とある思い出 by 記憶の力

無名氏

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もう昔のような恋はしない。

「昔の恋」というのは、いつでもお互いのことを思い、相手が何をしているのか知りたい、時間があるときはいつでも会いたいというものだった。

そんな恋をしていた私は2020年9月に別れた。

元カレは私をとても甘やかしてくれて、私も彼にくっつくのが好きで、私のいうことも何でも聞いてくれた。彼は私に世界で最も幸せな女の子とでも錯覚しているくらい甘やかされていた。とある日の真夜中に突然生理が来たときのことを今でも覚えている。出血がひどくてトイレに逃げて生理用ナプキンをチェックしたところ、月経血で下着が汚れていたので、彼が私に「君は寝ていて休んでいいよ。下着とか洗っとくから。」と言われ、今思うと本当に優しさに包まれた私だった。

けれど、遠距離となったのがきかっけで私達の関係が変わり始まり、二人で会うことができず、お互いに疑いを持ち始めた。お互いに不信感と焦りも感じていたが、実際のところ私の暮らしはとてもシンプルで、仕事が終わればすぐに家に帰っていた。友達もほとんどいなかったので、そんな毎日のやり取りに疑いや焦りに本当にうんざりしていた。毎日の彼との電話はお互いへの思いやりの言葉ではなく、代わりに、なぜ定期的に自分の居場所や一緒にいる人などを報告しなかったことの説明や、メッセージ返信が遅れたことへの疑い：もしや職場の同僚と曖昧な関係でもしているのか、そんな内容だった。

別れた後も暫くどん底な生活をしていた。一人でいるときは、昔の熱愛時期の光景やイチャついていた時のことも頭に浮かんできて、それが例え喧嘩していた日々でも恋しく思えて、涙を流しながら眠りについた夜は数え切れなかった。

時間が経った今、実は一人でも楽しい生活ができるということを発見した。仕事を終えて帰り道にコンビニにでも寄って高価なアイスクリームを買って家でゆっくり楽しめるのも出来るし、土曜日の夜に居酒屋にでも行ってパーとお酒も飲める。また、もっと自分磨きしてキレイに、魅力的に見せることも覚えていた。そして世界で最も心配の要らないことが私を追いかけて、愛してくれる男の子達だということにも気づいた。

今の私はとても元気だ。2020年にあっさりと別れを告げることも出来る。もう盲目な恋もしない。私には自分のライフスタイルと自分の愛の価値観が出来ているからだ。

彼が私の人生に居たことにも感謝し、この思い出（記憶）にも感謝し、2020年に突然に起きたコロナ禍にもいろいろな意味で感謝する。私は自分のことがもっと好きになり、より一段成長した気がする。そして「記憶の力」も分かるようになり：「記憶は力を与えてくれます」と、自分に励ましの言葉が掛けられるようになった。#MemoriesEmpower