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ドラゴンクエスト・バトルロワイアルIII Lv4
- 1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2016/05/05(木) 23:22:48.30 ID:abyJLZo2.net
- こちらはドラゴンクエストのキャラクターのみでバトルロワイアルを開催したら?
というテーマの参加型リレー小説スレッドです。
参加資格は全員にあります。
初心者歓迎、SSは矛盾の無い展開である限りは原則として受け入れられます。
殺し合いがテーマである以上、それを許容できる方のみ参加してください。
好きなキャラが死んでも涙をぐっと堪えて、次の展開に期待しましょう。
まとめWiki
http://seesaawiki.jp/dragonquestbr3rd/
避難所
http://jbbs.shitaraba.net/game/30317/
前回企画
ドラゴンクエスト・バトルロワイアルII
http://seesaawiki.jp/dqbr2/
前々回企画
ドラゴンクエスト・バトルロワイアル
http://dqbr.rasny.net/wiki/wiki.cgi
http://seesaawiki.jp/dqbr1/
DQBR総合 お絵かき掲示板
http://w5.oekakibbs.com/bbs/dqbr2/oekakibbs.cgi
- 71 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2016/05/14(土) 21:15:45.57 ID:sn5yod67.net
- >>70
お前よく平気でそんな嘘が書けるな
頭おかしいわ
- 72 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2016/05/15(日) 07:41:43.72 ID:rsCPReDP.net
- まずは避難所がベターかなと思う そこから必要になったら更に別のところに移転ってのもしやすいだろうし
- 73 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2016/05/15(日) 08:22:17.69 ID:kNNITXi2.net
- とりあえずスレ落ちるまではここでいいだろ
落ちたらとりあえず避難所で
- 74 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2016/05/15(日) 20:03:39.77 ID:bUkeKiWx.net
- 半日
- 75 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2016/05/16(月) 07:43:27.92 ID:63aaHriG.net
- 半日保守
- 76 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2016/05/16(月) 19:05:09.29 ID:4qBIQYtb.net
- 半日
- 77 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2016/05/17(火) 06:25:25.22 ID:8lgxiOqV.net
- 半日
- 78 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2016/05/17(火) 17:25:25.15 ID:jKrw5Yhl.net
- 半日
- 79 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2016/05/18(水) 00:39:54.90 ID:d0YSbsii.net
- ほ
- 80 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2016/05/18(水) 12:32:48.34 ID:bQwItV0t.net
- 半日
- 81 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2016/05/18(水) 18:05:39.00 .net
- 定期age
今北用
このスレの最重要事項は>>21-41あたり
この辺見れば何が原因でこうなったかわかる
特に>>24、>>26、>>27、>>42とか
お知らせ
ここはkanagawa.ocn=したらば専用板に成り下がりました
削除依頼スレまで私怨依頼で削除人を来なくしたkanagawa.ocn=したらば専用板です
- 82 : ◆.51mfYpfV2 :2016/05/18(水) 23:17:50.74 ID:QJYIyYZQ.net
- 投下します
- 83 :揺らぐ心、揺らがぬ心 ◆.51mfYpfV2 :2016/05/18(水) 23:18:30.45 ID:QJYIyYZQ.net
-
ーー厄介な奴に会った。
彼らが真っ先に浮かべた感想がそれだった。
気心の知れた仲間というのは信頼できるものだ。
しかしそれは、背中を預け合える関係の場合。
気心の知れた元仲間というのは、潜在的に敵意を持つ者にとって、何よりも厄介な相手でしかない。
少しばかり話し合い、アルスとクリフトはトラペッタに、エイトとブライはトロデーン城に、当初の予定通り向かうということでまとまった。
戦力が分散されてしまうが、二人の姫という探し人の捜索の効率を優先させた結果だ。
「……では、そちらで姫様を見つけたら、必ずや保護して下さいね」
「ええ、そんな恐い顔なさらずとも。アリーナ姫様のことも、そちらにいらした時は、よろしく頼みます」
「言葉が届くと良いのじゃが……クリフト、お主こそ、不測の事態が起きても焦ってザラキを使うようなドジを踏むのではないぞ」
「ブ、ブライ様、それは……!」
「はは、大丈夫だよ。僕もできる限りはサポートするから」
「……」
軽く冗談を飛ばしながら笑う三人を、エイトは笑顔ではあるが、どこか固い表情で眺めていた。
ミーティア姫の安全を考えれば、今の内に芽を摘んでおくのが最善だろう。
しかし、地の利を武器にできる城や街でならまだしも、こんな森の中で三人も相手にして立ち回るのは厳しい。
それに、槍を持とうとする手はやはり、どこか力を込めることを拒否していた。
覚悟が決まらない自分が嫌になる。
今度は利き手ではない左手に力を入れる。
掌に、爪の跡がくっきりと付いた。
森を抜け、分かれ道にたどり着いて別れようとしたところで、アルスがやや離れた場所にいる彼を見つけた。
銀の髪に、赤い服。先程共有したばかりの情報に一致する。
「ねえ、あの人、エイトが言ってたククールって人じゃない?」
「え? あ……」
「確か、マルチェロという方以外は危険がないんでしたよね?」
ならば合流しましょう、とクリフトが続けるのと同時に、人の気配を感じてか、ククールが振り返った。
あまり警戒心が見られないアルスやクリフトの様子に首を傾げたものの、横にエイトがいることを確認して合点がいったらしい。
ぽんと手を打ち、歩み寄る。
「よお、エイト、無事で何よりだ。ヤバい奴に出会したりもしてないみたいだな」
「ククールこそ、無事で良かった」
軽く手を挙げて語りかけるククールと、明るく応えるエイト。
エイトはククールにブライ、クリフト、アルスを紹介して、三人にもまた、話した仲間で間違いないと微笑んだ。
「女性を引っかけたり、賭博でイカサマをするような面もありますが、それ以外は確かに信用できますよ」
「情報収集や路銀稼ぎに貢献してただろ。それに、殺し合いなんて物騒なものに巻き込まれたんだ。流石にその辺は自粛するさ」
- 84 :揺らぐ心、揺らがぬ心 ◆.51mfYpfV2 :2016/05/18(水) 23:19:37.79 ID:QJYIyYZQ.net
- からかい混じりに信用して大丈夫だと言うエイトに、ククールは肩を竦めて返す。
表面上は仲間たちの和やかな再会。
しかし内に暗いものを抱える二人は、心からの笑みを浮かべてはいなかった。
ーー躊躇わずブライを殺し、早急にトロデーン城に向かっていれば。
ーーガボたちに悟られないよう、北西からトラペッタに入ろうと考えなければ。
ーーーー鉢合わせしなかったのに。
かつてエイトとククールは、互いに良い第一印象を抱いていなかった。
真面目な兵士と破戒僧。ほぼ対極ともいえる二人だ。
酒場で賭博に興じ、悪びれもせずイカサマまでしていたククールに、エイトは不信感を抱いていたし、
王を自称する尊大な魔物と馬に尽くし忙しく動き回るエイトを、ククールは何が楽しいのかとどこか冷めた目で見ていた。
やがて信頼を育むまでに、それぞれが認識を改めた時期は異なる。
エイトが少しククールの見方を変えたのはマイエラ修道院の懲罰室前で彼の生い立ちの断片を聞いた時。
複雑な生まれ、立場、兄弟関係。
意図せず知ったこととはいえ、ただ不真面目な気障男というわけでもないのかと、少し興味が湧いた。
その根本を垣間見たのは、ドルマゲスがマイエラ修道院を襲撃した時。
イカサマをしている時とも、ゼシカに言い寄っていた時とも違う、焦りが浮かんだ本気の表情。
そして炎が燃え盛る橋に躊躇する騎士たちを尻目に、迷わず駆け抜けた度胸。
大切な人の為に全力を尽くすことができる熱い部分もあるのだと知った。
後にククールが仲間に加わる頃には、彼なら信用に足るだろうと、既にそう思っていた。
ククールが少しエイトの見方を変えたのは、それよりもいくらか時が過ぎてから。
アスカンタで人一倍強くパヴァン王を慕うキラに、エイトが仲間に対するものともトロデ王たちに対するものとも少し違う眼差しを向けていることに気付いた。
王に身を尽くす者同士としての親近感、といったところだろうか。
金と陰謀が絶えず動き回る教会の闇を見てきたククールにとって、立ち直ったパヴァン王に喜ぶキラや、それを嬉しそうに見つめるエイトは珍しい存在だった。
その根本を垣間見たのはパルミドでミーティア姫が拐われた時。
エイトは決してトロデ王を責めることなく、姫の側を離れた自分に否があると言って直ぐ様その所在を追った。
苦労の末に無事姫を取り戻し、しかし一歩下がったところで親子の再会を安心したように見守るその姿を見て、何よりも彼らを優先させる想いの強さを知った。
- 85 :揺らぐ心、揺らがぬ心 ◆.51mfYpfV2 :2016/05/18(水) 23:20:45.57 ID:QJYIyYZQ.net
- 互いの印象が変わってから信頼関係を築くまで、さして時間はかからなかった。
我が強いメンバーがほとんどのパーティにおいて、一歩引いた位置を保つことが多いこと。
それぞれが抱いていた微妙な印象が、その実どちらも強く誰かを想うが故のものだったということ。
一歩踏み込んでみれば似ている部分も多く、気付けばある程度機微を感じ取れるようになっていた。
どちらも過ぎた詮索はしない質だったこともあり、そこには言葉の少ない静かな信頼関係ができていた。
旅の間は頼もしかったその信頼関係が、今この場では疎ましい。
ククールはやや距離を空けたところまでしか近寄らず、エイトはククールが立ち止まるまでの間、一切目を離さなかった。
不自然ではない程度だが、二人はそれだけで、確かに薄い隔たりを感じた。
「ククールは既に誰かと一戦交えたみたいだね。よく見ると、服も所々ボロボロだし」
「ああ。ま、これぐらい大した傷じゃないさ」
「……そのふくろも、その時に?」
「……そんなところだ」
やはり警戒されている。
旅をしていた時と比べて、距離の取り方が違う。
そして、自分もまた警戒している。
下手にボロを出せば、一度に四人を相手にした戦闘になる可能性がある。
エイト以外の手の内が分からない以上、それは避けたいところだ。
嘘にならない範囲でぼかして答えるに留める。
「ククールさんは、その……もしかして……」
そんな張りつめた空気を、クリフトが揺るがした。
「もしかして、その襲撃者を……?」
「…………」
青い顔で尋ねるクリフトに視線が集まる。
それ以上は続けられなかったが、言いたいことは察した。一拍間を空けて、ククールは口を開く。
「こっちだって、命が懸かってるからな。やり返すくらい、誰だってするだろ」
やはり正直に、しかし曖昧に答える。
そうですよね……と弱々しい声で呟き、クリフトは俯いた。
ブライとアルスがその顔を覗き込むも、かける言葉は見つからないようだ。
やがて、クリフトはそのままぽつりと溢した。
「姫様はお強いですし、無事だと思います。それに、ブライ様たちに反発していても、その心根はきっと変わっていないはず」
そう信じていますが、と、クリフトは続ける。
「ですが、もしも……ブライ様が仰ったように、姫様が反発心の赴くままブライ様を……いえ、サントハイムに仕える以上、私をも殺そうと襲いかかってきたら……。
私たちも、姫様と戦わざるを得ないんですよね……」
「クリフト……」
- 86 :揺らぐ心、揺らがぬ心 ◆.51mfYpfV2 :2016/05/18(水) 23:21:29.60 ID:QJYIyYZQ.net
- その手が微かに震えてることに気付き、アルスはゆっくりと尋ねた。
「姫様と戦うことになるのが恐い?」
「……ええ、恐ろしいです。姫様はお強い。私やブライ様では、敵わないのは明白です。ですがそれ以前に、姫様と戦うなんて、私にはできません。
だからこそ……王様が味わってほしくないと仰った悲劇の一端を、姫様が自ら担ってしまうことになるのが恐ろしい」
ブライもクリフトも、立派なサントハイムの国民。
もしも自分たちがアリーナ姫に殺されるようなことがあれば。
例えそれで国が滅びなくても。
例え他の国民たちが皆無事だとしても。
いつしか反発心が消えた時……自らが国民を、それも近しい立場の者の命を奪ったという事実を背負うことになってしまう。
「私は、姫様にそんなものを背負わせたくありません。もしも姫様が反発心に従って私たちに敵意を向けるのであれば、必ず説得しなければ!」
まだ手は震えているけれど。
それが難しいことだと分かってはいるけれど。
アリーナ姫と戦うことはできない自分が、彼女に自分たちの命を背負わせない為にできることは、それしかないから。
決意を固めて、言い切る。
顔を上げたクリフトの目には、確かに強い意志が宿っていた。
(…………)
クリフトとは対照的に、エイトは暗い瞳でその光景を見つめていた。
姫の為に迷わず覚悟を固められるその心が羨ましいのだろうか、と自問するも、少し違う気がした。
ならば、複雑なこの気持ちは。
ーーきっとこれは、親近感に近い。
方向性が真逆とはいえ、彼も彼の姫を大事に想っていて、大事な姫の為に行動して。
だからこそ……その決意が羨ましくもあり、同時に疎ましくもあった。
「……おい、エイト」
そんなエイトに、ククールが小さく声をかける。
「お前もなんとなく勘付いてるんだろ? 俺もお前のその顔を見てきた、予想が確信に変わった。
……提案だ、一旦手を組まないか」
- 87 :揺らぐ心、揺らがぬ心 ◆.51mfYpfV2 :2016/05/18(水) 23:22:07.22 ID:QJYIyYZQ.net
- エイトが微かに首を動かす。
互いにかつての仲間を警戒し、それでいて三人とは対立しないよう言葉少なくギリギリのやりとりをしていたのだ。
赤の他人ならいざ知らず、長く旅をしていた自分たちには分かっていた。
どちらも仲間と共にゲームに逆らう為ではなく、それより大事な何かの為に戦おうとしている、と。
「二対三なら、勝機はある。おまけにあの三人の内、二人は見るからに前衛ではなさそうだ。不利ってほどでもない。
俺たちは敵対すると厄介な奴同士だが、協力するとなると話は別だ。
……エイト。後はお前が決意するだけだ」
エイトとしても、ブライやクリフト、アルスは勿論、ククールを野放しにするのも不安が大きい。
ならば一先ず三人を片付けて、その後は一騎討ちをするなり、互いを利用し合う同盟関係を結ぶなりすればいい。
悪い話ではない筈だ。
ーーしかし。
揺れる瞳をブライに向ける。
二人しかいない空間で、背後を取り、首筋を狙い槍を引き……あとは真っ直ぐに突くだけという、今以上の好機にすら、躊躇ってしまったのだ。
ククールと手を結んだところで、変われるとは限らない。
大粒の汗が首を伝う。
ただの一言すら、音に出すのが難しい。
yesにしろnoにしろ、長い答えではない筈なのに。
「私、は……」
エイトが出した答えはーー
- 88 :揺らぐ心、揺らがぬ心 ◆.51mfYpfV2 :2016/05/18(水) 23:22:34.34 ID:QJYIyYZQ.net
-
【E-3/平原/1日目 午前】
【アルス@DQ7】
[状態] 健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式 支給品1〜3(本人確認済み)
[思考]:本気になれるものを探す。
【クリフト@DQ4】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式 支給品1〜3(本人確認済み)
[思考]:アリーナを探す。反発心から襲いかかってくるようなら、アリーナを説得する。
【エイト@DQ8主人公】
[状態] 健康
[装備]:砂塵の槍
[道具]:支給品一式 道具0〜2個
[思考]:ミーティアと合流する それまでは危険分子を排除する
ククールの提案に……?
【ブライ@DQ4】
[状態]:健康
[装備]:魔封じの杖
[道具]:支給品一式 道具0〜2個
[思考]:アリーナを探し出し、合流する
【ククール@DQ8】
[状態]:HP4/5 MP微消費 裂傷
[装備]:堕天使のレイピア
[道具]:支給品一式×2 消え去り草×2 道具0〜3個(本人確認済)
[思考]:優勝し、『元通りの世界』に帰ることを願う
エイトが乗れば、アルス、クリフト、ブライを殺す
[備考]:杖スキル9以上
- 89 : ◆.51mfYpfV2 :2016/05/18(水) 23:23:28.55 ID:QJYIyYZQ.net
- 以上で投下終了です
誤字脱字、指摘などあればよろしくお願いします
- 90 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2016/05/18(水) 23:26:06.07 ID:kGJGeVwX.net
- つまんね
- 91 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2016/05/18(水) 23:45:42.95 ID:CTUtBqtG.net
- 面白いよ
- 92 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2016/05/19(木) 00:43:03.42 ID:8Y3sdauM.net
- くっさ
- 93 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2016/05/19(木) 02:20:16.97 ID:mWGac6C3.net
- 投下乙です
マジか、そこで切っちゃうか
これでこの組もお昼到達かと思ったら、その前に一悶着ありそうだ
ここ、エイトが断ってもククールがエイトの考えを暴露するだけで亀裂が入るしどうなるか分かんないな
- 94 : ◆Qis03xqUaQac :2016/05/19(木) 05:05:39.58 ID:LpGunxoV.net
- 作戦、知恵、戦闘理論。
人も魔物も隔て無く、長き戦いの歴史の上でこういった物を身につけていった。
ひとえに、賢さが産んだ進歩である。
例えば、行動に一定の法則がある事を見切り、危険な行動の瞬間に防御する。
例えば、己が命が削れれば、それに応じて行動を変化させる。
知恵ある者にとって、思えば当然の事なのかもしれない。
しかし、真の命を懸けた戦いが起きたとき。
「木偶がどこまで食らいつくっ!!」
「ふぬぬぬぬ!」
それらは擲たれる。
力と力、体力が尽きる極限まで互いに戦い合う。
純粋な『戦闘』と呼ばれる行為へと回帰していくのだろう。
「オイラは諦めないのだ!諦めさせたいのならそれは無理ってものなのだ!!」
ヘルバトラーが大剣を振るうその刹那。
振り上げた剣の重心の移動を見たズーボーは、刃の描く軌跡を読む。
後方四時の方向、そこには呪文の詠唱中のゼシカ。
彼女への攻撃を阻む為ズーボーの取った行動は、気合充分な仁王立ち。
炎の民の名を宿す重厚なる盾を構え、その軌道上に割り込んだ。
「ガートランド聖騎士団は我慢強いのだ、ぜったいに負けないのだ!」
「ちいっ!」
火花を散らし、轟音と共に振るわれた大剣が弾かれる。
盾に残る痺れはかなりの物だが、ズーボーは力の限り踏ん張った。
「ありがとうズーボー!」
「お返し、行くよ!!」
攻撃を防いだ後の隙を突くのは、大賢者と大魔女の力を受け継ぎし者たち。
互いに魔力を練り上げ、狙うは一点集中。
メラミの呪文が紡がれ、ヘルバトラーの顔面をめがけて2つの火球が放たれた。
「ぐっ!」
「攻撃が来る!」
ヘルバトラーの両方の手からメラミの火球が生み出される。
ゼシカとバーバラにそのまま呪文をやり返す腹積もりだ。
- 95 :パラディンの魂2/17 ◆2UPLrrGWK6 :2016/05/19(木) 05:06:13.50 ID:LpGunxoV.net
- 「ふぅーーーーぬっ!」
「ぐふぅっ!」
バレットハンマーの重厚な一撃が、ヘルバトラーの脾腹の辺りに食らい込む。
踏み止まる力を奪うウェイトブレイクをまともに浴び、思わず傷口を手で抑えた。
「纏わり……つきおって!!」
ヘルバトラーが大きく息を吸い込むと、口腔から熱い光が溢れようとする。
そこからは、先ほどの炎を上回る熱が感じられた。
「!さっきよりも熱い炎が来るのだ!」
「危ない……!バーバラ下がって!」
三角形を描くような陣形を一時解除し、炎の範囲から逃れようと走る。
しかし完全に回避をするにはいささか接近を許し過ぎていた。
背後から迫る火炎が空気を灼き、大地を焦がして迫る。
「この私をお忘れなく」
「フアナ!」
「顕現せよ、神々の清衣……『フバーハ』!」
ズーボー達を暖かな光が包み込んだ。
フアナのフバーハがヘルバトラーの灼熱の炎が届く寸前で発動し、その猛威を妨げる。
「ちっ……!」
「頭に来た?冷やしてあげるよ!」
「っ!」
爆炎が弾けた事による視界の妨げが、一瞬移動する魔法使いを見失わせた。
バーバラは大地を駆けながらの詠唱を続行する。
小柄な身体が発揮する持ち前のすばしっこさは、一行の中でも随一だった。
「凍っちゃえ……マヒャド!」
「ちいっ!!」
交差させた両腕に、容赦なく氷嵐呪文が炸裂していく。
やがて凍てつく結晶は周囲の大地ごとヘルバトラーの躰を凍りつかせていった。
「小娘ええ!」
「ぬおおおおおおっ!」
「!ぐ……!!」
動きの鈍ったヘルバトラーを、再びズーボーが強襲した。
相手の防御を打ち砕く、シールドブレイクの一撃を構えることすらできずにまともに喰らう。
ハンマーの一撃は痛烈に響き、衝撃で砕け散った氷の結晶はダイヤモンドダストのような輝きを見せた。
「お……の、れっ!!」
- 96 :パラディンの魂3/17 ◆2UPLrrGWK6 :2016/05/19(木) 05:06:42.89 ID:LpGunxoV.net
- 「!しまった、離れるのだ!」
「?!」
ヘルバトラーは怒りに任せて残った氷を砕き、大地を踏み鳴らす。
振動と共に一行に激しい衝撃が訪れ、割れた大地は隆起し礫を散らす。
「きゃあっ!」
「しぶとい奴らめが!」
地形を変動させんばかりのその技は、一行の行動を大いに阻んだ。
先程まで平原だった周囲は、さながら荒れ果てた山岳の一角のように姿を変える。
バーバラが足を取られて転倒したところに、ヘルバトラーは突進する。
「やめるのだ!」
「きゃあっ」
「遅い!死ねぃ!!」
大剣が轟音を立て、地表にぶつかり合う音が響く。
振動は一同の躰を僅かに浮かす程の威力を持っている。
「はぁっ……はぁっ」
「ゼシカ!」
「仕留める順番が変わったか」
だが寸前、ゼシカがバーバラを突き飛ばしたことで危機は去る。
しかし、振り下ろした衝撃で散った散った岩片は強かにゼシカの右肩を傷めた。
特に鋭い礫が彼女の露出した肩に大きな血の線を引き、爪痕を残す。
「うぅっ……」
「ごめんっ、ゼシカ……!」
「!だめっ……」
駆け寄ったバーバラとゼシカに向け、ヘルバトラーは掌を突き出した。
至近距離で喰らえば絶命必至、威力は十分な爆裂呪文イオナズンが詠唱される。
収束した光の魔力が、邪な笑みと共に解き放たれ─
「ぬぁーーーっ!」
「がッ!?」
三度、ズーボーのハンマーが唸りを上げた。
顔面にキャンセルショットを食らい、イオナズンの魔力は虚しく宙に掻き消える。
「フアナ、ゼシカを頼むのだ!」
「ええ!」
- 97 :パラディンの魂4/17 ◆2UPLrrGWK6 :2016/05/19(木) 05:07:38.29 ID:LpGunxoV.net
- ズーボーはゼシカ達の安全を守るため、再びヘルバトラーと肉薄する。
先ほどのウェイトブレイクの効力が続いている、互いに押し合う形で拮抗した。
「しつこく食らいつくものだ、呆れた愚者め……」
「よく言われるのだ!」
この距離ではやはり大剣による攻撃は通用しない。
ヘルバトラーは早々に斬りつけることを諦め、強烈な体当たりをズーボーにぶちかます。
「ぐわあーっ!」
「その活力はどこより湧く?聖騎士としての誉れとやらか?己の誇りを曲げぬためか?……くだらん!」
転がる聖騎士を尻目に、半ば怒り任せの問いかけを投げ捨てつつ、ヘルバトラーは跳んだ。
出血を止めるため、回復呪文を使用するフアナとバーバラがその標的だ。
もとより、ズーボーの攻撃の威力そのものはヘルバトラーにとっての脅威ではない。
危険視しているのは、彼の足止めにより時間を必要とする呪文使い達に多くの攻撃機会が与えられることだ。
戦闘中に世界樹のしずくを使用したことで耐えしのいでは居るが、このまま幾度とない呪文に晒されればわからない。
蘇り、強化されたこの力をあっさりと散らすことは戦闘の天才たる彼には許しがたい事であった。
「女どもを先に片付けてくれるッ!」
「!フアナ、バーバラ、うしろっ」
「わっ!?」
振り返ったバーバラは視界に迫る巨体に驚き、迫る脅威にフアナも治療を一旦取りやめるしか無い。
尤もズーボーによる時間稼ぎにより初期治療は既に完了していた。
だか痛みの残るゼシカに攻撃を躱せるほどの万全さには及ばずだ。
空を切り裂き迫るヘルバトラーを迎撃するためには時間が必要だった。
治療を受けているゼシカも、驚きに眼を見開くバーバラにもそれが足りない。
「死ねいっ!!」
しかしフアナは優秀な僧侶。
パーティの後方支援を一手に担っていた治療のエキスパートだ。
故に、不測の事態に対する対応も素早い。
「荒ぶる聖風、神に捧ぐ十字をここに刻め!!」
「!」
ヘルバトラーは驚愕に顔を歪めた。
想定外の反撃の狼煙を目の当たりにしたが故だ。
「『バギクロス』!!」
- 98 :パラディンの魂5/17 ◆2UPLrrGWK6 :2016/05/19(木) 05:08:02.07 ID:LpGunxoV.net
- 「ぐっ……ぐあああああ!!」
身動きの鈍る空中で呪文を食らったのが災いした。
巻き起こる嵐に身を揉まれ、二回、三回とヘルバトラーの巨躯は回る。
やがて激しく地表に叩きつけられることで、普通に呪文を喰らう以上の手痛いダメージを負わされた。
「う……迂闊だったか……!!」
流れる血を拭うことも忘れ、その表情は怒りを表わす。
かなりの負傷と思われるにも関わらず、剣は確りと握られ、確かな殺意は留まらない。
「よもや僧侶の貴様に攻撃術法を浴びせられるとは─」
そこまで言いかけたヘルバトラーは自分の思案に硬直する。
何故、その考えに至ったのかと。
「……落ち着け……風の呪文は回復呪文の使い手の得意とするものではないか……!!」
かつて、自分を苦しめた勇者に導かれし仲間たち。
その一人、未来を見通す占星術師は聖なる風で自身を攻撃してきた記憶が有る筈。
だが、
いや、魔界に母を取り戻す為に乗り込んだ魔物を従えし国王も─
(ええい……どうしたというのだ?!)
飛び飛びとなった記憶が頭の中で渦巻いている。
これも新たなる力を得た弊害とでも言うのだろうか。
ヘルバトラーはまとまらぬ思考のしがらみを、頭を振ることで払おうとした。
「チャンスよ!バーバラ、合わせて」
「うんっ」
集う魔力が熱を帯び、燃えるような彼女たちの頭髪を逆立てる。
スカートはふわりと舞い上がり、飛び散った小石がカタカタと震え始める。
集合した魔力の共鳴現象は、隣り合う似通った力をさらに増幅させていた。
「『ベギラゴン』!!」
「『メラゾーマ』ッ!!」
大賢者の力たる黄金に燃え盛る閃熱が、大魔女の威光たる灼熱の大火球が大気を灼き顕在化する。
互いに絡みあい、強まりあいながらヘルバトラーめがけ迫った。
「ぐ、ぬ……がああああっ!!」
殺到する烈火の熱量に圧倒され、ヘルバトラーは身動きが取れないまま焼かれていく。
転げて纏わり付いた火炎を振り払っている内に、一行は既に陣形を整え直そうと走る。
分断されたズーボーとフアナ達は走り寄り─
「俺さまを……」
「なっ!?」
「どこまで怒らせれば……貴様らは気が済むのだぁっ!!」
ヘルバトラーは顔を歪め激怒した。
口調は乱れ、眼の色を変えてこちらに叫ぶ。
大剣を荒々しく振るい、突撃して一向に肉薄する。
- 99 :パラディンの魂6/17 ◆2UPLrrGWK6 :2016/05/19(木) 05:08:54.08 ID:LpGunxoV.net
- 「バーバラっ!」
「きゃっ……!!」
スレイプニールの重厚な刃が、最も近くに居たバーバラの脳天へ吸い込まれるように落ちていく。
怒りに任せた一撃は、その鋭さを増していた。
喰らえば切断に留まらず、存在そのものを粉砕せんと唸りを上げていた。
「ふんぬああぁぁあああッ!」
オーガシールドで迫る刃に対抗するべく、ズーボーは両者の間に入った。
だが、守り切るにはその体勢は明らかに不十分だった。
盾で受けきれずに、巨大な刃は先端はズーボーの肩に喰らい込んでいた。
噴き出る鮮血が、バーバラの頬に赤い斑点を散らす。
「邪魔立てを……っ!!」
「ズーボーぉ!」
「お前みたいな魔物は、おてんとさまが許しても……このオイラが許さないのだ!」
踏み止まるべく力を込める度、傷口から血が大量に溢れ出す。
しかしズーボーは全身を盾と化し、バーバラへの一切の攻撃を許さなかった。
歯を食いしばり、痛みに顔を歪めながらも、刃から自ら逃れようとはしなかった。
「ならばその腕、切り落とし……!!」
「ムーンサルトぉ!!」
気を取られていたヘルバトラーに、回転しての体当たりが炸裂する。
ゼシカの奇襲に一瞬ヘルバトラーの身体が傾いだ。
大剣を握る手に篭もる力が弱まったその隙を、ズーボーは見逃さない。
(ここで逃れるだけじゃ、だめなのだ)
ハンマーを掲げる手に力を込めるたびに、焼けつくような肩の痛みは増していく。
傷口を広げるに等しい行為だが、今ここで好機を逃すわけに行かないと彼は判断した。
「『ドラムクラーーーーーッシュ』!!」
「!?」
放たれた、物質を粉砕することに秀でた一撃が届いた先は─大剣スレイプニールの刃。
重くそして硬質な紫の刃と、バレットハンマーの黒鉄は、激しい火花を散らした。
金属音は、耳鳴りに苛まれたかと錯覚をさせるほどに辺りに響く。
「─くくっ」
だが、殺意の篭った刃を砕くには至らない。
僅かに軋みを感じたが、それまでだ。
「その傷では、貴様の攻撃など恐るに足らんわっ!!」
「う、うぐぐ」
ずるりと引きぬかれた大剣の刃が、朱の血で染め上げられている。
滴り落ちるそれを見て満足気そうなヘルバトラーは、再び攻撃を加えようと構える。
「『メラゾーマ』っ!!」
- 100 :パラディンの魂7/17 ◆2UPLrrGWK6 :2016/05/19(木) 05:09:31.52 ID:LpGunxoV.net
- 「!」
横合いから獄炎の火球が地表に着弾する。
轟音と共に火柱が立ち上りヘルバトラーは回避を行った。
その隙にフアナが2人の元へ駆けつけ、距離を取るべくズーボーの大きな身体を支える。
バーバラは血にまみれながら、心配そうに見つめて、逆側を支えて引っ張った。
「い、今ベホマを」
「あたしもっ」
焦って2人がかりで回復に回ろうとするゼシカとフアナを、ズーボーは手で制した。
痛むのか青い顔と浅い呼吸で堪えつつ、その表情は歯を食いしばっている。
「動ける程度のベホマでいいから、バーバラはゼシカの援護を頼んだのだ」
「でも!」
「ゼシカが孤立しちゃったら、オイラでも守り切れないのだ!すぐ駆けつけなきゃなのだ」
「……まったく、貴方は!バーバラさん、気をつけて」
「う、うん。ごめんねズーボー!」
全力のベホマでも、いつものように癒せない。
焦燥するばかりのフアナは、焦りを抑えつつベホマを立て続けにかけていく。
不安げなバーバラは、狙われているゼシカを助けるべく戦いに赴いた。
「女一人で、俺さまに立ち向かおうとは片腹痛い!!」
「男だ女だこんな場所で言うなんて、うっとーしいわね全く!!」
体技の方も卓越しているゼシカは攻撃をひらりと躱して交戦中だ。
しかしその回避にも限度がある、加えて先ほどからの激戦で足場は非常に悪い。
ところどころ岩片が隆起している上にそれ故の死角も増大しているのだ。
「一人じゃないわ、あたしも居るもん!」
「来たか小娘!」
ゼシカの打撃をものともせずに、バーバラの小柄な身体目掛けて腕を突き出す。
立て続けに放たれたのはメラミの火球だったが、バーバラは危ういところでそれらの直撃を免れる。
マントをはためかせながら、時間を稼ぐように動きまわった。
「ちょろちょろと……!!」
「えええええいっ!!」
「!?」
バーバラが地面に掌を叩きつけ、ヘルバトラーの方をキッと見据えた。
途端に、ひび割れもろくなっていた大地が音を立てて、さながらチーズのように裂けて行く。
賢者の経験から学んだ『地割れ』を生む術技である。
一撃必殺を狙うというより、この場合は足を取られて行動を封じるのが彼女の狙いだ。
「膨大な魔力で、地を割いたかッ!?」
「ナイス、バーバラ!」
- 101 :パラディンの魂8/17 ◆2UPLrrGWK6 :2016/05/19(木) 05:10:00.94 ID:LpGunxoV.net
- 近くの岩場に手をかけ、ゼシカは駆け上がり手を掲げる。
紡いでいる呪文は爆裂呪文イオナズン。
ヘルバトラーは頭上に魔力の収束していくのを一瞬で感じとった。
地割れにより足元に気を取られた隙を突き、周囲への影響を最も軽くする為に宙空に呪文の狙いをつけたのだ。
「『イオナズ』─」
「小賢しい!!」
ヘルバトラーは叩きつけるように大地を踏み鳴らす。
その衝撃にゼシカもバーバラも足を取られて転倒してしまった。
「きゃあっ!」
「終わりだ、小娘どもッ!!」
大剣を掲げ、巨体が地割れから足を引き抜き駆け出す。
殺意を宿らせ、邪魔な岩片を粉砕しつつ迫りゆく─
「─ランドインパクトォォーーーッ!」
「……!!」
しかし、その攻撃は強制的に妨げられる。
今度は、ヘルバトラーの方が地表を伝う衝撃に戸惑う番だった。
ズーボーが叩きつけたハンマーは地表を砕き、振動が再び大地を隆起させる。
「足を止めてやったのだ!」
「ゼシカさん、バーバラさん、こちらへ」
「あ、ありがとう」
その隙に、フアナは2人を助け起こして距離を取った。
三たび、ズーボーの攻撃を食らったヘルバトラーは再び怒りの形相で睨みつける。
ズーボーへと攻撃の対象を替え、大剣を大きく振り回す。
「今度こそ真っ二つにしてやろう!」
「そんなのは、ゴメンなのだ!」
- 102 :パラディンの魂9/17 ◆2UPLrrGWK6 :2016/05/19(木) 05:10:19.27 ID:LpGunxoV.net
- 二度、三度と唸る刃を危ういところでいなすズーボー。
しかし肩の傷は明らかに色濃いダメージを残していた。
短期決戦を狙い、ヘルバトラーは両手でスレイプニールを構える。
「死ねえええええッ!」
「……!!」
ズーボーは再びハンマーを握る手に力を込める。
痛みは今は捨てて置く。
この戦いの後、満足に身体が動かせる保証もない。
だが、踏みとどまらなければ。
そうしなくては、後ろの仲間たちを守れないからだ。
ヘルバトラーが先ほど言った、誉れも誇りも関係は無い。
ただ─ただ、守りたいのだ。
理屈を通り越して、守ることに全てを費やす。
ズーボーはそういう男だった。
「『ドラムクラッシュ』っ!!」
「二度は無いッ!!」
甲高い金属音が鳴り響く。
一瞬遅れて、歪んだ刃がみしりと音を立てた。
しかし。
「この刃を!俺さまの使命を!打ち砕けるわけがなかろう!!」
「うああっ!」
「ズーボーッ!」
バレットハンマーが、返す刃で弾かれる。
音を立てて転がるハンマーを眼で追ったが、そんな暇を与えてはもらえない。
掲げた刃は、首を刎ねる為。
鋭く振り下ろされる。
「もう貴様に武器は無い……終わりだ!!」
「……!」
しかしズーボーには最後の武器が残されている。
防御こそが─最大の攻撃。
パラディンの堅固なる護りは─
- 103 :パラディンの魂10/17 ◆2UPLrrGWK6 :2016/05/19(木) 05:10:50.70 ID:LpGunxoV.net
- 「はああぁぁッ!!」
「何ッ……!?」
時として、何よりも強き一撃と転じる。
即ちシールドアタック。
巨大なオーガシールドとの接触で、度重なる衝撃に耐えかねたスレイプニールの刀身は、瓦解した。
「くっ……!」
しかし、その衝撃が全身に直接伝わったズーボーは膝をつく。
先ほどの深手の傷が開いたのだ。
流れる血を手で抑えつつ、その顔は笑みを浮かべていた。
「目にモノ見せて……やったのだ!」
ヘルバトラーの表情から色が失われた。
それは落胆や驚愕ではない。
今までを遥かに超える─怒り。
◆ ◆ ◆
「やったわ、今がチャンスよ!」
「ズーボー痛がってる、助けなきゃ!」
「……のだ!みんな!」
ズーボーの反撃が剣を砕いたのを確認し、岩陰から飛び出す。
しかし、近づく3人に彼は鬼気迫る表情で何事か叫んでいた。
「離れるのだ!『魔瘴』を感じるのだ!!」
【魔障】─マショウ─
アストルティアにおける魔物達が消え行く時に感じられる物質である。
ドルワーム王国の研究機関による調査では、こう評されている。
(魔物が触れるとその力が何倍にも増し、人がこの物質に触れると死んでしまう)
多くの魔物たちや、アストルティアに災厄をばらまいた邪悪な存在の力の根源であると言える。
ドルワームやエルトナ地方等でもその脅威は確認されており、メギストリス前王の逝去にも関わっているとの噂だ。
聖騎士団に入ってきた情報の又聞きが全てではあるが、ズーボーもその脅威は知っており、眼にしたこともあった。
「……貴様らはもう……おしまいだ」
- 104 :パラディンの魂11/17 ◆2UPLrrGWK6 :2016/05/19(木) 05:11:04.47 ID:LpGunxoV.net
- そして、たった今。
凝縮しつつあるその闇のエネルギーが、爆発寸前まで膨れ上がっている。
全身に感じる冷たい刃がなぞるかのような怖気が、それを物語っていた。
「……くうぅ!」
「あっ」
「ズーボーっ!」
両手を掲げ、闇の力を充填しているヘルバトラーにズーボーは組み付く。
武器が手元になく、拾っていては間に合わない。
咄嗟の判断で、彼は力強く踏み込み、ヘルバトラーの身体を押し出した。
魔瘴の力の開放は、かなりの広範囲に散ると予測されている。
少しでも、濃度の高い魔瘴を吸うリスクを回避しなくてはならない。
「オイラが抑えている間に、とっておきの魔法で攻撃するのだ!!」
「!?」
ゼシカ、バーバラ両名にズーボーは告げる。
しかしその宣告は、即ち。
「ズーボー、あなた……!!」
「できないよ!巻き込んじゃう!」
「貴方何を考えているんですか!?」
「心配いらないのだ、ちゃんと避ける余裕を残すのだ!」
こう言っては居るが、実際のところはギリギリだ。
しかし彼の考えうる最善が、この手段しかない。
ここで、確実にヘルバトラーを仕留めなければ犠牲者は増えるに違いないからだ。
「約束するのだ。オイラは皆を守るから、倒れたりしないのだ」
「……!」
「撃つのだ!!」
ゼシカの覚悟が、先に決まった。
意志の強い深紅の瞳が、バーバラを見つめる。
迷いを無理に飲み込むような表情で、ゼシカを見つめ返した。
- 105 :パラディンの魂12/17 ◆2UPLrrGWK6 :2016/05/19(木) 05:11:48.10 ID:LpGunxoV.net
- 「全ての魔力をつぎ込むわ」
「……あたしも、それ、できる」
高まる魔力。
重なる詠唱。
これは、世界を揺るがす最強の魔法が一つ。
「重ねるわ。……ズーボーも只じゃ済まないかも」
「……」
「でも今はそれしかない……それしかないの」
ゼシカの手も震えていた。
バーバラの手も同じくだ。
ズーボーの行動は無駄にできない。
しかし、彼が犠牲になる可能性がそこにある以上─怖気づいてしまうのは避けられない。
葛藤をゼシカは言葉でねじ伏せた。
バーバラの不安は消えないが、彼女の肩にフアナの手がかかる。
「優秀な私がいます。ズーボーさんの命はきっと、きっと─助けますから」
自分よりも年若い少女であるバーバラ。
彼女の背中にとっても臆病な、自分の仲間である勇者の姿を少しだけ重ねて、励ました。
「信じて、やってやりましょう」
「……!」
光が溢れる。
巨大なエネルギーが制御され、やがて大きな球体となって顕在化する。
大賢者と、大魔女の全ての力。
魔力が弾けて渦巻く音は、竜の咆哮と聞き違えるほどに唸りをあげていた。
「ズーボーさん、今です!!」
「わかったのだ!」
押し合いを中断し、ズーボーは踵を返し皆の元に走り寄った。
激しい光に対抗するようにヘルバトラーは闇の力の塊を掲げている。
飲み込まれるのは、果たしてどちらか。
その結末がどちらであろうと、それを楽しみに待ち望んでいるように醜悪な笑みを浮かべたままでいた。
『全ての力を、ここに!!』
「無駄だ……!浸蝕せよ、魔瘴!!」
全てを飲み込むのは、邪なる力か、大いなる魔力か。
駆け寄るズーボーの頭上を、矢より早く魔法が通り抜ける。
『マダンテ───っ!!!!」
- 106 :パラディンの魂13/17 ◆2UPLrrGWK6 :2016/05/19(木) 05:12:09.54 ID:LpGunxoV.net
- ◆ ◆ ◆
ヘルバトラーの巨大な湾曲した角は、右半分が消失していた。
全身から流れる血は身体を染め上げて、もともと深紅の躰であったのかと誤解するほどだ。
翼ももがれ、残骸が僅かに背中にぶら下がるだけの存在と成り果てた。
そして丸太のように太い腕は、一つしか残されていない。
誰が見ても、満身創痍にほかならない。
─だが。
「無駄だと……言った……だろう……?ックク……」
生きていた。
全てを消し飛ばし、地形すら変えてしまうような魔力の奔流をその身に受けつつも。
魂の限りに放たれた、覚悟の上の極大破壊呪文を─耐え切って、しまったのだ。
「しかし……」
ヘルバトラーが見つめるのは、ひときわ大きく隆起した岩壁だった。
そしてその側に、折り重なるように倒れ伏す2つの影を見下ろす。
聖騎士ズーボーは、かすかなその生が燃え尽きて行くのを、動けぬままに感じていた。
「ここまでくると、認めるしかあるまい。貴様はくだらん矜持を最期まで貫き通したと」
(ランド・インパクト─っ!!)
マダンテの魔力が炸裂し、轟音と共に舞い上がる砂煙が舞い上がり、やがて晴れた直後。
最大限まで膨れ上がった魔瘴の塊を、震える片腕で支えるヘルバトラーがそこに現れたとして。
こうも冷静な判断を下せるパラディンは、どれだけいるだろうか。
「あの一瞬で防御壁を作りだし、女どもを守ろうと動いた」
取り落としたバレットハンマーを拾い上げ、決死の一撃を地表に放った。
全ては、彼女たちの命を守るための策だったのだ。
自分自身を守ることすら忘れ、おそらく無意識に下した判断だったのかもしれない。
「貴様は……俺が知る上で、最も手ごわき聖騎士だった」
目の前の命を、全身全霊を用い、守る。
とても単純明快で、愚直とも言えるその真っ直ぐさに─ヘルバトラーは畏怖すら覚えた。
残された方の手を広げ、横たわる2人へと向ける。
「飛び出してきた女を庇いさえしなければ、貴様も生きていたかもしれんな」
ズーボーが覆いかぶさるように守っていた彼女もまた、動かない。
魔蝕が炸裂する寸前、ズーボーが生み出した魔蝕の死角から飛び出したのだ。
それもまた、彼を救うという無意識より出た行動。
「一思いに首を刎ねてやりたいところだったが、生憎貴様に壊されてしまっていたな……」
ヘルバトラーの魔力が跳ね上がる。
無慈悲な爆裂呪文が放たれた。
「どれだけ撃てば貴様が死ぬのかわからんが……しっかりと殺しておいてやろう」
- 107 :パラディンの魂14/17 ◆2UPLrrGWK6 :2016/05/19(木) 05:12:38.33 ID:LpGunxoV.net
- ◆ ◆ ◆
幾度とない爆発音が響いた。
そして、岩壁の陰、身を縮めてそれを聞いているものが1人だけ居た。
「……」
バーバラの大きな両眼から涙の粒が溢れていた。
ぽろぽろと落ちるそれは、泥に塗れた頬を洗い流して線を引く。
眼、耳ともに真っ赤になり、拭うこともできぬままただじっとしていた。
(ごめんなさい……!ごめんなさい!)
震えていた。
傍らには気絶したゼシカが居る。
それは、マダンテを防ぎきられたショックからなのか、負傷によって体力が途切れたのか。
もしくは魔障の影響か、深い眠りについたかのように意識を失ったのだ。
故に今自由に動けるのは自分のみ。
しかし、だ。
気づかれてしまえば、ゼシカ共々為す術もなく殺されるのが目に見えていた。
"死"の気配をを感じ取ってしまったが最後。
身動ぎひとつとれなくなってしまったのだ。
そして、さらに彼女の心を深く傷つけていたのは。
(撃てなかった、あたし……あたしだけ撃てなかった)
極限まで追い詰められていた。
にも、かかわらずだ。
ズーボーが巻き込まれることを、彼女は恐れた。
自分の力がこの状況で制御しきれるのかと。
自分の魔法が、信頼すべき友を殺めてしまうのかもしれないと。
そうして躊躇が生まれたのだ。
その結果が─。
(あたし……弱虫だ……!!)
マダンテの、消失。
声を殺して泣く少女の、心の叫びは誰にも届かない。
【C-4/平原/1日目 昼】
【バーバラ@DQ6】
[状態]:HP4/5 MP2/5
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、不明支給品(0〜2)
[思考]:自分の心の弱さに絶望
[備考]:バーバラは少なくとも、僧侶、魔法使い、賢者はマスターしています。マダンテも習得済みです。
【ゼシカ@DQ8】
[状態]:HP3/5 右肩に傷(治療済み) MP0
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、不明支給品(0〜2)
[思考]:気絶中
- 108 :パラディンの魂15/17 ◆2UPLrrGWK6 :2016/05/19(木) 05:13:04.98 ID:LpGunxoV.net
- ◆ ◆ ◆
「……激情に任せ過ぎたか。些か撃ち過ぎた」
焼け焦げたズーボーの躰が動かないのを確認し、ヘルバトラーは歩き始めた。
ゼシカとバーバラの行方を追っても良かったがかなりの負傷で動くことが困難を極めた。
身を隠す場所を探す方針に切り替えたというわけだった。
「まだだ……この傷を癒やし、再び人間どもを絶望に突き落とすまで……俺は死なん」
狂気じみた覚悟を抱え、ヘルバトラーは何処へともなく歩き始める。
今しがた踏みにじった命を、振り返ることもなく。
【C-4/平原/1日目 昼】
【ヘルバトラー@JOKER】
[状態]:HP1/10、腹に十字の傷、右腕消失 翼消失 右角消失
[装備]:
[道具]:支給品一式、道具0〜2個
[思考]:
基本方針:心のままに闘う。
1:ひとまず体力回復。
[備考]:
※主催からアイテムに優遇措置を受けている可能性があります。
※歴代のヘルバトラーに使える呪文・特技が使用出来るようになっています(DQ5での仲間になった時の特技、DQ10での特技など)。
※スレイプニール@DQ10 は破壊されました。
◆ ◆ ◆
「『パ・ラ・ディ・ン……ガー、ド』……」 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:0be15ced7fbdb9fdb4d0ce1929c1b82f)
- 109 :パラディンの魂15/17 ◆2UPLrrGWK6 :2016/05/19(木) 05:14:26.82 ID:LpGunxoV.net
- 襤褸切れのようになりながらも、ズーボーは最後の最後まで誰かを守ることに全力を注いだ。
"2人分の"魔障に侵され、毒が身体を蝕んでも。
闇に包まれ、恐怖に支配されようとも。
死の一歩手前まで、諦めようとはしなかった。
その思いが彼に最後の奥義を実行させたのだ。
聖騎士最終奥義『パラディンガード』は、連続して放たれたイオナズンから、命を繋いだ。
「ズー……ボー……さ、ん……」
魔蝕からも。
絶命させようと、何度も放たれた魔法からも。
その全てから、フアナは庇われていた。
「何……やってんですか、貴方……」
「─ 、 ─ぅ ─っ」
(助けに来てくれたのに、悪いけれど……オイラ、助からないみたいなのだ)
喉も限界を超えているのだろう。
かすかな声すら、絞りだすことができない。
「何で……何で……」
(ごめんなのだ、フアナ。ズーボーはさよならをしないといけないのだ)
掠れた声でしか伝えることができない。
指で文字をなぞることも、眼と眼で通じ合うことすらも不可能だ。
ズーボーは生命ごと、灼き尽くされてしまっていたから。
「何で……っ!!」
(ゼシカとバーバラをたのむのだ。きっと生きてるのだ)
「待って、待って……!!」
(短い間だったけど みんなと冒険できて楽しかったのだ…)
失われていく生命の重みを、フアナは体感していた。
身動ぎひとつしない彼の身体から温もりが消えていく。
力が失われていく。
(ジャンボともまた会いたかったのだ。アイサツもしないまま……本当にごめんなのだ)
「守ってくれてありがとうって…」
(さよならなのだ…)
「…言わせてください……!!」
- 110 :パラディンの魂17/17 ◆2UPLrrGWK6 :2016/05/19(木) 05:18:13.64 ID:LpGunxoV.net
- 声は届いたのか、否か。
二度と立ち上がらない聖騎士は何も応えない。
【ズーボー@DQ10 死亡】
【残り66名】
【C-4/平原/1日目 昼】
【フアナ(僧侶♀)@DQ3】
[状態]:3/5 MP1/10
[装備]:なし
[道具]:支給品一式 支給品1〜3(本人確認済み)
[思考]:???
- 111 : ◆2UPLrrGWK6 :2016/05/19(木) 05:18:30.29 ID:LpGunxoV.net
- 投下終了です
- 112 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2016/05/19(木) 15:32:05.52 ID:8Y3sdauM.net
- 寝言は寝て言えよボケが
- 113 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2016/05/19(木) 18:43:29.03 ID:qboWYBKP.net
- >揺らぐ心、揺らがぬ心
何気に原作でもほとんど言及がククールとエイトの関係をそう描くのかと感心した
果たしてエイトはククールの誘いに乗るのか
放送が始まればアリーナ死亡という特大の爆弾も破裂することになるし、続きが楽しみなグループだ
>パラディンの魂
仲間を守り抜いて逝ったズーボーはまさにパラディンの鑑
そして結果的にズーボーを見殺しにしたバーバラは今後どうするのか、こちらも目が離せない
それにしても今回のジョーカー勢は早くも壊滅状態だな
ピンピンしてるのもうバルザックだけか…
- 114 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2016/05/19(木) 21:41:15.32 ID:bJg2R4WU.net
- 投下乙です。
>揺らぐ心、揺らがぬ心
黒い、黒いぞ、この8コンビ!
光の決意をするクリフト、闇の決意を固めているククール、まだ決意に踏み切れないエイト…。
アリーナもだけどトロデ王も死んでるからなあ…。
ここは午前だから放送までにはまだしばらくあるのか。どうなることやら…。
>パラディンの魂
あああああズーボー逝ったあああああ!
頼もしかった対主催チームがこんな形で壊滅するとは…。
もしバーバラがマダンテ撃てていたら…っていうもしを考えてしまうのが辛い…。
10慣れしてると僧侶のバギクロスは確かにびっくりするよなwバギ使えないもんなw
- 115 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2016/05/19(木) 23:16:46.70 ID:mWGac6C3.net
- 投下乙です
ズーボーはんがあああああああ!
魔蝕まで繰り出してくるとはヘルバトラーも恐ろしや
放送後はハッサンの死も知るし、バーバラは二重にショックを受けそうだなあ
>>113 それでも、それでも期待の新ジョーカーバラモスゾンビなら何とかしてくれるっ……!
- 116 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2016/05/20(金) 11:03:26.11 ID:+LG+X6JA.net
- 半日
- 117 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2016/05/20(金) 13:32:29.13 ID:MgS+6XdG.net
- >>116
マジひくわー
- 118 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2016/05/21(土) 01:32:55.07 ID:6viBLm95.net
- 半日
- 119 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2016/05/21(土) 02:20:55.16 ID:izUhRTWy.net
- >>118
保守荒らし野糞すんなくせえから!
- 120 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2016/06/27(月) 06:05:26.80 ID:sVYpIiWFN
- あ
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