高御座をイメージした「文武天皇陵」　古墳最後の華麗なる姿 [きつねうどん★]

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　わが国最初の都城・藤原京で政治を行った若き大王、文武（もんむ）天皇の墓の可能性が極めて高いことが２６日明らかになった中尾山古墳（奈良県明日香村）。天皇らの墓域と考えられる京の南の丘陵上にあり、極彩色壁画で有名な高松塚古墳にも近い。築造当初の姿は高御座（たかみくら）をイメージし、石で華麗に装飾された八角墳だった。（野崎貴宮）

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約５０年ぶりの再発掘が行われた中尾山古墳　＝１８日午後、奈良県明日香村（本社ヘリから、永田直也撮影）

　今回の調査によって中尾山古墳は３段築成で、１、２段目が基壇状、その上に３段目が高く立ち上がる構造と判明。墳丘本体とその周辺には推定約４８０トンという大量の川原石を敷き、きれいに装飾されていた。

　墳丘の高さは５メートル以上、幅は３２・５メートル以上。竜山石製の沓形（くつがた）石造物と呼ばれる特殊な形の石も出土し、墳頂部に複数個、のせられていたとみられる。

　同じ八角墳の天武・持統天皇陵や斉明天皇の墓とされる牽牛子塚（けんごしづか）古墳（いずれも同村）は切石で装飾されており、それに比べるとやや質素だが、白く輝く姿は天皇陵の威厳を保っていたとみられる。

　「死後まで政治」込められた思い

　藤原宮跡（奈良県橿原市）の発掘調査にも携わった木下正史・東京学芸大名誉教授は「中尾山古墳の造営には藤原宮と同じ唐尺（とうじゃく）（１尺２９・５センチ）が使われている。本来、八角墳は高御座を意識した形と考えられ、藤原宮でも政治の中心・大極殿（だいごくでん）に置かれていた。『徳をもって、死後まで政治を行う』という思いが込められているのだろう」と解説する。

　文武天皇は祖父の天武、祖母の持統両天皇の国造りを受け継ぎ、律令国家体制を整備。最大の功績は大宝律令の制定（７０１年）で、官僚機構が整い、中央集権体制が確立した。子は藤原不比等の娘・宮子（みやこ）との間に生まれた聖武天皇だ。

　２０代の７０７年に崩御。遺体は火葬され、檜隈安古岡上陵（ひのくまのあこのおかのえのみささぎ）に埋葬された。この頃は「薄葬（はくそう）思想」が進み、古墳時代のような大古墳は造られなくなる。文武天皇は、持統天皇に次いで火葬された２人目の天皇だった。

　岡林孝作・奈良県立橿原考古学研究所副所長は「八角墳の最終段階を象徴するような古墳。『文武をもって古墳は終わる』といわれているが、火葬骨をおさめた石槨（せっかく）の石はピカピカに磨かれ、本当に精緻な造り。最高峰の人物にふさわしい墓だ。中尾山古墳の被葬者は文武天皇の可能性が極めて高い」と話している。

「聖なるライン」に位置

　藤原京の中心、藤原宮（奈良県橿原市）から南へ４～５キロの丘陵地一帯は当時、天皇らの墓域だったと考えられ、中尾山古墳のほかにも菖蒲池（しょうぶいけ）古墳や天武・持統天皇陵、高松塚古墳、宮内庁が定める文武天皇陵、キトラ古墳などの重要な古墳が点在する。

　これらの古墳は京（宮）の中軸線を南に延長したライン上にほぼ位置し、計画的に配置されたという説がある。京都大教授や橿原考古学研究所長をつとめた岸俊男氏が指摘したのが始まりで、考古学者の間では「聖なるライン」と呼ばれている。

　八角墳であることや続日本紀の場所の記述などから、中尾山古墳を真の文武陵とみる今尾文昭・古代学研究会陵墓委員（関西大非常勤講師）は「古墳としては最後だが、見栄えにこだわり、権力者の格を墓制で示すという思想を貫いている」と指摘。「都の南は天皇か皇子しか古墳を造れない場所。聖なるラインを重視していると思う」と、ライン上への計画的な配置だとみる。

　今尾氏によれば、「聖なるライン」を北に延ばすと、天智天皇陵（京都市山科区）に行き当たるという。

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