ヘイトスピーチって？李洙任龍谷大学教授「北朝鮮のスパイ、嫌なら帰れと罵声を浴びる日本の社会問題」

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日本と韓国は、「近くて遠い国」といった関係として長く位置づけられていましたが、「冬のソナタ・ヨン様」ブームをきっかけに、日本と韓国の市民レベルの交流はかつて見られないほど進展してきました。

しかし、この数年で日韓の友好関係は大きく後退してしまいました。その原因は、領土問題や歴史認識の相違とされていますが、その背景にグローバル化の進行や経済格差の拡大、少子高齢化など、日本と韓国に共通する社会的、経済的な国内事情があります。
このような不安定な状況から生まれるストレスは社会のマイノリティ（少数者）に嫌がらせとして向けられがちです。これは他国の社会にも見られ、たとえばヨーロッパでは、移民を排除することを目的とする右翼勢力の台頭が目立ちます。

日本社会では人種・民族差別グループが存在し、日本のマイノリティ、特に在日コリアンにヘイトスピーチと呼ばれる憎悪表現を向けています。
その言葉による暴力は、民族学校に通う小さい子どもにさえ向けられています。「北朝鮮のスパイ」、「よい朝鮮人もわるい朝鮮人も皆殺し」「嫌なら帰れ」と罵声を浴びせかけ、コリアタウンに買い物に来た日本人たちに対しても嫌がらせを行っています。彼らはホームページを通じて、在日コリアンに対する憎悪感情をもたらす情報を公然と発信しており、今や日本の深刻な社会問題になりつつあります。

サッカー・Jリーグの一部の試合中に、チームのサポーターが「Japanese Only」という差別的な横断幕を揚げた問題で、制裁措置としてJリーグ史上初の無観客試合が行われました。直ちに措置を講じなければ、日本チームは世界で開催されるゲームに参加できなくなります。日本政府はヘイトスピーチや人種差別行為に対して厳しい処罰を視野にいれた法整備を急がないと、先進国家として人権意識が希薄な国というイメージがますます強まり、世界での日本の存在は弱くなっていきます。日本政府の動きが遅いので、市民が「レイシスト（人種差別者）」を阻止するために立ち上がっています。今や、ヘイトスピーチに対する複数の団体が生まれ、「カウンターデモ」が行われています。

「排外主義」「差別政策」をとるより、「共生主義」「内外人平等の精神」を優先し、政策に反映させることによって国を発展させると、将来的には国民にとってよりよい社会を形成する基盤となります。四世、五世になっても外国人として扱われている現状は、他の先進国から見ると尋常ではありません。「慰安婦問題」や「竹島・独島問題」をはじめ、日本の植民地支配に関する歴史認識について、日韓の間での溝は広がるばかりという様相を見せています。あらためて友好的な日韓関係を築く上で、1 歩ずつでもこの差を埋めていく努力が必要です。グローバル化が急速な勢いで進展する社会事情に対応するために、日韓が協力し東アジア地域を安定させる政策が必要で、その努力がそれぞれの国益につながります。そのためには、やはり領土問題、歴史認識の違い、そして従軍慰安婦問題を解決する外交力が必要です。そして、国家間の友好を政治だけに任せるのではなく、私たち一人一人が平和構築と維持のために何をすべきかを真剣に考える時なのです。