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穂乃果「異形の花々」

1 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2016/03/03(木) 18:18:39.67 ID:sdVRx+Mg.net
「穂乃果」
背後から海未が穂乃果の肩を掴んだ。
「貴女に涙は似合いません」
海未の暗い眼差しに穂乃果の体がピクッと震えた。
「う、海未ちゃ」
だが、それ以上穂乃果はなにも言えなかった。穂乃果の口を海未の唇が塞いでいた。
制服の下に海未の手が入ってくる。
ブラジャーが引き裂かれ、白い乳房があらわになった。
やめて、草加君!
穂乃果のスカートが一気に膝の下まで下ろされる。
穂乃果は激しく抵抗した。海未の顔に爪を立て、胸を叩いた。
だが、突然自分の体から力が抜けていくのを穂乃果は感じた。
「助けてください、穂乃果」
そう言う海未の囁きが、穂乃果の体から力を奪った。
大きく足が広げられ、引き裂かれるような痛みが穂乃果の全身を貫いていく。
穂乃果は手の中で枯れた花を握りしめた。

2 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2016/03/03(木) 18:23:04.22 ID:sdVRx+Mg.net
剣と楯を投げ捨て、ホースオルフェノクはガッとカイザのを首を掴んだ。
その体を頭上高く持ち上げていく。
神に生贄を捧げる儀式の始まりのようだった。
ホースオルフェノクはカイザの腰のベルトをむしり取り、握り潰した。
カイザの体が海未の姿に戻っていく。握られている首に激痛が走った。
が、のどが潰れて声が出せない。
――わたしは誰なのでしょう――
と海未は思った。
これはわたしじゃない。こんなわたしが、わたしであるはずがない。
ホースオルフェノクは海未の右足を引きちぎった。
なんの痛みも感じなかった。
――これはわたしじゃない――

海未の胸の奥が痙攣を始めた。治ったはずの厨二の発作が再発したのだ。
だが、のどが潰されているせいで、咳をすることもできない。
ホースオルフェノクは、海未の下顎を引きちぎった。
だらっと、赤いよだれかけのように血が流れる。
海未は急速に子供時代に戻っていく自分を感じた。
恥ずかしがり屋で二人の後を追いかけることしか出来なかった自分、なにもできずに泣いてばかりいた自分。
海未はそんな子供の頃に戻っていた。

3 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2016/03/03(木) 18:31:15.78 ID:sdVRx+Mg.net
「海未ちゃん!」
穂乃果の声が聞こえてきた。
真姫と穂乃果、二台のバイクが到着したのだ。
穂乃果の姿を見て、海未はほっと胸をなで下した。

もうだいじょうぶ。きっと、ほのかちゃんがたすけてくれる。
いつものように、わたしの手をにぎって、たすけてくれる。
海未は穂乃果に向かって手を伸ばした。
ホースオルフェノクは何のためらいもなくその腕を引き抜き、握り潰した。
穂乃果の悲鳴にギロッとホースオルフェノクが振り返った。
「貴女……絵里なの!」真姫が言う。
真姫にも穂乃果にも目の前の光景が信じられない。
ホースオルフェノクは道路の向こうの崖下に、まるで紙屑を投げ捨てるかのように海未の残骸を放り投げた。

4 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2016/03/03(木) 18:37:25.52 ID:sdVRx+Mg.net
亜里沙は小さなツリーをテーブルに置いた。
あまり飾り付けのない、ほとんど裸のクリスマスツリーだった。
「メリークリスマス、海未さん」
亜里沙は暗がりのベッドに向かって声をかけた。
ベッドの上でもぞもぞと人間の形を失った海未が動いていた。
「どうしたの、海未さん?なにも心配することはないんですよ」
亜里沙はもがき続ける海未の体を抱いた。
「アリサが守ってあげますから。ずっと……ずっと……」
ひとつだけ飾られた小さな明かりが、ツリーの枝先で光っていた。

5 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/03/03(木) 19:31:26.64 ID:zC5LUjr9.net
小説版555

6 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/03/03(木) 19:50:22.98 ID:UTcFybQn.net
>>1
唐突なやめて!草加くん!に草

7 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2016/03/03(木) 20:01:16.12 ID:sdVRx+Mg.net
「お父さん?」
「お前はにこじゃない」と、父親は言った。
翌日、にこが帰宅すると庭でジョンが死んでいた。
ジョンは腹を真っ二つに切り裂かれ、柿の樹の下に制服姿の父親が佇んでいた。
お前はにこじゃない
父親はにこに向けて銃を構えた。
考えてみれば娘になりすますのが一番いい。なかなか賢いじゃないか、おれが一番油断する相手だからな、
娘はどうした、殺したのか、おれも殺すのか、だが終わりだ、もう逃がさない、娘の仇だ、今度は急所を外さない
父親はにこを狙って発砲した。
次の瞬間、暴発した銃が父親の顔を吹っ飛ばし、柿の樹とにこの顔に灰色の脳漿が飛び散った。

8 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2016/03/03(木) 20:03:40.78 ID:sdVRx+Mg.net
にこが真姫と知り合ったのは父親が死んで二年ほど経った頃だった。
にこは芸能界デビューを諦め、アイドルショップで働いていた。
母親はすでに再婚していた。
相手はどこかのカルチャーセンターで知り合った男だった。
母親は深く男を愛していた。
そしていつもにこにこと笑顔を絶やさず、なんであれ家事をソツなくこなした。
にこの父親のことなどもう記憶にないようだった。
要するに母親は誰かに頼ってないと生きていけない女だったのだ。
そんな母親を見るのが辛くてにこは高校卒業と同時に家を出た。

9 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2016/03/03(木) 20:08:44.25 ID:sdVRx+Mg.net
ふと、にこは目の前の白衣に包まれたほっそりした女を壊したい衝動を覚えた。
にこの誘いに応じてことりは非番の日に会うことを承諾した。
そしてその日のうちににこに抱かれた。
初めてことりの裸体を見た時、にこは真っ白い肌のあちこちに残る無数の傷痕に驚いた。
おそらくは自傷によるものだろうが、それにしても奇妙なのはその傷痕が全身に及んでいることだった。
二の腕や胸、腹部や太股などにそれほど大きくはないがはっきりとした傷が残っている。
にこはなにも訊ねず、ただ、その傷痕に唇を重ねた。
「なぜ、にこに抱かれるの?」
何度目かのデートの日、ベッドの中でそう訊ねた。
「あなたには真姫ちゃんがいる」ことりは答えた。
「だから私を愛さない。それがいいの」
傷痕のことは聞かなかった。それは愛する者のすることだ。
通り過ぎる者に傷痕は見えない。
あなたは私を愛さない、それがいいとことりは言った。
それでいいとにこは思う。
にこは真姫のために戦っている。

10 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2016/03/03(木) 20:19:59.74 ID:sdVRx+Mg.net
花陽は凛を引っ張って繁華街のブティックに連れていった。
凛に服をプレゼントするためだ。
よく考えると超ラッキーな展開だった。
とにかく凛に声をかけることができて、そのうえ下着姿まで見せてもらった。
そして今は一緒にブティックにいるのだ。
まるでラブラブのカップルみたいだ。
凛のためにブティックで洋服を探しながら、花陽は真姫の言葉を思い出していた。
確かに美人だけど服装がダサい、と真姫は言ったのだ。
花陽は試しにブランドもののワンピースを選んでみた。
以前、そのブランドについてことりから聞いたことがあった。
女の子の憧れだけど、すっごい高くて手が出せない、と言っていた。
これなら真姫だって文句は言わないだろう。
試着室から出てきた凛の姿を見て、花陽は目が潰れそうになった。
ターコイズの流線型を裾にあしらったそのワンピースが、あまりにも凛に似合っていたからだ。
携帯のカメラで写真に撮っておきたかったけど、キモい奴と思われるのが嫌で言い出せなかった。
ブティックを並んで歩いていると、誰もが凛を振り返った。
一○○メートルも歩かないうちにモデル事務所のスカウトマンや軽薄そうな軟派男が近寄ってきた。
花陽が一緒だというのに失礼な奴らだ。

11 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2016/03/03(木) 20:34:50.70 ID:sdVRx+Mg.net
そのうちに凛のほうがいらいらしてきた。
花陽の幸せそうな顔がにくたらしい。
なにがそんなにうれしいのか?楽しいのか?
だから凛はいじわるをした。
人への残酷さが実は自分の喜びになることを凛は知った。

今も凛は花陽に対し、残酷な遊びを続けていた。
凛が注文したラーメンが運ばれてくる。ひとくち食べると顔をしかめ、凛は花陽に言う。
――美味しくない。かよちんが食べて――
そして自分は別のものを注文する。
店に入ってからずっとそんなことを繰り返していた。
注文してはまずいと言い花陽に食べさせる。もう二○品を超えていた。
それでも花陽は幸せそうだった。
「凛ちゃんの好きなものが見つかるまでどんどん頼んで。嫌いなものは全部私が引き受けるから」

12 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2016/03/03(木) 21:02:31.85 ID:sdVRx+Mg.net
だが、絵里はすぐ花陽に何か嫌なものを感じた。
絵里がこうなりたくはないという人間の、典型のような気がしたからだ。
絵里は正義感が強く、誰に対しても優しく、誰からも好かれた。
だがそれは生まれついての資質ではなかった。
強い意志の力で、そういう自分を作り上げてきたのだ。
逆に言えば自分の中の嫌な部分を押し殺し、捨ててきた結果だった。
花陽は絵里が捨ててきたものを全て身に付けていた。
卑屈な目つき、はっきりと物を言わない、曖昧な愛想笑い、
それでいてふとした瞬間に見せる図々しさ、狡猾さ……。
まるで、知らない間に絵里の後をつけてきて、絵里が捨てた物を拾い集めていたみたいだった。

13 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2016/03/03(木) 21:18:40.68 ID:sdVRx+Mg.net
絵里は年に一度の祭りが大好きだった。
絵里はいつも先頭に立って神輿を担ぎ、太鼓を叩いた。
花火師を引退した祖母だったが、この日だけは町のみんなのために花火を上げた。
祭りの一週間ほど前から祖母は男としてふるまった。
祖母によれば花火の神様は女があまり好きではなく、男のふりをして神様の目を誤魔化す必要があったからだ。
祖母は髪を角刈りにし、巨大な乳房にさらしを巻き、和服を脱いでスウェットを穿いた。
絵里の目から見ても祖母は本当に男になったようだった。
声までもが低く嗄れて、鼻の下にはうっすらと髭が生えてきた。
そうして男になった祖母は町の青年たちを助手に使って花火を上げた。

14 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2016/03/03(木) 21:28:45.59 ID:sdVRx+Mg.net
絵里の友人たちはそんな祖母をあざ笑った。
あの女は本当に男ではないのか、女にしては体が大きすぎる、大体髭が生えてくるとはどういうわけか。
おい、絵里、あれはばあちゃんじゃないぞ、じじいだぞ、それともなにかの化け物か
喧嘩になった。祖母の悪口だけは許せなかった。
絵里は鼻の骨を折り、三人の友人たちも体のどこかを骨折した。
祭り当日、祖母は男装を解き、普段の着物姿で現れた。
きちんと髭を剃り、唇には真っ赤な紅を引いていた。
絵里の喧嘩の原因を知り、祖母は女に戻ったのだ。
そして祖母が特大の三尺玉に点火した時、花火が爆発した。
地上で紫色の炎が膨らみ、祖母の体を飲み込んだ。
祖母は顔と腕に火傷を負い、右目を失くした。熱で焼かれた眼球が眼窩の中で破裂したのだ。
それからしばらくの間絵里は家に引きこもった。
自室のドアに鍵をかけ、町の人々が訪れても顔を出そうとはしなかった。
全部自分のせいだと絵里は思った。
自分の喧嘩のせいで祖母は片目を失った。
絵里はなぜ廃校が決まったのか生徒たちが学校から去っていくのかを考え、それも自分が悪いと結論した。

15 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2016/03/03(木) 21:50:54.78 ID:sdVRx+Mg.net
もう秋だ。
雑誌をめくっていると自然と穂乃果の口からため息が漏れた。
雑誌のモデルたちは早くも冬服の装いである。
季節が変わっても絵里と穂乃果の関係にはまるで進展がなかった。
相変わらず二人の間には壁があった。
前の前のデートの時、穂乃果は思い切って自分の過去を絵里に話した。
幼い頃、火事で両親を失ったこと――。
流星塾で育ったこと――。
絵里は真剣に聞いてくれた。
穂乃果が不快にならない程度の同情を示し、わざとらしくない程度に励ましてくれた。
でも、それだけだった。
絵里が態度を変えることはなく、だから穂乃果も変われなかった。
表面的な会話――。表面的なデート――。
穂乃果は同情されるのが嫌で過去のことをずっと黙っていたけれど、こんなことならもっと同情してほしかった。
なにも変わらないよりは全然ましだ。
穂乃果はふと、実は問題はすごい簡単なことなんじゃないか、と思い当たった。
いや、本当はずいぶん前から考えていたことだった。
まだ、エッチもキスもしていない。手も握っていない。
――だからなのかも――

16 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2016/03/03(木) 22:10:53.23 ID:sdVRx+Mg.net
私はお姉ちゃんが大好きだった
お姉ちゃんはいつも私の傍にいていつも私と遊んでくれた

だから私はお父さんとお母さんがいなくなって理事長さんの家に引き取られることになった時、
お姉ちゃんと離れ離れになるのが辛かった
お姉ちゃんは他の所に貰われていったから
理事長さんは優しかった
でも私は理事長さんが嫌いだった
理事長さんの顔はイボだらけで私に優しい言葉をかける度にそのイボがぐにゃぐにゃと動くのが気持ち悪かった
もし私が誰かを毒殺しようと思ったら、とびきり美味しい料理を作る
理事長さんの優しさはそういう種類の優しさだった

17 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2016/03/03(木) 22:18:51.71 ID:sdVRx+Mg.net
理事長さんには私よりふたつ年上の娘がいた
理事長さんは本当の娘にはとても厳しかった
よく物差しで娘の体を叩いていた
そうすると私の体に痣ができた
娘が叩かれたのと同じ場所がひりひり痛んで赤く腫れた
娘はときどき私にいじわるをした、大抵は他愛ないイタズラだったけど、我慢できないこともあった
たとえば娘の誕生日に、娘は私にプレゼントを要求した
私が両親から貰ったお饅頭のお守りをどうしても欲しいと言ってきかなかった
私は理事長さんに助けを求めた
これは大切なお守りなんです、これがなくなったら死んじゃうかもしれません
あら、いいじゃないの、と理事長さんは言った
死んだらお花畑に行けるのよ、お父さんとお母さんに会えるのよ
結局私は娘にお守りを奪われた
娘はキッチンのガスコンロでお守りを燃やした
すぐにお守りはどろどろと溶けはじめた
なんだ、ただのプラスチックじゃない、と娘は言った
お饅頭なんて嘘じゃない、それにどうしてあなたは死なないの? お守りが消えたのになんで死なないの?

18 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2016/03/03(木) 22:47:53.27 ID:sdVRx+Mg.net
東條希は糞尿の中で生まれた。
東京から遠く離れた田舎のアパートでひとり暮らしをしていたまだ高校生の母親は
村のほとんどの男と関係を持ったせいで父親のわからない希を汲み取り式の共同便所に産み落とした。
希は夥しい糞尿の海の中で産声を上げた。
その泣き声は三日間続き、母親は頭から布団を被って耳を塞いでいたが四日めに声が消えてほっと胸を撫で下ろした。
七日めの夜に母親は奇妙な音に目を覚ました。

窓からの月明かりに照らされて、ズルッズルッと黒い塊が畳の上を這ってくる。
恐怖で動けない母親の口にその黒い塊が頭を突っ込み、その時になって母親はそれが糞尿に塗れた希であることに気がついた。
希は糞尿を食べて生き残り、汚物タンクを這い上がって母親の元にやって来たのだ。
希はもう一度胎内に戻ろうとするように母親の口から食道を通って胃袋に落ちて体を丸めた。
だが、すぐに息苦しくなって母親の腹を引き裂いて顔を出した。
こうして希は自らの力で第二の誕生を完遂した。
希は生まれた時から怪物だったのだ。

19 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2016/03/03(木) 23:07:56.77 ID:sdVRx+Mg.net
東條希はさそり座の方角から出現した。
すでに仮面契約者王蛇に変身したその風貌は敵を威嚇して鎌首をもたげるコブラに似ている。
王蛇は首と指の骨を鳴らしながらゆっくりと前方の獲物に向けて近付いていった。
契約モンスターに餌をやるため、ミラーモンスターを倒した仮面契約者ライアは夜空に自分の運命を読んで怖気を震った。
入り組んだ星々の中にようやく見つけた自分の星が流れ落ちたからだ。

20 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2016/03/03(木) 23:15:23.18 ID:sdVRx+Mg.net
(ベノっち!)
その呼びかけに応じ、ジャンプした王蛇の背から契約モンスター、ベノスネーカーが現れる。
巨大な蛇のようなベノスネーカーは真っ赤な口から紫色の毒液を吐いた。
(ベノクラッシュ!)
それが王蛇の必殺技の名前だった。
瀑布のような毒液の奔流に乗り、王蛇の蹴りがライアの体を打ち砕く。
大の字に倒れたライアに駆け寄り、王蛇は引き裂いた腹から腸を抜き取り放り投げた。
(食え!)
星空に舞い上がった腸を、ベノスネーカーはひとくちで飲み込んで姿を消した。

21 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2016/03/03(木) 23:33:25.26 ID:sdVRx+Mg.net
ことりは現実世界に帰還するとすぐに穂乃果に抱きついて唇を重ねた。
「な、なにするの、いきなり」
穂乃果はびっくりして体を離した。
相変わらずことりはなにをするかわからない。
「歯に青のりが付いてたから取ってあげたんだよ」
そう言われて穂乃果はついさっきまでことりと一緒にお好み焼きを食べていたのを思い出した。
あれから何時間も過ぎたような気がするがまだ二十分しか経っていない。
「そんなことよりことりちゃん、大丈夫なの。ちょっと傷口見せてみて」
「平気だよ。翼の一本や二本」
穂乃果の頭の中で引き千切られて地面で羽ばたく血塗れの翼が甦った。
「ファムの体って意外と丈夫なんだよ。だから私も平気」
「本当に。無理してるんじゃないよね」
「本当だよ。私、生まれてから一度も無理なんてしたことないもん」

22 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2016/03/03(木) 23:43:37.33 ID:sdVRx+Mg.net
穂乃果と別れてことりはすぐにタクシーを拾った。
「海へ」と言う。
誰も自分を見つけることのできない場所に行かなければならなかった。
穂乃果に自分の死を知られたくない。
背中の傷から溢れる血が制服の裾から流れてシートを汚した。

車から降りて砂浜を歩いた。
穂乃果の笑顔が思い浮かび、つられてことりもくすりと笑った。
さて
そう呟いて水平線の彼方に目をやった。
そろそろ死ぬか
ことりは水の中に体を沈めた。

23 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2016/03/03(木) 23:59:24.68 ID:sdVRx+Mg.net
(誰やん? キミ?)
王蛇はゾルダを睨みつけた。いつものゾルダではない。動きが鈍い。
ゾルダはがむしゃらに王蛇の腰にしがみついた。
力は強いがそれだけだ。契約者として、戦い方がまるでなっていない。

何度めかの剣撃がゾルダの装甲を粉砕した。
ズッと根元までベノサーベルがゾルダの体内に沈んでいく。
王蛇は砂に倒れたゾルダの仮面を叩き割った。
血塗れの唇の、花陽の顔が歪んでいた。
(凛ちゃん……!)
花陽は叫びながら虹色の空に手を伸ばした。



暖炉の前のソファに座ったまま、星空凛は振り返って鏡を見つめた。
壁の向こうから、誰かが自分を呼んだ気がする。
凛は気のせいか、と思い、そうか、鏡ってしゃべるのか、と呟いて、すぐに興味を失くして指をしゃぶった。
凛はずっと指をしゃぶっていた。
千歳飴をなめているつもりだった。実際に甘い味が口の中に広がった。
凛は長い間探していた千歳飴をようやく見つけてはしゃいでいた。
七五三のお祝いの日、せっかく買った千歳飴を母親は虫歯になるからと言ってどこかに隠した。
その飴が目の前にある。
凛は両手の指を一本ずつ口に含んだ。涎が溢れた。
指を喉の奥まで突っ込むと、激しく咳き込んでびっくりするぐらいの涎が流れて体を汚した。
その暖かさが心地いい。
涎は途切れることなくあとからあとから溢れ出て、凛は気持ちよさそうに目をつぶった。

24 :名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2016/03/04(金) 00:11:21.31 ID:pCe+Ys3X.net
ゾルダの最期いいよね
沈黙の誓い

25 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2016/03/04(金) 00:22:55.10 ID:MDOfcEvR.net
ある日、亜里沙が姿を消した。
スプーンで海未の口に食事を運んでいるときだった。
窓からの風を受けて亜里沙の笑顔がすっと崩れた。
その顔が灰になって風に流れて消えていった。

さ よ う な ら

最後に口がそう動いたようだった。
海未の前で亜里沙は消え、空中に残ったスプーンが床に落ちた。
海未は身じろぎもできないまま、ひとりベッドの上に残された。
なにかの物体のようにごろんとそこに転がったまま、海未は糞尿にまみれ、床擦れの膿が背中を覆った。
喉がからからに渇き、飢えに全身が痙攣した。
一ヵ月が過ぎても、海未はまだ生きていた。

26 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2016/03/04(金) 00:30:57.14 ID:MDOfcEvR.net
二ヵ月が経った頃、海未は体が内側から溶けていくのを感じた。
まるで飢えに苦しむ肉体が、自分自身を消化しているようだった。
急速に体が縮んでいった。
三ヵ月が過ぎると、ベッドの上にあるものはもう海未とは言えなかった。
それはスズメ蜂の巣を想わせる、奇妙な茶色いなにかだった。
そうなってようやく海未は死ぬ事ができた。

27 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2016/03/04(金) 00:43:53.57 ID:MDOfcEvR.net
女は真姫を背負って歩き始めた。
そんなふたりに無数のオルフェノクが襲いかかった。
虎太郎がふたりを守るように立ち塞がる。
「変身!」
虎太郎は手にしたベルトを腰に巻いてファイズに変身した。
ファイズの力を継いだ虎太郎がオルフェノクたちに向かって飛び込んでいく。
女は真姫を背負ったまま一歩一歩歩き続けた。
女が歩くたびに、体から煙のような灰が立ち上っては消えていく。

28 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2016/03/04(金) 00:59:25.36 ID:MDOfcEvR.net
虎太郎は変わった、自分の生き方を自分で選んだ、でも私はどうすればいいんだろう、と真姫は思った。
正しく生きる、強く生きる、あの約束を守るためには一体どうすればいいんだろう。
答えなどない、真姫に分かっているのはそれだけだった。
答えが出せるような問題ではない。

真姫は知っていた。
子供の頃、ホテルの火災に巻き込まれた時、真姫は少女に背負われて助けられた。
自分はあの頃から何も変わっていない。
ずっと背負われたまま生きている。
あの背中から、この背中から降りようと真姫は思った。
まずはそこから始めよう。

29 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2016/03/04(金) 01:05:00.99 ID:MDOfcEvR.net
真姫は女の背中から滑り落ちるように地面を踏んだ。
木々の間から、何体ものオルフェノクが現れてふたりの前に立ち塞がる。

どうするつもり?にこが訊ねた。
分からない、と真姫が答える。
でも、行ける所まで、行ってみましょう。
真姫はそっとにこの手を握りしめた。
ふたりは森の向こうの、光を目指して歩き始めた。

<完>

30 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2016/03/04(金) 01:06:30.27 ID:MDOfcEvR.net
以上、小説版龍騎、555宣伝スレ

最近特撮クロスが豊作で嬉しい

31 :名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2016/03/04(金) 01:48:37.43 ID:OGeDgXF4.net
元ネタ知らないからなのか…?
綺麗さっぱりわけわかめだった

32 :名無しで叶える物語(禿)@\(^o^)/:2016/03/04(金) 01:54:38.21 ID:oWRyQ1i+.net
海未ちゃん半殺しにかたの絵里ちゃんなんでしょ?
なんでその後穂乃果ちゃんと絵里ちゃんが普通に付き合ってるの?

33 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2016/03/04(金) 02:22:15.57 ID:lyLJWYWE.net
なんかこういうコピペ見たことある気がする

34 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2016/03/04(金) 08:48:26.90 ID:/6p2YWHJ.net
唐突な草加くん!に草生える

35 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2016/03/04(金) 17:06:42.03 ID:dqa/u5OH.net
>>32
元ネタだと時系列が逆
最初から穂乃果と絵里(の役)は付き合ってる

ごめんね、全く知らない人が読むこと考慮してなくて

36 :名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)@\(^o^)/:2016/03/05(土) 08:41:58.53 ID:XcY+9/q4.net
ネタスレかと思ったらなに普通に変身しとんねん!
ってか浅倉の出生ってこんななのか?

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