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短編集

1 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 19:33:04.42
短編集のSSです。

2 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 19:33:26.34
「友達」

3 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 19:52:19.98
私はずっと友達なんて必要ないと思ってた。

私は他人と馴れ合わなくても生きていける。

私は弱い人間じゃない。

そうやって自分に言い聞かせて周りとの交流を避けてきました。

ただ、傷つくのが怖くて強い自分を守っていきたかっただけです。

4 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 19:54:47.32
そんな私に友達が出来ました。

高校生になった時少し勇気を出してみました。

二人は驚くほど簡単に友達になってくれました。

5 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 19:58:43.71
一人は小泉花陽。

普段は引っ込み思案で弱々しくて声も小さいのにアイドルとお米の
事となると興奮してまるで別人になってしまう。

誰にでも優しくてやわらかくて一緒にいると私を暖かい気持ちにし
てくれる。

6 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 20:06:54.88
もう一人は星空凜

いつも元気で走り回って人懐こくていちいち斜に構える性格の私を
素直にしてくれる。

わんぱくを絵に描いたようで、それでいて誰よりも女の子
っぽいものに憧れている。

7 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 20:08:37.28
二人は幼なじみで昔から大の仲良し。

そんなふたりが私の友達になってくれた。

8 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 20:14:12.98
花陽「凜ちゃん、今日家に何時に来るの?」

凜「7時に行くよー。お泊まり楽しみだにゃ〜」

海未「ふふ、二人を見ているとなんだか微笑ましいですね。」

9 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 20:17:15.37
どうして、私は違ったのだろう。

どうして、私は二人と幼なじみに生まれなかったのだろう。

友達になれただけで良かったのに

どんどん私贅沢になっていく。

10 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 20:18:44.80
「花陽、凜帰りましょ?」

凜「ごめんね。凜とかよちんは今日行くところがあるんだ」

花陽「ごめんね、真姫ちゃん」

11 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 20:21:45.40
凜じゃなく私だったなら。

花陽じゃなく私だったなら。

私は最低だ。

友達に嫉妬している。

二人といるのが時々悲しくなってくる。

12 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 20:24:13.19
胸が苦しくなる。

こんな思いするぐらいなら最初から友達にならなければ…

こんな事を考えてるなんて二人が知ったらどう思うかな?

13 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 20:28:50.94
「真姫ちゃん!」

二人の笑顔が眩しい。

凜「こないだは一緒に帰れなくてごめんね。」

花陽「本当は料理が得意なことりちゃんとにこちゃんが
           やる予定だったんだけどどうしても凜ちゃんと二
           人でやりたくて。」

凜「凜達が親友になって初めてだったから」

「お誕生日おめでとう!」

14 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 20:30:06.09
私は馬鹿だった。

二人との間に年数なんて関係なかったんだ。

15 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 20:33:43.41
ずっと、人前で泣く人間は弱い人間だと思って避けてきた。

それも、今は気にならない。

「花陽、凜。大好きよ。」

16 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 20:36:45.27
「卒業」

17 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 20:42:18.64
「どうして卒業なんかあるのかな?」

「それは、君達が卒業して進学やら就職やらをしないと日本が
ダメになってしまうからよ。」

彼女は興味無さげに肩に掛かった明るい色の髪を弄りながら
言った。

「そうじゃなくて、何というかもっと…文学?的な事を聞いて
    るの」

「あら、まさか君の口から文学なんて高尚な単語が出てくるとは」

18 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 20:48:44.15
そう言って彼女は髪を弄るをやめおどけて見せた。

「高校生活って言うのはさ、3年間しかないでしょ?とっても
   短い期間だよね?でも、それがいいんだよ。過ぎてしまった
   らもう二度と手が届かない。手が届かないものって素敵に見
   えるものね。」

彼女の得意気な顔が妙に腹立つ。

「なんか、ドラマや漫画にありそうな答えだね。」

「何だよ〜、せっかく答えてやったってのにさ」

19 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 20:56:12.68
頬を膨らます彼女は少女のような健気さと年相応の儚さを感じる。

「私だって永遠なんて物が無いことくらいわかってるよ。でも、
   絵里ちゃん達が卒業したら寂しいんだもん。せめて、もう少し
   長くいられたらって思っちゃうよ。」

「確かに卒業には別れが付き物だからさ、寂しいしかもね。
    でも、その寂しさこそ永遠ではないよ。時が経てば薄れ
    て綺麗な思い出になっていくから。」

やっぱり彼女は大人だ。こんなありきたりた言葉でも妙な
説得感がある。

20 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 21:00:49.04
「だからさ、将来思い出話をする時に鼻水だらけの顔じゃ笑い
   者だからなるべく笑顔で見送ってあげなよ。」

「うん…そうする。」

「それと、君は一つ間違ってるよ。永遠はね存在するよ。君が
    高校生活で築いた友情や仲間は永遠だよ。」

「わかるの?」

「わかるんじゃなくてね、知ってるの。」

21 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 21:09:27.44
「お姉ちゃん遅刻するよ。」

朝日にやかましい声が溶け込み爽やかな朝が台無しだ。

「やばい、遅刻する。」

今日も一日私の高校生活が始まる。

22 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 21:16:15.17
「希」

23 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 21:18:44.19
小さな頃から転校が多くて友達はいなかった。

家に帰ってまずやることは植木鉢の下に隠してある鍵を取り出し
玄関を開けること。

いわゆる鍵っ子てやつかな。

24 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 21:22:35.50
家に帰ってもお母さんもお父さんも仕事で忙しいし遊ぶ友達も
いないから一日一回も言葉を発しない事もあった。

このままではダメ。次の土地では友達を作らなきゃ。

でも、またすぐ転校になって悲しい思いをするだけかも。

それに、友達の作り方がわからない。

25 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 21:25:12.84
結局、中学生になっても友達は出来なかった。

「ねえ、カラオケ行こうよ。」

「いいね、誰を誘おうか?」

「あそこに東條さんがいるじゃん。」

「だめ、絶対来ないよ。」

そんな事ないよ、行きたいよ。

26 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 21:27:10.50
「だいたい、転校してきてから一人で本読んでばっか。クラ
    スに馴染む気ないんだよ。」

ここまで聞こえてるよ。

そんな事言われたら友達になんかなれないよ。

27 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 21:30:26.66
「希は手が掛からないから安心して留守を任せられるな」

そんな事ないよ。

「ごめんね、のんちゃん。でもね、のんちゃんは平気よね」

そんな事ない。お父さん、お母さん…私はそんなに強くないよ。

どうして二人とも私が苦しい時に側にいてくれないの?

どうして私の家族はこんなにバラバラなの?

28 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 21:32:30.28
わかってる。二人が私の事なんてどうでもいいなんて思って
ないことも、私の為に汗水垂らして働いてることも。

でも、私はそんなに強くない。たまに、壊れてしまいそうになる。

29 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 21:46:00.06
「高校生になったら東京で一人暮らしさせて。もう、転校は
    はしたくないから。」

高校で友達を作る。でないと、私は…

「絢瀬絵里です。よろしく。」

すぐにピンと来た。私と一緒で周りと打ち解けるのが苦手そ
うな不器用な子が。

「あの、」

30 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 21:48:55.43
「あなたは?」

「私は…」

私は変わるんだ。もう、お父さんとお母さんのせいにもしない。

「ウチ…東條希。」

31 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 21:51:47.60
「あら、希こんな所で居眠り?」

「…えりち」

いつの間にか部室で寝てしまったようだ。

「全く焼肉を食べる夢でも見てたんじゃないの?」

「にこっちは手厳しいな〜。」

32 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 21:54:44.36
お父さんお母さん、希は今幸せです。

33 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 21:59:36.85
言葉泥棒

34 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 22:08:53.05
私の幼なじみは言葉泥棒なのです。

私は曲の作詞をしているので死活問題です。

私の気も知らないで彼女は突然私から言葉を盗んでいきます。

35 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 22:19:44.14
「ねえ、何時になったら雨やむのかな?」

「さあ、どうでしょう?」

私は知っています、天気予報を見てきたから。

今週はずっと雨の予定なのです。

「穂乃果、天気予報見ないんだ!」

私の幼なじみは自慢にならない事を自慢げに言います。

36 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 22:28:09.78
「人に聞くくらいなら調べればいいじゃないですか。今はス
    マホですぐでしょう?」

「う〜ん。なんか、天気予報ってあんまり好きじゃないんだよね。
    次の日の事は次の日に取っておきたいと言うか。」

開いた口が塞がりません。なら、今日の予報を見るのと私に聞くの
とで何が違うのでしょうか?

「やっぱり止まないみたいだね。」

結局天気予報見てるのですね。

37 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 22:37:27.84
「もう、我慢できない。」

傘もささずにでていくな信じられません。

「雨やめー。」

彼女の言葉がまるで雲を割くようでした。

その瞬間雨が止み晴れたのです。

あまりにもびっくりしてしまい言葉が出ませんでた。

「ハラショー」

絵里は隣でそう呟いていました。

38 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 22:42:57.67
彼女の言葉泥棒は何も今に始まった事ではありません。

幼少の頃からそうでした。

当時、私はあまり自分から友達に声を掛けるのが得意ではありませんでした。

39 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 22:48:30.60
近所の公園で穂乃果やことりがよく遊んでいるのはしってい
ました。

穂乃果の事も近所の老舗の和菓子屋さんの子だとも認識して
いたのですが「仲間に入れて」の一言が私には難しかったの
です。

いつも、木の陰に隠れて見ていました。

40 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 22:52:00.74
「みーつけた。」

「え?」

「次はあなたが鬼だよ。」

突然でしたから驚きました。

彼女は幼い私から言葉を盗んでいきました。

しかし、それ以上のものを私に与えてくれました。

それは一生の宝物なのです。

41 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 23:00:51.27
スクールアイドルを始めたいと言った時また何時もの思いつき
かと思いました。

飽きたらすぐに辞めると言い出すんじゃないか。

壁に当たったら私に泣きついてくるのじゃないか。

42 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 23:11:32.14
けれども彼女は本当にやり遂げたのです。

途中何度も躓いても私たちを引っ張っていってくれました。

彼女はまた私の知らない場所まで連れていってくれたのです。

本当に驚かされてばかりです。

きっとこの先も彼女は私やことりでは行くことの出来ない所
へ連れていってくれると思います。

43 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 23:18:34.02
そんな彼女に私は心も奪われているのでしょう。

ただ、私もいつまでもこのままではありません。

いつか、ビックリして言葉にならないような所に穂乃果や
ことりを連れて行きたいと思います。

犯行予告ですよ。

44 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 23:35:22.62
「責任感」

45 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 23:43:39.15
堅物。わからず屋。鬼の生徒会長。

これが私が裏で言われている陰口だ。

こういうのは直に言われなくてもなんとなく耳に入ってくるものだ。

思えば入学当初からだ。ただでさえ、クウォーターだしスタイルも
まあまあ良い方だから目立つ。

46 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 23:49:23.97
「ねえ、貴女。今日掃除の当番よね?」

掃除をしないで帰ろうとする後ろの席の子に問いかけた。

「もしかして、さぼろうとした?」

「いや、私は」

「あのね、絢瀬さん。彼女は今日おばあさんのお見舞い
    にいくのよ。それもダメなの?」

「だって、そんな事聞いてない。」

47 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 23:52:25.00
「聞こうともしなかったでしょう?」

そんなつもりはなかったのに。私はただ…

「もういいよ。行こう。」

ただ、私はいつでもしっかりしなきゃと思ってただけなのに。

48 :名無しで叶える物語:2016/06/29(水) 23:57:35.22
入学して2週間たっても誰も私に声を掛けてはこない。

あっても業務連絡だけ。

私に声を掛けるとき怯えてる子もいた。

「あの…」

また、業務連絡かしら

「なにかしら?」

「うっ」

またやってしまった。

49 :名無しで叶える物語:2016/06/30(木) 00:00:28.69
「私…」

「え?」

「ウチ…東條希。絢瀬さん、今日一緒帰らない?」

それが高校で初めて出来た友達だった。

50 :名無しで叶える物語:2016/06/30(木) 00:06:31.19
「絢瀬さんはちょっと口調が堅いんよ。」

それは、自分でもわかってる。でも、私はしっかりしなきゃ。

「そうかしら?…別に普通よ。」

「それにトゲトゲしいよ。無理に自分を偽っているような」

「貴女に何がわかるの?」

「わかるんよ。ウチもそうやから」

そう、私は自分に嘘をついてでもしっかりしなければいけない。

51 :名無しで叶える物語:2016/06/30(木) 00:19:45.50
でも、

「貴女と一緒にしないで。私はね、しっかりしなきゃいけないの。
    適当にやってヘラヘラしてるような人間は嫌いなの。
    貴女のような挫折を味わった事のない人にはわからないかもし
    れないけれど。」

彼女は悪くない。本当の事を言われて腹がたった。ただの八つ当たりだ。

「うへへ、確かにウチは挫折はした事ないけどそれでも絢瀬さんの話を
  聞くくらいは出来る。」

「…言いたくないわ。」

本当は聞いてほしい。

52 :名無しで叶える物語:2016/06/30(木) 00:21:08.14
「言いたくなったらいつでもいってな、えりち」

「えりち?」

「うん。あだ名。まずはこう言うとこからかなと思ったんよ。」

「勝手にして。」

少し嬉しかった。

53 :名無しで叶える物語:2016/06/30(木) 07:42:44.33
東條希はいつでも私についてまわった。

いつしか私もそれが当たり前になっていた。

「希、いつまでもたもたしてるの?次は移動教室よ。」

「 お、さすがえりち。準備が早いな〜。」

私から声を掛けるようにもなっていた。

54 :名無しで叶える物語:2016/06/30(木) 07:45:09.46
「生徒会?」

「そうよ。先生に推薦されたの。私がやるのだから貴女もやる
   といいわ。」

55 :名無しで叶える物語:2016/06/30(木) 19:21:52.96
面白い
見てるから頑張って

56 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 00:27:14.98
「うん、えりちがやるならウチもやっていいかな」

「そう、でもやるからには中途半端にはやらないでね。」

57 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 00:36:39.03
希といると居心地がいい。

「希、貴女のこの報告書の書き方読みづらいわ。直してくれる?」

「えりちは厳しいな〜。」

でも、私は彼女に素直になれない。

「エリーチカ、またダメだったのね。でも、よく頑張ったわね。」

「…おばあさま、悔しいよ。」

あの人といるみたいで落ち着く。

58 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 00:40:58.21
「あの子、またおばあさんに泣きついてる。」

「貴女はそんなだから才能があっても優勝出来ないのよ。」

一度心を許したら甘えてしまう。

甘えていたら例え一生懸命やっても認めてもらえない。

あの頃のような思いはしたくない。

結果が全てだから。

完璧でいなければ。

59 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 00:43:19.72
「希、新入生歓迎会の資料まとめ終わったの?」

「後少しよ。」

「去年の物を手直しするだけでしょ?」

「そうなんやけど、なかなか納得いかなくて。」

「言い訳はいいわ。」

60 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 00:55:49.50
「…ごめん。」

私がこんなにきつく言っても彼女は困ったように笑顔を見せる。

そんな彼女の態度に頭にきた。

「なんで笑ってるの。私は真面目な話をしているのに。」

私がこんなに頑張って自分をつくっているのに。

やはり、彼女は私の事を何にもわかってないんだ。

61 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 00:59:32.89
その日の放課後、希はなかなか生徒会室に現れなかった。

少しきつく言われただけで来ないなんて、また少し腹が立った。

…まだ、教室かしら?

「ねえ、東條さん。なんで貴女は絢瀬さんと一緒にいるの?」

「友達だから。」

「そう思ってるのは東條さんだけかもよ?」

「今日だって怒鳴られてたじゃない。」

62 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 01:02:55.74
「普通、友達にあんな態度とらないでしょ。」

「私なんて前ちょっとノートの提出が遅れただけで凄い言われたよ。」

「自分が出来るからって何様なのよ。」

「…やめて。」

「東條さん?」

63 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 01:04:20.33
「皆、えりちの事よく知らないでしょ?」

「そうだけど。」

「なら悪く言うのはやめて。」

…希。

64 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 01:12:19.84
「えりちはね今はただ焦っているの。責任感が強いから。
    たまにね、寂しそうな顔するんだ。親に甘えられない
    子供みたいな。だから、私はそんなえりちが気を許せ
    るようなそんな存在になりたい。えりちの唯一になり
    たいの。」

「どうしてたかが半年の付き合いなのにそこまでできるの?」

「私の初めての友達だったから。」

65 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 01:16:19.09
「わかってくれないかもよ。」

「待つよ。」

「つらくないの?」

「大丈夫。きっと私はえりちと出会うのをずっと待ってた気
   がする。だから、 待つのは慣れっこなんだ。」



66 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 01:21:35.88
ずっと、私はしっかりしなきゃいけないと思ってた。甘えては
いけないと。

初めて希と話したときどうせ甘えた人間だと思っていた。

でも、違った。甘えていたのは私のほうだ。

自分を大切にするあまりに周りがみえていない私を彼女はただ
黙って受け入れてくれた。

過去にこだわっている子供な私を。

希といるとあの人を思い出す理由がわかった。

67 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 01:24:09.02
「だから皆もえりちの事少し多目にみてあげて。」

「…そうね。ごめんなさい、偉そうなこと言って。」

「ううん、気を使ってくれてありがとう。」

68 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 01:24:41.02
着々と造園されつつある花園

69 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 01:28:57.54
積み上げられた資料を一通り目を通す。

「ごめん、えりち遅くなっちゃった。」

「いいえ。それよりも希、しゃべり方変わってたわよ?」

「何の話し?」

「いいえ、今度話すわ。」

「えー、へんなえりち。それよりも目が真っ赤よ?仕事の
   し過ぎじゃない?」

70 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 01:32:13.59
「そうね、少し疲れたわ。」

「少し休憩としようか?」

「今日はもう帰りましょう?」

「え、珍しい。」

「美味しいパフェのお店があるの。一緒に寄っていきましょう?」

「…うん。」

「でも、明日は厳しいわよ。私はパフェのように甘くないから。」

71 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 01:33:28.73
「…えりちが冗談を。」

でもね、希 。私はこれからも貴女に甘えさせて貰うわ。

末永くよろしくね、親友。

72 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 11:21:53.79
「時間よ止まれ」

73 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 11:27:57.67
父親とは悲しい物である。

年頃の娘ともなると段々と壁を感じ何を考えているかもわからない。

何かあってもすぐに母親の方へ行ってしまう。

それでも、娘の幸せを一番に考えてしまう。

娘の為なら何を犠牲にしてもいいとすら思う。

74 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 11:33:18.37
私の娘は小さな頃からわんぱくでどれ程心配した事か。

帰って来ると服を泥だらけにして傷を作ってくる事もある。

時には男の子とケンカしてくることもあった。

「海未ちゃんに意地悪するんだもん」

泣きながら帰って来る彼女を見てヒヤヒヤしながらも心の中
ではどこかほっとしていた。

75 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 11:39:16.83
「大きくなったらお父さんのお嫁さんになってあげるね。
    そしたら、一緒にお饅頭作ろうね。」

そんな言葉を今でも昨日のように思い返す。

彼女が巣だって行くのはまだまだ先なんだと言い聞かせてながら。

76 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 11:44:46.40
「私ね、スクールアイドルを始めるんだ。」

最初は素直に応援できた。

少し突拍子がないが何事にも挑戦したがる彼女を誇りに思っていた。

最近は帰りが遅くなることもあり少しの寂しい気持ちもある。

「最近お父さん機嫌悪いよね。」

「あんたの帰りが遅くて寂しいのよ。」

77 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 11:47:29.55
「雪穂がいるじゃん。」

親の心、子知らずというやつかな。

…少し違うか。


こないだ、彼女は暗い顔して帰って来た。

活動が上手くいかなかったようだ。

あんなに必死に頑張っていたのに。

夜な夜な走り込みしていたのも知っている。

78 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 11:51:00.77
苦しいならやめてしまえ。

もっと嫌な思いをする前にやめてくれ。

そんな言葉が出そうだった。

でも、私がでしゃばって行くのは違う。

79 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 11:53:37.56
結局彼女は乗り越えた。

私の力など必要ともしなかった。

泣きついてほしかった。

彼女は成長しているのだ。

今度は彼女は生徒会長になった。

あんなにわんぱくで言うことを聞かなかったあの子が。

80 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 11:58:00.81
アイドル活動も順風満帆らしい。

今度大会に出るとか言っていた。

彼女がどんどん遠くに行ってしまう気がする。

わかっている。いつかはそんな日が来ると。

最近、少し落ち着いてきた。

見るたびに綺麗になっていく。

81 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 12:01:20.85
喜ばし事なのに…

私はダメな親だな。

「隠れて応援にいけばいいんじゃないんですか?最初、寂しいんでしょ?」

ステージ輝く彼女を見た。

やはり、少しずつ私の手から離れて行くんだな。

82 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 12:04:23.31
「お父さん。こないだ、来てくれたんだって?」

「私、ちゃんとアイドルしてたでしょう?」

それでも彼女は私の子供だ。

もう少しだけ私に甘えてくれ。

思う存分迷惑をかけてくれ。

…ああ、やっぱり私はダメな親だな。

83 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 12:05:06.20
…時間が止まってくれたなら

84 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 22:40:39.05
「劣等感」

85 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 22:49:24.25
「人には皆、何かしら他人に誇れる物があるものです。ただ、
   それに気づかないだけなのです。」

私はまだそれが見つかりません。

「私やるよ。やるったらやる。」

「いつかこの子会場を満員にしてみせます。」

人を惹き付ける事も引っ張ることもできません。

86 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 22:53:24.55
「海未ちゃん練習終わったらちょっと寄り道していかない?」

「申し訳ありません。この後、弓道部に顔を出して帰宅したら
    日舞のお稽古が。それに宿題もでていたでしょう?」

「うへ〜、穂乃果なら疲れちゃうな〜。」

器量もないし体力もありません。

87 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 22:58:45.63
「いい?アイドルっていうのは笑顔を見せる仕事じゃない!笑顔にさせる仕事なの!それをよーく自覚しなさい!」

「背も小さくて、声も小さくて。人見知りで、得意なものも何もないです。でも…でも、アイドルへの思いは誰にも負けないつもりです!」

一つの事に熱中した事もありません。

88 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 23:05:49.76
「凜は運動が大好きなんだ〜。だからダンスには自信があるにゃ」

「私はね、こうしてここでピアノを弾くのが好きなのよ。」

特出とした技術もない。

89 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 23:15:46.89
「面と向かって頑張れって言うんやなくて、まだまだ心配ないよって隣に寄り添っていたいかな」

「私はただ廃校を阻止したいだけじゃない。」

人を包み込んであげる事も信念をもって生きることもない。

90 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 23:20:25.76
私には誇れる物が何もない。

「バイトしてみませんか?」

私、変われるかな?

91 :名無しで叶える物語:2016/07/01(金) 23:20:49.09
ー完ー

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