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曜「そうだ、善子ちゃん」
- 1 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 08:57:37.95
- ある日の昼下がり、部室でご飯を食べようと花丸とルビィと約束し
二人の到着を一人待っていた善子であったが、曜の予期せず登場。
お互いに待ち人がいることがわかり、他の人が来るまで
何か話すべきかと考えたのであるが、大した話題など思いつかず、
気まずさを感じながらセルフ手相占いを開始したとき、曜が口を開いた。
善子「ん?何?」
曜「今週の日曜って暇?」
善子「えっと……特に予定はないけど」
曜「ほんと?じゃあさ、ちょっと付き合ってくれないかな?」
善子「付き合う?」
- 2 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 08:59:14.63
- 曜「うん。ちょっと街に買い物に行こうと思ってね。よかったら一緒にどうかなって」
善子「買いも……え?」
曜「いやー、ちょっと衣装の材料が足りなくてさ、買出しに行こうかなって」
善子「え、ちょっ」
曜「あとウインドショッピングして、衣装の参考になりそうなもの探すつもりなんだ」
善子「ま、待っ」
曜「あ、付き合ってくれたらちゃんとお礼するよ。だからどうかな?」
善子「え、えっとその……」
- 3 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 08:59:51.26
- その時、曜の携帯が鳴る。
曜「っと……あ、千歌ちゃんだ。集合場所は屋上に変更だよ……って急だなあ。
しょうがない、それじゃあ屋上に行こうかな。ごめんね、返事はメールでお願い」
善子「は、はい……」
曜「それじゃあねー」
曜はひらひらと手を振って部室を出て行ってしまった。
残された善子は一人呆然としていたのだが、
後から来た花丸達にどうしたのかと訪ねられるもまともな返事などできず、
脳内には週末、デートという単語が飛び交っていた。
- 4 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 09:00:46.72
- 数日後、
善子「へ、変なとこないわよね」
(だ、大丈夫なはずよ私!この日の為にわざわざファッション誌を読んでまで
服を選んできたんだから!)
善子(ち、ちょっと早く着すぎちゃったかしら……約束の時間の一時間前だし)
善子(いやいやでも!遅刻するよりはマシだし!)
善子(でもやっぱり早いし、ちょっとその辺りで時間でも潰して……)
曜「あれ?善子ちゃん?」
善子「ひゃい!?」
- 5 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 09:02:42.64
- 振り向くとそこには曜の姿があった。
善子「よ、曜先輩」
曜「随分早いね。まだ約束の一時間も前だよ。
善子「えっとその、先に寄っておきたいところがあったから
先に来て済ませちゃおうかなって思って」
善子(い、いえない!楽しみすぎて眠れなかったなんて言えない!)
善子「そ、それよりは曜先輩も一緒でしょ。どうしてこんな早いの?」
曜「いやー、恥ずかしながら今日が楽しみすぎてさ。
居ても立ってもいられてなくなって早めに家を飛び出してきちゃった。
でもまさか善子ちゃんも居るなんて思わなかったよ」
- 6 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 09:04:19.06
- 善子「そ、そうなんだ……」
善子(私とのお出かけをそんなに楽しみしてくれてたの!?う、嬉しい!顔がにやけそう!)
曜「でも結果的には早く出てよかったよ」
善子「どうして?」
曜「だってその分、善子ちゃんと一緒にいれる時間が増えるじゃん!」
善子(がはっ!)
その言葉を聞いて仰け反る善子。
曜「ど、どうしたの!?」
善子「な、何でもないわ。ちょっと太陽が眩しすぎて目が眩んだだけ」
(何これ何これ!たらしなの!?たらしなのこの人!
こんなセリフ言われたの初めてだわ!いやそもそも誰かとこうやって
出掛けたことなんてないけどさ!あ、ごめん!やっぱ花丸とだけあったわ!)
- 7 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 09:08:06.34
- 曜「そ、そう……それじゃあせっかくだし、善子ちゃんが寄るって言ってた所に行こうか」
善子「え、い、いいわよ別に!行っても曜先輩はつまらないかもだし!」
(ていうか実際そんな予定なかったし!)
曜「今日はそもそも私がつき合わせちゃってるんだから。
代わりといってはなんだけど、私も善子ちゃんの行きたいところに付き合うよ」
善子(やめて!善意が苦しい!)
善子「そ、そんなの気にしなくていいから!」
曜「いやいやいや、そう遠慮なさらずに!どこまでもお供いたしますぜ!」
ぐいっと善子に距離を詰める曜。
善子(ダメだ……これは折れないタイプの人間だ……逃げられない)
善子「えっと、それじゃあ……」
- 8 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 09:09:45.47
- 曜「かっこいい!何ていうのかな、これ!」
善子「えっと……それはモーニングスターと言って鉄球を振り回して
相手を攻撃するものなんだけど」
曜「うへぇ、名前と裏腹に強烈な武器だねぇ」
善子「そ、そうね」
善子(どうしてこうなってるのよ!)
二人は古今東西の武器が飾られた店を訪れたいた。
善子(いやだって私の知ってるお店ってこの辺りでこれくらいだもん!
こじゃれたお店?そんなの知らないわよ!ボッチだった上に、
お小遣いもほとんどこういうのに費やしてたんだから!)
曜「それにしてもいろんなものあるね。初めて見るものばっかり」
- 9 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 09:12:22.22
- 曜「それにしてもいろんなものあるね。初めて見るものばっかり」
善子(それはそうでしょうね!こんなとこに来る女子高生なんて普通いないわよ!
ってそれって私が普通じゃないみたいじゃない!いやまあ多少は自覚あるけどさ!)
曜「これは何?円形の刃物って感じだけど?」
善子「それはチャクラムって言うやつで、円形の刃を回転させて相手に投げる武器よ」
曜「なるほど……おお!鉄の扇子があるよ!」
善子「それは鉄扇って言う、護身用の武器よ。刀が使えない場所とかで変わりに使うの」
曜「ふむ。じゃあこれは?」
善子「それはアパッチ・リボルバーって言ってね。
昔それを使ってたやつが(中略)っていう代物なのよ」
- 10 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 09:14:24.82
- 曜「そうなんだ。善子ちゃんって物知りだね!それに何だか活き活きしてる!
善子「そ、そうかしら?そんなことないと思うけど?」
善子(やってしまったああああ!こんなオタクな知識ばっかり話してたら
つまらない子だと思われるううう!まあお店に来た時点でアウトだったけどね!)
曜「いやあ、楽しいなあここは」
善子「え?楽しいの?」
曜「うん。だって私こういうのよく知らないからさ。何だか楽しくない?
知らないことを知っていくのって」
善子「あ、うん……た、楽しいと思う、多分」
曜「でしょ!だからありがとう善子ちゃん!私に新しい世界を教えてくれて!」
そう言って曜は善子の手を強く握った
- 11 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 09:16:49.96
- 善子「は、はい……どういたしまして」
善子(よかった!なんか知らないけどよかった!喜んでくれてた!
すごい予想外だけど!)
善子(……曜先輩って何でも楽しめる人なんだな……羨ましい)
曜「それで、善子ちゃんは何か買うの?」
善子「今日は下見だけにしとくわ。結構いい値段するし」
曜「値段……うわっ、ほんとだ!これじゃあおいそれと手は出せないね」
善子「でしょ?それじゃあ今度は曜先輩の行きたいところに行きましょ。どこまでも付き合ってあげるわ!」
善子(こ、こんなノリで大丈夫かしら……大丈夫よね?)
- 12 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 09:21:21.79
- 曜「ありがとうございます善子殿!それでは僭越ながら私めがエスコートさせていただきます!」
善子(よし!正解!)
善子「ふむ、良きに計らいなさい」
曜「ヨーソロー!」
善子(行ける!行けるわ!これで私もリア充の仲間入りよ!)
- 13 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 09:25:54.10
- 曜「じゃあ次はこれね!」
善子「そ、それは私に合わないんじゃ……」
曜「絶対似合うよ!ほらほら早く着てみて!」
善子「わかった!わかったから押さないで!」
善子(どうして私がこんなことしてんのよ!)
その後、服屋を訪れた二人は、最初こそ普通に服を吟味して
楽しんでいただけだったのだが、
いつのまにか善子の方が着せ替え人形のように扱われていた。
善子(はあ……まあ、さっきは変なとこに突き合せちゃったし、
多少なら構わないんだけどさ。でもこれでもう何着目よ!
しかも私が普通は着ないような物ばっかり選んでるから何か恥ずかしい!)
- 14 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 09:27:03.75
- 曜「善子ちゃーん、まだー?」
善子「ま、待ってもうちょっとだから!」
善子(とりあえずさっさと着て曜先輩を満足させなきゃ……
ま、何だかんだ言って私も楽しいんだけどね)
善子「っと……よし」
服を着た善子はカーテンをあけ、曜の前に姿を現す。
善子「ど、どう?」
曜「いいね!すっごく似合ってるよ!かわいい!」
善子「そ、そう?それならいいけど……って写真取らないでよ!恥ずかしいじゃない!」
曜「いいじゃん。減るものじゃないし。それにここで撮っておかないなんてもったいないよ!」
- 15 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 09:30:40.12
- 善子「もったいないって何よ!もう!他の皆にも見せたりしないでしょうね!」
曜「ダメ?」
善子「ダメよ!」
善子(ズラ丸辺りに見られたら何言われるかわかったもんじゃないわ!)
曜「そう……じゃあ今日のことは二人だけの秘密だね!」
善子「秘密……」
善子(何かこう、いざ二人だけのって言われるとドキドキするわね。秘密の共有ってこんな風に感じるものなのかしら……なんだか急に仲が良くなったような気がするわね……
って私がこんなリア充な人と仲良くなれるわけなんかないでしょ!人種が違いすぎるわよ!
いや、曜先輩は悪いんじゃなくて私が見合ってないというか
こんな中二病引きこもりがそんなこと考えるなんて恐れ多いというか)
- 16 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 09:31:51.36
- 曜「よ、善子ちゃーん?大丈夫?」
善子「……えっ!?何!?」
曜「い、いや、何だかぼうっとしてたから……もしかしてそんなに嫌だった?」
善子「い、いえ!そんなことは――」
曜「だったらごめんね。無理やり付き合わせちゃうようなことして」
善子「だから違くて――」
曜「だめだなー私って。ときどきこうやって突っ走っちゃうことがあるから相手のこと考えられなくなっっちゃうんだよね……」
善子「ちょっと!聞きなさいよ!」
曜「!?」
- 17 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 09:36:16.33
- 善子「こ、こんな人間の戯れなんかで堕天使の私が怒るわけないでしょ!
むしろあなたは私の悪魔的な特性を理解し、最高の装備を与える言わば臣下のような存在!
臣下が私の為に謀略を立てるというのなら、それに耳を傾けるのが主人としての器……
あなたのようなリトリデーモンがいることを私は誇りに思うわ!」
曜「…………」
善子「…………」
善子(わあああああああああ!またやってしまったあああ!何いってるのよ私!
引かれた!これは引かれたわ!明日から学校で『悪魔さんチーッス』的な扱いになるんだわ!
照れ隠しで出る言葉がどうしてこんなのなのよおおお!)
曜「……えっと」
善子「?」
曜「……何となくだけど善子ちゃんが言いたいことがわかった気がするから……
だから、ありがとう善子ちゃん。私、善子ちゃと友達になれてよかったよ」
- 18 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 09:42:11.92
- 曜は柔らかに微笑んだ。それを見て善子は顔を隠すように背ける。
善子「そ、そう……それなら、よかった……です……」
善子(まずい!顔見れない!今私どんな顔してるのかわかんない!少なくともまともな顔をしてないのはわかるけど!)
曜「どうしたの?」
善子「な、なんでもないわ。それより、もう着替えていいかしら?」
曜「うん!もう満足したよ!」
善子「じゃあ、着替えるから待ってて」
善子はカーテンを閉めると、曜に聞こえないようにう小さく息を吐いた。
善子(ふう……何とか平静を装えるようにならないと。
……それにしても、ここまでくるともうリア充まっしぐらね!
いつもは引き篭もってばっかりだったけど、今日は出掛けてきてよかったわ!
もうこれまでの私とは違うんだから!曜先輩と友達になれて本当によかった!)
- 19 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 09:46:57.29
- その後、二人は衣装の材料を買いつ色々なお店を巡った。
そして気が付けば時刻は夕暮れ時となり、
空は綺麗なオレンジ色になっていた。
曜「そろそろいい時間だね。ちょっとお茶してから帰ろうか」
善子「ええ、そうしましょ」
最初こそ曜と二人きりということで緊張していた善子であったが、
最後には緊張を完璧に拭い去った……とまではいかないでも、
何だかんだで今日という日を楽しんでいた。
曜「それじゃあ、あそこなんてどうかな。お店の外にテラスがあって海が見れるんだ」
善子「いいわね。そこにしましょう」
曜は善子の分もあわせて注文をしに行き、
善子は先に席を確保することになった。
- 20 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 09:47:41.94
- 善子「ふぅ……流石に疲れたわね」
テラスの席に着いた善子は肩を降ろした。
善子(……今日は楽しかったなあ。ズラ丸とこうやって遊んだ時も楽しいけど、
今日はまた違った感じで楽しかったというか……どっちが上とかはないんだけどね。
それに久しぶりだわ、こんな風に夕日を見るなんて)
善子「……綺麗」
曜「何がかな?」
善子「ぴゃっ!?」
曜「うわっ!?何だかすごい声だったよ!?」
善子「いきなり首筋に冷たいもの当てられたら驚くに決まってるじゃない!」
- 21 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 09:54:54.92
- 曜「そうだよね、ごめんごめん。はいこれ」
善子「あ、うん。ありがとう」
善子が曜から飲み物を受け取る。
曜は善子の向かい側の席に腰をかける。
曜「いやあ、今日は疲れたよ。ちょっといろんなお店を回り過ぎたかもね」
善子「そうね。付き合わされたこっちの身にもなって欲しいわ」
曜「そんなこと言ってー。善子ちゃん楽しんでたじゃん」
善子「うっ……そ、そんなこと」
曜「そんなこと?」
善子「あ……ある、けど」
曜「でしょ?」
- 22 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 09:59:11.37
- 善子「ああそうよ!楽しかったわよ!」
善子(もう隠したって無駄だし開き直ってやるわ!」
曜「楽しかった発言!いただきました!」
善子「それはよかったわね」
曜「うん。よかったよかった」
善子「……ねえ」
曜「何?」
善子「曜先輩って他の人ともこうやって遊んだりしてるの?」
曜「うん。千歌ちゃんとか、果南ちゃんとか、梨子ちゃんとか……
みんながみんな一緒に買い物ってわけじゃないけどね。
あ、先週はルビィちゃんと花丸ちゃんと一緒に隣町まで行って来たよ」
- 23 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 10:01:42.36
- 善子「え!?何それ!?」
曜「何でも二人がボルダリングやりたいっていうから果南ちゃんも連れて
四人で行ってきたんだ。体動かせて楽しかったよ」
善子「私聞いてない!」
曜「え?でもその日は善子ちゃんも誘ったけど配信があるからどうとかって
断られたって言ってたよ?」
善子「ごめんなさい!やっぱり聞いてた!」
善子の脳裏に花丸からの誘いを断った記憶が瞬間的に蘇る。
善子(確かに先週は配信動画の撮影やってた!自業自得じゃない!私の馬鹿!)
曜「やっぱり善子ちゃんも行きたかったの?」
善子「いや、まあ……」
- 24 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 10:04:50.63
- 善子(あの時は花丸と二人で遊ぶもんだと思ってたから
今日くらいはいいかと思って断ったけど……そっか、曜先輩もいたんだ。
何だかもったいないことしたな)
曜「それとも何かな?私を盗られちゃったからって嫉妬しちゃいましたかな?」
にやにやと笑みを浮かべる曜。
善子「え!?……いや、そ、そそそそそんなことわないわよ!」
曜「……えっと、善子さん。何だかお顔が赤いようなんですが……
そんな反応されると流石の私も多少は照れるといいますか何というか……」
二人して顔を赤し、互いに視線を逸らす。
善子「……えっと、さ」
曜「?」
- 25 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 10:09:24.68
- 善子「ま、また今度こうやって一緒に遊んだりできるかしら?」
曜「え!?う、うん!もちろんだよ!いつでも誘ってくれて良いよ!」
善子「あ、こ、今度は花丸とかを誘うのもいいわね!皆で遠出しましょ!」
曜「いいね!計画立ててさ!泊りがけの旅行とかどうかな!」
善子「ありね!だったら山ね!海はいつでも見れるし!」
曜「だね!……でもさ、またこうして二人で出掛けるのもありかもね」
善子「ふぇ!?」
善子(と、突然何!?それって告白!?こ・く・は・くなの!?
夕暮れのテラスで告白なんて何それなんてアニメよ!)
- 26 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 10:11:46.99
- 曜「だって詳しく衣装の話ができるのって善子ちゃんぐらいだもん。
意見ももらえたりするし、他の人じゃこうはいかないからね」
善子(そ、そういう意味ね)
善子「まあ、私だって自分で服に小物付けるくらいはするから。全部自作は流石にないけど」
曜「それって前のゴスロリファッションとかの?」
善子「そうよ」
曜「へえ、あれってもとからああいう作りってわけじゃなかったんだ。
自然すぎて気付かなかったよ」
善子「そ、そう?そんなに?」
曜「うん。器用なんだね」
善子「それほどでもないけど……」
- 27 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 10:14:35.73
- 善子(そっか。一応曜先輩の御眼鏡に叶う位には器用なんだ私って)
善子「……ねえ、曜先輩。よかったら私も衣装作り手伝わせてもらってもいい?
これまでみたいにボタン付けとか細かいところだけじゃなくてもっと全体的な作業も」
曜「え?そんな悪いよ。善子ちゃんには善子ちゃんの予定もあるんだし、
今までの手伝いの量だけで十分助かってるよ!」
善子「だって大変でしょ。一人分ならとにかく、皆の分も作るなんて」
曜「大変じゃないよ……って言ったら嘘だけど、でも楽しいんだ。
みんなで考えた衣装が私の手でどんどん形になっていくのを見るのが。
それにみんなも出来上がった衣装をみたら喜んでくれるし。
それだけで私はお腹一杯になれるのさ」
善子「でも……」
曜「大丈夫だって!その気遣いだけで私は超頑張れるからさ!ありがとね!」
- 28 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 10:16:59.49
- 善子「……う」
善子(ダメよ!ここで「うん」と言ったら!この人は皆の為なら絶対無理しちゃう人なんだから!何とか説得しないと!説得……説得……こ、こんな言い方しか思い浮かばない……ええいもう!なるようになれ!)
善子「……な、何を勘違いしてるの?」
曜「へ?」
善子「私はリトルデーモンの負担を減らす為に手伝わせろと言っているのではない。
あなただけが皆からの感謝と笑顔を独占してるのが気に食わないから
私にも寄越せと言っているの。人間の感情というのは善悪に関わらず堕天使の
活力となるもの……それを人間ごときが独り占めするなんて許されないことだわ。
リトルデーモンはリトルデーモンらしく、主人である私の命に従いなさい!」
- 29 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 10:20:03.85
- 善子(だ・か・ら!何で私はこんな物言いしかできないのよおおお!曜先輩お願い!お願いだから私の意図を汲み取って!)
曜「……何それ」
善子「え?」
曜「善子ちゃんってそんなこと思ってたの?信じられない」
善子「え?」
曜「もういいよ。やっぱり衣装は私一人で作るから」
善子「え?いやその」
曜「折角友達に慣れたと思ったのに……もう終わりだね、私達」
- 30 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 10:21:48.96
- 善子(え?何その反応……失敗した?私失敗したの?)
善子(ちょっと待って、本当に曜先輩怒ってるの?これで終わりなの?
折角友達になれたと思ったのに?私が変なこと言ったから?調子に乗ったから?
そうよね?それしかないわよね?)
曜「……」
善子(待って本当に待って。泣きそうなんだけど。もう涙腺緩んでるんだけど。
声も出そうなんだけど。我慢できそうにないんだけど。
絶交……嫌だ、嫌だ、そんなの嫌だ……私、どうしたら……
曜「……なーんてね!どうだった私の迫真のえん……って善子ちゃん!?」
善子の目には涙が滲んでいた。
善子「……え?」
そしてまぶたに溜まった涙がその一言によって一筋流れた落ちた瞬間、
曜は善子に抱きついた。
- 31 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 10:25:44.43
- 曜「ごめんね!ホントにごめん!嘘だから!さっきの言葉も嬉しかったし、これからもずっと友達だから!本当にごめんね!」
善子「ちょ、ちょっと、急に抱きつか、ないでよ……な、泣いてなんか、ないん、だから」
曜「でも」
善子「泣いてないから」
曜「……ごめんね。善子ちゃんがこんなに傷つくなんて思ってもなかった。私って馬鹿だなぁ」
善子(いや多分普通の人は冗談だって分かるかもしれないけど、
友達がほとんどいない私にとってはそれを察するのは難しいんですよ。
数少ない仲良くなったから距離を取られるような発言や行動をされると全てが
クリティカルヒットしちゃうくらい耐性がないんです。
もうこれはボッチゆえの弊害なんですよすいません)
- 32 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 10:28:24.05
- 善子(でも……冗談でよかった。本当によかったよぉ)
善子「……って、流石にもう離れなさいよ。周りから変な目で見られるかもしれないわよ」
曜「構わないよ。友達が泣いてるのにほっとけない」
善子「私が構うのよ!恥ずかしいから離れて!もう大丈夫だから!」
曜「ほんとに大丈夫?」
善子「大丈夫よ!てかこれ涙じゃないし!さっき飲んだジュースの水滴がついただけだし!」
曜「そう?それじゃあ……」
曜は善子から不安そうに離れる。善子は息を整え、小さく息を吐いた。
- 33 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 10:31:01.74
- 善子「ふう……さて、この私に嘘をついた罪は重いわよ。どうしてくれようかしら」
曜「わ、わたくし渡辺曜は善子様のために何でもする所存でございます!」
曜は狼狽しつつも見事な敬礼を繰り出す。
善子「そうね……それならやっぱり私にも衣装作りを手伝わせてもらおうかしら。嫌とは言わせないわよ」
曜「え!?そ、それでいいの!?」
善子「それでいいんじゃない。それがいいの」
曜「……」
善子「……ダメ?」
曜「……うん、わかった。じゃあ今度から手伝ってもらおうかな」
- 34 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 10:31:48.15
- 善子(よし!かなり恥を晒した気がするけど結果オーライね!周りからの視線がちょっと生暖かい気がするのも気のせいよね!気のせいであってくださいお願いします!)
善子「そ、それじゃあ、そろそろ帰りましょうか」
曜「そうだね」
席を立つ二人。
そして曜が自然に善子の手をとる。
善子「……この手は何?」
曜「友情の証!」
善子「恥ずかしい!」
曜「私は恥ずかしくない!」
- 35 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 10:32:32.60
- 善子「あなたは、でしょ!」
曜「バス停までエスコートさせていただきます!」
善子「話聞きなさいよ!」
善子(周りからの視線がより一層生暖かいものにぃぃぃ!)
曜「聞いてるよ!それじゃあ行こう!」
善子「聞いてないじゃない!」
曜「ヨーソロー!」
善子「そうじゃなくてー!」
夕日が沈み、一番星が輝きだした頃、
二人は家路につくのであった。
- 36 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 10:33:04.22
- おしまい
- 37 :名無しで叶える物語:2017/03/13(月) 20:15:20.28
- 最高過ぎて涙出てきた
- 38 :名無しで叶える物語:2017/03/14(火) 01:47:30.40
- 乙
素晴らしい曜アンドエンジェルだった
- 39 :名無しで叶える物語:2017/03/14(火) 10:54:07.69
- |c||^.- ^||乙ですわ
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