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女子大生海未「穂乃果。セックスを前提に結婚してください」穂乃果「いやだ」

236 :名無しで叶える物語:2017/04/26(水) 00:17:23.19 ID:3lLeo2FY.net
k子って綺羅ツバサから取ってるんじゃないよな…?
英玲奈もいたし…

237 :名無しで叶える物語:2017/04/26(水) 03:59:35.86 ID:eg0ZluuH.net


238 :名無しで叶える物語:2017/04/26(水) 06:12:14.44 ID:neTDn8Y7.net
こんな合コン嫌すぎる

239 :名無しで叶える物語:2017/04/26(水) 19:40:38.29 ID:enNg41cm.net


240 :名無しで叶える物語:2017/04/26(水) 21:58:42.69 ID:hpIMIQrh.net
4回生って話だし違うんじゃない

241 :名無しで叶える物語:2017/04/26(水) 22:11:29.69 ID:/Tz9VlYx.net
後半まだか

242 :名無しで叶える物語:2017/04/27(木) 03:38:03.14 ID:8Em9nCaq.net


243 :名無しで叶える物語:2017/04/27(木) 16:08:55.57 ID:h0FGcbBl.net


244 :名無しで叶える物語:2017/04/27(木) 16:09:42.46 ID:h0FGcbBl.net


245 :名無しで叶える物語:2017/04/27(木) 16:18:07.28 ID:ag/vHgp7.net


246 :名無しで叶える物語:2017/04/27(木) 17:22:43.40 ID:lXJYiZeo.net


247 :名無しで叶える物語:2017/04/27(木) 17:28:56.35 ID:dPf4Nkj9.net


248 :名無しで叶える物語:2017/04/27(木) 17:55:28.71 ID:lXJYiZeo.net


249 :名無しで叶える物語:2017/04/27(木) 17:57:20.11 ID:iTRWtecZ.net


250 :名無しで叶える物語:2017/04/27(木) 18:11:08.00 ID:Pd+UjNiX.net


251 :名無しで叶える物語:2017/04/27(木) 18:20:21.34 ID:ILcqpKup.net


252 :名無しで叶える物語:2017/04/27(木) 20:05:15.99 ID:TUZnz+74.net


253 :名無しで叶える物語:2017/04/27(木) 23:28:21.72 ID:fJmHCtAC.net
週一更新とか長過ぎんよ
もう3日おきくらいで確認して更新なかったらキャッシュ消すわ

254 :名無しで叶える物語:2017/04/27(木) 23:30:49.56 ID:UcIMWKgz.net
黙って消えろよ

255 :名無しで叶える物語:2017/04/28(金) 03:22:52.29 ID:9rZN7DGk.net
保守

256 :名無しで叶える物語:2017/04/28(金) 15:25:25.42 ID:+6AFB86I.net
保守

257 :名無しで叶える物語:2017/04/28(金) 19:21:17.63 ID:p3NOegyZ.net
ペース遅くてすまない…
夜に更新します

258 :名無しで叶える物語:2017/04/28(金) 19:29:29.14 ID:dTvcmWYn.net
キートンあくしろよ

259 :名無しで叶える物語:2017/04/28(金) 23:40:31.66 ID:p3NOegyZ.net
#14-b


「君たちゎ…ぉ酒飲める?」

k子「私は飲めるよ〜」

海未「私も飲めます!」

ことり「……海未ちゃん?」

海未「じ、冗談ですよ…」


「店員さん…生中6つぉ…。他のみんなゎ?」

海未「烏龍茶で」

ことり「私も」

絵里「……私はオレンジジュースで」

「烏龍茶2、ォレンジ1で…ょろしく」



この人の喋り方はなんとかならないのでしょうか。

260 :名無しで叶える物語:2017/04/28(金) 23:41:14.25 ID:p3NOegyZ.net
「じゃぁ、まずゎ自己しょぅかぃから始めょぅか」

「………ぉれのなまぇゎ、裸婦茨ーだぁ。ラ板学院一のしゅぅさぃだぁ」

海未「ラブライバー?」

裸婦「違ぅ…。らふいばらー、だぁ」


「次は俺やな。俺の名前は高速増殖炉。ラ板学院文学部一回生やで」

海未「こ、高速増殖炉…さん?」

高速増殖炉「呼びにくかったら、もんじゃって呼んでくれや」


裸婦「ぁとの三人ゎ…全員、中国からの留学生だぁ…」

高速増殖炉「順番に紹介するやで。まずは要!」

要(yāo)「ヨウソ!ヨウソ!」

海未「ヤオさん…ですね」

高速増殖炉「ちなみにこいつのイングリッシュネームは、ソニアや」

海未「要ソニア…」


裸婦「その隣ゎ…、渡雨だぁ」

渡雨(dùyǔ)「コーガ!コーガ!」

海未「ドゥ…イさんですね。よろしくお願いします」

高速増殖炉「こいつのイングリッシュネームは、エアーや」


裸婦「最後ゎ、こぃっだぁ…」

高速増殖炉「みんなのアイドル、柔銀やで!」

柔銀(róugīn)「"Hey! Suzu!"」

海未「ルオジンさん…ですね」

裸婦「こぃっゎ、日本語ぉ全く喋れなぃ…」

高速増殖炉「あ、こいつのイングリッシュネームは、ジャスティンやで」

柔銀「"Super students!"」

261 :名無しで叶える物語:2017/04/28(金) 23:42:30.41 ID:p3NOegyZ.net
k子「………んじゃ、男子の自己紹介も終わったし、今度は女子メンの自己紹介タイームだよ!」

男共「イェェェェェ!!!」

海未「い、いぇーい!」


ことり「」

絵里「」


こ、ことりと絵里が息をしていません!

あからさまに帰りたそうな顔をしないでくださいよ…!

262 :名無しで叶える物語:2017/04/28(金) 23:43:06.78 ID:p3NOegyZ.net
k子「………で、よく聴く曲はA-RISEでーす。よろしく〜!」

男共「フッフー!」

海未「……フッフー!」

k子「次、海未ちゃんだよ!」

海未「は、はい!園田海未です。音ノ水女子学校の一回生で、好きなアーティストはμ'sです!よろしくお願いします!」

男共「ラブアローシュウウウウウ!!!」

k子「いぇーい。じゃあ次は、ことりちゃん!」

ことり「………」

263 :名無しで叶える物語:2017/04/28(金) 23:44:21.40 ID:p3NOegyZ.net
ことり「南ことり、18歳……」

ことり「あだ名はコッティー………よろしく」

海未「……いぇ、いぇーい!フッフー!」

ことり「」


こ、ことりが悟りを開いています!

戻ってきてください!あなたにニルヴァーナは早過ぎます!!



k子「じゃあ次は〜、絵里ちゃんね!」

絵里「………絢瀬絵里。よろしく」

海未「え、絵里?もうちょっと自己紹介することがあるのでは?」

絵里「別に」


絵里が沢尻エリカみたいになってしまいました!

帰りたい気持ちはわかりますが、もっと合コンへのやる気を出してくださいよ!

264 :名無しで叶える物語:2017/04/28(金) 23:45:00.00 ID:Ph1zgpuj.net
これはひどい…

265 :名無しで叶える物語:2017/04/28(金) 23:51:27.97 ID:p3NOegyZ.net
k子「お、ビール来たよ〜!」

高速増殖炉「せやな。全員に回ったことやし、乾杯しよか!」

k子「では、乾杯の音頭は海未ちゃんにやってもらうよ〜!」

海未「えっ!私ですか!?」

k子「みんな待ってるんだから、早く早く〜」

海未「………では、僭越ながら…」

k子「乾杯ーーー!」

男共「ウェェェイ!!!」

海未「!?」



私がネタ要員にされているのは不服ですが…。

一先ず、今を楽しみましょう!

266 :名無しで叶える物語:2017/04/28(金) 23:55:56.53 ID:p3NOegyZ.net
海未「ほら、ことりと絵里も飲みましょうよ!」

ことり「海未ちゃん…。どうしてそんなに元気なの…?」

海未「ふふ、これは穂乃果を見返すための合コンですからね!正直相手がどんな人だろうとどうでもいいんですよ!」

ことり「なるほど…。開き直っちゃってるんだね!」

海未「はい!男の顔を見ず、話を聞かなければ十分に楽しめますよ!」

ことり「いいね、それ!ことりも頑張ってみるよ!」

高速増殖炉「おーい、聞こえとるで」

267 :名無しで叶える物語:2017/04/28(金) 23:58:15.24 ID:2KiwKepp.net
殺処分してもまったく問題ない連中だなぁ

268 :名無しで叶える物語:2017/04/29(土) 00:03:17.69 ID:FNoiarbH.net
海未「あ!唐揚げが来ましたよ!」

k子「海未ちゃん、覚えてる?合コンが始まる前に私が言ったこと」

海未「はい、しっかりと!唐揚げにはレモンをかけな…」


高速増殖炉「あ、ごめん。かけてもうたわ」

海未「」



絵里「………エリチカお家帰る」

ことり「ことりチカも帰るね…」

海未「ち、ちょっと待ってください!」

海未「すべての唐揚げにレモンがかかっているわけではありませんから、まだレモンなし唐揚げの望みはありま…」


高速増殖炉「あ、ごめん。すべての唐揚げに満遍なく搾り尽くしたわ」

海未「」



k子「………帰るか」

海未「そうですね」

269 :名無しで叶える物語:2017/04/29(土) 00:14:43.47 ID:FNoiarbH.net
私たちは男共を置いて店を立ち去りました。


絵里「合コンって地獄のような所業なのね…。もう懲り懲りよ」

ことり「ことりも、二度と行きません」

海未「す、すみません!私が誘ったばっかりに、二人に嫌な思いをさせてしまいました…」

絵里「海未は謝らなくていいわ。行くことを決断したのは私だもの」

k子「そもそも海未ちゃんに数を集めるよう言ったのは私だしね。海未ちゃんの所為じゃないよ」

海未「……先輩。……すみませんでした」

k子「いいのいいの。海未ちゃんは何にも悪くないんだから」

海未「………」



合コンは、物の見事に失敗してしまいました。

このざまでは、穂乃果に嘲笑われるに違いありません…。

270 :名無しで叶える物語:2017/04/29(土) 00:21:38.03 ID:FNoiarbH.net
絵里「じゃあ私はここで」

海未「はい、お疲れさまです」

絵里「今日は楽し………、海未に会えて良かったわ。おやすみなさい」

ことり「おやすみ〜」


海未「………ことりの家はもう過ぎたと思うのですが、帰らないのですか?」

ことり「せっかく海未ちゃんに会えたんだもん。もうちょっと一緒に居たいな〜。……ダメ?」

海未「い、いえ、そんなことは…」


k子「あー、私はお邪魔虫みたいだね〜」

海未「あ、先輩!私たちに気を遣わなくても…」

k子「いいのいいの!あとは若い二人に任せるから!それじゃ!」


ことり「全速力で走って行ったね…」

海未「k子先輩、あんなに走るのが速かったんですね…」

271 :名無しで叶える物語:2017/04/29(土) 00:32:31.42 ID:FNoiarbH.net
合コンが思いの外、早く切り上がったのでまだ夜も浅いのですが、念のため、ことりを家まで送ることにしました。


ことり「海未ちゃんはいつもことりに優しくしてくれるよね。ありがと、海未ちゃん♪」

海未「そうですか?私は普段通りに接しているだけですが…」

ことり「そういう台詞を自然に吐くのは禁止です!かっこ良過ぎます!!」

海未「ふふ、何ですかそれは」

ことり「ことりは、海未ちゃんが他の子のモノになっちゃうことを危惧してるの。海未ちゃんってすぐにたらし込むから〜」

海未「大丈夫ですよ。私には心に決めた人がいますから!」

ことり「あー、そっか。そうだったね!じゃあ大丈夫か!」



ことりのやんわり笑顔は、どこか遠くを見つめています。

272 :名無しで叶える物語:2017/04/29(土) 00:41:16.50 ID:FNoiarbH.net
ことり「………そういえば、海未ちゃんはどうして合コンに参加しようと思ったの?」

海未「それはですね…。穂乃果が………かくかくしかじか………嫉妬させてやろうと思いまして」

ことり「ん…?穂乃果ちゃんは、本当に合コンに行ってたの?」

海未「はい。電話口の向こうから、穂乃果を呼びに来た男の声が聴こえましたから!忌まわしい限りです」

ことり「………」


ことりはしばらく考えた後、こう呟きました。


ことり「それ、穂乃果ちゃんの嘘だよ」

海未「へ…?」

ことり「たぶん穂乃果ちゃんも、今の海未ちゃんと同じように嫉妬してたんだろうね」

ことり「だから、海未ちゃんを自分と同じように嫉妬させようと、合コンに行った…なんて嘘を吐いたんだと思う」

海未「……な、何ですかそれは…」

海未「それじゃあ私たち、バカみたいじゃないですか!」

ことり「うん、バカなんだよ」

海未「ことりが辛辣です!」



ことり「………ほんと、二人とも大バカだよ」

273 :名無しで叶える物語:2017/04/29(土) 00:55:43.27 ID:FNoiarbH.net
ことり「海未ちゃんは、前に私が言ったこと覚えてる?」

海未「えっと…、何のことですか?」

ことり「やっぱり忘れてる…。だから穂乃果ちゃんの嘘に気づけなかったんだね」


ことりは、不敵な笑みを浮かべています。



ことり「穂乃果ちゃんは今、異世界にいるんだよ」

ことり「だからさ、現世で行われている合コンに参加できるわけ、ないよね?」



どこか消化不良のような、そんなもやもやとした気持ちを抱えながら寝床に着きました。

長かった夏休みも終わり、ついに後期授業が始まります。

274 :名無しで叶える物語:2017/04/29(土) 03:22:31.63 ID:TwZjYNu8.net
まだ夜なのにどこ行った

275 :名無しで叶える物語:2017/04/29(土) 04:23:01.44 ID:0x1v03w/.net
不穏だなあ

276 :名無しで叶える物語:2017/04/29(土) 04:56:58.75 ID:uhoHl1NX.net
急かしたから書き進めてた分だけ投下した感じかな多分

277 :名無しで叶える物語:2017/04/29(土) 16:28:05.18 ID:0x1v03w/.net


278 :名無しで叶える物語:2017/04/29(土) 16:35:21.38 ID:PkmGgYcL.net
待ってるからな

279 :名無しで叶える物語:2017/04/29(土) 18:28:01.37 ID:r33p9laH.net
呼んだら読み進めただけ言い様のない不安が増す
なんだこれ

280 :名無しで叶える物語:2017/04/29(土) 19:55:42.28 ID:PTt2Kppx.net
シュール過ぎる

281 :名無しで叶える物語:2017/04/29(土) 23:51:36.22 ID:KPv9lFAO.net
ほしゅ

282 :名無しで叶える物語:2017/04/30(日) 10:24:22.42 ID:C4z0v1ns.net


283 :名無しで叶える物語:2017/04/30(日) 10:24:22.82 ID:C4z0v1ns.net


284 :名無しで叶える物語:2017/04/30(日) 15:19:00.44 ID:+MbUPJ34.net
女子大生海未が高校生穂乃果ちゃんにアタックするスレかと思った

285 :名無しで叶える物語:2017/04/30(日) 19:04:36.10 ID:JTM7mnHz.net
保守

286 :名無しで叶える物語:2017/04/30(日) 21:34:29.69 ID:8hH5AyPm.net


287 :名無しで叶える物語:2017/04/30(日) 22:18:52.44 ID:rq5y6K6l.net


288 :名無しで叶える物語:2017/05/01(月) 04:26:49.25 ID:uZgzY0jd.net


289 :名無しで叶える物語:2017/05/01(月) 16:31:59.72 ID:uZgzY0jd.net


290 :名無しで叶える物語:2017/05/01(月) 23:49:19.18 ID:eQ5Wx3R1.net


291 :名無しで叶える物語:2017/05/02(火) 00:23:52.45 ID:SHeCcNQG.net
休みなので更新ペース上げます

292 :名無しで叶える物語:2017/05/02(火) 08:15:19.09 ID:LLNCJOYD.net
仕事だけど読むペースは落ちないから頑張れ

293 :名無しで叶える物語:2017/05/02(火) 08:48:19.37 ID:S2ZBsrzY.net
がんばってや

294 :名無しで叶える物語:2017/05/02(火) 08:48:20.76 ID:S2ZBsrzY.net
がんばってや

295 :名無しで叶える物語:2017/05/02(火) 18:12:31.27 ID:+YnLoFy6.net


296 :名無しで叶える物語:2017/05/02(火) 21:32:33.10 ID:vZ2Farjr.net
はよ

297 :名無しで叶える物語:2017/05/02(火) 22:47:41.67 ID:KcRghDj0.net


298 :名無しで叶える物語:2017/05/02(火) 23:58:36.66 ID:SHeCcNQG.net
#15

今日はことりの誕生日です。

私は片手にプレゼントを提げ、ことりの家を訪ねました。


海未「ことり、来ましたよ!」

ことり「いらっしゃい♪どうぞ入って〜」

ことり「………今日は家に誰もいないからね」



ことりに促されるまま、部屋の中へと入りました。

ことりの部屋は、相変わらず可愛らしいぬいぐるみや人形で埋め尽くされており、ことりらしさ全開です。

299 :名無しで叶える物語:2017/05/03(水) 00:00:04.80 ID:HZ5R6W7Z.net
海未「えー、改めまして。お誕生日おめでとうございます!」

ことり「ありがと〜!毎年こうやって祝ってもらえて嬉しいです♪」

海未「ことりは今年で19歳ですからね。ことりのために、スペシャルなプレゼントを用意しましたよ!」

ことり「え、なんだろう?楽しみっ!」

海未「それは…こちらです!」


私は、セブンのレジ袋から『ことりのムースケーキ(税込298円)』を取り出し、ことりに差し上げました。

(・8・)

ことりの顔は、ケーキに描かれた顔とそっくりになってしまいました。

300 :1:2017/05/03(水) 00:15:13.37 ID:w8xwA5Gr.net
ことり「ねえ海未ちゃん。本当に、このケーキが誕生日プレゼントなの?」

海未「ええ、そうですよ」

ことり「そ、そっか…。……プレゼント、ありがとう」


どうやらことりは大変喜んでくれているようです。

嬉しい限りです。

301 :1:2017/05/03(水) 00:16:26.66 ID:w8xwA5Gr.net
ことり「海未ちゃん〜。飲み物は何がいいかな?」

海未「何がありますか?」

ことり「えっとー…、果汁100%に野菜ジュースに午後の紅茶に、あとカルピコ!」

海未「コーラはないんですか?」

ことり「え?あるけど…。海未ちゃんは炭酸苦手だったんじゃ…?」

海未「ビールを飲むようになってから、少し炭酸に強くなったんです!」

ことり「それ、舌がバカになってるだけだよね…?」


私たちはケーキを食べ、コーラを飲みながら、ことりの誕生日を祝いました。

ことりのムースケーキは、想像以上の美味しさでした。

302 :1やわ銀:2017/05/03(水) 00:21:02.84 ID:w8xwA5Gr.net
海未「そういえば、私たちしか家にいませんね。お母様はまだ帰ってないんですか?」

ことり「うん、最近は選挙区廻りで忙しいみたいなんだ」

海未「そうなのですか。ということは、ことりはずっと家に一人で居るのですか?」

ことり「まあ、そういうことになるね」

海未「……家に一人きりだと、さぞ寂しいことでしょう」

ことり「うん、確かに寂しい時もあるけど…」

ことり「でもね、小さい頃から親がいないことはしょっちゅうだったし、慣れちゃいました!」


ことり「海未ちゃんも、親元を離れて暮らしてるわけだけど、ふとした瞬間に寂しくなったりしない?」

海未「いえ、一応ルームメイトもいますからね。寂しさに打ちひしがれることはありません」

ことり「そっか…」



ことりは少し間を置いて、私の目を見つめました。

その目は、私を捕らえて離しません。

303 :1やわ銀:2017/05/03(水) 00:45:49.47 ID:w8xwA5Gr.net
ことり「海未ちゃんは、お父さんと仲直りしたいとは思わない?」

海未「………」


私は目を背けようとしましたが、ことりの鋭い視線がそれを許してくれませんでした。


海未「……無理ですよ。今さら仲直りなんて…」

ことり「まだ遅くないと思うよ?もしかしたら、向こうも海未ちゃんが帰ってくるのを待ってるかもしれないよ?」

海未「そんなはずありません」

海未「私との縁を切ったのは、向こうなのですから」

ことり「で、でも、海未ちゃんは帰るべきだよ。それは、海未ちゃん自身の為にも…」

海未「ことりは心配しなくてもいいんですよ。私は、縒りを戻すつもりなどありませんから」

304 :1やわ銀:2017/05/03(水) 00:48:25.73 ID:HVd31nTh.net
ケーキを食べ終えた私は、すぐ帰ることにしました。

ことりはまごまごしつつも、私の後を追って来ています。



ことり「う、海未ちゃん!」

海未「………」

ことり「プレゼントありがとう!今日は楽しかったよ」

海未「……私も楽しかったです。プレゼント、喜んでもらえて何よりです」

ことり「うん…」

305 :やわ銀:2017/05/03(水) 00:56:34.87 ID:BUNS6lOq.net
ことり「………でもね、海未ちゃん!
コンビニで買ったケーキを誕生日プレゼントとして渡すのは、いかがなものかと思うよ!?」

海未「な、なんですか突然…?」

ことり「コンビニで買った安物………。まあ、そこは目を瞑ってあげるとして…」

ことり「プレゼントは、袋に入っていたものをそのまま手渡し?言語道断だよ!」

ことり「せめて、ラッピングや装飾を施す手間をかけてよ!」

306 :名無しで叶える物語:2017/05/03(水) 01:01:07.57 ID:TzCyycW+.net
海未ちゃん雑すぎ

307 :やわ銀:2017/05/03(水) 01:05:36.09 ID:FHAGfWpW.net
ことり「海未ちゃんはこれからも、女の子に何かをプレゼントする機会が"多々"あるよ」

ことり「だから、最低限のセンスは磨いておかないと!」

海未「……コンビニのケーキではダメなのですか?」

ことり「どうしてイイと思ったのか理解に苦しむよ」

308 :やわ銀:2017/05/03(水) 01:16:25.43 ID:LiVKtjrd.net
ことり「100万ドルの夜景なんてハードルの高いものは望まないからさ、
独りよがりにならず、相手が望む物をプレゼントしてあげて!」

海未「は、はぁ…」

ことり「海未ちゃんはプレゼント代を出しても生活に支障はない?」

海未「たぶん大丈夫ですよ。毎月奨学金が支給されていますので」

309 :やわ銀:2017/05/03(水) 01:17:07.26 ID:LiVKtjrd.net
ことり「それなら安心!ちゃんとプレゼントにお金をかけられるね!」

ことり「『プレゼントは相手を想う気持ちが大事』だけど、それはお金を積んでもらうことが大前提だもん!」

海未「ひどい話ですね…」

ことり「でもね、お金をかけた方が、相手の喜ぶ姿を想像しやすいでしょ?」



ことりのご高説を拝聴し、私たちは別れました。

310 :やわ銀:2017/05/03(水) 01:18:39.43 ID:LiVKtjrd.net
そういえば…。

ことりは今日、家に一人きりなんですよね。

慣れている、と言っていましたが、誕生日は誰かと一緒に過ごしたいと思うのが性です。

………しかし、出て来たばっかりに今さら戻れませんね。


ことりのことやことりの言葉を繰り返し、気づくと寮に着きました。

そしてそこで私は、ある大事なことを思い出しました。



海未「あ…。今月はビール代で出費が嵩んで、お金が無いのでした…」

311 :やわ銀:2017/05/03(水) 01:19:36.60 ID:i8OdGh6T.net
とりあえずここまで

312 :名無しで叶える物語:2017/05/03(水) 01:48:29.76 ID:9vqnOafO.net
乙です
続きはよ

313 :名無しで叶える物語:2017/05/03(水) 02:09:26.44 ID:I0QgDkbQ.net
名前がやわ銀なのか

314 :名無しで叶える物語:2017/05/03(水) 04:02:29.77 ID:375ULA5g.net


315 :名無しで叶える物語:2017/05/03(水) 07:56:00.99 ID:QMdMFAA0.net
おて

316 :名無しで叶える物語:2017/05/03(水) 20:01:02.28 ID:375ULA5g.net


317 :名無しで叶える物語:2017/05/04(木) 01:50:39.28 ID:RGoFiNQj.net


318 :名無しで叶える物語:2017/05/04(木) 14:43:25.16 ID:RGoFiNQj.net


319 :名無しで叶える物語:2017/05/04(木) 22:52:46.97 ID:SIX6k699.net


320 :名無しで叶える物語:2017/05/04(木) 23:03:38.92 ID:PsZLqGX0.net


321 :名無しで叶える物語:2017/05/04(木) 23:18:24.51 ID:EsvuXYDf.net


322 :名無しで叶える物語:2017/05/04(木) 23:20:43.35 ID:IjMn+FyZ.net


323 :名無しで叶える物語:2017/05/04(木) 23:41:43.00 ID:Dw/oFfUp.net
#16

講義を終え帰る道すがら、私は公園で親友に出会いました。

……前にも同じようなことがあった気がしますね。


絵里「あら、こんな所で会うなんて奇遇ね」

海未「そうですね。絵里はまた猫探しでもしているんですか?」

絵里「私のことを何だと思ってるのよ…」

海未「冗談ですよ。それで、何をしているのですか?」

絵里「ウサギ探しよ」

海未「ウサギ…?」

絵里「白ウサギが、この辺りにいそうだから探してるの」

海未「………」



絵里は、不思議の国にでも行くつもりのでしょうか?

……亜里沙の方が役としては合っていると思いますが。

324 :名無しで叶える物語:2017/05/04(木) 23:43:53.83 ID:Dw/oFfUp.net
海未「では、私はこの辺で」

絵里「あ、ちょっと待って!」


立ち去ろうとする私の腕を、絵里の手が掴みます。


絵里「来月、私の誕生日でしょ?」

海未「………ですね」

絵里「毎年、家で誕生日パーティをするんだけど…」

絵里「今年は希が来ないから、私と亜里沙の二人だけしか出席者がいないの」

海未「はあ…、そうですか」

絵里「……海未、よかったらあなたもパーティに参加しない?」

海未「別にいいですけど…」

絵里「歯切れが悪いわね。何か問題でもあるの?」

海未「実はですね、諸事情で貯金を食い潰してしまい、私は今お金がない状態なんです」

海未「なので絵里に渡すプレゼントは、本当に粗末な物しか用意できないと思うのですが…」

海未「それでもいいのなら、私も誕生会に出席したいと思います」

325 :名無しで叶える物語:2017/05/04(木) 23:44:45.70 ID:Dw/oFfUp.net
絵里「別にプレゼントがなくたって気にしないわ。私は多くを望まない」

絵里「ただ、私のことを祝ってくれる人が側にいる…。それだけでいいのよ」

海未「プレゼントはなくてもいいのなら、心置き無く参加できます」

絵里「ええ、ぜひ来てちょうだい。亜里沙も海未に会いたがってるわ」

海未「大学生になって以来、一度も連絡を取っていませんからね…。私も会うのが楽しみです」

絵里「今の言葉も含めて亜里沙に伝えておくわ。きっと喜ぶでしょうね!」


私は、上機嫌な絵里と別れました。

絵里は来月の誕生日で、20歳になります。

早く一緒にお酒を酌み交わしたいものですね。

326 :名無しで叶える物語:2017/05/04(木) 23:52:07.67 ID:fwEpyhj7.net
きた

327 :やわ銀:2017/05/04(木) 23:58:29.29 ID:BRq41N7P.net
音ノ水女子大学 食堂


ことり「海未ちゃん…。それ、本気で言ってるの…?」

海未「ええ。絵里は誕生日プレゼントなど要らぬ、と言っていましたので」

海未「むしろプレゼントを用意することは、かえって迷惑になるのではないでしょうか?」

ことり「………絵里ちゃんは、海未ちゃんに気を遣ってただけだよ」

328 :やわ銀:2017/05/04(木) 23:59:08.20 ID:BRq41N7P.net
ことり「本当は絵里ちゃんだって、好きな人からのプレゼントを貰いたいはずです!」

海未「私は絵里の想い人ではありませんよ?」

ことり「揚げ足を取らないでよ…。とにかく、プレゼントを渡すこと!」

海未「とは言っても、お金がありませんし」

ことり「お金がないなら、バイトをすればいいじゃない」

海未「バイト、ですか…?今までに経験がありませんし、一体どうすれば?」

ことり「それは海未ちゃんが考えることじゃないかな?」

ことり「海未ちゃんにはしっかりしてもらわないと困るから…、頑張って♪」

海未「放任です!」

329 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 00:00:40.38 ID:WU+juCbQ.net
というわけで、絵里に送る誕生日プレゼント代を稼ぐ為にバイトをすることになりました。

まあ、実を言うと、来月の食費を切り詰めればギリギリお金を捻出することは可能なのですが。

しかしそんなことをすると、一カ月もやし生活が始まってしまいます。それだけは避けなければなりませんからね。


バイトを始めようにもあまりに無知な私は、手始めにインターネットで情報収集することにしました。

330 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 00:01:27.86 ID:WU+juCbQ.net
【バイト 高時給 楽】[検索]



海未「運び屋…治験…事故現場の清掃…」



やはり、高時給の仕事は危ないものが多いようですね。

楽して稼げるバイトなど存在しないのでしょうか…?

331 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 00:02:21.89 ID:WU+juCbQ.net
海未「………ん?」


求人サイトを眺めていると、ある物件が目にとまりました。

高時給かつ楽なバイト。

それは、ここにありました。



海未「見つけました…!」



私は早速電話を掛けました。

これが運命だと思ったのです。

相手から指定された面接日は、明日の午前11時。

その時間帯には講義がありますが、一日くらいサボっても問題ありません。

332 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 00:03:50.12 ID:WU+juCbQ.net
翌日、私はその店に即採用されました。


【ローソン音ノ水駅前店】


客数が多く慢性的人手不足であったこと、2年ほど前に私がローソンのキャンペーンガールをしていたこと。

即採用された理由は、おそらくこの2つでしょう。

この店は時給がいいですからね、多少忙しくとも我慢しましょう。



研修の初めに、基本的な仕事内容、礼儀やマナーを教育させる為のビデオを観ました。

ビデオに映っていた店員さんは、とても楽しそうに、楽そうに仕事をしていました。


しかしそれは罠でした。楽に稼げるバイトなど存在しなかったのです。

333 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 00:04:21.56 ID:WU+juCbQ.net
レジ打ち品出し商品補充フライヤーおでん作り床トイレ掃除…

電気代やガス水道代の支払い受付、宅配便の受付、聴いたこともないようなアイドルグループのライブチケットの発見など………

あまりの業務の多さに、気が狂いそうです。


レジでもたもたしているとおじさんに怒鳴り散らされ、店に届いた商品も積み上げたまま。

商品が棚にない!と怒られせっせと並べていると、今度はファミチキがない!と怒られる始末。


バイトを始めて一週間。

軽くノイローゼを起こしかけていた私は、店長に相談しました。

334 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 00:05:19.74 ID:WU+juCbQ.net
相談の末、昼や夕方の忙しい時間帯ではなく、深夜にシフトを入れることになりました。

深夜は変な客が一層増えるそうですが、作業量は昼に比べ少ないそうです。

それに、深夜は昼夕より時給が上がるので、願ったり叶ったりです。


私は次の日から、深夜22:00〜2:00にシフト入りすることにしました。

335 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 00:18:56.53 ID:WU+juCbQ.net
『この理論によって、KとMが一対であるということになるわけで…』


海未「……zzz…」


『しかし、これはKとSが一対であることに矛盾する。この問題についてレポートを…』


海未「……zzz………っ、んぁっ!?」

「園田さん。寝息を立てて爆睡するとは、はしたないですわよ?」

海未「え…?あ、すみません…」



近頃、講義の間はいつも眠気に襲われます…。

というか寝てます。

深夜バイトを始めたことにより、生活習慣がずれ、狂っているようです。

336 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 00:34:53.53 ID:WU+juCbQ.net
すべてはバイトが原因なのですが…。

私は何故、バイトをしているのでしょう?

絵里の為?絵里にプレゼントを渡す為?

プレゼントをあげ、絵里が喜んだとして、何の意味があるのでしょうか?

それに価値はあるのでしょうか?そもそも、絵里は喜んでくれるのでしょうか?

………。

337 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 00:36:39.43 ID:WU+juCbQ.net
給料は、月末締めの15日払いだそうです。

つまり、今月末まで働いて辞めれば、キリよく給料を貰えるということです。

迷いはありません、辞めましょう。

「えー、海未ちゃん一カ月も保たなかったの〜!?」なんて穂乃果に言われそうですが、関係ありません。

そこそこ働きましたので、絵里へのプレゼント代も賄える…と思います。

最悪手として、もやし生活という方法もありますからね。



そして月末、私はバイトを辞めました。

店長は私が辞めることを止めませんでした。

338 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 01:54:45.41 ID:WU+juCbQ.net
ここまで
夕方に再開

339 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 02:04:23.44 ID:m4kgGbd+.net
まってる

340 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 02:26:48.63 ID:5dvBnNL3.net
待ってる

341 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 03:53:35.32 ID:LjYTdYrL.net
謎が多すぎて怖い
ユーヒーってなに

342 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 09:08:42.62 ID:+a92EDoV.net
UCCコーヒーの略
という訳でもなさそうだなツッコミ入れられてるし

343 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 10:20:41.97 ID:DYsc9awv.net
ローソンでファミチキなくて怒られるとかコンビニ客恐すぎ

344 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 11:11:18.56 ID:NFjyExdC.net
全てが謎だが気になって仕方ない

345 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 12:17:55.29 ID:xBQYo2ib.net
>>343
それ確かネタ元あったはず
うろ覚えだけど

346 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 12:18:30.45 ID:xBQYo2ib.net
元ネタや

347 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 12:43:17.27 ID:5dvBnNL3.net
ローソンの神田明神店くっそ狭いくせにそれなりに忙しいよな

348 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 19:34:00.67 ID:WU+juCbQ.net
そしてカレンダーをめくり、絵里の誕生日。


絵里「あら、いらっしゃい」

海未「絵里。二十歳の誕生日、おめでとうございます」

絵里「ありがと。ほら、中へどうぞ。もうパーティーの準備はできてるわ!」



私はカラーテープやバルーン、煌びやかなオブジェたちに迎えられ、家へと上がり込みました。

349 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 19:34:57.13 ID:WU+juCbQ.net
亜里沙「海未さん!お久しぶりだね!」

海未「ええ。亜里沙は少し見ない間にまた大きくなりましたか?」

亜里沙「えへへ、ちょっとね♪」

絵里「ちょっとどころじゃないでしょ。まさか亜里沙が私を越すとは思わなかったわ…」

亜里沙「それはお姉ちゃんが縮んだだけで………、あ!海未さんはここに座って!」

海未「え…?私が誕生日席に座るんですか?」

絵里「遠慮せずに座って。海未は大切なゲストなんだから!」


これ、絵里の誕生パーティなんですよね…?

相変わらずハラショーな姉妹です。

350 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 19:35:33.72 ID:WU+juCbQ.net
絵里「………では、私が挨拶を」


絵里は立ち上がり、手に持ったグラスを高々と上げました。


絵里「絢瀬絵里!20歳!!お誕生日おめでとー!!!」

亜里沙「おめでとー!」

海未「お、おめでとうございますー!」



自分で言うのですか!

………というツッコミが入る隙もなく、鳴らされたクラッカーは勢いよく弾けました。

351 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 19:36:11.41 ID:WU+juCbQ.net
テーブルに食事が運び込まれました。

中央には、圧倒的存在感を放つ七面鳥が陣取っています。

いよいよパーティの始まりです。



絵里「私の誕生日を祝って………」

三人「かんぱーい!!!」


絵里「希も、乾杯♪」

海未「あ、それは希の写真ですか?」

絵里「ええ。また何通か手紙が届いてね、そこに同封されていたわ」

絵里「ご丁寧なことに、プレゼントも一緒に贈られてきたわ」

海未「希も、海外から絵里の誕生日を祝ってくれているんですね」

絵里「そうね…」


絵里「………私が望むのはプレゼントじゃない。ただ、あなたが帰って来てくれるだけでいいのに…」

海未「絵里…」

352 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 19:37:13.64 ID:WU+juCbQ.net
絵里「……ごめん、いきなり湿っぽい話しちゃったわね…。さ、どんどん料理を食べていいわよ!」

亜里沙「この七面鳥も食べていい?」

絵里「ダメよ。先に海未が食べてからでないと」

亜里沙「あ、そっか!海未さん、チキン食べていいよ!」

海未「あの…。今日は絵里の誕生パーティなんですよね…?私ばかり優遇されると、かえって気を遣ってしまいます」

絵里「……じゃあ、三人で一斉に食べましょう?」



絵里は、バカみたいにでかい七面鳥をナイフで切り分け、各受け皿に置いていきました。

そして、三人で一緒に七面鳥を食べました。

ここ最近もやしのみの生活だった私には、涙が溢れるほどの美味しさでした。

みんなと同じ感覚を共有するのも、この美味しさに繋がっているのでしょうね。

353 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 19:37:58.37 ID:WU+juCbQ.net
皆で料理を突き、そして、テーブルいっぱいに広がっていた料理をすべて平らげました。



海未「ごちそうさまでした」

絵里「亜里沙。ケーキの用意しておくから、その間にお風呂に入っちゃって」

亜里沙「はーい!」


亜里沙は脱衣所へと直進して行きました。


絵里「………さて、と。いよいよアレを解禁する時が来たようね…」

海未「アレとは何ですか?」

絵里「私は今日、二十歳になったのよ…?ということはつまり…」



絵里「今日からお酒が、飲めるのよー!」

海未「あ、そういえばお酒って二十歳からでしたね」

354 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 19:39:05.17 ID:WU+juCbQ.net
皆で料理を突き、そして、テーブルいっぱいに広がっていた料理をすべて平らげました。



海未「ごちそうさまでした」

絵里「亜里沙。ケーキの用意しておくから、その間にお風呂に入っちゃって」

亜里沙「はーい!」


亜里沙は脱衣所へと直進して行きました。


絵里「………さて、と。いよいよアレを解禁する時が来たようね…」

海未「アレとは何ですか?」

絵里「私は今日、二十歳になったのよ…?ということはつまり…」



絵里「今日からお酒が、飲めるのよー!」

海未「あ、そういえばお酒って二十歳からでしたね」

355 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 19:40:31.58 ID:WU+juCbQ.net
絵里「どん!クリアアサヒよ!」

絵里「どのビールがいいのかよくわからなかったから、とりあえずCMでよく見るクリアアサヒを買って来たわ」

海未「ああ、アサヒビールですね」

絵里「それじゃあ、今日から大人になったということで…」


絵里「ビール、飲むわよー!」

海未「あ、待ってください」

絵里「な、何よ?人がせっかく良い気になってたのに…」

海未「いえ、一応忠告をしておこうと思いまして」

海未「お風呂に入る前に酒を飲むと、浴槽で眠りに落ち、そのまま溺れる危険性がありますので、気をつけてくださいね」

絵里「………そうね、確かにそうだわ。でもどうして海未はそんなに詳しいのよ?」

海未「飲酒に関しては、絵里よりも先輩ですからね!」

絵里「?」

356 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 21:23:19.29 ID:WU+juCbQ.net
食器を片付け、ケーキの準備をしていると、湯上りの亜里沙がやって来ました。

ケーキをテーブルの中央に置きました。プレートには、『祝 エリーチカ20才!』とチョコペンで描かれています。

白と赤のコントラストが鮮やかなショートケーキのホールに、立てられたロウソク2本。

火を灯し、部屋の電気を消し、いつもの定例文を読み上げます。


絵里「Happy birthday to you〜」

亜里沙「Happy birthday to you〜」

海未「ハッピバースデー、ディア絵里〜」

三人「Happy birthday to you〜」



絵里が息を吹きかけると、ロウソクの火は弱々しく消えていきました。

こうして、絢瀬絵里は20歳になったのです。

357 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 21:24:02.49 ID:WU+juCbQ.net
亜里沙「ん〜♪ヤミー!」

海未「このケーキ美味しいですね。程よい甘さで舌触りも抜群です」

絵里「………」

亜里沙「お姉ちゃん、どうしたの?ケーキ食べないの?」

絵里「さっきの料理、食べ過ぎたみたいで…。苦しくなってきた…」

海未「別腹を使えばいいじゃないですか?」

絵里「それは…」

亜里沙「食べないなら亜里沙が貰うね〜」

海未「あ、亜里沙…?今日はよく食べますね」

絵里「今日だけじゃなく、毎日よ」

亜里沙「ヤミー!オーサム!」

海未「なるほど、大きくなるわけですね…」

358 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 21:24:33.88 ID:WU+juCbQ.net
食後、夢の世界に行ってしまった亜里沙をベッドまで運び、私たちは再びリビングへ。



絵里「さて…亜里沙も寝たことだし、ようやくビールが飲めるわ。お腹も空けておいたし、たくさん飲むわよ!」

海未「お風呂には入らなくていいんですか?」

絵里「ええ。今日は酔いに浸ることにするわ」


絵里は冷蔵庫からクリアアサヒを取り出し、用意したグラスに注ぎます。

359 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 21:25:05.99 ID:WU+juCbQ.net
海未「あ、私にもグラスを用意してもらっていいですか?」

絵里「どうして?」

海未「私も、ビールを飲みたいので」

絵里「……薄々勘付いてはいたけど、海未…。あなた習慣的に飲酒してるでしょ?」

海未「ええ、まあ」

絵里「まったく…。お酒が飲めたからって偉くなれるわけじゃないのよ?」

海未「と言いつつ、注いでくれるんですね。ありがとうございます」



私たちは静かに、グラスを合わせました。

360 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 21:25:49.87 ID:WU+juCbQ.net
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


絵里「うぃぃぃ!今日れわらしは二十歳ぃだって言うのに!ろぉしてうぃは、わらしより先にお酒飲んれるのよお!」

海未「ええ!?グラス一杯でもう出来上がったんですか!」

絵里「うぃぃ!そこにぃ直りなあい!チューしてあげるわ!」

海未「ぎゃー!?来ないでください!ぶちますよ!?」

絵里「チューーー!!」


平手を一発。


絵里「いたい…」

海未「ようやく平静を取り戻してくれましたね…」


もう金輪際、絵里とはお酒を飲まないことにしましょう…。

361 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 21:26:52.69 ID:WU+juCbQ.net
私も酔いが回りやすい体質なのですが、私以上に酔っ払っている絵里を見ていると、酔うに酔えませんでした。

現在絵里は多量の水を飲み、落ち着きを取り戻しています。



絵里「ねえ…、海未?……私ね、今すごく悩んでるの」

海未「………どうしたんですか?」

絵里「今度、水コンがあるでしょ?友達からの推薦で、私がそれに出ることになったのよ…」

海未「水コン?」

絵里「ミスコンのことよ。音ノ水のミスコンだから、水コン」

海未「な、なるほど…」

絵里「水コンは毎年、徽音祭の名物企画となってるわ」

海未「その水コンに、絵里が出場するのですか。すごいです、さすが絵里!」

絵里「……でもね、私は出場を取りやめようと思ってるの」

海未「え…?」

362 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 21:27:36.01 ID:WU+juCbQ.net
絵里「私はね、水コンの推薦を受けた時こう思ったのよ」

絵里「『今年の水コンで優勝して、私を置いていった希を見返してやるわ!』
『ちやほやされている私に嫉妬させて、飛んで帰って来させるんだから!』………って。だから出場を決めたの」

絵里「でもわかってる、希は帰ってこない。私が水コンで優勝したとしても、目的が果たされることはない」

絵里「私は、水コンに出る理由を失くしちゃったのよ」

海未「だから、出場を取りやめようと思ったのですか?」

絵里「そうよ。特に目的もなく出るなんて、他の参加者に失礼だもの」

363 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 21:29:35.42 ID:WU+juCbQ.net
海未「………でも、絵里は悩んでいるんですよね?本当は出たいと思っているのではありませんか?」

絵里「ええ、出たいに決まってるじゃない。あのステージに、私も立ってみたい」

絵里「だけど、私には目的が…」

海未「出たい!という気持ちだけでいいじゃないですか」

絵里「ダメよ。こんな中途半端な気持ちで出場したって、優勝なんてできないし…」

絵里「それに、そんな浮ついた気持ちで出場する自分を、私自身許せないわ」



絵里は、自分の決意を正当化できるような理由が欲しいのですね。

それなら………

364 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 21:30:58.61 ID:WU+juCbQ.net
海未「それなら、私のために出場してください」

絵里「え…?」

海未「私は、絵里がそのステージに立つ姿を見てみたいんです。だから、出てください」

絵里「海未…」



海未「………それとですね」


私は鞄の中から箱を取り出し、絵里に渡しました。


絵里「これは…?」

海未「誕生日プレゼントです。どうか受け取ってください」

絵里「……あ、もしかして海未は、このプレゼントを買う為にバイトをしてたの?」

海未「えっ!何故バイトのことを知ってるんですか!?」

絵里「ことりが教えてくれたわ」

海未「またですか…。ことりはメッセンジャーですね」

365 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 21:31:54.27 ID:r/DofKkY.net
なぜこのssには通奏低音のように哀愁が流れているんだ…

366 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 21:32:35.84 ID:WU+juCbQ.net
私が骨身を削って働き、手に入れた給料。

今月の食費、及び生活費、酒代を極限まで削って捻出したお金。

これらを合わせた、出来得る限り最高のプレゼントです。



絵里「ネックレス……綺麗………」

海未「気に入ってもらえたでしょうか…?」

絵里「……ありがとう、海未。嬉しい…、すっごく嬉しい…!」


絵里は涙を溜めながらも、笑顔を向けています。

心からの悦びが伝わってきて、こちらまで嬉しくなってきます。


海未「絵里…。これは私の、個人的な願いなのですが………」


海未「そのネックレスに、スポットライトの光を浴びせてください」

絵里「ええ、もちろんよ…!私は必ず、水コンで優勝してみせるわ!」



交わした約束は、鎖のように堅く結ばれています。

367 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 21:33:19.79 ID:WU+juCbQ.net
次回、徽音祭編

368 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 21:58:53.78 ID:UElUEDYT.net
もんじゃだから言わせてもらうけど水コンに絵里ちゃん出たら"断然ダントツトップ"で優勝だからな

https://misscolle.com/ocha2016

369 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 22:30:25.35 ID:nQKwjg0k.net
お姉ちゃんが縮んだだけ…このSS所々謎多過ぎや

370 :名無しで叶える物語:2017/05/05(金) 23:10:36.35 ID:I40yjVg0.net
いろんなものが微妙にずれてて怖いな

371 :名無しで叶える物語:2017/05/06(土) 00:42:02.05 ID:+7dvWEDN.net
ここまでずっと不穏

372 :名無しで叶える物語:2017/05/06(土) 00:50:34.43 ID:XD7uDfJc.net
このSSは完結した後に再度読み直してみたいわ

373 :名無しで叶える物語:2017/05/06(土) 04:44:56.71 ID:iSvVUweO.net
>>369
絵里も海未もつっこみもしなかったけど亜里沙が冗談で言ってる感じもないんだよな・・・

374 :名無しで叶える物語:2017/05/06(土) 08:22:54.23 ID:9h/9jJ2c.net
だよね…このズレてる雰囲気めっちゃ好きだわ

375 :名無しで叶える物語:2017/05/06(土) 15:18:35.07 ID:9s0rAxAQ.net
>>368
おい

376 :名無しで叶える物語:2017/05/06(土) 15:49:46.08 ID:+7dvWEDN.net


377 :名無しで叶える物語:2017/05/06(土) 18:27:41.82 ID:DPwRxmIr.net
>>368


378 :名無しで叶える物語:2017/05/06(土) 18:31:25.92 ID:FvkTsToQ.net
まあ絵里ちゃんが優勝できない理由がない

379 :名無しで叶える物語:2017/05/06(土) 21:02:47.80 ID:2k51FYFT.net
もんじゃだけどって言っときながら携帯回線だった

380 :名無しで叶える物語:2017/05/06(土) 21:03:20.50 ID:i05zfGiL.net
>>368
ぶっさw

381 :名無しで叶える物語:2017/05/07(日) 00:40:47.30 ID:Y8zL3AIu.net


382 :名無しで叶える物語:2017/05/07(日) 12:34:37.36 ID:nrwcsJXv.net


383 :名無しで叶える物語:2017/05/07(日) 14:05:03.83 ID:QVR5xo2Z.net


384 :名無しで叶える物語:2017/05/07(日) 16:39:43.30 ID:QpwhnKo0.net


385 :名無しで叶える物語:2017/05/07(日) 17:27:55.32 ID:7YTNAJUK.net


386 :名無しで叶える物語:2017/05/07(日) 18:13:29.15 ID:Y8zL3AIu.net


387 :名無しで叶える物語:2017/05/07(日) 19:05:14.50 ID:TopkbpfJ.net


388 :名無しで叶える物語:2017/05/07(日) 19:05:31.44 ID:Y4UboMCa.net


389 :名無しで叶える物語:2017/05/07(日) 20:42:18.59 ID:TopkbpfJ.net


390 :名無しで叶える物語:2017/05/07(日) 23:38:28.84 ID:yTn7SbKL.net


391 :名無しで叶える物語:2017/05/07(日) 23:39:56.13 ID:7MHe45Z/.net


392 :名無しで叶える物語:2017/05/08(月) 00:04:24.70 ID:LH0HaGOn.net
この海未ちゃんは薬キメてそうで好き

393 :名無しで叶える物語:2017/05/08(月) 00:07:08.45 ID:3Q/3SW6M.net

   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ、  _ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
               `'ー '´
                ○
                 O
              ..ィ⌒¨¨:.:.......
            ...:.:´.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.、
         /.:.:.:.:.:.:.:{:.:|:.:.:|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\
         .:.:.:.:.:.:.:.:./ |:.:|:.:.:|、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.
        /:.:.:./:./|:/  :.:|:.:.:ハ\:.:.:.:.:.:.:.:.:':, :.:.:
         /:.:.:.:.:./、j:|   v:.:.、:ハ、\:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:i
       :.:.:.:i|:.:.| {ソー‐ ? \ー―\ :.:.:.|:.:.:|
       |i|:.:i|:.:.| γ_笊`  リ '´_笊? }:.:.:.|:.:.:l
       リ .:∨{ 代r少      V少 .ノ |:.:.:.|:.:.,  と思う海未であった
        :.:.:.{\ xx     ,    xx/:.:./.:.:′
        \i「`\      ,   厶ィ }:.|!|
          }:ーヘ    `−´′  , 、/:ハ:|
          |:.ハ:个:.....       イ:.:.i:.:.:.| }
          |:.l |:j|:.:.:.:.:.}__ー<{:.:.j|:.:.:i:.:.:.|  :,
.           __}/_j_i|__/__/{/{ ̄\il:_:_i:_:.:{_ \
       / | |    }ニニ「|ニニニ{/   / ./ ヽ \
.       / .| |   /ニニハニニニヽ    ′   } i
      /  | |   \ニ./∨\ニ./   | |   ∨ }
      .′    ′    V ヽ/ .V     | |/   ∨
.     /、   { /              ゝ/     :,
    /  \ ∨                 ′    __′
   {⌒!ー .,_j                i  ,.  ´__}
    y     { : : : : .          . : : :.. | ´ / |/
    /    / }: : : : : : : .     . : : : : : :.|.ィ    |

394 :名無しで叶える物語:2017/05/08(月) 09:37:50.96 ID:tbVaLwcV.net


395 :名無しで叶える物語:2017/05/08(月) 10:59:33.28 ID:CsuwaVmG.net
リトバスが浮かぶ

396 :名無しで叶える物語:2017/05/08(月) 19:17:53.67 ID:mGwUQ1Q3.net
はよう

397 :名無しで叶える物語:2017/05/08(月) 20:33:39.33 ID:Iotn6tT+.net
#17-a

第67回徽音祭、一日目。

各サークルがそれぞれ模擬店を構えたり、ステージでパフォーマンスをしたりと、既に大変な賑わいを見せています。


ことり「ほぇ〜。朝からすごい人の数だね」

海未「伝統と格式ある学園祭らしいですからね。楽しみです」

ことり「今日のイベントスケジュールは…」

海未「有名声優のトークショー、芸人による漫才、化石学者が説く『本能寺の変の真相』…」

ことり「うーん、ステージイベントは特に面白そうなものはないね」

海未「……14時から行われる、『スペゲスさんのスペシャルイベント』という項目が気になりますが…」

ことり「14時か〜。まだ時間は早いし、模擬店をぶらぶら周ろっか?」

海未「はい」


一日目は私とことりの二人で、初めての徽音祭を楽しみます。

398 :名無しで叶える物語:2017/05/08(月) 20:40:07.53 ID:Iotn6tT+.net
ことり「たこ焼き、イカ焼き、たい焼き、今川焼き、お好み焼き、
焼きそば、焼きうどん、焼きマシュマロに焼きおにぎり…」

海未「どれも美味しそうで迷いますね」

ことり「海未ちゃんはどれを食べたい?」

海未「そうですね…」



海未「ことり、たこ焼きを食べましょう」

ことり「うん!」

399 :名無しで叶える物語:2017/05/08(月) 20:41:04.85 ID:Iotn6tT+.net
たこ焼き店の前に来ました。

たこ焼きはたこ焼き器の上で、物の見事に綺麗な球体へと仕上がっていきます。

このたこ焼き店はテニスサークルが営業しているそうです。

どうりでボール捌きが上手なのですね。


ことり「海未ちゃん、あそこに座って食べよう?」

海未「はい」


ことりが目敏く見つけたパイプ椅子に座り、二人でたこ焼きを頬張ります。



海未「はふはふ…」

ことり「はふはふ…」

400 :名無しで叶える物語:2017/05/08(月) 20:42:01.91 ID:Iotn6tT+.net
私たちは、軒を連ねる模擬店を順に周って行きました。

ミニピザ肉まんフランクフルト骨なしチキンからあげクン
チョコバナナクレープカステラチュロスワッフルわたあめ御手洗団子わらび餅…

他にも、輪投げやヨーヨー釣り、紐くじに型抜き、占いの館など、色んな店を訪れました。

的屋では、屋台荒らしの称号をいただきました。



ことり「ふぅ…。ずっと食べてばっかりだから、喉乾いてきちゃった」

海未「あそこに飲み物を売っている店がありますから、そこで何か買いま…」

ことり「そうだね。んー、ことりは何飲もうかな〜?」

海未「………」

401 :名無しで叶える物語:2017/05/08(月) 20:43:19.38 ID:Iotn6tT+.net
ことり「海未ちゃん…?」

海未「あ…、ことり。向こうに自販機があるので飲み物はそちらで買いましょう」

ことり「え、どうして?こっちのお店で買えばいい…」


海未「いいから!来てください!」

ことり「は、ひゃい…!」



私はことりの腕を掴み、無理やり引っ張って、その場を離れました。

飲料水の販売をしているのは、他でもない、登山サークルの方達でした。

自分の中で区切りをつけたはずでしたが、あの人達と顔を合わせることはどうにも気が進みません。

402 :名無しで叶える物語:2017/05/08(月) 20:50:14.00 ID:Iotn6tT+.net
ことりを引き連れたまま、学生棟の裏まで来ました。


ことり「海未ちゃん…、痛いよ」

海未「あっ…、す、すみません。つい、強引に腕を引っ張ってしまいました」

ことり「ううん、ことりは平気…」



ことりは少し怯えた表情でこちらを見上げてきます。

どうやら、ことりを怖がらせてしまったようです。


海未「すみませんでした!ことりのことを考えず無理やり引き連れてしまい…」

ことり「本当だよ…。危うくトラウマになるところだったんだよ?」

海未「本当にすみません!私にできることなら、何でもしますから…だから…」

ことり「………何でも?」


ことりはそう言った途端、笑顔になりました。


ことり「じゃあ…、たこ焼き、もう一個奢ってください♪」

403 :名無しで叶える物語:2017/05/08(月) 20:50:58.60 ID:Iotn6tT+.net
私たちは、野外に設けられた特設ステージの客席でたこ焼きを食べることにしました。

ステージの上では、白衣を着た化石学者が本能寺の変の真相について熱弁しています。

学者曰く、「信長の遺骨は大阪にて発見され、現在も大阪の寺院に納められている。」
「信長は本能寺の変では死なずに逃げ延び、その後、逃げた先の大阪で息を引き取った。」…とかなんとか。

この学者の理論は、限られた証拠だけでトンデモ推理を披露する探偵のようです。

404 :名無しで叶える物語:2017/05/08(月) 20:51:58.22 ID:Iotn6tT+.net
ことり「もうすぐ14時になるね。結局スペゲスさんって誰なんだろう?」

海未「もし著名人ならば名前を使った方が客寄せできますし、恐らく名前を出しても客寄せが望めないような人なのでしょう」

ことり「なるほど〜。例えばどんな人?」

海未「どうせ、売れないアイドルとかその辺でしょうね」


この適当な推理は、見事に的中しました。



にこ「はーい♡ハリウッドも認めそうなスーパーアイドル!矢澤ニコニーどぅえぇす♡☆♪」

海未「あ、にこ」

405 :名無しで叶える物語:2017/05/08(月) 20:52:40.35 ID:guA8FB6a.net
ぬわ

406 :名無しで叶える物語:2017/05/08(月) 21:05:33.46 ID:/y4dCgXG.net
んで

407 :名無しで叶える物語:2017/05/08(月) 21:18:08.28 ID:tjDh+8E4.net
よ!

408 :名無しで叶える物語:2017/05/08(月) 21:18:44.75 ID:6uRrBpPc.net
被らなかったセーフ

409 :名無しで叶える物語:2017/05/08(月) 22:34:40.84 ID:wSDFyBYg.net
登山サークル潰れたのに店出してんのか

410 :名無しで叶える物語:2017/05/08(月) 22:52:29.74 ID:/eMWaXgz.net


411 :名無しで叶える物語:2017/05/08(月) 23:10:01.40 ID:BLC5qE9U.net
今回aってことはbがにこパートか
刻んでくね

412 :名無しで叶える物語:2017/05/08(月) 23:32:57.65 ID:x/ASPAB8.net
ハルヒの驚愕を思い出してちと怖い…エタるなよ…

413 :名無しで叶える物語:2017/05/08(月) 23:53:27.15 ID:Iotn6tT+.net
ステージ終了後、私たちはにこの元を直撃しました。


海未「にこ、お疲れ様です」

ことり「にこちゃん久しぶり♪そしてお疲れ様です!」

にこ「ええ、久しぶり。ステージの上からでも、あんたたちはすぐに見つけられたわ」


にこは綾鷹をぐびぐび飲んでいます。


にこ「敢えて連絡はしなかったけど、ちゃんと私がイベントをやることをリサーチしてくれてたのね。ありがと」

海未「勿論ですよ!スペゲスさんは、にこしかあり得ないと思っていました!」

にこ「ふふ、もっと褒めてもいいのよ?」

ことり「褒めてはないと思うなぁ…」

414 :名無しで叶える物語:2017/05/08(月) 23:56:42.17 ID:Iotn6tT+.net
海未「にこは仕事で徽音祭に来てるんですよね?」

にこ「まあね。でもステージは終わったし、今からは暇よ」

海未「そうですか。では、オススメの模擬店を紹介するのでぜひ立ち寄ってみてください」


海未「テニスサークルのたこ焼き屋なのですが、あそこのたこ焼きは絶品なんです」

海未「徽音祭の模擬店でたこ焼き屋は二つあるのですが、料理部のたこ焼き屋は汁だくで提供されるので要注意ですよ」

ことり「汁だくも美味しいと思うけど〜」

にこ「………というか、サークル名で言われて私がわかるわけないでしょ?」

ことり「じゃあ、案内しますね!」

海未「行きましょう!」


にこをたこ焼き屋に連れて行き、たこ焼きを買い、近くのパイプ椅子に腰を下ろしました。



にこ「はふはふ…」

415 :名無しで叶える物語:2017/05/08(月) 23:59:19.04 ID:Iotn6tT+.net
三人仲良くたこ焼き三姉妹をしている内に、特設ステージで何やら始まっているようです。

ステージの巨体スクリーンに、水コン出場者たちのPVが映し出されています。



海未「水コン出場者のプロフィールが、一人ずつ流れていますね。明日の宣伝でしょうか?」

にこ「たぶんそうでしょ。………ちゃんと絵里もいるわね」

ことり「あれ…?改めて見ると、今回の出場者のレベル、結構高いよね?」

海未「本当に綺麗な人はミスコンに出たがらないはずなのですが…。特に一番の人なんて、佐々木希みたいですよ!?」

海未「絵里は、この強豪揃いの水コンで優勝できるのでしょうか…?」

416 :名無しで叶える物語:2017/05/09(火) 00:18:41.78 ID:9eZinb1e.net
なんか森見登美彦ぽい。つまりすごく面白い。長編で大変だろうけど頑張ってください

417 :名無しで叶える物語:2017/05/09(火) 00:23:28.49 ID:25VqqyQU.net
にこ「絵里は負けないわよ」

海未「にこ…?」

にこ「絵里は、海未と約束したんでしょ?必ず優勝するって」

にこ「だったら大丈夫よ!絵里は約束を破ったりしないわ!絶対に勝つ!」

ことり「そうだよね。絵里ちゃんの美貌に勝る人なんていないもん!絵里ちゃんなら勝てる!」

海未「………はい。私たちは、絵里を信じましょう!」

海未「期待に応えるエリーチカなら、必ず成し遂げてくれるはずです!」

にこ「その意気よ!じゃあ明日は横断幕作って、絵里を応援するわよ〜!」

海未「え、にこは明日も来るんですか?」

にこ「………悪い?」



そして日は跨ぎ、翌日。

この音ノ水の舞台で、熱き女達の戦いが始まります。

418 :名無しで叶える物語:2017/05/09(火) 00:27:24.34 ID:25VqqyQU.net
ENTRY 05
絢瀬絵里(Ayase Eli)
社会学部国際学科2回生

BIRTHDAY
誕生日 10月21日
BIRTHPLACE
出身地 ロシア
HEIGHT
身長  159.9cm
BLOOD GROUP
血液型 B型

・趣味
キルト作り、YouTube
・特技
バレエ、歌唱
・所属サークル
国際交流部、ダンス部、オペラサークル
OC委員会
・アルバイト
ファミレス、飲食店
・よく行くエリア・スポット
音ノ木坂、神田明神
・よく使うアプリ
スクフェス、ツムツム
・コーヒー派?紅茶派?
紅茶派
・自分を色で例えると?
水色
・休日の過ごし方
エオルゼア、もしくはゲーム
・平均睡眠時間
6時間
・よく読む雑誌
ゼクシィ
・旅行で行きたい場所
インド、エジプト、ヨーロッパ、アメリカ、南極
・無人島に1つだけ持っていくなら
どこでもドア
・ストレス解消法
深夜に自転車を漕ぎながら大声で叫ぶ
・マイブーム
妹とスターウォーズごっこ
・最近買った一番高い物
スクフェス4周年記念セット〜μ's〜
・最近一番言っている言葉
ハラショー

419 :名無しで叶える物語:2017/05/09(火) 00:32:31.00 ID:25VqqyQU.net
・尊敬する人
ガガーリン
・好きな男性有名人
高倉健
・好きな女性有名人
IKKO
・好きなテレビ番組
世界不思議発見
・好きな映画
七人の侍、男はつらいよ
・好きな本
罪と罰、戦争と平和
・好きな歌手
ビートルズ
・好きな食べ物
2日目のカレーライス
・好きな場所
自分の部屋
・掛けられて嬉しい言葉
髪切った?
・「ドキッ」とする仕草
急に机をバンッ
・理想の告白シチュエーション
裸足で描いた砂の記号「I love you」
・初恋はいつ?
ひ・み・つ♡
・友達が異性に変わる瞬間
性転換手術…?
・自己流モテるテクニック
かしこくあること
・理想の結婚相手
ヤクルトファン
・学生生活を一言で表すと?
てんやわんや
・今までで一番笑ったこと
部活仲間たちとやった寄せ鍋
・今までで一番泣いたこと
自転車に棒を挟んで転倒
・今まで一番嬉しかったこと
μ'sの一員であれたこと
・今まで一番疲れたこと
ジュースを賭けた競走
・これまでの人生で一番美味しかったもの
実家で食べるボルシチ
・100万円あったらどうする?
運用資金にする
・1つだけ願いが叶うとしたら?
3つの願いを叶えてくれるマジックボックスを出す
・将来の夢
世界制服
・座右の銘
困ったら走れ
・ミスコンテストに参加したきっかけ
友達の推薦
・頑張ろうと思っていること
自分磨き
・アピールポイント
アイドルをやってるときに培ったファンサービス
・ミスコンテストへの意気込みを一言
絶対優勝!

420 :名無しで叶える物語:2017/05/09(火) 01:07:47.57 ID:kLKCC9vx.net
背ぇ縮んどるやないか!

421 :名無しで叶える物語:2017/05/09(火) 01:42:56.97 ID:fMX72V3T.net
寄せ鍋・・・
あれを笑った事って言えるの凄いわ・・・

422 :名無しで叶える物語:2017/05/09(火) 01:49:14.41 ID:KlaDFOwX.net
>・友達が異性に変わる瞬間
>性転換手術…?
>・今までで一番泣いたこと
>自転車に棒を挟んで転倒
ここ特に好き

423 :名無しで叶える物語:2017/05/09(火) 02:05:40.42 ID:vVaP0Fi6.net
小ネタの詰め合わせ好き

424 :名無しで叶える物語:2017/05/09(火) 02:20:38.74 ID:RPw4ZnBM.net
エオルゼアって中の人やん

425 :名無しで叶える物語:2017/05/09(火) 09:08:27.64 ID:TBZtpwT/.net
http://i.imgur.com/hDljCys.jpg

426 :名無しで叶える物語:2017/05/09(火) 09:27:43.39 ID:ZGHJc/NV.net
性転換手術で草はえる

427 :名無しで叶える物語:2017/05/09(火) 11:52:25.19 ID:W8Pb0t1P.net
>>420
亜里沙の発言は正しかったのか・・・

428 :名無しで叶える物語:2017/05/09(火) 13:22:44.20 ID:vBCIlhF0.net
なんで画像あるんだよ…

429 :名無しで叶える物語:2017/05/09(火) 15:14:37.64 ID:nZ+pVxgX.net
>>428
この画像のネタだからでしょ
これも元ネタあるけど

430 :名無しで叶える物語:2017/05/09(火) 20:43:34.84 ID:wYMNsOHV.net
>>425
これって前輪を軸に回転するから危険だよな

431 :名無しで叶える物語:2017/05/09(火) 22:40:42.00 ID:vVaP0Fi6.net


432 :名無しで叶える物語:2017/05/10(水) 02:56:31.43 ID:M/+1Lc7+.net


433 :名無しで叶える物語:2017/05/10(水) 04:37:09.49 ID:CTgyHn1c.net
スレタイとは裏腹に良く出来てるし流れが不穏で驚いたw

434 :名無しで叶える物語:2017/05/10(水) 13:43:59.45 ID:cJBnzyWx.net
保守

435 :名無しで叶える物語:2017/05/10(水) 15:21:07.60 ID:f506t4WP.net


436 :名無しで叶える物語:2017/05/10(水) 22:32:19.65 ID:PZ2lNzsM.net
ほし

437 :名無しで叶える物語:2017/05/11(木) 00:39:03.06 ID:fjeACqRE.net
更新まだですか?

438 :名無しで叶える物語:2017/05/11(木) 02:36:02.02 ID:4K/qfV4Q.net
>>437
まぁ焦るなよ
週一更新を宣言した頃よりはペース上がってる
まだ少なくとも今の倍程度のボリュームを残してんだから気長に行かないとな

439 :名無しで叶える物語:2017/05/11(木) 03:04:55.62 ID:7iaLYOpz.net
登山サークル編も色々と闇が深いな>>123
なんで気がついたら部屋に居たんだろうねえ

440 :名無しで叶える物語:2017/05/11(木) 07:50:28.31 ID:7eAqDzoV.net
楽しみにゃ〜ん

441 :名無しで叶える物語:2017/05/11(木) 10:23:29.46 ID:6ynkOBQO.net


442 :名無しで叶える物語:2017/05/11(木) 11:18:47.42 ID:wy7rqWtJ.net


443 :名無しで叶える物語:2017/05/11(木) 14:08:53.07 ID:lTdOBf9z.net
机をバンわろた

444 :名無しで叶える物語:2017/05/11(木) 22:01:36.41 ID:6ynkOBQO.net


445 :名無しで叶える物語:2017/05/12(金) 14:26:43.09 ID:zKiW/22D.net


446 :名無しで叶える物語:2017/05/12(金) 15:53:40.23 ID:V2pCUPAw.net


447 :名無しで叶える物語:2017/05/12(金) 22:28:07.62 ID:T5J74Zhm.net


448 :名無しで叶える物語:2017/05/13(土) 00:03:30.28 ID:39TMHPQF.net


449 :名無しで叶える物語:2017/05/13(土) 00:29:18.34 ID:o+PERUXR.net
更新遅くて申し訳ない…

夕方までに更新します

450 :名無しで叶える物語:2017/05/13(土) 00:37:12.60 ID:hJ342A/y.net
>>449
楽しみに待ってます!

451 :名無しで叶える物語:2017/05/13(土) 01:52:00.87 ID:dKAqao6w.net
>>449
待ってる

452 :名無しで叶える物語:2017/05/13(土) 12:56:16.63 ID:39TMHPQF.net


453 :名無しで叶える物語:2017/05/13(土) 18:50:34.90 ID:o+PERUXR.net
#17-b

徽音祭、二日目。

水コン当日。



絵里「ああ あああああ あああああああああ…」

海未「絵里!?どうしたんですか、顔色ブルースカイですよ!」

絵里「海未………私、やっぱり無理…」

海未「なに弱音吐いてるんですか!約束しましたよね、絶対に優勝すると!」

絵里「ええ…?じゃあそれは無かったことにしましょう?クーリングオフよ」

海未「バカなこと言わないでください!とにかく、早く支度を…」


「出場者の皆さん。スタンバイお願いしまーす」


絵里「ああ…」

海未「ほら、そろそろ腹を括ってください!」



海未「……始まりですよ」

454 :名無しで叶える物語:2017/05/13(土) 18:51:04.08 ID:o+PERUXR.net
『すぁあああ!始まりました、水・コンテスト!』

『ライバル共を蹴散らし、水の女王の杯を手に入れるのは誰なのかぁ!』


にこ『司会進行はぁ…天上天下唯我独尊!弱肉強食の乱世を駆け抜けるスーパーサラブレッド!矢澤にこにーよぉ!』

「Boo! boooo!!」

にこ『……え〜?なんで部外者が司会をしてるのかってぇ〜?』

にこ『にこはよく知らないんだけどぉ…。元々の司会役の人がぁ、お腹を下してトイレに立て籠もってるらしいにこぉ〜♪』

にこ『だからにこが急遽、ピンチヒッターとして…』

「ぼそぼそ…」

にこ『ちょっと!「お前が下剤盛ったんだろ」とか言ったの誰よ!出てきなさい!!』

ことり『まあまあ、にこちゃん』

にこ『あ、ごめん。ことりの紹介がまだだったわね』

ことり『えー、おほん…。今回衣装係をさせてもらいました、人文学部一回生の南ことりです!』

ことり『コメンテーターとして、みんなのかわいさが120%伝わるよう精一杯がんばります♪』

「Wooooooo!!!」

にこ『どうしてことりの挨拶の方がウケてるのよ…』

455 :名無しで叶える物語:2017/05/13(土) 18:51:32.12 ID:o+PERUXR.net
にこ『では早速、出場者の5人に登場してもらいましょう!』

にこ『エントリーナンバー 1番!今大会の優勝候補で、元スクールアイドルの経歴の持ち主!』

にこ『UTX学院でA-RISEと同格と謳われた実力は果たして本物か!?佐藤ぉ………』



絵里「うぅ…、海未ぃ〜…」

海未「大丈夫ですよ。ただそれっぽく歩いてそれっぽいポージングを決めるだけの作業です。絵里ならできます!」

絵里「うん…」


にこ『………えー、最後はエントリーナンバー5!極寒の地シベリアから舞い降りた金髪娘!』

にこ『伝説のスクールアイドルμ'sを支えた大黒柱!プレッシャーに負けず力を発揮できるか!?絢瀬ぇ………絵里ぃぃぃ!!!』


絵里「ガガ ガガガガガ ガガガ ガガガガガガガガガ…」

海未「右手と右足が一緒に出ていますよ!?」

海未「絵里、わかりやすく緊張していますね…」

456 :名無しで叶える物語:2017/05/13(土) 18:51:57.51 ID:o+PERUXR.net
にこ『………えー、以上の5名で水の女王の座を競っていただくわけですが…』

にこ『南さん、5人に何かコメントはありますか?』

ことり『はい!絵里ちゃん、頑張れ〜!』

にこ『南さぁん。贔屓目はダメにこぉ〜?』

ことり『ひぃっ!?ご、ごめんなさい〜!』


にこ『……えー、おほん。これから出場者の皆さんには、
「踊り」「演奏」「歌唱」「スペシャル」の全4項目を披露してもらいます』

にこ『「スペシャル」は毎年違うお題が出されるらしいけど………。お題は直前まで、観客にも出場者にも内緒!完全アドリブでやってもらいます!』

にこ『そして全項目後、客席にいるオーディエンスに各総合得点を投票してもらい、最も票を集めた人が優勝!』

にこ『いよいよ乙女達の熱き闘いが、始まるよーーー!』

「Woooooooooooooo!!!」

457 :名無しで叶える物語:2017/05/13(土) 18:52:55.98 ID:o+PERUXR.net
Woooooooooooo…



海未「すごい熱気…。裏手までひしひしと伝わってきますね」

絵里「ガクガクガクガク…」

海未「絵里!しっかりしてくださ…



「絢瀬絵里!」

絵里「あ、あなたは…」

「私は佐藤よ。元UTX学院アイドル部部長の、佐藤よ!」

海未「あ…」


佐々木希のそっくりさんですね。

458 :名無しで叶える物語:2017/05/13(土) 18:53:40.30 ID:o+PERUXR.net
絵里「……それで、私に何か用かしら?」

「お前も私と同じ、スクールアイドル上がりだからな。軽く挨拶でもしておいてやろうと思って」

絵里「へー、あなたもスクールアイドルだったのね。これはシンパシーを感じざるを得ないわ」

「なっ!?てめ、絢瀬ぇ!私のことを知らないフリして挑発するとは、舐めてるのか!」

絵里「あら、もしかしてあなた有名な人だったの?」

絵里「だったら、あなたが所属していたグループ名を教えてくれるかしら?あなたのことを思い出せるかもしれないわ」


「………B-ROSEよ」

絵里「ビローズ?聴いたことないわね。海未はどう?」

海未「私も知りません」

「くっ!バカにしやがって…!」

459 :名無しで叶える物語:2017/05/13(土) 18:54:18.95 ID:o+PERUXR.net
「お前たちμ'sがうちのA-RISEを倒したおかげで、UTXの株は大暴落!」

「そしてその責任は、アイドル部部長だった私がすべて被る羽目となった!」

「お前らさえ、いなければ…」

「許さない…!私はお前らを、絶対に許さない!」


海未「な、なんですか…。逆恨みもいいところですよ!だいたい…」

絵里「海未、黙ってて。私が話す」

海未「え………はい…」


絵里「ねえ、佐藤さん。私と勝負をしましょう?」

「勝負だと?」

絵里「この水コンで、どちらが優勝できるか競いましょう」

「はっ!わざわざ勝負なんてしなくとも、私が絢瀬をぶっ潰すだけだ!ビビって逃げ出すなよ?」

絵里「望むところよ。私が優勝して、あなたに力の差を思い知らせてあげるわ」

「けっ!」

460 :名無しで叶える物語:2017/05/13(土) 18:55:04.91 ID:o+PERUXR.net
海未「………行きましたね」

絵里「ふぅ…。佐藤さんと話していたら、なんだか緊張も解けちゃったわ」

海未「そ、そうですか…」

絵里「どうして海未がしょんぼりした表情浮かべてるのよ?」

海未「いえ…。結局私の力では、絵里の緊張をほぐすことができなかったので…」

海未「私は約束だとか言って、ただ絵里にプレッシャーを掛けていただけなんですね…」

絵里「そんなことないわよ。海未が側にいてくれるだけで心強かったわ、ありがと」

海未「絵里…」

絵里「ここからはもう大丈夫よ。海未は客席から、私の勇姿を見てなさい!」

海未「……はい!」


絵里の胸元で、ネックレスがきらりと輝きました。

461 :名無しで叶える物語:2017/05/13(土) 18:55:51.99 ID:o+PERUXR.net
にこ『………えー、色々ありまして、全員のダンスが終了したわけですが…』

にこ『1番と5番は、流石元スクールアイドルだけあってキレッキレに仕上がってたわね。他の出場者がモブにしか見えないわ』

ことり『衣装も運動性を優先したから、みんな思いのままに踊ってくれてました!』

にこ『あ、コメントそれだけ?じゃあ次の項目に行くにこ〜』

にこ『踊りの次は楽器演奏よー!演奏する楽器は何でもあり!
響けリズム、奏でろハーモニー、届けマイメロディー!』

にこ『まずはエントリーナンバー 1番!演奏は………』

462 :名無しで叶える物語:2017/05/13(土) 18:56:27.09 ID:o+PERUXR.net
楽器演奏は、佐藤さんはギター、絵里は電子オルガンを弾きました。

どちらもとても上手でした。

歌唱は、二人ともスクールアイドル時代の楽曲を熱唱していました。

特に絵里の"Angelic Angel"は圧巻のパフォーマンスでした。

ですがここではカットします。


そして、大熱狂の水コンは、ついに最終戦へ…!

463 :名無しで叶える物語:2017/05/13(土) 21:19:02.60 ID:o+PERUXR.net
にこ『ついに大詰め!泣いても笑ってもこれがラスト!最終審査ぁ!』

ことり『にこちゃんにこちゃん。最終審査は「スペシャル」って書いてあるけど、結局何をするの?』

にこ『慌てなくてもちゃんと発表するわよ!』

にこ『さあ、最後の審査は………これだ!』


『スクフェス!』


にこ『スクフェス対決よー!』

ことり『どうしてここにきてスクフェスなの…?』

にこ『この学祭のスポンサーがKlabだとか、色々と大人の事情があるのよ』

ことり『あー………なるほどなるほど』

にこ『じゃあ、出場者の皆さんはステージに集まってにこ〜。すぐにゲーム始めるよ〜』

464 :名無しで叶える物語:2017/05/13(土) 21:20:20.92 ID:o+PERUXR.net
「おい、絢瀬」

絵里「あら、佐藤さん」

「ここまでは互角の勝負だったが、次はそういかない!」

「何と言っても、私が得意な『ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル』の勝負だからな!奥歯ガタガタ言わせてやる!」

絵里「ふふ、どうかしら?私もスクフェスは得意だもの、そう簡単に勝ちを譲るつもりはないわよ」

「ふん、精々足掻くんだな!」

絵里「お手柔らかにね」



海未「え、絵里!」

絵里「海未…?どうしたのよ、もう私ステージに行かなきゃいけないんだけど?」

海未「ことりに頼まれたんです。絵里の衣装が崩れているから直すようにと」

絵里「衣装?どこも崩れてなんかないわよ」

海未「そ、そんなはずは…。だって、衣装担当のことりが言った言葉ですから…」

絵里「……海未。ことりに上手く遣われたみたいね」

海未「え…?こ、ことりぃ!!」

465 :名無しで叶える物語:2017/05/13(土) 21:21:27.03 ID:o+PERUXR.net
海未「すみません、絵里…。大事な最終審査の前に、集中をかき乱すようや真似をしてしまい…」

海未「私はもう戻りますね。頑張ってください!」



絵里「………海未」

海未「え…?はい、なんですか?」

絵里「私に、キスしなさい」

海未「………はい?」

絵里「だから、キスしなさい」

海未「何言ってるんですか、絵里?冗談は休み休みにしてください」

絵里「……私が、冗談を言っているように見える?」



絵里の目は真剣で、しっかりと私を捉えています。

私は思わず目を逸らしました。



絵里「目を逸らさないで、私を見て」

海未「………」

466 :名無しで叶える物語:2017/05/13(土) 21:22:03.36 ID:o+PERUXR.net
海未「絵里。手を貸してください」



私は絵里の手を取りました。

その手は少し汗ばみ、湿っています。



絵里「海未…?」

海未「そのままですよ」



私はその場に跪き、絵里の手の甲に、そっと口づけをしました。


海未「尊敬、敬愛…。これが私なりの愛情表現です」

絵里「……キスに意味を添えるなんて、海未らしいわね」

海未「もう、揶揄わないでくださいよ…」



絵里「………私、絶対に約束を果たすから。……だから、ちゃんと最後まで見ててね…?」

海未「はい!思う存分、羽ばたいてきてください」

絵里「……任しておきなさい!」


絵里はそのまま、ステージへと駆け上がりました。

467 :名無しで叶える物語:2017/05/13(土) 21:22:38.47 ID:o+PERUXR.net
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

にこ「ふぅー、お役御免!司会役も結構大変なのね〜」

ことり「でもすごく様になってたと思うよ?にこちゃんってMCに向いてるのかも!」

にこ「そうねー。また次の機会があるなら、今度は実況者とかもいいかもしれないわね」



海未「にこ、ことり。今日はお疲れ様でした」

ことり「お疲れ様〜。私はみんなの可愛さに見惚れてて、碌に衣装のコメントをしてなかった気もするけど…。まあいっか!」

にこ「絵里はどうしたのよ?」

海未「ああ、絵里ならあそこに」

468 :名無しで叶える物語:2017/05/13(土) 21:23:09.28 ID:o+PERUXR.net
絵里「………今日は一日、楽しかったわ」

「なんだよ…。私に嫌味か?」

絵里「共に戦った仲間を讃えているのよ」

「仲間、だと…?くそっ、ふざけやがって…!」

「いいか、絢瀬!来年、またこの場で勝負しろ!今度は絶対に勝ってやるからな!」

絵里「また来年、ね。その時までにはもっと音ゲーの技術を上げてくることね」

「ふん、ほざけ」



二人の小指は、強く結ばれています。

あの二人、何だかんだで仲良くなっていますね。

469 :名無しで叶える物語:2017/05/13(土) 21:24:40.87 ID:o+PERUXR.net
にこ「さ、絵里の水コン優勝記念に打ち上げするわよー!」

ことり「いぇーい!」

海未「場所はどこにしますか?」

絵里「ファミレスにしましょう!私は今、ものすごくチーズインハンバーグが食べたいわ!」

海未「またですか?」

絵里「私が主役の打ち上げなんだから、私の要望を通してもらうわよ!」

にこ「しょうがないわね。近くのファミレスに行くわよ〜!」


ファミレスでどんちゃん騒ぎを起こした結果、店員に怒られました。

かくして、私たちの今日は幕を閉じました。

470 :名無しで叶える物語:2017/05/13(土) 21:26:44.21 ID:o+PERUXR.net
絵里はこの日、私との間に結んだ約束を、見事果たしてくれました。

そして絵里は、水コンの舞台で共に戦った佐藤さんと、また新たな約束を誓いました。

来年の水コンで、再戦することを。





一年後、この約束が果たされることはありませんでした。

……いえ、今はまだ、未来の話はやめておきましょう。



季節は移り変わり、冬がやって来ました。

471 :名無しで叶える物語:2017/05/13(土) 21:39:35.48 ID:ph+gcXyv.net
1年後には世界滅亡してるのかな?(適当)

472 :名無しで叶える物語:2017/05/13(土) 22:29:42.30 ID:hJ342A/y.net
巧いなぁ

473 :名無しで叶える物語:2017/05/13(土) 22:43:46.98 ID:39TMHPQF.net
おいおい...

474 :名無しで叶える物語:2017/05/13(土) 23:01:04.83 ID:YScdV54q.net
どうなんだよこれから

475 :名無しで叶える物語:2017/05/14(日) 01:08:54.62 ID:nnZdckNO.net
>>471
このSSなら有り得るのが怖い

476 :名無しで叶える物語:2017/05/14(日) 04:33:54.14 ID:9HZ4lL/G.net
あれだろ
水コンから音コンに名前が変わったとかだろ

477 :名無しで叶える物語:2017/05/14(日) 04:39:05.84 ID:NvDg+nqE.net
>>476
それであってほしいな

478 :名無しで叶える物語:2017/05/14(日) 09:38:54.25 ID:7qlVyHiu.net
普通にSSって展開予想とか御法度(勿論これも)だけど、これは普通に予想の斜め下とか斜め上とか行きそう

479 :名無しで叶える物語:2017/05/14(日) 19:57:46.88 ID:xUjGmvfA.net


480 :名無しで叶える物語:2017/05/14(日) 23:30:11.31 ID:cNsoYIQz.net
#18

クリスマスまで一週間を切ったこの日。

何処と無く浮き足立つキャンパス内で、私は独り、パソコンに食らいついています。

今まで提出をサボってきたしわ寄せが来たのです。

私は自らに鞭を打ち、レポート作成が進むよう奮い立たせます。


海未「冬休み…。冬休みの為………」


うつらうつらしながらキーボードを叩いていると、携帯から着信音が聴こえてきました。

481 :名無しで叶える物語:2017/05/14(日) 23:30:51.86 ID:cNsoYIQz.net
誰ですか、人の集中を邪魔するのは!

私はイライラする気持ちを電話口にぶつけようと思い、電話を取りました。


海未「はいもしもし?誰ですか!」

ことり『あ、海未ちゃん〜』

海未「ぷわぁ!?」



この声を聴くと、脳が蕩け、全身に電流が走ります。


海未「こ、ことり…」

ことり『海未ちゃん〜!来週の24日、暇?』

海未「24日…?ええ、冬休みも始まっていますし、恐らく暇してるでしょう」

ことり『ふーん、そっか〜…』

海未「……含みのある反応ですね。ことりは何を企んでいるのですか?」

ことり『何も企んでないよ♪じゃあね〜』

海未「あ、ちょっと!ことr…」


電話は一方的に切られました。

結局ことりは何がしたかったのでしょうか…?

482 :名無しで叶える物語:2017/05/14(日) 23:32:22.20 ID:cNsoYIQz.net
私が再び文字を打ち込む作業に戻ると、またも携帯から着信音が聴こえてきました。

またことりですか!全く、何度も何度も…!

私は物のついでにストレス発散をしようと思い、電話を取りました。


海未「ことり!何回電話を掛けてくれば気が済…」

花陽『あ、海未ちゃん〜』

海未「ぷわぷわぁ!!?」



この周波数の声は、脳を震わせ、全てをダメにしてしまいます。


海未「は、花陽…!?どうしたんですか、私に何か用でも?」

花陽『……うん。用事というか、何と言うか…』



花陽は少しごもりながら、呟きました。


花陽『海未ちゃんに………話が、あるの』

483 :名無しで叶える物語:2017/05/14(日) 23:34:11.27 ID:cNsoYIQz.net
花陽に呼び出されやって来たのは、音ノ木坂学院。

約一年ぶりに、その門をくぐりました。

校門付近には人の姿はあまり見られませんが、運動部の掛け声が遠くから聞こえてきます。



海未「花陽、お待たせしました」

花陽「あ、海未ちゃん。急に呼び出しちゃってごめんね?」

海未「いえ。それより話というのは?」

花陽「あ…。うん、話しておきたいことがあって、わざわざ学校まで来てもらったんだけど…」

海未「はい」

花陽「……立ち話もなんだし、部室で話をしよっか?ストーブもあるし…」



先程から、花陽と目が合いません。

何か後ろめたいことでもあるのでしょうか。

484 :名無しで叶える物語:2017/05/14(日) 23:35:44.82 ID:cNsoYIQz.net
花陽に連れられ、アイドル研究部部室に到着しました。

私たちのいた頃から何も変わっていませんでしたが、そこは、もう私たちの居場所ではないことがよくわかりました。

部室の机には、音ノ木坂指定の鞄が乱雑に置かれています。

その内の二つは、雪穂の物と亜里沙の物のようです。


花陽「今ね、放課後だから。後輩たちは屋上で練習中」

海未「そうですか。こんなに寒いのに外で練習とは、大変ですね」

花陽「うん、だよね。新しい理事長が体育館での練習許可をくれたんだけど、みんな断っちゃったから…」

海未「何故断ったのですか?」

花陽「みんな、一生懸命μ'sの伝統を守ろうとしてるの。だから屋上での練習に拘ってるみたい」

花陽「特に後輩たちはすごいよ。μ'sの功績を、後世に渡って伝承していこうとしてるんだ」

花陽「『μ'sは伝説なんだー』…ってね」


花陽は頬杖をつきながら、溜め息をつきました。

485 :名無しで叶える物語:2017/05/14(日) 23:37:05.70 ID:cNsoYIQz.net
花陽「………で、私が海未ちゃんにしたい話なんだけどね…?」

海未「ええ。もしかして相談話ですか?」

花陽「相談というか………報告、かな?」


先程とは打って変わり、花陽は私の表情をやたらと気にしています。


花陽「あ、あのね。私、音ノ水にオープンキャンパスで行って、そこで海未ちゃんと会ったよね?」

海未「ええ。凛と真姫も一緒でしたね」

花陽「その時に私、音ノ水に進学します………って言ったと思うんだ。覚えてるよね、海未ちゃん…?」

海未「はい、覚えてますよ」

花陽「……でもね、あれ、訂正!」


花陽は胸の前で両手を十字にクロスさせ、×マークを作っています。

攻守において完璧な構えに、私は動揺を隠せません。



花陽「私………大学には行かず、JAに入ります…!」

486 :名無しで叶える物語:2017/05/14(日) 23:40:05.72 ID:cNsoYIQz.net
海未「JAって、確か農業組合のことですよね?」

花陽「うん。高校を卒業したらJAに入って、お米作りをしたいの」

海未「花陽のお米に対する想いは知っていますが…。大学を出てからでもいいのでは?」

花陽「それじゃダメなのぉ!一秒でも早く現地入りしたいのぉ!!」

花陽「卒業したら、新潟で一からお米作りを教えてもらう予定で…。もう現地の農家さんとは話をつけてあるの」

花陽「もちろん最初は上手くいかないだろうけど…。でも、いつか、何十年掛かってでも、美味しいお米を作ってみせます!」

海未「そ、そうですか…。花陽がそこまで言うのなら止めませんが」

海未「ちなみに、凛と真姫には話しましたか?」

花陽「ううん、まだ…。二人には、受験が終わってから話そうと思ってるの」

海未「今話しても、動揺を招くことは避けられませんからね。その方がいいと思います」

487 :名無しで叶える物語:2017/05/14(日) 23:44:44.26 ID:cNsoYIQz.net
花陽「話はこれでお終いです。あー、海未ちゃんにだけでも話せてよかった〜」

海未「あ、花陽。一つ質問していいですか?」

花陽「なあに?」

海未「凛と真姫には、受験が終わってから話すつもり…と言っていましたよね?」

花陽「うん、二人の受験を邪魔したくないし」

海未「ですが、花陽が入試を受けないのなら、受験前にあの二人に気づかれるのではありませんか?」

海未「受験会場にいないのであれば、気づかないわけが…」

花陽「大丈夫!一応私も、凛ちゃんたちと一緒に入試は受けるよ」

海未「え…?でも、花陽は大学に進学しないのでは…」

花陽「形だけの受験って言うのかな。凛ちゃん達には悟られないように、受験が終わるまでは何もかも偽って、女子大生花陽を演じて…」

花陽「そして、全部終わってから打ち明ける。そうすれば、凛ちゃんと真姫ちゃんの受験に迷惑を掛けなくて済むから」

海未「………」



私は、三人で音ノ水に受験した、あの時のことを思い出していました。

488 :名無しで叶える物語:2017/05/14(日) 23:48:57.05 ID:+HPtGDSv.net
埋め立てですかあ?

489 :名無しで叶える物語:2017/05/14(日) 23:50:16.64 ID:cNsoYIQz.net
花陽「海未ちゃん…?大丈夫?」

海未「……話は終わりなんですよね?だったら私は帰らせてもらいます」

花陽「う、うん…」

海未「それでは」


花陽「………あ、海未ちゃん!もうすぐ後輩達が練習終わって戻って来るけど、会っていかない?」

海未「いえ、私が今のアイドル部メンバーに会ったところで何の意味ありませんから」

花陽「きっと喜ぶと思うけどなあ…」

海未「………」


私は、先程まとめたレポートを机の上に置きました。


海未「暇を持て余して作った詩です。もしよければ、次の曲にでも当ててください」

花陽「ふむふむ、ジェンダー問題を批評する熱い詩…」

花陽「すごくいい詩です!このまま次の曲に使わせてもらうよ!」

海未「ええ、ご自由に」



私は、部室を後にしました。

490 :名無しで叶える物語:2017/05/14(日) 23:56:41.23 ID:cNsoYIQz.net
帰る前に、ふとアルパカ小屋を覗いてみることにしました。

しかし、中には何もありませんでした。

私は大学に戻り、レポート作成に没頭しました。



単位取得の安全域に達し、なんとか平穏な冬休みを手に入れることができました。

そして日付は12月24日。

クリスマス・イヴです。

491 :名無しで叶える物語:2017/05/14(日) 23:58:52.45 ID:cNsoYIQz.net
ここまで

492 :名無しで叶える物語:2017/05/15(月) 00:06:03.86 ID:OVlGy8n+.net
アルパカ…

493 :名無しで叶える物語:2017/05/15(月) 00:07:00.00 ID:sxGcoVX/.net
iPS細胞でネズミのメス♀から精子を作り出すことに成功! ちんさん不要の世界へ [無断転載禁止]©2ch.net [838847604]
http://hitomi.2ch.net/test/read.cgi/poverty/1494762685/

494 :名無しで叶える物語:2017/05/15(月) 00:50:57.25 ID:mrST6Bcg.net
さらっと消えるアルパカ

495 :名無しで叶える物語:2017/05/15(月) 00:55:34.27 ID:whacItaB.net
唐突な花陽ちんによるサンダークロススプリットアタック

496 :名無しで叶える物語:2017/05/15(月) 02:20:34.32 ID:8hI8sxTO.net
かよちん友達想いの良い子だなあ

497 :名無しで叶える物語:2017/05/15(月) 03:07:54.31 ID:VR7z6NQM.net
アルパカ…

498 :名無しで叶える物語:2017/05/15(月) 03:14:17.38 ID:ypzCcYTO.net
アルパカどしたん...

499 :名無しで叶える物語:2017/05/15(月) 09:30:55.51 ID:dhs+D5ie.net
アルパカはいないじゃなくてありませんでしたか

500 :名無しで叶える物語:2017/05/15(月) 09:44:38.76 ID:ypzCcYTO.net


501 :名無しで叶える物語:2017/05/15(月) 12:01:18.53 ID:IISW2ul5.net
普通にスクイズの「中になにもありませんよ」ネタじゃない?
なんでもいいけど一々過剰反応してたら展開予想してるようなものだろ

502 :名無しで叶える物語:2017/05/15(月) 17:49:21.96 ID:ypzCcYTO.net


503 :名無しで叶える物語:2017/05/16(火) 04:03:30.48 ID:li9dEV0Y.net
おもしろい

504 :名無しで叶える物語:2017/05/16(火) 13:30:33.40 ID:QiWJlwdQ.net


505 :名無しで叶える物語:2017/05/16(火) 22:20:35.38 ID:pCK8ukLQ.net


506 :名無しで叶える物語:2017/05/17(水) 03:53:01.59 ID:25ybo7gQ.net


507 :名無しで叶える物語:2017/05/17(水) 14:25:37.12 ID:Dzrwrb1Y.net
ほしゅ

508 :名無しで叶える物語:2017/05/17(水) 21:22:20.88 ID:hw1u4jBg.net
楽しみにしてたんだけどな〜

509 :名無しで叶える物語:2017/05/17(水) 23:54:26.63 ID:wtYYUv6w.net
明日更新します

510 :名無しで叶える物語:2017/05/18(木) 01:20:41.23 ID:Q99ALPOa.net
エタるなよ

511 :名無しで叶える物語:2017/05/18(木) 03:00:28.88 ID:j6Zqr2C5.net
多分後でまとめてコミケなりに出すんだろうからその心配はしてない
なんせ#50まで行く予定なくらいだしな

512 :名無しで叶える物語:2017/05/18(木) 03:46:12.23 ID:DHistH39.net
ファイトだよ!

513 :名無しで叶える物語:2017/05/18(木) 05:06:42.94 ID:kRpZAUtx.net
待ってるわよ

514 :名無しで叶える物語:2017/05/18(木) 13:32:15.61 ID:WphROIGr.net
21日までには続き書いてくれよ

515 :名無しで叶える物語:2017/05/18(木) 18:39:44.08 ID:m5jgetxB.net
あしたっていまさッ!

516 :名無しで叶える物語:2017/05/18(木) 21:38:25.82 ID:DHistH39.net


517 :名無しで叶える物語:2017/05/18(木) 23:42:43.32 ID:XlDN9X3i.net
#19

学生寮


k子「海未ちゃん〜」

海未「………なんですか」

k子「海未ちゃんにお客さんだよ〜」

海未「……『私は布団が恋しいので、後にしてください。』と、言ってもらえませんか?」

k子「やだよ。自分で行きな」

海未「まったく…。こんなにも寒いのに、どうして毛布から出なくてはいけないのですか…」

k子「いいから早よ行け〜」


k子さんに毛布を剥がされ、やむなく来客の相手をする羽目になりました。

518 :名無しで叶える物語:2017/05/18(木) 23:43:32.08 ID:XlDN9X3i.net
ことり「あ、海未ちゃん♪」

海未「ことり…?どうして私の部屋の前にいるんですか…」

ことり「海未ちゃん!私とクリスマスデートしよ?」

海未「いやです」

ことり「えー、なんで〜?部屋でゴロゴロしてないで一緒に出掛けようよ〜」

海未「ゴロゴロなんてしてません!ダラダラしてるだけです」

ことり「それって同じことだと思うけど…」

海未「私は断固として外に出たりなどしませんから、諦めて帰ってください!……それでは」

ことり「あっ、待って!!」



私がドアを閉じようとすると、ことりは足を挟んで阻止してきました。

ドアを引く力を強めると、ことりはどんどん目を潤わせていき、とても見ていられませんでした。

ああ、もう………。ことりはズルいですよ。

519 :名無しで叶える物語:2017/05/18(木) 23:45:26.25 ID:XlDN9X3i.net
私は暖かそうな服を適当に着込み、外へと出ました。

街はイルミネーションが飾られ、すっかりクリスマス模様です。



海未「クリスマスイブとだけあって、どこもかしこもカップルだらけですね」

ことり「私たちも、周りからはカップルに見えてるのかな?」

海未「ふふ、あなたの頭はお花畑ですか」


人の波を掻き分けしばらく歩いていると、人のばらけたエリアに出ました。

そこは、下品なネオンライトに彩られた場所………ホテル街でした。


海未「こ、ことり…?何故こんな所に連れて来たのですか…!」

ことり「ふぇ!?違うよ!私はただ、海未ちゃんの後を付いて来ただけで…」

海未「私も、ことりの行き先に付いて行ってたのですが…?」

ことり「………じゃあ私たちは、偶々ここに出て来ちゃったってこと?」

海未「そういうこと、になりますね…」


故意ではなく、偶然来てしまったということは確認できましたが…。

互いに気まずくなり、何を話していいかわからずその場に立ち尽くし、押し黙ってしまいました。

520 :名無しで叶える物語:2017/05/18(木) 23:46:48.02 ID:XlDN9X3i.net
先に沈黙を破ったのは、ことりでした。


ことり「ねえ、海未ちゃん…」

海未「な、何ですか?」

ことり「まだ日も暮れてないのに、寒いね…」

海未「ええ…。冬ですからね」

ことり「……だからさ…。この中で、一緒に暖まろう…?」

海未「………は?」



時が止まりました。



海未「……あなたの頭はピンク色ですか」

ことり「ダメ…?」

海未「ダメに決まってます!ことりと情事に溺れるなんて、私がおばさんになっても絶対にありえません!」

ことり「そこまで言い切られると傷付いちゃうなぁ…」

海未「すみません…。ですが、私は穂乃果と約束したんです」

海未「大学を卒業したら、セックスをすると…!」

521 :名無しで叶える物語:2017/05/18(木) 23:48:26.96 ID:l7weqktm.net
展開動くか…

522 :名無しで叶える物語:2017/05/18(木) 23:48:52.46 ID:XlDN9X3i.net
海未「約束した以上、他の人と行為をするわけにはいきません。だから、ことりとは………。本当にすみません」

ことり「ううん、謝らないで。海未ちゃんは悪くないよ」

ことり「……そっか。穂乃果ちゃんが相手なら、断られても仕方ないよね…」


ことりは悲しげな表情を浮かべています。

しかし次の瞬間には、パッと笑顔に変わっていました。

私のよく知る、ことりスマイルです。



ことり「海未ちゃん、そろそろお腹空く頃じゃない?どこか行こうよ」

海未「そうですね…。では、ケンタッキーにでも行きましょうか」



私たちはケンタッキーで、肉を貪りました。

523 :名無しで叶える物語:2017/05/18(木) 23:49:46.22 ID:XlDN9X3i.net
海未「さて、夕食も食べたことですし帰りますか」

ことり「え、帰るの早いよ!?もっと一緒にいよう!ね…?」

海未「……わかりましたよ。で、これからどこに向かうつもりなんですか?」

ことり「そうだね…」

ことり「波に、流されてみようか」



私たちは人の波に混じり、その流れに身を委ねることにしました。

お互いに離れないよう、しっかりと手を握っています。

流され、流され、流され………。

着いた場所は、駅前にセットされた大きなクリスマスツリーの下でした。


ことり「すごい…綺麗な光…」

海未「このツリー、何メートル位あるのでしょうか?かなり高いですね」

ことり「海未ちゃん!この光を背景に写真撮ろう!」

海未「写真ですか?ツリーの姿を全て写真に収めるなら、ずっと離れた所から撮影しないといけませんね」

ことり「ツリーはいいから!ほら、もっと私に近づいて。見切れちゃう」

海未「は、はい」


人々の騒めきの中、シャッターは静かに切られました。

524 :名無しで叶える物語:2017/05/18(木) 23:53:55.73 ID:XlDN9X3i.net
駅前のツリー付近には、更に人が増え、溢れかえっています。

何かレアなポケモンでも出たのでしょうか。

私とことりは人混みから抜け出し、少し離れた公園に避難しました。

そして、その閑寂な公園にあるベンチに腰を下ろしました。



ことり「………今まで、イルミネーションの光で全然気がつかなかったけど…」

ことり「星って、こんなに明るいんだ…」

海未「ええ。お星様も、イブの夜を照らそうと頑張っているんですね」

ことり「空を見上げれば、ロマンチックな景色が見られるんだね…。このことに気づいてるのって、もしかして私たちだけかな?」

海未「そうかもしれませんね」

ことり「じゃあ、この空を私たちが独り占め!…だね♪」

海未「二人ですから、二人占めです!」


こんな何でもないような会話が妙に楽しくて…

私たちはすっかり時間を忘れました。

525 :名無しで叶える物語:2017/05/18(木) 23:55:23.73 ID:XlDN9X3i.net
ふと視線を感じたのでことりの方を向くと、ことりは私の顔を凝視していました。


ことり「………海未ちゃんのファーストキスは、いつ?」

海未「まだですよ。唇へのキスは経験ありません」

ことり「へー。じゃあ、穂乃果ちゃんともまだなの?」

海未「当然です。私たちは清廉潔白な交際をしていますからね!」

ことり「……そっか」


ことり「海未ちゃん」

海未「はい」

ことり「私と、キスしよ…?」

海未「………はい?」

ことり「ここで私とキスをしたら、海未ちゃんのファーストキスは穂乃果ちゃんではなく、私になるんだよね?」

ことり「だったら…」



ことりは目を閉じ、その肉厚な唇で私を誘惑してきます。

526 :名無しで叶える物語:2017/05/18(木) 23:58:22.87 ID:DHistH39.net
流れ変わったな

527 :名無しで叶える物語:2017/05/18(木) 23:58:59.59 ID:XlDN9X3i.net
海未「ことり…。目を開けないでくださいね」

ことり「……うん」


私はことりの肩を抱き寄せ、その赤らむ頬に口づけを施しました。



ことり「え…」

海未「親愛、厚意…。これが私の想いです」

ことり「……どうして、唇にしてくれなかったの…」

海未「私はそんなに軽くありません。心の底から好きになった人にしか、唇は捧げませんよ」

ことり「………そっか。海未ちゃんには、大切な人がいるんだもんね…」


ことりは哀しげな表情で、私を見つめています。

その表情にどういった意味があるのか、私には知る由もないのです。

528 :名無しで叶える物語:2017/05/19(金) 00:08:40.21 ID:pCXHFfl1.net
ことりを家まで送った後、私は寮へと戻りました。


k子「海未ちゃんおかえり〜」

海未「あ、先輩。イブの夜なのにどこにも出掛けてないんですね」

k子「まあ色々あってね…。それより、デートどうだった?どこまで進んだ?K点超えた?」

海未「うるさいですね…。早く就職決めたらどうなんですか?」

k子「うわ、一番言っちゃいけないこと言ったよ…。悲しい…、悲しいから寝るね」

海未「……私も疲れましたし、もう寝ます」



私は布団に包まり、寝る体勢を整えていきます。



k子「あ、そうだ。海未ちゃんに言っておこうと思ってた言葉があるんだった」

海未「何ですか…?」

k子「メリクリ」

海未「……おやすみなさい」

529 :名無しで叶える物語:2017/05/19(金) 00:09:31.21 ID:pCXHFfl1.net
ここまで

530 :名無しで叶える物語:2017/05/19(金) 00:12:09.99 ID:WdNkftx8.net
待ってるわ

k子落ちるなこれは

531 :名無しで叶える物語:2017/05/19(金) 00:19:58.99 ID:a89ZtFp2.net
迷走気味だったけどやっと元に戻ってきたな

532 :名無しで叶える物語:2017/05/19(金) 02:05:13.47 ID:HlrMcF8d.net
元からどこへ向かってるのか分からなかった気がするが

533 :名無しで叶える物語:2017/05/19(金) 21:45:28.59 ID:LgT+ZxfG.net


534 :名無しで叶える物語:2017/05/20(土) 00:03:58.71 ID:u6OO4xlg.net
更新サンキュー
つづきまってるぜ

535 :名無しで叶える物語:2017/05/20(土) 02:09:03.12 ID:zXQv1pkk.net


536 :名無しで叶える物語:2017/05/20(土) 12:33:47.19 ID:67wNzhwE.net
圧倒的更新期待

537 :名無しで叶える物語:2017/05/20(土) 22:38:17.67 ID:R/MQ0C0j.net
保守

538 :名無しで叶える物語:2017/05/20(土) 23:05:27.22 ID:zXQv1pkk.net


539 :名無しで叶える物語:2017/05/21(日) 10:30:52.76 ID:oz0Sp4b+.net


540 :名無しで叶える物語:2017/05/21(日) 11:08:55.57 ID:gemj6IB3.net


541 :名無しで叶える物語:2017/05/21(日) 13:28:24.27 ID:1PXpYy4A.net


542 :名無しで叶える物語:2017/05/21(日) 14:47:24.14 ID:jmjRPeL1.net


543 :名無しで叶える物語:2017/05/21(日) 20:33:09.65 ID:9IZ0UBFa.net


544 :名無しで叶える物語:2017/05/22(月) 00:34:03.12 ID:Yw/n1+Rc.net
#20

「あけましておめでとうございます」


定番のこの挨拶から始まった新年、一月一日。

私たちは今、神田明神へと初詣に来ています。


ことり「あけましておめでとう。今年もよろしくお願いします!」

絵里「おめでとう。今年もよろしくね」

海未「はい、よろしくお願いします」



早々に挨拶を済ませ、私たちは拝殿へと向かう列に並びました。

今年もこの場所は、初詣客達で溢れかえっています。

昼になってから一層人が増えているようで、為された列は一向に進む気配を見せません。

545 :名無しで叶える物語:2017/05/22(月) 00:35:46.70 ID:Yw/n1+Rc.net
凛「おーい、海未ちゃん〜!」

海未「凛!こんな所で会うなんて奇遇ですね!何してるんですか?」

凛「初詣に決まってるでしょ。海未ちゃんバカなの?」

海未「むっ…」


絵里「凛、あけましておめでとう」

ことり「あけましておめでとう〜」

凛「あ、絵里ちゃんことりちゃん。あけましておめでとう!三人は一緒に来てるの?」

海未「ええ、まあ…。凛は一人ですか?」

凛「ううん、かよちんと真姫ちゃんと来てたんだ。でも、途中で海未ちゃんを見かけたから一人で走って来ちゃった」

海未「あなたは何やってるんですか…。花陽たちが凛のことを捜しますよ?」

凛「んーでも、こんなに人が多いようじゃ、戻るにも戻れないし…」

凛「ねえ、私も三人に付いて行っていいかな?」

ことり「どうぞウェルカム!」

絵里「人数が多い方が真姫たちも凛を見つけやすいでしょうし、一緒に行動しましょう」

凛「やったー!ありがと、ことりちゃん絵里ちゃん!」

海未「………」

546 :名無しで叶える物語:2017/05/22(月) 00:37:22.65 ID:Yw/n1+Rc.net
拝殿へと続く列は、少しずつですが流れているようです。

太陽の下で、段々と寒さも和らいできました。


絵里「凛は、神様に何をお願いするつもりなの?」

凛「まずは受験のことかな。三人全員合格できるようお願いしておきたいからね」

凛「あとは〜、かよちんと真姫ちゃんとずっと友達でいられますようにーとか、美味しいラーメンに巡り会えますようにーとか」

海未「いくつお願いするつもりですか。そんな貪欲な人間の願いなんて、神様は叶えてくれませんよ?」

凛「海未ちゃんこそ、『穂乃果とやらしいことがしたいですー』ってお願いを毎年してるんでしょ?神様も大呆れしてるはずだよ」

海未「な、何故それを…!?」

ことり「海未ちゃん、毎年初詣でそんなことお願いしてたの…?最低…」

海未「違います!そんなお願いをしたのは去年だけです!」

ことり「え、去年って…。受験を控えてたから、私と穂乃果ちゃんは三人での合格を祈願してたのに…。もっと最低だよ…」

海未「………」



これ以上墓穴を掘ると博多駅前のように地面が陥没してしまう恐れがあるので、私はしばらく黙って様子を見ることにしました。

547 :名無しで叶える物語:2017/05/22(月) 00:38:35.51 ID:Yw/n1+Rc.net
花陽「おーい!凛ちゃんー!」

凛「ん…?あ、かよちん!」

花陽「凛ちゃん〜!もう、捜したんだよ…?」

凛「ごめんごめん。……あ、真姫ちゃんも」

真姫「凛!まったく…この私に心配かけるんじゃないわよ」

にこ「ほんと、手の掛かる後輩なんだから」

凛「ごめんね、真姫ちゃんにこちゃん………ってにこちゃん!?」

にこ「久々ね、凛。あんたも少し見ない間に結構大きくなったわね〜」

凛「にこちゃん…。どうしてここに?仕事がなくて暇なの?」

にこ「」

凛「痛ぁ!?」


絵里「にこ〜!あけましておめでとう」

にこ「あけおめ。あんたたちは徽音祭以来ね」

ことり「そうだね、私たちはにこちゃんと会っても、あまり久しぶりって感じはしないね」

548 :名無しで叶える物語:2017/05/22(月) 00:40:05.47 ID:Yw/n1+Rc.net
真姫「絵里、ことり。あけましておめでとう」

花陽「あけましておめでとうございます!」

絵里「ええ、おめでとう」

真姫「今年もよろしく………そして今年からは、もっとよろしくね」

ことり「あ、そっか。真姫ちゃんも志望校を音ノ水に決めたんだもんね。じゃあ4月からは、また後輩になるんだ!」

真姫「ええ、まあね。凛と花陽も入学するから、音ノ水にμ's大集合よ!」

凛「凛の合格を前提に話さないでよ!まだ受かるかも分からないのに〜」

花陽「大丈夫、努力は嘘を吐かないよ!凛ちゃんと真姫ちゃんなら絶対合格できるよ!」

真姫「何言ってるのよ。花陽も、でしょ?」

花陽「う、うん…そうだね」


にこ「ねえ、音ノ水に医学部なんてあるの?真姫ちゃんは医学部志望なんだから、音ノ水だと…」

真姫「もうその話は終わったわよ」

にこ「あ、そうなの…?」

549 :名無しで叶える物語:2017/05/22(月) 00:41:09.03 ID:Yw/n1+Rc.net
ことり「………2年前の元旦も、こうしてμ'sのみんなで神田明神に来たよね」

海未「そうですね。あの時は9人揃っていましたが…」

真姫「今は、希と穂乃果がいないわね…」

絵里「あ、待って!希ならいるわよ!」

海未「どこにですか?」

絵里「……写真なんだけどね。ほら、これ」

海未「また希から送られてきたんですね。この写真はどこで撮られたものなんですか?」

絵里「エベレストの麓だそうよ」

海未「え、エベレスト…?」

絵里「なんでも、希はエベレストの山頂から初日の出を拝むそうだわ」

海未「すごい挑戦ですね…。希はどこに向かおうとしているのでしょうか?」

550 :名無しで叶える物語:2017/05/22(月) 00:43:27.51 ID:Yw/n1+Rc.net
絵里「というわけで、希はここはにいないけど、魂はここにあるわ!」

花陽「じゃあ、あといないのは穂乃果ちゃんだけ…」

海未「いや、穂乃果ならいますよ!」

にこ「海未も穂乃果の写真を持ってきてるの?」

海未「写真は持ち合わせていませんが…。今から、電話で穂乃果と繋がります!」


私は目にも留まらぬ早業で、穂乃果にダイヤルしました。



穂乃果『もしもし、海未ちゃん?』

海未「あ、穂乃果?あけましておめでとうございます!」

穂乃果『あけましておめでとう!また新たな年が始まったんだね』

海未「ええ、大変おめでたいことです。どうか今年もよろしくお願いします」

穂乃果『うん!よろしくね!』

551 :名無しで叶える物語:2017/05/22(月) 00:48:32.60 ID:6zWwuVtw.net
怒りのバーストストリーム

552 :名無しで叶える物語:2017/05/22(月) 00:48:56.66 ID:Yw/n1+Rc.net
海未「………穂乃果と電話が繋がりましたよ。これで本当に、念願のμ's集合を果たしました!」

凛「海未ちゃん!その電話、穂乃果ちゃんと繋がってるの?」

海未「はい!私と穂乃果は、離れていても定期的に連絡を取り合って…

凛「私も穂乃果ちゃんと喋りたい!ほら、電話変わって!」

海未「むっ…」


凛が私より穂乃果に興味を持っていることにやきもきしましたが、私は何食わぬ顔で、携帯を凛に手渡しました。


凛「もしもし、穂乃果ちゃん…?」

凛「………」

凛「………」

凛「………ねえ、海未ちゃん」

海未「どうかしましたか?」

凛「……電話、繋がってないよ」

海未「え…?さっきまではちゃんと繋がっていましたよ。穂乃果が電話を切ったのでしょうか…」


ことり「ううん。電話を切ったのは海未ちゃんだよ」

海未「え…?私は通話終了のアイコンを押してませんよ?」

ことり「違うよ、そうじゃない」

ことり「携帯が海未ちゃんの手から離れた時点で、もう穂乃果ちゃんとのリンクは途切れちゃったの」

海未「………」


またことりはおかしなことを言っていますね…。

553 :名無しで叶える物語:2017/05/22(月) 00:49:37.55 ID:Yw/n1+Rc.net
それから数分後、私たちはようやく拝殿へと辿り着くことができました。

みんなは、何を願っているのでしょうか?

私は………


今年こそ、穂乃果に逢えることを願いましょう。



希望に満ちた新年は、明るい未来を照らしています。

554 :名無しで叶える物語:2017/05/22(月) 00:51:14.79 ID:5hCviY7V.net
えっ

555 :名無しで叶える物語:2017/05/22(月) 00:57:13.09 ID:Yw/n1+Rc.net
#21

冬休み明け。

私の元に、一通のメールが届きました。

メールの差出人は、登山サークルの顧問。

件名には、『登山サークルの例の事故と今後の活動について』と書いてありました。



テレビやインターネットのニュースはどこもかしこも、この事故のことを取り上げていました。

『音ノ水大登山部 熊に襲われ全滅』

登山サークルの活動で冬の山を縦走している最中、彼女たちは、熊に出会したそうです。

熊に対する知識を持っていなかった彼女たちは熊から走り逃げ、三日間の逃走の末、三人全員熊に殺されたそうです。

このニュースに対し専門家は、「冬に冬眠せず活動している熊は非常に凶暴」
「彼女たちも冬に熊と会うとは思わなかったため何の対策も講じていなかったのだろう」などと、分析していました。



私は顧問からのメールを開くことなくゴミ箱に送りました。



音ノ水生の三人が死んだことで、枠が三人分空きますね。

………私は、そんなことを考えていました。

556 :名無しで叶える物語:2017/05/22(月) 00:57:56.81 ID:Yw/n1+Rc.net
ここまで

557 :名無しで叶える物語:2017/05/22(月) 01:09:13.66 ID:CE3pGvhY.net
不穏過ぎ泣いた

558 :名無しで叶える物語:2017/05/22(月) 01:11:56.87 ID:OajjlJOb.net


なんの枠が空くんだ・・・

559 :名無しで叶える物語:2017/05/22(月) 05:34:45.34 ID:jjIkkzhp.net
おかしいのにおかしいと指摘されずに進むから狂気を感じる

560 :名無しで叶える物語:2017/05/22(月) 15:12:42.41 ID:+NESWqml.net
枠3人分空いたって多分分かったけど考えると
海未ちゃん考えてること怖い

561 :名無しで叶える物語:2017/05/22(月) 20:40:12.49 ID:sNoBYifH.net
おいおい‥…

562 :名無しで叶える物語:2017/05/22(月) 22:06:24.33 ID:FaYi8gdd.net
携帯が海未の手から離れたことでリンクが切れたって…
なんだか怖い

563 :名無しで叶える物語:2017/05/22(月) 22:08:05.21 ID:4q1ybjB4.net
全部コッティの妄言の可能性もあるぞ

564 :名無しで叶える物語:2017/05/22(月) 22:09:02.24 ID:4q1ybjB4.net
全部じゃなく、ハノケチェン関連の不穏なお話は、だった

565 :名無しで叶える物語:2017/05/23(火) 05:27:26.85 ID:g3dDc8Gn.net


566 :名無しで叶える物語:2017/05/23(火) 12:36:47.03 ID:OodLLHLp.net
闇未ちゃんって事か

567 :名無しで叶える物語:2017/05/23(火) 16:12:16.27 ID:EEXWAfQ2.net
闇未ちゃんつーかヤミライブだ
全部おかしい

568 :名無しで叶える物語:2017/05/23(火) 16:26:56.43 ID:KUxaCMcq.net
やっと追いついた
スレタイからしてほのキチほのうみギャグSSだと思ってた自分が恥ずかしい

569 :名無しで叶える物語:2017/05/23(火) 16:28:01.39 ID:KUxaCMcq.net
拭いきれない不安感と
唐突に入るギャグが面白い

570 :名無しで叶える物語:2017/05/23(火) 16:28:42.78 ID:KUxaCMcq.net
しばらくはこのSSを楽しみに生きていきます

571 :名無しで叶える物語:2017/05/23(火) 22:59:00.84 ID:csSXviBG.net


572 :名無しで叶える物語:2017/05/24(水) 03:50:11.02 ID:rdr7R+Hz.net


573 :名無しで叶える物語:2017/05/24(水) 20:52:52.24 ID:FZsXnTbk.net


574 :名無しで叶える物語:2017/05/24(水) 23:10:12.93 ID:00zXT/Cr.net
へいかもん

575 :名無しで叶える物語:2017/05/25(木) 04:16:27.06 ID:ypyaqWdp.net


576 :名無しで叶える物語:2017/05/25(木) 12:40:12.36 ID:joIIkVG3.net


577 :名無しで叶える物語:2017/05/25(木) 19:09:58.21 ID:2SjcC+Ap.net
保守

578 :名無しで叶える物語:2017/05/25(木) 22:56:15.10 ID:GYkjXXmI.net
更新土日になりそう…

579 :名無しで叶える物語:2017/05/26(金) 00:51:47.89 ID:6Mm9EkpU.net
待ってる

580 :名無しで叶える物語:2017/05/26(金) 02:39:04.39 ID:V5vvNcL4.net
>>578
圧縮に巻き込まれさえしなきゃ良いよ
頑張ってくれ

581 :名無しで叶える物語:2017/05/26(金) 08:16:12.81 ID:YffD3okB.net


582 :名無しで叶える物語:2017/05/26(金) 12:16:30.34 ID:RiTBhNEj.net
k子さんの正体はkousaka…

583 :名無しで叶える物語:2017/05/26(金) 19:20:17.27 ID:3GU+8Aaz.net
ほしゅ

584 :名無しで叶える物語:2017/05/27(土) 02:24:36.56 ID:Vci3Eovz.net


585 :名無しで叶える物語:2017/05/27(土) 06:57:01.78 ID:J4QlgVqh.net
しゅ

586 :名無しで叶える物語:2017/05/27(土) 07:08:21.79 ID:2/iDQQla.net
維持

587 :名無しで叶える物語:2017/05/27(土) 13:26:17.58 ID:fgNUnXJG.net


588 :名無しで叶える物語:2017/05/27(土) 18:22:22.19 ID:e7e7tRuV.net


589 ::2017/05/27(土) 21:16:30.74 .net
はよ

590 :名無しで叶える物語:2017/05/27(土) 21:59:53.60 ID:D7EzVJcz.net
落とさん

591 :名無しで叶える物語:2017/05/27(土) 23:51:43.20 ID:93b206Y2.net
#22

k子「海未ちゃん、朝だよ〜」

海未「………何ですか?今冬眠中なんですよ、起こさないでください…」

k子「グリズリーくん、君にお客さんだよ。だから起きろ〜」

海未「うがぁ!」


私は毛布にくるまり必死の抵抗をしましたが、k子さんは毛布ごと引き摺り出しました。

私はそのまま床に叩きつけられました。

誰なんですか、お客さんとは…。どうせことりのことなんでしょうけど。



海未「………って、まだ8時じゃないですか…!こんな早朝に訪ねてくるとは、何用でしょうか?」

k子「いいから早く出てあげなよ。かわいい彼女が待ってるよ」


かわいい彼女…?

嗚呼、やはりお客さんとは、ことりのことでしたか。

まったく、こんな朝っぱらに訪ねて来るなんて非常識ですよ!会ったら文句の一つでも言ってやります!

………私はそう意気込んで扉を開けましたが、そこに居たのは、思わぬ人物でした。

592 :名無しで叶える物語:2017/05/27(土) 23:53:24.01 ID:93b206Y2.net
凛「………あ、海未ちゃん」

海未「凛!何故ここに…!?」

凛「あはは。ちょっとね…」


凛は私と目を合わせようとしません。

凛がこの癖をするときは、決まって何か後ろめたいことがあるのです。


海未「……今日って確か、センター試験当日ですよね?こんな所で何やってるんですか?」

凛「いやー、ほら!テストの前に海未ちゃんの顔を拝んでおこうと思ってさ!」

凛「海未ちゃんパワーがあれば今日のテストも乗り切れるかな〜、なんて。私にしてはナイスアイディアだと思わない?」

海未「私にはそのような仏チックな能力など備わっていませんよ」

海未「それより、時間は大丈夫なんですか?もう既に8時を回っていますが」

凛「ううん、大丈夫じゃないよ。もうとっくにかよちん達との集合時間に遅れてるし」

海未「……ならば早く行きなさい」

凛「実はね、試験会場は音ノ水女子大学なんだよ。だから海未ちゃんも一緒に来てよ」

海未「いやです。何故せっかくの休日なのに外へ…況してや学校に行かなければならないんですか!」

凛「ここから音ノ水までの道が分からないの!海未ちゃんなら毎日通ってるから分かるでしょ。だから、一緒に来て?」

海未「……わかりましたよ。ちょっと待っててください、すぐに支度してきます」



私はパジャマから着替え、パパッと支度を整えると、凛と一緒に大学へと向かいました。

私が準備をしている間、凛は花陽と真姫に遅刻の連絡を入れていたようです。

593 :名無しで叶える物語:2017/05/28(日) 01:49:12.86 ID:dVMPRc5B.net
今は1月も中旬。

冬の朝というものは、何度過ごしても慣れません。

更に、すこし出かけるだけと思って防寒を抜かったことが仇となり、南極に居るかのような寒さを体感しています。

私は身を震わせながら足を前に進めます。



凛「海未ちゃん。手袋してないけど、冷えないの?」

海未「冷え冷えに決まってるじゃないですかバカですか。まったく、誰のせいだと…」

凛「じゃあさ、ほら、手を出して」

海未「…?」


凛に言われた通り手を出すと、凛は私の冷えた手を取り、ぬくぬくと包みました。


凛「で、このまま私のポケットに突っ込むと………ね?あったかいでしょ?」

海未「………」



私は、この少女漫画風なシチュエーションに少しドギマギしました。

しかし、この湧き上がった感情は心の中だけに抑え、敢えて言葉にはしませんでした。

594 :名無しで叶える物語:2017/05/28(日) 01:50:57.79 ID:dVMPRc5B.net
右手には凛から借りた手袋をはめ、左手は凛の右手と繋いだままポケットの中に入っています。

多少の羞恥心はありましたが、暫くの間、手がぬくぬくする悦びに浸ることにしました。



海未「見えてきましたよ。今日の試験会場です」

凛「うん、そうだね」


門の前に受験生達が集まっている様子が遠目からでも見えました。


海未「………もうすぐ会場に到着しますが、その前に一つだけ訊かせてください」

凛「何?」

海未「凛は何故、私の元を訪ねて来たのですか?」

凛「あれ、言わなかったっけ?私は海未ちゃんのご尊顔を拝見する為に参ったんだよ。海未ちゃんには御利益があるから〜…」

海未「凛は嘘を吐くとき、決まって目が右に泳ぐんですよ」

凛「………流石は海未ちゃん。ほんと、人のそういう所だけはよく見てるよね」

凛「正解だよ。私は海未ちゃんパワーなんて求めてないし、信じちゃいないよ」

凛「本当を言うとね、私はただ、海未ちゃんに逢いたかっただけなの」

海未「どうして私に逢いたかったのですか?」

凛「………」

595 :名無しで叶える物語:2017/05/28(日) 01:52:40.19 ID:dVMPRc5B.net
凛「昨夜ね、夢を見たの」

凛「夢の中ではね、海未ちゃんが、どこか遠くに行っちゃうの。すごくすごく遠い場所」

凛「逢いたくても逢えなくて、手を伸ばしても届かない世界…。もう一生、海未ちゃんに逢うことができないんだって…」


凛「………朝起きたとき、私、泣いてたんだ。怖かったんだ」

凛「もう二度と、海未ちゃんと会えなくなるんじゃないかって…。不安で不安で、だから………」

海未「バカ言わないでくださいよ。私がいなくなるわけないじゃないですか!」

凛「ほんとに…?」

海未「ええ、約束します。私は黙って、突然あなたの前から消えたりしません」


ポケットの中で繋いだその手を、力強く握り締めます。


海未「今、海未ちゃんパワーを送りました。……今日のテスト、頑張ってください!」

凛「……ぷっ!あはは!!海未ちゃんパワーって………自分で言っちゃうんだ!」

海未「!?……やっぱりナシです!パワーを返してください!!」



私たちはテスト前とは思えない緊張感の無さのまま、会場へと到着しました。

596 :名無しで叶える物語:2017/05/28(日) 01:54:05.46 ID:dVMPRc5B.net
凛「あ、かよちんー!真姫ちゃん〜!」

花陽「凛ちゃんー!もう、遅い………って海未ちゃんだ!?」

海未「ど、どうも。凛に頼まれて付いて来てしまいました…」

真姫「ちょっと、何やってるのよ!」

海未「あ…、あまり凛を怒らないであげてください。凛にも色々と事情があってのことで…」

真姫「違うわよ!二人はそのポケットの中で、何やってるのよ!」

海未「え?ポケットって………あっ」

真姫「朝からイチャイチャしてるんじゃないわよ、まったく!」

花陽「ピャーやらしい」

海未「ち、違います!これには深い訳が…」

凛「あーもう!試験前の緊張感があったもんじゃないよ!」

海未「凛がそれを言いますか!?」


こんなくだらない会話をしていると、次第に三人の表情も和らいできました。

私が来たことによって三人の緊張を解せたのなら、付いてきた甲斐もありましたね。

597 :名無しで叶える物語:2017/05/28(日) 01:56:12.62 ID:dVMPRc5B.net
凛「試験が終わるまで待たせるのも申し訳ないし、海未ちゃんは先に帰ってくれていいよ」

海未「言われずともそうさせてもらいます」

真姫「じゃあそろそろ時間だし、私たちは行くわね」

海未「はい。凛と真姫はテスト、頑張ってくださいね」

凛「うん!全力で頑張るよ!」

真姫「当然でしょ!全問正解してあげるわよ!」

海未「それから、花陽も………頑張ってください」

花陽「……うん」


海未「さあ、三人共!これまで積み上げてきた成果を、存分に発揮してきてください!」

海未「………ファイトですよ!」



三人はそれぞれの想いを胸に、センター試験へと臨みました。

その後ろ姿はまるで、戦場へ赴く戦士のようです。

598 :名無しで叶える物語:2017/05/28(日) 03:20:27.34 ID:z4GfJcM4.net
ほげ

599 :名無しで叶える物語:2017/05/28(日) 03:22:10.30 ID:dVMPRc5B.net
ことり「おーい海未ちゃん〜」

海未「ことり?何故あなたがここに…?」

ことり「さっき海未ちゃんの寮に行ったら、『海未ちゃんなら大学に行ったよ〜』と聞いたから、ここまで来ちゃいました」

海未「ん…?私の行き先は、k子さんから聞いたんですか?」

ことり「え?ケイ子…?うん、たぶんその人かな」

海未「しかし変ですね。私の行き先はk子さんには伝えていないのですが、何故知っているのでしょうか…」

ことり「海未ちゃんの行動範囲は限定的だから、察しがついたんじゃないかな?」

海未「失礼ですね。私はもっとアクティブですよ」


ことり「そんなことより、海未ちゃんはここで何してたの?」

海未「色々とありまして、凛の送迎をしていたんです。今日はセンター試験の日ですからね」

ことり「あ、そっか」

ことり「……私たちも去年、この場所で、テストを受けたんだよね…」

海未「そうですね…」



そう、今から丸々一年前。

まだ穂乃果が東京にいた時の話。

私たちも世の学生と同様、必死に机にしがみ付いていたあの頃。

私が勝手に『第一次受験戦争』と呼んでいた、あのセンター試験が、この場所で行われました。

600 :名無しで叶える物語:2017/05/28(日) 03:23:14.66 ID:dVMPRc5B.net
穂乃果『ついに、この日が来たんだね』


穂乃果は大学の門を見上げながら、そう言いました。


海未『大丈夫ですよ、この日の為にあれだけ頑張ってきたのですから。努力は嘘をつきません』

ことり『うん、そうだね…』

海未『ああ、でも、いざ戦地に立ってみると、段々緊張してきました…』

海未『いよいよ、第一次受験戦争が始まるのですね…』

ことり『何言ってるの…?アガる気持ちも分かるけど、今日が本番なんだから落ち着いて…ね?』

海未『うぅ…、すみません。私がこの調子では、三人で合格という目標も叶えられそうにありませんね…』

ことり『なんで他人事みたいに言うの!?グロッキーにならないで頑張ってよ〜!』


この時、私とことりは緊張のせいかアガってしまい、パニック状態にありました。

しかし、穂乃果だけは平静を保っていました。

そして穂乃果は私たちの手を取り、こう言いました。



穂乃果『ファイトだよっ!二人なら、絶対に合格できるよ!』

601 :名無しで叶える物語:2017/05/28(日) 03:25:27.21 ID:dVMPRc5B.net
………あの時、穂乃果は『二人なら』合格できる、と言いました、

『私たちなら』と言えばいいところを、何故か『二人なら』と言ったんです。

花陽の相談を受けた後だから分かります。穂乃果は最初から、音ノ水に入学する気なんてなかったんです。

思えば、穂乃果はあの頃からずっと、おかしかったんですよね。


三人で音ノ水に合格する…。穂乃果はこの約束を破りました。

そして穂乃果は、私との間にも約束を結んでいます。

大学を卒業したら、結婚を前提にセックスすると。

果たして、穂乃果はこの約束を、本当に守るのでしょうか。



海未「………」

ことり「海未ちゃん…。色々と思うところはあるよね、分かるよ」

ことり「だから、その心に溜まったモヤモヤを全部吐き出しちゃおう?」

ことり「私が全部受け止めるから。それが、私の役目だから」



私はことりに連れられ、ファミレスに入りました。

まず頼んだのはドリンクバーでした。

ですが、ドリンクバーの配合よりも、今は穂乃果のことが気になって仕方ありませんでした。

結局私たちは、凛たちの試験が終わるまで、そのファミレスで愚痴をぶちまけていました。

602 :名無しで叶える物語:2017/05/28(日) 03:26:11.03 ID:dVMPRc5B.net
3月の初め、三人から一斉に合格の報せが届きました。

凛と真姫は嬉しそうに、喜びと今までの苦悩を語ってくれました。

花陽は、やっと別れの覚悟ができたと、心の内を語ってくれました。

花陽は近々、凛と真姫に伝えるそうです。自分は大学には行かず、農家になることを。

そのとき、あの二人はどういった反応を見せるのでしょうか。花陽との関係はどのように変わるのでしょうか。


あの三人の行く末は、誰にも分かりません。

私だって、幼馴染二人との物語がどういう結末を迎えるのか、想像もつかないのですから。

603 :名無しで叶える物語:2017/05/28(日) 03:26:44.17 ID:dVMPRc5B.net
そして、3月も中頃。

ことりから一通のメールが送られて来ました。



『そのだ 京都、行こう。』

604 :名無しで叶える物語:2017/05/28(日) 03:27:30.26 ID:dVMPRc5B.net
ここまで

605 :名無しで叶える物語:2017/05/28(日) 03:55:40.73 ID:ZF9kyUtQ.net
三都物語かよ
圧縮に巻き込まれないよう頑張ってくれ

606 :名無しで叶える物語:2017/05/28(日) 04:40:11.46 ID:vyN+uQmn.net
ついに京都か

607 :名無しで叶える物語:2017/05/28(日) 05:22:45.32 ID:UP2To6kP.net
園田呼びか・・・

608 :名無しで叶える物語:2017/05/28(日) 07:16:53.43 ID:/W/Lw5HP.net
そうだ京都へ行こうみたいに言ってんじゃねえよw

609 :名無しで叶える物語:2017/05/28(日) 08:22:43.35 ID:UP2To6kP.net
>>608
それじゃね?

610 :名無しで叶える物語:2017/05/28(日) 08:50:23.54 ID:xhN8jzAR.net
>>601
逆じゃない

611 :名無しで叶える物語:2017/05/28(日) 12:26:20.67 ID:ZF9kyUtQ.net
ホンマや
もしかしてスレタイの方が逆の可能性も

612 :名無しで叶える物語:2017/05/28(日) 16:35:24.40 ID:rBoUiV7p.net
逆にしたのもネタだと思うが

613 :名無しで叶える物語:2017/05/28(日) 19:13:17.80 ID:mlucKoYA.net
保守

614 :名無しで叶える物語:2017/05/29(月) 01:09:47.56 ID:T8dOQ9CB.net


615 :名無しで叶える物語:2017/05/29(月) 05:27:18.78 ID:einJ5tGj.net


616 :名無しで叶える物語:2017/05/29(月) 12:19:23.06 ID:RCvCmtks.net
保守

617 :名無しで叶える物語:2017/05/29(月) 13:03:53.55 ID:Ga/EeD2y.net
まあまあ予想はよそうぜ。あっ、今のは予想とよs

618 :名無しで叶える物語:2017/05/29(月) 13:33:34.59 ID:Efptaxbm.net
説明しなくていいk

619 :名無しで叶える物語:2017/05/29(月) 15:04:14.54 ID:naSDmkgE.net


620 :名無しで叶える物語:2017/05/29(月) 16:04:36.17 ID:r3zftgBh.net
園田 京都、行こう でクスッときた

621 :名無しで叶える物語:2017/05/29(月) 18:19:08.80 ID:pUJS1Q9h.net
-

622 :名無しで叶える物語:2017/05/29(月) 21:56:44.91 ID:ycY4tXpQ.net
週一の楽しみ

623 :名無しで叶える物語:2017/05/29(月) 23:45:20.67 ID:einJ5tGj.net
まだか

624 :名無しで叶える物語:2017/05/30(火) 01:55:04.29 ID:rI+JhHC3.net
あるSSの印象のせいか
凛ちゃんめっちゃ頭良さそうに思える

625 :名無しで叶える物語:2017/05/30(火) 05:26:41.34 ID:/yDdzqzO.net
保守

626 :名無しで叶える物語:2017/05/30(火) 12:28:25.18 ID:/yDdzqzO.net


627 :名無しで叶える物語:2017/05/30(火) 18:37:19.86 ID:iN9R8O1F.net


628 :名無しで叶える物語:2017/05/30(火) 23:21:25.89 ID:d5s+HZPq.net


629 :名無しで叶える物語:2017/05/31(水) 06:24:49.45 ID:fvYa1nb7.net


630 :名無しで叶える物語:2017/05/31(水) 12:49:32.25 ID:qxbut86R.net


631 :名無しで叶える物語:2017/05/31(水) 18:26:32.74 ID:StY0MNoA.net


632 :名無しで叶える物語:2017/05/31(水) 23:22:51.66 ID:qxbut86R.net


633 :名無しで叶える物語:2017/05/31(水) 23:58:26.75 ID:Fdz3Al+e.net
土曜に更新します

634 :名無しで叶える物語:2017/06/01(木) 04:25:40.58 ID:MmA5XPNB.net
楽しみだ

635 :名無しで叶える物語:2017/06/01(木) 07:04:14.88 ID:ltuDblyN.net
土曜か

636 :名無しで叶える物語:2017/06/01(木) 13:07:17.82 ID:L2YB2Qwd.net
保守

637 :名無しで叶える物語:2017/06/01(木) 21:46:23.80 ID:ltuDblyN.net


638 :名無しで叶える物語:2017/06/01(木) 21:47:10.69 ID:bae3mHZL.net


639 :名無しで叶える物語:2017/06/02(金) 07:15:57.55 ID:DsQhvqTq.net
待ち遠しいよお・・・

640 :名無しで叶える物語:2017/06/02(金) 13:38:28.61 ID:bGJ4KqOj.net
保守

641 :名無しで叶える物語:2017/06/02(金) 22:22:34.76 ID:aX6779AZ.net


642 :名無しで叶える物語:2017/06/03(土) 06:57:19.21 ID:lYNKvvjo.net


643 :名無しで叶える物語:2017/06/03(土) 13:07:12.23 ID:k0GM257J.net
土曜日だぞ

644 :名無しで叶える物語:2017/06/03(土) 23:00:41.63 ID:ONuT7x76.net


645 :名無しで叶える物語:2017/06/03(土) 23:55:15.62 ID:LqbIUaSw.net
#23-a

3月半ば、外の空気がほんわかと暖かくなってくるこの頃。

ことりに誘われ、私は京都へ行くことになりました。

東京駅からJR東海道新幹線に乗って2時間強。

何故か静岡県内に通過駅が6つもあることに疑問を感じながらも、私たちは京都駅に到着しました。

午前10時25分。


海未「着きました、京都ですよ!いつ来ても歴史風情感じられる良い町ですね」

海未「さて、ことり。まずはどこに行きましょうか?御茶屋巡りや芸妓遊びもしたいですし…。あ、仏閣ラリーなども…」

ことり「海未ちゃん。今回のデートのスケジュールはすべて、ことりが前もって作っておきました」

海未「スケジュール…ですか」

ことり「題して、京都観光弾丸ツアーです!」

海未「弾丸…?私はゆとりをもって京の都を味わいたいのですが」

ことり「ダメです。今日は決められた時間に決められた場所で決められたことをします」

ことり「というわけで、10時半から京都タワーを観光する予定だから………急ぐよ!」



私は人の混み合う京都駅で、ことりの後を必死に追いかけました。

646 :名無しで叶える物語:2017/06/03(土) 23:56:17.59 ID:LqbIUaSw.net
10時30分。


ことり「はい、時間通り着きました!」

海未「はぁ、はぁ…。駅から、結構近い所にあるんですね…」

ことり「ほら、早く中に入ろう?」

海未「こ、ことり!待ってください〜!」


私たちは京都タワービルからアクセスし、入場チケット一人770円(税込)を買い、展望台へと向かうエレベーターに乗り込みました。


ことり「海未ちゃん知ってた?この京都タワーの高さは131mで、無鉄骨建築で世界一の高さなんだって」

海未「あ、そうですか。見かけよりも大したことないんですね」

ことり「まあ、ビルの屋上にある観覧車みたいなものだからね」


そうこう言ってるうちに、エレベーターはタワー5階にある展望台に着きました。


ことり「海未ちゃん見て見て!ここから京都が一望できるよ、すごい!」

海未「雲一つない空ですから、遠くの山まで見渡せますね」

ことり「望遠鏡があるよ!空から京都を見てみよう」


タワー展望台、高さ100mから望む京の町はまるでミニチュアのようで、人がゴミのようでした。

もしかすると、その中に穂乃果の姿があるのでは…?

そう思い、望遠鏡で懸命に探しましたが、もちろん見つかるはずがありませんでした。


ことり「海未ちゃん。もう時間だから次に行きますよ〜」

海未「まだここに来て10分も経っていませんが、もう移動するんですか…?」

ことり「うん。スケジュールだと、11時には次の場所に着いてないといけないから」

海未「なっ…!?過密スケジュールですよ!もうちょっとゆとりを持ったスケジュール計画ができないものですかね?」

ことり「海未ちゃんにだけは言われたくないよ」

647 :名無しで叶える物語:2017/06/03(土) 23:57:57.71 ID:LqbIUaSw.net
私たちは京都タワーを降りた後、市バスに乗って北へと上がりました。

そして市バス一日乗車券(税込500円)を駆使し、烏丸今出川のバス停で下車しました。

11時00分。


ことり「次は京都御苑です。元は天皇の居住区だったけれど、今では国民公園になってるんだよ」

海未「ただの公園のようにも見えますが、ちゃんと当時の面影も残っているみたいですね」

ことり「11時半には次の場所に着きたいから…、少し早歩きで御苑を周ろっか!」

海未「何故こうも余裕がないのですか…」


私たちは小走りしながら御苑の風景を眺めました。

疲れて息が上がっていましたが、それでも有意義な時間を過ごせたと思います。

途中、テニスコートでテニスに興じている女子大生達を見かけました。

偶然、その女子大生達に混じっていた穂乃果と遭遇………なんてイベントは起きませんでした。


ことり「……あ、海未ちゃん!京都御所が見えて来たよ!」

ことり「鎌倉時代末期から明治初期の天皇達は、みんなこの御所で生活をしてきたんだよ」

海未「なるほど。今で言うところの皇居ですね」

ことり「入場料は無料なんだけど…、もう時間がないから中には入らず、写真だけにしておくね!」


私たちは御所前で自撮り撮影をしました。

約1kmの距離を走ってきた後だったので、撮れた写真は手ブレが酷かったです。

648 :名無しで叶える物語:2017/06/04(日) 00:06:12.96 ID:z+paWJqv.net
御苑を出て市バスに乗り、しばらく揺られると、バスは下鴨神社前に着きました。

11時42分。


ことり「あわわ、時間が押しちゃってる…。スケジュール調整しないと…」

海未「ことり。もっとゆったりと観光しませんか?急いてはせっかくの京都が台無しですよ」

ことり「でも、それだと間に合わなくなっちゃう…」

海未「間に合わない?………ああ、お寺の閉門時刻を気にしているんですね」

ことり「うん…。まあね」

海未「それならスケジュールに入っている予定を削って、時間に余裕を持たせたらどうですか?」

ことり「……うん、わかった。予定を削って、太秦映画村には行かないことにします」

海未「!?」

ことり「え、ダメだった?海未ちゃんは映画村に行きたかったの?」

海未「いえ、私は別に…」


もしここに穂乃果がいれば、絶対に映画村に行くと言って聞かなかったでしょう。

しかし、ここに穂乃果はいません。

そうです。わざわざ左京区から右京区の太秦まで行く必要はないんです。

649 :名無しで叶える物語:2017/06/04(日) 00:09:38.88 ID:z+paWJqv.net
下鴨神社の鳥居をくぐると、そこは周りを木々に囲まれた小経となっていました。

人々の騒めきも、木々がすべて消し去ってしまうような、そんな神聖さがありました。


ことり「この下鴨神社なんだけど、賀茂御祖神社というのが正式名称で、世界文化遺産に登録されてるんだよ」

海未「下鴨神社が愛称なんですね。こちらの方が親しみやすくていいと思います」

ことり「……で、ここを左に曲がると、美麗の神様を祀る河合神社があります。でも今日はまっすぐ進むよ」

ことり「この一本道を抜けると賀茂御祖神社の本殿があるんだけど」

ことり「そこに続くこの森は糺ノ森と呼ばれ、広さはなんと12万平方メートルもあるんだって!」

海未「ことりは前もって下調べをしていて偉いですね」

ことり「えへへ〜」

海未「しかし、糺ノ森ですか…。狸の四兄弟でもいそうですね」

ことり「た、たぬきさん…?」

海未「でも次男は蛙に化けて六道珍皇寺の井戸に隠れていますから、実質三兄弟ですかね」

ことり「さっきから何の話してるの!?」

650 :名無しで叶える物語:2017/06/04(日) 00:11:51.61 ID:z+paWJqv.net
糺ノ森を抜け、本殿に辿り着いたのが12時過ぎ。

本来の予定であれば、この時間には既に御茶屋で腹ごしらえをしているはずだったようです。


海未「朝からハードトレーニングでしたから、お腹空きましたね」

ことり「あ、お腹が空いたということで一つ豆知識を」

ことり「この下鴨神社には御手洗池(みたらしいけ)なるものがあって、それがみたらし団子の語源になったんだって」

ことり「池に浮かぶ泡をかたどって、あのお団子が産まれたそうだよ」

海未「お腹が空いているときにする話ではありませんよね!?」

ことり「ごめんごめん。空腹に耐えてる海未ちゃんを見て、つい虐めたくなっちゃった」


その後、私たちは本殿に参拝し、神社を後にしました。

ことりがランチに連れて行ってくれると言うので、私はことりについて行きました。

その道中、私はみたらし団子のことを考えながら歩いていました。

そして、穂乃果のことも考えていました。

もしも今日、穂乃果に会えたのなら、みたらし団子の豆知識をひけらかしてやりましょう。

いえ、穂乃果は今京都に住んでいるわけですから、もしかするとこの豆知識を既に知っているかもしれませんね。

それに仮にも和菓子屋の娘ですから、この程度の知識は一般教養なのかもしれません。


そんなことを考えていると、色んな食べ物が頭の中をぐるぐると渦巻き、余計に腹を空かせる結果となりました。

651 :名無しで叶える物語:2017/06/04(日) 00:47:59.91 ID:z+paWJqv.net
きょうの昼食は、パンでした。

賀茂川の上に建てられた川床で、私たちはむしゃむしゃとパンを頬張っています。


海未「京都に来て、川床でパンを食べることになるとは…。なんだか私が思っていた京都観光と違いますね」

ことり「思っていたものと違うっていうのは、ある種旅行あるあるだと思うよ。シンガポールのマーライオンしかり、デンマークの人魚像しかり」

ことり「あと、京都にパンは似つかわしくないイメージがあるみたいだけど、パンの消費量が一番多いのは、実は京都府なんだよ」

海未「そうなんですか?……京都府民は穂乃果に似ていますね」

ことり「あ、私も同じこと思ったよ」

海未「やはり小さい頃から和菓子が身近にあると、成長してからはパンを好む傾向にあるのでしょうか」

ことり「どうだろう?でも、穂乃果ちゃんはパン好きになって当然だったのかもしれないね」


パンがきっかけで、穂乃果の話が溢れるように湧いてきました。

それは止め処なく、私たちの心を満たしていくのです。

私とことりの最大の共通項は、穂乃果であると再認識しました。


春先の川床はすぐに冷え、耐えかねた私たちは近くの喫茶店に入って温かい紅茶を飲み、また観光ツアーを再開させました。

652 :名無しで叶える物語:2017/06/04(日) 01:07:33.63 ID:Yl2y6Y3u.net
京阪乗る人、おけいはん

653 :名無しで叶える物語:2017/06/04(日) 01:08:20.59 ID:z+paWJqv.net
市バスは私たちを、次の目的地まで運んで行きます。


海未「ことり。次はどこを観光するんですか?」

ことり「次は銀閣寺だよ。銀閣寺は正に京都を代表する観光地だよね」

海未「そうですか?私は京都といえば法隆寺を真っ先に思い浮かべますが…」



銀閣寺に向かい走るバス、その車窓に、その建物は映りました。



海未「………あれ、京大ですよね。テレビで何度も見たことがあるので、間違いありません」

ことり「え?……あ、ほんとだ。確かここにあるのは吉田キャンパスだったかな?」

海未「京大…」

海未「穂乃果は京都のどこかにある大学に行ったとは聞いていましたが、まさか、京大に入ったのでは…?」


海未「………なんて、そんなわけありませんよね!あの穂乃果が京大になんて…」

ことり「…」

海未「ことり…?どうかしましたか?」

ことり「い、いや…。なんでもないのよ、なんでも…」


ことりは何故か、狼狽えています。

目は縦横無尽に泳ぎ回り、口は金魚のようにパクパクと動き、鼻息は荒くなり、汗は滝のように流れているのです。

ことりの様子はおかしかったですが、怖かったので、そっとしておきました。

654 :名無しで叶える物語:2017/06/04(日) 01:39:44.05 ID:z+paWJqv.net
私たちが銀閣寺に到着したのは、13時半。

私はその迫力に、ただただ圧倒されていました。

ことり添乗員が銀閣寺に関する話や豆知識を披露していた気もしますが、覚えていません。


そして私たちは、哲学の道と呼ばれる小経を南へと歩きました。

沿道に並ぶ桜の木は蕾を膨らませ、今にも開花してしまいそうでした。

春の訪れを感じました。


そこから更に南下し、南禅寺へ着いたのは15時。

ここでは、よくドラマの撮影に使われると言う水路閣を見に行きました。

昔の人はすごい物を造るなー、と月並みな感想しか出てきませんでした。

655 :名無しで叶える物語:2017/06/04(日) 01:40:46.54 ID:z+paWJqv.net
南禅寺から北西へ。16時。

どデカイ鳥居を構えた平安神宮の迫力に、私たちは息を呑みました。


そして、祇園では舞妓さんを見かける度に写真撮影をお願いした挙句、ブラックリストに載りました。


清水寺に着いた時には、既に17時を回っていました。

私たちは、清水の舞台から飛び降りる、の舞台となった本堂前の板敷の所へ出ました。

遠くの空で、夕日が沈んで行きます。

ことりが、実際にこの場所から飛び降りた女性の話をしてくれました。

その人は結局、二回飛び降り、二回とも助かったそうです。

昔も、とんだおバカさんが居たものです。

656 :名無しで叶える物語:2017/06/04(日) 02:18:48.66 ID:z+paWJqv.net
18時。


ことり「今日のツアーはここまでです。海未ちゃん、お疲れさまでした」

海未「ことりもお疲れさまです。ことりのお陰で、今日はとても楽しい京都旅行になりましたよ」

ことり「そう言ってもらえると嬉しいな〜。ありがと」

海未「………しかし結局、穂乃果は見つかりませんでしたね」

ことり「え?穂乃果ちゃん?」

海未「実は今日の観光ツアーの中で、ずっと穂乃果のことを捜していたんですよ」

海未「まあ、そう簡単に見つかるわけがありませんよね!仕方ありません。今日は諦めて、また後日に…」


ことり「ねえ、海未ちゃん。一つ質問していい?」

海未「ええ、どうぞ」

ことり「海未ちゃんは、穂乃果ちゃんに会いたいの?」

海未「え…?そんなの、会いたいに決まってるじゃないですか!」

海未「穂乃果と婚約したあの日以来、もう一年も会っていないんですよ!会いたくて会いたくて毎晩震えていますよ!」

ことり「そっか…。じゃあ………」



ことり「穂乃果ちゃんに、会いに行こうか」

657 :名無しで叶える物語:2017/06/04(日) 02:19:21.38 ID:odD/AhfE.net
突っ込むのは野暮かもしれないけど法隆寺は奈良や

658 :名無しで叶える物語:2017/06/04(日) 02:19:31.95 ID:z+paWJqv.net
今夜9時あたりに更新

659 :名無しで叶える物語:2017/06/04(日) 04:40:13.26 ID:qZRt8awU.net
まってる

660 :名無しで叶える物語:2017/06/04(日) 06:24:46.24 ID:2WavFM2Z.net
楽しみ

661 :名無しで叶える物語:2017/06/04(日) 06:37:19.79 ID:5FcsjMal.net
>>657
この海未ちゃん色々ぶっ飛んでるから普通に素で間違えてる風の発言なんじゃね?
一方このことりは多分気付いても突っ込まない

662 :名無しで叶える物語:2017/06/04(日) 13:49:24.08 ID:FQmbvMPp.net


663 :名無しで叶える物語:2017/06/04(日) 16:27:03.50 ID:s69FqbYo.net


664 :名無しで叶える物語:2017/06/04(日) 19:46:24.29 ID:Ye6FWsyl.net
保守

665 :名無しで叶える物語:2017/06/04(日) 21:31:05.21 ID:z+paWJqv.net
#23-b


海未「………穂乃果に、会えるのですか…?」

ことり「うん。海未ちゃんさえよければね」

海未「……会います、会わせてください!」


やっと穂乃果に会える…!

そんな期待を胸に、私はことりの後を追いました。

陽が落ち、観光客も疎らになった京の町を、私たちは歩きました。


ことり「海未ちゃん、ここだよ。ここに穂乃果ちゃんがいるの」

海未「………冗談ですよね?ここ、看板に京都大学と書いてありますが…」

ことり「冗談なんかじゃないよ。ほら、早く行こう」


穂乃果が京大にいるという事実に戸惑いを隠せませんでした。

それに、この建物は京都大学の医学部付属病院で、その名の通り医学部の学生が集う場所です。

穂乃果が、京大の医学部に…?

不審に思いつつも、私は建物の中へと入りました。

666 :名無しで叶える物語:2017/06/04(日) 21:34:39.20 ID:n9aKjDeA.net
あっ(察し)

667 :名無しで叶える物語:2017/06/04(日) 21:43:49.72 ID:z+paWJqv.net
ことり「ちょっと待っててね。手続きを済ませてくるから」


そう言うとことりは、病院の受付に駆け寄りました。

私はその辺にあった椅子に座ってことりを待ちました。

周りをキョロキョロと見回すと、待合室なのに携帯で通話をしている人を見かけました。

そういえば、法律が変わって病院の待合室でも通話可能になったんでしたね。

私の中で合点がいったところで、ことりがやって来ました。

どうやら、手続きとやらは済んだようでした。


ことり「………行こう」


私たちはエレベーターに乗り込み、その階へと辿り着きました。

668 :名無しで叶える物語:2017/06/04(日) 22:08:17.40 ID:z+paWJqv.net
ことり「こっちだよ」


ことりは時々、私の方を振り向き、声掛けをしてくれました。

長く続く廊下は、照明が点滅を繰り返し、不気味さを演出していました。

私たちは人っ子一人いない廊下を、黙々と歩き続けました。


ことり「……着いたよ。ここ」


ことりは、ある部屋の前で立ち止まり、そう言いました。

その部屋の表札には、見慣れたあの名前がありました。



『高坂 穂乃果』

669 :名無しで叶える物語:2017/06/04(日) 22:09:17.28 ID:z+paWJqv.net
高坂穂乃果。

病室の表札には、確かにそう書いてありました。

その上には誰か他の人の名前が書かれてありました。それが誰だか私にはわかりませんでした。


ことり「海未ちゃん。扉、開けるよ?」


ことりは私の返事を待たず、二回ノックをした後、ゆっくりと、その重たい扉を開きました。



ことり「………穂乃果ちゃん」

穂乃果「ことりちゃん…。来たんだね…」

穂乃果「……海未ちゃんも」


私がずっと捜し求めていた彼女は、病院のベッドの上にいました。

670 :名無しで叶える物語:2017/06/04(日) 22:09:32.65 ID:odD/AhfE.net
あぁ…

671 :名無しで叶える物語:2017/06/04(日) 22:17:11.54 ID:qarwA6rU.net
C

672 :名無しで叶える物語:2017/06/04(日) 22:18:19.25 ID:qZRt8awU.net
うわぁ…そっちかぁ……きついなぁ

673 :名無しで叶える物語:2017/06/04(日) 22:21:37.17 ID:qarwA6rU.net
他の人の名前って米子さんのことかな
違うならそれはそれで悲しい物語

674 :名無しで叶える物語:2017/06/04(日) 22:40:00.86 ID:z+paWJqv.net
海未「ほの、か…?」

穂乃果「海未ちゃん…。久しぶり、だね…?よく電話で話してたし、あんまり久しぶりって感覚はないけど」

海未「………」


穂乃果は、病室の奥のベッドで横になっていました。

その周りには、様々なお見舞い品や娯楽品が積まれていました。

それは、穂乃果がここ数日ではなく、何ヶ月も前からこのベッドの上で暮らしてきたことを物語っていました。


海未「………何故、穂乃果はこんな所にいるんですか」

ことり「それは…」

穂乃果「……私が話すよ」

ことり「う、うん…」


穂乃果「海未ちゃん…。今まで隠してて、ごめん」

穂乃果「私はね…病気なんだ。それで、この病院に入院して治療してもらってるの」

海未「……病気だとしても、東京の病院で治療すればいいじゃかいですか…。何故、京都に?」

穂乃果「東京だと治療ができる病院がなかったんだ。だから、専門の治療を受けられる京都に移ったの」

海未「それが、去年の春のこと、ですか…」

穂乃果「うん、正解。海未ちゃんボッシュート〜!」

海未「………」

穂乃果「……ごめん」

675 :名無しで叶える物語:2017/06/04(日) 22:42:53.44 ID:z+paWJqv.net
いろんな感情が渦巻き、訳がわからなくなりました。

京都で女子大生をやっていると思っていた穂乃果が実は何かの病気で、それもその病気は一年も前から患っていて…。

私はそのことに気がつかず、穂乃果は一人でも上手くやっていると勝手に思い込み、悠々と過ごしてきました。

穂乃果は自分が病気であることを知られたくなかったのでしょう。だから隠していたのでしょう。

ですが、今思えば、この一年の中にヒントはたくさんあったんです。


穂乃果と電話をしている時に、いつも後ろの方で聴こえていたあの音…。

あの音は、待合室の騒めきやコール音、ストレッチャーを走らせる音だったんです。

穂乃果がルームメイトと称していた88歳の人もそうです。

穂乃果が言っていたルームシェアとは、病室の相部屋のことだったんです。

88歳の大学生なんて、普通に考えればおかしいと気づけたはずです。

ことりは、穂乃果は異世界にいると、いつも言っていました。

今になってようやく、ことりの言葉の意味が理解できました。

私たちがいる世界とは違う場所…。社会から隔絶された世界…。

ことりはそれをまとめて、異世界と形容したのでしょう。



隠されていたとはいえ、穂乃果の窮地に気づけなかった自分の不甲斐なさに、だんだん腹が立ってきました。

何故私は気がつかなかったんですか!私はこの一年何やってたんですか!

いつもの私なら、穂乃果のちょっとした変化も見逃さないのに…!

何故、気づいてあげられなかったんですか…!!

676 :名無しで叶える物語:2017/06/04(日) 23:00:47.12 ID:eKoQXcJx.net
ノック2回はトイレだよことりちゃん……

677 :名無しで叶える物語:2017/06/04(日) 23:16:29.65 ID:ixxCgbU4.net
性欲は人の目を曇らせるからね…

678 :名無しで叶える物語:2017/06/04(日) 23:23:38.91 ID:qarwA6rU.net
ちょっと1から読みなおしてくる

679 :名無しで叶える物語:2017/06/04(日) 23:33:03.10 ID:z+paWJqv.net
混乱していた私は、腹の底から湧き上がってきた怒りを自制できませんでした。


海未「何故、穂乃果はそのことを、私に教えてくれなかったんですか?」

穂乃果「それは…」

海未「ことりもですよ。ことりは、このことをずっと知っていたんですよね?」

ことり「うん…」

海未「いつから知っていたんですか?」

ことり「去年、私たちが音ノ水の受験を終えた後…」

ことり「私は穂乃果ちゃんに呼び出されて、病気のこと、そして京都に移ることを告げられたの」

海未「……何故、そのことを私には伝えてくれなかったんですか」

海未「知ってたのなら私に教えてくださいよ!私たちは幼馴染ですよね!?なのにどうして!私だけ除け者扱いなんですか!!」

海未「意味がわかりません!あなた達は何故今日に至るまで私に隠してきたんですか!」

海未「どうしてですか!何故教えてくれなかったんですか!?」

ことり「………」

680 :名無しで叶える物語:2017/06/04(日) 23:35:14.03 ID:z+paWJqv.net
ことり「言いたかったよ?穂乃果ちゃんが病を患ってるんだから、海未ちゃんにも教えなきゃって、真っ先に思ったよ?」

ことり「でも、言えなかった…。それは穂乃果ちゃん自身の意向でもあったし、私も言うべきじゃないと判断した」

海未「何故ですか…。何故、私に言うべきじゃないと…?」

ことり「だって………去年の冬頃から海未ちゃん、おかしくなっちゃったから…」

ことり「海未ちゃん…。お母さんが亡くなってから、壊れちゃったから…」

ことり「そんな海未ちゃんに、これ以上負担をかけたくなかった…。だからずっと、今まで隠していたの」


海未「………はあ?何言ってるんですか、あなたは…」

海未「私の母が亡くなった?何をバカなことを…。いくらことりとはいえ、そんな悪質な嘘は許しませんよ?」

ことり「忘れちゃったの…?海未ちゃんはちゃんと、お母さんのお葬式でご焼香してたでしょ?」


海未「そんなわけ…」


ことり「海未ちゃんがお父さんに勘当されて家を出たのも、海未ちゃんのお母さんの死が原因だって、お父さんから聞いたよ?」


海未「やめてください…」


ことり「海未ちゃん。目を逸らさないで、こっちを見て。現実を見て?」



海未「やめてって言ってるじゃないですか!!」

ことり「もう逃げないでよ、海未ちゃん!」

681 :名無しで叶える物語:2017/06/04(日) 23:37:26.99 ID:z+paWJqv.net
「どうかされましたか!?」

穂乃果「あ、すみません…。大声出しちゃって…」

「そう…?あ、そちらは穂乃果ちゃんのお友達?」

ことり「あ…、はい…」

「穂乃果ちゃんのお見舞いに来てくれたのね、ありがとう」

「穂乃果ちゃん、ここに来てからお年寄りの方とのお喋りがほとんどだったから、お友達と話せて本当によかったわ〜」

穂乃果「えっと…、その…」

「ああ、お取り込み中だったみたいね。失礼しました」

「……病室では、あまり大きな声で騒がないでくださいね?」



「………」


海未「すみませんでした…。つい頭に血が昇り、穂乃果に迷惑をかけてしまいました」

ことり「私も…、ごめんなさい」

穂乃果「ううん、いいよ。やっと二人が本音で話し合えたんだもん、嬉しいよ」

682 :名無しで叶える物語:2017/06/04(日) 23:39:09.85 ID:z+paWJqv.net
海未「………穂乃果の病気は、治るんですか?」

穂乃果「……たぶん、治らないと思うよ」

海未「そう、ですか…」

海未「穂乃果まで、いなくなったりしませんよね…?」

穂乃果「わからない…。でもね、私は治療を続けて、ちょっとでも長く生きようと思う」

穂乃果「海未ちゃんと約束したもんね!大学を卒業したら、結婚するって!あ、私は大学を卒業できないけど…」

穂乃果「でも、海未ちゃんが私の代わりに卒業してくれたら、約束は果たせるよね!」

穂乃果「だから私は、その日が来るまで………頑張って生きるね」

海未「……はい!」

683 :名無しで叶える物語:2017/06/05(月) 00:02:17.35 ID:5IBUyEn5.net
なるほど
ことりちゃんが言いよどむのはそういう意味だったのか
少し読み返すだけでも納得

684 :名無しで叶える物語:2017/06/05(月) 00:19:56.46 ID:LuB/PHPj.net
午後7時。面会時間が終了し、私たちは病院を後にしました。

そして、京都駅で新幹線に乗りました。

新幹線が走り出し、車窓からは京都が離れていく光景が見られました。


今日一日にいろんなことがあり過ぎて、頭がパンクしそうです。

穂乃果が音ノ水に入らなかったのも、京都に行ったのも…

私が京都に来ることを嫌がったのも、合コンなんて妄言を吐いたのも、電波が悪かったのも…

そのすべては、今の穂乃果の境遇を暗に示していたのですね。

………もし、穂乃果の病気のことを伝えられていたとしたら、私には何ができたのでしょうか?

穂乃果の為に、何をしてあげられたのでしょうか?

685 :名無しで叶える物語:2017/06/05(月) 00:20:57.47 ID:LuB/PHPj.net
ことり「………穂乃果ちゃんは、自分の病気は治らないって言ってたけど…」

ことり「でも、治ったケースは今までに何例もある病気なんだよ」

海未「では、穂乃果も治るかもしれない…と?」

ことり「絶対はないもん。いつか治るって…、また三人で笑いあえるって、信じてるよ」

海未「そう、ですね…。いつか、また………」



こうして、私たちは東京へと帰ってきました。

帰り道の別れ際、ことりは私に、最後のメッセージを残しました。



ことり「海未ちゃん。お誕生日おめでとう!」

海未「え…?あ、今日は私の誕生日だったんですね…。すっかり忘れていました」

ことり「今日の観光ツアーがプレゼントだったんだけど…。いかがでした?」

海未「楽しかったですよ。京都観光だけでなく、最後には穂乃果と会えましたし。お返しが大変で困りますね」

ことり「うんうん、よかったよかった!それじゃあ〜!」



そう言い残すと、ことりは夜の闇へと消えてしまいました。

私もすぐに、寮へと帰りました。

今は何時でしょうか?

わかりませんが、少なくともまだ今日は、私の誕生日です。

686 :名無しで叶える物語:2017/06/05(月) 00:28:05.09 ID:LuB/PHPj.net
私は学生寮へと帰ってきました。

寮の部屋は鍵が閉まっていたので、私は合鍵を使い鍵を開けました。

部屋の中は真っ暗だったので、私は電気を点け、部屋へと上がり込みました。

日付が変わる前に帰って来れたので、k子さんが私の誕生日に祝砲をあげてくれると期待していましたが、生憎の留守です。

きっとまたどこかで、夜の遊びでもしているんでしょうね。

私はそんなことを考えながら、ベッドに座りました。

そして、そこでようやく気がつきました。

部屋の中から、k子さんの荷物一式が失くなっていることに。


次の日も、次の日も、k子さんは帰ってきませんでした。

k子さんは、姿を消しました。

687 :名無しで叶える物語:2017/06/05(月) 00:29:07.56 ID:LuB/PHPj.net
今日中に終わらせたかったけど無理なので明日に続く

688 :名無しで叶える物語:2017/06/05(月) 00:35:14.67 ID:50Ny5Qld.net

終わってしまうのか……

689 :名無しで叶える物語:2017/06/05(月) 00:52:36.00 ID:hhgtLN5Y.net
>>687
終わるのはSS自体が?
チャプター#23-bが?

690 :名無しで叶える物語:2017/06/05(月) 01:42:11.51 ID:iu7dPpCE.net
海未ママなら俺の横で寝てるで

691 :名無しで叶える物語:2017/06/05(月) 05:47:18.73 ID:E9wFAmL3.net
楽しみが…乙
待ってる

692 :名無しで叶える物語:2017/06/05(月) 07:49:55.43 ID:0V9CwY8Z.net
独特な雰囲気があって引き込まれる

693 :名無しで叶える物語:2017/06/05(月) 12:35:43.12 ID:f3vEq7TJ.net


694 :名無しで叶える物語:2017/06/05(月) 21:15:52.69 ID:c9gqg8Uw.net
今日の夜中でもええんやで😊

695 :名無しで叶える物語:2017/06/05(月) 21:43:20.76 ID:BZNfkDrE.net
早く書いてくれないと娘が危篤になっちゃう

696 :名無しで叶える物語:2017/06/05(月) 23:17:34.49 ID:LuB/PHPj.net
#24

3月末。

k子さんがいなくなってから、早二週間。


海未「………」



私がこの寮に来てから、もう一年が経つ。

そんな物思いにふけながら、私は枕に顔を伏せた。



遠い遠い世界で、芳しくも懐かしい音がした。

それは、この部屋の扉が開く音だった。



k子「やっぱり鍵開けたままだ。無用心だよ、海未ちゃん」

海未「k子さん…」

k子「よっ、元気してた?」

697 :名無しで叶える物語:2017/06/05(月) 23:19:30.36 ID:LuB/PHPj.net
海未「k子さん。どうしたんですか…?」

k子「ちょっと忘れものを思い出したから戻ってきただけ。すぐに出て行くよ」

海未「忘れもの…?」

k子「うん。海未ちゃんへの、別れの挨拶をね」

k子「ごめんね海未ちゃん?黙って出て行っちゃって。今私、実家に戻ってるんだ」

海未「実家…」

k子「実は私、大学を卒業したら田舎に帰郷して、家業を継ぐよう言われてたの。もう何年も前から、ずっとね」

k子「海未ちゃんは勘違いしてたみたいだけど、私は別に就活をサボってたわけじゃないんだよ?」

k子「就職先は、もうとっくに決まっていたってわけ」

海未「………」

k子「そんな悲しそうな顔しないでよ。なんか別れ惜しくなっちゃうじゃん」

海未「すみません…」

k子「もし寂しくなったらいつでも会いに来ていいよ。私は北海道で、寂れた店の看板娘やってるからさ」

海未「……はい」



私はそう答えたが、もうこの人と会うことはないと、心のどこかで分かっていた。

698 :名無しで叶える物語:2017/06/05(月) 23:20:46.63 ID:LuB/PHPj.net
k子「それじゃ、そろそろ行くね」

海未「はい、先輩。お元気で」

k子「………」



k子「……結局最後まで、私のことを名前で呼んでくれなかったね」

海未「え…」

k子「海未ちゃんはいつも私のこと、"先輩"とか"k子さん"って呼んでたけど、一度も名前で呼んでくれたことはなかったよね」

k子「海未ちゃん。もしかして、私の名前忘れちゃったの?」

海未「……そんなわけありませんよ。忘れるわけ、ありません」


今まで私は無意識に、あなたの名前を認識しないようにしていた。

しかし、それでも、あなたの名前を忘れたことはなかった。

699 :名無しで叶える物語:2017/06/05(月) 23:22:48.01 ID:LuB/PHPj.net
海未「さようなら…。高坂さん」

高坂「なんだ、ちゃんと覚えてるんじゃん」



高坂さんは最後にその笑顔を残し、私たちの部屋から立ち去った。


再び静寂に包まれた部屋で、私は鞄に入っている求人誌を取り出し、その頁を開いた。

そして、求人情報を眺めていた私は、ある決意を固めた。





一年目は過ぎ去り、私の大学生活も、二年目へと突入した。

700 :名無しで叶える物語:2017/06/05(月) 23:24:16.32 ID:LuB/PHPj.net
ここまで

これで全体の半分くらい終わった

701 :名無しで叶える物語:2017/06/05(月) 23:26:05.07 ID:2QSXl/7Y.net

伏線の張り方とか上手くて引き込まれる

702 :名無しで叶える物語:2017/06/05(月) 23:32:04.56 ID:uUIgSqEB.net
これで半分か
長編だな

703 :名無しで叶える物語:2017/06/05(月) 23:38:21.49 ID:HAhTU7ia.net
まだしばらく楽しめそうだ

704 :名無しで叶える物語:2017/06/06(火) 00:24:48.99 ID:FIOxjR2l.net
やんやん謎が多いやん
これで半分なら1スレじゃたりなさそうだね

705 :名無しで叶える物語:2017/06/06(火) 03:04:33.82 ID:HgEqkUzx.net
そうなると、スレタイも納得だな

706 :名無しで叶える物語:2017/06/06(火) 05:08:47.81 ID:chfdHz7D.net
乙。次スレ待ったなしだな。

707 :名無しで叶える物語:2017/06/06(火) 05:34:39.47 ID:Pub/eTJX.net
楽しみに待ってる

708 :名無しで叶える物語:2017/06/06(火) 06:36:43.84 ID:4zWCGNu+.net
私待つわ

709 :名無しで叶える物語:2017/06/06(火) 08:43:22.16 ID:KVqcKaQC.net
いつまでも待つわ

710 :名無しで叶える物語:2017/06/06(火) 08:53:59.01 ID:TzrHMj68.net
たとえ穂乃果が振り向いてくれなくても

うみん

711 :名無しで叶える物語:2017/06/06(火) 11:12:12.38 ID:hVIbbAxo.net
海未ちゃん的には穂乃果と無関係な高坂さんなんてのは認めがたい存在なんだな

712 :名無しで叶える物語:2017/06/06(火) 18:53:26.28 ID:KlNwrCnm.net


713 :名無しで叶える物語:2017/06/07(水) 00:39:38.13 ID:cuG346Rx.net
しゅ

714 :名無しで叶える物語:2017/06/07(水) 01:39:43.13 ID:am4pqbWz.net
結構考えちゃったけど苗字同じなだけか

715 :名無しで叶える物語:2017/06/07(水) 03:03:44.31 ID:jMRc2fNl.net


716 :名無しで叶える物語:2017/06/07(水) 06:57:44.17 ID:tbgofr6N.net
どうでもいいけど地の文の文体が変わってるのに違和感

717 :名無しで叶える物語:2017/06/07(水) 13:44:38.84 ID:5/sINe/Y.net


718 :名無しで叶える物語:2017/06/07(水) 18:50:29.20 ID:hxA+crmY.net
しゅ

719 :名無しで叶える物語:2017/06/07(水) 20:53:33.68 ID:2cSz8xEn.net


720 :名無しで叶える物語:2017/06/07(水) 23:23:55.52 ID:8qdx4dIP.net
ベースはノルウェイの森だなあ

721 :名無しで叶える物語:2017/06/08(木) 06:15:06.38 ID:QTcZRrgR.net


722 :名無しで叶える物語:2017/06/08(木) 08:19:48.88 ID:7bFUvQGd.net


723 :名無しで叶える物語:2017/06/08(木) 12:54:52.14 ID:yTDN/PGJ.net


724 :名無しで叶える物語:2017/06/08(木) 14:36:22.55 ID:Gl+5HDvp.net
ラブライブssにしては珍しく文学チック
海未ちゃんのキャラ崩壊気味のギャグも最初は笑えたけど深い意味があったんだな

725 :名無しで叶える物語:2017/06/08(木) 23:03:53.74 ID:3RFhXmZI.net
ステンバーイ

726 :名無しで叶える物語:2017/06/09(金) 00:33:53.35 ID:8h+obb4d.net
保守ありがたい

土日に更新します

727 :名無しで叶える物語:2017/06/09(金) 06:24:14.90 ID:Pgy1ygw4.net
待ち遠しいな

728 :名無しで叶える物語:2017/06/09(金) 07:54:26.46 ID:Ozp/xvdn.net


729 :名無しで叶える物語:2017/06/09(金) 16:23:09.55 ID:c1IIN2iB.net
うみちゃん

730 :名無しで叶える物語:2017/06/09(金) 23:02:21.30 ID:bEYZ2oAd.net
おやすみ

731 :名無しで叶える物語:2017/06/10(土) 06:09:11.46 ID:NDd9sW0W.net
ho

732 :名無しで叶える物語:2017/06/10(土) 08:37:48.30 ID:bshqQwnx.net
ほも

733 :名無しで叶える物語:2017/06/10(土) 21:54:17.72 ID:Uzvn0JNE.net


734 :名無しで叶える物語:2017/06/10(土) 21:58:46.86 ID:u8D0CGpw.net
そろそろか

735 :名無しで叶える物語:2017/06/10(土) 23:46:06.35 ID:6WkYH7bM.net
まだか

736 :名無しで叶える物語:2017/06/10(土) 23:54:26.08 ID:BSsVXr/c.net
#25

音ノ水女子大学 講義棟


「……というわけで、この思考実験によって示された人間の心理の変容についてまとめ、明後日までにレポート提出するように」

「うわっ、めんどくさ…」

「他にもレポート溜めてるし…超やばい〜」

海未「………」



「……あれ?園田さんだ」

「園田さんも心理学を履修してたんだ。全然気がつかなかった〜」

「ねえ、園田さんも今から、レポート作りに行かない?」

「みんなで協力した方が早く終わるでしょ?だから、園田さんも一緒にどう?」

海未「すみません。これからバイトがあるので」

「あ、そうなんだ…」

海未「では失礼します」


「………なんか、変じゃなかった?」

「園田さんってあんな人だったっけ…?」



海未「………」

737 :名無しで叶える物語:2017/06/10(土) 23:54:46.20 ID:+T8Q3Kg9.net
お!

738 :名無しで叶える物語:2017/06/10(土) 23:55:05.78 ID:BSsVXr/c.net
海未「カードお預かりします………お返しします」

海未「CD3点で450円です」

海未「……50円のお返しです」

海未「レンタル期限は7泊8日です。ありがとうございました」



「園田さん、お疲れさま。もう上がっていいよ」

海未「はい。お疲れさまでした」

「いやー、それにしても園田さん頑張ってるねー。仕事もすぐに覚えてくれたし、ミスもなく完璧」

「ただ、もうちょっと愛想よく仕事をしてくれたら嬉しいなぁ………なんて」

海未「……頑張ります」

「じゃあ、明日もよろしく〜」



海未「………」

739 :名無しで叶える物語:2017/06/10(土) 23:56:00.23 ID:BSsVXr/c.net
海未「失礼します、教授」

「園田くんか。どうかしたのかね?」

海未「先日の講義を受け女性史に興味を持ちまして、もっと詳しく話を聞きたい思い教授の元を訪ねた次第です」

「ほう、それは感心だ。話を聞きたいのなら、どうぞ部屋に入りなさい。講義の続きをしてあげよう」

海未「ありがとうございます」

「しかし、不真面目代表の君からこんな言葉が聞けるとは。二回生になって心機一転したようだな」

海未「はい」



私は、変わろうとしていた。

740 :名無しで叶える物語:2017/06/10(土) 23:57:21.51 ID:BSsVXr/c.net
ことり「………あ、海未ちゃん」

海未「……どうも」

ことり「もう、授業終わったの?」

海未「はい。今から帰るところです」

ことり「そっか…」


ことり「……新学期になってから、海未ちゃんと中々会えなくなっちゃったね」

ことり「ただでさえ学部が違うせいで一緒の授業がないのに、ごはんを一緒に食べることもできないなんて…」

海未「仕方ありませんよ。二回生になってお互い忙しくなり、時間を合わせることが難しいのですから」

ことり「うん…」


ことり「海未ちゃん、4月からバイト始めたんだよね?」

海未「はい。近くのTSUTAYAで働いています」

ことり「未だに信じられないよ。海未ちゃんが能動的に働こうと思うなんて」

海未「生活費を稼がないといけませんので。それに、奨学金返済のために、今から少しでも貯金を作っておきたいですから」

海未「今までの私であれば、そのような考えに至らなかったでしょう。ですが、私は変わりました」

海未「私はもう、誰かに頼るだけの私ではありません」


海未「……では、そろそろバイトの時間ですので、失礼しますね」

ことり「うん…」


ことり「ねえ、海未ちゃん。私たち、また会えるかな?」

海未「きっと、すぐに会えますよ」

741 :名無しで叶える物語:2017/06/10(土) 23:59:06.91 ID:BSsVXr/c.net
私は今まで、多くの人に迷惑を掛けてきた。

数え切れない程、多くの人に。

春休み、そのことに気づいた私は、自分が他人に依存していないと生きられない寄生人間であることを痛感した。

母に依存し、穂乃果に依存し、ことりに依存し、そして先輩に依存し…。

私は、まるで寄生虫のような自身を恥じた。他人に寄生している自分の姿を想像するだけで厭気が差した。


自己嫌悪に陥った私は、決意した。

今までの自身を省み、改め、そして変わることを心に決めた。

もう誰にも迷惑を掛けない、面倒も掛けない。誰の助けも借りない。



私は、独りで生きていく。

742 :名無しで叶える物語:2017/06/11(日) 00:05:45.34 ID:H+eAxlpp.net
#26-a

音ノ水女子大学本館1階。

廊下の壁に設けられた掲示板の前には、一人佇む真姫の姿があった。


海未「………真姫」

真姫「!?う、海未…?あ…久しぶり、ね」

海未「お久しぶりです。キャンパスライフはいかがですか?」

真姫「まあ、ぼちぼちってところね。……そんなことより、海未!こんな所で何してるのよ?」

海未「そのままお返しします。真姫は掲示板の前に立ちつくして、何を見ているのですか?」

真姫「……サークルの、勧誘のチラシよ」


私は視線を掲示板の方へやった。

掲示板には、部活動・サークルの勧誘用のポスターが所狭しと貼られていた。


海未「真姫は、どのサークルに入りましたか?」

真姫「………まだ、考え中」

海未「考え中、ですか。もう大抵のサークルは新歓を済ませているでしょうし、入部するにしては遅すぎるのでは?」

真姫「いいのよ、新歓に行くつもりなんてハナからなかったわ。私、急性アルコール中毒でだけは死にたくないもの」

743 :名無しで叶える物語:2017/06/11(日) 00:07:29.01 ID:H+eAxlpp.net
真姫「サークル、サークル…」

海未「絶対に入らないといけない校則があるわけでもないですし、無理に入部することもないんですよ」

真姫「そうね…。でも、何事も経験だもの、入って損はないでしょ?」


真姫は髪の毛を指で遊ばせながら、私の方を見向いた。


真姫「……私、海未と同じサークルに入ることにするわ。海未はどこのサークルに所属しているの?」

海未「それを訊いたところでどうしようもありませんよ。真姫は、真姫がやってみたいと思ったサークルに入るべきです」

真姫「わかってるわよ、そんなこと…」

真姫「……でも私、初対面の人達と話すの苦手だから…。海未と同じサークルなら、少しは安心できると思ったのよ」

海未「真姫を助けてあげたいのは山々ですが、生憎、私はサークルに所属していませんので力になれそうにありませんね」

真姫「そうなの…?だったら、絵里のサークルに入るわ」

海未「絵里はサークル以外に様々なボランティア活動に取り組んでいるので、サークルには滅多に顔を出さないと思いますよ」

真姫「じゃあ、ことり…」

海未「ことりは園実習関連で何かと忙しいようなので、同じくサークルには顔を出さないかと」

真姫「えーっと…。じゃあ、それじゃあ………」


改めて掲示板の方へ視線をやると、あるサークルの勧誘ポスターが目に飛び込んできた。

744 :名無しで叶える物語:2017/06/11(日) 00:13:44.81 ID:H+eAxlpp.net
海未「真姫…。ピアノサークルなんてどうですか?真姫にぴったりです」

真姫「………」


真姫は黙ったまま、視線をチラチラとピアノサークルのポスターへと送った。

真姫はそのサークルのポスターがどこに貼られているのかを知っていた。恐らくこのサークルは候補の中の一つだったのだろう。


海未「真姫は、音楽の専門的な勉強をする為に、この大学に入学したんですよね」

真姫「うん…」

海未「だったら、ピアノ演奏ができるこのサークルに入ってみるのも悪くないでしょう」

海未「活動も年に数回のコンサートや発表会だけのようですし、交流回数が少ない分、人間関係を気にする必要もありません」

真姫「うん…、そうね…」


真姫は目を伏せながら、手に持っていた紙を私に手渡した。


海未「入部届…?ピアノサークル………なるほど。真姫は最初から、ここに入部しようと決めていたんですね」

真姫「入学式の日に勧誘を受けてから、ずっと入りたいと思ってたのよ?でも、気づいたらこんなに時間が経っていた…」

真姫「最初の機会を逃して以来、この紙を渡すタイミングを失っちゃって…。結局渡せず仕舞いで、こうして毎日掲示板の前に佇むことになってたのよ」

海未「何やってるんですか…」


私は呆れつつも、真姫の決断に付き添うことにした。

745 :名無しで叶える物語:2017/06/11(日) 00:16:59.33 ID:H+eAxlpp.net
その後、踏ん切りのついた真姫に同伴し、真姫が入部届を渡し終えるまでしっかりと見届けた。


真姫「ありがとう、海未。これでようやく、私も素敵なキャンパスライフを送れそうな予感がするわ」

海未「さいですか。また入部届を提出したい時はいつでも呼んでください」

真姫「大丈夫よ、これ以上サークルに入るつもりはないわ。私は凛みたいにフットワークは軽くないから」

海未「凛…」

海未「そういえば、真姫は凛と同じサークルに入ることもできたのではありませんか?」

真姫「いや、無理よ。凛は運動部も文化部も関係なく、殆どのサークルに入部届を出してたわ」

海未「……真姫とは正反対ですね」

真姫「なのに、どこのサークルの新歓にも出てないそうだし…。もう意味分かんない!」



私は真姫の横に並びながら、凛のことを考えていた。

入試の時以来、私は凛と言葉を交わしていなかった。

キャンパス内で見かけることは幾度かあったが、私は凛の後ろ姿に声を掛けることができなかった。

私はいつも、彼女との会話が始まるきっかけを探していた。

746 :名無しで叶える物語:2017/06/11(日) 00:17:41.06 ID:H+eAxlpp.net
また夜に更新

747 :名無しで叶える物語:2017/06/11(日) 00:31:11.57 ID:qOotAVSw.net

海未ちゃん…

748 :名無しで叶える物語:2017/06/11(日) 01:36:57.05 ID:SzKZt7cA.net
スレタイに感じた不純はどこへ……

749 :名無しで叶える物語:2017/06/11(日) 08:21:56.01 ID:JI8DaKEF.net
純粋じゃないか欲望にストレートで

750 :名無しで叶える物語:2017/06/11(日) 16:02:07.86 ID:TXV3U2al.net
ほしゅ

751 :名無しで叶える物語:2017/06/11(日) 20:47:54.18 ID:RLl9RqgD.net


752 :名無しで叶える物語:2017/06/11(日) 23:11:26.69 ID:H+eAxlpp.net
今日更新できそうにない…
明日の夜に更新します

753 :名無しで叶える物語:2017/06/12(月) 06:08:22.81 ID:x4aGxjxG.net


754 :名無しで叶える物語:2017/06/12(月) 07:36:54.55 ID:7luecZhA.net


755 :名無しで叶える物語:2017/06/12(月) 07:55:56.74 ID:hjZaMVNw.net


756 :名無しで叶える物語:2017/06/12(月) 10:23:23.02 ID:lcaSfZ/r.net


757 :名無しで叶える物語:2017/06/12(月) 12:52:43.11 ID:QYBJgNdD.net


758 :名無しで叶える物語:2017/06/12(月) 16:33:56.26 ID:KP8Fdpzf.net


759 :名無しで叶える物語:2017/06/12(月) 23:59:22.80 ID:1KcEpMAF.net
#26-b

この日、3限目の講義を終えた私は、大学の図書館へと向かった。

本来ならこの曜日の4限にはドイツ語の講義があり、本来なら私は講義室まで向かわなければならなかった。

しかし、本館の掲示板に、今日のドイツ語が休講であることを報せる掲示が貼り出されていたのを、今朝私は確認していた。

急に講義が抜け、次の講義までの時間を持て余していた私は、図書館で暇潰しをしようと思い立った。そして図書館へと向かったのだ。



私は小説が読みたい気分だったので、本棚に設けられた小説コーナーへと入り、読みたい本を物色した。

まず、ハリー・ポッターを読もうと思ったが、講義の空き時間で読むにはあまりにも文量が多いため諦めた。

他に何か良い作品がないかと彷徨っていたら、本のカバーが特徴的な、その小説に出会った。

確か何年か前に実写映画化されており、かなりの知名度を誇る作品だ。

私はその本を手に取り、図書館の端にある読書席に座って、その小説を読むことにした。

760 :名無しで叶える物語:2017/06/13(火) 00:00:05.30 ID:cLCT9UDm.net
私はこの小説を読んだことはなかったが、映画が公開されたおかげで大まかなあらすじは掴んでいた。


大学生の主人公はある日、同じ高校に通っていたヒロインと再会する。

それを機に主人公と彼女は定期的に会うようになり、次第にその仲も深くなっていく。

しかし、高校時代に起きたある出来事がきっかけで、彼女は心に大きな傷を負っていた。

それを知った主人公は彼女を救おうとするが、その闇はとても深く、主人公もまた…。

これは、主人公とヒロインの淡く切ない恋を描いた、純愛ラブストーリー………。



私が頭の中でそれっぽい映画予告を作っていると、5人のグループが卓を囲み、何かの話をしている光景が目に映った。

グループが使っている机は大人数で囲めるサイズで、よく図書館にある大机だった。

その大机は本棚が立ち並ぶエリアの手前にあり、今私がいる読書スペースからは少し離れた位置にあった。

私はそのグループが何をしているのか、考察をした。

761 :名無しで叶える物語:2017/06/13(火) 00:07:05.27 ID:cLCT9UDm.net
「グループは机を囲み、何かを話しています…。会議をしているのでしょうか?」

「全員、紙にペンを走らせていますね。何かの課題でしょうか?」

「傍らには分厚い本…。あれは辞典ですか?」

「……なるほど。あのグループは同じ講義を取っている仲間で、出された課題を相談や質問をしながら進めているわけですね」

「恐らくその講義は外国語で、課題はその言語でレポートを書く………といったところでしょうか」

「わざわざ図書館で課題をしている理由は、あの分厚い辞典を使って日本語を外国語に訳すためでしょうね」

「私もドイツ語の課題をする時、図書館で同じようなことをしていますから、すぐに分かりましたよ」



私は勝手に解決し、勝手にスッキリした。

しかし、私は何故、あのグループのことをこんなに気にしているのか。

それは簡単な答えだった。

あのグループの中に、凛が居るからだ。

762 :名無しで叶える物語:2017/06/13(火) 00:55:28.52 ID:cLCT9UDm.net
私は机の上に置いたまま忘れられていた小説のことを思い出し、頁をめくり読み始めた。

だがしかし、私はちょうどグループのいる大机の方を向いて座っていたので、凛の姿が目に入って読書に集中できなかった。

小説は、主人公が学生寮に入ったところで止まり、これ以上物語が進まなくなってしまった。


離れた場所から見る凛は、凛々しい顔で課題に取り組み、とても利発そうに見えた。

私はずっと、凛のことを見ていた。

すると、凛もこちらの視線に気づいたようで、グループの人達に何か言葉を残し、席を離れこちらへと駆け寄ってきた。



凛「海未ちゃん。こんな所で、独りで、一体何してるの?」

海未「……読書をしていたんです」

凛「あ、そうだったの?ごめん、もしかして邪魔しちゃったかな」

海未「い、いえ。ちょうど読むのをやめようと思っていたところだったんです。この小説、いつ面白くなるんですかね…?」

凛「そっか、良かった。じゃあもうちょっとお話しよっか。隣座ってもいい?」

海未「ええ、どうぞ」


凛は隣の席から椅子を拝借し、私の横へと並べ、そこに座った。

763 :名無しで叶える物語:2017/06/13(火) 01:27:11.78 ID:cLCT9UDm.net
海未「入学してしばらく経ちますが、もう大学には慣れましたか?」

凛「ううん、全然。授業はいっぱいあるし、講義は長いし、施設の場所も名前もさっぱり覚えられないし…」

海未「そんなものですよ。私も、この大学での生活に慣れるまで、かなりの時間を要しましたから」

凛「ふーん」

海未「……あ、真姫から聞いたのですが、凛はあらゆるサークルに見境なく入部届を提出したそうですね」

凛「あー、うん。そうだね」

海未「どのようなつもりで、そんなことをしたのですか?」

凛「入学式の日にさ、正門から本館までの道に先輩方がずらりと並んで、必死にサークルの勧誘してたでしょ?」

海未「はい。毎年入学式の日は勧誘が激しいですからね」

凛「その時にね、私、言われたんだ。『入部お願いします』って」

凛「だからその期待に応えなきゃいけないって思って、勧誘を受けたサークルはすべて入部したよ」

凛「まあでも、新歓が終わって辞めてく人も多いみたいだし、私も便乗して全部退部しようと思ってるよ」

海未「そうですか」


話の途中から凛が何を言っているのか分からなくなったが、私はとりあえず相槌をうって誤魔化した。

764 :名無しで叶える物語:2017/06/13(火) 01:39:48.84 ID:cLCT9UDm.net
海未「そういえば、凛は普段、真姫と一緒ではないんですね」

凛「どういうこと?」

海未「高校時代の凛は、いつも誰かにくっ付いていた印象があるんです。だから意外だったんです。凛と真姫が連んでいないことが」

凛「学部が違うから、中々会う機会がないだけだよ。お昼ごはんはできるだけ一緒に食べるようにしてるし、別に絶縁したわけじゃないよ?」

凛「……そうだね。高校時代の凛がべったりなら、今の凛はやんわりってところかな」

海未「よく分かりません」


私は、例のグループがこちらを見ていることに気がついた。

凛が突然席を離れ私の元に来たことで、混乱しているのだろう。


海未「凛…。向こうに戻らなくてもいいんですか?」

凛「ああ、いいのいいの。私はいつもあのグループと連んでるんだけど、どうにもあの空気が苦手なんだよね」

凛「同調圧力って言うのかな?みんな、同じじゃないと気が済まないらしいんだ」

凛「みんな同じ服で、同じメイクで、同じ持ち物で、同じ喋り方であることを強制してくるの。おかしいと思わない?」

凛「その内、生理も同じ周期にしろ!…とか言い出すんじゃないかって、いつもビクビクしてるよ」

海未「そうですか…。凛も色々と大変ですね」

凛「そうなの。だから偶にはこうして、息継ぎしないとね」

765 :名無しで叶える物語:2017/06/13(火) 02:11:57.16 ID:cLCT9UDm.net
凛は、何かを考えるような仕草を見せた。

そして、その二つの目で私を捉え、問い掛けた



凛「………海未ちゃんってさ、ドイツ語の授業取ってるよね?」

海未「はい。取ってますよ」

凛「どうして私がそのことを知っているのかって言うと、私も同じドイツ語を受講しているからなんだよね」

凛「それも、知ってるよね?」

海未「ええ、教室で何回か見かけましたから」


凛「………海未ちゃんは講義の時、いつも一人で前の方の席に座ってるよね?」

海未「……はい」

凛「どうして?」

海未「………」


私は少し間を置き、それから語り始めた。


海未「私はこれまで、たくさんの人に迷惑を掛けてきました。そして、自分がいかに最低な人間であるかを知りました」

海未「私は自己嫌悪の果てに、変わろうと決意したんです。もう誰にも、迷惑を掛けないよう…」

凛「あ、ごめん。その話、長くなりそう?」

海未「今話しているのがプロローグで、エピソードは全八章で構成されています」

凛「そんなに長いならもういいや。私はもう行くね?英語の課題がまだ残っててさ、今日中に出さなくちゃいけなくて結構焦ってるんだ」

海未「焦っていたのに、どうして私の元へと来たのですか…?」

凛「だって、海未ちゃんと二人きりになれそうなチャンスだったもん。私は久しぶりに海未ちゃんと話したかったんだよ」

海未「そ、そうですか…」

凛「それじゃ、また授業で!」



そう言うと、凛はまたあのグループの輪へと戻り、仲間内で何か言葉を交わした後、再び課題に取り組み始めた。

私は、止まってしまった小説を元あった場所へ直し、図書館を後にした。

図書館を出る際、司書が私を気味の悪そうな目つきで見ていた。

恐らく私の顔は、表情が弛み、だらしなく若気ていたのだろう。

766 :名無しで叶える物語:2017/06/13(火) 02:13:09.12 ID:cLCT9UDm.net
ここまで

767 :名無しで叶える物語:2017/06/13(火) 02:24:03.10 ID:K/Y4MuHO.net

グループに属して一人称も語尾も改まった凛ちゃんなんて…割りとありそうだから怖い
聞き流す時もわかるにゃーと言って欲しいよう

768 :名無しで叶える物語:2017/06/13(火) 03:16:12.39 ID:PQ6rsPoE.net
大学生になったら皆色々変わるもんだな
まぁこの作者の世界観の中だけの話と思うが

769 :名無しで叶える物語:2017/06/13(火) 05:42:15.52 ID:ECkOkRoa.net
普通にしてるだけで賢そうに見える

770 :名無しで叶える物語:2017/06/13(火) 13:06:10.31 ID:OpHgNmr4.net


771 :名無しで叶える物語:2017/06/13(火) 17:14:53.70 ID:oM2e1m44.net
大学生になったら高校の時より大人しくなる子いるよねー

772 :名無しで叶える物語:2017/06/13(火) 23:24:28.56 ID:+1oMeJl9.net
相変わらず素晴らしい

773 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2017/06/14(水) 07:21:04.67 ID:7OvppKc+.net
.

774 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/14(水) 07:48:33.59 ID:IHRxIOqU.net


775 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/14(水) 15:44:33.63 ID:qzW+D8Sm.net
保守

776 :名無しで叶える物語(禿)@\(^o^)/:2017/06/14(水) 17:50:51.30 ID:5UWfVW+k.net


777 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/14(水) 23:57:27.10 ID:CKP896B7.net
しゅ

778 :名無しで叶える物語(わたあめ)@\(^o^)/:2017/06/15(木) 00:15:43.31 ID:yDpzKMkr.net


779 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/15(木) 05:47:14.62 ID:0YB4amLr.net
しゆ

780 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/15(木) 06:07:14.91 ID:uz954eZs.net
このボリュームでまだ半分ってすごい

781 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/15(木) 12:10:14.30 ID:stsWoMwP.net
2スレ目に行くのは確実だな

782 :名無しで叶える物語(禿)@\(^o^)/:2017/06/15(木) 12:16:28.02 ID:4xr4J2Qi.net


783 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/15(木) 15:20:29.40 ID:tjayMxyp.net
ほっほほっほちゃん

784 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/15(木) 18:21:00.89 ID:GmYwtJka.net
名作の予感

785 :名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/:2017/06/15(木) 23:47:42.94 ID:6uStlf7e.net


786 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/15(木) 23:53:57.07 ID:3UuTI4nB.net
やっと追い付いた
保守

787 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2017/06/16(金) 07:38:33.95 ID:1QuMONhM.net


788 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2017/06/16(金) 15:41:36.39 ID:hIYSw3uv.net


789 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2017/06/16(金) 23:55:41.65 ID:czZzKHwK.net


790 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/17(土) 06:56:53.19 ID:HjOuLHA4.net


791 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/17(土) 08:51:54.53 ID:P9xEA09z.net


792 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2017/06/17(土) 17:19:49.76 ID:W0FpeyoE.net


793 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/17(土) 21:34:52.75 ID:s9RAY1zR.net


794 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/17(土) 22:39:06.82 ID:J5jsomox.net


795 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/17(土) 23:56:57.81 ID:7AMxfPmc.net
明日昼更新

796 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/18(日) 07:38:40.90 ID:hiSeUADK.net
了解

797 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/18(日) 13:44:53.32 ID:0zyftieM.net
#27

春の麗らかな陽気は消え、少しずつ夏の兆しが見えてきたこの頃。

私はこの日も、朝からバイトに勤しんでいた。

昨夜未明から降り始めた雨は店の客足を遠のかせていた。

「もう客は来ないだろう」という店長の判断で、私は昼にバイトを早上がりすることになった。

私は更衣室で着替えを済ませ、鞄から携帯を取り出した。

携帯には、一通のメールが届いていた。それは絵里からのものだった。

798 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/18(日) 13:45:28.79 ID:0zyftieM.net
件名:いまひま?

暇ならどこかでお茶でもし
ましょう。うみに見せたい
ものがあるの。
お返事、お待ちしてまふ。



絵里の言う"いま"とは、私がこのメールを開いた今ではなく、絵里がメールを送信した今のことを指しているのだろう。

私はこのメールを受信した時刻を確認した。

14:09。どうやら、メールは"今"から10分程前に送信されたようだ。

私は返事を綴った。



Re:いまひま?

お茶、いいでふね。
今ちょうど暇になったとこ
ろだったので、お付き合い
させてください。



それから3分程して、返事が来た。



Re:Re:いまひま?

人の揚げ足を取らない!

799 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/18(日) 13:46:28.17 ID:0zyftieM.net
絵里が指定してきた店は、駅の程近くにあるスターバックスだった。

私が戸を潜ると、店の店員は生気の抜けた声で私の来店を歓迎した。

客も疎らな店内を見回すと、奥の窓際の席から、金髪ポニーテールが覗いていた。私はその席へと向かった。

私がその金髪ポニーテールに近づくに連れ、金髪ポニーテールは大きく揺れ動いた。


海未「お待たせしました」

絵里「来たわね、待っていたわ」


私は軽く一礼し、上座のソファに腰を下ろした。

外はまだ雨が続いており、ガラス窓は雨に打たれ、視界がぼやけていた。


絵里「雨の日って嫌なのよね…。なんだか、自分だけが世界から取り残されたような気がするの」



私は自分の爪を見つめながら、適当に相槌をうった。

800 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/18(日) 13:48:20.25 ID:0zyftieM.net
絵里「さて、話の前に、まずはオーダーを決めましょうか。海未は何にする?」

海未「何にする…と訊かれても困りましたね。そもそも、この店には何があるんですか?」

絵里「苦いコーヒーと甘ったるい飲み物があるわ」

海未「私は『ユーヒー』には疎いので、何がどう違うのかよく分かりません。オススメは何ですか?」

絵里「そうね…。海未はどのビバレッジがお好みかしら?」

海未「………ビバ…?」

絵里「ビバレッジ、飲み物のことよ」

海未「ああ、そっちですか…。私は『えすぷれっそ』にします」

絵里「エスプレッソだったら…、カフェモカのグランデなんてどう?」

海未「はい…?」

絵里「あ、それとも、エスプレッソマキアートのドッピオを…」

海未「……もう!揶揄わないでください!」

絵里「ふふ、ごめんごめん。つい私のスタバ知識を披露したくなっちゃって。海未の分は適当に繕っておくわ」

海未「お願いします…」


絵里は席を立ち、カウンターに歩いて行った。

私は未だ止むことのない雨を見て、絵里を待った。

しばらくして、絵里は2つのカップとドーナッツと共に帰ってきた。


絵里「海未のメニューはマキアートのソロにしたわ。海未はお子様舌だから、甘いシュガーをたくさん持ってきたわよ」

海未「私のことバカにしてますよね?」

絵里「そして、私のはチョコトップ・フラペチーノよ。あと、ドーナッツも頼んできたから、一緒に食べましょう」


テーブルの上には、見るだけで吐き気を催す程甘ったるいメニューが並べられていた。

801 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/18(日) 15:15:28.78 ID:0zyftieM.net
私はマキアートを一口啜った。

口に合わなかったので、シュガーを二本投入し、もう一度啜った。

ミルクとコーヒーとシュガーが溶け合い、絶妙な美味さだった。

マキアートを飲みながらドーナッツを齧っていると、優雅な午後が味わえた。


海未「絵里、私に話したいことがあるとメールで言ってましたが、何の話ですか?」

絵里「ええ、今日は話が3つもあるのよ」

海未「……その内の一つが、希の話というわけですね」

絵里「よくわかったわね、ご名答」


絵里は横に置いてある鞄から写真を取り出した。

その写真には、私の知っている希と寸分も違わない、彼女の姿があった。


海未「森の中で撮られたみたいですね。日本の森…いや、違いますね。これはどこで撮られた写真ですか?」

絵里「さあ、どこかしらね?希は『うちはユニバース大学におるんよ。』としか言わないから、いまいち現在地を把握できないのよね」

海未「ユニバース大学ですか…。久しぶりにその名前を聴きましたね」

絵里「……希はいつまで旅を続けるつもりなのかしら…?早く希に逢いたいわ…」


そう言って、絵里はチョコを自分の口に運んだ。

目を閉じ、しみじみとほろ苦さを味わっていた。

802 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/18(日) 15:20:57.40 ID:0zyftieM.net
絵里「今の話が一つ目の話題で、次が二つ目よ」


絵里は口元に付いたチョコをハンカチで拭い、話を続けた。


絵里「穂乃果は…、今、京都の大きな病院にいるそうね?」

海未「え…。その話、誰から聞いたんですか?………って、ことりしかいませんよね」

絵里「そう、ことりを呼び出して問い詰めたら、『海未ちゃんにも話したし、もういいかな』と、全部教えてくれたわ」

海未「そうでしたか…」

絵里「聞くと、この話は亜里沙も知らなかったそうなのよね。『雪穂は一切そんな話をしなかった』って、驚いていたわ」

絵里「事情を知っていた雪穂もことりも、穂乃果の病気のことを今の今まで伏せてきたのよ。だから私たちも、あまりこのことを触れ回るべきじゃないわね」

海未「ええ、わかっています」


私はドーナッツを一口啄んだ。


海未「……あまり触れ回るべきではないと思いますが、私は、μ'sのみんなには伝えておくべきではないかと思います。絵里はどう思いますか?」

絵里「私はことりみたいに、訊かれるまでは黙っておくつもりよ。まあいずれ、みんなにも知れ渡る日が来るでしょうけど」

絵里「雪穂とことりが穂乃果の件を隠してたのは、やっぱり穂乃果自身の意思だと思うのよ」

絵里「穂乃果は私たちに心配を掛けたくなかったから、雪穂とことりに口止めをしていたんじゃないかしら。だったら、私たちも穂乃果の意思を汲むべきよ」

海未「確かに、絵里の言う通りかもしれませんね」

絵里「………それに、私たちが穂乃果のためにとやかくするよりも、海未が一声掛けてあげた方が穂乃果は喜ぶわ」

海未「そうでしょうか…?」

絵里「海未の言葉一つで、穂乃果は救われるのよ」

803 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/18(日) 15:22:56.59 ID:0zyftieM.net
絵里「それで、海未は穂乃果とのやり取りは続けているの?」

海未「………」

絵里「海未…?」


私は目の前にあるマキアートに焦点を合わせ、語りました。


海未「春休み………私が京都で穂乃果と会った日以来、何度穂乃果に電話を掛けても繋がらないんです」

海未「病院内で自由に電話ができないのは分かりますが、それでも、今までならちゃんと出てくれてたんですよ。それが、突然…」

絵里「なるほどね。海未は今、穂乃果と連絡が取れていない状況なのね」

海未「穂乃果に訊きたいことは海のようにあるのですが、それも訊けずじまいで…」

絵里「電話が繋がらないってことは、穂乃果に何らかの事情があったのかしら?」

海未「分かりません…」

絵里「ことりは何か言ってなかった?」

海未「ことりとは最近会っていません」

絵里「そうなの?前はよく二人で連んでたのに、どういう風の吹き回しかしら?」

海未「ことりも忙しいようですし…。それに、もう私はことりに頼らないと決めたんですよ」

絵里「ふーん、そう…」

804 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/18(日) 15:26:09.40 ID:0zyftieM.net
私はマキアートを啜った。

まだ量が半分も残っていることにうんざりさせられた。


絵里「そして、最後の話なんだけれど………」

絵里「海未、近頃の大学生活はどうかしら?」

海未「近頃、ですか…」

絵里「二回生になって後輩もでき、人との交流も増え、益々充実した日々を過ごしてることでしょう?」

海未「……私はそんな人生、望んでいません。私は変わったんです」

絵里「海未は"変わった"のね、へー、それはすごいわ。その割には結果が伴っていないような気もするけど」

海未「さっきから何が言いたいんですか?」

絵里「………海未に、先輩としてアドバイスをしてあげようと思って」


絵里「海未は、自分を変えたい、と思ってるのよね?こんなダメな自分を変えたいと」

海未「ダメな、は余計です。……それに私はもう、変わったんですよ」

絵里「いいえ、何にも変わってないわ。海未は成長も性徴もなく、心も体も高校生の頃のままよ」

海未「っ…」

絵里「『変わった』と唱えるだけで変われる程、世の中甘くないわ。本当に変わりたいのなら、まずは行動を起こさないと」

海未「行動…?」


絵里は「待ってました!」と言わんばかりに、ニヤリと口角を上げた。

805 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/18(日) 15:40:29.08 ID:5+oBXQAW.net
支援

806 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/18(日) 15:54:32.78 ID:0zyftieM.net
絵里「海未。……あなた、今年の水コンに出てみない?」

海未「水コン?私が、ですか…?」

絵里「ええ、そうよ。海未なら顔もそこそこ整っているし、スタイルも悪くない、歌唱力もダンスも一級品だし、充分に優勝を狙えるわ」

海未「いやいやいや…。何故私が水コンに?無理ですよ、あんな舞台に立つなんて私にはできません」


絵里「………去年、私は水コンに出場したでしょ?」

海未「ええ」

絵里「出場が決まった当初は、私は結構軽い気持ちで臨んでいたんだけれどね…」

絵里「運営委員会の人や、ライバル達、そして応援してくれる人達と交流することによって、私は成長できたわ」

絵里「海未も、この水コンに出場することで、何かが変わる切れ端を見つけられるはずよ」

海未「変わるきっかけ…」

絵里「どう?私と一緒に出てみない?」

海未「絵里も、出るんですか?」

絵里「もちろん!これからは、私たちはライバルになるのよ!」

海未「ライバル…」

807 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/18(日) 15:55:51.26 ID:0zyftieM.net
マキアートは空になった。

外はすっかり雨も上がり、しずくは太陽に当てられ眩しく輝いていた。


海未「………出てみようと、思います。……水コンに」

絵里「海未…!」

海未「自信はありませんが、頑張りたいと思います」

絵里「ふふ、よく言ってくれたわ!一緒に頑張りましょう!」


私の決断が、ようやく形になってきたような、そんな音が聴こえてきた。



私たちは割り勘をし、店を出た。

携帯には、バイト先からの連絡があった。

雨も止み、客が増えてきて、人手が足りなくて困っているとのこと。

私は絵里に別れを告げると、バイト先へと向かった。

808 :名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/:2017/06/18(日) 17:31:20.42 ID:bbId/WLL.net

流れがどんどん変わって予測不可能だw

809 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/18(日) 17:37:08.11 ID:5+oBXQAW.net
おつおつ
海のようにあるって言い回し意図的に山を避けてるのかな

810 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2017/06/18(日) 21:21:50.47 ID:D/50VmrU.net
>>809
海未ちゃんだからと普通に読んだけどこれまでの流れ考えるとそうとも取れるな

811 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/18(日) 23:59:42.06 ID:R1bai5lP.net
どこか不気味でクセになる

812 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/19(月) 06:32:04.10 ID:k3BunJCt.net


813 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/19(月) 16:51:28.49 ID:ac9YUQlJ.net


814 :名無しで叶える物語(禿)@\(^o^)/:2017/06/19(月) 18:27:24.15 ID:r6oHCYr0.net


815 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/19(月) 18:33:05.72 ID:NX5SCe+M.net


816 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/19(月) 20:29:29.04 ID:hVlzOkE5.net


817 :名無しで叶える物語(もみじ饅頭)@\(^o^)/:2017/06/19(月) 20:29:59.71 ID:fW76QSrO.net


818 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/19(月) 23:21:47.30 ID:y795smEa.net
#28

学生寮の玄関にある郵便受け。

そこに、私宛の手紙が一通、投函されていた。

差出人は、"ほのか"だった。

講義が始まる時間が迫っていたので、私は手紙を鞄の中に仕舞い、大学へと駆け出した。


私は空き時間にその手紙を読もうと決めていたが、結局読めずじまいで、時間だけが過ぎていった。

手紙を読もうとすると、得体の知れない感情が湧き上がってくるのだ。

それは喜びなのか悲しみなのか怒りなのか、あるいは緊張や恐怖といったものなのか、私には分からなかった。

819 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/19(月) 23:25:12.82 ID:y795smEa.net
その日の3限目、ドイツ語の講義。

講義室に入ると、教壇には既に先生の姿があり、講義の準備をしていた。

私は先生に軽く頭を下げ、部屋の一番左の列の一番前の席に着いた。


私は鞄から手紙を取り出し、それをしばらく眺めた。

覚悟を決め、意を決して、封を切ろうとした。

しかしそれは彼女の出現によって阻止された。



凛「おはよ!海未ちゃん」

海未「……お、おはようございます」

凛「隣、座ってもいい?」


凛は私の返事を待たず、隣の席に座った。

彼女は普段、教室後方にいる数人のグループと一緒に固まって講義を受けていた。

そんな彼女が私の側にひょこっと現れたので、私は少し動揺していた。


海未「いいんですか?後ろのグループを放って来てしまって」

凛「いいのいいの。あの子達と話してたら、私きっと、ダメになっちゃう。一応付き合いで連んでるけど、私はもっと、有意義な話がしたいんだ」

海未「そうでしたか」

凛「………ん?海未ちゃん、手に何持ってるの?」

海未「え…?」


凛が来たことですっかり忘れていたが、私はそこでやっと、手紙の存在を思い出した。


海未「な、何でもないんです。友達から送られてきた手紙で、後で読もうと思っていまして」


私はそそくさと、手紙を鞄の中へ帰した。

820 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/19(月) 23:27:40.14 ID:y795smEa.net
凛「ねえ、海未ちゃん。何か"かしこい"話をしてよ」

海未「"かしこい"話…?」

凛「話題は何でもいいよ、世界情勢のことでも忖度国会のことでも。たまには海未ちゃんの知的な面を見せてよ」

海未「一言余計です。……いいでしょう、私が好きな文学の話をしてあげます」


私は、ハリー・ポッターの話をした。

そしてとりあえず、知っている小説家の名前を並べた。

凛は文学には疎いと踏み、それっぽい話をしていれば何とか誤魔化せると思っていたが、凛からの鋭い指摘を受けることとなった。



凛「海未ちゃん…。チャイコフスキーは作曲家だよ?」

海未「ああ、間違えました。正しくはマルゼンスキーですね」

凛「マルゼンスキーは競走馬だよ」



私は鞄の中に頭を突っ込み、茹でダコのように真っ赤に染まった顔を隠す羽目となった。

821 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/19(月) 23:29:56.43 ID:y795smEa.net
講義後、私は凛と別れ、次の講義に向かった。

4限、5限、6限と終え、寮に戻った私は、手紙を机の上に置いた。

ものさしで手紙の封を切り、中に入っていた手紙を取り出した。

手紙は綺麗に三つ折りにされていた。私はベッドに寝転んでその手紙を展開し、読み始めた。

822 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/19(月) 23:37:49.92 ID:y795smEa.net
海未ちゃんへ


 こうして海未ちゃんに手紙を書くのは初めてなので、少し緊張しています。字が汚かったり誤字脱字を見つけても、どうか気にしないでください。

 まず最初に、海未ちゃんに伝えねばならないことがあります。前に海未ちゃんが私のとこに来てくれた時のあの病院なんだけど、覚えてますか?
私は訳あって、あの病院を出ることになりました。でもそれは私が退院したってわけじゃなくて、他の場所に移ったというだけのことです。私は引越しをしました。
どこに引越したかと言うと、そこもまた京都で、山の中にある施設に入ることになりました。自然も豊かで空気も美味しく、なんだか心がカタルシスな感じになっています。

 ここまで読んで海未ちゃんはきっと、穂乃果はどうして施設に移ったのですか?  と考えてるはずです。なので、その疑問を解消したいと思います。
そもそも私が京都の病院に入院していた理由は、今私が持ってる病気の治療をするためでした。だけど治療はどれも効果なし、そして治療が打ち切られました。
担当の先生は、もうお手上げだと、笑っていました。
そしてお荷物になった私は、この施設への移転を勧められました。施設のパンフレットを見て、いい所だなあと思い、ここに引越すことを決めました。

823 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/19(月) 23:39:18.43 ID:y795smEa.net
 今私はこの施設で病気と向き合っています。この施設では治療というものは一切行いません。その代わりに、カウンセリングを重点的に行なっています。毎日先生とにらめっこしながらカウンセリングをしています。
治療をせずに病気を治す方法を探しながら、  そうだね、私はまともな人間になろうと頑張っています。
だから、また海未ちゃんに京都へ来てほしいです。頑張れって応援してもらいたいです。お見舞い品なんていらないから、会いにきてください。

 施設がある場所は追って連絡します。というより、今はまだ面会が許されてなくて、最近ようやく手紙を書くことも許されたぐらいなんです。
でも夏までには面会OKになると思います。もしその時、海未ちゃんが会いにきてくれるというのなら、それまで私はこの場所で待っています。

まとまりのない文章でごめんね。


穂乃果より

824 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/19(月) 23:42:04.21 ID:y795smEa.net
手紙を読み終えた私は、安堵の胸を撫で下ろした。

一息ついた後、コンビニに行き、62円の切手を買った。

それから二日掛け、手紙の返事を書き上げた。

そして、寮の近くにある郵便局のポストへ投函した。



穂乃果から返事が返って来たのは、夏休みが始まって間もない頃だった。

825 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/19(月) 23:42:32.92 ID:y795smEa.net
ここまで

826 :名無しで叶える物語(プーアル茶)@\(^o^)/:2017/06/19(月) 23:54:15.00 ID:8EZNTT8P.net

物語が少し動き出しそうな予感

827 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2017/06/20(火) 00:02:40.20 ID:53TO2j6Z.net
治る見込みが無いのに安堵するのか・・・

828 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2017/06/20(火) 01:04:12.42 ID:J1GvEe4S.net
山奥で治療しないってホスピスやんけ…
治してくれよ…頼むよ…

829 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/20(火) 08:13:12.70 ID:Cs3aPmKn.net
悲C

830 :名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/:2017/06/20(火) 08:41:48.05 ID:irJ8AYC1.net
凛ちゃん…

831 :名無しで叶える物語(禿)@\(^o^)/:2017/06/20(火) 12:32:35.76 ID:ERpsl3A6.net
場所は追って連絡なのに手紙は送れるんか

832 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/20(火) 13:57:10.78 ID:vTrGIO5P.net
>>831
最終的に夢オチだったりしてな

833 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/20(火) 22:39:04.90 ID:pwN5VH1W.net
絵里ちゃんが縮んでる謎もあるし不思議な世界の可能性はまだ残ってるな

834 :名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/:2017/06/20(火) 22:56:24.01 ID:6amGCtck.net
ノルウェイの森じみてきたな…
あれも確か京都の山奥だ

835 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/21(水) 11:33:25.49 ID:eOoISXos.net
保守

836 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/21(水) 16:05:02.00 ID:ZGqxLPVC.net


837 :名無しで叶える物語(禿)@\(^o^)/:2017/06/21(水) 17:25:42.01 ID:pk9eQbEh.net


838 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/21(水) 19:09:27.31 ID:qarjfUii.net


839 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/22(木) 05:55:05.91 ID:oOzbaaEZ.net


840 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/22(木) 07:41:49.18 ID:VzjVMnt7.net
ほほ

841 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2017/06/22(木) 19:07:38.58 ID:F1RMTPdQ.net


842 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/23(金) 11:02:41.08 ID:txF+7jVw.net
保守

843 :名無しで叶える物語(禿)@\(^o^)/:2017/06/23(金) 12:08:19.35 ID:dn2Bo6C4.net


844 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/23(金) 18:29:14.63 ID:RvhnQJLZ.net
しゅ

845 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/23(金) 19:28:55.47 ID:hjnoql5A.net
とろはいむ

846 :名無しで叶える物語(禿)@\(^o^)/:2017/06/23(金) 21:45:50.41 ID:dn2Bo6C4.net


847 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/23(金) 22:28:38.44 ID:IR86xY/0.net
エタるのは勘弁

848 :名無しで叶える物語(おいしい水)@\(^o^)/:2017/06/23(金) 22:33:17.57 ID:ZNuqu1Lf.net


849 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/23(金) 23:01:24.44 ID:4BGD1JFg.net
>>847
元々遅筆なんだろうな
なんだかんだで予定の半分超えてるし気長に見守るしかねーな

850 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/24(土) 06:00:52.23 ID:4pZJP2T2.net
最低週に一回は更新されてるから大丈夫

なはず

851 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/24(土) 08:31:57.13 ID:PpzXqZPg.net
待ってる

852 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/24(土) 16:41:22.92 ID:mjlE4WnB.net
ほしゅ

853 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2017/06/24(土) 23:14:43.40 ID:utVi++gK.net


854 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/24(土) 23:31:50.86 ID:J4ssmaSN.net
#29

この日も、雨が降っていた。


休日だったが、私はレポート提出のために大学まで足を運んでいた。

研究室にいる教授にレポートを押し付け棟を出た私は、傘を差し、大学の正門へと向かった。

6月下旬。雨は一向に止む気配を見せなかった。


水たまりを避けるように跳ね、帰り道を辿っていると、いつ以来かの声に呼び止められた。


亜里沙「海未さんー!」

海未「亜里沙…!それに雪穂も!どうしてあなた方が大学に…?」

亜里沙「いやだなあ、海未さん。今日は音ノ水女子大学のオープンキャンパスの日だよ?」

雪穂「そういうこと。だから私たちがこの場所に居たって、何らおかしなことはないの」

海未「ああ、そうでしたね。オープンキャンパス………」


オープンキャンパスの日にしては、キャンパス内はやけに静かで、閑散としていた。

雨だから参加者が少ないのだろうと、私は一人で納得した。


海未「……あの。二人はこれから、少し時間がありますか?」

亜里沙「うん。時間ならいっぱいあるよ」

海未「では、もしよければ、一緒にお昼を食べませんか?私の奢りで」


雪穂と亜里沙はお互いの顔を見合い、それから、大きく頷いた。

私は二人を連れ、食堂に入った。

855 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/24(土) 23:34:38.81 ID:J4ssmaSN.net
音ノ水女子大学 食堂

券売機で、私は炒飯の食券を買った。

雪穂と亜里沙は券売機の前で、何を買おうか悩んでいる様子だった。

迷っていた二人は、私に尋ねてきた。


雪穂「ねえ、海未ちゃん。海未ちゃんは塩か醤油、どっちがいいと思う?」

海未「な、何ですか、それは…」

亜里沙「何って、ラーメンのことだよ!」

雪穂「そう、ラーメン!塩か醤油、どっち!?」


二人の熱に圧倒された私は、思わず味噌と答えてしまった。

二人は鋭い目で凄んできたが、「味噌もありだね」と言い、二人して札幌味噌ラーメンの食券を購入した。


海未「二人はどうして、そうもラーメンにこだわるのですか?」

亜里沙「練習終わりに、よく凛ちゃんにラーメン屋へ連れて行ってもらってたからね」

雪穂「そのおかげで私たちもラーメンが大好きになったんだ」

海未「やはり、二人を洗脳したのは凛でしたか…」

856 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/24(土) 23:36:11.49 ID:J4ssmaSN.net
私たちは昼食を取った。

私が食べた炒飯は、程よく水分を含んでいて口の中でベタつかず、パラパラとした食感で、とても美味しかった。

凛の弟子達(雪穂と亜里沙のこと)は札幌味噌ラーメンをツルツルと啜っていた。

一口食べる毎に感想を言い合い、ラーメンが残り半分を切ったあたりからは味噌ラーメンの歴史について語り始めていた。

私は二人のラーメン語りを片耳で聞きながら、お冷やを啜った。


亜里沙「たかが食堂のラーメンと侮っていたけど、すごく美味しい!」

雪穂「だよね〜。こんな美味しいものが毎日食べられるなんて、この大学の生徒は幸せ者だね」

海未「二人も音ノ水に入れば、毎日美味しいラーメンが食べられるんですよ」

亜里沙「あー………うん。そうだね…」

海未「……歯切れの悪い物言いですね。二人は、音ノ水に入学しないんですか?」

雪穂「うん、私はこの大学じゃない、別の進路を目指すことにしたよ」

亜里沙「海未さんやお姉ちゃんと同じ進路もいいけど…。やっぱり、亜里沙は雪穂と同じ道を歩みたいから」

海未「そ、そうですか…。今までμ'sのほとんどが音ノ水を志願していたので、てっきり雪穂達も同じだと思っていましたよ」

雪穂「うん。私も、そう思ってたよ」


雪穂はラーメンの残り汁を啜った。

857 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/24(土) 23:38:20.16 ID:J4ssmaSN.net
雪穂「私もさ、高校を卒業したら音ノ水に進学して、海未ちゃんやμ'sの先輩達と楽しい大学生活を送るものだと思ってたよ」

雪穂「みんな同じサークルに入って、くだらない話で盛り上がったりして…。そんな未来が来るんだって、信じてた」

雪穂「でも、お姉ちゃんが"ああ"なってから、私の未来予想図は狂った」

雪穂「ずっと憧れだった姉が病に侵され、私は進むべき針路を見失った。そして私は、自分すら見失ってしまった…」

雪穂「何をすればいいのか分からなくて…。とにかく、お姉ちゃんから離れたかった。お姉ちゃんのいない世界へ行きたかった」

雪穂「お姉ちゃんの面影が残るこの町が、息苦しくてしょうがないんだ…。だから、私は、誰も高坂穂乃果を知らない世界へ、いくことにしたよ」

亜里沙「亜里沙も…。雪穂と一緒に、その世界へいくよ」

海未「……二人が決めた道であれば、私がとやかく言う権利はありません。どんな道であれ私は応援しますよ」

雪穂「ありがとう…。やっぱり、ここに来て正解だった」

海未「え…?」

雪穂「最後に、お姉ちゃんが来るはずだった場所に来れてよかったよ」


雪穂と亜里沙はラーメンの汁を飲み干し、顔をテカらせて言った。



雪穂「海未ちゃん、ごちそうさま!」

亜里沙「海未さん、ごっつぁんです!」

海未「あなたはルメール騎手ですか」

858 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/24(土) 23:45:15.21 ID:J4ssmaSN.net
二人は、学科説明会を受けることなく帰って行った。

雨は上がり、空には数日ぶりの太陽が顔を覗かせていた。

二人の先には、空へと架ける七色の虹が、淡く輝いていた。


私は二人を眺めながら、先程交わした会話を繰り返した。

そして、先日テレビで特集されていた、がん患者とその家族の話を思い出した。

がん患者を支える家族は患者当人と同等の精神的負荷が掛かるらしく、そのことから『第二の患者』と呼ばれるそうだ。

穂乃果の病気を誰にも打ち明けられず、一人支えてきた雪穂も、第二の患者と呼べるのかもしれない。

雪穂がどれ程のストレスを抱えているのか、私には分からなかった。

これから穂乃果の病気と向き合って行く中で、私も雪穂と同じようになってしまうのではないかと、一抹の不安が頭をよぎった。


そういえば、ことりもまた、穂乃果を支えていた第二の患者であった。

ことりが病んでいく姿を、私は見てきた。どういう経過を辿り精神が参っていくのか、私はよく知っていた。

私の中にある不安の種は、少しずつ膨らんでいた。

859 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/24(土) 23:47:47.67 ID:J4ssmaSN.net
ここまで

キリのいいとこまで進んだら次スレいきます

860 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/24(土) 23:57:35.04 ID:AtSjJrtx.net
おつです
夕方にはなんなのか気になる

861 :名無しで叶える物語(プーアル茶)@\(^o^)/:2017/06/24(土) 23:58:37.78 ID:prHOlKLb.net
なんか凄い文才を感じる。>>1は普段から本とか読んでそう。

862 :名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/:2017/06/25(日) 00:19:27.61 ID:OAi7mj+K.net
長期連載

863 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/25(日) 07:02:54.83 ID:oNVW5YLd.net


864 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/25(日) 17:21:30.30 ID:oNVW5YLd.net
しゅ

865 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2017/06/25(日) 22:27:46.19 ID:FqiAECNk.net


866 :名無しで叶える物語(しうまい)@\(^o^)/:2017/06/25(日) 23:18:56.93 ID:TMwTUCHe.net
雪穂…

867 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2017/06/26(月) 02:21:44.58 ID:ToUh6/Kn.net
楽しみなんだ

868 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/26(月) 05:18:16.25 ID:ky+BEzAM.net


869 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/26(月) 12:21:32.90 ID:X/YH/KUp.net


870 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/26(月) 15:34:36.21 ID:fZYNVoc/.net


871 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2017/06/26(月) 23:09:00.99 ID:klJaIpqp.net
ほぁ

872 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/27(火) 02:57:44.37 ID:rLGWflpU.net


873 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/27(火) 05:16:54.08 ID:gsS4lC1d.net
しゅ

874 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/27(火) 06:48:55.16 ID:rLGWflpU.net


875 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/27(火) 12:43:40.57 ID:R5dd3yRR.net
しゅ

876 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/27(火) 13:51:34.14 ID:YnAneJhc.net


877 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2017/06/27(火) 21:46:54.46 ID:EzqUjlgI.net


878 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2017/06/27(火) 23:50:11.08 ID:JZsxuGnr.net


879 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/28(水) 05:31:01.12 ID:XQ3pvH2N.net
しゅ

880 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/28(水) 12:32:50.34 ID:PoAFmPQp.net


881 :名無しで叶える物語(禿)@\(^o^)/:2017/06/28(水) 15:18:45.60 ID:GOc5/nax.net


882 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/28(水) 23:35:40.19 ID:xs/uF4kc.net
保守

883 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2017/06/29(木) 01:38:25.03 ID:5Lmo5bhI.net


884 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/29(木) 05:58:30.67 ID:zpx2I5Os.net
しゅ

885 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/29(木) 12:23:09.02 ID:zpx2I5Os.net


886 :名無しで叶える物語(プーアル茶)@\(^o^)/:2017/06/29(木) 12:27:36.34 ID:QOGTskt/.net


887 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/29(木) 19:18:33.83 ID:rcdTYmJs.net


888 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/06/29(木) 20:50:56.48 ID:bqiYl5Yq.net


889 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/29(木) 23:54:27.72 ID:y1NwVVqO.net


890 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2017/06/30(金) 04:43:27.72 ID:X9+Yhcf+.net


891 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/30(金) 07:34:56.03 ID:Q+NwARnL.net


892 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/30(金) 13:31:57.17 ID:uOZxkQ7U.net


893 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/30(金) 18:36:26.22 ID:LVs1oxjx.net
しゅ

894 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/06/30(金) 23:29:55.44 ID:B2lNtzeO.net
保守

895 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/07/01(土) 06:30:38.92 ID:0uMJ29c2.net


896 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/07/01(土) 12:30:04.53 ID:YaJFbZdS.net
しゅ

897 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/07/01(土) 19:31:35.50 ID:LFW2QUPm.net


898 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/01(土) 22:40:42.68 ID:GLJEq12X.net


899 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/02(日) 00:06:26.71 ID:Dbg+M0r9.net
#30

前期試験を終え、いよいよ夏休みが始まった。

その初日、私は絵里に呼び出されていた。

絵里が指定してきた場所は、駅の側にあるビルの二階に店を構える、ファミレス。

店に入り、駆け寄ってきた店員に「待ち合わせをしている」と伝え、絵里が待つ席へと案内してもらった。

案内された席には、絵里と、ことりがいた。


絵里「来たわね、待ってたわ」

海未「は、はい…」


ことり「……おはよう、海未ちゃん」

海未「……おはようございます」

絵里「何してるのよ?早く座りなさい」


片側がソファ席で片側が椅子の、6人掛けの席だった。

絵里とことりは横並びに座っていた。私はその反対側の席に着いた。

900 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/02(日) 00:07:59.66 ID:Dbg+M0r9.net
テーブルには、お冷やとおしぼりが6つずつ置かれていた。

私はその内の一つを取り、自分の前に置いた。


絵里「注文はみんな揃うまで待っててちょうだい」

海未「はい。今日は私たち以外にも誰か来るんですね」

絵里「ええ、もうじき来ると思うわ」


絵里「……で、海未はテストの方、どうだったの?」

海未「手応えはありました。恐らくA以上の評価でしょう」

絵里「あら、そう?去年までの海未なら単位取得ギリギリのボーダーラインを低空飛行していたのに、見違えたわね」

海未「私だってやればできるんですよ。絵里はどうでしたか?」

絵里「私はいつも通り、平常運転よ」

海未「ということは良い点数が期待そうなんですね」


ことり「……私には訊かないの?」

海未「あ…。こ、ことりはどうでしたか?」

ことり「うん、いい感じだったよ」

絵里「ことりは頑張ってるわよね〜。さぞ、GPAも高いんでしょう?」

ことり「まあね。私は実習があるから、少しでも内申を良くしておかなきゃいけないんだ」

海未「この夏休み中に行くんですよね?いつから始まるんですか?」

ことり「7月末から8月の第1週までだよ」

絵里「あら、それってもうすぐじゃない。ことりならできるわ、頑張って」

ことり「……うん、ありがと」

901 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/02(日) 00:09:57.60 ID:Dbg+M0r9.net
海未「あの。机の上にお冷やが6つありますが、これからここに後3人来るということですか?」

絵里「ええそうよ。大体誰が来るのか察しはつくでしょ?」

海未「二人は分かりましたが、残りの一人が誰なのか分かりません…」

ことり「二人は、真姫ちゃんと凛ちゃんのこと?」

海未「はい。凛と真姫は同じ音ノ水ですし、今日の会合にも誘っていることは予想できたのですが…。絵里は他に誰を誘ったんですか?」

絵里「あら、忘れちゃったの?去年もこうやってファミレスに集まったでしょ。その時にいた、彼女よ」

海未「え…?いや、でも、そんなまさか…」



にこ「私はお呼びじゃなかった?」

海未「にこぉぉ!」


私は驚きのあまり声を上げた。その声は店内に響き渡った。

他のテーブルに座っている客がこちらをチラチラと伺ってる様子が、こちらからも伺えた。


にこ「ちょっ、しぃー!大声で私の名前を呼ぶな!」

海未「す、すみません…」


にこは絵里に促され、絵里の隣の椅子に座った。


海未「今日はいつもみたいに、マスクや濃いサングラスを着けていないんですね」

にこ「変装って、なんだか有名人気取ってるみたいで嫌なのよ」

902 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/02(日) 00:12:18.39 ID:Dbg+M0r9.net
絵里「にこ!やっぱり来てくれたわね」

にこ「あんたらに会う機会もめっきり減っちゃったもの。こうして定期的に顔を見ておかないと、誰が誰だか忘れちゃいそうになるわ」

絵里「忙しいのによく都合を合わせてくれたわ。撮影の方は順調なの?」

にこ「ドラマはもうとっくにクランクアップしてるわよ。今は番宣でバラエティに出てるぐらいでそんなに忙しくないわ」

海未「今やテレビで見ない日は殆どないぐらいの有名人となったにこが私たちに会いに来てくれて、私は感激しています!流石にこですね!」

にこ「ちょっと、やめてよそういうの。恥ずかしいでしょ」

海未「何を恥じらうことがあるのですか!事務所に所属して3年目で連続ドラマに大役で出演したんです。にこにはそれだけの素質があったんですよ」

にこ「違うわよ。私がここまで有名になれたのは、プロデューサーや社長、周りの人達の力添えがあったから。私一人の力じゃない」

にこ「アイドル業が鳴かず飛ばずで、テコ入れとして受けたドラマのオーディションに偶々受かって、気づいたら有名人扱いされるようになってて…。私にもよく分からないわ」

海未「ああ、そういえば本業はアイドルでしたね。しかし演技の才能を見出されてなお天狗になろうとしないにこの姿に、私は感銘を受けましたよ」

にこ「そう、ありがと」

903 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/02(日) 00:12:42.87 ID:Dbg+M0r9.net
ことり「ねえねえ、にこちゃん!にこちゃんが探偵さんの助手役で出演しているドラマ『流石にこの謎は解けない』、毎週欠かさず観てるよ!」

ことり「毎週、探偵さんとにこちゃんとの掛け合いが面白いよね!回を重ねるごとに親密になっていってるけど、二人は最後どうなるの?」

にこ「そうね〜………って、最終回のネタバレになっちゃうけど大丈夫?」

ことり「うんうん、大丈夫!どうぞ、ネタバレでも何でも!」

海未「何言ってるんですか、ダメに決まってます!私はネタバレをする人と食事マナーの悪い人が嫌いなんです!」

ことり「じゃあにこちゃん、海未ちゃんには聴こえないよう耳打ちして?」

海未「ダメです!私だけ除け者にしないでください!」

絵里「ちょっと!あんまり騒ぐと店員さんに怒られちゃうわ!」

にこ「………あんた達、ほんと変わらないわね」


にこはお冷やに口を付けた。

904 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/02(日) 00:15:56.62 ID:Dbg+M0r9.net
暫くして、凛と真姫が来た。


凛「お待たせ〜。あれ?もう私たち以外は揃ってる感じかな?」

絵里「ええ、凛達が最後よ」

真姫「ごめんなさい、待たせちゃったわね。えっと注文は…」

絵里「今からまとめて注文するわ。私たちはもう決めてあるから、二人も何を頼むか決めちゃいなさい」

凛「うん。あ、海未ちゃん。隣座っていい?」

海未「ええ、どうぞ」

凛「さて、何を頼もうかな〜?………ってにこちゃんんん!?」


凛は目を点にし、店内に響き渡る声を上げた。

離れたテーブルに座っている客がこちらの様子を気にしていたが、私は「自分は関係まい」と目を逸らした。


にこ「だから大声で私の名前を呼ぶなあ!」

凛「だからって何!?」



絵里はベルで店員を呼び、私たちの注文を並べていった。

絵里ことりにこ私は、肉を頼んだ。

ことりとにこは、野菜も頼んだ。

凛と真姫は、ラーメンを頼んだ。

真姫も既に洗脳済みであったことに、私は驚きを隠せなかった。

そして最後に、6人分のドリンクバーを頼んだ。

905 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/02(日) 00:17:26.11 ID:Dbg+M0r9.net
一旦ここまで
また今日中に更新します

906 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/02(日) 00:46:28.40 ID:eWQz4pA3.net
おつ
続き待ってます

907 :名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/:2017/07/02(日) 01:27:31.39 ID:VjxfvsGd.net
本当に久々この感覚

待ってる

908 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/07/02(日) 01:33:18.42 ID:fcqopIEe.net


そろそろ次スレでやってもいいのでは?

909 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/07/02(日) 01:37:20.80 ID:ekANw1FY.net
おつおつ
にこちゃん一年の間にすっかり売れっ子に

910 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/07/02(日) 07:25:05.47 ID:0yt+DU/N.net
和むわ

911 :名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/:2017/07/02(日) 07:28:34.53 ID:EjX0TqL9.net

流石 にこ の謎は解けないw

912 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/07/02(日) 12:35:27.70 ID:2CayXXCj.net
保守

913 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/07/02(日) 17:04:08.29 ID:vJCS3Htd.net
さすにこ

914 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/07/02(日) 17:31:57.54 ID:V8Qv4sEu.net
さすにこ

915 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/07/02(日) 22:57:27.51 ID:JDI1hYXL.net
さすにこ

916 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/07/02(日) 23:41:34.88 ID:0yt+DU/N.net


917 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/02(日) 23:55:28.21 ID:Dbg+M0r9.net
絵里が言うところの"女子会"は、食事を楽しみながら会話も弾み、和気藹々と進行していた。

そして、話題は真姫の大学生活の話へと移っていた。


絵里「真姫は大学に入ってからどう?何か良いことでもあった?」

真姫「……特にないわね、今のところ」

絵里「え?あ、そうなの…」

ことり「一応サークルには入ってるから、まあ、その…まだチャンスはあるよ!」

真姫「気を遣って言葉選ぶのやめなさいよ!」

にこ「相変わらずぼっちしてるのね。スクールアイドルやってたのに対人スキルが改善されないなんて、ある意味才能よ、それ」

絵里「真姫は勉強やピアノは得意だけど、そっちに一辺倒なのよね。ゲームで例えるとステを攻撃に全振りしてて他のステが軒並ゴミってところかしら」

凛「………」

海未「真姫は人見知り、ということですよ」

凛「おー、そういうことか、なるほど。確かに真姫ちゃんはそういうとこ弱いよね」

真姫「私から誰かに近付くのは気が引けるけど…、相手の方から親しく接してくれたら、ちゃんと友好な関係を築けるわ」


真姫はラーメンを啜った。


真姫「それに、大学生活はあまりぱっとしない私だけど、私生活では結構充実した日々を送ってるのよ」

真姫「実はね、最近、アルバイトを始めたの」

海未「そうですか、あの真姫がバイトを…。何のバイトを始めたんですか?」

真姫「私にしか、できない仕事よ」


それ以上質問をしても、真姫から答えは帰ってこなかった。

918 :名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/:2017/07/02(日) 23:59:10.47 ID:XuRzrMfF.net
ゴミww

私にしか出来ないって穂乃果の診断とかか?
とりま期待

919 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/03(月) 00:00:38.76 ID:ejCiBnGN.net
ことり「あ、そういえば海未ちゃん、今年の水コンに出場するんだってね?」

海未「ギクッ」

凛「ねえ海未ちゃん。水コンって何?」

海未「えーと…。水コンは、水のコントラストの略ですよ。絵画の表現技法として主にルネサンス期に用いられてた手法で…」

絵里「違うでしょ。水コンは音ノ水大学のミスコンのことよ。毎年音ノ水で行われる徽音祭の名物行事なの」

凛「へ〜。……って海未ちゃん、その水コンに出るの!?」

真姫「あの恥ずかしがり屋さんの海未が?まさかね」

海未「いや、えっと、それはですね…」

絵里「残念♪ 言質は取ってあるし、それに既に出場登録を終えてるから、もう逃げられないわよ?」

海未「そんな!?モチベーションが無くなったから出場取消…とはいかないのですか?」

絵里「当たり前じゃない。もう既に周りの大人達は準備を進めているの、私たちの勝手な都合でそれを狂わせるわけにはいかないでしょ」

海未「ですが…」

920 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/03(月) 00:01:12.23 ID:ejCiBnGN.net
凛「海未ちゃんがミスコンにねぇ、ふむふむ…」

真姫「応援に行くから、目が合ったらステージ上から投げキッスしてちょうだいね」

海未「後輩にまで揶揄われて、最悪です…。あの時、何故出場するなんて口走ってしまったのでしょう…」

にこ「いいじゃない。私も海未のステージ、楽しみにしてるわよ。去年の覇者である絵里と、その系統を受け継ぐ海未の戦い、目が離せないわ」

ことり「あ、にこちゃんは去年も徽音祭に来てくれてたよね。今年も来てくれるの?」

にこ「ええ、去年の私のパフォーマンスが盛況だったみたいで、今年もまた大学からオファーが来てるわ」

凛「絵里ちゃんと海未ちゃん、女の戦いか〜。面白そう!私も絶対に観に行くからね!」

海未「もう、わざわざ観に来なくていいですよ…」

921 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/03(月) 02:02:11.74 ID:ejCiBnGN.net
料理を平らげ、ドリンクバーの飲み過ぎでお腹が重くなり、そろそろお開きムードとなった頃。

ことりは突然、その話を切り出した。


ことり「私ね、この夏からフランスに留学するんだ」

絵里「………へ?」


あまりにも突然の話で、そこにいた者は皆、口を開け呆然としていた。

しかし、ことりは私たちなどお構い無しに話を続けた。


ことり「私はフランスの大学に留学して、保育の勉強がしたいの」

ことり「フランスは世界的に見ても幼児教育に力を入れている国で、そこで勉強できたら、きっと私自身の力にもなるなって、ずっと思ってたんだ」

海未「こ、ことり…?何を訳のわからないことを…。それにこの夏って、いくらなんでも急すぎます!」

ことり「ごめんね。でもずっと前から留学することは考えてたの。勉強を頑張って成績を稼いでたのも、本当は留学生奨学金を貰うためだったんだ」

海未「夏休みの実習はどうするんですか?」

ことり「もちろん、実習を終えてからフランスに行くよ。日本の保育の現場も知らずに渡仏なんて、笑い話にもならないからね」

ことり「私はね、フランスの先進教育を日本にも導入できたら、もっといい社会になると思うんだ。これは私の夢であり、野望なの」

ことり「理解は受けられないかもしれないけど、せっかくの門出だから、私のことを応援して欲しいな」

922 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/03(月) 02:03:51.12 ID:ejCiBnGN.net
真姫「……まあ、ことりが自分で選んだ道なら間違いないでしょうし、反対なんてしないわ。応援してあげる」

絵里「そうね。ことりは自分の歩みたい道を歩めばいいのよ。例えそれが、みんなとは違う道でも、自分を信じて歩み続けなさい」

ことり「真姫ちゃん、絵里ちゃん…!」

海未「ことり。一つ訊かせてください」

海未「………あなたは、逃げるわけではないのですね?」

ことり「………どうだろうね。でもたぶん、私はどうやったって逃げられないと思うよ。海未ちゃんも、ね」

海未「そう、ですか…」

923 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/03(月) 02:04:40.48 ID:ejCiBnGN.net
凛「ことりちゃん…!もうこれで、今生の別れになっちゃうの?」

ことり「大丈夫だよ凛ちゃん。留学といっても一年だけだから、来年の夏には日本に帰ってくるよ」

凛「そっか、よかった〜。ことりちゃんまで消えちゃったらどうしようって、心配してたんだ」

にこ「……9人いたはずなのに、二年で7人になって、また6人になって…」

にこ「ことりが留学したら、今度は5人になる。………もうμ'sが揃うことはないのかしらね」

絵里「それぞれが、それぞれの道を進んでるんだから良いことじゃない。希は相変わらず、得体の知れない大学で怪しいことをしてるみたいよ」

にこ「穂乃果と花陽はどうなの?元気にやってる?」

海未「穂乃果は私と定期的に連絡を取っていますし、………元気、ですよ」

凛「かよちんも休日には電話くれるし、元気そうだよ。みんなと離れ離れだから少し寂しそうだけどね」

海未「この場にいない人も、こうして繋がっています。私たちはいつかまた、一つになれる日が来ますよ」

ことり「……うん、そうだね。その日が来ると、信じよう」

海未「ええ!」


もちろん、そんな日が訪れることはないと、私は知っていた。



それから、私たちはにこの御馳走となり、解散した。

924 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/03(月) 02:05:03.77 ID:ejCiBnGN.net
数日後。

寮の郵便受けに私宛ての手紙が入っていた。

送り主は、例の施設からだった。手紙は、"ほのか"からのものだった。

私は部屋に戻り、そこで手紙を読むことにした。

925 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/03(月) 02:05:33.42 ID:ejCiBnGN.net
返信遅くなっちゃってごめんなさい
海未ちゃんへ。


海未ちゃん、お久しぶりです。お元気ですか?
すっかり夏本番になりましたね。私は最近、食欲も落ち、少し夏バテ気味のようです。京都の夏は暑くて堪りません。
東京も暑い暑いと思っていたけれど、今は東京がどれだけ涼しい場所だったのかが身に沁みて感じられます。(でも夜は東京の方が蒸し暑いです。)
水分補給等忘れないよう、熱中症に充分注意してください。

それから、返事ありがとう。じっくり読ませてもらいました。
海未ちゃんも二回生になったんですね。なんだか、時間が過ぎるのはあっという間だなぁ、とノスタルジックな気持ちになるこの頃です。
あ、最近知った面白い豆知識があって、学生が大学に所属している年数を、関東では 年生 と言うのに対し、関西では 回生 と呼ぶそうです。
でも、私たちはカントー育ちなのに、何故か 回生 を使っていますよね。フシギダネ

926 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/03(月) 02:05:55.06 ID:ejCiBnGN.net
思ったことをそのまま字に起こしてるせいで、いつも話に相関性のない支離滅裂な手紙となっています。ごめんね?
海未ちゃんなら私の想いを解読してくれると信じています。

最後に、本題です。
施設の方から、面会の許可が下りました。これでようやく海未ちゃんと会うことができます。
この手紙に、施設がある所までの地図を添付しておきます。
山道で歩きも多くて大変だと思うけど、海未ちゃんは山登り好きだし大丈夫だと思います。
海未ちゃんの予定はわからないけど、こちらには宿泊できる設備が整っています。好きなだけ滞在していってください。

海未ちゃんに会えるのを心待ちにしています。


穂乃果より。

927 :ここまで(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/03(月) 02:10:52.30 ID:ejCiBnGN.net
手紙を読み終えた私は、携帯のカレンダーを確認した。

そして、京都訪問の日程を決めた。

八月一日。

この日、私は穂乃果に会いに行く。

928 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/03(月) 02:27:54.41 ID:xOp70gPs.net
乙です

そろそろ次スレの準備した方が良いのでは?

929 :名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/:2017/07/03(月) 03:00:54.78 ID:CKrhVzKX.net
どうなるんかな

930 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/07/03(月) 05:17:00.78 ID:I+xRjjkN.net
そろそろこのスレも終わりか

931 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/07/03(月) 05:34:22.25 ID:8LqsOc1T.net
おつおつ
ことりちゃんは一歩前にって感じなのかな
穂乃果ちゃん手紙では普通に元気そうだけど、どうなるんだろう…

932 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/07/03(月) 12:25:03.36 ID:kYr92Yh5.net


933 :名無しで叶える物語(ぎょうざ)@\(^o^)/:2017/07/03(月) 15:35:24.91 ID:533MsvIv.net
穂乃果ちゃんも歩きで山登ったん?

934 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/07/03(月) 23:17:06.77 ID:zNmZ8PFi.net


935 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/07/04(火) 05:29:35.31 ID:NOW2O2oC.net
しゅ

936 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/07/04(火) 14:49:13.01 ID:ZLUK848u.net


937 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2017/07/04(火) 23:09:17.79 ID:ta0rN5EN.net


938 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/07/05(水) 05:58:19.31 ID:OJtmq61H.net


939 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/07/05(水) 15:48:23.24 ID:p1FCn1Hh.net
しゅ

940 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/07/05(水) 23:35:56.87 ID:kQv7vBhp.net


941 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/07/06(木) 05:14:12.29 ID:7VLyW1NU.net
しゅ

942 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/07/06(木) 16:30:10.40 ID:6VEiINvL.net


943 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/07/06(木) 18:27:37.48 ID:gVtWiN9r.net


944 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/06(木) 23:49:54.55 ID:h9ViBOvX.net
#31

穂乃果からの手紙を受けた翌日。

私は京都に行く前にしておくべき支度を整えようと思い、寮を出た。

まず向かった場所は、私のバイト先。

先輩達に挨拶を済ませてから事務室へと入り、8月分のシフト希望を書いて、京都へ行くための日程調整をした。

店長はそのシフト表を見て、頭を掻き、都合の悪そうな表情を浮かべていた。


「海未ちゃん、8月のシフト全然入ってないけど…。何か外せない用でもあるの?」

海未「離れた場所にいる友達に、会いに行く予定なんです」

「そっか。だけどここまで休みを入れなくてもいいんじゃないかな?夏休みは稼ぎ時なんだけれどなあ」

海未「店に迷惑が掛かるのは申し訳ありませんが、それでも、バイトより友達を優先させてもらいます」


私がこれまでよく働いていたこともあって、店長は私の希望を承諾してくれた。

店長は椅子に腰掛け、シフト表を睨みながら、また頭を掻いていた。

私は礼を言い、そして店を出た。

945 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/06(木) 23:52:15.18 ID:h9ViBOvX.net
次に、向こうで必要になるであろう物資を揃えるため、近くのショッピングモールに向かった。

向こうに何泊するかはまだ決めていなかったが、とりあえずお泊りの際に必要になるであろう日用品を幾つか買った。

他にも生理用品や正露丸などを買い、お泊りに必要な物をすべて揃えた。

用も済まし、これ以上長居する理由もなかったので、私は帰ることにした。



真姫「え、海未…?」


私がモールを出ようとしたところで、私の名を呼ぶ声が聴こえた。

振り返ると、そこには紙袋を提げた真姫の姿があった。


海未「おや、こんな所で会うなんて偶然ですね」

真姫「本当ね…。海未は今帰るとこ?」

海未「はい、もう用は済みましたので。真姫は何をしていたのですか?」

真姫「ちょっと、買い出しをね」


真姫はそわそわして、何か急いでいる様子だった。


真姫「……ねえ、歩きながら話しましょう」

946 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/06(木) 23:54:33.40 ID:h9ViBOvX.net
ショッピングモールから帰る道は二人とも同じだったので、私たちは横に並んで歩いた。


海未「真姫が提げているその紙袋には何が入っているんですか?」

真姫「さっき楽器店で買ってきた、クラシックの教則本や空のスコアよ」

海未「何故スコアを?もしかして真姫は、今も作曲を続けているのですか?」

真姫「……まあ、そんなところかしらね」


真姫は手を打ち、話題を変えた。


真姫「そうだ。12月にね、うちのサークルが主催のピアノコンサートがあるの。で、そのコンサートに私も出演することになったわ」

海未「そうですか。頑張ってくださいね」

真姫「あ、それでね。ぜひ海未にもコンサートに来てもらいたいの」

海未「いいですよ。また真姫のピアノが聴けるのですね、楽しみです」

真姫「これがコンサートチケットよ。この一枚で2人まで入場できるんだけど………誰か誘う人はいる?」


誰か一人を誘うのなら、あの人しかいないと…、私は強く思った。

947 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/06(木) 23:55:06.63 ID:h9ViBOvX.net
真姫「もし一緒に来る人がいないのなら…。このコンサート、ご家族の方と一緒に観に来たら…?」

海未「………私の家族のことは放っておいてください。どうせ誘ったところで来やしませんよ」

真姫「まだ喧嘩してるのね…。いい加減仲直りしたら?もう海未も大人なんだから」

海未「………」

真姫「私は両親と、ちゃんと向き合ったわ。話し合って、そして反対されていた音ノ水への入学を許してもらえた」

真姫「海未も一度、親と話し合う機会を作りなさい。そしたら、そう…。今の現状から、少しは進歩するはずよ」

海未「……余計なお世話ですよ」

948 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/06(木) 23:58:30.21 ID:h9ViBOvX.net
会話が途絶えたまま歩く帰り道。

途中の曲がり角に差し掛かると、真姫は突然に別れを告げた。


海未「え…。真姫の家は、まだ真っ直ぐですよね?」

真姫「うん、そうだけど…。私、今からバイト先に行くのよ」

海未「バイト?ああ、前にそんなことも言っていましたね。真姫は結局のところ、何のバイトをしているんですか?」

真姫「ピアノの先生よ。いや、ピアノの家庭教師かしら」

真姫「私の生徒の子がいて、その子の家にピアノを教えに行くバイトをしているの」

海未「好きを仕事にしたわけですか。その紙袋の中身も、バイトで使う教材というわけですね」

真姫「ええ、そういうこと」


真姫は空を見上げた。

その口元には、自然と笑顔が込み上げていた。

949 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/06(木) 23:58:45.38 ID:h9ViBOvX.net
真姫「今私が持ってる生徒は中学三年生の女の子一人だけなんだけれど…」

真姫「すごく努力家な子なの。私が出した課題も次の日には完璧に仕上げてくるし、分からないところは積極的に質問してくれるし、上達しようという意気込みが感じられてとても気持ちいいわ」

真姫「その子、高校は音ノ木坂に入学するみたいなの。ゆくゆくはアイドル部に入って作曲をしたり…そんな期待を密かにしてるわ。先生失格かしら?でも、そうなってくれるといいわね」


真姫はとても楽しそうに話した。

まるでその子の存在が、自分の生きがいであるかのように。



真姫と別れた私は、部屋で明日の支度を整えた。

京都はすぐそこまで迫ってきていた。

950 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/07(金) 00:00:07.68 ID:qe1HSibA.net
ここまで
土日に次スレ

951 :名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/:2017/07/07(金) 00:00:42.41 ID:24XBR/1e.net
繋がるのか・・・?

952 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/07(金) 02:11:16.54 ID:8MRsmw5p.net
乙です

953 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/07/07(金) 04:27:04.23 ID:nvL2jdtt.net
おつおつ

954 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/07/07(金) 19:03:00.83 ID:Gcn5b4k+.net
保守

955 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/07/08(土) 00:05:08.40 ID:9M2YT458.net


956 :名無しで叶える物語(きびだんご)@\(^o^)/:2017/07/08(土) 03:47:52.45 ID:Q/L7Zrbf.net


957 :名無しで叶える物語(きびだんご)@\(^o^)/:2017/07/08(土) 07:14:04.59 ID:Q/L7Zrbf.net


958 :名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/:2017/07/08(土) 09:51:15.98 ID:ItoU0yfj.net
待ってる

959 :名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/:2017/07/08(土) 18:37:39.35 ID:1z9UJ+am.net
ひしゅ

960 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/07/09(日) 00:11:00.07 ID:90zvnYMO.net


961 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2017/07/09(日) 06:39:08.60 ID:pKX4zasm.net


962 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/07/09(日) 07:47:32.13 ID:d2FCut7l.net
しゅ

963 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2017/07/09(日) 16:40:39.42 ID:gIGn7XIA.net


964 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/07/09(日) 20:41:35.65 ID:4tsXYL+i.net
次スレまだ来てないか

965 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/09(日) 22:16:29.03 ID:kW3HWHed.net
土日終わっちゃいますが・・・

966 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2017/07/09(日) 22:34:20.97 ID:kpD5m1bi.net
エタった

967 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/09(日) 22:54:05.43 ID:nqAtH+FR.net
#32

8月1日。

私は東京駅で買ったお土産の『東京ばな奈』を提げ、新幹線に乗って京都駅に向かった。

新幹線が駅に着くと、そこからバスに乗り換え30分。

降り立った場所は、山の麓だった。


私は、穂乃果から貰った地図を頼りに山道を歩き始めた。

30分程登ったところで、ようやく目的地に到着した。

音ノ水の校門よりも大きな門を構えた玄関で、私は守衛の方に、施設内の大まかな地図を見せてもらった。


その地図を頼りに歩くこと20分。

私は、穂乃果が使っている寮の前に立った。

周囲を緑に囲まれたその寮は、横に長く連なる5階建で、壁は白のペンキが剥がれ風化している建物だった。



私は携帯を確認した。

山奥にあるこの場所では、携帯は電波を受信できず、圏外と表示されていた。

968 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/09(日) 22:55:33.86 ID:nqAtH+FR.net
30分程待つと、穂乃果がこちらに近付いてきた。


穂乃果「あれ、海未ちゃん…?来てくれたんだ!」

海未「はい。あなたに会いに来ましたよ」

穂乃果「そっかそっか、ありがと〜!待ってたよ!あ、そうだ。今から昼食の時間なんだけど、海未ちゃんはもうごはん食べた?」

海未「いえ、まだです」

穂乃果「じゃあ食べに行こう!色々と積もる話はあるだろうけど、ごはん食べながらの話でもいいよね!」


私は穂乃果に連れられ、木造の建物の中へと入った。

そこは、この施設の人達が利用する食堂となっていた。


穂乃果「ここにいる人はみんな、この施設に入居してる人達なんだ」

海未「料理を配給している人達もですか?」

穂乃果「うん。みんな、自分の得意分野を活かして、それぞれの役割を全うしてるんだよ」


私たちは今日の料理を受け取り、長机の空いてる席に着いた。

969 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/09(日) 22:56:41.90 ID:nqAtH+FR.net
台の上には、ご飯みそ汁アジの開き野菜のぬか漬け野菜揚げ…が並んでいた。

「この野菜は施設の中にある畑で採れたものなんだよ!」と、穂乃果は嬉しそうに語った。


海未「あの…、すみません。今日、ここに私一人で来てしまって」

海未「今日、私が穂乃果に会いに行くことを他のメンバーには伝えてないんです。穂乃果も、ことりやみんなに会いたいだろうとは思ったのですが…」

穂乃果「ううん、いいんだよ。海未ちゃんが来てくれただけでいいの。まあ欲を言えば、ことりちゃんにも会えたらよかったんだけどね」

海未「ことりは今、実習に行っています。ですからどの道来ることはできません」

穂乃果「……そっか、残念。ことりちゃんはまたいつか来てくれるかな?」

海未「………ことりは、この夏にフランスへ留学に行ってしまいます。ですから私も含め、しばらくは会えないでしょう」

穂乃果「そうなんだ…。みんな、遠い所へ行っちゃうね」

970 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/09(日) 23:04:30.14 ID:nqAtH+FR.net
海未「京都での生活はどうですか?もう穂乃果は二年目ですから、随分馴染んできた頃でしょう」

穂乃果「まあね。京都弁も理解できるようになったよ」

海未「私は、京都に法隆寺があると思っていた位、京都に関して無知なんです。ですから、もうすっかり京都人となった穂乃果に、京都案内をしてもらいたいですね」

穂乃果「ううん。私は全然京都人なんかじゃないし、京都のことなんて全然知らないよ。だって、私はずっと、籠の中に囚われてるんだもん」

海未「あ…。す、すみません。無配慮なことを…」

穂乃果「気にしなくてもいいよ。それより、法隆寺って京都にあるんじゃなかったっけ?」

海未「私もずっとそう思っていたのですが、どうやら法隆寺は奈良にあるそうです」

穂乃果「あー、言われてみればそんな気もするね」

海未「法隆寺ではなく、"五重の塔"が京都にある…というのが正解でしたね」

971 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/09(日) 23:06:04.45 ID:nqAtH+FR.net
昼食を済ませると、穂乃果は私に鍵を渡してきた。


穂乃果「私は今から昼の仕事があって、夕方まで戻れないからさ、海未ちゃんは私の部屋で待ってて」

海未「分かりました。穂乃果は何の仕事をしているんですか?」

穂乃果「畑、だよ!」


この施設に入居している人達には各々に仕事が与えられているらしく、穂乃果の場合は何人かのメンバーと畑仕事を任されているそうだ。



私は寮に行き、鍵を使って穂乃果の部屋へと入った。

室内は簡素で、無駄な物や空間が一切除外されていた。

私は床に座った。

そして部屋の中を見回していると、ベッドの下に何かがあるのを見つけた。

それは日記帳だった。私はその日記帳を取った。

穂乃果に申し訳ないと思いながら日記帳を開いたが、中に書かれている字や絵は潰れていて、判読すらできなかった。

私は穂乃果から送られてきた手紙を思い浮かべた。あの字は達筆とは言えないが、文字は整っていて綺麗なものだった。


私はなんだか、気味が悪くなった。

972 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/09(日) 23:06:46.24 ID:nqAtH+FR.net
夕方になって部屋に帰ってきた穂乃果と、食堂で夕食を取った。

私たちは部屋に戻り、近況報告や、当たり障りのない話をした。

私は、日記帳の話には触れなかった。


穂乃果に『東京ばな奈』を渡すと、飛び跳ねて喜んだ。

それを見て、私も嬉しくなった。


穂乃果は明日の朝も早いとのことで、10時には床に就いた。

私は穂乃果から借りた寝間着で、床に布団を敷き、そこで横になった。

こうして1日目は過ぎた。

2日目も過ぎた。

この施設にいると、あっという間に時間が過ぎてしまう気がした

973 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/09(日) 23:08:01.12 ID:nqAtH+FR.net
私がこの施設に来てから3日目の、8月3日。

私はこの日に合わせて、穂乃果に会いに来ていた。


海未「穂乃果、誕生日おめでとうございます。これは細やかながら、私からのプレゼントです」

穂乃果「わぁ、ありがとう!これは…ポエム?海未ちゃんが書いたんだね!」

海未「ええ。気に入っていただけると幸いです」

穂乃果「うん気に入ったよ!毎晩ベランダで声を張り上げて朗読するね!」

海未「それはやめてください」


ここまで楽しく談笑していたが、突然、穂乃果は押し黙ってしまった。


海未「穂乃果…?」

穂乃果「ねえ、海未ちゃん。私のこと、好き…?」

海未「……何言ってるんですか。当然ですよ」

穂乃果「だったら、言葉にしてよ。好きって言いなよ」

海未「う…、それは恥ずかしいですよ…」

穂乃果「………」


穂乃果は私の手を取り、迫ってきた。

974 :名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/:2017/07/09(日) 23:09:37.97 ID:Hveui709.net
法隆寺wwwww

975 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/09(日) 23:10:26.41 ID:nqAtH+FR.net
穂乃果「だったら…、キスして」

海未「な、何故ですか!?話が飛躍し過ぎではありませんか?」

穂乃果「いいから。キス、しよ…?」


穂乃果はどんどんと接近してきた。

逃げ場を失った私は、事無きを得る為に、穂乃果の前髪を掬い上げ、そこに口付けをした。


海未「ほら、見ましたか?キスしましたよ」

穂乃果「………バカ」


穂乃果はぷいっと頬を膨らまし、ベッドに倒れこんだ。

私もその日は布団に入り、眠ることにした。



こうして、3日目が過ぎた。

いや、もしかすると、この時には既に、もっと多くの時間が過ぎていたのかもしれない。

しかし私にとってはこれが"3日目"であり、次の朝に迎えるのが"4日目"であった。

976 :名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/:2017/07/09(日) 23:58:30.39 ID:PjHxQgxX.net
刑務所?

977 :名無しで叶える物語(プーアル茶)@\(^o^)/:2017/07/10(月) 00:27:52.77 ID:jz8UxDwm.net
京大附属の病院でしょ

978 :名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/:2017/07/10(月) 00:40:47.75 ID:trgZ5cZJ.net
穂乃果の日記…

979 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/10(月) 00:47:45.70 ID:L82nrUWn.net
すごい違和感
まるで怪しい新興宗教を見ているよう

980 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/07/10(月) 01:03:47.90 ID:reWKt31J.net
体は元気っぽいな
なんの病気なんだろうか

981 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/10(月) 01:40:50.75 ID:mDGS3JnS.net
スレ立てできないので今日の夜に立てます

982 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/10(月) 04:32:35.27 ID:0fW8dgd7.net
誘導頼むぞ

983 :名無しさん@そうだ選挙に行こう! Go to vote!(庭)@\(^o^)/:2017/07/10(月) 07:18:32.65 ID:FtI3lKYq.net
やっぱりほのうみなんですよねぇ…

984 :名無しさん@そうだ選挙に行こう! Go to vote!(庭)@\(^o^)/:2017/07/10(月) 07:51:59.94 ID:31xzU0T5.net
なんか怖い

985 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/10(月) 18:03:34.47 ID:Oa6AdMUl.net
結構序盤から怖いけどな

986 :名無しで叶える物語(らっかせい)@\(^o^)/:2017/07/10(月) 19:24:38.28 ID:C4iu82i0.net
ようやく追いついた
スレタイからは想像もできないssだな
2になる前に見つけられて良かったぜ

987 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/10(月) 21:04:27.40 ID:mDGS3JnS.net
次スレ
https://fate.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1499688038/

988 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2017/07/10(月) 21:08:00.04 ID:DfjLLK92.net
>>987
乙です

989 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/10(月) 22:16:13.90 ID:dKlZk4bo.net
うめ

990 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2017/07/10(月) 22:17:32.74 ID:L82nrUWn.net
実は穂乃果病気じゃないとかありそう

991 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2017/07/10(月) 23:21:10.36 ID:AMtc8DFo.net


992 :名無しで叶える物語(禿)@\(^o^)/:2017/07/10(月) 23:46:48.86 ID:9d9LCyFg.net
うめ

993 :名無しで叶える物語(禿)@\(^o^)/:2017/07/10(月) 23:46:59.09 ID:4pW7QG5D.net
うめ

994 :名無しで叶える物語(禿)@\(^o^)/:2017/07/10(月) 23:47:08.85 ID:i2gNh8Yf.net
うめ

995 :名無しで叶える物語(禿)@\(^o^)/:2017/07/10(月) 23:47:20.89 ID:p7E3bCKc.net


996 :名無しで叶える物語(禿)@\(^o^)/:2017/07/10(月) 23:47:31.42 ID:bxGanLxL.net


997 :名無しで叶える物語(禿)@\(^o^)/:2017/07/10(月) 23:47:42.50 ID:hKRWHG2F.net


998 :名無しで叶える物語(禿)@\(^o^)/:2017/07/10(月) 23:48:06.72 ID:hKRWHG2F.net


999 :名無しで叶える物語(禿)@\(^o^)/:2017/07/10(月) 23:48:20.12 ID:pE7UviCq.net


1000 :名無しで叶える物語(禿)@\(^o^)/:2017/07/10(月) 23:48:49.70 ID:23Qvmivp.net
つまらん!

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