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善子「ミサンガをつけた人魚姫」

1 :名無しで叶える物語:2017/04/23(日) 22:07:28.80 ID:LB4YiQML.net
遠い昔の、思い出したくない思い出を、夢で見た。

「げ! 津島の配るパンなんて食いたくねーよ!」

「津島の配ったパンを食ったら不幸になるから要らねー!」

中学生のころも当然、私は不幸だった。運動会は雨、遠足は台風、芋ほりは不作、卒業アルバムはインフルエンザ。
細かいことを上げればきりがない。だから私は男子どもに揶揄われる、格好の的だった。

「ククク、私のパンを食べればリトルデーモンになれるというのに……やはり人間は度し難い……」

そうやって揶揄われても、私はひたすら堕天使のフリをして、殻にこもって、やり過ごしていた。

私は不幸。私は、幸せを手放して生きてきた。そう思って、生きてきたの。

2 :名無しで叶える物語:2017/04/23(日) 22:08:14.62 ID:LB4YiQML.net
パジャマが寝汗で気持ち悪かった。枕もとの時計が差す時刻は、四時過ぎ。

……もう一度、眠ることができるだろうか。

私はベッドから起き上がり、机の上に置いてあるデスクライトのスイッチを入れる。

まぶしい。

やはり堕天使に光は効く。主に目に。

ほんの少しだけ目を閉じて、また目を開ける。

机の上には赤色の、作りかけのミサンガ。

「……」

四月十七日まで、もうすぐだった。

もうすぐ完成しそうなミサンガと、もうすぐ訪れる四月十七日。

ぶんぶんぶんぶん。頭を振っていやな考えを振り払う。汗が飛び散る。

私は赤いミサンガをにらみつけると、デスクライトのスイッチを切って闇を召喚し、パジャマを脱いだ。

「いっでぇ!!!!」

小指を箪笥の角にぶつけた。不幸だわ。

3 :名無しで叶える物語:2017/04/23(日) 22:08:59.75 ID:LB4YiQML.net
私の目元のクマは、頬のチークでごまかせた。

「1,2,3,4,5,6,7,8,善子、ステップ遅れないで!」

果南先輩の声が屋上に響く。そうは言っても箪笥でぶつけた足の小指が痛む。

でもなんとなく、ケガをしたと言い出せなくて練習に臨んでいる。

「マルいい感じだよ! ルビィは笑顔意識して!」

「はい!」
「はいっ!!」

花丸の声とルビィの声が重なる。

「チカ! 早い!」

「うんっ!」

流石というか、果南先輩はすごい。千歌先輩に一番最初に巻き込まれたというが、確かに果南先輩がいれば安心できる。そう。頼りがいがありすぎて困る。

「善子!」

「え?」

しまった。ステップ。ルビィと入れ替わり。視界の隅ではルビィがもうこっちに向かってる。

やばい。合わせなきゃ。

4 :名無しで叶える物語:2017/04/23(日) 22:09:20.88 ID:lBUhukpf.net
ミンサガに見えた

5 :名無しで叶える物語:2017/04/23(日) 22:10:40.63 ID:LB4YiQML.net
焦った足。踏み込んだ。がくんと視界が傾く。小指が重い痛みを訴える。

「ぐ――っ!」

前に転びそうになって――ルビィ――!

「きゃっ!」
「ルビィちゃん!」

灰色の閃光が私の視界を駆け抜け、ルビィを私の前から遠ざけた。

屋上に両手をついて無様に転倒することだけは回避する私。

「曜ちゃん!」
「ルビィ!」

生徒会長とリリーの悲鳴に近い声に、どっと汗が噴き出す。

曜さんになにかあった――? それとも、ルビィにケガさせた――?

遂に、他人にまで不幸にさせた――?

6 :名無しで叶える物語:2017/04/23(日) 22:11:20.92 ID:LB4YiQML.net
「ふぃ〜……間一髪。ルビィちゃん、ケガはない?」

「は、はぃ……ごめんなさい曜せんぱい……善子ちゃんも……」

心臓が口から飛び出しそうになる。

「な、なに言ってるのよルビィ! 私がステップ遅れたから――ごめんなさいルビィ! 曜さん!」

汗が止まらない。私のせいでルビィにケガを、曜さんにケガをさせるところだった。

とにかく頭を下げる。恐怖で胃の中のものが全部出てきそうだ。なに? 私、どうしちゃったの?

「曜さん、本当にケガはありませんか?」

生徒会長のクールな声に、曜さんはいつもの敬礼で応える。

「曜は春季の試合があるんだから無理しちゃ――って言いたいとこだけど、さすがだね」

果南先輩のにへっとした笑顔。千歌先輩も目を輝かせて曜さんを見つめている。
リリーはカバンからマキロンと絆創膏を取り出してオロオロして、マリーに笑われていた。

7 :名無しで叶える物語:2017/04/23(日) 22:11:52.48 ID:LB4YiQML.net
本当にケガはないらしくて、私はほっと溜息をつく。

「……善子ちゃん?」

「ほあっ!?」

一息吐いて目を開けると、そこには曜さんの丸くて大きな目が私をじっと見つめていた。

「気分悪い? 顔色悪いよ? 目の下にクマもあるっぽいし。保健室行ったら?」

この人――私のせいで危ない目にあったのに……なんでよ……。

「大丈夫。ちょっと――寝不足なだけ、だから」

視線を曜さんから外して、ちょっと不貞腐れたように言葉を漏らす私。

心配してくれる曜さんに、私は嫌な態度をとってしまう。

「そっか。でも一応今日は見学するかお休みしたら? 善子ちゃんが怪我したら大変だもん」

――っ。

「私より曜さんのほうが怪我したら――」

曜さんは特別なのに、普通な私のせいで――そういいそうになって、止めた。

8 :名無しで叶える物語:2017/04/23(日) 22:12:31.62 ID:LB4YiQML.net
練習の後、私はルビィと花丸の誘いを断り、まっすぐ家に帰った。

いつも一緒に帰る曜さんは、衣装が遅れているという事で被服室でもう少し作業するらしく、私は久しぶりに一人だった。

四月十七日まで、もう残り少ない。赤いミサンガを早く完成させないと。

それに今日は放課後を明るく過ごす心的余裕はない。ルビィにも曜さんにも、申し訳ない気持ちが、気後れの感情が渦巻いている。

バスを降りて、マンションへ急ぐ。ミサンガ作りに没頭すれば、いやなことを考えずに済む。

「善子ちゃん?」
「――あれ? 津島じゃねーか?」

聞き覚えのある低い声と高い声に、私は振り向く。

「お前、スクールアイドルやってるんだったな! すげーな津島!」

中学時代の、クラスメイトだ。あの夢に出てきた姿から、相変わらず。
男子と女子、でも名前は出てこない。

「久しぶりだね善子ちゃん!」

「お前の不幸病、治ったかよ?」

「もう! 揶揄うのはやめなさいよ! スクールアイドルやってるくらいだし、不幸とか運が悪いとか、そんなの吹っ切ってるわよ!」

嘘が平然と吐ける。スクールアイドルと不幸は関係あるのか? でも、そう言い聞かせるように言った。言うしかなかった。

まるで私じゃないほかの誰かが喋ってるみたいに、嘘がスラスラついて出た。

その日、取り憑かれたように、なにかから逃げるように、ミサンガを完成させた。

9 :名無しで叶える物語:2017/04/23(日) 22:12:37.14 ID:4BsLqIPn.net
きっしょ
もうやめな

10 :名無しで叶える物語:2017/04/23(日) 22:13:19.90 ID:LB4YiQML.net
「善子ちゃん、ミサンガはできた?」

昼休み、のっぽパンをほおばるずら丸が唐突に聞いてきた。
ルビィがぶんぶんとヘドバンしている。

二人は私が赤いミサンガを作っていることを知っている。
そのミサンガを、四月十七日に曜さんに渡すことも知っている。

「できた……けど」

「見せて!!」

ルビィが物凄い食いついてくる。こういう時のルビィには逆らわないほうがいい。

下手に逆らうと拗ねるからだ。

「……はい」

私は渋々制服のスカートのポッケから赤いミサンガを取り出す。

「すごーい!! 赤色に白と水色のラインとが入ってる! すごいすごい! かわいい!」

「なんで赤色基調ず――なの?」

まるで宝石みたいに大事に両手で抱え持つルビィ。ちょっと照れる。

隣でずら丸が不思議そうに聞いてくる。曜先輩なら水色ずら、とでも言いたげだ。

「赤色は運動なんだって。白色は健康。ケガしないように、試合で結果出せるように、っていう色よ」

「なるほど……ちゃんと考えてあるんだね」

うんうん、とうなずくずら丸。私が何も考えないで編んだと思ってるのだろうか。……思っていそうだ。

11 :名無しで叶える物語:2017/04/23(日) 22:14:19.76 ID:LB4YiQML.net
「やっぱり誕生日に渡すの?」

ルビィが私にミサンガを返しながらウキウキ気分を隠さず言う。

いや、ルビィはミサンガ関係ないでしょ……。

「それはそうずら! ロマンチックずら〜……」

方言だ飛び出しているところ悪いけど――。

「これは没にするわ」

「……え?」
「……は?」

ルビィのきょとんとした顔と、ずら丸のぽかんとした顔。

「考えてみなさいよ。高飛び込みよ? ミサンガ付けたらいちいち外す手間がかかるのよ?」

「あ」
「確かに」

「プレゼントしても、曜さんの邪魔になるならそれは私の自己満足で、曜さんのためにはならない。だから――」

私はルビィから受け取ったミサンガを握りしめる。

そう。これでいい。

私の願いは、いつだって叶わない。

晴れてほしい日は雨。

来てほしくない台風は絶対に来る。

健康で迎えたい日は、インフルエンザ。

お芋は不作。

もし私の願いを込めたミサンガを、曜さんが身に着けたら、曜さんは間違いなくケガをする。

昨日だって、ルビィと曜さんを危険な目に遭わせてしまった。

だから、ミサンガは私の自己満足。この不幸のお守りは、ごみ以下なの。

「てい!」

12 :名無しで叶える物語:2017/04/23(日) 22:15:17.31 ID:LB4YiQML.net
ミサンガは教室をかっ飛んでゴミ箱にホールインワン。入ってほしくないと願っていたから、入ってしまった。

……嘘。珍しく運が良かった。いつもの私なら、ごみ箱とは明後日の方向に飛んで、二度手間になるところだったわ。

「さ! 着替えるわよ! 次は移動教室なんだから!」

私は立ち上がると、教科書と筆箱をまとめる。握りしめたミサンガの感覚がなぜか取れない。

「よ、善子ちゃん――」

「なによずら丸。私はもう次の手を考えてあるわ! 堕天使の涙って言ってね――」

これがなかなか美味なのよ。一口食べたら病みつきに――ん?

「ルビィちゃん?」
「ルビィ? 顔色悪いけど大丈夫?」

「わすれもの……しちゃった……」

まるでこの世の終わりのように、ルビィは震えている。

「えぇ? おっちょこちょいねぇ……隣のクラスの人に借りてきなさいよ。私もついて行ってあげるから――ねえずら丸?」

「!! いいよ! 大丈夫! そのくらい一人で借りれるよぉ!」

「! 流石に過保護だよ善子ちゃん……じゃあルビィちゃん、先に行ってるね?」

「うん、二人は先に行ってて……」

しょぼくれながらルビィが教室を出て行った。

「なんであんなに落ち込んでるのかしら?」

「忘れ物したこと、なぜがダイヤさんは絶対に聞きつけて家に帰ったらダイヤさんに怒られるからだよ」

「ああ……シスコン会長ねぇ……」

私と花丸は深く溜息を吐いた。

……深く、溜息を吐いた。

13 :名無しで叶える物語:2017/04/23(日) 22:23:38.16 ID:OC9uY/KM.net
へったくそで読みづらい文やな
もうやめろやガイジ

14 :名無しで叶える物語:2017/04/23(日) 22:24:52.23 ID:1JmJGn2X.net
気にしないで続けて

15 :名無しで叶える物語:2017/04/23(日) 22:34:53.57 ID:DjEdyZNK.net
規制食らった

16 :名無しで叶える物語:2017/04/23(日) 22:39:58.50 ID:pKOpXeok.net
お前恥ずかしくないのか?もうやめてくれよ見てるこっちが恥ずかしい
さっさとやめろよガイジ気色悪いわ

17 :名無しで叶える物語:2017/04/23(日) 22:42:48.45 ID:eVi0b3fe.net
しえん

18 :名無しで叶える物語:2017/04/23(日) 22:52:34.54 ID:1JmJGn2X.net
保守しとくわ

19 :名無しで叶える物語:2017/04/23(日) 22:53:46.43 ID:WFvXu3/l.net
支援

20 :名無しで叶える物語:2017/04/23(日) 22:54:01.14 ID:uJmxcawf.net
ほしゅ

21 :名無しで叶える物語:2017/04/23(日) 23:03:35.10 ID:FMpy2tSg.net


22 :名無しで叶える物語:2017/04/23(日) 23:04:24.21 ID:FMpy2tSg.net


23 :名無しで叶える物語:2017/04/23(日) 23:04:46.19 ID:FMpy2tSg.net


24 :名無しで叶える物語:2017/04/23(日) 23:05:34.08 ID:FMpy2tSg.net


25 :名無しで叶える物語:2017/04/23(日) 23:05:59.40 ID:FMpy2tSg.net


26 :名無しで叶える物語:2017/04/23(日) 23:40:57.55 ID:tLFflLsG.net
ちょっと暗めの話ってなぜか全力で叩くやつ現れるよな黙って閉じとけよ
待ってるぞ

27 :名無しで叶える物語:2017/04/24(月) 00:03:42.01 ID:wNBnqYF9.net
シリアス系や、地の文が混じると、やたら嫌う人がいるね。よくわからないけど

28 :名無しで叶える物語:2017/04/24(月) 00:13:25.45 ID:N8qJMWGY.net
期待

29 :名無しで叶える物語:2017/04/24(月) 00:29:22.61 ID:JEUmqGN2.net
ようよしなら先に言っといて

30 :名無しで叶える物語:2017/04/24(月) 01:25:08.91 ID:nGsTnls4.net
>>16
うんちぶりぶりwwwwwうんちぶりぶりwwwww

31 :名無しで叶える物語:2017/04/24(月) 05:44:34.88 ID:SDA2oB7v.net
続き待ってる

32 :名無しで叶える物語:2017/04/24(月) 08:37:14.87 ID:hsQhOxUS.net
や庭糞

33 :名無しで叶える物語:2017/04/24(月) 20:38:02.98 ID:TeR4FBuD.net
NGワード、パターンを回避しようとあれこれ試したが全て弾かれまた規制を食らった。
だめみたいだ。

34 :名無しで叶える物語:2017/04/24(月) 20:41:26.59 ID:wNBnqYF9.net
規制は長いと1ヵ月くらい続くと聞いたことある。この板の設定がどうか知らないけど
規制とけるまで待つか、SS速報等で書いてここでリンク張ったりとかかな

35 :名無しで叶える物語:2017/04/24(月) 20:57:57.65 ID:OeOcV5YC.net
続きはよ

36 :名無しで叶える物語:2017/04/24(月) 21:05:36.70 ID:2qWPrNtr.net
楽しみにしてるからSS板に移っても見るぞ

37 :名無しで叶える物語:2017/04/24(月) 21:11:35.75 ID:TGZM5aeP.net
渋に上がってるな

38 :名無しで叶える物語:2017/04/25(火) 20:25:38.47 ID:NkW3qQdL.net
つまんね

39 :名無しで叶える物語:2017/04/25(火) 20:26:15.85 ID:NkW3qQdL.net
これが本家だ
わかったか庭?

40 :名無しで叶える物語:2017/04/25(火) 20:29:28.27 ID:oaAOQ/9+.net
渋って何の略なんすか?

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