2ちゃんねる スマホ用 ■掲示板に戻る■ 全部 1- 最新50    

■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

曜「善子ちゃんをくすぐり続けたら失禁した」その4

1 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:17:10.48 ID:mc7jjdA4.net
おしっこ大好き曜ちゃんと、曜ちゃん大好き善子ちゃんのお話です。

今回はおしっこ要素はそこまでないので苦手な人もぜひ。


*過去スレ

曜「善子ちゃんをくすぐり続けたら失禁した」
http://fate.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1513854343/
(堕天)

曜「善子ちゃんをくすぐり続けたら失禁した」その2
http://fate.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1517118470/
(堕天)

曜「善子ちゃんをくすぐり続けたら失禁した」その3
http://fate.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1518316226/
(堕天)

↑の続きですが読んでなくても大丈夫です。

(付き合いたてのようよしがイチャイチャしたりケンカしたりたまにおしっこするだけなので)



【前回のラブライブ!】


*不治の病編

ケンカした翌日、何とか仲直りした二人でしたが善子ちゃんが倒れてしまいます。

風邪っぽい症状で熱もあったためインフルエンザかも? と病院へ連れて行く曜ちゃんでしたが……。

やっぱりどうやらただの風邪ではないようでした。


*料理教室編

善子ちゃんが倒れたと聞いた曜ママは、善子ちゃんにいっぱい食べて元気になってもらおうと張り切って料理を振る舞うことに。

予想通り酷い出来でも気を遣う善子ちゃん。はっきりマズいと言う曜ちゃん。

大人版曜ちゃん(曜ママ)にドキドキする乙女善子ちゃん可愛い。


*お泊まり会編

曜ママと善子ちゃんがお風呂で思い出話をしている間、曜ちゃんは善子ママと……。

あろうことか現場を目撃されてしまい、善子ちゃんのビンタが炸裂。

曜ママと善子ちゃん、善子ママと曜ちゃんの親子じゃないのに親子っぽい関係が好き。




以下本編

2 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:18:40.92 ID:mc7jjdA4.net
【ダイエット編】



 朝

 善子の家 リビング

善子「ふわぁ……よく寝たわ」

曜「おはよう。今起こしに行こうと思ったところだよ」

善子「あれ、ママたちは?」

曜「仕事。私たちも今日から学校だからね?」

善子「そっか。今日は始業式だったわね」

曜「午後からはテストだよ」

善子「結局、冬期講習は半分くらいしか出られなかったわね」

曜「でも、その代わり一緒に勉強できたからよかったよ」アハハ

善子「私は教えてもらえてよかったけど……曜さんはよかったの?」

曜「んー?」

善子「自分の勉強は」

曜「あぁ……うん。徹夜でテキスト読み込んだから大丈夫だよ」

善子「テスト中寝落ちしても知らないわよ」

曜「それは嫌だな……」

善子「分かってるとは思うけれど、赤点だと補習で追試だから」

曜「うん……」

善子「一緒にいる時間が減っちゃうわ」ボソッ

曜「え?」

善子「何でもない。朝ごはん食べましょ」

曜「そうだね」

……

善子「……」モグモグ

曜「美味しい?」

善子「ええ」パクッ

曜「よかった」

3 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:19:16.28 ID:mc7jjdA4.net
善子「念のために聞いてもいいかしら」

曜「入ってないよ」

善子「……」モグモグ

曜「入ってたら匂いで気づくよね?」

善子「ほんの少しだけ入れたかも」モグモグ

曜「そんなことしないよ」アハハ

善子「どうかしら」パクッ

曜「それはそうと、結局ダイエットはしなかったね」

善子「え?」

曜「ウエスト。二センチ太ったままだよ」

善子「……」

曜「私のせいかな」シュン

善子「どうして?」

曜「毎日善子ちゃんに食べさせるから」

善子「栄養のある食事は大事でしょ。食べ過ぎはよくないけれど」パクッ

曜「そういえば善子ちゃん、私が来てからカップめん食べてないね」

善子「そうね。曜さんの料理の方が美味しいから」モグモグ

曜「ママの料理は食べてる?」

善子「食べてるわ。曜さんがいないときに」パクッ

曜「そっか」

善子「……」モグモグ

曜「……」

善子「曜さんは食べないの?」パクッ

曜「わ、私? 私は……」

善子「ママたちともう食べた?」

曜「ううん……」

善子「……」

曜「食べてない」

善子「あっ……そういうことね」

曜「?」

4 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:19:50.07 ID:mc7jjdA4.net
善子「はい」つ

曜「えっと……」

善子「あーん」つ

曜「ごめんなさい」

善子「えっ」カシャン

曜「実はさ、私……」

曜「ダイエット中なんだ」アハハ

善子「」

曜「こう見えて先月から一キロ太ってるの」カァアア

善子「いや、一キロなんて誤差でしょ」

曜「ううん。空腹時も満腹時も平均してだよ」

善子「……」

曜「ほら、お腹周りなんて少し」スルッ

善子「ぬ、脱がなくていいから!」カァアア

曜「ウエストは三センチも増えた」プニ

善子「私より……」

曜「だからあまり善子ちゃんのことは言えないんだ」アハハ

善子「曜さんも食べ過ぎて?」

曜「ううん。私は運動不足かな」

善子「運動不足……?」

曜「前までは毎日欠かさず筋トレしてたんだけど、最近はほとんどやってないから」

善子「あぁ、それで……」

曜「果南ちゃんとジョギングしたりもしてたんだけどね、最近はすっかりやってないの」

善子「果南さんと?」

曜「そうだよ。私が誘うとね」

曜「『夜中に二人きりで会うのはやめてあげたら?』アハハ」

曜「ってさ」

善子「何だか気を遣われてるような……」

曜「善子ちゃんといるときはもちろんだけど、いないときもね」

善子「……」

5 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:20:25.04 ID:mc7jjdA4.net
曜「私が他の人と二人きりなんて嫌かな?」

善子「ジョギングでしょ? そのくらいいいわよ」パクッ

曜「本当は嫌でしょ?」

善子「……そこまで気にしてたら何もできないじゃない」

曜「私は果南ちゃんとも一緒にジョギングしたいんだけどね」アハハ

善子「すればいいのに」

曜「やっぱりみんな何か気を遣ってるよねぇ」

善子「……まあ、正直やりづらい感じはするわね」

曜「どうしたらいいと思う?」

善子「うーん……」

曜「本当はさ、グループ内での恋愛はあんまりよくないんだよね」

善子「私たちのせいでAqoursがうまくいかなくなるって心配してる?」

曜「……少し」

善子「自意識過剰も程々にしなさいよ。みんなそこまで私たちのことなんて気にしてないんだから」

曜「そうかな」

善子「そうよ。そんなに心配ならみんなに聞いてみたら? たぶん笑われるわね」フフッ

曜「う……」

善子「まあ、ダイエットくらいなら一緒に……」

曜「今日は学校まで走って行こうよ」

善子「は? 嫌よ絶対遅刻するわ」

曜「今から出れば間に合うよ」

善子「曜さんはよくても私が間に合わないわ」

曜「じゃあバス停ひとつ分だけ走ろう」

善子「ひとつ分? そんなのでダイエットになるのかしら……」

曜「あー、うん、本当は軽めの運動を三十分くらい続けないと有酸素運動にならないんだけど」

善子「そうよ。でも三十分も走ってたら遅刻しちゃう」

曜「善子ちゃんとジョギングしたいな」

善子「……」

曜「ダメ?」

善子「食べた後で走ると気持ち悪くなるから嫌」

6 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:20:57.08 ID:mc7jjdA4.net
曜「……」シュン

善子「帰りなら付き合ってあげてもいい」

曜「本当!?」ガタッ

善子「バス停ひとつ分だけね。毎日やれば少しは効果あるでしょ」

曜「毎日やるの?」

善子「やらないの?」

曜「やる」

善子「仕方ないから付き合ってあげるわ」

曜「ありがと」エヘヘ

善子「じゃあ……」つ

曜「ん?」

善子「朝ごはん食べないとテスト中頭が働かないわよ」つ

曜「一口だけ……」パクッ

善子「どう?」

曜「美味しいよ」モグモグ

善子「でしょ。実はこれ、私の大好きな人が作った料理なの」つ

曜「……」カァアア

善子「いいから早く食べて」カァアア

曜「善子ちゃんは優しいね」パクッ

善子「食べてるときの曜さんが好きなだけよ」

曜「私も。食べてるときの善子ちゃん、好きだよ」モグモグ

善子「……」ドキドキ

曜「えへへ……」ニヤニヤ

善子「って! ダメよそんな考えしてたら!」

曜「え?」

善子「このままじゃ私たち、本当に太っちゃうわ……」

曜「確かに」

善子「今日からダイエットよ」

曜「分かった。食事もいつもよりヘルシーなものにするね」

善子「それと、あんまり美味しく作らないで」

7 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:21:29.16 ID:mc7jjdA4.net
曜「食べ過ぎちゃうから?」

善子「そうよ」

曜「量を少なめに作ればいいんじゃないかな?」

善子「……」

曜「それと、お代わり禁止で」

善子「そうね。そうしましょ」

曜「おやつも控えようね」

善子「当然よ」

曜「あと夜食も」

善子「食べてないわよ」

曜「私が」

善子「食べてるの!?」

曜「お腹空いちゃってさ」アハハ

善子「……」

曜「さ、食べ終わったなら片付けてきちゃうよ」スタッ

善子「え、もう食べないの?」

曜「ダイエット中だから」

善子「じゃあこれは?」

曜「捨てる」

善子「そんなもったいないことできるか!」ガツガツ

曜「太るよ?」

善子「曜さんの料理を捨てるくらいなら太った方がましよ」モグモグ

曜「……そんなこと言われたらもっと美味しく作らなきゃね」エヘヘ

善子「やめて。本当に太る」パクッ

曜「やっぱり私も食べるよ」

善子「太るわよ?」

曜「善子ちゃんだけ太らせるわけにはいかないよ」

善子「……」つ

曜「あむっ」パクッ

善子「おせちも食べてないのに正月太りなんて……」ハァ

8 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:22:41.98 ID:mc7jjdA4.net
.

9 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:23:39.31 ID:mc7jjdA4.net
.

10 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:24:07.00 ID:mc7jjdA4.net
曜「幸せ太りじゃない?」

善子「どっちでもいいわよ」パクッ

曜「……」

善子「ごちそうさま。美味しかったわ」

曜「それじゃ片付けてくるから、善子ちゃんは着替えて来なよ」

善子「いいわよ、たまには私が片付けるから」スタッ

曜「そう? じゃあお願いしようかな」

善子「食器が一人分だと片付けるのも楽よね」

曜「今日から二人で一つの食器で食べようか」

善子「えっと……二人だけのときならいいわよ」

曜「ダイエットにもなるしね!」

善子「そうね。二人で一人前を食べれば見た目は一人前でもカロリーは半分……」

曜「もしかして善子ちゃんって天才?」

善子「ええ。今頃気づいたの?」フフッ

曜「善子ちゃんとなら楽しくダイエットできそうだよ」アハハ

善子「私も。一人だとどうしても怠けそうになるもの」

曜「私は怠けたりしないけどね?」

善子「夜食」

曜「う……」

善子「いいから着替えて来なさい。私も片付け終わったら行くわ」

曜「絶対に覗かないでね?」スタッ

善子「曜さんじゃないんだから……」ハァ

……

 善子の部屋

ガチャ

曜「そういえば……前に善子ちゃんの制服を着たときはちょっとキツかったっけ」

曜「着てみようかな」スッ

スルスル

シュルッ

曜「……」

11 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:24:38.10 ID:mc7jjdA4.net
曜「ん? 太ったはずなのにキツくない……」

曜「そっか。筋肉が落ちたから細くなってるのかな」

曜「お腹周りは調整すれば大丈夫だし……」キュッ

曜「うん! いい感じ」フリフリ

曜「……」

曜「カバンも交換しないとだ」

曜「うわ、善子ちゃんのカバン重たいなぁ」ズシッ

曜「何が入ってるんだろ?」ガサゴソ

曜「……」ガサゴソ

曜「教科書ちゃんと持ち帰ってるんだね。真面目だなぁ」

曜「私は基本置きっぱなしだからねぇ」

曜「おっ、このポーチは……」サッ

曜「メイク道具?」

曜「善子ちゃん、いつもメイクなんてしてたんだ」

曜「そんなことしなくても可愛いのに」キュッ

曜「……」ヌリヌリ

曜「……」サッサッ

曜「……」ペタペタ

ガチャ

善子「お待たせ曜さん」フゥ

曜「あ」サッ

善子「何して……」

曜「な、何でもないよ。善子ちゃんの着替えはそこに用意しておいたから」

善子「気が利くわね。ありがとう」

曜「うん……」ドキドキ

善子「何?」

曜「あの……」

善子「こっち見ないで」

曜「え」

善子「見ないで!!」

12 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:25:11.98 ID:mc7jjdA4.net
曜「……」クルッ

善子「……」

曜「……」

善子「……」スルッ

スッ シュルッ

曜「……」

善子「……」

キュッ パチッ

曜「あ、あのさ……」クルッ

善子「こっち見るなって言ってんでしょうが!!」

曜「ひぃっ!!?」クルッ

善子「……」スッ

曜「……」ビクビク

善子「あれ……? 太った割には制服がキツくない……」

曜「よ、よかったねぇ」アハハ

善子「さてと。もういいわよ」

曜「……」

善子「着替え終わったわ」

曜「うん」

善子「こっち見ていいわよ」

曜「……」クルッ

善子「ん? 曜さんは少し太ったみたいね。私よりキツそうだわ」

曜「そ、そうなんだよー。ちょっと痩せないと危険かも」アハハ

善子「まあいいわ。行きましょ」スッ

曜「っと! カバンは私が持ってあげる!」サッ

善子「いいわよ、自分で持つわ」

曜「大丈夫だって! このくらい私に持たせてよ」

善子「……」

曜「そろそろ行かないとバスの時間が……」

善子「そうね。行きましょ」スタッ

13 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:26:20.01 ID:mc7jjdA4.net
.

14 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:27:17.86 ID:mc7jjdA4.net
.

15 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:28:14.89 ID:mc7jjdA4.net
.

16 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:29:23.29 ID:mc7jjdA4.net
曜「ふぅ……」

善子「?」

曜「あ、いや……何でもないよ」

善子「今のため息は何?」

曜「え、えっとね? ため息が出るほど可愛いなーって」エヘヘ

善子「私が?」

曜「そう! 着替えを見られなかったのは残念だけど……」

善子「変な曜さん」

……

 バス

曜「……」

善子「……」

曜(善子ちゃん、もしかして気づいてない?)

曜(それとも気づかないふりしてるだけ?)

曜「……」チラッ

善子「何?」

曜「えっ? 何も」

善子「そう……」

曜「……」

善子(曜さんの様子がおかしい……)

善子(ひょっとして)ジー

曜(う、うわ……すごい見られてる)ドキドキ

善子(んん……?)ジー

曜(バレませんように! いや、バレてもいいけど怒らないで!)

善子(気のせいかしら)ハァ

曜(……)ドキドキ

善子「あ、そういえば曜さん」

曜「何?」

善子「帰りはバス停ひとつ分走るのよね?」

曜「うん。だから少し早めに学校を出ないとね」

17 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:30:05.43 ID:mc7jjdA4.net
善子「今日は部活がないから、帰りは待ち合わせしないと」

曜「あっ、それなら私が教室まで迎えに行くよ」

善子「そう?」

曜「もちろん。できるだけ早く行くから待ってて」

善子「分かったわ。終わったらメールするわね」

曜「うん」

善子「……」ジー

曜「……」ドキドキ

善子「曜さん、いつもより可愛いわね」

曜「そ、そうかな!? 善子ちゃんがそんなこと言うなんて珍しいなぁ」アハハ

善子「もしかしてメイクしてる?」

曜「してないよ?」

善子「そう……」

曜「……」ドキドキ

善子「……」

曜(何だか善子ちゃんに悪いことしてる気がしてきた……)

曜(間接キス目的とはいえ勝手に口紅使われたら嫌だよね)

善子「分かったわ」

曜(素直に謝れば許してくれるかな? ちょっとした出来心だったんだし……)

善子「トイレ、行きたいんでしょう?」

曜「あ、あのね善子ちゃん!」

善子「学校までかなりあるわよ。我慢できそう?」

曜「私っ……」

善子「って言うか我慢してくれなきゃ困るわ。降りたら次のバスまで一時間以上待たなきゃだし」

曜「……」

善子「ペットボトルならあるから……」ガサゴソ

曜「ごめんなさい」

善子「いいわよ。家を出る前にトイレ行かなかったのは悪いけど」

曜「……」

善子「まあ、仕方ないわよね。そのときは行きたくなかったんだから」

18 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:30:42.12 ID:mc7jjdA4.net
曜「実は……」

善子「はい、ペットボトル。小さいのだけど足りる?」スッ

曜「……」

善子「私に飲めって言うの? さすがにお断りよ」

曜「……」シュン

善子「もしかして具合でも悪いの?」

曜「ううん、大丈夫……」

善子「無理はしないでね」

曜(とても言い出せる雰囲気じゃない……)

曜(善子ちゃんが珍しく私に優しくしてくれてるのにそんなこと言ったら)

曜(せっかく優しい善子ちゃんがいつもの鬼みたいな善子ちゃんに)

善子「……」ヌギッ

曜「え!?」

善子「上着で隠して」スッ

曜「う、うん……」

善子「他のお客さんが乗ってくる前に済ませちゃいなさい」

曜「……」

善子「早く」

曜「分かった」スルッ

善子「見ないであげるから」

曜「見てもいいよ」

善子「いいわよ。別に見たくない」

曜「……」スッ

曜(出るかな? いや、善子ちゃんがくれたペットボトルを空のまま返すなんてできない)

曜(……)

ショワァ

曜「あ……」ブルッ

善子「声出てるわよ」

曜「だって……」

ジョボボ

19 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:31:17.03 ID:mc7jjdA4.net
善子「手にかけたら怒るからね」

曜「うん……」

ジョボボ

善子「あと溢したら私たちタダでは済まないわよ」

曜「分かってるよ……」

ジョボボ

善子「もう少し?」

曜「もう少し」

ジョボボ

バス「ププー!」キキーッ!!

善子「え」

曜「嘘っ!?」

善子「溢れ……」

曜「うっ」グッ

バス「」ピタッ

善子「きゃっ!?」ゴチンッ!

曜「善子ちゃん大丈夫っ!?」バッ

善子「いったぁ……」ヒリヒリ

「猫が飛び出してきたため急停車になりました……お怪我はありませんでしょうか?」ハァ

善子「だ、大丈夫です!」

曜「私も大丈夫です!」

「よかった……」

ブロロ

善子「……」

曜「……」

善子「溢した?」

曜「ううん。何とか押さえたから……」

善子「そう……」ハァ

曜「でも」

善子「え?」

20 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:31:53.45 ID:mc7jjdA4.net
曜「善子ちゃんの上着に……」

善子「あっ!! 私の上着が」ベチャ

曜「ごめん」

善子「……」シュン

曜「ごめんって」

善子「き、気にしないで。もうボロボロだったし新しいの買おうと思ってたし……」

曜「洗えば落ちるよ! 私が責任持って綺麗にする!」

善子「……」グスッ

曜「わああ! 泣かないで!!」

善子「泣いてない!」

曜「善子ちゃん、これお気に入りの上着だったんだよね……」

善子「……」

曜「代わりにはならないけどさ、とりあえず今日は私ので我慢して」ヌギッ

善子「いいわよ、曜さん寒いでしょう」

曜「ううん。善子ちゃん着て」スッ

善子「いいってば。私なら平気だから……」

曜「……」

善子「仕方ないわよ、さっきのは不可抗力だもの……」

曜「ごめんなさい」ペコリ

善子「……」

曜「善子ちゃんのメイク道具勝手に使いました」

善子「え?」

曜「制服も交換しました」

善子「えっ、ちょっと何? 何の話?」

曜「カバンも……」

善子「……」

曜「善子ちゃんになりたくて」

善子「私に?」

曜「物を交換したくらいじゃなれないのは分かってるよ」

曜「それでもなりたかったんだ」グスッ

21 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:32:29.11 ID:mc7jjdA4.net
善子「……」

曜「ごめんね」スッ

善子「あっ、そのノート……」

曜「今日一日だけ代わって」ピラッ

善子「ダメっ! その呪いは!」

曜「『……』」ボソボソ

善子「あ……」

曜「『…………』」ボソボソ

善子「わた……し……」フラッ

……

……

ユサユサ

善子「ん……」

ユサユサ

善子「何よ……」

「お客さん」ユサユサ

善子「え?」ムクッ

運転手「学校、着きましたよ。降りないんですか?」

善子「あぁ!? す、すみません降ります!」

善子「ほら、曜さんも起き……」

??「……」

善子「あ、あれ? 私??」

??「……」

善子「ってことは……」

運転手「あの……降りないんですか?」

善子「お、降ります……」

善子「曜さん、ほら起きて」グイッ

??「……」

善子「嘘っ……軽い」ヒョイ

??「……」

22 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:33:01.23 ID:mc7jjdA4.net
善子「私の体ってこんなに軽いの?」

スタスタ

運転手「変な子ねぇ。さっき頭を打ったのかしら……」ハァ

……

 学校 一年教室

ガラッ

善子「……」

ルビィ「あっ、曜さん。おはようございます」

花丸「おは……え?」

善子「おはよう。善子ちゃんはちょっと寝ちゃってて……」

曜「」

花丸「それ寝てるの?」

善子「え? そうよ。バスの中でね」

ルビィ「善子ちゃん重かったでしょ? ご苦労様です」

善子「重くないわよ!」

花丸「『わよ』……?」

善子「お、重くないヨーソロー……」

ルビィ「ぷっ……」クスクス

花丸「ふふっ……」クスクス

善子「何で笑うのよ!? 変なこと言った?」

ルビィ「だって今日の曜さん、善子ちゃんみたいなんだもん」

花丸「可愛いずら」ニコニコ

善子「か、可愛いとか言うな」カァアア

ルビィ「あっ、照れてる? 曜さん可愛いー♡」ギュー

善子「えっ、ちょっ……」カァアア

ルビィ「おっと、善子ちゃんにバレたら怒られちゃうよね」パッ

善子「そ、そうよ。絶対怒るって」

花丸「ルビィちゃん、あんまり曜さんを困らせちゃだめだよ?」

ルビィ「えへへ……そうだよね。ごめんなさい」ペコッ

善子「……」

23 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:33:36.65 ID:mc7jjdA4.net
花丸「善子ちゃんは預かるね」サッ

善子「ええ」ストッ

曜「」ズルッ

善子「っと! いい加減に起きなさいよ。始業式の後はテストなんだから」グイッ

ルビィ「曜さんも教室に戻らないと遅刻しちゃいますよ」

善子「そ、そうね……」

曜「んん……」

花丸「善子ちゃん、やっと目が覚めた?」

曜「あれ、私だ」

善子「善子ちゃん、ちょっと」クイクイ

曜「……え?」

ガラッ

ストッ

 廊下

曜「私、だよね……?」ツンツン

善子「やめて」プニプニ

曜「だって……目の前に自分がいるんだよ?」ジー

善子「よりによって何でこんな日に入れ替わるわけ」

曜「善子ちゃん、あの呪い今までに使ったことある?」

善子「……」

善子「ないわよ」

曜「今の間は何」

善子「あるわ」

曜「あるんだ」

善子「寝てる曜さんと入れ替わった。三回くらいかしら」

曜「えぇ!!?」ガタッ

善子「私の経験上、この呪いは掛けた当日のみ有効で日付が変われば解けるはずよ」

曜「今はまだ八時すぎだから……」

善子「あと十五、六時間はあるわね」

24 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:34:09.21 ID:mc7jjdA4.net
曜「……」

善子「曜さん、まさか知ってて……」

曜「知ってるわけないよ! 本当に入れ替わるなんて思わなかったし……」

善子「私でさえ成功率はかなり低い呪いなのに、どうして初見で成功させちゃうのかしらね」ハァ

曜「天才なので」エヘヘ

善子「いい? 今日の曜さんは私なんだから、いつもみたいな変な行動は控えること」

曜「善子ちゃんみたいな?」

善子「曜さんみたいな! 私は変な行動はしてない!」

曜「あはは。善子ちゃんこそ気をつけてよ? 私の体で変なことしたりさ」

善子「変なことっ……」カァアア

曜「してもいいけど誰にもバレないようにね?」

善子「しないわよ! 曜さんこそ私の体で変なことしたらタダじゃおかないんだから」

曜「分かってる。私は善子ちゃんとだからそういうことするんだよ? 善子ちゃんの体だからするわけじゃないよ」

善子「……」ハァ

曜「それじゃ、テスト頑張ってね」ポンポン

善子「最初からそのつもりで……!」ギリッ

曜「私はそんな怖い顔しないよ。ほら、笑って笑って!」グイ

善子「ふんっ、こうなったら全教科白紙で出してやるわ」

曜「……」

善子「曜さんも白紙で出してくれたっていいわよ。アスリートとして恥ずかしくなければだけど」

曜「何でアスリート?」

善子「曜さん言ってたじゃない。手を抜くことは努力への裏切りだって」

曜「……」

善子「私はアスリートじゃないし? 手を抜いたってサボったって何ともないわ。だって私じゃないんだもの」

曜「善子ちゃんはそんなことしないよね」

善子「……」

曜「白紙で出すなんてそんな酷いことしないよね?」

善子「私、これでも一年生なんだけど? どうして二年生のテストで点が取れると思ったの?」

曜「えっ」

善子「ん?」

25 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:34:46.06 ID:mc7jjdA4.net
曜「善子ちゃん一年生だ!!」

善子「え!!? 忘れてたの!?」

曜「どうしてくれるの善子ちゃん! これじゃ赤点で補習確定だよ!」

善子「いや……」

曜「ねぇ、今すぐ元に戻して! どうせなら梨子ちゃんと入れ替わればよかった!」

善子「それはダメ!!」

曜「何で!?」

善子「絶対にダメ! 私以外と入れ替わるなんて絶対に認めないわ!」

曜「善子ちゃんと入れ替わったところで赤点だよ!」

善子「くっ……!」

曜「私のバカ! バカ!!」ゴッ!

善子「それ私の体! 大切に扱ってよね!?」

曜「あ……そうだった」

善子「殴るならこっちの体にしなさい」

曜「じゃあ失礼して……」スッ

善子「ちょ、ちょっと! 本当に殴る気じゃ」

曜「私のバカ!」ブンッ

善子「ひぃっ!!?」

ペチッ

曜「っはぁ……」

善子「全然痛くないわ」

曜「けっこう強めにいったんだけどな」

善子「私の体ってそんなに力ない?」

曜「ないね」

善子「むぅ」

曜「すぐ疲れるし」

善子「悪かったわね……」

曜「……まあでも」ニヤニヤ

善子「わっ、私そんな気持ち悪い顔しないから!」

曜「いくら私の体とはいえ今は善子ちゃんだからね。本気で殴るわけないじゃん」アハハ

26 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:35:21.59 ID:mc7jjdA4.net
善子「そうよね……」

曜「逆に善子ちゃんは気をつけてよ。私の体なんだからうっかりいつもの勢いで引っ叩いたら最悪死ぬよ」

善子「その場合どうなるのかしら? 日付が変わったら元に戻って私が死ぬの?」

曜「うーん……」

善子「って、どうでもいいのよそんなことは。とにかく曜さんのせいでこうなったんだから責任持って私の振りしなさいよ」

曜「はーい」

善子「あと! ずら丸とルビィに変なことしたら本気で殺す」

曜「ひぇっ……」

善子「二人がベタベタしてきても、いつもの私みたいに嫌そうな顔して断るのよ」

曜「うん……」

善子「さっきみたいにデレデレするとすぐ調子に乗るんだから」カァアア

曜「?」

善子「な、何でもない! ほら、教室戻って!」グイッ

曜「あ、あのっ!」ガシッ

善子「何よ? 私、二年生の教室行かないとなんだけど」

曜「上着ごめん」

善子「え?」

曜「その……汚しちゃって本当に」

善子「いいわよもう。その代わり今度新しい上着買いに行きましょ」

曜「私のお金?」

善子「当たり前」

曜「そうだね」アハハ

善子「冗談よ。ママに汚しちゃったって言えば買ってもらえるわ。たぶんね」

曜「じゃあ今日私がお願いしてみるね」

善子「やめて。戻ってから私がお願いする」

曜「でも……」

善子「余計なこと言いそうだからよ」

曜「言わないよ。善子ちゃんと入れ替わったなんて言ったら私まで頭がおかしいと思われちゃう」

善子「私は思われてないわよ」

曜「あはは」

27 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:35:52.31 ID:mc7jjdA4.net
善子「いや、少なくとも私はね」

曜「……え?」

善子「そこに疑問の余地なくない? あるの?」

曜「いや……ないけど」

キーンコーン

善子「げっ、急がないと遅刻だわ! また後で!」ダッ

曜「廊下は走っちゃダメだよー!」

「何この体めっちゃ速い!」

曜「……」ハァ

曜「私も戻るか」

スタスタ

ガラッ

 一年教室

ルビィ「あっ、善子ちゃん戻ってきたよ」

花丸「……」ジー

曜「な、何かな」

ルビィ「今日ね、テストだから部活ないでしょ?」

曜「うん。そうだね」

ルビィ「たまには三人でお出かけしない?」

曜「……」

花丸「善子ちゃん、最近はずっと曜さんにべったりだから」

曜「そんなことないよ? 私はルビィちゃんも花丸ちゃんも好きだし」

ルビィ「え」

花丸「……」

曜「あっ……ええと、ルビィもずら丸も好きよ」

ルビィ「花丸ちゃん」トントン

花丸「何? ルビィちゃん」

ルビィ「この人誰?」

曜「えっ」

花丸「どう見ても善子ちゃんだけど……?」ジー

28 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:36:25.82 ID:mc7jjdA4.net
ルビィ「んん……?」ジー

曜(やば……)ドキドキ

花丸「あっ!」

ルビィ「でっかいタンコブ! きっとこれのせいだね!」サワッ

曜「いたっ!」ビクッ

ルビィ「あ……ごめんなさい」

花丸「どうしたの? どこかで頭ぶつけた?」

曜「えっと……そういえばバスの中で」

 善子『きゃっ!?』ゴチンッ!

曜「あのときのかな」

ルビィ「もう一度頭ぶつけたら治ると思う?」ヒソヒソ

花丸「却って酷くなるかも」ヒソヒソ

曜「何か物騒な話が聞こえてくる……」

ルビィ「えーい!」ブンッ

花丸「善子ちゃん覚悟!」グイッ

曜「わぁあ!!」

ペチッ

曜「え……?」

ルビィ「はい、あげる」つ

曜「えっと……これは?」

花丸「お菓子。どうせ善子ちゃんのことだもん、お正月太りで朝ごはん食べてこなかったでしょ」

曜「……」

花丸「お腹空きすぎて頭がおかしくなっちゃったんだね。よくあることずら」アハハ

曜「ないよ」

ルビィ「食べて。テスト中頭が働かないよ?」

曜「……」ゴクリ

曜(いや、間食はナシって決めたばっかりじゃん。ここで食べたら善子ちゃんが太っちゃう……)

花丸「ダイエットもいいけど、無理な食事制限は体を壊すからね」

ルビィ「善子ちゃんは十分すれんだー? だから大丈夫だよ」つ

曜「じゃあ……」アーン

29 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:37:37.45 ID:mc7jjdA4.net
.

30 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:38:07.17 ID:mc7jjdA4.net
ルビィ「え?」

曜「あむっ」パクッ

花丸「えぇ!!?」

曜「あ、これ美味しい」モグモグ

ルビィ「花丸ちゃん、今の見た?」

花丸「ルビィちゃんの『あーん』で食べたね」

曜「あれ? いつもはしないっけ」モグモグ

ルビィ「しないしない! 自分で食べるからいいって頑固だもん」

花丸「……頑固なのかな?」

曜「た、たまにはね? 私も素直なときもあるんだよ」アハハ

ルビィ「……」

花丸「素直すぎて気持ち悪いね」

ルビィ「ルビィはこっちの善子ちゃんも好きかも……♡」エヘヘ

曜「う……気に入られてしまった」ハァ

花丸「……」

……

 二年教室

善子(どうしよう……。本当にこのままテスト受けなきゃならないの?)

善子(いくら曜さんが悪いとは言え、赤点を取ったら曜さんガッカリするかしら)

善子(というより私のテストで赤点取ったりしないわよね? 二年生だものね?)

善子(不安だわ……)ハァ

「渡辺さん」

善子(あぁ……どうすれば)

「渡辺さん? 寝てるの?」

善子「へ?」

先生「渡辺さん。いつまでも冬休み気分でいたらダメよ。今日はテストもあるんだから」

善子「す、すみません……」

アハハ

……

千歌「曜ちゃん大丈夫?」

31 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:39:16.66 ID:mc7jjdA4.net
.

32 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:39:49.91 ID:mc7jjdA4.net
善子「ええ。たぶんね」

千歌「……」ジー

善子「な、何」

千歌「曜ちゃん?」

善子「私が何よ」

千歌「喋り方変じゃない?」

善子「えっ……あぁ、そうだよね!? 変だよね……」シュン

千歌「こんなのでテスト大丈夫なのかな」

善子「そういう千歌さ……千歌も平気なの? 赤点取ったら補習よ?」

千歌「ひゃっ……」

善子「?」

千歌「い、今私のこと何て」ドキドキ

善子「えっと……千歌さん? ううん、千歌ちゃんか」

千歌「……」

善子「ごめんね千歌ちゃん」

千歌「千歌でいいよ……」カァアア

善子(曜さんはみんなのことちゃん付けだったわね……気をつけないと)ハァ

梨子「……」

千歌「り、梨子ちゃん見てたの?」ドキドキ

梨子「ううん。曜ちゃんに全力ビンタ食らわせたの、どこの誰だったかしらと思って」

千歌「う……」

善子「ビンタ?」

梨子「まさか忘れたの?」

善子「えっと……」

善子(どうせ曜さんのことだから、どさくさに紛れて千歌さんの千歌さんを千歌さんしたとかなんでしょうね)

善子「ごめん。あのときは悪かったよ」

千歌「や、やめてよ。私の方こそ思ったより手首のスナップが効いちゃって……」

善子(曜さんってもしかしてしょっちゅう引っ叩かれてるの?)

梨子「……私も私だけどね」ハァ

善子「梨子さん?」

33 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:40:24.56 ID:mc7jjdA4.net
梨子「え?」

善子「あ、あぁ……梨子。じゃなかった、梨子ちゃん」

梨子「……」カァアア

千歌「ほら! 私の気持ち分かるでしょ!?」

梨子「……」コクコク

善子「??」

千歌「とにかく今日の曜ちゃん変だよ? 怪しいクスリとかやってないよね?」

善子「やってない!」

梨子「曜ちゃんが変なのはいつものことだから……」

善子「失礼ね」

千歌「ほらまた口調が変だ」

善子「あっ……」

善子(これ以上喋るとボロが出そうね。少し黙っておきましょうか)

梨子「……」

……

……

 始業式後

曜「ふわぁ……終わった終わった」

花丸「でっかい欠伸……」

ルビィ「女の子としてどうかなぁ」

曜「ん?」

花丸「この後テストだよ? 眠そうだけど大丈夫?」

曜「大丈夫。これでも勉強はしてきたから」

ルビィ「ルビィは心配かな……」

花丸「善子ちゃんのこと?」

ルビィ「ううん、ルビィ何でもっと勉強しとかなかったんだろ……」

曜「テストやる前から後悔してどうするの」

ルビィ「だって……」

曜「大丈夫。ルビィちゃんならきっとできるよ」ポンッ

花丸「ルビィ……ちゃん?」

34 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:41:03.68 ID:mc7jjdA4.net
曜「えーと、この私のリトルデーモンなんだから絶対に大丈夫! 自信を持ちなさい」

ルビィ「善子ちゃん……」ギュ

花丸「わぁ……」ドキドキ

曜(ルビィちゃんいい匂いするなぁ)ナデナデ

ルビィ「今日の善子ちゃん優しい……♡」スリスリ

花丸「気持ち悪いずら……」

「ちょっと!」グイッ

曜「わっ!?」

善子「ルビィちゃんとベタベタしないで」

ルビィ「曜さん?」

曜「し、してないよ?」

善子「その反応……やっぱり」

曜「違うよ! ルビィちゃんがテストを心配して元気なさそうだったから励ましただけで……」

善子「いくら同級生とはいえ過度にベタベタするのは良くないと思うわよ? ねぇ善子ちゃん」

曜「る、ルビィちゃんの方から抱きついてきたんだよ……」

ルビィ「もしかして今、ルビィのこと取り合ってケンカしてるの?」ヒソヒソ

花丸「新しい展開だね」ヒソヒソ

善子「とにかく! 二人も善子ちゃんにベタベタしないこと! 私の恋人なんだからねっ!」ダッ

ルビィ「……」

花丸「……」

曜「えっと……何かごめんね?」

ルビィ「曜さんってあんなにヤキモチ妬く人だった?」

花丸「善子ちゃん、曜さんと何かあったでしょ……」

曜「な、何のことかな」アハハ

……

 二年教室

善子「ったく、油断も隙もないわね……」ハァ

梨子「曜ちゃん?」

善子「あっ、ううん。ちょっとトイレに行ってくる」スタッ

梨子「私も行こうと思ってたの」スタッ

35 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:41:36.36 ID:mc7jjdA4.net
善子「え」

梨子「??」

善子「ちょっと待って。一緒に来るの?」

梨子「ダメ?」

善子「いや……」

梨子「いつもなら曜ちゃんの方から誘ってくるのに」

善子(何やってるのよ曜さん!)カァアア

「あっ、トイレなら私も行くよ!」

善子「千歌さんまで?」

千歌「さん付けはやめてほしいかな……」

善子「えっと、千歌ちゃんも?」

千歌「もしかして二人きりがよかった?」アハハ

梨子「ちょっと千歌ちゃん!」カァアア

善子「あの……私っていつもトイレ行くとき誘うの?」

千歌「え? うん。だいたいね」

梨子「私さっき行ったばかりなの、って言っても話し相手に連れて行かれるよね」

千歌「そうそう。善子ちゃんが聞いたら嫉妬しそうだなー」

善子「うっ……」

梨子「狭いところが苦手なんだよね。気持ちは分からないでもないかな」

千歌「一人だと寂しくなっちゃうなんて、曜ちゃんって子どもだよねぇ」

善子「うるさいわね。早く行くわよ」スタッ

……

 トイレ

善子「ふぅ……」カチャ

スルッ

善子(そっか……曜さんの体でおしっこするのは初めてなのよね)

善子(……)

チョロロ

善子(……)

チョロロ

36 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:42:10.83 ID:mc7jjdA4.net
善子(…………)

「曜ちゃん?」

善子「な、何よ千歌さ……ちゃん」

「紙貰っていいかな」

善子「え? もしかして確認しなかったの?」

「うん……我慢してたから」

善子「梨子ちゃんに貰いなさいよ」

「梨子ちゃん、くれる?」

「終わるまで待ってて。後でドアの上から渡してあげる」

「今欲しいんだけど」

「わがままね……」

善子「……」

チョロロ

ガチャ

「曜ちゃ……あっ」

善子「え?」クルッ

千歌「紙だけ貰っていくね」スッ

善子「ちょっ、何で!? 鍵閉まってなかった!?」

千歌「ここの鍵がユルユルなのは知ってるでしょ?」カチャカチャ

善子「し、知らないわよ……!」カァアア

千歌「じゃ」

バタン

善子(えぇ……!?)

「千歌ちゃん? あの……もしかして今、脱いだまま外出たの?」

「ちょっとだけ」アハハ

「もう! 誰かに見られたらどうするの!」

善子「そうよ! しかも他の人の個室に黙って入ってくるなんて!」

「曜ちゃんだってこの前入ってきたじゃん」

善子「えっ!?」

「そうなの?」

37 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:42:44.36 ID:mc7jjdA4.net
「あ、そのときは梨子ちゃんいなかったよね。っていうかもうちょっと紙置いといて欲しいよ」

「そうよね……スペアがないのはちょっと」

善子「無駄遣いする人がいるから、だったかしら」

「そうだよ。無駄遣いなんて、曜ちゃんくらいしかしないのにね」アハハ

善子「何で私」

「……」

「曜ちゃんが漏らすからだよ」

善子「……」

「拭くの私たちなんだからね? 私はまあいいけど梨子ちゃんなんていつも恥ずかしすぎて死にそうな顔してるよ」

「……」カァアア

善子「えぇ……」

「きっと今も恥ずか死寸前だよ」アハハ

「も、もう……!」

善子「えっと……いつもごめんなさい」

「いいっていいって! 生理現象だから仕方ないって曜ちゃんいつも言ってるじゃん」

「わ、私たちはともかく他の子に知られたら大変よ?」

「あー、特に善子ちゃんだけにはバレたくないよね。嫌われちゃうかも」アハハ

善子(いや、バレるも何も……)

善子(って曜さんいつも何させてるの? ううん、二人も二人よ! 私の曜さんに何して……)

ジャー

ガチャ

「ふぅ。スッキリしたぁ」

ジャー

ガチャ

「千歌ちゃん、あんまり大きな声でそういうこと言わないの」

「あはは。誰も気にしないよ」

「もう……」ハァ

「あれ? 曜ちゃんまだ?」コンコンッ

善子「な、何よ! まだ拭いてなかっただけ!」

「千歌ちゃん、行こうか」

38 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:43:19.57 ID:mc7jjdA4.net
「え? 待たないの?」

「テストの準備しないと。ね?」

「私は特に……」

「曜ちゃん、あんまり辛かったらメールしてね……」

善子「えっ?」

「あぁ、そういうこと! 曜ちゃんはうん……」

「千歌ちゃん?」ニコニコ

「テストのヤマも当たるといいね! 運だけに!」アハハ

「もう! 千歌ちゃん!」

ギィ

タッタッ

バタンッ

善子「何なの……」ハァ

善子(でも正直助かったわ。少し一人にしてほしかったし……)

善子(って、そろそろ拭かないと乾いちゃうわね)スッ

善子(……)

善子「こ、これは仕方ないのよ。そのままってわけにもいかないんだから」カァアア

フキフキ

善子(……)ドキドキ

フキフキ

善子(ん……)

フキフキ

ピロンッ

善子「メール? 誰からかしら……」スッ

 †堕天使ヨハネ†:善子ちゃんごめん

善子「何よ……また何かやらかしたの?」

 †堕天使ヨハネ†:間に合わなかった

 †堕天使ヨハネ†:(写真)

善子「わああ!!? 私のスカート!!」

 †堕天使ヨハネ†:さっきの上着といい本当にごめん

39 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:44:23.75 ID:mc7jjdA4.net
.

40 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:44:51.84 ID:mc7jjdA4.net
善子「……っ!」スッ

 曜♡善子ちゃん:今どこよ!? すぐ行くわ!

 †堕天使ヨハネ†:ううん。自分で何とかするから……

 曜♡善子ちゃん:曜さんいつもどうしてるの!? スカート濡らすなんて!

 †堕天使ヨハネ†:だって善子ちゃんタイツ履いてるんだもん

善子「あ……それでか」

 †堕天使ヨハネ†:タイツは新しいの買って返すね

 曜♡善子ちゃん:まさか脱ぐの?

 †堕天使ヨハネ†:脱ぐしかないでしょ?

 曜♡善子ちゃん:タイツの下履いてないんだけど!?

 †堕天使ヨハネ†:え

 曜♡善子ちゃん:違う! タイツ脱いだら下着になっちゃうってことよ!!

 †堕天使ヨハネ†:あぁ、スパッツ履いてないってことね

 曜♡善子ちゃん:そうよ。曜さんのことだもの、下着なんて気にするわけないし……

 †堕天使ヨハネ†:この下着は見られたら恥ずかしいよね

善子(ん……私どんな下着だったかしら)

 †堕天使ヨハネ†:うーん、セクシー♡♡

 †堕天使ヨハネ†:(画像)

善子「何してんのよ!! 下着姿で鏡……これってトイレ!?」

「え?」

善子(やば……外に人いたのね)カァアア

ガチャ

「あ、善子ちゃんここにいたんだ」

善子「まさか」クルッ

曜「善子ちゃんもトイレ? 気が合うね」アハハ

善子「ど、どうして曜さんがここに」

曜「とりあえず体操着に着替えなきゃかなって思ってさ」

善子「私の体で! そんな姿で歩かないでよ!!」バシッ!

曜「いてっ! だ、大丈夫だよ脱ぐのは中で脱いだから……」ヒリヒリ

善子「個室から出ないで!」

41 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:45:54.95 ID:mc7jjdA4.net
.

42 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:46:29.24 ID:mc7jjdA4.net
曜「誰も来ないよ」アハハ

善子「さっきまで千歌さんと梨子さんがいたし! って誰も来なければ出てもいいの!?」

曜「ところでもう終わった?」

善子「なーにがところでよ! 終わってない!!」

曜「じゃあ早めにね。テスト始まっちゃうよ」

善子「曜さんこそ、絶対に遅れないようにしなさいよ?」

曜「あっ、花丸ちゃんたちにメールしとこ」スッ

善子「余計なこと言わないでよね」

曜「ちょっとお腹痛いから何とか時間稼いでおいてっと」スッスッ

善子「だああ!!? お腹痛いとか言うな! 誤解されるでしょーが!」

曜「え? もしかして善子ちゃん、高校生にもなってまだ大きい方恥ずかしいの?」

善子「は、恥ずかしいわよ。恥ずかしいに決まってるじゃない」

曜「変に恥ずかしがってる方が恥ずかしい気がするなぁ」

善子「う……」

曜「授業中はどうしてるの? 我慢しきれないほど急に来たら?」

善子「そ、そんなこと滅多にないし……」

曜「いやー、夜中にアイス食べまくったりするとなるでしょ」

善子「私は食べまくらないわよ」

曜「今日は私の体なんだから、テスト中でも遠慮なく手を挙げなよ」

善子「え?」

曜「お腹痛いんでしょ。昨日アイス食べまくったからさ」

善子「食べまくったの?」

曜「何か無性に食べたくなってつい」アハハ

善子「バカ!! テスト中お腹痛くなったらどうするのよ!」

曜「だから、今日の善子ちゃんは私なんだからいつも通り普通に手を挙げて出てくればいいんだって」

善子「そういう問題じゃ……!」

曜「生理現象なんだから仕方ないよ」

善子「曜さん知らないの? テスト中にトイレに行くときはその時点で答案を回収されちゃうのよ」

曜「知ってるよ?」

善子「テストはいいの?」

43 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:46:48.55 ID:oKiqdLQi.net
待ってたよ

44 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:47:08.00 ID:mc7jjdA4.net
曜「うーん、いつも半分以上時間余ってるからなぁ」

善子「それ、解き終えてじゃないわよね」

曜「分かる問題だけやったら十分か十五分で終わっちゃうよ」

善子「他の問題は?」

曜「やらないよ?」

善子「いや、テストなんだから努力しなさいよ」

曜「考えても分からないって分かりきってる問題に悩むなんて、それこそ時間の無駄じゃない?」

善子「無知の知みたいに言うわね」

曜「むち打ち?」

善子「何でもないわ。それよりアスリート精神はどうしたのよ。何事にも全力を尽くすんでしょ?」

曜「例えばさ、善子ちゃんは学校の屋上から飛び降りられる?」

善子「は? 無理に決まってるわ。死んじゃうわよ」

曜「何で?」

善子「『何で』? あんな高い所から落ちたら死ぬわ」

曜「何で死ぬの?」

善子「五秒もしないうちにコンクリートにぶつかって死ぬの! 想像つくでしょ?」

曜「そうじゃなくて。どうして空を飛べるかもって思わないの?」

善子「飛べるわけないでしょ!? 鳥じゃないんだから!」

曜「あ、そこは天使じゃないんだ……」

善子「どっちでもいいわよ。それに、堕天使は翼を折られてるから飛べないし……」

曜「そんな考え方で飛行機を発明できると思う? 無理だよね」

善子「……この話、テストに関係ある?」

曜「つまりさ」

曜「やってみるまで分からないことには全力を尽くすけど、やらなくても分かりきってることには無駄な労力を使いたくないの」

善子「歪んだアスリート精神ね」

曜「命は一つしかないんだから、大切にしないと」

善子「テストは努力しても死ぬことはないわよ」

曜「だから頭の中どれだけ探してもないんだって。空っぽの金庫をいつまでも漁る?」

善子「どこかにあるはずよ。授業で聞いてるんだもの」

曜「聞いてたらね」

45 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:48:00.57 ID:mc7jjdA4.net
>>43
ありがとう
他に読んでくださってる方がいたら埋め立て規制回避のためにもレスくれるとありがたいです

46 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:48:46.28 ID:mc7jjdA4.net
善子「聞きなさいよ!」

曜「授業は貴重な睡眠時間なんだよ」

善子「そんなのでよく内申がどうのこうのって言えたわね!?」

曜「私そんなこと言ったっけ」

善子「言ったわよ! 内申に響くから赤点は取れないんじゃなかったの?」

曜「だからこうして入れ替わってもらってるわけですし」

善子「最低! こんなの替え玉受験じゃない」

曜「バレなきゃ犯罪じゃないんだよ? 知らなかった?」フフッ

善子「ねぇ曜さん、スポーツマンシップって知ってる?」

曜「もちろん。船長だからね」ゞ

善子「こんな人が選手宣誓したって説得力ないわね……」

曜「あのねぇ、昨日まで私と善子ちゃんはずっと一緒に勉強したよね?」

善子「したわよ」

曜「同じ内容が頭に入ってるよね?」

善子「えっ……私は一年生の内容しか」

曜「ううん、入ってるはずなんだよ。善子ちゃんは気づいてないかもしれないけど」

善子「……だから?」

曜「どっちが受けても同じだよ」

善子「なら自分でやりなさいよ」

曜「……」

善子「最初からそのつもりだったのね」

曜「え?」

善子「私に勉強を教えてくれたのは」

善子「自分の代わりにテストを受けさせて、いい点数を取らせるつもりだったのね」

曜「あ、違うよ?」

善子「最低よ!」

曜「だから違うってば」

善子「こんなの絶対に許されないわよ! いつか必ずバレるわ!」

曜「じゃあ私が二年生のテスト受けて、善子ちゃんは一年生のテスト受ける?」

善子「当たり前でしょ!? 明日になれば戻るんだから!」

47 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:49:30.92 ID:mc7jjdA4.net
曜「今日受けないの!?」

善子「私まで不正に巻き込まないで!」

曜「……」

善子「いいから出てってよ。まだ拭ききれてないんだから」シッシッ

バタンッ

善子(……)

「次の日受けると得点が半分になるの知ってるよね」

善子「ええ。先に受けた人に聞けば、事前にある程度問題を知ることは可能だから」

「せっかく勉強したのに」

善子「そう思うならこんなことしなければよかったでしょ?」

「……」

善子「どうして私まで半分にならなきゃいけないのよ……」

「今日受けようよ」

善子「は? 不正はしないって言ったわよね」

「だからさ、善子ちゃんは善子ちゃんとして受ければいいんだよ」

善子「無理よ! どう見たって曜さんじゃない! 誰が私だって信じてくれるの!?」

「私が本当のことを先生に話す……」

善子「やめて!! 私まで頭がおかしいと思われちゃう!」

「え……」

善子「どうしてこんなことしたのよ……」グスッ

「……」

善子「……」フキフキ

ガチャ

曜「あ、あのさ」

善子「入ってこないで」

曜「体調が悪いって言って保健室で受けさせてもらえないか頼んでみるよ」

善子「私は嫌よ。どうして嘘をつかなきゃいけないの」

曜「だから、私が保健室で受けさせてもらえるように頼むからさ」

曜「善子ちゃんは善子ちゃんとしてテストを受けてくれればいい」

善子「周りから見て替え玉には変わりないわ。バレるに決まってる」

48 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:50:04.59 ID:mc7jjdA4.net
曜「保健室に誰もいなかったら?」

善子「は? 誰も監督の人がいないなんてありえないわ」

曜「ふふ。どうかな」

善子「待って。テストの日だって保健の先生は来てるわよね?」

曜「まあ私に任せて」

善子「嫌よ! どうして訳も分からないまま任せなきゃならないの?」

善子「第一、監督の先生がいないんじゃそんなの……」

曜「教科書もスマホも見放題だね」

善子「……そうよ」

曜「でも善子ちゃんは不正はしないんでしょ?」

善子「……」

曜「私はしちゃうかもなぁ」アハハ

善子「曜さんだってしないわよ」

曜「赤点は取りたくないし」

善子「腐ってもアスリートだもの」

曜「そんなに腐ってるかな」

善子「目も耳も頭もね。性格だって相当腐ってるわ。それでも……」

曜「嫌いにならないでくれるんでしょ?」

善子「……私の台詞取らないで」カァアア

曜「善子ちゃんに不正の片棒を担がせるなんて……私ってバカだよね」フフッ

善子「……」

曜「善子ちゃんは私と違って……まともな生徒だもんね」

善子「……」

……

……

 保健室

ガラッ

曜「あー、げほっごほっ! 体調悪いわー」

先生「あら、大丈夫?」

曜「え」

49 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:50:43.38 ID:mc7jjdA4.net
善子「……」ジロッ

先生「えっと……津島さんもここで受けるの?」

曜「そ、そうですけど……」

先生「渡辺さんも、やっぱり少し頑張って受けたら?」

善子「いえ、私は……」

先生「もちろん無理してほしいわけじゃないの。でも……明日受けるとなると得点は半分よ」

善子「そんなの、分かってるわよ……」

先生「お腹が痛いのよね? トイレには行っていいから、ちょっとだけ頑張ってみない?」

曜「……」

先生「もちろん、トイレに行ったからってそこで試験終了にはしないわ」

先生「ただし、教科書やノート、スマホは預からせてもらうけどね」

善子「でも私……本当に」

曜「そ、そうですよ。渡辺さんはこう見えて体調悪そうだし……帰らせてあげても」

先生「替え玉しようったってそうはいかないわよ」

善子「え?」

曜「はは……何のことでしょうか」アハハ

先生「一度ね、その手を使われたことがあるから分かるのよ」

善子「……」

先生「と言っても、もう二十年くらい昔の話なんだけど」

先生「私だって養護教諭だから、生徒を疑うなんてしちゃいけないと思ってるわ」

先生「見た目で体調を判断するなんてね」

先生「だから津島さん、あなたがもし仮病だとしてもここで受けることは認めてあげるつもりよ」

曜「け、仮病なんてそんな」

先生「渡辺さんの方は平気そうな顔してるけど本当にお腹が痛そうね」

善子「はい……」

曜「……」

先生「さ、二人分の問題と答案を貰って来ないとだから」スタッ

先生「他には来ないでしょうね? さすがに三人も見るのは大変だわ……」ガラッ

ストンッ

善子「……」

50 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:51:22.27 ID:mc7jjdA4.net
曜「……」

善子「どうするのよこれ」

曜「どうって……」

善子「先生、いないんじゃなかったの」

曜「……」

善子「このままじゃ本当に」

曜「分かってる。何とかするから……」

善子「無理よ。私たちはそこのついたてで仕切られて、この椅子で先生に見られながら試験を受けるのよ?」

善子「曜さんが何をしたってすぐバレるわ」

曜「途中で私が吐きそうになるから、その間に答案を交換するとか」

善子「それも不正よね」

曜「……」

善子「もう無理よ。諦めて帰りましょう」

曜「待ってよ……それじゃ本当に赤点だ」

善子「いい加減にしなさいよ」

曜「明日になれば得点は半分! インフルエンザでもない限り……」

善子「まだ自分の心配してるの!? 曜さんって本当に、どうしようもなく最低ね」

曜「私は……善子ちゃんのために」ボソッ

善子「は?」

曜「善子ちゃんに赤点取ってほしくないから」

善子「もう一度言ってみなさい……」ガシッ

曜「知ってるよ。善子ちゃんの成績が本当に危なくて……りゅ、留年スレスレだってこと」

善子「……」

曜「ごめん。善子ちゃんの通知表見ちゃったんだ」

善子「そう……」パッ

ドサッ

曜「だから一緒に勉強して、こんな私でも教えてあげられればいいかなって思ったの」

曜「でも無理だよ……。善子ちゃん、頭悪すぎて私には」

善子「……」イラッ

曜「私ですらあそこまで酷くないよ!? こんな言い方しちゃいけないのかもしれないけど……」

51 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:51:58.77 ID:mc7jjdA4.net
曜「どうやって高校入ったの?」

善子「どうって……入学試験を受けて合格したのよ」

曜「嘘。あんな成績で受かるわけがない」

善子「本当よ」

曜「裏口だよね」

善子「は? そんなお金ないしあったとしてもやらないから」

曜「……」

善子「別に信じてくれなくてもいいわ」

曜「今日のテスト、私が代わりに受ければ……」

曜「これでも二年生だからさ、一年生の問題くらい赤点取らずに済むだろうって」

曜「……」

善子「それで私と」

曜「うん……。留年した子、だいたいみんな学校やめちゃうから」

善子「そうなの」

曜「一年かけて分からなかったことを、もう一年かけて分かるようになれるかな?」

曜「その自信が持てるくらいなら……最初から留年なんてしてない」

善子「……」

曜「ほら、浦女ってこう見えてそこそこ頭いい学校でしょ? 偏差値だってかなり上位だし」

善子「……入るまで知らなかったのよ」

曜「入学試験をたまたまパスしちゃったのは私も同じだよ」

善子「え……?」

曜「絶対受かるわけないって思ってた。それでもみんなと同じ高校に行きたくて」

曜「必死で勉強して、気づいたらさ」

曜「この制服を着てたんだよね」

善子「それは……たまたまなんかじゃないわ。曜さんが努力したからよ」

曜「合格点ギリギリだったよ」

善子「それでも合格は合格よ。私もね」

曜「そんな努力、三年間もずっとやらなきゃいけないのかな」

曜「そう思うとね……いっそ留年してやめちゃった方が楽なのかも」

曜「まあ、そんな勇気なくて進級はしたけどさ」

52 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:52:34.68 ID:tfa+seFf.net
支援

53 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:52:36.50 ID:mc7jjdA4.net
善子「曜さんはもうあと半分ないじゃない。その調子で頑張りなさいよ」

曜「善子ちゃんこそ! まだ諦めちゃダメだよ!!」

善子「……」

曜「大丈夫だよ……まだ一年生なんだから」

曜「進級さえできれば、別の学校に転校したって……」

善子「え?」

曜「私と転校しようか」

善子「何言ってるの?」

曜「私はもう二年生だから……この時期に転校なんてバカみたいだと思われるだろうけど」

曜「善子ちゃんと一緒ならもう一度二年生をやってもいい」

善子「……」

曜「無理せず新しい学校で頑張ればそれで……」

善子「冗談? 悪いけど全然面白くないわよ」

曜「本気だよ」

善子「は……? じゃ、じゃあAqoursは? やめるの?」

曜「同じ学校の生徒じゃないとダメかな?」

善子「そんなの……」

曜「他の学校に移ってもさ、やめろなんて言わないよ。みんな優しいから」

善子「それは……そうかもしれないけど」

曜「今みたいに勉強に時間取られなくて済めばもっと練習できるし……」

曜「衣装だってもっと締め切りに余裕持って作れるし、その分もっといいものにできるはず」

曜「善子ちゃんとも遊べるしね」アハハ

善子「そんなの願い下げだわ」

曜「え?」

善子「私はこの学校をそこそこ気に入ってるつもりよ。だからやめる気なんてない」

曜「……」

善子「もし留年したって、絶対に卒業してみせるわ」

曜「留年したことがないから言えるんだよ」

善子「曜さんだってないくせに。してから言いなさいよ」

曜「ないよ。ないけどさ」

54 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:53:18.40 ID:mc7jjdA4.net
善子「何?」

曜「留年が決まってやめてっちゃった子、どうなったと思う?」

善子「知らないわよそんなの。勝手にやめたんでしょ」

曜「……」

善子「曜さんは転校したいならすればいいし、やめたいならやめればいい」

善子「まあ、本当のことを言えば一緒にいたいのは確かだけれど」

善子「曜さんは勉強なんかに時間を取られたくないものね?」

曜「みんなは知らないんだ」

善子「……」

曜「ここをやめた後、しばらくは地元で働いてたんだけど」

曜「高校をやめたのがバレてクビになって、仕事を探しに東京に行って、一年もしないうちに……」グスッ

善子「し、知らない! 曜さんはそんなことにはならないでしょ?」

曜「ならないよ。善子ちゃんと一緒なら」

善子「私と一緒じゃなくてもよ」

曜「……」

善子「曜さんさえよければ、今のまま恋人で……」

曜「絶対嘘だよ」

善子「どうしてよ。曜さんは私を嫌いになるの?」

曜「留年してやめるような子だよ? そんな子と一緒にいたら善子ちゃんが恥ずかしい思いするだけだよ」

善子「あのねぇ」

曜「善子ちゃんには迷惑かけたくないよ……」グスッ

善子「本当にそう思ってるならこんなことしないわよね」

曜「うん……そうだね……」

善子「って、過ぎたことをあれこれ言っても仕方ないか」スタッ

曜「……」

善子「今日は帰るわ。朝まで本気で勉強すれば、例え半分でも赤点は避けられるはず」

曜「本気で言ってるの?」

善子「そこまでバカに見える?」

曜「見える……って言ったら怒るかな」

善子「やってみなきゃ分からないじゃない」

55 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:54:27.14 ID:mc7jjdA4.net
.

56 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:54:56.18 ID:mc7jjdA4.net
曜「……」

善子「曜さんは? 私のために替え玉で受けるなんてやめてよね」

曜「バレないと思うけどな」

善子「私が嫌なのよ」

曜「……分かったよ」

善子「はぁ……」

曜「ごめんなさい……私のせいで得点が半分になっちゃって」

善子「謝って許されるとでも思ってるの?」

曜「ううん……」

善子「もういいわよ」

ガラッ

先生「……」

善子「先生あの……」

先生「ごめんなさい。聞いちゃったわ」

曜「え……」

先生「あなた達……もしかして」

善子「すみません。体調が悪いので帰ります」スタッ

曜「待ってよ善子ちゃん!」ガシッ

先生「……やっぱり」

曜「あっ……待ってよ曜ちゃん」

先生「いいから、早く席につきなさい」

善子「明日受けるので……その、得点は半分でいいですから」

曜「ダメだよ曜ちゃん! 自分がどれだけ頭が悪いか分かってないの!?」

善子「曜さんに頭が悪いなんて言われたくない!」

曜「わ、私も悪いよ? あと私は善子ちゃん……」

善子「私は頭が悪いかもしれないけどね、曜さんは頭がおかしいのよ。だから平気であんなこと言えるの! 私の気持ちも考えないで!!」

曜「だ、だから私が善子ちゃんで善子ちゃんは私……あれ?」

善子「曜さんとだから頑張れたのに」ボソッ

曜「え?」

善子「勉強よ! 曜さんとだから頑張れたの!!」

57 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:55:40.69 ID:mc7jjdA4.net
曜「私だって同じだよ……」

善子「でももういいわ。私一人でも頑張ってみせる。だって曜さんは留年して転校しちゃうんだものね?」

曜「っ……」

善子「新しい学校で頑張ってね。応援はしてあげる……これでも恋人だから」

曜「……やだ」

善子「さよなら。それと先生、うるさくしてごめんなさい」ペコッ

先生「……」

ガラッ

ストンッ

曜「……」

先生「はぁ……」

曜「ごめんなさい」グスッ

先生「あなたたち、どこかで見たことがあると思ったら……そういうことだったのね」

曜「え……?」

先生「二十年前の替え玉事件」

曜「わ、私たちは替え玉なんて……」

先生「正確には替え玉未遂事件なんだけど」

曜「……」

先生「まあいいわ、とりあえず追いかけてあげなさい」

曜「私は……」

先生「いいから追いかけなさい」

曜「そんな資格ないです」

先生「早く! じゃないと半分どころかゼロにするわよ!」

曜「……」

先生「渡辺さん!!」

曜「っ!!」ダッ

ガラッ! バタンッ!!

ダッダッ

先生「ふぅ……手のかかる親子だこと」ハァ

……

58 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:56:19.41 ID:mc7jjdA4.net
 玄関

善子「靴がキツい……」

善子「あっ、今の私は曜さんだったわね」

善子「……」

ダッダッ

「善子ちゃん!」

善子「何? 私は曜さんだけど」

曜「先生、テスト受けさせてくれるって!」

善子「は? 不正ならしないわよ」

曜「だから、私が二年生のテストを受けて、善子ちゃんは一年生のテストを受けていいって!」

善子「……え?」

曜「私たちが入れ替わってること、何でバレたんだろう?」

善子「曜さんが私のこと『善子ちゃん』って呼ぶからでしょう!?」

曜「いや、善子ちゃんの方が……」

善子「って、そういう問題じゃないわね」

曜「普通は信じないよね」

善子「信じるわけがないわ」

曜「でも信じてくれたよ」

善子「……」

曜「私、本当は浦女やめたくない」

善子「そう」

曜「みんなと一緒に卒業したい!」

善子「その成績で?」

曜「こ、これから頑張る……」

善子「……」

曜「だから、その……」

善子「仕方ないわね。私も付き合ってあげるわよ」

曜「本当?」

善子「当たり前でしょ。私は曜さんの恋人なんだから」

曜「留年しても嫌いにならないでくれる?」

59 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:56:50.19 ID:mc7jjdA4.net
善子「留年したら別れる」

曜「えぇ!? 今よりもっと一緒にいられるのに!」

善子「そこまで曜さんが最低だったら付き合える自信がないわね」

曜「でも……」

善子「それとも、もう一回二年生しないと私の気持ちなんて分からない?」

曜「分からないよ」

善子「本当に?」

曜「……」

善子「とりあえず、保健室に戻りましょうか」

曜「善子ちゃんが頑張るって言ってるのに、私だけ頑張らないわけにはいかないよね」

善子「別に私のためにじゃないでしょう」

曜「一緒に進級しよう。それで一緒に……」

善子「卒業は別々」

曜「あ、そっか……」

善子「はぁ……」

曜「テスト、本当はもう始まっちゃってるよね」

善子「まだみんな解き終えてないもの。ネタバレはされようがないわ」

曜「途中でトイレに行った子がいるかも」

善子「まだ開始十分よ。そんな子いるわけ……」

ギュル

曜「?」

善子「う……」

曜「どうしたの?」

善子「夜中にアイス食べまくるのはやめなさい……」

曜「え、もしかして」

善子「いいから……トイレに連れて行きなさいよ」

曜「善子ちゃん、漏れそう?」

善子「早く……」プルプル

曜「分かった! 私もさすがにそっちの趣味はないからね!」ガシッ

ダッ

60 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:57:52.57 ID:mc7jjdA4.net
.

61 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:58:20.69 ID:mc7jjdA4.net
……

……

 保健室

先生「もうそろそろ時間ね。解き終えたかしら?」

曜「もう少し」

善子「さっきから一ミリも動いてないわよ」

曜「まだ考えてるんだよ」

善子「そう……」

先生「津島さんの方は回収しても?」

善子「あ、はい」つ

先生「どれどれ……? うん、赤点は免れそうね」

曜「本当ですかっ!!?」ガタッ

善子「わっ、何よ急に」

先生「採点はしてないから正確な点数までは分からないけど……」

先生「これは確実に合ってるし、ここも……あとここも」

先生「間違いなく半分以上正解してるわね」

曜「そっかぁ……」ホッ

ピピピ

先生「あ、時間ね。渡辺さんもペンを置いて」

曜「はーい……」コロンッ

先生「えーと、渡辺さんは……」ジー

曜「私も半分以上取れるかな。けっこう埋まったし」

先生「ここは不正解、ここも……あっ、ここは合ってるわ。ここは間違いね……」

善子「何だか怪しい感じね」

曜「そんなに間違ってないよね!?」

先生「うーん、どうかしら……」ハァ

曜「えっ、ちゃんと採点して! 赤点だったら大変だ!」

先生「いいけど、模範解答があるわけじゃないから誤差は許してね?」

善子「解答がないのに採点できるんですか?」

曜「あっ、それ聞いたことあるよ。学校の先生って偉そうなこと言ってるくせに、生徒と同じテスト解かせたら全然取れないって」

62 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:59:00.78 ID:mc7jjdA4.net
先生「そういう先生もいることは確かね……」

曜「自分が解けないような問題作るのっておかしくない?」

善子「って言われてもこれ、業者が作ったテストだから」

曜「うっ……」

先生「これはギリギリかもしれないわ……」

善子「そんなに間違ってるの?」ペラッ

曜「あっ、ダメだよ他の人の答案見ちゃ!」

善子「解き終えたとはいえ不正になるのかしら」

先生「ならないわよ。幸い、今日は欠席の生徒はいないようだし」

善子「それなら問題ないわね。どれどれ……?」

曜「見ないでぇー!」

善子「んん?」

先生「あ……これはギリギリセーフ? いやアウト……」

曜「やめて! 実況しないでぇ!」

善子「ねぇ、私の答案見せてくれる?」

先生「いいわよ」サッ

善子「問題用紙も。大丈夫、書き加えたりはしないので」

先生「見るだけなら」サッ

曜「あぁ……」

善子「これ、半分くらい同じ問題じゃない?」

曜「え?」

先生「ええ、そうよ。半分は一年生から三年生まで共通」

先生「残りの半分が学年に応じた内容になってるわ」

善子「」

曜「そうだったんですか!?」ガタッ

先生「渡辺さんは去年も受けたでしょうに」クスクス

曜「そうだっけ?」アハハ

善子「ねぇ曜さん」

曜「ん?」

善子「これ、替え玉しなくても同じじゃない?」

63 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 15:59:31.60 ID:mc7jjdA4.net
曜「同じじゃないよ。私の名前で善子ちゃんが解いてくれれば……」

善子「さっき私のことバカにしてなかった?」

曜「し、してないよ?」

善子「私がバカ過ぎて、教えても無駄だとか何とか」

曜「そんな言い方はしてない! 私の教え方が悪いだけだし……」

善子「……」

曜「さっきはごめん。いくら焦ってたとはいえ、酷いことたくさん言っちゃったよね」

善子「許さないわよ」

曜「善子ちゃんは頭はよくないけど、バカなんかじゃないよ」

善子「頭が悪い方は否定しないのね……」

曜「だって善子ちゃんだよ? 私なんかを好きになっちゃうような人だよ??」

善子「曜さんは間違いなくバカだし頭も悪いどころかおかしいわ」

曜「う……」

善子「でも好きでいてあげる」

曜「ありがと」

先生「うっ……何だか胸焼けが」

曜「二日酔いかな? 保健の先生なんだからまずは自分の体をね」

善子「それより、採点はどう?」

先生「まあ、赤点は避けられそうよ。と言ってもかなりギリギリなんだけど」

曜「っし!」グッ

先生「津島さんの方は頑張ったわね。平均点超えてくると思うわ」

善子「嘘っ!?」

先生「ざっと見積もって八十点……。よくあの成績からこの数字を出したものだわ」

曜「私の脳みそだからだね」

善子「いや、関係ないでしょ」

曜「私だってそっちの頭なら取れたもん……」

善子「一緒に勉強したら同じ内容が入ってるんじゃなかった?」

曜「そ、それは善子ちゃんを励ますための方便というか」

善子「曜さんこそ、私の頭を使っておいてその点数はないんじゃない?」

曜「だってこの体全然思うように動いてくれないし……」

64 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 16:00:02.06 ID:mc7jjdA4.net
善子「むっ……体力ないのは認めるわ」

曜「でも、何だか元気が出てきたよ」

善子「え?」

曜「私の頭でも頑張ればそのくらい取れるんだって分かったし」

善子「これは私の努力だから」

曜「いや、私の頭だね」

善子「……」

曜「私も同じくらい努力したよね!?」

善子「心構えが違うのよ。曜さんはやる前から諦めてたじゃない」

曜「う……」

善子「って言うか私と半分同じテスト受けて私の半分しか取れないって……」

曜「向き不向きがあるから仕方ないよ」

善子「曜さんこそよく進級できたわね」

曜「死ぬほど頑張ったから」

善子「あと一年ちょっとだもの、死なない程度に頑張りなさい」

曜「一緒に頑張ってくれる?」

善子「ええ。もちろんよ」

曜「えへへ。持つべきものは善子ちゃんだね」

善子「私も曜さんのおかげで頑張れたし……」ボソボソ

先生「あー、盛り上がってるところ悪いんだけど」

曜「はい?」

先生「まだ一教科しか終わってないわよ」

曜「」

善子「知ってるわ」

先生「どうする? 津島さんはともかく、渡辺さんは教室に戻ってもらっても……」

曜「善子ちゃんと一緒じゃなきゃ嫌です」

善子「……」カァアア

曜「次こそ高得点取ってギャフンと言わせてやる」

善子「これで赤点だったら本当に恥ずかしいわよ」

曜「くっ……」

65 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 16:00:34.64 ID:mc7jjdA4.net
先生「ほら、休憩してらっしゃい」

善子「ええ」

曜「はーい……」

……

……

 テスト終了後

曜「終わったぁ……」

善子「中々いい感じだったわ」

先生「見た感じ、二人とも赤点は回避できそうね」

曜「本当によかったよ」

善子「私のおかげじゃない」

曜「そうだね」

善子「ううん、曜さんが頑張ったからよ」

曜「……そうだね」フフッ

善子「って、ちょっと上から目線かしら?」

曜「実際あの点数見たら反論できないよ」

先生「津島さん、どうして今までこんな成績だったのかしら……」

善子「そりゃ死ぬほど努力したもの。でももう二度とごめんだわ」

曜「私となのに?」

善子「曜さんも。これからは毎日少しずつやりましょ」

曜「うん」

先生「そういえば生徒会長の黒澤さんは毎日三時間欠かさずに勉強されてるそうよ」

曜「あ、無理です」

善子「一緒に付き合わされてるルビィはそこまでよくないみたいだけど……」

曜「ダイヤさんどんな教え方してるんだろ? 今度教わってみたいなぁ」

善子「たぶん曜さんが想像してるような甘いものじゃないと思うわよ」

曜「って言うかママに教わればよくない? 先生じゃん」

善子「ママにだけは教わりたくないわね……」

曜「私は教わりたいな」

善子「絶対にダメ」

66 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 16:01:37.49 ID:mc7jjdA4.net
.

67 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 16:02:13.65 ID:mc7jjdA4.net
曜「……」

善子「曜さんのお母さんは? 成績良かったんじゃないの?」

曜「……あれで?」

善子「それは私も思うけど可哀想だから言わないであげて」

先生「……」

曜「さてと、そろそろ帰らないとかな」スタッ

善子「あぁ、帰りは家まで走って帰るんだっけ」

曜「えぇ!? 疲れたしバスで帰ろうよ」

善子「何だか座ってばかりで体がムズムズするのよ」

曜「私の体だもんね」

善子「そうだわ、今夜果南さんと走らない?」

曜「日付変わってからならいいよ」

善子「嫌よ。この体のうちにしかできないことをしておかなきゃ」

曜「あっ……それで朝トイレで」

善子「ち、違うし! 曜さんこそ私の体で変なことしないでよ!?」

曜「してないよ」

善子「スカートは?」

曜「……」シュン

善子「さっき気づいたんだけど、制服交換してあったのね」

曜「うん。言わなかったっけ?」

善子「曜さんが汚したのは自分のスカートね。タイツは私のだけどそんなに高くないからいいわ」

曜「大切にするね」

善子「やっぱり返して」

曜「新品で返すよ」

善子「……」

先生「さ、そろそろ帰りなさい。私も答案を担任の先生に渡しに行かなきゃだから」

曜「ありがとうございました」

善子「本当に助かったわ」

先生「私は何もしてないわよ。各自自分の名前を書いて解答しただけでしょう?」

曜「おまけに速報まで頂いてしまって」

68 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 16:02:53.66 ID:mc7jjdA4.net
善子「不安なまま家に帰らずに済んだのはよかったわね」

先生「二度と替え玉なんてバカなことはしちゃダメよ」

曜「やだなぁ、未遂じゃないですか」アハハ

善子「未遂でも不正をしようとしたのは事実でしょ」

曜「不正……不正なのかな?」

善子「不正よ」

曜「私が善子ちゃんじゃないってどうやって証明できる?」

善子「は? 私が曜さんの中にいるんだもの、私の中に曜さんがいるに決まってるじゃない」

曜「そりゃ私たちは当事者だからね? でも他の人からは分からないよ」

善子「……」

曜「私が渡辺曜として解答したことの方が不正だったりして」

善子「そ、それは……」

曜「まあ、バレずに済んだからいいけど」

先生「……」

善子「そういえば、私たちが入れ替わってることどうして信じてくれたのよ?」

先生「生徒を信じるのが先生の仕事だから」

曜「私たちが入れ替わってるって嘘ついて替え玉したかもよ?」

先生「あ」

善子「え? って言うか普通そっちを疑わない?」

先生「ううん、そんなはずないわ。こんなに綺麗な目をしている子たちが嘘をつくなんてあるわけない」

曜「ごめんなさい。ちょっと先生とは歳が離れすぎてるかな」

善子「口説いたわけじゃないわよ」

先生「ちょっと待って。本当はどっちなの?」

曜「どっち? 何が」

善子「私が津島善子です。今は曜さんの体だけど……」

曜「私も善子ちゃんだよ。中身は私だけど」

先生「???」

善子「やめなさいよ。先生困ってるわ」

曜「私たちのこと信じてくれたわけじゃなかったんだね……」

先生「あなた達のことは信じてるわよ? でも、本当に入れ替わって……??」

69 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 16:03:27.01 ID:mc7jjdA4.net
先生「ううん、そんなことあるわけない」

善子「生徒を信じるのが先生の仕事なんじゃなかったの」

先生「ごめんなさい、頭が痛くなってきたわ……」ハァ

曜「あはは。先生面白いね」

先生「一応確認しておくけれど、替え玉はしてないのよね?」

善子「してないわ。ちゃんと私は私として解いたもの」

曜「私も。筆跡見てもらえば分かって貰えるかな」

先生「私は何も聞かなかったわ。体調の優れない生徒二人をここで受けさせただけ」

先生「とりあえずカンニングはしてなかったからこの答案は有効よ」

善子「……」

曜「大丈夫ですか? 顔色悪いですけど」

先生「答案届けたら休む……」フラッ

ガラッ スタスタ

善子「何だか申し訳ないことをしたわね」

曜「やけに物分りがいいって思ったんだよねぇ」

善子「本当は分かってなかったのね」

曜「普通は信じられないよね、こんなこと」

善子「はぁ……私までフラフラしてきたわ」フラッ

曜「おっと」ガシッ

善子「テスト中は何とか耐えたけど……これも入れ替わりの副作用?」

曜「完徹したからかな」

善子「あっ……そういえば教科書を読み漁ったって言ってたわね」

曜「よくその頭であの点数出したね」

善子「……」フラッ

曜「大丈夫? ちょっと休んでから帰ろうか」

善子「ええ、そうするわ」

曜「それじゃ、ベッドまで」ガシッ

善子「わっ」

曜「うぅ……! 重たい!!」ツルッ

ズテッ

70 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 16:03:58.31 ID:mc7jjdA4.net
善子「いったた……」

曜「ごめん」

善子「無理しなくていいわよ。曜さんは重いんだから」

曜「重くないよ!」

善子「私に比べてよ。太ってるって意味じゃないわ」

曜「この体が力ないだけだもん!」

善子「どっちでもいいわよ……」スタッ

ギシ

善子「少し寝るわ。曜さんは先に帰ってていいから……」バサッ

曜「何言ってるの。私もいるよ」

善子「好きにしなさい……」スゥ

曜「うん」

善子「すぅ……」

曜「早い! さすが私!」

善子「……」

曜(寝てる自分を眺めるのも変な気持ちだな……)

曜(……)

曜「私って意外と……」スッ

善子「ん……」ムニャ

曜「可愛い?」

善子「すー……」

曜(ううん。中身が善子ちゃんだからだよね)

曜(それと、今日は薄くだけどメイクもしてるし)

曜(今度からメイクしてみようかな……)

曜(善子ちゃん喜ぶかな)エヘヘ

スッ

曜「ごめんね。私のせいで……」

善子「……」

曜「目が覚めたら戻ってるから」スタッ

……

71 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 16:04:31.25 ID:mc7jjdA4.net
……

 ???

善子「うぅ……寒い」ガタガタ

善子「ここどこ?」キョロキョロ

善子「そっか……夢の中ね」

善子「……」スタスタ

善子「お風呂発見」

善子「早く温まりたいわ……」タッタッ

タッタッ

曜「えへへ」

善子「あ、曜さん……」

曜「え?」クルッ

善子「私も入っていいかしら?」

曜「私はいいけど……ヨハネちゃんは?」

ヨハネ「誰あなた」

善子「はい?」

ヨハネ「名前。私はヨハネ、見ての通り天使よ。こっちは下僕の曜ちゃん」

曜「えっとね、ヨハネちゃんは私の恋人なの……♡」カァアア

善子「えっ」

ヨハネ「ちょっと、恥ずかしいから言わなくていいわよ」カァアア

曜「どうぞ。寒かったでしょ?」

善子「ええ、まあ……」

ヨハネ「……」ジー

善子「な、何よ」

ヨハネ「あなたどこかで……」

曜「あっ、ヨハネちゃんだめだよ? 可愛いからって手を出しちゃ!」

ヨハネ「出さないわよバカ!」

曜「ねぇねぇ! 名前何ていうの?」

善子「私は……」

善子「……」

72 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 16:05:04.50 ID:mc7jjdA4.net
ヨハネ「??」

善子「あれ、私……」

曜「とりあえず入ったら? 寒いでしょ」

ヨハネ「服は脱いで入ってよね」

善子「わ、分かってるわよ……」スルッ

曜「……」ジー

ヨハネ「ちょっと曜ちゃん?」

曜「えっ? 見てないよ」

ヨハネ「いや、完全に見惚れてたわよね」

善子「……」シュルッ

曜「……」ジー

善子「わっ!? な、何よ曜さん」

曜「ヨハネちゃんに似てる?」

ヨハネ「は? こんな地味な子と一緒にしないで」

善子「うっ……」

曜「ヨハネちゃん? 相手は一般人だよ」

ヨハネ「あ、そっか……よく見たら羽も生えてないみたいだし」

善子「羽?」

ヨハネ「これよ。背中に生えてるの」ファサッ

曜「ヨハネちゃんは黒くてシュッとしててカッコいい羽だよね。私のは白くてフワフワしてて何だか子どもっぽい」フワッ

善子「曜さんにまで……」

ヨハネ「見たところただの人間ね。どうしてこんなところに来たの?」

善子「保健室で寝てたらいつの間にか夢の中で……」

曜「あはは。変な子」

ヨハネ「まあいいわ。入ってもいいけど曜ちゃんには近づかないでよね」

曜「何で?」

ヨハネ「あなたが人間で汚れたら困るもの」ナデナデ

曜「ヨハネちゃん……♡」ウットリ

善子「……」イラッ

ヨハネ「どうしたの? 入らないの?」

73 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 16:06:12.16 ID:mc7jjdA4.net
.

74 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 16:07:14.18 ID:mc7jjdA4.net
.

75 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 16:07:44.05 ID:mc7jjdA4.net
善子「入るわよ。端っこの方でね」チャプ

曜「……」

善子(温かい……)フゥ

曜「ねぇ、名前教えてくれないの?」

善子「な、名前ね。名前……」

ヨハネ「言いたくないならいいわよ」

善子「待って。どうして思い出せないの……」

曜「名無しのなし子ちゃん」

善子「それは梨子さんに悪いからダメ」

ヨハネ「梨子さん?」

善子「りこ、よ。なしこじゃないわ」

ヨハネ「ふーん……」

曜「本当に思い出せないの?」

善子「梨子さんのことも、曜さんのことも、そこにいる……ヨハネのことも知ってるわ。なのに私」

善子「私って誰だっけ……」

ヨハネ「ヨハネたちのこと知ってるの? 人間のくせに博識ね」

曜「どこかで会ったかな?」

善子(私の恋人よ……)

ヨハネ「え?」

曜「私の恋人はヨハネちゃんだけだよ」アハハ

善子「何で聞こえてるのよ! 声に出してないんだけど!?」カァアア

ヨハネ「……あなた曜ちゃんのこと知ってるのね?」

善子「ええ。あなたと同じくらいには」

ヨハネ「……」ジー

曜「えっと……私のこと知ってるの?」

善子「知ってるわ。曜さんが浮気性なことも」

ヨハネ「浮気?」ジロッ

曜「いや、この子が勝手に言ってるだけだから……」

ヨハネ「まさかヨハネとの契約を忘れたわけじゃないでしょうね?」

曜「忘れるわけないよ。私は一生ヨハネちゃんに尽くす下僕だよ?」

76 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 16:08:19.99 ID:mc7jjdA4.net
ヨハネ「どさくさに紛れてちゃん付けで呼ぶな! ヨハネ『様』でしょ?」

曜「ずっと呼んでたけどな……」

ヨハネ「ヨハネ『様』よ。はい呼んで」

曜「ヨハネ……様」

ヨハネ「ふんっ。油断も隙もないわね……」

善子「えっと……」

曜「あなたが変なこと言うせいでヨハネちゃ……ヨハネ様の機嫌を損ねたじゃん」

善子「ご、ごめんなさい。でも私、本当に曜さんのこと知ってるんだもの」

曜「全く、冗談は善子ちゃんだよ」

善子「善子……?」

ヨハネ「だっさい名前ね。あなたにお似合いだわ」クスクス

曜「そんな言い方ないんじゃない?」

ヨハネ「は? 何よ、この子のこと好きなの? ヨハネよりもこの地味で羽もない人間がいいってわけ?」

曜「そ、そうは言ってないけど」

善子(私、夢の中でも面倒くさいわね……)ハァ

善子「ん? 私??」

曜「善子ちゃん、何だか記憶が曖昧みたいだし……きっと人間界からこっちに来て困ってるんだよ」

ヨハネ「だから何よ。戻りたいならそこから飛び降りればいいじゃない」

善子「私……ヨハネ? ヨハネなの?」

曜「え?」

ヨハネ「あなたもブツブツ言ってないで早く帰りなさい」

善子「そう……私なのね? あなたは私、そうでしょ?」

ヨハネ「は……? 何この子頭大丈夫?」

曜「ヨハネちゃん、そんな言い方」

善子「あなただったのね」

ヨハネ「バカなこと言ってないで早く帰りなさい。もう温まったでしょう」

曜「まだ五分も入ってないけどな」

善子「あのとき私の頭に話しかけてきてたのはヨハネ」

善子「もうひとりの私」

ヨハネ「曜ちゃん、この子本当にヤバいわよ」

77 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 16:08:56.80 ID:mc7jjdA4.net
曜「……」

善子「曜さんの恋人は私よ。あなたじゃないわ」

ヨハネ「な、何言ってるのよ!? どうして人間なんかが曜ちゃんと!」

曜「善子ちゃん……?」

善子「私……」

曜「善子ちゃん、だね?」

善子「ええ」

曜「そっか」

ヨハネ「曜ちゃん近づきすぎよ! その子……そいつは人間なの! 離れて!!」グイッ

曜「わっ」

ザブン

善子「私の名前は善子……」

ヨハネ「あなたも! 名前がわかったならもういいでしょ? さっさと帰りなさい!」

曜「ごぼごぼ」

善子「帰るって……どこに?」

ヨハネ「『どこに』?? 人間界から来たんでしょう!? そもそも何しに来たのよ!」

善子「曜さん、大丈夫?」グイッ

ザパァ

曜「ぷはっ……。それが分からないから困ってるんだよね?」ケホッ

善子「ええ」

ヨハネ「あなたが言う『夢の中』なら、そこから飛び降りれば戻れるんじゃない?」クスクス

善子「そこ……」スタッ

ヨハネ「下、見える? 人間界よ」

善子「高っ!!」

ヨハネ「さあ、行きなさい。もう二度と来ないでね」フフッ

善子「ここから降りれば……」ゴクリ

曜「待って!!」

善子「え?」

ヨハネ「何よ、邪魔しないで」

曜「羽もないのにこんなところから落ちたら死んじゃうよ!!」

78 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 16:09:32.38 ID:mc7jjdA4.net
善子「ゆ、夢の中だもの……」

曜「ヨハネちゃん! 善子ちゃんに羽がないの知ってて飛ばせようとしたね!?」

ヨハネ「ええ。だってこんな子」トンッ

善子「きゃっ……!?」

曜「危ないっ!」ガシッ

善子「曜さんっ!」ギュッ

ストンッ

曜「ふぅ……」

ヨハネ「何よ……ヨハネよりそっちの人間がいいわけ?」

曜「どうしてこんなことするの」

ヨハネ「そいつはここに相応しくない。曜ちゃんにも相応しくないの」

曜「……」

善子「私……」

ヨハネ「曜ちゃんは天使らしくヨハネの恋人でいるべきだわ。ううん、ヨハネ様の下僕で!」

曜「さっきの聞いたでしょ。この子……善子ちゃんはヨハネちゃんなんだよ」

ヨハネ「は!? 何言い出すのよ! これだから人間と関わるとろくなことが……」

善子「……」

ヨハネ「あんたのせいよ! あんたが来たせいで曜ちゃんは!」ガシッ

曜「やめなよ! やめっ……やめて!!」グイッ

ヨハネ「きゃあっ!?」

ドシンッ

曜「はぁ、はぁ……」

善子「曜さん……」

ヨハネ「……」

曜「私……天使なんかじゃないよ」

曜「この羽、偽物だよね」ブチッ

ファサッ

ヨハネ「っ!! 何てことを! 私がせっかくつけてあげたのに!!」

曜「私は人間だよ」ブチッ

ヨハネ「いいえ! あなたは天使! ヨハネと同じ!!」

79 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 16:10:27.90 ID:mc7jjdA4.net
曜「人間だよ」ブチッ

ファサッ

ヨハネ「っ……」

曜「さっ、善子ちゃん体拭こう? いつまでも裸じゃ……目のやり場に困るよ」カァアア

善子「曜さんも裸よね!?」

曜「私は……半分天使だから?」

ヨハネ「このヨハネ様に選ばれたというのに不満なのね」

曜「……」

善子「……」

ヨハネ「そう。さよなら。二人ともお幸せに」スタッ

善子「ちょっ、まさか死ぬ気じゃ……」

曜「ヨハネちゃんは天使だから。飛べるから心配しないで」

ヨハネ「……」スッ

バキッ!

善子「え!?」

曜「ヨハネちゃん!?」

ヨハネ「こんな羽! こんな羽があるから!!」ボキッ!

曜「やめなよヨハネちゃん!」

ヨハネ「近づかないで! それ以上来たら飛び降りるわ!」

善子「……」

曜「どうして……」グスッ

ヨハネ「ヨハネが天使だから……曜ちゃんは人間だから……」ボキッ

ヨハネ「どうせあんたもそうでしょ!? ヨハネなんていなければいいって思ってた!!」

善子「わ、わた……」

ヨハネ「あなたのこと知ってるのよ? ヨハネになりたがってたくせに、今はヨハネより『善子』がいいんでしょう!?」

80 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 16:11:18.80 ID:mc7jjdA4.net
ヨハネ「そのだっさい名前が! 地味な体が! 羽もないくせに!!」

善子「だって……」

善子「曜さんが好きになってくれたのは私だもの」グスッ

曜「……」

ヨハネ「曜ちゃんも否定してくれないのね。もういいわ」クルッ

ヨハネ「二人で人間界に帰りなさい。大丈夫、地面にぶつかる前に目が覚めるわよ」

善子「あなたは……」

ヨハネ「ヨハネは一人で天界を彷徨うことにするわ」

ヨハネ「どこかに曜ちゃんよりももっと優秀な下僕がいるかもしれないし……」

曜「ヨハネちゃん……」

ヨハネ「もっとも……こんな折れた羽の私を天使って認めてくれるかは分からないけれど」

ヨハネ「さっ、二人ともさよなら。目が覚めたら私のことなんて忘れてるから」

善子「……」

ヨハネ「必ず曜ちゃんを幸せにしなさいよ」ボソッ

善子「え?」

ヨハネ「何でもないわ」トンッ

曜「わっ……」

善子「きゃっ……!?」

ヨハネ「さよなら」

曜「落ちるぅぅ!!!?」

善子「……っ!!」ガシッ

ヨハネ「きゃっ!? は、離しなさいよ!」

善子「あんたも一緒に堕ちるのよ!」グイッ

ヨハネ「私は天使なんだから! 人間界へは行けないの!」

善子「そんな折れた羽で! 何が天使よ!!」

ヨハネ「うっさい! こんなの放っとけばまた生えて……」

善子「バカね。あなたも私じゃない」フフッ

ヨハネ「えっ……」ズルッ

ヨハネ「きゃああ!!? 堕ちる! 死ぬぅぅ!!」

善子「うるさい! 落ちる前に目が覚めるんでしょ!?」

81 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 16:11:58.18 ID:mc7jjdA4.net
ヨハネ「死ぬわよ! この勢いで地面にぶつかったら!」

善子「えええ!!? あんた嘘ついたの!?」

ヨハネ「今ごろ曜ちゃんは……」グスッ

善子「嘘! 嘘よ!! 曜さんがこんなことで死ぬわけ……」グスッ

ヨハネ「ヨハネたちもすぐ追いつくわ……」

善子「勝手に殺さないで! ってか曜さんも勝手に死ぬな!!」

ヨハネ「あぁ……もう地面が……」

善子「曜さん助けて!! お願い!!!」

……

ショワァ

「わっ」

ショワァ……

「善子ちゃんおねしょ?」

ユサユサ

「善子ちゃん」

ユサユサ

「善子ちゃん起きて」

善子「はっ!!?」バサッ

曜「大丈夫? すごい汗だよ?」

善子「私……死んで」

善子「ないわね」ホッ

曜「怖い夢でも見た?」

善子「ええ、少し……」

曜「私たち、戻れたね」

善子「え? あぁ、本当だわ」

曜「さっき日付変わったから」

善子「えっ……それじゃ今」

曜「夜中だね」

善子「ええ!? ここ保健室よね!? 何で誰も起こしてくれないのよ!」

82 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 16:13:01.00 ID:mc7jjdA4.net
.

83 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 16:13:29.34 ID:mc7jjdA4.net
曜「学校の鍵は預かったよ」チャリンッ

善子「そういうの、生徒に預ける……?」ハァ

曜「鞠莉さんに頼んで貸してもらったの」

善子「鞠莉さんに?」

曜「そう。事情を話したら信じてくれて……優しいよね」アハハ

善子「……」

曜「『変なことしちゃだめよ?』ってニヤニヤしながら貸してくれたよ」

善子「鞠莉さん……」ハァ

曜「それにしても……自分の体に戻るとき変な感覚だったな」

善子「そう」

曜「まるでもう一人私がいるみたいな……って、訳わかんないよねごめん」

善子「ヨハネは……」

曜「え?」

善子「ヨハネは!? 死んだの!?」ガシッ

曜「えっと……善子ちゃん大丈夫?」

善子「ヨハネよ! 一緒に堕ちて……」

曜「ヨハネちゃん」

善子「へ?」

曜「珍しいね。私の前でヨハネちゃんが出てくるの」

善子「わ、私……」カァアア

曜「これも浮気かな」ギュッ

善子「浮気……じゃないわ」グスッ

曜「ヨハネちゃん」ギュ

善子「善子よ……」

曜「私もね、変な夢見ちゃったんだ。ヨハネちゃんと浮気する夢……」

曜「天国みたいなところでお風呂に入ってたら善子ちゃんが来てね」

曜「……」グスッ

善子「待って、その夢」

曜「最後は地面に叩きつけられて死んだんだけどさ」アハハ

善子「うわ……」

84 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 16:14:01.14 ID:mc7jjdA4.net
曜「全身の骨が砕ける感覚は新鮮だったなぁ」

善子「だ、大丈夫だった?」

曜「二人の裸が見られたからいいよ」フフッ

善子「っ……!」ブンッ

パーン

曜「うわっ! 顎の骨折れてるからっ!!」ヒリヒリ

善子「ヨハネと浮気したわね!? 絶対に許さない!」

曜「浮気したからあんな目にあったんじゃないかな」アハハ

善子「言ったわよね? 私以外の私と浮気したら殺すって!」ガシッ

曜「いや、だから一回死んで……」

善子「このバカ! 私だから好きなんじゃなかったの!?」グイッ

曜「苦しっ……」

善子「本当は誰でもよかったの??」ググッ

曜「ね、ねぇ本当に死んじゃう……」ピクピク

善子「曜さんなんてっ……!」グッ

曜「ぐっ……」

善子「……」

曜「……」

善子「それでも好き」グスッ

曜「私も……好きだよ」

善子「私に殺されても?」

曜「善子ちゃんは……そんなことしないって信じてる」

善子「どうかしらね」グイッ

曜「善子ちゃんは優しいから」フフッ

善子「……っ」パッ

ドサッ

曜「げほっ!! ごほっ!」ゼェゼェ

善子「これで三回目ね」

曜「夢の中で……ヨハネちゃんのこと助けてたよね」ハァハァ

善子「えっ」

85 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 16:14:32.81 ID:mc7jjdA4.net
曜「善子ちゃん優しいな、って思った瞬間に死んだの」

善子「何で知ってるのよ!!」バシッ!

曜「だから顎! 折れてる!!」ヒリヒリ

善子「んなわけあるか! 夢の中でしょうが!」

曜「あれ……本当だ」サワッ

善子「折れてたら喋れないから……」ハァ

曜「それと、四回目だよ」

善子「は?」

曜「善子ちゃんに殺されかけるの」

善子「夢の中のは私じゃないでしょ」

曜「ヨハネちゃんも善子ちゃんだよね?」

善子「なっ……」

曜「あっと、ヨハネ様?」

善子「曜さんのバカ! 夢の中まで入ってくるなんて!」カァアア

曜「そんな。寝てたら呼ばれたんだよ」

善子「誰によ!」

曜「ヨハネちゃんに。『空を飛びたいって思ったことない?』って誘われて」

善子「飛びたかったの?」

曜「ヨハネちゃんが可愛かったからつい……」エヘヘ

善子「浮気! それ本当に浮気だから!!」

曜「ん……? ってことはあそこ、本当に天国?」

善子「え」

曜「本当に死ぬところだったね」アハハ

善子「笑いごとじゃないわよ」

曜「入れ替わりの魔術、あれはかなり危険だってことか」

善子「……そうみたいね」

曜「そんなもの三回も私に使ったの?」

善子「使ったわよ」

曜「よく死ななかったね」

善子「私は今のところ死んでないわね」

86 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 16:15:01.90 ID:mc7jjdA4.net
曜「もしかして、私だけ何回も死んでる?」

善子「まさか。落ちるのは今回が初めてよ」

曜「いつもはどうやって帰ってきてたの」

善子「忘れたわ」

曜「えぇ……」

善子「どうせ朝になったらまた忘れるもの」

曜「私は忘れないよ」

善子「忘れて。お願いだから」

曜「絶対に忘れない。ヨハネちゃんとお風呂入ったこと……」

善子「忘れて!!」

曜「あはは。じゃあおやすみ」

善子「いや、待ちなさいよ」

曜「え?」

善子「片付けないの?」

曜「朝やればよくないかな。徹夜のせいかすごくだるくて……」

善子「私だって何でか分からないけど足とか肩とか痛いのよ!」

曜「……」

善子「一つ聞いてもいい?」

曜「何?」

善子「これ、私がやったの?」

曜「ん?」

善子「おねしょよ」

曜「そうだよ。って言うかそのときもう起きてなかった?」

善子「そう……地面にぶつかりそうになって、それで」

曜「善子ちゃんってビビリなんだね」アハハ

善子「誰だってあんなの漏らすわよ」

曜「私は漏らしてないよ?」

善子「そういえば……」

曜「善子ちゃんと違ってモロに地面にぶつかったけどね」

善子「よく平気だったわね」

87 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 16:15:34.56 ID:mc7jjdA4.net
曜「実は高いところ好きなんだ」

善子「関係なくない?」

曜「飛び込み台の上とかすごく興奮するの。もっと高ければいいのに、っていつも思ってた」

善子「えーと、それは何と言うか……変態ね」

曜「……」エヘヘ

善子「褒めてない」

曜「でもさ、私が先に死んだおかげで善子ちゃんを死ぬ前に助けられたんだよ?」

善子「あ、地面にぶつかる前に目が覚めたのって、曜さんが起こしてくれたから?」

曜「あの痛みはさすがに可哀想だから」アハハ

善子「……どんな痛みだったのかしら」

曜「興味あるの? 善子ちゃんも私に負けず劣らず変態さんだね」

善子「味わいたいわけじゃないわよ」

曜「イメージとしては……そうだね、スカイダイビングでパラシュートつけるの忘れちゃった感じかな」

善子「うん、例えがズバリすぎて全くイメージが沸かないわ」

曜「死んだほうがまし、ってああいうときに使う言葉だね」

善子「そ、そんなに……」

曜「善子ちゃんが言う通り……善子ちゃんとヨハネちゃんが別人なんだとしたらさ」

曜「やっぱり私、浮気したことになるのかな?」

善子「さっきからそう言ってるじゃない」

曜「……」

善子「何よ。曜さんから見たらどっちも私?」

曜「うん……」

善子「そうよね。見た目は私だもの」

曜「善子ちゃんもそう言ってた」

善子「……」

曜「ヨハネちゃんを助け……ううん、道連れにしたとき」

善子「何でわざわざ言い直したの」

曜「『あなたも私じゃない』って」

善子「……」

曜「私はヨハネちゃんも好きだよ」

88 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 16:16:37.01 ID:mc7jjdA4.net
.

89 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 16:17:01.73 ID:mc7jjdA4.net
善子「それ、思ってたとしても私の前で言う?」

曜「言う」

善子「……」

曜「善子ちゃんに隠しごとはしたくないんだ」

善子「言ってることは立派だけどやってることは最低」

曜「でも、私の恋人は善子ちゃんだからね」

善子「ええ」

曜「どっちかしか選べないなら私は善子ちゃんを選ぶよ」

善子「いや、両方選べたとしても私だけを選びなさいよ」

曜「うーん……」

善子「悩まないで」

曜「……たまにはヨハネちゃんでもいいよ?」

善子「は? 死にたいの?」

曜「あっ、そうじゃなくて。私の前だからってヨハネちゃんを封印しなくてもいいんだよ、ってこと」

善子「……」

曜「ごめん、喋りすぎたね。おやすみ」

善子「おやすみなさい」

……

……

90 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 16:17:58.92 ID:mc7jjdA4.net
前半終わり 続きはまた夜に投下します

91 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 16:20:18.67 ID:oKiqdLQi.net
おつかれ
相変わらずボリュームがすごいわ
じっくり読ませてもらいます

92 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 16:23:22.28 ID:mc7jjdA4.net
>>91
もっと短いほうが読みやすいですか?

93 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 16:28:44.79 ID:oKiqdLQi.net
>>92
自分は気になりませんよ
それにボリュームがあったほうが嬉しいです

94 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 16:34:29.74 ID:cM/ytjrd.net
キター

95 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 17:08:18.15 ID:HOEJRI5s.net
おつかれさまでありますっ(*> ᴗ •*)ゞ

96 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 19:07:18.13 ID:hjCmVGHD.net
本当に今回は控えめだな

97 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 19:23:32.73 ID:mc7jjdA4.net
……

……

 翌朝 保健室

「な、何と破廉恥な……」カァアア

「よく見なよ。抱き合って寝てるだけじゃん」

「ふふっ。変なことしないように釘を刺しておいたんだけれど」

「そういう問題ですか……?」

善子「ん……」

「気持ちよさそうに寝ちゃってさぁ」ツンッ

善子「きゃあっ!!?」バサッ

果南「おっと、ごめん。起こしちゃったかな」

鞠莉「大丈夫? 曜に変なことされなかった?」

善子「えっと……」

ダイヤ「まさか保健室に泊まるとは……。寒くありませんでしたか?」

善子「ええ。曜さんのおかげで……」

果南「それはよかった。曜も今回は役に立ったね」アハハ

鞠莉「体調はもういいの?」

善子「あ……ええと、徹夜したせいでフラフラしたけどもう平気よ」

鞠莉「ノンノン! 寝不足はお肌の敵なんだからね?」

ダイヤ「そうですわ。ニキビができても知りませんわよ」

善子「まあ私じゃないんだけどね」ボソッ

曜「すー……」

果南「そうだ。善子、足とか痛くない?」

善子「え? そうね、起きたときから太ももとか肩とか……少しね」

果南「あれだけ走っておいて少し? こう見えて普段からトレーニングしてたりする?」

善子「トレーニング? 何のこと?」

果南「いや、頼んできたのそっちだよね? ダイエットしたいからみっちりトレーニングしてって」

善子「言ってないわよ」

果南「これ見てよ」スッ

 †堕天使ヨハネ†:お願い! 今からトレーニングに付き合って!

98 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 19:24:07.20 ID:mc7jjdA4.net
善子「これ私じゃないわ」

果南「善子のアカウントから来てるよ?」

善子「……」

鞠莉「まさか、アカウント乗っ取られたの?」

ダイヤ「いけませんわ! 善子さんのことですから、パスワードは曜さんの誕生日とかなのでしょう?」

善子「曜さんじゃあるまいし……」

果南「そういえば曜は誘わなくてよかったのかな」

善子「曜さんが勝手に私のスマホで送ったのね」ハァ

鞠莉「そうなの?」

善子「ええ」

果南「善子もノリノリだったけどな」

善子「え?」

果南「実は私、善子が最近ちょっと太ったなって思ってたんだ」

善子「……」カァアア

鞠莉「果南……」ハァ

ダイヤ「よく気づきましたわね。私ですら微妙なラインでしたのに」

果南「ちゃんと測ってないから分かんないけど、たぶん二センチくらい……かな?」

善子「な、何でそこまで……」カァアア

鞠莉「今度は曜を誘ってあげたら? きっと喜ぶわよ」フフッ

果南「あー、実は曜から善子を誘うように言われてたんだ」

善子「どうして果南さんが」

果南「何でだろう? 自分で誘えばいいのに」

鞠莉「善子に気を遣ったんじゃない? 恋人に『太った?』って指摘されるなんて、やっぱり気にしちゃうよね」

ダイヤ「ふふっ。曜さん、本当に善子さんのことが大好きですのね」

善子「そうかしら……」

鞠莉「曜ったらすぐ他の子にデレデレするものね」

果南「曜は昔からそういう子だよ」

善子「いや、曜さんも太ってたわよね。他人のこと言えないじゃない」

ダイヤ「曜さんが?」

善子「ええ。私が二センチなところ曜さんは三センチも太ってたわ」

99 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 19:24:44.33 ID:mc7jjdA4.net
果南「曜がそんなことするかなぁ……」

ダイヤ「まさか、善子さんと一緒にダイエットするためにわざと太ったとか?」

鞠莉「それは……かなり重たいわね。体重だけに」

果南「考えすぎかな」アハハ

善子「曜さんならやりかねないわね……」ハァ

ダイヤ「それはそうと、お二人は青少年健全育成条例を知らないわけではありませんよね?」

果南「ん? 早口言葉かな」

鞠莉「夜十時から翌朝四時にかけての外出は禁止……とんだ悪法ね」

ダイヤ「なぜです。普通の子どもはそんな夜中に外出などしませんわ」

果南「大丈夫。善子をいかがわしい場所に連れてくわけないじゃん」

鞠莉「いかがわしい場所……?」

果南「えっと、ゲームセンターとか?」

ダイヤ「果南さんにはもっと浦女の生徒として自覚を持って頂きたいですわね」

果南「室内で筋トレしただけだよ」

ダイヤ「先ほど『あれだけ走っておいて』とか何とか聞こえましたが? 果南さんの家にルームランナーなどありませんでしたわよね?」

果南「……外でちょっと走った」

ダイヤ「まあ! 不審者に襲われていたかもしれませんのよ!?」

鞠莉「ダイヤ、この辺りにそんな人出ないと思うわよ?」

ダイヤ「分かりませんわ。もしもそういうことがあってからでは……」

鞠莉「大丈夫。果南ならワンパンチノックアウトよ」

果南「いや、見ず知らずの人にパンチはしないよ……」

ダイヤ「果南さんは平気でも善子さんは! 必ず守り切れるという確証はありまして?」

果南「う……」

鞠莉「いくら果南とはいえ屈強なマッチョが五、六人でハイエースしにきたら勝てないわよね」

果南「全員黒帯だったら負けるかも」アハハ

ダイヤ「善子さんを人質にとられでもしたら尚更ですわ」

果南「……ごめんなさい」

善子「あ、あの……もしかして」

鞠莉「ん?」

善子「昨日の夜、私……果南さんとトレーニングしたの?」

100 :名無しで叶える物語:2018/03/10(土) 19:25:20.17 ID:mc7jjdA4.net
果南「えっ、忘れたの?」

善子「……」

ダイヤ「覚えていないのですか? いえ、私も見てはいないのですが……」

鞠莉「何よ、記憶が飛んじゃうようなことしたの? ねぇ?」

果南「し、してないよ……」カァアア

善子「……」スタッ

トコトコ

体重計「やぁ」

善子「……」スタッ

鞠莉「善子?」

善子「一キロも減ってる……」

ダイヤ「果南さん、無理なトレーニングは体を痛めますわよ」

果南「そんなの分かってるって。善子も体を痛めないように気を遣ってたみたいだよ」

善子「私が?」

果南「慣れてない人だとつい張り切りすぎて体を痛めがちなんだけどね。善子はそんなことなかったよね」

鞠莉「いつもこっそりトレーニングしてるの? それでそのスリムな体型を」

ダイヤ「善子さん、見直しましたわ」

善子「そっか……私が寝てる間に」

曜「すー……」

善子「何よ、一緒に誘ってくれればいつでも」グスッ

果南「え!? 何で泣くの? やっぱり筋肉痛?」

善子「少しね」フフッ

鞠莉「私たちもトレーニング始めようかしら。ねぇダイヤ?」

ダイヤ「私は結構ですわ。自分の体の管理はしておりますので」

鞠莉「嘘ね。ダイヤの家、お正月はすごい料理が出るじゃない」

ダイヤ「鞠莉さんみたいに好きなだけ食べて飲んで寝てはいません」

鞠莉「わ、私だってこれでも抑えたし……」

果南「鞠莉は二キロ太ったね」

ダイヤ「やはりそうですか。私の目でも分かりましたわ」

鞠莉「太ってない! しかもダイヤと違って『ここ』に行ってるから」ムニッ

総レス数 545
377 KB
新着レスの表示

掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50
read.cgi ver 2014.07.20.01.SC 2014/07/20 D ★