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善子「南ことりに恋をして」

1 :名無しで叶える物語:2018/06/10(日) 01:07:44.67 ID:afVaHyFR.net
代行
没ネタスレより

214 :名無しで叶える物語:2018/06/11(月) 20:14:22.01 ID:M0XeKDXV.net
お前が帰れ

215 :名無しで叶える物語:2018/06/11(月) 20:18:30.40 ID:dkgygVfR.net
茸はゴミだがぬしくんは好き
大好き💓♥❤

216 :名無しで叶える物語:2018/06/11(月) 21:11:09.85 ID:JLxUAyvf.net


217 :ぬし :2018/06/11(月) 21:32:18.98 ID:XPtIKRft.net
遅くなりました 保守ありがとうございます
20分後くらいに再開します

218 :名無しで叶える物語:2018/06/11(月) 21:40:24.16 ID:SWzc1Pa5.net
やったぜ

219 :ぬし :2018/06/11(月) 21:52:10.30 ID:efuRTpQb.net
***

さらに数週間後ーー…


司会者「本日は、日墺・ピティナ・文化交流ピアノコンペティションにお越しいただき、ありがとうございます」

司会者「今日この場から生まれる音楽が、オーストリアと日本の、ひいては国際的なピアノ文化の発展に寄与することを祈っております」

司会者「それではオープニングセレモニーと致しまして、日欧の若きピアノ奏者二名によるコントラストエキシビションをお届けいたします」

司会者「まずは日本の奏者をご紹介いたしますーー西木野真姫さまーー」


ワァァァァァァ…


善子「わ、すご…」

ダイヤ「本当に真姫さんが…」

善子「リリーのお父さんってすごいのね…」

梨子「いや、正直私も驚いてるよ…真姫さんが引き受けてくださったことまで含めて…」

ダイヤ「それどころか、」


『招待状 日欧・ピティナ・文化交流ピアノコンペティション』


ダイヤ「わざわざ三通も…」

善子「できすぎよね…」

………………

………

220 :ぬし :2018/06/11(月) 21:53:10.15 ID:efuRTpQb.net
司会者「ーーピアノ文化の更なる可能性を感じさせる演奏でした」

司会者「それではプログラム進行に参りますーー」


梨子「はあ…綺麗な音だった…」//

善子「リリーのピアノだってキレイよ」

ダイヤ「そうですよ。Aqoursのピアノ奏者だって負けてませんわ」

梨子「そっ! そんな! 今の演奏に比べたら私のピアノなんか鼻唄よ、鼻唄!」アセアセ

ダイヤ「どういう謙遜の例えなのですか? それは…」

ダイヤ「…っと。奏者のかたには申し訳ありませんが、今のうちに真姫さんへご挨拶に伺いましょう」

梨子「あ…そうですね」

善子「あ、待って、先にその、お手洗い…」

ダイヤ「善子さん! だから始まる前に行っておきなさいとあれほどーー」

梨子「まあまあダイヤさん。じゃあエントランスで待ってるから、行ってきて」

善子「うん。すぐ戻るわ」

梨子「あ! よっちゃん、これこれ」ヒラ

善子「わ。ありがとう、リリー」

善子「じゃあすぐに!」テテテ…

………………

………

221 :ぬし :2018/06/11(月) 21:54:09.27 ID:efuRTpQb.net
善子「エントランス…は、あっちね」

善子「 」トコトコ

女性「……ん?」

女性「 」ジッ…

善子「……… …」ピク

善子(な、なんか見られてる? 気のせいよね? 誰?) トコトコ…

女性「…」

女性「 」トコトコ

善子(ついてきたァ!) ビクッ

善子(なになに?! なんなの?! 怖い!) トコトコ

女性「 」トコトコ

善子(ダイヤぁ…リリー…) トコトコ

女性「………ねえ」

善子「 」ビックゥゥゥゥ!!

女性「あはは。そんなに驚かなくてもいいのに」

善子「な、なにか?」ビクビク

女性「んー…なにかっていうかー…」ジッ


ブラン

『ゲスト(招待者:西木野 真姫) 津島 善子 さま』


女性「真姫ちゃん…善子ちゃん…」

女性「ってことは、間違いないよね」ニパッ

善子「は、はいい…??」

………………

………

222 :ぬし :2018/06/11(月) 21:55:09.77 ID:efuRTpQb.net
梨子「よっちゃん遅いですね」

ダイヤ「方向さえ間違わなければ、迷うような造りでもないのですけれどね」

梨子「表示板もあるしなあ…」

ダイヤ「仕方ありませんね。わたくしが見てきますので、梨子さんはここで…あ」

梨子「あ。よっちゃん、遅かったわーーねーー?」

女性「こんにちは!」ニパッ

善子「………」アセアセ

ダイヤ「こ、こんにちは…」

ダイヤ「その…どちら様ですか?」

梨子「よっちゃん…」

善子「私なにもしてないもん…」←半泣き

女性「わたしは、まー…」ウーン

女性「真姫ちゃんの知り合いかな!」

ダイヤ「真姫さんの」

女性「うん! 今から真姫ちゃんとこ行くつもりでしょ? 私もそうだから、一緒に行こ!」

梨子「え、はあ…」

女性「行くよ、善子ちゃん!」ズンズン

善子「ちょ、手ぇ放して! 善子って呼ばないで! あなた誰よ!」

善子「あーーーーも〜〜〜〜っ」ズルズルズル…

梨子「…とりあえず行きましょうか」

ダイヤ「そうですわね…」

ダイヤ(この人、どこかで…)

………………

………

223 :ぬし :2018/06/11(月) 21:57:33.55 ID:efuRTpQb.net
『西木野真姫さま 控え室』

コンコンガチャ


女性「や、真姫ちゃん! お疲れさま!」

真姫「応答待ってから入りなさいよ」

女性「まあまあそう言わずに。ほら、お客さん連れてきたよ」

真姫「年々姉に近付いてきてるわよ…客? 誰よ……あら」

女性「ほい」グイ

善子「きゃっ。ま…真姫さん、お久し振りです」ペコ

梨子「あ…真姫さん、こんにちは。お招きいただいてありがとうございます」ペコ

ダイヤ「黒澤ダイヤです。ご挨拶に伺いました」ペコ

真姫「久し振り。来てくれたのね」

梨子「まさかご招待いただけるなんて思ってなくて…驚きました」

真姫「私がこの舞台に立ったのはあなたのおかげよ? 招待しないわけないじゃない」

梨子「あ、ありがとうございます……演奏とっても素敵でした」

ダイヤ「わたくしもそう感じました。ピアノに関しては素人ですが、それでもうっとりしてしまいました」

真姫「ふふ…アリガト。善子はどうだった?」

善子「き、キレイでした」

女性「あははは。シンプルな感想だねー」

善子「………」アセ…

真姫「善子の言葉がシンプルになってるのはあなたのせいでしょ。いい加減、放してあげなさいよ」

女性「おっと。手繋ぎっぱなしだったね」パッ

善子「 」ホッ

真姫「ま、みんな座って」

224 :ぬし :2018/06/11(月) 21:58:32.68 ID:efuRTpQb.net
女性「いやー、久し振りに聴いたね真姫ちゃんのピアノ。相変わらずキレイな音だなーって感心しちゃったよ。ね!」

梨子「え、ええ…そうですね」

女性「んー? なんか堅いね」

真姫「…その様子だと、あなた自己紹介してないんじゃない?」

女性「へ?」キョトン

女性「あー、してないや」テヘ

真姫「そりゃこの子たちも萎縮しちゃうわよ…まったく…」

ダイヤ「…」ジッ

ダイヤ「あ!」ハッ

梨子「え? ダイヤさん、お知り合いですか?」

ダイヤ「いえ、直接お会いするのは初めてですが…」

ダイヤ「高坂、雪穂さん…では…」

よしりこ「「えっ?!」」

雪穂「わ! 嬉しいなー、ダイヤちゃん私のこと知ってるんだ! そうだよ。わたし、高坂雪穂! よろしくね!」

225 :ぬし :2018/06/11(月) 22:00:31.24 ID:efuRTpQb.net
梨子「穂乃果さんの妹さん…」

雪穂「おっ。そうだよね、スクールアイドルやってるんだったらそっちが先に出てくるよね」アハハ

梨子「ご、ごめんなさい。失礼な言いかたを…」

雪穂「いいよいいよ! お姉ちゃんに比べたらわたしの活躍が日陰になっちゃうのは事実だからね!」

真姫「自分で活躍とか言うし」

ダイヤ「真姫さんに続いて雪穂さんまで…」ポーッ

善子「ほんと、信じられないわね…こんな…」

真姫「こんなちゃらんぽらんがスクールアイドルやってたなんて、でしょ」

善子「いいいいいえそそそそそんなことは」

雪穂「動揺が激しい」

真姫「姉からの遺伝よね。スクールアイドルやってた頃は雪穂ももう少ししっかりしてたと思うんだけど」

雪穂「真姫ちゃんは手厳しいなー」

真姫「ほんとのことでしょ」

226 :ぬし :2018/06/11(月) 22:01:32.80 ID:efuRTpQb.net
善子「…ん?」

善子「そういえば雪穂さん、なんで私たちがスクールアイドルだって…」

雪穂「あー…それは、ねー…」

雪穂「メール読んじゃったから…かなー…」ポリポリ…

善子「メール?」

雪穂「うん」チラッ

雪穂「そろそろ来ると思うんだけど」

ダイりこよし「「「?」」」

真姫「あら。来れるの?」

雪穂「来てるよ。真姫ちゃんの演奏も聴いてた」

真姫「そう」

真姫「…善子には少し酷かしら」

雪穂「うーん…」

梨子「………………………えっ。もしかして…」

真姫「…気付いた?」

梨子「え、その、まさか…」


コンコン


??「真姫ちゃん。いますかー?」

ダイよし「「っ!!」」

真姫「いるわよ。入って」


ガチャ


ことり「こんにちは〜っ♪」

………………

………

227 :ぬし :2018/06/11(月) 22:02:34.58 ID:efuRTpQb.net
真姫さんたちの会話。

リリーの反応。

それらを目の当たりにしても、なにも思い至らなかった。

色々な動揺が残っていたから?

それはあるかもしれないけれど、仮に落ち着いていたとしても、きっと思い至ってはいなかっただろう。

そして、仮に仮に思い至っていたとしても、心の準備など、一時間掛けたって整うことはなかっただろうから。


ガチャ


その瞬間があまりに唐突であったことは、


ことり「こんにちは〜っ♪」


ほとんどなににも影響しなかったのだと思う。

………………

………

228 :ぬし :2018/06/11(月) 22:03:33.11 ID:efuRTpQb.net
ことり「こんにちは〜っ♪」

雪穂「先生、遅いよー」

真姫「久し振りね、ことり。来てくれて嬉しいわ」

ことり「わあっ、真姫ちゃん! ほんとに久し振り! ことりも会えて嬉しいよ!」ヤンヤンッ

善子「こ、ことり…さん…」ガタッ

梨子「…」

ダイヤ「…」

雪穂「あ…」

真姫「…」フウ

真姫「紹介するまでもなさそうだけど。こちら、私の友人の南ことりよ」

梨子「は、初めまして。桜内梨子といいます」ペコ

ダイヤ「初めまして…黒澤ダイヤと申します」ペコ

ことり「梨子ちゃんに、ダイヤちゃん。初めまして! よろしくね」ニコッ

ことり「 」チラッ

善子「 」ビクッ

ことり「じゃあ、あなたが…」

ことり「津島善子ちゃんーーだね」

善子「…っ、はい…」

ことり「そんなに緊張しないで。とりあえず、ね? 座ろ」

229 :ぬし :2018/06/11(月) 22:04:33.88 ID:efuRTpQb.net
真姫「どこか寄ってたの?」

ことり「うん。偶然ね、知り合いと会ったから。少しお話ししてたの」

雪穂「先生マイペースなんだから」

ことり「ユキちゃんだってなにも言わずに行っちゃったくせに〜」プンプン

ことり「っていうか先生はやめてってばあ」

梨子「せ、先生というのは?」

ことり「えっとね、…あれ? ユキちゃん自己紹介したの?」

真姫「させたわ」

雪穂「したよー。わたし、ことりちゃんのとこでアシスタント兼マネージャーやらせてもらってるんだ。だからね、先生」

ことり「先生じゃなーいーっ!」チュン!

真姫「大先生」

ことり「真姫ちゃんまで!」ガーンッ

230 :ぬし :2018/06/11(月) 22:05:47.93 ID:efuRTpQb.net
ダイヤ「あの…つかぬことをお伺いしますが」

ことり「うん。なあに?」

ダイヤ「ことりさんがいらしているということは、その…他の方々も?」

ことり「μ'sの?」

ダイヤ「 」コク

真姫「呼んでないわよ。ことりと雪穂だけ」

ダイヤ「そ、そう…ですか…」シュン

梨子「…ダイヤさん」ジトッ

ダイヤ「だ、だって!」

ことり「うふふ。ことりたちのこと、好きでいてくれてるんだ。嬉しいなあっ♪」

ダイヤ「も、もちろんですわ! μ'sはわたくしたちの…いえ、全スクールアイドルの憧れですもの!」

雪穂「わたしたちだってμ'sに憧れて始めたんだもん。みんな同じだって」

ことり「えへへ…照れちゃうね」

真姫「そ、そう? たいしたことないデショ」クルクル

ことり「うふふ…」

梨子「あの」

梨子「ご歓談中に悪いんですけど、伺ってもいいですか?」

231 :ぬし :2018/06/11(月) 22:09:47.36 ID:efuRTpQb.net
ことり「…」

雪穂「…」

真姫「…なにかしら」

梨子「ことりさんだけ招待なさったのは、どうしてですか?」

ダイヤ「り、梨子さん?」

真姫「…どうして、とは?」

梨子「失礼な言いかたになったら申し訳ありません…ことりさんだけを招待なさったことと私たちを招待してくださったことは、関係がありますか?」

梨子「意図的なんでしょうか」

梨子「よっちゃんがーーいるから」

善子「……!」

真姫「…そうよ。わざとよ」

ダイりこよし「「「っ!!」」」

梨子「ど、どういうつもりでーー」ガタッ

真姫「待ってよ。落ち着きなさい…別に深い意図はないわ」

ダイヤ「梨子さん、座って」

梨子「…」スッ

232 :ぬし :2018/06/11(月) 22:10:48.06 ID:efuRTpQb.net
真姫「知人友人で呼びたい人がいたら呼んでいい。そう言われたから、呼びたい人を呼んだだけよ」

真姫「真っ先に浮かんだのはあなたたち。この場に私を引き合わせてくれた恩があるからね」

真姫「それだけでもよかったんだけど。せっかくだからμ'sからも誰か呼ぼうと思って、しばらく会えてなかったことりを招待した。それだけよ」

真姫「私はなにか悪いことをしたかしら」

梨子「だって真姫さんは、私たちの…よっちゃんの事情をご存知で…」

真姫「知ってたけど、それがなに? 招待客同士でランチに行く企画でもないのよ。必ず出会うとわかってるなら少しは気を遣ったかもしれないけど。反対に、私がそこまで気にしなきゃいけないことだった?」

真姫「あなたたちが来てくれる保証もなかった。多忙なことりが来てくれる保証もなかった。ましてやみんなで揃って挨拶にきてくれるなんて思いもしなかったわ」

真姫「そんな言いかたをされる覚えはないわね」

ダイヤ「…真姫さんのおっしゃる通りです。あまりに失礼な物言いでしたよ」

梨子「…ごめんなさい」

梨子「…でも真姫さん、ご自分で『わざと』だって」

ダイヤ「梨子さん!!」

真姫「いいわよ。確かに言ったもの。『わざと』なんて言いかたは、些か偽悪的が過ぎたかもしれないけどね」

233 :ぬし :2018/06/11(月) 22:11:59.99 ID:efuRTpQb.net
真姫「呼ぶ相手をあなたたちとことりに決めたとき、もちろん考えなかったわけじゃないわ。善子の気持ちを」

善子「…」

真姫「だけど、憎み憎まれている二人ならまだしも、想い想われている二人を引き合わせることを躊躇う理由は思い付かなかったのよ」

真姫「だって、そうでしょ?」

真姫「好きな相手でも、好きだった相手でもいいけど…私だったら会いたいと思うもの」

梨子「!」ハッ

真姫「もちろん、好いてくれてる相手でも好いてくれてた相手でも…ね。ただそれだけのことよ」

真姫「だけど…今になって気付いたわ。間違いだったかしらね」チラ

ダイりこ「「えっ…?」」

善子「…」

真姫「 」ハァ

真姫「あなたがそんな態度を取るなら間違いだったんじゃないかって言ってるのよ! 聞いてるわけ?! 津島善子!!」バン!

善子「ひっ?!」ビクッ

234 :ぬし :2018/06/11(月) 22:13:02.74 ID:efuRTpQb.net
ことり「真姫ちゃん」

真姫「…ごめん」

真姫「でも言わせてよ」キッ

善子「…」オロ…

真姫「私が気を回したかどうかなんてこれっぽっちも考えなくたっていいけど。あなたの隣にいる友達は、ずっとあなたのことを心配してくれてたんじゃないの?」

善子「そ、そんなこと…わかって…」

真姫「わかってないから言ってんでしょうが!」

真姫「わざわざ静岡から東京まで付き添ってくれて。自分のことでもないのに私に頭下げてくれて。私が勝手なことしたからって、自分の立場を顧みずにあなたの代わりに怒ってまでくれて」

真姫「友達がこんなにあなたのことを想ってくれてるのに、よくも隣でそんな風にうじうじ下向いていられるわね!!」

善子「…………っ!」

真姫「あなたがことりに対してどれだけ本気だったかなんて知らない。会ったからって告白を済ませろなんて言うつもりもないわよ」

真姫「でも、友達の誠意にくらい応えなさいよ。本当に大切な友達だと思ってるならね」フン

235 :ぬし :2018/06/11(月) 22:14:04.68 ID:efuRTpQb.net
ガチャ


スタッフ「なにかありましたか?! 大きな声が…」

ことり「すみません、なんでもないので大丈夫です」ペコ

スタッフ「そうですか…」スッ バタン

雪穂「ヒュウ。真姫ちゃんは相変わらず苛烈だねー」

真姫「なんとでも言いなさい」

ことり「大きな声を出したことは、後でみんなで謝りにいこうね」

ことり「でもその前に、話さなきゃいけないことがあるよね」

236 :ぬし :2018/06/11(月) 22:15:39.78 ID:efuRTpQb.net
ことり「善子ちゃん」

善子「は、はい」

ことり「この数ヶ月、どうしてた?」

善子「この数ヶ月…」

ことり「うん。真姫ちゃんに会いにいって、私に連絡をくれてから、今日までの数ヶ月間。どうしてたのかなあって」

善子「どうって…」

善子「…特に、なにも。学校に行って、練習して、ラブライブ!の予選に出て……そんな感じ、でした」

ことり「そっか。私のことは、どれくらい考えてくれた?」

善子「初めのうちは、ずっと考えてました…その、ことりさんにメールしてからしばらくは。返事まだかなとか、会えたらなんて話そうとか、曲もいっぱい聴いたし、ライブも何回も観直しました…」

ことり「じゃあ、最近は?」

善子「…あんまり」

善子「たまに思い出すことはあるけど、でも前みたいにことりさんのことで頭がいっぱいになったりする感じじゃなくて、ふと思い出して、なんとなく頑張ろうって思う…みたいな…」

ことり「うふふ…つまり、そういうことなんだよね」

善子「そういうこと?」

ことり「うん」

ことり「つまり、もう善子ちゃんの中に、私はいないってこと」

善子「そっ!」ガタッ

善子「そんな…こと…」

ことり「落ち着いて。善子ちゃんが嘘をついてたとか、裏切ったとか、そんな風に思ってるわけじゃないんだよ」

ことり「そういうことじゃ、ないんだよ」

237 :ぬし :2018/06/11(月) 22:16:50.68 ID:efuRTpQb.net
ことり「その気持ちはね、とっても不思議なの。

ことり「ある日突然目覚める。

ことり「いつ、なんで、誰が、誰に。一つもわからないまま、ある日…突然。

ことり「そして一回目覚めたら、もう誰も止められないの。本人にも、友達にも、お母さんにもお父さんにもどうにもできなくって、どんどん大きくなっていく。

ことり「コントロールすることもできないし、抑え込むことも消すこともできない。

ことり「苦しくって、切なくって、嬉しくって、そしてーー幸せ。

ことり「それでね、またある日突然、いなくなっちゃうんだよ。

ことり「振り回されて、それしか考えられなくって、もうどうにでもなれって思っちゃってたのが嘘みたいに、あっさりといなくなっちゃうの。

ことり「そして後には、なんだか温かくて優しいカケラみたいなものだけが胸に残る。

ことり「そういうものなんだよ、その気持ちは。永遠でもないし、絶対でもないーー

238 :ぬし :2018/06/11(月) 22:17:50.89 ID:efuRTpQb.net
ことり「善子ちゃんが私のことを好きだなって思ってくれたとき。そのときは、善子ちゃんが求めてたなにかを私がたまたま埋められたときだったの。

ことり「パズルのピースみたいに、善子ちゃんの心の形と私の形がぴったり重なった。だから、そのとき善子ちゃんは私のことをなによりも魅力的に感じてくれてた。

ことり「でもね、心の形ってずっと一緒じゃないんだよ。

ことり「毎日なにかを悩んで、闘って、乗り越えてーー心の形ってくるくる変わるの。

ことり「きっと、今は善子ちゃんの心の形は、前と違う形になってる。だから、もうそこに『南ことり』のピースは重ならない。

ことり「いつかまた善子ちゃんの心の形に重なる誰かが現れたとき。そのときは、私も全力で応援しちゃいますっ♪

………………

………

239 :ぬし :2018/06/11(月) 22:19:03.15 ID:efuRTpQb.net
司会者「これにて、本日のプログラムは全て終了となります。日墺・ピティナ・文化交流ピアノコンペティションにお越しいただき、誠にありがとうございましたーー」


テクテク…


梨子「素敵な会でしたね」

ダイヤ「ええ、本当に」

善子「最後に真姫さんのとこ寄らなくていいの?」

梨子「二回は行かないわ。会後こそ、お偉いさんたちの挨拶でお忙しいだろうし」

善子「そう。そんなものなのね」

ダイヤ「それに、あれだけたくさん話をしておいて、同じ日に改めて交わす挨拶などありませんわ」

善子「ふふ…それもそうね」

梨子「ねえ、よっちゃん。いい一日になった?」

善子「もちろんよ」

善子「素敵な音楽は聴けたし、素敵な人たちにも会えた。心の中でもやもやしてたものもみんなすっきりして、それに…」

梨子「それに?」

善子「素敵な友人の存在に気付けたもの」ニッ

梨子「あら。今さら?」

ダイヤ「随分のんびり屋さんでしたわね」クス

240 :ぬし :2018/06/11(月) 22:20:04.21 ID:efuRTpQb.net
梨子「あーあ。結局よっちゃん一人で自己解決したみたいなものだったってことよね」ノビーッ

善子「ええ?! ちょっとリリー、あなたことりさんの話ちゃんと聞いてなかったわけ?!」

ダイヤ「わたくしたちが東京に行こうが行くまいが、放っておけば治まったということでしょう」ノビーッ

善子「ダイヤまで!」

梨子「私たちの往復五千円はなんだったんでしょうね」ハー

ダイヤ「本当。しなくてもいい出費だったようですわ」ヤレヤレ

善子「い、いい話で終わったんだからそういう掘り返しかたやめなさいよ!」

梨子「これはなにか見返りを要求してもいいかもしれません」

善子「げっ! またなんか奢らせるつもりィ?!」

ダイヤ「まさか。そんな"たかり"行為、この黒澤ダイヤの目の黒いうちは赦しませんわよ」キリッ

善子「東京での行いを思い返してみなさいよ」

梨子「しょうがない…簡単なもので済ませてあげるわ」

善子「なんで譲歩したみたいになってるの?」

梨子「よっちゃん」ガシッ

善子「ひっ?!」

ダイヤ「あの動画を消 し な さ い」ガシッ

善子「あ…なんだ、それをさせたかったのね…」

241 :ぬし :2018/06/11(月) 22:21:06.51 ID:efuRTpQb.net
善子「 」スルリ

ダイりこ「「あっ」」

善子「ぜーったいに、イヤよ」ベーッ

ダイヤ「んなああああああああっ?!」ムキーッ

梨子「待ちなさいよっちゃん! 再生回数どうなってるか知ってるの?!」

善子「知ってるわよ。2521回でしょ」

ダイヤ「さらに増えてるんですのよ!」

善子「早く一万回になるといいわね」

梨子「ふざけないでよ! こら、もう…待ちなさーい!」

ダイヤ「梨子さんそちらに! 回り込んでください!」

梨子「あっちょっ、ちょこまかと!」

善子「あなたたちに捕まるような私じゃないわよ〜だ」

ダイりこ「「きーーーーーーっ!!」」

242 :ぬし :2018/06/11(月) 22:22:08.61 ID:efuRTpQb.net
………………

…………

……

ーー善子『一つだけ、訊いてもいいですか』

ーーことり『うん』

ーー善子『どうして、メールには返事をくれなかったのに、今日は来てくれたんですか?』

ーー善子『 』チラ

ーー真姫『…』

ーー善子『それとも、本当に真姫さんに呼ばれたから来ただけで、私と会ったことは偶然で…』

ーー善子『ことりさんにとって、私はなんの意味もない存在でしたか?』

ーー梨子『…』

ーーダイヤ『…』

ーー雪穂『…』

ーー真姫『…』

ーーことり『…』


ーーことり『そんなことないよ』


ーーことり『私がμ'sで活動してた頃…か。それって、うふふ…何年前なんだろうね』

ーーダイヤ『正式にμ'sの解散と言われた日から数えると、』梨子『ダイヤさん黙っててください』

ーーことり『うふふ…』

243 :ぬし :2018/06/11(月) 22:23:24.03 ID:efuRTpQb.net
ーーことり『一つ。がむしゃらになって駆け抜けたあの日々が、何年も経った今でもこうして誰かに感動を与えられる。そのことが、スクールアイドルμ'sの南ことりを讃えてくれる、なによりも嬉しい贈り物であること』

ーーことり『善子ちゃんたちもスクールアイドルなんだよね。スクールアイドルAqours』

ーー善子『はい』

ーーことり『少しだけその世界を先に知った先人として、やるなら本気で。目指すなら頂点。そんな激励を、スクールアイドルAqoursの津島善子ちゃんに贈るよ。いつになっても色褪せない…その姿を見た人の心に感動を与えられる、そんなスクールアイドルになってほしい』

ーー善子『…はい』

ーーことり『そして、もう一つ』

ーーことり『誰かを想う、その気持ち』

ーーことり『恋、とも言うし、憧れ、とも言える。その二つに区別はないのかもしれないけど、私は善子ちゃんのその気持ちを、恋って呼びたい』

ーーことり『叶っても、叶わなくっても。届いても、届かなくっても。たとえ一日だけの短い時間だったとしてもーー誰かを恋うこと、誰かに恋われること』

ーーことり『それは、私が知ってるかぎり、世界中で一番きらきらしてるの』

ーーことり『そんな相手を見付けられることはなによりも幸せなことだし、その相手に選ばれることはそれ以上に幸せなこと』

ーーことり『だからね、善子ちゃん』

ーーことり『私はこれだけ善子ちゃんに言いたくって、来たんだ』


ーーことり『ことりを、あなたの心の傍にいさせてくれて、ありがとう。とってもとっても、幸せだったよ』

………………

…………

……

244 :ぬし :2018/06/11(月) 22:24:25.82 ID:efuRTpQb.net
こうして、私の恋は終わりを迎えた。

想った相手に感謝を告げられ、そして、はっきりと振られて。

今、私の心はどんな形をしているのだろう。

誰かを求めているのだろうか。

もしかして、まだことりさんを求めているのだろうか。

重なるピースがどこかにあるのか、はたまたないのか。

わからないから日々を歩もう。

なにかを悩んで、闘って、乗り越えていこう。

そうして、きっと。

次にそのときが訪れたのなら、私は必ず掴んでみせる。

この痛みを、絶対に忘れないから。



終わり

245 :名無しで叶える物語:2018/06/11(月) 22:25:19.79 ID:QgnyKexc.net
んあ

246 :ぬし :2018/06/11(月) 22:25:50.57 ID:efuRTpQb.net
>>1で代行者にも書いていただいていますが、没ネタスレより。
この30です
https://i.imgur.com/GNONMgU.jpg

247 :名無しで叶える物語:2018/06/11(月) 22:26:11.17 ID:CCuNk2V1.net
んあ

248 :名無しで叶える物語:2018/06/11(月) 22:30:16.92 ID:SWzc1Pa5.net
良かったずら

249 :名無しで叶える物語:2018/06/11(月) 22:34:56.18 ID:6e/zopH9.net

ことりちゃんの語る恋はスクールアイドルか、穂乃果に対する思いなのかな
ライブ前後通していいSSを見させてもらったわ ありがとう

250 :名無しで叶える物語:2018/06/11(月) 22:52:40.35 ID:zAEzSLsa.net
ラブライブのキャラたちがイキイキと動いて喋って物語もいよいよ佳境って時に急にことりちゃんのお面被った作者が入ってきて手の届かない存在への恋愛論語り出した

251 :名無しで叶える物語:2018/06/11(月) 22:54:32.85 ID:Eyesa7V+.net
ことよしに可能性感じた

252 :名無しで叶える物語:2018/06/11(月) 23:18:55.00 ID:DdAS4q5Q.net
その後の話としてなかなか面白かった
確かに善子はことりみたいなタイプに弱そうつていう新たな可能性感じられたよ

253 :名無しで叶える物語:2018/06/11(月) 23:20:47.58 ID:JLxUAyvf.net
無事に書ききれて良かった
とても楽しませてもらいました

254 :名無しで叶える物語:2018/06/11(月) 23:56:37.55 ID:dwPNQbnz.net
ぬしくん好き、お疲れ様
茸ざまぁw

255 :名無しで叶える物語:2018/06/12(火) 00:02:28.04 ID:H2oBrMxk.net
ぴゅあっぴゅあで心が洗われる〜…
お疲れさまです

256 :名無しで叶える物語:2018/06/12(火) 01:14:43.44 ID:WMJeESWE.net
面白かったわ
お疲れ様です

257 :名無しで叶える物語:2018/06/12(火) 01:19:44.12 ID:J9jxOCs9.net
ことよしありじゃん

258 :名無しで叶える物語:2018/06/12(火) 03:57:14.66 ID:83STBJnv.net
|c||^.- ^||

259 :ぬし :2018/06/12(火) 09:33:34.31 ID:orSkI/dx.net
埋め茸さんに荒らされましたが、最後まで読んでくださった方々ありがとうございました
願わくば元ネタを下さった(勝手に貰っただけですが)たこやきさんがこのスレを見付けてくださいますように。
ものすごくどうでもいい情報ですが、作中の 100% ChocolateCafe. はもう閉業したので行くことはできません

260 :名無しで叶える物語:2018/06/12(火) 10:58:32.17 ID:UOQ1ntDm.net
落ち着いた雰囲気のことりいいね
クール組でドタバタ話が進んでくのも良かったよ

261 :名無しで叶える物語:2018/06/12(火) 17:12:23.58 ID:tCjH2f3q.net
こういうのもええな

262 :名無しで叶える物語:2018/06/12(火) 21:20:57.60 ID:iPdKB3qB.net
とてもよかったです

263 :名無しで叶える物語:2018/06/12(火) 23:23:06.60 ID:Ih6TEEIi.net
よかった!スラスラ読めて楽しかったです

総レス数 263
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