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穂乃果「アンデッドハント、ファイトだよ!」

1 :名無しで叶える物語:2018/11/04(日) 00:52:27.09 ID:h9/MTg7S.net
穂乃果「海未ちゃーん!そっち一体行ったよ!」

海未「分かっています。ことりは下がっていてください!」

ことり「うん、お願い!」

海未「―――シッ!」

「ぎみっ!?」

海未「穂乃果!止めを!」

穂乃果「狙いを定めて…いっけぇぇぇぇぇ!!」

「み゛ゅっ!!!!」

75 :名無しで叶える物語:2018/11/07(水) 16:02:27.73 ID:YQOK8zor.net
世界観がいいね

76 :名無しで叶える物語:2018/11/07(水) 22:18:04.88 ID:IH26ZZpn.net
花陽のおいたちが可哀そう

77 :名無しで叶える物語:2018/11/08(木) 00:48:53.80 ID:1fiwu+QA.net
今日のアンデッドは人型が6体、四足歩行の獣型が8体、この程度であれば十分許容範囲内だ。

花陽「アンデッドさん、この地は誰にも譲れません!!巨人の掌よ、我を守護したまえっ!」

重い音を響かせながら大地を切り裂き五メートルに達するであろうかという鉄甲冑の手が二つ、アンデッドの前に聳え立つ!

「ぎゅぎゅ!!!?」

大地から現れる刹那、指先に軽く触れたアンデッドはまるで紙屑のように崩れ去った。

78 :名無しで叶える物語:2018/11/08(木) 01:09:05.34 ID:1fiwu+QA.net
「ぎみみみみっ!!!」

「ぎゅあーーーーーーーーーー!」

剛健たる巨人の手甲はアンデッドの攻撃を弾く、弾く、弾き続ける。

攻撃が止んでなお傷一つ負うことなく、悠然とその姿を誇示し続けて見せる。

花陽「お願い…早く帰って……!もう諦めて」

掌の陰で花陽は祈るように頭を抱え、固く瞼を瞑る。

アンデッドが諦めて帰るまでずっと、毎日、魔力に目覚めたその日から今までずっと。

79 :名無しで叶える物語:2018/11/08(木) 01:19:30.86 ID:1fiwu+QA.net
そんな花陽に転機が訪れる。

今日の来客はアンデッドだけではなかった。

海未「凄まじい防御力ですね…」

穂乃果「よーし!そのままパンチだ!」

花陽「えぇっ!?喋れるアンデッドさん来ちゃったのぉ!?どうしよう…!」

ことり「ことりたちはアンデッドじゃないよー!花陽ちゃんだよね?あなたにお話があってきたの」

花陽「人間?」

海未「私達はアンデッドハンターです!」

80 :名無しで叶える物語:2018/11/08(木) 01:22:14.66 ID:1fiwu+QA.net
花陽「この辺りまでは聖地の人も全然来ないのに…」

穂乃果「ちょっとお話があるんだけどダメかな?」

花陽「まずはアンデッドさんをどうにかしないと…」

穂乃果「花陽ちゃんそのおっきい手でやっつけられないの?」

花陽「無理ですぅ…こうして耐えて耐えて、諦めてもらうのを待ってるの」

穂乃果「そういうことなら…!ことりちゃん!」

ことり「はいっ!」

81 :名無しで叶える物語:2018/11/08(木) 01:33:05.39 ID:1fiwu+QA.net
穂乃果の合図を皮切りに背中に風の魔力を集中させ翼を形成、大きく飛翔!

ことり「白翼の弾丸っ!えぇーい!」

「ガルっ……!」

「みゅっ!!」

「あぎっ・・・・・」

軽快な音とともに放たれた魔弾は巨人の手に集中していたアンデッド達にことごとく命中。

致命傷に至らずとも魔力の散弾は確実に機動力を削ぐことに成功!

穂乃果「海未ちゃん!次!」

海未「―――――言われずとも!」

82 :名無しで叶える物語:2018/11/08(木) 01:37:59.04 ID:1fiwu+QA.net
未の姿は消失、一踏みで六メートルはあろうかという距離を詰め寄り一斬!

姿を消しては斬撃、斬撃を躱し反撃に転じたと思えば、姿を消し背後に回り弓の一撃。

素早い獣型アンデッドにも追従できない圧倒的な機動力。

早さの余り消えたように見えるのではない。本当に海未は0コンマ数秒この世界から消え、人間の脚力を超えた地点に移動しているのだ。

海未「名付けて園田流、叢雨の型一式、サイレントファントム……」

穂乃果「長いよ……横文字混ざってるし、結構取り逃してるし」

海未「し、仕方ないでしょう!!位置の指定がなかなか難しいんですよ!」

ことり「あのー……喧嘩もいいんだけど来てるよ?」

穂乃果「大丈夫、もう『溜まった』から」

83 :名無しで叶える物語:2018/11/08(木) 01:39:19.41 ID:1fiwu+QA.net
とりあえずこの辺で
やっと書きダメが最初のボスの入りまで書けました

84 :名無しで叶える物語:2018/11/08(木) 01:44:56.97 ID:1fiwu+QA.net
しまった
一旦書き終わったら上げるようにしときます
読んでくれてる人ありがとね

85 :名無しで叶える物語:2018/11/08(木) 08:22:05.31 ID:Kdt+2rR4.net


86 :名無しで叶える物語:2018/11/08(木) 15:16:55.08 ID:VlYgXWV6.net
おつ、無理せずー

87 :名無しで叶える物語:2018/11/09(金) 00:50:40.30 ID:Th+6yxAQ.net
午後に更新する

88 :名無しで叶える物語:2018/11/09(金) 01:39:58.84 ID:tDWHQT3p.net
まってるぜ

89 :名無しで叶える物語:2018/11/09(金) 17:08:39.59 ID:Th+6yxAQ.net
腰のホルスターに収められた一風変わった銃。

グリップ部分と銃身部分が別パーツで構成されており、穂乃果が握りしめていた部分は彼女の心を象徴するような暖かなオレンジ色の光で仄かに染まっている。

カチャリと子気味のいい音を立てグリップを装着。

光は瞬く間に銃身へ銃口へ、銃口からは行き先を求めたこぶし大のエネルギーが解放を求めて今か今かと唸りを上げる!

穂乃果「お母さん直伝の…ほむら玉っ!!!」

放たれた小さな太陽は大地を抉りながらアンデッド達を削り飛ばしていく。

一体二体三体四体…五体!!臨界を迎えたエネルギーは大きく炸裂!弾の軌道にないアンデッドをも巻き込み、数メートル規模のクレーターをしかと大地に刻み付けた。

穂乃果「はぁ…はぁ。これで全部…かな?」

90 :名無しで叶える物語:2018/11/09(金) 18:26:34.95 ID:Th+6yxAQ.net
海未「穂乃果危ない!!」

「ガルルルルルル!!!!!!」

取り残したアンデッドが一体。
巧妙に視界から姿を晦ましていた獣型は跳躍し穂乃果の喉笛を噛み切らんととびかかる。
低級アンデッドと言えど急所への一撃を受ければ絶命は必至。

穂乃果「やっば…!」

海未「この距離では…!」

穂乃果の大ぶりの剣は勿論、海未の瞬間移動も二度の跳躍を要する距離。

ことりはようやく迎撃の準備を開始するが、到底間に合うタイミングではない。

花陽「巨人の掌よ!」

「ぎゃっ!!ぎぁぁぁぁん……」

間一髪、アンデッドは花陽の召喚した巨人の掌に阻まれ勢いを殺すことすら能わず、グチャリと嫌な音を立て力無く倒れる。
肉の崩れる不快音と黒煙を立ち上らせ、この世界の外へと旅立つ。

魔力を注ぎ込まれたことによるアンデッドの完全な死。

穂乃果達の勝利だ。

91 :名無しで叶える物語:2018/11/09(金) 19:52:59.79 ID:Th+6yxAQ.net
ことり「大丈夫!?穂乃果ちゃん!」

穂乃果「なんとかねー…全部やっつけたと思ってたよ」

海未「頼もしい盾ですね」

花陽「いえ…私も凛ちゃんと同じくらい強い人、久しぶりに観ました」

穂乃果「そう言えば自己紹介がまだだったね、私は高坂穂乃果。私達の討伐班の一員になって欲しい」

海未「是非!是非お願いします!」

花陽「えっと…その…」

ことり「海未ちゃん」

92 :名無しで叶える物語:2018/11/09(金) 21:34:06.43 ID:Th+6yxAQ.net
海未「はっ……すみません。しかし、貴女のような優れたメンバーが必要なのも事実なのです…」

ことり「近々ことりたちはアンデッドの討伐任務に出るの。花陽ちゃんも来てくれたらことりはとっても嬉しい♪」

穂乃果「あなたのお友達、凛ちゃんにも声をかけるつもりだよ。花陽ちゃん、あなた達は私達に絶対必要な仲間になるの」

花陽「少し待ってもらえませんか?その作戦の決行日は…」

穂乃果「2日後の朝」

花陽「ぴゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!ダレカタスケテーーーーーーーー!!!」

93 :名無しで叶える物語:2018/11/09(金) 21:37:29.10 ID:Th+6yxAQ.net
その日の夜、花陽は人生で一番悩んだ。

心の天秤は初めから大きく傾いていたが、どうしても踏ん切りがつかない。

自分を必要としてくれる人がいる。自分だってこの土地を、世界を守りたい。

それだけではない、運命的な何かが花陽の心を揺り動かす。

理屈じゃない衝動的な感情。

この機を逃せば自分はただただ魔力の続く限り畑を守り、いずれ倒れる存在だろう。

最後の一歩を後押ししたのは彼女の最も大切な親友、星空凛だった。

凛「凛知ってるよ。かよちん、あの人たちと一緒に行きたいんだよね?」

94 :名無しで叶える物語:2018/11/09(金) 21:42:26.99 ID:Th+6yxAQ.net
花陽「でも…」

凛「大丈夫!お兄さん達もかよちんが行きたいって言えばきっと許してくれるよ」

花陽「お父さん、お母さん……お兄ちゃん」

敷地の片隅に埋めた簡素な墓。

想像するだけで涙が溢れそうになる、戦いに出るということはこの農場との別れ。

泣き虫な自分を家族は知っている。ならば旅立ちの前に涙など見せられようものか。

ぐっと歯を食いしばり懸命に振り絞った声で伝える。

花陽「私…花陽ね、花陽を必要だって言ってくれる人に出会えたの……………!!
もうお父さんたちと過ごしたこの場所を守れないかもしれない。
でも私、この世界を守りたいっ。いつか世界に平和が戻ったらこの場所から農地をもっともっと増やして、秋に実る黄金の大地をこの目で見たいの……!!
だから……ちょっとの間だけお留守番お願いします…!」

凛「決まりだね!」

95 :名無しで叶える物語:2018/11/09(金) 23:02:11.32 ID:Th+6yxAQ.net
この辺で
明日は更新できないかも

96 :名無しで叶える物語:2018/11/10(土) 13:37:47.05 ID:nOuTDqrr.net
花陽の決意、良いね

97 :名無しで叶える物語:2018/11/10(土) 17:11:47.84 ID:laB7yAJB.net
伊坂「これがバトルファイトだよ!一万年前の再現だ」

98 :名無しで叶える物語:2018/11/11(日) 11:12:36.40 ID:99KOJQ3d.net


99 :名無しで叶える物語:2018/11/11(日) 16:20:16.90 ID:UUoacGKb.net
【聖地アキハバラ】

『作戦決行日』

時刻は早朝。拠点に辿り着くまでの時間と攻略までを考えれば夜間に突入してしまうことだけは避けたい。

故にアンデッド討伐の遠征は朝方から行うことが定石、揃ったメンバーは穂乃果達の三人に上級剣士が一人、そこに花陽たちの姿はなかった。

剣士「時間だ。これ以上は待てないよ」

穂乃果「そんな…!」

ことり「もう少し待てませんか?」

剣士「これ以上はアンデッドの力を増長につながりかねない。このメンバーで臨もう」

海未「止むをえません…」

花陽「待ってください!!!はぁ…はぁ…準備してたら丸一日かかっちゃって……!」

凛「フル充電完了だよ〜〜!!テンション上がるにゃーーーー!!」

剣士「決まりだね。二人の戦法把握はここを出てすぐ始める」

穂乃果「よーーし!討伐班出発―――!!!」

100 :名無しで叶える物語:2018/11/11(日) 17:38:44.08 ID:UUoacGKb.net
【西木野邸】

聖地アキハバラから少し外れた、かつて高級住宅街だった場所に構えられる豪邸が一つ。

他の家屋がアンデッドの襲撃と風化により見るも無残な形と化していく中、西木野邸は未だ健在。

何故か?

答えは単純にして明快、西木野邸に立ち入ることができないからだ。

「み゛ゅ゛っ!?」

今日もまた一体、屋敷に張られた結界にかかる愚かな不死者が一体。
聖地の結界がアンデッドが近寄りたくなくなる忌避の効果を兼ね備えているのに対して、西木野は真逆。

羽虫を誘う炎のように西木野邸の結界はアンデッドを誘惑し消滅させる。

101 :名無しで叶える物語:2018/11/11(日) 17:42:50.03 ID:UUoacGKb.net
「キモチワルイ」

身を焦がすアンデッドに対して短く一言。

赤く癖のある毛先をクルクルと遊ばせる少女。

彼女は西木野真姫。

真姫「もう…見送りなんていいわよママ」

真姫ママ「そう言わないの、南さんには言っておいたから。何でも討伐班が向かってるそうだし、初陣にしても簡単すぎるかもしれないけど」

そして今日、西木野の若き魔術師真姫は初陣を迎える。

深紅のローブの下には医師を彷彿とさせる白衣、腰のホルダーには本を携えいざ出発!

102 :名無しで叶える物語:2018/11/11(日) 17:45:08.78 ID:UUoacGKb.net
真姫「それじゃ行ってきます」

「ガルルルルルル…………………!!!」

「ォォォォォォォォォォォォォ………!」

「シャァァァァ…」

真姫の行く手を阻むように取り囲むアンデッドが四十と数体。

全て西木野邸に引き寄せられたアンデッド達、まだ母の目の届く範囲内、真姫は静かに本を取る。

真姫「詠唱もあなた達には要らないわね。サヨナラ」

やれやれと本を畳むと全く同時、十数メートルに達するであろう火柱が真姫を取り囲み瞬く間にアンデッド達を文字通り消滅させていく。

轟轟、堂堂、立ち上る爆炎に対して真姫の表情は至って怜悧。

103 :名無しで叶える物語:2018/11/11(日) 17:47:30.38 ID:UUoacGKb.net
「ガッ!?」

「ォぐっ!!!」

「キッ!!!!!!!!!!!」

真姫「記録に残す必要……なさそう」

パンパンと煤を払い、一瞥くれてやるのを最後に真姫は歩を進める。

恐れることなく、上級アンデッドが支配する魔の境地へ。

真姫「上級アンデッドだっけ……アレは記録に残さないと。焼滅師として」

焼き、滅するもの。焼滅師、それが意味するところとは……………

真姫「強い気配が…………2体?大丈夫なのかしら、討伐班って人達。ま、関係ないわね」

104 :名無しで叶える物語:2018/11/11(日) 17:50:17.29 ID:UUoacGKb.net
【chapter.3 拠点へ】

一行は拠点を目指し進む。

兵士たちの斥候と安全なルートの選定のおかげもあってか、未だアンデッドとの遭遇はない。

剣士「簡単にブリーフィングのおさらいをするよ」

剣士の号令をもってブリーフィングが開始される。

ここから先数キロの地点にアンデッドのものと思われる館が建設され始めたとの報告アリ。

上級アンデッド単体では討伐に向かうまでの時間では拠点の完成は困難であると推測される。

討伐対象は上級アンデッド「3」

2〜10の数字を与えられたアンデッドは数字の大きさがそのまま序列に。

特級アンデッドと呼ばれる特に強力なアンデッドはかつて使われていた英字のA、J、Q、Kが当て嵌められている。

こちらの序列は不明、また「A」を冠するアンデッドは未だ確認されていない。

105 :名無しで叶える物語:2018/11/11(日) 17:53:16.71 ID:UUoacGKb.net
剣士「報告では確認されている上級アンデッドは「3」の一体だ。通常序列の低い者から出現する傾向があるらしいが……」

ことり「一番弱い人がよかったなぁ」

海未「とにかく、本来会敵するはずの敵よりも強いのであれば気を引き締めなければいけません」

剣士「頼もしいな。僕も力の限り剣を振るうがアンデッド戦の主役は君達、それを自覚した振る舞いを期待するよ」

穂乃果「はいっ!みんなも頑張ろうねっ!」

剣士「よし、続いて隊列だが前衛は近接戦闘に優れた僕と園田さんで務める。大丈夫かな?」

海未「修練場では後れを取りましたが、アンデッド戦では私に背中を預けてください」

剣士「次に隊列中央、威力のある遠距離攻撃が期待できる高坂さん、最も機動力に長けている星空さんでお願いするよ」

106 :名無しで叶える物語:2018/11/11(日) 17:56:04.49 ID:UUoacGKb.net
穂乃果「穂乃果も前衛いけるのになー」

星空「そうにゃそうにゃ」

剣士「後ろの二人を守れるのは君たちが適任だと思っているよ。剣士は人を庇って動くのには向いてないからね」

星空「はい!かよちんは凛が守るにゃ!」

穂乃果「バッチリ任せてことりちゃん!」

剣士「最後に後列二人は南さんと小泉さん。防御魔法と回復魔法で僕たちのアシストを」

花陽「が、頑張りますっ!」

ことり「任せてくださいっ♪」

107 :名無しで叶える物語:2018/11/11(日) 17:57:01.20 ID:UUoacGKb.net
剣士「それと…今は僕が暫定的に班長を任されているけれど、高坂さん。僕は君がそう遠くない内に班長………いや、もっと大きなリーダーになることを確信しているよ」

穂乃果「えっ、穂乃果が!?」

剣士「そう構えなくていい。ただ、君は僕が知っている人によく似ていてね。この戦いが終わったら話をしようか」

海未「気になる話ですね…」

剣士「それにはまずは皆が生きて帰ることだ。ここから先はアンデッドも増える。行こう」

108 :名無しで叶える物語:2018/11/11(日) 17:58:41.11 ID:UUoacGKb.net
洋館・最深部】

「…………姉さん」

「お前も気が付いたようね……そう、風が変わってきているわ。
恐らくは……世界が変わり始めようとしている。でも、それは我々の栄華を表している」

「……………ドール。増える?」

「えぇ、増えるわ。女の子が五体、男の子が一体」

「………男の子、要らない」

「そう言わないの。うふふっ、女の子だけだと寂しいかもしれないでしょう?」

「姉さん……………笑うと怖い………」

「そんなことないわ。咲良。お前の力が、運命を切り開く鍵となるのよ」

「戦闘…………緊張」

「人形、二体ほどよろしくね。私はしばらく眠りにつくから」

「おやすみ…咲夜姉さん」

109 :名無しで叶える物語:2018/11/11(日) 17:59:46.75 ID:UUoacGKb.net
【洋館】

漸く敵の拠点が見えてきたころ、一行は朝一番の出撃が功を奏しアンデッドの動きも鈍く、損害は軽微。

長丁場慣れしている剣士が率先して剣を振るったこともあり、女性陣の魔力消費は極めて少ない。

これから起こりうる戦闘の主役は自分でないことを彼は重々承知している。

聖地から六時間ほど歩いたところで、一行は指定ポイントである上級アンデッドの拠点に辿り着くことができた。

アンデッドだからってあからさまな洋館だなんて構えないだろうという予想を裏切るベタもベタな洋館である。

耽美が過ぎる倒錯的な美的感覚が随所に見られ、洋風建築に良く映える鋳物作りの重厚な門から覗く黒薔薇が丁寧に切りそろえられたバラ園、
溢れ出る液体が血だと一目でわかる赤い噴水、どこからともなく流れる不協和音のヴァイオリン。

110 :名無しで叶える物語:2018/11/11(日) 18:01:19.50 ID:UUoacGKb.net
穂乃果「報告じゃここまで完成してないはずなのに…」

海未「敵も一筋縄ではいかないということでしょう」

花陽「凄い力を感じます」

凛「ビリビリするにゃ…」

海未「フム……裏口や別の侵入経路を探すべきでしょうか」

ことり「でも侵入者が来るって分かってるならそっちに味方を置いていくんじゃ…」

111 :名無しで叶える物語:2018/11/11(日) 18:02:31.68 ID:UUoacGKb.net
穂乃果「正面から行きましょう。どっちにしろ歓迎はされてないみたいだし、時間は早い方がいいよ」

荘厳な気配を醸し出す門戸に手をかけ、恐る恐る魔の門を開いて見せる。
もうあとには戻れない



穂乃果「行こう」

112 :名無しで叶える物語:2018/11/11(日) 18:04:12.25 ID:UUoacGKb.net
【洋館・中庭】

黒薔薇が咲き誇る洋館の庭内。

迷路のように入り組んだ半天然の要塞に足が進まない討伐班。

心なしか洋館も遠ざかって見えてきた………否、事実遠ざかっている。

入口の門が眼前に迫ってきたところで一行は一度歩みを止める。

海未「妙ですね……」

凛「ちっとも進まないにゃ〜」

同じ所をぐるぐると何度も何度も歩まされている。

天然の迷路は気付かされないよう巧妙に形を変えながら一行を門の前へと誘う。

ことりが短時間の飛翔で上から偵察するかだとか、凛が高速移動で駆けまわる等、様々な提案が飛び交うがいずれも解決策には少し遠い。

堂々巡りを繰り返しているうちにも時間は過ぎていく。

113 :名無しで叶える物語:2018/11/11(日) 18:07:05.05 ID:UUoacGKb.net
穂乃果「じゃあ穂乃果の銃で屋敷まで植木をぶち抜く!とか」

海未「全力で打った後の魔力量考えてます……?」

穂乃果「撃つだけならあと二発はいけると思う!」

海未「身体強化に回す分を考えないでどうするんですか!」

剣士「高坂さんの魔力は取っておきたいところではあるけどこのままでは…」

穂乃果「撃ちます!上級アンデッド相手でも二発全力で打ち込めば大丈夫と思う!みんな下がってて…」

「あら、そうはさせなくてよ?」

ことり「助けて穂乃果ちゃん!」

花陽「い、いやっ!!

短い声と共に現れる茨の蔓。

完全なる不意打ち。そう、ここは既にアンデッドの魔力が満ちる領域内。

瞬きも許さぬ間にことりと花陽は緑の闇へと引きずり込まれ消えていく。

114 :名無しで叶える物語:2018/11/11(日) 18:08:18.85 ID:UUoacGKb.net
剣士「刃が通らないか…!」

凛「かよちんを返して!こんのぉぉぉぉぉ!!!ダメ…電気も効かないよぉ…」

予測して然るべきだった、予測できなかった。

上級アンデッドを相手取り生還したものはそう多くない。

瞬時に判断を分けるは経験と直感、彼女達には経験が圧倒的に不足していた。

海未「私が瞬間移動で追います!!館の最深部で落ち合いましょう!」

穂乃果「約束だからね!」

凛「かよちんをお願い!」

障害物を通り抜けつつ、ことりと花陽を追うべく海未はその姿を消す。

警戒に気付いたか、追撃の様子はない。

115 :名無しで叶える物語:2018/11/11(日) 18:09:41.23 ID:UUoacGKb.net
穂乃果「凛ちゃん、剣士さん。周りをお願い」

穂乃果「早く合流しないと…これが今の穂乃果の最大……『陽杭(ソルドライバー)』いっけぇぇぇぇぇ!!!!!!」

杭の形に生成された光の一撃は闇の魔力で構成された茨の迷路を貫き館へと突き進んでいく。

再生も許さない光弾の勢いはすさまじく、茨の層を20層ほど突き破ったところで館の扉へと着弾!!

穂乃果「はぁっ…!はぁっ!はっ…扉を開ける手間が省けたね…!急がないと…」

116 :名無しで叶える物語:2018/11/11(日) 18:11:03.13 ID:UUoacGKb.net
【洋館・海未side】

薄暗く埃くさい館内の一室。

部屋の全貌がうかがえる程度には光が漏れ、突貫工事で仕上げた粗相なつくりであることがうかがえるのと同時に
積もった埃やかびたにおいは年季を感じさせ、まるで古い館に迷い込んだような奇妙な気分を覚えさせる。

結果から言えばことりと花陽は無事だ。

蔦に絡めとられては居たが傷を負ってはいない。

寧ろ二人の絹のような柔肌を包み込むように棘は全て外に向けられている。

手傷を負わせることが目的ではないというのは海未にとって予想外だったが、これはよい方向に出てくれた。

海未「(二人とも無事のようですね)」

117 :名無しで叶える物語:2018/11/11(日) 18:13:35.17 ID:UUoacGKb.net
海未は黙考する。

後衛二人と共に行動する以上は自分が最前線で戦い続けなければならない。

とすると、気がかりなのは己の心配でなく魔力消費の方だ。

海未や穂乃果が前線で男性兵士以上に戦うことができるのはアンデッドに対して止めをさせることでもなく、強力な魔術を行使できることでもない。
それ以上に全身に張り巡らされた魔力による身体能力強化によるところが大きい。

特に海未のような前衛タイプは身体能力強化に割く魔力消費ウエイトが大きく、また海未は自分の魔力量がそう多いわけではないことも熟知している。

剣に自らの属性、水の魔力を纏わせること、これはとりわけ燃費がいい

弓の射出も剣と要領は同じだがこちらは一発ごとに使いきりの為、撃てる数はそう多くない。

海未が行使できる魔術の中で最も強力であり燃費が激しいもの、それが瞬間移動なのだがここまで来るのに10回は使ってしまっている。

他の魔術を優先して使わなければいけない以上、戦闘中に使える回数は多くて三回ほどだろう。

118 :名無しで叶える物語:2018/11/11(日) 18:16:14.64 ID:UUoacGKb.net
ことり「んん………ここは」

花陽「っ……」

海未「二人とも目が覚めましたか」

ことり「うん。穂乃果ちゃん達は?」

花陽「凛ちゃんも…」

海未「はぐれてしまいましたが問題はありません。ですがここに長時間留まるのも危険。先を急ぎましょう」

二人の後衛の不安を拭い去るように部屋を後にする。

大丈夫だと自分に言い聞かせて。

119 :名無しで叶える物語:2018/11/11(日) 18:18:57.40 ID:UUoacGKb.net
【洋館・穂乃果side】

穂乃果一行へ向けられた迎撃は苛烈を極めていた。

樹木や蔦をふんだんに使ったブービートラップから、仕掛け部屋、迫りくる低級アンデッド達。

正面から門をぶち破ったから……と言えば考えられないことではないが、本人たちからすればたまったものではない。

凛の雷体術に穂乃果の太陽を宿した剣が剣士のアシストなど待っていられないとバッサバッサとなぎ倒していく。

剣士がなるべく矢面に立ち彼女たちの負担を軽減させようとはしているものの、
穂乃果と凛は親友を目の前で奪われ明らかに気が立っており、我を失うようなことはなくとも魔力のペース配分は出鱈目だ。

残念なことに男性である彼には魔力を持った戦闘が分からない以上、本人たちに大丈夫と言われてしまえばそれまで。

それでも目の前の少女二人は目に見えて疲弊してきている。

魔力が体に満ちていようが元々の体力が尽きてしまえば元も子もない。

何より彼女たちのダウンは自らの生命線にも関わる重要事項。

120 :名無しで叶える物語:2018/11/11(日) 18:21:11.13 ID:UUoacGKb.net
穂乃果「〜〜っ!この部屋も違う、海未ちゃん、ことりちゃん…!」

「ギギギギギギ……」

凛「凛たちは急いでるの!退いてよ!!!………雷穿爪!!」

壁を、床を、天井を、縦横無尽に踏み砕き、予測できぬ猫のようなしなやかな動き。

垂直落下の重力と錐もみ回転の力を加え、身軽な凛の弱点軽さを補う猫の雷爪が一閃!!

「ギギっ…!」

凛「そんなっどうして倒れないの!?」

本来の凛の実力であれば一撃で屠れた敵であった。

実際これまで何度も倒したことのあるアンデッドだった。

だが、疲弊かアウェーの影響か、あるいは焦りによる判断ミスか。

事実、アンデッドは今もなお凛たちに牙をむく!

121 :名無しで叶える物語:2018/11/11(日) 18:23:04.96 ID:UUoacGKb.net
穂乃果「今度は穂乃果が!ソード、エンチャントソル!倒れろーーーーーーーーーーーーー!!」

陽光を宿した剣の一撃。

大振りは相変わらずだがこの局面では吉と出たようで重量の乗った一撃はマミー型アンデッドの頭を勝ち割り、見事消滅させてみせた。

穂乃果「ふぅー…次の部屋だね」

扉に手をかけ、開かれた先にあったのはダンスホールのような大広間。

アンデッドの趣味なのか、単純に脆いのか、所々朽ちつつも絢爛な作りは退廃的な美すら感じさせる。

屋敷の外見から判断すれば、間取り的にこのような大広間を拵えるのは不可能だ。

それを実現させているのはひとえにアンデッドの魔力のなせる業。

122 :名無しで叶える物語:2018/11/11(日) 18:24:56.83 ID:UUoacGKb.net
「お待ちなさい」

剣士「ッッッ!!!!!!!!!!!!」

先と違い、油断は一切していなかった。

音も気配も、第六感すら容易に潜り抜けた闇の権化が側に降り立つ。

雪より白い純白の肌に、煌々と輝く赤い瞳、人ならざる縦長の瞳孔。

どす黒い瘴気に身の毛は世立ち、直感はただ逃げろ、今すぐ逃げろと吠える。

「はぁ…折角寝ていたのにこうも五月蝿くては寝られないわ」

穂乃果「あなた……誰!!」

「自己紹介?咲夜、黒羽咲夜よ。ふふふ……世界を相手に戦うスクールアイドルは、私くらいかしら?」

凛「スク…何…?」

剣士「何故お前が旧文明の事を…!」

咲夜「そんな事を話している場合?私は「3」の数字を与えられしローズアンデッド、貴方達は既に私の掌の上なのよ」

穂乃果「そっか。あなたを倒せば任務完了だね、凛ちゃん、剣士さん………行くよっっっ!!!」

咲夜「血に染まった真っ赤な薔薇を咲かせてあ・げ・る」

123 :名無しで叶える物語:2018/11/11(日) 18:26:24.49 ID:UUoacGKb.net
書き溜め殆ど終わり
忙しくなりそうだからあまり書けないと思うんだけど速報にうつったがいいのかね
落とすなら落とすで、とりあえずここまで

124 :名無しで叶える物語:2018/11/11(日) 19:42:51.09 ID:FNsy/nte.net
乙!

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