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曜「夕陽のたもとに微笑んで」

1 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 22:40:36.40 ID:D5aeLELQ.net
ぶっちゃけトーク記念ようまり。

2 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 22:41:51.89 ID:D5aeLELQ.net
静真高校の3年生として新たなスタートを切り、あっという間に数ヶ月が経ったある夏の日。

暑い中での練習が終わって、部室で帰り支度をしているときだった。

曜「ごめん、千歌ちゃん。今日はちょっと行くところがあって」

一緒に帰ろうと誘ってくれた千歌ちゃんに、私は手を合わせてごめんなさいで答えた。

3 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 22:42:17.83 ID:D5aeLELQ.net
千歌「そうなんだ。何か用事?」

曜「んー、ちょっとね」

千歌「えー、気になる。どこ行くの?何するの?」

曖昧な答え方をしてしまったせいだろう。私の行先に興味を示した千歌ちゃんが、ぐいぐいと顔を覗き込んでくる。

千歌「ねえねえ、教えて、教えてってばー。ねー、よーちゃーん」

曜「あはは、ええっと…」

4 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 22:42:27.02 ID:zhyUXhjL.net
>>2
でも千歌ちゃんの見てる先には
https://i.imgur.com/5GOaZ9j.gif

5 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 22:42:45.36 ID:D5aeLELQ.net
梨子「だめよ、千歌ちゃん。あんまりしつこく聞いたりしたら」

私が困り笑顔をしていたら、梨子ちゃんがフォローに入ってくれた。

注意される形になった千歌ちゃんは、不満げに頬を膨らませ、口を尖らせている。

千歌「だってー、曜ちゃんが隠し事するんだもん」

梨子「わがまま言っちゃいけません。曜ちゃんには曜ちゃんの事情があるんだから」

千歌「ううっ、はーい…」

6 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 22:43:27.86 ID:D5aeLELQ.net
千歌ちゃんはしょんぼりと俯いた。そんなつもりじゃなかったんだけど、ごめんね、千歌ちゃん、梨子ちゃん。

梨子「よろしい。それで曜ちゃん、急がなくて大丈夫なの?」

曜「うん、約束の時間まではもう少しあるから――」

千歌「約束?」

パッと顔を上げた千歌ちゃんは、好奇心でいっぱいの目に戻っていた。

私は自分の失言に気付いたけれど、もう遅かった。

7 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 22:44:02.44 ID:D5aeLELQ.net
千歌「いま約束って言ったね。私たちにも言えない、秘密の約束…もしかして曜ちゃん…これからデートとか!」

曜「で、デートぉ!?」

つい大きな声で返してしまった。これもよくなかった。千歌ちゃんの眼光が強さを増していく。

千歌「ほら、その反応!まさか曜ちゃん、本当に…!」

曜「いや、いやいや、違うって。違くはないけど、そうじゃないっていうか…」

8 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 22:45:47.50 ID:D5aeLELQ.net
不意を突かれて動揺した私は、自分でボロを出し続けていることに気付かない。千歌ちゃんの追求は続く。

千歌「そうやって誤魔化そうとするころが怪しい。実に怪しい」

曜「ご、誤魔化すだなんて、そんなこと」

千歌「本当かなぁ。じーっ」

曜「う、ううっ…」

じとーっとした視線の圧に耐えかねて目を逸らすと、苦笑する梨子ちゃんと目が合った。

気のせいかな、梨子ちゃんも私の表情を窺っているように見えたけど…

9 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 22:46:55.49 ID:D5aeLELQ.net
千歌「この慌てぶり…まさかとは思ったけど、曜ちゃんに意中の人がいるという噂は、本当だったのでは…!?」

曜「う、うええっ!?」

なにそれ、全然知らない話だよ!?

梨子ちゃん、ヘルプ――ねえ、どうして目を合わせてくれないの!?

月「なにやら楽しそうな話をしているねぇ」

10 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 22:47:33.22 ID:D5aeLELQ.net
梨子「あ、月ちゃん」

ちょうどその時、生徒会の仕事を終えた月ちゃんが教室に入ってきた。

普段ならさておき、このタイミングでの合流は、私にとって良くないことになりそうな――率直に言って、悪い予感がする。

千歌「聞いてよ月ちゃん、曜ちゃんったらこれから私たちに内緒で秘密のデートなんだって!」

11 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 22:48:35.56 ID:D5aeLELQ.net
曜「だから、違うってばー!」

月「へえ。さすが曜ちゃん、相変わらずのモテモテだなぁ」

月ちゃんのにこやかなスマイルには、明らかにイタズラの色が含まれている。
やっぱりか…不吉な予感は的中した。

曜「なんでもないんだって。本当にただの、ちょっとした用事で…」

月「ちょっとした用事なら、そんなに必死に隠さなくてもよさそうなものだけどなぁ」

千歌「そーだそーだ!」

12 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 22:49:11.34 ID:D5aeLELQ.net
これはまずい、いくらなんでも分が悪い。

焦る私をそっちのけにして、話はあらぬ方向へとどんどん盛り上がっていく。

月「人気者の曜ちゃんが逢う約束をするお相手って、一体どんな人なのかなぁ?」

千歌「ねー、気になるよねー」

曜「どうしてそうなるの!っていうか、月ちゃんには言われたくないよ!」

13 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 22:49:27.67 ID:D5aeLELQ.net
月「本当、曜ちゃんは罪な人だねぇ」

千歌「罪な曜ちゃん…ギルティ曜ちゃん!ギラン!」

千歌ちゃんがギルキスお得意の目元で横ピースを決めると、月ちゃんも背中合わせで「ギラン!」と応じてみせた。
どういうわけか、謎にコンビネーションがいい。

曜「だーかーらー!」

14 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 22:50:01.29 ID:D5aeLELQ.net
梨子「はいはい。二人ともそこまでよ」

エキサイトするやりとりを見かねてか、梨子ちゃんがついに助け舟を出してくれた。

梨子「千歌ちゃんも月ちゃんも…ダメじゃない。よってたかって曜ちゃんを困らせて」

月「別に困らせるつもりなんて。ただの確認だよ、確認。ねー、千歌ちゃん」

千歌「ねー、月ちゃん」

梨子「現に困ってるでしょ。もう、すぐに悪ノリするんだから。もう大丈夫よ、曜ちゃん」

15 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 22:50:36.33 ID:D5aeLELQ.net
曜「梨子ちゃん…!」

ああ…梨子ちゃんが女神様に見える。
ありがとう梨子ちゃん、頼りになるのはやっぱり梨子ちゃんだよ!

梨子「気になる気持ちもわかるけど、あんまりプライベートなことを詮索したら可哀想よ。恋する話題はいつだってデリケートなんだから」

そうそう、こういう話題はデリケートで…ん?

梨子「曜ちゃんは恥ずかしがり屋さんなんだし、本人から話があるまで、私たちは優しく見守ってあげないと」

んん?

16 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 22:51:05.96 ID:D5aeLELQ.net
千歌「そっか、そうだね」

月「曜ちゃんの大事なロマンスを、私たちが邪魔しちゃいけないよね。応援してあげなきゃ」

待って、ちょっと待って。さっきからどうも風向きがおかしいぞ?

千歌「ごめんね、曜ちゃん」

月「僕たちが前のめりすぎたよ」

曜「うん、それはそうなんだけど、私が言いたいのはそういうことじゃ――」

17 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 22:53:16.44 ID:D5aeLELQ.net
梨子「そうよ、二人とも。人の恋路を邪魔していると、馬に蹴られて酷い目に遭っちゃうんだから」

曜「り、梨子ちゃん!?」

本当に待って、さっきから一体何を言ってるの!?

梨子「ね、曜ちゃん」

慌てふためく私に対し、女神様はにっこりと微笑み返した。千歌ちゃんと月ちゃんがその傍に並んで、同じような顔をしてこっちを見ている。

千歌「頑張って、曜ちゃん!」

月「ヨーソローだよ、曜ちゃん!」

曜「この笑顔…さては3人とも、共犯者だなーっ!?」

18 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 22:54:11.82 ID:D5aeLELQ.net
……………………………………

曜「まったく。千歌ちゃんや月ちゃんはともかく、梨子ちゃんまで乗ってくるなんて」

まだ暑さが残る帰り道、さっきの出来事を思い返して思わず独り言が溢れた。あれはどこまでが本気で、どこまでが冗談だったのか。

見事なまでの連携攻撃にとことんいじり倒された私は、妙に温かい視線を背中に受けながら、教室を後にした。

あんな調子だと、明日はなんて言われるかわかったものじゃない。

今日は先に帰った善子ちゃんたち2年生を巻き込んで、多勢に無勢の集中砲火が待ち構えていることだろう。

19 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 22:54:40.92 ID:D5aeLELQ.net
曜「まあ、その時はその時、だよね」

声に出して頭を切り替え、前を向き直す。
街は夕暮れに染まり始めていて、私は去年の出来事の思い出した。

ちょうど1年前、胸の奥から湧き上がるモヤモヤと寂しさを抱えたまま、私は一人俯いて帰り道を歩いていた。

『これでよかったんだよね』なんて、自分に言い聞かせながら。

鞠莉『うりょっ!オーウ!これは果南にも劣らぬいつざ――い?』

あのとき、鞠莉ちゃんが追いかけてくれなかったら。

20 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 22:55:30.54 ID:D5aeLELQ.net
鞠莉『ぶっちゃけトーク!する場ですよ、ここは』

一人で悩む私に気付いて、寄り添ってくれることがなかったら。
私は、私たちは、全く違う未来を進んでいたのかもしれない。

そして今、急遽日本に帰ってきた鞠莉ちゃんに逢うため、私は待ち合わせ場所へと歩みを進めている。
目的地は、向かう先にそびえる大きな水門。

鞠莉『なら、本音でぶつかった方がいいよ』

私が初めて、押さえ込んだ心の悩みを打ち明けた場所。
そして。

鞠莉『ちゃんと本音で話してるよ?…うん、本当はね――』

鞠莉ちゃんもまた、秘めていた気持ちを私に打ち明けてくれた場所。

21 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 22:55:56.53 ID:D5aeLELQ.net
曜「なんて声をかけようかな。どんな話をしようかな」

鞠莉ちゃんが連絡をくれた昨日から、頭の中はそればっかり。

久々の再会を前にして、はやる気持ちを抑えろという方が無理な話だ。

きっと周囲からは浮ついて見えたのだろう。
そりゃ、みんなにも「何かあるな」って勘付かれちゃうよね。

でも、いいんだ。

曜「だって、鞠莉ちゃんと逢えるんだから!」

自然と頬がほころぶのもそのままに、弾む心に急かされるながら、私は夕暮れの水門を目指して歩き続けた。

22 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 22:57:42.40 ID:D5aeLELQ.net
……………………………………

曜「あ…!」

制服を整えながらエレベーターを降り、展望室に入った私の目に飛び込んできたのは、去年の今日を再現したような光景だった。

待ち人は――鞠莉ちゃんは長椅子に座って、夕陽が沈みゆく海の色を優しく見つめている。

曜「鞠莉ちゃん!」

夕陽に輝くブロンド髪がさらりと揺れ、鞠莉ちゃんがこちらを振り向いた。
お互いの視線が交わって、鞠莉ちゃんはぱあっと笑顔を咲かせて椅子から立ちあがった。

23 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 22:58:07.15 ID:D5aeLELQ.net
鞠莉「曜!」

逢ったらなんて言おうかな、だっけ?
そんなの、もちろん決まっている。

曜「おかえり、鞠莉ちゃん!」

嬉しさに胸が大きく高鳴るのを感じながら、私は鞠莉ちゃんのもとへと駆け出した。



終わり

24 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 22:59:02.60 ID:D5aeLELQ.net
全弾撃ち尽くしました。
9月10日は友情ヨーソロー初回放送日ということで、ぶっちゃけトーク4周年記念ようまりでした。

↓は前に書いたものです。よろしければ併せてお願いします。

鞠莉「背中に気持ちをなぞらせて」
https://fate.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1598752926/

ありがとうございました。

25 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 23:15:07.57 ID:vjJz1Yhn.net
月ちゃん含めた元2年生の会話も面白かったし、マリーとの再会もさわやかで良かった

26 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 23:49:12.15 ID:Uk90QCC+.net
続きが気になるけどそれは野暮だね
良かった!

27 :名無しで叶える物語:2020/09/11(金) 00:23:47.24 ID:XWUsjP2U.net
良かった

28 :名無しで叶える物語:2020/09/11(金) 23:59:51.60 ID:jV9ovwe1.net
いいようまり

29 :名無しで叶える物語:2020/09/12(土) 21:59:52.63 ID:K+8di5Lj.net
そうか4年経ったのか

総レス数 29
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