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【B○】棋○CP総合スレ【SS】 Part.2

172 :名無し草:2019/12/16(月) 22:57:56.08 .net
その頃、僕はまだ彼に恋をしてはいなかったんだけれど、それ以来なんとなく彼を見るのが恥ずかしいような気持ちになったし、部活の時ロッカールームで彼と一緒になるのを避けるようになっていた。
でも、夏の日差しの中で、彼のシャツも、肌も、桃色の傷跡もきっぱりと清潔で、僕はいつものように眼を逸らすようなことをせず、彼を見つめることが出来た。何も恥ずかしがることなく…。
その時、別に『同性愛万歳!』みたいな気持ちだったわけではないと思うんだよ。
ただ、僕には、もう自分の感情を責める気持ちがなくなっていた。
彼が僕のどの側面を切り取って好きと言ったかはわからないけれど、とにかく僕は嫌われていないんだ。
「僕、また手術しなくちゃならないんです。したくないんだけど。生きていても仕方ないし」
僕の視線から眼を逸らすようにして、彼が言った。
金〇君にちょっと似た品の良さのある彼にふさわしくない、投げやりな言い方に少し驚いた。
「こんなに浮腫むようになっちゃって」
そう言って彼は片足をひょいっと宙に上げて、靴下をずらして見せた。
細い足首にくっきりとゴムの跡が付いていた。彼の身体はほっそりとどこにも無駄がないように見えていたのに…。
「でも、手術したら、また好きな剣道も出来るようになるんじゃないの」
何と言っていいかわからなかったので、そんな月並みなことを言った。
「剣道なんて好きじゃないです」
えっ?って彼の顔を覗き込んだ。彼の目も僕を捕えた。土下座して謝りたくなるくらい、冷たい目だった。
「剣道なんて言ったって、只のスポーツじゃないですか。剣って、切るための武器ですよね。それを竹の紛い物に替えて、切られた振りをして…」
綺麗な眉を寄せて、吐き捨てるように言う彼に圧倒されて、僕は何も言えなかった。
「将棋を戦争の代わりだから下らないって言ったことありましたよね。申し訳ありませんでした。剣道だって下らないです」
ちょっと僕は混乱してしまった。

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