■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
ピカチュウの人生7
- 1 : ◆nT58vM8A36 :2014/01/12(日) 03:19:33.24 ID:???0.net
- 全世界のポケモンの支配を企むピカチュウを主人公とした小説を書くスレのその7
※続きを書く前に前スレ・過去スレ・議論所・保管サイトをしっかりと読み、
過去からの流れと設定、キャラの性格と口調等はしっかり掴んでおきましょう。
※荒らしはスルーが基本。書き手が現れるまでまったり待とう。
※sage進行推奨
前スレ
ピカチュウの人生6
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/poke/1332179947/
過去スレ
ピカチュウの人生5<小説リレー・進化>
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/poke/1286038834/
ピカチュウの人生4<小説リレー・進化>
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/poke/1243265269/
ピカチュウの人生Part3<小説リレー・進化>
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/poke/1186585164/
ピカチュウの人生2<小説リレー・進化>
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/poke/1168594628/
ピカチュウの人生<小説リレー・進化>
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/poke/1163338618/
関連過去スレ
ピカチュウの人生議論スレ
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/poke/1165628880/
避難所&議論所
http://jbbs.m.livedoor.jp/b/i.cgi/otaku/11567/#1
保管サイト
http://novel.motekawa.jp/pikatyulife
- 2 :前スレ直前の展開 ◆nT58vM8A36 :2014/01/12(日) 03:20:14.78 ID:???0.net
- 827 名前: ◆rgWFRtnaRA [sage] 投稿日: 2014/01/09(木) 07:56:38.30 ID:???0
「と、と。それなら、俺様が直々に案内してやるよ」
目を回し、ふらつく足取りを整えながら頭領は言った。
「しかしながら、頭領様にはこの後ご老公方との評定が控えておられるはずでは」
「いいの、いいの。あんなもんどうせ老いぼ――お義母さま方にくだらねえ
嫌味でぐちぐちと突っつかれるだけだからよ。くたばったと思ってた旧友が
生きて現れたってえこの時に水差されたかねえってんだ、ヒャッハッハ」
豪快に笑い飛ばして、頭領は子ニューラを肩車したまま襖を足で勢いよく押し開け、
「付いて来な」ぐいと首であっしら招いた。「ついて来なー」その肩の上で子ニューラが
嬉しそうに真似をする。
小さく嘆息を吐く隊長に、「いつもこんな調子?」とマフラー野郎が小声で尋ねると、
隊長はそっと頷いた。
「変わってないな」
マフラー野郎は呆れたように、しかし少し嬉しそうに苦笑いした。
「何してやがんだ、置いていくぞ」
「なにしてんだ、置いてくぞー!」
急かす二匹に「わかったわかった」とマフラー野郎は続く。
あっしも仕方なく付いていこうとする中で、何かじっくりと考え込んでいる様子で
動かないニャルマーに気付く。
「何してんだ?」
あっしが怪訝に思って声をかけるとニャルマーはじろりと目だけ動かしてあっしを睨み、
「なんでもないよ」と素っ気無く答えて腰を上げた。
- 3 :前スレ直前の展開 ◆nT58vM8A36 :2014/01/12(日) 03:21:13.09 ID:???0.net
- 828 名前: ◆rgWFRtnaRA [sage] 投稿日: 2014/01/09(木) 07:57:38.70 ID:???0
庭から門までずらりと両脇に並ぶ女中や門番のニューラ達に大袈裟盛大に見送られながら、
頭領と共にあっしらは屋敷を後にする。途中、あっしには一つ引っかかることがあった。
ニューラという種族の性別は赤い左耳の長さである程度判別できる、
とどこかで聞いたことがあるが、まだガキで判別がつかねえ子ニューラと
すっぽり頭巾を被っていて耳が見えねえ近衛隊は除いて、
この屋敷にいたニューラは女中から門番、果てはあの屋敷に入る前に
突っかかって来た老いぼれとその御付の奴までが左耳がちんまりとみじけえ、
つまりはメスばかりだってことだ。
謁見の時に見せたあのニャルマーへの態度からしても、
きっとあの頭領は随分な好きものなんだろう。あっしは勝手にそう解釈して、
門を出る頃には沸いた疑問をさっさと片付けてしまった。
調子外れに歌いながらご機嫌の子ニューラとそれを背負う頭領を先頭に、
屋敷から丘を降り少し離れた位置で身を寄せ合うように集っている廃屋の群へよ
あっしらは向かう。あれが件の匿われている連中のいる集落なんだろう。
近付くに連れてがやがやと活気ある喧騒が聞こえてくる。
- 4 : ◆nT58vM8A36 :2014/01/12(日) 03:21:52.18 ID:???0.net
- テンプレここまで
また明日明後日位にでも続き書く
- 5 :名無しさん、君に決めた!:2014/01/12(日) 18:14:06.08 ID:???i.net
- おつほしゅ
- 6 :名無しさん、君に決めた!:2014/01/13(月) 23:08:22.83 ID:???0.net
- 保守
- 7 :名無しさん、君に決めた!:2014/01/14(火) 18:07:21.33 ID:???0.net
- やっと規制解除w
遅ればせながら乙です
- 8 : ◆nT58vM8A36 :2014/01/16(木) 01:48:12.09 ID:???0.net
- 投下は明日の今くらいに
- 9 : ◆nT58vM8A36 :2014/01/17(金) 04:13:48.95 ID:???0.net
- すまん、もう少し遅れそう
夕方か夜くらいには間に合わせる
- 10 : ◆nT58vM8A36 :2014/01/18(土) 10:38:34.18 ID:???0.net
- 集落へと踏み込んで、あっしらは再び度肝を抜かれることになる。
そこには多くのニューラ達と数は少ないが他種のポケモン達が行き交い、
軒先で店のように品を並べて物々交換する者や、屋内で何か手作業に没頭する者、
せっせと荷物を運んで周る者、畑仕事に精を出す者等、
端から目に付く限りでも様々な役割に分かれて生活を営んでいた。
規模は小さいながらもその様はまるで人間の町のようだ。
「どうだ、ネズミ共よ。すげえだろ?」
「すげーだろー?」
驚き慄いて立ち竦むあっしらに二匹は振り向いて自慢げにニンマリ笑う。
「匿い者達などにより住まう者達の増加に備え、先代様と現頭領様により
人間に近しい生活様式を取り入れるよう推し進められたのでございます。
元は狩りのみを生きる糧としていた我らでありますが、
ようやく段々とそれらしい形となってまいりました」
後ろで隊長が淡々と、しかし少し声色に誇らしさを混じらせて言った。
「まだまだ見よう見まねの未熟なままごと程度だがな。
だがよォ、このままずっと長え時間をかけて仲間も増やしながら洗練していきゃあ
人間共に取って代われる程のモンになるかもしれねえぞ俺達ぁ」
「はは、人間に取って代わるだなんて、世界征服でもするつもりか?」
冗談めかしてマフラー野郎が言うと、
「それもいいかもしれねえなぁ、行く行くはよォ」頭領はニヤリと微笑んだ。
- 11 : ◆nT58vM8A36 :2014/01/18(土) 10:39:26.38 ID:???0.net
- 「頭領様! 今日は若様とお出かけでございますか」
「よう、そうなんだよ。置いてくとコイツ愚図りやがるからなぁ」
住民達は頭領の姿に気付くと敬いながらも親しげに挨拶し、
頭領もまた気さくにそれに応じる。
集落を進んでいく中であっしはまた何となくニューラ達の耳を目で追っていた。
全てを確認できたわけはなかろうが、屋外で活発に働いているニューラ達は
やはり屋敷の時と同じようにメスばかりだ。オスは全員屋内に引っ込んでるんだろうか。
あっしの心にまた同じ疑問が沸くが、なんだかずけずけ聞き辛いことにも感じて、
どうする事もできなかった。
「ガキ共の面倒を見てる家はもうすぐさ。見えるだろ、あの場所だ」
「あそこだッ!」
喧騒からは少し離れた田畑を挟んだ先にそれらしい家屋は建っていた。
田園を進みながら、特に気にするものも無くあっしとニャルマーが歩む中で
マフラー野郎だけは少し難しい顔をして植えられた作物や木々の様子を見回していた。
「あ、頭領様に若君、それに皆さん方もお揃いでー!」
畑の方からあっしらを呼ぶ声が聞こえた。声の方を見れば、
年若いメスのニューラが満面の笑みでこちらに手を振っていた。
あっしらが気付くと、ニューラは嬉しそうにこちらへと駆け寄ってくる。
ぺこりと頭領に一礼してから、ニューラはマフラー野郎へと向き直った。
「頭領様のご友人だったなんて! やっぱりただのネズミ様ではなかったのですね」
それからやけに友好的にニューラはマフラー野郎へと寄って話しかける。
- 12 : ◆nT58vM8A36 :2014/01/18(土) 10:40:19.17 ID:???0.net
- 「え、えーと、君は?」
面識が無く困った様子でマフラー野郎は言った。
「やだなあ、私ですよ。私。ほら、若君をお迎えに上がった時に少しだけお話した……」
言われて、マフラー野郎は少し考えた後「ああ、あの時の」とポンと手を打った。
同じように、あっしもあの時に隊長に余計な口を聞くなと窘められていた、
近衛隊のニューラの一匹だったかと思い出す。
「そうです、そうです!」
嬉しそうにはしゃぐニューラの目の前に、陰にいた隊長が踏み出て立ち塞がった。
「ひえッ、隊長! おられたのですか?」
跳ね上がりそうなほどに驚き、ニューラは冷や汗を垂らしながら後ずさる。
「私が若君のお傍を易々と離れるはずが無いだろう。一体、何用か。
一介の近衛がよもや他愛の無い私事で頭領様を御止めするなど無礼千万であるぞ」
隊長の面は見えねえがすさまじい迫力を傍からも感じる。
「おう、このぐれえいいじゃねえか、オメエは相変わらずお堅いね。
俺は何も気にしねえからよ」
すっかり縮こまるニューラに、見かねた頭領が取り成す。
「誠に僭越ながら……これは近衛の規律に関わる事にございます。
特にこの者、未だ心構えが出来ておらぬ様子ゆえ」
「まあまあ、スカーもああ言ってるしさ。それに丁度、俺もこの子に聞きたいことがあるんだ」
マフラー野郎も言って、ようやく隊長は「むう」と渋々ながらも引き下がった。
「聞きたいんだけど、ここの畑の責任者は君?」
きょとんとするニューラにマフラー野郎はそう聞く。
- 13 : ◆nT58vM8A36 :2014/01/18(土) 10:43:12.50 ID:???0.net
- 「は、はい。そうですけど」
「そうか……ごめん、スカー。少し寄り道していい?」
ニューラが答えるとマフラー野郎は少し考えた後、頭領に尋ねた。
「ん? まあいいけどよ」
「悪いね。君、ちょっと来てくれるかな」
頭領の許可を得て、マフラー野郎はニューラを連れ立って畑の中に踏み入っていく。
そして、植えられた木の葉っぱに触れて、「やっぱり」と呟いた。
「こんなこといっちゃ失礼かもしれないが、この木から採れる実の質は
あまり良くはないんじゃあないかな?」
「はい、恥ずかしながら……とても満足といえるものでは。何分、狩猟者たる我ら
ニューラには栽培など経験も知識も本能にも無いことでございまして……」
「そうだよね」納得しながらマフラー野郎は今度は根元の土をほじくり始める。
「なんだあいつ。土いじりなんて妙な趣味あったっけな?」
やりとりを見ながら頭領は不思議そうに片眉を上げる。
その後も二匹は、肥料はどうしてる? そうですね、肥料は――を、――で……
ここの気候だと、もっと――なほにょにょにょ……を混ぜて、――もっとじめじめ……
なるほど! それならうまく行く気がします! やっぱりあなたって只者じゃない!
折角なので更にお聞きしたいのですが……等と、どんどん盛り上がりながら
畑の奥へ奥へと話の内容も深く深くなって進んでいく。
「何だかよくわからねえが、こりゃ大助かりだ。益々あいつにここに居てもらいたくなった」
頭領は一匹呟いて、ニッと口端を上げた。
- 14 : ◆v98fbZZkx. :2014/01/20(月) 03:57:59.46 ID:???0.net
- 明日明後日にでも続き書く
- 15 :名無しさん、君に決めた!:2014/01/22(水) 05:03:34.37 ID:???0.net
- 保守
- 16 : ◆v98fbZZkx. :2014/01/24(金) 01:07:50.73 ID:???0.net
- 投下は明日の今くらいか明け方に
- 17 :名無しさん、君に決めた!:2014/01/26(日) 07:43:34.88 ID:???0.net
- ほ
- 18 : ◆v98fbZZkx. :2014/01/26(日) 08:54:10.53 ID:???0.net
- 「や、すまないね。ついつい熱が入っちゃって」
しばらくしてマフラー野郎は畑の奥から小走りで帰ってくる。
その表情は何だかいつになく活き活きして見える気がした。
「ありがとうございました。良い勉強になりました」
ぺこりと年若いニューラは頭を下げる。
「また聞きたい事があったら後で来てよ。君は呑み込みが良さそうだから」
「はい!」
マフラー野郎の言葉にニューラは嬉しそうに微笑んだ。
あっしとニャルマーは待ちくたびれた風にやり取りを眺め、隊長は苛々と、
頭領の方は相変わらず何か企んでいる様子でニヤつきながら、
その背の子ニューラは少しだけむくれている様に見えた。
「それでは頭領様、若君、ネズミ様、それからみなさんお気をつけて!」
手を振るニューラに見送られながら、あっしらは畑を後にして家屋へと向かう。
「昔のオメーからは考えられねえな。一体どこで覚えて来やがったんだ?」
道すがら愉快そうに頭領はマフラー野郎に話し掛けた。
「ああ、あの村で畑仕事をさせてもらっていた時期があってな」
「おいおい、そういうこっちゃねえよ」
「……? 一体、何が言いたい」
マフラー野郎は真顔で首を傾げる。
「かぁー、からかいがねえ。上っ面は変わって見えても根っこは相変わらず
カタブツみてえだなテメーは。まあいい。……ここで採れるモンは飲み込むのも
一苦労な代物が多かったからなあ。助言は大いに助かる」
- 19 : ◆v98fbZZkx. :2014/01/26(日) 08:55:31.36 ID:???0.net
- 屋根から何本も氷柱をぶら下げた古めかしい家屋の前まで来ると、
頭領は玄関の戸をごんごんとノックした。
子ニューラは急に慌てて頭領の背中から滑り降り、頭領の横に並び立って踏ん反り返る。
「様子見に来たぜ。元気かガキ共ー」
戸を開け、頭領は屋内へと呼びかける。
すると中から、あ、とーりょーさま! わか……じゃなかった、おやぶんもいるぞ!
なになに、お客さん? 等々と様々に入り混じった声が次々と元気よく返ってきた。
「へへ、変わらず元気そうだな」
鉄砲水みたいなその勢いに、頭領も思わず苦笑して赤い両耳を押さえる。
屋内を覗くと元は寺子屋か何かだったのだろうかそれなりに広々とした畳敷きの部屋には、
世話役らしいニューラが一匹と、大小様々なポケモンのガキ共が住み着いてるようだった。
ガキ共の種族は茶色い小熊みたいのや、桃色だが厳つい顔をした犬みたいなの、
それからこの辺じゃ見た事もねえオドシシとは違う鮮やかな橙色の鹿みたいなの等々、
他にもまだまだいるがとにかく多種多様だ。
その中には青色の子猫――コリンクの姿もあった。
「ニャルマー!」
あっしらに気付き、一目散にコリンクがニャルマーの元へと駆け寄ってくる。
- 20 : ◆v98fbZZkx. :2014/01/26(日) 08:56:43.04 ID:???0.net
- 「ああ、良かった、良かった……」
抱きつく代わりに頬を摺り寄せ、コリンクは目を潤ませて涙声で呻く。
「うん、コリンク……どこにも怪我はない?」
ニャルマーはそんなコリンクを受け入れながら、ぽんぽんと尻尾で宥めていた。
だが、何でだろうか。あっしにゃあ何となくニャルマーの表情は
あまり嬉しそうにゃ見えなかった。
――「もしも、森の中でまだまだ青い実をつけた若い木を見つけてだ。
ずっと早く熟れないかと今か今かと見守っていたとしやしょう。
だが、ある時、熟れきった実をたわわに実らせた太く立派な木を
他の場所で運良く見つけたとしたら……オメエさんはどうするよエンペルト」
「突然なんだい、ドン。そりゃ当然その場でその立派な木から実を幾つか拝借するけれど。
でもその後、今まで見守っていた方の若い木が気になってまた見に帰るかな。
ずっと世話をしていたなら愛着もわいているだろうし」
「まあ、それもありだな。だが、あのアバズレは今まで見てきた若い木の事なんて
すっぱり頭から取り除いちまって、立派な木の方に実を喰い尽くすまで住み着く事が
出来る奴なのさ。例えそれが木と違い、動いて口を聞く相手であろうがな」――
- 21 :名無しさん、君に決めた!:2014/01/26(日) 10:42:17.96 ID:???0.net
- 乙です
絵を投下したいんだがいいかな
- 22 :名無しさん、君に決めた!:2014/01/26(日) 13:56:34.17 ID:???0.net
- >>21
勿論
- 23 :21:2014/01/26(日) 15:58:37.08 ID:???0.net
- 初めての書き込みからすぐにはURL貼れないのね……
明日の夜には投下できるのかな?
- 24 :名無しさん、君に決めた!:2014/01/26(日) 17:34:52.12 ID:???0.net
- URL先頭のhttpのhを削ればいけるかも?
それでもダメそうなら>>1にある避難所の方にURL貼ってもらえれば代行するよ
- 25 :名無しさん、君に決めた!:2014/01/26(日) 20:40:41.18 ID:???0.net
- h抜きでもダメだったんで、避難所に投下させていただきました
貼り代行してもらえると助かります
ちなみに絵は過去ログ読みながら描いたもんだから、だいぶ前の場面なんだ スマン
- 26 :代行レス:2014/01/26(日) 21:49:35.39 ID:???0.net
- はいよ、これか
35 名前:名無しさん 投稿日: 2014/01/26(日) 20:22:34
http://i.imgur.com/Zqx9FA9.gif
本スレに貼れなかったので、助言によりこちらに投下
貼り代行していただけるとうれしいです
>>25
癒された、GJ!
- 27 :名無しさん、君に決めた!:2014/01/28(火) 01:26:14.57 ID:???0.net
- >>26
代行ありがとう!
懲りずにまた描いたんだけど、いまだこっちには貼れなかったので再び避難所の方に投下させていただいた
こんな絵で良ければ、また投下したいです
- 28 : ◆Pc42BttzIw :2014/01/28(火) 03:22:16.19 ID:???0.net
- 明日明後日にでも続き書く
>>27
GJ!いつでも歓迎
代行URL:http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/11567/1214901043/37
37 名前:名無しさん 投稿日: 2014/01/28(火) 01:01:51
http://i.imgur.com/v1Xwli0.gif
再び絵を投下
背景なんて(描け)なかった
- 29 :名無しさん、君に決めた!:2014/01/29(水) 23:03:11.20 ID:???0.net
- 保守
- 30 : ◆Pc42BttzIw :2014/01/31(金) 03:42:15.63 ID:???0.net
- 投下は明日の今くらいに
- 31 : ◆Pc42BttzIw :2014/02/01(土) 12:07:44.43 ID:???0.net
- 「目的のもんは見つかったみてぇだな。ちょうどいいやガキ共、
オメエらも宴に来いよ」
頭領はにんまりと笑っていった。
え、いいの? やった、ごちそうだ。ガキ共はわっと沸き立つ。
「たまにゃあいいもんたっぷり食わなきゃでっかくなれねえからな。
おい、隊長。こいつらの席も追加だ」
「はっ」
命を受けて隊長は口元に手をやり口笛を鳴らす。
すると、畑の方からばたばたと慌てふためくような音が微かに聞こえ、
それからすぐに少し息を切らした様子で黒衣のニューラが一匹姿を現して隊長に跪く。
「は、はいっ」
「遅い。大方、惰眠にでも耽っていたな? 小言は後だ、いいか――」
隊長が耳打ちすると黒衣は頷き、ついでにあっしらに愛想よく
手をひらひら振ってからドロンと姿を消した。
この緩み切った気配、考えるまでも無くさっきの若い奴だ。
隊長は片手で頭を抱えて溜息を吐いた。
- 32 : ◆Pc42BttzIw :2014/02/01(土) 12:08:16.49 ID:???0.net
- 「みんなー、あまり粗相の無いようにねー」
世話役のニューラにおっとりとした口調で見送られ、
ガキ共は「はーい」とやかましく返事をする。
屋敷に帰る途中、マフラー野郎は瞬く間にガキ共と打ち解けて、
旅で見た色んな話を聞かせていた。背のチビ助は屋敷で頭領に会ってからというもの、
相変わらずマフラーの中にすっぽり隠れ込んで気配を消しサナギのようにじっとしている。
コリンクは盛んにニャルマーへと話しかけるが、あっしの目にはやっぱり
ニャルマーの様子が変に見えた。どうもこいつも頭領に会ってから何か考え込んでいる風で、
コリンクへの返答も全てどこか上の空だった。
屋敷へと戻るとあっしらは女中と門番のニューラ達にまたしても大げさに出迎えられ、
大広間へと案内された。広間にはずらりと膳が並べられ、ポケモンが作ったなんて
到底信じられねえ料理の数々が豪勢に乗せられている。あっしとマフラー野郎達は思わず
ガキ共と一緒になって感嘆の息や声を漏らした。
頭領は子ニューラの奴と共に最奥の上座へとどかりと座り込み、
懐から取り出した男物にしちゃあ優雅な柄の扇子を上機嫌に広げる。
「改めて、ようこそ我らが里、我が屋敷へ。歓迎しよう、お客方。ヒャッハッハッハッ」
- 33 :名無しさん、君に決めた!:2014/02/02(日) 21:08:51.56 ID:???0.net
- 保守
- 34 : ◆nT58vM8A36 :2014/02/03(月) 01:54:34.73 ID:???0.net
- 明日明後日にでも続き書く
- 35 :名無しさん、君に決めた!:2014/02/05(水) 04:46:28.22 ID:???0.net
- 保守
- 36 : ◆nT58vM8A36 :2014/02/06(木) 02:30:29.99 ID:???0.net
- 投下は明日の今くらいに
- 37 :名無しさん、君に決めた!:2014/02/08(土) 00:24:22.64 ID:???0.net
- 保守
- 38 : ◆nT58vM8A36 :2014/02/08(土) 11:55:30.07 ID:???0.net
- 宴の間あっしらの隣には装飾品で華やかにめかし込んだニューラ達がぴったりと付き添い、
酌に新しい料理の手配にと持て成した。ちやほやとべたべたと囲まれるような状況に
まるで慣れていなかったあっしはすっかりかちこちに縮こまっちまっていた。
緊張して舌が乾いて自分が今何を食ってるのかもわかんねえ体たらくで、
ただ勧められるままにどんどんと酒をさっさと酔いに逃げ込まんとして呷り、呷る。
――今考えりゃ勿体ねえことしてやがったなあ……。
ほろ酔いの頭で場内を見回す。ガキ共は遠慮無しにご馳走を頬張り、
ニャルマーはコリンクの目の前で酒に耽るわけにもいかないのか
じれったそうに飯を口に運んでいた。マフラー野郎は存分に持て成しを楽しんでる様子で、
ニューラの酌を受けながら談笑している。よく見りゃあいつに付き添っているニューラは
例の若いニューラだ。よっぽどマフラー野郎が気に入ったらしい。
ガキ共の席の追加を伝えにいった時についでに自分にもやらせて欲しいと頼んだんだろうか。
チビ助は騒がしいのが嫌いなのか引っ込んだままだ。マフラー野郎はそんなチビ助を気遣ってか、
あいつにも後で食えそうな物をそっと脇に取り分けている。
上座で頭領は満足げにあっしらの様子を見ながら手酌し、
子ニューラはどこか不貞腐れたようにしていた。
隊長は二匹の背後にて変わらず無愛想な黒衣の格好のまま影のように控えている。
ぼんやり見回すあっしに「お注ぎいたしましょうか?」と
にこやかにあっしに付き添うニューラが声をかけてくる。
「あ、いや、すまねえ」依然どぎまぎとしながら酌を受けつつ、夜は深まっていく――。
- 39 : ◆nT58vM8A36 :2014/02/08(土) 11:56:17.23 ID:???0.net
- 遅れてすまん
一旦ここまで、また明日にでも投下する
- 40 :名無しさん、君に決めた!:2014/02/10(月) 13:56:26.18 ID:???0.net
- 保守
- 41 : ◆nT58vM8A36 :2014/02/10(月) 18:47:06.84 ID:???0.net
- 夜も更けて満腹も相まりガキ共がそろそろ目蓋を重そうにし始め、
頃合と見てか頭領は指をパチンと鳴らして指示する。
ニューラ達はあっしらにぺこりと会釈するとコリンクと子ニューラ以外の
眠そうなガキ共を連れてぞろぞろとはけていった。
あっしは残念半分、少しばかりほっとする。
頭領はうつらうつらする子ニューラを片腕で抱き上げ、もう片手に酒瓶を持って
あっしらの前に胡坐で座り、膝の上に子ニューラを寝かせた。
「よお、ちったぁ楽しんでもらえたい?」
「おかげさまで。悪いな、こんな豪勢に」
マフラー野郎は苦笑気味に答える。
「そりゃ良かった。久々にまともにもの食ったっつー面してたぜ、おめえら。
――んじゃ、ま。そろそろ積もり積もった互いに聞きてえこと話すとするかい」
「そうだな」
とは言ったものの、互いに積もり溜めたものが多すぎて何から聞いたものやらと
思い悩んだのだろうか、二匹は暫し黙ってどちらかが口火を切るのを待っているようだった。
そこに、静かになるのをずっと待ち兼ねていたのだろう。チビ助がもぞもぞと顔を覗かせた。
「ヒャハ! そうだよ、そうだ。まずはそいつについて聞かなきゃな」
頭領は子ニューラそっくりに目を輝かせ、チビ助の顔を覗き込んだ。
チビ助は「しまった!」と言いたげにびくりと身震いして慌ててまた引っ込もうとする。
「ああ、ちゃんと紹介しなきゃな。ほら、チビ助、挨拶」
が、マフラー野郎に引っ張り出され、抱きかかえられて頭領の眼前へと晒される。
- 42 : ◆nT58vM8A36 :2014/02/10(月) 18:47:57.75 ID:???0.net
- 「にひひ、何だよこいつ。目元とか昔のお前そっくりじゃねえ?」
頭領は愉快そうにぶにぶにとチビ助のほっぺたをつつく。
チビ助は不機嫌そうに睨み返しながらも為す術も無くされるがままだ。
「おい、俺はここまで目付きは悪くなかったろう。仮に似て見えても、ただの空似だ」
「いーや、こんなもんだったね。つーか空似って何だよ。親子なら似てて当然だろが。
うちのヤツなんて俺そっくりだぜ。口元辺りはあいつ寄りかな?
まっ、最終的にどっちに似ようと将来は有望だあな、ヒャッハッハッハッ」
頭領は子ニューラをわしゃわしゃと雑ながら愛しげに撫で回し、とどめに頬に口付けした。
酒臭いのか子ニューラはうなされながら頭領の顔を手で押し退ける。
「オメーのお相手はあの子なんだろう? オメーが生きてここにいるなら、
あの子も無事だったんだよな、当然よぉ。今どーしてんだよ?
俺も久しぶりにあの愛嬌ある顔を拝みたいねえ」
酔いの勢いもあってか頭領はぐいぐいと捲くし立てる。
頭領の言ってるあの子ってのはきっとマフラー野郎の話に出てきた”シスター”だろう。
だが、マフラー野郎の話によりゃシスターはもう……。
事前に話を聞いているあっしとニャルマーはとんでもねえ地雷原に
踏み込んでいることがわかり、気まずく目配せする。
「いや、この子は本当に俺の子じゃあない、あるはずがない。それに、あの子は……」
マフラー野郎は伏し目がちに、苦く重々しく口を開く。
「あ? どういうこった?」
終始上機嫌だった頭領の額にびしりと青筋が浮かんだ。
- 43 :名無しさん、君に決めた!:2014/02/11(火) 23:42:23.79 ID:???0.net
- 保守&絵を投下 2枚目はネタ濃い目なので注意
http://i.imgur.com/ebOQiu4.gif
http://i.imgur.com/uXfrHZO.gif
シリアスな展開になりそうなのに雰囲気壊したらスマン
- 44 : ◆v98fbZZkx. :2014/02/12(水) 03:22:42.51 ID:???0.net
- >>43
GJ!二枚目ジョジョの露伴風かwww
明日明後日にでも続き書くよ
- 45 :名無しさん、君に決めた!:2014/02/14(金) 03:44:54.19 ID:???0.net
- 保守
- 46 : ◆v98fbZZkx. :2014/02/16(日) 02:07:21.75 ID:???0.net
- 投下は明日の今くらいに
- 47 : ◆v98fbZZkx. :2014/02/18(火) 01:02:00.70 ID:???0.net
- すまん、もう少し遅れる
今日の夕方くらいには間に合わせたい
- 48 : ◆v98fbZZkx. :2014/02/19(水) 01:56:43.64 ID:???0.net
- 事の顛末を聞き終えて、頭領は岩のように固く握り締めていた拳を振り上げ、
床へと叩き付けた。膝上の子ニューラがびくりと飛び起きそうになり、
頭領はハッとして慌てて宥め寝かしつける。再び寝付いたのを確認すると、
一拍置いて溜まり過ぎた熱を排気するみたいに頭領は大きく息を吐いた。
「はっ、互いに男やもめかよ。情けねえな」
皮肉っぽく乾いた笑みを頭領は浮かべて、酒瓶を逆さまに勢いよく飲み干す。
マフラー野郎は無言で力無く首を振るった。
「でよ。そのガキどうするかっつぅ当てはあんのか」
「一応はピジョットの方に本当の両親の捜索を頼んではいるんだが……」
マフラー野郎の言葉の途中で、頭領は「ん?」と片眉を吊り上げた。
「そのピジョットってえのは、まさか”あの”……いや、んなわきゃねえよな」
「そうか、まだあいつの事までは話していなかったな。
まさかも何も”あの”ピジョットだ」
「はあ? 本当かよ!」
頭領は目を丸くして身を乗り出す。
- 49 : ◆v98fbZZkx. :2014/02/19(水) 01:58:04.89 ID:???0.net
- 「お前を逃がした後、例の奴らに捕らえられはしたがうまく逃げ出したそうでな。
何の因果か逃げ出た先は俺達と同じこの国で、紆余曲折あって今はお隣カントーで
鳥ポケモン達の大きな群れを率いているようだ」
頭領は一瞬だけくしゃりと表情を歪めた後、いつもの調子で大笑いする。
「こりゃケッサクだな。あのクソ野郎、あのままくたばったとばかり
思っていたがそんな事になってやがったとはよぉ! 憎まれっ子何とやらだ、くくっ」
「あいつもお前が生きてると知ったら同じ事を言うだろうな」
吉報で再び二匹の間に和やかな空気が戻ってあっしはホッとする。
仮に殴りあいやら何やらでも始まろうものなら、この場の誰も止められやしねえだろう。
「ところでスカー。お前こそどうやってわざわざこんな辺境の地にたどり着いた?」
「オメーと大体似たようなもんさ。俺達を追って来たあの妙な連中の正体と目的を
色々と探る内にこのちんけな島国へと行き着いた。だが、途中で精根尽き果てちまってよ。
行き倒れてる所をここの先代、こいつの母親に拾われたのさ」
子ニューラの耳をふにふにと弄くりながら頭領は語る。
- 50 :名無しさん、君に決めた!:2014/02/19(水) 17:14:08.48 ID:???0.net
- 奴隷人生
- 51 : ◆rgWFRtnaRA :2014/02/21(金) 02:45:38.28 ID:???0.net
- 明日明後日にでも続き書きたいです
- 52 :名無しさん、君に決めた!:2014/02/22(土) 21:16:59.73 ID:???0.net
- テスト
- 53 : ◆rgWFRtnaRA :2014/02/25(火) 02:41:49.36 ID:???0.net
- 明日の今くらいには投下します
- 54 :名無しさん、君に決めた!:2014/02/25(火) 21:41:31.15 ID:???0.net
- 無理しなくていいよ
- 55 : ◆rgWFRtnaRA :2014/02/27(木) 06:53:27.98 ID:???0.net
- 「ちと気は強えがいい女だった。俺ともあろうものが心底ベタ惚れしちまう程によ。
気の強さと同じぐれぇに体も丈夫だったなら、俺とこいつを置いて逝っちまうなんて事も
無かったかもしれねえのになぁ……」
表情を曇らせ嘆息を漏らしかけたのを頭領は不意にぐっと抑え、
掻き消すように首を横にぶるぶると振るった。
「かぁー、いけねえいけねえ。俺らしくもねえ。いつまでも過去の感傷に浸って
人前で情けねえツラ晒すなんざ、あいつが生きてたら後でケツ蹴り上げられて
活を入れられちまうところだ。ヒコザルみてえに真っ赤っかに腫れ上がる程によ」
言って、頭領は陽気に笑い飛ばす。
「随分と豪胆なひとだったみたいだな」
はは、とマフラー野郎は苦笑を返した。
「……ところで、おめえこれからどうするかってのは決めてんのか?」
頭領は表情を少しばかり引き締め、マフラー野郎に尋ねる。
「とりあえずは彼ら――このヤミカラスとニャルマー、
コリンク達を安全な所まで送り届けるのが当面の目標になるかな」
ね? と同意を求めるようにマフラー野郎に振り返られ、とりあえずあっしは頷いた。
ふうむ、頭領は唸るように呟く。
「その具体的な場所と、送り届ける方法は?」
話に深く切り込まれ、マフラー野郎は顎に手をあてて考え込む。
「そうだな。今はまだこのジョウトから出来るだけ遠く、と言う位にしか。
ニャルマーとコリンクに関しては故郷だというシンオウ地方まで送り帰したい所だが、
随分と距離がある上に海を渡る必要もあるようでね。中々に方法は考えあぐねている。
それに少々面倒な連中にも付け狙われていてな……」
- 56 : ◆rgWFRtnaRA :2014/02/27(木) 06:54:08.97 ID:???0.net
- ちら、と機嫌をうかがうようにマフラー野郎は頭領の顔を見やる。
「出来れば、スカー。お前とその部下達の協力が得られれば助かるんだが――」
その言葉を聞いた途端、待ってましたと言わんばかりに頭領は口元を弧に歪めた。
「そういうことならよ。俺からも一つ話がある」
「……話?」
何か嫌な予感がすると察したようにマフラー野郎は少し及び腰で聞き返す。
「オメーの腕っ節は俺もよぉく知っている。だからそれを見込んで俺にも
是非とも協力して欲しい事があるんだよ。オメーらを付け狙ってる面倒な連中ってのは、
もしかしなくても黒い服を着た人間共の事だろう」
「ああ。その通りだ」
やっぱりな、と頭領はくつくつと得意げに笑む。
「もう知っているかもしれねえが奴らの名はロケット団。
お天道様のあたらねえこの世の陰で盗み殺し詐欺に密猟、
そりゃもう好き勝手にやりながらぐんぐん成長して幅を利かせている糞野郎共だ」
頭領はコリンクの方を見やる。
「俺達が里で匿っているのはみんなそのガキンチョみてえにロケット団に浚われて来たり、
親や仲間を殺されたりして身寄りを無くしたポケモン達なのさ。その顔ぶれを見りゃあ、
あの黒服の糞野郎共の薄汚い手がどれだけ広く遠くまで伸びてんのかわかるだろ。
どれだけ遠くまで逃げようと安全とは言い切れねえ――その大元をぶっ潰さねえ限りはな」
- 57 : ◆nHbSPFGRkE :2014/02/28(金) 15:09:53.29 ID:???0.net
- 乙です
明日か明後日にでも続きを書きたいです
- 58 :名無しさん、君に決めた!:2014/03/02(日) 22:03:56.34 ID:???0.net
- 保守
- 59 : ◆nHbSPFGRkE :2014/03/04(火) 02:41:54.42 ID:???0.net
- 明日の今ぐらい〜明け方に投下します
- 60 : ◆nHbSPFGRkE :2014/03/05(水) 06:43:25.39 ID:???0.net
- 「つまり、彼らの為にも、俺にロケット団を襲撃する手伝いをしろ……という訳か?」
マフラー野郎はやれやれ、といった風に肩を竦めた。
「ヘッ、流石に察しがいいな。ま、そーゆーこった」
頭領はニヤリと笑いながら新たに酒瓶の栓を抜き、グイッとあおった。
「心配すんな。その間、テメーらはここで面倒見てやる。今更何匹か増えたとこでどーってこたぁねーしよ。
オメーならもう気付いてるたぁ思うが、この里は天然の要塞みてえなもんだ。洞窟の隠し扉以外、外から侵入する術はねえ。
普段は見えねえよう隠してあるが、たとえ敵が空から飛んで来やがっても、きっちり撃退できる手筈も整えてあるしな。
言っちゃあなんだが、世界中どこを探そうと、ここより安全な場所はまず見付からねえと思うぜ」
頭領にそう言われ、それもそうかとマフラー野郎は頷く。
「そんな大事に関わるとなると、かなりの長逗留になってしまうと思うけど……君達はどうかな」
暫し思案した後、マフラー野郎はあっしらに意見を求めた。
「アタシは構わないよ」
最初にそう同意したのは、意外にも一番渋るかと思っていたニャルマーだった。
「そういう事情じゃ仕方ないしね。もう危ない目に遭うのはゴメンだもの」
妙に甘ったるい声色を使いながら、ニャルマーは二匹に、というか、主に頭領に媚びるような視線を向ける。
それも恐らく、横にコリンクがいるせいだろう――あっしもそん時はまだ、そんな風に思っただけだった。
「ヤミカラス、君は……」
「どうもこうもねえだろ。オメーらと違って、俺様にゃ行く当てなんかねえんだからな」
何となくモヤモヤしたモンを抱えながら、あっしはそう吐き捨てる。
「そ〜か。そーいやそのカラス、先程の話からすりゃあ、元はロケット団に居たってこったよなあ〜?」
急に矛先をこちらに向けられ、あっしはギクリと固まった。
「え……いや、あの、その……そ、そうです、ハイィッ!」
一瞬の後、あっしの目前にぎらりと眼を光らせた頭領の顔が迫っていた。
- 61 : ◆nHbSPFGRkE :2014/03/05(水) 06:51:05.74 ID:???0.net
- 「ヒィィッ……! お、俺様……い、いや、手前はただの下っ端でして……あの、ど、どうか……」
「だったらよ、テメーの知ってる事、洗い浚いブチまけやがれ。さもねえと……」
ドスの効き過ぎた声で凄まれながら鋭い三本爪を突き付けられ、あっしの体中の羽根が一斉に逆立つ。
「おいおい、彼は俺とチビ助の恩人でもあるんだ。脅すような真似は止してくれ」
その様を見て、マフラー野郎は呆れたように助け船を出した。
「ヒャーハハハハハ!! 冗談だよジョーダン! こんぐれーでビビってんじゃねーよ!」
頭領は急に笑い出し、さも可笑しそうにあっしの肩をバンバン叩いた。
こっちゃあもうチビる寸前だったってのに、全くいい気なもんだ。
「だがよ、下っ端だろーがパシリだろーが、ちっとでも内部事情を知ってる奴がいるってのは好都合だ。
どんな些細な噂だろーと構わねえから教えやがれ。宿賃代わりに、そんぐらいは役立ってもらわねえとな」
「は、はあ……」
まだバクバクする心臓を押さえながら、あっしはただ承知するしかなかった。
「あの……」
その時、今まで黙ってじっと話を聞いていたコリンクが、初めて口を開いた。
「ああ、ごめん。肝心の君の意見を聞いてなかったね。何か不都合な事でもあるのかい?」
「いえ、ニャルマーがここに居たいのなら、僕もそれで構わない。でも……」
やや躊躇いながらも、コリンクは真っ直ぐに顔を上げた。
「でも、あなた達に助けてもらった上に、このまま、ただお世話になる訳になんていきません。
頭領さん、ピカチュウさん、お願いです! 僕にも、何かお手伝いさせて下さい!」
そう言って深く頭を下げるコリンクに、マフラー野郎と頭領は思わず顔を見合わせる。
「いーんだよ。ガキがそんな気ぃ使わねーでも。他の連中と一緒に好きに遊んでていーんだぜ」
頭領は苦笑いしながらひらひらと手を振り、マフラー野郎もうんうんと頷く。
「そういう訳にはいきません。『受けた恩は必ず返せ』と父さんにもよく言われてました。だから……」
なかなか引かないコリンクに、頭領は頭を掻きながら溜息を吐いた。
「ハッ、頑固な坊主だな。テメーの気持ちは有難えが、物事にゃ分相応ってモンがあんだよ。
ちーとキツイ言い方になるが、ぶっちゃけ、テメー自身すら守れねえ青二才にゃ用はねえんだ」
- 62 : ◆nHbSPFGRkE :2014/03/05(水) 06:57:57.76 ID:???0.net
- はっきりと撥ね付けられ、しゅんとなるコリンクに、マフラー野郎が宥めるように声を掛ける。
「まあまあ。まずは、君に出来る事をしようじゃないか。聞いた話だと、君は修行の為に故郷を出たんだよね?」
「あ、はい。それが僕ら一族の掟だから……一人前にならない限り、帰る事はできないんだ」
「だったらスカー、彼をここで修行させられないかな?」
「ん? ここでかぁ?」
少々決まりの悪そうな頭領に、マフラー野郎はそう提案する。
「ああ、そうだ。お前の部下の鍛え方から見て、当然、彼らを訓練するような場所もあるんだろ?」
「勿論よ。元々この里に伝わる特殊な体術に格闘実戦法を取り入れた、名付けて、スカーズブートキャンプ、ってヤツさ。
言っとくが、特訓は楽じゃねーぞ。いっそ、くたばった方がマシ、っつーレベルだ……ま、そんでもいいなら挑戦してみな」
「はい、お願いします!」
コリンクは途端に笑顔になり、改めて頭を下げた。
「僕、強くなります。皆を守れるぐらい強くなって、きっとあなた達に恩返しします!」
そう言って眼を輝かすコリンクの姿が、ふと、エンジュシティで出会った奇妙なガキと重なったような気がした。
頭領はそんな様子にやや微笑しながら、ずいっとマフラー野郎に向き直る。
「さて、と……つーこたぁネズミ、テメーはこの話、承諾したと捉えていいんだな?」
「ああ、俺としても乗り掛かった船だ。こうなったら、沈むまで付き合ってやろうじゃないか」
縁起でもねえ、と頭領は笑いながらマフラー野郎の杯に酌をした。
「でもスカー、どうしてそこまでロケット団に拘るんだ?」
「あん? そりゃあ、奴らの横暴非道が許せねえからに決まってんだろ」
マフラー野郎は飲み掛けの杯を置き、真顔なって声を潜める。
「確かに、奴らはポケモンにとって害悪でしかない。でも、お前が単なる義侠心だけで、わざわざこんな危険を冒してるとは思えなくてね。
ピジョットの話からしても、ロケット団が俺達、実行部隊の生き残りを追ってきた連中――つまり軍部と繋がっているのは明らかだ。
ひょっとして、お前はそこらへんの事情について、何か嗅ぎ付けているんじゃないのか?」
- 63 : ◆nT58vM8A36 :2014/03/05(水) 12:43:47.46 ID:???0.net
- 乙
明日明後日にでも続き書く
- 64 :名無しさん、君に決めた!:2014/03/06(木) 02:03:05.15 ID:???0.net
- 乙 そして落書きを投下する
マフラー野郎オモテの表情
http://i.imgur.com/ET6Ykag.gif
と、>>61のシーンのつもり
http://i.imgur.com/Lv7V36c.gif
スカーのバッテン傷って顔の正面で合ってたかな
- 65 : ◆nHbSPFGRkE :2014/03/06(木) 04:32:02.53 ID:???0.net
- >>64
乙です。うまいなー。自分のスカーのイメージもそんな感じw
「大きくバッテン状」とか「でかでかと顔面に」とか描写されてるから、やはり正面だと思う
あ、>>62の下から四行目、訂正したつもりが文字が抜けてました
マフラー野郎は飲み掛けの杯を置き、真顔なって声を潜める。
↓
マフラー野郎は飲み掛けの杯を置き、不意に真顔になって声を潜める。
です。もしまとめる際には修正お願いします
- 66 : ◆nT58vM8A36 :2014/03/08(土) 04:27:39.39 ID:???0.net
- 投下は明日の今くらいに
>>64
GJ!
傷の位置はぴったり自分のイメージしてた通りだ
- 67 :名無しさん、君に決めた!:2014/03/09(日) 01:57:21.18 ID:???0.net
- >>65 >>66
もしかして頬なんじゃないかと、いったん思うとそんな気もしてきて
書き手さんのイメージと合ってた様で良かった
- 68 : ◆nT58vM8A36 :2014/03/10(月) 06:14:40.00 ID:???0.net
- すまん、立て込んでてもう少し遅れる
今日の夜には間に合わせる
- 69 : ◆nT58vM8A36 :2014/03/11(火) 06:30:00.49 ID:???0.net
- マフラー野郎の眼差しに頭領はため息一つ面倒そうに酒瓶を置いた。
「……逃げるついでに俺も探っていたが件の連中の目的と正体なんざ
調べりゃ調べるほどはっきり言ってさっぱりなのさ。
軍用だったポケモンを血眼になって掻き集めて何かする気かと思いきや、
何を切っ掛けにか急にもう用無しとでも言うように売り捌くなりして手放しだした」
頭領はお手上げだという風にひらひらと両手を振るう。
「取引のルートから奴らに繋がる何かしらの糸口を探ろうとはしたが、
行き当たるのはしがないチンピラ共やしょうもないテロリスト紛いの連中ばかり。
ロケット団もそんな顧客の一つだ」
話を聞きながらマフラー野郎は難しい顔をして小さく唸る。
「ロケット団との取引以後、奴らの活動はぱったりと止んじまった。
鳴りを潜めているだけなのか、もうとっくに解体したのかすら知る由はねえ。
ロケット団は奴らが残した最後の足跡って所だ」
だがよ、と不意に頭領は言葉を置いた。
「オメーの前でこう言っちゃあ何だが、俺はもうそんな事にさして拘っちゃあいねえのよ」
そして、自分の膝元から聞こえる小さな寝息へと目を落とす。
「初めは俺らの人生を滅茶苦茶に弄んでくれた野郎の正体を暴いて一矢でも報いてやろうと、
胸に滾りぎらつくものを頼りに捨て鉢になってたが……。
今はそんな風にはなれねえ事情ってヤツができちまった」
- 70 : ◆nT58vM8A36 :2014/03/11(火) 06:30:52.41 ID:???0.net
- 子ニューラを優しく一撫でし、頭領はマフラー野郎に視線を戻した。
「クク、それにしても、俺が義侠心で動かねえなんざ随分な物言いじゃねえかネズミさんよ。
先代の頭には惚れた腫れた以上に拾われた恩義ってぇヤツがある。
その先代から直々に託されたこの里を守り、もっと栄えさせるにはあんな黒ずくめの悪党共を
のさばらしておく訳にはいかねえ」
昂ぶった様子で頭領はぐっと拳を握る。
「それにうちのガキにとっちゃ、今でさえこの里は狭すぎるみてえでよ。
もっとコイツが、いや、うちのガキだけじゃなく他の匿ってるガキ共もだ。
今やりでっかく育った時には自由に安心して里の外と行き来させられるような、
安全な地へと変える。それが第一の目標であり、今の俺を突き動かしてるもんだ」
握り拳をどんと胸に打ちつけ、頭領は言ってのけた。
「……オメーが信じるかどうかは勝手だがな」
頭領は少し気恥ずかしそうにばりばりと後ろ頭を掻く。
「変わったな、お前は」
呆気に取られた感心ともつかない何ともいえない表情を浮かべてマフラー野郎は言う。
「フン、協力する気が失せたかよ?」
「いや、悪くない。良い理想だ」
マフラー野郎は杯に酒を注ぎ、そっと頭領の方に差し出す。
杯を一気に飲み干して「ケッ」と拗ねたように頭領は顔を背けた。
- 71 : ◆nT58vM8A36 :2014/03/11(火) 06:32:18.31 ID:???0.net
- 「ところで、その第一の目標を果たした後は?」
マフラー野郎が言うと、頭領はくるりと上機嫌で振り返った。
「おいおい、聞いちゃいますか、それをよぉ。
俺はこの里を、その領地をこんなチンケなままで収めておくつもりはねえぞ。
これからもどんどんと外の血も受け入れて領地も勢力も大きく広げていくつもりさぁ。
人間共の手なんかを一々びくびく気にする必要が無くなる位によォ。
そして行く行くは世界征服ができるぐれえの大組織さ。
その暁にはどんな贅沢でも幾らでもし放題の好き放題、たまんねえだろ、ヒャッハッハッハ!
勿論、お前も付き合ってくれるだろ? それなりの地位は約束してやるぜ」
酒の勢いもあるんだろうが、頭領はまるで子どもみてえに目を輝かせながら
恥ずかしげも無く大言壮語な話を広げたら小一時間は語り出しそうな勢いでぶちまける。
「……そこまでは付き合いきれないな」
呆れ直した様子でマフラー野郎は嘆くように言った。
「ちぇっ、つれねえな」
いじけた風に頭領は言って、ヘヘッと冗談めかして笑う。
傍で聞いていてあっしも内心なんて馬鹿馬鹿しいと思う反面、
『世界征服』どこか頭領の馬鹿でかい話に少し惹かれる様なものを感じていた。
そう不覚にも思っちまったのは俺以外にも確実にもう一匹。
マフラー野郎の背のチビ助だ。どこまで理解出来てるのかわからねえが、
マフラーの中からいつもよりピンと耳を立てているのをあっしは見逃さなかった。
- 72 : ◆v98fbZZkx. :2014/03/13(木) 02:40:56.59 ID:???0.net
- 明日明後日にでも続き書く
- 73 :名無しさん、君に決めた!:2014/03/15(土) 13:34:31.98 ID:???0.net
- 保守
- 74 : ◆v98fbZZkx. :2014/03/17(月) 04:07:45.66 ID:???0.net
- 投下は明日の今くらいに
- 75 : ◆v98fbZZkx. :2014/03/19(水) 09:08:43.77 ID:???0.net
- 「さあてと。話は大体決まったしもう夜も遅え。細かいことは明日にして、
今日の所はそろそろ御開きとするかい」
ぐっと大きく伸びをして、頭領は欠伸混じりに言った。
頭領は手を打ち鳴らして女中達を呼び付け、あっしらを客間に案内するよう伝える。
「今日の所はゆっくり休めよ。時が来たらきりきり働いてもらうからな」
「老骨に鞭打って励むさ。精々お手柔らかに」
去り際、頭領にかけられた言葉にマフラー野郎は自虐的な苦笑を浮かべて返した。
「なあにが老骨だ。まだまだ現役バリバリだろうが、ヒャッハッハ!」
上機嫌な頭領の高笑いに見送られ、あっしらは宴会場を後にした。
「どうぞ、こちらへ」
女中達の案内であっしらは途中でばらばらに別れ、それぞれ個室へと通された。
部屋には人間用の布団がわざわざ枕まできっちりと用意されており、
今までのあっしの生き様からは考えられないまるで雲の上の出来事みてえな
至れり尽くせりの扱いにあっしは心の中で感嘆し打ち震える。
「では、ごゆるりと」
三つ指ならぬ二つ爪をついて女中は丁寧にお辞儀をし、そっと襖を閉めた。
- 76 : ◆v98fbZZkx. :2014/03/19(水) 09:09:34.78 ID:???0.net
- 女中が去った途端、あっしはもう辛抱堪らずに布団へと素早く飛び込むように潜り込んだ。
小汚いダンボールの上や、モンスターボールの中に押し込められてる時と違って、
温かで、ふわふわで、足から羽の先まで自由にのびのびと伸ばせて、
まるで雲にでも包まれてるみてえな最上の心地だ。
人間ってやつはいつもこんないいもの使って寝てやがるのか……!
存分に感触を堪能し興奮も少し落ち着いてきて、あっしは布団で一匹、
今後の身の振り方に付いて少し考えた。
客人として持て囃されている今の内はいいが、里の一員として長らく居なきゃならねえ中で、
一体あっしに何が出来るんだろうか。頭領が言ってた様に宿賃代わりに
ロケット団の内情を教えると言っても、下っ端団員の一ポケモンでしかなかった
あっしが知ってることなんて本当にたかが知れている。
だからと言って戦いの場について行ったって、今のあっしなんかじゃあかえって
足を引っ張ることになりかねない。マフラー野郎とここまで来るのだって
あっしには這う這うの体だった。
「……ああ、やめだ、やめだ!」
あっしは叫び、布団で顔を覆う。
幾ら考えたって頭の中のもやもやは増えるばかりで取れやしない。
酔いと疲れに任せ、逃げるようにあっしはまどろみの生温い泥濘へと意識を投じた。
- 77 : ◆rgWFRtnaRA :2014/03/21(金) 04:12:44.60 ID:???0.net
- 明日明後日位にでも続き書きます
- 78 :名無しさん、君に決めた!:2014/03/23(日) 09:38:01.54 ID:???0.net
- 保守
- 79 : ◆rgWFRtnaRA :2014/03/25(火) 04:39:50.56 ID:???0.net
- 投下は明日の今くらいに
- 80 : ◆rgWFRtnaRA :2014/03/27(木) 01:06:06.31 ID:???0.net
- 少し遅れます
夕方〜夜くらいには何とか
- 81 : ◆rgWFRtnaRA :2014/03/28(金) 12:13:24.04 ID:???0.net
- 翌朝。
「おい、起きろー!」
けたたましい騒音と共に飛び込んで来た声と、直後ドスドスと腹部に感じた衝撃に
あっしの意識は強引に現実へと引きずり出される。
目を開けると、目の前には子ニューラの憎たらしいにんまり面。
何しやがる、このクソガキ――怒鳴りかけた所で頭領の顔がはたと浮かび、
ぐっと喉の奥へと押し込む。
「何のつもりだよ、うるっせーな……」
苛々を抑えながらあっしは尋ねた。
「皆で作戦会議とオメーらを改めてしょーかいするんだって親父達がまってるぞ。
オメーだけ女中のみんなが声かけても中々起きてこないから、ガツンと目え覚まさせて来いって
わざわざオレがジキジキに呼びに来させられたんだぞ、まったく」
ぷんぷんと頬を膨らませて子ニューラは答える。
「おーおー、そりゃありがたいこって」
おざなりに言い返すとあっしは布団から這い出て、
頭領が待っているという会議の場へと少し重い足取りで向かった。
- 82 : ◆rgWFRtnaRA :2014/03/28(金) 12:14:06.02 ID:???0.net
- 「いよぉ、重役さん。たっぷり休めたかい?」
頭領はようやく現れたであろうあっしの姿に気付くと、気さくに笑いながら言った。
会場にはマフラー野郎以外にもニューラ他配下達が既にずらり控えており、
その視線が一斉に向けられてあっしは穴があったらすぐにでも入りてえ気分だった。
あっしはへこへこ周りに頭を下げながらマフラー野郎達のもとまで辿り着く。
揃った所で頭領はあっしらの事を配下達へと改めて紹介し、
里の一員としてしばらく暮らす事と、ロケット団への抗戦にも参加する旨を伝えた。
それからロケット団への今後の対抗策に話を移そうとしていたところで、
入り口の襖が勢いよく開かれて大きな音を立てる。
開かれた先に居たのは年老いたニューラ――最初に屋敷に来た時に
入り口で突っかかって来たあのババアだ――とその側近だ。
どよめく声にも構わずに年老いたニューラは眉間に深々と皺を寄せてずけずけと踏み入り、
頭領へと詰め寄っていった。
- 83 : ◆nHbSPFGRkE :2014/03/29(土) 01:12:11.47 ID:???0.net
- 乙です
明日か明後日にでも続きを書きたいです
- 84 :名無しさん、君に決めた!:2014/04/01(火) 21:14:56.81 ID:???0.net
- 保守
- 85 : ◆nHbSPFGRkE :2014/04/02(水) 00:22:36.40 ID:???0.net
- 明日の今ぐらいに投下します
- 86 : ◆nHbSPFGRkE :2014/04/03(木) 00:48:25.03 ID:???0.net
- 「これはこれはお義母さま、本日もご機嫌麗しゅう」
さして驚く様子もなく、頭領は全く感情の伴わねえ棒読み口調で挨拶を述べた。
「ふざけるでない! うぬにそのように呼ばれるなど虫唾が走るわ!」
老ニューラが一喝し、ドンと床を踏み鳴らすと、ざわめいていた場は水を打ったかのように、しん、と静まり返った。
「わしらとの評議を無視し、勝手に宴会など催した上、またしても無謀な算段などしておるのか!
あまつさえ、このような得体の知れぬ余所者を里に入れ、重きに用いようとは何事じゃ!」
かの大音声で吠えながら、老ニューラはあっしとマフラー野郎を鋭く指差した。
「ほー、ずっとお引き籠りあそばしてる割にゃ、随分とお耳が早いこって。
まー、こちとら、昨夜からそこのオバハン共が屋敷の周りを探り回ってた、っつー報告は受けてるがな」
皮肉っぽい笑みを浮かべつつ、頭領は老ニューラの後ろに控える側近達を見遣った。
「何を言う! ご老公の憂いも知らず、この我らを曲者扱いするか!」
「貴様こそ姫様を誑かし、うまうまと頭領の座を奪った不届き者ではないか!」
側近達が罵るのも意に介さず、老ニューラが睨みを利かすのにも動じず、頭領は堂々とした態度で啖呵を切る。
「アンタらがどう喚こうと勝手だが、先代は基より、皆からも正式に頭領と認められた以上、俺の決定は絶対の筈だ。
俺が受け継いだのは地位だけじゃねえ。この里の安全と未来の発展を願う、彼女の意志、責任、覚悟、その全てだ。
そして、こいつらは、その未来を担う跡取りを救った大恩人、しかも俺の知己でもある。厚く遇するのは当然だろーが。
俺はともかく、こいつらを貶めるような真似しやがったら、いくらアンタでもタダじゃおかねーぜ!」
一歩も引かねえ頭領に、老ニューラはぎりぎりと歯を噛み鳴らし、わなわなと体を震わせながらも努めて冷静を装った。
「……ならばその旨、他の長老達の前でも納得のいくよう説明願おう。評定の席は改めて設けておる。
たとえ頭領と言えど、年長者を敬うもこの里の倣い。このわしが直々に出向いたからには、否とは言わせぬぞ!」
「ケッ、お迎え付きで強制連行って訳かよ」
頭領はチッと舌打ちし、どっこいしょと面倒くさそうに腰を上げた。
- 87 : ◆nHbSPFGRkE :2014/04/03(木) 00:51:47.33 ID:???0.net
- 「悪ぃが、ちとお呼ばれだ、一旦解散するぜ。続きはまた帰ってからだ」
頭領がサッと手を挙げて合図すると、部下たちは一斉に頭を下げ「御意」と答えた。
「戻ったら連絡するからよ。ま、それまで散歩でもしてこいや」
頭領はマフラー野郎とあっしにそう言い残すと、老ニューラ達と共に会場を出て行った。
「ちょ、ちょっと待てってば、親父! ばっちゃん!」
「いけませぬ、若君! 大人の邪魔しては……これ、若君!」
子ニューラは只ならぬ雰囲気の頭領達を止めようと慌てて飛び出し、更に隊長がその後を追う。
やがて、部下達は波が引くようにぞろぞろと退出し、あっしとマフラー野郎もそれに倣うように会場を後にした。
「やれやれ、折角盛り上がってたのにな……ふふ、それにしてもスカーの奴、随分と立派になったもんだ」
「ああ……それにつけてもあの糞ババア……いちいちムカつくぜ」
どこか嬉しそうなマフラー野郎に対し、あっしの気分はすっかり苦り切っていた。
確かに頭領の度胸に感銘するもんはあったが、それよりも、あっしらを見下す老いぼれへの憤りの方がデカかった。
「仕方ないな。言われた通り、しばらく散策でもするとしようか。この里の事をもっと知っておきたいしね。
君はどうする? 昼寝でもしてるかい?」
「嫌味かよ……まあ、俺様も別にするこたねえし、テメーの御供でもしてやろうか」
「じゃあ取り敢えず、昨日の集落へ行ってみるか。ああ、調度いい、あの子に案内を頼もう」
そう言ってマフラー野郎が呼び止めたのは、やはり件の若いニューラだ。
――今思えば、最初に奴がこのニューラに声を掛けたのは、単に隣にいたから、というだけじゃねえ。
恐らく奴は、覆面の一群に遭遇した時から、その一匹一匹の特徴や挙動を密かに観察し、容易に情報を引き出す為、
最も若くて好奇心の強そうな――悪く言や、ちと未熟で口の軽そうな――こいつに当たりを付けたんだろう。
- 88 : ◆nHbSPFGRkE :2014/04/03(木) 00:55:56.08 ID:???0.net
- 「はい、喜んでご案内しますよ」
予想通り、若いニューラは二つ返事で同意し、あっしらは連れ立って屋敷を出た。
集落へと向かう道すがら、マフラー野郎はそれとなくあの糞ババアの話題に触れる。
「最初に話した時、君が懸念してたのは、あのご老体の事だろう?」
「はい……先程ご覧になったように、頭領様との仲はもう最低最悪で……」
「やっぱりね。あの御姑さん相手じゃ、いくら鉄面皮のスカーでも苦労が絶えないだろうな。
まあ、お孫さんの方は可愛がられてるみたいだからまだいいけど」
「いえ、でも……正確に言えば、若君はご老公の孫ではないんです」
若いニューラはふと辺りを見回し、見知った者がいない事を確かめると先を続けた。
「ご老公は本家の外戚で、先々代様――若君の実の御祖母の従姉妹であり、先代様の大伯母に当たる御方です。
先々代様がご病気で若くして亡くなり、他に御兄弟もおられなかった為、まだ幼かった先代様の親代わりとして、
ご老公が長年、後見役を務めておられました。その為、里の者は誰も――頭領様は除いてですが――頭が上がらないんです。
もっとも、近頃は体調が思わしくないとかいう理由で、別宅に隠居しておられますが」
「どこがだよ。到底くたばりそうにねーぐれえピンピンしてんじゃねーか」
「はあ……正直なところ、頭領様も、私たち近衛隊の者も、半ば信じてはいないんですけど……」
そう言って若いニューラは溜息を吐いた。
成程、そんな経歴がありゃあ、あの天を衝くようにエラソーな態度も、無理はねえのかも知れねえ。
もっとも、この状況じゃどう見ても老害としか思えねえが。
だがその時、マフラー野郎の方は、このニューラの話から別の事を考えていたらしい。
「先代の統領……スカーの奥さんも、体が弱かったとか言ってたな。頭領の家系は短命なのか……?」
ふと呟いた奴の言葉に、あっしは何故か、妙に引っ掛かるモンを感じた。
- 89 : ◆Pc42BttzIw :2014/04/03(木) 02:43:46.21 ID:???0.net
- 乙
明日明後日にでも続き書く
- 90 :名無しさん、君に決めた!:2014/04/05(土) 14:53:50.97 ID:???0.net
- 保守&絵を投下
http://i.imgur.com/uT78lF1.gif
- 91 : ◆Pc42BttzIw :2014/04/06(日) 01:11:23.16 ID:???0.net
- >>90
GJ!
投下は明日の今くらいに
- 92 : ◆Pc42BttzIw :2014/04/08(火) 03:00:42.92 ID:???0.net
- ちょっと急用が入ったので、投下は今日の夕方かあまり遅くならない内に
- 93 : ◆Pc42BttzIw :2014/04/09(水) 10:11:59.03 ID:???0.net
- 「我らのずっと祖先の犯した所業への罰、呪い――」
呟きを耳にしたニューラは更にぐっと声を潜めて囁く。
谷の隙間から注ぐ日差しが逆光となり、振り向いた表情はどんよりと陰を孕んで見えた。
「……年長者方はまことしやかにそう囁きます。
病弱の傾向があるのは頭領様の家系だけではないんですよ。
最初は殿方に広く蔓延し、先々代の頃には遂にメスにもその兆候が現れ始めたと。
今の頭領様は『呪いなんざあるわけねえだろう』って一蹴してますけれど。
『こんな狭い所でいつまでも寄り固まって閉じこもってるから、
気も体も血も溜まり淀んでおかしくなるんだ』って」
「この里でオスのニューラを全然見かけないのって、
みんなその”呪い”で床に伏せるなりして表に出られないような状態だから?」
マフラー野郎に問われ、ニューラはしまったと言いたげに表情を一瞬強張らせ、
逃げるように顔を背けた。
「今の話はどうかご内密に。ほらほら、そんなことよりもう到着ですよ!」
一転して明るい調子で言って、ニューラは足早に集落へと入っていく。
「おいおい、この里にいて俺様達も大丈夫なんだろうな?
罰だの呪いだのなんて俺様も馬鹿馬鹿しいと思うが、
オスがまずなりやすい奇病とか疫病の類でも流行ってるんじゃあ……」
またひとりで難しい顔をしているマフラー野郎に、
あっしはおっかなびっくり小声で耳打ちする。
- 94 : ◆Pc42BttzIw :2014/04/09(水) 10:13:01.80 ID:???0.net
- 「大丈夫、少なくとも俺達にまで伝染するような病気なんてここにはないさ。
だったら先にここに長いこと居るスカーがとうに参ってる筈だ。
スカーの方はこれでもかってほど至ってぴんぴんしてたろ?」
「じゃあなんだってんだよ」
突っかかる様にあっしは聞き返す。
「うーん。やっぱりあの子が言ってたスカーの言葉通り、ずーっと長いこと
外との繋がりを絶った状態で群れ存続させてきたせいじゃあないかなあ」
「それがなんで短命になっちまう事に繋がるんだ?」
ますますちんぷんかんぷんになってあっしは言った。
「違ったものを取り入れずに延々と同じものを掛け合わせ続けることは健全じゃあないんだ。
生き物にとっても、思考思想にとっても。まだはっきりとはしていないし、
今のところの俺の予想や見立てが合っているとすればだけれど、
この地を蝕む呪いとも言うべきものがあるとするならば、
それは執着とか妄執とかそんな感じのものじゃあないかなあ。
神とか幽霊とかそういう目にも見えず手も届かない存在によるものじゃなくて、
あくまで生きた者による、ね」
そう言い残すとマフラー野郎はあっしを置いて、
「何してるんですかー?」と手を振るニューラの方へとさっさと歩いていった。
「やあ、ごめん。ヤミカラスが少し腹の調子が悪いって言い出してね。具合を聞いてたんだ」
「わ、それは大変。すぐに薬を用意させましょうか?」
「大丈夫、大丈夫。もう収まったってさ。な?」
振り返るマフラー野郎にあっしは釈然としない思いをしつつ頷いた。
- 95 : ◆nT58vM8A36 :2014/04/11(金) 01:15:10.74 ID:???0.net
- 明日明後日にでも続き書く
- 96 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/04/14(月) 00:08:26.45 ID:???0.net
- 保守
- 97 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2014/04/14(月) 00:51:25.33 ID:???0.net
- 投下は明日の今くらい〜明け方に
- 98 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2014/04/16(水) 09:29:52.76 ID:???0.net
- 叫ぶニューラに何を大げさなとあっしが鼻で笑いかけようとした矢先、種が急変する。
中で何かが弾ける様な乾いた音を立てながら種は煙をもうもうと噴出し、
空気でも流し込まれているように表面は見る見る膨張していく。
それはまるで破裂寸前の爆弾のような有様だ。――これは不味い、と本能が訴えた。
ニューラはあっしを突き飛ばすような勢いで種を引ったくり、
全身全霊を込めて空高く放り投げる。直後、炸裂音と共に種は弾け飛び、
宙に白い煙を残した。ニューラは片手で額を拭って深々と安堵の息を吐き、
あっしは揺らめいて風に溶けていく煙を呆然と見上げた。
なんだなんだ、また新米が何かやらかしたのかとどよめき集まる野次馬達にニューラは
「大丈夫、大丈夫です。なんでもないですからご安心を」とぺこぺこ頭を下げて回る。
野次馬が散っていくと、ニューラはキッとあっしを睨み付けた。
「もう! 無闇に触らないでください。乾ききってない爆裂の種は危ないんですからー!」
「んな危険物を干し木の実でも作るみてえに軒先に呑気に吊るしてんじゃねーや!」
ぎゃーぎゃーと言い合うあっしらをマフラー野郎は「それくらいで」と宥める。
「なるほどねえ。人間の遺した知恵を取り入れるなんて器用なものだ」
マフラー野郎は感心した様子で呟きながら、興味深々で手を伸ばそうとするチビ助の手を
ぱちんと叩きつつ、並ぶ道具達を改めて見回した。
「以前までは門外不出の品だったんですけれど、先代様と現頭領様の提案で、
外のポケモン達との取引の材料としても今は大いに役立っています。
物珍しいし、物騒なもの以外にも便利なものが色々ありますからね。
一つ一つ紹介していたら日が暮れちゃいそうだからできませんけど」
- 99 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/04/18(金) 03:37:41.23 ID:???0.net
- 明日明後日にでも続き書く
- 100 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/04/20(日) 21:56:11.68 ID:???0.net
- ほしゅ
- 101 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/04/21(月) 04:10:07.71 ID:???0.net
- 投下は今日の深夜〜朝方くらいに
- 102 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/04/22(火) 07:21:34.50 ID:???0.net
- もう少し遅れる
夕方〜夜くらいには投下したい
- 103 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/04/23(水) 10:19:43.22 ID:???0.net
- あっしらの話す声が聞こえたのだろう、家屋から一匹のニューラが暖簾を潜って現れる。
「騒がしいと思ったら新米ちゃん。また隊長さんに頼まれてお使い?」
若いニューラの顔を見て妙齢のニューラは親しげに言った。
「ううん、今日は非番だから。ここで新しく暮らす事になったひと達に集落の案内頼まれて、
その最中」
砕けた調子で若いニューラは答え、あっしらを紹介するように手で示す。
「ああ、この方達が例の……」
じっと見渡す妙齢のニューラにマフラー野郎は「どうも、こんにちは」と人懐こく挨拶し、
あっしは「うぃっす」と少し畏まって頭を下げる。
「このひとがこの工房を取り仕切る店主さんです。彼女とここで働く他の職工さん達の力が
無ければ里の暮らしは不便になりますし、私達の外での任務ももっと大変になっちゃいます」
いつもお世話になっております、と若いニューラは店主に冗談ぽく頭を下げた。
「ふふ、どういたしまして。新入りのネズミさんとカラスさんも
何かご入用があったらいつでもいらしてね」
店主はあっしらに向けてにこやかに微笑む。
「それにしても――」
店主はまじまじとあっしとマフラー野郎を眺めてから、
微笑ましそうに若いニューラを見やった。
「良かったわね、新米ちゃん。活きのいい殿方とお知り合いになれるなんて
滅多に無いんだから、こんな機会を逃しちゃ駄目よ」
言われて、若いニューラはみるみる顔を赤くし、ぶんぶんと首を横に振るった。
「ちょ、ちょっと、滅多なこと言わないで! そんなつもりじゃないから!
さっ、ささっ、そろそろ次の場所に行きましょう、皆さん! それじゃ、店主さん!」
若いニューラに背中を押されながらあっしらは掃きだされる様にその場を後にした。
- 104 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/04/23(水) 10:20:35.35 ID:???0.net
- どたばたと工房から離れた後、若いニューラはホッと溜息を吐く。
「随分、慣れ親しんだ様子だったね」
「近衛隊に入ってからはしょっちゅう使い走りとして通ってますし、
それ以前からも色々と店主さんにはお世話になってて、言わばお姉さんみたいなものですから。
もしも、隊に入らなかったら、私もあそこで働かせてもらうつもりだったんですよ」
「それがどうして危険そうな近衛隊に何てなろうと?」
マフラー野郎に尋ねられて、ニューラは少ししんみりとした表情を浮かべる。
「ええ。確かに危険はありますが、それ以上に私にとっては大きなものがありまして。
里の外への出入りは極限られた者しか許されていません。
だから外への狩りや任務に出る頭領様とそれに仕える方達がとっても羨ましくて……
小さい頃からずっと憧れてたんです。おいそれと近衛に何てなれるものじゃありませんけれど、
外の世界を見てみたいその一心でそれはもう頑張りましたとも。血反吐が出そうなくらい」
「へえ」
「初めて頭領様達について外の世界を見た時は、何もかも新鮮に見えて、
とても広く感じて、目が回りそうなほど感動しちゃいました」
若いニューラの話を聞きながら、あっしはロケット団の元から逃げ出し、
初めて大空高く飛んだ時のえも言われぬ感情の高ぶりを何となく思い出していた。
「頭領がいつも言ってる事が言葉じゃなくて心で理解できた瞬間でしたよ。
私も早く皆がもっと自由に外を出歩けるようにしてあげたいって柄にも無く思ったり。
――っと、すみません私の身の上なんて長々と。それじゃあ次の場所へ行きましょう」
- 105 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2014/04/25(金) 11:24:53.62 ID:???0.net
- 明日明後日にでも続き書きます
- 106 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/04/27(日) 22:10:08.45 ID:???0.net
- ほしゅ
- 107 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2014/04/29(火) 04:02:25.33 ID:???0.net
- 今日の深夜〜明け方くらいには投下します
- 108 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2014/05/01(木) 03:47:39.97 ID:???0.net
- ごめんなさい急用でもう少し遅れます…
今日中には何とか
- 109 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2014/05/02(金) 06:10:02.46 ID:???0.net
- 次に案内されたのは食料品店だろうか。棚には多くの保存用に干された果物や野菜と、
幾らかの瑞々しい物が飾られていた。
「ちょっと待ってて下さい」
あっしらを残してニューラは店へと入って行くと奥の店番に何やら架け合い、
手に赤々としたリンゴを四つ程抱えていそいそと戻ってきた。
「はい、どーぞ。私の奢りですよ」
笑顔でニューラはあっしらに差し出す。
「こいつは爆発したりしねえだろうな」
「もう、まだ根に持ってるんですかー。爆発も毒もありませんってば、ほら」
疑うあっしにニューラは自分の分を一齧りして見せた。
「いいのかい? 土地が土地だから新鮮な果実は結構貴重なんじゃないかと思うんだけど」
シャクシャクと音を立てて遠慮無しに頬張るチビ助を背に、
申し訳無さそうにマフラー野郎は尋ねる。
「いえいえ、お気になさらず。外のポケモンとの取引で手に入れられる機会も手段も
昔よりずっと増えましたから。これからもどんどんポケモン達が増えてきたら
それだけでは賄い切れなくなってくるかもしれませんが、
それに備えて里でも栽培ができるように鋭意取り組んでいます。
……まあ、全然まだまだ質も量も満足できるものじゃないんですけどね」
決まりが悪そうにニューラは頬を掻いた。
- 110 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2014/05/02(金) 06:10:43.26 ID:???0.net
- 「それに関することでちょっと頼みたいことがあるんだけど」
マフラー野郎はずいと唐突に口を挟む。
その表情は少しばかりわくわくと興奮しているように見えた。
「な、なんでしょう?」
いつにない様子に少し戸惑った様子でニューラは聞き返す。
「詳しい話は畑についてからにしようかな」
そう言うと、マフラー野郎は早く早くと急かす様に畑の方へと足早に向かっていった。
「それで、頼みたい事ってなんですか?」
真っ先に畑へと辿り着いたマフラー野郎に追いつき、
うずうずと畑を見回す背中にニューラは声をかける。
「うん、後でスカーの方にも話そうと思っていたんだけれど、
出撃がなくて暇な間はここの世話を俺も手伝わせてもらおうと思っていてね。
君さえよければだけど、どうかな?」
マフラー野郎の提案にニューラは「おお!」と嬉しそうに両手を合わせた。
「なんだ、そんなこと頼まれるまでも無く、むしろこちらから頼みたいくらい大歓迎です!」
「よかった、ありがとう。昔ちょっと齧っていてね。好きなんだ、畑いじり」
「やっぱり! 昨日から何となくそんな気はしてました。
うれしいなあ、楽しさをわかってくれる仲間が出来て。初めは任務でヘマした罰として
嫌々やっていたんですけど、その内どんどんはまっちゃったんですよねー」
- 111 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2014/05/02(金) 06:11:53.95 ID:???0.net
- 和気藹々と話す二匹を、あっしは蚊帳の外から冷めたで見つめていた。
「スカーが戻ってくるまで、早速ちょっとまた色々見せてもらっていいかな?」
「それはそれは喜んで!」
また昨日みてえに夢中で畑へと入り込んでいこうとする二匹を、
あっしは「ちょっと待て」と呼び止める。
「俺様はどうすりゃいいんだよ。畑いじりなんてごめんだっての」
完全に忘れていたという顔でマフラー野郎は振り向く。
それから少し悩んで何か思いついたといった具合にマフラー野郎は手を打ち、
チビ助を背中から出して抱き上げるとこちらにほいと差し出した。
「……なんのつもりだ」
同じ事を言いたげなチビ助と目を合わせながら、あっしはマフラー野郎に言った。
「悪いけど俺が戻るまで子ども達の家でこいつと一緒に待っててくれるかな。
出撃にチビ助を連れて行くわけには行かないから、
俺の不在に今の内からしっかり慣れておかないとね」
「おいおい、ガキの世話なんざもっと――」
「世話役のニューラの方には君が寝坊している間に既に色々話は通してあるからさ。
場所は昨日も行ったしわかるだろ? 君を信頼しての事さ、頼んだよ」
問答無用でマフラー野郎はあっしの背中にチビ助をずしりとおぶわせ、
あっしとチビ助を置き去りにさっさと畑の奥へと行ってしまった。
- 112 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/05/04(日) 00:28:45.10 ID:???0.net
- 乙です
明日か明後日にでも続きを書きたいです
- 113 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/05/06(火) 07:32:15.05 ID:???0.net
- 保守
- 114 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/05/07(水) 00:20:42.62 ID:???0.net
- 明日の今頃くらいに投下します
- 115 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/05/08(木) 00:25:49.51 ID:???0.net
- 「な、何しやがんだ! おい! 待ちやがれ!」
喚くあっしと手をバタつかせるチビ助に、マフラー野郎と若いニューラはにこやかに手を振りながら遠ざかっていく。
「チキショー、テメーら覚えてやがれ!!」
そう毒づきながらも、あっしは背中に伸し掛かる予想外の重みに、その場から一歩も動けねえでいた。
何しろこのチビときたら、ナリは小せえくせに体重はあっしとあんま変わらねえ。
もっとも、あっしら鳥ポケモンの多くは、体の造りのせいか、見た目よりずっと軽かったりするんだが。
それにしても……あいつはいつも、こんな重荷を背負いながら戦ってたのか……と、改めて驚かずにゃいられなかった。
ともかく、いつまでもこうしている訳にもいかねえ。仕方なく、あっしは足を踏ん張って懸命に進み出そうとした。
だがチビ助の方は、マフラー野郎が自分を置き去りにした事に苛立ったのだろうか、まるで八つ当たりするように、
あっし自慢の頭の羽毛をわしゃわしゃと乱暴に引っ掻き回しやがった。
「何しやがんでえ! こんクソガキャ……いでで、ででで、いでぇー!」
頭にきたあっしは振り落としてやろうかともがくが、チビ助は意外に強え力で翼の根っこにがっしりとしがみ付く。
「おいチビ! そんなに嫌ならさっさと降りりゃあいーだろーが! 何処なりと勝手に行っちまえ!」
あっしが肩越しに怒鳴ると、チビ助はただじとりと一瞥し、聞く耳持たん、とでもいうようにぷいっと横を向く。
……可愛くねえ。いや、もう既に、可愛いとか可愛くないとかいう次元の問題じゃねえ。
「あーもークソッタレ! 放電なんかしやがったらタダじゃおかねーぞ!」
チビの暴君に翼を掴まれて飛ぶ事もできず、あっしは情けねえ格好でヨタつきながら畦道を歩いて行く。
あっしの体力が赤ゲージに差し掛かってピコピコ鳴り出す頃――
ようやく道の向こうに寺子屋の屋根が現れ、近付くに従って俄かに辺りが騒がしくなる。
家屋を囲う雪壁の狭間から、数匹のガキが相撲を取ったり、鬼ごっこをしたりして遊んでいるのが見えた。
- 116 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/05/08(木) 00:30:45.20 ID:???0.net
- 「あっ! 昨日のカラスだ!」
「わあ、ちっこいネズミ!」
あっしらに気付いた誰かが叫ぶと、何処からともなく湧き出すようにガキ共がわらわらと寄り集まり、
瞬く間にあっしとチビ助は、色どりどり、大小様々なポケモンに取り囲まれた。
そりゃあ、ネズミをオンブしたカラスなんて、滅多に見れる代物じゃねえだろう。
「かーっ! どきやがれ、こんちくしょー! こら、そこのテメー! 羽根を毟るんじゃねえ!」
好奇心旺盛なガキ共の襲来にもみくちゃにされ、あっしは残りの体力まで奪われる思いだ。
「こんにちはー。ヤミカラスさん、でしたっけー? わざわざご苦労さまー」
この騒ぎが聞こえたのか、ようやく世話役のニューラが現れた。
「マ……頭領の友達から話は聞いてんだろ? 早えぇとここんチビを引き取ってくれ!」
あっしはもう、縋るような思いでニューラに訴えた。
「はいはーい、じゃ、お預かりしますねー」
ニューラはやはりおっとりした調子で、あっしの背からひょいとチビ助を引き剥す。
やっと苦役から解放されたあっしは、はあ、と大きく息を吐いた。
「あー、しんでぇ……けどよ、こいつすげえ凶暴だから、テメーも気ぃ付けろよ」
「そうなんですかー? 今朝会った時はそんな事なかったですけどー」
だが、あっしの思惑をよそに、チビ助は憮然とした顔はしてるものの、ニューラに抱き上げられてもじっと動かなかった。
「なんだー、すごく大人しいじゃないですかー。うふふー」
……あっしに対する態度との落差に、ますます腹が立ってくる。
「みんなー、新しいお友達、ピチューのチビ助ちゃんですよー。仲良くしてあげてねー」
ニューラはガキ共の前にチビ助を下ろすと改めて紹介し、はーい、とガキ共は大声で返事をする。
「じゃあヒメグマちゃん、チビ助ちゃんを中に連れてってあげてー」
「はーい、せんせー」
眉間に三日月模様のある縫いぐるみみてえな小熊が進み出て、チビ助の手を引きながら屋内に入っていった。
少々不安はあったが、あの様子だったら何とかなるだろう、とタカを括り、あっしは玄関先の縁台に座り込み、
新入りを見ようとぞろぞろと後に付いていくガキ共を眺めた。
- 117 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/05/08(木) 00:35:25.40 ID:???0.net
- 「それにしてもよ、よくあんなとっ散らかった連中の面倒が見れるな」
あっしは一息入れながら、にこにことガキ共を見送るニューラに、話すともなく話し掛けた。
「だってー、どんな種族でも子どもって可愛いしー、見ててすごく面白いじゃないですかー」
全くユルい物言いにこっちまで崩れ落ちそうになりながら、あっしはふと、ガキ共の中にコリンクが居なかった事に気付く。
「ん? コリンクの坊主はここじゃねーのか?」
「あの子なら今朝、頭領さまの紹介で修練所へ行きましたよー。その時、お連れの猫さんも一緒に出掛けたようですけどー」
道理で、会議の時に奴らの姿が見当たらなかった筈だ。
恩返ししてえとか、強くなりてえとか、あいつ、本気でそのつもりなんだな……と、あっしは少々感心した。
まあ、あのアマは修行になぞ付き合う訳ねえだろうから、大方、その辺で見学でもしてんだろう、と勝手に予想する。
「でも、ちょっと心配ですー。あそこの訓練は本当に厳しくて、付いていくのも容易じゃないんですよー。
私なんか、生まれつき体力はないし、弱いしトロいしで、すぐに落ちこぼれちゃいましたー」
そう言って、ニューラは照れたようにえへへー、と笑った。
確かにこいつは、素早っこくて狡猾、というニューラ族のイメージとは程遠く、ぽややんとした雰囲気でどこか動作も鈍い。
ガキ相手ならそれでもいいんだろうが、本来の天分、殊に狩猟や襲撃なんか、とてもじゃねえがやっていけねえだろう。
――ひょっとしたら、これも……この里を蝕んでるという“呪い”ってやつのせいなのか――
「たいへんたいへん! 先生ー! 大変ですー!」
ふとそんな事を思った時、裏手の方から、橙色の小鹿が息せき切って駆け込んできた。
「シキジカちゃん、どうしたのー?」
「ちょっと目を離した隙に、ネズミちゃんが逃げちゃったの!」
……ちっとでも油断したのが甘かった……あのクソチビはマジで厄介モンだ、と、あっしは頭を抱えた。
- 118 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2014/05/08(木) 05:19:28.53 ID:???0.net
- 乙
明日か明後日にでも続き書く
- 119 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/05/09(金) 10:30:06.88 ID:97GhRVO9I.net
- 保守
- 120 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2014/05/11(日) 00:21:55.67 ID:???0.net
- 投下は明日の今ぐらい〜明け方に
- 121 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2014/05/13(火) 07:28:47.22 ID:???0.net
- すまん、投下は今日の夜くらいに変更で
- 122 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2014/05/14(水) 03:27:17.75 ID:???0.net
- 「ええー! 大変、すぐに追いかけなくっちゃ――」
途端にニューラは優しげに細めていた目を見開き、大慌てで捜しに駆けて行く。
が、すぐに糸が切れたようにその場にへたり込み、口元を押さえてコホコホと咳き込みだした。
「せ、先生! 具合悪いの?」
シキジカと呼ばれた橙色の小鹿は驚いた様子で駆け寄り、心配そうに顔を覗きこむ。
「お、おいおい、大丈夫かよ、せんせ」
あっしはどぎまぎとして、ふらふらと立ち上がろうとするニューラに肩を貸した。
「大丈夫、大丈夫よー。柄にも無く急に動いたから少し噎せただけで、すぐに良くなるからー」
ニューラは心配させまいとシキジカににこりと微笑み、
「ごめんなさいね」とあっしの肩を少し気恥ずかしそうに離れた。
「シキジカちゃん、先にみんなと途中ではぐれない様にちゃんと集まって、
チビ助ちゃんを呼び戻しに行ってくれるかしらー? 先生もすぐに後から行くわー」
「う、うん!」
シキジカは再び裏手へと大急ぎでぴょこぴょこ駆けていく。
「ヤミカラスさん、せっかく信用して預けてくださったのに、
こんなことになるなんてごめんなさい。息が整い次第、私も捜しに行きますからー」
平気な風にニューラは言うが、黒い毛並みの上から見てもその顔色は悪く見えた。
「いいよ、つれえなら無理しないでせんせは奥で休んでな。
あんなチビくれえ俺様の方でちょちょいと捕まえてくるからよ」
放って置いたら這ってでも行きそうなニューラを玄関まで押し込み、
あっしはガキ共とチビ助を捜しに向かった。
- 123 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2014/05/14(水) 03:28:28.68 ID:???0.net
- まず最初にあっしはガキ共と寺子屋の周りを黄色い姿を探して見回す。
しかし、その姿もそれらしい足跡も既にどこにも無い。
踏み固められた雪道を辿って商店街の方へ向かってしまったのかもしれない。
――思い返せばあの野郎、道具屋に並べられてたガラクタに興味深々だった。
そう思い立ち、あっしはガキ共を連れ立って商店街へと向かった。
「――子ネズミちゃん? うーん、こっちじゃ見てないけど」
しかし、予想は外れ、店主から返ってきた言葉にあっしらはがくりと肩を落とす。
その後も他の店や道行くポケモン達にも尋ねて回るが、全く手がかりは出てきやしない。
あのクソチビ、手間掛けさせやがって――ふつふつ沸いて来る怒りと疲れで顔を真っ赤にして
鼻息荒くひいひい言ってると、見かねた様子でガキの一匹が恐る恐る声をかけて来た。
「ねえねえ、カラスのおじちゃん。おじちゃんだったら空から里中を見渡せたりしないの?」
ぴしり、と思わずあっしの額に青筋が走る。
「誰が『おじちゃん』だ、誰が! 俺様はまだそんな歳じゃねえ!」
「う、うわ、ごめん」
反射的に怒鳴り返しながらも、あっしはガキの言葉にハッとする。
――そりゃそーだ。あっしには立派な翼があったじゃねえか。
誰に命じられる必要も無く自由に空を舞い飛べる翼って奴が。
確認するようにあっしは自分の翼をぱさぱさと微かに擦り動かす。
「おう、じゃあ俺様は空からあの野郎を探すとするぜ。
オメーらは精々ミイラ取りがミイラになってせんせに迷惑かけねえよう、
ちゃんと固まって行動してやがれよ」
「はーい」
ガキ共に忠告し、あっしは翼をはためかせ空へ舞い上がった。
- 124 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2014/05/16(金) 05:24:37.50 ID:???0.net
- 明日明後日にでも続き書く
- 125 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2014/05/19(月) 00:39:01.49 ID:???0.net
- 投下は明日の今位か明け方に
- 126 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/05/21(水) 01:29:43.50 ID:???0.net
- ほしゅ
- 127 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2014/05/21(水) 18:38:34.34 ID:???0.net
- 地上を離れどんどんと高度を上げるにつれて翼で切る空気が冷え冷えとしていく。
うう、さみぃ。ブルブルと羽毛が震え、鼻の穴から水滴が滲んだ。
上は下の方とは段違いの寒さだ。
あっしら鳥ポケモンみてえな空を飛ぶもんにとっちゃ冷気ってヤツは大の天敵だ。
悴んじまって翼の利きが随分と悪くなっちまうし、片翼でも凍っちまったが最期
地面へと真っ逆さまさ。
里をぐるりと囲む山の天辺付近では真っ白い雪を引き連れた風が渦巻いて吹き荒れ、
更に過酷な環境であろうことが目に見えてわかる。
頂上付近で鋭く突き出している凍り付いた岩達のぎざぎざとした輪郭と相まって、
まるで渦巻く風が無用心に近づく獲物を絡め取る大きな舌に、
尖った岩々は舌に絡まれた間抜け共を噛み千切る為の牙みてえにおっかなく見えた。
こりゃ例え里の場所を知ってたって上から来てえとは思えねえ。
天然の要塞と言ってのけた頭領の自信が尚更によおくわかった。
里から頂上までの距離の半分より少し上くらいまで到達した所でこれ以上高く飛ぶのは
しんどいだけだと判断し、あっしは翼をぴんと広げて滑空の姿勢を取る。
ぐるぐると螺旋を描きながら空を滑るように飛びつつ視線を下に向ければ、
ミニチュア模型みてえに小さくなった里の全景が見下ろせた。
- 128 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2014/05/21(水) 18:39:14.75 ID:???0.net
- 里の中央にでんと構えているのは頭領の住む屋敷。
門から広い庭まで付いていて空から見たってその立派さが一目でわかる。
その傍に寄り添うように、というかしがみ付く様に建っているのは、
頭領の屋敷の次くらいにしっかりとした造りの建物。
きっと、例のババア共が隠居してやがる場所に違いねえ。
あれを建てたであろう人間や建物自信に罪はねえだろうが住んでいる”中身”のせいで
何だか瓦一枚一枚の逆立った鱗みてえな並び方やら、
庭木の枝が隣の庭まで図々しく伸びている様子、
目に付くもの一つ一つ隅々まで何だか業突く張りで陰険に見えて胸糞が悪い。
うさ晴らしに落し物の一つでもしてやりてえ気分だ。
ま、常日頃から品行方正なあっしはそんな粗相しねえがな。
――「おい、エンペルト。なんでえ、その目ぁ?」
「いや、別に……。気のせいだろ」
いつも手下のヤミカラス達の見ていないところでくつろいで寝転がりながら
菓子を貪る威厳も気品も露ほども無い誰かさんの姿を思い浮かべつつ、
エンペルトは冷たく視線を逸らす。
「ちぇっ、なんか引っ掛かかっるんだよなぁ。まあいいや」――
- 129 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2014/05/21(水) 18:44:35.87 ID:???0.net
- 頭領の屋敷を時計の針で表して十二時の方向とするならば、
大体三時ぐらいの方向に列を成すように並ぶ少し簡素な家屋の集まり、集落が見えた。
家屋の間を米粒みてえなポケモン達が忙しなく動き回っており、
その中にガキ共らしい姿も確認できた。
ちゃんとあっしの言いつけを守って集団で行動しているようだ。
とっ散らかった連中だと思っていたが意外と聞き分けはいい。
ガキは好きじゃねえ筈なんだが、あっしは少しばかり感心する。
畑の方では随分とまあ仲のいいご様子で畑仕事に精を出す黄色い粒と黒い粒が見える。
しまった、すっかり慌てていたせいであいつらにも声をかけるのを忘れていた。
と、あっしは思い出す。だが、今更になって降り立つのも、
あの間に割って入っていくのも中々に体力と特に精神も消耗しそうだ。
文句は後で散々に言ってやるとして、今は件のクソチビを見つけるのが先だ。
集落の中にはチビ助の姿は見当たらなく、あっしは他の場所に視線を向ける。
四時と五時辺りの方向にはだだっ広い広場付きの少し武骨な造りの建物があった。
雪が除けられ整えられた広場には真ん中が区切られた長方形みてえな線がでかでかと描かれ、
その中で遠目からでも一目で分かる歌舞伎の裏方みてえな独特の覆面装束で身を包む
近衛隊の誰かに監督されながら鍛錬に励むポケモン達が見えた。
あれがきっと修練所なんだろう。探せばきっとコリンクの姿もあるに違いねえ。
ちょっと興味はあるが今は優先すべきものがある。
八時の方向には里の出入り口と、周辺の雪原には疎らなうち捨てられ朽ちかけた家屋。
里に今よりもっとポケモンが増えたらあの家も住めるようにするんだろうか。
まさかこんな所まで来れるのかと思いつつチビ助を探してみるが、
やはりその辺りにもそれらしい姿は見当たらない。
- 130 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2014/05/21(水) 18:51:00.19 ID:???0.net
- そのままチビ助の姿を求めて時計回りに里をざっと見回していく中で、
少し奇妙なもんが目に止まる。それは方角としては十時か十一時の辺り、
しかし十二時の方向とする頭領の屋敷からもずっとずっと離れて周りの山に
くっ付きそうな辺鄙な場所にひっそりと佇む建造物だ。
あまり大きなもんじゃあねえが、他の建物とは異なる異質な造りが目をひく。
例えるなら何かを祀る寺院みてえな、そんな感じだ。
離れた場所に建っている割には長い間ほったらかしにされた様子ではなく、
手入れはしっかりと行き届いているように見え、それでいてその寺院らしき建物まで
行き来するような足跡はほぼ見当たらない。
ありゃなんだと見れば見るほど疑問が湧くが、それ以上に何とも形容し難い胸騒ぎが、
顔に粘っこい蜘蛛の糸が一本ずつ一本ずつ絡み付いてきているような厭わしい感覚に捉われて
……寺院の窓に何かの影らしきものが蠢いたような気がしたなんて見間違いだ、
さっさと逃げるように目を背けた。
頭を切り替えてもう一度、目を皿のようにして里中を見回す。
すると、ようやくそれらしい小さな小さな黄色い姿を目が捉えた。
それは辺りを注意深く少し不安そうに見回しながら、四時の辺りを徘徊している。
奴の行動を推理するなら、キャイキャイうるせえガキ共に耐えかねて脱走し、
何とか連れ戻されねえよう身を潜めながら人目のありそうな場所を大回りに避けて避けて
マフラー野郎を探していたら、いつの間にか集落の外に迷い込んじまったってところだろうか。
あのままトボトボ歩を進めていたら、あの野郎修練所の方まで辿り着きそうだ。
- 131 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2014/05/21(水) 19:04:37.12 ID:???0.net
- やっと書き込めた……
>>128
最後の行
×「ちぇっ、なんか引っ掛かかっるんだよなぁ。まあいいや」――
○「ちぇっ、なんか引っ掛かるんだよなぁ。まあいいや」――
>>130
五行目
×あまり大きなもんじゃあねえが、他の建物とは異なる異質な造りが目をひく。
○あまり大きな建物じゃあねえが、他の場所とは違うどこか異質な造りが目をひく。
- 132 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/05/23(金) 22:46:09.30 ID:???0.net
- 明日明後日位に続き書く
- 133 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/05/26(月) 01:36:35.71 ID:ETfPpkGX0.net
- 保守
- 134 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/05/26(月) 03:55:44.59 ID:hJR46b9m0.net
- 投下は明日の今位に
- 135 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/05/28(水) 04:18:58.48 ID:Kgy+qsWt0.net
- すまん、投下はもう少し遅れる
今日の夜くらいには何とかしたい
- 136 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/05/29(木) 06:06:24.56 ID:M0yGKsAc0.net
- あっしはチビ助の上で旋回しながら何度かカァカァと鳴いてガキ共へと合図する。
それからチビ助目掛けて翼を縮めて高度をぐんぐんと下げていき、
その目の前へと勢いよく降り立った。
「――とと、やっと見つけたぜ! こんのクソチビ!」
つんのめりそうになるのを翼を大きくはためかせて立て直しつつ、
あっしは思い切り一喝してやった。
チビ助は全身の毛を逆立てて飛び跳ねそうなほどに驚き、
わたわたと踵を返してもと来た道へと逃げ戻ろうとする。
が、そっちの方からはあっしの合図に気付いたガキ共の一団が真っ直ぐに向かってきていた。
「カラスのおにーちゃん、チビ助ちゃん見つけたんだね!」
チビ助に気付いたガキ共からワッと歓声が上がった。
嬉しそうに駆け寄ってこようとするガキ共にチビ助はびくりと体を揺らす。
前門のガキ共、後門のあっし。挟まれたチビ助の野郎はアーボに睨まれたニョロモの如く
だらだらと冷や汗を流しながらその場で硬直してしまった。
もー、どうして勝手にどこか行っちゃったの? 怪我、どこにもない?
せんせが心配してるよ。早く帰ろうよ――等々、
機関銃のように次々とガキ共から気遣う言葉が飛んでくる。
- 137 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/05/29(木) 06:07:57.96 ID:M0yGKsAc0.net
- 困り果てた様子でチビ助はじりじりと後ずさりを始めた。
しかし、残念ながらその背後からはあっしが迫っているのだ。
どん、と背をぶつけ、恐る恐るチビ助はあっしに振り返る。
完全なる八方塞だ。本人も確信したんだろう。
きっとあっしを睨みながらも、その瞳はうるうると震えている。
……何だかこいつの普段のふてぶてしさからは考えられない取り乱しぶりだ。
これ以上は怒る気なんてもうすっかり失せてしまって、
さしものあっしも少しばかり気の毒に感じてきていた。
そういや、トキワの森でも他の子ども達と馴染もうとしなかったって
マフラー野郎が言ってたような気がする。あっしはふと思い返した。
同族相手でもそんな有様なんだから、種族のごった煮みてえなこいつらの中に
いきなり放り込まれるなんて産まれてすぐの雛に強風の中で飛ぶ練習をさせるような無茶か。
仕方ねえなあ。心の中で呟いて、ぱりぱりと翼で頭を掻く。
そしてチビ助とガキ共の間にそっと割って入った。
「おう、あっしとチビ助はちょっと用事で寄ってかなきゃなんねえ所があるからよ。
オメー達は先に帰って、せんせに無事にこいつが見つかったこと伝えてやってくれねえか」
咄嗟に誰かさんみてえに尤もらしく出まかせ言って、あっしは「な?」とチビ助に同意を求めた。
チビ助は戸惑いながらも小さく頷く。
- 138 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/05/29(木) 06:09:00.06 ID:M0yGKsAc0.net
- そうなんだ。わかったー。チビ助ちゃんまたねー。
様々に言い残してガキ共はとりあえず納得した様子で、手を振って帰っていった。
まったく、とんだいらねえ苦労をさせられたもんだ。
ガキ共が去ってから、あっしは大きくくたびれたため息を吐く。
そんなあっしの尾羽を不意に小さな手が軽くきゅっと握った。
喋れねえなりに礼を伝えようとしたんだろうか。何となくあっしは察した。
不器用な野郎だ。へっ、とあっしは苦笑いを浮かべる。
――思いだせばあいつとの奇妙で微妙な何とも言えねえ信頼関係みてえなもんは
あそこから少しずつ芽生えていったのかもしれねえ。
さて、ガキ共に先に寄って行く所があるといった手前、真っ直ぐに帰るわけにもいかねえ。
このチビ助もひき連れてどうしたものかと考えていると、
空から見た時に丁度この辺りの近くに修練所があったことを思い出す。
ちょうどいい機会だ、コリンクの様子を見に行ってみようか。
- 139 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/05/31(土) 02:42:45.50 ID:ans8E2SZ0.net
- 乙です
明日か明後日にでも続きを書きたいです
- 140 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/06/02(月) 23:17:41.69 ID:Xyq/VwOv0.net
- 保守
- 141 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/06/04(水) 00:06:11.08 ID:9SmWHNvo0.net
- 明日の夜か深夜に投下します
- 142 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/06/05(木) 01:14:18.61 ID:SLLewjOr0.net
- あっしは空から見た光景を思い出しながら、雪道をやや南西向きに進む。
程なくして修練所の建物が見え、囲いの中から気合の入った掛け声が聞こえてくる。
「おー、やってんな。なあ、ちとコリンクの顔を見ていきてえんだがよ、そんぐらい付き合ってくれてもいいだろ」
あっしは振り返り、尾っぽを掴んだまま付いてくるチビ助に話し掛ける。
散々逃げ回って疲れたのか、やかましいガキ共の所に戻るよりゃマシと思ったのか、さしものチビも今度は大人しく頷く。
それを承知したもんとみて、あっしらは修練所の門を潜った。
門のすぐ脇にある、道場のような建物の中を覗くと、板敷の床に数匹のニューラが円座になっているのが見える。
「こんちわー……」
あっしが恐る恐る声を掛けると、ニューラ達は一斉に振り向いた。
「これはどうも、ヤミカラス殿。何か御用ですか?」
その中心にいた、教官と思しき覆面のニューラが一礼する。恐らく、会議の時にいた近衛隊の一員だろう。
奴らを通じてあっしらの話は里中に知れ渡ってると見え、周りにいた訓練生らしきニューラ達も従うようにお辞儀をする。
「いやあ、用って程のもんじゃねえが、今日からコリンクがここにいるって聞いてよ」
「はい、確かにこちらにおります。お会いになるのでしたら、ご案内致しますが」
そう言って教官は訓練生に何やら指示を出し、戸口にいるあっしらの方へ出向いてきた。
「いやいや、別に気ぃ使わねえでもいいや、あんたらの邪魔するつもりなんかねえんだ」
「いえ、迂闊に動かれるのは危険です。それに、貴方達には特別に計らうよう、頭領様から言付かっておりますので」
危険? 一体どういうこっちゃ? と首を傾げながらも、教官に案内され、あっしらは広場へ向かった。
- 143 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/06/05(木) 01:28:00.60 ID:SLLewjOr0.net
- 広場では幾つかの班に分かれ、一匹の教官に対して五、六匹の訓練生が付き、様々な特訓が繰り広げられている。
その中央では、赤と白の襷を掛けた訓練生達が向かい合い、班対抗の模擬戦が行われようとしていた。
「双方、掛かれ!」
合図と共に雄叫びが上がり、黒い影が疾風のように飛び交った。
激しく爪と爪がぶつかり合い、氷の礫が砕けて飛び散る。そこここから空を切るような鋭い音が響く。
とても訓練とは思えねえ程の凄まじい勢いに、思わず息を呑まれる。
「……すげえ迫力だな」
実際にその様子を目の当たりにして、ようやく危険だという意味が分かった。
確かに、うっかり近寄って巻き込まれでもしたら、怪我どころじゃ済まねえかもしれねえ。
「訓練といえど手は抜けません。どんなに修練したところで、実戦で生かされなければ意味がない、
生きるも死ぬも一瞬の判断だ、と、頭領様はご自身の経験から、様々な実践的訓練を編み出されました」
教官の話では、入所した志願者は成績次第で容赦なく振い落され、素質ありと見做された者だけが次の過程に進めるらしい。
更に、その上位者に課せられる最終試練に合格した者のみが、様々な特権を持つ近衛隊に入る資格が与えられるという。
こりゃあ、せんせみてえな虚弱体質じゃ到底無理だな……と、ふとあっしの脳裏に、あのぽわんとした笑顔が浮かぶ。
「ああ、あちらにおるようです」
教官が広場の隅を指差し、あっしははっと我に返ってその方向を見た。
ニューラ達の黒い毛並みに混じって一点、薄青色の上半身が見えた。コリンクだ。
奴は上級生らしきニューラと組手を行っているらしい。
だが、二足歩行のニューラと異なり、四足のコリンクは随分と勝手が違うように思えた。
- 144 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/06/05(木) 01:34:42.49 ID:SLLewjOr0.net
- 「何しろ、ニューラ族以外の者が入所したのは初めての事ですので、まだ対応が不十分なのです。
ですが、この里に住民が増え、あの者のように他種族の志願者も出てくれば、次第に充実していく事でしょう。
いずれは種族に拘らず、様々な能力を持つ混成部隊を編成するつもりだ、と頭領様は考えておられます」
恐らくその取っ掛かりを務めるのは、やはりマフラー野郎だという事になるんだろう。
教官は近くまであっしらを案内した後、その班の教官に何か言伝し、「それでは、後は良しなに」と言って去って行った。
そのまま、あっしとチビ助はコリンクの様子を眺めていた。
体高が低い分、下への攻撃は防いでいるが、上からの攻撃は真面に食らっちまう。何より、その素早さが段違いだ。
飛び上がって噛み付こうとするところを振り飛ばされ、何度も剥き出しの地面へと叩き付けられる。
だが、それでもコリンクは懸命に立ち上がり、バチバチと火花を散らして向かっていく――
――こんなガキが頑張ってるってえのに、あっしは何をやってんだ――
その姿に、あっしは柄にもなく心を打たれ、同時に胸がズキンと疼く。
「それまで! 暫し休息とする。号令があればすぐ集合するように! それでは退散!」
突然、ドォンと太鼓のような音が鳴り響き、教官達が一斉に手を上げる。
途端に訓練生達は嬌声を上げ、今までの真剣さがまるで嘘のように、きゃいきゃいとふざけ合いながら休憩所へ引き上げる。
はしゃぐのも無理はねえ。そいつらをよく見りゃ、どこかまだ幼さの残る、やはり耳の短けえメスばかりだ。
その集団の後を、コリンクがフラフラしながら歩いていく。
「……あ、ヤミカラスさん!」
ふとあっしらに気付いたのか、コリンクは慌ててこちらに近寄ってきた。
「おう、かなりキツそうだな。大丈夫か?」
「いえ、平気です。父さんの特訓も、同じくらい厳しかったから……」
コリンクはぶるぶると体を振って土埃を払い、にっこり笑いながらあっしの前に座った。
思えば、こいつと面と向かって口をきくのは初めての事だ。
デパートの地下じゃゲス犬供に邪魔され、そんな暇もなく連れて行かれちまったし、
昨夜はニャルマーとぴったりくっ付いていて離れず、あっし自身も話し掛けるような余裕がなかった。
- 145 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/06/05(木) 01:41:34.36 ID:SLLewjOr0.net
- 「ちょうど良かった。あなたに、ちゃんと謝らなきゃいけないと思ってたんだ」
そう言ってコリンクは真顔になり、居住まいを正した。
「ピカチュウさんから聞きました。ニャルマーと一緒に、苦労してここまで来たって。
僕のせいで、皆さんに迷惑を掛けてしまって……それなのに、あの時……疑ったりしてすいませんでした。
本当に、あなた達が助けてくれるなんて思わなかったから……」
コリンクは本気で済まなそうに頭を下げた。
「あー、そんな事、別に気にする必要なんかねえよ。あの状況じゃ仕方ねえだろ」
あっしは翼を振って恐縮するコリンクを宥めた。
ちと頑固で強がりなとこもあるが、自分の非は素直に認める、この潔さは嫌いじゃねえ。
やはり、いいとこの御曹子なんだろう。寺子屋のガキ共にはねえ、どこか品というか、育ちの良さみてえなモンを感じる。
まあ、由緒ある生まれという点じゃあの子ニューラも同様なんだから、結局は本人の資質といったところか。
同時に、こんな真面目な坊主を、テメーの野望の為に利用しようとするニャルマーを、ますます苦々しく思った。
だが、文句の一つも言ってやろうにも、そのアバズレの姿が一向に見当たらねえ。
「そういや、ニャルマーはどうした? 一緒に出たって聞いたんだがよ」
「僕が訓練を受けている間、彼女は集落の方で待ってる、と言ってたけど……会ってないですか?」
コリンクは首を傾げ、眉をひそめる。一瞬、その真ん丸い金色の眼が、微かに銀色に光ったような気がした。
「いや……だがまあ、行き違いにでもなったんだろうな」
そんな筈はねえ、と思いながらも、あっしはコリンクを心配させねえよう、そう適当に流した。
今の今まで、その集落をガキ共と一緒に虱潰しに回ってきたばかりだ。空から見たって、あの特徴的な尻尾で一目で分かる。
――あのアマ……ひょっとして、何か企んでいやがるのか――
昨日から薄々感じていたニャルマーへの蟠りが、あっしの中で次第に色濃くなっていった。
- 146 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2014/06/05(木) 04:21:01.85 ID:mX1JCRaX0.net
- 乙です
明日明後日辺りにでも続き書きます
- 147 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/06/08(日) 01:49:36.67 ID:DeawRZ8g0.net
- 保守
- 148 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2014/06/09(月) 00:56:29.12 ID:eBkDu0WM0.net
- 投下は明日の今くらい〜朝方に
- 149 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2014/06/10(火) 23:28:15.52 ID:0sJfbAc10.net
- すみません、事情により明日の夕方くらいに延期します
- 150 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2014/06/12(木) 07:13:03.77 ID:Eg8CeoE/0.net
- 「あの……?」
不意に黙ったあっしを不安げにコリンクは見つめる。
「ああ、いや――」
咄嗟に誤魔化す言葉を脳みそが練り上げる前に、
丁度よく訓練の再開を告げる太鼓の音が空気を震わせる。
「おっと、これ以上邪魔しちゃ悪いから俺様はそろそろ退散するぜ。
ま、あんまり気張りすぎて怪我しねぇように気ぃつけな」
これ幸いとあっしは話を切り上げ、羽をひらひらと振るってさっさと退散にかかる。
「はい! 頑張ります!」
背に受ける真っ直ぐな返事に少し心苦しい思いをしつつ、
あっしはチビ助と共に修練所を後にした。
門の外で雪原をぼんやりと眺めながら、
チビ連れでこれからどうしたものかと再びあっしは思案する。
そろそろ寺子屋に帰ってもいんじゃあねえかなんて考えながらチビ助の方を見やると、
何かを察した様子で首をぶんぶんと横に振るった。
ちぇ、参ったな。あっしは舌打つ。変に慈悲を見せずにあの時にさっさと
ガキ共に引渡しときゃあ良かったと少しばかり後悔した。
- 151 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2014/06/12(木) 07:14:05.37 ID:Eg8CeoE/0.net
- このまま強引に連れ帰ろうとしたって、あっしだけじゃあ骨が折れそうだ。
また隙を見て逃げ回られちゃあ堪ったもんじゃあない。
かと言ってこのままこんな雪原の中でボーっと突っ立ってたら具合が悪くなりそうだ。
いっそ頭領の屋敷に先に戻っていた方がいいのかも知れねえ。
あそこなら暖かいし、その内必ずマフラー野郎も帰って来るだろう。
「おう、じゃあ屋敷に一旦帰るぞ。あそこならガキ共に囲まれねえし、
寒い思いもしねえ。それならオメエも文句ねえだろ」
あっしが言うと、チビ助は目をこすりながらゆっくり頷いた。
「んだ? まさか眠ぃのか? おいおい、もう少し我慢してやがれよ」
また背負わされるなんて冗談じゃねえ。チビ助にそう釘を刺し、帰路を急ぐ。
――が、案の定チビ助は途中で力尽き、あっしは重荷を背にひいこら言いながら
涎を羽毛に垂らされねえか戦々恐々としつつ屋敷まで帰ることになった。
息も切れ切れで屋敷に戻ると出迎えてくれた女中の一匹に事情を説明して
眠りこけるチビ助をどこか適当な所に転がしておいてくれと預け、
疲れ切った様子のあっしの為に持って来てくれた水を一気に飲み干して
あっしは大きく一息を吐いた。
ゆっくりと息を整えながら、今は屋敷内の掃除に精を出している女中達を眺めていると、
その中に混ざって鼻歌交じりに燭台の埃を払い落としているニャルマーの姿を見つけ、
あっしは怪訝に眉を潜める。
- 152 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2014/06/14(土) 03:38:18.56 ID:m1dP3A7x0.net
- 明日明後日にでも続き書く
- 153 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/06/15(日) 23:10:24.72 ID:jp5SaarU0.net
- 保守
- 154 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2014/06/17(火) 00:23:30.08 ID:lFsXKUOd0.net
- 投下は明日の今くらいか明け方に
- 155 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2014/06/19(木) 03:54:42.88 ID:oSml2vKP0.net
- ごめんもう少し遅れる
今日の夕方〜夜くらいには投下したい
- 156 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2014/06/20(金) 06:09:32.51 ID:M9qUMcvp0.net
- 「何やってんだ、オメー」
近付いていって声をかけるとニャルマーはぴくりと手を止め、
あっしの顔をチラと見てまた燭台へと視線を戻した。
「何、って見ての通り屋敷の掃除だけど」
燭台を磨きながらニャルマーはおざなりに応える。
「んなもん見りゃわかんだよ。俺様が聞きてえのはオメーの大事なあのガキの御守りを
ほっぽり出してわざわざそんなことしてんだって話だ」
苛々として少し語調を荒げて言うと、ニャルマーは面倒そうに溜息をついて
燭台を拭く布巾をそっと畳んで置いた。
「……ここじゃあ邪魔になる。付いといで」
女中から視線が集まっている事に気付き、
あっしは言われるがまま仕方なく付いて行く。
人目の少ない中庭の隅まで来るとニャルマーは立ち止まり、
ぺろぺろと手を舐めて煤の付いた顔を洗い出す。
「『訓練が終わるまで集落で待ってる』んじゃあ無かったのかよ、おい?」
ヒゲの先までちんたら整えてから、ニャルマーはようやくゆっくりと口を開いた。
「……あいつに会って来たのかい。訓練なんて眺めてたって退屈だからねえ。
だったらその間、アタシにできる事をやっておこうと思ったのさ」
- 157 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2014/06/20(金) 06:10:32.50 ID:M9qUMcvp0.net
- 「退屈だぁ? コリンクの野郎、何度も地面に叩きつけられるような
思いしながら頑張ってんだぜ。皆を守れるぐれえ強くなって恩返ししてえなんて
いじらしい理由でよ。それをテメーは見守ってなくていいってのか」
カチンときてあっしは食って掛かる。
「何を熱くなってんのさ。それはそれは健気だねえ。
だけどそれが実現できるまで一体いつまでかかるのやら」
ふんとニャルマーは鼻で笑った。
「やっぱおかしいぜテメー。あっしやマフラー野郎を巻き込んで
あんだけ必死にあのガキを取り戻そうとしていた癖にどういう心変わりだ」
掴み掛かってやりたいのをあっしはぐっと堪える。
「例えば、そうだねぇ――がちがちの殻に閉じ篭った蛹の近くで
丸々太って美味そうな芋虫がノソノソと這っているのを見つけたらアンタはどうする?
苦労して蛹を抉じ開けようとしたり、孵るまで待ってるなんてしないだろうさ」
あっしの上嘴をぐいと押してニャルマーは言った。
- 158 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2014/06/22(日) 03:22:44.99 ID:A97SMavQ0.net
- 明日明後日辺りにでも続き書く
- 159 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2014/06/25(水) 01:05:33.32 ID:pROMzirh0.net
- 投下は明日の今位か明け方に
- 160 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/06/27(金) 02:44:05.12 ID:o6sgXVm/0.net
- 保守
- 161 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2014/06/28(土) 02:04:24.38 ID:ndGhuyPZ0.net
- あっしはこいつが以前に話していた”生業”ってやつを思い出し、
何をたくらんでやがるのか大体察する。
「テメー、あのガキから鞍替えして頭領に取り入るつもりか」
前足を払い除け、あっしは言った。
ご名答、とでも言いたげにニャルマーは不敵に微笑む。
「んなこと許されるとでも思ってんのかよ」
「ふふ、誰に許しを請う必要があるってんだい。
ここの頭領にゃもう正妻がいないんだろ? だったら何も構わないだろうさ。
これだけの規模の群れなんだ、その長に妾のひとりやふたり居たってさぁ……」
ニャルマーは前足をあっしの顎元にそっとずらしてさすりながら、
耳元に口を寄せて囁いた。吐息混じりの声があっしの鼓膜をゾクゾクとくすぐる。
「あのガキはどうなんだ。信じてるテメーに裏切られてよお」
「やけにあいつの肩持つねえ。あんたそんな人情溢れる鬱陶しい奴だっけ?
アタシにとっちゃどうでもいいことさ、もう。
この里に比べりゃレントラー共の群れなんて霞んで見える。
危険を冒してまであいつをシンオウに送り返すメリットなんて薄いんだよねえ」
「テメーって奴ぁ……!」
とんでもねえ、救いようのねえクソアマっぷりだ。真っ黒い腹ん中を隠す素振りが微塵もねえ。
女子供にゃなるべく手を上げるつもりはねえあっしも頭に血が昇りきって
ニャルマーに掴みかかった。
「そう熱くなんじゃないよ、チンピラ。
こんな雪の積もった人目のつかない場所でぐっすり眠りこけたくないだろう」
ニャルマーの瞳に怪しい光がぼんやりと宿る。
途端に一瞬意識が混濁してあっしは咄嗟にニャルマーから離れて目を背けた。
- 162 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2014/06/28(土) 02:05:15.98 ID:ndGhuyPZ0.net
- 「アタシにとやかく言う前にさあ。あんたはこれからこの里でどうしてくつもり?」
何事も無かったように体をぱたぱたと払い落としながらニャルマーは言った。
「ああ?」
不意をつく言葉にあっしはぎくりとした。
「最低でもこれから何ヶ月、いや下手すりゃ年単位でここに御厄介になるんだよ?
初めの数週間くらいはお客様として歓迎ムードかもしれないけれど、
なんにもできないガキじゃあるまいに大の大人がずっといつまでもヒマそーに
ブラブラしてたら白い目で見られるようになってくるだろうさ」
「ん、んなこたぁ俺様だってわかってんだよ」
まるで胸中を見透かされているような言動にたじろぎ、
あっしはどんどんと気勢を殺がれていく。
「そりゃ結構だね。ま、アタシはさっきあんたも見た通り女中として仕えて行くつもりだよ。
戦いじゃあ役に立てないけれど、お偉いさんのお世話や機嫌取りするのは得意だからね。
で、あんたは具体的にこの里にどう貢献してくのさ。ここまで来る道中見てても、
あんたの戦いぶりじゃ頭領様やネズミのニイさんの足を引っ張りそうだしね。
ロケット団の内情を多少知ってるっつったって持ち場だったアジトから逃げる案内すら
ニイさんに任せきりでろくにできなかったじゃあないのさ」
ぐ、と言葉が詰まり、何も言い返せずにあっしは嘴をわなわなとさせた。
「嘴に紅さしてアタシ達と一緒に働くかい? あはは、やだやだ気色悪い。
……なんにせよ悪いこたぁ言わない。アタシの邪魔をせずに口噤んで黙ってみてるこった。
そうしていたらうまく行った暁にゃあんたにもお零れくれてやるよ。
殆どニイさんの功労とはいえ、あんたにも多少の借りはあるからね。
――さてと、そろそろ仕事に戻らなきゃ。あんたは精々良い子にしてる事だね、アハハ!」
勝ち誇るように高笑いを残し、ニャルマーはあっしを置いて持ち場に戻っていった。
- 163 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/06/30(月) 00:58:33.00 ID:/YqGfCeX0.net
- 乙です
明日か明後日にでも続きを書きたいです
- 164 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/07/02(水) 20:21:41.17 ID:EkygjUsx0.net
- 保守
- 165 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/07/04(金) 00:37:56.96 ID:g+mhF1Zf0.net
- 明日の今頃か明け方までに投下します
- 166 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/07/05(土) 00:57:41.11 ID:89wR4a040.net
- ――「何て身勝手な奴だ! そんな酷い話ってあるか! オスの純情を一体何だと思ってるポチャ!!」
思わずいきり立ち、エンペルトはダン!と叩き付けるように杯を置いた。
「おっとっと、テーブルまで壊さねえで下せえよ。だから、そういう事の出来る奴だと言ったでやしょ。
ま、おめえさんなら、当然そう言うんじゃねえかと思ったけどな」
どうどう、と宥めるドンカラスに対し、気を落ち着かせるようにエンペルトは大きく息を吐いた。
「……ドンがあの女を近付けたがらない理由が、ようやく分かった。そんな邪な魂胆でここに潜り込み、
色仕掛けでボスに取り入って、のうのうと甘い汁を吸おうとするのを警戒しているんだな?」
さも穢らわしげにエンペルトは眉を顰め、吐き捨てるように言った。
「ああ、理由の一つはその通りでさぁ」
それを受けて、ドンカラスは承知したように頷く。
「だがまあ、ボスがソッチ方面にゃとんと興味がねえ方で良かったと思いやすぜ。
けどよ、ボスはそれで良くとも、他の連中に関しちゃ油断はできねえ。あのアマにとっちゃあ、
ビッパみてえなお調子モンを乗せるなんざ訳ねえし、あの鳥公や虫トカゲ野郎みてえに弱みに付け込むような真似もしやがる。
だが、一番危ねえのは、おめえさんのように普段は真面目な堅物、って奴なんだぜ?」
ドンカラスに釘を刺され、エンペルトはグッと嘴を引き締めた。
「……コリンクの坊主が、正にその典型みてえなもんだった。本当に真面目で、健気で、一途な奴でやした。
同じ年頃のクソネコや寺子屋のガキ共がじゃれ合って遊んでるって時分に、泥まみれの傷だらけんなって、
投げ飛ばされても叩き付けられても懸命に立ち上がってってよ。傍から見てて痛々しいぐれえだったぜ」
どこか懐かしそうに目を細めながら、ドンカラスは溜息を吐いた。
- 167 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/07/05(土) 01:00:26.66 ID:89wR4a040.net
- 「それも元はと言や、自分がニャルマーを守れなかった、ってな後悔が負い目になってたようなもんだった。
群れから離れてひとりぼっちだった自分に優しくしてくれた、いつも傍にいて支えてくれた彼女の為にも、
強くなりてえ、いや、ならなきゃいけねえ、って……自分が利用されてるとも知らねえでよぉ」
次第に蘇ってくる怒りの記憶に、ドンカラスは瘧のように体を震わせる。
「だのに、そんな切ねえ思いを、あの性悪女は容赦なく踏み躙り、あっさりと見捨てやがった。
いや、そんだけならまだいい……あのクソアマはてめえが招いた災いまで、何の罪もねえあいつに押し付けやがった。
裏切られてもなお信じようとしてたあいつを、てめえの身の可愛さに、燃え盛る地獄に突き落としやがった!
ちっぽけな蛹がでっけえ蝶になったかもしれねえ未来ってやつを、奴は捻り潰しやがったんだ!!」
燃えるような憤りにドンカラスは立ち上がり、バアン!と翼でテーブルを叩いた。
「ド、ドン、落ち着いて、落ち着いてくれ!」
今度はエンペルトの方がドンカラスを抑え、宥めるように背中を摩った。
ドンカラスはぜいぜいと肩で息をしながら、ドサッと椅子に凭れ掛かった。
「……ひょんな事からシンオウに辿り着いた時、あっしはあいつの家族――レントラーの群れを探そうとしやした。
せめて、あいつの親父さんに会って一言詫びてえ、おめえさんの倅は最後まで立派だった、と伝えてえ……そう思ってな」
- 168 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/07/05(土) 01:02:00.46 ID:89wR4a040.net
- 「それで、彼らには会えたのか?」
「いや……見知らぬ土地じゃ見当すら付かねえし、あっし自身が生きるに精一杯でよ、そんな余裕はありゃしなかった。
どうにか一角の地位を得てから、随分と行方を追ってはみたが……何せかなり昔の話だ、全く手掛かりが掴めねえ。
あの里みてえな隠れた場所に今でも居んのか、どっか別の土地に移っていっちまったのか、それとも……
ひょっとしたら、とっくの昔に滅んじまったのかもしれねえ……」
力無く呟くドンカラスに、エンペルトは慰めるように言った。
「ドンが彼に同情する気持ちはよく分かるよ。子どもだったとはいえ、同じオスとして当然の事だ。
だけど、原因はあの女なんだろう? ドンがそんなに責任を感じる事はないじゃないか」
だがドンカラスは目を伏せ、左右に首を振る。
「いいや、誰が何と言おうと、責任の一端はあっしにもあるんでさぁ。
もしあん時、あっしが戸惑ったりしてなけりゃ……最悪の事態は避けられたかもしれねえんだ」
自分の不甲斐なさを責めるように、ドンカラスは苦い杯を飲み干した――
- 169 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/07/05(土) 05:38:41.06 ID:bm+Wviv30.net
- 乙
明日明後日位にでも続き書く
- 170 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/07/08(火) 06:35:09.99 ID:dum1dAkS0.net
- 保守
- 171 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/07/09(水) 03:15:19.31 ID:6XivfPAp0.net
- 投下は明日の今くらい〜明け方に
- 172 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/07/11(金) 09:27:58.20 ID:w0as+IZz0.net
- あのアマが去った後もあっしはしばらくその場から動けねえでいた。
気にいらねえがあいつに言われたあっしの置かれている立場って奴は
まったくもってぐうの音も出ねえ程のドンピシャだ。
内側からチクチクと感じていたものを外からも思い切りぶっ刺され、
風船が割れるみてえに気力がすっかり吹き飛ばされちまった。
吐いた溜め息が嘲笑うようにゆらゆらと白い軌跡を残して消えていく。
さみぃな……。身に触れる空気の冷たさに体がぶるりと震える。
チビ助探しで飛びまわっていたせいか、腹が小さくぎゅうと鳴った。
全く情けねえ。木偶の坊みてえに役に多々ねえこの身でも、
しっかりといっちょ前に生きる為の要求をしやがる。
とりあえず屋敷ん中に戻っていよう。あっしは覚束無い足取りでもと来た道を辿った。
屋敷に帰ると掃除を終えたのか女中とニャルマー達の姿は既に無かった。
あのアマに顔を合わさずにすんで少しばかりホッとしている自分がまた惨めだ。
玄関広間には布団に寝かされて変わらずのんきに寝息を立てているチビ助と、
その傍らで寝顔を見守っているマフラー野郎の姿があった。
「やあ、おかえり」
あっしに気付いたマフラー野郎は片手を挙げていつもの笑顔で声を掛けてくる。
「オメーも帰ってきてたのか……」
「ああ。畑仕事はとりあえず一段落ついたからね。先生達に話は聞いたよ。
寺子屋から脱走したこいつを君が見つけてくれたんだって?
ありがとう。面倒をかけてすまなかったね」
- 173 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/07/11(金) 09:29:23.87 ID:w0as+IZz0.net
- 「いーよ、別に」
あっしは上の空で応える。チビ助を押し付けられた怒りや文句なんて
意気と一緒にさっぱり失せ切っていた。
こいつはいいよな。腕っ節は勿論、畑いじりなんて特技まであって。
なのに、あっしゃ……。比べたらまた胸が抉られる思いがして、深々と嘆息が漏れた。
「どうした、何かあったのかい?」
マフラー野郎はあっしの態度に不思議そうな顔をして尋ねてくる。
あっしの脳裏に、すぐさまニャルマーの事が浮ぶ。
こいつに奴の企みを話しておくべきだろうか。
だが同時に奴の言っていた『邪魔せずにいたらお零れをくれてやる』って言葉が、
あっしの弱った心を甘く手招いて戸惑わせる。
「……別に何もねえよ。飛び回らされて疲れちまっただけだ」
――一時の誘惑に負け、あっしはニャルマーの企みを話す機会を失った。
どうせ奴の企みなんてうまく行きっこねえって、その後もずっとなあなあにしちまった。
少々先の話になるが実際に奴ぁ頭領にもろくに相手にされちゃいないようだったし、
あっしも色々あって調子に乗っちまってたんだ。
だがよ、千里の堤も蟻の穴から……些細な切っ掛けが、でけえ災いを招く事もあるのさ。
- 174 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2014/07/13(日) 04:59:48.70 ID:MjhXK51O0.net
- 明日明後日にでも続き書く
- 175 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/07/15(火) 01:05:48.74 ID:Iud2TmZ00.net
- 保守
- 176 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2014/07/17(木) 02:52:33.36 ID:plQLFX/T0.net
- 続きは明日の今位か明け方に
- 177 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2014/07/19(土) 07:01:46.26 ID:ACA4CYK90.net
- 「そっか、それもそうだな。こいつと来たらチビの癖に結構すばしっこくて、
俺でも捕まえるのに苦労するくらいだから、はは。
重ね重ねごめんよ。まったく、こいつには後でちゃんと言い聞かせておかないとな」
ひとまず納得した様子でマフラー野郎は朗らかに言った。
あっしは無言で頷いて、特に行く当てもなくそのまましばらくマフラー野郎達と
玄関広間で頭領が戻ってくるのを待っていた。
穏やかに過ごす親子の傍ら、あっしの方はどんよりと気が晴れないままだ。
溜め息を堪える度、肺が鉛のように重くなって感じる。
「……なあ」
耐え切れなくなったあっしはそっと口を開く。
「ん?」
「オメーも分かっちゃいるとは思うが俺様はロケット団に居たとはいえ、
下っ端の下っ端に扱き使われてたポケモンの一匹でしかねえ」
振り向いたマフラー野郎にあっしはそう続けた。
マフラー野郎はなんとなく予感していた様子で「ふむ」と頷いてこちらに体を向き直す。
「オメーらに伝えてやれる情報なんてガキの話す噂話みてえにぼんやりとしてて
使えたもんじゃねえだろうし、戦いにだってついていける気はしねえ……」
「それで?」
きょとんとしてマフラー野郎は首を傾げる。
何を当たり前のことを言ってるんだ、まるでそんな風にあっしには見えた。
「だからよ、俺様は何の役にも立てねえって事だ」
あっしはその態度にムッとして吐き捨てるように言う。丸っきりただの八つ当たりだ。
- 178 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2014/07/19(土) 07:02:37.12 ID:ACA4CYK90.net
- 息を荒げるあっしに対してマフラー野郎はふと一瞬どこか遠くを見るような目をして、
少し悲しげに微笑む。
「だったら、君はどうしたいんだ?」
不意に尋ね返されて、あっしは言葉に詰まる。
「ここから出て行きたいのかい?」
「それは……」
違う、あっしは目を逸らして俯く。
「君は俺よりずっと自由だ、身も心も。縛り付ける事はしないし、できない。
……まだまだ付き合いは短いが、俺は君を大切な友人のひとりだと思っている。
俺は君を見捨てたりしないし、スカー……頭領も無下にはしないだろう。後は全て君しだいだ」
「ん、んな事言われたってわかんねえよ、わかんねえだろうよ畜生!」
差し出されていた手に気付かずに突っぱねて、
その場から逃げ出すようにあっしは飛び立った――途端、すぐに何かにぶつかり、
あっしはべちんと地面に落ちる。
「……ゲホッゲホ。ってえじゃねえか。いきなり飛び出してくるんじゃあねえ。
俺ぁ急には止まれねえんだよ」
痛みを堪えながら顔を上げてその声の方をを見ると、
みぞおちの辺りをさすりながら起き上がろうとする頭領の姿があった。
「ったく、なあに楽しそうにはしゃいでやがったんだぁ?
ここじゃ廊下は静かに歩かねえと怖い隊長さんに怒られるんだぜ?」
あっしの翼を掴んで助け起こし、頭領はニッと笑った。
「スカー。お義母様の方は大丈夫だったのか?」
マフラー野郎が尋ねると、頭領はちっちっと指を振る。
「この俺様を誰だと思ってえやがる。こちとら口八丁手八丁、頭でっかちフーディン共すら舌を巻く天下の伊達男スカー様よ。
問題ねえ、問題ねえ。オメーらが心配する必要なんざ微塵もねえってんだぁ、ヒャッハッハッ!」
どこぞから取り出した紅葉柄の扇子を広げ、頭領は豪快に笑い飛ばした。
- 179 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2014/07/22(火) 00:31:32.97 ID:Ua8qaCmT0.net
- 明日明後日辺りにでも続き書く
- 180 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/07/24(木) 01:20:14.67 ID:BbgZn+gr0.net
- 保守
- 181 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2014/07/25(金) 02:40:23.44 ID:3BNlMsGK0.net
- 投下は明日の今位か明け方に
- 182 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2014/07/27(日) 01:42:57.44 ID:jTmCwjxR0.net
- すまん、投下は今日の夕方〜夜くらいに変更で
- 183 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2014/07/28(月) 09:27:38.12 ID:M1UOzEbx0.net
- 「……そりゃめでたいな」
マフラー野郎は少し呆れたような目をして言う。
「長らく待たせて悪かったなぁ。んじゃ、早速お待ちかねの会議の再開と行こうぜ。
おい、隊長。必要な面子を集めてきな」
「はっ」
いつの間にか頭領の背後に影のように控えていた隊長は
命令を受けるやいなや瞬く間に再び姿を消す。
「そういえばあの子は?」
マフラー野郎は頭領の周りを見渡す。
そういえば姿が見当たらない子ニューラの事を言ってやがるんだろう。
「ん、ちょっと御義母様方に急遽御呼ばれよ。
適当に菓子なり茶なり喰い散らかしてその内帰ってくるだろうぜ」
「預けて平気なのか?」
懐疑的に尋ねるマフラー野郎に、頭領は頬をぽりぽりと掻いた。
「平気平気。よくある事だからよ。俺の方はあんまり気分よくねーが。
あいつだけはババア共も一応かわいいみてえでな。たまに招く席を設けさせろってごねるのさ。
その後はしばらく奴らの機嫌が少しばかり良くなるから助かる面もあんだが、
何だか出しに使ってるみてえで嫌だし、変なこと吹き込まれていやしねえか毎度心配だし……
ま、他でもない俺のガキだからその辺は大丈夫だろーけど」
- 184 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2014/07/28(月) 09:28:19.24 ID:M1UOzEbx0.net
- 「びっくりするほどお前にそっくりだものな、あの子」
溜息をつく頭領に、マフラー野郎は気を紛らわせるように少し話を逸らす。
「そうだろ? 最近は何だか俺の真似ばっかりしてやがってよぉ」
「微笑ましいじゃないか」
「へへ、まあな。ただ親としちゃあ、将来的にはもうちっと落ち着きを持って欲しいとこだが」
「母親に似ていくことを祈るしかないな」
「それ、どっちにしても気は強くなっちまうんだよなぁ……」
盛り上がる二匹を他所に、逃げる事すらできなかったあっしは気まずく時を過ごした――。
「……これは、どういうことだスカー。何かの冗談だろう?」
会議の席をもう一度見回して、マフラー野郎は表情を強張らせる。
「いいや、これで欠けることなく全員だ」
場に集まったのは頭領、マフラー野郎、隊長、新米と他の近衛隊のニューラが数匹。
あっしを含めても十にも満たない。
「説明しろ」
「御老公共との話し合いの末よ。襲撃の計画は勝手にしろ。
だが兵として使っていいのは俺の直属の内からこれだけ、
それ以上は里の守備を考え一切合切許さねえとの御達しだ」
言葉を失った様子でマフラー野郎は黙りこくる。
- 185 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2014/07/28(月) 09:29:01.91 ID:M1UOzEbx0.net
- 「ここで怖じ気付いて止めりゃ民の俺への信頼は幾らか薄らいじまうだろう。
このまま強行して襲撃が失敗しに終わっても同様。ついでに俺がくたばってくれりゃ万々歳。
それがババア共の腹積もりに違いねえ」
なんと卑劣な、隊のニューラが忌々しげにわなわなと畳に爪を立てた。
「だが、しかし、てめえら。何にも臆することも案ずることもねえ。
こちとらロケット団共全員と真正面から正々堂々一気に潰しあう気なんざ端からねえんだ。
必要なのは大人数じゃあなく少数の精鋭。直接拠点に忍び込んでの破壊工作……
俺達の得意とするところだったろうが。よもや忘れちゃいねえだろ、ネズミ」
頭領はマフラー野郎をびしりと指差して不敵に笑む。
暫し間を置き、マフラー野郎は諦めたように、あるいは覚悟を決めるように、息を吸う。
それからゆっくりと口を開いた。
「いいだろう。それで、まずはどこから攻めるつもりだ?」
「おう。それを決めんのにここでいよいよ重要になってきやがるのが、そいつよ」
頭領が今度はあっしの方へと指を向けた。
同時に視線も集って、蚊帳の外にいるつもりだったあっしは戸惑う。
- 186 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/07/30(水) 00:21:16.17 ID:5tCizAQ60.net
- 明日か明後日にでも続きを書きたいです
- 187 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/08/01(金) 03:47:34.27 ID:sqmx7ceG0.net
- 保守
- 188 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/08/01(金) 18:10:45.88 ID:L1+I/bQ40.net
-
http://fox.2ch.net/test/read.cgi/poverty/1406859368/l50
- 189 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/08/03(日) 00:37:13.35 ID:scPXvQRM0.net
- 明日の夜か深夜に投下します
- 190 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/08/04(月) 00:48:54.61 ID:YF831V6m0.net
- 「皆も知っての通り、こいつは元ロケット団だ。外からじゃ窺い知れねえような情報を持ってるに違えねえ。
そいつが、これからの行く末を決める指標になるってこった」
いきなり話題の中心に担ぎ出され、あっしは翼の下に嫌な汗が流れ、無意識に体が震えだす。
皆の期待や不安の入り混じった視線にもう居た堪れなくなり、あっしは思わずその場に平伏した。
「い……いや、無理だ……堪忍してくれ! 俺様のチンケな情報じゃ、何の助けにもならねえんだ!」
情けねえ、みっともねえのは分かっちゃいても、皆を納得させるような自信なんざ全くなかった。
あっしの一言が頭領達の命運を決め、ましてや、あのいけ好かねえババア共への沽券に関わるなら尚更だ。
「なーにブルってやがる、カラ公」
だが、頭領は平然とあっしの襟首を掴み、ぐいっと自分の傍らへ引き寄せた。
「心配すんな。そんな大それた事ぁ期待しちゃいねーよ。奴らを攻める糸口さえ見付かりゃそれでいーんだ。
てめーはただ、知ってる事を片っ端から並べ立ててくれりゃいい。それが使えるか使えねーかは、この俺様が判断する。
ただーし! 嘘吐いたら針千本ならぬ、礫千本ノックが待ってるぜ、ヒャッハッハッ!」
「ひいいいいっ……勘弁してくれえ!」
縮み上がるあっしの喉元に、ひやりとした凍気の塊が迫ってくる。
「そこまでだ、スカー。少し脅しが過ぎるぞ。そんな風に絞められちゃ、彼だって話すに話せなくなるだろう」
半ばあっしをからかって面白がってる頭領を、マフラー野郎が押し留める。
へーへー、と手を放す頭領を尻目に、マフラー野郎は溜息をつきながら、真面目な顔であっしに向き直った
「なあ、ヤミカラス……何でも試してみる前に諦めてしまう、その悪い癖は早く直した方がいいな。
君自身が役に立たない、と思っていても、他人に取っては物凄く価値のある事だってあるんだ。
それで君をどうこうしようって訳じゃない。思い付いた事を、何でもいいから口に出してみればいいさ」
「ん、んな事っつっても……」
そう言われても、どんなに無え頭を絞ったところで、浮かんでくるのはロクでもねえ思い出ばかりだ。
――淀んだ空気、手持ち共の愚痴、「商品」達の嘆き、並ぶ鉄格子、黒服共の与太話、薄暗えアジト……アジト?…………!
- 191 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/08/04(月) 00:55:19.22 ID:YF831V6m0.net
- その時、ふと、あっしの脳裏に何やら閃くモンがあった。
「……なあ……本当に、噂でも何でもいいのか……?」
「ああ、構わねえ。言ってみろ」
頭領達に促され、あっしはようやく、恐る恐る話を切り出した。
「……こりゃあ決定したって訳じゃねえし、まだ先の話だろうが……」
それは、ジョウト支部のアジト移転の噂だった。
支部の規模がまだそれ程でもなかった頃は、地の利がいいコガネシティは何かと都合が良かった。
だが、組織が徐々にでかくなって団員が増えるに従い、デパートの間借りだけでは色々と手狭になってきた。
それに今後、活動規模を拡大していくのを考えりゃ、常に人通りの絶えねえこの場所は、余りにも人目に立ち過ぎる。
そんな訳で、どこか目立たねえ場所に、本格的なアジトを建設しようじゃねえか、という話が団員の間に持ち上がっていた。
「ほーお? そいつぁ初耳だ。で、その予定地ってのがどこか分かるか?」
「ああ、中でも有力な候補は二つだ。一つは南のヒワダタウン。もう一つは北、こっからも近え所にあるチョウジタウンだ。
だが、チョウジの方でほぼ決まりだろう、てな話だ。そっちを押してんのが、ジョウト出身の幹部共らしいんでな」
「ん? どういう事だ? それと出身地と、何か関係があるのか?」
マフラー野郎は、意味が分からない、と言った様子で怪訝な顔をする。
――ああ、そうか。あっしにとっちゃ当たり前過ぎて気にもしてなかったが、いきなり言われちゃ分からねえかも知れねえ……
あっしはそう思い直し、まずは黒服共の事情を説明する。
「オメーはともかく、頭領さんなら聞いた事あるんじゃねえかと思うが……ロケット団の総本部ってのはカントーにある。
その他、他の地方や外国にまで活動拠点が幾つかあって、ジョウト支部もその中の一つに過ぎねえ。
その支部にゃ、勿論カントーから派遣されてきた奴もいるが、その土地の人間が団員に加わるケースも結構あるんだ。
だが、表向きはどうあれ、環境の違いってやつなのか、その両者の関係は最初っから雲行きの怪しいもんらしかった」
「ふーむ、黒服なんざどれも同じかと思ってたが……で、そんで、どうなったんだ?」
意外にも、頭領達は興味深そうに膝を乗り出してくる。あっしは少々気が楽になり、そのまま話を続ける。
- 192 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/08/04(月) 00:57:52.00 ID:YF831V6m0.net
- 「奴らの仲が決定的に拗れてきたのは、ジョウト出身の幹部が支部長に抜擢されてからだ。
確か、アポロとかいったか――まだほんの若造で、色の生っ白いスカした野郎だったが――
その支部長が大々的に人事改正に乗り出して、終いにゃ重要なポストの全てを、ジョウトの出身者だけで固めやがった。
ジョウトの人間ってのは概してプライドが高え上、どっかカントーの奴らを田舎者と見做しているキライがあってな。
当然、カントーから来た輩は面白くねえ。何せ奴らにゃ、自分達の方がロケット団の本流だ、ってな自負があるからよ」
「ははあ、そういう事か。それで分かった。このジョウトに於いては、地元出身の奴の方が発言権が強いんだな。
それにしても、そんな派閥争いなんてものは、どこの世界にでもあるんだな」
「ああ、そのおかげで、ジョウトもんとカントーもんじゃ、たとえ下っ端同士でも仲が良くねえ。
任務以外じゃほとんど口も利かねえし、時にゃお互いを出し抜こうと、足の引っ張り合いまでする始末だ。
俺様の元飼い主もカントーから流れてきた奴だったもんで、ジョウト連中の陰口は耳にオクタンができる程聞かされたぜ」
「ヒャハ! そりゃ面白え。そいつぁ随分と付け入る隙がありそうじゃねーか。
上手く利用すりゃ、こっちが手を出さずとも、勝手に共倒れしてくれるかもしれねえ、ってこった」
何かを企むように、頭領は赤い眼をキラリと光らせた。
「ま、そこんとこの手は追々考えるとして……ん? どしたネズミ?」
ふと顎に手を当て、何かを考え込むマフラー野郎に気が付き、頭領は声を掛ける。
「いや、ちょっと思い出した事があって……ひょっとしたらその移転の話、そんなに先の事じゃないかもしれない。
ヤミカラス、俺達がそのチョウジタウンを通った時、あの子が土産物屋の前で言っていた事を覚えてるか?」
- 193 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/08/04(月) 01:09:38.33 ID:YF831V6m0.net
- 土産物屋、と聞いて、あっしは反射的に饅頭の甘い香りを思い出し、ポンと翼を叩く。
「ああ、あのガ……若君様が、人間の婆さんに饅頭もらってノラとかクロとかボケとか呼ばれてるってヤツか?」
「はああー? あんにゃろー、脱走だけならまだしも、そんな野良猫みてーな真似までしくさってやがったのか?!
ババア共はともかく、商店街の連中や寺子屋のガキ共まで誑し込んで、ちゃっかりオヤツを巻き上げてるくせによぉ」
頭領は思わず溜息を吐き、口をへの字に曲げる。
「ははは、かつての誰かさんの手口そっくりじゃないか。後はもう、呑兵衛にだけはならないよう願うばかりだな。
でも、問題はそこじゃない」
頭領が渋ーい顔で睨むのを軽く流し、マフラー野郎はチッチッと指を振りながら先を続ける。
「あの店を売ってくれ、という人間がいるって話さ。あの時は、あんな田舎の地所を欲しがるなんて物好きもいるもんだ、
ぐらいに思って聞き流していたけど……もしかしたら、そいつらはロケット団だったんじゃないか?」
そっちはすっかり忘れていたが……その意外な結びつき付きに、あっしは思わず「あっ!」と声を上げた。
「無論、これは単なる俺のカンだけど。でも、もしあの町に黒服が現れたら、その計画は進行していると思って間違いないだろう」
そうは言っても、こいつのカンが馬鹿にできねえのは、もう重々経験済みだ。
「それに、俺達があれだけ騒ぎを起こしたんじゃ、奴らもあのデパートに居づらくなっているに違いない。
だとすれば、無理にでも計画を早めるかもしれない。それに加えて、あの執念深いヘルガーが乗じてくる可能性もある。
念の為、今のうちからでも、あの辺りに見張りを立てて置いた方がいいかもしれないな」
マフラー野郎がそう提案するのを受け、頭領も頷く。
「成程な、これで的が絞れてきたぜ。その移転計画を邪魔できりゃ、奴らに取っちゃかなりの痛手になる訳だ。
つーか黒服共め、俺達の目と鼻の先にそんなモンおっ立てようなんざ、まったくいい度胸してんじゃねーか。
こりゃあ見付け次第、ちぃーっと灸を据えてやらねーとな! ヒャーッハッハッハッハッ!」
- 194 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/08/05(火) 01:51:00.43 ID:qB8AMUcM0.net
- 明日明後日辺りにでも続き書く
- 195 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/08/07(木) 15:58:58.04 ID:R8oBhp3D0.net
- 保守
- 196 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/08/08(金) 03:36:53.16 ID:g6pvAwYL0.net
- 投下は明日の今位か明け方に
- 197 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/08/10(日) 12:08:56.79 ID:UEeveFa40.net
- ごめん投下は夜か深夜に
- 198 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/08/11(月) 03:00:32.17 ID:lh8zBQnq0.net
- http://pokemon-matome.net/articles/49782.html
ORASでミミロップがメガシンカでノーマル・格闘になるらしいw
ピカ生的にタイプ一致過ぎるw
- 199 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/08/11(月) 08:04:17.53 ID:8Prc25IO0.net
- 高笑いしながら上機嫌で頭領は扇子を扇ぐ。
一先ず難は逃れられたようであっしはホッと人知れず安堵した。
「んじゃあ、早速チョウジに向かう面子を決めるとするかい。
あまり多くで見に行ったって徒に目立つばかりで意味はねえ。
とりあえずこの中から班を二つに分けて見張りは交代交代に行なう」
気を入れ直す様に頭領は扇子を閉じて先端でトンと床を叩いた。
「まずは甲班、俺とネズミと隊のニューラから数名」
頭領がニューラ達の方を見やると、逸る様子で新米は手を挙げた。
「はい、はーい! 私めをぜひぜひ甲班のお供に!」
鼻息荒く新米は立候補する。
「オメーはまだまだ危なっかしいから隊長とセットだよ」
呆れた調子で突っぱねられ、新米はしゅんとして手を下げた。
「んで、乙班は隊長と新米と残りのニューラ、それとカラ公――」
頭領の口から転げ出た思いもよらない言葉にあっしの心臓は再び飛び上がる。
「いやいや、ちょっと待て、待ってくだせえ」
慌ててあっしが止めると、頭領は小うるさそうに顔を顰めた。
「あんだ? 一々やかましい野郎だな」
- 200 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/08/11(月) 08:05:39.09 ID:8Prc25IO0.net
- 「お、俺、いや、自分ぁ奴らの情報を話せばもう十分なはずじゃあねえんですかい?」
頭領は怪訝そうに肩眉を吊り上げる。
「なあに言ってやがる。貴重な飛べる戦力としても存分に当てにしているぜ」
あっしはぶるぶると取れそうなくらいに首を横に振るった。
「いや、いやいやいやいや、とても役に立てるような強さはねえです」
「ああん? 仮にも奴らに使われてた身なんだろうが?」
「そんなもん誰も来ないような倉庫の見張りをしていたくれえが精一杯で……」
手持ちだった時に積んだ戦いの経験なんて、
精々食べ物を盗みに忍び込んでくる痩せぎすのコラッタを追い払うくれえなもんだ。
「んー?」
頭領は唸りながら、真偽を確認するようにマフラー野郎へ目をやった。
「どうだろな」
マフラー野郎は首を傾げてはぐらかす。
道中、散々あっしの無様な姿を見ていただろうに、どういうつもりだ。
はっきりと役に立たないって言ってくれた方がこの場はよっぽど助かるってのに……!
あっしは恨めしくマフラー野郎を睨んだ。
- 201 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/08/11(月) 08:06:20.75 ID:8Prc25IO0.net
- 頭領は煮え切らない様子に苛立ったのかぱしんと扇子で畳を叩く。
「ああ、まだるっこしい! 決めたぜ、班割りは変更!
甲班はネズミと隊長と新米他ニューラ数名!」
やった、影で小さく新米がガッツポーズする。
「んで、乙班は俺と余ったニューラ。それからカラ公、オメーだ」
びしりとあっしに扇子を突き付けて頭領は言った。
「だから、無理……」
不平を漏らそうとするあっしの嘴を頭領は片手でぎゅうと押さえつけて無理矢理閉じる。
「そのやかましい口閉じて黙って聞いてろ。この里の頭領は俺だ。
里にある民も物も土地も形あるもの無いもの全て頭領の財産、この俺のもんだ。
それを使うも捨てるも守るも何もかも好き勝手にできるのはこの俺だけだ。
ここにいる限りオメーもその一部。
俺のものを役立たずだなんだ勝手に扱き下ろす事は許さねえ。
オメーの実力の程は俺がこの目で直接確かめてやる」
ニヤリと不敵に笑む頭領に、あっしはただ震えながら冷や汗を流すしかできなかった。
「そうびびんな。タマぁ付いてんだろ?
まだ本格的に奴らとやりあうわけじゃあねえ。たかだか見張りだ。
万が一何かあってもここに集めたのは精鋭ばかり。死ぬこたあねえよ」
- 202 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/08/11(月) 09:59:14.37 ID:8Prc25IO0.net
- >>198
特性肝っ玉もぴったりだな
- 203 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2014/08/14(木) 03:08:54.59 ID:xpoJbkvt0.net
- 明日明後日にでも続き書きます
- 204 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/08/16(土) 04:10:30.77 ID:tWsROci40.net
- 保守
- 205 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/08/16(土) 11:50:50.54 ID:4dEY0gr/0.net
-
http://fox.2ch.net/test/read.cgi/poverty/1408112348/l50
- 206 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2014/08/19(火) 01:21:43.75 ID:piSyr2vc0.net
- 投下は明日の今位か明け方にします
- 207 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2014/08/21(木) 14:21:27.31 ID:BXW/3oAJ0.net
- すみませんトラブルがあり中々書き込むことができませんでした
今日の夜には間に合わせたいです
- 208 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2014/08/22(金) 09:37:22.72 ID:ATek3jZ70.net
- 有無を言わされずあっしは巻き込まれ、隊長達により出発の準備は
迅速に進められていった。その間、頭領は胡坐をかいてどっしりと構え、
マフラー野郎は深く瞑想するように口を固く結び静かに目を閉じている。
あっしの方は落ち着かず手持ち無沙汰ではらはらと胸をざわつかせながら
その時をただ待たされていた。
隊長達は大きな袋を抱えて戻ってくると、
中から工房で見た奇妙な道具の数々を取り出して一匹一匹に振り分けていく。
準備も一段落していざ出発という時、隊長があっしとマフラー野郎の下にやって来て、
何かを差し出しながら言った。
「我らの一員として戦う以上、あなた方にもこれを身に付けて頂きたい」
そう事務的な態度で手渡されたのは隊長達も被っている黒い頭巾だ。
「おいおい、こいつらにゃあ別にそんなものいらねえだろ」
「恐れながら、これは近衛に代々伝わるしきたり。
この頭巾に込められているのは個を消し己を捨て影として主に付き従うという覚悟、
忠義の証でございます。この方々は余所者。ニューラとは姿形背格好もまるで違いますが、
であるからこそ同じ物を身に付け同族意識、団結力を高める事が必要かと存じます」
淡々と隊長に説かれ、頭領は聞き飽きている様子で耳をぱりぱりと掻く。
「だそうだ。ちょっと暑苦しいかもしれねえが、我慢してくれ」
諦めたように頭領は溜息と共に言った。
- 209 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2014/08/22(金) 09:40:21.76 ID:ATek3jZ70.net
- 「郷に入れば何とやらだ。そちらのやり方に従おう。少し放電の邪魔になりそうだが」
マフラー野郎は頭巾をすぽんと被り、てきぱきと耳を収める位置や首元を整える。
仕方なくあっしも頭巾に嘴を引っ掛けねえように気をつけながら頭を通し、
顔面に黒い幕を下ろした。ちょっと薄暗くなって感じるが、
幕越しでも周りの様子は思っていたよりもちゃんと見える。
「へっ、てめえら中々様になってるじゃねえか。じゃあ、支度もすんだところで
まずぁ乙班、俺とカラ公とニューラ共、出陣だ!」
「はっ!」
ニューラ達が勇ましく応じる中、片やあっしは弱々しく肩を落とした。
大勢の女中――その中にニャルマーの姿もあった――に見送られて屋敷を後にし、
頭領の後に続いて里の出口へと向かおうとしていた道すがら、
ガキ共を連れて屋敷の方に向かってくるせんせに出くわす。
「おう、先生とガキ共。ぞろぞろとまあ連れ立ってどうした?」
頭領が声をかけると、せんせはぺこりと礼をしガキ共も真似してそれに続く。
「これはこれは、頭領様。ネズミ様が今日は大事なご用事でお出かけすると
近衛隊の方に聞きましてー。チビ助ちゃんをお迎えにあがりましたのー」
「おお、そうか。ご苦労さん」
「頭領様達もこれからお出かけですかー?」
「その通り。ちぃと例の奴らの動きを探りになぁ――」
- 210 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2014/08/22(金) 09:41:43.30 ID:ATek3jZ70.net
- 頭領とセンセが話す間、あっしは何となく今の格好を見られたくなくて、
そっと頭領と近衛達の後ろの方で息を潜めていた。
「あれ? カラスのおにーちゃん? その格好、どうしたの?」
だが、ガキの一匹、シキジカの奴に目ざとく見つけられてしまう。
途端に連鎖するかのようにガキ共の注意が一斉にあっしへと向けられ、
わらわらと興味津々な顔が周りに集う。
「カラスのにーちゃん、このえ隊にはいったの?」
ガキの癖に厳ついツラした桃色の犬――確かブルーとか言ったか、
がわくわくした様子で尋ねてくる。
「いや、これは何つーか、ただの付き添いで……」
「すっげー! あの黒い悪いやつらと戦うんでしょ?」
「おにーちゃんっていがいと強かったんだー」
説明する暇も無く、ガキ共はやんやと勝手に盛り上がり出した。
「……かっこいい」
ヒメグマぼそりと言ってあっしに羨望の眼差しを向ける。
違うんだ、言いたくても今更言えるような雰囲気じゃあない。
ガキ共から集う純真無垢な憧れの目。あっしには突き刺さるように痛く感じた。
- 211 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2014/08/25(月) 02:45:34.67 ID:fR99FqPB0.net
- 明日明後日にでも続き書く
- 212 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2014/08/28(木) 02:50:21.77 ID:KnSqRm0i0.net
- 投下は明日の今位か明け方に
- 213 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/08/29(金) 16:13:55.97 ID:JULJH3HW0.net
- そういえば最近ピカチュウ一行を見てないなーと思って確認してみたら最後に出たのが11年の8月だった
- 214 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2014/08/30(土) 08:38:00.68 ID:T56rbdnK0.net
- 「ほらほらみんな、そろそろチビ助ちゃんを迎えに行きますよー。
あまり頭領様達のお邪魔になっちゃいけないしー」
「はーい」
せんせに言われて、ガキ共は少し名残惜しそうにあっしの周りを離れる。
「それでは頭領様、皆様方、お気をつけてー。お怪我等なさらぬようー」
「がんばってね!」
せんせ達が手を振って見送る。
「おうよ!」
頭領は威勢よく片手を上げて応え、
「ほら、オメーも」ともう片方の手であっしの翼を掴んで強引に振らせた。
「いいもんだろ。期待を集めるってえのはよ」
せんせ達から遠ざかって、頭領はニッとあっしに笑いかけた。
「はあ、まあ……」
あっしは空返事する。期待を励みに出来るなんてのは、
ちゃんとそれに応えられるだけの中身が備わっている時だけだ。
中身のねえ張りぼてじゃあただその重みに潰されるしかねえ。
自分から言い出したわけじゃねえとはいえ、ガキ共に嘘をついたような形になっちまった。
別にあんなガキ共になんて思われようが関係ねえ筈なのに……モヤモヤしたもんが胸に残る。
里の外に通じる真っ暗な道を通りながら、あっしの気分も依然暗中を彷徨う。
- 215 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2014/08/30(土) 08:39:05.93 ID:T56rbdnK0.net
- ――「おいおい、まさかこんなに早く尻尾を出してくれるたあな」
チョウジタウンを望める小高い丘の上で、遠眼鏡を覗きながら頭領はほくそ笑む。
「ネズミの言った通り、すぐにでも見張りに来ておいてよかったって所だな、ほれ」
頭領はあっしを引き寄せ、遠眼鏡を宛がって覗かせる。
「土産屋だ。黄土色した瓦の屋根の家。見てみろ」
言われるがまま土産物屋を探して見てみると、
その軒先で店主の婆さんと穏やかじゃあない雰囲気で
口論している如何にも怪しげなコートの二人組みの姿があった。
「荒事はしばらくねえだろうとは言っちまったが、
俺のガキが贔屓にしてるっていう店が目の前で脅かされてんのを
黙って見てんのはやっぱ面白くねえ……なあ?」
誰にでもなく尋ねる様に頭領は言う。
答えを聞くまでも無く次に取る行動は決まっている。そんな雰囲気だ。
ニューラ達もそれを分かっている様子で、爪を研ぎ準備を整えている。
「少しだけ遊んでやろうじゃあねえか」
頭領の口が大きく弧に歪んだ。
- 216 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/08/30(土) 18:28:21.38 ID:RYbuA60e0.net
- >>213
もう三年も経つのか…
月日が過ぎるの早いな
- 217 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/08/31(日) 10:12:37.39 ID:uHOkWEMfI.net
- 保守
- 218 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/09/01(月) 19:22:58.00 ID:3dOxgGV+I.net
- ほしゅ
- 219 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2014/09/02(火) 01:49:01.70 ID:JGmeoKws0.net
- 明日明後日辺りにでも続き書く
- 220 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/09/03(水) 07:05:20.13 ID:SxSGVLZ+I.net
- 保守
- 221 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2014/09/04(木) 03:42:19.46 ID:CfurFY+G0.net
- 投下は明日の今ぐらいか明け方に
- 222 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/09/05(金) 23:23:36.40 ID:UWlWn8V+0.net
- 保守
- 223 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2014/09/06(土) 12:16:03.78 ID:/wvVw3Yv0.net
- 「ちょっと待て、待ってくだせえ! それじゃ俺ぁ一体どうしたら……」
戸惑うあっしを頭領は一瞥し、ちょいちょいと爪で招き寄せる。
首を傾げながら誘われるがままあっしは頭領の傍に近寄った。
途端、首根っこをギュッと掴まれ、頭領の脇に抱え上げられる。
あっしの脳裏に嫌な予感が過ぎった。前にもこんなことがあったような……。
頭領が白い冷気が漏れ出す拳を地面に叩き付けると、
びきびきと音を立てながら瞬く間に厚い氷の壁が目の前に出来上がった。
頭領は思い切り氷の壁を蹴り付けて根元から折ると、
そのままの勢いでつるつると斜面の方へと滑っていく氷をあっしを抱えたまま追いかけていく。
「ニューラ共は町の傍で待機だ! 俺とこいつで奴らを誘き寄せる!」
「はっ!」
頭領は駆けながら鉢金付きの頭巾を取り出して被り、
斜面を滑り出す氷の板へと飛び乗った。
この強引勝手にあぶねえ事に巻き込んでくるこの感じ――!
「ヒャハハ! 行くぜえええ!」
「うああああああああ――……!」
あの野郎に、マフラー野郎にそっくりだ。
- 224 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2014/09/06(土) 12:16:55.96 ID:/wvVw3Yv0.net
- 氷の板はどんどんと斜面で加速し、目の前には次々と岩や木々が迫る。
それを頭領は巧みな板捌きでかわして滑り降りていった。
あっしはもう悲鳴を上げるような余裕もなく、片腕に抱え込まれて逃げる事も出来ず、
嘴を噛み締めて体を強張らせていた。
順調に、このまま何事も無く下まで降りてくれ……あっしの願いも虚しく、
前方に避けられようのない障害、崖にも近いような大きな段差が迫っていた。
しかし、頭領は一切速度を緩める様子はなく、
迷うことなく崖際にある少し突き出した岩――突き出し方が、
スキージャンプのジャンプ台代わりにでも出来そうな丁度いい反り具合だ――
の方へと向かっていく。
既にあっしの中ではこれから頭領が何をするつもりなのか大体察しがついていた。
あの野郎に思考が似ているなら、これからやることは一つ。
あっしをわざわざ強引に抱えて連れて来た理由もそれだ。
ジャンプ台に近付き、頭領は脇に抱えていたあっしを頭上に掲げて両足をしっかりと掴む。
ああ……やっぱり――。
反りに合わせて板は大きく宙へ飛び出し、板を蹴って頭領は更に高く跳ぶ。
「っしゃあ! 一緒に落ちたくなきゃ必死に羽ばたけ、カラ公! 目標、土産屋!」
類は友を呼ぶ、って奴か。
- 225 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/09/08(月) 00:03:00.15 ID:S9YDcASqI.net
- ☆ゅ
- 226 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/09/08(月) 03:33:40.69 ID:UEmIKyon0.net
- 明日か明後日にでも続きを書きたいです
- 227 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/09/10(水) 07:59:36.75 ID:HejBMNBdI.net
- hosyu
- 228 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/09/12(金) 00:29:30.54 ID:FlPGAcFs0.net
- 明日の夜か明け方には投下します
- 229 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/09/14(日) 05:46:56.99 ID:DmGHBTaB0.net
- すいません、ちと立て込んでて遅れてます
夜頃には投下します
- 230 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/09/15(月) 06:46:32.54 ID:wJiUV/ekI.net
- 捕手
- 231 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/09/15(月) 23:17:47.71 ID:T+thQUJ60.net
- 宙に投げ出されたあっしと頭領は、そのまま放物線を描きながら土産屋の方角へ向かって行く。
だがその途中、急に引力に引っ張られるように、あっしの体がガクンと沈んだ。
あっしは懸命に体制を整えようとジタバタしたが、その甲斐もなく、急激に高度は落ちていく。
――このままじゃ墜落しちまう――
「おいコラ! 誰が突進しろっつった! 氷漬けにすっぞクソッタレ!!」
「ひ――――――――!!」
――んな事になったららタダじゃ済まねえ――!!!
頭領の怒声を受け、あっしは無我夢中で翼をバタつかせ、死に物狂いで落下を食い止めようともがく。
屋根瓦の波が目の前まで迫った時、ようやく風の流れを掴んだあっしは、縋るように翼に力を込めて羽ばたいた。
その瞬間――旋風が巻き起こり、スレスレで激突を避けたあっしらは、跳ね上がるように真っ直ぐ上昇した。
「ひゅー……アブねえアブねえ。おい、随分とスリル満点にしてくれるじゃねーか」
そう皮肉っぽく言いながらも、頭領はまだまだ余裕の表情で周囲を眺める。
「おー、絶景かな絶景かな。空からの眺めってやつぁ堪えられねえな。いくら俺様でも、こればっかりは自力じゃ無理だからよ。
よーし、その調子だカラ公、このまま奴らの上を飛び回れ!」
「わ……わっかりやしたあああ!」
あっしは大きく迂回し、土産屋の屋根の上をぐるぐると旋回した。
何度か飛び回るうちにどうにかコツみてえなもんを覚え、飛び方も安定してきたあっしは、ふと下を眺めてみる。
「な……何だありゃ……?」
「ポケモン……だよな?」
いきなり頭上に現れた異様な物体に人間共は口論も忘れ、二人組はおろか婆さんまでが呆気に取られ、
口をポカンと開けて上を眺めている。
- 232 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/09/15(月) 23:21:45.59 ID:T+thQUJ60.net
- 「よし、俺はちとチョッカイかけてくっから、テメーはこのまま奴らの目を引き付けてろ。
俺が合図したら東へ飛んで、そのまま町外れへ向かえ。いいな?」
「へ、へえ、承知しやした」
頭領は屋根の死角に入るとあっしの足を離してパッと飛び降り、素早く土産屋の裏手へと滑り降りた。
あっしは言われた通り、そのまま土産屋の上空を飛び続ける。
「何だ、カラスか?」
「バカ言うな、覆面してるカラスなんて聞いた事ねえぞ」
首を傾げる奴らのアホ面が可笑しくなり、あっしは奴らの頭上ぎりぎりまでヒューンとダイブした。
「うわわっ!」
「ひええええ!」
――何でえ、人間なんて、普段は威張りくさって踏ん反り返ってるクセに、いざとなりゃ大した事ぁねえじゃねえか。
奴らが首を竦めてビビる様に、あっしは腹立たしさと共に、妙な自信を覚え始めた。
気が大きくなったあっしは蹴爪を広げ、カアカア喚きながら逃げ惑う奴らを追い立てた。
「あんれまあ……こりゃどうなっとるのけ……?」
婆さんはひゅーひゅー息を吐きながら、訳も分からずただ成り行きを眺めていた。
その隙に、頭領はそっと二人組の背後に近付き、コートの襟元にストンストンと何かを投げ入れる。
次の瞬間、パパパパパンッ! と激しい音が炸裂し、閃光が奴らの背中で弾けた。
「ひっ……ひぃいいいいいいい! いででででででっ!」
「ぎゃあああああ! なっ……何じゃこりゃああああああ!」
二人は悲鳴を上げながら、まるで陸に上げられたコイキングみてえに無様に跳ね回った。
- 233 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/09/15(月) 23:24:26.33 ID:T+thQUJ60.net
- 「ヒャッハッハッ! どーだ、俺様考案『かんしゃくだま』! ザマーみろマヌケ共!」
頭領は腹を抱えて大声で笑いながら、地べたをゴロゴロ転げ回る。
「……んな事までして大丈夫で?」
「なーに、コケオドシ程度のもんだから殺傷力はねえよ。ま、ちっとぐれー痕は残るがな。さ、テメーは先行っていいぜ!」
頭領が手を振り上げたのを潮に、あっしは体を翻して東へと飛んだ。
「ち、畜生! おい、こっちは後回しだ! あいつらを何とかしねえと埒が明かねえ!」
「おう! また来るぜ婆さん。安全な老後を送りたいなら、もっと利口になるんだな!」
茫然と立ち尽くす婆さんを後に、怒りで顔をマグカルゴより真っ赤にした二人組は、笑いながら飛び跳ねる頭領に襲い掛かる。
だが頭領は二人の脇を風のように擦り抜け、あっという間に町外れへ向かって走り去っていく。
「ヒャッハッハッ! 来れるもんなら来てみやがれ! アンヨは上手、オツムテンテン、お尻ペンペン!」
途中、クルリと振り向いた頭領は、奴らを小馬鹿にするように自らの尻を叩く。
「ぐぬぬ……! ポケモンの分際で人間様をおちょくりやがって!」
「くっそー! とっ捕まえて痛い目見せてやる!!」
二人組は頭領を追い掛けながら、ボロボロに破けたコートを脱ぎ捨てた。
奴らがその下に着込んでいたのは、大きく「R」の赤文字が描かれた黒のツナギ……!
- 234 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/09/16(火) 05:52:23.62 ID:2hFTj6mV0.net
- 明日明後日辺りにでも続き書く
- 235 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/09/16(火) 07:01:31.28 ID:2wfspOPVI.net
- 職人さん
乙です!
- 236 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/09/18(木) 22:04:10.68 ID:vx4sBt2hI.net
- 保守
- 237 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/09/20(土) 01:22:51.01 ID:jU8s4o940.net
- 投下は明日の今位か明け方に
- 238 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/09/21(日) 07:00:16.11 ID:5etl4ZYMI.net
- 保守
- 239 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/09/22(月) 08:07:19.16 ID:chXAB/ElI.net
- hosyu
- 240 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/09/22(月) 08:33:04.61 ID:w+svEN4Q0.net
- ごめん投下は今日の深夜に変更で
- 241 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/09/22(月) 20:30:51.35 ID:chXAB/ElI.net
- そんなに焦らずとも職人さんの満足いくようにお願いします
- 242 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/09/23(火) 13:34:36.58 ID:RPA0IDwZ0.net
- 間違いようがねえ、ロケット団員の証。マフラー野郎の予見していた通りだ。
奴ら、本当に現れやがった。
団員達に追いかけられながら頭領は町外れの茂み近くまで来ると、
あっしに向けて『来い』と腕を振るって合図し、茂みの中へと飛び込んだ。
二人組みが追いつく前にとあっしは大急ぎで降下してその後を追う。
『野郎、どこ行きやがった』
『見つけたらただじゃすまさねえぞ』
奴らの怒号を近くに感じながら、あっしは頭領の後ろに付いて草陰の中を
息を殺しながらじりじりと這うように進む。
一体、このままどのくらい行けばニューラ達が駆けつけてくれるのだろうか。
奴らがあっしらを追い詰める為にポケモンを解き放つ音が聞こえた。
団員の指示を受け、ポケモン達はがさがさと乱暴に草むらとあっしの心臓を揺さぶりだす。
「――ビビるな、もう少しだ……」
あっしの様子を察したのか頭領が声を潜めて言う。
あと少し、あと少し――あっしは自分に言い聞かせて焦りを抑えながら、
慎重に慎重に歩み続けようとした。
その時だ。あっしと頭領のちょうど間を遮るよう、
あっしの目の前すれすれにべちょりと音を立てて薄桃色の長い何かが振り下ろされる。
- 243 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/09/23(火) 13:36:25.06 ID:RPA0IDwZ0.net
- 何かを探るように”それ”はうねうねとあっしの目前で蠢いた。
それは何か生き物の大きな”舌”のようだった。
「ッ――!」
あっしは喉から心臓が飛び出そうになるのを嘴を思い切り噛み締めて堪える。
声を上げちゃ駄目だ。この舌の主は適当にあたりをつけて探ってるだけ、
あっしらの正確な位置に気付いたわけじゃねえ。
その証拠に舌は諦めたように揺れ動きながら帰っていこうとしている。
このままじっとしていれば居場所を悟られずにすむ。
だが、無常な事にうねる舌の先が偶然、平静を繋ぎ止めるあっしの顔面を
”べろり”と舐め上げる。
その感触は嫌に生暖かく、不快に湿っていて、覆面の黒幕越しでもとても生臭かった。
おぞ気が電流のように全身を駆け巡り、
「っひ、うえぇ――!!」
あっしの我慢はとうとう決壊した。
その瞬間、周りで草むらを探る音が一瞬しんと静まり返る。
そして、示し合わせたように一斉に団員とポケモン達はあっしがあげた悲鳴を目印に
こちらへと真っ直ぐ向かってくるのが分かった。
しまった――あっしの顔からみるみる血の気が引いていく。
- 244 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/09/23(火) 19:59:36.18 ID:KeXR4IU0I.net
- GJ!
- 245 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2014/09/25(木) 05:01:06.55 ID:grZFuuHa0.net
- 明日明後日にでも続き書きます
- 246 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/09/27(土) 02:39:09.97 ID:TvGZ9xEL0.net
- 保守
- 247 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2014/09/28(日) 03:39:06.72 ID:y6J1xgZq0.net
- 投下は明日の今ぐらいか明け方にします
- 248 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2014/09/30(火) 17:45:21.23 ID:2zNhlw440.net
- すみません急用により予定は深夜になります
- 249 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2014/10/01(水) 06:51:07.02 ID:d5ZXO8AU0.net
- 頭領は舌打ち一つして、顔の覆いに手を突っ込んで”ぴゅい”と合図を出す。
「もっと引き付けられりゃ楽に済んだってのに――。作戦変更、一旦集合だ」
あっしに告げると、頭領は追っ手に背を向け素早く駆け出した。
慌ててあっしもその後を追おうとする。が、急に足が縺れたようになって、
あっしはその場へとへたり込んでしまう。
起き上がろうとしても体がピリピリと痺れて立ち上がれない。声も上げられねえ。
腰が抜けた? まさか、マフラー野郎の無茶に散々付き合わされてきて
今更こんなところで、ありえねえ。
焦りながら、生臭い唾液が付いて呼吸に邪魔な覆面を引き剥がそうと翼で触れると、
翼にピリと軽い痺れが走った。
舌に舐められた時に付いたこの唾液、毒か何かが……。
はたと気づいた時にはもう遅く、すぐ背後でずしんと足音が響く。
恐る恐る這いずって振り返ってみれば、丸々と太ったピンクの巨体。
そいつから伸びる、高く高く振り翳された太く長い舌。
「う……」
悲鳴を上げ終わる間もなく、鈍器の如く重量感ある舌が勢いよく迫る光景を最後に、
あっしの意識は暗く遠退いた。
- 250 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2014/10/01(水) 06:52:21.49 ID:d5ZXO8AU0.net
- 「――う、うわあああ!」
出し切れなかった悲鳴の続きを上げて、あっしは分けも分からず飛び上がるように目覚めた。
荒れた呼吸を整えながら周りを見ると、驚いた様子で目を丸くするせんせと目が合う。
傍らの畳の上には桶が置かれ、片手には絞りかけで水が滴る手拭いが握られていた。
「はー、びっくりした。おはようございますー、カラスさん」
胸を撫で下ろして、せんせは目を細めて優しく微笑んだ。
「え、せんせ……? ここは、なんで……?」
混乱しながらあっしは尋ねる。
「無事に目覚められたようでよかったー……。女中さん達もお忙しくて手が空かないし、
子ども達も若様と遊びに行ってしまったので、
ちょうど手の空いていた私が介抱を引き受けたんです。
気を失ったカラスさんを近衛隊の方が担いで帰って時は心配しちゃいましたー」
ああ、そうか。あっしはあのデブっちょのベロベロ野郎に舌でぶん殴られて、
そのまま無様に気を失っちまったんだ。
「頭領さん達は?」
「任務の成果と、今後についての会議をされているみたいですよー。
始まって結構経つから、そろそろ終わる頃じゃないかしらー?」
せんせがそう言うと、廊下の方からずかずかと足音が近付いてきて、
部屋の襖が勢いよく開かれた。
「おう、目え覚ましてたか」
あっしの顔を見て、頭領は少し安心した様子で言った。
- 251 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/10/01(水) 20:46:39.35 ID:RqZuGK9Q0.net
- 7年前からずっと読ませて頂いています。
保管サイト様の更新が停止しているようですが、
ご迷惑でなければ新しく作っても問題ないでしょうか?
- 252 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/10/01(水) 21:35:55.42 ID:Nz2tOQZc0.net
- >>251
良いと思うよ
むしろお願いします
- 253 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/10/02(木) 00:04:37.34 ID:jte+Dg980.net
- ありがとうございます。
まだ追いついておらず第43章の途中ですが、
運営しているサイト内にて終わったところまで公開させて頂きました。
不具合などがあればご連絡頂けると助かります。
http://hikochans.com/life_of_pikachu/
- 254 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/10/02(木) 02:06:06.78 ID:hA4mX2jt0.net
- >>253
お疲れ様です
次スレを立てるときはテンプレにURLを加えておくよ
- 255 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/10/02(木) 02:45:56.93 ID:LQXzFVrp0.net
- 仕事早いw
丁度読み直したいと思ってたんで喜んで利用させて頂きます。
- 256 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/10/02(木) 22:13:26.62 ID:jte+Dg980.net
- >>254様 >>255様
ありがとうございます!追いつきました。
ピカ父の過去話が始まった所から44章、終わった所から45章にさせてもらいました。
書き手様、続きをわくわくしながら応援しています。
それでは失礼致します。
- 257 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2014/10/03(金) 02:23:10.33 ID:k2Al+W7M0.net
- 明日明後日にでも続き書く
>>256
お疲れさまです!
助かります
- 258 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2014/10/06(月) 01:38:25.71 ID:Y5+11Su/0.net
- 投下は明日の今ぐらいか朝方に
- 259 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2014/10/08(水) 13:15:32.12 ID:Nq9PoFXw0.net
- 「様子ぁどうだ。頭打って記憶ぶっ飛んだり馬鹿になっちゃいねえよな?」
あっしの傍に頭領はどすんと座り込んでせんせに尋ねる。
「大丈夫そうですよー。あ、桶のお水が少し温くなってきたので換えに行って来ますねー」
「悪ぃな、そうしてくれ」
頭領に会釈してせんせは桶を抱えそっと部屋を出て行った。
ふたりだけになって、あっしは視線を気まずく泳がせる。
やっぱりあっしがヘマした事をどやしに来たんだろうか。
無理矢理連れて行かれたとはいえ足を引っ張っちまったのは事実だ。
言葉の弾を込めるように頭領が深く息を吸う。
さあ、これから一体どんなカミナリが飛んでくるのか、
あっしはぐっと嘴を噛み締めて覚悟した。
「……今回はすまなかったなカラ公」
しかし、頭領の口から飛び出したのはばつが悪そうな謝罪の言葉だった。
「はえ?」
予想外すぎて、あっしは思わず素っ頓狂な声で聞き返す。
「隊長にこってり絞られちまってよぉ……ホント気が強ぇとこまでアイツに良く似てやがる――。
実力も分からぬ余所者を急に実戦に組み込むなどやはり無理があったんだってそりゃもうお冠だ。
ネズミが連れてきた奴だし、そこそこ出来そうに見えたんだが――」
- 260 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2014/10/08(水) 13:16:23.06 ID:Nq9PoFXw0.net
- はぁ、と頭領は疲れ果てた様子で溜息をつく。
「その、すいやせん……」
「オメーが謝るような事じゃあねえ。全部俺の判断ミスさ」
「あっしが倒れてから、任務の方はどうなって……?」
「ちと面倒をしたが、問題なく終わったよ。
奴らから幾らか今後の方針となるような手がかりも得られたし、
オメーは何も心配しなくていいぜ。
俺ももうオメーを無理矢理連れ出すような真似はしないからよ。
そもそも隊長がそんなこと許さねえだろうしな」
よっ、と頭領は重い腰を上げる。
「オメーの怪我が大ごとじゃないのが確認できてよかった。
後はまあ俺達の方で何とかするから、オメーは気にせずゆっくり養生してな」
そう優しく言い残し、頭領は部屋を去った。
しんと静まり返る部屋にあっしはひとりぽつんと取り残される。
期待を裏切っちまった、のか――。勝手にかけられていたものとはいえ、
下手に怒鳴られるよりもよっぽど胸に堪えるものがあった。
- 261 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/10/09(木) 01:16:10.83 ID:VnljTHw+0.net
- 乙です
- 262 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/10/11(土) 01:49:27.08 ID:M58HPNg50.net
- 明日明後日にでも続き書く
- 263 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/10/13(月) 02:04:47.45 ID:Bi+zq8Nl0.net
- 保守
- 264 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/10/14(火) 03:43:07.28 ID:kfn8a1uS0.net
- 投下は明日の今位か明け方に
- 265 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/10/16(木) 01:46:51.38 ID:/9ybjn0e0.net
- 保守
- 266 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/10/16(木) 06:32:50.96 ID:wY+teKOM0.net
- ごめん少し延期する
今日の夜か深夜くらいには投下します
- 267 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/10/17(金) 11:16:01.64 ID:TohVjsYZ0.net
- しばらく打ちひしがれて愕然とした後、途方に暮れて嘆息を漏らした。
どうすっかな、これから……。
布団に仰向けに倒れこんで、天井を眺めながら考える。
やっぱりあっしにゃあ荷が重かったじゃねえか。
だのに、あの頭領と来たらあっしに勝手に期待して、勝手にひっぱり連れて行って、
挙句の果てに勝手に失望してくれやがって。
ちぇ、と掛け布団の端を悔し紛れに蹴飛ばす。
無茶な斜面降りに重荷をぶら下げての強引な飛行、
仕舞いには馬鹿でけえ舌にぶん殴られるは、
随分とまあ無駄におっかねえ目に合わされたもんだ。
もうあんなの、こっちからありがたく願い下げだってんだ。
……だが、人間共を追い立てた時、あのえばり腐ってた団員共が
あっしの姿を見て情けねえ声を上げてびびってるのを見た瞬間にわいて来た、
あの妙な自信と手応え――。
トントン、と不意に襖を叩く音がした。
「は、はひ!?」
まさか頭領が何か言い忘れて戻ってきたのか、
たまげたあっしは飛び起きながら素っ頓狂な声でノックに答える。
「……? どうしましたー?」
襖を開けて現れたのは、頭領じゃなく桶を抱えたせんせだった。
畏まって座るあっしの姿に怪訝な顔で首を傾げる。
- 268 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/10/17(金) 11:16:42.63 ID:TohVjsYZ0.net
- 「なんだ、せんせか……」
あっしはホッと胸を撫で下ろして、座る体勢を崩した。
「頭領様はもう行かれたみたいですねー。次の任務のお話だったのかしら?
また色々はりきって皆さんが準備している近衛隊の方々を帰りがけに見かけましたからー」
「あ、ああ、まあ、そんなところさ」
せんせの問い掛けにあっしは目を逸らしがちに答えた。
「お怪我為されたばかりなのに、また近い内に出発だなんて、大変ですねー……」
少し心配そうにせんせは言う。
「え? いや、あっしはしばらく休んで、怪我の様子を見ておくよう言われたのさ。
全く、俺様は大丈夫だってえのによぉ。はええとこ大丈夫だって照明して、
復帰しねえとな、クハハ……」
実質クビを言い渡されたみてえなもんだってのに。
何となく言い出しづらくて、強がりの嘘をべらべらと勝手に口がのたまう。
「あら、そうなんですかー」
うーん、と何か考えるようにせんせは自分の頬に手を置く。
まさか嘘だと感づかれているんだろうか。
あっしは苦しい笑顔を取り繕いながら内心冷や冷やとする。
「あのー」
「は、はい!」
びくりとあっしは返事をする。
「折角のお休みをお邪魔するみたいで申し訳ないんですけど、
よろしかったらお暇な時にでも寺子屋に遊びに来て頂けませんかー?
子ども達、近衛隊のお仕事とお話に興味津々みたいなんですー。
みんなカラスさんにはもう慣れているみたいだし、きっと喜ぶわー」
- 269 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/10/19(日) 20:53:42.65 ID:2z/dBKuQ0.net
- 明日か明後日にでも続きを書きたいです
- 270 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/10/21(火) 21:35:20.37 ID:kwHzRKEU0.net
- 明日の夜ぐらいに投下します
- 271 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/10/22(水) 22:49:54.20 ID:NL8QlO2W0.net
- にっこり微笑むせんせに対して躊躇いを感じながらも、あっしは慌てて首を左右に振った。
「い、いいや……近衛隊のお仕事なんっつっても……入ったばっかでこのザマだからよぉ。
あいつらに聞かせられるような話なんて、何も……何にもねえよ……」
ガキ共のあどけない笑顔を思い浮かべ、あっしは余計に罪悪感に苛まれた。
だが、あいつらの期待になんて応えられねえ。適当に取り繕っても、いずれはボロが出て失望されるのがオチだ。
「そうですかー……」
せんせは残念そうに肩を落として項垂れ、部屋中に何となく気まずい空気が流れる。
どうにも落ち着かなくなり、この場をどう乗り切ろうか考えていた時、不意にせんせが顔を上げた。
「……ひょっとしてカラスさん、気になさってるんですかー?」
「えっ? ……な、な、何を?!」
不安そうに覗き込むせんせの顔がすぐ目の前まで近付き、あっしは思わずドギマギした。
「あなたが、元はロケット団のポケモンだった事です。子ども達のほとんどは、ロケット団によって連れ去られたり、
親を奪われたりしてますから、それを心苦しく思っているんじゃないかと思ってー……」
幸い、せんせの心配は見当外れなもんだったが、そう言われて、あっしはハッとする思いだった。
ガキ共の無邪気な様子につい忘れそうになるが、あいつらにしてみりゃロケット団は憎むべき仇だ。
そして、理由はどうあれ、あっしは奴らの片棒担ぎをやってたみてえなもんだ。
「……あいつらも、知ってるのか?」
「ええ、ここへ来るまでの事を、ネズミさんが皆に話してましたからー」
あのお節介野郎、どうせまたいらねえ事をべらべらと……あっしは心の中で舌打ちした。
「でも、誰もあなたを悪く思ったりしませんよー。ネズミさん達が助かったのはあなたのおかげだって言うし、
あなたが本当に悪い方だったら、子ども達があんな風に懐くはずありませんものー。
だってカラスさん、あなた自身が望んでロケット団に居た訳ではないでしょうー?」
- 272 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/10/22(水) 22:59:14.56 ID:NL8QlO2W0.net
- 「ああ、そんなん当たり前じゃねえか。そうなっちまったのも、たまたま奴らの組織で生まれちまったせいだ。
でなきゃ、誰が好き好んで、あんな悪党共の手先んなってコキ使われるかってんだ……!」
吐き捨てるようなあっしの言葉を、全て受け止めるようにせんせは深く頷く。
「よく分かります、その気持ち。私も、似たようなものですから……いいえ、同情なんかじゃありません。
下手に同情される事がどれだけ傷付くか……私自身、よく知っていますー」
せんせは訴え掛けるような真摯な表情で、真っ直ぐにあっしと向き合った。
「……私の家族は皆、幼い頃に亡くなって、残された私も虚弱ですぐ具合が悪くなり、何度も命に関わる病を患いました。
面倒を見てくれた集落の方々に迷惑を掛ける度、どうして皆みたいに普通に暮らす事ができないんだろう、
どうして自分が“呪い”を受けなきゃならなかったんだろう、って……これでも、昔は随分悩んだんですよー」
確かに、ニューラしかいねえこの閉ざされた世界で、ちょっと走っただけでぶっ倒れちまうようなか弱い体を抱え、
せんせがどんだけ肩身の狭え思いで生きてきたのか、想像するにゃ難くねえ。
「だから、先代様と頭領様から、救った子ども達の世話をして欲しい、と言われた時、最初はひどく戸惑いました。
非力で技もろくに使えない、ただの厄介者でしかない自分に、そんな大事が勤まる訳がない、と思いました。
でも、やはり御体の弱かった先代様から『他人の痛みの分からない者には任せる事はできない』と言われて……
それで、目からウロコが落ちたんですー。本当は自分にも、いえ、自分にしか出来ない事があるのに、
他と違うから、他より劣ってるから、って、何もせずに悲観ばかりして、諦めていただけだったんだってー」
そう一気に言い終ると、急にせんせは恐縮するように肩を竦め、ぺこりと頭を下げた。
「あ……ごめんなさい、ついどうでもいい話をしてしまってー。私の事は関係ないですねー」
「……いいや、そんな事ぁねえよ……」
お義理や世辞なんかではなく、あっしは本心からそう答えた。
せんせの話を聞くうちに、あっしの中に凝り固まっていた、擦れて捻じくれた黒い感情はいつの間にか氷解し、
妙に澄み切った、素直な心持ちだけが残っていた。
- 273 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2014/10/23(木) 17:27:32.41 ID:M/2eCe3h0.net
- 明日明後日にでも続き書く
- 274 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2014/10/26(日) 03:00:30.46 ID:ED6896i50.net
- 投下は明日の今位か明け方に
- 275 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2014/10/28(火) 07:03:40.71 ID:i5cwV23P0.net
- 夕方〜夜位に変更する
- 276 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2014/10/29(水) 11:05:20.36 ID:M2mv7HJP0.net
- 一息吸って、決意を込めてあっしは立ち上がる。
「少し用事を思い出した。……ガキ共には暇見つけてその内行くって言っといてくれ」
「はい、ありがとうございます。私もその時を楽しみに待ってますねー」
少しはにかんで、せんせは言った。
「お、おう」
ぎこちなく羽を振って、あっしは部屋を後にする。
向かうべきは一つ。足に力を入れて廊下を歩む。
「――んで、使い物になるまで鍛え上げて欲しいってか?」
「……へい」
謁見の間の畳に頭を擦り付けるような格好のままあっしは答えた。
頭領は肘置きに体を預けた格好のまま片手で扇子をくるくるさせながらうーんと唸る。
ひとしきり考えた後、頭領はぱんぱんと手を鳴らし「おい」と声を上げた。
すればすぐさま隊長が天井裏から頭領の背後へと降り立ち、
「御呼びでしょうか」と跪く。
「おうよ。ちょいと相談がな――」
頭領は隊長を招き寄せて耳打ちする。
- 277 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2014/10/29(水) 11:06:32.13 ID:M2mv7HJP0.net
- 「……成る程」
「修練所の席空いてたっけな?」
「充分とは申し難いかと。異種族への指導は件の子ども一名がいるだけでも、
未だ対応に追われている様子。加えて、我ら地に足を付け戦う方法は知れど、
翼は持ちあわせておりませぬ。この者を短期間で”使い物”へと導く事は
修練所では困難……いえ、不可能であると断言いたします」
「だよなぁ……」
頭領は頭をぱりぱりと掻いた。
「そこをどうか、どうかお願いしやす。
俺ぁ、あっしは正式に近衛隊で働かせて貰いてえんです。
そのためにゃ何が何でも、泥舐める思いしたって強くなる、強くなりてえ!」
あっしは改めて頭を下げて必死に食い下がる。
せんせと約束しちまった。ガキ共に近衛隊の話をしてやるって。
その為にはついた嘘を本物にしなきゃならねえ。何が何でも死に物狂いで、
嘘の自分の姿に追いつかなきゃならねえ。
「何が何でも?」
「へい!」
聞き返されて、あっしは顔上げ頭領の目を真っ直ぐに見ながら答えた。
しばらく睨みあった後、頭領は根負けしたように短く息をついてパチンと扇子を閉じる。
「わかった。そこまで言うんだったら面倒見てやろうじゃあねえか。この俺が直々によ」
- 278 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2014/10/31(金) 03:47:15.63 ID:lf3O9mQ50.net
- 明日明後日くらいにでも続き書く
- 279 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2014/11/03(月) 02:55:14.80 ID:QberQjdh0.net
- 投下は明日の今位か明け方に
- 280 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2014/11/06(木) 04:08:29.01 ID:o1oj6YPd0.net
- 「しかし、それでは――」
異議を唱えようとする隊長の口元を頭領は扇子でトンと押さえる。
「いいや、決めた。もう決めた。どうせ団員の奴らぁ、
浮き足立ってしばらくはチョウジら辺じゃあ悪さできねえだろうし、
警戒されちまっててこっちからも手ぇ出しにくい」
「そ、それじゃ……! ありがとうごぜえやす」
期待に胸を膨らませて礼を言うあっしを見下ろし、
頭領は耳から耳へと届きそうなほどに口を半月状に大きく歪ませた。
ぞく、とあっしの体に悪寒が走り、期待は一転して不安へと変わる。
「ほとぼりが冷める間の暇つぶしをちょうど探していたんだ、クク」
くつくつと笑う頭領の後ろで、隊長は片手で頭を抱えて首を微かに振るった。
――「う、うう……」
突然ドンカラスは大きく身震いして、翼で体をさすりだした。
顔は青ざめ、冷や汗が滝のように額と頬を伝う。
「どうした急に? 酔いが回りすぎたか?」
エンペルトはグラスに水を注いでそっと差し出してやる。
受け取るとドンカラスは水を流し込むように一気に飲み干し、ぜーぜーと肩を揺らした。
「大丈夫、大丈夫だ」
ふー、と一息ついて、落ち着きを取り戻した様子でドンカラスはグラスをゆっくりと置く。
「特訓ってえ名目で、今でも思い出すだけで身の毛がよだって震えちまうほど、
それはそれは死ぬほどひでえ目に合わされたもんだ。
話しているうちにまたひきつけ起こしちまいそうだからその内容の全部は言えねえが――」
- 281 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2014/11/06(木) 04:09:10.71 ID:o1oj6YPd0.net
- ――「んじゃ、目え逸らさずによぉく見とけよー」
数メートル先から頭領は片手を振り上げてにこやかにあっしに声をかける。
掲げられた手には刃物の如く鋭い氷の礫。もう片方の手にも既に何本も同じ物が用意してある。
「……んー……んんんー!」
勘弁してくれ! そう叫びたいが嘴に布を巻かれて唸り声にしかならない。
嘴だけじゃあないあっしは体を縄でぐるぐる巻きにされた上、
地面に突き立っている丸太の先に打ち付けられた板切れの中心に縛り付けられていた。
まるでダーツのマトみてえにだ。
「テメーは肝が小さすぎんだよ、カラ公」
掲げた手を頭領は素早く振り下ろす。
それに思わず反応してびくりとあっしが目を閉じた瞬間、
顔のすぐ横で”カツン”と木の板を穿つ乾いた音が響いた。
「目え閉じんな、しっかり飛んでくるのを見てろって言っただろうが。
いいか。多少の臆病さは生き残んのに大切だ。
だが、敵前で今みてえにビビッて目え閉じちまったり、
腰が抜けて動けなくなっちまったらそのまま無様に死ぬだけさ。
まずはテメーのビビリ根性、徹底的に叩き直す。何が何でもな、ヒャハハ!」
二本、三本、四本……頭領が投げ放つ氷の礫はあっしの体の周りすれすれを
縫うように精確に次々突き立っていった。
- 282 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2014/11/08(土) 02:39:22.98 ID:K6gcaEJd0.net
- 明日明後日あたりにでも続き書きたいです
- 283 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2014/11/11(火) 04:52:59.30 ID:ZC3j0fAC0.net
- 投下は明日の今位には
- 284 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/11/12(水) 13:58:30.24 ID:vogL22H00.net
- 保守
- 285 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2014/11/13(木) 06:22:41.65 ID:m3TggV8l0.net
- すみません急用により遅れてます
今日の夜かあまり深夜にならないうちには投下したいです
- 286 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2014/11/14(金) 05:09:53.73 ID:g6wyf05Z0.net
- 何でこんな事になっちまったのか――頭が少しばかり前のことを走馬灯のように思い出す。
頭領の強引な決定を隊長は渋々ながらも了承してくれた。ただし、条件を付きでだ。
頭領様の手ほどきを受けたからといってそのまま近衛隊入りなんて特例は認められない。
入隊の前に正式な試験を受けてもらう。
なあなあで済ませようとしていた頭領を今度は隊長が押し切ってそう告げた。
未熟な腕で再び頭領様の手を煩わせるなど言語道断。
最低限足手まといにならず共に戦うに値する実力があると、
この目でしかと見定めるまで入隊は決して許しません。
強い調子であっしに釘を刺し、若君の護衛に戻らさせていただくと言い残して隊長は去った。
再び作戦が開始されるまでの間。猶予はあまり長く残されてはいない。
こりゃあ参ったね。少しばかり、いや、だいぶ荒っぽいのも必要だ。
困ったような仕草と口振りで、だがそれとは裏腹に内心楽しんでいる様子で呟く。
その後、しばらくして特訓を早速始めると頭領に呼び出され、
何をするのかもわからないままホイホイと付いて行って、
しばらくじっとして目を瞑っていろと言われるがままにしていた結果が――。
今のあっしのこのザマだ。
- 287 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2014/11/14(金) 05:12:46.25 ID:g6wyf05Z0.net
- あっしと板の境を狙い、ぎりぎり当たらねえようにはしてくれているのわかる。
しかし頭で分かってはいても、鋭い氷の刃が目にも止まらぬような速さで
自分に向かって飛んでくるのは吐きそうなほどおっかねえ。
だのに目を逸らさず見てろだなんてあのいかれた頭領様はのたまってくれる。
そうしている間にまた一本。もう何本目かもわからない刃が頭上へと突き立つ。
今まで瞬間移動でもしてきたみたいな速度で突き刺さってきていた礫の軌道が、
その時ほんの少しだけ見えた気がした。
さしもの頭領も投げ続けて少し疲れが見え始めたんだろうか?
「親父ー、オレもそれやりたーい」
縁側で隊長に寄りかかってくつろぎながら眺めてる子ニューラの奴が呑気にぬかす。
「駄目駄目、今やっと肩が温まってきたところなんだからよ」
すっぱりおねだりを断って、絶好調な様子の頭領の手からすかさずあっしに投げ放たれる礫。
――右。脳裏にそう浮かんだ瞬間。右頬紙一重の位置に礫が突き刺さる。
やっぱりだ。礫が描く煌く道筋が微かに見える。
頭領が疲れてきているんじゃあない。あっしの目が段々と慣れてきているんだ。
次は左。頭領は投げはなった直後に半ば無意識に軌道を目が捉え、
瞬間的に頭が突き刺さる大体の予測地点を割り出す。
刃が刺さったのは左頬すれすれ。また当たりだ。
その次は左足元。その次の次は右脇腹。次々と予測は当たる。
- 288 :名無しさん、君に決めた!:2014/11/15(土) 23:45:18.65 ID:zHl8iUk6a
- 久しぶりに来たらだいぶ更新されてる……!
乙です!!楽しみにしてます。
- 289 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/11/16(日) 04:07:12.67 ID:l1LnBJNk0.net
- 明日明後日辺りにでも続き書く
- 290 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/11/16(日) 10:28:47.20 ID:Y5O0+SkB0.net
- 韓国でピカチュウが大人気!数千人が殺到する事態に 学生の呉さん(19)「日本大好き」 [転載禁止]©2ch.net [277283116]
http://fox.2ch.net/test/read.cgi/poverty/1416064325/l50
- 291 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/11/18(火) 11:46:06.03 ID:sN7+1Hmk0.net
- 保守
- 292 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/11/19(水) 05:05:00.52 ID:aXjw04Fr0.net
- 投下は明日の今位に
- 293 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/11/21(金) 05:03:19.15 ID:LkH2y/xI0.net
- 「ちったぁ掴めて来たかよ、おい」
礫を休まず放りながら、頭領は笑う。
「俺もオメーも体が石や鉄で出来ているわけじゃあねえ。
一発いてえのを貰っちまったら下手すりゃお陀仏だ。
だから、目を逸らすな。相手の形、動き、癖をしっかり目に焼き付けろ」
白い冷気が漏れる口元にそっと手をやり礫を補充するとすかさず投げ放って頭領は言う。
「一度も掠りすらさせねえ覚悟で見切れ。死んじまったらおしまいだ。
だせえ思いしようがまずぁ無傷で生き残り続けろ。たっぷり経験つんで勘を研ぎすましゃ、
どんな野郎が相手でもぱっと見ただけで大体何してきやがるのかわかるようになってくる」
頭領の構えと手の動きからして、狙いは右頭上すれすれと感じて視線をやると同時、
どんぴしゃでその位置に礫が突き刺さった。
……あっしとしちゃあ非常に滅茶苦茶で納得がいかねえ方法だが、
確かに何となく効果は出ている気がする。
補充分も全て投げ終えたところで、頭領はふうと大きく息をついて額を拭った。
ようやくこの拷問じみた特訓だか、特訓に見せかけた拷問から解放されるんだろうか。
安堵しようとした矢先、頭領は縁側で暇そうにしている子ニューラを
ちょいちょいと手招きして呼び寄せた。
- 294 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/11/21(金) 05:04:01.36 ID:LkH2y/xI0.net
- ぼそぼそと何やら頭領が吹き込むと、子ニューラは目を輝かせてこっちを向く。
……おいおい、まさか。あからさまに嫌な予感がするが、
文句を言おうとしても嘴はグルグル巻きに封じられている。
「頭上あたりな。”一応”当てねえように注意するんだぞ?」
「わかってるってー。よーし、見てろよー」
ふんふん、と鼻息を荒くしながら、子ニューラの奴は両手を合わせてフーと息を吹き込み、
見るからに硬そうな拳大のごつごつした礫を作り出した。
「ビビルなよ、クソカラスー。オレだって、とーてきは得意だもんねー」
言って、子ニューラは礫を両手に抱えたまま片足を振り上げ、
随分と気合の入った投球フォームを取る。
おい、馬鹿やめろ。むー、むー、と塞がれた嘴が虚しく鳴る
頭領なら何歩か譲ってともかく、コイツのしでかす事は一切合財まるで信用ならねえ。
お構い無しと言った様子で礫を握った片手を大きく振りかぶり、投げ放たれる一投。
「あり?」
大きく作りすぎたのかものの見事に礫は子ニューラの手からつるりと少しずれ、
それでも尚こっちに飛んでこようとする礫の弾道は――こりゃ顔のど真ん中、直撃だ!
- 295 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2014/11/21(金) 05:05:03.85 ID:LkH2y/xI0.net
- すぐさま察知して、頭を必死に逸らす。
刹那、板が大きな音を立ててひび割れ、少しひしゃげた。
頭を逸らした拍子に嘴に巻かれた布が突き刺さっていた礫に擦れて切れ、自由になる。
「殺す気か馬鹿野郎ォ!」
その瞬間、溜まっていた鬱憤が噴火するように飛び出した。
「ありゃりゃ。わりー、わりー。ちょっと失敗しちゃった」
大して悪びれてない様子で子ニューラはぺこりと謝る。
「クク、フフ……どうだ、しっかり目を逸らさねえ大切さ、これで身に染みてわかったろ?
とりあえず一段階目はこれで合格としようか」
笑いを堪えきれない様子で拍手しながら、頭領はそう告げた。
「そいつぁ、ありがてぇこって……」
縄を解いて貰いながら今度こそ終わりかと安堵の息を吐こうとした矢先。
「次はどうしようかなー……楽しみ楽しみ、クク」
嬉しげな呟きが背後から聞こえて、苦い感覚と共に息を呑み戻した。
その後やらされた事も、無茶苦茶な事ばかりだった。
逆さに吊るされたまま飛んでくる物を避けさせられたり、
足を縛られたままひとりで坂を滑り下ろされたり、しまいにゃ甘い蜜を全身に塗りたくられて
スピアー達の縄張りに放り込まれたり他にも数え切れないほど様々……。
何度も死ぬ思いはしたが、度胸、咄嗟の逃げ足、土壇場で生き残る術は嫌でも身に付いた。
――それらをようやく乗り越え、いよいよ避けて逃げるだけじゃなく立ち向かう術を、
戦う技術をあっしは学ぶ事となった。
- 296 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/11/23(日) 00:13:59.32 ID:wXn+1PbY0.net
- 常々、「ピカ生のロゼって誰かに似てるな、誰だったっけかな?」と思っていたんだが、
「あー、ミツルじゃないかw」とORASプレイしてて気が付いたw
明日か明後日にでも続きを書きたいです
- 297 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/11/25(火) 03:45:59.53 ID:kMeOWRtZ0.net
- 保守
ついでにアートアカデミーで描いたあのお方
http://i.imgur.com/cXSRmYO.jpg
- 298 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/11/26(水) 20:57:37.66 ID:DeR/I9kX0.net
- 明日の夜か深夜に投下します
>>297
おお、かっちょいいw
- 299 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/11/29(土) 00:30:53.94 ID:ddgSc0Rk0.net
- ――「まずはテメーの強さを見とかねーとな。具体的な指導はそれからだ」
頭領はテストと称し、何本かの柱をおっ立てた庭先にあっしを先導した。
丸太や藁束、土塊や岩、金物、氷……その種類は様々だ。
「手段は何でも構わねえ、試しにこいつらをへし折ってみろ。反撃はしてこねえから、思い切ってぶつかって行け」
「へ、へい!」
あっしは意気込みながら飛び上がり、勢いをつけて柱に立ち向かい、嘴で突いたり翼で叩いたりし始めた。
藁束は一打ちでなぎ倒れ、太え丸太の柱なんかも意外と簡単にポキリと折れる。
土の柱は何度か羽ばたくと崩れ落ち、氷の柱も手こずったが何とか叩き割る事が出来た。
だが、岩や金属なんかにゃまるで歯が立たず、何度足掻いてもびくともしねえ。
どうにか掠り傷を付けるのがやっとの事で、攻撃してるあっしの方が擦り傷だらけになった。
「よーし、そこまでだ」
縁側で腕組みしながら眺めていた頭領が立ち上がり、倒れた柱や傷の様子を確かめる。
「ふーん、見掛けに寄らず、意外と力はありそうじゃねーか。だが、戦いってのは腕っぷしだけじゃねえからな。
ただ力押ししてるだけじゃ、いずれ頭打ちになっちまう。ちったぁココも使わねーとよ」
頭領はちょいちょい、と自分の頭を指差す。
「モノにゃ相性ってモンがある。無論、ポケモンにも相性がある。それを見極めて攻撃を繰り出さなきゃ、
勝てる勝負も勝てねえし、不利な条件に見えても一発逆転できる事もある。その為にゃ、持ち技は多けりゃ多い程いい。
だが、テメーはどーも、いい年こいてロクな技ぁ覚えちゃいねえみてーだな」
あっしは手前の努力不足や不真面目さを見透かされたようで、内心ギクリと冷や汗をかく。
「まーその鳥頭じゃ仕方もねえが。決め技をモノにするにゃ実戦で覚えんのが一番なんだが、今はそこまでの余裕はねえ。
それに、種族によって使える技ぁ違うし、俺が教えられるモンもあるが、それにだって限りがあるしな。
特に、空飛んでるよーな奴の技なんざ、俺にゃどーする事もできねーしよ」
- 300 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2014/11/29(土) 00:34:57.86 ID:ddgSc0Rk0.net
- 「ええ!? そ、そんな……だったら、どうすりゃいいんですかい?」
思わず動揺するあっしに、頭領はニカッと笑い掛ける。
「心配すんな、その為に、ちゃーんと特別講師を呼んである。おい、連れてきな」
頭領が指を鳴らすとスッと部下のニューラが現れ、裏庭へ続く木戸を開けた。
その後ろから、丸い帽子のようなもんを被った、白い犬みてえなポケモンがのそり、と入ってきた。
「おう、じーさん。大分元気そうじゃねーか」
「はい、それもこれも、全て頭領様のおかげですじゃ」
その年老いた犬ポケモンは抱えていた布包みを脇に置き、頭領に深々と頭を下げた。
「このじーさんはな、若え頃から世界中を巡り歩いてきたっつー旅の絵描きだ。病気で行き倒れてるとこを俺達が見付けてよ、
今はこの里で療養がてら働いて貰ってるって訳だ。ま、俺と似たよーな境遇だな」
「この屋敷の離れにてお世話になっております、ドーブルと申す者ですじゃ。以後、お見知り置き下され」
「へ、へえ、ども……」
挨拶を交わしながら、あっしは釈然としねえ思いで、そのドーブルと名乗る老ポケモンをつくづくと眺めた。
――こいつが講師……?
どこか間の抜けた面構えに、だらしなくダラリと垂れた舌。締りのねえ胴体から伸びた、不釣り合いに細い手足。
いやに太く長え尻尾の先は筆のような房になり、まだ乾き切らねえ絵の具がこびり付いていた。
どう見ても頼りになりそうにゃ思えねえ、全く風采の上がらねえしょぼくれた爺さんだ。
第一、今回の事とこの絵描きと、一体何の関係があるってんだ?
「仕事中に邪魔して悪ぃが、話は部下が伝えた通りだ。どーだ、何とかなりそうか?」
だが、あっしの懸念を余所に、頭領は爺さんに首尾を尋ねる。
「ふむ、この御仁ですか。成程、なるほど……」
今度は爺さんの方が一頻りあっしを見回し、ひとりごちながら頷いていた。
- 301 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2014/11/29(土) 05:41:15.26 ID:YPo9tNXp0.net
- 明日明後日にでも続き書く
- 302 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2014/12/03(水) 00:49:15.77 ID:WCtg50tK0.net
- 投下は明日の今位か明け方に
- 303 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2014/12/06(土) 05:10:23.44 ID:3+YNIdzj0.net
- すまん、ちょっと遅れます
今日の夜か深夜には投下する
- 304 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2014/12/07(日) 07:49:20.56 ID:ESghglWc0.net
- 「……――見えたッ!」
突如、爺さんは電流でも走ったように体を身震いさせ、
半分寝ぼけたような目をカッと見開いた。
「な、何だ……?」
爺さんのいきなりの豹変にあっしはたじろいで少し後ずさる。
締まりの無かった顔つきは一変して眉間には深々とした皺が刻まれ
目付きも射抜くような鋭い物へと変わり、
しょぼくれたボロ雑巾みてえだった尻尾の先からは
活火山の如くだくだくと虹色の体液が染み出している。
「おー、来た来た」
困惑するあっしをよそに頭領は爺さんの状態を把握している様子で言った。
あっしの様子なんてお構い無しに爺さんは脇に置いた布包みを逸る手つきで開け、
包まれていた巻物の一本を手に取って勢いよく地面に広げる。
それから体液の滴る己の尻尾をむんずと掴み、敷かれた白紙の巻物を獲物でも狙うように見据えた。
真剣での斬り合いでも始まる前のような緊張の糸をぴんと張り詰めた一拍の間の後、
「ちえりゃああああああー――――ッ!」
豪快な奇声と共に爺さんは尻尾を巻物に叩き付けた。
尾を掴む手はまるで剣豪のような卓越した腕捌きでびゅっびゅと音を立てて風を切り、
筆先が電光石火の速さで色とりどりの軌跡を残して白紙の上を縦横無尽駆け巡る。
- 305 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2014/12/07(日) 07:50:06.62 ID:ESghglWc0.net
- 「あ、あの、爺さん。こりゃどういう趣向で……?」
気迫と変貌振りに気圧されながらも、恐る恐るあっしは爺さんに声をかけた。
爺さんはぎろりと鋭い眼光をこちらに向け、尾でバチンとあっしの頭をひっ叩く。
「あ痛ッ! ちょ、いきなり何を」
「やかましい! 気が散る、黙っておれい!」
あっしを一喝し、再び爺さんは作業へと戻る。
先程までとはまるで別人だ。あっしは縮み上がって口を噤む。
絵の具を頭から滴らせるあっしを見て、頭領は堪えきれない様子でくつくつと笑った。
「へっへ、びびったろ? この爺さん、普段はまるで耄碌爺みてえ――」
そう言い掛けた頭領の顔面で勢いよく飛んできた絵の具の塊が弾ける。
「だぁれが耄碌ジジイだって? 若造めが!」
「――……だが、一度筆握ってスイッチが入りゃこの通りよ」
駆けつけたニューラが持ってきた手拭いで頭領は顔を拭いながら、
最早慣れきった様子で動じずに言った。
「……それで、これが一体あっしの技とどういう関係が……?」
また爺さんに怒鳴られねえよう声を潜めて頭領に尋ねる。
「まあ黙って見とけって。ぼそぼそ小煩えとまたぶっかけかまされちまうぞ」
鋭い視線を爺さんの方から感じ、あっしはこくこくと頷いて黙って成り行きを見守る事にした。
程なくして――。
「仕上がった――!」
誇らしげに声を上げ、爺さんは巻物を旗の如く高らかに掲げた。
- 306 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2014/12/09(火) 11:31:08.87 ID:ZQyIOGeF0.net
- 明日明後日にでも続き書く
- 307 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2014/12/12(金) 08:21:45.42 ID:nWBjYWml0.net
- 投下は明日の深夜か朝方に
- 308 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2014/12/14(日) 05:40:30.90 ID:3S9mOSri0.net
- 急用により今日の夜に延期で
- 309 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2014/12/15(月) 12:44:13.56 ID:tgkJ3kiC0.net
- 爺さんは巻物を両手でぴんと張って、あっしの眼前にずいと突きつけた。
「しかと刮目せよ」
「へ、へい……」
わけもわからず言われるままあっしは巻物に注目する。
そこに描かれていたのは今にも生きて動き出しそうな躍動感溢れるオニドリル達だ。
いや、よく見りゃ正確には”達”じゃあねえ。
複数描かれたオニドリルは流れるような一連の動作を描き表しているようだ。
宙で体と翼を横に少し捻って勢いをつけ、嘴を中心に体を回転させながら獲物に急降下――
眺めているだけで頭ん中でオニドリルの動きがまるで目の前で見てるみてえに再現される。
これなら何だか、あっしにも出来そうな気がする――!
脳内に閃きが走った。胸に奇妙な自信が沸々と沸いてくる。
「授けた技、早速試してみい」
びしと爺さんは柱の一つを尾で示す。
「おう!」
威勢よく応じ、あっしは宙へと羽ばたいて舞い上がった。
柱にじっと狙いを定め、脳裏にオニドリルの体捌きを思い起こす。
- 310 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2014/12/15(月) 12:44:55.66 ID:tgkJ3kiC0.net
- 体と翼を横に捩り、首から背筋を狙いに向けてぴんと真っ直ぐにして、
嘴を軸に勢いよく回転して突っ込む――!
視界が大地が世界が物凄い勢いでぐるんぐるん回る。
耳一杯に響くまるでドリルみてえに高く鋭い風を切る音。
視界は乱れに乱れ、耳も聞かず、自分でも己が周りがどうなってるのかわからねえ程だ。
だが、急降下する前に定めた狙いを信じて恐れずがむしゃらに回転し続けた。
嘴が何かにぶつかり、それを抉り砕く感触。誰かがヒューと歓声を上げる。
あっしは咄嗟に回転を止め、ブレーキをかけるように翼を扇いだ。
それでもなお勢いは殺しきれず、あっしは足で砂埃を上げながら滑るように地面に着地する。
で、出来た、決まった……!
ぱちぱちと拍手を受けて振り返ると、頭領は満足げに笑いながら粉々に砕けた柱の破片を
摘まんでぷらぷらとあっしに見せた。
何だかホッとしたような、成し遂げたような気持ちになって目が回るのも相まって
あっしはその場に仰向けにひっくり返った。
まさかあっしにこんなことが出来るなんて。自分でも驚くばかりだった。
いや、何よりすげえのは紙切れ一つに絵を描いただけであっしにここまでやらせたあの爺さんだ。
- 311 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2014/12/18(木) 03:58:41.47 ID:pL1sZ3MW0.net
- 明日明後日にでも続き書きたいです
- 312 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2014/12/21(日) 04:22:11.76 ID:nrXWA6qI0.net
- 明日の今位か昼前くらいには投下したいです
- 313 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/12/23(火) 14:36:42.14 ID:LtNR1kZt0.net
- 保守
- 314 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2014/12/24(水) 04:36:10.63 ID:nFdHU7030.net
- すみません、今日の夕方位には間に合わせます
- 315 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2014/12/25(木) 04:53:13.53 ID:w+YIpZag0.net
- 「爺さん、いや、ドーブルさん!」
最初に見たときはまるで耄碌爺にしか見えなかったなんて、
あっしの目はなんて濁っちまってたんだろう。
己を省みながらあっしは起き上がって爺さんの方へと向き直る。
「おみそれしやした。ぜひ、ぜひともこの調子であっしにどんどん新しい技を――」
しかし、逸るあっしの視線の先にあったのは、
いつの間にか用意された茶を腑抜けた面で啜る爺の姿だった。
さっきまでの覇気なんて影も形もねえ。思わずあっしはつんのめる。
「ほっほ、ワシも既に老いた身、申し訳ないが教えるのは一日一回までと決めておる。
欲を張らず授けた技をしっかりと己のものにできるよう精進なされ。
それに頭領様にお渡しする品の続きも描かにゃなりませんからの」
湯飲みを盆に置いて、よっこらしょと爺さんは立ち上がった。
「あんまり無理してくれなくてもいいんだぜ。俺ァ以前に描いてもらった先代の肖像で
十分すぎるほど満足してんだから」
頭領はぽりぽりと頬をかく。
「いやいや、まだまだ受けた恩に対して返したりませぬ。
それにあれの完成はワシの長年の夢でもありますからのお」
「そっか……。まああんまり無理しねえようにな。
一旦取り掛かりだすと寝食も忘れちまうって聞いたからよ」
「お心遣い感謝いたしますじゃ。またご用があればいつでもお呼び下され」
荷物を包みなおして抱えるとぺこりと会釈をし、
爺さんは少しばかり頼りない足取りで戻っていった。
- 316 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2014/12/25(木) 04:54:15.42 ID:w+YIpZag0.net
- 「さあて――」
仕切りなおすようにポンと頭領は手を合わせる。
「いやはや、すげえ技覚えさせてもらってありがとうごぜえやす。
これだけのことが出来るようになったんだ、隊長の鼻も明かせるんじゃねえですかい?」
自信満々、調子付いてあっしは言う。
頭領はハァ、と溜息をつき
「あいでッ!」
あっしの額にデコピンを強かに一発。
「調子に乗んな、たわけ。確かにでけえ一発は得た。
だからってそれだけで勝てるほど甘かねえ。何せ相手はオメーが得意げに
砕いて見せた棒切れと違って、ただじっと突っ立ってちゃくれねえんだ」
「う、つつ……んじゃあ、次はどうすりゃあ?」
額をさすりながらあっしは尋ねる。
「そうだな。次ぎぁいよいよ戦い方を仕込んでやるとするか。
骨の髄まで叩き込んでやる。悪タイプらしさって奴をよぉ」
クックック、頭領はいつにも増して意地悪く邪に笑った。
- 317 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2014/12/27(土) 04:41:04.78 ID:mTjdqvDU0.net
- 明日明後日ぐらいにでも続き書く
- 318 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2014/12/30(火) 06:23:46.69 ID:5Vt0x+2j0.net
- 保守
- 319 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2014/12/31(水) 04:01:07.89 ID:9mH6RtRN0.net
- 続きは明日の今位か明け方に
- 320 :名無しさん、君に決めた!:2015/01/02(金) 19:32:25.17 ID:TI8jgkQ7Q
- あけましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いします。
- 321 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2015/01/03(土) 05:40:57.93 ID:zniBaufl0.net
- あけましておめでとう
投下は今日の夕方〜夜位に遅れる
- 322 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2015/01/04(日) 11:53:46.47 ID:wvm+FJ6G0.net
- ――「おらおら、どうした。さっさと仕掛けて来な。日が暮れちまうぞ」
下から頭領が怒鳴り、煽る。
あっしは空からその姿を見下ろしながらどうしていいものか少し戸惑っていた。
「ほれほれ、この通り俺は手と自慢の爪は使えねえんだぜ? なーにビビってんだ?」
体の前でがっちりと縛られた両腕を頭領は胸を張って見せつける。
ハンデだと言う名目で、手合わせが始まる前にニューラにより縛られた頭領のその両腕。
余程縛る手際が悪かったのか、過剰なまでに包帯が巻きつけられて妙に膨らんでいた。
確かにあの状態じゃあ爪を使えないだろうし、得意の礫の投擲をすることも、
こっちの攻撃をろくに防ぐ事もできねえはずだ。
「こんなひでえ骨折でもしたみてーなアワレな状態の俺に、
一発でも攻撃を当てることが出来りゃオメーの勝ち。簡単だろーがよ、腰抜け野郎」
けらけらと余裕綽々な態度で頭領は挑発を続ける。
「ビードルの糞並にチンケな肝のテメーじゃ、近衛隊に認められるなんざ無理だな!
里のガキ共にさえ後ろ指差されて笑われらァ!」
いい加減カチンと来て、あっしは嘴を噛み締める。
「……焚き付けたのは頭領様、アンタだ。少しくれえ怪我しても許してくだせえよ」
ぐっと頭領を睨め付け、あっしは狙いを定める。
爺さんに技を教えて貰ってから、この手合わせが準備されるまでの期間、約一日半。
あっしは寝食の間すら惜しんで授かった技、ドリルくちばしを磨くことに励んだ。
万全の状態ならともかく、あんな風に腕を縛られてちゃいくら頭領が戦い慣れしてようと、
一発ぐれえ当てられるはずだ。
- 323 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2015/01/04(日) 11:54:49.66 ID:wvm+FJ6G0.net
- あっしは怒りに任せて気を奮い立たせ、ドリルくちばしを構える。
体と翼を捻って勢いをつけ、嘴を中心に回転――!
練習の甲斐あって、初めて使ったときみてえに技の威力に振り回されはしねえ。
回る視界の中でも頭領の位置、姿を冷静に捉え、一気に急降下した。
一直線に向かって行くあっしを見上げる頭領。
どう避けようとする。避けようとした方向を追って微調整できるようしっかり見張る。
だが、頭領は避ける素振りすら見せずに、
「ムキになっちゃって。ちょろいちょろい」ニヤリ笑う。
ぞく、と嫌な予感がした――時には遅かった。
頭領の両腕を縛る包帯の中から何か丸い物がポロと零れる。
即座に頭領はそれを足の甲で受け止め、あっしの方へぽいと蹴って寄越した。
一体何か確認する暇もなく、避ける事も敵わず、
眼前で球体は炎を吹き出して弾けた。
「――! あぢぃッ!」
堪らずあっしは回転を解いて、雪の上に転げる。
「あったけぇだろー、火炎玉はよ。懐炉にして持つにゃちと熱すぎるけどな、ククク」
悪ガキみてえに笑う頭領を、あっしは雪にまみれながら睨む。
「ちょ、攻撃しねえってさっきは言って……!」
非難するあっしを頭領は鼻で笑った。
「手と自慢の爪”は”使わないとは言ったが何も攻撃しねえなんざ一言も言ってねえぞぉ。
木偶の坊じゃあるめーし、頭に血ィ上らせて真っ直ぐ素直に向かってくる相手に
何もしねえ奴が居るかってえの」
「んな……! ひ、卑怯じゃねえですか!」
「分かってねえなー……。おら、もう降参か。文句があるならどんどんかかってこいよ」
- 324 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2015/01/04(日) 11:55:37.44 ID:wvm+FJ6G0.net
- ちょいちょい、と頭領は器用に指を動かして手招きならぬ”足”招きする。
「……ぐぬぬっ、この!」
再び乗せられるがままあっしは向かっていく。
どうせあの包帯の中にゃ何か仕込めて一つ。もう何も狡い飛び道具はねえ!
飛び掛るあっしを頭領は上体を軽く反らしてひょいとかわした。
そこにすかさず追撃をかけようとあっしは身を翻す。
その時、頭領の鬣の裏辺りから、またしても何かが転がり落ちるのが見えた。
「ま、また、まだ……」隠し持ってやがった――!
頭領は転がり出た赤い木の実を素早く踵で蹴り上げ、
打ち上がった木の実は狼狽し開いたあっしの嘴の中にすぽんと飛び込んだ。
舌から喉、頭の天辺にまで突き抜けるような、焼け付く”辛味”。
「うめえだろー。生のフィラの実は。舌が当分辛味で痺れるぜ」
あっしは我慢できずに地面に降り、少しでも辛味を飛ばそうと無我夢中で口に雪をかき込んだ。
「少しは頭と舌を冷やせたか?」
頭領は悶えるあっしのツラを覗き込んで言う。
口に含んだ雪のせいで喋れねえ代わりに、あっしは抗議の視線を送った。
「そう怒るな。……卑怯。さっきオメーは言ったけどよ。忘れちゃいねーか。
自分と俺のタイプって奴を。俺達ぁ泣く子も黙る悪タイプ。嘲り、欺き、翻弄して、
相手を自分のペースに引っ張り込んで叩きのめすが本分だろうが。卑怯? んなもん褒め言葉だ。
どんな手を使おうが、泥を啜ろうが、勝って最後まで生き残った奴が官軍よォ」
釈然としない面でいるあっしに、頭領は指を突きつける。
「しばらく時間をやる。俺みてえに体のどこかに道具を仕込んだっていいし、罠を張ったっていい。
空っぽ頭をうんと絞って出し抜く手段をよおく考えときな」
- 325 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/01/05(月) 00:49:52.36 ID:MowWpUxH0.net
- あけおめ乙です
明日か明後日にでも続きが書きたいです
- 326 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/01/08(木) 00:02:04.31 ID:eLosjOX80.net
- 明日の深夜か明け方に投下します
- 327 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/01/09(金) 01:50:25.69 ID:T4DR1ggh0.net
- そう言うと頭領はその場に座り込み、高く築いた雪壁に凭れ掛かった。
「それまで俺ぁ、ここで一休みさせてもらう。何なら、この隙に襲ったっていーんだぜ」
――んな事つっても……いってえどうすりゃいいんだ……
体の芯まで染み込むような雪の冷たさに、あっしは少しばかり冷静さを取り戻した。
悠々と休んでるように見えて、その実全く隙を見せねえ。雪壁のせいで、背後を突く事もままならねえ。
あっしがどんなに頭を捻ったとこで、相手は海千山千の強者だ。付け焼刃のシロウト考えなんざ、すぐに看破されちまう。
大体、あっしにゃ罠を張るような知恵も、道具を整えるようなアテもねえ。
……いっそ、集落まで一っ跳びして、誰かに協力を仰ぐか?
道具屋の店主に事情を話せば、何かしら使えそうな道具を分けてくれるかもしれねえ。
警戒の厳しくない今時分、恐らく畑にいるであろうマフラー野郎に尋ねりゃ、何かいい手段を教えてくれるかもしれねえ。
だが、それは絶対にしたくなかった。
あの時――せんせと約束して以来、あっしは集落にゃ一切近寄らなかったし、マフラー野郎達とも会うのを避けていた。
特訓に追われ、そんな暇すらなかったせいもあるが……何よりも、不甲斐ねえ今の自分を見せたくなかった。
こんなとこで躓いて、他人に甘えちまったら全てが台無しだ。
下らねえプライドだ、痩せ我慢だ、と言われようが、てめえの力だけで切り抜けなきゃ意味がねえ。
そうでなきゃ、あっしを信じて待っているせんせ達に合わす顔がねえ……
思わず溜息を吐くと、まだ腫れた舌がヒリヒリと痺れ、まるで火でも吹いたように感じられた。
いや、本当に火とか吐けりゃいいんだがな。けど、あっしにできるのは精々――
- 328 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/01/09(金) 01:53:13.03 ID:T4DR1ggh0.net
- ――そうだ……アレが使えるんじゃねえか……!?
その時、暗闇にポッと灯が点ったように、あっしの脳裏にある考えが浮かび上がった。
今まですっかり忘れていたが……上手く決まりゃ不意を突けるかもしれねえ。
しかし同時に、果たして頭領にも通用するんだろうか、という疑問も過る。
だが、どっちみち、真っ向からの正攻法じゃ勝負にもなりゃしねえ。一か八かに賭けてみるしかねえ……
あっしは覚悟を決め、くるりと頭領に背を向けて歩み出した。
「おい、どこ行くんだよ? 何かいい手でも見付けたか?」
途端に頭領は片目を開け、ちらりとこちらを窺う。
「へえ……いや、そうじゃねえんで……あの、ちょっと……」
あっしは気取られねえよう、もじもじと翼を擦り合わせ、大仰に体を揺すって見せる。
「んだよ、ちと冷やし過ぎじゃねーか? いーからさっさとそこらの陰で済ましてきな」
その様子に、頭領は思わず苦笑を漏らし、シッシッと追い払うように足先を振る。
あっしは頭を下げ、そそくさと大きな庭石の裏に回った。
無論、あっしの目的は小用なんかじゃねえ。だが、これでいい。そう思わせなきゃいけねえ。
――相手を欺くのが悪の本分てえのなら、その通りにやってやろうじゃねえか。
そう、あっしが『弱っちくて情けねえ、卑屈なカラス』だってのを利用してでもよ……
あっしは憤りを抑えるようにじっと息を潜め、そのまま時が過ぎるのを待った。
- 329 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/01/09(金) 01:57:05.80 ID:T4DR1ggh0.net
- 「おいカラ公、どんだけ掛かってんだよ。まさか野グソでも垂れてんじゃねーだろーな?」
やがて、痺れを切らしたように頭領が声を掛けてくる。
「……ははーん、そーゆー事か」
しかし、あっしが何も答えずに黙ったままでいると、それを合点したかのように頭領が動き出す気配がした。
庭石の向こう側から、こちらへ近づいてくる微かな足音が聞こえる。
不意に足音が止まり、空を切るような音と共に、黒い影が飛び出してくる。そして、
「……何やってんだテメー……?」
頭領は、思わず気の抜けたような声で呻いた。
恐らく頭領は、あっしがどっかに隠れてるか、急に不意打ちを食らわせるかと踏んでたに違えねえ。
だが、あっしが逃げもせずにじっと蹲ってるのを見て、肩透かしを食ったように眉を顰める。
「おいおい、テメーが休んでる暇はねーだろ。まさか、もう諦めたとか抜かすんじゃねーだろーな?」
半ば呆れたような顔をしながら、頭領は大した警戒も見せず、そのままあっしに近付いてきた。
だが、次第に辺りに漂う『異変』に気付いたのか、途中でふと足を止める。
「ん? 何か薄暗えな。まだ日暮れにゃ間があるハズだが……曇ってきたか?」
首を傾げながら、頭領は怪訝そうに空を見上げた。
――今だ!
あっしは顔を上げて目一杯息を吸い込み、頭領目掛けて勢いよく黒煙を吐き出した。
- 330 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2015/01/09(金) 04:10:42.69 ID:ropyq+Ua0.net
- 明日明後日位にでも続き書く
- 331 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/01/11(日) 00:43:17.97 ID:cvW+c7Kd0.net
- 相当な時間2chの鯖落ちてたな…
- 332 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2015/01/12(月) 02:58:47.75 ID:YaPcBCJ40.net
- 投下は明日の今位か明け方に
- 333 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2015/01/15(木) 09:50:50.27 ID:YvMI4gSb0.net
- 書けるかな?
2ちゃんが例のサイバー攻撃受けてるせいで、スレ開けなかったり開けてもPCからレス書き込めなかったりで散々だ
様子見て、今日の夜〜深夜位に投下する
- 334 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2015/01/16(金) 08:03:04.96 ID:LW7oJe/L0.net
- ――数多のそれはそれは無茶で過酷な特訓を乗り越え、とうとうやってきたその日。
あっしの近衛隊入りが認められるか否かの試験が行なわれる日だ。
何か儀式めいた物があるわけでもなく、方法は至って単純。
頭領様やババア共、もといご老公様方の御前で近衛隊の誰かと試合を行い、
お偉方を守るに足りる力があると認めさせりゃあいい。
執り行われる場は修練場の広場。邪魔な巻き藁やら的は撤去され、
広場の周囲は龍の紋様が描かれた幕でぐるりと囲まれていた。
道場の方を見ると、設けられた席の上で扇子を扇ぎながら
上機嫌でこちらを見守る頭領の姿があった。
……結局、あのひとにゃあただの一度も勝てなかった。
とっておきの秘策のつもりだった“あれ”に乗じた不意打ちだって身代わりですかされ、
それに気付かねえあっしが浮れたとこを上からぐしゃり。
『まあまあ考えたようだが……最後まで気ぃ抜くな、たわけ』
踏まれた頭の天辺が、あの時の頭領の言葉と共にひりつく。
最後の最後まで敵を疑い、あらゆる手段と可能性を考え、裏の裏を行け。
まだまだ抜けきれねえ臆病さを慎重さと狡猾さに発展させろ。
手合わせを通じて何度も骨の髄まで叩き込まれたその成果、
あの席からぜひとも御覧頂こう。
頭領の他の観衆は子ニューラと近衛隊の面々、修練所の教官に見習い達。
ご老公共の姿はねえ。体調不良の為、欠席らしい。体のいいボイコットだ。
まあ、かえって奴らには居て貰わない方がやりやすくていいってもんだ。
ニューラの黒一色の中にぽつんと黄色い一点。マフラー野郎も見物に来てるらしい。
ついでにあいつの度肝も抜いてやろうじゃあねえか。
ぐっと気合を込め、あっしは試験の相手となる者が現れるのを待った。
- 335 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2015/01/16(金) 08:04:27.40 ID:LW7oJe/L0.net
- 程なくして道場の中から歩み出てきたのは、近衛隊の隊長だ。
「へーぇ、こりゃ良い。隊長サン直々に相手してくれるんですかい?」
あっしは言葉に少し棘を含ませて問う。
「いや、私はあくまで審判だ。お前との試合はこの者が行なう」
淡々とした調子で隊長は答え、そっと横に退いた。
「はいはーい。どうも」
背後から現れ、愛想よく手を振るのは近衛隊の新米。
「なんだ、試験っつーからちょっと身構えてたが、おめえが相手かよ」
何だか拍子抜けしてあっしは言う。
「なんだとはなんですかー。私だって近衛の一員、選りすぐりなんですからね」
あっしの態度に新米はムッとして口を尖らせた。
「余計な口は慎んで、ふたりとも位置につけ」
隊長に叱られ、「すみません」と新米とあっしは頭を下げて定位置へと並んで向かう。
「……少し提案があるんですけど」
途中、隊長から少し離れた所で、新米がそっとあっしに耳打ちした。
「あ?」
釣られて声を潜めて聞き返す。
「この試合、よかったら負けたげてもいいですよ?」
「はあ?」
思わず素っ頓狂な声が出て、新米は慌てて「しー!」とあっしの嘴を抑えた。
「トドメは刺さない摸擬試合とはいえ、打ち所悪くて互いに怪我なんてしたら、
互いに損じゃないですか」
- 336 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2015/01/17(土) 03:19:34.87 ID:m0DDj+rQ0.net
- 明日明後日にでも続き書く
- 337 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/01/19(月) 21:49:02.90 ID:ZtLPbRhT0.net
- sage
- 338 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2015/01/21(水) 03:42:23.71 ID:L2YOBLad0.net
- 投下は明日の今位か朝方に
- 339 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2015/01/24(土) 05:10:53.21 ID:uNUGC7kz0.net
- 予定中々取れんかった…今日の夜には間に合わせます
- 340 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2015/01/25(日) 07:46:24.61 ID:lACRhJIJ0.net
- 一体どういうつもりだろうか。試合前から油断を誘う作戦?
怪しみながらもあっしは耳を傾ける。
「私は隊のひとが増えても別に不満も損もないですし。
……寧ろ後輩が出来たら私への負担が減って得? ――ってな感じなんで、
後でお礼としてカラスさんの夕飯分の配給を少し私に分けてくれでもすれば、
良い感じに苦戦しているように見せつつ頃合を見て降参しますよー。どうです?」
本気かこいつ……? 疑う視線に新米はニコニコと笑顔で返す。
まあ、確かにこいつが言うように、こいつにとってはこの試合に勝っても負けても
特に何の損も得も無いのかもしれない。下手に本気を出して怪我をするだけ損、か。
ずる賢く利用できるもんは何でも利用しろ。頭領の教えが頭を過ぎる。
「……いいぜ。のってやるよ」
「さっすが。話が分かりますね。うまくやっていけそうですよー。
じゃあ簡単に試合の流れを決めて――」
これもその一環、という事にするのもありか。
仮に後で騙まし討ちを企てての持ちかけ話だったとしても、
表向きは能天気に乗ったふりをしておいて裏の裏まで備えておけばいい。
悪らしく、狡猾、慎重に。
いつもより少し膨らんで重い翼の具合をそれとなく確かめながら、
心の中でほくそ笑んだ。
- 341 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2015/01/25(日) 07:47:06.03 ID:lACRhJIJ0.net
- 「お前達」
密談を交わすあっしらの背に不意に隊長の声が掛かる。
あっしと新米は同時にびくりと肩を揺らし、「はい」と振り向いた。
「何をもたもたとしている」
「ああ、いやー、ちょっと互いに正々堂々の戦いを誓い合った所でして」
「ほう? 殊勝な事だ。済んだのならば急げ」
あっしと新米は言われるままそそくさと逃げるように配置に向かう。
「待て」再び、出し抜けに隊長が呼び止める。
急げと言ったり止めてみたり、何なんだ。焦りと共に少し苛立ちを覚えながら、
新米と共にあっしは振り返る。
「ヤミカラス殿はそのまま配置へ。新米、お前には少し話がある」
「は、はあ……」
やっぱりばれていたか? それとも最初から何か共謀が……?
耳を欹てながらあっしは気付かれない程度に歩を緩める。
微かに聞き取れたのは少しの単語、”昇給”、”審査”……?
八百長の相談がばれた様子では無さそうだが、何故今そんな話を? 何だか嫌な気配がする。
話を終えて、数メートル離れた向かい側の配置に付いた新米の目付き。
気だるげだった先程とは打って変わり、やけにやる気に満ち溢れギラギラとしていた。
- 342 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2015/01/25(日) 07:48:27.55 ID:lACRhJIJ0.net
- 審判である隊長の右手がすっと上がる。
あの手が振り下ろされ、銅鑼が鳴らされた瞬間、試合開始だ。
新米と話した手筈では、試合開始直後に新米が氷の礫をわざと外すように投げ放ち、
あっしはそれをぎりぎりで避けるふりをしながら詰め寄る――となってはいるが……。
じっと新米のツラを見てみれば、相変わらず美味しそうな獲物を狙うような目でこちらを見ている。
こりゃあ――
隊長の手が振り下ろされ、銅鑼の音が空気を震わせる。
交渉は決裂だ!
地を蹴り一瞬で間合いを詰めてきた新米の右爪の鋭い一撃を紙一重で体をそらしてかわし、
続く左爪の追い打ちは翼を思い切り羽ばたかせた風圧で怯ませて防ぎ、
その勢いのままあっしは宙へと逃れて一旦距離を取った。
チッ、と新米が舌打ちする。
「まさかかわされるなんて。意外とすばしっこいですねェー……」
「テメェー、随分筋書きと違うじゃあねえか」
観衆達の声に紛れさせながらあっしは言う。
「筋書きってなんですかね? 試験を兼ねた大事な試合なんですから八百長なんてダメですよ」
両手に取り出した鋭い氷の礫をくるくると回しながら新米はすっとぼける。
「ぬけぬけとまあ……。夕飯の分け前はもういらねえってのかい?」
「どうせ選ぶなら一回で終わっちゃう得より、その後もずっと続く得です、やっぱり。
私の明るい未来とお腹一杯豪華なご飯のため――近衛隊入りなんてすっぱりきっぱり諦めて、
大人しく負けちゃってください!」
――”昇給”、”審査”そういうことか。飛んでくる礫をかわしながらあっしは閃く。
隊長の野郎、あっしらの企みにやっぱり気付いていて買収を買収で返して来やがった。
- 343 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2015/01/28(水) 00:47:21.47 ID:k0ozCOvZ0.net
- 明日明後日あたりにでも続き書くよ
- 344 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/01/31(土) 03:43:42.10 ID:hwKqHoRY0.net
- 保守
- 345 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2015/02/01(日) 04:10:41.12 ID:RzFbTIvA0.net
- 投下は明日の今位に出来れば
- 346 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2015/02/04(水) 04:53:54.02 ID:miI5YJX30.net
- すまん、今日の夜には投下する
- 347 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2015/02/05(木) 07:57:53.55 ID:CaxUR9i+0.net
- こちとら最初からねじくれ邪道に戦う準備は入念にしてあるんだ。
やる気を余分に注入されちまったのはちと厄介だが……
それも空回りさせてやりゃ足を掬う取っ掛かりに出来るかもしれねえ。
七、八、九、十、ワンテンポ遅れて十一本目。
礫を冷静に見切り、無駄に消耗しねえよう最小限の動きを心掛け空中で避け続ける。
選りすぐりを自負するだけあって確かに鋭く速い。
だが、頭領のあの嵐みてえな怒涛の連投に比べりゃてんで大したこたあねえ。
「臆病なカラスさん、ちょこまか逃げてばっかりでどうしました?
そんなに怖いのなら、じっとしてれば痛くないようにすぐ終わらせてあげますよ」
下から新米が罵る。口調と息遣いに微かな苛立ちと疲労が感じ取れた。
「へい、そっちこそどうした自称選りすぐり。
こちとら随分手加減して飛んでやってるっていうのに、一向に当てられる気配がねえぞ。
投擲の訓練サボってんじゃあねえのか。未来の後輩達の前でとんだ大恥だな」
十四、五本目をひょいと首をそらしてかわし、
余裕綽々な態度で空から見下しながらあっしは言ってやる。
新米の眉間がぴくりと揺れた。
- 348 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2015/02/05(木) 07:58:45.44 ID:CaxUR9i+0.net
- 先程より数と勢いを増し飛んでくる礫。数は増えたが投げ方が幾らか雑になり、
かえって避けやすい。避けるついでに身振り手振りで馬鹿にしてやれば、
尚更ムキになって狙いが乱れる。
「いい加減に、降りて、仕掛けて来たらどうですかッ!」
新米が叫ぶ。ぜえぜえと息は目に見えて荒い。
「へへん、やーだよ。くやしかったらそっちから来いよ、来れるもんならなぁ」
べえ、とあっしはガキみてえに舌を出す。
臆病者! 下手糞! 次々飛び交う礫と罵詈雑言。
見るに耐えないであろうあっしらのやり取りに観衆達は唖然とし、
頭領は扇子を広げくつくつと笑う。マフラー野郎は苦笑を浮かべ、
隊長も頭巾で表情はわからねえが片手で頭を抱えていた。
どんなに無様を演じて笑われようがいい。最後には勝ちゃあいいんだ、勝ちゃあ。
あっしの度重なる挑発と、観衆達の目に耐えかねた様子で新米はわなわなと体を震わせる。
「なるべく大怪我はさせないようにと思っていたけど――やめました!」
どすん、と新米は冷気を纏った拳で地面を叩き付ける。
地面から氷の柱が勢いよく迫り出し、新米は瞬時にそれに飛び移って勢いを付けて宙へ、
あっしの方目掛けて爪を構え飛び上がってくる。
- 349 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2015/02/07(土) 04:57:06.29 ID:TfptMPOf0.net
- 明日明後日位にでも続き書きます
- 350 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/02/08(日) 15:07:45.88 ID:vLjiU9Kw0.net
- 新参者です
数年前から閲覧させていただいてます
今後はよろしくお願いします
- 351 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/02/08(日) 23:13:50.39 ID:gjKR5Hgf0.net
- ピカチュウの厠事情についてご教授下さい。
ピカチュウは何処で排泄をするのですか?
モンスターボールの中でしょうか?
茂みの中でするのでしょうか?
それと、やはりネズミなのでしっぱなしなのでしょうか?
それともアナウサギのように自分の糞をむしゃむしゃ食べるのでしょうか?
- 352 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/02/09(月) 08:05:15.48 ID:KICr/A8K0.net
- 任天堂に聞け
- 353 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/02/09(月) 23:02:34.62 ID:U6F52YGs0.net
- >>352
任天堂には無視されました。
教えて下さい。
- 354 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2015/02/12(木) 05:28:42.60 ID:GQ0uyam40.net
- 投下は明日の今位に出来れば
- 355 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2015/02/15(日) 06:40:55.44 ID:dC3u9Z3P0.net
- すみません急用により遅れています…
今日の夜には間に合わせたいです
- 356 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2015/02/16(月) 06:52:20.37 ID:4lAygVkG0.net
- 骨にまで食い込んで切り裂いてしまいそうな凶暴な鋭さの鉤爪。
それに更に迫り出す柱と奴自身の跳躍の勢いを乗せた一撃。
翼で防いだってまともに受けりゃあ大怪我どころか翼ごと持っていかれかねねえ。
ただの翼でまともに直で受ければ、だ。
迫る鉤爪。あっしは逃げもせずに翼を交差させて受ける。
瞬間、固い物同士がぶつかり合う無機質な音。衝撃で翼にびりびりと痺れが走る。
ぎょっとした顔をする新米。たかだかチンケなカラスの翼なんて、
爪の一振りで容易く叩き斬れると思っていやがったろう。
重力に負け落下を始める新米の体を蹴り付け、あっしは飛び上がる。
奴にこれからできるのは落ちていくだけ。その間はほぼ無防備のはず。
あっしは新米の頭上を取り、狙いを定めて翼を振るった。
黒い羽が数本あっしの翼から飛び出て、ただの羽じゃあねえ鋭さで空気を裂きながら、
こちらを見上げ地面に背を向けながら落ちる新米を追う。
新米は表情を険しく歪め、羽を爪で切り弾いた。とほぼ同時、
牽制か氷の礫が一つ放たれ、あっしは追撃をやむなく中断しそれを紙一重かわす。
さすがの身のこなし、この程度じゃあまだ終わらせちゃくれねえか。
その間に新米はくるりと地面に着地し、試合は仕切りなおし――と思いきや、
新米は不意に手を上げ「ちょっと待った!」と声を張り上げる。
一体どうしたのかと群集がざわめく中、新米は地面に付き立っている黒羽を
ひょいと爪先で抜いて摘み上げる。
- 357 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2015/02/16(月) 06:57:48.89 ID:4lAygVkG0.net
- 訝しげな顔で爪で羽にしちゃあ妙に尖ったそれを
ゴシゴシと引っ掻くと、黒い塗装が削がれて金属質な銀色の光沢が露になった。
「おかしいと思った……! ただの羽じゃあない。隠し持ってた凶器だ!
隊長、いえ、審判! これ、ありなんですか?」
新米はビシリと隊長に羽を見せ付け、あっしは素知らぬ風に顔を背けた。
その通り、あれはあっしが予め仕込んでおいた凶器の一つ。
鋼の体を持つ怪鳥エアームドの刀のように鋭い羽を短く加工したものを、
光沢で隠し持ってるのがバレねえようあっしの手で黒塗りしておいた代物だ。
――硬く鋭くそれでいて軽いエアームドの羽は非常に貴重なものらしいが、
全てはこの日の為に道具屋の店主に頭を下げ、出世払いで譲ってもらったのさ。
隊長は手渡された刃を頭巾の黒幕越しにまじまじと見つめた。
それからスゥと息を吸い込み何かを言いかけようとしたところで、
「おい」と今度は頭領の物言いが入る。
「これは見事な”はがねのつばさ”じゃあねえか、カラ公よ。
凶器なんかじゃあねえ、れっきとした鳥ポケモンの技だ。そうだよなあ?」
扇子で口元を隠しながら頭領はわざとらしくたずねる。
「お褒めに与り恐悦至極。ええ、ええ、全くもってその通り。
手前自慢の”はがねのつばさ”でごぜえやす」
あっしはにやり笑い返してそう言った。
「た、隊長ぉ、いいんですかぁ?」
縋るように言う新米。隊長は深々と溜息をつく。
「…………問題ない。試合続行だ」
- 358 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/02/18(水) 20:50:25.25 ID:OODS8RCK0.net
- 明日か明後日にでも続きを書きたいです
- 359 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/02/22(日) 01:13:10.52 ID:I59OLG0t0.net
- 明日の夜か深夜に投下します
- 360 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/02/24(火) 06:36:04.96 ID:eRddvCIP0.net
- クッと新米は唇を噛み締め、あっしを睨み付けながら再び体制を整えた。
「……そういう事なら、ちゃっちゃとカタを付けさせて貰います!」
一歩踏み込みながら、新米はシャッシャッと爪を擦り合せるように大きく腕を動かした。
その動きが徐々に早まり、爪がきらりと光った瞬間、突如切っ先が襲い掛かってくる。
咄嗟に頭を下げてかわすが、ザシュッと頭羽根のてっぺんが削がれ、辺りに黒い羽毛が散る。
「クアアーッ! 何しやがる!」
自慢の頭の形を崩され、あっしが思わず怒鳴ると、新米は悪びれずに鼻で笑う。
「ふふんっ、決まってるじゃないですか! 要は、何も隠せないようにぜーんぶ毟り取りゃいいんです!」
「趣味悪ぃぞテメー! 野郎のヌードなんか誰が喜ぶってん――」
そう言い掛けた時、訓練生の一団からキャーッ!と黄色い歓声が上がり、ヒューヒュー口笛が鳴る。
そうだった。
頭領とマフラー野郎を除きゃ、観客は全てメスだったっけ……
だがそれも、隊長がジロリと一睨みすると、途端に水を打ったように静まり返る。
「皆の期待に応えて、素っ裸の赤っ恥かかせてやりますから!」
勢いを付けて矢継ぎ早にズバズバと切り込み、その度に細けえ羽毛が宙に舞う。
まあ、それでもまだ想定の範囲だ。よく目を凝らしていりゃ、全て避け切るのも可能だろう。
だが、あっし自身は打たれ強え方じゃねえ。このまま長引いて体力が落ちりゃ、ちとヤバい事になる。
油断して一撃でも食らう前に、あっしはとっておきの『隠し玉』を出す事にした。
「クハハハハッ! テメーこそ、好いた男の前で醜態晒さねえよう気ぃ付けるこったな!」
すれ違いざま、あっしは不敵に笑いながら新米に言い放った。
- 361 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/02/24(火) 06:39:05.10 ID:eRddvCIP0.net
- 「えっ……な、なな、何の事ですかっ!?」
突然、新米はぎょっとしたように目を見開き、ふと攻撃の手が鈍る。
「ま、訳アリのコブ付きだが、少なくとも今は独り身だ。幸い趣味も合いそうだし、ひとつ後釜でも狙ってみちゃどうだ?」
そう言いながら、あっしは意味有りげにちらりとマフラー野郎の方を見遣った。
自分で言うのもなんだが、この手の冷やかしに関しちゃかなりの自信がある。
(うん、そうだね、とエンペルトが深く頷く)
そういう意味じゃ、相手がこの軽率な新米だったのはラッキーだったかもしれねえ。
「ちょ、ちょちょっと、ここんな時に、み、みんなの前でい、いい、一体何なんですかあああっ!
そそそそそんなんじゃないって、前にもい、いい言ったじゃないですかあああああーーーーーーっ!!」
新米は明らかに動揺し、黒い毛並みの上からでも、みるみる顔が真っ赤に染まっていくのが分かる。
あっしの予想通り、もう周知の事実なのか、近衛隊の覆面達は隊長に見られねえよう顔を見合わせてクスクス含み笑いする。
頭領も肩を震わせながら、扇子の下で忍び笑いを漏らしている。
もっとも、当の本人だけは、全く訳が分からねえ様子でキョトンとしていたが。
手が完全に止まったのを見計らい、今度はあっしが仕込み羽を放つ。
新米はハッとして我に返り、どうにかスレスレで体をかわす。
「よくも純情な乙女を騙してくれましたね! もー絶っっっ対に許さないですからっ!」
完璧に頭に血が上ったように新米は腕を振り上げ、怒りに任せて氷の礫を投げ付ける。
あっしはそれを避けながら、仕込み羽を次々と飛ばす。
「そっちこそ、ちーっとも当たらないじゃないですか! 折角の”はがねのつばさ”も無駄撃ちですかぁ?!」
新米は挑発するように叫ぶが、こちとら始めから当てるつもりはねえ。その目的は別にあった。
――やがて、最後の一本を投げ終えた時、あっしは体が急激に軽くなったのを感じた。
- 362 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2015/02/25(水) 01:51:23.38 ID:ux+URagB0.net
- 明日明後日位にでも続き書く
- 363 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/02/28(土) 05:29:46.91 ID:Rh9iFV330.net
- 保守
- 364 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2015/03/01(日) 03:59:30.84 ID:b3XY7ana0.net
- 投下は明日の今くらいにでも出来れば
- 365 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2015/03/04(水) 13:25:47.56 ID:w0kyGL0l0.net
- 準備は整った。後はどう目を欺いて仕掛けるか、だ。
あっしは翼の内側にそれとなく視線をやり全部投げきっちまったことを
新米に勘付かせるようにわざと振る舞った。
新米はにやりと口元に薄笑いを浮かべ、雪混じりの地面を蹴って矢のような速さで向かって来る。
また飛び上がられて面倒な事になる前にさっさと仕留めちまおうってことだろう。
まんまと手の平の上で踊らされてるとも知らずにだ。
あっしは息を大きく吸い込んで、思い切り吐き出す。
喉の奥から嘴を通って勢いよく噴出される真っ黒な煙。
新米は吃驚した様子で片足でブレーキをかけ、
毒ガスとでも思ったか咄嗟に口元を押さえて飛び退いた。
煙は墨が水に溶けるように空気を侵食してあっという間に辺りを黒く染めていく。
どよめく観客。
「うろたえるな、煙自体に害はねえ」
そう頭領が鎮めた。
「煙幕――?」
視界を奪われた新米は立ち止まってきょろきょろと周りを見回す。
だが、あっしの目からはそんな様子も丸見えだ。
- 366 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2015/03/04(水) 13:43:53.26 ID:w0kyGL0l0.net
- 翼をくいくいと動かしてみて具合をちょいと確かめてから、
あっしは宙へと飛び上がり体勢を整える。
最早頭の中でわざわざ流れを意識する必要もなく体は自然に動いた。
磨き抜いた切り札、ドリルくちばし。あっしは新米目掛けて体を回転させながら突撃する。
ざくりと嘴に鈍い感触。ひやりと冷たい。
嘴を引き抜いた瞬間、新米に見えたそれは雪の塊と化してぱらぱらと崩れた。
「かかりましたね!」
直後、声を張り上げ、身代わりの陰から新米が飛び掛ってくる。
まんまと誘き寄せてあっしの位置をつかむことができた。
これで勝ちだ、そう確信してやがることだろう。
「ああ、かかったな」
ポツリとあっしは呟く。完全に想定内だ。
何せ頭領との手合わせでボロ負けした時とほぼ同じ局面なんだから。
当然、対策は用意してある。最後の最後の隠し球――!
あっしは翼をぐいと手前に引っ張るように動かした。
途端、新米は足に何かを引っ掛けたように体勢を崩す。
あっしは倒れ掛かってくる新米の体をひょいと避け、更に強く翼で引っ張る。
地面に刺さっていた何本かの仕込み羽が勢いよく引っこ抜けて飛び上がった。
- 367 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2015/03/07(土) 02:43:44.15 ID:5auBx0fI0.net
- 明日明後日辺りにでも続き書く
- 368 :名無しさん、君に決めた!:2015/03/07(土) 23:20:17.69 ID:kksJTq7gB
- ピカ父、ミュウツーが終われば流れ的にホウエンだが
ORASの発売でホウエンの扱いが難しくなりそうだな、、、
まだまだ先っぽいけど、、、
- 369 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/03/10(火) 04:30:15.72 ID:IcTaFzNe0.net
- 保守
- 370 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2015/03/11(水) 05:02:53.48 ID:nCxdg8oJ0.net
- 明日の今くらいにでも投下出来たら投下する
- 371 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/03/14(土) 04:14:38.32 ID:EEm04GaW0.net
- ほっしゅ
- 372 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2015/03/14(土) 10:48:16.05 ID:RpaUveUs0.net
- 霧が徐々に晴れ、あっしと新人の様子があっし以外の目にも晒される。
どよめく観衆達。傍から見れば立ち上がる途中の地に片膝と片手を付いた姿勢のまま
金縛りにでもあったみてえにギシギシと身じろぎしてうまく動けねえでいる新人と、
その全身のあちこちに何かで固定されたようにピタリと
くっ付いたままでいる仕込み羽はとても奇妙に映った事だろう。
超能力やら催眠術やらそんな大層なモンじゃあねえ。
種も仕掛けもちゃんとあるチャチな代物だ。
ちょうど谷間から広場へと日の光が差し込み、無数のか細い光の筋が新人の体の周りと、
幾つか地面に深く刺さったままの仕込み羽と、あっしの翼の内側とを線で結ぶように煌く。
その光の正体は仕込み羽と同じように店主に無理言って譲ってもらった品の一つ。
アリアドスの糸だかキャタピーの糸だかメリープの羊毛だか、
詳しく覚えちゃいねえが諸々を合わせて加工した特製の糸だ。
「ま、そーだな……これも”フェザーダンス”だか、
フェザータンゴだかいう名前の立派な鳥ポケモンの技の一つっつーことでここはひとつ」
緩めねえようにきりきりと糸に力をかけながらあっしは隊長に嘯いた。
新人への挑発と、ばら撒く様に次々放り投げた仕込み羽は、
何もただいたずらに場を掻き乱すためだけにやっていたわけじゃあねえ。
糸を括りつけた仕込み羽を気付かれねえように張り巡らせるが為。
黒い霧は駄目押しの目眩まし。ドリルくちばしはそのまま決まれば御の字、
本懐は糸を幾らか巻き戻して繰りやすいように。全てはこの瞬間への布石って奴よ。
間違いなく勝った。あっしの勝ちだ。
- 373 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2015/03/14(土) 10:49:22.80 ID:RpaUveUs0.net
- 「下手に動くなよ。あっしがちょちょいと操りゃ、纏わり付いた刃が全身をズタズタにするぜ」
余裕綽々で言ってやると、新米は眉間に皺を寄せてギリと悔しげに地に着いたままの片手で地を引っ掻いた。
「隊長さん、いや審判! こりゃ勝負ありだろ? 勝者は俺様――」
言いながら振り向きかけて、首下に何か冷やりとした物を感じる。
ぎくりとして恐る恐る目だけ下に向けてみると、地面から数本の鋭い氷が霜柱みてえに――
元は地面に突き立っていた氷の礫だろうか――あっしに先端を向けて伸びていた。
「そっちこそ下手に動かない方がいいかと。私が少ーし伝える冷気を強めたら串刺しですから」
優しくそれがまた不気味な調子で新米は言った。
いつの間に……さっき悔し紛れに地面を引っ掻いたように見えた時……?
こいつもこいつで、完全に乗せられた振りしてあっしを追い詰める策を練ってやがった……?
勝ったと思ったのが一転、あっしも新米も動けねえ膠着状態だ。
「……両者、そこまでだ。技を解け」
隊長の声が響く。
言われるがままあっしは糸を解き、新米が爪を地面から抜きさると鋭い氷は崩れ落ちた。
「この勝負、引き分けとする」
勝ってたってのに、後一歩だったってのに――告げられた勝敗の結果が残酷に胸を打つ。
負けはしなかった。だが、勝てなかった。これじゃあ試験はどうなる? 近衛隊入りは?
「実力の程は見せてもらった。これにて試験は終える。
合否の結果は後日、頭領様やご老公との協議の後――」
後日? 協議? 心臓がバクバク、口から飛び出そうなほど跳ねる。
頭の中はたったの一瞬油断した事への後悔や、不安でぐるぐるもう何が何だかわからねえ。
「待てぃ」唐突にまた入る頭領の横槍。
- 374 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2015/03/14(土) 10:50:14.42 ID:RpaUveUs0.net
- 「はっ」言いかけた言葉を止め、隊長は頭領の方へと向き直って跪く。
視線が一斉に頭領の方へと集った。
「まずは両者の闘いぶりを讃え様じゃあねえか。いやはや、天晴れ、お見事。
実に楽しませてもらった、ヒャッハッハ!」
機嫌よく広げた扇子をひらひらさせながら頭領は笑った。
「は、はいっ。お褒めいただきありがたき幸せ、です」
畏まった様子で礼をして、新人は跪く。
胸が騒ぎに騒いでどうしようもねえ中、何とか抑えてあっしもそれに倣った。
「まだまだそそっかしい新米とはいえ、過酷な訓練と厳しい試験の目を乗り越えて
選りすぐられたこいつをここまで追い詰めるたぁ大したもんさ。
ろくな技一つ使えなかった殆どシロウトみてえのが短期間でここまでよォ。なあ、隊長?」
閉じた扇子を顎に当て、頭領は隊長に話を振る。
一瞬だけ間を置いて、隊長は「はい」と答えた。
「今後また実戦つんで成長する事を加味すりゃ、申し分無しだろうよ。
つーわけで、後日の協議なんざいらねーよ。さっさとこの場で決めちまおう」
「しかし、一応はご老公方のご意向を……」
「いらねえいらねえ。実際にこいつの実力を見ていなかった奴らと何話合えってんだ。
仮にこのカラ公が新米を完膚なきまでに目の前で叩きのめしたって、
何かと理由つけて首を縦に振りはしねえよ。後はおめえの納得、判断だけさ隊長。
おめえが先に言い出したんだぜ。最低限足手まといにならねえで共に戦える力があると、
この目でしかと見るまで入隊は決して許さねえ、ってよ。さて、如何に?
意地張りと私情は抜きで正直に。おめえの目にはこいつはどう映る?」
扇子の先で頭領は隊長を指し示す。
暫しの沈黙の後に隊長は観念したように面隠しの黒幕の向こうで小さく息を吐いた。
「……荒削りではございますが。最低限の力は満たしていると言えるかと」
隊長の言を聞き、頭領は勝ち誇ったように扇子を広げて掲げる。
「んっ! というわけでカラ公……合格!」
- 375 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2015/03/17(火) 01:46:01.41 ID:z9agC1Gn0.net
- 明日明後日辺りにでも続き書く
- 376 :名無しさん、君に決めた!:2015/03/19(木) 22:07:37.69 ID:V1zYRBle/
- 保守
- 377 :名無しさん、君に決めた!:2015/03/20(金) 18:00:07.32 ID:ewp3jAEWE
- ほしゅ
- 378 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/03/20(金) 18:17:58.42 ID:B5iCV/Gn0.net
- 保守
- 379 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/03/21(土) 22:39:48.72 ID:MGJ2LDZM0.net
- 保守
- 380 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2015/03/22(日) 02:51:39.50 ID:bt2G8Y180.net
- 投下は明日の今位か明け方にでも
- 381 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/03/24(火) 21:42:38.55 ID:VprVv4Up0.net
- 保守
- 382 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2015/03/25(水) 04:42:58.34 ID:Eq2DZhCC0.net
- ごめん、今日の夕方くらいには間に合わせる
- 383 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/03/25(水) 20:54:11.60 ID:fsWD91QB0.net
- マターリ、焦らずに
- 384 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2015/03/26(木) 06:08:12.83 ID:rT/Q6/ng0.net
- かくしてあっしは近衛隊入りを少し異例な形ながら認められた。
任命式が執り行なわれるのは屋敷の謁見の間。
頭領は「面倒だからそれも省略」としようとしたが隊長もさすがにそこまでは譲らず、
仕方なしに渋々と言った様子で式の用意をさせていた。
あっしはずっと上の空で呆けていた。試合での疲れもあったが、
追い詰められて已む無しじゃあなく全力で戦った事も、
大勢から注目や歓声を浴びる事なんざ初めてでどこか現実味が無かったのさ。
「――つーわけで、ヤミカラス。お前を近衛に任命する」
ずいと何かを目の前に差し出され、あっしはハッとしてそれを受け取る。
渡された物は黒い頭巾と、先の方に向かって少し湾曲した何かの歯か牙のようなものが
一つ革紐に取り付けられた簡素な首飾りだ。
「――っと、へい。ありがたき幸せ」
それらを丁寧に脇に置いて、あっしは謁見の間の畳に跪く。
「何だよ、ぼうっとしてやがって。折角この俺が頭領らしく珍しく真面目に長々と
口上をたれてやったってのにろくに聞いてやがらなかったな?」
頭領は閉じた扇子であっしの嘴をこつんと叩く。
- 385 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2015/03/26(木) 06:09:22.00 ID:rT/Q6/ng0.net
- 「す、すいやせん」
両脇に並ぶ近衛隊達の片方、新米が居た辺りからくすくすと笑い声が聞こえた。
「本当はご老体方のそれはそれはありがたいお言葉もあるはずなんだが、
来てねえしどうでもいいだろう。これにて堅っ苦しい任命式は終わり!
後の説明だの何だのの話はしっかり隊長に聞いておくように。じゃ、後頼んだ隊長」
「はっ」
応じる隊長に向かって頭領はひらひらと片手を振るい、
気だるげに伸びと欠伸をしながら謁見の間を先に去っていった。
頼れる時は頼れるが、普段はのらりくらりと大雑把なひとだった。
だからこそ奇妙な魅力を感じてあってあっしも含め多くには慕われていたが、
反面老いぼれ達みたいな頭が固いのにはひどく嫌われているのも頷けた。
傍で仕えていくのに退屈はしないだろうが、気苦労は常に絶えないことだろう。
その日だけで何度聞いたことかわからない隊長の小さなため息がそれを物語る。
「ひとまず場所を移す。付いて来い新入り」
「へい」と返事をして言われるままあっしは隊長と近衛隊の面々、
先輩方の後にあっしは続いていった。
- 386 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2015/03/28(土) 03:55:52.02 ID:mC7Wc2qW0.net
- 明日明後日にでも続き書きます
- 387 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2015/03/31(火) 03:01:45.13 ID:f79eVqc30.net
- 明日の今くらいか明け方に投下したいです
- 388 : ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2015/04/02(木) 19:24:43.98 ID:LPVizSyF0.net
- http://kikakuvideos.blog.fc2.com/blog-entry-662.html
この万引きもののタイトル教えて下さい。
基本主婦・若妻系の女優が多いです。
当動画は違いますが、男優はひびやんが多いです。
- 389 :元 ◆rgWFRtnaRA @\(^o^)/:2015/04/03(金) 00:57:47.83 ID:U1+O2X030.net
- トリップが流出したようなので、避難所の通り◆5O1eppIR4Db7へ変更しますね
41 : ◆tNSfgVU2j6 :2015/04/02(木) 23:19:16
元rgWFRtnaRAだけどトリップが割れたっぽいので、変更しておきますね
適当な数字だったのにどうやったんだろ?
42 : ◆tNSfgVU2j6 :2015/04/03(金) 00:06:29
2chの方だとトリップは ◆5O1eppIR4Db7になると思います
- 390 : ◆5O1eppIR4Db7 @\(^o^)/:2015/04/03(金) 00:59:14.75 ID:U1+O2X030.net
- 投下のほう遅れていてすみません
明け方くらいには様子を見つつ(場合によっては避難所の方へ)投下できるよう目指します
- 391 : ◆5O1eppIR4Db7 @\(^o^)/:2015/04/03(金) 08:16:01.37 ID:U1+O2X030.net
- いつもの長く曲がりくねった薄暗い廊下を通り、辿り着いたその一室。
「ここが我々の詰め所だ」
そう隊長は言って、木の引き戸を開きあっしを通す。
先輩方がそれぞれの定位置に頭巾を外しながらぞろぞろと先に向かっていく中、
あっしは入り口からざっと室内を見回す。
何だか思っていたよりも随分と地味で質素な部屋だ。近衛隊なんて大層げな響きの役職だし、
ガキ共から羨望の眼差しを向けられていたもんだから、もうちょっと華やかなもんを想像していた。
あるのは畳みの上にでんと置かれた中くらいの古ぼけた机が一つと周りに座布団が幾つか。
整然と戦闘用の道具が並べられた棚と、食糧が備蓄されている戸棚や壷。
部屋の隅の方に均等に並んで敷かれた簡素な寝具が数点。必要最低限。
娯楽や飾り気なんてそこには一切無い。
「想像よりもみすぼらしくて失望でもしたか?」
ぴしゃりと木戸を閉めて、隊長はあっしに尋ねた。
「いやいや決してそんなこたぁ……」
ぎくりとしながらもあっしは首を横に振って否定する。
隊長は見透かしたように頭巾の面越しにフンと鼻を鳴らした。
「そこの新米を最初に案内した時も同じ顔をしていたものでな。
所詮我々は頭領様や若君の影として仕える身。傍からどう映るのかは知らないが、
華やかさなどからは程遠いものと心得ておけ」
「……へい、どうもすいやせん」
早速のお叱りにあっしは頭を下げる。
何だかいきなり出鼻を挫かれた気分だ。とほほ、と心の中で嘆息する。
- 392 : ◆5O1eppIR4Db7 @\(^o^)/:2015/04/03(金) 08:16:57.63 ID:U1+O2X030.net
- 隊長によりあっしは改めて近衛の面々に紹介され、
「よろしくお願いしやす」と頭を下げて粛々と挨拶をした。
「まあまあ、そんな畏まらなくてもいいってー。とりあえず座りなよ」
先輩のひとりが気さくに微笑んで座布団を勧めてくれる。
普段あの黒い頭巾と布の面で顔を覆い隠して寡黙に頭領達の傍に
仕えている時の不気味で威圧的な雰囲気とはまるで正反対だ。
ちょっと気恥ずかしく礼を言いつつあっしは座布団に腰を下ろした。
あっしは座って少し気が落ち着いたついでにそっと先輩方を見回す。
隣に座る新米を除き恐らくどれも初めて見る顔ばかりだ。
頭巾姿でならどこかで何度か会ってはいるんだろうが。
隊長だけは顔を隠したまま頭巾も面も外す気配は無く、
あっしに近衛隊の仕事についてを淡々と説明し始めた。
この前のような”狩り”が無い時は、陰ながら頭領や若君を見守って、
何か御用に呼ばれたり何か危険が迫れば即座に飛び出すのがもっぱらの仕事。
傍で頭領達に仕えるのは数人毎に交代で、自分の番が来るまではこの部屋で
仮眠なり食事なり取っていつでも万全の調子を整えておけとのことだ。
任務の内容もこの部屋を見たときの印象と同じく、
聞いただけでは想像よりずっと地味で退屈そうに感じてしまった。
まあ、それはあくまで見守り仕える対象が相応の立場らしく
気品と落ち着きがある者だった場合に限る話であると後から思い知る事になるんだが……。
- 393 : ◆v98fbZZkx. @\(^o^)/:2015/04/06(月) 03:53:00.84 ID:fAqfq/+X0.net
- 明日明後日にでも続き書く
- 394 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/04/06(月) 03:56:18.99 ID:fAqfq/+X0.net
- 後、一応トリップ変えておく
- 395 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/04/09(木) 02:09:42.95 ID:NDQKq7rO0.net
- 保守
- 396 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/04/09(木) 22:16:03.49 ID:yGmvwAzS0.net
- そんな矢先トリトドン将軍が尋ねてきた
- 397 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/04/10(金) 06:05:41.17 ID:QkwNwsne0.net
- 投下は明日の今くらいに
- 398 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/04/12(日) 08:59:04.30 ID:OJcc4QxG0.net
- ちょっと夜くらいに遅れる
- 399 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/04/13(月) 06:04:21.68 ID:Ml0ltFga0.net
- ――「んじゃ、次はそっちの鉤縄の手入れよろしくですー」
あっしは返事もせず小さく舌打ちして渋々言われた通りに取り掛かる。
慣れるまでの間、隊長の取り計らいであっしには先輩がひとり
教育係として常に二人一組行動してくれる事となった。
初め聞いた時は一体どのお姉さまが手取り足取り教えてくれんのかと
ほんの少しばかり期待に胸を膨らませたもんだが……。
「返事は? し・ん・い・り君」
ひとりだけ先に休憩の茶を啜りながらヤツは言う。
あっしは無視しながら足の爪と翼と嘴とを駆使してほつれ掛けた縄を直していく。
「おやぁ、良いんですか? あんまり反抗的だと隊長に言いつけちゃいますよ。
あなたの教育係として、新入り君」
あっしはギリと嘴を噛み鳴らし耐える。
「……へいへい、了解してます。新米――先輩さんよ」
「あー、何度聞いてもいい響きですー……」
うっとりとして新米は言葉を噛み締めるように頷く。
教育係として任命されてからという物ずっとこの調子だ。
何でよりにもよってこいつなのか。隊長曰く、教える立場にも立たせる事によって
この新米をより成長させる為みたいなこと言っていたが、
面倒なのに面倒なのを押し付けただけに思えてならねえ。
- 400 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/04/13(月) 06:05:04.76 ID:Ml0ltFga0.net
- 「ほらほら、早く終わらせないと護衛の交代の時間が来ちゃいますよ」
「だったらオメーも、いや、先輩さんもちったぁ手伝ってくれたらどうですかねえ」
イライラとあっしは言う。
「雑用は一番新入りのお仕事ですよー。それに今から少しでも多くこなした方が
早く慣れられますよ、きっと」
鼻歌混じりに爪の手入れをしながら新米は答える。
そういや試験の前にこいつが八百長を持ちかけてきた時、
『後輩が出来たら私への負担が減って得』だとか何とか言ってやがったっけ。
こういうことかとあっしは思い出す。
扱き使われて、これじゃあロケット団のとこにいた時とやってることはさしてかわらねえ。
ただまあ少し違うとすれば、孵化してすぐに何の選択の余地も無く
そう生きざるをえなかったわけじゃあなく自らで選んでこの道に入ったってのと、
「終わったぜ、先輩さんよ」
「ご苦労様。はい、労いに先輩がお茶とお菓子を奢っちゃいますよ」
「何が奢りだよ、隊の全員に支給されてるもんだろーが」
奴隷や道具のようにじゃあなく一応は対等な仲間の一員として扱ってもらえるって所か。
- 401 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/04/14(火) 00:36:53.51 ID:NL8QlO2W0.net
- 明日か明後日にでも続きを書きたいです
- 402 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/04/17(金) 01:03:49.60 ID:NuPz8Sgg0.net
- 明日の夜か深夜に投下します
- 403 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/04/18(土) 02:32:43.39 ID:hWNUTjtq0.net
- ――「交代だよ、お疲れさん。食事の時間まで、しばらく好きに過ごしてきな」
午後を過ぎた頃、引き継ぎでやってきた先輩にそう労われ、長かった勤務時間がようやく終わった。
「はーい。あー、疲れたー」
新米は大げさにコキコキと肩を鳴らし、うーん、と大きく伸びをする。
まったく……雑用はほとんどあっしに押っ付けて、自分じゃ何もしてねえくせに……
「さーて、リフレッシュしに行きますか! あ、新入り君はどうします?」
どうせこいつは、ウキウキと畑作業?にでも行くつもりなんだろう。
「もし集落の方に行くんなら、一緒に連れて行ってあげてもいいですよ?
何か、先生から聞いた話じゃ、子ども達があんたの来るのを楽しみにしてるみたいだし」
そう言われてグッと心が動いたが、まだ皆に大層な話ができる段階じゃねえ。
どうしようかと思いあぐねていた時、隊長が足早に庭を横切り、裏口から外へ出ていくのが見えた。
「ん? 隊長も休憩か? にしても、あんな急いでどうしたってんだ?」
「ああ、それはきっと……」
言い掛けて、新米ははっと口を噤み、
「い、いえ、私にはさっぱり! じゃあ、また後でー!」
と急に慌てふためいた様子で、そそくさと走り去っていってしまった。
んだよ、気になるじゃねえか……それに、あのお役目第一の堅物が、一体どこ行くってんだ?
ふと興味にかられ、あっしは隊長の後を付けようと空に飛び上がった。
ぎりぎりまで高度を上げると、隊長の姿が真っ白い雪原に落ちた黒い点のように見え、
それが物凄いスピードで移動しているのが分かる。
だが、いくら相手が精鋭中の精鋭とはいえ、所詮は地を這う生きモンに過ぎねえ。
上から見りゃ行先は一目瞭然だ。
- 404 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/04/18(土) 02:34:34.71 ID:hWNUTjtq0.net
- 屋敷を出た隊長は集落とはほぼ反対側、ほとんど人気のねえ北西方向へと進んで行く。
それを追っているうちに、あっしは何やら嫌な胸騒ぎがした。
その予感は的中し、案の定、隊長が向かっていたのは――あの、不気味な雰囲気の漂う、
寺院のような建物だった。
あそこへ近付くのにゃどうも気が進まず、躊躇したが、ここまで来て引き返すのもシャクだ。
あっしはお化け屋敷にでも踏み込むような心持ちで、建物の屋根に舞い降りた。
隊長が呼び鈴を鳴らすと、覗き窓から管理者らしきニューラが顔を出し、内側から扉を開いた。
何故かそいつは、人間でいうところのマスクみてえに、口元を白い布で覆っている。
隊長はその管理者に連れられて外廊下を渡り、奥の一室に入っていった。
幸い、その部屋の天井付近に明かり取りの天窓があり、あっしはそこから恐る恐る中を覗き込む。
そして――今思や、本当に申し訳ねえ話だが――あっしは体中の羽毛が逆立つ程にゾッとした。
そこには、まだ子どもらしき小柄なニューラが一匹、布団の上に横たわっていた。
いや、それだけならどうというこたあねえが、尋常じゃねえのはその子の容姿だ。
重い病気に掛かっているというのは一目で分かった。
ミイラみてえに干乾びて骨と皮ばかりに痩せこけた体。地肌が見えるぐれえに薄く艶のねえ体毛。
げっそりと肉の削げた顔の中で眼だけが異様に大きく見え、薄暗い部屋の中でぎょろぎょろ光っていた。
しかもその子は、他のニューラに比べて赤い片耳が長かった。
つまり、それは……あっしがこの里に来て最初に目にした、オスのニューラの姿だった。
- 405 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/04/18(土) 02:36:17.62 ID:hWNUTjtq0.net
- 部屋へ入ると隊長は子どもに二言三言声を掛け、傍へ座って徐に覆面を取った。
その時、あっしは初めて隊長の素顔を目撃し、腰が抜けそうなほど驚いた。
――こ、こりゃあ……すげえ別嬪じゃねえか……!
ニューラ族自体、見た目じゃポケモンの中でも上位に入る種族だが、その中でも恐らく別格だろう。
異種族のあっしから見ても、その容貌が際立っているのがよく分かる。
普段なら思わず浮き足立っちまうところだが、そん時は到底そんな気分にゃなれなかった。
薄暗い室内で寄り添う、美女と異様な子どもの取り合せが、いかにも奇妙に見えた。
だが、始めに受けた衝撃が薄らいでいくにつれ、あっしはそんな風に思っちまった自分に後悔した。
恐らく見舞いの品だろうか、隊長は木の実や菓子などを取り出して枕元に並べた。
子どもは甘えるように隊長の膝に縋り付き、隊長はそっとその頭を撫でる。
その優しげな笑顔は、あの杓子定規なガチガチの石頭だとはとても信じられねえ。
部下は勿論、頭領にも、いや、あの子ニューラにすらも見せねえような細やかな態度だった。
それがあっしには、何故だかどうにも遣り切れねえもんに感じられ、胸が詰まるような思いがした。
二匹はそうやってしばらく語り合っていたが、やがて、管理者がやってきて何やら声を掛ける。
途端に隊長は悲しそうに溜息を吐き、子どもをそっと抱き締めながら宥めるように何か囁いた。
やがて隊長は思い切るように立ち上がり、再び覆面を巻くと、目を伏せたまま表へ出る。
その後を追うように子どもは寝床から這い出し、壁に掴まりながらよろよろと立ち上がった。
去っていく隊長の後ろ姿を見送り、手を振りながら、子どもはその背中に声を掛ける。
それはか細い、掠れた声だったが、その子は確かにこう言った。
「おかあさん、またね」
- 406 : ◆Pc42BttzIw @\(^o^)/:2015/04/18(土) 17:05:34.60 ID:47Ak6cux0.net
- 明日明後日にでも続き書く
- 407 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/04/18(土) 17:06:58.86 ID:47Ak6cux0.net
- ついでにトリップ変えとく
- 408 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/04/22(水) 02:03:59.74 ID:zzOkpw+Q0.net
- 投下は明日の深夜か明け方に
- 409 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/04/24(金) 03:36:14.29 ID:uV/wSWWF0.net
- 今日の夕方〜夜位に遅れる
- 410 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/04/25(土) 08:18:19.99 ID:xPvREL8M0.net
- は――? あっしは一瞬耳を疑う。
同時、少し身を思わず乗り出しちまった拍子に積もり固まった雪が屋根から地面に砕け落ち、
ぼたぼたと物音を立てる。
しまった――あっしは天窓から素早く顔を離し、
言葉の意味を考える暇もねえまま一目散にその建物から飛び去って逃げた。
驚きやら何やら、見ちゃいけねえもんを見たような気がして逃げずにゃあいられなかった。
息を切らして詰め所まで帰ってきたあっしに先に戻っていた新米は不思議そうな顔をした。
「どうしたんです、そんな慌てて。まだ時間にはぎりぎりってわけでも無いですけど」
尋ねる新米にあっしは何でもねえと首を振るう。
「ははん、さては盗み食いか……それとも覗きでも?」
どきり、と心臓が跳ねる。
あっしはそれを表情に出さないよう大きく呆れる風を装って一息吐き、
「オメーさんじゃあるまいしするかよ、んなこと。
ちょっとばかし訓練がてら空を飛び回ってきただけだよ」
そんな風に誤魔化した。
「ふうん、真面目ですこと」
新米は退屈そうに納得して、座布団に座り込んだ。
とりあえず一息ついたのも束の間、背後の扉が勢いよく開けられた。
ひ、とあっしは微かに息を呑み、恐る恐る扉の方へと振り返る。
そこには危惧したとおり、いつもの頭巾姿の隊長が立っていた。
- 411 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/04/25(土) 08:21:33.00 ID:xPvREL8M0.net
- 覗いていたのがバレて追ってきたんだろうか。
どんな表情をしているのか口の形も目の色も顔にかかった黒い幕越しじゃ一切わからねえ。
ただただ立ち竦んで隊長の次の行動を待った。
「ご苦労」
ただそう一言労って、隊長はあっしの横を何の気なしと言った様子で通り過ぎた。
へ? 拍子抜けして、あっしはその背中を目で追う。
「あ、隊長おかえりなさい」
新米に手馴れた様子で座布団を差し出され、「うむ」と隊長は座った。
「おい、お前」
そう隊長に声をかけられ、再びあっしは緊張の糸をびんと引っ張られる。
「へ、へい」
おっかなびっくり返事をして、あっしは隊長の方に振り向く。
「何をそこで突っ立っている? こっちへ来て座ればどうだ」
言われるまま、あっしは覚悟して隊長の向かい側へと座る。
やはりなにかお咎めを? ハラハラと少し目線を下に様子をちらちら窺った。
隊長は依然として頭巾も黒幕の布面すらずっと取らないままただ黙ってじっと正座している。
新米はそんな隊長の様子を不審がるでも緊張するでもなく、
普段通りに爪を弄ったり毛並みを整えたり脱いだ自分の頭巾に付いた塵をパタパタ払ったりと適当に過ごし、
あっしだけが表に出さないようにしつつ内心は気が気じゃねえ状態で時が平穏無事に過ぎるのを待っていた。
- 412 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/04/25(土) 08:22:50.34 ID:xPvREL8M0.net
- 「新入り」
「は、はひ!」
不意にまた隊長に呼ばれ、素っ頓狂な声であっしは応じる。
「どうした、そんなに声を裏返らせて」
「い、いやぁ。何かしでかしまってお叱りでもあんのかなー、と……」
怪訝そうに首を少し傾げる隊長に、あくまで直接触れないように遠回しにあっしは言った。
「別に、叱るつもりも必要も無い。寧ろその逆だ」
「へ?」
「入ったばかりのわりには、お前はうまく務めをこなしている。と、言いたかった」
お叱りとは真逆、予想外の突然なお褒めらしき言葉に、
あっしは豆鉄砲でも食らったみてえに口を半開きのまま思考と動きが止まった。
「……それとも何か後ろ暗い事でも?」
「いやいや、そんな滅相もねえ。まだまだ慣れてねえもんだから、
知らない内に何か粗相でもしちまったかななんて思っただけでやして、へへ」
慌てて首を横に振って、あっしはそう言い繕った。
「ならばいい」
そう言って、隊長は何事も無かったようにそれきり黙る。
覗いていたのは悟られずにすんでいた……のか?
まだ少し半信半疑ながらひとまずあっしは胸を撫で下ろした。
- 413 : ◆nT58vM8A36 @\(^o^)/:2015/04/27(月) 04:20:56.35 ID:UV1DxlQe0.net
- 明日明後日にでも続き書く
- 414 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/04/27(月) 04:23:15.97 ID:UV1DxlQe0.net
- トリップはこっちに
- 415 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/04/30(木) 00:11:01.70 ID:balIzgBS0.net
- 今、このスレに来てる人何人いるんだ?
久しぶりに来たが少なくなってるような、、、
- 416 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/04/30(木) 00:11:34.73 ID:balIzgBS0.net
- 今、このスレに来てる人何人いるんだ?
久しぶりに来たが少なくなってるような、、、
- 417 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/04/30(木) 00:11:44.12 ID:balIzgBS0.net
- 今、このスレに来てる人何人いるんだ?
久しぶりに来たが少なくなってるような、、、
- 418 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/04/30(木) 04:17:00.30 ID:ooeQBgrZ0.net
- 投下は明日の今くらい〜明け方に
- 419 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/05/03(日) 07:02:13.57 ID:qZehHcMe0.net
- 「時間だな」
隊長はぽつりと呟くとすっくと立ち上がり、部屋をひとり出て行こうとする。
「ありゃ、そろそろ隊の皆さんで食事の時間じゃあ無いんで?」
疑問に思ってあっしが聞くと、隊長は振り向きもせずに言う。
「若君の御付きに行かねばならない。気にせず食事は先に済ませておけ。私は後で別にとる」
そっと扉を閉め、隊長は部屋を去っていった。
「……なあ、隊長っていっつもあんな感じなのか」
しばらく間を置いてから、あっしはすっかりだらけきって座布団を枕に寝転がる新米に尋ねた。
「そーですよ。何か変でした?」
「いや、休憩に来たみてえなのにずぅっと頭巾取らねえしよ。何かあるのかと思って」
よっこいしょと新米は起き上がり、
「やっぱり気になります?」
ずいと机に身を乗り出しニッと口元を歪めてあっしに聞き返してきた。
「お、おう」
少し引き気味にあっしは頷く。
新米はおもむろに立ち上がり、部屋の外を静かに見回してからいそいそと再び席に戻ってきた。
「私はもうすっかり慣れちゃいましたけど新入り君は不思議に思っちゃいますよね、
隊長が頭巾全然取らないの。あの通り休憩中も外さないし、いつも食事も水浴びも別で、
取った姿は私も見たこと無いんですよ」
- 420 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/05/03(日) 07:03:22.61 ID:qZehHcMe0.net
- 「……何でそんな頑なに人前で取ろうとしねえんだ?」
「さあ? そんなの私が知りたいくらいですー。
先輩達や女中さん達を探ってみても殆どみんな知らないし、失礼でしょって怒られるし……」
他の館の者達にまで素顔は見せていないのか……。余程の理由がありそうだ。
「やっぱり何かひとに見せられないような傷があるとかですかね?
それともとっても変なお顔とか、逆にすごい美形とかー? だったら隠してる意味わかんないしなー……」
あれこれと考えを述べる新米を他所に、あっしはあの寺院みたいな建物での出来事を思い出していた。
光の殆ど差さない薄暗い中、それも真正面から堂々見ることが出来たわけじゃねえとはいえ、
隊長の面に別に隠したいような目立った傷なんてあるようには見えなかった。
造りだって不細工どころか、どこに晒したって恥ずかしかねえ美形だ。
「ちょっとー。自分から話題をふっておいて何黙り込んでいるんですかー」
「え、ああ、いやなんでもねえよ。いい加減腹が減ってボーっとしてきただけだ」
咄嗟にあっしは誤魔化して言う。
「あー、それもそうですねー。先輩達もそろそろ戻ってくると思うんですけど」
どんな事情があるかまではわからなかったが、一介の近衛隊新入りでしかねえ上に元は余所者のあっしが、
隊長の素顔や寺院での事――同僚達にすらひた隠す隊長が唯一顔を晒していたあの奇妙な子ども――
を見たのを知られたり大っぴらに言っちゃ面倒な事になりそうだとは少なくとも感じ取れた。
- 421 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/05/05(火) 03:50:48.09 ID:L+IqPgaK0.net
- 明日明後日くらいに続き書く
- 422 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/05/08(金) 05:37:23.91 ID:Zd/aSZhP0.net
- 投下は明日の今くらいに
- 423 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/05/10(日) 18:29:02.51 ID:cmleyv9j0.net
- hoshu
- 424 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/05/11(月) 04:49:03.79 ID:55+uPkqk0.net
- 遅れててすまん、今日の夕方〜深夜くらいには投下できるようにする
- 425 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/05/12(火) 12:21:01.81 ID:tTa1L9240.net
- 先輩方との質素ながらも和気藹々とした夕餉を終え、
頭領への御付きの順番が巡ってきてあっしは新米と共に陰ながら頭領を見守っていた。
外からは険しい山々に守られた里、それを更に厳重に警備されている頭領が住まう屋敷、
安全に安全を重ねて織ったような環境の中でそうそう異変があるわけも無く……。
大広間で食事を終えて子ニューラと一緒にゆったりと時を過ごしている頭領を
あっしは隣の部屋から時折うつらうつら舟を漕ぎながら
――新米の方に居たっては襖に寄りかかって寝息を立てている――眺めていた。
程なくして頭領が手をぱんぱんと二度続けて打ち鳴らし、「おい」と声を上げる。
あっしらじゃなく隊長だけを呼び出す合図だ。
それから数十秒、一分もしない内に天井裏から隊長が降り立ち頭領と幾らか言葉を交わすと、
腹も一杯で眠い目を擦り始めた子ニューラの手をそっと引いて広間から連れ出していった。
ひとりになると頭領はおもむろに立ち上がって大広間を出ていき、
あっしは慌てて新米を揺り起こしてその後を付かず離れずの位置で付き従っていく。
長い廊下を渡りきって頭領は調理場の前までやってくると、中の女中たちに声をかける。
御用を聞きに出てきたのはニャルマーのやつだ。
酒を入れたトックリの二、三本ばかりとオチョコが二つ欲しい。そう頭領が頼むと、
ニャルマーはそれはまあ愛想よく笑顔で了承し奥へと引っ込んでいった。
あっしが仕方なく何か頼みに行った時は面倒そうに舌打ちやら悪態一つ残していく癖に。
本性を知っている身としちゃあ、おぞ気が走りそうなほど不自然な姿だ。
すぐにトックリとオチョコを入れた桶をニャルマーは咥え運んできて頭領に渡す。
そのついでとばかりに「お酌いたしましょうか?」だなんて
反吐が出そうなほど甘い声でそっとほざくのを、
「折角だが、晩酌に誘う相手は今日はもう決まってんだ。すまねえな」
そっけなく頭領は断った。
「そうですか……」ざあとらしくしゅんとして見せて、ニャルマーは調理場へと引っ込んでいく。
ざまあみろ、少し胸がすく思いがした。
- 426 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/05/12(火) 12:23:46.00 ID:tTa1L9240.net
- それにしても誘うと決めてる相手ってえのは誰の事だろう?
疑問に思いながら再び廊下を歩み出した頭領についていっていると、
不意に頭領が指をパチンと鳴らしてあっしらを呼び寄せた。
すかさずあっしと新米は頭領の目の前に躍り出て、「何なりと」と跪く。
「カラ公、オメーちっと俺様の晩酌に付き合え」
ニッと笑って頭領は言った。
「え、なんであっしなんざ」
戸惑ってあっしは尋ねる。
「頭領としてオメーに祝辞は言ったが、戦い方を伝授した師匠としちゃまだだからな。
パーッと勝利を――あ、引き分けだったっけ……まあ、何にせよ目的達成出来た事を祝おうや」
「でも、あっしぁまだ勤務中ですし」
「隊長の方にはもうしっかり話は通してある。四の五の言わず大人しく付き合いやがれってんだ」
「は、はあ……」
肩を掴まれあっしは半ば強引に頭領に連れていかれる。
「あのあの、私は?」
置いてけぼりにされそうな新米が申し訳無さそうに伺う。
「ああ、オメーも自由時間! 隊長にも言ってある」
言いながら頭領は桶からトックリを一本取り出して新米に押し付けた。
「適当に好きに過ごしてなよ。そうそう、ガキも寝かしつけてネズ公が暇そーにしてたぜ」
「ホント? んじゃ、お言葉に甘えさせてもらって、お先に失礼しますっ!」
新米は渡されたトックリ片手にウキウキを去っていった。
「いやあ、チョロイもんだ」
呆れたように呟いて、頭領はその背を見送った。
- 427 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/05/12(火) 12:25:26.21 ID:tTa1L9240.net
- 「ま、遠慮せず上がれよ」
そう手招かれた先はさほど広くないこじんまりとした和室だ。
「俺と嫁さん――先代の自室さ。普通なら入れるのは俺と先代と愛しのガキンチョ、
それから隊長くらいなもんだぜ。有り難く思いな」
「そいつぁどうも……」
恐縮しながらあっしは敷居を跨ぎ、部屋の様子を何気なく見渡す。
先代さんの趣向なんだろうか。頭領から感じる派手なのが好きそうな印象に反して、
室内は余計な物や豪華な装飾が無くすっきりさっぱりしたもんで、
精々あるのは小さな火鉢が一つ、床の間にちょこんと置かれている綺麗に紅葉した盆栽、
そのすぐ後ろに飾られた掛け軸――そこに描かれていた者の姿に、
あっしは驚きのあまり絶句する。
「おっ、それに見入るとはお目が高いね、カラ公よ。綺麗だろう、まるで生き写しだぜ。
まだ先代が元気で存命だった頃、ドーブルの爺さんに描いて貰ったのさ」
漆のように気品と艶のある毛並み、エンジュで見たあの見事な紅葉を映したような紅色の瞳
――確かに初めて見たなら度肝を抜かれる程の別嬪だ。
しかし、あっしは描かれているその姿に見覚えがあった。
頭領がいつも大事に持っている扇子を片手に柔らかく微かに微笑むその顔は、
あの建物で見た隊長の素顔に瓜二つだった。
- 428 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/05/14(木) 01:43:29.00 ID:bUhdA6J90.net
- 明日明後日辺りにでも続き書く
- 429 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/05/17(日) 22:25:37.37 ID:k0CT1kBb0.net
- 保守
めっちゃ続きが気になる
- 430 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/05/18(月) 03:37:06.77 ID:iEwdyjx80.net
- 投下は明日の今位か明け方に
- 431 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/05/20(水) 07:56:47.66 ID:fyIgPTMN0.net
- ごめん、やっぱり今日の夜〜深夜くらいになります
- 432 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/05/21(木) 11:10:40.89 ID:UBFDEO490.net
- こりゃ一体どうなってやがるんだ?
「失礼を承知で変なこと伺いやすが、先代さんはもう亡くなられているんでやすよね?」
恐る恐るあっしは上機嫌に桶からトックリとオチョコを取り出す頭領に伺う。
「ああ、前に言わなかったっけ? 子どもを産んですぐに、な。
元々、昔から体はあまり丈夫な方じゃなかったらしいが……。
ガキンチョにとっては勿論、俺にとってもこれからって時だったのによ」
ふぅ、と頭領は憂いを帯びた溜息を漏らす。
「おっと、いけねえ。ささやかだがオメーを祝う席なんだから湿っぽい話させんじゃねえや。
ほら、さっさと飲め、飲め」
頭領は酒を注いだオチョコをあっしに押し付けるように渡す。
「乾杯だ」頭領はあっしのオチョコに自分のオチョコをこつんとぶつけてから、ぐいっと仰いだ。
それに続いてあっしも飲み干す。舌の上から喉の奥まで、独特なピリピリとした感覚と熱っぽさが走った。
「ほら、もう一杯」トックリを差し出され、あっしは「ありがとうございやす」とお酌を受ける。
「ところで、近衛隊長さんはいつからああやって仕えておられるんで?」
酒を注いで貰いながらあっしはそれとなく尋ねてみる。
「ん? 先代の頃からずっとだよ。ガキの頃から先代の傍で一緒に育ってきたらしい。
――しかし、何でまた、藪から棒に隊長の事なんて聞きたがんだ? まさかオメー、さては……」
眉間に皺を寄せて頭領はあっしの顔を覗きこむ。
ぎくり、と心臓が揺れた。まさか何か感付かれたんだろうか。
「隊長に惹かれでもしたか?」
ごぽ、とあっしは酒を吹き出しかける。
- 433 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/05/21(木) 11:12:39.26 ID:UBFDEO490.net
- 「いやいやいや、無い無い無い無い絶対それはありやせん、恐れ多い!」
首を横に振るい全力であっしは否定した。
頭領は苦笑し、「しぃー」と指を立ててあっしに声を潜めるようにジェスチャーする。
「言い忘れてた。ちょい、声は抑え目で頼む。すぐ隣の部屋で隊長がうちのガキンチョを
寝かし付けてくれてるんだったわ」
「ありゃ、すいやせん……」
一息つくように頭領は空になったトックリの一本を桶に戻す。
「ま、さっきのはほんの冗談だ。一時期、俺も近衛の一員として先代に仕えていて、
隊長の下で働いてた事あるから分かるよ。口うるせえし一々手厳しいし、
いっつも歌舞伎の裏方みてーなあの頭巾と面でツラ隠しているし、
苦手に感じたり奇妙にゃ思ってもそうそう惚れなんてしねーわな。
あれはあれで、やさしーとこもあんだがよ。色々知らねえところで庇ってくれてたみてーだし……」
へへ、と頭領はどこか懐かしむように笑った。
あっしは誤魔化すように適当に相槌を打ちながら愛想笑いする。
その陰であっしはもう一度掛け軸をそっと見やった。先代さんは変わらぬ微笑を湛えている。
頭領の話が事実であるならば先代さんと隊長は同一人物ってわけじゃあ無さそうだ。
じゃあ、なんでこんなそっくりなんだ……?
隣の部屋に隊長もいるらしいとあっちゃそれ以上は頭領に根掘り葉掘り聞くわけにもいかず、
――あっしの様子を妙だと怪しまれるかもしれねえし。頭領の勘や見る目は油断できねえ――
あっしは悶々としながら頭領の晩酌兼あっしの近衛隊入り祝賀会に付き合った。
- 434 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/05/22(金) 03:34:29.39 ID:HZAZ9GxJ0.net
- 明日明後日辺りにでも続き書く
- 435 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/05/24(日) 00:39:40.35 ID:bKy+nfDu0.net
- ほしゅー
- 436 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/05/26(火) 23:13:40.38 ID:E7XSCWFi0.net
- hoshu
- 437 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/05/27(水) 01:49:21.45 ID:bVbxxWGu0.net
- 投下は明日の深夜か明け方辺りに
- 438 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/05/29(金) 07:18:39.80 ID:6yFLHTJn0.net
- 保守
- 439 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/05/30(土) 06:29:02.85 ID:WCj3H4NR0.net
- だいぶ遅れててすまん
ちょい立て込んでた、夜か深夜くらいには投下できるようにしたい
- 440 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/05/31(日) 07:54:27.86 ID:ejfEPBw10.net
- ――「近衛として館での下働きぁその後もしばらくは順風満帆なもんでやした。
たまにヘマしてお目玉を喰らう事もありはしやしたが……
ま、それも今となっちゃあ在りし日の良い思い出ってヤツだぁな」
グラスをドンカラスは少し傾けて揺らし、溶け出した水に浮かぶ氷の塊達が
カラコロとぶつかり揺れるのを遠い目で見つめる。
「少し気になったんだが」
ん? とドンカラスは帽子の鍔を上げエンペルトを見やる。
「いや、大したことじゃあない。ドンのその独特な訛りと言うか喋りかたって、
その頃から染み付いていたんだなあって思って」
「う……」
慣れ親しんだ者からの改まった癖の指摘に、ドンカラスは少し照れ臭そうに言葉を詰まらせた。
「包み隠さず話した通りあっしゃ生まれも育ちもロクでもねえもんで。
汚ねえ地を隠して相手に敬意を払った喋り方を仕様とするとどうしても影響されちまんでさ」
「それって何の?」
「あっしの元飼い主のロケット団員の野郎がよく見ていた極道モノや時代劇のビデオだよ。
レンタル料が安いんだかそういう世界に憧れていたんだかしらねえが、
ヤツぁそんなんばっかり借りて見てやがった。六畳一間のボロ部屋で、娯楽といやぁそれくらい。
根深く刷り込まれちまってもしかたねえでしょう?」
- 441 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/05/31(日) 07:55:09.72 ID:ejfEPBw10.net
- なるほどな、とエンペルトは頷く。
それから、今でもドンカラスはたまにどこからくすねているのか定かでは無いが、
そういった類のビデオを仕入れてきては観賞に耽っているなと思い返す。
ロケット団の事は嫌悪していても、元飼い主だというその団員個人に対しては
悪態をつきながらも少しばかり懐かしむような思いでもあるのだろうか。
そんな風にふとエンペルトは考えたが、口に出すのはやめておいた。
「逃げ出したきりあの野郎のツラを二度と拝むこたぁ無かったが、
今でもあの小汚ねえ部屋で相変わらず萎びた生活してやがんのかねぇ。
それともロケット団が解散した時のゴタゴタでサツにでもとっ捕まって塀の中か……。
ま、うだつの上がらねえヤツだったから碌でもねえ目にあってるのは間違いねえな、クカカ」――
――「ぶぇぇっくしょいッ!」
まるで大砲のような声量のくしゃみが、日も沈みかけたヒワダタウン近郊の静寂を貫く。
一斉に騒音の元……デルビルへと非難の視線が集った。
「静かにしろ。日が暮れてきたとはいえ町のすぐ傍、どこに人間が居るかもわからんのだぞ」
苛々と声を抑えて俺は咎める。
「ちっ、出るもんは仕方ねえだろ、ピカチュウさんよ。雨に当たってからどうも調子が悪ぃのさ」
ずび、と鼻を啜りながら悪びれる様子も無くデルビルは言った。
「ヤドンが捕らわれているという井戸の場所を探り辿り着くまで、
我らの存在を気取られるわけにいかん。以後気をつけろ」
- 442 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/05/31(日) 08:48:14.31 ID:ZHbribK70.net
- ピカチュウ4年ぶりくらいの登場?
- 443 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/05/31(日) 10:18:13.51 ID:t/ThkmSB0.net
- 職人乙です!
ピカチュウ久々だなーw
- 444 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/05/31(日) 18:41:11.64 ID:hUcxGF8j0.net
- 過去ログ漁ってみたら、最後のピカチュウ登場が2011年8月だったw
ほぼ4年前やねw
明日か明後日にでも続きを書きたいです。
- 445 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/06/03(水) 07:13:57.42 ID:Gi5GYo+10.net
- 保守
- 446 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/06/04(木) 00:12:28.31 ID:/AnyvE8m0.net
- 明日の夜か深夜に投下します
- 447 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/06/05(金) 01:59:06.63 ID:2e56/NU/0.net
- へーへー、と生返事をしながらデルビルは肩を竦ませる。
その時、遠くからざわざわと話し声が聞こえ、数人の人間が灯りを手にこちらへ向かってきた。
「ほーら見なさい、あんたのせいじゃないの?」
「ん、んな訳ねーだろ……」
ジト目で睨むミミロップに、デルビルはバツの悪そうに下を向く。
だが、どうやらそうではないようだ。
人間達は我々の方になど振り向きもせず、町の北側へ歩いて行った。
通り過ぎざま、人間達が口々に「うちの子が…」「どこへ…」「もうあそこしかない」などと
呟いているのをみると、町の住民達が姿を消したヤドンを捜す為に集まってきたのだろう。
恐らく、彼らの行先はヤドンの井戸に違いない。
「おい、あの後を追うぞ。見付からぬよう用心しろ」
住民達を付けるように俺達は急いで道路を横切り、向かいの藪の中へと入った。
程なくして、剥き出しの地面が掘り抜かれ、逆ピラミッド状に窪んだ場所に着く。
その中央に、梯子の掛かった、石造りの大きな煙突のようなものが見えた。
あれが、例のヤドンの井戸だろう。住民達は坂を下り、そこへ向かって行こうとする。
だがその時、不意に井戸の中から人影が現れ、梯子を降りて住民の前に立ちはだかった。
「はーい、皆さん、近付かないで下さーい」
それは若い男女の二人組だった。全身黒ずくめで、胸に「R」の一文字だけが赤く染め抜かれている。
紛う事なき、ロケット団の制服だ。
「この井戸は老朽化の危険がある為、我々が無償で調査中でーす。くー、俺って、いいひと?」
黒服共は通せんぼをするように大きく手を広げ、住民達を遮った。
「何言ってんのよ。どう見たって怪しい人に決まってるじゃない!」
下を覗き込みながら、ミミロップは憤慨して頬を膨らませる。
「あいつらジョウトの……! くそっ、勝手な事しやがって!」
デルビルは黒服共を睨み付け、ぎりぎりと歯噛みしていた。
- 448 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/06/05(金) 02:01:54.34 ID:2e56/NU/0.net
- 「どうした? お前のお友達か?」
ミミロップ達に聞こえぬよう、俺は小声でデルビルの耳元にわざと囁いてみる。
「奴らが? ケッ、冗談じゃねえ!」
デルビルは顔を顰め、ぶるぶると首を横に振る。
「ふん、どうも穏やかではないようだが、奴らに恨みでもあるのか」
「ああ、悪質な嫌がらせや、陰険な手口で仕事の邪魔をされた事なんざ、もう数え切れねえ。
おまけに、何かにつけちゃ人を下品だの田舎者だのと見下しやがる、鼻持ちならねえ連中だ。
てめえらこそ、サカ……ボスが行方不明なのをいい事に、好き放題やってる恩知らずのくせによ!」
溜まった鬱憤を吐き捨てるよう言いながら、デルビルは低く唸った。
つまり、現在のロケット団において実権を握っているのは、あのサカキという男ではなく、
デルビルらと相反する一派なのだろう。
ある意味、それは俺にとって好都合だ。相手が共通の敵であるならば、扱いはずっと容易になる。
この地方において、まだデルビルには利用価値があるのだ。
それに、目的を同くするなら他の配下達に怪しまれる事もない。こやつに取っても好都合だろう。
それにしても……と、俺はふと思い出す。
――それならば、あれからサカキは、一体どうなったのだろうか。
悪意の核ではぐれてしまった後、俺は、サカキは勿論、ニャルマーの行方すらも知らない。
奴らもパルキア達の手によって、無事に本来の場所へ戻った事は恐らく間違いないだろうが、
今まで特に知る必要もなかった故、気にも留めていなかった。
もし、あの男が裁きを受け、己の罪を悔いているとしたら、それに越した事はないが……
しかしまあ、それは今回の件とは全く関わりのない話だ。
俺達は息を潜め、黒服共が住民達を追い返すのを暫し待った。
流石に住民に危害を及ぼす訳にはいかぬが、あやつら悪党になら配慮する必要はない。
ムウマージの光で混乱させるか、ミミロップが当身を食らわせるかすれば、難なく井戸に潜り込める筈だ。
だが、住民達もヤドン並みにしぶとく、なかなか諦めようとしなかった。
- 449 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/06/05(金) 03:44:11.14 ID:fbY676s00.net
- 明日明後日辺り続き書く
- 450 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/06/07(日) 06:56:48.78 ID:/1wAQSeB0.net
- 保守
- 451 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/06/09(火) 03:34:48.10 ID:NuQ2+feS0.net
- 投下は明日の今位か明け方に
- 452 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/06/11(木) 04:33:14.96 ID:h3w0bNzM0.net
- ごめん、投下は今日の夜〜深夜くらいに変更で
- 453 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/06/12(金) 21:16:11.51 ID:rwfbCp3I0.net
- ポニーテールとホシュ
- 454 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/06/13(土) 05:54:55.28 ID:DV0G1oko0.net
- 「いっそ住民ごと無理矢理追っ払ってしまったらどうだ」
じれったそうにデルビルは前足で雑草を躙る。
「駄目だ」
俺は首を横に振るった。
我らの目的を果たす過程で恩も義理も無い人間が多少どうなってしまおうと関知する所ではないが、
遺恨を残したり存在を気取られるような行動は出来る限り避けておきたい。
余計なものにまで敵対心を持たれては今後の行動の妨げとなる。
そう諭すと、デルビルは不服げに舌打ち一つしてそっぽを向いた。
『ああー、うるさいうるさい……ツベコベ言わず消え失せろ!』
しつこい住民達にとうとう業を煮やした様子で黒服の一人が声を荒げ、
どんっ! と思い切り住民達の先頭に居た中年の男を突き飛ばす。
非難の声を上げる住民達を本性を露にした黒服の男は鋭く睨め付けた。
『人が親切でやってやってるってのに、あんまりしつこいと……』
黒服は腰のモンスターボールの一つに手をかけ見せ付けるように撫でる。
驚き竦む住民達。
「助けに入る?」
「必要ない。あの様子なら大ごとになる前にさっさと住民の方から逃げ帰るだろう。
奴らの処理はそれからでいい」
- 455 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/06/13(土) 05:56:15.59 ID:DV0G1oko0.net
- ミミロップの問いにそう答えていた矢先の事だ。
『待てよ!』
唐突に人間の声が緊張走る黒服と住民達の間に割って入った。
まだ年若い、子どもの声だ。俺達も住民達、黒服共も一斉に声の方へと視線を向ける。
その先に居たのは声から感じ取れた通りまだろくに年端も行かぬ人間の男児。
黄色い帽子を被り赤いジャケットを着た……。
「あいつは確か――」
「ピカチュウが繋がりの洞窟で遊んであげた少年君」
「何が遊んでやっただ。そんな生易しいものではなかろうが」
どこか愉快そうなミミロップに俺は苦々しく言う。
きっともう出くわすような事も無いだろう、そう半ば願うように思っていたというのに。
それもよりにもよってようやく邪魔な住民達を黒服が追い払ってくれそうだという時にだ。
『大丈夫か、おじさん』
黄色帽子は黒服に突き飛ばされ腰を抜かす中年の男へと駆け寄っていく。
そのすぐ後ろをぴょんぴょんと以前戦った時よりも体が一回り大きくなった火ネズミが付いていった。
『なんだなんだ、このガキは……』
困惑する黒服を黄色帽子は睨み返し、一歩も怯まず対抗するようにぐっと胸を張る。
- 456 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/06/15(月) 03:03:21.25 ID:mNlKGn1Z0.net
- 明日明後日位にでも続き書く
- 457 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/06/18(木) 00:55:21.76 ID:7ZlnRteM0.net
- 保守
- 458 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/06/18(木) 07:19:21.56 ID:us3Rucl/0.net
- 投下は明日の深夜か明け方位に
- 459 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/06/20(土) 20:35:25.78 ID:rBOS8Z9W0.net
- 保守
- 460 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/06/21(日) 04:49:31.31 ID:/uwXuDkD0.net
- 申し訳ない、投下は今日の夕方か夜位に
- 461 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/06/22(月) 05:41:47.86 ID:b3smWcjH0.net
- それから黄色帽子は黒服をびしりと指差し一言。
『おい、おっさん!』
たちまち黒服の男の額に青筋が浮かぶ。
いきなりの部外者の登場――それもまだ十歳前後の子どもだ――とそのあまりにも無鉄砲な言動に住民達はどよめいた。
黒服の男は平静を取り戻すように息を吐き、額を片手でゴシゴシと撫でる。
『あのねえ、ボク。”おにいさん”は皆さんと大事な大人の話し合いをしてるんだよ。
子どもの出る幕じゃあない、邪魔しないでくれないかな?』
黄色帽子に目線を合わせて黒服は嘘くさい笑みを浮かべた。
『ふん、騙されるもんか。ずっと見てたもんね。おじさん達を無理矢理追い払おうとして、
ぼーりょく振るっといて何が大人の話し合いだよ』
黄色帽子は強気な姿勢を崩さない。「そーだ、そーだ!」火ネズミも威嚇の姿勢を見せる。
わなわなと唇を震わせる黒服の男。その様子に慌てふためいているのは周りの住民、大人達の方だ。
『ぼ、坊や! おじさんは全然平気だから、もう話も終わっておじさん達も帰ろうとしていたんだよ』
中年の男が間に割って入り、黄色帽子の肩をそっと押さえて言う。
『でも、こいつら絶対何か隠して……』
『いいから! 皆で帰ろう、ね』
中年の男は黄色帽子の言葉を無理矢理遮って、黒服の方へと向き直った。
『きょ、今日のところはこれで私達は引き下がらせていただく。だがこれ以上その調査とやらが長引くなら――』
『なら、なんだ?』
『ひっ……』
最後まで言い終え切れぬ内に黒服の男に凄まれ、
中年の男は黄色帽子を半ば引き摺るようにして他の住民達と逃げるように帰っていく。
火ネズミも戸惑いながらその後を追った。
- 462 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/06/22(月) 05:42:49.85 ID:b3smWcjH0.net
- 黒服の男はフンと鼻を鳴らし、女の方は住民達の背中に向かって小馬鹿にするようにひらひらと手を振る。
『この町にはガンテツさんという頼もしい人が居るからね。きっと何とかしてくれるよ……』
途中、中年の男がポツリとそう嘆くように呟くのが耳に届いた。
ガンテツ……? まるで岩か鋼タイプのポケモンみたいな名前だが一体……。
「誰の事かしら……?」
同じような疑問をミミロップが投げかけた。
「さあな。我らには関わり合いの無い事だ。それよりもようやく邪魔者が去ってくれたのだ。
隙を見て黒服共を無力化し、井戸に潜入するぞ」
俺達は作戦を打ち合わせ、二人居る黒服のどちらかが離れて隙を見せるのをじっと窺った。
しばらくして、黒服達は二言三言何か言葉を交わすと女の方が井戸の中へと戻って行き、
男だけがその場へと留まった。言うまでも無い、絶好のチャンスだ。
俺はミミロップとマージに顔を向けて無言で頷く。
そんな時だ。
遠くの方から、カランコロンカランコロンと木が軽快に地面を叩くような音。
下駄か何かを履いた人間の足音だろうか。が、怒涛のような勢いでこちらへ、井戸の方へと近づいていた。
「今度はなんだ?」
ぎょっとして音の方を見ると、見るからに岩の如く頑固そうな顔をした白髪の老人が一人、
およそ老人とは思えぬ健脚で今にも噴火しそうな程に怒りで顔面を真っ赤にしながら向かってくる。
- 463 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/06/23(火) 04:09:05.07 ID:OYzfrFuk0.net
- ピカチュウの“マージ”呼びに何ともいえないこそばゆさを感じた
- 464 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/06/24(水) 04:33:33.94 ID:gwiFexsm0.net
- 明日明後日辺りにでも続き書く
- 465 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/06/27(土) 04:46:22.83 ID:ILsnk5uV0.net
- 投下は明日の深夜か明け方ぐらいに出来たら
- 466 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/06/30(火) 04:31:19.98 ID:DtSgxKqI0.net
- 急用につき今日の夜くらいに変更で…すんません
- 467 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/07/01(水) 07:43:38.36 ID:5REt+e7s0.net
- やむを得ず俺達は再び藪の中に潜み、老人がどうするつもりなのか様子を見ることにした。
老人は肩を怒らせながらずんずんと坂の前に立ち塞がる黒服に詰め寄っていく。
黒服は先程住民達にしたように舐めきったニヤつき顔を浮かべながら通せんぼのポーズを取った。
『はいはい、爺さん。この先は井戸の調査中のため立ち入り禁止だよ』
『……話は聞かせてもろたで。おのれらとうとう町のもんに手え上げたんやってなあ』
老人は独特な訛りのある口調で黒服へとそう迫った。
今度どんな厄介な事になるかと冷や冷やしたが思わぬ助けだ。
「丁度いい。あの老人が黒服の目をひき付けている間に、井戸へと向かうぞ」
そう全員に指示を出し、そろそろと物音を立てないよう慎重に井戸へと向かう。
「でも大丈夫かな。あんなお爺さんひとりで」
途中ミミロップは少し心配そうに口論する老人と黒服を見た。
「ああ、我らが忍び込む間の時間稼ぎくらいにはなるだろう」
「そうじゃなくって、危なくない? あの黒服いざとなったら平気でポケモンけしかけそうだし」
要らぬ心配に俺は呆れて鼻息をつく。
「危険に合う前にさっさと逃げ出さなかったのならあの老人が身の程を弁えず無謀だっただけということ。
それをわざわざ助ける義理はあるまい。我らは正義の味方でも人間の味方でも無いのだから」
「そうだった。あんたそういうヤツだった」
鼻で笑ったお返しとばかりに今度はミミロップが嘆息し、
レッドレッド言ってるからちょっとは心を入れ替えでもしたのかと思ったけど……、とポツリと付け足した。
「くだらねえ口論してんじゃねえや。もう井戸もすぐそこだってのに中の奴らに聞きつけられたらどうすんだ」
デルビルが苛立った様子で言う。
確かにその通り。言い返してやりたい苛立ちを飲み込んで、井戸の傍に張り付くように一時潜んだ。
- 468 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/07/01(水) 07:44:31.64 ID:5REt+e7s0.net
- 耳をそばだてる。中から新たに誰かが出てくるような物音はしない。
老人と黒服がいる坂の上の様子を覗き見る。未だに老人は黒服へと食って掛かっているようだ。
黒服がとうとう我慢の限界を迎えた様子で、住民達を脅した時と同じように
腰のモンスターボールへと手を伸ばすのが見えた。
その後、あの老人の運命がどうなろうと関係ない。井戸に入り込む好機。
「よし、潜入する……」そう言いかけたとき、
『この男ガンテツが、おのれみたいなチンケな悪たれの脅しに縮こまる思とんのかアホンダラァッ!!!』
大地を揺るがさんばかりの激しい雷鳴のような怒声が空気を貫き、不覚にもびくんと身震いしてしまった。
「な、何事だ?」
再び坂の上を覗き込む。
『ひ、ひぃっ……』
すると、先程の怒声ですっかり気圧され怖気づいた様子で坂を駆け下りる黒服。
『待たんかい、ワレ!』
その後をケンタロスの如き勢いで猛然と追う老人。
「ま、まずい、身を隠せ!」
慌てて俺達は井戸の反対側へと隠れる。
ドタバタと転げ落ちそうになりながら黒服は井戸の底に下りて行き、老人もその後を追う音。
それが静まるまでじっと息を潜めて待った後、全員で顔を見合わせ思わず目をぱちくりさせてしまった。
「助けなんていらなかったみたい……」
苦笑するミミロップに俺はやれやれと首を振るった。
- 469 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/07/03(金) 01:53:25.84 ID:5bYJ/xmE0.net
- 明日明後日あたりに続き書けたら書きたい
- 470 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/07/06(月) 21:13:20.67 ID:E8FFelIz0.net
- 保守
- 471 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/07/07(火) 03:01:06.16 ID:NcEsG9uh0.net
- 投下は明日の深夜か明け方に
- 472 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/07/10(金) 03:43:54.36 ID:xcQZu8Nl0.net
- 今日の夜〜深夜くらいで…
- 473 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/07/11(土) 06:47:05.05 ID:YoVjtdgI0.net
- ひとまず難は過ぎ去った。後は井戸の中へと侵入し、捕らわれているヤドン達を探らねば。
「中いるあの黒服達はどうするの? 見つけ次第どんどんやっつけちゃう?」
ミミロップの言葉に俺は「いや」と俺は否定する。
あの男女二人以外に後何人が井戸の奥に潜んでいるかわからない。
下手に手を出して嗅ぎ付けられ、スピアーの巣を突っついたように
奴らとその手駒のポケモン達に出てこられては数の面であまりにも不利だ。
ここは先に捕らわれているヤドン達を黒服共のの目を盗んで探し出し解放。
その中で動ける者達には協力してもらい、混乱に乗じて一気に奴らを纏める大将を狙う。
俺は皆にそう作戦を伝える。
井戸の淵に乗り上がって中を覗き込む。枯れた底の方には微かに明かりが見え、
古い木製の梯子がそこに向かって架けられていた。
急な梯子か――俺はアブソルの方を見やる。
「なあに?」
きょとんとアブソルは首を傾げた。
「お前の四足の身体つきでは急な梯子を下るのは難儀だろう。外のどこか近くに隠れて待っていてもいいのだぞ」
気遣って言うと、アブソルは首をふるふると横に振るった。
「大丈夫だよ、ちゃんと爪を引っ掛けてゆっくり降りてけば」
「しかし、中でどれだけの危険が待っているかもわからんしだな……」
「平気だってば。危険なんて旅に一緒について来た時からわかってるよ」
強情に反発を受け、俺は諦めて溜息を吐いた。
「仕方ない。ミミロップ、アブソルより先に降り、もしも体勢を崩しそうになった場合支えてやってくれ」
「うん、わかった」
- 474 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/07/11(土) 06:47:41.42 ID:YoVjtdgI0.net
- ミミロップたちが先に降りていくのを見届け、次は「俺もこんな体じゃ梯子は厳しいぜ」と
うるさくごねるデルビルを何かあればムウマージの気まぐれを祈れと強引に先に送り出す。
最後は俺が降りる番だ。そう思い井戸の淵に上がると、
坂の上からパタパタと誰かが駆け降りて来る音が聞こえた。
『なんて元気な爺さんだよ。俺達より足が速いなんて、なあマグマラシ』
あれは、黄色帽子。大人達に引き摺られていったはずなのに、何故にわざわざまたこっちに。
考えている暇は無い、このままでは鉢合わせてきっと確実に面倒な事になる。
「おい、急げ。何をもたもたしている」
まだもたもたと降りきれずおっかなびっくり中央辺りにいるデルビルを俺は急かす。
「な、なんだよ、急かすな。仕方ねえだろ、慣れねえ体なんだから」
「厄介なのがこっちに向かってきているのだ。このままじゃ――」
『あ! お前は!』
坂の方から奴の声が聞こえた。
「ちっ――」
俺はまだデルビルが降りきっていないのも構わず、井戸へと飛び込むように梯子を駆け下りる。
「え! ちょ、まだ、なにを――」
当然、驚くデルビルに衝突し、俺もバランスを崩して共にごろごろと井戸の底まで転げ落ちていく。
どすん、と底にぶち辺り全身に衝撃と鈍い痛みが走った。
「ど、どしたの?」
「奴だ、あの黄色い帽子のガキが何故だか井戸に向かってくる。
どこでもいい、その辺の岩陰に隠れてやり過す」
ミミロップに助け起こされながら、俺は這う這うの体で指示を出した。
- 475 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/07/12(日) 00:22:22.53 ID:s3NiQ88g0.net
- 明日か明後日にでも続きを書きたいです
- 476 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/07/16(木) 04:36:40.57 ID:Hfzl4kn70.net
- 明日の夜か深夜に投下します
- 477 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/07/17(金) 02:39:44.64 ID:ZJGMy+4J0.net
- ミミロップは俺とデルビルの襟首を引っ掴むと、急いで近くの岩陰へ飛び込み、
アブソルとムウマージもそれに続いた。
井戸とは言うものの、その底に水はなく、ぬかるんだ地面の其処此処に水溜りがある程度だった。
元は天然の洞窟であったものを人工的に掘り抜いたのであろうか、意外にその中は広く、
無造作に大きな岩が転がり、古い石壁の奥に開いた洞穴から、ひんやりと湿った空気が流れてくる。
「てててて……おい、そんな強く引っ張るんじゃねえ! 大体ピカチュウ、てめえが……」
「吠えるな、静かにしろ。あそこに誰かいるぞ」
不機嫌に文句を垂れるデルビルを制し、俺は井戸の中央を指差した。
古びた燭台のぼんやりとした薄明かりの中、黒い人影が蹲り、低い呻き声を発していた。
始めは先刻の黒服かとも思ったが、よく見れば、あのガンテツという老人だ。
「さっきまであんなに元気だったのに……一体どうしたのかしら」
ミミロップが首を傾げながら身を乗り出そうとした時、ギシギシと梯子の軋む音がした。
『おかしいなぁ……あのマントは確かに……』
ブツブツと呟きながら、黄色帽子と火ネズミが上から下りてくるのが見えた。
俺は慌ててミミロップの頭を引っ込めさせる。
『あっ! 爺さん!』
その途中、老人の姿に気付いたのか、黄色帽子は梯子から飛び降り、傍へ駆け寄った。
『おう、お前さんか』
『どうしたんだよ?! まさか、奴らにやられたのか?!』
助け起こそうとする黄色帽子に、『いや』と老人は首を横に振る。
『上で見張ってた奴は、大声で叱り飛ばしたら逃げよったがな……
わし、井戸から落ちてしもて、腰を打って動けんのじゃ』
老人は顔をしかめ、あたたたた、と腰を押さえた。
- 478 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/07/17(金) 02:44:59.31 ID:ZJGMy+4J0.net
- 『ええ?! そりゃ大変だ、すぐ助けを呼ばなきゃ!』
『いや、暫くじっとしとりゃ楽になるさかい、わしに構わんでええ。
それより、あいつらを早いとこ何とかせにゃ……』
『心配すんなよ! 爺さんの分も、俺が奴らをとっちめてやるからさ!』
自信たっぷりにそう言い放ちながら、黄色帽子は強く握った拳を振り上げた。
『くそう……元気なら、わしのポケモンがちょちょいと懲らしめたのに……
まあええ、お前さん! わしの代わりにトレーナー魂を見せるのじゃ!』
悔しそうに顔を歪めながらも、老人は大きく頷いて黄色帽子の肩を叩いた。
『よーし、任せとけ!』
黄色帽子は立ち上がり、腰に手を当ててグッと胸を張る。
『ロケット団め、今度は俺が相手してやるぜ! マグマラシ、行くぞ!』
「おうッ!!」
黄色帽子と進化した火ネズミ――どうやら、マグマラシというらしい――は勢いのままに走り出し、
あっという間に洞穴の中へと消えていった。
「あーあ、行っちゃった……」
それを見送りつつミミロップは、呆れたように溜息を吐いた。
「どうすんのピカチュウ? あの様子じゃ、大騒ぎになるのは目に見えてるわよ」
それは俺も同感だった。全く、あやつらときたら、尽くこちらの邪魔をしてくれる……
俺は、まだ鈍痛のする手足を擦りながら歯噛みした。
「どうもこうもあるまい。取り敢えず、この計画は延期する」
「また、しばらく待つしかないのかしら」
「ケッ、いちいち面倒くせえな。もう奴らの事なんか放っとけよ。
あのガキ共が痛い目見ようが袋叩きに遭おうが、こちとら知ったこっちゃねえ。
ま、俺としちゃ、あの連中がガキ一人に引っ掻き回されるっつー方が面白えけどな」
悶々とする俺達を横目に、体中の擦り傷を舐めながら、不貞腐れたようにデルビルが言う。
- 479 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/07/17(金) 02:48:59.63 ID:ZJGMy+4J0.net
- それを聞きながら、そうか、と俺は思い直した。
「……確かに、お前の言う通りだ」
「あん?」
虚を突かれたように、デルビルは怪訝な顔で俺を見返した。
「人間の事は、人間に任せておけばよいのだ。我々は余計な事はせず、ポケモンの為だけに動けばいい」
「そうは言ってもよ、あの下っ端連中はともかく、奴らを率いてるランスって陰険野郎は
性格や態度は最悪だが、手腕だけはかなりのもんだぜ。一筋縄じゃいかねえぞ?」
「あの子達だけで大丈夫かしら?」
「ふん、このようなところで挫けるのなら、所詮その程度の思い上がりだったという事。
仮にも、レッドの域に近付こうと志す者ならば、そのような小悪党ぐらい倒せないでどうする。
もし、こちらにまで火の粉が振り掛かりそうなら、その時は応戦するまでだ」
俺は皆を説き伏せ、改めて作戦の変更を告げる。
「あやつが騒ぎを起こし、黒服達が気を取られている隙を見て、我らはヤドン達に接触する。
ムウマージ、暗い場所は得意だろう。お前が先導して中の様子を探れ」
「りょーかーい、わかった〜」
ムウマージは敬礼でもするようにひらりと身を翻し、ふよふよと石壁に沿って低く飛んで行った。
俺達もその後を追い、残された老人に見付からぬよう、岩の合間を這いながら移動する。
「でもさ、ピカチュウ」
不意に、ミミロップが覆い被さるようにして、ひょいっと俺の頭上から顔を覗かせる。
「何だ」
「実はあの子の事、けっこう買ってたりするんじゃない?」
そんな訳あるか、と、にやつくミミロップを睨みつつ、俺達は洞穴へと向かって行った。
- 480 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/07/17(金) 03:36:58.50 ID:F6sncPpi0.net
- 明日明後日位にでも書けたら書く
- 481 :名無しさん、君に決めた!:2015/07/17(金) 17:12:55.50 ID:w9WF1vQF+
- まさかのピカ父は放置?ですか。
現代も面白いからいいんですが、ピカ父のこともお忘れなきよう。
- 482 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/07/20(月) 03:26:38.39 ID:wKR+5GuQ0.net
- 投下は明日の今位か朝に
- 483 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/07/23(木) 01:23:57.62 ID:s92EGeJQ0.net
- すまん、今日の夜くらいで
- 484 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/07/24(金) 10:26:58.96 ID:vUQK2RiI0.net
- ひたひたと水音滴るじめついた洞穴を進む中、開けた空間の少し先の方で
案の定あの黄帽子が早速騒ぎを起こしているらしき音が響いてくる。
先導するムウマージはしばらく岩陰から音の様子を覗き見た後、
突風に流れる布のようにひらりと素早く少し先の岩陰へと移り、
腕を通していない袖みたいなぺらぺらの触手で俺達を手招く。
『生意気なガキめ……えーい、うさ晴らしにお前をいじめるとするか!』
地上で井戸を見張っていた黒服の声だ。
ムウマージが招いた岩陰に俺と他の者達も駆け寄り、そっと声のほうを覗った。
『へん、返り討ちだね』
自信満々で黄色帽子は火ネズミと応戦の姿勢を取っている。
わざわざ戦いの様子を見届けてやるような義理も無い。
かといって、気付かれずに奴らが争う横をすり抜けていくのも岩陰や隙間が遠く、
この俺含め五匹もいる中じゃ厳しいとみえた。
やむなく俺達は奴らの戦いの行方を岩陰から暫し見張ることにする。
吠え面かかせてやる、そう言って黒服が繰り出したのは紫色の毛色をした鼠、コラッタだ。
いかにも下っ端の雑兵らしい手駒に俺は思わず鼻で笑う。
そこらの短パン履いて走り回っているような小僧の方がまだ余程上手く鍛え上げている。その程度の練度だ。
- 485 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/07/24(金) 10:27:48.95 ID:vUQK2RiI0.net
- 当然、目を見張るような名勝負になる事は無く、
『――よし、止めだ。でんこうせっかからの、火の粉!』
素早く体をぶつけて相手の体勢を崩してからの火炎の一撃。
黄色帽子と火ネズミの十八番らしきコンビネーションで、既に二匹目となるコラッタもあっけなく倒れた。
『あー、もー、全然だめだめだ!』
手持ちが尽きたのか黒服は頭を抱えがくりと両膝をつく。
それを見て黄色帽子と火ネズミは得意げにパチンと互いの手を打ち合わせた。
『おい、おっさん。いい加減ここで何してるのか白状してもらおっか。
ヤドンが居なくなったのって、絶対お前らの仕業だろ』
黄色帽子は拳をパキポキと慣らし、火ネズミは頭と尾の辺りに激しい炎を燃え盛らせながら、黒服へと詰め寄っていく。
黒服は口惜しげに顔を歪めた後、観念したように息をつく。
『そうさ、ヤドンの尻尾を切り売りしていたのは俺達さ!
金儲けのためなら何でもするのがロケット団さ!』
開き直った様子で黒服は叫んだ。
「ううー、聞いてるだけで腹が立つ」
憤慨し今にも飛び出していきそうなミミロップを俺は「今は耐えろ」と抑える。
『……ヤドン達はどこだよ』
黒服の胸倉を掴み黄色帽子は尋ねる。火ネズミは黒服が反撃してこないようすぐ傍で口に火をちらつかせて脅す。
『こ、このまま奥に行けよ。そこに捕らえてる。どうせランス様とあいつらにはお前みたいなガキじゃ勝てっこない』
- 486 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/07/27(月) 03:47:35.04 ID:q84ULdae0.net
- 明日明後日辺りにでも書く
- 487 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/07/29(水) 06:37:43.75 ID:CgaCDMcc0.net
- hosyu
- 488 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/07/31(金) 00:35:34.95 ID:6HmvIsHL0.net
- 投下は明日の深夜か明け方にでも出来れば
- 489 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/08/03(月) 04:03:35.26 ID:FT4j61HQ0.net
- 今日の夜くらいになります
- 490 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/08/04(火) 09:19:20.68 ID:uypB6sdy0.net
- 黄帽子は『へん』と鼻を鳴らして、黒服からぱっと手を離した。
『上等だよ。すぐにそいつらだって同じようにやっつけてやるさ』
そう言い残して黄帽子は火ネズミと共に奥の階段状に掘られた段差を駆け上っていった。
「あっさり勝っちゃった。やっぱり結構やるじゃん、あの子」
「なにをあの程度。易々と勝てぬ方がおかしい」
何やら嬉しげなミミロップに少し苛つきを覚えて俺は言った。
『はぁー……あんなガキに負けちまって、減給かな……』
頭を抱えてしゃがみこむ黒服の下に俺達はそっと忍び寄った。
気配に気付いたか黒服が顔を上げようとするよりも早くその無防備な首元をミミロップが殴打し、
黒服は糸が切れた人形のようにぐらりと倒れ込んだ。
「おお、ちゃんと教え通りにできた」
自分でも意外そうにミミロップは己の手と地に伏す黒服を交互に見る。
「殺してはいないだろうな?」
俺は黒服の意識を足先で軽くつついて確かめながら、ミミロップに尋ねる。
「大丈夫だって、たぶんね。それより私達も奥へ急ぎましょ」
頼りない態度にちゃんと加減できていたのか少しばかり不安を覚えるが、
急かされるままに俺は進むべき道を確認する。
- 491 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/08/04(火) 09:20:37.98 ID:uypB6sdy0.net
- 先に行ける道は黄色帽子が駆け上って行った階段と、
それとは別に舗装されておらず人の足では下っていくのが困難な高い段差を降りた先に続く薄暗い道と
その奥に微かに灯って見える人工的な明かり。
梯子も階段も無いのに人の手が入っているらしき痕跡が段差を降りた先の向こうにはある。
恐らくは黄色帽子が駆け上っていった階段の先はぐるりとどこかを迂回してきて、
この段差の下に繋がって降りてくることになるのではあるまいか。
俺は直感的にそう考え、ムウマージに少し様子を見てくるように命じた。
ムウマージは「あいさー」と間延びした気の抜ける返事を一つして、ふよふよと偵察に向かった。
少し待った後、ムウマージは何だか少し浮かない顔をして俺達のもとへと帰ってくる。
「どうだった?」確認すると、ムウマージはこくりと頷く。
「うーん、たぶんピカチュウがいってたみたいに、みちはつながってるっぽいー?
くろふくもひとりさきにいたよー……」
柄にも無くしょげた様子でムウマージは報告した。
「そうか、でかした」
怪訝に思いながらも俺はムウマージを労う。
人の足では困難でも、俺達であればこのくらいの段差どうにか降りられるだろう。
上のほうで黄色帽子が騒いで黒服たちの何人かを惹き付けている間にヤドンを見つけてしまおう。
降りる準備を進めるその横で「元気ないけどどうしたの?」とアブソルが心配そうにムウマージに聞く。
「うん、したのどこかでひとつおとしものしちゃったー……いいきずぐすりー……」
- 492 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/08/06(木) 04:34:43.03 ID:ELayMuwb0.net
- 明日明後日辺りにでも続き書く
- 493 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/08/09(日) 04:13:48.19 ID:VkLpKs/N0.net
- 保守
- 494 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/08/10(月) 04:10:02.12 ID:vXqgELmT0.net
- 投下は明日の今位に出来たら
- 495 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/08/13(木) 03:36:43.17 ID:83/nO6ey0.net
- 今日の夜〜深夜に変更で…
- 496 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/08/14(金) 09:44:50.20 ID:4yQD00OK0.net
- 何をやっているのだ、俺は嘆息する。
「その程度、また人里の傍を通る時にでも仕入れておけ。さあ、降りてしまうぞ」
まずはミミロップ、アブソルの順に段差の下へと向かわせた。
建物の一、二階分程の高さではあるが、二匹とも途中にある突き出た岩や窪みを
飛び移って経由しながら軽快に下へと降り立つ。
「暗えし急だしこんなの無理だって」
またぐだぐだとごねだすデルビルを俺は「死にはしない、さっさと行け」と突き飛ばした。
するとどうだろう、ごろごろと転げ落ちるかと思いきや、
時々足場に飛び乗り損ねてずり落ちそうになりつつ不恰好ながらも先の二匹のように降りていく。
「やればできるではないか。犬の格好にもだいぶ順応してきたのではないか」
上から覗きこみながら感心して声をかけると、
「絶対、いつか倍にして返してやる……」
溺れ掛けてようやく岸まで辿り着いたかのように荒れた呼吸を整えながらデルビルは言った。
難なく俺も下へと辿り着き、上からも見えた明かりの方を目指して慎重に歩を進めていく。
上の層が何やら騒がしい。あの黄色帽子が別の黒服と再び遭遇したのだろう。
- 497 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/08/14(金) 09:45:35.52 ID:4yQD00OK0.net
- 騒ぎを聞きつけたのか明かりの奥から黒服が一人駆け出してきて、
素早く適当な岩陰に潜んだ俺達に気付く事も無く、明かりの方すぐ近くの岩壁に刻まれた階段を上がっていった。
予定通り奴らの意識が黄色帽子に集中している。ヤドン達を早く見つけてしまおう。
明かりに近付くに連れて鼻を付き始める生臭い匂い。
話によれば黒服共はヤドン共を捕らえて尻尾を切り集めている筈だ――嫌な光景の想像が頭を過ぎる。
あまり子どもには見せない方がいいだろうとアブソルを少し後方に待機させ、
先んじて明かりの先の様子を覗き見た。
奥には何人かの黒服共。傍らに蹲るヤドンが数匹。
片隅には結構な数の切り取られた尻尾が雑に積み重ねられている。
長い間ろくな食べ物も与えられず、更に尻尾まで生えてくる度にもぎ取られながら監禁されているのだ。
ヤドン達の表情は置かれている状況をまるで理解していないかのように呆けたものだが、
どことなくやつれている様にも見える。
『もっときびきびと切り集めるのです! 町の連中が段々と我々に感づき始めている。
警察やら厄介な連中を引き連れてこられて撤収する前に、少しでも多く稼がねばなりません』
最奥にいる緑髪の黒服が他の黒服達に高圧的に命じている。
奴がこの場を仕切る大将に違いない。
- 498 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/08/16(日) 01:09:21.25 ID:g1rdWgtQ0.net
- 明日か明後日にでも続きを書きたいです
- 499 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/08/19(水) 01:54:49.50 ID:BFELYFlX0.net
- 明日の夜か深夜に投下します
- 500 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/08/21(金) 00:57:03.56 ID:wdUgM49s0.net
- 「あれが、ランスという輩か?」
念の為、俺が緑髪の男を指示すと、傍らに来たデルビルが無言で頷く。
それは、想像していたよりもずっと若く、非常に整った容貌を持つ青年であった。
見た目だけなら、恐らく人間の中では上等な部類に属するであろう。が、その言葉や挙動の端々に、
年恰好に似合わぬ徹底した冷酷さが滲み出ており、迂闊には近寄り難い雰囲気を醸し出していた。
今しも、黒服の一人がヤドンを押さえ付け、尻尾を切り取ろうと悪戦苦闘していた。
だが、ポケモンの売買は元より、その生死にすら無頓着な連中でも、直接自らの手を下す事については
躊躇するものなのか、その様を見る事を避けるように、顔を背けたまま刃物を振り下ろす。
しかし刃先は目標を逸れて地面へ突き刺さり、黒服が慌て戸惑う隙に、ヤドンは本能的にのてのてと逃げ出す。
それを見咎めたランスは、つかつかと黒服に歩み寄るや、いきなりその腹を蹴り上げた。
『只でさえ時間がないというのに何事です! 私情を捨て切れない軟弱者など、私には必要ありません!』
叱責された黒服は、辛そうに腹を押さえながらも一礼し、再びヤドンを捕まえる作業に戻った。
それを見た他の黒服達は顔色を変え、必死になって作業の手を早めた。
――成程……
確かに、切れ者ではありそうだが、決して関わり合いにはなりたくない類の人間である。
酸鼻を極める行為に眉一つ動かさず、ヤドン達はおろか、己の部下ですら道具と見做す奴の言動には、
血の通った情など一かけらも見当たらぬ。
この有様では、かつて対立関係にあったと思しきデルビルへの仕打ちはこの上なく苛烈、且つ、
容赦のないものであっただろう事は、もはや容易に想像が付く。
さすがに同情するまでには至らぬが、デルビルが奴を蛇蝎の如く忌み嫌うのも至極当然であり、
それが真っ当な感情だと思えた。
- 501 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/08/21(金) 00:59:33.28 ID:wdUgM49s0.net
- 案の定、積年の恨みつらみがあるのだろう、奴を目前にしてデルビルの表情は殊の外険しくなり、
眉間に深い皺を寄せ、睨み据えたその眼は爛々と輝き、まるで燃え盛る炎のようだった。
「何なのあいつ! 超ムカつく! あー、手加減なしで張っ倒してやりたい!!」
長い眉をキリキリと逆立て、怒りに頬を染めながら、ミミロップは固く拳を握り締めた。
「ヤドンたちかわいそう……ムウマージ、もう、しっぽかじらせてとかいわないよ……」
尻尾を切られ、訳の分からぬままのたうつヤドン達の悲痛な姿を目の当たりにして、
ムウマージは先程にも増して、しょぼん、と深く項垂れた。
「ピカチュウ……」
いつの間にか背後に来ていたアブソルが、ギュッと俺のマントを掴む。
振り返ると、アブソルは眼に溢れんばかりの涙を溜め、今にも泣き出しそうな表情で俺を見ていた。
何か言おうにも言葉が詰まって出てこない様子で、ただ小刻みに体を震わせている。
「……分かっている、案ずるな。ヤドン達の受難も、もうじき終わる。終わらせるのだ」
俺は沸々と湧き上がる苛立ちを押し殺し、慰めるようにアブソルに言った。
そう、もうすぐだ。
俺は上方へと目を向け、耳を凝らした。
黄色帽子達が巻き起こす騒動は、既に此処まで聞こえてきている。
後は、奴らが其方へ動き出すタイミングを待つばかりだ。
「よいか、連中が動いたら、出来る限り多くのヤドンに声を掛け、取り敢えず此方へ連れ出すのだ。
いくら状況を把握しておらぬ鈍感な輩でも、何時までもこの現状に甘んじていたくはあるまい。
もし、黒服共に見付かり妨害された際は、追撃できぬ程度になら攻撃しても構わん」
俺は皆に指示を出し、何時でも直ぐに飛び出せるよう身構えさせた。
『……どうも、様子がおかしいですね。一体、何の騒ぎですか』
漸く異変を察したのか、ランスは怜悧な眼を更に鋭く光らせた。
- 502 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/08/21(金) 02:56:50.33 ID:MfMLFHJt0.net
- 明日明後日辺りにでも続き書く
- 503 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/08/24(月) 03:47:56.19 ID:1L/KypXd0.net
- 投下は明日の夜か深夜に
- 504 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/08/27(木) 02:20:45.56 ID:6Gtf3bex0.net
- 今日の夜〜深夜に変更で
- 505 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/08/29(土) 04:44:37.36 ID:EcSXpiNd0.net
- 『そこのお前達、様子を見てきなさい』
ランスに命じられ、団員の何人かが逃げるように慌てて向かっていく。
『万が一に備え、他の者達は今の内に足が付きそうなものを処分しておくのです。
いつでも撤収できるようにしておきなさい。どうもきな臭い。嫌な予感がする』
残りの団員達に告げるとランスは背を向けて懐から携帯端末を取り出し、
岩陰にそっと身を寄せて何者かに連絡を取り出した。
団員達は慌ただしく切り落とされたヤドンの尻尾を束ね手分けしてどこぞへと運びだした。
ヤドン達から注意がそれている。仕掛けるなら今だろう。
手始めに俺は最も近いヤドンの元へと駆け寄った。
他の者も各々別のヤドンへ接触する。
「お前、動けるか?」
そっと声をかけると、やあん? とヤドンはとぼけた顔で首を傾げた。
「詳しい話は後だ。ここで尻尾をもぎ取られながら暮らすなど本意ではあるまい。
抜け出したくば俺の後ろをついて来い」
- 506 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/08/29(土) 04:45:11.88 ID:EcSXpiNd0.net
- ちゃんと理解できているのか表情からはわからないが、
俺が歩み出すとヤドンはのそのそとヤドンはうしろをついてくる。
一応意図は伝わっているようだ。
途中、黒服の一人に見つかりかけるが声を上げられる前に素早く飛びつき、
体を駆け上ってマントの裾で口を塞ぐ。暴れる手を避けながら首の後ろを掴み、
電気を瞬間的に流し込んだ。
その瞬間、団員はバネのように勢いよく背筋をびんと伸ばし、
苦悶の声もあげる間もなく倒れ込む。
相応の痛みはあったろうが一瞬で意識を奪ってやっただけ、
生きたまま何度も尻尾をもぎ取られるような苦痛を与えられるよりはマシというものだ。
口から泡を吹き芋虫みたいに痙攣しながら横たわる姿を横目に、
俺はヤドンを引き連れてひとまず元の岩陰へと戻った。
皆もまたそれぞれの方法で黒服の目を盗みヤドンを連れ戻ってくる。
「よくやったお前達」
ひとまず安心かと思いきや、俺はふと違和感を覚える。
助け出したヤドンは俺が連れた一匹、ミミロップが強引に引っ張り連れてきたものが一匹、
それからムウマージとアブソルが協力して説得したのが一匹、
それからすぐそばで黒服が作業していて手出しが出来ないままの奥の二匹の計五匹。
町中のヤドンというわりにはあまりにその数は少ない。
この場以外にもヤドンが捕らえられている場所があるのだろうか。
- 507 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/08/31(月) 02:24:43.47 ID:ynqGutT80.net
- 明日明後日辺りにでも続き書く
- 508 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/09/03(木) 05:07:28.27 ID:SxKSYYM90.net
- 投下は明日の今位に
- 509 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/09/06(日) 04:00:10.21 ID:D0OCyfXg0.net
- 今日の夜くらいに変更で
- 510 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/09/08(火) 07:57:47.15 ID:FY4dnh2E0.net
- ヤドンが減ったことにいつ気付かれるともわからん。
あまりもたもたしてはいられない。
「お前たちの他にも別に捕らえられている者達はいるか?」
身を寄せ合ってぼうっとしているヤドン達に俺は口早に聞く。
しかし、ヤドン達は理解出来ていないように顔を見合わせて「やあん?」と首を傾げた。
「……他に捕まっている仲間達はもういないのかと聞いている」
苛立を抑えて一度同じ事を聞きなおすがヤドン達の態度は変わらない。
やはりこやつらとはどうも相容れない。
「チッ、わざわざ助けに来てやったってのにイライラするぜコイツラ。
ちょっとビリッとしてやったら寝ぼけた目も覚めるんじゃねえか?」
堪りかねた様子でデルビルは唸る。
「ダメだよふたりとも、そんなんじゃ」
見かねたのかアブソルが割って入ってくる。
「このヤドン達とお話しするには少し工夫がいるんだ。ね?」
そうアブソルはムウマージに振り向くと、ムウマージは得意げに頷いた。
「どうするというのだ」
「まあ見ててよ」
一体どんな方法だというのだろうか。言われるまま俺はムウマージの出方をうかがっていると、
「ほーかーにーつーかーまってーるーなーかーまーはーいーるー?」
ムウマージは普段より更に間延びしたまるでマグマッグが這っていくかのような
のろのろとした喋りでヤドンへと語りかけた。
俺はがっくりと首を落としそうになる。
まさかこんな馬鹿馬鹿しい手段で伝わるはずが無いとヤドンの方を見ると、
俺が問い掛けた時とは打って変わった態度でこくこくと頷いた。
「ねっ、ねっ。すごいでしょ」
意気揚々とアブソルは微笑む。
- 511 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/09/08(火) 07:58:21.29 ID:FY4dnh2E0.net
- 「……わかった、後は任せる。俺にはとてもそんな真似できそうにない。
お前達でなるべく早く――程々の速さで伝わるように他の捕らえられた仲間の存在を聞き出し、
ついでに脱出に協力できる者はいないか話を通しておけ」
二匹にヤドンとのやりとりは丸投げして、俺はその間に迫る危険は無いか探った。
黒服達はヤドンの数が明らかに減っていることにいい加減気付き始め、きょろきょろと周囲を警戒している。
こちらに黒服が振り向きかけ、俺は慌てて首を陰に引っ込めた。
黒服達の捜索の手がこの岩陰まで伸びて来るのが先か、黄色帽子がこの場に駆けつけるのが先か。
どちらにせよ、まだヤドンに協力を得られていない以上は下手に動く事はできない。
そんな状況だというのに、いつの間にか気付かぬ内にひとりでに岩陰から離れ、
俺達がここまで来た道とは別方向の薄暗い通路の先に向かうミミロップの後姿が見えた。
「おい、勝手に離れてどこに行くつもりだ、ミミロップ」
黒服達に届かぬよう少し抑え目に俺は声をかける。声に気付いたかミミロップはこちらに一瞬こちらを見ると、
にやと薄ら笑いを浮かべて誘うように手招きして暗がりの奥へと消えていった。
奴め一体どういうつもりだ?
「急に何言ってんの? 私ならずっとあんたの横にいるけど」
追いかけようとしかけたところですぐ隣から聞き慣れた声がし、
振り向くと確かにそこには怪訝そうな顔をしたミミロップの姿。
ならば先程の見えたものは幻覚か? いや、俺の目も頭も正常な筈だ。
ならばあれは……嫌な胸騒ぎがする。
- 512 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/09/10(木) 03:44:51.77 ID:1v6mtUhx0.net
- 明日明後日辺りにでも続き書く
- 513 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/09/13(日) 21:47:35.11 ID:1U0dkL6J0.net
- 保守
- 514 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/09/14(月) 04:25:55.37 ID:kIXVKAa60.net
- 投下は明日の今ぐらいに
- 515 :名無しさん、君に決めた!:2015/09/17(木) 01:28:04.24 ID:GMARXcA0u
- ほっしゅ
- 516 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/09/17(木) 03:45:08.85 ID:BVWKop7j0.net
- ごめん、今日の夜〜深夜位に変更で
- 517 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/09/18(金) 06:30:50.67 ID:dl2j7No10.net
- 奴らも、我らのコピーもこの井戸に来ているというのか。
だとすれば何の為にこんな団員共が蔓延る場に?
「顔色悪いけど、どうしたの?」
思考を巡らせる俺に心配そうにミミロップが声をかけてくる。
「お前のコピーらしき者があちらの奥へと向かうのが見えた」
方向を指で示し俺は答えた。えっ、と声を上げかけた口をミミロップは自ら手で覆う。
コツコツ、と潜む岩陰のすぐ側を黒服の靴音が通っていった。
「まさかあいつらもここに……! でもどうして?」
声を潜め尋ねるミミロップに俺は「わからん」と首を横に振るう。
「こちらに気付いてもうろたえることもなく、悠々と手招きして暗がりへと消えていった。
一度我らを退けている驕り故か、それとも初めからここに俺達が来る事を予想していたのか……」
「ね、ふたりとも。ヤドン達から色々聞きだせたよ」
答えの出ぬまま、アブソルがそう割って入ってくる。
「よくやった。それで、何がわかった」
「うん、他にも捕まっている仲間がいるみたい。ヤドン達によれば、あっちの奥」
そうアブソルが前足で指し示したのは、先程コピーが向かった通路の先だ。
俺とミミロップは示し合わせたかのように互いの顔を見る。
- 518 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/09/18(金) 06:31:51.41 ID:dl2j7No10.net
- 「それから、ちょっと気になる話もヤドン達はしてたんだ。
あっちでヤドン達にひどい事してる悪いやつらの中には、
黒服達とは雰囲気が違う全身が隠れるような変な服を被っている背中の曲がった不気味な小男と、
そいつの用心棒みたいに付き添っているミミロップにすごくそっくりなポケモンがいたって……」
話しながらアブソルは不安げに俺達の顔を見た。
これではっきりしてしまった。この一件には奴らの息がかかっているようだ。
しかし益々わからなくなったことがある。
奴らが目的とするのは力ある者のみが生き残り群雄割拠する世の構築。
世界中に我が物顔で蔓延っている力無き人間共の支配や秩序の破壊ではないのか。
それが何故ロケット団員等と肩を並べ、ジョウトの辺境の井戸の底でヤドンの監禁と
尻尾の売買などという小さな悪事に協力している? あるいはさせている?
確かめねばなるまい。
『やい、お前ら! ヤドン達を放してもらおーか!』
広場の方で声が響き渡る。
黄色帽子がとうとうここまで辿り着いたようだ。
- 519 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/09/19(土) 00:14:19.46 ID:FLN/sBtV0.net
- 明日か明後日にでも続きを書きたいです
- 520 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/09/23(水) 00:59:22.19 ID:sP3z0CS00.net
- 明日の夜か深夜に投下します
- 521 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/09/25(金) 08:10:47.63 ID:X0uGuW3k0.net
- 『つ、強過ぎる……』
入口近くの黒服を瞬く間に倒すと、黄色帽子と火ネズミは広間を駆け抜け、
奥に一人佇むランスと対峙した。
『何ですか?』
ランスはやはり顔色一つ変えず、だが、突き刺すような視線で黄色帽子達を睨み付ける。
『おい! お前がランスとかいう奴だな!』
黄色帽子もランスを睨み返し、一瞬、二人の間に火花が散る。
『……ああ、あなたが、この騒ぎの元凶ですね』
『今すぐヤドン達を放して、この町から出て行け!』
「そーだ! 出て行けー!」
今にも飛び掛からん勢いの黄色帽子達をフン、と鼻であしらい、ランスは腕を振り上げた。
『私は、ロケット団で最も冷酷と呼ばれた男……私達の仕事の邪魔など、させはしませんよ!』
モンスターボールが放たれると同時に、黄色帽子達も身構え、バトルが始まる――
だがそれも人間同士の事。当然、我々は手出し無用だ。
しかし、ポケモンの事はポケモンで、俺達の手で解決せねばならない。
俺達は奴らが戦っているその隙に――見物したがる配下達を小突きながら――岩陰から離れ、
コピーらしき者の向かった通路へ移動し、突き当りの角へと身を潜めた。
「……やっぱり、あの連中がこの事件に関わっているって言うの?」
話を元に戻し、ミミロップは眉を顰めた。
「そうとしか考えられんな。仮に、お前と同じ種族がこの地にいたとしてもだ、
俺が見紛うほどお前と似ている者など、そうザラにおるものではないだろう。
第一、わざと俺に誘いを掛けてくるような、あの態度が解せぬ」
「じゃあ、ミュウツー達も……」
「いや、恐らくミュウツーは此処にはおるまい。それなら人質達も一緒の筈だ。
アブソル、念の為、他のポケモンや人間を見掛けなかったか聞いてくれ」
「うん、分かった」
アブソルは踵を返し、ようやく追い付いてきたムウマージとヤドン達に話し掛けた。
- 522 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/09/25(金) 08:13:45.78 ID:X0uGuW3k0.net
- ――「その二人以外は見てないって」
ややあって、アブソルは俺達の方へ顔を向け、首を横に振った。
「でもさ、そいつらのやってる事って、ロケット団より酷いんだよ。
ミミロップに似た方は、少しでも言う事聞かないと、すぐに殴ったり蹴ったりするし、
小男の方なんか、何かおかしな機械のようなものを使って尻尾をぎゅうぎゅう締め上げたり、
針を何本も刺したり、電気をビリビリ流したりしてたらしいんだ。
それならいっそ、ちょん切られた方がまだマシだって……」
アブソルは、まるで自分がそのような目に遭ったかのようにぶるりと身を震わせ、
体の下に尻尾を丸め込んだ。
「何それ! ただのイジメじゃない! 自分が強けりゃ何をしてもいいって言うの?!
大丈夫! そんな卑劣な奴ら、コテンパンにやっつけてやるから!」
ミミロップは憤慨して息を巻く。
「ヤドンたち、あいつらからなかまをたすけてくれたら、じぶんたちにできることは
なんでもきょーりょくする、っていってるよ〜」
ムウマージの言葉に呼応するように、ヤドン達はコクコクと頷く。
その表情からは分からぬが、奴らの所業には、内心かなり堪えているらしい。
正直、この連中がそれ程役に立つとは思えぬが、不慣れなこの地に足掛かりができるのは有難い。
「ともあれ、奴らの目的を確かめ、ヤドン達を救出しに行かねばなるまい。
ミミロップ、波動で先の様子を探って見てくれ。その他の者は、此処で待機しておれ」
話の様子では、俺達が到着するずっと以前から、奴らの行為は行われていたらしい。
どのような魂胆があるにせよ、同朋をそのような目に遭わせる輩を、決して許しておく訳にはいかぬ。
俺はミミロップに先導させ、通路の暗がりへと歩み出す。
「待ってくれ、俺も行くぜ」
その時、緊張した面持ちで、デルビルが後を追ってきた。
「ほう、お前が自ら進み出るとは、珍しい事もあるものだな。
だが、ポケモンとしての戦い方もロクに知らぬお前では、却って邪魔になる。戻れ」
「……確かめてえんだ。その小男とやらに、何か引っ掛かるもんがあるんでな」
- 523 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/09/26(土) 03:27:17.56 ID:woqG6VXW0.net
- 明日明後日辺りにでも続き書く
- 524 :名無しさん、君に決めた!:2015/09/27(日) 19:48:13.34 ID:8xHAlICFh
- ふぁいと
- 525 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/09/29(火) 03:34:19.94 ID:y4L2QgKm0.net
- 投下は明日の深夜位に出来たら
- 526 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/10/02(金) 05:37:58.86 ID:bQKvri4F0.net
- 今日の夜〜深夜位に遅れます
- 527 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/10/04(日) 07:26:40.54 ID:GqXqC0GN0.net
- 「好きにするがいい。足を引っ張るような真似をすれば容赦なく見捨てるぞ」
言い捨てるように俺は通路へと向き直り、止めていた足を再び進めた。
「俺だってお前らが危なくなったらいの一番に逃げてやら」
悪態をつきながらデルビルはついてくる。
似たような応酬をこいつとは以前にも交わしたことがあるのを俺はふと思い出す。
元はといえばこの頼りないチンピラがジョウトまで危険を承知で
慣れぬ体を引き摺ってついて来たのは、ミュウツー達と共にいる同じく元人間で
仲間だったフーディンに接触し人間に戻る術を聞き出すため、だったか。
カントーを発つ際にこいつはフーディンと再び手を組むなどありえないと口では言っていたが、
仮に人間に戻す事を交換条件に掲げられたらどう動くだろうか。
俺はちらと横目でデルビルを見やった。
気を張り詰め過ぎているのか足取りは少々ぎこちなく、額にはじわりと冷や汗を滲ませている。
こんな小心でまともに段差を降りるのすらままならないような犬一匹など、
奴らがわざわざ引き入れるような利点などないように思える。
だが、ミミロップのコピーが我らが現れるのを予め知っていたかのような態度を取っていた件もある。
……行動に目を光らせておくに越した事はない。
ミミロップが不意に立ち止まり、そっと壁に手を触れた。
「近い。もうすぐそこの角を曲がった先に何かいる」
声を潜めてミミロップは告げる。
- 528 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/10/04(日) 07:27:15.75 ID:GqXqC0GN0.net
- 「ポケモンの気配が沢山。濃い嫌な感覚が二つ、片方はたぶん私のコピーね。
もう片方はよくわかんない、何だか変な感じ。ポケモンの筈だけどちょっと違うような……。
それと眠ってるのか眠らされてるのか、ぼんやりした感覚のが一杯。
きっとヤドン達だとは思うんだけれど……」
少し自身がなさそうにミミロップは首を傾げる。
「ポケモンだけか。ヤドンが言っていた妙な小男とやらの気配は感じ取れんのか?」
「人間らしい反応はないわ。先に逃げたとか?」
俺達がやり取りする横で、デルビルはフンと鼻を鳴らした。
「最初から人間の小男なんざいなかったってことだ。間違いねえ、ハッキリした。
こんな陰気な場所に引き篭もって妙ちきりんな機械を嬉々として弄繰り回してるなんざ、アイツしかいねえ」
振り向く俺とミミロップにデルビルは半ば唸るようにして言った。
「ポケモンなのに人間と直接話すことができるような奴なんて、俺以外には奴しかいねえだろ。
ミュウツーのせいで俺と同じように人からポケモンにされちまったアイツだ、フーディンの野郎だよ」
そっか、とミミロップは納得いった様に頷いた。
「言われてみればもう一つの気配とアンタの気配は何となく似てる気がする。
奇妙な気配に感じたのは元々は人間だったからってことか……」
フーディンというポケモンは幾らか人に近いような背格好している。
全身をすっぽりと布か何かで隠して人間の言葉でスラスラと話しておけば、
素性がわからぬ者達に対しては欺く事もできるかもしれない。
きっと傍から見れば成人の男にしては背が低く、背も曲がった不気味な格好に映るはずだ。
ヤドン達の語った姿に一致する。
- 529 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/10/06(火) 04:00:21.30 ID:NUjU8qgj0.net
- 明日明後日辺りに続き書く
- 530 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/10/09(金) 03:46:31.80 ID:aX6dfV9L0.net
- 投下は明日の深夜か明け方に出来たら
- 531 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2015/10/09(金) 12:01:02.26 ID:6HYR//uI0.net
- ファイト
- 532 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/10/12(月) 01:53:53.02 ID:BeejwokK0.net
- ちょっと遅れます
今日の夜〜深夜に変更で
- 533 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/10/13(火) 06:55:52.20 ID:OjH516Fc0.net
- 「すぐに突入する? 中の様子もう少し探ってみる?」
「既に我らの存在は気取られている。一気に突入するぞ」
意を決して俺達は曲がり角の先へと雪崩れ込んだ。
消毒液の嫌な臭いが微かに漂う空間の片側には植物の根の如く
乱雑にコードが伸びる手術台のような機械が複数並べられており、
その上にはヤドンが尻尾かあるいは頭辺りに電極のような物を取り付けられたまま寝かせられている。
もう片側には大きな円柱状の水槽のようなものが並び、
薄緑色の液体に満たされた中には巻貝状に変化したシェルダーが浮かんでいた。
過去に乗り込んだギンガ団の研究施設を髣髴とさせる異様な光景だ。
何の為に用意されたものかは定かではない。だが、言い知れぬ悪意に吐き気を覚えた。
「おっそーい! 何をもたもたしてたんだか」
遊びの待ち合わせに相手が遅れてきたかのような軽い調子で
奥に控えるミミロップのコピーは俺達を指で指す。
その脇では深いフードが付いただぼだぼの白衣のようなものを頭から被った不気味な姿の者が、
こちらを気にもとめず小型のコンピューターに向かい一心不乱に作業をしていた。
- 534 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/10/13(火) 06:56:32.54 ID:OjH516Fc0.net
- 「貴様ら、どういうつもりだ。ロケット団員などと一緒にヤドン達を捕らえ何をしている!」
いつでも放てるよう電気袋に力を込めながら叫び問うた。
「うるさいなー。それがひとにもの聞く態度? チビの癖にエラソーなとこあいつとそっくりでほんと嫌ね。
元にされてんだから当たり前だけど」
対してコピーは小馬鹿にしたようにベーと俺に舌を出す。
「ふざけんじゃないわ。こんな酷いことして許されると思ってんの」
ミミロップが拳を握って息巻く。
「ムキになっちゃって。こんなノロマで弱くて何の役にも立たないような奴らが
ミュウツー様のお役に立てるかもしれないんだから感謝して欲しいくらいよ」
コピーは冷笑を浮かべ近くのヤドンの背をぺちぺちと叩いた。
「無理矢理捕まえておいて、ぬけぬけと……!」
「あのひとの言葉を借りるなら、何か一つを果たすのには大なり小なり犠牲はつきものってやつよ。
アンタ達がここにいるのだって色んなものを踏み越えてきたからなんじゃないの?」
「御託はいらない。とっととヤドン達を放してもらいましょうか」
今にも飛び掛りそうなまでに憤慨するミミロップにコピーは面倒くさそうに溜息をついた。
「言われなくたってこんなノロマ共返してあげるわよ。ここでやることは大体すんだみたいだし」
コピーが横目で不気味な格好をした者の方を見やる。作業を終えたのか奴は小型のコンピューターを畳み、
てきぱきと紙の束や妙な液体の入ったガラスの筒を頑丈そうなケースに詰め始めていた。
- 535 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/10/16(金) 04:39:48.89 ID:kPzt4Ooy0.net
- 明日明後日位に続き書けたら書く
- 536 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/10/19(月) 01:44:06.96 ID:dsv0INgP0.net
- 投下は明日の夜か深夜に
- 537 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/10/22(木) 03:53:40.60 ID:HC/8uiz+0.net
- 今日の夜〜深夜位になります
- 538 :◆IPGiyUy8W6:2015/10/24(土) 00:02:03.52 ID:BDf44XBdo
- 現在時点でリレーに参加してるのって四人ってことでいいのかな(けっこうどうでもいいことだが)
- 539 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/10/24(土) 05:56:15.09 ID:2QKq9rFJ0.net
- 「返す、だと?」
意図が飲み込めず俺は聞き返す。
「そーよ。その為にわざわざアンタ達なんて誘ってあげたんだから。
ホントはこんなことしなくたって別にいいと思うんだけど……」
長い耳の毛並みを髪の毛ように手で整えながらぶつくさと不満ありげにコピーは言った。
「ま、ノロマちゃん達の扱いはあんた達で好きにすればいいわ。
私もまた他でやらなきゃいけないことあるしねー」
腰掛けていた台からコピーは立ち上がり呑気にぐっと伸びをする。
「こんな残酷なの見せつけられて、あっさり返すからってはいそうですかって引き下がれるわけないでしょ。
他に何の用事か知らないけれど絶対ろくでもないことに決まってる。行かせるわけにはいかない!」
「おい! 待て!」
非道な行いと度重なる挑発的な態度に堪えかねた様子で、
俺が止めるのも聞かずミミロップはコピーへと一直線に向かっていく。
待ちかねていたようにコピーは口角を歪めた。
「あんた達に手を出す必要はないって言われてはいるけれど、身に降りかかる火の粉は払わなくっちゃね。
クジに負けたせいでこんなジメっぽいとこで同じくらいジメっぽい奴のお守ずっとさせられて
うっぷん溜まってたとこだし、ちょっとの間だけ遊んだげる」
本物と一切違わぬ仕草でコピーは拳を握り迎え撃つ姿勢を取った。
「先走りおって」
やむなく援護に向かおうとする俺に、
「こいつは私に任せて! あんたはそっちの小男を止めて」
コピーの鋭い蹴りを両腕で防ぎながらミミロップは言った。
- 540 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/10/24(土) 05:56:50.89 ID:2QKq9rFJ0.net
- 「しかしお前だけで……」
以前に力の差を見せ付けられ負けた相手だ。一対一では危うい。
「大丈夫、信じて!」
コピーの足を弾き返して間合いを離し、ミミロップは叫ぶ。
ハナダの洞窟での敗北を糧に自分達は血の滲む思いで努力したとロズレイドは言っていた。
ギラティナの誘いにのってひとりで旅立った俺を、
自分達の実力に失望したから黙って行ってしまったんじゃあないかと気にかけ、
もう二度と置いていかれるような事がないよう各々の方法で力を模索した、と。
配下の、仲間の力を信頼するのも王の務めか――。
「よかろう、雪辱を果たしてみせよ!」
俺はミミロップを激励する。
それに応じるようにミミロップは拳を激しく燃え盛らせ、コピーに再度挑みかかっていった。
この戦いに水は差させまい。俺は全身ローブ姿の小男の動向を探る。
小男は纏め終えた荷物を携え、苛々と時間を気にするように小型の端末と
ミミロップ達の戦いを交互に眺めていた。
ここでの実験らしきものの目的や、ロケット団員と手を組んでいる理由を聞き出すのは
奴を締め上げた方が早そうだ。そう思い立って俺が小男へと向かって行くよりも早く、
黒い小さな影が奴の前へと躍り出た。
コピーと問答している間どこかに身でも隠していたのか姿が見えなかったデルビルだ。
「やい、てめえ! 『この糞インテリ野郎!』
デルビルは怒りでひどく興奮した様子で吠え声と人間の言葉混じりに小男を今にも喰いつかんばかりの勢いで罵る。
- 541 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/10/26(月) 03:01:46.77 ID:+J3nOGBa0.net
- 明日明後日辺りに続き書く
- 542 :◆IPGiyUy8W6:2015/10/28(水) 20:28:46.91 ID:EK9Er+g1S
- ふぁいと
- 543 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/10/30(金) 04:19:17.95 ID:EjTe4dD+0.net
- 投下は明日の深夜か明け方位に出来れば
- 544 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/11/03(火) 03:20:45.77 ID:l6AtScsA0.net
- 今日の深夜位に遅れます
- 545 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/11/04(水) 06:53:48.34 ID:TS+D+Zhz0.net
- ぴくりと小男は小型端末を確認する手を止めて、
深いフードから覗く鳥の嘴みたいに鼻の部分が長い仮面を――フーディン種の長い鼻先を
すっぽり覆い隠すためだろう――を付けた薄気味悪い面容をデルビルへと向けた。
『……まだ生きていたか』
不気味な呼吸音を響かせながら、くぐもった声で平然と言った。
『当たり前だろうが! こんな犬畜生の姿のままじゃ死んでも死にきれねえってんだ!』
更に激昂しデルビルは叫ぶ。
『それで人に戻りたいが為に畜生と馬鹿にするポケモン達に縋り付いてまで私を追って来た、というわけかね』
小男は仮面をゆっくりと取り外す。面の下からは狐のように長い鼻先をしたフーディン種の顔があらわになり、
押し込められていた二本の長い髭がするりと流れ出て揺れた。
『それ以外にテメエを追う理由なんざ無かろうよ。
それに何でランスの野郎なんかと勝手につるんでやがるんだとか、
色々と聞きてえことも山ほどあらぁ』
デルビルは拳を鳴らす代わりのように前足を地面をガリガリと引っ掻き、
じりじりとフーディンへと詰め寄っていく。
その様子を見やりフーディンは冷笑する。
- 546 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/11/04(水) 07:04:21.66 ID:TS+D+Zhz0.net
- 『かつて人であった頃はよくそうやって力づくで言う事を聞かせられていたものだ――』
言いながらフーディンは懐からスプーンのような形状をした金属片を二枚取り出して両手に構え、
交差させてデルビルへと向けた。
結託を企てるようならまとめて電撃をお見舞いしてやろうと少し様子を見てはいたが、杞憂だったか。
『だが今はそうは行かないよ。私が上でお前は下。立場の違いを知ってもらおうか!』
びく、と硬直してデルビルは飛び退く事も出来ず立ち竦む。
交差したスプーンにびりびりと電流のような光が走って見えたその刹那、
俺はフーディンがスプーンを握る手を狙って電撃を放った。
バチンと大きな音を立てて、フーディンの手からスプーンが弾け飛ぶ。
『わりぃ、「助かった!」
デルビルはハッとした様子で礼を吠える。
それから素早く痺れた手を押さえて怯んでいるフーディンのローブの裾に噛み付き、
思い切り引っ張って引き倒した。
すかさず俺は仰向けに転んだフーディンへと飛び乗って、バチバチと電流が走る手をフーディンの眼前に晒した。
「動くな。俺の言葉もわかるだろう」
『ぐぐ……』
口惜しげにフーディンは呻く。
『よお、どっちが上でどっちが下だって? ええ?』
形勢が逆転した途端、得意げにデルビルは冷や汗を垂らすフーディンを見下ろして言った。
もう少し痛い目にあわせてから割って入るのも良かったかもしれない。俺は少し後悔して溜息をついた。
- 547 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/11/05(木) 05:42:45.11 ID:/DwyD/7z0.net
- 明日か明後日にでも続きを書きたいです
- 548 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/11/08(日) 03:48:00.37 ID:bt9B6yBO0.net
- 明日の夜か深夜に投下します
- 549 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/11/09(月) 21:25:16.63 ID:tBRwggQJ0.net
- 『おっと、下手な真似するんじゃねえ!』
床に落ちた小型端末を掴もうとしたフーディンの手に、咄嗟にデルビルが噛み付いた。
『くうっ……!』
それ程強く噛んだようには見えぬが、フーディンは大仰に顔を歪める。
……そうか、こやつのタイプはエスパー。悪タイプを持つデルビルとは相性が悪い筈だ。
その上、悪タイプには、エスパーの攻撃が一切効かぬ……そんな話を前に聞いた事がある。
だが、デルビルはそれで良くとも、俺自身は気を抜く訳にはいかぬ。
俺はかつて、こやつの同族であるユンゲラー――今は我が配下であるが――と対峙し、苦戦させられた事がある。
その進化系であるフーディンの攻撃は一際強力なものであろうし、元は人間であったこやつが何を企み、
どんな手を使ってくるのか見当も付かぬ。油断はならない。
『ま、待て、分かった……私に聞きたい事があるのだろう?』
やがて観念したかのように、フーディンが俺に話し掛けてきた。
『それなら取り敢えず、私から離れてくれたまえ。このままでは、ろくに話す事もできない』
俺がデルビルの方を窺うと、奴も承知したように頷く。
「よかろう、大人しく従う事だ。黒焦げになりたくなければな」
俺は電流を帯びた手を翳しながら、ゆっくりと奴の体から降りた。
フーディンは大きく息を吐いて立ち上がり、転がったままの小型端末の画面をちらりと見た。
しかし、すぐに俺達の方へ向き直り、やおらローブを脱ぎ捨てる。
「それでは聞かせてもらおう。何故、無力にも等しいヤドン達にこのような仕打ちをする?
ミュウツーが目指すのは、強者が常に競い合い、しのぎを削り合う修羅の世界の筈。
とは言え、戦いとは無縁の弱者を無暗に虐待するなど、誇りある覇王の為すべき事ではないぞ」
- 550 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/11/09(月) 21:27:38.43 ID:tBRwggQJ0.net
- 俺の言葉を聞いて、フーディンは端から馬鹿にしたように鼻を鳴らす。
『虐待? フン、勘違いも甚だしい。これは、崇高な意志に基づく事業なのだ。
進化の原理を解き明かし、その力を最大限に引き出し活用する、という大いなる目的に依ってな。
この者達は、その実験に貢献し、被験体としてその身を捧げたのだよ』
「戯けた事を言うな。ヤドン達にも己の意志がある。お前達の所業など、明らかに歓迎されてはおらぬ。
さもなくば、俺達に助けを求めたりする筈がなかろう」
俺は抜け抜けと言い放つフーディンに苛立ちながら、奴を横たわるヤドン達の方へ促す。
「さあ、ミュウツーの命であるならば、早速ヤドン達を解放してもらおうか。
よもや、命に障りなどないのだろうな?」
『ああ、眠っているだけだ。すぐに目覚める。すぐに、な……』
フーディンが薄ら笑いながら実験台の機械を操作すると、ヤドン達の体から電極が外れた。
『ケッ、崇高な意志、ときやがった。いかにも学者崩れの似非インテリが言いそうな事だぜ。
そうか、いけ好かねえジョウト連中と手を組んだのも、その実験に使うヤドンを駆り集める為か。
テメエだって昔は、奴らにゃ散々煮え湯を飲まされてきただろうがよ』
『確かに、そのような事もあったな。だが、もはや大義の前には、そんな些細な事はどうでもいいのだ。
大体、ロケット団……いや、人間如き、今の私にとって、取るにも足らん塵芥に過ぎんのだよ。
そんな愚劣で卑小な存在に戻りたいなどとは、全く以てお前の気が知れんな』
『……何ぃ?』
己の価値観を下卑されるような言い様に、デルビルは憎悪に満ちた眼でフーディンを睨んだ。
『それに私とて、奴らと手を組んだつもりなど毛頭ない。間抜けなクズ共は気付きもしないだろうが、
奴らの思考に介入し、この地に赴くよう仕向けたのはこちらの方なのだ――こんな風にな!』
フーディンは素早く念力で小型端末を引き寄せ、間髪入れずに上部のスイッチを押した。
次の瞬間――爆音と共に水槽が砕け落ち、四方に培養液とガラス片を撒き散らしながら、
棘をいからせた巻貝状のシェルダー達が次々と飛び出してきた。
- 551 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/11/10(火) 04:25:40.91 ID:bBoDUTx50.net
- 明日明後日辺りにでも続き書く
- 552 : ◆IPGiyUy8W6 @\(^o^)/:2015/11/12(木) 23:53:46.52 ID:itNhAwxb0.net
- ガンバ
- 553 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/11/13(金) 08:23:53.20 ID:4SyNDJ5K0.net
- 投下は明日の深夜位に出来たら
- 554 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/11/16(月) 00:55:32.48 ID:/fdMLYkT0.net
- 今日の夜か深夜位に遅れます
- 555 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/11/18(水) 09:42:02.41 ID:zD5F/zQJ0.net
- 勢いよく跳ねて襲い来るシェルダーの鋭利な牙を防ごうと咄嗟にマントを掴んで身構える。
しかし、シェルダーは俺やデルビルには目もくれず脇を過ぎ去り、
寝かせられているヤドン達の尻尾、あるいは頭へと喰らいついた。
「貴様! 何をした?」
俺はフーディンに振り向き、問う。その場に既に奴の姿は無い。
しまった。俺は素早く視線を走らせて奴の姿を追った。
『時間だ。これ以上凡愚共と戯れているような暇はない』
フーディンは空間の角奥に設置されていた不思議な淡い光を放つ機械の傍で
悠々とローブを着込んで仮面を被り直しながら言った。
「ありゃワープパネルだ、逃がすな!」
デルビルは吠える。
「言われずとも――!」
俺は電流を放とうとフーディンを狙って構えた。
が、その射線に桃色のずんぐりとした巨体がぬっと割り込む。
寝かせられていたヤドンの一匹だ。
瞳はぎょろぎょろと忙しなく動き回り、明らかに正気ではないことが見て取れた。
尾には眼を血走らせたシェルダーが食らいついたまま唸り声を上げている。
- 556 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/11/18(水) 09:42:41.11 ID:zD5F/zQJ0.net
- 『ヤドンを強引にヤドランへ進化させたってのか!?』
デルビルは動揺し声を上げた。
「クソッ」
突然の事態に毒づきながら、俺はヤドランの横をすり抜けようとする。
だが、次々と起き上がってくるヤドラン達により進路は阻まれた。
「ちぇ、ここまでか。次はもっと本気で相手したげる……!」
ミミロップのコピーは捨て台詞を残してヤドランの間を駆け抜けて行く。
「あ、待て!」
後を追おうとするミミロップだが、ヤドラン達はぴっちりと隙間を塞いで追撃を防いだ。
「ちょっと、何のつもり!? どいてってば!」
ミミロップは憤りながらヤドラン達の間を通ろうとするがヤドラン達は決して譲らない。
よもや救助する対象である者達に邪魔をされるとは。
力尽くで蹴散らすわけにも行かず俺達が攻めあぐねている内に、
ワープパネルは甲高い音を立ててフーディンとコピーを光で包み込んで転送を始める。
途端にシェルダー達は白目を剥いてポロリとヤドランの尻尾から取れ落ち、
ヤドランだった者達はへにょりとその場にへたり込んだ。
その隙に俺達は急いでワープパネルへと駆け寄るが、既にパネルの光は消えてしまっていた。
- 557 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/11/20(金) 03:58:42.77 ID:I5nsp1CG0.net
- 明日明後日位にでも続き書く
- 558 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/11/24(火) 05:06:53.01 ID:zmNh+C0J0.net
- 明日の深夜か明け方位に投下したい
- 559 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/11/27(金) 05:17:05.44 ID:wERQpWYJ0.net
- 今日の夜か深夜位に遅れます
- 560 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/11/28(土) 10:07:30.82 ID:0dC2exe20.net
- 「おのれ……」
まんまと逃げられた。まだ奴らの真意を掴みきれていないというのに。
俺は苛立ちを足に込めてもう動かないワープパネルを強く踏み躙る。
「ようやく人間に戻れるかもしれねえと思ったってのに、クソが」
デルビルは低く口惜しげに唸り、それから大きく溜息をついて肩を落とした。
なまじ一縷の希望を見出しかけただけに、失望や自分の置かれている境遇がより深く胸に刺さったことだろう。
元はと言えばこいつが今の姿に変えられるような目にあったのは、
ハナダの洞窟で出くわした状況や発言からしても恐らくは自分で引き寄せた因果であろう。
同情してやるような義理もないはずだ。だが、この時だけは少しばかり哀れに思えた。
「ま、いつまでも落ち込んでたってしょうがないでしょ! また今度きっちりとっちめてやればいいんだしさ」
ぽん、と手を打ってミミロップは明るく言った。
そういえば、フーディンの尋問に手一杯でコピーとの戦いはミミロップに任せきりにしていたが――。
「お前の方はどうであった? 少しは奴に借りを返すことは出来たのか?」
「ええー、せっかく頑張ったのに見ててくれなかったの?」
尋ねる俺に、ミミロップは意外そうな顔をして責める様に聞き返してくる。
「……む。こちらとて余計な邪魔立てをさせぬようフーディンの相手をしていたのでな。
それにお前の信じろという言葉を信頼してのものだ」
やむを得なかったとはいえ、激励するだけして勝負の行方の方はまるで見守ってやれなかったのは確かだ。
少し引け目を感じながら言い訳する俺に、「うそうそ、冗談だってば。わかってる」とミミロップは笑った。
- 561 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/11/28(土) 10:13:24.16 ID:0dC2exe20.net
- 「ありがと。信頼してくれて。ばっちり、とは決着つく前に逃げられちゃったから言えないけれど。
前よりは断然、互角……いいや、それ以上に戦えた! 次だって絶対負ける気しないから」
話す言葉以上に、ミミロップの自信に溢れた表情が勝負の様子を物語っている。
俺は安堵して、「ならばいい」と一言だけ頷いた。
「ところでよ。オメーのニセモンの方からはあいつらが次に向かいそうな場所とか、
何か手がかりは引き出せなかったのか?」
焦りと苛立ちを滲ませた様子でデルビルが割って入ってくる。
確かに、今の状態では掴みかけた奴らの尻尾をまた見失ってしまう。
俺もミミロップへと問う視線を向けた。
「うーん、手がかりになるかはわからないけど、”もっと大きな生命力を持った素材”を
ヤドンの再生力程度じゃ足りないから探しに行かないとみたいなことを言ってた気がする」
「なんだそりゃあ?」
デルビルは首を傾げる。
「私だって知らないってば。だから手がかりになるかはわからないって言ったでしょ」
少しムッとしてミミロップは言った。
お前はわかるか、と言いたげなデルビルの目がこちらにも向くが、俺は首を横に振るう。
行き詰まってしまい、俺達は頭を抱えた。そんな折のこと。
「ふぁーあ」と大きな欠伸のような音が後の方から響く。
注意深く振り返って見てみれば、頭にシェルダーが噛み付いたままの奇妙なヤドンが
ようやく目を覚ました様子で手術台の上でぐっと伸びをしていた。
「あー、よう寝た」
他のヤドン達と比べ物にならないほど流暢な話し方で、奇妙なヤドンは呑気に目覚めの言を漏らす。
- 562 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/11/30(月) 07:15:33.99 ID:NvvzAocK0.net
- 明日明後日にでも続き書く
- 563 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/12/03(木) 05:18:28.90 ID:5lzcnb0Z0.net
- 投下は明日の深夜か明け方に出来たら
- 564 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/12/06(日) 06:17:44.82 ID:LHusbENu0.net
- すまん、今日の夜〜深夜位に変更で…
- 565 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/12/07(月) 10:31:25.96 ID:CUqZZocG0.net
- フーディンによって何らかの処置を受けた置き土産だ。
こちらに気付いた途端、豹変して襲い掛かってくるかもしれない。
緊張して次の動向を見張る俺達を奇妙なヤドンはきょとんとした目で見やる。
「なんやお前ら。ひとの顔ジロジロ見よってからに。何かおかしなもんでもついとるか?」
奇妙なヤドンは怪訝そうにごしごしと顔を拭う。
「う、うん。顔というより頭、だけど……。それ痛くないの?」
恐る恐るミミロップはヤドンの頭にまるで兜か王冠みたいに堂々と
喰らい付いている巻貝型シェルダーを指差して聞いた。
「んー、頭ぁ? 痛いどころかえらいスッキリ爽やかなくらいやけども」
状況が飲み込めていない様子でにぼやきながらヤドンは自分の頭に手を伸ばす。
手の先がシェルダーの硬い殻にコツンと触れた途端、
何となく異常な状態が理解できたのかヤドンの顔色が青ざめる。
「え、え? これ何、どないなってん」
取り乱しながらヤドンは頭のシェルダーや首から伸びる紅白の襟飾りを手で探りだした。
ベタベタ触れられ不機嫌そうにシェルダーは唸る。
それでも把握しきれないのかヤドンは手術台から慌てて飛び降り、近くの水溜りに駆け寄って水面を覗き込んだ。
「な、な、なんやこれぇー!」
両頬を押さえて驚愕するヤドンの叫びが洞窟内に木霊した。
「ね、ねえ。どうする?」
ミミロップが小声で俺に尋ねる。
「奇妙な奴だがとりあえず害は無さそうだ。事情をわかる範囲で説明してやった方がいいだろう」
硬直したままのヤドンに俺達はそっと近寄っていく。
- 566 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/12/07(月) 10:32:56.76 ID:CUqZZocG0.net
- 「――はぁー」
大体のあらましを話し終えると、奇妙なヤドンは深々と息を漏らした。
納得とも諦めともつかない何とも言えない態度だ。
「ま、心中お察しするぜ、ヤドン。いや、ヤドキングさんよ」
ヤドランとはまた違う変化を遂げたヤドン。デルビルが正しければヤドキングと呼ばれる者らしい。
「自分の姿を知らない間に弄くられて勝手に変えられたとなっちゃあ
たまったもんじゃあねえよなぁホントによ」
ヤドキングを同情し宥めるように軽く前足で叩いて、デルビルはくつくつとどこか自嘲めいた雰囲気で笑う。
「ん、ちょっと頭ん中整理しとっただけや。まー、こうなってしまったもんはもう仕方ないんちゃう、うん」
あっけらかんとヤドキングは頷いて言う。「がう」と頭のシェルダーも同意するように唸った。
デルビルは意外そうに顔を歪める。
「あんま気分はよくはないけども、ごちゃごちゃ文句たれたり悔やんだり腐っとっても元に戻るわけやないしな。
それにこうやってヤドン同士以外ともすんなり話せとんのもたぶん何かされたおかげみたいやし、
悪いことばかりじゃない。そう、ポジティブシンキングいうやつや。ご心配おおきに」
悪気なく礼を言うヤドキングにデルビルは尚更複雑げな表情をして押し黙った。
「それよりも!」
取り直すようにヤドキングは声を張り上げ立ち上がる。
「許せないんはそのミュウツーだかいう連中や。ワシらヤドンが年中ボーっとしとるんをいいことに、
散々好き勝手してくれたみたいやないか。けったいな注射何度も打たれたせいかハッキリとは覚えてへんけど」
憤慨した様子でヤドキングは鼻をふんふんと荒く鳴らす。
「あんたらこれからもあいつらのこと追うつもりなん?」
「その通りだ。その為にこのジョウトの地まで来たのだから。しかし、なにぶん不慣れな土地だ。
この地に住まう者達にも協力が得られればありがたいのだが」
言いながら俺はヤドキングに期待を込めて視線を向けた。
「そういうことなら任しとき。あいつら追っ払ってくれた恩人でもあるあんたらになら、
ワシらヤドンに出来ることやったらなんだって協力させてもらうわ」
- 567 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/12/09(水) 00:24:58.08 ID:nYyO4oDR0.net
- 明日か明後日にでも続きを書きたいです
- 568 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/12/12(土) 07:32:53.58 ID:87AfXdWu0.net
- 明日の夜か深夜に投下します
- 569 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/12/13(日) 01:36:13.14 ID:W0hDarST0.net
- ヤドキングは自信ありげに胸を叩くと、むーん、と唸りながら眼を閉じた。
一体何事か、と訝しんでいると、やがてバサバサという羽音とキイキイと鳴く声が聞こえ、
瞬く間に十数匹のズバット達が集まり、蚊柱の如くヤドキングの周囲を飛び回った。
恐らくヤドキングが思念を送り、洞穴中から呼び集めたのだろう。
「こりゃまたぎょーさんでおおきに。なあ、ちょっと頼まれて欲しいんやけど」
ズバット達は当初、ヤドキングの異様な姿や見慣れない俺達に対して戸惑っていた様子だったが、
ヤドキングが状況を説明し始めると、大人しく耳を傾けた。
「ここんとこ、けったくそ悪い連中がこの井戸に出入りしとったのは、あんたらかて知ってるやろ?
こん方々はな、そいつらをとっちめる為にやって来たんや。ワシらを助けてくれた大事な恩人やで。
せやから、ここらに住んどるポケモンはんにも、こん方々に協力するよう振れ回ってきて欲しいんや」
聞き終ると、ズバット達は承知した、というようにキィッと一鳴きし、洞穴の出口へ飛び去って行った。
「これでええやろ。ワシらとちごてあいつら素早いからなあ、夜が明けるまでには近くの森まで伝わってる筈や。
このヒワダタウン一帯、あんたらの安全はワシらが保障するで」
「そうか、助かる」
俺はホッと胸を撫で下ろした。全く、何が幸いするか分からないというものだ。
ヤドン達はともかく、このヤドキングは見た目に寄らず聡明で、頼りになりそうに思えた。
「ところで、こやつらはどうする?」
俺はその場に伸びているヤドンとシェルダー達を指差す。
「まあ、仲間達は落ち着いたら勝手に帰るやろ。奴らに操られた事は、何も覚えてへんみたいやからな。
せやけど、この巻貝はん達はそうもいかんな。このナリじゃ元の場所にも戻れんやろし、気の毒なこっちゃで。
ワシらがここで面倒みたる事にするわ」
ヤドキングがそう言うと、頭上のシェルダーも嬉しげにがうがうと唸った。
やがてヤドキングの言った通り、ヤドン達は起き上がるとぽかんとした表情で辺りを見回し、
のそのそとあちこちへ這っていった。
「あんたらは、ここで休んでいくとええ。大した持て成しはできんが、助けてもろた礼もしたいしな。
ほな、ワシらの隠れ家まで案内しよか」
- 570 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2015/12/13(日) 01:41:52.37 ID:W0hDarST0.net
- そう申し出るヤドキングに随行し、通路の途中まで行き掛けた時、
「ピカチュウ! 大丈夫だった?!」
前方からアブソルが勢いよく駆け寄ってきた。その後ろからムウマージが付いてくる。
また置いてけぼりを食い怒っているのか、と思いきや、何故かにこにこと機嫌が良い。
「あのね、勝負はあの子達が勝ったんだよ! それで、ロケット団はみんな出て行ったんだ!」
そう言われ、ふと広間の方を眺めると、人間達――黄色帽子達も、ランスを始めとした黒服達も、
既に姿を消していた。
「……お前達、結局、持ち場を離れ、あやつらの観戦をしていたのか」
「だって〜、まってるあいだひまだったんだもん〜」
俺が呆れたように言うと、ぶーっとムウマージは頬を膨らませた。
「ごめん、ピカチュウ。でも、あの子達には見付からないよう隠れてたからさ」
「まあいい。お前達、これは……」
「あっ、へんなヤドン〜。おもしろ〜い!」
俺が紹介するよりも早く、ムウマージはヤドキングの回りを漂い、良い玩具を見付けたとばかりに
頭のシェルダーを小突いたり、襟飾りを引っ張ったりする。
「こらこら、何すんねん。なんや、あんたのお連れさんか、こりゃ適わんなあ」
悪ふざけに辟易しながらも、ヤドキングは俺達に先導して歩き始めた。
「そうだ……黒服達はこの後、何処かへ行くとか言っていなかったか?」
もしやと思い俺が尋ねると、アブソルは首を捻った。
「うーん……『邪魔しても私達の活動は止められない、これから何が起きるか怯えながら待っていろ』
とか言ってたけど……他の事はよく分かんないや」
「ヘッ、そんなの負け惜しみだろ。あの気障野郎め、いい気味だぜ」
仇敵の失態を聞き、少々気を持ち直したように、デルビルはニヤリと笑った。
「どーせまたロクでもない事でしょ。こっちだって大変なのに、まったく迷惑な話よね」
と、ミミロップも苦笑して肩を竦めた。
本来なら、人間達の事など捨て置くべきなのかもしれない。
だが、フーディンの言っていた事が本当なら、ロケット団の背後にはミュウツー達がおり、
その行動にも奴らの意図が絡んでいる、という事になる。
となると今後、我々は奴らばかりか、ロケット団の動向も追わねばならぬ。
どうにも面倒な事になった……と俺は溜息を吐いた。
- 571 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/12/13(日) 15:37:40.89 ID:6GhjJw4I0.net
- 明日明後日辺りに続き書く
- 572 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/12/16(水) 06:43:26.88 ID:nSmsk8Cj0.net
- 投下は明日の深夜か明け方位に出来たら
- 573 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/12/19(土) 06:20:37.09 ID:ExaVJI5d0.net
- 今日の夜か深夜に変更で
- 574 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/12/20(日) 13:14:48.93 ID:YeAOUvJY0.net
- ――ジョウト地方、起伏のある鬱蒼とした森林の中を、
大小種族も不揃いな四匹のポケモン達が辺りを警戒しながら足早に進む。
「ねえ、おかあさん。あとどのくらいで安全なばしょにつく?」
その中で一番小さな者オタチが、寄り添うように歩む胴長な体をした者オオタチに
少し息をきらせた様子で尋ねた。
「きっともうすぐよ。もうちょっと頑張ってね、坊や」
オオタチは優しくオタチを励ます。
一方で、少し不安げな眼差しを先導するロズレイドとマニューラへと向けた。
親子のやり取りが背後から聞こえて、ロズレイドはジョウト地方の地図と方位磁石を取り出して
自分達が今いる大体の場所を改めて調べだす。
「三十一番道路を越して、人目を避けキキョウシティ近辺は北に迂回してきたので……
今は三十六番道路を少し北に外れた森の中、って所でしょうか?」
地図を片手にロズレイドは歩を少し緩め、並び歩くマニューラに確認した。
「ああ。大体その辺だろな」
どこか気のない返事をマニューラは返す。
それから急くように再び歩む速度を上げた。
- 575 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2015/12/20(日) 13:15:16.02 ID:YeAOUvJY0.net
- 反対を押し切ってオオタチの親子をイトマル達から救い出し、
更には病に伏すオオタチの夫の為ミルタンクのミルクを譲り受けに三十九番道路への護衛まで引き受け、
何度も自分のお節介にとことん付き合わせることになってしまい、
流石に気を悪くしてしまったのだろうか。ロズレイドは申し訳なく感じた。
だが、形はどうあれ一度引き受けたからにはオオタチ親子を無事に送り届けてあげたい。
ロズレイドは意を決して、マニューラに再び挑む。
「あの、オタチ君が少し消耗しているように見えます。
もう少し歩を緩めるか、どこかで休憩してあげることはできませんか」
オオタチ達に聞こえぬようロズレイドはそっとマニューラに囁いた。
マニューラは面倒そうに舌打つ。
「ちんたらしてたらまたあの忌まわしい奴らに出くわすかもしれねえ。
三十六番道路の先、三十七番道路辺りまで行けばガーディ共の縄張りがあった筈だ。
虫けらどもは火を嫌う。そこまで行きゃあひとまず安心なはずだ」
マニューラはロズレイドから地図を奪い取り、三十七番道路の場所を爪の先でとんとんと叩く。
「でも、ここからまだ結構距離があるんじゃあ。それに蜘蛛が怖いなら僕が――」
反論するロズレイドを遮るようにマニューラは地図を投げ返した。
落としそうになりながら何とか受け取り、ロズレイドは地図と一緒に言葉もしまいこむ。
- 576 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/12/22(火) 06:22:12.83 ID:qPIFTdtH0.net
- 明日明後日辺りにでも続き書く
- 577 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/12/25(金) 05:12:17.39 ID:0IqbsjZr0.net
- 明日の深夜か明け方位に出来たら投下したい
- 578 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/12/28(月) 06:24:08.69 ID:4wq3Wif50.net
- 今日の夜くらいに遅れます
- 579 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/12/29(火) 09:34:39.87 ID:t8RJhiNF0.net
- 少し前まではオオタチ親子とマニューラも幾らか打ち解けた様子で安心したというのに、
急に冷たく接するようになるなんてどうしてしまったのだろうか。ロズレイドは思い返す。
元々マニューラは気まぐれで気分屋な所はあったが、殊にジョウトの地に来てからはよりそれが顕著に、
情緒不安定と言えるくらいに激しく感情が浮き沈みして見えた。
何が引き金になっているのかロズレイドには直接聞く事もできず定かではない。
だが、一度目はマニューラが大切に腕に巻いているボロボロの布切れに大切なものだと知らず触れようとした時と、
二度目はイトマルに襲われているオオタチが子連れだと知った時に、
特に激情をあらわにしていた様にロズレイドには映った。
そして、今回は目的地を目指しながらオオタチ達と会話を交わしていた時。
確か、どうしてそれなりの長旅になるというのに子どものオタチまで連れて来てしまったのかを
ロズレイドが何気なく聞いた後のことだ。オオタチは最初はオタチを祖父のもとに預けて旅立つもりだったが、
オタチはそれを聞かずに祖父のもとを抜け出してオオタチの後をこっそりつけて来て、
仕方なく旅に同行させる事になってしまったと答えた。
イトマル達に襲われたのはオタチに合流してすぐ後のこと。自分ひとりであれば逃げ切れたけれど、
子どもを連れていてはそうもいかない。助けに入ってくれて本当に助かったとオオタチは改めて礼を言っていた。
マニューラの様子がおかしくなったのはその話を聞いてからだ。
理由はわからないが複雑そうな表情をして、それきり黙りこくって態度もよそよしくなってしまっていた。
- 580 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2015/12/29(火) 09:35:40.39 ID:t8RJhiNF0.net
- 一行は何も言葉を発さないまま森をひた進んだ。
オタチの徐々に荒くなっていく息遣いだけが一行の間に響く。
子どもの足ではきっともう限界だ。ロズレイドは感じ取る。
「もう三十七番道路の近く、ガーディ達の縄張りの近くまで来ているんじゃないでしょうか。
三十九番道路を目指すのなら三十七番道路を人目を避けながら横断しないといけませんし。
あ! ほら、ちょうど近くに水場もあります。休むにはちょうど良いと思いませんか」
運良く見つけた湧き水を指し示しながらロズレイドはマニューラに提案する。
湧き水とオタチの方を一瞥して、「勝手にしろ」マニューラはそっけなく言った。
「良かった。というわけで、オオタチさん、オタチ君、少し休憩にしましょう」
「はい。私も少し喉が渇いていたところなので助かりますわ」
「やった、ぼくもうへとへとだよ」
ロズレイドはオオタチ達を連れ立って湧き水へと向かった。
その背が離れてからマニューラはひとり舌打ちする。
「だからガキは嫌なんだ。自分がどれだけオトナの足引っ張るのかもわかっちゃいねー……」
だってのに余計な無茶をして掻き回す――マニューラは苦々しく呟いて、
腕に巻いた布の切れ端をくしゃりと握り込む。
過去の記憶が想起され、自責、後悔、滲み出る感情を抑えようとしても体が微かに震えた。
- 581 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2015/12/31(木) 04:35:16.58 ID:u7kTnPX30.net
- 明日明後日にでも続き書く
- 582 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2016/01/03(日) 02:04:40.78 ID:GOPs+t9Y0.net
- 保守
- 583 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/01/04(月) 07:32:45.16 ID:uFI5rAj/0.net
- 「きゃはは、つめたくて気持ちいい!」
「深いところに行かないようにねー」
ばしゃばしゃと水浴びを楽しむオタチとそれを見守るオオタチ。
二匹の姿を眺めながらロズレイドは微かに口元を緩ませた。
お父さんはとても大きくて強いんだよ。道中でオタチが目を輝かせながら
自慢げに話していたことをロズレイドは思い出す。
子どもの目からとても大きく映るほど素直に尊敬できる父親と、
少しドジで気弱だけれど優しい母親に囲まれて幸せに生きてきたんだろう。
羨ましいな。そうロズレイドは思うと共に、この二匹を絶対に無事に帰してあげたいと改めて決意する。
再びまたイトマル達に襲われてしまった場合、不調なマニューラと戦いには向かないオオタチに代わって
自分が最も奮闘しなければならない。ロズレイドは前回の戦いを頭の中で振り返る。
最も得意とする毒や葉による攻撃は奴らには殆ど効果が無かった。
唯一幾らか有効な打撃を与えられたのは戦いの最中に咄嗟に閃いたあの勢いよく弾けるシャボン玉みたいな奇妙な技だ。
ロズレイドは薔薇の手を見つめ、あの技をもう一度再現しようと頭に感覚の根を巡らせる。
さほど時はかからない内にそれらしき感触を根が絡めとり、引き寄せながら手の先に少し加減して力を込めた。
途端に花から小さな空気の玉のようなものがふわりと飛び出した。
これはどんな特性を持った技なのか。ふわふわと漂う空気の玉を見てロズレイドは考える。
あの時は不意をついたのと大きな音でイトマル達を怯ませることが出来たけれど、そう何度も通用するとは思えない。
漂う玉にロズレイドは手を伸ばしてそっと触れてみた。
軽快な音を立て、小さいながらも結構な勢いで空気を吹き出して玉は弾けた。
- 584 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/01/04(月) 07:33:20.51 ID:uFI5rAj/0.net
- 本当にたったこれだけの技なのか……? もう一度小さな玉を浮かび上がらせ、ロズレイドは首を傾げる。
扱いきれなかったが強力だった念動力の代わりに思い出したものにしてはあまりに不釣合いだ。
いや、絶対にまだ何か秘密があるはず。無色の玉を見ていると何故だか無性にそう感じられた。
しかし自分が出した技だというのに全くそれが見当も付かない。
「お兄ちゃんひとりでなにやってるの? なにそれ、シャボン玉? いいなー、楽しそう!」
思い悩むロズレイドをよそに、オタチが無邪気に目を輝かせながら近くへ駆け寄ってくる。
「待って、今は近付いたら危ないよ!」
加減して小さくしてあるとはいえ、何が起こるかわからない。ロズレイドはオタチを止める。
「えー、ただのシャボン玉でしょー。大丈夫だよ、それっ」
玉を割って遊ぼうとでもしたのだろう、オタチは泉の水を手で掬い上げて宙に撒いた。
「わっ、冷たいじゃないか」
水滴が雨のようにロズレイドと玉へとぱらぱら降り注ぐ。
先程はそっと触れるくらいの衝撃で破裂したというのに、玉は水滴を何度浴びてもまだその場に浮いていた。
それどころか、降り注いだ水滴を逃さずぎゅうぎゅうと圧縮するように中心へと蓄えていく。
一体これはどうなっているのか、ロズレイドは目を見張った。
ある程度まで吸い込むと玉は急に水を激しく渦巻かせ、
弱り果てて消えそうというよりもまるで力を込めるようにぐっと縮む。
何か起こる、ロズレイドの直感が告げた。
咄嗟にオタチと玉の間にロズレイドが入り込んだ瞬間、触れて壊した時よりも強い音を立てて玉は弾け、
潰したホースの先から噴出したかのような勢いで玉が蓄えていた水が辺りに飛び散った。
「だ、大丈夫? まさかこんなになるなんて、僕も思わなかったけれど……」
水を滴らせながら気遣うロズレイドをオタチは状況を理解し切れてない様子で驚き呆けて見つめた。
- 585 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/01/06(水) 06:30:35.84 ID:Pe5eR1/e0.net
- 明日明後日辺りにでも続き書く
- 586 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/01/09(土) 05:17:57.90 ID:y3dDcVmQ0.net
- 明日の深夜位にできたら投下する
- 587 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/01/12(火) 03:06:52.97 ID:3BzBluG70.net
- 今日の夜くらいに変更で
- 588 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/01/13(水) 10:34:57.51 ID:icb/Vgbs0.net
- 心配して駆け寄ってきたオオタチにロズレイドは事情を説明してオタチを親元へと帰す。
「もう、邪魔しちゃ駄目でしょう」
オタチを窘めながら連れて離れて行くオオタチの背を見送って、ふっとロズレイドは一息ついた
それからまた自分の奇妙な技の特性について考えを巡らせ始める。
オタチが見せた行動とそれに対して玉が起こした反応は特性を理解する為の大きなヒントに違いない。
ロズレイドはそう思い立って小さな玉を発現させ、水を勢いよくかけてみる。
しかし、玉は水を溜め込むことなくパチンと虚しく割れてしまう。
今度はオタチがしたように水を直接かけるのではなく、上から水滴となってまばらに降り注ぐように
ロズレイドは水を玉にかけてみた。たちまち玉は水滴を中心に取り込み、激しく炸裂した。
ただ水をかけただけでは駄目で、水滴をぽつぽつと降り注がせるようにした時にだけ特殊な反応を見せる。
一体どういうことなのだろう、ロズレイドはより一層頭を捻った。
反応を見せるのは水に対してだけなのだろうか。水を取り込んだ時の玉は全力で放ったものであれば
身を守るのに充分な威力になりそうではあるが、いざ危機に陥った時に近くに水場があるとも限らない。
ロズレイドは毒液、花粉、葉っぱの破片など自分に出来る範囲の事を玉に試す。
だが、玉は水のときのような反応を見せる事はなく虚しく弾けるばかりだった。
水に反応するのであればそれが変化したもの、氷ではどうなのだろうか。はっとロズレイドは閃いた。
丁度よくそれを発生させられる存在も近くにいる。試さない手はない。
そう思い至りロズレイドはマニューラの姿を探してみる。
泉の傍にはマニューラは既に居らず、ロズレイドが見つけたのはひとり藪の中に入っていこうとする背だった。
「あの、どこに行くんですか?」
慌ててロズレイドは引き止める。
「別にテメーら置いて逃げやしねえよ。ちと周りを探って来るだけだ」
振り返る事もなくマニューラはそう言い残して藪の奥へと進んで行った。
- 589 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/01/13(水) 10:36:03.69 ID:icb/Vgbs0.net
- 「……そうですか。お気をつけて」
頼みごとを出来るような雰囲気でもなく、ロズレイドはそのままマニューラを送り出す。
玉に対してそれ以上新たな試みも出来ず、考えも行き詰まり、
ロズレイドはしんと静まり返った泉のほとりでオオタチ親子がくつろぐ姿を見守りながら、
マニューラが戻ってくるのを待った。
それ程時が経たない内にマニューラは帰ってきて、
「おい、すぐに発つ準備をしろ」少し顔色悪く、急くように言い放った。
「どうかしたんですか?」
ロズレイドが尋ねると、マニューラは黙って頷いた。
ただならぬ気配を感じ、ロズレイドはオオタチ達に出発を伝える。
「一体何が……?」
森の中をマニューラに合わせ急ぎ足で進みながら、ロズレイドは急な出発の理由を問う。
「あのキャンキャン小うるさいバカ犬どもの縄張りに近いにしちゃあ、
吠え声一つ聞こえてこねえし不気味なくらい静かすぎると思ってたんだ」
苦々しくマニューラは声を潜めて答える。
それから少し進んだ後マニューラはより草深い茂みの前に立ち止まり、
「この奥を見ろ。静かにな」とロズレイドに囁いた。促がされるままロズレイドは恐る恐る草を掻き分け、
その先に広がっていた光景に戦慄する。
木々と草の間には粘々とした糸が網のように張り巡らされており、
茶色い毛並みをした犬型ポケモンのガーディ達が何匹も糸で雁字搦めにされ捕らわれていた。
「蜘蛛共の食料庫ってとこか。あの忌々しい虫けらども、火を吹く犬ころすらものともせずに
こんなとこまで勢力を伸ばしているなんて。妙だ、一体どうなってやがる」
- 590 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/01/14(木) 12:29:33.43 ID:EEVXLToj0.net
- 明日か明後日にでも続きを書きたいです
- 591 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/01/17(日) 03:20:28.01 ID:pv1npH3a0.net
- 明日の夜か深夜に投下します
- 592 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/01/19(火) 05:24:40.35 ID:Hu1bTwdp0.net
- 余りの事の異様さに、流石のマニューラも微かに怖気だっているようだった。
普通に考えれば、火に弱い虫ポケモンが炎タイプのポケモンを襲う事など滅多にない。
あるとすれば、窮地に追い詰められたか、もしくは――余程に戦力の差があるか、だ。
「……状況は分かりませんが、いくら多勢に無勢だとしても、イトマルの力だけでは無理な筈です。
相性の悪い相手も恐れないほど、強力な親玉が蜘蛛の群れを仕切っているに違いありません」
ロズレイドは得体の知れない恐怖に苛まれながらも、捕らわれているガーディ達をつぶさに観察した。
ガーディ達は一様に顔色が土気ばんだ紫色に染まり、毒に侵されている事は明らかである。
半開きの眼には生気が無く、だらしなく開いた口元からは呻き声一つ上がらない。
手足も凝固したようにピクリとも動かないが、微かな呼吸で胸の辺りが上下している為、
辛うじて生きているのだという事が分かる。
「毒針にでもやられたか?」
「それにしては様子が変です。毒による異常だけなら、こんな風に全く動かなくなるという事はありません。
でも、彼らは……毒と同時に、眠りや麻痺も引き起こしているように見えます」
「んなバカな!? そんな異常がいっぺんに起こるなんざ聞いた事ねーぞ?!」
「ええ、常識では考えられない事です。それに、僕が知る限りでは、ポケモンの持つ毒……いえ、
この自然界そのものにだって、そんな猛毒があるなんて話も聞いた事がありません」
その時、背後からガサッと草を踏む音が聞こえ、ハッとして二人は同時に振り向いた。
「……主人と同じ状態だわ。この子達も病気なんじゃ……」
後から追ってきたオオタチが、目の前の光景に顔を青ざめさせ、怯えるオタチを抱き締めていた。
「何ですって? それは本当ですか? では、ご主人の病気というのは、もしや……」
「ええ、毒によるものです……どうも、出掛けた先で虫に刺されたのが原因らしいんです。
その時は大した事なかったのですが、いつまで経っても体力が回復せず、やがて体中に痺れが出て、
昏睡が続くようになってしまったんです」
- 593 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/01/19(火) 05:27:07.59 ID:Hu1bTwdp0.net
- オオタチの話を聞いて、ロズレイドは眉を潜めた。
「つまり……この土地の虫達は、そんな異常を起こす程の、強力な毒性を持っているんですか?」
「いいえ、私達の住処の近くにも虫ポケモンはいましたが、これまでにそんな事ありませんでしたわ。
それより、あの子達をどうにかしてあげないと……」
そう言ってガーディ達の方へ行こうとするオオタチを、マニューラは乱暴に押し留めた。
「不用意に動くんじゃねえ! 二度は助けねーぞ!」
「ご……ごめんなさい……でも、あの子達が可哀想で……」
「幸い、奴らは今この辺にゃいねえようだが、何時やってくっか分からねえんだぞ?!
第一、あの犬っころ共を巣から外したとこで、あの有様じゃどーにもなんねーだろーが!
テメーとテメーの家族の命か、見知らぬ他人の命か、どっちが大事かよく考えろ!」
そう言い捨ててマニューラは踵を返し、先を急ごうとする。
オオタチは涙目になり、何度も振り返りながら、オタチを伴ってとぼとぼと歩き始めた。
自分の用事で付き合せている、という負い目から、我が儘は言えない。だが、自分の主人と同じ、いや、
それよりも酷い状態のガーディ達を見て、とても他人事には思えなかったのだろう。
「ま、待ってください!」
ロズレイドは慌ててマニューラを呼び止めた。
「んだよ、ロゼ。テメーまであの連中を助けよう、とか抜かすんじゃねーだろーな?」
マニューラが蜘蛛を苦手としている事も、一刻も早くこの場を離れなければ自分達も危険だという事も、
ロズレイドは重々承知していた。
「……その通りです。やっぱり見捨ててはおけませんよ」
だが、やはり、まだガーディ達が生きている以上、このまま放っておくのは躊躇われた。
- 594 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/01/20(水) 05:04:22.08 ID:EwZOxQ/80.net
- 明日明後日位にでも続き書く
- 595 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/01/23(土) 03:56:48.79 ID:yohBI1320.net
- 投下は明日の夜か深夜位に
- 596 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/01/25(月) 06:07:31.54 ID:z/iWtKUM0.net
- 今日の夜くらいに遅れます
- 597 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/01/26(火) 12:11:21.25 ID:O0eIL/wP0.net
- 「じゃあどうするってんだ、あ? 具体的に方法言ってみろってんだ、お利口さんよぉ」
マニューラは恫喝するようにロズレイドを睨む。
「それは……」
これと言えるような策があるわけでもなく、ロズレイドは言いよどむ。
「その枝みてえなひょろっちぃ体で犬っころを何匹も背負うか?
餌を横取りされてご立腹の蜘蛛に追われながら、どこまで? 犬共々とっ捕まんのがオチだ。
助けを求めて大声でもあげる? 聞きつけて寄って来るのは蜘蛛共だけだ」
矢継ぎ早に繰り出されるマニューラの指摘に返せる言葉も無く、ロズレイドは口を噤んだ。
「思いあがんな。一時の同情でテメーの力じゃどうしようもねえことに首突っ込んで身を滅ばすなんて、
優しいんじゃなくてただの馬鹿のすることだ。付き合いきれねーよ」
マニューラは言い捨て、まごつくオオタチ達を急き立てて先に行ってしまった。
取り残されたロズレイドはひとり悔しさと無力感にぶると手を震わせる。
「せめて、これくらいは」
呟いて、ロズレイドは針を伸ばしてガーディ達を縛る糸を切り払う。
力なくどさりとガーディ達は草の上に転げ落ちた。
それからロズレイドは道具袋の中を探ってみる。状態異常に効きそうな道具は幾つかあるが、
とてもガーディ全員に行き渡らせる事はできない。
ガーディの異常にも効果がある保証はなく、自分達に万が一があった場合に必要となる分も
確保しておかなければいけないだろう。もたもたしていればマニューラ達にも置いていかれてしまう。
結局は見知らぬ他者より、我が身と近しい周りの者の命を優先してしまうのか。
マニューラがオオタチに言っていたどちらを優先するべきか考えろという言葉がロズレイドの胸を刺す。
「すみません、今の僕にはこのくらいしか出来ない」
道具の幾つかをガーディ達に分け与え、後ろ髪を引かれる思いで立ち去った。
その手にガーディを解放した時に斬り損ねた蜘蛛の糸が一筋付着している事に気付かず――。
- 598 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/01/26(火) 12:12:48.12 ID:O0eIL/wP0.net
- 息をきらせながら遅れてようやく追いついてきたロズレイドを見て、マニューラはふんと鼻を鳴らした。
ロズレイドは何も言えず、黙って一行に加わる。
「ガーディ達は……?」
心配そうにオオタチは尋ねる。
「僕に出来る限りのことは」
ロズレイドが答えかけた時、マニューラは「しっ」と手でロズレイドの口を強引に塞いだ。
少し離れた場所からガサガサと葉や草を掻き分けるような無数の音。
「音を聞きつけた蜘蛛共かもしれねえ。一旦隠れるぞ」
マニューラの指示のもと一行は高い草むらへと入り込み、じっと息を潜める。
無数の音はどんどん近付いて大きくなる。それどころか徐々にその範囲が広くなり、
一行が潜む草むらをしっかりと分かった上で包囲していくかのようだった。
マニューラの額を冷や汗が伝う。ふと傍のロズレイドを見たとき、
その手から細い一筋の光のようなものが伸びていることに気付く。
「テメー、まさか犬どもを解こうとでもして巣に触れやがったか」
マニューラの剣幕に驚きながら、ロズレイドは頷く。
「馬鹿野郎が……!」
歯噛みしてマニューラはロズレイドの腕を強く掴み上げ、
目の前で見せ付けるように手に付いていた蜘蛛の糸をぷつんと爪で切った。
切れ離れる糸を見て、ようやくロズレイドは自分のしでかした事に気付く。
蜘蛛達、イトマルの糸はまるで第二の神経の如く敏感に触れたものを察知する。
その進化系であるアリアドスは獲物に糸を付着させたままわざと逃げ帰らせ、
糸を辿り仲間ごと捕らえに来るという。それは、過去何かの本で読みロズレイドも知っていたはずだった。
蜘蛛達が立てる物音は着実に迫ってくる。
ガーディ達には結局ろくな処置はしてやれず、自分と周りにも余計な危機を招いてしまった。
どちらも取ろうとして、どちらも出来ない。”馬鹿野郎”だ僕は――! ロズレイドはぐっと胸を押さえた。
- 599 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/01/28(木) 05:11:47.42 ID:qvG+OisG0.net
- 明日明後日位にでも続き書く
- 600 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/01/31(日) 04:15:23.71 ID:ALZr1ilL0.net
- 投下は明日の深夜位に出来たら
- 601 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/02/03(水) 11:35:14.50 ID:Jhvsw/hT0.net
- 時を同じくして、イトマルの巣窟。
動けずにいるガーディ達のもとを訪れるひとつの姿があった。
ガーディ達とは風貌もまるで異なり体格もずっと大きい四足のその獣は、
地に伏したガーディの一匹へと近付き前足でそっと触れて様子を確かめる。
まだ辛うじて息はあるがそれも弱々しく深刻な状況だった。
傍らに転がっている使用されてまもない形跡がある毒消しや麻痺直し等の空き瓶に獣は気付く。
先に訪れた何者かがガーディ達を治療しようとした形跡だ。
しかしそれもむなしくガーディ達に効果は見られなかったようだ。
風のつてに聞いた、少しずつジョウトのポケモン達へ蔓延しつつあるという
解毒作用のある薬草や人間達の作る薬品すら効果がない病に違いなかった。
その時、獣の背後の藪が音を立て飛び出した一匹のイトマルが獣を目がけて襲いかかる。
毒牙がその身に届くよりも早く、獣の全身を稲光が駆け巡り鋭い電撃がイトマルの体を貫いた。
病の蔓延と同時期に囁かれ始めた凶暴性を格段に増した虫ポケモン達の存在。
普段の生息範囲も外れ、本来は苦手とする天敵や自分よりずっと大きな者にも平然と襲い掛かるという。
このイトマルもその凶暴化した虫ポケモンの一部なのだろうか。
ぶすぶすと煙をあげ足を丸めて動かなくなったイトマルを獣は見下ろす。
主が仰っていた通り、このジョウトの地に異変が起きている。獣は確信する。
- 602 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/02/03(水) 11:36:48.82 ID:Jhvsw/hT0.net
- 原因は何か。それが何者かの手によるものなのか。
確証は得られないが何か不吉な影を異変の裏に蠢くものを獣は感じずにはいられなかった。
いち早く調査せねば。そう足早に立ち去ろうとした間際、瀕死のガーディ達が目に止まる。
しばし獣は考えて、獣は鬣の中に隠し持っていた小袋を取り出し、
器用に紐を解くと中に入っていた何かの灰のようなものをガーディ達へふりかけた。
灰は虹色に煌き、淡い光がガーディ達の体を包む。
ガーディ達の顔色はみるみる生気を取り戻し、途絶えかけだった息は穏やかなものへと変わった。
それから悪い夢から覚めたようにはっと目を開けて起き上がり、
一体何が起きたのか分からない様子でガーディ達は互いの顔を見合わせた。
獣の存在に気付き、ガーディ達は信じられないといった顔であなたが我々を救ってくれたのか、
と見知らぬ種族の獣に恐る恐る問うた。
獣は答えず、蜘蛛共が戻る前に逃げるがいいと告げる。
そのまま立ち去ろうとする獣にガーディ達は何か礼をさせて欲しいと追い縋った。
「礼ならば私より先にお前達を救おうとしていた者にするがいい」
獣は前足で地面に転がっている空の薬瓶を指し示す。
これは一体誰が? 聞き返そうとガーディ達が薬瓶から獣へと視線を戻そうとした直後、
閃光と共に雷鳴のようなが音が轟き、ガーディ達が再び目を開けた時には獣の姿は既に消えていた。
- 603 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/02/05(金) 06:33:46.47 ID:pMy9mdDR0.net
- 明日明後日位にでも続き書く
- 604 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/02/08(月) 03:19:41.16 ID:0rG0wPAo0.net
- 明日の深夜位に投下できたら
- 605 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/02/10(水) 09:11:54.78 ID:jy5UhSdA0.net
- 蜘蛛達が立てる無数の葉と枝が擦れる音に追い立てられるようにロズレイド達は森の中を駆ける。
走り続けている間にも追っ手は数を増し、行く手の先々にも立ち塞がり、
何度も逃げ道の変更を余儀なくされた。
群れ全体が一つの生き物のように統制の取れた動きだ。
足並みも揃わぬ一行はなすすべもなく追い込まれていく。
何度も何度も、包囲の隙を見つけロズレイド達はすんでの所で逃げ延びる。
その度に蜘蛛の数は増えているというのに、その包囲網には必ずどこか穴があった。
まるでわざと隙を見せて誘導しているかのようだ。
ロズレイドは違和感を覚えるが、多勢に無勢。最早、蜘蛛の巣にかかり力なくもがく獲物も同然だった。
蜘蛛達の中にもしも統率している司令塔がいるのであれば、それを潰せば一気に瓦解するかもしれない。
だがそれらしき個体は見つからない。
このまま疲弊しきるまでただ逃げ続けるしかないのか。
ロズレイドが諦めかけた時、突然ぴたりと蜘蛛達の追跡が止み、
森を抜けて急に開けた場所へと逃げる勢いのままに飛び出した。
レンガで舗装された広々とした道と、多くの花が植えられた花壇。
明らかに人間の手によって整えられたその場所はどこかの公園と思われた。
- 606 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/02/10(水) 09:12:42.06 ID:jy5UhSdA0.net
- 日が傾き始めた公園内には人間の姿は見当たらず、辺りはしんと静まり返っている。
刈り揃えられた草むらに囲まれた広場の中央にある大きな噴水の水音だけがどこか不気味に響いていた。
森の方をロズレイドは振り返ってみる。蜘蛛達が追ってきている様子はなく、姿も見えない。
蜘蛛達が急に退いた理由はわからないが、ひとまず逃げ延びたのだろうか。
疲れきった息を整えながら一行は顔を見合わせる。
しかし、その安堵もほんの束の間のことだった。
噴水を挟んだ向かい側から、ゆっくりと現れた者にロズレイド達は驚愕する。
「これはこれは。思わぬ獲物が巣にかかったようですね」
噴水を飛び越え、一行の目の前に降り立った”それ”はロズレイドと全く同じ姿をしていた。
「どうなっているの……」
悪い夢でも見たかのような驚いた顔をしてオオタチの親子は二匹のロズレイドを交互に見る。
「これが例のニセモノ野郎か」
気味が悪そうにマニューラは顔を顰める。
「偽者とは心外ですね。オリジナルを元に生み出された僕は本物と何一つ違わない。
寧ろ改良を施され、オリジナルよりずっと優れた存在だ。
最も見るからに教養の無さそうなあなたに言っても理解はできないでしょうが」
フッ、とロズレイドのコピーは鼻で笑った。
- 607 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/02/12(金) 00:59:00.53 ID:w8ByIOBz0.net
- 明日か明後日にでも続きを書きたいです
- 608 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/02/15(月) 04:05:36.66 ID:WhKatgFs0.net
- 明日の夜か深夜に投下します
- 609 :600@\(^o^)/:2016/02/15(月) 08:37:10.43 ID:MXnXthlz0.net
- 600(σ´∀`)σ ゲッツ!!
600キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!
600(・∀・)イイ!!
- 610 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/02/16(火) 01:41:46.86 ID:oYXsnNHi0.net
- 「んだとぉ?」
マニューラがコピーを睨む横で、ロズレイドの表情が一層硬化する。
「お前も進化したのか……」
以前、ハナダの洞窟で対峙した時は、共にロゼリアのままであった。
自分がロズレイドへと進化したのはその後、キッサキでの修行の末、マニューラの御前でニューラと戦った時。
それも偶然のようなものであり、まさか、自分のコピーまで進化を遂げているとは思ってもいなかった。
「あなた達の行動ぐらい、こちらには全てお見通しなんですよ、オリジナル」
そう言ってコピーはおもむろに片手を差し出した。赤い花束の上に、きらりと光る石が乗っている。
「要領の悪いあなたの事ですから、どうせ貧相なままだろうと思い用意していましたが……どうやら不要だったようですね。
せめて姿だけでも対等になってくれないと、僕が倒したところで自慢にもなりませんから」
皮肉めいて言いながら、コピーは光の石を遠くへ投げ捨てた。
「あの犬共に毒を仕込んで動けなくしたんは、テメーの仕業か」
凄むマニューラに対し、コピーは臆する事無く嘲るような笑みを浮かべる。
「犬? ああ、あのガーディ達の事ですか。冗談は止めて下さい、あれは僕ではありません。
あんな騙し討ちのような真似は、僕の美学に反しますからね。
まあ、多少は我々が関与しているのも事実ですし、それがあの方のお考えなら仕方ありませんが」
「まさか、この異変に、お前達が関わっていると……」
戦慄きながらロズレイドは呻いた。
「そう言う事になりますかね。大体あの連中も、ロクな力もないくせに、我々に楯突いてうるさく騒ぎ立てるから、
あんな無様な目に遭うんですよ。云わば、見せしめのようなものです」
「そ、そんな身勝手な……あなた達は一体何者なんです?! この土地の虫達がおかしくなったのも、
主人やガーディ達が病気になったのも、全部あなた達のせいなんですか?!」
余りの言い様に、オオタチは堪りかねて叫んだ。
「だとしたら何だって言うんですか。抗う力も無い弱者は、大人しくしていて下さい」
コピーは唇に花弁を当て、ヒュウッと鳴らした。
次の瞬間、周囲の草むらがガサガサと鳴り、頭上に大きな二本角を頂いた甲虫――カイロスが姿を現す。
- 611 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/02/16(火) 01:45:22.75 ID:oYXsnNHi0.net
- 「ひぃっ……きゃああああ!」
「お、お兄ちゃーん!」
カイロス達は続々と数を増し、取り囲まれたオオタチ親子が、その力強い角に挟まれる。
「オタチくん! オオタチさん!」
「何しやがるコノヤロー!」
驚愕する二匹の前にもカイロス達が立ち塞がり、瞬く間にロズレイド達は完全に包囲された。
どの個体も眼に異様な光を湛え、尋常な状態でない事は明らかだった。
「ご心配なく。我々の邪魔にならないよう拘束したまでです。これ以上の危害は加えません。
ですが、あなた達が僕の申し出を却下するというのなら、その限りではありませんが」
「申し出だと……?」
「ええ。勿論、オリジナル、あなたと雌雄を決するという意味です。その為に、此処まで来たのでしょう?」
そう言うとコピーは手先から針を伸ばし、剣のように構えた。
「どうします? 僕を倒さない限り、この先へは進めませんよ? 何なら、二人掛かりでも構いません。
まあ、悪党と名高いニューラ族もいる事だ、卑怯な真似はお手の物でしょうが」
「卑怯はどっちだ! このクソッタレが!」
マニューラは爪を振り上げ、牙を剥いて怒鳴った。
「テメーみてーなお上品ぶった腐れ外道にゃ反吐が出るぜ! ああ、調度ムシャクシャしてたとこだ、
お望み通り、その上っ面ブッ潰して屁も出ねえようにしてやらあ!」
「おお、嫌だ嫌だ、何と言う品性下劣な……穢らわしい」
コピーは露骨に顔を顰め、汚物でも見るような厭わしい目でマニューラを見遣る。
「全く、あなたの感性を疑いますよ、オリジナル。こんな粗暴な野良猫とつるんでいるとは悪趣味の極みだ。
もっとも、あなたに品格が足りないのも、こういった育ちの悪いゴロツキの影響ですかね」
「テメー……」
煽り立てるコピーの方へマニューラが向かおうとした時、その行く手を、ロズレイドがすっと遮る。
反射的に払い除けようとした途端、マニューラは鋭い棘にでも触れたかのように、ビクリと手を引っ込めた。
小刻みに震える体から闘気が立ち昇り、コピーを睨み据える瞳が、炎の如く深紅に輝いている。
「……ロゼ?」
激しい怒りを露わにしたロズレイドを、初めて目の当たりにし、マニューラは思わず息を呑んだ。
- 612 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/02/16(火) 23:10:44.85 ID:wCkxKWx90.net
- 明日明後日位にでも続き書く
- 613 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/02/19(金) 01:21:57.78 ID:gbEbkk3W0.net
- 明日の夜か深夜位に投下できたら
- 614 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/02/22(月) 05:20:08.52 ID:wMvWLz2+0.net
- 今日の夜位に変更で
- 615 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/02/23(火) 00:07:53.85 ID:KWnmn/vq0.net
- 「いいだろう、相手になります」
ロズレイドの言葉にコピーの口端が弧を描く。思惑通りいとも容易く焚き付けられてくれた。
ハナダの洞窟で対面した時から何も成長していないようだとコピーは見て取る。
「それでいい」
同じ条件に引きずり込めば身体能力に優れた者の勝利だ。頭に血が昇った相手であれば尚更御しやすい。
もはや蜘蛛の巣にかかった獲物も同然。後は如何にじわじわと嬲り心を圧し折るかだけだ。
「おい。わざわざ同じ土俵に立ってやる筋合いなんざねえだろうが」
苛立った様子でマニューラはロズレイドの肩を掴む。
「大丈夫です、そう簡単に負けるつもりはありません。それに――」
ロズレイドは臆することなく言ってのけ、最後にそっとマニューラに耳打ちする。
「ほー……ま、勝手にしな」
マニューラはそっけなく言うとロズレイドの肩から手を離し、
瞬時に作り出した氷の椅子へ気だるそうに頭の後ろに手を組んで座り込んだ。
「お仲間とのお別れはもう済ませましたか。もう二度と言葉を交わせなくなるかもしれないのですから」
くつくつとコピーはせせら笑う。
意に介さぬ様子でロズレイドは無言で一歩前へ踏み出た。
「もう言葉はいりませんか……」
コピーはすっと片手の針先をロズレイドへと向ける。
- 616 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/02/23(火) 00:10:47.73 ID:KWnmn/vq0.net
- 「前と同じように僕は片手だけでお相手しましょう。ハンデが無ければつまらない」
それに対して、ロズレイドも右手の針だけを伸ばして構え、左手は背の方に回した。
「ならば僕もこれで充分だ」
コピーを真っ直ぐに見据えながらロズレイドは静かに言った。
その陰で片足で地面を何か確かめるように探る。
ぴくりとコピーは不愉快そうに片眉を動す。
「さて、過去にあれだけ無様に敗れておきながらその自信はどこからくるのでしょうか?
強がらなくていいんですよ。両手でも何でも使うといい」
「もう御託はいらない。そのべらべらと良く働く口の代わりに、
足なり手なりを動かしてさっさとかかって来たらどうですか」
ロズレイドは剣先をくいくいと招くように動かす。
「……いいでしょう。その余裕がいつまで持つのか楽しみだ」
コピーは瞬時にロズレイドとの間合いを詰め、毒針による鋭い刺突を繰り出す。
ロズレイドは針先を払うようにかち合わせて刺突の勢いを逸らし、すんでの所でかわした。
それから反撃とばかりに力強く踏み込み、コピーの喉元めがけて思いきり針を振るう。
コピーは身を翻し、流れるような動作で毒針で受け止めて弾く。
続け様に振るわれた一撃も紙一重で一歩後ろへと退いて避け、間合いを離した。
「なるほど、あれから多少は腕を上げたようですね。ですが何とも乱暴で無駄が多い。
品格に欠けた針の捌き方だ。一体、どのような輩に指導を受けたのやら」
- 617 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/02/25(木) 03:06:00.26 ID:zCjBgs070.net
- 明日明後日位にでも続き書く
- 618 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/02/28(日) 03:46:42.16 ID:rDD51f290.net
- 明日の深夜位に投下したい
- 619 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/03/02(水) 03:43:20.10 ID:FROTPgxm0.net
- 夜位に遅れます
- 620 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/03/03(木) 11:29:22.42 ID:MoiupY6Q0.net
- コピーはわざとらしく横目で思い当たる者の方を見やった。
当の本人はだらしなく氷の椅子に腰掛けたまま、
どこ吹く風と言ったように退屈そうに片手は爪同士を擦り合わせて手入れし、
もう片方の手はだらりと背もたれの後ろへと投げ出してすっかりくつろいでいる。
四方を囲まれ、人質をとられた上、仲間の一人が戦っている状況であの態度。
一見すればつける薬が無いほどの愚か者だ。
しかし、そこはかとない不気味さを、言い知れぬ胸騒ぎをコピーは感じずにはいられない。
コピーがその正体を掴めぬ内に、再びロズレイドが斬りかかる。
以前より幾分か向上は見られても、その太刀筋は愚直で単調。コピーには容易く見切ることが出来た。
次々と絶え間なく振るわれる毒針をコピーは易々と捌いていく。
言葉により散々揺さぶりをかけたことや、攻撃が通らない焦りと苛立ちで、
もはやオリジナルは冷静さを欠いている筈。次の一撃に合わせて奴の毒針を根元から斬り折って、
喉元に針先を突きつけてやろう。コピーは見計らう。
そして、振るわれるロズレイドの次なる攻撃。まるで予測通りだ。
コピーに生じた慢心、それを見越したようにロズレイドの斬撃は振り抜かれることなく、
途中でひょいと逃げるように退いた。
- 621 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/03/03(木) 11:29:47.07 ID:MoiupY6Q0.net
- 空振るコピーの毒針と思惑。更に追い打ちをかけるようロズレイドは地面を蹴り付け、
コピーの顔目掛けて泥を跳ね上げた。完全に虚を突かれ、反射的にコピーは顔を片手で庇う。
その瞬間、己の毒針はカツンと乾いた音を立てて斬り飛ばされた。
直後に冷やりとした感覚を喉元に感じる。
「一本、です」
毒針を突き付け、ロズレイドは冷淡に告げた。
それから止めを刺すことはせず、ロズレイドはコピーを蹴り付けて転ばせ、距離を取る。
コピーは頬の泥を拭い落とし、蔑むような眼をロズレイドに向けた。
「ハナダの意趣返しのつもりですか? 薄汚い真似を」
ロズレイドはその言葉を待ち侘びていたと言わんばかりに不敵に笑む。
「卑怯な手を幾らでも遠慮なく使え。前にお前が僕に言った言葉に乗ったまで」
臆面もなく返すロズレイドにコピーはわなわなと口を歪ませた。
「クク、いーぞいーぞ」
マニューラは愉快そうに野次を飛ばす。
きっとコピーが睨むとマニューラはそ知らぬ風に目を背けた。
「……救いがたいほど下劣に染まりきっているようだ。
あなたのような低俗な者を元にして僕が造られたなど信じがたく、おぞましくてならない」
「敬意を払う価値の無い相手には相応の態度を取らせてもらう。それだけのこと。
師に倣うなら、”てめえのようなゲス野郎は泥まみれがお似合いだ。”でしょうか」
- 622 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/03/05(土) 03:08:41.01 ID:Tc8H31C30.net
- 明日明後日にでも続き書く
- 623 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/03/08(火) 02:40:51.83 ID:az7Sk4RT0.net
- 明日の今位に投下出来たら投下する
- 624 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/03/11(金) 03:07:58.06 ID:4IDm1wxU0.net
- 今日の夜位に変更で
- 625 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/03/13(日) 06:43:21.37 ID:ysiQxWJo0.net
- 立て込んでて中々時間取れなかったすみません
夜〜深夜くらいには
- 626 :名無しさん、君に決めた!:2016/03/13(日) 11:48:40.44 ID:KKEUhsvb7
- お待ちしておりますー
- 627 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/03/15(火) 05:43:22.38 ID:h55inoij0.net
- コピーはぎりと歯噛みし、新たな毒針を伸ばして構える。
「同じ手が通用すると思うな……!」
己より劣る存在であるはずのオリジナルに見下される耐え難い屈辱。毒針を振るうコピーの手に力がこもる。
敗北などありえるはずがない、あってはならない。焦燥感がより早い決着を急きたてた。
一方のオリジナル、ロズレイドは自分でも驚くほどに冷静だった。
頭の中は小波一つたっていない冬の湖のように静かに澄み渡り、冷徹にはっきりと物事を見据えられる。
これが怒りが限界を超えた先の境地というものだろうか。
頭からつま先、手と花びら一つ一つ、
――それから毒針を構えていない後ろ手に隠した片手から密かに伸ばして草むらを蛇みたいに這い進む何本もの茨の蔓――
全身至る所まで鋭利に研ぎ澄まされているような感覚をロズレイドは覚えていた。
コピーの一撃は速く精密だ。致命傷となりうる部位を隙あらば的確に狙ってくる。
だからこそ、ロズレイドには容易に捌く事ができた。わざと隙を作ればほぼ確実にその場所へと攻撃が来る。
予測が出来れば後はそれに合わせて防ぐだけだ。ニューラ達のずば抜けた身体能力、
反射神経から繰り出される野性的な爪の一撃に比べれば、こんな気取った攻撃なんて読みやすく重さもなくてまるで大したことがない。
手玉に取るつもりが逆に手玉に取られている。よもや自分が陥れられているなどコピーは気付かないだろう。
油断と傲慢さと屈辱への怒りに邪魔をされ、薄々感づいても認められないはずだ。
「防戦一方ではないですか。先程までの余裕はどうしました、オリジナル!」
コピーの煽る言葉がまるで滑稽にロズレイドには聞こえていた。
安易に挑発に乗って苦戦していたように見せていたのは最初からハッタリだ。
全ては油断を誘いこむが為。コピーから冷静さを奪い、足元から注意をそらす為だ。
- 628 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/03/15(火) 05:44:15.12 ID:h55inoij0.net
- 伸ばしていた蔓の一つが、硬い甲殻で節くれ立ったような足に触れたのを感じ、
そっと巻きつかせた。操られるままで自意識が無いのかカイロスは足に巻きつく蔓に反応を示さない。
他の蔓も次々と別のカイロスの足に辿り着き、同じように絡みついていく。
準備は整った。ロズレイドは蔓の一本をくいと引いた。マニューラはぴくりと反応し、
背もたれ後ろへ垂らしていた手に絡む蔓をぐしゃりと握って力を込める。
後は仕上げとばかりに、向かってくるコピーの足へと最後の蔓をロズレイドは巻きつける。
体勢を崩したコピーへとロズレイドは体当たりし、そのまま地面へと仰向けに組み伏せた。
「僕の勝ちだ」コピーの首筋に針を押し当ててロズレイドは冷徹に見下ろす。
「卑劣な……」怒りに燃える眼でロズレイドを見上げコピーは低く唸るように言った。
「無様ですね、”ニセモノ野郎”。くだらないプライドに拘るからこうなる。
さて、このまま止めを刺してもいいんですが、最後にお前達がこのジョウトの地で
一体何をしようとしているのかお聞かせ願いたいところですね」
「愚かな。よもやもう勝った気でいるのですか?」
ニヤリとコピーは笑みを浮かべた。
「こちらにはあのオオタチ達の命が握られている事をお忘れなく。
人質などと好きな手段ではありませんが、あなたが卑劣な手も厭わないと言うならばこちらにも考えが――」
「フフ……アッハッハっハッハ!」
コピーの脅しかけに、ロズレイドは堪えきれないように笑い出した。
「何がおかしい。よろしい。神聖な決闘を汚した罰として先に片方始末して差し上げましょう、カイロス!」
コピーが叫ぶ。と同時、奇妙な甘い臭いがロズレイドの鼻をつく。
しかし、カイロス達はまるで油が切れたブリキの玩具のように体を軋ませるばかりで動かない。
- 629 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/03/15(火) 05:45:30.57 ID:h55inoij0.net
- 「どうした、何をしているのです!」
コピーは目を見張る。カイロスの体からはもうもうと白い煙が立ち、
間接や甲殻の隙間からビキビキと音を立てながら霜のようなものが次々と生じる。
「これは、凍って……!? まさか――」
振り向くコピーに、マニューラは凍り付いた蔓を掴んだ手を勝ち誇ったように掲げて見せた。
その隙にカイロスの鋏から逃れたオオタチ親子がマニューラの傍に駆け寄る。
「テメーらがチンタラお遊戯してる間に虫けらアイスの出来上がりさ。
蔓越しに大勢を凍らせんのは流石のオレでも骨が折れた。ああ、やれやれ」
蔓をポイと投げ捨て、マニューラはだらりと再び氷の椅子に座り込んだ。
「協力ありがとうございました、マニューラさん。
……どうやって虫達を操っているかは知らないが、まともに考える意識を残さず奪っていたのは失敗だったな」
「ッ――!」口惜しげにコピーは表情を歪めた。
その時、上空から獣とも鳥ともつかない鋭くけたたましい咆哮が響く。
ロズレイドが空を見上げた直後、鋭い岩の刃が弾丸のように土煙を上げながら次々と降り注ぎ、
カイロス達を瞬く間に容赦なく薙ぎ払っていく。
「助太刀に来たぜぇ! 薔薇の兄ちゃん!」
宙で羽ばたきながら、岩のような皮膚をした灰色の翼竜、プテラは豪快に叫んだ。
一瞬ロズレイドの拘束が緩んだのを見逃さず。コピーは首にあてがわれた毒針を払いのけて起き上がり、
その勢いでロズレイドを突き飛ばして逃れる。
「……本来の目的に戻らねばならぬ頃合だ。今回は潔く負けを認めましょう。
しかし、次の機会があればこうはいきません。あなたの流儀に則ってお相手して差し上げます。油断も慢心も捨て、全力で」
「待て!」ロズレイドは追おうとするも、大量の鋭利な葉が嵐の様に吹き荒れ行く手を阻む。
葉の嵐がおさまると既にそこにコピーの姿は無かった。
- 630 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/03/16(水) 21:17:16.31 ID:J9V7BHuL0.net
- 明日か明後日にでも続きを書きたいです
- 631 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/03/19(土) 05:36:07.05 ID:2En1lSW00.net
- 明日の夜か深夜に投下します
- 632 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/03/21(月) 01:53:21.71 ID:OHp8wWjo0.net
- 「へっへ、虫けら共め、ざまーみやがれてんでェ! うぉーい、兄ちゃん達、大丈夫だったかァ?」
プテラはぐるりと旋回しながら降下し、ロズレイド達の前へ降り立った。
「おっと、そーだった。えっと、『ピカチュウの』」
「『人生』……プテラさん、何故ここに?」
「ああ、あれから白猫の旦那に、兄ちゃん達をさぽぉとするよう仰せつかったんでェ。
危険だ何だ言われちゃいるが、ここでやらなきゃ誰がやるってなもんで、間抜けな鋼鳥共を尻目に、
あのシロガネ山をちょいと超えてきたって訳さァ。んで、折良くこの上を通り掛かったところ、
兄ちゃん達がクワガタ共に絡まれてんのを見付けたって次第でよォ」
思わぬ展開に唖然とするロズレイドに、プテラは意気揚々と胸を張る。
「ったくこの化石野郎め、派手にやりやがって。おかげでニセモノ野郎まで逃げちまったじゃねーか」
「いやァ、失敬失敬。そりゃまたおれっち一生の不覚でェ」
悪態をつくマニューラに対し、悪びれずにプテラは翼でピシャリと己の額を叩いた。
「いえ、お気遣い、ありがとうございます」
そう礼を言いながらも、ロズレイドは内心、穏やかならぬものを感じていた。
――ひょっとしたら、これは、マニューラへ対するペルシアンの下心ではないのか……?
「ところでよ、兄ちゃん達はこんなとこで何してるんでェ?」
「え、ええ、それが……」
邪念を払い除けつつ、ロズレイドは此処へ至るまでの経緯をプテラに語った。
「ははは、電気ネズミの旦那も偏屈なとこがあるしねぇ、まったくしょうがねえやな。
で、今んとこ、このイタチさん達のぼでぇがぁどをしてるって訳ですかい」
「ええ、道中は危険ですから。それに、この件にミュウツー達が関わっていると分かった以上、
オオタチさん達が災難に巻き込まれた原因も、僕らと無関係ではない事になりますし」
そう語りながらロズレイドは表情を曇らせる。
- 633 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/03/21(月) 01:55:52.67 ID:OHp8wWjo0.net
- 「何しろ、ミュウツーは強さだけではなく、途方もない頭脳と科学技術の持ち主です。
恐らく虫達も何らかの手を加えられ、危険性を増しているに違いありません。
それに、ミミロップさんのコピー同様、僕のコピーも虫達を従えていました。
どういう仕組かは分からないけれど、コピー達は虫ポケモンを操る術を身に着けているようです」
「つまり、あっちこっちであんな連中がウロウロしてるっつー訳か……チッ、厄介な事してくれるぜ」
マニューラは舌打ちしながら、腕に巻いた布切れを弄った。
「……どうしました、オオタチさん? 挟まれた時に怪我でもしたんですか?」
ロズレイドはふと、沈痛な表情のオオタチに気付き、声を掛けた。
「いいえ、あの……」
言い難そうに口籠りながらも、オオタチは話を切り出した。
「こんなにお世話になりながら、本当に申し訳ないのですが……これ以上進むのは、もう諦めようかと思います」
「んだってぇ?! ここまで来といて何言ってんだテメー!」
「そうですよ! あと一息じゃないですか!」
「いえ、そういう意味ではないんです」
驚愕するロズレイド達に、オオタチは頭を横に振る。
「例え無事にミルクを持ち帰ったとしても、一時しのぎにしかならないでしょう。
そんな恐ろしいポケモン達の仕業なら、主人を治す事はもう不可能かもしれません。
それに、そのポケモン達を止めない限り、ガーディ達のような犠牲者は増えていく一方でしょう。
ですから……あなた達が、そのポケモン達を追うという目的でこの土地に来たのなら、
これ以上私達の我が儘に付き合せるべきじゃない、邪魔をしてはいけないと思うんです」
今まで事情から、オオタチが希望を失い、意気消沈しているのは明らかだった。
「そんな事は気にしなくてもいいです! それに、戻るにしたって……」
「虫の少ない道路沿いを行けば、今なら何とか引き返せます。だから……」
「バカ言ってんじゃねえ! テメーがここで諦めちまったら元も子もねーだろ!」
説き伏せようとするロズレイドを押し退け、マニューラが掴み掛らん勢いでオオタチに迫った。
「それで旦那が死んじまってもいいのかよ! テメーはそれで後悔しねーっつーのか?!
生きてさえいりゃ何とかなるかもしれねーが、死んじまったら何にもなんねーんだぞ!」
- 634 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/03/21(月) 01:58:21.96 ID:OHp8wWjo0.net
- 一貫して冷淡な態度を取っていた筈のマニューラが、何故か激しい憤りを見せた事に、
ロズレイドは驚きと共に、何か感慨深いものを感じた。
「そ、それは……」
困惑したオオタチが思わず俯いた時、
「おかあさん、いこうよ」
オタチがオオタチの腕を強く引っ張った。
「ぼく、もう一度おとうさんと遊びたい。おとうさんに高い高いしてもらいたい。
でも、おとうさん死んじゃったら、いなくなっちゃうんでしょ? びょう気も治らないんでしょ?
ううん、治らなくてもいい、遊べなくてもいいから、おとうさんにずっといてほしい。
おねがい、ぼく、つかれてもがまんするから……だって、おとうさんいなくなったら……おとうさんが……」
そう言いながらオタチは泣き出し、ひっくひっくとしゃくり上げた。
「……坊主の言う通りだ。ちったぁ頭冷やして考えな」
マニューラはオオタチから離れ、どかりと氷の椅子に座り込んだ。
「……ごめんね、坊や……ごめんね……」
オオタチは溢れそうな涙を堪えながら、嗚咽するオタチを強く抱き締めた。
「くう〜、泣かせるねェ。親子の情ってやつぁ、何億年経っても変わらねえもんだなァ」
プテラも貰い泣きした様子で、爪で目頭を押さえた。
「ええ……オオタチさん達が落ち着いたら、僕らは39番道路へ向かいます。
このまま何事もなければ、明日には牧場に到着するでしょう」
「そうかい。おれっちも、日が沈まねえうちに、もう一っ飛びしてくらぁ」
ばさばさと翼を広げるプテラに、ロズレイドはマニューラに聞こえないよう声を潜めて囁いた。
「……ピカチュウさん達を見付けたら、そのように伝えて下さい。それから、くれぐれも虫には注意するようにと。
ひょっとしたら、もうコガネシティに到着しているかもしれませんが」
「んー、コガネシティねえ。どうもああいうゴテゴテしたとこにゃ、いまいち馴染めねぇんだよなァ。
何せ、おれっちが青春を謳歌してた頃にゃ、人間なんて生きもん、影も形もなかったからよォ」
プテラは口先を尖らせ、頭をポリポリ掻きながらぼやいた。
「ま、しゃあんめェ! もし旦那方に会う事があったら知らせとかァ」
「ええ、お願いします」
「おう! 達者でな! 運が良けりゃまた会おうぜ!」
そう言って、プテラは夕暮れの空へ飛び去って行った。
- 635 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/03/21(月) 05:32:32.95 ID:z2kVcgou0.net
- 明日明後日位にでも続き書く
- 636 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/03/24(木) 02:23:41.45 ID:O9GQDl6K0.net
- 投下は明日の夜か深夜位に出来たら
- 637 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/03/27(日) 02:21:34.05 ID:HkrK1DQm0.net
- 今日の夜位に遅れます
- 638 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/03/29(火) 13:38:27.56 ID:cupMUOxh0.net
- ――ヤドンの井戸で一夜を過ごした俺達は隠れ家の一室に集い、
早朝から今後の方針についてを会議していた。
「ロケット団の裏にミュウツー達がかかわっていることが知れた今、
奴らの動きを探ることも今後は必要となるだろう。
団員達が向かいそうな場所、しでかしそうな事に宛てはないのか、デルビル」
会議机代わりにしている平たい岩の向かい側についているデルビルへ尋ねる。
「さあな。俺がいた頃より……ああいや、その手の話に詳しいダチづてに聞いた時の頃より
だいぶ内部の事情も変わってるようだし、奴らがどこで何をしようとしてんのかなんてサッパリだ」
大欠伸一つしてデルビルはむにゃむにゃと顎を動かす。
団員を追うことがフーディンの手がかりに繋がる事がわかった以上、
こやつも今更しらばくれることはしないはずだ。
「何か考えは、ムウマージ」
机に突っ伏したまま動かないムウマージの姿が目に余り、叩き起こすがてら指名する。
ほらほら呼んでるよ、と隣のアブソルに揺り動かされ、ムウマージは面倒そうに唸った。
「んー、まーテキトーで? いーんじゃなーい……」
顔だけ向けてそう返事をすると、ムウマージ「あさごはんになったらおこして」と再び机に沈んだ。
まったく、使えない奴らだ。ムウマージに関しては話を振った俺が愚かだったとも言えるかもしれない。
昨晩の内から明日は早朝から会議を行うと全員に伝えておいたというのに、
ミミロップの奴に限っては部屋から起きてくる気配もない……最も、波動読みをさせたことや
コピーとの戦いであやつが一番疲れているだろうから、自発的に起きてくるのに任せて
部屋に声をかけにいくのは控えていたのだが。それにしたって遅いものは遅い。
「おはよー。寝坊した、ごめーん」
- 639 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/03/29(火) 13:39:35.15 ID:cupMUOxh0.net
- ようやく件のウサギめが呑気に目をこすりながら現れる。
「遅いぞ。少し気が緩んでいるのではないか」
苛立ちを沈めるように俺は傍らに用意されていた木の椀の水を啜った。
「えー、だって昨日の晩、ピカチュウったら中々寝かせてくれないんだもん」
わざとらしくもじもじとしながら囁くようにミミロップは言った。
途端、俺とデルビルは飲みかけていた水を盛大に吹き出す。アブソルはきょとんと不思議そうな顔をした。
「ゲホッ、ゴホッ、くだらない嘘を言うんじゃあない! もういい、さっさと席につけ!」
「はいはい、ウソウソごめんごめん」
悪びれる様子も無くしれっとミミロップは席へとつく。うまく小言をあしらわれてしまったようだ。
こんな時にロズレイドさえいればもう少しまともな意見も聞けたであろうし、
うまく場を纏めることができたかもしれないというのに――俺はふとそう思いかけて、
いやいや! と心の中で首を振るって否定した。あんな裏切り者がいなくともちゃんとやっていける。
仕切り直すように俺は思い切り両手を机に叩き付けた。
「とにかく! 一刻も早くミュウツーやロケット団員達の後を追う為の手がかりを我らは掴まねばならん。
”もっと大きな生命力を持った素材”とやら以上の話はコピーから得られなかったのかミミロップ」
「それ以上はなーんにも。後はアンタとそのコピーへの悪口と、
お強いミュウツー様への惚気話を聞かされただけ。聞きたい?」
「いらぬわ。そんなもの」
俺は深々と溜息をついて頭を抱えた。
「なんや白熱しとるなあ。ちょっとお邪魔してもええ?」
そんな時、恐る恐ると言った様子で部屋の入り口からヤドキングが顔を覗かせる。
- 640 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/03/29(火) 13:40:36.02 ID:cupMUOxh0.net
- 「ああ、構わん」
了承すると、ヤドキングはいそいそと入ってきて席へと加わった。
「昨日な、あんたらが寝静まった後、どーにも眠れんで井戸ん中散歩しとったんや。
そしたらな、うっかり落としたんか壊す為にわざと捨ててったんか知らんけども、
水ん中にこんなんが沈んでんの見つけてな」
ヤドキングがそっと机の上に画面が付いた小型の機械を置いた。
「起こすのも悪いから何か手がかりでもうまく残ってないかと弄くっとったんや」
「お前、人間の機械が操作できるのか?」
驚く俺達を見てヤドキングは得意げな顔をする。
「せや。奴らに弄くられてからえらい頭ん中シャッキリしてなぁ。
こんなチャちぃ機械の操作触りながら覚えるくらいちょちょいのちょいやで」
「それで、どうだったんだよ」
先程まで眠そうにしていたのが嘘のようにデルビルが机に乗り出して聞く。
「うん。水に漬かっとったせいか所々おかしくなってたり消えてたりでえらい難儀したけども、
ワシらから切り取って大事な尻尾ちゃんをどこに運ぶつもりなんかばっちし掴めたわ」
「それで、その場所は?」
「コガネシティにめっちゃ立派な百貨店があるんやけども。
その地下にあるらしい倉庫の一部を間借りして奴らあくどい事につこうとるらしいわ」
- 641 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/03/31(木) 05:37:36.15 ID:RnuY2sUZ0.net
- 明日明後日位にでも続き書く
- 642 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/04/03(日) 04:54:03.20 ID:LIUyaRIq0.net
- 明日の深夜位に投下できたら
- 643 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/04/06(水) 03:12:15.53 ID:OYrjKr3Y0.net
- 今日の夜位に遅れます
- 644 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/04/07(木) 04:11:55.33 ID:ROrSNB930.net
- やはりコガネ、か。そして、地下にあるらしい倉庫。
復唱するように頭に思い浮かべると、途端に痛みと共に嫌な感覚が走った。
「奴ら、昔あそこでヘマしてサツに引っ張られかけたってのにまだ懲りずに使ってやがんのか」
デルビルが独り言のようにぼやく。
そうだ、過去にもあの場所は使われていた……? 頭痛と正体の掴めない不快さが益々強くなる。
「大丈夫? なんだか顔色悪いけど。熱でもあんの?」
心配そうにミミロップが俺の額にぺたりと手を当てた。
「問題ない。気安く触るな」
俺は我に返って乗せられた手を除けた。
……言い知れぬ感覚もきっと早朝から気を張りすぎていたせいに違いない。
コガネの地下で奴らがのうのうとまた何か非道な行いをしているかもしれないと
まだ頭もはっきりと覚めきらない朝っぱらから想像すれば、
気分と体調を害しても仕方ないというものだ。
「うむ。やはりコガネシティに向かってみる他ないようだ。
以前にミュウツーが作為的に残していった手がかりの場所であることから、
何か罠や策を張り巡らされている危険性も高いが……虎穴に入らずんば、だ。
ここで我らが立ち止まり奴らを野放しにしてしまえば、
再びヤドン達のように奴らに虐げられる者達が出てくるだろう」
己自身も奮い立たせるように俺は言った。
仮に”嫌な感覚”が思い過ごしでなく、何かがあの地下にある、あった――のだとしても、
逃げずに立ち向かわねばならん。
- 645 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/04/07(木) 04:12:37.73 ID:ROrSNB930.net
- 「うん! ボクもうヤドン達みたいに誰かがひどい目にあってところなんて見たくないよ。
危なかったとしても足手まといにならないように頑張るから、行ってみよう」
机に両方の前足をどんと乗っけてアブソルが張り切る。
「同じくー。今回だって追い払えたし、コピーのひとりやふたり待ち受けてたって何とかなるでしょきっと。
きっちりと落とし前はつけなきゃ」
ミミロップはぱしんと片方の手の平を拳で叩く。
「……コガネなら多少は土地勘があるから人目に付きにくいルートを案内できるかもしれねえ。
奴らに好き勝手されるのも癪だし協力してやる」
いつになく協力的な様子でデルビルは言った。
「んー、ごはん?」
ムウマージが小うるさそうに顔を上げる。「違うよ」とアブソルが教えると、
「ちぇー」と再びムウマージは夢の世界へとかえった。
「あ、そうそう最後にもう一つええやろか?」
ヤドキングに言われ、俺はなんだと首をかしげる。
「こっちのほうは話半分で聞いて欲しいんやけど、”もっと大きな生命力を持った素材”っちゅうのに
ちょっとだけ関わるかもしれん話があんねん」
「というと?」
「しょうもないと思うかもしれん昔からのおとぎ話みたいなもんなんやけど、
このジョウトには伝説が残るくらいすごいポケモンはんがいたんやって。
なんていうたかなぁ……ホーホーと少し似たような響きの名前しとったと思うんやけども……。
困ったなぁ、思い出せんわ。まあ、その何だか言うすごいポケモンはんは
火事に巻き込まれて焼け死んだかわいそうなポケモンを蘇らせるくらいのえらい力持っとったらしいわ」
- 646 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/04/09(土) 02:00:23.83 ID:2g9H8u5f0.net
- 明日明後日辺りにでも続き書く
- 647 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/04/12(火) 03:40:16.80 ID:2+8YFMiG0.net
- 投下は明日の深夜位
- 648 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/04/15(金) 04:38:36.17 ID:JEDj4pcU0.net
- 今日の夜位に遅れる
- 649 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/04/17(日) 12:06:46.07 ID:o899Tlql0.net
- 死者を蘇らせるほどの信じがたい生命力をもっているということしかわからず、
名前も不確かで実在しているかも疑わしい伝説上のポケモン。
話半分で聞いて欲しいという前置き通りになんとも不明瞭な話だ。
「あぁー、やっぱあかん? そりゃそうやな。んな神さんみたいなもん実際におるはずないかぁ」
半信半疑なのが表情に出ていたのか、ヤドキングはばつが悪そうに頬を掻いた。
「せや。神さんが実在しとんならあんな悪い連中を長いこと野放しにしとくハズないわ」
言いながらヤドキングはひとり納得するようにうんうんと頷く。
確かに昔の俺も神の存在なんて信じてはいなかった。
だが、あの”厄介者”どもに何の因果か散々関わってしまった今、
信じざるをえなくなってしまったというのが現状だ。
俺はアブソルの方へ気付かれぬようそっと視線を向けると、
気のせいか少し複雑な表情を浮かべているように見えた。
「いや、貴重な話を聞けた。伝説として残されているからにはその根拠となるような
強い生命力を持ったポケモンがこのジョウトのどこかにいるのかもしれん。
ミュウツー達がそのような者の存在を知れば、きっと放ってはおかぬはず。
もう少しその伝説について詳しいものはおらぬのか?」
「せやなぁ……。このヒワダタウンからはずぅっと北の方、
コガネシティを過ぎて更に北へ北へ向こうた先にあるエンジュシティいうとこには、
そのポケモンはんを祀る為に人間達が建てた塔があるそうやけども……。
そのへんに住んどる奴らならワシよりもうちょい詳しいんとちゃうかな?」
- 650 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/04/17(日) 12:07:26.95 ID:o899Tlql0.net
- はあ、と耐え切れなくなったようにデルビルが溜息を漏らす。
「もうんな曖昧で眉唾な話どうだっていいじゃねえか。ぱっぱとコガネまで行こうぜ」
デルビルが言う通り、今はコガネに向かい地下倉庫を捜索するのが先決だろう。
だが強い生命力を持つ伝説のポケモンのことは少し気がかりだ。
もし本当にそのポケモンが実在し、万が一ミュウツー達の手に落ちるようなことがあれば……。
良くないことが起きるのは間違いない。しっかりと頭の片隅に入れておくことにしよう。
ヤドキングの隠れ家で旅支度を終えて、
俺達は井戸の底から梯子を伝い柔らかな朝日が差し込む地上へと登り出た。
「これより我らはコガネに向け出立する。世話になった、ヤドキング」
少し遅れて井戸から出てきたヤドキングの方へと振り向き改めて礼を言う。
「あんたらにはまだまだ全然受けた恩返しきれてないわ。
必ずまた無事な顔見せてな。困ったことがあった時は何でも言いに来るんやで。
ちょっと頼りないかもしれんけどワシとヤドン達はいつだってあんたらの味方や」
「感謝する」
ちょっと間の抜けた朗らかな笑顔に見送られ、俺達はヤドンの井戸を後にする。
コガネに行くにはウバメの森を抜けていく必要がある。
鬱蒼とした深い森は住み慣れた原住のポケモンでもなければ非常に迷いやすい為、
朝の内に人間達が切り開いた道を辿って抜けた方がいいとヤドキングは教えてくれた。
そこら中でヤドン達が呑気に日向ぼっこしている姿が見られ、
すっかりと平穏を取り戻した町の様子を物陰から眺めながら森の入り口へと向かう途中のことだ。
「あッ! お前は!」朝の穏やかな空気を引っ掻き回す、聞き覚えのある声が唐突に轟いた。
あの黄色帽子だ、まさか姿を見られたか――! ぎくりとして俺は声のほうへと振り返る。
しかし奴は俺達に気付いて叫んだわけではなく、肩に触れるくらいまで赤髪を伸ばしている
威圧的な目付きをした同年代くらいの子どもと何やら一触即発の雰囲気で睨みあっていた。
- 651 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/04/18(月) 00:42:09.96 ID:AAm+j9dW0.net
- 明日か明後日にでも続きを書きたいです
- 652 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/04/21(木) 00:59:28.20 ID:3fiEkLlh0.net
- 明日の夜か深夜に投下します
- 653 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/04/22(金) 01:44:30.57 ID:h3iUHLK10.net
- 『何でこんなとこにいるんだよ。とっくにケーサツに捕まったかと思ってたのにさ』
何やら物騒な黄色帽子の発言を無視し、赤毛の少年は憮然とした表情で尋ねる。
『……聞きたい事がある』
『俺に? 一体何の用だよ?』
そんな赤毛に対し、黄色帽子もムッとしたような顔で聞き返す。
『ロケット団が復活してるって本当か?』
その単語を聞いてふと俺達は顔を見合わせ、奴らの方へ耳を欹てた。
ひょっとしたら、奴らを撃退した黄色帽子は、何か手掛かりになりそうな事を聞いているやもしれぬ。
『ああ、本当だとも。でも、大した事ないさ。俺達がばーっちりやっつけちゃったもんね!』
「そーそー! やっつけちゃったもんね!」
そう得意げに言いながら、黄色帽子と火ネズミはエヘンと胸を張った。
『何!? お前が倒しただって? ウソ言うなよ』
赤毛は驚いた様子で黄色帽子に喰って掛かる。
『へん! ウソなもんか! そう思うんだったら町の人に聞いてみりゃいいだろ!
昔っからウソ吐きはドロボーの始まりってゆーし、俺はお前みたいなハンザイシャじゃないからな!
大体さ、勝手に人のモノ持ってくとか、お前だってロケット団と同じようなもんゃないか!』
黄色帽子も負けじと赤毛を睨みながら言い返した。
『……あんな奴らと一緒にするな!』
赤毛は急にわなわなと肩を震わせ、その髪色と同じぐらい頬を紅潮させ叫んだ。
「何だか険悪な雰囲気ねー。あの赤い髪の子も、どーも一癖ありそうだし」
「あのこのおともだち〜?」
「うーん、違うんじゃないかなぁ? なんか仲悪そうだよ」
ひそひそと囁きながら首を傾げるミミロップ達の横で、
「……ま、まさか、ありゃ……坊――」
何故かデルビルが、食い入るような目で赤毛を見詰めていた。
「どうした? 知っている人間か?」
「あ……い、いや、何でもねえ……ひ、人違いさ、きっと……」
俺の問い掛けに、デルビルはバツの悪そうな表情で頭を振り、曖昧に言葉を濁す。
……怪しい。
ロケット団の事を尋ね、デルビルも顔を知っている様子ならば、関係者か何かだろうか?
もっとも、あんな年端もいかぬガキの事、さして重要な人物ではなかろうが。
- 654 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/04/22(金) 01:50:21.05 ID:h3iUHLK10.net
- しかし、あの異様に鋭い、他を威圧するような目付き――どこか見覚えがあるような気もする。
無論、俺はあやつのようなガキなど知る由もない。
ただ単純に、誰かに似ているような気がする、といった程度の事なのかもしれぬが……
『それが本当だと言うなら……その実力、オレに見せてみろ!』
俺がそんな埒もない事を考えているうちに、赤毛は黄色帽子へとバトルを仕掛けてきた。
赤毛が放つボールから、赤いトサカの生えた青いワニが勢いよく飛び出す。
『さあ戦え! アリゲイツ!』
「うぉっしゃあああぁーっ!」
アリゲイツと呼ばれたワニは、気合を入れるように天を仰ぎ、大口を開けて雄叫びを上げた。
その全身には細かい傷痕が無数に走り、今までに相当荒っぽい生活をしてきた事が窺える。
『望むところだ! 行け、マグマラシ!』
だが、意気込む黄色帽子の思惑とは裏腹に、何故か火ネズミは中々動こうとはしなかった。
いつもの自信満々な態度とは打って変わり、どこか困惑したような様子でワニと対峙している。
見た感じでは、ワニは恐らく水タイプであり、確かに火ネズミと相性は良くなかろう。
「……お前、いつまでそんな奴と一緒にいるんだよ! そいつは盗っ人なんだぞ?!」
だが、どうやら、それだけの問題ではないらしい。
「さっさと逃げ出して早く研究所に帰るんだ! ウツギ博士が心配してたぞ、お前が連れ去られてから……」
「うるせえ! てめえ如きがオレ様に指図すんじゃねえ! もう二度とあんな辛気臭え所は御免だぜ!」
ワニは憤慨したように鼻息を荒げ、火ネズミに怒鳴った。
「オレ様はな、早く表に出たくてウズウズしてたんだ。だのに、あの冴えねえオッサンがもたもたしやがって
ちっとも順番が回ってきやしねえ! だから、オレ様を連れ出してくれる奴なら、誰だって構わなかったのさ。
オレ様を戦わせ、暴れさせてくれさえすりゃ文句はねえし、こいつが何者かなんて興味もねえ。
何しろこのオレ様は、誰よりも強い――そう、世界で一番強いポケモンになってやるんだからな!」
ワニは牙を剥きながら、火ネズミに向かってズシンと踏み出した。
「この前はロクに戦えなかったが、今度はそうはいかねえ! 借りは100倍にして返してやるぜ!」
- 655 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/04/22(金) 02:00:31.50 ID:h3iUHLK10.net
- × 大体さ、勝手に人のモノ持ってくとか、お前だってロケット団と同じようなもんゃないか!』
○ 大体さ、勝手に人のモノ持ってくとか、お前だってロケット団と同じようなもんじゃないか!』
>>653の脱字です、すいません
- 656 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/04/23(土) 01:00:18.91 ID:FgjFeyAR0.net
- 明日明後日位にでも続き書く
- 657 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/04/26(火) 02:24:03.33 ID:5lUv64Xu0.net
- 明日の深夜位に投下できたら
- 658 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/04/29(金) 02:38:24.13 ID:aI1Euf8Z0.net
- すみません今日の夜位になります
- 659 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/05/01(日) 08:13:55.79 ID:WmBRCSkG0.net
- 「お前……ひとがわざわざ心配してやってんのにあったま来たぞ!」
顔を見る見る真っ赤にさせて火ネズミは前足を地面に叩き付ける。
全身の体毛が波打ち、昂る感情に呼応するように頭と腰から赤々とした炎が燃え上がった。
びくり、とワニの尾が少し跳ねて強張り、瞳が微かにおどおどと揺れる。
相性も体格も勝っているとなればあんな大して威圧感もない火ネズミ相手に怯むこともなかろうに、
昔から染み付いた癖のように反射的にワニの表情に怯えと躊躇が浮かんで見えた。
「弱っちぃ泣き虫ワニのくせに、ナマイキに図体と気ばかりでかくなりやがって!」
続けて出た火ネズミの言葉にまるでスイッチが切り替わったように
ワニの顔からは怖気が吹き飛び額に青筋が浮かび上がる。
「その名前で呼ぶんじゃねえ! 昔のオレ様とは違うってこと、お前にトコトン思い知らせてやる!」
煮え立ったヤカンから吹き出す蒸気のように鼻から激しく息を噴出しながら、
ワニは大口を開けて火ネズミへと喰らいかかった。
『来るぞ。でんこうせっか!』
黄色帽子が指示を出す。火ネズミは身軽に跳ねて鋭い牙が並んだ顎をかわすと
ワニの無防備な鼻先を後ろ足で蹴りつけて跳び退き、くるりと宙返りして着地した。
「へへん、ちょろいね」
『いいぞ! ひのこで押せ押せ!』
黄色帽子がそう言うだろうと予め知っていたように声とほぼ同時、
火ネズミはワニの方へと細かな炎を無数に吐き出した。
絶え間なく機関銃の如く放たれる火弾をワニは避ける間もなく一身に受ける。
激しい連続攻撃に土煙が舞い上がり、熱気と焦げ臭いにおいが辺りを包んだ。
- 660 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/05/01(日) 08:15:07.14 ID:WmBRCSkG0.net
- 町外れとはいえ朝っぱらからなんとはた迷惑な奴らだ。
聞きつけた人間達が見物に来る前にこんなガキ同士の小競り合いなど放っておいて
さっさとこの場を離れてしまいたい所だが、アブソルとムウマージは興味津々だ。
あまつさえミミロップも野次馬根性丸出しで奴らの戦いを眺めている。
一方的に自分のポケモンが攻撃を受けているというのに赤髪のガキは眉一つ動かさず冷静だ。
『弱いやつめ、その程度の攻撃に怯むんじゃない。行け!』
赤髪が鋭く命じる。応えるようにワニは咆哮を上げ、土煙の中から飛び出す。
避ける素振りなど一切見せず、その身に何度もいくつも火弾を浴びながらワニは猛然と
真正面から火ネズミへと向かっていく。
「オレ様は、弱く、なんて、ねえ……!」
いくら水ポケモンに炎が効きにくいといっても無傷ですむわけではない。痛みだって当然ある。
あの赤髪もそのポケモンのワニもなんと無茶苦茶なことをする。
ワニの体に刻まれた無数の傷の理由がわかった。今までもこんな強引な戦い方を繰り返してきたに違いない。
『嘘だろ』
片手で頭を抱え、黄色帽子は驚愕した様子を見せる。
素早い先制攻撃で相手を鈍らせた後に炎の連続攻撃によるとどめ。
井戸でも団員相手に披露していた十八番の戦法が通じず、
そして何より冷徹な赤髪の指示とそれに平気で従うポケモンの己を省みない姿に驚いたことだろう。
ワニの足を止めようと火ネズミも炎を吐き続けていたがとうとう息切れを起こす。
その機を逃すはずもなくワニは火ネズミを両手で力強く鷲掴みにしてとらえた。
- 661 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/05/03(火) 04:08:58.13 ID:MFCcTLSN0.net
- 明日明後日位に続き書きく
- 662 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/05/07(土) 00:26:11.67 ID:FDTTBQ0Z0.net
- 明日の深夜位に投下できたら
- 663 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/05/11(水) 03:21:13.78 ID:XdEhrNZH0.net
- 急用続きでだいぶ遅れていて申し訳ない
今日の夜〜深夜くらいには間に合わせたい
- 664 :まとめWebサイト@\(^o^)/:2016/05/12(木) 01:17:43.70 ID:BLooSllq0.net
- やっていればいいね?
- 665 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/05/12(木) 06:10:31.49 ID:piNCIrjg0.net
- ワニの鋭い爪が強く食い込み、火ネズミは短い苦悶の声を上げる。
「勝てる、てめえにやっと、オレ様は……!」
『そのまま仕留めろ! みずでっぽう!』
赤髪の指示のままワニは大口を開けて口内で水を渦巻かせ始めた。
全身に手傷を負っているにも関わらず、その勢いは激流の如く強く激しい。
『抜け出せないか、マグマラシ!?』
火ネズミは懸命に身を捩りワニの手に爪を立て暴れるが、ワニは決して放さない。
勝利を確信した様子でワニは口の端を歪ませた。
渾身の力を込めた水流が今にも放たれようとしたその刹那。
火ネズミは急に抵抗するのを止め、ワニの目をぐっと睨み返す。
すると、一体なんだと言うのだろうか。再びワニの動きが躊躇したように鈍る。
『一か八かだ……! ”あれ”また試してみようぜ、マグマラシ!』
その隙を突き、黄色帽子が何やら妙な指示を飛ばた。
火ネズミは全身に力を込め、頭と腰の炎を勢いよく燃え上がらせる。
『何をモタモタしてる!』
赤髪に叱り飛ばされ、ぎくりとしてワニは水流を構えなおす。
- 666 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/05/12(木) 06:11:18.84 ID:piNCIrjg0.net
- だが、もう遅かった。炎の勢いが一層強まり火ネズミの全身を覆いつくしてワニの手を焦がす。
ワニはたまらず火ネズミの体を投げ飛ばすように放してしまった。
投げ飛ばされた勢いと炎の噴射で火ネズミの体は宙でぐるぐると回り、
地面に着いてもなお派手な音を立てながらその場で回転を続ける。
その光景に俺は見覚えがあった。あれは繋がりの洞窟で奴らに勝負を仕掛けられ、
返り討ちにしてやって追い詰めた時に土壇場で見せたものと同じだ。
『今だ! 突っ込めヒノアラシ! えーっと、そう、必殺かえんぐるまだ!』
勢いが極限に達したのか黄色帽子が――まだどこか少し不慣れな様子で――技名を叫ぶ。
火ネズミの体はその技名が示すとおり車の車輪のように回転しながら、ワニへ向かっていく。
『……ッ! 早く止めろアリゲイツ!』
危険を感じ取ったのか赤髪の声には少し焦りが混じっていた。
火ネズミに負けじとワニの口から吹き出される激しい水流。
全身全霊を込めた技と技が真っ向からぶつかり合う。
真っ向から水流を受けながらも火ネズミの回転と炎の勢いは一向に衰えず、
蒸発する水の白い煙を上げながらじわりじわりとワニの方へと押していく。
相性差を覆す程の底力。俺に一瞬だが冷や汗をかかせただけはある。
そしてとうとう炎の車輪はワニの体へと達し、
巻き起こった蒸気と炎によりワニと火ネズミは双方弾き飛ばされた。
- 667 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/05/14(土) 01:54:46.53 ID:Vw7MsQ2q0.net
- 明日明後日にでも続き書く
- 668 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2016/05/14(土) 03:50:40.80 ID:XWatlMZl0.net
- 早よからやりん♪
- 669 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/05/18(水) 02:35:21.10 ID:jj83xM5W0.net
- 投下は明日の深夜くらいに
- 670 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2016/05/18(水) 15:58:30.29 ID:/BJ8/z5f0.net
- 明日中ばっかやん
- 671 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2016/05/18(水) 23:12:31.07 ID:nmz03sP60.net
- >>670
書き手にもいろいろ都合があるんだから仕方ないだろ
どうも最近不必要にスレ上げてるが何なんだよ
- 672 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/05/20(金) 08:33:13.50 ID:FwMwUpW30.net
- 吹き飛んだ勢いで火ネズミの体はゴム鞠のように数回跳ねて地に転がり、
ワニは地面を滑るように仰向けに倒れ込んだ。
『ああっ、マグマラシッ!』
目を回す火ネズミへ黄色帽子が慌てて駆け寄っていく。
自らの技の威力による盛大な自滅。まだあの技――かえんぐるまとか言ったか――の
制御をできているわけではないようだ。
『大丈夫か、しっかりしろ』
「つつー……へーき、へーき。まだ、立てる……」
黄色帽子の差し出す手を取り、火ネズミはよろよろと起き上がる。
心配そうに火ネズミを助け起こす黄色帽子とは対照的に、
赤髪は地面で伸びているワニを呆れたように冷たく見下ろしていた。
『……フン! 使えないポケモンだぜ』
その言いようにカチンと来た様子で黄色帽子は赤髪を睨みつける。
『おい、そんな言い方ないだろ! お前のワニだって必死に戦ってたじゃんか!』
食って掛かる黄色帽子に赤髪は面倒そうに眉を顰める。
『……いいか、お前が勝てたのはオレのポケモンが弱かったからさ』
吐き捨てるように言って赤髪はモンスターボールにワニを戻した。
- 673 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/05/20(金) 08:33:59.98 ID:FwMwUpW30.net
- 『……オレは弱い奴が大嫌いなんだ。ポケモンだろうがトレーナーだろうが……。
そういう弱い奴らがうろついてるのが目障りで仕方ない……。ロケット団も同じ。
ひとりひとりは弱い癖に集まって威張り散らして偉くなったつもりでいる。
そんな奴らが許せないんだ』
握った拳をわなわなと震わせながら赤髪はどこか独り言めいて言う。
影を感じさせる言い知れない迫力に黄色帽子は返す言葉を失った様子でごくと息を呑んだ。
『お前はうろちょろするなよ。オレの邪魔をするなら、ついでにお前も痛い目にあわせてやるからな……』
赤髪は畳みかけるようにそう言い残してウバメの森へと続く関所に入っていく。
『あっ、おい! 待てよ!』
「く、くそ……ワニ公……ま、て……」
ハッとした様子で黄色帽子は後を追おうとする。
火ネズミも行こうとするが体力の限界が来た様子でふらりとよろけ、倒れる寸前に黄色帽子に支えられた。
『っと、そうだ。その前にお前の手当てしてやらないとなマグマラシ……。
あのヤロー、今度会ったらけちょんけちょんに負かしてケーサツに突き出してやる』
悔しそうにぼやきながら黄色帽子は鞄から取り出した傷薬のスプレー缶をかちゃかちゃと振りだした。
さて、いざこざが収まって黄色帽子が火ネズミの治療に気を取られている今こそ
気付かれずにこの場を離れる絶好の機会だ。
それにしてもあの赤髪。鋭い目付きが示す通り、ポケモンを盗んだだの弱い奴が大嫌いで許せないだの、
一癖も二癖どころか三癖も四癖もありそうな輩だ。
なるべくならあの黄色帽子と同様にこの先関わりたくはない所だが――。
- 674 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/05/21(土) 05:53:47.15 ID:IAbfCGIj0.net
- 明日か明後日にでも続きを書きたいです
- 675 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/05/24(火) 07:15:08.27 ID:lY6XZb0R0.net
- 明日の夜か深夜に投下します
- 676 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/05/26(木) 02:04:42.35 ID:8mnJtrkH0.net
- 「やっぱりあの子達、天才なんじゃないかしら」
「だよね〜」
「うん、何となくだけど、あの子達、これからとてもすごい事をしそうな予感がするんだ」
関所の脇を通り、森へと進む道すがら、俺の思惑を余所に配下共は口々に黄色帽子達を賞賛する。
「ねえ、アブソルちゃんもこう言ってるんだし、そろそろあの子の事、認めてもいいんじゃない?」
ミミロップは悪戯っぽく笑いながら俺に話し掛けてくる。
「ふん、少しは腕を上げたようだが、あのような輩に苦戦するようではまだまだだ。
大体、相性の悪い相手に相性の悪い技をぶつけるなど、全く基本がなっておらぬ。いつまでも力押しが通用する訳がない」
「はいはい、素直じゃないんだから」
呆れたように苦笑しながら、ミミロップはふと思い出したように眉を潜める。
「……それにしてもあのワニ、大丈夫かしら。強くなりたいって気持ちはよく分かるけど、
あんな無茶ばっかりしてたら、そのうち体を壊して戦うどこじゃなくなるわよ」
「心配しても仕方なかろう。あの曲者そうなガキに強制され、酷使されているというなら話は別だが、
己の意志で随行しているならば致し方あるまい。どうなろうと自業自得というものだ」
「それはそうだけど……」
「余計な事は考えるな。我々には、為すべき事があるだろうが……」
その時、道の先に人影が見え、俺達は咄嗟に藪の中へ飛び込んだ。
そっと窺って見ると、それは昨日炭焼き小屋で見掛けた、職人の見習いらしき若い男だった。
男は我々に気付く事なく、黙々と切り揃えられた木材を集め、束ねる作業をしている。
仕方なく俺達はそのまま、道路に沿って藪の中を進み始める。
だが、予想以上に下生えが密集し、尻尾や体毛に引っ掛かって歩き難い事この上ない。
「おい、デルビル」
「ん……あ、ああ……」
俺に小突かれ、デルビルは生返事をする。あれから、どうもこやつから覇気が感じられぬ。
しかし、それは落ち込んでいるというより、何かに気を取られ、上の空になっているような様子だった。
「このままでは時間が掛かる。どこか近道を知らぬか」
「いや……コガネに着きゃいくらでも案内できるが、流石に森ん中までは……」
と、返答も心許ない。
- 677 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/05/26(木) 02:07:27.82 ID:8mnJtrkH0.net
- 「大口を叩いていた割りには頼りにならんな」
俺はデルビルを睨み、大袈裟に溜息を吐いた。
「すまねえ……」
普段ならムキになって言い返してくるであろうデルビルが、拍子抜けするほど素直に頭を下げた。
どう考えてもその原因は、あの赤髪のガキとしか思えぬ。
まさか、ロケット団について非難された事が、それ程までに堪えたとでもいうのだろうか。
そのような繊細な神経がこやつに通っているとは到底思えぬが、その表情はどこか沈痛で、哀しげにすら見えた。
こやつにとって、一体あのガキが何だと言うのだ?
「もういい。下がっておれ」
ともあれ、役に立たぬ黒犬は放っておき、辺りを探ると、少し先の繁みが途切れ、隙間から開けた場所が見える。
俺は人気のない事を確かめ、恐る恐る藪から踏み出した。
その途端、足元でパチリと小枝が鳴った。
「おい、こら! そこを踏み荒らすんじゃない!」
次の瞬間、即座にその音を聞き付けたように、ガアガアと喚く声が聞こえた。
振り向くと、それはやはり昨日、炭焼き小屋で見たカモネギだった。
改めて周囲を見渡すと、恐らく炭焼きに使うのだろう、細い木材がそこかしこに広げられていた。
「折角乾いた木が台無しになるだろうが。さあ、行った行った!」
カモネギは翼に持った茎を振りかざし、俺達を追い払おうとした。
「待てよ、兄弟。こいつら、もしかして……」
だがその時、もう一羽のカモネギが走り寄り、ひそひそと耳打ちする。
「ん? ……黄色いネズミに茶色のウサギに黒い犬……あっ!」
カモネギは驚いたような顔付きで、まじまじと俺達を見る。
もしや、我々が無断で小屋に侵入したのがバレたというのか……?
「そうか! ヤドン達を助けた恩人ってのはあんたらか!」
だが、それは杞憂だった。
カモネギは合点したように翼をポンと叩き、満面の笑顔を見せた。
「いや、こりゃ失礼。俺達はヒワダの炭焼き職人の所にいる、カモネギってモンだ。
この森で薪を集めたり、木炭にする木を切ったりしているのさ」
「昨夜、ズバット達から話は聞いたよ。何でも、悪さをしてる連中を懲らしめに来たんだってな。
俺達も応援するからな。何しろ俺達は兄弟、同じ町のヤドンも兄弟、その恩人なら、やっぱり兄弟だからな!」
- 678 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/05/26(木) 03:07:31.84 ID:fwSoYAtk0.net
- 明日明後日辺りにでも続き書く
- 679 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/05/29(日) 04:27:06.80 ID:kW9JMaZL0.net
- 明日の夜か深夜位に投下できたら
- 680 :名無しさん、君に決めた!:2016/06/01(水) 00:23:08.95 ID:aTnMn4J3i
- 何ヵ月ぶりだろうか
また、来させていただきます。
応援してます
- 681 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/06/01(水) 17:31:55.42 ID:aH3yNC6e0.net
- 人間に飼育されているポケモンだが、幸いこのカモネギ達は友好的なようだ。
ズバット達の働きには感謝せねばなるまい。
「ところであんたら何だってこんな森ん中にまで?」
首を傾げるカモネギに俺は事情を説明する。
「なるほどなあ。コガネシティに行きたいのかい」
カモネギ達は互いに顔を見合わせ、何か合意したように頷きあう。
「ウバメの森を慣れないあんたらだけで抜けるのは大変だろうな。
よけりゃ俺達がコガネ側の出口まで案内してやるよ」
ぽんと胸を叩いてカモネギが申し出る。
「ありがたい話だが、お前達も仕事の途中ではないのか」
「なあに兄弟の為だ、少しくらい手を止めたって構わないさ。
それにそろそろ息抜きしたいと思っていたところだしちょうどいい」
カモネギはニッと人懐こそうな笑みを浮かべた。
「そうか。ならばその言葉に甘えさせてもらおうか、カモネギ」
「おう、大船に乗った気で任せろ。カモネギだなんて水くせえ、兄弟でいいぜ兄弟!」
グワグワと豪快に笑いながら、カモネギは咳き込みそうなほど力強く俺の背を叩く。
悪い奴では無さそうだが少しばかり馴れ馴れしくて暑苦しい助力を得て、
俺達はウバメの森を行くことと相成った。
- 682 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/06/01(水) 17:32:37.12 ID:aH3yNC6e0.net
- さすが土地鑑があるだけあって、カモネギが案内する道は俺達だけで
闇雲に進むよりもずっと円滑で快適だ。
途中、ふと俺はヤドキングが話していた伝説上のポケモンの事を思い出す。
人間に常日頃から接し、ヤドンよりも行動範囲も広いであろうカモネギ達なら何か知らないだろうか。
そう思い立って、俺の背中を叩いたカモネギの方に問うてみた。
「んー、すまねえネズミの兄弟。そんなすごいポケモンの話こんな田舎じゃ全然聞いた事ねえや」
ひとしきり考えた後、カモネギはすまなそうにそう答えた。
「そうか」やはりヤドキングが言っていた通り、
手がかりを得るにはエンジュシティとやらまで足を運んでみるしかないのだろうか。
そう俺が思いかけていた時、カモネギ不意に何か思い出したようにポンと翼を打つ。
「ああ、でもそうだ。関係あるかは微妙だが、このウバメには森の神か何かが住んでいるって
親方が話しているのを聞いたことがあるぞ」
「神?」ぴくり、と俺は耳を立てる。
「人間達が好きな迷信だとか験担ぎってやつの類いだと思うけどな。
森の中にあるその神を祀ってるって祠にたまに親方も参りに行ってるよ。
いつも木を採らせていただいてるからーって。別に何かが住んでいるような気配もないし、
何の変哲も無いただの古めかしい木の祠なんだけど、ちょっと見に寄ってみるか?」
- 683 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/06/03(金) 03:53:07.68 ID:GRLkQkPe0.net
- 明日明後日位にでも書けたら書く
- 684 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/06/05(日) 03:22:19.57 ID:nzmw5X3o0.net
- 明日の深夜か明け方位に投下できたらする
- 685 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/06/08(水) 13:30:52.88 ID:pcLvlsZc0.net
- よく見知った者から何の変哲もないと言われるような祠か。
果たしてわざわざ見に寄ってみる価値はあるのだろうか。
「その祠とやらは本来の道のりからだいぶ外れることになるのか?」
「いんや、そんなに遠かねえよ」
「それならボク見に行ってみたい! 色々なものを自分の目で見るのが大事って、
色んなひと達に言われたしボクもそうしたいよ」
早足で俺の隣まで進み出てきて、アブソルが会話に割って入ってくる。
「いいねえボウズ。そうそう男の子は好奇心旺盛じゃなきゃな」
感心するカモネギに対して、アブソルは「男の子?」と怪訝そうな表情を浮かべる。
「おっと、わりいわりい。かわいげな顔してるし女の子だったかい」
ばつが悪そうに訂正するカモネギにアブソルはますます不思議そうな顔をして首を傾げた。
「んー、なんだ気ィ悪くしちまったのか? まあいいや。
お連れさんは行きたがってるみたいだが、どうすんだネズミの兄弟?」
カモネギは困った様子でそそくさとアブソルとの会話を切り上げ、こちらへと話を戻してきた。
「うむ。折角だ、案内してもらおうか」
「あいよ。ま、ほんとにちっちゃい祠だからあんまり見応えあるようなのは期待はするなよな」
ひんやりとした空気に包まれる静寂な森を祠を目指して進む内、
辺りには徐々に白い霧が立ち込み始め、少しずつ視界が悪くなっていくように感じられた。
そんな事をまるで意に介することなく、カモネギ達は歩を緩めることなく先へと進んでいく。
森に慣れきった彼らにとって目を閉じていても進めるくらいの道ということだろうか。
不慣れな我々にもう少し気を配って欲しいものだ。
- 686 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/06/08(水) 13:31:24.26 ID:pcLvlsZc0.net
- そうこうしている内にどんどんと霧は濃くなっていき、
ほんの数歩先にいるはずのカモネギ達の背も見えないほど景色は白く染まっていた。
「もうす――森の……だ――」
霧に邪魔され姿が見えぬカモネギの声がとても遠い場所から響いてきているかのように掠れている。
いつの間にかもうずっと先の方へ行ってしまったのだろうか。
俺の後ろをついて来ているはずの配下達はちゃんとはぐれずにいるだろうか。
先程から俺以外の足音が聞こえない気がする。
「ちゃんとついて来れているかお前達!」
俺は立ち止まって、後ろへと声をかける。しかし、誰の返事も無い。
音すら霧が飲み込んで掻き消してしまっているかのように、周囲はしんと静まり返っていた。
「おい! 誰か、聞こえぬか!」
声は誰かに届いた気配もなく虚しく濃霧の中へと消える。
まさか俺だけがはぐれて取り残されてしまったというのか。それとも全員散り散りに?
ただでさえ鬱蒼とした森の中、視界も悪いとなれば探しようもない。
少しばかり焦りを覚えながらも諦めずに配下達を呼びながら周囲を見渡す。
「つっ――!」
突然、左腕が燃え上がるように熱くなって感じた。
驚いて見やると、腕輪が何やら淡い金色の光を帯びている。
これは、一体? 原因を考える間もなく腕輪の光と熱ははすぐに収まってしまった。
不可思議に思いながらも今はこの状況を乗り切ることが先決だろうと俺は顔を上げる。
すると、どうだろう。まるっきり濃霧に包まれて何も見えなかったはずの辺り一面に
一箇所だけ霧が薄くなって僅かに先の様子がわかる部分が――たんに見落としていたのか、
それとも新しく出来たのか――あることに気付く。
細く続く獣道。その先にぼんやりとそれ程大きくはない何か人工物らしきものの輪郭が見える。
- 687 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/06/10(金) 03:59:58.63 ID:p+OD2xmE0.net
- 明日明後日にでも続き書く
- 688 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/06/12(日) 02:02:55.58 ID:zy/imT7J0.net
- 明日の深夜か明け方位に投下できたらしたい
- 689 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/06/15(水) 00:11:57.39 ID:j67hYI1k0.net
- 今日の夕方〜夜位に遅れます
- 690 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/06/16(木) 05:21:56.09 ID:PNCnWL7q0.net
- あれがカモネギが言っていた森の祠なのだろうか。
前を歩んでいたはずなのに、カモネギ達が先に辿り着いている気配は無い。
何か、おかしい。急に立ち込めた異様な濃霧。
腕輪が見せた奇妙な反応。果たしてこのまま進むべきか。
しばし考えながら様子を見ていても小道の周り以上に濃霧が薄まる気配も無く、
俺は怪しみながら慎重に道を辿って建物らしきものを目指してみる事にした。
がさがさ、と俺の足が背の低い草を踏み、掻き分ける音だけが響き渡る。
これだけの森ならば鳥や虫ポケモン達も多く住み着いてるだろうに、
木々の葉や枝を揺らし蠢く音や鳴き声一つしない。
まるで時間でも止まっているかのような異様な静けさだ。
建物のある木々が開けた空間に近付くにつれて霧は少しずつ薄れていき、
建物が三角屋根の小さな祠だとはっきりわかる頃には視界は鮮明になっていた。
俺は辺りを見回す。やはりまだ誰も祠には辿り着けてはいないようだ。
祠周辺の外はいまだ深い霧に覆われている。
ここに居れば配下達も霧の中をちゃんと抜けて来るのだろうか。
闇雲に霧の中を探しに戻ってもすれ違いになるかもしれない。
心配だが少しだけ待ってみようか。
しばしこの場で待つことに決め、改めて祠を眺めてみて俺は首を傾げる。
何の変哲も無いただの古めかしい木の祠。カモネギは確かそう言っていた筈だ。
だが、祠はまるで建てられたばかりのように真新しいではないか。
- 691 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/06/16(木) 05:23:05.03 ID:PNCnWL7q0.net
- 柱や壁や戸の木材は染み一つ無く、朱色に塗られた屋根は塗りたてのように艶々と輝いている。
建て替えられて間もないのだろうか。それならばカモネギはそう伝えるであろうし、
建て替えられた事を知らないはずがないだろう。
怪訝に思いながら眺めていると、祠の戸が少しだけ開いている事に気付く。
スー、スー。耳を済ませると、その間から微かな音が聞こえる。
隙間風が漏れる音、もしくは何かの寝息のようなその音……。
まさか本当に森の神か何かが住んでいるでも言うのか?
正体を確かめる為、恐る恐る戸の隙間へ手をかける。
散々はた迷惑な神々と関わってきたのだ。今更になって罰が当たるなどと恐れる必要もない。
俺は力を込めて一気に戸を開いた。
一瞬、意識が遠退いたような感覚。
内部には小さな祭壇らしきものが設置されており、その奥に厳かな場にはとても似つかわしくない、
ポケモンのぬいぐるみのようなものが数個と可愛げな柄のクッションが敷き詰められている。
寝息の主らしき姿はどこにもない。ただの隙間風だったのだろうか。
「ふぁーあ」突然すぐ背後から欠伸のような声。
驚いて振り向くと、ぺたんと葉っぱみたいな感触をした”それ”の指先が俺の額に触れた。
「せっかく気持ちよく寝てたのに誰、君。ひとの領域にずかずか上がりこんできた上に、
急に寝室まで開けるなんてとびきり失礼なヤツだな」
球根か花のつぼみのような頭の形状をした”それ”は憤慨した様子で青い瞳の目を尖らせこちらを睨んでいる。
「うーん? ただのネズミにしか見えないけれど……。おかしいなあ。
君みたいな普通の子が易々と入ってこられるはずがないんだけど」
- 692 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/06/17(金) 01:06:06.52 ID:wguV30D50.net
- 明日明後日位にでも続き書く
- 693 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/06/20(月) 03:37:51.26 ID:r6jlQF0J0.net
- 明日の深夜位に投下できたら
- 694 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/06/22(水) 04:48:47.25 ID:pKZlJqlM0.net
- 今日の夜くらいに遅れる
- 695 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/06/24(金) 07:27:23.47 ID:lia2FfDr0.net
- 昆虫のような薄い二枚の翅でふわふわと浮きながら、”それ”は俺を不思議そうに観察し始めた。
「……眠りを妨げた非礼は詫びよう。ただのネズミではない、我が名はピカチュウ」
意思の疎通を図る為、ひとまず俺は名乗ってみる。
だが、聞こえなかったのか端から聞くつもりもないのか俺の言葉を意に介す様子もなく、
”それ”はじろじろと不審そうな目で俺を眺め続けていた。
「なーんか変なんだよなあ。なんだろうこの違和感。
どこかで見たことがあるとか……? 思い出せないな」
不意に”それ”は顔をぐいと俺に近づけ、すんすんと臭いを嗅ぐような動作をする。
それからまた納得がいかない様子で首を傾げた。
「気はすんだか? 生憎、俺はそなたに見覚えはない。初対面であろう。
ひとつ尋ねたいのだが、そなたがこの森の神と呼ばれる者か?」
待っていても埒が明かないと俺は質問をぶつけてみる。
すると”それ”は二本の触角をぴくりと動かした。
「なに、君。お参りにでも来たの?」
「ああ。何匹かの配下と共に地元のポケモンに案内されてな」
「ふーん。でも残念だけどボクは神なんて大仰なものじゃあないよ。
というかあんな乱暴な高慢ちき達と一緒にしないでくれたまえ。
ボクはセレビィ、気ままな時渡りさ」
- 696 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2016/06/24(金) 19:18:12.92 ID:8I6wWYAs0.net
- ピカチュウの二人称なんか変じゃない?
- 697 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/06/24(金) 22:36:19.23 ID:lia2FfDr0.net
- すまん色々思案してた時の名残を修正し忘れてた
「お前」か「おぬし」にでも脳内変換しておいて
- 698 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/06/25(土) 00:42:40.26 ID:BhXSD9XL0.net
- 乙です
明日か明後日にでも続きを書きたいです
- 699 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/06/28(火) 01:56:07.87 ID:KNSx1hOM0.net
- 明日の夜か深夜に投下します
- 700 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/06/29(水) 03:23:49.90 ID:qx7ZFInu0.net
- 「時渡り?」
「そうだよ。過去だろうが未来だろうが、心の向くまま気の向くまま、自由に行き来する旅人みたいなもんさ」
セレビィと名乗った“それ”は、やや得意そうに頷いた。
「それに、ボクが訪れた所では、何故か草木がよく育つんだ。ここも、元は小さな繁みだったんだけど、
ボクがやってきてから、たちまち森になったんだ。それを有難がった人間達は、もっとご利益があるようにと、
ついこの前、この祠を建てたんだ。おかげで、ボクにとっては良い隠れ家ができたんだけど」
「ついこの前……だと? それは本当なのか?」
「うん、だって見れば分かるじゃない。壁だって床だって柱だって、まだ新品ぴっかぴかでしょ?
あ、これは違うよ? ボクの私物。二度と手に入らない貴重品だから触っちゃダメー」
そう言ってセレビィは、どうやら爬虫類を模したと思われる、緑色のぬいぐるみを抱えた。
しかし、それではカモネギの話とは大幅に違う。
――という事は、まさか……俄かに信じ難い事だが……
「では『今』は……俺がいた時代ではないというのか?!」
俺の問いに、セレビィは面倒臭そうな様子で首を傾げた。
「そんなの知らないよ。大体、君がいた時代って、一体何時なのさ?」
逆にそう聞かれ、俺は思わず返答に詰まった。
人間とは違い、明確な暦を持たぬ我々が、自身の存在する時代を説明するなど困難極まりない。
少なくとも、普通に生活するポケモンがそういう事態に陥る事など、まず起こり得る筈がないからだ。
「……俺を案内した者に依れば、この祠は相当古いもののような話だった。
何年、何十年……いや、何百年かも分からぬが、『今』よりも遥か未来だ、という事は間違いあるまい」
「じゃあ、君がひとりで時を渡ってきたってワケ? おかしいなあ、そんな力、滅多に……」
セレビィは急に言葉を切り、初めて気付いたように、俺の手首にある腕輪を注視した。
- 701 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/06/29(水) 03:25:53.15 ID:qx7ZFInu0.net
- 「それ……まさか……」
セレビィはグイッと俺の腕を掴み、腕輪に向かって探るように触覚を忙しなく動かした。
すると、それに呼応するかのように、腕輪は淡く光り、珠が次々と明るく輝く。
――思い当たるのは、この腕輪の異変ぐらいだ。もしや、こいつのせいなのか?
「何でこんなものが……力は持ち出した筈なのに……」
信じられない、といった面持ちで呟きながら、セレビィは俺に向き直った。
「君! これをどこで手に入れたんだ?! まさか、盗んだんじゃないだろうね?!」
セレビィは訝しげな顔で俺に詰め寄った。
「人聞きの悪い事を言うな。これは元より俺の物だ。友情の証として、俺が友から授かったのだ」
「友だって? それは一体誰なんだ? こんなの、とても普通の子が扱えるような代物じゃないよ!」
尚も問い詰めるようなセレビィに対し、俺は強引に腕を振り解き、首を横に振った。
「それは、おいそれとは教えられぬ」
出所を疑われた事に腹が立ったのも事実だが、どうも神という存在を良く思っていなさそうな
――まあ、ある意味、それは俺も同様だが――セレビィに、本当の事を教える気には到底ならなかった。
それでなくとも、軽々しくその名を口に出す事は憚られる。
「もっとも、その友も、当時とは大分変ってしまったが。ああ、そういえば……」
俺はもしやと思い、祠の戸口へ向かった。
ひょっとしたら、腕輪の元の創造主であるアブソルだけでも、此処へ来ているかもしれぬ。
「ちょっと! 勝手に開けちゃダメだってば!」
セレビィが制止するのも構わず、俺は戸を開けて表に出た。
- 702 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/06/29(水) 03:28:00.82 ID:qx7ZFInu0.net
- ――霧はすっかり晴れており、緑の木々が陽光に煌めいていた。
だが、辺りはしんと静まり返り、アブソルを始め、配下達も、カモネギ達も、その姿はどこにもなかった。
やはり、俺だけが過去の世界に来てしまったのだろうか。
改めて祠の周囲を見回すと、森の様子も先程とは大分異なっている事が分かる。
昼なお暗い、鬱蒼と茂る深い森ではなく、まだ青々とした若木の伸びる、庭園のような明るい場所だ。
淡い緑に芽吹く梢の上に、澄み切った青空が広がっている。
その若い森の遥か向こう――恐らく、ヤドキングの言っていたエンジュシティの方向だろう――に、
寸分たがわぬ姿の高い木造の塔が二棟、まるで仲の良い双子のように並んで聳えているのが見えた。
塔が、二つ……?
その光景に、俺は何故か違和感を覚えた。
ジョウトに到着してからというもの、特に意識はしておらず、遠目に眺めていた程度だったが、
あのように、何処からでも見える程に高い塔は、一つしかなかったように思う。
いや、エンジュシティの塔は、確かに一つだけだった。
――そうだ、あの時――あの、虹色に光る――を見た時も――
何かを思い出し掛けた途端、ズキンと鋭い痛みが頭に走り、俺は思考を中断させ、その場に蹲った。
- 703 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/06/29(水) 14:25:00.01 ID:gXxk2fZS0.net
- 明日明後日位にでも続き書く
- 704 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/07/02(土) 03:29:09.21 ID:MOj22YNL0.net
- 投下は明日の深夜くらいにできたら
- 705 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/07/05(火) 03:55:34.71 ID:hXrs9hao0.net
- 今日の夜くらいに延期します
- 706 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/07/07(木) 07:01:28.95 ID:DMPzmb3h0.net
- 「あーもう! 勝手なことしないでよね。特別なボクと違って、
本来この時間の者じゃないキミの無用心な行動ひとつで未来が大きく変わってしまう事だってあるんだ。
もしもその辺のキャタピー一匹にでも思い切り躓いて、踏み所が悪かったとしたら大変だよ」
意識が朦朧とする中、背後から少し息を切らしたセレビィの声が聞こえてくる。
「そのキャタピーはバタフリーになった時に多くの子どもを残すはずだったかもしれない。
そのある一匹は飢えたポッポを一羽救い、そのポッポがまた多くの子どもを残して、
その卵のひとつはアーボを一匹救い――例えばの話でしかないけれど、
そんな流れの一つを断ち切ってしまえばどんな影響が連鎖的に出てくるかわからないんだからね」
セレビィは憤慨した様子で蹲る俺を気にかけることもなく、
周囲を飛び回りながらべらべらと畳み掛けるように説教し始めた。
「ん? なにキミ、具合でも悪いの? 持病の癪とかいうやつ? これだから普通の子は。
どこの時代から来たのかわからないような子にこんな場所で死なれたらとっても迷惑だ。
ボクが勝手に何かしたんじゃないかって疑われたらまーた公に叱られちゃうよ。
もう既に友達のお願いで色々結構無茶しちゃった後なのにさー」
「……勝手にひとを死なそうとするんじゃあない。少し、立ち眩みがしただけだ」
頭を抱えながらゆっくりと俺は立ち上がった。
いつともわからぬ時代でこんな薄情な輩の目の前で死んでなるものか。
ふつふつと込み上げてくる苛立ちが俺に正気を取り戻させる。
- 707 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/07/07(木) 07:02:09.20 ID:DMPzmb3h0.net
- 「なんだ。それはよかったよかった」
安堵したようにセレビィは息を吐いた――手にはいつの間に掻き集めてきたのだろうか、
薬草らしき葉っぱや根っこが握られていた。
「いやいや、まだよくないぞ。キミがここにいたままじゃあまたいつ何がどうなるかわからないじゃあないか」
ハッとした様子で手を打ち、セレビィは俺の方へと詰め寄る。
「キミのその――今は腕輪の形をしているそれの出所はひとまずおいておこう。
ボクは逃亡者の身だ。もうそれに関わりたくはない」
腕輪を見つめセレビィは忌々しそうに呟く。
「一体どういうことだ?」
「……もう互いにこれ以上踏み入らない方がきっと身のためさ。
キミはボクの事をよく知らないみたいだし、追っ手というわけでも無さそうだ。
ボクはこのまま平穏に過ごしたい。きっとキミも無事な姿で元の時間に帰りたい……意味は分かる?」
俺を見るセレビィの目は、子どものような幼い顔のつくりをしているにも関わらず、
普通のポケモンではない長く生きた強大な獣に睨まれているようなゾッとする迫力を備えていた。
見逃してやる代わりに自分のことは見なかったにしろ。恐らくはそんな脅しに近い言葉だ。
俺にこの腕輪を送った主との浅からぬ因縁を感じさせたが、
セレビィから発せられるただならぬ気配からそれ以上の追求は躊躇われた。
「……ああ。俺はただ迷い込んだだけだ。無事に元の時間に帰ることが出来ればそれでいい」
俺がそう答えた途端、セレビィは子どもじみた明るい表情へと戻る。
「よしよし。じゃあ、もう一回キミが元いた時代の手がかりになるようなものはないか考えてみよっか」
- 708 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/07/09(土) 06:08:51.82 ID:wjvjlwrX0.net
- 明日明後日にでも続き書く
- 709 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/07/12(火) 03:59:25.37 ID:ymd2i6qi0.net
- 明日の深夜位に投下できたら
- 710 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2016/07/13(水) 11:06:08.83 ID:3HGNKMNN0.net
- ゴーストタイプのピカチュウがポケモンサン・ムーンの新ポケモンとして登場 ネタ切れか [無断転載禁止](c)2ch.net [416095206]
http://h itomi.2ch.net/test/read.cgi/poverty/1468341424/
- 711 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/07/15(金) 14:24:55.94 ID:IYv67HFX0.net
- どこかわくわくとした様子でセレビィは俺を眺めた。ひとまず危険はないと判断された途端、
俺の扱いはちょうどいい暇つぶしの道具へと変わったように感じる。
ひとり過去らしき時代へと飛ばされて中々に俺の置かれた状況は深刻だというのに、
まるで他人事として面白おかしく扱われるのは少しばかり癪には触るが
こやつの力を借りねば俺ひとりでは帰れるかわからん。
それに、何やら逃げ隠れせねばならぬ身だとセレビィは仄めかしていた。
どのくらいの間そうやって過ごしてきたのかわからないが、
まともに話の通じる者とこうして言葉を交わすのは随分と久しぶりなのかもしれない……。
「しかし元の時代の手がかりと言っても俺がわかるのは、祠が古ぼけて周りの草木も
もっと昼でも薄暗い位に鬱蒼と生い茂っているぐらいの未来というだけ――」
いいや、もう一つある。
はっとして言葉を止めた俺にセレビィは首を傾げた。
「ここからも見えるあの二つの塔だ。俺のいた時代ではあの塔は一つだけしか見えなかった」
ふーむ、とセレビィは唸る。
「あの塔が一つだけになってからどれくらい経った後なのかわかる?」
セレビィに問い返されて俺は首を横に振る。
「生憎、俺は元々この地方に住んでいるポケモンではないのでな。
あの塔がいつ片方無くなるかもその名前すらも知らぬ」
- 712 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/07/15(金) 14:25:56.93 ID:IYv67HFX0.net
- だよねー、とセレビィは手を横にひらひらと振るった。
「それじゃあ絞りきれないよ。まあボクとしては面倒だし塔の片方が無くなった後の時代のどこかに
適当に君を飛ばしちゃっても別に全然構わないんだけど。
でもそれも色々と問題起こりそうだし……どうしよっかなー」
適当な時代へ再び飛ばされては敵わぬ。
何か持ち物に手がかりはないかとマントの裏に付けている道具袋を探ろうとする。
が、そこにあったはずの袋が幾ら手で探っても見つからない。まさかどこかで外れて落としたのだろうか。
あれには保存食や傷薬、ジョウトの地図等々大事な旅の道具が入れてあったのだが。
焦り見回すと、知らぬ内にセレビィが俺の道具袋を手にして漁っていた。
「パンくずに、傷薬、干した木の実……あ、君の持ち物見させて貰ってるよ」
見終わったものを地面に落としながらセレビィは次々と中身を調べていく。
俺は眉間がぴくぴくと引き攣るのを感じるがぐっと堪えた。
手がかり探しはセレビィに任せ、俺は再び塔の方角をじっと眺める。
そこには変わらず陽光に照らされて輝く二つの塔が聳えていた。
「気になる?」
勝手にひとの食料をもぐもぐと頬張りつつ袋漁りを続けながらセレビィが声をかけてくる。
「ああ。なにか言い知れない気配をあの塔から感じる気がしてな」
「へぇ。ボクも流れ者だしあまりここから動かないから詳しくは知らないけど、
前に祠へお参りに来た人間達が話すのを陰で聞いたことがあるよ。
なんでもあの塔は空の守り神の為に建てられたものなんだとか。
もしかしたら人から見れば神と見紛うような普通の子より強い力を持った
古き何かが本当に住み着いてるかもね。ちょうどボクみたいにさ」
- 713 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/07/17(日) 04:31:14.45 ID:2YGUSicG0.net
- 明日明後日にでも続き書く
- 714 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/07/20(水) 01:24:47.89 ID:9v36+7hL0.net
- 明日の深夜位に投下できたら
- 715 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/07/23(土) 18:14:20.02 ID:KaA6+X1I0.net
- 明日の夜くらいに遅れます
- 716 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/07/26(火) 06:33:04.61 ID:8dj9XzQP0.net
- 空の守り神……ヤドキングが話していた伝説のポケモンと同じ存在だろうか。
人間達の間でも昔から語り継がれている話だということがわかり、
信憑性が増したように思える。コガネの調査を終えた後に足を運んでみる価値はありそうだ。
その者が未来でも健在であればミュウツー達の事を忠告してやらねばなるまいし、
守り神と呼ばれるような存在であるならばジョウトを脅かす者達であるミュウツーや
ロケット団を打ち倒す為に力を貸してくれるかもしれない。
最もそれも無事に現代へ帰ることが出来たらの話だ。
「おっ」
唐突にセレビィは声をあげ道具袋をガサゴソ探る手を止める。
それから少し重そうにして力を込め何かを引っ張り出した。
「なんだ、こんな良いもの持ってるんじゃあないか」
セレビィが手にしていたのは小型の機械。
ヤドキングが井戸の水底で拾ったというロケット団の置き土産だ。
セレビィはあっという間に扱い方を理解した様子で、
与えられた新しい玩具にがっつく子どものように夢中で機械を弄くりだす。
「こんな人間のオモチャ持ってるなんて、本当に結構未来から来たんだねキミ。
うんうん、一応電源も生きてるし、キミが持っていた傷薬の製造日や地図とかと見比べても、
画面に表示されてる時間と年月日が大きく狂ってるってことは無さそうだ」
この先も何かの役に立つ事があるかもしれないと託されていたのだが、
まさかこんな形ですぐに役に立つ時が来るとは思わなかった。
- 717 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/07/26(火) 06:33:58.55 ID:8dj9XzQP0.net
- 「――では、ちょっと離れていたまえ」
俺を帰す用意をすると言って祠の前でセレビィはぐっと目を閉じ、
両手を交差させるように閉じて触覚をぴくぴくと揺らめかせた。
微弱な電流でも流れているかのような奇妙な感覚が俺の体毛の上を走る。
セレビィの全身は淡い光に包まれ、その輝きが少しずつ増していくに連れてそのちりちりとした感覚は強まった。
眩いまでに光が強まるとセレビィは目をかっと見開き、溜めた力を一気に解放するように両手を広げたその瞬間、
視界が真っ白に染まる。
やがて閃光がおさまり、ゆっくりと俺は目を開けた。
すると、セレビィが居た場所には光が渦巻く穴のようなものがぽっかりと開いている。
「あの裂け目に飛び込めばキミの時代に帰れるはずさ」
少し疲れた様子でセレビィは穴を指さした。
「すまぬ、苦労をかけたようだ」
「全くだよ、もう」
よっこいしょ、とセレビィはいつの間にやら支度されていた風呂敷包みを背負い込んだ。
「それは?」
「ついでにボクもどこか別の時代へ渡ろうとね。キミの為にこんなでかでかと裂け目を開いちゃって、
きっとこの場所は嗅ぎ付けられただろうから。もうここにはいられない」
故意で無くこちらも被害者のようなものとはいえ、思った以上に深刻な迷惑をかけてしまったようだ。
なんと言葉を返せばいいのか困り果てていると、クスとセレビィは笑った。
「まあ、久しぶりに誰かと話す事が出来て良い気晴らしにはなったよ。
どの道、逃亡者は一所にそう長くなんていられない。遅かれ早かれいつかは離れなきゃだったさ。
それにキミのようなものが現れるってことはボクが隠れている内になにか状況が大きく変わったのかもしれない。
色々と調べておきたいとも思ってね」
- 718 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/07/27(水) 01:51:34.66 ID:M6oAaR1b0.net
- 明日か明後日にでも続きを書きたいです
- 719 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/07/30(土) 02:27:41.59 ID:oSLL9dGi0.net
- 明日の夜か深夜に投下します
- 720 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/08/01(月) 02:04:04.80 ID:I89vXk+a0.net
- 「状況が変われば、逃亡せずともよくなるやもしれぬ、という訳か?」
「そうだといいんだけど。少なくとも、キミのいる未来までは大丈夫、という事は確かなようだしね。
あ、そうそう、オヤツをくれたお礼に、これあげる」
そう言ってセレビィは、俺の道具袋と共に何かを手渡した。
別に俺があげた訳ではなく、そちらが勝手に食ったのだろうが、と突っ込みたい気持ちを抑えつつ、俺は渡された物を見た。
それは、ポケモン――しかも、我が同族であるピチューを模った、小さなぬいぐるみの人形だった。
所謂ストラップのように、二匹のピチューが、頭の先に縫い付けられた紐で繋がっている。
一つは俺の毛色と同じような黄色。もう一つは通常通り薄めの黄色だが、作り掛けだったのか、解けてしまったのか、
片方の耳の先が閉じ合わされず、ギザギザと不揃いになっている。
「ボクの私物をたくさん作ってくれた子が、最後に作っていた物だったんだ。
見た目はまあ、そんなに可愛くなかったけど、とにかく明るい働き者で、手先の器用な女の子だったな。
もうすぐ自分の子どもがタマゴから孵る予定だったから、本当は、その子の為に作ってたんだと思う」
「子どもの為という事は、作り手は俺と同じピカチュウ族なのか?」
「うん。ちょっと珍しい……色違いっていうの? キミより少し赤っぽい色だった」
「ならば道理だ、我が一族の器用さは並ではないからな。しかし、本来なら、その子どもとやらに渡すべきであろう?」
「うーん、そうなんだけどね……」
語尾を濁しながら、セレビィは頭を掻いた。
「実は、前にいた場所から逃げる間際に、その子からいろいろ届け物を押し付けられちゃってさ、
あたふたしてるうちにボクの私物の中に紛れ込んで、うっかり持ってきちゃった物なんだ。
本当はあの子の家族を見付けた時、荷物と一緒に渡さなきゃいけなかったんだろうけど、その時は気付いてなくてね。
でも、一度行った時代に引き返すのは危険だったから、ついついそのままになっちゃってたのさ」
「……要するに、本人に渡す機会を失った、という事か」
「まあ、ぶっちゃけそーゆー事。でも、ボクの好みじゃないから持っていても仕方ないし、
どうせなら同じ種族のキミが持っていた方がいいじゃない? お守りぐらいにはなるかもよ」
- 721 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/08/01(月) 02:10:31.01 ID:I89vXk+a0.net
- などとセレビィはのたまい、せいせいしたといった顔付きで、全く反省している様子はない。
その者達も気の毒に……と思いつつ、俺はつくづくと人形を眺めた。
小さいながらも細部まで丁寧に作られており、手にしているだけで、ひどく懐かしいような、和やかな心持ちになってくる。
恐らくそれは、その作り手の――母の願いが込められているからかもしれない。
「仕方あるまい。預かっておくとしよう」
……俺は、自分を生んだ母というものを知らぬ。
それ故、その願いが羨ましくも、貴くも思われ、とても捨て置く気にはなれなかった。
まあ、ピカチュウ族自体、それほど数多くの場所に生息している訳ではない。
いずれその者か、若しくはその縁者か子孫にでも出会う事があるやもしれぬ。その時は、本来の持ち主筋に返してやればよい。
そう考え、俺はセレビィが散らかした持ち物と一緒に、人形を道具袋へと入れた。
その刹那――
突然、何かが割れるような音が上空から響いた。
驚いて見上げると、青天の霹靂か、空に一閃の稲妻が光った。
――いや、そうではない。
常識では考えられぬ事だが、青空に、まるで割れたガラスのように亀裂が入り、ピシピシとひび割れが広がっていく。
「あーあ、もう見付かっちゃったか。いつもはぐーたらなくせに、こーゆー時だけ素早いんだから」
セレビィは特に驚いた様子もなく、溜息を吐きながら肩を竦めた。
「キミは構わずに行きたまえ。どうやらボクの未来は、まだカタが付いていないみたいだ」
「し、しかし……」
ひび割れた空がバラバラと剥がれ落ちていくその奥に、極彩色に渦巻く空間が見える。
あの空の色には見覚えがある。
あれは、人知を遥かに凌駕した、禁断の世界……俺の体に緊張が走る。
――では、セレビィが追われているというのは、まさか――
「何をぐずぐずしてるんだ! さあ、厄介事に巻き込まれないうちに早く行くんだ! 早く!」
セレビィは体当たりするように強く俺の背を押し、光の渦の中へ突き飛ばした。
- 722 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/08/01(月) 03:00:07.66 ID:g4OjZ/4D0.net
- 明日明後日位にでも続き書く
- 723 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/08/04(木) 02:30:01.69 ID:kt5BF6s90.net
- 明日の深夜位に投下できたら
- 724 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/08/07(日) 05:41:41.65 ID:ebYztSsd0.net
- 今日の深夜位に遅れます
- 725 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/08/09(火) 08:03:34.19 ID:hBKGoOJu0.net
- 渦に放り出された途端、体が奇妙な浮遊感に包まれる。
セレビィがいた方へ俺は振り向こうとするが、急流に流されるように渦の外の景色は瞬く間に遠ざかってしまう。
際限なく周りの空間が加速していくような圧迫感に視界が暗く掠れ意識も失われようとしたその刹那。
不意に俺は不思議な懐かしさを覚えた。この渦の中を流される感覚、ずっとずうっと前にも一度だけ――。
どさり、と草の上に倒れこんだような感触。
寝起きのように朦朧とする意識を覚まそうと俺は手で頭を揺するようにさする。
「おいおい、急にどうした兄弟?」
ガアガアと馴れ馴れしく暑苦しそうな声がすぐ傍で響き、俺は目を開ける。
目の前にはこちらを覗き込むカモネギ二羽の姿が見えた。
差し伸べられた翼を掴み、礼を言いながら俺はゆっくりと立ち上がる。
「一体どのくらいの間、俺はこうやって倒れていた?」
そう尋ねるとカモネギ達は怪訝そうに顔を見合わせた。
「どのくらいの間って、たった今いきなりすっ転んだばかりじゃあねえか」
呆れたようなデルビルの声が背後から聞こえる。
振り返るとデルビル、ミミロップ、アブソル、ムウマージ、
誰ひとりはぐれて欠けた様子はなく配下達は全員で不思議そうな顔をしてこちらを見つめていた。
- 726 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/08/09(火) 08:08:08.52 ID:hBKGoOJu0.net
- これは一体? 急に深い霧が立ち込めて全員とはぐれてしまったのではないのか。
俺がそう話すと、
「霧だぁ? んなもん全く出てなかったぜ。俺はずうっとお前の後ろを歩いてたしな。
白昼夢でも見てたんじゃねえのか?」
小馬鹿にしたようにデルビルは言った。
「朝から時々ちょっと変だし、やっぱり具合でも悪いんじゃない?」
ミミロップも熱か何かで俺がどうかしているんじゃあないかと言いたげだ。
「……俺は至って正常だ」
口では否定しながらも、カモネギや配下達が俺をからかっているような素振りはなく、
俺自身もあの深い霧の中を彷徨ったことやセレビィとの邂逅は本当に起こった事なのか、
デルビルが言う通り幻覚でも見ていたんじゃあないかと疑ってしまいそうだった。
しかし、そんな疑念もすぐに晴れることになる。
「ま、本人が無事だってんならいいけどよ。……もうすぐ例の森の祠だぜ。ほら、あれだあれ」
そういってカモネギが指し示した先にあったのは、
かなり古ぼけてしまってはいるが間違いない――濃霧の中をひとり歩いて辿り着いたあの祠だ。
ハッと思い出して俺は道具袋を探る。中にはセレビィに託された二匹のピチュー人形がしまい込まれていた。
あの出来事は幻覚や白昼夢なんかじゃあない。
俺は確かに過去へ一度飛ばされて、再び現代へと帰ってきたのだ。
- 727 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/08/11(木) 03:36:14.24 ID:ShZn/J8X0.net
- 明日明後日にでも続き書く
- 728 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/08/14(日) 17:00:32.55 ID:zbaco5TC0.net
- 明日の深夜位に投下できたら
- 729 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/08/18(木) 02:43:21.94 ID:csC+2tNx0.net
- 今日の夜くらいに遅れます
- 730 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/08/19(金) 04:19:14.99 ID:9nPfC8u/0.net
- 「なにもってるのー?」
ムウマージのやつが気配も無く急に横から顔を覗かせてきて、
俺は思わずびくりと体を揺らした。
「む。これはやらんぞ」
繁々と人形を見つめられ、何となく危険を感じてマントの内側に庇うように隠す。
大事な預かりものだ。こんな普段何を考えてるのかいまだに掴めないやつに触らせるわけにはいかん。
乱暴に扱って千切れたのか最初から壊れていたものを拾ってきたのか知らないが、
こやつのガラクタ入れに綿が飛び出たぬいぐるみや壊れた人形が
幾つも押し込められているのを見たことがあるから尚更だ。
はらはらと動向を見張っているとムウマージは何も言わずぼんやりとした様子で離れていった。
愚図ることなくあっさりと引き下がるなんて珍しい事もあるものだ。まあいつもの気まぐれだろう。
深く考えず俺はほっとして、再び気が変わって目を付けられないよう人形を袋にしまい込んだ。
「さ、到着だ。見ての通り、古めかしいだけの木の祠だろ?」
祠の目の前まで辿り着き、カモネギ達は振り向く。
成長した木々や雑草に囲まれ、祠周囲の広場はセレビィが居た時代よりもずっと薄暗くなっていた。
- 731 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/08/19(金) 04:23:12.66 ID:9nPfC8u/0.net
- 「ま、こんな辺鄙な田舎のちっぽけな祠に神サマなんてご大層なもんが住んでる筈ねえよな」
もう一羽が何だか少し自嘲を込めた様子でぐわぐわと笑う。
神とは少し違うがそれに近しい者が確かに住んでいたのを過去へ飛ばされ実際に見てきたのだが……。
話した所でまた正気を疑われるだけだ。
「そうだな」
俺は適当に相槌を打つ。
「不慣れな森の中を歩き通してあんたらも疲れただろ。ちょっとこの場所で休憩しねえかい」
カモネギの提案にのり、俺と配下達は少しの間この周囲で思い思い過ごす事にした。
俺はひとり祠にそっと近付き、柱や壁や戸の木材は汚れや傷ですっかりと古ぼけ、
雨や風で塗装が所々剥がれ色褪せてしまった屋根を見上げる。
あれからセレビィはどうなっただろう。追っ手からは逃げおおせたのだろうか。
戸は蝶番が錆び付き指一つ入れられる隙間も無く硬く閉ざされていた。
もはや尋ねる相手も調べる術もない。
だが、せめて無事であることを祈ろう。あやつには大きな借りがある――。
- 732 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/08/21(日) 03:38:19.48 ID:WMsDwGIz0.net
- 明日明後日にでも書く
- 733 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/08/23(火) 04:02:50.06 ID:Dv/QYZeK0.net
- 明日の深夜にでも投下したい
- 734 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/08/26(金) 07:03:39.34 ID:gqYppHcd0.net
- ――「っと、いけねえ。あんな思い出すだけ損な萎びた下っ端野郎のことなんかでついつい脱線しちまった。
あー、どこまで話したんだっけなあ、エンペルト」
ドンカラスはばつが悪そうに翼でぽりぽり頭を掻いて、苦笑するエンペルトに尋ねる。
「ニューラの里で近衛隊の一員になれて頭領に祝ってもらった、ってところまでだったかな」
「おお、そうでやした」
ぽん、とドンカラスは少し大げさに翼を合わせた。
「新入りとしての雑用雑務もそつなくこなせるようになっていき、
ロケット団狩りもマフラーのピカチュウやマニューラの頭領さん、他の近衛達にも度々救われながら、
どうにか戦力のひとりとして数えられてもいいくらいに慣れてきた頃だ――」
「――そこですかさずこの俺様が団員が繰り出しやがったサンドに素早くキュキュっと糸を括ってやったのよ」
寺子屋の一室であっしは身振り手振りを交えて得意げに”狩り”での様子をガキ共に話して聞かせる。
「そしたらあのマヌケ共、転んだサンドに躓いて一気に将棋倒しだ。
その隙を突いて俺様は奴らをちぎっては投げちぎっては投げ、ばっさばっさと――」
……実際に蹴散らしていたのは殆どが他の奴らだが、
あっしも一人か二匹突いてやったからまるきり嘘じゃあねえ。
- 735 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/08/26(金) 07:04:40.53 ID:gqYppHcd0.net
- 「すげーや! さすがカラスの兄ちゃん、かっこいい!」
「ねーねー、それからそれから?」
ガキ共の歓声と憧れの眼差しがあっしに集う。
そんなあっしとガキ共のやりとりを世話役のニューラのせんせは微笑ましそうに眺めていた。
「お疲れでしょうにー。いつもありがとう、カラスさん」
「へへ、いいってことよ。俺様にとってもさっさとお屋敷に戻って雑用やら小言やら隊長に
ふっかけられるよりよっぽど気晴らしになるしよ」
帰り際、見送りに来たせんせにあっしははにかむ。
任務の後こうして寺子屋に立ち寄ってガキ共に話を聞かせてやるのは、
すっかりとあっしの恒例行事となっていた。
出任せの嘘を本物にし、やっとしっかりガキ共とせんせに顔向けできたことが
嬉しくて嬉しくて仕方なかったのさ。
ガキなんて小うるさいしそんなに好きじゃあなかったはずだが、
通うにつれて段々と慕われていくのはやぶさかじゃあなかった。
それに、少しばかり小っ恥ずかしい話だがせんせに良い格好も見せたかったってえのもあるかもな。
――「それが九割じゃあないのか?」
そう思わず口を衝いて出てしまい口を抑えるエンペルトをじとりとドンカラスは睨む。
「冗談だよ、悪かった。話を続けて」――
- 736 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/08/27(土) 03:53:48.42 ID:wzyNYyZx0.net
- 明日か明後日にでも続きを書きたいです
- 737 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/08/30(火) 07:03:44.71 ID:u1Y6Bo2q0.net
- 明日の夜か深夜に投下します
- 738 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/09/01(木) 02:44:54.04 ID:vOi0mDf50.net
- 「あ、カラスさーん、どーも」
寺子屋を後にして屋敷へ帰る道すがら、小柄なニューラが四、五匹、あっしに声を掛けてきた。
まだ若え、いや、幼ねえと言った方がいい年頃の、修練所の訓練生達だ。
新米とはいえ正規の隊員と五分の勝負をし、正式に近衛隊に配属されて以来、あっしは連中にも一目置かれるようになっていた。
「ねえ、コリンクちゃん見なかった?」
挨拶もそこそこに、中の一匹が出し抜けに尋ねてくる。
「へ? 今まで修練所だったんじゃねえのか?」
「ううん、訓練が終わったら、いつの間にかいなくなっちゃったのよ」
「もー、せっかく一緒にオヤツ食べようと思ってたのにー」
「ちょっとアンタ! 抜け駆けしたらダメなんだからね!」
訓練生達は思春期特有のキラキラした目を輝かせ、キャアキャアと騒いでいる。
「いや、俺様は知らねえな。集落にでも寄ってるんじゃねえのか?」
キンキンと頭に響くような黄色い声に辟易しながら、あっしは集落の方を指示した。
「うーん、そっかなー。じゃ、またねー」
訓練生達は首を傾げながらも、あっしに手を振りながら引き揚げて行った。
「……おい、行ったぜ」
その姿が見えなくなったのを見計らい、あっしは背後の雪塊に後足で合図した。
するとボコッと雪の表面が割れ、当のコリンクが這いずり出し、ふーっと大きく息を吐いた。
「すみません、ご迷惑お掛けして……」
「なーに、いいって事よ。オメーも大変だなあ」
「いいえ、その……先輩方にはいろいろとお世話になっていて、とても感謝しているんですが……
それが、あの……どうも、少し度が過ぎているような気がして……」
そう口ごもりながらコリンクは頬を赤らめた。
云わば、見渡す限りメスだらけの女子校に、ただひとり男子の新入生が入ってきたようなもんだ。
それがまた、性格も育ちも上々、しかも見た目も可愛い男の子となりゃ、どうなるかは火を見るより明らかだろう。
「へへへぇ、随分とおモテになってるようで。このぉ色男が」
「そっ、そんなっ……か、からかわないで下さい!」
ニヤニヤしながら小突くと、コリンクは益々顔を真っ赤にして俯いた。
「いやぁ、お姉さま方に甘やかされるのも、オトコの修行ってもんだぜぇ」
「そ……そんなの、無理ですよ……!
- 739 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/09/01(木) 02:46:33.86 ID:vOi0mDf50.net
- ――「大人げないにも程があるポチャ……」
エンペルトは呆れたように嘴をへの字にひん曲げた。
「まあそう言うねえ。これもひとつの愛情表現でさあ。あっしにとっちゃ、あいつは可愛い弟分みたいなモンだったからな」
「怪しいもんだな」
「それに、お転婆なニューラ達のがまだ可愛げがあらあ。あの性悪女に関わってるよりゃよっぽどマシだ。
そう思ってた部分もあったんでさ」――
「ヤミカラス、あんまり真面目な子を苛めちゃ駄目だよ」
ふと振り向くと、マフラー野郎があっしらを見てにこやかに微笑んでいた。
その背中にはお決まりの如く、チビ助がべったり貼り付いている。
「あ、ピカチュウさん」
その姿を見て、コリンクはホッとしたような顔をする。
「よう、相変わらず畑いじりか」
「ああ、おかげで、少しずつ収穫が上げられるようになったよ」
そう言って奴は、木の実の入った包みをコリンクに差し出す。
「さっき採れたやつさ。少ないけど、寺子屋の皆で分けてくれ」
「ありがとうございます。みんな喜びますよ」
コリンクは礼を述べながら、包みを首の所へ括り付けた。
あれからずっと、コリンクは他のガキ共と一緒に寺子屋で寝起きしていた。
頭領は屋敷に居ても構わねえと言っていたが、未だ厄介者である以上、自分だけ特別扱いされる訳にはいかない、と自ら断ったんだ。
それについちゃ、あっしとマフラー野郎は敢えて反対しなかった。
はっきりとは言わねえが、奴としても、コリンクはニャルマーの傍にいるべきじゃねえ、と判断したんだろう。
「僕も早く、皆さんのお役に立ちたいです」
「大丈夫、君ならすぐにそうなれるよ」
マフラー野郎は励ますように、ポンとコリンクの肩を叩いた。
「おう、頑張れよ。また困った事があったら相談ぐらいにゃ乗るぜ」
「はい、それじゃ、また」
コリンクはぺこりと頭を下げ、寺子屋の方へ走っていった。
- 740 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/09/01(木) 02:48:41.65 ID:vOi0mDf50.net
- 「彼は強くなるよ。年の割に、ちょっとストイック過ぎる気もするけど」
「そうだなあ。毎日あんだけきつい特訓してんのに、よくへこたれねえと思うぜ」
あっしとマフラー野郎達は、連れ立って屋敷への道を歩き始めた。
任務ですれ違いになる事も多かったもんで、奴とこうやって話すのも随分久し振りの事だ。
「そう言う君もさ、ヤミカラス」
「俺様が?」
不意に、マフラー野郎はあっしの顔を覗き込む。
「ああ、ここのところ、寺子屋に通ってるそうじゃないか」
「ん、まあ……そういう約束だったからな。ガキ共に近衛隊の話を聞かせてやるって」
最初にそう約束したのがせんせだったとは、流石に照れ臭くて口にできず、あっしはただ頭を掻いた。
「それを実現させたのは君自身の力さ。何か大切なものがあれば、俺達は想像以上の力を発揮できるんだ」
「そういうもんかねえ」
あっしはそう誤魔化しながらも、その通りかもしれねえ、という思いはあった。
――この里にやってきた頃、あっしにゃ何の希望も目的もなかった。
だが今じゃ、この里の住人だという自覚がある。
ガキ共の、そして、せんせの喜ぶ顔が見れるなら、少しぐれえの苦労なんか屁でもねえ……そう思うようになっていた。
「ははは、今の君を見てると、昔の俺を思い出すよ。あの村で暮らしていた頃の俺をね」
マフラー野郎は穏やかに笑いながらも、その目はどこか遠くを見詰めていた。
- 741 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/09/01(木) 02:51:28.76 ID:vOi0mDf50.net
- >>738の最後
」が抜けてました、すいません
- 742 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/09/01(木) 20:33:28.76 ID:t1XPvA+L0.net
- 明日明後日くらいにでも書く
- 743 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/09/04(日) 02:54:30.63 ID:ryluDKZ00.net
- 明日の深夜か明け方位に投下できたら
- 744 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/09/07(水) 03:10:24.96 ID:vNp0aAhI0.net
- 今日の夜くらいに延期で
- 745 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/09/09(金) 04:44:44.35 ID:3YyuqeOk0.net
- しばらく無言で歩調を合わせている内に、あっしはふと聞きたくなった。
「なあ、ロケット団のことが無事に片付いた後だけどよ」
先に歩を止めたあっしより数歩先でマフラー野郎は立ち止まり、
「急にどうした?」
顔だけ少しこっちへ振り向かせて尋ね返してくる。
「いや、居心地が良いもんで俺様達ついついこの里に馴染んで来てるからよぉ。
コリンクはあの調子だし、ニャルマーの奴も何だか離れる気ねえみたいだし……。
あんなにひと見知りだったチビ助ですらオメー以外の奴とも幾らか打ち解けてきてるみたいじゃねえか」
「確かに、そうだね。チビ助もひと前から逃げて回ることがだいぶ少なくなったものなあ」
くす、と笑ってマフラー野郎は再び歩を進めだした。
その少し後ろを距離を保ってついて行きながらあっしは言葉を続ける。
「だからよ、その、なんだ。頭領さんが前にいつだか言ってくれただろ。
オメーらさえ良けりゃいつまでもこの里に居てくれていいってよ」
翼でわさわさと頭の羽毛を探るように掻きながら言葉を繋ぐ。
「ふむ。君はどうしたいんだ?」
「……俺様はその話にのってもいいんじゃあねえかなと思ってる」
少し間を置いた後、あっしは答えた。
「良いじゃないか。前にも言ったろう。キミは自由さ。俺が反対する理由なんてどこにも無い。
寧ろキミが自分から進む道を見つけられたのはとても喜ばしい事だ」
嬉しそうに何だか成長した子どもでも眺めるような調子でマフラー野郎は微笑む。
- 746 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/09/09(金) 04:47:17.94 ID:3YyuqeOk0.net
- 「はは、ニューラの里なんて行くのはごめんだ、なんて初めは言っていたキミが
こりゃまた随分と大胆に手の平を返したもんだなあ。いや、キミの場合は翼の平返しか……?」
冗談めかすようにマフラー野郎は笑って言った。
「う、うるせえな。恐ろしい噂しか聞いていなかったし、まさかこんな風に迎え入れてもらえるなんて、
イシツブテに花が咲くくらい想像もつかねえだろ」
隣にまで距離を詰めていってあっしは言い返した。
苔の生えたイシツブテは見たことあるけど花はさすがにないな、なんてマフラー野郎はまだ茶化す。
「ちぇ……。まあ、そんなことはいいんだ。もうまだるっこしいのは無しでえ、直接聞かぁ。
一番言いたいのはオメーがどうするつもりなのかってことだ」
「俺……?」
今度はマフラー野郎が不意に歩を止め、あっしの方が振り返る。
谷間に差し込む夕暮れの日差しのせいで、その姿は何だか影絵のようにおぼろげに見えた。
よいしょ、と帯を締めなおしてチビ助の位置を直し、マフラー野郎は再び歩き出す。
「まだ生きてるのかさえもわからねえそいつのホントの両親なんて探し続けなくたって、
オメーと里のみんなが居りゃそいつだって充分幸せになれるんじゃあねえのか?」
マフラー野郎の言葉を待たずにあっしは言葉を更に続ける。
「オメーも畑いじりしてんのが性に合ってそうだしよ……。
頭領と同じようにこの里でずっと暮らすことにしたって……もう、いいんじゃあねえか?」
- 747 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/09/11(日) 04:06:05.60 ID:9sPkQhdw0.net
- 明日明後日にでも続き書く
- 748 :あの日から、早くも15年か@\(^o^)/:2016/09/11(日) 20:35:57.87 ID:2g+eXAyx0.net
- そうぞうりょくがたりないよ?
- 749 : ◆cAII3gBk5. @\(^o^)/:2016/09/12(月) 15:13:24.85 ID:vEiDhKhG0.net
- マダー?!チンチン
- 750 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2016/09/17(土) 00:37:24.80 ID:H2tUgi9n0.net
- 保守
- 751 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/09/17(土) 04:18:50.23 ID:mpgKqLSu0.net
- あっしみてえのが口出しできるような事じゃあねえのは重々承知だった
だけど言わずにはいられなかったのさ。どこかで引き止めておかねえと全部片付いた後、
こいつはあっしらに何も言わずふらっとどこぞへ消えちまうんじゃねえか、
それから二度と戻ってこないんじゃないか、って気がしてな。
「どうするつもりか、か」
反芻するようにマフラー野郎は呟く。
あっしは少し先を歩みながらヤツの言葉を待った。
「俺の目標は変わっていないよ。君やコリンク達を安全な所まで送り届ける。
君が言うように皆納得してこの里へ安住するつもりなのであればそれはひとまず果たされた事になるのかな」
「俺様が聞きてえのはその先だ。やっぱりオメーまだ、オメーや頭領さんを追ってたっていう
妙な連中の手がかりを探しに行くつもりかよ」
マフラー野郎のほうへ顔を向けてあっしは思わず問い詰めるように聞いちまった。
するとヤツは少しだけ驚いたような顔をしてから、
ちょっと困ったようなどこか寂しげにも見えるようななんとも言えない笑みを浮かべる。
- 752 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/09/17(土) 04:19:40.54 ID:mpgKqLSu0.net
- 「嬉しい誤算だったのは、君も話してくれたけれどチビ助がこの里に来てからというもの、
見る見るうちに他のひと達とも打ち解けられるよう成長していることだ」
背中でうつらうつらしているチビ助をマフラー野郎は肩越しに眺める。
「こいつが何度逃げたり突き放そうとしてもスカーの子が輪に引き込もうと
ちょっと乱暴だけど無理矢理にでも引っ張って行ってくれて、
――ああいうとこ本当に昔のあいつそっくりだよ。
同じ種族以外の色んな子達に接する事ができたのが良かったのだろうなあ。
だいぶ物分りも良くなってきたように思う。
きっとそれ程経たないうちに、俺が何日も何ヶ月もずっと居なくなったって大丈夫なようになるはずさ」
マフラー野郎は顔をあっしのほうへと戻し、仕切りなおすように一息ついた。
「君の言う通りだ。ここでやるべきことを終えれば俺はチビ助をこの里に預け、
この島国に来た本来の目的であるグレン島にあるという研究所の調査へと向かうつもりさ」
「そこまでしてやらなきゃいけねえことなのかよ」
「……ああ。前にもいつか話したが、見たこともない筈のその場所を思う度に不吉な胸騒ぎがするのさ。
決して消えることなく、砂が降り積もりように少しずつだけど着実にその思いは大きくなってきている。
体の奥底が訴えかけるんだ。行かなければと」
- 753 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/09/19(月) 00:52:59.88 ID:Xwi8BVbH0.net
- 明日明後日にでも続き書く
- 754 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2016/09/22(木) 04:13:30.81 ID:/tOh+Xvz0.net
- 保守
- 755 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/09/23(金) 01:35:37.02 ID:TTfQJMe/0.net
- 明日の深夜位に投下できれば
- 756 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/09/26(月) 03:14:04.33 ID:hSksyiib0.net
- 今日の夜くらいに遅れます
- 757 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/09/28(水) 05:37:18.93 ID:RQN1/wPQ0.net
- いっつも呑気に笑ってるように見えるこいつから滲み出る仄暗い側面。
いまだにこいつの中じゃあ過去は終わっちゃいねえんだって改めて痛感させられる。
君は自由だ、ヤミカラス。あっしが迷ったり行き詰った度、言われていた気がする。
その時は何だかその言葉は冷たく響いて無責任に軽く突き放されたような気になっちまってたが、
今になってありゃとても重いものだったと気付いた。
引き止めておく事も出来ねえ。かといって安定した後の里の生活を捨てて海越え山越え、
足を引っ張らず着いていけるような実力も度胸もねえ。
だがせめてあっしにも出来る事は無いか。こいつにゃ大きな借りがある。
あっしは悩みに悩んだ。
「……へんっ、わかったよ。勝手にどこへなりと行きやがれ、ったく。
厄介事始末した後、大人しくこの里にいりゃあ功労者として良い地位貰えるだろうし、
綺麗なネーちゃんに囲まれてウハウハな生活送れるだろうに大馬鹿野郎でえテメーぁ」
あっしはマフラー野郎に半ば喧嘩腰にぐいと詰め寄る。
「だがよぉ。テメーの中でちゃんとケジメがつけられたらここに戻ってきやがれよ。
その時まで頭領さんや隊長達と一緒に俺様もきっちりがっちりこの里を守っておいてやらあ」
ならせめてこいつの帰れる所を新しく用意しておいてやりてえ。
ちゃんと待ってる奴と帰ってくる場所がある。そう頭の片隅にちらっとでも意識しておいてくれりゃあ、
旅先で何があったとしても捨て身になるのはいくらか思い止まってくれるかもしれねえ。
それがあっしがこいつにしてやれそうな唯一の事だった。
- 758 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/09/30(金) 00:22:39.96 ID:Y8iWVypz0.net
- 明日か明後日にでも続きを書きたいです
- 759 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/10/03(月) 07:27:22.05 ID:/rLKj/FY0.net
- 明日の夜か深夜に投下します
- 760 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/10/06(木) 01:05:54.33 ID:cyzp7Qkk0.net
- マフラー野郎はほんの一瞬、驚いたような顔であっしを見た。
だが、すぐにいつのも調子で「そうしてくれると有難いな」と笑顔で呟く。
「まあ、まだずっと先の話だ。とても近々に片付く問題じゃない。
人間の、しかもこれだけ大規模な組織を潰すというのは、簡単な事ではないからね」
宥めるように言いながら、奴はあっしの肩を軽く叩いた。
「そりゃまあ、そうだがよ……」
「だから、そんなおっかない顔しなくたっていいさ。俺としても、出来るだけこの里には長く居たいと思う。
俺にとっては、今この時、君やこの子、スカーや里の皆と一緒に過ごす時間の方が、よっぽど重要なんだ。
だけど、これだけは信じて欲しい――何があっても、俺は、君の事は決して忘れない。それは確かだ」
余りにも真っ直ぐな、真剣な目でそう言われりゃ、あっしはもう何も言えなくなっちまう。
あっしは複雑な思いを抱えたまま、無言で奴の隣を歩き続けるしかなかった。
結局、あっしの覚悟は、ものの見事にはぐらかされちまった。
最後まであいつは、戻るとも、戻らねえとも言わなかった。
「おっそーい! 何やってたんですか!」
屋敷に帰った早々、門の所で待ち構えていた新米が、ブンむくれた顔であっしに詰め寄ってきた。
「へ? いや、でも、まだ交代の時間じゃ……」
「頭領様が、直々にお二方をお呼びです!」
あっしが抗議しようとすると、新米はビシッと目の前に爪を突き付けた。
「休憩中だろうと就寝中だろうと、我々近衛隊にとって、これは最優先事項ですから!」
「スカーが俺達を?」
「はい! 大分ご機嫌が宜しかったようですから、何かとーっても良い話でもあるんじゃないでしょうか?」
マフラー野郎が話し掛けると、途端に新米はコロッと態度を変え、満面の笑みでニッコリ答える。
……分かり易くていいが、余りにも露骨過ぎてこっちは呆れ返るしかねえ。
もっとも、それでもまるで気付いちゃいねえマフラー野郎の鈍感さも大したもんだが。
「まあ、スカーの用事なんて、聞く前からもう分かり切ってるようなもんだけどね」
暮れていく空を見上げながら、マフラー野郎は苦笑した。
- 761 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/10/06(木) 01:10:57.39 ID:cyzp7Qkk0.net
- そう、頭領の用事、といや、晩酌の付き合いに他ならねえ。
ほぼ毎晩、あっしとマフラー野郎は交代で酒の相手を務めているようなもんだった。
ごく稀にドーブルの爺さんが顔を出す事もあるが、普段は離れに引き籠りっぱなしで、外にも滅多に出てくる事はねえ。
おかげで、嗜む程度だったあっしの酒量は日増しに増え、終いにゃ頭領にも劣らねえ程の酒豪になっちまった。
――「本当かなあ」
「当たり前でやしょ。ロケット団にいた頃にゃ酒を口にする機会なんざ、元飼い主がふざけて飲ませる時ぐれえしかなかったしよ」
「いやあ、ドンなら、こっそり盗み飲みでもしてそうな気もするけど」
「してねえよ!」――
「分かったよ。すぐに行こう。先にこの子を寝かせてきていいかな? スカーの子が起こしに来なきゃいいんだけど」
「大丈夫ですよ。今、若君は隊長に捕まってて、こってり絞られ中ですから」
「それなら当分は平気か。今度は一体何なんだろうな」
さもおかしそうに、マフラー野郎はククッと喉を鳴らして笑う。
また脱走しようとして見付かった事か、寺子屋でヒメグマを小突いて泣かせた事か、ふざけて障子を蹴り破った事か、それとも……
とにかくあのクソガキにゃ心当たりが多過ぎて、原因が特定ができやしねえ。
ともあれ、あっしらは一旦詰め所に戻り、そこでチビ助を寝かせてもらう事にした。
新米ともう一匹の当直の隊員に面倒を頼み、ぽつぽつと灯りの点る薄暗い廊下に出る。
「ふたり一度に呼ぶぐらいだからな、徹夜は覚悟した方がいいかな」
「勘弁してくれよ、明日も早えのによぉ……」
戦々恐々しながら、あっしらは直に頭領の部屋の前に着いた。
その時――
「あーもー、しつけーな! 何もテメーに用はねえ! とっとと出て行きやがれ!」
中から、脳天に響くような、頭領の怒鳴り声が聞こえた。
上機嫌だと聞いていたんだが……あっしとマフラー野郎は、思わず顔を見合わせる。
と、突然、サッと襖が開き、あっしらの目の前に青い影が飛び出してきた。
「ニャルマー……?」
あっしらに気付き、はっと振り向いたその目元は滲んだように赤く腫れ、心成しか瞳が潤んでいるように見えた。
だが問う間も与えず、ニャルマーはキッとこちらを睨み付け、何も言わずに足早に去っていった。
- 762 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/10/06(木) 03:30:32.65 ID:Pm0IAxpm0.net
- 明日明後日位にでも続き書く
- 763 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/10/09(日) 03:07:31.91 ID:xcuxG6E+0.net
- 明日の深夜か明け方に投下できたら
- 764 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/10/12(水) 02:30:03.68 ID:OkuSzRg+0.net
- 今日の夜くらいに遅れます
- 765 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2016/10/12(水) 13:35:07.81 ID:FBHSDtUk0.net
- http://imgur.com/zEbTvs2
- 766 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/10/13(木) 06:18:03.45 ID:B12+dBRt0.net
- 「なんだありゃあ?」
「なんだか尋常じゃなさそうだね」
あっしとマフラー野郎は声を潜めながら再び顔を見合わせて首を傾げる。
あの跳ねっ返りのクソアマがめそめそ目元腫らしてるなんざにわかにゃ信じられない光景だった。
ふーむ、とマフラー野郎は顎に手をあて、こちらを見やる。
「君、ちょっと様子を見てきてくれないか」
「ああ? やだよ、なんだって俺様が」
役立たずだなんだと罵られて以来、ニャルマーとはずっと殆ど口を聞いちゃいねえ。
屋敷ですれ違っても互いに嫌な奴に出くわしたとでも言いたげに眉間に皺寄せて一瞥するだけだし、
近衛としての仕事で女中に用事がある時にあいつが対応に出てきても極めて事務的な会話を交えるだけだ。
「俺が行っても警戒されちゃって何も話してくれないだろうからな。
それとも何だか機嫌の悪そうなスカーの相手を君ひとりでするかい?」
頭領の部屋の中からは「ちっ、気分わりぃ。にしてもあいつら遅ェな、なにしてやがんだ」
なんてぶつくさ言って畳をドスンと叩きつける音が聞こえてくる。
あっしは心ん中で不機嫌な頭領に不意に酒瓶を投げ付けられるかもしれない物理的な痛みと、
ニャルマーに棘のある言葉をぶつけられるかもしれない精神的な痛みを天秤にかけ、
「わーった、わーった。俺様が見てくりゃいいんだろ。
その代わり頭領さんには俺様がいないこと上手く言っといてくれよな」
死にてえくらい嫌な気分になるかもしれねえが、
打ち所が悪くて本当に死ぬなんてことはないであろうクソアマの方を渋々選ぶ。
「ああ、任せといてくれ。じゃあそっちは頼んだよ。さて、こっちは子ども達も隊長も今いないから、
落ち着いて話ができるようになるまで久々にちょっと骨が折れるかもしれないな……」
そう言い残すとマフラー野郎は拳をぱきぽきと慣らして戦にでも赴くような面持で頭領の部屋へと向かっていった。
- 767 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/10/15(土) 04:17:43.07 ID:fugLL3Yh0.net
- 明日明後日位に続き書けたら書く
- 768 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/10/17(月) 02:01:27.16 ID:YPMh3vSU0.net
- 明日の深夜に投下できたらする
- 769 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2016/10/19(水) 09:34:01.04 ID:a6CLJHYy0.net
- 保守
- 770 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/10/20(木) 05:56:57.46 ID:wTYXmFaH0.net
- 「しゃあねえなあ……」
大きな溜息を一つ零して、あっしはニャルマーの姿を探しにいく。
薄暗い廊下は気乗りしない思いをより膨らませ、
足に枷でもつけられてるみてえに足取りを重くさせた。
「あの野郎、俺が行っても警戒されるかもーだとか言ってたが、
俺様がのこのこ声をかけに行く方がよっぽど不審なんじゃあねえのか?」
気紛らわせにぶつぶつ言いながらあっしは何て声をかけたもんだか頭の中を探る。
泣いてる奴になんざただでさえ話しかけづれぇってのに、
あのクソッタレアバズレに対してなんて尚更だ。
「明日も仕事はえーかもしれねえってのによぉー……」
何度目かもわからない嘆息を吐いて、はたとあっしは気付いた。
そういやあ、前にあの女に口で負かされた時と違って、
もう自分もこの里でやれること見つけてそれなりに形になってきてる所じゃねえか。
途端、開き直ったようにみるみる気が大きくなっていく。
そうだ、そうだ。もう何も負い目も引け目も感じる事はねえんだ。
あんなクソアマに気を使う必要なんて微塵もねえ。
何だかめそめそ弱ってやがんのならあの時の仕返しとばかりに好き勝手言ってやる良い機会だ。
- 771 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/10/20(木) 05:58:16.88 ID:wTYXmFaH0.net
- 女中のニューラ達に居場所を聞きながら、ようやくあっしはニャルマーの居場所を突き止めた。
奴がいるらしい倉庫になってる部屋の前まで来て、あっしはそっと中を覗き込む。
あの女は室内にひとり、古ぼけた棚をカウンター代わりにするように酒瓶と徳利一つ置き、
どうもヤケ酒でもかっくらってるようだった。
女中達も口々に何だかいつも愛想が良くて明るいあの子、
――本性を知っている身としては反吐が出そうだが、表向きはそう通ってやがるらしい――
の様子が少し変だとか言ってたし、あっしとマフラー野郎の見間違いじゃあなくどうも本当に参ってるようだ。
何があったのか知らねえが、今までと現在も進行中の悪行のツケって奴だ。
気遣ってやる気も必要もなくあっしは堂々と部屋の中へと入り込んだ。
「おう、こんなとこでこっそり酒盛りとは良いご身分じゃねえか」
あっしがそう声をかけると青い耳がぴくりと少し揺れただけで何も返答は無い。
気にせずにずかずかとあっしは踏み込んでいき隣へどかりと座り込んだ。
そこでようやくニャルマーはこちらへ振り向く。
その面は酷く酔っているのが一目で分かりそうなほど真っ赤に染まり、
ひっくひっくとしゃっくりする度に酒の臭いが鼻をつく。
じとりと向けられる据わった目に、気を引き締めてきた筈のあっしも思わず少したじろいでしまった。
「……んだ、アンタかい、しょうもない。もう必要なくなったもん処分してるだけらし、いいらろ別に……」
少し呂律が回らない様子でニャルマーは毒づく。傍らの酒瓶はもう三分の一くらい空いていた。
- 772 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/10/22(土) 03:52:30.22 ID:CNQ4/wOq0.net
- 明日明後日位に続き書く
- 773 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2016/10/23(日) 21:27:33.32 ID:retia1I80.net
- 居なくなる
- 774 :◆IPGiyUy8W6:2016/10/24(月) 22:26:50.42 ID:h6bqcI888
- あげんといてな
- 775 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/10/27(木) 06:36:02.51 ID:JUp+wyWf0.net
- いつも表面や体裁を丹念に取り繕ってるようなこいつともあろうものが隙だらけでこんな醜態を晒すとは。
乱れた毛並みや垂れた酒を雑に拭ったのが汚れた口元が何とも哀れで、
好き勝手に罵ってやろうとしていた気勢が少しばかり削がれそうだった。
「良いご身分なのはアンタの方じゃらいのさ。この里へ逃げてくるまでの間、
ビビッてぴぃぴぃ喚いてばかりだったのが近衛隊だってぇ?
どうやって騙くらかして取り入ったんだか知ららいが、
見かける度に何らかニタニタしちゃっててまあ気色の悪いこと」
舌打ち一つしてニャルマーは前足で瓶を器用に掴んで酒を煽った。
「へん、俺様は何も騙くらかしてなんていねえや。血が滲むようなたゆまぬ努力の成果ってヤツよ」
カチンと来てあっしは言い返す。
「騙して頭領に取り入ろうとしてんのはテメエの方だろうがよ。
ま、今日の様子見る限り取り付く島もなさそうだけどな。
いい加減見切りつけてくだらねえことはやめたらどうだ?」
哀れみを感じて削がれかけていた勢いが再びふつふつと湧き返ってきてどんどんとあっしは言葉をぶつけた。
ニャルマーはキッとこちらを睨みつけ悔しげに口元をわなわなと震わせる。
酔いの赤み以上に怒りで顔が真っ赤になっているのがわかった。
どんな反撃が来るかとあっしは心を構えて様子をうかがう。
「……見切りをつけられんならもうとっくにやってるさ」
しかし、ニャルマーの口から漏れたのは弱々しい言葉と吐息一つだった。
- 776 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/10/27(木) 06:37:31.50 ID:JUp+wyWf0.net
- 内心ホッとする反面、あっしは何だか肩透かしを食らったような気分になる。
「癪だがアンタの言う通りだよ。冷たくされ続けてアテが無さそうなら
とっととあのひとに見切りつけて他の付け入り易そうなヤツ探しゃいいし、今までだってそうしてきた」
また溜息をついて、ニャルマーは表情を隠すように棚にふらっと顔を伏せる。
「だのに、何でだろうね。初めてさ、こんな拘んのは……」
「まさかオメエ、本気で――」
棚に突っ伏したままニャルマーが既にすーすーと寝息を立てている事に気付き、
あっしは途中で言葉を飲み込んだ。
上辺だけで言い寄ってる内にいつの間にか本気で頭領に入れ込んじまっていたってことか?
そんなタマだってのかこいつが。腑に落ちない思いを抱きながらあっしはばりばりと頭を掻く。
明日マフラー野郎に何て報告すりゃいいんだこんなの。
頭を悩ませながらあっしはニャルマーをそのまま置いて物置を立ち去る。
「このような場所に近衛の者が何用じゃ」
部屋を出て扉を閉めた直後、屋敷で一番聞きたくない嫌味ったらしい声をかけられあっしはぎょっとする。
恐る恐る声の方へ向くと、案の定糞ババア――もといニューラのご老公が立っていた。
周りに私兵の姿は見えず珍しくひとりのようだ。
「いえ、ちょっと隊長の言いつけで探し物をば。どうもここには無いようなのでもう失礼しやす、へっへ……」
テメエこそこんな場所にわざわざ何の用だババアと言い返したい気持ちをぐっとこらえ、
何か嫌味が飛んでこない内にあっしはそそくさと逃げるようにその場を立ち去ることにした。
- 777 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/10/28(金) 07:29:10.71 ID:I9eRvOir0.net
- 明日か明後日にでも続きを書きたいです
- 778 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/10/28(金) 21:27:35.62 ID:I9eRvOir0.net
- しかし何だ、レッドさん成人したらごっつくなったなw
- 779 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2016/10/29(土) 03:31:53.47 ID:9wfFISQQ0.net
- シロガネに篭もって修行してたのは伊達じゃないな
赤緑の「もういかなくちゃ!」みたいなひとり言やモノマネ娘に普通に明るく喋りかけて真似されるって会話みるに無口設定はちょい違和感だけど
山篭りするくらいストイックな生活してるぽかったり長い年月が経てばそりゃ性格も大きく変わるか
- 780 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2016/10/29(土) 08:30:20.96 ID:HkGpeImO0.net
- スレちがうやん
- 781 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/10/31(月) 02:45:43.89 ID:KD3X5fYa0.net
- このスレ的には……あれじゃもうきつきつ帽子だなw
明日の夜か深夜に投下します
- 782 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/11/01(火) 01:31:59.41 ID:9UqXv7h10.net
- ご老公はいつもの如く見下すような目であっしを一瞥したが、何も言わず、そのまま物置へと入っていった。
何か探し物でもしに来たんだろうか……?
酔っぱらって眠り込んでいるニャルマーが見付かったら、しこたま怒られるこったろう。
ちっとばかり気の毒にゃなったが、まあ自業自得だ、知ったこっちゃねえ、とあっしはその場を後にした。
――今にして思や、あの食えねえババアに対しちゃ、もうちっと疑って掛かるべきだった。
だが、ニャルマーの奴は、次の日にはもうすっかり立ち直って女中仕事に勤しんでいやがったし、
それを見たマフラー野郎も気にする程の事じゃねえと思ったのか、特にあっしに聞いてきた覚えはねえ。
それにあっし自身、その後の余りにも衝撃的な体験のせいで、そんな些細な事なんざ頭からぶっ飛んじまってたんだ。
「待て」
不意に呼び止められ、ぎょっとして立ち止まると、闇がすうっと抜け出るように覆面姿のニューラが目の前に現れた。
声と佇まいで、それが隊長だと分かる。
子ニューラと一緒じゃなかったのか……一難去ってまた一難とはこのこった。
「や、やー、どーも、おばんです」
あっしはなるべく平静を装いながら、ぎこちなくお辞儀をして立ち去ろうとした。
「何処へ行く?」
「あ、あの……頭領さんに呼ばれてるもんで、ちょっと……」
「いや、もうその必要はない」
「へ?」
だが隊長は、そう言ってあっしの行く手をを制した。
- 783 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/11/01(火) 01:40:36.10 ID:9UqXv7h10.net
- 「先程、私は若君を連れて頭領様の所へご報告に伺った。
ちょうどその時、ネズミ殿が頭領様に、お前はどうした、と尋ねられ、返答に窮していたようだったのでな、
私が用を言い付けたので今夜は来られぬ、と咄嗟に助け舟を出したのだ」
「へ、へえ、そりゃ、どうも……」
そんじゃあ、もう後の心配はねえ訳だ、とあっしはホッと胸を撫で下ろした。
だが、何だって隊長がそんな庇い立てをしたのか、今一つ釈然としねえ。
「頭領様が若君と戯れている間に、ネズミ殿から事情は聞いた。で、そちらの用事は済んだのか?」
「ああ、いや……あんな奴の事なんか、用事なんてご大層なモンじゃねえです」
隊長にわざわざ言うような事じゃねえな、と考え、あっしはそう答えた。
「ならば良いが……あの女、どうも頭領様に馴れ馴れし過ぎる。一体何を企んでいるのやら」
腕組みしながら、隊長は小さく溜息を吐いた。
流石にあの頭領や子ニューラをあしらってるだけあり、他の者と違って誤魔化されねえという事か。
もっとも、隊長は初っ端からあのアマの豹変振りを見てるんだから、当然っちゃ当然だが。
「己の野心を隠し、上辺だけ取り繕い媚び諂う例など、今まで嫌と言うほど見てきた。あの女もその類いだろう」
「へえ、まあ、仰る通りで……あ、お、俺様は関係ねえ! あいつとはただ、成り行きで同行した腐れ縁ってだけで……!」
こっちまで共犯に見られちゃ堪らねえ、あっしは首と翼を振って必死に否定した。
「分かっている。お前は、見栄っ張りのくせに小心で救い難いお調子者だが、根は正直で良識的な奴だ。
己の利の為に他者を騙したり貶めたりする真似が、平然とできるようなタマではない」
褒められてるんだか貶されてるんだか分からねえが、まあトータルじゃ悪くは思われてねえらしい。
- 784 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/11/01(火) 01:44:07.08 ID:9UqXv7h10.net
- 「それに、お前が寺子屋を訪問するようになってから、子ども達が明るくなり、自発的に学ぶようになった、
お前の存在が良い影響を与えているのだろう、と、あの子……世話役がよく話している」
「え? あのぉ、隊長さんはせんせとお知り合いで?」
あっしが近衛隊に入って以来、隊長が寺子屋に来た事も、せんせと一緒にいるところも見た事はねえ。
何よりもあっしの中じゃ、バリバリの精鋭である隊長と、あのおっとりしたせんせがてんで結び付かなかった。
「ああ、あの子がまだ幼い頃からな……」
何かを思い出すように、隊長ふと言葉を切った。
「……あの子は、今でこそ日常生活ぐらいなら差し障りない程度に回復してはいるが、
昔は、大人になるまで生きられない、と言われていたほど虚弱だったのだ。
何度も重病で診療所に運び込まれ、食事もろくに取れずに痩せ細り、起き上がるのもままならない状態だった。
里に“呪い”を広めてはならぬ、と長老達は医者らに、あの子を見殺しにするか、さもなくば死ぬまで隔離するよう命じた。
もし先代様の取り成しがなかったら、二度と日の目を見る事はなかっただろう」
その話はせんせ自身から聞いていたが、そこまで酷え状況だったとは思っても見なかった。
隊長は坦々と語っちゃいるが、どこか感情を押し殺している風にも思えた。
『診療所』『医者』『隔離』……そんな言葉から、あの陰気で不気味な建物の記憶が蘇ってくる。
薄々感じちゃいたが、やはりあそこは、そういった施設だったんだろう。
そして、隊長が見舞っていた、あのオスの子ども……
がりがりに痩せ、立つのもやっとなあの子どもと、せんせの柔和な笑顔が重なり、胸が締め付けられる思いだった。
「やはり……何か知っているようだな?」
心の内を見透かしたような隊長の言葉に不意を突かれ、あっしはビクッと体を震わせた。
- 785 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/11/01(火) 19:59:13.58 ID:z8+zwZbp0.net
- 明日明後日位にでも続き書く
- 786 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/11/05(土) 01:01:23.50 ID:yhZyLBwA0.net
- 明日の深夜か明け方位にに投下できれば
- 787 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2016/11/06(日) 18:48:55.59 ID:sIE0S54W0.net
- 今過去ログってどっか生きてる?
- 788 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2016/11/07(月) 03:18:45.15 ID:xKE/p5Jf0.net
- >>787
>>253のサイトさんに最初〜このスレの途中の部分までは保存してあるっぽい
- 789 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/11/08(火) 02:27:44.72 ID:1vRIYJGY0.net
- 今日の夜くらいに遅れます
- 790 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/11/10(木) 04:23:31.76 ID:zXqfgEp60.net
- 「はえ? いやぁ、何かって言われても何のことだかさっぱり……」
首を横に振るいあっしは咄嗟に誤魔化した。
前にあんたの後をつけてそれらしい場所をもう見たことがある、
だなんて嘴が割れたとしたって言えやしないだろう。
隠し通してそうなことを盗み見したなんてどんなお咎めを受けるかわからねえ。
しかし、隊長はあっしのそんな態度も見通していた様子でフッと鼻で笑った。
「以前私があの場所を訪れた時のことだ。
帰り際、建物の傍にこんなものが落ちているのを見つけてな」
そう言って隊長は何かを取り出してあっしに見せる。
それは一枚の真っ黒な鳥らしきものの羽根。どう見てもあっしのだ。
「ああー、そりゃあっしの抜け羽根。たぶん何か用事で空を飛んでいて抜け落ちたのが、
たまたまその場所とやらに風に乗って辿り着いたんじゃねえですかい?
この時期になるとよく抜けるもんで、女中の方々にゃあまり散らかさないでくださいまし、
だとか別にあっしだってわざとじゃねえってのにお叱りをうけまさあ、へへ」
なるべく表情を変えないようにしながら苦し紛れに言い訳する。
内心は心臓は口から飛び出そうな程に高鳴り、冷や汗をこらえるのに必死だ。
- 791 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/11/10(木) 04:24:04.15 ID:zXqfgEp60.net
- 「……それともう一つ。この羽根とは別に屋根の雪の上には鳥らしき足跡も残されていた」
言い訳するあっしを全く意に介さない様子で、
あがき悶える獲物にとどめを刺すが如く隊長はそう言葉を続けた。
確証を得て隊長はあっしを追い詰めにきている。
あっしがどう言い逃れようと最初から無駄だったようだ。
抑えていた冷や汗が滝のように湧き出す。
刑が言い渡されるの待つ罪人のようにあっしは俯きがちに隊長の次の言葉を待った。
「明日の早朝、屋敷の裏へと来い。無論お前ひとりで」
隊長はそれだけ言い残し、あっしを置いて廊下の先の暗がりへ馴染むように消えて行った。
部屋に戻った後寝付けるはずも無く、明日あっしは一体どんな目に合わせられるんだとか、
覗いたのを気付いていたのならなんであの時すぐに何か言わなかったのだとか、
せんせのことやあの建物の事、他にも色々悶々と考えている内に
外は薄っすらと明るくなってしまっていた。
「行きたかねえが、すっぽかしちまったら尚のことマズそうだな……」
目元に隈を作りながらあっしは隊長との約束の場所へ向かう。
- 792 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/11/12(土) 03:23:57.25 ID:tbPajA9x0.net
- 明日明後日位に続き書く
- 793 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/11/14(月) 01:33:14.68 ID:3q+pIbQd0.net
- 明日の深夜位に投下できたら
- 794 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/11/17(木) 06:33:24.20 ID:PIu4aXdd0.net
- 他の連中を起こさないように屋敷の裏まで抜き足差し足やってくると、
先に来ていた隊長が壁に背でもたれかかって待っている姿が見えた。
ただでさえこれからあっしがどんな処分を受けるかわからねえってのに、
遅刻まで上乗せされて咎められたら大変だ。
「おはようございやす。すいやせん、お待たせしちまったみてえで」
謝りながらあっしは慌てて駆け寄っていく。
「問題ない。私もつい先程来たばかりだ」
隊長は壁から背を離して塀の方へと歩いていき、身軽に屋根瓦の上へと飛び乗った。
「付いて来い」
そう言い残して隊長は塀の向こう側へと降り立つ。
こんな朝っぱらから呼び出して更にどこへ連れて行くつもりなのだろうか。
それも正門じゃなくわざわざ屋敷の裏から塀を乗り越えてこそこそと。
疑問には思ったが、なるべく機嫌を損ねないようにあっしは黙って後を付いて行くことにした。
屋敷の敷地を抜け出てから隊長は集落でも修練所でもない逆方向へと迷いの無い足取りで歩んでいく。
ざくざくと雪を踏み締める音だけが響き渡る中、あっしはこのまま進めばどこへ辿り着くのか
大体の予測を建てる為に前に上空を飛んで全景を見渡した記憶を元に頭に里の地図を思い浮かべる。
屋敷から大体北西の方角。こっちの方角にあるものなんてただ一つ。
隊長が診療所と呼んでいたあの寺院らしき建物くらいだ。
- 795 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/11/19(土) 03:00:15.60 ID:C0QrbjcB0.net
- 明日明後日位にでも続き書く
- 796 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/11/21(月) 00:11:29.30 ID:dmqNlwAN0.net
- 明日の深夜位に投下できたら投下する
- 797 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2016/11/22(火) 04:37:54.08 ID:/o1BLdUY0.net
- 保守
- 798 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/11/24(木) 00:59:57.23 ID:Vearpy8J0.net
- 今日の深夜位に遅れます
- 799 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/11/25(金) 08:21:12.88 ID:OaXwA0cy0.net
- 「あの、隊長さん。こっちって、その……」
あっしは意を決して、隊長におどおどと声をかける。
「……うむ、ここまで離れれば平気だろう。
耳聡い連中のいる屋敷の廊下や敷地内では誰が聞き耳を立てているか分からん」
いつもの淡々とした喋り口の中にどこか辟易とした様子を隊長は混じらせる。
きっとご老公とその取り巻き連中の事を言ってやがるんだろう。
あるいは有ること無いこと噂好きな女中達のことだろうか。
「お前を呼んだ用件を話そう。これからお前には私と共に診療所の視察をしてもらう」
「しかし、近衛の一員とはいえニューラ族じゃねえあっしが入ってもいいような場所なんで?」
「覗き見した分際で今更そのような心配をするか」
呆れたように言う隊長にあっしは何も返せずただ恐縮して俯きながら歩む。
「案ずるな。既に頭領様にはお伝えしてある。
前々から――お前にあの場所を知られた事を察した時から相談はしていてな」
そんな素振りは感じなかったが頭領さんにもとっくに知られてたのか。
顔を上げるあっしに隊長は覆面の下でフッと苦笑めいた吐息を漏らす。
「お前の行動は頭領様と私とでずっとそれとなく監視していた。
もしもあの場所で覗き見たことや、そこから生まれる適当な憶測を他の者に吹聴して周り、
里や特に若君の御心を掻き回す様な素振りがあれば任務の中で何かしら不運な事故に
あってもらうというのも私の考えの一つとしてあったのも事実だ」
うっかり誰かに話していたら始末されたかもしれねえってことか。あっしは心の中で震え上がった。
- 800 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/11/25(金) 08:23:53.01 ID:OaXwA0cy0.net
- 「だが、お前はそうはしなかった。小心者ゆえか良識によるものかまでは測れんが
ある程度の信頼は置ける。頭領様と私はそう判断した」
「そりゃどーも」
複雑な気分であっしは言うべきかもわからない礼を言う。
「でもなんであっしみてえのを連れて視察を?
ニャルマーや子どものコリンクに見せねえのはわかるが、
見て何か出来ることがあるなら頭領様とも昔馴染みであっしよりは頭も回るだろうしずっと強ええ
マフラー野郎もといあの黄色いネズミさんのが適任なんじゃねえですか」
「ネズミ殿か。確かに頼りになる御方だ。あの頭領様が友と呼ぶのだから信頼も置けるのだろう。
しかし頭領様と同じく特殊な経歴という以上に何かを感じるのだ。正体はわからんが、底知れぬ気配を」
隊長は微かに腕を揺らす。
「それにお前に何かして欲しいというわけではない。
頭領様のお部屋の掛け軸に描かれた先代様の御姿、
そして診療所の天窓から私が面を取った姿をお前は見たろう」
黙ってあっしは頷いた。
頭領様に自慢げに見せられた掛け軸に描かれていた顔と、あの時に覗き見た隊長の面の下。
驚くぐらい瓜二つだったのを確かに覚えている。
「少しばかり私の立場も特殊でな。事情を知るのは頭領様とご老公方の一部だけ。
それを話す前にあの場所のことを知った方がいいだろうと思い至ったのだ」
- 801 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/11/26(土) 04:29:15.70 ID:6Lm68rdv0.net
- 明日か明後日にでも続きを書きたいです
- 802 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2016/11/28(月) 05:17:20.85 ID:3GQvKXTq0.net
- 保守
- 803 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/11/30(水) 07:29:04.81 ID:fhbhK2XL0.net
- 明日の夜か深夜に投下します
- 804 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/12/02(金) 00:40:05.37 ID:O7SpJdw+0.net
- すいません、明日に遅れます
- 805 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2016/12/04(日) 03:50:21.12 ID:YoKn/ZN90.net
- 保守
- 806 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/12/04(日) 20:29:57.93 ID:FO7mUoBk0.net
- 「そりゃまあ……教えてくれるってんなら有難えですが……」
確かに隊長の事も含め、知りてえ事は山ほどあった。
この里は、ずっと腰を落ち着けてもいいと思うほど居心地のいい場所ではあったが、
どうにも払拭できねえ大きな蟠りが、常に頭の隅に残ったままだった。
この里に根強く巣食う、所謂“呪い”というモンについてだ。
里にメスしかいねえ理由、代々短命だという頭領の家、あのオスのニューラの子……
考えねえようにしていても、どこか澱のようにこびり付いて離れねえ疑問は日増しに強くなっていた。
殊に、やはりその当事者であるせんせと会う機会が増えてからは尚更だ。
だが里の住民は勿論、近衛隊の面々も敢えてその話題には触れようとせず、あのお喋りな新米ですら口を噤んだ。
ひょっとしたら、せんせに聞けば教えてくれるかもしれねえが、とても古傷を抉るような真似はできねえ。
「全てを知りたければ、大人しく私に付いてくるがいい」
「へえ……」
知りてえような知りたくねえような、とにかく愉快ならざる気持ちであっしは隊長の後を付いて行った。
やがて、どれぐれえの時間が経ったのか――いや、ほんの十数分だったかもしれねえが、嫌に長く感じられた――
あっしと隊長は、漸くあの建物の前へ到着した。
下から見上げる建物は、空から見た時よりもやたら大きく思え、異様な威圧感で迫ってくる。
隊長はあの時と同じように呼び鈴を鳴らし、程なくして、やはり口元を白い布で覆ったニューラが現れた。
ニューラは隊長の後ろにいるあっしを見て、一瞬怪訝そうに眉を潜める。
「こやつは気にせずとも良い、私の部下だ。頭領様の許可は取ってある」
「左様ですか……では、こちらへ」
ニューラは承知したように扉を開け、あっしらを中へ入れると、すぐさま内側から閂を下ろす。
「この者は、この場所を管理をしている者だ。医者でもあり、私の幼馴染でもある」
「はい、以後お見知り置きを……中をご案内致しますか?」
「いや、私が連れて行く」
管理者のニューラは一礼すると、あっしらを残して去っていった。
- 807 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/12/04(日) 20:34:17.04 ID:FO7mUoBk0.net
- 其処は、頭領の屋敷と同じぐらい古い重厚な建物だった。
ぐるりと張り巡らされた廊下の脇に、太い柱が何本も立ち並び、大きな瓦屋根を支えている。
板張りの床は塵一つなく清められ、何処か薬臭い、消毒液のようなツンとした匂いが鼻を突く。
その長い廊下を歩いてくと、しんと静まり返った部屋の中から微かないびきが聞こえる。
「元々、此処は人間達が己の神を祀る為に建てたのだそうだ」
声を潜めながら隊長が説明する。
「その当時から診療所が――もっとも人間の為のものだが――併設されていたらしい。
怪我や病の治癒を祈願する為に訪れる者も多かったのだろうし、弱者に施すのも神に仕える者の役目という訳だ」
「そんじゃ、みんな具合の悪い時はここに来るんですかい?」
「いや、余程の事態でもなければ、里の者が此処には来る事は滅多にない。
お前もポケモンなら分かるだろうが、我々は、多少の病や怪我なら木の実や人間の薬で治す事が出来る。
だが、それでは治す事ができない、生まれついての弊害を持つ者もいるのだ」
「それが、あの……“呪い”……って事ですかい?」
「そうだ」
あっしは恐る恐る尋ねたが、隊長は割合あっさりと答えた。
やがて、敷地の中心にある――元は神殿とか本堂とかいうもんだったんだろうか――一際大きな建物の前に着く。
重い木戸を開けると、中は天井の高い、ガランとした大広間だった。
まだ早朝のせいか、高窓から差し込む光も弱々しく、中は薄墨を流したみてえに薄暗い。
あっしは目を凝らして中を窺う。
だが、“ソレ”に気付いた瞬間、あっしは心臓を鷲掴みにされたような衝撃に襲われ、体が凍り付いたように固まった。
御堂の奥の方に――何か白いもんが寄り固まり、まるで芋虫のようにもぞもぞと蠢いていた。
- 808 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/12/05(月) 00:54:03.95 ID:+zt67FAB0.net
- 明日明後日位にでも続き書く
- 809 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/12/07(水) 01:34:03.88 ID:IPXZApyh0.net
- 明日の深夜位に投下できたら
- 810 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2016/12/08(木) 20:52:07.84 ID:UvGBpJAi0.net
- 保守
- 811 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2016/12/08(木) 22:22:34.02 ID:Mwjfgaf20.net
- ほ
- 812 :800@\(^o^)/:2016/12/09(金) 05:58:27.02 ID:xcSG8ST10.net
- 800(σ´∀`)σ ゲッツ!!
800キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!
800(・∀・)イイ!!
- 813 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/12/11(日) 03:02:24.11 ID:3I3CNVf/0.net
- 今日の夜くらいに遅れます
- 814 :名無しさん、君に決めた!:2016/12/11(日) 05:55:59.83 ID:hywjxUmoF
- ここすご
- 815 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2016/12/13(火) 04:07:11.12 ID:Q1D4ALmq0.net
- http://jump-news.idws.jp/pho/p1212.jpg
- 816 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2016/12/13(火) 09:16:27.78 ID:VLItMv6d0.net
- ありゃあ、一体――。
釘付けされたみてえに動けないあっしを尻目に隊長は御堂へと踏み込み
あっしの翼を掴んでぐいと中へと引き込んだ。
「外気が中の者達の体に障る」
そっと囁いて隊長は扉を閉める。
あっしはびくびくとしながら隊長に視線で疑問を投げかけた。
「彼らがこの里に残るニューラのオス達だ」
耳を疑うような隊長の言葉にあっしは再び御堂の奥の方へと恐る恐る目を向ける。
そこにいるものは”外”で暮らすニューラ達とは似ても似つかない
頭から白い布のようなものをすっぽりと被った不気味な集団だった。
布の下で背中を丸めているのか随分と小柄で歪だ。
仄暗い静寂の中、かすかに響くそいつらの物悲しげな呻き声はまるで何かに祈り、
訴えかけているかのようにも聞こえた。
こんな場所に押し込められて、なんだってあんな格好を……。
あっしが尋ねるよりも先に隊長は口を開く。
「奇怪に映るだろう。だが彼らの身を守るのに必要なものなのだ。
虚弱なその身に悪い空気が触れぬよう。その呪われた姿をひと目に晒さぬよう……」
感情を殺しきれない様子で隊長の声が少し震えた。
- 817 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/12/15(木) 01:44:43.26 ID:OBiuFy4D0.net
- 明日明後日位に続き書く
- 818 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/12/17(土) 05:19:24.47 ID:H01vvn050.net
- 明日の深夜位に投下できたら
- 819 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/12/20(火) 05:48:22.91 ID:kLtu4ul50.net
- 今日の夜くらいに変更で…
- 820 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/12/21(水) 18:47:52.05 ID:HHLmgxu10.net
- 呪われた姿という不吉な言い回しとその白い布を被せられた格好の不気味さから、
下で蠢くものの姿を頭が勝手な想像を思い浮かべてあっしは身震いする。
「そして、私もまた彼らのように呪いを受けし者のひとりだ」
そう言って、隊長はゆっくりと覆面を取り去る。
前に覗き見した時と何一つ変わりはしない、思わず目が覚めるほどに美しく、
掛け軸に描かれていた先代と瓜二つなその素顔。
一体どこに呪いなんて禍々しい言葉を感じさせる要素があるというのか。
あっしには検討もつかなかった。
「薄暗い場所ではわかり難かろう。私の弊害なんて奥の彼らに比べればずっとずっと些細なものだから――」
隊長は傍の小さな龍の燭台を手に取り火を灯す。それから顔に少し燭台を近づけ、
よく見せつけるように目を大きく見開いた。
そこでようやくあっしは違和感に気付く。
里にいる普通のニューラ達はみんな瞳が赤っぽい色をしているが、
隊長の瞳はそれよりずっと色が薄くて黄色に近い色合いをしていた。
だけど――。
- 821 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2016/12/21(水) 18:48:23.75 ID:HHLmgxu10.net
- 「気付いたか? たかが瞳の色が少し違うだけで何を大げさに隠す必要があるのか。
外の者であるお前にはそう映ったのではないか」
自嘲めいて隊長は言った。
心情をぴたりと言い当てられ、あっしはただ黙って頷く。
「であろうな。だがこの里を蝕む病の如き風習はこれを良しとはしなかった。私の置かれた立場上、なおさらな」
燭台の火を吹き消し、隊長は覆面を被り直す。
「……最初は虚弱で身体のどこかに弊害を持って生まれてくるのはオスの中でも僅かしかいなかったという。
しかし、代を重ねるごとにそういったオス達は増え始め、その症状も深刻化し、
遂には何一つ不自由無く生まれてくるオスは里にひとりもいなくなってしまったのだそうだ」
燭台の龍の首元を隊長は爪でゆっくりと撫でる。
「里の先祖達は震え上がった。かつて人間達と共に暮らしていた頃に
従事していたといわれる口にするも恐ろしき所業。
最も神に近しい神聖な者達を屠り、数多の返り血を浴びたことで我らの血筋は祟られたのだ。
健康な男子が生まれないのは呪いのせいだ――誰が初めに言い出したのかも分からないが、
そんな噂が瞬く間に里中に広がったという」
- 822 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/12/23(金) 02:51:57.72 ID:iDx1HiGI0.net
- 明日明後日にでも続き書く
- 823 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/12/25(日) 03:56:23.68 ID:rOuCII0O0.net
- 投下は明日の深夜位に
- 824 :名無しさん、君に決めた!:2016/12/27(火) 13:49:08.84 ID:mguz1MhpF
- 少し遅れましたが、ピカチュウの人生10周年おめでとうございます!
ひこちゃんずさんでまた最初から読んできます!
- 825 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2016/12/28(水) 02:24:05.98 ID:h39BTy820.net
- ピカチュウの人生10周年と聞いてお祝いしにきました
おめでとうございます&全ての書き手に感謝
- 826 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/12/28(水) 03:34:15.82 ID:Fo0pyL/10.net
- 今日の深夜くらいには投下したい
>>825
ありがとう&おめでとう
10周年ってそんな長く続いてたのかと書き手の一人ながら驚く
- 827 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2016/12/28(水) 23:47:19.02 ID:WXxF+VJ30.net
- いつのまに10周年おめでとうございます
ピカチュウの人生初代スレ設立日時は2006/11/12だったんですね
スレの歴史と今も書き続けている方々に乾杯
月日がたつのは早いものですね
ポケ板に数多くあったSS系スレも今では殆どなくなってしまいました
- 828 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2016/12/29(木) 05:18:55.62 ID:yFac6d7d0.net
- 10周年おめでとう、これからもよろしくお願いします
多分、最初にふざけて(だと思う)スレ立てた奴も予想だにしてないだろうw
DP発売時からそんなに経つんだな
ピカチュウ達がアローラまで行けるよう頑張ろうw
- 829 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2016/12/30(金) 02:22:01.51 ID:hPhzSQ3D0.net
- 今まで登場した地方ってシンオウ、カントー、ジョウトだっけ?
ここからホウエン、イッシュ、カロス、アローラ行くまで何年かかるんだろw
地方はともかく異国から来たポケモンはもっと登場してほしいな
イッシュやカロスのポケモンにリージョンフォームのポケモンを見てピカチュウが「世界は広いな」って再認識する感じで
将来的には精霊プレートをキーアイテムにして面白いの書けそう
- 830 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2016/12/31(土) 03:39:54.21 ID:aymh2WVp0.net
- 諸事情により今日の夜くらいに遅れます
- 831 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2017/01/01(日) 21:49:04.16 ID:fsFuAgf90.net
- 一族が何かえげつない行いをしていた過去があって、
ある時に急に里が原因不明の病や異常に徐々に蝕まれ始めた。
呪いだの祟りだののせいだと思い込んじまっても仕方ないのかもしれねえ。
「里の長達は話し合い、呪いの影響が体に強く出た者達はこの本堂へと治療のため、
あるいは神へ許しを請う祈祷者として集められた」
隊長は自分の言った言葉を否定するように弱々しく首を振るう。
「そんなもの殆ど建前だろう。恐らく本当は彼らの姿や、
自分達にも呪いが伝染する事を恐れたのだ。
先程も言ったが、この里に生まれつきの弊害を持った彼らを治療する方法などありはしない。
彼らは外へ出ることも許されず、この薄闇の中その長くはない命を終えるまで過ごす。
あのような布を被せられ姿も存在さえも最初から無かったもののように隠されたまま……」
こんな薄暗い場所に押し込まれて一生……まるで生贄かなにかみてえじゃねえか。
胸糞の悪さにあっしは顔を顰める。
「オス達が病に伏せ、自ずと里の主導権はメス達へと移った。
呪いを恐れて外との交流は極力避け、比較的症状の軽いオス達と共に一族の血は辛うじて存続されてきた。
が、近年になってとうとうメスにまで呪いの兆候は現れ始めたのだ」
- 832 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2017/01/01(日) 21:51:10.80 ID:fsFuAgf90.net
- 最初はオスから、徐々にメスにも影響が出始めたみたいな話は、
そういや確かずっと前に新米の奴がぽろっと漏らしていた記憶がある。
「それがせんせや隊長さん……」
「ああ。あの子や私。そして若くして亡くなられた先々代様とそのお子である先代様もまたそのひとり」
そういや先代も体が弱かったって以前に聞いていたが……。
「その、失礼を承知でお聞きしやすが、隊長さんと先代様は一体どういったご関係なんで?
他人って事は絶対にありえねえでしょう」
とても他人の空似なんて言い逃れできる程度のものじゃあねえ。
呪いとやらで瞳の色が後天的に変わってしまったことで
――そんなことがありえるのかはわからねえが――表向きは死んだことにされ、
今は身分を隠して近衛隊長になってるんじゃねえかなんて少し想像もしたが、
隊長の口から出た答えはもっとシンプルだった。
「うむ。そろそろ私の正体について話そう。先代様は私の姉君にあたるお方だ。
同じ日同じ時間に生まれた双子の、な」
- 833 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2017/01/02(月) 15:04:19.43 ID:zR3P0jEy0.net
- 明けましておめでとうございます
明日か明後日にでも続きを書きたいです
そろそろスレの容量が500KB近いのでこの投下でラストになるかもしれません
その時は新スレ立てますのでよろしくお願いします
- 834 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2017/01/05(木) 00:25:52.17 ID:SddPKko20.net
- 明日の夜か深夜に投下します
- 835 :名無しさん、君に決めた!:2017/01/05(木) 17:42:05.96 ID:vmrChfdGP
- あけまして&10周年おめでとうございます。
保管サイトはひこちゃんずになるのかな?
栞機能は本当に助かってる
書き手さん、ひこちゃんずさん、今年もよろしくお願いします。
- 836 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2017/01/06(金) 04:27:35.75 ID:vPdXPX1w0.net
- あけましておめでとうございます
>>833
警告ないし>>900までたぶん次スレ立てなくて大丈夫な気もするけど、もしも立てる時は>>253氏のまとめサイトをテンプレに追加よろしくお願いします
しばらくご多忙だったらしく更新できていなかったみたいだけどまた再開されたようなので
書き手の方々とサイトの管理人さんいつもありがとう、お疲れ様です
- 837 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2017/01/06(金) 12:28:45.02 ID:632zejWv0.net
- ピカチュウのZわざせめてアロライZみたいに攻撃後100%麻痺とかあればまだマシだったのに
電気玉持たせた方がいいという結論でただの魅せ技扱いとかどうしてこうなった
- 838 :名無しさん、君に決めた!:2017/01/06(金) 19:00:56.99 ID:F0PtLG84d
- >>836
そうそう、もう更新されないのかと思って問い合わせた事があったんですが、
管理人さんがご出産されたそうで、更新できる状態じゃなかったみたいです。
- 839 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2017/01/06(金) 22:22:40.49 ID:TPWAIkBw0.net
- http://market-uploader.x0.com/neo/src/1483702402619.gif
- 840 :◆IPGiyUy8W6:2017/01/07(土) 04:44:25.33 ID:rCpZ6Kob2
- 遅れながらもピカ生10周年おめでとう
アローラまで行くって難しいよなぁwゲーフリが新作出す速度にスレが置いてかれてるところあるし、イッシュはピカ父枠でピカ様単体で旅させてもいいだろうし、ホウエンとカロスはまとめてメガシンカ枠にしてしまってもいいと思う。けど、やっぱりどっかで二手に別れそう。
舞台はその地方で、ホウエン神(カロス神)対シンオウ神だったり、ピカ様勢力に対抗しうる勢力用意したりで新天地を舞台にした戦争にしても良いかもしれんね。まぁ戦争は現段階で起きてるかもしれないけど、ホウエンでチラつかせて、カロスで全面戦争とか
とりあえずスローペースで追ってたら追いつけないのは間違いなさそう。(追わないという選択肢もありけり)
- 841 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2017/01/07(土) 22:37:07.61 ID:IIMmCVwV0.net
- すみません、明日の夜に遅れます
>>836
了解です
一応テンプレは作っておきます
- 842 :名無しさん、君に決めた!:2017/01/07(土) 23:07:20.78 ID:6XcT4Nmca
- 一応説明しとく
こっち(sc)に書きこんでもここの書き込みとはnetの方の人には伝わらないよ
- 843 :名無しさん、君に決めた!:2017/01/07(土) 23:18:24.24 ID:6XcT4Nmca
- ↑
×書き込みとは
○書き込みは
- 844 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2017/01/09(月) 04:32:48.65 ID:31FcDaGh0.net
- 「ふ、双子だってぇ?!」
確かに、実の姉妹だってんなら、容姿が瓜二つなのは納得がいく。
だが、しかし……
「そう、一つのタマゴから二匹のポケモンが生まれるなど、本来ならあってはならぬ事だ」
あっしが聞くまでもなく隊長は答える。
「だが穢れた血筋は、そのように有り得ない事態が起こるほどの狂いを生じていたのだ。
かつては人間達ですら、双子が生まれるという事は不吉なものとされていたという。
頭領の家に遭っては尚の事、このような有るまじき不祥事は、何としても隠し通さねばならなかった。
今でもこの事を知るのは、頭領様とご老公を始めとした長老達、そして、この療養所の者達だけだ」
隊長はふと白い集団を見遣る。いつの間にかオス達は、這うように此方へにじり寄ってきていた。
「姉とは違い見た目が異なる私は、存在を隠蔽する為に、長老らによって生まれて間もなくこの療養所へ押し込められた。
抹殺されなかったのは、曲がりなりにも本家の血を引く私に手を掛ける事は憚られたからだろう。
幸い、私はこの眼の色以外、体には異常がなかったし、此処の者は皆、私に対して同情的で親切にしてくれた。
私は此処で医者らを手伝い、患者達の面倒を見ながら育った。この者達は、云わば私の家族のようなものだ」
オス達は布の下から、すすり泣くような声を上げた。
それは隊長に対し、感謝を示すようでもあり、また、その境遇を憐れむようにも聞こえた。
頭領になれるかもしれねえ資格があり、類い稀な美貌を持っているというのに、それを隠し通さなきゃならねえとは。
あっしはもう、この場所やこの連中に対して、おっかねえとか不気味だとかいう感情は、とっくに消え失せていた。
ただただ憐れで、悲しくなった。
――どうして自分が“呪い”を受けなきゃならなかったんだろう――
いつか、せんせがあっしに言った、嘆きの言葉が蘇ってくる。
「……優しいのだな、お前は」
そのまま押し黙っていると、隊長は覆面の下でフッと笑った……ように思えた。
- 845 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2017/01/09(月) 04:37:12.01 ID:31FcDaGh0.net
- 「いや……そんなこたぁ……」
「あの子がお前に惹かれるのも、無理はないような気がする」
「え……?!」
あっしは一瞬ドキッとした。何か今、トンデモねえ事を聞いたような気がするが……
「あ、い、いや……あの、そんで……それから、隊長さんは……」
思わず狼狽えるのを誤魔化すように、あっしは先を即した。
「ああ、察しは付いているだろうが、私がこの場所から出る事ができたのも、全て先代様である姉のおかげだ。
姉は体こそ弱かったものの、性格は気丈で豪胆、それでいて聡明で、優しい心の持ち主だった。
一族の長として、ひとりの女として、妹の私から見ても惚れ惚れする程に魅力的だった」
うっとりと心酔するような口調で、隊長は語った。
「姉が何時頃に私の存在を知ったのか、それは定かではない。だが、とにかく姉は長老達の反対を押し切り、
血を分けた姉妹が別々に暮らすなどおかしい、と私を手元に置く事を強く主張した。
終いには長老達も折れ、顔と身分を隠す、という条件で私は姉の傍に仕える事となった。
そして此処を出た私は、姉の恩に報いる為、修練所で厳しい鍛錬に励んだ。ただ好意に甘んじている訳にはいかない。
姉を……頭領を守り、その影と成り働く事、支えていく事が、妹の……近衛としての、私の使命だと思ったからだ」
絵姿でしか知らねえが、話を聞くにつけ、先代の統領は、容貌ばかりでなく、中身もとびきりのいい女だったんだろう。
そうでなければ、実の妹という隊長がここまで必死になる訳はねえ。
「私がどうにか近衛として一人前になった頃、姉はこの里を革新する計画を打ち立てた。
というのも、姉は常々、里の旧態依然とした有り様に疑問を持っていたのだ。
里を一から立て直さねばならない。もっと開かれた場所にしなければ、やがて里は滅んでしまう、と。
だが、依然として現状に固執するご老公らの力は強く、計画は遅々として進まなかった。
姉は外界の様子を見学し知識を得る為、私だけを連れ、秘密裏に里を抜け出す事が度重なるようになった。
そして、ちょうど、そんな時期だったのだ。
姉があの男……現在の統領様に出会ったのは」
- 846 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2017/01/09(月) 04:49:19.48 ID:31FcDaGh0.net
- まだ平気かな?一応テンプレ作ったのでよろしくお願いします。
ピカチュウの人生8
全世界のポケモンの支配を企むピカチュウを主人公とした小説を書くスレのその8
※続きを書く前に前スレ・過去スレ・議論所・保管サイトをしっかりと読み、
過去からの流れと設定、キャラの性格と口調等はしっかり掴んでおきましょう。
※荒らしはスルーが基本。書き手が現れるまでまったり待とう。
※sage進行推奨
前スレ
ピカチュウの人生7
http://tamae.2ch.net/test/read.cgi/poke/1389464373/
過去スレ
ピカチュウの人生6
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/poke/1332179947/
ピカチュウの人生5<小説リレー・進化>
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/poke/1286038834/
ピカチュウの人生4<小説リレー・進化>
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/poke/1243265269/
ピカチュウの人生Part3<小説リレー・進化>
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/poke/1186585164/
ピカチュウの人生2<小説リレー・進化>
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/poke/1168594628/
ピカチュウの人生<小説リレー・進化>
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/poke/1163338618/
関連過去スレ
ピカチュウの人生議論スレ
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/poke/1165628880/
避難所&議論所
http://jbbs.m.livedoor.jp/b/i.cgi/otaku/11567/#1
保管サイト
http://novel.motekawa.jp/pikatyulife
http://hikochans.com/life_of_pikachu/
- 847 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2017/01/09(月) 05:17:58.78 ID:96ROI/Ck0.net
- 明日か明後日くらいにでも続き書く
>>846
乙
容量オーバーで書き込めなくなったりスレ落ちてたら新しく立てるわ
- 848 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2017/01/12(木) 02:45:12.74 ID:IMOtm1P10.net
- 明日の深夜位に投下できたら
- 849 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2017/01/12(木) 22:02:01.19 ID:mi+AMTqc0.net
- >>846
保管サイトの、ひこちゃんずじゃない方はいるのかな?
もともとここが更新停止してたからひこちゃんずが出来たんじゃなかった?
- 850 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2017/01/12(木) 22:52:54.14 ID:IMOtm1P10.net
- 確かに確認したらモテカワノベルの方は長い間更新止まってるっぽいし、
新スレ建てる時はひこちゃんずさんのURLだけ載せておきますね
- 851 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2017/01/13(金) 08:22:27.05 ID:FAX1sPSv0.net
- そうだねぇ
ひこちゃんずさんは10レス分くらいで1ページになってるから読みやすいし、何より栞がありがたいw
- 852 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2017/01/15(日) 04:19:16.94 ID:vGSFbqYd0.net
- 明日の深夜以降に遅れます
- 853 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2017/01/17(火) 21:35:01.53 ID:2C68+4EV0.net
- 保守
- 854 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2017/01/20(金) 04:22:42.44 ID:Z4UMCcTv0.net
- 色々と立て込んで投下が非常に遅れて申し訳ない
今日の夜には間に合わせます
- 855 : ◆/1NWgu5.6o @\(^o^)/:2017/01/21(土) 03:33:07.00 ID:2Gc/lC+b0.net
- 「確か今の頭領さんが行き倒れになっちまってた所を先代さんが見つけて救ったんでしたっけ」
「ふむ。その口振り、既に飽きるほど頭領様から聞かされた後か」
くく、と苦笑じみた微かな笑い声が隊長の面の下から漏れる。
全くその通り。頭領と先代の出会いはいつも付き合わされる晩酌の肴として、
酔いで呂律が怪しくなった本人からそりゃあもう耳にタコが出来そうなくらい聞かされていた。
「ふっ、そう嫌な顔をせず私からもありがたく聞いておけ。頭領様の話だけでは分からぬ事もあるだろう。
……いらぬ脚色や美化が加えられてる可能性も大いにあるしな」
思い当たる節もあって、あっしはなんともいえぬ苦笑を浮かべる。
確かに酔った頭領の口から出る話は離す度に違う部分があったりしやがるから、
隊長から聴いた方が確実かもしれねえ。
「さて、あの男を見つけたのは人間が45番道路と呼ぶ渓谷の道を東へと越え、
シロガネ山に連なる山々へと続くおよそ人は寄りつかず我らポケモンでも険しい山道への入り口付近。
それはもう見るに堪えない有様だった。不注意にもエアームドが多く棲む領域へと踏み込んでしまい
追い立てられて来たのだろう。何羽かの奴らの死骸に囲まれでまるで引き裂かれたズタ袋の如く
無残な傷だらけになって倒れていた」
エアームドっていうとあっしが道具屋に譲ってもらった仕込み刃の元になったっていう怪鳥か
とあっしはふと思い出す。あの頭領を追い詰めるなんてよっぽど凶悪なポケモンのようだ。
「あのような姿では生きてはいまい。それに外のものを助け起こすような義理ない。
むせ返るような鉄に似た臭いが漂う不浄な空気漂う場にいつまでも姉を留まらせたくなかったし、
臭いを嗅ぎ付けて他の危険なポケモン達がお零れを漁りに来るかもしれない。
早くこの場を離れようと私は進言したが、姉は聞き入れずゆっくりとあの男の傍へと歩み寄っていった」
単純な好奇心からか、それともなにか運命めいて惹きつけられるものがあったのか。
なんにせよ血生臭い空間、をまだエアームドの生き残りもいるかもしれねえってのに
気にせず近付いていくなんて度々言われている先代は肝が座っていたってのが本当なんだなってのが伝わる。
- 856 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2017/01/22(日) 03:16:39.99 ID:bxBjoEXR0.net
- 明日明後日位にでも続き書く
- 857 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2017/01/25(水) 02:19:12.30 ID:uUPRcb3m0.net
- 投下は明日の深夜位に出来たら
- 858 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2017/01/28(土) 04:17:14.10 ID:GVBU9kyc0.net
- 保守
- 859 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2017/01/29(日) 10:29:09.90 ID:mNI4ElwC0.net
- 「仕方なく私は周囲を警戒しながら姉の後に続いた。
うつ伏せに倒れているその者の傍へ行くと姿形はニューラに似ているが、
頭部に生えた奇妙な鬣や爪の形状など他にも普通の者とは異なる部分があることがわかった。
突然変異だろうか。それともシロガネの山奥にもニューラ達が棲息しているらしいと聞くから、
シロガネに棲む者達は皆このような姿をしているのだろうか。
――それがニューラが進化した姿だということを知るのは後の事だ。
何代にも渡る閉鎖的な里の暮らしは我々から進化の方法も、
その存在すらも忘却の彼方へ置き去り奪っていたのだ――
様々な憶測が頭の中で巡る中、奇妙なニューラにまだ息があると姉が一足先に気付く。
揺すり起こすつもりなのか姉は傍にしゃがみ込んで恐る恐る手を伸ばした。
直後、気配を感じ取ったのか微かに奇妙なニューラは揺れ動き、いきなり姉の手を掴んだ。
それから飛び起きるように顔を上げて我々の姿を確認するやいなや表情に少し安堵の色を浮かべ、
『血が足りない。何よりも腹が減って限界だ。悪いが何か恵んでくれないか』
そう言い残してまたふらりと突っ伏してしまった」
行き倒れになっているところを救われたってのは頭領から何度も何度も聞かされていたが、
倒れていた理由はその時が初耳だった。もっと壮絶な理由かと思えば決定打は空腹とは。
なるほど、頭領もそこだけはあまり詳細を話したがらないわけだ。あっしは苦笑を浮かべる。
- 860 : ◆MD73K1NQHubz @\(^o^)/:2017/01/29(日) 10:30:01.28 ID:mNI4ElwC0.net
- 「驚きと呆れで私と姉は顔を見合わせた。よくよく見ればその体に刻まれている傷は、
新しいものもありはしたがその多くは昔に負ったらしい古傷だった。
捨て置いてもいいのでは、と言い添えつつも私は姉にこの”傷だらけ”の処遇をどうするか尋ねた。
姉は暫し考えた後、里に連れ帰り介抱しようと告げる。
里の外に住まうニューラらしき者と接触できるまたとない好機。
この者から得られる知識が里に改革を起こす切っ掛けとなるかもしれないと感じた、と。
姉は一度言い出したことはよほど誤った事でもない限りほとんど曲げることはない。
あまり根拠はないただ己の直感に依るものだったとしてもただ『信じろ』と臆さず堂々と胸を張る。
それを後押しするように姉のそういった感覚は良くも悪くもいつも当たるのだ。
内心諦めつつも私は幾らか反論したが『責任は全て自分が取る』と姉に一蹴され、
仕方なくあの男を里へ連れ帰ることと相成った。
どこの馬の骨ともしれない者をいきなり連れ帰ってきたなどと知られればご老公らの反発は免れぬし、
里を勝手に抜け出していた事もまだ知られたくはない。
里に戻ると私と姉はを屋敷から離れた廃屋の一つに運び込み匿う事にした。
普段は比較的自由に動ける私が、暇を見つけては姉も訪れて介抱を続ける内、
あの男は瞬く間に回復していった」
- 861 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2017/01/31(火) 06:17:59.63 ID:3S4TS/Qw0.net
- 明日明後日位にでも続き書く
- 862 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2017/02/03(金) 01:51:23.73 ID:V3Jx2JF60.net
- 明日の深夜くらいに投下できたら
- 863 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2017/02/06(月) 13:12:55.80 ID:+Ye6bc5J0.net
- 保守
- 864 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2017/02/08(水) 01:02:00.32 ID:enDEKbKV0.net
- 今日の夜〜深夜くらいには間に合わせます
- 865 : ◆THwEt9XplM @\(^o^)/:2017/02/09(木) 06:20:43.88 ID:7sxItbNM0.net
- 「我々に助けられた事にあの男は大層大袈裟なまでに感謝してな。
自分に出来る事なら何だってして恩を返したい等と自ら言い出した。
姉が様子を見に来たときの態度からして下心があるのは明白で、
これ以上関わるのはやはり危険ではないかと姉に伝えたが、
分かりやすくてかえって御しやすいだろうと――心なしか何だか少し愉快そうに見えた――
存分に里の為に役立てて売った恩を返してもらうことにしたのだ」
隊長は思い返すだけでも当時の気苦労が蘇るといった様子で少し項垂れ、胃の辺りをさする。
「あの男の世話や目付け役は自ずと私に押し付け……いや、任された。
きっと姉も姉でご老公方の説得に苦心していたのであろうが、
軽薄という言葉が足を生やして歩いてるかのようなあの男を里に馴染ませるのには、
私もとても手を焼かされたものだ。お前とは比にならない程に、それはもう。
紆余曲折、四苦八苦、悪戦苦闘しながら私の指導や、
ご老公方から課される半ば殺すことが目的な無理難題の数々を悪運と妙な腕っ節の強さで乗り越え、
――曰く、愛の力の賜物だのなんだの事あるごとに歯が浮くような台詞を姉に吹き込んでいた。
その都度、姉にはそれをからかうように軽くあしらわれて飄々とかわされていたが――
あれよあれよという間にもっと姉に近づける近衛隊の地位にまで登りつめてきた。
異例中の異例な事態だ。隊の、特に年長の者達が猛反発して多くが姉のもとを離れていった。
当のあの男は、私と特に自分がいれば姉を守るのに十二分過ぎるだろう。
かえって頭のお堅い年増方がいない方が動きやすくていいのではないか、と気にする風もなかったがね」
- 866 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2017/02/10(金) 17:40:20.14 ID:6eM9p5Nc0.net
- 明日か明後日にでも続きを書きたいです
- 867 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2017/02/13(月) 02:27:18.90 ID:BV3HWsdn0.net
- 明日の夜か深夜に投下します
- 868 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2017/02/15(水) 02:11:21.40 ID:/XkcAWM60.net
- すいません、明日の夜に遅れます
- 869 :名無しさん、君に決めた!@\(^o^)/:2017/02/18(土) 02:26:28.82 ID:mSBFJS9E0.net
- 保守
- 870 : ◆nHbSPFGRkE @\(^o^)/:2017/02/18(土) 15:42:41.45 ID:lCeGfw7M0.net
- 隊長は頭領の無茶振りに呆れるように溜息を吐いた。
「そうやって離反した者達は、挙ってご老公の下に付いた。この里で姉に匹敵する力を持つのは他にはおらん。
ご老公は若い頃、近衛隊の隊長を務めていた程の猛者で、先々代、つまり私達姉妹の母からの信頼は厚かった。
それをいい事に、ご老公は更に自分の地位を強くするべく、母に自分の弟を娶せ、頭領の家に婿入りさせた。
それが私達の父親だ。もっとも、私達が生まれる以前に亡くなったそうだがな。
更に母が亡くなってからは、姉の後見として絶対的な権力を誇っていたのだ」
自分の野望の為に兄弟まで利用するたあ、ある意味、あのババアの根性もご立派なモンだ。
ふとあっしは昨夜ご老公を見掛けた事を思い出したが、話の先の方が気になり、口に出すまでに至らなかった。
「ご老公は姉に、あの男を重用するのを止めるよう進言した。当然、姉は聞く耳など持たない。
狡猾な野心家であるご老公は、姉を傀儡として利用しようと甘言に甘言を重ねて育ててきたそうだが、
幼い頃より賢明だった姉は、とうの昔にその魂胆を見抜いていたのだ。
そして、どう足掻いても姉を説得できぬと悟るや、姉に反旗を翻し、屋敷を出て郎党共々別宅へ居を構えた。
自分達はこちらに手出しせぬ代わりに、一切命令には従わぬ、やるなら勝手にやればよい、とな。
一応、表向きは体調不良の為に隠居したという事になってはいるが、無論それは建前に過ぎん。
結果、姉の元に残ったのは、私とあの男、そして、まだ若い隊員数名のみだった。
そして、私は近衛隊の隊長に就任した。いや、させられたと言った方がよいか……
ほとんど姉の薦めと、あの男のゴリ押しによるものだったからな」
総レス数 870
517 KB
掲示板に戻る
全部
前100
次100
最新50
read.cgi ver 2014.07.20.01.SC 2014/07/20 D ★