【太平洋戦争/特攻からの伝言】＜２＞士気のために死んだのか【神風特別攻撃隊徳島白菊隊】[08/14]

マスター・ネシトル・カ ★＠＼(^o^)／

2017/8/14 10:30神戸新聞NEXT
https://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201708/0010461736.shtml

　神戸市長田区の宮〓亘さん（９２）は、茶道裏千家前家元の千玄室さん（９４）も所属していた「神風特別攻撃隊徳島白菊隊」の一員だった。２０歳で途絶えようとした命がつながった瞬間を静かに振り返る。

　１９４５（昭和２０）年５月２５日、鹿児島県の串良（くしら）基地。目指すは、沖縄。「いよいよだな、これが最期だ」。操縦かんを握り、爆弾を抱えた海軍の練習機「白菊」を滑走路へ動かす。白み始めた明け方の空を見つめていると、整備員が「中止」と叫ぶ声が聞こえた。

　出撃直前の取りやめ。天候不良により軽装備の白菊では敵艦隊にたどり着けないとの判断とみられる。

　生き延びた心境について、宮〓さんは多くを語らない。特攻の是非に対してもそう。「たくさんの仲間が特攻で死んだ。生き残ったもんができるのは、冥福を祈ることだけなんです」

　そんな宮〓さんが語気を強めた。軍の上層部がまとめた書類に、「白菊の出撃が戦闘機などの部隊の士気を鼓舞している」という趣旨の記述が残されていた。

　「『あんな練習機でも特攻に行っとる』いうてな。白菊の隊員は、何のために死んだんか。同僚の士気のためか」

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　太平洋戦争末期、巨大戦艦「大和」が海上特攻として投入されるなど、特攻作戦には航空機だけでなく、さまざまな兵器が配備された。

　「官房人機密第一九四一号ニ依リ掌（しょう）特攻兵トナル」。明石市の粟村義廣さん（９０）の軍歴資料には、４５年２月２４日付でそう記されている。

　「掌特攻兵」とは、航空機が足りず、海の特攻に回った飛行兵を指す。人間魚雷「回天」、特殊潜航艇「蛟龍（こうりゅう）」…。粟村さんは、爆薬を積んだモーターボート「震洋」部隊に配属された。

　本土決戦に備えて鹿児島県・喜界島で待機し、終戦までに２度、出撃準備がかかったという。いずれも取り消されたが、その際によぎった「お母ちゃん、親孝行できなくてごめん」という感情は、今も胸に残る。

　「特攻隊員の遺書って親きょうだいへの感謝が多いでしょう。将来の夢を描く前に亡くなった裏返しだと思うんですよね。それだけ、みんな若かった」

　艦上攻撃機の搭乗員だった姫路市の男性（９１）は、ある朝の光景が忘れられない。

　特攻で出撃する隊員や機体を発表する「搭乗割」に、同僚の名前が書き出された。「なんで俺が突っ込まなきゃいけないんだ。なんでおまえじゃなくて、俺なんだ」。人目のつかない場所で、その同僚が涙をこぼしながらつぶやいた。

　男性は、翌日に同僚が飛び立っていったことを覚えている。消息は分からない。４４（昭和１９）年秋、日本軍の組織的な特攻が始まったフィリピンでの記憶だ。