東京高裁　プロレスラーは「労働者」か

お前名無しだろ

　東京高裁がマッスル・レスリング事件で、プロレス団体の興行に出場するプロレスラーを一律に労働基準法上の「労働者」と認定し、トレーニングや興行時間に対応した時間給を支払うよう命じた判決は不適切といわざるを得ない。

　雇用関係にある労働者とされれば解雇権濫用法理の適用となり、結果的に団体として広く興行参加を募ることができなくなる。プロレスラーを志望する若者の芽を摘んでしまう恐れがあろう。厚生労働省の通達は「芸能タレント」への報酬は稼働時間で定められていないとして、労働者ではないとしている。

　プロレスラー志望者はマットに立つことを望んで、自ら進んでトレーニングや興行に出ている。なかには、所属料を支払ってまでプロレス団体に入団し、プロレスラーを志す者もいる。
一審の東京地裁が指摘しているとおり、興行の裏方業務やそれに一時的に従事した時間については時間給が発生するとしても、練習生がトレーニングや興行した時間に同様の賃金が発生するという理屈には無理がある。

　プロレスラーへの報酬も稼働時間に対応した時間給ではないことは明らかである。しかし、東京高裁は、練習１日６時間、試合20分を一律に労働時間とみなして、185万円ほどの未払い賃金支払いを命じたという。興行料が入る試合もトレーニング時間も同一労働としている点も問題がある。プロレスラーの多くが、違和感を覚える判決だろう。

　近年、経営が厳しいといわれる団体運営にも影を落としかねないばかりか、広くレスラーを募る興行が縮小することになれば、プロレスラーをめざす若者の芽を摘むことになる。団体の指示を受けてトレーニングや試合することを、使用者による指揮命令と同視して労働者と即断するのは、プロレス界全体に悪影響を及ぼしかねない。

東京高裁 プロレスラーは「労働者」か

東京高裁　プロレスラーは「労働者」か