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宇宙世紀の小説書いてみてるんだけど

1 :通常の名無しさんの3倍:2019/07/24(水) 00:50:40.43 ID:XfFrIQoe0.net
小説書いたこともなければスレッド建てるのも初めてなんだけど、もし誰か見てるなら投稿してみる

952 :◆tyrQWQQxgU :2020/07/27(月) 00:05:03 ID:xPbph6ya0.net
 一年戦争において、ソロモン戦は敗北の許されないものだった。グラナダを叩くにしろア・バオア・クーを叩くにしろ、ソロモンは絶対に抜かねばならない。そのプレッシャーもあったのだろうが、それでも艦は沈む時には沈むのだ。
 ましてジオンの巨大MAなどと交戦になれば、簡単に基地を攻略など出来はしない。メガ粒子砲を艦体に受け、いよいよとなった当時の上官の焦りと恐怖で歪んだ顔を思い出す。
「…クルーも道連れに玉砕なんて訳にいかねぇ。当時副官だった俺は脱出を提言したよ。上官はおかしくなっちまって、あろうことか俺に銃を向けやがった…。俺が命令を聞けないと言ったその時さ」
 イカれた上官に撃たれるのが先か、艦が沈むのが先か。いずれにせよ死を覚悟したその時、全身が血で塗れた。
「…上官はその場で撃ち殺された。ヴォロ・アイバニーズ…お前の親父さんにな。同じ艦に乗ってたんだ。あっちはパイロットだった。
 艦の被弾時に丁度補給へ戻ってきていて、ブリッジのゴタゴタを聞きつけて来てみたら…俺を撃とうとしてる上官の姿が目に入ったってな訳だ」
 少尉は何も言わず、またコップを覗き込んでいる。何を考えているのか窺い知ることは出来ない。艦長はそのまま話を続ける。
「上官を殺すなり、俺に向かって『あんたが1番階級が高い。指示をくれ』なんて言うからよ。そらもうクルー連れて皆で一目散に逃げ出した。おかげで皆助かったんだ」
 艦が沈んでしまえば、証拠も一緒に消える。わざわざあの上官の事を証言する様なクルーも居なかった。

953 :◆tyrQWQQxgU :2020/07/27(月) 00:05:28 ID:xPbph6ya0.net
「そんでま…彼とは終戦後も多少交流があったもんでな。…ほんと言うと、ゲイルちゃんがまだガキの頃に何度か会ったりもしてるんだぜ」
「うそん」
 顔を上げた少尉が、当時のまだ子供だった頃の彼女と重なる。丁度思春期真っ只中で父親と上手くいっていなかったのか、その父親が連れてきたグレッチ艦長とも殆ど顔すら合わせようとしなかったのを憶えている。
「デラーズ紛争も終わったあたりの頃だったな。長いこと連絡を取ってなかったら、久々にあっちから寄越してきてよ。…自分の身に何かあれば娘を頼むってさ。最初俺は何の事だかさっぱりわからなかった」
「…それってつまり、ティターンズに入るからってこと?」
「そういうことだった。俺がティターンズに入る様な柄じゃない事はあっちも知ってたからな。同じ連邦とはいえ、詳しいことは伏せたんだろうよ」
 彼自身、娘が軍に入るとは思っていなかったのだろう。あの手この手で護ろうとしていた。その為に、時には汚い仕事もやった筈だ。気付けば…連絡など取れない様なところへ逝ってしまった。

954 :◆tyrQWQQxgU :2020/07/27(月) 00:06:54 ID:xPbph6ya0.net
「親父さん…俺に相談出来るのはティターンズに入る前が最後だとわかってたんだろうな。なし崩し的に俺はエゥーゴに入っちまったし。結果的にはそのおかげで上手く行ったけどよ」
「じゃあ…私がいつまでも哨戒任務に就かされてたのは、父さんと艦長のせいってことですか…?」
「まあ…そうだな」
 少尉は何かを言いかけてすぐ口を閉じた。言わんとすることは艦長にも痛いほどわかる。
「ゲイルちゃんの為だった。とにかく死んでほしくなかったんだよ…親父さんは」
「それで自分は死んだっていうんですか!?」
 艦長を遮り少尉が立ち上がった。コップを持つ手が小さく震えていた。
「落ち着け。…続けるぞ?」
 少尉に背を向けるようにして艦長は窓際へ行った。
「この事を知っているのは俺と…ロングホーン大佐だけだ。ティターンズの将校の娘がエゥーゴにいるなんて知れたら、過激なやつが何をするかわからん。とはいえ…この状況下で戦力を遊ばせておくわけにもいかなくなってきた。大佐が最大限に手回しした結果が…」
「マンドラゴラですか」
 少尉が俯いた。艦長は彼女自身の力量もガンダムを与えられた理由の一つだと思っているが、彼女はそうは考えていない様子だった。

955 :◆tyrQWQQxgU :2020/07/27(月) 00:07:36 ID:xPbph6ya0.net
「まあ何にせよ、ゲイルちゃんの活躍で俺達はここまで来れた。もう俺達が守ってやらなくたって…お前はやっていける」
 そういって艦長は少尉を見つめた。
「そんなの…身勝手ですよ…」
 見つめ返してきた少尉の目には、哀しみや憤りが入り混じっていた。背けたくなる気持ちを抑え、じっと見つめる。
「私のこれまでは…私自身の意志で決めてきたと思ってました。でも…」
 彼女が肩を落とす。小さな身体が更に小さく見えた。
「お前はお前だ。父親が誰だろうが、何に乗っていようが、お前はお前なんだ」
「だったら何で父の事を隠していたんです!?何故ガンダムなんか寄越したんです!?」
 少尉が半ば叫ぶ様に吠えた。
「ゲイルちゃん…」
 肩に触れようとした手を振り払われる。
「…許してくれとは言わない。ただ、少しでも知ってしまったなら、全てを誤解なく知っていてほしかったんだ。伝えるのが遅くなって…済まなかった」
 彼女が知ってしまった以上、今更何かを隠すことは出来ない。艦長は自分のデスクから一束の資料を引っ張り出した。
「…これに、お前の親父さんの事が書いてある。俺が掻き集めた全てだ…持っていくといい」
 目を合わせることもなく、少尉はそれを奪い取る様に受け取る。
「…失礼します」
 去っていく彼女の目には涙が光っていた。
「…アイバニーズ。お前の娘は今日も元気だぜ…。なあに、大丈夫だ。強い子に育ってる」
 独り取り残された自室で、艦長はグラスを空けた。

62話 いつかこんな日が

956 :◆tyrQWQQxgU :2020/07/27(月) 00:12:35 ID:xPbph6ya0.net
 スクワイヤ少尉はひたすら走った。何処に行くでもなくただ走った。流れる涙も拭かず、ぶつかる肩も気に留めなかった。
 父は敵でありながらずっと見守ってくれていたのだろう。それなのに自分はそんな事も知らずにいた。ただ自惚れ、玩具を与えられて喜ぶ子供の様にガンダムに乗っていた。そして父は、少尉も知らぬ所で独り死んでいったというのか。

「はあ…はあ…」
 息が切れ立ち止まった場所は格納庫だった。目の前には、傷だらけのガンダムが佇んでいた。
「お前も…私と一緒か」
 呟いて、コックピットハッチを開く。すっかり乗り慣れたシートに彼女はうずくまった。生死を共にする覚悟で一緒に戦ってきた機体には、長年連れ添った家族の様な気持ちさえ湧いてくる。シートが暖かく少尉を包んだ。
 いわゆるガンダム開発計画の末裔であるマンドラゴラは、本来ならばあってはならない機体だった。エゥーゴにいてはならない人間だった少尉が乗るには、おあつらえ向きだったのかもしれない。鼻つまみ者同士、気が合うわけだ。少尉は自嘲気味に鼻で笑った。
「…」
 艦長から受け取った資料に目をやる。父の全てがここにあると言っていた。鼻をすすりながら手に取ると、ページをめくっていった。

957 :◆tyrQWQQxgU :2020/07/27(月) 00:19:51 ID:0v0DPqXX0.net
なんか連投規制掛かりました…笑
変なとこで切れてますが1日お待ちください…

958 :通常の名無しさんの3倍:2020/07/27(月) 00:51:53.20 ID:IZmqZpo70.net
楽しみにしてます。

959 :◆tyrQWQQxgU :2020/07/28(火) 00:25:39 ID:m1HvhbmY0.net
 艦長の言う通り、一年戦争時はパイロットとして戦った様だ。終戦後は残党の拠点を虱潰しにまわり、いつしか特務部隊の隊長として任務をこなす様になったことがわかった。そして、ティターンズからの勧誘。そこから先の資料は、黒塗りや切り抜きが急に増えた。
 読める範囲で目を通す限り、東南アジア地域のエゥーゴ・カラバを追う任務についていた様だ。
「これって…」
 エゥーゴ側の資料と、ティターンズ側のものと思われる資料が入り混じっている。父が追っていた部隊というのは、ガルダ級とその戦力だった。そこにあった名に、ページをめくる手が思わず止まる
「カラバに合流していたエゥーゴの構成員…ワーウィック大尉とアトリエ…中尉」
 彼らは父と交戦していた様だ。偶然とはいえ、その事実に少尉は震えた。嫌な予感がする。しかしここで資料を閉じることはどうしても出来なかった。
 そして、その予感は的中する。ニューギニア基地攻略作戦。ここで父の情報が途切れる。最後まで戦っていたことだけはわかったが、父が戦った最後の相手は…試作機のマラサイとガンダムだった。
「そんなことってあるの…?いや、でも…」
 父を殺したのはワーウィック大尉なのか。或いはアトリエ大尉なのか。しかし、この資料にどれ程の信憑性があるのかもわからない。
「…本人に聞けば」
 それがもし事実なら、あまりにも酷だった。自分の愛する人が、父を殺めたかもしれないのだ。戦争で敵味方に別れている以上、仕方のない事ではある。だとしても、それが事実なら少尉はどうすればいいのか。洗いざらい話すよう問い詰めるべきなのか。或いは後ろから撃てばいいのか。どちらも少尉に出来ることではなかった。
 恐らく、大尉はこの事を知らないのだろう。艦長も話してはいないだろうし、大尉がこの事実を知った上で接してくれていたとは流石に思えない。

960 :◆tyrQWQQxgU :2020/07/28(火) 00:26:26 ID:m1HvhbmY0.net
 しかし疑問も残る。何故ロングホーン大佐とグレッチ艦長は、この事を知りながら同じ部隊に2人を配置したのか。
「…ああ、そういうことか」
 あくまでも推測だが、万が一少尉がティターンズと繋がりがあった場合に対処できる様、特務部隊と交戦経験のある大尉を呼んだのだ。大尉の着任をまともに把握していない風だったグレッチ艦長はともかく、大佐の様な立場の人間ならその位は考えるだろう。
 そして、もし何かあった時に揉み消せる機体…マンドラゴラを寄越したのだとすれば辻褄も合う。
 しかし、それ程ティターンズとの内通を警戒していたのなら大尉に話していてもおかしくないのではないか。少尉は疑心暗鬼に陥っていた。

961 :◆tyrQWQQxgU :2020/07/28(火) 00:27:12 ID:m1HvhbmY0.net
「ここに居たんだな…。大丈夫か?」
 ハッチの外の声に驚き、少尉は思わず顔を上げた。フジ中尉だった。
「ああ…中尉ですか…」
 資料をシートに隠してハッチを開けた。
「大尉じゃなくて悪かったな。廊下で声を掛けても無視して走っていったから、何事かと」
 気づかなかった。それどころではなかったのだが、少し悪いことをした。
「何でもないですよ。ただ、ガンダムが気になって」
「ふん、それならいい。無理に話す必要はあるまいよ」
 察したのか、中尉はそれ以上深く聞かなかった。
「…あ、そういえばあのデータ…」
「あれか?ちゃんとロード出来たみたいで何よりだ。役に立ったろう?」
「無かったら危なかったかもしれません。にしてもあのメッセージ何だったんです?意味わかんない」
「相変わらずだな。少しは言葉や歴史を学んだらどうなんだ」
「いいから教えてくださいよ」
 中尉は意地悪く笑った。

「形影相同…。影の形というものは、身体と相同じ様に動くだろう?転じて、心が正しく動いたならば、物事もその様に動くだろうと言うことだ」
「ふーん、なるほど」
 父は、間違った行いをしたのだろうか。娘の為に誤った道を歩み、その結果死んだというのだろうか。ならばそうして残された少尉は、過ちの産物なのか。
「…私達は、正しいんでしょうか」
 少し驚いた様に中尉が眉を動かした。
「誰にも正しいことなんてわからん。だが、正しいと思った事をやらねば何も変わらん。影は、私達が動かなければ動かないだろう?」
「中尉にもわからないことってあるんですね」
「わからんから学ぶんだ。少尉も本くらい読めばいい」
 そういって、持っていた本で軽く少尉の頭を叩いた。
「…何かあればいつでも呼べよ」
「ありがとうございます」
 彼が去っていった後も、少尉はしばらくシートにうずくまっていた。

63話 正しいこと

962 :◆tyrQWQQxgU :2020/07/28(火) 00:27:53 ID:m1HvhbmY0.net
 艦長との一件の後、少しの時間が経った。スクワイヤ少尉達はコンペイトウでの休息を終え、アイリッシュもまたコンペイトウを後にすることとなった。アンマンに戻り、グラナダのアナハイムチームによるガンダム改修や新型機の受領を行う為だった。
 小さくなっていた月も随分大きくなり、長い戦いがひとまず終わったのだという実感も少し感じられる。そんな月をしばらく眺めた後、少尉は自室を出た。
 ワーウィック大尉の容態もすっかり快方に向かい、そろそろ彼も自室での待機を許される頃合いだ。スクワイヤ少尉は大尉を手伝う為、医務室へと向かった。

「ああ、済まないな少尉」
 大尉は丁度身支度を始めているところだった。
「言っても病み上がりですもん。手伝いますよ」
「少尉こそ…ここのところ、あまり元気がないみたいだが。…大丈夫か?」
 あの一件以来、艦長ともギクシャクしたままだった。ワーウィック大尉にもどう接すればいいのか測りかねているところがある。
「別に…。さ、行きましょ」
 大尉についていく形で医務室を後にする。2人で廊下を歩きながら、何か話題がないか探した。
「…そういえば、月に戻ったら新型を受領するとかなんとか。大尉が乗るんでしょ?」
「そうなるのかな。グラナダの工廠で作ったらしいが…ジオン系の機体なら扱いも楽だ」
 大尉はいつもと変わりない。それはそうだ。考えてみれば、変わってしまったのは自分自身の心の持ちようだけだった。
「少尉のマンドラゴラも改修するんだろ?」
「らしいです。私は元通り直してくれればそれだけで全然良いんですけど、アナハイム的にはもっとデータが取れるから改良させてくれって」
「ま、少尉とガンダムはもうワンセットみたいなものだからな。少尉の活躍を考えれば、彼らが張り切るのも無理はないさ」
 これまでの少尉なら素直に喜んだ。しかし今の少尉には、大尉の何気ない言葉すら何処まで信じられるのか確証がなかった。
「…大尉」
 思わず立ち止まる。やはり、もう今までと同じでは居られない。
「どうした?やっぱり何か変だぞ」
 大尉が覗き込むようにして心配する。その彼の気遣いすら痛かった。
「…聞きたいことがあるんです。その…色々」

963 :◆tyrQWQQxgU :2020/07/28(火) 00:28:24 ID:m1HvhbmY0.net
「まあ、そうだよな。構わんよ。…立ち話もなんだし、取り敢えず荷物を置いてきていいか?」
 そういって大尉は荷物を受け取り、そそくさと自室へ入っていく。少尉はつい彼の袖を掴んだ。
「私…」
 誰を信じたらいいのかわからなかった。そのことを伝える術も、無かった。
「…入るか?散らかってるが…」
 少尉は頷いた。彼は優しく部屋へ迎え入れてくれた。
 病室にしばらくいたせいか、部屋は少し埃っぽい。物はそんなに多くもないが、生活感のある部屋だった。大尉がバタバタと衣服を片付ける。
「すまんな、普段はもうちょっと片付いてるんだが…」
 彼は苦笑いしながら、まとめた衣類を籠に投げ込む。そんな大尉を眺めていると、少尉も少し気持ちが落ち着いた。ふと傍の棚に目をやる。何処かの格納庫で撮影したのだろうか、部隊の集合写真が目に入った。

「これって」
「ああ、一緒に戦ったカラバのメンバーだよ。ここに来る前に撮ったやつでな。皆元気だといいが」
 少尉はその写真を手に取った。カラバのメンバーと共に、ワーウィック大尉と肩を組んでいるアトリエ大尉。その傍には戦場に不似合いな女の子が満面の笑みで写っていた。
「この子、誰かの子供とか?」
「いや、ガルダ級に潜り込んだ迷子だ」
 ひと通り片付けの済んだ大尉がベッドに腰掛ける。
「迷子…。ガルダ級ってザルな警備してるんですね」
 思わず少尉は笑った。
「見つけた時は私も正直目を疑ったよ。しかしまあ不思議なものでな…彼女はいわゆるニュータイプというか…」
「そういうことなら仕方ないですね」
「いやいや、本当に。研究所に居た娘なんだ」
「へぇ…」
 ショートヘアの活発そうな子だ。写真でもアトリエ大尉にパンチを食らわしている。
「…おっと、すまない。ついついお喋りになってしまうな。そんな事より、少尉の聞きたい話があるだろ?…こないだの返事だよな」
 手遊びしながら、大尉も少し落ち着かない様子で言った。
「それは最後に聞かせてください。…大尉が地球で戦ってた時の話も聞きたかったんです」
 そういって少尉もベッドに腰掛けた。

964 :◆tyrQWQQxgU :2020/07/28(火) 00:30:21 ID:m1HvhbmY0.net
 大尉は色んな話を聞かせてくれた。アトリエ大尉との出会い、先程の少女…メアリーのこと。カラバの仲間の話や、ジオン残党との共同作戦も興味深い話だった。今更だが、ワーウィック大尉がどんな道程を辿ってきたのか知ることが出来たのも少尉にとって嬉しいことではある。
 しかし、やはり1番聞きたいのは交戦したティターンズのことだった。
「ずっと同じ部隊と戦ってたんですね」
「ティターンズ自体特殊部隊の延長線みたいなものだが、交戦していた部隊はその中でも更に特務部隊と呼ばれていたらしい」
 やはり父の小隊だったのだろう。少なくともあの資料の裏付けになった。
「結局、彼らとはニューギニア基地の攻略まで戦うことになってしまった。途中でガルダ級が沈みかけたりもしたが」
「…よほど手強かったんですね」
「正直、アレキサンドリアの試験部隊よりも連中の方が練度は高かったな。特に隊長機は別格だった」

965 :◆tyrQWQQxgU :2020/07/28(火) 00:34:28 ID:m1HvhbmY0.net
なんですかねこれ…また連投規制…。
めちゃめちゃいいとこですが、この感じだと1日1話が限界かもです…。

966 :通常の名無しさんの3倍:2020/07/29(水) 00:13:56 ID:v51igk6v0.net
乙です!

967 ::2020/07/29(水) 01:02:49.42 ID:c3b+Gpyy0.net
 それから大尉の話はニューギニア基地攻略作戦へと移っていく。
「私とアトリエ大尉は、カラバに地上部隊を任せて基地へと侵攻した。特務部隊の連中をどうにか退けて司令部を目指したんだが、我々が到達した頃にはもう上層部の連中は壊滅した後だった」
「先を越された?」
「いや、仲間割れみたいなものだな。待ち構えていたのは、ひと仕事終えた特務部隊の隊長だったよ」
 それも父の戦いだったのだろう。資料にも、エゥーゴによる占拠時にはニューギニア基地におけるティターンズ首脳部は壊滅した後だったと記されていた。

 大尉はごろりとベッドに寝転がって天井を見上げた。
「あの隊長のことは…忘れられないだろうな」
「…何故?」
 遠い目をした大尉を見つめながら、少尉は訊いた。
「まず何より強かった。もしまたあんな敵と戦うことがあるなら、今度こそ死ぬな」
 大尉はそういいながら顔の火傷を撫でた。
「その火傷…その時の傷なんですね」
「これで済んだのは奇跡だ。私とアトリエ大尉のガンダムの2人掛かりで、たった1機のジム・クゥエルに気圧されていた」
「ジム・クゥエルって…旧式も旧式じゃないですか」
 ただただ驚いた。ジム・クゥエルは性能的にGM2とさして変わらない筈だ。多少カスタムされていたとしても、アトリエ大尉の駆るガンダムとワーウィック大尉の試作型マラサイを同時に相手取るのは尋常な事ではない。まして優勢に戦うなど可能なのか。
 少なくとも、少尉ならガンダムをもってしても恐らく無理だ。
「それに加えて…短い時間だが話した。私とよく似た男だったよ。彼を乗り越えなければ、私は前に進めないとはっきり感じた」

968 ::2020/07/29(水) 01:04:47.89 ID:c3b+Gpyy0.net
「大尉と似てたんですか?」
 少尉からすれば不思議だった。彼女の知る父の姿と大尉の姿はあまり重なる部分は無い。父は口数も少なく、只々厳格な男だった。
「かつての自分と話しているようだった。憎しみに囚われて、独りで戦うことでしか存在を証明出来なかった…。人に、自分の何かを託すのは難しいことだからな」
 それを聞いて、ようやく少尉は腑に落ちた。連邦に所属している事を周囲に隠す為軍服姿も見せず、我が子にすら己を見せなかったのが父だ。それが嫌いでもあった。
「…だが、俺はアトリエ大尉を始めとした仲間に助けられた。やつを倒すにしても私一人では無理だったが、皆の協力で戦えた。それが…生死を分けた大きな差だったんだろうな」
 大尉らしい答えだった。だからこそグロムリンとの戦いでも、身を挺して少尉を守ってくれたのだろう。彼が仲間に助けられたのと同じ様に。

「大尉って、優しいんですね」
「ん?どうした急に」
 上体を起こした大尉に、少尉は力なく微笑んだ。
「だって殺されかけたわけですよね。傷まで負わされて、生死の境を彷徨って…。そんな風に思えないですよ普通」
 大尉は父に自分を重ねたというが、大尉の戦う原動力はいつしか…憎しみではない何かにすり替わったのだろう。そういう意味では父とは逆だったのかもしれない。
「亡くした人もいる。他所者の私に良くしてくれた当時の艦長は…基地攻略半ばで戦死された。だが、それは敵にとっても同じだ。私も…自分が生き延びる為に、誰かの大切な人の命を奪ってきた」
 その通りだった。不仲ではあったし、結果的には少尉のことを縛っていた父。しかしそれでも父は少尉を守っていたのだ。その父の命を奪ったのは、紛れもなく目の前にいる男だとはっきりしてしまった。
 何かを人に託すのは難しい…。大尉のその言葉も、艦長に少尉を託した父と重なる部分がある。それが余計に苦しさを増した。

 父を殺した男。それと同時に…彼は彼女の愛する男でもあった。

64話 火傷

969 ::2020/07/29(水) 01:06:21.53 ID:c3b+Gpyy0.net
また変な切れ方したら嫌なのでここで切ります!
第2章も長いこと書いてきましたが、次でラストです。
多分明日あたり投下するので、お楽しみに…!

970 :通常の名無しさんの3倍:2020/07/29(水) 01:52:38 ID:v51igk6v0.net
待ってまーす!

971 :◆tyrQWQQxgU :2020/07/29(水) 16:54:35 ID:mYNlLmBN0.net
「私も…聞いてほしいことがあって」
 スクワイヤ少尉は、意を決して切り出した。
「ああ、聞こう」
 ワーウィック大尉は上体だけ起こしたまま次の言葉を待っていた。
「…コンペイトウでの戦いがあって…正直、誰が味方で誰が敵なのかわからなくなったんです」
 自分の手をもう片方の手で包みながら言った。
「信じられるのは自分だけなんだって思って…でも…自分すら少し怪しくて…」
 ウィード少佐を始め、敵の戦う理由を現実として受け入れた時、本当に彼らが討つべき存在だとは思えなくなっていた。
 味方ですらそうだ。身を案じてくれていた父はティターンズだったし、信頼関係を築いてきたグレッチ艦長は真実を隠していた。今となっては、共に戦ってきたフジ中尉に自身のことを話して受け入れてもらえる自信も無い。ジオンとの折り合いをつけたばかりの中尉にはあまりに酷だ。
 そして何より、ワーウィック大尉が父を殺したという事実も知った。その彼は、自身よりも仲間を信じると言う。何が正しく、何が間違っているのか。今の少尉にはわからなくなっていた。

972 :◆tyrQWQQxgU :2020/07/29(水) 16:55:05 ID:mYNlLmBN0.net
「…それでも私は、少尉を信じるよ」
 暫しの静寂の後、ワーウィック大尉が言った。
「…どうして…?」
 こみ上げてくるものを抑えきれず、嗚咽を漏らす。大尉は、彼を信じられなくなりつつあった少尉とは真逆の事をいう。
「憶えているかわからんが…私が着任した日、休憩室で話したろ。まだあの頃は何というか…少し危うい感じだった」
 大尉が頭を掻く。少尉も今でも鮮明に思い出せる。ボロボロのサラミス改の中で、どうせ何も変わらないと不貞腐れていたあの頃の自分。
「あれから…ガンダムを受け取ったり、私とフジ中尉が少し揉めたり、敵との交戦があったり…。ほんとに色んな事があった」
 また大尉は寝転がった。少尉は溢れ始めた涙を袖で拭った。今日に至るまでの全ての景色が、感情が、猛スピードで彼女の中を駆け巡る。
「今の少尉は…何というか…素敵だ。鬱屈とした時間を乗り越えて…きっと少尉自身、誰かの為に戦う事ができる。…人の苦しみを知って、それでも尚生きて戦うのは簡単な事じゃない。でも今の少尉ならそれがきっと出来ると思ってる。そんな少尉を…私も守りたい」
 拭っても拭っても、涙が溢れた。ようやく気付いた。きっと少尉は、肯定して欲しかったのだ。生きていていいのだと。死後の世界に思いを馳せなくとも、今ある時間を称賛してくれる存在が欲しかったのだ。
 ただこの瞬間の為に生きてきた気さえした。
「私がもし…誰かを守れなくて…大尉の期待を裏切っても…信じてくれる…?」
「信じるさ」
 涙も言葉も止められない。
「もしも…皆いなくなって…私しかいなくなっても…」
「信じる」
「もし…!私が…あなたに銃を向ける様なことがあっても…」
「…少尉の選択を信じる」
「…うぐ…もう…何でよ…!!」
 堰が壊れたかのように、少尉はわんわん泣いた。身体から何もかもが枯れ落ちてしまうくらい泣いた。
 彼が父を殺したのだとして、それは許せない。しかしもう今の少尉にとって、ワーウィック大尉は心の底から憎める様な相手ではなかった。板挟みにされる苦しみも、ようやく気付けた生きる喜びも…溢れる感情はないまぜになった。今の少尉には、この涙の理由を説明できる術がなかった。
 のそのそと起き上がった大尉が、静かに背中をさすってくれた。

973 :◆tyrQWQQxgU :2020/07/29(水) 16:55:26 ID:mYNlLmBN0.net
 それから少尉が落ち着くまで、2人はただ月を眺めていた。
「月、きれいですね」
 鼻をぐずらせながら少尉は言った。
「旧世紀の日本って国で、とある有名な作家がいてな」
「え?またうんちく?」
 少尉は笑った。大尉も笑う。
「『月が綺麗ですね』ってどういう意味だと思う?」
 大尉が言う。
「そのままですよ、きれいだなーって」
「あなたの事が好きですって意味になるんだと。洒落てる」
 それを聞いた少尉は赤く腫れた目で大尉を見つめると、立ち上がり、大尉をベッドに押し倒した。
「私…馬鹿なんで。言葉で言われてもよくわかんないんですけど…。でもまあ、言ったことには責任取らないとですよね?…ねえ、月は綺麗?」
「そうだな…綺麗だ」
 少尉はそのまま大尉に被さる様にして抱きついた。互いの心臓の音が、まるで自分の物のように聞こえる。もっと聞こえる様に、彼の胸に頬を埋め耳を澄ませた。
 今はただ自分達の生だけを感じていたかった。この鼓動と月明かり以外、確かに信じられるものは何処にも無かった。

974 :◆tyrQWQQxgU :2020/07/29(水) 16:55:48 ID:mYNlLmBN0.net
 一夜明け、予定より少し遅れつつアイリッシュはアンマン市へ入港した。少し久しぶりの基地には、見慣れた景色が広がっている。補給がひと通り済んだところで、スクワイヤ少尉はブリッジに足を運んだ。
「お、ゲイルちゃんか。調子はどうだ」
「うん…ぼちぼちですかね」
 グレッチ艦長がいつものシートに腰掛けている。少尉はその傍に立った。
「…何かちょっとご機嫌だな?珍しいじゃねぇか」
「艦長とも仲直りしようかなって」
 驚いた様に艦長が少尉を見る。
「私…気にしないことにしたんです。色々。マンドラゴラにも言っちゃってますしね…私は、私の魂を信じるって」

「そうか…魂ねぇ…」
 艦長は口元をニヤリとさせながら、帽子を深く被り直した。
「わかんない事だらけだし、そんなに頭も良くないですけど。これからの自分の事は、今度こそ自分で決めます」
 ブリッジの向こうを眺める少尉の目に、沢山の景色が映り込む。幾何学模様の様に複雑な光が射す。
「…そりゃ、いい心掛けじゃねぇか!」
 艦長が立ち上がり、両手を腰に当てた。
「艦長!何やってるんです!?」
 バタバタとやってきたフジ中尉が眼鏡をかけ直しながら怒っている。
「どうした!」
「いやいや、補給が終わり次第大佐の所に行くようにとあれ程」
「…そうだっけ?」
 艦長がとぼけるのを見て、中尉が更に怒る。
「あなたという人は…!今回の部隊再編がどれだけ重要かわかってらっしゃらないので!?全く、やっとまともになったかと思えば…」
「あーもう、2人で勝手にやってて…」
「おい!逃げんなゲイルちゃん!」
「艦長!まだ話は終わってませんよ!こないだも…」
 問答を続ける2人を置いて、少尉はブリッジを後にした。

975 :◆tyrQWQQxgU :2020/07/29(水) 16:56:31 ID:mYNlLmBN0.net
「どうだ?ブリッジはいつも通りか?」
「うん、いつも通り。何だかんだで…ほんと変わんないですよあの人達」
 廊下を歩いていると、ワーウィック大尉も合流した。2人で格納庫へと足早に進む。
「少尉は変わった」
「またその話?大尉は相変わらずですよ!」
「それならいい」
「はいはい」
 談笑しながら向かった格納庫では、新しい機体の周りに人だかりが出来ていた。ここからではよく見えない。
「あ!あれ大尉のやつでしょ!?早く!」
「そんなに慌てなくてもな…おい…」
 呆れながら満更でも無さそうな大尉の手を引く。
 本当に何もかもを気にするのをやめた訳ではない。しこりは今も残ったままだ。だが、いつかはそれも許せる日が来る事を願った。既に失ったものの為に、今ある幸せを失う覚悟は持ち合わせていなかったのかもしれない。
 死への探究心は今も消えない。だが、それ以上に探すべきものを生の中に見つけた。傍に寄り添う死神を手懐けて、今は少しでも生きていたいと思うのだった。

65話(最終話) ねぇ、月は綺麗?

976 :◆tyrQWQQxgU :2020/07/29(水) 17:04:02 ID:mYNlLmBN0.net
第2章完結です。
ご愛読ありがとうございます。

これから第3章…最終章へと入っていく訳ですが、その前にスピンオフ的な話を4話程投下します。
時系列的にはコンペイトウ攻略作戦後なので、61話〜最終話辺りと平行している感じですね。
これも最終章に繋がる重要なパートになりますので、お楽しみください!

最終章はまだ殆ど構想が出来ていない状態で、しばらく期間が空くかと。
スレッドもぼちぼち埋まりそうなので、スピンオフの後は感想や質問があればお聞かせ願えたらと思っています。

気付いたら1年以上お付き合い頂いてますね…!
引き続きよろしくお願いします!

977 :通常の名無しさんの3倍:2020/07/31(金) 14:40:59 ID:L0VueQHU0.net
乙です!

スクワイヤ少尉...ニュンペーの名前、覚えてくれたんでしょうか(苦笑)
終わりを見ている辺り、ウィード少佐も過去に囚われた人間になってしまいました(泣)
分離式ナギナタを用いた死闘、熱いです!
拡散ビームといい、ニュンペーは隠し腕のついたパラス・アテネを想像すれば良さそうですね(但しミサイル無し)
2連ライフルが無いことで固定の腕部ビームガンが映えるの、良いと思います
ライフルを鈍器にして長短を補うスクワイヤ怖っ!
爆発するイメージあるんですけど、死にたがり経験からその辺の匙加減も分かるといったところでしょうか

遂に明かされるスクワイヤの出自......けどこのやりとりで「アイバニーズ=ティターンズ兵」と知るのは難しくないですか?
ボスニア隊みたいに半ば従わされてる部隊やスードリ隊のような義勇兵、ホンコン特務のように呼ばれる流れもあります

形影相同、フジ中尉ったら分かりにくい言葉を...w
文字通り漢字なのでしょうか、百式や龍飛はある世界観ですし
それとも英語? The heart-shadow will stab the facts!(さっき考えた、現ライダー並感)みたいなw

ウィード、ホント不憫...コロニー落としに携わった業はあるでしょうけど、何も言わずに、独りで...
リディルみたいに生き残った部下もいるのに、目の前が真っ白になっちゃったんでしょうね
さて、アレキサンドリアごと逃げたレインメーカー爺さんと、そろそろ人間やめてそうなソニックの行方は...
ロングホーン大佐まで救援に行ったアイリッシュ隊との対比も印象的です

アイバニーズ......なんでぇ、いい親父だったんじゃないですか >>928で少しdisってごめんちゃい😣💦⤵?
>「何故ガンダムなんか寄越したんです!?」
これは、F91、V、Gレコ辺りの親と子を繋ぐガンダムにも通じる心象でしょうね
マンドラゴラはアイバニーズの用意した機体ではありませんが、彼の願いがきっかけになってるわけで...
艦長、結局飲むんかい!(まぁ適度に飲んでた方がアル中は再発しにくいといいますしねw)
しかし辛い中でも資料を読み始めるスクワイヤは強い、こちらも請求書など読まねば...無作法というもの(私事)

マンドラゴラとワーウィックの関係......実質被害妄想ですよね(笑) 艦長・大佐「解せぬ」
いや、こういう暗いところのあった方が共感できる部分もあります
わーっ、もう、大尉の誘い受け! ちゃんと地球いけよ畜生!
月が綺麗ですね、と言いながら月に着陸したカップルはあまりいないと思いますw いい着地点だ!

新しい機体といい改修アイリッシュ(そろそろ艦名が付くのでしょうか?)といい、2.5と3章への期待が高まります!
引き続きよろしくお願いします!!

978 :◆tyrQWQQxgU :2020/08/01(土) 23:46:39 ID:DxKUOfXf0.net
>>977
いつも感想ありがとうございます!

アイバニーズ=ティターンズ所属という部分はもっとわかりやすく書いても良かったかもしれませんね!どうも読み手書き手が知ってる事の説明は疎かにしがちです…

フジ中尉のアレは漢字に英語でルビ振ってあるくらいのイメージで良いと思います。笑

正直言いますと、ウィードは最初から死ぬ予定でした。残念ながら。
何もないと思っていたスクワイアが色んなものを手に入れていく過程と、充実していると思われたウィードが色んなものを失っていく過程は対比になっています。
その先に何があるのかは、3章でも書けたらなと思ってます。

1章では母と娘の話をしたので、2章では父と娘の話をしたいなと思っていました。メアリーの時は母親側の描写多めだったので、今回は殆ど描写しない手法で書いてます。それぞれ、直接的に護った母親と間接的に護った父親ですね。

ワーウィックとスクワイアの関係ですが、ひとつは前作主人公を弱体化させずに一歩も引かせないという目的がありました。彼がこの局面で引くとは思えませんし。
しかし新しい人物を中心に置きたい思いもあり、どういう関係性にすれば良いか考えた時…いわゆるヒロインの逆バージョンに据えれば丸く収まるなと。笑
彼の前作での成長やアトリエ大尉の強さを描写しつつ、それによってスクワイアの父であり前作ラスボスでもあるアイバニーズの株も上がったかなと思います。
彼らによってスクワイアのキャラクターを補強しつつ、ちゃんと主人公として成長させたいと思っていたので、塩梅が結構難しい部分はありました…ワーウィック目線のパートが一切存在しないのもその関係です。

また、地球をテーマにすることが多いガンダムシリーズで月を舞台にするのも良いなと思っていました。個人的にXも好きですしね。笑
幸いグリプス戦役的にも重要な場所だったので描写しやすかった部分はあります。
地球で生き方を見つけたワーウィックの傍にいるスクワイアが、月で生き方を見つける…そういうのもロマンチックかなと。笑

新しい機体は既に決まってます!笑
過去最高に豪華な面子が揃う最終章になるかと!期待してください!
その前日譚に当たるのがスピンオフだったりしますんで、お楽しみに!

979 :◆tyrQWQQxgU :2020/08/01(土) 23:56:05 ID:DxKUOfXf0.net
追記ですが、強さ的には

 アイバニーズ
≫アトリエ≧ワーウィック
>ソニック≧ウィード≧スクワイア≧フジ

くらいのつもりです。機体的にはぶっちぎりでマンドラゴラが強いですが、操作性も最悪です。
ニュンペーは量産前提なところもあり、操作性や拡張性が最も高い設定です。レコアさんが完成形のパラス・アテネであそこまでやれてましたし。
なので、組み合わせ的にはやっぱりワーウィック×百式改が2章作中だと1番強いでしょうね。

…いや、名無し×グロムリンが1番強いか。笑

980 :通常の名無しさんの3倍:2020/08/02(日) 09:23:56.65 ID:vxOKlxpp0.net
おおっ、強さ比乙です!
ソニックはウィードより強い設定なんですね、只の筋肉じゃないと思ってましたが


量産前提のニュンペーは作中のアレキサンドリアに先行配備されるのでしょうか...捨てた女からフィードバックして。
あとソニックが最初に乗ってたガルバルディγも気になりますね。
>>657で説明はありましたが、αとβだけでもかなり違うので若干曖昧なままというか
例えばカラーリングなんてどうなんだろうなー、て思ってました

ウィードのニュンペー→水色
オーブのガルバルα→薄萌黄
ドレイクのガルバルβ→赤紫

と来れば

ソニックのガルバルγ→檸檬色

といったところかな、と
キャラクターが暑苦しい分だけ、色くらい爽やかでいてほしかったのもありますw

981 :◆tyrQWQQxgU :2020/08/02(日) 09:37:10 ID:c/vKaxZs0.net
>>980
ソニックは一歩引いてる感じありましたが、彼自身は決して弱くないです。コンペイトウでも実質独りでスクワイア達相手に粘ってますしね。
とはいえ大体ウィードと同じかやや上くらいのイメージです!

ガルバルディ軍団は元デザインから継ぎ接ぎして別物っぽくなってるイメージだったので、詳細の色までは考えてなかったですね笑
単色というよりはほんとツギハギのイメージです。
そうはいっても特に描写も無いので、好きなカラーで読んでもらって良いかなと思います!

982 :通常の名無しさんの3倍:2020/08/02(日) 11:38:41 ID:yA8n81MZ0.net
連投規制は鯖自体が政治板やニュース板の煽りを喰らってるっぽいな
あっちの連投荒らしや煽りは最悪に酷いからな
コロナ関連で何処ぞの国家のバイオテロだとか触れ廻ってるキチガイもいたし

運営が規制かけまくってるんだろう

983 :通常の名無しさんの3倍:2020/08/02(日) 11:45:10 ID:vxOKlxpp0.net
新旧シャア板でもそれくらい働いてくれないかと思うわ

やたらID持ってる(それでいて同じようなことばかり書く)輩もいるけど
運営なら寿命半分とか出さなくても見えるんでしょ?

984 :◆tyrQWQQxgU :2020/08/02(日) 21:22:27 ID:c/vKaxZs0.net
>>982
>>983
なるほど、そういう背景が…!!
そういうことなら暫くは連投するの難しいでしょうね…改善されてほしいものですが…

985 :◆tyrQWQQxgU :2020/08/02(日) 23:31:51 ID:c/vKaxZs0.net
「おっと…。いやはや、私もトレーニングは好きな方だと思っていたが…敵わんな」
 入室してくるなり、ロングホーン大佐が呆れた様に笑った。
「…いつまでも寝てる訳にはいきませんよ。身体が…なまってしまう…!」
 上半身を剥き出しにして懸垂をしながら、ソニック大尉は応えた。その背中には、自爆時に背に受けた生々しい傷痕が残っていた。

 大尉が意識を取り戻した時、目を開けたその場所はエゥーゴによって占領された基地内の医務室だった。医師の問診では常人ならば死んでいておかしくない高さから落ちていると指摘されたが、その割には軽傷で済んでいる。日々の鍛錬が物を言うとはこのことであろう。
 傷が癒えたのち捕虜として尋問も受けたが、ソニック大尉は潔く全て答えた。事の経緯が真実だとすれば、これ以上ティターンズに恩義を感じることもない。そして何より、失っていたであろう命をロングホーン大佐に拾われた様なものだった。
 今現在は、コンペイトウから移送されてアンマンの月面基地に滞在している。
「それで…意思は固まったかね?」
 壁に寄りかかりながらロングホーン大佐は腕を組んでいた。
「…」
 懸垂をやめ、タオルを手に取り汗を拭う。
「試験部隊は壊滅、アレキサンドリアも最早私の帰りを待ってはいない。それはわかります。しかし…」
「ふむ。…こうして囚われの身になるのは2度目だな」
 大佐が腕を擦りながら笑う。
「あの時はご無礼を」
「構うものか。私が焚き付けた。…あの時の君の大義とやら、今はどうなのかな」
「大義ですか。…確かに口にしましたね」
 地球を在るべき姿に戻す。その考えは今も変わらない。しかしそれ以上に、ウィード少佐やドレイク大尉、オーブ中尉の存在が大きかった。彼女らと共に戦うことに充実を見出していたところはある。
 それを奪ったのはエゥーゴだと思っていたが、結局のところその充実自体がまやかしだったと知る今となっては…もうエゥーゴに対する強い抵抗感も無かった。
「ひとつ気掛かりなのは…エゥーゴに手を貸すということは、かつての仲間と戦うことになる。私に…それが出来るかどうかわかりません」
「よく考えてみろ。エゥーゴもティターンズも、本来ならば同じ地球連邦軍だ。この戦役自体内輪揉めのようなものだぞ」
 大尉は息を吐いた。オーブ中尉が戦線に出てくることはないだろうが、実質的な裏切りになる。それは自身の生き方に背いてはいないか。
「君自身のことだ。君が自分で決めろ。エゥーゴに与するもよし、ティターンズに帰るもよし。この際下野して戦いから距離を置くのもひとつだろう。…だがな」
 ロングホーン大佐がドリンクを渡してくれた。ありがたく受け取る。
「君のような男…私は嫌いではない」
 後ろ手を組みながら、大佐は退室していった。

986 :◆tyrQWQQxgU :2020/08/02(日) 23:32:22 ID:c/vKaxZs0.net
 シャワーで汗を流し、連邦軍の標準的な制服を着込む。久しぶりにティターンズ以外の制服だったが、元々着ていたこともあり身体には自然と馴染んだ。
 こうして個室まで与えられているのは破格の待遇と言えた。まるで隊員のひとりの様な扱いだ。大佐からしてみればもうエゥーゴに入れたつもりらしい。しかし、それと同時にいつでも逃げていいと言われているのと同じでもあった。手早く荷物をまとめる。
 特に周囲を気にするでもなく部屋を出た。基地の構造は把握していないが、詳細とまではいかずともおおよその見当はつく。
「ロングホーン大佐か…。変わった男だ」
 大尉は部屋を出ると、小さな荷物を持ってその場を後にした。目下向かうのは、MSが格納されているであろう整備ドックである。
 人の格好や流れを見ながら、整備ドックの方向を探った。今のような状況だと格納庫は人も多いはずだ。メカニックらしきクルーやスーツを着たままのパイロットが出てきた方へと足を運ぶ。

「ここか…」
 大きな扉の先にはドックが広がっていた。慌ただしい人の動きに囲まれ、多数の機体が整備を受けている。
 ソニック大尉は品定めをする様に外周を歩いた。GM2やネモなどの主力量産機、一部にはGMキャノン2の様な型落ち機体も見受けられた。
「…おっと、あんた。ここから先は関係者しか入れないぜ」
 更に先へ進もうとしたところを呼び止められる。柄の悪い金髪の男だった。
「何か証明の類が必要か?それなら…」
「いや、要らねぇ。俺は関係者の顔なら全部覚えてる。だが…あんたの顔は見覚えが無い。帰んな」
 証明書類を出そうとした大尉を男が制した。
「君の知らない人員補充だってあるだろう。書類ならある」
「そんな書類は幾らでも作れる。信用ならねぇ。それに…あんたからは敵の殺気を感じる」
 揉め事を起こすと面倒だが、ここを進めないとなると困る。

987 :◆tyrQWQQxgU :2020/08/02(日) 23:32:47 ID:c/vKaxZs0.net
「どうしてもっていうんなら、押し通ってみろよ」
 男が構える。何の確証も無しに突っかかってくるこの男が、不思議と嫌いではなかった。
「血の気の多い連中だな、全く」
「やっぱ余所者だな!?」
 早々に男は殴りかかってきた。大尉はそれを容易く躱すと、先に進んだ。
「おいこら待てこの野郎!」
 更に後ろから殴りかかってきたがそれも躱し、男の腰を抱えるとそのまま担ぎ上げた。
「てめぇ!離せよ!」
「口ほどにもないな。弱い犬ほど何とやらか」
「まじで何なんだよお前…くそ。」
 悪態を突く男の抵抗を意に介さない。子供の様に肩に担いだまま、気を取り直した大尉は先へ歩いた。
「…お前が何者か知らねぇが、ここは通さねぇ!」
 懲りずに男は暴れ続けた。あまりに暴れるので一旦放り投げる。
「私は丸腰だぞ?侵入者かもしれん男相手に随分と手緩いのだな」
「痛ってえ…!そういうお前こそ必死さが感じられねぇな。…もしかしてほんとに関係者なのか?」
 再度立ち上がる男を見ながら、大尉は自分のこれからが馬鹿馬鹿しくなっていた。この男の言う通り、本気でティターンズに戻りたいなどとは思っていないのは自分自身が一番よくわかっていた。
「ふん…。お互いこれでは茶番だな」
「うっせぇ!さっさと引き返せよデカブツ!」
 掴みかかってきた男をヒョイとつまみあげ、再び担ぎ上げて前へと進んだ。やはり男は暴れたが、もう降ろしてやらなかった。

988 :◆tyrQWQQxgU :2020/08/02(日) 23:33:36 ID:c/vKaxZs0.net
「来たか。…ん?」
 並ぶ機体と戦艦を前にして、ロングホーン大佐が腕を組んでいた。
「アトリエ大尉…そこで何やってる」
 ソニック大尉が担いだ男はアトリエ大尉という名らしい。
「こいつ余所者でしょう!?何者なんです!?」
 担がれたままアトリエ大尉が喚く。
「すみません大佐。機体でも奪って逃げようかと思いましたが、この男が見逃してくれなかったものですから」
 ソニック大尉は、アトリエ大尉をその辺に軽く放り投げた。彼は着地も下手くそだった。
「痛ってぇな…。何しやがる!」
「アトリエ大尉、君こそ何をやっている。彼はソニック大尉…先日の戦闘で人員が不足している君の部隊への最後の補充だ」
「え!でも」
「とやかく言うな。例の任務は彼と共に遂行しろ。それとも1人でやる気か?」
「まじかよ…」
 アトリエ大尉は立ち上がりながら身体についた埃を払った。

「…決心は着いたんだな?」
 ロングホーン大佐は再びソニック大尉を見据えた。
「はい。私は帰る場所も無い、一度死んだ身です。それに…戦うことでしか恩義を返すことが出来ん男ですから。しばらくはお世話になります」
「そうか、歓迎するとも。さあ、荷物は自室に置いておくといい。…アトリエ大尉、案内してやれ」
「はあ…了解。…ほら、デカいの!付いてこいよ」
 ややぶすくれたアトリエ大尉に付いていく形で、新たな母艦へと足を踏み入れた。

65+1話 自身の生き方

989 :◆tyrQWQQxgU :2020/08/02(日) 23:41:20 ID:c/vKaxZs0.net
「お前…ソニックって言ったっけ?ファーストネームは?」
 アトリエ大尉は腰をさすりながら艦内を歩いていた。勝てる気はしなかったが、ここまで子供扱いされると流石のアトリエ大尉も少し落ち込んだ。
「ラム・ソニックだ。君は?」
「酒みてぇな名前だな。俺はベイト・アトリエ」
 このジントニックみたいな名前の男からは、初見に敵と同じ雰囲気を感じた。しかしその割には切羽詰まったものを感じない。それはそうとしても、ロングホーン大佐が認めている以上あれこれ詮索するだけ無駄だった。
「まあいいや、ここがお前の部屋な」
「ありがたい」
 ソニック大尉の部屋に2人で入室すると、彼はゴソゴソと荷物を解き始めた。
「お前、余所者だよな?元ティターンズか何かか?」
「…勘の鋭いところは認める。そのとおりだ。大佐に命を救われた」
「なるほどね。それだけ判れば十分だわ」
 地球に置いてきたメイもそうだが、どうも元ティターンズ兵とは接する機会が多いらしい。

「それで…我々の任務というのは?」
 ソニック大尉が立ち上がる。
「ああ、新しい機体を受領しにいくんだ。俺用でな」
 先日の対アクシズ戦で部隊はかなりの痛手を負っていた。アトリエ大尉自身も乗機のネモに限界がきていたし、そろそろ丁度良い頃合いだった。
「受領するのが任務か?訳有な感じだが」
「その通り。体よく言っちゃいるが、要は奪いに行くって訳さ」
「それで鉄砲玉に元ティターンズの俺を使う訳か。…何を奪うつもりだ?」
「ふふ、それはお楽しみにしとけ。あんたはあんたとして…俺ほど適任な人材もいないんだとよ」
 そう言ってアトリエ大尉は笑った。今回奪うつもりの機体のことを考えれば、あながち間違ってもいない人選ではある。
 ソニック大尉を連れ、MSデッキへ向かった。今回アトリエ大尉は奪った機体で帰還しなければならない為、行きはソニック大尉の機体に同乗することになっている。機体の説明などを済ませ、その場はお開きにした。彼にはまだ色々と慣れて貰わねばならない。

990 :◆tyrQWQQxgU :2020/08/02(日) 23:41:46 ID:c/vKaxZs0.net
 準備を済ませ、遂に決行する日がやってきた。ワーウィック大尉達のアイリッシュが帰還した様だが、今回は出迎えに行っている暇はない。
 アトリエ大尉が格納庫へ向かうと、既にソニック大尉が機体に乗り込んでいるところだった。
「準備万端ってか?おはようさん」
「ああ、アトリエ大尉。よろしく頼む」
 まだエゥーゴに合流して日が浅いからか、少し緊張の色が見て取れる。
「あんたもMSはよく遣うと聞いたが…急にエゥーゴの機体でいけるのか?」
「問題ない。…エゥーゴはなかなかいい機体を持っているな。何よりフォルムがいい」
 2人が今回使用する機体は黒いリックディアスである。
「最近は赤が人気らしいけど、断然黒だよな」
「同感だ。ティターンズカラーという訳じゃないがな」
「ま、カッコ良けりゃそれでいいよな。…意気投合したとこで、準備するか」
 シートをソニック大尉に譲り、アトリエ大尉はその後ろについた。
『2人とも、準備はいいかな』
 艦長から通信が入る。
「ああ、大丈夫だ。短い間だったが世話になったな」
 今作戦での機体奪取成功後はこの艦から異動することになっている。主力部隊の再編である。恐らくソニック大尉もそのタイミングで正式にエゥーゴ加入が決まるのだろう。
『まだ気が早いぞ。この任務が終わるまではよろしく頼む』
「あいよ!そっちこそ手筈通り頼む」
『うむ。任された』

991 :◆tyrQWQQxgU :2020/08/02(日) 23:42:28 ID:c/vKaxZs0.net
 事前にリークした情報では奪取目標の試作機が3機建造されていて、その中の1機を奪えればそれで良い。その1機は現在月の周辺を輸送中の為、航行を妨害する形で強奪する。本来の引き渡しの為に装備が一式用意されているらしく、強襲して丸々掠め盗る予定だ。
 まずは母艦であるサラミス改で近付ける限界まで追いかけ、そこからはSFSに乗って単機で襲う。遅れてくる陽動部隊が支援するとのことだが、あまりあてにし過ぎない方がいいだろう。
「しっかし、何でまたこんなに情報が駄々漏れなんだ?」
『既に機体開発の主導権は反ティターンズ側に傾いているのでな。本質的に強奪ではなく受領と言っていい。今回はティターンズ寄りの連中が邪魔に入るだろうが、我々で対処出来る規模だ。残す記録としてもエゥーゴ側に正当性がある形を取りたいというわけだよ』
「回りくどい言い方だな」
 ソニック大尉が苦笑いする。
「俺達には関係ねぇ。貰うもん貰って帰るだけだ」
 アトリエ大尉はソニック大尉の肩を叩いた。

 月から出港したサラミス改は、予定のポイントへと向かう。敵の輸送艦が通った道をなぞる形だ。
「丁度いい時期に転向できて良かったんじゃねえか?これからティターンズは苦しくなるだろうぜ」
 出撃待機しながら、アトリエ大尉は後ろから話しかけた。
「何処で踏み違えたのだろうな。理念を持ち、能力のある人間を集めた組織の筈だった」
「へっ。そういう思い上がりが全ての原因だと思うけどな?」
「…確かにな」
 ソニック大尉は自嘲気味に笑う。彼の転向に至った経緯は詳しく知らないが、結局こうして人が離れていくのも時勢を表しているのだろう。
 そうこうしている間に敵の輸送艦が見えてくる。敵もこちらを捕捉しているはずだ。
『では2人とも、武運を祈る』
「おう!行ってくる!」
 アトリエ大尉の返事を聞き、ソニック大尉がリックディアスを起動する。SFSのスラスターに火を入れると、輸送艦へ向かって出撃した。

65+2話 回りくどい言い方

992 :◆tyrQWQQxgU :2020/08/03(月) 00:14:29 ID:uwYmBiVJ0.net
「さて…。あの輸送艦に取り付けばいいんだな?」
 ソニック大尉は操縦桿を握り直す。慣れないなりにシミュレーションはしておいた。幸いリックディアスは非常に操作性の高い機体だった。
「あんたが取り付いたら、俺が機体を奪いに行く。援護は任せるぜ」
「そんな細腕で大丈夫か?」
 とてもじゃないが、アトリエ大尉は白兵戦が得意には見えない。
「おいおい、そこはあんたの丸太みてぇな腕で援護してくれよ」
「俺ありきか。戻ったら鍛え直してやる」
「…来たぜ。お出迎えだ」
 輸送艦から敵のMSが迎撃に出てくる。ざっと4機。いずれもバーザムである。

「新型のみで編成か。余程大事な積荷なんだろうな」
「頼むぜソニック大尉!」
 開幕の合図に放たれた複数のビームを難なく避ける。まずはもっと輸送艦に近付かねばならない。敵に構わずSFSのスラスターを吹かした。
 2機ほど突出してこちらを迎撃する動きを見せている。これらの合間を縫うようにして、とにかく敵の攻撃を躱す。
「流石に…手数が多いな」
 八方から浴びせられるビームをどうにか躱しつつ、とにかく距離を詰める。
「先に叩かねぇのか!?」
「輸送艦に取り付いてしまえばやつらも手出し出来んだろう」
 嘘を言ったわけではない。とはいえ、正直まだ元同胞を撃つ事に引け目を感じている部分も否めなかった。だが敵からすればそんな事情は関係ない。当然容赦ない攻撃が続く。
「おい!大丈夫かよ!」
 うろたえるアトリエ大尉。
「黙って見ていろ!」
 粘りに粘るソニック大尉だが、いよいよ限界だった。ある程度の距離まで近付けたことを確認すると、SFSを蹴る様にして跳んだ。
「この男を送り届けねばならん。この鍛えた身体に誓って!」

993 :◆tyrQWQQxgU :2020/08/03(月) 00:15:24 ID:uwYmBiVJ0.net
 好機と見たのか、バーザムの1機が接近戦を仕掛けてきた。サーベルを抜き、加速を掛けて斬りかかる。
「ぬおお!!!」
 ソニック大尉は敵のマニピュレーターを掴み斬撃を止めると、もう片方の手で頭部を殴りつける。よろめいた敵機からそのままサーベルを奪うと、コックピットに突き立てた。
「次ぃ!!」
 背後から撃ち抜こうと狙いを定める別のバーザムだったが、逆にソニック大尉は背のビームピストルで威嚇射撃を食らわせる。
 180度転身し、今度はピストルを手に持ち直してそのまま敵を蜂の巣にする。ライフルに比べると威力は低いが、2丁をバランス良く扱うことで手数を増やせる。
「邪魔はさせんぞ!!」
 そのまま爆散するバーザムに背を向けつつ、再び輸送艦へ向かう。残る2機は連携して輸送艦を守っているが、これに取り付く為にはどうにかして敵を引き剥がす必要がある。
「やるじゃねぇかよ!見直したぜ」
 後ろでアトリエ大尉が声を上げる。
「まだだ。問題はここからだからな」

 味方の牽制に期待したいところだが、今のところそれらしい動きは見られない。可能ならばこの軌道を抜ける前にケリをつけてしまいたいところだ。
「多少強引だが…行くしかないな!」
「うおっ!」
 よろめくアトリエ大尉にも構わず、バインダーの出力を上げて突進した。迎え撃つ敵の射撃が掠める中、一心不乱に輸送艦目掛けて突っ込む。
 こちらの狙いを察したのか、敵が進路を塞ぐ様にして立ちはだかった。
「押し通る!!」
 ソニック大尉はサーベルを抜いた。受ける敵のサーベルと鍔迫り合いになり、そこへ更に別機体のビームも迫った。しかしここは引いた方が負ける。被弾しつつも鍔迫り合うバーザムを押し退けた。
 押し込まれ体勢を崩した敵機を踏みつける様にして、更に加速して輸送艦に向かって駆ける。背後から撃とうにも、この位置なら輸送艦への着弾が気になって撃てない筈だ。
 狙い通り敵の動きが鈍った隙を突き、リックディアスはそのまま輸送艦の後部ハッチを撃ち抜き、突き破りながら強引に着艦した。

「いてて…。全く無茶しやがるぜ」
「何にせよ…これで文句はあるまい。さて、お目当ての機体は何処だ?」
 モニターから周囲を確認する。バーザム達が格納されていたらしきハンガーの奥に、白い機体が見えた。
「よし、あれだな。援護頼む!」
 言うなり、アトリエ大尉はコックピットを飛び出していった。ソニック大尉に仕掛けてきた時もそうだったが、何故あの腕っぷしでそこまで無茶ができるのか…。飛び出したアトリエ大尉を追いかける形で、ソニック大尉も機体から離れた。

65+3話 輸送艦

994 :◆tyrQWQQxgU :2020/08/03(月) 00:16:06 ID:uwYmBiVJ0.net
「くそ…!簡単には渡しちゃくれねぇか!」
 アトリエ大尉は敵から見えないよう壁に背をつけて銃を抜いた。散発的に敵の銃声が響く。威勢よく飛び出したものの、騒ぎに気付いた敵クルーと白兵戦になっていた。
「…で、何か作戦があるんだろうな」
 合流したソニック大尉が溜息をつく。
「そりゃお前…その自慢の筋肉であいつらどうにかしてくれれば」
「無茶苦茶なやつだ」
 呆れ果てた様にソニック大尉が笑う。軽口を叩いてはいるが、それほど余裕があるわけではない。見た限り敵は3人ほどで、全員銃を持っている。闇雲に突っ込んでどうにかなる状況ではなかった。
 銃声が止み、ジリジリと迫ってくる敵の気配を感じる。2人は息を潜めた。
「…俺が囮になる。その間にお前が最低1人仕留めろ」
 小声でソニック大尉が呟いた。
「囮って言ったってよ…どうするつもりだ」
「俺を連れてきたのはこういう時の為だろう?俺の筋肉を信じろ」
 猶予は無い。アトリエ大尉は渋々頷いた。
「長くは保たん。任せたぞ」
 そう言ってソニック大尉は前に出た。

 遮蔽物を利用しながらソニック大尉が攻勢に出る。敵の注意を引きつけながら、アトリエ大尉のいる場所への意識を離そうとしていた。
 敵の動きを見つつ、アトリエ大尉は敵の背後を取るべくソニック大尉とは反対の方向へ走った。敵はソニック大尉との銃撃戦に夢中でこちらには気付いていない。
「よし…。くたばってな」
 瞬時に敵へ狙いを定めると、背後から1人の頭を撃ち抜いた。崩れ落ちた味方に気を取られたもう1人を、ソニック大尉が逃さず撃つ。
 最後の1人は逃走を図ったが、ソニック大尉が後ろから羽交い締めにする。揉み合いになりながらヘッドロックの要領で首を抑え込むと、そのまま落としてしまった。
「上出来だな。取っ組み合いにさえならなければお前も良い腕だ」
 周囲を確認しつつソニック大尉が言う。
「俺に限らず取っ組み合いであんたに勝てるやつがいるのか怪しいがな!…あんたはディアスに戻れ。俺は目標を奪取する」
「了解。そろそろハッチも破られそうだしな」
 ソニック大尉の言う通り、先程破壊したハッチから外のバーザムがこちらに向かってこようとしていた。アトリエ大尉は、踵を返したソニック大尉とは反対方向へ走る。

995 :◆tyrQWQQxgU :2020/08/03(月) 00:16:39 ID:uwYmBiVJ0.net
「待ってろよ…!」
 アトリエ大尉はとにかく機体のもとへと急ぐ。息を切らせ辿り着いた場所には、純白の機体がいた。白い装甲には赤いラインが走り、やや大型で独特なフォルム。それを見上げながらアトリエ大尉は懐かしい気分がしていた。
「久しぶりだな…ガンダム」
 そこに居たのは、アトリエ大尉のかつての乗機であるガンダムMk-?の正当後継機…ガンダムMk-?だった。
 まだ一部調整が済んでいないとのことだが、一応ひと通りの装備が揃っている。アトリエ大尉はハンガーのレールを伝い、コックピットへと飛び乗る。
「ガンダム盗るなら俺に任せろってね…。ま、1機盗んで1機は諦めたけどな」
 ワーウィック大尉にベッタリだったスクワイア少尉を思い出して、つい笑った。あの生真面目な男が、ああいう娘に懐かれているとは思ってもみなかった。
 事前に確認していた手順で手早く機体の起動に入る。その起動手順もMk-?と通ずるものがあった。乗機だったMk-?はムラサメ研究所が盗用データから組み上げた不完全な機体でもあったが、Mk-?はオーガスタ純正だ。
 Mk-?の一件を問われたムラサメ研究所も開発に手を貸す羽目になった様だが、サイコガンダムの運用データなどの提供によりMk-?の完成は早まったという。
「よし…動けよ…!」
 各シーケンスをクリアし、デュアルアイに光が灯る。それと同時に、アトリエ大尉も前を見据えた。
「ガンダム…また俺と戦えて光栄だろ?」

996 :◆tyrQWQQxgU :2020/08/03(月) 00:17:28 ID:uwYmBiVJ0.net
 ハンガーから強引に引き剥がす様に機体を動かしつつ、リックディアスと通信チャンネルを合わせる。
「ソニック大尉!目標を奪取した!離脱するぜ!」
『わかった!これ以上は持ち堪えられん!急げ!』
 前方を確認すると、ハッチをこじ開けたバーザムと揉み合いになっているリックディアスが見えた。
「借りは返さねぇとな」
 専用のライフルを構え、正確にバーザムの頭部だけを撃ち抜く。そのままソニック大尉はバーザムを組み伏せた。
『よし!先に行け!』
「了解!」
 開けたハッチから脱出する。が、それを待ち伏せていた残る最後のバーザムが背後から斬りかかってきた。
「甘いぜ…鶏ちゃん」
 斬撃をひらりと躱し、追撃のライフルも容易く避けた。アトリエ大尉が反応した通りに機体が付いてくる。ネモが悪い機体だったとは言わないが、やはりガンダムは規格外だ。インターフェースのせいもあるが、やはりMk-?を思い出す。
 迫る敵と向かい合いながら、とっておきの武装を射出した。当然、使い方なら熟知している。
「ん?2基もあんのか…!流石後継機…贅沢なこって!」
 再度斬りかかろうとしたバーザムだったが、それは叶わなかった。ガンダムの射出したインコムがサーベルを手首ごと弾き飛ばしたのだ。更に脚部、頭部、肩…あらゆる部位を四方から撃ち抜いた。半壊したバーザムを、大型サーベルでとどめを刺す様に両断する。
「この威力…オーバーキルか?…一理ある」
 爆散する敵機を背後に、ガンダムは悠々と武装を収めた。

『お前…その武装。…ニュータイプってやつか』
 続いて脱出してきたソニック大尉のリックディアスが追いついた。
「最近はもうニュータイプニュータイプって言われ過ぎて否定するのも面倒になってきたわ…。それに、インコムの事ならシステム的にはオールドタイプでも使えるんだけどなあ」
『いや、俺は遠慮しておこう…』
 2人が合流して程なく、援軍が輸送艦を取り囲んだ。彼らの予定よりもかなり早い段階で敵を殲滅してしまったらしい。
「これで任務完了だな。あんたが居て助かったぜ」
『お前のようなやつと戦場で相対することが無くて良かった』
「へっ、そうかい。…まあこれからもよろしく頼むわ」
 友軍にその場を任せ、2人はサラミス改への帰路についた。

65+4話 純白の機体

997 :◆tyrQWQQxgU :2020/08/03(月) 00:24:58 ID:uwYmBiVJ0.net
何だかんだギリギリになりましたね…
取り敢えず次建てときました!

次スレッド
グリプス戦役の小説書いてるんだけど
https://medaka.5ch.net/test/read.cgi/x3/1596381803/

まさか跨ぐ事になるとは書き始めた頃には思っても見ませんでしたが…笑
引き続きよろしくお願いします!

998 :通常の名無しさんの3倍:2020/08/03(月) 07:32:19.93 ID:PIGO23ZM0.net
乙です!

まだ黒塗りのディアスなんていたんですね...w
あのドムもどきなカラーリング嫌いじゃないです

裏切ったのがシロッコだとしても、ティターンズ全体がジャブロー核自爆をやらかす危険集団、どのみち戻れはしない...
ここでGMキャノン2! 新訳要素も嬉しい
やはりアトリエは勘がいい、まだソニックにも迷いがあったでしょうしね
書類の件はWのデュオが「偽物だけどなぁ!」と行って逃げていくシーンを思い出しましたw

ここで来たか、(顔的に)虫野郎! 青に塗られる前というのがまた細かいw
もしやソニックをゼク・アインに乗せたのは、MK-V奪取作戦への伏線だったのでしょうか?

(もうアトリエの心配はしてないので、笑)ソニック、お前くらい生き残れよ...!

次スレ、楽しみにしてます!

999 ::2020/08/03(月) 10:37:01.45 ID:uwYmBiVJ0.net
>>998
個人的に黒ディアス渋くて好きので…笑

ティターンズは実際かなりヤバい事してますし、ソニックは知らされてない部分もあれど加担している部分もありましたから。
メイの時ほど割り切れてはいない感じですが、その辺りも3章で!

クインマンサ顔のあいつです…!
1機が教導団、1機がネオ・ジオンへ行くので正直ギリギリの数ですが…
前作主人公の1人が乗るガンダムと考えると、丁度いい顔してます笑
そうですね、教導団行きの機体同士っていう接点はあります。後で簡単に掘り下げますが、その辺の絡みも考えてはいます。

ウィード隊最後の1人がエゥーゴに来てしまいましたが、それによって彼らのストーリーもまだ終わっちゃいないといったところですね。

よろしくお願いします!

1000 :通常の名無しさんの3倍:2020/08/03(月) 17:12:42 ID:PIGO23ZM0.net
第1部・第2部、完!

1001 :2ch.net投稿限界:Over 1000 Thread
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