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長靴半ズボンその3

224 :夢見る名無しさん:2017/03/27(月) 17:30:47.45 ID:yWKsKR4oX
大人たちが主役の祭りは続くが、A樹はもう帰りたくなった。
C子に投げられて擦りむいた膝は歩くとやはり痛い。

A樹は終わってから気づいたのだが、4年生の部の子ども相撲はC子が優勝した。
A樹がとぼとぼと神社を後にしようとすると、長靴で走る足音が聞こえてきた。
音でわかる。C子だ。
いつもならすぐ振り返るのだが、その日はそんな気になれなかった。
A樹はC子に肩をたたかれた。

「A樹、怪我は大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。それより優勝おめでとう。」
「ありがとう。ごめんね。」
「いいよ。気にしなくて。僕よりもC子のほうが強かっただけなんだから。」
「A樹も強かったよ。あのまま負けちゃうんじゃないかと焦って、かっとなっちゃったんだ。」
「やっぱ、C子は強いよ。僕もC子のように強くなりたいよ。」
「A樹、来年も出る?」
「もちろん! 来年は負けないよ。」
「私だって負けないわ。お互いに頑張りましょう。」
「うん。」
「それじゃあね。」
「じゃあね。」

A樹とC子はそれぞれ別れた。

角を二つくらい曲がり、C子に見られない確信を持つと、A樹は急に立ち止まった。
電柱があった。電柱にはN祭の子ども相撲の募集のことが書いてあるポスターが貼ってあった。

A樹は電柱に向かって仕切りをした。長靴の縁が裏腿に当たった。
しばらく電柱をにらんでから、A樹は電柱に突進し、電柱に張り手のような鉄砲を打った。
鉄砲と打っているうちに涙で目が曇ってきた。
そして電柱と相撲を取るように電柱を抱きしめて力を入れた。
力尽きるとA樹は電柱に寄りかかって泣き出してしまった。

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