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宇宙世紀の小説書いてみてるんだけど

1 :通常の名無しさんの3倍:2019/07/24(水) 00:50:40.43 ID:XfFrIQoe0.net
小説書いたこともなければスレッド建てるのも初めてなんだけど、もし誰か見てるなら投稿してみる

983 :通常の名無しさんの3倍:2020/08/02(日) 11:45:10 ID:vxOKlxpp0.net
新旧シャア板でもそれくらい働いてくれないかと思うわ

やたらID持ってる(それでいて同じようなことばかり書く)輩もいるけど
運営なら寿命半分とか出さなくても見えるんでしょ?

984 :◆tyrQWQQxgU :2020/08/02(日) 21:22:27 ID:c/vKaxZs0.net
>>982
>>983
なるほど、そういう背景が…!!
そういうことなら暫くは連投するの難しいでしょうね…改善されてほしいものですが…

985 :◆tyrQWQQxgU :2020/08/02(日) 23:31:51 ID:c/vKaxZs0.net
「おっと…。いやはや、私もトレーニングは好きな方だと思っていたが…敵わんな」
 入室してくるなり、ロングホーン大佐が呆れた様に笑った。
「…いつまでも寝てる訳にはいきませんよ。身体が…なまってしまう…!」
 上半身を剥き出しにして懸垂をしながら、ソニック大尉は応えた。その背中には、自爆時に背に受けた生々しい傷痕が残っていた。

 大尉が意識を取り戻した時、目を開けたその場所はエゥーゴによって占領された基地内の医務室だった。医師の問診では常人ならば死んでいておかしくない高さから落ちていると指摘されたが、その割には軽傷で済んでいる。日々の鍛錬が物を言うとはこのことであろう。
 傷が癒えたのち捕虜として尋問も受けたが、ソニック大尉は潔く全て答えた。事の経緯が真実だとすれば、これ以上ティターンズに恩義を感じることもない。そして何より、失っていたであろう命をロングホーン大佐に拾われた様なものだった。
 今現在は、コンペイトウから移送されてアンマンの月面基地に滞在している。
「それで…意思は固まったかね?」
 壁に寄りかかりながらロングホーン大佐は腕を組んでいた。
「…」
 懸垂をやめ、タオルを手に取り汗を拭う。
「試験部隊は壊滅、アレキサンドリアも最早私の帰りを待ってはいない。それはわかります。しかし…」
「ふむ。…こうして囚われの身になるのは2度目だな」
 大佐が腕を擦りながら笑う。
「あの時はご無礼を」
「構うものか。私が焚き付けた。…あの時の君の大義とやら、今はどうなのかな」
「大義ですか。…確かに口にしましたね」
 地球を在るべき姿に戻す。その考えは今も変わらない。しかしそれ以上に、ウィード少佐やドレイク大尉、オーブ中尉の存在が大きかった。彼女らと共に戦うことに充実を見出していたところはある。
 それを奪ったのはエゥーゴだと思っていたが、結局のところその充実自体がまやかしだったと知る今となっては…もうエゥーゴに対する強い抵抗感も無かった。
「ひとつ気掛かりなのは…エゥーゴに手を貸すということは、かつての仲間と戦うことになる。私に…それが出来るかどうかわかりません」
「よく考えてみろ。エゥーゴもティターンズも、本来ならば同じ地球連邦軍だ。この戦役自体内輪揉めのようなものだぞ」
 大尉は息を吐いた。オーブ中尉が戦線に出てくることはないだろうが、実質的な裏切りになる。それは自身の生き方に背いてはいないか。
「君自身のことだ。君が自分で決めろ。エゥーゴに与するもよし、ティターンズに帰るもよし。この際下野して戦いから距離を置くのもひとつだろう。…だがな」
 ロングホーン大佐がドリンクを渡してくれた。ありがたく受け取る。
「君のような男…私は嫌いではない」
 後ろ手を組みながら、大佐は退室していった。

986 :◆tyrQWQQxgU :2020/08/02(日) 23:32:22 ID:c/vKaxZs0.net
 シャワーで汗を流し、連邦軍の標準的な制服を着込む。久しぶりにティターンズ以外の制服だったが、元々着ていたこともあり身体には自然と馴染んだ。
 こうして個室まで与えられているのは破格の待遇と言えた。まるで隊員のひとりの様な扱いだ。大佐からしてみればもうエゥーゴに入れたつもりらしい。しかし、それと同時にいつでも逃げていいと言われているのと同じでもあった。手早く荷物をまとめる。
 特に周囲を気にするでもなく部屋を出た。基地の構造は把握していないが、詳細とまではいかずともおおよその見当はつく。
「ロングホーン大佐か…。変わった男だ」
 大尉は部屋を出ると、小さな荷物を持ってその場を後にした。目下向かうのは、MSが格納されているであろう整備ドックである。
 人の格好や流れを見ながら、整備ドックの方向を探った。今のような状況だと格納庫は人も多いはずだ。メカニックらしきクルーやスーツを着たままのパイロットが出てきた方へと足を運ぶ。

「ここか…」
 大きな扉の先にはドックが広がっていた。慌ただしい人の動きに囲まれ、多数の機体が整備を受けている。
 ソニック大尉は品定めをする様に外周を歩いた。GM2やネモなどの主力量産機、一部にはGMキャノン2の様な型落ち機体も見受けられた。
「…おっと、あんた。ここから先は関係者しか入れないぜ」
 更に先へ進もうとしたところを呼び止められる。柄の悪い金髪の男だった。
「何か証明の類が必要か?それなら…」
「いや、要らねぇ。俺は関係者の顔なら全部覚えてる。だが…あんたの顔は見覚えが無い。帰んな」
 証明書類を出そうとした大尉を男が制した。
「君の知らない人員補充だってあるだろう。書類ならある」
「そんな書類は幾らでも作れる。信用ならねぇ。それに…あんたからは敵の殺気を感じる」
 揉め事を起こすと面倒だが、ここを進めないとなると困る。

987 :◆tyrQWQQxgU :2020/08/02(日) 23:32:47 ID:c/vKaxZs0.net
「どうしてもっていうんなら、押し通ってみろよ」
 男が構える。何の確証も無しに突っかかってくるこの男が、不思議と嫌いではなかった。
「血の気の多い連中だな、全く」
「やっぱ余所者だな!?」
 早々に男は殴りかかってきた。大尉はそれを容易く躱すと、先に進んだ。
「おいこら待てこの野郎!」
 更に後ろから殴りかかってきたがそれも躱し、男の腰を抱えるとそのまま担ぎ上げた。
「てめぇ!離せよ!」
「口ほどにもないな。弱い犬ほど何とやらか」
「まじで何なんだよお前…くそ。」
 悪態を突く男の抵抗を意に介さない。子供の様に肩に担いだまま、気を取り直した大尉は先へ歩いた。
「…お前が何者か知らねぇが、ここは通さねぇ!」
 懲りずに男は暴れ続けた。あまりに暴れるので一旦放り投げる。
「私は丸腰だぞ?侵入者かもしれん男相手に随分と手緩いのだな」
「痛ってえ…!そういうお前こそ必死さが感じられねぇな。…もしかしてほんとに関係者なのか?」
 再度立ち上がる男を見ながら、大尉は自分のこれからが馬鹿馬鹿しくなっていた。この男の言う通り、本気でティターンズに戻りたいなどとは思っていないのは自分自身が一番よくわかっていた。
「ふん…。お互いこれでは茶番だな」
「うっせぇ!さっさと引き返せよデカブツ!」
 掴みかかってきた男をヒョイとつまみあげ、再び担ぎ上げて前へと進んだ。やはり男は暴れたが、もう降ろしてやらなかった。

988 :◆tyrQWQQxgU :2020/08/02(日) 23:33:36 ID:c/vKaxZs0.net
「来たか。…ん?」
 並ぶ機体と戦艦を前にして、ロングホーン大佐が腕を組んでいた。
「アトリエ大尉…そこで何やってる」
 ソニック大尉が担いだ男はアトリエ大尉という名らしい。
「こいつ余所者でしょう!?何者なんです!?」
 担がれたままアトリエ大尉が喚く。
「すみません大佐。機体でも奪って逃げようかと思いましたが、この男が見逃してくれなかったものですから」
 ソニック大尉は、アトリエ大尉をその辺に軽く放り投げた。彼は着地も下手くそだった。
「痛ってぇな…。何しやがる!」
「アトリエ大尉、君こそ何をやっている。彼はソニック大尉…先日の戦闘で人員が不足している君の部隊への最後の補充だ」
「え!でも」
「とやかく言うな。例の任務は彼と共に遂行しろ。それとも1人でやる気か?」
「まじかよ…」
 アトリエ大尉は立ち上がりながら身体についた埃を払った。

「…決心は着いたんだな?」
 ロングホーン大佐は再びソニック大尉を見据えた。
「はい。私は帰る場所も無い、一度死んだ身です。それに…戦うことでしか恩義を返すことが出来ん男ですから。しばらくはお世話になります」
「そうか、歓迎するとも。さあ、荷物は自室に置いておくといい。…アトリエ大尉、案内してやれ」
「はあ…了解。…ほら、デカいの!付いてこいよ」
 ややぶすくれたアトリエ大尉に付いていく形で、新たな母艦へと足を踏み入れた。

65+1話 自身の生き方

989 :◆tyrQWQQxgU :2020/08/02(日) 23:41:20 ID:c/vKaxZs0.net
「お前…ソニックって言ったっけ?ファーストネームは?」
 アトリエ大尉は腰をさすりながら艦内を歩いていた。勝てる気はしなかったが、ここまで子供扱いされると流石のアトリエ大尉も少し落ち込んだ。
「ラム・ソニックだ。君は?」
「酒みてぇな名前だな。俺はベイト・アトリエ」
 このジントニックみたいな名前の男からは、初見に敵と同じ雰囲気を感じた。しかしその割には切羽詰まったものを感じない。それはそうとしても、ロングホーン大佐が認めている以上あれこれ詮索するだけ無駄だった。
「まあいいや、ここがお前の部屋な」
「ありがたい」
 ソニック大尉の部屋に2人で入室すると、彼はゴソゴソと荷物を解き始めた。
「お前、余所者だよな?元ティターンズか何かか?」
「…勘の鋭いところは認める。そのとおりだ。大佐に命を救われた」
「なるほどね。それだけ判れば十分だわ」
 地球に置いてきたメイもそうだが、どうも元ティターンズ兵とは接する機会が多いらしい。

「それで…我々の任務というのは?」
 ソニック大尉が立ち上がる。
「ああ、新しい機体を受領しにいくんだ。俺用でな」
 先日の対アクシズ戦で部隊はかなりの痛手を負っていた。アトリエ大尉自身も乗機のネモに限界がきていたし、そろそろ丁度良い頃合いだった。
「受領するのが任務か?訳有な感じだが」
「その通り。体よく言っちゃいるが、要は奪いに行くって訳さ」
「それで鉄砲玉に元ティターンズの俺を使う訳か。…何を奪うつもりだ?」
「ふふ、それはお楽しみにしとけ。あんたはあんたとして…俺ほど適任な人材もいないんだとよ」
 そう言ってアトリエ大尉は笑った。今回奪うつもりの機体のことを考えれば、あながち間違ってもいない人選ではある。
 ソニック大尉を連れ、MSデッキへ向かった。今回アトリエ大尉は奪った機体で帰還しなければならない為、行きはソニック大尉の機体に同乗することになっている。機体の説明などを済ませ、その場はお開きにした。彼にはまだ色々と慣れて貰わねばならない。

990 :◆tyrQWQQxgU :2020/08/02(日) 23:41:46 ID:c/vKaxZs0.net
 準備を済ませ、遂に決行する日がやってきた。ワーウィック大尉達のアイリッシュが帰還した様だが、今回は出迎えに行っている暇はない。
 アトリエ大尉が格納庫へ向かうと、既にソニック大尉が機体に乗り込んでいるところだった。
「準備万端ってか?おはようさん」
「ああ、アトリエ大尉。よろしく頼む」
 まだエゥーゴに合流して日が浅いからか、少し緊張の色が見て取れる。
「あんたもMSはよく遣うと聞いたが…急にエゥーゴの機体でいけるのか?」
「問題ない。…エゥーゴはなかなかいい機体を持っているな。何よりフォルムがいい」
 2人が今回使用する機体は黒いリックディアスである。
「最近は赤が人気らしいけど、断然黒だよな」
「同感だ。ティターンズカラーという訳じゃないがな」
「ま、カッコ良けりゃそれでいいよな。…意気投合したとこで、準備するか」
 シートをソニック大尉に譲り、アトリエ大尉はその後ろについた。
『2人とも、準備はいいかな』
 艦長から通信が入る。
「ああ、大丈夫だ。短い間だったが世話になったな」
 今作戦での機体奪取成功後はこの艦から異動することになっている。主力部隊の再編である。恐らくソニック大尉もそのタイミングで正式にエゥーゴ加入が決まるのだろう。
『まだ気が早いぞ。この任務が終わるまではよろしく頼む』
「あいよ!そっちこそ手筈通り頼む」
『うむ。任された』

991 :◆tyrQWQQxgU :2020/08/02(日) 23:42:28 ID:c/vKaxZs0.net
 事前にリークした情報では奪取目標の試作機が3機建造されていて、その中の1機を奪えればそれで良い。その1機は現在月の周辺を輸送中の為、航行を妨害する形で強奪する。本来の引き渡しの為に装備が一式用意されているらしく、強襲して丸々掠め盗る予定だ。
 まずは母艦であるサラミス改で近付ける限界まで追いかけ、そこからはSFSに乗って単機で襲う。遅れてくる陽動部隊が支援するとのことだが、あまりあてにし過ぎない方がいいだろう。
「しっかし、何でまたこんなに情報が駄々漏れなんだ?」
『既に機体開発の主導権は反ティターンズ側に傾いているのでな。本質的に強奪ではなく受領と言っていい。今回はティターンズ寄りの連中が邪魔に入るだろうが、我々で対処出来る規模だ。残す記録としてもエゥーゴ側に正当性がある形を取りたいというわけだよ』
「回りくどい言い方だな」
 ソニック大尉が苦笑いする。
「俺達には関係ねぇ。貰うもん貰って帰るだけだ」
 アトリエ大尉はソニック大尉の肩を叩いた。

 月から出港したサラミス改は、予定のポイントへと向かう。敵の輸送艦が通った道をなぞる形だ。
「丁度いい時期に転向できて良かったんじゃねえか?これからティターンズは苦しくなるだろうぜ」
 出撃待機しながら、アトリエ大尉は後ろから話しかけた。
「何処で踏み違えたのだろうな。理念を持ち、能力のある人間を集めた組織の筈だった」
「へっ。そういう思い上がりが全ての原因だと思うけどな?」
「…確かにな」
 ソニック大尉は自嘲気味に笑う。彼の転向に至った経緯は詳しく知らないが、結局こうして人が離れていくのも時勢を表しているのだろう。
 そうこうしている間に敵の輸送艦が見えてくる。敵もこちらを捕捉しているはずだ。
『では2人とも、武運を祈る』
「おう!行ってくる!」
 アトリエ大尉の返事を聞き、ソニック大尉がリックディアスを起動する。SFSのスラスターに火を入れると、輸送艦へ向かって出撃した。

65+2話 回りくどい言い方

992 :◆tyrQWQQxgU :2020/08/03(月) 00:14:29 ID:uwYmBiVJ0.net
「さて…。あの輸送艦に取り付けばいいんだな?」
 ソニック大尉は操縦桿を握り直す。慣れないなりにシミュレーションはしておいた。幸いリックディアスは非常に操作性の高い機体だった。
「あんたが取り付いたら、俺が機体を奪いに行く。援護は任せるぜ」
「そんな細腕で大丈夫か?」
 とてもじゃないが、アトリエ大尉は白兵戦が得意には見えない。
「おいおい、そこはあんたの丸太みてぇな腕で援護してくれよ」
「俺ありきか。戻ったら鍛え直してやる」
「…来たぜ。お出迎えだ」
 輸送艦から敵のMSが迎撃に出てくる。ざっと4機。いずれもバーザムである。

「新型のみで編成か。余程大事な積荷なんだろうな」
「頼むぜソニック大尉!」
 開幕の合図に放たれた複数のビームを難なく避ける。まずはもっと輸送艦に近付かねばならない。敵に構わずSFSのスラスターを吹かした。
 2機ほど突出してこちらを迎撃する動きを見せている。これらの合間を縫うようにして、とにかく敵の攻撃を躱す。
「流石に…手数が多いな」
 八方から浴びせられるビームをどうにか躱しつつ、とにかく距離を詰める。
「先に叩かねぇのか!?」
「輸送艦に取り付いてしまえばやつらも手出し出来んだろう」
 嘘を言ったわけではない。とはいえ、正直まだ元同胞を撃つ事に引け目を感じている部分も否めなかった。だが敵からすればそんな事情は関係ない。当然容赦ない攻撃が続く。
「おい!大丈夫かよ!」
 うろたえるアトリエ大尉。
「黙って見ていろ!」
 粘りに粘るソニック大尉だが、いよいよ限界だった。ある程度の距離まで近付けたことを確認すると、SFSを蹴る様にして跳んだ。
「この男を送り届けねばならん。この鍛えた身体に誓って!」

993 :◆tyrQWQQxgU :2020/08/03(月) 00:15:24 ID:uwYmBiVJ0.net
 好機と見たのか、バーザムの1機が接近戦を仕掛けてきた。サーベルを抜き、加速を掛けて斬りかかる。
「ぬおお!!!」
 ソニック大尉は敵のマニピュレーターを掴み斬撃を止めると、もう片方の手で頭部を殴りつける。よろめいた敵機からそのままサーベルを奪うと、コックピットに突き立てた。
「次ぃ!!」
 背後から撃ち抜こうと狙いを定める別のバーザムだったが、逆にソニック大尉は背のビームピストルで威嚇射撃を食らわせる。
 180度転身し、今度はピストルを手に持ち直してそのまま敵を蜂の巣にする。ライフルに比べると威力は低いが、2丁をバランス良く扱うことで手数を増やせる。
「邪魔はさせんぞ!!」
 そのまま爆散するバーザムに背を向けつつ、再び輸送艦へ向かう。残る2機は連携して輸送艦を守っているが、これに取り付く為にはどうにかして敵を引き剥がす必要がある。
「やるじゃねぇかよ!見直したぜ」
 後ろでアトリエ大尉が声を上げる。
「まだだ。問題はここからだからな」

 味方の牽制に期待したいところだが、今のところそれらしい動きは見られない。可能ならばこの軌道を抜ける前にケリをつけてしまいたいところだ。
「多少強引だが…行くしかないな!」
「うおっ!」
 よろめくアトリエ大尉にも構わず、バインダーの出力を上げて突進した。迎え撃つ敵の射撃が掠める中、一心不乱に輸送艦目掛けて突っ込む。
 こちらの狙いを察したのか、敵が進路を塞ぐ様にして立ちはだかった。
「押し通る!!」
 ソニック大尉はサーベルを抜いた。受ける敵のサーベルと鍔迫り合いになり、そこへ更に別機体のビームも迫った。しかしここは引いた方が負ける。被弾しつつも鍔迫り合うバーザムを押し退けた。
 押し込まれ体勢を崩した敵機を踏みつける様にして、更に加速して輸送艦に向かって駆ける。背後から撃とうにも、この位置なら輸送艦への着弾が気になって撃てない筈だ。
 狙い通り敵の動きが鈍った隙を突き、リックディアスはそのまま輸送艦の後部ハッチを撃ち抜き、突き破りながら強引に着艦した。

「いてて…。全く無茶しやがるぜ」
「何にせよ…これで文句はあるまい。さて、お目当ての機体は何処だ?」
 モニターから周囲を確認する。バーザム達が格納されていたらしきハンガーの奥に、白い機体が見えた。
「よし、あれだな。援護頼む!」
 言うなり、アトリエ大尉はコックピットを飛び出していった。ソニック大尉に仕掛けてきた時もそうだったが、何故あの腕っぷしでそこまで無茶ができるのか…。飛び出したアトリエ大尉を追いかける形で、ソニック大尉も機体から離れた。

65+3話 輸送艦

994 :◆tyrQWQQxgU :2020/08/03(月) 00:16:06 ID:uwYmBiVJ0.net
「くそ…!簡単には渡しちゃくれねぇか!」
 アトリエ大尉は敵から見えないよう壁に背をつけて銃を抜いた。散発的に敵の銃声が響く。威勢よく飛び出したものの、騒ぎに気付いた敵クルーと白兵戦になっていた。
「…で、何か作戦があるんだろうな」
 合流したソニック大尉が溜息をつく。
「そりゃお前…その自慢の筋肉であいつらどうにかしてくれれば」
「無茶苦茶なやつだ」
 呆れ果てた様にソニック大尉が笑う。軽口を叩いてはいるが、それほど余裕があるわけではない。見た限り敵は3人ほどで、全員銃を持っている。闇雲に突っ込んでどうにかなる状況ではなかった。
 銃声が止み、ジリジリと迫ってくる敵の気配を感じる。2人は息を潜めた。
「…俺が囮になる。その間にお前が最低1人仕留めろ」
 小声でソニック大尉が呟いた。
「囮って言ったってよ…どうするつもりだ」
「俺を連れてきたのはこういう時の為だろう?俺の筋肉を信じろ」
 猶予は無い。アトリエ大尉は渋々頷いた。
「長くは保たん。任せたぞ」
 そう言ってソニック大尉は前に出た。

 遮蔽物を利用しながらソニック大尉が攻勢に出る。敵の注意を引きつけながら、アトリエ大尉のいる場所への意識を離そうとしていた。
 敵の動きを見つつ、アトリエ大尉は敵の背後を取るべくソニック大尉とは反対の方向へ走った。敵はソニック大尉との銃撃戦に夢中でこちらには気付いていない。
「よし…。くたばってな」
 瞬時に敵へ狙いを定めると、背後から1人の頭を撃ち抜いた。崩れ落ちた味方に気を取られたもう1人を、ソニック大尉が逃さず撃つ。
 最後の1人は逃走を図ったが、ソニック大尉が後ろから羽交い締めにする。揉み合いになりながらヘッドロックの要領で首を抑え込むと、そのまま落としてしまった。
「上出来だな。取っ組み合いにさえならなければお前も良い腕だ」
 周囲を確認しつつソニック大尉が言う。
「俺に限らず取っ組み合いであんたに勝てるやつがいるのか怪しいがな!…あんたはディアスに戻れ。俺は目標を奪取する」
「了解。そろそろハッチも破られそうだしな」
 ソニック大尉の言う通り、先程破壊したハッチから外のバーザムがこちらに向かってこようとしていた。アトリエ大尉は、踵を返したソニック大尉とは反対方向へ走る。

995 :◆tyrQWQQxgU :2020/08/03(月) 00:16:39 ID:uwYmBiVJ0.net
「待ってろよ…!」
 アトリエ大尉はとにかく機体のもとへと急ぐ。息を切らせ辿り着いた場所には、純白の機体がいた。白い装甲には赤いラインが走り、やや大型で独特なフォルム。それを見上げながらアトリエ大尉は懐かしい気分がしていた。
「久しぶりだな…ガンダム」
 そこに居たのは、アトリエ大尉のかつての乗機であるガンダムMk-?の正当後継機…ガンダムMk-?だった。
 まだ一部調整が済んでいないとのことだが、一応ひと通りの装備が揃っている。アトリエ大尉はハンガーのレールを伝い、コックピットへと飛び乗る。
「ガンダム盗るなら俺に任せろってね…。ま、1機盗んで1機は諦めたけどな」
 ワーウィック大尉にベッタリだったスクワイア少尉を思い出して、つい笑った。あの生真面目な男が、ああいう娘に懐かれているとは思ってもみなかった。
 事前に確認していた手順で手早く機体の起動に入る。その起動手順もMk-?と通ずるものがあった。乗機だったMk-?はムラサメ研究所が盗用データから組み上げた不完全な機体でもあったが、Mk-?はオーガスタ純正だ。
 Mk-?の一件を問われたムラサメ研究所も開発に手を貸す羽目になった様だが、サイコガンダムの運用データなどの提供によりMk-?の完成は早まったという。
「よし…動けよ…!」
 各シーケンスをクリアし、デュアルアイに光が灯る。それと同時に、アトリエ大尉も前を見据えた。
「ガンダム…また俺と戦えて光栄だろ?」

996 :◆tyrQWQQxgU :2020/08/03(月) 00:17:28 ID:uwYmBiVJ0.net
 ハンガーから強引に引き剥がす様に機体を動かしつつ、リックディアスと通信チャンネルを合わせる。
「ソニック大尉!目標を奪取した!離脱するぜ!」
『わかった!これ以上は持ち堪えられん!急げ!』
 前方を確認すると、ハッチをこじ開けたバーザムと揉み合いになっているリックディアスが見えた。
「借りは返さねぇとな」
 専用のライフルを構え、正確にバーザムの頭部だけを撃ち抜く。そのままソニック大尉はバーザムを組み伏せた。
『よし!先に行け!』
「了解!」
 開けたハッチから脱出する。が、それを待ち伏せていた残る最後のバーザムが背後から斬りかかってきた。
「甘いぜ…鶏ちゃん」
 斬撃をひらりと躱し、追撃のライフルも容易く避けた。アトリエ大尉が反応した通りに機体が付いてくる。ネモが悪い機体だったとは言わないが、やはりガンダムは規格外だ。インターフェースのせいもあるが、やはりMk-?を思い出す。
 迫る敵と向かい合いながら、とっておきの武装を射出した。当然、使い方なら熟知している。
「ん?2基もあんのか…!流石後継機…贅沢なこって!」
 再度斬りかかろうとしたバーザムだったが、それは叶わなかった。ガンダムの射出したインコムがサーベルを手首ごと弾き飛ばしたのだ。更に脚部、頭部、肩…あらゆる部位を四方から撃ち抜いた。半壊したバーザムを、大型サーベルでとどめを刺す様に両断する。
「この威力…オーバーキルか?…一理ある」
 爆散する敵機を背後に、ガンダムは悠々と武装を収めた。

『お前…その武装。…ニュータイプってやつか』
 続いて脱出してきたソニック大尉のリックディアスが追いついた。
「最近はもうニュータイプニュータイプって言われ過ぎて否定するのも面倒になってきたわ…。それに、インコムの事ならシステム的にはオールドタイプでも使えるんだけどなあ」
『いや、俺は遠慮しておこう…』
 2人が合流して程なく、援軍が輸送艦を取り囲んだ。彼らの予定よりもかなり早い段階で敵を殲滅してしまったらしい。
「これで任務完了だな。あんたが居て助かったぜ」
『お前のようなやつと戦場で相対することが無くて良かった』
「へっ、そうかい。…まあこれからもよろしく頼むわ」
 友軍にその場を任せ、2人はサラミス改への帰路についた。

65+4話 純白の機体

997 :◆tyrQWQQxgU :2020/08/03(月) 00:24:58 ID:uwYmBiVJ0.net
何だかんだギリギリになりましたね…
取り敢えず次建てときました!

次スレッド
グリプス戦役の小説書いてるんだけど
https://medaka.5ch.net/test/read.cgi/x3/1596381803/

まさか跨ぐ事になるとは書き始めた頃には思っても見ませんでしたが…笑
引き続きよろしくお願いします!

998 :通常の名無しさんの3倍:2020/08/03(月) 07:32:19.93 ID:PIGO23ZM0.net
乙です!

まだ黒塗りのディアスなんていたんですね...w
あのドムもどきなカラーリング嫌いじゃないです

裏切ったのがシロッコだとしても、ティターンズ全体がジャブロー核自爆をやらかす危険集団、どのみち戻れはしない...
ここでGMキャノン2! 新訳要素も嬉しい
やはりアトリエは勘がいい、まだソニックにも迷いがあったでしょうしね
書類の件はWのデュオが「偽物だけどなぁ!」と行って逃げていくシーンを思い出しましたw

ここで来たか、(顔的に)虫野郎! 青に塗られる前というのがまた細かいw
もしやソニックをゼク・アインに乗せたのは、MK-V奪取作戦への伏線だったのでしょうか?

(もうアトリエの心配はしてないので、笑)ソニック、お前くらい生き残れよ...!

次スレ、楽しみにしてます!

999 ::2020/08/03(月) 10:37:01.45 ID:uwYmBiVJ0.net
>>998
個人的に黒ディアス渋くて好きので…笑

ティターンズは実際かなりヤバい事してますし、ソニックは知らされてない部分もあれど加担している部分もありましたから。
メイの時ほど割り切れてはいない感じですが、その辺りも3章で!

クインマンサ顔のあいつです…!
1機が教導団、1機がネオ・ジオンへ行くので正直ギリギリの数ですが…
前作主人公の1人が乗るガンダムと考えると、丁度いい顔してます笑
そうですね、教導団行きの機体同士っていう接点はあります。後で簡単に掘り下げますが、その辺の絡みも考えてはいます。

ウィード隊最後の1人がエゥーゴに来てしまいましたが、それによって彼らのストーリーもまだ終わっちゃいないといったところですね。

よろしくお願いします!

1000 :通常の名無しさんの3倍:2020/08/03(月) 17:12:42 ID:PIGO23ZM0.net
第1部・第2部、完!

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