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【邪気眼】二つ名を持つ異能者達【其ノ拾】

1 :テンプレ1/2:2013/05/04(土) 21:59:03.63 0.net
ここは【二つ名】を持つ異能者達が普通の人間にはない【第三の眼】を使って
架空の現代日本を舞台に異能力バトルを展開する邪気眼系TRPスレッドです。
登場キャラクターの詳細、各用語、過去ログのミラーは【まとめwiki】に載っております。

*基本ルール
[壱]参加者には【sage】進行、【トリップ】を推奨しております。
[弐]版権キャラは受け付けておりません。オリジナルでお願いします。
[参]参加される方は【テンプレ】を記入し【避難所】に投下して下さい。
[肆]参加者は絡んでる相手の書き込みから【三日以内】に書き込むのが原則となっております。
   不足な事態が発生しそれが不可能である場合はまずその旨を【避難所】に報告されるようお願いします。
   報告もなく【四日以上書き込みが無い場合】は居なくなったと見なされますのでご注意下さい。

*参加者用テンプレ
名前:
性別:
年齢:
身長:
体重:
職業:
容姿:
眼名:○○眼
能力:
人物紹介:

2 :テンプレ2/2:2013/05/04(土) 21:59:47.11 0.net
*まとめwiki
【邪気眼】二つ名を持つ異能者達@wiki
http://www35.atwiki.jp/futatsuna/pages/1.html

*専用掲示板
【邪気眼】二つ名を持つ異能者達@専用掲示板
http://yy81.60.kg/futatsuna/

*避難所
【邪気眼】二つ名を持つ異能者達 避難所【其ノ弐】
http://yy81.60.kg/test/read.cgi/futatsuna/1329993613/

*過去スレ
【邪気眼】二つ名を持つ異能者達
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1274429668/
【邪気眼】二つ名を持つ異能者達【其ノ弐】
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1286457000/
【邪気眼】二つ名を持つ異能者達【其ノ参】
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1292605028/
【邪気眼】二つ名を持つ異能者達【其ノ肆】
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1294751568/
【邪気眼】二つ名を持つ異能者達【其ノ伍】
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1311515589/
【邪気眼】二つ名を持つ異能者達【其ノ陸】
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1321693013/
【邪気眼】二つ名を持つ異能者達【其ノ漆】
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1335730347/
【邪気眼】二つ名を持つ異能者達【其ノ捌】
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1345655745/
【邪気眼】二つ名を持つ異能者達【其ノ玖】
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1357582712/

3 :ルカ・ナイトヘイズ@代理:2013/05/04(土) 22:03:48.32 0.net
「オトコに揉まれると大きくなるって言うじゃん? 鼬さぁ、誰と寝たのよぅ〜?」
『ぶ、無礼な……。まったく、そなたからは危機感のきの字も感じられぬ。もう少し己の現状をだな──』
「──わかってるって」
度の越えたリラックスぶりに流石に口を尖らせる鼬だったが、
対するルカの返事はあたかも聞き流すが如くの速答なれど、その声にはこれまでにない確かな“重さ”があった。
「ここに来る途中で色々街を見回ってきたけど、証拠になってるとかいう写真がそこら中にばら撒かれてたわ。
 確かに鼬の言った通り、それを見てる連中は頭っから信じてる様子だった。
 血眼になってる奴もちらほらいたし……ボサボサの頭とラフな格好してなきゃ間違いなく襲われてたと思う。
 って、それって逆言えばその時のあたしが写真のカワイ子ちゃんと似ても似つかないって思われてるって事なんだけど」
軽口を交えてはいるが、なるほど彼女のなりに現状の分析はできているらしい。
鼬は一度安堵を意味するような溜息をつくと、今度は電話越しのルカにも聞こえるように大袈裟に頭を掻いた。

『とすると、やはり“そのまま”で居た方が都合が良いということになるわけだが……』
「ジョーダンじゃないわよ! あんな格好で出歩いてたらあたしのイメージ崩れちゃうじゃない!」
『……そう言うと思ったぞ』

時に合理的なことを言って柔軟に対応するかと思えば、変なところに意地を張って不合理な姿勢を貫く。
まぁ、わかってはいたが……それにしても一体、どういうイメージを振り撒いていたのだろうか……?
そんな突っ込みたい気持ちを抑えて、鼬は再び溜息をついた。

「あによ、呆れちゃったみたいな溜息ついてさ。大丈夫だって、この街であたしに敵う奴なんてそうはいないって」
『だと……いいのだが』
「場合によっちゃソフィア(あの男女)を生贄に使ったっていいわけだし、まぁ、上手くやるよ。
 それより鼬はあたしのことより自分の心配をしてなよ。スケベな拷問係の手にかかるかもしれないんだから」
前半で恐ろしいことをサラッと、後半で官能的な取調べを想像させる意地悪いことをケロッと言い放って、
ルカは「うふふふふ」と悪趣味な笑みを零す。

『やれやれ……そなたは一生死にそうにないな』
「ま、頑張ってよ。そんじゃあたしはそろそろ行動に出るから、切るよ」
そして、一方的にそう告げて通話終了ボタンを押すと、休む間もなく再び通話のボタンを押して、耳に携帯を押しやった。

4 :ルカ・ナイトヘイズ@代理:2013/05/04(土) 22:04:19.28 0.net
プルルルルル──プルルルルル──。誰にかけてもいつも同じお馴染みのコール音。
相手が出るのを待ちながら、ルカは指でトントン、と洗面台を小突く。
彼女の性格上、二、三度のコールで痺れを切らすのは日常茶飯事のことである。
ましてや今は置かれた立場が立場なのだ、気持ちが急いていても不思議ではない。
だが、今回ばかりはそれだけが原因ではなかった。いやむしろ、原因といえば“それ”しかなかったといえるだろう。
(あぁ〜……なんか嫌だなぁ、この気持ち……)
彼女は今、柄にもない年相応の乙女心からくるちょっとした決まりの悪さから、若干憂鬱であった。
(……嫌だなぁ……よりにもよってこんな日に……)
鏡にソメイヨシノの花弁のような色にほんのり染まった頬が映るのを見て思い出す、昨晩見た夢。

季節は夏。海に来ているのであろうルカは水着姿で一人、夕日を背に人気の無い海岸に立っている。
だが、「こうしてこの夕日を見られるのはあたしのお陰よ、感謝してよね」とまるで誰かが傍に居るかのような
ことを抜かしたかと思えば、突然「夕日よりも、君の赤眼の方が綺麗だよ」と歯が浮くようなことをほざいて
背後から抱きしめてくる男が登場。
初めは抵抗するも、耳元で甘い言葉を囁かれ続ける内にルカは全身が溶けるような感覚に襲われやがて無抵抗に。
気がつけばその男に砂浜の上に仰向けに押し倒されただけでなく、更に唇を奪われ、終いには水着を脱がされて……。

(あぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああッ!! ない! ないないないない!! ありえないッ!!)
確かにありえない、確かに夢だからこそありえた光景。それはわかっている。
寝起きの時に勢いに任せて「いいとこだったのに」と口走ってしまったが、それが本心ではなかったのも確かである。
それでも、ルカはその頬を火が点いたかのように真っ赤に染め、頭を横に振って記憶を消そうと必死であった。
誰だって一度はそういうどこぞのフィクションの世界にありそうな甘い淫らな夢を見るかもしれない。
淫夢という言葉が世の中にあるくらいなのだから、恐らくそうなのだろう。
ならば正常といえるし、恥と思わず開き直ったっていい。だが、そうは問屋が卸さないのが今の彼女の心境であった。
何故なら──

5 :ルカ・ナイトヘイズ@代理:2013/05/04(土) 22:04:49.47 0.net
「──ッあ! あ、あ、あのぉッ──あた、し……だけドッ」
通話が開始されると同時に、若干、たどたどしく、ところどころ声を上ずらせながらルカは言葉を吐きつける。
返ってきたのは七月二日に初めて会い、言葉を交わし、共に闘った男の声──……ソフィア。
そう──彼こそが彼女に決まりの悪い思いをさせていた元凶であり、夢に登場した男その人だったのだ。
対する当のソフィアといえば素知らぬ不利というようにただただ落ち着いている。
というか、知らないのが当たり前なのであるが……半ばパニックにある今のルカにはそれすらカチンと来る。
「ちょ、ちょっと……あ……あたしがわざわざ電話してやってんのに感謝の一つもないってのぉっ?
 って、てゆーか謝れ! 昨日あんだけスケベなっ……って、あっいや………………あぁ〜〜もぉ〜〜!!」
しかし、感情に任せて言葉を並べてもどんどん本筋から離れていく。
自分でも何が言いたいかわからなくなり一層その顔を上気させて慌てたルカは、
とにかく早く用を済ませて楽になりたいとばかりに唐突に早口となって用件を告げるのだった。
「あああたし達ハメられたらしくてそそそれで番号は鼬から聞いて電話したんだけどとととにかく合流した方がいいみたいだから
 とりあえずあああ会って欲しいんだけどッ!! ばば場所は今あたしがいる北エリアの……え、えぇえっと人気のない……
 えええと……うん、そう、山のふもとにある寂れた公園ね!! まま、待ってるからッ!!」

ブチッ。一方的に通話を遮断するルカの携帯。
「はぁー、はぁー……」
洗面台に手をつき、鏡に映し出した顔はとにかく汗ばみ、肩はランニング後のようにゆっくりと上下していた。
「サイアク……あたし、なんでこんな緊張して……」
自問するように鏡の自分に向かって呟くルカは、次の瞬間、ゴクンと唾を飲み込んで「まさか──」と発していた。

(あたし……オトコに耐性が無い……!?)
考えてみれば、夜霞の兄弟を除けば同世代の若い男とこれまで親しい仲にあったことがない。
それを自分では別に気にしたこともなかったし、ましてや自分に限って漫画の奥手のキャラクターのように
ありがちなリアクションをすることなどないとも思っていた。だが、現実はどうだ?
妙に自分と相手の性別を意識してしまっているし、胸は高鳴っているし、顔は火照りっ放しではないか。
しかも、前に学校の喫茶店で二人仲良く食事していた鼬とソフィアのことを思い出すと、何故だか悔しさが込み上げてくるのだ。
それが嫉妬だとしても、鼬が自分に先駆けてオトコに耐性をつけていた事に対するものならばいいのだけれど、
仮に……仮に百歩譲ってそうではない別の感情から来る嫉妬だとするなら……。そう思うと全身がむずむずした。
(やばい、やばいって……! ジョーダンじゃないってば!)

ありえない──それを頭の中で何度も連呼して体のむず痒さを必死に打ち消そうとするルカであったが、
それとは裏腹に彼女の内に芽生え始めた淡い思いは加速度的に膨らんでいくのであった。

【ルカ:思い込みが加速し、ソフィアを意識するようになる。現在地:北エリア北部の山のふもとにある寂れた公園】

6 :ミゼル・アインスウェイン ◆21WYn6V/bk :2013/05/04(土) 23:49:14.68 0.net
七月五日から遡ること二日前──七月三日の深夜。
ミゼルは危険区域に足を運んでいた。
この時期にしては珍しく涼しげな風が吹いており、彼女の長い髪の毛を揺らしていた。
今宵、彼女は珍しく髪をアップにしており、普段は隠れている顔が僅かな月明りに照らされている。

「さて、と──。確か市内のコラプターを統一、だったかしら。
 ……その過程で戦闘は必ず発生する。無血開城は不可能だもの」
誰に言うでもなく、一人呟きながら歩を進めて行く。目的地はとあるコラプター達のグループが溜まり場にしているという建物。
「"不慮の事故"で犠牲者が出ても問題はないわよね?こっちも命を狙われるんだから」
フフフ──と口を歪めて笑い、楽しそうな足取りで区域中央に消えていく。
月に照らされた彼女の瞳は爬虫類のように細まり、笑った口元から覗く牙のような犬歯と合わせて、まさしく獲物を狙う蛇のようであった。

「おい、聞いたか?あの話」
「あぁ、ダーク・スネークの話だろ?何でも九鬼党とクリムゾン・フォースを吸収したとか」
「俺達もいよいよやばいんじゃねぇか?」
「何言ってやがる!俺達のグループだって小さいわけじゃねぇ。
 奴らとぶつかったって勝てるさ!」

二人の男が話している。どうやら見張りのようだ。
とは言ったものの、話に夢中で周囲の確認を全くしていないので、見張り役としては如何なものか。
「こんばんは」
そんな彼等の背後から、この場には似つかわしくない若い女の声が聞こえた。
「あ?なん──」
その言葉は最後まで続くことはなく、彼の首は胴体と別れを告げた。

「……て、敵襲だあああぁぁぁぁ!!!」
残された一人が大声で叫ぶ。
その声を聞いて、周囲の建物にいた彼の仲間達──ミゼルにとっては目標──が次々に飛び出して来る。
「何者だ!ダーク・スネークの手先か!?」
リーダーと思しき男が声を荒げて問い質してくる。
「んー……ハズレ。私はあの男の部下じゃないわ」
「じゃあ一体──」
「強いて言うなら同僚、かしら。ま、私のことなんてどうでもいいじゃない。
 それよりも自分達の心配をした方がいいわよ?
 とは言っても──あなた達に残された選択肢は、ここで死ぬか降伏するかの二つだけど」
一息ついて一旦言葉を切り、スゥ──と息を吸い込んで、挑発的な笑みと共に彼らに告げた。

「死にたいのならかかってらっしゃい。そうでなければ降伏しなさい。
 ──私としては前者希望だけど」

うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ──────!!!!
その言葉を皮切りに、大量のコラプター達がこちらに向かって走ってくる。
その数は五十や百ではきかないだろう。普通ならやられるか逃げ出すかのどちらかだ。
だが彼女──ミゼルは口元に子を描くだけで、逃げ出す様子は一切なかった。
それもその筈。先程言ったように、これは彼女の望む展開なのだから──。

7 :ミゼル・アインスウェイン ◆21WYn6V/bk :2013/05/04(土) 23:49:46.10 0.net
「ウフフ────アハハハハハハ────!!」

高笑いと共に、彼女の背後から車やポスト、無数の大小様々な瓦礫が飛んでくる。
凄まじい速度で飛んでくるそれらを撃墜する技術は彼等にはなく、大多数は無情にも押し潰され、吹き飛ばされていく。
それでも数十人は飛来物を突破し、ミゼルの下へ辿り着こうとしていた。

「これだけ近付けばさっきのような攻撃は出来まい。仲間の仇──討たせてもらうぞ!」
彼女を囲んだ内の一人が口を開く。
確かに、先程のような物を投げる攻撃は対象を引き寄せなくてはならないので、接近された状況では使い辛いだろう。

「ふぅん……中々頑張るじゃない。そうこなくちゃ面白くないわ」
だがミゼルはそんなことはお構いなしと言う風に言葉を返す。
「強がりを……同時にかかれ!!」
号令と共に三方向から突っ込んでくると同時に一斉に能力を発動し、炎や雷などの様々な攻撃がミゼルに殺到する。

「多方向からの同時攻撃は悪くない作戦よ。私相手じゃなければ健闘出来たかもね」
落ち着いた声で解説し、自身も能力を発動。無数の弦が縒り合わさり、巨大な注連縄のような状態になる。
それがミゼルに巻きつくように彼女を覆い、飛来した攻撃を全て弾いた。

「なっ──!!」
「何だありゃあ!?」
その光景に動揺した彼等に隙が生じる。そして彼女はその隙を逃さなかった。

「蹴散らしなさい──『オロチ』──」

その声を合図に、彼女に巻きついていた太い弦が体から離れ、まるで本物の蛇のように蛇行しながらコラプター達に向かっていく。
「ギャッ!!」
「く、来るn──ウギャアアアアアアアア!!!!!」
「く、苦しい……助け……」
ある者は押し潰され、ある者は引き裂かれ、またある者は締め付けられて体中の骨を砕かれる。
「に……逃げろおおおおおおおおおおおお!!!」
そして、未だオロチが到達していない者達でも、一方的な殺戮を前にして逃げ出し始める者が出始めた。

「言ったはずよ。死ぬか降伏だって──」
しかしミゼルが逃走を許す筈もなく、逃げ出そうとした者は、いつの間にか周囲に張り巡らされていた弦で体中を切り裂かれた。

「こ、降伏する……!だからい、命だけは……!」
先程のリーダーらしき男が土下座をしながら懇願する。
ミゼルはそれをつまらなそうに見下ろして、溜息と共に男に告げた。
「ハァ……向こうに結構生きてる人間がいる筈だから、彼等を連れてダーク・スネークのアジトに行きなさい。
 そうすれば取り敢えず命だけは助かると思うわ。下手なことしなければね」
それを聞いた男は生き残った数人に声をかけ、車や瓦礫が散乱している方へと走っていった。

そんな調子で二日間危険区域を渡り歩いた結果──ほぼ全ての組織は壊滅、ダーク・スネークに吸収される形となった。
そして現在、七月五日──

「『大蛇』はうまくやったみたいね」
手には一枚のコピーされた写真。そこには警官達を惨殺している太刀風達の姿が写っていた。
「街全体が敵となるこの状況──どう切り抜けるのかしら?
 出来れば私と闘うまで死なないで欲しいものだけど──」
呟きはビルの合間に吹いた風に乗って、廃都の空へ吸い込まれていった──。

【ミゼル・アインスウェイン:七月五日に突入。現在地:危険区域】

8 :ソフィア・ストラトス・ソロモン@代理:2013/05/06(月) 16:32:01.88 0.net
路地裏から路地裏へと、人目を盗んで移動する―――それがステレオタイプな潜伏者というものだろう。
だがソフィアは違った。ルカを探して街を“見下ろしている”のだ。今いる場所は地上百メートルは有ろうかという鉄塔の上。
馬鹿と煙は高い所が好きとはよく言ったものだが、決して愚かな行動ではない。
第一に人探しにこれほど便利な立ち位置はそうそう無い。第二に簡単には手出しが出来ない。第三にそもそも見つからない。
考えてみて欲しい。熟練のスパイが追跡者の気配を察知したとしよう。後ろを振り返り、物陰に目を光らせ、前面尾行も考える。
だが頭上を見上げる者が果たしているだろうか? 家々の屋根、ビルの屋上、鉄塔の先端を飛び移りながら追ってくる超人―――
想像するだけで馬鹿らしい。その余りに有り得ない行動を実行する事で、ソフィアは街中の捜索を逃れていた。
(…まったく、どいつもこいつも写真1枚で目の色変えやがって…自分たちが超常現象の申し子だっつーのに。
 脳みそに沁み込んで侵入してくる様な催眠じみた違和感に気付かないのか? 映ってる本人にしか分からねーのか?
 でもマスター・レオは速攻で気付いたな…ああ―――)
―――あの人は特別か、と呟いた。それと同時に無線機が鳴り出した。

「──ッあ! あ、あ、あのぉッ──あた、し……だけドッ」
「あ、どーも。ルカさん…何の思惑有ってか知らねーけどお互い厄介な事件に巻き込まれた様で」
頬を撫でる初夏の風の様に飄々とした態度のソフィア。対してルカの言葉は妙にたどたどしい。
「ちょ、ちょっと……あ……あたしがわざわざ電話してやってんのに感謝の一つもないってのぉっ?
 って、てゆーか謝れ! 昨日あんだけスケベなっ……って、あっいや………………あぁ〜〜もぉ〜〜!!」
「…悪ぃ、何が言いたいのかサッパリ分からない。3文で頼む」
「あああたし達ハメられたらしくてそそそれで番号は鼬から聞いて電話したんだけどとととにかく合流した方がいいみたいだから
 とりあえずあああ会って欲しいんだけどッ!! ばば場所は今あたしがいる北エリアの……え、えぇえっと人気のない……
 えええと……うん、そう、山のふもとにある寂れた公園ね!! まま、待ってるからッ!!」
捲し立てるだけ捲し立ててブツンと切れる回線。ソフィアの頭上にクエスチョンマークが浮かぶ。
「……本当に3文で言い切りやがった…それはそうと何を焦ってたんだろう―――っ!?」
暢気な顔をかすめたのは金属製のブーメランだった。下の空き地に目を向ければいつの間にやら30人ばかりのキャデット達。
ふう、と溜息をつくとソフィアは重力加速度を減衰させて粉雪の様にゆっくりと宙を下りて行った。

9 :ソフィア・ストラトス・ソロモン@代理:2013/05/06(月) 16:32:31.84 0.net
「よう、良い日和だな…どうした殺気を漲らせてよ。ん?」
久しぶりに会った悪友に声を掛けるような気楽さで声を掛けるソフィア。それに対してキャデット達は尋常でない敵意をむき出しにする。
「黙れ! 反逆者め! 何を企んでいる!?」
「この人殺し! この人でなし!」
「前々から気に喰わなかったんだよ…手前はよぉ…丁度いい機会だ、ぶっ潰す!」
次々と浴びせられる罵声。込められた殺気と対照的に彼らの目は何かに操られているかの様に虚ろで光が無い。
(…これもあの写真の“効力”か…グダグダの泥仕合やってる暇は無ぇ)
すっと右脚を上げて胸の前で両腕で龍の咢を象る―――ソフィアはこの二日で編み出した新しい技を試そうとしているのだ。
「かかれぇぇええええ!!」
そんなソフィアに向かって来る30人。その突進が自らの意思で無く“吸い寄せられる”のに変わるのはたった数秒のことだった。
「…『龍嚥(りゅうえん―――)』」
白銀に輝く髪を逆立たせ、爛々と紫色を湛える眼でタイミングを見計らうソフィア。突如発生した吸引力は他ならぬその両腕から生じている。
轟々たる猛風。風速にして何十メートルだろうか? “それ”に巻き込まれてキャデット達は風に身を躍らせる。
「―――『虎吐(こは)』!!」
瞬間、踏み込んだ右脚、広げられた両の掌。それと共に生じた前方180度を吹き飛ばす爆風。
哀れな集団はまとめて吹き飛ばされ、背後の貯水池に落下した。

『龍嚥虎吐(りゅうえんこは)』―――両腕で龍の咢を象り、周囲の空気分子に止める力を急速に注ぎ込む。
運動、振動を止められた分子は急激に―――分子構成にもよるが―――液化、固化して体積を激減させる。
一瞬で体積が激減した空間は真空状態となり、極度の低気圧状態が生まれ、それを補うべく猛風が吹き込む。
吹き込んできた風も液化、固化。巨大な吸引力が周囲のモノを飲み込んでソフィアに向かって行く。
そして頃合を見計らって止める力を一気に解除。異能力の縛りを解かれた分子は打って変わって一気に気化する。
体積変化は約1000倍。熱こそ伴わないが、それが爆風と化して吸い寄せられたモノを今度は吹き飛ばすのだ。
「この装備じゃなきゃ出来ない技だな…すげーな、液化した空気の温度も通さないし。爆風の反動もしっかり受け止められる」
それだけ言うとバシャバシャと水音を立ててもがく可哀相な集団に背を向け、ソフィアは駆けだした。

「よう、遅れて悪い。一悶着あってさ…街の目も掻い潜らにゃならんし苦労したぜ」
約10分後の錆びれた公園。公衆トイレの屋根の上に突然着地したソフィアを見て、ルカは何故か顔を赤らめる。
「これからどーするよ? 鼬さんを助けに行くのは自殺行為だ。写真を作ってる奴をぶちのめしゃ手っ取り早いけど、探し回るのは無理。
 もう少し戦力が欲しい…と、なると一緒に映ってる藍先生をお誘いするのがいいかな?…どうよ?」
ルカは答えない。なぜか赤面した顔を風船の様に膨らませて視線を合わせたり外したり…
3分程、ソフィアがルカの顔を覗き込んで、ルカがそっぽを向いて、またそれを追いかけてグルグル回って…ソフィアが根負けした。
「あー、何なんだよ! 呼び付けといてシカトかよ! 案が無いならオレに続け! 御影の屋敷に行くぞ!」

【ソフィア:遭遇したキャデットの集団を撃破しルカと合流。御影邸に行く事を提案】

10 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2013/05/21(火) 00:43:34.96 0.net
>>9
「ん〜〜……」
洋式の便座に腰掛けながら、ルカは一人呻っていた。
別に用を足そうと気張っているわけではない。
視線の先、手に持った携帯の画面、その表示内容がどうも期待したものとは違う不満のあるものだったからだ。

(何度やっても同じか。……アクセスは完璧、ブロックされてるわけじゃない。
 ……やっぱりこれが正真正銘オリジナルのデータ。……ってことは……)
「誰かに先を越されたってこと……よね」
顎に手を置きながら視線を横に流すルカ。
その顔はいつになく神妙で、やはり厄介なことになっている──とでも言いたげなものであろうか。

「よう、遅れて悪い。一悶着あってさ…街の目も掻い潜らにゃならんし苦労したぜ」
「──どわぁっ!?」
だが、そんな顔つきも頭上からの不意の声によって一気に崩れる。
見れば、そこには連絡から十分ほどの時を経て無事に到着したソフィア。
「あわわっ」
えらいところを見られた──そんな慌てぶりで便座から立ち上がったルカは、
顔を真っ赤にした半泣きの顔で自分のズボンに手をかけたが、そこで正気を取り戻してほっ、と安堵の息をついた。
初めからズボンを下げて用を足していたわけではない。
つい興奮して状況を見失ってしまったが、別に見られて恥をかくようなことは何もしていなかったのだ、と。

それでも、彼女はまだ本当の意味で自分を取り戻してはいなかった。
「これからどーするよ? 鼬さんを助けに行くのは自殺行為だ。写真を作ってる奴をぶちのめしゃ手っ取り早いけど、探し回るのは無理。
 もう少し戦力が欲しい…と、なると一緒に映ってる藍先生をお誘いするのがいいかな?…どうよ?」
降りてきたソフィアが言うが、今までのルカならそんなことを言わせる前に文句の一つや二つ、
例えば「ノックぐらいしろ、変態!」とか「どっから入って来てんのよ変人!」ぐらいのことは言っていたに違いない。
(うぐぐ……)
だが、今の彼女と言えば何も言えず、頬を赤く染めたままただソフィアの顔を凝視したり目を逸らしたり……
何とも要領を得ない態度に終始するばかり。
ルカ自身、そのらしくない接し方を早く改めようと内心では躍起になっていたのだが、
それ以上に乱れきった気持ちを抱えていた為に戸惑う他なかったのである。

(う……うぅぅぅぅぅぅぅ〜〜……)
相手にも聞こえてしまうんじゃないかと思うほど心臓が高鳴り、冷や汗に似たものが顔中溢れてくる。
止めようと思っても止められない、落ち着こうと思っても落ち着けない。それは初めての経験だった。
(こ、これってやっぱ……)
とはいえ、それが何らかの急性の病気だとかと勘違いするほど幼いわけでもなければ、鈍いわけでもない。
彼女はここに至ってしっかりと、明確に昂りの原因を直視していた。

(あたし……あたし、こいつのこと“好き”になってるみたい……!!)
頭の中で、両手で両の頬を覆いながら涙目になるルカ。
それは彼女にとって理解すればするほどショックな現実であったのだ。

初めて会ったのはたかだか数日前。その時の当初の印象は悪いもので、決して心を開けるような相手ではないと思っていた。
それから確かに色々と面倒な事情から共に闘ったりなどしたが、一気に好意を持つに至るなどどうかしてるとしか思えない。
しかもその切欠が人には言えないような夢であるから尚更である。
恋に理由はないと言うが……それでも何故だろう? という疑問は当然ながら無視することはできなかった。
(確かに良く見れば中性的な顔だし、スポーツマンみたいにガッシリしてるみたいだし……)
ルカは不思議そうな面持ちで顔を覗きこませるソフィアから逃げるように顔を背けつつ、
時折、ちらっと視線を送りながら惚れた理由を“彼”の容姿に求めようとするも、どうも違うと首を傾げる。
では、内面か? と思ってみても、彼の内面など良く知っているはずもない。
となると、理屈抜きの何かに惚れ込んでしまったと考えるしかないのかもしれないが、彼女はそれで良しとはしない。

相手に一方的な好意を持たれるならまだしも、たまたま身近にいたオトコに何の理由も無く自分から惚れてしまったとあっては、
自身を全てを虜にする世紀の美少女と自称するルカのプライドが許さないのだ。

11 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2013/05/21(火) 00:45:16.92 0.net
だからルカは必死に考える。あたかも金色に輝いて見えるような理由をだ。
ソフィアが追い、ルカが逃げる──ぐるぐるぐるぐるとその場に回り続けながら相手を観察し、美点を見つけ出そうとする。
だが、何をしたって情報不足は否めないし、時間的な縛りから焦りもあって答えは一向に出ない。

「あー、何なんだよ! 呼び付けといてシカトかよ! 案が無いならオレに続け! 御影の屋敷に行くぞ!」
そんないつまで経っても煮え切らないルカの態度にいよいよソフィアが痺れを切らす。
まぁ、当然の言い分である。だが、そうとわかっていても素直に「ごめん、わかった」が言えないルカは、
「う、うっさいわねぇ! だ、大事な考え事してんのよ! 男ならレディに少しは気を利かせなさいよ、もう!」
と、そっぽを向く。
それに対しソフィアは無言。まぁ、色々と突っ込みたい気持ちはあっても、
仮に「大事なことって?」と訊いたところでルカがお茶を濁したらそれまでだし、
「オレは女だ」と明かしてそれを体で証明しても却って収拾がつかなくなるのが目に見えていたからだろう。

とはいえ、何か言いたそうな顔をしているのは当のルカもわかっていたこと。
これ以上間を引き伸ばすと流石に気まずくなる……と、ルカの脳細胞は一層思考を加速させる。
(…………あっ、そうか……)
するとその甲斐あってだろう、十五秒かあるいは二十秒かという沈黙を経た時、彼女はある一つの名案を浮かび上がらせていた。

「オホン!」と咳払い一つして、ルカはゆっくりとソフィアに振り向く。
その顔には先程までの赤みが若干残っていたものの、落ち着きを孕んだ得体の知れない小悪魔的な笑みが張り付いていた。
それを見て心なしかギョットするような面持ちのソフィアに、ルカはつかつかと歩み寄って言う。

「──ところであんたさ、この街の地下に収監されてたA級犯罪者が脱獄したってことは知ってる?」
そして隣に並び立つように体を寄せると、自分の二つ折りの携帯を二人で覗き見るような位置で展開し、解説を始めるのだった。
「通称、『マグ・ナンバー』と呼ばれるそいつらが脱獄したのは今朝。
 鼬が言うには、あたし達にかけられた容疑ってのはどうもその脱獄の手引きに関してらしいの。
 恐らく例の写真はその際の一コマを監視カメラが写した……って感じの設定なんだと思う。
 んでさ、多分例の写真は脱獄した連中かあるいは本当に手引きした奴のどちらかが捏造したものなんだろうけど、
 少なくともマグ・ナンバーのデータだけならSAにあるっていうからさっき調べてみたわけよ。勿論、正攻法でじゃないけど。
 一度捕まえてるんだから能力とか特徴がわかってるはずだと思ってさ。……でも見てよ」
カチカチ、とボタンを操作して映し出された画面には、「エラー」の文字。
「記録したデータを更にバックアップしてるものでこれよ? そこにデータが無いなんて、事前に誰かが消したってことじゃん?
 仕方ないから別のところから欠片のデータを引っ張り出してきたんだけど、それでもわかったのは名前と人数くらい。
 全部で四人いるらしくて、収監された順番でそれぞれナンバーが与えられてるんだって。知ってた?
 一番新しい『詐欺城 十一』とかいうやつが4で、『ボブ・デーモン』とかいうやつが3。
 2は『鬼女羅 姫(きめら ひめ)』って言ってどうも女みたい。1は……わかんないんだよね、どこにもデータがなくてさ。
 でも、いつだったかナンバーの一人は前騒乱の当事者だって聞いたことあるのよね……
 名前は知らないけど、もしかしたらそいつのことだったのかな……?
 ……ま、それはいいや。とにかくあたしが調べたのはこんなところ」

12 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2013/05/21(火) 00:46:39.67 0.net
パチン、と携帯を閉じるルカ。
「で? どうするの? どこかの家に行くっていってたけど、そこは本当に大丈夫なんでしょうね?
 行ったはいいけどそこの住人も既に“洗脳”されてましたーってのは御免よ。
 まぁ、ありえないと思うけど、もしおばあちゃんが敵に回ってたら厄介ってこともあるし……
 あたしは他に適当な行き先を持たないからあんたに任せるわよ。しょーがないからさ」
そして本意ではないが仕方ない──ということを強調した言葉で締めくくった彼女は、前を向いた。
その際、「あー、なんか暑い」と目線をソフィアの横の虚空に合わせた上で胸元を指で広げながら。

わざととバレると顔から火が出そうになるので、あくまでさりげないように。故意ではなく、事故を装う。
これが先程彼女が出した結論、それにより起こした行動の一つだった。
(……け、結構恥ずかしいかも……)
自分のプライドを守りつつ最終的に自分の恋心を満たすいい方法はないか──
考えに考えた結果、彼女はソフィアを自分に惚れさせればいいという発想に行き着いたのだ。
ただ、その結果起こした行動が色仕掛けというのは何ともド直球でルカらしいというべきか……
いずれにしても微笑ましいやら、おかしいやら、何とやらである。

【ルカ:ソフィアに対する好意を認識。マグ・ナンバーについて話す】

13 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2013/05/21(火) 00:47:39.43 0.net
「で? どうするの? どこかの家に行くっていってたけど、そこは本当に大丈夫なんでしょうね?
 行ったはいいけどそこの住人も既に“洗脳”されてましたーってのは御免よ。
 まぁ、ありえないと思うけど、もしおばあちゃんが敵に回ってたら厄介ってこともあるし……
 あたしは他に適当な行き先を持たないからあんたに任せるわよ。しょーがないからさ」
先程のどぎまぎした表情から一変。蠱惑的な雰囲気を纏い、自分達の状況と“敵”を示すルカ。
ソフィアは成程、と軽く頷き―――相も変わらずルカの誘う様な、挑発的な身振りには興味も持たない。いや、気付いてもいない。
当然と言えば当然だ。ソフィアはれっきとした女であり、同性の者が異性を誘う仕草を見せた所で『何をやってるんだ?』としか思っていない。
むしろ逆に無関心を通り越して、隣のルカはまさか同性愛者ではなかろうかという悪寒まで鎌首をもたげてくる。
ブンブンと頭を振って、そんな思考を振り払うとソフィアは持論を展開し始めた。

「…これから行こうってのはマスターが6年前の激戦で共に死線を潜り抜けた“三英傑”の1人…御影って人の家だ。
 当の本人は事件の直後に行方をくらましてる。マスターも何か思惑あってか詳しく話そうとしない…
 ただ、その人の部下に当たる人が屋敷を管理してるんだ。藍先生も関係者だと聞いてる。
 並のスイーパーじゃ相手にならねぇ優れた人材の宝庫だったという噂だ―――っ!」
そこまで言うとソフィアはルカの口に手を当てて塞ぎ、羽交い絞めにし、身を伏せた。
突然の事でモゴモゴと口の中で何か言っているルカに、見える様に自分の唇に人差し指を当てて気配を消すように要求する。
数秒後、答えはすぐにやって来た。老若男女の声が自分達2人を探し回り、出てこいと喚き散らしながら通り過ぎて行ったのだ。
「…写真に写ってたオレ達4人とある程度の実力者以外はあの有様だ。とにかく戦力を集める事が第一。
 オレの言う合流地点としても身を隠す拠点としても最適なんだ―――ところで、高い所は大丈夫か?」

当然平気だ、とばかりにルカが首を縦に振る。それを確認するとソフィアは―――ルカをお姫様抱っこした。
突然の事でルカは思考回路がショートしたのかポカンとした表情をしている。
「いや、街の中を身を隠して行くのはほぼ不可能だからよ…空中散歩で行くんだよ。OK?
 ああ、最近分かってきたんだが、オレの能力は“動き”の他に“力”にも作用するらしい。
 やったことないか? 月面重力体験とか…その要領だ。とにかくビビッても暴れんな」
言うだけ言ってルカを抱えたまま手近な木の枝に飛び乗る。それを足掛かりに更に高い木へ。そして鉄塔へ―――
上空から街を包み込む喧騒を鼻で笑いつつ、ソフィアはルカをしっかり抱きとめて、御影の屋敷へと文字通り飛び始めた。

【ソフィア:強引にルカを連れて御影邸へ移動開始。地上数十メートルを跳躍している】

14 :ソフィア・ストラトス・ソロモン@代理:2013/05/21(火) 00:49:43.69 0.net
>>13の名前欄間違えました。こちらです、すいません。

15 :葦ヶ矢 藍@代理:2013/05/21(火) 00:50:25.30 0.net
「……ここまで来れば取り敢えずは大丈夫かしら」

市街地から離れること十数分──藍は数年振りとなる御影邸の付近まで来ていた。
段々と近付いてくる巨大な屋敷を見ると、過去の記憶が甦ってくる。
「懐かしいわね。ここを離れて早六年──」
六年前、主と共に屋敷を後にした時のことを思い出す。
あの時の自分はまだ能力もなく、戦闘になるとメイやエリ等の面々に任せるしかなかった。
「でも今はあの時とは違う──誰かに任せることなく、己の力で闘うことが出来る」
グッ、と静かに拳を握り締め、屋敷への道を急いだ。

リーン──リーン──
六年振りに聞く屋敷の呼び鈴の音。しかも外から聞くのは初めてのことだった。
『はい──』
六年前と変わらない聞き覚えのある声が応答する。
「お久ししゅうございます、丙様。私です、藍です」
『おぉ、藍さん。お帰りなさい。今門を開けさせますよ』
プツ、と通話が切れ、同時に門が音を立てて開く。
藍は開かれた門をくぐり、六年振りに屋敷の敷地に足を踏み入れたのだった。

「お久し振りです、藍さん」
玄関を入ると、そこには丙が一人で立っていた。
「事情は察しているつもりです。さ、どうぞ中へ」
「助かります」
挨拶もそこそこに、藍はかつて自分が使っていた部屋へと通された。

「さて……どうやら大変なことになっているようですね」
丙がお盆にお茶を載せて部屋に入ってくる。
「ありがとうございます。──えぇ、どうやら街全体から追われているみたいです」
お茶を受け取りながら答える。その顔には若干の疲れが滲み出ていた。
「ここに来る途中にも、何人かの住民に襲われかけました。
 何者か──というより、あの"写真"に操られているのでしょう」
「ほう──そこまで言われるということは、犯人に心当たりが?」
藍は一度目を閉じ、深呼吸をしてからその名前を口にした。

「えぇ。恐らく──犯人の名前は詐欺城 十一。
 過去に犯した約13万件の詐欺と約11万件の脅迫の罪で、
 現在懲役九十年を受けて地下牢獄に収監されている筈の男です」

お茶を一口飲み、口の中を潤してから話を続ける。
「二年前、他でもないこの私が捕まえて牢に放り込んだ男です。
 もし誰かの手を借りて脱獄したとすれば、必ず私に復讐するでしょう。
 ただ、私だけならいざ知らず、何故太刀風・ルカ・ソフィアの三名を巻き込んだのか。
 恐らく、脱獄の手引きをしたのと同じ人物が裏で糸を引いていると私は思います」

「ふむ……脱獄、ね。地下牢獄と言うからには、警備は厳重だったんでしょう?」
話を聞いて、顎に手を当てながら丙が尋ねる。
「えぇ……その筈でした。
 収監者は全部で四名。内一人は前騒乱の関係者です」

「ほう……」
丙は初めて知るような顔をしていたが、内心では違うことを考えていた。
(前騒乱の関係者……あの男、か。)
「ん……どうやらお客のようですね」
話の途中、ふと丙が窓の方──正確に言うなら市街地の方を見つめて呟いた。
「お客、ですか……」
「えぇ。人数は二人。それなりのスピードでこちらに向かってきています」
「二人……?もしや、彼等の内の誰かなのでは……?」
藍はまだ存在を感じ取ることは出来なかったが、丙に倣って窓の方へ視線を向けた。

【葦ヶ矢 藍:御影邸に到着。丙がソフィア・ルカの接近を感じ取る】

16 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2013/05/21(火) 00:52:19.42 0.net
>>13
「ふ……ふーん……」
折角胸をアピールしたのに無視された。そんなことを気にしながらも、ルカは直ぐに頭を切り替える。
「三英傑の一人の家、か……」
それにしても、このタイミングで前騒乱の英雄の名が出てくるとは思わなかった──
顎に手をやりながら思いもよらぬソフィアの台詞を神妙な顔つきで反芻するルカであったが、
彼女にとって本当に思いがけない出来事が起きたのはあるいは次の瞬間であったろう。
「むぐっ!?」
口元を塞ぐ手の温もり、全身に圧し掛かってくる重み──
ルカがソフィアに押し倒される格好となったのは正にあっという間だった。
場所は人気の無いトイレの中、傍から見ればルカが襲われているようにしか見えない危ない構図。

「んぐぅぅう〜〜!」
これから起きることを咄嗟に予測し、半ばパニック状態になりながらルカは暴れる。
(ちょ、ちょっと……まま、まって!!)
それでもそれは普段のルカの馬鹿力から比較すれば余りに弱々しいものだった。
ソフィアにすればあるいは拍子抜けのリアクションかもしれない。
だが、実際に拍子抜けしたのはルカの方であった。

「…写真に写ってたオレ達4人とある程度の実力者以外はあの有様だ。とにかく戦力を集める事が第一。
 オレの言う合流地点としても身を隠す拠点としても最適なんだ―――ところで、高い所は大丈夫か?」
怒号が近づいてきたかと思えば、直ぐに去っていく。そして声が完全に聞こえなくなったところで言うソフィア。
(…………はぁ、何やってんだろあたし)
冷めた目つきで手を払いのけ、ルカは溜息一つ零す。
「……大丈夫に決まってんでしょ、バーカ。あたしを誰だと…………、おわぁっ!?」

しかし、再び訪れた予測不可能な現実を前に、ルカの思考はまたも乱れる。
「いや、街の中を身を隠して行くのはほぼ不可能だからよ…空中散歩で行くんだよ。OK?
 ああ、最近分かってきたんだが、オレの能力は“動き”の他に“力”にも作用するらしい。
 やったことないか? 月面重力体験とか…その要領だ。とにかくビビッても暴れんな」
「お、オーケーって……ちょ、ちょっと……!」
今、自分がどんな格好をしているか、改めて視認してルカは頬を真っ赤に染める。
これは世に言うお姫様だっこというやつではないか。
いくらガサツとはいえ齢18の女。ロマンチックな事に憧れが無かったといえば嘘になる。

縁が無いと思っていたことが今、現実に。それも、まるでおとぎ話の如く、巨大な街を見下ろす位置で。
「あ……あたしを抱っこするなんて……な、何様なのよ! この変態ッ! スケベッ! エッチッ!
 ……お、落としたら承知しないからね! 目的地まで無事に届けてよね! も、もう……!」
恥ずかしさを紛らわすように小学生並の語彙で罵るルカであったが、
それでも最後には本音を現すかのようにひしっと、静かにソフィアの首に両腕を回して抱きつくのだった。


──そうこうしている内にふと見えてきた大きな屋敷。
そしてそれに目掛けて徐々に肉体を降下させていくソフィア。
(もしかして、あそこが三英傑の一人……御影 篠の屋敷)
ルカがそれを確信した頃には、既にソフィアは屋敷の門の前へと立ち、ルカを降ろしてブザーを押していた。
(鬼が出るか蛇が出るか…………本当に大丈夫なのかしら、ここ)

【ルカ:ソフィアと共に御影の屋敷に到着】

17 :ソフィア・ストラトス・ソロモン@代理:2013/05/24(金) 19:06:52.02 0.net
>>15 >>16

「到っっ着ぅ〜〜〜っと!!」
ルカを抱えたまま粉雪の様な軽やかさで落下しつつ、ソフィアが声を張り上げる。
2人が地に足を着け、目の前には豪奢な屋敷。それを守る様に威圧感すら漂わせる大きな門。
「藍先〜生〜。居ますか〜? 開けて下さいな〜。当事者同士、力を合わせにゃ不味いっすよ〜」
暢気な口調で呼び鈴とブザーを連打するソフィア。その遠慮の無さは在りし日の獅子堂を思い起こさせる。
当然ながら周囲に人の気配は無い。異能者の邪気も感じない―――だからこそ、こんな風体なのだが。
(…どうしたルカさん?)
その一方で何か危険な予感を抱えているのか、ルカは僅かに身構えている。
屋敷の人間も敵に回っていたらどうするんだという先程の発言。街の人間の有様を見ればルカの警戒心はもっともだ。
「ルカさんよ、そんなシャチホコ張っても仕方ねえよ。大丈夫に決まって―――」
ゴン、と言葉を遮る鈍い音。固く閉じていた門が開いていく。その向こうの玄関には藍の姿が。
「―――な? 言った通りだったろ」
早く入れと言う手招きに従い、2人は急ぎ足で屋敷の中へと足を踏み入れた。

「―――で、マスター・レオはEPSILONの上層部を探ると言って行っちまいました。
 あの人、仮にも幹部のくせに組織への忠誠だとか全く考えちゃいないんですよ。利用してるだけって感じ。
 与えられた権力に満足してそれ以上は望まない。けど実力はみっちり磨いてるから立場以上の発言力はある。
 それだけなら似た様な人は居るんでしょうけど…真実の探求の為に社会的地位も名誉も捨てて良いと思ってる。
 でもって“反逆者”の仲間入りです。弟子になって6年経ちますが、未だにあの破天荒ぶりにゃあ呆れますよ」
出された紅茶に際限なくドボドボと角砂糖を放り込み、ティースプーンで掻き混ぜながらソフィアは言葉を紡ぐ。
余りに大量の砂糖の投入によって紅茶は既に“ゲル状の良く分からない茶色いモノ”と化している。
呆れるのはお前のお茶の飲み方だ―――その場に居る全員の視線が無言のままに呟いている。
当のソフィアはと言うと、そんな視線に動じることなく熱心にティーカップを掻き混ぜ続け、更に大量の牛乳を要求した。

18 :ソフィア・ストラトス・ソロモン@代理:2013/05/24(金) 19:07:42.66 0.net
カップに牛乳を混ぜつつ止める力を注ぎ込むソフィア。
入念に空気を取り込みつつ混ぜられた“紅茶だった物”は次第に粘りと冷気を帯びていく。
そしてそれを続ける事、更に数分―――
「―――トルコ風アイス、ダージリン風味の出来上がり。何ならオレが全員分作りましょうか? …う」
ノーサンキューの視線に混じった無言の非難。ハッキリ言ってソフィアの行動は能天気な馬鹿以外の何物でもない。
「…まぁ、そう刺々しくならずにさぁ―――要点をまとめるとこういう事でしょ」
僅かに氷の混ざった即席アイスを口に入れてシャクシャクと口から音を漏らしつつ、ソフィアは今後の方針を提案する。
「街は今のところ厳戒態勢で恐らくは出入り不可能。オレ達も逃げられないが、脱獄囚もそいつは同じ。
 ピンチと同時にチャンスでもある…連中の潜んでいそうな所……この数日で“何らかの大きな変化があった場所”…
 そこを重点的に洗えば出てくるものがあるかも。潜伏場所の確証を得たら全戦力で叩きに出る」
にやり、とソフィアの口元が歪む。まるでこれから起きる戦いを楽しみにしている様だ。
「見つけたらぶちのめす。泣くまでぶちのめして、何もかも吐かせて、EPSILONに突き出す。
 特に件の写真を造ってる奴は念入りにぶちのめす。オレは嘘で人を陥れる輩が死ぬほど嫌いなんだ」
それだけ言って残りのアイスを一気に掻き込む。と、同時に腹がギュルギュルと鳴り出した。
「…す、スイマセン、ちとトイレ…」
溜息交じりに藍が示した場所に向かってソフィアは廊下を駆けだした。

数分後、痛みの引いた腹をポンポンと軽く叩きつつトイレから出てくるソフィア。その腰の無線機が振動した。
『ソフィア、応答せよ』
それは他でもない獅子堂の声だった。
「マスター、ご無事ですか? 上層部は?」
『俺の事なら心配無用だ。EPSILONの動きも多少は掴んだ』
「…やはり全部が敵ですか?」
『そう予想していたんだが、8割方が敵、1割が写真に関して半信半疑、1割は味方ってところだ。
 実際に会って無実だと信じた上で協力を約束してくれた者が4人いる。そいつらは絶対に裏切らない』
「…オレも御影邸で合流が完了しました。あとは脱獄囚の所在ですね」
『そればかりは俺にもどうにもならん。お前達で見つけるんだ』
「イエス、マスター…ところで、独り言なんですが良いですか?」
『言ってみろ』
「何つーのか…この事件は“始まり”に過ぎない気がするんです。マスターも事件と裏切りの嫌疑からISS崩壊を経験したわけですし…
 オレ達の今の状況と似てると思うんですよ。人生の舵を大きく切る、そんな運命的な何か…それに差し掛かってる様な気がします」
『そう思うなら急ぐことだ…“仲間”の下へ。またな』
それが最後。回線がザーザーと砂嵐の音に変わる。すっと目を閉じる事、数秒―――
見開いたソフィアの目には静かな闘志が芽生えていた。
「…いってきます、マスター」
『ただいま』を言う為の言葉を零すと、ソフィアは仲間のいる部屋へと駆け出した。

19 :葦ヶ矢 藍 ◆21WYn6V/bk :2013/05/26(日) 09:43:52.89 0.net
>>17
「来たようですよ」
丙が窓の方を指差す。そこにはソフィアと彼女に抱えられているルカの姿が見えた。
「なるほど……。人間の死角である頭上をうまく利用した、大胆かつ合理的な移動手段ですね」
二人が地面に降り立ち、藍が出迎えようと席を立とうとした瞬間──狂ったように呼び鈴が鳴らされる。
「元気がいいですなぁ」
「……師が師なら弟子も弟子ですね。まぁ、侵入しないだけ師よりはマシですが」
苦笑しながら席を立ち、今度こそ出迎えるために部屋を出た。

「藍です。門を開けて下さい」
『了解でーす』
内線で研究班に連絡し、門を開けてもらう。
すぐさま玄関を開けて二人の姿を確認すると、手招きで二人を屋敷の中へと招き入れた。

部屋に通すと、そこにいた丙の姿に驚くルカ。
ソフィアもまさかつい先日会った謎の女がこの場所にいるとは思わなかったのだろう。目を丸くしている。
「先日はどうも。……あぁそういえば名前を言ってなかったね。
 私は丙 凪沙。一応この屋敷の代表を務めている者だよ」
警戒する二人に向かって、丙は軽く自己紹介をした。

「―――で、マスター・レオはEPSILONの上層部を探ると言って行っちまいました。
 あの人、仮にも幹部のくせに組織への忠誠だとか全く考えちゃいないんですよ。利用してるだけって感じ。
 与えられた権力に満足してそれ以上は望まない。けど実力はみっちり磨いてるから立場以上の発言力はある。
 それだけなら似た様な人は居るんでしょうけど…真実の探求の為に社会的地位も名誉も捨てて良いと思ってる。
 でもって“反逆者”の仲間入りです。弟子になって6年経ちますが、未だにあの破天荒ぶりにゃあ呆れますよ」
藍が一旦席を外し、人数分の紅茶を淹れて戻って来る。
話をしながら角砂糖をこれでもかとカップに入れていくソフィアの姿は、またしても獅子堂を髣髴とさせるものがあった。
丙は「砂糖もタダではないんですけどねぇ」とでも言いたげな視線を送っている。
藍も若干呆れたような、諦観の念がこもった表情をしていた。

「あの方は以前からあのような感じでしたよ。六年前の時もこう言っていました。
 『俺はISSという組織の旨味を利用してるだけ。組織自体はそんなに信頼を置ける代物ではない』と」
藍自身が直接聞いたわけではないが、主からそんな話を聞かされたことがあった。
「それはEPSILONに変わっても同じと言うことでしょう。あの方らしいですね」
ソフィアは頷くと、今度は牛乳を要求したのだった。

「街は今のところ厳戒態勢で恐らくは出入り不可能。オレ達も逃げられないが、脱獄囚もそいつは同じ。
 ピンチと同時にチャンスでもある…連中の潜んでいそうな所……この数日で“何らかの大きな変化があった場所”…
 そこを重点的に洗えば出てくるものがあるかも。潜伏場所の確証を得たら全戦力で叩きに出る」
もはや紅茶ではなくなった何かを食べながらソフィアが今後の方針を提案する。
「…す、スイマセン、ちとトイレ…」
が、その直後に腹を下したようで、青い顔でトイレの場所を尋ねてきた。
「はぁ……トイレはここを出て左へ行った突き当りの先の扉です」
藍が場所を指示すると、ソフィアは腹を押さえながら部屋を飛び出して行った。

「しかし全戦力で、ですか……。それは少し危険ですね。
 もう知っているかも知れませんが、マグ・ナンバーは全部で四人います。
 その全員が同じ場所に潜伏しているとは限りません」
戻ってきたソフィアを交え、再び今後の方針について議論する。
「私は戦力を分散した方がいいと思います。連絡は適宜携帯などで取り合えばいいでしょう」
二人は考え込んでいるのか、難しい表情をしている。
「あと、ソフィアさんには悪いのですが、写真の犯人は私にやらせて下さい。
 ──と言うよりも、恐らく向こうから私を狙ってくる可能性が高いと思います。
 詳細は割愛しますが、彼は私を憎んでいるでしょうから」
カップを手に持ち、クッと残りを一気に呷ると、ソフィアの方に向き直った。
「私情を挟んで申し訳ないのですが、どうかお願いします」
そう言って、藍は静かに頭を下げた。

【葦ヶ矢 藍:二人を屋敷に招き入れ、詐欺城は自分に任せるよう二人に頼む】

20 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2013/05/29(水) 01:47:26.42 0.net
>>17>>19
ソフィアはあくまで一個の集団として行動する策を、対する藍は戦力の分散策を提案する。

どちらが妥当なのか、その判断は極めて難しい。どちらにも一理あるからだ。
対立勢力が圧倒的多数であるこのケースで、味方の戦力を分散するというのは用兵論の基本を無視する愚策だ。
とはいえ、敵の中核をなすマグ・ナンバー達の所在が仮にバラバラであったとすれば、
極めて少数であるとはいえ一個の集団がぞろぞろと一纏めに行動するのは果たして合理的と言えるのかどうか。
第一、それでは一人で行動するよりも人目につく。敵が建物内に潜んでいれば空から探すわけにもいかないのだから。

(うーん……)
いずれにせよ言えることは、結局のところ敵の情報が圧倒的に足りないのではリスクは同じということだろう。
そういう意味ではどっちを選択しようと良いのかもしれないが、後悔はしたくない。
だからルカは考える。ほんの少しでいい、事前に敵の潜伏ポイントを絞り込むことができないか、と。

「学園もEPSILONも脱獄した連中を追ってる。
 やっぱ逃げる身の心理としては、こういう時って人の居ないところを潜伏先に選ぶと思うんだけど……」
「そう見せかけて、実は街中に潜伏してるって可能性もあるぜ? ま……それいったらキリがねぇんだけどさ。
 あの、地図みたいなもんありますか?」
と、市内の地図を要求するソフィアに、藍はリモコンで部屋の壁にかけられた大型液晶に電源を入れる。
途端にパッ、と映し出されたのは市内を上空から撮影した航空写真。

「人気が無いところといったらやっぱり……」
ルカの視線が画像の中のとある場所に集中する。それは、傍らに居るソフィアも同様であった。
「危険区域、だよなぁ……」
溜息をつく二人。実際問題、一番潜伏先として怪しいのがそこである。
しかし、それは脱獄囚も当然思っていることでもあろう。怪しいが、だからこそ違うような気もする。

(こうして話しているより、さっさと手分けして各エリアを虱潰しにした方が早いかも)
……そんなことをルカが思っていると、ふと「あれ?」とソフィアが声を出し、写真の端を指差した。

「待てよ……もしかしたらここもあまり人がいないところじゃないか?」
そこは市内の北、他でもないこの御影邸がある北エリアであった。
確かに御影邸が位置する場所は田園や山に囲まれた郊外。
エリア中央にこそ学園の北側校舎や寮などがあって一定数の人はいるが、市内きっての過疎地に違いはない。
だが、ソフィアが差したところはそれらではなく、更にその下の危険区よりに集まる建物の密集地帯であった。
「確か街の復興と開発を進めるために田園を埋め立てて大量に工場を作らせたんだ。
 でも、付近の農村が公害を恐れて反対してて、今でも稼動してる工場は全体の半分に満たないとか……」
「へぇ……」

ルカは窓から外を見る。
工場地帯という名の通り、大きな煙突や筒のようなを円柱をあしらった建物が沢山並んでいるのが見えるが、
なるほど確かに言われてみると煙を吐いている煙突というのは数えるくらいしかない。

「東は行楽地、西はビジネス街、南は住宅街に学園……危険区域がシロだとすれば、確かに怪しいのはここかも。
 人気も少なくて隠れるところは沢山あるし」
「でも、確証はないぜ? さっきも言ったけど裏をかいてる可能性もあるしな。……どうする?」
「……どうするもこうするもさぁ、もうとにかく怪しいところを片っ端から行くしかないんじゃないの?
 何らかの大きな変化があった場所って言ったけど、情報がなきゃそれもわかんないじゃん……」
「結局、そういうことかぁ……。んじゃ、とりあえず手近なところから責めるってことで……
 一応、全員で調べてもしシロなら次は危険区域……そこもシロなら、後は他三つのエリアを三人で手分けして探す。
 徹底して探す、何が何でも探す! そんでもし連中を見つけたら叩きのめして、詐欺城ってのは先生に任す。
 ……なーんか不安一杯だけど、全体の流れとしてはこれでいいですよね? ってか、もうこれしかなさそうだし」

頭をかきながらソフィアが藍に顔を向けた。

【ルカたち:詐欺城に関しては承諾。人気の無い場所を優先的に調査し、その手始めに工業地帯を調べることを提案する】

21 :葦ヶ矢 藍 ◆21WYn6V/bk :2013/06/03(月) 20:37:04.99 0.net
>>20
「学園もEPSILONも脱獄した連中を追ってる。
 やっぱ逃げる身の心理としては、こういう時って人の居ないところを潜伏先に選ぶと思うんだけど……」
「そう見せかけて、実は街中に潜伏してるって可能性もあるぜ? ま……それいったらキリがねぇんだけどさ。
 あの、地図みたいなもんありますか?」

二人ともあーでもないこーでもないと言いながら話し合っている。
その中で地図を要求された藍は、リモコンを手に取ってスイッチを入れた。
ブン、と言う低い音と共に、壁に取り付けられている大型のモニターが起動し、市内を一望できる航空写真が映し出された。

「これでいいですか?」
藍の問いかけに満足そうに頷くソフィア。
「人気が無いところといったらやっぱり……」
「危険区域、だよなぁ……」
しかし直後にルカと二人、市内のある一点──危険区域を見つめて溜息を吐いた。
(確かに危険区域は潜伏するには最適に思えます。
 ですが……今まで収監されていた彼等が、果たして人気のないところに潜伏するでしょうか?)
ナンバー達の顔は一般人では知らない人が殆どの筈。
故に、木を隠すなら森の中という諺があるように、人込みに紛れている可能性も低くはない。
ましてや彼等は凶悪犯の集団だ。人の命など何とも思っていないだろう。

「待てよ……もしかしたらここもあまり人がいないところじゃないか?」
藍がそんなことを考えていた折、ソフィアが地図の端──この屋敷のある市内北部の田園地帯を指差して声を上げた。
しかしその指先をよく見ると、指していたのは田園地帯ではなく、その少し南に位置する工場地帯だった。
「確かに……ここは危険区域と並ぶほど人が少ない場所。
 現在稼動している工場は、こちらが把握しているだけで7つ。どの工場も従業員はそれほど多くありません。
 コラプター達のことを考えれば、危険区域以上に人気がないかも知れません」
なるほど、犯罪者は危険区域に集まる、という先入観を見事に覆す場所だ。

「東は行楽地、西はビジネス街、南は住宅街に学園……危険区域がシロだとすれば、確かに怪しいのはここかも。
 人気も少なくて隠れるところは沢山あるし」
「でも、確証はないぜ? さっきも言ったけど裏をかいてる可能性もあるしな。……どうする?」
「……どうするもこうするもさぁ、もうとにかく怪しいところを片っ端から行くしかないんじゃないの?
 何らかの大きな変化があった場所って言ったけど、情報がなきゃそれもわかんないじゃん……」
「結局、そういうことかぁ……。んじゃ、とりあえず手近なところから責めるってことで……
 一応、全員で調べてもしシロなら次は危険区域……そこもシロなら、後は他三つのエリアを三人で手分けして探す。
 徹底して探す、何が何でも探す! そんでもし連中を見つけたら叩きのめして、詐欺城ってのは先生に任す。
 ……なーんか不安一杯だけど、全体の流れとしてはこれでいいですよね?ってか、もうこれしかなさそうだし」
最終的な案が纏まったようで、ソフィアがこちらに顔を向けて意見を求めてきた。

「えぇ、構いません。それでいきましょう。
 ただ、詐欺城の件を任せてもらう以上、他の三人はそちらに任せてしまうことになるでしょう。
 二人だけでは心配ですが……」
「では、私も同行致しましょう」
ここにきて、今まで黙って話を聞いていた丙が声を上げた。
「丙様?しかし──」
「なに、そのマグ・ナンバーとやらは犯罪者の集団なのでしょう?放っておけば市民にも害が及ぶことは明白。
 ならばそれを阻止するのが我々ヴァルキリーの勤めと言うものです。お嬢様もきっとそう望んでおられる筈」
そう言って音もなく消えたかと思うと、次の瞬間にはかつて着ていた黒いボディスーツに早変わりしていた。
その行動に二人、特にルカはかなり驚いていたようだ。
それもその筈──今の行動は紛れもなく「驚天」を利用したものだったのだから。

「それに、戦力は一人でも多い方がいいでしょう。足手纏いにはなりませんよ」
「まさか、丙様が足手纏いなど……」
「と言うことだ。私も同行してよろしいかな?二人とも。
 まぁ、どうしても嫌だと言うのなら無理強いはしないがね」
得体は知れないが、藍の知り合いだから信用出来なくもないか──?
そんな表情を浮かべている二人に向かって、丙はニヤリと笑いかけた。

【葦ヶ矢 藍:ルカたちの提案を承諾。同時に丙が同行を申し出る】

22 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2013/06/06(木) 22:27:14.54 0.net
>>21
「えぇ、構いません。それでいきましょう。
 ただ、詐欺城の件を任せてもらう以上、他の三人はそちらに任せてしまうことになるでしょう。
 二人だけでは心配ですが……」
「んん? あー……先生の心配はごもっともですよ。でも、こっちも未熟ながら多対一は経験済みでして。
 自分で言うのも何ですけど、オレたち結構修羅場くぐってんですよ、ねぇ? ルカさん?」
「そりゃあね、こちとらちょっぴり特殊な環境で育ったもんで。
 んでもさ、正直不安がないわけじゃないのよね。敵が脱獄者の四人だけなら問題ナッシングだったんだけど、
 もし連中を探す過程でキャデットやサージェントと交戦することになったら数の不利は必ず効いてくるし」

そんなことを言っていると、ふとこれまで沈黙していた場所から声が飛んでくる。
「では、私も同行致しましょう」
それはこれまでじっと三人のやり取りを静観していた女性のものだった。
ソフィアもルカも彼女については触れてこなかったが、気になっていたのは確かである。
異牙との戦いの際、ふらっと朱雀堂に現れては去っていった正体不明の実力者──
それが目の前にいることに。

「なに、そのマグ・ナンバーとやらは犯罪者の集団なのでしょう?放っておけば市民にも害が及ぶことは明白。
 ならばそれを阻止するのが我々ヴァルキリーの勤めと言うものです。お嬢様もきっとそう望んでおられる筈」
藍に「丙」と呼ばれた彼女は淡々とそう述べると一端は素早く部屋から退出したが、
コンマ数秒後にはボディスーツとなった姿を三人の前に現した。それが彼女の意気込みの現れと言うように。
恐ろしいほどの早業ばかりに気を取られそうな一瞬であったが、
実際にはルカとソフィアの頭脳を巡っていたのは全く別の事柄であった。

(今の動き……異牙の連中と同じ……? どうやら御影の一派ってのも随分な曲者揃いのようだぜ。
 ……ま、敵じゃないだけ心強いってもんだが)
(まさか『驚天』……!? 只者じゃないと思ってたけど……一体何者……?)

思っても、口に出して直接問うてみなければ答えは返ってくるはずもない。

「それに、戦力は一人でも多い方がいいでしょう。足手纏いにはなりませんよ」
「まさか、丙様が足手纏いなど……」
「と言うことだ。私も同行してよろしいかな?二人とも。
 まぁ、どうしても嫌だと言うのなら無理強いはしないがね」

気がつけば今度は二人が逆に尋ねられていた。

「……どうする? って、まぁ答えは出てるけどな」
ちらりと視線を向けてくるソフィアにルカも頷く。
「実力は折り紙つき。ただでさえ戦力不足な今、断るのは馬鹿ってもんよ」
「それじゃ話は決まりだ。とっとと行こうぜ? 今のオレ達には時間は味方しちゃくれねぇからな」

──数分後、四人は屋敷を発った。まだ見ぬ脱獄者達を求めて。

【ルカ・ソフィア:藍と丙を連れて屋敷を発つ。目的地は北エリア南部に広がる工場地帯】

23 :葦ヶ矢 藍@代理:2013/06/10(月) 20:21:21.83 0.net
>>22
「……どうする? って、まぁ答えは出てるけどな」
「実力は折り紙つき。ただでさえ戦力不足な今、断るのは馬鹿ってもんよ」

どうやら丙は問題なく受け入れられたようだ。
出会い方がちょっとアレだったために本人は少し心配していたが、今は人間性よりも実力優先。
──マグ・ナンバーのような凶悪犯なら話は別だが。

「それじゃ話は決まりだ。とっとと行こうぜ? 今のオレ達には時間は味方しちゃくれねぇからな」
丙の加入が決まった所でソフィアが皆を代表するように告げる。
「そうですね。こうしている間にも私達の敵は増える一方ですから」
藍も頷きながら同意する。

「孫子曰く、『兵は拙速を聞くが、未だ巧久を睹ず』。何とかして早期発見を目指したいですな」
丙は腕を組んで、少し難しい顔をして言った。
(ハヤテがいれば少しは楽だったのだが──まぁ……仕方ないか)
虎に預けた相棒を思い出し、心の中で苦笑する。
しかしそれを表に出すことはせず、出発のために皆と共に玄関へと向かった。

「──では行きましょう。まずは工場地帯からですね」
藍の合図で四人──否、三人は駆け出した。
丙は合図の次の瞬間に音もなく姿を消したが、気配はあるので着いて来ているのだろう。
並の異能者ならいざ知らず、ここにいるのはいずれも実力者ばかり。
屋敷からそう遠くない工場地帯に到着するのに然して時間はかからなかった。


「ここが工場地帯──」
屋敷を出て数分後──目の前に広がる工場群を見て、藍がポツリと呟く。

「屋敷から見るのとは一味違いますなぁ」
いつの間にか横に立っていた丙がそれに返す。
のんびりとした口調とは裏腹に表情は鋭い。こうしている間にも周囲を探っているのだろう。

「今の所周囲に怪しい気配はありません。一般人がいるだけです」
工場群から目を離さずに丙が皆に告げる。
相手が気配を消している可能性もあるが、とりあえず丙の言葉を信じていいだろう。

「では捜索を開始しましょう。相手は凶悪犯であり強力な能力者です。
 周囲の警戒は怠らないで下さい」
藍が一歩前に出て、三人に告げる。
「詐欺城の能力は所謂『念写』と呼ばれるものです。
 なので直接的な戦闘力は低いと思われますが、他の三人に関してはその限りではありません。
 再度言いますが、注意して進みましょう」
三人が頷くのを確かめると、聳え立つ工場群に向かって歩き出した。

【葦ヶ矢 藍:ソフィア・ルカ・丙と共に工場地帯に到着。ナンバーの捜索を開始する】

24 : ◆ICEMANvW8c :2013/06/12(水) 21:09:32.73 0.net
簡易的なテーブルにした気の箱の周りを、三人の男女が取り囲んでいる。
それぞれが手にしているのは同じ模様のカードであり、それぞれの前に積まれているのは同じ色のコイン。
「エースのスリーカード」
その一声と共に、まず初めに手にしたカードを台に投げ打ったのは眼鏡と緑髪が特徴的な痩せ型の青年・詐欺城であった。
「……ついてないわね、クイーンのワンペア」
それを見て続いてカードを文字通り捨てるかのように投げ出したのは、彼らのグループの中での紅一点、
通称「ナンバー3」と呼ばれる稀代の悪女・鬼女羅 姫。
「おや? これはまた僕の一人勝ちかな?」
「悪いが、そうそう奇跡は続かねぇよ」
フッ、と笑い、残った三人目の褐色肌の黒人・ボブ・デーモンが手元の五枚のカードを台に巻く。
絵柄は2とジョーカーの二種類で、それぞれ四枚と一枚の組み合わせだ。
「ファイブカード。俺の圧勝だな?」
「チッ…………いくら君がナンバー2だからといって、そこまで徹底して揃えなくてもいいのにさ」
呆れたような顔で肩をすくめる詐欺城を笑いながら見下ろして、ボブは二人のチップを豪快に攫っていく。

「それにしてもさぁ……折角シャバに出ても、やる事がないっていうのは、案外、辛いものだねぇ」
それを見ながら詐欺城は欠伸一つ、不意にしみじみと呟いた。
騒乱の火種は既に街中に撒き散らした。ならば、後はその根源を断とうと忍び寄ってくる者達を待ち、迎え撃つだけ。
来なければそれまで。時間が来れば契約も終わりで、それぞれが自分の欲望を満たす為に好きなところへ散る。
本来ならこれ以上に楽な契約もない。だが、人間というのは勝手なものだ。
それは彼らとて例外ではなく、暇つぶしにと始めたポーカーも既に二十ゲームを終えた頃には、
スリルがないやら張り合いがないやら退屈やらと文句の一つも零すようになっていたのだから。

「次は別のゲームをしないかい? そうだナンバー1、君も参加してはどうだろう?」
空間の隅、日光の差さない暗闇に向けて、詐欺城は声を投げる。
「そうやって一人で居ても退屈だろう?」
「…………」
だが、返事は無い。
「……やれやれ、何が面白いのやら」
再び肩をすくめる詐欺城。
時折呻き声のようなものをあげながら、何やら工具と機械の部品を弄ってはカチャカチャとやっている。
暗闇の中で蠢く存在は、先程からそれに終始するばかりで会話一つしようとしないのだ。

「何の罪で捕まったかは知らねーが、あいつはあれが生き甲斐なんだろうぜ?
 人が好きでやってることに口を出すのは野暮ってもんだ」
「フッ……認めるよ。犯罪者にも色々なタイプがいる。その全てを僕が理解しなきゃならない理由は無い。
 さ、続きを始めよっか? ここに牌があれば麻雀でもやりたいところだけど──」
そう話を纏めつつ、投げ捨てられたカードをも纏めようとした詐欺城だったが、
その瞬間そこへ割って入るように差し出されたか細い腕が、それを止めた。

「…………気配が近づいて来てる。この生体エネルギーの強さは並じゃない」
「え? 僕には何も感じないけど……」
「……あぁ、数は三人……いや、四人か? 足音の殺し方といい、こいつぁプロの一団だぜ」

詐欺城は思わず耳を澄ますが、何も聞こえない。目を凝らして見ても、何かが見えるわけでもない。
それもそうだ。これは鬼女羅 姫にボブ・デーモンという、
気に精通した稀代の大量殺人鬼と百戦錬磨の暗殺のスペシャリストたる二人だからこそ把握できるのであり、
邪気眼を持っているという事以外、五感も肉体も常人と何ら変わらぬスペックの詐欺城では到底到達できる領域ではないのだ。

25 : ◆ICEMANvW8c :2013/06/12(水) 21:14:23.85 0.net
「で……そのプロってのを二人はどう見てるんだい?」
「間違いなく異能者……それも、熟練されたかなりの上玉……」
「けど、気の波長パターンはどれも若々しく、強さに溢れている。……もしかしたら例の小娘ちゃん達じゃないかしら?」
「とすると……見つかった? 変だね、てっきり危険区域を探し回るものかと思ってたけど」
「何にせよこの目で直に確かめりゃわかる話だ」

すくっと立ち上がるボブ。そして、それを眼鏡のズレを直しながら見つめる詐欺城。

「行く気かい?」
「あぁ、放っておいたらここまで来るぜ? 騒ぎになる前に俺が片付けてきてやる」
「でも、相手は複数よ? だから……あたしもついていってあげる」
「頼んだよ? 君達が負けたら、僕一人じゃどうしようもないんだからね」
「気の小せぇ奴だ。……まぁ、安心しな。一人残らず血祭りにあげてやるからよ、ククク……」
「不公平のないよう二人ずつ分け合いましょうねぇ?
 若い娘のエキスを独り占めにされちゃ、また皺が増えるもの……うふふふふ」

互いに邪な笑みを交錯させながら、二人はその場を経つ。
果たして、次に詐欺城の前に現れるのは二人か、それとも正体不明の侵入者か……
答えを知る者はまだ、誰もいない……。

26 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2013/06/12(水) 21:30:57.52 0.net
>>23
「詐欺城の能力は所謂『念写』と呼ばれるものです。
 なので直接的な戦闘力は低いと思われますが、他の三人に関してはその限りではありません。
 再度言いますが、注意して進みましょう」

その言葉に従いながら、藍を先頭に工場地帯の奥深くへ進んでいく丙・ルカ・ソフィアの三人。
なるほど、百聞は一見にしかずというが、こうして実際に来てみると、
敷地の広さに反比例してやたらと人気が少ないのがわかる。
こういう場所にいると、自然と緊張感や警戒感が増すのは隠密特有の習性なのだろうか?
あるいは「敵がいるかもしれない」という思いが、誰にも等しくそうさせるのだろうか?

「ねぇ……“ソフィア”……さぁ」
そんなことを頭に過ぎらせつつも、それでもルカの奥底にあるものは未だ緊張感ではなく、意識した相手に対する好奇心であった。
仮にここに雀舞がいれば「なに呑気してるんだい」と頭をはたかれているところなのだろうが、鬼の居ぬ間に何とやらである。
「ん? ……んん?」
初め、何とは無しに言葉を返すソフィアだったが、直ぐに彼女の言葉の中にある違和感に気付いて顔を曇らせた。
(今……オレのこと名前で呼んだよな……?)
いつもなら名前を省略するか、あるいは「あんた」と呼んでくるところを名前で呼んだ。
勘がいい“男”ならばここで彼女の心情の決定的な変化に気付くところなのだろうが、
残念ながらソフィアは女であり、加えて特に勘が良いというわけでもないせいか、
(ま……少しは仲間として心を開いてくれたってことかな……?)
と、ごくごく無難な解釈をするに留まっていた。

「で、何だよ?」
「え、えーと……む、胸が大きいのとぉ、小さいのってさぁ……ど、どっちがいいのかなぁ?
 もも勿論! いい、一般論としてぇ……どっちがオトコのコに魅力的に映るのかなぁ、って……」
この突拍子も無い質問が、実は遠回しに自分のスタイルが好みかどうかを訊ねているものであることに疑いはないのだが、
そんな意図を今のソフィアが看破できるはずもない。
「はぁ?」
「……は、はぁ? じゃないわよ! ここ、答えてよ! ちょっと意見を聞いてるだけなんだから!!」

(今、そんなことを聞くような状況かぁ?)──そうは思いつつも、ソフィアは何とか答えを出そうと考える。
彼女にとって胸が小さいと言われてイメージするのは自分である。
対して、大きいと言われてイメージするのは学園の先輩・鼬である。
自分の体つきにコンプレックスを抱いているソフィアは、前々より鼬の体つきを羨んでいた。
だから、どっちが魅力的かといえば、彼女の場合は鼬のタイプなのだ。
「……大きい方、かな? まぁ、あくまでオレの場合はだけど……」

27 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2013/06/12(水) 21:43:41.21 0.net
好みに個人差はあって然るべき。だからこその、「オレの場合は」という主張。
「…………むむむ」
だが、その丁寧ともいうべき回答が、ルカのプライドと嫉妬心をいたずらに刺激することになったのは、皮肉というべきか。
「お、オトコってどうしてこう……」
眉間に皺を寄せてわなわなと震えるルカに、ぼんやりとした顔をソフィアは向ける。
「なんだよ?」
「あーーもぉーーわかったわよぉ! 結局、いつまでもママが恋しいってことでしょぉ!?」
「……なんだ、それ」
「うっさい!! このマザコン!! 変態!! 鼬に色目使ったらあたしが許さないからねッ!! っべーだっ!!」
散々、罵った挙句、終いには顔を顰めて舌を出し、「フン!」とそっぽを向くルカ。まるで小学生だ。
一方、堪らないのはソフィア。当たり前だ、身に覚えのないことを次々に言われてコミュニケーションを一方的に打ち切られては
誰だって不快なものだ。それでも溜息をつくくらいで済ませているのは、彼女がルカよりもよっぽど精神的に大人だからだろう。

だが、そんなこんなしている内に、事態は急展開を迎える。

不意にどこからかボッ、という号砲が鳴り響いたかと思えば、彼女ら四人を二組に切り離す小規模な爆発が起きたのである。
「「ッ!?」」
それをルカとソフィアの二人が左に躱し、藍と丙の二人が右に躱す。
「──……ルカさんよ、どうやら喧嘩してる場合じゃねェようだ。……ビンゴだぜ」
背後を振り向くソフィア。それにつられるように後ろに視線を飛ばしながら、「みたいね」と返すルカ。
その顔は先程とは打って変わって引き締まっており、正に一瞬の内に戦闘態勢に入ったことを意味するものだった。
「ビンゴもビンゴ。少なくとも、ここには“二人”のナンバーがいた」
「あぁ……手間が省けたってもんで有り難ぇ。残りの居場所も“奴ら”から聞くとするか」
視線を後ろに向けながらも、既に二人は把握していた。
自分達の後ろにゆらりと陽炎のように立つ着物姿の女の他にももう一人、
丙らの前に片腕に巨大なランチャーを装着した褐色肌の大男が現れていたことを。

「先生、“そっち”は任せるぜ! こっちはオレ──いや、オレ達が片付ける!!」

【ナンバー2のボブ・デーモンとナンバー3の鬼女羅 姫が現れる。どうやら姫vsルカ組、ボブvs丙組の闘いになる模様】

28 :葦ヶ矢 藍 ◆21WYn6V/bk :2013/06/16(日) 11:33:35.78 0.net
>>23>>27
「いやはや、本当に元気がいいですな、あの二人は」
ルカとソフィアがギャーギャーと他愛のない会話をしている頃、丙と藍の二人も周囲を警戒しながら話をしていた。

「この状況ではあまり褒められたことではありませんが……。
 まぁ、警戒して気を張り過ぎるよりはいいのかもしれませんね」
チラリと二人の方に目をやり、苦笑する。
「ここにいるのが一般の生徒でしたらこうはいかなかったでしょうね。
 片やあの歳でアーセナリーとして活動、片やあの三英傑の直弟子。
 そんな彼女等だからこそ、ああいった行動が取れるのでしょう」
(そしてそのアーセナリーは異牙の末裔……)
心の中で密かに情報を付け足しながら、丙は小さく頷いた。

ボッ──
四人の間を割るようにして小さな爆発が起こったのはその直後である。
「ふむ、どうやら当たりを引いたようですな」
爆発は砲撃によるものだと見抜いた丙が、その方向に目をやりながら小さく呟く。
「えぇ、それも一人ではなく"二人"」
藍もそれに倣って同じ方向を向く。
そこには片腕が巨大な砲身になっている、色黒の大男が。
そしてソフィア達の方にはボサボサに髪を伸ばした着物姿の女性が立っていた。

「先生、“そっち”は任せるぜ! こっちはオレ──いや、オレ達が片付ける!!」
ソフィアから大きな声が飛んでくる。その声は自信に満ち溢れていた。
「……だ、そうですよ。"先生"?」
丙が笑いながら藍に返事を促す。
「からかうのはやめて下さい。ですが……そうですね」
藍はスゥ──と息を吸い込み、次の瞬間にはソフィアに負けないほどの大声で叫んだ。

「えぇ、任されました!こちらのことは気にしないで結構です!
 ソフィアさん──いえ、今この瞬間だけはお二人とも私の生徒です!
 教師として言います──必ず生きて顔を見せて下さい!!」

「あの男……どこかで──」
目の前に仁王立ちする大男を見て、丙は記憶を探っていた。
「丙様、あの男を知っているのですか?」
「えぇ、以前何かで見たことがあるような──あぁ」
ポン、と手を打ち納得したように何度か頷いた。
「思い出しましたよ。奴の名前はボブ・デーモン。
 元軍人の殺し屋で、要人専門の暗殺を行っていた男です。     ここ
 五年ほど前に捕まったという話は聞いていたのですが……まさか黒歴市にいたとは」

「ボブ・デーモン……名前に聞き覚えはあります。
 なるほど、要人専門の殺し屋ですか。となると腕は確かなようですね」
スッっと藍が一歩前に出る。
丙はその様子に少し驚きながらも、黙って藍の行動を見守っていた。
「相手にとって不足はありません。全力を以って制圧します」
ザッと大地を踏み締め、相手を鋭く見据えた。

「EPSILON所属エージェント、葦ヶ矢 藍。──これより任務を開始します」

その言葉と同時に藍の周囲に無数の刃が出現し、切っ先が一斉にボブの方へと向いた。

【葦ヶ矢 藍:丙と共にボブと戦闘開始】

29 : ◆ICEMANvW8c :2013/06/20(木) 18:03:14.67 0.net
>>28
穿たれる地面。もくもくと噴きあがる黒煙。
それを眼下におさめて笑うは褐色肌の大男、ボブ・デーモン。
「ハッ! どいつもこいつも中々いい反応をするじゃねぇか! おおぅ?」
いや、正しくはクレーターの両脇に立つ、四人二組の集団を交互に見据えてか。

両組とも面子は女。しかも、予想通りに写真に写ったターゲットである。
「流石に俺達がターゲットにしただけのことはあるぜ。さぁて、どいつから片付けてやろうか……」
最初の餌食は金髪のツインテールか、白髪の褐色肌か。
それとも茶色眼の淑女か、黒髪ボディスーツか…………。
まるで品定めをするかのようにボブの目がじろじろと面々を観察にしにかかる。
(……? そういえば一人、知らない奴が混じって……)
だが、それを中断せざるを得ないほどの戦慄が全身を走ったのは、正にその瞬間だった。

「EPSILON所属エージェント、葦ヶ矢 藍。──これより任務を開始します」

その一声と共に、無数の鋭い殺気のようなものが自身に向けられたことを察知したのである。
(何だこの感覚──……! 気のせい、じゃねぇ……確かに今、何かが空間に発現した……!)
直接、目で見てその正体を把握することはできない。
しかし、彼は何が発現したかを既に確信していた。
脱獄を手引きしたあの男から、事前に伝えられていたデータのお陰で。

(葦ヶ矢 藍……そうか、こいつが『死刃眼』とかいう能力の持ち主……。ってことは今、俺に向けられているのは……)

「ククククッ! わかってるぜェッ!!」
ニタァ、っと、口を歪に変えて、ボブは素の拳を前に差し出す。
すると、それは見る見るうちに形状を変化させ────次の瞬間には、巨大な“ガトリングガン”と化していた。
「ヒャッハァァァーーーーーーーーーーーー!!!!」
そして狂声一番、ガルルルルルルル! っと、火を噴くガトリングガン。
撃ち出された無数の弾丸は藍の周囲に展開していた無数の刃を次々に弾き飛ばしていく。

藍が創造した異能の刃。通常の弾丸なら逆に切り裂かれているところだろう。
だが、彼が撃ち出した弾丸も藍の刃と同様に己の邪気を練ったもの。常識は一切通用しないのだ。
そう……その硬度も、そして、放たれた後のその軌道も……。

チュインッ!!

甲高い金属音に、一瞬だが僅かに目を見開いたのは藍。逆に、目を細めたのはボブだった。
刃を弾き飛ばした弾丸が今度は一斉に軌道を変えて藍の全方位から迫ってきたのである。
跳弾、にしてはあまりにできすぎている光景故に、藍も直ぐに気がつくことだろう。
ボブは単に己の身体を武器とするだけではない。撃ち出したそれを自在に遠隔操作することも可能なのだと。
(さぁぁて、お次はぁぁ〜〜!!)
結果を待つことなく、ボブは即座に次の手を打つ。
ぎょろっとした瞳で睨め回すはもう一人の敵、丙。
そして間髪入れず向けたのは初めに使ったロケットランチャーの先端。

「見知らぬお嬢ちゃんよォ、派手にいこうじゃねぇか、派手によぉぉおおおおおお!!」

ボッ! 再びロケット弾が撃ち出された。

【ボブ:刃をガトリングガンで蹴散らし、更に弾丸の遠隔操作によって藍を取り囲む。
    丙に対してはもう一方の腕のランチャーからロケット弾を撃ち出して攻撃する。】

30 :葦ヶ矢 藍 ◆21WYn6V/bk :2013/06/22(土) 23:55:21.94 0.net
>>29
「ククククッ! わかってるぜェッ!!」
藍と対峙しているボブが、口元を歪めて拳を突き出す。
その拳は見る見る内に変形していき、最後には巨大な回転機銃──ガトリングガンになっていた。
「ヒャッハァァァーーーーーーーーーーーー!!!!」
ボブの叫びと共にガトリングが回転し、大量の弾が発射される。
しかしその弾は藍を避けるようにして、彼女の周囲に向けて発射されていた。
「……?──まさか!」
急いで周囲に目を向けると、藍の創り出した刃が悉く弾き飛ばされているではないか。
現存する弾丸程度なら軽く切り裂く、彼女の異能の塊である刃が。

(私の刃を弾き飛ばすなんて……!予想よりも強力なようね、あの能力は──)

チュインッ!!

刃が全て弾かれた直後、不意に金属音が聞こえた。
おかしい──今自分の周囲に刃はないはず。ならばこの音は────。
見れば、刃を弾き飛ばした弾丸が藍に向かってくるではないか。
跳弾──ではない。それにしては軌道が不自然すぎる。

(まさか……放たれた弾丸をも操っている!?)
攻撃のからくりに気付いた藍だが、もはや弾丸は回避不可能な距離にまで迫っていた。

(回避は不可能。ならば──!)
避けられないのなら──受ければいい。
藍は両手にナイフを出現させると目を閉じ、ザッ、と腰を落とした。

「……」
至近にまで迫った弾丸。何もしなければコンマ数秒後には蜂の巣になっているだろう。
藍はスゥ──と息を吸い込み、カッ、と目を見開いた。

「ハァァァアアアアアッ!!!」

次の瞬間、何と向かってくる弾丸をナイフで弾き始めたのだ。
カカカカカッ──目にも止まらぬ速さで振られたナイフが、的確に弾丸を弾いてゆく。
その姿は『舞姫(ダンサー)』の名に相応しく、まさに踊っているようだった。

カッ!と最後の一発を弾き落とす。
「……この程度ですか?だとしたら拍子抜けですね」
全て受け切れたわけではなく、何発かは体を掠めたが、戦闘に支障はない程度の傷だ。

(お二人のお陰ですね……。ありがとうございます)
以前の藍だったら、能力の有無に関係なくこんな芸当は出来なかっただろう。
では何故このようなことが出来たのか?──それは彼女の師事した二人の女性の修行による賜物だった。

メイとエリ──それが彼女の師事した二人の女性。
先程のような跳弾紛いのことならば、エリは朝飯前にやってきた。
それどころか、能力によってこちらの迎撃を掻い潜るような軌道まで扱っていた。
そしてそれらを迎撃するための動き──というより戦闘に関する動き方はメイから教えられた。
その修行の成果が、先程の迎撃行動である。

そこで藍は、自身の足元に刃が一本残っていたことに気が付いた。
(これは……?全部弾かれたものと思っていたけど……。
 ──そう、そういうことね)
そこから導き出されるのは、ボブは藍の創り出した刃が見えていないと言うこと。
恐らくは自身に向けられた殺気やオーラなどで凡その位置を把握していたのだろう。

「──参ります」

再び自身の周囲に無数の刃を出現させ、今度はその刃と共にボブに向かって飛び出した。

31 :葦ヶ矢 藍 ◆21WYn6V/bk :2013/06/22(土) 23:55:53.17 0.net
藍が弾丸を弾き落とす少し前────

「見知らぬお嬢ちゃんよォ、派手にいこうじゃねぇか、派手によぉぉおおおおおお!!」
藍だけではなく、当然丙にも攻撃は向けられていた。
しかしそれは弾丸の檻ではなく、先程四人を分断した際に使用していたと思われる大砲だった。

「やれやれ、派手なのはあまり好きじゃないんだが……」
溜息を吐きながら迫り来る砲弾を見据える。
直撃、ないし至近で爆発すれば、如何に彼女とて無傷では済まないだろう。
そのどちらかが実現すれば、の話だが。

(どうやら奴は体を武器に変形させるだけではなく、そこから放たれる弾丸なども操作できるようだな)
スッ、と丙の姿が消え、次の瞬間には砲弾の背後に立っていた。
しかし驚くべきはその直後。
何と砲弾が粉々──否、粉末状になってサラサラと風に流されていったのだ。

これには流石のボブも驚いたようだ。何が起こったのかわからない、と言う顔をしている。
「驚いてもらっては困るぞ。この程度、まだほんの一部なのだからな」
言いながらパチン、と指を鳴らす。
すると、どう言う訳かボブが耳を押さえて、顔を顰めながら地面に膝を突いた。

「ほぉ、これに耐えるか。流石に下忍程度よりは頑丈か。だが──」
その隙を丙が見逃すはずもなく、驚天で一瞬の内に接近し、腹に強烈な蹴りを食らわせた。
ボブは数メートル吹き飛んで着地し、丙を睨み付けた。

「動きは悪くない。だが──所詮は『その程度』だ。
 お前が今までどれほどの要人を暗殺してきたか知らないが、あくまでも相手は一般人。
 それも闘いとは無縁の者が殆どだろう。生憎だが我々はそんな輩に負けるつもりはない。
 現に先程の蹴り──私が"能力を使っていれば"お前は死んでいたぞ?」

挑発するような笑みを浮かべ、ボブに告げる。

「再び監獄に戻りたくなければ全力で来い。
 但し──私に攻撃が当てられるかは保証しないがな」

嘲るような、しかし自信に満ちた口調で丙は続けた。
相手を馬鹿にしているような印象を受けるが、決して格下だからと油断しているわけではない。

(さて、どうなるか……。この手の手合いはプライドが高い奴が多いが……)

背後から接近してくる藍の気配を感じながら、丙はボブの行動を注視していた。

【葦ヶ矢 藍:ボブの弾丸を叩き落す。数発受けたが戦闘に支障はない
  丙 凪沙:砲弾を粉砕し、ボブに蹴りを食らわせる】

32 : ◆ICEMANvW8c :2013/06/23(日) 18:58:48.59 0.net
>>30>>31
「おおぅっ!? ──ごっ!!」
耳に走った痛烈な痛みの正体を突き止める間も無くボブは腹部を突き抜ける鈍い衝撃に飛ばされる。
(──チィ!)
それでも唖然とすることなく後方数メートルの地点で体勢を立て直したのは流石の即応というべきであろうが、
そこから即座の反撃に転じることができなかったのは彼に僅かな気後れが生じたからに他ならない。

「動きは悪くない。だが──所詮は『その程度』だ。
 お前が今までどれほどの要人を暗殺してきたか知らないが、あくまでも相手は一般人。
 それも闘いとは無縁の者が殆どだろう。生憎だが我々はそんな輩に負けるつもりはない。
 現に先程の蹴り──私が"能力を使っていれば"お前は死んでいたぞ?」

(どういうことだ……?)
ぺっ、と唾を吐き捨てて、ボブは先程の攻防を思い返す。
放たれたロケット弾、それが直撃の瞬間に、塵となって掻き消えた──
更にその後、耳に走った激痛──そして腹部に入った蹴り──
妙なこと続きだ。かろうじて理解できるのは、高速移動との併せ技と思われる最後の蹴りくらいか。
それ以外はまるで雲を掴むように正体が漠然としすぎている。

丙は能力を行使していないと言い切ったが、果たしてそうだろうか?
動揺を誘う為のハッタリは良くある手だ。
それに第一、本当にあの瞬間に仕留めることができたならば、そうしなかったことが却って不自然である。
敵には手を抜く理由が無いのだから。
(この女のデータは無ェ。だが、邪気で練った俺の砲弾を力だけで粉々にすることはできねぇはずだ。
 ということは、やはり何かしらの能力を……)

「再び監獄に戻りたくなければ全力で来い。
 但し──私に攻撃が当てられるかは保証しないがな」
「……言ってくれるぜ、小娘の分際でなァ」

丙を、次に彼女の背後から迫り来る藍を一瞥して、ボブは微かに笑った。
「暗殺ってのはよォ、失敗したら逆に自分にリスクが降り掛かってきやがるんだ。
 だから暗殺者ってのは一発必中を心がけながらも、初弾が外れた時の対処ってのを必ず用意している」
その刹那──だらりと下がったランチャーが、再び号砲をあげた。
一発目、そして二発目とは違い、地面に向かって撃ったのだ。
しかも撃ち出された砲弾は炸裂と同時に眩い光(目くらまし)を放つ閃光弾。

「ちょっとばかし俺をナめてたンじゃねぇかァ? あぁっ?」
カッ──と辺り一面に広がる白い光。
と同時に再び火を噴くガトリングガン。その弾丸はさながら横殴りの豪雨のように空間を入り乱れる。
下手な鉄砲数撃ちゃ当たるとはいうが、互いに視界が封じられている以上、
とにかく手数で圧倒しようというのは有効な戦法であるといえる。
だが、実際のところボブの本命はそれではなかった。何故なら彼はこの光の中でも敵の姿が視えていたからだ。

殺傷力の高いガトリングガンだが、敵の二人の実力を考えればこれだけで倒せると誰が言い切れよう。
ましてや丙の方は能力がまだ未知数。意外な方法で凌がれるということも十分に考えられる。
故にガトリングガンの乱射は敵を威嚇し、怯ませ、かつ銃声で己の音を消すための陽動の意図が含まれているのだ。

銃声に自分の足音を混ぜてボブは光の中を密かに突き進む。
そして両目を瞑る丙と足を止めた藍を眼前にしたところで、ニヤリ、その口を歪める。
(俺にはお前らの姿がよぉ〜く見えてるぜェ!)
すかさずその両者に向けて、にゅっ、と左右に伸ばした腕。
それは見る見る内に形を変え──コンマ五秒後には一つは先端にノズルのついた“火炎放射器”に──
もう一つはロケットランチャーよりも更に長く、太い砲身を持った強力な“戦車砲”と化していた。

(ほぼゼロ距離だ──こいつを躱せるかァッ!!)

次の瞬間、丙には数千度に達する紅蓮の火炎が、藍には120mmの砲弾が放たれた。

【ボブ:閃光弾を使って視力を奪い、その隙に攻撃する】

33 :葦ヶ矢 藍@代理:2013/07/13(土) NY:AN:NY.AN 0.net
>>32
「暗殺ってのはよォ、失敗したら逆に自分にリスクが降り掛かってきやがるんだ。
 だから暗殺者ってのは一発必中を心がけながらも、初弾が外れた時の対処ってのを必ず用意している」

丙の背後から向かってきているであろう藍に一瞬視線を向け、ボブは地面に砲弾を撃ち込んだ。
(自爆──ではない!これは──!)
丙が答えに行き着くよりも早く、辺り一面を眩い光が覆った。

「ちょっとばかし俺をナめてたンじゃねぇかァ? あぁっ?」
(スタングレネード!)
気付いた時にはもう遅い。視界は奪われ、目を閉じるしか方法はなかった。

同時に、再び聞こえる狂ったような連射音。
(まずいな……この状態では下手に避けても当たる可能性がある)
視界が正常ならばかわすのは容易だが、今は目を閉じている。
(だが、この弾なら──)

一方、藍もグレネードによって足を止めざるを得ない状況になっていた。
(まずいわね……。この状況、相手は十中八九こちらの姿が見えている筈。
 でなければ態々自分の足元に撃ったりはしない)
そして聞こえるガトリングの掃射音。
(こちらの視界を奪っておいてからの機銃掃射……。流石に手馴れている……!)
だが、ここで藍はふと先程の出来事を思い出した。

(そういえば、あの男は私の刃が見えていないにも拘らず撃ち落とした……)
ボブが藍の刃を視認出来ていないのは先程証明済みだ。
(私の刃は邪気の塊。それを感じ取れれば位置の把握も出来る……。
 そしてこの物量とあの男の格好。それを顧みれば自ずと答えは見えてくるわ)
そう、それは即ち──

(邪気の塊であるこの弾ならば、それを感じて避けることは出来る──!)
(あの男に出来て、私に出来ない道理はない!!)

藍は先程のように二本のナイフで弾を弾き始める。
丙は流れる水のような脅威の体捌きで弾を避けていった。

どの位の時間そうしていたであろうか?
いつの間にか銃声は止み、周囲に静けさが戻っていた。
(奴は何処に──)
(あの男は──!)
未だ視界が戻らない中、ボブを探す二人の眼前で突如として邪気と殺気が膨れ上がった。

「マズい──!!」「しまった──!!」
二人のその声は轟音にかき消されていた。
次の瞬間、丙は紅蓮の炎に包まれ、藍は轟音と共に巨大な爆発に巻き込まれていた──。

34 :葦ヶ矢 藍@代理:2013/07/13(土) NY:AN:NY.AN 0.net
「クッ……!」
ようやく視界の戻った藍だったが、ダメージは思いの外大きかった。
如何に能力者とはいえ、零距離で戦車砲を食らったのだ。
だがそれでも生きているのは、やはり能力者だからだろう。

「この程度のダメージで……!」
ギリッ、と歯を食いしばり、痛む体に鞭打って立ち上がる。
そこで藍は、目の前の光景を見て息を呑んだ。

(あれは──丙様がいた場所──!?)
そう、丙が居た筈の場所は激しく燃え盛る炎に包まれていたのだ。
離れている藍にまで届くほどの超高熱。恐らく数千度はあるだろう。

(如何に丙様とてあれの中にいれば死は免れない……)
そう思う藍だったが、心中とは裏腹に表情は笑っていた。

仲間が生死不明なのに何故笑っていられるのか──?

その答えは至極単純。藍はその目で見ていたのだ。
ボブの数メートル背後に立つ丙の姿を────。

「……確かにお前の言う通り、私は貴様を侮っていたようだ」

普段と変わらぬ声。しかしその声には静かな威圧感が含まれていた。
弾かれるように振り返るボブの目に映っていたのは、
所々融けて穴の開いたボディスーツを着た、しかし五体満足で立つ丙の姿だった。

よく見ると、丙の背後の地面には人が一人通れるほどの大きさの穴が開いていた。
「能力を使わなければ危ない所だったよ。だがこの通り、私は生きている。そして──」
丙の体から濃密な邪気と共に、それだけで人を殺せるほどの殺気とプレッシャーが放たれていた。

「もはや遠慮はせん……。監獄へ返すなど生温い、この場で息の根を止める」

ゴゴゴゴゴ……と大地が鳴動し始める。
「……冥土の土産に見せてやろう。私の能力を──」
丙の姿が乱れた映像のようにブレる。そして次の瞬間にはボブの眼前にあった。
一瞬反応が遅れたボブの腹に手を添え、静かに、しかしハッキリとした声で呟いた。

「──『波動掌(はどうしょう)』──」

ドンッ──!!!という音と共にボブの体が紙切れのように吹き飛び、工場の壁に激突。
そのまま壁を粉砕し、瓦礫と共に中へと消えていった。

「大丈夫ですか?藍さん」
いつの間にか横へ来ていた丙を、藍は驚いた表情で見つめる。
しかしそれは突然現れたことに対してではなく、今の一連の出来事を見てのことだった。

「丙様、今のは……」
「分かりにくかったかも知れませんが、これが私の能力──『覇振眼(はしんがん)』です。
 大層な名前の割に振動を操るというだけ単純なものですがね」
「これが丙様の能力──」
あまりの出来事に、藍は戦闘中ということを忘れ、数秒の間呆然としていた。

「奴はまだ死んだわけではありません。闘えますね?」
藍の体の状態は一目見ただけで分かっていたが、敢えてそう聞いた。
「──勿論です」
鋭い視線で工場の方を見ながら、藍は静かに答えた。

【葦ヶ矢 藍:戦車砲の直撃を受け、ダメージ大。戦闘の継続は可能だが、戦闘力が大幅に落ちる
 丙 凪沙:炎に焼かれダメージを受けるが、戦闘は継続可能。能力が明らかに】

35 : ◆ICEMANvW8c :2013/07/13(土) NY:AN:NY.AN 0.net
「クックック」
笑いながら、左の戦車砲にジャコン、と次弾を装填し、右の火炎放射器に燃料を充填するボブ。
対する藍は砲弾の威力を受けて後方数メートルまで吹っ飛び、傷だらけ。その顔に当然ボブのような笑みは無い。

「流石にダメージは小さくねぇようだな? だが、褒めといてやるぜ。今のでくたばらなかったタフさをよぉ」
今、どちらが優勢でどちらが劣勢かは一目瞭然。故にボブも余裕を醸し出す。
「……──っ?」
ところが、次の瞬間その態度は一変する。
そう、視線を燃え盛る紅蓮の火炎に移したと同時に彼は気付いたのだ。
火炎の中にあるはずの丙の姿が無いことに。そして、地面に大きな穴がぽっかりと空いていることに。

「……確かにお前の言う通り、私は貴様を侮っていたようだ」
これまで全く意識を向けていなかった背後からの声に、ボブは反射で応じる。
「なっ……?」
振り向いたその先にはところどころに焦げ痕こそついてはいるもののほぼ無傷といっていい姿の丙。

「そうか……穴を掘って俺の後ろに……!」
「能力を使わなければ危ない所だったよ。だがこの通り、私は生きている。そして──」
「っ!?」
「……冥土の土産に見せてやろう。私の能力を──」
(──これは!)

咄嗟に火炎放射器の先端を向けるボブ。
だが、それは文字通り“遠慮を捨て去った”今の丙の前には余りにも遅い反応であった。
「──『波動掌(はどうしょう)』──」
時間すらも置き去りにするかのようなスピードで腹部に叩き込まれた破壊の衝撃は、
正しく音速をもってボブの全身を駆け巡り、容易に彼の身体をバットの芯に当たったボールの如くはね飛ばした。

「がっ──あぁっ!?」

壁に叩きつけられ、更にそれをぶち抜いて転げ回り、衝撃で落ちてきた瓦礫に飲み込まれるボブ。
会心の一撃とは正にこの瞬間の為に用意されたのかと言っていいくらいの痛快な光景である。

「奴はまだ死んだわけではありません。闘えますね?」
だが、それを目の当たりにしても尚、藍がそう呟いたように、ボブはこれで参るようなヤワな犯罪者ではない。
「……なるほど……振動、か……!」
ガラガラ、と瓦礫を押しのけて、彼は直ぐに立ち上がった。

36 : ◆ICEMANvW8c :2013/07/13(土) NY:AN:NY.AN 0.net
すいません、>>35に訂正ありです。訂正済みのレスはこちら。

>>34
「クックック」
笑いながら、左の戦車砲にジャコン、と次弾を装填し、右の火炎放射器に燃料を充填するボブ。
対する藍は砲弾の威力を受けて後方数メートルまで吹っ飛び、傷だらけ。その顔に当然ボブのような笑みは無い。

「流石にダメージは小さくねぇようだな? だが、褒めといてやるぜ。今のでくたばらなかったタフさをよぉ」
今、どちらが優勢でどちらが劣勢かは一目瞭然。故にボブも余裕を醸し出す。
「……──っ?」
ところが、次の瞬間その態度は一変する。
そう、視線を燃え盛る紅蓮の火炎に移したと同時に彼は気付いたのだ。
火炎の中にあるはずの丙の姿が無いことに。そして、地面に大きな穴がぽっかりと空いていることに。

「……確かにお前の言う通り、私は貴様を侮っていたようだ」
これまで全く意識を向けていなかった背後からの声に、ボブは反射で応じる。
「なっ……?」
振り向いたその先にはところどころに焦げ痕こそついてはいるもののほぼ無傷といっていい姿の丙。

「そうか……穴を掘って俺の後ろに……!」
「能力を使わなければ危ない所だったよ。だがこの通り、私は生きている。そして──」
「っ!?」
「……冥土の土産に見せてやろう。私の能力を──」
(──これは!)

咄嗟に火炎放射器の先端を向けるボブ。
だが、それは文字通り“遠慮を捨て去った”今の丙の前には余りにも遅い反応であった。
「──『波動掌(はどうしょう)』──」
時間すらも置き去りにするかのようなスピードで腹部に叩き込まれた破壊の衝撃は、
正しく音速をもってボブの全身を駆け巡り、容易に彼の身体をバットの芯に当たったボールの如くはね飛ばした。

「がっ──あぁっ!?」

壁に叩きつけられ、更にそれをぶち抜いて転げ回り、衝撃で落ちてきた瓦礫に飲み込まれるボブ。
会心の一撃とは正にこの瞬間の為に用意されたのかと言っていいくらいの痛快な光景である。

「奴はまだ死んだわけではありません。闘えますね?」
だが、それを目の当たりにしても尚、丙がそう呟いたように、ボブはこれで参るようなヤワな犯罪者ではない。
「……なるほど……振動、か……!」
ガラガラ、と瓦礫を押しのけて、彼は直ぐに立ち上がった。

37 : ◆ICEMANvW8c :2013/07/13(土) NY:AN:NY.AN 0.net
「打撃に振動を加え、衝撃を倍加……ぐふっ、ごほっ! ……常人なら今の一撃で内臓を完全に破壊されているところだ。
 顔に似合わずおっかねぇなぁ……ククク……、げぼっ……!」
それでもダメージは大きい。それは吐血し、苦しそうにむせる姿からしても明らかだった。
(思った以上の攻撃力……そして、体捌き……闘い慣れしてやがる……)
彼自身、不敵に笑みを作ってはいるものの、余裕は既に無かった。
──次に今の技をくらえばアウトだろう──そんな危機感すらあった。

故に、彼は次の攻撃で勝負に出ることを即断した。
「──おおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
咆哮一番、一気に全身を変形させるボブ。
一片の迷い無く瞬く間に現したその形は──
いや、その姿は──見たことも無い禍々しいまでの漆黒の『甲冑』を纏い『剣』を手にした『重騎兵』。

これは賭けだ。この鎧は物理的な衝撃をシャットアウトする鎧本来の特性を限界まで高めたもの。
自身の肉体を変形させたものだから見た目と違って重いわけではなく、スピードが殺されることはない。
一方の剣もただの剣ではない。これはいわば剣の形をした強力な“超音波メス”。
刃を低周波で振動させ、触れた物質の分子そのものを直接切断する破壊力抜群のカッターなのだ。

邪気で練られたロケット弾すら振動の力で粉砕できる丙には飛び道具は通じない。
ならば、こちらは鎧で相手の攻撃を防御しつつ、同じ振動の力を利用した兵器で直接切り付ける他決め手は無い。
鎧と剣が勝つか、それとも彼女の力が勝つか──そう、これは賭けなのだ。

「息の根を止めるだとぉ……? ククククク!」
ボブは見た目の重武装を思わせない軽快な動きとこれまでにないスピードで一気に大地を突き進む。
「やれるものなら──、やってみやがれぇえええええええええ!!」

そして、丙を眼前に据えたところで、脳天目掛けて勢い良く剣を振り下ろした──。

【ボブ:丙の実力を痛感し、勝負に出る。】

38 :葦ヶ矢 藍@代理:2013/07/13(土) NY:AN:NY.AN 0.net
>>36>>37
「……なるほど……振動、か……!」
丙の言葉通り、ボブが瓦礫の山から姿を現す。
「打撃に振動を加え、衝撃を倍加……ぐふっ、ごほっ! ……常人なら今の一撃で内臓を完全に破壊されているところだ。
 顔に似合わずおっかねぇなぁ……ククク……、げぼっ……!」
不適な言葉とは裏腹に、咳き込み吐血するボブ。
しかしその姿を見て尚、二人は油断なく彼の動向を探っていた。

「──おおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
ボブが叫ぶ。それは自身の体に喝を入れているようにも見えた。
そして咆哮と共にボブの体を漆黒の鎧が覆っていく。

「銃器ではない……あれは──」
初めて見るボブの変化に、僅かに驚いた表情を浮かべる藍。
「鎧──ですな。どうやら最後の勝負に出るようです。
 気をつけて下さい。追い詰められた人間は得てして意外な強さを発揮するものです」
今まで銃火器を使用していたボブが、ここに来て肉弾戦を選択した意味。
その意味を丙は理解し、藍に告げた。

「息の根を止めるだとぉ……? ククククク!」
重そうな見た目からは想像もつかない速度でボブが疾駆する。
「やれるものなら──、やってみやがれぇえええええええええ!!」
気が付けばその姿は丙の眼前──先程とは真逆の展開だった。

「確かに、先程よりは遥かに速いが……この程度──」
ボブの移動速度は桁違いに上がっていたが、それでも丙からすればまだ認識できるものだった。
冷静に見切って回避を試みる。──が、ボブの持つ剣を見てその動きを止めた。

「──ハッ!」
そして何と、振り下ろされた剣を白羽取りしたのだ。
「丙様……!?」
藍は丙は当然避けるものだと思っていた。故に彼女の行動を見て驚く。
彼女は丙の少し後ろにいたため、刀を創り出して受けるつもりでいた。
今の藍は先程のダメージの影響で、ボブの攻撃を避けられるだけの動きが出来なかったからだ。

39 :葦ヶ矢 藍@代理:2013/07/13(土) NY:AN:NY.AN 0.net
「危ない危ない……危うく藍さんが真っ二つになる所でしたよ」
丙の涼しげな声が聞こえる。背中しか見えない藍はその表情まで窺うことは出来なかった。

「これは一見普通の剣に見えますが、低周波で振動しています。
 故に、触れれば受ける間もなく切断されてしまうでしょう」
「ではどうして丙様は……あっ!」
そこまで言いかけて、藍は何かに気が付いたような声を上げた。

「そう、振動するものならば私の能力で"中和"出来る。波動掌の応用ですがね。
 ──私が掴んでいる限り、お前の剣は効果を発揮できないぞ」

言いながら丙はチラリと背後の藍へ視線を向ける。
その視線で全てを察した藍は、二人を飛び越してボブの背後数メートルの場所に着地した。

「──『斬鋼刃(ざんこうじん)』──」
言葉と共に、藍の手に一振りの刀が現れる。
その白銀の刃は何処までも美しく、見るものをゾッとさせる輝きを放っていた。

「──いきます」
弾丸のように飛び出し、一気にボブの背中へ肉薄する。
(彼はあの鎧に相当な自信を持っているはず……。しかし鎧である以上当然──)
凄まじい速度で胴を薙ぐように刀を振るう。

(狙うは一点のみ。胸甲板と前当て、その境目──!!)

鎧というものは人が着ることを前提としている為、構造上どうしても脆い部分が出てくる。
それが関節部だ。肘然り、膝然り、そして──腰然り。

(どんなに強度が強くてもパーツとパーツの繋ぎ目、そこを狙えば──!)
鋼をも切り裂く白刃が、残光を残しながらボブの横っ腹に吸い込まれていった──。

【丙 凪沙:ボブの剣を白羽取りして動きを止める
 葦ヶ矢 藍:『斬鋼刃』でボブの胴を狙う】

40 : ◆ICEMANvW8c :2013/07/14(日) NY:AN:NY.AN 0.net
>>39
「そう、振動するものならば私の能力で"中和"出来る。波動掌の応用ですがね。
 ──私が掴んでいる限り、お前の剣は効果を発揮できないぞ」
(チィ! こいつの振動の力がここまでとは……!)

あっさりと無力化された剣を押し合いへし合い──ボブはギリリと歯軋りする。
押し込んでも引いても、剣はびくともしない。
あたかも掌に吸い付いてしまっているかのような、華奢な女の腕とは思えないほどの怪力でがっちりと固定されているのだ。
文字通り、これではもはや剣を振るうことはできないだろう。
(──だが!)
それでもボブに劣勢に陥ったという自覚は無かった。
何故なら剣を止められてもそれは一時的に攻撃力を奪われただけに過ぎず、
何より自身が決定的なダメージを受けたわけではなかったからだ。

「──『斬鋼刃(ざんこうじん)』──」
故に、その手に白刃を顕現した藍に背後を取られても、彼は微塵も動揺しなかった。
「ケッ……その剣で俺に斬り付ける、ってか?」

それに対し、藍は見ての通りだといういわんばかりに急接近し、一閃──
通常の鎧であればどこに当たっても真っ二つになるであろう鋭い斬撃であるが、
それでも鎧と鎧の繋ぎ目に狙いを定めたのは防御力が軽視できないという判断からだろう。
読み自体は妥当。だが、問題はその読みが、狙いが的中するかどうかである。

「──馬鹿がァ!!」

ギィン!
それはボブが叫んだと同時だった。高密度の邪気で練られた白刃が根元から折れたのである。
狙い通りの防御の甘い箇所に打ち込んだにもかかわらず──
それによって藍に生じた一瞬の動揺をボブは見逃さなかった。
動きを止めた体、そのガラ空きの胸に向けてエルボー。
次の瞬間、メキメキ、という骨の粉砕音を鳴り響かせて、藍は吹っ飛んでいた。

「残念だったなァ! 俺の鎧は俺自身の肉体を変化させたもの! その性質は自由自在!
 内部をゴムのように柔軟にすれば一部の隙もねぇ鎧を纏っても動きが制限されることはねェ!!
 わかったかァ!! 常識なんざ一切通用しねぇってことがよぉおおおッ!!」

目を血走らせて得意げに笑うボブ。
なるほど、これはいわば全身を『最強の盾』で一部の隙無く覆い尽くしたようなもの。防御は完璧。
ならば、剣を封じられながらも、劣勢に陥った自覚がなかったのは道理である。

だが、彼は知らなかった。この時点で既に致命的な誤算が生じていたことを。
そして彼がそれに気付くのは、得意げに高笑いした正に次の瞬間であった。

「────ごふっ!!?」

大口をあけたその口から不意に飛び出る真っ赤な血。
ボブは初め、自分に何が起きたのかまるで理解できないというようにぽかんとした。
だが、徐々に脇腹から痛烈な痛みが沸いてくるのを自覚して、まさかという思いがありながらも理解した。
そう、防いだと思われた斬撃によって、実はダメージを与えられていたのだと。
(馬鹿な……! 俺の鎧は完璧に防いだはず……! そ、それがダメージをッ……ということはッ……!)

ピキ──ピキピキ。脇腹部の鎧に亀裂が生じる。
それは流血を伴いながら爆発的な速さで広がり、ついには逆の脇腹にまで達する一本の切り傷と化すのだった。
ボブにとって、それが何を意味するかなどもはや考えるまでもなかった。
(既に、俺の肉体は…………!!)
そう、無敵を誇る『最強の盾』が内部の肉体ごと既に真っ二つにされていたのだ。

41 : ◆ICEMANvW8c :2013/07/14(日) NY:AN:NY.AN 0.net
「ばっ、馬鹿な……!! 俺がっ……この俺がぁぁぁぁああああ……!!」

彼の誤算、それは彼の纏った鎧と正しく対極に位置するものが、偶然にも藍の剣であったということ。
最強の盾が彼の鎧であるならば、彼女の剣は『最強の矛』。
その二つが衝突すればどうなるか──その答えこそが『相討ち』だったのである。

ただし、それがイコール戦闘の結果ではない。
剣は邪気をもとに藍が生み出したもの、一方の鎧は自分の肉体をもとにボブが生み出したもの。
両者の得物が相討ちであっても、肉体にダメージを負うのは片方だけなのだから。

「うぎゃぁぁああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

ばっくりと開き切った傷口。
ボブはそこから盛大に血飛沫を噴き出しながら、凄惨な断末魔をあげて豪快に崩れ落ちていった。
もはや二度と這い上がることのできない地獄の底へ──あたかも周囲にそう印象付けるように。


──この時点で、ボブの敗北はもう一つの戦場に居る者達の知るところでもあった。
ボブの断末魔に誘われるように、ルカ、ソフィア、そして鬼女羅が一斉に視線を向ける。
だが、その瞬間を絶好の好機と捉え、すぐさま意識を“相手”に向けたのはルカであった。

「隙ありぃ!!」
そしてその行動は早かった。
一瞬の内に掌に顕現した紅蓮の火龍を音も無く放ち──
刹那の時間差をおいて鬼女羅の全身を圧倒的な灼熱で包み込んだのだ。
正に電光石火の速攻。それを成功させたルカは思わずガッツポーズ。
傍らのソフィアも、流石に「ひゅぅ」と口笛を鳴らしてその早業を称えた。

「さっすが手が早い。俺の出る幕もなかったか、こりゃ?」
「そんなん見ての通りよ。これで終いよ、終い」

ルカが得意げに鼻を鳴らすのも当然であったろう。
彼女が繰り出した『火遁炎龍焼』は殺傷性が極めて高く、生身の人間がまともに食らえば確実に瀕死は免れない技。
決まればその時点で勝負がついたも同然なのだ。
「……って、おい」
「へ?」
しかし、次の瞬間二人はぎょっとした。
「ふふふふふ」
焼かれ、断末魔の苦しみにもがいているはずの鬼女羅が、笑ったからである。
何故、笑えるのか。その理由を直ぐに突き止めた二人は、そこでまたぎょっとした。

(『心頭滅却』とは違う……これは……!)
(皮膚が……皮膚が焼かれながら『再生』している! 『自己再生』……!)

「やはり私の見た通り……お前たち二人はかなり質の良いエキスを持っているようね。
 ふふふ……久々のご馳走、美味しそうだわぁ〜〜」

火炎を振り払ってじゅるり、と涎を拭う鬼女羅。
それを見てルカはぞっと青ざめ、ソフィアは気色の悪い虫を見るように眉間を寄せた。

「ね、ねぇ……もしかしてあいつ、変なシュミの持ち主なんじゃ……」
「……捕まったら何されるかわかんねーな。……さっさと片付けようぜ」

【ボブ:肉体を切り裂かれ敗北。死亡】
【ルカ&ソフィア:戦闘中】
【鬼女羅に吸収したエネルギーを使った自己再生能力があることが判明】

42 :葦ヶ矢 藍@代理:2013/08/14(水) NY:AN:NY.AN 0.net
>>40>>41
「──馬鹿がァ!!」
藍の刃は確かにボブの鎧に到達した。
しかしそれを切断するには至らず、甲高い音を残して根元から折れた。

「────!?」
刃を過信していたわけではない。
だが、切断とまでは行かずとも防御を崩す自信はあった。
それがどうだ。こちらの刃は折れ、向こうの鎧は無傷のままだった。
そしてそこで僅かでも動揺してしまったのは、心のどこかで無意識の内に刃を過信していたという証拠でもあった。

「ガッ────!!」
硬直した体にボブの強烈な肘打ちが突き刺さる。
骨の砕ける嫌な音と感触を残して、藍は十メートルほど吹っ飛ばされた。

「残念だったなァ! 俺の鎧は俺自身の肉体を変化させたもの! その性質は自由自在!
 内部をゴムのように柔軟にすれば一部の隙もねぇ鎧を纏っても動きが制限されることはねェ!!
 わかったかァ!! 常識なんざ一切通用しねぇってことがよぉおおおッ!!」
「……悔しいですが、私はここまでのようです。丙様、後は…頼み…まし……た……よ……」
キッ、と最後に心底悔しそうにボブを睨み付け、藍は意識を失った。

「……」
丙はボブの剣を掴みながらその一部始終を見ていた。
表情にこそ出さなかったが、頭の中では藍に大怪我を負わせたボブを既に五回は殺していた。
では何故実際にやらないのか?──彼女は既に分かっていたからである。
藍の刃が、確実にボブの体に届いていたということを。

「────ごふっ!!?」
高笑いをしていたボブが口から盛大に血を吐く。
「……始まったか」
丙は予想通りといわんばかりの表情で、剣を手離しボブから距離をとった。

「ばっ、馬鹿な……!! 俺がっ……この俺がぁぁぁぁああああ……!!」
ボブの鎧の脇腹の辺りに亀裂が生じ、凄まじい速度で反対側まで伝播していく。
「どうやら、今度は貴様の方が藍さんを侮っていたようだな」

「うぎゃぁぁああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
絶叫という名の断末魔を残し、ボブは血の海に沈んだ。
丙の宣言通り、その生命活動を停止させて。
数々の暗殺を手がけて来た彼の行き着く先は地獄だろう。
丙は仏教徒ではないが、そんな確信があった。

「藍さん、貴女の剣は確かに奴に届いていました。貴女の勝ちです」
倒れている藍の下へ近付き、優しく抱き起こす。
「厳しいとは思いますが、囚人はまだ残っています。こんな所で倒れるわけにはいきませんよ」

「……う…っ…」
丙の言葉が聞こえたからなのかは分からないが、藍が薄っすらと目を開ける。
「気が付かれましたか」
「丙…さま……。闘いは……」
「我々の──いえ、貴女の勝ちです。
 全ての闘いが終わった訳ではありませんが、取り敢えず今は休息されるがいいでしょう」
その言葉を聞いた藍は、安堵と満足の入り混じった表情で再び気を失ったのだった。

43 :名無しになりきれ:2013/08/14(水) NY:AN:NY.AN 0.net
>>41
「ね、ねぇ……もしかしてあいつ、変なシュミの持ち主なんじゃ……」
「……捕まったら何されるかわかんねーな。……さっさと片付けようぜ」

二人が嫌悪感を露にするのを見た鬼女羅はフゥ、と溜息を吐いた。
「変なシュミとは失礼しちゃうわ。別にお前たちのカラダはどうでもいいんだよ」
しかしその直後には再び愉悦の表情を浮かべ、「ふふふ」と笑った。

「用があるのはその"中身"。健康そうな体にピチピチの肌──さぞかし美味しいんだろうねぇ〜」
ゾワゾワと鬼女羅の髪が生き物のように蠢く。
そして次の瞬間には爆発的な速さで伸び、二人の周囲360度から迫った。
回避は不可能と判断した二人は迎撃を試みるが、ルカの能力が鬼女羅に通じないのは先程証明済み。
故にソフィア一人に頼ることになるのだが、流石に二人分を迎撃することは難しく、結果としてルカが捕まる形となった。

「ふふふ……まずは一人」
ルカを捕まえるや否や、ルカの方に伸びていた髪は急速に縮まり、鬼女羅の前に磔にされる形となった。
もがくルカだが、その度に髪が肌に食い込み、締め付けを強くするだけだった。

「若い女の子は一番のご馳走──さぁ、味を確かめさせてもらうよ」

そう言ってルカの胸元に右手を当てる。
すると鬼女羅の邪気眼である『精吸眼』が輝き出し、ルカの体から光の粒子のようなものが吸い取られ始めた。

「あぁ……!やっぱり思った通り極上の味だわぁ……!こんなご馳走初めてよぉ〜〜」
恍惚の表情を浮かべる鬼女羅。その顔、体は皺が消えて徐々に若々しくなっていく。
最初は抵抗していたルカだが、次第にその力が弱まっていく。
この時点で彼女は鬼女羅の持つ能力に気付いただろう。
未だ髪の毛と格闘しているソフィアはまだ気付いていないようだった。

「このままお前のエキスを吸い尽くせば、二十歳は若返れるかしらねぇ〜」
もう五歳ほど若返ったであろう顔に愉悦を貼り付けたまま、鬼女羅は笑う。

(しかしもう一人の子は髪だけじゃ駄目みたいだねぇ。何か別の方法で捕らえないと。
 ふふふ……二人合わせたら何歳若返れるかしらぁ……?)

【藍&丙:ボブに勝利。藍はダメージ大で気絶中】
【鬼女羅:戦闘開始。ルカを捕らえて生体エネルギーを吸収し始める】

44 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2013/08/14(水) NY:AN:NY.AN 0.net
>>43
縦横無尽に広がる髪の毛に真っ先に捕らわれたのはルカだった。
それは、依然として襲い掛かる黒き触手と格闘し続けるソフィアと比べれば随分と呆気ないように見えた。
だが、実際の内容は決して淡白であったわけではない。

如何に自由自在の触手とはいえ、正体はヒトの髪の毛である。つまりたんぱく質の塊だ。
ルカの持つ火炎ならば一瞬の内に焼き払うことができるだろう。
当のルカ自身もそう考えていた。だからこそ、彼女は捕らわれる前に自らの全身を高熱の火炎でコーティングしていた。

決して悪手とは言えない防御策。
にもかかわらず結果が伴わなかったのは、単純に運が悪かったとしか言いようがない。
そう、相手が紅蓮の業火にもものともしない驚異的な再生能力の持ち主であったという不運。

ルカにすれば、火炎に触れて一瞬の内に焼失した髪の毛が、直後にすっかり再生して進撃を続けてくるのだからたまらない。
止めたと思った足が止まっていないのだから、どうしたって後手にまわる。
「ちょ、ちょっとぉ! 変なところに入ってこないでよぉ! あたしこんなプレイの趣味は無いって……! あァン!」
ショートパンツの隙間から、脇の下の隙間から、うぞうぞと入り込む無数の侵入者にルカは不快な、
時にあられもない声を出して拒絶の意を示す。
だが、その悲鳴に耳を貸すはずもない侵入者は、逆に一層締め付けを強くする。
サディスティックに、などという生易しさなど一切無い、絞め殺さんとばかりにだ。

「ぐぅぅう!」
「若い女の子は一番のご馳走──さぁ、味を確かめさせてもらうよ」

顔を顰め、苦しむルカとは正反対の笑みを以って、鬼女羅が右手をぬっと差し出す。
途端にルカの顔からこれまでとはまた種類の異なる苦しみの表情が浮かび出す。

「あっ……がっ……!」
「このままお前のエキスを吸い尽くせば、二十歳は若返れるかしらねぇ〜」
「わか……がえる……?」

全身を襲う急速な脱力感。そして俄かに変化が訪れる鬼女羅の顔。
全身が磔にされて動かない中、唯一動かせる目で彼女を見たルカは、その変化を目の当たりにして息を呑んだ。
元々、成人女性として丁度熟しかけた年齢の顔立ちであったが、今のそれはそれよりも明らかに若さに溢れているのだ。
(どうなってるの……? あたしが何かを吸い取られるような感覚に襲われてから突然…………って、まさかこいつ……!)

敵に現れた変化。そして、「このままお前のエキスを吸い尽くせば、二十歳は若返れるかしら」という科白。
全てのピースは直ぐに一致した。
(こ、こいつ……真の能力は肉体操作や再生能力じゃない! その手で直に触れた生物からエネルギーを吸い取る能力!
 だとするとやばい! 吸われた方はその分……!)

ビンの中の水を飲み続ければ、やがてビンは空になる。
それと同じことが今、己に起きつつある。
ルカは自分の思った以上に事態が深刻なものになっていることをこの時自覚した。

一刻も早く離れなければならない。しかし、動けない。おまけに抵抗するだけの力を現在進行形で奪われているときている。
これでは詰みが決まった将棋と同じだ。
(しまった! 髪の毛に捕まり、その手で触れさせることを許してしまった時点でアウトだったなんて!)

「あ、あたしとしたことが……! ちっくしょう!」
唇を噛み、キッと鋭い目で睨みつけるルカ。鬼女羅はそれを笑って見据える。
まるで勝負の決まった盤上に二人の指し手が対照的な視線を注ぐように。

だが、この戦闘自体は将棋ではない。
勝つ為の手段が制限されているわけでなければ、そもそも一対一のタイマンが前提でもない。
故にこれで勝負が決まったなどと誰も言い切ることはできないのだ。

45 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2013/08/14(水) NY:AN:NY.AN 0.net
「──このまま? ったく、オレがそんなのを許すと思ってんのか?」
これまで髪の毛をひたすら躱し続けていたソフィアが初めて足を止めたのはその時だった。
そんな何とも大胆不敵な敵を、縦横無尽・変幻自在の触手が放っておくわけがない。
(やれやれ)
一瞬の内に前後左右に展開し、押し潰さんとばかりに一斉に向かってくる髪の束にソフィアは溜息一つ。
そしてゆらりと上げた片足を、周囲の大気を吹き飛ばすかのような一声を以って強く地面に叩き付けた。

「破ァッ!!」

瞬間、彼を中心に地面が広範囲に渡って崩壊し、爆ぜる。
それは『凍土爆砕陣』が炸裂した事を意味するものに他ならなかった。
不意の揺れに流石の鬼女羅もバランスを崩す。
その際、反射的に意識を大地に集中するのは受身を取ろうとする防衛本能であろう。
それによって髪の動きが鈍り、一瞬だが確かに停止する瞬間をソフィアが見逃すはずがない。

髪の毛の包囲網を文字通り飛び越え、ソフィアはターゲットを定める。
それはバランスを崩して今にも倒れそうな鬼女羅──ではなく、捕らわれのくの一。
「よっ!」
腕を掴み、勢いを利用してそのまま空間に引っ張る。
ぶちぶち──と髪が引きちぎられ、強引に拘束から解放されたルカは、
そのままソフィアが着地した地点にその身を投げ出して尻餅をついた。

「あいたっ!」
「言っとくが、こっちは一応キャッチしてやる気だったんだぜ? でも、そうそう都合よくいかねぇもんなんだよな。
 だから……文句は言わねぇでくれよ?」
「……そんな偉そうに言える立場じゃないって事はわかってる」

パンツ越しに尻をさすりながらルカが言う。
高飛車が服を着て歩いているような彼女も流石に助けてもらったという事実を前には素直にならざるを得ないのだろう。
しかし、ソフィアにとっては却ってそこが不気味であった。

「……あによ、きょとんとしちゃって」
「あ、いや…………なんか……調子が狂うっていうか……」
「フン……バーカ!」

舌を出し、プイッと顔を背けるルカ。
それに対し、なんだかなぁー……初めはそう言いたげに頭を掻いたソフィアであったが、
「あたしだって素直になる時はなるんだから」とルカが呟いたのを聞いて、直ぐにフッと笑った。
(少しずつだけど……やっぱなんだかんだで心を開いてくれてるわけね。……これってツンデレ?)

口に出して問えば烈火の如く反論されるのは目に見えていたのであくまで自問に留める。
まぁ、そんなことを訊ねたり、言い合いできる余裕が無いのも確かなので無難な判断であろう。

「……それよりあいつの能力だけど」
ルカも既に思考を切り替えじっと鬼女羅を凝視していた。
「あぁ、もうわかってるつもりだ」
と、ソフィアも視線をルカから切って彼女を見る。
言葉の通り、ソフィアは既に能力に見当をつけていた。
敵の言葉をそのまま自然な形で解釈し、受け止めれば誰だってそれくらいはできるだろう。
(そして何より……)
ソフィアは再びルカに視線を戻し、目を凝らす。
(……体を覆う邪気がさっきよりも薄く、弱々しくなっている……十中八九、敵の能力はエネルギーの吸収。
 髪の毛の操作や再生能力はそれによる副産物に過ぎないんだろうぜ。だとすれば……)

46 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2013/08/14(水) NY:AN:NY.AN 0.net
「ルカさんよ」
そしてルカの前に一歩出て、鬼女羅と対峙する。

「色々やり返したい気持ちはあると思うが、ここはオレに任せてくれねぇか?
 ──いや、闘いをオレに“合わせて”くれるだけでもいい。
 オレの予想に間違いがなければ、あいつにはオレの能力の方が通じる」

ルカもそれは薄々思っていたことであった。だからこそ、ここも素直であった。

「……わかってる、わかってるわよ、馬鹿じゃないんだから」
それでも罰が悪そうに、若干悔しそうに視線を下に落とすところに彼女なりの意地が見え隠れもするが、
ソフィアにすればその方がむしろ清々しい反応と言えた。
「へいへい、余計なお世話でごぜぇやすか」
だから軽口を交えながらも、最後にはこう言った。
「ルカさんのそういうところさぁ、オレ、嫌いじゃねぇぜ?
 性格はちょっとばかし面倒くせぇけど、自分に嘘をつかないってのはできるようでできなかったりするもんな」

それには、言葉以上の深い意味はなかっただろう。
だが、含みは無くとも今現在、進行形で好意を抱き始めているルカには刺激的な一言に変わりない。
(ほ、褒められてる……? それに、き……嫌いじゃないって……それってまさか、す…………)
勘違いを加速させて一人勝手に胸を高鳴らせるルカの顔は、自分の火炎よりも真っ赤であった。
パートナーがそんなことになっているとは露知らず、ソフィアは対照的なシリアスな顔で鬼女羅を睨みつける。

「さて、そンなわけだからよ……悪いけどこっからは闘いの主役の座を任せてもらうぜ?」
「ぇ……ぁ、ああっ、う、うん!」
戸惑っていたこともあったのだろう、ルカは自分でも驚くくらい素直に、それも子供のような甘い声で頷いた。
(あ、あたし……なんかキャラ違うぅぅぅ〜〜! オトコにこんな……ああぁああ〜〜〜〜!)

恥ずかしさ、悔しさ、そんな感情を交えて心の中で涙目になって頭を抱えるルカを尻目に、
ソフィアは一言──
「さっきの髪の毛、今度は躱さねぇでいてやる。だから、今度はオレに食らわせてみな?
 手前の攻撃ではオレに傷一つつけられねぇってことを教えてやるよ──」
そして構えた。それは『把玉の構え』であった。

【ルカ:ソフィアに助け出されるもエネルギーを吸収されたことで攻撃力ダウン+体力消費】
【ソフィア:『把玉の構え』を取りながら挑発する】

47 :名無しになりきれ:2013/08/14(水) NY:AN:NY.AN 0.net
>>45

「──このまま? ったく、オレがそんなのを許すと思ってんのか?」
不意に聞こえてきたその声は、未だ髪と格闘を続けていたソフィアから発せられた。
「許すも何も……今のお前にこの娘が助けられるのかい?」
確かにソフィアを髪の毛で捕らえることは難しいだろう。
しかし足止め程度なら可能。現にソフィアは先程から釘付けにされている。

と、そこで今まで動き続けていたソフィアの足が急に止まる。
(流石に疲れが出てきたようだねぇ。ま、あれだけ動けば当然か)
鬼女羅はソフィアの捕獲──即ち、この勝負における勝利を確信する。
だが、そんな鬼女羅の考えはソフィアの次の行動で覆された。

「破ァッ!!」

ソフィアが勢いよく片足を地面に叩きつける。
そこを中心に凄まじい勢いで地面が爆裂し、大地が揺れた。
「なにっ……?」
その行動を予測できなかった鬼女羅が取れる行動は、倒れないよう自分の足元に意識を向けることだけだった。
如何に鬼女羅といえど、他のことに意識を向けていれば肉体操作が疎かになるのは仕方のないことだろう。

「よっ!」

そして足元に意識を向けていた一瞬の間に、いつの間にやら接近していたソフィアがルカを強奪する。
操作が疎かになったことにより締め付けが緩んだ髪の毛は、ブチブチという音を立ててルカから離れる。
結果としてソフィアの思惑通り、ルカは解放される形となった。

「いたた……お前も女なら髪の毛は丁寧に扱いなさいよ、まったく……」
抜けた部分の頭部をわざとらしくさすりながらごちる。
引きちぎられた髪の毛はとっくに再生しており、再び二人(主にルカ)を捕らえようと蠢いていた。
(しかしあの金髪の娘はいいとして……もう一人の方は厄介だねぇ。
 髪の毛で捕らえられる相手じゃなさそうだ。となれば──)

「さて、そンなわけだからよ……悪いけどこっからは闘いの主役の座を任せてもらうぜ?」
鬼女羅がソフィアを捕らえる方法を考えている内に、向こうの方はどうやら準備が整ってしまったようだ。
ソフィアが一歩前に出て、ルカを庇うような形で鬼女羅と対峙する。
「さっきの髪の毛、今度は躱さねぇでいてやる。だから、今度はオレに食らわせてみな?
 手前の攻撃ではオレに傷一つつけられねぇってことを教えてやるよ──」
そして地面に片膝を突き、両手は何かを握りこむように構えられていた。

見たことのない構え。そして鬼女羅に対するあからさまとも言える挑発。
「ふん、安い挑発ね。さっきの攻防でお前に髪の攻撃が効かないのはもう分かってる。
 効かないと分かっている攻撃を態々繰り出すと思うかしら?」
ゾゾゾ──と蠢いていた髪はいつの間にかその動きを止め、静かに風に靡いていた。

48 :名無しになりきれ:2013/08/14(水) NY:AN:NY.AN 0.net
「お前が何かをやろうとしているのかは分かっているわよ。
 そしてそれは──あたしが動かないと意味がないこともね」
(そう、あの娘はあの構えを取ってから動く気配がない。 ということは、向こうの狙いはカウンターによる攻撃)

そう、鬼女羅は『把玉の構え』のがカウンター始動の技であることを見抜いていたのだ。
それは一世紀近くを生き、様々な人間を見てきた鬼女羅だからこそ成せる業でもあった。
「……黙っている所を見ると図星のようね。
 それでも構えを解かないということは、よっぽど自信があるのか……」
今度は鬼女羅が逆に挑発するも、ソフィアは動こうとしなかった。

(これだと埒が明かないねぇ。時間を置けばいずれ金髪の方も回復してくる。
 そうなればさっきほど簡単には捕らえられないだろう。
 そうなる前に何とかしてもう一度捕らえないと。その為には……)
「──気が変わった。お前の挑発、乗ってやるわ。ただし──」
言葉と共に、再び髪の毛が蠢き始め、それを見たルカが顔を顰める。

スッ、と腰を落とし、次の瞬間にはソフィアに向かって飛び出していた。
元々鬼女羅自身そこまで身体能力は高くないのだが、先程ルカからエネルギーを吸収したお陰か、
その速度はルカ達に匹敵、或いは上回るほどのものだった。

「お前も休ませるつもりはないけどねぇ!!」
鬼女羅本人はソフィアの元へ、そして髪の毛は再びルカの方に向かって伸びていった。

「さぁ、その小娘ちゃんを守りながらあたしを倒せるか──試してご覧よ!」

【鬼女羅:挑発に態と乗る形でソフィアに攻撃を仕掛け、ルカに再び髪の毛を放つ】

49 :名無しになりきれ:2013/08/14(水) NY:AN:NY.AN O.net
てす

50 : ◆ICEMANvW8c :2013/08/15(木) NY:AN:NY.AN 0.net
>>48
「お前が何かをやろうとしているのかは分かっているわよ。
 そしてそれは──あたしが動かないと意味がないこともね」
「…………」
「……黙っている所を見ると図星のようね。
 それでも構えを解かないということは、よっぽど自信があるのか……」

鬼女羅の洞察力の前にソフィアはただただ無言を貫き通した。
しかし、それは驚きや、感嘆の念があったからではない。
多弁は銀、沈黙は金──余計な一言が、計算を狂わせる可能性があったからだ。
つまり、ここまではソフィアの計画通り。『把玉の構え』、その意味が敵に知れることなど想定内。

(餌は撒いてやったぜ? さぁ、食いつけ──)

吸い取ったエネルギーを自らにプラスする──それは若さだけでなく、純粋な身体能力の強化をも可能とする。
その読みに間違いがなければ、一瞬の判断の遅れが命取りになるだろう。
だからソフィアは微動だにせぬまま敵の一挙手一投足に集中する。
まるで、糸を垂らした水面に目を凝らしながら“その時”をひたすら待ち続ける釣り名人のように。

「──気が変わった。お前の挑発、乗ってやるわ。ただし──」

(来た!)

弾き出されるように飛び出す鬼女羅を、目を大きく見開いて待ち受けるソフィア。
文字通りの弾丸のようなスピード。だが、事前に集中力を極限まで高めていた彼の目には、全てがしっかりと見えていた。
「お前も休ませるつもりはないけどねぇ!!」
そう、意表を突いて繰り出された髪の毛の一本一本さえも、しっかりと。
「さぁ、その小娘ちゃんを守りながらあたしを倒せるか──試してご覧よ!」
だから彼は思わず笑った。フッ……と、不敵に。

「ありがとよ。何から何まで、俺の思った通りになってくれた」

次の瞬間、今度は鬼女羅が目を丸くした。
計算通りにルカを縛り上げたはずの髪の毛が全て、一瞬の内に内部から破裂したように消し飛んだのである。
「悪党なんざ腐るほど見てきてる。だから、手前みてぇな外道のやることなんざハナからわかってんのさ」
ソフィアは敢えて説明しなかった。
ルカを救出した際、彼女の身体に密かにアンプルを一本、打ち込んでおいたことを。
そして髪の毛を消し飛ばしたのは他でもない、アンプルの効果により一時的に増大され
体外に溢れ出したルカの濃密な邪気そのものであるということを。

「言ったろ? 手前じゃオレに傷一つつけられねぇってよ──!」

そしてその手に力を込めた。自ら死地に飛び込んできた敵を、予告通り無傷で屠るために。

「──『神凍懐受』──ッ!!」

ドンッ!!
触れるもの全てを凍結させる魔拳が今、鬼女羅の心臓部に叩き込まれた。

【ソフィア:ルカに獅子堂から貰ったアンプルの一つを打ち込み、回復プラス一時的な戦闘力増強を促して危機を回避させる。
      そして『把玉の構え』から繰り出せる一段目の奥義を鬼女羅に叩き込む。】

51 : ◆21WYn6V/bk :2013/08/17(土) NY:AN:NY.AN 0.net
>>50
「ありがとよ。何から何まで、俺の思った通りになってくれた」

(……!)
ソフィアのその台詞とその直後に起こった現象を目の当たりにして、鬼女羅は僅かに驚きを見せた。
ルカを捕らえるはずだった髪の毛は、その体に触れた直後に消し飛んでいたのである。

「悪党なんざ腐るほど見てきてる。だから、手前みてぇな外道のやることなんざハナからわかってんのさ」
(あの小娘──!)
ソフィアが何かをしたことは明白だった。
先ほどまでの攻防を見ていれば、ルカが自力で髪の毛を撃退できるとは考えられない。
となれば残るソフィアが何らかの仕掛けを施したと見ていいだろう。そしてそのチャンスは──

(さっき金髪を助けた時、か。チッ……厄介なことをしてくれるわね)
こうなった以上、自身の失態と考えて向こうは一旦諦めるしかない。
今は目の前に迫ったソフィアに集中しなければこちらがやられかねない。

「言ったろ? 手前じゃオレに傷一つつけられねぇってよ──!」
ソフィアは鬼女羅を迎え撃つべく力を溜めている。大技を狙うつもりだろう。
態ととは言え挑発に乗ってここまで来てしまった以上、鬼女羅も離脱することは難しい。
ならば敵の技を見た上で対策を考えるしかない。
リスクは承知の上。もとより無傷で勝てなくてもいいのだ。
倒した後にじっくりとエネルギーを奪えばいいのだから。

「──『神凍懐受』──ッ!!」

鬼女羅の心臓部に高速で拳が打ち込まれる。
「ガハッ!!」
こちらの勢いと合わせてカウンター気味に決まったその威力に、鬼女羅は盛大に息を吐いた。
しかし直後に本命はその威力ではないことに気付く。
手足の──否、体全体の動きが心臓部を中心に急速に鈍くなっていくではないか。
(体が……凍っている!)
恐らくはこれがソフィアの能力なのだろう。
体内から凍ってしまえば、如何に異能者といえども防ぐ手立てはない。
まさに必殺の一撃。──そう、"鬼女羅以外"の異能者にとっては。

「やるじゃない。まさか凍結能力とはね」
ここでソフィアも違和感に気付いただろう。
心臓部に打ち込んだということは、即ち最初に機能が低下するのは心臓を始めとする臓器。
そして臓器の活動が鈍るということは、体全体の機能の低下を意味する。
にも拘らず、鬼女羅には未だその兆候は現れていない。ただ不敵な笑みを浮かべているだけだ。
「あたしじゃお前に傷一つつけられない?結構よ。だって──」
ソフィアが表情を驚きに変えると同時に、鬼女羅が動いた。

「傷をつける必要はないんだからねぇ──!!」

ガシッ、と鬼女羅の右手がソフィアの首を掴んだ。
「捕まえたよ」
そこから即座にエネルギーの吸収が始まる。
「何故自分の技が効かないのか──そんな顔をしているわね。
 いいわ、冥土の土産に教えてあげる」
エネルギーを奪われて僅かに苦痛の表情を浮かべるソフィアに、鬼女羅は悠然と語る。

「まず一つ。あたしの本業は気功師。体内に流れる気──邪気を外に放出するなんて朝飯前。
 そして二つ。心臓を狙ってきたのはいい判断よ。流石のあたしも心臓が止まれば死ぬわ。
 だけど──あたしは心臓を含めた臓器を自由に体内移動させることが出来る。
 つまり、最も遠い足先に移動させれば、即座に心臓が止まることはないわけ。分かったかしら?」

【鬼女羅:一段目の奥義を食らうも、臓器の移動と気の放出で受け流す。
      同時にソフィアからエネルギーの吸収を開始する】

52 : ◆ICEMANvW8c :2013/08/18(日) NY:AN:NY.AN 0.net
>>51
「やるじゃない。まさか凍結能力とはね」

それは、ソフィアの全身を総毛立たせるような一声だった。
何故なら『神凍懐受』を打ち込んだ箇所は生物の最大の急所、心臓部だったのである。
本来なら言葉を紡ぐどころか息をすることすらままならないはずで、
ましてや余裕有り気に笑みを浮かべることなどできるはずもないのだ。

(こいつ……オレの技が効いて……、──いや……!)
だが、自分の首根っこを掴まれたその瞬間、ソフィアは理解した。
鬼女羅の体内で起きたマジックのからくりを。
胸に打ち込んだ手に伝わった感触が、それを教えてくれたのだ。
(鼓動を感じない……! しかも、この血流の動きは…………まさか、心臓は別の場所に……)

「何故自分の技が効かないのか──そんな顔をしているわね。
 いいわ、冥土の土産に教えてあげる」

そうか──ひとりそう確信して目を細めるソフィアに、鬼女羅は自らタネ明かしを始める。

「まず一つ。あたしの本業は気功師。体内に流れる気──邪気を外に放出するなんて朝飯前。
 そして二つ。心臓を狙ってきたのはいい判断よ。流石のあたしも心臓が止まれば死ぬわ。
 だけど──あたしは心臓を含めた臓器を自由に体内移動させることが出来る。
 つまり、最も遠い足先に移動させれば、即座に心臓が止まることはないわけ。分かったかしら?」
「……あぁ、手前が想像以上の妖怪女だってことがな」
そんな彼女に対し、ソフィアは自分の首を絞める鬼女羅の手首を掴み、言った。
「気を放出することで打ち込んだ拳の衝撃を緩和し、更に臓器の体内移動で直撃を避けた。
 それだけやりゃあダメージはほとんどない。確かに笑っていられるだろうよ……」

そして、くすっと笑うのだった。

「だがな、手前は何もわかってねぇよ。こうして触れるだけでいいのは……傷をつける必要がねぇのはオレも同じなんだぜ?」
瞬間、鬼女羅が表情を凍りつかせる。
彼女は気がついたのである。ソフィアに掴まれた右手首が真っ白に凍りついていることに。
いや、手首を伝って腕も肩も、いつの間にか右半身が完全に“機能停止”していることに。

「勘違いしてたようだが、オレの能力は温度操作や冷気を利用した凍結能力じゃない。
 自分のエネルギーを対象に注ぎ込むことで動きそのものを停止させる能力なんだよ。
 一方の手前は吸収した他人のエネルギーを自分にプラスする能力の持ち主。
 お陰でこうしているだけで手前の全身にオレの“力”がくまなく廻り、急速に肉体の活動が停止されたってわけだ。
 エネルギーを吸収されながら、更に自らエネルギーを送り込んでる敵ってのは初めてだったか?」

ソフィアがそう言っている間も冷凍は進み、鬼女羅から更に抵抗の余地を奪っていく。
左肩から左腕を侵し、左の上半身へ。同時に左の腰から左脚へ……そして終いには頭部を。

「ま、何にせよこれで終わりだ。……手前の心臓も、全身を凍らされたら逃げ道はねぇだろ?」

掴んでいた手首を離してソフィアは呟く。
彼女が見上げた先には、もはや物言わぬ氷像が虚しく佇んでいるだけであった。

【ソフィア:鬼女羅の能力を逆用して全身を凍結させ、勝利する。】

53 :名無しになりきれ:2013/08/25(日) NY:AN:NY.AN 0.net
>>52
「……あぁ、手前が想像以上の妖怪女だってことがな」

エネルギーを吸収されている筈のソフィアは、事もなげに鬼女羅の腕を掴んで言った。
「気を放出することで打ち込んだ拳の衝撃を緩和し、更に臓器の体内移動で直撃を避けた。
 それだけやりゃあダメージはほとんどない。確かに笑っていられるだろうよ……」
そしてクスリと笑った。
笑う?エネルギーを奪われて秒単位で弱体化しているのに──?
鬼女羅が抱いた僅かな疑問の答えは、直後にソフィア自身の口から告げられた。

「だがな、手前は何もわかってねぇよ。こうして触れるだけでいいのは……傷をつける必要がねぇのはオレも同じなんだぜ?」

「なに?───!?」
その瞬間、鬼女羅は己の身に起きたことを理解した──否、せざるを得なかった。
そう言えば、腕を掴まれているのにその感触がないとは思っていたが、些細なことだと思っていた。
しかし結論から言えばそれは些細どころか、重大な判断ミスに繋がっていたのだ。
気が付けば掴まれた右腕を起点に、右半身は白く凍り付いていた。
通りで感覚がないわけだ。彼女の右半身は、既に機能を失っていたのだから。

「勘違いしてたようだが、オレの能力は温度操作や冷気を利用した凍結能力じゃない。
 自分のエネルギーを対象に注ぎ込むことで動きそのものを停止させる能力なんだよ。
 一方の手前は吸収した他人のエネルギーを自分にプラスする能力の持ち主。
 お陰でこうしているだけで手前の全身にオレの“力”がくまなく廻り、急速に肉体の活動が停止されたってわけだ。
 エネルギーを吸収されながら、更に自らエネルギーを送り込んでる敵ってのは初めてだったか?」

続くソフィアの言葉でしばし呆然としていた意識が呼び戻される。
慌てて腕を放そうとするも、既に機能しないそれを自身の力で剥がすことは不可能であり、
更に左半身にまで及んでいた凍結のせいで、右腕を切り離すことも叶わなかった。

「馬鹿な……このあたしが……このあたしがァァァァァアアアアアアアア!!!」
唯一残された頭部で叫ぶ。
今まで何万という人間を"食って"きた彼女だったが、ソフィアはまさに天敵とも呼べる相手だった。
ソフィアの言う通り、彼女は今までエネルギーを吸収している最中にエネルギーを送り込まれるといった経験はなかった。
更にその能力は物体の活動停止。エネルギーを吸い取るという彼女の最大の武器が、最大の弱点に早変わりしたのだ。

「こんな小娘に負けるとはね……一体どこで間違えたのかしら……」

その呟きを最後に鬼女羅の体は完全に凍り付き、後に残されたのは彼女の姿をした一体の氷像だけだった。
彼女の最後の問いに答えるとするならば、それはソフィアと相対したこと。
更に言うならば、この計画に加担した時点で遅かれ早かれこの結果は避けられなかっただろう。

「ま、何にせよこれで終わりだ。……手前の心臓も、全身を凍らされたら逃げ道はねぇだろ?」

そして勝者は彼女の疑問に答えることなく、踵を返してその場を去った。

【鬼女羅:能力を逆手に取られ、全身を凍結させられて敗北】

54 :名無しになりきれ:2013/08/25(日) NY:AN:NY.AN 0.net
kaxtukexe

55 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN 0.net
──闇。全てが漆黒に染まった、ただただま真っ暗な暗闇。
気がつけば、ルカの目にはそれしか映っていなかった。
(ここ……どこ?)
呆然とする意識の中、ルカは自問し考える。
そう、確か自分はソフィアらと共にマグ・ナンバーを探して工場に入り込み、そこでターゲットと闘った。
その過程で敵に捕まり、もう駄目かと思った時にソフィアに救い出され…………
気がついたら目の前が真っ暗になっていた。そうだ、その記憶に間違いはない。
(……ソフィアは? あの丙とか言う人やソフィアの先生は?)
だからこそ、ルカにとってこの現状には首を捻るばかりだった。
何せ全く記憶との繋がりがないのである。
一体どうしたら、このようにたった一人で暗闇の中に取り残される破目になったのか。
おまけに全身は自由が効かず、まるで宇宙空間に漂うデブリのようにふわふわと空中に浮いているかのようなのだ。

突然、地球から重力が無くなり、光が失われたとでも言う気だろうか?
「ね……ねぇ! みんな、みんなどこよぉー!?」
常識で考えればありえない。だが、この現状を論理的に解釈できるほど賢しいわけでもない。
だからルカはとにかく仲間を呼んだ。一体何が起きたのかを説明してもらうために。

『……孤独は嫌か?』
しかし、次に鼓膜を打ったその声は、待ち望んでいた仲間のそれとは似ても似つかない、“誰か”のものだった。
「っ!? だ、誰!?」
辺りを見回しても目に映るは相変わらずの暗闇一色。
気配を探っても自分の近くに謎の第三者がいる気配は無かった。
『……ククク、そううろたえるな』
それでも、確かに声だけは彼女の耳に届いていた。

『ワタシはお前を最も良く知る者。味方でもなければ敵でもないが、少なくとも今のお前に危害を加えるつもりはない。
 ……まぁまずは聞け。今、お前の意識はある所に封じられている。あることを切欠にして、偶発的にそうなったのだ』
「あ、あること……?」
『ソフィアとか言うあのガキ……奴がお前の肉体に打ったアンプルが、ワタシを縛っていた鎖を解いたのだ』
「鎖……?」
『それによってお前の意識が今までワタシが封じられていた“世界”に隔離され、代わりにワタシがお前の肉体に現れた。
 ククク、思っていた通り、いい肉体じゃないか。よくぞここまで成長したものだ」
「な、なんだかよくわからないけど……あたしが閉じ込められてるってんなら早く出しなさいよ! 何なのよここはァ!」
『ククク、うろたえるなと言ったはずだ。安心しろ、ワタシが肉体の支配権を得たのはほんの一瞬だ……』

謎の声が、そう言った瞬間だった。
僅かな、ほんの僅かな一条の光がルカの視界に走り、それが見る見る内に輝きを増して周囲を照らし始めたのだ。

『──そう、“今は”な』
「──っ!」
徐々に光に飲み込まれていくルカ。
全身を包んでいくそれは余りにも眩しく、意識さえも徐々に霞ませていくほどであった。

「うあっ──!!」
『“これ”は返しておいてやる。だが忘れるな。近い内に、ワタシはまた取り戻しに現れる。
 それまで精々、大事に使うがいい……ククククククク…………』

遠のき、そして途絶える意識。
だが、ルカの耳には、不気味な笑い声だけがいつまでも鳴り響いていた。

56 : ◆ICEMANvW8c :2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN 0.net
「さて、これで二匹片付いたわけだ。恐らく残りの二人もこの先の建物のどこかに潜んでるんだろうぜ。
 そうとくりゃ芋づる式にパパッと見つけてパパッとやっちまおうぜ、なぁ? ルカさ────ん?」

振り返った先のルカを見やって、ソフィアは思わず訝しげに眉を吊り上げた。
つい先程までアヒル座りでぼうっと闘いを見守っていた筈の彼女が、いつの間にかゆらりと立ち上がっていたのである。
しかも、様子が変なのだ。顔こそ前髪と日光の加減によって生じた影に隠れてどんな表情をしているのかわからないが、
口をもごもごと何かを呟くようにしきりに動かし、時たま、何が可笑しいのか不気味に口元を吊り上げたりしているのだ。
傍から見れば、完全に自分の世界に入り込んだアブない人そのものである。

「ルカさーん?」

再度名前を読んでも返事は返ってこない。
ソフィアは「あっちゃぁ〜」と頭を掻いた。
思い出すのはかつて己の師・獅子堂から聞かされたあの言葉であった。
『その手の中には…少なく見積もって万全のお前の5倍近い邪気が形を成している』
『摂取した際にお前の闇を呼び起こす可能性は高いぞ』
『非常時に備えて何本か渡しておくが、使うなら覚悟して使え。信じているぞ。お前の心を』

地面に打ち捨てられた空になったアンプルの容器を見つめて、ソフィアは唸る。
彼女自身、獅子堂から聞かされた『闇』という概念については、未だ良く理解はできていないものだった。
ただ、アンプルの使用には、少なくとも高いリスクがつきまとうものということだけはわかっていたつもりだった。
しかし、その認識ももしかしたら甘かったのではないか──そんな後悔が彼女を悩ませ始めていた。

「咄嗟の判断だったとはいえ、勝手に使っちまったのは流石に悪かったかぁ?
 なんせマスターが用意したモノだからなぁ……考えてみりゃ想像の斜め上の副作用があってもおかしくはねぇ。
 精神がイッちまったんだとしたら……こりゃヤベェってもんじゃ……あぁぁぁ〜〜!」

ソフィアはとうとう両手で頭を抱える。
ルカを壊してしまったのだとしたら、それこそ敵どころではない。ただただ自分の浅はかさを悔いるばかりとなるからだ。
だが、次の瞬間、彼女の様々な思いは色々な意味で打ち砕かれることとなる。

「へっ!?」
頬をかすめた一瞬の熱風。そして、背後で鳴り響くガラスを砕いたかのような破壊音。
それは、突如としてルカから放たれた火炎弾が、氷付けとなった鬼女羅を木っ端微塵に爆裂させたことを意味していた。
氷像が爆ぜたのは、高熱を受けたことによる急激な温度変化にあることは明らかであったが……
「なっ……」
問題は、何故ルカがそれを……それも、狂気の笑みを浮かべた顔でやったかということであった。

「ウククククク……」
「ルカ……さん? ……いや」
「挨拶……代わり……今は、これで……」

(──違う! これは──)
ソフィアがルカから感じた得体の知れぬ何かの正体を直感した時、ルカの顔から狂気が消えた。
そして直ぐに、“いつもの”彼女の顔へと戻るのだった。

57 : ◆ICEMANvW8c :2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN 0.net
「…………ん……んん? あっ……!」
何度か連続して瞬きし、慌てたように左右に首を振る彼女を見て、ソフィアは無意識に安堵の溜息をついていた。

「……んだよ、夢でも見てたのか? あぶねーな……」
「えっ? 夢っ?」
「いや、オレが聞いてんだけどさ」
「あ、あぁ……そっか……夢、だよね……」
「……戦闘中に居眠りねぇ……それはそれは随分図太い神経をお持ちなようで」
「あっ! あによぉー! 別にそういうわけじゃ……」

口を尖らせ反論しかけるも、自分自身いま一つ納得がいかないと言うように直ぐに小難しい顔を見せるルカに、
ソフィアも内心考えざるを得なかった。
(あれは……あれは確かにルカさんの顔じゃなかった……まさかあれが……)
そして、それはルカも同様であった。
(あれは夢……いや、絶対違う! でも、だとしたらあれは一体……)

二人の間に流れる沈黙。
その様子を眺めていた丙らも同様に押し黙るのみだった。
彼女らも今の光景に何かを考えていたのか、それともこのなんとも言えない雰囲気に口を差し挟めないでいたのか……
いずれにせよ確かなことは、この永遠に続きかねない静寂を破ったのは、
この四人の内の誰かの一声ではなかったということである。

「──ぎゃああああああああああああああああああああああ──!!!!」

突如としてけたたましい悲鳴が、四人の先に佇む建物から鳴り響いたのだ。

【ルカ:精神世界に隔離され、そこで闇の声を聞く。その間、肉体を闇に支配されるも、再び肉体の支配権を取り戻し我に返る。】
【直後に、近くの建物からけたたましい悲鳴があがる。】

58 : ◆ICEMANvW8c :2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN 0.net
──ルカらが悲鳴を聞いた時刻よりほんの少し遡り──
場所は、詐欺城と残すもう一人のマグ・ナンバーが潜伏するとある工場内。

「……遅いな」

その中を、詐欺城は一人、ぐるぐると歩き回っていた。
彼は不安を募らせていた。
追ってきた刺客を返り討ちにする為に出て行った仲間二人が一向に帰ってこないことに。
既に先程まで嫌というほど聞こえていた戦闘音もぴたりと止んでいた。
勝利したのならば、そろそろ帰ってきてもおかしくはない。
まさか戦闘の報告もせずにそのまま二人して逃げたわけでもないだろう。
ならば、何故帰ってこないのか?

「くっそ! 何してんだよあの二人はァ! まさか…………まさかまさかまさか!」

最悪のケースが頭をもたげ、彼は焦りすらも感じ始めていた。

「まさか……や、やられたんじゃないだろうなっ? あんなに自信満々で行ったのに……じょ、冗談じゃないぞ!
 これじゃあわざわざ僕の居場所を教えに行ったようなもんじゃないか!!
 ちくしょう! あんな奴ら信用するんじゃなかった! くそっ! くそくそくそ! クソォッ!!」

ガァン、と床に放置してあったバケツを蹴っ飛ばす詐欺城。
別に意図があったわけではない。ただ、感情に任せて八つ当たりしただけである。
しかし、飛ばされたバケツが床を転がり、やがて一つの人影に当たって止まったのを見て、
彼は一つの切欠を得るのだった。そう、怒りの矛先を、“そいつ”に向けるという切欠を。

「おいっ!! さっきから何をのそのそやってるんだよ!! 状況がわかってんのか!!」
「……」
その人影は何も答えなかった。逆を言えば、嗜めたりも激情にかられて反論することもなく、無視を決め込んだのである。
「いい加減にしろよ……このままだと僕らもやられてしまうんだぞ! 何か考えはないのか!」
「……」
「おい!!」
「…………クックック」

再三に渡る呼びかけにようやく人影は応じた。しかし、それは単なる不気味な愉悦であった。
神経を逆撫でするかのような言動を受けて、一気に血流が脳天に昇ったのを感じた詐欺城は、
無意識の内に人影の胸倉に掴みかかっていた。

「てめぇ、いい加減に……────ヒッ!?」

しかし次の瞬間、彼は悲鳴にも似た小さな声をあげ、同時に自らの過ちを理解した。
そう、怒りの矛先を向けるという選択が最低最悪の悪手であり、触れてはいけないものに触れてしまったということを。
そして直感した。自分自身が、自らの意思で己の“死地”に飛び込んでしまったということを。

「あっ……あぁぁ、あぁぁぁああ……」
「クククククク……とうとう完成したぞ、この私の“腕”が……! 復讐を可能にする最高の“武器”が……!」
「なな、なんだお前……! その……その姿はぁぁぁああああ!!」
「丁度良い。まずは小うるさい貴様の体でこの試作品のテストといこうか……!」
「──うわ──あああああああああああああああああ────」


「──ぎゃああああああああああああああああああああああ──!!!!」

大量の血飛沫が、空間に舞い上がった。

【詐欺城 十一:最後のマグ・ナンバーの手にかかり、肉体をバラバラにされて惨死。】
【最後のマグナンバー:潜伏先でルカらを待ち構える。】

59 :葦ヶ矢 藍 ◆21WYn6V/bk :2013/09/01(日) 19:04:51.83 0.net
「ん────」
目覚めた藍を迎えたのは、辺りを包む静寂と雲に覆われた空だった。
「私は……そうだ!戦闘は──」

「取り敢えず皆無事です。彼女等もよく闘ってくれましたよ」
背後から聞こえる声に振り向くと、そこには丙が佇んでいた。
「……ということは、あの女性も倒れたわけですね?」
「えぇ、一時は助太刀に入ろうかと思った場面もありましたが、どうやら杞憂だったようです。しかし──」
チラリとソフィア達の方──主にルカに目を向ける。
戦闘に勝利し生き残った二人を見るその顔は、決して勝利を称えるそれではなかった。

「どうかなさったのですか?」
その視線が気になり、藍が声をかける。
丙は「いえ……」と呟くと、小さく首を振って視線を藍に戻した。
「今はまだ気にする段階ではないでしょう。ですがいずれは──」
丙の言った台詞は気になったが、今はそれどころではないという気持ちの方が強く、強引に頭の片隅に追いやった。

「さて、藍さんも回復したようですし、改めて捜索を──」
「──ぎゃああああああああああああああああああああああ──!!!!」
ソフィア達に向けて捜索再開の旨を伝えようとした時、前方に見える建物からこの世のものとは思えない悲鳴が響いてきた。

「──!今の声は詐欺城のものです!」
三人に聞こえるように少し大きめの声で藍が叫ぶ。
「──確かですか?」
「えぇ。私はあの男を捕まえ、取調べも行ったのですから。声を聞き間違えることはありえません」
「ならばこの悲鳴の意味する所は一つでしょう。詐欺城は何者かに襲われ、既に死亡している可能性が高い。
 そしてその犯人は恐らく──マグ・ナンバーの最後の一人」
そこまで言って丙は言葉を切り、過去を顧みるような目で前方の建物を見つめていた。

(マグ・ナンバーの最後の一人は恐らくあの男……。あの時と同じなら恐るるに足らない相手だが──。
 六年も経てば変化はあるはず。先の二人と同等以上と思っていた方がよさそうだな)

「二人とも、よく聞いて下さい。あの建物には恐らく最後のマグ・ナンバーが潜んでいます」
前方の建物を睨み付けながら指差し、藍はソフィアとルカに告げる。
「そしてその男は実力は未知数ですが極めて危険と思われます。
 何しろ、目的の為とは言え共に行動していた人間を平気で殺すのですから」
そこで険しい目つきを緩め、フッと穏やかに微笑んだ。
「ですが相手は一人。私達四人が力を合わせれば必ず勝てます」
先陣を切るように颯爽と歩き出す。その足取りに疲労や怪我の影響は微塵も見られなかった。

「行きましょう。決着をつける為に──」

【葦ヶ矢 藍:体力・ダメージ共に中程度回復。最後のマグ・ナンバーの潜伏先へ向かう】

60 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2013/09/07(土) 03:21:47.48 0.net
>>59
「──!今の声は詐欺城のものです!」

一人目、二人目を倒したその矢先に、三人目のターゲットと思われる悲鳴が響き渡った。
それは、正に二重の驚きだった。

「詐欺城ってのは確か……」
「うん、マグ・ナンバーの一人……! 悲鳴はあの建物からしたみたいだけど」
「仲間割れでもしたか、こりゃ?」

追い詰められた途端、結束が緩んで仲間割れ。
確かに薄っぺらな人間関係で結ばれた集団にはありがちな話である。

(……でも、これじゃまるで自分の居場所を教えてるみたいじゃない。
 追い詰められて逆に開き直ったのか、それとも返り討ちに出来る自信があるのか…………
 …………いや、どっちでも同じか)

ルカは首を振って考えるのを止める。
真相はどうあれ、今更引き返すことはできない以上、取るべき道は一つしかないのはわかっていたからである。

「行きましょう。決着をつける為に──」

藍の号令に頷いて歩を進めるルカとソフィア。
そう、現状を打開するには、どの道、最後のマグ・ナンバーと闘い、勝利するしかないのだ──。


「どうやらお待ちかねだったようだぜ?」
扉を蹴破り、真っ先に建物の中へと入ったソフィアが暗闇の奥を睨みつけて言った。
直後、ルカら三人も彼女の背後で素早く散開し、“それ”を目の当たりにする。

「クックック、待っていたよ……」
人間の手足や内臓が散乱する身の毛もよだつ血だまりのど真ん中で、一人の小男が佇んでいるのを。
異様といえば異様、だが真に異様だったのはその光景自体ではなく、男の出で立ちであったろうか。

「なによ……こいつ……」

ルカがおぞましいものを見たかのように顔を顰めながら目を丸くしたのも無理はない。
服は何年も着こなしたものであるかのようにボロボロ、露になった上半身には巨大な十字傷が刻まれ、
更に顔には奇妙なサイクロプスのバイザーが装着され、両手に至っては機械剥き出しの義手だったのだ。

「ひぃ、ふぅ、みぃ…………ククク、どれもこれも中々の上玉じゃないか……いいぞ……いいぞいいぞ。
 研究意欲が沸いてくるというものだ……君達は殺さずに私の実験材料(モルモット)として飼ってあげることにしよう。
 あぁ……今から楽しみでならないよ、君達が泣き叫び、絶望に顔を歪ませるのがねぇ……ククククク」

「……ただの機械人間じゃないみたいね。なんか、捕まる前はマッドサイエンティストやってたっぽいけど」
「マッドサイエンティスト……そういや、前にマスターから聞いたことがあったような……」

ルカとソフィアは、この時点ではまだ知る由もなかった。
男はかつて『禿山 貢』という名でISSの中枢に潜り込んでいたということを……
そして六年前の騒乱で『夜霞 龍之介』に正体を暴かれ、倒された過去を持っているということを。

【ルカ:禿山 貢と相対すも、まだ正体に気がつかず】
【禿山:義眼(一つ目カメラ)つきのバイザーと義手をつけた姿で四人の前に現れる】

61 :葦ヶ矢 藍 ◆21WYn6V/bk :2013/09/14(土) 22:08:25.34 0.net
>>60
藍の先導の下、四人は詐欺城の悲鳴が聞こえた建物に向かった。
建物に着くや否や、ソフィアが乱暴に扉を蹴破っていち早く内部へ進入する。

「どうやらお待ちかねだったようだぜ?」
そして部屋の奥の暗闇を睨み付けて一言。
「クックック、待っていたよ……」
その声に呼応するかのように暗闇の中に佇む人物が姿を現した。

その男の周囲には、人の体と思われるパーツが血溜りと共に散乱していた。
「なによ……こいつ……」
ルカの漏らした呟きに答える人間はいなかった。
程度の差はあれど、他の三人もルカと同じ胸中だったからだ。
男の服はボロボロ、剥き出しの胸部には大きな十字傷、両手は義手、更に視力を補うためと思われるバイザーまで着けていた。

「ひぃ、ふぅ、みぃ…………ククク、どれもこれも中々の上玉じゃないか……いいぞ……いいぞいいぞ。
 研究意欲が沸いてくるというものだ……君達は殺さずに私の実験材料(モルモット)として飼ってあげることにしよう。
 あぁ……今から楽しみでならないよ、君達が泣き叫び、絶望に顔を歪ませるのがねぇ……ククククク」
男が口を歪めながら舐めるようにこちらを見てくる。
年少組は不快感を顔でも表していたが、年長組は表情を変えることはなかった。

「……ただの機械人間じゃないみたいね。なんか、捕まる前はマッドサイエンティストやってたっぽいけど」
「マッドサイエンティスト……そういや、前にマスターから聞いたことがあったような……」

「──その通り」

ルカとソフィアの会話に応えるように、これまで沈黙していた丙が一歩前に進み出る。
「この男はまさしくマッドサイエンティストそのもの──今までに数多くの人体実験を行っている。
 そしてその悪行に天罰が下って、"あの男"に倒されたはずだが……。
 懲りずに再び地上に出てくるとはな」
まるで目の前の男を知っているかのような彼女の口ぶりに、男の方も僅かに顔色を変える。

「六年振りだな。元ISS警備部門統括・禿山 貢──いや、ステルベン・ヒンメルファートとお呼びした方がいいかな?」

丙のその一言に男──禿山は今度は表情を大きく驚きに変えた。
「貴様は覚えていないかもしれないが、私はその傷に見覚えがある。
 マグ・ナンバーの話を聞いた時もしやとは思っていたが……まさか本当に貴様だったとはな」
ザッ、と床を鳴らし、研ぎ澄まされた刃のような殺気を放つ。

「今やただの囚人である貴様に存在価値はない。
 あの時は生き地獄で済んだようだが──二度と生きて大地を踏めぬよう、今度は本物の地獄へ叩き落してやる」

【葦ヶ矢 藍:建物に到着。禿山の正体を知る
 丙 凪沙:建物に到着。禿山の正体を明かす】

62 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2013/09/17(火) 04:00:51.98 0.net
>>61
「六年振りだな。元ISS警備部門統括・禿山 貢──いや、ステルベン・ヒンメルファートとお呼びした方がいいかな?」

丙の言葉に、男は一瞬、眉を吊り上げた。
そしてそれは、二人の因縁と全く無関係である筈のソフィアも同じであった。

「あっ……あぁ〜〜あ……そうか、思い出したぜ」
ポンと手を叩くソフィア。それを見て、すかさず傍らのルカが顔を寄せて訊ねる。
「なに? 何者なの、あいつ?」
ソフィアはかつて獅子堂から聞かされた話、その記憶をなぞるようにして答えた。
「聞いての通りさ。あいつは元ISSの幹部だった男。……いや、成りすましていたと言った方が正しいかな?
 とにかく六年前の騒乱の際に密かに敵側に組していたことが発覚して、とっ捕まったって聞いてるぜ。
 なるほどな、マグ・ナンバーってのはA級犯罪者の集まり。前騒乱の主要人物がその一人でもおかしくはねぇ」
「ふーん……要するに騒乱の亡霊ってとこか……」
「丙サンとは顔見知りみたいだが……ま、あの人も色々と謎の多い人だからな、騒乱の時に何かあったんだろう」

互いに想像を膨らませながら、二人は丙を見る。いや、正しくは丙と、その彼女と対する男・禿山か。

「今やただの囚人である貴様に存在価値はない。
 あの時は生き地獄で済んだようだが──二度と生きて大地を踏めぬよう、今度は本物の地獄へ叩き落してやる」
「……っ! ……そうか、過去の経緯を知っているところを見ると、女、貴様は“あの場”にいたのだな?
 ということはあの時の女が……クククク……!!」

禿山が笑う。バイザーのカメラを目まぐるしく動かし、腕を鳴らすかのように両手の義手から機械音を発しながら。

「まさか、まさかターゲットが自ら私の前に現れるとは! これは中々ついている! 探す手間が省けたというものだ!
 女ァ、もはや貴様をモルモットにしようなどとは思わんッ! この私の発明品(手)で粉々に打ち砕いてくれるわッ!!
 そう──この手でなァッ!!」

そして、バッ──! と、その禿山の両手が前に差し出される。
それを見て、いや、正確にはその両掌の真ん中に埋め込まれている“モノ”を見て、ルカとソフィアはハッと目を見開いた。

「「人工邪気眼──!?」」

「その通り!! しかし──これを二流の粗悪品のそれと同じだと思うなァ、小娘どもォ!!
 さぁ──今こそ私の心の“闇”を映し取り、その力を示すがいいッ!! 『投影眼(とうえいがん)』よッ!!
 そしてェェェエエエエエエエエ──ッ!!!!」

それは禿山が叫んだのと同時だった。
彼の寮掌にある人工眼の瞳が瞬く間に黒く染まったかと思えば、
次の瞬間、そこから巨大な黒き光線が丙に向かって放たれたのである。
「──ってっ!」
「やばい!!」
しかも、禿山はその場からくるりと時計回りに一回転。黒い攻撃波動を全方位に向かって浴びせかけてきたのだ。
これではルカらもぽかんとしているわけにもいかない。

「フゥーーーハッハァァーーーーーーッ!!」

ズズズズズッ──ズゥウウウウウンッ!!

半径二百メートルほどにまで及ぶであろう破壊の衝撃が、大地を震わせ、建物をなぎ倒し、瓦礫の山にしていく。
その有様を間一髪空中に逃れて見下ろすことができていたルカ達は、思わず唾を飲み込んでいた。

「おいおいおい……あの技、どっかで見たことねぇか……?」
「そ、そんなん言われなくたってわかってるわよ! だってあれ……お母様の『秘術』と……!」

二人の脳裏を、かつての闘いでルカの母が披露した『光遁黒滅閃』が去来する。
しかし、二人にはまだ認められない部分があった。
何故なら、禿山が“それ”を使えるということはすなわち──彼が異能者として龍姫と同格であることを意味しているからだ。

63 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2013/09/17(火) 04:04:47.27 0.net
(そんな、たかだか人工邪気眼がこれほどまでの技を……!)
(チッ……自慢していただけのことはあるようだぜ!)

ただし、使える技は同格であっても、異能者としての“質”が同格であるわけではない。
そのことをルカ達はまだ知らなかった。

「クックックックッ……」
爆煙、砂煙のみが舞う地獄絵図と化した地上。
その中にあって、禿山は一人、不気味に笑っていた。

「自らの邪気眼を持たぬ私が『闇』の技を使うとは思ってもいなかっただろう?
 クククク、今のうちに教えてやろう。これが私が発明した人工眼・『投影眼』の力なのだ。
 人間は誰しも己の内に闇を抱えている。そして、その闇が覚醒した者が邪気眼を持つ異能者となるわけだが……
 私は己の内に住まう闇を投影することで、一時的にその力をこの現実世界において行使できる装置を開発した。
 それがこの投影眼だ。これによって例え異能力に目覚めていなくとも闇の力を使う闇人となれる……」

ふと禿山の眼(カメラ)がもうもうと巻き上がる砂煙をサーチする。
その際に彼は徐々に笑みを打ち消していったが、やがてカメラが砂煙の一角に焦点を合わせて止まった時、
再び思い出したかのように笑うのだった。

「さぁ、そろそろ出てきたらどうだね? 君が死んでいないということはわかっているんだ。
 君の生体反応はキャッチ済み……ククク、騙し討ちでもする気かもしれないが、誤魔化すことは不可能だよ」

【禿山:投影眼の力によって黒い光線を丙に浴びせる】
【ルカ&ソフィア:時間差によって間一髪空中へ逃れてノーダメージ】

64 :葦ヶ矢 藍 ◆21WYn6V/bk :2013/09/23(月) 16:11:40.90 0.net
>>62>>63
「……っ! ……そうか、過去の経緯を知っているところを見ると、女、貴様は“あの場”にいたのだな?
 ということはあの時の女が……クククク……!!」
禿山の瞳──カメラがグルグルと動き、両手の義手からは機械音が聞こえる。
興奮しているのか、笑いながらも息が荒い。

「まさか、まさかターゲットが自ら私の前に現れるとは! これは中々ついている! 探す手間が省けたというものだ!
 女ァ、もはや貴様をモルモットにしようなどとは思わんッ! この私の発明品(手)で粉々に打ち砕いてくれるわッ!!
 そう──この手でなァッ!!」
禿山が両手をこちらに向ける。丙はその掌にあるものを見ても眉一つ動かさなかった。
「また人工眼、か。相も変わらず玩具(おもちゃ)が好きな男だ」
丙がそう呟いたのと、禿山の人工眼から漆黒の光線が放たれたのはほぼ同時だった。

「フゥーーーハッハァァーーーーーーッ!!」
禿山の高笑いと共に、周囲に破壊の衝撃が伝播していく。
建物は悉く崩壊し、瓦礫となって積もっていく。
間一髪空中へ逃れていた藍は、その光景を見て目を見張った。
(何なのあれは……!?人工眼にあんな種類のものまであったなんて……!)
闇の力を初めて目の当たりにした彼女は、ただただ驚くことしか出来なかった。

「自らの邪気眼を持たぬ私が『闇』の技を使うとは思ってもいなかっただろう?
 クククク、今のうちに教えてやろう。これが私が発明した人工眼・『投影眼』の力なのだ。
 人間は誰しも己の内に闇を抱えている。そして、その闇が覚醒した者が邪気眼を持つ異能者となるわけだが……
 私は己の内に住まう闇を投影することで、一時的にその力をこの現実世界において行使できる装置を開発した。
 それがこの投影眼だ。これによって例え異能力に目覚めていなくとも闇の力を使う闇人となれる……」
爆煙舞う中、禿山が一人今起こった出来事について語っている。
やがてある一点で視線を止めると、得意気な笑みを浮かべて砂塵の中に語りかける。
「さぁ、そろそろ出てきたらどうだね? 君が死んでいないということはわかっているんだ。
 君の生体反応はキャッチ済み……ククク、騙し討ちでもする気かもしれないが、誤魔化すことは不可能だよ」

「騙まし討ち?──貧弱な貴様にお似合いの発想だな」
砂塵の中から丙が姿を現す。その体は爆発が起こる前と比べて、全く変化はなかった。
そう、あれだけの爆発に巻き込まれたにも拘らず、火傷一つ負っていなかったのだ。

「なるほど、投影眼か。──まったく大した玩具だな」
訂正──変化はあった。丙の両手には白目と黒目が反転した邪気眼が輝いていた。
「──"我々"は本来あのお方の部下でありながら、あの方よりも強い。
 しかし決してあのお方の前でこの力を使うことは許されなかった」
ズ────
まるでその場を支配するかのような濃密な邪気が丙から放たれる。
「だが今この場にあのお方はいない。一時的ではあるが使わせて貰おう」
彼女の雰囲気が変わったことは、その場にいる誰もが理解できた。

「投影眼──先ほども言ったが大したものだ。邪気眼を持たぬ貴様がこれほどの技を使えるとは。
 だが、貴様は一つ勘違いをしている」
ゴゴゴゴゴ────丙の足元を通じて地面が鳴動し始める。

「闇の力を使えるから闇人?誰がそんなことを言った。
 闇人とは本来、二つに分かれた力を一つにすることで己の力を昇華させることが出来た人間を指すものだ。
 故に、片割れすら持たぬ貴様はいくら足掻こうが闇人にはなれない」
スッ──と片腕を突き出し、掌を禿山に向ける。
「見せてやろう──これが本当の闇人だ」
そしてチラリとルカの方を見て再び前を向いて言葉を紡いだ。

「──異牙"丙流"忍術『波動闇黒閃(はどうあんこくせん)──』

全てを飲み込む闇の力と、全てを塵に変える振動の力が融合した黒閃が、禿山に向かって放たれた。

【葦ヶ矢 藍:空中へ逃れノーダメージ
 丙 凪沙:直撃するもダメージなし。闇の力を解放し、禿山に『波動闇黒閃』を放つ】

65 : ◆ICEMANvW8c :2013/10/01(火) 11:40:38.34 0.net
>>64
「騙まし討ち?──貧弱な貴様にお似合いの発想だな」
その言葉と共にキナ臭い砂煙の中から“無傷”で現れた丙に、禿山は「フッ」と鼻を鳴らした。

「おやおや……これは少し予想外。君も闇の力を発動できるとはね」
「投影眼──先ほども言ったが大したものだ。邪気眼を持たぬ貴様がこれほどの技を使えるとは」
「こちらこそ褒めておこう。私の暗黒閃(デスペア)を同じ闇業で相殺したとは、少し驚いたよ」
「だが、貴様は一つ勘違いをしている」
「……なに? 勘違…………──ッ!?」

ゴゴゴゴ……
突如として揺れ動く大地に、思わず息を止める禿山。
それが突発的な超自然的に発生した大地震などではないことは明らかだったからである。
「見せてやろう──これが本当の闇人だ」
そう、その言葉の通り、丙 凪沙という一人の異能者が持つ強大なエネルギーが起こしたものであることが明白だったからだ。

「大地にも影響を及ぼすほどの大パワー……ククク、確かに自ら“真”と言うだけのことはある!」
「──異牙"丙流"忍術『波動闇黒閃(はどうあんこくせん)』──」

ズオッ!!
その轟音と共に放たれたのは一筋の黒閃。
禿山の暗黒閃に勝るとも劣らないエネルギーの奔流に振動の力が加えられ威力が飛躍的に上昇した必殺の闇業。
食らえばまず生き残れまい──理屈を抜きに、誰もが瞬時にそう直感するほどの凶兆が、それにはあった。

「面白い! どれ程の威力があるか、確かめてやろう!」

しかし、禿山は避けなかった。
避けられなかったのではない、避ける時間的余裕がありながらそれを無視し、あろうことか仁王立ちして待ち受けたのだ。

──ズッ!!

光の先端が禿山の手に触れた瞬間、一つの束になっていたエネルギーが無数の細かな光の筋に分かれ、空間に飛び交う。
弾いたのか? いや違う。禿山が両手で受け止め、更にその場で踏ん張ったことにより、
一時的に留まった一部のエネルギーが瞬時に玉突きに押し出されて禿山の周囲に勢い良く拡散しているのだ。

「──おっ──ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお──ッ!!!」

その最中にあって、禿山はただただ絶叫する。
それが人によっては断末魔のそれに聞こえるのは気のせいではないだろう。
当然である。丙が放った暗黒閃には彼女のオリジナルの能力である“振動の力”が加わっているのだ。
まともに受ければ、例え即死は免れたとしても、接触部分から徐々に崩壊するのは避けられない。

「ば、馬鹿な──!! 私が崩れてゆく────こんな──これほどとは、計算外だッ!!
 うぐぐぐぐぐぐぐッ──ぐぉおおおおおおお!! こ、こんなァァアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

禿山の義手も、そしてその肉体も例外ではなかった。
指先からボロボロと崩れ落ち、さらに腕を伝って崩壊の力が生身に及ぶ過酷な現実に晒された禿山は、
ただひたすらに叫び声を挙げるしか術を持たなかった。

「ああああああアアアアアア──────………………」

黒き光線が通り過ぎた跡には、もはや何も残っていなかった。
肉片一つ、髪の毛一つ……。
全ては自業自得。全ては無謀。その浅はかさが招いた末路こそ、完全なる消滅であった。

66 : ◆ICEMANvW8c :2013/10/01(火) 11:45:35.26 0.net
「ヒュゥ……こいつぁ敵に回したくねぇな」
「丙流って…………聞いたことない……。ホント、マジで何者……?」

闘いの終わり。囚人達との決着。
それを空中から見守っていた者達も、丙の圧倒的勝利という事実を前に驚き、そして安堵する。

「「──っ!?」」

だが、それも一瞬であった。
ルカとソフィアの二人が驚愕の光景を目の当たりにし、目を丸くしたその時には、既に丙は黒い爆発に晒されていた。

「見間違い……じゃねぇ!」

眉を顰め、ソフィアが吐き捨てる。そう、確かに見間違いではなかった。
丙が勝利したその直後、後ろから、左右から、同時に三つの暗黒閃が放たれのだ。

「っ! ね、ねぇ、ちょっとあれ!」
ルカが狐につままれたと言ったような顔で視線を落とした先には、一つの人影。いや、一つ二つ……もっとあるか。
「そうか、あの野郎ォ……この短い期間で自分の“コピー”を……!」
ソフィアもそれを視認して、また吐き捨てた。

「ククククク……今、倒したのが私のオリジナルだとでも思ったのかね?」
「こういう事もあろうかと既に手は打ってあるのだよ。一度、オリジナルで闘いに挑んで痛い目を見ているからね」
「何をするにしても手は多いに越したことはない……研究でも戦闘でも……そうだろう?」
「脱獄からこれまで碌な施設も時間もなかったが、私の手にかかればダミーの増産など造作もない」
「といっても、質に拘る余りこうしてクローン体となれたのはたったの六体だったがね」
「完璧を求める研究者故の皮肉さ。笑ってくれても構わない。もっとも……これから笑うのは私、いや……“私達”だけになりそうだが」

ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ──
爆発を取り囲む六つの足音。その主は全て、あの禿山に相違なかった。

「初めから詐欺城らと行動を共にしていたのはオリジナルではない。ダミーの、六体の内の一つだ」
「刺客が送られてくるであろうことは容易に想像できたのでね」
「君の……いや、君達の力量を調べるためのいわば当て馬、捨石よ」
「つまりこれからが本番ということだ。私達六人を相手に出来る力が、君にあるかな?」
「なんなら纏めて相手をしてやってもいいが……ククククク」

一斉に笑う禿山。
一度、「どうする?」──そんな顔で互いに顔を見やるルカとソフィアだったが、
そんな二人に無言で首を振る藍を見て、再び見守ることを決意するのだった。

「信じろ、か……」
「……ま、あたしが丙(あの人)の立場なら、意地でも一人で闘うと思うわ。あんな舐めた真似されちゃね」
「……同感だね。ああいうのは一人で蹴散らすに限る」

【ルカ&ソフィア:戦闘には参加せず、闘いを見守る。】
【禿山:クローンの内の一体が消滅するも、オリジナルを含めた六体の奇襲で再び丙を暗黒閃で爆破する。】

67 : ◆21WYn6V/bk :2013/10/06(日) 18:34:14.53 0.net
>>65
「ば、馬鹿な──!! 私が崩れてゆく────こんな──これほどとは、計算外だッ!!
 うぐぐぐぐぐぐぐッ──ぐぉおおおおおおお!! こ、こんなァァアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

丙の『波動闇黒閃』を受け止めようとした禿山だったが、その威力を前に体が耐えられなかったようだ。
受け止めた両手を起点に、振動の力によって徐々に禿山の体が塵と化してゆく。

もしこれが純粋な暗黒閃であったならば、まだ耐えられたかも知れない。
だが振動の力を加えたこの闇業の前では、その振動の力にも対処しなくてはならない。
そしてその対処を怠った禿山に、目の前の黒閃に耐えられる道理はなかった。

「ああああああアアアアアア──────………………」
やがて断末魔の叫びが消え、黒閃が過ぎ去った跡には、文字通り塵一つ残ってはいなかった。
「……貴様の敗因は六年前と同じ、己の力を過信しすぎたことだ。
 地獄で己の所業を悔い改めるがいい」
何もなくなった後の地を見つめながら、丙は静かに佇んでいた。

「ヒュゥ……こいつぁ敵に回したくねぇな」
「丙流って…………聞いたことない……。ホント、マジで何者……?」
「丙様──流石でございます」
空中に逃れた者達からも賛辞の声が上がる。
丙はその声を聞きながらも、警戒を解くことはしなかった。

(随分とあっけなかった。六年もかけてこの程度か……?)
別に禿山を過大評価していたわけではない。
しかしあの男の執念を考えると、こんなにもあっさり終わるものだろうか……?

ズオッ────!!
そんな丙の疑念に答えるかのように、突如として背後と左右の三方向から暗黒閃が放たれる。
「──!?」
その様子を頭上から見ていた藍が驚くのと同時に、丙は再び黒い爆発に飲み込まれた。

「丙様──!」
丙の身を案じるも、当の本人は爆煙の中。その姿を確認することは出来ない。

「っ! ね、ねぇ、ちょっとあれ!」
「そうか、あの野郎ォ……この短い期間で自分の“コピー”を……!」
そこにルカとソフィアの声が飛び込んでくる。
その声に従って眼下に目を凝らすと、そこには信じがたい光景が広がっていた。

「ククククク……今、倒したのが私のオリジナルだとでも思ったのかね?」
「こういう事もあろうかと既に手は打ってあるのだよ。一度、オリジナルで闘いに挑んで痛い目を見ているからね」
「何をするにしても手は多いに越したことはない……研究でも戦闘でも……そうだろう?」
「脱獄からこれまで碌な施設も時間もなかったが、私の手にかかればダミーの増産など造作もない」
「といっても、質に拘る余りこうしてクローン体となれたのはたったの六体だったがね」
「完璧を求める研究者故の皮肉さ。笑ってくれても構わない。もっとも……これから笑うのは私、いや……“私達”だけになりそうだが」

そこには先程倒したはずの禿山が、何と六人も存在していたのだ。
「初めから詐欺城らと行動を共にしていたのはオリジナルではない。ダミーの、六体の内の一つだ」
「刺客が送られてくるであろうことは容易に想像できたのでね」
「君の……いや、君達の力量を調べるためのいわば当て馬、捨石よ」
「つまりこれからが本番ということだ。私達六人を相手に出来る力が、君にあるかな?」
「なんなら纏めて相手をしてやってもいいが……ククククク」
爆心地を取り囲むように勢揃いした禿山は、声を揃えて挑発するように笑った。

一方、上空ではルカとソフィアが顔を見合わせていた。
恐らく助けに入るか否かのアイコンタクトだろう。
「……」
そんな二人に対し、藍は無言で首を振り、言外に「丙を信じろ」と告げるのだった。

68 : ◆21WYn6V/bk :2013/10/06(日) 18:34:47.22 0.net
「フッ……『質に拘った』結果がこの程度か?」

砂塵の中から聞こえる声は、紛れもなく丙のもの。
そしてその声は余裕の色を含む嘲笑だった。
「だとしたら大した研究だ。やはり貴様は何も理解していない」
砂塵の中から姿を現した丙は、無傷とまではいかなかったもののダメージらしきものは殆ど感じられなかった。

「纏めて相手をするのはこちらの方だ。貴様等など彼女達が出るまでもない。尤も──」
丙が言葉を切ったのと同時に、ドシャ──という音と共に禿山の一人が倒れる。
一斉にその音の方を向く禿山達。
見れば、倒れた禿山の首から上はなくなっており、残った胴体も少しずつ塵となっていく。
「──その体たらくでは何人いようと私は倒せないがな」
禿山達の間に僅かな動揺が走ったのを、丙は黙って見ていた。

「何が起こったのか分からないと言う顔だな。だが貴様の体は理解しているんじゃないか?
 何しろ──六年前にも同じことをされているのだからな」

そう──丙がたった今行ったことは、細部は異なるが六年前に夜霞が禿山に対して取った行動と同じだった。
目にも止まらぬ速さで相手に近付き、波動掌で頭を瞬時に粉砕、そして元の位置に戻る。
(六年前の私では出来たかどうか……。だが今なら造作もないことだ)

「さぁ、余興はここまで。『つまりこれからが本番ということだ』。『なんなら纏めて相手をしてやってもいいが』」

敢えて禿山の台詞を真似て挑発的な笑みを浮かべ、掌をクイッ、と自分の方へ傾けた。
それは「かかってこい」という合図に他ならなかった。

【葦ヶ矢 藍:ルカ・ソフィアと共に闘いを見守る。
 丙 凪沙:多少のダメージを受けるも、六体の内一体を撃破する】

69 : ◆ICEMANvW8c :2013/10/11(金) 21:43:59.46 0.net
>>68
「「「「「──!?」」」」」

首を失い、更に残った胴体も塵となって消えてゆく六体の内の一体を見て、五体の禿山達は一瞬言葉を失った。
正に瞬殺、ほんの刹那の内に起きた完全なる殺戮。その事実を前にしては愕然とするのも無理からぬことであったろう。
しかし、それも時間にすればほんの一瞬に過ぎなかったのもまた事実であった。

「何が起こったのか分からないと言う顔だな。だが貴様の体は理解しているんじゃないか?
 何しろ──六年前にも同じことをされているのだからな」

丙がそう言った時には、禿山達も目の前の事象を受け入れ、理解し、冷静さを取り戻していた。

「さぁ、余興はここまで。『つまりこれからが本番ということだ』。『なんなら纏めて相手をしてやってもいいが』」

故に、彼らは文字通りそっくりそのまま返された挑発めいた言葉も不敵に笑い流した。

「ククククク」
「面白い……」

だが最後、一人の禿山が座興の締めくくりとばかりにこれまでになく歪に頬を歪めた時──
全ての禿山が人外とも言えるスピードで丙に迫るのだった。

「──シャッ!」
「──ひゃァッ!」
鋭い貫手が丙の背後から秒間十発も繰り出され、
更に前面から機械の駆動音を響かせて蛇がのたうち回るかのような変幻自在の手刀が迫り来る。
無能力者でも、肉体が半分メカと化しているからこその芸当。
異能者であっても肉弾戦に不向きな人間であればこの時点で勝負はついていてもおかしくはない。

だが、そこは流石の丙である。
一切の無駄を省いた隠密独特の体さばきを以ってそれを涼しい顔で躱していくばかりか、
同時に敵の懐にそれぞれ振動の力を付加した必殺の打撃を打ち込んでいくのだ。
一撃、二撃──……僅かゼロコンマ後には、二体の禿山が急所への破壊力抜群の打撃を許していた。

「──ヒヒヒヒヒ!」
「──ヒヒヒィイイヒヒヒ!」
それでも残った禿山達に攻撃の手を緩める気配は無く、すかさず左右から新たな二体が丙を挟み撃ちにする。
そう、彼らに微塵も動揺はないのだ。恐怖を感じていないのか? いや違う。
彼らは紛れも無く丙の致命傷であるはずの一撃を屁とも思っていないのだ。何故か?

「ククク、余所見はいけないねぇ!」
その声に、一瞬、丙が面食らったような顔をする。無理も無い。
何故なら必殺の一撃を食らわせ、塵となるのを待つばかりの前後の禿山が、
何食わぬ顔で再び襲い掛かってきたのだ。これで前後左右、四方が敵。見渡す限りの拳打の嵐だ。
それでも驚異的な身体能力を以ってその嵐を真っ向から器用に受け流して踏み止まるのは
迂闊に上空に逃げれば隙が出るという戦士としての判断か、それとも己の実力に裏づけされた意地か。

しかし、そんなある種のこう着状態を崩したのは、丙ではなく禿山達であった。
彼女がコンマゼロ数秒という刹那の中の刹那という瞬間に脇腹に作った僅かな隙目掛けて、
四方の禿山が一斉に貫手を炸裂させたのだ。
脇腹を抉られ思わずバランスを崩す丙。そこへ、追い討ちをかけるように脳天目掛けて拳を振り下ろしたのは、
頭上という死角に舞い上がった五人目の禿山。

──が、その拳が打ち付けたのは、誰も居ない大地であった。
四方を囲んだ禿山が一斉に同じ箇所へ攻撃を繰り出したことにより生じた隙を丙は見逃さず、素早く包囲網を脱出していたのだ。

70 : ◆ICEMANvW8c :2013/10/11(金) 21:46:12.16 0.net
「流石に素早いじゃないか。しかし……今の動きは見えていた」

禿山達は再び不敵に笑い出していた。

「不思議かね? 君が何も理解していないと評した我らが何故君の攻撃に無傷で、逆に君が手傷を負ったのか」
「答えは簡単だよ。我らが君の力を理解でき、そして君が我らの力を理解していなかったからだ」
「初めに倒された私は捨石だと言っただろう? 君の戦闘力データは既に我らの頭脳(コア)にインプットされている」
「スピード、パワー、絶妙な体さばきの中に隠された僅かな癖……それさえわかれば傷を負わせることなど造作もない。
 更に能力の原理さえ分析し解明すれば、“同じ力”を再現して相殺することも可能だ。この意味がわかるかね?」
「君は知らず知らずの内に我らにデータを提供していたばかりか、パワーアップの為に一役買っていたということだ。
 つまり──我々は強者と闘えば闘うほど更に強くなる。君のデータを丸ごとインプットした我らは今や君以上に強い!」

そして、それは五人目の禿山が言い終えると同時だった。
ブン! という風切音をその場に残して、四人の禿山が忽然と姿を消したのだ。
──否、消えたのではない、目にも留まらぬ高速移動で一瞬の内に丙の頭上を取ったのである。

「さぁ、終わりにしようじゃないか!」
「この手でズタズタに引き裂かれて死ぬか、それとも君の能力でひと思いに塵となって死ぬか!」
「お望みの方法で楽にしてやろう!」
「我らの力を侮った己の浅はかさをあの世で悔やむがいい! ウハハハハハハハハ!!」

【禿山:丙の戦闘データをインプットしたことで身体能力強化、プラス振動の力を再現可能になる】

71 : ◆21WYn6V/bk :2013/10/20(日) 12:55:32.86 0.net
>>69>>70
「──シャッ!」
「──ひゃァッ!」

丙の言葉通り、遊びは終わりと言わんばかりの凄まじい攻撃が禿山から繰り出される。
丙に肉薄したスピードといい、この攻撃といい、凡そ研究者とは呼べないほどの動きだった。
それらは自らを機械化したが故に会得したものなのだろうか。

「フン──」
しかし丙は一切動じず、最小限の動きで的確にかわしていく。
そればかりか、秒にも満たない刹那の中、攻撃をかわしながら二人の禿山の腹と胸にそれぞれ波動掌を叩き込む。

(これで二対は行動不能──)
「──ヒヒヒヒヒ!」
「──ヒヒヒィイイヒヒヒ!」
しかし残った禿山達はその光景を見ても、少しも怯むことなく攻撃を続けてくる。
恐怖がないのか、それとも麻痺しているのか──。

「ククク、余所見はいけないねぇ!」
「──!?」
答えはそのどちらでもなかった。
何故──そう思ったときには既に、波動掌を打ち込んだ禿山が再び襲い掛かり、丙は再度四方を囲まれる形となっていた。
(──チッ!考えている暇はないか!)
四面楚歌の状態から繰り出される嵐のような攻撃。
それを今度は避けるだけでなく、手足を使って受け流していく。その動きはまるで風に揺れる柳──若しくは流水の如く。
上空に逃げるという選択肢はなかった。
上空では動きが制限され、尚且つその際に隙が生じるからだ。

しかしその選択は結果的に仇となった。
丙とて人間。これだけの攻撃をかわし続けているのだからいつかは隙も出来る。
それは針の穴よりも小さな、並の──否、先程闘ったボブや鬼女羅ですら見つけられるか分からない程の小さな隙。
しかし禿山達はその瞬間を待っていたかのように、一斉に丙の脇腹に攻撃を放つ。

「クッ──!」
四人の禿山の放った貫手は的確にその隙を突き、丙の脇腹の肉を抉った。
(思った以上にやるようだな……!だが──!)
しかし今度は丙が禿山達が同じ箇所に攻撃を放った際に生じた僅かな隙を突いて、四人の包囲網の脱出を試みる。

(攻撃をしていたのは四人。ならばあと一人は──頭上(うえ)!)
それは数多の戦闘をこなしてきた彼女だからこそ出来る、一種の予知のようなもの。
瞬時に五人目の禿山の位置を割り出した彼女は、その姿を確認することなくその場から消えた。
コンマ数秒後には、彼女のいた位置に頭上より襲い掛かった禿山が拳を振り下ろすのだった。

「不思議かね? 君が何も理解していないと評した我らが何故君の攻撃に無傷で、逆に君が手傷を負ったのか」
「答えは簡単だよ。我らが君の力を理解でき、そして君が我らの力を理解していなかったからだ」
「初めに倒された私は捨石だと言っただろう? 君の戦闘力データは既に我らの頭脳(コア)にインプットされている」
「スピード、パワー、絶妙な体さばきの中に隠された僅かな癖……それさえわかれば傷を負わせることなど造作もない。
 更に能力の原理さえ分析し解明すれば、“同じ力”を再現して相殺することも可能だ。この意味がわかるかね?」
「君は知らず知らずの内に我らにデータを提供していたばかりか、パワーアップの為に一役買っていたということだ。
 つまり──我々は強者と闘えば闘うほど更に強くなる。君のデータを丸ごとインプットした我らは今や君以上に強い!」

言い終わると同時に、四人の禿山が消え、丙の頭上に現れた。
「また頭上(うえ)か?──芸のない奴等だ」
またしても丙はその方向を確認せずに答える。

「さぁ、終わりにしようじゃないか!」
「この手でズタズタに引き裂かれて死ぬか、それとも君の能力でひと思いに塵となって死ぬか!」
「お望みの方法で楽にしてやろう!」
「我らの力を侮った己の浅はかさをあの世で悔やむがいい! ウハハハハハハハハ!!」

72 : ◆21WYn6V/bk :2013/10/20(日) 12:56:06.58 0.net
「……」

無言のまま四人の禿山がいる上空へと飛び上がる。
先ほどのことを考えれば自殺行為にしか見えない行動。
しかし丙は酔狂でそうしたわけではない。その証拠に、彼女の表情は自信に満ちていた。

襲い来る四人の禿山。丙はそれを真っ向から受け止め、かわしていく。
しかし今度は全てをかわそうとするのではなく、多少のダメージを覚悟していた。
その結果か、先程から何発か体を掠めているものの、致命傷には至っていなかった。

しかしそれでも敵の手数は多く、地上の時と同じく僅かな隙が生じる。
そこへ殺到する禿山の貫手。しかしそれを見た丙はニヤリと笑う。
その表情を見て禿山は何かに気が付いたようだったが、既に繰り出した攻撃を止める術はなかった。

「フッ──」
バランスを崩したかに見えた丙だったが、それが嘘のように鮮やかに貫手をかわす。
今度は逆に禿山に隙が生じる。それも丙のような僅かな隙ではなく、大振りの攻撃の後の決定的な隙。

「お返しだ」
丙が両の腕を突き出し、二人の禿山の胸に突き刺さる。
禿山は驚いた表情をしていたが、その表情は一秒ともたなかった。

「異牙丙流忍術──『波動内爆手(はどうないばくしゅ)』

呟いた次の瞬間、胸を貫かれた二人の禿山が爆散する。
血と肉片が周囲に飛び散り、ビチャビチャという音を立てて地上に落ちた。
馬鹿な──という表情の禿山を尻目に、丙はゆっくりと地面に降り立った。

「どうせクローンを作るなら全身機械にするべきだったな。
 ……あぁ、それだと見た目の僅かな違いで本体がばれてしまうから出来ないのか。
 クク……ジレンマだなぁ」

小さく笑う丙。しかし直後には元の表情に戻っていた。
「貴様の方こそ私を──いや、異牙を侮り過ぎだ。動きと能力をインプットした程度で勝てるほど甘くはない」
フッ、と再び顔を緩め、挑発的な表情で禿山に視線を向けた。

「今の技もインプットしてみるか?そうしたらまた別の技を披露してやるぞ?」

【丙 凪沙:ダメージ中。『波動内爆手』で二人の禿山を爆散させる】

73 : ◆ICEMANvW8c :2013/10/21(月) 23:52:06.07 0.net
>>72
降り立った丙の後を追うように大地に着地する二人の禿山。
その顔には既に、先程までの狂気じみた高揚感やサディスティックな笑顔は無く、
代わってあったのは、予想外の事象に対する焦燥感であった。

「ば、バカな……!」
「我らの攻撃を紙一重で躱しただけでなく、決定的な一撃を二人に加えるとは……!」
爆散した二体のクローン。それが示す意味は、振動の能力を用いたということに他ならない。
──そう、だからこそ禿山にとっては理解し難いのだ。
振動の能力、その原理は既に彼らの知るところであるばかりか、再現までも可能とされているもの。
事実、彼らはその再現を可能としたことで丙の攻撃を一度は中和し、無傷で切り抜けている。

では、何故爆ぜたクローン達には二度目ができなかったのか?
考えられる可能性は二つ。
一つは、中和の力が丙の力の前に及ばなかった。つまり、もっと大きな振動によって押し切られたか。
もう一つは、中和の力が発動するよりも速く振動の力を流し込まれたか。つまり、発動スピードに若干の差があったのか。

(この女ァ……!)
例え前者であろうと後者であろうと──結局は「いずれにせよ」という結論に行き着く。
だからこそ本体の禿山は歯軋りする。
どちらにせよ、これは“計算外”であることに変わりはないからだ。
(データをインプットしたクローンの動きを軽くあしらい、更に中和というこちらの無力化策を瞬時に無力化するとは……!
 ……まさか、……まさかこれまでが“本気ではなかった”とでも……!)

丙が小さく笑う。まるで、それこそがその自問に対する答えであると言うかのように。

「グッ……ぐぎががががががッ!」
屈辱的な光景。本体は歯をギリギリと鳴らして耐える。
冷静さを失い、今にも飛び掛らんとする衝動に耐える。
頭脳に取り付けたクローンとの交信機能(ネットワーク)を用い、
新たに取得したデータを互いの肉体にインプットし終えるまでの十数秒を待っているのだ。

(──胸を貫いた物理攻撃力、数値化完了。及びそれに耐えるだけの物理防御力の数値化完了。
 現在の改良型『強発眼』の出力は78.8%、計算上はこれを99.1%まで引き上げれば先の攻撃は無力化可能である)
(──しかし、90%以上の出力では活動限界時間が大幅に短縮され、仮に99.1%の出力での活動を想定した場合、
 通常およそ1分13秒で肉体維持機能に限界が来るものと予測される。
 更に投影眼との併用による生体エネルギーの消耗を想定すると、限界時間は約15秒。厳密には14.493秒まで短縮される。
 敵の実力の上限を未だ計りかねる現状、戦闘続行は非常に危険であると判断される)
(──構わん! 私に考えがある! 戦闘は続行だ!)
((──了解──))

「今の技もインプットしてみるか?そうしたらまた別の技を披露してやるぞ?」

そして、その時が来たのは、調度、丙が残る三人に挑発的な視線を向けた時と同じであった。
(──既存データ更新及び肉体機能向上完了。強発眼の出力99.1%確認)
(──肉体機能及び強発眼に異常無し。投影眼発動確認、活動限界まで残り13秒ジャスト)

「その必要は無い──! 何故なら──ッ!!」

三人の禿山が一斉に左右前から突進を開始したのである。
強発眼による一時的、人為的な筋力強化によって先程よりも更に速く力強い動作で。
もっとも、丙にとって多対一の接近戦などもはや一瞬でも動じることのないものだろう。
しかし、本体である禿山には考えがあった。

74 : ◆ICEMANvW8c :2013/10/21(月) 23:55:55.57 0.net
「ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!!」
「キヒャヒャヒャヒャヒャヒャァッ!!」
奇声のような雄叫びをあげて左右から迫り来る二体のクローン。
何かに憑りつかれたかのような狂気の表情を見て、丙は内心、こう思ったことだろう。
──狂人(馬鹿)の一つ覚えか。──と。

だが、そんな彼女をギョッとさせる展開が、次の瞬間、起こるのだった。
「ヒヒヒ────ひぎぃえッ──」
今にも鋭い貫手を繰り出さんばかりに接近していた左右の禿山が、
突然、肉体をひしゃげさせ、そして風船のように膨れて爆裂したのである。
しかも、凄まじいほどの濃密な邪気を撒き散らしてだ。
これでは高密度の邪気という爆弾を抱えた人間に至近で自爆されたようなもの。ダメージは免れないだろう。

いや、仮にダメージを与えられなかったとしても、一瞬でもそちらに気を奪われてくれれば、それでよいのだ。
そう、唯一残った本体にとっては。
                                                                自 爆
(クローンの強発眼及び投影眼の安全装置をこちらで解除! 両方の出力を一気に120%超に引き上げ、肉体を崩壊させた!
 クローンを操っているのはあくまで私! どう利用するかも私の意志一つ! ククククク!)

どす黒いしたり顔を浮かべながら黒い爆煙に飲まれた丙に禿山は両手を向けて、立ち止まる。
その手にある投影眼には既に漆黒の邪気が装填されていた。
彼の狙いはこれ。二体のクローンを布石にし、至近──いや、超至近から闇業を炸裂させることだったのだ。

「100%の機械(メカ)では邪気を産出することはできない! だから敢えてクローンにしたのだッ!
 本体(私)の駒として十二分に活用する為になァァァァアァアッ!! クカカカカカカカカカカッ!!」

ズッ!!
禿山の兇笑が鳴り響く中、容赦なく放たれる二つの暗黒閃。それは振動の力が付加されたあの『波動闇黒閃』であった。

「自分の技で死ねることを感謝するがいい!! イヒヒヒヒヒヒヒ、ヒィーッヒッヒッヒッヒッヒッ!!」

【禿山:残ったクローンを至近で自爆させ、それに気を取られた隙に超至近から再現した波動闇黒閃を放つ。
     人工眼の出力を90%超まで引き上げ、更に闇業を使った為に消耗は大。】

75 : ◆21WYn6V/bk :2013/11/03(日) 22:25:22.37 0.net
「その必要は無い──! 何故なら──ッ!!」

丙の挑発を振り払うかのように、残った三人の禿山が突撃してくる。
「ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!!」
「キヒャヒャヒャヒャヒャヒャァッ!!」
奇声を上げながら迫り来る左右の禿山を見て、彼女は内心で溜息を吐いた。
(数で押せる状況ならいざ知らず──この状況で無策での突撃とはな。
 まるで馬鹿の一つ覚え。そこまで己の人工眼(おもちゃ)に自信があるのか?)

先程と同じく──否、防がれるであろう事を予測して先程よりも腕に邪気を込めて構える。
左右から突撃してくる禿山を『波動内爆手』で迎え撃つべく、タイミングを計っていた。

そんな折である。彼女がこの戦闘が始まって以来、初めて決定的な(と言っても一秒にも満たないが)隙を見せたのは。
「ヒヒヒ────ひぎぃえッ──」
迎え撃とうとしていた左右の禿山が、突如空気を入れ過ぎた風船の如く膨張、破裂したのだ。
それも高密度の邪気を撒き散らすというおまけ付きで。

「なに──!?」
決して油断していたわけではないが、自爆というあまりにも予想外の行動の所為で一瞬反応が遅れる。
即座に切り替えて防御に回ったが、如何せん距離が近すぎたために間に合わず、受け切れなかった分をその身に食らった。

「100%の機械(メカ)では邪気を産出することはできない! だから敢えてクローンにしたのだッ!
 本体(私)の駒として十二分に活用する為になァァァァアァアッ!! クカカカカカカカカカカッ!!」

そして聞こえる至近という言葉すら生ぬるい超至近距離からの禿山の声。
同時に放たれた邪気を感じ、丙は瞬時にこの状況を理解した。

                       こ れ
(爆発させた二体は囮──本命は『波動闇黒閃』というわけか!)

そう、丙は禿山の放った技が己のものであると見抜いていたのだ。
というのも、先の攻防で肉弾戦は不利と考えているはず。
更にただの『暗黒閃』では通用しないのは既に証明済み。
となれば、残った選択肢は投影眼による『波動闇黒閃』の再現のみ。
触れるものを塵と化すこの闇業こそが、今の禿山にとって唯一丙を葬ることの出来る攻撃なのだ。

「──フッ」

眼前に迫った黒閃を前に、丙は小さく笑った。
回避不可能と諦めたのか?──違う。
彼女の目は既に勝利への道筋を見据えていたのだ。

「この状況──私が想定していないとでも思っていたか?」

両手に振動の力を集め、掌を上下に広げて体の前に突き出す。
「忍とは──いや、これは私だけかもしれないが……。
 少なくとも私は、己の技が複製された時のことを常に考えて闘ってきた。
 その成果を今見せてやろう」

もはや回避も防御も不可能な距離。
今まさに塵と化そうという寸前、彼女は小さく呟いた。

「異牙丙流秘術──『波動反振掌(はどうはんしんしょう)』

76 : ◆21WYn6V/bk :2013/11/03(日) 22:26:10.05 0.net
その瞬間、突き出された丙の掌に禿山の波動闇黒閃が衝突する。
禿山はさぞ愉悦に満ちた表情でその瞬間を眺めていたことだろう。
何せ六年も追い続けた標的(ターゲット)が、今まさに塵となって消えようというのだ。
そのために研究を続けた自身にとって、これ以上の喜びはないだろう。

だが、その表情が徐々に曇り始める。
触れるもの全てを塵と化し、射線上には何も残らないはずの黒閃が、丙がいた辺りの位置で止まっている。
その光景が意味する所は即ち、丙が黒閃を受け止めているという事実に他ならない。
そして次の瞬間、禿山は信じられない光景を目にする。

「貴様の負けだ、ステルベン。地獄で業火に焼かれてくるがいい」

何と、自身の放った波動闇黒閃が、こともあろうか跳ね返ってきたのだ。
更に、二本で放たれた黒閃は融合し、恐ろしく巨大な一本の黒閃となっていた。
この一撃に全てを賭けていた禿山に、黒閃を退ける力は残っていなかった。

「心配することはない。痛みを感じる前に塵となる。"自分の(放った)技で死ねることを感謝するがいい"」

【丙 凪沙:クローンの爆発に巻き込まれダメージ小。
       禿山の波動闇黒閃を『波動反振掌』で跳ね返す】

77 : ◆ICEMANvW8c :2013/11/05(火) 03:22:49.83 0.net
>>76
放たれた『波動闇黒閃』。瞬間、それを受けた丙。
「ヒヒヒヒヒヒヒヒッ! ヒャハハハハハハハハハハッ!」
禿山はその光景をただただ嘲笑う。
“それ”を受けたということは、勝利が彼のものであるということがもはや決定的だったからである。

「ハッ──!?」
しかし、その確信も、勝利の高笑いも長続きはしなかった。
何故なら──
「貴様の負けだ、ステルベン。地獄で業火に焼かれてくるがいい」

直撃したはずの波動闇黒閃が、なんと跳ね返ってきたからである。
それは正に嘲笑う彼を更に嘲笑うかのような信じられない光景であった。
(ば、バカな! こ、こんなことが──!)

繰り出した必殺の一撃が外れれば、逆に術者に隙が生まれるのが戦闘の道理。
しかも超至近から繰り出したものがそのまま跳ね返ってくれば、回避するのは至難である。
(──おのれ、ならば──)
それでも高性能AIによって思考を制御されている禿山の頭脳は、正にメカさながらの爆発的な早さで防御策を講じた。
それは波動闇黒閃による相殺。
生身の人間ならば、この状況を事前に想定していない限りは不可能な即応といえるだろう。
(──到達までおよそ0.7秒。邪気の充填は0.4秒ほどで完了する。──いける! いけるぞ!)

正に紙一重の生死を分ける僅かな時間差。
正に刹那の瞬間にそれを導き出した禿山の顔には、自己陶酔に満ちた愉悦すら浮かんでいた。
しかし──勝利の高笑いに続き、それも長続きはしなかった。
(なっ────!?)
あてにしていた投影眼が、強発眼と共に機能を停止してしまったのである。
そう、これは肉体の維持を最優先に考えるAIが、活動限界に達したことを受けて強制停止させたことを意味する。
本来ならば本体を守る為に働く安全装置が、皮肉にも裏目に出てしまったのだ。

いや、裏目に出たというのは正しくはない。
そもそも安全装置が働かなければ、本体もクローン同様に肉体が崩壊していたかもしれないのだから。

「心配することはない。痛みを感じる前に塵となる。"自分の(放った)技で死ねることを感謝するがいい"」
「そ、そんなッ──これは、これは何かの間違いだッ──!! こ、こんな──ッ!!」

計算外。誤算。
どちらに転んでももはや死という運命から逃れられなかったことを悟った時──
そして、そもそも刺客として現れたのが丙 凪沙であった、それが全ての誤算であったことを理解した時──
彼は、その顔を狂おしい程の絶望に染め上げ、差し迫った恐怖に子供のように絶叫するのだった。

「し、死にたくない……た、たすけ────たすけてくれェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!」

もっとも、そんな小物さながらの命乞いも、もはや丙に届くはずもない。
次の瞬間には全てが黒き閃(ひかり)にかき消され、その場に残ったのは半円状に抉られた大地のみであった。

かつて何の罪も無い人々を自らの実験道具(オモチャ)にし続け、命を弄んだ狂気の科学者・ステルベンは、
夜霞 龍之介によってあらゆる自由を奪われた生き地獄に墜とされた。
それから六年を経て、今度は正真正銘、物理的に地獄へと叩き落された。
彼にとって、果たしてどちらが幸せだったのか──

最後の、生への執着を感じさせたあの言葉から察すると、
あるいはあのまま目も見えず、何もできず獄に繋がれていた方が良かったと、今頃、そう後悔しているのかもしれない。

(だとすれば……いや、そうでなかったとしても、全く救いようがない奴だったとは言えそうね……)

自分が敵になっても、あぁはなるまい──
戦闘終結を見守ったルカは、内心、ひそかにそう誓うのだった。

78 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2013/11/05(火) 03:28:58.14 0.net
〜♪〜〜♪♪〜〜♪
これまでの轟音が嘘のように場を支配する静寂。それを唐突に破ったのはルカの服に収納された携帯の着信音だった。
ルカが手に取り、画面の表示を見ると発信元は不明。それでも彼女には既に誰がかけてきたものかわかっていた。
元々、ルカの携帯にかけてくる物好きは少ない上(言い換えれば友達が少ないのだが)、
しかもこのタイミングで発信元不明の端末で連絡を寄越す者といえばほぼ一人に限られるからだ。

『今、どんな状況だ?』
通話を開始した携帯の向こうから聞こえる凛とした張りのある女性の声。
間違いなく、それは太刀風 鼬のものであった。
「たった今、全部片付いたところよ。成り行きで逮捕はできなかったけどさ」
『そうか、早いな』
「そりゃあたしがいるんだもの、当然よ、とーぜん。
 ソフィアなんてさぁ、敵の色気に惑わされて鼻の下とか伸ばしててまるっきり使えなくってさぁー」

結果としてほとんど闘っていないにも関わらず、まるで全て自分ひとりでやったかのような物言いのルカに
(しかもソフィアに関してあることないこと捏造して)、傍らにいるソフィアが何とも言えない呻き声をあげる。

『そ、そうなのか……鼻の下を、か……』
電話越しの鼬も同じ気持ちだったのだろう、その口調はどこかたどたどしかった。
まぁ、女が敵の色香に惑わされて鼻の下を伸ばすなど、普通では考え難いのだから当然だ。

ルカの勘違いがやがておかしな事態を生じさせるのではないか────
鼬がそれを危惧し、かつこれまで誤解を解くことをしなかった己の行いに対し
若干の罪悪感と後悔を抱き始めていることなどルカは知る由もなければ、
(ハァ……一体いつになったら誤解が解けるんだろ? てか、鼬さんからもそろそろ言ってやってくれよ……)
と、ソフィアが内心そう思っていることもまた知らない。
そういう意味では今はまだルカも幸せであったといえるだろうか。……色々な意味で。

『い、いや、その話は今はいいんだ』
話が横道に逸れたところで、鼬はコホンと咳払い一つ、本題を切り出す。
『一つ朗報がある。そなた達がナンバーを片付けてくれたお陰だろう、私も先程解放してもらった』
「あ、そっか、術者が消えて皆の洗脳が解けたのね」
『ああ、どうやら洗脳中のことは何一つ覚えていないらしくてな。
 お陰で我々に対する疑惑も綺麗さっぱり消えてなくなっているが、多数のキャデットやサージェント、
 アーセナリーまでもがそなたらを追って街中で暴れていたものだから学園は今、半ば混乱状態にある。
 学園もEPSILONと共同で事態の収束を図っているが、なにせ学園長ですら洗脳状態に置かれていたのだ。
 混乱が収まるにはしばらく時間がかかるだろうな』
「はぁ〜あ、よりにもよって犯罪者に洗脳されるなんてSAも先が思いやられるわね。
 ……で? 拷問係の魔の手にかかる前に解放された捕らわれの姫君さんは、今どこで高みの見物を?」

──南エリアのSA本部校舎の屋上。
その一角の手すりに片足を乗せて下界を双眼鏡で望む鼬は、インカムに向かって「フッ」と微笑を漏らした。

『そう言うな。別に事態を静観しているわけではない。ただ、この事件……まだ気になることがあってな』
「っていうと?」
『もう忘れたのか? ナンバー達の脱獄の手引きをした者の存在を。それとも、そなたは既にそいつも倒したのか?』
「あ……そういえば“北の工場地帯(ここ)”に潜んでたのは四人、ナンバー達だけだった」
『だろうな。この事件の黒幕が奴らと行動を共にしているとは考え難い。
 となれば、まだこの町のどこかに潜んでいて何かを企んでいると見るべきだろう』
「何か? 何かって何よ?」
『……それが分かれば苦労はしないさ。ただ……黒幕が初めからナンバー達の敗北を想定の内……
 いや、それを前提にしていたと仮定すると、あるいは狙いも見えてくるやもしれんな。例えば──……』

──鼬が何かを言いかけた、その時であった。
ドォオオン! ──という爆発音と共に、本部近くのビルが崩れ、そこから火の手があがったのだ。

「っ!?」『──!!』

突然のことに息を呑む鼬。
それは、南エリアとは正反対の北エリアにいながらも、音と黒煙の存在を認めることができたルカも同様であった。

79 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2013/11/05(火) 03:34:39.86 0.net
(まさか……!)
そして、咄嗟に爆発の方向に双眼鏡を合わせた鼬は、そこで見るのだった。
悲鳴と驚愕、恐怖と絶叫、キナ臭さが充満する空間の中を、全身ダークブルーの装束に身を包んだ集団が隊列を組み、
一糸乱れぬ行進でもって突き進んでくるのを。

「な、なんだお前ら! この爆発もお前らの──ぐわぁっ!?」
「た、高木ィ!」
「こいつらクライマーか!? それともコラプターか!?」
「ま、待て! この数、そしてこの装束はもしかして……!」

「SA及ビEPSILONニ遣エル機関ノ犬ドモヨ。コノ町ハコレヨリ『蛇神(じゃしん)』ニ選バレシ我ラ『ダークスネーク』ガ統治スル!!」

(ダークスネーク! 最近勢力を伸ばしていると聞いたが……これは!)

双眼鏡から見える、集団の胸元に縫い付けられた黒い蛇のエンブレムが入ったワッペン。
それは確かにコラプター集団の一つ、ダークスネークの構成員であることを意味するものである。
だが、事前に聞き知らされていたデータに無く、やたらと彼らを異質な存在にしたて上げているのは
顔の上半分を覆う漆黒の仮面であろうか。そう、それは鼬の目から見ても不気味で、異様な雰囲気を醸し出していた。

「はっ! とうとう蛇共が表舞台に出てきやがったか! だがな、お前らキャデット崩れ風情が俺達に──」
それでも、隊列の先頭にいる猫背の男に向かって勇気ある一人のキャデットが足を踏み出す。
だが──そんな彼は、次の瞬間、若い命を無残に散らすしかなかった。
断末魔をあげる暇も無い一瞬の殺戮。全身を即座に輪切りにされ、バラバラになって大地を鮮血で染めたのである。

「逆ラウ者ハ皆殺シ、我ラニ従ウ者ダケニ生キル権利ヲ与エル。ククククク……」

機械を通したような無機質な声。だが、その中に僅かに含まれた下卑た地声を、相対したキャデットの一人は聞き逃さなかった。
そして仮面には覆われていない男の両耳に大量のピアスがしてあるのを見て、そのキャデットは一つのことを確信した。

「お、お前……まさか『九鬼党』の『三柴 好正』か!?」
それに対し、猫背の男は笑った。それが否定ではないことは誰の目にも明らかであった。
「九鬼党、カ。クククク、確カニカツテノ俺ハソウダッタ。シカシ、今ハ『ダークスネーク』ノ副長!
 ソウ、俺ハカツテノ俺デハナイ! 今ヤ、キャデット等軽ク凌駕スル能力ヲ得タ、選バレシ戦士ナノダ!」

「ざ、戯言を……。いいぜ、もはやコラプターですらねぇクライマーだってなら、全力で叩き潰してやる!」
「本部に連絡だ! 多数のクライマー集団が本部を襲撃! 増援を求む、とな!」
「ククククククク、ソウ上手クハイカンゾ。コノ『蛇神ノ仮面』ト『投影眼』ヲ装着シタ我ラニハ、モハヤ貴様ラ等敵デハナイノダ!
 ──サァ、行クゾ『蛇』達ヨ! 我ラノ時代ハ直グソコニアルノダ!!」

──ォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォオオオオオオオオオッ!!!!

地上であっという間に始まったコラプター・『ダークスネーク』とキャデット達の“戦争”。
「クッ……!」
鼬はそれを、苦虫を噛み潰したような顔で見守るしかなかった。
(ナンバー達を使い、学園を一時的にせよ混乱させ、守りを手薄にさせたのはこれが狙いか……?
 だとするとナンバー達を脱獄させたのは奴ら…………)
なるほど、そう考えれば確かにつじつまが合う。しかし、鼬には腑に落ちない点がまだ依然としてあった。

それは
(如何に数を増やし、奇襲をかけたとはいえ数の上ではこちらが圧倒的に有利。それを承知で何故……?
 何より気になるのは学園生を一瞬で惨殺したあの攻撃力……明らかに一介のコラプターにはない力だ。
 その源があの妙な仮面にあると仮定しても、一体どこで手に入れたのか……)
という点である。

鼬は考える。そして数秒の沈黙の後、彼女はそれらの疑問点を結ぶ答えに気がついたような気がした。
すなわち、黒幕と思われたダークスネークの背後に更なる黒幕がおり、“それ”が仮面の供給元ではないか、と。
では、それとは具体的に何を指しているのか?
ヒントはある。三柴が示した『蛇神』というキーワード。恐らく、蛇神の異名を持つ何者かが、真の黒幕なのだ。

80 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2013/11/05(火) 03:40:46.00 0.net
「鼬っ? ちょっと聞いてるの鼬ィッ?」
イヤホンの向こう側から聞こえてくる痺れを切らしかけたルカの声が、脳内に篭りかけた意識をはっと引き戻す。
『あ、あぁ……聞いている』
「何があったのよぉ! こっちからも爆発の煙が見えてるし! そっちで何かがあったんでしょぉ?」
『……ルカ、これから私が話すことを良く聞いてくれ。
 ただ、これはあくまで私の推測に過ぎぬし、確たる証拠もあるわけではないが……』
「……なんだってのよ?」
『時間がないので手短に話す。実は──……』

鼬は今、目の前で起きたことをありのまま説明すると共に、襲撃者・ダークスネーク一党とマグ・ナンバー達は
『蛇神』と呼ばれる真の黒幕の手駒に過ぎぬであろうということを語った。
勿論、後者は自分の推論であるということを念入りに付け加えて。

「仮面の軍団、蛇、黒幕──…………ねぇ」
『そうだ』
「いや……うん、まぁ……確かに筋は通ってるケドさぁ…………なぁ〜んか突拍子もないってゆーか」

ルカは終始ぽかんとした口調だった。コラプター達が攻めてきた、という事実に対しても特に驚く様子もなかった。
己の目で見て、確認したことではない為、危機感を感じることができないのかもしれない。
あるいはあたかも天地をひっくり返すかのような大騒動の渦中に今、自分達がいるという途方も無い“推測”が、
現実離れしているように聞こえたのかもしれない。

『突拍子も無い、か。確かにな……だがルカ』
しかし、かつて途方も無い陰謀をこの町で企てた者がいたということを鼬は知っている。だから彼女は言い返すのだ。
歴史は繰り返す、その可能性は常にあるのだから。

『たった六年前に、この町には途方も無い暴挙に出た連中が現実にいたのだ。
 あの時、何も知らずにこの町で暮らしていた人々に、前もって騒乱の話をしても突拍子も無いと受け取られただろう』
「……でも、その黒幕とやらの目的はわからないんでしょ? 実際にいるかどうかもさ。
 事実、鼬は初めナンバー達の脱獄もダークスネークが仕掛けたものだって解釈したんでしょ?」
『……あぁ、だがそれでは腑に落ちない点が多すぎた。だから、実際はこうではないかと……そう、私の推論だ』
「……ん〜……」
『そうだ、証拠はない……』
「……鼬って結構、思い込み激しいからなぁ〜」

電話越しのルカの声からは信じる気など欠片も感じさせなかった。だが、それも致し方のないこと。
鼬自身が何度も言っているように、証拠は何もないのだ。如何に筋が通っていたとしても、信じる方が馬鹿げている。

「でも……ここは信じた方がいいみたいね」
『!? ルカ……』
しかし、ルカは信用した。彼女にとって千の物的証拠よりも、鼬の情報の方が信頼に値するからだ。
これまで幾百と共に闘い、誰よりも互いを信頼しあって来た仲……
目に見えない深い絆で結ばれているが故の素直な判断だった。
そしてそれは、何より彼女自身個人的にこの事件について思うところがあったからでもあった。

「確か、先の騒乱の時も仮面をつけた連中が大暴れしたって話だし……なんか似てるのよね、話に聞いた六年前とさ。
 鼬、前に三英傑の話したことあったじゃん? 騒乱の時、三英傑はどういう経緯で裏切り者にされたんだっけ?」
『あ、あぁ……仲間殺しの疑いをかけられ、街中が敵に回ったという。しかし、実際はレッドフォースの陰謀であり、
 連中の狙いは三人に周囲の注意を引き付けさせ、裏で…………あっ!』
「そう、レッドフォースはスケープゴートを使い、それに注目が集まる裏で事を起こそうとした。
 今回の事件はあたし達が嵌められた。それで街中が敵に……そして次はダークスネーク。ね、似てない?」
『だとすると、この目の前で起きているダークスネークの暴挙もやはり囮(ブラフ)……!』
「でも、真の黒幕とやらの狙いが何にあって、どこを目指しているのかがわからない。どうする?」

鼬は目を瞑り、迷うように数秒沈黙した。だが、再び目を開いた時、彼女は迷い無く言い放つのだった。

『……わかった。私とルカ達はこのまま合流せず、別行動を取った方が良いようだ。
 私はここで蛇どもの迎撃に当たる。真実がどうあれ、このまま奴らの暴挙を見逃すこともできぬからな。
 ルカはソフィア達と共同して“黒幕”の正体とその居場所を突き止めてくれ──』

81 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2013/11/05(火) 03:46:03.89 0.net
パチン。携帯を閉じたルカは、背中にしたソフィア達を振り返った。
「おう? 話は済んだか?」
そう真っ先に声をかけてきたのはたった今、無線機を切ったばかりという風なソフィア。
「タイミングがいいぜ。こっちもたった今、済んだところだ」
「はぁ? あんたに電話をかけてくれるような友達がいたの?」
「ま……友達はいなくても、連絡を取り合えるような師匠はいるもんでね」

友達。それはもしかして男友達というやつだろうか?
そんなことを密かに心配していたルカだったが、やんわりと師匠と話していたことを明かされて内心安堵する。
おまけに友達はいない、とくれば、妙に心が躍るというものだった。

「ふ、ふ〜ん……結構、寂しい青春なのね。
 ……で、でさぁ、もし友達が欲しいんだったらさぁ……今なら土下座一つであたしが……」
「──マスター・レオが言うにはオレ達にかかった容疑は消えてなくなったらしい。
 だが、今度はコラプターの集団が反乱を起こして、街は今や戦争状態だって話だ。
 なんつーか……狙いすましたかのようなタイミングと思わねーか?」

頬の赤らみを抑え、必死に上から目線で寂しい青春とやらを送る“男”に手を差し伸べたつもりのルカであったが、
当のソフィアと来たらそれがまるっきり耳に届いていない様子でスルーする。
「……って、どうした?」
思わずピクピクとこめかみ辺りを震わし、紅潮するルカ。
そんな彼女に何も知らない顔で訊ねても、火に油である。
「どーもしないわよッ! バカッ!」
プイッ、と顔を背けられ、ソフィアは心底困惑したような様子で頭を掻いたが、話だけは彼女に向けて続けていた。

「ま、まぁ、それはいい……。とにかくオレが確認して置きたいのはこれからどこへ向かうかだ。
 ナンバー達を片付けてオレ達は文字通り無罪を勝ち取ったが、今度は本部の方が厄介になってきやがった。
 こうなるとキャデットとしての責務を果たしに学園へ向かうのが妥当と思うんだが……
 実はそれについてマスター・レオからある指令を授かっててよ」
「……三英傑の一人から?」
「ああ。どうやらマスターの見るところによると、今回のマグ・ナンバーや今、攻めて来てるコラプター共の背後には、
 正体はわからねーが何か大物がいるって言うんだよ。……ま、オレも薄々は思ってたことなんだが、
 このタイミングで本部が襲撃されたってのを聞いて確信したぜ。奴らを裏で操る黒幕の存在をな」
「……あんたもあたしや鼬と同意見なわけだ。そんじゃ話が早いか」

そのむくれっ面を打ち消し、くるりと回ってソフィアや丙らと顔を合わせて、ルカは続けた。

「実はあたしも鼬と話してたんだけど──」

そして、語り始めるのだった。今、本部で何が起きているのか、聞いたこと知ったこと、鼬から伝えられた全てを……。
……数分後、それらを伝えられた一同の顔は、皆一様に神妙なものであった。

「仮面を着けた軍勢、か……。そういやマスター・レオが言ってたっけ。
 六年前の騒乱の時、レッドフォースの手駒として利用されたのが『鬼の仮面』を着けられた一般人だったって」
「うん、鼬の言ってた『蛇神の仮面』っていうのもそれと似たようなものなのかも。
 だとするとやっぱり何もかもがISS騒乱の時と酷似してる」
「そんで今回、利用されてるのがここにいるオレ達……。ただの模倣犯にしては手がこんでやがるし、何より規模がデカイ。
 普通のクライマーか何かがやってると思ったらエライことになるぜ、こりゃ」
「で、鼬はとりあえずダークスネークの迎撃を受け持つから、あたし達はその黒幕の正体と居場所を突き止めてくれって」
「マスター・レオもオレに同じ事を言ってた。『こっちも探すが、別の用も済まさなければならない』から、先行してやれってな。
 どうやら今日のオレ達はとことん走り回る運命にあるみたいだぜ?」
「黒幕って言ってもねぇ……正体がわからない以上、果たしてどこに潜んでいるものやら……」

腕を組み、考え込むソフィアとルカ。
敵の漠然とした正体すらも掴みかねていた今の二人には知る由も無かった。
かつてISS騒乱の終結に前後して、自ら意図して己達の存在を闇に葬った影の部隊がいたことを。
そしてその部隊が今、密かに事を起こさんと動き始めていたことを……。

82 : ◆ICEMANvW8c :2013/11/05(火) 03:59:02.11 0.net
──時間は少し遡り、丁度、ルカ達がボブや鬼女羅と闘っている頃──
市内郊外に位置するとある建物の秘密の巨大地下室にて、集結したダークブルーの軍団を眼下におさめながら、
数人の男女が「狼煙が上がった」との一報を今か今かと待ちわびていた。

「──装着した者から“恐怖”を奪い、代わりに“闘争心”を引き出し、
 更に俺達の命令に忠実に動くよう“洗脳操作(刷り込み)”を行う『蛇神の仮面』──。
 『鬼の仮面』とは違い人格に操作を加えるわけじゃねぇから奴らには理性があり感情がある。
 しかし、あくまでどんな命令にも忠実に従う“兵器”。要するに人間の心を持った殺人マシーン。
 ……ケッ、まどろっこしいもんだな。心なんざ失くしちまった方がもっと扱い易いんじゃねーか?」

クチャクチャとガムを噛みながら眼下の手駒、ダークスネーク構成員をそう評したのは『九頭の毒蛇(ヒュドラ)』であった。

「精神の機械的な制御は行動パターンが大きく制限される欠点がある。九鬼の『鬼傀兵』がそうであったようにな。
 その為、敢えて人格を弄らず理性や感情を残すことで、より人間的に戦闘を多角的に捉えることを可能にした。
 そのサンプルが奴らだ。奴らは勝利の為なら手段を選ばぬ。勝つ為なら人質を取るような真似も厭わぬだろう。
 従来の操り人形にはできぬ芸当よ」

それに反論したのは、彼の背後に佇む『破壊者(クラッシャー)』。

「そして、彼らの両手にはそれぞれ改良型の『強発眼』と『投影眼』が備わっている。
 単純な戦闘力ならレッドフォースの『鬼傀兵(オモチャ)』とは比較にならない。
 無論、所詮はサンプル。完全ではないことは確かだが、それでも今回の一件では十二分に役立つはずだ」

そしてクラッシャーに代わり言葉を続けたのは、一人、離れた場所で壁に背を預けた謎の男、『影の支配者(シャドウルーラー)』。
彼はその場にいるクラッシャー、ヒュドラ、そして『狂気の蛇王(クルーエル・スネーク)』を交互に見やると、更に続けた。

「さて、今の内に確認して置こう。狼煙が上がった際、彼ら『蛇信兵(じゃしんへい)』を率いて本部に襲撃するのは『狂気の蛇王』。
 もっとも、これはこの騒乱に置けるあくまで“偽りの終幕(陽動)”、囮だ。だが、小うるさい奴らに真意を察知されると面倒。
 精々、この騒乱の“黒幕”らしく派手に動き回ってくれ。……いや、君には言うまでもないこと、蛇足だったかな?」

ミゼルから視線を切って、続いて向けたのは残る二人。

「我々はボスを擁して“約束の場所”……あの“旧ISS本部ビル”へと向かう。
 計画通りならば、およそ一時間から二時間の間に“約束の刻”を迎えることができるだろう。
 しかし、念を入れるようだが、万に一つも小うるさい奴らがそれを邪魔しに来ないとも限らない……。
 ボスを除く我々四人は、その時の為に所定の配置につき、それぞれが己のポイントに近づいたネズミを根こそぎ駆逐する。
 静かにかつスマートに……おっと、これも分かりきっていたことだったかな?」

ククク──。男は一人、静かに笑った。
そんな顔から一瞬、笑みが打ち消されたのは、正に他の三人が一様に顔色を変えたのと同じ時であった。
彼らが使う専用の通信機に『大蛇(オロチ)』からメッセージが入ったのである。
『ナンバー達、戦闘開始』──と。
それは、彼らの言う『狼煙』が今、正に上げられたことを意味するものであった。

「さぁ、行こうじゃないか──ボスを擁し約束の場所へ──」

その号令に従う形で、面々はその場をゆっくり後にする。一様にどす黒い笑みを口に貼り付けながら……。

【禿山:消滅、死亡。これによりマグ・ナンバー壊滅】
【ミゼルに率いられた『蛇信兵』がSA本部校舎を襲撃。キャデット達と交戦状態に入る】
【太刀風:牢獄から解放されるも、ルカ達とは合流せず『蛇信兵』の迎撃を選択】
【ルカ&ソフィア:黒幕の正体と居場所を突き止めることを丙らに提案】
【クラッシャー、ヒュドラら四人が危険区域へ向かう】

83 : ◆21WYn6V/bk :2013/11/09(土) 22:05:44.67 0.net
>>77
「し、死にたくない……た、たすけ────たすけてくれェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!」

恥も外聞も、プライドすらも捨てた断末魔を残し、禿山は今度こそ完全に消滅した。
波動闇黒閃の威力は先程証明した通り。万に一つも生存はありえない。

(当然の末路、と言えばそうだけど……。少し──ほんの少しだけ憐れみも感じる……)

禿山が消え去った大地を見つめ、藍は複雑な気持ちになっていた。

〜♪〜〜♪♪〜〜♪
シン──と静まり返った静寂の中鳴り響いたのは、ルカが所持していた携帯だった。
ルカが手にとって通話を始める。
と同時にソフィアも通信機を取り出し、何処かへと通信を始めた。

「……恐らく太刀風さんと獅子堂教諭でしょうね」
二人の通話の相手に目星を付けて藍が呟く。
「獅子堂殿は分かりますが……その太刀風というのは?名前は先程聞きましたが」
直接会ったことのない丙からすれば、その質問は当然のものであった。

「太刀風──太刀風 鼬。私の勤務先であるSA極東地区第01校の生徒ですよ。
 実力は折り紙付き。何せ──」
しかし藍が太刀風の素性を説明している最中、丙は「あぁ」と言って手を叩いた。

「太刀風──何処かで聞いたことがあると思っていました。
 その少女はあの『太刀風秘閃流』の現当主でしょう?」
「……性別まで言っていないのに、何故女性と分かったのですか?」
少し驚いた表情の藍に、丙は肩を竦めて見せた。

「なに、簡単なことですよ。私はその流派を知っている──ただそれだけのことです。
 まぁ、例え知らなくても──あのお嬢さんに異性の友人がいるとは少々考えにくいですな」
小さく笑いながらチラリと電話を続けているルカの方に視線をやる。
その表情は穏やかながら、自分では決して手に入らないものを羨む子供のような表情でもあった。

「では、この後はどうします?」
ルカ達の通話を待つ間、丙と藍は今後の行動について話し合おうとしていた。
「そうですね。ナンバーも倒したことですし、市民にかけられていた詐欺城の能力も解けている頃でしょう。
 しかし彼等に黒幕の存在を聞き損ねてしまいました。ですので、一旦屋敷に戻って──」
藍がそこまで言いかけたとき、遥か遠く──こことは正反対の南エリアの方から爆発のような音が聞こえてきた。

「「──!!」」

弾かれたようにその方角を向く二人。
そこで目にしたものは南エリアに建つビルが崩れ去り、そこから黒煙が上がっている光景だった。

「どうやら──黒幕が動き出したようですね」
爆発の方向を見つめながら、藍が静かに呟く。
「えぇ。ですが──罠である可能性も考えられます」
それに倣うように、丙も静かに答えた。

「罠──ですか」
「えぇ。この状況──"あの時"の状況と酷似しています」
「あの時──六年前の騒乱ですか?」
「街中が敵に回るとういう状況。そして──」

ピー、ピー────
丙が懐に手をやったのと、その懐に入っている通信機が鳴り出したのはほぼ同時だった。

84 : ◆21WYn6V/bk :2013/11/09(土) 22:06:51.05 0.net
「そっちどうだ?」
相手が誰かも確認せずにいきなり話し出す丙。
『戻ってきて早々人使いが荒いですね、凪沙?』
通信機からはそのことと言うより、自分の置かれた状況に対する不満の声が返ってきた。
「愚痴なら後でいくらでも聞く。状況は?」
丙はそんな不満も受け流し、用件を伝えるように告げた。

『概ね予想通りですね。仮面をつけた大勢の集団が学園本部へ向かっています。
 ──いいえ、既に交戦状態に入っている、と言った方が正しいですね』
「何?学園にだと?」
『えぇ、"おかしなことに"学園を襲撃しているのですよ』
「なるほど──それは十中八九陽動だな。
 本隊、と言うより本命は別にいるはず。そしてそいつらの目的地は学園じゃない」
『そう考えるのが妥当でしょう。しかしこちらを放置するわけにもいきませんよ?』
「あぁ。だからお前には引き続き監視、周辺の安全確保を頼みたい」
『了解しました。必要ならば学生達にも手を貸しましょう』
「頼む。では何かあれば連絡をくれ」

通信を終えて振り返ると、ルカ、ソフィアの両名もちょうど通信を終えた所のようで、二人で話していた。
そしてルカが、今しがた友人から聞いたばかりだという現状について話し始めたのだった──。

「仮面を着けた軍勢、か……。そういやマスター・レオが言ってたっけ。
 六年前の騒乱の時、レッドフォースの手駒として利用されたのが『鬼の仮面』を着けられた一般人だったって」
「うん、鼬の言ってた『蛇神の仮面』っていうのもそれと似たようなものなのかも。
 だとするとやっぱり何もかもがISS騒乱の時と酷似してる」
「そんで今回、利用されてるのがここにいるオレ達……。ただの模倣犯にしては手がこんでやがるし、何より規模がデカイ。
 普通のクライマーか何かがやってると思ったらエライことになるぜ、こりゃ」
「で、鼬はとりあえずダークスネークの迎撃を受け持つから、あたし達はその黒幕の正体と居場所を突き止めてくれって」
「マスター・レオもオレに同じ事を言ってた。『こっちも探すが、別の用も済まさなければならない』から、先行してやれってな。
 どうやら今日のオレ達はとことん走り回る運命にあるみたいだぜ?」
「黒幕って言ってもねぇ……正体がわからない以上、果たしてどこに潜んでいるものやら……」

考え込む二人を余所に、丙と藍も二人で現状を整理することにした。
「黒幕、ですか……。丙様の読み通り、といったところでしょうか」
「この程度のことならあの騒乱を知っているものなら誰でも──
 失礼、貴女は"あの兵士"を見ていなかったのでしたな」
「あの兵士?それは一体──」
「いえ、今は関係のないことです。問題となるのはその黒幕の向かう先ですが……」
食い下がろうとする藍をやんわりと退け、丙はやや強引に話題を変えた。
藍も不服そうではあったが、その話題の方が今は重要だとわかっていたために引き下がった。

「何処か心当たりが?」
「えぇ、仮に今回の黒幕の目的が六年前のレッドフォースと同じだとしたら、目的地をほぼ搾ることが出来ます」
「今の状況を考えれば、強ち違うとも言い切れませんね。それで、その目的地とは?」
丙は『それ』がある方角に視線を向け、ハッキリと口にした。
それはこの中でただ一人、六年前の騒乱の決戦の場に居た者だからこそ予想できる場所だった。

「危険区域──旧ISS本部ビルです」

85 :ミゼル・アインスウェイン ◆21WYn6V/bk :2013/11/09(土) 22:07:32.83 0.net
>>82
遡ること数刻前──
ミゼルは『九頭の毒蛇(ヒュドラ)』、『破壊者(クラッシャー)』、『影の支配者(シャドウルーラー)』の三名と共に、
とある建物の地下にある巨大な空間にいた。
眼下には今や市内のほぼ全てのグループを吸収し、四千を超える巨大組織となったダーク・スネークを収めながら。

「さて、今の内に確認して置こう。狼煙が上がった際、彼ら『蛇信兵(じゃしんへい)』を率いて本部に襲撃するのは『狂気の蛇王』。
 もっとも、これはこの騒乱に置けるあくまで“偽りの終幕(陽動)”、囮だ。だが、小うるさい奴らに真意を察知されると面倒。
 精々、この騒乱の“黒幕”らしく派手に動き回ってくれ。……いや、君には言うまでもないこと、蛇足だったかな?」
『影の支配者』がニヤリと笑いながら告げてきた。
「そうね──と言いたい所だけど、今は気分がいいからやめておいてあげる。
 陽動と言う配役に不満がないわけじゃないけど、やっと"合法的に"殺しが出来るんだもの」
堪えきれないというように唇を歪めながら、ミゼルはそう返した。

そして次の瞬間、その表情は更に一変することとなる。
この場にいる者達だけが使う専用の通信機──その通信機にこの場にいない『大蛇(オロチ)』から連絡が入ったのである。
『ナンバー達、戦闘開始』──それはミゼルを含めた四名が心待ちにしていた『狼煙』。
その狼煙が上がったと言うことは即ち、最後の仕上げが始まるのだ。

「さぁ、行こうじゃないか──ボスを擁し約束の場所へ──」

その号令に従い、ミゼルはそれは楽しそうな表情でその場を後にした──。



時は少し進んで、ダーク・スネークとキャデット達が交戦する少し前──
ミゼルは約四千の仮面をつけた兵士達──『蛇信兵(じゃしんへい)』を率いて学園本部に向かっていた。
髪はアップにしており、蛇のように細くなった瞳が獲物を狙うかの如く妖しく揺らめいていた。
やがてその校舎を視界に収めると、前進をやめさせてクルリと振り向いた。

「いい?よく聞きなさい。
 私はあなた達の頭ってことになってるけど、これからやることに関して命令と呼べるものはないわ。
 ただ、強いてあるとすれば私の分は残しておきなさいってことだけ。後は好きにしていい。
 さぁ行きなさい、蛇神の僕(しもべ)達──」

(まぁ、太刀風が出てきたらコイツらじゃ勝ち目はないだろうけどね)
全員が頷いたのを確認して、改めて本部を目指し歩き出した。

そして戻って現在──
ダーク・スネーク──『蛇信兵』達は既にキャデット達と交戦を開始している。
ミゼルは中心を、まるで散歩でもするかのような足取りで悠々と歩いていた。
今までにその様子を見た十数人が止めにやってきたが、その悉くは原型を留めていなかった。

校舎まで数十メートルと言う位置まで来た時、ミゼルは何かに気付いたように視線を上へと向けた。
そこで彼女の驚異的な視力が捉えたものは、屋上に佇む濃紺の髪の少女──太刀風の姿だった。

「高みの見物はお終い。これを見てもそこにいられるかしら──?」

呟いたと同時に能力を発動し、無数の弦を展開していく。
弦は的確にキャデット達だけを捉え、ある者は上空に投げ飛ばされ、ある者は細切れになっていく。
その様子は宛ら暴風雨のようであった。

「さぁ──早く私を止めてみなさい、太刀風 鼬。
 フフフ──アハハ──アッハハハハハハハハハハハハ────!!」

【丙&藍:ルカ達の提案に同意。危険区域が怪しいと告げる】
【ミゼル・アインスウェイン:『蛇信兵』を率いてSA本部校舎を襲撃。屋上にいる太刀風の姿を確認する】

86 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2013/11/13(水) 01:57:39.01 0.net
>>84
もし、黒幕が先の騒乱の元凶たるレッド・フォースと九鬼 義隆の計画をなぞっているのだとしたら──
そう前置きした上で丙は言った。
黒幕の目的地は──「危険区域──旧ISS本部ビルです」──と。

それを聞いたソフィアとルカの二人は一瞬呆然と、しかし直ぐに我に返ったように互いに顔を見合わせて言った。
「……そうか、そりゃそうだな」
「あぁ……あたし、馬鹿だった?」
ソフィアは苦笑混じりに、ルカは目から鱗が落ちたというように。

そう、そうなのだ。今の自分達の置かれた状況がかつての三英傑と似通っており、
実際に今回の一連の事件の黒幕が先の騒乱を現在に蘇らせているのだとするならば、
そう仮定した時点で最終的な目的地等わかってなければいけなかったのだ。

「前騒乱の最後の決戦地は旧ISSの本部ビルだって、マスター・レオから耳タコになるまで聞かされてたってのに……
 それを土壇場で思い出せなかったってのは自分自身情けないっつーか、あぁ〜〜〜!」
「ま……あたしの場合、何よりショックなのはそんなソフィアと同レベルだったってことだけどね!」
「……オレも自分で馬鹿と認めた人と同じ次元に居たってのが一番ショックさ、はぁ……」
「な、なんですってェ〜〜!?」
「……って、自分で喧嘩売っといて挙句の果てにキレるんかい!」

──そこに丙と藍の目があるにも関わらず、お約束のように始まる痴話喧嘩。
まぁ、女同士の喧嘩を痴話と表現していいのかどうかは疑問だが……恥さらしには違いない。
だが、そんな恥さらしタイムも遠くから聞こえる狂声、悲鳴、そして二度目の爆音によって打ち切りを余儀なくされる。

「……ま、言いたい事はあるけど、それはまた次の機会にしといてあげる」
「オレ達に、“次”があれば、な……。……ってか、次があったってルカさんと口喧嘩はしたくねぇよ」

流石に自分達の置かれた現状を思い出し、直ぐに切り替えたのだろう。
二人は音の方向を見据えながら同時に次なる戦場となりえる場所をその目に映していた。
すなわち、危険区域である。

「……いくらオレ達が仮定の話を積み重ねたってそこには何の証拠も無ェ、それは紛れも無ェ事実だ。
 だが、ここで指を咥えてたって何にもなりゃしねェのも事実。一か八か、オレは危険区域に行くぜ。
 ルカさんよ、あんたはどうする? って、愚問か?」
「あったりまえでしょ? 学園は鼬に任せて、あたしは黒幕の居場所を突き止めるって約束したんだから。
 もう怪しいところは片っ端から行くわよ」
「丙サン……だったよな? そんで藍先生。二人はどうする?
 もし、オレ達と一緒にこの賭けに乗る気があるなら……一緒に来てくれ! お先!」

そう言うとソフィアは危険区域目指して一目散に駆け出していった。
「ちょ、ちょっと! あたしの先を行くなんて生意気よッ、もぉーッ!!」
遅れて、ルカがそれに続く。
残された丙と藍は果たして──……。

ただ、今この時点で確かな事が言えるとすれば、それはたったひとつ。
──ルカとソフィア、少なくとも彼女ら二人が行き着く先は、この騒乱の“最終決戦場”であるということだ。

【ルカ&ソフィア:危険区域へ向かう】

87 : ◆ICEMANvW8c :2013/11/13(水) 02:05:34.03 0.net
>>85
後に危険区域で発生するであろう闘いを“最終決戦”と位置づけるのならば、
今、正に学園前で繰り広げられている戦いはさしずめその“前哨戦”と言ったところだろうか。

「こ、こいつら、本当にキャデット崩れのコラプターなのか! パワーにスピード、共に一流のそれだ!」
「それだけじゃないぞ、気をつけろ! 手から妙な黒い光線を撃ってきやがる!
 どうやら邪気の塊のようだが……『集束眼』のそれとは威力が比較にならん! 迂闊に近寄るな!」
「一人ひとりが固有の能力を持っていないところを見ると、恐らくは人工邪気眼による能力だろう!
 しかし、これだけの性能と威力を誇る人工眼などデータに無い! 一体、どこで手に入れたんだ……!」
「しまっ──うわぁぁぁああああああああああああ!!」
「加藤ォーー! 鈴木ィーー!」
「くそがぁぁぁああ!!」

ただし、黒幕一派の狙いはあくまで“陽動”。
学園生も蛇信兵も、彼らの中では等しく掌の上で踊る滑稽な猿に過ぎず、
彼らにとってこの闘いは“前哨戦”という位置付けすらされていないもののはずだ。
しかし、それはあくまで彼ら黒幕一派にとってであって、全員共通の認識ではない。
少なくとも本部ビル屋上から闘いを望む太刀風 鼬は、この闘いに明確な意義を見出していた。
(この闘いが陽動ならば黒幕はまた別の場所に───なれど)

鼬の目が睨みつけるように見据えたその先にあったのは、
キャデット達を蹂躙しながらビルに向かって悠々と歩を進めるたった一人の少女の姿。
(──恐らく作戦をより完璧なものとする為──……敢えて主力の一人を指揮官として投入した!
 そうだろう──? 『ミゼル』──ッ!!)

明確な敵として認識したその視線と、ミゼルの高揚した狂気の視線が交錯──
その瞬間、鼬は弾き出されるように屋上を跳び立ち、戦場のど真ん中へとその身を投じるのだった。

「ヒヒヒヒヒ! 綺麗ナ蝶々ガ態々『蜘蛛ノ巣』ヘ入ッテ来ヤガッタゼッ!」
「コイツァイイ、殺ッチマウ前ニ俺達デ姦(まわ)シチマオウゼ! 久々ノ美人ダシヨォオオオオオ!!」
「ヒャッハーーーーー!!」

だが、降り立った彼女を見て真っ先に駆け寄ってきたのは、下卑た声をあげる蛇信兵という名の十匹ほどの“飢えた狼”。
涎を垂らしながら、欲望に身を委ねんと一斉に飛び掛るその様は狼というよりはむしろハイエナだろうか。
いずれにしても、これが通常の一般女性であればなす術なく身柄を拘束され、即座に餌食とされるところだろう──

「──外道どもめ」

──が、残念ながら太刀風 鼬は“通常の一般女性”などではないのだ。
それは彼女が腰におさめた愛刀に微かに触れたその瞬間だった──
カッ──と眩いばかりの光が辺りを照らし、細くそして鋭い無数の光の筋が飛び上がった蛇信兵の肉体を貫いたのだ。

「ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア──ッ!!!!」

悲鳴をあげて吹っ飛び、やがて大地に一斉に沈んでいく蛇信兵達。
彼らの肉体には傷こそ無かったものの、もはや皮膚はピクリとも動かなかった。

「安心しろ、全て峰打ちだ。私の愛刀は貴様らのような外道の血で汚してよい代物ではないのでな。
 もっとも……峰打ちとはいえ、完全に急所を突いた。24時間は身動き一つ取れぬ……しばらく悪夢に魘されるがよい」

言いながらも、鼬の視線は既に蛇信兵にはなかった。
いや、そもそも彼らなど眼中になく、初めから彼女の瞳に移っていたのはミゼルたった一人であったのだ。
何故なら、それはこの闘いにおける一番かつ唯一の難敵がミゼルであると認めていたからである。
そう、自分にとってのこの闘いにおける意義こそ、その難敵を学園の為ひいては仲間の為、この場で倒すことだ──
と、確信していたからである。

「一番初めに会った時からそなたの事は気になっていた。が……まさかこのような形で再会するとは思ってもいなかった。
 望みどおりそなたは私が止めてやる。そして聞かせてもらうぞ、そなたら一派の正体とその目的をな……!」

【太刀風:ミゼルと相対す】

88 : ◆21WYn6V/bk :2013/11/24(日) 13:43:25.28 0.net
>>86
丙の一言に、ルカ・ソフィアの両名はハッとしたような表情になった。
恐らく、今自分達が置かれている状況と六年前の状況を照らし合わせ、
その結果浮かぶべき答えが出てこなかった、と言った所だろう。

そして何度目かになるか分からない痴話(?)喧嘩が始まる。
藍は苦笑し、丙は微笑みながらそれを見ていた。

「「──!」」

が、直後に聞こえた爆発と悲鳴によって、再び表情を真剣なものへと変えた。
「……いくらオレ達が仮定の話を積み重ねたってそこには何の証拠も無ェ、それは紛れも無ェ事実だ。
 だが、ここで指を咥えてたって何にもなりゃしねェのも事実。一か八か、オレは危険区域に行くぜ。
 ルカさんよ、あんたはどうする? って、愚問か?」
「あったりまえでしょ? 学園は鼬に任せて、あたしは黒幕の居場所を突き止めるって約束したんだから。
 もう怪しいところは片っ端から行くわよ」
「丙サン……だったよな? そんで藍先生。二人はどうする?
 もし、オレ達と一緒にこの賭けに乗る気があるなら……一緒に来てくれ! お先!」

ルカとソフィアは危険区域へ行くことを決めたようだ。
弾丸のように飛び出していくソフィアとそれを追いかけるルカ。
そんな若い二人の背中を見つめながら、藍と丙はその場に留まっていた。

「丙様、どうされますか?」
「ソフィアは賭けと言っていましたが、黒幕はまず間違いなく危険区域にいるでしょう。
 そして目的を達成するために邪魔者を排除する部隊も。
 恐らく敵も少数──されど、今までの者達とは比べ物にならない力を持っているでしょう」
「そんな、それでは何故──」
「えぇ、分かっていますよ。本当はあなたを含めた若い人間に任せるつもりでいたのですがねぇ……。
 あの二人だけでは、可哀想ですが返り討ちに遭う可能性の方が高いでしょう」
「では──」
「──行きましょう。これからを生きる若い命を散らすわけにはいきません」
「──はいっ!」

頷き合って二人は駆け出した。
既に見えなくなった若い二人の背中を追いかけて、"最終決戦"の地へ──。

【丙&藍:ソフィア・ルカを追いかけて危険区域へ】

89 :ミゼル・アインスウェイン ◆21WYn6V/bk :2013/11/24(日) 13:44:06.02 0.net
>>87
戦場へと舞い降りた太刀風。
それを狙って飛び掛った十人ほどの蛇信兵は、瞬きをする内に地に伏していた。

「一番初めに会った時からそなたの事は気になっていた。が……まさかこのような形で再会するとは思ってもいなかった。
 望みどおりそなたは私が止めてやる。そして聞かせてもらうぞ、そなたら一派の正体とその目的をな……!」

鋭い視線を向ける太刀風。
まるで今倒した蛇信兵など始めから眼中になかったかのようである。
──いや、実際になかったのだろう。何故なら彼女は知っているからだ。
この闘い、目の前にいるミゼルを倒せば学園側の勝利となるであろうことを。

「ハァ……」
しかし当のミゼルは、そんな視線をものともせずに溜息を吐いた。
「足りないわ……。全っ然足りない」
大げさな仕草で首を振り、心底つまらなそうに呟いた。

「確かに止めてみろとは言ったけど……それは言葉のあやって奴よ。
 それに、例え私が負けたところで身内のことを話すと思う?──考えが甘いのよ」
指先から無造作に垂れている弦がざわめき始める。
それは彼女の感情が高ぶり始めている証拠でもあった。

「闘いとは常に殺るか殺られるかの二択。
 生かしたまま勝つなんて考えてる内は私には勝てないわよ?」

不規則な動きをしていた無数の弦が一箇所に集まり、巨大な一本と化していく。
以前、コラプターとの闘いで見せたものより遥かに巨大になったそれは、まるで本物の大蛇の如く鎌首を擡げた。

「さぁ、始めましょう?太刀風。
 あなたのその綺麗な顔を苦痛と血に塗れさせてあげるわ──!!」

ミゼルの狂声と共に、大蛇が太刀風に向かって凄まじいスピードで突進していった。

【ミゼル・アインスウェイン:戦闘開始。『オロチ』が太刀風に向かう】

90 : ◆ICEMANvW8c :2013/12/02(月) 03:37:14.89 0.net
>>89
「さぁ、始めましょう?太刀風。
 あなたのその綺麗な顔を苦痛と血に塗れさせてあげるわ──!!」

繰り出された、太く、巨大な一匹の“蛇”と化した弦の束。
恐れを知らぬその猛進ぷりといい、その禍々しさといい、正しくそれはミゼルの狂気そのものと言ってよかった。

(弦……能力で作り出した強靭な糸を操る力か。それも、恐らくかなり精度の高い……)

「だが──」
ドウッ!!
巨大な蛇の頭が勢い良く大地を穿つ。
しかし、その時には既に、鼬の姿はそこにはなかった。
「──いくら威力があろうとも、その巨大な形りでは動きは丸見え。初撃に限れば紙一重でも躱すのは容易い」

上空、助走もつけぬ垂直跳びで高さ十数メートルはあろう位置まで跳んでいた彼女はそこで紡ぐ。
そして視線をミゼルに合わせつつも、背後に意識を置いたその状態からこう続けた。

「──ならば当然」

ドンッ!!
地中に顔を突っ込んだ蛇が再び地上に顔を出し、物凄い勢いで上空に向かって飛び出してきたのはその時であった。
足場の無い空中で、しかも足元から背後にかけてを急襲してきた巨大な敵。
通常なら無傷で切り抜けることは極めて困難と言えるだろうシチュエーション。

だが、当の鼬といえば奇妙なほど落ち着いていた。
それもそのはず、彼女にはこの展開が予め読めていたのだ。想定内ならば、動じるはずが無いのは至極当然。
「──すかさず二撃目を繰り出す」
意識を向けたその空間に大蛇が侵入したのを察知したと同時──
鼬は抜刀すると共に全身のバネを使って空中で時計回りに一回転。
細く、鋭い真円状の一本の光の軌跡を自身の周囲に描くと、
やがてパチン、と何事もなかったかのように納刀するのだった。

まるで周囲の時が止まったかのような所作であったが、当然ながら時は現在進行形で動き続けている。
故に、結果も次の瞬間に現れるのだった。

──鼬の背後で今正に彼女を呑み込まんと大口を空けていた大蛇の首が、突如として胴体から離れ落ちたのだ。
いや、首だけではない。地中から伸びた胴体も輪切りとなり、いくつかの塊となって文字通り崩れたではないか。
無論、これは既にミゼルも理解していることだろう。
鼬は単に一閃したわけではない。抜刀の瞬間、その剣先から巨大ないくつもの真空波を生み出し、
単なる一閃を“乱撃”に変えていたのだということを。

そしてそこまで理解が及んでいるなら恐らく気がついているはずだ。
彼女が残した“真円状の剣閃”、その意味を。

(太刀風秘閃流・改式── 『風円斬・乱神(みだれがみ)』ッ!)

そう──既に目に見えない、触れるもの全てを切り裂く無数の真空の円盤が、ミゼルに放たれていることを。

【太刀風 鼬:大蛇を輪切りにし、同時にミゼルに無数の風円斬を繰り出す】

91 :ミゼル・アインスウェイン@代理:2013/12/10(火) 20:13:15.04 0.net
>>90
「なっ────」

ミゼルは少なからず驚いていた。太刀風は最初から誘導していたのだ。
自ら逃げ場のない空中に跳ぶことで、襲い来るオロチが通るであろう軌道を。
そしてその行動の意図は、オロチを撃墜する自信があったからに他ならない。

倒すまではいかなくとも、手傷を負わせることは出来ると思っていた。
様子見とは言え、並の異能者なら一撃で十人は殺せるであろう邪気も込められていた。

だが気が付けばオロチは文字通り空中分解し、その姿を消していた。
そのショックからだろうか──刀を一振りしただけに見えた太刀風の攻撃が実際は乱撃であったこと。
そして己の身に無数の真空の刃が迫っていることに気が付くまでに僅かなタイムラグが生じたのは。

「クッ──!」
回避は間に合わないと悟り、とっさに腕をクロスさせ防御の体勢を取る。
オロチで防御できなくもなかったが、真空波(アレ)を防げる邪気を込めるのには僅かとは言え時間がかかる。
となれば、ダメージ覚悟で凌ぐ他に方法はなかった。

「やって……くれるじゃない……」
数瞬の後──嵐の後に立っていたのは、所々服が裂け、裂けた部分から血を流しているミゼルの姿だった。
顔が無傷だったのは女としての意地か、それとも単に運がよかっただけか──。

「特殊繊維で編まれたこのケープがまるで紙切れね……」
痛みに顔を顰めるミゼル。彼女は焦っていた。
太刀風を少し侮り過ぎていたかも知れない。

「まさかこれほどの切れ味とはね。恐れ入ったわ」
ダラリと両腕を下げる。その十指の先からは、無数の弦が地中に伸びていた。
「けど──これならどうかしら!」
ミゼルが叫んだ次の瞬間、地中から再び大蛇が姿を現し、鎌首を擡げた。

つい先程切り刻まれたと言うのに、また同じ攻撃をするのか──?
太刀風の頭にはそんな考えが過ぎったことだろう。
だがよく見ると、先程までは白銀の弦で編まれていた大蛇が今は黒く艶のある弦で編まれている。
太刀風の斬撃の威力を考慮し、それを上回る強度を持つ弦で創り出したのだ。

しかし如何に強度を上げたとは言え、一匹の攻撃で太刀風を倒せるのだろうか──?

答えは限りなく否に近い。
太刀風自身、つい先程『初撃に限れば紙一重でも躱すのは容易い』と言っている。
ならばどうするのか──?

──答えは至極単純。紙一重で避けられないタイミングで攻撃すればいいのだ。

紙一重でかわすと言うことは、その直後に僅かながら硬直時間が出来る。
常人では捉える事は不可能なほど僅かな隙だが、ミゼルにとっては然したる問題もない。

先程と同様に、大蛇の攻撃を紙一重で避ける太刀風。
だが次の瞬間、その表情が驚きに変わった。
太刀風が避けた先を狙って、二匹目の大蛇が背後より突進してきていたのだ。
更に死角となる足元から三匹目が。
気が付けば太刀風を八匹の大蛇が取り囲み、今まさに波状攻撃を仕掛けようとしていた。

「様子見は終わり。ここからは本気で行かせて貰うわ。
 喰い殺せ──『八頭蛇龍(ヤマタノオロチ)』!!」

【ミゼル・アインスウェイン:ダメージ小。『八頭蛇龍』で太刀風に波状攻撃を仕掛ける】

92 : ◆ICEMANvW8c :2013/12/13(金) 21:59:36.05 0.net
>>91
避けた先──そこで鼬を待っていたのは、八匹の黒き蛇による包囲網であった。
(単体では捉えるのは困難と見て、すぐさま戦法を切り替えたか──!)

前後から三匹、左右から三匹、上下から二匹──退路は無い。
ましてやこちらは一度リアクションを取った直後であり、その身は空中にある。選択肢は限られている。
ミゼルの狙いがそこにあったのは論ずるまでもない。紙一重で躱す、それを一瞬の内に逆手に取られたのだ。

「様子見は終わり。ここからは本気で行かせて貰うわ。
 喰い殺せ──『八頭蛇龍(ヤマタノオロチ)』!!」

だが、裏を掻いた攻撃など戦闘にはつきもの。
“まさか”に対し、なんら為す術を見出せないほど鼬は経験不足なわけではなかった。
刀を頭上に掲げた鼬は、既にその目でしっかりと、自分が進むべき道を捉えていた。
(この現状に対する最善手──それは──)

「──ぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ──!!」

瞬間、その気勢に呼応するように刀身が発し、作り上げたのは強力な螺旋の気流──小型の竜巻であった。
通常なら剣閃に併せて飛ばすその小型竜巻を──鼬は刀身に纏ったまま、地中の蛇目掛けて打ち下ろした。

「太刀風秘閃流・弐式乃改──『刃旋風・激震』ッ!!」

通常の剣撃に、凄まじい風圧と真空波の威力がプラスされた、正に破壊的な打撃技。
それは地中から顔を出した蛇の頭部を木っ端微塵に打ち砕くだけには留まらず、
そのまま地面をも切り裂き、穿ち、破壊し、周囲に凄まじい轟音を鳴り響かせながら大量の土砂と突風を巻き散らした。

それでも倒した蛇の数はこの時点ではたったの一匹に過ぎない。
だが、鼬にとってはこの一撃で十分であった。
広範囲に渡ってもうもうと巻き上がった土埃──それが計算通り、自分の存在を覆い隠したからだ。

蛇にはピット器官というものが備わっており、生物の体温をサーモグラフィーのように視ることができるといわれている。
しかし、ミゼルが操るのは弦を束ねることで形作られた蛇に過ぎない。
それでも蛇の特徴を兼ね揃え、自立して動く自動操作タイプのものならばいざ知らず、
ミゼルのそれは明らかに本体が直接操作するタイプのもの。視覚を本体に委ねているのに疑いの余地はない。
となれば、本体たるミゼルの目すらも欺くことができれば、残り七匹の蛇に察知されずに行動することも可能なのは道理。

「──そうだ、様子見は終わり──」

巻き上がった土埃により、誰もがどこに誰がいるのかすら判然としない中、鼬は静かに己の存在を告げた。
──ミゼルの背後から。
彼女は煙幕を張ると同時に閃歩によって一気に空中を駆け、敵本体の背後に躍り出ていたのである。
様子見は終わり──その言葉の通り、一気に決着をつける為に。

「──覚悟」

抜刀の構えから解き放たれた白刃が、ミゼルの首筋目掛けて鋭い剣閃を描いた──。

【太刀風 鼬:『八頭蛇龍』の包囲網を突破し、逆にミゼルの背後から攻撃を繰り出す。】
【避難所の新スレができました。念の為御知らせしておきます。】
http://yy81.60.kg/test/read.cgi/futatsuna/1386675154/

93 :ミゼル・アインスウェイン@代理:2013/12/22(日) 22:44:32.26 0.net
>>92
「──ぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ──!!」
気勢と共に太刀風が咆え、同時に刀に竜巻を纏う。
そしてその刀を地中から顔を出していたオロチの一匹目掛けて振り下ろした。

「太刀風秘閃流・弐式乃改──『刃旋風・激震』ッ!!」

咆哮と共に繰り出された竜巻を纏う斬撃──もはや打撃に近いが──はオロチを完全に粉砕し、
更に地面までをも粉砕、周囲を粉塵で覆った。

「まさかコレも壊すなんて──素敵。フフッ」

オロチを粉砕され、視界まで塞がれたにも拘らず、ミゼルは余裕を失ってはいなかった。
確かにオロチは自立して動くものではなく、ミゼルが直接操るタイプのものだ。
故に蛇としての特性も備えておらず、この状況下で役に立たないのは道理である。

だが、操縦者たる"ミゼル自身が"それに近い特性を備えているとしたら──?

ここで思い出して欲しい。
以前、危険区域で太刀風とミゼルが出会い、ルカが大暴れした日のことを。
あの時、ミゼルは視界に収めることなく二人の区域侵入を察知した。
今の状況と比べると、視界に捉えていないという共通点がある。と言うことは──

「──そうだ、様子見は終わり──」
自身のすぐ背後より、太刀風の声が静かに聞こえる。
通常ならば驚く場面だが、ミゼルはそれでも余裕を崩さなかった。
「──覚悟」
自身の命を刈り取るであろう白刃が迫る。
瞬きする瞬間には首が胴体から離れて落ちることだろう。

「──『黒蛇鱗(スネークアーマー)』」

ギィン──!!
確実にミゼルの首を飛ばすと思われていた斬撃は、果たしてその首筋で止まった。
よく見ると彼女の首は通常のそれではなく、黒い網──いや、鱗のようなもので覆われていた。
背後にいる太刀風の表情は分からなかったが、一瞬完全に動きが止まったのが気配で分かった。

「さぁ──覚悟するのはそっちの方よ?」

その隙をミゼルが見逃す筈はなく、瞬く間に太刀風は無数の弦に絡め取られ、宙吊り状態にされていた。
ミゼルは最初から分かっていたのだ。
太刀風が粉塵の中を高速移動し、自身の背後に現れていたことを。
「瞬時にオロチの特性を見抜き、粉塵で視界を塞いだのはいい判断だったわ」
ゆっくりと振り向き、磔状態の太刀風と視線を合わせる。
「でも甘く見過ぎたわね。蛇を操る人間が蛇より弱いとでも?
 それに、操縦者たる"私が"蛇の特性を備えていると言う可能性を考えなかったの?」

粉塵が晴れ、視界が元に戻る。
太刀風の周囲には、残りの七匹のオロチが餌を待たされているように蠢いていた。

「さぁどうする?正義の味方さん」

【ミゼル・アインスウェイン:攻撃を防御し、太刀風を弦で捕らえる】

94 : ◆ICEMANvW8c :2013/12/26(木) 19:40:27.76 0.net
>>93
カラン──。
手から零れた刀が、地面に落ちて虚しい音を立てる。

「ぐっ……うっ……!」
その愛刀の様を、鼬は険しい顔つきで見下ろすことしかできなかった。
取りに行きたくとも、ギリギリと全身を締め付ける黒い弦がそれを許さないのだ。
(なんという強靭な糸……! 下手に動けばそれだけ肉体に食い込み、更に自由を奪われる……!)

「でも甘く見過ぎたわね。蛇を操る人間が蛇より弱いとでも?
 それに、操縦者たる"私が"蛇の特性を備えていると言う可能性を考えなかったの?」

鼬を見上げる体勢にありながらも、ミゼルのその目はあたかも彼女を見下ろしているかのようだった。
罠にかかった蝶に対し、蜘蛛がそうするように……。

「……くっ!」

もっとも、実際にはミゼルは蜘蛛でなければ、対する鼬も蝶と形容する程華麗な生き方はしていない。
ミゼルが蛇の異名を持つならば、鼬の異名は鎌鼬。
「最後っ屁」と足掻くことに定評のある鼬の名を持つだけあって、彼女もまた非常に諦めが悪いのだ。

「さぁどうする?正義の味方さん」

ミゼルの悠然たる問に対し、鼬の解答は早かった。
下手に動けば更に弦が深く肉に食い込む──などということ等おかまいなしという風に、
がんじがらめにされた右腕を力任せに無理矢理後方に引いたかと思えば、
即座にその腕回りに小型の竜巻を出現させ、それを拳と共に自らの胸部に叩きつけたのである。

瞬間、爆発音をあげて後方に吹っ飛ぶ鼬。
そう、『旋風壊拳』を自らに炸裂させることで無理矢理拘束を解き、かつ爆発に身を任せることでその身を移動させ、
再び足元から構築されつつあった大蛇の包囲網からをも退避したのだ。

己の身を省みない自爆技に等しい荒業。例え結果がわかっていても、実行できる者は少ないだろう。
何故なら荒業には得てして時に致命的ともなりかねない、高い代償がつきものだからだ。
事実、彼女は胸部を中心に深手を負っただけでなく、何より愛刀との距離が更に開いてしまっていた。

「がっ……! はぁー、はぁー……特殊素材で編まれた服なのだがな……
 己の身を以って己の技の威力に感嘆することになるとは、フッ……何とも皮肉だ」
ズザァァァ、と大地を滑って止まり、胸を抑えながら自虐的に嘲る鼬。
だが、それも束の間
「──覚悟するのはそっちの方、か……確かに、そなたの実力を見誤ったのは私の不覚。
 そなたに比べて私には覚悟が足りなかったのかも知れぬ。この傷は、その戒めとして記憶しよう。
 だがミゼル、この闘いで私が傷を負うのが今のが最後と心得るが良い──」
直ぐに自虐的な笑みを顔から打ち消した鼬は、今度は一転して静かな表情を以って対峙した。
しかも、今度は全身と、その双腕に竜巻を現して。

「太刀風秘閃流・参式乃丙──『乱流烈鎧(らんりゅうれっかい)』──ッ!
 さぁ、今度こそ決着をつけよう──ミゼル・アインスウェイン!」

触れるもの全てを暴圧で弾き、圧砕し、そして外周部を廻る真空の刃によって切り刻む──
正に攻防一体ともいえる風の鎧を身に纏い、鼬は突撃した。

【太刀風 鼬:負傷覚悟の荒業で無理矢理拘束を解き、『乱流烈鎧』で勝負に出る。ダメージ中】

95 :ミゼル・アインスウェイン ◆21WYn6V/bk :2013/12/31(火) 20:33:00.33 0.net
「へぇ──」

数十メートル離れた位置で蹲る太刀風を見て、ミゼルは感嘆を漏らした。
(いくら古流剣術の継承者って言っても所詮は現代を生きる軟弱者。
 ──そう思っていたけど、中々骨があるじゃない)

「やるわね。自身の技の爆風で無理矢理弦を引き千切るなんて」
表情では余裕を装いながらも、視線は鋭く太刀風を射抜いていた。

(あの目──まだ何か仕掛けてくるわね)
太刀風の得物である刀は彼女から離れ、ミゼルの傍に落ちている。
更に太刀風は深手を負っているが、ミゼルの傷は大したことはない。
この状況を何も知らない第三者が見れば、ミゼルの優勢は明らかだと言うだろう。

「……」
しかし彼女は己が優勢だとは微塵も思っていなかった。
その証拠に、戦闘開始から今まで崩さなかった余裕の表情もいつの間にか消えている。
(手負いの獣ほど厄介なものは存在しない。次が勝負ね)

「──覚悟するのはそっちの方、か……確かに、そなたの実力を見誤ったのは私の不覚。
 そなたに比べて私には覚悟が足りなかったのかも知れぬ。この傷は、その戒めとして記憶しよう。
 だがミゼル、この闘いで私が傷を負うのが今のが最後と心得るが良い──」
そんなミゼルの予想を裏付けるかのように、太刀風が全身に風を纏い始めた。
最初はつむじ風程度だったそれも徐々に勢いを増していき、
今では触れるもの全てを切り裂かんとする真空の刃にまでなっている。

(当然と言えば当然、か。刀を奪われた時用の技くらい持ってるわよね)
「太刀風秘閃流・参式乃丙──『乱流烈鎧(らんりゅうれっかい)』──ッ!
 さぁ、今度こそ決着をつけよう──ミゼル・アインスウェイン!」
暴風を纏った太刀風が突撃してくる。
その様子を見たミゼルは小さく笑った。

「フフッ、最後の最後で技が似通るなんてね」

呟いた彼女の全身を、黒い弦が巻きつくように覆っていく。
そして全身を覆いつくした弦は次の瞬間、一斉に高速で回転し始めた。

「私にこの技まで使わせたのはあなたが始めてよ。
 ──『黒蛇鱗・戦闘刃形態(スネークアーマー・タイプ・ブレード)』」

向かってくる太刀風を真似るように、ミゼルも地を蹴って飛び出す。
「あなたの刃と私の刃──どちらが強いか。
 これで決着が付きそうね──太刀風 鼬!」

ギイイイィィィィィィン────!!!

ミゼルと太刀風、両者の拳が激突した瞬間、周囲に凄まじい音が響き渡る。
それは宛ら、サンダーで金属を削るときの音のようであった。
お互いに一歩も譲らない。互いに譲れないものがあるのだ、当然と言えよう。
しかし、その瞬間は唐突にやってきた。

ピキッ────!

或いは幻聴だったのかもしれない。
だが音はともかく、術者たるミゼルにはハッキリと伝わっていた。
自身の腕から伝わる、太刀風とぶつかり合うのとは別の、僅かな振動が──。

96 :ミゼル・アインスウェイン ◆21WYn6V/bk :2013/12/31(火) 20:33:30.11 0.net
(あぁ──)
その瞬間に彼女は悟っていた。自身の負けであると──。

ピシッ、ピキピキピキ────

音と振動は徐々に大きくなり、既に太刀風にも伝わっているはず。
それが即ちミゼルの敗北を意味することも、同時に理解したことだろう。

パキーン────

甲高い音と共にミゼルの刃が折れたのと、太刀風の拳がミゼルの腹部に炸裂したのはほぼ同時の出来事だった。
「ガッ……ハァッ……!!」
ミゼルは腹部に激しい裂傷を負い、盛大に血を吐きながら吹き飛び、地面に激突する。
立ち上がろうと全身に力を入れるが、僅かに手足が動くのみに留まった。

「私の負け、ね。フフッ……最初に言った通り私は何も喋らないわよ」
いつの間にか近くに来ていた太刀風に視線だけを動かす。
「あぁ、傷のことなら気にしなくていいわ。体が動かないだけだから」
太刀風が僅かに見せた申し訳ないような表情に、静かな口調で答える。
如何に倒す気で来たとは言え、最後まで冷徹になりきれないのは彼女の美徳ゆえだろう。

「……難儀なものね。痛みを感じないと言うのは」
徐々に薄れていく意識の中、ポツリと独り言のように呟く。
「こんな出逢いじゃなければ……友人にでも……なれたのかしらね……?」
最後にそう呟くと、ミゼルは意識を闇の底へと手放した。

【ミゼル・アインスウェイン:敗北。気絶する】

97 : ◆ICEMANvW8c :2014/01/01(水) 15:35:13.85 0.net
>>96
「こんな出逢いじゃなければ……友人にでも……なれたのかしらね……?」
見下ろした先でゆっくりと目を瞑り、その口を閉じていくミゼル。
それは電池が切れた人形の如く死に至った……いや、意識を失ったことを意味していた。

「……何故、過去形で申す」
鼬はその場にしゃがみ込み、そっとその手をミゼルの首筋に添えて言った。
「互いに生きていれば、これから共に友として肩を並べることもできよう……」
そして安堵した。指先から伝わる確かな脈の感触に。彼女がまだ生きているという100%の確信を得られたことに。

「バ……馬鹿ナ! 俺達ノ道標タルミゼル様ガ……ッ! ソ、ソンナ……ソンナ馬鹿ナッ!!」
「や、やった……! 流石の『鎌鼬(サイズ・ウィーゼル)』だ! 太刀風が勝ったぞ!」

ミゼルと鼬の決着。それは両陣営に瞬く間に伝播し、一進一退を続けていた攻防に決定的な変化を齎した。
「マサカ、マサカ俺達ハ負ケルノカ……!?」
蛇達は狼狽し、指揮系統が混乱する一方、
「へっ……どうした蛇共! 頭が潰れて気が萎えたかァ?」
「覚悟しろよコラ! 一匹残らず牢にぶちこんでやるぜ!」
学園側はこれまでにないほど士気旺盛。
その上、元々数の上でも勝っていたこともあり、各所で戦場を支配する光景が見られるようになっていた。
こうなればもう後は時間の問題。誰の目にもそれは明らかであった。

「太刀風さんは少し休んでいて下さい。後は我々が始末をつけます」
「礼を申す。しかし、気遣いは無用。まだ闘える身ゆえな」
「えっ……? で、ですが……」

後ろから来た後輩キャデットの言葉を遮るその鼬の右拳は、滝のように出血していた。
いくら見事なまでにミゼルの『黒蛇鱗・戦闘刃形態』を打ち破ったとはいえ、無傷で済むはずもない。
正に紙一重……紙一重の差で勝敗が決する、それが実力が拮抗した者同士の闘い。

「確かに私の右拳は砕かれ、骨の亀裂は手首にまで達しているが……」
なればこそ後輩もその身を案ずるのだが、今の鼬にはどこ吹く風。
既に心配無用とばかりの苦痛を欠片も感じさせぬ目で新たなターゲットを照準に合わていた彼女は、
ほとんど無傷の左手で地面に転がっていた愛刀を掴むと、淡々と息を零した。

「今のダーク・スネークならば、この左腕一本でも充分過ぎるほどだ」

──後輩キャデットは、彼女の視線の先にあるものを見て、「なるほど……確かに……」と呟いた。
「クソッ! 何シテヤガル! 俺ノ言ウ事ヲ聞キヤガレッ! 退クンジャネェッ!!」
そして思った。総長たるミゼルとは違い、構成員を掌握しきれずにいる部隊の副長・三柴 好正──
あの男は正に名ばかり。右腕というハンデをもってしても勝負にならないだろう……と。

「ミゼルはまだ生きている。後で聞かなければならないことが山ほどあるのでな……しばらくそなたに預ける」
「はっ、はい、お任せを」
「──では、行ってくる。──この混乱を収拾しにな」

再び、鼬は戦場へとその身を繰り出した。

【太刀風 鼬:右拳を完全に砕かれながらもミゼルに勝利する。後輩にミゼルの身を任せて、再び戦場へ】
【ミゼルの敗北によりダーク・スネークが完全に劣勢となる。鎮圧は時間の問題】

98 : ◆ICEMANvW8c :2014/01/01(水) 15:40:07.98 0.net
──南エリアで学園とダーク・スネークの闘いが続いている頃、東エリアにあるとある人気の無い路地裏では、
あのサングラスをしたターバン男が一人のブロンド髪の女性と対峙していた。

「──既にこの街に来ていたとはな。しかも、俺を呼び出したのがあんただったとは……雀舞の婆さんの仲介か?
 まぁいい……こちらとしても探す手間が省けたというものだ」

男の第一声は、傾いたサングラスを中指で直しながらのものだった。
別に気にしなければ気にならないちょっとした仕草であったが、
勘が抜群に良い者であれば、この時点で既に彼が何に着目したかを察することができたかもしれない。

彼のサングラスが傾いたのには理由があったのだ。
それは、女性が手から下げたアタッシュケース。
内から何とも言えない雰囲気を漂わせているそれに釘付けになるあまり、
首が下がってサングラスのズレを招いたのが事の真相だったのである。

「…………しかしそうか、あんたも俺と同じ、この六年間“それ”を追って来た者か。
 そして…………“お前”も、“それ”の使い方を知ろうとする者……そういうことか?」

サングラス越しなので見た目にはわからないが……男はその時、確かに視線を横へと投げていた。
すると、それを明確に察知したのか、あるいは言葉によって彼の意図を知ったのか──
彼の視線の先の暗闇の中でじっと腕組する者が一人、やれやれといわんばかりにフッ、と笑った。

「──なに、つい先日、俺に面会したいという女が来たということを聞いてな。
 まさかと思い市内の気を探っていたら……えらく懐かしい気があったもんでな、こうして足を運んだってわけだ。
 お前さんも、あるいはそれを期待して敢えて自分の気を完全には消さなかった……違うか?」

そして、その声の持ち主は、ジャリ──と靴を鳴らして暗闇から街灯が照らす路地にその身を移動させつつ、続けた。

「なぁ? 『黒羽』よォ」

光に照らされてぼんやりと露になったその姿こそ『獅子堂 弥陸』──
そして一方の、それに対する返礼とばかりにサングラスを外してその素顔を露にした者こそ『黒羽 影葉』であった。

「……学園は今、面倒なことになっているみたいだが?」
「あっちは俺の弟子か……その仲間が何とかするはずだ。だから、安心して話をしてくれ、なぁ?」

そう言って獅子堂は、今度は女性に目を合わせた。

【ターバン男の正体が判明。女性と密会中、獅子堂が乱入する】

99 :ミゼル・アインスウェイン ◆21WYn6V/bk :2014/01/11(土) 11:02:48.66 0.net
>>98
「──既にこの街に来ていたとはな。しかも、俺を呼び出したのがあんただったとは……雀舞の婆さんの仲介か?
 まぁいい……こちらとしても探す手間が省けたというものだ」

ここは東エリアにある人気のない路地裏。
サングラスにターバンと言う格好の男が、ブロンドの女性に問いかける。
女性もまたサングラスをかけており、手には小さなアタッシュケースを提げていた。

「そうね……。確かにあなたを呼び出したのは私だけど、あの人の手は借りていないわ。
 あくまでも私自身の情報網。……骨は折れたけどね」
女性は苦笑しながら答える。
「…………しかしそうか、あんたも俺と同じ、この六年間“それ”を追って来た者か。
 そして…………“お前”も、“それ”の使い方を知ろうとする者……そういうことか?」
「えぇ──と言っても私が手に入れられたのはこの一つだけ。
 でも私にはこの一つで充分。他はあなたに任せるわ」
男の目がアタッシュケースに向いていたことは最初から気付いていた。
そして彼が視線を向けた暗闇の中に存在するもう一人の人物のことも。

「──なに、つい先日、俺に面会したいという女が来たということを聞いてな。
 まさかと思い市内の気を探っていたら……えらく懐かしい気があったもんでな、こうして足を運んだってわけだ。
 お前さんも、あるいはそれを期待して敢えて自分の気を完全には消さなかった……違うか?」
暗闇から足音と共に一人の男が現れる。
その男こそまさに彼自身が述べた通り、先日学園に足を運んだ女性が面会を取り付けようとした男であった。


「懐かしい、ね。今の私は六年前とは全くの別人よ?」
クスクスと笑いながら二人目の男──獅子堂に答える。
そして一人目の男はサングラスを外し、その素顔を露にした。
それは六年前、かの激戦の後にこの街を去った男──黒羽であった。

「……学園は今、面倒なことになっているみたいだが?」
「あっちは俺の弟子か……その仲間が何とかするはずだ。だから、安心して話をしてくれ、なぁ?」
獅子堂が女性に視線を向ける。
対する女性も、もうこれは要らないだろうと言う風にサングラスを外し、その素顔を街灯の下に晒した。
その顔こそ、かつての黒羽の担任教師であり、獅子堂の上司であった女性──『御影 篠』であった。

「そうねぇ……何処から話していいのやら。
 取り敢えず"コレ"についての説明からした方がいいかしらね?」

御影は手に持ったアタッシュケースを持ち上げ、眼前に掲げた。
「と言っても、私よりあなたの方が詳しそうだから説明は任せるわ。黒羽君」
ケースの中身についての説明は黒羽に任せ、御影は話を聞く姿勢を取った。

【ブロンド髪の女性の正体が判明。黒羽、獅子堂と密会中】

100 : ◆21WYn6V/bk :2014/01/11(土) 23:48:31.86 0.net
>>99
名前ミスです。

101 : ◆ICEMANvW8c :2014/01/14(火) 03:59:12.90 0.net
>>99
「と言っても、私よりあなたの方が詳しそうだから説明は任せるわ。黒羽君」
と言う御影に、黒羽は「なんだ、結局俺に丸投げか」と溜息一つして、自分の胸元を探った。
そうしてやがて彼が取り出したのは、街灯の灯りに照らされても輝き一つ見せない“漆黒”の水晶玉であった。
「……それは?」
尋ねる獅子堂に、黒羽は「恐らく、お前の“それ”と同じものだろう」と意味深にぽつり。
それに対し更なる怪訝な顔を以っての「俺にも解るように説明して欲しいんだが?」との要求に、
黒羽は「そうだな」と再度呟き、手にした黒き玉を見つめた。

「これは“落葉”だ」
「ほう? 黒い落葉があったということか」
「……あった? なるほど、確かに過去にはこれと同じ原理で創り出されたものがあったのだろう。
 だが、“これ”自体は俺自身の力で生み出されたもの……つまり、俺の力で黒く染め上げたのだ」
「フッ、絵の具を使って塗り潰した──ってレベルの話じゃなさそうだな」

獅子堂は冗談めかしているが、ふざけているわけではない。
あくまで彼風の軽口の類であり、茶々を入れるつもりもあるわけではない。
黒羽もそれを解っているから「あぁ」と敢えて糞真面目に返答するのだ。

「俺はこの六年、異能力の根源たる“闇”の正体を調べる為に世界中を旅してきた。
 そして二年前、俺はローマの地下である古文書を見つけ、落葉の本当の使い方と生み出された理由を知った。

 ……かつての九鬼 義隆は落葉に己の邪気を込め、結果、落葉内で増幅された邪気を、
 すなわち異能エネルギーを使役することによって自らの意思を具現化してみせた。
 奴の場合、その意思とは異次元にあるもう一つの世界・地獄に通じるトンネル『鬼門』を開くこと……。
 このように落葉を構成する粒子には外部からの邪気を吸収し、更に吸収した邪気を反響増幅する性質がある。
 しかし……単に邪気を増幅するのが落葉の真の使い方ではない」
「九鬼は使い方を誤っていた……ならば、真の使い方とは?」

軽口も無く、真面目な顔で問う獅子堂に、黒羽は手にした落葉を己の顔の前まで持ち上げて言った。

「邪気を通すだけでは黒くはならない。黒い落葉とは『内に“闇”を込められたもの』なのさ」
「……っ! 闇を……!?」
「黒色はその証。闇を己の精神内から分離させて落葉に送り込む。そうすることによって黒き落葉は完成する。
 だが、元々異能者と闇は一心同体。切っても切り離せない仲。それを修行によって無理矢理分離させる……
 勿論これは一朝一夕にはいかない。俺の場合、分離と再融合を自在に行うその修行だけでも一年を要した」
「……闇を体外に放出するということは己の内から邪気を、異能力を失うということだろう?」
「その通りだ。今、俺は自身の闇を落葉に送り込んでいるから、邪気眼は既にこの掌には無い。
 だが、落葉内の闇を操作して再び俺自身と再融合させればこの掌に邪気眼は戻り、落葉もまた緋色の輝きを取り戻す」
「わからんな。何故、そこまでする必要があるのかが」

腕を組み、溜息のような息をつく獅子堂。
確かに、これまでの説明だけでは落葉に闇を込めるという作業にメリットはほとんどない。
だが、黒羽は「肝心なのはこれからだ」というように、フッと笑って少々キザに前髪を掻き上げた。

「全ては『聖者(セイント)』の出現にある」
「聖者……だと?」
「『聖気』という邪気とは正反対の性質の気を操ると言われる存在だ。
 世に邪気眼使いが溢れて世界が乱れると姿を現し、邪気眼使いの数を“調整”するという。
 落葉に闇を込めるという概念は、聖者に対抗する為に古の異能者が編み出したものだ。
 俺がローマで見た古文書はそれら異能者が後世の同胞達に伝える為に残したものなのだろう」
「だがそれが、メリットに一体どう繋がる?」
「聖気と邪気というのは陰と陽。互いが互いのエネルギーを効率よく破壊する性質を持つ。
 だが、聖者はかつて発生した邪気眼使いとの“戦争”に悉く勝利しているという。何故か?
 古文書によれば、それは肉体の内から気を生み出す者とそうでない者の違いだという」
「……つまり、肉体に邪気を宿す異能者は、聖気によるダメージを特に強く受けてしまうということか。
 一方、聖者とやらは肉体そのものに気を宿しているわけではないから、邪気による異能を苦手としていない……」

「そうだ」──小さく頷く黒羽に、獅子堂は「なるほどな」と空を仰いだ。

102 : ◆ICEMANvW8c :2014/01/14(火) 04:09:58.57 0.net
「聖者は二、三百年周期でこの世に現れる。前回の戦争が350年ほど前。
 しかも、その時の戦争の発端となったものが『鬼門』だった。
 だから俺はこの二年、奴らへの対抗手段を会得する修行に明け暮れた」
「そういうことか……。だが……まだ疑問は残っている。先程の言葉、『お前のそれと同じもの』とはどういう意味だ?」
「言葉の通りだ。もっとも、あくまで推測でしかないがな」

そう言って落葉に繋がった細い鎖を指にかけ、ぶらんと落葉を垂らす黒羽。
そして、怪訝な目でその一連の動作を観察していた獅子堂にこう続けた。

「落葉に送り込まれた“闇”は、その内部で己の力の反響増幅を繰り返し、能力を飛躍的に増大させる。
 闇を使役する術を持つ『闇人』ならば、“この状態”にあっても問題なく能力を発揮させることはできる。
 だが──能力にはその性質に適合した“形”や、性質を象徴する“形”というものがある。
 刀剣が物体を切り裂く形をしているように、弾丸が物体を貫く形をしているように……“闇”もまた例外ではない。
 従って“闇の支配”の境地に達した『闇人』であれば、落葉ごと闇をその能力を生かす形へと“変化”できる──」

瞬間──落葉を稲妻のような細く黒い無数の光が包み込み、カッ──と弾ける。
「っ!」
獅子堂が、御影が、目を見開いたのはその直後であった。
水晶玉の形をしていた落葉が、一瞬の内に紅黒い、弾倉部からキセルのような形をした二本のパイプを伸ばした、
独特な水平二連式の『猟銃』へと早変わりしたのだ。

「俺の能力は知っているな? この銃は空気を取り込み、内部で圧縮して撃ち出す能力を持つ。
 闇が持つ力が増幅されているから弾の威力も以前の俺とは桁違いだ」
「……へっ、お前が銃を持つとはな。二つ名も変えた方がいいんじゃねぇか?」

獅子堂が言っている内に、落葉は黒羽の意思を感知して、再び元の水晶玉へと戻っていた。
黒羽はそんな落葉を胸にしまい込み、獅子堂が腰のホルスターに下げる双銃を見て言った。

「その双銃……正体はこれと同じ落葉だろう。
 恐らくだが、かつて自身の闇を落葉に送り込んだまま死んだ異能者がいたのだ。
 本体が死んでも、精神的にも物理的にも切り離された闇だけは落葉の中で生き続けた……その形を保ったままな」
それに獅子堂が頷く。
「そしてそれが、巡り巡って俺の手に……。確かにそう考えるとこの銃に闇人格が宿っていたことの説明がつく。
 ……待てよ」
その時、獅子堂はふと何かに気付いたか、目を真横に流して呟いた。
「俺は黒い落葉を持つ。しかし、俺は俺自身の闇を落葉に移したわけではない。
 俺自身の肉体の強化は、あくまで俺自身の闇の邪気によるものだ。
 ……黒羽、体内から邪気を失ったお前は肉体強化をどう補助している?」
「問題は無い。俺は落葉を介して邪気を纏い強化することができる。
 体内に宿し、気が細胞と一体化しているわけではないから理論上は聖気によるダメージも特に強く受けるわけではない」
「……そうか、そうなるとむしろ問題は俺のようなタイプになるわけか」
「俺がこの六年間で世界中から見つけ出した落葉の数は全部で四つ。その内一つは俺が持っているもの。
 残り三つは雀舞の婆さんに渡しておいた。事情を話せば渡して貰えるだろう」
「ほう? 人の為に集めた分ということか?」
「別にそういうわけではない。世界のどこに九鬼のような奴がいるかわからんからな。
 将来の芽を摘んでおくという意味で見つけた分だけは回収しておいただけの話だ」
「お前にしては殊勝な心がけだな……」

再び軽口を復活させて、腕を組む獅子堂。
彼はそこでふと御影が持つアタッシュケースの存在を思い出すと、
これまで会話にほとんど参加していなかった彼女に話を切り出した。

「ところであんたはこれまで何処で何をしてたんだ? ケースの中身は落葉のようだが……」

【黒羽が落葉と『聖者』の秘密を明かす。獅子堂が御影に六年間の動向を聞く】

103 : ◆21WYn6V/bk :2014/01/18(土) 20:04:19.07 0.net
>>102
「ところであんたはこれまで何処で何をしてたんだ? ケースの中身は落葉のようだが……」
黙して二人の話に耳を傾けていた御影に獅子堂が声をかける。
それに対し、御影は「フフッ」と笑うとアタッシュケースのロックを外し始めた。

「私がこの街を去って六年間何をしていたか、ね。基本的には黒羽君と似たようなものよ」
ケースの中から落葉を取り出し、胸の前に掲げる。
黒羽のものとは違い緋色に輝くそれは、六年前に見た落葉そのものだった。

「私は母様の実家である北欧のアシュハルト家に向かったわ。
 その家はとても歴史の古い名家でね。起源は13世紀にまで遡るの」
「それがどうした?」とでも言いたげな獅子堂に対し、黒羽はピンときたような表情だった。
御影は獅子堂に視線を向け、教師のような──実際に教師だったが──口調で続けた。

「……母様の実家は13世紀から存在していた。
 そしてさっき黒羽君の言った聖者と邪気眼使いの戦争が三百五十年前──。
 ここまで言えば分かるわね?」
そこまで言えば、獅子堂も御影が何が言いたいかを理解したようだった。

「そう、残ってたのよ。三百五十年前の戦争──その詳細な記録がね。
 聖者云々については黒羽君のと殆ど同じだから省くわ」

落葉を胸元で握り締め、静かに目を閉じる。

「そしてその記録を元に私が辿り着いた答えが──これよ」

すると、先程まで緋色だった落葉がみるみる黒くなっていくではないか。
そして黒羽の時と同様に激しく光ったかと思うと、次の瞬間にはその形を全く別の物へと変えていた。
その様子に今度は黒羽、獅子堂──獅子堂は二度目だが──が表情を変える番だった。

「言ったでしょう?六年前とは別人だって」

笑いながら言う御影の手には、ガントレットと呼ばれる西洋甲冑の籠手が装着されていた。
「これは私の能力である結合と崩壊──その伝導率を極限まで高めるものよ。
 そして私の体にフィードバックされる破壊の力を抑える効果もある。更に──」
スッ──と腕を前に突き出し、ビルの壁に掌を向ける。
次の瞬間、壁の一部が爆発を起こし、小さな穴を開けた。
よく見ると、籠手の掌の部分には小さい穴が開いている。

「闇の力を増幅させることによって、今までは不可能だった生身での遠距離攻撃もこの通りよ」

数秒後、御影の手から籠手は消え、そこには黒い落葉が握られていた。
「私がこの秘術?を文献で見つけたのが五年前。そして習得したのが四年前。
 そこから今に至るまで鍛錬を欠かしたことはなかったわ」

落葉を元通りアタッシュケースにしまい、ロックをかけ直す。
「ところで貴方は──確か学園の教師だったわね。それも『三英傑』なんて有難くもない肩書き付きで。
 ごめんなさいね、何か押し付けるような形になっちゃって」
本心から謝る気はないのか、口元に笑みを浮かべて獅子堂に告げる。

「さて、次にやることはもう決まってる。そうでしょ?──黒羽君」

【御影が六年間の動向を話す】

104 :名無しになりきれ:2014/01/25(土) 19:32:30.24 0.net
>>102
「ところで貴方は──確か学園の教師だったわね。それも『三英傑』なんて有難くもない肩書き付きで。
 ごめんなさいね、何か押し付けるような形になっちゃって」
そんな言葉とは裏腹に、どこか挑発めいた笑みを浮かべる御影であったが、当の獅子堂はといえば
「別に。何をするにも好奇の目で見られる肩書きだが、役に立つ時もあるんでな。
 まぁ、サージェントの肩書きは脱獄者のお陰で危うく失いかけたが……
 どっち道、俺にとっちゃそこまで固執するものではない。元々学園には俺から売り込んだわけではないからな」
とサラり。
今の立場が御影らの意図した結果でないのはとっくの昔に承知していたことであるし、
仮に悪意であれ善意であれ、意図したものであったとしても別にどうということはない。
そして、その立場を失ったとしても他の生き方などいくらでもある──
御影の善悪抜きにした今一つ掴み所のない振る舞いが相も変わらずならば、
獅子堂の科白も持ち前の自信と組織に対するドライさを含んだ“らしい”ものであろう。

「さて、次にやることはもう決まってる。そうでしょ?──黒羽君」
そういう意味で違和感があったのは、むしろ黒羽であったろうか。
以前ならば……少なくとも六年前であったならば、ここで「ああ」と即答して敵を強襲する旨を明かしたに違いない。
ところが今日の彼は「……どうかな」と曖昧な返事をしたっきり、視線を横に流してしまったのだ。
それは六年の歳月を経て“慎重”あるいは“消極”というものを覚えた結果なのか……

しかし、獅子堂にはあくまで何となくだが、黒羽が思案するところが解ったような気がしていた。
彼とは古い顔見知りであるが、こうして顔を合わせるだけでも六年前の騒乱以来。
しかもその時に、一時的な協力関係を結んだことでようやく仲間意識が芽生えたに過ぎない間柄。
要するに時に自分と同じ側に立つ対等な協力者であって、特に親密な親友ではないわけだが、
それでも互いに背中を預け、生死わかつ戦場を共にした事で得た濃密な経験と情報が獅子堂に直感させたのだ。

「……さっきも言ったが、俺には弟子がいてな。実を言うとこいつをいい機会にしてやりてぇと思ってはいたんだ」
言う獅子堂は更に「それに……」と言葉を続けようとしたが、その続きを紡いだのは黒羽であった。
「俺達でまた事を解決しては、この街に成長はない……か」
それに対し獅子堂は「……フッ」と軽く笑みを零す。
そう、それこそ獅子堂の言わんとしたことであって、黒羽が思案したことそのものであった。

かつて前代未聞の騒乱を死闘の末に解決に導いた僅か数人足らずの異能者達。
後に英傑と称されるようになった彼らの実力は、今や間違いなく世界屈指のものだ。
そんな彼らが再び起きた騒乱に団結して立ち上がれば解決の可能性は確実に高くなる。
だが、それで良いのか? それは他の異能者達の成長を阻害することにもなりはしないか?
人はいつか必ず死ぬ。なればこそ、困った時に必ず現れる完全無欠の“英雄”や“絶対者”など居てはならない。
でなければ、そうした存在が消えた時に現れた悪を誰も捻じ伏せることができなくなるからだ。

人々を自分達に依存させてはいけない。
そして自分達は、死を迎えるその日までに己の意思と力を継ぐ新たなる“強者”を誕生させておかなければならない。
考え方、生き方、立場が全く異なるにもかかわらず、かつての騒乱の際に一時的とはいえ協力関係を築けたのには、
成り行きという都合以上に二人の芯の部分にある“正義”に不思議と共通するものがあったからに違いない。
そしてそれは、時を経ても変わっていない。意見の一致とはそういうことなのだろう。

だが、であるならば、黒羽の態度には疑問が生じるのだ。
それは御影の問いに何故、敢えて曖昧な返事をしたのかということである。
黒羽の言った「……どうかな」という科白。どうかな、ということは決めあぐねているということに他ならない。
だから獅子堂は訊いた。「ならば、何故だ?」と。
その意味を当然の如く理解した黒羽は、一瞬の沈黙を置いて答えた。

「……“二神 歪”。奴は何故、死んだと思う?」
突然紡がれた二神の名。普通であればここで戸惑う。彼を知っている者ならば尚のことだ。
しかし、獅子堂は顔色一つ変えずに沈黙を返答として返した。
彼の死因など明確に知っているはずがない。だから答えようがないというのもある。だがそれだけではない。
勘の良い獅子堂には黒羽の言葉が、これまでの会話を通してそれに含まれたものの察しが何となくついたのだ。

105 :名無しになりきれ:2014/01/25(土) 19:33:08.37 0.net
恐らくそれは同様に沈黙を守る御影もそうであったのだろう。
黒羽もそれに気がついていたのか、誰が何も訊いていないのにしゃべり始めた。

「この街に着いて直ぐ、俺は雀舞の婆さんと夜霞の龍之介を除く“あの時”のメンバー全員の居場所を探った。
 その結果、真っ先にコンタクトを取れたのが二神だった。
 ニュースで知っていると思うが、奴はどこかに出掛ける直前に何者かの襲撃を受けて殺されている。
 奴は……この黒歴市に来るはずだった。俺の誘いを受けてな」

それを聞いても、獅子堂も御影も何一つ言おうとはしなかった。
結果的に彼の行動が二神の死を招いたという告白に等しいものであったが、
それを咎めたところで何の意味もないことくらいわかっていたのだろう。

「目的はわかっていると思うが、奴に事情を話して落葉を渡す為だ。来るべき“聖戦”に備えてな。
 俺が今更この街を訪れたのもその為。御影センセイ、落葉を持参したあんたもそのつもりだったんだろうが……」
「……まわりくどいぜ、黒羽。要するに奴を殺した何者かがこの騒動に絡んでると言いたいんだろう?」
言う獅子堂に、黒羽は「その通りだ」と即答。
そして直後に吐かれた「そして恐らく、そいつは」の科白に、黒羽は「あぁ」と目つきを険しく細めて言った。

「恐らくだが……その正体は“聖者”」
「肉体が物理的なダメージを受ければ受けるほど強化される二神の異能。敵はそれを超越する異能の持ち主。
 精神支配、あるいは精神破壊の能力者ならば奴の異能を潜り抜けて倒すことは可能だろう。
 だが、それでは死に至らしめることはまず不可能。となれば、奴を倒す能力者のケースは二つしかない。
 二神の能力、つまり再生と強化を圧倒的に上回る極限まで突き詰めた破壊の異能を持つ“邪気眼使い”か、
 それとも邪気と相反する別次元の異能を持つ“聖者”か……黒羽、お前は後者だと踏んだわけだな」
「その理由はもうわかるだろう?」
「スイーパー……いや、異能者としてほぼ隠遁生活を送っていた奴を名声を得たいが為に殺したならば、
 そいつは次に俺やあるいは御影を狙うはず。いや、そもそも順序としてはこの都市のサージェントとして名が知れ、
 誰よりも所在のはっきりした俺が真っ先に狙われていなければおかしい。
 いずれにしても今日までに俺がそういった輩と接触がないということは、少なくとも前者のケースはほぼ有り得ん。
 お前は二神を殺した程の奴と闘ったならば、俺がこうして無事にこの場に立っているわけがない。そう思ったんだろう?」

黒羽は何も答えなかったが、それこそが肯定の意であることは誰の目にも明らかだった。
ただ、それを踏まえ、更に黒羽の結論に納得した様子の顔つきをしながらも獅子堂は敢えて疑問を呈した。

「しかし、聖者が敢えてこの街を離れていた二神を真っ先に殺害した理由はなんだ?
 そしてもし聖者がこの一件に絡んでいるならば、敵というのは聖者の集団という可能性がある。
 目的は何にせよ、そうだとすればそれこそ俺がこうして無事でここにいる理由が見えてこない。違うか?」

黒羽は「その通りだ」と淡々と答えつつ、直ぐに続けた。

106 :名無しになりきれ:2014/01/25(土) 19:33:39.30 0.net
「俺はこの街に着いてから、ずっとある者の視線を感じていた。まるでマークされているかのような視線をな。
 変装はしていたが、恐らくそいつに俺の正体は知れている。だが、これまでにこれといった干渉は特に受けていない。
 聖者であればとっくの昔に俺を消しに来ているはず。俺達のような前騒乱の生き残りは奴らの存在意義を考えれば
 最優先の抹殺対象だろうからな。そいつが俺達に目立ったリアクションをしていないということは、
 少なくとも狙いは俺達の抹殺ではないということだろう。あくまで事に絡んでくれば迎え撃つ……その程度のスタンス」
「つまり二神を殺害したのは将来の芽を摘むという意味と、俺達への牽制……。
 そんなまわりくどい真似をするということは…………なるほど考え難いが、やはりそういうことか?」

疑念が確信に変わったというような表情の獅子堂に、黒羽は小さく頷いた。

「ああ。恐らくこれは聖者の集団の仕業ではない。敵は九鬼の意思を継ぐ邪気眼使い──その一派だろう。
 二神を殺害した聖者は、その一派の手先──」
「本来敵対関係にあるはずの邪気眼使いと聖者が手を結んでいる……冗談にしちゃできすぎてるぜ」
「邪悪な意思が奇跡的に結びついたんだろう。それが共闘を生んだ。
 立場はどうあれ見据える先が同じならば手を結ぶ……そう思えば不思議ではないな」
「その良い見本が俺達ってか? へっ、それを言われちゃ何も言えねぇな」

確かに皮肉としか思えないような話である。だが、有り得ない話ではない。
黒羽は独り薄笑いを浮かべる獅子堂とそして御影を一瞥して、再びサングラスをその顔に装着した。

「この件、お前の弟子やその仲間達の手に余るようなら干渉することにする。
 どっち道この件の黒幕共を放っておくわけにもいかないからな。ただ……」
「ギリギリまで見極める。俺は最初からそのつもりだ。限界まで追い詰めんと成長はしねぇからな、特にあの馬鹿弟子は」
「……御影センセイ、あんたは? 直ぐに干渉する気でも別に止めはしないが」

サングラス越しの黒羽の瞳が、御影を映した。

【黒羽と獅子堂がルカらの戦況次第で事に干渉することを決め、御影の決断を聞く】

107 : ◆21WYn6V/bk :2014/01/25(土) 20:29:37.65 0.net
>>104>>105>>106
「……どうかな」
御影の問いに対し,黒羽は曖昧な答えを返した。
「……さっきも言ったが、俺には弟子がいてな。実を言うとこいつをいい機会にしてやりてぇと思ってはいたんだ。それに……」
「俺達でまた事を解決しては、この街に成長はない……か」
獅子堂もまた、黒羽と同じく自分達が積極r的に動くべきではないと言う考えだった。

「あら……何だか勘違いさせちゃったみたいね」
少し驚いた表情で御影が口を開いた。
その表情の意味は、自分の言葉の理解のされ方から来るものだろう。

「別にそういう意味で言ったわけではないのだけど」
御影は確かに『やることは決まっている』と言った。
しかし、それは決して自分達が事態の解決に乗り出すと言う意味ではなかった。
寧ろ黒羽達と同様、若い世代に任せるつもりでいたのだ。

「……“二神 歪”。奴は何故、死んだと思う?」
黒羽が不意に二人に問いかける。
今までの会話内容からすると、急に話が飛んだようにも思える。
だが、会話と言う名の腹の探り合いを数多く経験してきた御影は、黒羽の問いの意味を明確に察していた。
そして、『沈黙は金』という諺を体現するように、獅子堂と同様、御影も黙することで返答とした。

「この街に着いて直ぐ、俺は雀舞の婆さんと夜霞の龍之介を除く“あの時”のメンバー全員の居場所を探った。
 その結果、真っ先にコンタクトを取れたのが二神だった。
 ニュースで知っていると思うが、奴はどこかに出掛ける直前に何者かの襲撃を受けて殺されている。
 奴は……この黒歴市に来るはずだった。俺の誘いを受けてな」

聞く者が聞けば、「二神を殺したのはお前だ」とでも言いそうな黒羽の独白。
しかし御影は何も言うことはせず、黙って耳を傾け続ける。
仮にここでそのことを追求しても何の意味もないし、自分に裁く権利があるわけでもない。

「目的はわかっていると思うが、奴に事情を話して落葉を渡す為だ。来るべき“聖戦”に備えてな。
 俺が今更この街を訪れたのもその為。御影センセイ、落葉を持参したあんたもそのつもりだったんだろうが……」
「そうね……私が見つけた落葉を持ってきたのは確かにその為よ」
黒羽の科白に、少々含みのある言い方で答える御影。
その表情はここではない、何処か遠くを見ているようでもあった。
しかし今重要なのはそのことに彼等が気付くかではなかった。

「この件、お前の弟子やその仲間達の手に余るようなら干渉することにする。
 どっち道この件の黒幕共を放っておくわけにもいかないからな。ただ……」
「ギリギリまで見極める。俺は最初からそのつもりだ。限界まで追い詰めんと成長はしねぇからな、特にあの馬鹿弟子は」
「……御影センセイ、あんたは? 直ぐに干渉する気でも別に止めはしないが」
気が付けば二人の会話も終わり、黒羽が御影に今後の動向を聞いていた。
無論、御影もボーっとしていたわけではなく、会話の内容はしっかりと聞いていた。

「……私って、そんなにせっかちに見えるのかしら?」
少しむっとしたような表情で御影が答える。
「私もすぐにどうこうする気はないわよ。
 獅子堂君は知っていると思うけど、今回の件、うちの子も絡んでいるの。
 あの子の成長を阻害するのは私としても望まないことだし、仮にあの子がいなくても同じことだわ」

108 : ◆21WYn6V/bk :2014/01/25(土) 20:30:11.10 0.net
御影は再び少し遠い目をし、「それに……」と続けた。
「あの子の成長速度は驚くほど速いのよ?それこそ私なんか足元にも及ばないくらい」
そう言うとフフッ、と悪戯っぽく笑った。

「ただ、それでもあの子達の手に負えなくなるようならその時は遠慮なくやらせてもらうわ。
 黒羽君じゃないけど、この件の黒幕は野放しにしていい存在じゃないしね」
怒りの中にある僅かな悲しみ──御影の表情はそう見えた。

「結論から言うと、貴方達と同じってことね。
 ところで、久し振りに集まったんだからお茶でもどう?黒羽君とはあの時の約束もあるしね」

いきなりそんなことを言い出す御影。
今はそんなことをしている場合ではないことぐらい、御影を含めたここにいる全員が理解している。
事実、御影自身返答は期待していない。だが、彼女はそういう人間なのだ。
決して事態を軽視しているわけではない。だが、慌てることこそ愚の骨頂。
意識してやっているわけではないが、結果的に泰然自若を地でいくような形になっているのだ。

「無理にとは言わないけど、気が向いたらうちにいらっしゃい。
 ──あぁ、あと黒羽君。センセイはやめて頂戴ね?私はもう教師でもなんでもないんだから」
小さく苦笑すると、黒羽同様、再びサングラスをかけ直した。

【御影も二人と同様、戦況次第では参戦する旨を伝える】

109 :名無しになりきれ:2014/02/02(日) 18:39:00.52 0.net
>>108
「私もすぐにどうこうする気はないわよ。
 獅子堂君は知っていると思うけど、今回の件、うちの子も絡んでいるの。
 あの子の成長を阻害するのは私としても望まないことだし、仮にあの子がいなくても同じことだわ」
御影の言葉を受けて、獅子堂は黒羽をふと見やる。
「葦ヶ矢 藍。そういえば彼女はあんたの秘蔵っ子だったな。
 姿が見えないと思っていたらうちの弟子共と一緒だったか」
殊更説明口調なのは事情を知らない黒羽を思ってのことだろう。
もっともそれは優しさなどではなく、黒羽の疑問の答えを先んじて明かしておくことで
無駄な時間を省くという意図によるものに違いない。

「そうか。お前らは初めからこの件には無関係ではなかったわけか」
「幸か不幸かな。お前は相変わらず一匹狼か?」
「……弟子、のようなものはいるが……実戦はまだ荷が重い。今は大人しくさせておくさ」
「フッ……お前も弟子には気を遣うか。なるほど、色々な意味で俺もお前も……いや──」

二人を一瞥して言う獅子堂だったが、その言葉の続きを紡いだのは彼ではなく、御影であった。
「結論から言うと、貴方達と同じってことね」
「……ああ、俺もお前も、あんたもな」

互いにフッと笑う獅子堂と御影。
この六年、生き方も立場も異なり接点はほとんど無かった両者だが、
彼女もまた芯に根付いた正義が獅子堂と一致する者に違いなかった。

「ところで、久し振りに集まったんだからお茶でもどう?黒羽君とはあの時の約束もあるしね」
あくまで飄々、自然体といわんばかりの御影に、獅子堂は負けじと「最後の晩餐ってな」と皮肉めいた笑みを返しつつも、
「できればそのまま明日まで宴会って形にしたいもんだがな」──と、乗り気の顔で言った。

「あの時の約束……か」
一方、無表情で一人呟いた黒羽は二人に背を向ける。
そのまま立ち去るのか──そう思われた黒羽だったが、彼は一度空を見上げると再び二人に向き直った。
「そうだな、もしかしたらこの機会が最後になるかもしれないからな。
 今の内に美味い茶をご馳走になっておくのも悪くはない……」
「……真顔で言ったら冗談に聞こえねぇぜ? 以前のお前ならもう少しユーモアを感じたんだがなぁ」
「フッ……この六年、俺も色々あったんでな。勿論、三英傑の英雄さん達ほど苦労はしなかったが」
「フン、口が減らねぇのは相変わらずか……」

呆れたように、それでいてどこか懐かしさを楽しむように獅子堂は苦笑し、一方の黒羽は御影に向けて顎をしゃくる。
「話は決まりだ。行こうか、センセイ」

既に教師ではなくとも、かつて教えを請けた担任には変わりない。
誰が何と言おうと今でもセンセイはセンセイだ──そういうような態度の黒羽に、御影はくすっと笑った。

踵を返して路地を出て行く御影の後を、獅子堂、黒羽の順で二人が追う。
そこに談笑や世間話などの他愛もない会話はなかったが、それは別に無心を意味するわけではないだろう。
恐らく、それぞれが何かを思案し、自分の世界に入っていたのだ。
少なくとも獅子堂は先程の会話を今一度思い出し、その意味を咀嚼していた。

『……真顔で言ったら冗談に聞こえねぇぜ?』
『この六年、俺も色々あったんでな』

(…………馬鹿野郎。俺に隠し事はできねぇことくらい知ってんだろうが)
初めから若干顔色が悪いように見えたのは気になっていた。
だから変装だけが目的でサングラスをかけていたわけではないということも何となくだがわかっていた。
それがはっきりしたのは会話の最中、黒羽の体内を『闇照眼』を通して見た時。
……彼の全身は、酷く汚れていた。

透き通る清流に、あたかも真っ黒な重油が混じってしまったかのような感じ。
黒羽自身はそんなことをおくびにも出さなかったが、それでも体は正直だ。
冗談の科白に含まれた微かで悲壮な響き──それは肉体が発する切迫した悲鳴に違いない。

110 :名無しになりきれ:2014/02/02(日) 18:39:48.87 0.net
人はいつか死ぬ。それが常識であり不変の摂理。
仮にそれを覆す力があったとしても、それをすることはむしろ世界のバランスを大きく崩す禁忌であることもわかる。

わかる、それはわかる。
だが、わかっていても心にチクチクとくるこの痛みはなんだろうか?
仮に戦いに勝利しても、かつての戦友と昔話に花を咲かせることもこれが最後かもしれないと思うと、
どうしてこうもやるせないのか。

──そう、全てを頭で理解しても決して全てを割り切ることはできないのだ。
例え如何に人には無い才を持つ、異能の申し子たる異能者であっても。

(六年…………か)

六年という歳月の無常さを、獅子堂は改めて噛み締めるのだった。

【御影の誘いに乗り、移動する。獅子堂が黒羽の先が長くないことを悟る】

111 : ◆21WYn6V/bk :2014/02/11(火) 18:41:15.04 0.net
>>109
「そうだな、もしかしたらこの機会が最後になるかもしれないからな。
 今の内に美味い茶をご馳走になっておくのも悪くはない……」
「……真顔で言ったら冗談に聞こえねぇぜ? 以前のお前ならもう少しユーモアを感じたんだがなぁ」
「フッ……この六年、俺も色々あったんでな。勿論、三英傑の英雄さん達ほど苦労はしなかったが」
「フン、口が減らねぇのは相変わらずか……」

御影の誘いに対する黒羽の返答と、それに反応する獅子堂の言葉。
少なからずこの二人を関係を知るものならば、極自然な反応に見えただろう。

(そう──)

だが、御影は少なからずと言う言葉では収まらない程度には二人を知っている。
故に、黒羽の言葉が単なる皮肉ではないということに気付いていた。
そして同時に、獅子堂も闇照眼の力によってそれを察したであろうことも。

「話は決まりだ。行こうか、センセイ」
だがそれを表に出すようなことは決してしない。
出した所で何かが変わるわけでもないし、二人もそれを望んでいるだろう。
聞き様によっては皮肉とも取れる黒羽の言葉に微笑しながら、御影は二人を先導すべく踵を返した。

「……」
路地を出て市街地を歩いている中、御影は思考に耽っていた。
先程の黒羽の言葉を思い出す。
──『もしかしたらこの機会が最後になるかもしれない』──
そんな彼の言葉に、獅子堂は内心戸惑っていることだろう。
如何に表面上は皮肉で返していても、本心は全く別のところにあるはず。
六年と言う時間の長さ、、そして戦友との別れが近付いていることに頭を悩ませていることだろう。
獅子堂 弥勒とはそういう男なのだ。

そういう意味では、御影は限りなく冷酷と言えた。
なにも黒羽の死期が近いことを喜んでいるわけではない。
ただ、獅子堂のようにあれこれ考えるのではなく、そういうものとして割り切れてしまうのだ。

幼い頃より、親族間の家督争いを数多く目にしてきた。
その過程で、謀略や暗殺など然して珍しいものでもなかった。
親しかった人間との突然の別れ。そんなことは日常茶飯事だったのだ。
故に彼女は黒羽の死を当然のものとして受け入れるし、悲しみこそすれ悔やみはしない。
大切なのは、黒羽 影葉と言う人間が生きた時間の一部を、共に過ごしたことを誇ること。
そして彼にも同様に思ってもらうこと。それが彼女に出来る黒羽への手向けだった。
だからこそ、最後の瞬間まで普段通りに過ごし、穏やかに送り出すことが自身の務めだと御影は思う。
例えそれが戦場の真っ只中であったとしても────。

「そういえば──」
思考の海から帰還した御影が思い出したように声を上げる。
それは市街地を抜け、正面に六年ぶりとなる屋敷の門が見えてきた時のことだった。

(確か、藍に付いて凪沙も一緒にいるはず。となると、今家には誰もいないのかしら?)
今現在、この街に残っていたのは藍と凪沙の二人だけだったはず。
家が大きいということもあり、それなりの地位を持つ者出なければ代表は務まらない。
藍は教師の仕事があり、一般のメイドには勤まらないので当時街に残っていた稟に頼んだ。
が、明華を含め、凪沙を除いたヴァルキリーのメンバーには別件で動いてもらうことになった。
そこで凪沙に白羽の矢が立ったのだが、その彼女もいないとなると──。

(家に誰もいない可能性が高いわね)
彼女の性格上、事が終わるまでメイド達に暇を出していてもおかしくはない。寧ろその可能性が高いだろう。
(こんなことならもう一人くらい残しておけば──)
そう思いながら門に辿り着いた時、巨大な門が音を立てて開き出したではないか。

112 : ◆21WYn6V/bk :2014/02/11(火) 18:41:48.28 0.net
「──!」
僅かに驚く御影を尻目に、まるで来るのを待っていたと言わんばかりに門が完全に開いた。

多少訝しげに思いながら、もしかしてと言う考えも頭に浮かべて玄関までの道を歩く。
そして玄関先に辿り着いた時、彼女はことの全てを理解した。

ギイイィィィ──と扉が軋みを上げながら開く。
そして扉を開けた先には、メイド服を着た二人の女性。
赤髪と金髪の二人の女性は、三人を見ると丁寧な仕草で深く頭を下げた。
「お帰りなさいませ、お嬢様。そしてようこそいらっしゃいました、獅子堂様、黒羽様」

「もう、先に帰るのなら一言言ってくれれば良かったのに」
頭を上げた二人──メイとエリを見て御影が溜息を吐く。
「申し訳ありません。私は言ったのですが──」
「あ、メイひどーい!私のせいにする気ー?
 ……なんて、言い出したのは私なんです。すいません」
メイにジロリと見られ、ペロッと舌を出しながらエリが謝罪する。
「お嬢様は必ず屋敷に戻られると思ったので、どうせならサプライズをと思いまして──」
「もういいわよ。別に怒ってるわけじゃないんだから。それに──」
(ちょっと嬉しかった──なんて言ったら調子に乗りそうね)
後半部分を口には出さず御影は苦笑した。そこには六年前と変わらない主従の姿があった。

「さて、ちょっとした悪戯もあったけど改めて。
 ──ようこそ我が屋敷へ。少ない時間ではあるけれど、くつろいでいって頂戴」

そして黒羽と獅子堂の二人へと振り返り、優雅に一礼した。

【三人が御影家へ到着、メイ、エリの両名と合流。御影が黒羽の死期が近いことを悟る】

113 :名無しになりきれ:2014/02/18(火) 20:30:09.01 0.net
>>86
「──っ!」
ルカは、街のある方角から大きな気が弾けて消えるのを感じていた。
「──気がついてるか?」
彼女の隣で顔色一つ変えずに走るソフィアが訊ねる。
「まぁね。あっちの方じゃ一つ大きな決着がついたみたい」
気の方角からして学園がある方──恐らく、鼬か。
たくさんの邪気に邪魔されてどちらが勝ったのかは判然としないものの、
ルカには「鼬が勝ったに決まってる」──多少願望が入ってはいるが、そんな確信があった。

「──そうじゃねェよ」
しかし、それをソフィアは否定した。
いや、彼女は学園での決着、誰が勝ったか誰が負けたかを言っているのではない。
厳密にはルカの確信めいた思いを肯定しながら、“それ以外”に気がついたことはあるかと言ったのだ。
「尾けられてるぜ、オレら」
そう、先程から音も無く、ぴったりと後を追ってくる者の気配を──
全身にへばりつくような悪意の眼差しを、ソフィアは感じていたのだ。

「あぁ……それね。尾行がへったくそなんだもん、気にしてなかったわよ」
ルカはこともなげに言う。なるほど彼女も気がついていたらしい。
確かによくよく考えてみれば、元は尾行するのもされるのもとっくの昔に慣らされた隠密である。
内にある悪意を隠そうともしない敵など、嫌でも気がつくというものであろう。
そういう意味ではソフィアは少々、結果としてルカを舐めた言動をしたのかもしれない。
「へいへい。恐れ入りやした」
ソフィアはそうおどけつつ、反省の意をあらわすように自分の頭を掻いた。
「……ふん、そんじゃそこらの小娘と一緒にしないでよね」
ルカは若干口を尖らせて言う。もっともそれは照れ隠しなのか、その頬は僅かに朱色に染まっていた。

「「ッ!?」」
そんな二人が突然、前進を止めて左右の両横に跳ねたのはその直後だった。
一定間隔を保ち続けていた後方の気配が不意に急加速し、瞬時に殺気を爆発させてきたのだ。
それは次の瞬間、ドゥン! と二人が避けた地面を深く抉る形で具現化され、
更に回避した方向に向けて撃ち出された黒い邪気の光線となって現れるのだった。

「様子見は終わりってか!」
「だったら始めから仕掛けてくればいいのに、面倒臭いわね!」

しかし、不意打ちに関わらず二人は当然のようにそれらを余裕で回避する。
元々のポテンシャルが高いのもそうだが、この数日で得た戦闘の経験値が彼女らを確実に成長させていたのだ。
以前であったら躱すことはできても、紙一重となっていただろう。
少なくとも敵の接近のスピードだけはそう思わせるに充分なものだったのだ。

「さぁ、人の旅路を邪魔する奴はどいつだ? ……って、いちいち名乗っちゃくれねぇか」
名乗るどころか、攻撃しても尚、スピードを緩めずにあちらこちらを高速で移動して翻弄しようとしてくる正体不明の敵に、
ソフィアはすかさず『把玉の構え』を取った。
「どこまでも失礼な敵ね。てゆーか動き回ってて疲れないのかしら?」
ルカもその場で立ち止まるか、大地をしっかりと踏み締める静一辺倒のソフィアとは違い、
彼女は臨機応変に対応しようと猫足で立ち、全身でリズムを取っている。

だが、形は違えど双方とも狙っているのはたった一つ。
それは右に左に、上に背後に、風切音を発して縦横無尽に空間を行き来する敵が、
隙を見てその凶拳を炸裂させんとするその瞬間。己の間合いに侵入してくる、その刹那。

「「──とらえた!!」」

そして二人は、その絶好の機会を逃さなかった。
敵が一瞬、楔を思わせる鋭い殺気を発したのを感じ取ったと同時──
二人はそれが来る方角に向けて、必殺拳を発動させたその拳を繰り出していた。

114 :名無しになりきれ:2014/02/18(火) 20:30:50.65 0.net
「『雹拳』ッ!」
「『火遁炎龍焼』ッ!」

ドンッ!!
瞬間、轟音を発して凄まじい炎熱が大気に広がり、それとは逆方向の空間に凄まじい冷気の衝撃が走る。
「「ウギャアアアアアアアアアッ!!」」
その中で断末魔を挙げる二人の人間。
声や体形からして両方とも男のようだが、その容姿はといえば黒いボディスーツと黒い仮面によって
覆い隠されている為、肝心の正体は判然としない。
だが、一つ確かなのは彼らこそルカらを尾行していた張本人であり、敵に違いないということ。

「やっぱ二人だったわね」
「あぁ。単独に見せるかける為、敢えて一人は雑に気配を殺していた。初めから騙し討ちが目的だったわけだな」
「でも、仕留めようとする時の殺気、その数を誤魔化せる程あたし達は甘くないっての。
 ったく……何者か知らないけど、これがもし“黒幕”ってならとんだ笑い話で……」

大地に崩れ落ちる二人の敵。その顔に装着された黒い仮面が、パキッ──と真っ二つに割れた。

「「っ!?」」
瞬間、ルカとソフィアは、思わず息を呑んだ。
仮面の下から現れたのはケロイド状の顔面を持つスキンヘッドと、額にжの刺青が入った面長顔──
そう、敵の正体は、クリムゾン事件の際に二人が倒した鍵錠 龍鎖と雲柱 影親だったのである。

「な……なんでこいつらが……」
「混乱に乗じて脱獄したってわけ? でも……以前とはスピードが桁違いなのは……」

まさか──。
ソフィアはふと、先程のルカとのやり取りを思い出していた。

『仮面を着けた軍勢、か』
『うん、鼬の言ってた『蛇神の仮面』っていうのもそれと似たようなものなのかも』

「ルカさんよ、こいつらが被ってた仮面がもしかしたら──」
「────その通り」
透き通るような、それでいて全身に悪寒を感じさせる冷たい悪意に染まった声が二人の背後から轟いたのは、その時だった。

「マグ・ナンバーを脱獄させる際、牢に囚われていたのを見てな。
 ついでに俺の手駒として再利用してみたのだが……『蛇神の仮面』を着けてもこの程度とはな。
 やはり、所詮は下忍の域を出ぬ小物か」

振り返ると、そこには所々丈が千切れたロング黒コートをはじめとした、
全身真っ黒の装束を身に纏った顔に×字の傷を持つ男が悠然と佇んでいた。
いつの間に──いや、もはや二人にはそんな疑問はどうでも良かった。
それよりも男が発する圧倒的存在感が、二人に彼こそがこの場における真の敵であることを直感させたからだ。

「……なるほど、黒幕はこっち。それも、先鋒と言ったところか」
「あんたがマグ・ナンバーの脱獄を裏で手引きしたのね……! まったく、舐めたことしてくれたじゃないの!
 こっちが受けた屈辱を何倍にもして返してやるから覚悟しな!」
構える二人に、男は悠然としたままフッと笑う。
「……やれやれ、俺の相手をするのがよりにもよってあの小僧と小娘のコンビとはな。
 やはり、こちらは『破壊者(クラッシャー)』に任せておくべきだったか……」

──ルカ達から1kmほど離れた危険区域のとある一角。
そこでは黒尽くめの装束を身に纏った初老の偉丈夫が、丙と藍の行く手を遮る形で仁王立ちしていた。
「偶然ここに入り込んだ……というわけではないのだろうが、一応、忠告しておこう。
 今すぐここを立ち去れい。さもなくば、私がこの場でお主らの息の根を止める。
 誰であろうと邪魔者は排除せよ、それが我らの『蛇神』からの命令なのでな……」

【ルカ&ソフィア:『蛇神の仮面』を着けた鍵錠と雲柱を撃破した後、『大蛇(オロチ)』と相対する】
【丙と藍の前に『破壊者(クラッシャー)』が現れる】

115 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2014/02/23(日) 23:44:10.70 0.net
「あの小僧と小娘……?」
男の言葉を反芻して、ソフィアはその眉間に皺を寄せた。
「小娘二人」と言われるところを「小僧」呼ばわりされたこと──その所為ではない。
明らかに以前より自分のことを知っている風な口ぶり、それが彼女にそうさせたのだ。

「…………そうか、やはりあの時、オレ達のことを視てやがったのは……」
ソフィアの脳裏に蘇るのは異牙との激闘。その最中に感じた、遠くからの視線。
「安心しろ、俺は話に聞いていただけだ。こうしてお目にかけるのはこれが初めてとなる」
男は言うが、だとしても彼の仲間が二人を観察していた事実に違いはなかろう。
つまり、既にその仲間を通じて充分な情報が彼にも伝わっているとみていいのだ。

「いずれにしてもあんたらに無礼な覗き趣味があるってことに違いはないじゃない。
 フン……どんな大物悪党達かと思えば、とんだストーカー一味ね」
「ルカさん、油断するなよ? この男は……」
「わぁーってるわよ。只者じゃないってのは雰囲気だけで充分伝わってきてるんだから」
「……そうじゃねぇんだ。マスター・レオから聞いたことがあるんだが、六年前の騒乱の時……
 壊滅したレッドフォースのメンバーの中で唯一、生きて逃げた敵がいるらしいんだ」
「……それがなによ?」
「話によると、逃げた奴は『椥辻』と言う男で、顔に大きな×字の傷を持っていたらしい……」
「────っ……! それじゃあ……」
「ああ。もしかするとこの男こそが……!」

二人は顔を見合わせて、直ぐに再び男を見やる。
男は、微笑を浮かべてただ悠然としていた。まるで二人を嘲笑っているかのように。

「椥辻……『椥辻 空也』か。……残念だが“それは違う”ぞ、小僧。
 何故なら初めから“レッドフォースの椥辻 空也”という人物などこの世に存在していないからだ」
「……なんだと?」
呻る様な低い声で訊ねるソフィアに、男は引き続き嘲笑うような態度で言った。
「レッドフォースなど所詮は『蛇神』の駒の一つに過ぎなかったということだ。
 椥辻 空也はいわばその蛇神の代理人として影からレッドフォースを指示していただけの仮の存在。
 “俺”にとってレッドフォースは仮の肩書き……椥辻 空也は数多ある内の仮の名よ」
「レッドフォースが手前らの駒の一つ……それじゃあ手前は……いや、手前らは一体……!」
男が、ニィと笑う。
「─そう、『ブラックフォース』──」
──だが、その顔が一変したのは次の瞬間だった。
ルカでもソフィアでも、ましてや男のものでもない全く別の第三者の声が、どこからともなく響き渡ったのだ。

「ISS騒乱の直後に突如として行方をくらましたかつてのISS最高指導者・『虎将 蒼月』──
 その親衛隊にしてレッドフォースと唯一比肩する力を持ったもう一つのISS特殊部隊、通称『ブラック・スネーク』。
 完全に影に徹していた故に当時の幹部ですら存在を知る者がほとんど居なかったISS真の暗部。
 その男が身に着ける漆黒の装束と白蛇のエンブレムが入ったグローブ──それこそが正しく隊員の証」

(──この声……この声ってまさか!)
心に染みる懐かしい声に、ルカは昂るものを感じながらゆっくりと声の方向に視線を合わせる。
その動作につられて上を見たソフィアは、そこで一瞬、息を呑んだ。

「元々、部隊は一部の上層部にしか知れていなかったトップシークレット。
 その上、ISS崩壊のどさくさに紛れて、本部はもとより各支部のマザーから端末に至るまで記録は綺麗さっぱり
 消されてしまっていた。お陰でお前らの存在を突き止めるまで随分と時間を要したが……」
葉っぱがごっそり枯れ落ちた裸の巨木、その太い枝の上。
そこに立つ一種独特な忍装束を纏った容姿端麗な青年の姿を認めたルカは、思わず頓狂な声をあげていた。

「りゅ、龍之介お義兄様ァ!」
「龍之介……義兄様……? ……おい、それってまさか……」
六年前の騒乱に直接関わった者ではないソフィアでも、ルカの言葉が意味するところは容易に理解できていた。
ルカの本名、その姓は夜霞。彼女と同じ姓を持ち、六年前の騒乱に関わった者の名をソフィアは知っている。
騒乱の生き証人である獅子堂よりとっくの昔に聞かされていたことなのだ。

「そうか、ISS情報室長・夜霞 龍之介ってのは、やっぱルカさんの縁者だったのか!」

116 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2014/02/23(日) 23:49:31.38 0.net
「ど、どーしてここに!?」
正にビックリ仰天といった感じで目を真ん丸くするルカ。
龍之介はそれに答えるより先にシュタっと華麗に大地に降りると、
後頭部で一本に纏めた鮮やかな黒髪をこれまた華麗に空間に舞わせてフッ、と微笑した。

「それはこちらの科白だ、と言いたいところだが、既に母上からあらかた事情は聞いている。
 ……久しぶりだな、龍華。その金髪は相も変らぬ跳ね返りの意思表示か?」
「えっ? あ、いや……」
「……」
「に、似合うぅ? えへへ……」

と、左右に垂らした髪の束を指に巻きつけながら、頬を微かに赤らめて精一杯におどけるルカだが、
龍之介の目は「若気の至りというやつか」とでも言いたげに生暖くなっていた。
「は、ははは……なんてゆーか、そーゆー年頃でして……」
髪を染めた本当の理由は母の目を欺く為だったわけだが、金髪が気に入っていたのも事実である。
色気を求める年頃娘の心を思い切り見透かされたようで、ルカは何とも罰が悪そうに肩を落とすしかなかった。

(……まぁ、育てた隠密がこんな派手な身なりになっちまってちゃ、呆れるというか困るというか……だよなぁ)
傍目にしながらこれまた複雑な表情で頬をヒクつかせるソフィアだったが、
直ぐに龍之介の視線が依然として悠然と立ち尽くしたままの男に注がれている事に気付いて、顔を引き締めた。

「初めてお目にかける──いや、それとも久しぶりだな、と言った方がいいのか?
 もっとも、俺は覚えてはいないがな」
そんな龍之介の問いに反応したのは男ではなく、ルカであった。
「えっ……? お義兄様、この男を知ってて?」
「────それについては、妾の口から説明した方がよかろう」

ふと背後から発せられた声に、ルカとソフィアの二人は思わず、その身を硬直させた。
不意の闖入者、それ自体に驚いたのではない。聞き覚えのある声だったからこそ驚いたのだ。

「お、お母様までっ!? いやっ、てゆーかっ……」
後ろへ向けた視線──そこにいたのは紛れも無い、あの夜霞 龍姫その人であった。
「よぉ、また来たぜぇ〜?」
「ハロー、龍華。元気でやってたみたいねぇ」
しかも、例によって龍斗や龍希、暗裏の雀勝までもその後ろに引き連れて。
「ルカさん、それだけじゃねぇぜ……!」
言うソフィアの視線の先には、陣を組んで自分達をぐるりと取り囲むおびただしい数の忍装束の集団が。
その数はかつての異牙襲来の時とは比べ物にならないほどである。
「あの時より増えてやがる!」
「っ! 本家だけじゃなくて分家の連中まで! 異牙が総力を挙げてここに……どうしてっ!?」
「ルカさんを再び連れ戻しに来た……ってわけじゃなさそうだが──」
その時、ソフィアは視線を男に向けてハッとした。

(──まさか……異牙の狙いは……)
そして、その思いを見透かしたように口を開いたのは龍姫であった。

「久しぶりじゃのう。こうして顔を合わせるのはかれこれ三十年ぶりになるか。
 龍之介がお主の影に気がつかなければ、我らの情報網を以ってしても遭うことは永劫適わなかったじゃろう」
「三十年って……まさかこの男、異牙の……?」
「龍華よ、そちが知らぬのも無理は無い。何故ならこやつは我ら異牙一門にとっての黒歴史そのもの……
 闇隠家最大の悲劇を生んだ『闇隠騒動』の元凶となった男じゃからのう」
「──闇隠騒動っ!? それじゃあ──」
「そうじゃ。この男の名は『闇隠 巳呉』。我ら異牙の最大の面汚しにして、最強の抜け忍よ」
「こいつが……近代異牙最高の天才隠密と謳われてたっていう……あの!?」

「……ククククク」
全員の視線が集中したところで、男は笑った。
これまで真一文字に結び続けていた口をどす黒ささえ感じる形に歪めて。

「久しぶりだな、夜霞 龍姫。お前如きが今や異牙の筆頭とは、異牙も存外人手不足と見える」

117 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2014/02/23(日) 23:55:15.25 0.net
「如き、だとォ?」
声にドスを効かせて前に出ようとする龍希を手で制止しながら、
「それはお互い様じゃろう。お主もどこの馬の骨とも知らぬ輩を集めて、小山の大将を気取っておるではないか」
と、事も無げに言い返す龍姫の目には、既に新たな敵の集団の姿が鮮明に映し出されていた。

ザッ──。
大地を踏み締める足音。それも十や二十ではない、確実に百は軽く超える重低音。
男を、いや、巳呉を取り囲む異牙の集団はそこで初めて気がついた。
取り囲まれているのは自分達の方であったと。

(チィ! 次から次へと──)
ソフィアは唇を噛みながら見渡した。
百、二百──総勢千は下らない異牙の円陣の更にその後ろに現れた、二千は下らない漆黒の覆面の集団を。

「あらあら……」
「チッ! 俺達の後ろを取るとは生意気な……!」
「龍斗、龍希。うろたえるでない。所詮、我らの敵ではないわ。ただの寄せ集めよ」
言う龍姫に、巳呉は悠然と言い放った。
「──この者共は俺の邪気によって異能に目覚め、更に俺の“選別”を生き抜いた選りすぐり。
 確率にして数万分の一の生存率を勝ち抜いたいわば精鋭よ。果たしてそう上手くいくかな?」

確かに回り取り囲む覆面の一団には、これまで闘ってきた雑魚とは違う言い知れぬオーラが漂っている。
先程ルカやソフィアが倒した下忍崩れなどとは、その実力はまず比較にならないだろう。
だが、それに対する龍姫もまた悠然としていた。
「ならば試してみるがよい。
 最後に立っているのがお主が三十年かけて作り上げた精鋭部隊か、それとも我ら異牙か──」

すっ……と上に掲げられた龍姫の手。
その手がふわりと降ろされた時、両陣営の忍は互いに視線を交錯させ──
そして、雄たけびをあげて激突した。

────オオオオオオォォォォォォオオオオオオオッ!!

地鳴りのような声が轟く中、龍姫は巳呉を……そしてルカとソフィアを一瞥して、静かに言った。
「これは本来なら闇隠の、ひいては我ら異牙が始末せねばならぬ問題。
 ……じゃが、ここは我らよりも一足早くこの場に辿り着いたそちらに一番槍を譲るとしよう。
 後ろは任せておけい。誰であろうとそちらの闘いの邪魔はさせぬ故、心置きなくやるがよい」
「お母様……」
「……龍華よ。いや、ルカ・ナイトヘイズ。ここは任せたぞ」

龍姫は、それだけ言って文字通りその場から姿を消した。
ルカとソフィアは互いに顔を向け合いながら苦笑する。

「美味しいところを敢えて譲ったってつもりなんだろうが……どうせならこっちも任せておきたかったなぁ」
「……同感。……でも」
だが、二人は直ぐに顔を引き締めて、巳呉を睨みつけるようにキッと見据えた。
「あぁ……強敵との闘いはどの道避けられねぇ」
「だったら、ここで勢いつけておこうじゃないの! この先の為にもね!」
力強く構える二人に、巳呉はぽつりと零す。
「笑止な。俺に勝てるとでも思っているのか?」

そして、終始組みっぱなしだった腕を崩し、大地に向かって下げたその両の手の関節をパキリと鳴らした。
それは初めて彼が戦闘態勢に入ったことを意味していた。
「思い知らせてやろう。我ら『ダーク・フォース』の力をな……」

【ルカ&ソフィア:戦闘態勢に入る】
【椥辻 空也の正体が闇隠騒動の元凶・闇隠 巳呉であることが判明。
 同時に彼をはじめとする黒幕一派が元ISS特殊部隊『ブラック・フォース』であったことも明らかに】
【異牙軍が現れ、巳呉が作り出した異能者部隊と戦闘状態に突入】

118 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2014/03/04(火) 04:02:38.42 0.net
「業火・激流・烈風・地力・迅雷・森羅・氷結・壊龍・美雀・蛇神・魔影・決殺」
一旦はだらんと下げたその両の手で次々と独特の“印”を結んでいく──
それはルカにとっては馴染み深く、そしてソフィアにとっては夜霞 龍姫との戦闘以来目にするものだった。
「これは──っ」
「気をつけて。闇隠 巳呉ってのはかつての超一流上忍なの。その上忍が不要な印結びを敢えて行うってことは──」
「──あぁ、あんたのお母さんの時と一緒だってことだろ?」
だからこそルカだけでなく、ソフィアも既にそれが意味するところを知っていた。
そう、これは上忍家伝来の秘術中の秘術。異牙・高等秘術「秘喚の影業(ひかんのかげわざ)」であると。

「──光栄に思うがいい、俺の影業など滅多に見られるものではないぞ?
 なにせ俺にはこれを使わずとも異牙を容易く抜けられるほどの力があったものでな。
 此度はいわば異牙との30年振りの再会を祝しての大サービス。よぉーく目に焼き付けておくがいい」
巳呉の全身から漂っていた邪気がどす黒く変色していき、油を注いた炎のように力強く猛っていく。
「──クッ……!」
「チィ……! なんて威圧感なの……!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!
大地を震わすような大気の鳴動に、ソフィアは思わず唇を噛み、ルカは舌打ちする。
恐れを知らぬ二人だが、既にその顔はかき慣れない冷や汗で一杯になっていた。

「……どうした? チビッてる暇はねぇぜ、元・名門夜霞家の次期当主さんよぉ?」
「それはあんたでしょぉ? 三英傑の獅子堂のお弟子さん?」
それでも普段の軽口を忘れないのは生来の度胸の良さ故か。
そういう意味では二人には共通項があるのだろう。
度々いがみ合ったりするのも、似た者同士──そういう部分があるからかもしれない。
「フッ──減らず口が叩けるんじゃ心配はねぇな? そっちはそっちで、任せて大丈夫か?」
「いつでもOKだっての」
「そんじゃ……先手は俺達で──」
「──いくわよ!」
その顔から一瞬にして冷や汗を消し、キッ──と敵を見据える。
──瞬間、二人は大地を思いっ切り蹴って空中を駆け抜けた。

「「おおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」」
無意識の内に飛び出た咆哮をハモらなせながら、その腕に纏わした炎龍と凍結拳の威力を最大限まで高めて突進する。
しかし、はるか格上と思われる敵を相手に、馬鹿正直に真正面から突っ込むほど二人は未熟ではない。
それぞれの武術の特徴を出した機敏かつ変幻自在の歩法を以ってあたかも己自身を分裂させたが如くの
リアルな残像を無数に出現させながら一気に間を詰めていくのだ。
「ほう? 多重残像か。子供にしては大した芸当だ」
口では感嘆の念を紡ぎながら、それでも巳呉が顔色を変える様子は無い。
見下した態度を一貫しているのは正しく強者の余裕というやつだろう。
(──微塵も動じる様子はねぇな)
(褒めてるように聞こえないっての。でも──)
とはいえ、敵にそれだけの実力があることはとっくに承知済み。二人にとっては予想の範囲内。
なればこそ狙いがそこにある。
(余裕でこっちの動き見切る──そう、それでいいんだよ!)
(それこそが“慢心”! その鼻っ柱ぶち折ってやるわ!)

敵との距離が手を伸ばせば届きそうなくらいまでに縮まる。
「撹乱のつもりなのだろうが────笑わせるな。
 俺の目から逃れたければこの100倍のスピードを以ってかかってくるがいい!」
刹那、己の左右に出現した二人の像に向けて巳呉がその両の手を広げる。
掴み取ろうだとか捕まえようだとか、そんな生易しいものを目的としたものではない。
そのまま胸を抉り、ぶち抜こうというほどの強力な殺気が篭った容赦のない一撃。

ドズッ!!

それはあっさりと目的を達した。
辺りに轟いた確かな衝撃音と共に、その両の腕は二人の胸の真ん中にぽっかりと風穴を空けたのだ。

119 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2014/03/04(火) 04:08:14.21 0.net
しかし──その手に伝わった確かな手応えがやがて違和感に変わった時、彼は全てを理解した。
「──っ! これは──」
一方の手に突き刺さっていたのはどこから沸いて出てきたのか一本の『丸太』であり──
そしてもう一方の手が貫いていたのはソフィアそっくりに形作られた『氷像』だったということを。

「俺らの動きが撹乱にすらならねぇってのは百も承知! だが、無駄にはならなかったようだな!」
「時にベッタベタな『空蝉』の術に引っかかる! それがあんたら強者の弱点!」
巳呉が気付いた時、ソフィアは隙だらけになった彼の眼前で拳を構えており、
ルカは彼の無防備な背後でその手に紅蓮の炎を凝縮していた。
その形は正に前門の虎、後門の狼。前後からの挟み撃ち。

「これでやられるとは思わねぇが──!」
「とりあえずくらっときなァーーっ!!」
「雹拳ッ!!」「炎龍焼ッ!!」

ドウッ!!

──巳呉を中心にして巨大な氷柱と火柱が同時に立つ。
彼の前面は絶対零度に近い凍気の衝撃によって完全に凍て付き、後背はそれとは真逆の業火の奔流によって焼けただれる。
だが、それだけでは終わらない。
その相反するエネルギーがぶつかる境目においてはやがて極端な温度変化によって分子の結合が崩れ始め、
それによって引き起こされた爆発が彼の肉体の隅々にまで及んで炸裂したのである。

バァァァアアアンッ!!

氷が一気に飛散し、紅蓮の火炎が大気圏に突入して燃え尽きる隕石のような無数の火球になって空間に飛び交う。
その様を見て二人は一気に呆然となった。
「これでやられるとは思わねぇが」──そう言ったのはソフィアだった。
ルカも、同じことを思っていた。
ダメージを与えることを目的とした確かな攻撃なれど、あくまでこれは軽いジャブ。そのはずなのだ。
しかし目の前の現実はどうだ。強敵・巳呉は二人の挟撃を受けて呆気なくその肉体を崩壊させたではないか。
こんなことがあるはずないと必死に気配を探ってももはや先程まで焼け付くように肌に伝わってきた敵のプレッシャー
は嘘のように消えていた。思わず狐につままれたような顔をしたのも無理は無かった。

「……嘘だろ?」
まるで否定してくれと言うようにルカに問いかけるソフィア。
「いや……マジみたいだけど……?」
これが現実。そう答えるルカであるが、やはり半信半疑というようにその顔に笑顔は無い。
これまでどんな強敵にも粘り強く闘い、その結果生き残ってきた二人だが、
これはほとんど前例が無いほどのあっさりとした大金星。だから素直に勝ち誇れないのだ。

「いかんいかん、なんか疑り深くなっちまって。でも……こんなことってホントに──」
──しかしその刹那、ソフィアは──いや彼女とルカの二人は、一気にその顔から冷や汗を噴き出した。
自分目掛けて物凄いスピードで向かってくる圧倒的な殺気に気がついたのである。
「「──っ!!」」
そこに、避けろ、だとか、やばい、だとかのテンプレ的な掛け合いは一切なかった。
二人は息をつく間も無く、ただただ無言でその場から飛び退いて、迫り来る殺気から逃げていた。
──そして直後、二人の足元を掠めて空間を突き抜けていく二つの黒き光。
それは遥か彼方の大地に沈み込むと──
やがてこの世の物とは思えないけたたましい爆裂音を轟かせて空を突き刺すとてつもない黒いエネルギーの柱を打ち立てた。

「ッ!! くっそっ! またこれかよっ!!」
肌に叩きつける生暖かい爆風に歯軋りしながら、ソフィアはかつて見た光景とをダブらせる。
そう、ひとつは龍姫との闘いの際、彼女が放ったものとを。
そう、禿山との闘いの際、彼が放ったものとを。

「──黒滅閃ッ! それも二発同時に──っ!!」
睨みつけるように見据えたその先には、やはりというべき人物が悠然と佇んでいた。
右手の人差し指と中指を二人に向けて差し出しながら──。

120 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2014/03/04(火) 04:15:36.89 0.net
「やっぱな……。ある意味じゃ俺達の期待通りに……な」
苦笑しながら、それでいてどこか苦虫を噛み潰したような顔をして、ソフィアが吐き捨てる。
そう、そこにいたのは紛れも無い闇隠 巳呉その人。

「気配は完全に絶っていたのだがな。黒滅閃を放つ際の一瞬の殺気を──
 いや、黒滅閃そのものが発するプレッシャーを感じ取ったというべきか。
 それでも並の人間ならば回避することはできなかっただろう。
 ……なるほど、『影の支配者』がお前らを“適任”だと推したわけだ」
異牙の高等秘術・黒滅閃は大量の純粋邪気を押し固めた圧縮光弾を放ち、炸裂させる技。
邪気を使用するということはそれだけエネルギーを消費し、体力が減るということ。
しかも二発同時撃ち。それは闇人すら修得していない今のルカ達には想像もつかない程の
膨大な量の体力を消費するものに違いない。
しかし、腕を組みながら淡々と言葉を紡ぐ彼からは、疲労の欠片すら感じられないではないか。
(やばい……! こいつ、やっぱりお母様と同レベルの使い手……!)
それが何を意味するのか。ルカはそれを改めて突きつけられた気分がして、思わず拳を握り締めた。

「適任……だと? ……そうか、やはり手前ェらは俺達を……」
「気がついていたのか。そうだ、お前らはかつての三英傑と同じ軌跡をなぞっていたのだ。
 他でもない、俺達の手によってな。
 この街は学園都市という特殊形態故に異能者が多い。一人ひとりの力は俺達の足元にも及ばぬ奴らだが、
 俺達の動きを察知して徒党を組まれると厄介な事になる。この街には雀舞のような強力な異能者もいることだしな。
 そこで必要になったのが奴らの目を引き付け、俺達から注意を逸らす役目を持った哀れな“道化”の存在だ。
 それはマグ・ナンバーであり、ダーク・スネークであり、そしてそれらと闘う正義の使者達……。
 異牙の襲来は計算外だったが、結果としては俺達の影を覆い隠す良い敵役になってくれた。感謝せねばな。
 クククク……どいつもこいつも良く俺達の役に立ち、よく踊ってくれたよ。俺達の掌の上でな」
「……フッ、俺達は手前らにとっては猿……掌で得意になって踊りまわる孫悟空ってわけか……。
 だが、かといって手前らが大仏様を気取っていいってわけにはならねぇんだぜ?」

「なに?」──上げかけた口角を途端に下げて、巳呉が低い声で訊き返す。
それに対し少々得意げな顔で答えたのはソフィアではなく既に気持ちを切り替えていたルカであった。

121 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2014/03/04(火) 04:16:22.92 0.net
「単に残像を残すだけじゃない。
 超々々スピードで移動することで自分の存在感そのものを置き去りにする『驚天』と『空蝉』の応用技・『虚実分身』。
 異牙に伝わる高等秘術の一つだけど、体得した者は過去現在併せてたったの一桁しかいないといわれる伝説の術。
 ……まだまだお母様には遠く及ばないあたしだけど、それでもあんたの術の正体は読めた。
 孫悟空は釈迦の力を理解できずに最後まで掌の上を飛び回っていた事に気付けなかった。
 けど、あたし達はこうして理解できてる。……わかる? あんた如きが釈迦を気取るなんて100年早いってのよ!」
啖呵を切るルカに、ソフィアが「そういうこと」とニヤリ。
ルカもそんなソフィアに言ってやったといわんばかりに胸を張る。
こうなると面白くないのは巳呉。彼はやがて格下に威勢のいい事を言われたことに対する
微かな怒りを露にするように、その無表情の顔をどす黒く染めて、口角を不気味に吊り上げた。

「クックックック……聞きしに勝る身の程知らずだな。………………面白い」
ゴゴゴゴゴゴゴ、と再び全身のオーラを炎のように猛らせながら、彼は組んでいた腕を解いて続ける。
「どうせ勝負にならぬつまらぬ闘い。あっさり片付けるつもりだったが、気が変わった。
 いいだろう、そこまで言うなら教えてやろう。闇の技など使わずとも、あらゆる面で俺が遥か格上であるという事実をな」

顔から笑みを打ち消し、一転して真面目な顔で構えるルカとソフィア。
しかし、二人は内心ではほくそ笑んでいた。
そう、未だ闇の力を自在に使役することのできない自分達が巳呉に勝つには、こうして同じ土俵で闘わせるしかない。
そして彼はまんまとその策に乗った。これで第一関門は突破したのだ。
(……もっとも、敵さんもそこんところは百も承知なのかもしれねぇけどな)
それでもソフィアは最後にこう思った。
なにせ敵の実力は確かなもの。自他共に認める超一流のそれなのだ。
罠と知りつつ敢えてその罠にかかり、それを真正面から引きちぎるという自信があっても何ら不思議は無い。

「見せてやるぞ。『異牙・最強の水遁師』と謳われた俺の力を──この『蛇流眼(じゃりゅうがん)』の能力をな──」

【ルカ&ソフィア:戦闘中】

122 : ◆21WYn6V/bk :2014/03/09(日) 19:07:29.88 0.net
 >>88
「──!」
危険区域へと疾走する最中、藍は学園の方角から大きな気配の動きを感じ取っていた。

「丙様──」
「えぇ。どうやら向こうは決着が付いた、或いは付くようですね」
横を走る丙は視線を前から離さずに答えた。

「では──!」
「どちらが勝ったのかは分かりません」
丙はあくまでも冷静に答える。
本当はどちらが勝ったのか彼女は知っていたが、敢えて口には出さなかった。
それはこれからの闘いに僅かでも油断を持ち込ませないようにするための、彼女なりの配慮でもあった。
「そうですか……。でも彼女──太刀風さんなら必ず勝って学園を守ってくれているはずです」
そんな丙の配慮に薄々気が付いていた藍は、ちらりと学園の方角を横目に見て力強く頷いた。

「それにしても……」
ポツリと藍が漏らす。その顔には僅かな焦りの色も浮かんでいた。
「二人の姿が見当たりませんね……」
「途中で進路を変えたのでしょう。何もまっすぐ走っていたわけではないでしょうし」
「しかしこれでは──」

「分断されて危険、ですか?」
「──!」
今まさに言おうとしていたことを先んじて丙に言われ、藍は僅かに驚いた。
「良いのではないですか?それに戦力の分散を提案したのはあなただったはずです」
「そ、それはナンバー達を捜索する際に……ってもういいじゃないですかその話は。
 それにこの先にいるであろう相手は、ナンバーよりも遥かに強いでしょう。
 だからこそ、今こそまとまって行動するべきだと思ったのですが……」
「心配する気持ちは分かります。ですが、もう少し若者達を信じてみましょう。
 なに、彼女らは今この瞬間も成長を続けています。──勿論藍さん、あなたもね」
フッ、と小さく笑いながら、丙は更に走る速度を上げた。

数分後、二人は危険区域のとある一角にいた。
目の前には黒装束を纏った初老の、しかし歳に似合わぬ体躯を持った男が立ち塞がっていた。
「偶然ここに入り込んだ……というわけではないのだろうが、一応、忠告しておこう。
 今すぐここを立ち去れい。さもなくば、私がこの場でお主らの息の根を止める。
 誰であろうと邪魔者は排除せよ、それが我らの『蛇神』からの命令なのでな……」

「…………」
「貴方が黒幕の側近、と言うわけですね。
 申し訳ないのですが、立ち去ると言う選択肢はありえません。
 私達は黒幕を倒し、この事件を終わらせるためにここにきたのですから」
丙は何かを考えるように黙し、藍が男に対して答えた。

「そうか……。ならば仕方あるまい。宣言通り息の根を止めさせてもらおう」
男は構えもしなかったが、徐々に殺気と邪気の密度が上がっていく。
「その前に──お聞きしたいことがあります」
そんな中、黙していた丙が口を開く。
如何に初老とは言え、敵に向かって敬語で喋る丙を見て、藍は驚きの表情で丙を見た。

「丙様……?」
「……先程初めて顔を見た時、まさかと思って記憶を遡っていました。
 しかし本当に貴方だったとは……驚きましたよ」
それを聞いた男は僅かに表情を変える。
「あのお方は貴方を必死に探していましたよ。それこそ藁にも縋る思いで。
 しかし貴方はその気持ちを嘲笑うかのようにこうしてここに現れた。
 どういうことか説明して頂きましょうか?前御影家当主──御影 豪!!」

123 : ◆21WYn6V/bk :2014/03/09(日) 19:08:20.01 0.net
「──!!」
「…………」

丙の叫びを聞いた残る二人の反応は実に対称的だった。
藍は驚きの表情で、男は表情を変えないまま丙を見た。
「──否定しないと言うことは肯定していると見てよろしいですね。
 ……不思議ですか?私のような者が何故貴方の顔を知っているのか」
男は未だ表情を変えなかったが、丙の言葉を聞いてはいるようだった。

「過去に一度──そう、一度だけですが貴方の顔を拝見したことがあります。
 貴方は気が付いていなかったかも知れませんがね」
「ほう……」
「……まぁそんなことは今はどうでもいいんですよ。
 それよりも先程の質問に答える気はありますか?」
「……否──と言いたい所だが、お主らがあやつの関係者だと言うのなら話は違ってくる。
 質問に対する答えだが……単純な話だ。私はあのお方に付いて行くと決めた。ただそれだけだ」

「……そうですか。その言葉、しかとお嬢様にお届けするとしましょう。
 ──貴方の身柄と共に、ね」
丙は問答は終わりとばかりに構えを取る。
その様子を見た藍は、またしても驚きの表情を見せた。

「丙様、それほどなのですか……?」
藍が何に対して驚いていたか──それは丙が"構えを取った"ことである。
これまで数回とは言え丙の戦闘を見てきた藍。
しかしいずれの闘いでも丙が構えらしい構えを取ったことはなかったのだ。

「えぇ。御影の系譜と言うことは破壊の力を持っていると言うこと。
 そしてその力はお嬢様をも遥かに凌ぐでしょう」
「あのお嬢様を!?……いえ、考えてみれば当たり前のことですね」
その丙が構えを取るほどの相手。
油断していれば、宣言通りあっという間に息の根を止められてしまうだろう。
藍は気持ちを切り替え、表情を引き締めて構えを取った。

「……退く気はない、か。よかろう、あやつとは違う破壊の力、とくと味わわせてやろう。
 『破壊者』(クラッシャー)の名が伊達ではないと言うこと、その身に刻むがいい……!」

【丙&藍:戦闘開始】
【『破壊者』の正体が御影 豪であることが明らかになる】

124 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2014/03/11(火) 03:51:42.05 0.net
ザザザザザ……!
乾ききっていた地面から突如として溢れ出す水。
それが瞬く間にまるで掘り当てられた油田のように噴き出して、巳呉を中心とした透明な渦と化す。
「──っ! なるほど水遁師。その名の通り水を操る異能者。
 クリムゾンの時に同じ水遁師と闘ったことがあるが……やっぱ参考にゃできねぇよな」
「そんな当たり前のこと言ってる場合じゃないっての。……くるわよ!」

ルカが前方をキッと見据え、一層深く身構えたその瞬間、渦となった水流が空中で一点に凝縮され──
ドッ! というまるで大砲でもぶっ放したような轟音をあげて撃ち放たれた。
「まずは挨拶代わり──水遁流激波」
巨大な水鉄砲の銃口から放たれたような太い水流が着弾箇所の大地を穿ち、広範囲に渡って炸裂する。
相手が下忍の水遁師であれば、ルカなら高温の火炎で一気に蒸発させることができただろう。
ソフィアであれば極寒の冷気によって水流の根元まで一気に凍らせることができただろう。
しかし、これはかつて天才と呼ばれた程の逸物が放ったもの。
そう簡単にいくはずがないと二人には真っ向から技を打ち砕くという選択肢はなかった。

(やはり威力は下忍のそれと桁違い! だが、このスピードなら躱せる!)
(相手が超一流上忍でも、初等水遁術ならまだあたしの炎でも打ち消せる。
 けど、何度も連続して撃たれたら恐らくあたしの炎じゃもたない! とにかく躱しながら隙を見つけないと!)

「──“この技なら躱せる”──“隙を見て打ち込む”──か?
 残念だがお前ら如きが容易く躱せるほど、お前ら如きの実力で隙を作るほど、俺の技も俺自身も甘くはない──」
一瞬にして心の内を看破した巳呉に──
そして指先一つ動かさずにすかさず次の手を繰り出した巳呉に、二人は戦慄した。
「「っ!?」」
大地に叩きつけられ、周囲の空間に細かく散った水飛沫が一瞬の内に再集結を果たし、
再び巨大な水流となって背後より襲い掛かってきたのだ。
しかも、途中でその矛先を二つに分けて、左右に散ったルカとソフィアの双方を同時に狙うという周到さを以って。

「くっ!」
それをルカは己の身軽さを生かした後方一回転ひねりのジャンプで躱し、
「チッ!」
ソフィアは無理矢理体をよじって受け流すように躱す。
「『水遁流斬波』」
しかし、一難去ってまた一難。今度はそこへ向けて三日月形の水流が間髪入れずに放たれる。
恐らく、いや、間違いなく巳呉は二人の動きは明確に読み取っていたのだ。でなければ考えられない即応。

(──速ェ! 常に俺達の一歩先を行ってやがる!)
(何が何でも近づけない気ね! ──なめんな!)
己が動く度に、それに対し敵が手を打つ度に、否が応でも感じさせられる圧倒的な力量差。
だが、だからこそ二人はこの時点で完全に腹を括ることができていた。
敵は常に先手を打つ格上。ならば、どの道ダメージを受けずに凌ぎきることなどできやしない。
これまでは黒幕の“先鋒”と位置づけた敵に対し、如何にして体力を温存して倒すか、それが焦点になっていた。
故に腹を括ったつもりでも知らず知らずの内に自ずと力をセーブし、消極的になっていた。その姿勢を改めたのだ。
ボロボロになってもいい。この場で瀕死のダメージを負うことになってもいい。
今は目の前の強敵を倒すことのみに全てを注ぐのだと。

(恐らく“この”水流の特性は────)
カッと力強く目を見開いたソフィアが向かってくる流斬波に自ら突撃する。
いや、彼女だけではない。それはルカも同様だった。
(──わかってる。“わかってるからこそ”もう恐れない!)

ズバババババッ!
着弾した水流が、鋭い斬撃音に似た音を発して二人の体を切り刻む。正に滅多切りだ。
いや、そんなことはわかっている。そう、二人はこの結末をわかっていたのだ。
滅多切りにされても致命傷には至らないことを。初等忍術ならばまだ、防御しなくてもこの肉体が耐えられることを。

125 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2014/03/11(火) 03:57:17.58 0.net
「「おおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」」
全身を流血させながらも力強く吼えた二人は全身に刻み込まれた痛みを振り切って一気に加速する。
「──っ」
まさか微塵もスピードを緩めずに突進してくるなど予想もしていなかったのだろう。
生意気な、とでも言いたげに眉をピクリとさせ、素早く己の周囲に分厚い水の壁を展開する巳呉。
その瞬間、ソフィアは思わずニタリと口角を上げた。
巳呉が更なる攻撃の手に打って出なかった。それは攻撃の手を一切緩めなかった彼が、初めて防御に回ったことを意味する。
つまり、無理矢理に攻撃の主導権を奪い取ったのだ。力の差を精神力で押し切ったのだ。流れは今、二人に来ている。

「玉砕覚悟に見えるか? ──違うね、砕けるのは手前ェ一人だ!」
正に肉を斬らせて骨を絶つ。
拳を落とし、低く身構えるソフィア。その目と鼻の先には凄まじい水圧を持つ分厚い水の壁。
だが、彼女の目は既にその壁を通り越して、壁の先のターゲットのみを捉えていた。
「『雹拳』!!」
吼えながら、傷だらけの拳を触れるもの全てを圧砕する暴圧の膜の中に躊躇なく突き入れる。
通常なら拳はこの時点で見る影もなく粉々にされるはずだ。
しかし、ソフィアの冷気の拳はその破壊的圧力さえも凌駕した。
水の壁を一瞬にして凍りつかせ、内包していたあらゆる威力を瞬時にゼロに戻したのだ。

(チィ……! それでも壁を突き抜けることはできなかったか……!)
突き入れた拳から伝わる硬い氷の感触に、ソフィアは唇を噛んだが──
直ぐに気を取り直して言った。
「奴を閉じ込めたぞルカさん! この氷を奴の棺にしてやれェエエエエエ!!」
もっとも、それはルカにとっては言われるまでもないことだった。
自分を防御する為に全方位に広げた水の壁が、皮肉にも自分を閉じ込める氷の檻となった。
その好機を彼女が逃すはずがない。

「安心しな! 今すぐ氷ごと焼き尽くしてやるわ!」
空中に舞い上がりながら手に顕現した火炎龍を氷に向けるルカ。
「くら────っ!」
しかし、それを正に撃ち放そうとする瞬間だった。
永久氷壁を思わせる超低温超硬度と化していた氷が、不意に、それも一気に溶解して再び液体に逆戻りしたのだ。
「言ったはずだ、お前らのデータは既に伝え聞いていると。
 停止の力を使った物質の固形化など今更驚くには値せん。
 水を凍らせることで無力化したつもりか? ──笑止な。俺は水遁師。個体を再び液体に戻すなど造作もない!」
「「なっ──!?」」
硬直。時間にすれば僅か瞬きほどの一瞬であったが、それでも巳呉を相手には致命的と言っていいロスであった。

「受けろ、大蛇の毒牙をな──!」
ドンッ!!
大地から噴き出した八つの水流。それはこれまでになく長く、巨大で、そして──禍々しかった。
その姿は正に神話に出てくる八つの頭を持つ水神・ヤマタノオロチそのもの。

「異牙・闇隠流水遁術奥義──『水遁蛇王八殺(すいとんじゃおうはっさつ)』ッ!!」

首をくねらせ、あらゆる包囲から変則的な軌道で襲い掛かる不可避の超絶技が今、放たれた。

【ルカ&ソフィア:戦闘中。現在ダメージ中】

126 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2014/03/16(日) 21:34:29.91 0.net
向かってくる八つの巨頭に対し、ソフィアは『把玉の構え』を取り、ルカは『火遁焦熱壁』を展開する。
隙を突いた、それも八包囲からの同時多角攻撃など避けきれるものではない。
となれば、己の全身全霊を防御に向けてダメージを最小限に留める他に最善手はないからだ。
「──いいのか? “防御に回って?”」
ニタリ。その瞬間、巳呉が笑った。
「っ!?」
ソフィアは悪寒を覚えずにはいられなかった。まるで先程の自分の生き写しを見ているかのようだったからだ。
(──こいつ!)
それがどういう意味かはルカもわかっていた。
避けても無駄な攻撃に対し防御に回る──実はそれこそが“無駄”であり“悪手”であったのだと。
つまり、最善手はダメージを最小限に留めんとする防御ではなく、
大ダメージを覚悟の上で敵にもダメージを与えんとする無謀な攻撃だったのだ。力で押し切るしかなかったのだ。

「折角奪い取った主導権を呆気なく手渡す──それがお前らの致命的な“未熟さ(若さ)”だ」
大蛇の頭が火炎の壁に、把玉の構えに、それぞれぶつかる寸前でグンッ、と突然軌道を変える。
一つは小さい弧を描いて二人の無防備な脇腹に、一つは頭上に、一つは大きな弧を描いて背後より──
(しまっ──!)
気がついた時はもう遅い。
八つの巨頭は不可避のタイミングで一斉に二人に襲い掛かり、想像を絶する破壊の力を容赦なく炸裂させた。

「──────っ!!」
激しい水流に混じって真っ赤な血飛沫があがる。
そこにはもはやありきたりな悲鳴や、恐怖に慄く絶叫はなかった。
地獄の一瞬が過ぎ去った時、二人はその姿をかつてない程ボロボロにして、大地に伏せっていた。
「うっ……ぐぅ……」
「がはっ……」
「ほう? まだ息があったか」
全身流血、如何にも虫の息、といった感じの二人であったが、それでも息も意識も確かにあった。
巳呉がパチパチ、と軽く手を叩いて驚嘆する。
「直撃の一瞬、そこから炎を、停止の力を注ぎ込んで威力を軽減させたか。未熟だが、驚くべき防御能力だ。
 たかだか十代の子供にしては上出来──いや、明らかに子供の範疇を超えた超反応。
 マグ・ナンバー程度では足止めにもならなかったわけだ。全く……末恐ろしい奴らだな」
「へ……へへへ……」
その言葉を自ら裏付けるように、ソフィアが大地に着けた手を震わせて立ち上がる。
「俺の……俺達の力はかつての天才隠密さんのお墨付きってわけかい。うれしい……ねぇ……げほっ」
「バカ。上から目線の物言いじゃない……あたしはちっとも嬉しくないわよ……」
それにつられるようにルカも立ち上がる。
はっきりいって現状は立ち上がれたのが奇跡といえるコンディション。
(……妙だな)
それでも依然として尚、気迫を失わない二人の目に、巳呉は一抹の疑念を感じずにはいられなかった。
実力の差は歴然。それは明白。事実、二人は既に息も絶え絶え、立っているのもやっと。
それに引き換え自分は未だ無傷。しかも、闇の力を敢えて行使しない、ハンデを背負った状態でだ。
誰がどう見ても優勢なのは自分。どう足掻いても二人に勝ち目は無い。
にもかかわらず二人の目には敗北を悟った者が漂わせる、諦めや怯えといった負の色が全くといっていいほど無い。
(奥の手があるというのか……? バカな……今更何を隠し持つ……?)
故に彼がその理由を未だ見ぬ「奥の手」に求めたのは必然であった。
しかし、それに現実感等ない。奥の手というものは隠し持つものとはいえ、
この圧倒的といえる実力差を覆す技があるなら如何なる理由があろうともとっくの昔に使うのが自然だし、
ましてやそれだけの魔法のような手段がこの世に存在するとも思えないからだ。
(……まさか)
それでも、もしそのような手段があるとするならば──それはもはやあれしかない。
そしてもし、ほんの僅かでも希望を見出せるそれに、二人が賭けるつもりだとするならば──
巳呉のそんな予感は的中する事になる。

(──マスター・レオ……覚悟を決めました。貴方から受け取ったあれを、俺は今こそ使います──!)
ソフィアの血まみれの手が懐を探って一本のアンプルを取り出す。
それはいつぞや獅子堂から貰った自分の潜在能力を一気に引き出すあの闇アイテムに他ならなかった。
「ルカさん……悪ィけど離れててくれ。これからやることに……あんたを巻き込まねぇ自信はねぇんだ……」

127 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2014/03/16(日) 21:40:53.85 0.net
そのいつになく真剣な重い響きのある声は、それを使う際のリスクの高さが如何ほどものかをあらわしていた。
しかし、言われたソフィアはそれに従うどころか、ふふん、と鼻を鳴らして笑っている。
「だいじょーぶ。なんとかなるわよ」
「……はぁ? おいおい……バカにしてるわけじゃねぇんだぞ? 俺ァあんたの為を真剣に思ってだな──」
呆れるソフィアだったが、彼女はふとルカに目を向けたところで気がついた。
ルカがその手にアンプルを握り締めていることに。
「っ!? おまっ──いつの間に?」
「前にこれを使われた時に気になってね。さっき、ちょっとくすねておいた」
「お、お前なぁ……それがどんなもんかわかってんのか? 下手するとだなぁ──」
「わかってるからこうしてくすねたんでしょ?
 下手も何もあたしは一回経験済みで、そういう意味じゃ多分未経験のあんたよりは安全よ。
 それになにより、博打を打つぐらいじゃないともうこの劣勢は跳ね返せない──そうでしょ?」
「だーかーら! 何も二人して危険な賭けに出るこたぁねぇだろ!」
「仮にあんたが倒されたら、次はあたしの番。そうなりゃどの道これを使うことになるわよ。
 危険な橋を渡る時は一緒……あんたとはもうそれくらいの関係になってると思ってるから」
「…………そうかい」

人差し指で頬を掻きながら、ソフィアは複雑な表情を浮かべる。
やっと自分と肩を並べた存在と認められた。
これまではとにかく上から目線の物言いをされて苛々したこともあったが、
いざこうして仲間として見なされるとどうにも嬉しさ半分、恥ずかしさ半分なのだ。

「チッ……言い出したら聞かねぇもんな、あんたは」
「わかってきたじゃない、あたしのことがさ」
「短かいけど、それだけ濃い時間を過ごしてきてるってことさ。
 ……いいぜ、こうなりゃお言葉に甘えて地獄の果てまで付き合ってもらうとするか!」
「お互い承知の上。何があっても恨みっこなし……いいわよね?」
「あぁ。覚悟決めていくぜ!!」

ズッ──。
二人の手が、アンプルを自らの肉体に突き刺す。
その時、巳呉は既にアンプルから発せられる強大な邪気の存在に気がついており──
故にアンプルが何を目的として作られたかを理解できていた。
(なるほど。誰が作ったかは知らんが、あれは要するに闇を起こす為のシロモノ──)

ドッ──!!
二人が纏っていた邪気が一気に膨れ上がり、どす黒い炎のように沸き立つ。
「いわば邪気眼覚醒剤の一種。もっとも、その効果もリスクも比較にはならんようだが」
“その効果”を冷静に分析する彼の目に、ずしり、と重量感を感じさせる足取りで歩み寄ってくる二人の姿が映る。
白黒が反転した目、今にも弾けそうなほど充実した黒い邪気、一歩進むごとに肌を叩きつける物理的プレッシャー。
それは紛れもない闇の力を発動した者の証。
「……結局、奥の手もその程度か」
しかし、強大な闇を二人も前にしても、巳呉の冷然とした態度は崩れなかった。
「やぶれかぶれの闇堕化など俺の前では何の意味も無い。たかが闇の一匹や二匹、赤子の手を捻るようなものだ」
何故なら、彼にとっては如何な戦闘力を誇ろうとも、思考力を失った異能者など所詮獣に過ぎないからだ。
経験豊富なハンターが猛獣をハントするように、ただ己の技と経験で淡々と仕留めるのみ。
そう、もはや彼ほどの実力者になれば、闇堕との闘いは狩りとなり作業となるのだ。

「つまらん種明かしを見たところでそろそろ終わらせることにしよう。もはやお前らに興味はないんでな」
「──そうかい」
「っ!?」

刹那──巳呉は顔をハッとさせた。
心の底から驚いた──そういう意味ではこの時が初めてであったろう。
ソフィアが言った「そうかい」という科白。それは彼の言葉を認識したからこそのもの。
闇墜は多くの場合、理性は無く感情は無く、人語すら解せないケースが多いにも関わらずだ。
そして何より、彼女は言った瞬間、ふっと姿を消したのだ。

128 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2014/03/16(日) 21:45:06.58 0.net
「──何を驚いてやがる。まだほんの2、3割ってとこだぜ?」
振り向きこそしなかったが、巳呉は目を後ろに回して彼女が残した残像を追う。
(速い──)
一瞬の内に背後に回った。先程までとはまるで別人のスピードである。
別人。そう、闇堕ならば文字通りの別人なのだが、彼はそう断定はしていなかった。
何故ならもうわかっていたからである。彼女は闇堕であって厳密には闇堕ではないということを。

「どういうカラクリを使ったかは知らんが──お前、闇の力を使いこなしているな? そして──」
目線を再び前へと戻すと、そこにはこれまでにないほど強力な紅蓮の火炎を拳に溜めて低く身構えたルカの姿。
「──お前もな」
言うが早いかルカから火炎が解き放たれる。
巳呉は避けようとはせずに自身の周囲に水流のバリアーを展開して防ごうとする。
今、背後にはソフィアがいる。下手に避ければ彼女に隙を見せる事になるからだ。
「水の壁で自分を覆う……それによって俺への防御も兼ねる。流石に一瞬の判断にも抜かりはねぇな、だが──」
ボッ!
「っ!?」
巳呉はその時、言葉を失った。
自身が展開した水の壁が炎に触れた瞬間、一気に蒸発してしまったからだ。
360度に展開していた壁全てが、である。
しかもその上、炎は勢い衰えることなく前進し続けて来るのである。
「──“いいのか? 防御に回って”──!」
嘲笑うように皮肉を紡ぐソフィア。その拳には既に、とてつもない冷気がこれでもかと凝縮されていた。
(先程までとは比べ物にならん邪気の量──おのれ!)
前からは圧倒的火炎、後ろでは絶対零度を思わせる凄まじい冷気。
これをもはや“能力”で防ぎきることは不可能──。そう踏んだ巳呉の判断は早かった。

「雹拳ッ!!」
拳打と共に解放された冷気がルカの火炎と入り混じり、瞬間、凄まじい爆発を引き起こす。
ソフィアはそれを避けようとはしなかった。否、もはや避ける必要もなかったのだ。
「……」
爆発の熱気の中にあって、彼女は平然と己の拳に伝わった感触を噛み締める。
手応えはあった。だが、違う──。
わかっていた。だからこそ、動く必要を感じなかった。ただ黙って“そこ”へ視線を向けるのみだった。

(俺に回避行動を取らせるとは……信じられん、これが奴らの潜在能力だというのか!)
──そこは上空。
目に映るは『虚実分身』によって存在感だけを爆発の中心点に残し、高さ20mほどの位置まで跳んでいた巳呉──
「──見える」
と、彼の頭上にその身を移動させていたルカ。
「っ!」
「今までが嘘みたいに──あんたの動きがしっかりと!」
巳呉は上に視線を向けると同時に水流を発生させて彼女を貫かんとする。
例え一流でも、並の一流ならば何もできなかっただろう。流石の反応である。
しかし──
「火遁赤攻拳」
「っ!?」
それも今や完全に闇の力をものにしたルカの前では全くの無意味。
タイミングでは完全に後手であるにも関わらず、火炎を纏った彼女の拳は容易にその時間差の壁を突き破った。

ズドドドドドドドドドドッ!!
秒間、数百発のパンチが巳呉の全身に叩き込まれる。
「──ごはぁぁっ!?」
巳呉はたまらず吐血し、大地に墜落。その衝撃で穿たれたとてつもない大きさのクレーターのど真ん中に文字通り沈む。

「ルカさんだったら上に跳んでると思ったぜ」
大地に降り立つルカに微笑みかけるソフィア。
「火炎が目くらましになって、敵があたしの姿を見失う。それくらいわからないあたしじゃないわよ」
そんなソフィアに得意気な顔をするルカ。
ここに鼬が居たらこう言ったことだろう。「いいコンビになったものだ」──と。

129 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2014/03/16(日) 21:52:32.62 0.net
「──前言撤回だ──……」
そんな二人の表情を一瞬にして真顔へと引き戻したのは、まるで地獄の底から湧き上がったような低い声だった。
「俺も、闇の力を以ってお前らを粉砕しなくてはならないようだ──」
だが、その声は実際には地中からではなく二人が目を向けた先──
先程爆発が起きたその中心部、熱気と黒煙漂う大地の上からしていた。
そしてそこには、全身の衣装の至る所に焦げ痕と裂け目を作った巳呉が
あたかも陽炎のような不気味な存在感を漂わせて佇んでいた。

「──相変わらず移動が速いな。その様子だと既に準備はできているようだな?」
「そうみたいね。次は文字通りの全力──」

若干手に力を込めて、その声に警戒感をあらわす張りを込めて──
だがその表情には余裕を漂わせて──二人はかつてない堂々とした佇まいで巳呉を“見下ろす”。

「……ソフィア・ストラトス・ソロモン、ルカ・ナイトヘイズ。
 俺をここまで本気にさせたのはお前らが初めてだ。褒めてやろう」
言う巳呉の全身に漂っていたオーラが、初めは清流のような静けさだったオーラが徐々に激しく、力強くなって充実していく。
「その褒美に、お前らの望みどおり全力の一撃を叩き込んでやろう……!」
それに呼応して彼の足元から八つの水流が次々に噴き出す。
それはこれまでになく力強く、太く、勢いがあり──そして、異様な程どす黒かった。

「闇の邪気が混じった水流、か……。これまで以上に常識は通用しそうもねぇな」
「そうね。沸点も零点も通常の水とは……これまでとは違う。こっちも全力で邪気を練らなきゃあっさり飲み込まれそう」
「だったらこっちも全身全霊を込めて──」
「奥義を繰り出すのみ!」

二人の拳に再び冷気と火炎が凝縮されていく。
(……そうか、もはや……)
それを見て、巳呉は目つきを細く、鋭いものに変えて、拳を握り締める。
二人の手に溜まっていくエネルギーがこれまでのものとは違い、漆黒に染まっていたからだ。
(もはや闇業も自在に……。……いいだろう、ならば!)

意を決した巳呉が、その目を大きく開く。
「「っ!?」」
二人が驚愕したのはその時だった。
ドンッ、という音と共に地面が割れ、そこから新たに八つの黒い水流が噴き出してきたのだ。

「闇人の証──双拳の邪気眼を最大限に利用した、我が能力と闇業の複合技──」
「おいおい、八つだけでも厄介だってのに……こりゃあまさか」
「そのまさかでしょ、これは! 来るわよ……!」
計十六の黒き水流が見る見る内に禍々しい蛇の首に変わり、巳呉の背後を縦横無尽にのたうちまわる。
「俺が片方を迎え撃つ! ルカさん、もう片方を頼んだぜ!」
「言われるまでもないっての!」

そしてそれらは、「くらえ──」という何の変哲もない、
それでいて死刑宣告に似た恐ろしいほどの冷たさを持つ一言によって一斉に牙を剥くのだった。

「異牙・闇隠流高等秘術・『闇拳蛇王決殺(あんけんじゃおうけっさつ)』──ッ!!」

【闇隠 巳呉:ダメージ中。全力となって奥義を繰り出す】
【ルカ&ソフィア:ダメージは大だが、アンプルを使って闇堕化の賭けに出る。
          そしてある理由により一時的に闇の力を支配することができ、巳呉との最終決戦に挑む】

130 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2014/03/18(火) 01:46:00.50 0.net
──ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
咆哮とも、大質量物体の接近音ともつかない重低音を響かせながら迫り来る“二匹”の八頭大蛇。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
ソフィアは両手に、いや、全身から発する冷気を増幅させてそれを待ち構える。
「はぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」
一方のルカは、両手にのみ全身から発する火炎を集中させて狙いを定める。
どちらも考える戦術は異なる。しかし、大技を放つそのタイミングを図っているという点について両者は共通している。
寸分の狂いも許されない刹那の瞬間。二人はそれを見極めんとパワーと共に集中力を極限まで高める。

((──とらえたっ!!))
そして、神経があらゆる物質の動きを敏感に察知するほどまでに研ぎ澄まされた直後──その瞬間は訪れた。
しかもそれは、奇しくも二人同時にであった。
ソフィアの場合、迫り来る八つの首の最も先陣に位置していた首が鼻先にまで迫った正にその時──
「『凍魔』ァッ!!」
下からあらん限りの力で振り上げた右拳を顎にヒット。
そのまま停止の力を注いで瞬時に凍りつかせ、顎から脳天にかけてを力任せに一気に粉砕した。
だが勿論、八つの首を持つ大蛇が首を一つ破壊された程度で終わるはずもない。
直ぐに破壊された首の後ろから不規則な軌道を描いて二つ目の首がソフィアを噛み砕かんと迫る。
「『雹拳』ンッ!!」
その口目掛けてすかさずもう一方の手で繰り出したのは冷気の拳打。
ズボォッ、と拳を口内にねじ込むと同時に蛇が凍りつき、拳が送り込んだ衝撃によって頭部の上半分が瞬時に吹っ飛ぶ。
すると、一難去ってはまた一難。今度は左右横から二つの首が同時に牙を剥く。
既に二つの腕を繰り出してしまった今の状態では腕を胸元まで引き戻すまでカウンターの真髄・『把玉の構え』は使えない。
だが、それでもソフィアの精神は微塵も揺るがない。
「『氷蹄』ェッ!!」
左の軸足を回転させ、冷気を纏った右回し蹴りを顎の付け根にクリーンヒット。
瞬時に爆砕させ、更にそのままの勢いで逆方向から迫るもう一つの首を撃破。凍らせて頭部を根元からぶった切る。
これで四つ目。しかし、残りもまた四つ。まだ終わらない。
直ぐに五つ目の首が大口を上げて頭上から迫る。
死角を突かれた上、一本足の不安定な体勢では、回避は愚かもはや氷蹄での反撃もできない。
雹拳などの拳打ですら力が上手く伝わらず満足に威力を発揮することはできないだろう。完全な迎撃には不足だ。

なればこそ、ここで使うのが『把玉の構え』。
自身の頭上、斜め上の位置でクロスさせていた手首を脳天の位置に移動させ、そこで宝玉を握るような構えを取る。
真の構えとは違う簡易的なものだが、ソフィアはこれで十分という自信と確信があった。
自らの武術の最も基本的な型。故に最も多く反復練習し、最も得意な技に昇華してきた揺ぎ無い事実があるからだ。
「──おああああああああああああああッ!!」
受け止めんとする掌と押し潰さんとする蛇が接触し、ドンッ! という雷でも落ちたかのような衝撃音が響き渡る。
直後、ソフィアの足がずしりと地面に深く減り込んだ。
未だ自身の体を支えているのは左脚の一本のみ。
ソフィアは今にも筋肉が破裂しそうだと訴える大腿部の悲鳴に歯を食い縛り、目一杯の力をその手に込める。
「『神凍ォォオオオオオオ────懐受ゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ』ッ!!!!」
瞬間、ソフィアを押し潰そうとしていた蛇が一気に凍りつき、その動きを止めた。
ソフィアはそのまま両手で凍った頭部を押さえつけ、一気に押し潰して破壊する。
凍らせて機能停止させただけだといつ復活するかわからないからだ。
これで残るは三つ。
この時、これで何とか全て上手くいくかもしれない──そんな楽観論ともいえる期待がソフィアの中で生まれ始めていた。
(さぁ、お次は────チィイイイイイッ!!)
しかし、それも儚く終わる。
ソフィアは次なるターゲットを照準に合わせた時、思わず唇を噛んでいた。
残す三つの首全てが左右前方から寸分の時間差なく全くの同一のタイミングで突っ込んできていたのだ。

氷蹄でまた一気に粉砕するか?
いや無理だ。左脚は既に言うことを利かない。感覚が完全に麻痺してしまっているのだ。
では右脚は?
これも無理。右脚は当初の位置に戻し、痛み切った左脚の代わりに体を支えるので精一杯。
よしんば左脚で無理に全体重を支えることができたとしても、再び蹴りを放つだけの時間的余裕が無い。

131 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2014/03/18(火) 01:55:04.14 0.net
こうなると残る双拳で対処するしかないが、どう足掻いても二撃で二つの首を仕留めるのが限界だ。
どうする──いや、考えてる時間は無い。
(ちくしょう! こうなりゃ──こんなデカイ、威力のある飛び道具に使うのは初めてだが──やるしかねぇ!!)
必死なソフィアの頭に浮かんだのは妙案とは程遠い一か八かの賭け。
どうなるかは自分でもわからない、自信もへったくりもない命懸けの大博打。

「もってくれよォオオ──俺の体ァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
叫ぶソフィアが取った行動は──
真ん中の首を完全に無視し、左右の首目掛けて雹拳を突っ込むというもの。
それによって瞬時に二つの首を粉砕できたが、体は致命的に隙だらけ。
ほぼ大の字の形を取ったまるっきり無防備な肉体を残る最後の一つの首に晒すこととなった。

結果──三本の首の内の中央が、容赦なくソフィアの腹部のど真ん中に命中する。
「があああああああああああああああああああああああッ!!!?」
凄まじい螺旋回転をする強靭な激流が皮膚を破り、血管を切り刻み、筋肉を破壊し、肋骨をバキバキにぶち折り──
想像を絶する衝撃と痛みを全身に巡らせる。
もはや意識が飛んでいても、いや、ショックで絶命してもおかしくはない大ダメージ。
「げはぁああっ……うごはぁあああっ────ぁぁぁぁあああああああああああああああああああッ!!!!」
しかし、ソフィアはそれに耐え切った。
それは単に痛みに耐えられたという意味ではない。
敵の放った超必殺技をその身で、己が誇る巧みな肉体操作術で押さえ切り──そして

「人……間! やっ……ってみるっ……もんだっ、なっ!
 手前……のっ、技ァっ……!! 今度は俺がくれてっ……やるぜぇぇぇぇぇええええええええええええええッ!!!!」
そして──威力をそのままに真っ向から跳ね返したのである。
ソフィアは勝ったのだ。敵の奥義を『整流』で受け止め、跳ね返すという一か八かの無謀な大博打に。

ここで時はほんの少し遡り──場面はルカvsもう一匹の八頭大蛇。
ソフィアが巧みな連続技で一つ、また一つと首を潰していた時、彼女はソフィアとは真逆の攻防を展開していた。
八頭大蛇に対するソフィアが動とするならば、彼女は正しく静。
(見える──読める──八本の首の動きが、全て!!)
ルカの狙いは八つの首を目一杯引き付けて、一気にその全てを“撃墜”すること。
すなわち──

「異牙・夜霞流火遁術『奥義』────ッ!! 『火遁九頭龍焼(かとんくずりゅうしょう)』ォォォオオオオオオオッ!!」
一発で九撃を可能にする大技の発動である。
しかも彼女が放った炎龍は、通常の奥義とはまた違う、闇の力が混ざって漆黒に“強化”されたものであった。
実はそれこそ夜霞流忍術の最大秘術なのだが、今の彼女がそれを知る由は無い。
いずれにしても、とにかくこれで巳呉の蛇王決殺と互角の威力となった。
放たれた黒龍が迫り来る蛇王の首に一つ、また一つと命中して相討ちとなって消滅していく。

しかし、厳密には完全な互角ではなかった。
たった一つだが、ルカの黒龍が巳呉の蛇王に勝った点があったのだ。
それは“数”。蛇王が八つ首であるのに対し、黒龍はそう、九頭であったということ。
巳呉の不運、そしてルカの幸運は、ソフィアがいたことである。
もし彼女がいなければ十六の首全てがルカに向けられ、黒龍の迎撃及ばずやられていたことだろう。
(ホント──ちょっと悔しいけど、あんたのお陰ね、ソフィア──)

全ての蛇を粉砕して尚、一つ残った黒龍が何も障害がなくなった空間に猛然と飛び出す。
そして、同時にソフィアの方角から唯一生き残った蛇が、まるっきり巳呉を敵と見なしているかのように飛翔する。
ルカもソフィアもこれが限界。もう次の手を繰り出す力は残っていない。
「──チィイ! まさかここまでやるとは!」
二人とは異なり、巳呉はまだ余力を残していたものの、流石に目に見えて疲労の色が濃くなっていた。
もう大技は撃てない──少なくとも黒龍を撃墜し、かつ自分達にダメージを及ぼす程の技は──
と、二人が確信するには十分な程に。

132 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2014/03/18(火) 02:09:20.44 0.net
(俺は勿論だが……ルカさんだってもう満足に動ける体力は残っちゃいないはずだ……!
 敵だって疲れてる、とはいえ……もし躱されたら……そんなことになったら、今度こそアウトだ……!!)

もう動けない。そうなると人は祈るしかなくなる。
疲労とダメージが極限まで達したソフィアは、まるですがりつくようにルカを見やった。

当のルカは、ソフィアとは対照的に落ち着いていた。
残した体力の差、喰らったダメージの差が生んだ余裕だろうか、その姿は凛として堂々たるものであった。
(──大丈夫。必ず当たる)
まるでソフィアに語りかけるように心の中で呟くルカは、予想される“その時”に備えて集中力を高めていた。
(もし、あたしがあいつの立場なら──)
そして訪れる、その時──

「──技を跳ね返す、だと? ──笑止な!」
突き出した二本の右指で、グンッ、と空間を横に薙ぐ巳呉。
途端にこれまで巳呉に向かって一直線に突き進んでいた蛇が突如として軌道を変え、
真横に並行していた黒龍に牙を向けた。
「俺が生み出した水流は俺の意思で自由自在に操作できることを忘れたのか? 馬鹿め、このまま撃ち落してくれる!」
「っ!?」
ソフィアは驚いた。
いや、巳呉の言葉にではない。ここに至って気がついたからだ。ルカの奇妙な程の余裕の正体に。
(そうか! ルカさんは!)

「そう、あたしがあんたでもそうしてたと思うわ」
ルカの手が、微かに震える。
瞬間、蛇に横っ腹を噛み付かれるかと思われた黒龍が一転、不規則にくねって牙を躱し、更に加速したではないか。
「──っ!?」
「全身疲労で流石のあんたも足にきてる。
 躱すのは億劫だし、かといって新たに水流を生み出してそれをぶつけるのは消耗が更に激しくなる。
 なら跳ね返された蛇を利用しようとするのはあんたにとっちゃ当然の思考、当然の合理的判断よね。
 特にあんたみたいな超一流の、終始堂々としてる奴は最小限の体力消費で敵の反撃に対処しようとするし、
 実際にそれができるから癖になってるのよ。それがこっちに逆用されるってリスクも考えずにね……!」
「なっ……お前、初めからこれを……!?」
「あたしもソフィアみたいに言葉を返してあげるわ。
 ──“それが強者(あんた)の致命的な“未熟さ(迂闊さ)”よ、ってね──」
「クッ……! 馬鹿な……ッ!!」

巳呉は必死に蛇に黒龍を追わせようとするが、もう明らかに間に合わなかった。
その手から新たに水流を生み出し相殺しようとしても、もうそれだけの時間的余裕は無かった。
そして紙一重で避けたとしても、黒龍を自在に操作するルカの前では無意味であることは疑いなかった。
つまり──もはや“詰み”が確定したのである。

「この俺が……この俺がこんなガキ共にっ!!馬鹿なっ……!! 」
「あんたの敗因は“強者は必ず弱者に勝利するもの”だと勘違いしたこと。
 弱者になったのことのない生まれながらの天才さんには、わからなかったみたいね──」
「馬鹿なァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア────ッ!!!!」

カッ──。
一瞬の閃光の後、周囲に広がったのは圧倒的灼熱の大火球と凄まじい爆裂音。
「アアアアアアアアアアアア──────」
巳呉の断末魔はその中心部に呑み込まれ、やがて虚しく消えていくのだった──。

「馬鹿はあんたよ。今学んだことを精々、地獄で復習するといいわ──」

踵を返し、視線を切ったルカの瞳には、いつしか“いつもの”彼女の色が戻っていた。
彼女を見やるソフィアの瞳もまた同様に。

【闇隠 巳呉:死亡】
【ソフィア:勝利するもダメージ+疲労度極大。戦闘力大幅減。闇堕化が解除される】
【ルカ:勝利。ダメージはソフィア程ではないが疲労増大。闇堕化の解除もあって戦闘力半減】

133 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2014/03/24(月) 01:18:12.57 0.net
「ちょっと……血まみれじゃない、大丈夫?」
よろけるソフィアに肩を貸して言うルカ。
「ちっとばかしハイリスクな技を使っちまったもんでな……っと、悪ぃな」
「有り難く思いなさいよね。あたしが肩を貸すなんて滅多にないことよ」
「……へっ、幸せモンだね、俺は」
にっ、と笑うソフィアだが、やはりダメージが大きいのかその笑顔はどこか痛々しい。
「……あんた、あたしと同じ『影羅化』を……あ、異牙では『闇堕化』のことを『影羅化』って呼ぶんだけど……
 てゆーかその前に『闇』ってのを知ってるって思っていいのよね?」
「ああ……マスター・レオから聞いてるよ。闇ってのは自分の内に潜むもう一人の存在だろ?
 それこそが異能の根源。俺たちはそいつらから力を借りている。邪気眼がその証だ」
「で……あんたはどうやって闇を言いくるめて闇堕化をモノにしたのよ?
 普通、闇の力を100%支配し、制御するには闇人にならなきゃいけないのに」
「……聞くまでもねぇんじゃねぇか? 多分、あんたと同じだと思うぜ?」
それを聞いて、ルカは驚くよりもむしろ呆れたように息をついて言った。
「やっぱりか。考えることは同じね」
「逆に言えばそれくらいしか手立てがなかったと言えるのかもしれねぇけどな」
「成功するかどうかもわからなかったし……
 『この闘いが終わったら正式に決闘してやるから、今は力を貸せ』……これに耳を貸してくれたのはラッキーだったわ」
「あぁ、そこだけは運任せだったからな。
 ……まぁ、俺の場合、『決闘の際は両手を使わねぇでいてやる』ってハンデつけなきゃ首を縦に振ってくんなかったが」
「あたしは『視覚を封じた状態で闘う』って条件よ? 考えようによっちゃ黒幕と闘うより厄介かも」
「はは……黒幕に勝ったとしても、結局茨道か……。お互い悩みがつきねぇな」
「そうね、ふふふ……」

笑いあいながら、一歩、また一歩と足を先へ進める二人。
その足取りは見るからに疲労困憊した者のそれであったが──それでいてどこか軽そうにも見えた。
想像を絶する死闘を経て得た掛替えのない仲間──
その存在が傍らにいること、それが無意識の内に互いに勇気と力を与え合っているのかもしれない。

「──ルカ」
ふと耳に届いた声。二人が前を向くと、そこには龍姫が相も変わらず悠然とした雰囲気を漂わせて立っていた。
「此度の闘い、見事であった。そちの勇姿、しかとこの目に焼き付けたぞ」
「お母様……」
「じゃが……巳呉が死んでも、奴が生涯をかけて作り上げた兵共はまだ生きておる。
 奴らを全てを始末するにはまだ時間がかかろう。背中は我らに預けて、そち達は真っ直ぐ先へ進むがよい。
 奴らを片付け次第、我らも加勢に行くのでな」
「……」
「ルカ……気をつけてな」

その言葉を残してふっと姿を消す龍姫。
ソフィアは未だ激闘が続く背後を振り返って、ぽつりと呟いた。
「暖かい人だな、ルカさん」
「……うん」
ソフィアは敢えてルカを見ようとはしなかった。恐らく目を潤ませている、それが涙声になった言葉からはっきりとわかったからだ。
感激の余りとはいえ、見方によっては弱いと受け取られかねない姿を他人に見られるのを良しとするルカではない。
ならばそっとして置こう──それはソフィアなりの気遣いだった。
(いや、あの人だけじゃねぇ、あんたの兄弟も、家臣も、同じ名門家の連中も……
 そう……本当の幸せモンは俺じゃなく、あんたじゃねーのか、ルカさん……)
仲間がいても兄弟がいない。師匠がいても親がいない。
そんな境遇のソフィアには今のルカが眩しく見えていた。まるで、宇宙を照らす太陽のように。

「……行くわよ。少しでもモタついてたら、皆の思いを無駄にする事になる」
「オーケー。さっさといこうぜ、次のステージへよぉ──」

【ルカ&ソフィア:どちらも疲れきって満足に走れない状態だが、巳呉一派の残党を異牙に任せて先へ進む】

134 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2014/03/30(日) 22:28:42.97 0.net
ゆっくりと、足を引き摺って、それでも互いに互いの体重を支え合いながら、ルカとソフィアは着実に前を行く。

「なぁ、ルカさん? 敵は後何人だと踏んでる?」
「お兄様がいうには巳呉はISSの特殊部隊出身だったらしいから、その仲間も同じ部隊出身の可能性が高いわ。
 だとすれ間違いなく少数精鋭。レッドフォースみたいにね」
「確かレッドフォースはボス含めて七人だったはず。ってことはやっぱ、後数人ってとこか。
 巳呉と闘ってみてわかったが……とても俺達だけじゃ全滅させることはできねぇ。藍先生たちに期待するしかねぇな」

「ブラックフォースは、正確には俺を含めて六人。
 そして既に、ダーク・スネーク率いるミゼルは敗北したとの報が入っている。
 つまり、お前らにとって残す敵は後四人だ」

「「っ!?」」
不意の声。そして、不意に肌を包み込んだひんやりとした鉄の感触に、二人は思わず声を失った。
(──いつの間に!?)
(これは──!)
いつの間にやら全身に巻きついた漆黒のチェーン。
二人がそのチェーンを目で辿っていくと──
そこには、巳呉同様に全身真っ黒の装束に身を包んだ、片目隠しのヘアスタイルをした長身の男が不敵な笑みを浮かべていた。
「お前らがここに来たってことは、やはりアニキは殺られちまったようだな。
 突然、気が消えたもんだからまさかと思ったんだが……マジだったとはな」
「……アニキ、だと?」
「闇隠 巳呉が兄……? それって……」
「フッ、流石に夜霞の小娘ともなると、俺のことは耳にしたことがあるようだな」
「やはり! ってことは、あんたが闇隠騒動のもう一人の元凶……!」
「──そうだ、俺は闇隠 巳流(やみがくし しりゅう)。巳呉の実の弟よ」
「あの男の弟……敵討ちってわけか。いいぜ、この場で返り討ちに……ぐっ!」

己を拘束する鎖を力任せに解こうと全身を力ませるソフィアが、次の瞬間、顔を顰める。
「うっ、ぐっ……!」
それはルカも同様であった。全身を突然、焼きつくような痛みが襲ったのだ。
いや、それは焼かれるというよりは、まるで全身を猛毒が巡るような、そんな感触。

「無駄だ。俺の鎖に捕らわれたが最後、死ぬまで解くことはできん」
「チィ……! 鎖に毒を仕込んでやがったか……!」
「毒? ククク……馬鹿め、そんな生温いものではない。もっとも、お前ら邪気眼使いにとっては毒も同じだがな」
「なん……だと?」
「これ以上の問答は無用。このまま俺の気によって全身を蝕まれ、何も知らずに死んでゆくがいい」
「クッ!」

拘束した相手の力を、体力を徐々に削いでいく鎖。それを自力で解くことは難しい。
(まずい、このままじゃ……!)
ルカは唇を噛む。互いが鎖に捕らわれていては、助け合うこともできない。
このままでは、ここで呆気なく殺されるということも十分に有り得るのだ。

「ククククク、さぁ、後何秒持つかな?」
嘲笑う巳流。苦しむルカとソフィア。
だが、そんな二人の窮地を救ったのは、ドウッ、というたった一発の銃音であった。
「──なにっ!?」
どこからともなく飛んできた赤黒い光弾が鎖を爆ぜ散らす。
その途端に拘束から解放された二人は、即座に光弾の軌跡を目で辿った。
「やはり……聖者がこの件に関わっていたか。俺の読んだ通りだ──」
するとそこには、どこぞの民族衣装のようなものを纏ったサングラスの男が、独特な形の散弾銃を手にして立っていた。
そう、その男こそ黒羽 影葉。
ルカも、そして影葉本人も知る由もないことだが──これはかつて生き別れた兄妹の再会の瞬間でもあった。

「……俺の鎖を破壊した、だと? ……貴様、何者だ」
「わからんか? 俺は、聖者(お前)の敵だ」

135 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2014/03/30(日) 22:30:43.72 0.net
(こいつ……俺らの敵ではないようだが……なんだ?)
ソフィアが訝しげな目をするのも無理はない。
突然現れた闖入者。
彼女にとって鎖を破壊して拘束を解いてはくれたので敵ではない、と見ることはできるが、得体が知れないことに変わりはない。
そして何より、手にした銃から感じる異質な雰囲気。
それは気のせいか、巳流が操る黒い鎖が放つそれと似ていたのである。

「──そこの二人」
その言葉と共に、ぽいっとソフィアに投げ渡された小瓶。
なんだこれは──そんなことを言いたげな顔をする彼女に、影葉は続けた。
「中身は特製の回復薬だ。それを呑んで、とっとと先へ進め。この男は俺が引き受ける」
「引き受けるって……あんた一体……」
「こいつを倒すには今のお前らでは不足。だから俺が来たまでのこと。気にせず、さっさと行け」
「……ルカさん」
男を見て茫然とするルカの肩に手を置いて、ソフィアが彼方の地平線に向けて顎をしゃくる。
それではっと我に返ったルカは、「あ、うん」と頷いて、ソフィアと共に立ち上がった。

「誰だか知らねーが……闘いを肩代わりしてくれるんならこっちにも都合がいい。任せて先へ行こうぜ。
 見たところ、あのサングラスの男も相当やりそうだしな」
「……」
「……おい、どうしたよ? 気が抜けちまったか?」
「いや、そういうわけじゃ……ないんだけど……」

互いに肩を貸しながら、ひょこ、ひょこ、としたぎこちない足取りでその場を後にする二人。
その途中で一旦振り返ったルカは、サングラスに覆われた影葉の顔をじっと凝視して、ふと独りごちた。

「…………影葉おにいちゃん?」
「……え、なんだって?」
自分に何かを言ったものかと誤解したソフィアが何事かと聞き返す。
それに対しルカは
「ううん……なんでもない。……まさか、そんなはずないもんね……」と首を横に振り、今度はしっかりと前を向いた。

「おいおい、大丈夫か? この戦闘は回避できたが、敵はまだ三人も残ってんだぜ?
 まぁ、もし先生達の方にも敵の刺客が行ってんなら残りは二人だが」
「あたしは大丈夫。てか、あたしより酷いダメージ負ってるあんたが偉そうに言うなっての」

遠ざかっていく二人の会話を聞きながら、影葉はサングラス越しから鋭い視線を巳流に叩きつける。
それに気付いた巳流もその目つきを鋭く変えて影葉を見やる。
もはや二人には互いの姿しか見えていなかった。それは巳流も既に敵はルカ達ではなく影葉だと認めたという証だった。

「俺の鎖を千切ったそのパワーといい全身から漂う殺気といい、貴様、ただ者ではなさそうだ。
 いいだろう、まずは貴様を血祭りにあげてやる。ガキ共はその後だ」
「それは不可能だ。何故なら──」

ジャキ──。
手にした散弾銃の銃口を巳流に向けて、影葉は続けた。
「お前は死ぬからだ。ここで、直ぐにな──」

【ルカ&ソフィア:一度は闇隠 巳流の鎖に捕らわれるが、駆けつけた影葉によって救われ、その場を後にする】
【黒羽 影葉:巳流と相対する】

136 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2014/04/06(日) 18:22:17.97 0.net
「一ついい事を教えてやろう。これまで、俺に対して貴様と同じようなことを抜かした奴は何人もいたぜ?
 だがな、その威勢の良さは悉く口だけに終わった。……何故だかわかるか?」
巳流は、ブラックホールのような底の見えない漆黒が広がる銃口に不敵な眼差しを向けて問うた。
「……」
そして、沈黙する黒羽を今一度見やると、その口角を歪めて続けた。
「相手が全て“邪気眼使い”だったからだ。この意味がわかるか?
 相手が一流の異能者であればあるほど、邪気眼を極めた使い手であればあるほど俺を倒すことはできんのだ!
 それを今から教えてやろう!!」
指先から伸ばした黒い鎖が金色に変化し──更に瞬時に修復され、ジャラララララ、と金属音を立てて弾丸の如く空間を走る。
その数は一、二──全部で九本。
先にはどれも小型の蛇頭がくっついており、あたかも九匹の蛇が得物に向けて飛び掛っているかのようだ。

「教える?」
それに対し、黒羽は平然と、ぽつりと呟く。
──瞬間、黒羽に向けてその牙を剥いた九つの蛇頭が、バァァァン! と音を立てて崩れ落ちた。
否、紅黒い光弾によって全て叩き落されたのだ。
「お前から教わることなど何もない。俺は、全てを理解したうえでここに立っているからだ」
「なっ……!?」
それは巳流にとって、正に唖然茫然の光景だった。
恐るべき早撃ち──それだけではない。
彼が言っていることを全て理解しているということ──その証に鎖を全て破壊したということ、それが何よりの驚きであった。

「馬鹿な……『聖気』に覆われた俺の『聖具』を木っ端微塵に……!? 貴様、一体……!!」
「──ならば教えてやろう」
既に立場は逆転していた。
悠然と己の力を誇るのは、今度は黒羽の番であった。

「俺の武器は“お前らに対抗する為に生み出されたもの”──。その為に俺は体内から邪気眼を失った」
「なに……!」
「目には目を、歯には歯を。お前ら聖者の特性を利用させて貰ったぜ」
「……なるほど、聖者の復活を予想して先手を打ったということか。その銃はその為の武器……」
「お前も元は邪気眼使いだろう? それが、どういうわけか聖者として選ばれ、邪気ではなく聖気を支配するようになった。
 そこで聞いておきたい。何故、聖者であるお前が邪気眼使いの一団に手を貸しているのか。
 お前も元はブラックフォースだろう? とはいえ、その馴染みという理由だけで行動を共にしているとは思えん」
「……簡単なことだ。奴らと俺の利害が一致しているからだ。奴らがなそうとしていることは結果として混沌を生む。
 その混沌こそ俺が望むもの。自由気ままに世界を破壊し、自由気ままに闘いの中を生きる。これ程面白いことはない」
「……世界を混沌から救う、そのために邪気眼使いとの闘いを宿命付けられている聖者の言葉とは思えんな」
「聖者などというのは数ある肩書きの一つに過ぎん。俺にとっては聖者の使命など、どうでもいいことなのだ」

クククク、と歪に歪められた顔から漏れる下品な笑み。
黒羽はやれやれ、と一つ息をつくと、再び銃口の照準を巳流に合わせる。
「これだから神というものは信用できん。ちょっとした気まぐれで、このような男に過ぎた力を与えてしまうのだからな」
「ほう? その銃で俺を殺すと? ──できるかな?」
「っ!」
巳流が言った、その時であった。
いつの間にか修復を完了していた五本の鎖が地中から飛び出して黒羽の全身に巻きついたのだ。
「クククク、油断したなァ? その様では引き金は引けまい。後はこいつを突き刺して終いだ」
しかも、もう片方の手から伸びていた鎖は互いに巻きつき、一本の太い槍を形作っていた。
「……」
「安心しろ、苦しませはしねぇよ。腹じゃねぇ、一瞬の内に逝けるようその頭をぶっ飛ばしてやるからよぉ!」
そしてその槍は動けない黒羽目掛けて砲弾のような勢いをもって放たれた。
しかし、それでも黒羽の表情には微塵も動揺は無かった。

「聖者の鎖……邪気眼使いであれば鎖が発する聖気に肉体を蝕まれ、完全に拘束されていたに違いない。──だが」
次の瞬間、巳流の顔が驚愕に染まる。
相手を完全に拘束するはずの鎖が、一瞬の内に引き千切られたからだ。
「馬鹿な! まさか、肉体の力だけで引き千切っただとぉ!?」
「言ったはずだ、俺の体に邪気眼は無いと。
 だが、武器を介して邪気を纏うことで肉体の強化そのものは可能なんだよ。聖気によるダメージを受けずにな」

137 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2014/04/06(日) 18:28:25.79 0.net
「おのれ……! だが、もはやこれを防ぎきることはできまい!」
コンマ一秒ごとに凄まじい勢いで距離を縮めてくる鎖の槍。
しかし、黒羽はそれすらも超越する驚異的な早業で銃を構えると、普段と何ら変わらない抑揚のない声でぽつりと言い放った。

「防ぎきることはできない? それは、お前の方だ」
──瞬間、巳流は驚愕の光景を目の当たりにする。
銃口から放たれた圧倒的な赤黒い閃光が、一瞬の内に槍を粉砕し呑み込んで己の視界に目一杯広がったのである。
「なっ!?」
「──全てを無に還す破壊の閃光──名づけて、ディザスター・ブラスト」

巳流は動かなかった。否、動けなかったのである。
防御も回避も、肉体がその行動に移るよりもはるかに早く、閃光に呑まれてしまったからだ。
「この光は避けることも耐えることも不可能」
「この俺が──この俺がまさかっ────クソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああっ!!!!」

ズッ──ドォォォォオオオオオン──!!
大地を、そして大気を震わせる凄まじい衝撃が辺り一面に広がる。
その衝撃が生んだ大火球を一瞥した黒羽は、全てを見納める前に踵を返して確信の一言を静かに紡いだ。

「終わりだ」

背中から叩きつける衝撃波にマントをなびかせて、先を見据えるその目には、残る二つの影がしっかりと映し出されていた。
「奴ら(ルカ達)の仲間(藍達)が敵の一人と接触したのは確認している。ということは、残る敵は後二人……。
 あの二人ではまだ荷が重いか……」

そしてその頃、当のルカ達は……
「──っ! この鳴動は……あのグラサンが居た方からだ」
「大きな気が一つ消えた。残った気の感じからすると、あのサングラスが勝ったみたいね」
「あぁ……。あいつがくれた回復薬の効果といい、やはり只者じゃなかったな」
既に走れるくらいまで回復した肉体を改めて見つめて、ソフィアがしみじみと漏らす。
「龍斗お兄様も不思議な薬を使うけど、効果は比較にならないわ。でも、異牙の秘薬にどこか似てる……ホント、何者なんだと思う?」
一方のルカも、心の底からというような疑問を口にする。
「……さぁな。戦闘力は間違いなくマスター・レオと──三英傑クラスだと思うがな。正体は見当もつかねぇよ」
「まぁ、今はそれを考える事にあまり意味はないか」
「そういうこと。……って」
「……おでましね」

快調に飛ばしていた足に急ブレーキをかけて止まる二人。
その二人の視線の先には、二つの人影があった。

「数は二人。なるほど、敵もとうとうボス自らが来たってことか。正真正銘、これが最後の闘いになりそうだな」

【ルカ&ソフィア:回復薬の効果で肉体のコンディションは3分の2まで回復。二つの人影を発見し止まる】
【黒羽 影葉:巳流を新技『ディザスター・ブラスト』で撃破。勝利する】
【闇隠 巳流:死亡】

138 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2014/04/13(日) 12:58:48.10 0.net
「やれやれ……。まさか私達まで侵入者の殲滅に駆り出されることになるとはな」

現れた二つの人影、その一つが口を開く。
瞬間、夕日を遮っていた雲が風に流れ──人影の正体を明るみに出した。

「えっ……? ちょっと、あいつは確か……」
それを見てルカはぽかんと口を開け、
「っ! 手前がこの事件に絡んでやがったのか……!」
ソフィアはギリッと歯軋りした。

軍礼服のような真っ白な装束、太ももの辺りまで伸ばした長髪、そして特徴的なマスク──。
それはルカには見覚えがあるもので、ソフィアにとっては良く見慣れたものだった。
そう、その人影の正体こそ『ヱ那堀 有慧』。学園一の実力者として知られたあの男だったのだ。

「驚きだよ。まさか君達がここまで来るとはね」
「ヱ那堀 有慧……まさか、手前が黒幕一派の一人だったとはな……。
 ……昨年、極東校に編入したのも全てはこの日の為ってわけか」
「──ふぉっふぉっふぉ、そのとおり。この日の為に予め学園に潜伏させ、下地を整えておいてもらったのよ」

ずいっと前に出た、もう一つの人影。
夕焼けに照らされたその人影は着物を着た老人で、ソフィアも、そしてルカも見覚えがない人物であった。
「……なんだ手前は」
睨みつけながら尋ねるソフィアに、老人は長く伸びた白い顎鬚を触りながらニィっと口角を上げた。
「わしか? わしは元・ISSの会長よ」
「──ISSの会長っ? それじゃ、ISS騒乱で突如として行方をくらました虎将 蒼月ってのは……!」
「こいつか……っ!」

──しかし、二人が確信した老人の正体は直ぐに第三者によって否定される。
「虎将 蒼月? そこにいる爺さんがかい? ──笑わせんじゃないよ、蒼月はもっといい男だったはずだよ」
背後からの声にルカ、そしてソフィアが振り向く。
そこには杖をついた和服の老婆が飄々とした雰囲気を纏って立っていた。
「──えぇっ? おばあちゃん!?」
雀舞 美緑──彼女の姿を見てルカが頓狂な声を出す。
いや、驚いたのは彼女だけではない。ソフィアも、そして敵の二人も同様であった。

「……雀舞 美緑……」
「久しぶりだねぇ。まさかこうして再び顔を合わせる時が来るなんて思いもしなかったよ」
「おばあちゃん、こいつが誰か知ってるの?」
「あぁ。この男の名は虎将 蒼月じゃない。恐らく、本物の虎将はとっくの昔にこの男に殺された。
 ──そうだろう? 『亀澄 玄耶』──」

『亀澄 玄耶』──その名を聞いてソフィアの眉が動く。
「亀澄……聞いたことがあるぜ。確か、ISSが創設される原因となった事件を起こした首謀者の名前が……」
「そうだ。30年前にあたしや龍神が倒した男。その時、確かに死んだ男……。
 それがどういうわけかこうして生き延びていた。虎将を殺してなりかわり、ISSを支配していたのもお前だろう?
 どうりで九鬼のような悪党が副会長としてのさばっていたわけだ」
「──その様子では薄々わしの影に気がついていたと見える。流石は雀舞といったところか。
 虎将のように耄碌はしておらぬようだな」
「冗談じゃないよ、耄碌なんかしてたまるかい。少なくとも30年前の因縁にケリをつけるまではね」
「……ほう?」
「お前さんがこうしてここに現れた理由ってのも、漆黒の月とやらを空に昇らせる為だろう?
 目的はやはり九鬼と同じ……だったら尚更黙ってみてるわけにはいかないんだよ」
「わしらを止めると? さて、それができればいいがのぅ」
「おやおや、人のことを言う前に手前がボケちまってるんじゃないかい? それができるからここに居るんじゃないか」
「……くっくっく、面白い。ならば試してみるがよいわ。果たして今のお前にわしらが止められるかどうか」
「馬鹿言うんじゃないよ、むしろ試すのはお前さんの方だろう? お前さんは一度、あたしに止められてるんだからね。
 ──ソフィア、ルカ。こいつはあたしが引き受ける。お前さんたちはもう一人の若い奴だ」

139 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2014/04/13(日) 13:01:27.86 0.net
そんな雀舞にソフィアとルカは苦笑い一つ。
「できればボスを引き受けたかったが……婆さんに出てこられちゃ任せるしかねぇな」
「ほんと、美味しいところ持ってくんだから……」
やれやれと頭を掻いて自分達のターゲットたるヱ那堀を見据える。

(美味しいところ、ね……)
その時、ソフィアは仮面に覆われた彼の判然としない表情を見ながらふと思った。
(……もっとも、この男が雑魚とも思えねぇがな……)

学園一の使い手として名高いヱ那堀 有慧。
女生徒達が敬愛した『貴公子』の姿は残念ながら彼の本性とは似ても似つかない偽りのものだった。
しかし、だからといって実力までもが評判とは真逆とは限らない。
むしろ、巳呉や巳流のように元ブラックフォースであるならば、実力は噂以上のものとなるだろう。

「……ルカさん」
「? なによ?」
「油断するなよ」
「……またそれ? バーカ、んなもんするわけないでしょ。この一件の黒幕に雑魚がいるわけないんだから」
「いや、わかってるさ。けどよ、警戒し過ぎってことはねぇんだ。だから、わかってても一応言っておきたくってな」
「……そうね、ここまできて後悔だけはしたくないもんね。
 だからあたしもあんたに言っとく。……気を引き締めていくわよ!」
「おうよ」

ザッ──。
大地を踏みしめ、ヱ那堀と改めて対峙する二人。

「今度は生かしちゃおかないよ。完全なる止めを刺す……覚悟しておくんだね」
「今度は以前のようにはいかんぞ? それを今から教えてやろう」

一方、雀舞もかつての仲間であり、怨敵と視線を交錯させる。
勝っても負けても、全ての因縁に終止符が打たれる文字通りの最後の闘い──
その火蓋が今、切って落とされようとしていた──。

【残る黒幕が『ヱ那堀 有慧』と『亀澄 玄耶』であることが判明】
【同時に元ISS会長『虎将 蒼月』が既に六年前の時点で死亡していたことが明らかになる】
【ルカ&ソフィア:ヱ那堀との対決が決定】
【雀舞:亀澄との対決が決定】

140 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2014/04/20(日) 19:14:48.97 0.net
「あの世で……虎将に詫びて来い、か……。いいだろう……敗北者として、勝者の言うことには従おう……だが」
上半身だけの姿となって大地に伏せる亀澄がくつくつと笑う。
「……なにがおかしい?」
「く、くくく……これで終わりだと思うな、雀舞よ……げほっ」
苦しみ、吐血しながらも笑みを消さない亀澄に、雀舞は眉を顰めた。
全ては終わったはず、にもかかわらず何か得体の知れない不安のようなものを感じたのだ。
「……何が言いたい?」
「ごほっ、ごほっ……」
「お前さんが九鬼を操っていたように……お前さんの背後にはまだ更なる黒幕がいると、そういうことかい?」
「……そうではない。わしが死んでも、まだわしの意思を継ぐ者がここにはいるのだ……」
それが誰を指すかは聞かずとも雀舞にはわかっていた。
当たり前だ。旧ブラックフォースの内、もはや機能している戦力は“彼”しかいなかったからだ。
(あの仮面の青年か……)
しかし、そんなわかりきったことを死に際に明かす、それが彼女には疑問であった。
「……なぁに、あの若いのも直ぐにお前さんの後を追うことになるよ。諦めて降参してくれれば無用な血を流さずに済むんだけどねぇ」
「……くくくくく」
そんな疑問は次の瞬間、氷解する。
他でもない亀澄の口からその答えが明かされたことによって。

「直ぐにわかる。あの男の力が……どれほどのものかをな……。
 直ぐに思い知る……あの男こそわしの最後の切り札……“最強”の異能者であるということをな……」
「……なに?」
「くくく、先に逝って……待っておるぞ…………雀舞……美緑……よ…………」
その言葉を残して息絶える亀澄。
雀舞は彼の死を見送ることなく素早く目線を切って、未だ戦いが続いているルカ達を見やった。
(あの青年が最強……まさか……!)
彼女が抱いた一抹の不安。それが的中しないことを祈りながら。


「……ふっ」
荒れ狂う火炎、凍てつく波動、それらを巧みに躱し続けてきたヱ那堀の両足が、不意にぴたりと止まった。
「? なんだ、もう疲れたか?」
「いや」
怪訝な顔をするソフィアに対し、ヱ那堀がその抑揚のない声と共に首を振る。
「どうやら残ったのは私一人のようだ」
そこで気付く、亀澄の敗北。
「さっすがおばあちゃん!」
「あぁ、やっぱ伊達じゃねぇや」
二人が笑う。それは彼女らにとっては喜びを表したごく自然なリアクションであろう。
だが、不思議なのはここでヱ那堀もニィっと笑みを零したこと。
だからソフィアは直ぐに表情を引き締めて、少々その声にドスを効かせて唸るように言った。

「……追い詰められたってのに、随分と余裕があるじゃねぇか? あぁ?」
「当然だ、ボスが殺られたところで動じる必要は何もない。何故なら────ボスより、私の方が強いからだ」
「……あ?」
ぽかんと口を開けるソフィアに、今度はくつくつと声を出して笑うヱ那堀。
「つまり、君達にとっての真の難敵はボスではなく、この私だと言う事だ。それを今から証明してみせよう、これを使ってな!」
瞬間、ソフィアはその目を驚愕の色に染め上げた。
ヱ那堀が懐から取り出したもの、それが“黒い水晶”だったからだ。
(あれは──まさか以前マスター・レオが言ってた、黒い落葉────?)

「──気をつけろルカさん! 奴は何かする気だ!」
だが、事情を知らないルカでも既に水晶が放つ異様な気に気がついていたのだろう。
ソフィアが言うよりも早く、その体は既に警戒態勢に入っていた。
「っ! 一体……何をしようってのよ!」

「異能力の真の使い方、それを君達は知らない。それが何を意味するか……その身を以って知るといい」

【雀舞vs亀澄:亀澄の死亡により雀舞が勝利する】
【ルカ&ソフィアvsヱ那堀:ヱ那堀が落葉を用いた異能を発動する】

141 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2014/04/28(月) 04:19:45.19 0.net
「目覚めろ──我が魔具よ」
一言。そのたったの一言で、場の空気が一変した。
「……っ!?」
「こ、これは……!」
「亀澄の切り札……! これが……」
ルカも、ソフィアも、そして雀舞ですらも、肌を突き刺す凶悪なプレッシャーに歯を食いしばり、
そして己の両目が捉えた“異質な存在”に眉を顰めた。

「これが私の“異能の形”──この世で唯一無二の私の専用武器だ」
「武器……だと?」
ヱ那堀の背中に顕現された黒い双翼。
それが彼の持っていた水晶、すなわち黒い落葉が変化した姿であることは疑いようもなかった。
だが、目を見張ったのはそこではない。
何よりの驚きは、その翼が顕現された途端にヱ那堀から感じられるパワーが一気に跳ね上がったことであった。

「落葉を己の異能の内に組み込むことで力を増大させる──想像を絶するほどにな。
 これが、私が『最強の異能者』と呼ばれる所以だ」

(チィッ……)
頬に一滴の汗を垂らしながらソフィアは歯軋りした。
(こいつから感じられるパワーは──やべぇぞ! こいつ──まさかマスター・レオよりも……! そんな馬鹿な……)
頭を過ぎるのは一抹の不安。いや、一抹と思い込み、己自身を欺きたくなるほどの明確かつ大きな不安。
「なにが最強よ」
しかし、それをルカが消し飛ばす。
「そう言えばこっちが諦めるとでも思ってるわけ? こっちは相手が誰だろうが倒すしかないのよ!」
「っ!」

自分の頭を金槌で殴られたような衝撃を覚えたソフィアは、一つの間を置いて苦笑いした。
ルカの言うように、相手がどんな実力を持っていようがもはや後戻りはできない。
闘い、そして勝つしか道はない。なのに無意味に萎縮してしまった。それが情けなかったのだ。
「……なぁーにビビってんだ、俺は? らしくねぇぜ」
自分に言い聞かせるように小さく独りごちて、ソフィアは前を向く。
その目にはもはやマイナス思考が齎す負の色はなく、代わって闘争心が宿っていた。

「ならばかかってくるがいい。君達の覚悟など私の前では無意味だということを教えてやろう」
「言われなくても……!」
「いってやるぜ、学園の貴公子さんよぉ!」

バッ!
大地を押しつぶさんとばかりに力強く蹴り上げ、空中に飛び上がる二人。
その手には既に紅蓮の火炎が、絶対零度を思わせる輝きが宿っていた。
「「でやぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああっ!!」」
そしてそれらは咆哮と共に開放──。ヱ那堀を、左右から挟み撃ちにする形で火炎の龍と冷気の波動を浴びせかける。

「──フッ」
しかし、ヱ那堀が笑い、その両手を左右に広げた時だった。
火炎の龍が黒き炎によって瞬時に掻き消され、冷気の波動が黒い冷気によって同じく相殺されたのだ。
「「なっ──!?」」
「笑止な。“異牙の七系統の能力を司る”この私に対し火炎と冷気を浴びせてくるとはな」
「異牙の七系統──!? どういう──」
「──おっと、余所見はしないことだ。君達の技は掻き消されても、私の技はまだ生きているぞ?」

その瞬間、「やべぇ!」と声を出したのはソフィアだった。
相殺されたかと思われていた黒い火炎や冷気が、その威力をほとんど衰えさせることなく向かってきたのだ。

142 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2014/04/28(月) 04:20:22.38 0.net
(──避けられねぇ! チィ!!)
ソフィアは空中で『把玉の構え』を取ってそれを待ち受ける。
一方のルカは再びその拳に炎を溜めて迎撃せんとする。
しかし──
「「っ!?」」
ヱ那堀が放った技は、それでも尚、勢い留まるところを知らず、その威力を二人の肉体に炸裂させた。
「がはぁあっ!?」「うぁぁぁああっ!?」
全身を焼き焦がされ、凍て付かされ、二人は悲鳴を上げながら大地に墜落する。

「ふふふふ」
「……くっ」
嘲笑うヱ那堀を、即座に肩ひざを突いて立ち上がるルカが睨み付けた。
「あんた……異牙の七系統を司るって言ったわね? それ、どういうことよ……!?
 ……あんた、まさか異牙の出身──」
「──その通り」

そんな疑問に答えたのは、ヱ那堀ではなく背後からの不意の声だった。
(この声は……)
いち早く振り向いたソフィアが目にしたのは、闇隠 巳流との闘いを引き受けたサングラス男の姿。
「そいつはあらゆる系統の能力と技を司る『魔影眼(まえいがん)』を持つ異牙の“影の支配者”────……。
 名を『黒羽 影羅』。初代黒羽 影羅の直系の子孫。……そうだろう?」
「……」
ヱ那堀の顔が、初めて真顔に変わる。
その変化こそが男の、影葉の言っていることが核心をついた証であるということを、ソフィアもそしてルカもわかっていた。

「有慧(Arie)……逆さにすると『Eira』。黒羽一族に伝わる暗号名の一つだ」
黒羽一族──その言葉を耳にして、ルカは目を大きく見開いて男を見やる。
「黒羽って……なんであんたがそんなことを……? …………まさか」
まさか──まさかこの男、やはり──。
元々、抱いていた疑念が、次第に確信めいたものに変わっていく。だが──

「雀舞の婆さんは異牙の出身。何でもお見通しってわけだな」
男の更に後ろから現れた獅子堂の言葉が、瞬時に彼女の思いを大きく揺るがした。
ルカには知る由もないことだが、獅子堂は影葉から事前に誰にも自分の正体を悟られぬように口裏を合わせるよう頼まれていたのだ。
雀舞もそれは同じだったので、
「あたしは情報屋。この道三十年のベテランだよ。暗号名の一つや二つ、調べるなんてわけもない」
と、突然のことにも慌てることなく淡々。それによってルカの確信は瞬時に単なる思い過ごしへと一変するのだった。

「……なるほどね、お婆ちゃんが……」
「……そんなことより、だ。……マスターレオ。どうしてここに?」
「弟子に任せっぱなしってのも心配だったんでな。昔の仲間を呼んで様子見にきてやったんだよ」
「ちぇ、信頼度ゼロですか」
「そうでもない。お前は良くやった。残す敵を後一人のとこまでこぎつけたんだ。上出来だ。
 ──だが、ここから先はお前じゃちと荷が重い」

「影の支配者──黒羽 影羅が相手ではな」──そう続けながら、獅子堂はヱ那堀に視線をぶつけた。
「よぉ、学園の最終兵器。俺もまさかお前が黒幕だとは思っていなかったぜ。
 これでも要注意人物と思ってマークはしてたんだが……やれやれ、俺も実戦から離れてヤキが回っちまったかな」
「恥じることはない、三英傑の獅子堂教諭。私は貴方が私を警戒していることを知っていた。だから猫を被っていただけのこと。
 私の正体を見抜ける方が不自然なのだ」
今度はヱ那堀が、いや、影羅が影葉を見て言う。
「──だからこそ、お前が私の正体を見抜いたことには予想外だった」
「……そうか、俺がこの街に来た時に感じた視線……それはお前だったか」
「相当の実力者だと思えたんでね。何を目的にこの街にきたのか観察させてもらったんだよ。
 こちらから手出ししなければ無害かと踏んだのだが……どうやら見込み違いだったようだ。
 そこで一つ聞いておきたい。君は一体何者だ? なぜ、わざわざ私に敵対しようとする?」
「その質問に答えるには条件がある。たった一つの、簡単な条件がな」

その言葉を聞いて動き出したのは獅子堂であり雀舞であった。

143 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2014/04/28(月) 04:21:37.52 0.net
「さて……お前ら、ここを離れるぞ?」
肩にぽんと手を置かれ、ソフィアが「はぁ?」と言いたげな頓狂な顔をする。
「ここはあいつ一人に任せるんだ。巻き添えを食いたくねぇだろ?」
「ちょっ……何言ってんのよ!? 全員で闘ったほうが──」
思わず声を荒げるルカの肩に、今度は雀舞が手を乗せて言った。
「ごちゃごちゃ言うんじゃない。あたしや獅子堂はともかく、お前さん方じゃ足手纏いなんだよ」
「そ、そんな! ここまできて……!」
「誰かが命を賭さなきゃあの男には勝てない。そして、あいつには誰かの代わりに命を賭してもいい理由があるんだよ。
 ……わかっておやり」
「……おばあちゃん」
これまで一度も見せたことのないような、寂しそうな顔をする雀舞。
それを見てルカは、男が自分達以上の、後戻り不可能な悲壮な覚悟を背負っていることを悟った。

「…………いこうぜ、ルカさん」
「ソフィア……」
「もう俺達の出る幕はねぇよ。後は、任せようぜ」
「……」
「俺達だってできることはやった。だろ……?」
「……そうね。ちょっと消化不良な気もするけど、あたし達が入り込む余地は確かになさそう。……いきましょ」

踵を返して足早にその場を後にするソフィアにルカ。一瞬遅れてその後に続く雀舞。
「…………」
獅子堂だけは最後まで影葉の後姿をじっと見ていたが、それもほんの僅かな一時。
三人の気配が数百メートルほど遠ざかった頃になると、やがて吹っ切ったように踵を返して去っていくのだった。
「……あばよ、黒羽」──その一言を残して。


「……なるほど、仲間を逃がす。それが条件か。私とて無益な殺生は望むところではないので好都合だがね。
 もっとも、漆黒の月が昇り、鬼門が開けば結局彼らとて無事では済まないだろうが」
「だろうな。だが、鬼門が開くことは決してない。術者のお前が死ねば、自然と鬼門は閉じられる。九鬼の時がそうだったようにな」
「やはり六年前の騒乱の生き証人か。ますます君の正体が気になるな、私はてっきり夜霞の天才児かと思っていたのだが、
 当の彼は『大蛇』の下に現れた……となると」
「もう薄々感づいているんだろう? 俺が、お前と同じ血を引いている者だということが──」

サングラスを外し、ターバンを解いてその素顔を顕にする黒羽。
瞬間、影羅の目が鋭さを増し、次いでその口元がニタァと歪んだ。

「──黒羽 影葉。“表”の黒羽家を背負う、最後の当主──なるほどやはり貴様だったか!」
今度は影羅が仮面を外し、その素顔を顕す。
その顔はなんと黒羽 影葉と瓜二つ。双子と見紛うほど酷似した容姿を持つ青年ではないか。
「黒羽 影葉──初代当主の名と力を一子相伝で受け継ぐ“裏”の黒羽一族。
 俺がその一族に良く似ているという噂は耳にしたことがあったが、まさか本当だったとはな」
「確かに見た目は良く似ているようだが、内面まで同じだとは思わないことだ。
 貴様の家系は所詮“劣性”。我ら“優性”の血を受け継ぐ“支配者”の存在を覆い隠す為だけのいわば飾り。
 その力は天と地ほどの開きがある! ……このようにな」

バサッ。
影羅の背中に顕現された両翼が開き、纏っていた黒い邪気を激しくスパークさせていく。
それは見た目の派手さだけではない、スパークが激しさを増すたびに彼が放つプレッシャーが二倍、三倍、四倍とぐんぐん上昇しているのだ。
つまり、力が増幅されているのだ。
「天と地、か……」
しかし、影葉は平然としていた。
「っ! 貴様のその銃は、まさか……」
自身の持つ銃が影羅の翼と同じ原理で具現化されたもの、
つまり同じ邪気増幅装置であり今更驚くに値しなかったというのがその理由であったのは確かだろう。
だが、彼の反応は、単にそれだけが理由といえない程に妙に気薄であったのも事実であった。

「そう、お前と同じものだ。……これで全てが終わる。六年前からの因縁も、黒羽家の宿命も、なにもかもが……」

144 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2014/04/28(月) 04:25:57.00 0.net
「────────────────────っ!!!!」

影羅が“それ”に気がついたのは、正にこの時だった。
だからこそ彼は、驚愕とした表情を浮かべながらなす術を失っていた。

「俺が大地でお前が天ならば、天を大地の爆発で黒く染めてやろう──」
影葉が手にした銃は既に異変が起きていた。
否、厳密には銃の内部で反響増幅、超圧縮されていた邪気に異変が起きていたのだ。
それは明らかに許容範囲を超える大量の邪気の毎秒ごとの強制圧縮に起因していた。
武器や道具には必ず使用制限がある。
どんな名刀も鉄以上の硬度を誇る物は斬れないし、リボルバー拳銃は常に一発ずつの発砲しかできない。
それは落葉を元に創り出した武器であっても例外ではない。
影葉の銃にも一度に撃てる弾の数が限られており、そして一度に圧縮できる空気や邪気の量にも制限がある。
──だが、影葉はその制限量を超えた邪気を無理矢理銃に送り込み、無理矢理その内部で圧縮し続けていたのだ。
そうなればどうなるか。
いずれ銃は内部で高まる圧力に耐え切れず崩壊し、圧縮していた邪気を一気に解放──その威力を炸裂させることになる。
つまり──

「貴様──初めから自分もろとも──!!」
「っ……げほっ、げほっ!」
激しく咳き込み、その口元からつぅーっと真っ赤な血を滴らせた影葉は、わなわなと震える影羅を見てニヤリと笑った。

「……どうせ長くは持たん身だ。だったらこの場で、地獄の道連れにしてやろうと思ってな」
「おのれっ……!!」

歯軋りする影羅であったが、彼にできることといえばもはやそれくらいであった。
想像を絶する実力者であるが故に、既に悟ってしまっていたのだ。
影葉の銃の中で今か今かと暴発を待つ爆弾が炸裂すれば、辺り一帯が完全に消し飛ぶことになるであろうことを。
そして今から逃げても、もはや遅いということを。
そう、己の命運は、影葉がこの場に来た時に既に決まっていたということを。

「これが俺の覚悟、俺がお前の相手を引き受けた理由だ。
 まだこれからを生きる獅子堂(あいつら)に任せることはできない、俺にしかできない最後の仕事──……
 ──3──2──1──  終わりだ ──」

─────瞬間、全てが黒き閃光に染まった。

「──── おのれぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええええええええええええっ!!!! ────……」
その中で影羅は断末魔をあげ、そして影葉は対称的な小さな声でぽつりと零すのだった。
「……獅子堂、御影センセイ、雀舞(ばあ)さん……そして龍華、さらばだ……。
 二神……迎えに来い。三途の川で待っててやる──……」

────。
────地面から伝わってくる圧倒的な地響き、耳を劈く圧倒的轟音、背中を叩きつける凄まじい爆風。
獅子堂達は、危険区域と南エリアの丁度境目となる場所でそれらを受け、黒一色で染まる爆心地を振り返った。

「とてつもないパワーだ。巳流を倒した時に使った技の軽く200倍はありそうな爆発だよ」
「あぁ……あの野郎、派手に逝きやがったぜ」
「……マスター・レオ。結局あの人は何者だったんですか?」
「それは聞くなと言ったはずだが?」
「わかってますけど……」
「…………一言で言えば好敵手(ライバル)だ。かつての、な……」
「……そう、だったんですか……」
「ねぇお婆ちゃん、これで本当に何もかもが終わったわけ?」
「あぁ……これで開きかけた鬼門は再び閉じられるだろう。この街で、黒き月が昇ることはなくなった。
 少なくとも、九鬼や亀澄の一派達の手によって昇ることは、もう二度とね……」
「……おばあちゃん?」

その時、ルカは見た。
誰よりも早く爆発から視線を切り、背を向けた雀舞の頬に、涙が伝っているのを。

145 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2014/04/28(月) 04:26:58.50 0.net
(ったく、親子揃って親不幸者だよ。祖母(ばあ)さん一人残してさっさと逝っちまうなんて……)
今も尚、サングラス男の招待が影葉だと知らないルカには、その涙の正体など知る由もない。
(……やれやれ、お前といいお前の妹といい……)
世の中には知らない方がいいこともある──とはいえ、実の兄の死の瞬間を目の当たりにしながら、
それに気付けないのは果たして幸せなのか不幸なのか──

『貴様も難儀な人生を送ってきたもんだな』

獅子堂はかつて影葉に言った己の科白を思い出しながら、ため息混じりに独りごちるのだった。

「つくづく難儀を背負う一族だぜ」

【ヱ那堀 有慧:その正体がもう一つの黒羽一族の末裔・影羅の名を受け継ぐ者だと判明】
【影葉vs影羅:影葉の自爆により相打ち。両方死亡】
【影羅の死により鬼門開放は再び阻止され、全ての戦闘が終了する】
【次回、最終回予定】

146 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2014/05/04(日) 21:04:24.96 0.net
「──ルカ!」
──学園本部正門に続く坂道。
その歩道に植えられた街路樹の一つにもたれ掛かりながらぼんやりと空を眺めていたルカは、
自分を呼ぶ声にハッと顔を上げた。
「待たせてすまない」
視線の先にはトットット、と坂道を降りてくるグラマラスな体型の女性が一人。
「遅っそいわよ〜? 約束の時間を四分もオーバーしてる! あたしを待たすなんて何様って感じィ?」
などと、たまらずルカは口を尖らすが、それもあくまで心底の本音ではないのだろう、
「許せ。パフェの一杯も奢ってやる」
と、苦笑しながら向かってくるその女性に、クスッと微笑んだ。
「一杯ぃ? 二杯よ、二杯。それで手ェうっちゃる」
「いいのか? 太るぞ?」
「太ってんのは鼬の方でしょぉ? そんな脂肪の塊をぶるんぶるん揺らしてさぁ。何食ったらそんなにでかくなるのやら」
そう言って多少の嫉妬と羨望が入り混じった軽蔑の眼差しを向けるルカに、太刀風 鼬は敢えてこれ見よがしに胸を張る。
「ん? 羨ましいのか? ならばはっきりとそう言えばいいものを」
「ば……バッカじゃないのっ? そんなの肩が凝るだけでメリット何もないじゃんよ!」
「ははは、まるで一度でもこの大きさの胸を手に入れたことがあるかのような言い草だな」
「……うぐ」
悔しそうに唇を噛むルカを、不敵に嘲笑う鼬。
だが、相手がルカでなければ彼女も敢えてこのような物言いもしなかったであろう。
相手を信頼し、心を開ける仲だと思っているからこそのユーモア。
ルカも同じように思っているからこそ本気で怒りはしないし、むしろ楽しむことができる。

しかし、そんなやり取りもこれから日常的にはできなくなると思うと、ルカはため息を漏らさざるを得なかった。
「……で、ちゃんと卒業できたわけ?」
「あぁ。これで四月からはエージェントだ。それまでに引越しの荷物を纏めたり、色々忙しくなる」
「目出度く学園生活も終わり、か」
「うむ。長いようで短い、そんな三年間だった」
「……アーセナリーのあたしには学園生活がどんなものか知らないけど、鼬と会ってからの三年間はホント色々なことがあったわ」
「そうだな。闘ったり遊んだり、笑ったり泣いたり、喧嘩もしたな……、……それももうできなくなると思うと、寂しくなる」
「……バカね。これからも会おうと思えば会えるじゃない。今生の別れみたいに言わないでよ。
 それに……感傷的になるのはちょっと早いっての。何の為に皆を呼んだと思ってんのよ」
あくまで明るく振舞うルカだが、その声は若干震えていただろうか。
鼬もその震えは感じ取っていたが、彼女は敢えてその意味するところを考えないようにしていた。
考えれば、胸の内から込み上げるものを抑えられそうになかったからだ。

「あっ、いたいた。すいません遅れまして」
その時、鼬とは逆に、坂道を駆け上がってきたのはソフィアだった。
鼬の学園卒業を祝しての、そして幸ある前途を祈っての宴会を催すということでルカに呼ばれていたのだ。
「あれぇ? あんたの師匠は一緒じゃなかったの?」
「なんか他に寄る所があるんだって。後で藍先生達と合流して来るってさ」
「あ、そう。じゃあ先に三人で行ってようか」
と、二人を促して先頭を行くルカ。
その背後で互いの顔を見合わせたソフィアと鼬は、思っていることは同じというように同時に手を差し出して、固い握手を交わした。

「卒業おめでとうございます、鼬さん。貴女は尊敬に値する先輩でした。貴女と共に闘えた経験は俺の、いや、私の貴重な財産です」
「こちらこそ世話になった。礼を言わせてくれ、ソフィア」
「これから寂しくなります」
「私もだ。だが、私に不安はない。この街をそなたに任せて行けるのだからな」
「ルカさんも、でしょ?」
「……フッ、これからも仲良くしてやって欲しい」
「大丈夫です、ルカさんは大事な仲間ですから。上手くやっていけますよ」
「……頼むぞ、この街を」
「……はい、任せてください」

それは、世代交代の瞬間。街を守るという使命が次代に継承された、その瞬間だったであろう。

147 :ルカ・ナイトヘイズ ◆ICEMANvW8c :2014/05/04(日) 21:06:59.35 0.net
「──ちょっと、なにモタモタしてんのよぉ? 早く行くわよー?」
遠くで呼ぶルカの声。
「お呼びだ。行こう」
その場に微笑を一つ残し、腰に手を当てて怪訝そうな顔をするルカに向けて鼬は駆け出す。

「……行こう、か」
ソフィアはぽつりとそう零すと、雲一つない晴天の空を見上げて、フッと微笑した。
「ああ──、行くさ」

見据えるのは吸い込まれそうな青空。
否──その先にある眩いばかりの光。
「ちょっと、待ってくださいよー。置いてくなんて人が悪いですってー」
ソフィアは駆け出す。
坂の下で自分を待つ仲間に向けて──そして自分を待つ光あふれる“世界(未来)”に向けて。


──。
「──あれから一年が経とうとしてる。早ぇもんだな、ホントによ」
危険区域。
荒れ果てた大地の真ん中に花を手向けた獅子堂は、その場に眠るかつての仲間に向けて語りかけていた。
「俺の弟子も今年で学園最高学年になった。まだまだ一人前とは言えねぇが、それでも俺にかかる負担は随分減ったぜ。
 これで俺もお前の置き土産の面倒を見てやれそうだ」
そんな彼の背後から、ひょこっと首だけを出したのは一人の少年だった。
「おい、さっきから何をぶつぶつ言ってるんだよ? パーティー始まっちまうぜ?」
それはかつて、黒羽 影葉を師匠と呼んでいたあの少年。
「……近況報告だ。昔の仲間にな」
「はぁ? そんなもんどこにいるんだよ?」
「ま、時が来たら教えてやる。だから今は、お前の師匠の伝言に従って俺の言うことを聞いてりゃいい」
「フン、未だに信じられねーぜ。師匠が俺に黙って外国に飛んで、あんたに俺の世話を頼んでたなんてよ。
 あぁ〜! 俺はトレジャー・ハンターだぜぇ? 学園生活なんて性に合わねぇーってのによぉー!
 師匠〜! どうしてですか〜! どうして俺も連れて行ってくれなかったんスかぁ〜〜!!」
「ったく、いつまでもメソメソしやがって。黒羽には随分と甘やかされていたようだな?」
「あぁっ? 師匠の悪口を言うと許さねーぞ、おい!」
「ほぅ? どう許さないんだ? それにな、俺は奴の悪口を言ったつもりはない。お前の情けなさを嘆いたんだよ」
少年の首に腕を回し、締め上げるようにしながら獅子堂はその踵を返す。
「──イテッ! イテテテテテッ! おいこら! 離しやがれ!」
「威勢がいいのは口だけか? 何か文句があるなら拳で言ってみろ」
「こ、この野郎……調子に乗ってんじゃ──イテテテテテテッ! タンマタンマ! 本当に締まってるっての!」
引き摺られる格好となった少年は己の首を絞める獅子堂の硬い腕をなんとか引き離そうとするが、
数え切れないほどの実戦で鍛え上げられた彼の腕力の前では結局どうすることもできない。

「お前の言うようにそろそろ約束の時間が来る。折角、招待されたんだ。遅れず行ってやろうじゃねぇか」
「その前にこの手を離──ぐぇぇぇぇえ! ぐるじいい!」
「言っとくがな、俺の修行の苦しさはこんなもんじゃねぇぞ? 今から根を挙げてどうする。少しは根性を見せろ」
「ぢぐじょぉおおお! ばなぜぇぇぇぇぇええええええ!!」

──。
すがすがしいまでの晴天の下、一人の少年の苦悶の声が静かな危険区域のど真ん中に轟いた。


【闘いから約一年が経過し、太刀風 鼬が学園を卒業】
【黒羽の弟子を獅子堂が引き取る】

【二つ名を持つ異能者達 第参部・ルカ編────完────】

148 :名無しになりきれ:2014/05/04(日) 23:18:10.82 0.net
   _______ __   _             ____ 
   \.  _  // _ ヽ / ───、     .|~゙ー┐! <(())>=───
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 、_/ /,__| |  | | __//  \\_,  \| l ロ .| | し|  \\_.
  \_/  \_,|  |/ \_/      `ー`.    |__| ヽ__/
二つ名を持つ異能者達は完結しました。長い間ご愛読、ありがとうございました。





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      ≡     ≡      ,. ‐- 、-─''ー- 、     ≡       ≡
      ≡ : 選 ≡    /: : : : : : : ヽ: : : : : : ヽ    ≡ ス  そ ≡
      ≡ : 択 ≡   /: :_: . . . : : : : : )、: : : : : : :ヽ   ≡ レ  れ ≡
      ≡ ! か ≡  l: : :\ヽ,.久-‐'"  ヽ: : : : : : :l   ≡ の  が ≡
      ≡      ≡ l: : : :/゙丶、\_   ,,.゙ ヽ: : : l   ≡       ≡
      /| | | | | | |\ l,.. ''"//゙ヽ、_ ゙\'"_゙ L:_:/   /| | | | | | | | |\
              / -‐'/-ィテ、-ヽ   ゙丶 、`)ヘ)
             /   lヘ `‐''" ,. -)     ゙丶/
            //  / ヽ  ̄ ヽi_,. -‐------、  ヽ, 、
          ,、/ i   _ -‐'ヽ ̄ ,.==-、   | /ヽ-へ \
         / )  _/   ヽ、  'ヘ--‐'   / | \  \ ヽ,、
       /  / ̄/     /lヽ、     / ,. ゝ \_ -‐''  \
      /\/__/       l l ゙ ー-- '",. /  |、_ヽ  \  \
   ========= l l/ | /\ / ̄ ヽ   /   |    \  ゙丶、_
   \、   \\つ ピッ   | | |/  |/    |  /    l          ヽ、
   \\_. -‐ /n \    | |  ◎/     l/__ ___ l_  _       i
    | \ -‐¨◎   ゙i ̄)  | |   l _ --‐‐ ̄i  | |  |  ヽ|  |      ヽ
    ヽ -\゚   ピッ `´\_ | |__|    ,.   ハ_| L.-┘_,,| └-i____\
    l __r--‐=フ     | ) |   レ-‐''"/   <    i-‐¨ ,.  ┌┘┌┘└‐┐
    .l / `i-'"    /Y.| |      / ∧  ゝ.   └'二フ /l.  |    フノ|. | ̄
    l l" ‐"ヽ\-‐'''"  ̄l. | |     ∠ - ' `´       レ'  L_」   ´ L.l
     ',  '" ヽ\ヽ‐‐-'''i .| |
     \    ヽ     | .| |

149 :埋め:2014/05/05(月) 00:43:00.79 0.net
                        ,r、、、) ̄ヽr"(ー 、、、
                     ,ノヽY"("r"iiit;;;t、 从ヽ`)'"ヽ
                 、 ,r("' "、、、 "''"t;;;ヽ匁、、ー、、))〉;;;;;;;;三彡"
                _ソ"从 了ミミi ,,`ヽ、;;;;ヽ、、、、ーヽ;;、''''-、ノt,,,,,
               it(  (;;ノ (;;;;|、t シヽ;;;;ヽ、、)、 ヽ;;;;;;;jjj'|ii、"""ノ
              、,,t,`レ 从ii|ヽ、ー''"iii、ヽ;;;;;リ|;;;;从i 、、、从、、t;;;;ヽ'ー、ヽ
              メ''""/;;;;;从,,、、 、 i;i||j;;;;r"t;;;( ソ、t;;;;ヽ |;;;;;tヽミ 、),
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             t、,女 t(ツ||i;;;;;;;;;;;;;;;i;;;;";;;;;;;;;;;;;;;;;;;|ツ;;;i、、、i;、~'-、;;;;;、))
             、、ノ(iツM;;;;|;;;;;;;;;;;;ii;;;;|i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;、;;;;;;;|;;;i |;;;t'ヽ三彡
              // り";;;;;;;;;;;;;iヽ;;;;;;;;tiii;;;;;;;;i|;||;;;;ii;;;;itソ;;;;リ;;;;"ヽ;;;;;ir'"
              ヽツキ;;;;;;;;;;;;;;;;;;ミ人、、、ミ;;;;;;;;tヽ、;;ヽ二リ;-、t;;;;;;;レ;;;;|''"
              ー7;;i|、;;;;;;r、ミr'";;;;;;;;;;;;;;;~~' リヽ|i";;;;;;;;;;;;;;;シi;;;;;;、i|)
               リ;;;;||t;;;;〈 ミ 彡=モ丐ァ、r;;; "リ、zモチテzー' リ;;;;ii|j
              (;;|;;;ヽ、;;;;i    `~ '''' ":::  |~::''- ̄ー  リ; イ
                フ;;;;;ヽ;;;i,     ""    |      ,'r';;;i
  ,r''ヽ           `(;;;;;;;;i~t       ,,,,, j ,,     /"彡|、
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.  i  リ             't;;;;i :ヽ     ,,、-_~-,,   /::  j ノ ;;リ''ヽ、    ,, 、- '' "~:::::::::::::::::::::
  i  '"|  r'~ヽ,         ヽ、i  ::ヽ    "''ニニ"   ,'::  y"  "ノノ フンゝ'":::::::::::::::::::::::::"""""
 リ   i ,,/   i''''"" ̄ ̄ ̄>'''"~t |i ::ヽ,  ''~~~""" /:::::、-'"  ,r"/zr'":::::::::::::::::"""" "
_,/ :::::"i" / '-、ノ,,,,,,、ニ、 ,、-'";;;r''"::::入 ii;;::::::::ヽ,      /::: '" , ,r、" /"/""t    ー⌒)     ""''
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" ,、-'i"    ,、-ー '''ヽ"/r" :::::;;/  t  ヽ::::;;;;;:::::;;;;,r'" ,, ,、-'"" "/          ~
''"  ヽ ,、ー''"ii  ,,,、ノ";;r"::: :::;;;iii|   リ,r'" ヽ   y'" '"//'/"_; '   " ~'ーー   r"~
 ::,、-'"  ,、- '";;;;/;;;r" :::::;;;;iiiii、;;;; 、、,,,,,,,, ヽ,r'" //:::::::/ ',ノ/            )   ー )ヽ,、-'
 "  ,、-' /、;;;;;/';;;;r" ::::::/i"  ~''''''""""",r" 三//::::::, "' /;;/  r''''''''''''''''''''''-、  ( ∴ー''" ,、-'"
 ::: イ ,,、r'- '''""ノ;r" :::::::/ t::::::::     ,r"  三//' /'" /;;;;t r'┏━━┓   ヽ、、、、-ー''''"
   "~  ,、- ''"ヽ、::: :::::::/  ~''- 、,,,,,,,, /  三/'"// /r //ヽt ┃、,  ┃

150 :埋め:2014/05/05(月) 00:43:54.23 0.net
                      ,,、   ,,,  、,,     ,, ,,,,,,,,,, ,,,,,,, ,,,,,  ,,, ,,,,,,
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                     `''フ, ii ;;;Y/;;、;;;;;;(;;;;; ;; ;;;;;i|;;;i;;;;;;;;、t;;;;;;ii;;从、;;;;、、     死 す き
                      ノノij、、;;;; ;;;t ;;;;t;t;;ノノ;;;;ノtt;;;、升込ヘ、从`;;;;;ii
   ,,、、、                  iyi)从;;;;i r'"iiii||||iiiヽ;;t'''"iiiiiii||||i體逡;; <;;;;;`      ん で  さ
  r"   '' 、                /フ-i;;;;;i:ン、zモテテ、;;t≦;;ー;rモテチゝz'"  〉;;;;;;
  't     ` ' 、              从;;;;;;t:::`:::"";;;;;リΞ :::::::"",,,",ノ"  i;;;;;リ,     で に  ま
  ヽ,        、             刈ii、t::::::::::::::;;; i::     :::::::::::::::'" i;;;;/ノ
    ' 、 ,,、、::'''  ヽ,            i;;ヽ, ;、::::::::::::;; i、__,,,_ ::::   :::::  i;r"/;;     い    は
      ~' 、""" :::;;; ヽ,           t; ;;;`it  ::::::::ヽ、;;;~''     :::  /~r;;;;;;;;;;
  ,,、--、,,,,、'ヽ,       '' 、,        ノi; ;;;| t  ::  ,,ii,,,,,       / |;;i;;;;;;;;;;;;   る
ー'";; ;;''''';;;; ''"ヽ;;;;;;'''"",,    ヽ,       ヽ;;;i ;t   ''";;",`' -     /;;:::ヽリ;;;;;;;;;;;;,,,
;; ;; ;;"  ;;;    `t''''""  ~'' ,,  ヽ,,rr"iiitt、r"t;;;i ヽ  '' ;;~;; ''ー    ,, ';;::::  "i|;;;;;;;;;ヽ"" !
,,r"  /    :::ヽ;;tヽ、,,,,,、、-'",,   ヽ,ー-;;、iiii"ヽii;;ヽ;;ヽ r';;;;     ,,r";;:::::::   i|レ"|;;;;ノ
"   /   ::::: i;`''-、;;;;;;;;;;;;'":::、,    t  ~'' 、;;;;ii"ii:::ヽヽ,ヽ-ー  ,、 ';;;  ::::    :::  |'"ヽ''';;-、、,,,,,,,,,,,,,,
   /   :::  ノ''ー、;;;;;;、,,,,,,,::::::::::;;    t ''"""'ヽ;;;; ""ii::;;;~~~~~~";;;;;  ::::::::''"  :::  |;;;;""''ヽ;;;~'- 、==~、''''' ー 、
  ソ   "r '"ヽ/ /;;;;;;;;;;;;;;;;;;、 '/:     t   '"ヽ;;;; 彡;;;;;;;::~'-、;;;;;;  ;;::::'"   ;;;;  |、;;;;"''";;;ヽ;;;;、~''ー 、,>~' 、
  ヽ,;;;""  ''""' ,ソ;;;;;;;;;;;;;;;、'" r'"     ヽ  yii;; t;;;; 彡、;;y;;;; ::~' 、  ;;::::''"   ;;;;; tヽ,、;;;;  "ヽ;;;;;;;; ;;;;~ '"'z
ヽ、;;;;;;~,二フ"~~~;;;;;;;;;;;;;;;r'" ,,r"      リ    リi;;;; 彡tヽ;;y;;;; :;;ヽ;;;;;;''"     |i ヽtヽ;;;; ミヽ;;;; ;; ;;;iii/;/
-、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;、 -ーー - 、、-ーー'"   ,,,,,,,;;;;;; /;;;     i;;;; 彡;t、ヽ;y;;;; ;;;ヽr''ー、、、、,,,,、、 ー''" リ t;;;; ミ''ヽ ;;;;;;;;/;/

151 :埋め:2014/05/05(月) 00:45:27.38 0.net
                              、、、,, ヽ~' 、      ,,  、
                           i~'ヽ );;;;;;ソ,,ノ;;;;;ヽ"",r了ノ;;}ノ;;|;ヽ,
                       ,,,,  ,,ノ;;;;;;;;)";/ノ;;;;;;;/ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;(;;;;;;;y;;;;;i 、,,
                      ,r";;t,,r";(;川"";;;彡彡;;;;;;;;;;;;;ヽ/;;;;ヘ;;;;;;;;;;;;;;;/'";;;)
                    j-、、'、,;;;Y;;t;;t;ソ;;;;;;;;;;;;;;;;;//;;;;/;;;;;;iii;i;;i;;;リ;;;t;;;;;;;;;;;;/;/i
                    i;;;;;ヽ`;;;;;;;;;;ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/;;/;;;;;;;;;;;;ノリ;;;;;);;;;;;));;;;t;;;;;/-、
                  /;ti、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ;;;ミ;;;;;y;;;;;;レi;;彡;;;";;;;;;;;;;;;ノり;;;;;ソ;;;;;;;;;;;;/
                  i;;;;ヽ';;八;;;;;;;ヽ);;;ヽi;;;ミ;;;;;;;ziii";;;;;ii;彡彡彡;;;;;;;;;;;;;;);;;r'";;;;")
                  ,r'、;;;;;、;人;`iii";ヽ;;Ξt/;彡;;;;;;iiiiii;;;;;;;;;;;;;;;;;彡彡;;;";;;;;;;;;;;之,、 '
        ,,、 -ー'' ーーー- 、,,t;;;;~';;、;;;;;ヽ;;;ヽ、;;;;三;;;;;彡;;;iiiiiiiii;;;;ノ;;;;;ノ;ノ;;;;;彡彡;;r"r''"之"
       、'~  ノ,、 -ー―ー- 、ヽ、;;`;;;ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;彡;;;;;;;、- '''";;;;;;、-'、-';;;;;;;;;;彡;;;;;;;;;ヽ;;;;;;;ノ
     、'~''ー,、- '~;;;;;;;;;;;;;::::::::::::::: ~'、;;;;`tミ;;;;;ア;;;ri、;;;;;;;;;~ ' -、'、;;ヽ、;;;、ヽ彡;;;;;;/;;;;r";;;、;;;ヽ
   ,r'"'',、''~;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::::::`、ヽ;;ミ;; |iiii i;;;;i i;;;i、;;;、、;;;;;;;ヽ;i;;;;)i;;;;/彡;;;;;;;;;;;r'~i;;;;;;;;ミ,,,、-'"
   / ,r~;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::::::::::ミこミ彡 t;;;ヘ;;;t t;;tヽヽ、t;;;、'-;;;;;;ー、 ~' 、;;;;;/''i i;;;;;;;ミ' 、
  iヽ/;;::::::;;;、-ー;;'''' ~~~~;;;~;;~'';;-、ヽこ三;〈::(;;;;;;、;ヽ、ヽ、ヽ、-'~;;;、-ー-zr''  リ;;/ア' ノ;;;;;;乙ヽ
  t;;i;;;;;;;;;;r" ,, ::: ;; ヽ::::: ;;;リー;;ヽ:t;;;;;;;ヽ;;;t:::'t'''ヒテ,、;、(;;;;~',r'''モテン彡   |/"''r";;;;;;;;;;;;;、ヽ
   tt;;;;;;;ノ :(ノ  ;;リ   ,, リ   ヽ;;;;;;;;;; 、;t:::::~""";;;| ,i彡";;;;;;"      、,,ノ'イ;i、;;;i;;ヽi);、,,
   ヽ,ゝ' ,,   ;;;/   i| i  ,,,, 、、i t;;;;;;;;;;;;;; t:::::::;;;;;;;;;| i  、,,,,    ::::  ,    ::リ::)ノ;;;;;;;t~ ' -、
   /,,,r",, ,、:'r/ー-、;;;;リ-i ~   }ノ'i;;;;;;;r'''" ヽ::::::;;`〈 ヽ,r-' ヽ  ::::   i"   ::":r";;;;;;;;|;|:t::::::::~' 、
  /" /  ' r;;i"  ::r';;;;;;|' ~~ f:i; ヽr'  ,,、-t:::::::::,,`、,,,,,,,,,,_       ,'     ::ノ;;;;;;;;;リ;リtt;;;;;;;;::::~' 、
. /-、/,,,,,,,r::/;;;i '''''ー::/;;;;;;;;t rー 、:i ::::リ::::: `ti;;;;;t:::::::i` '''''''''"`}    r':彡   r";;;;;;;;;;/;::::::ii;;;;;;;;::::::::::::
. /  i   ):/--ir⌒j:/''"~' 、t'ーー':i;; ヽ::t:::::::::r'ii;;;;;;;;t::::t、,,,,,,,,,zソ   , ':::::彡 ,、-'~;;;;;;;;、-';;::::::;;;||:::::;;;;;;;;;;;;:
/''''' i'i⌒) /  {, ̄ノ    ヽー't'';;; '-リ、::::::|;;ti;;;;;;;;;t:;;;;こ二ン  /リ:::彡r";;;;;;;;;;;、-';;r"::::::ミ::ii;;;;;;;;;;;;:::::::
こ),rt二r'"   ~~        t;;;;   `t::/;;;;ヽ;;;;;;;;;t;;て   ,-'::::: i ,r";;;;;;;;、-';、-'":::::::::::::iリ:::::::::::::::::::
ー''"                 ヽ:::::  ::t;:;:;:;:;:ヽ;;;;;;;`;ー-- ''"::::: ,、-'";;;;;;、-' '";;、-';;;;;;;,、-'//;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
                    ~'-、;;;;;;;ノ;,、-ー '''ヽ;;/:::::::::: ヽ,、-'";;;、- '"";;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/-、'''' ーー-、
                  ,,,,,,,,,,、 -ー'";;;;;;;;;;;;;;:::リ;i:::::::リ::)r";;;、-';;;;;;;;;;、 - ー ―、ニ二二__)  ,、 -
                  | ○;;;;;;,、-';;;;;;;;;;;;;;;;:::;;;;リ  ,、r';;;;;;;、-,,ー''__ー- 、''''''ー――――――''~

152 :埋め:2014/05/05(月) 00:46:27.72 0.net
                            /l|     ヽ       /|////   ,,,、ィ__
                  ,、- ーァ ,、-ーァ / レ') ,,,、 /|      /    ∠  7" ,,,,  〈
              /l| /|レ'" / /  //  / ///ノ  j ハ   //'ァ  /  / ,r´ ノ  フ
           /| (  ( | |  |/イ  ゙"   "// " ´  ノ/ l|   " / /   フ ゙イ) ,、 '´
           /  ヽ|  ゙ヽ           シ彡シ  ""  / ,/|  ∠ ∠   ,、-}_  ,、-'
          ,、(    ゙'ー-   ーミミ''''"ミ、 ミ三彡彡 ,、",ノ/ / /  /  フ  ∠´
        こ,,,,, 'ー、   ヽ;;;从" liiヽ  ヽ 、 ヽ ミ'ー、ミ、彡ー'彡 ノイ/  r''"  ∠  /      ,,ィ
        ,、-"、 ミー、こ=ジミミ゙""ii从 ハ;;ヽヽミlll|lll )ミ |ll|彡彡'∠,/  /     ノ ,>  ィ,,、-''"/
        \  ミミ 二ンイ⌒`l、,l|、、,,,,,゙ミヽミミll|l|jj''} j}リ...//'''、彡- //"      //,ィー'"_,ィ /
        ltヽ、 三= 、シシ々::ノ;;ミミ≧ッミ从/,,,ノi l|_,从ッッッツ彡= /"       /,,''" ,、ィ/ >
        |ヽ 、 三彡゙'  /''''ャ';;;>-t丐'''')ヽ::人::.ヽr't弓'-、彡}ミ '''<   ,、 '"'",、ヲ" レ" /
       ヽ' 、ミ 、こン' /   '''''"""´´´/  , 'ヽヽ`゙゙"''''゙゙ ',ミ ''ヾ  /  / フ ,r、/
    (ヽ(::(ーミ三 ミシ ,イ}     ''"::::::::::''"::::::y':r'}:::ゝ〉:::::    lミ ミ゙''  '//|/   / /     ,イ、 '"7
  (`''-:::::::::: ("" 彡彡'"l|    :::ィ::::::::::: ::::''"`''''゙;;'、`':::"    | ("     |/    / >  /ー'_,, ィ /
  /::::::::::::::::ヽ、>ー''', ィィ 〈      :::::'" :::'"  ..:;;ッッ;_       リミヽ         / / /",,,イ /,/
  マ:::::::::::::::::、之,ァ /ii''キ:: '、       ''"  ::::: ,、''"-ーー...ヽ    |)l        /ノ_//,ィ'´/レ'/  ,,ィ
   >:::::::::::::、之''"| l|(:::ノ゙''ミ        ::::::::::::::;、 '"":::ヽ    j _j        // ノ. イ/ ,/ ィ'" / ,,ィ
  (:::::::::::::::::::`゙'''フ入'ー '" ),         :::::::::;r'´ ;;;;;;;;;;;;;    |ミ)        |/ |/ ) ,/,/|/ /,r''/
rー 、 ヲ;;:::::::::::::ノノ  `゙''ァー';;;;ヽ...:::::: : : : ::::::::::::: : : ;;;;;;;;;;;;;;;   リ、;Y        ,,、- ''"フ/ .」 フ //ィ''"/
`'ー、`' 、(::::::::::::::(_(((--(::: ;;;;;`'' 、:::::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::/l|:l;;l     ,、-''";;;;;;;、 '´// /// ∠
                                                     /,、 '"´

153 :埋め:2014/05/05(月) 00:47:25.56 0.net
                                               ,、-'ア
           l| :::::: ..::::::::::::::::::: : : : :. . . . .: : : : : :::::|           __,,、-'"  (
           / ::::::: :::::::::::::::::: : : : : : :  : ::::::::::::::::::::l          / ,、、ァ /
           / :::::: ::::: :::::::: : : : : : : : :  :::::::::::::::::::::|           //__ / |__
      __   ,' ::::::: :::::.....:::::::: : : :  : : : : : :::::::::::::::::ヽ           |//__  _ /
    /|,, ヽ';;;、 l,l :::: ::::::::::::::: : : :  : : : ::::::::::::::: : :::::::::ヽ           // //// /|
ーャ'''ー、|;;;;;`'、l;;;;; ;|`ヽ:::::  ::::::::::::::::::      :::: :::: ::::::::::::::::::ヽ,          //   ∠ /r"∠
 ヽ;;;;{;;;;ヽ、ヽ;;; ;;;l| Y:::" :::::::::             :::::::::::::::::::::',         //  ,ィ,,/ ,,ィ  /    ,ィ
ノヽ|;;(ヽ、;;;;;;;;;;  l|ノ;;; ニ=、::::"              :::  :::::::::'、      |/. / ,、'"/ /  ,,、-''"∠
;;;;;;;;(ヽ、ミ::: ,,;;彡||,,l|;;;ミミ、,,ヽ、,, 、- 'ヽ           : : : ::::::::::ヽ       ∠ / ,ノ/ ,、-'"  ,、 ''"
:::ヽミ二ミ ,, 彡|リ|:,y-"_,、ゝ::::::::::Y l |;;;;;;, ,,llll|ll、,,,;;;;       l|リ       ////.,、 '", z'", '"
::;,、-ー=='",二;;リミ:} ,ィ''ノ5y '''''''''ヽz'`''ー、,,,'"" ヽlll|||      ::l|.ノ       |/ /" '',, イ´'"/
ヽ`' 、ン''" シ''''/ミミ{リlllll|,イ;;,    ,,;;;;;l  { l、,, ,,,,、'l||     .::ll|i´        ,r'"/∠ /   _
:::乂二彡シ彡リ、,      ''::::::'''::;;;;;;;;|:::::{、l|  ´  `};;;    ;;l||/        / /  / /    / /  ,ィ
彡―フニ彡|::l|::ヽ        ::::::''"/;〉l:::ヽ/''''''''""/ j     ;;;; /        / /  / /    / / //
彡::/彡彡;;|ジ' 、、゙''ー- 、     :::;;ノ::::::::::}/::::::" / ,´    从/        /'"   / /  /| |// /
/::/:::::::::ノリリ从゙入'ー 、`' 、   ::::::::::::::}l:::::: /ー/    从}"            /.  |  |. /  |  /
彡彡彡シ:::::ノノ从リ勿''''''>-、,,,,,,,,,,, _::::::}}、ノ:::::/、`'' 、'''''''''ノ            / /,,,,,,|/ ,,,,, リ /
彡彡彡::::;r''"ツツツツーツ´l j `'' 、    ::::ヽ / `'''''''ー'、´     ,、-ーー '''''''' "//´´ ::::::::::::`|/ー 、
ツツ从从从::::t '、,,  ,/,r":::::::::::::`''- 、,,,,,,,,、-'     ::::`'' 、,,,,,,,,r"  :::::::::::::::::/./::::::::  ::::::::::::::::::::::::: `
ツツツYYY从l|::`'ー-- ''"三フ,,ィ:::::::::::::'''"""""'''' :::::::::::::::,、-'" ;;イrー、ヽ;;、  ;;;;;;;;;;;|/;;;;;;;;;  ::;;;; 、- - ー――
{{彡彡ツツ从リリ::::::::从从;;三;;;;;;ノ    ....::::::::::::::::::::,,、-''" ;;;;;;;//ミミ::ヽ;;} ;;;;;;;;;;;;  ,,、-ー,,'"::ー ''' " ̄ ̄ ̄
    """""''''''' : ::::::::::从从;;"'''ア  :::::::::::::::,、-''" ;;;;;;;、-''"//;;;;;、-、ヽ};;;○,、-'",,、-'' "'''从从从''""""""
                     :::::::,、-'" ;;;;;;;;;、-'"彡;;//"彡"~ヽヽ、,,,,、-'";;;;;;ヽ:::'、::从:::从ヽ;;;;:::::从:::
                              """;;;ノノ彡三三:::l |<;;;;;三ミミ;;ヽ:::ヽ:::ヽ :::ヽヽ;;;;;;;;;;;;;
                                          """''''ー-;;、ヽ ::ヽ::ヽ ::ヽll|;;;;;;;;;;
                                                   ` ""'''ー--ll|;;;;;;;;

154 :埋め:2014/05/05(月) 00:48:45.80 0.net
      ,,、 -''/
;;、-''",,、イ  /,r ''了 / 了
,,、-''"::::/  /,/  // ,/,r、-  _,,,、 -ー ―ァ
:::っ::::::/   /:/  // _/'"/レ '' "  ,、   /    wii,,  ;;
;',\ イ  / / __/: l/::: /   z- "/  / 八  l|ll|.| /::"     )::::::''"
:::ヽl|:|.  / //__,ィ l} /,、-''"|: ヽ/  / 从.l|,ノ l|| }| | /::"     ツ:::"  ...:::::::::::::::
,,、-':|  レ '''"  / l} [] °,,、-'  / 从l|||::: l| ::::',.l/:::" ::,,、 ''"""  :::;;:::;;;:::;;''"     ......::::::::彡,"::::::::''"
::っ::|    ,、-ーー'rヽヽl},、-'' "   ,,、zjjr、l|||0 l|l||::'''i.l::::::''":::::::::::::'''" ::::::;;;;;;::::"     .....:::::,、 '""::::::''"" ....::::,,
\':|  r'",、- ''"Yヽ|:l"   ,、- '",、-'::イ;;::}l|| } l| :: ::: :',ヽ::::::::::''""´   ヽ;;;;;;::::::.......  ...::::,、 '"''"" ""´...:::::,,、- '"
 ン|  | {ii  从 q ,/ ,、 ''"<:rヽl|从:::}}|从! l| l| :::;;;;;;;;'、 i;;;;/...............:::::::`' 、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;彡"::: ャ――z  ''"   ,、-、
::::::|  | ii ヽ、-ーー''//wl,|l|"::l,ノ:::V:: ノ}},,'   l| :::;;;;;;;;;;::ヽヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::''ー―――:::''"/  / ヽ;;,,, 、 <
、::/  | {ii''!, ヽ:、,,/√::::::::::ヽ从::::::::Y从}},ィ''};;7":::;;;;;;;;;;;;:::::::ヽ,ヽ、::::::::::::::::::::::.....::::lー''''" ̄ ̄"    ̄ ̄`'、
 |  / ~'' ヲ''' 〉Yヨ:::::::::::::::::ヽ}、:l|:::'":::,r{;;/リ l;;;;;;;;;;;;;;'''" ,,,,,,,`'' 、,, 、、;;;;;;;;;;;; ∠,,、 -z    ,r――― ''"ヽ ,," ,、-'
 |/    ,,、-'":゙'::、从::::::::::::::ヽ、l ::: (;;;/-'| l;;;;;;;;''" ;;;;;;;;;;;;;;  ,、、、、二≧ー―'',、 '"´,、ィ   /_ ,,,、-ー―'''"ヽ"::::
ミ ミ ,、-''"从゙'ー、0こヽ}}:::::::::::::゙'ー、〉;r":::彡'' 、ヽ,,,,,,;;;;;;;;; ,、 '" ,、- ::}:: -ー,、 '" ,、 '":ツ   /ー、  /゙ '' 、 :::::::ヽ
,、-''"从从从 、ィ::::::oヽlヽ;;:::}:::(::::..  )''":::::''"`' 、;;;;;;;;;、-'"イ:::/;;,,、-''} 、-' ,、 '´゙''"/  /ー''"/_  /:::::,、-'"/
 ̄/ " ̄ ̄不::ア乂:::::从ww、{{:: :... ('''" ";;  `"~' 、::}|::| ///::::::::/| ,、 '´::::彡 /  /,,、-''"○ `',,、- ''" ,,,/
/l,,、- ''"⌒/'''"};;;;;;;;;;;;、-''''"''ーー、〉|;;ゝ ''"   :: :: :: }ノ ;;;、-='''''く、,/'´―>''"/ /l/ /从,,,, /    / ,、 '"
 /,r ⌒⌒ ) ''''(⌒r''ヽ''ーr''""''''"/ヽ:``''''ー 、:: : :::::: リ ;;;;;、-ー'''Z">;;''""ii|―//、,从从从,、 /  __/,、'",,、-'
::/ ) (   )⌒(   )⌒ーri(、_/:::::::ヽ___/ヽ`'' ー ''´,,,、-ー―<二::Y;;;、-'ハ <,、 'ヽ ̄ くX∠  /、 }::::,、 '",、 '
/::ら,, ィ )  ),凡,、-'[――――iixx――}::::::゙'ー::、::::ヽヽ''",、 ''L}}:::::Y''''{ ̄ ̄ヽ   ,,、-'"ヽ | /  Y
了''"ゎ,、-::'''"// イノ二こて<::::つ::::::::::|~'''ー、ァr->ー::、'、|く( )ー'''''Y"〉;;; V-X''" ''ー 、_| / ッ //,,、-ー'"
''ヽ...彡彡'' l/,,,、-''"/''j" ,、-l|/ ̄ノ::/;;、-'"":::>、::::::::::::入ヽ::ヽヽ)、、,,、-'",r'')Y >、二   |/X/ / ,、 '"
:::::ヽ彡,,、 '""彡::::乂ーzz匸//ヽ /''"二三}从ラ )了ー':::hX〈 >ノ-''´。 V ゙'"   \三  ::::ヽー''"/::::: '"

155 :埋め:2014/05/05(月) 00:51:19.24 0.net
                ィ ィ、 ノ|ィ   ,,,ィ
    ,、-ー '''' ー 、/|(イ(-'"ノノ''''"イ"''''"´"レ,、-ー ''''''''
   /  死 き ヽ"(ヽツツイ,ーイ},,从ッレッッ/ 選. 早
  /   ぬ さ  ',)))ヽ)ツ;;(从Lミミミ〉〉;/  べ く
  ,'   べ ま   lリヅ从ミミ从`' 、;;));;ll|  // 死
  l    き は.  |;;;;ィノイミ从从ヽヽ"l|||  ・・  に
  l    男     l;;;イ从从从゙l|||从从l l;|     場
  ',.   だ    /|;;;|、ノ从从;;;;从从;;从ヽ    所
  ヽ  //    /l|ノ)从从l| l|l||;;l|イイ从从ヽ   を
   ゙' 、・・   /;;;イノノノノノl||l;;;;ツ从;;/;;;从从`゙)ノ― ''
    ノ>―''ヽ;;;;l|;;;|彡ノノイl|;;|;;;;l;;;;;|;;;;/从;;;;)从从之
    之三;;彡;;;、l|;;|;;;lイ/从ノ;八;|llYイノイ/;;从从ニ<
    /イ/t=;;;;;ミィ;;;;;;;;;;;`ミ;;人ィ''彡二二ミ゙'、j;;jj;;ュ;;;、)
    ((/;;|lヽ;;|、'''ィ,t;;ッ=、;;;j人;;;ィ:;ミッ;ラニ' イ;;;/ l|;;lト
     ゙之;;;'、l|;;゙, ::、` ̄´´":|"ン:::::::::'''イ:.. リ;イ),r';;之ー
     {彡;;;ヽ;;;',::::::...   ::::|: リ::::  ゙  イ;/ノ;;;;゙l|
      ゙|/;;;;;;;|゙:',:::::: : : ::; 、j_, -、:::    イ;|゙/;;;l从
      ノノ;;;;;;|:l|:', :::: : :::`゙'ー '´"    ,':::l|/;从`' 、
  ,, 、-ーz''"イリ|l|::|l:'、 : ::::::: ,;}、     / :: ゙l、从l|',::ヽ
''" ,、 '":/   /|::}}:::ヽ ::::::r'二゙゙'ヽ   , '::: :: ::l|彡 ',从
 /イ::/:: ::::/::l| }}:::::ヽ :::::..'""''   , ':::::: :: ::}::l|彡::: ll||
/"://::/ ::::ll/::::l| :}} : :::ヽ ::::.ヽ   /::::::::"} }:::|彡 ::: |||
ノ//::/ : ::::ミ/:::::リ :}}  ::`---- '´ :::::" } }:::|彡三::|}
/:/::/:  :::::/ ,,イ   ::::::\:::ー '´  :::"   :::|彡三 l}}
//:/::  :::,'    {  ヽ ::ヽ    :::    ::リ::::彡 l}}
イ:/::  ::::リ'ー、,,   ヽ  \::::',彡  /彡   ::/::::彡  l}{
l l|::::   ::| " `''ー、::ヽ、  '、 l|  :/彡 ,, 、-/彡彡 ミ}}
、ll、;::  :::::|::::ー、:::::   `゙゙'''ー'、 /ー―´   /彡彡彡ミ;;
::`'' 、、 :::: |           y'::::''"    イ::::彡彡三ニ

156 :埋め:2014/05/05(月) 00:52:58.92 0.net
_    ,、-'t,,、-、_/|                              、   ,,,,,,、-'"t     ..:::::
)  ̄ ̄        /                   、,,ni、rj、,,r、,     r' ~~~     `'ー'| .:::'' ..::::..'''::
  の 歴 真 こ 了                 (レ'"     ~''-,   i'~  ラ 屠 最   |.::: ,ry'''i/)::
  だ 史 の の  |                 ,{''` ,,, ,, ,,,,、 从  イ,  |  オ る 強   |r'Y ノ./ー,' ::
  //  は 強 ラ  |                ミj,ミ、,iツ(Y、iirリイ''ノ、,}  ノ  ウ 者 の  |,ノ''リ ノ ,,r ::'' ::
 ・・   始 者 オ  |                'i ミ' ::~'':'、iir''イ"''〉"リ  |  // の 北  |{ ~j .リ__ i ,,'~'i ::
     ま の ウ  〉                i{,i| ;;、ti;(从ノ,_,'、''j,,イ ノ  ・・.  名 斗  | ー',,"-ー't(  ', ::
     る    よ  ,>              ,r/ヽ't`""'ミ|~ミ''''''"イ)/ー-ヽ     は を   〉}  ,、 ''~  / ::
          り /   ,, 、、、、,,、r-ー――r―';/'"i |t " 、,j,/" ''/イヽ' 、;;;;i          /'i/)ヽ'"  r' ::
          _( ,、-'"::::::::::::::::~' 、''"""''ヽ|;;;;'i ,、'":ヽ ー==- ,i':::リ;;;;;)'ヽ,|        ,、-'./ー,':::::  / ::
        _)  (;;;:::::::::: ::::::::::::::::~'ー、三ーヽ;;t  ::::::'、"、~ /:: ::リ|ii;;;| ,t|,、-'),、-―、/'リ ノ ,,r::: / ::
~'''''i  __(    ,r'~'''''ー- 、、;;;;;;;::::::::::ヽ,三=::;ヽ ::::: :'''''''":::''::: :::リ;;;;ヽ"::ヽ ,ry'''i/) ~j .リ__ i ,'~'i ::
  |/        iリ ::'"    ::::: ::::,~ー、 ,、ー、 ,i;;`'、;;;;,、、、、 , -、 ,ー、;;;;;;|ir ,r'Y ノ./ー,''. ー',,"-ー't,i  i ::
       , ー、 ,,、ー、:::   ::r'''i  /、,,,ノ/、, ノ:::::,,、 、;;r'~'i /、,,,ノ/、, /~)リ ,' ,ノ''リ ノ ,,r~''"} :::,、 ''~ / ::
   r'''i  /、,,,ノ/、, ノ:::::,,、 、:j ;;イ. /,,, //, ,r",、 '~ ノ;;j ;;イ./,,, //, /,、/;/ i ー{ ~j .リ__ i ,'~'i /:::: r' ::  r''ヽ
   j ;;イ. /,,, //, ,r",、 '~ ノ:i、,-tj r'''レ::~'/,r'"、,、 '";;;;;j、-tj r'''レ::~'/ /;ノ'=i -' ー',,"-ー't,i  ',、 ,、-'" r''ヽr''ヽ( ヽ
   i、,-tj r'''レ::~'/,r'"、,、 '"::::,〉ー' ー'' 二,,,,,,'ーリ ー(、,,,,iー' ー'' 二,,,,,,(~ ヽ,,ノ ~''"}  ,、 ''~ /''";;; ,,ti''ヽr''ヽ, ヽ
   ,〉ー' ー'' 二,,,,,,'ーリ  :::::j ~'''''''""  ,,,、-~ノ    j ~''''''"" ,,,、-イヽ ''||   ヽ /   r'::::::, '( . '、 ''t,, ', r 、',
 ,r"j ~'''''''""  ,,,、-~ヽ ::::::::/:::  :::::~'''~   ヽ-("~,)/:::  ::::~''~  t /、(:、,,,,ソ、、 ,、-"::,、 '"  ヽー',〉-.〉 |.| .i
,、"'/:::  :::::~'''~   ア~'Y'"~_,) ),,;;;; ,,,;;;  ,',,,,、ー'"   t,,;;;; ,,;;; ,,、 '"'、;;;;`''ーー,、-'":::,,、 "_、,'''' 、 {ー ''ー t,,,,ii'ー|:
: 从;;;;;;;;,,,,,,,;;;; ,,,;;;  ,',,,,、、ー'"~'ー-- ーヲ''''ヲー'i ::::~'ー-- ーヲ''''ヲ'" '、,,,,,, ,、-ー'"::::::,、'"  (  ' 、,,,、''~ ~'''''ー、  :
:ヽミ;;`'''ー--- ーヲ''''",('''"(~'ー---ー''''"-'"从:::' 、;;;;;;r、;;;;;; 、-'"'ー 、~'''''',、 '":::::::::::,、 '"    `'-、   ~';;、 '' リ:: :

157 :埋め:2014/05/05(月) 01:07:07.46 0.net
  |               |   ミ  ,,l゙r、  ::::::::::y ツツノ/;; ツ : :::: 彡彡::::≧''" ノ     リ  」
ヽ」               ヽ   ゙l :ミl |;; "ヽ:::::/イ((::"/;; i"r,,彡"彡リ彡:::之彡彡ノ、ノ  ク 了
 ヽ  す. わ こ み な  イ   ミ ミ}}}ヽ };iiY|",,((,,、ミ_ィ:::::ェ;チ―ァヲ""}}ヽニ シ,j、゙,彡 rク .「    よ
 イ  べ  が の せ ら  L    { (jミ;;r=ィッ-5ソ´ミ三::'-ー゙ー´'''''"´彡ニ彡:::)) イ l| ',ー < )    か
 ,〉  て  生 拳 よ ば  /    ゙ミ Y゙`'' "´ヽ| ;;`'''Y゙,``゙::'ー、  ;;::j:::::::::ィ::| イリ ノ,リ、 ゙',ヲ`l     ろ
 |   を 涯 に  う 砕  j     ゙t ゙{;{ /::::::::j ,  {::Y:::::::" 、 :: ,,''ノ;;;;、;/::|/,/,"ミ  ヽ,, |.    う
 |   こ. の.      い  |       ヽ',゙', : :::::イ ヽ,,,__ Y'"   ゙;;X; `;;} {;; ゙'=''/ミ゙  、,,,,ノ |       /
 |   め        て  7       ヾ: : ::::`''ー、rー''´    }; ;} ;l| ゙;; '-ー''ミ    `゙'ミ 〉      (
_)".   て           /           ', ゙::::" ゙゙ろ        {;; |;; :レ::::::l|ミ      ゙、、´゙、     /
ヽ   //           |            ', ::::: ,,ィ''ー_'''_ー;-zイ  ''' l|  :|::::: ゙' 、ハ、,, 、 乙'゙  |_  r''゙
 l   ・・             |             ',: Y :::`゙ ̄_,, ヽ;;;ll;;   {;;  l|: : :  " ゙`ツ ノヽヽ ) ´  `''"
 ヽ             _|   ;;{{   ;;   l, 、j ´ ̄' 、:::::::::||ヽ|ll;  };; ,j: : : : : :    :::ノノ ヽ    '',,/;;
  ヽ、,,          <,     ;;ヽ  Y    |',: }}""   `''ー、}};; }"  ,、-'":::::: : : : :    ',::|  ::.ヽ、、、,, ノ)
     `レ―-、/ ̄ ̄ ̄      ;;}}ヽ、};;  ,,,|::', { 彡::   ..{;; ;{,、 ''´: : : :;;、-ァー-、    l|::  ::..ヽヽ、`l|''ー、
                ;;ヽ   イノ;;;、-ー ''"::|:::} ィ ヽ:::::::.../,、 '": : : : : ::/  /   `' 、   ゙、::  ゙:::l|:::::::`゙'' 、
                  ;;〉、,,、-'"    .....::::::| ゙ヽ、,,,,,,,,_,,、-'´:: : : ::   /  |       ゙' 、 /:   /:::::::::::::::::
                 ,、 '" /;/  ......::::::::::::::l  ::::ヽ : : : : : :: : :   /    l         /  /::::::::::::::::::::

158 :埋め:2014/05/05(月) 01:09:51.21 0.net
            {  ``、`       / / /////__/ . ),   《,、、
     _______    ∧   、ヾ、ヽ、ヽ,  / ,//'''':::::::::,'  `彡 '´__彡彡" ソヽ
 ┌'`'´    ̄ヽvヽ、 ミミヾ、ヽ、 ,, ノレ''''ノ''/:::::::::::::;;   '-ニ、,/     彡}
 「         |、` ミ、、,ヾヽヽ'`'´: :/ : : l `;::::::  :::::..   ミニ : : : :   /、
 .|  お す 今  ト`、ヽヾ`;;;;;;; ': : . .. : : : ,'/ ..::::  ::::: ::::;;;,  ミ--       ミ__
 |.  わ べ. :   ト、 ミ| ';;;;;  ` .:::. :::/,,,'':::,';;;;,,,, ,, ;;;,,;;;;;;;;;..... ヾ、、、     --ヽ
 |.  る .て. :   ト、、、.|  ;;;;,, ;;; ;;;;;, ', ;;:::,、,`l!',',,,,,,',,__'',,'',,::::::.. Y___     、ミ
 j   !! が .:   | ゙} ミミ , ;;;;;;;,, ;;;; l、ノ:::;ヾ ヽ/ /ヘソノ-−':::::::::..... ゙、、___ jヽ、ヽミ
 ヽ         j  ト、ヾ| ;;;、、'゙ヽヽ;;;! 彡彡;; ゙゙゙゙゙゙゙゙゙̄``::::::::::::::::  ト- / ヽヽ彡
  l__      /  ヽ | >,-、ソ,-;;; :::::::::::::::::::::     ..::::::::::  .| /´`´ .|ト
   ヽ---、, ' ̄    ミ, ヽ彡'-';'''; ; ;' ::::::::::::::::...     ..:::::::::::::::/' |/:::丿 ...::;l |
              `、l!   :::::ヽ :::::.......-っ    ::::::::::::::::::/   ,;;' -- '/ヽ
               ヾl!   :: ヽヽ '´:::::/     `ヽ:::::::´   lヽ__ / ミ
                ヽ|! ........... ヽ::::, '       :::::::::::.   |:::::::: }}/ ,
                 ',  :::   ,`-_'_______    :::::: ::::::.  ,'::::::::::.. 彡,, /
                  l!  ::  /´´   ....`` ::::::::: ::::: l!:::::::::..  `>彡
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                    l! :: ヾ'   ヽ:::::::::::::/    /::::::::::::::
                    l!   .:::::::::..        , - ´:::::i::::::   /::::
                     li   ::::::::::::::::.   , - ':::::::::::::::::i::::::  ヽ:::::::
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                       ヽ ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i::::::::::::::  ,'::::::::::::::,

159 :埋め:2014/05/05(月) 01:10:56.46 0.net
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        /'''""彡;;;;;;;;;;;;ヽー"";;;;;;;;t''ヽヽ、,,
       /''"彡彡 彡"'''三;;;;;;irー、;;;;ミ ミ ー、
     ,r'//イイ彡シ,、-'"彡三;;;;ミ;;;;ミミ ミ i |;tヽ
     /;;彡彡 "i;;;// /"从i")ミ;;;;ミ;;;iiiii|||||;;;i;;t;;i;;|ヽ
  `'ー'イ;;;;彡;;/;;;;ii,,,,,,/ii/;;;;ijiiiiレ|''"ヽヽ| ,,, ,,,,,|ii|;;;;;;;;;;;、i
  `'フ;;;;;;リ|;/;;;;i;;;;iii/;;;|ソ;;|冂ソi ̄ ̄|||;;;;|jiii| |i|''|ト、;;;|リ
  ,、-';;;、-'ヲii ̄~//;;;;/i;;;ノ_/;;/――ノ|ノ-|、;iリ;;|iii、,j;;;リi
 ";;r''""ノ;/i,,i|ノノノノ",,ii;;;、、 -'   ー--i、|、,ii;;;t、;i,,i、i
;;r"//;/;;ノ/ノ-'"ー',ゝ=、"    ,、ィ'=、 `' };;W;;;;;;i
" r'//"";;;;/i;t ッr'"t;;゚;リ`'   ソ´ t;゚ノ '"リ;;;;;ii;;;;;ソ
 |/i'//";;;i,リ、;;;i;;;i  ` '''''"    t'、,,, ̄~  i;;;i;;;;;|ノ"
 "i/ノ;;;;;;;;;;;tヽii;;;i;;|        ,,づ'     i;;;;;;;;リ'ノ
  |i;;;;;;;;;;;;;;;;`i|;;;;;;;i       _,,'、,,,    ,i;;;;;( |
  iヽ||i';;;;;;;;;;;;|;;;;;人      "、,,,,_ノ    /;;;;;;|リ
   リ||ii;;;;;;;;;;;/;;/;;;t' 、      ー    , ';;;;;;;;;;ソ
   /ノ;;;;;;;;;;;;;//;;;;;;;;;i :~' 、      ,、';;;;;;;;;;;;r、-、
  ,(||ii;;;;;;;;;;;;;;;;;;i;;;;;;リ   ::::::~ ー-- ';;;;;;;;;;;;;;;;ノ i t'ヽ、
,r'",,,,)、、;;;;;ii;;;;i;;;|;;;ノ        (;;;;;;;;;;、 '"  |  t ヽ,
'''""/  ヽ、、tt、;;iミ           (ツ|i    i|  t  t
  i   イi|   t,         ,,, -'" |ii   |` |i  リ  t
 ::::::t  リ   ,,,、 ゝーー-zー'''''',z'"   リ, ,,||/  リ ノ  jゝ,
::::::::::::t ヽ,、 '" ''''""~~~  ,、'"   〆///'"   ,y"" r" |
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::::::::''/:::  ~ '''' ー 、,::::::::::::::::::::::::::::::;;、-'"" :::::  ii/ ,、'"  " | i
" ノ:::  ::::::::::::::  ~''''ー---ー '''"    ::::::"  " "   "

160 :埋め:2014/05/05(月) 01:11:59.50 0.net
                       ,,、- =ー -ーzzr-zz,,,,  )ヽ -、
                    ,、-'r(  <(( ((( (r"ツ~''" )) )
                  r"((`''~((( i,,  、,,ー、 、(ヽ r'~"、,, ⌒z)、
                 ,r(、,,  ,,,、--'-、ミヽヽヽ`ヽ、リヽiii}|||ヽi、(,、-'"ノ
                (i、ミ~  彡三互ミ三ミ\iヽ)::ソツjiiノノリ))''""'ヽ
―――――――、    (((ミーーン"彡,、 '"""'ヽ、)ノY)ソソツ彡シリノシ~=、レ
 海 追 ケ こ  \   (互三,、 '",、 '彡"≧;;;;))y)彡ヽ≧彡ン''"ツヽ"ミ<"  ,r――――、
 を  っ ン の   |   >シ/"//彡'"/''"" )'  / ミ三彡彡彡≡ ミ r"       ヽ、
 渡 て. シ 女   |   (((j// ,イr"/ / ,,  ,;"     ミ三彡 了三ミ、ヽ、|          }
 っ.    ロ. と   ヽ    ̄it// /|从|| リ:: ::' :::'"     ミこン",,r、ミ~:::' 、 |  バ  オ    |
 て.    ウ      )     ',ii;;|、|从|i|リ {'ツ,,,,,、 -''''' ー- ヽ;;彡'"i:|;;|,i, ミノ           |
 来    を      |      'ツtシモモz、t r":::rニモヲ戈   }'('i リii| ミ、|    ッ  レ    |
 た.          |        ' ,`' ::::::リ'i ~':: :::::、:::    jリシノ,/'ii| ''ミj            |
 //          |         t"::::::ノ      ~"'    イ,,ノ:::t,, ii 、|    ト  は    |
.・・          ,/         t ::(__',,、,,)       /::::: ::::|i| || iiヽ   /       (
         ,r''"            t ::::::'、-''       /:::::::  :::ji } j j |  ・       _ノ
        ,,ノ'              t,  r' ''' ー 、    r'::::::::::  ://,rr、(, |         /
    ,   ,,>―             ,,、t  ~~~~'ヾ   , '::::::::::::::: ( ((((r''"~ヽ_    _/
 ̄ ~~~ `'''"            ,,、- ''":::::::::t(::,    /:::::::::::::::   ヽ 'ソ":::"ン)i \ /、,,,、、、
                 ,r''" '"彡  ::::::::'、,,ヽ'' ,、 '::::::  /:::     /:::""彡 r"彡:::)'" :::;;;;;
           __,,,,,,,,, 、、 -ヽ、<  彡 :::::::::::t`~::::::::::   /::::  , "  /"::"::::/X彡:::/::: ,r''' "
    ,,、 -ー''"~//:::/::::'"/:::ヽ,< 彡i:::r"::::ヽ ヽ :::::  /::: ,ノ :::r":::::: /ゝ>彡/::: /:::::
 ,、-'"  :::::::::r"r":::r'"  / :::::::Zヽく、,iキ|::::::::::::t ::ヽ ::::/:: ,、'"  ,r'::: :::ノC三ー-/::: /::::  /
//:::::::::::::   / / /   r"::::::::;r'⌒)::~'ー、,|ii''ー、ノ :::::tr、-ー''''""'」,,、-ー'(8 三,/イ~'/::::::  /:::
i |::::::''"   i i  ii   ,' ::;、-'"(⌒)::::  i":::: ~''=,、''~'""  ,、-ー''''''''''''''''ー 、ミノ//-/   /
ヽ,ヽ,    i i  ||  ,,、- '" :::(⌒)::::   リ:::::  r";;"   /:::(~~)::::::::::  ::::::~' 、非ミミ,,,/
  ヽヽ   t t り'"::::''"    ~-"   リ:::  ,:""   /(⌒)::::::::::(⌒)  ''":::~' 、ミ)、ミ三彡
   \\  t Y( ̄ )"   '"~     /ヽ、 ,,'::  ,、-'/:::::::::::::(⌒)    (⌒) :::::::~' ,ミマー'"
    iヽ,ヽ, t '、ヽ レ'"        〈   `~~~  /::r'''ヽ:::::::::::::::(⌒)    (⌒):::::::ヽヽ彡

161 :埋め:2014/05/05(月) 01:13:05.64 0.net
           /";;;;;;、、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;彡三三二り
          (;;(,、-'''"三;;;;;;;;;;、、、;;;;、;;;;;;;;;;;/リ/;;;;;;;;;彡;;;ヽ'';;;;;;;;''"彡 三;;;;ヽヽ    男 胸 .生 お
         ヽ、;;;;"彡,、 ';;;;;;;;)'7;;;;/~Y~'' 、、リソ~''ヽ''ヽヽ |;)|彡;;;;;;;;"Z二二;;;;;;リ    を に き れ
        ~'ー-y//"彡";;;;;;;| i;;;;;i | |i|    :::: リ リリ リリ| 彡;;;;;;;;三ミミミ;;;;>   .殺 七 ね は
          //"/"彡三;;;;;リ t;;;;ti ヽ, 、   ii  / // /;// ろ;;;;;;;;;彡;;;;;;;;ヽ<    .す つ ば
          |(tii,、'~ 彡;;;;;;;、 ヽ、t、 ヽji,, i リ"/,, /"/// 彡;;;;;;;;;''~~ヽ、);;;;;;;;    ま の な
          ,,,r'"彡'了;;;;;;;;;r'、--、,,,,,'' ii リ r"","、、 -ーー-ゥヽ;;;;;;;、-i;;;;;;;;ミ;;;;ミ    で 傷 ら
        `''ー''/;;;/;;;;;;;、;;;;t`'-、-モzチ';;t tz(;"zニ竺'ン''",,  |;;;/),|L,、、;;;;; ;;;_   は を ん
          /;;;/彡M;;;;ii;;;;;t  `~~~"":ri~'シ;;;;;;;:::""""::''"  リ;/´ ,r'" ,、~'''-、、  ! ! も !
          |;;//;;;;;;//;;;;;;t、;;;t  "::::ヽ |  :::::::::    ::   i/ ⌒t  ,r'~、'"  ヽ    つ
          Y/;;;/;;;川;;;;;;;ヽ;;t   '""、|、,,  ヽ    "  r"-,,rー' 、:::::      ヽ
          i;;;/(;;i;;;;M;;;;;;;;;;;;|:t   ::::ゝ、,,、 '"       /7`,,   `' 、:::      ヽ
          ヽ| /;;ノ/;;;;;;;;;;;;;i::ヽ   、,,,、:::",,,___,,,,    ,、-"、"     `' 、:      t
           〉"、-';;;;;;;;/W;;;;i::::ヽ   `~:~~"",, ̄    ,r"'  `' 、     `' 、,    i
- ''' """"~~"" ''' ー'i";;;;;;;;A;;/, iy;;;;;i::::::ヽ   ~''''''''"    ,,r';t'"    `' 、        ,,i::リ''-、,
 "~,、,, ~   ,、-'",|;;;;/;;//;;レY;;|;;;;;;| :::::ヽ  ::::::::::   ,r"'''"ヽ      `'、   、 、、  :;ノリ  ヽ、
''"、-ーz~>-'"、-'" t;;;i|;;i~|i;;;;;;||;;i't;;;;|   :::ヽ、 ''''''''': ,,、-':::t"   \         ヽ,'' ,r"i h  "|| ~'' ーー- 、、,
,、 ,,、-'"" r'"   /ヽt,/t;;;;;;itt;;t"''|   :::::::~~~~~:::::::::: ヽ,    \  ,,  、,,  ':::::: j ソ/ j、、 ,ノノ       ~
//i  <,    ,/   /ヽ ' 、;;,,,ヽ、    ::: ::::::::::::::::::  ,ノヽ,  ,,    "'':,, "'',, ,、-"ソ'/ /j  ~ ''' ー- 、,,
/;;;;;t  ヽ,   i   i     ~  ~''   :::  :::::::::::::: '"    "    `  "" ""  " "         ~

162 :埋め:2014/05/05(月) 01:27:00.16 0.net
                                         _   _
                                       / / ,/ /  __
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  i                 ( ,、-'|;;;;;;;;;/   ―=-、i,,,(/''|;;;;ii;// ::: / ''"::::~'t;ヽヽ;;/,、-'"
、―'   だ  血  て      L(::::(|;;;;;;;/     i从,,二;;;;;、';;、/'"ii||| :: :::::::::::::::::;;;;);;;/'i'r―――- 、
 )'    ┃             /~''、|;;;;;/  ::::::::: '、""''''ー、,ヽヽ~'、ミ  ::: ::::::::::;;;;''"/;;ノノノ;;;; ̄~i''i'ァ /
ノ     ┃  は.  め     (~''''::::::t;;/   ::::::::::::: `'-、 (:・:)~'' 、;;,,,,  :::: ,,r'''~::ノr"ノノ /;;;;;;i;;;;;Uノノ
)     ┃            ヽミ、,_ y'   :::::::::::::::::::::::: ~'''ー--jヽ;;;;≧z'"" ノ"彡彡" リ;;;;;;;;();;_;;;;;_
7'     ┃  な  え.      /;t''/    :::::::::::::::''''"''::::::::::i、;;;;ミミ三'''_∠彡、;;;;マニ;ノ;;;;、;;;;////_
ヾ    ┃            /;;;;;リ:/         :::::::::::::::''" ~'-、ヽ /~''ー'z;;",,,,>";;;;;;;;ミニ="" ""/ /
/'     ┃  に  ら     (;;;;;;ノir'         ::::::::'''" r'~~ヽ,  y /::::::~'''ー'",/;;;;;;;;;;;;;;~'''ー-、、,/ /
      つ            ヽヽ t        "   :::::t~ヽ、 :::::::/、:::::::::''" ノ;;;;;;;(、ー---- 、, ) ̄
、__    //  色.  の     ,〉i | :ヽ       ,'"i' 、;::::   :::::ヽ:ヽ  ノ'":::::  /;;;r、;;;ミ ;;;;ヽ   ノ
  |   ・・            ( } |:::::ヽ     /  ~ー、'-、;; :::::)::ー'":::::::::: , ';りi;;;;) ~ヽ;)ノノ
 / ,,,,,,,,              rゝ| |i::::::ヽ    :}、"~~~ヽ;;~''ー"'ニ=ーァ"::''"/;;ノノノノヽ, ノ'
 "   ヽ         ,,、-、i":: i. |i:::::: ヽ    :::t、  :::::"''~~ );;;/'", '";;;;;;("  、  ヽ,
     ヽ/t,,、-ー―ー ' :::::  ::: t t:::  ヽ  :::ヽ::`'、'''-、 __、ノ;/ /;;;;;;;;;;;;;;;;`' ー--- 、,ヽ
      リ|  |;;;;/⌒ヽ  :::::... ::  t t"  ::ヽ  ::`' 、、,,~''' ー--''  /;;;;人;;;;;;;;;;;;、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;~' 、
      / |  Y ::: /"⌒ i::::: :ヽ t t  :::::ヽ  ~ ''ー-"、:::::''" ,、'";r'7   ~ '''' - 、;;,,    ヽ;リ
.     / /;;;;;;;/ :: /:::::  /⌒j:: :レ tt  :::::::ヽ  .....:::::::::::: //;;/ / ・  ⌒ー  ~);;)  ノ'i
    / /;/;;;/ :::: /:::::  /::::: /::  :::: tヽ:::::::::::~' 、 ::::::::'''"/r'"ノ /   >   ,,,、-''"     |
    / /イ 〉"::: ノ:::::  /::::: /|i:::: :::::.. i |:::::::::::::::::::~~ ''''''"/-'",ノ   `、           |

163 :埋め:2014/05/05(月) 01:33:32.43 0.net
           t        〉从||||iiー''";;;;;;;;ー、リリ)          ~'ー、
           了     ,r'~;;;;Lr'";;;;;、 '"ヽ ~' 、ii〈            /
   て 消     (     /ソ、;;;;;;;;;;;/:::  ::ヽ:::ヽi|   土 わ     (
   え 毒      〉     |/、,, 'ーiii~''",,,、ヽ- 、,,t:::::j   下 は     〉
   か さ     (      y,,,,='';;'"´ ;;;;;;、r'--ミ:ヌ   座 は     (
   ┃. れ     ヽ,     t'" ;;;r'⌒''yー'"   ::t )    し は     / ,,、-''"
   ┃         ゝ    i ̄:::::ノ'ーイ;;;;,,,,_ー、 彡|i |   ろ       /'",、-'"
   ┃       ,r"     ヽ、  'r=='"~,,)i'iii リ:j |   //       〉:::::::::::::
   //     r-、|        ',  i;;;;r'"~~ リ ソ:://'''ー、 ・・      _(::::::::::::::
  ・・     |           i  tー'--,ノ / ,r';;; :::L  _  __ /::::::::::::/
,r、 ,、-- 、, -'"           ,iヽ, 二~-ー, ',、 ':::::::::/ ノ/",, レ''"、~  ,、 ':::;;、
 レ"从 ;:;: (         _,, r'''~|::::to'''''"o~j";;;、 -'":::"::| ,,,,」L,,,,  ヽ''",,、-'~::::
 从     ),,,、-ー ''''" ̄ ̄::/::::. (、;;;;二=ー'''":::::::::::::::,、-''i,  |j" ,,,,,、- '":::::::::::::
 ゙〉  , '''~ '''"::''___''''/::::::::| ::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;、-ー''"/从;;;;~'''''''i'i""| i|:/ ̄ ̄
 ∫ (,,:::::''" ,r"ii .ツY""::/:' 、;;;;;;;;;;、 -ー ''""     i i|||;;;;;;;;;;;;;;||;;;;;| i|:::/
`}∫  _ノ、,,,,,,,/ニ了 ̄/,,,,,i////::::::::::::::::::::tj:::::::::::::::::::::::::| }||;;;;;;;;;;;;;;;|i;;;;;;| |/
";:;: ;:i'___(二二i|/iiiiii////     :::::i :::      i 〈t""○;;;;ti;;;;;;i /
'、t,,々ヽ==、、~'' 、ヽ| iOj//リ:::::,、 '""  :::| :::       t | t、、   ti;;;;;;i
.,r/;:;~''tt;;;;;:ヽヽヽ'yi|リ,//iソ''~      ::::| :::       '、ヽ';;;;;;O;;;;ヽ;;i
.i.|;:;:;:;:;;゚;;;;o;:;;:;:;:i |"|::|O|ii||||       :: it :::::::       ' 、;'、;;;;;;;;;;;;ヽ| 、、
i ';:;:;:;:;;;;;;:;:;:;:;;:;:;ノノ:::i:ソii|||i| ||       ::;;ヽ ::::::::......................`' 、;;;;;;;;;;;;;;;i :::"   ,、
ー、' 、、;;;;;;;;;;;、 '"::::ノ人i从i ||      ::::::;;;j ~' 、,,::::::::::::::::::::::::::::::\;;;;;;;;;;;t ::::::,、 '~ ,,
_i、ヽ,,二_,,、 '",,r"入从jノ:::::::::::::::::::::::::::;;/ (:、  ~ '''''''''''''''''""""~ヽ;;;;;;;;;'、/:::/::
  'フヽ、iii二二;;;;、-'"ー-'、〉、、;;;;;;;;;;;;,、- ''~  ;;;;};;;;:::::;;;;;;;; ,,,,,,,,,、  ,、-ー''''、~フ""/:::::::
 /、 '"~(~~~  '''、"~   ヽ,...,,'ー-、~'ー、::::'''" ヽ::    ~ 、-ー''":::::::ヽ  Y

164 :埋め:2014/05/05(月) 01:34:21.16 0.net
                                       ,,、 - ー― ー- 、
           な 昔 今 ほ                  、- ' ~:::::::::    ;;;;;;;; ~''-、 
           い の の ざ                , ''~; ; ;;;;;;;::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;  ;;;;ヽ
           ぞ お .お .く       ,、       r";; ; ;;;; ;;;; z;;;;;;;;:::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;; ;;; ヽ
           ∫ れ れ な      i;;|      r';;;;;; ;;;;rr'((t"t、;;;、 - ーー 、;;;;;_;;;;;;、;;;;;;;; t
           ∫ で は!!.     |;;;|      ';;;;;;;;r';(;;ヽ,、-;;'''";;、、、;;;;;;;;r'"ii 」ー 、)'yヽ、i
           ! は         |;;; |     i;;;;、i~t''o't;;;;;;;;≪,,,。,~'ヽ;;ノ ;ii i;;、、,;;~',、'ソ )
                       |;;;;; |     i ;;;t'、、o「"`'ー ''"~~~~~~,,,,、::-';;; ~'-ゝ;;ヽ。ソ
.                       |;;;;;; |     | ;;'t、ァo)ー- ''"r'' ,、":::: r'、~~~;;; ~'';;- 、''"*i/
             |;;; t,        |;;;;;;;; |.    | ;;;;t,ュア;;;;::://',, i;;i ::::: i;;;i ::;;;リ~i :: ::~'ア,,ノ
、、 ,,,,,,,         |;;;; t       |;;;;;;;; |    | ;;;;;;;t't;;:/;;/;、 ', i;;i :::: |z;i  ; リ;;i :::リリ : 〉j
;;;;;;;;;;;;;;;;~~~~~ヽ''''''' 、,,,,|;;;; h:ヽ     |;;;;;;;; :: |.    | ;; ;;;;;;i/;;; /i;;;t,、. i;;i ::: |ニ| ;;;;/ョリ :/;/::/::/
 """"""""""''ヽ;;;;;ヽ;;;;~ '' ー`、 ,,,,,,,,,|;;;;;;;;;;;; |    i,,;;;;;;/;;;;:::/::t/リi |;;i :: |;;;i ;; /;;/ ://:::/ /
,,,,,,,,,,,,,;;;;;;;;;;;;:::::::::::t;;;;;;;t;;;;;;;;;;;;;;;;;;~' 、二、,,~~~::''''ー- 、,,ノ;;;/;;;;:::: /ー'"'' ,イi |;;;t__i;;t ;;/;;/: //::/ i,r'|    /i
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|;;;;;;;;i  ::::::::::::;;;;;;ヽ;:::::~'' ,,z、::,,,:::::;>'";;;;;::::: /、、;;;;/:: ̄::::::::::::::~":::ヽ''〈::/ ''" ,/    /; |
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::::::::::::;;リ;;;;;;;リ;;;;;;;;;;;;; ::::::::::;;;;ヽ'>'~   ~ ' 、;;;;::::::: /:::::::;;;;;;;;~;;'ー--ー''::~~~::''y"r''ヽ;;;r"    /;;; |    /;
;;;;;;;;;;;;:::::::::::::::::::ノ;;;;、,'- '7;;;;;;;;;;; ::::::::::;;;;;r" "'':::,,    リ,ヽ;;;;/t~',,-、::::::;;;;;;t:::::;;;;;;;;;、- /彡 i |     /;;;;; |   /;;;;
::::::::::::::::''",,、-'"ー''ノ":::::::||;;;;:::: :::::::::::::;;;i;,,~'' 、,, "''  /,i、、::::: :::t;tヽヽ;:::::;;;;;t;;;;;;;、':::: /彡  ,リ;'-、,,,,,,,, /;;;;;;; |   /;;;;;;;
 ,,,,、 ー''";;;;;;、 - ",,::II ;;||;;:::::  :::::::::;;;リ iiiii::: ~'  )'"'/i:::;t::: '' tヽヽヽ、-ーt'"::::;;; j彡  ,'i;;;;~' -、'-~、,''ー+ 、,,/;;;;;;;;;;
."|;;;、-'"  -ー '" ,,,,,;;;;;;;|i;:::::  :::::::;;;/r、,,    //:ハ :::tt~' :::t、ヽ~' 、ヽ:::t'';;;  j彡  ''i;、;;,,"" ~'' -、、"""<;;;;;;;;;;
i"|       ''"";;;;;;、-'ェ-、;;;;;;:: ::;// ~'-、 ,r"t;;:::: ノt :::tt'':: ::::i;;ヽt;;;リ |::;;'i ;;;; / ;;" ;;;; i;;、ヽ、;;,,, ::;;;;tヽ i::ヽ;;~'' --
ii |      '''"":::::''"'' ~~''~~ヽ'''  'ヽ   ノ/::: t;: / t :::tt   i;;;;;;;;ヽi t;;;;;i;;; /"  ;;; /;;;;` ~'  ""' i t:::::::ヽ ::::::

165 :埋め:2014/05/05(月) 01:35:35.54 0.net
  M   i、/ヽ、,ノヽ、      i| /  从从M从/'",、、,,  ,、   /
 ,,ノ t  ノ   i"i  |    ii| |リ i't'tt、;;;;";;;;;;;;;;;、iir,わるrニヽ'=Ξ(ツ、彡彡       ,,
 >   ヽヽ  tt   ヽ  、'、ヽ殺 t;;;; ;;;;;;;骸、--、::r''~,r'~ー'ー"、, ))-ヽヽ彡,,   / ̄~/
 `|  ( |   tt   | 、、ヽt;;;;''狡 t;;;;~'-、;;,、 -ー'  ,/r''''''。z'''"-'"t,,゚ヽヽ-、)) ~~ヽ,,  ヽ、    、'|
  |   ヽ,t  r、t  t ~'ミミ;;;恐i,i,i-,、-a''" O,, i ゚ノ i,ーーー- 、rn  ~''||' t、,彡彡  t r''"  / 」
   |_  t´ t t | r"、'、~'ミ、;;;;ミ、",ノ,,、-ー ''、,,,,'t'~  tiiiiiip=''~~  i~'ツ、,、cつ彡   V  ,、-"  レ
   |   t  |i´ ヽ| ,,叛シネ、;;;;ミ、,血 ,、 -ー ''''" o   ̄ ̄ ̄了o ~'-、,t| it、醜'"シ,,、-'" ,、-'"
    |  ,,t   ,、- '" /ミ殺ミ汚iii:血;;i「C ,、 -ー'||:::::  r''''''''''''ー、  ,,,,  リ  |t罠ヽ/   /
.    |  tr-''"  ,、 ミ兇ミ狂:::::iii|||ii;;;'"~""';;;'"ヽ;::゚::: i|ii,,C==イ::: |))~'-、 cつ⌒   ,、"
    i    ,-、r"ヽ、ミiii悪惨iiiiiiiiiiiii:::::"i ::::ヽ:: :::''ー'"ii,,,, ;;ii、-'、〉Y,,;;;;从 || |、`i邪")'"
    |_   i"  "' 、、狡忌}>;;::;iiiiiii;;、、-ーー 、iiiiii||'''|iリ;;;;;、 -ー-、;ヽ(ー'r-'' |;;"虐,,,、-"
     |  t   シ死ミヽ;;;;;;;t::iiiiii;;、r''"~o ~',,iiir'ュュ、iiiii',,,,,,,・,、-ー'iiiiゝt;;;;  〉、襲ニ''"
      |  ヽ  ,、-'";;;'''";;;;;;;|:::"彡`~;;;;~~;;;;;;/ii|i::o|i'i|ヽi腐暴iii刃、、---'i, |ヒ i猥爆彡
      |  」   彡;;;;;;r'";;;ノ:::彡"ツ"/血zr"or''~'、ヽ;;; t)ミ[ o~~  o 恨 jミ>j蹂リ
       |  ,t  ,、-';;;;;r;;/i;nt:::::、,,  ",,,;;;;:::;'>'"(;;;;ノ::))-';;;; 'ーー''''''、' ーュ, |::;r'リ躙ミ
       | t   ,滅;;;;;| ;t,t、;ヽ-ー';"::iii、-'";;t;r''';;,,,'ーリ;ノ;ブチ、)、"、i-) iii' y" /i怨ヽ   、
        'ー'  ,'",,;;,、';;ヽ ,,;;;;、、;;;;;;;;:::::    ;;;;;;;;;;;;;;;'''" コロスr'ミr――':、し"ノ亡ミ   |i
          " ''";;;;;;;;;;;;;;ヽ、 t;;;;;;;;;xx,,, ";;;; :::::;;ニニニ;;;:""ゾテメ-||iC ::: リ、"恨ヽ,    | :i
  生 燃 き こ    ;;;;;;;;;;;;;;;;;;~;;;;;;;;;;;xx:ヽ、;z'、"r+-i.r'+ヽ、;;彡,,'" 'ーーヲ;;'";;|辱リ,リ、   | : i
  き や .さ の    ;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;xxxx`'''""""" ̄ ̄""":::::  ::::::i;;i ;; |从 |     | : i
  て .し .ま 傷    ;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;xxx;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,, ""彡 ::::|i":: | |;i|     | ::: i
  き つ へ .が    ;;;; ;;;;;;;;;;;;;;'、;;;;;;;"";;;;;;;;;;;;、ー '''''''''ー''彡  ::: ;;r' :: | |      |: ::: i
  た の の 痛     ; ;;;;;;;;;;;;;;;;;;' 、;;;;;;;;;;;;;;;;:: ";;;;   ''"彡;、 '"  ::: i |      | : ::: i
  の ら 憎 む     ;;;:: ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::\;;;;;;;;;;;;,,,,,,,";;;;;,,,,,,,;;;、 '"彡   :::  i''''''' ー- 、  | : ::::: i
  だ せ 悪 た     ;;;;::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::::\;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;、 '"iiii;;;:    ::  |~''-、::::  ヽ| :: :::::: i
  ! ! て  を び     ;;;;;:: :;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::::::::::::::::::::::::::'""iii;;;::::::   ::   |;;;;;;;;;i::::: : t;;;,,,;;;;;;,,,t,,_
         に     ;;;;;彡 ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ::::::::::::::::::  ;;;;;;::::::   ::::  / |;;;;;;ソ:::::  入::::::::::::'''''''
               ;;;;;;;:::: ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;  :::::::::::::";;;;;;;::::::" :::::::  / t;;;;i:::::  /、;;tヽ:::: : : ::

166 :埋め:2014/05/05(月) 02:10:57.88 0.net
                                               /(  ,rl
                                           )ー―'" ゙''´ ヽ
                                        __r"         7
                     ,、-ー - 、               >             |
                   ,、 '";;;;;;;;;,,   ヽ             ヽ           ヽ
                     /从;;;;;;;;;;;;;;: ::..  `、          __)      う      フ
                /;;、ヘiヘ;;;;;;;;;;;;;;;,,,,,,〉〉〉l          \              /
                  l{''、ヽ,,、-―=ァヽ;z-、.ノイ           )            (
                  |、゙、l(|=∠゚ヽl:: l゙:=゙'リ イ           /       ぎ     フ
                  |t゙゚=゙`三彡ニこニニミt }       /|  /|  )             >
                 lヽ。{::|`'´::´,,r==、l|||l:} |. _   / :|  /:|  )            /
                l;;;;|{:::|: {: j-、r、;;|リ:| }.ノ|:||、  ,/:::::|. /:::|   )       ゃ    |
      ,、         |;;;;|::/|:}: {ヽ  |リ'l |  / ||::`゙'"、:::::|/:::::|   /            ヽ
        ':'、        |レlヽ、ノ、 ヽ三ツ, /`::´Y||:::::::::..ヽ:/:::::::|   /             ( ̄
   、    ';:::'、     ,r''''ヾl|', :: ヽヽ ゙-ー''"/,、-ー '||~'''''' ''、 ヽ二二) \        あ    (
    ',ヽ   ';:::::'、   /Yヘl| |/ハ ,、-ー`''''''''、":´   ||ノヾ'ー、ヽ ヽ ̄ヽ  l|      ∫    (
    ';:::ヽ  ';::::::ヽ,-''-、 ,、-'ヽ::::'''"    ..:::ヽ:..、从||)、r" ::::::l |=='、 l|      ∫    rヽ
    ';::::::>ー';;、-'"o , 入~ー、l ',   ノヽ    ', ;从||'''ー   :::|. }ヽ  リ∠、_    ∫    」
     〉'´,、-ー―、'"o ゚oヽ ヽ,}.|    `゙´     l  从 、,   ::::l. ', ヽ  lリ ,、-'ヽ       (
    {/ '" `゙゙'' 、\゚、 '´ヘヽ|||::::::''"      l| l| <_r゙  ::::ヾ、 ヽ l| l:::::::::|  ,r、   r'
    / /  {::   t ハ.  l| l| l|      ....::::::/| |:::::..............:::::::l| |  イr|::::::::::|/::::ヽ/ヽ|
.   / l|  ゙' 、::::... |l: |  l|,,|| ||   ......:::::::::::ノ `ァ、,,,,,,,,,,, 、、-ー<| | ̄/::::;;;,,::::::(⌒:ミl|   l゙ヽ' 、
   l l|     :::::::ヽl | / |〉从'、....::::::::::::,、-'´⌒'´       ::::| | r":::;r'f  )(::':(~ヽ  / l| ヽ
   ', l '::、www''""ヽ ヽ::|l / | l| ',:::::,,、-'"、:::  ,、 '' }、 ̄`ヽ...  ::::t| ';:::::l,,"'、  ヽ}゙トー'  ./  リ  l|
    ヽ:r''''''''' ー-、   ',l. // |〉l.}'"    ,、 '´  〈,,、〉  }、.....  ::l|l (:::人 ヽ,,,,ノ   /   /  |
.   /r' ヽ、:::::::::::::ヽ;;;;,, j // / l| ||''''""" /     ,,、-ー-、}:::::::.. ::l|l/´'yノ,ー'´   ./  /   ./
   l l. |゙'l }:::::::::::::::::::::: ヽ;;;/  | || ..::::/   ,,、-'"ツ く,,〕 ';::::::: ,r''''゙ j } } ヽ,,,,,、 '   /   /::
.  ,,、',`''ー'ミミ:::::::::::::::::::  〉|/l/ ||  /:::::,,、 '´    j  ,,,,,_}:::::: '-ーー' ',ヽ ゙' 、_,、-'  ,、 ' :::::
 / )Y、:::::;;r  t わ)/.} '''ノ'ー、:::::: /;|彡///||:::/::::::::::......,,、-'"  }}    ,,ノ::::ッ ,,,||  | ,,r'   `'''ー―― '''"
  ヽ_ノ'/ヽ.j  リ}:::::ヽ;;;;シ}/ll //( ,,,}、|:::::::::::::''"    ,,上-ー'"彡=三ミl|,,、-'´
  ,,、-'、 r(''ー'´:::::;r-、 /}:l| /  |lll 〉ヽ;:::::::,,、-ー ''''´彡彡彡,,,、、-==、
  (   / `'ー 、,,゙マノ ノ///  |ll/  ,、 ''"彡''"三彡-ー ''"      /二 l|

167 :埋め:2014/05/05(月) 02:12:09.12 0.net
           ノ= 、、、、ッッー― 、-、-、- 、― 、
       ,、-'"三ヾヾシ―乙三ミミ\\\ミ、ヽ`゙'' 、          ,、 ー '" ̄ ゙゙'
     ゙マ´"シ 三ll|ll|彡''"""ミミ゙゙゙゙ヽヽヽ ミヾ\ヾ ヾ'、       /
    /彡三ミミ从/ ,、-= 、ヾ゙゙  ヽ   \\;;;;'、 ll|l',    /
    /;;;;/三ミミ、l|//´;;;;彡ミ;;ミミミ} l| l|ヽ、、、、ミミl|ヽ;;;;リl | ',   /      そ
   ,'////;;;;三ヲー、ィッッ--ー-、ll|゙l l| l|ヽヾ;;;;;ヾ;;;;;;;l|レl|ミll| ;}   l         う
   ,j从//;;;;,'             }ll|,| |l|;l|,l| ゙゙}}lll||l|;ィll|ッッl|l|l|l|   |         か
   j从ll|| ;;;;|、,,         jlリl| |l|ll|从;;;;;;;、 - ''"´,jl|;;;;;;l|   l       :
  リ从从;;;;;',  `''''' ー― ---l||;;;;lリl|l|l|''" ̄,, 、-ー'''"ヾヾll||   ヽ        :
  { l|ii 从 |;;| `゙''ー =ミ ,,,,, _l||;;;;;;;l|ll|-|''"´ll\ヾlリリ;;;;l|ヽlj    \
  ヽ ソ从l|;;;l       ...:::::::|;;;;;;イl||从ヾヾヾヾ゙゙゙ |l||ll|/l|l|     `''ー-ァ- ー ''"
  /ノ彡リ;;;;;;'ー,、 ,,、,,  ''"""´ ヽ、;;从从ヾヾ゙'ー、ヾミ≧;;〈〈
  /ノ,,ノノ从||:ミミ弖ミ:ッ''ー-::::__:::;;;;;;ミミ゙lwミミミミヽ`'ーミ;;;;}{、
 イイイノノ从;;',゙::::::::,' ''""゙ヽ`'''''''"´彡  |ll|゙'ーwW;;;;;;;;ヾヾ}リ;;l
  ' 、l|lV/ノノ ;;', :::::,'           l|ll||ll| |;;;;;;;;;;ヽ、l|ii|リ|リ
    ラ;;;;l/ ; ;;', :::,'   -、:::...      lリl;|ll|从;;;;;;;;;;;;;;;Yl|〈〈〈
     |ll|l/;;;;/;;', (",,、-:ァ''       l.|l;;;;;;ヽヾヾll|;;;;;;;;イ|从ll|
    ヽl||;;;/ ;;;', :゙´、∠____,,,ノ   |l|lヽ;;;;;;\\リ、;;;;;;ノミllリ
      l|;l||| ;;;;;', `゙゙'""""´´      |l|;;|lll、ミミミ゙\イll(llミl|<、
     , ''、ll;;;;;;;;;;', :`:::""´´     ゝ;;;;;;;\、、ヽヽ、゙ヽミ ミーミ、
    , " イ ; ;;;;;;;;l イ       ,、 彡ツ;;;;;;;;;;ヽミヾヽ\ヽヽヽヽ\
    イ /|lヽ;;;;;;;;;'、、::..   ,、-'":::"///〉〉lll|;;;;;;;llヽl|;;;)|l;;;;)l|〉ヽ))
     | /  乂々/ミ`゙ー― '´:::::::'" /イ//从l|ll|;;;;;;;;;;;;;リl|イjj;;ノ }}リ;;;;/|〉、,
    /ノ  //" レ゙゙゙〈::::ll|:::::::::::"  l|l|;;l从|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l|;|リ((ll|l|ノ忽ヽ/  ゙゙l
    イ  /j"|l、 ヽ ヽ::リ::::::::::::::,、-'ヾヾl||;;;;;;;;ヽ;;;;;;;ヽ、;;;(从从ミツ" ̄  `゙ '' 、
   |レ // /:::l| \ ヽ ::,、 '" /ーア"'ーミア::>ー'''" ゙̄"´,, 、-ー―― ー―- 、ヽ
  /  |::| l::::::|l \ >'"/"/::/",、-'"      ,、-''" ´,,、 -ー―――― ー- 、 ゙
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168 :埋め:2014/05/05(月) 02:13:18.75 0.net
                  __         __
    r、 ,、-'、,       i~|,,| i/|.     i~|,,| i/|
 ノ'ー"  '"  ' 、     ,,,ノ   /    ,,,ノ   /
"         ~'ー-z //レi"| | [][]////レi"| | [][]//  ___ノーヽ、
            〈.      |/.  //,     |/.  // iヽ|
     は      |   ((('ー''"""~~ ~~'''"ー、       |
.            i  ,r''彡 ;;;;;;;;;;;;(;;彡'''ミミ~了    ノ    あ
      っ.     ヽ jii彡彡''"~'';;;;;;;;;i)彡ミ ミミ;t    ヽ
            (,r'r'';;|,,,r'"彡三;;;;ii;;;;彡ミ;;;;ii、)〉、   |    は
     は      /iゝ;;;;、;;;;;|'ツ、r-ー''''''''"〉;;|ii;;;リ))〈.   /
     //     ,i )|;;;;;|ミー、i|itt=ニ三彡|、||;;;;;;;;;;;|  /     っ
     ・・    ,r'"フノノリ从~从)u |j,,,ノ)rr=,<ツ;;;A;/"从~'ー、
         ,,( ,r'~ツ/;;rr,,ノt';;;;r'',,つ;; マ'゚""''|//ii-、从,,ノ L___
ヽ,  ,,、-ーー 、r" Yii'/''iiiii"ノヽi~~~`⌒r、、,,):ij ,r'iリfiii、,,~' 、~~'''''' ー - 、 ヽi"'~
 レ'"       ,、(ァiii, (|〉;;;;;;;;iリ ij ,r==::ー'"|( リ/iii ii ヽヽ~'-、   :::::: ヽ
        ,、 '了;;リ;'''|i〉;ッiァ、;;;`t. i' Y''ヽ")j /r"iii~'-、~ヽ i ~''' - 、  ヽ,
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 /'"       ~'''=-;;;ー::::::ii| t  ::: ~''i"  t iii ii iii|iii ii/   ||   ヽ :::::
. イ:::::......   r====ヲ;;t、,, ,,r ::::''  :: ::'"|ii~  tiiiii`iiiiiiii iiii   リ     ~'、:::::
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ヽ、、::::::::::::''''''''~''ー、;;;;  /     ::::::)"iiii";;;; i|iiiリ))iiii~ ,,,~'ー- '''''''"
'""ヽ::::::'"    ~', ヽ;;;;/      ::::/iiii ii iiii i:::iiiiiiiiリ(~~:::::....       :::::::::
   ::::::      i レ       :::/iiiiiii  iii リ:::iiiiiiiiiiiit;;;;;;;;从        :::::
   ::::::     ,、'~       :/:::::iiiiii ,、-'ii ||iiiiiiii、;;;;;;;;;;;ノノ:::::
ヽ  ::::::::::,、-''"~         ノ,,,,、-ー'ii  ii|iiiiiiiiii、;;;;;;;;;ノー--- 、~'-、,,,,
.ii  ::::;、'~            /   iii ii;;、-'iiiiiiii~''ー '"ソ    /|~''ー、、,,,,,,,,,,,
iit   "    :::::::: ..::::'"    /;;::::;;;;、、ー'"  iiiiiiiiiiii  ノ   i~|,,| i/|
ii }     ::::::::::" ::::::'"    /;; ''"      |i,,、-iii ri"  ,,,ノ   /
.tt    :::::::::" :::::''"    /" |i...::::::ii::;;;;;;''"iii  iii ノ||.  //レi"| | [][]//
                                    |/.  //

169 :埋め:2014/05/05(月) 02:14:45.18 0.net
,, ii、   i;;  |;'   ;;;','','|i  ;;;;  /ヽ":ヽ/;;;;・,’・,’/・,’
ii  'ii、  ';;,’',;|;'・',' |;;','''|i ;;;; ',';',';リ|:::::/;;;,・,・,’//,、-'
ii、',''・ヽ,.’';;;,’, |;;',.’',''|i','',|i ;;;;;'・,’',';/','/;;;;ヽー)ヽ―'"
,'iii、'・,’ヽ',';;;',,’|;;,.'・,’i|.'・,|i ;;;ii~'ー、/',/;;;;;;;;、)
  iii、'・,.’ヽ;;;;t.|;;',';',';'|.|.'・,|i;;;丸ミ"ヽ/;"','・ヽ    う
ヽ ;ヽ'・,、i,,从ii|;;ヽr-| |;','〉;;;;井ミミイ/ ,、-'"ノ
;iiiヽ ヽ };;;t(();;;;)ノ | |;≧iiii;ヽ从||-从从ヽ     わ
' iiiヽ;; ''(;;;;;;)~)从⌒~'ー、~'ー、;;;_,、-'"~~'ツ )
 'iiii i〉~'-、;;;;tヒ从从~''ー 、~';;;;;ノ;;;,,ヾ~~'''〈     ら
、ミ、シ ;;;;;;;メ彡-、レ フ ,r",、-'"''ヽ゚、)彡リソ;;;;)
ミ','て iii、;、''iiァ-、r、";;;;;r",,、-ーー、 ヽ彡'",,ノ     ば
・'了"i、i人;;V''゚'"t)t';;;;;、-ー''彡彡~''ー ''"/,、z-、
,':,'((ii|ii|ii、;;;"'t、,,/,r''"彡彡'彡"、',、-'":/'"ノ彡)_
,':,':;了リ|;;;;''';;;;;;ヽ" 't;r'~'ー-'"彡''"彡::/: j川ソ/'i      _,,,
,':'"( Yit、ii、;;ii;;;;;ヽ'、 ミ三ii彡";;;;"::::::iq, |;;;;;;,/. i| __,/  /i
/  リ;;;;iレ|i、;;ii;;;;;;;;;;ェ;、~"'、~,、-'"/ノノノ |;;;j  |ji"ツ,、-'//|r" リ
,':’r"、r-;;、;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ `~'ミ";;;;rー''ノ-ir-ノ~;;|  |、-'" ,/:|  || /
/"ヽ'"~'-、;;)、;;;;rii;;;;ノ ̄::'"''-ii、~,、'"r":::::;;|   ,,、- '"ニ| r' |/";;;;
 /":::::    ´`" ´" ''"  ''"":::i;;;/ ,、-'"   ii ;;;;/.|ii|/ /|ツ
ーー-、、,,::::::::::        :::'''"~',r'" ,、-'|.  ノ ;;|  |;;;;;;;;i ;|. |"
::''"   ~''' 、;;;;;........::      /j  /;;;;;;;;|. /三|  |;;;r".| |. //|i
"      ,};;;;;;;;;:::::................../::://;;;ri三|. iへ;|  r';;;|  | レ''|  |ン
~'-、  ::/ノ~'-、;;:::::::::::::;;/::(::::::::/. |',,' | |ン;;|/;;;;;;| /彡;;|. r'彡
  ::~'-、-'";;;;iiiii||"~~~~~:::::::::::::(;;;;;|.  |',' | 〉,r"";;;;;;;;;;|/;;;;''",,|/",,、-
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''",ノii;"::iiiiii'・',;;"ii','::,':~'i,r、 i~iiii;;;;;;;;|. /;;;;;;;;|i:::,,、'/::>z'/~リ/ ,,、-'"
.:/ii '・',iiii'・';;; iii'・,・,,':"´ ヽ,jiiiiii;;;;;;;;|/;;;;;;;;:::,、':/:>";//. リ/ "
"/'・',;;;"/','::;;;iii,',・,iii",iii,/;;;;{ii ;i;i;(ヽ;ii;;;;;;;;//::/::::/;; / ヽ/|||ii|
" ;;;''・'/','::;;;; iii・,''"・iii/ii;; {ii(ii;;r" `´~::ノ /-ァ''ヽ-、'i: |i''ii iii
             /i;;ノ;;'";i;(  i::::r"ir" ソ /=///'-、iit iiii || |i ii
                 ""'' " | \イi|| ////""~'ー-iiiii| tt,,iii,,,tt
                        `" """   :::::::::~'ー、―''ー―'
                                    ~'-、~'''ー-

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                         ,,、ー '""~~~~~~~ ~'''-、
                       ,-'".. /'  レ "  //<<    い あ 困 さ
    な 大 .き           / ::::: /ri'ノii "  (~ヽr''')    .う  っ っ っ
    ん 事 み.          /  ::::::: r"ツ人ン    ヽ,/    .と. た た. 続
    だ な  た         /  ,,,、、、、;;;;ij,//~ 彡,,、-- 、,     い .ら こ け
       労 ち         r"r'"::、、、  '""ヽツ"     ,,、    い    と な
       働 は.       rニti 、,,,ー'''''ヽツ(,,--、 'tr''ニ"ニ彡       な が さ
       力         リ, '    ̄~)::)r"   ミ":::'"          ん    い
                //    ;;ッ''"(,」⌒'',"~'' ,,:::::、、、,        で
                r'ii    r"/,、 ヽ-z⌒",, ヽヽ'~        も
              A tii    `/;;"ヽ`'=zz三zz'7" 't;;|i
 r"ヽ  ,,、       /:::::|  i     |;i ii,,ゝ、_,、-''" ,ii  |;;i       ii
. |   ヽi;::ヽ     /::::::::|  t    i;| ~'' 、,,""",、-''"  jリ       ii'-、
. t    ヽ;:ヽ,,,,,,、、-'ーz=-t、r"t    i|,    ~~~    ノ/       ノ  ~' 、      
 ヽ、,,   ~' 、 ::::''";;;/~''i", ヽ;;;  j |ii       ,,,iij| /      ,、 '     ~'''''ー 、ー< ̄~
ーー ゝ、-―  ~''ー"、,'   | iii  ヽ、;;; t、wwwwwwiij"" "     '"           ~'i::'i
  ,r  ヽ、,,,、-'    i|   ヽi||;ii   ~' 、iiiiii、、,,,、、jjiiiii}iiiiii从ii        ,、-''"      |:::|
ー 、、,,,,z''   ,,、 '" Aヽ、  |t~' 、;;;;;;  ~'''ーー------ー'''"      ,,、-''"        i::::i:::::
   )  ''フ"" r" ii ヽ、、  ti  ~''-''、、;;;;;;;;;;;;::::    ,,,,,,,、 -ー ''''"            リ:::リ :::
,,,、-"-ー''"   i;;  ヽ,     リヽ      ~~~ """""                   リ:::リ:::::
、    /::   t;;;  `'   ノ  t                              /:::/ :::::
.リ  r":::::::   'ー、;;;;;;;;;;;;/   t.                            /:::/:::
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171 :埋め:2014/05/05(月) 02:17:53.63 0.net
                 /::: /       /      ::::::::::::::::::::::::::        ::ヽ
.       __      /::: i       /      ::::::::::::::::::::::::::::::,r、,,、-、    :::t  ,,、-ー '''" ̄ ̄ ''' ー、
   ,,、-''"     ~ '''ー、  |:::  t      ,i   ,r'ヽ''ヽ:::::, ==、::::::::::r"::/::::r'⌒7ーフ :::::/
.  /           ヽ,|::::: ヽ,     リ,,r〈~~〉 )::i'::::ii:::::: t:::::::リ:: i ::j:::: / ::/⌒t::/   ん あ 最 お
 / 死 そ す 口 わ  ヽ:::::  ~'''ー---i|リ ( (  |:::ヽ;::|i:::::: i|::::ノ::ノ:::ノ:::::ノ j::  /   ∫ た 高 ま
./.  ぬ. し る づ. た   t、::::: :::::::::::::ii|( ヽ ヽ::ヽ::::|:ヽ;;;;;;ノ::/:::/::::/::::r":::ノ:::  /    ∫ え. の え
i   が て の け. し    | ~'' ー- 、、;;;;i|、,,〉i r-ー='ヽ三三三r''''''''''''' ー - 、":;、-'''|    ∫ よ 名 に
|   よ    だ を の    |.       |二ir'"";;;= ,、ミ;rー、:::彡;r=eニ'z、:::::::::tt'-ー|    ∫ .う 誉
|   い.    :.    ブ    |       i 'iーii:''''''` ̄ ̄リ:::::"、::Y::::;; ii""::::::'''""ii-―|    ふ  :. を
t.  //         |    /      /こニ=7:::::::::;;r,、t⌒j''",、,,)''::::ミ、 、-ー'"二二ヽ   ふ
.t  ・・.         ツ.  /      ,リミ二ン/:::::'"" ヽ;ヽ:::::~:::r"  `'''::'ii i ' 、   ,,,,,ヽ  ふ
 ヽ          に ,/       i it',-ー'/::::i|,,,、-'"ソ;;;;;;;;ソ、"""、''-、:::|rヽミ二",,、|:: ヽ、_        ,、
  ~'ー、          <        ,i |:::::ゝ,/リリiiif",;rfr'ニニニ'''=;;ヌi、 :└― ''''":::::::ヽ  |::::ノノ――― '''"ー、
     ~'''ー----ー'''"二ニ-ー''''''''''""~~レ:::::'彡 '" "リ"ii`''''''''' """""´,,~i||ii 'iiii从从||"t;;;;:::::ヽ|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
        ,,,、-ー'''":::::::::::;rー ー、:::::::::::::::/シ  彡ツイiii`~~~~~~~~~iiiii、、i||| | iii从从ii|ヽ| t:::::::::::r二二)::::::::::::::::::::::
   ,,、-ーー''''"  :::::::::::::::::::::>ーー'、::::::::::::i 彡   jjj||||从从j!~'iii、   iii ||| iiii|||||iiiiiiii|  t:::::::::(、,,,,,,,,,,):::::::::::::::::::::
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172 :埋め:2014/05/05(月) 02:19:22.92 0.net
             |                                     /        ヽ,
   強 だ こ お |                   ,,,(ゝ'"""~~~ ~ ヽ-、,        |    そ    t
.   く. れ の. れ |                 ,r'""''rriii、iiri ii、、 ji t "'-、      |.          i
    :. よ 世 は ,ゝ                J r,,",、,,,,i(|t,,、、-、i,、::::、-、~'z     i    う     |
    :. り. で.  /                ,ミゝir:リrzッ) 、'-≠手t:::::ツリ' |,,,、,,    t         リ
      も.   / ,、-''"~~ ''ーー-、         j(( i|〉:|  'iヽ,    ::::j_riツ'}::: ""'')) ,,、  ヽ       /
ヽ、_____/ ,r'~:'"::/"::" ii:::::ー、 ~''ー- 、   ,r'"ー((ミii| '=;;;=- ::::::::{,ツXノ、_::::: ~~)リ   ~'-、  _/
        ,,、-"/~ ::'"ー、 ノ:::   ~''' 、  ~ ''''ー"、('ii)i|i: ,,,,,   :::/Kリ|了/、):::::iiii `=マ))  ノ/
     ,,、-'" ,,、z'__ ji,,, r、 十、:: ::::      ,,   ,,,,~' 、ヽ":::::~'''ー''"::4"(iヱイ~|ヽ::::jjj   ''''t_
    '--ー''フ ,/  ルー/j|. /  ~'' 、 :::     :::::  :::: ヽヽ`:::::::::'"ノ:: {itiijjj}||≧z、、}ヽY''Y''Yヽr、ミ-)
       / ル-/ j j (,/     '、 :: ::    ::: :::: ヽ~'~、~~'''ー 、 ,/::::::::::::::::::~'' -)~)Z入(~ヽ、)ヽ
      'ー ' | ,ノ |,ノ   、- ''''' ーヽ ::  ::    :: :::::::    ~''ー―、~' 、:::::::::::::   ~''::ヽ"マー芒iー、)
.         ~    ,、 '"  ::::::"  ヽ ::、  :::    '':::::::'"":::  .....       ::....:::::  ::::ヽ、iiii ら⌒)、
            /  ,,,::::'''"    ~'-、' 、,, ;;;;::::''";;;; ''''''::::::::::::::::::::     "'':::::::::::'''" |ijjj|| (~'i⌒))
.           i' ::  ,,        :::r~'''ー-- 、'''" :::::...........  ::::::      `'::......::::::リr'"i、'' ))'i⌒))
           i| :::::::|i,,,,,,,、、-''"""~~:::i|     ~'ー、  ''':::::::::::::::''"    ...........''''"" リ ツツリ リ ゝー'、
            j ::::::ti"~~      :::|        ~' 、、、;;; ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: /  ツ /ノ (  ::ヽ,
          ,,、-' :::''"ヽ;:::::::::.................:::t::::::::::::::::::::::::::::::::::~''ー 、;;;;;;;;;;;;;、、-ー''''";;;;;;::::::::: i'  (((ii (   ヽ   :i
         r"::::":'"   ヽ、;::::::::::::;;、- '" ~'ー---::、、、、;;;;;;;::::::::::::::;、-'"::::::::::::::::::"::" '" j  (((ii シ   リノ :リ
        /::" ::"    :::ノ~'''''''"  :::"  ""'''''::::    ~~~~~   :::::::::::::::"::" :::::ノシ     :)  /:::/
       ノ :::''"    ::: /;;;;:::: ::;;;;;;;;:::ii ー-、;;;;;;;;::::::::::::::::::'''" ;;;;::::::''''"::::::::::'''" ::::;、 '"ii  ~'ーリリ ))  //
    ,、-'" ::: ;;;;;;;;;;;;:::://;;;,,,,, ミミ/  t、     ~'-、:::::::::::::''":::::   ::::: : ::'",、 '"リミミii  )ツ"/
   ,r":::::..  ::::;;;;;;;;:::::::;、-''t;;;; ti、,,, :::、_,,ti;;;;;;;;;;;;;;;;:::::::::::::::/ノ"   ;;;; ,,、-'"iii ))))r)""ノ `'-、
  i ::ii""''  ::;;:::::::ir'"   ~''-、  ::::::i''""''i"~~~~~~~~''''::::::'''" ::::::::::: '"r'"::iiiiヽリリ  ミ  ミ   ))
  ノ| ji  ::  ::::''"::::|      ii  ::t   |      〔:::::'''"  ::::::: リ-、"、、t((( ミ ~' 、-、   )
 /j /ヽ;:   :::::  ::リ       t、 ::::'、、,、i;;;;;;;;;;;、-ー'"ノ::::''" ,,,,,、、、、,,ii ~'-、、、,,,,ー、))  ))))  ナリ

173 :埋め:2014/05/05(月) 02:20:17.20 0.net
           ,,,, ,,,、、、 ,,,, ,,,,  ,,,,,, _,,,,,,,_
       ツツ、,,,(((rレ"イ彡-''""rr'',、-ー//ー-、~'''-,r''" ̄ ̄ ̄~ヽ
       ≧从从((、、,""(((ア;;;;;;;((彡    彡 /  美 そ
     ,、'"~ヾヾミ三⌒;;;;;;;;ミ(;;;;((、r"ヽ(;;;;;;;; 彡"|   し. し
   ,、'""(''"((((( r''"~~フ;;;;;;;;r'ヽr"iii""、、二ー、シ |.   い て
  r"/ノ"((",、(;;;;r''",、-'"r'"tit(;;iii:::::..."":::~'-、) |.   ! !
  ツ"r'"ヽソi'",、-'"" ((yi(((::::入::::ii;;;; iii  :::::::、、,ヽ、.
 " {、√" ,,(((ーi:::::ii:::::);;rrrリ),',))iiiiリ||,,,::::::: ヽ::::ii|人|i,`''――― '''"
  ノミ リ ((ii"ii" j (;;;|iii,/  ノ(、 i,,Y(リソサヽ、、;;;;;; t;;;;"ミ ≡"""
  (、::::  (~'フY iii彡;;/rYiii(ヽ,リti( iitt))))りii('|ii、彡ii |ミt、アー''三""
   )j,  てjj ノ " iit(((Y"ノ,,レ ::::(,,r'"tt i'i、 j))tii 彡ii |(:: "1__シミ
  (""  ら((Lii ミツ、〈〈リ( り:::::::::j(  Y)人)iリ ゝ彡r、ミii)(、、、,,,
 ,、ゝiii:  (~ i~~'r)"''-,((,,yリ::::::::::ミ ソ:::ttリ((ii,,,,,t...t:/::::|、ii|''ヽ;;;t三
'" (,、-'ii  ゝ:::r、Y'tこ'''=リ、,,, ::::、:ミ:;;;;;;;;;、='''"""`:::/、::リ ~''、 リ;;;;ミミ
))ノ (((リ|y(:::'~it、't ヽ;モtッチミ,ヽ シ;、-tッチヲ'''" :::/:ノ:,':::__Yヽミ ミ
ノ   ::::::::iit  リ"ヽ,t:: "`"""":|  '''"""'''''"  :::リ,,,,/;;t::::  ヽ|シ彡ミ
,、-'",、 '"( `''i、,、、'"i::t    :::i  ............   :::::/:/":/;;リ'''ー-、 )'' `'
,、 ''"彡""t  |'" ノ(ii|::ヽ :::::'"、i 、 )-、:::''' :::"リ::|| jjjj 'ゝ、,, i、''ヽミ
 シツ"",r'''''Y⌒): i|::::ヽ  、・ヽ、;;'"__ ,,r   :/:: ヽ( ii/|t、;::::~'ヽノ、;;
 iii::::: ,(:: ヽ",,ノiリi,,i:::::::ヽ, `ミ'ーー'''"    、 ':::  サツ, ツ::t:''' ー-、ハ
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174 :埋め:2014/05/05(月) 03:03:16.92 0.net
                         ,,,,、 '' "",,,,,       '''ー- 、
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                  、i(ミ/,,iii  i|""i" ::::  ノノリ       彡彡 ''"",, リ
                  iミ;iii{{iY|ッ ::)、リ:::::  /''"       彡彡 '''"",, )
                  Ciリ'iiijヽ,iit :::::::: ○ r'"        彡彡 彡 ツy'
     ,,、 -ーー ''''"""~~~~~ ""'|,| ミ|t、,、iiヽ、;;j"/,,r'" :::       、;;彡 ー'",,'' ア
   ,r'":::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ti =ヽミ-'ヽ、;リ  {iii'ー- - ー '''"'"彡::ヽ辷,ノノリノ
   |~ '' ー- 、、、;;;;;;;;;;;:::::::::::::::::::::::|   :::::~~~~ii 三ー、z=モ≦ヲご,、彡" リ: ,r"//,)
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    t :::::::::      |::::::::::::   i'| :::::''''" /    ,,'''"       :::/、"ー'"t;;;   ̄ ~''''''''
ーー-- t ::::::::::     t   ,,,,,,,, リ i '::: !, '(⌒ __ ) ::::     ,::::'"_/(:: ::: ::::    ノ;;
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175 :埋め:2014/05/05(月) 03:05:40.93 0.net
         , ";;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ノ;;j;;;;;;;;;リ|;;;;;||;;;|;;;;ii;;;;|(
.        / ;;;ii;;;;;;;;;;;;从;;i;;;;;从|||||iii|从从从|ii|"|iiノ  た 修 久 た
        リ ;|"jj'|'"|"|"||"从i |リ|| iii,,从从 从|i|ir''   ぎ 羅. し ぎ
        j ;;|从|;;;;;;;i| i |,j|从iiリリ|i||从从||;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ  る の ぶ る
        ||リ从;;;;;;;;;;i||;;ii;;|;|从!!!;;;||i|;;;;;;|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ノ  わ 血 り //
        Li|;;;;i;;;;;;;;;;;;;;i|ii|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i;;;;;;;;;;;;;;;;;;、、-フ  // が に ・・
         ~''i''iiー-、、;;;;;;;;;;;;;;|i;;;;;;;;;;、-'- ー '"く、  :::ヽ・・
          ,」;;W;;ノ、,,_リ~'iヽ/"/"::''",,,、、-ー ''"  :::)__
          i、iヲiiミ、、;;_ミミt,i,("'jー彡;;;;;;;;ニ;;ヲ"  ::::}イ tヽー、 _,,r"
          ii从`'ー`='=)ミZマ::'ー-`='´''"    :::|〉ノリ,}  ノノ
.          iii从iiリ :::::〈.|:"彡::"レ、::::::...    :::i|-'' ,rt
           t i iiリ  ::::::」|   ,、;;  """""   :::/i,,,ノ::: t
          ,、'ヽii;;|、 ::::(、|" ''",, i:::    /::  / /彡 :: t
             ヽ从|:::: :~'-:'",,___   /:::   ii: /イ、彡:::::t、
 ,,、、、, ,、 -ー- 、,,、、 、-{入',};;<"ミ三;;;三z;ァ  〉" リ ノ:::::イ、彡:リ::~'''ー、
",,、-ー'''' ~~~~ ,,r- 、 ,,,rノ(};;t、(⌒ )''",、;ノ´  / ノ/ヽ::::::} ' 、,,::::: .....:::,> '"'~
"  彡彡彡;/::::;r'''  ~~~ ''''' '-、"  ヽ;;;",rー-、/彡::::}彡ヽ〈彡;;;;;/,,,、シ''"
~''''";;;;;;;;;;;;;;;/::::i", ,r'''' ー '''''''"~~ ~'''''ー-~(;;;; ;;;;;;~''、彡ノ:::彡|;;、-''"~´   ~ ''
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::::::::::: ,'`':/~'、::/" リ::: :::   、,,,    ::::::::: };;; :::  |~ヽ;;;;;;;;ソソ :::::リ::::::::::::::
   / ::::/ ::::::j  / 、,,、__リ;;;;;;)::..........,、〉ヽ;;ソ;;;;;;; :::i;;;;;;;|"ノノ ::::::ノ::::::::::::::::
.  /ヽ, ' :::::::::t:::r'、 _  タrー、、;;;;;;;;、-'"、-ー''";;;;;;;;;;;;;;リ;;;;;;;iノ   :::::从   :::::
. ノヽ:/ ~'::::/ ~'''-、""~く;;;/ ::::::::::(;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ノ;;;;;;jイi、 :::::从::::..  ,、-'"
.i ,ノ/、,:::: r'      ~'ー'" :::::::::::::::::);;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ノ;;;;;;;ソ;リ i  Wiiし;;;/;;;;;;;;
. ~'7 ノ ノ          :::::::::::::::::リ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ |   :::::/;;;;;;;;;;;;;;

176 :埋め:2014/05/05(月) 03:12:14.81 0.net
                              、    ,、、、、,,_              _
        ,、-'" ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ゙'ー、         ,,、-≧'''"≦三ミ`゙'ー、,,,、、,,   ,、-ー ー ''''"  ゙''
     ,r'"            ヽ       ,r",、-'''""三彡―ミ~'ー彡三ミヽ/
     /               ヽ  'ーミ彡'"´///;;;;//シ;;;;;;ミミ、リ彡;;;;;ミ/
   /                |  ,,、-''"ィィ ""///'"/- 、;;;;;;;l;;;;}r''";;;;ヽ/     あ
   |    顔  お  お  お  | (////ノッッ从从ll||l|;|  `'''ll、ッ彡;;;;;;;イ
   |    を  れ  れ  れ  |,,,、-彡 ノノリ//从;;;;;;リリ   u::::::::::::::゙'' 、;|        あ
   |     :  の  の  の   L// ッッ ///;;ノ;;// u   :::::::::::::::::/;|      ・
   |     :  天  顔   :  ///彡ノノ/":::ミー、,ッu ノ ィ'"/::://;;;;|      ・
    L    :  才.  を   :   |/ッッイノ;;;/ィ'" <っ゙ヽ;ゝ" {Y'∠,, |||;;;;;/ヽ     ・
   〈         の        ノ彡彡ノ;;;/)-、""'''ミミ'''=.ィ'"彡;=,-、-、;;l|ll|ヽ
    |                 /,、彡彡ィ' '/ ノ ,,-、ミ゙゙ ヽj::::::::`゙゙゙'ーヽ:ヽl|;;;;ll`'ー、
      ̄\           (/'""";ィ/ /'" イ:/ ゙/:〈、〈" ),<"  `ヽ::::/;;;;;トlll |ノノヽ、__
         ゙'ー―-ァ- 、,,、-'" ̄`゙//////__/  ,'::ノ ィ´、」゙゙'::゙"ア  U :::::::/;;;;;;ノll| \l
_       ,、-'彡 l | (;;;;;/イww/;;;;/ |''','"" ,'ィ´',/::(゙_'ー≦=ミ_   ..::::/;;;;//イ }} l| ヽ
  `゙゙'''ー- 、,,"ー=ノシノノ从从l|l|」;;;;;;;;;;;j j. j  :イノ j:::ィ''ヾ゙゙'''ー-ノ:::〉 ..:::/;;;;/" |、 lリ)
        `゙゙''- 、,彡ノノ;;;;;;;レ ;;;;;;;;;;;;;j. ",イ, Y" 〈{イ}、_ `´⌒):::/ :::/;;;;;;;リ、l||| lヽ|
             `'' 、;;ニニニl;;;;;;;;;イ( (   }  j''ー- 、''ー--'::::,'u: /;;;;;;;;;/ノ/|"|
                l;[ ̄ ̄_];;;;;/" } ,}  :}.   |゙゙''''ー-`ミ''ー-' /;;;;;;;;ーイ//从l
               [ ̄ ̄_];ィ" / ./  "   |'"´ `゙゙ヽノ  イ;;;;;;;;;;リ//イ;;;;;;/
               [ ̄ ̄_]|:::::"   ィ     l、     ,/:/;;;;;;/从ッッll|;;;;/
,,、、 --ー―― '''''' """""" ´ ̄ ゙'ー、:::::... :::'"   ,'::`''ー 、,,,/" ノ;;;;;;;ツ;;/llーl从イ}
                      ', :::::'"   ノ:::::::::::''"彡彡/;;;;;;;;;;;;ッッッ从;;;;ノ_
                           " ̄ ̄ll ̄ ̄|l'''''''''''ir''''"´ヽ< ̄\ \ー 、,

177 :埋め:2014/05/05(月) 03:13:35.80 0.net
             ,,、-ー''",、-'i::::::::::      ー 、
.    r'フ,,,,,、-'ツ/~i/~'i:::::r''",、-'"i,,、-'|::::::_r――''~'
   ,ノ ,,,、、  / 'ー"'ー"::::r''" ,、-'" ,、-":::::ヽ
  / /  / /)ノ""i从iii|、-'" ,、-':::::/~|___|  た
 r"ノ  //,、-'"iiiij;;;、iii'",、-'":;;,r-''" ,-、/
  ̄  ///    :r、、,rイ彡ノ"::::'''"// |.´    わ
  ノ/ ~/    ::ソi  `ヽ彡::ノ::::ノノ::~/
. /ノ,,r"::    ::::t t e };;r''":ノ"::::''ヽ,     ば
i::::::::r"::::::::::    ヽ~''ー'";;;;;;彡::::((::;、,ゝ.    //
ヽ::/ ;;;;、 --ーー 、、、,, ~~",、)::;;;;;;;;;;;;''":::ノー、__  ・・
. r〉 リ"" ::::::::::::::....:::,、-''";;;;、-'''";;;;;;;;;;;;;;;;;;r'"ノ/⌒)"
// r从  """",、-'" ,, ::::(;;;;;;;;;;;;;;;ノ~,、r''~,,ヽ;;;彡 u' ノ
/(|ii|;tii、it,,,、、, (''"~~"( ,,、-ーヽ;;"''''-、' 、ヽ ,ノ"彡 /|
ミ(((iミ、ー-、ミミ`≧'ー--:::、;;;;<t::   ~'ー~'"、、、-'"ノ
:i 、,、-'"::;;;;;;;;;;;;、-ー'''""'i- 、ヽiiii、t、   ..........iリr'r"ヽ,
::t ヽ;r'~、 r j,,,,,、-'ー'`'ー、i_t t从tヽミミニ;;;;;r'ノノ   ヽ
::::t'、 `tー-、シノ;;;;::::::::::::::;;;:::、;::t 、i''~'ーー'''r( t''"t ;;;;;
: :::tiii、 ヽ;;;;;;;;;r~~ ''''ー"、:::  ヽ' 、ヽ、::::::::tt  t t ::::
  tiii、  ヽ(::::::::::::::  `   ヽ~' 、;;、::::::ti ,): i ..:::
  :t ii|    ~' 、;:::::::       ヽf、,,ヽ i|イ::::: |::: ::::
  ::ヽ i   \ ヽ'''ー 、;;r 、,,r、r ヽ" ,).ii ti|::::::i|:::::
  ::::::ヽ    :::\ ヽr、/  ,,,,、-ー'''",,ノ  'j:::::リ::::::::
ヽ ::::::::::::~'' 、  :::\  `~~~ ,,,、-''"    ii/ ::::::::::
 \::::::::::::::: :::~' 、 :::::~'''''''Y''''"       ノ   ::::::::
   \:::::::::::: ::::: '、    |i     ::;; 、 ''";;;;;......
 ::::::: \::::::::::  :::::~'ー- 、,J   ,、-'";;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
 :::::   \:::::  :::::::::::::::::::~~"""r"

178 :埋め:2014/05/05(月) 03:14:09.50 0.net
       、,,r '" ノ;:;、-'"L,'・, 从从::|'・||',''||・/ / / / ノヽ、ノL
 "  ,,  ノ  /:::/  /r-"7从从i i'・,||','|;レ"/,'//)" ´
  ,,' " r'"  ,r"/ // ノii匁|ii从ii',从 ノ;;;/',/  )   ひ
,''・,.、,', ノ ,r" i、-"/,、/iii;:;:;:;;;iiiiit、りノノン'"(ゝ,,ー'"   で
,'・',' , / /,.、,'i、|','・'";:;:;:;:;ii:::iii;;;;;;iiiiit',''('),`´ ~'、ヽ )    ぶ
,'・ ;;;;;,,,/ / ;;;、-'"〉'・,・',' ;:;:;::;;;i''iヽ,';;;;|リ´~zr。、ヽ;;; t:)    っ
ヽ`  / "''" ,、-'";;ヽ、','::',ヽ iii| t;;;ヽ| iii'" ~''''" :::リ    //
','・',':/ rー '"ヽ;;;、、;;ヽ;;ヽ;;;'ヽtii`ヽヽ从j   ,,ii'",''Yiー、   ・・
,'・・/ /・’ヽ;;;;’iii;;;:::::;;ヽ;ヽ,'・,ヽ;;;; ,,,, 'iii     },"ノ ),,,
:: ) j‘’・ミ。・、ii,,ii;;iiii;;;;;r'"|,'・,','~''t;;;; ,,,,,,,,;;;;;ii,r" ,r"´ ヽ、r、,,,r'"
::::"⌒・;:;:;rー'" 〉iiii、ヽii;/ /;;;;、、|;;; 'リt|'"""/',、 ",、-'"",、-'"','・
;;;;",'・:::/   ノ、;:;:;:;:;、/ r"'"〉;;;;;;;;ヽ,f'ii ,,,、''/'";;;;";;;/ヽ'ヽ''",'・‘
:r:::::~:::/  /;:;:;:;:;:r" L// ノ、;;;;;;;;;;;;;;;;`";';;;;〈";:;:;:;;;""彡tt-r''"ノ/
:|:::[|:::i'' /;:;:;:’、;:;/ / ノ''"  ::::::::::;;;;'''ー-、;;;;;ー--、彡彡:| レ' "~
二ニ:ノ ,/;:’´;:;:;:;/ /ii獨つ;; :::''''":::::  ,、 '";:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;,、 '";;;"",、"
::;;:’/'''":::;;:::;::::::i|、r'ミミ:: ''"、r彡iiijjj''r'";:;:;:;:;:;;:;:;:;:;:;;;;;;;;;;;;;;;;;;r-ー≦、
:::::;;;:::::;;;;;;;:::::;;;;::::::'.'./L./ 」','','""",,ゝー''''~,、-ー ''":;:;:;:;;;;;;;;≦二ニ
:::::::::::::::;;;;;;;;:::;;;;;:;:;:;i  /::|,、/、,ノ',' r'",、-'"ヽ",、-'''ニ=三=ー;;二三
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;"";;;;;.......レ".. "r''"/ iiiijj"ーー - )t/"~ミ;;;;;;;;;;;;ニニ三ミ
;;;i;;iii;i;;;;;;;;;;ヽ;;;;;;;;.......ン"/ /,,、 '''~~⌒ 、)ノ⌒ 4,,,ミミミヽ、,,,,,,___""'''
::::i:t;;、r;;;::''"彡;;;;;;;;;;;;;;;;;;レ'"(( ミ~'''ー- 、,,<_ミミー、;;;;;;;;;;;;t- 、;;;,,,~'''
::::ヽヽ|;;;;彡",r~~~'' ヽ ::: :::ハミ )ー-''''''''""":::::::::: ミミ、;;;;;;;;''ー-、,,~
::::::::~' 、;;彡/ ー)、iii ) /:::::~'' 、、,'','"""::::::::::''''" ミ;;;;;;;;;t`'''-、;;;;,,,
:::;、-'"";;;;;::trr  ヽー'~ ノ''"~''ー 、''ー、',';;;;;;;;、-'"""ミミ;;;;;;;;i,,,  ,、 '"
"~~'''ツry、;;;;;tヽ、、ヽ'''~,r":::::;:;:;;;;;;~''-、ヽ、-''~~ヽ≦'''ヽ、;;;;,、-、ヽ",r'
~父r''"    ヽ  ノ,、'",、 ''' ~ 'ーrー'"~;;;;;;;;;,',','・, ,'・, ・ ,~' 、r'' ~'' -、
 ヽー、 )ー、、,、ー '~(;;;;:::::...;;;;";;;;;;/(ノ ~"'-、;;ヽ,' ,,、-'",、 '"~' 、;;;;r"
~''''''-、 )';;;;;t '・,. (;;;;;;;;;/ |;;;;/ r'~" ""'' ,,,,,、-''"-''",,、-'" ,、-'ヽ"
ヽ、、,、 '・;;; 'レノヽ:''~彡,-|/、,,'~,,,,,,、-'"~~-'''"
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