マンボウ研究者「3年前の『まん防』をめぐ [きつねうどん★]

きつねうどん ★

　ニュースでもあまり取り上げられなくなった印象があり、コロナ禍が終ったのかどうかよく分からない状態になっている昨今だが、新型コロナウィルス感染症（COVID-19）は未だまん延している。とはいえ、個人的にはワクチンが普及したおかげで以前より脅威度は下がっているように思われる。

　新型コロナワクチンの一般摂取が始まる前だった2021年3月中旬～4月上旬、連日のように「まん防（マン坊・マンボウ・まんぼうの表記も同義とする）」という言葉がニュースやSNSで見られたことを覚えている人はいるだろうか？　「まん防」とは、『まん延防止等重点措置』の略称のことである。

　3年前のあの時、私は結構複雑な心境だった。何故なら、『マンボウ』（本記事では魚類の方をこの表記で示す）でネット検索してもまん延防止等重点措置のことばかりがヒットするようになって、私が欲しい魚の『マンボウ』の情報が検索しにくくなっていたのだ。

　世の中の興味関心が「まん防」の方に向いているのはわかっていたので、検索汚染と言ってしまうのはおかしいかもしれない。ただ、今も当時も私が『マンボウ』というキーワードで欲しいのは『魚のマンボウ』の情報だった。今でこそ言える話ではあるが、マスメディアが最初に「まん防」ではなく「まん重（まんじゅう）」と略してくれれば良かったのにと、内心、思ってしまう事も（少しだけ）あった……。

　あれから月日が経ち、3年後の2024年3月現在。ネット検索では魚類の『マンボウ』の方がヒット率は高くなり、まん延防止等重点措置はほとんどヒットしなくなった。

　こんな風にネット検索も日々変遷していくのだなと、少し感傷的に―――。……いや、ならない。

　社会的同調圧力とも言うべき「まん防」の略称を巡るあの時の雰囲気は異様だったのだ。しかしながら、「まん防」の話題は一時的なものと直感していた私は、「まん防」が世間で流行る前から流行後までを追跡して論文にまとめた。魚類の『マンボウ』は巻き添えを喰らった形だったが、これもまた『マンボウ』の令和民俗として後世に残す必要がある。あの時、『マンボウ』の知名度は日本の歴史上一番と言ってもいいくらい高かったはずだ。

　流行りが過ぎた今、今一度あの時何があったのか振り返ってみたいと思う。

「まん防」とは何だったのか？
　人の記憶力ほど信頼できないものはない。まん延防止等重点措置とは何だったのか？　もう一度思い出してみよう。

　まん延防止等重点措置は、新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部改正にともなって2021年2月3日に新設され、2021年2月13日から施行された。新型コロナをはじめとする感染症のまん延を防止し、人々の生活や経済に及ぼす影響を最小限にすることを目的とした日本の措置である。

　警戒レベルが高くなると、都道府県知事が飲食店等に時短要請・命令ができ、命令違反には20万円以下の過料を科すことができる。

　これが発出されると、飲食店等の施設での収入減少が懸念されるため、3年前も殺伐とした雰囲気があった。まん延防止等重点措置が初めて発出されたのは、2021年4月5日、宮城・大阪・兵庫の3府県6市であった。

つづき
https://lab-brains.as-1.co.jp/enjoy-learn/2024/03/62116/