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穂乃果「江戸物語」

1 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2015/04/02(木) 04:34:18.26 ID:za0sRi03.net
鬱注意

2 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2015/04/02(木) 04:47:07.39 ID:za0sRi03.net
【奇跡の村編。第一章】

また一人。

明日を知る。

また一人。

明日を知る。

私には見えるのだ。

何もかも見たいと思った物が。

また一人。

明日を知る。

また一人。

明日を知る。

そうやってこの村は奇跡の村と呼ばれるようになった。

そして、また一人。

明日、死ぬ。

3 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2015/04/02(木) 04:57:25.61 ID:za0sRi03.net
【猫又の居場所。第一章】

私はこの場所が好きだ。

彼女の名は花陽と言ったか。

名と言うのは便利な物で私が人間と言えば人間は皆振り返るが花陽と言えば彼女だけが振り返る。

まぁ、私は人間の前で喋るなんてそんな馬鹿な真似はしないが。

とにかく、この場所が好きだ。

一度、この柔らかな太ももに座れば途端に眠くなり。

花陽が撫でれば欠伸が出る。

笑うその息遣いがくすぐったい。

4 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2015/04/02(木) 05:03:55.07 ID:za0sRi03.net
花陽は目が見えないらしく、手取り足取りで生活をしている。

最初はこんな夜更けに戸を開けたままでいる馬鹿な人間がいると思い。

食べ物を拝借してやろうとこの家に入った。

すると花陽が誰?と鳴いた。

誰?の意味は良く分かる。

今、このボロ屋に入った来たのは何者なのかと言う意味だ。

私は耳が良い人間なんだと思い。
迷い込んで来た馬鹿な猫を装ってにゃあにゃあと鳴く。

5 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2015/04/02(木) 05:09:47.83 ID:za0sRi03.net
何だ猫か、と普通は追い出す物だが花陽は違った。

おいで、と私とは手を差し伸べた。

その手を差し伸べてる報告は私がいる方向とは若干違ってはいたが私はその手に体を擦り付けた。

勿論、花陽に懐くつもりはなかった。
馬鹿な猫は馬鹿らしく人間に媚びを売るからだ。
それから食べ物を人間に貰って去って行く。

だが私は違う。
彼女にバレてしまったのならそれならそれで食べ物を拝借する手段がある。

花陽に懐く振りをして食べ物を後で盗もうと頭の良い私はそう考えた。

6 :名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/:2015/04/02(木) 05:15:35.67 ID:psk9RW8t.net
懐かしい
前の続きもあるのかな

7 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2015/04/02(木) 05:22:45.56 ID:za0sRi03.net
花陽はぽんぽんと自分の太ももを叩いた。

ここに来いと言う意味だ。

人間から酷い事をされた訳ではないが、人間と言う生き物をあまり信用していない。

自分よりも賢い動物は他にいないと思っているからだ。

私が戸を一人で開ければ賢いと言い。
雀を捕らえては賢いと言う。

その明らかに自分より劣ってる動物が人間と同じ事が出来る事に何故かとても敏感でそして見下しているかのように褒める。

8 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2015/04/02(木) 05:31:05.25 ID:za0sRi03.net
私から言わせて貰えば。

おいおい人間様。
私は人の言葉を喋れるし、勿論人と同じような事も出来る。
それを知らないで呑気に団子を食って一芸をする動物に手を叩いて一喜一憂する人間様如きが高貴な猫を愚弄するんじゃないと。

むしろ、毎日仕事をして金を貰い。
飯を食い、寝てまた仕事をする。

そんな、退屈な事を繰り返している人間こそ芸が無い動物だ。

やれやれ。

私がこう思った所で何も変わらないし何も起こらない。

喋れる猫がいた所で見世物小屋で少し話題になって後は人間と同じように仕事し金を貰い飯を食うだけだ。

猫も犬も猿も。
人間と同じ舞台に上がれば人間と同じつまらない日々を過ごすだけだ。

9 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2015/04/02(木) 05:36:46.73 ID:za0sRi03.net
考え事が少し長引いてしまったが私は花陽の太ももに前足を乗っけった。

おおっ。

肌が沈む。

そりゃ肌は沈む物だが何か違うのだ。

私は幾つもの人間の太ももに座った。
勿論、肌も沈んだがこれはそんじょそこいらの人間とは違う。

こう、雲の上にいるかのような気分だ。

いや、実際には雲の上には行った事が無いがもし雲の上を歩くのならこんな感じだろう。

私はいよいよこの場所で座りたくなり、不安定な足場なので体制を整えてながらも、落ち着ける格好でくつろぐ。

10 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2015/04/02(木) 05:44:33.85 ID:za0sRi03.net
花陽はふふふと笑った。

私はその笑い声がとても気に入り、にゃあと鳴いてみせる。

反応した花陽はまず私の尻尾を触り、次に胴、頭、首筋を撫でた。

人間のする行動で一つ好きな物がある。

それは嫁ぐ事。

人間はお互いにとって心地いい人間を決めそして二人で良い居場所を見付ける。

私もここに嫁ごうかと思った。

11 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2015/04/02(木) 05:51:32.15 ID:za0sRi03.net
それから毎晩、私は妻のようにここへ来て花陽の太ももで眠った。

花陽は目が見えない。

たまに私が入って来た事に気付かず絵を書いている時がある。

その時は私がにゃあと鳴いて花陽はいらっしゃいと言い太ももに向かう。

彼女の手は優しく威圧も無く私を撫でて。

暖かなこの体温はお日様の光よりも心地良く。

彼女の笑い声はこの後に起きる悲劇を感じさせないくらいにただ愛おしい。

12 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2015/04/02(木) 05:57:09.26 ID:za0sRi03.net
【猫又の居場所。第二章】

花陽「ねぇ、猫さん」

「にゃ」

花陽「名前、付けないとね」

確かにそれは必要だと思った。

もし仮に私と別の猫が二匹同時に入って来たとしよう。

そしたら花陽はきっとおいでと言うだろう。

勿論、馬鹿な猫は花陽に媚び食べ物を貰おうときて太ももに座るだろうがそうなればもうお終いだ。

この太ももは私意外の物では無くなり、猫の界隈じゃ有名になる事だろう。

13 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2015/04/02(木) 06:25:25.44 ID:za0sRi03.net
花陽「なんにしよっか?」

それを私に聞かれても困る。
何でもいいからだ。

花陽はうーんと考える。

何ならそこらにある適当に目の付いた物をそのまま名付けて貰っても構わない。

茶碗でも筆でも墨でも。

花陽「なかなか良いのが思い付かないね。ふふふ」

何故か花陽は楽しそうだ。

私の名を考えるのが面白いらしい。

14 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2015/04/02(木) 06:29:59.87 ID:za0sRi03.net
その時、何処かで鈴の音が鳴った。

辺りが涼しげな音色が響き、花陽は思い付いたかのように凛と言った。

花陽「凛・・・。凛ちゃん」

「にゃあ」

花陽「今から凛ちゃんって呼ぶね!」

凛「にゃー」

私の名前は凛ちゃん。

そう決まったらしい。
とりあえずは一安心で他の猫にこの場所を取られずに済む。

花陽「ふふふっ。凛ちゃん」

凛「ふにゃあー」

15 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2015/04/02(木) 06:33:10.62 ID:za0sRi03.net
花陽「ねぇ、凛ちゃん?私、凛ちゃん見たいなぁー」

盲目の彼女が抱く当たり前の願望だった。

私よりも外の風景を見れた方が心打たれるだろう。
それを知らず彼女は私を見たいと良く言う。
彼女は恐らく私の事が好きなのだろう。

実際、私も彼女は好きだ。
人間は私を見ては走って近付き抱き上げるのだけど、それが私にとってとても苛々する行為だとは思っていない。

だけど彼女は私が触って欲しい時に触り、抱いて欲しい時に抱く。

それに、この太ももはやっぱり魅力がある。

16 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2015/04/02(木) 06:37:06.63 ID:za0sRi03.net
花陽「ねぇ凛ちゃん?」

凛「にゃあ」

それから、彼女は事あるごとに私の名を呼んでは笑う。

盲目の彼女が私が側に居ることを知る術だったのだ。
私はこの名前を呼ばれると決まってにゃあと鳴き、彼女もまたふふふと笑う。

それから日にちが経ち、私はもう10歳になってしまった。

猫又になったのだ。

私達、猫又は人間に正体を知られてはならない。
理由は分からないがそう言う掟がある。

人間の世界にも理由を分からないが掟を破らない風習はある。
それは猫だって同じだ。

17 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2015/04/02(木) 06:41:55.67 ID:za0sRi03.net
花陽「私ね。ずっと一人ぼっちだった。暗闇の中で手探りで見えるのはいつも変わらない景色だけ」

凛「にゃあ」

花陽「でも、あの日。凛ちゃんが来てから全てが変わったんだよ」

凛「にゃ」

花陽「光を見た気がした。お日様の光。暖かくてふわふわしてて。そしてにゃあと鳴く」

なるほど。
それだと、まるで私がお日様だと言ってるような物だ。

花陽「ありがとう凛ちゃん」

お礼を言うのはこっちだと言いたかった。

18 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2015/04/02(木) 06:51:38.02 ID:za0sRi03.net
一応、猫にも恩を返すって気持ちはある。

それから、人間嫌いだった私に芽生えた確かな感情が湧いて出て溢れ出す。

あぁ、私は花陽が心地良い。

そしてまた。

花陽にとっても私は心地良い。

これはもうお互い同じお墓に入るなと呑気な事を考えながらいつの間にか眠りに落ちていた。

19 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2015/04/02(木) 06:59:23.87 ID:za0sRi03.net
【猫又の居場所。第三章】

人間にも集まってこれからの行く先や遠い未来について話合う事があるように猫にも勿論ある。

その日は私が猫又になった事によるお祝いと猫又の未来について長々と話された。

それもようやく終わり。
退屈だった時間は過ぎ、花陽の元へすぐに帰って眠りたかった。

花陽のボロ屋の前に辿り着いた時、違和感を感じた。

戸が閉まっている。

妙だなと思い、にゃあと鳴いてみる。

反応が無い。

もう一度鳴いてみる。

か細い声が微かに聞こえる。

20 :名無しで叶える物語(しうまい)@\(^o^)/:2015/04/02(木) 07:15:37.52 ID:Kd8t269c.net
ああ…

21 :名無しで叶える物語(禿)@\(^o^)/:2015/04/02(木) 08:09:23.34 ID:HZaBH18s.net
(´;ω;`)

22 :名無しで叶える物語(禿)@\(^o^)/:2015/04/02(木) 13:24:58.28 ID:xA1ooC4P.net
期待

23 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/04/02(木) 13:39:58.85 ID:tTBXi83v.net
きになる

24 :名無しで叶える物語(しうまい)@\(^o^)/:2015/04/05(日) 02:40:56.98 ID:C+aP4KcQ.net


25 :名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/:2015/04/09(木) 00:32:02.73 ID:jO122kmQ.net


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