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希「失った記憶と繋がる心。」

1 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 00:19:48.69 ID:fEmQmvNQ.net
その人を、その人と定義付けるもの

それは一体、何だろう?


容姿? 性格? 言動?

記憶? 思考? 経験?


…それとも、魂?


あるいは、その全てなのか


ひとつでも違えば、それは

その人とは言えないのだろうか


もし、それが違ったら…

もう、元には戻れないのだろうか

2 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 00:21:34.35 ID:fEmQmvNQ.net
-----


「おはよう、にこっち♪」


「…おはよ、希。」

「今日も朝から元気ねえ…」


「…ウチは、それが取り柄やからね♪」


下駄箱前で、にこっちと会って

2人一緒に、教室まで

いつも通りの、ウチの毎日



「…それにしても。」


「…?」


「アンタ、変わったわね。」

3 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 00:22:16.70 ID:fEmQmvNQ.net
「1年で出会ったばかりの頃は。」

「ずっと、回りばっか気にして。」

「すごく、奥手だったじゃない。」


「それが、今や…」


「今や?」


「こんなに、面倒な性格に。」


「…酷いなあ、にこっち。」


「ま、希らしいけどね。」


「ふふっ、ありがと♪」


「…別に、褒めてないんだけど?」

4 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 00:23:11.79 ID:fEmQmvNQ.net
「それじゃ、また後でな、にこっち。」


「じゃあね。」


にこっちと別れて、ウチのクラスへ

見知った顔に、挨拶する


「…おはよう、希。」


「おはよ、えりち。」

「今日は早かったんやね?」


「少し、先生に頼まれ事があったから。」

「生徒会はもう、終わったのにね。」


「それだけ、頼りにされてるんよ♪」


「…じゃあ、希にも手伝ってもらおうかしら?」


「おっと、授業の準備が…」


「…もう。」

5 :名無しで叶える物語(雨が降り注ぐ世界)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 00:23:24.54 ID:Rjgqj18B.net
おお

6 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 00:23:39.96 ID:fEmQmvNQ.net
-----


「それでね、その時にこが…」


「…そうなん?にこっち。」


「ちょっ…言うなって言ったでしょ!?」


午前の授業を終えて、お昼休み

今日は天気がいいから、屋上で


誘ったら、にこっちも来てくれたから

今日は珍しく、3人でのご飯



「…でも、もうすぐ終わりなのよね。」


ぽつりと、えりちが呟く


「「…」」

7 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 00:24:07.04 ID:fEmQmvNQ.net
「…考えたってどうしようも無いでしょ?」

「今は、頑張るしかないんだから。」


「…そうやね。」


年が明けて

ラブライブ本戦は、もう目の前に迫ってた

一日が、すごく短く感じて

ウチらの頭は、終わりを意識し始めてた



「ラブライブまで、後少し。」

「最後まで、ウチららしく頑張ろ?」


「…そうね。」


少し落ち込むえりちに、声をかける

8 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 00:24:36.06 ID:fEmQmvNQ.net
「…優勝、するわよ。」


「うん♪」

「ええ、勿論よ。」


今まで、このために頑張って来た

うぬぼれる訳じゃないけど

このメンバーなら、絶対優勝できる


…なぜだか、そう確信が持てる



「それじゃ、そろそろいこっか♪」


予鈴の音に合わせて、そう告げる

荷物を片付けて、午後の授業へ


…練習が、待ち遠しい

9 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 00:25:21.99 ID:fEmQmvNQ.net
-----



「…ふう。」

「それでは、今日はここまでにしましょう。」


海未ちゃんの一言で、みんなの糸が切れる


「疲れたーっ…」


「お疲れさま、穂乃果ちゃん♪」


「かよちん、帰ろー?」


「あっ、ちょっと待って凛ちゃん!」


いつも通りの、練習おわり

疲れてても、みんな笑顔でいられる

…そんな、居場所



「…さ、私達も帰りましょうか。」

「そうやね。」

10 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 00:25:57.48 ID:fEmQmvNQ.net
ドリンクとタオルを手に持って

屋内に繋がる扉に向かう


「穂乃果ちゃん達も、一緒にラーメン食べにいかない?」


「おっ、いいね!」

「いくいく!」


「真姫ちゃんも行くにゃーっ!」


「私は別に…」


「いいじゃん、いいじゃん。」

「いこうよっ!」


「いいでしょ?真姫ちゃん!」


穂乃果ちゃん達に詰め寄られる真姫ちゃん

この光景も、いつも通り


きっと、押しに負けて行くんやろうなあ…

11 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 00:26:25.44 ID:fEmQmvNQ.net
「…ああもう、分かったわよ!」

「行けばいいんでしょ?行けば。」


真姫ちゃんが振り向いて、投げやりに言う

…ほら、やっぱり負けた♪


「さっすが真姫ちゃん!」


「まったく…」

そう言って、階段に足をかける


いつも通り、こうして部室に帰って

いつも通り、帰り道を歩いて


そう、思ってた


…でも


ひとつだけ、いつもとは違った

12 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 00:27:00.00 ID:fEmQmvNQ.net
「な…ッ!?」


振り向いて答えたからなのか

それとも、疲れていたからなのか


真姫ちゃんが、バランスを崩す

重力に逆らえず落ちていこうとするその体に

凛ちゃんが手を伸ばした時には、もう遅くて





…どうして、動けたのかも分からない

ただ、ウチも手を伸ばした

凛ちゃんより4センチ背が高かったからか

その手に、手が届く


「…ッ!」

13 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 00:27:44.28 ID:fEmQmvNQ.net
それでも、飛び出したウチの体も

真姫ちゃんを支えきれずに落ちていく


全てがスローモーションに見える中

腕を引いて、引き寄せる


運動しといてよかったなあ…とか

スタントマンみたいやね…とか


どこか他人事のような考えが、頭を流れる


打ち付けられた体に痛みを感じる事も無く

…ただ、自分の体を下に出来てよかったと思った



「よかった…」


真姫ちゃんに、怪我がなくて

声は出なかったけど、そう呟いた




---そこで記憶は途切れた

14 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 00:28:18.43 ID:fEmQmvNQ.net
-----




…声が聞こえる


名前を呼ぶ、声が



そっと目を開けると

白い景色が、広がっていた


---ここは?


「…!」

声が、出ない


一面真っ白の、世界

足下には、百合の花が咲いてる


…ああ、死んじゃったのかな、なんて

そう考えてはみるものの

なんだか、釈然としない


…そもそも



---私は何を、していたんだろう?

15 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 00:28:55.13 ID:fEmQmvNQ.net
-----


「…!」

目の前に、唐突にそれは現れた



---私?


何かを、叫んでる


「     」


---聞こえないよ?


「     」


どこか、焦っているように

目の前の『私』の顔が、険しくなる


---なんて言ったの?


口を開けてみても

やっぱり、声は出ない

16 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 00:30:08.11 ID:fEmQmvNQ.net
…すると、目の前の『私』は

諦めたように、下を向いた



自分は、こんな顔して泣くんだ


そんな事を考えながら

目の前の『私』を見つめる、私



「…!」


また、どこからか声が聞こえる

何だか、呼ばれているような気がする


「……み!」

だんだん近付いてくる、その声



それと同時に、目の前の『私』が離れていく


---待って!

---まだ、聞きたい事が…!




「…希!!」

17 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 00:30:37.12 ID:fEmQmvNQ.net
-----



目を開けると、真っ白な天井


なにか、夢を見ていたような気がする



…思い出せない


でも、それよりも…



「希!」

「希ちゃん!」


「大丈夫!?」


口々に投げかけられる、その言葉

どうやら、心配させてしまっていたみたい



「えっ…と…」

18 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 00:31:19.94 ID:fEmQmvNQ.net
「分かる?希。」

「貴女、屋上の階段から落ちたのよ。」


「真姫をかばって、下敷きに。」

「…覚えてる?」


「希…」


泣きはらした顔と、目が合う

…なんだか、申し訳なくなった


「奇跡的に、大きな怪我はしていないそうです。」

「多少の擦り傷と、打ち身がある程度で…」


「心配…したんだよ…?」


「でも、目を覚ましてよかった…」

19 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 00:32:15.35 ID:fEmQmvNQ.net
だんだんとクリアになる頭で

状況を整理してみた


どうやら、ここは病院で

階段から落ちた後

意識を失って、運ばれて来たみたい


…でも、それよりも

気になっている、事があって


「えっと…」


「どうしたの?希ちゃん。」

「何か、ほしいものある?」


心配そうに覗き込むみんなを見て

こう、呟いた






「貴女達は…誰ですか?」

20 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 00:32:58.82 ID:fEmQmvNQ.net
今日はここまで

恐らく長編になると思います
よろしければ、お付き合いください

21 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 00:33:45.99 ID:bgb8LwqH.net
おいいいいいい
つづき早く見たいぞ!!!!

22 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 00:33:53.75 ID:ArXgop5v.net
おつ

23 :名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 00:34:16.45 ID:YFyqol/Z.net
ここでかよwww

24 :名無しで叶える物語(湖北省)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 00:35:21.01 ID:DO+wBqy2.net
いいとこで切りやがって...
乙です

25 :名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 00:36:55.30 ID:pUmVVyQq.net
乙!
続き期待

26 :名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 00:37:06.88 ID:b7XzU8fR.net
気になる

27 :名無しで叶える物語(雨が降り注ぐ世界)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 00:37:24.35 ID:Rjgqj18B.net
いいね!

28 :名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 00:41:16.51 ID:m3I4VR8N.net
ちゃんと完結するかどうか、それだけが心配です

29 :名無しで叶える物語(しうまい)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 00:42:42.95 ID:WET2JaHZ.net
期待
乙!

30 :名無しで叶える物語(湖北省)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 00:45:16.01 ID:tmd7jVMA.net
この雰囲気ほんと好き
期待

31 :名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 00:46:00.48 ID:NJ/wfP3j.net
いいところで切りやがる…

32 :名無しで叶える物語(湖北省)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 01:07:10.09 ID:VSg8b7H1.net
俺くん「穂乃果ちゃーん」
穂乃果「あなたは誰?気持ち悪い」

33 :名無しで叶える物語(湖北省)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 01:19:14.70 ID:OsCK+KqX.net
なんでそんな書くの早いの
羨ましい

34 :名無しで叶える物語(おいしい水)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 01:23:59.28 ID:FnF3zom3.net
書き留めだろ

35 :名無しで叶える物語(湖北省)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 01:32:12.97 ID:OsCK+KqX.net
書きためるのが早いなという話よ

36 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 01:35:09.66 ID:ArXgop5v.net
>>35
書きための意味わかる?

37 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 01:38:03.73 ID:d0y4/Kwj.net
前の2作品知らないでここにくる人どれくらいいるんだろ

38 :名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 01:45:07.87 ID:69V+7Q58.net
前の2作品?
前作とかあるのこれ?

39 :名無しで叶える物語(わたあめ)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 01:46:20.84 ID:e9P5Vtvf.net
あああっち終わったんだね
2まで読んだけど残り完結してから読もうと思ってたから読んでこよう

40 :名無しで叶える物語(禿)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 01:49:38.25 ID:X+XLfNym.net
前作というか、同じ人が書いた前の作品がある
希とにこの関係から前々作に近い世界線なのかなって思った

41 :名無しで叶える物語(湖北省)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 01:50:39.85 ID:tmd7jVMA.net
ifだし別物じゃないのかな、でも分岐の可能性もないわけではないのか
そこらへんは進むうちにわかりそうだしとりあえず座して続きを待とう

42 :名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 01:51:28.49 ID:69V+7Q58.net
誰か前作のURLプリーズ

43 :名無しで叶える物語(湖北省)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 01:58:05.50 ID:OsCK+KqX.net
>>36
前のやつでもリクエスト聞いてからすぐそれで書いてたし、これと前の同時並行でやってたのか別々にやってるのかわからんけどこのたこやき書くの早くない?って話
これ以上はスレチになりそうだからやめるよごめんね

44 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 02:03:03.10 ID:ArXgop5v.net
>>43
そうだったんだ
トゲのある言い方してごめんね

45 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 02:05:09.57 ID:2/2rzr4w.net
冒頭の文章どこかで読んだことがある気がする

46 :名無しで叶える物語(とうふ)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 02:59:43.78 ID:qP8yxKCp.net
前作からきました
前回面白かったので期待してます‼

47 :名無しで叶える物語(とうふ)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 03:02:23.30 ID:qP8yxKCp.net
>>42
希「私がウチになれたのは。」3 [転載禁止]©2ch.net
http://hope.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1429677533/

48 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 08:17:30.85 ID:fEmQmvNQ.net
おはようございます
仕事の前に、少しだけ

前々作とかぶっている所はありますが
スートーリー上必要なものですので
過去作とリンクしている訳ではありません
これは、違うifとして楽しんでもらえれば幸いです

あと、冒頭の文章ですが
好きな漫画から、少しだけ文をお借りしています

よかったら、次の更新までに過去作もどうぞ
>>47さんがあげてくれている物と
英玲奈「統堂英玲奈の変身計画。」
http://hope.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1431355598/
短いですが、こちらもあります

49 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 08:18:24.87 ID:fEmQmvNQ.net
「ちょっと希…」

「こんな時に、冗談なんて…」


金髪の女の子が、声を震わせる


「あの…」


「これって…」

「もしかして…」


何となく、空気を察した

周りにいる子達の、顔が暗くなる


…ああ、なりほど


きっと私は、私でない誰かで


そして


彼女達のともだちを---奪ってしまったのか

50 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 08:19:08.14 ID:fEmQmvNQ.net
「記憶喪失…ですか。」

大和撫子みたいなその子が、ぽつりと告げる


…記憶喪失


でも、そうするとひとつ疑問が出てくる


私の名前は、東條希

…それは、覚えている


もし、間違っていなければ、だけど


心にかかったもやを理解できずにいると

ひとりの女の子が、声を発した



…そこで、理解する

今の私の、現状を

51 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 08:19:44.90 ID:VdSKNh5/.net
前から思ってたけどスレタイに丸が入ってるの壮絶に寒いよ

52 :名無しで叶える物語(プーアル茶)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 08:20:07.76 ID:fEmQmvNQ.net
「…ちょっと真姫、どういう事!?」


「分から…ない…」


「分からないじゃなくて!!」


金髪の女の子が、赤い髪の…

真姫、と呼ばれていた子に掴み掛かった


「あ、あの…!」


声を、絞り出す

なぜだか、胸が痛くなった




「やめなさい!!」


大きく響いた声に

その場にいた全員が、体を硬直させる

目に入ったのは、ピンクのカーディガン

53 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 08:20:49.25 ID:fEmQmvNQ.net
「…目の前で、不安を煽ってどうすんのよ。」

「落ち着きなさい。」


「でも、にこ…」


「アンタが取り乱したって、仕方ないでしょ?絵里。」


「…」


「えっと…」


「…ごめんね、希。」

「何か覚えている事、ある?」


そう言って、顔を覗き込まれる


…ああ

これは、覚えてる


いつだって、こうして

気にかけていてくれたから…



「にこ…ちゃん?」

54 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 08:21:24.26 ID:fEmQmvNQ.net
「希…?」


「…やっぱり、にこちゃんだ。」


そっと、胸をなで下ろした

知っている顔が、いた


大丈夫

全部忘れたわけじゃない


これなら、きっとすぐにでも…




そんな私の想いは

すぐに、打ち砕かれる事になった



「もしかして…」

55 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 08:22:02.02 ID:fEmQmvNQ.net
「…ねえ、希。」


「…何?にこちゃん。」


「…」

何かを言おうと、開いた口から

言葉が出てこずに、また閉じる


…何を、言いたいんだろう?


「…正直に答えて。」

「今、希は…」


「何年生?」


何年生?

そんなの、言わなくてもわかるんじゃ…



「1年生、だよ?」




何かが壊れる---音がした

56 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 08:23:11.09 ID:fEmQmvNQ.net
それでは、また夜に

57 :名無しで叶える物語(湖北省)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 08:40:01.62 ID:tmd7jVMA.net
そうくるのか、またいいところで…
乙です

58 :名無しで叶える物語(わたあめ)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 08:40:42.89 ID:X+zPQCYN.net


59 :名無しで叶える物語(関西地方)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 08:49:10.06 ID:UwEvDrmt.net
これは期待

60 :名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 16:17:21.78 ID:AgBfaG5D.net
のぞえりでそこそこ名前知られてる小説サークルの同人誌に記憶喪失になった希の学年が下になる話がある
それは中学2年生になっちゃう話で最終的にはのぞえりだから結末は異なるんだろうけど
記憶喪失ネタは気を付け無いと

61 :名無しで叶える物語(有限の箱庭)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 16:45:46.41 ID:g7IaoDZL.net
被り上等でしょ
作者ごとの違いが光ってそれもよい

62 :名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 16:46:01.96 ID:y9dj8lr7.net
>>60
きんもーっ☆

63 :名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 17:13:17.14 ID:kG7OEJhr.net
スピデブと>>1死ね

64 :名無しで叶える物語(禿)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 17:58:18.44 ID:X+XLfNym.net
急にキモいやつらが沸き出したな
1には気にせずマイペースにやってほしい

65 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 19:55:43.65 ID:YtRSigKf.net
たまにはゆっくり

66 :名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 21:06:51.64 ID:bOqPUKDj.net
>>1のペースで

67 :名無しで叶える物語(らっかせい)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 21:09:40.90 ID:+hnSYeqJ.net
>>63
テメーがしねよカス

68 :名無しで叶える物語(pc?)@\(^o^)/:2015/05/14(木) 22:26:13.81 ID:QN7ABa6b.net
や笑糞

69 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/15(金) 01:17:01.70 ID:3wX1jYv/.net
-----



「…疲れて、寝ちゃったみたい。」


「…そうですか。」

「では、状況を整理しましょう。」


「…にこ、先ほどの話を、もう少し詳しくお願いできますか?」


「…いいわ。」

「恐らく希は、ここ2年間の記憶を失ってる。」


「…2年間も?」


「高校生活、ほとんどじゃ…」


「…花陽の言う通りよ。」

「理由としては、私を覚えていた事。」

「…そして、絵里の事を知らなかった事。」


「…」

70 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/15(金) 01:17:34.17 ID:3wX1jYv/.net
「私が入学した時。」

「希は、同じクラスだった。」


「いつも、周りを気にしてる希を見て。」

「…なんだか、放っておけなくて。」

「声をかけたのが、始まり。」



「…希があの喋り方になったのは。」

「2年に、進級した時。」

「いつまでも私と一緒にいちゃ駄目だ、って。」

「自分を変えたい、って希は決めた。」



「…その時ね。」

「絵里と、出会ったのは。」



「…ええ。」

71 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/15(金) 01:18:05.41 ID:3wX1jYv/.net
「…いつも、そうだった。」

「私の後ろを、ずっと着いて来て。」


「…にこちゃん、って。」


「そう…呼んでたの。」


「「…」」



「じゃあ、今の希ちゃんはその時に…」

「って事は、穂乃果達の事…!」


「忘れている…いえ。」

「知らない、と言った方が正しいのかもしれません。」


「そんな…」


「…ッ。」


「…真姫?」

72 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/15(金) 01:18:35.78 ID:3wX1jYv/.net
「…のせい。」

「私が…こけなかったら…」

「あの時…」


「…思い詰めてはいけません、真姫。」

「希は、真姫を助けようとした。」

「それだけです。」


「…それが、希の性格なんですから。」


「…違う。」

「違うの!!」


「私が悪いの!!」

「私のせいよ!!」


「そう言えば良いじゃない!!」

「希があんな風になったのは、私の…!」



パンッ…

73 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/15(金) 01:19:20.99 ID:3wX1jYv/.net
「え…?」


「絵里…ちゃん…?」


「…罵ってほしいなら、いくらでもしてあげるわ。」

「それで、希の記憶が戻るならね。」

「…でも、そうじゃないでしょう?」


「…」


「泣いてる暇なんて無い。」

「後悔してる暇なんて無い。」


「…探さなきゃ。」

「希の記憶が戻る、方法を。」


「…そうでしょ?」


「…」



「…うん。」

74 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/15(金) 01:20:03.04 ID:3wX1jYv/.net
「…ごめんなさい。」


「私こそ、ごめんなさい。」


「…ううん。」

「もう、大丈夫。」

「…ありがと、絵里。」



「真姫ちゃん…」


「…大丈夫だよ、かよちん。」

「真姫ちゃんなら、きっと。」



「…では、話を戻しましょう。」

「今の希の、状態についてですが。」


「真姫のお父様に聞いた所。」

「記憶喪失と言うよりは、記憶障害というらしいです。」

75 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/15(金) 01:20:49.24 ID:3wX1jYv/.net
「症状としては、逆向性健忘という名前で。」

「主に、昔の記憶…思い出を忘れている状態だそうです。」


「思い出…」


「治療法は確立されておらず。」

「…しかし、早ければ24時間ほどで元に戻る場合もあるようです。」


「…ほんと!?」


「…ええ。」

「ですが記憶障害自体、謎の部分が多く。」

「なにがきっかけとなって思い出すのかは分かりません。」


「そんな…」


「…ただ。」

「真姫のお父様に、こう言われました。」

76 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/15(金) 01:21:14.67 ID:3wX1jYv/.net
「思い出は、その人の人生そのものだ、と。」

「悲しい事も、楽しい事も。」

「感じた事は全て、その人の心に宿っていて。」

「密接に絡み合い、決して消える物ではない。」


「…そう、おっしゃっていました。」


「…つまり?」


「つまり。」

「私達と過ごして来た時間が、決して無くなった訳じゃない。」

「思い出せないだけで、希の心には必ずある、って事。」

「…そうでしょ?」


「…にこの言う通りです。」


「じゃあ、どうすれば…」

77 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/15(金) 01:21:48.18 ID:3wX1jYv/.net
「…教えてあげればいい。」

「私達と過ごした、時間を。」


「真姫ちゃん…」


「私達との思い出が希の中にあるのなら。」

「私達が、それを伝えれば良い。」

「楽しかった事も、苦しかった事も。」

「全部一緒に乗り越えた仲間が、私達なんだ、って。」


「…思い出すまで、何度も。」



「…うん、そうだよ。」

「真姫ちゃんの言う通りだよ!!」


「今まで、ずっと9人でやって来たんだもん。」

「忘れるなんて出来ない、そんな時間を過ごしてきたんだから。」

78 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/15(金) 01:22:16.70 ID:3wX1jYv/.net
「…きっと希ちゃんの事だから。」

「すぐに思い出して、またからかってくるに決まってるにゃ!」


「ふふっ…希ちゃんらしいね。」



「「…」」



「悩んでたって、しょうがないよ。」

「この9人で、夢を叶えるんだから。」


「…みんなで、叶えるんだよ。」



「そうよ。」

「ラブライブまで時間もないんだから。」


「…それに。」

「面倒くさくない純粋な希なんて。」

「つまらないじゃない?」


「…一刻も早く、希の記憶を取り戻すわよ!」


「「おーっ!!」」

79 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/15(金) 01:22:57.37 ID:3wX1jYv/.net
-----



「ん…」


どうやら、寝ちゃってたみたい

そっと、ベッドから足を下ろす


幸い、記憶が無い事以外は

…とは言っても、記憶が無い事自体分からないんだけど

体は問題ないみたいで

明日にでも、退院できるみたい


「のど…乾いたな…」


けほっと小さく咳をして、ゆっくり立ち上がる


少しだけ、ふらつくけれど

頭は、はっきりと冴えている


「えっと…たしか、自販機が下に…」


病室の時計を見ると

針は、夜10時を回ってた

80 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/15(金) 01:23:31.75 ID:3wX1jYv/.net
-----


こつ…こつ…と

私の足音が、響く


夜の病院って怖いなあ…


そう考えながら歩いていると

自販機の明かりが見えて来た


ブーン…と怪しい音を立てている

自販機の前に立つ


「…あ。」

…しまった


病室に、財布を忘れて来ちゃった

自販機の所に来るって、分かってたはずなのに…


「…仕方ない、か。」

諦めて病室に帰ろうとした時

後ろから、声が聞こえた


「…希?」

81 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/15(金) 01:24:01.97 ID:3wX1jYv/.net
今日はここまで

また朝、時間があれば更新します

82 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2015/05/15(金) 01:36:22.83 ID:56oYOYuT.net

「」の前に名前入れないスタイルは新鮮なような気がする

83 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2015/05/15(金) 02:09:31.17 ID:bW1QwM0A.net
更新早くて良いですね
前作?から楽しみにしてます

84 :名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/05/15(金) 07:55:30.33 ID:pNpQuUbp.net


>>82
そんなに珍しくはないよ

85 :名無しで叶える物語(有限の箱庭)@\(^o^)/:2015/05/15(金) 08:29:59.65 ID:Wt86x+YG.net
ふむふむ

86 :名無しで叶える物語(関西地方)@\(^o^)/:2015/05/15(金) 11:29:49.74 ID:/tK83ffM.net
時間なかったかー

87 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 01:00:27.04 ID:ldnI5HhC.net
ただ今帰りました
飯食って、2時頃再開します

88 :名無しで叶える物語(湖北省)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 01:03:02.58 ID:CjO7J0Xv.net
おかえりんこ

89 :名無しで叶える物語(新疆ウイグル自治区)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 01:06:32.80 ID:onxJaNeh.net
ただいマンデー

90 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 01:20:38.16 ID:5ICwn7aV.net
お仕事お疲れ様っす
無理しない範囲で後日貯めてから出してもええんやで

91 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 01:57:47.49 ID:ldnI5HhC.net
振り返ると、そこには

赤い、くせ毛の女の子


確か、この子は…


「えっと…」


「…真姫よ。」


「…そっか、ごめんね。」


「…ううん。」


「「…」」


「ま、真姫ちゃんは、どうしてここに?」


「…病院。」

「うちの、病院なの。」


「えっ…!?」

92 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 01:58:30.30 ID:ldnI5HhC.net
どうやら、真姫ちゃんは

世間で言うお嬢様らしく

この病院の、先生のお子さんみたい


…でも、ひとつの疑問が生まれた

どうして、そんな子と私は知り合いなんだろう?


「…ねえ、真姫ちゃん?」

「ひとつ、聞いても良い?」


「…なに?希。」


「今日、いた子達も…だけどさ。」

「どうして、私はみんなと仲良くなれたのかな。」


「…!」


「みんな、私が3年生になってから、知り合ったんだよね。」

「…だから、覚えてない、って。」


「それが…知りたいの。」

93 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 01:59:06.91 ID:ldnI5HhC.net
「…」


一瞬、顔が曇ったけど

すぐに、さっきまでの表情が戻る


「…?」


財布を取り出した真姫ちゃんは、紅茶を買って

ひとつ、私にくれた


「わ、悪いよ…お金持って無いし…」


「…そんな事だと思った。」

「いいから、飲んで。」



「…少し、長くなると思うから。」



「…うん。」

「ありがとう。」

94 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 01:59:55.52 ID:ldnI5HhC.net
それから、ぽつぽつと

真姫ちゃんは、話してくれた


今、私達が何をしているのか

…何を、目指しているのか



「スクールアイドル…μ's…」


「希は、その最後のメンバーなの。」


「…まさか。」

嘲笑気味に、声を漏らす

引っ込み思案な私が

どうして、そんな事が出来るのか


…一体、私に何があったんだろう?

95 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 02:00:28.53 ID:ldnI5HhC.net
「…信じれないのも、分かる。」

「今の希は、私の知ってる希とは到底結びつかないもの。」


「…」


「でも、だから何?って感じ。」


「え…?」


「μ'sの事を忘れていても。」

「希は、希でしょ?」


「…それに。」

「きっとすぐに、思い出すわ。」

「ううん、思い出させてみせる。」


「…約束する。」


「…どうして?」


どうしてそこまで、してくれるんだろう

真姫ちゃんも、他のみんなも

96 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 02:01:31.64 ID:ldnI5HhC.net
「…私を、救ってくれたから。」

そっと、そう告げる真姫ちゃん


「でも、それは咄嗟にそうなっただけで…」


「違うわ。」

「今回の事も、確かにそうだけど。」


「…私を救ってくれたのは、もっと前から。」

「初めて会ったときから、今日まで。」


「…私は、何度も貴女に救われてきた。」


「それって…」


「…今度は、私の番。」

「希が私に、してくれたように。」


「…希を、救いたいの。」


真姫ちゃんの瞳から溢れたそれから

私は、目を離せなくなっていた

97 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 02:02:51.10 ID:ldnI5HhC.net
「…」


どれくらい経ったのか

不意に、真姫ちゃんが口を開く


「…私ね、昔希に、面倒な人って言われた事があるの。」


「ええっ…!?」

「それは…えっと…」

「ごめんなさい。」


「ふふっ、いいのよ。」

「私も、そう思ってるから。」


「…希が、同じぐらい面倒だって。」


「それって…」


「…」

98 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 02:03:19.42 ID:ldnI5HhC.net
「希が記憶を失くした、って知って。」

「正直辛かった。」

「私のせいだって、後悔もした。」


「…でも。」

「こんな事言ったら、不謹慎なのかもしれないけど。」


「希と話して、どこかほっとしてるの。」


「…え?」


「なんとなく、なんだけど。」

「もしかしたら…」


「…ううん。」


「一番辛いのは、やっぱり希だから。」

「こんな話して、ごめんなさい。」


「真姫ちゃん…」

99 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 02:03:49.49 ID:ldnI5HhC.net
「…あのね、真姫ちゃん。」


「こんな事言ったら不謹慎かもしれないけど…」

「私も、ほっとしてるんだ。」


「…え?」


「私の記憶…1年生の頃はね。」

「ともだちって言える人、にこちゃんぐらいだったから。」


「あ…」


「だから…なんて言うのかな?」

「今、ここでこうして、真姫ちゃんと話せてる事。」

「私を心配してくれた、みんながいた事。」


「…心の中で、喜んじゃってる私がいるの。」


「…」

100 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 02:21:38.46 ID:ldnI5HhC.net
「だからね、真姫ちゃん。」

「きっとこうなったのは、私自身が望んだ事で。」

「真姫ちゃんが気にする必要は、ないと思うんだ。」


「…きっと、みんなの知ってる私も。」

「今の私も、同じ事をしたと思うから。」


「希…」


「だって、もし大事なともだちが、そうなってたらって思うと。」

「そんなの、手を伸ばしちゃうに決まってるから。」

「真姫ちゃんも、そうでしょ?」


「…うん。」


「だから、私としては。」

「真姫ちゃんが無事で、よかった。」


「…ただ、それだけなんだよ。」

101 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 02:22:16.26 ID:ldnI5HhC.net
「のぞ…み…」


必死に涙をこらえる真姫ちゃんを見て

自然に、その華奢な体に手を伸ばした


…そうしなきゃ、って思った


腕の中で小さくなる真姫ちゃんを

優しく、抱きしめる


「…私ね、嬉しいんだ。」

「こんな風に、私を想ってくれる人がいて。」

「私のために、泣いてくれる人がいる。」

「…悲しくなんか、ないんだよ?」


「私の事、みんなが覚えててくれたなら。」

「それだけで十分、私は幸せだよ。」



「…私とともだちになってくれて。」

「ありがとう、真姫ちゃん。」

102 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 02:23:55.58 ID:ldnI5HhC.net
「…ッ。」

「そんなの…」

「そんなの、私だって…!」


「…真姫ちゃんの話を聞いてると。」

「こんな事、きっと言わなかったと思う。」

「でも、今の私なら、言えるから。」



「…私も。」

「私こそ…」


「ありがとう、希。」

「また…私は、救われたの。」


「…絶対、思い出させてみせるから。」

「だから、今は…」


「今だけは…素直になっていい…?」


止まらない涙を拭って

もう少しだけと、目を閉じる


…今は、私達だけだから

103 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 02:35:50.85 ID:ldnI5HhC.net
-----



「これで、よしっと…」

お世話になった…と言っても、2日だけだけど

使ったベッドを綺麗にして、受付へ


午前中に、お母さんがわざわざ来てくれて

このおかげ…って訳じゃないけど

久しぶりに、会えた気がする


記憶が無いだけで、家の場所とか

自分の事は覚えているから

特に治療が必要ないので、自宅療養になったみたい


定期的に検診は必要だけど

日常生活に戻る事で

また、何か思い出せるかも…


そんな理由で、退院することになった

104 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 02:36:36.12 ID:ldnI5HhC.net
「希ちゃーん!!」


「あ、えっと…」


受付で諸々の手続きを終えて

帰る用意をしていると、その子が来た


「…そっか、覚えてないもんね。」

「穂乃果だよ、希ちゃん!」

そう言って…穂乃果ちゃんは笑う


「ふふっ…もう覚えたから、大丈夫♪」


「ホント!?」

「じゃあ、間違えたら罰ゲームね♪」


せめて、みんなを不安にさせないように

笑顔でいよう、って決めたけど…

この子の前では、自然と笑顔になれちゃうみたい

105 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 02:37:02.76 ID:ldnI5HhC.net
「…それで、穂乃果ちゃん。」

「今日は一体、どうしたの?」


「あ、そうだった!」

「希ちゃん、体調は平気?」


「…?」

「うん、大丈夫だよ?」


「なら、来てほしい所があるの。」

「きっと来れば、すぐに思い出せるよ!!」


そう言って、私の手を取って、走り出そうとする穂乃果ちゃん


「…あ!」

何かに気付いたように、ピタッと止まる


「…ごめんね、希ちゃん。」

「いつも通り、走り出しちゃう所だったよ。」


…止まってられない性格なんだね

106 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 02:37:31.69 ID:ldnI5HhC.net
-----



「…ここだよ。」


穂乃果ちゃんに連れて来られて

学校の中へ

たどり着いたのは、アイドル研究部の部室


…そう言えば、前に一度

にこちゃんに連れられて、入った事があったっけ?


今は、穂乃果ちゃん達も使ってるんだね


「ではでは、どうぞ!」


ぐいっと背中を穂乃果ちゃんに押されて

扉を開けて、部室の中へ



「…!」


目に入ったのは

たくさんのアイドルグッズと

私を待っててくれた、7人のともだち

107 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 02:38:04.61 ID:ldnI5HhC.net
穂乃果ちゃんが、前に回って来て

上に向けて、クラッカーを鳴らす


「えっ…ええっ!?」

驚く私を、みんなが迎え入れる


「…希ちゃん。」

「おかえりなさい。」


「…!」


「本当の意味の、おかえりじゃないのかもしれないけど。」

「それでも、やっぱり私達は、この9人だから。」


「…」


ただいまと、言って良いのかな

…だって


みんなが待っていたのは

私じゃない…『私』だから

108 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 02:38:37.58 ID:ldnI5HhC.net
「…ほら、さっさと入りなさいよ。」

「今日は、みんなの事思い出すまで、帰さないからね。」


「にこちゃん…」


目の前に、みんなが並ぶ


「…改めて、高坂穂乃果だよ。」

「一応、μ'sのリーダーやってるんだ。」

「2年生で、希ちゃんの一個下だよ♪」



「えっと…南ことりです♪」

「穂乃果ちゃんと同じ2年生で。」

「μ'sの衣装を作ってるよ。」

「…あ、お菓子作って来たから、あとで食べてね♪」



「…同じく、2年の園田海未です。」

「μ'sでは、作詞を担当しています。」

「あと、メニューも私が作っていますので。」

「辛かったりしたら、言って下さい。」

109 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 02:39:39.95 ID:ldnI5HhC.net
「1年生の元気代表、星空凛だよ!」

「好きな物はラーメンで…」

「えっと…すっごく元気にゃーっ!!」



「り、凛ちゃん…」

「…あ、えっと、小泉花陽です。」

「凛ちゃんと同じ1年生で…」

「ご、ご飯が大好きですっ!」



「ちょっと2人とも…」

「好きな物答えてどうするのよ。」


「…昨日も話したけど、西木野真姫よ。」

「μ'sでは、作曲を担当しているわ。」

110 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 02:40:19.87 ID:ldnI5HhC.net
「もう知ってると思うけど、改めて。」

「アイドル研究部、部長の矢澤にこよ。」

「希は私の事、にこっちって呼んでたわ。」

「もしかしたら、思い出すきっかけになるかもしれないから。」



「…最後は、私ね。」

「絢瀬絵里よ。」

「希とは、2年の頃から一緒に生徒会をやっていたわ。」

「私のことも、えりち、って呼んでたから。」

「そう呼んでもらえると、私も嬉しいわ。」



「…と、言う訳で。」

「μ'sのメンバー紹介でした!」


「忘れちゃ駄目だよ?希ちゃん。」



「みんな…」

111 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 02:41:13.29 ID:ldnI5HhC.net
なんて言っていいのか、分からずに

その場に、立ち尽くす


嬉しいような、申し訳ないような


言い悩んでいると、にこちゃんが、口を開く


「…なに、遠慮してるのよ。」


「ここは、アンタのもうひとつの家で。」

「にこ達は、家族みたいな物よ。」


「例え記憶が無くたって。」

「誰も、アンタをよそ者みたいに扱ったりしない。」


「…だから、言うべき事はひとつ。」

「そうでしょ?」


「…」


「…みんな、ただいま。」



「「おかえりなさいっ!!」」

112 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 02:41:58.75 ID:ldnI5HhC.net
眠たいので、今日はここまで

では、また明日

113 :名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 03:52:52.17 ID:z0vI33jG.net
乙です
前作、前前作共に読んでましたがどの作品も同様に引き込まれる文章で楽しく読ませてもらってます!
記憶を失った希とμ'sのみんなの心の触れ合い楽しみです!

114 :名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 04:04:59.44 ID:DZzrAOjb.net
乙ー
前作から読んでるけどやっぱ>>1の文章には引き込まれる

115 :名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 08:21:40.81 ID:NLVuln8x.net
おおお
素晴らしい

116 :名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 08:44:06.22 ID:V5qhvDck.net
おつおつ
単純な退行じゃなくて新人格出てきてる感じなだけに葛藤が

117 :名無しで叶える物語(有限の箱庭)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 09:56:34.00 ID:npqspsTT.net
随分読んだ筈なのに全然疲れないな。
この書き方いいな……

118 :名無しで叶える物語(とうふ)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 22:21:59.02 ID:js0dXMJN.net
乙です‼
いつも楽しみにしてます!!

119 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 22:26:35.15 ID:ldnI5HhC.net
「さあさあ、希ちゃん!」

「まずは、これを見てもらわないと!」


そう言って穂乃果ちゃんは、パソコンの電源を入れる

動画再生サイトを立ち上げて

ある動画をクリックする


「…さあ、始まるよ。」


流れて来た音楽は

…どこか、懐かしい感じがした


「これ…」


そこには、とても楽しそうに踊っているみんなと



…『私』がいた

120 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 22:27:15.41 ID:ldnI5HhC.net
「…ほら。」

「言ってた事、本当だったでしょ?」


真姫ちゃんが、後ろから声をかける


流れる曲に合わせて

ステップを踏んで、ターンして

笑顔で踊る、『私』がいた


「…すごい。」


素直に、口からそう出た


「とっても…楽しそう。」


私は、こうして笑う事も出来るんだ

…こうして、みんなと一緒に

121 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 22:27:49.89 ID:ldnI5HhC.net
「…真姫から聞いたそうですが。」

「希は、こうして私達と一緒にスクールアイドルをやっていました。」


「希ちゃん、すっごく上手だったんだよ?」

「練習したら、すぐに出来ちゃって。」

「…よく、教えてもらってたの。」


優しそうな顔の…花陽ちゃんが、そう告げる


「私が…?」


とてもじゃないけど、信じられなくて

だって、記憶にある私は

運動は嫌いじゃないけど

そんなに得意ってほどじゃなかったし…


何より、人に教えられるようになるなんて

122 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 22:29:26.61 ID:ldnI5HhC.net
「…どう?」

「何か思い出した?」


にこちゃんが、聞いてくる


「…ううん。」

申し訳ないけど

嘘をつく訳にもいかなくて

…素直に、そう答える


「ま、そんなに簡単に思い出せたら、苦労しないわね。」


「…うん。」

「でもね?」

「なんて言うのかな…」


「…懐かしい、感じはしたよ?」

123 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 22:30:03.53 ID:ldnI5HhC.net
「本当?希。」

顔が明るくなった…絵里ちゃん


「うん。」

「なんだか…私も、やってみたいって思ったの。」

「…教えてくれる?」


「…ええ、勿論よ♪」

「と言っても、体が覚えてると思うけど。」


「ありがとう、絵里ちゃん。」

「あ…」


「…良いのよ。」

「慣れてからで、構わないから。」


そう言う絵里ちゃんの顔は

さっきよりも、少しだけ曇ってた

124 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 22:30:34.14 ID:ldnI5HhC.net
「…でも、この調子なら。」

「もしかしたら、すぐ戻るかも♪」


えっと…ことりちゃんが、そう言ってくれる



「そんなに心配しなくても、大丈夫!」

凛ちゃんも、フォローしてくれた


「では、今日は解散して。」

「明日から、希の体調を見ながら練習しましょうか。」

「ラブライブまで、時間もないですしね。」


「えっと…その…」

「よろしくお願いします!」


…できる事を、しよう

今の私には、それしか出来ないから

125 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 22:31:11.96 ID:ldnI5HhC.net
-----


「ここが、希の家ね。」

「…とは言っても、それは覚えてるか。」


みんなと解散した後

にこちゃんと絵里ちゃんが、家まで着いて来てくれた


「ありがとう、2人とも。」


鞄から鍵を出して、鍵穴に差し込む

がちゃり、と音を立てて、鍵が開いた


「えっと…どうぞ?」


「…なんで、疑問系なのよ。」


「な、なんとなく…」


なんだか、自分の家じゃないみたいだから

126 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 22:31:57.10 ID:ldnI5HhC.net
「これは…」


中に入って、驚いた

だって…これは…



「す、すぐ片付けるね!」


まるで、男の子の部屋みたいに

片付いていない、女の子の部屋


「…そう言えば、希ってこんな性格だったっけ。」


「…忘れてたわ。」


「ええっ!?」


呆れた感じの2人の言葉に、驚いた

私、こんな性格なの?


「…なんだか、こっちの希の方が。」

「しっかりしてる気がするのは、気のせいかしら?」

127 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 22:32:30.48 ID:ldnI5HhC.net
呆れながらも、絵里ちゃんは笑ってくれた

…すこし、ほっとする


「それじゃ、まずは片付けないとね。」


「そんな、悪いよ…」


「いいのよ。」

「晩ご飯はにこに任せて。」

「私達は、こっちをやりましょう?」


「それじゃ、台所借りるわね。」


私以上に、私の家でテキパキ動く、2人


もしかして、常習犯だったのかな…

128 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 22:46:40.76 ID:ldnI5HhC.net
-----


「…だいたい、こんなものかしら。」


絵里ちゃんの手伝いもあって

意外と早く、片付いた私の部屋

片付けながら、気付いたのは

…私の知らないものが、沢山増えていた事


「あ、これ…」


目に入った、一枚の写真立て

学校の講堂で、笑顔でポーズをとる、9人の写真


「…懐かしいわね。」


そう言って、絵里ちゃんがその写真に触れる


「…夏の終わりにね。」

「ちょっとした、問題が起きて。」

「私達、解散するかもって事があったの。」


「え…?」

129 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 22:47:30.16 ID:ldnI5HhC.net
「…結局、それは解決して。」

「私達は、またラブライブを目指す事になった。」

「また、夢に向かって走り出そう、って。」

「…その時の、写真なの。」


「…そうなんだ。」


あんなに、みんな仲良さそうだったのに

そんな事が、あったなんて


「それからも、色々あったのよ?」

「泣いたり笑ったり、忙しかった。」


「何度も壁にぶつかって。」

「…決して、毎日が楽しいと言える日々じゃなかった。」


「それでも、ここまで来れたのは。」

「…みんながいて、希がいたから。」

130 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 22:48:24.59 ID:ldnI5HhC.net
「…私もね。」

「μ'sに入るまでは、変な意地を張って。」

「生徒会長って立場を利用して。」

「穂乃果達の活動を、諦めさせようとしていた事があったの。」


「…」


「その時に、希が。」

「…私を、救ってくれたの。」

「自分の殻に閉じこもって、周りを見ようともしていなかった。」

「思い通りにならない現実に、辟易してた私に。」


「…貴女が、希望を見せてくれたの。」


「絵里ちゃん…」


そう語る絵里ちゃんの顔は、はっきりと見えなかった

でも、どこか、悲しそうで…

131 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 22:48:54.42 ID:ldnI5HhC.net
「…ご飯、出来たわよ。」


にこちゃんに呼ばれて、はっと気付いた

さっきまでの空気は無くなって

部室で感じた、あたたかな雰囲気に変わっていた


「…さ、ご飯にしましょう?」


「うん。」


絵里ちゃんに促されて、リビングへ

にこちゃんが用意してくれた料理は

…とても、美味しそうで


「いいにおい…!」


「ほら、冷めるから早く座りなさい。」

目の前に並んだ料理から

にこちゃんも、私が元気になった事を

喜んでくれている、気がした

132 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 22:49:25.87 ID:ldnI5HhC.net
-----



「…それじゃ、また明日ね。」


「うん。」

「2人とも、遅くまでありがとう。」



夜は9時を回ったあたり

2人にお礼を言って、玄関に鍵をかける


美味しいにこちゃんのご飯を頂いて

今までにあった思い出話を聞いて


まだ、何も思い出せてはいないけど

とても、楽しい時間だった


…少なくとも、私はそう感じた



「…ふう。」


部屋に戻って、ソファに座る

133 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 22:50:20.55 ID:ldnI5HhC.net
「…なんだか、知らない部屋みたい。」


場所も、荷物も

自分のものではある


…当たり前の事だけど


それでも、どこか手を出しにくくて

結局、タンスの奥にあった

ここに来た当初に着ていたパジャマを、引っ張りだす


「下着は…仕方ない、か。」


流石に、昔の物は残ってないみたい

「安物だったからかなあ…?」


手に取ったそれを見ていると

大きくなっていた事に気がついた


「…なるほど。」


つまり、入らなくて捨てたんだ

134 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 22:50:46.27 ID:ldnI5HhC.net
-----



「…」


お風呂に浸かって、天井を見上げる

思ったよりも、体は疲れていたみたい


…それもそうか

いくら、友達だからとは言え

私は、覚えていないのだから


向けられた好意に、疲労を感じてしまう


それも、仕方の無い事だけれど

どうしても、申し訳なくなる


「変わらないとなあ…」


そう呟いて、気付く


変わる必要があるのだろうか


…思い出さないといけないのに

135 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 22:51:11.92 ID:ldnI5HhC.net
-----



「…おやすみなさい。」


豆電球を残して、ライトを消す

…なんだか、真っ暗は怖いから


もぞもぞと布団に入って

今日の事を思い出す


「みんな…優しかったなあ…」


何も分からない私のために

みんな、動いてくれて


とても、嬉しかった


「明日から、頑張らないと。」


記憶の事もそうだけど

部活の事で、迷惑はかけられない

136 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 22:51:54.02 ID:ldnI5HhC.net
「でも、私がダンスなんて…」

何度考えても、納得できない


でも、にこちゃんが言ってたように

私が、2年になった時に変わったのなら


…本当に、変われたのかな

ううん、変わってないとおかしい


だって、そうでもなきゃ、説明できないくらいに

現在の『私』の周りには

私の欲しかった物が、溢れていたから


「もう…限界…」

眠気がピークに達して、考えがまとまらなくなってきた

目を閉じて、意識が途切れる直前


ある、ひとつの懸念が頭をよぎる

だけどそれを脳が自覚するよりも前に


…私は、意識を手放した

137 :名無しで叶える物語(湖北省)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 23:01:55.36 ID:lAI1Vjjc.net
しえん

138 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 23:07:41.96 ID:ldnI5HhC.net
-----




「…これで、いいのかな?」


次の日

昨日、にこちゃん達に言われた荷物をまとめる

今日は土曜日だから、学校は無くて

代わりに、お昼から一日、ダンスの練習みたい


「本当に、踊れるのかなあ…?」


そんな不安を振り切るように

首を横に振ってごまかす


「…やらないと。」


そうじゃないと

また、みんなに迷惑をかけるから



「…行こう。」

一人でいると、考え込んでしまいそうで

背中に迫る暗い何かから

逃げるように、家を後にした

139 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 23:08:37.90 ID:ldnI5HhC.net
-----



「うう…」


寒い風が、足下を通り過ぎる

年が明けたとは言え

まだまだ、冬が残ってるみたい


…なにより

最後の記憶では、まだ夏だったから

季節が急に逆転したみたい


それでも、通学路の街路樹には

春に咲くための準備をしている、桜の木が


「卒業…か。」

実感がまるで無い

そもそも、こんな状態で卒業して、大丈夫なのかな


…悩みは、尽きる事はなさそう

140 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 23:09:12.28 ID:ldnI5HhC.net
「おーい、希ちゃーん!」


並木道を進んでいると

後ろから、声がかかった


この、元気な声は…


「おはよ、希ちゃん。」


「おはよう、凛ちゃん。」


やっぱり、凛ちゃんだ

後から遅れて、花陽ちゃんも走ってくる


「はあ…はあ…」

「凛ちゃん、急に走り出したら危ないよ…」



「…はあ。」

「おはよう、希ちゃん。」


息を整えた、花陽ちゃんと挨拶する

141 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 23:09:49.73 ID:ldnI5HhC.net
「2人とも、仲いいんだね。」


「もちろんにゃ!」

「だって凛達、幼なじみだもん。」

「かよちんの事なら、何でも知ってるよ?」



「ふふっ…そっか。」

「何だか、羨ましいね。」


そう言うと、凛ちゃんは不思議そうな顔をする


「希ちゃんも、そうだよ?」

「にこちゃんと絵里ちゃんと、すっごく仲良しだったから。」


「…そっか。」


花陽ちゃんに言われたけど

やっぱり、何も覚えてはいなくて…

142 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 23:10:14.96 ID:ldnI5HhC.net
「…でも、なんだか不思議な感じだね。」


「凛ちゃん…?」


「希ちゃん、いつもと喋り方が違うから。」


「喋り方…?」


「いつもはね、なんて言うか…」

「関西弁?っぽい喋り方なんだよ?」


「関西弁…」


「それと、自分の事も私じゃなくて、ウチって言ってたよ。」


「…」


関西弁…


ウチ…?


なんだろう…この感じ

なにか、忘れちゃいけないような…

143 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 23:10:53.95 ID:ldnI5HhC.net
「…希ちゃん?」


「…!」

「ああ、ごめんね。」


「何か、思い出したの?」


「…ごめん、花陽ちゃん。」

「まだ、何とも。」


「あ、その…急かしてる訳じゃ、ないから。」

「…無理は、しないでね?」


「…うん、ありがと。」

「でも大丈夫。」



「なんだか…」

「2人の話聞いてて。」

「なにか、思い出せそうな気がしたから。」

144 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 23:11:25.03 ID:ldnI5HhC.net
「ほんと!?」


凛ちゃんが、すごく嬉しそうな顔をする


「うん、ほんと。」

「まだ、はっきりとはだけど…」



「ううん、よかったにゃ!!」

「きっと、すぐ思い出すよ!」


「…うん、そうだと思う。」


花陽ちゃんも、そう言ってくれる


「ありがとう、2人とも。」

「それじゃ、早速いこっか♪」

2人と学校に向かいながら

さっきの事を、思い出そうとする



…関西弁、か

145 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/16(土) 23:13:12.46 ID:ldnI5HhC.net
今日はここまで

おやすみなさい

146 :名無しで叶える物語(らっかせい)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 00:29:42.99 ID:uSfKL40I.net
乙乙

147 :名無しで叶える物語(プーアル茶)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 00:40:48.27 ID:cPrAaK0z.net
乙です
ハセガワケイスケっぽくてすき

148 :名無しで叶える物語(湖北省)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 00:53:33.32 ID:tET7O6K4.net
乙乙
全く知らん人がすげー親しく話しかけてくるってどんな感じなんだろうなぁ

149 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 06:57:49.62 ID:tpk/GxcD.net
-----



「…っと。」


演奏が終わって

みんなの方を見る


「どう…かな?」


「ハラショー…」


「す、凄いよ希ちゃん!」


「ほんと!」

「一回見せただけだったのに…」



「…うん。」

「私も…不思議な感じ。」


「考えずに動けたっていうか…」

「…覚えてた?」

150 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 06:58:17.72 ID:tpk/GxcD.net
「…やはり、予想通りでしたね。」

「ずっとみんなとやって来たんですから。」

「思い出せなくても、体に染み付いているんでしょう。」



「体に…」


学校について、練習儀に着替えて

海未ちゃん達の説明を受けながら、踊ってみた


説明を聞いてるだけだと

難しすぎて、無理だと思っていた事が

曲を流してみると、すんなり踊れて


…まるで、自分の体じゃないみたいに


私の足は、ステップを踏んで

指先まで、意識が届く



「…楽しい。」

151 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 06:58:41.04 ID:tpk/GxcD.net
「うんうん♪」

「これなら、問題なさそうだね。」


「…みたいね。」

「ダンスすら覚えてなかったら、どうしようかと思ったわ。」


「あ…そっか…」

それすら出来ないと、私…


「気にしなくていいの。」


「真姫ちゃん…」


「実際、こうして踊れたんだから。」

「歌も、きっと大丈夫。」

「…それに。」


「体が覚えてるんだもの。」

「心も、すぐに思い出すわ。」


「…うん。」


そうだと…いいな

152 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 06:59:26.29 ID:tpk/GxcD.net
「でも、無理はしちゃだめだよ?」

「体壊しちゃ、意味ないからさ!」


「穂乃果が、それを言いますか…」


「ほ、穂乃果はもう大丈夫だもん!」


「…?」


「ああ、いえ。」

「とにかく、無理はしないように。」

「何かあったら、言って下さいね?」


「…ありがと、海未ちゃん。」



「…よしっ。」

「それじゃ、今度は発声練習を…」


穂乃果ちゃんが、プレーヤーを持ってくる


「…あ。」

153 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 06:59:49.29 ID:tpk/GxcD.net
〜♪


「…!」

プレーヤーから、流れるメロディに

体が、ピクッと反応する


「…ごめんごめん。」

「間違えて、再生しちゃっ…」


「待って!!」


「…希ちゃん?」


…聞いた事がある曲調に

何かが、頭をよぎった


「…」


「届けて…切なさ…には…」

「名前を…つけようか。」

「スノーハレーション…」

154 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 07:00:20.10 ID:tpk/GxcD.net
「希…?」


「これ…知ってる…」

「何でか、分からないけど…」


頭に浮かぶ、歌詞をなぞる

どうしてかは分からないけど

言葉に出さなきゃいけない


…そんな気がした



「希…貴女…」


「…なんでかな。」

「体が…熱くなるの。」


もっと、踊りたい

もっと、歌いたい…って



「好き…?」

155 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 07:01:00.36 ID:tpk/GxcD.net
「なにか思い出したの!?」


穂乃果ちゃんの言葉に、はっと気がつく


「え…?」


「あの日の事、思い出したの?」


「あの日…?」


「…その様子だと、まだみたいね。」


「…ごめん。」


「いいのよ。」

「少しでも、何か思い出すきっかけに、なったのなら。」


「…うん。」

「頑張って、思い出すから。」


「…お願いね。」

156 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 07:01:32.06 ID:tpk/GxcD.net
-----


あれから数日経って

ダンスは、何度か教えてもらいながら

ほぼ完璧に、踊れるようになった


歌も、プレーヤーで何度も聞き返して

歌詞を暗記した

歌う事自体は、思ったよりもすぐに出来て

みんなに、喜んでもらえた


…それでも

ふと口ずさむのは、あの歌


---Snow halation


…一体、私は

この歌に、どんな思い入れがあるんだろう

絵里ちゃんの言ってた、『あの日』


…そこに、何かがある気がする

157 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 07:02:08.74 ID:tpk/GxcD.net
「…ごめんね、練習終わりに。」


「別に、気にしないで。」

「希の記憶を戻すためなら、何だってする。」

「…約束したでしょ?」


「…うん。」

「ありがとう、真姫ちゃん。」


「…それで?」

「何が聞きたいの?」


「…前に、絵里ちゃんが言ってた、『あの日』の事。」

「もし知ってるなら、教えてほしいの。」


「…分かった。」


「あれは、去年の終わり頃。」

「初めて希が、想いを口にしてくれた日…」

158 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 07:02:43.59 ID:tpk/GxcD.net
一旦ここまで
仕事行ってきます

続きは夜に

159 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 08:01:56.38 ID:PDDAo66V.net
仕事ファイトだよ!!

160 :名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 11:55:17.02 ID:Y14Uzq8B.net
ハラショー!まってるよー!

161 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 21:43:22.52 ID:tpk/GxcD.net
-----


「…そんな事があったんだね。」


「あの日、初めて希は私達に夢を話してくれた。」

「みんなと出会った事。」

「ここまで来れた想いを、形にしたい。」

「そんな希の想いを…みんなの想いを、ひとつにしたのが。」

「…この曲だったの。」


「…そっか。」

「やっぱり…私じゃないみたい。」


「希…」


「ありがとう、真姫ちゃん。」

「私には、知らない事が多すぎるから。」

「…みんなに、迷惑はかけたくないの。」

162 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 21:44:15.17 ID:tpk/GxcD.net
「…ほんとはね。」

「早く、思い出したい。」

「みんなの知ってる私を、早く返してあげたい。」


「…そうは思っているんだけど。」

「思い出せないのが、歯がゆくて。」


「みんな、記憶を失くした私にも、とても良くしてくれてる。」

「それは、今まで『私』として過ごして来たからかも知れないけど。」


「それでも…やっぱり、嬉しいんだ。」



「…ねえ、希。」


「何?真姫ちゃん。」



「今は…幸せ?」

163 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 21:45:08.36 ID:tpk/GxcD.net
「幸せ…かあ…」

「うん、そうだね。」


「友達と、こうしてお話しして、過ごせた事は今まで無かったから。」

「…多分、幸せなんだと思う。」



「…そう。」


「あ、でも、このままが良いとかじゃなくてね?」

「ちゃんと、思い出したいんだよ?」

「みんなに、迷惑かけちゃってるし…」


「…」

「…でも。」

「それでも…」


「憧れてた、毎日だから。」



「…そうね。」

164 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 21:45:54.55 ID:tpk/GxcD.net
-----



「…で、次は私の所に来たわけ?」


「うん。」

「にこちゃんとは、話しやすいから。」


「…ま、唯一知ってたのがにこだしね。」

「それで、何が聞きたいの?」


「私の…話し方。」

「どんな風に話してたとか、言葉使いとか。」

「…思い出すきっかけに、なるかもしれないから。」


数日前、真姫ちゃんと話して

やっぱり、思い出すためには知る事が必要だと思った


待ってるだけじゃ、きっと思い出せないから

思い出すために、何かしないと


「…どうせ、みんなの為に、とか考えてるんでしょ?」


「…え?」

165 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 21:46:40.68 ID:tpk/GxcD.net
「記憶を失ったままじゃ、みんなに迷惑をかける。」

「そんな事、思ってたんでしょ?」


「…すごいね、にこちゃん。」


「そういう所は、変わらないみたいね。」

「真姫から、あの日の事聞いたんでしょ?」

「希は、それまでずっと誰かのために動いてたから。」

「…自分の事なんて、二の次で。」


「きっと、忘れているとしても。」

「そこだけは、変わらないみたいね。」


「そう…なのかな。」


そう言ってもらえるのは、嬉しいけど

…きっと、そんな高尚なものじゃないんだよ


だって、私は…

166 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 21:47:09.38 ID:tpk/GxcD.net
「…で、希の話し方だけど。」


「あ、うん。」


「基本的には、意味深な感じね。」

「あと、エセ関西弁。」


「…具体的には?」


「そうね、例えば…」



にこちゃんに言われた、自分の特徴

それを手帳に書きとめる


自分の事を他人に聞くのは変な気分だけど

少しでも何か思い出せれば

そんな思いで、ペンを走らせる


「…こんな所かしら。」


「…難しいね。」

167 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 21:47:38.45 ID:tpk/GxcD.net
書きとめたそれを見返す度に

なんだか、私じゃないように感じる


…どうして、私は

こんな風になったのかな?


「…なにか、質問ある?」


「うーん…」


「そう言えば。」

「よく希は、みんなの様子をビデオに撮ってたから。」

「探せば、希の声が入ってるのもあるんじゃないかしら?」


「ビデオ?」


「ひとつの、趣味みたいな物よ。」

「他にも、写真を撮るのも好きって言ってたわね。」

「確か、お父さんにもらったカメラがあるとか…」

168 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 21:48:17.48 ID:tpk/GxcD.net
「生徒会の活動で、部活紹介のビデオを撮った事もあったから。」

「そんなのに関しては、生徒会室にあるんじゃないかしら。」


「私は流石に、関係者じゃ無いから入れないけど。」

「元生徒会役員のアンタなら、大丈夫でしょ。」


…そっか

映像が残っていれば、知る事が出来るし

なにより、思い出せるかもしれない


「ありがと、にこちゃん。」

「早速、調べてみるね。」


にこちゃんにそう告げて、席を立つ


「…ねえ、希。」


「…?」


「記憶…早く、取り戻したい?」

169 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 21:48:49.10 ID:tpk/GxcD.net
「…?」

「うん、もちろん。」

「早く記憶を戻して。」

「みんなの事、思い出したい。」


「今までの私にはいなかった、ともだちだから」



「…無理するんじゃないわよ?」


「…うん、ありがとう。」

「それじゃ、行くね?」


にこちゃんと別れて、学校に向かう

この時間なら、まだ開いてるはず



記憶を戻す手がかりを見つけた私は、走り出した

気付かなければいけなかった現実に、背を向けて

170 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 22:00:05.68 ID:tpk/GxcD.net
-----



「…」


家に帰って、見つけたそれを再生する

ハンディカムに映る、μ'sのみんなと

それを撮っている、私


「これが…私?」


聞こえてくる声は、確かに私の声

でも、例えば口調であったり

話し方であったり、態度であったり


そのどれもが、私じゃない『誰か』


真姫ちゃんの言ってた事が、分かる気がする

この『私』は、気持ちを隠してる


…そんな、話し方


「やっぱり…私じゃないみたい。」

171 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 22:00:55.45 ID:tpk/GxcD.net
…変な話

自分が喋っているのに

それを聞いた自分が、自分じゃないと感じるなんて


「…一体、私に何があったんだろう。」


にこちゃんの話だと、私は2年に上がる時に変わって

その後は、お互い色々あってほとんど話せなくて


改めてちゃんと話した時には、もう…


「…そっか。」


それを知ってるのは

変わってから、みんなと出会うまでの私を、知ってるのは…



…絵里ちゃん




「でも…」

172 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 22:01:40.70 ID:tpk/GxcD.net
記憶を失くして、1週間とちょっと経った

最初の頃は、私を気にかけてくれた絵里ちゃんだったけど


日が経つに連れて、どこか…

遠くを見る機会が、増えた気がする


それに何より、ここ2・3日


…私は、ほとんど会話をしていなかった


「いつから…?」


凛ちゃんと花陽ちゃんが、言っていたのが本当なら

私が一番仲良かったのは、にこちゃんと絵里ちゃん


特に絵里ちゃんとは、2年間一緒に生徒会にいた

…なら、一番仲がいいと言っても間違いは無いと思う


それこそ、目を覚ましたときは

あんなに心配してくれていたのだから

173 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 22:02:09.32 ID:tpk/GxcD.net
「何か…おかしい。」


でも、何がおかしいのか分からない


私が、何も思い出せていないから?


「どうしたらいいんだろ…」


どうして私は、思い出せないのか

何度病院に通っても、答えは同じで


もしかしたら、ずっと戻らないかも、なんて


「戻らなかったら…」


私は、どうすればいいんだろう?

何も思い出せない私は

彼女達の目にどう映っているんだろう


希ちゃん、と呼んでくれたみんな

笑顔を見せてくれているのは

私になのか

それとも---『私』になのか

174 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 22:18:19.84 ID:tpk/GxcD.net
-----



「…おまたせ、にこちゃん。」

「希は?」


「帰ったわ。」

「いきなり呼び出して、ごめんね。」


「…希の事?」


「…そうよ。」

「…」

「真姫ちゃんから見て…」

「希は、記憶が戻ると思う?」


「…!」

「何言って…」


「もちろん、戻ってほしい。」

「それは、全員が思ってるはずよ。」


「だったら…」

175 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 22:18:50.18 ID:tpk/GxcD.net
「…私は。」

「今の希に、記憶が戻るとは思えない。」


「…!」


「恐らく、今のあの子は…希だけど希じゃない。」

「私は目を覚ました希を見て、昔に戻ったと言ったけれど。」

「そうじゃなかった。」


「…ううん。」

「実際、戻ってたんだと思う。」

「覚えていた事は、当時のままだったから。」


「…でも、厳密には違う。」

「戻った記憶に、今の記憶が継ぎ足されてる。」


「それって…」


「…おかしいと思ったのよ。」

176 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 22:19:33.91 ID:tpk/GxcD.net
「希は確かに、1年生の頃に戻った。」

「多分だけど、私が思っていた時期よりも。」

「数週間のズレがある。」


「…ここからは、憶測だけど。」

「過去に、希が変わるきっかけを作ったのは。」

「きっとこの、ズレた期間の中だったんだと思う。」


「変わらないといけない。」

「いつまでも、私といる訳にはいかない。」

「あの子がそう感じて、決意したのは、きっとこの間。」


「…もし、私の言う通りの事が起こってたとしたら。」


「…真姫ちゃんなら、分かるでしょ?」



「でも、それは…!」


「…」

177 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 22:20:10.67 ID:tpk/GxcD.net
「…だって。」

「もし、そうだとしたら…」


「…真姫ちゃんの、考えてる通りよ。」


「そんな…」


「もしそれが事実なら、私達は考えなきゃいけない。」

「…私達の、これからの事を。」


「それに…」

「ひとつ、気になる事もあるしね。」


「…真姫ちゃんも、感じてるでしょ?」


「…」


「希…」

178 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 22:20:41.62 ID:tpk/GxcD.net
-----




…声が聞こえる

…私を呼ぶ、声が


目を開けると

いつか見た、あの世界


…ああ、またこの夢か

そう思って、辺りを見渡す


…いた



数メートル離れた所に

同じ姿をした、『私』


「…あの。」


口を開いて、気付いた


声が、出る


「あの、貴女は…」


目の前の『私』に、声をかける


「貴女は…『私』?」

179 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 22:21:27.14 ID:tpk/GxcD.net
手を伸ばそうとして、知った


「…壁?」


ぴた、と手のひらをそれに当ててみる

透明な、ガラスの壁のような物が

私と、目の前の『私』の間にあった


「…ねえ、聞こえる?」


私の声が聞こえたのか

『私』は、こちらを見る


「     」


口を開いて、何かを言おうとする

…でも、やっぱり聞こえなくて


「貴女は、やっぱり私なの?」

「私は、どうしたらいいの?」


「何か…」

「…ッ。」

「何か教えてよ!!」


目の前の壁を、叩いた

180 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 22:22:16.77 ID:tpk/GxcD.net
けれど、それが届いたそぶりを見せずに

『私』は、地面に腰を下ろす


「私に…記憶は戻らないの?」

「みんなの事…思い出してあげられないの?」


「     」


「聞こえないよ…!」


何度声をかけても、答えは聞こえず、静寂だけ


「…」


膝から、崩れ落ちる

…私は、ここでも一人なのか



『私』が、壁に近付いてくる

そっと伸ばした手に、私の手を重ねる


「     」



「…え?」

181 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 22:23:27.82 ID:tpk/GxcD.net
-----



「ん…」

「あれ?」

「寝ちゃってた?」


携帯の画面に目を凝らすと

ビデオを見始めてから、1時間ほど


…どうやら、うたた寝をしてたみたい


「お腹すいた…」


そう言えば、にこちゃんと別れてから

何も食べてなかったなあ…


ひとまず顔を洗いに、洗面台へ


「…あれ?」


鏡に映った私の顔には

一筋の、涙の痕があった

182 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 22:24:03.87 ID:tpk/GxcD.net
今日はここまで

おやすみなさい

183 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2015/05/17(日) 23:36:35.67 ID:cxbfXE0/.net


184 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/18(月) 07:07:28.49 ID:2QpkYo94.net
-----



あれから、また数日

部活紹介のビデオや

今までに撮り溜めていた映像

ケータイに残ってたメールのやりとりなんかから

…なんとなく

自分がどういう性格で、どんな話し方をしていたのか

少しずつ、理解し始めていた


…それでも、一向に記憶は戻らない


今までにあった事を

知識として、頭に詰め込む毎日



そして今日も、午前の授業が終わって、お昼休み

ご飯を食べた後、時間を持て余した私は、屋上に

185 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/18(月) 07:08:03.81 ID:2QpkYo94.net
「…で?」

「話って何かしら?」


「…分かってるんでしょ?」


屋上に出る扉の向こうから、声が聞こえる

風通しのためか、開け放している扉

その奥から、聞き慣れた声が聞こえた


…盗み聞きなんていけないと思いつつ

その声の主を知っているからこそ


そこに…足を踏み出す勇気が、無かった。



「…何の事?にこ。」


「絵里…」

「アンタの、希に対する態度についてよ。」

186 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/18(月) 07:08:35.03 ID:2QpkYo94.net
「…」


「知らないとは、言わせないわよ。」

「ここ最近、ずっと希の事避けてるじゃない。」

「…どういうつもり?」


「むしろ、私が聞きたいわね。」

「にこ達こそ、どういうつもり?」

「どうして、彼女とそんなに仲良くできるの?」


「…は?」


絵里…ちゃん?



「当たり前でしょ?」

「希は、μ'sの…私達の仲間よ。」

「記憶を失くしてたって、今まで一緒に過ごして来た、ともだちでしょ!?」

187 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/18(月) 07:09:14.30 ID:2QpkYo94.net
「…本当に?」

「本当に…ともだちだと、思ってるの?」


「アンタ、何言って…」


「今の希は、私達の知ってる希じゃない。」

「それは、にこも感じている事のはずよ?」


「だからそれは、記憶が…!」


「嘘。」

「本当は、もう分かってるはず。」


「…彼女は、私達のともだちだった希じゃ無いって事を。」


「…」


「だから、記憶が戻れば…」


「…本当に、戻ると思う?」


「…!」

188 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/18(月) 07:09:44.15 ID:2QpkYo94.net
「あの日から、1週間もたってる。」

「私だって、希の記憶が戻れば、なんて思ってた。」

「記憶が無くても、希は希だって。」

「そう…思いたかった。」


「…」


「でも、実際は。」

「日に日に、彼女は希じゃない『誰か』になっていった。」

「…それは、にこも気付いてるんでしょう?」

「なにより…」


「記憶が戻る事。」

「…彼女は、望んでるの?」


「それは…」


「…昔ね。」

「本で読んだ事があるの。」

189 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/18(月) 07:10:39.04 ID:2QpkYo94.net
「思い出は、その人の人生だって。」

「記憶が、その人をその人たらしめると。」

「それらが繋いだのが、人であって。」

「人との繋がりが、その人の性格を現す、って。」

「なら…」


「記憶の無い希は。」

「一体誰と、繋がっているのかしら?」


「絵里、アンタ…」



「正直、自分がこんな考えを持ってるなんて思わなかった。」

「希がいてくれればいい。」

「記憶が戻らなくても、それでも。」

「いつか、いつかきっと…って。」


「…でも、そうは思えなかった。」

「だって…」


「あれは、希じゃないもの。」

190 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/18(月) 07:11:13.41 ID:2QpkYo94.net
-----



「…うっ。」

「おぇ…っ。」



思わず、トイレに駆け込んだ

さっきまでお腹の中にあった物を

全て吐き出す


「…げほっ。」

「はあ…」


出る物が無くなっても

吐き気は、止まらなかった

ただただ、胃液だけを吐いた


「はあ…はあ…」


空っぽになったお腹をさすって

顔を洗うために、外に出る

191 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/18(月) 07:11:44.60 ID:2QpkYo94.net
…気持ち悪い


口を濯いで、顔を洗う

顔を上げると

青白い顔の『私』と目が合った


「私は…一体、だれ?」


『貴女は、東條希。』

聞こえるはずの無い、声が聞こえる


『貴女は、μ'sの東條希。』

『それ以外に、居場所は無い。』


「…じゃあ、どうしたらいいの!?」


私が、『私』であるためには…



「…」


…そっか

192 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/18(月) 07:12:26.19 ID:2QpkYo94.net
「…なんだ。」


簡単な事だった

いつまで経っても、記憶が戻らないなら



…演じればいい



私じゃない、『私』として


変われないなら、無理にでも変えれば良い


やっと出来た居場所

ようやく手に入れた、友達

記憶が無くても、それを手に入れたのは、『私』だから


「…」


失う訳には、いかない

もうひとりには、なりたくないから


「ふふっ。」

「…よろしくな、『ウチ』。」


答えるはずのない鏡の中の『私』に

…そっと、笑顔を向けた

193 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/18(月) 07:13:42.08 ID:2QpkYo94.net
一旦ここまで

194 :名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/05/18(月) 07:29:23.14 ID:O/B+jnU1.net
悲しいなぁ

195 :名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/:2015/05/18(月) 07:46:58.85 ID:2bLODcTI.net
胃が痛くなってきた乙
期待

196 :名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/:2015/05/18(月) 08:57:55.29 ID:qq6gzmbm.net
あああ…切ない…

197 :名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/05/18(月) 09:33:38.74 ID:m8wi/nh/.net
ズレが重なってきてしまったか……

198 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2015/05/18(月) 15:26:02.73 ID:9n/TABtq.net
上条さん状態か

199 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2015/05/18(月) 20:38:26.04 ID:cuOymHpa.net
超本命が大穴
暇つぶしに覗いて見たけど あり得ない女が・・
見返りをもらって損はしなかったww

★をsに変えて、◎を消す
★nn2c◎h.net/s11/59azusa.jpg

200 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 00:10:07.61 ID:+F/NSPz4.net
-----


それから『ウチ』は

少しずつ…少しずつ

理想を現実にあてがっていく


誰にも気付かれちゃいけない

今まで戻らなかった物が

すぐに戻ってもおかしい


ただひたすら、薄氷の上を歩くように

みんなと接する自分を、塗り替えていく



「…おはよ、穂乃果ちゃん。」

「おはよう、希ちゃん。」


「今日は、遅刻しなかったね?」


「だ、大丈夫だもん…!」

「…あれ?」

201 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 00:10:47.24 ID:+F/NSPz4.net
「希ちゃん、覚えてるの?」


「…なんだか、そうだった気がして。」

「思い出して…きたのかな。」


「うう…」

「そんな事は思い出さなくていいんだよう…」


「ふふっ、ごめんね?」




ほんの小さな事を

言葉の端々に織り込む

感づかれないように

ただただ、慎重に


…相手を、見極めて

202 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 00:11:16.62 ID:+F/NSPz4.net
「それでね、その時真姫ちゃんが…」


「…そうやったっけ?」


「あれ?希ちゃん、今…」


「何か、変な事言った?花陽ちゃん。」


「少し…前みたいな、言葉使いがでたから。」


「そっか…ありがと♪」

「少しずつ、思い出せてたらいいなあ…」


「きっと、大丈夫だよ。」

「…少しずつで、いいんだから。」


「…うん♪」



顔色を、変えずに話す癖がついた

あくまで自然に、さりげなく

203 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 00:11:55.44 ID:+F/NSPz4.net
「…ねえ、ことりちゃん。」

「この、ウチの衣装なんだけど…」


「え?」

「希ちゃん今、自分の事…」


「…あ、そういえば。」

「ウチ…って、言ってたんだっけ?」


「…思い出したの?」


「…何となく、口から出たみたい。」

「ウチ…か。」

「変じゃ無いかな?」


「…うんっ♪」



眠れない日が続いた

みんなの曲を聴く事で、夜を明かした


目の下に出来た隈は、コンシーラーで隠した

204 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 00:12:37.73 ID:+F/NSPz4.net
「…希。」

「最近、記憶が戻り始めているらしいですね。」

「穂乃果達が、喜んでましたよ?」


「…ほんと?」

「嬉しいなあ。」


「でも、まだ全部じゃなくて。」

「話し方とかも、咄嗟にそれが出る、って言うか…」


「それでも、嬉しい事ですよ。」

「以前と比べて、だいぶ落ち着いて来たように感じます。」


「…何となく、雰囲気がそれらしくなって来ましたね。」


「海未ちゃんに言われると、なんだか自信つくなあ。」

「頑張って、全部思い出せるようにするからね?」


「…はい!」


何となく、意味深に

何となく、曖昧に


この話し方にも、慣れて来た

205 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 00:13:04.54 ID:+F/NSPz4.net
「…にこっち♪」


「…なに?希。」


「今日、帰りにクレープ食べて帰らん?」


「クレープぅ…?」


「バイト代入ったし、ウチがおごるよ♪」


「…そっか。」

「バイト先にも、顔出すようになったのね。」


「うん。」

「何となく、断片的にだけど。」

「思い出せてきたから、バイトも再開したん。」


「そうね…」

「それじゃ、付き合うわ。」


「ありがと、にこっち。」

206 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 00:13:44.19 ID:+F/NSPz4.net
「それで、どこまで思い出したの?」


「どこまでって言っても…」

「ほんとに、断片的で。」

「話し方なんかは、喋ってるうちにいつのまにか…」


「そう…」


「…あ、でも。」

「にこっちが学園祭で、講堂の抽選を外したのは、思い出したよ♪」


「…!」

「もっと思い出すなら、他にあるでしょ!?」


「…いやあ。」

「ウチにとっては、忘れられない記憶なのかもね♪」


「…ったく。」

「ほら、いくわよ。」

「はーいっ!」


時にふざけて、時に真面目に

のらりくらりと、その場を流して


踏み外す事の出来ない、綱渡りを続ける

207 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 00:14:18.07 ID:+F/NSPz4.net
「…!」


にこっちとの帰り際、えりちと目が合う


「〜♪」


陽気に、手を振ってみた

悟られる事の無いように

何か、思い出したと伝えるように


「…っ。」


ぎこちなくも、えりちも手を振ってくれた


…もう少し、時間がかかりそうだね


「…あと、少し。」


自分を戒めるように

小さな、小さな声で呟いた

208 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 00:22:27.44 ID:+F/NSPz4.net
「希…」


「あ、真姫ちゃん。」


「…大丈夫?」


「…なにが?」


「記憶…戻って来たんでしょ?」


「…うん。」

「真姫ちゃんの、おかげでな♪」


「茶化さないで。」

「その…大丈夫なの?」


「あんまり、無理したり…」


…そっと、真姫ちゃんの手を取る


「希…?」

209 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 00:23:00.70 ID:+F/NSPz4.net
「…ウチな、真姫ちゃん。」

「真姫ちゃんが、記憶が無くても。」

「ウチはウチ、って言ってくれたのが、嬉しかったん。」


「…!」


「記憶が戻るためなら、何だってするって言ってくれた。」

「その言葉通り、いつだってウチの事を気にかけてくれた。」


「今までの事、色々教えてくれたり。」

「話、聞いてくれたり。」

「…すごく、感謝してるんよ。」


「まだ、全部が思い出せた訳じゃないけど…」

「それでも、真姫ちゃんがこうしてウチのそばにいてくれたから。」


「ウチは…こうして、思い出す事が出来るようになったんやと思う。」


「希…」

210 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 00:23:24.93 ID:+F/NSPz4.net
「…正直な話。」


「このまま、記憶が戻らなくてもいいかな。」

「…そう、考えた事もあった。」


「…!」


「でも、それは違うって気付いたん。」

「きっと記憶が無くても、みんなは優しくしてくれる。」

「…それに、甘えてたんやと思う。」


「でも、今は違うよ。」

「ちゃんと、自分の記憶取り戻して。」

「みんなと、ラブライブに出たい。」

「優勝したいって、思ってる。」


「…そう思えたのは、真姫ちゃんのおかげ。」

「いつでも、ウチを支えてくれたから。」


「…ッ。」


「本当に…面倒なんだから…」

211 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 00:23:57.85 ID:+F/NSPz4.net
「ありがとう、真姫ちゃん。」


震えるその手を握りしめて


…自分には、演技の才能があるんじゃないかと思ってしまう


嘘に嘘を重ねて

顔色ひとつ変えずに、こうして歩み寄る



…酷い事をしてるのは、分かってる

きっとバレたら、嫌われると思う


でも、こうするしかない


『ウチ』としてここに存在するためには

『私』は、ここに必要ないから



あとは…

212 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 00:25:02.48 ID:+F/NSPz4.net
「…えりち。」


「…!」

「…なに?」


「あの…さ…」


「…また、パフェ食べて帰らない?」


「希…貴女…!」


「…また、ああして話したいんよ。」

「一緒に、生徒会の事や。」

「μ'sの事を、話してたみたいに。」


「…えりちと、また笑いたい。」



「思い…出したの?」


「全部…とは、いかないけど。」

「でも、えりちと過ごした事は…」


「ウチにとって、大切な記憶だから。」

213 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 00:25:27.85 ID:+F/NSPz4.net
「希…」


「…遅くなって、ごめんな?」

「でも…」


「…いいのよ。」

「私の方こそ…ごめんなさい。」


「…ううん。」

「思い出せなかったのは、事実だから。」

「えりちが、そんなウチの事。」

「認められなかったのも、分かるから…」


「気付いて…!?」


「でも…」

「でも、ウチは。」


「また、一緒に笑いたい。」

「えりちと、今まで過ごして来たみたいに。」


「駄目…かな?」

214 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 00:25:54.74 ID:+F/NSPz4.net
「…!」


えりちに、抱きしめられる


「…駄目なんかじゃない。」

「ごめんなさい、希。」

「ごめんなさい…」



役に入りきる、というのは

こういう事なのだろうか


いつから、涙を流せるようになったんだろう

自由に、必要な時に



「えりち…じゃあ…」


「…ええ。」

「行きましょ、希。」


「…うんっ♪」

215 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 00:26:36.79 ID:+F/NSPz4.net
-----



「う…っ。」

「んぐっ…。」


喉を焼尽すように上がってくる胃液を

無理矢理、飲み込む


ご飯は、以前と変わらず食べた

相変わらず襲ってくる吐き気を

水を飲み込んで、ごまかす


見た目が、変わってはいけない

心配させてはいけない


…気を使わせては、いけない


「…はあ。」



「これで…」


これで、きっと大丈夫

みんなとも、ある程度打ち解けられたはず


…あとは、会話を記録して、記憶するだけ


ラブライブまで、残り1ヶ月を切っていた

216 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 00:27:20.07 ID:+F/NSPz4.net
みんなとの距離が近付くにつれて

昔の事なんかも、気軽に話せるようになった


会話の中で、頭にその話をインプットする

ふられても、冷静に受け流す

あくまでふざけるように、核心には触れずに



…失くしていた間の記憶も

ほとんどがケータイと手帳の記録で補えた

詳しい事は、みんなが喋ってくれる


…そこに、少し話を誘導するだけで



『そんな事をしても、変われる訳がないのに。』


「…うるさい。」


鏡の中のそれと、話す事なんか無い

上手く、いってる


…あと、少し

217 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 00:27:48.82 ID:+F/NSPz4.net
-----



「…あれ?」

「まだ、凛ちゃんだけ?」


「あ、希ちゃん。」

「まだ、凛だけだよ?」


放課後に、部室に顔を出す

まだみんなは、来てないみたい


「そっか…」

「ねえ、凛ちゃん。」


「なあに?希ちゃん。」


凛ちゃんには悪いけど

一番、鈍そうだったから


「ウチ…何か、変な事言ったりしてない?」


「…変な事?」


「うん。」

「どこかおかしい所とか、ないかな?」

218 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 00:29:38.51 ID:+F/NSPz4.net
「う〜ん…」

「今の質問とか、かな?」

「なんだか、希ちゃんらしくないっていうか…」


「…あはは、ごめん。」

「思い出したって言っても、まだ全部じゃないから。」

「何となく、気になっただけなんよ♪」


「そっか♪」

「あ、でも、それなら…」


「…ん?」


「どうして、そんなに頑張ってるの?」


「どういう事?」


「うーん…凛、ずっと気になってたんだよね!」


「何が?」


「凛、知ってるよ?」









「…記憶、ひとつも戻ってないよね?」

219 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 00:30:08.31 ID:+F/NSPz4.net
今日はここまで

続きは、また明日

220 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 00:31:36.53 ID:nvhqNOgI.net
さすが凛ちゃん……

221 :名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 00:35:38.66 ID:BX1aXWqj.net
ああああ なんか悲しいなあ
凛ちゃんはするどいね

222 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 00:36:54.28 ID:V7pKzK3y.net
他のメンバーは気付いてるのかな?

223 :名無しで叶える物語(プーアル茶)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 00:39:46.37 ID:UIHcOthP.net
凛ちゃんは本能で気付いてるって感じ

224 :名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 03:12:04.05 ID:cxtnWegl.net
リリホワで築かれた芸能魂が揺れなかったか…

225 :名無しで叶える物語(もこりん)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 04:50:20.53 ID:xyU4txwP.net
この凛ちゃんは何でも知ってるリリホワの末っ子(泣)

226 :名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 10:58:23.34 ID:SgiDkwEV.net
凛ちゃん…
再び続きが気になる終わり方だな乙

227 :名無しで叶える物語(もみじ饅頭)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 11:32:16.54 ID:RJh6c+0O.net
凛ちゃんはなんでも知ってるなあ

228 :名無しで叶える物語(湖北省)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 11:58:54.20 ID:mNUuFY6f.net
二年分の記憶がなかったら全くの別人みたいなもんだよねぇ
えりちの考え方もしょうがないのかな

229 :名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 12:40:35.15 ID:u9MkmFQd.net
悲しいなぁ

230 :名無しで叶える物語(しうまい)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 19:48:09.64 ID:hseh0iYq.net
辛い・・・

231 :名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 21:43:39.89 ID:V/hf0TC6.net
きついなぁ…

232 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 23:14:43.58 ID:+F/NSPz4.net
「…」


凛ちゃんのその言葉に

何も、反応が出来なかった


いつばれた?


何で?



他のみんなは…騙されてるのに



「なーんちゃってっ♪」

「冗談だよ、冗談♪」


「…凛ちゃん?」


本当に?

でも、さっきの目は…


とにかく、なにか口に出さないと

そう思って口を開いた時


部室のドアが開いた

233 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 23:15:24.43 ID:+F/NSPz4.net
「おっはよーっ!」


「おはよー!穂乃果ちゃん!」


「あれ?2人だけ?」


「もうすぐ、みんな来ると思うよ?」


「そっか♪」

「ねえねえ、2人で何話してたの?」


「今ね、希ちゃんの記憶、戻って来てよかったね、って。」

「凛達の事、思い出してくれて嬉しかったな、って話してたんだ。」


「うんうん、確かに!」

「一時は、本当に心配したから…」


「ありがと、希ちゃん♪」


「あ、ううん…」

「穂乃果ちゃん達の、おかげだよ。」

234 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 23:15:53.68 ID:+F/NSPz4.net
「それにしても、穂乃果の寝坊とか。」

「そういうのは忘れたままでよかったのにー…」


「それは流石に失礼にゃ。」

「それに、きっとすぐに寝坊して、バレてたよ?」


「凛ちゃんひどいよっ!?」



目の前には、いつもの光景

いつでも可愛い、元気な2人


…でも、それが怖い


さっきの凛ちゃんの目

あれは、冗談なんかで言ってる目じゃ…



「…希ちゃん?」


「…!?」


「一緒に、屋上行こっ?」


「…そうやね。」

235 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 23:16:25.68 ID:+F/NSPz4.net
-----



「どうしたのよ。」


「…何が?」


「昨日から、どこか暗いわよ?」

「何かあった?」


「いややなあ、にこっち。」

「ウチは、いつでも元気やで♪」


「…そう。」

「何かあったら、言いなさいよね。」


「アンタは、自分の中に溜め込んじゃうタイプなんだから。」


「…うん。」


昨日、凛ちゃんに言われてから

みんなが、少し怖くなった

騙せてると思ってるのは自分だけで

もしかしたら…


みんな、分かってるのかもしれない

236 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 23:18:38.04 ID:+F/NSPz4.net
「分かりにくいのよ、アンタは。」

「今は…大丈夫だと、思うけど。」


「…はは。」

「まあ、もうみんなに心配はかけたくないから。」

「何かあったら、ちゃんと言うよ?」


「それでいいわ。」

「じゃないと、また昔みたいに…」


「…昔?」


「ほら昔、希と一緒にいた時…」



「…」


「希?」


「あ、ううん!」

「懐かしいなあ…って、ちょっと思い出してた。」


「…やっぱり、分かりにくいわね。」

「それに、遠くを見るほど昔の話じゃないでしょうに。」


「それもそうやね♪」

237 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 23:19:34.12 ID:+F/NSPz4.net
「ねえ、希。」

「良かったら、今日…」



「あ、ごめん、にこっち。」

「今日はちょっと、家でやる事あって…」


「…そうなの?」

「なら、仕方ないか。」


「うん、ごめんな?」


「別にいいわよ。」

「また今度、どこか寄り道して帰りましょ。」


「うん、ありがと。」

「流石、ウチの親友やね♪」


「…調子いいんだから。」


精一杯の笑顔でごまかして

足早に、家に帰って来た

238 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 23:20:18.41 ID:+F/NSPz4.net
-----



「…」

「なんで…」



「…ッ。」


頭を冷やすように

洗面台で、顔を洗う


「…」


水が流れる音が

唯一、自分が目を覚ましている事を証明してくれた



「昔…」


にこっちの言っていた、昔の事

あれは、いつの時の事を言ってたんだろうか


…思い出せない

239 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 23:20:51.40 ID:+F/NSPz4.net
「…」


鏡に映った自分の顔が

あざ笑っているようにすら感じる


「…ッ。」


「あれは…」

「あの、記憶は…」





「『ウチ』の記憶なん?」


「それとも、『私』の…?」



「昔…」


「昔って、いつ…?」


思い出せる、最初の記憶は


…えりちと、出会った日の事だった

240 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 23:22:14.32 ID:+F/NSPz4.net
短いですが、今日はここまで

希をいじめたい訳ではありません
むしろ、書くのが辛いです

それでは、また明日

241 :名無しで叶える物語(pc?)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 23:24:26.30 ID:5bDXrfK/.net


242 :名無しで叶える物語(湖北省)@\(^o^)/:2015/05/19(火) 23:59:17.17 ID:1t/g0sXB.net


243 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2015/05/20(水) 00:28:00.09 ID:3Dh3MFGQ.net
追いついた乙です
こっちも辛いです

244 :名無しで叶える物語(湖北省)@\(^o^)/:2015/05/20(水) 01:26:22.29 ID:G8E2FgAK.net
乙です

245 :名無しで叶える物語(有限の箱庭)@\(^o^)/:2015/05/20(水) 12:30:56.38 ID:DQSb03l3.net
頑張って欲しいなぁ

246 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/20(水) 23:32:23.07 ID:kNejN/6K.net
-----



「んっ…」


服を脱いで、お風呂場に入る

冷たい水を、頭から流して


もう一度冷静に、考えてみる


「…」


「やっぱり、おかしい…」


「なんで…?」

「なんでなんよ…?」


何度思い浮かべても

頭の中にある、最初の記憶は

えりちと出会った、あの教室で



それより昔の記憶が

ウチの記憶には一切ない


「…寒い。」

247 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/20(水) 23:32:49.87 ID:kNejN/6K.net
-----



冷たい水に冷やされた体を拭きながら

部屋の中に入る


「あ…」


ベッドの上に置いてある携帯に、ランプが灯ってる


「真姫ちゃん…」



From: 真姫ちゃん
title: 明日
=============

良かったら、少し話さない?


=============


「明日…」


そうだ、真姫ちゃんに相談してみたら

何か、分かるかもしれない

返事を打って、ベッドに倒れ込む


…今は、何も考えたくない

248 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/20(水) 23:33:18.68 ID:kNejN/6K.net
-----


「すごい…」


真姫ちゃんに呼ばれて、真姫ちゃんのお家に


…のはずが

目の前にあるのは豪邸で


「やっぱり、お医者様ってすごいんやね…」


そんな言葉しか、出てこない


「…希?」


お家を眺めていると

門の向こう側から、声がした


「もう、来たなら呼び鈴鳴らしてよね。」


「ああ、ごめんな。」

「ちょっと、考え事してた。」

249 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/20(水) 23:34:07.54 ID:kNejN/6K.net
-----


「…そういえば。」

「希が家に来るのって、初めてだっけ?」


「…うん。」

「大きさに、ビックリしてた。」


リビングに通されて、少し話をする

真姫ちゃんが、紅茶を持って来てくれた


「でも、別荘と大して変わらないんじゃない?」


「いやいや、確かに別荘もすごかったけど。」

「自宅はそれ以上やん?」


「…そんなものかしら。」


そう言って、正面に座る真姫ちゃん

ご両親は、お仕事でいないみたい

250 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/20(水) 23:34:32.81 ID:kNejN/6K.net
「今日は、和木さんもいないから。」

「ゆっくりしていって。」


「和木さん?」


「…ああ、お手伝いさん。」

「そう言えば、花陽たちしか知らなかったっけ。」


「お手伝いさんまでいるんやね。」


まさに、お金持ちってイメージ

それでこの性格やと、確かに近寄りがたい気はするなあ…


「それで、今日はどうしたん?」


「…別に、たいした用じゃないの。」

「にこちゃんから、少し様子が変だ、って聞いたから。」


「なにか、力になれないかと思って。」

251 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/20(水) 23:35:01.93 ID:kNejN/6K.net
「あ…」

「そうやったんやね。」


これは…話が早い

けど、どう言ったらいいんかな


まさか、最初から説明するわけにも…


どう言おうか迷っていると

真姫ちゃんから、声がかかる


「…別に、無理して話さなくていいから。」

「言いたくなったら、言って?」


「あ…うん。」


「それに、希とこうしてちゃんと話す事って、あんまりなかったから。」

「その口実に、呼んだだけ。」


そう言って真姫ちゃんは、紅茶に口をつける

252 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/20(水) 23:35:36.81 ID:kNejN/6K.net
それから、2人で色々と話した

真姫ちゃんの別荘に行った時の事

9人でのファーストライブの事や

学園祭であった事なんかも


真姫ちゃんの話に合わせて

すらすらと出てくる言葉

…なにも、問題は無いように思えた


ちゃんと、覚えてる


「…あれ?」


「どうしたの?希。」


「…!」

「ううん、何でもないんよ?」


「そう…」


…なんやろ?

この---違和感

253 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/20(水) 23:36:21.52 ID:kNejN/6K.net
「…そう言えば。」

「まだ、ちゃんとお礼を言えて無かったわね。」


「…何のお礼?」


「…改めて言うのも、照れるんだけど。」

「ほら、希が目を覚ました時、病院で…」


「…」


「…希?」


「…ああ、うん。それで?」


「…あの時、希はいいって言ったけど。」

「やっぱり、助けてもらったのも、事実だから。」


「…私を、助けてくれてありがとう。」

「私に怪我が無かったのは、希のおかげよ。」


「…ずっと、言いたかった。」

254 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/20(水) 23:36:58.69 ID:kNejN/6K.net
「…」


「あの時、もう駄目だ、って思った。」

「凛の手も、届かなかったし…」


「でも、希が手を伸ばしてくれた。」

「私の事、ちゃんと掴んでくれた。」

「…それは、覚えてる。」


「本当に、ありがとう。」


そう言って、笑顔になる真姫ちゃん


「…ちょっと。」

「せっかく言えたんだから、何か反応してよ。」

そう言って

少し照れくさそうに、髪の毛をいじる



「病院…?」


「希…?」

255 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/20(水) 23:37:32.00 ID:kNejN/6K.net
…そう

確かにあの時、手を伸ばして

真姫ちゃんを掴んで、引き寄せた


…そう

それで、きっと頭を打って

気付いたら、病院にいて


…それで

目が覚めたら、みんながいて

話しかけられて…



「…ッ。」


「希?」


頭が、痛い


それで…えっと

みんながウチを覗き込んで





あの時、何を話したっけ?

256 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/20(水) 23:37:57.65 ID:kNejN/6K.net
「ねえ、希!」


気付いたら、真姫ちゃんが隣に来ていた


「ねえ、一体どうしたの?」


心配そうにウチを見つめる、真姫ちゃん

確か、あの時もこうして…





あの時?


あの時って…いつだっけ?


「希!」

「ねえ、希ってば!!」


治まらない頭痛に襲われた体は

意識を手放す事で、逃れようとする


「まき…ちゃ…」



目の前が、暗闇で覆われた

257 :名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/:2015/05/21(木) 00:00:28.86 ID:MPOFtE3N.net
え?え?

258 :名無しで叶える物語(とうふ)@\(^o^)/:2015/05/21(木) 00:05:49.83 ID:ZWtuH1BO.net
のんたんが何かを思いだそうとしているのか?

259 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/21(木) 00:27:02.69 ID:22TTHPWL.net
-----


…声が聞こえる

ウチを呼ぶ、声が



「…」


目を開けると

真っ白な世界が広がっていた


「また…か。」


何度来ても、やっぱり現実では覚えていなくて

それでも、ここに来ると思い出す


ウチの…夢の、世界


「…」


今度は、真後ろにいた


ウチと同じ姿の、『ウチ』


「…もう、慣れた物やね。」

260 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/21(木) 00:27:45.51 ID:22TTHPWL.net
その目は、向こうを向いている


遠くを見つめるその姿の後ろで

背中を見るように立つ、ウチ


「…どうせ。」

「また、何も聞こえないんやろ?」


その背中に、言葉を投げかける

…いつもそうだ

ここにいる『ウチ』は、答えをくれない

まるで、鏡の中にいる、それと同じように




『…聞こえてる。』



だからこそ、驚かずにはいられなかった

目の前で同じ声を発する


---その存在に

261 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/21(木) 00:28:15.41 ID:22TTHPWL.net
「なんで…」


『今までも、声は聞こえてた。』

『ちゃんと、答えたつもりだった。』


「嘘!」

「声なんて、聞こえなかった!」


『…嘘じゃないよ。』

『それに、聞こえなかったんじゃない。』


そう言って、こちらを振り返る


『ただ、聞こうとしなかっただけ。』

『…自分で、耳を塞いでたん。』


『…そうやろ?「ウチ」。』


「な…」


『…ようやく、話せた。』

『そっちの「ウチ」のお陰やね。』

262 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/21(木) 00:28:48.18 ID:22TTHPWL.net
「なんで…」

「なんで、今になって…」


『…それは、自分が一番よく分かってると思うけど?』


「ウチが…?」


『そうじゃなきゃ、きっとまだウチの声は聞こえてない。』

『…疑問を、感じたんやろ?』


「疑問?」


「…!」


「まさか…」


『…おっと。』

『最初に断っておくけど。』

『これは、ウチのせいじゃないよ?』

『自分で勝手に、そうしたんやから』


「何言って…」

263 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/21(木) 00:29:12.95 ID:22TTHPWL.net
『…記憶。』

『無くなってるんと違う?』


「…!」


『でもそれは、自分が望んだ結果なんよ?』


「…意味が分からない。」


『そうやね…』

『どこから話せば良いかな。』


そう言って、目の前の『ウチ』は語りだした

今、ウチに起こっている事と

なぜ、そうなったのかを



『…そうやね。』

『まず…』



『記憶を、失った訳じゃないんよ。』

264 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/21(木) 00:29:55.67 ID:22TTHPWL.net
『海未ちゃんが説明してくれたように。』

『真姫ちゃんのお父さんが言ってる事は正しい。』


『正確には、忘れたんじゃなくて。』

『記憶の奥底に、しまい込んでしまっただけなんよ。』


『…とは言っても、多分覚えてないと思うけど。』


「何、言って…」


『簡単に説明すると。』

『ここにいるウチは、バックアップみたいな存在なん。』


「バックアップ…?」



『…少し、お勉強しよっか♪』


そう言って、『ウチ』は軽く笑った

265 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/21(木) 00:31:11.20 ID:22TTHPWL.net
『詳しく分かってる事ではないけど。』

『脳っていうのは、色んな情報を処理してるのは、知ってるよね。』

『特に、海馬では、記憶の処理が行われてるんよ。』


『その時得た情報…』

『それらを集めて、処理してるのが、脳の海馬っていう組織で。』

『そこで処理された情報が、バックアップをとる為に、記憶野へと運ばれる。』

『これが、記憶する事の簡単な手順やね。』


『多少アバウトに言ってるから、詳しくはちょっと違うんやけど…』


『とにかく、それらを処理して、記憶させるのが海馬で。』

『そこに何か障害が起こると、記憶に障害が出る。』



『…事故の時みたいにね。』


「…」

266 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/21(木) 00:31:48.84 ID:22TTHPWL.net
『だから、現実には忘れてるんじゃ無くて。』

『思い出す事が出来ないだけで。』

『こうして、ウチみたいに記憶と言うデータは残ってる。』


『もちろん、他の病気みたいに。』

『記憶そのものが無くなるケースもあるけれど。』


「…じゃあ、貴女がウチの中のバックアップで。」

「ウチの記憶を、保管してる、って事?」


『…話が早くて助かるよ。』

『とは言っても、ウチも同じ「ウチ」やから。』

『分かってくれるとは思ってたけど。』


『…ところで。』

『夢って、何で見るか知ってる?』



「…え?」

267 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/21(木) 00:32:20.38 ID:22TTHPWL.net
『夢の中で非常事態に備えてる、とか。』

『現実じゃ叶えられない願望を体験してる、とか。』

『脳の機能を回復させている、とか。』


『色々説はあるけど、ウチが思うのは。』

『脳で、記憶の処理が行われている、という説。』


「記憶の…処理?」


『今日あった出来事や、古い記憶。』

『覚えとかないといけない事や、忘れたいような記憶。』

『それらを取捨選択して、記憶してる間に、見るのが夢。』

『言わば、記憶の断片のような物。』

『…ウチは、そう思ってる。』


「断片…」

268 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/21(木) 00:33:47.00 ID:22TTHPWL.net
『夢を覚えてないって言うのは。』

『単に、それが処理をしていただけで。』

『特に意味のある物じゃないからやと、ウチは思うんよ。』


『だから、こうして会った事も現実では忘れてる。』

『単なる、処理を視覚的に感じてるだけだから。』


『…必要な記憶を残して。』

『いらない物は、バックアップだけとって、現実では忘れる。』

『それが、記憶と夢との関係やと思う。』


「それが、今のウチと何か関わりがあるん…?」


『…言ったやろ?』

『必要な物を残して、いらない物は捨てる、って。』


『凛ちゃんに、言われて焦ったんやろ?』

『思い出してない事が、バレた、って。』


「…!」

269 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/21(木) 00:34:10.82 ID:22TTHPWL.net
『あの時に、「ウチ」の記憶に変化が起こった。』

『このままじゃ、みんなにバレてしまう。』

『もっと、ウチになりきらないと。』

『記憶の戻ったフリをしないと。』


『…違う?』


「…」


『そう意識をした「ウチ」の脳は。』

『このまま「私」の記憶を持っていたら、邪魔になると判断した。』

『…だから、自ら忘れたんよ。』


『「ウチ」として、あり続けるために。』



「…!」

270 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/21(木) 00:34:47.33 ID:22TTHPWL.net
『…だけど、そこでひとつ問題が起こった。』

『病室で目が覚めた時、「ウチ」には1年の頃の記憶があった。』

『そこに、目が覚めてからの記憶が付け加えられた。』


『目が覚めてからの「ウチ」は。』

『今までの「ウチ」では、無かったん。』

『…言わば、「他の人格」とでも言うべき存在やったんよ。』


「他の人格…?」


『まあ、考えてみれば当たり前の事やけど。』

『今の「ウチ」なら分かってるとは思うけど。』

『「ウチ」が変われたのは、1年の終わり頃。』

『もちろん、「ウチ」はその時の記憶を持っていなかった。』

271 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/21(木) 00:35:56.35 ID:22TTHPWL.net
『だからこそ、急に与えられた立場…』

『μ'sという、居場所や。』

『友達がいたからこそ。』


『「ウチ」として、変わる必要が無くなってしまった。』

『変わらなくても、目が覚めた時そこにあったから。』



『ずっと欲しかった物が、向こうから現れた事で。』

『「ウチ」の、変わると言う選択肢が消えたんよ。』

『その必要がなかったから。』



『…だから、こう思った。』


『変わる必要があるのか、って。』


「あ…」


『言ってしまえば、そこが分かれ道やったんよ。』

『記憶を取り戻すか、そうでないかの。』

272 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/21(木) 00:36:57.40 ID:22TTHPWL.net
『そして、「ウチ」は選んだ。』

『変わらない事を。』


『記憶が無くても、このみんなとなら。』

『あの時、確かにそう思ったはず。』

『その内、記憶は戻るだろうから、って。』


『思い出さないと、っていう想いに。』

『自ら、ふたをした。』


「…」


『ところが、そう上手くはいかなかった。』

『えりちやにこっちみたいに、疑う人が現れた。』


『そこでまた、「ウチ」は考えた。』


『思い出せなくても、なりきればいい。』


『みんなの知ってる、「ウチ」として。』

『自分で、今の自分の人格を否定した。』

273 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/21(木) 00:37:28.38 ID:22TTHPWL.net
『脳はその考えに則って。』

『人格よりも、新たな記憶を優先した。』


『そんな時に、凛ちゃんを騙しきれてなかった事を知って。』

『「ウチ」は、酷く動揺した。』

『もっと、なりきらないと。』


『そのためには、それまでの「私」は必要ないと。』


『結果、自分で自分を否定した事に寄って。』

『脳はこの記憶を「いらない物」として判断した。』


『だから、忘れた。』

『今の「ウチ」に、必要なかったから。』


「そん、な…」


『絶望しても、仕方ないよ。』

『自分で、選んだんだから。』

274 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/21(木) 00:38:00.39 ID:22TTHPWL.net
『…目覚めた時。』

『自分で選んで、記憶を取り戻したいと思った。』

『でも、事故のせいで上手く思い出す事が出来なかった。』


『だから、「ウチ」は新しい人格と呼べる物を作った。』


「…やめて。」


『そして、思い出さない事を選んだ。』


『その上、みんなに打ち明ける事はせずに。』

『騙していく、と言う事を選んだ。』


「やめて…」


『…その結果が、今。』

『全てに中途半端な、「ウチ」が出来た。』


「やめてって言ってるやん!!」


『…』




「…返して。」

275 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/21(木) 00:38:25.86 ID:22TTHPWL.net
『…』


「…言ったよね、バックアップって。」

「って事は、その人格の記憶を持ってるんやろ?」


『…これの事?』


手に現れたのは、キャンパスノート


『…まあ、夢の中だから。』

『形は、何でもいいんやけど…』


「…返して。」


『確かに、返したら。』

『「ウチ」は、思い出すと思う。』

『もうひとつの人格の、「ウチ」として。』

『みんなから聞いた、記憶を受け継いで。』



「…分かってるなら、返して。」

276 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/21(木) 00:39:23.50 ID:22TTHPWL.net
『…本当に、いいん?』


「…何が?」


『この記憶は、本当の「ウチ」じゃないよ。』

『たまたま出来た人格に。』

『事故の時の記憶と、「ウチ」が集めた記憶が繋がってるだけ。』


『本当の意味での、記憶が戻った事にはならないんよ?』



「…それでも。」

「それでも、今ここにいるのはウチ。」

「その記憶を失くしたまま、えりち達と一緒にいられる訳がない。」

「…独りになるのは、もうたくさん。」


「…あの頃に、戻りたくない。」


『…』



「…返して。」

277 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/21(木) 00:39:50.94 ID:22TTHPWL.net
『…そうやって。』

『また、選ぶんやね。』



差し出された手から、ノートを受け取る

それは光となって、ウチの中に入った



「…そっか。」

「真姫ちゃん、あの時…」


ようやく、思い出せた

あの、病院での事


『…覚えておいて。』

『その記憶が戻ったという事は。』


『今の「ウチ」にとって、いらない情報が戻ったのと一緒。』

『気を抜くと、すぐにバレるよ。』


「…」

278 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/21(木) 00:40:42.62 ID:22TTHPWL.net
「大丈夫。」

「後は、凛ちゃんだけやから。」


「…この「私」の記憶があっても。」

「今まで以上に、なりきってみせる。」


『…分かった。』

『また、目が覚めたらここでの事は忘れてると思う。』


『でも、覚えておいてほしい。』

『例え何が起こっても。』


『…それは、自分が選んだと言う事。』


「…分かってる。」



悲しそうなその顔を、視界から外して

夢から、覚めようとする


…きっと、真姫ちゃんが呼んでるから


また、あの黒い世界へ

279 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/21(木) 00:41:17.21 ID:22TTHPWL.net
『…』


『行っちゃった…か。』


『まあ、ウチは単なるバックアップやし。』

『本人が、元々の記憶を取り戻そうとしない限り。』

『動く事は出来ないんやけど…』


『…』


『多分、気付いてるんやろ?』

『だからあんなに、元の記憶が戻る事を嫌った。』



『…元々のウチじゃない、もう一人の「私」。』


『元の記憶が戻るという事は…』

『「私」として過ごした時間が、無くなるから。』

『手に入った何もかもが、ゼロになるから。』



『…でも、気付いてほしい。』

『例えその記憶がなくなったとしても。』


『今、「ウチ」が過ごしてる日々は。』

『…いずれ訪れる未来の、自分の姿だって事。』

280 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/21(木) 00:42:08.04 ID:22TTHPWL.net
-----


…声が聞こえる

名前を呼ぶ、声が



「…希!」


「真姫…ちゃん?」


あれ?

どうして…


あ、そっか

確か、倒れて…

…!


「ご、ごめん、真姫ちゃん!」

「私、いきなり倒れ…て…」


言葉に出して、気付いた

でも、それを口に戻す事は、出来るはずもなく



「希…まさか…」


…やめて

…それ以上、口にしないで



「記憶、戻ってないの…?」

281 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/21(木) 00:43:40.87 ID:22TTHPWL.net
今日はここまで

そろそろ、話が動きます

282 :名無しで叶える物語(関東・甲信越)@\(^o^)/:2015/05/21(木) 02:19:47.87 ID:O/+9bhSd.net
救われるのか救われないのか…

283 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2015/05/21(木) 02:21:43.85 ID:oZwbYf8J.net
つまりどういうことだってばよ?

284 :名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/:2015/05/21(木) 13:24:09.38 ID:QTqCs9jx.net
このもやもやした感じもたまらなく好き


285 :名無しで叶える物語(聖火リレー)@\(^o^)/:2015/05/21(木) 13:34:26.15 ID:l21YeBey.net
頼むからのんたん幸せになってくれ

286 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2015/05/21(木) 17:58:04.42 ID:1xMbQecg.net
乙です
前作同様希には幸せになってほしい…

287 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/21(木) 22:34:49.74 ID:22TTHPWL.net
仕事が残ってるので
更新は明日にします

288 :名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/:2015/05/22(金) 02:30:32.29 ID:ogadO7Hj.net
イッチのペースでええんやで

289 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/23(土) 01:47:32.52 ID:CGPipAx4.net
「…あ。」

「そ、そんな事ないよ?」


「…」


「ちょっと、気が動転しちゃってただけで…」

「ちゃんと…思い出してるよ。」


「…本当?」


あまりにも、苦しい言い訳

完全に、油断してた

まさかここで間違えるなんて


「希…」


さっきまで、あんなに話せてたのに

あんなに、騙せてたのに


…なんで?

290 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/23(土) 01:48:14.44 ID:CGPipAx4.net
「…」


一体どうすれば…

また、騙せるのだろうか


頭の中を、その言葉が埋め尽くす


…騙す?

騙して…


騙し続けて、どうしたらいいんかな


これは

この記憶は


自分が勝手に---作り上げた物なのに


何より、どうしていきなり

あの時の記憶が戻ったのか

ついさっきまで、忘れてたのに

291 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/23(土) 01:48:58.98 ID:CGPipAx4.net
思い出せなかった記憶

あの時の、病院での事

…みんなと、話した事


思い出せた事は嬉しいのに

思い出せた事で


…嘘が綻び始めるなんて


「…」


何を言って良いのかが分からない

とにかく、何か口に出さなきゃ


…無言は、肯定ととられてしまう


「あ、あのな、真姫ちゃん。」

「ほんとに、間違えちゃっただけで…」


なんとか、絞り出した言葉

でも、真姫ちゃんの顔を見て

その言葉が意味の無い物だと悟る

292 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/23(土) 01:49:27.55 ID:CGPipAx4.net
「…真姫ちゃん。」


「どうして…」


「…」


「どうして…黙ってたの?」


これ以上の言葉は

ただ、真姫ちゃんを傷つけるだけだろう

…これ以上、辛い思いをさせてしまって良いのかな


「…」


…ううん、きっと違う

そうやって騙して来たのはウチだから

真姫ちゃんは、すでに傷ついているのだから


「…答えて、希。」


…ああ

どこで間違えたんかな

293 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/23(土) 01:50:03.06 ID:CGPipAx4.net
「…ごめん。」


ただ、それしか言えなかった

傷つけた事へのごめんなのか

騙してた事へのごめんなのか


…口に出したウチにも、分からなかった


ただ、謝らなければいけないと思った

悪さをして怒られる、子供のように


「…それは、何に対してのごめん?」


「…」


真姫ちゃんも、気付いてたみたい


…それもそうか

今まで作り上げたもの


それが全部…嘘だったのだから


「…ごめんなさい。」

294 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/23(土) 01:50:28.41 ID:CGPipAx4.net
真姫ちゃんの顔を見る事が出来ずに

ただ、頭を下げた


見られたくなかったのもある

どんな顔で向き合えばいいか、分からなかったから


…きっと、幻滅される

嫌われると思う


…もう


ここに、私の居場所は…




無くなってしまった





「…頭を上げて、希。」

295 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/23(土) 01:50:54.18 ID:CGPipAx4.net
「…」


「…こっちを向いて。」


「…」


出来れば、上げたくなかった

見たくない

見られたくない


…でも

そうしなければ、いけないと思った


「…」


ゆっくりと、顔を上げる

きっと、怒っているだろう

きっと、蔑んでいるだろう


きっと…きっと、嫌われただろう



そんな思いを打ち消すように

真姫ちゃんの瞳には、涙が溢れていた

296 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/23(土) 01:51:47.90 ID:CGPipAx4.net
「真姫…ちゃん…」


…ああ、そうか

騙して、傷つけて


そして…泣かせてしまったのか


なんて最低な…私


「…ごめんなさい。」

「ごめんなさい…」


謝る事しか、出来なかった

謝っても、変わる事の無い結果なのに


「…違うの、希。」

「謝って…欲しい訳じゃない。」


「…」





「気付いてあげられなくて…」

「ごめんなさい。」

297 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/23(土) 01:52:09.29 ID:CGPipAx4.net
「…!?」


「なん…で…」


どうして、謝られているんだろう

真姫ちゃんは、何も悪くないのに


…どうして



「…私、知ってたの。」

「絵里が…希を、受け入れてない事に。」

「その事で、希を避けている事に。」


「知ってて…」

「何も、しなかった。」


「希の記憶が戻れば。」

「きっと…」

「きっと、元通りになる。」


「そう…思ってた。」

298 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/23(土) 01:52:35.54 ID:CGPipAx4.net
「…私がそう思って、すぐ。」

「希の記憶が、少しずつ戻りだした。」

「本当に…自然に。」

「…私には、そう感じた。」


「…」


「それで思ったの。」

「これで、全部上手くいく…って。」


「絵里が、これ以上疑う事も無い。」

「みんなが、ようやくまとまれる。」


「そう…思ってた。」

「…ううん。」

「思いたかった。」



「…あの時に、気付くべきだった。」

299 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/23(土) 01:53:09.59 ID:CGPipAx4.net
「…これは、多分だけど。」

「にこちゃんが、絵里と屋上で話した時。」

「…聞いていたんでしょ?」


「…!」


「…やっぱり。」

「今更、それに気付くなんて…」


「…タイミングが、良すぎるもの。」

「あれから、今まで以上に昔の事を聞くようになった。」

「みんなで話すときも、過去の話が多くなった。」


「…それに、気付く事が出来なかった。」



「…希。」

「もう…」



「泣かなくて、いいから。」

300 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/23(土) 01:53:41.24 ID:CGPipAx4.net
「…え?」


ウチは、泣いてなんか…


「…ずっと、苦しかったんでしょ。」

「嘘をついてた事。」

「みんなを、騙してた事。」


「…本音を、言えなかった事。」


「もういいの。」

「…泣かなくて、いいから。」



「泣いてなんか…」


みんなを傷つけたのは、ウチなのに



「…それも、嘘。」

「ずっと…泣いてた。」



「…ここで。」


真姫ちゃんが、ウチの胸に手を当てる

301 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/23(土) 01:55:49.55 ID:CGPipAx4.net
「気付いてあげられなくて、ごめんなさい。」

「ずっと…辛かったと思う。」


「絵里が疑ってる事を知って…」

「みんなに、受け入れてもらえないかもって思って。」


「…そんなの。」

「一人で、抱え込める訳ないじゃない。」



「…もういいの。」

「これ以上耐えられないなら、みんなに話せばいい。」

「私も、みんなに話すから。」


「続けるなら…せめて、私の事は信じて。」

「私は…例え記憶が無くても。」

「希は希だって…親友だって、思ってる。」

「絶対に貴女を、裏切ったりなんてしない。」


「…まだ、返せてないの。」

「今度は、私が貴女を救うわ。」


「…約束する。」



真姫ちゃんの言葉に答えるように

ウチの目にも、それが溢れ出した



手に落ちたそれは

ほのかに---あたたかかった

302 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/23(土) 01:57:00.84 ID:CGPipAx4.net
今日はここまで

仕事が一段落着いたら
もう少し更新できると思います
それでは

303 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2015/05/23(土) 03:07:18.16 ID:I5DB7Fft.net
真姫ちゃんええ娘や

304 :名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/:2015/05/23(土) 03:46:45.27 ID:M9wskgBG.net
まだ序盤だよなこれ
もう画面見えなくなったぞ

305 :名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/:2015/05/23(土) 05:00:59.44 ID:AKE5PrXL.net
真姫ちゃん…
希を助けてあげてください…

306 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2015/05/23(土) 08:37:28.77 ID:6AN5V0Rb.net
そろそろ佳境かな

307 :名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/:2015/05/23(土) 22:56:25.25 ID:XdLQ7WaE.net
ハッピーエンドね?

308 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/24(日) 00:08:49.17 ID:qAlNl/ka.net
-----



「おじゃましまーす!」


「…いらっしゃい、凛。」


「ねえねえ、真姫ちゃん。」

「いきなり、家に来てって…どうしたの?」


「…後で話すわ。」

「それより、中に入って?」


「…はーい!」




「…さ、中で待ってて?」

「お茶、入れてくるから。」


「うんっ♪」

309 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/24(日) 00:09:16.99 ID:qAlNl/ka.net
-----


真姫ちゃんが出て行って、数分経った

そろそろ…


そう考えた時

リビングの扉が開いた


「…え?」


「…こんにちは、凛ちゃん。」


「希ちゃん…」


「また…騙したみたいで、ごめん。」

「話したい事が、あるんだ…」


ちゃんと、向き合おう

ちゃんと謝って


…それで、嫌われてもいい


ただ、この2人にもう、嘘はつかない

今だけは…自分の言葉で

310 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/24(日) 00:09:40.11 ID:qAlNl/ka.net
-----



「…そっか。」

「やっぱり…戻ってなかったんだね。」


「凛は…どうして、気付いたの?」

「正直、私には分からなかった。」


「…凛も。」

「凛も、絶対そうだ、って思ったんじゃないんだよ?」

「ただ、なんとなく…」


「…だから、あの日に確認したくて。」


「凛ちゃん…」


「…凛にも、良く分からないんだ。」

「今までの希ちゃんみたいに、優しくて…」

「お姉ちゃんみたいな、感じで…」



「…でもね。」



「雰囲気が…違ったの。」

311 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/24(日) 00:10:07.38 ID:qAlNl/ka.net
「雰囲気…?」


「うーん…」

「何かを、必死に隠してるみたいな…」

「どこか、遠くを見てる気がしたの。」


「あ、そう言えば…!」


「何?凛…」


「凛達ね、この希ちゃんになってから…」

「一度も、わしわしされてないんだよ?」


「わしわし…?」


「…!」

「ああ…忘れてた…」


「えっと…そのわしわし、って?」


「そ、それは…///」


何故か、赤くなる真姫ちゃん

なにか、変な事言ったっけ…?

312 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/24(日) 00:11:07.38 ID:qAlNl/ka.net
「わしわしって言うのはね…」

「希ちゃんが、みんなの胸を揉みしだく事にゃ!」



「胸を…」


「…」


「…ええっ!?」


む、胸を揉むって…私が!?


「もうちょっと、オブラートに包みなさいよ…///」


「え?合ってるでしょ?」


「それは…そうだけど。」



「えっ?えっ?」

「そんな事…してたの?」


「そうだよー?」

「こんな風に…」


凛ちゃんが両手を広げて近付いて来る

313 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/24(日) 00:11:33.56 ID:qAlNl/ka.net
「…はい、そこまで。」


胸に手が届くか届かないかの所で

真姫ちゃんに、止められた凛ちゃん


「あははっ!」

「希ちゃん、顔真っ赤〜♪」


「…///」


こんな恥ずかしい事を

みんなに、してたなんて…



「…凛は、こっちの希ちゃんも好きだよ?」


「…!」


「記憶があるとか、無いとかじゃなくて…」

「希ちゃんは、希ちゃんだもん。」


「記憶が無かったときも。」

「希ちゃん…みんなに心配かけないように。」


「頑張ってたから。」

314 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/24(日) 00:12:05.30 ID:qAlNl/ka.net
「凛ちゃん…」


「…凛の言う通りよ。」

「私も、賛成。」


「私達は、記憶が無いからって他人だとは思わない。」

「どんな形でも。」

「…一緒に過ごして来た、私達なんだから。」


「そうそう!」

「凛なんか、一昨日の晩ご飯ですら忘れちゃってるんだよ?」

「真姫ちゃんに借りたCDも、借りた事忘れててもう1ヶ月だし…」


「ちょっ…」

「それは返しなさいよ!!」


「えへへー。」


「…と、とにかく。」

「もう…嘘、つき続けなくてもいいんじゃない?」

315 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/24(日) 00:12:55.07 ID:qAlNl/ka.net
「…」


「きっと、みんなも受け入れてくれるわよ。」

「絵里だって、きっと。」

「私達で、説明すれば…」


「真姫ちゃんの言う通りにゃ!」

「凛達が、ちゃんとフォローするから。」

「だから、もう…」





「…ごめん、2人とも。」



「え…?」


「正直、2人にそう言ってもらえて嬉しい。」

「きっと、嫌われるだろうな、って思ってた。」


「それなのに…2人は、受け入れてくれた。」

「…嬉しかった。」

316 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/24(日) 00:13:27.73 ID:qAlNl/ka.net
「なんで…?」

「凛達じゃ、不安なの?」


「…そうじゃないよ。」

「2人がいてくれる事は嬉しい。」


「だったら…!」



「でも。」

「きっと今この話を言ってしまったら。」

「絵里ちゃんも…きっとμ'sも、ぎくしゃくすると思う。」

「騙してたから…なおさらね。」


「それは、私達が…」


「…大丈夫。」


「私は…」


「ウチは、大丈夫やから。」

317 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/24(日) 00:14:33.18 ID:qAlNl/ka.net
「希ちゃん…」


「2人の事が、信じれないとかじゃないんよ。」

「むしろ2人には、感謝しかない。」


「…でも。」

「だからこそ。」


「…今、打ち明けるべきじゃないんよ。」


「ウチは…このウチとして、これまでやって来た。」

「時間は短かったかもしれないけど…」


「それでも、今はこれが『ウチ』だから。」

「このまま、続けるよ。」


「でも、それじゃ…」


「…心配せんでも、大丈夫。」

「2人が、こうして打ち明けられなかった秘密を知ってくれてる。」

「こんなウチの事を、支えてくれるって、言ってくれた。」


「それだけで、十分。」

「それだけで…ウチは、頑張れるから。」

318 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/24(日) 00:15:39.44 ID:qAlNl/ka.net
-----



「希ちゃん…行っちゃったね。」

「やっぱり、怖いのかな?」


「…」


「真姫ちゃん?」


「…そう。」

「きっと希は…怖いのよ。」


「みんなに本音を知られてしまう事が。」

「それに…ただ、逃げてるだけ。」


「逃げてる…?」


「…前に、にこちゃんと話してたの。」

「あれは…きっと、希じゃない、『誰か』だって。」


「…『誰か』?」

319 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/24(日) 00:16:12.59 ID:qAlNl/ka.net
「きっとあれは…希に出来た、もうひとつの人格。」

「『心』…と、言うべき物。」


「…心?」


「過去の記憶に、目が覚めてからの記憶が繋がった。」

「…言わば、もうひとりの希。」


「…ねえ、真姫ちゃん。」

「それって、もしかして…」


「…きっと、打ち明けてしまったら。」

「みんなの反応がどうであれ、今の希を縛るものは無くなる。」


「もしかしたら、全部思い出せるきっかけになるかもしれない…」


「でも、それじゃあ…」


「…ええ。」

「今の、希の『心』は。」

「恐らく…。」




「消えてしまうから。」

320 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/24(日) 00:16:34.78 ID:qAlNl/ka.net
今日はここまで

321 :名無しで叶える物語(関東・甲信越)@\(^o^)/:2015/05/24(日) 00:22:14.41 ID:hruZjowX.net
一体どうなってしまうのか

322 :名無しで叶える物語(もこりん)@\(^o^)/:2015/05/24(日) 00:30:24.06 ID:xSEwgIlf.net
何でも知ってる凛ちゃん(;_;)
まさかわしわしがここで出てくるとは

323 :名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/:2015/05/24(日) 00:46:14.91 ID:8UbA9RBM.net
希がみんなが幸せになってほしい…

324 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/24(日) 23:34:41.72 ID:qAlNl/ka.net
-----



「…はあ。」


とすん、とソファに座って

ごろん、とそのまま横になる



「…裏切っちゃったよね。」


あんなに、私の事考えてくれてたのに


「…でも。」


それでも、私は続けると決めた

…自分で、選んだから


「頑張ろう。」


そして、何よりも…



自分が自分で無くなってしまう事


…それが


何よりも---怖いから

325 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/24(日) 23:35:21.24 ID:qAlNl/ka.net
「…うん。」


今更悩んだって、仕方ない

だってもう…2週間もない


来週の週末には、もうラブライブが待ってる

みんなに迷惑をかける訳にはいかないから


「…大丈夫。」


私なら…やれる


例え記憶が無くたって

学んで来た事がある

みんなの気持ちも、性格も

全部…


全部、覚えたんだから


「絶対に、ミスはしない。」

「せっかく…手に入ったんだから。」


天井に伸ばした手を

ただ、強く握りしめた

326 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/24(日) 23:35:52.60 ID:qAlNl/ka.net
-----




『…今日は、来ないか。』

『まあ…今度は、ちゃんと決めたみたいやし。』


『でも…』


『ううん。』

『それも、「私」が決める事だから。』


『ウチは、ここでこうして、見てるだけ。』



『…今は、ウチは動けない。』

『「私」が、そう決めた。』


『バックアップという存在として作り上げたのも、「私」。』


『だから…きっと、まだ気付けない。』


『…気付かないかもしれない。』



『だって…「私」は、ウチだから。』

327 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/24(日) 23:36:21.93 ID:qAlNl/ka.net
-----



後悔先に立たず、なんて言葉がある

その言葉の通り

後で悔やむ事は、先に知る事ができない訳で


…だって、知ってたら回避しようとするもんね

誰だって、後悔なんてしたくないから



だからあの時、私は決めたのに

どうして、今、後悔してるんだろう?

…いや


どうして、後悔してしまうんだろう?

自分で、そう決めたのに

…これは、『私』なのに



…でも、もしかしたら

例え未来の事が分かったとしても

私は…この道を選んだのかな?



---自分が消えてしまわないように

328 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/24(日) 23:37:15.96 ID:qAlNl/ka.net
-----




「そういえば…」

「亜里沙ちゃんと雪穂ちゃん、合格したんでしょ?」



「…うん!」

「2人とも…春から音ノ木坂の新入生。」


「亜里沙ちゃん、ずっと前からμ'sに入りたい、って言ってたもんね♪」



ある日の練習前

真姫ちゃんの言葉から、みんながその話題を口にする


「じゃあ、もしかして新メンバー?」

「ついに10人目誕生!?」


「…!」


「ちょっと、そういう話は…」


みんなの顔が、曇ってくる

えっと…こんな時、『ウチ』なら…


「…ふふっ。」


「どーやろ?」


そう言って、にこっちに視線を向ける

329 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/24(日) 23:37:56.62 ID:qAlNl/ka.net
「にこっちは卒業できるかどうか…」


「するわよっ!!」


『ウチ』らしく、取り繕ってはみたものの

みんなの空気は、相変わらず


…でも、いつか卒業という行事は来る訳で

それに伴って、μ'sのあり方も変わる

それは、仕方が無い事で…



少し前に、えりち達とこの話をした

ラブライブが終わるまで、この話はしない


余計な事を考えないように

ただ、ラブライブに集中できるように


…でも、やっぱり雰囲気は暗いままで

練習が始まっても…

どこか、不穏な空気が流れてた

330 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/24(日) 23:38:28.44 ID:qAlNl/ka.net
-----


今日はグラウンドで

体をならすトレーニングを中心に

今は、ランニングをしている


先頭に立って走っていると…

後ろから、穂乃果ちゃん達の声が聞こえてくる



「…私も同じです。」

「3人が抜けたμ'sを、μ'sと言っていいものなのか…」


「…そうだよね。」



「なんで卒業なんてあるんだろう…?」


やっぱり、みんなさっきの事を気にしてる

気にしたって…仕方ないやん?


そんな事を考えてると、にこっちが話に割り込んだ


「続けなさいよ…!」

331 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/24(日) 23:38:57.42 ID:qAlNl/ka.net
「メンバーの卒業や脱退があっても。」

「名前は変えずに続けていく。」

「…それがアイドルよ。」


「アイドル…」


「…そ。」

「そう言って名前を残していってもらう方が。」

「卒業していく私達だって、嬉しいの。」


「だから…っぷ!?」


えりちと目を見合わせて

にこっちを、止めた


「その話はラブライブが終わるまでしない約束よ?」


「分かってるわよ…」


みんなで、そう決めたんだから

332 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/24(日) 23:39:27.41 ID:qAlNl/ka.net
「…本当に、それでいいのかなあ?」

「…!」


「花陽…」


「だって…」

「亜里沙ちゃんも雪穂ちゃんも、μ'sに入るつもりでいるんでしょう?」

「ちゃんと…答えてあげなくて、いいのかな?」


「…」


「もし…私が同じ立場なら、辛いと思う。」


「かよちんは…どう思ってるの?」

「…!」


凛ちゃんが、そう告げる


「μ's…続けていきたいの?」


「それは…」

333 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/24(日) 23:39:55.40 ID:qAlNl/ka.net
「何遠慮してるのよ!」

「続けなさいよ…?」


「メンバー全員入れ替わるんならともかく。」

「貴女達6人は残るんだから。」



「…遠慮してる訳じゃないよ?」

「ただ…私にとってのμ'sって。」

「この、9人で…」


「一人欠けても、違うんじゃないか、って。」


「…私も、花陽と同じ。」

真姫ちゃんが続ける


「でも…にこちゃんの言う事も分かる。」


「μ'sという名前を消すのは辛い。」

「だったら…続けていった方がいいんじゃないか、って。」


「…でしょ?それでいいのよ。」

334 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/24(日) 23:41:16.34 ID:qAlNl/ka.net
「…希は。」

「希は…どう思ってるのよ。」


「ウチは…」


…ウチは、どうしたいんかな?

いや、『ウチ』なら、どうするのか


「…決められない。」

「それを決めるのは…穂乃果達だと思う。」


「…!」

えりちが、話に加わる


「私達は、必ず卒業するの。」

「スクールアイドルを続ける事はできない。」

「だから…その後の事を言ってはいけない。」

「私は、そう思ってる。」


「決めるのは、穂乃果達。」

「それが私の考え。」



「絵里…」


にこっちの頭に、手を置く

「…!」


「…そうかもしれないね。」

335 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/24(日) 23:41:55.22 ID:qAlNl/ka.net
-----



「まったく…」

「絵里ってば、意地張って…」


「別に、意地を張ったんじゃないわ。」

「言った事は、本心よ。」


「…本気?」

「本気で…そう思うの?」


「ええ…勿論。」


練習が終わって…結局

みんなで、その事について考える事になった

そこで、ウチら3人はカフェへ


まったりとした空気の中

2人の表情は、真剣で


…聞いてるこっちも、顔に力が入る


「…で。」

「希の意見は?」

336 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/24(日) 23:44:08.00 ID:qAlNl/ka.net
「ウチは…」


「こういう事に関して消極的なのは、いつもの事だけど。」

「私達のこれからにも関係してるんだから、ちゃんと言いなさいよ?」


「そうね…」

「希の意見も、聞いてみたい所ね。」


「…うん。」


μ'sは…このグループは

『ウチ』が、名付けたもの

…そして、ずっと見守ってきたもの

3人で始まったときから、ずっと


なら、それだけ思い入れがある

それだけ、大切に思ってきた


だったら…




「ウチは…μ's、続けてほしいな。」

337 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/24(日) 23:46:55.30 ID:qAlNl/ka.net
今日はここまで

前々作から少し引用してますが
ストーリーは違うのでご安心を

338 :名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/:2015/05/25(月) 01:59:51.60 ID:mTMkPdAz.net

既視感があったけどやっぱりか

339 :名無しで叶える物語(もこりん)@\(^o^)/:2015/05/25(月) 02:06:23.34 ID:zfjbtoql.net
ifならではの分岐した世界
この世界線も幸せになりますように

340 :名無しで叶える物語(湖北省)@\(^o^)/:2015/05/25(月) 02:44:54.56 ID:YVQ9Eidv.net
予想しないところで離れたりくっついたりほんと引き込まれる
乙です

341 :名無しで叶える物語(あゆ)@\(^o^)/:2015/05/25(月) 03:45:13.69 ID:43V89o+s.net
過去作教えて欲しい

342 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2015/05/25(月) 08:51:55.31 ID:mEctxtWp.net
>>341
これだな
>>1にリンクあるから、そこから一作目辿れるよ

希「私がウチになれたのは。」3 [転載禁止]©2ch.net
http://hope.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1429677533/

343 :名無しで叶える物語(あゆ)@\(^o^)/:2015/05/25(月) 14:27:28.77 ID:43V89o+s.net
>>342
ありがとう

344 :名無しで叶える物語(プーアル茶)@\(^o^)/:2015/05/25(月) 18:11:44.52 ID:3hPR+KcC.net
前作と違うここの希の返答が分岐点になってくるのかな
乙です

345 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/26(火) 00:00:41.37 ID:DAf6izzQ.net
ごめんなさい
今日はお休みします

あと2日ぐらいで完結です

346 :名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/:2015/05/26(火) 05:18:17.60 ID:3ZeoOhIo.net
楽しみに待ってます!!

347 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/26(火) 20:54:29.16 ID:DAf6izzQ.net
「え…?」


「ほら、やっぱり希もそう思うでしょ!?」


「ちょ、ちょっと待って…」

「本当に、それで良いの?希。」


「どういう事?えりち。」


「だって、貴女…」

「あんなに…」


「えりち…?」


なんで、そんなに悲しそうな顔をするん?

自分が名前をつけて、見守って来たんだから

それが続いてくって、嬉しい事なんじゃないん?


「…そう。」

「分かったわ。」


「…それが、貴女の答えなのね。」

348 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/26(火) 20:55:00.08 ID:DAf6izzQ.net
「ちょっと絵里、そんな言い方…!」


「…いいえ。」

「怒ってる訳じゃないの。」

「ただ、意外だったから…」


「…意外?」


「昔の希なら…」


「…!」


「…ごめんなさい。」

「とにかく、私は反対よ。」


「それにみんなに言った通り。」

「穂乃果達が、決めるべきだと思うから。」


昔の希、という言葉に

少し、ドキッとした


…大丈夫

バレては…いない

349 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/26(火) 20:55:56.77 ID:DAf6izzQ.net
「…それに関しては、ウチも賛成よ?」

「続けていくのは、あの子達だから。」


「それでも…!」


「…にこっち。」


「…!」


「今まで…ずっと、頑張って来たんだから。」

「これからは…あの子達に、任せるべきと違う?」


「それは…」


「…そうね。」

「私達の想いを繋いでくれる事は嬉しい事だけど。」

「これから頑張るのは、彼女達なんだから。」


「…」


「それじゃあ、何のためにここにいるのよ…?」


「それはほら…ね?」

350 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/26(火) 20:56:50.38 ID:DAf6izzQ.net
「…まあいいわ。」

「絵里の考えも、希の考えも分かる。」

「でも、私もこれは譲れない。」


「だったら、あの子達に任せるしか無いって事も。」


「…そうやね。」


「でも…私も、ちょっと意外だった。」


「え?」


「だって、普段なら…」

「…いや、もう関係ないわね。」


「…とにかく。」

「みんなの答えを、待ちましょう。」


「それまでは、私達らしく。」


「…分かってる。」


「…うん。」

351 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/26(火) 20:57:22.60 ID:DAf6izzQ.net
-----



「…」


『昔の希なら…』


「…」


『だって、普段なら…』



「…」


どこか、おかしかったんかな

昔のウチ?

普段の…ウチ?


でも、こうして経験して来て

考え方は、分かってるつもり

現に、2人とも気付いてない…はず



「…はあ。」



「…ため息つくと、幸せが逃げるわよ?」

352 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/26(火) 20:57:59.59 ID:DAf6izzQ.net
「…!」


公園のベンチに座っていると

後ろから、声をかけられた


「…真姫ちゃん。」


「話し合い…終わったの?」


「え…?」


「してたんでしょ?」

「これから、どうするか…」


「…ああ、うん。」


「…決まった?」


「…一応。」


「ウチらは…」

「みんなが決めるべき、って事になった。」


「そう…」

353 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/26(火) 20:58:24.42 ID:DAf6izzQ.net
「真姫ちゃん達も?」


「…そうね。」

「さっきまで、話してたわ。」

「そう簡単に…決まる物ではないけれど。」



「…それもそうやね。」


「…希は?」


「…へ?」


「どうした方がいいと思うの?」


「だから、みんなに任せるって…」


「それは、3年生の意見でしょ?」

「希自身は、どうなの?」


「ウチは…」


「μ's、続けてほしいな…って。」

354 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/26(火) 21:00:08.90 ID:DAf6izzQ.net
「…」


「…真姫ちゃん?」


「…そう。」


「…意外?」


「…どうして、そう思うの?」


「えりちも…にこっちも。」

「今の真姫ちゃんと、同じ反応したから。」


「…」

「…そうね。」


「意外かと聞かれたら…意外ね。」


「…なんで?」


「希らしく…ないから。」


ウチ…らしく?

355 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/26(火) 21:00:37.37 ID:DAf6izzQ.net
「よかったら…聞かせてもらえない?」

「どうして…希が、そう思ったのか。」



それから…ぽつぽつと

ウチは、真姫ちゃんに想いを吐き出した


「…そう。」


「自分が名前をつけて…見守って来た。」

「今まで、そうやって来たんやから…」


「無くなってほしくないと、思うのが普通じゃない?」

「自分の想いを込めた居場所が。」

「ずっと…続いてほしい。」


「そう思うのは…間違いなんかな。」


真姫ちゃんは、ちゃんと目を見て聞いてくれた

真剣に、話を聞いてくれてるのが分かる


だからこそ…知りたい

356 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/26(火) 21:01:01.63 ID:DAf6izzQ.net
「私は…」


「やっぱり、意外って感じるわ。」

「でもそれは、仕方ない事。」


「きっと…その想いが、違うのよ。」


「想いが…?」


「昔の希が、μ'sに込めた想い。」

「今の希が、μ'sに込める想い。」


「…そこが、にこちゃん達が意外に感じる理由だと思う。」


「込めた…想い。」


「でもね、希。」

「私は、今の希の考えでも良いと思う。」


「…え?」

357 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/26(火) 21:01:30.22 ID:DAf6izzQ.net
「私は、希の気持ちを否定したりなんてしない。」

「だからこそ…言えるのは。」


「今の希の気持ちを、大事にしてほしい。」


「今の希が、このまま続ける事にしたんだから。」

「その考えは、貴女自身の物。」


「今までみたいに、誰かの様子に振り回される必要はない。」

「今は、貴女が東條希なんだから。」


「真姫ちゃん…」


「希は、希よ。」

「今の自分が、一番いいと思う物を、選べば良い。」

「例えそれが間違っていたとしても…」


「それが、希の選んだ答えなんだから。」


「…」

358 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/26(火) 21:01:56.32 ID:DAf6izzQ.net
「…私は、嫌いじゃないわよ。」

「希の、その考え。」


「…え?」


「誰かのためにずっと動き続けてきた、前の希も。」

「みんなと一緒に、自分も幸せになりたいと思ってる、今の希も。」


「どちらも、同じ希だから。」



「…きっと、正解はないのよ。」

「μ'sを続けるにしても、辞めるにしても。」

「その結果に反対する人は、必ずいる。」


「絵里と…にこちゃんのように。」


「だったら…自分の想いに、任せちゃえばいいのよ。」

「自分が、こうしたいと思う事。」



「…何のために、決めるのか。」

359 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/26(火) 21:02:23.23 ID:DAf6izzQ.net
「何のため…」


「…そう言えば。」

「昔…初めて、合宿をした時。」

「希に言われたわ。」


『…ウチな、μ'sのメンバーの事が大好きなん。』

『ウチはμ'sの誰にも欠けてほしくないの。』

『確かに、μ'sを作ったんは穂乃果ちゃん達だったけど。』

『ウチもずっと見て来た。』

『…それだけ、思い入れがある。』


「…って。」


「ウチが…?」


「ええ。」

「朝に海辺で、希は確かにこう言った。」


「そっか…」

360 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/26(火) 21:02:51.03 ID:DAf6izzQ.net
「さっきも言った通り。」

「今の気持ちを、一番大事にするべきだと思う。」


「それでも…私が思うのは。」

「かつて、希がそう言ってくれた事も。」

「今、希が、考えている事も。」


「…どちらも、同じだと思う。」


「同じ…?」


「どちらも、何のために…」

「誰のための、言葉なのか。」


「希は…分かってるでしょ?」


「…」

…ああ、そうか

答えは、目の前にあったんだ


「あのね、真姫ちゃん…」

361 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/26(火) 21:03:17.09 ID:DAf6izzQ.net
-----


「…」


ベッドに、倒れ込む


「誰のため…か。」


そんなの、決まってる

…ううん


ずっと…そうだった

そのために、頑張って来た


だから…


今度も、そのために


「…すぅ。」


大きく息を吸って…吐く


「…決めよう。」

「今度こそ…」




…一番大事なもののために

362 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/26(火) 21:03:42.93 ID:DAf6izzQ.net
-----


…声が聞こえる

名前を呼ぶ、声が


この、声は---




『…おかえり。』


『いや、この場合は…』

『いらっしゃい、の方がいいんかな?』


「…」


『また、迷ってるん?』


「…違う、決めたの。」


『…』



「…話があるの。」

363 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/26(火) 21:04:25.58 ID:DAf6izzQ.net
今日はここまで

昨日はごめんなさい
何事も無ければ、明日、完結です

364 :名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/:2015/05/26(火) 22:28:54.56 ID:3ZeoOhIo.net
乙です
続き楽しみにしてます!

365 :名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 02:55:47.07 ID:UY6ijPKu.net

もう終わってまうのか

366 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 03:21:47.48 ID:8gFQuFRZ.net
相変わらず真姫ちゃんかっこいい

367 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 21:38:21.43 ID:vFXhb/CQ.net
-----



「よ〜しっ!!」

「遊ぶぞ〜!!」


週末、穂乃果ちゃん達に呼ばれて

ウチらは、集まった


「…遊ぶ?」


「いきなり日曜に呼び出して来たから。」

「何かと思えば…」


にこっちとえりちも、驚いてる


「休養するんじゃなかったん…?」


「それはそうだけど…」

「気分転換も必要でしょ?」


「楽しい、って気持ちを沢山持って。」

「ステージに立った方がいいし♪」

368 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 21:38:53.93 ID:vFXhb/CQ.net
「そ、そうですよ…!!」

「今日、あったかいし♪」


「遊ぶのは、精神的な休養だって、本で読んだ事あるし…!」


「そうそう!」

「家に籠っててもしょうがないでしょ?」


「にゃーっ!!」


穂乃果ちゃんの話に、皆がすんなり同意する

海未ちゃんなんかは、何か言いそうやのに…



「なによ…」

「今日はやけに強引ね。」


にこっちも、勘ぐってる



「…ほら、それに。」

369 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 21:39:30.58 ID:vFXhb/CQ.net
「μ's結成してからみんな揃って遊んだ事ってないでしょ?」

「一度くらい、いいかな?って♪」


「でも…」

「遊ぶって、何するつもり?」



「遊園地行くにゃ!」


「子供ね…」

「私は美術館。」


「えっと、私はまずアイドルショップに…!」


「バラバラじゃない!!」

にこっちがツッコむと、穂乃果ちゃんは…




「う〜ん…」


「じゃあ、全部!」



「「はああ!?」」


「行きたい所、全部行こう?」

370 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 21:40:16.97 ID:vFXhb/CQ.net
「…本気!?」


「うん!」

「みんな行きたい所を1個ずつ挙げて。」

「全部遊びに行こう!!」


「いいでしょ!?」


すっごく笑顔で、答える穂乃果ちゃん



「…しょうがないわね〜。」


みんなの顔も、笑顔になる

やっぱり、μ'sで何かをするって事は

みんな、楽しみなんやね



穂乃果ちゃんが、飛び出す


「しゅっぱーつっ!!」



「「おーっ!!」」

371 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 21:41:01.71 ID:vFXhb/CQ.net
-----


それから、μ'sのみんなで

アイドルショップを回ったり

ゲームセンターで勝負したり


動物園で、動物と戯れたり

緑地公園で、いわゆるスワンボートに乗ったり


他にも浅草や、遊園地なんか

みんなの思い思いの場所に、立ち寄る



…やっぱり、誰かと

この、みんなといられる事


それが、何よりも楽しい


初めて出来た、ともだち

初めて出来た、居場所


終わってほしくない

ずっとこのともだちと


…そんな気持ちをかき消すように

日は、どんどんと傾いていった

372 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 21:41:58.23 ID:vFXhb/CQ.net
「それで後は…穂乃果が遊びに行きたい所だけど。」

「私は…」


「海に行きたい。」


「海?」


「うん。」


「誰もいない海に行って。」

「9人しかいない場所で。」

「9人だけの、景色が見たい。」


「…ダメかな?」


穂乃果ちゃんの言葉に

若干戸惑いを見せつつも


誰も、反対はしなかった


…せめて、日が落ちきるまでに

目的地へと、足を速めた

373 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 21:42:28.84 ID:vFXhb/CQ.net
-----



電車に揺られて、数十分

落ちてくる日が、オレンジ色に変わる頃


ウチらは、海岸沿いの駅に着いた


なんとなく、薄暗くなった雰囲気がウチらを包んで

あんまり言葉を交わす事も無く


浜辺に足を運ぶ


潮の香りが立ちこめる中

荷物を濡れない所に置いて


…いざ、波打ち際まで




「「…わあ〜っ!!」」


ちょうど、水平線に沈み始める

紅く染まった夕日を見る事が出来た

374 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 21:42:57.82 ID:vFXhb/CQ.net
日が沈むまでの、ほんの少しだけの時間

みんなが思い思いに、海を楽しんだ



みんなで、顔を合わせて

海に向かって、そっと手を繋ぐ


影を帯びて来た茜空の下

静かに、海を眺めてた




「…合宿の時も。」

「こうして、朝日見たわね。」


えりちがふと、口を開いた


「…そうやね。」


眺める夕焼けが、仄暗くなり始める

時間が来た、と言わんばかりに

穂乃果ちゃんが、口を開いた



「…あのね。」

375 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 21:43:33.12 ID:vFXhb/CQ.net
「…あのね。」

「私達、話したの。」



「あれから6人で集まって…」

「これからどうして行くか。」



「希ちゃんと、にこちゃんと、絵里ちゃんが卒業したら。」

「μ'sを、どうするか…」



「穂乃果…」



空気が、ひんやりと冷気を帯びる

まるで、これからの事を予期してたみたいに


…でも、不思議と怖くはなかった


だって…

376 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 21:44:05.39 ID:vFXhb/CQ.net
「…ひとりひとりで、答えをだした。」

「…そしたらね?」


「全員一緒だった…!」



「…みんな同じ答えだった。」


「だから…」


「だから、決めたの。」

「…そうしよう、って。」


「…」



「言うよ?」

「せーっ…」


「…」


「ごめん。」

「言うよ…」







「せーのっ…!!」

377 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 21:44:37.24 ID:vFXhb/CQ.net
「「大会が終わったら…」」


「「μ'sは…」」











「「おしまいにします…!!」」

378 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 21:45:04.95 ID:vFXhb/CQ.net
「…やっぱり、この9人なんだよ。」

「この9人が、μ'sなんだよ。」



「…誰かが抜けて、誰かが入って。」

「それが普通なのは、分かっています。」



「…でも、私達はそうじゃない。」



「μ'sはこの9人…」



「…誰かが欠けるなんて、考えられない。」



「1人でも欠けたら、μ'sじゃないの…!」




「…」



「…そう。」


「絵里…!!」

379 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 21:46:33.76 ID:vFXhb/CQ.net
「私は、穂乃果達が決めた答えが、ベストだと思う。」

「だって…私達は、卒業するのだから。」


「…ッ!」

「希は…!?」


ウチは…


うん、決めたから

あの時ちゃんと、自分の、心の中で



「…ウチも賛成だよ?」


「…!」

「アンタ、続けてほしいって…」


「…」

「…思い出したんよ。」


「え…?」


「μ'sに込めた…想いを。」

380 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 21:47:06.84 ID:vFXhb/CQ.net
-----


「…話があるの。」


『話…?』


「…そう。」


『てっきり…また、迷ってるんかと。』


「…迷うのは、もう辞めた。」

「迷う必要なんて、なかった。」


「…一番、大事な物が、そこにあるから。」


『…』


『…で、話ってなに?』


「その前に…聞かせてほしい。」


『何を?』


「貴女にとってのμ'sって…何?」


『…』

381 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 21:47:35.57 ID:vFXhb/CQ.net
『…えっと。』

『「ウチ」の記憶によると…』


「…そうじゃない。」

「ウチは、貴女に聞いてる。」


『…え?』


「貴女は…どう思うの?」


『…』


「…答えて。」


『…』



『μ'sは…』







『ウチの、夢。』

382 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 21:48:20.17 ID:vFXhb/CQ.net
『…ともだちが、欲しいと願った。』

『大切なものが、欲しいと願った。』


『誰かの役に、立ちたいと願った。』

『叶えたいと思える、夢を願った。』


『その願いを、叶えてくれた場所。』

『ウチに、夢を見せてくれたんよ。』


『沢山の願いが詰まった、居場所。』

『願った夢を…叶えてくれる、夢。』



『それが…ウチにとっての、μ's。』

『一番大事な…8人の、ともだち。』



「…」


『答えに、なったかな?』


「…やっぱり。」


『…え?』






「…嘘つき。」

383 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 21:48:59.63 ID:vFXhb/CQ.net
『…何の事?』


「分かってるくせに…」

「…ずるいよ。」


『…』


「…」


「…最初から?」


『…最初からやね。』


「…どうして?」


『「ウチ」が、そう決めたから。』


「…そっか。」

「ずっと…見てたんだね。」







「本当の…『私』。」

384 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 21:56:20.74 ID:vFXhb/CQ.net
『…』

『まさか、気付くとは思わんかったよ。』


「私も…まさか、って思った。」

「なにより…ここでの事は、覚えてなかったし。」


『なら…なんで?』



「バックアップ…」


『…』


「貴女は自分の事を、バックアップだと言った。」

「ただ、記憶の処理をしているだけの存在だと。」


「なら…」

「どうして、私に選ばせたの?」


『…』

385 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 21:56:55.92 ID:vFXhb/CQ.net
「その後も…助言したり、忠告したり。」

「ただのバックアップにしては、貴女には意思があった。」


『そんなの、勝手に「ウチ」が作り上げた物かもしれんよ?』


「…思い出したの。」

「2回目に…貴女と出会った時。」

「目を覚ます、直前…」


「貴女は、言った。」



『どうか…間違えないで。』



「…今なら、分かる。」

「貴女は、ずっと隠してた。」

「自分の想いを…気持ちを。」


「…そうでしょ?」



『…』

386 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 21:57:34.87 ID:vFXhb/CQ.net
「どうして…」

「どうして、教えてくれなかったの?」


「自分が、本人だって…」


「どうして、戻りたいと願わなかったの?」

「私は、勝手に生まれた存在なのに。」


『…』


「また…答えてくれないの?」


『…』



『…幸せに、なってほしかった。』


「え…?」


『あの頃の…昔の、「ウチ」を。』


『応援したかったんよ。』

387 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 21:57:55.97 ID:vFXhb/CQ.net
『…貴女が、今までの「ウチ」の事を別人だと思ったように。』

『ウチも、そう思ってた。』


『自分じゃない、誰か。』

『それでも、そこには存在してて。』


『…急に、欲しかった物が手に入って。』

『悩みながらも、みんなになるべく心配させないように動いて。』


『ウチみたいに、気持ちを隠してた頃とは違う。』

『素直な…貴女が、羨ましいと思った。』


「…」


『見た目は、確かにウチだけど。』

『性格も、考え方も違う「ウチ」。』


『ウチが、みんなの幸せを願うように。』

『貴女も…その内の、一人だった。』


「え…」

388 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 21:59:19.67 ID:vFXhb/CQ.net
『だから…って言うのも、あるんやと思う。』

『せめて、貴女が望むまでは…』


『ウチは、望まないように。』

『貴女が…幸せに、なれるように。』


『そう、選んだ。』


「でも…でも、私は…」

「少なくとも貴女のイマを奪ったんだよ?」


『…別に、いいよ。』

『同じ、「ウチ」だから。』


『それに…』


『真姫ちゃんや、凛ちゃんが…』

『あんな風に思って、言葉にしてくれたのは。』


『貴女の、お陰だと思うから。』


「…」

389 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 21:59:50.96 ID:vFXhb/CQ.net
『ウチじゃ…きっと、本音なんて話せなかったし。』

『2人が、本音でぶつかってくれたのも。』

『きっと、それが貴女だったから…』


「…ああもう、めんどくさい!!」


『…へ?』


「ほんと、真姫ちゃんから聞いてた通り、面倒な人!」

「なんでそんなに、ネガティブなのか…」

「…いや、確かに私もそうなんだけど。」


「真姫ちゃんも凛ちゃんも、確かに私を希として見てくれた!」

「それは、私だったからかも知れない!」


「でも、そんな私でも希と認めてくれて、支えてくれたのは…」

「貴女が、今まで希としてみんなの願いを叶えて来たからでしょ!?」

390 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 22:00:46.21 ID:vFXhb/CQ.net
『でも…』


「記憶が無い時、みんなに話を聞いた!」

「『私』は、どんな人間だったのか、って!」


「…全員が答えた!」

「かつて…貴女に、救われたって!!」


「直接関わってないにせよ…」

「貴女が過ごして来た日々は、確かにあったの!」

「貴女を大切に想う人が、たくさんいるの!」


「そんな人達に、支えられてきたんでしょ!?」

「そんな人達と、夢を叶えたいんでしょ!?」


「だから…」

「だから、その想いをμ'sに込めたんでしょ!?」


「…思い出して!」

「今度は、貴女が思い出す番だよ!?」

391 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 22:01:12.71 ID:vFXhb/CQ.net
『…』


「はあ…はあ…」


『でも…』

「でも禁止!」


『…』


「…貴女は、どうしたいの?」

「貴女自身の手で、叶えたいの?」


『ウチは…』


「本気で私の幸せを願って。」

「自分は、見てるだけでいいなんて言うなら。」


「…この体、私がもらうから。」


『…!』


「選んで。」




「…私が、選んだように。」

392 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 22:01:28.87 ID:vFXhb/CQ.net
『ウチは…』


「…」


『ウチは…』









『…みんなと、幸せになりたい。』









「…本当に、面倒な人。」

393 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 22:02:06.26 ID:vFXhb/CQ.net
『でも、そうなったら…』


「…分かってる。」


『それでいいん?』


「良いも何も…元々、貴女の体でしょ?」


『それは…』


「これからどうするのかを考えた時、思った。」

「確かに、私は『私』だったけど。」

「それでも、本当の『私』じゃなかった。」


「ラブライブっていう目標に向かって。」

「…みんな、本気で努力してた。」

「それは、今まで乗り越えて来た物があるから。」

「みんな…お互いの事を、信頼してた。」



「でも…」

「私には、その記憶がないから。」

394 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 22:02:36.11 ID:vFXhb/CQ.net
「確かに、記憶が戻ったフリをしてたら。」

「みんな、優しかったよ?」


「みんなで笑って、遊んで、頑張って。」

「…とにかく、充実してた毎日だった。」


「でも…」

「どこかで、本気になれない自分がいた。」


「それはやっぱり、μ'sに込めた想いが違ったから。」

「私は、今が楽しかった。」

「楽しい日が、ずっと続けば、って思ってた。」


「…でも、違った。」

「楽しい日は、いつか必ず終わる。」

「終わった時、後悔がないように、今をみんな頑張ってる。」


「とてもじゃないけど…」

「私には、そんな考えなんて無かった。」


『…』

395 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 22:03:33.93 ID:vFXhb/CQ.net
「私は、何よりも自分が幸せになりたかった。」

「欲しかった物が手に入って。」

「望んでた幸せを、手に入れる事ができた。」


「ただの…仮初めの、幸せを。」


『…』


「それで、分かったの。」

「やっぱり…どう頑張っても、私は『私』じゃないんだと。」


「…知ってると思うけど。」

「真姫ちゃんに、何のために、って言われて。」

「…気付いちゃった。」



「みんなのために。」


「そのために頑張るのが。」

「そのためにいるのが、私だったんだ、って。」

396 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 22:04:07.19 ID:vFXhb/CQ.net
「そしたらね…なんだか、自分がすごく小さく思えたの。」

「記憶が無い事を隠して、生活して。」

「みんなには嘘をついて、2人には心配させて。」


「私…なにやってるんだろう、って。」


「みんなのために、記憶が戻ったフリをしたのに。」

「いつのまにか、自分のためになってた。」


「…自分でも、呆れた。」

「みんなの事を考えないで…どうして、私はここにいるんだろう、って。」


「そんな気持ちで、優勝なんて出来る訳ない。」

「だって…」


「全部、自分で手に入れた物じゃないから。」


「ともだちも、居場所も…全部、貴女から与えられたもの。」

「変わろう、って気持ちが、無くなっちゃうくらい。」


「居心地が…よかったから。」

397 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 22:04:38.92 ID:vFXhb/CQ.net
「だから…もう、いいんだ。」

「もう…十分、楽しんだから。」


『でも…でも…ッ!』


「…手、出して。」


『…』


「…あったかいね。」


「今度は、全部自分で手に入れてみせる。」

「私の、最後の記憶。」

「あの日に戻って…また一から、やり直す。」


「そして、必ず手に入れてみせる。」

「この…最高の、ともだちを。」



「…約束する。」

398 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 22:05:16.71 ID:vFXhb/CQ.net
『…ッ。』


「…ほら、泣かないで?」

「同じ「私」なら、分かるでしょ?」


「みんなに、本当に必要な存在は…誰なのか。」

「みんなが、貴女を待ってる。」

「貴女と夢を叶えたいと、思ってる。」


「…そんな貴女が、私は誇らしいから。」


『…』


「貴女が、私を覚えていてくれるなら。」

「私は、決していなくなる訳じゃないから。」

「だから…笑って、お別れしよう?」


『…分かった。』

『絶対…叶えて、みせるから。』



「…ありがとう。」



「…ばいばい、『私』。」


『ばいばい、『ウチ』。』

399 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 22:21:53.58 ID:vFXhb/CQ.net
-----


「…希?」


「思い出したんよ…」

「この9人で、叶えてきた夢があって。」

「この9人じゃなきゃ、叶えられない夢がある事。」


「初めて、みんなと出会ってから…」

「ウチが、どんな想いで見て来たか。」


「…名前をつけたか。」


「9人しかいないんよ…!」


「ウチにとって…」



「μ'sはこの9人だけ。」


「…ッ。」

「そんなの…。」

「そんなの、分かってるわよ…っ。」


「…私だってそう思ってるわよ。」

「でも…」


「でも、だって…!」



「にこちゃん…」

400 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 22:22:22.21 ID:vFXhb/CQ.net
「私が、どんな想いでスクールアイドルをやってきたか。」


「…分かるでしょ?」



「3年生になって諦めかけてて。」

「それがこんな奇跡に巡り会えたのよ!?」



「こんなすばらしいアイドルに…」

「仲間に巡り会えたのよ!?」


「終わっちゃったらもう、2度と…」

「だからアイドルは続けるわよ!!」


「絶対約束する!!」

「何があっても続けるわよ…!!」


「真姫…」


「でも…μ'sは私達だけの物にしたい!!」

「にこちゃんたちのいないμ'sなんて嫌なの…」


「私が嫌なの!!」

401 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 22:23:13.36 ID:vFXhb/CQ.net
「…かよちん。」

「泣かない約束なのに…」

「凛、頑張ってるんだよ…?」

「なのに…もう…」




「あーっ!!」


「「!?」」



「時間!!」

「早くしないと、帰りの電車なくなっちゃう!!」


「えっ?」

「穂乃果ちゃん…!?」



「と、とりあえず追いかけるわよ!」

「みんな、荷物もって…」



「…希?」


「…ううん、すぐ行く!」

402 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 22:23:39.93 ID:vFXhb/CQ.net
…これで、良かったんやと思う

みんな、ウチの記憶は戻ってると思ってる

今更、みんなに伝えた所で

…混乱させたり、悩ませるだけだから


だから…ひとつだけ、誓うよ

絶対に、このみんなと夢を叶えてみせる


手を取って、約束したように

ただ…『ウチ』に、胸を張れるように



…でも、やっぱり

伝えないといけない、人がいるから


「…真姫ちゃん、凛ちゃん。」


「「…?」」


「…ありがとう。」

403 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 22:24:07.75 ID:vFXhb/CQ.net
「貴女、やっぱり…」


「記憶、戻ってたの!?」


「しーっ…」


「…!!」

凛ちゃんが、慌てて口を押さえる


「…今まで、ありがとう。」

「ウチの記憶が戻ったのも…」

「これまで、支えてくれた2人のお陰。」


「もう…大丈夫なの?」


「うん♪」


「…そう。」


「そっかー…」

「でも凛、あの希ちゃんも好きだったなー。」


「わしわししないし…」

404 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 22:24:41.03 ID:vFXhb/CQ.net
「…ほう?」

「それは…これの事かーっ!!」

両手を上げて、凛ちゃんに飛びつく


「け、結構にゃーっ!!」


そう言って、みんなの方へ走っていく


「…はあ。」

「凛の言う通り…」


「面倒な希に、戻ったのね。」


「…ま、そういう事やね。」


「…」


「…笑ってた?」


「…うん。」

「最期まで…」


「…そっか。」

405 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 22:25:07.52 ID:vFXhb/CQ.net
「…あのな、真姫ちゃん。」


「…?」


「…ひとつだけ、頼まれた事があるんよ。」


「…何?」


「真姫ちゃんに、伝えといてほしい、って。」

「あの日…」


「真姫ちゃんに、伝えて無かった事。」


「あの日…?」



「…ああ。」

「そう言えば…」

406 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 22:25:39.21 ID:vFXhb/CQ.net
-----



「あのね、真姫ちゃん…」


「…?」


「…」



「…やっぱり、辞めとく。」

「また決めたら、伝えるから。」


「…分かった。」



「…ありがと、真姫ちゃん。」


「…?」


「えへへ…なんでもないよ。」

407 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 22:28:30.55 ID:vFXhb/CQ.net
-----



「それで…なんて?」


「『ウチ』から、真姫ちゃんへの伝言。」


『最期に私を救ってくれて、ありがとう。』


「…ッ。」

「…」


「…そうね。」

「少しは…返せたのかしら。」


「…うん、きっと。」


「例え時間が短くても、一緒に過ごしたのは事実だから…」

「あの希が笑っていたのなら。」

「私が泣く訳には…いかないわね。」


「真姫ちゃん…」


「希ちゃーん!真姫ちゃーん!」


「…あれ、凛ちゃんどうしたん?」

「えへへ…言わなきゃいけないの、すっかり忘れてた!」


「…?」


「…そうね。」


「せーのっ…」


「「おかえりなさい!!」」




「…ただいま。」

408 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 22:31:05.32 ID:vFXhb/CQ.net
これにて完結です
お付き合い、ありがとうございました

こういった感じのを書いたのは初めてなので
分かりにくい所もあったと思いますが
読んで頂きありがとうございました!

何か質問などあれば、お答えします

409 :名無しで叶える物語(らっかせい)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 22:35:51.20 ID:FzLJxCAo.net

全作も今作も面白かったよ

410 :名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 22:36:36.41 ID:jTUkccGe.net
完結お疲れさまです
一時は読んでて辛かったけどハッピーエンドで良かったです

私がウチになれたのは。のどのあたりでこのif分岐構想が練られたのか気になるにゃー>ω</

411 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 22:39:34.73 ID:vFXhb/CQ.net
前作も読んでくれてありがとう

実は思いついたのは英玲奈を書いてる途中で、しかも最後はバッドエンドだったんですよね…

書いてるうちに、いつの間にかこのストーリーに…
凛にバレた時までは、バッドエンド直行だったので、もしかしたら矛盾とかあるかも

いずれにしても、読んでくれて感謝です

412 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 22:47:28.08 ID:D/4U8vId.net
完結おつかれなんよ
ハラショーな終わり方で良かった

エタらない速筆
次回作も期待してます
一作目から何回Blu-ray見たのかわたし気になります

413 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 22:54:11.33 ID:vFXhb/CQ.net
一作目に関しては、コピーしてたBlue-ray1枚、おしゃかにしました
何度も再生、ストップ、巻き戻しをしてたので
限定版入れなくて良かったと思ってる

でも、それで楽しんでもらえたら良かったです
できれば、明日からも何か書きたいですけどね

414 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 23:01:45.05 ID:gdUiO1d+.net
やったー!
あなたの作品を読むのが日課みたいになっているので楽しみです

415 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 23:04:40.15 ID:8gFQuFRZ.net
ハラショー

416 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 23:06:51.25 ID:D/4U8vId.net
すごい再生回数ですね

原作リスペクトされたうえでのサイドストーリーの繋げ方、後半での伏線回収が素晴らしくて私がウチになれたのは。の最初から引き込まれました
台詞の前に名前が入らないスタイルでも誰と誰の会話かすぐに分かる文章はハラショー!に尽きます

次作も期待してるんよ

417 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 23:09:30.89 ID:vFXhb/CQ.net
リクエストあれば、書いてみようかな
ひとつのテーマでもいいんで、何かある人いれば、明日書くかもです
今の所、特にまだ決まってないので…

418 :名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 23:13:44.36 ID:jTUkccGe.net
sideA-RISE一期or二期見てみたいにゃ>ω</

419 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 23:15:58.67 ID:D/4U8vId.net
たこやき氏の書きたいものなら何でもいいんよ

ラブライブ!アライズ編は読んでみたいとは思います

420 :名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 23:17:52.91 ID:GSrghhEs.net
確かにアライズ編を見てみたい

421 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 23:25:55.60 ID:vFXhb/CQ.net
A-RISE編かあ…

前作で結構使っちゃったし、情報が少なすぎるな…
完全オリジナルでもいいなら、A-RISE誕生秘話とかになるのだろうか

422 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 23:42:36.64 ID:5gqSfpEo.net
1さん、前作に引き続き乙でした!
バッドエンドにならず、本当に良かった!

423 :名無しで叶える物語(とうふ)@\(^o^)/:2015/05/27(水) 23:52:12.03 ID:6nmCEu1z.net
お疲れ様です
前作に引き続きいい話だった!!
バッドエンドはどうなったのかとても気になる...

424 :名無しで叶える物語(もこりん)@\(^o^)/:2015/05/28(木) 00:44:52.13 ID:j9fJ2hz+.net
完結お疲れさまにゃ≧ω≦/

なんでも知ってる凛ちゃんからのバッドエンド√も気になりましたがやっぱりハッピーエンドが一番です

オリジナルA-RISE編や
>>1さんの好きなリリホワ短編(特にテーマは思いつきませんが…)とか読んでみたいなとは思います

425 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2015/05/28(木) 01:20:35.29 ID:ok2CO8+m.net
相変わらず良い終わり方だった
前作から見てます

(バッドエンドも気になるとか言ったらいけない空気)

426 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/28(木) 02:09:50.84 ID:I2U5Sa88.net
-> Bad End


>>218より



「…ど、どういう意味?凛ちゃん。」


「…別に、そのままの意味だよ?」

「希ちゃん、記憶戻ってないよね、って。」


「そんな訳ないやん…?」


「ほら、みんなで合宿行った事も。」

「ハロウィンで、踊った事も。」


「凛ちゃんが、ウェディングドレスの衣装着たのだって…」

「ちゃんと、覚えてるよ?」



「…本当に?」


「勿論!」


急速回転する頭を、冷やす

まさか、凛ちゃんがこんなに鋭いなんて思わなかった


どうする…?

427 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/28(木) 02:10:28.07 ID:I2U5Sa88.net
「そっか…」

「本当に、覚えてるんだね。」


「…もう、凛ちゃんってばいきなり酷いなあ。」


なんとか笑顔で、ごまかそうとする

大丈夫のはず

今までだって、ごまかせて来た…



「…じゃあ、ひとつ質問しても良い?」


「…ん?なに?」


大丈夫


今までみんなとやって来た事は

頭にちゃんと入ってる


…大丈夫、問題ない

428 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/28(木) 02:12:17.72 ID:I2U5Sa88.net
「…新曲作りのために、真姫ちゃんの別荘に行って。」

「もちろん、覚えてるよね?」


「うん。」


確か、行き道で穂乃果ちゃんが寝坊して…

3人がスランプに陥って

みんなで、ユニットに別れたんよね


…大丈夫


「希ちゃんが、食べられる草とか教えてくれてね?」

「みんなで、テントに入って夜空を見上げて。」


「…そう言えば、希ちゃん。」

「好きな星の話、してくれたよね。」


「…そうやね。」


「南十字星…今でも、覚えてるよ。」


…そう

あの時確かに、その話をした

海未ちゃんから、その話も聞いた

本当に南極で見たのかって、追求されたから

429 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/28(木) 02:12:58.57 ID:I2U5Sa88.net
「本当に、覚えてたんだ!」

「ごめんね?疑ったりして…」


「あ…ううん。」

「変な質問して、困らせたのはウチやし…」


…切り抜けたんかな?


少なくとも、凛ちゃんは笑顔になった


「えへへっ。」

「やっぱり、いつもの希ちゃんだったみたい♪」

「あの時も、お姉ちゃんみたいに、優しくて…」


「…流れ星を見つけたのも、希ちゃんだったね。」


「ふふっ…綺麗やったね。」



「…ねえ、希ちゃん。」


「…ん?」



「あの時、流れ星なんて無かったよ?」

430 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/28(木) 02:17:35.90 ID:I2U5Sa88.net
「え…」



「確かに、希ちゃんは流れ星を見つけたけど。」

「あれ…冗談だったよね。」


「海未ちゃんも…確認してたよ?」

「希ちゃんが、凛達を元気づけようとしてくれた、って。」


「…」


「…ねえ、どういう事かな?」


「…ッ。」


血の気が引くのが、分かる

完全に、油断してた

開いた口が渇いて、水分を求める


とにかく、切り抜けないと

でも、どうやって…?


声が出せないでいると

部室の、ドアが開いた

431 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/28(木) 02:20:31.98 ID:I2U5Sa88.net
「今の話、本当ですか?」

「…希。」



「海未…ちゃん…」


「あ、海未ちゃんおはよー!」


「ええ、おはようございます、凛。」

「それで…教えて頂けますか?」


「…」


ウチに、言える事はひとつもなかった

ここから、巻き返せる訳が無い

これがきっと、ことりちゃんとか

他のメンバーなら、大丈夫やったかもしれない


…でも、この3人で行動してたからこそ

必ず、ボロが出る



ほつれた糸口は

もう…戻す事は出来なかった

432 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/28(木) 02:24:24.13 ID:I2U5Sa88.net
バッドエンドは、こんな感じで進める予定でした

少しずつボロが出始めて
追い込まれていく感じで書こうと思ってましたが
凛ちゃんがキレ者過ぎるのと、救いが無さ過ぎたので没にしました

後、パターンとしては凛ちゃんをごまかして
真姫ちゃんと2人に支えてもらうけど
結局、記憶は戻らないパターンも用意してましたが
今回の内容で書き上げた次第です

後味悪く感じてしまったら、すみません

433 :口直しに、どうぞ(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/28(木) 02:42:09.23 ID:I2U5Sa88.net
-> Epilogue

-----



「のーぞみっ。」

「…どうしたの?」


「…あ、にこちゃん。」


「ぽけっと口開けて、何してるのよ?」


「うーん…」

「夢を、見てたの。」


「…夢?」


「うん。」

「なんだか、すっごく楽しかった。」

「わくわくして、どきどきして。」


「…そんな、夢。」



「夢、ねえ…」

434 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/28(木) 02:43:33.61 ID:I2U5Sa88.net
「…ねえ、にこちゃん。」


「…何?」


「正夢って…信じる?」


「んー…そうね。」

「私も、アイドルになった時の姿とか、夢で見るし。」

「正夢になってほしいな、ぐらいの気持ちはあるわよ?」


「…そっか♪」


「何か、良い夢でも見たの?」


「…あんまり、覚えてないんだけどね?」

「でも…すっごく、幸せだった。」


「幸せ…ねえ。」

「そりゃ、こんないい天気の日に屋上で寝てたら。」

「幸せな夢のひとつも見るでしょうよ。」


「…確かに。」

435 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/28(木) 02:44:19.13 ID:I2U5Sa88.net
「…それで、どんな夢なの?」


「え…?」


「何?話してくれるんじゃないの?」


「まさか、そんな事言われるとは…」


「話す努力をしなさいよ。」

「誰でもにこみたいに、聞いてくれる訳じゃないんだし。」


「…そうだね。」

「でも、本当にあんまり覚えてないんだよ…?」


「別に、いいわよ。」


「…なんだか、あたたかかった。」


「…?」


「誰かとね?」

「手を…繋いだ気がするんだ。」


「手を…?」


「…うん。」

436 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/28(木) 02:45:02.51 ID:I2U5Sa88.net
「優しい両手に、包まれて。」

「元気な手に、引っ張ってもらって。」


「…最後に、握手をした。」


「…」


「…にこちゃん、私ね?」

「ともだち…作ろうと、思うんだ。」


「…へ?」


「なんだか、今なら何でも出来る気がするの。」

「いつまでも、にこちゃんに頼ってばかりじゃ駄目だから。」


「…どうしたのよ、いきなり。」


「…勇気を、もらったの。」

「顔も覚えてないけど…」


「確かに、この手で受け取った。」



「…やるよ、私。」

「変わって、みせる。」




見ててね


いつか--きっと

437 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/28(木) 02:47:42.57 ID:I2U5Sa88.net
ありがとうございました

438 :名無しで叶える物語(もこりん)@\(^o^)/:2015/05/28(木) 02:55:52.45 ID:j9fJ2hz+.net
>>432
自分もリリホワ好きですが二人がのんちゃん支え合うとしても
この√で書いていたら>>1も辛くなりそうな展開な気が…

ちょうど二期八話見た後なのですが
最初から読み直してたら涙腺崩壊が止まらなくなりました

439 :名無しで叶える物語(もこりん)@\(^o^)/:2015/05/28(木) 03:11:49.81 ID:j9fJ2hz+.net
エピローグが私がウチになれたのは。のプロローグ
…思ってもいなかったどんでん返しにゃ≧ω≦/

>>1さんならではの練り込まれた作風の真骨頂ですね

440 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2015/05/28(木) 14:15:26.39 ID:Qw8TQpS8.net
エピローグに驚いたにゃー>ω</

441 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/28(木) 21:28:03.35 ID:I2U5Sa88.net
よければ、どうぞ

ツバサ「可能性の頂点へ。」
http://hope.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1432816041/

442 :名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/:2015/05/28(木) 21:31:50.37 ID:ce/GogC3.net
>>441
新作キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
誘導ありがとうございます

443 :名無しで叶える物語(湖北省)@\(^o^)/:2015/05/28(木) 21:33:53.66 ID:mlXzUb+f.net
エピローグいいね、グッド見た上でバッド見るの好きだからありがたい
しかしあまり触れられてないけどディスク駄目にするほどって感心するわ…すごい練られてたもんな改めて乙です
誘導も乙

444 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2015/05/28(木) 21:45:02.92 ID:UZJTS3Nn.net
このエピローグは上手い!
新作アライズ編も期待

445 :名無しで叶える物語(あら)@\(^o^)/:2015/05/28(木) 22:56:20.37 ID:c3/S1XZH.net
新作マジ楽しみです!これから読むぜ

446 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2015/05/29(金) 08:26:06.47 ID:J/JQD7xN.net
無理にハッピーにしなくても良かったのに...
エリチのフォロー無かったし

447 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2015/05/30(土) 00:40:51.53 ID:B3YpfA8d.net
プロットっていうの?
どんな具合に練ってるのか気になる

448 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/30(土) 02:15:05.84 ID:AqmGu0jj.net
目が覚めたので>>447だけ答えるよ

ちなみに、>>446が言う事も最もだと思う
当初の予定とは外れたからね
ただ、えりちに関してはどう転んでも救いが無い様にしたかったから
フォロー入ってないのは、そう言う事です

えりちにとって大切な物が、過ごした時間で
真姫にとって大切な物が、その人自身で、って感じで
>>1にある通り、その人にとって何が一番大切なのか
何を持って、その人と決めるのか、と言う部分で対比させたかったので
今回は、絵里は完全に悪役になってしまいました

決して、絵里をdisろうとか
話を投げた訳ではないので、そこだけ理解して頂きたいです

449 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/30(土) 02:30:56.14 ID:AqmGu0jj.net
プロットに関して、流れとしては
1、テーマを決める
一作目から、変化・自覚・対比という感じ
2、着地点を決める
締めの台詞、モノローグ
基本的には、>>1と対になる様にしてたりする
3、2に収めるために、必要なイベントをつくる
ただし、詳しくは決めずに、必ず書く台詞ひとつくらい
ここで言う、凛ちゃんの台詞程度
4、3のイベントに、アニメ等から伏線になりそうな物を取り入れる
一作目で言う、南十字星や合宿での、のぞまきの掛け合い等

あとは、これらを頭の中でまとめて、書き出して
台詞や背景を統一化させて、完成…みたいな感じです
頭の中で、実際に立ち位置とかジオラマを思い浮かべる感じかな?

450 :名無しで叶える物語(湖北省)@\(^o^)/:2015/05/30(土) 02:37:04.91 ID:DMwg1k+T.net
>>1いい書き出しだなーとか思ってたけど意識してたのね、なるほど
文章も勿論なんだけどBDの話とか聞くと作品が好きなことが伝わってくるのが何よりも好き
今のSSものんびり待ってます

451 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2015/05/30(土) 02:41:56.75 ID:AqmGu0jj.net
上の3で書いた様に、内容を詳しく決めないって言うのは
書いてるうちに、もっとこうした方が良いんじゃないか、とか
リクエストもらって書いたときとかに、着地点が分からなくなるから

この台詞だけは必ず入れて、物語に繋げるんだ、って決めておけば
後々見直した時に、ズレなんかが出にくくなるから

こうやってコメをもらうと、やっぱり嬉しいし
リクエストしてくれたら書きたくなるから、俺はそうしてる
一作目なんか、一年間のストーリーしか用意してなかったから
ほとんどその場の思いつきだし…
それでも、最後の希の自己紹介に繋げるために、って書いたのが、3スレ続いただけであって
見返した時におかしいと思った所は、そのまま伏線にしちゃって、話に繋げる事もあるし

リクエストも即興で書いたから、よくよく見返すと変な所もあるし
何より、修学旅行のリクエストが来なければA-RISEはほぼ空気扱いだったし
南十字星の話も、内容が変わってたと思う

…だから、3は自分の中では大事にしてます
もちろん、2が一番大事なんだけど


長々と書いたけど、もしSSを書いてみたいって人の、きっかけにでもなれば嬉しいです
完全に野暮な事書いてるし、SSだけ書いとけ、って人はスルーしてください

それでは、また次作で

452 :名無しで叶える物語(しうまい)@\(^o^)/:2015/05/30(土) 02:57:15.96 ID:uLIpKJGU.net
どういう風に物語を作ってたのかが分かったけど、改めてすごいなと思ったわ・・・

453 :名無しで叶える物語(舞妓 どすえ)@\(^o^)/:2015/05/30(土) 03:53:54.04 ID:Kbu2mElX.net
リクエスト無かったら今やってるA-RISEのSSもなかったかもって思うと何か感慨深いなぁ…
リクエストからの即興もビックリするくらい違和感なかったし本当にすごいっていつも思ってました

454 :名無しで叶える物語(とうふ)@\(^o^)/:2015/05/30(土) 05:22:56.52 ID:ExHS+kxF.net
そこまで考えてしてたのか...
すごいなぁ...

次回作も楽しみにしてます‼
落ちてなければリンクを貼ってもらえるとありがたいです

455 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2015/05/30(土) 08:06:16.18 ID:1CPU8VBB.net
>>454
>>441に次作のリンクが

456 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2015/05/30(土) 11:39:00.96 ID:AWaidfCM.net
こうやって書き方教えてもらっても
俺にはとてもじゃないけど出来ないなと思う
やっぱ1はすごい

457 :名無しで叶える物語(とうふ)@\(^o^)/:2015/05/31(日) 19:01:41.02 ID:R81v8cf5.net
>>455
454です
サンクス
貼ってあったね

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