凛「星は見えないだけで確かに今もあの空で輝いている」

1 ：名無しで叶える物語(茸)＠＼(^o^)／：2015/08/12(水) 18:36:49.17 ID:WUjU41IU.net

そこに存在していて君を照らしている。
僕が君を想う気持ちと同じさ。
だからこうして夜しか会えなくても、寂しがる必要はないんだよ。


凛「…ふむふむ、わかるにゃわかるにゃー」
ﾍﾟﾗﾍﾟﾗ


「これ面白いから凛ちゃんも読んでみて」と、やや強引にかよちんから渡された漫画。漫画といっても普段凛は絶対に読まないジャンルの。
そう、今凛は少女漫画を読んでいるのだ。
タイトルは、『宵闇の王子様』


凛「泣けるにゃぁ、うんうん、」
ﾍﾟﾗﾍﾟﾗ

「ただいまー！ あ、凛、帰ってたんだ？」

凛「んー、おかえりー、杏お姉ちゃん」

杏「何読んでんの？ 見せて見せて」

凛「あっ、ちょっとー！ まだ凛が読んでる途中ー！」

杏「いいじゃん少しくらい。ほら、貸せよー」

凛「もーーっ！！ 杏お姉ちゃんはいつもいつもそうやってーー！！」


星空杏。凛の二つ上で高校三年生。ちょっと、ううん…、“かなり”ガサツなところがあって凛の物を何でも奪おうとしてくるの。カップラーメンのチャーシューとかお風呂上がりに食べようと楽しみにしてたアイスとか、他にも色々……。


杏「これ少女漫画じゃん。へぇ、あんたもこういうの読むようになったんだー」

凛「かよちんが貸してくれたの！ ほらもう返して！」

2 ：名無しで叶える物語(山城・丹波・丹後國)＠＼(^o^)／：2015/08/12(水) 18:38:08.93 ID:kD6Guzrx.net

いない者の話はよせ！

3 ：名無しで叶える物語(もこりん)＠＼(^o^)／：2015/08/12(水) 18:41:49.43 ID:S4FL/0hC.net

あんじゅちゃんかとおもった

4 ：名無しで叶える物語(茸)＠＼(^o^)／：2015/08/12(水) 18:44:41.51 ID:WUjU41IU.net

凛「うんうん、わかるにゃ、わかるにゃ、」
ﾍﾟﾗﾍﾟﾗ

杏「凛ー」

凛「んー、」
ﾍﾟﾗﾍﾟﾗ

杏「りんりんりんりんー」

凛「うるさいなぁ、なにー？」

杏「呼んでみただけ。ていうか、あたし暇なんだけど」

凛「勉強でもしてれば？ 受験生でしょ」

杏「ねぇ、あんた部活何に入ったの？」

凛「ひとの話全然聞かないし……。部活？ まだ決めてないけど多分陸上部かなー」

「凛は昔から走るの速かったものね」

凛「あ、蓮お姉ちゃん！ ご飯できたの？」

蓮「まだもう少しかな。ごめんね、もうちょっとだけ待ってて」

凛「うん」


星空蓮。四つ上のお姉ちゃん。大学二年生。いつもご飯作ってくれるの。杏お姉ちゃんと違って蓮お姉ちゃんはいつも優しくて、ご飯も美味しいし、大好き。
姉妹なのに全然性格は違うんだよね。そう考えるとどっちかっていうと凛は杏お姉ちゃんに似てるのかも。

5 ：名無しで叶える物語(茸)＠＼(^o^)／：2015/08/12(水) 18:57:15.46 ID:WUjU41IU.net

杏「走るの速いっていっても、あたしに一回も勝った時ないじゃん」

凛「うっ…、そ、そんなことないもん！ 最近また速くなったってみんなに言われるし」


悔しいけど杏お姉ちゃんは運動神経抜群で陸上の全国大会までいったことがあったりする。トラック競技の他にも球技や水泳とかも軽々こなしてしまうくらい。
杏お姉ちゃんの言う通り、凛は今まで一度も勝てたことがなかった。


杏「おっ、なら久々に勝負するか！」

凛「い、いいよ！ 絶対負けないから！」

杏「ははっ、じゃあ負けた方は今日のオカズを差し出すことで！」

凛「え……おかずを……？」

杏「あれれー？ 絶対負けないんじゃなかったのかなー？」
ﾆﾔﾆﾔ

凛「そ、それは、えっと……」


今日のオカズは凛の二番目に大好物のミートボール。それを奪われるのは、すごい困る！
で、でも今更やめるなんて言えないし……どうしよう……。


杏「おい凛、さっさと準備しろよ。外行くぞ」

凛「え、えっと、ちょっと待っ」

蓮「二人ともご飯出来たから手洗ってきて」

凛「う、うん！」

杏「えー！ 今から凛と」

蓮「早く手洗ってきなさい」
ｷﾞﾛｯ

杏「ひっ…、はぁーい…」


助かった。蓮お姉ちゃん、ありがとう。
普段は温厚で優しいんだけど、怒るとめちゃくちゃ恐いんだよね。
何度杏お姉ちゃんが泣いてるのを見たことか……。

6 ：名無しで叶える物語(笑)＠＼(^o^)／：2015/08/12(水) 19:03:33.98 ID:KmafZ7WR.net

ほぉ

7 ：名無しで叶える物語(茸)＠＼(^o^)／：2015/08/12(水) 19:04:28.08 ID:WUjU41IU.net

凛「なにか手伝うことある？」

杏「腹へったー！ 早く食べよう！ ってあれ？ そういえば母さんは？」

蓮「まだ寝てるんじゃないかな？ 凛、ちょっと起こしてきてくれる？」

凛「はーい」

蓮「杏はお皿並べるの手伝って」

杏「うーい」



ｶﾞﾁｬ…


凛「お母さん、ご飯出来たってー」

「ん……、んー……」

凛「ほら起きて起きて！ 一緒に食べよ！」


星空蘭。凛のお母さん。一言でいえば、この家の中で一番自由奔放な人。
今日だって昼間からお酒飲んで今まで寝ちゃってたみたい。


凛「ほら、はーやーくー！」

蘭「んー、凛、手引っ張って起こして」

凛「もぅー！」
ｸﾞｲｯ

8 ：名無しで叶える物語(茸)＠＼(^o^)／：2015/08/12(水) 19:13:12.19 ID:B36ElFhS.net

確かにあのお母さんは自由そう

9 ：名無しで叶える物語(茸)＠＼(^o^)／：2015/08/12(水) 19:19:44.88 ID:WUjU41IU.net

蘭「ふあぁ……あー、いつの間にみんな帰ってたの……ていうか頭痛っ、」

凛「お母さん、ずーっと寝てるから」

杏「ホントそうだよ、蓮姉に花嫁修業とか言って家事全部やらせて自分が楽したいだけじゃん」

蘭「将来お嫁に行く時に苦労しないようにっていう私の優しさがわかんないかなー」

蓮「まぁお母さんのおかげで料理の腕が上達したのは本当のことだからね」

蘭「さすが蓮。良い子に育ってくれて母さんは嬉しいわぁ」

杏「まったく、蓮姉は母さんに甘すぎるんだよなー。なぁ、凛」

凛「えーと、凛にはよくわかんないかなぁ…。それより早く食べようよー」

杏「ん、そうだな」


「「「「いたただきまーす！」」」」





杏「んーーっ、やっぱ蓮姉の料理は格別だなー！」

凛「うんっ、おいしい！」

蘭「さすが私の自慢の娘だ」

蓮「ふふっ、ありがと。そう言ってくれると嬉しい」

杏「蓮姉、おかわりくれっ！」

凛「凛もおかわり！」

蘭「蓮は今私の酒を作るのに忙しいから自分でついできなさーい」

杏「ったく、母さんこそ自分で作れよなー！ んじゃ凛、あたしの分もついでこい」

凛「はいはい、わかったよ」

10 ：名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)＠＼(^o^)／：2015/08/12(水) 19:22:11.39 ID:QFpDfwRF.net

誰か誰だかわかんねえぞおい

11 ：名無しで叶える物語(茸)＠＼(^o^)／：2015/08/12(水) 19:32:31.14 ID:WUjU41IU.net

蓮「そういえば杏、ちゃんと勉強してる？ まだ先とはいえこの一年はあっという間よ」

杏「んー、まぁぼちぼち」

蘭「杏はスポーツ推薦で入るから勉強なんてしなくていいんじゃないの？」

杏「あー、あたし部活辞めたからそれ無理っぽいなー」

蘭「辞めた？ なんで？」

杏「なんていうか…、飽きたから」

蘭「ふーん、まぁ飽きたならしょーがないか」

杏「そうそう。つーか親としてその台詞はどうなんだよ……でも別に大学とか行かなくても適当にバイトでもしてりゃそのうち結婚することになるだろ」

蓮「大学は絶対に行きなさい」

杏「そんなのあたしの勝手だろ。まぁ気が向いたら」

蓮「絶対に行きなさい」
ｷﾞﾛｯ

杏「は、はい……」

蘭「おーこわいこわい」


凛「杏お姉ちゃん、ご飯これくらいで……って、あーーっ！！」

杏「んだよ、うっせぇな」

凛「凛の……凛のミートボール！！ 食べたでしょ！？」

杏「知らねぇよ、自分で食べたんじゃねーの？」

凛「楽しみにとっておいたのにー！！ 返して返してーっ！！」

杏「うるせーなー、そこまで言うならこのニンジンやるよ。だから静かにしろ。そしてそのご飯を早く渡せ」

凛「久々にキレそうだにゃ……もうこんな家出ていってやるー！ 杏お姉ちゃんのバカー！！」
ﾀﾀﾀﾀｯ

蘭「あ、凛！ 外行くならついでに煙草買ってきて」

杏「アイスも忘れんなよ。チョコのやつな」

蓮「凛、あまり遅くならないうちに帰ってくるのよ」

12 ：名無しで叶える物語(茸)＠＼(^o^)／：2015/08/12(水) 19:51:50.21 ID:WUjU41IU.net

凛「えーと、チョコチョコ……あった、あとは、蓮お姉ちゃんはこのお菓子が好きだったよね」
ｺﾞｿｯ


凛「すみません、お願いします」

「712円でーすっ」

凛「あ、それと」


「ん？ あれは…」


凛「た、たばこの、えっと……49番を」

「り、凛…」

凛「あ、お父さん」

「凛が……凛が……っ、不良になってしまった」

凛「へ？ あ、ち、違うよっ！ これは」


星空龍(ロン)。凛のお父さん。何の仕事をしてるのかわかんないけど、お母さんと凛たち三人姉妹を養えるだけの収入はあるみたい。
そういえばお母さんとどんな風に知り合ったとか全然聞いたことなかったなぁ。今度訊いてみよっと。
とにかく一緒に暮らしてる家族からしても何かと謎が多い人。


龍「そうかそうか、蘭のおつかいだったのか。凛がグレてしまったのかと思って心臓が止まりそうだったよ」

凛「凛はそんなことしないにゃ」

龍「そうだね、凛は良い子だからな」
ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

凛「えへへ」

13 ：名無しで叶える物語(茸)＠＼(^o^)／：2015/08/12(水) 20:14:27.96 ID:WUjU41IU.net

凛「ただいまー」

龍「ただいま」


杏「おせーよ、凛ー！ あ、父さんも一緒だったんだ。おかえりー」

蓮「お帰りなさい。お仕事お疲れ様。鞄持つよ」

龍「いや、大丈夫。ありがとう」

蓮「あ、大事な商売道具が入ってるんだったよね。ごめんなさい」

龍「こっちこそ気遣わせてしまってすまんな」

凛「……？？」

杏「なぁ、凛」
ﾋｿｯ

凛「なに？」

杏「父さんの仕事って何か知ってる？」

凛「んーん、知らない」

杏「蓮姉は知ってるみたいなんだけど教えてくれないんだよなー」

凛「直接訊いてみたら？」

杏「んなのとっくに訊いてるよ。でも絶対教えてくんなくて、これは怪しい…」

凛「そう？」


蓮「お父さん、お母さんがずっと待ってたよ。疲れてると思うけど少しだけ付き合ってあげて」

龍「お、そうかそうか」

蓮「水割りでいい？」

14 ：名無しで叶える物語(茸)＠＼(^o^)／：2015/08/12(水) 20:23:32.15 ID:WUjU41IU.net

蘭「あ、おかえりー」

龍「ただいま」

蘭「もうおそいー！ ささ、座って座って」

龍「明日も朝早いから少しだけな」

蘭「蓮ー」

蓮「すぐ持ってくから」

杏「蓮姉、あたしが持ってくよ」

蓮「そう？ じゃあお願い」


杏「父さん、お疲れ様。はい、どうぞ」

龍「おぉ、ありがとう。杏」

蘭「あら、めずらし」



杏「ねぇ、父さん父さん」

龍「ん？」

杏「父さんって何の仕事してるの？」

龍「どうしたいきなり」

杏「ま、まぁ深い意味はないんだけどさ、あたしも今年で高校卒業じゃん？ 進路とか考えるにしても父親の職業とか知っておいて参考にしたいなーみたいな」

龍「あー……」

蓮「杏はまず大学に行くんだから、まだまだ先の話でしょ」

杏「いやそれでもさー」

蓮「それより早くお風呂入っちゃって。お父さんが飲んでる間に」

杏「ちぇっ、はーい」

15 ：名無しで叶える物語(茸)＠＼(^o^)／：2015/08/12(水) 20:34:29.05 ID:WUjU41IU.net

ﾎﾟﾁｬﾝ……


杏「あっさり撃沈した……」

凛「まぁ仕方ないよ」

杏「凛は気になんないのかよー」

凛「ん、別に。お父さん、優しいし好きだよ」

杏「いや、あたしだって好きだけどさ、なんつーか、気になるっていうか……よく考えれば父親の仕事知らないっておかしいだろっ！」

凛「まぁ普通はそうだけど、今更じゃない？」

杏「……たしかに、今更だな」

凛「うん」

杏「……」
ｼﾞｰｯ

凛「……なに？ どうしたの？」

杏「いやぁ、成長しねーなって」

凛「？？」

杏「凛の胸」

凛「っ、ほ、ほっといてにゃあぁぁ！！」

杏「あははっ、ほらこっち来て。洗ってやるから」

凛「いいよ、一人で洗えるもん」

杏「姉ちゃんの言うことに刃向かう、なっ」

凛「わわっ」


杏「凛は相変わらず細いなー」
ｺﾞｼｺﾞｼ

凛「お姉ちゃんだって細いじゃん」

杏「あたしはいろいろ努力してるけど凛は何もやってなくてこれだろ？ うらやましー」
ｺﾞｼｺﾞｼ

凛「えへへ、なんか照れるにゃぁ」

杏「ほら頭貸して。目閉じてろよ」

凛「うん」