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【SS】真姫 「歌に捧ぐ、私の未来」 【世奇妙】

1 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:22:54.68 ID:qDuoKaAL.net
・世奇妙風SS

過去作リンク
ことり 「私の来世!?」
http://itest.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1456235970/l50

千歌 「私目覚めたんだ…超能力に!!」
http://itest.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1468601018

穂乃果 「もし世界から、ラブライブ!が消えたら」
http://itest.2ch.net//test/read.cgi/lovelive/1470579663/l50

2 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:23:24.52 ID:qDuoKaAL.net
〜真姫の部屋〜


目が覚めた。

季節は夏。蝉の声が部屋の中にまで響く。

前に“見舞い”に来た海未が、「涼しくなりますよ」 と言ってつけてくれた風鈴が、蝉の声に呼応するかのように鳴る。


真姫 「………。」


海未 「真姫ー? 入りますよ?」


ドアを2回ノックし、声をかけた海未は、私の返事を待つことなく部屋に入ってくる。

…まぁ、今の私には返事ができないから、当然のことだ。

3 :名無しで叶える物語(地図に無い島)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:23:29.36 ID:uCrWkvHs.net
期待

4 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:23:53.82 ID:qDuoKaAL.net
海未 「真姫が好きそうなアイスを買ってきました。一緒に食べましょう。」


海未がコンビニのレジ袋から取り出したアイスのパッケージには、『ナポリタン味』と書かれている。
私は露骨に嫌そうな顔を

しようとするが、できない。

私は“あの頃”から、ずっと無表情のままだ。
本当は、いろんな顔をしたい。いろんな話をしたい。


だが、それはもう、叶わない。

5 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:24:24.93 ID:qDuoKaAL.net
海未 「…あまり美味しくありませんでしたね。」

真姫 「………。」


そうね。…と言いたい。


海未 「表情が変わらなくても、分かりますよ。真姫も美味しくないと思ったのでしょう?」

真姫 「………。」

海未 「真姫は分かりやすいですね。…人のことを言える身ではありませんが。」


海未 「……真姫、ひとつ聞いてもいいですか?」


海未は私の顔を見て、そのまま話を続けた。

6 :名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:24:40.42 ID:zsfibcV/.net
支援砲撃

7 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:24:56.97 ID:qDuoKaAL.net
海未 「真姫がこうなってしまったのは真姫の決意の結果です。」

海未 「真姫が μ'sに全てを捧げることを決めて…こうなることも覚悟した上での決意だったと、私たちもわかっています。」

海未 「私達は真姫の意思を尊重して、真姫の作った曲を歌い、踊り、学校を廃校から救っただけでなく、ラブライブ優勝も成し遂げることが出来ました。」


海未は一呼吸置いて、続けた。


海未 「真姫は、これでよかったのですか?」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

8 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:25:30.43 ID:qDuoKaAL.net
私には、ある “能力” があった。

未来から、感情を借りることが出来るのだ

これだけ言っても、理解に苦しむだろうから、例を出して説明しようと思う


私は主にこの力を、曲作りに使っていた。
将来、私が感じる怒りや哀しみ、喜びや感動を借り、曲の中に込めるのだ。

勿論借りるわけだから、曲に込めた分、私は将来感じる感情を失う。
曲に怒りを込めれば、その分将来私が感じる怒りが無くなるわけだ。

この力を使って出来た曲は、それは大きな反響を呼んだ。感情を直接込めているので、聴いた人もその感情を直に受け取ることが出来るからだ。

9 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:26:03.21 ID:qDuoKaAL.net
しかしこの力にも欠点がある。
この力には、限度があった。

お小遣いを前借りするようなものだから、上限があるのは当然だ。もし上限いっぱいにこの力を使ってしまえば、私はすべての感情を失ってしまう。そうすれば、今のような普通の生活はできなくなるだろう。

だから私は中学の時、この力を封印した。
人を感動させる曲、哀しくさせる曲…いろいろ作ってきたが、それももうおしまい。


私の音楽は、終わったのだった。

10 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:26:41.47 ID:qDuoKaAL.net
だけど、私は音楽を諦めきれなかった。
度々音楽室に足を運び、過去に作った曲を弾いていた。
ある日、その姿を1人の少女に見られた。


穂乃果 「すごい! ピアノ上手だねぇ!」


…どうも彼女は、最近スクールアイドルというものを始めたらしく、曲を作って欲しいと頼んできた。
最初は断った。曲を作ったりするのは、もう辞めたから。

だが、気付けば私は、五線譜の描かれた紙とペンをとり、ピアノの前にいた。


真姫 「…やるなら、全力で…。」

11 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:27:25.10 ID:qDuoKaAL.net
私は将来の私の希望…それを少し、曲の中に込めた。
この曲を歌う彼女達が、希望を持ってこの先頑張っていけるように。


…ライブは、成功だった。
観客こそ、1人2人しかいなかったものの、歌っていた3人の顔は、希望に満ち溢れていた。

これで終わり…かと思えば、そうではなかった。私はなんだかんだで、μ'sに入ることになった。
そして私はμ'sの曲作り担当になった。

9人が揃った時の喜び…
観客と一体になって楽しめる興奮…
感動、希望、夢……

私は、将来の感情を、出来る限り曲に注いだ。

12 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:28:02.11 ID:qDuoKaAL.net
海未 「真姫の曲は、すごいですね。」


合宿先で、深夜一緒に作詞作曲をしていた時、海未はこんなことを言ってきた。


海未 「真姫の曲は、人の感情が直に感じ取れると言いますか…」

真姫 「何よそれ…。」

海未 「いえ、本当のことです。真姫の曲を歌っていると、ほかの曲では感じられない感覚に浸ることが出来るのです。」

真姫 「ふぅん…。」


嬉しいような、嬉しくないような、複雑な感じがした。
そんな曲を作れるのも、すべて私の能力のおかげだ。だから、私が褒められるようなことじゃないのに…。

13 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:28:38.06 ID:qDuoKaAL.net
真姫 「…私、いつの間にか穂乃果に相当影響されていたのね。」

海未 「と言いますと?」

真姫 「この力を使うのは、もう最後だって思っていたのに…。あの人に影響されてか、わからないけど…」

真姫 「今を全力で楽しみたいと思った。今できることを、全力でやろうと思った。」


海未 「真姫…?」


真姫 「だから私は…μ'sにすべてを捧げるって誓ったの。将来のことは今はどうだっていい。」

真姫 「この力で、最高の曲を作って、最高のライブがしたい…。」

14 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:29:19.06 ID:qDuoKaAL.net
いつの間にか私は、自分の力のことを、海未に話していた。
どうして話してしまったのかは、今でもわからない。今まで誰にも話したことは無かった。両親にさえも。


海未 「…真姫がそんな嘘をつく人とは思えませんし、本当のことなのでしょう。」

真姫 「あら、意外にあっさり信じるのね。」

海未 「真姫の言うことですから。私は信じますよ。」

真姫 「なっ…何ソレ!」

海未 「意味わかんない…ですか?」

真姫 「も、もう…っ! 真面目な話してるのにっ!」


海未は笑っていた。私も、気付けば一緒になって笑っていた。

15 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:29:51.66 ID:qDuoKaAL.net
海未は先に寝てしまったことりに毛布をかけ、真剣な表情で話を続けた。


海未 「ですが、そうなると真姫は、未来の自分を犠牲にして曲を作っているということですか…?」

真姫 「まぁ…そういうことになるわね。」

海未 「で…ですがしかし!」

真姫 「いいの。私の曲のせいで、予選に落ちた…なんてことになるのが嫌なの。」

海未 「そんなこと…真姫の曲は、そんな力に頼らずとも…」

真姫 「ふふっ、ありがとう。でもね海未…」


真姫 「私は“今”を、全力でやりきりたいの。」


海未 「真姫…。」

16 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:30:27.81 ID:qDuoKaAL.net
海未は私の決意を、受け容れてくれた。
私の力のことも、二人の秘密にすると約束してくれた。


海未 「…それで、今回はどんなものを込めたんですか?」

真姫 「…夢。この曲を聴いた人が、新しい夢に向かって突き進むことが出来るような、そんな曲にしてみたの。」


私は音符を書き連ねた楽譜を、海未の書いた歌詞と一緒に渡した。

17 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:31:23.58 ID:qDuoKaAL.net
真姫 「ユメノトビラ…。いい歌詞ね。」

海未 「ありがとうございます。…よかったら、一緒に歌ってみませんか?」

真姫 「いいわよ。練習もかねて、ね。」


ことりを起こさないよう、私達は静かに歌った。…曲に込めた意思を、海未と確かめ合うように。


ユメノトビラ ずっと探し続けて
君と僕とで旅立ったあの季節

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18 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:32:05.35 ID:qDuoKaAL.net
μ'sの快進撃は、とどまることを知らなかった。最終予選も突破し、いよいよ本戦を明日に控えた。
…穂乃果のアイデアで、急遽学校に泊まることになった。みんなでお泊まりをするのも、大分慣れてきた。

…皆が寝静まった頃、私はこっそり海未に話しかけた。


真姫 「……最近、不安なの。」

海未 「何がですか?」

真姫 「…段々、自分の意識が薄れていくのを感じるの。嬉しいと感じてるはずなのに、それが素直に、表に出ないの。」

海未 「真姫…。それは、やはり…」

真姫 「あの力の…せいでしょうね。」

19 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:32:34.80 ID:qDuoKaAL.net
こうなることも分かっていた。
あれだけ、自分のありったけの感情を注ぎ込んだのだ。

−−でも、早すぎる。

もっと、みんなと感情を共有したい。
嬉しいときは喜んで、可笑しい時は笑って、悔しい時は泣いて…
それが、難しくなっていく。


海未 「…真姫。」


海未は、いつの間にか零れてしまった私の涙を、そっと拭ってくれた。

20 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:33:07.50 ID:qDuoKaAL.net
海未 「大丈夫です。私がついてますから。」

真姫 「海未…。」

海未 「もし真姫が感情を失ってしまっても、私がその分笑ったり泣いたりします。だから、今はそんなこと考えないでください。」

真姫 「でも…!」


海未は私の唇に人差し指を当て、私の言葉を遮った。…そしてそのまま、私の体を抱き寄せた。

21 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:33:37.23 ID:qDuoKaAL.net
海未 「…明日のライブ、精一杯 “楽しむ”。」

海未 「それは、できそうですか…?」

真姫 「当たり前じゃない…。そのためにここまで、頑張ってきたんだから…!」

海未 「なら、大丈夫です。一緒に…9人で、最高のライブにしましょう。」

真姫 「うん……うん…っ!」


海未の胸の中で、私は声を押し殺して、泣いた。海未はそんな私の頭を、優しく撫でてくれていた。

…よかった。
この感情はまだ、残ってた。

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22 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:34:02.27 ID:qDuoKaAL.net
…ラブライブ決勝戦、私は最高に楽しむことが出来た。沢山の光に囲まれ、私達は最高に幸せだった。

…だけど、これで終わりじゃない。
μ'sのために…いや、私自身のためにも、やらなくてはいけないことがある。

μ'sの最期の曲を、つくりあげる。

海外でのライブが決まり、みんなで練習を重ねている時も、私は持てるすべての感情を使って、最高の曲を作り上げていた。

23 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:34:36.10 ID:qDuoKaAL.net
ホテルの部屋でシャワーを浴びて出ると、部屋に置きっぱなしにしていた楽譜を、希が見ていた。
慌てて取り上げようとするも…その“焦り”が出なかった。


真姫 「なに勝手に見てるのよ。」

希 「ご、ごめん…。」


つい、キツイ言い方をしてしまった。


希 「真姫ちゃん…それ…」

真姫 「いいの。私が勝手にやってることだから。…気にしないで。」


…そう、これは私が勝手にやってることだ。
この曲を完成させて、私の曲作り…人生は、終わる。

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24 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:35:09.56 ID:qDuoKaAL.net
〜音楽室〜


海未 「真姫…本当に大丈夫なんですか…?」

真姫 「えぇ…。平気…よ。」


結局この“μ'sの最期の曲” は、ドーム大会のオープニングセレモニーで披露することになった。
…それならやることは一つだ。

喜び、哀しみ、興奮、感動、愛、夢、希望…

そのすべてを、この曲に注ぎ込んだ。

25 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:35:38.49 ID:qDuoKaAL.net
真姫 「……。ねぇ、海未。」

海未 「…なんですか?」

真姫 「前に、言ってくれたわよね。私が感情を失っても、代わりに私の分まで喜んだり、してくれるって。」

海未 「…はい。」

真姫 「それ…本当にお願いできる…?」

海未 「真姫……。」


海未の瞳から、涙が溢れ出る。
私がそれを拭おうとした時、音楽室の扉が、勢いよく開かれた。


希 「…そういう、ことやったんやね。」

真姫 「希……みんな…?」

26 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:36:06.16 ID:qDuoKaAL.net
音楽室にやってきたのは、μ'sのみんなだった。


海未 「…ごめんなさい。やはり、伝えるべきだと思ったのです…。」

真姫 「海未……。」


穂乃果 「真姫ちゃん…どうして、こんなこと…。」

真姫 「…私が勝手にやってることよ。」

凛 「真姫ちゃん…それは違うよ。」

真姫 「違う…? 何が?」

穂乃果 「私達は、みんなでここまでやってきたんだよ? 誰かひとりが犠牲になんて、そんなの間違ってるに決まってる!」

27 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:36:41.41 ID:qDuoKaAL.net
真姫 「でも…μ'sの曲は、私にしか作れない! 今ここで作るのをやめたら…」

穂乃果 「うん。…だから、作るのをやめてなんて言わない。」

海未 「穂乃果?」


穂乃果 「私たちも、曲作り手伝う!」


真姫 「…手伝う?」

穂乃果 「一緒に作ろうよ。…本来、そうするべきだったんだよね。真姫ちゃんだけに任せちゃって…本当、ごめんね。」

真姫 「私は…別に。」

28 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:37:10.52 ID:qDuoKaAL.net
穂乃果 「真姫ちゃんみたいな曲は作れないかもだけど…。私たちの感情も、曲に込めたいんだ。」

真姫 「穂乃果…。」

穂乃果 「みんな、気持ちは同じだよ。みんな、曲を通して、自分の感情を伝えたいんだよ。だから…お願い。」


8人の顔を見た。
みんな、笑顔で私のことを見ていた。

…私はなんて幸せなんだろう。
幸せすぎて、涙が止まらない。私の手を握ってくれるその手が、暖かくて、落ち着く。

−−この気持ちだ。
この気持ちを、歌にしよう。
それが私の 最期 の役目だから。

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29 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:37:44.60 ID:qDuoKaAL.net
…最期のライブは、最高のものだった。
この感動を、大勢の観客と、μ'sのみんなと共有できた。
みんな…勿論私も、笑顔でステージを去った。


本当に良かった。この9人で。

この9人のためにやってきて、良かった。

今、この瞬間が本当に……

…し……あわ……せ…だ………


海未 「真姫?」

穂乃果 「真姫ちゃん…?」

にこ 「真姫……真姫…ッ!」

希 「真姫ちゃんっ! 真姫ちゃんっ!」

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30 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:38:15.03 ID:qDuoKaAL.net
私は殆どの感情を失った。
μ'sの曲に、殆どを使い切った。私は、ほぼ無気力のような感じになっていた。

音楽室でピアノの前に座る。傍らには、いつものように海未がいる。


海未 「真姫…。これが、あなたの望んだ結果なのですか…? 私は納得できませんっ!」

真姫 「………そう。」

海未 「どうして…どうして……っ。」

真姫 「……本当はわかってるでしょ。どうしてこうなるまで、私が曲を作り続けたか。」

海未 「うぅっ……ひぐっ……。」


あの海未が、床に膝をつき、泣いている。
私はそんな海未に、最後のお願いをした。

31 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:38:46.23 ID:qDuoKaAL.net
真姫 「…ねぇ、海未。」

海未 「…なん…ですか…?」

真姫 「私の最後の曲作りに、付き合って欲しいの。」

海未 「…! まだ…なにか作るつもりなのですか!? そんなことしたら…っ!」

真姫 「いいの。…これは、あなたに贈る曲だから。」

海未 「私に…?」

真姫 「そう。残った私の感情を、すべて注ぐ曲。あなたのためだけに、作る曲。」

32 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:39:12.98 ID:qDuoKaAL.net
真姫 「実はもう、ほとんど出来てるの。あとは最後の部分だけ。」

真姫 「…もし、この曲が完成したら、この楽譜は音楽室の棚にしまっておいて。しばらく見つからなさそうな、奥の方に。」

海未 「真姫……。」


海未は瞳にたまった涙を拭い、決意したように、目を尖らせ、傍らにあった何に腰掛けた。


海未 「聴かせてください。…その曲。」

真姫 「……うん。じゃあ、聴いて。」


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33 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:39:41.70 ID:qDuoKaAL.net
…曲を引き終わると、海未は静かに拍手を送ってくれた。表情は俯いてるせいで、よく見えない。

…それでも、よかった。
−−この曲を、聴かせることが出来て。


海未 「…素晴らしい、曲でした。真姫…あなたは本当に…」


真姫 「…………。」


海未 「……真姫? 真姫、嘘…ですよね?」

海未 「真姫……っ! うぐっ…うぅっ…!!」


海未 「真姫ぃぃぃっっっ!!!!!」

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34 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:40:12.25 ID:qDuoKaAL.net
〜5年後〜


海未 「…なぜ私は、あの時止めなかったのでしょうね。…多分、純粋に真姫の曲が聴きたかったんだと思います。」

真姫 「………。」

海未 「…そうですね。この話はもうやめましょう。アイスも溶けてしまいました。」


海未は溶けて完全に水になったナポリタン味のアイスを、レジ袋の中に戻した。

…そのときだった。家の階段をかけ登るかのような音が聞こえてきた。


穂乃果 「真姫ちゃんっ! 海未ちゃんっ!」

海未 「穂乃果…? どうしたのですかそんなに慌てて…」

穂乃果 「これを見てよっ!」


穂乃果は海未の言葉を待たず、パンフレットのようなものを、海未に押し付けた。
表紙には、ピアノの絵らしきものが描かれていた。
なにかの、発表会のパンフレットだろうか?

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35 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:40:42.85 ID:qDuoKaAL.net
〜ピアノコンクール 会場〜


海未 「ふぅ…なんとか間に合いました。」

真姫 「………。」

海未 「驚きました? 御両親に無理を言って、外出の許可をもらったんです。」

海未 「一緒に外に出るのも、久しぶりですね。」


どうして、急にこんなところへ?


海未 「連れてきた理由は、すぐに分かりますよ。…ほら、発表が始まりますよ。」


司会 「続きまして、エントリーナンバー9」

司会 「浦の星女学院 2年 桜内 梨子」

司会 『海に還るもの』


真姫 「………!」

36 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:41:09.63 ID:qDuoKaAL.net
彼女が弾いた曲は、間違いなくあの時作った曲だった。
所々アレンジはされているが、元となっているのは、私の曲で間違いない。

…しかし、どうして?


穂乃果 「あの人、音ノ木坂から転校した娘なんだって。」

海未 「だから、あの曲を…。」

真姫 「………。」


……違う。
あの曲からは、私の込めていないはずの感情が伝わってくる。

“迷い”だ。


真姫 「………。」

37 :名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:41:13.30 ID:rxp2yLe3.net
つまんね

38 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:41:39.53 ID:qDuoKaAL.net
…曲が、終わった。
しかし彼女は、ピアノから離れようとしない。観客が拍手をしようか迷っていると、彼女は、ある曲を弾き始めた。

そして、あろうことか彼女は、弾き歌いをし始めた。


穂乃果 「…海未ちゃん、この曲って…。」

海未 「はい……間違いありません…!」


ユメノトビラ ずっと探し続けて
君と僕とで旅立ったあの季節

39 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:42:09.43 ID:qDuoKaAL.net
穂乃果 「ユメノトビラ…!」


会場が一気にざわつく。
だが、演奏者の彼女に一切の迷いはなかった。楽しそうに、歌っていた。


真姫 「………。」


頬に、熱いものが伝っていくのを感じた。
今の私に…流れるはずのないものが、流れた


海未 「真姫……? 真姫…っ!」

穂乃果 「真姫ちゃん…!」

真姫 「しーっ。…彼女の歌、しっかり聴いてあげましょ。」

海未 「真姫…っ! ……はいっ!」

40 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:42:41.45 ID:qDuoKaAL.net
ユメノトビラを歌い終えると、彼女は立ち上がり、拍手を待たず走り去っていった。


海未 「今の娘は…何だったのでしょう…。」

穂乃果 「海未ちゃん、真姫ちゃん、コレ見て!」

真姫 「……?」


穂乃果の携帯には、とあるスクールアイドルの写真が表示されていた。

…今話題の、『aqours』というグループらしい。その中には、ピアノを弾いていた、彼女の姿もあった。


海未 「そういえば今日…ラブライブ予選の日でしたね…。」

海未 「……真姫。」

真姫 「どうしたの、海未?」

41 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:43:05.62 ID:qDuoKaAL.net
海未 「真姫の歌…聴いた人に、ちゃんと届いていましたね。」

真姫 「…当然でしょ。あの曲には、私の夢を、詰め込んであったから。」


私は海未の手を両手で包み込んだ。
海未はもう片方の手を、私の手の上に重ねた。


真姫 「海未……ありがとう。本当に。」

海未 「…はい。これからも、ずっと一緒ですよ。真姫。」


ざわつく会場の中、私たちは、ただ静かに、涙を流しながら、抱き合っていた。


〜終わり〜

42 :名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:43:44.92 ID:EaPGwdQ2.net
おつ

43 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:44:55.36 ID:qDuoKaAL.net
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
ライブコレクションを見ていたら思いついたアイデアを、そのまま形にしてみました

改めて、ありがとうございました
今後の参考とさせていただきますので、よろしければ感想等よろしくお願いします

44 :名無しで叶える物語(らっかせい)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 01:53:34.44 ID:WZ5ywI80.net

なんかあったかい

45 :名無しで叶える物語(おいしい水)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 02:04:54.87 ID:cCbpalMB.net

焦りがでなかった、みたいな描写をもっと見たかったかも
でも何かリンクしてて良かったです

46 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 02:26:59.64 ID:iqv7THvx.net

まきちゃん

47 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 02:47:48.98 ID:WFCebGMH.net
あああああああああああああああああああああああああああああああ
http://i.imgur.com/OrZyFwl.jpg

48 :名無しで叶える物語(らっかせい)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 02:57:26.76 ID:lOEXnT5s.net

面白かった
過去作も読んでみる

49 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 07:41:37.53 ID:GnaNDC72.net
うみまきはいいぞ

自分が込めた感情が自分の心を動かすなんてね
もしかしたら梨子ちゃんにも同じ力があって、それが曲自体に込められた感情に加えて届いたのかな

最近レズSSばっかりだから(それも好きだけど)こういうの読めてよかった

50 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 07:52:04.72 ID:QD0dBuFf.net
たこやき、必死のスレ上げ

51 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 12:07:43.23 ID:qDuoKaAL.net
>>45
なるほど、確かに段々感情が無くなっていく描写もあった方がよかったかもですね。ありがとうございます

>>49
レズ系は書くのが苦手で、こういうのしか書けないんですよね…w
気に入ってもらえたようでよかったです

52 :名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 12:24:30.28 ID:YtErfUA7.net
おつおつ
よかったわ

53 :名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 12:59:15.35 ID:74RPs2uh.net
Aqoursともリンクしてて面白かった

54 :名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 15:50:56.62 ID:OY3em/7K.net
おつ
感動をありがとう

55 :名無しで叶える物語(たこやき)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 17:06:44.89 ID:Ky7tDhMy.net

うみまき要素あって良かったよ

56 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 17:43:14.60 ID:ob5YIJaY.net
http://i.imgur.com/39uJunK.jpg
http://i.imgur.com/J0LKgWG.jpg
http://i.imgur.com/ntrtI87.jpg

うみまき厨…

57 :名無しで叶える物語(神々の温泉街)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 21:10:50.63 ID:kurl8PgN.net
うみまき!うみまき!

58 :名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/:2016/09/10(土) 22:32:21.54 ID:htOQgMLi.net
保守

59 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)@\(^o^)/:2016/09/11(日) 03:55:24.24 ID:nxtYeVSj.net
海未真姫ってやっぱり少ないですよね…
結構一緒にいる時間多いんだけどな(´・ω・`)

60 :名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/:2016/09/11(日) 16:41:24.95 ID:XDc6Jwrj.net
h

61 :名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/:2016/09/11(日) 20:58:29.13 ID:BA8O3ssj.net
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