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絵里「うみのそこまで、会いに行く」

1 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/28(水) 18:57:54.61 ID:/LeI1k4D.net
※たぶんえりうみ


 水面に写る月明かりを時々見上げながら深く深くと潜っていく。

 冴えた光が水よりも冷たく、
 遠ざけるように腕をかき分け深く沈んでいくと、
 底から湧き出すような闇の方がかえって温かく思えてくる。

 飛び込むまでは息も続かないなんて思いこんでいたけれど、
 人間、意外と酸素なしでも泳いでいけるらしい。
 息を吐いて水を吸う度に、私がこの海に許されていくようで、
 ますます奥の闇が身体を温めてくれる。

 なのにこうして水面に月光のかけらを探して目を向けてしまうのは、
 まだ二本足で立つ暮らしに未練を残しているからかもしれない。

2 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/28(水) 18:59:07.00 ID:/LeI1k4D.net
 そのうち上も下も分からなくなるんよ、
 なんて知ったような口振りで教えてくれたあの子には、
 もう会えないかもしれない。

 旅の途中で読もうと思っていた文庫本をそそくさと取り上げながら、
 希はあの巫女装束、
 というより海女さんみたいな真っ白な着物の紐を結び直しながら

希「うちもそろそろ支度しないとねえ」

 などとつぶやいた。

 私を追ってくるの、と尋ねてみても
 いつもの微笑みを浮かべるだけで、
 なのにとうとう本も熱冷ましもトゥ・シューズも返してくれなかった。

 しまいにはシュシュを外して
 私の髪の毛までほどいてしまったから、
 今もこうして髪をおろしたまま泳いでいる。

3 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/28(水) 18:59:48.26 ID:/LeI1k4D.net
希「いつまでも人間らしく息をしようとするから溺れちゃうんよ。
  こう、身も心もすべて任せてしまうのがコツやね」


 そう言うなり私の背中をばすんと叩き落としてしまった。
 私は私で予習してきた通り、
 月の動きを通して飛び込む間合いを計っていたのに、
 希のおかげで唇を少し切ってしまって、

 にじみ出た血の粒が赤い泡になって
 ぷくぷく浮かぶのがいちいち目ざわりだなんて思っているうちに、
 気付けば呼吸の仕方も覚えてしまった。

 だからあの子には感謝しなければいけない。
 ……今度会ったら、おんなじ目にあわせてあげてもいいんだけど。

4 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/28(水) 19:00:33.07 ID:/LeI1k4D.net
 あんた本当にいくつもりなのね、と冷めた声がふりかかる。

 黒い影が揺れている。
 いや、水に揺れているのはあの子のきれいな黒髪で、
 その奥で赤い瞳がぱちくり光ってみせた。

絵里「なあに、ひやかし?
   だーめっ、心に決めた人がいるんだから」

 冗談を言ってみたのに、にこったらクスリともしない。

にこ「あんたみたいのまで落ちてくるなんて、世も末よね。
   向こう、そんなひどい暮らしなわけ?」

絵里「そうじゃなくて、会いたい人がいるのよ」

5 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/28(水) 19:01:11.42 ID:/LeI1k4D.net
にこ「趣味ならやめときなさい。
   スキューバダイビング何級だか知らないけど、
   調子こいてると足を取られて溺れるんだから」


 そう言うにこの足は暗がりに紛れてもう見えない。
 なにか尾ひれのようなものが動くのを水流の動きで感じるけれど、
 何が生えているのか、
 何を捨てたのかはよく見えない。


絵里「あら、それは亜里沙に失礼よ」

にこ「妹さんは趣味だっていいたいわけね」

 いじわるな笑い。にこってこういうところがある。

6 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/28(水) 19:01:52.02 ID:/LeI1k4D.net
絵里「ねぇ、そこから先、いきたいんだけど?」

 にこの白い手がにゅっと伸びて、
 ちょっと手を貸しなさい、と私のことを引っ張る。
 にこの唇、あぶく一つ漏らさない。

 私もいずれあんな風になれるかしら、なんて見ていたら
 「変な気起こさないでよね」
 とそっぽを向かれてしまう。

 思わずにやけてしまって、私の口からぶくぶく気泡が漏れた。
 ああ、みっともないわ……。

7 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/28(水) 19:02:26.09 ID:/LeI1k4D.net
にこ「で、どうなの?」

 いつの間にか、
 にこの右手にはホッチキスのようなものが握られている。
 うさぎの絵柄、妙に懐かしい。
 よく見たら針を詰めるところがなく、どうやら穴開けパンチの一種らしい。

 ピンク色のファンシーな絵柄はちょっと気味悪くて、
 珊瑚礁のようにかわいらしかった。


絵里「……キモカワ系?」

にこ「ぶっ飛ばすわよ!」

8 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/28(水) 19:03:15.16 ID:/LeI1k4D.net
 私は左手、あの子とつなぐ方の手を差し出す。
 にこがパンチを構え、私の手の甲を挟む。
 赤い目が細められて、ちょっと油断したみたいな笑い。

 口の端から小さな気泡。

 

 ――ばつん!

 

9 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/28(水) 19:03:53.46 ID:/LeI1k4D.net
 気付けば私の手の甲に直径三センチほどの穴があいていた。
 そこから真っ白い煙のようなものが次々あふれ出してくる。

絵里「ちょっと、これどうするのよ!」

にこ「ほっときなさい。出きったらそのうち止まるから」

 役目を終えたにこはそそくさと行ってしまう、
 もう声が遠い。

 いろいろ聞きたいことがあるのに、
 左手から私の光がぶくぶくあふれ出してしまってしょうがない。
 無傷の手で抑えようとしてもダメ、
 なんだか私が軽くなっていく気がする。

 通行手形だと思っときなさい、
 それかフェスの入場バンドよ、なんて勝手な言いぐさ、
 もう私の話なんて聞いちゃいない。

10 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/28(水) 19:04:37.19 ID:/LeI1k4D.net
絵里「そんなことより! 次っ、私、どこいったらいいの?」

 絵里、あんたはもっと身体を軽くしないとダメなのよ。
 いいから出し切っちゃいなさい、あいつに会いたいんなら。


 赤い光は私の煙でかき消されてしまってもう分からない。
 にこったら最後まで勝手なことを言ってくれる。
 勝手なことをしてくれる希とどっちがいいだろう。

 って、一番勝手なのは私だった。

11 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/28(水) 19:05:17.71 ID:/LeI1k4D.net
 ひとり残されても腕の煙は止まらない。
 ぶくぶく流れ出て、
 こんな量が出たらもう私が空っぽになっても仕方ないぐらい。

 しょうがないから放っといてもっと深く潜っていく。
 けれども手に空いた穴のせいでうまく水がかけない。

 いい加減こういうところの不便さに慣れないと
 自然界ではやっていけないって分かってはいるんだけど……。

12 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/28(水) 19:06:04.76 ID:/LeI1k4D.net
 自分の穴に指を入れて、断面をさわってみたりする。

 シャワーヘッドに手のひらを当てた時みたい、
 煙だか液体だかの勢いは全然止まらなくて、
 指三本でふさごうとしても余計噴き出すばかり。

 小指まで挿れてみようとして、
 急にその格好が恥ずかしく思えてきた。
 誰かに見られてないかと見上げても私の煙で月も見えない。
 顔が熱くなる、あの子みたいに。

 とりあえず泳ごう。うん。

13 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/28(水) 19:06:37.32 ID:SnrrdOYI.net
読みにくいの何とかならんのか
読む気が失せる

14 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/28(水) 19:06:40.62 ID:/LeI1k4D.net
 手を握りしめ、グーの形にすると少しは水をかきやすくなる。

 けれども穴が余計に広がってみえて、
 こんな格好であの子に会いに行って大丈夫かしら、
 なんて考えてたら本当に穴が広がっちゃったみたいで、
 ますます煙の勢いが止まらない。

 視界は全部真っ白で、
 これが全部私から流れ出たものだと思うと
 申し訳ないやら恥ずかしいやらで身悶えしたくなる。

15 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/28(水) 19:07:32.02 ID:/LeI1k4D.net
 そのうち真っ白な煙はきらきらと光り出して、
 いよいよ身体が熱くてたまらない。
 まるで私の身体ぜんぶが溶けていってるみたい。

 そういえば、希は蝶のサナギの中にたとえて説明してくれていた。
 まもなく手や足の感覚もよく分からなくなって、
 お母さんに抱きしめられるみたいな、
 とにかくすごくせつない感じに満たされていく。

 もう、たまらない。ちょっとだけあがろう。

 そう思って顔を上向けたら
 ざぶんと一気に水面に上がってしまった。
 嘘でしょう、あんなに深く潜ったのに!

 ショックで縮み上がりそうなとこに降り注ぐ甘い声。


ことり「えりちゃんだぁ」

 ことりだった。

16 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/28(水) 19:08:09.84 ID:/LeI1k4D.net
絵里「ああ、悪いわね、こんな真っ白にしちゃって」

ことり「そうだねぇ、ちょっとびっくりしちゃった」

 こっち見てくすくす笑ってる。
 いたたまれない……。

 本当、自覚はあるんだけど、
 私の中身を見られちゃうのってやっぱり抵抗あるのよ。
 というかことり、あなたわざとやってない?

17 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/28(水) 19:08:44.62 ID:/LeI1k4D.net
絵里「もういいから、これからどこに行けばいいのよっ」

 あの子ったら
 こっちの話を聞きもしないで奥の棚をごそごそやってる。
 鼻歌まじりに、どっかで聞いたようなメロディの。
 でもちょっと間違ってるのがすごくもどかしい。

 私は水の中から頭や腕を出しただけだから、
 自然と目の位置はことりの脚に行ってしまう。
 フリルがひらひら揺れて、
 サンダルのかかとがちらついて、ちょっと目のやり場に困る。

 ねぇことり、私の話聞いてるの?

ことり「ことりはうめもの屋さんです」

絵里「……はぁ? あみもの?」

ことり「うめものっ!」

 あ、ちょっとむくれた。

18 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/28(水) 19:09:21.39 ID:/LeI1k4D.net
絵里「ごめんなさい……それで、何を埋めるのよ」

 ことりは私の手を指さした。

絵里「え……これ、埋めて大丈夫なの?」

ことり「わたしはそのためにいるんです」

 両手で穴の方の手を持ち上げて、じろじろ見ている。
 さすがにもう煙というか私の中身は止まってたらしい。
 そういえば水の中にもずいぶん慣れてきた。

 ことりはポケットからひよこの絵が描かれたメジャーを取り出して、
 ぶつぶつ言いながら寸法を計ったりする。

ことり「ちょっとごめんね」

絵里「え、――ひゃん!」

 ちょっと、勝手に指とかいれないでくれる?

19 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/09/28(水) 19:09:45.95 ID:E2ZVKaXA.net
不思議な世界観だな

20 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/28(水) 19:09:58.43 ID:/LeI1k4D.net
ことり「だって、そういう仕事だし」

絵里「……ウソでしょっ」

ことり「……はい」

 しょんぼり眉をさげることり。
 私がわるいことしたみたい。

絵里「その、それで私の……これ、埋まるの?」

 と、今度は口を閉じてむむむむと悩み始めた。
 その、親指をかむくせ、やめた方がいいと思うんだけど。

21 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/28(水) 19:10:43.76 ID:/LeI1k4D.net
 しばらくして、ことりは何枚かの埋めものを持ってきた。

 メダル、というより大判焼きに近い形で、
 こんにゃくか何かのようにぶよぶよしている。
 青白いのから薄いピンク色、
 大きさも直径三センチから五センチ弱ぐらいで様々だった。

ことり「これなんてどうかな?」

 よりにもよって、
 真っ黄色に黒の渦巻き模様が描かれた、一番毒々しいのを提案された。

絵里「……やめて。お願い」

 こんな手で海未の元へ行くぐらいなら、穴開きの方がマシだった。

ことり「だよねぇ」

 じゃあなんで聞いたのよ。

22 : ◆rB0CA7jVXk (SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/28(水) 19:17:03.72 ID:/LeI1k4D.net
いったんここまで
つづきあとで
あと文字サイズ最小を推奨

23 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/09/28(水) 19:21:05.61 ID:1BgDsUn4.net
いったん乙

24 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/09/28(水) 19:36:40.30 ID:Zn/HyEBz.net
保守

25 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/09/28(水) 19:42:21.40 ID:WOJ7Dbln.net
保守

26 :名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/:2016/09/28(水) 19:48:57.82 ID:SpzTK20L.net
何やら不思議な世界観…

続き期待どす

27 :名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/:2016/09/28(水) 20:41:15.56 ID:j7tFunkx.net
乙!この不思議な世界観好き
続き待ってます

28 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/28(水) 21:58:17.51 ID:zU6GRAAa.net
死ね埼玉

29 :名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2016/09/28(水) 22:29:06.95 ID:/++kDYCL.net


30 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/09/28(水) 22:53:54.73 ID:3IQss967.net
えりうみは美しい

31 :名無しで叶える物語(らっかせい)@\(^o^)/:2016/09/28(水) 23:00:01.24 ID:nJMirE0O.net
スレ見た時点でマーマ…と思ったら真面目な話だった
すまむ

32 :名無しで叶える物語(ほうとう)@\(^o^)/:2016/09/29(木) 00:58:44.46 ID:AytiBT1H.net
なんか独特な雰囲気で引き込まれる
続き期待

33 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/09/29(木) 08:26:28.08 ID:NpNnEBag.net
保守

34 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/29(木) 08:39:53.80 ID:IcMCCH7D.net
 それから二人でいろいろ試したけれど、結局私の穴は埋まらなかった。

 紫色のは柔らかすぎてすぐつぶれちゃったし、
 橙色のは形が合わない。
 桃色のは小さすぎてすとんと抜けちゃうくらい。

 ことりもプロとしての意地なのか、
 むむむと唇をかたくして悩んでいたけれど、
 やっぱり材料を取り寄せないと難しいらしい。


絵里「その、穴を埋めるのってどうしても必要なの?」

ことり「わたしが許せないのっ!」

 クライアント側の譲歩にも耳を貸さない職人気質のことりだった。

35 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/29(木) 08:40:30.11 ID:IcMCCH7D.net
ことり「それに絵里ちゃん、海に入ったばかりでしょう?
    だからね、ちょっとしたことが危ないの」

 まだ諦めてないことりが
 白い埋めものを無理やり縫いつけようとしながらそう話す。
 応急処置だからか、縫い目がほつれがちでちょっと危うい。

 私だって、水に入るのは危ないとは分かっていたけれど――

 言おうとしてちょっと咳き込んでしまう。
 なにか喉にひっかかったみたい、そういえば腕も少ししびれてきた。



ことり「……ごめんなさい。
    時間切れみたい、また今度だね」

36 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/29(木) 08:41:09.43 ID:IcMCCH7D.net
絵里「ちょっと、時間切れってどういう――けほっ」


 絵里ちゃん早く水に入り直した方がいいよ、
 と言ってことりは私の肩を沈めた。

 湿布薬のように肌にしみこんでいく。
 焼けるような冷たさが間接の重みを和らげてくれる。
 私の身体はもう、地上にいた頃とは変わってきてしまったみたい。


絵里「ことり、これ、どういうこと……?」

 急におそろしくなって尋ねる。
 ことりは、

 ……そんな悲しそうな顔をしないでよ、よけいに薄ら寒くなるんだから。

37 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/29(木) 08:41:40.96 ID:IcMCCH7D.net
「言いにくいんだけど、絵里ちゃんはね。
 わたしや穂乃果ちゃん、海未ちゃんと、暮らす世界が違うと思うの」

 ついに私の頭までそっと沈み込めながら、悲しそうな声で言った。
 岩肌の壁が屈折してゆがんでいく。

 海水が肌にしみこむごとに、
 手足がほんのり温まって楽になっていく。
 水面で広がる波がことりの顔をさらにゆがませていた。


絵里「そんな、……私だって分かってる、
   でも、それでもあの子に会いたかったの、
   あんな顔で別れたら忘れたくたって」

ことり「絵里ちゃん、潜水病って知ってる?」


絵里「急に水に上がると血圧がおかしくなる、
   ……んだったかしら? それで、こうなってるってこと?」

38 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/29(木) 08:42:21.15 ID:IcMCCH7D.net
ことり「絵里ちゃんは潜水病とは反対だけど、症状は同じなの。
    適応障害っていうのかな、
    ……やっぱり、絵里ちゃんはわたしたちとは一緒にいられません」


 ことりの手が水から上げられる。

 あんなに流れでた私の白い液はもう流れて無色透明になってしまった。

 屈折した水面の向こうでことりがしゃがみ込んで、私を見送っている。

 たかが十数センチの距離が遠く、水面は壁のように隔たっている。

 もしその向こうに、ことりだけでなく、海未までいるのなら……


 いっそ、昔のおとぎ話のように、白い泡になって消えてしまいたいくらいよ。


ことり「そうだっ、絵里ちゃん、ちょっとおつかい、お願いしていいかな?」

 と、急に立ち上がって行ってしまう。
 えっなによ、さっきまでの空気はなんだったの?

39 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/29(木) 08:42:57.35 ID:IcMCCH7D.net
 ことりはすぐに戻ってきて、私に後ろを向けという。
 言われたままにすると、
 あの子は水の中で器用に私の髪の毛をくくり直してみせた。


ことり「うんっ、絵里ちゃんそっちの方が似合うね。
    絵里ちゃん感がある」

絵里「いいんだけど、おつかいは?」

ことり「そこにくくりつけたから、
    そのまま穂乃果ちゃんのとこに行ってね」


 なにをくくりつけられたか不安だけれど、
 あの子の微笑みは質問を許しそうになかった。

 まぁとにかく、
 ことりにはさっきからただ働きをさせてしまっていたから、
 これくらいは聞いてあげたかった。

40 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/29(木) 08:43:29.11 ID:IcMCCH7D.net
 ひらひら手を振ってくれたあの子に別れを告げて、とにかく来た道を戻る。

 浮かび上がるのは一瞬に思えたのに、
 また沈みなおすのはなかなか苦労する。

 一応埋めてもらった分は水をかきやすくなったけれど、
 それでも縫い目がちくちくする。
 そういえば「引っかいちゃダメ」って言われてたっけ。
 もどかしいわね。


 元の深みまでたどり着く頃には、潜水病(仮)もだいぶ和らいだ。
 というより、
 水に沈めば沈むほどよくなるのは「潜水病」と呼んでいいのかしら。

 ことりも逆だとは言っていたけれど、
 病気や障害ってそもそもなんなのだろう、
 なんてことを考えていたら魚の群れに行き当たる。

 小魚たちの銀色のうろこが目にまぶしい。
 ここは地上で言うところの町中、大通りかなにからしい。

41 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/29(木) 08:43:58.69 ID:IcMCCH7D.net
凛「絵里ちゃんだ」

 凛だった。
 長い棒の先に巨大な鍵爪をつけた物騒なものを構えながら、
 海草の影から顔を出している。


絵里「ちょっと、危ないでしょう!」

凛「危ないのは絵里ちゃんだよ。そこ、じゃま」


 何かの武器を凪ぐように揺らす。
 はじめ私をにらみつけてるのかと思ったのに私なんて見てもいなかった。

 言われた通りに少し動く。
 なんだか腑に落ちないけれど。

42 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/29(木) 08:44:31.10 ID:IcMCCH7D.net
絵里「……とらないの? 入れ食いじゃない?」

 目の前には小魚の大群が今も流れている。
 なのに凛は大げさな道具を構えるだけで動こうともしない。
 もう、私が代わりに獲ってくる方が早いくらい。


凛「だめ。あれは空気的に無理にゃ」

絵里「空気なんて言われても分からないわ。
   というか、水の中じゃない」

凛「絵里ちゃん水差さないでよ……」

絵里「差すもなにも、水だらけじゃないのよ」

 凛の心底げんなりした顔。

 小さい頃、
 亜里沙が烏龍茶と間違えてめんつゆを飲み干した時、
 同じような顔をしてたわね。

43 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/29(木) 08:45:11.41 ID:IcMCCH7D.net
絵里「あれを獲るんでしょう? いいわ、私がやってくる」

 もうだんだんもどかしくなってきてた。
 ちょうどいいわ、年上らしいとこもたまには見せてあげましょう。
 狙いを定めて、群れからはずれた一匹を、
 こう、両手で包み込むように――



絵里「――っあ! っつう、なっ、なにこれ?」

 ビリってきた。
 いや、パチって感じ?
 なによあれ、身体に電流でも流れてるの?


凛「だから言ったにゃー……空気を読まないとダメなんだって」

 だから空気ってなんなのよ。
 まだちょっと痛い。

 ていうか、今ので縫い合わせた痕、取れたりしないわよね?
 指でなぞって確かめたり。


凛「もー、絵里ちゃんよけいなこと――あ」

 しゅばっ、と例の鍵爪が伸びた。

44 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/29(木) 08:45:44.42 ID:IcMCCH7D.net
絵里「ちょっと!? いきなり何するのよっ、危ないじゃない!」

 凛の鍵爪には、一気に二匹もあの魚が突き刺さっていた。
 刺し傷からは白いあぶくが流れ出してる。

 ……私のと同じ色なのがちょっとだけむなしい。


凛「空気を読んだにゃ」

 すっごいしたり顔。
 まあ、水の中は凛の方が慣れてるのかもしれないけれど。

絵里「それが主食? あなた、お魚は苦手じゃなかった?」

凛「食べてもいいっていうかもったいないから食べてるけど、そのためじゃないよ」

 こっちの方がおいしいもんね、
 といって身を隠している海草の端っこをちぎって渡してくる。


凛「食べないの?」

 横で凛に仕留められた魚がみるみる弱って動かなくなる。

絵里「……私、海苔が苦手なのよ」

凛「あは、絵里ちゃんも空気読めるんだね」

 さすがにちょっと怒るわよ。

45 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/29(木) 08:46:14.17 ID:IcMCCH7D.net
凛「水質調査? っていうのかなぁ、
  凛はね、この海のバランスが悪くならないように、調節する係なんだよ」

絵里「いろいろな仕事があるものねぇ」

凛「そうそう。
 絵里ちゃんが来るってにこちゃん経由で聞いたから、
 先に貝を集めたりあの群れをいくつか減らしたりしてたの」


 草影から胸を張ってみせた。
 そんな小さな身体で、よくもまあ、見事な仕事をするものね。

 って、私のために?

46 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/29(木) 08:46:48.79 ID:IcMCCH7D.net
凛「絵里ちゃん。バランスはすーごく大事なの」

凛「なにかが増えたら凛が働かなくちゃいけないし、
  逆に減ったら、埋めなきゃいけないの。
  絵里ちゃんは今度からそういうのも気にしないとダメにゃ」


 塞いだばかりの手の穴を見返してみる。
 ことりの言葉を思い出してしまう。

 私は一人きりで海未の元へ行くつもりでいたけれど、
 本当は一人きりで達せられることなんて一つもないのかもしれない。
 どこかで何かを動かしてしまう。
 その結果、いま目の前であの魚が二匹、息絶えた。


凛「そういうことでもないの。
  凛だって、絵里ちゃんだって、
  自分で何かを決めてやってるわけじゃないんだよ」

絵里「私は違うわよ、海未に会いたくて、
   一緒になりたくてここまで来たんだから」

凛「ううん、違わない。
  お月さまやお星さまが全部決めてて、
  みんな自分が決めたって思いこんでるだけ。
  絵里ちゃんが海未ちゃんを大好きなのも、お星さまが決めてくれたの」

凛「そこを履き違えたらぜったいダメ」

 自由意志というものは凛の頭にはないらしい。

47 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/29(木) 08:47:23.72 ID:IcMCCH7D.net
絵里「それじゃあ、私にできることなんて」

凛「うーん、まぁ、なるようになるにゃ!」

 凛は魚を素手で引っこ抜いて茶色い壷の中に入れていく。
 それから鍵爪の柄の方を使って、ぐりぐりと中で押しつぶしている。
 会話しながらやるような作業としては少し不適切に思えた。

凛「だからね、絵里ちゃんが海未ちゃんといっしょになるように決まってたなら、
  いつかきっと会えるよ」

絵里「そうじゃなかったらどうするのよ」

凛「そのときはそのときにゃ」


 あっけらかんと言う。
 そんな簡単に諦められないのに。

48 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/29(木) 08:47:58.08 ID:IcMCCH7D.net
絵里「ねぇ、その……お星さまにお願いすることってできないの?」

凛「そんなの意味ないよ。
  お星さまも機械と同じで、自分で考えたり思ったりするものじゃないからね。
  絵里ちゃんは冷蔵庫に『よく冷えますように!』ってお祈りしちゃうの?」


絵里「……テレビにお祈りしたことはあるわね」

凛「あはは。凛も」


 凛の助言は要するに、大いなる流れには従うこと、だった。
 話しながら今度は希の言っていたことと重ねていた。

 お星さまは、
 この海は、
 私があの子と重なることを許してくださるのだろうか。

49 : ◆rB0CA7jVXk (SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/29(木) 08:48:32.50 ID:IcMCCH7D.net
いったんここまでー

50 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/09/29(木) 08:59:37.53 ID:7i57swAj.net

スレタイで海未に還るものを思い出した

51 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/29(木) 09:25:58.70 ID:bU3s5+vD.net
いったんここまでー(笑)
死ねよかまってちゃん

52 :名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/:2016/09/29(木) 10:01:38.85 ID:6ORDpq9Q.net
乙待ってるよー

53 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/09/29(木) 13:36:42.83 ID:lMY0+WFs.net
いろいろ考えさせられる

54 :名無しで叶える物語(プーアル茶)@\(^o^)/:2016/09/29(木) 16:02:17.97 ID:f2QpAdIx.net
東京モーターショー2016で話題になったダイハツ美人
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55 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/09/29(木) 20:02:14.78 ID:1hRyNutX.net
保守

56 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/30(金) 08:39:11.18 ID:MmOoq/3H.net
凛「まぁ、収拾つかなくなった時は言ってね。
  話くらいは聞くから」


 壷の中身をすりつぶすと、今度はさっきちぎった海草を放り込む。
 手際のよさ、目も向けずに行程をこなしていく。
 どれほど長い間この仕事を続けているのだろう。

 私も地上では様々な仕事や取りまとめを任されてきたけれど、
 器用貧乏とでも言うのかしら、
 何か一つのプロフェッショナルにはなれないままだった。

 何事にも一途だったあの子が今もたまらなくいとおしいのには、
 そういう引け目もあるのかもしれない。

57 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/30(金) 08:39:41.42 ID:MmOoq/3H.net
絵里「そうね。……あなたみたいな人がいると、心強いわ」


 すると凛は壷の底に差してあった栓をすぽんと引き抜き、
 中身を水に流してしまう。
 すぐさま嗅ぎつけた魚の群れが寄ってきた。

 さっきの小魚よりももっと小さな、
 私の手の穴も抜けられそうなほどの稚魚たちが、
 凛の流した――餌、なのかしら――黄色がかった液体に群がっている。

 よく目を凝らすと壷から流れる液体はぎらぎら輝いていて、
 どうしてもあの銀のうろこを思い出してしまう。


凛「本当はね、凛なんていない方がいいの。
  そしたら凛もおうちで寝てられるもんね。

凛「でも、みんなが海に入るようになったから、
  海だけだとバランスを取れないんだよね」

 それに凛やかよちんだっておいしいもの食べたいしね、と
 しれっと付け加える。

58 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/30(金) 08:40:09.64 ID:MmOoq/3H.net
絵里「ねぇ凛、穂乃果ってどこにいるか知ってる?」

凛「え、穂乃果ちゃんなの?」

 目を丸くして、聞き返される。
 まあでも、ことりの頼みは済ませておきたい。

 

「穂乃果ちゃんは遠いにゃー……海未ちゃんだったら、
 この底の方に」

「海未がいるの!?」

 飛びついたら足下のお魚が逃げ出した。
 凛の引き気味な目、でも、だって、だってそんな、
 海未に会えるなんて――


凛「お、落ち着いて! またやり直しになっちゃうからぁ!」

59 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/30(金) 08:40:37.60 ID:MmOoq/3H.net
 あわてて壷を振って残りを注ぎ出す凛。

 群がってくるあの稚魚たちはまるで凛を守るみたいに、
 というより私に警戒しているみたい。

 今さら取り乱した自分に気付く。
 地上ではこんな姿も見せなかったのに。

 自分の鼓動と目の前の魚たちの動きが連動するように鎮まっていく。
 バランスというなら、一番崩しているのは私自身かもしれない。


凛「えーっとね、ここずうっと行くと、あの群れが今行った方ね、
  そしたらやたら太くて長い水草のつるがあるはずなの」

 例の鍵爪を振りかざして説明する。
 その割に稚魚たちは逃げようともしない。
 凛に馴れているのかしら。

60 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/30(金) 08:41:06.72 ID:MmOoq/3H.net
凛「その水草の茎をね、根本までたどっていくと、
  海未ちゃんに会えるはず。
  ……あんまり期待しない方がいいけど」


絵里「水草の根本ね、分かったわ」

凛「あと途中で気持ち悪い草むらがあるけど、
  あれにはさわんない方がいいにゃ」

 と、またさっきのめんつゆ顔で。

絵里「何があったのよ……」

凛「凛も人のこといえないけど、あんな趣味はないよ……
  かよちんよくあんなのと仲良くできるにゃ……」


 いけない、地雷踏んだかも。
 凛が愚痴りたがるのをなんとか振り切って後にする。

61 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/30(金) 08:41:34.47 ID:MmOoq/3H.net
 よく考えたら
 あの電気魚の群れにくっついて泳いでも大丈夫なのだろうか。
 今のところ、かれらに攻撃の意志はないらしいけれど。

 ときどき腕の間をすり抜けたりするのがくすぐったい。
 水のにおいも飛び込んだ海辺と比べて濃くなってきた。
 暗闇にも目が慣れて、
 あの銀の肌が放つわずかな光すらまぶしいくらい。


絵里「……あれね」


 言われずとも気付く、遠い先の黒ずんだかたまり。
 近づくと赤黒いツタが何重にも絡まりあっていて、
 吸盤のような形の葉が煙草をふかすように大きな気泡を吐き出している。

 筋骨隆々として育った太い茎は
 思わず手に触れてみたくなるほどたくましいものだったけれど、
 凛があんな顔をするのも無理はなかった。

62 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/30(金) 08:42:02.66 ID:MmOoq/3H.net
 よく見るとこの辺りの水草だけ、やけに育ちが良すぎる気がする。
 人の手でも加えられているのだろうか。

 私の左手からも気泡が漏れ出している。
 思わず手元の赤い葉っぱの一つでそれを拭おうとすると、
 ジジッと音を立てて小さく煙を上げた。
 黒く縮れていく、まるで燃えだしたように。


 とっさにその葉を一枚だけ引きちぎると、
 すぐに黒い灰になって流れていった。

 このまま下手をすると、これ全部に燃え広がってしまう。
 急いでその場を後にした。

63 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/30(金) 08:42:29.78 ID:MmOoq/3H.net
 ああもう、さっきから何をしてるんだろう……
 私が悪いわけでもないのに、
 なんて思いたがる自分を咎める。

 そもそもここは私の居場所ではないの、
 あの子が海の奥深くにいるって分かって、
 家族が止めるのも振り切ってここまで来た時点で、
 私はもういろいろなものを裏切っている。


 一人で暗い海を潜り続けているせいか、
 どうしても良くない方へ心が向かってしまう。

 暮らす世界が違うと言った。
 バランスを崩していると言った。

 仮にあの子と再会できたとして、
 私の手は海未を連れていけるだろうか。

 さっきの葉っぱみたいに、
 海未の身体を燃してはしまわないだろうか。

64 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/30(金) 08:42:55.39 ID:MmOoq/3H.net
 巨大な茎に行き当たったのはそんな頃だった。

 緑がかった、
 というより青白く褪せた色だが、
 太さは三十センチもあるだろうか。

 今や遠い水面の果てから海の底さらに深くまで伸びていて、
 海流に圧されて少し揺れている。

 見るからに重量感が強く、石で出来ているとすら思える。


 ともかくこの根本に、あの子がいる。
 この海の一番深いところまで、茎に沿って下りていく。

65 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/30(金) 08:43:21.60 ID:MmOoq/3H.net
 闇の濃度はみるみる増していく。
 不思議と水の濁りも消えていくようで、
 それはきっと、この先に海未が待っているからだ。

 地上で働いていた頃、どこからともなく見習いとして私の下に就き、
 誰よりも熱心に働いていた。

 気品ある所作の奥底にちらりと覗かせる、
 年相応に幼さの残る表情。
 いつの間にか、彼女から目が離せなくなっていた。

 華奢な身体からは意外なほど鍛えていたらしく、
 いつだか、あの柔肌に触れた時、
 張りつめた肉の線に驚かされたものだった。

 けれども触れればあの子の頬はぽうっと桜のように染まり、
 年頃の娘らしい初々しさも見せるものだから、
 私の方も気後れして手を引っ込めてしまった


 「うみ」と名付けられた少女は、生まれた場所に帰る定めだった。

66 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/30(金) 08:43:46.91 ID:MmOoq/3H.net
 最後の夜を思い出す。

 月明かり、波の音、潮の香り。

 あの子の髪から漂うにおい、重ねた指の熱、

 汗で交わりあう指先。

 ぜんぶ覚えてる。
 なのに離れていっちゃう。

 忘れてください、だなんて。

 うす明かりに照らされた唇の影まではっきり思い出せる。
 夢で何度も会おうとしたから。


 やがてその根本にたどり着く。
 そこは死んだように静謐な空間だった。

67 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/30(金) 08:44:43.82 ID:MmOoq/3H.net
 壁のように太い幹をひとまわり、海未はいない。

 本当に、
 こんな場所にいるのだろうか。
 いたとしても、海未は幸せなのだろうか。


 

「……ぁ」

68 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/30(金) 08:45:09.11 ID:MmOoq/3H.net
 存在があった。

 声が、吐息の熱まで一瞬で思い出した。

 すぐ後ろ、向こう、
 闇に慣れた今の私ならすぐ見えた、わかった!


海未「そんな……嘘でしょう、どうして、」


 もう何も言わせない、
 腕があの子をもとめる、
 ああ、うみ、
 ほんとうに海未だわ、あの子がここにいる!

69 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/30(金) 08:45:33.98 ID:MmOoq/3H.net
 あんなに慣れた水の抵抗さえももどかしくて、
 それでも外界の空気に遮られた地上の逢瀬よりずっと近く感じられて、
 私は私を海未と溶け合わすようにして腕を絡めた、
 繋げた、
 まだ動けない海未の両腕ごと包んで背中に手をあてた。


 ああ、すごいわ、心臓が動くのを感じる。
 海未も私の腰に手を回してくれる。
 感じあえる。
 海未が生きている。
 もっとあなたを感じさせて。


 暗がりの中でもすべてが輝いていた。
 私のしあわせは真っ白な闇、蕩けるほど熱い肌よ。


海未「……絵里、すみません」

70 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/30(金) 08:46:00.99 ID:MmOoq/3H.net
 近づきたい私の肩を引きはがして海未が言う。
 いいのもう、
 これで全部チャラよ、だってあなたにまた会えた、

 これから二人で、


海未「だめなんです。……絵里、できません」


 私のあいする人の唇が震えていた。

 どういうことよ、胸の奥でいやな熱が広がっていく。
 こんなに近づいて重なったのに、また離れていく予感がして、
 掴まえなければいけないのに動けなくなってしまう。

71 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/30(金) 08:46:27.37 ID:MmOoq/3H.net
 私の足下を見てください――


 かすれる声で言った海未の白い御脚は、
 青白いツタに絡め取られ、一歩も動けそうになかった。

 そのとき初めて、私はことりの言葉を理解した。


 うちの家では、十八になった娘は生涯こうして生きるのです。
 海未は最後に、そう付け加えた。

72 : ◆rB0CA7jVXk (SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/30(金) 08:48:14.44 ID:MmOoq/3H.net
はいいったんここまで

73 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2016/09/30(金) 08:50:38.18 ID:fTvCCTh0.net
http://denjiha.main.jp/higai/archives/category/%E6%9C%AA%E5%88%86%E9%A1%9E

74 :名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/:2016/09/30(金) 08:51:39.74 ID:sursdKvo.net
いいとこで切るなー
続き待ってます!

75 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/09/30(金) 09:07:51.55 ID:P7gZkWUH.net
死ね害悪

76 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/09/30(金) 12:41:50.26 ID:j2oLt3So.net
人魚なのかと思ってたけどそういうことでもないのか

77 :名無しで叶える物語(プーアル茶)@\(^o^)/:2016/09/30(金) 14:26:31.63 ID:3idDwtWz.net
Facebook、Amazon、Google、IBM、MicrosoftがAIで歴史的な提携を発表
https://t.co/EdOyEmq7jD

78 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/09/30(金) 20:24:38.75 ID:AybJCvIB.net
保守

79 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/01(土) 12:22:50.96 ID:iM2vOAKZ.net
保守

80 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/02(日) 10:59:57.35 ID:HQJ65A6T.net


81 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/02(日) 22:07:19.77 ID:SnikgjUA.net
まだかよ

82 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/10/03(月) 06:56:25.08 ID:tunYCNHN.net
 足下から生えたツタはすでに
 石のように重く、枝分かれした先は編み目のように絡まり合い、
 その足の指一本一本にまで固く絡んでいる。

 ツタは膝の付け根から腰骨に至るまで海未を侵食していた。
 あの子の血色や肌の色まで白っぽく見えてしまうのは、
 生命力をツタに吸われているからかもしれない。

 生け贄にしか見えない。

 まるで現実味のない姿、
 けれども、触れた親指は確かにあの懐かしい熱を灯していて。


海未「・・・・・そんな、気にしないでください」

 足下にすがりつく私の頬へと、
 無理にかがんだあの子の腕が下りる、伸ばされる、触れられる。

 慣れたはずの海水に目が染みるのは、その指が触れたせいだろうか。

 地上での暮らしを思い出す。
 自らの脚であの子が歩く姿を、肌の色さえも輝いて見えた。

 私が勝手にあこがれていたあの時すでに、
 この子はこんな運命を受け入れていたのだろうか。
 そんなのって、そんなのってないわ。

83 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/10/03(月) 06:57:03.32 ID:tunYCNHN.net
海未「お気遣いありがとうございます。私は大丈夫ですよ」

絵里「・・・・・そんなわけないでしょう」


 見てください、と
 晴れやかそうに手を伸ばした先には
 私が根本まで追いかけてきたあの巨大な茎がある。


海未「あれが姉のです。
   十年も経てばあれだけ育って、この海を自由に渡ることもできますから」

 今までと変わらない、私は自由なのだと、この子は言い張る。


絵里「っ・・・・・そんなわけないでしょう!? こんなの、ゆるせない・・・!」


 家のしきたりだか何だか知らないけれど、
 自分の足で歩き泳ぐ権利を奪われて、
 何がしあわせだっていうのよ。

 なのにツタは思うよりも固くてぜんぜんちぎれそうもない。
 もう私の爪の方がはがれそうよ、それに、

海未「えり、やめてくださいっ、あなたの手が!」

 私をこの忌々しい植物から遠ざけようとするあの子は
 見るも悲痛な表情で、
 それでも両足をきりきりと締め上げる痛みに堪えようと、
 ふたりの別れに慣れようとしている。

 小さく震える肌とつま先、生命力が吸い出されていくようで、
 私は左手の縫い跡がほつれるのも気にせず力一杯引っ張ってしまう。
 すると手の穴との隙間から白い筋が、

 いや違う、

 あの煙に似た何かがくゆりはじめる。

84 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/10/03(月) 06:57:58.74 ID:tunYCNHN.net
 はっとして一瞬身を引いた。

 掌の糸はいくつかちぎれている。

 埋めものと手との隙間から私がまた漏れ出している。

 向こうの青白い蔓草も、かすかに焼け焦げて見えた。



絵里「・・・・・っ!」

海未「絵里、あなた何を・・・・・だめです、やめてください!」


 思うよりも早かった、
 私はもう一方の指で縫い目を引きちぎって海未の足下に押し当てる――

 やった、やっぱり焦げてる!

<>

85 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/10/03(月) 06:58:28.70 ID:tunYCNHN.net
 みるみるしおれて赤黒く変色していく、
 枯れ葉を握りつぶすみたい、

海未「危ないです、やめてください!」

 少しずつ確実に燃え広がっていく、あと少しで膝を縛る茎が破けそう、
 煙のような白が広がって、



絵里「大丈夫よ、海未、あなたは私が自由に――けほっ、ごほっ!?」

86 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/10/03(月) 06:59:22.39 ID:tunYCNHN.net
 気管にがらがらした感触、思わず咳込んでしまう、
 何もない、喉に水が入り込む、鼻から口から染み込んで痛いくらい、
 息ができなく

海未「えり? ああっ、もう毒が・・・・・」

 くるしい、喉から空気が出て行かない、
 吐き出しても吐き出しても流れ込む、ああ頭がキリキリする、
 でもダメよ、これを引きちぎるまでは、わたしは、

海未「どうして絵里は・・・・・ああ、もうっ!」

 だめ、  なにもみえなく、  かんかくが、  うみが




海未「――おとうさま、お許しください!」


絵里「っ!? くふ、ごぼっ! んぅ・・・・・んぁあ・・・・・」


 唇から喉の奥まで、さらさらしたものが流れていく。

87 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/10/03(月) 06:59:49.86 ID:tunYCNHN.net
 わたしは手を離してしまう、からだが楽になる、
 舌が重なって唇からあの子の味がながれてくる、
 ああ、熱くなって、身体の奥からあふれだすみたい、いい、
 すごくいい・・・・・


 目を開いた。

 海未は私にくちづけして目を閉じている。

88 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/10/03(月) 07:00:16.95 ID:tunYCNHN.net
 こわばった、けれどあまりに艶めかしく映ったその頬、
 海水に広がるあの子の髪に手を伸ばす。
 ふれる、指を通す、なでてみる。

 すると急にぱっと目を見開き、
 あの子ったら変な声をあげて私を突き飛ばした。



海未「・・・・・その、応急処置ですからっ!」

絵里「応急処置、だったの? ・・・それなら、さっきことりにも」

海未「はあ?! あなたっ、なんてことを!」

 あ、やばい。
 みるみる涙目になっていく。

89 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/10/03(月) 07:00:42.54 ID:tunYCNHN.net
絵里「ちがうのっ! ことりのはこっちの手の穴!
   キスなんて――あなたとしかしてないわよっ!」


 ドキドキする。
 不可抗力ではあるんだけど、
 私なんてこと告白しちゃってるんだろう・・・・・。

 海未も海未で目をそらしてて、
 私だってあの子のことみれなくって、
 ああだめ、にやけちゃだめ、
 こんなみっともない顔したら格好つかないでしょう、
 海未のことばかり考えないでちゃんと海未のこと考えないと、

 って何いってるの私・・・・・。

90 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/10/03(月) 07:01:09.46 ID:tunYCNHN.net
絵里「・・・・・ありがとう。うれしい」

海未「仕方なかったんです、絵里が、あんなことするからぁ・・・
   しんじゃうと、おもいました・・・・・」



 海未ったらついに目尻をこすって泣き出してしまう。
 いてもたってもいられなくてあの子の元に泳ぎ寄って、
 でも触れていいのかちょっと迷うけれど、
 やっぱり抱きしめてあげる。

 だって、地上で働いてた頃だって、
 互いの思いに勘付き合っても手をつなぐのがやっとだったのに、
 少しでもエッチな素振りに免疫なくってすぐ拒絶してきてたのに、
 そんな子が、私のために、その身を汚してまで・・・

 ああもうだめ、私、
 やっぱり海未が好きなんだ。

 ああもうどうしよう、本当に!

91 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/10/03(月) 07:01:37.52 ID:tunYCNHN.net
絵里「ほーら、もう大丈夫だから。
   ごめんなさいね、私、下手なことしちゃって」

海未「・・・・・最低、です」


 子どもをあやすように背中をなでてあげて、
 ああこのさわり心地、懐かしいなぁなんて。

 羽衣を重ねたような繊細な装束の背中から肩胛骨にかけて、
 指を滑らせて深く入り込んでしまいたいけれど、
 さすがの私もまた同じ目にあったら怖かった。


 いやでも、海未がキスしてくれるなら?


絵里「っぎ!? っつ・・・・・何するのよっ」

海未「今度やったら許しませんから」

 左手首を折られそうになる。
 まだ目が赤いのに真顔。
 怖いわよ。

92 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/10/03(月) 07:02:07.06 ID:tunYCNHN.net
絵里「とにかく、いいですかっ、私のことは、」

海未「バカいわないでよ。海未はおとなしくしてなさい」

 落ち着いてくると胸の奥でふつふつと暗い熱が湧いてくる。
 怒りのあまり頭の奥がかえって冷え切っていく。

 家がなんだか知らないけれど、この子の幸せはどうなるのよ。
 百歩譲って相手が私じゃなくてもいいわ、
 でもこんなものの良いようにはさせておけない。


絵里「いい? これから私、穂乃果のところに行ってくるの」

海未「穂乃果ですか・・・・・もはや懐かしい名前ですね」


 ことりと穂乃果は私があの子と出会うよりもずっと前から旧知の仲だったという。

 ことりのあの言葉は、
 二人と海未との間にも隔てる壁が生まれてしまったという意味だったのだろうか。

 二人でさえ海未を救えないとしたら、
 私にできることなんて・・・・・いけないいけない。


 そういう私はもうここで溺れて死んだのよ。
 そういうことにする。

93 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/10/03(月) 07:02:59.22 ID:tunYCNHN.net
>>92ミス
訂正



海未「とにかく、いいですかっ、私のことは、」

絵里「バカいわないでよ。海未はおとなしくしてなさい」

 落ち着いてくると胸の奥でふつふつと暗い熱が湧いてくる。
 怒りのあまり頭の奥がかえって冷え切っていく。

 家がなんだか知らないけれど、この子の幸せはどうなるのよ。
 百歩譲って相手が私じゃなくてもいいわ、
 でもこんなものの良いようにはさせておけない。


絵里「いい? これから私、穂乃果のところに行ってくるの」

海未「穂乃果ですか・・・・・もはや懐かしい名前ですね」


 ことりと穂乃果は私があの子と出会うよりもずっと前から旧知の仲だったという。

 ことりのあの言葉は、
 二人と海未との間にも隔てる壁が生まれてしまったという意味だったのだろうか。

 二人でさえ海未を救えないとしたら、
 私にできることなんて・・・・・いけないいけない。


 そういう私はもうここで溺れて死んだのよ。
 そういうことにする。

94 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/10/03(月) 07:04:01.42 ID:tunYCNHN.net
絵里「まぁのんびり待っていなさい。
   私との結婚生活でも空想しながら、一眠りして落ち着いたらどうかしら?」

 一回死んでお姫様のキスで生き返った私はこんな冗談だって言える。

海未「できませんよ・・・あなたのこと考えたら、眠れなくなっちゃいます」

 ……前言撤回。私、この子無理。
 勝てない。
 しかもなんでそんな顔で言うのよ、離れたくなくなっちゃうじゃない。




 振り切るようにして泳ぎ出たのに、
 横目で見たあの子は笑顔で手を振ってくれてた。

 未練がましく何度も振り向き目に焼き付けながら、まずは元の場所まで。
 いや、もう少し寄り道させてもらおう。

 私は大きな茎に沿って上の方へと浮かび上がり、
 その主の元へと迫った。
 海未の話が事実ならこの先に海未のお姉様も繋がれているはずだ。

 義理の妹として少しばかり挨拶させていただこう。

95 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/10/03(月) 07:04:29.93 ID:tunYCNHN.net
 まもなく小さな人影が、
 近づけば海未のに似た羽衣の揺れるのがはっきり見えた。
 あれが海未の姉だろう。呼びかける。


絵里「すみませえん! 海未の、」

 ・・・・・何て言えばいいかしら。

 恋人? ではないのよね、まだ。
 いやもう事実上恋人と言ってもいいはずだけど、客観的にも。

 ああでもそういう家だと疑られるのはまずいかしら、
 いやいや私は海未の恋人なのよ?
 ここで嘘を付くのは癪よね。

 って、つまらないこと考えてるうちにたどり着いてしまう。


絵里「海未とお付き合いさせていただいています。
   地上から来ました、絢瀬絵里と申します」


 反応はない。
 無視されてるのかしら。

 と、かすかにその身が揺れる。
 ここからは顔色は見えない。
 何かをかぶせられているみたい。

 口を利いてはいけない、
 とでも言われていたとしてもあながち間違いではないだろう。
 こんな家ですもの。

96 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/10/03(月) 07:05:00.91 ID:tunYCNHN.net
絵里「私は、海未と添い遂げる覚悟です。
   どうか、海未を自由にさせていただけませんか」

 本当はお姉様よりも他の誰か、ご両親にお会いできればいいけれど、
 こんな家なのだから期待はできない。
 下手すると海未から余計に引き離される可能性すらありうる。

 それでも、
 たとえお姉様が一言も返してくれなくてもわざわざ言いたかったのは、
 たぶん私自身に対する決意表明なのだと思う。




絵里「・・・・・また来ますから」

 水流のおかげか、海未のお姉様は小さくうなづいたように見えた。
 今はこれが精一杯なのだろう。
 私はくるりとターンしてまた水中深くを目指す。
 いい加減、穂乃果の元へ向かわないと。

97 : ◆rB0CA7jVXk (SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/10/03(月) 07:08:42.85 ID:tunYCNHN.net
いったんここまで
今週はペースが落ちそう
落ちてもいつか立て直すんで気になさらず

98 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/10/03(月) 08:54:40.93 ID:L453qpbC.net
いい加減懲りたら?
エリチカを池沼にすんな害悪埼玉

99 :名無しで叶える物語(はんぺん)@\(^o^)/:2016/10/03(月) 09:01:28.35 ID:LRKN95M1.net
読んでるよー
気長に待ってます

100 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/03(月) 09:12:41.06 ID:Xgj+1WyD.net
更新乙

101 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/10/03(月) 09:15:26.33 ID:L453qpbC.net
信者キモw

102 :名無しで叶える物語(プーアル茶)@\(^o^)/:2016/10/03(月) 10:53:07.42 ID:+qo94PZF.net
「YAMAHAのコピペ」ってどこまで本当なの? ヤマハ本社に聞いてきた
https://t.co/9tIIVhDYJq

103 :名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/:2016/10/03(月) 12:00:45.05 ID:536XyXor.net
(落ちてもいいならぜんぶ書きためてから建てろよ信者もアンチも沸いて楽しめねえよ)

104 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/03(月) 12:13:19.42 ID:a9eZ4K6i.net
いつかが不安なのでできるだけ保守するわ

105 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/10/03(月) 15:39:36.18 ID:L453qpbC.net
>>103
>>1は構ってちゃんだからね
持ち上げコメントが欲しくてしょうがないんだよ

106 :名無しで叶える物語(ほうとう)@\(^o^)/:2016/10/03(月) 23:03:12.04 ID:oBXU8BlI.net
この先どうなるか不安だけどとても気になる・・・

107 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/04(火) 07:19:34.57 ID:jCwRkRau.net
保守

108 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/04(火) 16:32:43.81 ID:cow29iM1.net


109 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/04(火) 21:35:31.83 ID:ly3k7kkz.net
保守

110 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/05(水) 12:42:04.53 ID:+sNehjCC.net
保守

111 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/05(水) 20:25:58.80 ID:HutdBx6E.net
保守

112 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/06(木) 14:12:58.46 ID:P+NmOhsr.net


113 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/06(木) 19:52:12.07 ID:uJNFou2m.net
保守

114 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/07(金) 10:02:49.47 ID:6Sz/nQNO.net
保守

115 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/07(金) 22:34:31.17 ID:jns9keAt.net
保守

116 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/08(土) 12:14:18.50 ID:5eaJEG39.net
保守

117 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/08(土) 21:50:48.65 ID:QTqhsgRl.net


118 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/09(日) 14:31:27.18 ID:pmXuUMF7.net


119 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/09(日) 22:29:29.22 ID:pmXuUMF7.net
保守

120 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/10(月) 09:41:10.74 ID:h2NWv4Ed.net


121 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/10(月) 22:18:59.14 ID:6qeeHTqM.net


122 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/11(火) 07:19:37.99 ID:knXEz7YH.net
保守

123 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/11(火) 19:41:14.39 ID:l7+IOVz3.net
保守

124 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/12(水) 13:08:16.59 ID:vmsbK5W6.net
保守

125 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/12(水) 20:50:06.69 ID:RWmjX1jJ.net
保守

126 :名無しで叶える物語(SB-iPhone)@\(^o^)/:2016/10/12(水) 22:37:49.95 ID:+CJwhm7O.net
庭さぁ…
いい加減糞スレの保守やめたら?

127 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/13(木) 11:34:32.66 ID:bQBFFxyj.net
保守

128 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/13(木) 22:40:04.44 ID:PetcLZXF.net
保守

129 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/14(金) 13:05:09.77 ID:slnMleDm.net


130 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/14(金) 22:11:45.40 ID:4uTNWdHZ.net
しゅ

131 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/15(土) 08:50:29.25 ID:zKkzCDzv.net
保守

132 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/15(土) 22:57:12.26 ID:pInNZ7UZ.net
保守

133 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/16(日) 13:09:41.01 ID:4kAQJDDn.net
保守

134 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/16(日) 22:21:23.58 ID:2SCzhiGz.net
保守

135 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/17(月) 11:45:58.81 ID:D+WqkNIZ.net


136 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/17(月) 22:01:55.86 ID:4sp9CItg.net


137 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/18(火) 13:30:46.78 ID:2urKSomF.net
保守

138 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/18(火) 22:49:18.55 ID:ssrdEolD.net


139 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/19(水) 13:02:17.66 ID:wTVnkVu1.net
保守

140 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/19(水) 22:03:18.23 ID:cY8jkjK9.net
保守

141 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/20(木) 16:06:39.16 ID:wDt229lE.net
保守

142 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/21(金) 09:00:26.40 ID:Gr7o/1Jt.net
保守

143 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/21(金) 23:34:18.03 ID:L5OW0a+Q.net
続いてくれ

144 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/22(土) 22:18:59.65 ID:94W/00i7.net


145 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/23(日) 21:52:30.00 ID:Z7rLjwVR.net
保守

146 :名無しで叶える物語(プーアル茶)@\(^o^)/:2016/10/23(日) 23:18:38.89 ID:g8Cuxmhu.net


147 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/24(月) 07:59:33.15 ID:L5s+wMUd.net
しゅ

148 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/24(月) 22:17:05.69 ID:EzU6rBOw.net
保守

149 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/25(火) 21:11:54.17 ID:SAwxgUSd.net
保守

150 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/26(水) 12:11:46.13 ID:lCTocUSA.net


151 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/27(木) 00:55:48.44 ID:COV8Wsnt.net
保守

152 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/27(木) 09:37:01.94 ID:OuvS5pEs.net
保守

153 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/27(木) 15:41:17.45 ID:Q92uaQKS.net
保守

154 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/27(木) 22:34:00.38 ID:bjVIIVpl.net
保守

155 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/28(金) 21:57:28.98 ID:hy1Aqulp.net
保守

156 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/29(土) 03:25:34.10 ID:qS4r4Lg2.net
保守

157 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/29(土) 08:40:24.82 ID:QlJ5MV1k.net


158 :名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2016/10/29(土) 22:18:47.21 ID:CrDQp0T2.net


159 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/30(日) 09:59:50.72 ID:3lbjUccv.net
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160 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/30(日) 22:32:58.70 ID:pxwaKGFH.net
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161 :名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2016/10/31(月) 15:15:05.71 ID:rDfgVZuM.net


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