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ダイヤ「おーらい おーらい」
- 1 :名無しで叶える物語(しまむら)@\(^o^)/:2016/12/26(月) 04:06:18.42 ID:77jxxv4O.net
- ダイちか
短い
地の文のみ
- 2 :名無しで叶える物語(しまむら)@\(^o^)/:2016/12/26(月) 04:06:59.85 ID:77jxxv4O.net
- また、夢を見た。
みかん色の髪をした彼女が、私の膝の上で甘えてくれる夢。
いつも甘えてくる妹とは違う、不思議な温かさ。
不思議な安心感、幸福感。
今朝の寒さがやけに苦しいのは、夢の中の彼女に暖められてしまったからなのだろう。
- 3 :名無しで叶える物語(しまむら)@\(^o^)/:2016/12/26(月) 04:08:23.81 ID:77jxxv4O.net
- 起きて、台所で濃い珈琲を飲む。
砂糖を加えずに、少し顔をしかめてしまうくらいの苦さ。
でも、これくらいが丁度いい。
そう、これくらいが丁度いい。
おーらい、おーらい。
- 4 :名無しで叶える物語(しまむら)@\(^o^)/:2016/12/26(月) 04:10:15.53 ID:77jxxv4O.net
- 彼女に教えてもらった曲を聴く。
所謂ロックというものなのだろうけれど、どこか優しい歌。
彼女を好きになってしまった自分を許してくれる気がした。
おーらいの一言は、いつしか心の口癖になった。
- 5 :名無しで叶える物語(しまむら)@\(^o^)/:2016/12/26(月) 04:11:39.33 ID:77jxxv4O.net
- 何故、彼女を好きになったのか考える。
もやもやした頭の樹海を抜けるように。
周りを惹きつける明るさか。
憧れを形にしようとする強い意志か。
時折見せる、今にも消えてしまいそうな表情か。
「普通」に抗おうと必死にもがく姿か。
結局のところ、その全てなのだろうという結論に至った。
- 6 :名無しで叶える物語(しまむら)@\(^o^)/:2016/12/26(月) 04:14:44.73 ID:77jxxv4O.net
- それだけではないと感じて、もう一度樹海に入る。
そこでふと思いつく。
彼女は、私の願いを叶えてくれた。
2年前から止まったままだった私の時計を、もう一度動かしてくれた。
何よりもやりたくて、でもどうしてもできなかったことを、叶えてくれた。
それが、本当に嬉しかった。
本当に幸せだった。
あの日の衣装でステージに立った時、涙を堪えるのに必死だった。
あの日から、毎日が楽しくてしょうがなかった。
- 7 :名無しで叶える物語(しまむら)@\(^o^)/:2016/12/26(月) 04:16:56.82 ID:77jxxv4O.net
- きっと、私にはないものを持った彼女への憧れと。
私の願いを叶えてくれて、あまつさえこんなにも輝いている毎日を与えてくれた感謝と。
それを独り占めしたいという欲が、この恋心の正体なのだろうと、改めて結論を出す。
ときめき分類学者として、論文でも書いてみようか。
幸い、共同執筆者になってくれそうな本の虫がいる。
彼女もときめき分類学の専攻だ。
今度暇ができたら頼んでみることにしようか、なんて考えながら珈琲を飲み干した。
- 8 :名無しで叶える物語(しまむら)@\(^o^)/:2016/12/26(月) 04:19:15.90 ID:77jxxv4O.net
- ある日、私の恋は叶わないことを知った。
みかん色の彼女は、美しいピアノを弾くあの子と街を歩いていた。
友人というにはあまりに近い距離で、指を絡ませながら。
私の隣を歩く時は、もっと離れているのにな。
そんなことを考えながら喫茶店の甘い珈琲に口をつける。
不思議と、すんなり受け入れられている自分がいた。
彼女との間の厚い壁を感じていたからか。
隣を歩くあの子が、驚くほどお似合いであったからか。
彼女が幸せであるならそれでいい、と祝福する気持ちすら抱いている。
これが本心なのか強がりなのか、今はまだわからない。
まだまだ研究が必要なようだ。
- 9 :名無しで叶える物語(しまむら)@\(^o^)/:2016/12/26(月) 04:21:41.21 ID:77jxxv4O.net
- それでも、今はこれでいい。
下手に恋愛に発展してこの輝かしい毎日を失うほうが、彼女の隣に居られないことより余程つらい。
それにこのままでも、彼女と関わり続けることはできるのだから。
だから自分自身に言い聞かせる。
彼女に迷惑をかけなければ好きでいることは許されるのだから、それだけで以前の死んだように生きる日々より少しはマシだろうと。
おーらい、おーらいと。
- 10 :名無しで叶える物語(しまむら)@\(^o^)/:2016/12/26(月) 04:25:59.61 ID:77jxxv4O.net
- また、起き抜けに珈琲を淹れる。
冷めるのを待つ間にイヤホンをつける。
格闘技の名前のバンド。プレーヤーに1曲だけ入っている。
再生ボタンを押すと、ドラムとギターのブラッシング。
前奏が終わって歌が始まる。そして曲のクライマックス。ボーカル2人の歌に合わせて口ずさむ。
そう、おーらい おーらい。
おーらい おーらいと。
これでいいのだと言い聞かせ、珈琲に口をつける。
相変わらず顔をしかめる苦さ。
でも、これでいいのだ。
失恋のつらさには、これくらいが丁度いい。
end
- 11 :名無しで叶える物語(しまむら)@\(^o^)/:2016/12/26(月) 04:28:30.59 ID:77jxxv4O.net
- 元ネタはAsian Kung-fu Generation feat.橋本絵莉子「All Right Part2」
求める距離と丁度いい距離、みたいなテーマにて。
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