ルビィ「オトナになんか、ならないよ」

名無しで叶える物語

そう言ったらあのひとはルビィの方をみて、ちょっと笑った
うなずき、目を細めて、かすかに
ルビィはあの笑顔がとってもすきだった
そのあと、なでてくれる指もすきだった
ルビィが、ずっとずっと一緒にいるよ
そう言ったらあのひとはルビィを見つめて、優しい優しいキスを、ひとつくれた
これがルビィの持ってる、だったひとつの真実
大切で甘い、ルビィだけの果実
だから、あの日
ルビィは深い深い海に沈みながら、大事なリンゴを差し出して、かみさまにお願いをした
このリンゴをあなたにあげる。一番大事なリンゴをあげる。ルビィの全部をあげるから
だから、お願い。だいすきなあのひとがいつまでも元気でいてくれますように
ずっとずっと、あのひとのそばにいられますように
やさしいかみさまは、ルビィの願いを叶えてくれた
全部全部、叶えてくれた
あの日ルビィは、オトナになるのをやめた
あの日あのひとは、死ななかった
そして祈りは巡り巡って
別の誰かが死ぬことになった