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栞子「お見合い、ですか?」
- 1 :名無しで叶える物語:2021/10/05(火) 21:39:51.96 ID:UwGBDVgn.net
- しおぽむss
初心者ですがよろしくお願いします。
- 2 :名無しで叶える物語:2021/10/05(火) 21:40:13.80 ID:UwGBDVgn.net
- 職場から近くに借りたマンションに帰宅すると久しぶりに会う姉がいた。
鍵は渡していないはずなのに、とは思ったがこのマンションも三船の家経由で契約しているのでそれを経由して入ったのだろう。
最も、それは手段であって理由ではないのだが。
栞子「姉さん…日本に帰っていたんですね」
薫子「お!おかえり、栞子〜」
栞子「…ただいま。今日はどうしたんですか?」
薫子「ええ〜、久しぶりに会う姉に対して連れないな〜」
- 3 :名無しで叶える物語:2021/10/05(火) 21:40:17.17 ID:ZrnfyY40.net
- 支援
- 4 :名無しで叶える物語:2021/10/05(火) 21:40:40.05 ID:UwGBDVgn.net
- 理由はないようだ。
まあ、姉のこういった振る舞いは慣れっこだ。
昔はちょっとした憤りも感じてはいたのだが、同好会の皆さんのおかげで今はもうなんともない。
栞子「もう夜ですよ?会いに来てくれるのは嬉しいですが、明日は私もお休みですし連絡をくだされば三船の本家に顔を出したのに」
薫子「いや〜、いいニュースがあってさ。一刻も早く知らせたくって」
栞子「…良いニュースですか?」
”良いニュース”。このワードが姉から発された時は要注意だ。
本当に良いニュースであることは少なく、ほとんどは姉の思い付きに良かれと思って巻き込まれるのだ。
- 5 :名無しで叶える物語:2021/10/05(火) 21:41:13.94 ID:UwGBDVgn.net
- 薫子「栞子に、お見合いを持ってきたんだ!」
栞子「お見合い…ですか?」
お見合い…実際に行ったことはないが、いままでも何度かそういった話をもらったことはある。
三船の家を継ぐ者として、私には男女問わず名家から新進気鋭の芸術家、上場企業の御曹司まで様々なお見合いの話が来ていた。
そのすべてをこれまで何かと理由をつけて断ってきたのだが、まさか私が三船を継がされる原因になった姉からその話をされるとは思わなかった。
栞子「私にはまだ、早いかなと思うのですが」
薫子「そんなことないって!もう25でしょ?ぜんぜん早いことないってば」
あなたも未婚でしょうが、という一言をぐっと飲み込む。
薫子「それに、今回はこっちから声をかけたからさ。ほら、私の顔を立てると思って、会うだけでも、ね?」
私の顔を立てると思って?三船本家がもってきた見合いではないのか。
- 6 :名無しで叶える物語:2021/10/05(火) 21:41:41.05 ID:UwGBDVgn.net
- 栞子「…姉さんが持ってきたお話なのですか?」
薫子「え?うん。相手も今独り身だって言うし、それに栞子なら気に入ってくれると思うんだよね」
栞子「私も知っている方なのですか?」
薫子「え?うん。もちろん」
姉は今虹ヶ咲の教員を数年努めた後はラブライブの運営を含めたスクールアイドルを後援する団体の代表をしている。
私も高校の三年間をスクールアイドルに捧げた身なのでそれなりに知り合いはできた。
その中で会った方なのだろうか。
流石に知り合いに会うこともせず断るのはマズいかもしれない。
- 7 :名無しで叶える物語:2021/10/05(火) 21:41:57.29 ID:UwGBDVgn.net
- 栞子「わかりました。とりあえず会うだけですよ?」
薫子「そうこなくっちゃ!きっと気に入るよ」
栞子「それで、どなたなのですか?」
薫子「あ、うん。一応写真も持ってきたんだ」
姉が取り出した写真には、私もよく知るひとが写っていた。
- 8 :名無しで叶える物語:2021/10/05(火) 21:42:59.93 ID:UwGBDVgn.net
- 薫子「ほら、もう先方は待ってるよ」
栞子「ま、待ってください!髪型変じゃないですか!?」
薫子「大丈夫だよ。ていうか、なんでそんなに緊張してるのさ。結構会ってるんでしょ?」
栞子「いや、前にお会いしたのは1年も前で…それに…」
薫子「ほら、開けるよ?」
栞子「あ、待っ…」
止める声はむなしく、ふすまは開かれた。
歩夢「あはは…1年ぶりだね、栞子ちゃん。って、ちゃんは失礼か。栞子…さん?」
栞子「…ちゃんで、お願いします」
ふすま越しに聞こえていたであろう姉との騒ぎ声に笑うその人はやっぱり歩夢さんだった。
- 9 :名無しで叶える物語:2021/10/05(火) 21:45:09.81 ID:ZrnfyY40.net
- ᶘイº⇁ºナ川……
ᶘイ^⇁^ナ川
- 10 :名無しで叶える物語:2021/10/05(火) 21:45:34.24 ID:UwGBDVgn.net
- 歩夢「うん、わかったよ。栞子ちゃん。あの日、以来かな?」
栞子「…そうですね」
薫子「ほら、栞子。久しぶりに会ったなら気持ちは分かるけど、まずは座ろうよ」
栞子「…はい」
促されるまで立ちっぱなしだった。
行儀の悪いことだ。
席に着くと自然と歩夢さんとの距離が近づく。
- 11 :名無しで叶える物語:2021/10/05(火) 21:45:36.04 ID:n87ruu86.net
- 期待
- 12 :名無しで叶える物語:2021/10/05(火) 21:46:19.70 ID:UwGBDVgn.net
- 薫子「いやー、ごめんなさいね。こちらがお願いした縁談なのに」
歩夢ママ「いいえ、こちらもつい先ほど来たところなので」
歩夢さんのお母様と姉の話を聞きながら、私は歩夢さんを見つめていた。
お化粧をしているせいだろうか、記憶の中よりずっと綺麗だった。
薫子「積もる話もあるでしょうし、そろそろお若い二人に任せて我々は退出しましょうか」
栞子「!?」
少し話した後、お見合いの常套句を言う姉を思わず見てしまう。
私の視線に何を思ったのか姉はウインクをして歩夢さんのお母様と一緒に出ていってしまった。
二人きりになった部屋にしばらく沈黙が流れる。
- 13 :名無しで叶える物語:2021/10/05(火) 21:48:18.45 ID:iU/k5UuG.net
- 期待
- 14 :名無しで叶える物語:2021/10/05(火) 21:48:44.25 ID:UwGBDVgn.net
- 栞子「…お久しぶりです、歩夢さん。お元気でしたか?」
耐えきれずにこちらから会話を切り出した。
歩夢「…うん、元気だよ。栞子ちゃんはご実家のお仕事をしているの?」
栞子「はい。といっても今はしがない会社員ですが」
歩夢「へぇ、頑張ってるんだね。何の会社なの?」
栞子「---という会社でして」
歩夢「あ!その会社しってる!私の友達もよく買ってるって言ってるよ」
自然と会話が続いてることに安堵すると同時に、ああこの人は聞き上手なんだったと思い出す。
めちゃくちゃな幼馴染と姉に囲まれて育ち、お世辞にも会話慣れしていなかったあの頃の自分とも本当に楽しそうに話してくれたのだ。
- 15 :名無しで叶える物語:2021/10/05(火) 21:48:44.65 ID:whZB/nB8.net
- しおぽむ期待
- 16 :名無しで叶える物語:2021/10/05(火) 21:49:33.16 ID:UwGBDVgn.net
- 栞子「それでですね、その時その人が」
歩夢「…ねぇ、栞子ちゃん」
栞子「あ…はい」
だけど、今私たちは大人だ。
あれから何年も経った。
ここはお見合いの場だ。いつまでも世間話だけをするのも変だろう。
それに、自分はこの人と…。
歩夢「栞子ちゃんは、すっかり大人になったね」
栞子「…それを言うなら歩夢さんがですよ。私なんて」
歩夢「ううん、大人になったよ。私はまだ…」
歩夢さんはそれきり黙ってしまう。
- 17 :名無しで叶える物語:2021/10/05(火) 21:49:56.49 ID:3yDrl+8/.net
- 当たり前のようにレズ
- 18 :名無しで叶える物語:2021/10/05(火) 21:51:27.87 ID:UwGBDVgn.net
- 栞子「あの、歩夢さん?」
歩夢「…ほら食べよう?おいしそうだよ?」
栞子「…どうして、お見合い、受けてくださったんですか」
歩夢「…どうしてって」
栞子「あれから、私…」
その時、ふすまが開く。
料亭の店員さんがお茶を運んできてくれたのだ。
歩夢「…そろそろ、時間だね」
時計を見ると迎えを呼んである時間だった。
歩夢「ねぇ、栞子ちゃん。あれから…何かな?」
栞子「…いえ、なんでもないです」
歩夢「そっか。…また、会えるかな?その、近いうちに」
栞子「…もちろんです。こんどはかすみさんや菜々さんも呼んで」
歩夢「そうじゃなくって、ふたりで」
意味は、分かる。
元々、そのための会なのだ。
でも、また会ってくれるのか。それも二人で。
- 19 :名無しで叶える物語:2021/10/05(火) 21:51:55.57 ID:UwGBDVgn.net
- 栞子「…はい」
歩夢「うん、ありがとう」
にっこりと微笑んだ歩夢さんはやっぱり、綺麗だった。
それから店の前で分かれる時に、次に会う具体的な日取りと場所を決めて解散になった。
迎えにきてくれた姉さんにまた会うことになったことを言うとすごく喜んでくれた。
でも、私の内心はそんなに単純じゃない。
歩夢さんと最後に会ったのは1年前。その日以来私は歩夢さんに会っていない。
あの日送ったLINEの返事はまだもらっていない。
- 20 :名無しで叶える物語:2021/10/05(火) 21:52:57.37 ID:bJrUfMvD.net
- めちゃくちゃ期待
- 21 :名無しで叶える物語:2021/10/05(火) 21:55:52.11 ID:o7ExRVpQ.net
- 見てます
- 22 :名無しで叶える物語:2021/10/05(火) 21:55:56.36 ID:UwGBDVgn.net
- かすみ『行っちゃったね、先輩』
璃奈『寂しくなる…りなちゃんボード「うるうる」』
しずく『本当に!それに、アメリカからスカウトなんて。先輩はコネだっていってたけど、ミアさんのお墨付きだもんね』
愛『そうだよ!門出なんだからお祝いしなきゃ!それに、あの子なら絶対上手くいくって!』
菜々『もちろんです!さあ、私たちも次のライブに向けて頑張りますよ!かすみさん!』
かすみ『あ、待ってくださいよ!せつ…菜々先輩!』
友人たちの会話を聞きながら、私は恩人の乗った飛行機の残す雲を見つめるその人が心配だった。
- 23 :名無しで叶える物語:2021/10/05(火) 21:56:35.69 ID:UwGBDVgn.net
- 栞子『歩夢さん、その、大丈夫ですか?』
歩夢『え?…うん、大丈夫だよ。私も応援するって決めたんだもん』
栞子『…あの人の代わりにはならないかもしれませんが、何かあれば私…たちにも頼ってくださいね』
歩夢『も〜何いってるの?もうそんなんじゃないってば。ほら、私たちもいこ?』
振り切るようにこちらを向き、悲しそうに微笑む歩夢さん。
その当時、いや学生のころからずっと、私は歩夢さんのことが好きだった。
- 24 :名無しで叶える物語:2021/10/05(火) 21:58:54.33 ID:UwGBDVgn.net
- それから、私は歩夢さんと会う頻度はそれまでよりずっと多くなった。
あの人のいなくなった隙間を私が埋めるように、要するに寂しい歩夢さんの心に付け入ったのだ。
歩夢さんも私を拒まず、連絡をすれば遊びに付き合ってくれた。
最初の内は同好会のメンバーも一緒だったけれど、皆忙しくなるにつれて私と歩夢さんは二人で会う機会が増えた。
歩夢さんの心はあの人に向いているのは知っていたけれど、それでも私はとても幸せだった。
あの日も、いつものように待ち合わせをしたんだ。
いつものように、おしゃれをして待ち合わせ場所に行くと、歩夢さんはまだ来ていなかった。
それから少し待って、待ち合わせの時間になってもまだ来ない。
不審に思った私は歩夢さんの家へ行ったのだ。
そこで…。
- 25 :名無しで叶える物語:2021/10/05(火) 21:59:37.69 ID:UwGBDVgn.net
- 目覚ましの音に目を覚ます。
あの頃の夢を見たのは、今日が歩夢さんと会う日だからか。
夢見がいいというべきか、悪いというべきか。
栞子「はぁ…」
待ち合わせの時間は昼前だ。
とにかく見た目で失敗しないよう、午前中にしっかりと準備をしよう。
職場との往復の生活で普段は買わないおしゃれ着を昨日の内に買ってある。
タグ付きの服を着ていかないように、念入りに確認をし、化粧もいつもより気持ち分時間をかけた。
栞子「…行こう」
それでもずっと早くに支度が終わってしまったけれど、家にいてもソワソワするだけなので早めに出かけることにした。
- 26 :名無しで叶える物語:2021/10/05(火) 22:06:00.18 ID:UwGBDVgn.net
- 待ち合わせ場所には1時間前に着いた。
有名な忠犬像前は休日というのもあって人であふれていたが、よく知った相手と待ち合わせるのには問題ない。
カフェで時間をつぶそうかとも思ったが、コーヒーは口臭に影響すると聞いたことがあったのを思い出し、止めた。別に期待しているとかではないが。
30分ほど待っていると歩夢さんは来た。
歩夢「おまたせ〜。早いね、栞子ちゃん」
栞子「いえ、今来たところなので。歩夢さんこそ」
歩夢「え?ふふ、そうかな?」
カップル染みた会話が懐かしい。
歩夢「栞子ちゃん、どこか行きたいところ、あるの?」
栞子「えっと、歩夢さんはお昼はまだですか?」
歩夢「うん、まだだよ」
栞子「でしたら、ぜひ行きたいお店がありまして」
歩夢「そうなんだ。じゃあ、行こうか」
栞子「はい!」
- 27 :名無しで叶える物語:2021/10/05(火) 22:08:31.23 ID:UwGBDVgn.net
- 前もって行く場所は決めてある。
私たちはおしゃれなお店でパスタを食べて、ウィンドウショッピングを楽しみ、有名なケーキ屋さんがやっているらしいカフェで紅茶を楽しんだ。
歩夢さんは終始笑顔だったし、楽しんでいるように見える。
このまま夕食も食べに行かないか、という私の提案に歩夢さんは頷いてくれた。
歩夢「ここが栞子ちゃんのオススメのお店?」
栞子「はい。といっても、以前取引先の方に連れてきていただいただけなんですが」
歩夢「そうなんだ、おしゃれなところだね」
栞子「ええ、料理も絶品でしたので」
歩夢「楽しみだね」
予約しておいたコースは一番良いものだ、次々に出される料理に舌鼓を打ちつつ、歩夢さんと私は今日のことを話した。
このお店の服が可愛かったとか、あのケーキがおいしかったとか、ここはデザートも有名なんですよ、とか。
なんてことのない話をしていると、あの頃に戻ったようだ。
あの、一番楽しかったころに。そうすると、必然に、そこで頭に浮かんでしまう。あの時のことが。
- 28 :名無しで叶える物語:2021/10/05(火) 22:10:13.11 ID:UwGBDVgn.net
- すいません、書き忘れていましたが、牛歩ですのでよろしくお願いします。
- 29 :名無しで叶える物語:2021/10/05(火) 22:17:04.38 ID:UwGBDVgn.net
- 帰り道も歩夢さんはずっと歩夢さんは明るかった。
私も、楽しかった。一年間会っていなかったのが嘘のようだ。
このまま次にあう約束をして別れれば、あの頃に戻れるのかもしれない。
でも、このままでは、またいつか破綻してしまう気がする。
私は歩夢さんと、少なくとも気の置けない関係でありたい。
栞子「歩夢さん」
歩夢「なに?」
栞子「私は、歩夢さんのことが好きです」
歩夢「…まだ、そう言ってくれるんだね」
栞子「そうでなければ、デートなんて、ましてやお見合いなんてしませんよ。でも、歩夢さんは違いますよね」
歩夢「そんなこと…」
栞子「ではどうして、あの後LINEを返してくれなかったんですか」
歩夢「それは…」
栞子「話してくれませんか?」
歩夢「…」
栞子「…私、待ってたんですよ?ずっと」
- 30 :名無しで叶える物語:2021/10/05(火) 22:18:00.92 ID:UwGBDVgn.net
- 歩夢「…ごめんなさい。ずっと謝らないといけないと思っていたの、あの日のこと、傷つけたよね。でも、栞子ちゃんまでいなくなったら、私…だから返信できなくて…でも、会えなくて、1年も経っちゃって、それで…」
栞子「お見合いを受けてくださったんですね」
頷く歩夢さん。
歩夢「うん、取引先に薫子先生がいて、たまたま今一人だって話をしたら栞子ちゃんとどうかって…」
栞子「姉さんが…」
あまり身内の色恋に口を出す人ではないのに珍しいとおもっていたが、思えばあの頃の私は歩夢さんのことばかり見ていたから、姉さんも気づいていたのかもしれない。
歩夢「ごめんね…お見合いの時から、ずっと謝る時間を探してて、でも栞子ちゃんあの時と変わらないから、優しいから、逃げそうになっちゃってた。また、あの頃に戻れるんじゃないかって…」
- 31 :名無しで叶える物語:2021/10/05(火) 22:22:56.83 ID:ZrnfyY40.net
- 良き
- 32 :名無しで叶える物語:2021/10/05(火) 22:26:10.22 ID:UwGBDVgn.net
- きっかけを探していてくれたんだ。
あの頃に戻りたいとおもっていてくれた。
それが私はとても嬉しかった。
栞子「歩夢さん…私も1年間、結構悩みました」
それを聞いた歩夢さんの表情は申し訳なさそうで、泣きそうで。
歩夢「ごめんね…」
栞子「だから、お詫びに仲直りしましょう」
歩夢「栞子ちゃん…。ごめんね。ごめんなさい」
栞子「もう、泣かないでください。その、笑顔の方が歩夢さんには似合っていますから…」
歩夢「…うん!ありがとう」
泣き顔で笑う歩夢さん。
それをみて、私は思ってしまう。
ああ、やっぱり好きだなぁ、と。
- 33 :名無しで叶える物語:2021/10/05(火) 22:48:07.47 ID:CXqohIqj.net
- 支援
- 34 :名無しで叶える物語:2021/10/05(火) 23:29:12.56 ID:7c/sAFIE.net
- ドキドキする
- 35 :名無しで叶える物語:2021/10/06(水) 02:40:06.06 ID:sI9Wxib4.net
- インターホンを押しても返事がない。
部屋の前まで上がると、鍵が開いていた。
強盗や空き巣といった嫌なワードが脳裏に浮かぶ。
栞子『歩夢さん?入りますよ?』
玄関にはいつも使っている仕事に持っていくというバッグが置いてある。
昨日帰宅してそのままのようだった。
奥へ入ると部屋が荒らされている様子はないが、ところどころにつまずいた後のように家具の位置が少しずれていた。
そして、リビングに行くと机に突っ伏す歩夢さんがいた。
嫌な想像が浮かび、歩夢さんに駆け寄る。
身体を揺すると、歩夢さんはむくりと上体を机から起こした。
栞子『歩夢さん!?大丈夫ですか!歩夢さん!うっ…』
ひどいアルコールの匂いがした。
- 36 :名無しで叶える物語:2021/10/06(水) 02:40:37.48 ID:sI9Wxib4.net
- 歩夢『あれ?栞子ちゃんだあ?』
メイクをしていたのが流れたのだろうか、涙でぐずぐずになった顔をみて少しぎょっとしてしまうがとにかく命に別状はなさそうだった。
栞子『すいません、待ち合わせにいらっしゃらなかったもので、心配してしまって…』
歩夢『…待ち合わせ?そっかあ、ごめんね…』
よくみると、机の上にはお酒の瓶が置いてある。
前にいただいたけれど強くて飲めないと言っていたお酒が、ほとんど空だ。
普段から飲んでいるチューハイの缶もいくつか転がっていた。
いつから飲んでいたのだろうか。
- 37 :名無しで叶える物語:2021/10/06(水) 02:41:06.95 ID:sI9Wxib4.net
- 栞子『一体どうされたのですか?こんなに飲むなんて…。とにかくお水を』
歩夢『ううん大丈夫だよ…』
栞子『しかし…』
どう見ても大丈夫なようには見えなかった。
冷蔵庫に中にはペットボトルの水があったので、無理やりそれを飲ませる。
少しすると、まだ目は座っていたが視線が合うようになった。
栞子『何が、あったんですか』
歩夢『…あの子が…結婚するって』
そう言うと、また黙ってしまった。
あの方が結婚…。なるほど、待ち合わせに来ないはずだと思った。
でも、歩夢さんに何もなくてよかった。
安心して、足の力が抜けた。
倒れ込むように歩夢さんの隣の椅子に座った。
- 38 :名無しで叶える物語:2021/10/06(水) 02:41:46.98 ID:sI9Wxib4.net
- 栞子『すいません、椅子、お借りしますね』
歩夢『…』
歩夢さんは何も言わなかった。
メイク落としで顔を拭いても、されるがままにただ虚ろに前をじっと見ていた。
それにしても、結婚とは。
いつも突然行動する方だったが、また急な話だ、と思った。
歩夢さんがさっき知ったのでは同好会の面々も知らないだろう。
いや、もしかしたら同好会の誰かと?
ここ2年はアメリカにいるはずなので一番怪しいのはミアさんだろうか。
そんなことを考えながらしばらくそうしていたが、そのうちに腹の虫が耐えかねてくる。
待ち合わせ場所を離れられず待った時間も長く、気づけばもう夕飯の時間だ。
- 39 :名無しで叶える物語:2021/10/06(水) 02:42:32.24 ID:sI9Wxib4.net
- 栞子『とにかく、無事でよかったです。その様子では歩夢さんも何も食べていないでしょうし、何か買ってきますね』
返事はない。
ただ、立ち上がろうとすると裾をつかまれた。
栞子『大丈夫です。すぐに戻りますから』
子どもたちに接するように声をかけても離す様子はない。
栞子『歩夢さん?』
顔を覗き込んで、そして。
栞子『んむっ!?』
キスをされた。
- 40 :名無しで叶える物語:2021/10/06(水) 02:43:00.70 ID:sI9Wxib4.net
- 栞子『あゆっ、んっ』
歩夢『あん、ちゅっあなたっ!』
初めてのそれは、想像していたよりもずっと濃厚で、残酷だった。
初恋の人に、今もずっと好きな人にキスされているのに、その目は私を見ていない。
その事実がひどく悲しくて、でも信じられないくらいに、私は興奮していた。
- 41 :名無しで叶える物語:2021/10/06(水) 02:43:39.54 ID:sI9Wxib4.net
- 気づいたら裸でベッドの上にいた。
あれからむさぼるように歩夢さんに抱かれた。
今も彼女は隣で寝息を立てている。
起こさないようにベッドを抜けようとするが、その動きで歩夢さんは目を覚ましてしまった。
歩夢『…あなた?』
栞子『あ、起こしてしまいましたか、ごめんなさい』
歩夢『え?…しおりこ、ちゃん?』
栞子『はい』
歩夢『あ、ああ、あああ、あああああ…ごめん、ごめんなさい、し、栞子ちゃん…』
栞子『大丈夫、大丈夫ですから。落ち着いてください』
歩夢『大丈夫なわけないよ!だって私…うっ』
頭を押さえる歩夢さん。
アルコールに強くないのにあんなに飲んだら、きっと今日明日は地獄だろう。
- 42 :名無しで叶える物語:2021/10/06(水) 02:43:53.89 ID:8x9lV0HK.net
- ミアは大人になったらすごいスタイルになってそう
- 43 :名無しで叶える物語:2021/10/06(水) 02:45:26.89 ID:sI9Wxib4.net
- 栞子『大丈夫です。私、歩夢さんのこと好きですから』
歩夢『嘘だよ、そんなの…』
栞子『嘘ではないです。だから、落ち着いてください』
歩夢『う、うん…』
栞子『とにかく、私は気にしていませんし、昨日のことはただの事故でした。忘れましょう?』
歩夢『そんなわけには!』
栞子『いいですから。私は帰りますね。歩夢さんも、深酒をした翌日なのでいまさらですがお水をよくのんでください』
それから私はのろのろと追いすがる歩夢さんにまるで気づいていないように歩夢さんの家を出た。
拒もうと思えば拒めたのに、欲望に負けて歩夢さんを傷つけたことから逃げるようにして。
帰り道にスマホが鳴り、歩夢さんから一言『ごめんなさい』と謝罪が入っていた。
私はそれにもう一度、気にしないで下さい、忘れましょうと送って、来週からまた歩夢さんと遊びに出かけられると思っていた。
今思えばひどく楽観的な考え方だ。
壊れた関係性は見て見ぬふりでは取り戻せないのだ。
翌週に何事もなかったかのように遊びに誘ったLINEにいつまで経っても返事がなくなって初めて、私はそのことを実感したのだった。
- 44 :名無しで叶える物語:2021/10/06(水) 03:09:36.83 ID:s7iQ69y/.net
- いいねいいね
こういうの大好き
支援
- 45 :名無しで叶える物語:2021/10/06(水) 07:13:27.48 ID:Jdy5lG9K.net
- ᶘイº⇁ºナ川……
ᶘイ^⇁^ナ川
- 46 :名無しで叶える物語:2021/10/06(水) 07:48:54.06 ID:2gWXvTrt.net
- これはヤバいやつだ
すき
- 47 :名無しで叶える物語:2021/10/06(水) 15:47:03.24 ID:sI9Wxib4.net
- 人間、自分にとって都合の悪いことはなるべく自然と思い出さないようになるらしい。
あれから少しして、自分の罪から逃げるようにその記憶は私のなかの片隅に追いやられていた。
けれど、歩夢さんと今再びこうして気兼ねなく会えるとなると、ぼーっとしているときには、特に歩夢さんのことを考えていると連想的にあの時のことを思い出すようになった。
歩夢さんからすれば滅多に飲まないお酒で逃避したいほどの現実に私がダブルパンチを加えた結果になるのだから、1年間音信不通になったのも仕方のないことだと今なら分かる。
「次は---、---です。お降りの方は---」
そもそも、家が分かっていたのだから、私から行けばよかった。
まぁ、後で返信が来なくなって冷静になった後は私もとんでもないことになってしまったと思って、自分からアクションを起こすことに臆病になってしまっていたので、できなかったとは思うが。
- 48 :名無しで叶える物語:2021/10/06(水) 15:47:38.73 ID:sI9Wxib4.net
- ピンポーン…[はーい、あ!栞子ちゃん!ちょっとまってね、今鍵開けるね。
改めて歩夢さんに再会できて、ましてやこうして家に招かれるまで至れたことは本当に幸運だった。
姉さんには感謝してもしきれない。
今日は歩夢さんに招かれて、お宅でお手製のお菓子をいただけることになっている。
あれから何回か一緒に週末に遊びに行き、そこで歩夢さんが最近自宅でケーキを焼くのにハマっているという話題になり、御馳走になれることになったのだ。
歩夢「いらっしゃい、栞子ちゃん。丁度今焼きあがったんだ〜」
可愛らしいエプロン姿で迎えて下さる歩夢さん。
甘く香ばしい香りが玄関まで漂ってくる。
- 49 :名無しで叶える物語:2021/10/06(水) 15:48:10.00 ID:sI9Wxib4.net
- 栞子「お邪魔します。これ、お土産です。ケーキをいただけるということなので、紅茶を」
歩夢「ええ?いいのに、ありがとう。じゃあ、さっそく淹れさせてもらうね」
栞子「あ、でしたら私が淹れます。こう見えて上手いんですよ、紅茶を入れるの」
歩夢「ふふっ、知ってるよ。じゃあ、お願いしようかな」
栞子「任せてください」
ああ、この何気ない会話に幸せを感じる。
栞子「あと、これ言っていた映画です。お茶をしながら見ようと思って」
鞄から借りてきたDVDを取り出す。
家の中で話題を途切れさせないためのアイテムだ。
歩夢「前に言ってたワンちゃんの?楽しみだね!」
笑顔の歩夢さん。
失った時間は取り返せないけれど、私たちには今がある。
これからもっと一緒の時間を過ごして、あの頃よりも近づきたい。
願わくば、歩夢さんの特別な人になりたい。
欲深い私はそんなことを考えられるようになっていた。
- 50 :名無しで叶える物語:2021/10/06(水) 16:04:39.03 ID:sI9Wxib4.net
- 事件はその日、ケーキを食べた後に映画を見ていた時に起こった。
紅茶を飲みながら映画をみていた時だ。
必然にテレビの前でソファーに並んでみることになった。
あんなことがあった後でも、私は歩夢さんと近づくだけでドキドキが止まらない。
こんなに近づいたのは久しぶりだ。
鼻腔を甘い歩夢さんの香りが満たし、ちらりと横を向けば歩夢さんの顔が見える。
油断している歩夢さん。その時私は愚かにも思ってしまった。
手、くらいなら繋いでもいいのではないか、と。
思えばお見合いの話を姉としていた時に、歩夢さんは独り身だと聞いている。
私のことがあって、こんな美人を一年間もそうしたことから遠ざからざるを得なくなってしまったことについては申し訳ないが、私にとっては都合がいい。
なにせ、あの方が結婚された今、歩夢さんに一番近いのは、私だろう。
- 51 :名無しで叶える物語:2021/10/06(水) 16:14:12.32 ID:LOk0d62F.net
- ドキドキする
- 52 :名無しで叶える物語:2021/10/06(水) 18:46:55.95 ID:sI9Wxib4.net
- 今みている映画を実は私は一人で一度見ている。
歩夢さんにつまらない映画を見せる気はないのだ。
この映画、実はラブシーンがある。
といっても、主人公の犬の飼い主がヒロインと結ばれるシーンでキスシーンがあるというだけの子供騙しなものだが、盛り上がるシーンではあるので手を繋ぐきっかけにはなるだろう。
そのシーンが近づくにつれて自分でもソワソワしているのを感じた。
歩夢さんは犬の出てくるシーンに「わぁ…」とか「うう…」だとか実に可愛らしい反応をしており映画に夢中だ。
そして、そのシーンがやってきた。
私がそっと自分の左手を歩夢さんの右手に被せようとして、指先が触れた瞬間。
バッと歩夢さんが手を引っ込めた。
恐る恐る歩夢さんの方を見ると、歩夢さんは今しがた私が触れた右手をぎゅっと胸に抱きながら、こちらを見ていた。
その明確な拒絶の様子が目に入ると同時に、サーッという自分の血の気が引ける音が聞こえた気がした。
- 53 :名無しで叶える物語:2021/10/06(水) 18:47:25.41 ID:sI9Wxib4.net
- 栞子「あ、ち、違うんです!手が、たまたま当たってしまって」
何が違うというのだろうか、必死に誤魔化そうとする私の言い訳を聞いた歩夢さんは同じく取り繕うようににこりと笑った。
歩夢「…ごめんね。ちょっとびっくりしちゃった」
栞子「え、う、す、すいません…」
歩夢「ううん、気にしないで」
そう言って、歩夢さんはまた画面の方に視線を戻した。
だけど、盛り上がっているシーンなのにもう歓声を上げることはない。
明らかにさっきまでとは様子が違う。
私はというと、映画が終わるまでずっと歩夢さんがどんな表情をしているのかが気になって仕方がなかった。
- 54 :名無しで叶える物語:2021/10/06(水) 19:06:58.80 ID:sI9Wxib4.net
- 映画は私たちを置いてけぼりにして盛り上がり、ハッピーエンドを迎えた。
その後歩夢さんは「ワンちゃん、可愛かったね」と感想を言ってくれたけど、それ以上に話題が膨らまず、今日はお開きになった。
出口まで見送ってくれた歩夢さんに、何かと理由をつけてまた会う口実を取り付けたけど、とても不自然だったことだろう。
帰りの電車の中での気分は最悪だった。
取り繕おうと必死だったが、あのタイミングで手が重なるのはわざとらしいにもほどがあっただろう。
私が歩夢さんの手を握ろうとしたのはバレバレだったはずだ。
それを拒まれたということは、脈なんて存在していないのではなかろうか。
- 55 :名無しで叶える物語:2021/10/06(水) 19:07:48.10 ID:sI9Wxib4.net
- 栞子「はぁ…」
自然と何度目かのため息がもれる。
私にとっては10年来の片思いだ。
面と向かってフラれたわけではない以上はこの程度のことで諦められはしない。
歩夢さんだって、お見合いまでして私との仲を取り戻そうとしてくださったのだ。
もっとも、それは友人としてのものであって、歩夢さんにとってはお見合いもデートも仲直りの手段に過ぎなかったのかもしれないが。それでも、嫌われてはいないはずだ。
だとすると、私のアプローチをああやって明確に拒絶した理由は一つしか思いつかない。
歩夢さんの愛は慈愛の愛だ。
それはもしかしたら相手が結婚しても変わらないのかもしれない。
歩夢さんはまだあの方が好きなのだろう。
- 56 :名無しで叶える物語:2021/10/06(水) 19:08:20.49 ID:sI9Wxib4.net
- 歩夢さんはあの方の結婚を知った時、決して強くないお酒を自分を失うほどに飲まれるほどに悲しんでいた。
それでも愛しているとなると、勝ち目なんて存在しないのではないか。
栞子「不毛ですね…」
既に結婚している人を好きな歩夢さん、そして決して振り向くことのない相手が好きな私。
歩夢さんがあの方の家庭をめちゃくちゃにしてまであの方を手に入れようとはしないであろうことは分かる。
であれば、この関係は私が歩夢さんを振り向かせることができるか、あるいは永遠に続くのだろう。
できれば前者がの方がいいが、ここ1年間の自分の行動力を振り返るにこのままでは後者にまっしぐらだ。
とにかく、超えるべき壁は…。
栞子「あの方、ですか…。いったいいつ帰ってこられるのやら」
あれから3年経つが一度も帰ってきたという話は聞いていない。
電車の中で私は何度目かのため息をついた。
- 57 :名無しで叶える物語:2021/10/06(水) 21:37:14.08 ID:U4+g0JMn.net
- 栞子アンチの巣が観てるぞ
ラブライブ!シリーズ用ヲチスレ 20
https://rosie.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1632461838/
- 58 :名無しで叶える物語:2021/10/06(水) 23:11:23.53 ID:sI9Wxib4.net
- 朝、目を覚ますと、スマートフォンに大量の通知が届いていた。
内容は、あの方が帰還したということ。
そして、愛さんが主催でその記念のパーティーをするということだった。
まあパーティーといっても飲み会だが。
参加か不参加かのアンケートもある。
その日程はというと。
栞子「…歩夢さんと会う日だ」
歩夢さんは参加するだろう。
そうなれば私も、必然参加せざるを得ない。
いや、私だってあの方に会いたくないわけではないが。
栞子「一応、歩夢さんにも確認の連絡をとりますか」
ブッキングはしているわけであるし、確認は必要だろう。
あの後も私と歩夢さんはそれなりの頻度で会っている。
単に出かけた先が近かった為合流したり、約束をして会ったりと様々だが、誘って断られたり嫌な顔をされたことはない。
まぁ、だからといって前進もしていないので、あの方に会えるのは良い機会だろう。
歩夢さんにとっても。
もちろん、私にとってもだ。
- 59 :名無しで叶える物語:2021/10/07(木) 00:43:59.86 ID:kRfOh7PX.net
- しお子視点地の文すき
- 60 :名無しで叶える物語:2021/10/07(木) 07:03:00.82 ID:WxDVuqlC.net
- 支援
- 61 :名無しで叶える物語:2021/10/07(木) 10:39:00.93 ID:5tuXEgjz.net
- いいっすねえ…
- 62 :名無しで叶える物語:2021/10/07(木) 17:06:38.58 ID:6kQeuU1A.net
- しおぽむ対応
- 63 :名無しで叶える物語:2021/10/07(木) 19:33:18.01 ID:ugiyEbqh.net
- 愛「それじゃあ、この子の帰還を祝って!かんぱ〜い!!」
「「「かんぱ〜い!!」」
愛さんの音頭に合わせてグラスを上げる。
あなた「あはは、みんなありがとう〜!ホントに久しぶりだね」
久しぶりに会うその人は、髪を染めていたりはしたけれど、見た目は全然変わっていなかった。
しずく「先輩、しばらくはこちらに居られるのですか?」
あなた「うーん、ひと月くらいかな?向こうの家もほったらかしじゃマズいしね」
せつ菜「そういえば、新婚さんでしたね。結婚式はされたのですか?」
あなた「いやー、もう1年だし新婚ってほどでもないんだけどね。結婚式は向こうでしたよ」
璃奈「写真あるの?見たい!りなちゃんボード「憧れ」」
愛「あ!アタシも!アタシもみたい!」
皆さんあの方を中心に盛り上がっている。
私もいろいろと話したいことはあったが、とりあえずは歩夢さんが心配だった。
歩夢さんはかつて陣取っていたあの方の隣からはずっと遠くに座っていた。
- 64 :名無しで叶える物語:2021/10/07(木) 19:33:45.53 ID:ugiyEbqh.net
- かすみ「あれ、歩夢せんぱ〜い、それノンアルコールじゃないですか?」
歩夢「え?うん。ちょっとお酒で失敗しちゃって…。それ以来飲まないようにしてるんだ」
かすみ「へぇ〜。歩夢先輩にしては珍しいですね。一体何をやらかしたんですか?」
歩夢「あー、ちょっとここじゃ言えない失敗かな?」
かすみさんにだる絡みされているが、様子がおかしなことはない。
あの方とも、再開の時にはにこやかに接していたし、問題はないようにみえた。
かすみ「えー、お酒の席ですよ〜?あ、しお子なら知ってるんじゃないの?」
栞子「あはは…。確かにここではちょっと…」
かすみ「一体何やらかしたんですかぁ!?」
愛「それにしても、かすかすならこの子に再会できた瞬間に抱き着くと思ってたけど、今日はしなかったね」
かすみ「かすみんです!ってこのやりとりも懐かしいですね…。流石に奥さんのいる人に抱き着くのはちょっと…」
歩夢「あはは、かすみちゃんも大人になったんだねぇ」
かすみ「そうですよ〜。だ・か・ら、歩夢先輩に抱き着いちゃいま〜す!むぐっ、何で避けるんですか〜!」
歩夢「お酒臭かったから…」
そう言ってかすみさんが飛びつこうとして、歩夢さんがサッと避けた。
お店のソファにそのままうつぶせでつっこんで、文句を垂れるかすみさんに、みんなが笑う。
あなた「もう、そんなの気にしなくていいのに。ほら、おいでかすみちゃん」
かすみ「あ〜ん!せんぱい好き好き〜!」
皆大人になったし、急な招集で集まれないひとも多かったけど、変わらない空気感がそこにはあった。
あんなことがあったからといって心配をしすぎだっただろうか。
- 65 :名無しで叶える物語:2021/10/07(木) 19:35:56.70 ID:9GIb7bRX.net
- トラウマなのか割と深刻だぴょん……
- 66 :名無しで叶える物語:2021/10/07(木) 19:47:38.30 ID:R4giKGHx.net
- 侑ちゃんの奥さん気になるなあ
- 67 :名無しで叶える物語:2021/10/07(木) 19:48:19.43 ID:R4giKGHx.net
- ごめん侑ちゃんじゃなくてあなたちゃんだった
- 68 :名無しで叶える物語:2021/10/07(木) 21:55:04.42 ID:A0vhkwdq.net
- ᶘイº⇁ºナ川……
ᶘイ^⇁^ナ川
- 69 :名無しで叶える物語:2021/10/08(金) 07:13:19.69 ID:C+7eRmi6.net
- しお
- 70 :名無しで叶える物語:2021/10/08(金) 11:51:56.26 ID:fOpAvJHj.net
- すいません、1ですが、昨日本日と出勤のため、本日の更新はできないか、できても深夜になると思われます。
- 71 :名無しで叶える物語:2021/10/08(金) 14:27:19.23 ID:kP+cjNGO.net
- 待ってるぞ
- 72 :名無しで叶える物語:2021/10/08(金) 18:35:35.58 ID:3KO/CLRK.net
- お仕事大変ね、がんばって
ゆるゆる待ってます
- 73 :名無しで叶える物語:2021/10/08(金) 23:26:34.13 ID:dzneDnYl.net
- 支援
- 74 :名無しで叶える物語:2021/10/09(土) 07:15:34.26 ID:a9VHJTzB.net
- ほっしゅ
- 75 :名無しで叶える物語:2021/10/09(土) 12:31:16.79 ID:mPEiJ6XI.net
- かすみ「にじかい〜どうします〜?」
しずく「かすみさん…今日は帰ろう?だいぶ飲んでたし」
かすみ「ええ〜!大丈夫だよ〜しず子のけち〜!」
しずく「ケチで結構だよ。それでは先輩、またご挨拶に伺いますね。愛さんも、幹事ありがとうございました」
かすみ「みなさ〜ん!おやすみなさ〜い」
しずくさんの腕に掴まって、かすみさんが連れられて行く。
あの二人は付き合ってるわけでもないのに一緒に住んでいるらしい。
うらやましいことだ。
- 76 :名無しで叶える物語:2021/10/09(土) 12:32:07.92 ID:mPEiJ6XI.net
- 愛「かすみんの言うように二次会って思ってたけど、5人まで減っちゃったしね。また君が帰る前にやろうよ。今度は今日いなかったメンツもイケる日でさ」
あなた「うん。今日は来れなかったけど、今度は嫁もつれてくるよ」
璃奈「あなたの口から嫁なんて言葉を聞くとちょっとどきっとするね」
私もどきっとする。璃奈さんとは別の意味で。
ちらりと歩夢さんをみたけれど、特に表情に暗いものは感じなかった。
私が過敏になりすぎているのだろうか。
愛「じゃあね、せっつーと歩夢も。またランジュも呼んで5人で2年生会やろう!」
せつ菜「はい!やりましょう!また予定を連絡します!」
歩夢「うん。私も送るね」
璃奈「私たちも。今ミアちゃんも日本にいるし1年生会もやろう!りなちゃんボード「うふふ」」
栞子「その区切りで言うならミアさんは3年生ですが…。そうですね、私もやりたいです」
それぞれ別れを言って、自分の今の日常に帰っていく。
私たちの代が二十歳になったタイミングでも皆で集まったが、ほぼ全員が学生の身分だったしそれ以外でも結構な頻度で集まれていた。
でも皆社会に出てしまうとなかなかきっかけでもなければ集まりづらくなってきていた。
こういったタイミングで新しい約束ができることは嬉しいことだ。
- 77 :すいません、人数ミスってました:2021/10/09(土) 12:35:54.56 ID:mPEiJ6XI.net
- 愛「かすみんの言うように二次会って思ってたけど、6人まで減っちゃったしね。また君が帰る前にやろうよ。今度は今日いなかったメンツもイケる日でさ」
あなた「うん。今日は来れなかったけど、今度は嫁もつれてくるよ」
璃奈「あなたの口から嫁なんて言葉を聞くとちょっとどきっとするね」
私もどきっとする。璃奈さんとは別の意味で。
ちらりと歩夢さんをみたけれど、特に表情に暗いものは感じなかった。
私が過敏になりすぎているのだろうか。
愛「じゃあね、せっつーと歩夢も。またランジュも呼んで5人で2年生会やろう!」
せつ菜「はい!やりましょう!また予定を連絡します!」
歩夢「うん。私も送るね」
璃奈「私たちも。今ミアちゃんも日本にいるし1年生会もやろう!りなちゃんボード「うふふ」」
栞子「その区切りで言うならミアさんは3年生ですが…。そうですね、私もやりたいです」
それぞれ別れを言って、自分の今の日常に帰っていく。
私たちの代が二十歳になったタイミングでも皆で集まったが、ほぼ全員が学生の身分だったしそれ以外でも結構な頻度で集まれていた。
でも皆社会に出てしまうとなかなかきっかけでもなければ集まりづらくなってきていた。
こういったタイミングで新しい約束ができることは嬉しいことだ。
- 78 :名無しで叶える物語:2021/10/09(土) 13:06:42.34 ID:mPEiJ6XI.net
- 駅前でせつ菜さんと別れ、3人で電車に乗る。
歩夢「最寄り駅は栞子ちゃんが一番近いね。あなたは今日はどうするの?」
あなた「日本にいる間は実家に帰るよ。ほかに家もないしね」
歩夢「そっか。なら一番遠いね。あ、栞子ちゃん次の駅だよ」
栞子「あ、今日は私もこの後少し予定がありまして、まだ降りないんですよ」
あなた「こんな遅くに?」
ちらりと時計をみると22時。
こんな時間に一体どんな予定があるというのか。
栞子「…できるだけ早い方がいい用事を思い出しまして」
あなた「…」
いらぬ誤解を招きかねない発言だったかもしれないが、私の目の前で歩夢さんとこの方が2人きりになる場面はできるだけ避けたかった。
それに、嘘は言っていない。
- 79 :名無しで叶える物語:2021/10/09(土) 13:45:00.67 ID:mPEiJ6XI.net
- 少しの間電車に揺られて、歩夢さんの降りる駅に着いた。
その間無言ということもなく、お二人は昔とそう変わりない距離感で話しているようにみえた。
むしろ、私が少し会話の輪から外れてしまっているくらいだ。
歩夢「じゃあ、またね。あなた、栞子ちゃん」
栞子「はい、また連絡しますね」
あなた「歩夢もたまには実家に帰りなよ?おばさん、全然帰ってこないって怒ってたよ」
歩夢「…うん。今度帰るって言っておいて」
あなた「わかったよ。でも、自分でも連絡しなよ?」
歩夢さんは曖昧に頷いて、電車を降りて行った。
あなた「さて、次は栞子ちゃんだね。用事って、どこに?」
栞子「どこに、というか…。あなたにお話しがありまして」
あなた「あ、やっぱり?ちょっとそんな気がしたんだよね」
バレていたか。
鋭いのか、鈍いのか相変わらず分からないひとだ。
- 80 :名無しで叶える物語:2021/10/09(土) 19:51:58.50 ID:pVRfowGC.net
- 何を話すつもりだろう
- 81 :名無しで叶える物語:2021/10/09(土) 22:30:45.06 ID:a9VHJTzB.net
- ᶘイ˶˘⇁˘ ナ⑅|
- 82 :名無しで叶える物語:2021/10/10(日) 10:11:13.96 ID:AH0pz4ys.net
- しおっ!
- 83 :名無しで叶える物語:2021/10/10(日) 22:10:46.51 ID:Ud4JH4qU.net
- しお?
- 84 :名無しで叶える物語:2021/10/11(月) 03:28:38.49 ID:5Vow+9UW.net
- あなた「それで、何かな?言っとくけど、私今結婚してるよ?」
栞子「…ええ、よく知っていますよ」
あなた「冗談だって、そんな怖い顔しないでよ」
笑えない冗談だ。
いや、ある意味では冗談ではないかもしれない。
栞子「私の話というのは、歩夢さんのことです」
あなた「やっぱり?でも、最近の歩夢ちゃんのことなら私よりも栞子ちゃんの方が詳しいでしょ?」
歩夢さんと私がよく会っていることを知っている。
やっぱり歩夢さんはあの後もこの方と連絡を取っていたようだ。
飲み会の中でそんな話にはなっていなかったはずだし。
栞子「…そうでもありませんよ」
あなた「そっか。で、なにが聞きたいのかな?昔の話ならいくらでもあるけど?」
栞子「そのお話も、興味がないと言えば嘘になりますが、今は別のことを」
そう、大事なのは今の話だ。
- 85 :名無しで叶える物語:2021/10/11(月) 03:29:08.38 ID:5Vow+9UW.net
- 栞子「…あなたは、歩夢さんのことをどう思っていますか?」
あなた「どうって…大切な人だよ。昔からそれは変わらない」
それはそうだろう。でも、私が聞きたいのそういう意味ではなくて。
栞子「それは…一人の女性として?」
あなた「もちろん、違うよ。あくまで、幼馴染としてさ」
栞子「では、恋愛感情はないんですね?」
あなた「もちろんだよ」
栞子「そう、ですか…」
正直安心した。
私の質問の心外だ、という顔をしているが、たくさんのスクールアイドルに囲まれてなお、この人にとって歩夢さんは特別な人だった。
もし結婚した今でも歩夢さんと関係を持ちたいと言い出したら心の底から軽蔑していただろうが、ありえないとは言い切れなかった。
- 86 :名無しで叶える物語:2021/10/11(月) 03:29:39.04 ID:5Vow+9UW.net
- 栞子「でしたら、お願いがあります」
あなた「それは、歩夢ちゃんに関することだね?」
栞子「もちろんです」
むしろこの流れで他に何の話があるというのだろうか。
あなた「それで、お願いというのは?」
栞子「…歩夢さんは、あなたのことを想っています」
あなた「え?いやいや、流石にもうそんなことはないと思うけどなぁ」
もう?歩夢さんの好意を知っていたのか。
いや、気づかない訳がないか。誰が見ても昔の歩夢さんはこの人にべったりだった。
栞子「いいえ、歩夢さんは今でもきっと…だから、あなたの口からはっきりと言ってほしいんです。歩夢さんに…」
『もう結婚しているから、自分のことを想うのはやめるように』と。
あなた「…それを栞子ちゃんが私に頼む理由は?」
何でそんなことを聞くのか、話の流れでわかりきっていることだろうに。
いや、試しているのか?
私の想いが遂げられた時、大切な幼馴染を任せるに足る相手かを。
- 87 :名無しで叶える物語:2021/10/11(月) 03:30:15.38 ID:5Vow+9UW.net
- 栞子「…私が、歩夢さんを愛しているからです。今も変わらずずっと」
あなた「それを聞いて、安心したよ」
栞子「よかったです。では、私のお願いは…」
あなた「でも、嫌かな?」
え?
栞子「…なぜ、ですか?」
あなた「だってさ…」
そこまで言って、言葉がとまる。
言うか言うまいかを考えているようだった。
そして『もったいぶるな』という私の視線に負けたのか、頬を指でポリポリとかいてから「まぁ栞子ちゃんもある意味当事者だし、いいか」と前置き、私にとって、衝撃的な事実を言った。
あなた「私、もう歩夢ちゃんのこと、フったんだよね」
- 88 :名無しで叶える物語:2021/10/11(月) 07:37:41.61 ID:WCvkMTyL.net
- これが追い風になればいいが・・・
- 89 :名無しで叶える物語:2021/10/11(月) 21:32:38.05 ID:ZkJSnG83.net
- 衝撃の事実
- 90 :名無しで叶える物語:2021/10/11(月) 23:39:42.02 ID:SAX0zQA1.net
- 私事ですいません、仕事により本日の更新は難しそうです。
明日の深夜で更新したいと思います。
- 91 :名無しで叶える物語:2021/10/11(月) 23:49:12.50 ID:HaTLZXZv.net
- 楽しみにしてるけど無理はしないで
- 92 :名無しで叶える物語:2021/10/11(月) 23:55:15.44 ID:rVMqLY07.net
- うむ
のんびり待ってるね
- 93 :名無しで叶える物語:2021/10/12(火) 07:00:45.12 ID:jylcaRM3.net
- 待ってる
- 94 :名無しで叶える物語:2021/10/12(火) 20:54:16.14 ID:ISv1EyNl.net
- ほしぉ
- 95 :名無しで叶える物語:2021/10/13(水) 07:07:27.86 ID:61A1je0A.net
- ᶘイ˶˘⇁˘ ナ⑅|
- 96 :名無しで叶える物語:2021/10/13(水) 07:45:30.13 ID:YUS1ReKN.net
- あなた「1年とちょっと前かな?私、結婚してすぐに歩夢ちゃんにビデオレターを送ったんだよね。やっぱり一番最初に言うべきだと思ってさ」
本当にとんだ便りだった。
おかげで私は歩夢さんと一年間も連絡すらとれなくなったのだ。
あなた「そしたらその次の日に電話がかかってきてさ。正直何言われるんだろうとか覚悟して出たんだよね。それで、出てみたら栞子ちゃんを襲っちゃったって…ホント最初は意味が分からなかったよ」
歩夢さん…話していたのか。
まぁ、パニックになった時に相談相手として誰が浮かぶかと言われたら、この人だったのだろう。
責められまい。
あなた「それで、泣きじゃくる歩夢ちゃんを宥めて話を聞いたら、お酒でつぶれて、私と勘違いして一方的に…って言うしさ。いや、ごめんね、なんか」
栞子「…いえ、その件については私にも非があるので…」
自分が惨めになるのであんまり謝らないでほしい。
- 97 :名無しで叶える物語:2021/10/13(水) 07:46:04.68 ID:YUS1ReKN.net
- あなた「その時歩夢ちゃんもだいぶ参ってたみたいでさ。私の送ったビデオを見たはずなのに」
歩夢『お願い…帰ってきて、あなた…あなたがいないと私、だめなの!私の側にずっといて!私だけのあなたでいて…』
あなた「って」
栞子「…それで、その時に?」
あなた「まあ、流石に断ったんだ。キッパリと」
栞子「そう、ですよね」
あなた「ただ、流石にそのまま突き放すだけだと歩夢ちゃんを追い詰め過ぎちゃう気がしたからさ、その後も連絡自体は結構頻繁にとるようにしたんだ。でも、物理的に距離はとった方が歩夢ちゃんのためにもいいかなと思って。だから、日本にはしばらく帰ってなかったんだけど」
栞子「そういうことだったんですか」
確かに、別に実家と喧嘩しているわけでもないなら、結婚する時くらいは帰ってきて挨拶をするのが自然だろう。
この方も、それをしないほどには歩夢さんもことも大切に思っているということだ。国際電話は高いだろうに。
- 98 :名無しで叶える物語:2021/10/13(水) 07:46:40.90 ID:YUS1ReKN.net
- 栞子「でしたら、今回帰国されたのは?」
あなた「え?まぁ、もう大丈夫かなって」
栞子「えぇ…」
べつに私がとやかく言える立場ではないと思うが、結婚から一年も帰らなかったのにそんな理由でいいのか。
あなた「いや、別に根拠も無しにってわけじゃないよ?」
栞子「…根拠というと?」
あなた「えっとね、歩夢ちゃんと電話してるとさ、大体昔の話になるんだ。幼稚園の頃とか、小学校の頃の話、あとは同好会の頃の話が多かったかな?」
栞子「想像できますね」
私のよく知る二人の会話の内容だ。
もう3年近く聞いていないが。
- 99 :名無しで叶える物語:2021/10/13(水) 07:47:57.98 ID:YUS1ReKN.net
- あなた「でもね、最近は違うんだ」
栞子「え?違うとは?」
あなた「歩夢ちゃんの話の内容。今日は栞子ちゃんとどこに行って、何がおいしかった、楽しかったって。そんな話を、すっごい嬉しそうに話してくれるようになった」
栞子「…それ、本当ですか?」
あなた「もちろん」
一緒にいる歩夢さんはいつも笑顔だったけれど、私といて本当に楽しいのか、負い目で一緒にいて下さっているのではないか。どうしてもそう思ってしまっていた。
歩夢さんの本心がこの方の言う通りなら、こんなに嬉しいことはない。
- 100 :名無しで叶える物語:2021/10/13(水) 07:50:37.70 ID:YUS1ReKN.net
- あなた「だから、もう大丈夫だって思った。歩夢ちゃんには栞子ちゃんがいるからって、そう思った」
そう言って、車窓を振り返る。
私も学生時代に何回か降りたことのある、この方と歩夢さんのご実家の最寄り駅が見えていた。
あなた「それが根拠だよ」
電車が減速し、やがて止まる。
車掌のアナウンスが聞こえて、ドアが開いた。
あなた「まぁ、私の話はこれくらいなんだけどさ。栞子ちゃん、まだ私に歩夢ちゃんのことをもう一度振ってほしい?」
栞子「…いいえ。すいません、大丈夫です」
あなた「ん。…ところで、栞子ちゃんはこれから予定とかある?」
栞子「え?今からですか?家に帰りますが…」
さすがに今の時間から他に用事はない。
- 101 :名無しで叶える物語:2021/10/13(水) 07:53:39.93 ID:YUS1ReKN.net
- あなた「じゃあ、飲みなおそうよ。私、栞子ちゃんと話したいこといっぱいあるんだ」
栞子「え?私と?」
あなた「そう!栞子ちゃんと今日ぜんぜんしゃべってないもん。聞かせてよ、私が向こうに行ってからの栞子ちゃんの話をさ」
明日は休日だ。
私の休日なんてボランティア活動をしているか、歩夢さんと出かけるか。
そうでなければ、同好会のみなさんのおかげで趣味も増えたが動かせない予定はあまりない。
多少飲みすぎても問題はないだろう。
栞子「…あまり面白い話を期待しないでくださいね?」
照れ隠しにそんなことを言ってしまうが、内心とても嬉しかった。
私も、他の皆さんと同じようにこの人のことが昔から変わらず大好きなのだ。もちろん、尊敬しているという意味で。
あなた「そうこなくっちゃ!実は昔よく行ってた居酒屋があるんだ!まだ全然開いてるはずだよ」
電車を降り、先を歩くかつての先輩の背を追いながら、私は歩夢さんにLINEを送った。
『大切なお話があります。来週お時間はありますか?』
- 102 :名無しで叶える物語:2021/10/13(水) 18:26:51.67 ID:a1iHb6m1.net
- 良い
- 103 :名無しで叶える物語:2021/10/13(水) 21:17:23.64 ID:ZQPEo01v.net
- 支援
- 104 :名無しで叶える物語:2021/10/13(水) 22:57:08.02 ID:5edQKKeb.net
- メインの二人に限らずあなしおも掘り下げてくれるのすき
- 105 :名無しで叶える物語:2021/10/14(木) 02:54:20.71 ID:5pVZySoG.net
- 栞子「…頭痛」
二日酔いなんて久しぶりだ。
上半身を起こすと、昨日の服装のままで自分のベッドに寝ていた。
時間を確認しようとスマホをみると、LINEが届いている。
あなた『栞子ちゃん、無事に着いてる?
今日は楽しかったYO!
懲りずにまた遊ぼうね!』
あの方の肩を借りてなんとかタクシーに乗ったことを思い出す…。
大分酔っていたし、迷惑もかけたことだろう。
栞子『今LINEを確認しました。
すいません、ご迷惑をおかけしたようで…。
私も楽しかったです。
はい!今度は私がお店を探しますね』
返信を送ると、すぐに親指を立てたキャラクターのスタンプが送られてくる。
それにお辞儀をしたキャラクターのスタンプを返し、スマホを枕元に置く。
栞子「…さて、まずはシャワーですね」
体が汗臭い。思い身体を引きずるようにしてベッドを出る。
ついでにシーツを剥がして洗濯機に放り込んだ。
- 106 :名無しで叶える物語:2021/10/14(木) 02:56:16.20 ID:5pVZySoG.net
- シャワーから出て、洗濯機から乾燥機にシーツを移す。
服を着て、鞄に必要なものを詰めようとスマホを手に取るとまたLINEが届いていた。
あの方かな?と思ってホーム画面から相手を確認すると、歩夢さんだった。
歩夢『分かったよ。
時間はいつでも大丈夫!』
急いでロックを解除し、メッセージを返す。
栞子『ありがとうございます。
では、お昼にいつものところでお願いします』
第一段階はクリアだ。
栞子「さて、まずは銀行ですね」
来週、私は勝負を仕掛ける。
最後には当日の自分頼みだが、そこに持っていくための準備は念入りにせねば。
- 107 :名無しで叶える物語:2021/10/14(木) 03:10:28.64 ID:ABzJOkZN.net
- いよいよか
- 108 :名無しで叶える物語:2021/10/14(木) 07:18:52.92 ID:pKAXRk9N.net
- 支援
- 109 :名無しで叶える物語:2021/10/14(木) 07:47:44.47 ID:pI98R0Dg.net
- 決戦は
- 110 :名無しで叶える物語:2021/10/14(木) 22:31:24.20 ID:D6VgVTAE.net
- 歩守
- 111 :名無しで叶える物語:2021/10/15(金) 07:11:57.17 ID:JHvCp05t.net
- しお
- 112 :名無しで叶える物語:2021/10/15(金) 18:36:40.03 ID:uNY/Y6yv.net
- 準備中しお
- 113 :名無しで叶える物語:2021/10/15(金) 23:43:42.28 ID:LACvP9Hi.net
- 支援
- 114 :名無しで叶える物語:2021/10/16(土) 12:58:27.26 ID:GCQvRX4o.net
- 待つわ
- 115 :名無しで叶える物語:2021/10/16(土) 13:04:55.51 ID:mJNdNIU1.net
- お見合い後のデート以来、お馴染みの待ち合わせ場所になった忠犬像前で歩夢さんを待つ。
いつも通り待ち合わせ時間よりかなり早く彼女は現れた。
歩夢「お待たせ、栞子ちゃん。いつも早いね」
栞子「いえ、私も来たところですので」
歩夢「そっか。それで、大事な話って?」
栞子「ええと、それは後でも大丈夫ですか?今日のデートの最後にでも」
歩夢「デート?」
…しまった。
大事な話とだけ伝えてしまって、今日の予定だとかは言っていなかった。
栞子「あ、えっと、すいません!このあとご予定がありましたか?」
歩夢「ううん、大丈夫。ふふ、わかったよ。デートだね」
よかった。
あやうく準備が無駄になるところだった。
栞子「はい、ありがとうございます。では、行きましょう」
歩夢「うん」
二人で並んで歩きだす。
さぁ、勝負の一日だ。
- 116 :名無しで叶える物語:2021/10/16(土) 13:05:31.95 ID:mJNdNIU1.net
- ランチを済ませた私たちはそのままショッピングモールに移動して、買い物を楽しんだ。
お互いを着せ替え人形にしていると、学生の時を思い出して年甲斐もなくはしゃいでしまったが、それも含めてデートは概ね予定通りにすすんでいた。
歩夢「遊園地なんて本当に久しぶりだよ」
次の目的地である遊園地に着いた。
一応下見はしたが、アトラクションを回る余裕はなかった。
まぁ、初見の方が楽しいだろう。
栞子「大人になるとなかなか行かないですからね。それとも、あまりお好きではなかったですか?」
歩夢「ううん、そんなことないよ。すっごく楽しみ!栞子ちゃんはよく行くの?」
栞子「いえ、実はもう何年も…。ですが、二人でなら楽しいかなと」
歩夢「ふふ、そうだね。どんなアトラクションがあるのかな?」
栞子「ええと、大人気のジェットコースターに、おすすめのシアター、あとホラーハウスもあるみたいです」
歩夢「わぁ〜、ホラーハウス!楽しみだね!」
栞子「はい!」
歩夢さんを連れて歩き出す。
それにしても好きなのだろうか、ホラーハウス。知らなかった。
- 117 :名無しで叶える物語:2021/10/16(土) 13:06:11.09 ID:mJNdNIU1.net
- 歩夢「ふぅ…楽しかったね」
栞子「ええ、ですが少し詰めすぎだったでしょうか」
歩夢「ううん、若いころに戻ったみたいで楽しかったよ」
栞子「私もです」
周囲は段々と薄暗くなってきている。
閉園時間が近づくにつれてジェットコースターなどのアトラクションから悲鳴や歓声が聞こえなくなってくる。
歩夢「そろそろ、帰る?」
栞子「いえ、最後に乗りたいアトラクションがありまして」
歩夢「え?うん、どれ?」
栞子「はい、あれに乗りませんか?」
歩夢「観覧車?うん、いいよ」
イルミネーションが点灯し、ムードも出てきた。
そろそろ頃合いだろう。
大事な話…歩夢さんに告白をする時が来たのだ。
- 118 :名無しで叶える物語:2021/10/16(土) 21:21:23.37 ID:GGn7ElLi.net
- A・ZU・NAランドに来たのかな?
- 119 :名無しで叶える物語:2021/10/17(日) 10:14:16.52 ID:Bbjk3Qee.net
- 支援
- 120 :名無しで叶える物語:2021/10/17(日) 22:53:54.03 ID:F6dpquRK.net
- ほむ
- 121 :名無しで叶える物語:2021/10/18(月) 07:04:10.72 ID:J8dPxO0R.net
- ₍₍ @cメง*˶ˆ ᴗ ˆ˵リว ⁾⁾
- 122 :名無しで叶える物語:2021/10/18(月) 16:20:50.92 ID:3TnEiqnU.net
- 観覧車を選んだのは時間制限があるからだ。
臆病な私が逃げずにちゃんと私の気持ちを伝えられて、ロマンチックさも兼ね備えているシチュエーションを考えて、たどり着いた。
タイムリミットはパンフレットによれば15分だ。
歩夢「観覧車なんて久しぶりだよ」
栞子「私もです」
歩夢「ふふ、ねぇ覚えてる?みんなで遊園地に来た時、栞子ちゃんすっごくはしゃいで」
栞子「そ、それは、本当に初めてだったからで…」
とはいえ、出発してすぐは外の景色も変わらない。
実際に告白に使える時間は10分足らずだろう。
今日の楽しかったこと、これまでの話を枕にして、本題を切り出すタイミングを探る。
歩夢「でも、あの時の栞子ちゃん、可愛かったな〜。今は可愛いっていうより、美人さんだもんね」
栞子「歩夢さんは、あの頃と変わりません。いつまでも可愛らしくて、お優しい」
歩夢「も〜何言ってるの。私もう26だよ?」
栞子「いいえ、変わりませんよ。あの頃からずっと…」
歩夢「栞子ちゃん?」
日は完全に落ち、窓の外にはイルミネーションと町の明かりが灯っている。
タイミングは悪くない。
- 123 :名無しで叶える物語:2021/10/18(月) 16:21:27.26 ID:3TnEiqnU.net
- 栞子「歩夢さん、大事な話があります」
歩夢「!…うん」
栞子「初めて会った頃、私は同好会の活動を、スクールアイドルを無駄なものだと思っていました」
歩夢「うん、そうだったね」
栞子「ですが、皆さんのおかげで私は変われました。あの出来事がなければ、姉とも今のようには接することができなかったでしょうし、なにより自分の考えを他人に押し付けるだけの人間として今も過ごしていたでしょう」
いや、もしかしたらあの時点で挫折してしまい、もっとひどい人間になっていたかもしれない。
栞子「皆さんには、特にあの方と歩夢さんには今でも感謝してもしきれません」
歩夢「ううん、私たちも栞子ちゃんにいままでたくさん助けてもらってきたもん。お互い様だよ」
栞子「少しでも恩を返せているならいいのですが。…話が逸れましたね。あの頃の私は歩夢さんのことを姉のように思っていました」
実の姉があの有様であったからして、優しく甘えさせてくれる歩夢さんに対してこういう人が姉だったらよかったなどと思ったりもしたものだ。
栞子「ですが、いつしかその感情は変わってゆきました。優しいところ。可愛らしいところ。でも、しっかりと強い芯をもっているところ。そして…一途なところ」
虹ヶ咲で開催した1回目のスクールアイドルフェスティバルで背中を押してくれたこと、友人の少ない私を気にかけて一緒に遊びに行ってくれたこと。体調を崩したときにあの方と一緒に看病をしにきてくれたこと。そのすべてが私に気持ちを植え付け、育てた。
栞子「学生の頃からずっと…私は歩夢さんに恋をしているんです」
- 124 :名無しで叶える物語:2021/10/18(月) 16:22:01.48 ID:3TnEiqnU.net
- 歩夢「…」
歩夢さんの目を見つめる。
どんな返事であったとしても受け止める。
そのために、自分の想いをしっかりと伝えなくてはならない。
栞子「歩夢さん…あなたのことがずっと好きでした。私と、付き合ってください!」
- 125 :名無しで叶える物語:2021/10/18(月) 16:22:59.66 ID:3TnEiqnU.net
- 私の告白を聞いて。歩夢さんは黙っていた。
その顔は驚いているというよりは、言葉を探しているように見えた。
栞子「…あの、歩夢さん?」
歩夢「…栞子ちゃんの気持ち、とっても嬉しいよ」
栞子「でしたら!」
歩夢「でも、私は栞子ちゃんとは付き合えません。ごめんなさい」
- 126 :名無しで叶える物語:2021/10/18(月) 16:23:32.90 ID:3TnEiqnU.net
- ああ…。
フラれた…。
私の長い長い片思いが、終わった…。
- 127 :名無しで叶える物語:2021/10/18(月) 16:24:18.24 ID:3TnEiqnU.net
- 栞子「…。そう、ですか…。すいませんでした。私なんかが、歩夢さんに」
なんとか口から言葉を吐く。
涙があふれるのを必死にこらえるけれど、ダメだ。
耐えられそうにない。
歩夢「そんなこと、言わないで!栞子ちゃんにはもっとちゃんと」
栞子「慰めはよしてください!」
歩夢「……ごめんね、本当に」
その時、ガチャンと音がしてドアが開く。
どうやらちょうど観覧車が一周し終わったようだ。
タイミングがいい。
少し前まで至福だった二人きりが今はつらかった。
歩夢「降りよっか」
栞子「…はい」
- 128 :名無しで叶える物語:2021/10/18(月) 16:26:56.59 ID:3TnEiqnU.net
- 観覧車から降りてとぼとぼと歩夢さんの後ろをついて歩く。
横目に見える待機の列にはカップルが大勢並んでいた。
栞子「あの、今日はもう解散でいいでしょうか」
歩夢「…うん。そうしよっか」
栞子「それでは」
歩夢さんと別れ、遊園地の出口に向かって歩く。
とにかく今は家の布団にでもくるまって、一人になりたかった。
歩夢「…栞子ちゃん!」
後ろから歩夢さんに呼び止められる。
泣くのを堪えた顔を見られたくなくて、振り返らず足だけを止めた。
歩夢「…ううん。なんでもない。気を付けて帰ってね」
栞子「…歩夢さんも。お気をつけて」
なんとかそれだけ絞り出して、私はまた一人で歩き出した。
- 129 :名無しで叶える物語:2021/10/18(月) 16:28:49.69 ID:udPL8HWj.net
- ᶘイ˶;⇁; ナ⑅|
- 130 :名無しで叶える物語:2021/10/18(月) 18:21:36.08 ID:qA1syP8C.net
- Oh…
- 131 :名無しで叶える物語:2021/10/18(月) 21:15:30.25 ID:0gJWcgiC.net
- うぅ…
- 132 :名無しで叶える物語:2021/10/18(月) 22:00:19.49 ID:2DJ7/gAU.net
- かなしい
- 133 :名無しで叶える物語:2021/10/18(月) 23:27:26.96 ID:+3oUifK1.net
- しおこぉ😭
- 134 :名無しで叶える物語:2021/10/19(火) 07:06:30.54 ID:SNnxOySM.net
- しお…
- 135 :名無しで叶える物語:2021/10/19(火) 21:56:19.97 ID:hExpPzNc.net
- しお〜
- 136 :名無しで叶える物語:2021/10/20(水) 02:52:38.12 ID:oQUBbxbn.net
- 初めは可愛い妹のように思っていた。
ニジガクにいた頃は後輩みんな懐いてくれていたし、平等に可愛がっていたつもりだけれど、卒業してからも慕って一緒にいてくれたのは栞子ちゃんだけだった。
あの子が行ってしまってからは特に遊ぶ機会が増えたように思う。
寂しいというのを特に知り合いと一緒にいる時には表に出してしまう私の性格もあってか、栞子ちゃんは事あるごとに私を誘ってくれた。
栞子ちゃんといる時は寂しさを忘れられるから、私の方もそれに甘えてしまって…。
とにかく年単位であの子に会えないという人生で初めての経験を乗り越えられたのは間違いなく栞子ちゃんのおかげだった。
- 137 :名無しで叶える物語:2021/10/20(水) 02:53:27.68 ID:oQUBbxbn.net
- 目が覚めるとひどい頭痛がした。
どうしたことだろう。
思い出そうにも、仕事から帰ってきてからの記憶も曖昧だ。
風邪でも引いたのだろうか。それにしては夢見がよかった。
誰だってたまにはみる、好きな人と結ばれる夢だ。
いつもよりも大分生々しかったが…。
「んん…」
隣で布団の擦れる音がする。
うん?え、誰?
歩夢「…あなた?」
恐る恐るそちらを向いて、うっすらと目を開く。
そこには、全裸の栞子ちゃん。
栞子「あ、起こしてしまいましたか、ごめんなさい」
前を布団で隠しながらなんでもないようにそう言う。
- 138 :名無しで叶える物語:2021/10/20(水) 02:53:57.43 ID:oQUBbxbn.net
- 歩夢「え?…しおりこ、ちゃん?」
栞子「はい」
その顔を、身体ををみて、頭の中に昨日の出来事が鮮明に蘇った。
あの子から連絡が久しぶりにきて、すっごく嬉しくって、次の日に栞子ちゃんと約束があったのにそれがお昼からだからって、お酒なんか準備しちゃって。ほろ酔いで動画を開いたら…。
歩夢「あ、ああ、あああ、あああああ…ごめん、ごめんなさい、し、栞子ちゃん…」
栞子「大丈夫、大丈夫ですから。落ち着いてください」
歩夢「大丈夫なわけないよ!だって私」
約束の時間に来なかった私を心配してきたであろう妹分を、犯したのだ。
この手で。
歩夢「うっ…」
頭痛と吐き気がひどい。
体調も気分も最悪だ。
- 139 :名無しで叶える物語:2021/10/20(水) 02:56:11.76 ID:oQUBbxbn.net
- 栞子「大丈夫です。私、歩夢さんのこと好きですから」
本当にこの子は…自分とあの子を勘違いして襲ったと理解しているのだろう。
その上でこんな私を気遣う言葉をかけるなんて。
歩夢「嘘だよ、そんなの…」
栞子「嘘ではないです。だから、落ち着いてください」
歩夢「う、うん…」
そうだ。被害者が落ち着いているのに、加害者の私だけこんなに慌ててどうする。
頭でそう考えるけれど、とにかく落ち着かない。
思考も流れていってしまって、今すべきことが決められない。
栞子「とにかく、私は気にしていませんし、昨日のことはただの事故でした。忘れましょう?」
歩夢「そんなわけには!」
栞子「いいですから」
本人がいいと言うからいいということではない。
栞子ちゃんは名家の跡取りだし…いや、そんなの関係なしに純潔を奪ってしまった責任を…。
- 140 :名無しで叶える物語:2021/10/20(水) 02:56:45.88 ID:oQUBbxbn.net
- 栞子「私は帰りますね。歩夢さんも、深酒をした翌日なのでいまさらですがお水をよくのんでください」
ぐるぐると思考が回って何も言えない私を余所にそう言って、栞子ちゃんはそくささと出ていってしまう。
後を追いかけようとして立ち上がろうとするけれど、四肢に力が入らずなかなかできない。
歩夢「まって、あ、す、スマホ!」
何とか這うようにしてテーブルに置いてあるスマートフォンにたどり着き、栞子ちゃんに電話をかけようとして、止まる。
歩夢「えっと何を、言えば…」
スマホを持つと、顔認証でロックが外れた。
手癖で開いた画面に再生の終わったビデオが映る。
無意識にあの子に電話をかけていた。
- 141 :名無しで叶える物語:2021/10/20(水) 02:57:26.52 ID:oQUBbxbn.net
- あなた「あ、もしもし、歩夢ちゃん?もしかして…ビデオ、見てくれた?」
出てくれた。
後で聞いたら向こうはこの時夕方で、職場から帰る途中だったらしい。
歩夢「あ、あなた!わた、私!私!」
あなた「え?ちょっと、落ち着いてよ歩夢ちゃん!どうしたの?」
歩夢「栞子ちゃんを…うっ」
あなた「え?栞子ちゃん?ちょ、ちょっと、何があったのさ」
私がなんとか昨日何があったかを伝えた。
途中で涙まで出てきてだいぶしどろもどろになってしまった説明を、あの子は辛抱強く聞いてくれた。
自分の口から出して改めてひどいことをしたと思う。
- 142 :名無しで叶える物語:2021/10/20(水) 02:59:51.32 ID:oQUBbxbn.net
- あなた「…まぁ、大体何があったかは分かったよ。それで、歩夢ちゃんはどうしたいの?」
歩夢「私、私は…わからない…。わからないよ…」
あなた「歩夢ちゃん…」
流石にあの子も呆れている。
あの子にも見放される!
歩夢「…お願い…帰ってきて!」
思わず縋るようにそう言ってしまってからは止まらなかった。
歩夢「あなた…あなたがいないと私、だめなの!私の側にずっといて!私だけのあなたでいて…」
言うつもりのない言葉があふれてしまう。
自覚してからいままで秘めていた。
そして今となっては伝えることすら憚られる言葉が。
- 143 :名無しで叶える物語:2021/10/20(水) 03:01:30.50 ID:oQUBbxbn.net
- あなた「え、ちょ、歩夢ちゃん!?ビデオ見てくれたんじゃ」
歩夢「み、みたけど…」
あなた「じゃあ、分かるでしょ?それは、できないよ」
歩夢「……ごめんなさい」
はっきりと言ってくれた。
フラれた悲しさが目から溢れそうになるが、今はとてもありがたかった。
あなた「ううん。こっちこそきつい言い方をしちゃってごめんね」
歩夢「だいじょうぶ。ありがとう。もう、切るね」
あなた「あ、ちょっと歩夢ちゃん!今度また電話す…」
電話を一方的に切ってしまう。
何をしているんだろう、私は…。
栞子ちゃんを傷つけて、そのままあの子に告白みたいなことを言うなんて。
最低が過ぎる。
力の入らない手でなんとか栞子ちゃんに『ごめんなさい』とだけ送って、そのままベッドに突っ伏した。
今は何も考えたくない。
- 144 :名無しで叶える物語:2021/10/20(水) 03:48:04.10 ID:oQUBbxbn.net
- あれから一年が経とうとしている。
定期的に連絡をくれるあの子のおかげで、何とか私は最後の一歩で日常に踏みとどまっていた。
栞子ちゃんのいない日常に。
栞子ちゃんはあれからすぐに、また会おうと連絡をしてくれた。
冷静になった今、きちんと面と向かって謝らなくちゃならないのは分かっている。
でも、どんな顔をして会えばいいというのか。
もし会えたとしても、二度と私に向かってあの笑顔を向けてくれることはないのかもしれない。
そう思ってしまうと、勇気が出ない。
いろいろとウジウジ考えているうちに、返事が出来ずに時間が経ってしまい…。
いつしか私が会えば、栞子ちゃんの傷を広げる結果になってしまう、だなんて自分に言い訳をするようになっていた。
「あれ?歩夢ちゃん?」
でも、仕事場でその人に会った時、神様は見ているんだと思った。
私にきちんと自分の罪と向き合うように言っているのだと、そう思った。
- 145 :名無しで叶える物語:2021/10/20(水) 03:48:34.46 ID:oQUBbxbn.net
- 歩夢「…薫子、先生?」
薫子「やっぱり歩夢ちゃんじゃん!久しぶり!元気だった?」
歩夢「…はい、なんとか」
薫子「そっか〜。まぁ、ここ忙しそうだもんね。今日も今度やるスクールアイドルのイベント会場について相談しに来たんだけど、みんなバタバタしててさ」
歩夢「あはは、すいません」
薫子「いや、歩夢ちゃんが謝ることじゃないって。それよりさ、栞子とはどう?卒業したあとも遊んだりしてくれてるんでしょ?」
歩夢「…ええ、たまにですが」
嘘だ。
卒業してからは、特に一年前まではしょっちゅう会っていた。
そして逆にここ一年は全く会っていない。
- 146 :名無しで叶える物語:2021/10/20(水) 03:51:19.41 ID:oQUBbxbn.net
- 薫子「そっか。いや〜あの子、あんまり友達いないからさ。これからもよろしく頼むよ」
歩夢「…はい」
薫子「っていっても、歩夢ちゃんにもプライベートがあるもんね。そんなに美人さんなら、恋人も選び放題でしょ?ってこれじゃセクハラか」
歩夢「いえ、そんな。私なんて…それに、ずっと一人ですから」
確かに声をかけてくる人はいるが、今の私にそんな余裕はない。
それに、もう自分は誰かと恋愛する権利なんてないだろう。
薫子「え?じゃあ、いま歩夢ちゃんフリーってこと?」
歩夢「え、ええ。まあ」
薫子「じゃあさ、栞子とかさ、どう」
その名前を聞いてドキリとする。
- 147 :名無しで叶える物語:2021/10/20(水) 03:54:53.10 ID:oQUBbxbn.net
- 歩夢「…栞子ちゃんこそ、引く手数多なんじゃないですか」
薫子「いや〜それがさ、あの子来るお見合い話を全部断ってるみたいなんだよね」
歩夢「栞子ちゃんが?」
まさか。
自分のせいなのだろうか。
あんなことを自分がしてしまったから。
薫子「だからさ、歩夢ちゃんさえよければ、あの子とお見合いとか、どうかな?あの子も歩夢ちゃんが相手なら大喜びで来ると思うんだよね〜」
歩夢「いや、そんな…」
私が行けば、また栞子ちゃんを傷つけてしまう。
だけど、このままで良いのだろうか。
あの子を傷つけただけのままで。
面と向かってきちんと謝って。
そして私との縁を切って栞子ちゃんがちゃんと幸せになれるようにするのが、私に残された最後の責任なんじゃないだろうか。
- 148 :名無しで叶える物語:2021/10/20(水) 03:55:46.56 ID:oQUBbxbn.net
- 薫子「やっぱダメか〜、ゴメンね…」
歩夢「…いえ、やっぱり。お願いできませんか」
薫子「え?ホント!?いやー、栞子、喜ぶぞ〜」
歩夢「そんな」
そんなわけ、ないのだ。
薫子「いやいや、昔っからあの子、歩夢ちゃんの話ばっかりだったんだから!」
ズシリと罪悪感が重く感じられた。
薫子「一応、栞子にも聞いてみるけど、まぁどっか暇な日を一日空けといてよ」
それを聞いてはっとする。
栞子ちゃんが話を受けなければそもそもお見合いが成立しない。
歩夢「分かりました」
栞子ちゃんはおそらくお見合いを受けないだろう。
そして、この期に及んでそれを逃げ道に考えてしまっている救いようのない自分がいた。
- 149 :名無しで叶える物語:2021/10/20(水) 04:15:25.14 ID:9N3Hy2nn.net
- 支援
- 150 :名無しで叶える物語:2021/10/20(水) 07:10:38.79 ID:La5ZyXSP.net
- しお〜
- 151 :名無しで叶える物語:2021/10/20(水) 09:22:36.25 ID:Osq2BvAh.net
- ぽむ視点が
- 152 :名無しで叶える物語:2021/10/20(水) 10:04:07.29 ID:5LfG44NV.net
- しぉ。。。
- 153 :名無しで叶える物語:2021/10/20(水) 10:20:03.95 ID://vRwkNU.net
- しお…しお……
- 154 :名無しで叶える物語:2021/10/20(水) 19:43:28.90 ID:alhCCn2o.net
- シオ…
- 155 :名無しで叶える物語:2021/10/20(水) 23:06:44.84 ID:jBJIXFaO.net
- シォン……
- 156 :名無しで叶える物語:2021/10/20(水) 23:22:18.51 ID:oQUBbxbn.net
- すいません、次更新明日の深夜以降になります
- 157 :名無しで叶える物語:2021/10/20(水) 23:24:50.94 ID://vRwkNU.net
- しお!
- 158 :名無しで叶える物語:2021/10/20(水) 23:35:02.90 ID:jBJIXFaO.net
- しお!しおー!!
- 159 :名無しで叶える物語:2021/10/21(木) 07:16:33.93 ID:zpX9lg/U.net
- 期待
- 160 :名無しで叶える物語:2021/10/21(木) 18:24:55.60 ID:gBZNLBQA.net
- ししおお…
- 161 :名無しで叶える物語:2021/10/21(木) 22:18:04.49 ID:GF3V78fI.net
- しぉっ
- 162 :名無しで叶える物語:2021/10/22(金) 04:54:27.54 ID:Bjq9Lndr.net
- それから数日後、薫子さんからお見合いの日程を調節したいという旨のLINEがきた。
栞子ちゃんは、お見合いを受けたのだ。
どんな顔で何を言われるのだろう。
普段よりもずっとしっかりとしたお化粧をさせられて母の隣に座っていると、嫌な想像が止まらなかった。
いや、どのような言葉も甘んじて受け入れよう。
栞子「ま、待ってください!髪型変じゃないですか!?」
そう思って座っていると、懐かしい声がした。
たった一年なのに何年も聞いていないような気がする。
薫子「大丈夫だよ。ていうか、なんでそんなに緊張してるのさ。結構会ってるんでしょ?」
栞子「いや、前にお会いしたのは1年も前で…それに…」
薫子さんと言い争うその声はあまりに私の想像していた感情とは遠くて。
薫子「ほら、開けるよ?」
栞子「あ、待っ…」
歩夢「あはは…1年ぶりだね、栞子ちゃん」
すっかりおめかしして、いつも以上に美人になった栞子ちゃんは慌てたような表情でふすまの奥から現れた。
第一声で罵倒されることすら予想していた私は、それを見てつい笑ってしまったのだった。
- 163 :名無しで叶える物語:2021/10/22(金) 04:55:20.31 ID:Bjq9Lndr.net
- お母さんと薫子さんが退出して、栞子ちゃんと二人で残される。
お見合いの場ではあるけれど、私たちが集まった理由は異なるのだろう。
少なくとも、お互い本来の目的で集まってはいないはずだ。
私は最後のけじめをつけるため、そしておそらく栞子ちゃんはこんな私と仲直りをする為に来てくれた
のだ。
少し会話してそれを悟った時、思わず泣きそうになった。
あんなことをした上一年も逃げた私に、この子はなんて優しいのだろう。
けれど、薫子さんの話からして、私との関係を引きずることは栞子ちゃんにとって決して良いことじゃない。それは分かっているのに。
歩夢「…ねぇ、栞子ちゃん」
栞子「あ…はい」
歩夢「栞子ちゃんは、すっかり大人になったね」
栞子「…それを言うなら歩夢さんがですよ。私なんて」
歩夢「ううん、大人になったよ。私はまだ…」
栞子「あの、歩夢さん?」
歩夢「…ほら食べよう?おいしそうだよ?」
栞子ちゃんがまだ私に好意的な感情をもってくれていることを察してしまった私は、途中何度か話を切り出そうとするも、結局ははぐらかしてしまうというのを繰り返していた。
自分から栞子ちゃんとの縁を切る。
そう決めたのに、自分の口からそれを切り出す覚悟が揺らいでいた。
- 164 :名無しで叶える物語:2021/10/22(金) 04:56:03.46 ID:Bjq9Lndr.net
- 栞子「…どうして、お見合い、受けてくださったんですか」
歩夢「…どうしてって」
栞子「あれから、私…」
そんな私の様子にしびれを切らしたのか、ついには栞子ちゃんから話を振ってくれたものの、料亭の店員さんがお茶を運んでくることで途切れてしまう。
歩夢「…そろそろ、時間だね。ねぇ、栞子ちゃん。あれから…何かな?」
これ幸いと、卑怯な言い方をして逃げる私。
本当に往生際が悪い。
栞子「…いえ、なんでもないです」
歩夢「…そっか」
とはいえ、今日はもうタイムリミットだろう。
少なくとも連絡も避けていた状態からは進歩したと、前向きに捉えることも大事だと思うことにする。
残り時間を考えると後日改めて機会を設けたほうが良さそうだ。
- 165 :名無しで叶える物語:2021/10/22(金) 04:56:37.02 ID:Bjq9Lndr.net
- 歩夢「また、会えるかな?その、近いうちに」
栞子「もちろんです。今度はかすみさんや菜々さんも呼んで」
歩夢「そうじゃなくって、ふたりで」
栞子「…はい」
歩夢「うん、ありがとう。じゃあ、出よっか」
お店のお会計は栞子ちゃんのお家が済ませてくれていた。
私だって社会人の端くれだし、半分は出すと言ったが栞子ちゃんは自分ではなく家の金から出ているので受け取れないと頑だったので、次の会計は私がすることを約束した。
高そうなお店だったし、つり合いは取れないだろうけど仕方ない。
- 166 :名無しで叶える物語:2021/10/22(金) 04:57:43.44 ID:Bjq9Lndr.net
- 歩夢「じゃあ、11時半に集合だね」
栞子「はい!お店なんかは私が予約しておきますね」
歩夢「ええ?いいよ、今度は私が」
栞子「えっと、オススメのお店があるんです!そこに行きたくって」
歩夢「うーん、分かったよ。でも次のお会計は私が払うからね」
次に会う約束をしてお店の前で別れる。
LINEはまだあれから返事を返せていないのもあって、なんだか次の約束をするのに使うのが憚られたので、口で約束を取り付けた。
少し歩いて、有料駐車場で待つ母の車に乗って帰った。
帰り道で母からやたらと今日の感想や感触を聞かれて、ああそういえばお見合いの場だったと思い出す。
昔と変わらず優しくて綺麗なままだったと素直な感想を伝えると、嬉しそうにしていた。
借りているマンションまで送って貰う途中、実家に中々帰らないことにお小言を言われる。
あそこにいるとどうしてもあの子との日々を思い出して悲しくなるので近寄らないようになっていたが、栞子ちゃんとの一件が片付いたら実家に帰るのも気分を変える意味で良いかもしれない。
窓の外の景色を眺めながら、なんとなくそう思った。
- 167 :名無しで叶える物語:2021/10/22(金) 07:24:58.98 ID:upExYvC2.net
- しお…?
- 168 :名無しで叶える物語:2021/10/22(金) 07:36:33.11 ID:9zo1sl9+.net
- 見てます
- 169 :名無しで叶える物語:2021/10/22(金) 10:08:34.85 ID:RzeVSGyV.net
- ぽむゥ
- 170 :名無しで叶える物語:2021/10/22(金) 21:23:12.62 ID:ICi4f15j.net
- どうなるか気になる
- 171 :名無しで叶える物語:2021/10/23(土) 07:07:24.96 ID:T5K4c+Rc.net
- ほっしゅ
- 172 :名無しで叶える物語:2021/10/23(土) 23:13:10.80 ID:3ZomvWhW.net
- @cメ*˶ˆ ᴗ ˆ˵リ
- 173 :名無しで叶える物語:2021/10/24(日) 10:09:08.59 ID:vyzgRFzz.net
- しお〜
- 174 :名無しで叶える物語:2021/10/24(日) 19:24:54.36 ID:u1g/JLDn.net
- 追いついた!ドキドキする…
- 175 :名無しで叶える物語:2021/10/24(日) 22:47:58.49 ID:UwaLbPfI.net
- 待ち合わせ場所が見えると、すでに彼女が待っているのが分かった。
相変わらず集合時間よりもずいぶん早く来ていたようだ。
歩夢「おまたせ〜。早いね、栞子ちゃん」
栞子「いえ、今来たところなので。歩夢さんこそ」
歩夢「え?ふふ、そうかな?」
時計を確認すると、まだ集合時間よりも30分は前だ。
今日は私も早めに家を出たんだけどな。
歩夢「栞子ちゃん、どこか行きたいところ、あるの?」
二人で出かけたら、いつも栞子ちゃんが行き先を決めてくれた。
私は元々あんまり自分からぐいぐい行く方じゃないからありがたかったな。
栞子「えっと、歩夢さんはお昼はまだですか?」
歩夢「うん、まだだよ」
栞子「でしたら、ぜひ行きたいお店がありまして」
今日は流石に私の方でもお店やらを考えてあったけど、その必要はなかったみたい。
歩夢「そうなんだ。じゃあ、行こうか」
栞子「はい!」
嬉しそうに私の前を歩いて行き先を案内してくれる栞子ちゃん。
少し前のことなのに、この光景がひどく懐かしく感じるのは、私が壊してしまったからだろうか。
- 176 :名無しで叶える物語:2021/10/24(日) 22:48:19.30 ID:UwaLbPfI.net
- お昼の後はショッピングだ。
この歳になると目的もなくぶらぶらすることが少なくなる。
ウィンドウショッピングなんて久しぶりだ。
栞子「あ、このお店ここにも出店してるんですね。行ってみませんか?…歩夢さん?」
歩夢「あ、ごめんね。なんだっけ」
ただ、私はあまり楽しめていなかった。
あのお見合いから日が経つにつれ、私の決意は薄れていってしまっていた。
本当は私も栞子ちゃんと縁なんて切りたくないのだ。
今日楽しいことがある度に、私は一人考えてしまっていた。
栞子「もしかして、お疲れですか?すいません、引っ張りまわしてしまって…ペースを落としますね」
歩夢「ううん、大丈夫。だけど、ちょっと落ち着きたいかも?」
栞子「あ、でしたら、この先にオススメのカフェがあるんですよ。何でも有名なケーキショップが出しているんだとか」
歩夢「へぇー、栞子ちゃん詳しいんだね。行ったことあるの?」
栞子「実は私も行くのは初めてです。いつか歩夢さんと行けたらな、と思ったので覚えていまして」
歩夢「!…嬉しいよ」
相変わらず可愛いことを言ってくれる。
もし、今日私が目的を果たせたら、彼女にどんな顔をさせてしまうのだろうか。
このまま、栞子ちゃんと元の関係に戻ってはダメだろうか。
- 177 :名無しで叶える物語:2021/10/24(日) 22:49:04.39 ID:UwaLbPfI.net
- その後は栞子ちゃんのオススメのお店でディナーをして、夜の街を歩いた。
夜になるにつれて人通りが減り、昼間と同じ道を歩いている感覚はあまりない。
就職してからは皆忙しくなってしまって、栞子ちゃんと会わなくなると夜に街を歩くことがめっきりなくなった。
そのせいか、久しぶりな街の空気感に私は少し浮ついてきていた。
栞子「歩夢さん」
けれど呼び止められて、その声音を聞いて、気持ちがスッと落ち着くのを感じた。
歩夢「…なに?」
栞子「私は、歩夢さんのことが好きです」
歩夢「…まだ、そう言ってくれるんだね」
栞子「そうでなければ、デートなんて、ましてやお見合いなんてしませんよ。でも、歩夢さんは違いますよね」
この時、初めて分かった。
ああ、好きというのはそういう意味か。
あの日は恋愛感情があるなんて嘘をついて私を慰めようとしていたのだと思ったけれど、栞子ちゃんは友情に免じて許しますよ、とそういう意味で言ったのだ。
そして、この『違いますよね』というのは…。
歩夢「そんなこと…」
栞子「ではどうして、あの後LINEを返してくれなかったんですか」
友情を感じているのなら、なぜホンネを言ってくれないのか、と問うているのだ。
あんなことがあって、栞子ちゃんを傷つけた。
だから距離を置くべきだと思っていたけれど、それも私のエゴなんじゃないだろうか。
自分の気持ちを置いて、栞子ちゃんから離れて傷つけて。
それは結局独り善がりに過ぎないのではないか。
- 178 :名無しで叶える物語:2021/10/24(日) 22:49:41.75 ID:UwaLbPfI.net
- 歩夢「それは…」
栞子「話してくれませんか?」
歩夢「…」
栞子「…私、待ってたんですよ?ずっと」
私は、結局答えが出せず、このまま流されて元の関係に戻れるのなら、それでも良いと考え始めていた。
でも、それで本当に元の関係に戻れるわけではないだろう。
あの日に私が犯した罪は、私が空けてしまったこの一年間は、いつか私たちの関係を歪にゆがめて、取り返しのつかないところまで壊してしまうだろう。
私もそれは分かっていた。
そして、栞子ちゃんはそれが分かった上で私たちの関係を戻すつもりでお見合いを受けて、今日も一日付き合ってくれたのだ。
歩夢「…ごめんなさい。ずっと謝らないといけないと思っていたの、あの日のこと、傷つけたよね」
そして、また逃げようとしている私を呼び止めて、きちんと問い詰めてくれる。
その優しさに、応えなくてはならない。
自分の中で言い訳をして自己完結をするのではなく、ちゃんと答えを出して、伝える。
そして、その上でどうするのかを決めるのは私ではなく栞子ちゃんだ。
- 179 :名無しで叶える物語:2021/10/24(日) 22:50:04.58 ID:UwaLbPfI.net
- 歩夢「でも、栞子ちゃんまでいなくなったら、私…だから返信できなくて…でも、会えなくて、1年も経っちゃって、それで…」
栞子「お見合いを受けてくださったんですね」
歩夢「うん、取引先に薫子先生がいて、たまたま今一人だって話をしたら栞子ちゃんとどうかって…」
栞子「姉さんが…」
歩夢「ごめんね…お見合いの時から、ずっと謝る時間を探してて、でも栞子ちゃんあの時と変わらないから、優しいから、逃げそうになっちゃってた。また、あの頃に戻れるんじゃないかって…」
私の懺悔を聞いた栞子ちゃんはこちらを見ている。
栞子「歩夢さん…私も1年間、結構悩みました」
そう言う栞子ちゃんの表情は優しくて、温かくて。
私は最後の言葉が紡げなくなっていた。
代わりに出た言葉は…。
歩夢「ごめんね…」
栞子「だから、お詫びに仲直りしましょう」
歩夢「栞子ちゃん…。ごめんね。ごめんなさい」
涙が溢れる。
あんなことがあった後に、栞子ちゃんは赦してくれて、私にまだ側にいてほしいと言ってくれていたのだ。
愚かにも私はそれに気付かず、栞子ちゃんを傷付け続けていた。
そして、それすらも赦そうというのだ。
栞子「もう、泣かないでください。その、笑顔の方が歩夢さんには似合っていますから…」
歩夢「…うん!ありがとう」
私はもう、栞子ちゃんを絶対に裏切らない。
何があっても栞子ちゃんを守ろう。そして、側にいよう。
栞子ちゃん自身が幸せをつかむ、その時まで。
- 180 :名無しで叶える物語:2021/10/25(月) 01:12:02.99 ID:Z+iIqCtD.net
- しお……
- 181 :名無しで叶える物語:2021/10/25(月) 03:58:52.57 ID:lQrq7V05.net
- 微妙に拗れてる…
- 182 :名無しで叶える物語:2021/10/25(月) 07:21:05.67 ID:ekMjEchU.net
- しお
- 183 :名無しで叶える物語:2021/10/25(月) 13:46:08.49 ID:PkWUMkgA.net
- どうなる…
- 184 :名無しで叶える物語:2021/10/25(月) 23:54:31.88 ID:2QEgewr7.net
- ᶘイ˶˘⇁˘ ナ⑅|
- 185 :名無しで叶える物語:2021/10/26(火) 04:01:35.45 ID:YWciJ7y3.net
- しおぉ…
- 186 :名無しで叶える物語:2021/10/26(火) 07:18:48.82 ID:r/fXxAyE.net
- どうなるしお
- 187 :名無しで叶える物語:2021/10/26(火) 12:25:33.09 ID:cECtjvdx.net
- しお……しお……
- 188 :名無しで叶える物語:2021/10/26(火) 15:19:37.47 ID:MqDFkyAZ.net
- すいません、本日夜勤のため更新ありません…お待たせしてしまい申し訳ありません
- 189 :名無しで叶える物語:2021/10/26(火) 16:31:59.35 ID:6lpLkgMA.net
- お疲れ様です
無理しないでいいしお
- 190 :名無しで叶える物語:2021/10/26(火) 16:34:18.38 ID:Afr9pLqE.net
- しおしおしてきた
- 191 :名無しで叶える物語:2021/10/26(火) 16:57:31.14 ID:C/Kq/U1x.net
- ゆっくりでいいしお
- 192 :名無しで叶える物語:2021/10/26(火) 19:09:41.16 ID:oCnduow+.net
- 夜勤ファイトしお〜!
- 193 :名無しで叶える物語:2021/10/27(水) 02:32:22.40 ID:MdOU90iK.net
- 期待してます
- 194 :名無しで叶える物語:2021/10/27(水) 07:14:22.74 ID:NrXG1Nj7.net
- しお!
- 195 :名無しで叶える物語:2021/10/27(水) 19:11:07.35 ID:86R84iIY.net
- しおっ
- 196 :名無しで叶える物語:2021/10/27(水) 23:45:49.28 ID:xg95ddVz.net
- しおしお
- 197 :名無しで叶える物語:2021/10/28(木) 06:24:43.71 ID:EAT2PGF/.net
- @cメ*˶ˆ ᴗ ˆ˵リ
- 198 :名無しで叶える物語:2021/10/28(木) 07:12:00.40 ID:0kDdXl+N.net
- しお〜
- 199 :名無しで叶える物語:2021/10/28(木) 20:35:40.30 ID:GjFwBHg8.net
- @cメ*˶ˆ ᴗ ˆ˵リ 三 *˶ˆ ᴗ ˆ˵リ
- 200 :名無しで叶える物語:2021/10/29(金) 00:39:23.68 ID:hl6UBijq.net
- 栞子「ケーキ作りですか、歩夢さんらしいですね」
歩夢「そうかな?」
私と栞子ちゃんはその日、仕事帰りに待ち合わせてご飯に出かけていた。
あれ以降私たちの関係は良好だ。
お互い他にあまり友人はできなかったらしく、私から遊びやお出かけに誘うとほぼ必ずOKをもらえた。
そこで、一緒に遊ばない休日は何をしているかという話になったのだ。
歩夢「でも、作るのは楽しいんだけど、食べてくれる人がいなくって…。あんまり頻繁には作れないんだよね」
栞子「なるほど。確かに焼き菓子ではなかなか小さいものを1つだけとはいかないですしね」
歩夢「そうなの…。この歳になるとあんまり太ると痩せにくいし…。生クリームを使っちゃうと、さらに日持ちしないし…。趣味って言うにはあんまり作れてないかも」
栞子「歩夢さんはそんなに気になさらなくてもスマートですよ。ですが、確かに女性として深刻な問題ではありますね」
歩夢「うーん。あ、そうだ!今度ウチに食べにこない?」
栞子「え?私がですか?」
歩夢「うん!二人でお茶しながら食べたら半分だし、そんなにカロリーもないんじゃないかな?」
栞子「それはどうでしょうか…。ですが、楽しみにしてますね」
歩夢「うん!」
そのまま話はまとまって、次の週末に栞子ちゃんがくることが決まった帰り道。
1人で電車に乗っているとふと思った。
歩夢「あ…。栞子ちゃんがウチにくるの、あの日以来だ…」
忘れもしない、忘れてはいけない、一年前のあの日。
栞子ちゃんは赦してくれたけれど、私は赦しちゃいけないあの事件があった日だ。
私は引っ越す気力もなくて、未だにあの部屋に住んでいるが、こんなことならせめて模様替えくらいはしておけばよかった。
今からでは到底週末には間に合いそうもない。
しまったなぁ…。
とりあえず、当日は寝室の扉は絶対に開けないようにしよう。
あと、あまり触れ合うような距離に近づくのもやめた方がいいだろう。
とにかく、あの日を想起させるようなことを避けて栞子ちゃんのトラウマを刺激しないようにしなくっちゃ。
- 201 :名無しで叶える物語:2021/10/29(金) 00:39:55.34 ID:hl6UBijq.net
- タイマーが鳴り、スポンジをオーブンから取り出す。
生地を冷まして、生クリームを塗り、フルーツをトッピングすればケーキの完成だ。
生クリームをしぼるために袋に移していると、インターホンが鳴る。
カメラを見ると、いつも通りに清楚な服装の栞子ちゃんが立っていた。
返事をして、鍵を開ける。
歩夢「いらっしゃい、栞子ちゃん。丁度今焼きあがったんだ〜」
栞子「お邪魔します。これ、お土産です。ケーキをいただけるということなので、紅茶を」
歩夢「ええ?いいのに、ありがとう。じゃあ、さっそく淹れさせてもらうね」
栞子「あ、でしたら私が淹れます。こう見えて上手いんですよ、紅茶を入れるの」
歩夢「ふふっ、知ってるよ。じゃあ、お願いしようかな」
栞子「任せてください」
ふふ、ちょっとした会話も嬉しいな。
栞子「あと、これ言っていた映画です。お茶をしながら見ようと思って」
歩夢「前に言ってたワンちゃんの?楽しみだね!」
食器棚からティーポットと二人分のカップを取り出して、電気ケトルにお水を入れる。
その間に手洗いを済ませた栞子ちゃんはテーブルにお皿やらの準備をしてくれた。
- 202 :名無しで叶える物語:2021/10/29(金) 00:40:18.77 ID:hl6UBijq.net
- ケーキの出来は上々だと思う。
実はちょっと久しぶりだったので、味見をした時は安心した。
栞子「流石は歩夢さんです!お店を出せる出来ですよ」
歩夢「褒め過ぎだよ〜。でも、ありがとう。栞子ちゃんの紅茶もすっごくおいしい!高かったんじゃないの?」
栞子「値段はそれほどではありませんが、行きつけのお店で甘いものに合うものを選んだので」
歩夢「行きつけの…。流石だね」
私紅茶なんてほとんどスーパーで買ってるよ。
栞子「ご馳走様でした。お皿、どこに置いておけばいいですか?」
歩夢「流しにお願い。後で洗っておくよ」
栞子「そんなわけには。自分の使ったものくらいは洗います」
歩夢「いいから、いいから。それよりも、栞子ちゃんの持って来てくれた映画みよ?ずっと気になってたんだよね」
事件はその後、紅茶を飲みながら映画を見ていた時に起こった。
- 203 :名無しで叶える物語:2021/10/29(金) 00:41:56.38 ID:hl6UBijq.net
- あんなことがあった後だ、私は今日、栞子ちゃんに極力近づかないように心がけていた。
けれど、私の部屋にテレビは一台しかなく、必然にテレビの前でソファーに並んでみることになる。
自分の部屋で、紅茶の香りも手伝ってリラックスしていたのもあっただろう。
何気なく両手を膝のうえから脇に移した。
そしてその手に誰かが触れた感触がした。栞子ちゃん以外にはいまい。
そう気づいた瞬間、私はバッと手を引っ込めてしまった。
栞子ちゃんの方を見ると、ショックを受けた表情で固まっている。
栞子「あ、ち、違うんです!手が、たまたま当たってしまって」
まずい。
栞子ちゃんを傷付けまいと意識しすぎて、つい過剰な反応をとってしまった。
私自身、あれ以来誰かと肌が触れることに敏感になってしまっているのも災いした。
慌てた様子の栞子ちゃん。
その様子はトラウマを刺激されたからというよりは、私の過剰な反応に焦っているようだ。
とにかく取繕わないと。
歩夢「…ごめんね。ちょっとびっくりしちゃった」
栞子「え、う、す、すいません…」
ああ、すっかり委縮しちゃって…。
まるで痴漢の冤罪にかけられたひとみたいな表情をしている。
歩夢「ううん、気にしないで」
そう言って、別に怒ってるわけじゃないから話は終わりですよ、というアピールも込めて画面に視線を戻すけれど、この言い方は逆に気にしている言い方ではないだろうか。
栞子ちゃんも気になったのか横目で私の方をチラチラと見てる。
失敗したなぁ…。
- 204 :名無しで叶える物語:2021/10/29(金) 00:42:34.88 ID:hl6UBijq.net
- その後、映画はハッピーエンドで終わったんだけど、途中からはあんまり話に集中できなかった。
映画の終わった後も、「ワンちゃん、可愛かったね」なんて中身のない感想しか出なかった。
栞子ちゃんも落ち込んだような表情をしているし、ケーキを食べて映画も見られた。
もう今日は解散で良いかもしれない。
歩夢「もう夕方だね」
栞子「そ、そうですね。集まったのもお昼過ぎでしたし、映画もみましたから」
歩夢「暗くなると危ないし、もう今日は解散にしよっか」
栞子「は、はい…」
栞子ちゃんはしょんぼりしたまま荷支度をすませ、玄関に向かう。
この部屋とこの子はとことん相性が悪いようだ。
歩夢「じゃあ、またね。栞子ちゃん」
栞子「はい、今日はごちそうさまでした。えっと、あの」
歩夢「うん?」
栞子「あ!手作りのケーキのお礼と言ってはなんですが、私の方でもおいしいお店をみつけまして、今度一緒にいかがでしょうか!」
歩夢「え?大丈夫だけど…」
栞子「ありがとうございます!では日程はまた連絡しますね」
そういって栞子ちゃんは帰っていった。
なんだかちょっと挙動不審だったけど、やっぱり今日の私の行動にショックを受けてしまったのか。
せっかく次の遊びのお誘いも貰えたことだし、次で挽回することにしよう。
そう思ってテーブルの上に残った空のカップを手に取ろうとしたら、その横に置いたケータイが震えた。
そこに映っていた着信先は…。
歩夢「もしもし、あなた?珍しいね、そっちからかけてくるなんて。今?大丈夫…ええ!?」
- 205 :名無しで叶える物語:2021/10/29(金) 00:59:05.17 ID:oj+/pm+x.net
- すれ違いが悲しいしお…
- 206 :名無しで叶える物語:2021/10/29(金) 01:05:02.64 ID:creS0ZbL.net
- しお〜
- 207 :名無しで叶える物語:2021/10/29(金) 01:38:08.76 ID:oY8h1VEn.net
- しぉ…しおぉ……
- 208 :名無しで叶える物語:2021/10/29(金) 08:51:47.62 ID:C5R6FT3t.net
- ᶘイ•̥ _ •̥ナ⑅|
- 209 :名無しで叶える物語:2021/10/29(金) 22:57:31.71 ID:C5R6FT3t.net
- どきどき
- 210 :名無しで叶える物語:2021/10/30(土) 07:59:50.88 ID:kHWWx7LO.net
- しお
- 211 :名無しで叶える物語:2021/10/30(土) 21:53:20.76 ID:+OcdYMgF.net
- ぽむ?
- 212 :名無しで叶える物語:2021/10/31(日) 04:44:33.64 ID:SVt+PXkq.net
- しぉ
- 213 :名無しで叶える物語:2021/10/31(日) 09:19:53.24 ID:dQRh8JPa.net
- しお…
- 214 :名無しで叶える物語:2021/10/31(日) 14:12:38.46 ID:UgETN5p3.net
- しぉん
- 215 :名無しで叶える物語:2021/10/31(日) 21:04:20.17 ID:SVt+PXkq.net
- @cメ*˶˘ ᴗ ˘˵リ
- 216 :名無しで叶える物語:2021/10/31(日) 22:03:13.63 ID:PN0AOWRC.net
- お店のドアを開く。
まだ週の真ん中の平日だったためか、それとも普通に人気のない店なのか、店内のお客さんはまちまちといった様子だった。
あなた「あ!おーい、歩夢ちゃん!こっちこっち!」
店員さんに聞くまでもなく、大きな声で呼ばれた席に向かう。
歩夢「お待たせ。ごめんね、今日は早く抜けられるように調整してたんだけど」
あなた「全然待ってないよ!お仕事お疲れ様!適当に料理は頼んでおいたから、とりあえず飲み物選んでよ」
三年以上ぶりに会った幼馴染は、髪の色以外全く変わっていないように見えた。
しかし、その薬指には銀の指輪が輝いていて、それが経ってしまった時間を意識させた。
見ていたことを悟られないよう視線を外して席に着き、ジンジャーエールを注文する。
- 217 :名無しで叶える物語:2021/10/31(日) 22:03:51.19 ID:PN0AOWRC.net
- 歩夢「それにしても、久ぶりに会う幼馴染との再会の場所が居酒屋って、どうなの?」
あなた「あはは、私あんまりお店とか知らないしさ。それに、居酒屋なら日本食もたくさんあるでしょ?向こうじゃ、あくまで再現になっちゃうからね」
歩夢「帰ってきてまず和食を探すあたり、もうすっかり向こうの人だね」
もうちょっとギクシャクするかと思っていたけど、自然な会話ができている。
頻繁な国際電話のおかげかな?
- 218 :名無しで叶える物語:2021/10/31(日) 22:04:34.79 ID:PN0AOWRC.net
- 料理が並んで乾杯をした後、少しの間飲み食いをして場が出来上がってくる。
まぁ、いくら飲んでも私は素面なんだけど。
歩夢「それにしても、すごい急だね。これまで頑なに帰ってこなかったのに」
あなた「まぁ、ちょっとごちゃごちゃしてた」
歩夢「じゃあ、今は落ち着いたってこと?」
あなた「まぁ、たぶんね?」
たぶん?
まぁ、帰ってきたこと自体は良いことだし、別にいいんだけど。
あなた「それよりさ、歩夢ちゃんの方はどうなの?」
歩夢「私?なんのこと?」
あなた「とぼけないでよ。いつも電話では話してくれるじゃんか。栞子ちゃんだよ」
歩夢「栞子ちゃん?仲直りできたって言ったよね?」
あなた「うん。その後は?デートも何回かしたんでしょ?」
歩夢「デートって…。別に遊びに行ってるだけだよ」
あなた「それをデートって言うんだよ。具体的に聞かせてよ」
具体的って言われても、特別なことは何もしていない。
ていうか、何か誤解してるよね。
歩夢「べつに、一緒にご飯を食べにいったり、買い物に行ったり、普通だよ。ていうか、栞子ちゃんとは本当にただの友達だからね?」
あなた「え〜?”ただの”?」
歩夢「…まぁ、一番仲良しではあるかな」
あなた「あはは、そういうことにしておいてあげようかな」
歩夢「もう!」
この子は私を振ったことをもう忘れてしまったのだろうか。
普通あんなことがあった相手にこんな話題を振る?
もう酔っぱらってるのかな。
- 219 :名無しで叶える物語:2021/10/31(日) 22:05:16.40 ID:PN0AOWRC.net
- あなた「それにしても栞子ちゃんかぁ。会いたいなぁ、他の皆にも」
歩夢「皆、あなたが帰ってきたなんて聞いたらすぐ集まってくれるよ」
あなた「そうかな?皆大人になったし、予定もあるかも」
歩夢「じゃあ、とりあえず連絡いれてみたら?LINEは消してないでしょ?」
あなた「…うん。そうしてみるよ」
この子にしてはなかなか煮え切らない。
3年という月日が友情を薄めてしまったのではないかということを、この子なりに不安に思っているのだろう。
でも、同好会のメンバーと会った時にこの子の話題が出ずに終わることがないのを私は知っている。
メッセージを入れた後LINEを見せてもらうと、すぐに既読がたくさんついて、返事も返ってきた。
あなた「わ!わ!すごい!みんなすっごいメッセージくれてるよ!」
歩夢「ふふっ。皆嬉しいんだよ。返事してあげて」
あなた「うん!あ、愛ちゃんがパーティーしてくれるって!」
私もスマホを見ると、参加か不参加かを答えるアンケートが届いていた。
流石の行動力だ。
- 220 :名無しで叶える物語:2021/10/31(日) 22:06:12.99 ID:PN0AOWRC.net
- 歩夢「よかったね!私も皆で集まるのは久しぶりだし、楽しみだな〜」
あなた「私が向こうにいる間は集まらなかったの?」
歩夢「みんな社会人だしね。何人かとは未だに会うけど、人数集まってっていうのは難しいんだよ」
あなた「そっかぁ…」
大学に入ってもみんなとは仲の良い友人関係を続けられていたけれど、海外に行っちゃた何人かと、芸能界に行ったせつ菜ちゃんとかすみちゃん、ランジュちゃんとは特にめっきりだ。
あなた「じゃあ、やっぱり栞子ちゃんは特別なんだね〜」
歩夢「え、なんで話がもどってるの」
あなた「だって、そんなに忙しいのに毎週会って遊ぶなんて…」
歩夢「もうっ!知らない!」
あなた「あ!ごめんごめん!歩夢ちゃ〜ん」
私の恋心は叶わなかったけれど、私たちは幼馴染だ。
久しぶりに会っても、どちらかが結婚しても、それは変わらない。
ずいぶんからかわれたけど、それがよく分かった楽しい時間だった。
ちなみに、次の日栞子ちゃんから連絡がくるまで日程のブッキングに気付かなかった私は、心の中で
謝りつつ、あの子の帰還を今知ったかのように返信を返した。
- 221 :名無しで叶える物語:2021/10/31(日) 22:27:04.73 ID:YbmfEACw.net
- しお!
- 222 :名無しで叶える物語:2021/11/01(月) 01:21:31.46 ID:rtp3lSye.net
- しお!しおお!!
- 223 :名無しで叶える物語:2021/11/01(月) 06:41:56.78 ID:R1Ml+7LL.net
- きたしお
- 224 :名無しで叶える物語:2021/11/01(月) 19:54:15.83 ID:uKg2myL4.net
- しおぉ…
- 225 :名無しで叶える物語:2021/11/02(火) 05:13:46.51 ID:vrJiWMn5.net
- 栞
- 226 :名無しで叶える物語:2021/11/02(火) 07:22:49.73 ID:poxHRHbi.net
- 子
- 227 :名無しで叶える物語:2021/11/02(火) 15:04:04.13 ID:0pBIJdCK.net
- 🔖
- 228 :名無しで叶える物語:2021/11/03(水) 00:55:18.80 ID:lUL+u61T.net
- しお
- 229 :名無しで叶える物語:2021/11/03(水) 12:28:27.88 ID:0qrxw5fa.net
- しお?
- 230 :名無しで叶える物語:2021/11/03(水) 21:25:30.23 ID:jYwkXIXC.net
- あの子の帰還祝いの会は幹事から何まですべて愛ちゃんがやってくれた。
お店での席はみんなあの子の近くに座りたがったから、二人だけで会った私は遠慮して一番離れたところに座る。
といっても、全員で8人だからそこまで離れてはいないけど。
あの子と友人たちが絡んでいるのを眺めるのも本当に久しぶりだ。。
昔は嫉妬してしまっていたけれど、今となっては懐かしい光景だ。
あの子は向こうに家まで買ったというし、たまには帰ってきたとしても、こんな光景はこれから何度みられるだろう。
かすみ「あれ、歩夢せんぱ〜い、それノンアルコールじゃないですか?」
そんな光景を肴にして隅でノンアルコールドリンクをちびちびやっていると、かすみちゃんに絡まれる。
そういえば、この子は昔から一人でいる人に自分から声をかけるタイプだった。
歩夢「え?うん。ちょっとお酒で失敗しちゃって…。それ以来飲まないようにしてるんだ」
元々あまり飲む方ではないし、困ることもあまりない。
今時職場の飲み会でアルコールを飲まないからといって何か言われることもないのだ。
- 231 :名無しで叶える物語:2021/11/03(水) 21:27:06.53 ID:jYwkXIXC.net
- かすみ「へぇ〜。歩夢先輩にしては珍しいですね。一体何をやらかしたんですか?」
歩夢「あー、ちょっとここじゃ言えない失敗かな?」
かすみ「えー、お酒の席ですよ〜?あ、しお子なら知ってるんじゃないの?」
あ、そういう認識なんだ。
後輩ちゃんたちで集まって遊んだりするのかな?
栞子「あはは…。確かにここではちょっと…」
かすみ「一体何やらかしたんですかぁ!?」
かすみちゃんに詰められるけれど、笑い話にできることとできないことがある。
それにしても、栞子ちゃんはずっと私の隣にいるけれどあの子のところには行かないのだろうか。
まぁ、あの子の方へ行ったら?なんて声をかけるのも要らないおせっかいか。
愛「それにしても、かすかすならこの子に再会できた瞬間に抱き着くと思ってたけど、今日はしなかったね」
あの子を囲っていた愛ちゃんと璃奈ちゃんがこっちにくる。
席替えのタイミングかな?
- 232 :名無しで叶える物語:2021/11/03(水) 21:27:37.47 ID:jYwkXIXC.net
- かすみ「かすみんです!ってこのやりとりも懐かしいですね…。流石に奥さんのいる人に抱き着くのはちょっと…」
歩夢「あはは、かすみちゃんも大人になったんだねぇ」
かすみ「そうですよ〜。だ・か・ら、歩夢先輩に抱き着いちゃいま〜す!」
かすみちゃんが突っ込んできたので、つい後ろに反射的に身を引いてよけてしまう。
かすみ「むぐっ、何で避けるんですか〜!」
歩夢「お酒臭かったから…」
昔は受け止めていたから不自然だったかと思って回りを見ると、みんな笑っていた。
あなた「もう、そんなの気にしなくていいのに。ほら、おいでかすみちゃん」
かすみ「あ〜ん!せんぱい好き好き〜!」
かすみちゃんはパッと起き上がると、あの子に抱き着きに行った。
代わりに、かすみちゃんの席に愛ちゃんが腰を下ろす。
- 233 :名無しで叶える物語:2021/11/03(水) 21:28:02.13 ID:jYwkXIXC.net
- 愛「歩夢は行かないの?」
歩夢「え?うん。私はいいかな」
愛「へ〜、昔の歩夢からは想像もつかない発言だね。あんなにぶちょーにべったりだったのに」
栞子「あ、歩夢さんにもそういう日はありますよ!ね?」
別にそんなんじゃないんだけど、慌てて事情を知ってる栞子ちゃんがフォローしてくれる。
まぁでも、みんなに譲ろうと思ってたけど、あんまり話さないのも不自然かも。
歩夢「そういうわけじゃないんだけど…。じゃあかすみちゃんの次に行こうかな」
愛「そうした方がいいって!せっかくなんだからさ」
そこでふとこの飲み会が開かれるきっかけが、あの子と栞子ちゃんの話をしていたからだったのを思いだした。
歩夢「栞子ちゃんも一緒に行こ?」
栞子「え…いえ。私はまた後でいきます。お二人の邪魔になってもよくないですし」
歩夢「邪魔だなんて…」
愛「まぁまぁ、じゃあとりあえずしおってぃーは愛さんと飲もうよ!」
どうしたんだろう、栞子ちゃん。
あの子にも昔はあんなに懐いてたのに。
それからあの子の隣が空いても、栞子ちゃんは頑なだった。
後で一応あの子に挨拶には行っていたけれど、どうして私と一緒に行くのを拒んだんだろう。
やっぱり、あの事件が後を引いているのかな。
…私のせいであの子と栞子ちゃんとの仲にまで問題が生じていたら、どうしよう。
- 234 :名無しで叶える物語:2021/11/04(木) 01:08:00.35 ID:cIUzIdSx.net
- ぽむぅ…
- 235 :名無しで叶える物語:2021/11/04(木) 02:52:19.21 ID:pA9+0pSZ.net
- ぼむ。。。、
- 236 :名無しで叶える物語:2021/11/04(木) 07:23:08.39 ID:1ffsju5M.net
- ぽむ
- 237 :名無しで叶える物語:2021/11/04(木) 19:59:38.16 ID:7ePFmLXo.net
- しお
- 238 :名無しで叶える物語:2021/11/04(木) 22:40:23.84 ID:0lSbOxzN.net
- @cメ*´•̥ _ •̥ リ
- 239 :名無しで叶える物語:2021/11/05(金) 07:16:35.31 ID:fc2rBkQF.net
- しお
- 240 :名無しで叶える物語:2021/11/05(金) 19:22:41.07 ID:P962LOtO.net
- しお!
- 241 :名無しで叶える物語:2021/11/06(土) 09:20:26.11 ID:7kYsVEo2.net
- しお〜
- 242 :名無しで叶える物語:2021/11/06(土) 12:30:25.72 ID:nsOJsi9r.net
- お待たせしてしまいすいません。
明日の夕方に更新予定ですが、仕事が立て込んでおり、この更新ペースが続いてしまうかと思われます。
- 243 :名無しで叶える物語:2021/11/06(土) 12:46:21.61 ID:1OKYQ/Ku.net
- お疲れ
ゆっくり待ってるで
- 244 :名無しで叶える物語:2021/11/06(土) 13:37:36.20 ID:vee5GcME.net
- 気にしないで
- 245 :名無しで叶える物語:2021/11/06(土) 22:46:19.07 ID:ASV7sttD.net
- 期待しお
- 246 :名無しで叶える物語:2021/11/07(日) 09:16:20.86 ID:0KtK60wj.net
- 楽しみですー!!
- 247 :名無しで叶える物語:2021/11/07(日) 21:16:48.56 ID:SuVS8LOC.net
- しお
- 248 :遅くなりました:2021/11/07(日) 22:25:04.31 ID:qXnsVjsj.net
- その後盛り上がったままで会は終わり、かすみちゃんとしずくちゃん、愛ちゃんと璃奈ちゃんとお店の前で別れた。
残った4人で街を歩く。
せつ菜「お三方は電車ですよね」
あなた「うん。でも私以外は結構近いから、途中から一人だよ…」
せつ菜「私も電車でご一緒したかったのですが、マネージャーがタクシーを呼んでしまったようでして…」
歩夢「すごいなぁ。芸能人さんだもんね」
栞子「新曲が出るたびにテレビでお見掛けします」
せつ菜ちゃんは昔学園でそうしていたように三つ編み眼鏡で街を歩いている。
その上マスクをしているからか街で声をかけられることはないが、CDショップに行けば大抵コーナーが設けられている有名人だ。
私がずっと立ち止まっている間、せつ菜ちゃんたちはずっと頑張っていたのだ。
あなた「私も向こうでもせつ菜ちゃんとかすみちゃんの活躍はみてたよ!すごいよね、今度はおっきい会場でやるんでしょ?」
せつ菜「はい!皆さんなら関係者席のチケットをいつでもお渡しするのでおっしゃってくださいね!」
などと話しているうちに、もう駅前に着いた。
せつ菜「では、失礼します。歩夢さん、また今度オフの日を送りますね」
歩夢「うん。日程調整は私たちがするから、せつ菜ちゃんは気にしないでね」
せつ菜「はい!ありがとうございます!」
タクシーから手を振るせつ菜ちゃんの笑顔は、相変わらず眩しかった。
- 249 :名無しで叶える物語:2021/11/07(日) 22:26:21.33 ID:qXnsVjsj.net
- 三人で並んでつり革に掴まる。
歩夢「最寄り駅は栞子ちゃんが一番近いね。あなたは今日はどうするの?」
あなた「日本にいる間は実家に帰るよ。ほかに家もないしね」
歩夢「そっか。なら一番遠いね。あ、栞子ちゃん次の駅だよ」
栞子「あ、今日は私もこの後少し予定がありまして、まだ降りないんですよ」
あなた「こんな遅くに?」
栞子「…できるだけ早い方がいい用事を思い出しまして」
歩夢「?」
用事って何だろう。
もともと私と出かける予定だったから、何かしら買いたいものがあったのかな。
それから少しの間電車に揺られると、私の最寄駅だ。
私とこの子に挟まれて栞子ちゃんはなんだか黙りがち。
やっぱりなんだか気まずそうに見える。
歩夢「じゃあ、またね。あなた、栞子ちゃん」
栞子「はい、また連絡しますね」
あなた「歩夢もたまには実家に帰りなよ?おばさん、全然帰ってこないって怒ってたよ」
…すっかり忘れていた。
栞子ちゃんとの一件が片付いたら帰ろうと思っていたんだった。
歩夢「…うん。今度帰るって言っておいて」
あなた「わかったよ。でも、自分でも連絡しなよ?」
曖昧に頷いて、電車を降りる。
降りてすぐに振り返ると、何やら二人で話しているのが窓から見えた。
私がいた時は全然会話なんてなかったのにな。
…ちょっと気になる。
そういえば、昔あの子に何日もかまって貰えなかったときに、後をつけたことがあった。
いま冷静になればストーカーそのものみたいな行動に反省しているけれど、当時は当然の権利のように思っていた。
そういうところがダメだったのかな…。
いや、もう考えるのはよそう。
あの子とは新しい関係を築いていかないといけないんだもん。
それにしても実家か…。
歩夢「お母さんにはお見合いにも無理言ってきてもらったし、流石に帰らないとね」
- 250 :名無しで叶える物語:2021/11/07(日) 22:29:07.63 ID:qXnsVjsj.net
- 翌朝、スマホをみると通知が届いていた。
昨日の内に母さんに送った、週末に顔を出すというLINEの返事と。
歩夢「あれ、栞子ちゃんだ」
送信時間は昨日の23時頃。
『大切なお話があります。来週お時間はありますか?』
大事な、お話…。
昨日会ったばかりなのに、わざわざ約束を取り付けるなんて、一体何だろう。
よほど大事な話なんだろうか。
頭にあの子からビデオメッセージを受け取った時のことが浮かぶ。
…何の話かはまだ分からないけれど、直接会って話したいことがあるというのだ。
気を引き締めて行こう。
『分かったよ。
時間はいつでも大丈夫!』
そして、覚悟をしよう。
今度は栞子ちゃんかもしれない。
思えば昨日あの子とわざわざ二人きりで話していたのは、そういうことなのかもしれない。
そういう方面ではあの子は先輩にあたる訳だし。
そう思うと、胸が痛んだ気がした。
この痛みには覚えがある。
でも気のせいだ。栞子ちゃんはそんなんじゃない。
それに、そんな風に想う資格は私にはないんだ。
今度は笑って送りだしてあげないと。
他ならぬ、あの子を傷つけた私自身だから。
独善的な感情で誰かを、大切な人を振り回すのはもうたくさんだ。
- 251 :名無しで叶える物語:2021/11/07(日) 22:30:15.78 ID:R3mk8IAw.net
- こらぽむ!
- 252 :名無しで叶える物語:2021/11/07(日) 22:59:19.40 ID:k90KVr/C.net
- ぽむさぁ……
- 253 :名無しで叶える物語:2021/11/07(日) 23:56:45.04 ID:n8F9IvWy.net
- しぉ……
- 254 :名無しで叶える物語:2021/11/08(月) 07:04:51.42 ID:lo2n9aAQ.net
- ぽむぅ
- 255 :名無しで叶える物語:2021/11/08(月) 12:38:08.22 ID:Itd3mXyA.net
- ぽむェ……
- 256 :名無しで叶える物語:2021/11/08(月) 21:33:10.59 ID:41e4YN4H.net
- しおっ
- 257 :名無しで叶える物語:2021/11/09(火) 02:39:48.85 ID:Bdz4BnSf.net
- あゅむぅ
- 258 :名無しで叶える物語:2021/11/09(火) 07:17:31.14 ID:AE/S4O6H.net
- @cメ*˶ˆ ᴗ ˆ˵リ
- 259 :名無しで叶える物語:2021/11/09(火) 07:25:24.48 ID:8Q/vHCze.net
- 何わろとんねん
- 260 :名無しで叶える物語:2021/11/09(火) 18:40:43.44 ID:nEZmHyUl.net
- @@cメ*˶◉ _ ◉˵リ
- 261 :名無しで叶える物語:2021/11/10(水) 02:59:58.93 ID:0o8ZKo9e.net
- しお
- 262 :名無しで叶える物語:2021/11/10(水) 07:17:23.72 ID:PkCkG4vi.net
- しおしお
- 263 :名無しで叶える物語:2021/11/10(水) 18:44:42.53 ID:4fPGotPW.net
- しおっ
- 264 :名無しで叶える物語:2021/11/11(木) 03:46:40.84 ID:lSiSOGdh.net
- しお?
- 265 :名無しで叶える物語:2021/11/11(木) 07:20:36.78 ID:qDoYhjOs.net
- 支援
- 266 :名無しで叶える物語:2021/11/11(木) 16:29:45.61 ID:Fl+OGL+r.net
- すいません、明日更新です
- 267 :名無しで叶える物語:2021/11/11(木) 16:43:28.37 ID:IYtuwogY.net
- 待ってます
- 268 :名無しで叶える物語:2021/11/11(木) 18:27:49.12 ID:AUH5T3jP.net
- しお!b
- 269 :名無しで叶える物語:2021/11/11(木) 21:46:12.52 ID:ZRL7qEc/.net
- 待つしお
楽しみしお!
- 270 :名無しで叶える物語:2021/11/12(金) 06:26:59.01 ID:bQ3nKnb9.net
- しお〜
- 271 :名無しで叶える物語:2021/11/12(金) 17:17:12.34 ID:VxfEK+JW.net
- ぽむむむむ
- 272 :名無しで叶える物語:2021/11/12(金) 22:31:08.38 ID:CkZjvhy1.net
- 歩夢「ふう…」
お風呂あがりに窓辺で涼む。
実家には学生の頃に過ごした部屋がそのまま残っていた。
お母さんからはお見合いのその後について聞かれたけれど、その後も何回か一緒に出かけていると伝えると特にそれ以上は追求されなかった。
「そんなに薄着じゃ、風邪ひくよ?」
不意に声をかけられて驚く。
歩夢「あなた…。びっくりしたよ」
あなた「あはは、ごめんごめん。たまたま窓開けたら、歩夢ちゃんが見えてさ。なんか光景が懐かしくって声かけちゃった」
歩夢「…そうだね」
確かに懐かしい。
私たちはいつも、寝る前にここで顔だけ乗り出して話をしていた。
- 273 :名無しで叶える物語:2021/11/12(金) 22:31:34.77 ID:CkZjvhy1.net
- あなた「戻ってきてたんなら、言ってくれたらよかったのに」
歩夢「週末だけの予定だし、あなたも忙しいと思ったから…」
あなた「もう。気にしなくていいってば」
何年振りかに帰ってきたというのに、そういう訳にもいくまい。
あなた「でもじゃあ、今日明日はこっちに泊まるんだ」
歩夢「そうだね。ただ、予定があるから夜まではいないけど」
あなた「へぇ、おでかけ?」
歩夢「うん。何か栞子ちゃんが大事な話があるみたいで」
そう言うと、この子は意味ありげにニヤリとした。
歩夢「…何?」
あなた「別に?なんでもないよ?」
そういえば、電車で別れたあと二人で話してたっけ。
歩夢「あなた、知ってるんじゃないの?」
あなた「まぁ、予想できるくらいだけどね。もちろん内容は言えないよ」
歩夢「予想でも?」
あなた「うん。…ただ、栞子ちゃんは真剣だと思うから、歩夢ちゃんもちゃんと聞いてあげてほしい」
そう言うこの子は、昔スクールアイドルを、私たちをサポートしてくれていた時の目をしていた。
私たちのことを真剣に考えてくれている時に目だ。
歩夢「…分かったよ」
あなた「うん!じゃあ、そろそろ本当に冷えそうだから、部屋に戻ろっか」
歩夢「うん、おやすみなさい」
部屋に戻って布団に潜り込んで、明日のことを考える。
あの子は話の内容を知ってるみたいだったけど、教えてくれなかった。
真剣な話で、私じゃなくってあの子に相談する話。
まさか…。
まさかね。
- 274 :名無しで叶える物語:2021/11/12(金) 23:30:51.10 ID:qGkc67GM.net
- 続きはよ
めっちゃ好き
- 275 :名無しで叶える物語:2021/11/13(土) 00:31:52.15 ID:zc1z+IPj.net
- しお!
- 276 :名無しで叶える物語:2021/11/13(土) 03:15:29.93 ID:NJcSL68F.net
- そうよ
そのまさかしお
- 277 :名無しで叶える物語:2021/11/13(土) 04:47:17.25 ID:LFNytLWN.net
- ドキドキする
- 278 :名無しで叶える物語:2021/11/13(土) 14:53:34.38 ID:jvf4pnvT.net
- いつもの待ち合わせ場所には、やっぱり先に栞子ちゃんが着いていた。
いつも栞子ちゃんが私を見つけると、それまでキリっとしていた顔がパッと明るくなる。
しっかりものの栞子ちゃんに対してこんな風に思うのは失礼かもしれないけど、ちょっとワンちゃんみたいで可愛いんだ。
けれど、今日こちらをみつけた栞子ちゃんはどこかキュッと引き締めた顔をした。
大事な話とやらはどれほどの内容なのだろうか。
昨日のことが頭を過ぎる。
歩夢「お待たせ、栞子ちゃん。いつも早いね」
栞子「いえ、私も来たところですので」
歩夢「そっか。それで、大事な話って?」
栞子「ええと、それは後でも大丈夫ですか?今日のデートの最後にでも」
歩夢「デート?」
そんな約束だっけ?
栞子「あ、えっと、すいません!このあとご予定がありましたか?」
疑問をそのまま口にした私に、慌てた様子の栞子ちゃん。
まぁ、するのが重たい話だとしたらクッションも必要なのだろう。
歩夢「ううん、大丈夫。ふふ、わかったよ。デートだね」
私がそう言うとほっとした顔をした。
どうやらいつも通り予定を組んできてくれたみたいだし、他に予定もいれていないから従おう。
栞子「はい、ありがとうございます。では、行きましょう」
歩夢「うん」
二人で並んで歩く。
向かいから吹く風が少し冷たかった。
- 279 :名無しで叶える物語:2021/11/13(土) 14:54:03.63 ID:jvf4pnvT.net
- ランチ、ショッピングを経て、二人で遊園地に来た。
ここまではいつものお出かけと同じような流れだったけれど、大切な話はここでするのかな?
なんて身構えてたけど、私たちは普通に久しぶりの遊園地を楽しんだ。
最初はキリっとしてた栞子ちゃんも、アトラクションでは楽しそうにしている。
やがて周囲は段々と薄暗くなってきて、アトラクションから聞こえる歓声や悲鳴もボリュームダウンしてきた。
歩夢「そろそろ、帰る?」
もしかしたら、大切な話とやらをする決心がつかなかったのかもしれない。
引き伸ばしてもいい話というのなら、内容を知らない以上追求はしない。
それに、もし昨日思った通りの内容だったら、私は…。
栞子「いえ、最後に乗りたいアトラクションがありまして」
歩夢「え?うん、どれ?」
栞子「はい、あれに乗りませんか?」
栞子ちゃんが指さしたのは入場の時から見えていた巨大な観覧車。
この遊園地に来るのは初めてだったけど、おそらく目玉のアトラクションの一つだろう。
歩夢「観覧車?」
絶叫系のアトラクションの営業が終わるアナウンスと同時に明かりが落ちて、代わりにイルミネーションが点灯する。
ワッと歓声が上がったあと、周囲は先ほどまでと同じ空間とは思えないほどに周囲が静かになった。
その上籠の中に入れば、二人きりになるのにぴったりだ。
歩夢「うん、いいよ」
栞子ちゃんは最初からここで話をしようとしていたんだと分かった。
- 280 :名無しで叶える物語:2021/11/13(土) 14:54:27.98 ID:jvf4pnvT.net
- 歩夢「観覧車なんて久しぶりだよ」
栞子「私もです」
地面が離れ、景色が昇っていく。
ゆっくり上がっていくので浮遊感はあまりない。
歩夢「ふふ、ねぇ覚えてる?みんなで遊園地に来た時、栞子ちゃんすっごくはしゃいで」
栞子「そ、それは、本当に初めてだったからで…」
歩夢「でも、あの時の栞子ちゃん、可愛かったな〜。今は可愛いっていうより、美人さんだもんね」
今日の栞子ちゃんの服装はなんだかいつもよりきっちりしていて、上品な顔立ちを際立たせている。
まぁ、いつもいいとこのお嬢様然とした恰好をしているし、なんとなくかもしれないけれど。
栞子「歩夢さんは、あの頃と変わりません。いつまでも可愛らしくて、お優しい」
歩夢「も〜何言ってるの。私もう26だよ?」
流石に30歳が見えてくると、可愛いという言葉が恥ずかしい。
栞子「いいえ、変わりませんよ。あの頃からずっと…」
栞子ちゃんはそこで言葉を区切った。
歩夢「栞子ちゃん?」
タイミングを計るようにこちらを見つめている。
そして、籠が少し揺れた。
外を見ると、ちょうど景色が頂上にきていた。
栞子「歩夢さん、大事な話があります」
歩夢「!…うん」
栞子ちゃんの言葉で、向き直る。
時がきたのだろう。
栞子ちゃんにとって、そして恐らくは私にとっても大事な時が。
- 281 :名無しで叶える物語:2021/11/13(土) 14:55:20.65 ID:jvf4pnvT.net
- 栞子「初めて会った頃、私は同好会の活動を、スクールアイドルを無駄なものだと思っていました」
歩夢「うん、そうだったね」
栞子「ですが、皆さんのおかげで私は変われました」
初めて会った頃の栞子ちゃんは、今と同じようにとっても真面目さんで、今よりもずっと頑固さんだった。
スクールアイドルに悪印象を抱いていた栞子ちゃんと私たちは対立してさえいたのに、あの子がその間に入ってくれたおかげで、私たちは仲良しになれたんだよね。
栞子「あの出来事がなければ、姉とも今のようには接することができなかったでしょうし、なにより自分の考えを他人に押し付けるだけの人間として今も過ごしていたでしょう。皆さんには、特にあの方と歩夢さんには今でも感謝してもしきれません」
歩夢「ううん、私たちも栞子ちゃんにいままでたくさん助けてもらってきたもん。お互い様だよ」
栞子「少しでも恩を返せているならいいのですが。…話が逸れましたね。あの頃の私は歩夢さんのことを姉のように思っていました」
私も初めは後輩として、とっても不器用で、頑張り屋さんな栞子ちゃんが心配で、ついつい余計なお世話をしていた。
でも、学年が上がって卒業して、あの子がいなくなって、みんなとも中々会えなくなって。
いつしか、私がくじけそうな時に一番最初に助けてくれるのは、いつも栞子ちゃんになっていった。
栞子「ですが、いつしかその感情は変わってゆきました。優しいところ。可愛らしいところ。でも、しっかりと強い芯をもっているところ。そして…一途なところ」
向かいに座る栞子ちゃんが距離をつめてきた。
その顔を改めて見つめる。
とても綺麗な、大人になるのをずっと横で見てきた後輩の…大切な人の顔だ。
栞子「学生の頃からずっと…私は歩夢さんに恋をしているんです」
これまでの流れで、さすがに私も栞子ちゃんの言っていた大切な話が何だったのか分かっていた。
栞子ちゃんは、告白をするために呼び出したんだ。
これまで栞子ちゃんに言われてきた言葉が本気だったんだとようやく気付く。
あの子のこと、もう鈍感だなんて言えないなぁ。
- 282 :名無しで叶える物語:2021/11/13(土) 14:55:49.73 ID:jvf4pnvT.net
- 栞子「歩夢さん…あなたのことがずっと好きでした。私と、付き合ってください!」
面と向かってそう言われて、私は…。
ドキドキした。
栞子ちゃんと付き合った自分を想像する。
栞子ちゃんはマメだし、凄い気配り上手で、一緒にいると楽しい。
それに、とってもかわいくって、美人で…。
きっと幸せになれる。
そう思う。
だけど…。
栞子「…あの、歩夢さん?」
歩夢「…栞子ちゃんの気持ち、とっても嬉しいよ」
栞子「でしたら!」
歩夢「でも」
幸せになれるのはきっと、私だけだ。
歩夢「私は栞子ちゃんとは付き合えません。ごめんなさい」
だから、私は栞子ちゃんを振った。
栞子「…。そう、ですか…。すいませんでした。私なんかが、歩夢さんに」
栞子ちゃんの顔が、泣くのを我慢するようにゆがむ。
こんな顔をしてほしくない。
栞子ちゃんには、笑っていてほしい。
なんて、どの口が言えるものか。
私は最近、この子を悲しませてばかりだ。
歩夢「そんなこと、言わないで!栞子ちゃんにはもっとちゃんと」
ちゃんとした相手がいるはずだ。
私なんかよりも、もっと相応しい人が。
でも、それを言える立場でも、状況でもない。
栞子「慰めはよしてください!」
歩夢「……ごめんね、本当に」
私は、ただ謝るしかなかった。
- 283 :名無しで叶える物語:2021/11/13(土) 14:56:16.25 ID:jvf4pnvT.net
- ガチャンと音がしてドアが開いた。
丁度1周が終わったのだ。
観覧車は回り続けているから、腰は重たいけれど早く降りないといけない。
歩夢「降りよっか」
栞子「…はい」
促すと、栞子ちゃんは従ってくれた。
退場口を歩くと、観覧車の待機列が隣に見える。
見事にカップルばっかりが楽しそうに並んでいて、なんとなくそちら側に立って栞子ちゃんの視界から隠した。
栞子「あの、今日はもう解散でいいでしょうか」
栞子ちゃんは俯いたまま、小さな声でそう言った。
歩夢「…うん。そうしよっか」
反対する理由はない。
栞子「それでは」
とぼとぼという擬音が聞こえるかのような足取りで、遊園地の出口の方へ歩いていく栞子ちゃん。
歩夢「…栞子ちゃん!」
その背中が見ていられなくって、つい後ろから呼び止めた。
こちらを振り向かず、ただ足だけを止めてくれる。
歩夢「…ううん。なんでもない。気を付けて帰ってね」
でも、なんていえばいいか思いつかなくって。
栞子「…歩夢さんも。お気をつけて」
絞りだすようにそう返してくれた栞子ちゃんをただ見送った。
…もう、今度こそ本当に二度と会えないかもしれないと思いながら。
- 284 :名無しで叶える物語:2021/11/13(土) 18:16:38.13 ID:/PRHIkWg.net
- とうとうここまで来たか
- 285 :名無しで叶える物語:2021/11/13(土) 19:49:03.08 ID:BWhQwc5A.net
- しおぉ……
- 286 :名無しで叶える物語:2021/11/13(土) 21:36:34.52 ID:FSxSzrEv.net
- 頼むぞぉ…
- 287 :名無しで叶える物語:2021/11/14(日) 09:05:50.05 ID:N5mGc+Va.net
- しぉ
- 288 :名無しで叶える物語:2021/11/14(日) 16:10:25.71 ID:ri1aCY3d.net
- 泣いてる
- 289 :名無しで叶える物語:2021/11/15(月) 00:55:21.57 ID:JUgYEeY1.net
- ぽむぅ…
- 290 :名無しで叶える物語:2021/11/15(月) 06:27:29.58 ID:iUKfwUhe.net
- しお〜
- 291 :名無しで叶える物語:2021/11/15(月) 17:34:38.75 ID:zXATb077.net
- 二人はどうなるしお…
- 292 :名無しで叶える物語:2021/11/16(火) 03:15:38.99 ID:ImnfuBws.net
- しおしお…
- 293 :名無しで叶える物語:2021/11/16(火) 06:28:02.15 ID:F6q1b2S9.net
- しお〜
- 294 :名無しで叶える物語:2021/11/16(火) 21:02:18.63 ID:oWr+7jpe.net
- ぽむぽむ〜
- 295 :名無しで叶える物語:2021/11/17(水) 06:20:18.87 ID:4V1HBFn2.net
- しお〜
- 296 :名無しで叶える物語:2021/11/17(水) 20:21:41.75 ID:Q2HTQ23J.net
- 泣ける
- 297 :名無しで叶える物語:2021/11/18(木) 06:07:53.25 ID:AJRJtXgj.net
- しお
- 298 :名無しで叶える物語:2021/11/18(木) 21:07:47.60 ID:BK9g5yW7.net
- しお?
- 299 :名無しで叶える物語:2021/11/19(金) 11:14:52.97 ID:o7TedZpk.net
- あれから、ひと月が経とうとしていた。
栞子ちゃんからの連絡は途絶え、私の立場から連絡を入れられる訳もなく。
私はまた、栞子ちゃんと会う機会を失っていた。
元々あまり多趣味ではなかった私は、お菓子を作ったりする気力も沸かずに編み物やらをして休日を消費するしかなかった。
部屋に友人からの電話が鳴り響いたのは、そんな時間に虚しさが募り始めた時だった。
歩夢「もしもし、愛ちゃん?どうしたの?」
愛『あ!歩夢、今大丈夫?』
歩夢「うん。暇してたところだよ」
愛『それなら良かった!実はさ、せっつーからライブのチケット貰ったんだけど、その日りなりーが取引先と外せない用事があるみたいでさ。歩夢はどうかなーって』
せつ菜ちゃんとかすみちゃんのライブ…。
そういえば、前に飲み会の帰りに話した時、そんな話をしてたっけ。
せつ菜ちゃん達には申し訳ないけど、それどころではなくなってしまって、忘れていた。
愛ちゃんから日付を聞くと、ちょうど来週の土日だった。
歩夢「私は大丈夫だよ」
愛『よかった〜!せっつーにめっちゃお願いしてチケット貰ったから、空席作るの申し訳なくってさ!』
それから待ち合わせの約束をして、電話を切る。
ライブかぁ。
正直そんな気分ではないけれど、いつまでも落ち込んでいても仕方ない。
良い機会かもしれない。
- 300 :名無しで叶える物語:2021/11/19(金) 11:15:19.11 ID:o7TedZpk.net
- 愛「二人とも!すっごかったよ!!」
歩夢「うん!かっこよかった!」
せつ菜「ありがとうございます!!」
かすみ「ふふん!当然です!それに、かっこいいだけじゃなくって、可愛かったでしょう?」
愛「うんうん!今日のかすかすは世界でりなりーの次に可愛かった!」
かすみ「かすみんです!それに、ここで惚気ますか!?普通!」
関係者席のチケットを見せて楽屋に通してもらい、私たちはかすみちゃんとせつ菜ちゃんに挨拶をさせてもらっていた。
せつ菜「あはは!それにしても、来てくださって本当に嬉しいです!トロッコから応援してくださるお二人が見えてましたよ」
歩夢「ええ!恥ずかしいなぁ。年甲斐もなくおっきな声で応援しちゃってた」
かすみ「バッチリ聞こえてましたよ〜」
愛「恥ずかしがることないって!観客席で歓声上げてくれるファンを見ても嬉しいって感情しか湧かないって、アタシたちは知ってるっしょ?」
せつ菜「そうです!皆さんの声が、私たちに力をくれるんですよ!!」
ライブの力ってやっぱりすごい。
正直今日会場に入る前まではあまり気分が乗っていなかったけれど、今は全力で応援したのもあってか少しすっきりしていた。
根本的には何も解決していないのだけれど、少し前向きになれた気がする。
- 301 :名無しで叶える物語:2021/11/19(金) 11:16:02.90 ID:o7TedZpk.net
- せつ菜「関係者の方への挨拶が終わったらマネージャーに車で送っていただけるので、お二人も一緒に乗せてもらえないか掛け合ってみますね」
歩夢「ええ?いいよぉ。電車でそんなにかからないし」
かすみ「えー。でも、今たぶん、電車激混みですよ?規制退場でもホームに着くまですっごい時間かかりますし」
愛「そっかー。お願いしようよ歩夢」
私ひとりならともかく、愛ちゃんまでそんな人混みに揉まれながら帰すのは申し訳ない。
おそらくあちらもそう思っての提案だったのだろう。
歩夢「んー、じゃあお言葉に甘えようかな。私たちはここで待ってたらいいの?」
せつ菜「はい!では行ってきますね」
楽屋を出ていくふたりを見送って、愛ちゃんと二人することもなく座って待つ。
愛「でも、良かったよ」
歩夢「え?ああ、送ってもらえること?」
愛「そうじゃなくって、歩夢のこと」
歩夢「私?」
なんのことだろう。
愛「うん。なんだか電話した時元気なかったからさ。でも、今は元気出たみたいじゃん」
相変わらず人の感情の機微に鋭い。
それとも、電話口で分かるほど私は落ち込んでいたのだろうか。
歩夢「…うん。最近ちょっと悩んでたことがあって…。でも、愛ちゃんが誘ってくれたおかげで元気でたよ」
愛「そっか。なら良かったけど…。悩み自体は解決してないんじゃないの?」
歩夢「え?うん。それは、そうだけど」
気分がどうこうで、解決できる種類の問題ではない。
いや、もうすっかり忘れてしまえば解決と言えなくはないけれど、それは嫌だった。
愛「話してみなよ。今、時間あるしさ」
歩夢「ええ。いいよぉ。どっちみち私一人じゃ解決できないことだし」
愛「じゃあ、なおさらじゃん!愛さん、こう見えて人間関係とかそういう相談、得意よ?」
確かに、愛ちゃんはその道のエキスパートと言えるだろう。
それに、「ん?ん?」と距離を詰めてくる愛ちゃんから逃れる術は思いつかない。
とはいえ、赤裸々に話すのは告白してくれた栞子ちゃんにも悪いので、誰についての相談かを特定できないように話すことにした。
- 302 :名無しで叶える物語:2021/11/19(金) 11:16:37.35 ID:o7TedZpk.net
- 歩夢「私の、えっと親戚の話なんだけど」
愛「ふむふむ、親戚の話ね。りょーかい」
まぁ、これは自分の話を誤魔化して言う時の常套句なのでバレて仕方ない。
歩夢「…えっと。その親戚の人は、ずっと好きな人がいて、でもフラれちゃったんだ。それで、その時に親友に辛くあたっちゃたの」
愛「…なるほど。それが悩みの種なの?」
「なるほど」の前の間は「好きな人」が誰かを察してのことだろう。
となると、「親友」も察してそうだが…。
歩夢「それは赦してもらえた…らしいんだ。それで、親戚の人は親友にすっごく感謝してて、その親友の友情に報いよう。傷つけた償いをしよう、って思ってるみたいなんだ」
愛「へぇ〜、今のところは何も問題はないね」
歩夢「うん。…でもね、一つ問題が起こったんだ」
愛「問題?」
歩夢「…その親友は、その親戚のことがずっと好きだったんだって。告白されちゃったんだ」
愛「…そうだったんだ。それで、その親戚はその答えで悩んでるの?」
歩夢「ううん。ちゃんと断ったんだって」
愛「え!なんで?…友情と恋愛感情の違いとか?」
歩夢「ううん。しお…。コホン、親友のことは、もちろん大事な友達だけど。その子なら付き合ってもいいくらいには好き。…っていってたよ」
ああ、もうボロボロだ。
我ながら幼稚な説明の仕方だと思うけど、愛ちゃんは真面目に聞いてくれている。
愛「じゃあ……まだ、好きな人のことを忘れられない、とか?」
歩夢「え、ううん。そんなことはないよ。その好きな人はもう結婚しちゃったし」
恐る恐るという様子で聞いてきた質問を否定すると、愛ちゃんはあからさまにホッとしていた。
…やっぱり、これバレてるよね。
愛「ええと、付き合ってもいいくらいには好きで、相手も自分のことが好きなのに、あゆ、おっと。親戚の人はなんでその親友を振っちゃったわけ?」
歩夢「…。私じゃ、その人を幸せにできないから」
ついに私って言っちゃったけど、今更訂正するのも馬鹿馬鹿しいし、いつまでも変な誤魔化しをするのも真剣に聞いてくれてる愛ちゃんに失礼だろう。
愛「歩夢…。そんなこと」
歩夢「…あるんだよ。少なくとも、私はその人をこれまで不幸にしてきたの。辛い思いもきっとたくさんさせてきた。なのに、今更都合よくじゃあ付き合いましょうだなんて、言えないよ」
- 303 :名無しで叶える物語:2021/11/19(金) 11:17:07.05 ID:o7TedZpk.net
- 私の話を聞いた愛ちゃんは、少しの間言葉を探すように黙って、それから溜息をついた。
愛「歩夢はさ、しおってぃーを振って、それでどうなってほしいわけ?」
べつに栞子ちゃんとは言ってないが…。いや、今更か。
歩夢「どうって、幸せになってほしいよ」
愛「それって、具体的には?」
歩夢「…私なんかよりも、栞子ちゃんを幸せにできる人と一緒になること」
改めてそう口に出すと、心がズキリと痛んだ気がした。
でも、これは私の本心だ。
そう決めたから、あえて今は栞子ちゃんを傷つける選択をとったのだから。
愛「そっか。じゃあ、しおってぃーを幸せにできる人って、どんな人?」
歩夢「それは…私が選ぶものじゃないでしょ?栞子ちゃん自身が好きな人じゃないと当然だめだよ」
愛「ふぅん、そこは分かってるんだね」
え?何のことだろう。
愛「しおってぃーが選んだのが、歩夢だったんでしょ?」
話をきいてなかったのかな。
歩夢「私は、ダメだってば。少なくとも、栞子ちゃんを傷つけたりしない人じゃないと」
愛「…傷つけあわずにずっと一緒にいられるカップルなんて、いないよ?誰よりも近い相手なんだから、嫌なとこもたくさん知ってる」
歩夢「…。璃奈ちゃんに悪いとこなんてないでしょ?」
愛「あ、そう思う?あるんだな、これが。寂しがりだし、実は嫉妬深いし、女好きだし…」
愛ちゃんはそこまで言って、「おっと、今のは内緒ね」とウインクした。
それにしても、璃奈ちゃんが女好き…想像できない。
- 304 :名無しで叶える物語:2021/11/19(金) 11:17:38.67 ID:o7TedZpk.net
- 愛「十年も一緒にいると、なおさらね。歩夢も、しおってぃーのダメなとこ、思い浮かばないわけじゃないでしょ?」
そんなのない。と言おうとしたのに、嫌な、ではなくダメなところと言われたせいか、いくつか浮かんでしまって、止まる。
歩夢「…頑固なところ。自分ひとりで頑張りすぎちゃうところ。見栄っ張りなところ。あと…ヘタレなところ」
ん?言ってみ?という顔に、促されてついぽろっと漏れるけど、こんなの栞子ちゃんの良いところに比べたら別にどうってことはないことだ。
愛「それでも、しおってぃーのこと、好きなんでしょ?まぁ、一旦恋愛感情とかは置いといてさ」
歩夢「…うん」
愛「じゃあ、向こうもそう思ってるんじゃないの?」
歩夢「それは、そうかもしれないけど。告白してくれたんだから、そうじゃないの?」
愛「だから、そっちじゃなくってさ。嫌なとこも含めて、好きになってくれたんじゃないの?言っとくけど、憧れの感情だけで10年も好きでいられないからね?」
それを聞いて、ハッとする。
あの時、栞子ちゃんはなんて続けただろうか。
『ですが、いつしかその感情は変わってゆきました。優しいところ。可愛らしいところ。でも、しっかりと強い芯をもっているところ。そして…一途なところ』
良いところだけ言っているようで、一番最後に付け加えた一言。
一途というのは、栞子ちゃんを対象にしてのことではない。
良い風に言っているけれど、栞子ちゃんを傷つけたあの日に出てしまった私の一番悪いところだ。
そこも踏まえた上で、栞子ちゃんは好きだと言ってくれていたのだ。
愛「付き合うかどうかはさ、本人たちしか決められないことだと思うけど、せめてちゃんと自分の思ってることとか、気持ちを伝えてあげないと、しおってぃーが可哀想だよ」
歩夢「…うん。そうだね」
私はまた一人よがりで、余計に栞子ちゃんを傷つけていたんだ。
このままじゃ、だめだよ。
栞子ちゃんがなんて言うかは分からない。
もしかしたら自分を振った相手となんて、もう会ってくれようとはしないかもしれない。
それでも、ちゃんとどう思ってたのかを伝えたい。
その上で、栞子ちゃんの答えを聞こう。
愛ちゃんのおかげで、目が覚めた気分だった。
歩夢「愛ちゃん、ありがとう」
愛「ううん、アタシも偉そうに説教みたいなことしてゴメン」
歩夢「そんな、説教だなんて。愛ちゃんと話せてなかったら、私ずっと栞子ちゃんを傷つけただけだったよ」
愛「そっか。しおってぃーと上手くいったら、また教えてね」
歩夢「…うん」
その時、話が終わるのを見計らったかのようにドアがバタンと開き、せつ菜ちゃんとかすみちゃんが楽屋に入ってきた。
せつ菜「お、お待たせしました!では、行きましょうか!」
見ると顔が赤い。
あ、これ聞かれてたな。
いや、タイミングを計ってくれていたのだろう。
責めはすまい。
- 305 :名無しで叶える物語:2021/11/19(金) 11:19:08.05 ID:o7TedZpk.net
- マンションの前まで送って貰って、車から降りる。
車に乗ってる間、かすみちゃんが何やら言いたそうにブスっとしながらこちらを見ていたけど、特に何か言われることはなかった。
去っていく車に軽く手を振って見送ったあと、マンションのエレベーターに乗り、自分の部屋のある階まで上がると、ドアの前に知った顔がいた。
歩夢「あれ、薫子さん?どうしたんですか?」
丁度ウチのインターホンを押そうとしていたらしく、声をかけられたことに驚いた薫子さんがこちらを見つけてばつの悪そうな顔をした。
薫子「お見合いぶりだね、歩夢ちゃん。ちょっと時間、いいかな?」
その表情を見て、私は何か悪いことが起こっているのだと予感した。
- 306 :名無しで叶える物語:2021/11/19(金) 11:25:55.33 ID:RONiCkIR.net
- 愛さんめっちゃいい……
- 307 :名無しで叶える物語:2021/11/19(金) 11:35:51.00 ID:ezQe9Ztl.net
- しお…
- 308 :名無しで叶える物語:2021/11/19(金) 12:48:44.99 ID:bBcsna04.net
- めちゃくちゃ響いたしお……
- 309 :名無しで叶える物語:2021/11/19(金) 13:08:52.72 ID:S2qOJvRu.net
- これは良い愛さん
- 310 :名無しで叶える物語:2021/11/19(金) 13:51:43.44 ID:4inJhDII.net
- 相手を思いやることが必ずしも相手を救うことにはならないのが辛いところ
- 311 :名無しで叶える物語:2021/11/19(金) 14:44:28.45 ID:MoW9zw6d.net
- やっぱ愛さんよ
- 312 :名無しで叶える物語:2021/11/19(金) 20:43:55.95 ID:qZIC2Kqb.net
- ζ㎗òヮóリ
- 313 :名無しで叶える物語:2021/11/19(金) 20:59:27.11 ID:Zqbba7ZS.net
- サンキュー愛さん
- 314 :名無しで叶える物語:2021/11/19(金) 21:41:21.46 ID:eAkv9Fus.net
- このSSほんと素晴らしい
- 315 :名無しで叶える物語:2021/11/20(土) 08:49:46.90 ID:oJ2B3NJr.net
- しお!
- 316 :名無しで叶える物語:2021/11/20(土) 22:48:53.98 ID:8KzbVNur.net
- しお〜
- 317 :名無しで叶える物語:2021/11/21(日) 10:38:38.71 ID:Smn4GFR5.net
- しお
- 318 :名無しで叶える物語:2021/11/22(月) 01:01:55.96 ID:JNIUycAy.net
- しお〜!
- 319 :名無しで叶える物語:2021/11/22(月) 06:06:10.17 ID:5nfuEIwa.net
- ᶘイ˶˘⇁˘ ナ⑅|
- 320 :名無しで叶える物語:2021/11/22(月) 19:35:40.27 ID:EcHutUbp.net
- ぽむぅ…
- 321 :名無しで叶える物語:2021/11/22(月) 22:14:44.57 ID:v31kJVQ7.net
- しおぉ…
- 322 :名無しで叶える物語:2021/11/23(火) 10:51:16.04 ID:ptWcr3Gl.net
- しーおー
- 323 :名無しで叶える物語:2021/11/23(火) 23:37:08.38 ID:QibxKPIg.net
- あの方にだけはデートの結果を報告の意味も込めてLINEして、私は自分で分かるほどふさぎ込んでしまっていた。
長年の片思いが破れ、抜け殻のようになってしまっていたというのが正しいか。
仕事もなんとか出勤できてはいるが、くだらないミスを繰り返したりと、あまり手についているとは言えない。
そしてそれ以外の時間は、部屋で何をするでもなく過ごしていた。
フラれて初めて、あの時の歩夢さんの辛さが理解できた気分だった。
そんな私の様子が、恐らく姉さんから伝わったのであろう。
1週間程すると、あの方が部屋を訪ねてきた。
あなた「ごめんね。急に来たりして」
栞子「いえ…。今日は一体どういった御用でしょうか」
心配してきてくれたであろう方に対して、かなり失礼な物言いをしてしまう。
余裕がない証拠だ。気を付けないと。
あなた「いや、用ってほどじゃないんだけど、近くに寄ったからさ。…それよりも栞子ちゃん。少し痩せた?ちゃんとごはん食べてる?」
栞子「…ええと、少しなら」
あなた「それじゃだめだよ。辛いかもしれないけど、ごはんは食べないと」
栞子「わかりました。ご心配、ありがとうございます」
あなた「ううん。…それと、ごめんね」
栞子「…何がでしょうか」
そう聞き返すけれど、言葉の意味は分かる。
あなた「歩夢ちゃんのこと。私が焚きつけたのに、こんなことになっちゃてさ」
栞子「…あなたは何も悪くありませんよ。きっといつまで経っても歩夢さんの心が私に向くことは無かったんです。だから…」
言ったことは本心だったけれど、それだけに自分の口から出したことで、より現実として認識されて、涙が溢れた。
もう枯らしたと思っていたのに、この方の前で泣きたくないのに…。
あなた「栞子ちゃん…」
栞子「ご、ごめんなさい。ちょっと、待ってください」
あなた「我慢しなくていいんだよ」
そう言って、私を抱きしめてくれる体温が、においが、あんまりにも優しくて。
私は人目を憚らず泣いた。
- 324 :名無しで叶える物語:2021/11/23(火) 23:37:31.33 ID:QibxKPIg.net
- 栞子「…ご迷惑をおかけしました」
恥ずかしくて、目が見られない。
こんなに子どものように泣いたのはいつ以来だろうか。
あなた「あはは、気にしないで。エマさんなら、もっとうまく慰められたんだろうけど。ほら、私あんまり大きくないからさ」
私の涙でびしょびしょになったTシャツを引っ張りながら、冗談めかして笑う。
こういったこの方の優しさに、歩夢さんも、そして私たちみんなが惹かれたのだ。
栞子「それと、Tシャツもすいません…。すぐに着替えを用意しますね」
あなた「いや、そのうち乾くから大丈夫だよ」
栞子「ダメです!今持ってくるので脱いでおいてくださいね」
申し訳ないのももちろんあったが、自分の涙で濡れた服を着た相手と話すのは恥ずかしすぎる。
背後からの「栞子ちゃんのエッチ」という声を聞き流しながらタンスに向かうと、足がさっきまでと比べてずいぶんと軽く感じた。
本当に、凄い人だ。
- 325 :名無しで叶える物語:2021/11/23(火) 23:38:48.85 ID:QibxKPIg.net
- あなた「あんまり長居するのもなんだし、そろそろ帰るよ」
栞子「そうですか。あの、本当にありがとうございました。ずいぶん楽になりました」
あなた「それならよかったよ。薫子さんも心配してたからさ、返事してあげて?」
やっぱり姉さんから情報が行っていたらしい。
だが、今回は素直に感謝しなければなるまい。
この方が来てくださらなければ、下手をすれば年単位で引きずることになっていただろう。
栞子「はい。あとで電話しようと思います」
あなた「うん。それと…」
栞子「何ですか?」
あなた「えっとね、私の立場からは良いにくいんだけどさ。歩夢ちゃんとも、連絡はとってあげてほしいんだ。少なくとも、歩夢ちゃんが栞子ちゃんのことを大事に想っていたのは本当だって、知ってるから」
歩夢さん…。お元気だろうか。
お優しい方だから、私のことであまり気を病んでいなければいいけれど。
この方の言う通り歩夢さんが私を可愛がってくださっていたのは事実だし、早めに会った方がいいのかもしれない。
けれど、好きでいた期間が長すぎたせいもあってか、面と向かってフラれた今ですら、正直想いが捨てられないでいる。
こんな状態で会えば、きっと歩夢さんに迷惑をかけてしまうだろう。
だから…。
栞子「…すいませんが、すぐには…。ただ、いつかは必ず」
そう、いつかは。
私がこの想いを捨てられたら、改めて仲直りをして二人でこの方にも会いたいと思う。
でも、そのためにも少し距離を置くべきだろう。
あなた「そっかぁ、分かったよ。ごめんね、今は栞子ちゃんも辛い時期なのに」
栞子「いえ、せっかく帰ってきてくださっているのに、あなたを間に挟むようになってしまって申し訳ないのですが…」
あなた「ううん。気にしないで。代わりって言ったら何なんだけど、かすみちゃんたちからの連絡は返してあげてね。ミアちゃん、心配してたから」
かすみさんたちからの連絡…?
急いでスマホを取りに行き、1週間以上開いていなかったLINEを開く。
大量の通知の中に、グループラインへの招待が届いており、その内容は前に話していた1年生会の日程調節だった。
途中から反応のない私への心配のメッセージに代わっており、それぞれのメンバーからも個別でメッセージで届いている。
栞子「…はい。後で返信しておきます」
あなた「うん。そうしてあげて。それじゃあね」
あの方の後ろ姿が見えなくなるまで見送った後、急いで私は謝罪と参加の連絡を送った。
- 326 :名無しで叶える物語:2021/11/24(水) 01:28:31.51 ID:1zTTWK6j.net
- しおっ!
- 327 :名無しで叶える物語:2021/11/24(水) 02:21:03.48 ID:jqXKmRUK.net
- こっから更に曇るしお…?
- 328 :名無しで叶える物語:2021/11/24(水) 02:30:05.84 ID:BRFcqE20.net
- しお……しお……!!!
- 329 :名無しで叶える物語:2021/11/24(水) 06:08:27.05 ID:ZId850Iu.net
- しお〜
- 330 :名無しで叶える物語:2021/11/24(水) 19:20:38.19 ID:NCvMSjSy.net
- しぉ……
- 331 :名無しで叶える物語:2021/11/24(水) 22:36:24.24 ID:1EtxvFNM.net
- ドキドキ…
- 332 :名無しで叶える物語:2021/11/25(木) 06:05:34.62 ID:gqHQQQJD.net
- しお
- 333 :名無しで叶える物語:2021/11/25(木) 18:42:16.44 ID:YMNFk3TZ.net
- しお!しお!
- 334 :名無しで叶える物語:2021/11/25(木) 21:15:49.17 ID:gkIND1tL.net
- しお
- 335 :名無しで叶える物語:2021/11/26(金) 01:22:56.66 ID:B0CDw8e5.net
- しぉ…
- 336 :名無しで叶える物語:2021/11/26(金) 08:03:49.49 ID:aCgvcOxU.net
- しおしお
- 337 :名無しで叶える物語:2021/11/26(金) 18:43:49.35 ID:lQH2/aIA.net
- しお〜
- 338 :名無しで叶える物語:2021/11/27(土) 07:07:54.52 ID:wJ0ZFEnn.net
- ぽむぽむ〜
- 339 :名無しで叶える物語:2021/11/27(土) 21:23:13.21 ID:L5eK1NJL.net
- ぽむっ!
- 340 :名無しで叶える物語:2021/11/28(日) 00:17:30.40 ID:yAi9NjJg.net
- すいません、明日夜更新予定です。
- 341 :名無しで叶える物語:2021/11/28(日) 00:41:51.53 ID:61r0rHV/.net
- しお!👍
- 342 :名無しで叶える物語:2021/11/28(日) 08:01:09.77 ID:j1tu4TVH.net
- 期待しお
- 343 :名無しで叶える物語:2021/11/28(日) 11:18:54.55 ID:SLrWCk/S.net
- しお!
- 344 :名無しで叶える物語:2021/11/28(日) 16:43:35.87 ID:zRQKT1ue.net
- しお!
- 345 :名無しで叶える物語:2021/11/28(日) 19:42:15.43 ID:1+NOiJMQ.net
- しお!
- 346 :名無しで叶える物語:2021/11/28(日) 23:48:58.66 ID:yAi9NjJg.net
- かすみ「それじゃあ、かんぱ〜い!!」
「「かんぱ〜い!!」」「Cheers!!」
栞子「か、かんぱーい」
かすみ「あれれ?しお子の声が小さいぞ〜」
栞子「あ、あはは。そうでしょうか…」
しずく「もう、かすみさん。飲む前から酔っぱらってるの?」
ミア「しずく。かすみは元から酔っぱらってるようなものじゃないか」
かすみ「そんな訳ないでしょ!ていうかミア子、それどういう意味!?」
今日私たちは愛さんの経営する居酒屋チェーンに集まっている。
璃奈「それにしても、こんなに早く集まれるなんて思ってなかった。璃奈ちゃんボード「感動」」
かすみ「ホントホント!しお子が返してくれないから、流れちゃうかと思ったよ」
栞子「すいません…。今度からはすぐに返事できるよう頑張りますので…」
謝罪の後何があったかを聞かれたが、本当のことを返す訳にもゆかず。
結局は携帯を修理に出していたと、嘘の返信をした。
我ながら苦しすぎる言い訳だったが、特に追求はされなかったのは皆さんの優しさだろう。
- 347 :名無しで叶える物語:2021/11/28(日) 23:49:29.08 ID:yAi9NjJg.net
- しずく「まぁまぁ、かすみさんそのくらいで。こうして皆集まれたんだし」
璃奈「そうそう。ミアちゃんともやっと一緒に飲めるようになったんだから。璃奈ちゃんボード「にっこりん」」
ミア「そうだね。ボクも向こうでは飲んでたけど、早く璃奈と一緒に飲みたかったよ」
かすみ「かすみんたちは!?」
ミア「うるさいなぁ…嫌だったら、来ないだろ?」
しずく「ふふ、そうだよかすみさん。ミアさんが一番返信早かったんだから」
ミア「た、たまたまだよ!」
そう言うとミアさんはグイっとジョッキを傾けた。
他のお三方とは時々一緒に飲むけれど、ミアさんはどれくらい強いのだろう。
結構ムキになりやすい性格だから、かすみさんに煽られて無理な量を飲まなければいいけれど。
- 348 :名無しで叶える物語:2021/11/28(日) 23:49:57.38 ID:yAi9NjJg.net
- かすみ「ねぇねぇ、恋バナしよーよ!恋バナ!」
だいぶ場があたたまってきたタイミングで、かすみさんが急にそんなことを言い出した。
しずく「恋バナって…。かすみさんアイドルでしょ?そんな話あるの?」
かすみ「ないけど…。って、しず子はずっと一緒にいるんだから知ってるでしょ!」
しずく「まぁね。というか、それなら私もそんな話ないの、かすみさんこそ知ってるでしょ」
かすみ「しず子はね。でも後の三人はどうかな?」
酔ったかすみさんは結構面倒な絡み方をしてくる。
そのせいで仕事先での飲み会では、しずくさんとマネージャーさんにアルコールを禁止されているらしく、そのことを二人でいる時に愚痴っていた。
璃奈「私は別に話してもいい」
かすみ「おお!流石りな子!…って、今度会った時気まずくなるから愛先輩以外の話はやめてよ?」
璃奈「そんなのない。璃奈ちゃんボード「ムッ」」
かすみ「あ、冗談だってば!ごめんだから怒らないで、りな子!」
しずく「かすみさん、メッ。ごめんね、璃奈さん。それで、愛さんとは最近どんなデートしたの?」
璃奈「別に怒ってないよ。えっとね、前のデートは愛さんが…」
話し始める璃奈さん。
そして、それを嬉しそうに聞くかすみさんと、歓声を上げるしずくさん。
ミアさんもしっかり耳を傾けている。
この流れは、マズい…。
恋バナなど、今の私にとっては地雷原そのものだ。
- 349 :名無しで叶える物語:2021/11/28(日) 23:54:48.79 ID:yAi9NjJg.net
- ミア「まぁ、ボクはそんな感じ」
どうやって回避しようかを考えている内に、お二人の話が終わってしまった。
しずく「さすがだなぁ。そんな普通スマートにできないよ」
かすみ「二人とも。決めるとこは決めるのズルいよね」
お二人は璃奈さんとミアさんの話に歓声を上げながら聞いていたけれど、私はそれどころではない。
かすみ「さて、次はしお子だね」
栞子「…私もですか?」
かすみ「もっちろん!最近結構調子いいんでしょ?聞かせてほしいな」
そう言って、「ニシシ」とおおよそアイドルとは思えない笑い方をするかすみさん。
そう、何が一番マズいかというと、ミアさんを除く1年生には私が歩夢さんが好きだとバレているのだ。
赤裸々にすべてを話している訳ではないはずだけれど、長い片思いの歴史の中でポロリと漏らし続けた情報から、いつしか1年生組の皆さんは私を応援して下さるようになっていった。
とはいえ、ここまで露骨な流れになることは今まで無かったのだが…。
ミアさんが加わったことで相手持ちの割合が増えたのが原因か。
集まる四つの視線。
ミアさんすら、何の話だ、という顔でこちらを見つめている。
これは…観念するしかないだろう。
それに、これからはもし求められようとも話す中身が増えることはなくなるのだから。
栞子「実は…」
私はこれまでの経緯を、もちろん歩夢さんの名誉を傷つけない範囲で話すことにした。
- 350 :名無しで叶える物語:2021/11/28(日) 23:56:07.11 ID:yAi9NjJg.net
- 話の途中から、私の話を聞く皆さんは無言だった。
さっきまで飲み会を楽しんでいたのに、こんな空気にしてしまって申し訳ない。
栞子「…以上が、ここ最近あったことです」
かすみ「……」
しずく「…それは…」
璃奈「栞子ちゃん…辛かったね」
栞子「…そうですね。ですが、あの方のお陰でだいぶ立ち直ることができました」
ミア「もしかして、Replyが遅かったのって…」
栞子「すいません。余裕がなくて…」
かすみ「…しお子!」
話の途中からずっと黙っていたかすみさんが、急に抱き着いてきた。
栞子「わっ!ど、どうされたんですか!?」
かすみ「どうしたも何もないよ!辛かったんでしょ!もっと頼ってよ!」
栞子「かすみさん…」
しずく「…そうだよ。私たち、せっかく友達なんだから」
璃奈「うん。嬉しいことも、悲しいことも、分かち合いたい」
ミア「…ずっと一緒って訳じゃないけど、ボクだって栞子の友達だ。辛い時は言ってくれないと、悲しい」
ああ…。だめだ。涙が出てきた。
先週の内に、出し尽くしたと思っていたのに。
いや、これは悲しいだけの涙じゃない。
嬉しいのだ。
栞子「皆さん…ありがとうございます」
大人になって皆忙しくなって、集まる頻度もどうしても減ってしまって。
友人の少ない私と違い、皆さんにとっての私は昔の友人の一人なのだと勝手に思っていた。
けれど、皆さんこうやって私の身勝手な失恋に親身になって、私の話に目に涙まで溜めてくれている。
私にはこんなに良い友人がいたことを思い知れて、嬉しいのだ。
- 351 :名無しで叶える物語:2021/11/28(日) 23:58:49.21 ID:1jdhlN0a.net
- ほんと面白い
- 352 :名無しで叶える物語:2021/11/29(月) 00:11:53.30 ID:rMhMrYAo.net
- 栞子「ですが、大丈夫ですので」
かすみ「そんな訳ないじゃん!10年も片思いして、ずっと側にいたのに!」
栞子「もちろんまだ辛いですし、少し前まではもう立ち上がれないのではないかと思うこともありました」
かすみ「…やっぱり、今から歩夢先輩に電話かける!」
しずく「ちょ、ちょっと、かすみさん!?」
かすみ「だって、ひとこと言ってやらないと気が済まないよ!」
そういって、スマートフォンを取り出そうとするかすみさんの手を、上から柔らかく抑える。
かすみ「しお子…」
栞子「先ほども言ったように、あの方のお陰でもう大丈夫です。…なので、皆さんには歩夢さんに今まで通りに接してほしいんです」
かすみ「でも…」
栞子「今回のことは、あくまで私と歩夢さんの問題です。それに、私のせいで歩夢さんと皆さんの仲が微妙になったりしたら、もっと辛いですから」
しずく「…歩夢さんのことは、もういいの?」
栞子「…本当は、まだ想いを捨てられずにいます。ですが、いつか気持ちに整理がついたら、歩夢さんとも仲直りして、皆さんとまた一緒に騒ぎたいです。あの方とも、そう約束しましたから」
私がそう言うと、かすみさんはスマホから手を離してくれた。
かすみ「…納得はしてないけど、しお子がそう言うなら…分かった」
周りを見ると、他のお三方も頷いてくれる。
ミア「次に来る時までには、仲直りしといてくれよ?」
栞子「が、頑張りますね」
璃奈「私と愛さんに協力できることがあったらいくらでも言ってね」
しずく「…私も、相談ならいくらでも乗るからね」
栞子「はい。ありがとうございます」
本当に、私には勿体ない。
良い友達を持った。
かすみ「…もうっ!じゃあこの話は終わり!飲み直そう!すいませーん!ビール5つ!」
しずく「飲み直すって…かすみさん!明日もレッスンでしょ!」
- 353 :名無しで叶える物語:2021/11/29(月) 02:52:56.29 ID:C0mXBcwO.net
- 良い…
- 354 :名無しで叶える物語:2021/11/29(月) 06:23:40.02 ID:KLbYXcbE.net
- 支援
- 355 :名無しで叶える物語:2021/11/29(月) 07:57:34.71 ID:Rky3kE/w.net
- どうなるしお
- 356 :名無しで叶える物語:2021/11/29(月) 11:25:44.84 ID:bFi6RuXL.net
- しおっ!
- 357 :名無しで叶える物語:2021/11/29(月) 19:33:17.28 ID:TztiGaH3.net
- @cメ*˶ˆ ᴗ ˆ˵リ
- 358 :名無しで叶える物語:2021/11/30(火) 00:41:26.73 ID:/HPym9v1.net
- @cメ*˶ˆ ᴗ ˆ˵リ 三 *˶ˆ ᴗ ˆ˵リ
- 359 :名無しで叶える物語:2021/11/30(火) 01:12:58.64 ID:/kYhd2wT.net
- 気になりすぎる
- 360 :名無しで叶える物語:2021/11/30(火) 06:14:04.92 ID:gyPUBusB.net
- しお
- 361 :名無しで叶える物語:2021/11/30(火) 20:33:33.58 ID:CuiN9TR9.net
- ぽむぅ…
- 362 :名無しで叶える物語:2021/11/30(火) 21:24:00.27 ID:06ZkQ4AP.net
- しぉ
- 363 :名無しで叶える物語:2021/12/01(水) 06:12:01.05 ID:pktdFYWy.net
- ほっしゅ
- 364 :名無しで叶える物語:2021/12/01(水) 18:32:51.24 ID:INN8YvO0.net
- しおしお…
- 365 :名無しで叶える物語:2021/12/01(水) 23:40:08.73 ID:hPs0wbKV.net
- はかたの
- 366 :名無しで叶える物語:2021/12/02(木) 06:23:01.62 ID:QykcLWCH.net
- しお?
- 367 :名無しで叶える物語:2021/12/02(木) 19:39:41.64 ID:5vHpl82V.net
- 萎…
- 368 :名無しで叶える物語:2021/12/02(木) 19:57:24.26 ID:8WTm/+fa.net
- しお!
- 369 :名無しで叶える物語:2021/12/03(金) 06:12:52.73 ID:xfGZfSqg.net
- しお〜
- 370 :名無しで叶える物語:2021/12/03(金) 16:24:32.49 ID:R5YgMmmj.net
- しぉ
- 371 :名無しで叶える物語:2021/12/03(金) 16:46:08.30 ID:Wyjme1mh.net
- すいません、明日夜更新できるよう頑張ります
- 372 :名無しで叶える物語:2021/12/03(金) 16:58:32.47 ID:G8IwQfVk.net
- 楽しみ
- 373 :名無しで叶える物語:2021/12/03(金) 21:15:59.71 ID:5uPSJ+Sd.net
- 無理はしないでしお
ファイトしお
- 374 :名無しで叶える物語:2021/12/04(土) 07:31:13.44 ID:89yv4cNj.net
- しお
- 375 :名無しで叶える物語:2021/12/04(土) 21:57:26.75 ID:q5HKv1P/.net
- しおしお
- 376 :名無しで叶える物語:2021/12/05(日) 08:11:49.20 ID:ccRORdYU.net
- ぽむぅ…
- 377 :すいません、遅くなりました。:2021/12/05(日) 08:46:24.03 ID:NmLucktK.net
- あれから、私は概ね調子を取り戻しつつあった。
職場でも、次は大きな仕事を任せると上司から言われている。
その準備のせいで、誘っていただいたかすみさん達のライブを断らざるを得なかったのはとても残念だけれど、まぁ順調と言って良いだろう。
とにかく、皆さんには感謝しなければならない。
あの方が向こうに帰ってしまうまでには、もう一度集まりたいものだ。
歩夢さんとはまだ連絡も取れていないけれど、気持ちの問題は時間が解決してくれるのを待つしかない気もする。
少なくとも、声や仕草を思い出すだけで切なくなるような状態ではまだ会うべきではないだろう。
けれど、会わないと決めてからも想いは強くなるばかりだ。
もうフラれた身だというのに、どうしたものだろうか。
そんなことを考えながら職場からの帰り道を歩いていると、自宅のあるマンションの前に見慣れた車が停まっていた。
近づくと、中からメイド服を着た女性が降りてくる。
三船家に仕える女中さんだ。
「お帰りなさいませ。お嬢様」
栞子「え、ええ。ご苦労様です。何かありましたか?」
「奥様がお呼びです。お疲れのところ申し訳ありませんが、ご同行を願えますか?」
栞子「この時間に?…要件は?」
「直接お話されるとのことで、私どもは知らされておりません」
嫌な予感がする…。
仕事帰りに待ち伏せた上で連れていくなど、碌な理由ではないだろう。
とはいえ、行かない訳にもいくまい。
何せ、今の私は職場から住居に至るまですべて三船の物に囲まれた生活だ。
栞子「…わかりました。連れていってください」
「かしこまりました」
私の溜息を無視して、お手伝いさんは後部座席のドアを開けてくれた。
明日も仕事なんだけれどな。
- 378 :名無しで叶える物語:2021/12/05(日) 08:46:56.60 ID:NmLucktK.net
- 女中さんに付いて廊下を進み、突き当りの部屋に案内される。
襖を開けると、着物を着た中年の女性がこちらを振り向いた。
私の母だ。
栞子「お呼びでしょうか」
栞子ママ「来ましたね」
母に指されるままに座布団に座り、向かい合うと女中さんが何も言われずともお茶の用意をして部屋を出ていった。
栞子ママ「お仕事の調子はどうですか?」
栞子「最近は少し体調を崩してしまいましたが、概ね問題なくこなせているかと」
栞子ママ「三船を継ぐ者として、失敗をしないというのは当然です。その上で成果を出しなさい」
栞子「…心得えております」
栞子ママ「それならば、これ以上は言いませんが…。くれぐれも、薫子のようにはならないよう、お願いしますよ」
姉さんのようになるな、という言葉は結局スクールアイドルとして活動するようになった私に、母が頻繁に言ってくるようになった言葉だ。
特に姉との和解の後には、あまり聞いて気分のよい言葉ではなくなった。
栞子「…大事な用事というのは、そのことでしょうか」
私の反抗的な態度が癇に障ったのか、母の眉がぴくりと動く。
栞子ママ「…いいえ。栞子。貴方にお見合いの話がきています」
お見合いか…。
あれからしばらく聞かなくなっていた言葉だ。
- 379 :名無しで叶える物語:2021/12/05(日) 08:47:21.48 ID:NmLucktK.net
- 栞子「申し訳ありませんが、お見合いは…」
歩夢さんとのことがあったばかりだ。
少なくとも今は他の誰かとどうこうなろうという気は毛頭ないし、相手にも失礼だ。
いつも通りに断ることとしよう。
栞子ママ「いいえ、今回は受けなさい。断ることは許しません」
しかし、今回の母は引かなかった。
栞子「…え?えっと、しかし今は仕事もありますし…」
栞子ママ「栞子。あなた、薫子の持ってきたお見合いを受けたでしょう?」
栞子「!それは…」
言葉に詰まる。
まぁ、バレないはずがないのは確かなのだが。
もしかして、今回母が頑なな理由はそれなのだろうか。
栞子ママ「あなたの言うように、これまでは仕事を優先してのことと思って、お見合いを断ることも許してきました。しかし、そうではないようですね」
栞子「そんなことは…確かに姉さんの持ってきてくださったお見合いは受けましたが、それは…」
そこまで言って、言葉に詰まる。
歩夢さんとのことを、母に言う訳にはいかない。
栞子ママ「…これまでも、あなたの我儘は聞いてきたつもりです。家を継ぐ者として、今回は聞き入れなさい」
そんな私の様子を見てどう思ったのか、母はそうぴしゃりと言うとお茶を一口飲み、立ち上がった。
栞子ママ「話は以上です。日程は追って伝えます。今日はもう遅いですから、泊まっていきなさい」
栞子「あ、ま、待ってください!」
このままでは本当にお見合いをさせられてしまう。
ここまで頑なな様子をみるに、そのまま話が結婚までいってしまいかねない。
思わず、母の足元に縋る。
- 380 :名無しで叶える物語:2021/12/05(日) 08:49:09.90 ID:NmLucktK.net
- 母はそんな私を無視して出て行こうとしたが、ふと何かを思い出したように立ち止まった。
栞子ママ「ああ、それと」
思い直してくれたのか、という私の期待を否定するように、母はひどく冷たい目で私を見た。
栞子ママ「もうこれ以上、あんな女と会うのは辞めなさい。あなたに悪い影響しか与えないわ」
栞子「…え?」
それだけ言って、話は終わったとばかりに母が部屋を出て行くと、女中さんが襖をぴしゃりと閉めてしまう。
しかし、私はもうその背を追いかけることはできなかった。
母の言った「あんな女」という言葉。
歩夢さんのことがバレていたのだ。
そう分かった瞬間、背筋にスッと冷たい汗が流れたのを感じた。
もしかすると母は歩夢さんと私が付き合っていると勘違いしており、その上で私にお見合いの話を持ってきたのではないか。
流石に直接歩夢さんを害するようなことはしないと思いたいが、姉がスクールアイドルに傾倒しすぎたからという理由で、家から追い出すことまでした母だ。
やらないとは言い切れない。
ここで私がお見合いを拒否すればするほど、母は歩夢さんに対して反感を抱くだろう。
これ以上歩夢さんに迷惑はかけられない。
お見合いを、受け入れるしかない。
栞子「歩夢さん……」
そして、もう二度と歩夢さんに会うことはできないかもしれない。
そう思うと、自然と涙が溢れるのを止められなかった。
- 381 :名無しで叶える物語:2021/12/05(日) 10:24:54.02 ID:mXaAvlGj.net
- しお…
- 382 :名無しで叶える物語:2021/12/05(日) 10:27:26.91 ID:F4QpgIpn.net
- た👶
- 383 :名無しで叶える物語:2021/12/05(日) 20:07:48.47 ID:CjD713aE.net
- つれぇしお…
- 384 :名無しで叶える物語:2021/12/05(日) 20:18:59.35 ID:188i2Fcj.net
- 泣ける
栞子…
- 385 :名無しで叶える物語:2021/12/06(月) 00:58:08.49 ID:LRW8grGU.net
- しぉ……
- 386 :名無しで叶える物語:2021/12/06(月) 06:54:00.90 ID:W/ARnQk3.net
- お金持ちだからその辺厳しそうだしね
- 387 :名無しで叶える物語:2021/12/06(月) 20:21:08.93 ID:Rl+1BWyS.net
- しお
- 388 :名無しで叶える物語:2021/12/07(火) 03:40:55.63 ID:a1gCu6GZ.net
- _,. --- 、_
, r ' ´ `ヽ、
/ .ヘ、
. , ' { 、 Y. .ヘ
. / ! ヘ ! ヘ
,' .{ V ヘ .! i
. {. i. ,、_λ .,レヘハ !. |
V. V ./,,,,_ `ヾ'ー'^’_,,。。、゙'´'}. |
. V V__,.....ニ.、 ,。――‐、 .レ} リ
', .√.、_七_ォ.l,,,,,,,l. ャ''孑゙`.iー|. ,′
', k___,,,... ノ゚ .゚ == --‐' l. ,' しお?
. .V / .! ν゙}
. .乂. .イ.,,、 ,,,.‘ヽ /'´
', { `´ ヽ ./
ヽ |.一''ニニ'''''・ イ
. \ ___ ./ .ト、
/| `. 、_ / }. \
. /. {  ̄ ̄ .| ├- 、_
_, イ i ノ i ! ` 丶、
, r ´ / 弋 リ ! `ヽ、
- 389 :名無しで叶える物語:2021/12/07(火) 06:12:19.09 ID:bBYRS5DB.net
- 支援
- 390 :名無しで叶える物語:2021/12/07(火) 19:49:37.32 ID:NLAKa0fb.net
- しぉん
- 391 :名無しで叶える物語:2021/12/08(水) 06:00:43.08 ID:PN9aDrc6.net
- しお〜
- 392 :名無しで叶える物語:2021/12/08(水) 17:04:26.02 ID:kGP4VtBc.net
- しお!?
https://i.imgur.com/804m4WI.png
- 393 :名無しで叶える物語:2021/12/08(水) 21:37:14.12 ID:zAlWlMPW.net
- 支援
- 394 :名無しで叶える物語:2021/12/09(木) 06:10:36.54 ID:pRjZyUQh.net
- 支援
- 395 :名無しで叶える物語:2021/12/09(木) 18:43:38.79 ID:gEpRStE6.net
- しお
- 396 :名無しで叶える物語:2021/12/10(金) 01:27:43.54 ID:w53rArXx.net
- しおしお
- 397 :名無しで叶える物語:2021/12/10(金) 06:46:51.90 ID:JVEpeTHN.net
- 支援
- 398 :名無しで叶える物語:2021/12/10(金) 18:48:15.39 ID:cBMpYlak.net
- ぽむぅ…
- 399 :名無しで叶える物語:2021/12/11(土) 06:53:57.75 ID:0o51wsfX.net
- ほ
- 400 :名無しで叶える物語:2021/12/11(土) 14:53:43.26 ID:YzyhhkjM.net
- 薫子さんを部屋に招き入れて、とりあえずお茶を入れる。
茶葉のフタを開けているときに、それが栞子ちゃんが前に持ってきてくれたものだったと気づいた。
薫子「今日は仕事だったのかな?ゴメンね」
歩夢「いえ、今日はせつ菜ちゃんとかすみちゃんのライブに行っていたんです」
薫子「へぇ、凄いね。あの二人のライブって今チケット取るの大変なのに」
歩夢「愛ちゃんが、関係者席のチケットを貰ってきてくれていたので…」
薫子さんと会うのはお見合いの日以来だ。
妹さんをフッた身としては、少々気まずい。
話し上手な人ではあるけれど、先に本題に入ってもらおう。
歩夢「それで、今日はどういった御用でしょうか」
薫子「…ああ、そうだね。ごめんごめん」
歩夢「いえ…」
薫子「実はさ…」
薫子さんが何かを言い淀むなんて珍しい。
いや、言いにくいことを言おうとしているというよりは、言うのを悩んでいるような感じだ。
薫子「連絡がとれないんだよね、栞子と。ここ1週間近くはマンションにも帰ってないみたいでさ」
歩夢「……え?」
- 401 :名無しで叶える物語:2021/12/11(土) 14:54:07.47 ID:YzyhhkjM.net
- 薫子「それで、歩夢ちゃんなら何か知ってるんじゃないかって、思ったんだけど…。その顔は今知ったって感じだね」
歩夢「え、ええと…。はい、実はあれから色々ありまして、ひと月ほど連絡は取っていないんです」
それを聞いた薫子さんはなんとなく察した顔をして少し悲しそうだったけれど、すぐに表情を戻した。
薫子「…まぁ、二人とも大人だしね」
そういえば、お見合いの時話を持ってきてくれたのは薫子さんだったのだし、私からも顛末を伝えておくべきだったかもしれない。
歩夢「すいません…」
薫子「ううん。謝ることはないよ。でも、それなら今日はお暇しようかな」
歩夢「い、いえ、待ってください!今から、電話してみます!」
薫子「え?…まぁ、でも歩夢ちゃんなら、もしかしたら…わかった。お願いするよ」
歩夢「はい!」
電話帳から栞子ちゃんの名前を探し、祈るような気持ちで電話番号を押す。
ワンコール、ツーコール…。なかなか繋がらない。
少しして、留守番電話のメッセージが流れる。
歩夢「も、もしもし、栞子ちゃん。久しぶり。このメッセージを聞いたら、折り返してほしいです。…私、栞子ちゃんに言いたいことがあるの」
絶望しそうになりながら、なんとかメッセージを残した。
- 402 :名無しで叶える物語:2021/12/11(土) 14:54:37.78 ID:YzyhhkjM.net
- 薫子「…ダメだったみたいだね」
歩夢「…はい。すいません。あの、警察とかには」
薫子「うん、そうだね。次は、その段階かも…」
その時、薫子さんのポケットから音楽が流れる。
よく知るその曲は、『翠いカナリア』だった。
薫子「ちょっと、ごめんね。もしもし。…!うん。うん。わかった」
もしかすると、栞子ちゃんかな?と期待して、スマホから漏れ出る声を盗み聞いたけれど、流石に分からなかった。
薫子「じゃあ、3番の店でまた会おう。うん、じゃあ」
歩夢「あの、もしかして、栞子ちゃんから?」
薫子「いいや。違った」
歩夢「…そうですか」
薫子「でも、栞子の居場所は分かったよ」
歩夢「え!?」
薫子「やっぱり、実家にいたみたいだ」
やっぱり?実家にいたなら、なぜ薫子さんが知らなかったの?なんて、いろいろと疑問は沸いたけれど、とにかく無事でよかった。
安心して、全身から力が抜ける。
薫子「ごめん、お邪魔したね。私はもう行くよ」
歩夢「ええ!?ちょ、ちょっと!どういうことか、説明してほしいです!」
薫子「え?ああ、ゴメン。実はさ、栞子と連絡が取れないことに気付いてすぐから、実家に入れてくれなくなったんだ」
薫子さんは、その時点で栞子ちゃんの居場所が実家だと半ばアタリを付けていたらしい。
その時点で今連絡をくれた人に、どうにか接触を図っていたんだとか。
それによると、栞子ちゃんは今実家で半ば監視生活をさせられているらしく、連絡がとれなかったのもそのせいいだという。
おおよそ現代に起こっているとは思えない話だった。
- 403 :名無しで叶える物語:2021/12/11(土) 14:56:59.41 ID:YzyhhkjM.net
- 歩夢「そんな…。でも、なんで急に?」
いままでは一緒に遊んだり、出かけたりするのに別に支障はなかったはずだ。
厳しい親御さんだとは、栞子ちゃんから聞いていたけれど…。
薫子「…まぁ、予想はできないことはないけれど、それも今から分かるはずだよ。じゃあ、今度こそゴメンね」
歩夢「待ってください!」
薫子「…今度はなに?」
再び呼び止めた私に、急いでいるんだけれどという目を向けながら薫子さんが振り向く。
歩夢「私も行きます!」
薫子「え?…いや、でもここからは、ウチの問題だから…」
歩夢「私も、栞子ちゃんが心配なんです!」
少しの間、薫子さんと見つめ合う。
じっと目を逸らさずにいたら、薫子さんが根負けしたように溜息をついた。
薫子「…分かった。じゃあ、行こう。あまり時間はないらしいし」
歩夢「はい、ありがとうございます!」
栞子ちゃんが、大切な人がひどい目に遭っているかもしれない。
それだけで、行かないなんて選択肢はない。
それに、私は栞子ちゃんに今度こそちゃんと、伝えたいことがあるんだ。
- 404 :名無しで叶える物語:2021/12/11(土) 19:29:01.44 ID:OBqKN9tA.net
- しぉ……!!!しぉ
- 405 :名無しで叶える物語:2021/12/11(土) 21:33:50.08 ID:jdU8z3si.net
- 期待…!
- 406 :名無しで叶える物語:2021/12/11(土) 23:33:06.28 ID:cRDnFBDa.net
- 待っている間に他のしおぽむミタイカラオススメ教えろください
- 407 :名無しで叶える物語:2021/12/12(日) 05:11:13.88 ID:71wdFdAW.net
- 頑張れぽむ
- 408 :名無しで叶える物語:2021/12/12(日) 09:52:36.91 ID:OBYVvyTN.net
- 栞子
- 409 :名無しで叶える物語:2021/12/12(日) 20:50:00.15 ID:q/RCH0oZ.net
- ᶘイ˶˘⇁˘ ナ⑅|
- 410 :名無しで叶える物語:2021/12/13(月) 05:56:27.99 ID:iEb/VvQn.net
- 支援
- 411 :名無しで叶える物語:2021/12/13(月) 19:03:53.38 ID:Kgb0zF2K.net
- しぉ
- 412 :名無しで叶える物語:2021/12/13(月) 20:46:24.10 ID:QjuORCKu.net
- 支援
- 413 :名無しで叶える物語:2021/12/14(火) 07:23:18.82 ID:bLu6js4P.net
- しお
- 414 :名無しで叶える物語:2021/12/14(火) 11:56:28.93 ID:I+TaacI4.net
- 👶ちぇ?
- 415 :名無しで叶える物語:2021/12/14(火) 21:52:44.90 ID:ySZNH3lt.net
- 支援
- 416 :名無しで叶える物語:2021/12/15(水) 07:08:29.90 ID:holpJmQC.net
- しお
- 417 :名無しで叶える物語:2021/12/15(水) 21:30:26.20 ID:fPniHBjp.net
- しお
- 418 :名無しで叶える物語:2021/12/16(木) 02:38:33.93 ID:P8PFvqOs.net
- しおしおしお
- 419 :名無しで叶える物語:2021/12/16(木) 08:56:46.93 ID:CPZDGGdS.net
- >>406
これとかおすすめ
栞子「歩夢さんって、お人好しすぎませんか⋯?」
https://fate.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1619347798/
- 420 :名無しで叶える物語:2021/12/16(木) 19:58:34.56 ID:vviQd47O.net
- しお
- 421 :名無しで叶える物語:2021/12/17(金) 06:37:44.88 ID:BgZ0uDH1.net
- ぽむ…
- 422 :名無しで叶える物語:2021/12/17(金) 07:31:21.29 ID:BJmpxTcd.net
- しおぉ…
- 423 :名無しで叶える物語:2021/12/17(金) 16:13:57.22 ID:D+fmtXKG.net
- 中々更新出来ずすいません…。
今日は夜勤なので明日の夜以降に更新予定です。
- 424 :名無しで叶える物語:2021/12/17(金) 17:14:56.13 ID:ou4I+s6+.net
- しお♡
- 425 :名無しで叶える物語:2021/12/17(金) 21:22:04.63 ID:CstfzSd7.net
- た👶
- 426 :名無しで叶える物語:2021/12/17(金) 23:29:45.29 ID:8UZc/qav.net
- 楽しみにしてます!
- 427 :名無しで叶える物語:2021/12/17(金) 23:41:09.28 ID:aVmALq01.net
- ゆっくりでもいいから完結頑張って
とても面白い
- 428 :名無しで叶える物語:2021/12/18(土) 08:57:39.35 ID:6KcS//7a.net
- 期待しお
- 429 :名無しで叶える物語:2021/12/18(土) 20:25:20.39 ID:D7Lir1N8.net
- しお…?
- 430 :名無しで叶える物語:2021/12/19(日) 08:47:34.41 ID:dxdw6J6S.net
- しお
- 431 :名無しで叶える物語:2021/12/19(日) 11:03:44.15 ID:T114khqW.net
- 薫子さんの車に乗せてもらって、目的地に着くころにはもう日が沈んでいた。
1時間ほどで着いたそこは、個人経営らしいレストランだった。
薫子「さあ、入ろうか」
歩夢「はい」
入口で店員さんに薫子さんが聞いたこともない名前を伝える。
案内されたのは、店の奥の扉を開けたさらに先の席だった。
扉の表札に「VIP」って書いてあったのが見えた気がする。
「お久しぶりでございます。薫子様」
席に座っていた女の人が立ち上がって、薫子さんに一礼する。
薫子「うん、久しぶり。元気だった?」
私も薫子さんに紹介してもらって挨拶を済ませる。
さっき連絡をくれたのはこの人だったらしい。
薫子さんがまだ実家にいた頃、身の回りの世話をしてくれていた人なんだとか。
薫子「店員は?」
女中「すべて手の者でざいます。ご安心くださいませ」
なんだか時代劇みたいな会話が繰り広げられていてちょっと怖いけど、今はとにかく栞子ちゃんだ。
…あれ?
歩夢「栞子ちゃんは?」
女中「栞子様は、まだお屋敷におられます」
歩夢「そんな…」
薫子「まぁ、そのあたりも含めて、話そうか」
薫子さんに肩を叩かれ着席を促される。
そうだ、こうしている間にも栞子ちゃんが辛い目に遭ってるかもしれないんだ。
とにかく建設的に動かないと。
- 432 :名無しで叶える物語:2021/12/19(日) 11:06:05.71 ID:T114khqW.net
- 席に着くと、普通に店員さんがお水を持ってきてくれて、メニューを渡された。
それどころじゃないけれど、一応お店で集まっている以上は軽食を頼んでおく。
薫子「さて、あんまり時間もないだろうし、話を聞こうかな」
女中「お待ちください。あと御一人、もうじき到着されます」
薫子「え、連絡ついたんだ」
女中「先ほど繋がりまして、今向かってらっしゃるそうです」
薫子「そっか、じゃあすぐだろうし、待とうか」
そういうと、薫子さんは運ばれてきた料理をつまみ始めた。
切り替えの早い人だ。
歩夢「ええと、こんなことしてる暇はないんじゃ」
薫子「まぁ、もうちょっと待ってなって。大事な助っ人が来てくれることになったからさ」
歩夢「助っ人?」
薫子「歩夢ちゃんも知ってる人だよ」
精神的にあまり余裕がないので、勿体振らずに教えてほしい。
その時、扉が開く音がして、後ろから声が聞こえた。
「薫子、来たわ!あら?」
あれ、この声…。
ランジュ「きゃあっ!歩夢〜!久しぶりね!元気だった?」
歩夢「わ!ランジュちゃん!?」
私に駆け寄り、手を握るその無邪気な笑顔は、久しぶりに会っても変わらないままだ。
- 433 :名無しで叶える物語:2021/12/19(日) 11:07:24.35 ID:T114khqW.net
- 女中「薫子様。全員集まりました」
薫子「うん、じゃあ、ランジュと歩夢ちゃんにも状況を話してあげて」
女中「かしこまりました」
歩夢「お、お願いします!」
ランジュ「忙しいんだから、手短にね!」
ランジュちゃんは職場から直接きたらしくて、お腹がすいているというので私の頼んだ分をあげたら、大喜びしてくれた。
女中「はい。まず事の始まりは、奥様の耳に栞子様がお見合いをされた話が入ったことでした」
ランジュ「あら、栞子、結婚する気はあったのね…」
そこまで言って口をつぐむと、私の方をちらりと見てランジュちゃんは誤魔化すように食事を再開した。
女中「栞子様の胸中はわかりませんが、これまでお見合いを断り続けていたこともあり、それが奥様の癇に障ったようでして」
歩夢「それって…」
薫子さんが私の方にポンと手を置く。
薫子「歩夢ちゃんのせいじゃないよ。昔から、私たちが自分の想い通りに動かないと怒る人だった。…続けて?」
女中「はい。奥様は突然に私どもに栞子様をお迎えにいくように命じられ…。申し訳ありません。どこからか、お見合いは薫子様が持ってきたお話だと知られたようでして」
薫子「そっか…。一応口止めはしてたんだけど、流石にどっかからは漏れるよね。私が甘かったよ」
女中「それから、奥様は栞子様に新たなお見合いの話をされました」
お、お見合い…。
歩夢「栞子ちゃんは、受けたんですか?」
女中「初めは断ろうとされたようですが、奥様が説得され、今は受け入れれたと聞いております」
歩夢「そ、そんな!?」
薫子「母さんが持ってきた話なら、お見合いの後はすぐに結婚まで行くだろうね」
お見合いだけじゃなく、栞子ちゃんが他の誰かと結婚…。
ランジュ「まぁ、良家にはよくある話ね…。って、歩夢どうしたの!?」
ランジュちゃんが急に慌てて、高そうなハンカチを取り出して私に渡してくれる。
その時初めて、私は自分が泣いているのに気付いた。
- 434 :名無しで叶える物語:2021/12/19(日) 11:07:44.67 ID:T114khqW.net
- 歩夢「あ、ご、ごめんなさい」
女中「…失礼ながら、上原様は?」
薫子「…歩夢ちゃんは、栞子の前のお見合い相手だよ」
ランジュ「ええ!?栞子、上手くいってたのね!歩夢も教えてくれてもよかったのに!」
歩夢「ち、違っ!私は…」
そんなんじゃない。
私は言って貰うだけで、まだ栞子ちゃんに自分の想いも伝えられていないんだ。
女中「そうでしたか。失礼いたしました」
歩夢「本当に違うんです!私はまだ…」
ランジュ「あら、そうなの?でも、その様子だと、歩夢も栞子のこと、好きみたいね」
歩夢「…そう思う?」
ランジュ「当然!」
私は、栞子ちゃんが他の人と付き合って、幸せになってくれたらいいと思っていた。
でも、いざ他の人と栞子ちゃんが付き合ったら、ましてや結婚するなんて考えると、とても悲しくなった。
この気持ちは知っているし、一度体験したこともある。
私、栞子ちゃんのこと、ちゃんと好きになってたんだ。
付き合ってもいいとか、そんなのじゃなくって、ちゃんと。
歩夢「…ありがとう、ランジュちゃん」
ランジュ「ん?何がかしら。って歩夢〜!どうしてそんなに泣いてるのよ!ランジュ、何かしちゃった!?」
- 435 :名無しで叶える物語:2021/12/19(日) 14:03:10.32 ID:KkL/yj4H.net
- 無問題ラ
- 436 :名無しで叶える物語:2021/12/19(日) 18:26:13.57 ID:cq3A/e1y.net
- 無問題ラ
- 437 :名無しで叶える物語:2021/12/19(日) 19:54:08.17 ID:q55ndphq.net
- ラ!!!
- 438 :名無しで叶える物語:2021/12/20(月) 05:28:30.95 ID:OAs2otDW.net
- しお?
- 439 :名無しで叶える物語:2021/12/20(月) 18:12:03.15 ID:TxqN6l1S.net
- ラ?
- 440 :名無しで叶える物語:2021/12/21(火) 00:31:43.51 ID:/3KXp2Ft.net
- ʃcʃ|.ò ᴗ ó)ʅ
- 441 :名無しで叶える物語:2021/12/21(火) 06:23:38.39 ID:xUXGY097.net
- しお
- 442 :名無しで叶える物語:2021/12/21(火) 18:09:58.95 ID:/fS85Fmg.net
- ぽむ
- 443 :名無しで叶える物語:2021/12/21(火) 23:26:21.24 ID:/3KXp2Ft.net
- しおしお
- 444 :名無しで叶える物語:2021/12/22(水) 07:20:38.29 ID:sZgnYGu5.net
- しお
- 445 :名無しで叶える物語:2021/12/22(水) 21:12:57.53 ID:9HULoKMs.net
- ぽむぽむ
- 446 :名無しで叶える物語:2021/12/23(木) 07:22:07.80 ID:LddbYOXY.net
- しお〜
- 447 :名無しで叶える物語:2021/12/23(木) 19:16:18.06 ID:sMhnGIJJ.net
- しお!
- 448 :名無しで叶える物語:2021/12/24(金) 02:27:29.85 ID:x2SO/h3s.net
- しえん
- 449 :名無しで叶える物語:2021/12/24(金) 07:21:45.42 ID:y69qa4QY.net
- しお?
- 450 :名無しで叶える物語:2021/12/24(金) 18:58:02.64 ID:HD3zjEcm.net
- ぽむ!
- 451 :名無しで叶える物語:2021/12/25(土) 03:47:10.09 ID:rK5Vbe2A.net
- ラ?
- 452 :名無しで叶える物語:2021/12/25(土) 07:40:10.53 ID:v0sqFwSp.net
- ほ
- 453 :名無しで叶える物語:2021/12/25(土) 20:57:13.83 ID:VNVpx/IO.net
- ラ!
- 454 :名無しで叶える物語:2021/12/26(日) 00:14:51.73 ID:33KusHdM.net
- しおしお
- 455 :名無しで叶える物語:2021/12/26(日) 11:05:31.41 ID:/C6sab0G.net
- しお
- 456 :名無しで叶える物語:2021/12/26(日) 22:16:36.53 ID:KzCySvC5.net
- ほ
- 457 :名無しで叶える物語:2021/12/27(月) 07:14:38.74 ID:FiZb44iS.net
- しゅ
- 458 :名無しで叶える物語:2021/12/27(月) 19:31:11.12 ID:VLF9B3hN.net
- ラ
- 459 :名無しで叶える物語:2021/12/28(火) 00:31:47.97 ID:K4+FQdk/.net
- しお!
- 460 :名無しで叶える物語:2021/12/28(火) 07:23:54.29 ID:bh6OPKwb.net
- ほむっ
- 461 :名無しで叶える物語:2021/12/28(火) 21:02:31.92 ID:K4+FQdk/.net
- しお!
- 462 :名無しで叶える物語:2021/12/29(水) 06:31:54.28 ID:QLYTMPKM.net
- しお…
- 463 :名無しで叶える物語:2021/12/29(水) 19:25:26.39 ID:MyxFRdZj.net
- しお〜
- 464 :名無しで叶える物語:2021/12/30(木) 07:51:19.27 ID:yyBOKFsA.net
- ラ!
- 465 :名無しで叶える物語:2021/12/30(木) 18:49:06.20 ID:jCh+mPt7.net
- メン
- 466 :名無しで叶える物語:2021/12/31(金) 05:05:27.92 ID:6W8LZYYY.net
- ᶘイº⇁ºナ川
- 467 :名無しで叶える物語:2021/12/31(金) 13:30:00.49 ID:OBnMEO4n.net
- よいおとしお
- 468 :名無しで叶える物語:2021/12/31(金) 21:33:28.91 ID:OBnMEO4n.net
- しお!
- 469 :名無しで叶える物語:2022/01/01(土) 02:50:22.82 ID:hNyaykN/.net
- 私が落ち着くのを待ってくれた後、話は栞子ちゃんの今の状況に移っていた。
ランジュ「それで、それから栞子はずっと家に閉じ込められてるの?」
女中「いえ。基本は自室でお仕事をしておられますが、必要な時のみ出勤を許されています」
逆に言えばそれ以外は家から出られない生活なんだ。
あれ、でも。
ランジュ「あら、それなら仕事に行った後に帰らなければいいじゃないの」
私の思ったことをランジュちゃんが言ってくれる。
色々と問題は出るだろうけど、栞子ちゃんは逃げようと思えば逃げられるということじゃないか。
女中「行き帰りは送迎として、使用人の内誰かが付くことになっておりますので、それは難しいかと」
一日中見張りの目があるということか。
そんなの、ノイローゼになっちゃうよ。
でもそれなら、栞子ちゃんが自分の意思で逃げていないことにも説明がつく。
まだ、ただの要らぬおせっかいになってしまう可能性もあるけれど。
歩夢「栞子ちゃんのお母さんは、これからずっとそんなことを続けるつもりなんでしょうか…」
女中「…分かりかねますが、少なくともご成婚までは続けられるかと」
ランジュ「それじゃ、遅いわね。どこのどいつとも知れないやつには栞子はやれないわ。薫子、考えがあるんでしょ?」
薫子「もちろんさ。その話をするためにランジュにも来てもらったんだからね。」
ランジュちゃんの問いかけに、薫子さんは即答してくれた。
そうだ。諦めるのは、直接栞子ちゃん本人の口からお見合いのことを聞いてからでも遅くはない。
それに、薫子さんのことだから、きっとすごい作戦を考えているんだろう。
- 470 :名無しで叶える物語:2022/01/01(土) 11:02:36.82 ID:p+wNNagu.net
- あけおめ支援
- 471 :名無しで叶える物語:2022/01/01(土) 13:26:29.84 ID:qKUgYqTJ.net
- あけましておめでしお
- 472 :名無しで叶える物語:2022/01/01(土) 13:48:37.69 ID:34QLQMVw.net
- 謹賀しお年
- 473 :名無しで叶える物語:2022/01/01(土) 14:44:41.97 ID:ulhzlqZv.net
- 待ってたで!
- 474 :名無しで叶える物語:2022/01/01(土) 21:39:45.16 ID:hNyaykN/.net
- 女中「決行は明後日にしようかと。急になってしまいますが、栞子様が今月出勤するのが明後日だけですので」
確かに急だけど、栞子ちゃんが現状を辛く思っているとしたら、なるべく早いほうがいいだろう。
歩夢「分かりました。具体的には、何をすればいいんでしょうか」
女中「はい。まずは私が、帰りのお迎えを装い、栞子様を連れ出します」
薫子「その間に、私が母さんを説得するよ。ランジュにはその間、栞子を匿ってほしい」
ランジュ「分かったわ!」
薫子「それと、歩夢ちゃんには…ランジュのサポートをお願いしようかな」
歩夢「は、はい!」
…。
あれ?…以上なの?
薫子「あ。作戦ってそれだけ?って思ってるでしょ」
歩夢「ええと…」
薫子「まぁ、結局は母さんと交渉するしかないからね。ちょっと時間はかかるかもしれないけど、勝算はあるから安心してよ」
歩夢「勝算ですか?」
薫子「うん。私だけだと、母さんは話も聞いてくれないかもしれないからね。助っ人を頼む」
栞子ちゃんが実家を継ぐことになる前には、薫子さんがその立場にいたという。
その立場を追われている以上は、もしかしたらご実家との仲は良くないのかもしれない。
確かに交渉のテーブルにも着けないというのは困る。
歩夢「助っ人…ランジュちゃんですか?」
ランジュ「まかせなさい!」
薫子「あはは。確かにランジュは頼りになるけど、鐘家と三船を直接揉めさせる訳にはいかないよ」
歩夢「じゃあ…」
薫子「まぁ、当てはあるから安心してよ」
薫子さんがそういうなら、信じよう。
それにしても明後日か…明日休暇申請して間に合うかな…。
- 475 :あけましておめでとうございます:2022/01/01(土) 21:40:49.90 ID:hNyaykN/.net
- すいません、年末の仕事がなかなか終わらず更新が滞りました。
保守ありがとうございます。
- 476 :名無しで叶える物語:2022/01/01(土) 21:59:14.69 ID:34QLQMVw.net
- しお✌
- 477 :名無しで叶える物語:2022/01/02(日) 11:05:00.34 ID:pZAFit43.net
- 支援
- 478 :名無しで叶える物語:2022/01/03(月) 00:48:00.80 ID:Y6+Pk+zt.net
- しお
- 479 :名無しで叶える物語:2022/01/03(月) 13:18:49.20 ID:+OLQjHtc.net
- ほ
- 480 :名無しで叶える物語:2022/01/04(火) 00:00:40.23 ID:Y4uTuuTW.net
- しゅ
- 481 :名無しで叶える物語:2022/01/04(火) 12:09:30.97 ID:90MjDuvY.net
- しぉ
- 482 :名無しで叶える物語:2022/01/04(火) 23:11:28.43 ID:mime8Nhs.net
- ぽ
- 483 :名無しで叶える物語:2022/01/05(水) 14:15:20.80 ID:hiENLpSj.net
- ラ
- 484 :名無しで叶える物語:2022/01/05(水) 23:33:15.25 ID:oQ28VvcF.net
- ほ
- 485 :名無しで叶える物語:2022/01/06(木) 06:52:17.36 ID:dbJl78Ik.net
- しゅ
- 486 :名無しで叶える物語:2022/01/06(木) 14:48:11.10 ID:RwRSk3aY.net
- しお
- 487 :名無しで叶える物語:2022/01/06(木) 22:39:51.95 ID:qUtoGacz.net
- しお!
- 488 :名無しで叶える物語:2022/01/07(金) 01:36:51.69 ID:YRj8rahC.net
- ひお
- 489 :名無しで叶える物語:2022/01/07(金) 07:35:10.27 ID:9EUhSXDc.net
- しお
- 490 :名無しで叶える物語:2022/01/07(金) 21:48:25.67 ID:11JOS1CE.net
- それからの状況は、日を追うごとに悪くなっていった。
最初こそマンションに帰ることを許されていたけれど、会社を出ると実家の車が待っているようになり、毎日実家に連れていかれるようになった。
そして、そこには必ず母が待ち構えているのだ。
初めは一緒に夕食をとるぐらいだったのだが、そのうちに泊まっていくように言われるようになり、気が付けばほぼ毎日実家の自分の部屋で仕事をするようになっている。
今にして思えば、この束縛の強さであの姉さんがこの家にずっといられる訳もない。
跡継ぎの話も、実は姉さんが自分から断ったのではないかと思えてきた。
勤め先は三船に連なる会社のためか出勤した時にも何も言われてはいないが、今はしがない1社員に過ぎない身であるので、元の生活に戻った後の職場の目が怖い。
もはや、本当に元の生活に戻れるかすら不安であるが…。
栞子「あれ?」
今日は会社にプレゼン用の資料を提出しに行く必要があったため、母に許可をとり(こんなことすら許可が必要なのか、という疑問はもはや諦めて)、朝から出勤していたのだが、会社から出ると当たり前のように迎えが来ていた。
今日はあの日実家に私を連れていった女中さんが運転もしている。
…のだけれど、いつもと違う道を通っている気がする。
栞子「あの…」
女中「はい、どうされましたか?」
栞子「道、間違っていませんか?」
女中「問題ありません」
栞子「そうですか…」
この人は結構前から実家で働いていたけれど、言葉が少なくて少し苦手な人だった。
自然と会話も途切れがちになる。
- 491 :名無しで叶える物語:2022/01/07(金) 21:49:08.53 ID:11JOS1CE.net
- 女中「栞子様」
栞子「…えっ!あ、はい。なんですか?」
と思っていたら、あちらから声をかけられた。
女中「お仕事に必要なものは、すべて今お持ちですか?」
どういう意味だろうか。
確かに、今日は職場でも作業をするためにノートPCも、資料も持参してはいるが…。
この人がそんなことを聞く意味が分からない。
忘れ物の心配でもしてくれているのだろうか。
栞子「え、ええ。きちんと持っていますよ」
女中「そうですか、失礼いたしました」
栞子「いえ…」
再び車内に静寂が訪れる。
窓に目を移すと、ちょうど高速道路のETCを通るところだった。
…ん?高速道路?
栞子「ええと、本当に道は間違えてないんですよね?」
女中「大丈夫です」
いや、おかしい。
車で10分で着く実家に行くのに、どう道を間違えても高速道路を使う必要はない。
フロントミラーに写る女中さんの表情は、いつもと変わらないすまし顔だが…。
脳裏に“誘拐”の2文字が浮かぶ。
昔からよく注意するようには言われていたけれど、この歳で、しかも身内と言っても過言ではない相手から?
まさか、とは思うけれど…。
- 492 :名無しで叶える物語:2022/01/07(金) 21:49:53.77 ID:11JOS1CE.net
- 車は迷いなく進み、隣県に突入していた。
いよいよ誘拐説に現実味が出てくる。
栞子「…今、どこへ向かっているんですか?」
勇気を出して尋ねてみる。
私たち以外には車内におらず、片方がハンドルを握っている以上は直接危害を加えるようなことはできないはずだ…私の方も、高速で走る車から逃れることもできはしないが。
まぁ、高速道路さえ降りてしまえばどこかで信号に止まるだろうから、もし逃げるとしたらチャンスはある。
けれど、それまでに相手の目的が知りたい。
女中「ご安心ください。薫子様に指示されてのことでございます」
栞子「姉さんの?」
女中「はい。栞子様をお連れするようにと」
それならそうと、早く言ってほしい。
正真正銘身内の名前が出て、少し安心した。
まだ嘘の可能性はあるが、あの姉であればこの突然の拉致にも納得できてしまう。
栞子「…その話は、母さんを通しているんですか?」
女中「いいえ」
即答。思わずため息が出る。
なぜこんなことを…。
あの人は、これ以上実家と揉めれば勘当されかねないと分かっているのだろうか。
鞄からスマホを取り出し、姉さんに電話をかける。
…出ない。
栞子「あの、これから行くところに、姉さんがいるのですか?」
女中「いいえ。ですが、遠からず合流するできるでしょう」
栞子「…そうですか」
であれば、その時に真意を問いただそう。
もしかしたら、姉さんは私の置かれている状況を勘違いしているかもしれない。
本当に、いつもの思い付きで連れ出したのだとしたら、今はマズい。
そうでないとすれば、なぜ…。
考えているうちに、車は高速を抜け、信号に止まった。
けれど、今はとりあえずこのまま車に乗っておくことにする。
一応スマホはポケットに移して、いつでもかけられるようにしながら。
- 493 :名無しで叶える物語:2022/01/07(金) 21:52:09.48 ID:11JOS1CE.net
- もうすっかり暗くなった頃、見覚えのないマンションの前で車は止まった。
見るからに高級なマンションだ。
女中さんが車のドアを開けてくれる。
周囲をみるけれど、周囲に人影はない。
降りたとたんに麻袋を被せられるようなことはなさそうだ。
栞子「ここが、目的地ですか?」
女中「はい。少し、お待ちください」
そう言うと、女中さんはどこかへ電話をかけ始める。
一応聞き耳を立てたけれど、向こうの声はあまり聞き取れなかった。
1分にも満たない通話の後電話を切り、女中さんは何やら荷物を下ろし始める。
栞子「ええと、それは?」
女中「生活に必要なものと、食料品です。しばらくはこちらで過ごしていただきますので」
聞いていない。
栞子「ええと、流石に泊まって帰るとマズいのでは?」
女中「お着替えもご用意しております」
そういう問題でもない。
仕方なしに座席に置いてあったパソコンの入ったカバンを持つと、マンションの玄関が開いて、こちらに向かって誰かが小走りでかけてくるのが見えた。
逆光になっていてよく確かではないが、シルエットからして女性のようだ。
というか、あれは…。
栞子「……え?」
歩夢「栞子ちゃん!」
栞子「あ、歩夢…さん?」
- 494 :名無しで叶える物語:2022/01/07(金) 23:37:20.14 ID:2id2CW16.net
- !!!!!!!!!!
- 495 :名無しで叶える物語:2022/01/08(土) 00:00:49.14 ID:v+4MxrBk.net
- キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!
- 496 :名無しで叶える物語:2022/01/08(土) 08:22:37.50 ID:iE2kxolr.net
- しお!!!
- 497 :名無しで叶える物語:2022/01/08(土) 22:26:08.31 ID:Tyy73ixd.net
- しお!!!
- 498 :名無しで叶える物語:2022/01/09(日) 09:58:46.61 ID:E1rCa/Dj.net
- ちょうど今1から読み終えた
楽しみしおなぁ
- 499 :名無しで叶える物語:2022/01/09(日) 23:37:09.76 ID:9ERaBqQ4.net
- しお!
- 500 :名無しで叶える物語:2022/01/10(月) 11:21:07.37 ID:zhfSZmEf.net
- 支援
- 501 :名無しで叶える物語:2022/01/10(月) 20:13:04.22 ID:xHNKBv98.net
- しお〜
- 502 :名無しで叶える物語:2022/01/11(火) 07:20:51.55 ID:i2B1H+87.net
- しお
- 503 :名無しで叶える物語:2022/01/11(火) 19:44:48.84 ID:bHFDaZ0W.net
- しお?
- 504 :名無しで叶える物語:2022/01/12(水) 06:57:43.35 ID:JiLughk/.net
- しお〜
- 505 :名無しで叶える物語:2022/01/12(水) 19:26:23.61 ID:vW2OA0dt.net
- しぉ
- 506 :名無しで叶える物語:2022/01/13(木) 01:36:29.73 ID:AP57d1h3.net
- 歩夢さんはエレベーターに乗ると、最上階のボタンを押した。
女中さんも荷物を担いでついてきている。
私は状況がつかめないままに後ろをついていくしかなかった。
歩夢「ここ、ランジュちゃんの持ってるマンションなんだって」
栞子「ランジュの?」
歩夢「うん。他にも都内にいくつか持ってるって言ってたけど、凄いよね」
元々ランジュの実家は太かったけれど、今ではランジュ自身も超大手芸能事務所の社長兼アイドルという冗談のような肩書だ。
マンションの一つや二つ持っていたところで驚きはしないが、今の話では姉さんだけでなくランジュまで今回のことに関わっていることになる。
そして、ここにいる以上は歩夢さんも…。
栞子「ええと、話が見えないのですが…」
歩夢「あ、そうだよね。もうちょっと待ってくれたら、部屋に入ってちゃんと説明するから」
栞子「…わかりました」
やがてたどり着いた最上階にはドアが1つしかなかった。
どうやらこのフロア全体で1部屋らしい。
歩夢「ランジュちゃんは仕事が忙しいらしいから、とりあえず私が鍵を預かったんだ。明日の夜には一回顔を出すって言ってたよ」
歩夢さんがカードキーを出して、ドアを開けてくれる。
栞子「…お邪魔します」
玄関からして豪勢な部屋だ。
いや、もはや部屋というよりは家と言える大きさだけれど。
歩夢「じゃあ、そこに座ってちょっと待っててね」
栞子「あ、はい」
言われるがままに、大きな白いソファに座る。
歩夢さんはというと、奥の方にひっこんでしまった。
いきなり連れてこられた知らない場所で一人でいると、流石に心細い。
スーツを着替えたいのだけれど、着替えはどうしたものだろう。
- 507 :名無しで叶える物語:2022/01/13(木) 01:41:18.78 ID:AP57d1h3.net
- 女中「栞子様、お荷物はお部屋に運んでおきました」
そんなことを考えていたので、突然横から声をかけられ、ついビクッとしてしまう。
そういえば、もう一人いたのだった。
栞子「あ、ありがとうございます」
女中「それでは、私はこれで失礼いたします」
栞子「え、もう帰るんですか?」
女中「はい。薫子様より、栞子様を送り届けた後は早めに合流するよう、仰せつかっておりますので」
栞子「ええと、せめてこの状況の説明をしてほしいのですが…」
女中「上原様にお任せします。…積もるお話も、お有りでしょうから。それでは、失礼いたします」
そういうと、女中さんは綺麗なお辞儀をしてさっさと帰ってしまった。
ポカンとしていると、エプロン姿の歩夢さんが奥のキッチンから出てくる。
歩夢「あれ、メイドさんは?」
栞子「…止める間もなく、帰ってしまいました」
母さんに黙って私を連れ出した以上は、もう三船の本邸には帰れまい。
これからは、姉さんのところで働くのだろうか。
歩夢「そんなぁ。晩御飯、食べていってもらおうと思ってたのに」
栞子「え、晩御飯ですか?」
確かに、部屋に入った時から何かいい匂いがすると思っていたけれど。
歩夢「うん。あれ、もしかして栞子ちゃんも食べてきちゃった?」
栞子「い、いえ。まだですが…」
歩夢「よかった〜。3人前で作っちゃったから、どうしようかと思ったよ」
さ、食べよう?と促されるままに着いたテーブルには、とても美味しそうなハンバーグが並んでいた。
- 508 :名無しで叶える物語:2022/01/13(木) 01:41:45.36 ID:AP57d1h3.net
- 歩夢「どうかな?」
栞子「お、おいしいです!」
本当においしい。
思えば、歩夢さんの手料理を御馳走になるのは、ご自宅にお邪魔して頂いたケーキ以来だ。
人参のグラッセなど、全体的に甘めだが、彼女の人柄が出ているかのような優しい味付けだ。
歩夢「本当に?栞子ちゃんのお口に合ってよかったよ。普段から良いものを食べてそうだし」
栞子「そんな、毎日食べたいくらいですよ」
歩夢「ええ〜?褒め過ぎだよ」
照れながらも、嬉しそうな顔をする歩夢さん。
相変わらず可愛らしい。
…いけない、ついうっかり覚悟しないままに再会してしまったけれど、私はもうフラれた身だ。
この想いも、捨てると決めたのだ。
いや、それ以前に私はもう…。
栞子「…それで、そろそろ状況を説明いただきたいのですが」
歩夢「うん、そうだね。じゃあ、まずはウチに薫子さんが来たところから、話そうかな」
そう前置くと、歩夢さんはこの3日間の出来事について話して下さった。
- 509 :名無しで叶える物語:2022/01/13(木) 02:22:28.92 ID:HKwr5u0p.net
- 更新お疲れさまです
いつも楽しく読んでおります
- 510 :名無しで叶える物語:2022/01/13(木) 07:34:46.47 ID:Xq2hM5Oh.net
- 支援
- 511 :名無しで叶える物語:2022/01/13(木) 08:36:41.18 ID:S+ziKBPD.net
- すきしお
- 512 :名無しで叶える物語:2022/01/13(木) 12:47:23.62 ID:AP57d1h3.net
- 歩夢「それで、メイドさんが栞子ちゃんを連れ出してくれてからは、知ってる通りだよ」
私の家に薫子さんが来てからの経緯を話す間、栞子ちゃんは黙って聞いていた。
栞子「…姉さんは、私がお見合いをさせられると知って、こんなことをしたのですね」
歩夢「うん。だから、薫子さんが栞子ちゃんのお母さんを説得してくれるまでは、ここにいるようにって。もちろん私も、いろいろとサポートするからね」
栞子「歩夢さんも、ありがとうございました。後輩の一人に過ぎない私のために、ここまでして下さって」
歩夢「そんな!栞子ちゃんは…」
栞子「…ですが、明日には帰ろうと思います」
歩夢「もう、ただの後輩じゃ……え?」
栞子ちゃんの言葉を理解するのに少し時間がかかる。
帰るって?まさか栞子ちゃんを閉じ込めた上に、無理にお見合いをさせようとしてくるっていうお母さんのところに?
栞子「母も、一日帰らなかったくらいなら許してくれると思うんです。流石に今からでは電車がありませんが…」
歩夢「ちょ、ちょっと待ってよ!そんな…」
栞子「…ごちそうさまでした。最後に、歩夢さんの手料理が食べられてよかったです」
そう言って、栞子ちゃんは席を立った。
歩夢「ま、待って!」
思わず、脇を通り抜けようとするその手をつかむ。
歩夢「…教えて?私たちがしたことは、只のおせっかいだったの?」
栞子「そうは言いません」
栞子ちゃんは優しい顔で、子どもを相手に諭すような口調で続ける。
栞子「姉さんとランジュ、そして歩夢さんが私のことを想って行動して下さったことは、本当に嬉しかったですから」
歩夢「なら、栞子ちゃんは、本当にこのままお見合いをして、それで…結婚するので、いいの?」
本当は望んでいないお見合いをさせられようとしているのなら、心にもないことを言っているのなら、説得することが出来ると思った。
けれど、栞子ちゃんは私の視線から目を逸らさない。
栞子「…ええ。きっと、幸せにしてもらえると思います。写真を見ましたが、中々に素敵な方でしたよ?」
歩夢「…そっか」
栞子ちゃんがちゃんと納得して出した答えなら、私が口を出すことじゃないのかもしれない。
そう思ってしまうと、栞子ちゃんの手を掴んでいた手から力を抜けた。
- 513 :名無しで叶える物語:2022/01/13(木) 12:47:43.86 ID:AP57d1h3.net
- 栞子「…さて、そうと決まれば、明日は早くに帰らないといけませんね。お風呂もお借りしていいのですよね?」
歩夢「…うん。キッチンの手前で左に曲がった先だよ。私のものじゃないけどね」
栞子「分かりました。すいませんが、お先にいただきますね」
栞子ちゃんは、そう言うとさっさと行ってしまった。
食卓には、自分で作った食べかけのハンバーグと私が残される。
人生で2度目の失恋をしてしまった。
1人になってその事実に遅れて気づくと、涙が溢れそうになる。
せっかく愛ちゃんとランジュちゃんのお陰で、自分の気持ちに気付けたのに…。
そう思ったとき、ハッとした。
歩夢「そうだよ、愛ちゃんも言ってた…」
栞子ちゃんの今の気持ちは聞いた。
でも、私の気持ちはまだ伝えられてないじゃないか。
今回、薫子さんは家族として、ランジュちゃんは幼馴染として栞子ちゃんのためを想って動いた。
なら、私は?
先輩として?友達として?それだけじゃない。
私は、栞子ちゃんのことが好きだから、今回ここにいるんだ。
それを伝えずに、このまま栞子ちゃんを帰らせてしまったら、きっと一生後悔する。
歩夢「よしっ!」
そうと決めた私は、食器を流しに置いてすぐ、バスタオルと着替えを取りに自分の部屋に向かった。
- 514 :名無しで叶える物語:2022/01/13(木) 17:11:32.53 ID:VLcyPi4y.net
- これは期待
- 515 :名無しで叶える物語:2022/01/13(木) 18:12:01.63 ID:v+ikvCb0.net
- …しお///
- 516 :名無しで叶える物語:2022/01/13(木) 22:40:56.59 ID:dRNWBiFk.net
- ᶘイº⇁ºナ川……
ᶘイ^⇁^ナ川
- 517 :名無しで叶える物語:2022/01/13(木) 22:54:09.70 ID:dvUep45h.net
- しお……!!しお…………!!!!!!!
- 518 :名無しで叶える物語:2022/01/14(金) 07:40:20.77 ID:wYA5hYCt.net
- 支援
- 519 :名無しで叶える物語:2022/01/14(金) 19:40:14.14 ID:+LrqxESO.net
- ぽむ!ぽむ!
- 520 :名無しで叶える物語:2022/01/15(土) 07:01:57.98 ID:hmZw3v/u.net
- しおん
- 521 :名無しで叶える物語:2022/01/15(土) 23:18:57.04 ID:53IyhfMG.net
- しお〜
- 522 :名無しで叶える物語:2022/01/16(日) 08:40:26.12 ID:AS5Uiwcr.net
- おしりこ
- 523 :名無しで叶える物語:2022/01/16(日) 18:18:25.57 ID:exdvuOcN.net
- しおしお!
- 524 :名無しで叶える物語:2022/01/16(日) 23:18:06.00 ID:VRCalX71.net
- 面白いなぁ
- 525 :名無しで叶える物語:2022/01/17(月) 07:31:45.90 ID:3ywmrbrV.net
- 支援
- 526 :名無しで叶える物語:2022/01/17(月) 17:43:29.91 ID:RLgxoh0g.net
- ぽむぅ…
- 527 :名無しで叶える物語:2022/01/17(月) 23:17:47.80 ID:c/YoG50Y.net
- ᶘイº⇁ºナ川
- 528 :名無しで叶える物語:2022/01/18(火) 07:30:53.22 ID:u4iz3Z7Y.net
- 支援
- 529 :名無しで叶える物語:2022/01/18(火) 14:04:42.40 ID:js3NVaeT.net
- ポム…
- 530 :名無しで叶える物語:2022/01/18(火) 22:48:59.17 ID:wXDZ4CSc.net
- ほ
- 531 :名無しで叶える物語:2022/01/19(水) 07:21:35.27 ID:6XJXeh+Z.net
- しゅ
- 532 :名無しで叶える物語:2022/01/19(水) 18:58:22.96 ID:sFNyukIE.net
- しぉ
- 533 :名無しで叶える物語:2022/01/20(木) 00:59:52.12 ID:NeY28bin.net
- 栞子「……はぁ」
浴室の中には水の音と私の溜息だけが響いている。
お湯が溜めてあったのは、きっと歩夢さんが私たちを待つ間に用意して下さったのだろう。
その歩夢さんを差し置いて一番風呂をいただいたことも申し訳ないのだが、残念ながらそれを楽しめてはいなかった。
今にして思えば、フラれた後に会わずにいたのは失敗だったのかもしれない。
自分の中でだけでなく、きちんと直接会って清算しなかったせいか、今日改めて会ってから想いが止まらないのだ。
栞子「歩夢さん…」
会わずにいようと決めた。
もう会えないだろうと諦めた。
そんなあの人とまた会えた。
けれど、私の立場は前とは違う。
今の三船家は昔と違いそこまでの力はないし、歩夢さんの会社やご家族にどうこうできるとは私も思っていないが、問題はあの母だ。
母は根は悪い人ではないのだが、家柄と格式にこだわりが強いためか、少々行き過ぎた行動をとることがある人だった。
姉さんが家を出てからはさらにその傾向が強くなったように感じる。
歩夢「栞子ちゃん?まだ入ってる?」
そんな人に目をつけられたら、いつかきっと歩夢さんにも迷惑をかけてしまう。
身内である姉さんと、ほぼ身内のようなものであるランジュはともかく、歩夢さんだけでも守らなくてはならない。
それが私なりのケジメだ。
歩夢「あれ?返事がないな…。栞子ちゃん、私も入るね?」
ふと首元に、スゥーッと冷気を感じた。
あれ、入口のドアを閉め損ねていただろうか。
ランジュから借りている部屋だそうだから、脱衣所を水浸しにするとマズい。
そう思って、湯舟の中で身をよじって振り返ると。
栞子「……あえ?」
全裸の歩夢さんがいた。
一応、身体の前にバスタオルを当ててはいるが、その豊かな肢体がくっきりと浮いている。
歩夢「栞子ちゃん、大丈夫?のぼせちゃった?」
そうかもしれない。
- 534 :名無しで叶える物語:2022/01/20(木) 00:59:52.77 ID:NeY28bin.net
- 栞子「……はぁ」
浴室の中には水の音と私の溜息だけが響いている。
お湯が溜めてあったのは、きっと歩夢さんが私たちを待つ間に用意して下さったのだろう。
その歩夢さんを差し置いて一番風呂をいただいたことも申し訳ないのだが、残念ながらそれを楽しめてはいなかった。
今にして思えば、フラれた後に会わずにいたのは失敗だったのかもしれない。
自分の中でだけでなく、きちんと直接会って清算しなかったせいか、今日改めて会ってから想いが止まらないのだ。
栞子「歩夢さん…」
会わずにいようと決めた。
もう会えないだろうと諦めた。
そんなあの人とまた会えた。
けれど、私の立場は前とは違う。
今の三船家は昔と違いそこまでの力はないし、歩夢さんの会社やご家族にどうこうできるとは私も思っていないが、問題はあの母だ。
母は根は悪い人ではないのだが、家柄と格式にこだわりが強いためか、少々行き過ぎた行動をとることがある人だった。
姉さんが家を出てからはさらにその傾向が強くなったように感じる。
歩夢「栞子ちゃん?まだ入ってる?」
そんな人に目をつけられたら、いつかきっと歩夢さんにも迷惑をかけてしまう。
身内である姉さんと、ほぼ身内のようなものであるランジュはともかく、歩夢さんだけでも守らなくてはならない。
それが私なりのケジメだ。
歩夢「あれ?返事がないな…。栞子ちゃん、私も入るね?」
ふと首元に、スゥーッと冷気を感じた。
あれ、入口のドアを閉め損ねていただろうか。
ランジュから借りている部屋だそうだから、脱衣所を水浸しにするとマズい。
そう思って、湯舟の中で身をよじって振り返ると。
栞子「……あえ?」
全裸の歩夢さんがいた。
一応、身体の前にバスタオルを当ててはいるが、その豊かな肢体がくっきりと浮いている。
歩夢「栞子ちゃん、大丈夫?のぼせちゃった?」
そうかもしれない。
- 535 :名無しで叶える物語:2022/01/20(木) 01:01:19.54 ID:NeY28bin.net
- 歩夢「ふふっ、大きなお風呂だと思ったけど、二人で入るとちょっとだけ狭いね」
栞子「そ、そうですね…」
私は、夢を見ているのだろうか。
いや、そうに違いない。
歩夢さんと長方形の湯舟に入ると、お互いの足が僅かに交差して、それが触れそうになる度に慌てて避ける。
そう、向かい合っているのだ。
水面で揺れる歩夢さんの胸に目が行きそうになるのを必死に我慢し、目を逸らし続ける。
栞子「あ、あの、私、もう出ますね!」
歩夢「え?でも、さっき入ったばっかりなのに…」
分かっているなら、もうちょっと待ってほしかった。
栞子「もう、身体は洗った後ですから」
歩夢「なら、もうちょっと温まってからにしなよ」
栞子「い、いえ。もう十分に」
歩夢「あのね、栞子ちゃん」
栞子「…なんですか」
歩夢「私ね、栞子ちゃんに言いたいことがあるんだ」
こちらをじっと、真剣な目で見つめる歩夢さん。
おそらくはお風呂に入る前の話の続きだろう。
気は重いが、ここまでして下さった歩夢さんには、きちんと納得してもらうまで話すのが筋だ。
栞子「……わかりました。では、お風呂を出たら聞きましょう」
ここでは、心臓が持たない。
そう思って、腰を上げようとした私の左足を。
歩夢さんの足が、きゅっと挟んだ。
歩夢「今、ここで話したいの。ダメ?」
栞子「……はい」
私は、少し浮かしかけていた腰を落とした。
これは、ズルいですよ、歩夢さん。
- 536 :名無しで叶える物語:2022/01/20(木) 01:27:57.03 ID:fL7DCaSr.net
- しおっ!しおっ!しおーーーっ!!
- 537 :名無しで叶える物語:2022/01/20(木) 02:05:57.25 ID:gfVOqjPC.net
- まさかの風呂場でクライマックス
- 538 :名無しで叶える物語:2022/01/20(木) 02:33:08.25 ID:82o19eJk.net
- @cメ*˶ˆ ᴗ ˆ˵リ
- 539 :名無しで叶える物語:2022/01/20(木) 07:32:59.39 ID:lC1uwpIb.net
- ᶘイ˶˘⇁˘ ナ⑅| 支援
- 540 :名無しで叶える物語:2022/01/20(木) 11:28:26.17 ID:jmAJwqk9.net
- お風呂で裸のお付き合いをするのは初めてです。
- 541 :名無しで叶える物語:2022/01/20(木) 22:32:21.54 ID:CxpBot0q.net
- 支援
- 542 :名無しで叶える物語:2022/01/21(金) 07:22:09.44 ID:yl27qebd.net
- しお
- 543 :名無しで叶える物語:2022/01/21(金) 20:06:11.65 ID:3SKReCnS.net
- 上原、脚で脚を挟みがち
- 544 :名無しで叶える物語:2022/01/22(土) 06:07:37.65 ID:AuvYhd1m.net
- しお…!?
- 545 :名無しで叶える物語:2022/01/22(土) 21:34:29.90 ID:x7qiSsEN.net
- 栞子ちゃん最高だったよ!
- 546 :名無しで叶える物語:2022/01/23(日) 11:32:43.94 ID:LPO3Yx+O.net
- ぽむ
- 547 :名無しで叶える物語:2022/01/23(日) 21:07:29.37 ID:hLU/kxWo.net
- 歩夢さんは足で挟むことに適性があります
- 548 :名無しで叶える物語:2022/01/24(月) 07:24:27.57 ID:oPy66aEX.net
- しお!
- 549 :名無しで叶える物語:2022/01/24(月) 20:51:18.32 ID:G/gCVBa2.net
- しお?
- 550 :名無しで叶える物語:2022/01/25(火) 06:39:16.87 ID:s2ejuEje.net
- しお〜
- 551 :名無しで叶える物語:2022/01/25(火) 21:40:13.37 ID:BUbuE872.net
- じ゛お゛っ゛?゛
- 552 :名無しで叶える物語:2022/01/26(水) 07:18:18.83 ID:YXNykbht.net
- しお
- 553 :名無しで叶える物語:2022/01/26(水) 19:30:09.71 ID:7ouI1pws.net
- ぽむ
- 554 :名無しで叶える物語:2022/01/27(木) 07:27:21.35 ID:JXfGMHrs.net
- 支援
- 555 :名無しで叶える物語:2022/01/27(木) 21:50:32.12 ID:taf6xuJz.net
- しえんしお
- 556 :名無しで叶える物語:2022/01/28(金) 01:42:29.00 ID:bufv0tvo.net
- お待たせしてしまい、すいません。
明日の深夜で更新します。
- 557 :名無しで叶える物語:2022/01/28(金) 01:46:01.22 ID:x2CLpceq.net
- @cメ*˶ˆ ᴗ ˆ˵リ
- 558 :名無しで叶える物語:2022/01/28(金) 02:00:13.26 ID:nTujhvAl.net
- しおっ!
- 559 :名無しで叶える物語:2022/01/28(金) 07:35:33.06 ID:MV1au5xg.net
- 期待
- 560 :名無しで叶える物語:2022/01/28(金) 23:33:31.23 ID:r9CylqVA.net
- 支援
- 561 :名無しで叶える物語:2022/01/29(土) 07:04:52.22 ID:SzE0Hcbm.net
- しお
- 562 :名無しで叶える物語:2022/01/29(土) 16:08:54.12 ID:PspHHnS7.net
- 私が湯舟に入ってから、栞子ちゃんはずっと自分の膝を見つめている。
こっちを見ないようにしてくれてるみたい。
まだ意識してくれているってことでいいのかな?
それなら、ものすごく恥ずかしい思いをした甲斐があった。
いや、現在進行形でしているんだけど。
栞子「それで歩夢さん、あの…話しというのは」
歩夢「あ、うん。…今から話すね?」
勢いでここまで来たけれど、いざ言うとなれば緊張する。
あの子の時は混乱していたのもあったし、するつもりもなかったから、考えてみれば面と向かって誰かに告白するとなると初めてのことだ。
それに、なんとお互い全裸。
流石にやりすぎだったかな…。
栞子ちゃん、引いてないといいんだけど。
でも、今言うって決めてお風呂場まで来て、出ようとする栞子ちゃんも引き留めた。
これまで逃げてばっかりの私だったけど、ここからはもう逃げないよ。
- 563 :名無しで叶える物語:2022/01/29(土) 16:09:55.31 ID:PspHHnS7.net
- 歩夢「私ね、ずっと好きな人がいたんだ。…って、栞子ちゃんには今更な話だよね」
栞子「…ええ、まぁ」
歩夢「小さな頃から一緒にいたから、いつまでもそうなんだろうなって、勝手に思ってた。虹ヶ咲に入っても、スクールアイドルをしている時も、そして卒業してからも…」
だからあの子が音楽のために海外に行くと言い出したとき、本当は行ってほしくなかった。
けれど、スクールアイドルをしている間、あの子はずっと私たちのために走り回ってくれていた。
もちろん、それもあの子自身がやりたいことではあったんだろうけれど。
でも、私たちの夢のために青春すべてを費やして頑張ってくれていたあの子が見つけた夢を、今度は私が応援しないといけないと思った。
だからあの日、私はあの子を笑顔で送り出した。
最後には私の隣に帰ってきてくれる未来を信じて。
歩夢「あの子がいなくなってからは、なんだか毎日に穴がぽっかり開いちゃったみたいだった。なんとか頑張れたのはね、栞子ちゃんがいてくれたからだよ」
きっとあの頃の私は、傍からみても抜け殻みたいになってしまっていたんだろう。
同好会の皆がなにかと理由をつけては、私を外へ連れ出してくれるようになった。
中でも栞子ちゃんは、ほぼ毎週お出かけや遊びに誘ってくれて。
良くないことだけど、あの頃の私は栞子ちゃんを少しあの子の代わりにしてしまっていた部分があったから、連絡が来る度に安心していたのを覚えている。
でも、しばらくしてあの子の結婚を知った私は、自分を失って…。
それからは、またあの子から連絡を貰うようにはなったけれど、心にはぽっかりと穴が開いたままだった。
あの子がいない間にどれだけ栞子ちゃんに救われていたのかを自覚したけれど、弱い私には連絡すらできなくって。
あの日偶然に薫子さんに会えて、本当に良かったと思う。
歩夢「私、これまでずっと栞子ちゃんに支えてもらってた。なのに私は、栞子ちゃんにほとんど何もしてあげられてない。それどころか、傷つけてばっかりで…でも、優しいあなたに甘えて、それを良しとしてきた」
あの子にフラれて、間違いを起こしてしまった時も、二人で私の家で遊んだ時に何気なく傷つけてしまった時も、いつだってこの子は私を気遣ってくれていた。
ひとえに私を好いてくれていたこの子に、今まで私はどれほど残酷なことをしてきただろう。
栞子「そんなことはありません。それに私だって…」
歩夢「栞子ちゃんは、優しいからそう言ってくれるよね。でも、私は嫌だったんだ」
だから。
- 564 :名無しで叶える物語:2022/01/29(土) 16:10:35.28 ID:PspHHnS7.net
- 歩夢「だから、栞子ちゃんの告白を断ったんだ」
栞子「そんな…」
歩夢「うん、最低だよね。また栞子ちゃんをすごく傷つけたと思う。でも、それでもあの時の私は、それが本当に正しいことだって、そう思ってた」
栞子「そんな訳、ないじゃないですか…」
歩夢「そうだよね。…ねぇ、覚えてる?私はね、栞子ちゃんにあの日貰った言葉、全部覚えてるよ」
栞子「え?」
歩夢「私の好きなところだって、栞子ちゃんが言ってくれたところだよ。優しいところ、可愛いところ、しっかりと強い芯をもっているところ。そして、一途なところ。…すっごく嬉しかった。でもね」
そこで私は身体を起こした。
歩夢「これ全部、栞子ちゃんのことだよ」
湯舟の中、膝立ちになって栞子ちゃんの方へ近づく。
栞子「え?あ、歩夢さん?何を…」
歩夢「1か月も経っちゃってごめんなさい。でも、その間に私いろいろ考えて、決めたの」
そして、栞子ちゃんの手を取った。
歩夢「栞子ちゃん、大事な話があります」
栞子「み、見えちゃいますから!歩夢さん!」
歩夢「…いいの」
栞子「え?」
歩夢「栞子ちゃんになら、見られてもいいの。本当は、すっごく恥ずかしいけど、栞子ちゃんになら、いいよ」
栞子「あ、歩夢さん、何を言って…」
歩夢「栞子ちゃんが別の人と結婚するかもしれないって聞いた時、すっごく悲しくなった。他の人を好きになったらって思うだけで、胸が締め付けられたみたいだった。勝手にも程があるよね、自分からフッておいて。でも、言わせて?」
栞子ちゃんの手を握る力を少し強める。
私の想いが少しでも伝われって、そんな気持ちで。
歩夢「栞子ちゃん、私はあなたのことが好きです。付き合ってください」
- 565 :名無しで叶える物語:2022/01/29(土) 16:10:58.29 ID:PspHHnS7.net
- 栞子ちゃんが目を見開いた。
そうだよね、少し前に自分を振った相手が急に告白してきたんだもん。
驚くだろうし、それに怒るかもしれない。
…正直、不安で胸が張り裂けそうだよ。
あの日の栞子ちゃんは、これよりももっと勇気を出して、傷ついたんだね。
栞子「…私は、夢を見ているんですね」
栞子ちゃんは少し黙って、その口を開いた。
栞子「だって、こんなの、私に都合が良すぎますよ。もう二度と会えないと思っていた歩夢さんに会えて、その歩夢さんから告白されるなんて…」
そのきれいな瞳から、一筋の雫がこぼれた。
思わず左手を栞子ちゃんの頬に添えて、それを受け止める。
歩夢「栞子ちゃん、じゃあ…」
栞子「はい。私も、歩夢さんのことが、好きですっ。忘れようと思っても、忘れられませんでした…。だって、あなたは、私にを初恋を教えてくれた人ですから」
そう言って、栞子ちゃんは涙を流しながら微笑んだ。
その表情がすごく綺麗で、愛おしくなって。
歩夢「…栞子ちゃん、嫌なら避けてね?」
添えた手で、そのまま栞子ちゃんの顔を持ち上げる。
栞子「あ、歩夢さん?…んむっ…」
思わずそのまま顔を近づけて、その唇にくちづけた。
- 566 :名無しで叶える物語:2022/01/29(土) 18:23:24.13 ID:BWuYHEJc.net
- やったぜ。
- 567 :名無しで叶える物語:2022/01/29(土) 18:51:22.24 ID:Rfm8+qbJ.net
- やったしお!
- 568 :名無しで叶える物語:2022/01/29(土) 19:23:56.09 ID:cSoTgTsx.net
- ⎛(cV„Ò ᴗ ÓV⎞=3
- 569 :名無しで叶える物語:2022/01/30(日) 00:23:02.35 ID:4cokl0/h.net
- !!!!!!!!!!!!!!!!
しおっ!!!!しおーーーーー!、!!!!!!!!!、!!!
- 570 :名無しで叶える物語:2022/01/30(日) 01:50:59.42 ID:ks9A9tDh.net
- ほんと…作者様ありがとうございます…
丁寧なこの作品楽しませてもらってます
- 571 :名無しで叶える物語:2022/01/30(日) 11:45:24.48 ID:bDcIo8Ew.net
- ₍₍ @cメง*˶ˆ ᴗ ˆ˵リว ⁾⁾
- 572 :名無しで叶える物語:2022/01/30(日) 21:33:08.67 ID:julFloLU.net
- 保守しお
- 573 :名無しで叶える物語:2022/01/31(月) 07:14:34.92 ID:XVuOgpE4.net
- 支援しお
- 574 :名無しで叶える物語:2022/01/31(月) 19:25:53.56 ID:uwkuPV0i.net
- しおしお
- 575 :名無しで叶える物語:2022/02/01(火) 07:22:32.86 ID:+mj9/GCF.net
- ぽむ
- 576 :名無しで叶える物語:2022/02/01(火) 22:33:42.62 ID:URFheA1s.net
- ほ
- 577 :名無しで叶える物語:2022/02/01(火) 23:43:19.27 ID:8W4A/K/4.net
- !!!!!!!!!!!!!!!!
しおっ!!!!しおーーーーー!、!!!!!!!!!、!!!
- 578 :名無しで叶える物語:2022/02/02(水) 07:29:19.48 ID:sqgUQivw.net
- 支援
- 579 :名無しで叶える物語:2022/02/02(水) 22:44:47.22 ID:m2enTLKJ.net
- しお?
- 580 :名無しで叶える物語:2022/02/03(木) 07:30:19.10 ID:QSvADPGQ.net
- 支援
- 581 :名無しで叶える物語:2022/02/03(木) 22:43:34.23 ID:5fbiFnva.net
- しお
- 582 :名無しで叶える物語:2022/02/04(金) 07:36:22.95 ID:ruj27sXC.net
- 支援
- 583 :名無しで叶える物語:2022/02/04(金) 16:58:33.90 ID:XiyKjLd2.net
- しお…
- 584 :名無しで叶える物語:2022/02/05(土) 01:13:41.96 ID:AcY2X3L5.net
- しおにゃん🐈⬛
- 585 :名無しで叶える物語:2022/02/05(土) 14:16:48.02 ID:kvIkkv6z.net
- しおしお♡
- 586 :名無しで叶える物語:2022/02/05(土) 17:44:18.40 ID:E3zLUELD.net
- 目を開けると、見覚えの無い天井。
心地の良い疲労感を引きずりながら布団をめくると、下着しか身に着けていないにも関わらず、部屋は季節にそぐわない温かさだった。
…はて。下着を穿いた記憶がないが。
いや、実際に穿いているのだから、自分で穿いたに決まっている。
そうでなければ…深く考えるのは止そう。
そのままベッドを降りて、サイドテーブルに置いてある服を身に着けていく。
昨日着ていたものとは異なるものなので、おそらく歩夢さんが荷物の中から出して用意して下さったものだろう。
歩夢さん…。
昨日のことを思い出すだけで、身体が熱くなるのを感じる。
好きな人と結ばれるということは、こんなに幸せなことだったなんて、知らなかった。
今でも夢みたいだ。
いや、本当に夢なのではないか?
なにせ、昨日からの流れの都合が良すぎる。
一抹の不安を抱えながら扉を開くと、キッチンに立つ歩夢さんの後ろ姿が見えた。
歩夢「ん?あ!おはよう、栞子ちゃん!よく眠れた?」
料理中だったようで、髪をポニーテールに纏めてのエプロン姿が実に魅力的だ。
思わず近寄った私を、少し不思議そうに見つめている。
歩夢「ん?どうしたの?」
幸せ過ぎて夢ではないか不安になったなんて、恥ずかしくて言えない。
栞子「…いえ、すいません。おはようございます、歩夢さん」
歩夢「うん。あ、朝ごはんもうできるからね」
栞子「あぁ、すいません。昨日に引き続き作っていただいて…」
歩夢「ううん、気にしないで。それに、もう私は栞子ちゃんの…彼女なんだし」
少しはにかみながらそう言う彼女があんまり愛おしくて、これが夢でもいいから永遠に覚めないでほしいと思った。
- 587 :名無しで叶える物語:2022/02/05(土) 17:44:44.78 ID:E3zLUELD.net
- 相変わらず歩夢さんの手料理は美味しい。
味ももちろん良いのだが、なんと言うかそれ以上にぬくもりを感じるのだ。
朝からそんな料理を食べられることに限りない幸福を感じていると、ふと歩夢さんがこちらを見つめているのに気が付いた。
栞子「歩夢さん?どうしましたか?」
ごはんつぶでも付いていただろうか、と思い自分の口元に手をやりながら尋ねる。
歩夢「あ、ううん。ごめんね、なんでもないの」
栞子「そうでしたか」
歩夢さんが何でもないというのであれば、何でもないのだ。
味噌汁の椀を手に取り、口に含む。
これも美味しい。
もしや、朝から出汁を取ったのだろうか?
歩夢「ただ、昨日の栞子ちゃん、可愛かったな〜って」
栞子「っ…、ごほっ、ごほっ」
なんとか御椀をテーブルに置く。
吐き出さずに済んで良かった。
歩夢「ああっ!どうしたの!?むせちゃった!?」
栞子「コホン…い、いえ、大丈夫です…」
そうだった…。
昨夜は、歩夢さんにキスされて、そして…。
- 588 :名無しで叶える物語:2022/02/05(土) 17:47:17.87 ID:E3zLUELD.net
- 今続きを書いていますが、この後ベッドシーンを入れるか迷っています。
もちろん書くのは初めてです。
- 589 :名無しで叶える物語:2022/02/05(土) 19:23:07.64 ID:fIbd30Uq.net
- |c||^.-^||
- 590 :名無しで叶える物語:2022/02/05(土) 19:43:07.98 ID:NtXHWYeE.net
- 入れてくれ!
- 591 :名無しで叶える物語:2022/02/05(土) 20:01:57.28 ID:xpqR5JS5.net
- 当然入れるよなぁ!?
- 592 :名無しで叶える物語:2022/02/05(土) 20:24:25.09 ID:4xuAf2NI.net
- ぽむしお最高
- 593 :名無しで叶える物語:2022/02/05(土) 22:39:00.20 ID:JU/eQkJh.net
- しお!?////
……………………しぉ♡////////
- 594 :名無しで叶える物語:2022/02/05(土) 23:25:49.69 ID:Cf0vuDAc.net
- 書かない選択肢あるの?
- 595 :名無しで叶える物語:2022/02/06(日) 02:10:16.12 ID:Dv+WOPmf.net
- ゆっくりでいいから頼みますよ!
- 596 :名無しで叶える物語:2022/02/06(日) 10:20:49.27 ID:Og+vzOve.net
- ⎛(cV„◜ᴗ◝V⎞まいったねこりゃ♥
- 597 :名無しで叶える物語:2022/02/06(日) 22:44:51.41 ID:KDn/ali/.net
- 期待
- 598 :名無しで叶える物語:2022/02/07(月) 07:21:30.51 ID:S2rb0Y+G.net
- しおしお
- 599 :名無しで叶える物語:2022/02/07(月) 21:50:12.45 ID:VmblC+eJ.net
- しおっ!
- 600 :名無しで叶える物語:2022/02/08(火) 07:32:38.18 ID:LOB9549x.net
- 支援
- 601 :名無しで叶える物語:2022/02/08(火) 21:45:50.04 ID:pWc0VPa/.net
- しお
- 602 :名無しで叶える物語:2022/02/09(水) 07:25:17.28 ID:UVnF2wYB.net
- 支援
- 603 :名無しで叶える物語:2022/02/09(水) 22:04:30.03 ID:h2b7Ouqo.net
- しぉん
- 604 :名無しで叶える物語:2022/02/10(木) 11:16:50.57 ID:dm+YgFQo.net
- ぽむっ!
- 605 :名無しで叶える物語:2022/02/10(木) 22:58:04.06 ID:W/nczEKp.net
- ほ
- 606 :名無しで叶える物語:2022/02/11(金) 09:28:38.74 ID:7e7bjyu4.net
- しお…
- 607 :名無しで叶える物語:2022/02/11(金) 23:47:34.97 ID:6g4F+yCO.net
- 支援
- 608 :名無しで叶える物語:2022/02/12(土) 11:20:22.42 ID:bBuYIQrq.net
- しお
- 609 :名無しで叶える物語:2022/02/12(土) 22:25:44.83 ID:wvZmpnjU.net
- 支援
- 610 :名無しで叶える物語:2022/02/13(日) 11:27:08.91 ID:8dr59H0h.net
- しお!
- 611 :名無しで叶える物語:2022/02/13(日) 22:01:36.86 ID:uIdmG9Eb.net
- 一向に終わる気配ないな
- 612 :名無しで叶える物語:2022/02/14(月) 00:39:31.34 ID:Ocwl/x1F.net
- お待ちしております。
明日夕方以降に更新予定です。
が、次回更新分は丸々前回と前々回の間の回想なので読み飛ばして下さって結構です。
- 613 :名無しで叶える物語:2022/02/14(月) 06:40:25.04 ID:rYYMdxGd.net
- 期待
- 614 :名無しで叶える物語:2022/02/14(月) 20:37:07.91 ID:Ocwl/x1F.net
- すいません、修正したいので明日朝投稿します。
- 615 :名無しで叶える物語:2022/02/15(火) 06:56:39.84 ID:A6M9LvKV.net
- 歩夢『ん…ふふ、キス、しちゃったね』
唇を離した歩夢さんが、照れたように微笑む。
私はというと、突然の出来事にまだ混乱しているのもあって、ぼーっと歩夢さんを見つめることしかできなかった。
歩夢『…あ、暑いね!そろそろ出ようかな!栞子ちゃんはまだ入るの?』
栞子『はい…』
歩夢『そっか…ねぇ、栞子ちゃんさえ良ければなんだけど、この後私の部屋に来ない?』
栞子『はい…』
歩夢『そ、そっか。じゃ、じゃあ、その…私先に行って準備してるね?』
栞子『はい………え?』
歩夢さんが浴室の戸を閉めた音でようやく我に返る。
今、歩夢さんは何と言っただろう。
聞き間違いでなければ、お部屋に誘われたような…。
いや、確かに言っていたはずだ。
というか、この流れで部屋に呼ばれるということは…。
頭の中にピンク色の妄想が広がる。
…なんだかのぼせてきた気がする。
そろそろ私も出よう。
- 616 :名無しで叶える物語:2022/02/15(火) 06:57:22.99 ID:A6M9LvKV.net
- 脱衣所にはもう歩夢さんはいなかった。
身体を拭き、下着を身に着ける。
そして脱衣所に備え付けてあったドライヤーを手に取ったところで、鏡に映る自分の姿のあんまりな色気の無さに気が付いた。
正確には着ている下着の、だ。
いつも寝る時に身に着けているのによく似たグレーのナイトブラとショーツ。
入浴前に準備する時に、女中さんが用意してくれた荷物の中から引っ張り出してきたものだ。
まさかこんな展開になるとは思ってもいなかったから何の気も無しに選んだけれど…。
もし万が一そういう事に及ぶことになったとして、歩夢さんにこれを見せるのか?
栞子『まだ服を脱ぐようなことになるとは決まっていませんが…』
とりあえず髪が乾いたら、自分の部屋に着替えに行くことを決める。
女中さんがそういったことを考えて衣類を選んでいるとは思えないが…。
今着けているものより、少しはマシなものがあると祈ろう。
…いや、まだそういうことをするとは決まっていないが。
- 617 :名無しで叶える物語:2022/02/15(火) 07:00:47.72 ID:A6M9LvKV.net
- ノックをすると『はーい』という声が帰ってきたので、ドアを開ける。
栞子『…歩夢さん、失礼します』
歩夢『うん、いらっしゃい。待ってたよ』
部屋の中は薄暗く、ベッドの脇にあるランプ1つだけが光源だった。
間取りは私が使わせてもらっているものとほぼ同じで、テレビとテーブルが1つずつにクローゼット、壁端にベッドが一つあり、歩夢さんはそこに座っている。
そしてその恰好は、薄いピンク色のパジャマだった。
可愛らしいが、いやらしさを感じる類のものではない。
そのことに少しホッとしたような、残念なような微妙な気持ちでいると、それが顔に出てしまっていたのだろうか。
入口でぼーっと立っている私を、歩夢さんがベッドの自分が座っている隣を手でポンポンと叩いて招いてくれた。
歩夢『ここ、おいで?』
栞子『し、失礼します…』
意気地の無い私は、少し距離を開けて座ってしまったが、歩夢さんは自分の座る位置を少しずらして距離を詰めてきた。
けれど、その後は何も言わず、私も何を言ったら良いのか分からず…。
二人の間に少しの間、無言の時間が流れた。
- 618 :名無しで叶える物語:2022/02/15(火) 07:03:16.41 ID:A6M9LvKV.net
- 先に静寂を破ったのは歩夢さんだった。
歩夢『…ねぇ、栞子ちゃん、改めて確認してもいいかな?』
栞子『な、なんでしょうか』
歩夢『うん。私たち、さっきので付き合った、ってことでいいんだよね?』
そうだ。
歩夢さんから告白されて、私が受けた。
まだ実感があまりないけれど、私たちはついさっきから恋人同士になったんだ。
栞子『…はい。その、不束者ですが、よろしくお願いします』
歩夢『あ、え、うん。こちらこそ、末永くよろしくお願いします』
お互いに頭を下げ合う。
なんだか照れ臭いやり取りだけれど、これまで曖昧な関係を続けてきた私たちだから、明確に言葉にすることは大事なことなのだと思う。
だって、今もの凄く幸せを感じているから。
- 619 :名無しで叶える物語:2022/02/15(火) 07:07:04.62 ID:A6M9LvKV.net
- 歩夢『…それでね、1つお願いがあるの』
栞子『ええ。何でもおっしゃてください。歩夢さんの頼みなら、何でも…』
歩夢『今度は、栞子ちゃんから、してほしいなって』
栞子『す、するというと…』
歩夢『…キス』
そう言うと、こちらを向いて目を閉じた。
これまで何かと受け身だった私だけれど、覚悟を決める時だ。
栞子『い、いきます!』
歩夢『ふふ、はーい』
…いきます、は言わなくても良かったかもしれない。
栞子『…ん』
触れているところから歩夢さんの体温を感じる。
ただ触れるだけのキスなのに、自分の身体が熱を帯びていく。
何秒そうしていただろうか。
した時と同じようにゆっくりと唇を離して目を開けると、歩夢さんが微笑んでいるのが見えた。
歩夢『…ありがとう』
栞子『い、いえ。私の方こそ、ありがとうございました』
歩夢『ふふっ、じゃあ、そろそろ寝よっか』
栞子『えっ、その…もうですか?』
壁に掛けられている時計はまだ22時を少し回ったところだ。
歩夢『うん。そんな気分なんだ』
栞子『そ、そうですか。では…お休みなさい』
少し残念だが、キスだけでも十分幸福な気分になれた。
付き合った初日に最後までするというのも、私たちには飛ばし過ぎな気もする。
恋人同士になれた以上はこれからも時間は十分にあるのだし、ゆっくり付き合っていけばいい。
そう自分の中で納得することにして、ベッドから立ち上がろうとすると、手を掴まれた。
栞子『え?あの、歩夢さん?』
歩夢『…一緒に寝よ?』
栞子『ええと…』
歩夢『…だめ?』
上目遣いでそんなことを聞いてくる歩夢さん。
そんなの、決まっている。
栞子『だめじゃ、ないです…』
- 620 :名無しで叶える物語:2022/02/15(火) 07:55:39.46 ID:51Gu10jU.net
- ⎛(cV„Ò ᴗ ÓV⎞ムヒョー!
- 621 :名無しで叶える物語:2022/02/15(火) 10:12:50.69 ID:mu30qsgi.net
- だめじゃないです!!
- 622 :名無しで叶える物語:2022/02/15(火) 22:34:28.31 ID:6GODOvQx.net
- 支援
- 623 :名無しで叶える物語:2022/02/16(水) 07:26:11.48 ID:aiS3+HAQ.net
- ほ
- 624 :名無しで叶える物語:2022/02/16(水) 14:34:19.78 ID:QiURBE1d.net
- 二人並んでベッドの上で横になる。
2人で寝るには少し手狭だけれど、歩夢さんの体温が感じられる距離感は悪くない。
歩夢『ねえ、覚えてる?高校の時にも、二人でお泊りしたよね』
栞子『ええ。あの時は、歩夢さんがベッドを貸してくださると譲らなくって』
歩夢『うん。結局2人で同じベッドで寝たんだよね。懐かしいな〜。…あの頃とは、関係性も変わっちゃったね』
栞子『…私はあの時から、ドキドキしているのが歩夢さんにバレないか心配でなりませんでした』
歩夢『え?そうだったんだ』
栞子『本当ですよ。なのに歩夢さんたら、無邪気に身体を寄せてくるんですから』
歩夢『ええ〜?そんなこと、したかな?』
栞子『もうっ』
お互い向き合って、二人で笑いあう。
ああ、幸せだなぁ…。
- 625 :名無しで叶える物語:2022/02/16(水) 14:35:31.06 ID:QiURBE1d.net
- 歩夢『…でも、今は違うよ』
栞子『え?』
歩夢『だって、私も今すっごくドキドキしてる』
栞子『歩夢さん…』
私が腰に手を添えると、歩夢さんも私の肩に手を置いた。
顔を近づけると、歩夢さんはまた目を閉じてくれる。
栞子『んっ、ちゅっ…』
そしてその唇に、再び口づけた。
歩夢『ちゅ、ちゅっ…、ん…』
顔を離すと、歩夢さんもキスを返してくれる。
そのまま私たちは、ついばむような短いキスを繰り替えした。
でもそのうちに、1度のキスの間隔が長くなってゆく。
- 626 :名無しで叶える物語:2022/02/16(水) 14:45:14.66 ID:QiURBE1d.net
- 歩夢『ん……ぷはっ…ねぇ、栞子ちゃん、舌、出してくれる?』
栞子『した?…んべ…』
歩夢『うん、そう。…ちゅうっ 』
言われた通りに出した舌を、歩夢さんが口に含んだ。
舌の先に歩夢さんの歯や、口の中の粘膜の感触が触れる。
栞子『ちゅぱっ、ふー…あむぁ…あゆむひゃ…?』
歩夢『れる…ちゅっ…ひおりこひゃん…』
歩夢さんの口の中で私の舌が弄ばれ、思わず開いた口の隙間から今度は歩夢さんの舌が侵入してくる。
そのまま中に受け入れ、私たちは夢中になってお互いの舌を絡め合った。
慣れない深いキスに私は唾液を受けとめきれず、それが二人の間を落ちてシーツに染みを作った。
歩夢『ぢゅ…はっ…汚れちゃったね…ん ちゅぅ…』
栞子『ご、ごめんなひゃ…れむ…ゅぷ…っはぁ』
歩夢『はぁ、ううん、はぁ、明日洗うから、ふぅ大丈夫だよ。だから、もっと…ちゅぅ』
さっきのキスでは息を止めていたけれど、今回はそんな余裕はない。
私たちの周りの空気だけがやたらと湿度を伴っているような気がする。
お互いの息が荒いのもあり、息を吸うと一方の吐いた空気がそのまま流れてくる。
歩夢さんから吐き出された甘い香りを吸うと、私はさらに全身が熱を持っていくのを感じた。
- 627 :名無しで叶える物語:2022/02/16(水) 18:35:43.44 ID:zTGlBLbH.net
- @cメ*˶ˆ ᴗ ˆ˵リ …❤
- 628 :名無しで叶える物語:2022/02/16(水) 21:38:10.03 ID:CyS2MpIf.net
- えっちですね!
- 629 :名無しで叶える物語:2022/02/16(水) 23:37:41.29 ID:wP4SN9gE.net
- ⎛(cV„O ᴗ OV⎞抜けるね
- 630 :名無しで叶える物語:2022/02/16(水) 23:58:10.41 ID:eMgMajEM.net
- えっろ
- 631 :名無しで叶える物語:2022/02/17(木) 07:27:27.13 ID:zgr+COTL.net
- エッッッッッッッッッッ
- 632 :名無しで叶える物語:2022/02/17(木) 19:16:07.77 ID:8Ii+GrQU.net
- たまんね〜!!!
- 633 :名無しで叶える物語:2022/02/18(金) 06:32:29.83 ID:qVUK8lqR.net
- しお❤
- 634 :名無しで叶える物語:2022/02/18(金) 07:22:27.00 ID:u1iNRhAH.net
- 素晴らしいしお
- 635 :名無しで叶える物語:2022/02/18(金) 22:21:06.77 ID:w99claU1.net
- 支援しお
- 636 :名無しで叶える物語:2022/02/19(土) 16:06:41.62 ID:fmSJ4DxS.net
- しお❤
- 637 :名無しで叶える物語:2022/02/19(土) 17:30:57.03 ID:hVgGC23d.net
- どれほどの時間そうしていただろう。
流石に息苦しくなり、どちらともなく顔を離した。
二人揃って肩で息をする。
歩夢『はっ、ふぅ…はぁはぁ…』
栞子『ん…はぁ、はふ…』
歩夢さんの少し濡れた口の周りが薄暗い部屋の中で照らされ、非常になまめかしい。
息を整えながら、少しの間無言でお互いに見つめ合った。
そして、歩夢さんがまた顔を近づけてきたため、私もキスを待ち受けようと目を閉じると。
歩夢『ちゅっ』
今度は耳元で音が響いた。
栞子『ひゃっ、あ、歩夢さん?』
そのまま歩夢さんは耳から首筋にかけてまた啄むようにキスを落としてくる。
栞子『く、くすぐったいです』
歩夢『え?ふふ…』
キスされた側の耳を手で押さえながらそう言うと、歩夢さんはクスクスと笑った。
- 638 :名無しで叶える物語:2022/02/19(土) 17:55:13.46 ID:hVgGC23d.net
- 栞子『…ちゅぅ』
仕返しという訳ではないが、このままではペースを持っていかれると思った私も、真似して歩夢さんの鎖骨に口づけてみる。
歩夢『んっ…栞子ちゃん?』
栞子『…お返しですよ…っちゅ、ぇろ…』
そして首筋にキスをし、舌を這わせる。
やってみると、うなじが近く歩夢さんの匂いが濃いせいだろうか、舐めたりキスをしたりしているだけの私の方が興奮してきた。
歩夢『お返しって…もう』
戸惑った様子ではあるが、歩夢さんは拒否する様子はなく、されるがままにしている。
栞子『ゅぱ…かぷっ』
昂ぶった私は、思わず歩夢さんの首筋を甘く噛んでしまった。
歩夢『ひぁんっ…』
その瞬間、歩夢さんはピクリと身体を震わせた。
驚いた私が口を離し歩夢さんを見ると、顔を真っ赤にしている。
歩夢『…栞子ちゃんの、えっち』
やりすぎてしまった!と思いながら歩夢さんの様子を伺うも、怒っている様子ではない。
むしろじゃれ合いに少し喜んでいる様子に、私は内心胸をなで下ろしていた。
栞子『あ、歩夢さんからしてきたんじゃないですか…』
歩夢『もう…よいしょ』
おもむろに歩夢さんはベッドの上で起き上がってぺたんと座った。
栞子『歩夢さん?』
そして、自分のパジャマの上のボタンを上から1つずつ外し始める。
パジャマの上を脱ぐと、歩夢さんによく似合うピンク色のブラジャーに覆われた豊かな胸が現れた。
花柄をあしらった清楚な可愛らしいデザインのランジェリーが、その上に見える肌色の谷間のセクシーさを際立たせている。
- 639 :名無しで叶える物語:2022/02/19(土) 18:00:52.40 ID:hVgGC23d.net
- 歩夢『栞子ちゃんも、脱いで?』
栞子『え?』
好きな人が目の前で服を脱ぎ、下着姿になっていく様子に釘付けになっている私に、歩夢さんが頬を膨らませる。
歩夢『私だけだと、恥ずかしいよ…脱いで?』
栞子『え、ええと、はい…』
私は慌てて起き上がり、言われるままに自分のパジャマのボタンを外す作業に入った。
その様子を確認して、歩夢さんは今度は下を脱ぎ始める。
少しして、お互いベッドの上で下着姿でになった。
歩夢『わぁー、栞子ちゃんのブラ、可愛いね。すっごく似合ってるよ』
栞子『そ、そうでしょうか』
歩夢『うん。懐かしい、栞子ちゃんのイメージカラーだね』
言われて自分の姿を見下ろす。
レースをあしらった翡翠色のブラジャーは、確かに自分の好みなデザインをしている。
歩夢さんに褒めてもらえたのなら、態々お風呂上りに部屋に戻って着替えてきた甲斐があったというものだ。
元々用意したのは私ではないが。
栞子『そういう歩夢さんも、その、素敵です…』
歩夢『え?…ふふ、さっきからずっと見てるもんね』
そういって、歩夢さんはご自身の胸に手をやった。
気を抜くと視線がそちらに行きそうになるのを必死に我慢していたのに、バレていたらしい。
- 640 :名無しで叶える物語:2022/02/19(土) 21:09:25.46 ID:3WosQfnJ.net
- しおっ!
- 641 :名無しで叶える物語:2022/02/19(土) 21:16:59.02 ID:o/wa9Nlh.net
- ᶘイo⇁oナ川…
ᶘイ^⇁^ナ川
- 642 :名無しで叶える物語:2022/02/19(土) 22:40:15.22 ID:hVgGC23d.net
- 栞子『いや、その…』
歩夢『…触ってみる?』
栞子『え…いいんですか?』
歩夢『もちろん』
歩夢さんはクスクスと笑ってそう言うと胸を張り、両手を身体の脇に下ろして私が触りやすい姿勢をとってくれる。
栞子『で、では…』
私は、恐る恐る歩夢さんの胸に手を伸ばした。
下から支えるように持ち上げてみると、自分のものでは味わえない重量感を感じる。
心地よい触感に手が吸い付いたように離れず、私は夢中になって歩夢さんの胸を触った。
歩夢『ん、ふぅ…ぶ、ブラも、外すね?』
栞子『あ…はい、すいません』
ついにブラジャーの上から揉み始めた私にそう言うと、歩夢さんは後ろに手をまわして外し始めた。
ブラを除けると、ピンと立った薄い桜色の突起が露わになる。
栞子『…おぉ…』
歩夢『そ、その反応は流石に恥ずかしいよ…』
栞子『す、すいません…』
歩夢『もう…はい、触っていいよ』
栞子『は、はい、では…』
恐る恐る包み込むように胸に手を添える。
ブラジャー越しでもすごかったけれど、直接触ると柔らかさが段違いだ。
栞子『柔らかいです…』
無意識のうちに感想が口から出ていた。
歩夢『そ、そういう、ことは、言わなくていいよぉ…んっ』
栞子『あ、すいません…』
これ以上余計なことを言わないように口を噤み、私は歩夢さんの胸を揉むのを再開した。
始めは覆うように外側から軽く、やがてぐにぐにと柔らかく全体を触り、そのうちに歩夢さんの口から漏れる声にも艶が増してきたのを見計らって、先端を責める。
反応を示すその度に、私は歩夢さんの胸に夢中になっていった。
- 643 :名無しで叶える物語:2022/02/20(日) 09:40:52.28 ID:MEvkhjam.net
- 最高やね
- 644 :名無しで叶える物語:2022/02/20(日) 22:19:35.30 ID:2p49bhNR.net
- 支援
- 645 :名無しで叶える物語:2022/02/20(日) 23:23:20.51 ID:WjGgZNKC.net
- ふと、私の背中を何かが触っている感触がした。
栞子『…歩夢さん?』
歩夢『き、きにしないで…ぁん…』
そのうちに、後ろで聞こえるプチっという音。
そしてスルスルと下ろされる、私のブラジャー。
慌ててズレ落ちるブラを腕で押さえて胸を隠した。
歩夢『…どうして隠すの?』
栞子『いや、だ、だって…恥ずかしいですよ』
歩夢『私だって、見せたのに…』
そう言われては弱い。
やけにさらりとブラジャーを外したのは、もしかしてこのためだったのだろうか…。
歩夢『ね、栞子ちゃんも見せて?可愛いおっぱい』
栞子『うぅ…』
仕方なく、抑えていた腕を退けてブラジャーを外す。
栞子『あまり、じっと見ないでください…』
歩夢『どうして?』
栞子『どうしてって…私の胸なんて、そんなに大きくもないですし…んむっ…』
言い訳は口で塞がれた。
歩夢『ぷはっ、そんなことないよ。すっごく可愛い。ねぇ、私も触っていい?』
栞子『…歩夢さんって、実は結構遊んでたりします?』
歩夢『え?い、いやいや、これまで栞子ちゃんと以外とはキスもしたことないよ?』
栞子『そうですか…』
あの方といい、歩夢さんといい、人たらしっぷりは健在らしい。
歩夢さんに関しては、もうあまり私以外に対しては発揮してほしくないスキルだ。
- 646 :名無しで叶える物語:2022/02/20(日) 23:25:16.48 ID:WjGgZNKC.net
- 栞子『本当に大したことのない胸ですが、その…歩夢さんのも触らせていただきましたし、触りたければ…どうぞ』
歩夢『もう…じゃあ、触るね?』
ゆっくりとした動きで歩夢さんは私の胸に手を添え、軽く撫でた。
栞子『ん……』
心臓が近いからだろうか、歩夢さんの手は少しだけ冷たく感じた。
歩夢『だ、大丈夫?痛かったかな?』
栞子『いえ、少しくすぐったかっただけです』
歩夢『そっか…本当に嫌な時とか、痛い時はすぐ言ってね?私、もう栞子ちゃんには少しも辛い思いさせたくないから…』
栞子『歩夢さん…胸を…んっ、揉みながら言っても、恰好がつかないですよ』
歩夢『え?…あ、あはは…』
初めは恐る恐るだったけれど、そのうちにややしっかりと、けれども優しい手つきで歩夢さんは私の胸を触った。
私も誰かに触られたのが初めてだったのもあり、始めは緊張していたけれど、相手が歩夢さんというのもあるのか、揉まれている内に段々と気持ちよくなってきた。
…けれど、今一つ物足りないというか、流石に優しすぎるというか。
- 647 :名無しで叶える物語:2022/02/20(日) 23:26:30.19 ID:WjGgZNKC.net
- 栞子『ぁ、ん…あゆむ、さ…ん、ぁんっ』
切なくなって名前を呼ぶと、歩夢さんはパッと手を離した。
栞子『あ…』
歩夢『ど、どうしたの、栞子ちゃん!痛かった!?』
栞子『い、いえ…その…むしろ逆というか…』
歩夢『逆?』
栞子『いえ、その、もう少し…』
歩夢『もう少し…えっと、もう少し強くしてもいいってこと?』
改めて口に出されて、自分の顔がカァっと熱くなるのを感じた。
これではおねだりだ。
栞子『いえ、その、なんでもないです…』
歩夢『栞子ちゃん…かわいい…!』
栞子『か、可愛くなんて…』
歩夢『可愛い!可愛いよ!栞子ちゃんは、可愛い…ちゅぅ』
可愛いを連呼されて、キスされる。
それもずっとずっと片思いしてきた、自分がこの世で一番好きな人に。
私の思考回路は、この時点で機能停止した。
- 648 :名無しで叶える物語:2022/02/20(日) 23:26:58.23 ID:WjGgZNKC.net
- 栞子『ちゅ…本当ですか?私、可愛いですか?んむ、ちゅ…』
歩夢『ちゅ、うん、可愛い。世界一可愛いよ…ねぇ、ひとつお願い、いい?…ちゅぅ』
栞子『んむ、ちゅ…はい、なんですか?』
歩夢『吸ってみたいな。その…栞子ちゃんの、おっぱい』
栞子『…』
歩夢『…だめ、かな?』
栞子『…いいですよ』
歩夢『いいの!?』
栞子『な、何度も聞かないでください!…歩夢さんがしたいなら、どうぞ』
歩夢『じゃあ、失礼します…はむ、ちゅう…』
歩夢さんはさっきまで揉んでいた私の胸にかぷりと口を付けた。
そのまま舌で先端を転がされ、唇で弄ばれる。
そして、やさしく舐られ、吸われた。
栞子『ぁんっ…ど、どうですか?』
歩夢『ちゅ…え、ええと…ちょっと、しょっぱい?…れる、ちゅぅ』
栞子『あ、味は聞いてませぇ…んんっ、ぁあっ…』
歩夢『ちゅぱ…あ、あはは、ごめんね…でも、なんていうのかな、吸ってて、気持ちいいというか…ちゅ…』
栞子『な、んですかそれ…ぁ、ぁあ…んっ…』
その後は答えず、歩夢さんはひたすらに私の胸を吸い、そのうちに反対側の胸も揉み始めた。
私の胸なんて吸ってなにが楽しいのだろうと思ったけれど、夢中になっている歩夢さんを見ていると、不思議と悪い気はしなかった。
これが母性本能というやつなのだろうか。
けれどやっぱり、普段触られなれていない胸だけを責められているとだんだんと切なくなってくる。
その…下の方が。
- 649 :名無しで叶える物語:2022/02/20(日) 23:27:24.01 ID:WjGgZNKC.net
- 栞子『んっ…、あ、あゆむ、さん…』
歩夢『ちゅぱ…、はぁはぁ…どうしたの?はむ…』
栞子『いえ、その…ぁん…な、んでもないで、す…あっ…』
でも、流石に触ってほしいとは言い出せなかった。
偏に羞恥心ゆえに。
けれど。
歩夢『ぷは…ねぇ、栞子ちゃん。その…そろそろ下も、触っていいかな?』
唐突に歩夢さんの方からそう提案された。
驚いて思わず歩夢さんの顔を見つめてしまう。
口には出していないはずだし、表情に出ていたのだろうか。
もしそうなら、恥ずかしすぎる。
歩夢『え、だ、だめなら良いんだよ?』
私の反応をどう捉えたのか、慌てた様子の歩夢さん。
これは…どっちだろう?
栞子『…歩夢さんが、したいなら…』
歩夢『えっと…うん、したい』
栞子『なら、その…いいですよ』
歩夢『ありがとう…優しくするね?』
そのまま歩夢さんは私の向正面に移動し、下着に手をかけた。
歩夢『すごく素敵なショーツだけど、脱がせるよ?』
栞子『いちいち言わなくて、いいですから…』
胸への愛撫により、さっきから大事なところを中心にして濡れが広がってしまっているのを感じていた。
そんな下着を、まじまじと正面から歩夢さんに見られているというだけで顔から火が出そうだというのに。
- 650 :名無しで叶える物語:2022/02/20(日) 23:32:05.26 ID:WjGgZNKC.net
- 腰を浮かせて下ろしやすくすると、歩夢さんは一息に私のショーツを下ろした。
歩夢『………』
そのままじっと動かなくなる歩夢さん。
思わず体勢を支えていた内の片方の手で、私は自らの秘部を隠した。
栞子『じ、じろじろ見すぎです…』
歩夢『あ…ごめん…その、綺麗だよ』
栞子『そ、そんな訳ありません…』
歩夢『そんなことある。凄く綺麗で、栞子ちゃんのって感じがするよ』
栞子『私の感じって…どういう意味ですか…』
歩夢『説明してほしければするけど…』
栞子『…いえ、結構です』
アソコの見た目の感想をつらつらと言われるなんて、流石に付き合って初日の私たちには高度すぎる。
別に将来言ってほしいということも全くないけれど。
- 651 :名無しで叶える物語:2022/02/20(日) 23:39:23.23 ID:WjGgZNKC.net
- 歩夢『じゃあ、手を退けて見せて?ちゅう…』
正面から覆いかぶさるように仰向けに枕に押し倒され、また唇を奪われる。
栞子『んむ…は、やっぱり、だめですぅ…ちゅぱ、は、恥ずかしい…』
歩夢『ちゅ…大丈夫だよ。ちょっと見ただけでも、すっごく可愛いかったから』
栞子『…本当ですか?』
歩夢『うん』
先に惚れた弱みのせいなのか、さっきから歩夢さんにキスされると頭が上手く回らない。
私は自分の手を退けて、一番大事なところを歩夢さんに晒した。
歩夢『ありがとう、ちゅっ…じゃあ、触るね?』
歩夢さんの指先がそこに触れる。
栞子『ちゅっ、…はぃ…ぁんん…!』
さっきまで物足りないと思っていたにも関わらず散々に焦らされた私は、それだけで軽く達してしまいそうになった。
両手で頭を載せている枕をギュっと握りしめて耐える。
歩夢『ちゅ…栞子ちゃん、大丈夫?』
栞子『だ、大丈夫ですから、続けて…んっ、ください』
歩夢『分かったよ…頑張って、気持ちよくなれるようにするね…ちゅ…』
そう言って、歩夢さんは指の腹で適度に陰核を刺激し、私の反応を聞きながら感じる場所を探し始めた。
その度にぴちゃぴちゃ音が立ち、私は快感と羞恥でどうにかなりそうだった。
歩夢『ここ?…うーん、ねぇ、栞子ちゃん、ちゅっ…声、我慢しないで?気持ちいいところ、私に教えて?…ちゅ』
栞子『んむっ、んっ…あっ、ああっ、くぅぅ…ちゅ、ちゅむぅ、はふ…ちゅぅ、ぁんっ』
はしたない女だと歩夢さんに思われたくない一心で我慢しているけれど、限界は近い。
それがバレているのか、いないのか、歩夢さんは溢れてくる蜜を掬いながら愛撫を続ける。
部屋の中にはくぐもった私の声と時折キスの音、そして水音のみが響くようになった。
- 652 :名無しで叶える物語:2022/02/20(日) 23:41:49.77 ID:WjGgZNKC.net
- 歩夢『…ねぇ、栞子ちゃん』
栞子『ぁん、んんっ…あ、…ああっ』
聞こえているけれど、返事をする余裕がない。
会話をしようとすると、我慢している喘ぎ声が漏れてしまう。
歩夢『その…指、入れてもいい?その、中に』
…いま、指を入れると言わなかっただろうか。
いまでもこんな状態なのに、歩夢さんの指なんて入れたら…一体どれほど気持ちいいだろうか。
だめだ、思考も追い付かなくなってきた。
気持ちよくなっちゃだめなのに…あれ?なんで気持ちよくなっちゃだめなんだっけ?
だって、気持ちいい方がいいに決まってるのに。
あれ?
栞子『ぁっ、な、なか?…い、いれてっくださ、い…あんっ、あゆむしゃんの、ゆび、欲しいっ、んむっ…』
歩夢『ちゅ…、うん…。入れるね?…痛かったら、叩いていいから、止めてね?』
歩夢さんはさっきまで腹を秘部にあてがって愛撫してくれていた指を立てると、そのまま少しずつ沈めていった。
栞子『あっ、ああっ…なか、入ってきて、るぅっ…あゆむさっ…っちゅぅ』
歩夢『ちゅっ…栞子ちゃん、指、わかる?痛くない?…ちゅぅ』
栞子『いたく、あぁんっ、ないですぅ、きもちいっ…ちゅ、あゆむさん、の、ゆびぃっ…あっ、ちゅう、すきぃっ、あっ…』
すっかりびしょ濡れになって蕩けてしまっていた私の穴は、すんなりと歩夢さんの指を飲み込んだ。
歩夢『あったかい…動かすね?』
栞子『は、ぃンっ…』
ゆっくりと中を擦りつつ、指を引き出しては沈め、歩夢さんは今度は内側で私の感じる場所を探し始める。
歩夢『栞子ちゃん、どう?…ちゅぅ』
栞子『はぃ、いいぃっ、です…あっ ちゅむ…はぁ あゆ、むさ…あぁ…ぁあ!』
もはや私は、やがてくるその瞬間をただ期待しながら、喘ぎ声を我慢することができなくなっていた。
- 653 :名無しで叶える物語:2022/02/20(日) 23:44:12.18 ID:WjGgZNKC.net
- その瞬間はすぐにやってきた。
歩夢さんの指先が私の一番気持ちいい所を擦ったのだ。
歩夢さんが触れた場所はいつも一人でする時に、刺激している場所だった。
瞬間、思わず腰が跳ねる。
栞子『ぁあ゛っ……っ』
さっきまでとは明らかに違う。
少し触っただけのはずなのに、一瞬目の前がチカチカした。
歩夢『…栞子ちゃん、ここ?』
栞子『あっ、だ、だめですっ、そこっ…だめぇっ…!』
けれど、歩夢さんはようやく見つけた私のスポットをやさしく指先で擦る。
栞子『あっ、ああっ…!きもひぃっ そこッ…んっむ ちゅ…ぱ、はぁ…だ、だめっですぅっ!』
けれど、自分でした時にはこんなに感じたことはない。
これまで経験したことのない快楽の波に、私は恐怖さえ感じていた。
歩夢『ちゅっ、栞子ちゃん…、もっと、こえ、きかせて…ちゅ、気持ちよくなって?』
栞子『あ、あ゛ぁっ…クるっ!ちゅっ、ぷぁ、はぁ…イっ…あゆ、むさ…あ゛っ…』
歩夢『いいよ?歩夢さん…ちゅ… はぁはぁ、我慢しないで?イって?イってっ…』
栞子『い゛…っ、ッッ、 ぅ……あ゛………ぁ…』
一気に脳天まで電流のような快感の波が突き抜ける。
それと同時、腰が自然と浮き腹筋が痙攣したのを感じた。
それらが治まると、歩夢さんは私からゆっくりと指を引き抜いた。
栞子『あ……ヒュっ、は、はふ、あ、あゆむさん…みないでください…わたしいま、きっと、んっ…ひどい、かお…』
歩夢『ふふ、ううん。そんなことない。凄く可愛いよ。上手にイケたね……ちゅ…』
栞子『…ちゅっ…ゅむさん…す、きぃ…』
歩夢『うん。私も、好きだよ…ちゅ』
栞子『…ちゅぅ…』
歩夢さんからのキスに応えたのが最後。
強烈な疲労感からくる眠気に、私の意識は薄れていったのだった。
- 654 :名無しで叶える物語:2022/02/20(日) 23:45:28.29 ID:WjGgZNKC.net
- お目汚し失礼しました。
回想以上なので次回更新から続き書いていきます。
そろそろ終わりも近いですので、お付き合いいただけると嬉しいです。
- 655 :名無しで叶える物語:2022/02/20(日) 23:47:14.63 ID:WjGgZNKC.net
- あと、最近しまむらになりがちですが、引き続き1が書いてます。
- 656 :名無しで叶える物語:2022/02/20(日) 23:51:16.63 ID:YUslKuDd.net
- えろは♥もりもりみたいなのが好きだったけどこれえっろ
- 657 :名無しで叶える物語:2022/02/21(月) 02:20:20.01 ID:DR9OPIUi.net
- えっろ
- 658 :名無しで叶える物語:2022/02/21(月) 03:27:32.02 ID:Kc26G4z1.net
- しお❤
- 659 :名無しで叶える物語:2022/02/21(月) 07:51:24.65 ID:O64JiLWT.net
- 支援
- 660 :すいません:2022/02/21(月) 13:16:41.09 ID:rtaHFCPH.net
- その瞬間はすぐにやってきた。
指先が私の一番気持ちいい所を擦ったのだ。
歩夢さんが触れた場所はいつも一人でする時に、刺激している場所だった。
思わず腰が跳ねる。
栞子『ぁあ゛っ……っ』
さっきまでとは明らかに違う。
少し触っただけのはずなのに、一瞬目の前がチカチカした。
歩夢『…栞子ちゃん、ここ?』
栞子『あっ、だ、だめですっ、そこっ…だめぇっ…!』
けれど、歩夢さんはようやく見つけた私のスポットをやさしく指先で擦る。
栞子『あっ、ああっ…!きもひぃっ そこッ…んっむ ちゅ…ぱ、はぁ…だ、だめっですぅっ!』
自分でした時にこんなに感じたことはない。
これまで経験したことのない快楽の波に、私は恐怖さえ感じていた。
歩夢『ちゅっ、栞子ちゃん…、こえ、きかせて…ちゅ、気持ちよくなって?』
栞子『あ、あ゛ぁっ…クるっ!ちゅっ、ぷぁ、はぁ…イっ…あゆ、むさ…あ゛っ…』
歩夢『いいよ?栞子ちゃん…ちゅ… はぁはぁ、我慢しないで?イって?イってっ…』
歩夢さんの指が私のお腹側に向かってギュッっと押しつけられる。
栞子『 い…っ、ッッ、 ぅ……あ゛…………』
その瞬間、一気に脳天まで電流のような快感の波が突き抜けた。
それと同時、腰が自然と浮き腹筋が痙攣したのを感じた。
それらが治まると、歩夢さんは私からゆっくりと指を引き抜いた。
栞子『あ……ヒュっ、は、はふ、あ、あゆむさん…みないでください…わたしいま、きっと、んっ…ひどい、かお…』
歩夢『ふふ、ううん。そんなことない。凄く可愛いよ。上手にイケたね……ちゅ…』
栞子『…ちゅっ…ゅむさん…す、きぃ…』
歩夢『うん。私も、好きだよ…ちゅ』
栞子『…ちゅぅ…』
歩夢さんからのキスに応えたのが最後。
強烈な疲労感からくる眠気に、私の意識は薄れていったのだった。
- 661 :名無しで叶える物語:2022/02/21(月) 13:17:34.89 ID:rtaHFCPH.net
- 最後の投稿間違いと、抜けがあったので再投稿しました。
- 662 :名無しで叶える物語:2022/02/21(月) 13:23:27.01 ID:hMYKGsI+.net
- ᶘイo⇁oナ川…
ᶘイ^⇁^ナ川
- 663 :名無しで叶える物語:2022/02/21(月) 23:01:31.17 ID:+2YIrU1G.net
- エッッッッッッッ
- 664 :名無しで叶える物語:2022/02/22(火) 07:24:12.71 ID:zlhaAJ/x.net
- 支援
- 665 :名無しで叶える物語:2022/02/22(火) 22:47:31.11 ID:WLEbxhUZ.net
- ほ
- 666 :名無しで叶える物語:2022/02/23(水) 13:16:24.03 ID:C1Jn9g7o.net
- 支援
- 667 :名無しで叶える物語:2022/02/23(水) 22:28:16.36 ID:z3kie3hL.net
- ほ
- 668 :名無しで叶える物語:2022/02/24(木) 07:22:53.44 ID:kDWsxCxM.net
- 支援
- 669 :名無しで叶える物語:2022/02/24(木) 22:07:41.14 ID:7T6peBE4.net
- ほ
- 670 :名無しで叶える物語:2022/02/25(金) 07:21:53.14 ID:98Oxuh+T.net
- 支援
- 671 :名無しで叶える物語:2022/02/25(金) 22:49:17.20 ID:z9TsHWTb.net
- しお
- 672 :名無しで叶える物語:2022/02/26(土) 13:02:51.86 ID:LG7jKt4/.net
- しお〜
- 673 :名無しで叶える物語:2022/02/27(日) 00:07:40.04 ID:NbUT7cYX.net
- ほ
- 674 :名無しで叶える物語:2022/02/27(日) 14:05:28.10 ID:j4gA2e43.net
- しお?
- 675 :名無しで叶える物語:2022/02/28(月) 01:31:47.87 ID:MoPZ/5F9.net
- ほ
- 676 :名無しで叶える物語:2022/02/28(月) 11:21:32.42 ID:6BMJw2ze.net
- しお
- 677 :名無しで叶える物語:2022/02/28(月) 22:25:19.02 ID:SYbJ8VLH.net
- ほ
- 678 :名無しで叶える物語:2022/03/01(火) 07:25:30.84 ID:q2aURKb7.net
- 支援
- 679 :名無しで叶える物語:2022/03/01(火) 22:29:43.16 ID:nU3+6YoN.net
- ほ
- 680 :名無しで叶える物語:2022/03/01(火) 23:53:48.39 ID:lMxxdpPf.net
- お待たせしてすいません…明日退勤したら続き書くので、深夜更新になると思います…
そろそろ終わる予定です…
- 681 :名無しで叶える物語:2022/03/02(水) 01:50:09.73 ID:59NA9SNM.net
- お疲れさまです!
- 682 :名無しで叶える物語:2022/03/02(水) 02:27:16.94 ID:82ZtcSax.net
- 待つしお
- 683 :名無しで叶える物語:2022/03/02(水) 18:46:26.80 ID:WtdDOOi5.net
- しお…
- 684 :名無しで叶える物語:2022/03/03(木) 07:38:24.04 ID:GGiAj9/o.net
- 支援
- 685 :名無しで叶える物語:2022/03/03(木) 14:42:42.32 ID:61ozCbGr.net
- すいません…昨日は寝落ちしてしまいました
これからまた仕事ですので、明日推敲し投稿します…
- 686 :名無しで叶える物語:2022/03/03(木) 17:15:43.79 ID:MIcpUbex.net
- ゆっくりでいいしお
- 687 :名無しで叶える物語:2022/03/03(木) 21:11:37.51 ID:Q2eAQwuX.net
- 無理しないでいいしお
- 688 :名無しで叶える物語:2022/03/04(金) 08:05:38.60 ID:d35lseEd.net
- 楽しみにしてるしお
- 689 :名無しで叶える物語:2022/03/04(金) 21:40:18.41 ID:stvKd6JA.net
- いつまでも待ってるしお
- 690 :名無しで叶える物語:2022/03/05(土) 09:22:23.82 ID:9a8bKRaZ.net
- 楽しみしお〜
- 691 :名無しで叶える物語:2022/03/05(土) 13:06:53.74 ID:wgH9llIo.net
- ウソついた罰としてたまにぽむしおSSを書けしお
- 692 :名無しで叶える物語:2022/03/05(土) 13:35:52.85 ID:g5FFvA8Y.net
- そうだ、昨日は結局最後の方は歩夢さんにされるがままで、そのまま疲れて眠ってしまったんだった。
栞子「ええと、昨日はその…すいませんでした」
歩夢「うん?えっと…何のこと?」
栞子「だって、私ばっかりその…歩夢さんにしていただいてばかりで…」
朝っぱらから私は何を言っているのか。
歩夢「ふふ、私は栞子ちゃんの可愛いところがみられたから大満足だよ」
歩夢さんは、にっこりと笑ってそう言った。
ううん、私とは余裕が違う気がする。
栞子「そ、そうですか…ヨカッタデス」
次があれば、いや、かならず次は私から誘おう。
そして、今度こそ私が…と、静かに心に決めたのだった。
- 693 :名無しで叶える物語:2022/03/05(土) 16:08:46.27 ID:g5FFvA8Y.net
- 栞子「ごちそうさまでした。とても美味しかったです」
歩夢「うん、お粗末さまでした」
歩夢さんがお皿を片付けはじめたのを見て、慌てて自分の分を重ねて洗い場に運ぶ。
キッチンには食器洗浄乾燥機完備だったので、さっと水で流して並べるだけで後は機械が全部やってくれた。
どの部屋に行っても最新式の家電が並んでいるのは、目新しいものが好きなランジュらしい。
リビングに戻ると、歩夢さんがお茶を入れてくれていた。
栞子「すいません、ありがとうございます」
歩夢「ううん、気にしないで」
緑茶を啜り、二人で一服する。
歩夢「ふぅ、今日はどうやって過ごそっか。あ、栞子ちゃんはお仕事?邪魔しないように、私外に出てた方がいいかな?」
栞子「そんな、歩夢さんを邪魔だなんて…、それに、今日はもう上司にお休みの許可をもらいました」
自宅で仕事をさせてもらっていたことといい、職場には最近迷惑をかけっぱなしだ。
歩夢「あ、そうだったんだ。じゃあ、今日はゆっくりできるね。さっき検索してたら、この前一緒にみた映画の続編が配信してたよ」
そう言って、歩夢さんが無邪気にスマホの画面を見せてくれた。
この上なく素晴らしい提案に心がグラつきそうになるが、実は今日することはもう決めている。
上司にもその事情を話して、当日にも関わらず休みを貰えたのだ。
でもきっと、三船が経営している会社でなければ許されなかっただろうけれど。
栞子「実は今日はやることがありまして…」
歩夢「え、そっかぁ。そうだよね、わざわざお仕事を休んだんだもんね」
栞子「すいません…」
- 694 :名無しで叶える物語:2022/03/05(土) 16:10:06.11 ID:g5FFvA8Y.net
- 歩夢「ううん。大丈夫だよ。でも、何をするの?」
栞子「…やはり、一度実家に帰ろうと思いまして」
歩夢「…ええ!?急にどうしたの?何か、忘れものとか?」
栞子「いえ、そうではなくてですね…。昨日、この件の解決には姉さんが動いてくれていると言ってましたよね?」
歩夢「え?う、うん。そのはずだよ」
栞子「実は、そこが心配なんです」
歩夢「心配?…だ、大丈夫だよ。真面目な時の薫子さん、凄く頼りになるし」
真面目な時の、という枕を入れなくてはならないのが少し悲しい…。
栞子「それはそうなのですが、今回は違う理由でして…。ここからは身内の恥ずかしい話なのですが…」
だから、正直歩夢さんにはあまり聞いてほしい話ではないのだけれど。
ちら、と歩夢さんの反応をうかがうと、真剣な顔でこちらを見ていた。
歩夢「…それって、これからは私にも関わる話ってことでしょ?なら、聞かせてほしいな」
確かにこれから真剣なお付き合いをしていくつもりなら、いつかは話しておくべきことかもしれない。
栞子「…わかりました。では、順を追って説明していきますね」
- 695 :名無しで叶える物語:2022/03/05(土) 16:10:25.77 ID:g5FFvA8Y.net
- 栞子「歩夢さんは、元々は姉さんが三船家の跡取りだったことをご存じですか?」
歩夢「うん。でも、スクールアイドルのことでご実家と揉めて、今は栞子ちゃんがそうなったんだよね」
そう、私があの頃スクールアイドルを目の敵にしてしまい、同好会とぶつかっていた原因でもある。
栞子「実はその時、一番姉さんと揉めたのが母なんです」
当主の父が家にほとんど帰らないのもあり、母は実質的に家を取仕切っている。
何をしても要領が良いけれど性格が破天荒な姉さんは成長するにつれ、格式と礼儀を重んじる母との折り合いが悪くなっていった。
そして、姉が高校生の頃にスクールアイドルにのめり込んでしまったことが決定的だった。
栞子「父の仲裁で最悪の事態には至りませんでしたが、顔を合わせる度に喧嘩になるので、成人してからは特に姉もあまり実家へ寄り付かなくなりました」
母も一時は塩を撒く勢いだったので、あれは実質追い出されたようなものだった。
歩夢「そうだったんだ…」
栞子「そんな姉さんが、直接母と交渉をする…。あちらが取り合ってくれたとしても、私には喧嘩になる未来しか見えません」
歩夢「うーん…でも、薫子さん作戦があるみたいだったよ?」
栞子「作戦ですか?」
歩夢「うん、間に立ってくれる助っ人を頼むんだって。誰かは教えてくれなかったけど、当てはあるって言ってたよ?」
栞子「助っ人…」
母と姉の間を取り持てる立場の人は私を除くと一人しか思い浮かばないが…。
あの人はあの人であまり母に対して強く意見を言っているのを見たことがない。
それにそもそも、来てくれるかすらも怪しい。
なにせ、忙しすぎる人だ。
私とてここ数年は顔も見ていない。
- 696 :名無しで叶える物語:2022/03/05(土) 16:11:06.46 ID:g5FFvA8Y.net
- 栞子「助っ人に期待が持てるかは置いておくとして…。どちらにせよ当事者を欠いた交渉を上手くいかせるのは難しいでしょうし。それに、私はそもそも姉が交渉の席に着くこと自体、反対です」
歩夢「ええと。それは、お義母さんと薫子さんの仲が悪いこと以外に理由があるってこと?」
栞子「はい。…先ほども言ったように、姉さんは一部を除いて母さんを中心とした実家の面々とあまり折り合いがよくありません。それに、今回は三船の跡取りに関わることですから、一度跡取りの座を追われた姉さんが、次の跡取りの縁組に関することに口を出すのはまずいと思うんです」
本人にそんな気がなくても、傍から見れば落ち着いていた跡取りの問題に石を投げる行為に見られかねない。
栞子「もし今回のことが上手くいっても、禍根が残れば本格的に姉さんと母さんが対立することになりかねません。それに、最悪の場合には縁切りということも…」
歩夢「そ、そんなまさか…」
母とてさすがにそこまでしたいとは思っていまいが、他の親類の目もある。
古い家柄というものは、どこまで行ってもしがらみが多いものだ。
どちらにせよ私のことで母親と姉の仲がこれ以上拗れるのは見逃せない。
栞子「なので、話がこれ以上拗れる前に私が直接母と話してきます」
歩夢「…大丈夫かな。また閉じ込められたりしない?」
栞子「ない、とは言い切れないのが悲しいところですが。別に檻にいれられる訳ではありませんし、私ももう大人ですから、歩夢さんの安全さえ確保されているなら大丈夫ですよ」
歩夢「え、私?」
…口が滑った。
栞子「い、いえ、ほら、歩夢さんが心の支えという意味でですね」
歩夢「そ、そっか…。うん…」
苦しかったか?とは思ったけれど、歩夢さんは少し照れた顔をしただけだった。
どうやら誤魔化せたらしい。
- 697 :名無しで叶える物語:2022/03/05(土) 16:12:08.22 ID:g5FFvA8Y.net
- 栞子「コホン。ということなので、これから実家に行ってきますね」
歩夢「…せめて、薫子さんに連絡だけでもしちゃだめなの?」
栞子「…あの人は普段滅茶苦茶に振り回すくせに、時々ものすごく過保護になるんです。連絡をすれば、来るとも言わずにやってきてしまいます」
歩夢「それだけ栞子ちゃんのことが心配なんだよ」
栞子「それは…そうなんでしょう。ですが、私ももう大人ですから。これ以上姉や友人の手を借りなくとも、大丈夫です。母親と話すだけなんですから」
歩夢「そっか…分かったよ」
納得してくれたようでなによりだ。
さて。今日は気合を入れなくてはなるまい。
私の反抗期は姉に向かってしまっていた面もあるので、思えば面と向かって母親と対峙する機会があまりなかったかもしれない。
歩夢「なら、代わりに私が行くね?」
この機会に、腹を割って話せるといいのだけれども…うん?
栞子「…いま、なんと?」
歩夢「私も一緒に行くって言ったんだよ?」
栞子「いや、駄目ですよ!」
歩夢「どうして?」
栞子「どうしてって…」
危ないから?いや、所詮は私の実家だし別に物理的に危険なことはないはずだ。
最初に私が母の言うことに従ったのだって、フラれた身でありながら歩夢さんに迷惑をかける可能性を考えたからに過ぎない。
- 698 :名無しで叶える物語:2022/03/05(土) 16:12:32.81 ID:g5FFvA8Y.net
- 歩夢「栞子ちゃん、さっき言ったよね。自分のことだからお姉さんや友達の手は借りないって。なら、私はどうかな?」
ならお付き合いしている今なら巻き込んで良いのか?
いや、良くはないだろう。
栞子「…母に嫌なことを言われるかもしれませんし」
歩夢「例えばどんなことを言われるの?」
栞子「え、それは…その…」
たまに口の過ぎる人だから、いくつか言われそうな嫌味を思いついたが、それを私が歩夢さんに言うのは憚れた。
歩夢「大丈夫。お義母さんにご挨拶に行くだけだよ。一緒に、お付き合いを認めて貰いにいこ?」
こちらをまっすぐ見つめる歩夢さん。
この目には昔から弱い。
栞子「う…。はぁ、分かりました。いずれにしても、いつかは紹介しなければならないですしね」
歩夢「うん。じゃあ、さっそく準備しよっか。服装はどんな感じがいいかな、お土産も買って行った方がいいよね」
そう言うと、歩夢さんはスマホで近くのデパートを検索し始めた。
この人には、一生敵わないのだろうな…。
とにかく、一緒に来てくださる以上は私が守らないと。
…たとえ、そのために母と対立することになっても。
- 699 :名無しで叶える物語:2022/03/05(土) 16:12:46.20 ID:g5FFvA8Y.net
- 遅くなり、すいませんでした。
- 700 :名無しで叶える物語:2022/03/05(土) 21:12:29.03 ID:8RoKDSY/.net
- 身体に気を付けて自分のペースで書くしお
- 701 :名無しで叶える物語:2022/03/05(土) 21:35:04.30 ID:qdy2SBS4.net
- お疲れさましお
- 702 :名無しで叶える物語:2022/03/05(土) 22:10:00.05 ID:JRuE7koO.net
- 決戦は金曜日しお
- 703 :名無しで叶える物語:2022/03/06(日) 13:03:59.90 ID:GDLF2Wlw.net
- 楽しみしお
- 704 :名無しで叶える物語:2022/03/07(月) 00:48:46.89 ID:Vw5drKE3.net
- ぽむぅ
- 705 :名無しで叶える物語:2022/03/07(月) 19:58:34.29 ID:Vw5drKE3.net
- しお
- 706 :名無しで叶える物語:2022/03/08(火) 07:26:22.56 ID:u3+kAben.net
- 支援しお
- 707 :名無しで叶える物語:2022/03/08(火) 22:19:31.35 ID:tqaJm9qk.net
- 楽しみしお
- 708 :名無しで叶える物語:2022/03/09(水) 07:05:01.83 ID:s+9pnWVc.net
- 期待しお〜
- 709 :名無しで叶える物語:2022/03/09(水) 22:37:09.09 ID:yIU+gfZA.net
- 支援しお
- 710 :名無しで叶える物語:2022/03/10(木) 09:07:54.84 ID:fUmDh/Lc.net
- ほしお
- 711 :名無しで叶える物語:2022/03/10(木) 22:41:32.66 ID:xTJH21Wo.net
- 支援しお
- 712 :名無しで叶える物語:2022/03/11(金) 10:17:24.43 ID:XIGDeOIv.net
- 期待
- 713 :名無しで叶える物語:2022/03/11(金) 21:52:01.55 ID:sGgL7acy.net
- ほ
- 714 :名無しで叶える物語:2022/03/12(土) 06:50:20.90 ID:mwtBhVCR.net
- 支援
- 715 :名無しで叶える物語:2022/03/12(土) 21:42:11.61 ID:PeM6CMOx.net
- ぽむぅ…
- 716 :名無しで叶える物語:2022/03/13(日) 10:49:01.28 ID:UKtL0M38.net
- しお
- 717 :名無しで叶える物語:2022/03/13(日) 20:15:56.24 ID:FTvHIdD6.net
- 昼過ぎ、私たちは東京行きの電車に乗っていた。
平日の昼間だからなのか車内は比較的に空いており、座席にも座ることができた。
服装は、アイボリーの総レースのブラウスに、深緑のロングスカートを選んだ。
清楚な組み合わせだし、栞子ちゃんにも確認してもらったから問題はないはずだ。
歩夢「いい感じのお菓子が売っててよかったね」
栞子「はい」
歩夢「お義母さんの口に合えばいいんだけど…」
栞子「…そうですね」
並んで座る栞子ちゃんも派手すぎない範囲でおしゃれしているけれど、その表情はあまり明るくない。
というか、緊張している感じかな。
歩夢「ご実家には、帰るっていうのは連絡したんだよね?」
栞子「はい。電話で先ほど伝えました」
歩夢「お義母さん、私にも会ってくれるかな?お留守ってことはないよね?」
栞子「出たのは母ではありませんでしたが、外出していないことは確認できました。会ってくれるかは…すいません、保証はできません」
歩夢「そっかぁ…」
栞子「ですが、何があっても歩夢さんは私が守ります!」
歩夢「…うん」
栞子ちゃんはそう言ってくれるけど、私だって今回は栞子ちゃんを守るためについてきたつもりだ。
そんな私の心の中の決意を伝えるように、お膝の上にギュッと握りしめていた栞子ちゃんの手を上からそっと握ると、少し驚いたような反応をしてから握り返してくれた。
まだ恋人同士のスキンシップにもお互い慣れていない。
そのまま上野駅に着くまで、私たちは座席の上で手を繋いでいた。
- 718 :名無しで叶える物語:2022/03/13(日) 20:19:57.51 ID:FTvHIdD6.net
- 上野の改札を出ると、すぐに栞子ちゃんのご実家の使用人と名乗る女の人が待っており、お家の前まで車で乗せてくれた。
改めてご実家を見ると、栞子ちゃんが本当に良い所のお嬢さんなのだと実感する。
都内に平屋のこんなに立派な木造住宅を建てるのに、今だと一体いくらかかるだろうか。
栞子「…母は怒っているようです」
私がお家を見上げていると、栞子ちゃんが隣でポツリとそう言った。
歩夢「え?どうして?」
栞子「先ほど迎えに来てくれたのは、母が特に気に入っている使用人で、いつも自分の運転手に使っている方です」
歩夢「ええと…だから?」
栞子「他の人の送迎に彼女を使っているのを見たことがありません。きっと、確実に自分のところに連れてくるために寄こしたのでしょう」
なるほど。
いわば側近を寄こしてきたということか。
でも、それなら。
歩夢「それだけ栞子ちゃんが心配だったってことじゃないの?」
栞子「…そうでしょうか」
歩夢「きっとそうだよ」
無責任な励ましだ。
私はまだお義母さんがどんな人なのかも知らないのに。
けれどその答えも、きっとこの後分かる。
栞子ちゃんがインターホンを押して、向こうの人と一言二言話すと、ガタンと音がして門が開いた。
内側に通って振り返ると、さっきのが閂が抜かれる音だったと分かる。
栞子「…行きましょう」
歩夢「うん」
お土産の入った紙袋の取手を握る手にも、自然と力が入った。
出る時は2人揃って笑顔でこの門を通れるように、私も頑張らないと。
- 719 :名無しで叶える物語:2022/03/13(日) 21:05:46.95 ID:A/d/rYyP.net
- しおっ!
- 720 :名無しで叶える物語:2022/03/13(日) 22:39:16.05 ID:xOhHLeV9.net
- @cメ*˶ˆ ᴗ ˆ˵リ
- 721 :名無しで叶える物語:2022/03/14(月) 06:39:54.29 ID:1TnZgEif.net
- 支援
- 722 :名無しで叶える物語:2022/03/14(月) 22:52:13.03 ID:Uq+7oupp.net
- しお
- 723 :名無しで叶える物語:2022/03/15(火) 07:23:46.99 ID:tUi8VNHQ.net
- 支援
- 724 :名無しで叶える物語:2022/03/15(火) 22:12:44.87 ID:GUYQOyug.net
- しお
- 725 :名無しで叶える物語:2022/03/16(水) 07:23:07.08 ID:5FqVh4Yl.net
- 支援しお
- 726 :名無しで叶える物語:2022/03/16(水) 22:12:19.00 ID:XN05+xD+.net
- しおん
- 727 :名無しで叶える物語:2022/03/17(木) 07:15:06.99 ID:U1Gv+Fbi.net
- ぽ…ぽ…
- 728 :名無しで叶える物語:2022/03/17(木) 22:58:11.72 ID:Ff5jJjMc.net
- 支援
- 729 :名無しで叶える物語:2022/03/18(金) 12:07:18.45 ID:x8mHeDql.net
- しお
- 730 :名無しで叶える物語:2022/03/18(金) 22:16:05.79 ID:G4FPEOng.net
- 支援
- 731 :名無しで叶える物語:2022/03/19(土) 09:35:29.39 ID:g27kbGSi.net
- しお〜
- 732 :名無しで叶える物語:2022/03/19(土) 21:55:39.47 ID:sM7Fa50R.net
- しお
- 733 :名無しで叶える物語:2022/03/20(日) 10:11:32.54 ID:5JMqZK5A.net
- しお〜
- 734 :名無しで叶える物語:2022/03/20(日) 22:35:34.14 ID:tZtpAIl5.net
- しおってぃー
- 735 :名無しで叶える物語:2022/03/20(日) 22:45:14.53 ID:lg8HMFHr.net
- 続きが楽しみすぎる
- 736 :名無しで叶える物語:2022/03/21(月) 11:01:41.31 ID:OsvX5L3c.net
- 支援
- 737 :名無しで叶える物語:2022/03/21(月) 21:45:04.17 ID:j8JWcR0l.net
- しお
- 738 :名無しで叶える物語:2022/03/22(火) 02:59:07.05 ID:xVDWUaYo.net
- しお
- 739 :名無しで叶える物語:2022/03/22(火) 06:51:49.37 ID:35htYiek.net
- 支援
- 740 :名無しで叶える物語:2022/03/22(火) 20:59:49.57 ID:jC59Ubaw.net
- しお
- 741 :名無しで叶える物語:2022/03/23(水) 07:21:53.63 ID:APM/MrEo.net
- しお〜
- 742 :名無しで叶える物語:2022/03/23(水) 19:24:56.09 ID:H4t1o7xW.net
- お待たせしてすいません、明日急に休みを貰えたので明日更新します。
- 743 :名無しで叶える物語:2022/03/23(水) 19:51:54.87 ID:/lYzbA59.net
- ᶘイ^⇁^ナ川
- 744 :名無しで叶える物語:2022/03/24(木) 00:15:37.74 ID:GwDIdIfr.net
- しぉ♡しぉ♡♡
- 745 :名無しで叶える物語:2022/03/24(木) 07:19:34.50 ID:QUkPiyjA.net
- 楽しみしお
- 746 :名無しで叶える物語:2022/03/24(木) 20:04:19.21 ID:RodsiR09.net
- しお…しお……
- 747 :名無しで叶える物語:2022/03/25(金) 07:20:49.97 ID:b+eUD/I+.net
- しおってぃー
- 748 :名無しで叶える物語:2022/03/25(金) 08:10:18.46 ID:D4NVSTVM.net
- すいません…。
家の用事が思ったよりありまして、キリの良いところまで書き上げられませんでした。
今日明日も仕事は休みなので、その中で更新しようと思います。
もうしばらくお待ちください。
- 749 :名無しで叶える物語:2022/03/25(金) 14:16:17.92 ID:gWoQxtdB.net
- しおっ!
- 750 :名無しで叶える物語:2022/03/25(金) 23:48:28.67 ID:Ls6dJXpK.net
- ゆっくり待つしお
- 751 :名無しで叶える物語:2022/03/26(土) 10:22:32.56 ID:QrW6CUkP.net
- 栞子ちゃんが玄関のドアを開けると、着物姿の女の人が立っていた。
50歳くらいに見える。
あんまり似ていないけれど、この人が栞子ちゃんと薫子さんのお母さんなのかな?
「お帰りなさいませ、お嬢様。お部屋で奥様がお待ちです。お連れの方も応接にご案内しますので、少々お待ちください」
そう言ってこちらに見事なお辞儀をしてきた女の人に対して、慌てて頭を下げる。
でも、お義母さんでは無かったみたい。
先走った挨拶をしなくてよかった。
栞子「この人は上原歩夢さん。私の大切な人です。そして、彼女のことについて母に話があります。同席の許可を通してください」
栞子ちゃんが紹介してくれると、それまで不審そうに私の方を見ていた女の人は途端に驚いた顔をした。
「…奥様に確認して参ります。お二方とも履き物をお脱ぎになって少々お待ちください」
女の人はそう言うと、2つスリッパを並べてスッと奥に消えていった。
言われた通りに靴を脱いでスリッパに履き替える。
フワフワしていたりするわけでもないのに、物凄く履き心地の良いスリッパだ。
下らないことに感動していると、女の人が早歩きで戻ってきた。
「…お待たせしました。お二人とも奥へどうぞ」
この時点で引き離されなかったことに内心ホッとしながら、案内をしてくれる女の人について歩く。
襖や障子の並ぶ純和風な廊下は、建物の外観から考えても凄く長く感じた。
- 752 :名無しで叶える物語:2022/03/26(土) 10:23:07.57 ID:QrW6CUkP.net
- ずっと廊下をまっすぐに進み、やがて突き当りで女の人は足を止めた。
そして少し頭をかがめるようにして下げ、襖に向かって声をかける。
「奥様、失礼いたします。お二人をお連れしました」
栞子ママ「入りなさい」
向こうから凛とした声が帰ってきた。
女の人はこちらを振り返り、栞子ちゃんが頷いたのを確認してから、襖を開いてくれた。
栞子「…失礼します」
先に入った栞子ちゃんに続いて私も敷居を跨いで部屋に入った。
6畳くらいの畳の部屋で、部屋の真ん中にちゃぶ台が一つ置いてある。
そして入口から机を挟んで向かい側に、薫子さんにそっくりな顔立ちの着物姿の女性が座っていた。
その顔を一目見て、間違いなく栞子ちゃんと血の繋がった人だと分かった。
でも、凄く若く見える。
少し歳の離れたもう一人の姉です、と紹介されても信じそうな見た目だ。
栞子ママ「…どうしましたか?」
歩夢「い、いえ…。失礼します」
声をかけられて、慌てて並べられた座布団の上に栞子ちゃんに並んで座った。
しまった…。
顔をジロジロ見るなんて不躾に思われただろう。
いきなりの悪印象だ。
- 753 :名無しで叶える物語:2022/03/26(土) 10:23:33.97 ID:QrW6CUkP.net
- 私たちが2人とも席に着くと、さっきの女の人がお茶を出してくれた。
こういう時って、飲んだ方がいいのか飲まない方がいいのか、分からなくなる。
ビジネスマナー的には飲まないほうが良いんだっけ?
栞子ママ「さて、栞子」
私が来る前にマナーについて少しは調べてくるべきだった、と内心後悔していると、お義母さんが口を開いた。
栞子「は、はい」
栞子ママ「まずは、昨日帰ってこなかった言い訳を聞きましょう」
栞子「それは…」
女中さんに連れ去られて、ランジュちゃんのマンションに薫子さんの指示で来て、その後は私と過ごしたのだ。
どこを切り取って言っても、誰かしらの立場が悪くなる。
だから、朝の内にある程度聞かれることを想定してその答えを決めてきた。
交渉の中で虚言を混ぜたとしても、お互いに打ち合わせておけばボロが出るのを防げるからだ。
私たちの要求は2つ。
1つ目は栞子ちゃんのお見合いを断ること。
2つ目は、私と栞子ちゃんのお付き合いを認めてもらうことだ。
でも、栞子ちゃんの話を聞く限り、お義母さんに折れてもらうのはなかなか難しそうだった。
そこで栞子ちゃんが提案してくれた作戦は、こうだ。
栞子「それは、この上原歩夢さんと駆け落ちをしようとしていたからです」
栞子ママ「…は?い、今なんと…」
お義母さんは、私が初めてこの作戦を聞いた時と同じ反応をした。
- 754 :名無しで叶える物語:2022/03/26(土) 10:25:13.95 ID:QrW6CUkP.net
- 栞子「ですから、駆け落ちです。私は望まぬ見合いをさせられ、結婚させられるくらいなら思い人と駆け落ちしようと思い立ち、女中を脅し実行しようとしたのです」
お義母さんは少しの間絶句し、私と栞子ちゃんの間で視線をうろうろさせた後、私の方をキッっと睨みつけた。
いや、そうなるよね。
栞子ママ「あ、あなたが、栞子を誑かしたのですか…?あんなに素直だったこの子を…!」
今にも飛び掛かってきそうな鬼の形相でお義母さんはバッと立ち上がる。
というか少し腰を落としてるし、本当に飛び掛かってこようとしてない?
栞子「お、落ち着いてください、母さん!」
栞子ママ「こ、これが落ち着いていられますか!この女を今すぐに…」
栞子「歩夢さんは、私を説得して駆け落ちを思い止まらせてくれたんです!」
栞子ママ「つまみ出して…。どういうことですか?」
栞子「順を追って説明していきます。なので、まずはどうか落ち着いてください」
一転困惑した表情になったお義母さんは、再び腰を下ろした。
それに対してあくまで冷静な表情の栞子ちゃん。
完全に場の空気を握った感じだ。
ここまでは、良い感じできている。
本当に怖かったけれど、栞子ちゃんの予定通りの流れだ。
- 755 :名無しで叶える物語:2022/03/26(土) 12:12:24.62 ID:x9ASEQ+n.net
- しおっ……!!!
- 756 :名無しで叶える物語:2022/03/26(土) 13:00:50.78 ID:9JXdR8Hk.net
- しおぽむ…!
- 757 :名無しで叶える物語:2022/03/26(土) 13:51:38.06 ID:0m4lhE0p.net
- しおしおっ!
- 758 :名無しで叶える物語:2022/03/26(土) 19:15:01.61 ID:LAzuIYGY.net
- VSしおママ
- 759 :名無しで叶える物語:2022/03/27(日) 07:19:48.71 ID:OsujHqTM.net
- ᶘイ^⇁^ナ川作戦通りしお
- 760 :名無しで叶える物語:2022/03/27(日) 11:40:07.67 ID:wIN3V7sC.net
- 良きしお
- 761 :名無しで叶える物語:2022/03/27(日) 22:26:57.51 ID:i/Waq4Ib.net
- 支援
- 762 :名無しで叶える物語:2022/03/28(月) 15:08:10.83 ID:4P/Fk2vu.net
- よくやったしお
- 763 :名無しで叶える物語:2022/03/29(火) 02:34:40.03 ID:MyQ8d658.net
- ᶘイ^⇁^ナ川
- 764 :名無しで叶える物語:2022/03/29(火) 07:27:08.96 ID:b+rJJk2f.net
- しお
- 765 :名無しで叶える物語:2022/03/29(火) 22:37:35.17 ID:XclcoEOo.net
- 支援しお
- 766 :名無しで叶える物語:2022/03/30(水) 07:28:23.96 ID:/leLw8gn.net
- しお
- 767 :名無しで叶える物語:2022/03/30(水) 21:39:07.87 ID:8G/aayne.net
- 支援
- 768 :名無しで叶える物語:2022/03/31(木) 07:21:02.36 ID:mrd0RzcX.net
- ぽむぅ…
- 769 :名無しで叶える物語:2022/03/31(木) 22:29:04.26 ID:XUr0byNz.net
- しお!
- 770 :名無しで叶える物語:2022/04/01(金) 07:18:40.21 ID:xl/I3NN1.net
- しおってぃー
- 771 :名無しで叶える物語:2022/04/01(金) 22:11:15.03 ID:hdoBv0m8.net
- しお
- 772 :名無しで叶える物語:2022/04/02(土) 13:03:57.56 ID:z1mAl93y.net
- しお
- 773 :名無しで叶える物語:2022/04/02(土) 23:51:05.85 ID:WZoG/DoL.net
- 支援
- 774 :名無しで叶える物語:2022/04/03(日) 20:50:41.45 ID:tzXmxwHZ.net
- 保守す
- 775 :名無しで叶える物語:2022/04/04(月) 07:29:07.63 ID:MVPM4GWY.net
- しお
- 776 :名無しで叶える物語:2022/04/04(月) 19:19:00.80 ID:4RITbYDW.net
- 続きが楽しみですね
- 777 :名無しで叶える物語:2022/04/05(火) 07:18:51.71 ID:XQOTbUJZ.net
- しおってぃー
- 778 :名無しで叶える物語:2022/04/05(火) 19:42:17.48 ID:1V3gwKgs.net
- しお
- 779 :名無しで叶える物語:2022/04/06(水) 07:13:39.66 ID:vcspyHPC.net
- pomb
- 780 :名無しで叶える物語:2022/04/06(水) 14:55:51.29 ID:RBAmIVGC.net
- しおぽむ
- 781 :名無しで叶える物語:2022/04/06(水) 23:35:51.66 ID:8LR0e8d9.net
- しお?
- 782 :名無しで叶える物語:2022/04/07(木) 07:20:57.21 ID:U5Zl0UtP.net
- しお
- 783 :名無しで叶える物語:2022/04/07(木) 15:22:35.83 ID:BzMdAGMP.net
- 今日これから夜勤なので、明日の深夜で更新頑張ります
- 784 :名無しで叶える物語:2022/04/07(木) 18:40:43.66 ID:CogMzngR.net
- 楽しみにしてる
- 785 :名無しで叶える物語:2022/04/08(金) 14:00:54.67 ID:FuXisr0w.net
- 楽しみにしてます!
- 786 :名無しで叶える物語:2022/04/08(金) 17:36:22.49 ID:LAgPl0wq.net
- むー♪
- 787 :名無しで叶える物語:2022/04/09(土) 06:54:27.18 ID:ZwcXJ8tV.net
- すいません…がっつり寝落ちしてたら今になってたので、今日中には上げます…
- 788 :名無しで叶える物語:2022/04/09(土) 13:17:44.18 ID:bG4ljDVE.net
- 無理しないでいいしお!
- 789 :名無しで叶える物語:2022/04/09(土) 13:18:08.80 ID:8TqsV1T3.net
- 楽しみ!
- 790 :名無しで叶える物語:2022/04/09(土) 13:18:47.26 ID:8TqsV1T3.net
- このタイミングで書き込みかぶることなんてあるのか
びっくり
- 791 :名無しで叶える物語:2022/04/09(土) 18:44:44.71 ID:EvFVy2Xe.net
- 乙
- 792 :名無しで叶える物語:2022/04/10(日) 11:38:15.35 ID:huq65awj.net
- しお
- 793 :名無しで叶える物語:2022/04/10(日) 15:24:38.54 ID:pzfR9XKu.net
- お義母さんはお茶を一口飲むと、部屋に入った時と同じすまし顔に戻っていた。
栞子ママ「それで、そちらの…上原さんでしたね?」
名前を呼ばれて気づく。
そういえば、部屋に入ってから自己紹介をしていない気がする。
歩夢「す、すいません。自己紹介が遅くなりました。上原歩夢と言います。ええと、栞子さんは高校の時に同じ部活の後輩でして、それで…」
栞子ママ「ええ、知っていますよ。…スクールアイドル、でしたか?」
歩夢「あ、そ、そうです。ええと、ご存じだったんですね」
栞子ママ「ええ。お見合いの相手のことくらいは調べますよ」
お見合い…。
おそらく、薫子さんが私たちを引き合わせてくれたあのお見合いのことだ。
薫子さんがすべての段取りを仕切っていたみたいだったけれど、そういえばお金は三船家からでているとか、栞子ちゃんも言っていたっけ…。
それで私のことを知っていたんだ。
栞子「…母さん、調べたとはどうやって?」
栞子ママ「昔うちにきたことがあったのでしょう?あの頃は夫が三船を継ぐ前でしたから、ここではありませんでしたが。それでも、当時から私が使っている使用人が覚えていました」
そういえば、高校生の時には何回か栞子ちゃんのお家にお邪魔したこともあったっけ。
当時はお家も広い一軒家って感じだったし、栞子ちゃんのお家はお金持ちなんだなくらいの印象で、まさか跡継ぎ争いがあるレベルとは思っていなかったけれど。
その頃に使用人さんっぽい人に会った記憶がないのは、向こうが一方的に私の存在を認知していたか、あるいは私が家政婦さんか何かと思ってスルーしていたのか。
- 794 :名無しで叶える物語:2022/04/10(日) 15:25:33.99 ID:pzfR9XKu.net
- 栞子「その使用人とは誰ですか?」
栞子ママ「…さっきからなんです。なぜそんなことが気になるのですか?」
栞子「当時は本家の使用人がうちに来ることはほとんどありませんでした。なのに、偶然に歩夢さんと会会うでしょうか。それに、歩夢さんはそのことを覚えていますか?」
そう聞かれて私は首を横に振った。
家政婦さんなんかが働いていたら、余計にお金持ちのイメージに結びついて覚えているはずだもん。
栞子「やはり。それでは、母さんの言っていることと矛盾がありますよね?」
お義母さんは栞子ちゃんから問い詰めるように口調で言われて、焦るというよりは少し迷っているような表情をした後、何かを諦めたような溜息をついた。
栞子ママ「…はぁ。まぁ、もうあなたも大人ですものね」
栞子「…何の話ですか?」
栞子ママ「あなたは気づいていなかったでしょうけど、あの頃は後ろをずっと護衛替わりの使用人に交代でつけさせていたのですよ」
ちょっと衝撃な発言が飛び出した。
栞子「え?…本当ですか?」
栞子ママ「だって、あなたボランティア活動なんかをしていたでしょう?トラブルに巻き込まれないか心配で…」
栞子「え、いや、だからって…」
栞子ママ「それに、悪い虫がついてもいけませんから」
そう言うと、お義母さんは私の方をギロリと睨んだ。
凄く怖いけれど、私のこれまでの行いを振り返ると悪い虫という表現は否定できない。
- 795 :名無しで叶える物語:2022/04/10(日) 15:25:58.53 ID:pzfR9XKu.net
- 栞子「…なぜ私だけ…。それに、いつまで?まさか…」
栞子ママ「いいえ。薫子にもつけていましたし、あなたのも高校の途中に辞めさせました。薫子に気付かれて、喚かれましたから」
栞子「そ、そうですか。…ちょっと信じられませんが、母さんの言うことが本当だったとして…。もう一つ疑問があります」
栞子ママ「なんです、まだあるんですか?」
しつこい、と顔に書いたような表情のお義母さん。
私も、事前の打ち合わせの内容からどんどん脱線していてちょっと戸惑っている。
でも、栞子ちゃんがそれでも追求するってことは、きっと大事なことなんだよね。
私は話についていけてないけれど、余計なことを言うといけないから黙っていよう。
栞子「あの時…。私に次のお見合いの話をした時です。母さんは歩夢さんのことを「あんな女」と呼びました。使用人から学生時代の様子を聞いただけでは、ああいう言い方をすることはないはずです」
栞子ママ「…あんな女?そんなことを言いましたか?」
栞子「言いました!私に悪い影響があるから会うなと!」
栞子ママ「あぁ…おそらく、それは薫子のことです」
栞子「本当ですか?いくら母さんと姉さんが、折り合いが悪いからって…」
栞子ママ「ええ、本当です。あの日は、その…色々ありましたから」
栞子「色々とは?」
栞子ママ「別に、大したことではありませんよ」
お義母さんの言葉に栞子ちゃんは何か言いたげな顔をしたけれど、それ以上は何も言わずにただ疲れたような溜息だけついた。
栞子「…そうですか。…いえ、歩夢さんに害為す気がないというのなら、もう私は姉さんと母さんの仲に口を出すつもりはありませんが…」
よく分からないけれど、話がひと段落した雰囲気だったので、栞子ちゃんにこっそり小声で「どういうこと?」と聞くと、「後で説明します」と力ない声が返ってきた。
- 796 :名無しで叶える物語:2022/04/10(日) 22:57:40.63 ID:5atNcXty.net
- 更新お疲れさまです
- 797 :名無しで叶える物語:2022/04/11(月) 06:32:28.02 ID:5Di1rMAO.net
- 良き
- 798 :名無しで叶える物語:2022/04/11(月) 22:47:34.68 ID:lzzyRw3U.net
- 支援
- 799 :名無しで叶える物語:2022/04/12(火) 07:20:56.71 ID:JQ2HBoJa.net
- しお
- 800 :名無しで叶える物語:2022/04/12(火) 23:08:02.49 ID:TnBIpkTW.net
- 更新来てたか
- 801 :名無しで叶える物語:2022/04/13(水) 07:32:51.47 ID:MKSN/QMP.net
- 支援
- 802 :名無しで叶える物語:2022/04/13(水) 22:02:40.53 ID:wKi650xS.net
- しおぽむ
- 803 :名無しで叶える物語(SIM):2022/04/14(木) 07:19:00 ID:P6b83pmP.net
- しお
- 804 :名無しで叶える物語:2022/04/14(木) 22:54:38.50 ID:hhdSK9oM.net
- しお〜
- 805 :名無しで叶える物語(SIM):2022/04/15(金) 07:29:36 ID:3uhzRbGw.net
- しお
- 806 :名無しで叶える物語:2022/04/15(金) 20:37:37.96 ID:8Xm3zAfo.net
- ほしゅしお
- 807 :名無しで叶える物語:2022/04/16(土) 13:35:17.64 ID:SXRk6SEG.net
- しお
- 808 :名無しで叶える物語(もんじゃ):2022/04/17(日) 00:37:22 ID:6Sdx49SI.net
- 🔖🎀
- 809 :名無しで叶える物語:2022/04/17(日) 13:27:55.79 ID:Hio2/U66.net
- 支援
- 810 :名無しで叶える物語:2022/04/17(日) 23:10:16.84 ID:TNqBa2pj.net
- しお
- 811 :名無しで叶える物語:2022/04/18(月) 07:34:24.01 ID:1vryGj6Z.net
- しお
- 812 :名無しで叶える物語:2022/04/18(月) 20:26:51.04 ID:D0/B5uGX.net
- ほ
- 813 :名無しで叶える物語(SIM):2022/04/19(火) 07:34:39 ID:8CG0xgqc.net
- 支援
- 814 :名無しで叶える物語:2022/04/19(火) 22:56:04.36 ID:WkqNULXK.net
- しお
- 815 :名無しで叶える物語:2022/04/20(水) 07:47:26.35 ID:OXyk8//5.net
- 支援
- 816 :名無しで叶える物語:2022/04/20(水) 22:55:39.58 ID:wApRENp0.net
- しお
- 817 :名無しで叶える物語:2022/04/21(木) 07:45:26.76 ID:4/VtcK1U.net
- 支援
- 818 :名無しで叶える物語:2022/04/21(木) 22:55:32.22 ID:38jxnxXc.net
- しお〜
- 819 :名無しで叶える物語:2022/04/22(金) 07:40:01.69 ID:vI4VyYZU.net
- しおってぃー
- 820 :名無しで叶える物語:2022/04/22(金) 22:28:36.66 ID:9pGGHQR0.net
- すいません、明日か明後日で更新できそうです
- 821 :名無しで叶える物語(SIM):2022/04/23(土) 04:36:09 ID:Sf99d6L4.net
- しお?
- 822 :名無しで叶える物語:2022/04/23(土) 13:29:11.36 ID:TnP6YYp/.net
- 楽しみしお
- 823 :名無しで叶える物語:2022/04/24(日) 01:47:30.96 ID:LrVcgG5x.net
- ᶘイ^⇁^ナ川
- 824 :名無しで叶える物語:2022/04/24(日) 14:14:14.92 ID:6pjeDx/2.net
- しお
- 825 :名無しで叶える物語(ますのすし):2022/04/24(日) 22:52:53 ID:cNYhBGqz.net
- しおってぃー
- 826 :名無しで叶える物語:2022/04/25(月) 07:34:55.41 ID:fMMoGj0R.net
- しお
- 827 :名無しで叶える物語(SIM):2022/04/25(月) 22:43:27 ID:uxFF2db9.net
- しお
- 828 :名無しで叶える物語:2022/04/26(火) 07:21:41.37 ID:tnmNGtLT.net
- しお
- 829 :名無しで叶える物語(調整中):2022/04/26(火) 17:03:06 ID:QMsF+/0v.net
- すいません、身内が急病のため更新が遅れています。落ち着き次第更新するので、もう少しお待ちください。
- 830 :名無しで叶える物語(SB-iPhone):2022/04/26(火) 17:39:20 ID:zuFBFWcN.net
- 余裕できるまで焦らず
- 831 :名無しで叶える物語:2022/04/27(水) 07:27:58.73 ID:xrSG7Zv3.net
- ゆっくり待ちます
- 832 :名無しで叶える物語(もんじゃ):2022/04/27(水) 21:04:46 ID:oT8/TNvQ.net
- しおぽむ
- 833 :名無しで叶える物語:2022/04/28(木) 07:28:49.17 ID:ww62pyay.net
- しお
- 834 :名無しで叶える物語:2022/04/28(木) 23:16:52.27 ID:0x2fpz4v.net
- しお〜
- 835 :名無しで叶える物語:2022/04/29(金) 13:03:16.21 ID:7X+UiPkl.net
- しお
- 836 :名無しで叶える物語(SIM):2022/04/29(金) 22:48:21 ID:O/493Rh0.net
- しお
- 837 :名無しで叶える物語:2022/04/30(土) 13:33:41.95 ID:MmbhQfdC.net
- しおっ
- 838 :名無しで叶える物語:2022/04/30(土) 23:58:03.09 ID:eVIKt4WM.net
- しお
- 839 :名無しで叶える物語:2022/05/01(日) 11:54:15.71 ID:04B5qLaK.net
- しお〜
- 840 :名無しで叶える物語:2022/05/01(日) 22:30:46.74 ID:z2H851PG.net
- しお!
- 841 :名無しで叶える物語:2022/05/02(月) 07:01:55.70 ID:LMeteVWb.net
- ほ
- 842 :名無しで叶える物語(SIM):2022/05/02(月) 23:55:25 ID:ETaM8jgx.net
- しお
- 843 :名無しで叶える物語:2022/05/03(火) 14:52:15.82 ID:3KAKdinx.net
- しおってぃー
- 844 :名無しで叶える物語:2022/05/04(水) 00:42:48.32 ID:Q7fFSR7A.net
- しお
- 845 :名無しで叶える物語:2022/05/04(水) 16:10:03.25 ID:kiuBritr.net
- しお?
- 846 :名無しで叶える物語(SIM):2022/05/05(木) 00:45:50 ID:qakWKLG7.net
- しお
- 847 :名無しで叶える物語:2022/05/05(木) 14:13:22.19 ID:pCiakASx.net
- ってぃー
- 848 :名無しで叶える物語:2022/05/05(木) 14:44:36.84 ID:XG2Jy6Yo.net
- しお子が25ってことは、薫子さんは30くらい?
- 849 :名無しで叶える物語:2022/05/05(木) 22:38:39.13 ID:TuQ6F3I7.net
- ほ
- 850 :名無しで叶える物語:2022/05/06(金) 18:29:46.08 ID:C6HHMh7Q.net
- しお~
- 851 :名無しで叶える物語:2022/05/07(土) 13:45:55.52 ID:vkfli8Zk.net
- しおしお
- 852 :名無しで叶える物語:2022/05/07(土) 21:42:34.32 ID:6tz9TGSr.net
- しおっ
- 853 :名無しで叶える物語:2022/05/08(日) 13:37:23.72 ID:4g4m/Yn4.net
- しお
- 854 :名無しで叶える物語:2022/05/08(日) 23:26:52.16 ID:WU1JnbM4.net
- しお
- 855 :名無しで叶える物語:2022/05/09(月) 06:51:11.68 ID:87Pur24+.net
- ほ
- 856 :名無しで叶える物語:2022/05/09(月) 20:48:50.01 ID:OknRXcNU.net
- しお子
- 857 :名無しで叶える物語:2022/05/10(火) 07:45:57.45 ID:nMBaq8nc.net
- しお
- 858 :名無しで叶える物語:2022/05/10(火) 13:22:51.28 ID:Wc+OCCkl.net
- しお
- 859 :名無しで叶える物語:2022/05/11(水) 02:37:18.37 ID:IIBTAs9B.net
- ᶘイº⇁ºナ川
- 860 :名無しで叶える物語:2022/05/11(水) 07:40:38.26 ID:CHNA4Hlx.net
- ほ
- 861 :名無しで叶える物語:2022/05/11(水) 23:30:27.23 ID:DAjXh3uV.net
- ほしお
- 862 :名無しで叶える物語:2022/05/12(木) 07:34:02.70 ID:X+vmpIY5.net
- しお
- 863 :名無しで叶える物語:2022/05/12(木) 21:29:05.98 ID:cm6qgU/T.net
- しお!
- 864 :名無しで叶える物語:2022/05/13(金) 07:35:59.12 ID:oQUOn859.net
- しお
- 865 :名無しで叶える物語:2022/05/13(金) 20:46:52.62 ID:G/p9agkq.net
- しお
- 866 :名無しで叶える物語:2022/05/14(土) 14:39:31.86 ID:GUEDBqju.net
- しおー
- 867 :名無しで叶える物語:2022/05/15(日) 00:22:49.27 ID:J6ysxkff.net
- しお!
- 868 :名無しで叶える物語:2022/05/15(日) 12:42:26.86 ID:ePYWh4cw.net
- ほ
- 869 :名無しで叶える物語:2022/05/15(日) 21:28:32.00 ID:cSyaOl+a.net
- しお
- 870 :名無しで叶える物語:2022/05/16(月) 07:38:13.02 ID:F+2XUnoo.net
- しお
- 871 :名無しで叶える物語(SIM):2022/05/16(月) 23:53:09 ID:Fmr6kFhG.net
- しお〜
- 872 :名無しで叶える物語:2022/05/17(火) 07:34:17.16 ID:5Q120hwu.net
- しお
- 873 :名無しで叶える物語:2022/05/17(火) 23:03:37.58 ID:FKBFo6Ze.net
- しお
- 874 :名無しで叶える物語:2022/05/18(水) 07:38:48.28 ID:F8fkE6U5.net
- 支援
- 875 :名無しで叶える物語:2022/05/18(水) 22:57:55.55 ID:zHVaBC+o.net
- ほ
- 876 :名無しで叶える物語:2022/05/19(木) 07:42:59.63 ID:rStFlro9.net
- しお
- 877 :名無しで叶える物語:2022/05/19(木) 22:43:50.10 ID:SpciVwT7.net
- ほ
- 878 :名無しで叶える物語:2022/05/20(金) 07:41:55.07 ID:9DyT5FRv.net
- しお
- 879 :名無しで叶える物語:2022/05/20(金) 20:29:49.34 ID:ZvF20fZL.net
- 支援
- 880 :名無しで叶える物語:2022/05/21(土) 09:32:27.95 ID:xktw5T4j.net
- ほ
- 881 :名無しで叶える物語:2022/05/22(日) 00:16:17.70 ID:h/ndmRf0.net
- しお
- 882 :名無しで叶える物語:2022/05/22(日) 14:34:40.72 ID:PLHDtq6e.net
- ほ
- 883 :名無しで叶える物語:2022/05/23(月) 00:27:53.04 ID:BXOXFTjJ.net
- 平癒祈願
- 884 :名無しで叶える物語:2022/05/23(月) 16:51:50.33 ID:zMLLSvSM.net
- ひと月以上に渡る保守ありがとうございました。
身内の症状も落ち着いてきているので、今日は中々仕事から帰れそうにないので難しいですが、明日退勤後から更新を再開しようと思います。
- 885 :名無しで叶える物語:2022/05/23(月) 21:39:05.14 ID:YfsW4Ac8.net
- しお!
- 886 :名無しで叶える物語:2022/05/23(月) 21:49:49.39 ID:C8BoD7Tz.net
- 本当によかったです
- 887 :名無しで叶える物語(光):2022/05/24(火) 01:55:32 ID:476OmNE4.net
- しお……!!( ; ; ) しお♡
- 888 :名無しで叶える物語(SIM):2022/05/24(火) 07:18:28 ID:ITERimtr.net
- 良かったしお
- 889 :名無しで叶える物語:2022/05/24(火) 23:16:58.12 ID:lxooVmrC.net
- しお!
- 890 :名無しで叶える物語:2022/05/25(水) 07:40:15.75 ID:1odkpXGy.net
- しお
- 891 :名無しで叶える物語:2022/05/25(水) 23:03:09.59 ID:fxZnlY6L.net
- しお
- 892 :名無しで叶える物語:2022/05/26(木) 07:37:48.77 ID:HQxFSxqd.net
- 支援
- 893 :名無しで叶える物語:2022/05/26(木) 14:35:34.24 ID:cjOzmKcp.net
- しお
- 894 :名無しで叶える物語:2022/05/26(木) 23:41:55.46 ID:VxZboKEf.net
- しおん
- 895 :名無しで叶える物語:2022/05/27(金) 07:45:08.74 ID:dVZDEyra.net
- しお
- 896 :名無しで叶える物語(SIM):2022/05/27(金) 23:37:46 ID:eGzeVJv2.net
- 支援
- 897 :名無しで叶える物語(SIM):2022/05/28(土) 13:27:21 ID:2Q5qhwjF.net
- ほ
- 898 :名無しで叶える物語:2022/05/29(日) 00:20:56.15 ID:NQVXcDNE.net
- しお~
https://i.imgur.com/VXwds0Y.jpg
- 899 :名無しで叶える物語:2022/05/29(日) 21:33:28.18 ID:9wTKgVYv.net
- しお
- 900 :名無しで叶える物語:2022/05/30(月) 07:39:14.46 ID:5QWZcfc4.net
- ほ
- 901 :名無しで叶える物語:2022/05/31(火) 00:08:40.26 ID:6sd5amNg.net
- あゆぴょん
- 902 :名無しで叶える物語(茸):2022/05/31(火) 21:59:45 ID:+BOUIoOs.net
- しお!
- 903 :名無しで叶える物語:2022/06/01(水) 07:18:08.16 ID:CKI2/DCG.net
- しお
- 904 :名無しで叶える物語:2022/06/01(水) 23:00:14.70 ID:E7ygvknT.net
- ほ
- 905 :名無しで叶える物語:2022/06/02(木) 07:12:28.59 ID:mOfGi6Ga.net
- しお
- 906 :名無しで叶える物語(SIM):2022/06/02(木) 23:08:06 ID:bpcIEEPj.net
- しお
- 907 :名無しで叶える物語:2022/06/03(金) 13:01:58.19 ID:3kUtvIjE.net
- ほ
- 908 :名無しで叶える物語:2022/06/04(土) 00:32:47.26 ID:RN5+cLLq.net
- あゆむ
- 909 :名無しで叶える物語:2022/06/04(土) 14:27:16.00 ID:QL6SGTiR.net
- ほ
- 910 :名無しで叶える物語:2022/06/04(土) 21:38:49.37 ID:aGSjkt9q.net
- どうやらくるといったのは嘘だったようだな
- 911 :名無しで叶える物語:2022/06/05(日) 07:38:37.78 ID:bVx/kv9v.net
- しお
- 912 :名無しで叶える物語:2022/06/05(日) 23:29:26.11 ID:VvGIk/Ww.net
- ほ
- 913 :名無しで叶える物語:2022/06/06(月) 06:30:59.87 ID:AyXRiwm6.net
- 支援
- 914 :名無しで叶える物語:2022/06/06(月) 22:31:23.67 ID:qalGhBVG.net
- ほ
- 915 :名無しで叶える物語:2022/06/07(火) 07:14:58.23 ID:wl0PJCnY.net
- しお
- 916 :名無しで叶える物語:2022/06/07(火) 22:49:07.60 ID:cEHxXX6K.net
- ほ
- 917 :名無しで叶える物語:2022/06/08(水) 06:58:58.98 ID:P18XFV+6.net
- しお
- 918 :名無しで叶える物語:2022/06/08(水) 07:04:28.54 ID:Gv/X4cuA.net
- 忙しいんでしょう
いつまでも待つよ
- 919 :名無しで叶える物語:2022/06/08(水) 21:12:15.03 ID:DLu5n9jy.net
- 栞子ママ「さて、上原さん。話の続きですが…」
歩夢「は、はい!」
何やらもう消耗したような表情の栞子ちゃんの方を気にしている時に急に話を振られて、焦る。
ええと、話ってどの話のことだろう。
栞子ママ「確か、あなたは駆け落ちに反対したのでしたか?」
ああ、その話か。
どうやら、お義母さんの方から会話の軌道を戻そうとしているみたいだ。
歩夢「ええと、反対というか…。私はお義母様にご挨拶をするのが筋だと思いまして」
私は予め栞子ちゃんと決めていた回答をする。
まぁ、嘘は言ってないよね。
栞子ママ「それは…よい心掛けです。ですが、他にも理由があるのではありませんか?」
歩夢「理由だなんてそんな…」
栞子ママ「ええ、気持ちは分かりますよ。駆け落ちというものは、それまでの生活や仕事、友人などのすべてを捨ててするものですから。リスクが大きすぎますよね。ですが…」
よく知ったような口ぶりだ。
昔何かあったのかな。
栞子ママ「…ですがそれでも、ここに来たことについては分かりませんね」
歩夢「…何がでしょうか」
栞子ママ「栞子から話を聞いていたのであれば、私に会ったとしても反対されるだけと分かっていたでしょうに。駆け落ちまで考えていたのであれば、こっそり付き合っていれば良かったのです」
これは意外な発言。
思わず横目で栞子ちゃんの顔をみると、目が合った。
栞子「…母さんがそれを言うのですか?」
栞子ママ「もちろん知れば良い顔はしないでしょうが…まぁ、人の想いというものは止められないものです」
そう言ってお義母さんは大きく溜息をついた。
あれ、なんだか聞いていたのと違って理解を示してくれているような口ぶりだ。
これは、もしかして今お願いしたら、すんなりと話が解決したりしないかな。
- 920 :名無しで叶える物語:2022/06/08(水) 21:13:12.84 ID:DLu5n9jy.net
- 歩夢「あ、あの…正直に言います。お義母様のおっしゃる通りです。私は栞子さんとのお付き合いを認めていただきに来ました」
栞子ママ「そうですか」
それを聞いたお義母さんはまた一口お茶を飲んだ。
そして。
栞子ママ「認めません」
私の期待をすっぱりと切るように、お義母さんはそう答えた。
あんまりに簡潔な答えに、私の脳はストップしてしまう。
栞子「か、母さん…!どうして…」
代わりに栞子ちゃんがそう聞いてくれた。
栞子ママ「どうして、ですか。理由はいくつかありますが…。上原さんに関しては根本的なものが1つあります…聞きたいですか?」
そうだ、理由を聞かないと。
根本的、というのがどういう意味なのかは分からないけれど、もしかしたら解決できることかもしれない。
歩夢「は、はい。聞かせてください!」
栞子ママ「そうですか…。まぁ、あなたの諦めのために答えてあげましょう」
お義母さんは仕方がないな、という風に溜息をつくとこう言った。
栞子ママ「私が、スクールアイドルが嫌いだからですよ」
- 921 :名無しで叶える物語:2022/06/08(水) 21:14:11.16 ID:DLu5n9jy.net
- 歩夢「…え?」
思いもよらない言葉に思考が止まる。
なぜスクールアイドルがいま出てきたのだろう?
歩夢「ええと…」
言葉の意味を飲み込めないでいる私を余所に、お義母さん言いたいことは言ったとばかりに黙ってしまう。
栞子「母さん!それだけでは納得できるわけがありません」
栞子ちゃんの言葉に私もうんうんと頷く。
栞子ママ「…まぁ、良いでしょう。どうせあなたもここまで来たのですから知っているでしょうけれど、三船の本家には元々二人の娘がいました」
お義母さんはあからさまに面倒そうな顔をしたけれど、説明を続けてくれた。
栞子ママ「姉は活発で先進的。妹は冷静で真面目。姉妹の仲は良く、二人ともとても優秀。当然周囲も次代の三船は安泰と思っていました。もちろん、私も…ですが」
そこでスッとお義母さんの顔つきが冷たいものになった。
栞子ママ「突如姉はスクールアイドルなどという良家の子女にあるまじき、大衆に媚びへつらう活動に傾倒…跡継ぎの座も自ら破棄。それだけならともかく、真面目なはずの妹も姉の後を追うように今度はスクールアイドルそのものに…」
栞子「それは…」
栞子ママ「挙げ句、当てつけのように姉の紹介でそんな活動をしていた時の知り合いと見合いまで…」
栞子「当てつけだなんて、そんな…私達は…」
栞子ママ「そうに決まっています!そうでなければ、姉があんなことになった後に態々同じ道を進もうなどとするものですか!」
お義母さんの言葉に、栞子ちゃんは何かを言い返そうとしたけれど、戸惑いのせいか口を閉じてしまった。
私も、栞子ちゃんの、恋人のお母さんから自分たちの青春をそんな風に言われて悲しくなる。
けれど、私はお義母さんの言葉を聞いて一つ思ったことがあった。
歩夢「…お義母様は、栞子ちゃ…さんが、嫌がらせのためにスクールアイドルを始めたと思っているんですね」
栞子ママ「だから、事実そうでしょうと…」
栞子「ですから…!」
栞子ちゃんが反論しようとするのを、その膝に手を置いて止める。
こちらをちらりと見た栞子ちゃんは、本人からも言いたいことがあったんだろうけれど、私の意を汲んでそこで言葉を止めてくれた。
ありがとう、ここは私に任せて。
- 922 :名無しで叶える物語:2022/06/08(水) 21:14:58.16 ID:DLu5n9jy.net
- 歩夢「ひとつお尋ねしますが、お義母様は栞子ちゃんのライブを見たことがありますか?」
栞子ママ「は?…いえ、ありませんが…」
やっぱり…。
お義母さんの言葉には思い込みや偏見がたくさん含まれているけれど、言い換えれば実体を知っている風には聞こえない言葉ばかりなんだ。
きっと薫子さんのことがあって、スクールアイドルという存在憎しのあまりに目を逸らしてきたんだろう。
歩夢「あの…。でしたら、今からでも見てもらえませんか?」
栞子「歩夢さん!?」
栞子ママ「…なんのために?」
栞子ちゃんが隣で驚いた声をあげ、お義母さんが不快そうな顔でそう聞いてくる。
もちろん理由はいろいろあるけれど…。
歩夢「私が納得するためですよ。…だめですか?」
栞子ママ「…言っておきますが、私が曲や歌詞に感動してあなたたちの関係を認めることはありませんよ?」
歩夢「はい」
ジッとにらみつけるその視線に目を逸らさずにいると、お義母さんはまた態とらしく溜息をついた。
- 923 :名無しで叶える物語:2022/06/08(水) 21:16:03.45 ID:DLu5n9jy.net
- 栞子ママ「それで、どうやって見るのですか?」
歩夢「そうですね…パソコンか何かを貸していただければ」
私がそう答えると、お義母さんは手を叩いた。
すると、襖が開いて入口からここまで案内してくれた女の人が入ってきてちゃぶ台の上に大きめのノートパソコンを用意してくれる。
「wifiはつながっておりますが、有線の方がよろしかったでしょうか」
歩夢「えっと、いえ、大丈夫です。ありがとうございます」
女の人はお茶を注ぎ直すと一礼して部屋から出ていった。
栞子ママ「DVDか何かを持ってきている訳ではないのですね」
歩夢「ええと、流石に…。ですが、たぶんまだ同好会のチャンネルがあるはずなので…」
動画サイトにアクセスして「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」と打ち込んだ。
すると、検索結果にたくさんの動画が表示される。
最後の更新は…なんと昨日だった。
顔も知らない後輩が私達や他のスクールアイドル達の曲のカバーをアップロードしている。
中には知らない曲もあるけれど、この子たちの曲なのかな?
またこんど母校でイベントがあれば二人で見に行くのもいいかもしれない。
栞子ママ「まだですか?」
歩夢「あ、すいません」
つい懐かしくなってしまったけれど、これは同好会の歴史の中から栞子ちゃんの動画を探すよりも検索をかけたほうが早いかもしれない。
今度は検索欄に「三船栞子 ライブ 映像」と入力する。
すると、今度は見覚えのある曲名が並んだ。
どれがいいかな…。
歩夢「栞子ちゃんは、どれがいいと思う?」
栞子「ええ!?ええと…どうしましょう…できれば、歩夢さんに決めて欲しいのですが…」
親に自分の10年以上も前の曲を聞いてもらうのは多少恥ずかしさもあるだろう。
歩夢「そっか、じゃあ私も悩むけど…やっぱりこれにしようかな」
そう言って私は、栞子ちゃんが一年生の時に歌った一番最初のソロ曲を流した。
きっとこれが一番私の伝えたいことが伝わると思ったから。
- 924 :名無しで叶える物語:2022/06/08(水) 21:16:58.50 ID:DLu5n9jy.net
- お義母さんは、目を逸らさずにじっと動画を見てくれた。
そして、動画が終わる。
栞子「ど、どうでしたか?」
栞子ママ「…拙い、踊りに歌でしたね」
それを聞いて少しがっかりした顔の栞子ちゃん。
ごめんね…。
歩夢「これは栞子ちゃんが1年生の時の、最初の曲の動画ですから。3年生の時には、もっともっと上手でしたよ」
栞子ママ「そうですか。それならそっちを…。コホン、それで、見ましたが、どうだというのですか?これをみたからと言って…」
歩夢「動画の中の栞子ちゃん、どうでしたか?」
栞子ママ「ですから…」
歩夢「すっごく、頑張ってて、まっすぐで、そして楽しそうじゃなかったですか?」
栞子ママ「…」
歩夢「栞子ちゃん、最初はお義母様と同じでスクールアイドルのこと、あんまり好きじゃなかったみたいでした。練習に参加してくれたのも、いろいろあって栞子ちゃんなりに悩んだ末の決断だったみたいです」
あれは確か私が同好会に入った年の学校説明会の時だったと思う。
そういえば、栞子ちゃんが生徒会長になって少しした頃だっけ。
せつ菜ちゃんに取って代わった経緯もあって、栞子ちゃんと当時の同好会メンバーとの仲はちょっとピリピリしてた。
あの頃の私は、まさか将来栞子ちゃんとお付き合いすることになるなんて全く思ってなかったな…。
あの子のおかげだね。
歩夢「でも、一緒に練習して、時には一緒にステージにも上がって…。そんな私からみた栞子ちゃんは、少なくとも嫌々スクールアイドルをやっているようには見えませんでしたよ」
お義母さんは何も言わない。
もう再生の終わった画面に映る、曲終わりの栞子ちゃんのホッとしたような、やり遂げたような笑顔をじっと見つめている。
- 925 :名無しで叶える物語:2022/06/08(水) 21:18:03.95 ID:DLu5n9jy.net
- 歩夢「さっき言ったようにこの曲は栞子ちゃんの最初の曲です。悩みながら、自分で歌詞も考えた、栞子ちゃんだけの曲なんです。ね、栞子ちゃん」
栞子「…そうですね。あの時はまだ右も左も分からなくて…あの方や、皆さんにも相談に乗っていただきながら、曲を作りました。懐かしいです」
歩夢「お義母さん」
栞子ママ「…はい」
歩夢「栞子ちゃんがスクールアイドルをしていたのは、お義母さんへの当てつけなんかじゃありません。栞子ちゃん自身が決めて、頑張って、やりたかったからやっていただけです。スクールアイドルは栞子ちゃんの、そして私達の青春だったんです。…それだけなんです」
お義母さんはじっと栞子ちゃんの方を見ている。
栞子ママ「…なぜ栞子が薫子の持ってきた見合いだけ受けたのか、今分かりました」
そして、そう呟いた。
歩夢「え?」
栞子ママ「相手が、上原さんだったからです。そうですね、栞子」
栞子「…そうです。歩夢さんは…私にとって憧れです。昔も、そして今も」
栞子ママ「…骨抜きではないですか…。まぁ、今日のあなた達を見ていれば分からなくはないですが…」
歩夢「え?」
栞子ママ「コホン。上原さん、あなたが本当にこの子のことを大切に思ってくれているのは、よく分かりました。スクールアイドルに関しては未だ複雑な気持ちですが…」
お義母さんはそう言うとスッと後ろに下がり頭を下げた。
栞子ママ「先ほどからの私の失礼な発言の数々については、訂正と謝罪をさせていただきます」
歩夢「あ、頭を上げてください!」
顔を上げたお義母さんはニッコリと笑っていた。
栞子ママ「その上で、私個人としては、二人が恋仲であることを認めましょう。上原さん、これからよろしくお願いしますね」
歩夢「は、はい!こちらこそ、よろしくお願いします!」
頭を下げつつ横の栞子ちゃんと顔を見合わせる。
やった…やった!
これで栞子ちゃんのお家にも認めて貰えたんだよね!
だって、私個人としては、恋仲を認める…って…。
うん?
- 926 :名無しで叶える物語:2022/06/08(水) 21:42:39.98 ID:Yla6gnNu.net
- しお!
- 927 :名無しで叶える物語:2022/06/08(水) 22:20:28.13 ID:D9rwQhwd.net
- しお!
- 928 :名無しで叶える物語:2022/06/08(水) 23:24:56.36 ID:N2LtdVs0.net
- 更新待ってました!
- 929 :名無しで叶える物語:2022/06/08(水) 23:38:38.79 ID:ZtcyW5o6.net
- 待ってた!
感想書き込むとスレが埋まってしまう悲しみ
無事に認めてもらえて良かったね
- 930 :名無しで叶える物語:2022/06/09(木) 07:11:05.35 ID:a5TNUCkP.net
- 良かったねしお子
- 931 :名無しで叶える物語:2022/06/09(木) 22:53:10.52 ID:y28bwPel.net
- しお~
- 932 :名無しで叶える物語:2022/06/10(金) 07:15:55.47 ID:rCupFCRA.net
- 支援
- 933 :名無しで叶える物語:2022/06/10(金) 22:44:00.64 ID:+cVIT3oH.net
- しお
- 934 :名無しで叶える物語:2022/06/11(土) 14:57:12.90 ID:u02iP3m+.net
- しお
- 935 :名無しで叶える物語:2022/06/12(日) 03:02:14.39 ID:ywudMMHq.net
- しお
- 936 :名無しで叶える物語:2022/06/12(日) 17:33:37.52 ID:dR0vbC5Y.net
- 万が一落ちても次スレ立てて完結してほしいな
- 937 :名無しで叶える物語:2022/06/13(月) 07:15:45.36 ID:KuQIWgB2.net
- しえん
- 938 :名無しで叶える物語:2022/06/13(月) 22:06:32.03 ID:pZb03sjl.net
- ほ
- 939 :名無しで叶える物語:2022/06/14(火) 00:19:47.16 ID:o+R/q9/g.net
- ぽむ
- 940 :名無しで叶える物語:2022/06/14(火) 12:06:44.47 ID:TKodB6Af.net
- しお
- 941 :名無しで叶える物語:2022/06/15(水) 00:19:16.85 ID:qElMi1mi.net
- このペースだと次スレまでいく感じかな
- 942 :名無しで叶える物語:2022/06/15(水) 22:00:37.80 ID:LuGR0ofi.net
- しお~
- 943 :名無しで叶える物語:2022/06/16(木) 07:15:30.71 ID:P91uHFAF.net
- しお
- 944 :名無しで叶える物語:2022/06/16(木) 22:17:15.07 ID:LwEA5k9K.net
- ほ
- 945 :名無しで叶える物語:2022/06/17(金) 15:32:02.44 ID:0FNaNvNS.net
- しお
- 946 :名無しで叶える物語:2022/06/18(土) 10:33:33.09 ID:IZMLt0fL.net
- 今日はしおぽむ真ん中バースデー
- 947 :名無しで叶える物語:2022/06/18(土) 23:00:12.30 ID:yAZZBAyC.net
- 素晴らしき日
- 948 :名無しで叶える物語:2022/06/19(日) 14:04:05.00 ID:kIsL/DKM.net
- しお
- 949 :名無しで叶える物語(もんじゃ):2022/06/20(月) 05:04:04 ID:wDdLs4Ks.net
- しおー
- 950 :名無しで叶える物語:2022/06/20(月) 22:39:59.43 ID:yZCR9Hqn.net
- ほ
- 951 :名無しで叶える物語:2022/06/21(火) 07:15:24.03 ID:b/jpl3sR.net
- 支援
- 952 :名無しで叶える物語(SIM):2022/06/21(火) 22:38:04 ID:CEN0PVS1.net
- しお
- 953 :名無しで叶える物語:2022/06/22(水) 07:15:12.35 ID:Rsd1ord9.net
- ほ
- 954 :名無しで叶える物語:2022/06/22(水) 22:29:08.55 ID:lxJ4mK+A.net
- しお
- 955 :名無しで叶える物語:2022/06/23(木) 07:11:23.61 ID:oOUsQd+/.net
- ほ
- 956 :名無しで叶える物語:2022/06/23(木) 22:55:45.22 ID:dMHqmoM+.net
- しお
- 957 :名無しで叶える物語:2022/06/24(金) 07:17:18.44 ID:F3dVXSVK.net
- ほ
- 958 :名無しで叶える物語:2022/06/24(金) 22:29:57.16 ID:THMVlDqw.net
- しお
- 959 :名無しで叶える物語:2022/06/25(土) 11:08:42.75 ID:653y7GoL.net
- しお
- 960 :名無しで叶える物語:2022/06/26(日) 01:11:00.92 ID:mgzdAHLM.net
- 支援
- 961 :名無しで叶える物語:2022/06/26(日) 01:11:24.68 ID:l/Cyu8LS.net
- しお
- 962 :名無しで叶える物語:2022/06/26(日) 22:09:11.79 ID:rTLwnQo5.net
- しお
- 963 :名無しで叶える物語:2022/06/27(月) 10:35:21.01 ID:LhgKUO7O.net
- しお
- 964 :名無しで叶える物語:2022/06/27(月) 23:47:36.41 ID:r9roKkAO.net
- しお
- 965 :名無しで叶える物語:2022/06/28(火) 20:30:17.32 ID:LabQPIbs.net
- しお
- 966 :名無しで叶える物語:2022/06/29(水) 02:04:20.20 ID:UbZnmxP/.net
- しお
- 967 :名無しで叶える物語:2022/06/29(水) 22:41:12.61 ID:P23e2xOZ.net
- しおってぃー
- 968 :名無しで叶える物語:2022/06/30(木) 07:17:38.73 ID:2ywPKKh3.net
- しお
- 969 :名無しで叶える物語:2022/06/30(木) 22:48:27.72 ID:TVyUe/pT.net
- しお
- 970 :名無しで叶える物語:2022/07/01(金) 07:16:09.28 ID:A0J1EqyM.net
- しお…
- 971 :名無しで叶える物語:2022/07/01(金) 22:36:35.93 ID:/BDOP+/i.net
- しお
- 972 :名無しで叶える物語:2022/07/02(土) 09:59:37.30 ID:Y3gBIl9O.net
- しお…
- 973 :名無しで叶える物語:2022/07/02(土) 23:39:08.87 ID:cRX58e9g.net
- しお
- 974 :名無しで叶える物語:2022/07/03(日) 11:43:45.72 ID:hWFlOe3M.net
- ほ
- 975 :名無しで叶える物語:2022/07/03(日) 18:24:30.30 ID:LJQhEt0J.net
- しお
- 976 :名無しで叶える物語:2022/07/04(月) 07:21:29.13 ID:YousZX5l.net
- しお
- 977 :名無しで叶える物語(SIM):2022/07/04(月) 22:31:00 ID:h9WghuqJ.net
- ほ
- 978 :名無しで叶える物語:2022/07/05(火) 07:19:38.33 ID:Dkn0tWNM.net
- しお…
- 979 :名無しで叶える物語:2022/07/05(火) 13:19:11.01 ID:U5lZbhuh.net
- もしスレが落ちちゃって自分でスレ立てられなかったらここで代行頼んでください
完結まで楽しみにしてます
SS総合
https://fate.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1653684941/
- 980 :名無しで叶える物語:2022/07/06(水) 06:41:10.24 ID:7+WA8+CF.net
- しお
- 981 :名無しで叶える物語:2022/07/06(水) 22:08:08.29 ID:h14U8wU4.net
- しお
- 982 :名無しで叶える物語:2022/07/07(木) 07:21:50.02 ID:qaw+/Dwy.net
- しおってぃー
- 983 :名無しで叶える物語:2022/07/07(木) 22:14:32.78 ID:5EzdYCHA.net
- しお
- 984 :名無しで叶える物語:2022/07/08(金) 00:50:37.74 ID:ObwQ2DKp.net
- 思わず栞子ちゃんと手を取り合って喜びを分かち会おうとしたところで、お義母さんの言葉にふと違和感を覚えた。
栞子「歩夢さん?どうかしましたか?」
私が急に真顔になってしまったからか、栞子ちゃんが戸惑った表情をしている。
歩夢「ううん、私の気にしすぎかな…。ええと…、お義母様の今おっしゃった“お義母様個人としては”というのは…」
感じた不安を解消してくれる答えが返ってくることを期待してそう尋ねる。
栞子ママ「言葉通りの意味です。私個人として二人の仲を認めることはできますが、三船の家としては、難しいのです…」
栞子「そんな…」
歩夢「で、でも、お義母様が許してくださったのに、一体何が問題なんですか?」
栞子ちゃんの話ではご実家を取り仕切っているのは実質的にお義母さんだという。
なのに、そのお義母さん以上の障害があるというのか。
栞子ママ「…上原さん。大きい家には、それだけしがらみが生まれるものなのです」
しがらみ…。
栞子ちゃんの方を見ると、何か思い当たることがあったのか驚いたというよりは困ったという顔をしている。
栞子ママ「栞子は、三船の後を継がねばなりません。つまりは、その妻となる相手は必然的に三船の権力を担う存在になってしまいます」
栞子「…分家の御婆様方ですね」
栞子ちゃんの言葉に頷くお義母さん。
2人にはわかっているみたいだけれど、正直話についていけていない。
歩夢「つまりは…どういうこと?」
栞子「あぁ、歩夢さんには分からないですよね。説明するとですね…」
栞子ちゃんの話は、まるで小説や歴史の本にあるような内容だった。
要約すると、戦前に財閥と呼ばれるほどに成長した三船家は、当主…つまりは系列の正真正銘のトップだけじゃなく、一族で様々な事業を展開してきた。
それがあんまり多岐に渡ってしまっているため、初代当主の子供たちの内長男の家系が大本の事業と全体の系列の統括を、その下の兄妹姉妹が系列の経営をしているんだとか。
まだお妾さんとかが暗黙のもとに許されていた時代だそうで、初代当主の子供は何十人もいてその内当主になれなかった家系の人たちが分家として存在し、財閥解体後も跡継ぎの問題になる度にドロドロな駆け引きを仕掛けてくるらしい…。
歩夢「…ええと、つまりはその分家?の人たちも説得しないといけないってこと?」
栞子「…母の言いたいことはそういうことかと」
それって…あんまりに違う世界の話で、まず何をどうすればいいのかすら分からない。
栞子ママ「…栞子に話した見合いというのがそもそも分家筋から来ているものです」
栞子「それであの日、いつになく強引だったんですね…。その後も…」
そうだったんだ…。
いくら何でも娘に監禁紛いのことをするなんて、と思ってたけれど…。
栞子ママ「それについては、今は悪かったと思っています。ですが、見合い自体を断るだけなら無理は通せても、その代わりにどこからか別の相手を連れてきたのでは向こうは納得しなかったでしょう」
なんだかどんどん話が大きくなってきている。
私はただ、ようやく好き同士になれた栞子ちゃんとご実家にご挨拶をしにきただけなのに…。
話の流れからしてお義母さんは私達の味方をしてくれそうなのだけが救いかな。
栞子ちゃんの話を聞いてきた限りでは、お義母さんも家柄とかを重視するタイプらしいから。
- 985 :名無しで叶える物語:2022/07/08(金) 00:51:08.27 ID:ObwQ2DKp.net
- 栞子「今日は出直しましょうか。ここですぐに解決する話でもありませんし」
歩夢「そうだね…。すいません、そろそろ…」
栞子ママ「分かりました。では、車で送らせましょう」
私達が荷物を纏め始めると、そう言ってお義母さんがまた手を叩いた。
すると、またあの女の人が…。
あれ、今度はこない。
栞子ママ「…どうしたのでしょうか。部屋の前に控えているように言ってあるのですが…」
お義母さんは不思議そうな顔でもう一度手を叩いたけれど、今度も誰も来なかった。
その表情に苛立ちの色が見え始める。
栞子ママ「全く…不出来な使用人ですいませんね、上原さん。きちんと叱っておきますから」
そんなことを言われて、「ええそうしてください」なんて言える人間性はしていない。
歩夢「い、いえそんな、きっと忙しいんですよ!あ、それなら私、タクシーを呼ぼうかな!」
栞子ママ「それには及びませんよ…。全く…。表には私の運転手をまだ控えさせています。あの子に送らせましょう」
お義母さんが立つ素振りをみせたので、私は率先して立ちあがって襖を開けた。
こういう点数稼ぎが姑との良好な関係につながるとか聞いたことがある気がする。
初めて来たお家で先頭を歩くのもどうかと思ったので、栞子ちゃんの後ろをついて長い廊下を歩いた。
すると、向こうから何か言い争うような声が聞こえてくる。
「だから!…してって言ってるでしょ!…は…って言ってる…」
「……ません。…ください」
栞子「玄関の方ですね。今日は他にもどなたか来る予定が?」
栞子ママ「いいえ、ありませんが…」
近づくにつれ、声がはっきり聞こえてきた。
言い争っているのは二人で、両方とも女の人の声かな?
というか、片方はさっきお茶やノートパソコンの用意をしてくれた人で、もう一人の声はもっと聞き覚えが…。
栞子ちゃんと顔を見合わせる。
「ああもう、埒が明かない!とにかく、もう上がるよ!」
「お待ちください!薫子様!」
やっぱり…。
薫子「母さんはいつもの部屋でしょ!分かってるから…っと」
ドタドタという足音が近づいてきたかと思えば曲がり角から現れた人影は、先頭に立っていた栞子ちゃんがぶつかりそうになると、慌てて止まった。
薫子「…え?栞子!?…あれ、歩夢ちゃんと…母さんも…?」
- 986 :名無しで叶える物語:2022/07/08(金) 00:51:29.19 ID:ObwQ2DKp.net
- 私達は、とりあえず近くにあった応接間に4人で腰掛けた。
薫子さんに会ってから不機嫌な顔を隠そうとしないお義母さんと薫子さんが向かい合ったり隣同士にならないよう、栞子ちゃんと顔で示し合わせて座ると、私の隣が薫子さん、栞子ちゃんの隣がお義母さんになった。
薫子「もう!ランジュのマンションに行っても誰もいないし、歩夢ちゃんも電話に出ないし…心配したんだからね!」
歩夢「え?…す、すいません。着信来てますね…。通信、切ってたもので…」
お義母さんと話している最中に電話が鳴り響いてしまわないようにしていたのが裏目に出たようだ。
結果的に薫子さんとお義母さんが顔を合わせることになってしまった。
そうならないように、二人で来たというのに。
薫子「まぁ、二人とも無事でよかったよ…栞子も、顔を見られて安心した」
栞子「姉さん…。はい、心配をかけました」
栞子ちゃんに言われて連絡をしなかったけれど、やっぱり心配させちゃったみたいだ。
メールはともかく置き手紙でもしてくれば良かったかな。
栞子ママ「薫子…」
そんな心温まる姉妹の再開の場面とは裏腹な冷ややかな声が、斜め前から聞こえる。
ひぃ…、できるだけ二人がお互いを見ずにすむ配置にしたのに、お義母さんは薫子さんをガン見だよ…。
薫子「あぁ、母さん。久しぶり。元気だった?」
栞子ママ「…あなた、追い返した時に私がなんと言ったか、覚えてないのですか?」
薫子「え?…次はお土産持ってこいとか?」
栞子ママ「違います!もう二度と、この家の敷居は跨がせないと言ったはずです!」
見るからに怒っているお義母さんに、いつも通り飄々としている薫子さん。
そんな薫子さんの態度に益々お義母さんもイライラしているみたい…。
2人とも親子なのに、これまで話に聞いてきた通りで仲が悪いというか、相性が悪い感じが私でさえよく分かった。
薫子「あぁ…覚えてるよ。でも、もう跨いじゃったもんはしょうがないじゃん」
栞子ママ「盗人猛々しいとはこのことですね!ではすぐに出て行きなさい!」
薫子「まぁ、待ちなって。もうすぐ母さんが大好きなお土産が到着するからさ」
栞子ママ「要りません!」
薫子「そんなこと言わずにさ。ほら、もう着いたみたいだよ」
詰め寄るお義母さんから目線を逸らすように薫子さんが見たのは玄関の方。
あ、確かにいま戸の先で門の閂を抜く音が聞こえた。
こんなにカンカンなお義母さんを相手に、何のお土産を渡そうとしてるんだろう。
足音が近づいてきて、インターホンが…鳴らず、足音の主は自分でガラガラと三船家の戸を開けた。
そして、まっすぐな足取りでこっちに近づいてくる。
「皆揃って、なにをしているんだい?」
襖をあけて現れたのは、細身で中性的な顔立ちをした凄い美形な男の人?だ…。たぶん。
声も高めなので、「背の高い女の人ですよ」って言われたら納得してしまいそう。
私が男の人だって思ったのは着物が男性向けだから。
もし、男装した女性だって言われたとしても納得してしまいそう。
ことりちゃんあたりに頼んで栞子ちゃんを男装させたらこんな感じかな…背はちょっと足りないかもだけど。
「おや、君は…もしかして、君が上原歩夢さん?」
そんな馬鹿みたいなことを考えていると、その人は私の名前を呼んだ。
…え?誰?どこかで会ったかな…。
「あぁ、ごめんね。三船栞子の父です。娘と仲良くしてくれて、ありがとうね」
必死に私が思い出していると、その人はペコリと頭を下げたので私も反射的に会釈を返す。
…は?今なんて…。
栞子ママ「あ、あなた…」
薫子「お帰りー。到着してすぐで悪いんだけどさ、一緒に母さんを説得してよ」
栞子パパ「え〜?どうせ、また薫子が怒らせたんだろ?」
え、ええ〜…?
- 987 :名無しで叶える物語:2022/07/08(金) 00:52:08.49 ID:ObwQ2DKp.net
- 栞子ちゃんがこちらに移動して、私と栞子ちゃん、薫子さんが二人のご両親と向き合う形でソファに座った。
お義母さんもさっきまでの不機嫌をしまいこんで、お義父さんの隣に座っている。
栞子パパ「久しぶりだね、栞子」
栞子「あ、はい。父さんこそ、お元気そうで何よりです」
栞子パパ「うん。まぁ、忙しいのは相変わらずだけどね。そのせいで栞子にも迷惑をかけた…すまない」
栞子「い、いえそんな!それに、歩夢さんと姉さんが色々と頑張ってくださったので…」
栞子パパ「そうだね…。薫子、ご苦労様。上原さんも…」
歩夢「は、はい!」
栞子パパ「栞子のために、動いてくれてありがとう」
歩夢「いえ、そんな!私は、その、当然というか、私のためでもあるというか…」
栞子パパ「…そうか。栞子のことをそんな風に言ってくれる人に、娘が出会えたことを嬉しく思うよ」
そう言ってお義父さんは微笑んだ。
お義母さんの第一印象は冷たい美人、って感じだったけれど、何というかお義父さんは底の知れない感じがする。
話し方も、表情も、温和なんだけれど、それだけじゃないっていうか…。
これが人の上に立つ人の醸し出すオーラ、なのかな?
栞子パパ「…さて、さっさと本題に入ろうか」
栞子「本題、ですか?」
薫子「言ったでしょ?助っ人を呼んでくるって」
歩夢「助っ人…。あ!」
すっかり忘れてた。
薫子さんが言ってた当てって、お義父さんのことだったんだ。
三船家の当主だというお義父さんなら確かに効果的な助っ人だろう。
でも、もうお義母さんとは話しがついていることも、私と栞子ちゃんがお付き合いしていることすら薫子さんとお義父さんは知らないんだ。
それに、また自己紹介をしていないのもマズい。
歩夢「あ、あの!お義父さん!自己紹介が遅れました、実は私、栞子さんと、その、お付き合いさせていただいていまして…今日はそのご挨拶に来たんです」
薫子「ええ!ホントに!?よかったね、栞子!あんなに大好きだった歩夢ちゃんと付き合えて!」
栞子パパ「おや、薫子は二人の仲を知らなかったのかい?私は一目でわかったよ」
薫子「いや〜、私は歩夢ちゃんとの付き合いも長いからさ…逆にね?」
栞子パパ「そうか。でも、ふむ…。君が自ら栞子の恋人だと名乗るなら、助っ人の話は一旦置いておこうか」
薫子「え!なんで!?ここまで来て…」
歩夢「あ、あの、私何か失礼なことを言いましたか?」
お義母さんを説得するための助っ人だから別にいいんだけど、お義父さんに第一印象で嫌われたならマズい。
栞子パパ「ん?ああ、別にそういう訳じゃないし、約束を違えると決めたわけでもないよ。ただその前に私も、親の務めとして見極めなくちゃならない思ってさ。上原さんをね」
歩夢「!み、見極める、ですか?」
栞子パパ「そう。まぁ、話を聞こうと思ってね。薫子からある程度の人となりは聞いたけれど、私自身君とは初対面だ。だから、君の口から直接聞きたいんだ。栞子とのことを、どう考えているのかをね」
歩夢「それは、つまり…」
栞子パパ「ああ、べつに馴れ初めや惚気を聞くつもりはないんだ。これから栞子とどうなりたいのか、それだけ聞かせてほしい」
思わず栞子ちゃんの顔を見る。
信用しています、って言うみたいに頷いてくれる栞子ちゃん。
でも、その瞳には少しだけ不安が揺らいでいた。
それはそうだろう。
だって、私達は昨日初めて想いを伝えあった仲だ。
これまでずっと、ずっと私を好きでいてくれたという栞子ちゃん。
それをずっと、気づかなかった…ううん、きっと気づいてて、でも色んな言い訳をして見逃してきた私。
今更何を言ってもそれは変わらない。
歩夢「わかりました、お話しします。私は…」
でも、だからこそちゃんと、言葉にしないとね。
しっかり栞子ちゃんのことを考えてくれる人たちの前で。
歩夢「栞子さんを、お嫁さんにしたいです!」
- 988 :名無しで叶える物語:2022/07/08(金) 00:53:32.84 ID:ObwQ2DKp.net
- 応接間がシン…と静まり返る。
あ、あれ?
栞子「…あ、あの、歩夢さん?」
栞子ちゃんですら困惑顔。
歩夢「わ、私、何か変なこと言ったかな?」
そこで、堪えきれなくなったように薫子さんが吹き出した。
それに釣られるように笑いだすお義父さん。
お義母さんだけが少し困った顔で微笑んだ。
歩夢「え、えー…」
栞子パパ「いやぁ、栞子は面白い子を選んだね」
薫子「うんうん、やっぱり私の妹だ!アハハ!」
そんなに笑われるようなことを言ってしまったのだろうか、真剣だったんだけど…。
歩夢「あ、あの…」
栞子パパ「ふふ、ああ。失礼した。君の言った言葉の意味は、栞子と添い遂げる覚悟と受け取って良いんだね?」
歩夢「は、はい!」
栞子パパ「それはつまり、三船の跡取りと結婚するということだ。それは分かっているかい?三船の妻という立場は、恐らく想像しているよりも大変だよ。実務面だけじゃあない。恥ずかしながら、三船家の中にあるドロドロとしたことにだって、君は立ち向かってゆかなくてはならない」
歩夢「…それはお義母さんから、少し聞きました。ですが、栞子さんとなら、覚悟はできています」
お義父さんは少し意外そうな顔でお義母さんをチラりとみた。
栞子パパ「…そうか、でもそれは、栞子に会えなくても変わらないのかい?」
歩夢「…どういうことですか?」
栞子パパ「…私は、妻を愛している。子どもができても、この歳になってもそれは変わらない。だから仕事がない時必ず家に帰り、家族での時間をとるようにしているんだ。当主になってからもね。けれど…去年の1年で家に帰ってこられたのは1週間にも満たない日数だろう」
そんなに…。
栞子パパ「それだって、家を妻が守ってくれているからこそできることだが…。その上で何も返せない自分を歯がゆく思うよ」
栞子ママ「私は、あなたの妻でいて不幸と思ったことはありませんよ」
栞子パパ「ありがとう…。けれど、大変な思いをさせてしまっているだろう。今回のことだって、私が家にいれば、ここまで大ごとにならなかったろう?」
栞子ママ「それは…。申し訳ありませんでした…」
栞子パパ「いや、君は私を責めるべきだよ。あの日、何があっても君を守ると誓ったのに…私はそれを破ってばかりだ」
栞子ママ「そんな!あなたが何よりも私たちを大事にしてくれているのは痛いほど…」
歩夢「あ、あのー…」
栞子パパ「…コホン、すまない。…とにかくだよ。恋人でいるのと、夫婦になるというのは違うんだ。栞子が相手であれば特にね。それでも、さっきの言葉を後悔することはないと言えるかい?」
お義父さんは、あくまで私を試すというよりは心配するような声色で聞いてくれた。
だから、感情としては「もちろんです」と即答したいところだけれど…。
歩夢「…栞子さんは、凄く責任感の強い人です。私には三船家の当主のお仕事の大きさとか、大変さとかはまだ分からないけれど、それがどんなに辛くてもやり遂げようとする人です」
栞子パパ「…そうだね。薫子とは違った、栞子の強さだと思う。でも、栞子が苦境に立ち向かおうとすれば、それは傍にいようとする君にだって降りかかるだろう」
歩夢「だからこそです。私は…栞子ちゃんの帰る場所になりたいと思っています」
栞子「歩夢さん…」
栞子パパ「ほう…それは、つまり?」
歩夢「どんなに大変なことがあっても、何が敵になったとしても、私だけは栞子ちゃんを守ります。どうしても、私達だけじゃ立ち向かえないものが相手なら、栞子ちゃんを連れて逃げます」
栞子パパ「!…それが、三船家でも?」
スッとお義父さんがこちらを見る目を細めた。
気を悪くさせたかもしれないけれど、今の言葉は私の本心だ。
訂正する気はない。
歩夢「はい!」
私の返事を聞いたお義父さんは元々細めていた目をそのままにっこりと閉じた。
- 989 :名無しで叶える物語:2022/07/08(金) 00:54:16.91 ID:ObwQ2DKp.net
- 栞子パパ「…うん、君の言葉、三船家の当主として聞き届けたよ」
薫子「!父さん。それは…」
栞子パパ「うん、良いんじゃないか。上原さんなら、なぁ母さん」
栞子ママ「ええ。私はあなたが帰る前から上原さん、いえ。歩夢さんのことは認めていましたよ」
薫子「え、そうだったの?それならそうと言ってくれればよかったのに」
栞子ママ「あら、だって。お父さんも可愛い末の娘の恋人に、言いたいことがあるみたいでしたから」
栞子パパ「…じゃあ、これで仕舞いだね。二人とも、今日は泊まっていきなさい、薫子も」
お義父さんがお義母さんがしたように手を叩くと使用人の人が何人か入ってきた。
お言葉に甘えるべきかどうか判断しかねて薫子さんを見ると、こちらの視線に気付いた薫子さんは少し悩んだ顔をした後に、お義母さんの顔をちらりと見て頷いた。
薫子「いや、やめとくよ。せっかくの夫婦水入らずなんだし、私達は私達でよろしくやってくるよ」
ね?と薫子さんがこちらにウインクする。
確かにさっきの話しじゃあんまり会えないみたいだし、お邪魔しない方がいいよね。
歩夢「そうですね、いこっか栞子ちゃん」
栞子「はい、歩夢さん」
栞子パパ「おや、そうかい。それじゃあ、お言葉に甘えようか、母さん」
栞子ママ「では、2人を送るよう、連絡をしておきましょう。…薫子も」
薫子「いや。私は乗ってきた車があるし、二人もついでに送るよ」
栞子ママ「もう、あなたはまたそうやって人の好意を…まぁ、良いでしょう」
お義母さんは一瞬眉を上げかけたけれど、一つ溜息をつくとしょうがないな、という顔をして薫子さんの背中をぽんと押した。
- 990 :名無しで叶える物語:2022/07/08(金) 00:54:50.61 ID:ObwQ2DKp.net
- 外まで見送りに来てくれたお義父さんとお義母さんにお辞儀をして、薫子さんの車に乗り込んだ。
助手席に薫子さんがさっさと乗ってしまったので、私と栞子ちゃんが後部座席だ。
服装がスーツになっていたので乗り込むまで気づけなかったんだけれど、運転席には栞子ちゃんの救出に協力してくれた女中さんが乗っていた。
会釈を交わし合った後にはスッと前を向いてしまったので会話はなかったけれど、三船家から出奔したようなものだし、お義母さんたちの前であまり目立ちたくないのかもしれない。
車が出たあとも、あまり話してはくれなかったけれど。
薫子「いやー、緊張したね〜。それにしても、母さんにあそこまで気に入られるなんて、やるじゃん歩夢ちゃん」
栞子「そうですよ。歩夢さんのお陰で、全部上手くいきました。やっぱり歩夢さんは凄い人です」
歩夢「も、もう、二人してそんなに褒めないでよ。それに、お義母さんから聞いた分家の人たちのこともあるし、まだ頑張らないと…」
薫子「え、何のこと?」
薫子さんが到着するまでのことを大まかに話す。
お義母さんを説得したときのことを話したら嬉しそうに笑ってたけど、分家の人達の話をしても薫子さんはあんまり暗い表情はしなかった。
薫子「あぁ、それなら大丈夫だと思うよ」
歩夢「え、なんでですか?」
薫子「父さんが言ってたでしょ。“三船家の当主として”って。あれは、二人の仲を認めたってだけじゃなくって、だれにも口出しさせません、って意味なんだよ」
歩夢「ほ、本当ですか!」
薫子「うん。だから、そっちの問題はなんとかしてくれると思う。父さん、結構強権派だし」
それなら、もう私達の仲を邪魔するものはないってこと!?
歩夢「やったね!栞子ちゃん!」
栞子「は、はい!歩夢さん、やりましたね!」
薫子「うんうん。2人は晴れて婚約者同士になれたわけだし、万々歳だね」
歩夢「…え?」
こ、婚約?
栞子「歩夢さん?どうしました?」
こちらを見てきょとんとしている栞子ちゃん。
別に今の言葉には何にも引っかかってないみたいだけど…。
歩夢「あ、あの。婚約って…」
薫子「え、だって、言ってたじゃん栞子のこと『お嫁さんにしたい』って」
…言った。
栞子「あ、歩夢さん、もしかして…」
栞子ちゃんが凄い悲しそうな目でこっちを見ている。
歩夢「あ、いや、違うの!あの言葉には嘘はないんだけど!だって…」
薫子「だって?」
歩夢「だって、プロポーズはもっと、ロマンチックにしたかったから…」
それを聞いた薫子さんは一瞬フロントミラー越しにきょとんとした顔をした後、笑い出した。
あ、女中さんまで!
歩夢「そ、そんなに笑わなくても!」
薫子「だ、だって…ぷ、ふふ。そんなこと、気にしてるなんてさ!」
そんなことじゃないもん!と私が拗ねかけていると、栞子ちゃんが袖を引っ張り私の耳元に顔を寄せて囁いた。
栞子「…今度は、私がプロポーズしますね」
- 991 :名無しで叶える物語:2022/07/08(金) 00:55:32.47 ID:ObwQ2DKp.net
- あのレストランで食事をしてから、荷物があるからとランジュちゃんのマンションの前まで車で運んでもらった。
歩夢「すぐに荷物を纏めてきますね」
薫子「いや、いいよ。とりあえず今日はもう遅いし、また明日迎えにくるね」
歩夢「そんな、二度手間じゃないですか」
薫子「いーの、いーの。それに、いろいろあった日だし、今日はきっと…燃えるよ?」
ニヤリとしながら言う薫子さんに、顔を真っ赤にする栞子ちゃん。
一瞬きょとんとしてしまったけれど、3秒ほどで私も意味に気づく。
栞子「あ、歩夢さんに何を言うんですか!帰るなら、早く帰ってください!」
薫子「ハイハイ…ああ、あと1つ、2人には謝らないといけないことがあるんだよね」
歩夢「…なんですか?」
薫子「実はさ、栞子のお見合いが母さんにバレたの、私のせいみたいなんだよね…」
え?ええと、どういう意味?
薫子「えっとね、調べたら栞子のお見合いの会場代の領収書が実家に届くようになっちゃっててさ。ごめんね。なんか前実家に顔出した時に母さんが滅茶苦茶怒ってたからなんでだろ、とは思ってたんだけど…」
なるほど…そんな経緯があったのか。
歩夢「でも、結果的に、全部上手くいきましたし」
薫子「それは二人の頑張りがあったからだよ。間違いなくね」
歩夢「でも、薫子さんがいなければ、栞子ちゃんとこうはなれなかったと思います」
薫子さんは照れたように「そっか」と言うと、ひらひらと手を振って窓を閉めた。
そのまま車は発進し、マンションの前で栞子ちゃんと二人きりになる。
歩夢「じゃあ、入ろっか」
栞子「は、はい!」
栞子ちゃんの手を握ると、少し強張っていた。
- 992 :名無しで叶える物語:2022/07/08(金) 00:56:30.06 ID:ObwQ2DKp.net
- 持って出た荷物はお土産とそれぞれ小さなバッグのみだったので、片付けるものも特にはない。
お風呂を入れてくると、リビングで栞子ちゃんがお茶を入れてくれていた。
歩夢「ありがとう」
栞子「いえ、こちらこそありがとうございます」
歩夢「…ふぅ。今日は疲れたね」
栞子「はい、長い一日でした…。それで、あの…」
歩夢「うん?なに?」
栞子「き、キスしてもいいですか?」
歩夢「え?…うん、いいよ。…ん」
返事をしてすぐに、栞子ちゃんから顔をよせてくる。
受け入れると、少し栞子ちゃんの鼻息が荒かった。
舌を絡めてから、そういえば歯を磨いてないことに気付いたけれどお互い様と思うことにする。
臭うようなものは食べていない気がするんだけど…。
栞子「ぷは…、あ、歩夢さん、脱がせますね?」
歩夢「え?ちょ、ちょっと待って!」
するりと手が裾から入ってきそうになるのを止める。
栞子「え…?」
拒否されたと思ったのか、凄く悲しそうな顔の栞子ちゃん。
栞子「だ、駄目でしたか?」
歩夢「そうじゃないけど…」
栞子「でしたら…」
だって、朝から色々あったし暑い季節じゃないけれど流石に…。
歩夢「シャワー浴びてから、ね?」
- 993 :名無しで叶える物語:2022/07/08(金) 00:56:54.32 ID:ObwQ2DKp.net
- 私は別に一緒に入っても良かったんだけど、全裸で向かい合うのはまだ緊張すると言うので栞子ちゃんに先に行ってもらって、その間にベッドを整える。
凄い緊張した顔もちで栞子ちゃんが帰ってきたので寝室で待ってもらって、私もお風呂に入った。
湯舟で疲れを解したあと、どことは言わないが特に念入りに身体を洗う。
パジャマに着替えて戻ると、栞子ちゃんはベッドの上に座っていた。
歩夢「ふふ、なんで正座なの?」
栞子「え、いえ、その…緊張してしまって」
栞子ちゃんのとなりに腰掛けて身体を寄せる。
一瞬強張らせた後栞子ちゃんもベッドから足を下ろし、また顔を寄せた。
栞子「ちゅ…んむ。ふぅ、あ、歩夢さん…一つ、お伝えしたいことがあります」
歩夢「ん…ぷは。…うん、なぁに?」
栞子「それは…やっぱり、後でお話ししますね…ちゅ…」
歩夢「ちゅ…うん、わかった…ちゅる…」
そしてそのまま、何度も口づけを交わす。
そのうちおもむろに、栞子ちゃんの手が服の中に入ってきた。
今度は拒まず、私もボタンを自分で外す。
そして、その手が胸に触れる寸前…インターホンが鳴った。
歩夢「…誰だろう」
栞子「…誰だっていいです。こんな時間にやってくるなんて非常識な人、無視しましょう」
栞子ちゃんにしては珍しい物言いだ。
歩夢「でも、そういう訳にも…」
その内にインターホンがまた鳴った。
栞子「…はぁ。見てきます」
歩夢「わ、私も行くよ!」
カーディガンを羽織り、二人でインターホンの前に行く。
スピーカーをオンにして、「どちら様ですか?」と聞くと…。
「ランジュよ!あら、この声…きゃあ!久しぶりね!栞子!」
私たちは急いで服装を整えて、玄関に向かった。
- 994 :名無しで叶える物語:2022/07/08(金) 00:57:20.25 ID:ObwQ2DKp.net
- ランジュ「あら、栞子。どうしたの、そんなに怖い顔をして。もう、そんなにランジュに会いたかったの?仕事が遅くなったんだから仕方ないでしょ?」
栞子「いえ、何でもありません。こんばんは、ランジュ」
歩夢「あ、アハハ…ええと、ゴメンね、こんな格好で。実はもう、お風呂入っちゃたんだ」
ランジュ「あら、そうなの。じゃあ、ランジュも入ってくるわね」
栞子「と、泊まるんですか!?」
ランジュ「なによぅ、そんなに大きな声だして。ここはランジュのマンションなのよ?」
栞子「そ、そうでしたね…。いえ、すいません、ランジュ。今回は、迷惑をかけました」
ランジュ「無問題ラ!大親友の栞子と歩夢のためだもの!そうだわ、お風呂の後は、パジャマパーティーをしましょ!」
歩夢「うん、紅茶とお菓子、用意しておくね」
ランジュ「それって…もしかして、歩夢の手作り?」
歩夢「う、うん、一応…」
栞子ちゃんを待つ間、暇だったのでクッキーやらを焼いておいたんだ。
ランジュ「それなら、すぐに行かなくちゃ!ちょっと待っててね!」
そう言って浴室に歩いていくランジュちゃん。
栞子「あの、歩夢さん…後で話すと言っていた話なのですが」
それを見送りながら、不意に栞子ちゃんがそう切り出した。
歩夢「え?それって、さっきの…?」
栞子「はい。大事な話なのですが、今日話さないと意味がないことなので…」
歩夢「そうなんだ…分かった、今聞かせて?」
栞子「…歩夢さんは、私をお嫁さんにしたいと言ってくれましたよね」
私は黙って頷く。
栞子「実は、私も…歩夢さんをお嫁さんにしたいんです。だから…」
歩夢「!…そっか。じゃあ、結婚式は、二人ともドレスだね」
栞子「は、はい!それと…ちゃんとプロポーズの指輪、用意しますね?」
歩夢「うん、私も用意する。でも、高いのじゃなくていいからね。ちゃんと栞子ちゃんが選んでくれたなら、どんなのだって私は嬉しいんだから」
栞子「もちろんです。世界一の指輪を用意してみせます!」
歩夢「もう…待ってるね?」
私達は触れるだけのキスをもう一度だけ交わして、お茶とお菓子の用意をしにキッチンに向かった。
- 995 :名無しで叶える物語:2022/07/08(金) 01:00:23.80 ID:ObwQ2DKp.net
- あんまり書き込めないので浪人というものを買いました。
次回更新で完結予定でしたが、スレが足りないのでエピローグという形で新しいスレを立てようと思います。
これまで長らくの保守、本当にありがとうございました。
スレは変わりますが、もう少しだけお付き合いください。
- 996 :名無しで叶える物語:2022/07/08(金) 01:24:26.71 ID:wpCjJCje.net
- 乙です
エピローグも楽しみに待ってます
- 997 :名無しで叶える物語:2022/07/08(金) 01:37:33.83 ID:UvWKviQg.net
- わざわざ助かる
楽しみに待ってます
- 998 :名無しで叶える物語:2022/07/08(金) 04:52:48.77 ID:gWVHCs0e.net
- 更新ありがとうございます
続きも楽しみにしてます!
- 999 :名無しで叶える物語:2022/07/08(金) 08:34:13.82 ID:scuRD5iu.net
- 続き楽しみ
- 1000 :名無しで叶える物語:2022/07/09(土) 01:10:59.73 ID:IZosD2js.net
- ᶘイ^⇁^ナ川
- 1001 :2ch.net投稿限界:Over 1000 Thread
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