殺人事件発生

Ψ

バーチャル仮想空間の開発エンジニアが殺された。
警視庁捜査１課の堀田刑事と矢野刑事は、バーチャル設計会社を訪ねた。

「事件のことで、お聞きしたいことがあります」
堀田刑事は言った。

蓑川という男が、対応した。
チーフエンジニアらしい。

「バーチャル仮想空間とは、どんなもの何ですか？」
矢野刑事は聞いた。
「現実世界とまったく同じように、街や車があり、そこで生活することが出来ます。重力感や痛みもありますよ」
蓑川は言った。
「空を飛べるとかなら別ですが、まったく同じではつまらんでしょう」
堀田には、バーチャル空間で生活する意味がわからなかった。
「例えば、パイロットになりたい夢があるとします。現実世界では、夢でも、バーチャル世界では、パイロットになることが出来るんです」
蓑川は説明に入った。

「パイロットばかりになってしまいますよ」
堀田は、笑いながら言った。パイロットは競争率が高いからである。
「現実世界よりも難しくないですが、パイロットの適正試験もありますし、オークションで買えるのです」
蓑川は言った。

「金次第というわけですか」
堀田はため息をついた。
非現実世界も、現実的である。
「それに、事故とかアクシデントも用意してあるんです。乗客は墜落する恐怖を味わえますが、現実では死ぬことはありません」
蓑川は、話を続けた。
「ただ、バーチャル空間で死んだ人間は、２度と、その世界では遊ぶことは出来ません。つまりバーチャル空間の死です」
「そのパイロットは、現実世界で袋叩きにあいますな」
寺田は笑いながら言った。

刑事と蓑川は、会話は終えた。
お礼を言って別れた。
堀田は、蓑川の財布を掏っていたことに気が付いた。
泥棒の癖が出たと思った。
バーチャル空間でも、癖は隠せない。