【日本の解き方】マイナス金利に反対する人たちは“自分の身のまわり”を見ている

きつねうどん ★

　日銀のマイナス金利導入を受けてメガバンクなど銀行株が売られる場面があった。国債の金利低下で運用難になるとして預金金利を引き下げる銀行も出ている。

　今回の日銀のマイナス金利では、基本的には、銀行が日銀に預ける当座預金が２５０兆円を超える部分にマイナス０・１％の金利をつける。つまりその分の手数料を日銀が銀行などから取ることになる。逆にいえば、今ある日銀当座預金２５０兆円のかなりの部分に０・１％付利されているが、これは継続されるようだ。このため金融機関への収益悪化は直ちには起こりにくいだろう。

　マイナス金利自体は、スイス、スウェーデン、デンマーク、欧州中央銀行（ＥＣＢ）で行われており、経済下支えには効果がある。ＥＣＢでは、当座預金全体にマイナス金利が付されている。この点、今回の日銀のマイナス金利は、当座預金の一部と、これからの追加分だけに限定されており、銀行などにとっては「やさしい」仕組みである。

　ただし、今後、さらなる金融緩和となると、今の２５０兆円の部分まで、マイナス金利が適用される可能性もある。その場合には、金融機関の収益にも影響が出てくるだろう。

　マイナス金利の危険性を強調する市場関係者というのは、そうした今後の金融緩和を心配していると思われる。「市場関係者」といっても、ほとんど金融機関の関係者であるので、金融機関の収益が悪くなることは、たとえ日本経済のためになったとしても反対しがちである。

　これは、債券関係者（いわゆる「債券村」の人たち）が、債券部門の収益になるので、デフレ経済を良いものとして扱ってきたこととまったく同じである。

　こうした傾向は、日銀金融政策決定会合でのマイナス金利導入をめぐる政策委員会委員の賛否を見てもわかる。賛成したのは、黒田東彦（はるひこ）総裁、岩田規久男副総裁、中曽宏副総裁、原田泰委員、布野幸利委員。

　一方、反対は、白井さゆり委員、石田浩二委員、佐藤健裕委員、木内登英委員。白井委員は学者出身であるが、石田、佐藤、木内の各委員は民間金融機関出身である。

　さらに興味深いのは、賛成委員は、すべて安倍晋三政権になってから任命されているが、反対委員は逆にすべて民主党政権下での任命である。時の政権が正しい政策をしているかどうかは重要だ。

　今回のマイナス金利について、金融機関から文句が多いということは、政策が効くという証しだろう。日銀の買いオペ（市場から国債を買うこと）は、金融機関が持っている国債を取り上げて貸出に仕向ける、という政策だ。これは日本経済にとって良いが、当事者の金融機関が当面は困るという話なのだ。

　多くの市場関係者の話は、自分の身の回りだけを見て、日本経済を見ていない、ということを念頭に置いて聞いた方がいい。　

http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20160205/dms1602050830011-n1.htm