白鵬「強い人が大関になる。宿命ある人が横綱になる」

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白鵬、全勝対決制す

　今場所最多の５８本の懸賞がかかった結びの大一番。取組前の「稀勢の里」コールは取組後、
熱戦を繰り広げた両雄への大きな拍手に変わった。だが、優勝に向けて前進した白鵬に対し、
初優勝と横綱昇進が遠のいた稀勢の里。２人の命運は大きく分かれた。

　けんか四つにもかかわらず、白鵬は立ち合い右で張って左を差し、あえて稀勢の里得意の左四つに組む。
「勝つなら勝ってみろ。それで横綱になってみろという感じだった」と、まさに横綱相撲で受けて立った。

　右上手は切られて寄り返され、逆に上手を許したが、がっちりとつかんだ左下手が効いた。
何度も投げを打ちながら土俵上を動き回り、最後は豪快に下手投げで転がした。

　過去に４２勝１３敗と稀勢の里を圧倒してきた白鵬だが、初場所では押し出しで完敗するなど、
ここ数場所は立ち合いの出来が勝敗を左右していた。取組前、支度部屋で付け人相手に
普段以上に入念に立ち合いを確認して臨んだ。

　場内の声援が稀勢の里を後押ししても、冷静さを失わなかった白鵬。「（稀勢の里は）勝って
いいんだよという感じだったけど、勝てなかった。何かが足りない」と余裕も。１０年近くその地位に
君臨する横綱はこうも言った。「強い人が大関になる。宿命ある人が横綱になる」。
横綱の偉大さを身をもって示した。

　白鵬に転がされた稀勢の里は敗因を聞かれて「見ての通りです」。健闘むなしく、白鵬との
実力差を認めざるを得なかった。

　得意の左四つで白鵬を土俵際に追い詰めた。「集中してやれた」と見せ場は作ったが、
最後は白鵬の下手投げを残せなかった。攻めきれなかったかとの問いに「うん」。
短い返事に、高い壁にはね返された悔しさがにじむ。

　先場所は１３勝で、優勝した白鵬の１４勝に続いた。今場所は相撲内容を伴った優勝を果たせば、
横綱昇進の可能性も見えてくる。それに応えるように落ち着いた取り口で、初日から白星を連ねた。
勝てば優勝へ一気に近付く白鵬との無敗対決だったが、あと一歩、及ばなかった。

http://mainichi.jp/articles/20160521/ddm/035/050/090000c