発射から2日たっても分析中、韓国軍のミサイル防衛が崩壊の危機

きつねうどん ★

韓国軍、「2－3日前に特異動向があった」としつつも北の兵器についてきちんと把握できず

専門家ら「今回のミサイルは30分以内に探知・追跡・破壊しないと防御困難」

　ロシア製の「イスカンデル」ミサイルに準ずる弾道ミサイル（推定）を北朝鮮が発射してから2日たっても、韓国軍は「細かな事項は確認中」だとしている。北朝鮮が発射したという「新型誘導戦術兵器」がミサイルなのか、そうでないのか、まだ確認できていないのだ。当初、韓国軍内外では、軍がこうした態度を公式に示しているのは「大統領府（青瓦台）の顔色をうかがっている」からだという解釈が優勢だった。だが情報判断が遅れ続けていることを受け、単に顔色をうかがうにとどまらず、北朝鮮の核・ミサイルへの韓国軍の対応能力に深刻な問題があるのではないか－という声が上がっている。

　複数の韓国軍および情報当局の関係者は6日、今回の北朝鮮の挑発について「少なくとも2－3日前から特異動向をつかんでいた」と語った。北朝鮮は挑発に先立ち、江原道元山の虎島半島で金正恩（キム・ジョンウン）労働党委員長専用の視察施設の工事を行うなど、大々的な作業を繰り広げた。韓国軍関係者は「これは、まるで韓米両国に見せつけるかのように挑発するということ」と語った。だが韓国政府は、北朝鮮によるミサイル挑発の直後、情報判断について右往左往する姿を見せ、数日たってもまだ「分析中」とコメントしている。

　韓東大学の朴元坤（パク・ウォンゴン）教授は「今回の『イスカンデル』クラスのミサイルは、従来の韓国のミサイル防衛システムでは防げない新型のシステムで、（このミサイルを防ぐ）唯一の方法は『戦略標的打撃』（旧キルチェーン）によって事前探知・追跡を行い、先制攻撃を加えること」「そのためには30分以内に探知・追跡・破壊が可能でなければならないが、今でも挑発兵器が何なのか分からないというのは極めて深刻な問題」と語った。

　韓国軍は、北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対抗して「3軸体系」と呼ばれるシステムを運用してきた。このうち「キルチェーン」は、北朝鮮に挑発の兆候が見られたならば韓国軍が先制攻撃で移動式ランチャーなどを制圧する－という概念で、北朝鮮がこれを避けてミサイルを発射した場合は韓国型ミサイル防衛システム（KAMD）で防ぐ、という戦略を立てていた。同時に、北朝鮮の指揮部を攻撃する「大量反撃報復（KMPR）」を行うことで防御体制を構築しようとした。現政権になってからは、「3軸体系」という用語を「大量破壊兵器（WMD）対応態勢」に変更した。

　戦術核兵器の搭載が可能な「イスカンデル」クラスのミサイルは、弾頭が落下してくる段階で従来の弾道ミサイルより低い高度を飛び、また軌道が複雑で、THAAD（高高度防衛ミサイル）やパトリオットPAC3など従来のミサイル防衛システムでは防ぐのが難しい。ここで戦略標的打撃（旧キルチェーン）概念すら揺らいでしまったら、北朝鮮の核・ミサイルに備えるため用意された従来の3軸のうち、2軸までが無力化されたことを意味する。大韓民国守護予備役将星団は6日に声明書を出し「北朝鮮のミサイル技術発展を考慮すると、3軸体系など従来のミサイル抑止・対応システムを全面補完し、これを早期に構築しなければならない。韓国政府と軍は、韓国国民に対し北朝鮮の核の脅威を率直に知らせて、現実的な案を整備すべき」と主張した。だが韓国軍は「韓米両国は北朝鮮の脅威に対応して隙のない態勢を構築している」と言うばかりだ。

　韓国軍内部からは、今回の事態で、完全な米国頼みとなっている探知アセット（資産）の限界がはっきり現れた、という声が上がった。軍内外には「全くもって米国の情報アセットに頼らないといけないのに、このところ韓米の関係が疎遠になり、情報交流が難しくなっているのではないか」という見方もある。

　こうした中、韓国国防部（省に相当）の鄭景斗（チョン・ギョンドゥ）長官とロバート・エイブラムス韓米連合司令官は6日、国防部庁舎で1時間ほど非公開の会談を行った。双方は、北朝鮮が発射した「新型戦術誘導兵器」についての分析結果を共有したと伝えられている。

■キルチェーン（Kill Chain・戦略標的打撃）

北朝鮮による核およびミサイル攻撃の兆候を事前に探知し、先制打撃を加えるシステムのこと。偵察衛星、高高度無人偵察機、地対地・艦対地・空対地ミサイルなどを活用し、30分以内に北朝鮮の移動式ミサイルランチャーを探知・追跡・破壊するという概念。

http://www.chosunonline.com/m/svc/article.html?contid=2019050780053