韓国が日本に反発するのは、王朝があったから？ [きつねうどん★]

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韓国・ソウルにある朝鮮王朝の王宮、景福宮（Pixabay）

（平井敏晴：韓国・漢陽女子大学助教授）

　台湾は親日で、韓国は反日じゃないか。そう言われることがよくある。でも台湾は尖閣諸島の領有権を主張して日本に反発し、一方で韓国では旅行先として日本がトップの人気だ。台湾と韓国のこの比較対照は、いったいどこまで本当なのか？　

　日本の某出版社の社長さんが続けてこう切り出した。

　韓国に住んでいるから韓国の事情はわかるだろう。台湾に何度か足を運んでその親日具合について探り韓国と比較してみてほしい、というのだ。

　内心、また厄介で面倒な提案をされたもんだと思いもしたが、台湾は好きなところだし、専門分野の研究で台湾を調査しておかなくてはとも考えていたので、取材をすることにした。

　だが原稿をほぼ書き上げる頃、その出版社が事業停止になってしまった。そこで、これから何回かにわけて、その原稿の一部を改変して公開する。

朝鮮王朝を潰した日本に反発
「韓国が日本に反発してしまう理由はいろいろありますが、私がまず思うのは、王朝があったからですよ。台湾にはなかったでしょ」

　取材のために台北に夜遅く着いた翌日の朝、シェラトングランドホテルのラウンジで羅福全さんからそんな話を聞いた。1970年代から国連大学で活動したあと、2000年から4年間にわたり台北駐日経済文化代表処代表（大使に相当）を務めた。韓国とも人脈の太い人物である。

　学生時代に台湾独立運動に身を投じたために中国政府から目をつけられたが、国連に在籍していたために何度も中国に入国できた。そうした話は回想録『台湾と日本のはざまに生きて』に書かれている。

　恰幅がよく杖が似合う。待ち合わせのロビーに30分以上も前に姿を見せ、ラウンジのコーヒー代も、私が経費で落ちますからと話しても、「まあ、いいから」と言って支払ってくれた。

　あれからもう5年以上が経ったが、いまになってみると、羅福全さんの言葉が韓国在住の日本人であるわが身になかなか重く堪える。

「最悪の日韓関係」なんて言葉は聞き飽きた。「最悪」を何回更新すれば気がすむのか。むしろ、日韓関係は悪くて当たり前だと思うようにしている。この頃は、日韓のどちらかが歩み寄りの態度を示しても、どこか滑稽に思えてしまう。社会の意見を反映して政府が関係を改善しましょうと言っているようにはとても見えない。日韓関係の葛藤はそれほど根深く、その実感が羅福全さんの一言に重なるのだ。

「韓国には王朝があったから」とは、朝鮮王朝を潰した日本への反発心が何らかの形で韓国社会に根を張っているという意味である。

　1897年に朝鮮は国王を皇帝に代え、大韓帝国が成立し、日韓併合の1910年まで存在した。韓国は正式な国名が大韓民国であることからもわかるとおり、大韓帝国と無縁ではない。

　それはすなわち、こういうことだろう。現在の韓国には大韓帝国が重ね合わせられ、さらにそこから直接遡れる朝鮮王朝500年の歴史を自ずと回想することになるというのだ。

　そんな思考体系によって、近代日本と朝鮮王朝は対立関係に置かれてしまう。当時の日本の仕業に反対・反発することは、現在の大韓民国においても正しく称賛されるべき行いであり、そうしなければ罰せられる対象になる。日本で冷淡とも言われる親日派への処遇である。

台湾統治は黒字で朝鮮統治は赤字だった？
　では、王朝のない台湾ではどうだったか。

　台湾はもともとポリネシア系の多数の民族が住む島で、16世紀に、明が倭寇対策の拠点をつくるようになる。その後、オランダやスペインの勢力が明の勢力を駆逐して西側沿岸に入り込んだ。