【朝日新聞】「こんな小さな兵隊さんが…」最年少の志願者、投稿で体験伝え続ける

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重政紀元

2021/9/10 14:04 会員記事
陸軍少年飛行兵学校に入学当時の小山年男さん。制服は軍服とほぼ同じだった=小山さん提供
小山年男さんが入学した陸軍少年飛行兵学校=小山さん提供
「これからも体験を歌などで伝えていきたい」と話す小山年男さん=2021年8月20日午後5時35分、銚子市
　旧陸軍は太平洋戦争末期、操縦士養成学校の入学年齢を14歳からに引き下げた。千葉県銚子市の元高校教諭、小山年男さん（91）は最年少で志願した1人。その時の思いを本紙の「朝日歌壇」「声」へ投稿を続けている。「子どもたちにあんな経験をさせてはいけない」という思いを込めて。

　投稿を始めたのは20年ほど前。これまでに「朝日歌壇」に29回、「声」に9回掲載された。多くは14歳で入学した陸軍少年飛行兵学校や戦後の混乱をテーマにしたものだ。

　敗色濃い1944年春、私は空に憧れ、陸軍少年飛行兵学校の生徒になった。駅まで軍歌に送られ、ホームでは万歳三唱。「こんな小さな兵隊さんが……」と涙ぐむ人もいた=2021年8月13日付「声」

　当時身長150センチ、体重41キロ。8人きょうだいの末弟で、高等小学校卒業後は働かざるを得ない状況だった。「小さな町工場勤めより格好いい飛行兵に、という子ども心からの志願。よく試験を通ったものです」

　その年の夏、母校に呼ばれ、約300人の生徒たちの前に立った。「俺に続け」と話した記憶があるが緊張していてよく覚えていないという。軍服と同じ制服姿で銚子の街を歩くとみなが振り返った。

　村山村（現東京都武蔵村山市）にあった学校は、日立航空機の工場や陸軍多摩飛行場（現米軍横田基地）が隣接し、米軍の攻撃標的になった。

　空襲警報があると、工場との境の松林に掘った「たこつぼ」と呼ばれた壕（ごう）に逃げ込んだ。だが、そこも狙われ、目の前で工員が血まみれで死ぬのを見た。仲間2人は飛行場の壕で生き埋めになって亡くなった。

　東京西部にある貯水池のほとりで野営することになった。夜半ただならぬ気配に外に出ると、東の空が真っ赤に燃え、B29が超低空で後から後から飛んでくる。胴体は下の炎を受け、悪魔が舌を出しているようだった=11年3月22日付「声」

　1945年3月10日、東京の下町に壊滅的な打撃を与えた東京大空襲だった。焼け跡整理にも動員された。隅田川にはまだ遺体が浮かび、公園に掘られた大きな穴に埋めていた。付近には異臭が漂っていた。