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凛「この一球に……命を懸ける!」

1 :名無しで叶える物語:2020/08/10(月) 21:48:45.55 ID:Sm4lEvW7.net
凛(はっきり言って私は、小さい頃野球に興味なんて無かった)



凛(始まりは……小学校の夏休みのあの日、たまたま押し入れで見つけた一本のVHS)



凛『甲子園決勝大会 音ノ木坂高校対浦の星女学院……?』



凛(なんの気無しにビデオデッキに入れて、暇つぶしのつもりで見始めて)



凛(……試合が終わるその瞬間まで、目が離せなかった)



実況『空振りィィッ! 四番松浦、その場に崩れ落ちましたッ! 凄い、凄すぎるぞ豪腕桜内ッ! 9回裏の連続三振ーッ! キャッチャー星空がマスクを取って駆けつけ……』



実況『おっと……どうしたことでしょうか桜内。肩を抑えて……』



凛(そこで、テープは終わっていた。後でママに聞いた話だと、それはママが高校球児だった時の映像で。音ノ木坂が最強と呼ばれた、その時代を納めたものだったらしい)



凛『音ノ木坂高校……!』



凛(特に目標も無かった凛の人生に、その日一つの目標が生まれたんだ)



凛(ママのように、音ノ木坂高校で甲子園に出たい。って)

2 :名無しで叶える物語:2020/08/10(月) 21:55:33.74 ID:Sm4lEvW7.net
8年後

凛(……)

凛(凛は、今立っている。あの憧れの音ノ木坂高校野球部の部室前に)

凛(ここまで長かった……通ってた中学に野球部が無かったり、音ノ木坂が定員割れなのにE判定だったり)

凛(けど! 今日その全ては報われるにゃ! 今日から凛の伝説が始まるんだ!)

凛「すぅー……はぁー……」

凛「入部届オーケー! 体育のジャージオーケー! お腹も若干しか空いてない! ヨシ!」

凛(最終確認をして、高鳴る鼓動を押さえながらドアをノックする)

凛(どうぞ、という声に凛はゆっくりとドアを開けて――)

3 :名無しで叶える物語:2020/08/10(月) 22:01:42.22 ID:Sm4lEvW7.net
絵里「……」

希「ようこそー! よく来てくれたね野球部に!」

凛「は、はいっ!」

凛(優しそうな先輩……と、何か凄いこっちを睨んでる金髪の先輩?)

凛(というかいいの金髪……ここ野球部だよね? 漫画とかでよくある、不良に乗っ取られてるあれかにゃ?)

絵里「……貴女一人? 友達とかは一緒に来てない?」

凛「え、あっ、はい! 凛一人です! 友達は誘ったんですが米料理研究会に入るって断られちゃいましたにゃ!」

絵里「そう……参ったわね」

希「あー、もう絵里ち。そんな不愛想にしたら新人さん不安になっちゃうやん」

4 :名無しで叶える物語(鮒寿司):2020/08/10(月) 22:09:46 ID:Sm4lEvW7.net
希「えっと、凛ちゃん? でいいんかな。ウチは三年の東條希で、あっちは部長の絢瀬絵里。ごめんねこんな感じで、気にしないでね」

凛「は、はい! 星空凛です! 一年生ですにゃ!」

希「にゃ? あはは、元気のいい子やね。先に入った子とは真逆やん」

絵里「……全員揃ったら、練習前にもう一度自己紹介してもらうから。ジャージに着替えて待ってて」

凛「はい!」

凛(答えて、部室の奥に移動して……もう一人、人間がいることに気付いた)

凛(赤い髪の女の子が、ロッカー横の安っぽいベンチに座り部長にも負けない仏頂面で野球マガジンを読んでる)

凛(確か自己紹介の時に見た気がする。同じ一年生の……)

凛「西木野真姫ちゃん……だったっけ。真姫ちゃんも野球部に入ったんだね、これからよろしくにゃー!」

真姫「わたし、仮入部だから」

5 :名無しで叶える物語:2020/08/10(月) 22:15:08.94 ID:Sm4lEvW7.net
凛(こっちを一瞥もせず、突き放すように言われて。そこで会話は終わった)

凛「そ、そうなんだ……仮入部なんだねー」

凛(何とか会話を繋げようとしても、真姫ちゃんはもう此方の声に応えることはなかった)

凛「……かよちーん、助けてー」

凛(幼馴染の小泉花陽に助けを求めてみても、彼女はここにはいない)

凛(今頃米料理研究会で、全国の米を利き米出来る期待のホープとしてドリアでも作っていることだろう)

凛「……っと」

凛(ジャージに着替えて、とりあえず空いていた真姫ちゃんの横に座る)

真姫「……」

凛(こっちのことは微塵も気にしていないようで、身じろぎ一つしない。さながら凛は空気のようにゃ)

6 :名無しで叶える物語:2020/08/10(月) 22:23:09.84 ID:Sm4lEvW7.net
絵里「……よし、皆揃ったわね。グラウンドに移動するわよ」

凛(あの後、次々集まってきた先輩達と雑談をすることで何とか時間を潰していたところ、眉間に皺を寄せながら絵里先輩がそう宣言した)

凛(皆……? 凛達を入れても7人しかいないような……)

絵里「結局新入部員は二人……まぁしょうがないわよね。私だって、こんな状態なら入りたくなんて……」

希「だからあかんって! そんなん言ってたらせっかくの新入部員二人もいなくなっちゃうやん!」

凛(何事かぶつぶつ言っている絵里先輩の後を希先輩が追う)

穂乃果「絵里ちゃんは相変わらずだなぁ。ほら、凛ちゃんと真姫ちゃんも行こ?」

凛「はい! 穂乃果先輩!」

穂乃果「穂乃果でいいよ、先輩ってかたっ苦しいし」

凛(二年生の高坂穂乃果先輩は、そう言ってにこにこと笑う。良い先輩が多そうで良かった)

凛(相変わらずの真姫ちゃんを引き摺るようにして、凛達はグラウンドへと向かった)

7 :名無しで叶える物語:2020/08/10(月) 22:31:46.07 ID:QhlenLyI.net
米研究会って何だよ

8 :名無しで叶える物語:2020/08/10(月) 22:34:51.79 ID:Sm4lEvW7.net
凛(グラウンドに着くと、まず真姫ちゃんと共に部員たちの前に立たされる。要するに、正式な自己紹介をしろとのことだった)

凛「北西中学出身、一年生星空凛です! ポジションはピッチャーです!」

凛(ぱちぱちと拍手の音が聞こえる。何度見ても凛達の目の前には5人の先輩しかいない。他の先輩は遅れているのかな)

穂乃果「北西って確か野球部無かったよね?」

凛「はい、だからずっと一人で自主トレしたり陸上部やサッカー部の練習に混ざってましたにゃ!」

絵里「嘘でしょ? 二人しかいない上に片方は未経験……?」

穂乃果「け、けど未経験でピッチャーやりたいってあんな堂々と言えるのは凄いことだよ! 胆力があると思うよ、うん!」

希「それ褒めてるんか……?」

凛「今は未経験ですが、この高校で努力して……甲子園に行きたいと思っています! よろしくお願いします!」

凛(途端に、ざわめきが止んだ)

9 :名無しで叶える物語:2020/08/10(月) 22:39:07.86 ID:Sm4lEvW7.net
絵里「甲子園……?」

穂乃果「いやー、あはは……それはー」

凛「?」

「ぷっ……」

「あははははははっ! ははっあははっ!」

凛(静まり切った場を切り裂くように、突然笑い声が響いた)

凛(笑い声の正体は凛の隣にいる少女……真姫ちゃんだった。クールだった顔がおかしそうに歪み、心底面白そうに笑っている)

凛「な、何笑ってるにゃ!? 甲子園は高校球児の夢でしょ!?」

真姫「いやいや……あはは、それ音ノ木坂の現状知って言ってるの?」

凛「にゃ……?」

10 :名無しで叶える物語:2020/08/10(月) 22:45:37.96 ID:Sm4lEvW7.net
真姫「甲子園常連、常勝無敗の音ノ木坂伝説はどこへやら。今や弱小最低の下り坂なんて呼ばれてるのよ、ここ?」

凛「へ……?」

絵里「ッ……悔しいけれど、真姫の指摘は事実よ。私達は練習試合すら勝ったことが無いの」

希「そもそも人数足りないから、練習試合組んでくれるとこも滅多にないけどね」

凛「ええ……?」

穂乃果「で、でも真姫ちゃんが入ってくれたんだから! きっと練習試合くらいは勝てるよ!」

絵里「そうね。あの西木野真姫が入ってくれたんだから……一回くらいは、私の引退までに」

凛(『あの』西木野真姫……? 真姫ちゃん有名人、なの?)

真姫「……あのね、言っておくけど私まともに部活動する気なんてないわよ?」

11 :名無しで叶える物語:2020/08/10(月) 22:51:39.43 ID:Sm4lEvW7.net
希「はぁ!? なっ! 何言うてるんよ真姫ちゃん、野球やりにここ入ったんじゃないの!?」

真姫「……私、もうスカウトに声かけられてて。卒業後はほぼプロ入り内定してるのよね」

真姫「それに家に帰れば専門のプロトレーナーが数人ついてるのよ?」

真姫「こんな設備も碌にない……狭いグラウンドに、ショボい先輩と練習するより家の方が何倍も効率がいいわけ」

凛「じゃ、じゃあ何で野球部に……!」

真姫「野球部に入っておいた方がプロ入りの際に都合がいいのよね。いくら下位ドラフトとはいえ、何にもないところから湧いたら変でしょ?」

真姫「球団としても『たまたま過去の強豪を見に来たスカウトが、惚れこんでドラフトにかけた』って形にしたいわけ」

凛「……凛達は踏み台ってこと?」

12 :名無しで叶える物語:2020/08/10(月) 22:59:10.41 ID:Sm4lEvW7.net
真姫「踏み台なんて言い方してほしくないわね。それじゃ立派すぎるもの」

真姫「そうね……たまたま歩いていた道の脇に生えてた雑草! その程度じゃない?」

真姫「強豪にいかずにここ選んだのも、練習に出なくても済みそうだからだしね」

凛「……ッ!」

真姫「というわけで、誠心中出身西木野真姫。ポジションはショート。練習は出ないけど、試合なら肩慣らしに出てあげてもいいわよ?」

真姫「ああ、入部を断ってもいいわよ。ここの評価が更に下がるだけだけど……嫉妬に狂った無能、天才の入部を拒否なんて記事が出たりね」

絵里「こ、の……!」

希「お、抑えて絵里ち! 確かに腹は立つけど、あの西木野真姫が入ってくれるなんて奇跡に近いことやん!」

希「試合には出てくれるって言ってるし! な、抑えて! お願いやから!」

絵里「けど……けど、こんな奴に頼って試合に勝ったって……!」

13 :名無しで叶える物語:2020/08/10(月) 23:04:26.16 ID:Sm4lEvW7.net
真姫「どっちでもいいわよ? まだ他の高校への編入も間に合うし……」

真姫「とにかく私は帰らせてもらうわね。トレーナーが待ってるのよ」

凛「……待つにゃ」

真姫「……何よ、未経験?」

凛(気付けば、呼び止めていた)

凛(音ノ木坂が弱小だったことは驚いたし、甲子園の夢を笑われたのも腹が立ったけど……)

凛(先輩達の思いを、この野球部を踏みにじったことがただただ許せなかった)

凛「凛と一打席勝負してよ。そっちが負けたら今言ったこと、全部撤回して先輩達に謝って」

真姫「勝負?しょうぶ……一打席勝負? 私と、未経験のピッチャー志望が?」

14 :名無しで叶える物語:2020/08/10(月) 23:07:30.89 ID:7xQZKevQ.net
タイムリーなSS

15 :名無しで叶える物語:2020/08/10(月) 23:10:18.41 ID:wTyX34jp.net
今日の明徳と城北の試合面白かった

16 :名無しで叶える物語:2020/08/10(月) 23:10:52.42 ID:Sm4lEvW7.net
真姫「驚いたわね……侮辱に近いわよ、こんなの。勝負を挑んでくるなんて」

絵里「凛……気持ちは分かるけど、無理よ。勝てるわけが……」

凛「……真姫ちゃんがどれだけ凄いのかは知らないけど、凛は絶対に勝つよ?」

真姫「知らない? ああ、未経験だから仕方ないわね。気軽に話しかけてくるし変だと思ったのよ」

真姫「凛が勝ったら私が謝る。私が勝ったら凛は何してくれるの?」

凛「凛が負けたら何でも言うこと聞いてやるにゃ! 目でピーナッツ噛んだり、野生のちんすこう捕まえるでも何でも!」

真姫「あ、そう。じゃあ私が勝ったら全裸逆立ちで神田の街を一周してもらうわね」

凛「全然問題ないよ! その条件で勝負してやるにゃ!」

穂乃果「あぁ……」

17 :名無しで叶える物語:2020/08/10(月) 23:19:58.12 ID:Sm4lEvW7.net
真姫「バット借りるわね……用具置き場はどっち? 案内して、そこのモブっぽい先輩」

「は、はい……モブって……」

穂乃果「り、凛ちゃん! とんでもない約束しちゃったね!」

希「今からでも遅くないからごめんなさいしよ!? 流石に無理やんこれは!」

凛「ふ、二人とも何でそんなに慌ててるんですか……? 凛だってピッチングの練習はしてたにゃ!」

絵里「そういう問題じゃないのよ、なんで西木野真姫を知らないのよ……」

絵里「昨年の中学ベストナイン。ショートに入っているのが西木野真姫よ」

凛「へ……?」

凛(ベストナイン、って……確かそのポジションで最も優れた選手の……)

18 :名無しで叶える物語:2020/08/10(月) 23:27:03.59 ID:Sm4lEvW7.net
希「ウチ、作申中の天王寺からホームラン打ったの今でも覚えてるで」

穂乃果「打っても守ってもプロ顔負けの逸材なんだよ、真姫ちゃんは!」

凛「え、ええ……!?」

凛(そ、そんなヤバい選手だったの真姫ちゃん!? 打ち取れるか分からなくなってきた……)

凛(完全に思い上がったイキり噛ませだと思ってたのに……!)

絵里「うちの高校の惨状も知らなかったみたいだし……本当に野球好きなの?」

凛「あの……凛の家、ママ、お母さんが野球関係禁止してて」

凛「この高校に入るにも、友達と一緒に説得してようやくだったんですにゃ。自分もここの野球部だったのに嫌がるなって怒って、ようやく……」

絵里「そう……お母さんもここの出身なのね」

19 :名無しで叶える物語:2020/08/10(月) 23:32:05.03 ID:Sm4lEvW7.net
希「親子で同じ高校の野球部なんて、何かかっこいいなあ」

凛「だから凛は、ママと同じようにここで甲子園に!」

希「まあ、全裸で神田を歩いて警察に逮捕されんかったら一緒に野球やろうね……」

凛「……」

真姫「あら? 逃げずに待ってるとはいい度胸ね」

凛「そっちこそ! って、バットはどうしたの? なんで手ぶらで戻ってきたにゃ?」

真姫「ちゃんとバットは持ってるわよ、あっちのモブっぽい先輩が」

「何で二年も下の子に、こんな……こんな……」

絵里「大丈夫よ球拾。貴女には球拾って立派な名前があるじゃない、モブなんかじゃないわ」

「部長……うう……」

20 :名無しで叶える物語:2020/08/10(月) 23:37:31.71 ID:Sm4lEvW7.net
凛(さて、と……)

凛(マウンドの土を踏みしめる。途端に、足の先から脳のてっぺんまで)

凛(びりびりと痺れるような快感が凛の身体に走った。その気持ちよさに、思わず笑みが零れる)

真姫「何よ、恐怖でおかしくなったの? 今謝るのなら、半裸で許してあげるわよ」

凛「冗談。そっちも謝る準備しておくにゃ」

真姫「……下の毛を処理する時間くらいはあげるわね」

凛「生えてないにゃ」

真姫「ッ!?」

絵里「〜〜ッ!」

希「キャッチャーはウチや。大丈夫やで凛ちゃん、落ち着いていこうな」

凛「は、はい!」

21 :名無しで叶える物語:2020/08/10(月) 23:39:39.54 ID:QhlenLyI.net
流石天然のパイパン

22 :名無しで叶える物語:2020/08/10(月) 23:42:01.54 ID:Sm4lEvW7.net
凛(最初の一球……初めての一球は決めていた)

凛(あの甲子園のテープを見た時から、マウンドに初めて立った一球はこれにしようと……)

希「ここよ」外角高め

凛「ん」フルフル

希「……ここ?」内角高めボール一個外し

凛「……」フルフル

凛(希ちゃんの示すコースに首を振っていく)

凛(そして、最後に残る場所。希ちゃんが恐る恐る示したその場所に)

凛「……!」コクリ

凛(凛は大きく首を振って応えた)

23 :名無しで叶える物語:2020/08/10(月) 23:53:21.50 ID:Sm4lEvW7.net
絵里「嘘、でしょ……?」

凛(絵里ちゃんの声が聞こえる。それは凛が首を縦に振ったコースのことか、下の毛のことか)

凛(片足を高くあげ、凛は)

凛(思い切り、腕を振りぬいた)

真姫「――っ」

凛(指を離れた白球は真っ直ぐに、構えられた、ミット目掛けて飛んでいく)

凛(真姫ちゃんはバットを振らなかった。何処か呆然としたようにただただ、ボールの行く末を目で追っている)

バンッ!

凛(バンッ、と。球がミットに収まる気持ちのいい音が響いて)

凛(瞬間――身をよじるほどに途方も無い快感が、身を振るわせた。マウンドに立った瞬間のそれとは比べ物にならない快感……!)

24 :名無しで叶える物語:2020/08/10(月) 23:57:49.69 ID:Sm4lEvW7.net
真姫「ふざけてるの……?」

凛「ふにゃあ……」

真姫「ふざけてるのね!?」

凛「ち、違うよっ! た、ただ凛は……気持ち良すぎてっ!」

凛「キャッチャーに向かってボール投げたの、初めてだったからっ!」

真姫「はじ、めて? だからあんな、あんなボールを……?」

真姫「あんなど真ん中の、ストレートを! この私に!」

凛(凛が投げたボール……ど真ん中目掛けてのストレート。小細工の無い、文字通り直球勝負の一球)

凛(あの甲子園の桜内投手の三振三球。決め球のど真ん中ストレートを空振りさせているのを見て、凛もああなりたいと思った)

凛(け、けど本当に気持ちいい……! ストライク取るのってこんなに、気持ちいいんだ……!)

25 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 00:02:36.47 ID:OyWpJhH8.net
希「タイム!」

凛(まだ何かきいきい言っている真姫ちゃんを無視して、希ちゃんがこっちに駆けてくる)

凛(キャッチャーマスクを外したその顔には、明らかな焦りの色があった)

希「な、なんなん今の球……?」

凛「凛の必殺ストレート! えへへ、真姫ちゃん全然バット振れてなかったにゃ」

凛「やっぱり凛の投球、強打者にも通用するんだなーって……」

希「何言うてるんよ、あんな遅い球! 呆れて振らんかっただけやん!」

凛「にゃ……?」

凛(この人は何を言っているんだろう。凛のボールが遅い? 凛のストレートが……遅い?)

希「変化球とか無いん? あれじゃバッピしか務まらんよ!」

26 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 00:09:32.29 ID:OyWpJhH8.net
凛「バッピ……バッティングピッチャー!?」

凛「嘘でしょ!? 凛のストレートそんなに遅いの!? 小学校から鍛え続けてきたのに!?」

希「フォームもガタガタやし今まで何してきたんよ!? お母さん野球部やったんやろ!?」

希「見てもらわんかったん自分のフォーム!? 経験者やったら一発でおかしいって気付くレベルやん!」

凛「そんな……」

凛(ママは、凛が野球をやることを――いや、野球そのものに余り良い感情を持っていない)

凛(練習だってママに見られないようにやっていたのに、投球フォームを見てくれなんて言えるわけ……)

希「……今から矯正してる時間はない。とにかく、今はほとんど手投げの状態なんよ」

希「腰を使って、全身で投げるように切り替えないと肩や肘を壊すリスクも大きくなる」

凛「腰で……?」

27 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 00:12:10.52 ID:LP8zVOlT.net
凛ちゃんの全裸逆立ちを見られそうと聞いて来ました

28 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 00:14:15.33 ID:OyWpJhH8.net
希「と、とにかくそういう感じでお願い。勝つのは無理にしても、ある程度まともに勝負したいやろ?」

凛(全身で投げる……野球を知ってから8年間、凛の練習はほとんど手投げだったから……)

凛(完全なる素人状態……!?)

真姫「どうしたのよ、早く投げて。日が暮れるわよ?」

凛「わ、分かってるにゃ!」

凛(全身、全身……腰を使ってくいっと……)

凛(こ、こんな感じ……?)グイッ

ヒョロロロ

真姫「……」

希「ボール……しかもキャッチャーから一メートルも離れたヒョロヒョロ球」

希「これは……」

29 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 00:18:42.76 ID:OyWpJhH8.net
真姫「……アホらし。このまま立っててもフォアボールで終わりそうね」

凛「ば、馬鹿にするにゃー! こうして、こう……っ!」クッ

ヒュッ

希「おっ……」

凛(やった! さっきのひょんひょろよりかなり速いにゃ!)

凛(とはいえ……)

希「ば、バッターに着く前にワンバンしてどうするんよ!?」

凛「し、しかも手投げより遅い……全身で投げてる筈なのに何でにゃ!」

真姫「あのね、野球ってのは積み重ねなのよ……付け焼刃の技術でどうにかなるわけないじゃない」

30 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 00:25:58.70 ID:OyWpJhH8.net
凛「凛だって……ずっと、練習してきたのに……」

真姫「あのねぇ……」

真姫「実らない努力は、『無 駄』って言うのよ! どれだけ苦労したとか、どれだけ頑張ったとか関係ないの」

真姫「才能無い奴が間違った練習方法で八年やって『頑張った』『精一杯やった』? そんなので慰めてくれるのはママくらいよ」

真姫「さっさと投げなさい? あんたが八年かけた……的外れのひょろひょろ球!」

凛「凛……は……」

凛「――ッあああああああっ!」グッ

シュンッ

真姫「はいまたボールゥ! ボールスリー! あははははっ、ははははははっっ!!」

希「……」

絵里「……ねえ、穂乃果?」

31 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 00:30:29.53 ID:OyWpJhH8.net
穂乃果「うん……酷いよね、本当の事でもあんな風に言うなんて」

絵里「そこじゃないわよ。希は気付いてるみたいだけど……」

絵里「同じピッチャーの球拾はどう? 気付いた?」

「ええ……あの子、投げるたびに……」

絵里「そう。あの子、投げるたびに球のスピードが上がってる。もう最初の手投げ球を超えてるわ」

絵里「それにコントロールも。少しずつミットに近付いて行ってる」

「けど、あれじゃ間に合いませんね。次のボールが外れれば、そこで終わりです」

絵里「……そうね。きっと負けたら、心が折れる。惜しいわ、鍛えればきっと良いピッチングをしたでしょうに」

絵里「それにしても、星空って……何か聞いた覚えがあるのよね……」

32 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 00:35:37.52 ID:OyWpJhH8.net
凛「凛は……凛は……」

凛(凛はただ、皆と野球がしたくて。音ノ木坂で甲子園に行きたくて)

凛(ママに気付かれないようにこっそり練習して、ずっとずっと頑張って)

凛(けどその結果が、あんなつまらないボールで)

凛(凛は……野球が……)

希「……凛ちゃん!」

凛「希ちゃん……凛は……」

希「ええから! ずっと野球したかったんやろ!」

希「ボール投げただけであんなに嬉しそうな顔する子、見たことないもん! 色々言っちゃってごめん!」

希「もう何も気にしなくていい! 全身とか腰とかどうだっていい!」

希「凛ちゃんの投げたいように投げて! 何処に投げたって、ウチが受け止めるから!」

33 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 00:40:25.47 ID:OyWpJhH8.net
真姫「あー……何々? そういうのあんまり好きじゃないのよね」

真姫「漫画の読みすぎじゃない? それに凛も野球に、自分に期待しすぎよ」

真姫「別にいいじゃない、才能無い同士傷舐め合って野球やっていけば」

凛「……」

凛(投げたいように、凛の投げたいように……?)

凛(凛の投げたいボールって何? 凛はどんな球を投げたいの?)

凛(凛が投げたいのは……)

凛「ふぅ……」

凛「やめよ……考えるの。凛は難しいこと考えると頭が破裂しそうになるんだ」

真姫「見ればわかるわ、そんな顔してる」

34 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 00:45:55.91 ID:OyWpJhH8.net
凛(凛が投げたい球なんて。そんなの最初から決まってる)

凛(肩の力が抜けているのが自分でもわかった。ほとんど無意識に、身体は投球の体制に入っていた)

凛(片足を上げて。思いっきり大地を踏みしめて)

凛(指先を転がったボールは、真っ直ぐに真っ直ぐに)

凛(真ん中に構えられたミットに向かって進んでいく)

真姫「バカの一つ覚えみたいに真ん中を……」

真姫「投げてんじゃないわよ!」

凛(短く持ったバットを、真姫ちゃんはコンパクトに振りぬいた)

凛(対戦相手ながら、憎い相手ながら――惚れ惚れするほどの理想的なフォルム)

凛(風を切るようなスイングスピードで、ボールを狙ったバットが――)

35 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 00:46:39.78 ID:OyWpJhH8.net
バンッ!

真姫「……あ?」

凛(そのまま、空を切った)

36 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 00:53:03.75 ID:OyWpJhH8.net
真姫「……? 遅すぎて、先に振りぬいちゃったのかしら」

希「……自分騙すのはいいけど、冷や汗止められてないで。振り遅れさん」

真姫「……振り遅れ? 私が……あんな球に?」

凛(ボールがミットに吸い込まれる、二度目の音。自然と鼓動が早くなっていることに気付いた)

凛(興奮の中で、何処か冷静になっている自分がいた)

凛(一度目のストライクは謂わば虚をついた一撃、不意打ちのようなものでしかなかった)

凛「真姫ちゃんからストライクを……奪えたにゃ」

凛(二度目は……完全に振り遅れていた。自分の力で、自分の力だけで真姫ちゃんからストライクを取った)

凛(ツーストライクスリーボール、フルカウント。泣いても笑っても、この勝負は後一球で終わり)

凛(冷めやらぬ興奮も、事態を冷静に鑑みる自分も。その全てがこう言っていた)

凛(終わりたくない、まだ戦いたい)

37 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 01:04:41.48 ID:OyWpJhH8.net
凛(けれど……どう足掻いても勝負は終わる)

凛(もっと野球をしたい、もっとボールを投げたい!)

凛(確かに凛には才能が無いかもしれない、努力は無駄だったかもしれない)

凛(だったらこれから死に物狂いで練習して……努力を無駄になんかさせない)

凛(小学生の私に胸を張って、野球をしていると言いたいんだ!)

凛「行くよ……最後の一球!」

凛(全裸逆立ちなんてして、高校を退学になったら野球が出来なくなる……)

凛(勝ちたい!)

ヒュオッ

真姫「また真ん中……そう何度も何度も!」

真姫「空振りなんかしてやらないんだから!」

38 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 01:10:48.19 ID:OyWpJhH8.net
穂乃果「ああ! 振り遅れてない!」

絵里「星空……ゾラ……」

絵里「……お母さんがこの野球部にいた」

絵里「……まさか」

真姫「完全に捉えた……真芯! 長打コースに……!」

絵里「まさか、あの伝説のバッテリーの……サクゾラコンビの娘……?」

凛(当たるな……当たるなッ!)

凛(……気付かれるな!)

真姫「っらああああああああッ!」

キュルルルッ

真姫「!?」

39 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 01:16:14.76 ID:OyWpJhH8.net
希「うおっ!?」

ボスッ……

真姫「フォークボール、ですって……?」

凛「……て、手元で曲がった?」

凛「なんで……?」

希「なんでって、縫い目に開いた指掛けたからやろ……?」

凛「え……無我夢中すぎて覚えてないにゃ……」

真姫「負けた……の? こんな、ストレート投げるつもりでフォーク投げるような素人に……?」

凛「……」

凛「よく分からないけど……勝ったにゃーっ!」

40 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 01:20:08.94 ID:OyWpJhH8.net
希「凄いな凛ちゃん、よくフォークボールなんて投げられたなぁ」

穂乃果「うわーっ! 凄いよ、凄いよ! あの真姫ちゃんに勝っちゃうなんて!」

凛「いや、本当に無我夢中で……」

凛(けど、何で凛は勝負の最後に『気付かれるな』なんて思ったんだろう)

凛(……凛はフォークの投げ方を知ってた? 知っててあの球を投げた?)

凛(いや、気のせいにゃ。きっと気のせい、だよね)

真姫「負け……私が、負け?」

ザッ

真姫「……」

凛「真姫ちゃん、約束覚えてるよね?」

41 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 01:22:51.24 ID:OyWpJhH8.net
真姫「……私は負けてない」

凛「負けたにゃ。三振したもん」

真姫「負けてないわよ! 一打席は油断もあったから、三打席なら負けなかった!」

真姫「それに体調も悪かったし、喉も乾いていたし、それに、それに……!」

真姫「……」

真姫「……私が、悪かったわ。全部撤回する、凛の努力をバカにしたことも謝る」

「私にバット持たせたのは?」

真姫「……?」

「そこは悪びれないんだね……」

42 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 01:28:54.61 ID:OyWpJhH8.net
真姫「……私、部活を辞めるわ」

真姫「あんなに酷いこと言って、調子に乗って負けたんだから。みっともなくて……涙が出るわ」

絵里「……真姫」

真姫「凛、頑張りなさいよ。貴女は多分、自分で思ってるより強いから」

凛「……待つにゃ」

凛「勝手に辞めるなんて許さないよ。真姫ちゃんは甲子園に行く為に絶対必要なんだから」

真姫「甲子園、って。本気で……言ってるに決まってるわよね」

凛「確かに真姫ちゃんは恥ずかしい奴だにゃ。未経験者に負けるし、短く持った割に空振りだし、噛ませ犬みたいだし」

真姫「……」

凛「だけど、実力は本物だと思う。凛、正直怖かったもん」

凛「だからこそ、味方に欲しい。それに……単純に、真姫ちゃんと野球したいにゃ」

真姫「凛……」

43 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 01:33:33.71 ID:OyWpJhH8.net
真姫「いいの、皆も……?」

穂乃果「そりゃ言われた時はムカッと来たけど、謝ってくれたしね」

希「真姫ちゃんほどの実力があれば、ウチは大歓迎やん?」

絵里「……そういうこと。才能の無い頼りない先輩かもしれないけど、皆、貴女と野球がしたいと思えるくらいには野球が好きなのよ」

真姫「……ごめん、なさい」

真姫「ごめんなさい、ごめんなさい……」ボロボロ

凛「大丈夫だよ、真姫ちゃん。泣かないで……」

凛「凛も、真姫ちゃんが全裸逆立ちで神田を一周したら許してあげるから」

真姫「……え?」

凛「下の毛くらいは処理させてあげるにゃ」

44 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 01:38:10.43 ID:OyWpJhH8.net
翌日


凛「眠いにゃー……結局あの後みっちりフォーム直しさせられたし、身体が痛いよ」

凛パパ「おはよう、凛。お前の学校凄い生徒がいるんだなあ」

凛「にゃ?」

凛パパ「ほら、この新聞記事」

バサッ

『元誠心中学名ショート、深夜のストリーキングで補導。泣きながら星空と叫び続ける』

『球界からは呆れ声。スカウトも指名拒否を決定「たまげたなぁ……これはNです」』

凛「……」

凛「こいつぁ面白くなってきたにゃ」

45 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 01:39:07.43 ID:OyWpJhH8.net
今日はここまで

46 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 03:11:40.46 ID:JAaPF23V.net
追い付いた
続き楽しみにしてる

47 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 04:32:42.26 ID:c8l6r0hH.net
真姫ちゃんw

48 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 04:34:09.26 ID:+DmdrIbu.net
めちゃめちゃ面白い 龍狩りの人の野球SSを思い出すな

49 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 04:53:10.24 ID:E7DIv3jY.net
2014-2015年に戻った気分だ

50 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 12:27:48.84 ID:Aro9sCL7.net
期待

51 :名無しで叶える物語(鮒寿司):2020/08/11(火) 19:14:09 ID:OyWpJhH8.net
凛(何はともあれ真姫ちゃんも仲間になったし、凛はフォークボールを投げられるし)

凛(本当に甲子園行けそうな気がしてきたにゃ)

凛ママ「凛、ちょっといい?」

凛「どしたの? 朝ごはんはパンじゃなくて白飯がいいにゃ」

凛ママ「そうじゃなくて。あんた本当に野球部に入ったの?」

凛「……入ったけど」

凛ママ「悪いこと言わないから早いとこ辞めなさい。花陽ちゃんと同じ部活入ったらいいじゃない」

凛「凛が米料理研究会に入って何するって言うのさ」

凛ママ「いつの間にそんな部活が……米料理はともかく、あんまり野球にのめり込まない方がいいわよ」

凛ママ「後悔する時が来るかもしれないから」

凛「……? 後悔なんてするわけないじゃん、凛は野球やりたいんだもん」

52 :名無しで叶える物語(鮒寿司):2020/08/11(火) 19:18:59 ID:OyWpJhH8.net
凛ママ「……そう。それなら、いいけど」

凛ママ「一つだけ約束して。絶対無茶や無理はしないって」

凛「だ、大丈夫だよ。無茶も無理もしない! ママは心配し過ぎにゃ」

凛パパ「そうだぞハニー。凛ももう高校生なんだから、そこまで心配することもないだろう」

凛ママ「貴方は黙ってて。後二度とハニーって呼ばないで」

凛ママ「虫唾が走る」

凛パパ「……」

凛「パパとママはいつも仲がいいなぁ」

凛(部活入った初日に無茶も道理も通り越したなんて知ったら、ママ卒倒しちゃうかも)

凛(実際無茶苦茶だったよね……よく勝てたよ本当に)

53 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 19:23:28.55 ID:OyWpJhH8.net
凛ママ「……凛、貴女確かピッチャーやりたいって言ってたわよね?」

凛「う、うん。その予定だけど……」

凛ママ「朝ごはんの前に庭に出なさい。フォーム見てあげるから」

凛「……へ?」

凛「い、いいの? ママ、野球嫌いなんじゃ……」

凛ママ「嫌いよ。けど、娘が変なフォームで癖つけて、身体壊す方が嫌なの」

凛ママ「貴女がこっそりやってる自主練も、今までは遊びの延長くらいに思ってたけど……」

凛(バレてたんだ……)

凛ママ「本格的にやるんなら、きっちりと『壊れない身体』を作りなさい。いい?」

凛「分かったにゃ……」

54 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 19:30:13.55 ID:OyWpJhH8.net
凛(一人この世の終わりのように絶望し項垂れているパパを置いて、ママと一緒に庭に出る)

凛(うちの庭はパパの稼ぎに比例して狭いけど、投球の真似事をするには十分な広さがある)

凛ママ「さ、やってみなさい」

凛(手渡されたタオルを掌に巻きつけて、足元の土を固める)

凛「ふぅ……」

凛(昨日フォーム矯正をされたからある程度は出来るようになっている筈だけど、いざ母親の前で……甲子園優勝捕手の前で披露すると考えると)

凛(……怯えても仕方ないにゃ。息を整え、凛は片足を大きく上げた)

凛「ふっ!」

凛(腰を捻り、全身で押し出すように……!)

バサッ!

凛「ど、どうにゃ……?」

55 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 19:53:31.13 ID:OyWpJhH8.net
凛ママ「何それ……全ッ然駄目! そんな投げ方してたら肩か肘壊すわよ!?」

凛「えっ、そんなに駄目なの?」

凛ママ「ああ、もう……いや、これは何も見せなかった私の責任でもあるのか」

凛ママ「一個一個治していくから、とりあえずもう一回お願い」

凛「う、うん」

凛(何がそんなに駄目なんだろう……とにかくもう一回だ)

凛(片足を大きくあげて……)

凛ママ「はい、まずそこ」

凛「にゃっ!?」

凛ママ「足はもっと大きくあげて。ピッチングには必要な要素が三つあるのよ」

56 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 20:00:44.04 ID:OyWpJhH8.net
凛ママ「まずは投手自身の筋力……これは当たり前よね」

凛ママ「厳密には足腰とか腕の筋肉のしなりとか色々あるけど……とりあえずは筋トレをやっておけば問題ないわ」

凛ママ「あんたはサッカー部や陸上部に混じってた分、上半身はまだまだだけど足腰はしっかりしてるわ。そこは合格」

凛「走り込みだけはガッツリさせられたからね……何回吐いたか分からないくらい」

凛ママ「次に位置エネルギー。分かる?」

凛「馬鹿にしないでよ! そのくらい凛でも知ってるにゃ!」

凛「高いところから低いところにいくと何かすごい速い!」ドヤァ

凛ママ「……ま、まあそういうことよ。この位置エネルギーってのは、足を高く上げることで稼ぎやすいの」

凛ママ「難しい理論言ったって分からないだろうから、足をなるべく高くあげて思いっきり踏み込むと速い球が投げれるって」

凛ママ「そう考えてくれたらいいわ」

57 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 20:09:36.52 ID:OyWpJhH8.net
凛ママ「そして最後に並進エネルギー!」

凛「科学の授業はもうやめようよ……読者が離れるよ」

凛ママ「いーや2レスほどやる」

凛ママ「これは……簡単に言うと助走よ」

凛「助走? けど槍投げじゃあるまいし、ピッチャーで助走なんかつけたら……」

凛ママ「普通に反則よね。これは助走の代わりになる力、って理解してくれたらいいわ」

凛ママ「凛のフォームの話に戻るけど、これじゃ並進エネルギーは伝わり辛いわね」

凛「何でさ?」

凛ママ「片足をあげて……ここ!」パンッ

凛「ひゃっ! お尻叩かないで!」

凛ママ「お尻が横向いてるのよね。足を上げる際はもっと身体を捻って……」

凛ママ「お尻がキャッチャー側になるべく向くイメージで、足首と相談しながら限界を探ればいいわ」

58 :名無しで叶える物語(鮒寿司):2020/08/11(火) 20:17:01 ID:OyWpJhH8.net
凛ママ「ここでしっかりと『溜め』を作る」

凛「にゃー……!」

凛ママ「その『溜め』を逃がさないように、なるべくタイミングを遅く……遅く……!」

凛ママ「インパクトの瞬間に、解き放つ!」

凛「にゃ!」

ビシュゥン

凛「ッ……!?」

凛(な、なんか今……凄く自然に、力の移動が出来たような)

凛(腕が鞭のようにしなったっていうか、全く無駄を出さずに指先に力を伝えられたような気がする!)

凛ママ「そう、これがピッチングの基本。筋力×位置エネルギー×並進エネルギーを上手に利用できた結果よ」

59 :名無しで叶える物語(鮒寿司):2020/08/11(火) 20:22:40 ID:OyWpJhH8.net
凛「はぁー……ピッチャーって科学が出来なきゃ駄目だったんだね」

凛ママ「そういうことじゃ……いや、まあそういうことになるのかしら」

凛ママ「変化球も回転の向きや風の抵抗を考える必要があるし……」

凛「変化球なら、凛はフォークボールを投げられるにゃ」

凛ママ「フォーク? あんたいつの間にそんなもん覚えたの?」

凛「覚えてないよ? 昨日無我夢中で投げたら、何だか曲がったにゃ」

凛ママ「……!」

凛「ママ?」

凛ママ「なんでもないわ……すぐにご飯作るから先に今に戻ってて」

凛「? はーい、白飯と納豆がいいにゃ」

凛ママ「……知らないボールを投げられた? まさか、私の時と同じ……?」

凛ママ「気にしすぎ、よね……?」

60 :名無しで叶える物語(鮒寿司):2020/08/11(火) 20:28:52 ID:OyWpJhH8.net
学校 放課後

凛「かよちん、先輩に花陽様って呼ばれてたけど何があったんだろ」

真姫「何であんたの幼馴染、教室で米俵担いでたの? 力士か何か?」

凛「力士は真姫ちゃんの方にゃ。何全裸逆立ちで捕まってるのさ」

真姫「そっちがやれって言ったんでしょ!? パパが警察と懇意にしてなかったらヤバかったわよ、本当」

凛「真姫ちゃん補導した警官、給料半分になった上今日付けで沖縄の孤島署に転勤になったらしいね」

真姫「そこまでは知らないわよ……便宜図ったんでしょ勝手に」

真姫「それより、グラウンドに行ったら早速勝負よ。勝ち逃げなんて許さないんだから」

凛「真姫ちゃんは負けず嫌いだにゃー。分かったよ、先輩が良いって言ったらね」

61 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 21:40:32.21 ID:3i3rGar7.net
楽しみ

62 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 21:42:57.96 ID:OyWpJhH8.net
.



絵里「勝負? 駄目に決まってるでしょ」

真姫「何でよ!?」

絵里「そもそも真姫が一悶着起こしたせいで、私達まともに自己紹介も出来てないのよ!?」

希「そうやん。これから野球やってく仲間だっていうのに」

真姫「それは、そうだけど……」

絵里「凛だってまだ自分の投球フォームを探り探りやってる状態だし、勝負はきちんと凛が基礎を覚えてからよ」

凛「あー! 酷いにゃ、凛は今日ちゃんとママに教えてもらって……」

絵里「! と、とにかく今日は先輩達の自己紹介! その後は普通に練習! いいわね!?」

真姫「分かったわよぉ……」

63 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 21:53:43.45 ID:OyWpJhH8.net
凛(それにしても……今日も5人しかいない気がするんだけど)

絵里「まずは私。部長の絢瀬絵里、三年生。ポジションはサードよ」

希「ウチは副部長の東條希、同じく三年生やん。ポジションはキャッチャー……って二人とも知ってるやんな」

「わ、私は三年生の球拾(たま ひろい)。あの名門剛掌中学でエースピッチャーをやってたの! ほ、本当だよ?!」

「あーしは三年の藻部永(もぶ えい)。フライ取れないから、球来ないライトやってんの。受けるっしょ?」

穂乃果「そして私、唯一の二年生高坂穂乃果! ファーストだよっ!」

絵里「以上5人よ、貴女達入れて7人ね。これで野球部全員」

凛「ちょ……嘘でしょ……」ポロポロ

絵里「何泣いてるのよ! 泣きたいのはこっちよ、新入生せめて四人入らないか期待してたのに!」

真姫「いや……凛の気持ち分かるわ。野球って9人でやるものなのよ……?」

64 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 21:59:25.62 ID:OyWpJhH8.net
凛「三角ベースじゃんこんなの! 三角ベース部に名前変えるにゃ!」

真姫「そうよ! 練習試合とか甲子園予選とかどうすんのよ!?」

穂乃果「それなら大丈夫だよ! 私の友達に兼部してもらってるから、その子達に出てもらうんだ」

凛「ち、ちなみにその友達の部活は……」

穂乃果「弓道部と、裁縫クラブだよ!」

凛(弓道って……裁縫に至っては文化部にゃ!?)

絵里「後はクラスの暇な人とか集めて参加してもらってるわね」

凛「クラスの暇な人……」

真姫「試合の日を見据えて鍛えてきた高校球児に、クラスの暇な人を……?」

凛「あは、あははははっ! ぎゃははははははっ! 終わりにゃ! 甲子園終わりにゃ!」

真姫「狂わないで凛! 凛が全部三振にとって、私が全打席ホームラン打てば勝てるからっ!」

65 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 22:10:49.92 ID:OyWpJhH8.net
絵里「大丈夫よ、アイシールド21だってクラスの暇な人レベルのレギュラーいたじゃない。佐竹とか山岡とか」

凛「いたけど! 確かにいたけどあいつら活躍してるとこ見たことないにゃ!?」

穂乃果「こればっかりは諦めてよ、私達だってどうすることも出来ないんだよ……」

凛「せ、せめて助っ人二人に野球部の練習に参加してもらうとか、クラスの暇な人に部に入ってもらうとか……」

穂乃果「む、無理だよ! 試合ですら土下座する勢いで頼んで渋々出てもらってるんだよ!?」

希「よく試合出てくれる隣のクラスの子も、前に誘ったけど『バイトあるから無理にこ』とか何とかで入ってくれんかったし」

凛「改めてとんでもないところに入っちゃったにゃ……」

真姫「今時パワプロでも無いわよこんな展開……流石は弱小の下り坂」

絵里「はいはい! ぼやくのはそこまで! 練習を始めるわよ!」

絵里「真姫はノックお願い! 凛は姿鏡使ってフォームチェック! さ、皆ポジションについて!」

66 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 22:29:58.95 ID:OyWpJhH8.net
真姫「ちょ、何で私がノッカーなのよ! こういうのって顧問がやるものじゃないの!?」

絵里「顧問のピーターソン先生はお爺ちゃんよ、バット振れるわけないじゃない」

絵里「それに私達、狙ったとこにボール打てないし」

真姫「ああ、もう! 三年間何してきたのよ!」

真姫「仕方ないわね……まずはピッチャー行くわよ!」ガオンッ

「え、速っ……おごっ!」ドボゴォ

希「うわあああっ! 球拾がゲロ吐いたぁ!」

穂乃果「内臓潰れてない!? 大丈夫!?」

ワーワー

凛(……あの先輩、本当にエースピッチャーだったの? 単純なピッチャー返しだったような……)

凛(まあいいや。ママに教えてもらったフォーム練習しよう。片足を高く上げて……)

67 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 22:37:26.93 ID:OyWpJhH8.net
凛(身体を捻って、お尻をキャッチャー側に……そのまま溜めて溜めて)

凛(……投げる!)

ブオンッ

凛(手に巻いたタオルが風を孕んで、凛の目の前を凪いでいく。抵抗感が強い)

凛(濡れタオルとかにした方がいいのかな。それとももっとシャープに……)

絵里「……昨日とは全然違う。ママに教えてもらった、って言ってたけど」

絵里「たった一日でああも変わるものなの……? やっぱり教えたのはホシゾラ……」

「やばいよ、球ちゃん泣いてるじゃん」

穂乃果「真姫ちゃん謝って!」

真姫「な、何で私が……ごめんなさい、あれくらいなら取れると思って軽く打ったのにこうなるとは思いませんでした」

希「すすり泣きが号泣になったで」

穂乃果「けど謝ったから問題ないよ! 仲良くしなよ、二人とも」

真姫「穂乃果はサイコパスか何かなの?」

68 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 22:49:43.48 ID:OyWpJhH8.net
絵里「上達したわね、普通にピッチング出来てるじゃない」

凛「そう? なんか……動きは合ってる筈なんだけどしっくりこないんだよね」

絵里「それでも上手くなったじゃない。昨日のひょろひょろは何だったの、ってくらい」

凛「えへへ……ママの教え方が上手かったからだよ」

絵里「……ね、ねえ。凛のお母さんの名前って、何?」

凛「凛のママ? 星空 真凛(マリン)だけど……それがどうしたにゃ?」

絵里「ホシゾラマリン……や、やっぱり!」

絵里「お母さん、高校時代に桜内由梨子(ユリコ)って人とバッテリー組んでなかった!?」

凛「よく知ってるね。ママと桜内選手の甲子園優勝を決めた最後の一投、一度しか見てないけど今でも覚えてるにゃ」

絵里「凛……貴女!」ガシッ

凛「にゃあっ!?」

69 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 22:59:29.91 ID:OyWpJhH8.net
絵里「本当に……本当に!」ギュッ

凛「うぎゃっ!?」

凛「や、やめるにゃ! 凛よくそういう風に見られるけど、ソッチの気はないの!」

絵里「私だって無いわよ! けど……もう、嬉しくて嬉しくて」

絵里「あのサクゾラコンビの娘が、音ノ木坂に入学してくれるなんて……」

凛「さ、さくぞら?」

凛(少女漫画のタイトルみたいな単語にゃ……)

絵里「娘なのに知らないの……って、教えてもらえなかったって言ってたわよね」

絵里「豪腕ピッチャー桜内と、天才キャッチャー星空。高校球児で知らない者はない最強コンビよ」

凛「に、二十×年も前の話なのに未だに語り継がれてるの?」

絵里「その程度には、彼女達の残した伝説は凄まじかったってこと」

70 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 23:06:41.42 ID:OyWpJhH8.net
凛(ママ、そんなに凄い選手だったんだ……けど、じゃあなんで)

凛(ママはプロ野球に行かずに、普通に働いてるんだろう?)

凛(プロでも桜内選手なんて聞いたこともないし。高校で二人とも野球を辞めちゃったのかな)

絵里「私にとっても憧れの存在で……だから、下り坂と呼ばれても音ノ木坂を選んだんだけど」

絵里「そっか……もう、野球は嫌いになっちゃったのね。仕方ないことだけど……少し悲しいわ」

凛「? ま、まあママはママだし凛は凛だから! 凛は野球を嫌いになったりしないよ!」

絵里「分かってるわよ。期待してるわよ、大型ルーキー」

絵里「……い、一応聞いておいてほしいんだけど。お母さんに私達のコーチとか頼めたりしない?」

凛「聞くのはいいけど……多分無理だと思うよ? フォーム見てくれたのも、怪我させないために仕方なくだったし」

絵里「そう……」シュン

71 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 23:07:16.73 ID:OyWpJhH8.net
今日はここまで

72 :名無しで叶える物語:2020/08/11(火) 23:45:39.05 ID:+cPg1Gbu.net
>>67
この流れ最高に好き
穂乃果ちゃん

73 :名無しで叶える物語:2020/08/12(水) 01:33:42.00 ID:vfU6HLUf.net
>>64
全部三振取ってって
りんちゃんのこと認めるの早っ

74 :名無しで叶える物語:2020/08/12(水) 01:41:50.53 ID:Pzen13Tb.net
>>57
やるな、3レスやってたら離れてたぞ

75 :名無しで叶える物語:2020/08/12(水) 02:03:58.63 ID:E7k6C6V5.net
>>73
それくらい自分の実力を信じてるんでしょ

76 :名無しで叶える物語:2020/08/12(水) 02:24:21.28 ID:IdrbdlQa.net
おもろい

77 :名無しで叶える物語:2020/08/12(水) 11:40:12.99 ID:U9EM//jt.net
のぞえりの実力が気になる

78 :名無しで叶える物語(茸):2020/08/12(水) 14:34:08 ID:4coO6e+h.net
>>73
真姫ちゃんちょろいから

79 :名無しで叶える物語:2020/08/12(水) 20:26:35.02 ID:AHXZ1Bcp.net
凛「とにかく今はフォームを安定させて……っと!」ビュンッ

凛「早くエースピッチャーとして活躍出来るようになるにゃ!」ビュッ

絵里「大丈夫よ、あの人の娘ならすぐに上手くなるわ」

凛「……ママを褒めてくれるのは嬉しいけど」

凛「なんだかなぁ……」ドビュッ

凛(実際問題、どうなんだろ。凛はすぐにでも前線に立てるピッチャーになるのかな)

「げほ……今度こそ受け止めてやるわよ。バッチこぉーい!」

「あ……また速、無理……げおぼっ!」ボグォン

穂乃果「またゲロ吐きながら泣いちゃったじゃん! 真姫ちゃん謝って!」

真姫「なんであの速度でゲロ吐くほどダメージ喰らうのよ!? 小学生でも取れるわよ!?」

凛「……あの人よりは凛の方がまともに投手出来そうだけどにゃ」

80 :名無しで叶える物語:2020/08/12(水) 20:30:37.26 ID:AHXZ1Bcp.net
絵里「あの子、剛掌中学でエースやってた割には弱いのよね」

絵里「ストレート110キロしかないし、変化球もカーブしか投げられないし」

凛「110キロのストレートって、ストレートって呼んでいいの?」

絵里「さぁ……」

絵里「気になるなら投げ合いでもしてみる? フォームも……これなら修正の必要は無さそうだし」

凛「んー……いいにゃ」

絵里「あら。てっきり喜び勇んでノッてくると思ったのに」

凛「球は投げたいけど、凛に基礎が足りてないのは昨日の一件で十分分かったしね」

凛「今はしっかり鍛え直したいにゃ。正直このフォームもしっくりこないし」

絵里「そ。ならいいけど……」

81 :名無しで叶える物語:2020/08/12(水) 20:33:40.83 ID:AHXZ1Bcp.net
凛「えっと……春の甲子園、だっけ? それに出るんだよね? それまでに直したいし」

絵里「えっ、出ないわよ?」

凛「えっ?」

絵里「えっ」

凛「甲子園だよね?」

絵里「甲子園ね」

凛「出ないの?」

絵里「出ないわね」

凛「甲子園って誰でも出られるものじゃないの?」

絵里「ああ、そこがまず認識違いしてるのね。春の甲子園と夏の甲子園は別物なのよ」

82 :名無しで叶える物語:2020/08/12(水) 20:39:22.02 ID:AHXZ1Bcp.net
絵里「有名な夏の甲子園は全国の高校が出られるわ」

絵里「春の甲子園はね、選抜なのよ。審査員が決めた高校しか出られないの」

凛「ええっ!? うちは選ばれてないにゃ!?」

絵里「選ばれる基準は、大会でどれだけ結果を残せたかよ?」

絵里「練習試合にも勝ったことがないうちが選ばれるわけないじゃない」

凛「えっ、えっ? じゃあ試合は……甲子園までお預けなの?」

絵里「もし夏までに練習試合が一件も無かったらそうなるわね……」

凛「あー、なんにゃ。練習試合を申し込んだり申し込まれたりしたらいいんだ」

凛「延々基礎練して人生が終わると思ったにゃ」

絵里「ただ……音ノ木坂よ?」

絵里「練習試合を断られる確率9割以上、申し込まれるのは天文学的確率……ましてや甲子園に向けて鍛えてる今は尚更」

83 :名無しで叶える物語:2020/08/12(水) 20:45:13.26 ID:AHXZ1Bcp.net
凛「……い、今って申し込まれてたりとかは」

絵里「しないわね」

凛「結局駄目にゃ!?」

絵里「一応知ってる高校に申し入れたりはしてみるけれど……期待はしないで」

凛「うう……あ、そうだっ! 真姫ちゃんにゃ!」

真姫「十二回も腹にピッチャー返しをぶつけてごめんなさ……ヴェ? 呼んだ?」

「うぉぉう……おぉぉんうぅ……あぉう」

希「傷は浅いから大丈夫やん、意識をしっかり持って! 内臓に傷がついてるとまずいから、エタノール飲ませて消毒するやん」

「ごぉ……ぼぉが! げほっ、おぉぼっあっ……」ビタビタ

凛「真姫ちゃんの知り合いで、音ノ木坂と練習試合組んでくれそうなところに入った子っていない?」

84 :名無しで叶える物語:2020/08/12(水) 20:50:42.66 ID:AHXZ1Bcp.net
真姫「いや……私、友達いないんだけど」

凛「だから知り合いって言ったにゃ」

凛「真姫ちゃんに友達いなさそうなんて、昨日の発言のアレさで分かってるよ」

真姫「アレさって何よ!? 知り合い……って言われても」

真姫「そりゃ、同じ中学ベストナインの何人かは義理で連絡先交換したけど。強豪校に行った子ばかりよ」

真姫「人類最弱の音ノ木坂と試合してくれるところなんて……うーん」

凛「連絡するだけ連絡してみてほしいにゃ……」

凛「このままじゃ凛は、姿見を見ながら投手の真似をする妖怪になっちゃうよ」

絵里「い、いや……あんまり強いところは駄目よ? 前にたまたま受けてくれた中堅校と試合して」

絵里「0-97で負けたこと今でもトラウマなのよ」

凛「バスケのスコアみたいになってるにゃ……」

85 :名無しで叶える物語(鮒寿司):2020/08/12(水) 20:59:07 ID:AHXZ1Bcp.net
真姫「ちょっと待って……うーん。向こうも部活中だろうから繋がるか分からないけど」

真姫「一応連絡取ってみるわね……携帯、使っていいかしら」

絵里「事情が事情だし仕方ないわね」

真姫「何でやってもらってる側が偉そうなのよ……はぁ」

真姫「まずは……無理そうなところから潰しましょ。静岡の浦の星……取れたら連休使って向かうことになるわね」プルルル

『も、もしもし?』

真姫「あ、ルビィ? 私だけど」

『えっと……どちら様ですか? 番号が、と、登録されてなくて』

真姫「ちゃんと交換したわよね!? 何さらっと電話帳から私の番号消してるのよ!?」

『ピギィ!? うゆ……ごめんなしゃい』

真姫「西木野真姫よ! ショートの! 一緒にベストナイン入ったでしょ!?」

『あ? ……はぁー、チッ』プツッ

ツー……ツー……

真姫「……」

凛「いやいやいやいや」

86 :名無しで叶える物語:2020/08/12(水) 21:03:57.51 ID:AHXZ1Bcp.net
凛「えっ、何今の? えっ?」

凛「途中まで凄い大人しくて可愛らしい子なのかな、ってイメージだったのに」

凛「何で最後あんな吐き捨てられたタンカスみたいな対応されたの?」

真姫「……いや、なんというか」

真姫「私、ベストナインの会場で『この中で一番強いのは私、他の雑魚と比べてほしくないわ』って言っちゃって」

真姫「そこから少し嫌われてるのよね」

凛「無理じゃん」

凛「いや、そこからよく練習試合申し込めると思ったね?」

真姫「だって事実だから……」

凛「そういうとこだと凛は思うよ。とりあえず謝ってみたら? 話はそれからだよ」

真姫「分かったわよ、リダイヤル……」プルルル

『何? ルビィ忙しいんだけど』

真姫「ご、ごめんなさい。今までの発言全部謝るから、話だけでも聞いてくれない?」

87 :名無しで叶える物語:2020/08/12(水) 21:10:50.65 ID:AHXZ1Bcp.net
『……まぁいいけど。何かあった?』

真姫「練習試合を申し込みたくて……」

『真姫ちゃんの行った高校って、音ノ木坂高校だったよね……?』

真姫「そ、そうだけど……」

『他のところならともかく、音ノ木坂は無理だと思うよ。昔の因縁もあるし、仮にルビィが話を通しても……』

『実力差がありすぎて、調整にもならないというか……二軍すら出してくれるか』

真姫「そうよね……時間取らせて悪かったわ」

『別にいいよ、まだ練習始まってないし。じゃあね』

ツー……ツー……

真姫「まぁ無理だとは思ってたけど……やっぱり無理ね」

凛「そもそも静岡は遠すぎるにゃ。もっと近場でないの?」

真姫「今のが一番近場だったのよ! 全国から選ばれてるんだから仕方ないでしょ!」

88 :名無しで叶える物語:2020/08/12(水) 21:25:19.62 ID:AHXZ1Bcp.net
絵里「ま、待って!? 浦の星女学院が近場って、これから何処に電話かける気なのよ!?」

真姫「えっと……桜坂しずくの福岡劇場学院でしょ、ゴリラブス子の仙台の打振五輪羅高校(ダブルゴリラ)、津島善子が親に無理矢理入れられた和歌山の聖ミヒャエル大学付属」

真姫「鹿角理亞の函館聖泉女子高等学院は北海道だから無理として、後はえーと……あの子何処に行ったんだっけ」

絵里「ぜ、全部甲子園常連校じゃない!?」

凛「そんなに凄いところにゃ?」

絵里「打振五輪羅なんてホームラン女王の松浦果南がいるのよ!? 王長嶋松井清原に松浦が並ぶって言われてる『現代の水ゴリラ』松浦果南が!」

凛(し、知らねぇ……過去にもいたの水ゴリラ……?)

真姫「だから強豪校だって言ったじゃない!」

絵里「そもそも博多とか北海道とか! そんなとこに行けるほど部費無いわよ!」

89 :名無しで叶える物語:2020/08/12(水) 21:31:23.75 ID:Pzen13Tb.net
果南よりゴリラブス子が気になるんだが

90 :名無しで叶える物語:2020/08/12(水) 21:43:45.40 ID:AHXZ1Bcp.net
真姫「何処にいけるくらいならあるのよ、部費」

絵里「二万円ならあるわ。電車に乗って東京内ならどこでもいけるわよ」

真姫「少なすぎる……家で飼ってるペットのお小遣いより少ないじゃない……」

凛(えっ……)

凛(凛……真姫ちゃんと友達になるの辞めようかな……)

真姫「けど東京内……東京内……」

真姫「UTXに行った知り合いはいないし、ううん」

絵里「さらっと去年の東京代表に練習試合申し込もうとした?」

真姫「……虹ヶ咲? そうだ、虹ヶ咲に行ってる子がいたわ」

絵里「虹ヶ咲って、あの西東京の? 名前は聞いたことあるけどうちと同じ弱小よね?」

絵里「真姫の知り合いにも、あんなとこに行ってる子はいるのね」

※このSSでは国際展示場は西東京にあります。コミケの最寄り駅は田無

91 :名無しで叶える物語:2020/08/12(水) 21:46:17.94 ID:0Iel1Fzc.net
西武新宿線壊れちゃう

92 :名無しで叶える物語:2020/08/12(水) 21:53:26.61 ID:AHXZ1Bcp.net
真姫「天王寺璃奈って子なんだけど、知ってる?」

絵里「知ってるも何も……ベストナインだし、中学全日本のエースじゃない!」

希「天王寺!? ウチ、りなりーのファンなんよ! 虹ヶ咲に行ってたなんて知らんかった」

絵里「あら、球拾は大丈夫なの?」

希「なんか目が見えないって言いだしたから部室に戻って休ましてるよ」

絵里「そう……それより虹ヶ咲よ。あそこなら天王寺さんがいてもいい勝負になるんじゃないかしら」

凛「真姫ちゃん早く電話するにゃー!」

真姫「はいはい……」プルルル

『もしもしー?』

真姫「ああ、璃奈? 久しぶりね」

『えっと、誰? 登録されてないから分からない』

真姫「何で皆私の番号登録してないのよ。ちゃんと交換したわよね?」

93 :名無しで叶える物語:2020/08/12(水) 22:01:26.37 ID:AHXZ1Bcp.net
『冗談だよ。真姫ちゃんから掛けてくるなんて璃奈ちゃんボード『びっくり』』

真姫「それ電話だと伝わんないわよ……」

『ところで何の用? 今からミーティングなんだけど』

真姫「忙しいところごめんなさい。実は虹ヶ咲に練習試合を申し込みたくて……」

『練習試合?』

『ね、ねえそれ本当? 本当に虹ヶ咲と練習試合してくれるの?』

真姫「え、ええ……こっちも所詮音ノ木坂だから、頭下げてでもしてほしいくらいよ」

『う〜……』

真姫「……?」

『璃奈ちゃんボード『やったー』! 皆、練習試合の相手見付かったよ!』

ヨウヤクカスミンノデバンデスカァ ホントウナノ?ヤッター! ワーワー コレデハイブガ……

真姫「な、何だかよく分からないけど……受けてくれるのね?」

94 :名無しで叶える物語:2020/08/12(水) 22:06:56.07 ID:AHXZ1Bcp.net
『勿論! 璃奈ちゃんボード『負けないよ』』

真姫「ちょっと待ってね……皆、練習試合オーケーみたい」

絵里「本当!? 良かったわね凛、試合が出来るわよ」

凛「うわー! 初めての試合にゃ! 凛ばっちり試合まで練習するよ!」

真姫「ごめんごめん……それで、試合の日程なんだけど、明日の土日じゃ早すぎるし」

真姫「来週にでも……」

『明日で』

真姫「ヴェ?」

『明日、虹ヶ咲に来てね! 璃奈ちゃんボード『待ってる』』

『さー皆、迎え撃つために練習しなきゃ! 歩夢ちゃんはまずこの岩を素手で……』プツゥ

真姫「もしもし!? もしもーし!? 嘘でしょ!?」

希「どうしたん、そんなに焦って。日程はいつになったんよ」

95 :名無しで叶える物語:2020/08/12(水) 22:11:07.60 ID:AHXZ1Bcp.net
真姫「に、日程……」

凛「そうにゃ、来週なら急ピッチで練習しなきゃならないし」

絵里「理事長に掛け合って夜中まで練習させてもらう? 試合近いって言うと甘いのよね。あの人」

穂乃果「海未ちゃんとことりちゃんにもスケジュール空けてもらわなきゃいけないしね!」

希「ウチもにこっち連れてこなきゃいけないし。バイトと被ったら交代要員いなくてキツいんよね」

絵里「で、日程は? 来週なの? 再来週なの?」

真姫「……明日」

絵里「ん……?」

真姫「明日! 明日虹ヶ咲に来いって、言ってたの!」

凛「……」

穂乃果「……」

希「明日……?」

96 :名無しで叶える物語:2020/08/12(水) 22:16:40.47 ID:AHXZ1Bcp.net
絵里「いや無理……とは言ってられないわよね」

希「練習試合を申し込んですっぽかすのはスゴイシツレイに当たるからな……!」

絵里「穂乃果! 今すぐ弓道部室と裁縫部の部室に行ってスケジュール確認してきて!」

穂乃果「う、うんっ!」

絵里「希は矢澤さんに今すぐ電話! バイト中で出なかったら直接スーパーまで見に行って!」

希「了解やんっ!!」

絵里「凛はモブAとキャッチボール! 硬球に慣れて! 今すぐ!」

凛「わ、分かったにゃ!」

「あいあーい」

絵里「球拾は部室よね……肝心な時に! 真姫、一先ずはありがとう、久々に試合が出来るわ!」

真姫「べ、別に……いいわよお礼なんて。照れるじゃない」

絵里「ありがとうついでに、一年生の教室に残ってる子で暇そうな子に片っ端から声かけて!」

絵里「一人でも多く交代要員が欲しいの! お願い!」

真姫「ヴェェ!? 無理よ、絶対無理!」

97 :名無しで叶える物語:2020/08/12(水) 22:20:38.11 ID:AHXZ1Bcp.net
絵里「言ってる場合じゃないのよ! 急いで!」

真姫「う、うう……連れてこれなくても知らないわよ!」ダッ

絵里「とんでもないことになったわね……」

凛「ちなみに……人数揃わなかったらどうなるにゃ?」

絵里「決まってるじゃない!」

絵里「三角ベースにしてくれって土下座するわ!」

凛「やっぱり三角ベース部にゃ! やっぱりここ三角ベース部にゃあ!」

絵里「それが受け入れられなかったら……不戦敗よ」

凛「……」

凛(お願い……神様、生まれて初めて貴方に祈ります)

凛(せめて九人……! せめて九人集まりますように……!)

98 :名無しで叶える物語:2020/08/12(水) 22:21:16.22 ID:AHXZ1Bcp.net
今日はここまで

99 :名無しで叶える物語:2020/08/12(水) 22:39:21.02 ID:MkYwxr5j.net
部員いないし穂乃果ちゃんに次いで希ちゃんもサイコパスだし過去ここまで崖っぷちな部活SSがあっただろうか

100 :名無しで叶える物語:2020/08/13(木) 00:51:10.57 ID:1ol4QI6k.net
球拾ちゃんだけが癒しだぞ

101 :名無しで叶える物語(かぶらずし):2020/08/13(木) 01:39:33 ID:aDWkDu4X.net
にじがさき
はいぶ
うっ、頭が

102 :名無しで叶える物語:2020/08/13(木) 12:03:17.37 ID:2r9QR33c.net
翌日 虹ヶ咲

絵里「……ここが虹ヶ咲」

凛(バスを降りると、すぐに異様な光景が目に入った)

凛(門向こうの鈍く光る銀色の建物の上に、逆三角形を模した謎の物体が二つデンと鎮座している)

凛(随分と無遠慮な逆三角形だ。どうにも我慢がならないにゃ。均等が取れているのがまた嫌だ)

凛「こ、これ本当に学校なの……?」

希「なんとなく……同人誌が売られてそうな建物やんなぁ」

希「抱き枕持ったデブや黒い服着たガリが列を成して並んでる情景が目に浮かぶよ」

絵里「失礼なこと言わないの!」

絵里「間違いなく虹ヶ咲よ。何度も住所を確認したもの」

穂乃果「わくわくするね! 試合が終わったら、あの三角形を探検してみたいなぁ」

真姫「子供みたいなこと言わないの。一応頼んでみてあげるけど」

103 :名無しで叶える物語:2020/08/13(木) 12:22:51.89 ID:2r9QR33c.net
絵里「私は先方に挨拶してくるから、皆は先にグラウンドの方に行ってて」

希「絵里ち、頑張ってな」

穂乃果「絶対に条件飲んでもらってね!」

絵里「ええ、勿論よ! だって私達……」

凛「……」

絵里「七人しかいないからね。三角ベースじゃないと試合出来ないわ」

真姫「試合申し込んで悪いことしちゃったかもしれないわね」

凛「申し込んできた側が三角ベースやりたがったら、凛なら殴るよ」

穂乃果「仕方ないでしょ。海未ちゃんは弓道の大会だし、ことりちゃんはデザイナーさんの手伝いだし」

希「にこっちは普通にバイトしてたしなぁ」

凛「真姫ちゃんが暇な人連れてこれないのが悪いにゃ!」

真姫「連れてきたのよ!? 自前で向かうって言ってたからまだ来てないだけよ!」

104 :名無しで叶える物語:2020/08/13(木) 13:07:13.97 ID:2r9QR33c.net
凛「真姫ちゃんに連れてこれるとは思えないんだよね」

凛「嘘ついてない?」

真姫「ついてないわよ! あぁもう……何してるのよ」

希「というか真姫ちゃんが連れてこれたのって一人なんよね? どのみち9人には足りないやん」

「あ、あの……音ノ木坂高校の方たちですか?」

凛「にゃっ!?」

凛(真姫ちゃんをからかう最中、背後から聞こえた声に驚いて振り向くと頭の片側に白玉団子を付けた女生徒が立っている)

凛(どこをどう見ても白玉団子だ)

絵里「はい。お出迎え頂きありがとうございます、音ノ木坂高校野球部部長の絢瀬絵里です! 今から挨拶に伺おうと思っていたんですが」

歩夢「これはご丁寧に……ご足労頂きありがとうございます、虹ヶ咲学園二年生の上原歩夢と申します。部室に案内しますので、そちらでユニフォームに着替えてください」

凛「!?」

凛「お、おかしいにゃ。絵里ちゃんも白玉団子の子も凄い常識人に見える……」

希「最初から皆常識人やん?」

穂乃果「何言ってんだろうね」

105 :名無しで叶える物語:2020/08/13(木) 13:17:26.70 ID:2r9QR33c.net
凛「じゃあ部室に……にゃ?」チャララー

凛「かよちんから電話……何だろ」

花陽『あっ、もしもし。よかったぁ……凛ちゃんが試合してる高校って、どのあたりにあるの?』

凛「かよちん? 虹ヶ咲なら虹ヶ咲前駅バスのすぐだけど……どうかしたにゃ?」

花陽『応援に行こうとしたんだけど迷っちゃって。お弁当も作ってきたんだよ』

花陽『虹ヶ咲前駅……あ、こっちかな? はい、教えてもらったので……はい。何とか行けそうです』

凛「ん? かよちん以外にも誰かいるの?」

花陽『野球の試合に行こうとして迷った、って人がいて。多分ここの試合かなー、って思って一緒に探してたんだぁ』

凛「野球の試合……あー、多分その子真姫ちゃんの助っ人にゃ」

花陽『真姫ちゃんってあの全裸の子?』

凛「うん、全裸の子」

106 :名無しで叶える物語:2020/08/13(木) 13:22:06.35 ID:VjTMb2nc.net
この世を拗ねた身も蓋もない作風には覚えが…
エタるんじゃねぇぞ…

107 :名無しで叶える物語:2020/08/13(木) 13:23:11.30 ID:2r9QR33c.net
花陽『とにかくすぐに向かうね、じゃあまた後で』

凛「うん、うん。ありがとうね」ブツッ

凛「絵里ちゃん。真姫ちゃんの呼んだ助っ人、かよちんと一緒にこっちに来るみたいにゃ」

絵里「かよちん?」

歩夢「が、学校の前でちん……なんて言わないで!」

凛「誤解にゃ! 凛の友達のあだ名だよ! とにかく二人でこっちに向かってるみたいで……」

真姫「丁度いいじゃない。その二人で9人になるし」

凛「え……かよちんに野球させるの?」

絵里「無理にとは言わないけど、してもらう他に道はないわよ」

凛「八方塞がりにゃ」

希「じゃあ凛ちゃんはそこで待っててよ。ウチらは助っ人使う許可貰ってくるから」

凛「分かったにゃー。後から部室の方向かうね!」

108 :名無しで叶える物語:2020/08/13(木) 13:32:33.59 ID:1ol4QI6k.net
>>105
真姫ちゃん有名人で草

109 :名無しで叶える物語:2020/08/13(木) 13:39:28.12 ID:2r9QR33c.net
凛「にゃーにゃにゃ」エアギター

凛「かよちんは本当いい子だなぁ……凛の友達には勿体無いよ」

凛「初試合って言ったら自分の事のように喜んでくれたし」

凛「お弁当持ってきてくれるって言ってたけど何かなぁ。前は米びつ抱えてもってきてくれたんだよにゃー」

凛「真姫ちゃんの助っ人もどんな人なんだろ。多分クラスメートの誰かだとは思うけど……」

凛(それにしてはかよちんの反応おかしかったような……クラスメートなら名字言うよね?)

凛(うーん、二年生や三年生とかにも助っ人要請したのかな)

リンチャーン

凛「あっ、かよちんかよちーん! こっちにゃ!」

凛「凄い大きい米びつ背中に背負ってるけど、それお弁当?」

花陽「やっとついたよ……うん、お弁当。凛ちゃんは高校球児なんだからいっぱい食べなきゃ!」

凛「善処するにゃ」

「ここ……なの? 貰ってた資料と外観が違うような……」

凛「それで貴女が助っ人さんにゃ? さぁ来て来て! 皆待ってるにゃ! かよちんも!」

「えっ? 私は……ひ、引っ張らないで」

凛「外人さん助っ人に呼ぶなんて、真姫ちゃんも中々やるにゃー」

110 :名無しで叶える物語:2020/08/13(木) 13:53:10.15 ID:2r9QR33c.net
虹グラウンド

「ええと……つまりこういうこと?」

「例外的に野球部員じゃない助っ人を認めてほしい、と」

絵里「そういうことです、高咲さん」

侑「侑でいいよ。それにしても部員7人とは……」

「全く……りな子も凄いところと試合組んできたわね」

侑「かすみ、りなりーをいじめないで」

かすみ「えぇー? いじめてないですよぉ」

璃奈「かすみちゃんは存在がいじめみたいなところあるから」

かすみ「え、酷くない……?」

侑「……認めないと試合出来そうもないしね。いいよ別に」

希「やった! 助かったぁ……!」

歩夢「丁度こっちも試合したかったしね。侑ちゃんえらいえらい」ナデナデ

侑「やめてよ恥ずかしいな……」

111 :名無しで叶える物語:2020/08/13(木) 14:05:31.39 ID:2r9QR33c.net
絵里「それにしても……春先なのに二年生が部長なんて珍しいわね」

侑「うちは文武両道ならぬ文文独道だからね。三年生の先輩は春になるとすぐに部長を明け渡すんだ」

侑「実際残ってる三年生二人だけだしね」

彼方「彼方ちゃんはねー……眠いから野球出来ないかもー……果林ちゃん代わりにやってぇ。むにゃ」

果林「起きなさい。折角来てくれたのに……この子いつもこうなのよ、ごめんなさいね」

穂乃果「凄いネイルだね、爪折れたりしないの?」

果林「練習中や試合中は外すわよ? つけ爪だもの」ポリン

穂乃果「うわあああっ! 爪が取れたぁぁああっ!?」

希「呪い、やろなぁ……むごいことや」

果林「女子高生よね? 男子小学生とかじゃなく」

侑「ところでそっちの子は目に包帯してるけど大丈夫なの?」

「見えないよぉ……前が……見えないよぉ……」

希「エタノールを飲んだせいで目がな……可哀想に」

真姫「昨日うちの病院で緊急手術したから大丈夫よ。新技術を駆使したからもう見えるようになる筈……」

「誰か……明かりをつけて。何も……見えないんだ……」

112 :名無しで叶える物語:2020/08/13(木) 14:10:14.28 ID:2r9QR33c.net
侑「変わった子達だなぁ……それで助っ人はどこに?」

絵里「そろそろ凛が連れてくる頃だと……ああ、来たわね」

凛「ごめんごめん、部室の場所がいまいち分からなくて!」

花陽「な、なんで私までジャージに着替えちゃってるのぉ……?」

「ええと……困ったなぁ」

絵里「この子達がうちの助っ人……んん!?」

侑「ちょ……はぁ!? え、えええっ、えっ!」

凛「さっきから気になってたんだけど、何だか助っ人さんだけユニフォーム違わない? よくそんなの持ってたね」

「試合があったから……」

侑「なっ、ななっ、なんで……! なんで音ノ木坂の助っ人に……」

絵里「聖ミヒャエルのエマ・ヴェルデがいるのよ!?」

113 :名無しで叶える物語:2020/08/13(木) 14:16:29.07 ID:2r9QR33c.net
エマ「助っ人……って私は、試合に来ただけなのに」

エマ「そもそもここ、本当にUT……むぐっ!?」

絵里(希、希! 確か聖ミヒャエルって、今日UTXと練習試合組んでなかった!?)ボソボソ

希(た、確かそのはず……日本に慣れてないから道間違えたんか!?)ボソボソ

絵里(と、とにかく……)

絵里「ええ、そうよ! 彼女はうちの秘密兵器……助っ人よ!」

絵里・希『全力ですっとぼけるしかない!』

エマ「ち、違……私は聖ミヒャエルとUTXの試合……うむぐぅ!?」

絵里「聞いて、エマさん。私達は野球の試合に来たんだけど、8人しかいないの」

エマ「!?」

絵里「貴女も野球を愛する人なら分かるでしょう? 試合がしたいのに人が足りない、三角ベースをするしかない苦しみが……」

エマ「苦しみ……」

絵里「どうか我々の助っ人となり、この苦しみからお救い下さい……」

エマ「う、うう……」

希「お、効いてるな。流石ミッション系」

真姫「信仰をこんなことに使って、キリスト教徒に怒られない……?」

114 :名無しで叶える物語:2020/08/13(木) 14:22:52.89 ID:2r9QR33c.net
エマ「分かりました……私は貴女達の助っ人になりましょう」

絵里「おお……ありがたい! 皆、彼女を拝んで!」

おお……エマ様……ママ……おお……ママァ……おっぱい……

エマ「何かおかしいような……?」

絵里「気にしちゃ駄目よ! さぁ、此方の面子は揃ったわ!」

穂乃果「試合しようよっ!」

侑「ま、ままま……待って! 通らない! 流石にそれは!」

絵里「あら、さっきあなた認めたじゃない。助っ人の参加をミトメルワァって」

侑「そんな言い方してないよ! 流石に『ミヒャエルの奇跡』の参加は予想外だって……!」

璃奈「けど認めちゃったのは事実だよ。璃奈ちゃんボード『正論』」

侑「う、うう……」

歩夢「だ……大丈夫だよ! エマちゃんが入っても元は弱小、私達と条件は一緒だから!」

115 :名無しで叶える物語:2020/08/13(木) 14:39:32.97 ID:2r9QR33c.net
凛「それにそっちは天王寺さんがいるにゃ。凛はよく知らないけど、天王寺さんって強い投手なんだよね?」

璃奈「強いよー? 璃奈ちゃんボード『えっへん』」

真姫「ま、私にホームラン打たれてるけどぉ?」

璃奈「その前に三振2回取られたの忘れた?」

真姫「お、終わりよければ全て良しなのよ!」

希「『ポーカーフェイク』と『ミヒャエルの奇跡』の戦いか……わくわくしてくるやん」

凛「さっきから気になってたんだけどそれ何? みはえるのきせき? とか何とか……ダサいにゃ」

希「ダサいって……二つ名やん」

凛「えっ? 二つ名とかついてる人、本当にこの世にいたの?」

希「『ハンカチ王子』とか一時期流行ったやん……」

116 :名無しで叶える物語:2020/08/13(木) 14:55:44.81 ID:2r9QR33c.net
真姫「常にフェイスボードを身に着け素顔が謎に包まれた、球筋の読めない天才投手。通称『ポーカーフェイク』」

『ポーカーフェイク』天王寺璃奈

真姫「生徒の野球離れにより中堅に落ちた聖ミヒャエルを、再び甲子園常連校に導いた偉大なるスラッガー。通称『聖ミヒャエルの奇跡』」

『聖ミヒャエルの奇跡』エマ・ヴェルデ

真姫「このくらい知っておかなきなゃモグリよ?」

凛「へぇー……真姫ちゃんも天才なんだよね? 何か二つ名とかないの?」

真姫「へあっ!? わ、私!?」

真姫「わ、私は……そうね、クールで冷静沈着。どんな相手も支配するスタジアムの女王、通称『氷の女王』と呼ばれていたわ!」

希「えっ、真姫ちゃんはいついかなる時でもイキりちらし、アンチスレが500スレを超えた唯一の中学生。煽りの天才『イキリ野球太郎』だった筈じゃ……」

真姫「ち、違うわよ! イミワカンナイ!」

絵里「最新のアンチスレでは全裸逆立ち事件を考慮して『変態番付取的』になってたわよ」

真姫「幕下以下じゃない……それはそれで腹立つわね」

エマ「とんでもないところの助っ人になっちゃった……後でヨハネちゃん達に謝っておかないと」

エマ「今ごろUTXと試合してるのかな……」

117 :名無しで叶える物語(はんぺん):2020/08/13(木) 17:40:41 ID:zQjbZsPx.net
気体

118 :名無しで叶える物語:2020/08/13(木) 18:30:44.36 ID:2r9QR33c.net
侑「……いつまでも悩んでても始まらないね」

侑「やろうか、試合」

絵里「ええ。じゃあ先行後攻を決めるじゃんけんを……」

凛(……わくわくする。凛の初めての試合)

凛(凛の……初めての登板。音ノ木坂高校で初めてピッチャーをする瞬間が、目の前まで来てる)

凛(ずっと憧れていたこの高校で! 戦える!)

「……」

凛(……にゃ? 校舎から凄い目でこっち見てる人がいる……?)

歩夢「生徒会長だ……こっち睨んでるよ」

侑「思惑通りにいかなかったから怒ってるんでしょ。放っておいていいよ」

凛(……色々ありそうだね、この高校も)

119 :名無しで叶える物語:2020/08/13(木) 18:33:50.98 ID:2r9QR33c.net
絵里「じゃんけん……ぽん!」パー

侑「ぽんっ!」グー

絵里「よし……こっちが先行でお願い」

侑「分かったわ。オーダー表はもう出来てるから、そっちも作り終わったら交換しましょ」

凛「オーダー表?」

真姫「誰がどのポジションについて、何番に打つかを印した紙よ」

凛「凛は四番でピッチャーとして、後はどうなるんだろうね」

真姫「私が四番でショートってことくらいしか分からないわ」

絵里「オーダー表ならもう決まってるわよ……」サラサラ

絵里「うちはこれで行くわ!」

凛「えっと……え!?」

120 :名無しで叶える物語:2020/08/13(木) 18:41:28.69 ID:2r9QR33c.net
音ノ木坂高校

1(一)高坂穂乃果
2(右)藻部英
3(捕)東條希
4(二)エマ・ヴェルデ
5(遊)西木野真姫
6(三)絢瀬絵里
7(左)小泉花陽
8(中)星空凛
9(投)球拾

凛「なんで凛がセンターやってるにゃー!?」

絵里「単純な話。凛は実戦慣れしてないじゃない」

凛「にゃっ!?」ガーン

絵里「スタミナはあるし走り回れるから、とりあえずセンター。本当は体力温存でライトにしたいんだけど……」

「あーしライト以外出来ないし」

絵里「フライが取れないモブAをセンターに回すことは自殺を意味するわ」

真姫「私が5番なのは!? 4番打たせなさいよ!」

絵里「エマ・ヴェルデがいるのに真姫が4番打てるわけないでしょうが!?」

エマ「あはは……」

121 :名無しで叶える物語:2020/08/13(木) 19:04:53.27 ID:2r9QR33c.net
穂乃果「虹ヶ咲のスタメンは……」

虹ヶ咲学園

1(遊)近江彼方
2(一)上原歩夢
3(二)朝香果林
4(投)中須かすみ
5(捕)捕手野デブ子
6(中)何処出文魔毛留
7(三)優木せつ菜
8(左)高咲侑
9(右)すぐにしぬ代

真姫「こっちもこっちで予想外ね……璃奈が出てない」

真姫「エマと私を見て先発で璃奈を出してくると思ったのに。このかすみって子に余程自信がある……? 聞いたことない名前だけど」

侑「……ところでせつ菜は? まだ来てないの?」

歩夢「う、うん。いつも通りみたい」

侑「あの子はもう……」

「ごめんなさい!!!!!! 遅れました!!!!!!!!!」

122 :名無しで叶える物語:2020/08/13(木) 19:16:50.22 ID:2r9QR33c.net
侑「遅いよせつ菜。試合始まっちゃうところだったよ」

せつ菜「はい!!!! お仕事が少し忙しくって!!!!!!」

凛(なんだ……妙だぞ……)

グニャァ

凛(『視界』が……『歪む』ッ! この女が現れてから……足元が揺れているッッッ!)

侑「うるさいよ。地震起きるから少し静かにして」

せつ菜「気をつけますね!!!!!!!」

凛「鼓膜破れたにゃ……?」

真姫「すぐに耳栓をしなかった凛の落ち度よ。現れた瞬間耳を塞ぐべきだったわね」

凛「そんな危機察知能力、凛にはないよ」

エマ「いいね、あの子。大きな声が出せるっていうのは、強い肺を持ってるってことなんだよね」

エマ「心肺力は勿論鍛えることが出来るけど、それでも才能に左右される部分が大きい。スタミナの強弱は生まれた瞬間に決まる……」

エマ「……欲しいな、あの子」

凛「なんか言ってるにゃ? 全然聞こえないんだけど」

エマ「ううん、なんでもないよ」

真姫「そういえば私が誘った子、どうしたのかしら……まぁいいわ。遅れる方が悪いのよ」

123 :名無しで叶える物語:2020/08/13(木) 19:38:32.04 ID:2r9QR33c.net
凛(グラウンドに揃い互いに礼をして、試合開始。未だかよちんは納得できていないようでベンチでぼやいている)

穂乃果「よっし! 一番槍!」

絵里「絶対塁に出るのよ! 塁に出さえすればエマに回るから!」

穂乃果「うんっ! 身体で受け止めてでも出るよ!」

希「それは痛いから、あんまりやらん方がいいよ」

穂乃果「薄々そう思ってたよ」

真姫「穂乃果が一番ってことは……足が早いの? 出塁率はどのくらい?」

絵里「特に足も早くないし、出塁率はそうね、二割くらいね」

真姫「なんで穂乃果に一番任せたの……!?」

絵里「早めに出さないと試合に飽きちゃうのよ……」

凛「えぇ……」

124 :名無しで叶える物語:2020/08/13(木) 19:45:24.26 ID:2r9QR33c.net
穂乃果「よし……」

かすみ「ふふふ……かすみんの高校三振第一号はあなたですねぇ。かすみんはこう見えても三振取るの上手いんですよぉ?」

穂乃果「……」ブンッ

凛(マウンドでマウントを取るかすみちゃんに応えるように、穂乃果ちゃんはバットを大きく振る)

凛(スイングスピードは中々に早いけど……大振りすぎる気がするにゃ)

かすみ「いきますよぉ……かすみんのぉ……!」スッ

絵里「! モーションが早い……それに、異常に動きが細かいわ!」

希「あれじゃ球速はあまり出ない筈……」

かすみ「無敵級ッッビリーバー投法ッッッ!!!」

凛(足を軽く上げ、ほとんど身体を折り畳むような窮屈な動きで、かすみちゃんは……)

凛(腕が地面につくスレスレを走り、浮き上がるように球をその指先から外す)

絵里「アンダースロー……!」

穂乃果「しかもっ……速い!?」

125 :名無しで叶える物語:2020/08/13(木) 20:11:40.15 ID:1ol4QI6k.net
>>121
9番当て字すら貰えてないの草

126 :名無しで叶える物語:2020/08/13(木) 20:59:46.82 ID:2r9QR33c.net
かすみ「……」ニィ

ギュオオオオオオッ

穂乃果「っ……!」

ズドォンッ

審判「ットライゥ!」

凛「速い……しかもミットに収まった瞬間のあの音!」

凛(凛の球とは比べ物にならない……!)

希「おまけにあの地を這う蛇のような腕のしなりや。きっと穂乃果ちゃんには……」

穂乃果「……」ダラダラ

希「地中から珠が這い出してきた、そんな光景が見えてると思うやん」

穂乃果(な、なんなのあれ……投げた瞬間ググーって、グイって珠が……ギュウンだよっ!)

穂乃果(け、けど……?)

127 :名無しで叶える物語:2020/08/13(木) 21:06:09.68 ID:2r9QR33c.net
花陽「あ、あんな球打てないよぉ……」

凛「凛にだって無理だよあんな凄い球……!」

かすみ「ふっふっふ〜……? かすみんの凄さに皆怯えてるみたいですねぇ」

かすみ「りな子の出番は無い! かすみんが9回まで三球三振で終わらせてあげますよぉ!」キュッ

ギュオォォォンッ

凛「腕のしなりが余計に鋭く……! 速い……!」

キュイッ

凛「し、しかも曲がったにゃ!? えっとあれは……スライダー?」

絵里「スライダー方向に鋭く曲がってくる……それも、浮き上がりながら。参ったわ……天王寺さん以外にもとんでもないピッチャーがいたのね」

スパァン

審判「ットライゥチュウッ!」

花陽「も、もう追い込まれちゃったよ……遊び玉や様子見すら無いなんて……」

128 :名無しで叶える物語:2020/08/13(木) 21:12:26.15 ID:2r9QR33c.net
穂乃果(……これは。やっぱりさっきのは気のせいじゃなかったんだ)

穂乃果「……ふうっ」

穂乃果「……!」キッ

エマ「ああ……気付いたんだね。打席に立つと分かりやすいのかな」

真姫「みたいね。気付いたなら二球目から振っていきなさいよ……全く」

凛「へ? き、気付いたって……何が?」

真姫「凛は……そりゃ気付かないわよね。素人に毛が生えたようなものだし」

エマ「今から一つ予言をするね。次のボール、穂乃果ちゃんはほとんど真芯で捉えて打つよ」

絵里「あの球を真芯で? 穂乃果には少し荷が重そうな気がするけれど」

「そうですよ、穂乃果ちゃんは大振りで無理矢理当ててくタイプなんですから」

絵里「あら球拾。目が見えるようになったのね、後攻に間に合って良かったわ」

「おかげさまで」

エマ「穂乃果ちゃんだけじゃない。多分皆……バッターボックスに入れば分かると思うよ」

129 :名無しで叶える物語:2020/08/13(木) 21:24:39.60 ID:2r9QR33c.net
かすみ「おー怖い怖い。そんなに睨まないで下さいよぉ」

かすみ「三振するのがそんなに嫌なら、見逃しなんてしなきゃいいのに……ま、そっちの勝手ですけどぉ」

穂乃果「……」

かすみ「まぁ……かすみんの犠牲者第一号になれたこと、精々誇ってくださいね!」キュッ

かすみ「らぁっ!!」シュオッ……ドピュッ

凛(やっぱり地を這うような……鋭いストレート! あんなの打てるわけないじゃん!)

凛(穂乃果ちゃんもきっと怯えて……ッ!?)

穂乃果「……犠牲者になるのは」ニィッ

凛(笑ってる……!?)

穂乃果「かすみちゃんの方だよ!」ブォンッ

凛(穂乃果ちゃんがバットを振り抜く。ただひたすら大振りに、ただひたすら力強く)

凛(本来ならやたらめったらに振られたそれに、あの蛇ボールが当たる筈はない。その筈なのに……)

かすみ「なあっ!?」

ガキイイィィン!!

凛(会心の当たりが太陽を目指し飛んでいくのを、凛はただただ息をするのも忘れて眺めていた)

130 :名無しで叶える物語:2020/08/13(木) 21:24:54.65 ID:2r9QR33c.net
今日はここまで

131 :名無しで叶える物語:2020/08/13(木) 21:39:44.94 ID:MyEAE/To.net
お疲れ様です!
楽しみに待ってます!

132 :名無しで叶える物語:2020/08/13(木) 23:16:36.14 ID:TTheCDbL.net
乙ー
めっちゃ面白いから期待してる

133 :名無しで叶える物語(光):2020/08/13(木) 23:39:53 ID:789K9i50.net
乙ですー
期待してます

134 :名無しで叶える物語:2020/08/13(木) 23:42:25.93 ID:l+HRs4Sw.net
審判すこ

135 :名無しで叶える物語(SIM):2020/08/14(金) 06:46:03 ID:JpFXsMey.net
おつ
みんなイキイキしてて読んでて楽しい

136 :名無しで叶える物語:2020/08/15(土) 00:02:36.45 ID:aJ4miX+2.net
期待

137 :名無しで叶える物語:2020/08/15(土) 15:51:12.30 ID:PXJ3YNuo.net
かすみ「なっ……んで!」

歩夢「侑ちゃん! レフトォ!」

侑「ッ……!」

凛(レフト方向への当たり……あの球相手に振り遅れるどころか引っ張ってる!?)

侑「間に合わ……っ!」

ザッ

侑「ない……!」

絵里「レフトの頭超え……穂乃果! 二塁狙えるわ!」

穂乃果「分かってるって!」ダダダッ

侑「セカン!」ビシュゥ

果林「……」バシッ

凛(侑ちゃんの返球は決して速いものではない)

凛(ボールを取ってから、投げる体勢に移行するまでの流れはスムーズでそれだけで体の柔らかさ、身のこなしが優れていることは分かるけど……)

凛(肝心のボールは、山なりでようやく届くレベルにゃ)

138 :名無しで叶える物語:2020/08/15(土) 16:00:25.54 ID:PXJ3YNuo.net
凛(当然、そんなボールじゃランナーを刺せるはずも無く)

穂乃果「わー! やった! ツーベースなんていつぶりかなっ?」

凛(ボールがセカンド果林ちゃんのミットに収まった時には、穂乃果ちゃんは二塁ベースの上で嬉しそうに飛び跳ねていた)

希「おおー、凄い! 1回の表からランナー出たとこ初めて見たやん!」

真姫「う、嘘でしょ……? それは流石に嘘よね? 嘘って言いなさいよ!」

希「……」

真姫「遠い目をしないで! 凄く不安になるから!」

凛「穂乃果ちゃん……よく打てたねあんな凄いの」

「あーしには無理だわこれ。さくっと三振してくるね」

エマ「んー、いや……」キュイイン

エマ「問題なく打てると思うよ。動体視力、人並みにあるし」

「え、そんなん分かるの? 確かにあーし、目は良いほうだけど」

139 :名無しで叶える物語:2020/08/15(土) 16:10:19.69 ID:PXJ3YNuo.net
エマ「だからね……」ゴニョゴニョ

「うん? うん……え、そんなんでいいの?」

エマ「うんっ! それで多分、からくりが分かると思うよ!」ニコニコ


侑「一回からツーベースか……」

侑「打たれるだろうとは思ってたけど、まさかあんなに飛ばされるなんて」

侑「かすみちゃんは、と」

かすみ「なんで……なんでかすみんが打たれて……」

侑「……んー、やっぱ不安定だなぁ」

彼方「侑ちゃーん、やっぱ璃奈ちゃんに交代した方がいいんじゃない?」

彼方「打たれて守備が増えると、彼方ちゃんの寝る時間が減っちゃうよ……ふぁ」

侑「彼方さんは一番打者だからどのみち寝れないけどね。んー……なるべく代えたくないんだよねぇ」

140 :名無しで叶える物語(茸):2020/08/15(土) 16:17:28 ID:PXJ3YNuo.net
侑「かすみには実戦経験を積んで少しでも強くなって貰わなきゃ」

侑「うちで甲子園を戦える投手は、りなりーとかすみしかいないんだから」

彼方「んー……それはいいけどさぁ」

彼方「ここで負けたら終わりだって、分かってる?」

侑「……」

侑「何点取られても、三回が終わるまでは代えない。それが答え」

彼方「……了解、部長」

第2打席 打者モブA

かすみ「……かすみんが、かすみんが……」

「えー大丈夫? 超グロッキーな顔色してんじゃん」

かすみ「……ふっ」

「?」

かすみ「ふっふっふ! 分かりましたよぉ、あれは……まぐれです!」

凛「にゃ……!?」

141 :名無しで叶える物語:2020/08/15(土) 16:23:09.21 ID:PXJ3YNuo.net
かすみ「何故あんな大振りでかすみんの球を打てるのか! そう、まぐれだからですよぉ!」

凛「た、確かに……まぐれだったら有り得るにゃ!」

絵里「まさか……まぐれなの!?」

希「なんて冷静な判断なんだ、名ピッチャーの風格があるやん」

穂乃果「まぐれじゃないよ!? ちゃんと見て打ったよ!?」

侑「……」ハァー

彼方「代えない?」

侑「代えない」

かすみ「そうですよ、ソフトボールをやってた頃はかすみんのボールは誰にも打たれなかった! だからあんな人に打てるはずない!」

真姫「ソフトボール出身……あぁ、だから名前を知らなかったのね」

真姫「だからあのライズボールってわけか」

凛「らいすぼーる?」

花陽「おにぎりのことだよ、凛ちゃん」

142 :名無しで叶える物語:2020/08/15(土) 16:57:55.62 ID:PXJ3YNuo.net
真姫「違うわよ、ライズボール! 浮き上がってくる球のこと!」

真姫「元々ソフトボールって下投げじゃない? 上向きの回転が掛かりやすくて、ボールが浮き上がりやすいのよ」

凛「へぇー……真姫ちゃんソフトボールも詳しいんだ」

真姫「かすみはアンダースロー(身体を沈ませ低い位置から投げる投法)で、それを擬似的に再現してるってわけ」

エマ「その上、地面すれすれを這うような動きと、よくしなる腕でやられたら……通常の回転よりより多くの回転を生むことになる」

エマ「結果的に、打者は球が急に浮き上がったような錯覚に陥るんだ」

エマ「本来なら回転を付けるために球速が落ちるんだけど……140は出てる気がする」

エマ「勿体無いなぁ……」

凛「? とにかく凄い球なんだね、凛も投げてみたいよ」

エマ「うん、凛ちゃんも練習してみてもいいと思うよ」ナデナデ

凛「なんで撫でるにゃ?」

エマ「あ……ごめんなさい。スイスにいる姉弟を思い出しちゃって。三歳の弟に似てるのよ、凛ちゃん 

凛「三歳……」

143 :名無しで叶える物語:2020/08/15(土) 18:12:43.34 ID:PXJ3YNuo.net
かすみ「まぐれは二回も続きませんよぉ、ましてやあんなギャルっぽい子に!」

かすみ「かすみんの球は打てませんよぉ!」グイッ

ギュゥオオオオン!

「……」

ズバァンッ

審判「ボォーゥ!」

かすみ「研究に研究を重ねて……ようやく作った球なんですよぉ。そんなに簡単に打たれるわけがないんですよねぇ」パシッ

凛(かっこいいこと言ってる割に一球外してきた……)

「……なるほど、ね」

かすみ「いきますよぉ!」ギュイン

キュルルルルルルルッ

凛「今度はスライダー……浮き上がりながら曲がってくる!」

凛「やっぱりあんなの打てるわけが……」

「ふっ!」ブォンッ

ケキッ

かすみ「ッッッーー!?」

凛「あ、当たったぁ!?」

144 :名無しで叶える物語:2020/08/15(土) 18:19:10.35 ID:PXJ3YNuo.net
「スライダー分芯から外れちゃったか……」ダッ

彼方「ピッチャー! 正面ッ!」

かすみ「えっ、えあっ!? えっ!?」

かすみ「あっ……」ポロッ

彼方「ッ!」

絵里「チャンスよ! 一塁間に合うわ!」

凛(かすみちゃんの正面に転がったボテボテのゴロ)

凛(多分守備練習を余りしてない凛でも取れそうなそれを、放心のせいか、かすみちゃんはミットからこぼす)

凛(穂乃果ちゃんはとっくにスタートを切ってる。普通ならこの状況で走るな、って怒られそうだけど……)

侑「……つうっ」ギリッ

凛「ナイス判断にゃ! これでノーアウト一三塁の状況に出来る!」





せつ菜「……と、思いますよね!!!!!」

希「な……サードの優木せつ菜がピッチャーのカバーに入ってる!? この状況で!?」

145 :名無しで叶える物語:2020/08/15(土) 18:25:00.44 ID:PXJ3YNuo.net
花陽「じゃ、じゃあサードは……?」

せつ菜「任せましたッッッ!!!!!」ブンッ

ヒュルルルルルッ!

絵里「サードに投げた……誰もいないのに……!?」

絵里「っ!?」

彼方「はいはい……」バシッ

絵里「ショートがサードのカバーに入ってる!? さっきまで定位置にいたじゃない!?」

穂乃果「ちょ、ちょ!? 嘘でしょ、止まれなっ……!」

彼方「はい、タッチ」パン

塁審3「アウッ!」

穂乃果「あぁーっ!!」

彼方「で……歩夢!」ヒュンッ

「な……」

歩夢「……!」パシッ

「あっ……」

塁審1「アアウッ!」

146 :名無しで叶える物語:2020/08/15(土) 18:38:39.35 ID:PXJ3YNuo.net
絵里「嘘……でしょ?」

希「ノーアウト一三塁が見えてたのに!」

エマ「へぇ……凄いなぁ」

凛「つ、ツーアウトランナー無し!?」


彼方「ふぅ……」

せつ菜「ありがとうございます!!!!! 一塁への送球もバッチリでした!!!!」

彼方「余り働かせないでよねー、彼方ちゃん眠いんだから」

かすみ「あ、あの……かすみんは……」

かすみ「かすみんが打たれて、ミスして……ごめんなさい、こんな筈じゃ……!」

せつ菜「気にしないでください!!!!!」

かすみ「!」(鼓膜が破れる)

せつ菜「ピッチャーが打たれるのは当たり前です!!!! その為に私達が後ろにいるんです!!!!」

せつ菜「誰かがミスをしても、すぐにカバーに入る為に他の8人がいるんです!!!!!」

せつ菜「かすみちゃんが打たれても、すぐに助ける!!! それが私達の仕事ですから!!!!」

かすみ「せつ菜先輩……」

かすみ(何言ってるか全然聞こえない……)

147 :名無しで叶える物語:2020/08/15(土) 18:42:56.99 ID:+igU1ilr.net
せつないたらみんな耳聞こえなくなって大変そう
耳栓して試合しなきゃいけないのか

148 :名無しで叶える物語:2020/08/15(土) 18:47:52.15 ID:PXJ3YNuo.net
侑「こっちまで耳がやられそうだよ……けど、良い拾い物したなぁ」

歩夢「せつ菜ちゃん……本当、未経験から部に入って一週間とは思えないよ」

希「一週間……!?」

凛「未経験から一週間でレギュラーに……!? 信じられないにゃ……!」←野球歴3日

真姫「い、一週間であの動き!? あそこまで的確な判断、私でも出来るか……」←野球歴1日の女に三振

エマ「あの子も凄いけど、三年の子も中々凄いね。サードが動いたとほぼ同時にカバーに向かってたよ」

エマ「一塁に送球する際の動きも最小化されてるし……皆勿体無いなぁ」

エマ「なんでこんな弱小にいるのかなぁ……」ボソッ

花陽「……?」

「ごめん穂乃果ちゃん……あーしミスっちゃった」

穂乃果「こっちこそごめん、もう少し私の足が速かったら……せめてワンアウト三塁の形にしたかったよ」

絵里「……いいのよ、二人とも! うちはいつもこうじゃない!」

絵里「三番の前にランナーがいたことなんて、数回しかないでしょ? いつも通りよ!」

149 :名無しで叶える物語:2020/08/15(土) 19:30:39.71 ID:dQ+E0Bm4.net
声で球返せそう

150 :名無しで叶える物語(茸):2020/08/15(土) 19:59:07 ID:PXJ3YNuo.net
希「さて……ウチか」

絵里「頼むわよ希。いつもは5番を打ってる実力、見せてあげて」

真姫「いつもは5番って、じゃあ4番は誰が打ってたのよ」

穂乃果「ことりちゃんだよ」

絵里「裁縫部の子よ」

凛(兼業の裁縫部に4番任せるうちの部って一体……)

希「エマちゃん、あの球の攻略法分かってるんやろ? ウチにも教えてくれへん?」

エマ「攻略法ってほどでもないんだけどね?」

「そうそう、一球見たら分かるわあれ」

穂乃果「あの球ね……止まるんだよ!」

希「止まる? 何言うてるんよ、ずっと真っ直ぐ進んでたやん」

151 :名無しで叶える物語:2020/08/15(土) 21:48:36.52 ID:dXS0+FV3.net
今日は終わりかな

152 :名無しで叶える物語:2020/08/16(日) 03:35:47.52 ID:lEAq9uG9.net
穂乃果「いや違うんだって……なんかこう、分からないけど! その場で止まってふわっと浮き上がって、また進み始めるっていうか……」

「だから穂乃果ちゃんもあーしも、その止まった瞬間を叩いたわけ」

希「……って言われてもなぁ」

穂乃果「あー! 信じてない!」

真姫「横から見てるだけだと信じられないわよね、バッターボックスに立てば理解すると思うわ」

真姫「二人が言ってることが、真実だって」

希「んー……」ポリポリ

希「分かった、とにかく見てみるやん」

穂乃果「うん、一球見ればタイミングは分かるから!」

絵里「頼むわよ希! 当たればパワーはあるんだから……!」

153 :名無しで叶える物語:2020/08/16(日) 03:41:04.30 ID:lEAq9uG9.net
第3打席 打者東條希

希(さて……)

かすみ「……これ以上醜態を晒すわけにはいかないんですよぉ」

かすみ「せめて貴女だけでも三振に……!」ギュインッ

ヒュオッ!

希(……ッ。地面スレッスレのアンダースロー……予想してたよりボールの出が低い!)

シュルルルルルッ

希(地面を転がりながら進んでるような気さえするやん……! なんなんやこのボール!)

希「こんなん打てるわけ……」

フワッ

希「!」

希(ボールが……止まって、ストライクゾーンに浮き上がった!? さっきの話本当やったんか……!?)

シュパンッ

審判「ットライゥ!」

154 :名無しで叶える物語:2020/08/16(日) 03:56:03.16 ID:lEAq9uG9.net
穂乃果「けど……なんであんな風に見えるんだろうね」

穂乃果「横から見てる限りでは、真っ直ぐ進み続けてるように見えるのに」

真姫「簡単な話よ。原因はあの球速と回転のせい」

花陽「回転? 確か、回転の勢いが凄いからあの球は浮き上がる……んだよね?」

真姫「そう。浮き上がるような球を生み出すあの回転」

真姫「皮肉な話だけど、かすみが努力と研究の末に得た、常識を超えた回転があの止まったような錯覚を生み出してるの」

真姫「あの球は140ほどのスピードで地面スレスレを進んでくる。そして、回転が空気を巻き込んだ結果バッターの手前で急速にスピードを失いふわりと浮き上がる……」

エマ「打者の目は寸前に見ていた140に慣れてるから、一気にスピードを落とした球は擬似的に止まったように見えるんだ」

エマ「球速か、回転か。どっちか一つでも劣っていたら、打つのに相当苦労したと思うよ?」

凛「強くなったせいで余計に弱くなったってことにゃ……?」

絵里「なんて皮肉な話……」

155 :名無しで叶える物語:2020/08/16(日) 04:17:13.56 ID:lEAq9uG9.net
かすみ「……フッ!」シュッ

ヒュインッ

希(相変わらず低空飛行している時は速いけど……)

フワッ

希(これなら誰でも打てるやん!)ブォンッ

ガギィォォォン!

希「っっ! らぁ!」

かすみ「あ……」

希(……あかん、当たりはかなり良かった筈なのに)

希(ホームランどころかフェンスにも当たらん! ライズボールは軽い球やから、当たればホームランも軽いのに……!)

侑「ライト前……セカン送球! 処理早く!」

凛(ライトの手前に落ち土の上を転がったボールは、コロコロと力無さげに転がっていく)

凛(慣れていないのだろうか、ライトがボールを手にするまでも、セカンドへ送球するにも動きが遅い。というかぎこちない)

凛(それは関節の硬い人形が、操られて野球をしている風にも見えた)

侑「くっ……やっぱり彼方さん達以外の部員は、試合慣れしてなさすぎる……! 気持ちに身体が追いつけてない……!」

凛(ぎこちないボールがセカンドにワンバウンドで送られる。希ちゃんはというと、最初から二塁を目指す気はなかったようで、一塁の上でまんじりともせずバウンドし転がるボールを眺めていた)

156 :名無しで叶える物語:2020/08/16(日) 04:17:34.00 ID:lEAq9uG9.net
今日(昨日)はここまで

157 :名無しで叶える物語:2020/08/16(日) 10:19:53.64 ID:gKt1Uri5.net
おつおつー
かすみんが曇っていく…

158 :名無しで叶える物語:2020/08/16(日) 19:09:40.33 ID:/xC7Fm7d.net
名ありキャラでは虹は音よりは有能揃ってる感じか

159 :名無しで叶える物語:2020/08/16(日) 20:05:32.44 ID:Lqbcb0/g.net
エマ「ツーアウト一塁、か……」

第4打席 打者エマ・ヴェルデ

絵里「この回で三点は入りそうね。それだけリードがあればある程度余裕が持てるわ」

真姫「三点? エマが打って、私が打って……」

絵里「そして私がアウトになる」

絵里「スリーアウトチェンジよ」

凛「そんな純粋な目で言わないでよ……何も言えなくなるにゃ」

かすみ「……エマ・ヴェルデ。貴女の名前は知ってますよ」

かすみ「優れたスラッガー、スカウト注目の一人。いくらかすみんでも分かりますよぉ、こんな人には敵わないって」

エマ「ありがとう、けどそんな……ううん、謙遜は失礼かな」

エマ「何処に投げても、何を投げても私は打つよ。どうするの?」

かすみ「決まってるじゃないですかぁ!」

凛(悔しげに叫ぶと、かすみちゃんはマウンドの上で手を大きく上下させる)

凛(その動きに合わせるように、捕手が立ち上がる。180kgはあるだろう、はちきれんばかりの巨山が動くたびに砂埃が巻き上がった)

凛「捕手が立ったってことは……敬遠!?」

160 :名無しで叶える物語:2020/08/16(日) 20:16:31.29 ID:Lqbcb0/g.net
絵里「けいえん……敬遠!?」

絵里「初めて見たわ、うちが敬遠されるとこ」

穂乃果「落ち着いてる場合じゃないよ! エマちゃんが敬遠されたってことは……!」

凛(ベンチが騒いでいる間に、一球、二球とカウントが進んでいく)

エマ「……」ニコニコ

凛(ボール球が投げられるのを、エマちゃんは笑って見ていた)

凛(それでいい、と納得するように。成長を見守るような微笑みで)

凛(審判がフォアボールを宣言すると共に、エマちゃんは一塁へと歩を進めた。希ちゃんもそれに合わせて二塁に進む)

穂乃果「ツーアウト一二塁……多分、真姫ちゃんも敬遠されると思う」

真姫「満塁になるわよ? 敬遠してくるかしら」

「満塁になるのはデメリットも大きいですけど、真姫ちゃんと正面対決するのは避けると思いますよ」

「有名なスラッガーさえ避ければ、残っているのは弱小高校の部員のみ。そちらを打ち取る方に賭けた方が可能性は高い」

絵里「自分で言うのはいいけど他人に言われるのは腹立つのよ、球拾」コチョコチョ

「や、やめてくだっ! 腰は弱っ……えひひっ!」

161 :名無しで叶える物語:2020/08/16(日) 20:22:31.74 ID:3slNasdx.net
キャッチャー無駄に強そうで草

162 :名無しで叶える物語:2020/08/16(日) 20:45:03.91 ID:vPJRNnl0.net
山のフドウかよ

163 :名無しで叶える物語:2020/08/16(日) 20:57:06.09 ID:Lqbcb0/g.net
真姫「次は私の番ね。敬遠だとは思うけど、甘いところに来たら……」

凛(そして真姫ちゃんも当然のように敬遠され、ツーアウト満塁となったのだった)

真姫「カット!?」

真姫「待ちなさいよ、まだ私がいい感じのことを言って……!」

凛(なったのだった)

真姫「……」

絵里「……満塁。ポテンでも、打ちさえすれば最低一点の場面か」

絵里「よしっ! 行ってくるわ!」

第6打席 打者絢瀬絵里

真姫「絶対打ちなさいよ! こうなったら走塁でいいところを見せ」

かすみ「フッ!」ビュオン

真姫「聞きなさいよ!」

絵里(浮き上がって……止まる、って言ってたわよね)

164 :名無しで叶える物語:2020/08/16(日) 21:01:00.55 ID:Lqbcb0/g.net
絵里「……!」

フワッ

絵里(ここ!)ブンッ

絵里(確かに球は止まって、その場で浮き上がった。ポールに置いたボールを打つような、簡単に打てる球……!)

絵里(けど……!)

スカッ

ズバァンッ!

凛「か、空振り……!」

絵里「参ったわね……」

絵里「私、ポールに置いたボールにも滅多にバット当たらないのよ……!」

真姫「は……」

真姫「はああああぁぁぁぁぁぁっ!?」

165 :名無しで叶える物語:2020/08/16(日) 21:06:43.97 ID:Lqbcb0/g.net
真姫「そりゃ、そんな……そういうシーン、漫画でたまに見るけど!」

侑「現実にもいるんだね、そういう人」

歩夢「狙ったところにバットがいかないタイプなのかな……?」

侑「何にせよ、こっちにとってはチャンスだね。かすみ! 三振取っちゃって!」

かすみ「ふっふっふぅ……よっうやくかすみんの可愛いエンジンが温まってきたようですねぇ」

かすみ「これですよこれ、これこそがかすみんなんです!」ギュオッ

絵里「ッう!」ブォンッ

スカァッ

絵里(当たらない……! こんなことなら、バッティング練習ももっとしておくべきだったわね)

希「苦手やから、そもそも当たらんからって守備練習ばっかさせてたからなぁ……」

果林「最低限、止まった球は打てる程度には練習させておいた方が良かったんじゃない?」

希「せやなぁ……失敗したやん」

166 :名無しで叶える物語:2020/08/16(日) 21:14:05.60 ID:Lqbcb0/g.net
絵里「……くっ」

かすみ「サインは……コースをつけ? 必要ないと思うんですけどね」

かすみ「真ん中でも打てないのが、かすみんの真の実力なんですからっ!」キュッ

ギュオッ

絵里(コースギリギリ……! 入って……いや、これは)

審判「ボォ!」

かすみ「球半分ずれてましたかぁ……デブ子先輩、最初からボールコースにミット置いてませんでしたぁ?」

「……」フゴッ

かすみ「冗談ですよ。とにかく、これで一回表も終わりです……いきますよぉ!」

ギュウッオン!

絵里(速い……! 明らかに、さっきよりも球が速くなってる!?)

絵里(まさか、あの投手……調子に乗ると強くなる目立ちたがりタイプ? 調子に乗らせたのは……私だ)

絵里(打てない……止まったところを狙っても、バットが空を切るだけ。どうすれば……!)

167 :名無しで叶える物語:2020/08/16(日) 21:18:04.83 ID:Lqbcb0/g.net
絵里(低い位置から、浮き上がって止まって……その瞬間を捉えるしかない! とにかくバットを振り回して……)

絵里(……?)

ギュウォオォオォ

絵里(いや……違う、その方法じゃ打てない。バットにボールが当たらない私じゃ、皆と同じようにしても仕方ない)

絵里(狙うのは……!)

希「な、なんや!? 構えが変わった!?」

真姫「大きく振り上げ……っ、まさかあの構え!」

絵里「っらぁぁぁぁああああっ!!」

ブォンッ!

絵里(浮き上がって打てないなら……)

真姫「ゴルフじゃない!?」

絵里(その前に、無理矢理捉える!)

ギィッン!

168 :名無しで叶える物語:2020/08/16(日) 21:25:06.11 ID:Lqbcb0/g.net
穂乃果「あ、当たったけど……なんでゴルフ!?」

凛「そっか……」

穂乃果「凛ちゃん、何か分かったの?」

凛「かすみちゃんのあのボールは、言ってしまえば縦に曲がってくるストレートにゃ」

凛「縦に曲がる球なら、横向きのバットよりも縦に向けたバットの方が必然的に面は大きくなる」

花陽「だから、あのバットを縦にしたゴルフスタイル……」

花陽「無理矢理にでもミートしやすくなるんだね」

穂乃果「けど、代わりに威力は……」

ヒョロロロッ……

歩夢「オーライ……オーライ……よっ!」パシッ

塁審1「アッ! チェン!」

絵里「っはぁー……全っ然飛ばなかったわね」

希「大丈夫やん、絵里ち。当たっただけでも十分やと思うよ」

真姫「駄目よ、甘やかさない! 試合終わったらみっっっちり、バッティング練習させるから!」

絵里「分かってるわよぉ……」

169 :名無しで叶える物語:2020/08/16(日) 21:53:37.94 ID:Lqbcb0/g.net
一回裏 虹ヶ咲攻撃

穂乃果「まさか一点も取れずに攻守交代なんて……」

絵里「いつものことじゃない」

穂乃果「そうだけど! あの球ならまぁ一点くらいいけるかなーって思うじゃん」

絵里「私だって予想外よ、エマや真姫が敬遠されるなんて!」

エマ「よく敬遠されるから、そうなるだろうなぁって思ってたんだけどね」

真姫「私も敬遠慣れてるし。スラッガーはPASSさ……ってもんよ」

絵里「弱小と強豪の違いね」

希「まぁまぁ……こっちも0点に抑えればええ話やん」

希「かすみちゃんも凄いピッチャーやったけどこっちには球拾もいるし、凛ちゃんもいるんやから」

穂乃果「球拾ちゃん、絶対打ち取ってね! 出来れば三振取ってね!」

絵里「素人ばかりなんだから、外野に飛んだらほぼ終わりと思って投げなさい」

「プレッシャーかけてくるなぁ……」

170 :名無しで叶える物語:2020/08/16(日) 21:59:22.63 ID:Lqbcb0/g.net
第1打席 打者近江彼方

彼方「……」

侑「0点に抑える、だって」

歩夢「けどあれだけ自信があるってことは、相手も凄いピッチャーなのかもしれないよ」

侑「無いよ。強いピッチャーがいるなら、音ノ木坂は弱小なんて呼ばれてない」

果林「思いっきりブーメランじゃない」

侑「いいんだようちは……かすみもりなりーも今年入ってきたばかりなんだから」

かすみ「ええ、そうですよぉ。今年の夏には、虹ヶ咲は弱小の名を挽回してる筈です」

果林「挽回するの?」

せつ菜「かすみさん、それを言うなら返上ですよ!!!!」

かすみ「ギッ」(声と共振し肉体が自壊する)

侑「まあまあ……とにかく、相手を黙らせてあげてよ。彼方さん」

彼方「……」

侑「彼方さん?」

彼方「……zzz」

歩夢「寝てる!? お、起きて! 起きてください!」ユサユサ

171 :名無しで叶える物語:2020/08/16(日) 22:05:41.19 ID:Lqbcb0/g.net
彼方「ふぁああ……おはよ、彼方ちゃんはおねむだよ。もう少し寝かせて……」

果林「駄目よ。彼方がトップなんだから……早くバッターボックスに入ってきなさい」

彼方「ふぁあああっ……むにゅ」

「欠伸混じりとは……舐められたものですね」

希「大丈夫なん? 眠かったら三振するまで寝ててくれてもええよ?」

彼方「いやぁ……それやると侑ちゃんに怒られるからねえ。普通にやるよ」

希「そう……打ち取って、なるべく早くベンチに返してあげるやん」

彼方「んー……」

「とりあえずは……」

希(内角に一球外して様子見やん)

「……」コクッ

「ふぅー……とにかく凛ちゃんに代えたくなくなるくらい活躍しなきゃ。まずは三振一つ取って……」ヒュッ

172 :名無しで叶える物語:2020/08/16(日) 22:27:29.87 ID:Lqbcb0/g.net
希(ボール一個外れてるコース……相変わらずコントロールは完璧やな。球おっそいけど)

彼方「んー。彼方ちゃん、いいこと思いついたよ」

希「……?」

彼方「早くベンチに戻れて、侑ちゃんにも怒られない……」ヒュンッ

カキンッ!

希「なっ……無理やり打ってきた!」

絵里「ボール球を初球打ち……ひょろひょろ上がったセンターフライじゃない」

絵里「凛! バック、バックよ!」

凛「はいはい……下がって下がって」

凛「意外に伸びるにゃ……あんなふらふらなのに」ガンッ

凛「にゃ? ……フェンス?」

「う、嘘……」

凛「まだ落ちてこない、ってことは……」

穂乃果「先頭打者……ホームラン!?」

173 :名無しで叶える物語:2020/08/16(日) 22:50:14.27 ID:Lqbcb0/g.net
彼方「ふぁ……」タッタッタッ

彼方「はい、ホームベース踏んだ……戻るね」

希「嘘やろ……何で虹ヶ咲なんて弱小にあんたみたいなんがおるんや?」

彼方「それはこっちの台詞でもあるよねえ。何で西木野真姫がいるのさ」

希「……次は打ち取るからな?」ニィ

彼方「……楽しみにしてるよ?」ニィ

侑「凄い凄い彼方さん、よくやってくれたね」

果林「この子実力だけはあるのよね。公式戦全部寝坊で遅刻して、試合経験ほぼ0だけど」

彼方「はーい……彼方ちゃんは眠いから、もう起こさないでね」

歩夢「何だか、今日はいつもより眠そうな気がするね」

彼方「昨日、果林が寝かせてくれなかったから……」

歩夢「えっ……そういう……関係だったんですか」

果林「変な言い方しないで。遅刻しちゃまずいから家に泊めて、今日の動きを確認しただけ。20時には寝かせたのよ?」

174 :名無しで叶える物語:2020/08/16(日) 22:57:47.80 ID:Lqbcb0/g.net
果林「それから朝までぐっすり寝てたじゃない」

彼方「んー……けど、午前0時ごろにさ。隣からくちゅくちゅって水音聞こえてきて、その音で起きて」

果林「やめなさい」

果林「寝なさい。いいわね?」

彼方「おやすみ……」

せつ菜「流石に友達が隣にいるのにそれは引きますね」

果林「せつ菜ちゃん? いつもの元気な大声が無いわよ?」

歩夢「あ、あー! 私次のバッターだったー、いってきまーす!」

果林「話題を変えようとしてくれるのはありがたいけど、余計に私の恥ずかしさが際立つような……」

侑「果林ちゃんがどすけべな事なんてこの際どうでもいいよ、さて……ホームランで相手もどうでるか」

果林「どすけべ……」

璃奈「果林さん、元気出して。璃奈ちゃんボード『けど時と場合は選んで』」

175 :名無しで叶える物語:2020/08/16(日) 23:05:28.04 ID:Lqbcb0/g.net
果林「皆だって似たようなものじゃない……」ブツブツ

侑「いいから……ぼやくくらいならかすみの面倒見てあげて。結構心にダメージ負ってるから」

侑「……相手のピッチャーもそこそこダメージ負ってそうだけど。早速タイムかかってるし」


絵里「大丈夫? いけそう?」

希「そこそこ打たれる覚悟はしてたけど、まさか一発目からとはな……」

「だ、大丈夫ですよ! まだ肩があったまってないだけだから!」

凛「いざとなったら凛がいつでも代わるから、無理しないでほしいにゃ」

「交代するにしてもまだまだだよ……今日は矢澤さん来てないから、他に交代できる投手もいないし」

「いくら凛ちゃんにスタミナがあるって言っても、練習と実戦のそれは大違いなんだから」

凛「にゃ……」

穂乃果「とにかく一人一人しっかり処理していこ! とりあえずはワンアウト目指して、ファイトだよっ!」

絵里「そうね……何とか頼むわよ、球拾。審判、タイム終了!」

審判「ダイザッ!」

176 :名無しで叶える物語:2020/08/16(日) 23:05:53.34 ID:Lqbcb0/g.net
今日はここまで

177 :名無しで叶える物語:2020/08/16(日) 23:07:56.62 ID:8MV+5md7.net
時と場合を選んだ結果だった可能性も?

178 :名無しで叶える物語:2020/08/17(月) 00:21:02.37 ID:9qUmZ1q3.net
>>160
モブ絵里でちょっとエモい先輩後輩百合放り込んでくるんじゃないよ

179 :名無しで叶える物語:2020/08/17(月) 03:01:29.64 ID:ehfxRmNL.net
音側の部員が思ったよりポンコツで草

180 :名無しで叶える物語:2020/08/17(月) 19:58:42.37 ID:6xNmZn95.net
Hossyu

181 :名無しで叶える物語:2020/08/17(月) 21:08:33.57 ID:l+7B1E4V.net
第2打席 打者上原歩夢

歩夢「……」

希(どうするか……この子は余り力が強そうなタイプには見えない)

希(さっきみたいに、無理矢理ホームランに持っていかれる展開にはならないと思うけど……)

希(一応様子見やな、外角低め半個ずらしで一球外そか)

「……」コクッ

「らあっ!」シュイッ

ヒュルルルルルッ

歩夢「……」

スパァン

審判「ボッ!」

希(手を出してこないか……目がええみたいやな。技巧派か?)

希(となるとボールは無駄にカウントを重ねるだけかな。かぶさり気味やしここは……)

「……なるほど、ね」

希(内角高めギリギリ……上から叩く形になるから、まぁ外野まではいかない筈や)

182 :名無しで叶える物語:2020/08/17(月) 21:11:05.98 ID:9mvwLTcb.net
まだかなと覗きに来たら丁度更新来てた期待

183 :名無しで叶える物語:2020/08/17(月) 21:13:57.50 ID:l+7B1E4V.net
「内角いっぱい、しかもカーブ……顔目掛けて飛んできて曲がる球に」

「どこまで対応できますかね!?」シュオン

ギュルルッ!

希(お……遅い! 相変わらず遅い! ストレートが110の球拾のカーブは、80も出てるか怪しいレベルで遅いんや)

希(ただでさえ微妙なところに、この超スローカーブ! とりあえずワンストライク……)

歩夢「ごめんなさい……」

希「……?」

歩夢「私達が勝つには、こういう手を使うしかないから」クイッ

凛(あの構え……!)

絵里「バント……!?」

希(なっ……!)

コンッ

凛(軽く当てられたボールは勢いを失い、力無さげに三塁目掛けて転がっていく)

凛(とはいえほとんど線の上……放っておけばファールボールになりそうにゃ)

184 :名無しで叶える物語:2020/08/17(月) 21:18:26.22 ID:l+7B1E4V.net
絵里「……!」ダッ

希「絵里ち! 触ったらあかん!」

希「ファールや! ファールになるから!」

ヨロ……

絵里「よろけた……! これでファールに……」

ピタッ……

「なっ……」

絵里「ファールライン寸前で止まっ……つうっ!」ガシッ

絵里「ファースト! ……!?」

絵里「ファーストにランナーがいな……」

穂乃果「こっち! 絵里ちゃんセカンド! 早くっ!」

絵里「なっ……」ピシュッ

凛(絵里ちゃん達がファールラインを眺めている間に、気付けば歩夢ちゃんはファーストを回っていて……)

穂乃果「っ……うう!」パンッ

凛(絵里ちゃんの投げたボールが、セカンドの穂乃果ちゃんのミットに収まった時には。歩夢ちゃんはとっくに二塁を踏んでいた)

185 :名無しで叶える物語:2020/08/17(月) 21:24:45.79 ID:l+7B1E4V.net
希「〜〜ッ! 嘘やろ……!? ランナー無しでバント、しかもサードゴロでツーベース!」

歩夢「せ、成功した……良かったぁ」

穂乃果「凄いね今の……狙って転がしたの?」

歩夢「う、うん。ドカベン読んでたら、そういう技が出てきて……とりあえず練習してみたら、意外と出来ちゃって」

穂乃果「へぇーっ……」

エマ「……っと、ごめんごめん穂乃果ちゃん。セカンドのカバー入らせちゃって」

穂乃果「ほんとだよ、穂乃果ファーストだよ!? 歩夢ちゃん一塁で止まってたら危なかったよ!」

穂乃果「なんでエマちゃん、センターの近くに行ってたのさ!?」

エマ「いや、あはは……何て言えばいいんだろ」キュイイン

エマ「この子の筋力と技量なら……そこに打ってくるような気がしたから」

歩夢「……!」ゾクッ

歩夢(な、なんだろ今のエマさんの目……凄く嫌な目だったような)

穂乃果「んー? よくわかんないや」

エマ「ごめんね、次からはちゃんとやるから」

穂乃果「うんっ! お願いねっ!」

186 :名無しで叶える物語:2020/08/17(月) 21:32:14.93 ID:l+7B1E4V.net
第3打席 打者朝香果林

果林「ふぅ……歩夢が決めたんだから、私もいいところ見せなくちゃ」

希(……まずいな、ノーアウト二塁か)

希(打者は……なんかどすけべそうな人や。どすけべのオーラがある)

絵里「ワンアウト、ワンアウト取っていきましょ!」

希(そうは言っても、何をしてくるか……って!?)

果林「……」クイッ

希「送りバントか……消極的やね」

果林「あら、一点を確実に取るのが野球でしょう?」

希「……皆、前に出て。バントシフトや!」

凛(希ちゃんの掛け声に合わせて、皆がぞろぞろと前に……)

凛(あれ……? エマちゃん……?)

「なるべく三塁をアウトに出来るように、内角に……」ヒュッ

果林「……」ニヤッ

187 :名無しで叶える物語:2020/08/17(月) 21:39:12.33 ID:l+7B1E4V.net
果林「それを狙ってたのよ……!」ヒュッ

希「なっ……バットを戻した!? 皆下がって!」

希(バスター! クソッ、読めた筈なのに!)

果林「遅いわ、よっ!」ブォンッ

カキィンッ!

希(センター前の強い当たり……凛ちゃんが走っても間に合わない!)

希(歩夢ちゃんは既に三塁付近まで進んでる、まずい、追加点取られた上にノーアウト一塁になる!)

果林「これで楽々……!?」

エマ「……」ポスッ

凛「エマちゃんが立ってたとこに……落ちてきた……?」

歩夢「えっ、嘘っ!? 戻らなきゃ……!」

エマ「……!」ダッ

凛(歩夢ちゃんが慌てて二塁に戻ろうとしていたが、既に三塁を蹴っている状態から間に合うわけもなく)

凛(エマちゃんが二塁ベースを踏み、これでツーアウトとなったのだった)

188 :名無しで叶える物語(鮒寿司):2020/08/17(月) 21:46:31 ID:l+7B1E4V.net
侑「……」

果林「……あの位置にセカンドがいるなんて予想外だったわ」

歩夢「私も……ヒットだと思って走り過ぎちゃった。ごめんなさい……!」

侑「いいよ二人とも。相手はあのエマ・ヴェルデなんだから」

侑「あの化物なら、何をしてきてもおかしくはない。知ってる? 前回の夏の甲子園大会で、エマさん全部のヒット性フライの落下位置を、バッターが打つ前に予測して動きアウトにしたんだよ」

果林「全ての落下位置を予測……!? そんなこと出来るわけないじゃない!」

侑「出来るんだよ、エマ・ヴェルデだから」

侑「インタビューでは『神様が私に教えてくれたんです』なんて言ってたけど……」

凛「凄いにゃエマちゃん! よくここに落ちてくるって分かったね!」

エマ「神様が、ここに落ちてくるって言ってくれたんだよ」

凛(神様……? ベーブ・ルースが落下位置を……?)

侑「……神様なんか信じてるタマじゃないと思うんだけどねぇ」

189 :名無しで叶える物語:2020/08/17(月) 21:55:21.14 ID:l+7B1E4V.net
凛(続く第4打席、バッターは自壊し肉体の半分が砂と化したかすみちゃん……)

凛(虚ろな目をして遠くを見ている彼女は、スタミナ温存の為かバットを振らず三振。一回裏が終了した)

凛(二回表、7番バッターかよちんは浮き上がる球にバットを振れず三振……140に目が慣れる以前に、運動部経験の無いかよちんには無理だったみたいにゃ)

花陽「ううー……ボール怖いよぉ」

凛「かよちんは無理しなくていいにゃ。参加してくれてるだけでもありがたいんだから」

凛「さーて、ようやく凛の打席にゃ! ずばーんとホームラン決めるよっ!」

穂乃果「やっちゃえ、凛ちゃん!」

凛「うん、やるにゃ!」

第2打席 打者星空凛

凛「よーし、彼方ちゃんみたいにホームラン打つぞー!」ブンブン

かすみ「そう簡単には打たせませんよぉ? ようやく肩も温まって……かすみんの真の実力が発揮されてきたところなんですからっ!」

190 :名無しで叶える物語:2020/08/17(月) 21:59:46.24 ID:l+7B1E4V.net
凛(……なんちゃって! 凛には考えがあるにゃ)

かすみ「いきますよぉ!」ギュニャ

シュオオオッ!

凛「ここにゃ!」クイッ

絵里「……え」

希「んなっ!?」

穂乃果「ええ……」

凛「バントにゃ! さあ、ファールラインギリギリを転がるがいいにゃ」コツッ

凛(さっきの歩夢ちゃんのバント見てから、やってみたかったんだよねこれ……相手もびっくりしてるみたいだし、これは確実に一塁いけるにゃ!)ダッ

凛「たったったっ……と! よし、これでノーアウト一塁にゃ!」

審判「ファール」

凛「ちょ……嘘でしょ……」ポロポロ

歩夢「え、ええと……バントの練習とか、余りしてない……のかな? 流石に一発勝負じゃあれは無理だよ」

凛「にゃあ……」

191 :名無しで叶える物語:2020/08/17(月) 22:03:30.93 ID:l+7B1E4V.net
凛「と、とりあえず戻って……」

凛「仕方ないにゃ……ホームラン狙いに切り替えるよ」

かすみ「バントからホームランって……切り替えすぎな気がするけど」

彼方「バントでホームラン打つゲームあったよね、昔」

かすみ「余計にややこしくなること言わないでくださいよぉ!」

凛「バントでホームランって凄いゲームにゃ……ん?」

凛「バントでホームラン……」

穂乃果「何か頭悪そうなこと考えてる顔してるよ」

花陽「間違いないですね。付き合いの長い私には分かります、あれは馬鹿の極みの時の顔です」

穂乃果「人間、馬鹿を極めたらあんな顔になるんだね」

穂乃果「生きるのが辛くなってくるよ」

192 :名無しで叶える物語:2020/08/17(月) 22:17:04.57 ID:l+7B1E4V.net
凛「さぁ、来いにゃ!」クイッ

かすみ「バカの一つ覚えみたいにバントの構え……そんなのじゃ、ボール投げられたらおしまいですよっ!」ヒュッ

凛「ボール球……! だけど、当てるだけなら無理矢理でもいけるにゃ!」

クッ

かすみ「当てても、既に皆バントシフトを引いていますよぉ!? さぁ、これでセーフになれますかねぇ!?」

凛「う……」

クククッ

かすみ(……? バットに触れたボールが、離れない……?)

凛「にゃああぁぁぁぁぁっ!!」

凛(力を入れて、限界まで力を溜めて……)

凛(押す!)

キィン!

かすみ「プッシュバント……歩夢さん!」

歩夢「うお、あれ、あ……届かない!」

凛(バントの構えを見て前に出てきた内野の頭を越えるバント……思いつきだけど成功したにゃ!)ダッ

審判「セッ!」

193 :名無しで叶える物語:2020/08/17(月) 22:17:24.75 ID:l+7B1E4V.net
短いけど明日早いから今日はここまで

194 :名無しで叶える物語:2020/08/17(月) 23:13:29.31 ID:3xFy3OzD.net
お疲れ様です!
毎日の楽しみ

195 :名無しで叶える物語:2020/08/17(月) 23:22:30.19 ID:wpyR3fAw.net
果林ちゃんに出し抜かれたのは仕形ない
毎日劇場でも希ちゃんをすけべに出し抜いてたもんな

196 :名無しで叶える物語:2020/08/18(火) 01:11:30.96 ID:zVCzrbh1.net
>>189
1レスの中でかすみ変わりすぎだろ…

197 :名無しで叶える物語(鮒寿司):2020/08/18(火) 20:02:02 ID:aNIspzMV.net
第3打席 打者球拾

「ワンアウト一塁……上手く塁に出て1番打者に回せば、点の可能性も見えてくる場面ですか」

かすみ「ツーアウト一塁……ううん、ゲッツーでスリーアウトもあるかもしれませんよぉ?」

凛(球拾ちゃんのバッティング……投手としては三流だけど、打者としての力量は未知数にゃ)

凛(ベンチは顔が死んでる……絶対走らないでおこう)

凛「ツーアウト一塁! ツーアウト一塁で何とかいくにゃ!」

かすみ「味方から信頼されてなさすぎません?」

「ピッチャーだからね。バッターとしては信頼なんかなくていいよ」

「そっちだってバット振らなかったでしょ? 四番のくせに」

かすみ「いいんですよぉ、かすみんは……!」クイッ

キュルルルルルルルッ

(止まった瞬間を狙って……!)

(ん?)

ボグオッ!

「げはっ!?」

せつ菜「デッドボール!!!!!??? お腹に思いっきり当たってましたよ!!!!???」

198 :名無しで叶える物語(鮒寿司):2020/08/18(火) 20:08:22 ID:aNIspzMV.net
かすみ「て、手元が狂って……」

「げは……おえぇ!」ビタビタボタッ

歩夢「げ、ゲロ吐いてるよ! 大丈夫なの!?」

彼方「これは……一旦中断して治療した方がいいかもねー」

絵里「酷いじゃない! ボールをお腹にぶつけるなんて!」

穂乃果「そうだよ! ただでさえ昨日十二発も真姫ちゃんのライナーお腹に受けてるのに!」

希「そうや! 謝れ!」

「謝れ!謝れ!」「球拾に謝れ!」「球拾先輩可哀想です……」「避けられない方が悪いのよ」「早く謝って!」「ここまで戦えたのも球拾先輩のおかげじゃないか」「今ならまだ許してくれる、謝れ」「頭を下げろ中須かすみ!」

かすみ「ご、ごめんなさい……わざとじゃないんですよぉ……」

凛「許せんにゃ……凛の尊敬する球何とか先輩を……!」

穂乃果「殴りつけてやるがいいや」

希「そうやな、殴りつけたまえよ」

凛「にゃっ!」ボグオッ

かすみ「げはぁっ!? おぼえっ!?」ビタビタボタッボトッ

絵里「げ、ゲロ吐いてるじゃない相手の投手!?」

199 :名無しで叶える物語:2020/08/18(火) 20:13:39.45 ID:qhn/k0rh.net
再開早々くるってて草

200 :名無しで叶える物語:2020/08/18(火) 20:17:16.54 ID:aNIspzMV.net
侑「かすみになんて事を……!」

歩夢「そうだよ! わざとじゃないのに酷いよ、あんまりだよ!」

果林「スポーツマンとしてどうなのかしら……」 

「謝れ星空!」「彼方ちゃんも謝った方がいいと思うよー?」「そうよ、早く謝りなさい!」「高野連に通報するわよ!?」「ちんぽを見せろ星空凛」「ちんぽも見せずに何が進歩だ」「全裸で神田の街一周してこい!」「謝れ!」

凛「にゃ……!? ち、違う! 凛は悪くねぇ! 穂乃果ちゃん達がやれって言ったんだ! こんなことになるなんて誰も教えてくれなかったにゃ!」

凛「凛は悪くねぇ!」

穂乃果「ベンチに戻ります。ここにいると馬鹿な発言にイライラさせられる」

希「少しはいいところもあると思ってたのに……ウチが馬鹿だった……」

真姫「絵里、こいつらクビにした方がいいわ。いつか新聞に載ると思う」

絵里「私もそんな気がしてきたわ……頭痛くなってきた」

第4打席 打者高坂穂乃果 ワンアウト一二塁

穂乃果「何はともあれ、得点のチャンスだよ。最高の結果を残してくれたね、球拾ちゃん!」 

「げほっ……えほっ……はぁー……」

かすみ「ぐっ……ごほっ……はぁ……はぁ……」

穂乃果「相手投手も弱ってるみたいだし、ここで畳み掛けなきゃ……!」

201 :名無しで叶える物語:2020/08/18(火) 20:18:57.58 ID:zVCzrbh1.net
ここは男塾か

202 :名無しで叶える物語:2020/08/18(火) 20:24:33.46 ID:aNIspzMV.net
穂乃果(狙うのは思いっきり叩き付けての転がし……いや。この際、フライでもいい)

穂乃果(打ちさえすれば、凛ちゃんは走ってくれる。凛ちゃんの足なら二塁からホームへの生還も十分に有り得る!)

穂乃果「よっし! いくよー!」

かすみ「くそっ……なんで人殴らせといてあんなキラキラした目をしてるんですかあの人……!」

真姫「これよ」頭の横で指クルクル

かすみ「かすみんを怒らせましたねぇ!」グイッ

キュオオォン

穂乃果(来た! いつもの……じゃない!?)

穂乃果(何だか少し、遅いような……腹へのダメージが効いてるのかな?)

穂乃果(まぁいいや、遅い方が打ちやすいし!)

真姫「……まずいわね」

エマ「うん、まずいね。これ」

穂乃果(よし、手元……さぁここで!)ブンッ

ブオッ

穂乃果「っ!? と、止まらない!?」

203 :名無しで叶える物語:2020/08/18(火) 20:30:40.95 ID:aNIspzMV.net
エマ「やっぱり……さっき言った通りだけど、あの球を打ちやすくしている原因は回転と球速なんだよね」

真姫「凛の腹パンが効いて、球速が落ちてる……回転も落ちてるわね。その状態だと目は遅い球速にしか慣れず」

真姫「結果的に、ただ浮き上がって真っ直ぐに進む……本来の厄介ボールの完成ってわけよ」

穂乃果「凛ちゃんめ……! いらないことを!」

凛「凛のせいなのこれ……? こんなの絶対おかしいにゃ……」

かすみ「はぁ……はぁ……」グイッ

キュオッ

穂乃果「う……」ブンッ

スパァン

審判「ットライゥチュウ!」

真姫「エマは打てる? あの球……」

エマ「私は打てると思うけど……あれに対応できるの、この中だと私と真姫ちゃんくらいな気がするなぁ」

凛(エマちゃんの予想通り、穂乃果ちゃんは次の球も空振りしアウト、続くモブAちゃんも同じく空振り三振)

凛(二回の表は、0-1のスコアをひっくり返せないまま終わってしまったにゃ)

204 :名無しで叶える物語:2020/08/18(火) 20:38:39.18 ID:aNIspzMV.net
凛(続く二回の裏……腹部へのダメージは球拾先輩にも平等に響いていたようで)

凛(5番捕手野デブ子が外野への鋭い当たり……余裕でツーベースコースだったが、走れない為一塁止まりとなってノーアウト一塁)

凛(6番何処出文魔毛留は堅実に送りバントを成功させ、ワンアウト二塁という場面)

凛(迎える7番バッターは、声の大きな優木せつ菜……)

希(前の前がパワーヒッター、前がちっこい技巧派……この子はどういうタイプなんや?)

希(塁に出た5番をホームに返す役目だとしたら、長打も警戒して……)

せつ菜「デブ子さん!!!!!! ホームランは無理ですけど、なるべくゆっくりホームに帰れるようにしますね!!!!!」

希「う、うるさいなぁ……思考が纏まらんやん!」

せつ菜「えっ!!!! そうですか!!!???? 気をつけますねっ!!!!」

希「わかった! わかったから、喋らんといて!」

せつ菜「……!!!!!!!!!」

希(めっちゃ圧感じるやん……一応外野下げとくか?)

205 :名無しで叶える物語:2020/08/18(火) 20:39:51.45 ID:Vvf/6V04.net
>>200
アビスw

206 :名無しで叶える物語:2020/08/18(火) 20:43:39.17 ID:aNIspzMV.net
凛「あれ、下がるの?」ズリズリ

花陽「えっと……モブAさんと凛ちゃん、なんで下がってるの?」

凛「キャッチャーが頭の上で右手を前後に動かしてるでしょ? あれ、長打あるから外野は下がれって合図にゃ」

花陽「サインかぁ……野球してるみたいだね!」

凛「野球してるんだよ、かよちん」

カキィンッ!

凛「っ!? かよちん、レフトフライにゃ!」

花陽「へ……」

凛(景気良く上がったボールは、真っ直ぐに……ほぼかよちんのいる位置に落ちてくる)

凛(けれどかよちんには、まともにボールを追えていないようで……)

花陽「あ、あわ……あわわっ!」

凛「まず……っ! かよちん、凛が取るからそこどいて……」

エマ「どいてっ!」シュッ

花陽「あわっ!?」ドンッ

パシッ

エマ「……っと、危ない危ない」

207 :名無しで叶える物語:2020/08/18(火) 20:52:34.83 ID:pDu3K2IQ.net
エマの守備範囲が全盛期の菊池よりやばい

208 :名無しで叶える物語:2020/08/18(火) 21:06:14.04 ID:aNIspzMV.net
凛「かよちん大丈夫っ!? ……エマちゃんっ!」

エマ「ごめんなさい、言葉でどいてもらってたら間に合わないと思って……」

凛「それでもだよっ! 突き飛ばすなんてっ……!」

凛「誰かに怪我をさせるなんて、そんなの駄目にゃ!」

かすみ「!?」

エマ「けれど、私が取らなかったら……凛ちゃんは間に合わなかったでしょ? 私だって打つ前からスタートを切って、ようやくだから」

凛「それは……」

エマ「その場合、花陽ちゃんはフライを取れない。ボールが転がって、凛ちゃんがカバーに入った時には……」

エマ「あの動かざる山は、ホームを踏んでいたかもしれない」

「……」フゴッ

凛(巨大な岩山から短い手足と顔が生えているように見えるあの子が、そんなに早いとは思えないけど……肉でベース完全に隠れてるし)

凛「そ、それでも突き飛ばすなんて!」

花陽「ううん、やめて凛ちゃん……!」 

凛「かよちん……」

花陽「私が悪いから……きっと、あのフライも取れなかっただろうし。エマちゃんの言う通りだよ」

209 :名無しで叶える物語:2020/08/18(火) 21:11:02.64 ID:aNIspzMV.net
花陽「私が下手なのが……悪いから」

凛「……」

凛「エマちゃん、一つだけ約束してにゃ。もうあんなことはしないで」

エマ「うん、分かった。もう突き飛ばしたりなんかしないよ」

花陽「ごめんなさい……」

凛「……」

凛(多分……エマちゃんの言うことの方が正しいんだろう)

凛(下手な選手に任せるより、突き飛ばしてでも優秀な選手がアウトを取った方がいい)

凛(そうなんだろうけど……なんかモヤモヤするにゃ)


せつ菜「ごめんなさい!!!! 取られました!!!!」

侑「うーん……ツーアウト二塁の場面で私に回っちゃったか」

侑「参ったなぁ……私じゃデブ子を返せるほどのバッティングは出来ないよ」

彼方「返せないと、リトルリーグ並の足の速さだからねー。センターゴロとかになってもおかしくないよ」

210 :名無しで叶える物語:2020/08/18(火) 21:17:09.91 ID:aNIspzMV.net
侑「とにかく塁に出て……最悪でも一二塁の形にしてくるから」

第4打席 打者高咲侑

侑「ふうっ……」

希「なんや部長さん、随分自信なさげやね」

侑「部長って言ったって、野球が上手いとは限らないからね。私は皆を纏める方……本来なら裏方の人間だから」

希「それなら何でスタメンに……」

侑「私より上手い人が……その……」

希「……弱小はお互い大変やな」

侑「うん……」

希(自信ない、って本人も言ってるし……実際態度もそんな感じやけど)

希(鵜呑みにするわけにはいかんな。ブラフに騙され続けてるし)

希(とはいえ長打はない、この細腕だとスイングが完璧でもそこまで持っていく威力は出ない筈)

希(内野を下げて、外野を前に……ううん)

希(普通にやった方が刺さりそうや。内角高めのカーブでびびらせて)

「……」コクッ

211 :名無しで叶える物語:2020/08/18(火) 21:19:42.00 ID:aNIspzMV.net
「フッ!」グイッ

ヒュルルルルル

侑「……!」ブンッ

スカッ

パスッ…

審判「ストライッ!」

希(スイングスピードは……予想通り、遅い。腰も余り入っていないように見えるやん) 

希(これは穴なんか……? まぁええわ、もう一球同じとこに)

「はいっ」コクッ

「らぁっ!」グイッ

ヒュルルルルル

侑「……」

侑「っ……!」クイッ

希(バントの構え……! 送ってきた!?)

212 :名無しで叶える物語:2020/08/18(火) 21:25:36.01 ID:aNIspzMV.net
コンッ

希(とはいえ上原歩夢のような、芸術バントじゃない……ただのボテボテのキャッチャーゴロや)

希(しかも足の遅い肉塊が相手やん、刺すには十分に間に合う!)ガシッ

希「絵里ち!」ヒュッ

絵里「ええ!」パシッ

希(これで二塁ランナーを二、三塁間に挟め……)

希(……いない?)

「……」フゴッオゴッ

希「二塁から……一歩も動いてない!?」

絵里「嘘っ……穂乃果ッ!」ヒュンッ

穂乃果「うんっ!」

侑「……!」バッ

侑(飛び込む……! 絶対に間に合わせるッ……!)

ズザァーッ!

穂乃果「くっ!」パシッガッ

侑「……」

穂乃果「……」

塁審1「……セーフッ!」

ワアアァァァッ!

侑「いてて……危なかったぁ。やっぱり色々練習しなきゃなぁ……」

213 :名無しで叶える物語:2020/08/18(火) 21:33:22.12 ID:aNIspzMV.net
絵里「凄い執念……何であそこまで……」

希「怪我してもおかしくなかったのに、スライディングなんて……!」

侑「……負けられない理由があるんだよ」

侑「叶えなきゃいけない、夢もあるからさ……」

凛「……夢」

凛(その後は一方的な試合展開が繰り広げられた)

凛(9番すぐにしぬ代がレフト方向からライト方向に曲がる長打を打ち、一塁、二塁とも本塁へ帰還。本人もスリーベースヒットとなった)

凛(0-3の場面で迎えた1番近江彼方。希ちゃんは当たり前のように敬遠策を取ったけど……) 

彼方「んー……敬遠だと塁に出なきゃいけないからなぁ」ブンッ

希「飛んで……無理矢理当てに行ったぁ!?」

凛(無理な体勢から当てられた球は、ふらふらと上がって……フェンスに届く寸前で凛のミットに収まった)

凛(少しでも球が甘く入っていたら、間違いなくまたホームランを浴びていた……)

凛「無事に二回裏が終わったとはいえ……」

穂乃果「0-3かぁ……」

214 :名無しで叶える物語:2020/08/18(火) 21:40:00.37 ID:aNIspzMV.net
絵里「……」

絵里「三点を追う場面……かすみの球も捉え辛くなっているっていうのに、これは厳しいわね」

希「エマちゃんと真姫ちゃんが打ってくれたらいいんやけど、多分敬遠されるやろうしなぁ」

エマ「あはは、こればっかりは……ごめんね」

真姫「私だって打ちたいわよ……」

かすみ「ふぅ……やっとお腹の痛みもおさまってきましたよぉ」

かすみ「かすみんの本領発揮です、ここからばんばん三振を……!」

侑「待って、かすみ」

かすみ「侑先輩? なんですかぁ、早くマウンドに上がらないと……」

侑「ここまでよくやってくれたね。……そろそろ、交代の時間だよ」

かすみ「! ま、まだかすみんはやれますよぉ!?」

かすみ「それに、三回まではやらせてくれるって言ったじゃないですかぁ! 実戦経験を積ませるって!」

侑「うん、だからかすみにはライトに回ってもらう」

かすみ「ライト……?」

215 :名無しで叶える物語:2020/08/18(火) 21:48:34.37 ID:aNIspzMV.net
侑「すぐにしの代わりにかすみがライトに入って、投手には璃奈を置く」

侑「相手はかすみの球に慣れてきてるからね……また、後半にチャンスがあったらマウンドに立ってもらうよ」

かすみ「……」

侑「睨まないの。璃奈、いける?」

璃奈「ウォーミングアップは完了してるよ。璃奈ちゃんボード『ばっちり』」

かすみ「……りな子、不甲斐ないピッチングしてたらすぐにかすみんがマウンドに戻るから」

璃奈「大丈夫だよ、私結構凄いもん」

歩夢「硬球には余り慣れてないんだから、爪を割らないように気を付けてね」

彼方「彼方ちゃんも陰ながら応援してるよー……」

璃奈「ありがとうね。璃奈ちゃんボード『にっこり』」

かすみ「余裕ですねぇ……」


侑「ピッチャー交代! かすみに変わって天王寺璃奈! かすみはライトに入ります!」

絵里「ここで交代……天王寺璃奈がついに出てきたわね」

エマ「予想より少し早いね。三回が終わるまではかすみちゃんでいくと思ったんだけど」

真姫「念には念を……ってことでしょうけど、三点リードでエースを出すのは臆病すぎよ」

216 :名無しで叶える物語:2020/08/18(火) 21:56:33.65 ID:aNIspzMV.net
希「……んー」

凛「希ちゃん、確か璃奈ちゃんのファンって言ってたよね?」

凛「どんな球投げるの、あの子」

希「どんな球、っていうか……多分説明しても信じてもらえんと思う」

希「参ったなぁ……かすみちゃんの時にリード出来なかったの、かなり厳しいわ」

穂乃果「そんな凄い球投げるんだね……」

真姫「ま、私はその球ホームランにしたんだけどね? 詳しく知りたい? 話してあげてもいいけど?」

凛「失せろ」

希「ま、目をつむって振ってくるわ。そっちのほうが当たるかもしれん」

第1打席 打者東條希

希(さーて、どうなるかな……様子見とかで手加減してくれたら嬉しいけど……)

璃奈「……」クッ

ヒュッ

凛「……って、何あれ? 大暴投してるにゃ」

花陽「サード方向に向かって投げてる……? ランナーもいないのに、牽制するの?」

希(手加減、なしか!)

グググッ

凛「……? サードに投げたボールが……曲がってる?」 

217 :名無しで叶える物語:2020/08/18(火) 22:03:05.52 ID:zVCzrbh1.net
すぐにし ぬ代 なのか…

218 :名無しで叶える物語:2020/08/18(火) 22:04:12.83 ID:aNIspzMV.net
穂乃果「何あれ……あれじゃまるで、ボールじゃなくて……」

凛(ブーメランっ……!)

グググッ

希「っ……!」ブンッ

スパァァァンッ!

審判「ストライクッ!」

希「くっそ……テレビで見たときはあんなに興奮したのに。いざ目の前にすると……憎くて仕方ないやん」

真姫「相変わらずキレッキレね、璃奈のボール……」

凛「あれ何なの!? サードに投げたボールが……ぐいっと曲がってバッターボックスに飛び込んでいったよ!?」

真姫「そう、あれが璃奈の得意技よ。サード、ファーストに投げた球が、気付けばキャッチャーの手元に来ている……」

真姫「ランナーがいるときにあれをされたら最悪よ、牽制なのか普通に投げたのかも分からない。表情の見えないボール!」

璃奈「ふふ……ドキドキするよね? ピポパポするよね?」

真姫「魔球『ドキピポ』……!」

凛「ブーメランスネイクに改名しない?」

真姫「璃奈に言いなさいよ。気に入ってんだから、このネーミング」

219 :名無しで叶える物語:2020/08/18(火) 22:12:40.86 ID:aNIspzMV.net
希「まともにやっても打てへん! やっぱり目をつむるしか……!」グッ!

希(タイミングは分かってるんや、さっきのタイミングでバットを……さっきのタイミ)

スパァァァン!

審判「ストライッツウッ!」

希「……!」

璃奈「目なんか閉じたら、普通にストレートを投げるよ? 璃奈ちゃんボード『指摘中』」

希(くそっ……あかん!)

凛「目を閉じて当てずっぽうだと、変化球かストレートかの選択になる……真っ向勝負するしかないにゃ!」

希「分かってる、分かってるけど……!」

璃奈「いくよっ!」クッ

希(今度はファースト方向……外角に刺さってくる! 合わせるように打って、何とか転がすしか……!)ブンッ

スカッ

希「な……バットが届かん!? ボール……!?」

パシッ

審判「ストライッ! バッター、アウッ!」

璃奈「あんなに外れたボールを振ってもらえるなんて、得したね。璃奈ちゃんボード『にっこり』」

希「っ〜〜!」

220 :名無しで叶える物語:2020/08/18(火) 22:19:47.41 ID:aNIspzMV.net
凛「凄い……希ちゃんが手のひらの上で踊らされてる!」

真姫「……エマ、どうする?」

エマ「うーん、多分璃奈ちゃんは敬遠してこない気がするんだよね」

エマ「前に見た時から一度打ってみたかったし、まともに勝負してくるよ」

真姫「そ。一応アドバイスしとくけど、あれはかなり軽いわよ、当たりさえすれば長打になるわ」

エマ「当たりさえすればだけどね」

第2打席 打者エマ・ヴェルデ

エマ「……」ニコニコ

璃奈「エマ・ヴェルデ。聖ミヒャエルのスラッガー。去年の甲子園、わくわくしながら見てたよ」

エマ「ふふっ、ありがとう」

璃奈「一度、打ち取ってみたかったんだ」

エマ「そう……奇遇だね。私も一度、あの変化球打ってみたかったんだ」

璃奈「……打てたら、打たせてあげるよ」クッ

ヒュッ

凛(まっすぐなストレート……エマちゃんの目は完璧にコースを捉えていた)

凛(けど……動かない。最初からバットを振る気がないようにも見えるほどに、腕も、指の一本すらもぴくりともしていない)

スパンッ

審判「ストライクッッ!」

エマ「んー……出し惜しみしないでさ、あれ投げてよ。あのすっごく曲がる変化球」

221 :名無しで叶える物語:2020/08/18(火) 22:27:27.73 ID:aNIspzMV.net
璃奈「……そうだね。こんな強い打者なんだもん」

璃奈「全力を出さないと、失礼だよね。璃奈ちゃんボード『本気』」グオッ

キュオッォッ

穂乃果「出た! ファースト方向への大暴投!」

絵里「魔球ドキピポ……!」

クイイイイッ

凛「曲がって……けど、ストライクゾーンに入ってるのかボールになるのかすら全然分からない……!」

エマ「……」キュイイン

エマ「なるほど……回転に微妙な差があるのね。だからボールコースを使い分けられる」

エマ「……」ブンッ

ガキィィィン!

璃奈「……『!△?』」

凛(曲がったボールにドンピシャの位置で、エマちゃんはバットを思い切り振り抜いた。甲高い音が響き、ボールの姿が消える)

凛(誰もがボールの存在を見失って……最初に気付いたのは、ライトにいたかすみちゃんだった)

かすみ「嘘……」

凛(皆が、かすみちゃんの視線の先を追って……同じように口をあんぐりと開ける)

凛(だって、球が……)

かすみ「フェンスをえぐりとって、向こう側にいってる……!?」

222 :名無しで叶える物語:2020/08/18(火) 22:36:54.98 ID:aNIspzMV.net
歩夢「え……こ、これは……?」

侑「……ホームランでしょ。認めざるを得ないよ」

侑「あんなに軽く、持ってかれちゃあさ……」

エマ「良い球だったと思いますよ。繊細な指使い、瞬時に風の抵抗を予測する脳が無いと成立しない素晴らしい変化球です」タッタッ

エマ「けれど、回転を目で追えるものにとっては平凡な変化球と変わりありません。見た目の派手さだけです。改善すべき点が多いですね」タッ

璃奈「……覚えておくよ。璃奈ちゃんボード『メモ帳』」

絵里「流石よエマ! これで璃奈も調子を崩す筈よ!」

真姫「やるじゃない、これで1-3ね」

エマ「真姫ちゃんもホームラン打つでしょ? 前に打ったってことは、あの回転目で追えるんだよね?」

真姫「へ? と、当然じゃない!」

真姫(がむしゃらに振ったら当たったとは言えないわね……)

第3打席 打者西木野真姫

真姫「……久しぶりね、こうして対戦するの」

璃奈「中学生大会の準決勝以来だったっけ。あの時は逆転サヨナラホームラン打たれて……悔しかったなぁ」

真姫「そう、お詫びに二度目の無念を感じさせてあげるわ」クッ

凛(ホームラン予告……ま、真姫ちゃんのくせに何だかかっこいいことしてるにゃ)

223 :名無しで叶える物語:2020/08/18(火) 22:37:03.48 ID:aNIspzMV.net
今日はここまで

224 :名無しで叶える物語:2020/08/18(火) 22:54:19.40 ID:SIzhH7sN.net
いくら曲がれど牽制方向に投げるのはボーk…なんでもない

225 :名無しで叶える物語:2020/08/18(火) 23:06:21.06 ID:grk6WMo1.net
おもろい

226 :名無しで叶える物語:2020/08/18(火) 23:13:46.30 ID:8anX//Ib.net
乙乙
エマさんが強キャラすぎる

227 :名無しで叶える物語:2020/08/19(水) 11:09:22.86 ID:+awjchUj.net
想像つかない変化球だけど三塁一塁ベースあたりからキャッチャーに向かう球はストライクなのかどうかw

228 :名無しで叶える物語:2020/08/19(水) 18:34:10.97 ID:t+2YK4e/.net
一三塁に投げた時点でアウトなんかこれ
調べたらボークに抵触してるっぽい
一塁、三塁がキャッチした場合ボーク、ファールゾーンを超えた場合ボール扱いって認識してたごめん
今日の更新はないです

229 :名無しで叶える物語:2020/08/19(水) 18:45:03.20 ID:I7nHXHF9.net
俺審判「ボークだけど面白いからオーケー」

230 :名無しで叶える物語:2020/08/19(水) 21:49:29.43 ID:wnffLArX.net
面白いからおっけー
創作だしだれもそんなにガチガチにしなくても

231 :名無しで叶える物語:2020/08/19(水) 22:02:56.12 ID:arjivQUH.net
女の子同士で子供ができる世界だしそのぐらい些細なことさ

232 :名無しで叶える物語:2020/08/19(水) 23:02:24.74 ID:3vWwi7/f.net
あんまり気にしなくていいぞ
楽しみに待ってる

233 :名無しで叶える物語:2020/08/19(水) 23:14:15.66 ID:12GMKEKP.net
そこそこ有名な魔球のワンダーワイドホワイトボールだってボークらしいしへーきへーき

234 :名無しで叶える物語:2020/08/19(水) 23:26:14.67 ID:AFZgfTJN.net
っていうかそれが元ネタだと思った

235 :名無しで叶える物語:2020/08/20(木) 00:48:21.20 ID:V8CCw9a3.net
地獄甲子園

236 :名無しで叶える物語(らっきょう):2020/08/20(木) 12:52:10 ID:wdcN0SR+.net
保守

237 :名無しで叶える物語(しまむら):2020/08/20(木) 19:19:29 ID:D+3w32Ta.net
またこの世にゴミが放たれてしまったのか
ゴミは俺だけで十分なのに>>1も馬鹿な真似をする

238 :名無しで叶える物語:2020/08/20(木) 19:36:33.33 ID:fRFtpATC.net
期待

239 :名無しで叶える物語:2020/08/20(木) 20:01:40.48 ID:0oWe4m1l.net
璃奈「ホームラン……打てたらいいねっ!」キュッ

キュルルルルルルルッ

真姫(三塁目掛けて投げられた球は、やはりベースの手前で急激に曲がり、ファールラインを沿うように私の元へと向かってくる)

真姫(回転は……見えなくはない。見ること自体は出来るけど……)ブンッ

スパァァァンッ

真姫(打てるかどうかは別の話。そもそも回転が見えたからって何処に着弾するかなんて分かるわけないでしょ!?)

璃奈「まずはワンストライク……次々いくよ!」

真姫「待ちなさい!」

璃奈「……?」

真姫「今の球は……ボークよッ!」

璃奈「!?」

侑「触れやがった……タブー中のタブーに」

璃奈「ぼ、ボークじゃないよ! 言いがかりはやめて! 璃奈ちゃんボード『怒り』」

真姫「セットプレイに入ってから投手が打者以外にボールを投げた場合、ランナーがいれば直ちにボークとなる……」

真姫「ルールブックにそう書いてるじゃない!?」

240 :名無しで叶える物語:2020/08/20(木) 20:05:56.62 ID:fRFtpATC.net
クレーム柔軟に取り入れてて草

241 :名無しで叶える物語:2020/08/20(木) 20:08:13.73 ID:0oWe4m1l.net
凛「ま……待って、あれはボークなの!?」

絵里「……ルールブックの通りであれば、一塁や三塁に投げられているからボークね」

璃奈「けどおかしいよ! 中学でもこの球を投げてたけど、誰もボークなんて言わなかったよ!?」

真姫「簡単な話よ……」

真姫「中学校の部活レベルなら、審判は野球にあんまり興味ない顧問の先生がやっていることが多い」

真姫「場合によっては補欠にも入ってない暇な部員よ?」

真姫「つまり中学野球の審判は、野球を知らないのよ!」

璃奈「な……」

璃奈「璃奈ちゃんボード『な、なんだってー!?』」

凛「けど普通に対戦してたってことは、真姫ちゃんも中学時代はボークの条件知らなかったんじゃない?」

希「いや、しゃーないと思うよ。投手以外はそこまで詳しく見ないもん、投手用のルールブック」

璃奈「し、知らなかった……じゃあ私の魔球は……!」

真姫「今後投げれば全てボークと指摘するわ! 当たり前よねぇ?」

242 :名無しで叶える物語:2020/08/20(木) 20:08:42.98 ID:ylFU8m66.net
こういうのは要らねぇわ
攻めたギャグ書く癖にこういう所で照れちゃうのダサい

243 :名無しで叶える物語:2020/08/20(木) 20:11:13.28 ID:eCtIKCVG.net
まあ待ちや

244 :名無しで叶える物語:2020/08/20(木) 20:16:53.65 ID:0oWe4m1l.net
璃奈「待って……それって全部真姫ちゃんがそう言ってるだけだよね?」

璃奈「審判によって裁定は変わるんじゃない?」

真姫「何言ってるのよ、大リーグボール2号じゃないんだから……」

璃奈「実際どうなのかな?」

審判「……西木野さんが持っているのは、旧時代のルールブックのようですね」

審判「皆さんもご存知の通り、この日本は2000年問題で男子が生まれる割合が20分の1になりました」

審判「甲子園大会は男子だけでは成立しなくなり、生き残った数少ない野球男子もレイプ宇宙人共に連れ去られた……そこで改定されたのが、現在の野球ルールになります」

審判「その際にボークは消滅しました。故に問題はありません」

審判「もし今後何かあった場合、全てレイプ宇宙人と改定野球ルールによって判断されます」

璃奈「問題無かったよ」

真姫「ええ、問題無かったようね……私が間違っていたわ!」

審判「試合再開!」

璃奈「いくよっ……魔球『ドキピポ』!」クイッ

キュオッォッ

真姫(一塁線に沿うような球……三塁線なら、デッドボールの可能性を考えてボールは警戒しなかったけど)

真姫(一塁側は例の届かないボールが有り得る……!)

245 :名無しで叶える物語:2020/08/20(木) 20:21:12.66 ID:0oWe4m1l.net
キュルルルルルルルッ

真姫(この球は……さっきと回転数がほぼ同じだから届く筈……)

真姫(届くわよね……?)ブンッ

キシッ

真姫(先っぽに当たった! ……けど)

璃奈「ッ……歩夢さん取らないで!」

歩夢「っと……ファールだね」

真姫(参ったわね……真芯で当たらないわ)

246 :名無しで叶える物語:2020/08/20(木) 20:25:14.96 ID:0Y6KyWfa.net
はいはいワロスワロスで腹筋が草だよーw

247 :名無しで叶える物語:2020/08/20(木) 20:35:30.93 ID:0oWe4m1l.net
凛「真姫ちゃーん! ちゃんと目で追えてるから大丈夫にゃ!」

絵里「ガツンとホームランお願い! 追加点が無いと厳しいのよ……!」

真姫「分かってるわよ!」

真姫(ツーストライク……相手にとっては選択肢がかなり増えるわね)

真姫(こっちは寸前まで警戒してバットを振れない。ボールならいいけれど、ストライクを狙われた場合どうしても反応が遅れる……)

璃奈「……」クッ

真姫「何か……手は無いの?」

キュルルルルルルルッ

真姫(二度続けての一塁線……ボールが有り得る! 私が璃奈だったらこの場合はどうする?)

真姫(一球外して安全にバットを振らせる……?)

真姫(いや……私が、ある程度回転で判断していることは向こうも気付いている筈よね。わざわざボールカウントを増やす判断はしてこないはず)

真姫(つまり……)

真姫「真っ向勝負……っ!」ブンッ

248 :名無しで叶える物語:2020/08/20(木) 20:43:49.20 ID:0oWe4m1l.net
キンッ

真姫「……駄目ね」

真姫(実際、投げられた球はストライクゾーンに入っていた……とはいえ、ほとんど当てずっぽうに振ったそれは)

真姫(ふわりと浮き上がり、センター方向への浅いフライにしかならなかった)

真姫(当然のようにボールはセンターのミットに納まって……)

真姫「ツーアウト……」

凛「やっぱり真姫ちゃんでも、あの球を攻略するのは難しいの?」

真姫「正直なところ……そうね。右打者の場合、三塁線のドキピポは余り気にしなくていいと思うのよ」

真姫「デッドボールの可能性が高い中、早々相手もボールコースをついてこない……問題は一塁線」

真姫「ストライクかボールかの二択を、横っ腹から凄い勢いで飛んでくるボールの前でさせられるのよ? 悪夢よあれは」

凛「と、なると……やっぱり」

第4打席 絢瀬絵里

真姫「絵里じゃ……無理でしょうね」

249 :名無しで叶える物語:2020/08/20(木) 20:52:52.32 ID:0oWe4m1l.net
凛(真姫ちゃんの言う通り、絵里ちゃんでは無理だった)

凛(バットを一度も振れないまま三振し、スリーアウト)

凛(三回裏、球拾が好投し二番の歩夢ちゃん、三番の果林ちゃんを打ち取ったものの四番かすみちゃんにホームランを打たれ点差を更に広げられる)

凛(その後も凛の出番はないまま……)

8回裏

絵里「……疲れたわ」

希「何で野球って9回もあるんやろうな。5回くらいでいいと思うわ」

希「放送延長してその後の番組に影響出ることもあるし、短くした方がいいと思う」

絵里「球拾……ももう限界みたいね」

「……」ゼェゼェ

絵里「8回までよく投げてくれたわ。普段ならとっくに矢澤さんに交代してる頃だもの」

絵里「……凛。いける?」

凛「いつでもいけるにゃ! 4回くらいからずっと待ってたんだよ、いつ変わってくれるのかって!」

250 :名無しで叶える物語:2020/08/20(木) 20:59:24.13 ID:0oWe4m1l.net
凛(マウンドに立つ、初試合初登板の場面でーー)

凛(思ったより、緊張感は無かった。凛がいい球を投げようが、打たれようがもう関係ない領域に来ていたからかもしれない)

4-9

凛(8回裏で5点差……中々厳しいにゃ)

凛(おまけに9回表は絵里ちゃんからの下位打線……どうあがいても5点差は覆せない)

凛(そういう意味では、凛は敗戦処理投手のようなものなのかもしれなかった)

凛(9回裏は多分登板する機会無さそうだし……)

歩夢「……」

凛(打者は2番、歩夢ちゃんから……技術タイプの厄介な相手にゃ)

凛「……参ったにゃ」

凛(凛はバントの処理をやったことがない。練習をしたこともない。正直、あのバントを決められたら余裕でセーフを決められる……)

251 :名無しで叶える物語:2020/08/20(木) 21:15:40.34 ID:0oWe4m1l.net
凛(ボールで一球様子見……なんてしてもしょうがないよね)

凛(ひとまず真っ直ぐの外角低め……!)キュイッ

シュオッ

希「……!」

凛(しまっ……甘いところに……!)

歩夢「っ……ここ!」ブンッ

カキィンッ!

凛(ほぼ真ん中に入ったボールに、ほとんどドンピシャのタイミングで歩夢ちゃんはバットを合わせる)

凛(軽く振られたスイング……少なくとも凛にはそう見えた。なのにボールは内野を超え、外野の頭を超え……)

凛「ら……ライト! フェンス当たるにゃ!」

凛(叫んだ時にはもう既に、歩夢ちゃんは一塁を回っていて。ライトがボールを投げた時には、二塁を踏みしめている歩夢ちゃんの姿があった)

252 :名無しで叶える物語:2020/08/20(木) 21:21:24.17 ID:0oWe4m1l.net
凛「あんなに……飛ばされるなんて」

希「タイム! ……凛ちゃん!」

凛「ああ、希ちゃん……ごめんにゃ。あんな甘い球……」

希「それもやけど! さっき投げた球、あれ駄目やん!」

凛「へ……?」

凛(少なくとも真姫ちゃんと一打席勝負をした時よりは、スピードも出ている筈だけど……何が駄目なんだろう)

希「多分なんやけど……投げ方が凛ちゃんに合ってないんやわ、あのフォーム」

希「前のぎこちないフォームの方がまだいいかもしれん」

凛「な、なんで? スピードだって上がって……」

希「回転が……回転が全く足りてないんよ……」

凛「回転……?」

希「簡単に言うけど……回転が少ないとどれだけスピードがあっても打者の手元でガクッとスピードが落ちるんよ」

希「結果的にノビが無くなって、打ちやすく飛びやすいボールになるってわけやん」

希「今の凛ちゃんの球は……完全にそれ。打ちやすく飛びやすい、棒球や」

253 :名無しで叶える物語:2020/08/20(木) 21:25:39.90 ID:0oWe4m1l.net
凛「そ、そんな……今そんなこと言われても流石に無理にゃ!?」

希「いや……練習時間を碌に取れんかったからこれはしゃーない」

希「何とか元のぎこちないフォームに戻してくれへん?」

凛「難しいよ、それは……」

凛「言うなれば凛は、今まで音程を知らない曲を適当に歌ってたようなものだもん」

凛「音程を知ったら、元の適当な音程は出てこなくなる……それと同じで、凛も元のフォーム覚えてないよ!」

希「参ったな……これなら球拾の方が……」

「……」ゼェゼェ

希「立ってるだけでも限界、って感じやんな……悪いけど、今は凛ちゃんしかいないんよ」

希「何とかして、回転数を上げて! スピード落としてもいいから、指引っ掛けるようにして!」

凛「わ、わかったにゃ」

254 :名無しで叶える物語:2020/08/20(木) 21:32:42.69 ID:Gz+0X3DT.net
凛ちゃん妙に的確に自分のことを理解してて草

255 :名無しで叶える物語:2020/08/20(木) 21:34:21.19 ID:0oWe4m1l.net
凛「回転、回転……」

凛「こう、かな」ヒュッ

ヒュルルルルルッ

希(回転数は上がったけど……球速が随分落ちたな)

果林「さっきの子よりは打ちにくいけど……捉えられない球じゃないわね」ブンッ

キィンッ

凛(さっきよりかは球質が重くなったのだろう、ライト方面へふらふらと上がる浅いフライ……)

凛(浅いフライ?)

凛「エマちゃん! カバーお願い!」

凛(凛が叫ぶ前に、既にエマちゃんは動いていた。今までの試合から、外野のモブA、かよちん、そして満身創痍の球拾の全員が最早戦力にならないと知っていたのだろう)

凛(モブAもまた、エマちゃんが捕ると信じているのか最初から一切動かずスマホをいじっている)

凛(真姫ちゃんがセカンドのカバーに入り、エマちゃんからのボールを受け……これでワンアウト)

凛「外野が穴すぎるにゃ……エマちゃんいなかったら完全に終わってるよこれ……」

256 :名無しで叶える物語:2020/08/20(木) 21:41:55.30 ID:0oWe4m1l.net
エマ「私は全然大丈夫だよ、けど……出来れば外野の前に落ちる浅いフライばかりにしてほしいかな」

エマ「流石にフェンス前とか捕りに……いけなくはないけど、疲れちゃうから」

凛(やっぱりノビの無い球じゃ意味は駄目みたいにゃ)

凛(続くバッターはかすみちゃん……ピッチャーだし、ちっこく見えるけど……)

かすみ「追加点のチャンスですねぇ」

凛「あげないよ。凛は自責点0で試合を終えるつもりだから」

凛(球拾のボールを軽くフェンス越えさせたパワータイプの打者……かすれば外野まで飛ばされそうにゃ)

凛(外野は……下がってない。まぁ下がらせても取れないし……)

凛(あ……エマちゃん凄い勢いで下がってる……歩夢ちゃんリードしたまま困った顔してるよ……)

凛「悪いけど三振してもらうにゃ……!」ザッ

凛(一球、外角に外して振らせる……カウントを進めなきゃ!) 

ヒュルルルルルッ

かすみ「……」

審判「ボーッ!」

257 :名無しで叶える物語:2020/08/20(木) 21:47:19.81 ID:0oWe4m1l.net
凛「振ってこないか……」パシッ

かすみ「当たり前ですよぉ。あんな見え見えのボール球に手を出すほど、目が悪くないですもん」

かすみ「ストライクが取りたかったら、ちゃーんとストライクに入れてくださいね? くすくす……」

凛(……それが出来れば苦労はしないんだけど。何処に投げても打たれるような気がしてならない)

希「……」スッ

凛(内角……高め? しかもギリギリ? 無理矢理引っ張られそうな気がするけど……)

凛「にゃっ!」キュッ

キュルルルルルルルッ

かすみ「! ……ッ」ヒョイ

凛「!?」

凛(避けた……? 別に身体の近くに向かったわけじゃないのに?)

258 :名無しで叶える物語:2020/08/20(木) 21:55:17.57 ID:0oWe4m1l.net
凛(もう一度内角高め……了解)コクッ

凛「もう一球……!」ヒュッ

ヒュルルルルルッ

かすみ「……チッ! ううっ!」ブンッ

スパァンッ

凛(無理矢理身体をそらしながら、振ってきた……なんであんなにビビってるにゃ……?)



侑「まずいね、かすみの弱点がバレた」

歩夢「かすみちゃんの弱点って……内角高めから逃げてるあれのこと?」

侑「かすみは……ナルシズムの塊なんだよ。自分のかわいさに並々ならぬ自信を持っていて、国宝として崇め奉られるべきだとすら思ってる」

侑「だからかすみは「絶対顔を傷付けてはいけない、全世界の皆さんの為に」という志を持っているんだよ」

侑「顔に当たる可能性がある内角高めは……駄目なんだ。身体が無意識に避けてしまう……」


かすみ「くっ……かすみんのかわいい顔を狙うなんて、非道な人ですねぇ……!」

凛(別に顔狙ってるわけじゃないにゃ……!)

259 :名無しで叶える物語:2020/08/20(木) 21:59:56.20 ID:0oWe4m1l.net
凛(けど……内角高めくらいであの反応なら……)

凛(顔面にボールを投げつけてみたらどういう反応するんだろう)

凛(わくわくしてきたにゃ)

希「……」

凛「……」パチッパチッ

希「! ……」コクッ

凛(希ちゃんも同じ意見みたいだにゃ。どことなく心躍ってるように見える)

凛「いくよっ! これで三振にゃ!」キュッ

かすみ「かすみんは負けませんよぉ……!」

ヒュルルルルルッ

かすみ「……えっ? うおっ!? やあっ!」ブンブン

凛(避けられた……!)

希(避けられた……!)

かすみ「危険球ですよ今の! ビーンボールですよ!」

凛「違うにゃ、凛はただ顔面にボールをぶつけたら新しい世界が見えそうな気がしただけなんだよ」

かすみ「そんなの見えなくていいですよ!? えっ、アウトなんですか!? バット振ったから!?」

かすみ「あんまりですよぉ……」

260 :名無しで叶える物語:2020/08/20(木) 22:08:48.36 ID:0oWe4m1l.net
凛(ツーアウト二塁の場面から、打者は5番。身長2m20cm,体重180kgの岩山を何とか三振に取り8回の裏は終わった)

凛(続く9回表。例によって6番絵里ちゃんは三振、7番かよちんはドキピポを何とかバットに当てたものの、ショートゴロでアウト)

凛(9回表4-9。ツーアウトかぁ……)

璃奈「最後のバッターだね、ついに虹ヶ咲の勝利だよ。璃奈ちゃんボード『わくわく』」

凛「まだまだ。野球は9回ツーアウトからって言うにゃ」

璃奈「今までずっと三振なのによく言えるね?」

凛(璃奈ちゃんの言葉は事実で……凛は今までの打席、一度も璃奈ちゃんのドキピポにバットを当てられていない)

凛(全て三振……我ながらゾッとするにゃ)

璃奈「いくよっ!」キュッ

ヒュオオッ

凛(一塁線のボール……回転も何も見えない! ただただ向かってきてるだけじゃんこれ!)

凛「くっ!」ブンッ

スパァンッ

凛(全くタイミングも、位置も合わない……そもそも目で追えていない時点で無理があるにゃ! エマちゃんも真姫ちゃんも、こんな球どうやって攻略してるの……?)

261 :名無しで叶える物語:2020/08/20(木) 22:13:49.59 ID:0oWe4m1l.net
璃奈「全然見えてないね……ふふっ。後二球っ!」ヒュン

キュルルルルルルルッ!

凛「また……! くっ!」ブンッ

スパァンッ

凛「ツーストライク……! 駄目にゃ、全然見えない……!」

凛「何をされてるかもよく分からない……こんなの、打てるわけないにゃ……」

璃奈「最後の一球……これでこの練習時間、私達の勝ち!」ヒュン

ヒュルルルルルッ!

凛(終わる……凛の初試合が終わる。あっけなく、大量の点差をつけられて……終わっちゃう)

エマ「……」キュイイン

エマ「……無理かな、打つの」

凛(けど……けど! せめて一球、せめて一球だけでも……!)

凛(このふざけた魔球を打ち崩してやりたい……!)

エマ「ん……えっ!?」キュイイン

262 :名無しで叶える物語:2020/08/20(木) 22:25:32.71 ID:0oWe4m1l.net
エマ(おかしい……身体能力が……動体視力が、腕のしなりが、筋肉量が! 野球のセンスが……上がってる!)

凛「にゃあああああぁぁぁっ!」ブオンッ

凛(気付けば――ボールを目で追っていた。そのボールは、縫い目の一つ一つすらもくっきりと見えるほどに、凛の目にはっきり映り込んでいて)

凛(ボールがストライクゾーンに入ると認識した瞬間、凛の身体は自分の意志とは関係なく動いていた)

凛(自分がバットを振る感触が、バットに触れたボールの重さが、地面を抉り舞い上がった砂埃のひと粒ひと粒が。活動写真のように切り取られては切り替わっていく)

凛「……あ」

璃奈「……え」

凛(二人、空を見上げて。呆けたように呟く)

凛(凛の打った球はまっすぐに、まっすぐに……フェンスの向こう側へと飛んでいく。それは誰の目にも明らかな、ホームランだった)

凛「凛が……打ったの?」

263 :名無しで叶える物語:2020/08/20(木) 22:38:24.90 ID:0oWe4m1l.net
璃奈「打ったでしょ……早くベース回ってよ」

凛「ああ、うん……」

凛(ベースを回っている途中も、いまいち実感が沸かなかった)

凛(ベンチから聞こえる歓声も、何も頭には入ってこない。虹ヶ咲の選手達からの褒め言葉に生返事をしながら、ただただ回り続ける)

凛(自分が何かに動かされたような。身体を操られたような)

凛(都合のいい何かになっているような……そんな、気怠い不快感が纏わりついて離れようとしなかった)

凛(凛に続くバッターは、9番球拾……だけど、本人は疲れきってもうバットを振る元気も残っていないようで)

凛(なんでもないストレートで三振に倒れ、凛の初試合は5-9の敗北で幕を閉じた)

凛「負けちゃったにゃ……」

絵里「仕方ないわよ……向こうに良い選手が揃いすぎてたから」

希「くよくよしてても仕方ないやん、もっと練習をして……」

ヤッタァァァァァァ

凛「!?」ビクッ

264 :名無しで叶える物語(鮒寿司):2020/08/20(木) 22:43:19 ID:0oWe4m1l.net
歩夢「勝った……勝ったよ侑ちゃん!」

侑「うん……良かった。本当に良かった……」

かすみ「これで野球部は、甲子園までは存続できるんですよね?」

璃奈「そうだよ。璃奈ちゃんボード『にっこりん』」



凛「な、なんにゃ……ただの練習試合に勝っただけにしては、めちゃくちゃ喜んでるにゃ……」

彼方「あー……音ノ木坂の皆さん、試合お疲れ様でした」

絵里「あ……はい、お疲れ様でした。あの……?」

彼方「ごめんねえ。多分、皆喜びすぎてしばらく落ち着かないから……実はこの練習試合、廃部がかかってたんだよね」

希「は、廃部!? 天王寺璃奈が入ったのに!?」

彼方「うちの生徒会長、野球のこと知らないからねー。有名人とかベストナインとか関係ないんだよね」

絵里「それならそうと先に……!」

彼方「言ったら、そっちも気を使うでしょ? ちょうど生徒会長も見てたし、八百長だと思われたら最悪だからね」

265 :名無しで叶える物語(鮒寿司):2020/08/20(木) 22:47:15 ID:0oWe4m1l.net
絵里「それは……そうかもしれないけど」

凛(そういえば、と。試合前に生徒会長らしき人物を見た窓へ視線をやる)

凛(鬼がそこにいた)

凛(顔色は赤と青が入り混じり、目は吊り上がり正気を失ったような顔をしている)

凛(人間、こんな恐ろしい顔が出来るものだろうか)

侑「あ、生徒会長まだいたんだ……約束は守ってもらいますからねー!」

せつ菜「甲子園優勝したら、絶対言うこと聞いてもらいますからね!!!!!」

凛「そっか……試合中に見せたあの執念は、廃部阻止の為……」

彼方「……厳密には違うけどね」ボソッ

凛「にゃ?」

彼方「なんでもないよー」

266 :名無しで叶える物語(鮒寿司):2020/08/20(木) 22:53:32 ID:0oWe4m1l.net
凛(虹ヶ咲が落ち着きを取り戻すのを待ってから、それぞれ整列し一礼する)

凛(色々あったけど……終わってみれば何処か寂しい気がするにゃ)

エマ「あの……」

絵里「ありがとう、エマ。貴女のお陰で何とかまともに点を取ることが出来たわ」

絵里「私達だけなら多分0点に抑えられていたし、そもそも試合も出来なかったし……」

エマ「それはいいの。私の方も収穫があったから」

希「収穫……?」

エマ「えっとね……」キュイイン

エマ「かすみちゃん、せつ菜ちゃん。それと……凛ちゃん。うちの高校に来ない?」

凛「え……?」

かすみ「そ、それどういう意味ですかぁ? かすみんがいくらかわいいからって、ナンパなんて……」

エマ「試験なんかもいらないよ、私が推薦すればすぐにでも入れると思う。大学も、何処でも好きなところに行かせてあげるよ?」

絵里「ちょ、ちょっとエマ? 冗談にしても……」

エマ「冗談じゃないよ?」

267 :名無しで叶える物語:2020/08/20(木) 23:02:04.53 ID:0oWe4m1l.net
エマ「虹ヶ咲は確かに選手層は厚くなったかもしれないけど、設備は悪いしまともな練習環境を整えられないよね?」

エマ「音ノ木坂も同じ……とはいえ、最初は誰も引き抜くつもりなかったくらい選手層は薄いけど」

エマ「まだまだ成長出来る余地があるのに、こんな高校に入ってるのは勿体無いよ! ねえ、そう思わない?」

凛「そ、それは……」

かすみ「……」

せつ菜「えっと……」

凛(確かに……音ノ木坂の設備は物凄く悪い。それに、一緒に試合をした感じでは先輩達も弱い……まともに戦える選手は真姫ちゃんくらいにゃ)

凛(聖ミヒャエルは甲子園常連校……きっと強い選手も、優れた設備もいっぱいあるんだろうな……。そこで練習した方が強くなれる……それはきっと間違いない)

絵里「待ちなさいよ……凛はうちの未来を担う次期エースなのよ? 引き抜かれたらたまったもんじゃないわ」

穂乃果「それに人を殴れる後輩は手放すのは惜しい」

侑「こっちもかすみとせつ菜に抜けられたらまずいんだけどね……」

エマ「えっと……私が言ってること、何か間違ってる? 優れた選手は優れた環境で育てた方がいいに決まってるでしょ?」

真姫「間違ってるわ……!」

璃奈「うん、間違ってる……!」

凛「二人とも……」

真姫・璃奈「「なんで私達が誘われてないの!?」」

268 :名無しで叶える物語:2020/08/20(木) 23:10:05.07 ID:0oWe4m1l.net
真姫「強い選手で言うならまず私でしょ!? 何考えてるのよ!?」

璃奈「私だって、聖ミヒャエルに入ってもやっていける自信はあるよ。璃奈ちゃんボード『むんっ』」

侑「いや、聖ミヒャエル行きたいの?」

璃奈「行きたくないよ」

侑「……」

エマ「二人は……彼方ちゃんとかもそうなんだけど。完成されすぎてるというか」キュイイン

エマ「これから成長する余地が無いんだよね。何処でやっても同じだもん、それならわざわざ聖ミヒャエルに来る必要はない」

エマ「私は……成長の上限値が高い子が好きなんだ。そういう子を育て上げることこそが、私の生きる意味だと思うんだよね」キュイイン

凛「……!」ゾクッ

凛(まただ……あの、凄く嫌な目! 全てを見透かされてるような、裸をじろじろ眺められてるような……気持ち悪い目にゃ!)

エマ「ね、どうかな。来れば皆今以上に強くしてあげられるよ? 聖ミヒャエルは野球部の地位が高いから、皆言うこと聞くよ? 必要なら、野球部以外の一年生を召使としてつけてあげる」

エマ「大学は何処でもいけるし、もしかしたらプロから声がかかるかもしれない……勿論、甲子園にも出場出来る。それは、今の高校にいれば絶対に叶わないことだよ」

エマ「私が貴女達を……成功に導いてあげる。だから、どうかな?」

凛「……」

凛「……凛は遠慮しとくにゃ」

エマ「凛ちゃん?」

269 :名無しで叶える物語:2020/08/20(木) 23:18:34.91 ID:0oWe4m1l.net
凛「聖ミヒャエルは凄いんだろうなと思うし……凛は頭が悪いから、大学を選べるのも魅力的だけど」

凛「『導いてやる』ってのがすっっっげぇ気に食わないにゃ!」

かすみ「かすみんも行きませんよぉ。元々侑先輩追ってここに入ったんですから。侑先輩も聖ミヒャエルに行くなら考えますけど」

侑「いや私は誘われてないし」

かすみ「と、いうわけです」

エマ「……勿体無いなぁ。馬鹿だなぁ。野球をやるなら……がむしゃらに強さを求めたほうがいいのに。勿体無いよ……」

エマ「せつ菜さんは……?」

せつ菜「お誘いありがとうございます!!!! けど私、この学校で仕事がありますんで!!!!」

エマ「……? 何も聞こえない……あれ?」

凛「それに、和歌山なんて行ったらかよちんと遊べなくなるしね。ねー、かよちん」イチャイチャ

花陽「和歌山に行っても、お互い会いに行くから遊べるよ? けど近くにいればいつでも一緒にいられるもんね」イチャイチャ

エマ「誰一人付いてきてくれない、か……いい条件だと思ったんだけどなぁ」

絵里「当たり前じゃない……そんなことで引き抜かれるほど、うちの部員はやわじゃないの!」

絵里「ちなみに私とかどう? 引き抜いてくれないの?」

エマ「三年生は転校しても甲子園出れないからちょっと……」

270 :名無しで叶える物語:2020/08/20(木) 23:24:25.41 ID:0oWe4m1l.net
彼方「あれ、そういえばエマちゃん元々UTXに行こうとしてたんだよね」

エマ「うん、UTXで練習試合を組んでたんだけど……今頃やってると思うよ」

彼方「じゃあ彼方ちゃんが送ってくよ。丁度バイク乗ってきてるし」

絵里「えっ……バイク乗るの?」

彼方「乗るよ? 免許持ってるから」 

希「なんか意外や……一番乗り物とか乗りそうにないのに」

果林「私も持ってるわよ、バイク免許。というか彼方に取らせたのが私……一緒にツーリングしたくて」

彼方「果林ちゃんもついでに行く? 秋葉原でご飯食べていこうよ」

果林「はいはい……じゃあ、私達先に行くわね。UTXから聖ミヒャエルが離れちゃったら厄介だし」

ザッザッザッ……キュルッブオンッブォォォ

凛「それにしても……まさか凛が誘われるなんて、予想外だったにゃ」

真姫「全くよ。私を三振取ったくせに、あんなヘボいピッチングしか出来ないなんて……」

271 :名無しで叶える物語:2020/08/20(木) 23:32:17.25 ID:0oWe4m1l.net
璃奈「多分、私からホームランを打ったからお眼鏡にかなったんじゃないかな」

璃奈「自慢じゃないけど中々打てないもん、私のボール」

凛「そう、なのかな?」

凛(自分自身が評価されなかったような、微妙な気分になる)

凛(間違いなく打ったのは自分の筈なのに……)

穂乃果「ま、ま。何でもいいじゃん、帰って練習しよーよ」

絵里「あら、練習嫌いの穂乃果が練習したがるなんて珍しいわね」

希「雪でも降るんちゃうかな?」

穂乃果「だって、今回の試合全然活躍できなかったし……それはいつものことだけど、皆があんなに頑張ったのに悔しいじゃん」

絵里「まぁ……そうね、私もなんだかいつもより悔しいわ」

真姫「エマが打ってたからとはいえ、結構いい勝負出来てたからそれもあるんじゃない?」

侑「じゃあ、私達も練習があるので……今日はありがとうございました」

絵里「こちらこそありがとうございました! ……次は負けないわよ」

侑「次『も』負けないよ」

凛(お互い別れの挨拶を交わし、帰路に……とはいえ戻るのは学校だけど、帰路につく)

凛(相手の部員とは連絡先も交換したし、これから何かあったら相談乗ってもらおう。真姫ちゃんに相談するとイキり倒されそうだし)

272 :名無しで叶える物語(馬刺し):2020/08/20(木) 23:34:20 ID:wVcXmwY2.net
イキり真姫太郎だからな

273 :名無しで叶える物語:2020/08/20(木) 23:41:31.56 ID:0oWe4m1l.net
虹ヶ咲 生徒会室

「……そんな、まさか野球部が勝つなんて」

「弱小じゃなかったの……? 今まで練習試合も公式試合もほぼ全敗だったのに!」

コンコン

「!」

侑「失礼します……練習試合、見ててくれたみたいだね。三船生徒会長」

栞子「……ひとまずは。おめでとうと言わせてもらいます」

栞子「約束通り、甲子園大会までは野球部の廃部措置を保留にしてあげましょう。けれど……甲子園に優勝出来なければ即廃部、分かってますよね?」

侑「分かってるよ。予選でも本戦でも、一敗すればそこで終わり。その条件でやってるんだから」

侑「そっちこそ、条件忘れてないよね?」

栞子「それは……忘れてない、ですけど。本気で言っているんですか? 正気とは思えませんよ」

侑「正気も正気だよ。絶対に約束は守ってもらう」

栞子「……甲子園に優勝出来たら、の話ですよ」

侑「楽しみにしてるよ。……準備はしておいてね?」

パタン……コツコツコツ

栞子「……くっ! 私は……なんて約束を……!」

中川菜々「あの……す、すいません……遅れました」

栞子「中川副会長! 今まで何をしていたんですか、書類が溜まってるんです……急いで処理をしてください!」

中川菜々「は、はい。生徒会長……」

274 :名無しで叶える物語:2020/08/20(木) 23:41:52.07 ID:0oWe4m1l.net
今日はここまで

275 :名無しで叶える物語:2020/08/20(木) 23:52:19.91 ID:HAPUujRY.net
乙ー
せつ菜が副会長をやってる世界線か…

276 :名無しで叶える物語(四国地方):2020/08/21(金) 01:24:18 ID:008UEtXE.net
>>237
こいつといい真姫ちゃんを酷使しすぎだろ

277 :名無しで叶える物語:2020/08/21(金) 15:51:12.47 ID:sv4exQlB.net
保守

278 :名無しで叶える物語:2020/08/22(土) 06:49:58.97 ID:JhhK4qH0.net
保守

279 :名無しで叶える物語:2020/08/22(土) 18:22:45.47 ID:J2svTnTy.net
学校

凛「……」

花陽「……」

凛「……」シコ

凛「……」シコシコ…

真姫「教室で何やってるのよ凛。オナニー?」

凛「真姫ちゃんじゃないんだからそんなことするわけないにゃ」

凛「バイト情報誌に丸付けてるだけだよ」

真姫「紛らわしい擬音してるわね……バイトするの?」

凛「いや……この前エマちゃんに言われたこと冷静に考えたんだねど」

凛「野球部の設備、本当にボロッボロだし碌に機材揃ってないんだよね」

花陽「私も部室見せてもらったけど、本当にバットとグローブとボールしか置いてなかったよね……?」

真姫「うちから機材持ってくる? 若い衆(新米ドクター)に運ばせるけど」

280 :名無しで叶える物語:2020/08/22(土) 18:31:03.83 ID:J2svTnTy.net
凛「いやそれは駄目にゃ。野球部全体の問題を、真姫ちゃん一人に押し付けて解決させるわけにはいかないよ」

真姫「真面目なこと言うわねぇ……それで、バイトと何の関係があるのよ」

花陽「部費も足りないし皆でバイトして、野球部の設備を良くしようって話になったんだよ」

凛「野球部兼部してもらって早々こんなことになってごめんね、かよちん……」

花陽「ううん、いいよ。私も一度アルバイトしてみたかったから」

真姫「……それ、私聞いてないんだけど?」

凛「真姫ちゃんバイトとか出来るの……?」

花陽「上級国民だからアルバイトなんてしてる下賤の民とは相容れないんじゃ……?」

真姫「医者の娘を何だと思ってるのよ……」

真姫「私だってバイトくらい出来るわよ! いくら稼げばいいわけ?」

281 :名無しで叶える物語:2020/08/22(土) 18:41:06.64 ID:J2svTnTy.net
凛「一応3万円くらいにゃ。皆で集めればまぁまぁの設備も買えそうだし」

真姫「お小遣いの10分の1くらいね」

凛「凛のパパより収入多くない?」 

花陽「毎月30万円も何に使ってるの……?」

真姫「エステとかピアノスクールの月会費とか……」

真姫「ま、3万円くらいなら一日あれば稼げるわよね?」

凛「無理にゃ……高校生で3万稼ぐなんて」

真姫「そういうものなの……? ちょっと借りるわね」パラパラ

真姫「日給8000円……時給950円……ええと、月給21万?」

真姫「何これ、こんなので人間が暮らしていけるわけないじゃない」

凛「暮らしていってる人もいるから、この話題やめよ?」

花陽「そうだよ、21万あったら貯金もギリいけるよ……」

真姫「下賤の民共の暮らしはよく分からないわね……けどここに載ってるので3万円貯めるとなると……」ペラペラ

282 :名無しで叶える物語:2020/08/22(土) 19:05:15.92 ID:J2svTnTy.net
真姫「あるじゃない! 一日3万円の仕事!」

凛「え? そんなのあったっけ……?」

真姫「『スクールアイドルコスプレぬるぬる天国』……ゴム? が無ければ三万円らしいわ」

凛「じゃあ真姫ちゃんはそこに行ってみるにゃ」

花陽「い、いいの凛ちゃん……?」

凛「何事も社会勉強にゃ。お金を稼ぐ大変さを理解してもらおうよ」

花陽「うん……全裸になってたし、実はそういうの合ってるのかもね」

真姫「? よく分からないけどここに応募するわね」

花陽「私はやっぱり『ごはんや』かな……店員さんとも知り合いだし」

花陽「凛ちゃんは何処にするの?」

凛「んー、凛は……」 

283 :名無しで叶える物語:2020/08/22(土) 19:30:08.77 ID:Xk04xfha.net
止めない流れ草

284 :名無しで叶える物語:2020/08/22(土) 19:50:17.25 ID:bpiyjRb4.net
更新来てたでござる
最高かよ

285 :名無しで叶える物語:2020/08/22(土) 19:51:48.76 ID:t9HW9X+z.net
かよちんも納得してるの草

286 :名無しで叶える物語:2020/08/22(土) 20:58:05.18 ID:J2svTnTy.net
凛「仕事が楽なのは交通量調査なんだけど、飽き性だから続かなさそうだし」

凛「かといって身体を動かすのもあんまりだし、接客は向いてないし……」

花陽「私と一緒に『ごはんや』行く? キッチンやればいいよ」

凛「うーん……」

真姫「『コスプレ天国』でもいいわよ?」

凛「それは絶対嫌にゃ。初めては好きな人とって決めてるから」

真姫「何教室でスケベなこと言ってるのよ……もう」

凛「その余裕ぶった顔が絶望に変わる瞬間が今から楽しみで仕方ないよ」

凛「何かいいバイトないかにゃー……」ペラペラ

凛「スーパーの品出し……時給もそこそこだし、ここでいいかな」

花陽「じゃあ、早速応募してみようよ! 先輩達ももう動いてるだろうし」

真姫「私も放課後早速面接みたい。ワクワクしてきたわ」

287 :名無しで叶える物語:2020/08/22(土) 21:10:36.11 ID:J2svTnTy.net
スーパー

凛「受かったにゃ。短期でもいいなんて話が早くてありがたいよ」

凛「えっと……仕事はなんちゃら先輩に聞けって言われたけど」キョロキョロ

「ああ、あんたが短期のバイトさん?」

凛「にゃ! 星空です、よろしくお願いします! えっと……」

「にっこにっこにー! 笑顔届ける矢澤にこにこー! にこにーって覚えてらぶにこ♡」

凛(な、なんかちっこい上にクソ寒い先輩にゃ……リアルでツインテール初めて見たよ。けど今日はバイト初日!)

凛(初対面の相手に寒いなんて言えないよ……言ったら社会生活終わりにゃ)

凛「ちょっと寒くないかにゃ?」

にこ「あによ!? ……ところで、あんた音ノ木坂らしいわね? 私も音ノ木坂なのよ」

凛「え……一年にいたっけ?」

にこ「三年生よ三年生。節穴じゃないのその目」

288 :名無しで叶える物語:2020/08/22(土) 21:18:58.21 ID:J2svTnTy.net
凛「三年生……三年生!?」

凛「こんなちっこい三年生がいてたまるか、って感じだけど……」

にこ「身長は関係ないでしょ!? 全く礼儀を知らない後輩ね……」

凛「あれ、三年生で矢澤にこ……えっと、矢澤先輩?」

にこ「にこでいいわよ」

凛「じゃあにこちゃん」

にこ「あれれ? 先輩まで消していいとは言ってないぞ?」

凛「にこちゃんって、ひょっとして野球部入ってる?」

にこ「だから先輩を……もういいわ。一応入ってるわよ、幽霊部員……というか、試合だけ手伝ってる感じだけど」

にこ「何? あんたひょっとして野球部の関係者?」

凛「今年から入ったんだよ。抑えのピッチャーに矢澤って人がいるって聞いて、ひょっとしてと思って……」

凛「凛もピッチャーだから、協力してもらうこともあるだろうし」

289 :名無しで叶える物語:2020/08/22(土) 21:36:10.46 ID:J2svTnTy.net
にこ「ああ……あんたもピッチャーなのね」

にこ「良かったわ。今までピッチャーはあのボロ腕の球拾しかいなかったから、私の負担が酷いことになってたのよ」

凛「100キロくらいしか出てないもんね、ストレート」

にこ「そうよ! なんであの腕でエースやれてたのか疑問が尽きないわ」

にこ「けど……あんたも大丈夫なの?」

凛「にゃ、凛はバッチリにゃ。エースピッチャーの風格があるでしょ?」

にこ「微塵も感じられないけど……音ノ木坂に入ってくるくらいだから、実は残念な腕してんじゃないの?」

凛「むー! 流石に失礼にゃ!」ポカポカ

にこ「あはは、ごめんごめん。休憩の時に一度見せてよ、ピッチング」


〜その頃の真姫ちゃん〜

真姫「え……あの、無理です」

真姫「知らなかったんです、無理です……許してください」

真姫「やめ……本当に、許して……やだ! やだぁ!」

真姫「やだ! やだよぉ……助けてぇ……」

290 :名無しで叶える物語:2020/08/22(土) 21:39:31.23 ID:J2svTnTy.net
休憩 店の裏

にこ「よいしょっと」パシッ

にこ「いつでもいいわよ」

凛「う、うん……けどグローブなんてよく持ってたね」

凛「凛は学校帰りだし、鞄に入ってたけど……いつも持ち歩いてるの?」

にこ「私も入れっぱなしにしてただけよ、出すの忘れてて」

凛(それにしてはしっかり手入れされてそうだけど……まぁいいや)

凛(キャッチャーマスクとかつけなくてもいいのかな。無いけどさ……)

凛「軽くいくよー」クイッ

ヒュッ

にこ「……」パシッ

にこ「んー……本気で投げてみてくれない? 軽すぎてよく分からないわ」

291 :名無しで叶える物語:2020/08/22(土) 21:45:26.47 ID:J2svTnTy.net
凛「いやいや……本気で投げたら危ないよ、こんなとこでさ」

にこ「いいから。もし暴投しても身体で止めてあげるわよ」

凛「にゃー……どうなっても知らないよ?」

にこ「はいはい、分かったから……さっさと投げなさいよ」

凛「んもー。凛は知らないから……ねっ!」キュッ

ヒュオオッ!

凛(やばっ……スピード出すぎてる! 危ないにゃ!)

にこ「……」

にこ「……あによこれ」パシッ

凛「よ、よく受け止められたね今の……」

にこ「あんたも球拾と大して変わらないじゃない。スピードは遅い、回転は弱い、ノビが無い……まーた私の負担が増えただけよ」

凛「にゃっ!?」

凛(り、凛の本気のボールをそんなケチョンケチョンに! 許せんにゃ!)

凛「オラァッ!?」ブンッ

にこ「ふっ!」パシッ

凛(つ……強いッ! 顔面を狙った凛の正拳突きが軽くいなされたっ……!)

292 :名無しで叶える物語:2020/08/22(土) 21:53:30.59 ID:J2svTnTy.net
凛(なら左手で軽くジャブ……)

にこ「……」ヒュッ

凛(と見せかけて右膝を顎にッ)ブオンッ

にこ「……甘いわね、甘い」パシッ

凛「なっ……!」

凛(止められた……凛の動きが完全に読まれてる!?)

にこ「……」ヒュンッ

凛「……ッ!!」

凛(慌てて頭を無理矢理後ろに逸らすようにして、半ば尻もちをつきながら……顔に突き出された二本の指を避ける)

凛(一切の迷いが無い……避けなければ間違いなく眼球を潰されていた! 何てストリートファイトに慣れた女にゃ……!)

にこ「凛のボールは……何て言えばいいのかしら。全体的に弱いのよ」

凛「全体的に?」

にこ「んー……難しいわね。一個一個の動きがバラバラというか、最適化されてないというか」

293 :名無しで叶える物語:2020/08/22(土) 22:04:18.84 ID:J2svTnTy.net
凛「そりゃまあ……このフォー厶教えてもらったの一週間くらい前だし」

にこ「はぁ!?」

凛「というか野球始めたのも一週間くらい前だし……」

にこ「あんたそれでよくエースの風格とか言ってたわね!?」

にこ「エースはエースでも敗北者の方じゃない」

凛「悲しくなるからやめてよ」

凛「中学でも自主トレはしてたんだけどなぁ……全体的に駄目かぁ」

にこ「んー……かなりガッツリ鍛えた方がいいかもしれないわね。よかったら暇な時、部活出て鍛えてあげるわよ?」

にこ「甲子園の予選には間に合わないかもしれないけど……」

凛「それは困るにゃ! 凛は音ノ木坂で甲子園優勝する予定なんだから!」

にこ「いやそれは無理……凛が三年生になるまで鍛え続けたら、ないとは言い切れないけど」

にこ「鍛えても急に強くなるわけでもないし、今年は無理よ。よほど無茶な特訓でもしないと」

凛「特訓……真姫ちゃんとか何か知らないかな……」

にこ「真姫? 西木野病院の……?」

凛「知ってるの?」

にこ「知ってるも何も。あの子に野球教えたの私よ?」

294 :名無しで叶える物語:2020/08/22(土) 22:09:54.11 ID:J2svTnTy.net
凛「え!?」

にこ「嘘よ」

凛「……」

凛「まぁいいにゃ。電話してみよ……」プルルル

真姫『も、もしもし凛!? 助けて!』

凛「あ、真姫ちゃん? なんか凄い特訓してくれるとこ知らない?」

真姫『それどころじゃないのよ! 赤黒いのがビクンビクンって……追ってくるのよ!? しかも皮むいたタケノコみたいな臭いがするの!』

凛「ん? えっと……知らないの? 稽古つけてくれそうなとこ」

凛「ほら、よくあるじゃん修行の場みたいなの」

真姫『……中学の頃お世話になってたお寺があるけど。今はそれどころじゃ』ガチャ

『ここにいたのね! ほら、大人しく舐めなさい! 娘と同じくらいの歳の子に舐めてもらうのって気持ちいいのよねぇ……』

真姫『やめ……やだ! 助け』プツッ

ツーツー……

凛「なるほど……お寺か」

295 :名無しで叶える物語:2020/08/22(土) 22:13:24.55 ID:J2svTnTy.net
にこ「大丈夫なの? 電話の向こうすごいことになってなかった?」

凛「よくあることだから気にしないで」

凛「にこちゃん、凛は何とかバイトを終えて特訓モードに入るよ」

凛「特訓を終えたら、もう一回ピッチング見てもらっていい?」

にこ「別にいいけど……そういうのってゴールデンウィークにやるもんでしょ?」

にこ「まだ一ヶ月くらいあるじゃない」

凛「……」

凛「学校休んで行ってやるにゃ!」

にこ「一年生から無茶するわね……」

凛「とりあえず休憩そろそろ終わりだし、勤務に戻ろ? お寺には後で真姫ちゃんから連絡してもらうにゃ」

にこ「はいはい、次はとうもろこしの並べ方を教えるわね」

296 :名無しで叶える物語:2020/08/22(土) 22:13:32.52 ID:J2svTnTy.net
今日はここまで

297 :名無しで叶える物語:2020/08/22(土) 22:20:42.06 ID:zyPlIioz.net
お疲れ様です!
まきちゃん…

298 :名無しで叶える物語:2020/08/22(土) 22:23:04.27 ID:Xk04xfha.net
女根が襲い来る

299 :名無しで叶える物語:2020/08/23(日) 01:36:07.57 ID:inYuQJyF.net
まきちゃん…

300 :名無しで叶える物語:2020/08/23(日) 02:04:06.00 ID:uL0ZpRda.net
エリチ強化イベは来るのだろうか

301 :名無しで叶える物語(らっきょう):2020/08/23(日) 03:12:36 ID:TfbDkmIR.net
まきちゃん...

302 :名無しで叶える物語:2020/08/23(日) 03:27:01.23 ID:D79N9yMf.net
「打撃王(リトルスラッガー)凜」という漫画を思い出した
凛じゃなくて凜だけど

303 :名無しで叶える物語:2020/08/23(日) 10:15:15.48 ID:kfMfwj47.net
数日後 学校

凛「ふぅ……何とか目標金額まで貯められたにゃ」

凛「並べすぎて、美味しい大根の見分け方完全に覚えちゃったよ……」

花陽「私は店長候補になったよ」

凛「前から思ってたんだけど、その米に対するバイタリティなんなの?」

花陽「お米はねぇ、美味しいんだよ!?」

花陽「まさかねぇ!? ご飯を馬鹿にする気じゃないよねぇ!? 舐めちゃいないよねぇっ!?」

凛「り、凛もご飯は好きだよ。納豆をかけて食べると美味いにゃ」

花陽「うんうんっ! 納豆もいいよね、卵を一つ落として醤油を垂らすとまた味と食感が変わってオススメだよ!」

凛「あはは……あ、真姫ちゃん!」

真姫「……」

凛「前に言ってたお寺に連絡取ってくれた?」

真姫「取ったわよ……」

凛「……なんかやつれてない? 全身から負のオーラが漂ってるけど」

真姫「やつれるわよそりゃ……とんでもないバイト紹介してくれたわね」

真姫「目の前の仕事こなしてるうちに店長候補になったわ」

凛「凛の友達店長候補になりすぎじゃない?」

304 :名無しで叶える物語:2020/08/23(日) 10:19:21.60 ID:kfMfwj47.net
真姫「えっ……友達?」

凛「ん? 違った?」

真姫「いや……何というか、まだ友達になれてないと思ってたから」

凛「凛はもうとっくに友達のつもりだったけど、真姫ちゃんは違ったの? なんだかショックにゃ」

真姫「わ、私だって……友達になりたいと思ってたわよ」

真姫「こ、これからもよろしく……でいいのかしら?」

凛「うんっ! 仲良くしようね、真姫ちゃん!」

花陽(こいつ友達だと思ってる奴を風俗店に送り込んだのか……)

真姫「花陽も友達……でいい?」

花陽「あっ、私は西木野さんのこと詳しく知らないから知り合いからお願いします」

真姫「……」シュン

凛「とにかく放課後になったら部室行こうよ、皆3万円稼いでくれてる筈だし」

305 :名無しで叶える物語:2020/08/23(日) 10:25:10.53 ID:kfMfwj47.net
. . . . . . .

絵里「……」 

凛「えっと……再確認していい?」

凛「まず凛が3万円、かよちんが3万円、真姫ちゃんが4日で126万円稼いだ中から3万円出したよね?」

絵里「ええ、そうね」

穂乃果「私は家の和菓子屋手伝って3万、海未ちゃんとことりちゃんもそれぞれ協力してくれて二人で6万円」

絵里「ええ……」

希「ウチは神社のバイト代から3万、球拾はデイトレで稼いで3万、モブAはギャル喫茶に短期で入って3万」

絵里「……」

希「絵里ち?」

絵里「……」

希「あの、部長? なぁ、本来真っ先に稼がなあかん筈の部長?」

絵里「……」

穂乃果「財布の中身、正直に出してみなよ」

絵里「……」スッ

126円

凛「……」

306 :名無しで叶える物語:2020/08/23(日) 11:53:13.36 ID:kfMfwj47.net
凛「何があったの?」

穂乃果「絵里ちゃんバイトしてたよね? ネジを締める流れ作業の短期で……」

絵里「してたわよ」

絵里「5日で3万貯めたわよ」

穂乃果「じゃあなんで126円しか入ってないのさ!?」

絵里「……パパが」

絵里「パパが……パチンコでお金を倍にしたって言ってたのを思い出して……」

凛「ま、まさかパチンコにつぎ込んじゃったの!?」

絵里「3万が6万になれば……余った金で妹に可愛い服を買ってあげられるなぁ……って」

希「……」

凛「嘘でしょ絵里ちゃん……絵里ちゃんが言い出したんだよこれ!?」

穂乃果「海未ちゃん達や、入ったばかりの花陽ちゃんまで稼いできたのに!」

絵里「ごめんなさい……ごめんなさい……」ポロポロ

真姫「仕方ないわね、一日で3万稼げる店を紹介するわ」

絵里「そ、そんなところがあるの?」

真姫「あるのよ」

絵里「ハラショー! 真姫、ありがとう! これで皆に顔向けできるわ!」

凛「ハードなオプションつけてあげてね」

真姫「分かってるわよ」

凛(翌日、絵里ちゃんは学校に来なかった。まぁどうでもいいことにゃ)

307 :名無しで叶える物語:2020/08/23(日) 12:00:04.49 ID:kfMfwj47.net
凛「お寺いつ行こうかなぁ……早い方がいいよね?」

真姫「ゴールデンウィークまで待った方がいいと思うけど」

真姫「学校休んでまで行くと、住職に怒られるわよ?」

凛「それはそうなんだけど……」

凛(押し問答を続けているうちに、気付けば日々は過ぎていき……)

凛「明日からゴールデンウィークにゃ」

真姫「……!?」

真姫「あれ……!? 今何だか……!?」

凛「どうしたの、真姫ちゃん」

真姫「いや、あれ……5月? あれ!?」

花陽「この一ヶ月色んなことがあったよね、海未ちゃんが弓道の大会で無事優勝して、正式に野球部に協力することを申し出てくれたり」

凛「ことりちゃんが空気を操る能力を持っていた時は驚いたにゃ」

真姫「……!? え? だ、誰……?」

凛「何言ってるの? 海未ちゃんが仲間になってくれたのは真姫ちゃんのおかげじゃないか」

凛「あの身体を張った説得、凛は忘れないよ」

真姫「……? ちょ、ちょっと具合が悪いみたい。保健室に行ってくるわ……」

308 :名無しで叶える物語:2020/08/23(日) 12:07:18.05 ID:kfMfwj47.net
凛「とにかく明日から、真姫ちゃんが紹介してくれた寺で修行だよ」

凛「楽しみだな、合宿みたいでわくわくするにゃ」

花陽「合宿みたい、っていうか合宿そのものだよ?」

花陽「ことりちゃん達も都合がつくみたいだし、無事に野球部全員で集まれて良かったよ」

凛「うん……」

凛「けど本当にいいの? かよちんも合宿来てもらって」

凛「米料理研究会の方で米旅行があるって聞いたけど」

花陽「ううん、私も野球部に協力するって決めたんだから!」

花陽「それに、私を庇って交通事故に合い入院してるモブAさんの為にも、頑張らなきゃ……!」

凛「……この一ヶ月、本当に色んなことがあったからなぁ」

凛「うん……本当に……うん。何も考えてないツケが回りつつあるようなほど、色んなことがあったよ」

花陽「明日からの合宿、頑張ろうね!」

凛「にゃ! 頑張るにゃー!」

309 :名無しで叶える物語:2020/08/23(日) 12:12:53.37 ID:kfMfwj47.net
翌日

絵里「皆、バス来たわよ! 早く乗って……あら? 穂乃果は?」

希「トイレ行くって言ってたやん」

絵里「なんで先に済ませとかないのよ!?」

凛「あはは……かよちん、真姫ちゃん乗ろうよ。一番後ろの席を取ってやるにゃ」

花陽「一番後ろは先輩に譲ろうよぉ」

真姫「……いや、やっぱりおかし……昨日まで4月半ばだった筈……」ブツブツ

凛「真姫ちゃん?」

真姫「……あ、いや……なんでもない」

真姫「それにしてもよくバスなんて取れたわね。お金足りたの?」

凛「理事長がぽんと出してくれたよ。真姫ちゃんのおかげにゃ」

真姫「……?」

花陽「『あれ、ぬるぬる天国ゴールド会員の親鳥さん……?』の一言で、バスから何から全部手配してくれたもんね」

真姫「え、そんな個人情報流出させたの私……?」

真姫「ま、まあ何でもいいわ。早く乗りましょ」

310 :名無しで叶える物語:2020/08/23(日) 12:21:22.49 ID:kfMfwj47.net
凛「凛はかよちんの隣に座るにゃー!」

花陽「う、うん……真姫ちゃんは通路挟んで隣?」

真姫「に、なるわね。……あら?」

(・8・)

真姫「誰よ、こんなところにぬいぐるみ置いたの」

(・8・) ジロッ

真姫「? 目が動……」

(^8^) サマーウィィィィィィwwwww

真姫「!?」

(^8^) 何故か見えた 明日のときめきどうするちゅんかぁ?

(^8^)つかまえてもっとちゅんなぁ!

(^8^)もっとちゅんなぁ!

(・8・) た の し く し ち ゃ う よ

真姫「……!?」

ことり「おはよう、真姫ちゃん。そんなに驚いた顔してどうしたの?」

真姫「あ、あれ? ぬいぐるみは!? というか貴女誰!?」

ことり「えー、酷いなぁ。ことりはことりですっ、ぬいぐるみじゃありませんよーだ」

真姫「穂乃果の言ってた助っ人の二年生……ご、ごめんなさい。私今記憶喪失みたいで……」

311 :名無しで叶える物語:2020/08/23(日) 12:30:17.07 ID:kfMfwj47.net
海未「記憶喪失ですか……まさか私のことも忘れてしまったのですか?」

真姫(えっ……えっと、多分流れ的に……)

真姫「園田、海未さん……?」

海未「あぁ、覚えていてくれましたか。ホッとしました」ホッ

海未「あんなに熱い戦いを繰り広げたのに、忘れられては切ないですからね」

ことり「えーっ、海未ちゃんばっかりずるいなぁ……ことりのことは覚えてないの?」スルッ

真姫(な、なんか手つきがエロい……というか顔が近い!)

真姫「ご、ごめんなさい。海未さんとの戦いもことりさんのことも何も思い出せないの!」

海未「なんと……大丈夫ですよ、ゆっくり思い出してくれたら」

海未「合宿の間、何があったかちゃんと教えてあげますから……ね?」

ことり「合宿中はずっと一緒にいられるもんね?」

真姫(私、何したのよこの二人に!? めちゃくちゃ距離近いじゃない!)

穂乃果「ちぇー、二人とも取られちゃった。嫉妬しちゃうよもうっ」

希「お返しにこっちはこっちでいちゃいちゃしてやるやん」イチャイチャ

穂乃果「んー♡ 希ちゃん好きだよー♡」

穂乃果「けど私と希ちゃんがイチャイチャしても、何ら需要は無いと思うんだよね」

希「それは、薄々思ってた」

312 :名無しで叶える物語:2020/08/23(日) 12:34:05.07 ID:F8eccO+m.net
わりとあるぞ
このSSのほののぞが絡んでもサイコだが

313 :名無しで叶える物語:2020/08/23(日) 12:37:36.44 ID:kfMfwj47.net
絵里「全員揃ったわね? じゃあ運転手さん……出発してください」

「はいはい……」ブォォォン

絵里「それにしても……長野の方のお寺、よね?」

絵里「よくそんな場所知ってたわね」

真姫「中学の時に、修行でお世話になったのよ。パパの知り合いに紹介してもらって……」

真姫「環境としては最悪だけど、確実に強くなれることは保証するわ」

穂乃果「環境としては最悪……?」

真姫「着けば分かるわよ。……逃げるんだったら今のうちよ? 本当に逃げられないから」

ことり「ことり、怖いなぁ……」イジイジ

真姫「髪の毛触らないで」

海未「私は……多少、厳しい訓練に慣れていますけど」

凛「凛だって、何だかんだ中学の頃から色々やってきたからねー」

真姫「……うーん、多分そういうものじゃないというか」

真姫「ま、いいわ。地獄への道連れは一人でも多い方がいいから」

希「嫌な予感しかしてこないなぁ……」

314 :名無しで叶える物語:2020/08/23(日) 12:51:53.05 ID:kfMfwj47.net
凛(高速に乗ったバスはいくつかのサービスエリアを経由し、約4時間ほどかけて目的のインターチェンジを通過する)

凛(……最初に感じたのは、左右に山しか見えない違和)

凛「東京暮らしとはいえ……ここまで周りに山しか無いと感動より先に恐怖を覚えるにゃ」

凛(携帯の電波は……圏外だ)

凛(自分が別の世界に来てしまったような、木々の隙間から差す光の奥に異常の影が顔を覗かせているような)

凛(奇妙な気分にさせられる)

凛「かよちん、山ばっかりで凄いよ。かよち……」

凛(返事をしない親友にやきもきし隣を見ると、たこやきのようなほっぺたを膨らませたかよちんが軽い寝息を立てているのが見えた)

凛(微笑ましい……と。考えた刹那、気付く)

凛(どうしようもない違和――自分以外の全ての人間が、寝ているという信じがたい光景に、走っているバスの中ではしたないと思いつつ立ち上がった)

凛(インターチェンジを過ぎた時にははしゃいでいた穂乃果ちゃんも、ヴェェヴェェトラナイデと鳴き声を上げていた真姫ちゃんも。合宿先について確認していた絵里ちゃんも……時間が止まったかのように、シンと静まり返っている)

凛「なん、だ……これ……?」

凛(窓の外が、赤くなっていく。空が、木々が、地面が……凛を嘲笑うかのように赤黒く染まっていく。子供がペンキをぶちまけたようた、不格好な色が世界を染めていく)

凛「運転手さん! バスを止め……!」

凛(最後まで言い終える前に、足がふらつき、視界が遠くなっていくのを感じた。脳を覆う霧が深まる中、最後に凛が見たのは)

凛(ガスマスクをつけた、運転手の姿だった)

315 :名無しで叶える物語:2020/08/23(日) 12:58:33.48 ID:kfMfwj47.net
……ん、……きて!

凛(誰かが呼んでいる声がする) 

凛……! 起きて、凛……!

凛「にゃ……!?」ガバッ

真姫「はがっ!?」ガンッ

凛「あ、あれ? あれ……?」

真姫「いきなり飛び起きるんじゃないわよ! あー痛っ……」

凛「こ、ここは……バスの中?」

真姫「もう皆降りてるわよ、いつまでも寝てないで早く来なさい」

凛「凛、寝てたの……? 夢を見てた、のかな……?」

真姫「変な夢でも見たの? とにかく早く行くわよ、皆待ってるから」ザッザッ

凛(真姫ちゃんに促され、少し痛む頭を抑えながら凛はバスの中を出入り口に向かって歩いていく)

凛(あの奇妙な光景は夢だったのだろうか。全てが赤黒く染まる世界……)

凛(けれど。バスを降りる瞬間……運転手にお礼をする際、凛は見ちゃったんだ)

凛(運転席の下に置かれた、ガスマスクを)

316 :名無しで叶える物語:2020/08/23(日) 13:11:00.58 ID:kfMfwj47.net
ーーー

真姫「ここが私がお世話になった西園寺(さいおんじ)よ」

凛「へぇ、ここが……敷地は大きいけど、よくあるお寺にしか見えないにゃ」

凛「ん……あれ、でも……」スーハー

凛(なんか息苦しいというか、酸素が薄い気がする……?)

凛「山の上とかにあるお寺なの? 凛寝てたから分からないや」

真姫「山の上にあるとは思うけど……私も詳しい位置は分からないのよね」

凛「へ?」

真姫「この寺の位置を知ってるのは、バス会社の一部運転手と寺の和尚さんだけよ」

真姫「私が連絡したら、向こうからバス会社に連絡がいって……住所を知ってる運転手がバスを回すよう手配されるの」

真姫「運転中に薬で眠らされたでしょ? 下界には場所を余り知られたくないみたいよ」

凛「なんかやべぇ臭いがぷんぷんしてきたにゃ……だから逃げられないって言ってたんだね」

真姫「場所が分からないんだから逃げようがないのよね。下手に徒歩で逃げると遭難しそうだし」

真姫「まぁ規定の日時、特訓をこなせばいいのよ。死ぬことはないから安心して」

凛「うん……にゃ?」

絵里「どういうことですか!?」

「うむ……すまんのぅ」

凛「なんかモメてる……?」

317 :名無しで叶える物語:2020/08/23(日) 13:21:10.02 ID:kfMfwj47.net
「ワシが連絡を受ける前に、弟子が別の高校に入山の許可を出していたようでな」

希「ダブルブッキング、ってわけやな……」

絵里「けど東京から来て長野県よ……? 今から戻るにしても……」

「ううむ……申し訳ない」

真姫「住職、ダブルブッキングってどういうこと?」

「おお、西木野の娘さん。久しぶりじゃのう」

「今、寺の中で長野佛教高校が修行をしていてな。勘違いから、2つの高校が同じ日に予定を入れてしまったんじゃ」

真姫「そうなると私達は……」

「すまん……あちらが先じゃからのう、無碍にするわけにはいかん」

「ここまでのバス代金はこちらで持たせてもらう。すまんが……」

凛「にゃあ……4時間もかかったのに……」

「別にいいずらよ、和尚」

凛「にゃ?」

凛(寺の奥……開かれた襖の向こうから、一人の少女が顔を出す) 

凛(茶色い長い髪が風を受けて揺れている……肉付きのいい二の腕は浅く焼け、しっとりと汗で濡れていた。何というか)

凛(非常にえっちな印象を受ける女の子にゃ)

「しかし……」

花丸「うちの高校としては、合同でも構わないずら。わざわざ東京から来てくれたんでしょ?」

花丸「このまま返すのは失礼だからね」

318 :名無しで叶える物語:2020/08/23(日) 13:30:00.65 ID:kfMfwj47.net
絵里「……いいの?」

花丸「いいずら。和尚さんから聞いたときに、部の皆で相談して決めてたんだよね」

凛「よ、よかったぁ……またあの高速を帰る羽目になるかと思ったよ」

希「しかも長野佛教やろ……? なんちゅうラッキーな」

凛「知ってるところなの?」

希「知ってるも何も。最近甲子園に出てなかったとはいえ、長野の強豪高といったらまず思い浮かぶところやん」

凛「へぇー……凄いところなんだね」

「ふむ……長野佛教さんがそういうのであれば。申し訳ないが部屋も大部屋を一緒に使ってもらうことになる、いいかね?」

絵里「此方としては、修行をさせていただけるのなら何も文句はありません」

「あいわかった! 音ノ木坂学院をここに受け入れよう!」

花丸「部屋に案内してあげるずら。荷物を置いたらすぐに練習に移るから……」

絵里「ありがとうございます。ええと……」

花丸「オラは国木田花丸。長野佛教の一年生ずら、これからゴールデンウィークの一週間、よろしく……」

真姫「……」

海未「どうしたのですか、真姫。変な顔をして……」

真姫「いや……何でもないのよ。ただ……」

海未「ただ?」

真姫「かすみといい、こんな強い一年生が……野心も持たず隠れてたと思うと」

真姫「甲子園が楽しみで仕方ないのよ」

海未「……本気で、行けると思いますか? 甲子園」

真姫「行けると思ってるわよ。私がいるんだから」

319 :名無しで叶える物語:2020/08/23(日) 13:30:10.38 ID:kfMfwj47.net
今日はここまで

320 :名無しで叶える物語:2020/08/23(日) 14:26:44.91 ID:ncN3aX1X.net
>>308
何から何までひどい…
>>294が親鳥というどうでもいい伏線はしっかり回収してやがる

321 :名無しで叶える物語:2020/08/23(日) 17:32:58.40 ID:TfbDkmIR.net
えりちゃんもまきちゃんも処女じゃなくなっちゃったってこと...? それとも口だけ...?

322 :名無しで叶える物語:2020/08/23(日) 22:52:02.35 ID:02dqc0W5.net
女口調の変態おじさんなんじゃないかとヒヤヒヤしたぜ

323 :名無しで叶える物語:2020/08/23(日) 23:34:13.69 ID:hFR1Y2g5.net
普通の野球SSかと思ったらなんか色々とぶっ飛んでるな...

324 :名無しで叶える物語(四国地方):2020/08/24(月) 01:58:47 ID:v5z9Krhk.net
レイプ星人に男は根こそぎやられたからな…

325 :名無しで叶える物語:2020/08/24(月) 16:56:22.68 ID:XDU6yrGZ.net
真姫ちゃんめっちゃ稼いでるようにみせてお小遣い4ヶ月分だよな
割りに合わねぇ

326 :名無しで叶える物語:2020/08/24(月) 23:29:57.76 ID:cVca7vKl.net
今日は更新なしかな
まあゆっくりやってほしい

327 :名無しで叶える物語:2020/08/25(火) 18:06:12.35 ID:npVXwPm9.net
保守

328 :名無しで叶える物語:2020/08/25(火) 20:52:00.76 ID:2TEdekuM.net
凛(和尚と、国木田花丸と名乗る少女に案内された先には25畳程の和室があった)

凛(随分と広いが、既に先住の長野佛教達で部屋はいっぱいのようで、綺麗に畳まれた布団が部屋の脇に詰まるように置かれている)

凛(布団壁の奥には、やはりこれでもかと床に敷き詰められた荷物の海があった。これ凛達寝れねぇんじゃねえかな)

花丸「荷物を置いて、着替えたら裏に回ってほしいずら」

凛(短く言って、花丸は踵を返し廊下に出た。和尚もまた、その後をいそいそと付いていく)

凛(ふと、和尚の頭に一匹の蜻蛉が止まった)

凛(蜻蛉は産卵の時を迎えているようで、腹が丸石のように膨らんでいる)

凛(和尚の禿頭を路傍の石と間違えたのだろうか。彼女はそこで産卵を企てたようである)

凛(じい、と眺めていると不意に和尚はその蜻蛉をむんずと掴み、忌々しげにそれを庭へと放り投げた)

凛(蜻蛉は燦々と照り付ける陽に焼かれた石の上に叩きつけられ、握られた際に羽を壊したのであろうか、飛ぶこともできず蠢いている)

凛(凛はその蜻蛉の姿に、人生の無常を感じた。虫けらの命は儚いが、人もまたそうである。石に叩きつけられ、羽を拗じられ……)

凛「にゃっ!」ボグォ

穂乃果「おごあっ!?」

穂乃果「な……!? え……!?」

凛「人生の無常を穂乃果ちゃんにも感じてほしくて……」

穂乃果「……!?」

329 :名無しで叶える物語:2020/08/25(火) 21:01:38.04 ID:2TEdekuM.net
凛(荷物を置いて、廊下に出る。裏手とは言われたけれど、凛はこの寺の何処が表で何処が裏かを知らない)

凛(ここの常連たる真姫ちゃんはヴェェヴェェ鳴いてばかりで役に立たない。廊下を全員連れ立ってぞろぞろと歩いていると、見慣れた光景が目に入った)

凛「え……これグラウンド?」

絵里「みたいね。山を切り開いてグラウンドにしてるのかしら」

凛「花丸ちゃんは何処にいるにゃ?」

真姫「誰もいないみたいだけど……ここで合ってるのよね?」

希「分からんけど……こんなあからさまにグラウンドがあるってことは、ここじゃないの?」

花陽「長野佛教の人達は……えっ?」

凛(グラウンドの奥には森がある。その森の中から、20人ほどのユニフォームに身を包んだ女子高生達が出てくるのが見えた)

凛(けど……何かおかしいにゃ。全員ユニフォームが泥にまみれて、青い顔をしている人や肩に担がれている人までいる)

凛「な、何が……」

「ほらほら、皆顔上げて! 音ノ木坂の人達来たんだから、挨拶するよ!」

330 :名無しで叶える物語:2020/08/25(火) 21:10:31.68 ID:2TEdekuM.net
凛(選手達を追って出てきた、金髪のギャル風の女性――他の選手達と違い、随分と元気そうだ――が皆にそう声をかける)

凛「え、えっと……」

「「「よろしくお願いします……」」」

「音ノ木坂の皆ーっ! 愛してるよ、愛だけに!」

凛「!?」

花丸「愛さん。自己紹介してない時にそれやっても意味ないずら」

凛(花丸ちゃんも出てきた……呼びに行ってくれたのかな)

愛「えっ? あはは、そっかそっか!」

愛「アタシは長野佛教二年生の宮下愛! よろしくね!」

絵里「音ノ木坂高校三年生、部長の絢瀬絵里よ……貴女が部長をしているの?」

愛「えっ? いや、愛さんは部長でも何でもないよ、部長はそこでブッチョー面して担がれてる人! 部長だけに!」

凛「次にギャグ言ったら殴っていい?」

希「ええよ」

凛「やったぁ!」

愛「え、な……何?」

絵里「こいつらは気にしないで。思考回路が人じゃなくて猿に近いから」

絵里「それにしても……そんなボロボロになって、何をしていたの……?」

331 :名無しで叶える物語:2020/08/25(火) 21:17:03.93 ID:2TEdekuM.net
花丸「ああ、それは……」

「修行じゃよ」

凛「にゃ? 一体どこから……!?」

「気にするでないよ。ほれ、君達も……」シュッシュッ

穂乃果「な……えっ、何これ?」

絵里「霧吹きで水をかけて……?」

穂乃果「濡れちゃうのやだよ、ユニフォームこれともう一枚しか無いのに……」

「ただの水じゃない。さ、君達も森に入ってきなさい」

絵里「森に……野球と何の関係があるんですか?」

凛「そうにゃそうにゃ! 凛たちはなんかすっごい必殺技を学びに来たんだよ!」

花陽「そうだったの?」

凛「修行ってそういうもんじゃないの?」

「森に入れば分かる……長野佛教の子達は、君達二人以外は限界みたいじゃな。君達はどうする?」

愛「アタシはもう一回行っとこうかな。ずら丸ちゃんは?」

花丸「オラももう一回やっとくずら」

「ほっほっほっ……優秀な子達じゃ」シュッシュッ

332 :名無しで叶える物語:2020/08/25(火) 21:23:44.22 ID:2TEdekuM.net


凛「随分と木が多いにゃ。葉っぱも積もってるし、根っことか石とかあって歩き辛い……」

花丸「森だから仕方ないよ。そういうものだと思って諦めるずら」

凛「ところで花丸ちゃん、長野佛教の子なんだよね?」

花丸「そうずら」

凛「何で静岡の方言を?」

花丸「元々静岡の出身で……長野佛教には推薦で行ったんだ。それが無かったら地元の浦の星に行ってたよ」

凛「へぇ……」

愛「おっ、早速仲良くなったみたいだね。他校の人と仲良くなるのはいいことだよ」

ことり「それはいいけど……森の中を歩くだけなの?」

ことり「それにまだ春なのに、何だか蒸し暑いというか……」

愛「うんうん、私も最初はそう思ったよ。この森が何なんだって」

愛「……そろそろ分かるよ」

ブゥゥゥゥゥン

花陽「……? 何か、変な音が……」

蜂「……」ブゥゥゥゥゥン

花陽「……」

花陽「ピャアッ!?」

希「は、蜂ィ!?」

333 :名無しで叶える物語:2020/08/25(火) 21:29:01.07 ID:2TEdekuM.net
絵里「だ、大丈夫よ! 刺激しないで、刺激さえしなければ……」

ブォォォォォン!

凛「め、めちゃくちゃ興奮してるみたいだよ!?」

海未「一匹くらいなら何とかなります! この木の枝で……」

ブォォォォォン
ブォォォォォン
ブォォォォォン

海未「……何百匹といるじゃないですか!?」

凛「向かってくるにゃ!?」

愛「逃げろー!」ダッ

絵里「ちょ、ちょっと待っ……!」ダッ

希「何でこんな足場が悪い中、蜂に追われなあかんのや!?」ダッ

ことり「誰か巣でも壊したの!? すっごく追ってくるよぉ!」

花丸「和尚が、さっき皆にかけた液体が原因ずら」

真姫「はぁ!? どういうことよ!?」

334 :名無しで叶える物語:2020/08/25(火) 21:34:18.65 ID:2TEdekuM.net
花丸「あれは水じゃなくて、働き蜂が毒針から出す警報フェロモンを濃縮したものなんだ」

花丸「警報フェロモンを嗅ぎとった他の蜂達は、警告無しでこっちに攻撃してくるずら」

凛「何っつうもんを!」

真姫「前に来たときよりやり口が酷くなってるわね……!」

絵里「真姫が中学時代に来た時はまだマシだったの!?」

真姫「まだマシよ。3日分の食料だけ渡されて、二週間山の中でサバイバルさせられたけど!」

ことり「どのみち最悪だよ!?」

「とんでもないところを紹介してくれましたね、真姫ちゃん……!」

希「ああ、もう……葉っぱが邪魔や! 許さんからな真姫ちゃん!」

真姫「私のせいじゃないわよ! あわわっ!」

ブォォォォォン

凛「と、とにかく仲間割れしてる場合じゃないよ! 逃げ切らないと!」

335 :名無しで叶える物語(茸):2020/08/25(火) 21:39:36 ID:2TEdekuM.net
絵里「逃げ切るって言っても……この足場じゃ撒けないわよ!?」

海未「何とか追いつかれないようには出来てますが……!」

海未「そろそろ花陽や球拾が限界ですよ……!」

花陽「……ご、ごめんねぇ。体力……はぁっ……無くて……」ゼェゼェ

「し、死ぬ……だから皆あんな青い顔……!」

凛「ふ、二手に別れよう!」

希「二手に?」

凛「どっちか片一方に蜂がいけばもう片方は逃げられるにゃ! 半々に割れても数が減る分対応しやすくなる筈だよ!」

穂乃果「そ、そっか! じゃあイチニのサンで別れるよっ!」

穂乃果「イチ……ニの!」

凛「サンっ!」バッ

ダダダッ……ザァーッ……ダーッ……

336 :名無しで叶える物語(茸):2020/08/25(火) 21:46:02 ID:2TEdekuM.net
凛「……」

凛「……にゃっ!?」ガバッ

真姫「あがごっ!?」ボグォ

凛(あれ……ここどこ? 確か山の中で蜂に追われて……)

凛(ここは……洞窟? ほら穴? 何かの中みたいにゃ)

凛「また、凛寝てたの?」

真姫「何でよりによって二回も鼻に……! そうよ、覚えてないの?」

凛「えっと、蜂に追われて……二手に別れて」

真姫「その直後よ。足元よく見てなかったのね……凛、崖から落ちたのよ」

凛「えっ、崖……!? いやいや、流石にそんな……つうっ!?」ズキッ

真姫「動いちゃ駄目よ。軽くだけど捻挫してるから……冷やして安静にしてたら明日には治るわ」

穂乃果「駄目だー……素手じゃ兎狩れないよ。あっ、目が覚めたの!?」

337 :名無しで叶える物語(茸):2020/08/25(火) 21:56:25 ID:2TEdekuM.net
凛「穂乃果ちゃん……み、皆は……?」

穂乃果「海未ちゃんと希ちゃんは魚捕りに行ってる、花丸ちゃんは野草を探しに。後の5人は、別れちゃって以降分からないんだよね」

凛「かよちんとはぐれちゃったの……!? す、すぐに探しに……ぐううっ!」ズキズキ

真姫「無理しちゃ駄目よ。手当はしたけど、歩けるようになるにはまだ少しかかりそうだから……」

凛「け、けどかよちんが……蜂に襲われてたらと思うと……」

穂乃果「大丈夫だよ、あっちには絵里ちゃんがいるし」

花丸「それに愛さんもいるずら」ザッザッ

穂乃果「花丸ちゃん。どう? 食べられそうな野草あった?」

花丸「つくしとかカタバミとか……少しは取れたよ。ヨモギはこのまま食べるにはあれだけど、捻挫には効くからすり潰して患部に貼っておいて」

真姫「へえ、随分と詳しいのね」

花丸「静岡でも田舎の方に住んでたからね、最低限は知ってるんだ」ヌリヌリ

凛「いちち……ありがとうにゃ」

338 :名無しで叶える物語:2020/08/25(火) 22:05:25.84 ID:2TEdekuM.net
希「……」クスンクスン

凛「あぁ、希ちゃんも戻って……」

凛「何で泣いてるの……?」

希「海未ちゃんがはぁはぁしながら、ウチにおしっこ引っ掛けてきたんよ……」

凛「……」

穂乃果「えぇ……」

海未「ちょ、ちょっと待ってください!」ダッダッダッ

海未「勘違いされるようなことを言わないでください! 私が破廉恥な目的でおしっこを引っ掛けたみたいじゃないですか!」

真姫「いや……少し話しただけだけど、海未はそんなことしないでしょ。真面目な子だもの」

海未「そうですよ、私がわざとそんなことをするわけありません!」

凛「おおかたあれでしょ? 希ちゃんがさっきの蜂に刺されてて、慌てて海未ちゃんがおしっこかけたとか」

海未「いえ……まず私が魚を探している最中に尿意を催したんです」

凛「うんうん」

海未「ふと見ると、手頃な岩がありまして」

凛「おっと……話が見えなくなってきたにゃ」

339 :名無しで叶える物語:2020/08/25(火) 22:11:08.52 ID:2TEdekuM.net
海未「それが随分と手頃な大きさだったんですよ」

海未「そこで私は考えたんです。この岩の上から、川に向かって放尿するとさぞ気持ちがいいだろうなぁと」

凛「……」

海未「そこでその岩に登り始めたんですが……少し登るのに手間取りまして。息が上がってしまったんです」

海未「それでも何とかよじ登って、下着を脱いで川に向かって始めたんですよ」

希「ウチが下にいるのにも気付かずにな」

海未「だから……事故だったんですって! 希が下にいるのに気付いていたら、放尿なんてしてません!」

花丸「待つずら。何で希さんは岩の下に立ってたの?」

希「いや……海未ちゃんが急にパンツ脱いだから……」

希「一番いいアングルで眺めようかと思って……」

海未「破廉恥な!」バシッ

希「何でや!? おしっこかけられた上に殴る権利が海未ちゃんにあるんか!?」

真姫「いや……あるでしょ」

穂乃果「話を聴く分にはあるね」

340 :名無しで叶える物語:2020/08/25(火) 22:18:53.38 ID:2TEdekuM.net
凛「はぁー……皆アホばっかりにゃ」

真姫「そのアホに看病されてんだから感謝しなさいよ」

穂乃果「とりあえずはここで一夜を明かす感じになるかな? 凛ちゃんおぶってお寺まで戻るのは難しいし」

凛「ごめんね、皆……凛が捻挫なんかしたから」

花丸「困った時はお互い様ずら」

希「そうそう。魚も取れたし、野草もあるし一晩くらいはパーティーやと思って楽しもう」

海未「野草で包んで、包み焼きにしますか。容器になるようなものもないですし」

花丸「尖った石もあったから、下ごしらえはマルがやるよ」シャキシャキ

凛「ありがとうね、皆に何かあった時は凛が助けるから」

希「いやいや、そんなの気にしなくても……」

ブォォォォォン
ブォォォォォン
ブォォォォォン

希「……凛ちゃん、早速何かあったで。助けて」

凛「いや……無理にゃ」

真姫「は、蜂!? こんなところにまで……!」

341 :名無しで叶える物語:2020/08/25(火) 22:24:33.26 ID:2TEdekuM.net
穂乃果「まずいよ……流石に逃げ場ないよ!?」

希「最悪走れば被害は最小限……って言いたいところやけど」チラッ

凛「……ごめん」

希「ええんよ、気にしないで」

真姫「やってやるわよ……こうなれば命懸けよ。一匹でも多く潰してやるわ」スチャ

海未「こんなことになるなら、弓を持ってくればよかったですね…」スチャ

花丸「……」

花丸「……はぁ」

花丸「皆、奥に下がってほしいずら。ここはオラに任せて」

凛「花丸ちゃん一人で……流石にあの数の蜂は無理だよ!」

凛「どう見ても数十匹はいるにゃ!」

花丸「いいから、下がって……大丈夫だから」

342 :名無しで叶える物語:2020/08/25(火) 22:29:10.05 ID:2TEdekuM.net
花丸「蜂も、フェロモンに騙された被害者だから……本当はやりたくなかったけど」ブツブツ

花丸「仕方ないよね……」

凛(皆が奥に避難すると同時に、花丸ちゃんは足元の丸い石ころを拾い上げる)

凛(石ころ1つじゃ潰せても一匹二匹……あんなのでどうするっていうの?)

花丸「ふぅー……」

希「セットアップ……? ピッチャー、なんか?」

花丸「ごめんなさい、蜂さん達……」クイッ

ギュルルルルルルルッ!

穂乃果「なっ……すごっ!」

海未「ただの石なのに、何て回転……!」

凛「……え!?」

凛(一瞬、目を疑った)

凛(花丸ちゃんの投げた石が、蜂の群れに向かって飛んでいく。回転する石はいきり立つ蜂達の中で……) 

凛(数十匹の蜂ごと、消失した。最初からそこには何も無かったように)

343 :名無しで叶える物語:2020/08/25(火) 22:42:18.27 ID:2TEdekuM.net
花丸「ふぅ……」

希「な……」

希「何なん、今の……蜂が消えた……?」

穂乃果「石も消えたよね……? 私、夢でも見てるの……?」

花丸「消える魔球ずら」

真姫「……」

花丸「昔、流行ったよね。消える魔球。マルの投げた球もそれと同じ」

花丸「消える魔球ってやつずら」

凛「そ、それじゃ説明になってないにゃ」

花丸「そりゃそうだよ。音ノ木坂も甲子園を目指してるんだよね?」

花丸「ライバルになるかもしれないところに、詳しく解説なんてしてあげられないずら」

真姫「その割には……よく合宿一緒に参加させてくれたわね」

花丸「それとこれとは別だよ。マルはげーむとかしないからよく分からないけど、愛さん曰く『ボスを倒す為にレベル上げるのはアリだけど、行動パターン全部教えられたら萎えるよね』ってことずら」

真姫「……なるほどね。こっちが強くなるぶんにはいいけど、攻略法は教えない」

凛「……? 何の話……? 消える魔球の話だよね……?」

穂乃果「よく分からないよね」

真姫「面白いわね……正直この合宿、乗り気じゃなかったけど……ワクワクしてきたわ」

真姫「絶対その消える魔球の秘密、合宿中に暴いてやるから!」

花丸「無理だと思うけど、頑張ってね」

凛「……? 回転してるからじゃないの……?」

344 :名無しで叶える物語:2020/08/25(火) 22:42:27.79 ID:2TEdekuM.net
今日はここまで

345 :名無しで叶える物語:2020/08/25(火) 23:35:06.11 ID:ESgJN3SM.net
おつ
希の口調が面白いなwww

346 :名無しで叶える物語:2020/08/26(水) 00:32:18.45 ID:0spJvv3l.net
にこちゃん前回からいないけど来てないのか

347 :名無しで叶える物語:2020/08/26(水) 09:37:37.15 ID:v6IX7cWa.net
凛、またなにかやっちゃいましたかにゃ?

348 :名無しで叶える物語:2020/08/26(水) 10:46:56.38 ID:LxcfNaXD.net
>>339
これはどうも希ちゃんの言いぶんに分があるように思う
おしっこかけた上に叩いちゃったら、もうそういうプレイだもん
純情な希ちゃんはさぞ傷ついたことだろう

349 :名無しで叶える物語:2020/08/26(水) 20:44:30.13 ID:A4zzA0PA.net
翌日

凛「ん……にゃ」

凛「……」グッグッ

凛(まだ少し痛いけど……歩ける程度には回復したかな)

凛(真姫ちゃん達は……)

真姫「……」ングォォォ

希「……」ガゴォォォォ

穂乃果「……」スヤスヤ

凛「まだ寝てる、か」

凛(海未ちゃんと花丸ちゃんは……いない。外にいるのかな)ヨタヨタ

凛「……っあ、眩し……」

凛「昨日、ずっと洞窟の中にいたから目が痛いにゃ」

凛(海未ちゃん達は何処にいるのかな。まさか二人だけで寺に帰ったってことはないよね)

凛(そもそもヘロモン消えてるのかな、また蜂に襲われたりしたら嫌だにゃ……)

「ふっ……はぁっ……!」

凛「ん……? 喘ぎ声……?」

350 :名無しで叶える物語:2020/08/26(水) 20:52:36.41 ID:A4zzA0PA.net
凛「ま、まさか海未ちゃんと花丸ちゃん……」

海未『ここが気持ちいいのですか?』クニクニ

花丸『あっ……ん……! 海未さんの指、気持ちいいずらぁ……!』

花丸『んんっ……!』ヌプッ

海未『ふふ……いけない子ですね、こんなに濡らして』ヌロ…

花丸『意地悪、しなっ……いで……! じれったいよ……』

花丸『皆が起きる前に、早く挿れてほしいずら……!』

海未『そんなに欲しいなら……孕めオラァ!』ズブパンパンパ…ビュルルビュービュッビュルルビュ

凛「こういうこと!? そういう……関係だったのか」

凛「こいつぁ見なきゃどうにもならんにゃ」

「はっ……くっ、あっ……!」

「ふうっ……はあっ!」

凛「声はこっちの方から……にゃ?」

海未「やぁっ!」ヒュンッ

花丸「っ! ……らぁっ!」ガッ

凛(チャンバラ……?)

351 :名無しで叶える物語:2020/08/26(水) 21:03:08.60 ID:A4zzA0PA.net
凛「えぇ……こんな爽やかな朝に、女子高生が何でチャンバラしてるにゃ……」

凛「レズセックスの方がまだ山で見るよ」

海未「……っと、起きましたか」

花丸「ふぅ……お手合わせありがとうございました! 海未さんとっても強いずら!」

海未「いえ、此方こそ。朝の稽古に付き合わせて申し訳ありません」

凛「海未ちゃん弓道家でしょ? 剣道もやってたっけ」

海未「中学時代に少々。腕が鈍らない程度には、今でも朝稽古をしているんですよ」

凛「知らなかったにゃ……花丸ちゃんは?」

花丸「マルはおじいちゃんに一通り教えてもらってるから……運動神経は鈍い方だけど、何とか着いていくくらいならできるずら」

花丸「うちの家もお寺さんをやってるから、礼儀作法が身につく武道やスポーツは大体やれって言われてるんだよね」

凛「二人とも万能感あるにゃ……」

凛「り、凛はサッカーが出来るよ。PKの勝率8割にゃ」

花丸「それサッカーの道に進んだ方が良かったんじゃ……」

352 :名無しで叶える物語:2020/08/26(水) 21:10:23.30 ID:A4zzA0PA.net
海未「足はもう動かしても大丈夫なんですか? 痛みなんかは……」

凛「まだ少し違和感はあるけど、昨日みたいに動くだけで痛いってことはないよ。ありがとうね」

花丸「良かったずら。折角の合宿なのに練習に参加出来なかったら悲しいもんね」

凛「うん! 凛も皆が起きるまでチャンバラやっていい?」

海未「足に負担がかからない程度なら。なるべく節くれのない枝を使って、寸止めでお願いしますね」

凛「うんっ!」



穂乃果「なんか喘ぎ声が聞こえるね」

希「ふむ、これは……海未ちゃんと花丸ちゃん、凛ちゃんの3Pに違いないな」

穂乃果「えっ、3P!?」

真姫「写真撮ってばらまいてやりましょ」

穂乃果「真姫ちゃんもだんだんこっちに染まってきたね」

希「若人の成長は嬉しいことやん」

353 :名無しで叶える物語:2020/08/26(水) 21:43:38.53 ID:A4zzA0PA.net
凛(起きてきた三人を加え、寺に戻って歩き始める)

凛(切り立った崖を登る羽目になったらどうしようと不安だったが、予感は的中し凛が滑り落ちた崖を登らなければ道はないらしい)

凛「よく降りてきてくれたね皆……凛三人分くらいあるよ、この崖」

真姫「蜂に追われながら崖を滑り落ちるのはスリルがあったわ」

希「ごつごつしてるから何とか登れそうやし、早いところ登っちゃお。まだ朝ごはん食べる前かもしれん」ギュッ

穂乃果「昨日から魚の野草巻きしか食べてないしね。お肉出るかな?」グッ

希「豆腐ハンバーグくらいなら出るかも」

真姫「出ないわよ。前に来た時、精進料理オンリーだったから」

花丸「昨日の夕飯は味噌汁と湯葉と豆腐と青菜のおひたしだったずら」ガッ

穂乃果「え……それ一週間続けたら死んじゃうんじゃない……?」

海未「私は家でも似たようなものなので、別に気にならないですね」

穂乃果「海未ちゃんは人生常に修行中みたいなもんだし、そりゃそうだろうけどさー……」

354 :名無しで叶える物語:2020/08/26(水) 22:04:15.36 ID:A4zzA0PA.net
凛(朝食の話をしながら何とか崖をよじ登り、蜂に気をやりながら昨日無我夢中で駆けた森の中を歩いていく)

凛(フェロモンが消えてたらいいけど、凛達は昨日お風呂にも入ってないし服も洗ってないから正直怪しい……)クンクン

凛「ご飯もいいけどお風呂入りたいにゃ……汗臭いよ」

凛「かよちん達は無事戻れたのかな……まだこの森の中を彷徨ってるってことはないよね?」

花丸「そこまで深い森じゃないし、昨日蜂から逃げ回ってた感じだとまぁ大丈夫だと思うけど……」

花丸「一度お寺に戻って、いなかったら探しに行くよ」

凛「うん……」

穂乃果「昨日叫び声とか聞こえなかったし大丈夫じゃない?」

希「こんな森の中で夜迎えたら、絵里ちが叫んでるもんな」

海未「怖がりですからね、絵里は」

凛(森を抜け、広々としたグラウンドに戻ると駆け回っている愛ちゃんの姿が見えた)

凛(愛ちゃんがいるってことはかよちん達も戻れた、ってことだよね)

355 :名無しで叶える物語:2020/08/26(水) 22:11:13.99 ID:A4zzA0PA.net
希「……何してるんや、あの子」

凛「何って、走り回って……ん?」

凛(最初に見た時は、シャトルランでもやっているのかと思った)

凛(前方に走っていき、踵を返してまた走って戻る。ただそれだけの動作)

凛(問題は……)

穂乃果「ボール、投げてない?」

凛「ボールを投げて、走っていってキャッチして……また投げてキャッチして……って! あれ地味に凄いんじゃ……」

真姫「いやいや! 凄いなんてもんじゃないわよ、山なりとはいえ何で投げたボールに追いつけるわけ!?」

花丸「一人キャッチボールずら、愛さん暇なときによくやってるよ」

海未「無茶苦茶な瞬発力とスタミナですね。私も一回やろうとしましたけど……あれって出来るもんなんですね」

凛(凛も瞬発力には自信がある方だったけど……あれは流石に無理かなぁ)

凛(甲子園ってあんなのがゴロゴロいるの……?)

356 :名無しで叶える物語:2020/08/26(水) 22:20:13.70 ID:A4zzA0PA.net
愛「あ、ずら丸ちゃん達おはよー。案外元気そうだね」

花丸「元気じゃないずらー。おぶって部屋まで連れて行ってほしいずら」

愛「駄目駄目、自力で部屋まで戻れば花丸あげちゃうよ。花丸だけに! あっははー」

愛「こっちは適当なところで蜂追い払ったけど、そっちはどうだったの?」

穂乃果「ヤバかったよ。凛ちゃんが崖から落ちて……」

ーーーーーーーー

愛「へぇ、そんなことになってたんだ。大変だったね」

愛「てかさ……ずら丸ちゃん、あれ投げたんだね」

花丸「投げたずら」

愛「んー……」ポリポリ

愛「……合宿中、投げんなって言ったよな?」ギロッ

凛「……」ビクッ

凛(な、なんか雰囲気変わったような……)

357 :名無しで叶える物語:2020/08/26(水) 22:25:19.26 ID:A4zzA0PA.net
花丸「緊急事態だったから仕方ないずら」

愛「それでもさー……んーっ……」

愛「ま、いっか。もう使っちゃだめだからね」

真姫「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 私、あのボールの正体見破るって宣言しちゃったのに!」

愛「いやー、あはは。ごめんね、あのボールは結構身体に負担かかるんだ」

愛「花丸ちゃんってほら……小柄でしょ? 身体に負担かけすぎるとヤバいんだよね」

真姫「むー……」

希「素直に諦めるやん、甲子園で長野佛教と当たるかもまだ分からんし」

海未「そうですよ、当たらなければあのボールがどんな代物でも関係ないんですから」

愛「ブロックの反対側でも、お互い勝ち上がれば最悪決勝で戦うことになるけどねー」

358 :名無しで叶える物語:2020/08/26(水) 22:33:54.16 ID:A4zzA0PA.net
凛「ところでかよちん達は今どこにいるにゃ?」

愛「花陽とタマヒーはまだご飯食べてるとこじゃない? ことりはお風呂行くって言ってたし……エリーはお寺に戻ってから姿見てない」

希「姿見てない? 部屋に戻ってないん?」

愛「布団敷かれた形跡も無かったし、わっかんないなー」

希「おかしいなぁ……夜中のお寺で一人遊びするような子じゃないのに」

凛「まぁまぁ、皆無事に戻ってきたならそれでいいよ。凛お風呂入ってくるね」

海未「では、私も……真姫も一緒に入りましょう」

真姫「え、えぇ……別にいいけど」

穂乃果「私は先にご飯食べたいけど、こんな汗ドロじゃ叱られちゃいそうだしねー」

穂乃果「希ちゃんも行くでしょ? 洗いっこしよーよ」

希「んー……ウチ、先に絵里ち探してくるよ」

希「何処かで気絶してたら、風邪引いちゃうかもしれないし」

穂乃果「そう? じゃあ先に行ってるね」

359 :名無しで叶える物語:2020/08/26(水) 22:41:24.18 ID:A4zzA0PA.net
お風呂

ことり「ふんふーんちゅんちゅん♪」

ガラッ

ことり「ふぁ……あっ、海未ちゃん! 良かったぁ、無事だったんだね」

海未「えぇ、何とか」

ことり「背中洗ってあげるよ。身体中汗でびちょびちょだね……♡」ヌルル

海未「んっ……そこは背中じゃ……!」ニュルッ

真姫「仲良いわねぇ」ゴシゴシ

ことり「後で真姫ちゃんも洗ってあげますっ♡」

凛「ふー……」シャワー

穂乃果「んー! やっぱり朝シャン気持ちいいねっ!」シャワー

凛「そうだにゃー……あれ、穂乃果ちゃんまたおっぱい大きくなった?」

穂乃果「そうかな? 自分だといまいちわかんないや」

凛「大きいおっぱいなんてこうしてやるにゃ! えいっ」

穂乃果「やめてよくすぐった

ーーー風呂画面終了ーーー

希「絵里ちー? どこにいるんやー?」

希「おっかしいなぁ……お寺の周りにはいないみたいやし、やっぱり中なんかな」

360 :名無しで叶える物語:2020/08/26(水) 22:53:49.24 ID:A4zzA0PA.net
希「部屋……にはいないし」

希「ここにもいない、ここにも……うーん」

「どうかしたかね?」

希「あ、住職さん。おはようございます、絢瀬絵里を探しているんですが……何処に行ったか分かりませんか」

「部長さんなら、特別な稽古をつけている最中じゃ。そろそろ朝食を取る時間じゃし、連れて行ってあげてくれんかの」

希「はい! ……連れて行く?」

「一人で歩ける状態か分からんからな」タッタッ

「ここじゃ」ガラッ

希「お邪魔します……絵里ち? いるの?」

希(部屋に入って最初に見えたのは、小坊主だろうか、長い棍のようなものを持った三人……皆僧服を着込んでいる)

希「絵里ち!?」

希(その三人に囲まれながら、床の上に倒れ付すジャージ姿の人影は紛れもなく絵里ちだった。血にまみれ、顔はボコボコに腫れ上がりジャージの袖から見える素肌には青痣がいくつも浮かんでいる)

絵里「の……じょみ……」

希「絵里ち! 絵里ち、しっかりして! 生きてる!?」

「お前たち、一先ず朝餉にしよう。絵里さんも再開は朝食が終わってからでよいかな?」

希「修行って……こんなの暴行やん!? 許されるわけが……」

絵里「は……い……」

希「絵里ち……?」

361 :名無しで叶える物語:2020/08/26(水) 22:58:56.25 ID:A4zzA0PA.net
絵里「らいじょうぶ……だから」

希「まともに発音出来てないやん……と、とにかく一旦部屋に戻るから。薬を塗らなきゃ!」

「薬ならこれを使いなさい。よく腫れ、打ち身、捻挫に効く軟膏じゃ」

「凛さんだったかな、あの投手にも使ってあげなさい。風呂に向かう際、わずかに足を庇っていた」

希「っ! ……分かりました、ありがとうございます」

絵里「……」

希「……」ズリズリ

希「何であんなわけわからん修行受けてるん」

絵里「……」

希「部長だからって、無理しないで」

希「絵里ちは絵里ちらしく、強くなってくれればいいんだから」

希「ウチだって穂乃果ちゃんだって、絵里ちだから着いていってるんよ」

絵里「……ごめん」

362 :名無しで叶える物語:2020/08/26(水) 23:04:47.84 ID:A4zzA0PA.net
絵里「とりあえず……薬を塗ったら朝食を、っうっ……」

希「喋らんとき。口の中噛んでるみたいだし、動かすと染みるやろ」

希「……朝食食べ終わったら、さっきの修行、っていうか暴行また受けるん? ウチはよく分からんけどさ」

希「さっきも言った通り、ウチは絵里ちが無理するのが……一番嫌なんやけど」

絵里「……するわよ。食べたらすぐにでも、再開する……」

希「……分かったよ」

絵里「……」


ーーーーー

昨夜

『こんな夜更けにどうされましたかな、蜂に追われて疲れたでしょう。早く寝た方がいい』

絵里『……私に、稽古をつけてほしいんです』

『ほう?』

絵里『お願いします。強くなりたいんです』

絵里(……虹ヶ咲との一戦。碌に活躍できないのは私だけだった)

絵里(かすみちゃんの止まったボールすらまともに打てない、守備も上手くない。皆は、何だかんだ頑張ってるのに……)

絵里『お願いします……!』

『ふむ……はっきり、言ってもいいかな』

363 :名無しで叶える物語:2020/08/26(水) 23:15:13.24 ID:A4zzA0PA.net
『君は、音ノ木坂学院の中で一番弱い』

『バットを振る筋肉も無い、ボールを見る目もない。速く走れる足もない、ボールに飛びつく瞬発力もない』

『野球をしてきたという経験を除けば、君は4月に野球を始めたばかりの者にも劣るじゃろう。野球をやる才能が微塵もない』

絵里『……!』

絵里『……そんなこと、分かってるわよ。そんなこと、自分が一番よく分かってるのよ!』

絵里『だから諦めてた……適当に試合をして、適当に9人揃えて仲良く野球ごっこが出来ればいいって』

絵里『けど真姫が来て、凛が来て、甲子園に行って優勝するなんて、真っ直ぐな目で言われて! ……頼りない部長かもしれないけど、少しでも協力してあげたいのよ!』

『……三年生になるまで、何をしていたんじゃ』

『一年生の頃から正しい練習をしていれば、こうはならなかったろうに……三年間努力をしてきた者を相手に、残り三ヶ月もない中、強くなりたいなんて虫がいい話じゃと思わんか?』

絵里『それは……』

絵里『それでも、お願いします……どんなに厳しい修行でも音は上げません。お願いします』バッ

『……』

『分かった。此方に来なさい』

364 :名無しで叶える物語:2020/08/26(水) 23:21:49.50 ID:A4zzA0PA.net
絵里(案内されたのは10畳ほどの部屋……中には棍を持った三人のお坊さんが立っていた)

『今から、この三人が君をこの棍で殴りつける』

絵里『え……!?』

『気絶したらその間は攻撃は中断されるが、目覚めて立ち上がれば攻撃は再開される』

『後一週間のうちに、一時間連続で、三方向からの攻撃を避け続けられるようにならなければ修行は失敗じゃ。君はただ殴られ損になる』

『弟子には手加減をしないように言ってある。骨が折れるかもしれない、顔が潰れるかもしれない。それでもやるか?』

絵里『……やります、絶対に成し遂げてみせます』

『そうか、そうか。お前たち、始めなさい』

『『『押忍ッッッ!!!』』』

ーーーーーーーー

絵里「いっ……たぁ! ゴマ豆腐染みるぅ……」

希「大丈夫? 一人で食べられそう?」

絵里「だ、大丈夫よ……お風呂に入ってきて。昨日ずっと山の中にいたんでしょ? 泥まみれよ」

希「それならええけど……」

365 :名無しで叶える物語:2020/08/26(水) 23:21:58.83 ID:A4zzA0PA.net
今日はここまで

366 :名無しで叶える物語:2020/08/27(木) 07:40:37.13 ID:buRWfYXx.net
デッドボール耐性が鍛えられそう

367 :名無しで叶える物語:2020/08/27(木) 11:48:12.78 ID:03YWTkWK.net
絵里ちゃんが最弱のSS初めて見た気がする

368 :名無しで叶える物語:2020/08/27(木) 12:11:35.98 ID:WePqL9++.net
3年生になるまで何をしていたんじゃ…

369 :名無しで叶える物語:2020/08/27(木) 14:26:16.35 ID:BJ8jaWQ0.net
>>368
黙れドン

370 :名無しで叶える物語:2020/08/27(木) 15:16:20.91 ID:ePpiHdoL.net
希「ふぅ……やっとお風呂や。絵里ち本当に大丈夫なんかな……」ガラッ

凛「……」

穂乃果「凛ちゃん! 目を覚まして……息してないよ!」

海未「くっ……よくも凛を……」

「安心しろ……貴様らもすぐに地獄に送ってやる」

希「……」ガラララピシャッ

希「なんか魔王みたいなの浮いてた……」

希「気のせいやんな……? 疲れてるんかな、もう一回見てみよ」ガララ

真姫「凛の心臓は『臓器作成』で新たに作り出したわ。ことり……私に合わせてっ!」

ことり「う、うん! 空気をロープに……!」

真姫「私のチートスキル『大賢者』『万物流転』『目が合ったら死ぬ』『ハーレム形成』『ありふれた職業だがレベル100』『極限大魔法生成』……全てをそのロープに込めるわ!」キュオオオオッ

凛「真姫ちゃん……! 勝って……!」

「馬鹿な……異世界最強の魔王たる私が……! ぐあああぁぁぁっ!」

希「……」ピシャッ

希「あかん……寝よ……これは絶対関わったらあかん気がする……」

371 :名無しで叶える物語:2020/08/27(木) 15:20:18.49 ID:ePpiHdoL.net
真姫「あら、希……お風呂に入りに来たんじゃないの?」ガラッ

凛「何でまた服着ようとしてるにゃ」

希「何やったん今の。なんかよくある三流芝居が展開されてたけど」

海未「何を言ってるんですか……? 私達は身体を洗っていただけですが」 

希「いや異世界の魔王とか何とか……」

穂乃果「そんなのいるわけないじゃん。異世界転生の見過ぎだよ」

希「いや……えぇ……?」

希「やっぱお風呂入るわ……頭が変になってるんかもしれん」ペタペタ

穂乃果「何言ってたんだろうね」

凛「崖から降りるとき頭でも打ったんじゃないの?」

真姫「よく分からないわね。さっさとご飯食べて練習行きましょ」

372 :名無しで叶える物語:2020/08/27(木) 15:26:36.53 ID:ePpiHdoL.net
凛「やっとまともなご飯にありつけるにゃ……」

穂乃果「もうお腹ぺこぺこだよ……」キュルル

真姫「足りたらいいけど。ここあまり量出ないわよ?」

穂乃果「食べられるだけで満足だよ」

海未「食への感謝……穂乃果も分かってきましたね」

穂乃果「そういうのいらない」

ことり「じゃあ私、部屋に戻って先にグラウンド行ってるね」

海未「おや、ことりは食べに行かないのですか?」

ことり「私はもう食べたから大丈夫だよ。海未ちゃん達だけで行ってきて」

穂乃果「しかし珍しいね……こういう合宿だと、全員揃ってご飯食べることが多いのに」

真姫「野球をやってる人間なんて皆個人プレーのエゴイストよ? 集まって食事させられるわけないじゃない」

凛「それもそうだけど。何か不思議な感じにゃ」

373 :名無しで叶える物語:2020/08/27(木) 15:35:38.12 ID:ePpiHdoL.net
真姫「まぁ……凛は特にそうよね。皆で一緒にご飯とか好きそうだし」

凛「陸上もサッカーも正式な部員じゃなかったから、合宿とかいけなかったんだよね……楽しみにしてたのに」

穂乃果「まぁまぁ。次の機会をお楽しみにだよ」

凛「GW終わったらもう合宿とかなさそうだけどね」

海未「7月初めからもう予選が始まりますからね。何かをしている余裕は無さそうですね」

ことり「土日に学校泊まり込んだりとかは……」

穂乃果「いやー……無理じゃない?」

凛「じゃあ合宿終わったら甲子園予選まで時間飛ばすよ」

真姫「……!? やっぱり凛、あんたあの時も……!?」

凛「え? 何言ってるの凛ちゃん、ジョークだにゃ」

真姫「……」

穂乃果「あはは……ほら、もう着くから。とりあえずご飯食べようよ」

374 :名無しで叶える物語:2020/08/27(木) 15:44:52.19 ID:ePpiHdoL.net
穂乃果「すいません、4人分の朝ごはんを……」

「あぁ……いや。もうおかずしかないが、それでも大丈夫かい」

穂乃果「えぇ!? ご飯は!? パンでもいいけど……!」

「あの子が全部食べちまったよ」

花陽「美味しいなぁ……水が違うのかな」もぐもぐ

花陽「米自体は珍しいものでもなさそうだけど、長野県で多く流通してるコシヒカリじゃなく風さやかを使ってるのはいいね」もぐもぐ

花陽「うん……あっさり、さっぱりとしている中に深い旨味の詰まったご飯だから漬物がよく合う……」もぐもぐ

「何処にそんなに米が入るんですか……? 食べた量、花陽ちゃんの体積超えてません?」

花陽「別腹ですもん」もぐもぐ、ごくん

花陽「おかわりお願いします!」

「もう無いよ」

花陽「ピャアッ!? な、なんで……お米がもう無いなんて……!」

凛「かよちん……!」

花陽「あ、凛ちゃん! 良かったぁ……心配してたんだよ、山の中で心細くしてないかなって……」

凛「ご飯何杯食べたの?」

花陽「えっと……35杯までは数えてたんだけど。ちょっと分からないや」

凛「かーよーちーんーっ!」

375 :名無しで叶える物語(鮒寿司):2020/08/27(木) 15:52:52 ID:ePpiHdoL.net
真姫「炊き直してもらうことは……」

「水を組んでくる小僧も、下界に買い出しに行った小僧も戻ってきてないし難しいなぁ……」

「おかずはたっぷりあるから、何とかこれで腹を膨らせてくれ」ドサッ

穂乃果「えぇ……」

花陽「ごめんねぇ……まさかお米が無くなるなんて……」

凛「かよちんはご飯好きだからしょうがないよ。これを予見できなかった凛も悪いにゃ」

凛「けど本当によく食べたね。新記録じゃない?」

花陽「うーん……昨日、山の中を走り回って体力使っちゃったからからなぁ? あの後、スタミナ切れた後も悪路を二時間は走ったし」

凛「ならしょうがないにゃ! 凛はご飯食べすぎて丸くなったかよちんも好きだよ」ギュッ

花陽「り、凛ちゃん……皆の前で恥ずかしいよぉ」

穂乃果「ごま豆腐二十個くらいない?」モグモグ

海未「こんにゃくでなるべく腹を膨らせましょう。昼はまともにご飯食べたいですね」モグモグ

真姫「まだ花丸と希が来てないんだから、ある程度は残しておきなさいよ」モグモグ

376 :名無しで叶える物語(なし):2020/08/27(木) 15:54:14 ID:WePqL9++.net
だからお風呂シーンをさあ…!

377 :名無しで叶える物語:2020/08/27(木) 16:02:36.52 ID:ePpiHdoL.net
凛「んぐ……ぷはー」キョウモイイテンキ

凛「お腹いっぱいにゃ……寝ていい?」

真姫「駄目よ。20分ほどしたら練習行くから」

凛「にゃあ……」

海未「一週間しかないうち一日を無駄にしましたからね。今日からは気合を入れて練習しましょう!」

穂乃果「昨日あんまり寝られなかったんだけどなぁ……」

凛「イビキかいて寝てたにゃ」

穂乃果「う、嘘だぁ。私いびきなんてかかないもん……」

凛「かいてたにゃ」

穂乃果「うう……恥ずかしいなぁ、もう!」

真姫「女子なら私みたいに静かに眠りなさいよ」

凛「真姫ちゃんは倍ぐらいいびきかいてたし、寝言で誰かにマウント取ってイキってたよ」

真姫「は? 証拠あるの? 無いでしょ? はい論破ね」

海未「はいはい。グラウンドに行きますよ」

378 :名無しで叶える物語:2020/08/27(木) 16:13:36.15 ID:ePpiHdoL.net
グラウンド

ことり「いくよーっ……と」カンッ

希「はいはーい」パシッ

愛「ことりー! こっちも、こっちもほしい!」

ことり「はーい!」カンッ

愛「よっと……」パシッ


凛「希ちゃん、ご飯も食べずに練習してるにゃ……」

海未「朝ごはんは食べないと健康に悪いんですけどね」

真姫「というか何でことりが長野佛教相手にノックしてるのよ! 前にうちでノック出来るの私だけって言ってたのに」

穂乃果「ことりちゃんと海未ちゃんとにこちゃんはノックできるよ?」

真姫「なんで兼部のピンチヒッターだけ野球上手いのよ……」

希「あ、皆。ノック入る?」

真姫「ノックはいい。絵里は見つかったの?」

希「あー……見つかったは見つかったんやけど。個別で修行受けてるから、しばらく放っておいてあげてくれない?」

凛「個別修行……!?」

379 :名無しで叶える物語:2020/08/27(木) 16:22:33.21 ID:ePpiHdoL.net
凛「待ってよ、ずるいにゃずるいにゃ! 主人公凛なのに、絵里ちゃんだけ個別で特別な修行なんて!」

凛「凛だって必殺技欲しいにゃー!」

希「必殺技の修行か分からんけどね」

真姫「まぁ……でも凛の気持ちも分かるわ」

凛「真姫ちゃん……! 分かってくれるの? やっぱり持つべきものは真姫ちゃんだね……!」

真姫「ええ、私を三振に取ったから期待してたのに、割とクソザコみたいなスペックしか無いし……必殺技に期待したくなるのも分かる」

凛「放して海未ちゃん。凛はこいつを殴らにゃいかん」

海未「石は駄目です! 殴るんなら石投げ捨ててからにしなさい!」ガシッ

穂乃果「けど実際そうなんだよね。凛ちゃん、追い込まれるとフォーク投げたりホームラン打ったりするけど……」

穂乃果「普段は私でも打てるくらい球は遅いし棒だしノーコンだし、打つ方も球拾ちゃんに連続三振するレベルだし……」

「私がスタミナつけてずっとピッチャーやってた方が、まだ点を抑えられますね」

凛「えっ、凛の評価意外にボロクソ……?」

凛「ただ凛のママは甲子園優勝してるんだよ? 貴様ら凡俗とは血筋からして違うから敬語使え敬語」

希「おくたばりくださいオラァッ!」ボグォ

凛「がはっ! な、なんで……理不尽すぎる……」シクシク

380 :名無しで叶える物語:2020/08/27(木) 16:40:52.39 ID:AsartDDv.net
サイコにはサイコの秩序があるんだなぁ

381 :名無しで叶える物語:2020/08/27(木) 18:27:13.06 ID:ePpiHdoL.net
希「だから必殺技が欲しいと、そういうことやろ?」

凛「まぁ……大体そういうことだけど」

凛「凛、あんまり役に立ててないし……」ブツブツ

「そういうことならやってみるかの?」

凛「……うおっ!? いつからいたにゃ和尚!?」

「こっちに来なさい」

凛「え、えっと……皆、いい?」

海未「大丈夫ですよ、頑張って必殺技身につけてくださいね」

希「必ず殺すと書いて必殺やからな。どこまでも追い詰めて必ずぶち殺してやる」

穂乃果「こっちもこっちでキツそうだしね……」

「皆はもう一度森に入ってきなさい」シュッシュッ

穂乃果「ああ! また蜂のフェロモンかけた!?」

「ほっほっほ、今日は別の液体じゃよ。ささ、行ってきなさい」

希「はい……足腰は確かに鍛えられるけど、この森嫌なんよなぁ……」

382 :名無しで叶える物語:2020/08/27(木) 18:31:43.91 ID:ePpiHdoL.net
真姫「さて……」ザクザク

真姫「本当に蜂は寄ってこないみたいね」

愛「別物だって言ってたしね。今度は何が寄ってくるんだろ」

愛「夜まで逃げちゃうよ、寄るだけに!」

穂乃果「お前本当にもう許さねぇからな」

希「二度とそんな口聞けなくしてやるから」

愛「……!?」

海未「二人とも、愛が怖がっているではないですか。めっ、ですよ」ボグシャァ

穂乃果「がっ……はぁっ……!」

希「穂乃果ちゃん! 穂乃果ちゃん……!? 心臓が止まってる……!」

真姫「ところで花丸はどうしたのよ、さっきから姿が見えないんだけど」

愛「今日は休ませてるよ。むしろ何でそっちピンピンしてるの? 昨日遭難してたよね?」

ことり「一日も無駄には出来ない、ってやつだよ。うちの高校は弱小だからねぇ」

383 :名無しで叶える物語:2020/08/27(木) 18:45:21.79 ID:ePpiHdoL.net
希「まぁそういうことやん、合宿で鍛えるチャンスなんて早々ないからね」

ことり「穂乃果ちゃんは?」

希「生き返らないから捨ててきた」

真姫「おかしいわね……何も寄ってこない」

真姫「あの住職のことだから、次は蛇に襲われるフェロモンでもかけてきたのかと思ってたけど」

愛「まぁまぁ、何もないならないほうがいいよ」

海未「そうですよ。ただ山を歩いているだけでも足腰は鍛えられますし」

海未「それに何でしょうか、心が踊るんですよね。山を歩いてると……私意外とこういうの好きかもしれません」

ガサガサ

海未「む……猪でしょうか」

花陽「い、猪……? 怖いよ……」

希「大丈夫や花陽ちゃん、ウチの後ろに隠れて」

クマ「……」バサッ

希「……」

クマ「……」

希「ここでウチが花陽ちゃんを生贄に差し出すと思ったやろ?」

希「せやねん」スッ

花陽「ピャァァァァァァッ!!!??!?」

384 :名無しで叶える物語:2020/08/27(木) 18:52:54.27 ID:ePpiHdoL.net
真姫「冗談やってる場合じゃないわよ! 逃げるわ!」

愛「し、死んだふりしたほうがいいんじゃない!?」

海未「どっちも間違いです! クマと遭遇した際は、視線をそらさずゆっくり下がっていくんですよ!」ジィッ

海未「背中を向けると襲ってきますからね、真っ直ぐに目を……」

クマ「……」ブォンッ

海未「ひいいっ!? な、何で襲ってくるんですかぁ!?」

希「な、なぁ……思ったんやけど……」

希「さっき和尚さんがかけてたアレ、まさか……」

ことり「クマを……攻撃的にするような液体……?」

「「「「「「わぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」」」」」ダッ

クマ「……」ザザザザザザ

ーーーーー

「これじゃ」

凛「何これ、でっかい岩……?」

「うむ。これをな……」ポン

凛「……これ、野球のボール? えっと、まさかとは思うけど」

「この位置……丁度マウンドと同じ高さに土が積まれてるじゃろ? ここからあの岩にボールを投げて」

「粉々に砕きなさい」

凛「え……」

凛「えええええっ!?」

385 :名無しで叶える物語:2020/08/27(木) 18:53:26.76 ID:ePpiHdoL.net
今日はここまで

386 :名無しで叶える物語:2020/08/27(木) 20:12:30.90 ID:Wz7qUV6R.net
穂乃果ちゃんしれって死んでてワロタ

387 :名無しで叶える物語(はんぺん):2020/08/28(金) 01:43:56 ID:FublSSGr.net
作者インマーか…

388 :名無しで叶える物語(もんじゃ):2020/08/28(金) 08:43:35 ID:fOhLD3Pt.net
めっちゃおもろいやん…

389 :名無しで叶える物語:2020/08/28(金) 10:23:05.63 ID:vJEifFTc.net
絶賛してるやつら居るから半分までは読んでみたものの糞つまらねえ…

390 :名無しで叶える物語(馬刺し):2020/08/28(金) 14:18:13 ID:emUcMVuf.net
お疲れさん
半分以降もノリは一緒だからこの作品は合わないと思うよ

続き期待

391 :名無しで叶える物語:2020/08/28(金) 21:16:18.73 ID:sfiYfh57.net
今日は投下ないです

392 :名無しで叶える物語:2020/08/28(金) 21:23:30.65 ID:U7+YMBCV.net
🥺

393 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 11:17:25.45 ID:wNdK534d.net
保守

394 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 19:11:00.81 ID:YUdCjrLg.net
凛「いやいや、砕けって……」

凛「……」ヒュンッ

ボコッ

コロコロ…

凛「……」

凛「いや無理にゃ!? 流石に凛でも分かるよ、これ人間が出来ることじゃないって!」

「そうかのう?」

凛「そうだよ! ボールで岩なんて砕けるわけないじゃん!」

「ふうむ……よさそうじゃのう」テクテク

凛(一回り小さい岩……何をする気だろ)

凛(まさか砕くとか言わないよね? 何も持ってないし……)

「……」チョン

凛「にゃ……?」

「まぁ無理かどうか頑張ってみなさい。ほっほっほっ……」テクテク

凛「何がしたかったの……? 軽く指でつついただけじゃん」

395 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 19:15:21.74 ID:YUdCjrLg.net
凛「別になんともなってないし……」

凛「ひょっとして凛騙されてる? まさか凛が最強になることを嫌った長野佛教の回し者とか……」ピキ…

凛「にゃ……? 何の音……」ピキピキ…

バギィッ!

凛「な!? さ、さっきの岩……砕けてる!?」

凛「なんで……? 突っついただけだよね……?」

凛「……」

凛「とりあえず、とりあえず百球投げてみて様子見るにゃ!」

凛「もしかして爆弾とか中に埋め込まれてて、スイッチで起爆するやつかもしれないし! 一球目っ!」ヒュッ

ボンッ

コロコロ…

凛「よーし、二球目ぇ!」ヒュンッ

396 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 19:24:34.94 ID:YUdCjrLg.net
ーーーーーーーー

カァー……カァー……

海未「死ぬかと思いました……」

花陽「上手く心臓を抉り抜けて良かったです……」

愛「クマを米と認識することで心臓を抉り取るなんて、中々できる発想じゃないよ」

愛「花陽は今日のMVPなんだから、お風呂で背中流してあげるね」

希「それにしてもええんかなぁ……こんな山の中で走ってばっかで」ズルズル

希「もっと野球の練習っぽいこと出来ると思ったんやけど。ほら、ことりちゃんしっかりクマ持って!」ズルズル

ことり「やだよぉ……生臭いよぉ……。血が垂れてる……」シクシク

真姫「泣かないで! 私なんか真ん中よ、頭に血がかかってんのよ!?」

真姫「球拾が持てばいいじゃない、こんなの!」

「え……いや、持ち帰りたいって言ったの希ちゃんと真姫ちゃんだねだし……やです……」

希「MVPの花陽ちゃんと他校の人達はええよ」

希「けどなァ! 仲間が血にまみれてるのに、手を汚さずに生きている貴様のことは許せない!」

「病人め」

花陽「凛ちゃんどうしてるかなぁ……必殺技習得できたのかな」

397 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 19:30:16.97 ID:YUdCjrLg.net
真姫「どのみちご飯でしょ。呼んできてあげなさいよ」

花陽「う、うん……和尚さんが連れて行ったとこ見てくるね」ダッ

真姫「ええ、行ってらっしゃい」ペタッ

真姫「うえ……何これ、何処の臓器よ」

ことり「臭いよぉ……汚いよぉ……助けて海未ちゃん」シクシク

海未「申し訳ありません、足を持つのに忙しいんです」

ことり「海未ちゃんはいっつもそうだよ! 私が困ってる時助けてくれない!」

海未「……っ! ことり、貴女は最低ですっ!」バシィッ

真姫「……えっ!?」ヒリヒリ

ことり「……? ……!?」

真姫「???? ……!?!!?!?」ヒリヒリ

海未「殴れるわけないじゃないですか……ことり、血にまみれていても貴女の美しさは変わりません」チュッ

ことり「ンミチュア……」

真姫「?????」ヒリヒリ

398 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 19:37:39.05 ID:WFQs+LGy.net
>>396
花陽が先に必殺技覚えてて草

399 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 20:01:03.40 ID:YUdCjrLg.net
花陽「えっと……凛ちゃん何処だろ?」キョロキョロ

バシィッ

バシィッ

花陽「なんだろ、この音……凛ちゃん? そっちにいるの?」

凛「65球目……だっけ?」

凛「あれ……また1から数え直しにゃ! 一球目!」ヒュッ

花陽「り、凛ちゃん何やってるの?」

凛「かよちん? ってあれ!? もう夕方にゃ!?」

コロコロ

花陽(このボール……物凄くボロボロだよ)

花陽「まさか……朝からずっとあの岩にボールぶつけてたの?」

凛「うん、砕けって言われて」

花陽「砕けるわけないよぉ……岩だよ、あれ?」

400 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 20:04:40.87 ID:YUdCjrLg.net
凛「だよねぇ……凛もそう思うんだけど」

凛「かよちんは何してたの? また蜂に追われてた?」

花陽「ううん、クマに追われてた」

凛「クマぁ!? え、えっ!? 皆無事だったの!?」

花陽「クマに襲われたって意味なら皆無事だったよ」

凛「よく逃げ切れたね……あの山、クマ出るんだ……」

花陽「うん、何とか……」

凛「ところで何で右腕が血に染まってるの?」

花陽「そういうものだよ」

凛(よく分からんにゃ……けど凛がやってることもよく分からんし、おあいこってことにしとこ)

凛「そろそろ夕御飯かな……? かよちん、一緒に食べに行こ」

花陽「うん、一緒に手を洗いに行ってからね」

401 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 20:27:23.18 ID:YUdCjrLg.net
凛「……中々血が落ちないね」パシャパシャ

花陽「粘り気があるね……」パシャパシャ

花丸「……何で右腕が血塗れずら?」

凛「ゆっくり休めた?」

花陽「クマの心臓を抜き取ったんだよ」パシャパシャ

花丸「!?」

凛「!?」

花丸「ほぇ〜……未来ずら」

凛「過去だよ、原始人に近いにゃ……」

花陽「何とか目立たないようにはなったしご飯食べに行こうか。花丸ちゃんも行くでしょ?」

花丸「いくよ。何でか朝も昼もご飯無かったから楽しみずらー。おかずなんだろ?」

花陽「多分クマの刺し身とか出ると思うよ」

402 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 20:31:58.85 ID:YUdCjrLg.net
ーーーーー

希「クマって意外に美味しいんやな」モグモグ

真姫「ええ、意外といけるわ」モグモグ

花丸「未来の味がするずら」モグモグ

凛「皆、大皿の上にクマの首が乗ってる状況には疑問を覚えないんだね」

海未「必殺技の修行はどうでしたか?」

凛「全然にゃ! 全くもって身になってる気がしないや」

ことり「大変だねぇ」モグモグ

希「穂乃果ちゃんにも食べさせてあげたかったな……」

真姫「辞めなさいよ穂乃果の話は……」

愛「せめて安らかに眠ってほしいね……」

凛「何なの? 凄い不穏な空気が漂ってるんだけど」

花陽「忘れた方がいいよ。人間は忘れることで前に進める生き物だから……」

403 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 20:37:09.75 ID:YUdCjrLg.net
ガラッ

希「ん……」

絵里「……」フラッ

絵里「クソが……」フラッ

希「絵里ち、大丈夫……?」

絵里「大丈夫よ、何とか今日は自力で歩けるから……」

凛「ぼ、ボロボロにゃ……絵里ちゃんも修行してるんだよね? ど、どんなのやってるの?」

絵里「四方八方から迫りくる棍にぼこぼこにされる修行よ……」

絵里「あぁ……味噌汁が身体に染みる……」

「絵里さんは肉を食うてはならんぞ。坊主達は肉を長いこと食っとらんからな、血の匂いがすると気が狂いよる」

絵里「え……」

「見なさい、調理をした厨房の連中を。空中に向かって怒鳴ってるじゃろう」

「クマの肉食べたさに気が触れておる」

花陽「さっきから包丁振り回してると思ったら……」

希「仕方ないやん、こんな環境なんやし」ズズ…

404 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 20:42:20.69 ID:YUdCjrLg.net
絵里「私も、ってことは凛も修行してるのよね? 何をやってるの?」

凛「ひたすら巨大な岩にボール投げてるよ。砕かなきゃいけないんだって」

絵里「そっちもそっちでヤバそうね……頑張りなさい、凛」

絵里「貴女はうちのエースになるかもしれない女なんだから」ナデナデ

凛「ふにゃあ……」

希「球拾が凄い顔してるで」

真姫「自分が音ノ木坂のエースだってことだけが心の支えだったみたいね」

真姫「むごい話よ」

愛「ふー……ご馳走様。皆、肉にありつけたのは音ノ木坂のお陰なんだからお礼言ってね」

「「「「「「ありがとうございましたッッッ!」」」」」」

花丸「ありがとうございました、学校でも食べさせてもらえないし肉に飢えてたからありがたいずら……」

凛「仏教系の高校って大変だにゃ……」

405 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 20:45:30.40 ID:YUdCjrLg.net
凛「凛もご馳走様! 明日も朝から投げるしさっさとお風呂入って寝るにゃ」

花陽「あ、待って! お風呂一緒に入ろうよ」

愛「愛さんも一緒に入るよ。背中流すって言ったもんね」

凛「それじゃ皆で……」ブルル

凛「ん……凛、先におしっこしてくるにゃ。皆先に行ってて」

花陽「はーい」

海未「先に行くのはいいですけど……トイレの場所、分かりますか?」

凛「流石にそのくらい分かるよ……ちょっと行ってくるね」

希「絵里ちも入ろ、上がったら軟膏塗ってあげるよ」

絵里「ええ、お願い……肌がヒリヒリするわ」

406 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 20:54:56.76 ID:s0L9qvcR.net
凛「……」

凛「……普通に迷ったにゃ」

凛「トイレ何処ー? 漏れちゃうよ! 人に聞こうにも……」キョロキョロ

シーン

凛「だーれもいない! 手当り次第に開けてくしかないのかにゃ」ガラッ

「あぁ……熊五郎、じれってぇ。早く肉棒挿れてくれや」

「へへ、長次郎さんのケツ穴ひくひくしてやらぁね」

凛「失礼しました」ピシャッ

凛「昔ながらの寺では今も衆道狂いがいると聞いていたけど、本当だったんだなぁ……」しみじみ

凛「って、あっ! さっきの人達にトイレの場所聞けばよかったにゃ!」

凛「まぁいいや、他の部屋にも人いるだろうし……ここは何の部屋にゃ?」ガラッ

「……あ」

407 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 21:01:21.96 ID:s0L9qvcR.net
「……」

凛「え……」

凛(男の子……それも幼稚園にも入っていないだろう子供から、中学生くらいの子まで……)

「あ、あの……」

「ばっくだんさー」

凛「し、信じられない……本当に男の子? 凛、同年代の子なんてテレビでしか見たことないよ」

凛「皆レイプ宇宙人に連れ去られたと思ってたのに……」

「それはワシから説明しよう」

凛「住職……どういうことなの?」

「この寺に来る時、やけに場所の隠匿が厳重だとは思わなかったかい」

凛(確かに……言われてみれば睡眠ガスで寝かせられたりしてたにゃ。真姫ちゃんでも場所分からないって言ってたし)

「この寺はのう、野球修行の他にレイプ宇宙人から男子を守る役割を担っているんじゃ。男という種が滅びぬよう、な。25歳を超えれば男は狙われぬ」

「それまで、この寺で保護し預っているんじゃよ。レイプ宇宙人に気付かれぬようにな……」

408 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 21:06:35.91 ID:s0L9qvcR.net
「鍵をかけておきなさいと言ったじゃろう」

凛(そう言いながら、住職は男子達の中でも最年長……やけに肌の白い子に言う。外に余り出られないのだろう、一種病的な、不健康な白さがやけに目につく)

「ご、ごめんなさい……コタロウ君がおしっこに行きたいと言うから」

凛「あ……トイレ! そうにゃ、凛トイレに行こうと思ってたんだ」

凛「トイレは何処にあるにゃ!?」

「ここから3つ先の扉が厠じゃ。ここで見たことは誰にも話さないでおいてくれるか」

凛「勿論……漏れるから凛はもう行くにゃ!」ダッ

凛「駄目です」ジョボボボボボッジョバーナ

「うわぁぁぁぁぁぁっ!?」

「馬鹿者! 早くトイレに行きなさい!」

凛「何怒ってるにゃ! 怒りたいのは凛の方にゃ」ジョボボテクテク

「下界の女性って……怖いんですねぇ」

「あれは特別じゃよ」

「ばっくだんさー」

409 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 21:15:33.21 ID:s0L9qvcR.net
凛「ふぅ……それにしてもここが男子を守る場所だったなんて」

凛「今や天然記念物だもんなぁ……皆にも黙っておかなきゃ」

凛「ぱんつが気持ち悪いにゃ。さっさとお風呂行こ……」ビジャビジャ

「……」


凛(三日目、四日目と……凛は岩に向かってボールを投げ続けた)

凛(けれど成果は無く。岩は一向に割れる気配はない)

凛(絵里ちゃんの方は、まだまだ殴られているようだけど少しずつ傷が減っていってる)

凛(皆の特訓も第二段階になったみたいで、山で昼まで走った後はそれぞれの得意を伸ばすようにタイヤを打ったり、タイヤを身体にくくりつけて走ったり、タイヤに乗ったりしている)

凛(凛だけが何の成果も得られないまま……合宿は5日目の夕方を迎えた)

凛「はぁ……」

希「合宿も明日で終わりかぁ……長かったような、短かったような」

凛「短いよ……凛、岩にボールぶつけてただけだよ?」

凛「家の前のコンクリで壁投げするのと変わらないよ……」

海未「凛もこっちの練習をやった方がよかったのでは? 花陽も随分と上達しましたよ」

ことり「最後の一日だけでもこっちに参加する?」

凛「んー……けど今までやってきたこと、完全に無駄になっちゃう気がするんだよね……」

410 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 21:22:42.16 ID:v9x+JdZP.net
ねえ、そのお漏らしシーン必要だった?

411 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 21:23:05.80 ID:s0L9qvcR.net
真姫「まぁ夕食を取って、お風呂にゆっくり浸かって……それから考えましょ」

キャー ワー

真姫「……何の声?」

希「お寺の方からや! 何かあったんか!?」ダッ

海未「ちょ、ちょっと待ってください!」ダッ

凛(皆が走るのにつられて、凛も走り出す。声がどんどん大きくなっていく……)

凛(グラウンドを越え、寺の正面に回ったところで凛は見てしまったんだ)

「若い男は貰っていくよ……!」

「待ってくれ! 返してくれ! その子達は人類の希望なんじゃ……!」

凛(寺の前に浮いたUFOと、人のような形をした宇宙人……レイプ宇宙人の姿を)

凛「レイプ宇宙人……! クソッ!」ヒュンッ

「ぐあっ!?」ガッ

「貴様……私の顔に、私の顔に石を……!」

凛「か、返すにゃ……男の子達を返すにゃ!」

「ふんっ! 滅びを待つ愚かな種族共め! 貴様らには何も出来ん!」ヒュオンッ

凛「待てっ……!」ヒュンッヒュンッ

凛(石を投げ続けてもUFOには何も効果は無く……凛達は飛び去って行くUFOをただただ見送ることしか出来なかった)

412 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 21:29:05.24 ID:s0L9qvcR.net
真姫「どういうことなの……? それに、今のは男子……?」

凛「実は……」

ーーーー

希「そうか……この寺にはそんな役割があったんやな」

絵里「けど何で急にレイプ宇宙人が? 今までは気づかれていなかったのよね?」

凛「……」

「もう終わりじゃ……若い男がいなくなれば、人類を維持していくことは……」

ガサッ

凛「! 君は……」

凛(年長の男の子とばっくだんさーの子……)

「おぉ……おぉ……よかった。お前達だけでも無事で……」

「お、俺……怖くて……皆を助けられなくて……」

海未「レイプ宇宙人が何か言っていたとか……覚えてはいませんか?」

「あ、あいつの情報は正しかったんだって……」

希「あいつの情報……? まさか、凛ちゃん!?」

凛「へっ!? り、凛は違うよ! 情報なんて売ってないにゃ!」

413 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 21:34:46.77 ID:xecKrOeC.net
「た、多分違うと思う……そのお姉さんが部屋に来たとき……だ、誰かに見られてるような気がしたんだ」

「暗くてよく分からなかったけど……庭から誰かが……」

凛「……!」

希「まさか……この中に、レイプ宇宙人と繋がってる奴がいる……?」

絵里「そ、そんなわけないじゃない! 音ノ木坂の生徒にそんなことをする人間はいないわ!」

愛「長野佛教にだってそんな子はいないよ……けどね」

愛「実際に、私達がここに来てから『今まで気付かれていなかった男の存在に気付かれた』。それは事実なんだよ」

花丸「マル達の中に裏切り者がいる……それが誰かは分からないけど」

花陽「そ、そんな……!」

凛(裏切り者……そんな、嘘でしょ?)

凛(音ノ木坂か、長野佛教か……その中に少なくとも一人)

凛(人類を裏切り、宇宙人に与した奴がいる!)

414 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 21:43:52.24 ID:LGRnRZrC.net
凛(その日は皆、何も話さずそこから離れた)

凛(食事を終え、風呂を終え……消灯時間まで、誰一人として話そうとはしなかった)

凛(皆の目に浮かんでいるのは、ぎらぎらと濁った猜疑心だけ……)

凛「なんで野球しにきてこんなことに……」

凛(今まで共に野球をしてきた中に……犯人がいるかもしれない。頭がぐらぐらし、目の前が回っているような気さえした)

凛(回る世界の中、凛はゆっくりと夢の世界に落ちていった)

ーーーー

チュンチュン

凛「……」ガバッ

凛「……最悪の目覚めにゃ」

凛(着替え、会話のない朝食を終え……住職と少し話してから、グラウンドに出る)

凛(皆練習には出ているものの、集中は出来ていないようだった)

花陽「凛ちゃん……大丈夫? 目の下の隈、凄いよ」

凛「余り寝られなかったからね……今日は凛もこっちに参加するよ」

花陽「うん……男の子達、不安そうにしてたけど大丈夫かな」

凛「住職とさっき話したんだけど……男子二人はグラウンド隅の倉庫に隠してるんだって。次にバレて寺が襲われても、あっちまでは見ないから」

花陽「あんな狭いところに……可哀想だけど、仕方ないのかな」

凛「これも人類を守る為だからね……」

415 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 21:50:13.30 ID:THvt0CAc.net
凛(皆浮ついていて身になったかは怪しいけれど……ハードな練習を終える)

凛(空が赤い……合宿最終日だっていうのに、結局何も出来なかった。岩も割れないまま)

「疲れたじゃろう、最後の夕食じゃ……皆、迷惑かけてすまんかったのう……」

絵里「明日は朝早くからバスが出るわ……早く食べましょ」

希「……」モグモグ

真姫「……」モグモグ

凛(疑心暗鬼……誰も目を合わせようとしない。美味しいはずの食事が、全く味がしないや)

ことり「もう寝ようよ……」

海未「ええ……」

凛「にゃー……」

凛(布団に潜り込み、会話もないまま電気が消される)

凛(……)

凛(……)

凛(さて……)

416 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 21:54:32.51 ID:GClZbAF1.net
そういえばそんな設定あったな…

417 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 21:55:03.41 ID:TWUA0woe.net
ーーーーー

「本当にここに男がいるんだな?」

?「……」コクリ

「ふん……小癪な奴らだ。こんな寺に男を隠すなんて……」

「まぁいい、さっさと残りの二人を回収して母船に戻ろう。一週間はかかるからな……昨日の連中も早く連れていきたい」

「貴様も母船に戻してやろう。嬉しいだろう?」

?「……ありがとう、ございます」

「さぁて……レイプの時間だ!」ガラッ

シィン…

「……? 男などどこにもいないではないか」

?「なっ! た、たしかにここだと……!」

ピカッ!

「っ!」

?「眩し……!」

凛「かかったようだね、レイプ宇宙人さん達」

418 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 22:03:40.50 ID:b+PQmO/z.net
「馬鹿な……今回はUFOも無い、暗闇に紛れていたはずだ! 何故私がここに来ると……」

絵里「……本当に来るとは思わなかったわ」ザッ

希「……信じたくないけど、これが真実なんやな」ザッ

凛「昨日、住職にこう言われたんだよ。『音ノ木坂の全員に、それぞれ別の場所に男を隠したと言え』って」

花丸「オラは長野佛教の人達に、別々の場所を言えって言われたずら」ザッ

愛「私は一瞬で気付いたけどねー。ずら丸ちゃん、嘘が下手すぎだもん」ザッ

?「け、けどここに来るかどうかは分からない筈……最初から私が犯人だと……」

海未「そういうわけではないと思いますよ」ザッ

ことり「多分……凛ちゃんは、信じたかったんだよ」ザッ

凛「凛は……うん、他の子に騙されても……悲しいけど、仕方ないとか。そう思えるよ。まだ付き合って一ヶ月くらい、知らないところはいっぱいあるから……」

凛「けど、けど……!」

?「凛ちゃん……」

凛「一番信じたかったから……この人がレイプ宇宙人と通じてたら一番嫌だったから……凛はそこを見張ってたんだよ」

凛「レイプ宇宙人の姿を見て皆を起こしてる時も、布団を確認したけどいなかった! ……なんで、なんで!」

凛「なんでレイプ宇宙人に情報を渡したの……!?」

花陽「……」

凛「かよちん!」

419 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 22:08:25.75 ID:b+PQmO/z.net
「は……はははっ! 何故、だと!?」

「まだ気付いていないのか、ならば教えてやろう」

花陽「だ……駄目っ!」

「小泉花陽は……我々と同じレイプ宇宙人だ!」

凛「ッ! なっ……!」

希「花陽ちゃんがレイプ宇宙人……!?」

凛「嘘だ……そんなの嘘だよ! 凛は小さな頃からずっと、かよちんと一緒にいたにゃ!」

凛「産まれた時から一緒だったのに、レイプ宇宙人の筈ない!」

「当たり前だ。こいつは小泉花陽の母親……そいつの腹の中に入り」

「胎児を食い殺して成り代わったのだからなァ!」

花陽「やめて……やめてよ……!」

凛「……! かよちん、今の話、本当なの……?」

420 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 22:16:02.61 ID:b+PQmO/z.net
花陽「うぅ……本当だよ……私は本物の小泉花陽じゃない」

花陽「生まれてすぐに、私は地球にばらまかれたんだよ……男を見つけ次第レイプ宇宙人の母船に報告しろって命令を受けて!」

花陽「十六年間、男は見つからなかった……私は人間として過ごすのに慣れていた! けど、けど……」

「男が見つかったというわけだ」

「彼女の使命は終わった……褒美として母船に帰らせてやろうというわけさ」

凛「ふ……ふざけるなっ!」ダッ

「ふっ!」ボグオッ!

凛「が……はっ!」

凛(普段のふざけあっている殴られ方とは違う……息が止まり、目の奥が熱い。喉が冷えていく……!)

凛「は……あ……っ!」

「我々の種の力は貴様らのそれとは比べ物にならん。全員でかかってくるか? ふふふ……」

希「信じられん……人間とほぼ同じような身体の癖に、力がおかしすぎる……!」

絵里「顔は醜いのに……!」

421 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 22:20:24.45 ID:b+PQmO/z.net
「行くぞ、カヨ。男は寺の中にいるはずだ、こうなったら皆殺しにしてでも奪っていく」

花陽「あ……は、はい!」

ガシッ

「む?」

凛「させ……ない、にゃ」ハァハァ

凛「かよちんは……連れて行かせないにゃ……」

「なんだ、この手は? な、ん、だ、この手はァ!?」グシャァッ

凛「ぐうっ……!」

「まだ! 分から! ないのか! 小泉花陽なんて女はァ……この世にいないんだよォ!」グシャァッグチッグチャッ

凛「がっ、ぐぁっ……あぁっ……!」

花陽「……! 凛、ちゃん……!」

422 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 22:26:30.93 ID:b+PQmO/z.net
凛「う……」

「ふぅ……小汚い蝿虫め。さぁ行くぞ、カヨ……」ガシッ

「……」

凛「だ、めにゃ。いか、せな……」

「いい加減に……」ボゴッ

「ぐっ!? なっ……」ドゴォッ

愛「やー……」ヒョイッ

愛「恩があるんだよね、うん……クマに助けられちったからさ」

愛「だからさ……やる気スイッチオンだよ、恩だけに!」ヒュンッ

「がっ!」ドグォッ

「顔に傷がつくわ……人間ど、も……?」

真姫「よく分からないけどね……花陽を連れてかれると困るのよ」

希「そうそう、うちの大事な選手なんやから……合わせるで!」

真姫「いくわよっ!」ブォンッ

希「おぉッ!」ブォンッ

ベギィッ!

「が、あっ……!?」

愛「おーおー……ダブル金属バットで顔面打ちか。怖いねぇ」

423 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 22:34:34.32 ID:b+PQmO/z.net
真姫「よし、次は……」

「ぶ、ぶ、ぶ……」

真姫「……!」

「ぶざげるなァ! クズ共がァ!」ギュオッ

絵里「――速っ……!」

希「絵里ち! 危な……!」

「わたじの……うづぐじぃ顔にぃ!」グオオッ

絵里「……!」

スッ

「……!」

絵里「貴女、殴り慣れてないでしょ。今からここ殴りますよって……目線がそう言ってるもの」

絵里「あの人達もこうだと楽だったんだけど」ドグォッ

「……ぎっ!」

花丸「膝蹴り……モロに顎に入ったずら!」

424 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 22:39:52.25 ID:b+PQmO/z.net
「ふぅー……ふぅー……」

凛「か、よ……ちん……」

花陽「凛ちゃん……」

「なにをじでいる! そいつをごろぜぇ!」

花陽「!」

「皆殺しだ……皆殺しにしろぉ!」

花陽「……は、はい」グッ

凛「かよ、ちん……」

花陽「ごめんね、凛ちゃん……逆らえないの。産まれた時から、脳に、心臓に、刷り込まれてるの……命令にはどんな内容であれ絶対服従しろって……」

花陽「だから、だから……私は凛ちゃんを、皆を殺して……」ポロポロ

凛「ねぇ、レイプ宇宙人……お米は好き?」

「米……? あんなものより優れたものが、母船には大量にある……わざわざあんなものを食う必要はない!」

425 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 22:45:01.39 ID:b+PQmO/z.net
花陽「……凛ちゃん?」

凛「じゃあ……アイドルは好き?」

「あいどる……ああ、あの歌う連中か。あんな娯楽はレイプ宇宙人には必要ない。必要なのはセックスだけだ!」

凛「……じゃあさ、野球は?」

「野球……ははは、スポーツなんて文化はとうに廃れた! あんなものをやるのは野蛮人だけだ!」

凛「それは……レイプ宇宙人は皆、そうなんだね」

「ああ、そうだ……それがどうした」

凛「じゃあ……かよちんは、レイプ宇宙人じゃないよ」

花陽「……」

凛「かよちんはお米が大好きで、アイドルが大好きで」

凛「一緒に野球をやってくれて……一緒に悩んで、一緒に成長して、一緒に笑える」

凛「凛の親友の……女の子にゃ」

花陽「凛、ちゃ……」ポロポロ

花陽「う……あぁ……あぁぁぁ!」

「何をしている……カヨ! これは命令だ! その女を殺せ!」

426 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 22:50:51.70 ID:b+PQmO/z.net
花陽「私は……私は……」

「お前はカヨだ、レイプ宇宙人のカヨだ! 私の命令に従え!」

花陽「私はぁぁぁっ!」グオオッ

絵里「危ない! 凛!」

真姫「説得失敗したの……? 殺され……」

グチャッ

希「な……」

愛「自分で自分の頭に、手を差し込んでる……?」

グチャ、ビチャ…

花陽「は、はは……」スッ

花陽「やっぱり……埋め込まれてたよ」

凛「チップ……?」

「やめろ……それはレイプ宇宙人たる証拠だ! 我らの偉大なる指導者様から授けられた、栄誉ある……!」

パキッ

花陽「……あぁ、霧が……晴れた」

花陽「産まれた時から……ずっと、モヤモヤしてたんだ。霧が……霧がさ、ずっと頭の中にかかってて……」

427 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 22:56:27.77 ID:b+PQmO/z.net
「貴様……貴様ァ! レイプ宇宙人を裏切る気かァ!?」グオオッ

花陽「……」スッ

グチャリ

「か……はっ!」

真姫「心臓を……」

花陽「私は小泉花陽……凛ちゃんの友達の、『人間の』小泉花陽だ!」バチンッ

「……が」

花陽「……」スッ

凛「……かよ、ちん」

花陽『カヨより輸送船アルファに告げる。先日攫った男は去勢済みで無精子症であることが判明した、至急捨てられたし』

『こちら輸送船アルファ、無精子症の件了承した。リーダーはどうした』

花陽『リーダーは作戦中死亡した。母船に戻り新たなリーダー決められたし』

『了承した。積荷の男は森の中へ捨てていく。処理を頼む』

花陽「……ふぅ、これで」

花陽「だいじょ……うぶ」フラッ

凛「かよち……うっ」ズキッ

希「……っと。二人とも大丈夫か? とりあえず怪我が酷そうや……はよ寺に戻ろう」

428 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 23:05:41.91 ID:b+PQmO/z.net
絵里「えぇ……森の中に男の子達もいるのね?」

愛「愛さんが真っ先に見つけるよ! 先に見つけた人のものね!」シュバッ

希「ものって……手を出さずに返すんよ?」

「……」グッ

希「ん……?」

「ガァァァアアッ!」グオオッ

真姫「こいつ、心臓を潰されたのにまだ生きてっ……!」

希「っ! ヤバ……!」

ヒュルルルルッ

「ァ……アアッ……」ギュオッ

絵里「な、何……ボールに吸い込まれて……!?」

真姫「……!」

花丸「……」フゥフゥ

真姫(あれは蜂が消えた時のあのボール……宇宙人が吸い込まれた?)

真姫(まさか、あのボールは……)

真姫「……とにかく、凛と花陽を運びましょ。とんだ合宿になったわね……全く」

429 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 23:16:32.84 ID:b+PQmO/z.net
ーーーーーー

凛「……ん」ズキッ

凛「んおぉ……痛い……」ズキズキ

真姫「まだ動かない方がいいわよ。右手が凄いことなってるから」

凛「ぐ……か、かよちんは?」

真姫「もうとっくに起きて、皆に謝罪して回ってるわ。頭の傷も治りきってないのに……もう」

凛「よ、よかった……かよちん、行かなかったんだ……」

真姫「けど……どうするのよ、花陽はレイプ宇宙人だったのよ? もし誰かに気付かれたら……」

凛「その時は……凛が守るよ。産まれる前に死んじゃったかよちんには悪いけど……凛にとっては、十六年間一緒にいた今のかよちんが本物のかよちんだから」

凛「人間とか、レイプ宇宙人とか……本当はどうだっていいんだ。親友だもん」

真姫「……そういうと思った。私も出来る範囲で協力するわ」

真姫「最悪バレたら、パパの力フル活用してもみ消してあげるわよ。気付いた奴も癌ってことにしてこの世から消すわ」

凛「あんまりブラックなのはやめてよね……」

430 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 23:23:53.70 ID:b+PQmO/z.net
花陽「凛ちゃん……目が覚めたの!?」

凛「あ、かよちん……」

花陽「よかった……よかったよぉ……私のせいでごめんねぇ……!」

凛「気にすることないにゃ。かよちんがどこにもいかなかったんだから……それだけで満足だよ」

花陽「けど……右手が……」

凛「甲子園までには治るよ……気にしないで」

凛「指も動くし、ほら……あいてて」ズキッ

「……目が覚めたようじゃな、凛さん」

凛「住職……本当にごめんなさい。あんなことになって……」

「いや、皆無事に帰ってきてくれたからそこはもういい。花陽さんが二度とここに来ないようにもしてくれたしな……」

花陽「レイプ宇宙人は繁殖が目的なので、無精子症しかいないと言われたここにはもう来ないはずです」

「それより星空さん、バスが来るまでまだ少し時間があるが……岩はどうする?」

凛「岩……そりゃ、投げたいけどこの腕じゃ……」

「絵里さんは修行を終わらせたぞ」

凛「にゃ……!?」

431 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 23:27:18.06 ID:b+PQmO/z.net
絵里「っ……!」ヒュッ

ブォンッ ヒュオンッ

絵里「っ! ふっ!」シュッ ヒュッ

絵里「ふぅーっ……ふぅーっ……」

希「……一時間経過や! 避けきったで!」

絵里「や、やった……ギリギリだけど……」

希「良かったなぁ絵里ち……よくあんな猛攻を……」

絵里「宇宙人と相対したからかしらね……度胸がついたのよ」

「「「修行、お疲れ様でしたッッッ! ありがとうございましたッッッ!」」」

絵里「ありがとうございます! 皆さんもゆっくり休んでください……」

「「「押忍ッッッ!」」」

絵里「け、けど……この修行で何が身についたのかしら……?」

希「さぁ……」

432 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 23:30:53.35 ID:b+PQmO/z.net
ーーーーー

凛「……」

凛(目の前の岩……やっぱり砕ける気がしない)

凛(腕が完璧な時でも出来そうになかったのに、こんな壊れた腕で……?)

「やはり無理そうかな?」

凛「いや、やります。凛は……絵里ちゃんに、頑張れって言われたから」

凛「次期エースはこんなとこで止まってられないにゃ」

花陽「凛ちゃん……」

凛「ふぅっ……」

凛「ん……」クイッ

凛「…………ッ!」ズキィッ

コロコロ…

真姫「凛……!」

凛「はぁ……はぁっ……握ることもままならないや……」

凛「く、そっ!」ガッ

凛「投げる……絶対……! 砕いてみせる……!」

433 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 23:37:15.00 ID:b+PQmO/z.net
凛(投げられて一球……多分それ以上は右手が言うこと聞いてくれない)

凛(その一球もかなり威力を落としたものになるはず……どこに投げれば……)

凛(……住職はなんで、指でつついただけで岩が砕けたんだろう)

凛(……)

凛「……」グッ

真姫「目をつむった……?」

花陽「凛ちゃん……?」

凛(意識を集中させろ……多分、何処かに、何処かに違いが……)

凛(……風の動き、草の揺れる音。石にぶつかる空気の振動……)

凛「……!」グッ

ヒョロロロロッ

真姫「あ、ああ……酷い球……」

花陽「こ、これは流石に……」

ポコンッ

コロコロ…

凛「あ……やっぱり、駄目だったにゃ……」

434 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 23:41:20.86 ID:b+PQmO/z.net
真姫「仕方ないわよ、怪我してるんだし……来年また挑戦しましょ」

凛「えっ、来年もここ来るの? クマ出るんだよ!?」

真姫「花陽が倒せばいいじゃない」

花陽「それはそれうなんだけど、クマに襲われてるときいつでも私がいるわけじゃないし……」

凛「にゃー……」トボトボ

「……ふぅむ、駄目じゃったか」

「……しかし、最後に見せたあの動き。凛さんの普段の投げ方とは些か違ったような……」

パキッ

「……む?」

バギィッパキッボゴォッ

「……ほ、ほほっ! なるほど、これは……素晴らしい!」

「内側をくり抜くように綺麗に砕けておる……まるで三日月じゃ。あの子は……成長するかもしれんのぅ」

435 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 23:45:28.05 ID:b+PQmO/z.net
凛「右手痛いにゃー……」

真姫「はいはい、鞄持ってあげるわよ!」

穂乃果「私一番うしろの席!」

希「あれ、穂乃果ちゃん。ようやく生き返ったんか」

穂乃果「生き返ったっていうか生きてたよ!? 皆が死んだ風に話してたからこっそり隠れてたんだよ」

希「なんでそんなことを……?」

穂乃果「いや、自分が死んだ時に皆がどう反応するか見たくて……」

希「いや気持ちは分かるけどな」

海未「穂乃果、生きていたんですね……! よかった……!」ギュウッ

穂乃果「が……あっ!」ベキベキメシメシベギィ

穂乃果「……」

希「……脈がない! また死んでる! 背骨が折れたんや!」

ことり「とりあえず後ろの席に積んでおこうよ。多分サービスエリア辺りで復活すると思う」

436 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 23:52:55.25 ID:b+PQmO/z.net
凛(こうして……六日に及ぶ凛の初めての合宿は終わった)

凛(少しは成長できたかにゃ……? 腕ボロボロにしただけだったら悔やんでも悔みきれない……)

凛「……ところで、皆なんというか」

凛「少し足、太くなってない……?」

花陽「毎日山を走ってたからね」

希「結構筋肉ついたと思うよ。スタミナも」

真姫「走塁なんかは間違いなく上手くなってると思うわ。最終的には総合的に鍛えられたし……やっぱりあの寺、何だかんだやってくれるのよね」

希「流石にもうクマはごめんやけどな」

ことり「穂乃果ちゃんポッキー食べる?」

穂乃果「食べる食べる。二日目から野草と虫と兎肉しか食べてないから、お腹ぺこぺこだよ」

海未「何だかんだ一番強くなったの穂乃果では……?」

凛「あははは……!」

凛(しばらくは投球はお休み……下手したら甲子園予選までは投げられないし、帰ったら基礎トレメインで鍛えようっと。ママに効果的な筋トレ聞こうかな……)

凛(いや、そもそもこの腕見たら怒りそうだなぁ……やだな)

凛(運転手の放った睡眠ガスのおかげで瞼が重い。起きたら右手、治ってたりしないかなぁ……)

凛「ふにゃ……」zzz

437 :名無しで叶える物語:2020/08/29(土) 23:56:34.13 ID:b+PQmO/z.net
今日はここまで
明日からようっやく甲子園予選です

438 :名無しで叶える物語:2020/08/30(日) 00:12:57.69 ID:0lavEQnt.net
お疲れ様です!
レイプ星人とか出てくる世界観だっけこれ…

439 :名無しで叶える物語:2020/08/30(日) 00:36:45.72 ID:7eY4ao7n.net
んなこと言ったら前回魔王出てたぞ

440 :名無しで叶える物語:2020/08/30(日) 00:37:48.92 ID:kaB3fv/D.net
おい、野球しろよ

441 :名無しで叶える物語:2020/08/30(日) 00:41:32.62 ID:uoPyxThF.net
大草原
絵里の成長が気になるね

442 :名無しで叶える物語:2020/08/30(日) 00:58:59.62 ID:dTJ5H5V0.net
これ絵里ちゃんステゴロ最強だろ

443 :名無しで叶える物語:2020/08/30(日) 00:59:20.78 ID:kUKdmu5Q.net
ボークがここまで尾を引くとは誰が思っただろうか

444 :名無しで叶える物語:2020/08/30(日) 19:08:35.23 ID:nKDDK/qm.net
二ヶ月後

凛「……」グッグッ

「右手の調子はどうです、完治はした筈ですが」

凛「んー……ばっちりにゃ! 痛みも全然無いよ」

真姫「良かった……パパ、ありがとう。おかげで予選に間に合ったわ」

「娘の頼みだからな。最優先で治療するのは当たり前だ」

凛「ありがとうございます、本当に……」グッパッ

凛(合宿が終わり、バスで東京まで帰った後。すぐに凛は真姫ちゃんの病院に連れて行かれた)

凛(全治四ヶ月と言われた時は目の前が真っ暗になったけど……何とか予選に間に合うように治療出来てよかったにゃ)

真姫「とはいえ、二ヶ月もまともに投げられてないんだから……かなり鈍ってる筈よ」

真姫「球拾が何とかするから、凛は余り無理はしないように」

凛「分かってるにゃ……」グッグッ

445 :名無しで叶える物語:2020/08/30(日) 19:16:05.69 ID:nKDDK/qm.net
ーーーーー

絵里「ううん……何とかこの組み合わせなら……」

希「UTXが別ブロックに行ってくれたのありがたいな。序盤からあんなのに当たったら地獄や」

キュオッ

希「うおおっ!? ボール!?」

絵里「だ、誰よ!? 危ないじゃない!?」

凛「絵里ちゃん! 希ちゃん! 凛、完全復活にゃ!」

希「おお、包帯取れたんやな……よかった」

真姫「パパの実力は日本一よ。手を治すくらい何でもないわ!」

真姫「それより……予選の組み合わせ決まったのよね? どんな感じになったの?」

絵里「東京エリアは……一先ず、前回甲子園出場校のUTXとは別ブロックに入ったわ」

絵里「当たるとしても、予選決勝ね」

真姫「他に注意するところは……?」

絵里「ええと……最近実力をつけてきてるのは結ヶ丘女子ね。唐揚げみたいな名前の四番が強かった……気がするわ」

絵里「ここも別ブロック……UTXと潰し合ってくれるから楽ね」

446 :名無しで叶える物語:2020/08/30(日) 19:25:05.86 ID:nKDDK/qm.net
絵里「こっちのブロックは一二三学園くらいしか目立ったところは無いし……決勝までは問題なくいけるんじゃないかしら」

希「初戦の相手も『画九礼儀一番(ガクレキイチバン)高校』とかいうお坊ちゃんお嬢ちゃんな進学校やしな」

希「ま、軽く勝たせてもらうわ」

真姫「えっと……ガクレキイチバン」ポチポチ

真姫「東大合格率とか有名私立への進学率はサイトに出てるけど、野球のことは一文字も書かれてないわね」

絵里「ま、うちと同じ無名の弱小よ。勉強じゃなくて野球してるぶん、うちのほうがマシまであるわ」

ガチャッ

花陽「た、大変ですぅ!」

穂乃果「ヤバいよ! 絵里ちゃん、私達負けるかも……!」

絵里「ちょ、ちょっと待って! いきなり飛び込んできて何言い出すのよ!?」

希「そうや、落ち着け」ブォンッ

穂乃果「……」スッ…

希「……ッ!?」

穂乃果「いつまでも 食らうと思うな その腹パン」

希「……ふっ。成長しやがって……」

447 :名無しで叶える物語:2020/08/30(日) 19:29:48.38 ID:nKDDK/qm.net
凛「それで二人とも……負けるかもしれないって?」

穂乃果「ああ、その……なんて言えばいいんだろ。私達、絵里ちゃんに頼まれて一応偵察に行ったんだよ」

花陽「何とか気付かれないように侵入して……野球部の部室まで行ったんだけど」

花陽「あぁ……」ガクッ

真姫「花陽……?」

凛(かよちんと穂乃果ちゃんがここまで怯えるなんて……ガクレキイチバンは一体何をしていたにゃ……?)

穂乃果「あ、あいつら……あいつら! 野球の試合に……!」

穂乃果「スパコンを導入しようとしてたんだよ!」

凛「す、スパコン!?」

絵里「スパコンを野球に……!」

希「まずいな……スパコンが出てくるなんて」 

希「一応聞いとくけどスーパーファミコンってオチじゃないやんな?」

花陽「違います……スーパーコンピュータの方です!」

花陽「あいつら、スパコンを試合に……!」

448 :名無しで叶える物語:2020/08/30(日) 19:33:07.24 ID:nKDDK/qm.net
希「そんな……スパコンだなんて」

絵里「嘘よ……嘘だと言って! スパコンなんて!」

絵里「見間違いよね!? スパコンじゃなかったのよね!?」ガクガク

穂乃果「わ、私だって……目を疑ったよ」

穂乃果「けど、何回見ても……あれは完全にスパコンだったよ!」

絵里「あぁ……あぁぁ……」

凛「凛達、ここまで必死にやってきたのに! ずるいにゃ! あんまりにゃ!」

凛「スパコンなんて……スパコンを使うなんて!」

真姫「ところでスパコンで何をする気なのかしら」

希「分からん……」

絵里「さっぱら分からないわ……」

凛「カブトムシでも取るんじゃねえの」

449 :名無しで叶える物語:2020/08/30(日) 20:03:27.67 ID:kUKdmu5Q.net
言うて中卒だから大丈夫やろ

450 :名無しで叶える物語:2020/08/30(日) 20:42:58.31 ID:nKDDK/qm.net
凛(スパコン、学歴、その組み合わせに不安を覚えたまま時間は過ぎて……)

『只今より、画九礼儀一番高校と音ノ木坂学院の試合を開始いたします』ウーウー

絵里「結局、スパコンで何をする気なのか分からなかったわね……」

希「前の侵入がバレてて、警備が厳重になってたもんなぁ」

凛「あいつらマシンガン撃ってきやがったもんにゃ」

絵里「私が狙われたお陰で銃弾全て避けれたからよかったけど……本当なら殺人よ?」

真姫「殺人くらいもみ消されるわよ、あの後調べたんだけど……」

真姫「現首相のアガペー総理、他にも国会議員の画素、チンポウ、カンチョクト、バット山、あとは元財閥の社長や警視総監なんかも……皆あの高校の出身なのよね」

凛「そりゃ殺人くらいもみ消されるねぇ……」

絵里「有名人がいても野球は実力でやるもんよ! 関係ないわ!」

ことり「そうだよ、多分実力は……勝ってるはず」

希「後はスパコンだけや……」

451 :名無しで叶える物語:2020/08/30(日) 20:52:27.12 ID:nKDDK/qm.net
審判「両校整列してください!」

「……ふんっ」

絵里「……」

実況『おっと、画九礼儀一番キャプテン絵羽理数都 牙狼亞と音ノ木坂キャプテン絢瀬絵里! 開始前からばちばちと睨み合っております!』

実況『実況は私、報 道太郎が勤めさせていただきます! さぁ両者キャプテン、手を差し出しました』

絵里「勉強なんかしなくても甲子園優勝すれば推薦が貰えるから、そんなもの無駄よ」

「先日全国模試で全国一位取りました。脳が腐るので低学歴は話さないでくれません?」クイッ

実況『おっと……絢瀬絵里、試合開始前から倒れております! 泣いているようです! 煽りに弱いィ〜っ!』

希「大丈夫や絵里ち! 甲子園優勝して推薦で青山行こう、な!」

絵里「うう、希ぃ……」

452 :名無しで叶える物語:2020/08/30(日) 20:59:15.15 ID:nKDDK/qm.net
凛「と、ところで……今回も球拾が先発なのはいいんだけど」

凛「残るピッチャー凛だけなの!? にこちゃんは!?」

絵里「それが……メンバーには入ってるんだけど」

絵里「朝……妹が熱を出したから病院に連れて行く、って電話があって以降連絡が無いのよ」

海未「抑えのにこがいないとなると……試合は少し厳しくなりそうですね」

凛「凛はまだ右手治ったばかりで不調だし、球拾は球拾だし……」

「えっ……私、そんなに信頼ないんですか……」

ことり「大丈夫だよ、にこちゃんなら間に合うよ!」

絵里「けれど、妹を病院に連れて行くがやむを得ない事情と認められるかどうか……」

真姫「実況に金を積んでおくわ。マスコミ関係みたいだから、審判より買収しやすいし」

絵里「よし……とにかく行くわよ!」

453 :名無しで叶える物語:2020/08/30(日) 21:00:00.09 ID:YGbhm06Z.net
初戦で実況ありは贅沢だな

454 :名無しで叶える物語:2020/08/30(日) 21:18:09.44 ID:nKDDK/qm.net
先.音ノ木坂学院

1(一)高坂穂乃果
2(三)絢瀬絵里
3(捕)東條希
4(遊)西木野真姫
5(中)南ことり
6(二)園田海未
7(左)小泉花陽
8(右)星空凛
9(投)球拾


後.画九礼儀一番高校

1(遊)三島鏡花
2(右)辺理咲
3(中)或辺留戸亜員集他院
4(二)絵羽理数都牙狼亞
5(三)雀羅漢
6(捕)孔子
7(左)孟子
8(一)シイゼエボオイエンドゼエガアル
9(投)狩礼王狩礼



凛(噛ませの癖に意外に凝った名前貰ってるにゃ……)

絵里「一番は穂乃果よ……行ってきて!」

穂乃果「うんっ!」

455 :名無しで叶える物語:2020/08/30(日) 21:25:36.55 ID:nKDDK/qm.net
穂乃果「相手投手は……」

実況『ガク高、投球練習です』

「……」ヒュッ

穂乃果(力はそこまで無さそう……というか、やっぱりガリ勉って印象だなぁ)

ヒョロロロロッ

穂乃果(ひょろひょろ球じゃん……目をつぶっても打てそう)

穂乃果(後は相手ベンチに置いてあるスパコンだけだけど……)

スパコン『ジー……ジー……ガガッ』

穂乃果(相手が何をしてこようと、打って打って打ちまくれば関係ないよ!)

実況『さぁ、プレイ開始です!』

「……」ヒュッ

穂乃果(弱い球……絵里ちゃんも大したことないって言ってたし……一球目から打っていこう!)

カァンッ

「……」ニヤッ

456 :名無しで叶える物語:2020/08/30(日) 21:29:25.84 ID:nKDDK/qm.net
実況『おっと、高坂選手初球から打ってきました!』

実況『大きい、大きい! まさか開幕から入ってしまうのかァ!』

ヒュウウウウウッ

穂乃果(よし、これはホームランコース……やっぱり合宿で足腰鍛えられたからなぁ)

穂乃果(インパクトの瞬間しっかり地面踏めてるよ)ダッ

「この場所で……この角度で」

ヒュウウウウウッ

実況『おっと……これは!? 打球の勢いが……弱まっています!』

絵里「突風……そんな、これじゃ……」

実況『これは入りませ……おっとぉ! 着弾点には既にガク高のレフトが立っているぅ!』

パスッ

審判「アウトォッ!!!」

穂乃果「あぁ……惜しいなぁ、もう少しで入るところだったのに」

「……」

457 :名無しで叶える物語:2020/08/30(日) 21:35:51.68 ID:nKDDK/qm.net
穂乃果「へへ……絵里ちゃん、やっぱり大した相手じゃないよ」

穂乃果「ひょろひょろ球だし、今もホームランギリギリだったし」

絵里「ええ、そう……みたいね」

絵里「……」

絵里(確かに球自体は遅いみたいだけど……何かしら、変ね)

絵里(普通あんな痛烈な打球を食らえば、動揺の一つでも見せるはずなのに……打たれた瞬間、守備が皆笑っているように見えたわ)

絵里「……よし。ここは……」

実況『さぁ音ノ木坂学院、次のバッターはキャプテン絢瀬です! 下り坂と呼ばれた悪夢の世代を見てきた三年生、その胸中で何を思うのかぁ』

絵里「……」

「……ふっ!」ヒュッ

ヒョロロロロッ

絵里「……」

実況『おっと……これは……絢瀬、ひょろひょろと飛んできたど真ん中の球を見逃しました!』

絵里(……やっぱり、どう見てもただのひょろひょろ球よね)

絵里(私の思い過ごし? このままカウントを進められても面倒だし……)

実況『ピッチャー、振りかぶって第二球! 投げましたぁっ!』

ヒュウウウウウッ

絵里(打ち……っ!?)

ガンッ!

458 :名無しで叶える物語:2020/08/30(日) 21:40:04.24 ID:nKDDK/qm.net
実況『詰まった辺りはショートの頭上へふらふらと飛んでいきます! ショート三島取ったァ! アウトです!』

絵里(……さっきのボールより、僅かに速い?)

絵里(『目』を鍛えていたおかげで反応できた……いや)

絵里(反応してしまったせいで、逆に詰まった当たりになった。させられた……?)

「……」ニヤッ

凛「ど、どういうことなの……? あんなひょろひょろ球なのに」

凛「穂乃果ちゃんと絵里ちゃんがアウト……?」

真姫「おかしいわね……」

希「絵里ち、穂乃果ちゃんもやけど……今日は調子悪いんか?」

絵里「そういうわけじゃないけど……希、気を付けて」

絵里「あいつら多分……こっちの動きが分かってる」

459 :名無しで叶える物語:2020/08/30(日) 21:44:52.03 ID:nKDDK/qm.net
希「動きがわかる?」

絵里「あのスパコンのせいだと思うんだけど……」

絵里「何処にどんな力でボールを投げれば打ち取れるか、ボールの飛ぶ方向は何処か、飛ぶ距離はどうか、現在の天候はどうか……全て計算されているような気がするのよね」

希「な……いやいや、そんなんあるわけないやん」

希「それにはデータが必要やろ? ウチみたいな弱小、試合もろくにしてないのにデータがあるわけないやん」

希「仮に去年の試合データを打ち込んでたとしても、あの頃よりは相当成長しとるんよ? 合致するわけないやん」

絵里「そうよね……だからおかしいのよ」

絵里「何でこんなに正確なデータが取られているのか……」

絵里「少なくともあの合宿以降のデータが打ち込まれてる……んだと思う。私の『目』を利用した戦法を取られたから」

希「……けど、合宿以降に試合なんかしてへんやん」

絵里「ううん……おかしいわねぇ……」

希「考えすぎやん、ウチがホームラン打って流れ変えたるよ!」

実況『さぁ第3バッター、音ノ木坂のおかわりくんと名高い東條希の登場です!』

460 :名無しで叶える物語:2020/08/30(日) 21:45:06.90 ID:nKDDK/qm.net
今日はここまで

461 :名無しで叶える物語:2020/08/31(月) 00:47:25.75 ID:iKqjg+yo.net
やっぱデータキャラは予選相手の王道っすね

462 :名無しで叶える物語:2020/08/31(月) 01:35:18.68 ID:wVJNZjM1.net
これ本当に強くなってんのか?

463 :名無しで叶える物語:2020/08/31(月) 15:03:50.52 ID:ez9ssOWb.net
希「さてさて……」

希(スパコンがウチらの動きを把握してる? 本当にそんなことあるんかな)

希(所詮は高校生が用意できるレベルのもんやろ?)

「ふうっ……!」ヒュッ

ヒュルルルルッ

希「……」

実況『ストライク! 東條、初球を見逃しました!』

希「やっぱりどう見てもただのひょろひょろ球やし……簡単に打てる気がする」

スパコン『ジー……ジジ……』

実況『ピッチャー狩礼王、余裕の笑みが浮かんでいます! 振りかぶって……投げたぁ!』

希(打てる……間違いなく打てる球や。けど……スパコンの話が本当やったら? カマかけてみるか……)スッ

実況『な……あの構えは、バントォ!?』

絵里「ツーアウトランナー無しのこの状況でバント!? あんな絶好球に!?」

真姫「あれは……! 虹ヶ咲の上原歩夢と同じ構えじゃない!」

464 :名無しで叶える物語:2020/08/31(月) 15:35:14.10 ID:ez9ssOWb.net
希(ウチなりに研究してたんや、あのファール線ギリギリを転がるバント……!)コツッ

実況『これはファール……じゃない! サードラインギリギリのところで留まっています、何というバントだ東條希ィー!』

希「あのスパコンがウチの動きを読んでるんなら、今の絶好球をバントにするわけないよなぁ? ま……どっちにしろ間に合うけどね!」ダッ

希(余裕や……皆は甲子園の予選で緊張してただけ。それが結論……)

パシッ

希「な……!」

塁審「アウトッ!」

実況『な……何が起こったんでしょうか。ファーストがボールを持っています! ベースを踏んでいます! 東條、呆然としています!』

希(な、なんで……間違いなく意表をつけた筈なのに……!)

465 :名無しで叶える物語:2020/08/31(月) 18:56:13.74 ID:ez9ssOWb.net
すいません次レス投下午前2時過ぎになります

466 :名無しで叶える物語:2020/08/31(月) 19:12:25.33 ID:vgiEPtPz.net
まってる

467 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 00:34:58.72 ID:HlPIzGV1.net
保守

468 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 02:26:11.84 ID:2QUEzOeO.net
実況『驚くべきはサードの動きでしょう、ファールになるか分からないバントを真っ先に拾いに行き……素早いというよりは、未来予知でもしてるような動きでした』

希(未来予知……未来予知!?)バッ

スパコン『ジー……ジジ……』

スパコン『東條希ハ……策士デス。絶好球二対し意表ヲ突ク、バントノ確率96%……ファール率8%……ジジ……』

「ふふ……調子がいいじゃないか」

希「読まれてる……? 本当に、ウチらの思考も行動も、あのスパコンに読まれて……」トボトボ

凛「けどおかしいよ……! 凛達の情報、何処から漏れたっていうのさ」

凛「情報……?」ジロッ

花陽「……」

凛「またやったにゃ……?」

花陽「やってないよぉ! そんなことしたら皆に顔向け出来ないよ!」

469 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 02:41:22.17 ID:2QUEzOeO.net
凛「じゃあ一体誰が……?」

真姫「ねぇ凛、あんた確か……少し前に野生のドローン拾ってなかった?」

凛「ラスカルのこと? 拾ったけど……あの子は野生に返したよ」

凛「自然のものは自然の中で生きるのが一番いいからね」

真姫「そのドローンが犯人なんじゃないの? あれはガク高の刺客で、カメラがついてたとか……」

凛「ラスカルはそんなことしないにゃ!」バンッ

凛「ラスカルは……!」

凛『ふんふふーん……あ、野生のドローン。こんなところに生息してるなんて珍しいなぁ』

『ジ……ジジ……』

凛『! ひどい怪我にゃ、猟師の罠にやられたのかな……家に連れて帰って手当してあげるからね』

『ジジ! シャー……フシャー……』ブォォォォンッ

凛『大丈夫だよ、怯えないで。凛は味方だから……』

470 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 02:46:41.31 ID:2QUEzOeO.net
『厶……ココハ……』

凛『目が覚めたにゃ?』

『包帯……』

凛『喋れるまで回復したんだね。良かったにゃ』

凛『完全に治るまでは面倒みてあげるから……えっと、ドローンだから……ラスカル! あなたはラスカルにゃ!』

『ラスカル、ラスカル……ジジジ』


凛『ほらラスカル、あれが凛の仲間だよ』

ズバァァァンッ カァンッ キィンッ ズバァァァンッ

『ジジ……』

凛『今は右手を怪我してるけど……凛も野球をやってるんだよ? ピッチャーなんだ』

凛『早く怪我治ってほしいなぁ……』

『聞カセテ、モット、仲間ノ話聞カセテ。野球ノ実力聞カセテ』

凛『あはは、ラスカルも野球が気になるの? 変わったドローンにゃ』

471 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 02:52:38.78 ID:2QUEzOeO.net
穂乃果『ドローンは自然の生き物だよ。人工物だらけの人間界では生きてはいけない』

凛『そんな……! 凛、ラスカルと離れたくないよ……!』

『ジジ……』

希『そんな弱りきったラスカルをまだ見たいんか! これ以上この子をここに縛ると、本当に手遅れに……』ポロポロ

凛『ラスカル……』

『アリガト……アリガト、凛チャン、アリガト……』

凛『ラスカル……!』ギュッ


凛「ラスカルがそんなことするわけないにゃ!」

「ラスカルというのは、このドローンの事かね?」スッ

凛「なっ……ラスカル!? 何故貴様らがラスカルと共に!」

「まだ分からないのか……? お前達がラスカルと呼んでいたこのドローンを操っていたのは、この牙狼亞だ! お前と一緒にいた一週間……良いデータが取れたぞ」

凛「……ッ! そんな……!」

472 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 03:00:38.32 ID:2QUEzOeO.net
凛「ラスカルは……ラスカルは、ずうっと私を騙していたの……?」

凛「寒い日に布団をかけてくれたのも……」

「好きなハンバーグを作ってあげたわね」

凛「夜、寝る前に本を読んでくれたのも……」

「ほつれた服も繕ってあげたわ」

「みーんなあなたから音ノ木坂学院の野球データを貰うため……」

「あなたのためじゃないわねえ……凛!」

凛「……許せんにゃ! 鎌で背中ぶっ刺してやる!」

希「落ち着くんや凛ちゃん! 背中やと致命傷にならん!」

穂乃果「そうだよ! やるならせめて前から心臓狙お!」

海未「どちらもいけませんよ! 鎌を下ろしなさい!」

花陽「ごめん……凛ちゃん、生き物を飼うことにトラウマがあるから」

473 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 03:08:10.15 ID:2QUEzOeO.net
花陽「昔、神社の境内で捨てられた子猫を飼ってたんだけど」

花陽「子供のやることだから、田舎に帰省する時誰にも任せずにいっちゃって……」

花陽「帰ってきたらウジが湧いてたんだ」

花陽「それ以来凛ちゃん、生き物を飼う時は真剣に、真摯に向き合うようになったから……尚更許せないんだと思う」

ことり「そんなことが……けど、情報が流れてるのが確定しちゃったよ。どうするの?」

海未「練習風景を見られているということは……データを取られていないのは」

海未「右手を怪我し、軽い基礎トレ以外の練習に参加していなかった凛」

海未「そして、練習にそもそも参加する気のないにこ。この二人だけです」

絵里「参ったわね……片方は病み上がりで、片方はまだ来てない! 完全に凛に任せる、とはいかないし」

「明日以降も試合はありますからね……凛ちゃんに全部任せるわけにはいかないです。何とかかんとか私がやりますよ」

凛「いけるの? 球拾……」

「私だって伊達でエースをやってるわけじゃありませんから」

474 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 03:20:51.74 ID:2QUEzOeO.net
実況『さぁ音ノ木坂を0点に抑えて画九礼儀の攻撃。1番は美しい日本語を書く女、三島です!』

(……バッター達が簡単に打ち取られたというとは、逆にピッチャーの私は簡単にヒットを打たれる可能性が高い)

(かといって……スパコンの予測相手にあれこれやっても仕方ない。何とかコースをついて……!)クイッ

ビュッ!

希「狙ったところにビシバシ入ってくる……けど、相手の反応は……」

「……」

希(……なんや? バットを振る気が無さそうやな……ボール見てないやん)

ヒュルルルルッ

「……ん」キュブオンッ

希「……なっ、ん……!? ボールを見ずに振った……!?」

ガギィンッ!

475 :名無しで叶える物語(茸):2020/09/01(火) 03:28:27 ID:2QUEzOeO.net
実況『おっと……やたらめったら振られたバットがピッチャー球拾のボールにクリーンヒットォ! 大きい、大きい、入るか、入るか、入るかぁ!』

ことり「バック……あぁ」

実況『センター南諦めたぁ! 入りました! ホームラン、ホームランです! 画九礼儀一番高校、貴重な一点をもぎ取りました!』

希「な……」

希(やたらめったら振られた……!? んなわけないやろ、何を見てたんやクソ実況!)

希(あれはやたらめったらじゃない、確実にボールを狙って、真芯で振られていた! しかも、打つ本人には何のやる気も、ボールを見る気すらもないまま!)

「ホームラン打っちゃったよ……自慢になるかな」タッタッタッ

キラッ

希「ん……あのバッター、今リストバンドが光った……?」

希「……まさか!」

希(あのリストバンドにもコンピューターを……? スパコンが打ち出したデータを受け取り、本人の意思に関係なく確実な位置で振れるように!)

476 :名無しで叶える物語(茸):2020/09/01(火) 03:33:21 ID:2QUEzOeO.net
実況『さぁ一番三島に続け、イケイケムードの画九礼儀一番! 次のバッターは2番辺理です』

ヒュルルルルッ スパンッ
ヒュルルルルッ スパンッ

実況『おっと……どうしたことだ、辺理。バットを振ろうとしません』

ヒュルルルルッ スパンッ

実況『バットを一度も振らないままストライクスリー、バッターアウトです! この回は『見』に回ったのでしょうか!』

絵里(『見』に回った……? 何処がよ、ボールを見てもいないじゃない!)

絵里(次のバッターも……やっぱり振る気が無い! 簡単なことよ、奴らはこう言ってるの)

絵里(一点さえ取れば勝てるから、さっさと終わらせようって!)

477 :名無しで叶える物語(茸):2020/09/01(火) 03:43:21 ID:2QUEzOeO.net
凛(データ野球……冗談のような話だが、そのデータの精度が100%なら?)

凛(二回、三回、四回と回を重ねていっても……データのろくにない凛がヒットで塁に出ることはあったけど、他の皆は全滅)

凛(相手もやはりバットを振る気は無いらしく、最初の一点以外はお互い0点で進んでいき……凛に変わったところで手遅れだった)

凛(だってそもそも振る気が無いんだもん! ど真ん中に投げようが、希ちゃんとキャッチボールしようが振らない!)

凛(そして試合は八回の裏を迎えたにゃ)

ビュオンッ スパァンッ バッターアウッ

凛「ツーアウト……だけど」

凛(ここまで一点も取れていない……九回表になってもチャンスが得られるとは思えない)

凛(何とかボールで粘ってにこちゃんが来るのを待つ? データ無しが二人いれば突破口に……)

『ジジ……プシュ、ジ……プシュ』

「何をしているんだ! 早く投げろ、スパコンが暑がっているじゃないか!」

478 :名無しで叶える物語(茸):2020/09/01(火) 03:47:23 ID:2QUEzOeO.net
凛「うう……」

凛(負けるの……? 甲子園どころか予選一回戦で?)

凛(凛の夏はここで終わるの……?)

凛「……どうすれば、いいの?」

凛「凛は……」

「どうすればいいの、ですって?」

凛「……!」

「決まってるじゃない、勝つのよ。必死こいて勝つ為の方法を模索するの」

凛「……そう、だよね。諦めてちゃ駄目だよね」

凛「間に合ってよかったよ……にこちゃん」

にこ「待たせたわね……後は私に任せなさい」

希「遅いわにこっち……来ないかと心配したやん」グスッ

絵里「ぴ……ピッチャー交代! 星空凛から矢澤にこ! 星空はライトへ!」

479 :名無しで叶える物語(茸):2020/09/01(火) 03:53:10 ID:2QUEzOeO.net
審判「しかし君……彼女は整列にもいなかったしねぇ、遅刻だろう? そう簡単に認めることは出来な……」

実況『おっと……今入ってきた百万……げほっ、情報によりますと、矢澤にこ選手は熱を出した妹さんの看病の為に今まで病院にいたようです』

実況『何という家族愛! これぞまさに高校球児の鑑と言えるでしょう! もし彼女の参戦が認められないとしたら、審判の個人的事情や嫌がらせとしか思えません』

実況『何やら揉めていますが……まさかとは思いますが画九礼儀一番に金を貰っているのでしょうか。だとしたら大変なことです、高校野球を汚す行為です! 彼の名前は、愚かな犯罪者として明日のスポーツ新聞の一面を飾るでしょうね!』

審判「すいません何でもないです、交代認めます……」シュン

凛「哀れにゃ」

真姫「金はルールより重いのよ」

希「けどにこっち……どうする? 現状は最悪やん」

にこ「とりあえず事情を説明して。何であんなレベルの連中に、あんたらが一点も取れてないのよ……」

480 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 03:59:33.36 ID:2QUEzOeO.net
ーー少女説明中ーー

にこ「なるほどね……あのスパコンが原因で一点も取れないと」

希「そうなんや。ウチらの行動、思考全部読まれとる」

希「ここに投げたらここに打たれる、ここを打ったら点が入る。それを全部指示されてるってんだから……」

にこ「ふうむ……って、いやいや簡単な話じゃない」

希「簡単な話?」

にこ「ええ、試すから見てなさい」

希(にこっち……何を?)

実況『さぁピッチャーは星空に代わりまして矢澤。一体どんなピッチングを見せてくれるのか……おっと、ボールがすっぽぬけたようですね』

実況『画九礼儀のベンチにぐんぐんと球が飛んでいきます……ベンチに置いてある、あれはコンピューターでしょうか? それに思いっきりぶつかりました!』

実況『画九礼儀慌てています、冷却装置? が壊れたみたいですね、湯気が出ています! 画九礼儀ナイン、泣き叫んでいるのが見えますね』

「やべぇよこれ一兆円するんだぞ!」

「国家予算注ぎ込んでもらってんのに! 働いて返しきれる額じゃないよぉ! うわぁぁん!」

481 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 04:07:46.39 ID:2QUEzOeO.net
凛(スパコンを欠いてからの画九礼儀ナインの動きは明らかに精彩を欠いた。いや、最早やる気どころか生気すらないようだった)

凛(スパコンさえ無くなれば、本来凛達の相手になるような高校じゃない……機械的に投げられる球を次々と打ち込んでいき)

実況『凄い、凄いです! 音ノ木坂学院打線爆発ゥー! 9回表だけで5点を奪い返しました!』

凛(そのまま9回裏も〆、蓋を開ければ凛の初予選は5-1という大勝で幕を閉じた)

凛「な、何とか勝てたにゃ……」

にこ「あんたもさっさと壊しときなさいよあんなの。そしたらもっと早くコールドしてたのに」

凛「いやいや……だってスパコンだよ? とんでもない値段だよ? 流石に壊すのは……」

にこ「私のものじゃないもの。他人のものなんて1円だろうが100兆円だろうが等しく無価値のゴミよ」

凛「そういうものかな?」

にこ「そういうものよ」

希「まぁまぁ……一回戦は無事終了したんやから。今日のところは早く帰ってゆっくり寝よう」

希「明日からはまた二回戦に向けて特訓や、少しでも実力をつけなあかん」

「……待て」

482 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 04:16:21.26 ID:2QUEzOeO.net
凛「にゃ……?」

「……お前、星空真凛の娘だな?」

凛「そう、だけど……」

凛(何だろう、この子……酷く冷めきった目をしてる)

凛(心まで凍てつくような、恐ろしい目を……)

「私の名は柘榴。お前達と二回戦で戦うことになるだろう、天下高校のキャプテンだ……」

「私の母は甲子園予選で貴様の母親に手酷くやられたことを今でも恨んでいてな……幼い頃から毎日のように、呪詛のように言われたよ。甲子園に行け、星空を、桜内を倒せって……」

凛「……」

「……まずはお前達音ノ木坂学院。次に一二三、そしてUTX……全てを打ち倒し、100試合無失点の私の投球と鉄壁の守備で天下高校を甲子園で優勝させてみせる」

「試合の日を……せいぜい震えて待っていろ」

審判「柘榴選手、今から試合ですよ。ベンチに戻ってください」

「くく……ははは! はははははっ!」

凛(ママと凛は違うのに……これからもああいったことはありそうだね)

凛(天下高校か……)

483 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 04:21:32.38 ID:2QUEzOeO.net
音ノ木坂学院

凛「にゃっ!」ビシュッ

希「お……っと」パシッ

希「気合入ってるなー、凛ちゃん」

凛「今日の試合は手応え全く無かったからね……振る気無い相手に投げてもテンション上がらないよ」

凛「右手も問題なさそうだし……何とか実力つけて、勝ち上がっていかなきゃ」

希「よーし、その調子や。頑張ってな!」

絵里「凛、凛! 東京の予選結果の速報入ったわよ」

凛「本当? UTXとか、一二三とか……順当に上がってきてる?」

真姫「そうね、勝ち進んできてるわ。特にUTXはヤバい……コールドゲームになる前に、一回表から25点先取して相手の心へし折ったみたいよ」

凛「25点……!?」

484 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 04:26:26.59 ID:2QUEzOeO.net
凛「とんでもない数字にゃ……」

ことり「そんなところと戦わなきゃいけないんだね……」

穂乃果「案外大丈夫だよ、私達も強くなってるし」

凛「そうは言うけど、流石にレベルが違いすぎるにゃ……」

絵里「はいはい! 確かにUTXは怖いけど、次に当たるのはUTXじゃないんだから。まずはそっちに集中しなさい!」

凛「はぁい……ええと、次の相手は」


天下高校 0-7 平凡高校


凛「平凡高校か……また聞いたことない学校にゃ」

凛「あれ? 凛に二回戦で戦うって言ってたの平凡高校だっけ?」

希「確かその筈……やん。うん、確か平凡高校のキャプテンが母親なんちゃらかんちゃら言ってた気がする」

凛「多分そうだよね? 無失点とか言ってたし」

凛「やってやるにゃ……平凡高校!」

485 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 04:26:37.03 ID:2QUEzOeO.net
今日はここまで

486 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 07:37:52.35 ID:/D2fcaGj.net
拓瑠…いったいどんな能力なのか次回が楽しみだぜ!

487 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 11:58:32.43 ID:pz5Dvc0g.net
柘榴さん…

488 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 12:26:05.03 ID:qdgoysPu.net
柘榴…幽々白書にもそんな名前のやつがいたな…

489 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 12:30:56.80 ID:UdLqZCt6.net
ラスカルも拓瑠も最終回でピンチに駆けつけてくれるんだよな

490 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 20:27:18.06 ID:mTzFuHpS.net
??

491 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 20:35:00.95 ID:0MpuUBwI.net
>>471
ボーボボで見たわ

492 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 21:20:42.83 ID:3GjQXMD8.net
絵里「ところで……花陽と球拾の姿が見えないんだけど」

穂乃果「言われてみれば。会場から戻るバスには乗ってたよね?」

凛「かよちんはモブAちゃんのお見舞い行ったよ。一回戦に勝ったって報告するんだって」

絵里「花陽を庇って怪我をしたのよね……退院が予選に間に合わなかったのは可哀想ね」

絵里「甲子園大会には間に合えばいいけど……」

希「球拾は何処行ったんやろな?」

真姫「サボりじゃないの? 全然活躍出来なかったからって拗ねちゃったとか」

凛「にゃー……球拾ちゃんは球は遅いけどサボるような人じゃないよ」

ことり「そうだよ、毎日一番遅くまで練習してるし」

海未「真面目なことは真面目なんですけどね……その、才能が……」

凛「何とも世知辛いにゃ……」

493 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 21:20:57.48 ID:v/PSaNmY.net
レイプ宇宙人に長々尺割いたのマジ意味不だったけど
パワポケみを出したかったのか

494 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 21:23:56.92 ID:3GjQXMD8.net
ーーーーー

花陽「えっと……13階の444病室」

花陽「モブAさん喜んでくれるかな。予選に一回でも勝つのが夢だって言ってたし」

花陽「好きだって言ってたもんじゃ焼きも買ったし……」

ソレデ……

花陽「あれ、声が……誰か来てるのかな」

「治っては……いるんですよね」

医者「ああ、もう歩ける筈だよ。リハビリは必要だけどね」

医者「ただ……」

「野球は……野球は出来るんですか? 部員数がギリギリで……早く復帰しないといけないんです」

医者「……その、だね」

495 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 21:27:33.50 ID:3GjQXMD8.net
医者「君の足は……日常生活を送るには何ら支障はない」

医者「リハビリを進めれば短い距離なら走れもするし、長い距離を歩いても違和感は無いと思う」

医者「ただ……野球のようなスポーツをすることはもう……」

「……」

花陽「え……!」

「……! 花陽ちゃん……!?」

医者「ああ……お友達かな。ではモブさん、また後で看護師が来ますので……」

「はい、ありがとうございます……」

花陽「あ、あの……モブAさん。今のって……」

「……あはは、いやいや受けるっしょ。あーし、もう野球出来ないんだって」

496 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 21:32:28.87 ID:3GjQXMD8.net
花陽「私のせいで……私がごはんやの看板につられて車道に飛び出したりなんかしたから……!」

「いやいや、泣かないでよ花陽ちゃん。野球出来ないだけで日常生活には支障ないらしいし?」

「ほら、あーしフライも取れないじゃん? 復帰しても役に立つか分からなかったし……海未達も正式に参加してくれることになったんでしょ?」

「大丈夫大丈夫、なーんも問題ないって!」

花陽「け、けどモブAさん……あんなに野球したがって! 甲子園大会の予選も、本当は出ようとして……!」

「……いやいやー! 野球はほら、何となく続けてただけだし! 今まで練習ばっかで、ギャル仲間の誘いとか断ってたから丁度いいよ」

「原宿とか、渋谷とかで遊んで……普通の女の子みたいに過ごしたかったしね! うん、野球はもう諦めたよ。お見舞いとかももういいよ、そんなことする時間あるなら練習して甲子園大会優勝してよ」

花陽「モブAさん……」

497 :名無しで叶える物語(鮒寿司):2020/09/01(火) 21:36:39 ID:3GjQXMD8.net
「ほらほら……帰って帰って。練習して、私より強くなって……皆を引っ張ってってよ」

「もんじゃ焼きありがとうね。食べさせてもらうから」 

花陽「はい……ありがとうございます」

花陽「失礼します……」

「うん、ばいばい。応援してるからね、あはは……」

ガラララ……ピシャッ

「あは、は……はは……」

「う、うう……うぇぇ……」ポロポロ

「野球、したかったよぉ……私、全然弱いけど……皆と一緒に甲子園行きたかったよぉ……」ポロポロ

「うぁぁ……あぁ……」ポロポロ



花陽「……モブAさん」ポロポロ

花陽「強くならなきゃ……モブAさんの分も……!」ポロポロ

498 :名無しで叶える物語(鮒寿司):2020/09/01(火) 21:41:34 ID:3GjQXMD8.net
ーーーーーー

「えっと、ここの角を曲がって……」

おばはん「あら、球さんちの拾ちゃん。こんなところでどうしたの?」

「ああ、こんにちは。ちょっと用事がありまして」

おばはん「まぁまぁ。今って甲子園の予選やってるんでしょ? 拾ちゃん野球部だったわよね、頑張ってね」

「ありがとうございます!」

(頑張ってね、か……頑張れるのかな。先発のエースピッチャーとしてまだやれてはいるものの……)

凛『にゃっ……!』キュッ

ギュオンッ

(星空凛のボールは、私よりも速い。誰の目にも明らかに……)

(凛はどんどん凄みを増してるし、にこさんは練習はろくにしないけど天才タイプで変化球がビシバシ決まる……私だけが個性がない)

499 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 21:44:07.19 ID:4GpGDn3S.net
球拾が愛されてるのエモいわ
そういうとこやぞ西木野……

500 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 21:47:07.81 ID:3GjQXMD8.net
(だから……)



『なんじゃ、球拾さん。強くなりたい……?』

『そうなんです……住職。私にも絵里さんや凛のように個別の修行をつけてください』

『私だけが……置いていかれるようで……今のままじゃ駄目なんです。あんな遅い球じゃ……』

『ふうむ……そうじゃのう。しかし、君に合う修行はここにはない……そうじゃ、ここに行ってみなさい』サラサラ

『これって……音ノ木坂の隣町の住所?』

『そうじゃ。ただし……行くのは甲子園の予選が始まってからじゃ。今はただの空き地じゃからのう』



(そう言われて来てみたけど……)

「え、ここで合ってるの? ここって……」

ピエロ「ブカブカドンドン。さぁさぁ皆さん、寄ってらっしゃい見てらっしゃい! 楽しいサーカスだよ!」

「サーカス……?」

501 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 21:52:54.43 ID:3GjQXMD8.net
「あ、あの……」

ピエロ「やぁお嬢ちゃん、もしくは女の子のかっこしたお坊ちゃん! おとっつぁんアンドおかあちゃん! 楽しい楽しいサーカスだよ、見ていくかい?」

「いえ、その……ここを紹介されて。これを見せれば分かるって」

ピエロ「……」ジー

ピエロ「君、西園寺さんとこの紹介だね。裏に回ってよ、案内するよ」

「は、はい!」

(よかった……ここで合ってた! けどサーカスで何をするっていうんだろう)

ピエロ「ここからはボールに乗ってと……」

ピエロ「さぁこっちだよ、こっちだよ。足元がフラフラして危ないから気を付けてね」フラフラ

ピエロ「フラフラしてるのは僕の方だけどね! ピエロジョーク! ははは!」

「あ、あはは……」

ピエロ「あぁ、そこの隙間からサーカスの中に入って。裏口になってるから」

502 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 21:59:46.92 ID:3GjQXMD8.net
「は、はい!」スッ

「……? これって」

ガオォ……グルル……

ピエロ「猛獣使いの操る動物達さ。ライオンにトラ、ダチョウにクマに象さん! こいつは僕の象さん」ポロンッ

ピエロ「けど、この子達は違うんだよね。君が相手をするのはこの奥にいるよ」スタスタ

「えっ? 相手……?」

グルル……

「……!? 白い、トラ……!?」

ピエロ「こいつはベンガルトラのリディアくん! 団員を二人も食い殺した悪い子さ、猛獣使いも手を焼いていてね」

ピエロ「いや、助かったよ。じゃあこれを持って……」

「へ……」

(これって……日本刀? 重っ……ていうか何でこんなもの!?)

ピエロ「はい入って入って」グイッ

「えっ? えっ?」

ガチャンッ

ピエロ「じゃあ、西園寺の住職から伝えられたメッセージを言うよ」

ピエロ「そいつを殺すか飼い慣らすか、毎日檻の中に入って戦い続けなさい。以上だよ!」

「え……」

「えぇぇぇぇぇっ!?」

503 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 22:07:15.98 ID:3GjQXMD8.net
ーーーーーー

凛(その日から打倒平凡高校に向けて、凛達は練習を開始した)

凛(各々足りないところ……例えば凛ならコントロール、ことりちゃんは守備力、絵里ちゃんは筋力といった具合で)

凛(少しでもアラを無くすために毎日日付が変わる寸前まで練習を行い)

凛「23時にゃ……よし、シメにグラウンド100周して終わりにしよ!」

絵里「いいわよ……はぁ、ふぅ……よく体力続くわね」

希「0時頃まで特訓、朝は5時に起きて練習やからな……そのうち死ぬかも」

真姫「仕方ないでしょ……腐っても私達弱小なんだから。勝つには無理矢理にでも練習時間増やすしかないのよ」

「そうですね……」ボロボロ

真姫「球拾……なんか日に日にボロボロになってない? ちゃんと寝てる?」

「寝てませんよ……食われますもん」

真姫「よく分からないけど大変みたいね……」

504 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 22:13:15.83 ID:3GjQXMD8.net
凛「100……っと! 終わり! 日付変わる前に済んで良かったにゃ」

絵里「あぁ……シャワー浴びてさっさと寝ましょ……」

希「部室に布団敷きっぱなしにしてるから、着いたらすぐに寝れるよ……」

海未「羨ましいですね。私は父に毎日帰れと言われているので、泊まれないんですよね」

ことり「けどまぁ……普通は心配すると思うよ。娘が学校から帰ってこなくなったら」

穂乃果「本当、真姫ちゃんに感謝だね。今までは学校泊まれなかったのに……理事長、真姫ちゃんの言うことはすぐに聞いてくれるんだもん」

真姫「見返りとしてぬるぬる天国のプラチナカード要求されたけどね。まぁ理事長に渡しても採算取れてるからいいけど……」

凛「結局店長やってるんだもんなぁ……よくやるよ」

真姫「何だかんだ小銭稼ぐのも楽しいもんよ」

凛(小銭……? 確か年間三千万くらい稼いでたような……小銭……?)

505 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 22:16:45.03 ID:3GjQXMD8.net
花陽「ふっ……ふっ……」タッタッタッ

凛「ん……かよちん、もう100周超えてるよ! やりすぎると身体悪くするからもう寝るにゃ」

花陽「ご、ごめん……もうちょっとだけ……」

絵里「明らかに体力の限界超えてるのに……大丈夫なの?」

希「花陽ちゃんレイプ宇宙人やし、ウチらと身体の構造違うんじゃない?」

絵里「そういうものかしら」

「じゃあ私は……行くところありますので……」フラフラ

絵里「あぁ……ちゃんと寝なさいよ、球拾。顔色悪いわ……」

「いえ……あのクソ虎、思いっきり背中引っかきやがって……今日こそぶち殺してやる……」フラフラ

凛「大丈夫なのかな……」

506 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 22:21:39.60 ID:3GjQXMD8.net
ーーーー

数日後

審判「それでは只今より平凡高校対音ノ木坂学院の試合を行います! 両校整列してください」

「平凡によろしくね、キャプテンの平凡子だよ」

「平凡によろしく、副キャプテンの平凡美だよ。平凡に双子なんだよ」

凛「……二十数年前にママがどれだけ手酷く、甲子園予選でそっちのママを叩きのめしたかは知らないにゃ」

凛「それをそっちのママが恨んでるってのも、この戦いには関係ないことにゃ!」

凛「お互いしがらみなんて無く……悔いの残らない戦いにしようね」

「私のママ、平凡に歴史研究会じゃなかったっけ」

「平凡に野球してなかった気がするね」

凛(……? なんだ……妙だぞ、話が噛み合わない……?)

507 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 22:27:38.68 ID:vNjT/zDb.net
柘榴はどこにゃ!柘榴をだせ!

508 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 22:27:59.96 ID:3GjQXMD8.net
凛(平凡高校は名前の通り平凡な高校だった)

凛(平凡なピッチングと平凡なバッティング、そして平凡な守備。そんな、平均値を出したような相手にやられる音ノ木坂学院じゃない)

凛(早々に体力の限界を迎えた球拾がいくらか打たれたものの、こっちはそれ以上に打ち続け……)

平凡高校 2-4 音ノ木坂学院

実況『やりました、音ノ木坂学院見事二回戦を突破! 三回戦に駒を進めました!』

実況『これが本当に、あの弱小連敗の下り坂でしょうか! 堕ちた強豪音ノ木坂、見事に復活です!』

「平凡に負けちゃったね」

「平凡に悔しいよ。最後の夏だったのに」

凛「良い戦いだったにゃ……平凡なフォークと平凡なナックルカーブに苦しめられたよ」

「平凡にありがとう。これからどうしよっか」

「高校卒業したら、平凡に二人暮らしして大学行こうよ。親の目を気にしないでいいしさ」

「そうだね、妹ちゃん。平凡に愛してるよ」

「そうだね、お姉ちゃん。平凡に愛されてあげるよ」

凛「非凡にゃ……」

509 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 22:40:02.23 ID:3GjQXMD8.net
凛(三回戦、四回戦……凛達は何とか練習の量を増やしながら無理矢理突破していった)

凛(球拾は最初の頃は日を経るごとに怪我や汚れが増えていたが、最近は怪我も減り随分と余裕が見られるようになった)

凛(絵里ちゃん達も地道に自分の苦手な部分を克服し……)

絵里「次が準決勝……ここまで来ちゃったのね」

希「来ちゃったなぁ」

穂乃果「本当に来れるとは思ってなかったから……夏休みにデンズヌイランド行く予定入れちゃってたよ……」

絵里「駄目よ……」

穂乃果「うん……」

凛「次の対戦相手は一二三高校だよね。確か絵里ちゃん、前にここは強いって言ってたけど……どういうところなの?」

絵里「ここは……攻めはそこそこ程度なんだけど。守備がとにかく上手いところなのよ」

絵里「センターの三宅ヒデコ、ショートの山本フミコ、ファーストの原ミカ……このトライアングルを突破するのは非常に厄介ね」

希「確か去年はUTX相手に、9回やって3点しか取られなかったんやっけ」

凛「あのUTX相手に3点に抑えた……!?」

絵里「それも、取られた3点は全部どうしようもないホームランよ。考えようによっては完封と言っても過言じゃない」

510 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 22:46:00.88 ID:3GjQXMD8.net
凛「一二三高校……」

穂乃果「打ち崩すとしたら……やっぱりUTXと同じ戦法?」

絵里「そうね……そうなると思うわ」

絵里「パワーのある3番、4番、5番のラインで……何とかホームランを打って点をもぎ取り」

絵里「球拾、凛、にこの流れで無失点に抑える」

絵里「勝つにはこれしかないわ!」

海未「希、真姫、ことり……頑張ってくださいね」

ことり「海未ちゃんも力強いんだからホームラン打ってよぉ……」

海未「流石にことりには負けますよ」

凛「凛も! 凛もホームラン打つにゃ!」

希「凛ちゃんは投手なんやから……って思ったけど。虹ヶ咲との一戦で実際にホームラン打ってるしなぁ」

真姫「ま……他が打てなくても私が打ってあげるから安心しなさいよ。やれやれ……私に苦労ばかりかけるんだから」ファサッ

希「……」ボグオッ

真姫「お……ごぽっ」ゲボシャ

凛「もう殴るときに雄叫びすらあげなくなったんだね」

希「暗殺型に改良したんや」

511 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 22:46:10.59 ID:3GjQXMD8.net
今日はここまで

512 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 22:49:08.53 ID:3GjQXMD8.net
柘榴なら今頃海の家で焼きそば焼くバイトしてるよ

513 :名無しで叶える物語:2020/09/01(火) 23:02:11.29 ID:EebfVkaf.net

ごぽって内臓傷ついてない?

514 :名無しで叶える物語:2020/09/02(水) 00:44:03.77 ID:PwBTFhTY.net
ここの人たち格闘技やった方が良さそう

515 :名無しで叶える物語:2020/09/02(水) 01:52:19.92 ID:0ShccxB6.net
>>502
男だ!ここに男がいるぞ!!!!

516 :名無しで叶える物語:2020/09/02(水) 17:28:14.72 ID:81UetDSF.net
アマゾネス「男が来たら殺すのよ」

517 :名無しで叶える物語:2020/09/03(木) 11:24:43.37 ID:N/pVMhzU.net
保守

518 :名無しで叶える物語:2020/09/03(木) 22:13:02.41 ID:vVbwGoW+.net
ーーーーー

実況『ついに東京予選大会準決勝の幕が上がりますッッッ!』

実況『一二三高校、堂々とした振る舞いです。その表情に焦りの色は見えません、真っ直ぐに勝利への道を見つめていますッッッ!』

ウォォォォォォォッ!

実況『対するは……誰がここまで残ると予想したでしょうか! 弱小連敗の下り坂、堕ちた強豪、ばか、いんきんたむし、クソレズしかいない、レイプ宇宙人より嫌い……暴言しか聞いたことがありません! 音ノ木坂学院ッッッ!』

ブーブー! 死ねー! 顔も見たくない! そうかそうか、つまり君はそういうやつだったのか。

凛「凄い嫌われようにゃ……」

絵里「仕方ないわよ、今までが酷すぎたもの」

穂乃果「公式大会は全て一回戦負け……そりゃ、当時を知ってる人からすれば文句の一つも出るよねえ」

穂乃果「今までは無名ばかり。勝っても偶然、とかで片付けられてたけど……今度は一二三だもんね」

凛「だからこのブーイングかぁ……」

凛「ホームラン打って、一人一人顔に当てて殺すにゃ」

希「何それめっちゃ面白そうやん!」ウキウキ

穂乃果「きょコょぽァ気あゎみ区ぇら!」ウキウキ

真姫「一二三を見習いなさいよ……」

519 :名無しで叶える物語:2020/09/03(木) 22:17:32.38 ID:vVbwGoW+.net
ヒデコ「……」

真姫「ほら、あんなに真剣な……真剣っていうか悲しげな……?」

穂乃果「あ、ヒデコちゃーん。久しぶりー、元気してた?」

絵里「……知り合いなの?」

穂乃果「うん、中学一緒だったんだ」

ヒデコ「穂乃果……なのよね? 本当に」

穂乃果「私が穂乃果じゃなかったら、一体誰が穂乃果だというのだろう」

穂乃果「お前か?」

希「言われてみればウチは穂乃果ちゃんやった気がする」

希「ウチが穂乃果やん。久しぶりやね、ヒデコちゃん」

穂乃果「じゃあ私は誰だと言うのだろう……」

凛(自己矛盾に耐え切れず穂乃果ちゃんの身体は自壊し、さらさらとした砂が風に流された後には骨しか残らなかった)

520 :名無しで叶える物語:2020/09/03(木) 22:22:14.37 ID:vVbwGoW+.net
ヒデコ「うぅ……」ポロポロ

フミコ「ヒデコ、大丈夫? 泣かないでよ」

ミカ「そうだよ……落ち着いて、ね?」

穂乃果「ホネブーメラン!」キャッキャッ

海未「やめてください! 骨を投げないでください!」

ヒデコ「中学の頃はあんなんじゃなかったのに……憧れてたのに……」

ヒデコ「あんなの穂乃果じゃないよぉ……!」

凛「えっ……穂乃果ちゃん、中学時代はまともだったの……!?」

穂乃果「うん、高校デビューだもん私」

ことり「変な方向にデビューして吹っ切れたんだよね。一時期友達辞めようかと思ったもん」

海未「射精モモンガ事件、今でも忘れてませんよ」

穂乃果「恥ずかしいなぁ……」

ヒデコ「穂乃果が馬鹿になっちゃった……穂乃果がぁ……」シクシク

花陽「試合始まる前から地獄絵図になってきたよ……」

521 :名無しで叶える物語:2020/09/03(木) 22:40:03.10 ID:vVbwGoW+.net
審判「両校整列してください! 試合を始めます!」

審判「両校……両校、整列してくださいっ!」

審判「……整列! おい!」

絵里「審判がキレ始めてるわ……これ以上茶番を続けると判定が不利になる可能性があるわね」

絵里「さっさと並びましょ」

フミコ「ほ、ほらヒデコ……早く並ぼ? 泣いてたら審判さん怒っちゃうよ」

ミカ「審判さん怒らせるとまずいよ……」

ヒデコ「ぐす……うぇ……」トボトボ

審判「チッ……それでは只今より、一二三高校対音ノ木坂学院の試合を始めます! 礼ッ!」

「「「よろしくお願いします!!」」」

凛「凛達が後攻……守備は強いって聞いてたけど打撃はどんなもんだろ」

希「ここまで勝ち残ってきた高校やからなぁ……守備ほどではない、ってだけで打つ方も十分強いやろ」

真姫「……そうみたいね、あれ見て」

522 :名無しで叶える物語:2020/09/03(木) 22:44:06.65 ID:vVbwGoW+.net
ヒデコ「……ふっ!」ブォンッ

凛(シャープなスイング……確かに鋭さは感じるしスイングスピードは速いけど、それだけにゃ……?)フワッ

凛「……!? 風が……!」

絵里「スイングの風圧がこっちのベンチまで届いてる……?」

真姫「心構えはしておいた方がいいわよ」

真姫「UTXと肩を並べる……その肩書は伊達じゃないみたいだから」

絵里「……いける? 球拾」

「……やるしかないじゃないですか。私はエースなんですから」

絵里「……頑張りなさい。後ろには皆がついてるから」ポンッ

523 :名無しで叶える物語:2020/09/03(木) 22:51:11.97 ID:vVbwGoW+.net
実況『さァ始まりました。一二三高校、第1打席はヒデコ……ここまで打率6割、4打点で来ています』

実況『以前は一二三といえば守備一辺倒のイメージでしたが、昨年のUTX戦以来ガッツリと打撃を鍛えてきたようですね。今年の甲子園予選では選手皆よく打っています』

ヒデコ「……許さない。穂乃果をあんなにして」キッ

「穂乃果ちゃんは元からキチガイの二乗だったけど……」

ヒデコ「そんなわけない。穂乃果はもっと……かっこよくて、可憐で、ヒーローで……!」

穂乃果「照れるなぁ」

「貴女のイメージを穂乃果ちゃんに押し付けないで。穂乃果ちゃんはかっこ悪くて、ガサツで、悪役なんですよ!」ヒュッ

穂乃果「許さないぞぉ?」

ヒュオオオオッ

ヒデコ「……こんな球、簡単にっ……!」ブォンッ

スパァンッ

審判「ストライッ!!」

524 :名無しで叶える物語:2020/09/03(木) 22:56:13.20 ID:vVbwGoW+.net
ヒデコ「……!? 手元で球が伸びた……?」

希(球拾も地味に成長はしてるんよな……110キロやったストレートも125キロまで伸びたし、ノビのあるストレート投げれるようになったし)

希(ただやっぱ……個性がないというか、相手に押し付けられる強みがないというか)

希「……」スッ

「……ふっ!」キュッ

キュルルルルルルッ

ヒデコ「カーブ……これは貰っ……っと」

スパァンッ

審判「ボールゥ!」

希(ボール半個だけずれた内角高めのカーブを見逃してくるか……ここまで残るだけあって目はかなりいいな)

「……」クイッ

希(もう一球同じところ? それはええけど……)

キュルルルルルルッ

ヒデコ「……」

スパァンッ

審判「ボールツァゥー!」

希(当然、見逃してくるよなぁ……これでワンツー。さてさて……)

525 :名無しで叶える物語:2020/09/03(木) 22:56:41.39 ID:vVbwGoW+.net
早いけど今日はここまで

526 :名無しで叶える物語:2020/09/04(金) 00:11:39.83 ID:kDqqYSao.net
中学時代の穂乃果ちゃんみたい

527 :名無しで叶える物語:2020/09/04(金) 10:50:07.09 ID:8D5AkIN8.net
>>518
エーミールさん!?

528 :名無しで叶える物語(鮒寿司):2020/09/04(金) 16:08:36 ID:S2geeUz/.net
「……フッ!」キュッ

キュルルルルルルッ

希(三回連続で同じ場所へのカーブ……そろそろつられて振りたくなるんじゃない?)

ヒデコ「……」

希(……ともならないか、残念だけどボールスリー)

キュッ

希(……!)バシッ

ヒデコ「っ……僅かに変化が変わってる」

審判「ボ……ストライッツゥー!」

「ふぅ……よかった、通った」

ヒデコ「やってくれるわね。けれど……」

ヒデコ「ツーツー。一球外してフルカウントにする? 私に有利になるだけだけど」

「……希さん」

希「……」スッ

希(外角……内角を攻めたから球を散らそうってだけだけど、そんな安直な手が通用する相手とも思えんな)

「いきますよ……」クッ

529 :名無しで叶える物語:2020/09/04(金) 16:16:40.97 ID:S2geeUz/.net
ヒデコ「構えが変わった……?」

希(何をする気や……? 新しい変化球でも覚えたんか?)

希(最近はほとんど凛ちゃんの特訓につきっきりやったからな……何をしてくるか全然分からん)

希(けど変化球なら流石にウチに教えてる筈やんな? 取れなかったら振り逃げやし)

希「一体何を……」

「らぁっ!」ギュオッ

シュォォォオッ!

ヒデコ「ストレートじゃない、少し早くなっただけの……!」

ヒデコ「こんなの簡単に打ち取れ……っ!?」

希(な、なんや……!?)

ボワァァァァッ

希(球の周りに白いモヤが……煙?)

ヒデコ「っ……見えな……だから何だっていうのよ!」ブォンッ

キィンッ!

凛「打たれ……いや、詰まってる! 絵里ちゃん、サードフライにゃ!」

絵里「分かってる……わよっ!」ポスッ

審判「バッターアウッ!」

ヒデコ「くそっ……何よあの球! 煙の出る魔球……? こんなくだらないものに……!」

希「た、タイム! 凄いやん球拾! ズタボロになってたとは思ってたけど、あの球を練習してたんやな!」

「……まだ、駄目みたいですね」

希「へ? 煙の出る球やろ……?」

「いいえ、あれは未完成なんです。あの球はそんなにくだらないものじゃ……」

「……戻ってください。何とかして支配しなきゃ」

「私をもっと……信用してもらわなきゃ」ブツブツ

希「あ、ああ……うん。よく分からんけど、頑張ってな……」

530 :名無しで叶える物語:2020/09/04(金) 16:25:28.76 ID:S2geeUz/.net
フミコ「煙の出る球……バッターボックスに入った時点で煙に包まれ場所が見えなくなるんだよね」

フミコ「変化球と掛け合わされたら厄介そうだけど……」

希(変化球と掛け合わされたらウチが取れへんって……こっちも見えてないのに)

「もう一球……らぁっ!」キュッ

シュォォォオッ!

フミコ「煙に包まれ……ここっ!」ブォンッ

キンッ!

実況『初球打ちィ! ピッチャー球拾の、煙の出る魔球を見事に捉えてレフトの頭を超えました!』

実況『しかし一体どんな原理なのか、煙の出るあのボール! よく姿の見えない球に反応することが出来ましたね』

フミコ「ツーベース……は厳しいか。レフトの一年生、結構反応いいね」タッ

穂乃果「まぁね……けどよく打てたね、あんな見えない球」

フミコ「煙に包まれて見えなくなるのはバッターボックスに入る直前だもん。大体何処に来るのか、それまでの軌道で分かるよ」

フミコ「それに……ストレートでしか投げられないみたいだしね、あの球」

穂乃果「……」

「……やっぱり煙になっちゃいますか」

「練習でも駄目だった。試合ならと思ったけど……どうしても纏まらない。私じゃ駄目なの……?」

実況『さぁランナー一塁の場面です、ここは得点を得たいところ! 第3打席、バッターは技巧派のミカです』

531 :名無しで叶える物語:2020/09/04(金) 16:36:27.99 ID:S2geeUz/.net
ミカ「はりきって魔球なんか投げたみたいだけど……結局打たれてるね」

ミカ「駄目駄目ピッチャーじゃん、もっと打たれちゃえ。ざぁこ♡ざぁこ♡」

実況『な……これは一体何なのでしょう、一二三高校のミカ、相手投手を煽っています』

実況『今入りました情報によりますと、ミカ選手は元々一二三高校の生徒ではなく『メスガキわからせ高等専門学校』からの転校生のようです』

実況『なるほど、試合などで興奮するとメスガキとしての本能が出てしまうのですね』

ミカ「くすくす♡ ざこざこ童貞おちんぽピッチングなんかで、私と勝負しようなんて……」

「……」イラッ

シュォォォオッ!

ドグオッ!

ミカ「げぼっ……ご、おぁ……」ビグッ

審判「ボール!」

ミカ「!?」

「フッ……!」

シュォォォオッ

ドグオッ

ミカ「びっ! 痛いよぉ……ごめんなさいごめんなさい……もうやめてぇ……」

ミカ「童貞おちんぽって言ったこと謝ります……雑魚じゃありません……」ビクビク

審判「……」

審判「ボールツー!」

ミカ「ひいっ!」

532 :名無しで叶える物語:2020/09/04(金) 16:43:40.82 ID:S2geeUz/.net
「このままじゃフォアボールになりそうですね……これ以上デッドボールを繰り返すわけにはいきません!」シュォォォオッ

ギュオンッ

希「あっ……ちょ、イラつきすぎや! 甘いところに……!」

ミカ「……」スッ

ガギィンッ!

希「ッ……!」

実況『おっと……なんということでしょうか! 甘いところを見逃さず、打たれた球が綺麗に右中間を抜けていきます!』

実況『素晴らしい判断力です、甘いところに入るのはコントロールの良い球拾にしては珍しいですが……』

「ミス……いや、甘いところに投げさせられた?」

ミカ「……」

ミカ「くすくす♡ざぁこ♡」

フミコ「ミカの能力『メスガキ』……彼女を見たものはイラつき、正常な判断力を失い……」

フミコ「結果的に甘い球を投げたりボール球に手を出す……ふふっ、上手くハマったみたいだね」

絵里「……そっちも中々の曲者みたいね、全く」

実況『さぁこれでワンアウトランナー二塁三塁……得点が見えてきました。先制点のチャンスです!』

533 :名無しで叶える物語:2020/09/04(金) 17:01:36.44 ID:S2geeUz/.net
希「次は4番……まずいな」

絵里「4番に回る前に、悪くてもツーアウトランナー一塁の形に持って行きたかったけど……」

絵里「球拾! 絶対抑えて!」

「……はい!」

実況『一二三高校4番バッター、名無しモブ1……身長270cm体重175kg! 見てくださいあの腕を……私の胴回りほどありますッッッ!』

「……」シュゴーシュゴーッ

「ぶぉぉぉぉっ! ぐるぉぉぉぉぉっ!」ジャラジャラッ

実況『今一二三高校の教師陣達が……彼女の手を縛る鎖を外しています! おっと……教師の一人が裏拳を食らって……何ということでしょうか! 頭がありません! 壁にぶつかり散らばった脳が芝生に張り付いていますーーーっ!』

一二三教師「お、おい早く注射を! 鎮静剤だ!」

一二三教師2「既に打ってる! クジラでも死ぬ量だぞ!」

「ぐおぉっ! ぶるふぉぉぉっ!」ブォンッブォンッ

実況『さぁ名無しモブ1、教師陣を皆吹き飛ばし今バッターボックスに立ちました。ピッチャー球拾、どう攻めるのか』

534 :名無しで叶える物語:2020/09/04(金) 17:07:40.83 ID:S2geeUz/.net
希「恐らくはパワー型のバッター……」

希「低めやん……高めは絶対にまずい、あの筋肉は芯を外してもホームランに持っていく量や!」

「わ、わかってますけど……何処に投げても打たれるような……」

穂乃果「何というか禍々しいね……」

海未「あれは……本当に人間なのですか……?」

ミカ「多分その筈だよ、この前タピオカミルクティー一緒に飲みに行ったし……」

ミカ「後コンビニで夜勤のバイトしてる」

「ぐるふぁぁぁっ! ぶおっふぉ!」

「とにかく低め……低めに!」スッ

シュォォォオッ!

「……ぎぎっがぁ! ごばぁど!」

ズバァンッ

審判「ボールッ!」

希(低すぎたか……つられて振ってくれたらよかったんやけど。4番だけあって目は良いみたいやな)

535 :名無しで叶える物語:2020/09/04(金) 17:16:43.59 ID:S2geeUz/.net
希(もう一球、低めに……)

「ふっ……!」クイッ

キュルルルルルルッ!

フミコ「ここっ!」ダッ

ミカ「はぁい」ダッ

絵里「なっ……!」

「ご……ぼぉがぁ!」スッ

希「んなっ!」

コォンッ

希「バント……! しかもプッシュ……!」

実況『ここでバントだぁぁぁっ!? ボールはピッチャーの頭の上を超え、セカンド園田の前に落ちましたっ!』

実況『既にランナーはスタートを切っているっ! セカンド、拾いましたが……』

フミコ「……っと、はい帰還!」

実況『ホームベースやサードは諦めたようです! 今ボールがファーストに投げられました! 1点と引き換えのツーアウトです!』

穂乃果「か、完全に……打ってくると思ったのに」

「ごぎがががぎご……かぐじつに、てん、どるぅ、ぞれが、よばんの、やぐめ!」グチャ…ドチャ…

穂乃果「本当に人間なんだよね?」

「ぢがう」

実況『これで1-0! ツーアウトと追い込みましたがサードランナーが怖い状況、まだまだ5番と怖い打順が続きます!』

536 :名無しで叶える物語(鮒寿司):2020/09/04(金) 17:27:28 ID:S2geeUz/.net
凛(その後5番を何とかショートゴロに抑え、1回表は1-0のまま終わった)

凛(凛達は一点を追う形になるけれど……ヒデコ、フミコ、ミカの地獄のトライアングルは噂通り恐ろしいものだったにゃ)

穂乃果「らっ!」ガギィン

実況『おっと、一番高坂打ちました! 良いコースです、これは右中間を抜け……』

穂乃果「私だってちゃんと成長してんだから……へへ……」

パシッ

穂乃果「……へ?」

審判「アウトォッ!」

実況『……ません! センターがフライのまま取っています……いつの間に移動したのか! 本来なら確実にヒットを取れるラインだったのは間違いありません、素晴らしい守備です一二三高校!』

穂乃果「な、なんでぇ!? 確かに打つ前までは別の場所に……!」

ヒデコ「……これが『完璧な守備』よ」

真姫「……打つ寸前に動き出した? まさか、エマ・ヴェルデの……」

ヒデコ「……ああ、知ってるのね。彼女の力のこと」

ヒデコ「確かにそうよ。これはエマ・ヴェルデの模倣……それも守備にしか使えない劣化したもの。けれど……それを三人でやればエマ・ヴェルデを超えられる」

凛「……これ、三人のエマちゃんを相手にしてるようなもんってこと!?」

537 :名無しで叶える物語:2020/09/04(金) 17:36:42.65 ID:S2geeUz/.net
絵里「エマを相手に、ね……」

実況『続く二番バッターは今大会よく当たっている絢瀬です! 過去の記録を見ていると、ほぼ一割も打ってないような駄目打者だった筈ですが……』

実況『一体どんな特訓を重ねれば人間こうなるのか、今大会の打率は実に7割近いです!』

「……」シュッ

絵里「……」キュイインッ

絵里(ピッチャーの目の動き、筋肉の動き、指のゆらぎ……全て見えるわ)

絵里(あの小坊主達の棍に比べれば……全てがスローモーションみたいなものよ!)

絵里「う……るぁ!」ガオンッ

ガキィィンッ!

ヒデコ「なっ……!」

実況『おっと……どうしたことか! センターヒデコ、珍しく反応が遅れています!』

実況『打球はセンターの頭を超えました……フェンス激突ーっ! バッター、ファーストを蹴りました!』

ヒデコ「っく……!」シュンッ

実況『セカンドはセーフ、絢瀬! キャプテンの面目を保ちましたっ!』

フミコ「なんで……私達の目が……」

ミカ「何処に打ってくるかは分かる……なのに、反応しきれない……?」

凛「な、なんで? エマちゃん並みの守備なのに……」

真姫「当たり前よ……絵里もあの三人組と同じなの」

538 :名無しで叶える物語:2020/09/04(金) 17:43:58.87 ID:S2geeUz/.net
真姫「絵里が修行で身につけたのは相手を観察する『目』よ」

真姫「あの三人がやっていることも、謂わば『目』を使った観察……」

真姫「絵里はその逆で守備にはいまいち活かせないけど、打撃においてはほぼ無敵……ピッチャーの動き、守備の動きを瞬時に理解し穴へ鋭い打球を穿つ。これもエマの劣化版」

真姫「まぁエマが化物すぎるだけで、片方が出来るだけでも十分なんだけどね」

凛「……甲子園に行けば、その両方併せ持つ真の化物と戦うことになるんだよね」

穂乃果「……仕組み聞くと不安になってくるね、なんか」

穂乃果「イチローなんかは投げた球がスローモーションに見えることがあるらしいけど……それを全自動、全打席、全守備位置で行えるとか恐ろしすぎるって……」

真姫「今は考えても仕方ないわよ。それより希の打席を……」


希(さて……ワンアウト二塁。安定行動はバントで確実に塁を進ませて)

希(次の真姫ちゃんにかける、ってのが一番なんやけどな……間違いなく反応してくるよな。あのファーストとショート)

フミコ「……」

ミカ「……」

希(となるとバントは無しや。打っていくしかない)

539 :名無しで叶える物語:2020/09/04(金) 18:42:09.60 ID:S2geeUz/.net
希(あのスイングを見る限りやと相手は後数点は取ってくるはずや)

希(最低でも毎回同点、もしくは逆転せな追いつけなくなる!)

スパァンッ

審判「ットライッ!」

実況『一球見逃してワンストライク。慎重になっているようですね』

希(フライは絶対駄目や……甘く入ったところを確実に地面に叩きつける!)

ミカ「くすくす……♡」

希「ッ!」

ミカ「慎重っていうか臆病なだけだよねー。ざぁこ♡前髪すかすか♡」

ポワァァン

希「なっ……にを!」

ヒュンッ

希「……!」ブォンッ

希(しまっ……低めのクソボールッ……!)

ガンッ

ポテポテ…

実況『ピッチャーの前にボテボテのゴロが転がっていくゥー! 絢瀬、セカンドに張り付いていますっ! 動けません!』

希(アウトか……ただでさえ守備をガチガチに固められてる上にあの能力!)

希「厄介やな……!」

540 :名無しで叶える物語:2020/09/04(金) 18:48:47.64 ID:8D5AkIN8.net
これは分からせてやらねばなりませんねぇ…

541 :名無しで叶える物語:2020/09/04(金) 18:53:56.96 ID:S2geeUz/.net
実況『さぁ3番東條が敗れ次は4番! お待たせしましたすごい奴! 何故この高校にいるのでしょうか、生ける伝説イキる伝説中学生っ!』

実況『西木野真姫ですっ!』

希「真姫ちゃん……耳栓をして行ったほうがいいかもしれん」

希「あのファースト……ミカとかいうメスガキ。とにかくヤバい」

真姫「いらないわよ、そんなの」ザッザッ

真姫「メスガキっぷりなら……」

スッ…

実況『こ、これは……ホームラン予告だぁ! その上空いた手で中指を立てていますっ! 何というふてぶてしさっ!』

真姫「私も負けないのよ!」

ミカ「く……ホームラン予告とか打てなかったらダサいよねー? ざこざこ童貞さんはイキることしか出来ないのかなー」

真姫「あれあれぇ? ベストナイン入ったことも無いクソ無名の雑魚カスが何か言ってるわねぇーー? スカウトに声かけられたこともない素人さぁん! スタジアムでバット振ってるよりジジイ相手に腰振ってる方が似合うんじゃない?」

真姫「そもそもメスガキとか自分で言ってる奴www自称メスガキwwwおめぇキチゲェかぁ?www」

ミカ「ぐぅっ……!」ブォォォッ

キュオオォォォォッン

凛「『メスガキ』を打ち消しあってる……!?」

ことり「そうか……元々真姫ちゃんは自分以外の全てを見下している!」

ことり「メスガキも何も、最初から全部馬鹿にして煽り倒す対象でしかないんだ!」

海未「『メスガキ』は真姫には効かない……まさか真姫のイキりがこんなところで役に立つなんて……!」

542 :名無しで叶える物語:2020/09/04(金) 18:57:49.09 ID:urbjSxaz.net
まきちゃん...

543 :名無しで叶える物語:2020/09/04(金) 19:01:58.19 ID:S2geeUz/.net
フミコ「ミカの『メスガキ』が効かない奴がUTX以外にいるなんて……!」

ヒデコ「これを打ち破ったのは綺羅ツバサと統堂英玲奈だけだったのにっ……!」

フミコ「優木あんじゅは怒り狂ってたよね」

ヒデコ「うん、怒りすぎて鼻血出してぶっ倒れてた」

ミカ「く……ざぁこ! ざぁこ! 薄毛前髪すかすかおじさん!」

真姫「……」ギンッ

ミカ「っ……!」

ヒュオオオオッ

真姫「……絵里や凛だけにいいカッコさせるわけには」

真姫「いかないのよっ!!」ブォンッ

ガキィィンッ!!

実況『スター西木野打ったァァァッ! 大きい、大きい! 入るか、入るかっ!』

にこ「ふぁぁ……。入るわよ……あの角度なら」

花陽「にこちゃん、しっかり試合見なきゃ駄目だよぉ!」

にこ「夜までバイトしてたから疲れてるのよ……交代要員なんだし出番まで寝かせて」

穂乃果「にこちゃん起きてよぉ!」ブォンッ

にこ「うおっ!?」

にこ「ば、バットは辞めなさいよっ! あんた達と違ってギャグ世界の住人じゃないんだから、死んだら復活できないのよ!?」

実況『これはホームランでしょう! 今フェンスを超え……!?』

にこ「ノコギリも駄目……ん?」

544 :名無しで叶える物語:2020/09/04(金) 19:09:48.11 ID:S2geeUz/.net
ヒデコ「させるか……させるかぁ!」ダッ

ガッガッガッ

凛「な……!」

にこ「フェンスを登ってる……っ!?」

ヒデコ「らぁぁぁぁっ!」

パシィィィンッ

ヒデコ「っうぉ……!」ドサッ

実況『な……』

実況『なんということでしょう! センターヒデコ、ホームラン性の打球に……フェンスをよじ登って飛びつきましたぁ!』

実況『しかし身体はそのまま向こう側に消えて柵越え……ボールはどうなったのでしょうか!』

ヒデコ「……」スッ

実況『入っています! グローブの中にきっちりボールは収まっていますっ!』

実況『審判が集まって相談しています……どう判断されるのかぁ!』

にこ「……身体ごと柵を越えたんだからホームランに決まってるじゃない!」

ミカ「柵を越える前に捕球したんだからアウトだよ! 決まってるじゃん!」

545 :名無しで叶える物語:2020/09/04(金) 19:20:53.10 ID:S2geeUz/.net
実況『おっと……相談が終わったようです。一体どうなったのか!』

審判「……」

審判「アウトッ!」

にこ「はぁぁぁぁぁっ!?」

絵里「ふざけんじゃないわよ!?」

実況『審判の下した結論はアウトォ! しかし納得しきれない音ノ木坂ナイン、審判に詰め寄りますっ!』

凛「どういうことにゃあれがアウトって!」

真姫「そうよ! 完全に身体ごと向こうに落っこちてるじゃないの!」

審判「審判員はフェンスにヒデコ選手がよじ登った時点で捕球を確認しています!」

審判「落下は捕球後……つまり打者アウト後のことになります!」

真姫「ぐ……そんな……!」

ミカ「くすくす♡やっぱり無理じゃん♡」

ミカ「弱小連敗の下り坂♡ざぁこ♡」

凛「穂乃果ちゃんそいつ抑えて。前と後ろにバット突っ込むから」

穂乃果「前も後ろも二本ずつね! 破壊しよ!」

ミカ「え……やだ、やだ……ごめんなさい……やめ、入らなっ……やっ……」

フミコ「何とか0点に抑えられたね……最後は危なかったけど。助かったよヒデコ」

ヒデコ「上手くキャッチ出来て良かったわ……」

ミカ「助けて……助けてよぉ! そんなの入るわけ……ごめんなさい私が悪かったです、二度と生意気言いませんからぁ! ……ひぎぃ!!」


実況『さぁ2回表、一二三高校打順は6番からになります!』

実況『下位打線とはいえよく打ちよく守る一二三高校、音ノ木坂学院は油断が出来ない状況が続きます!』

凛「追加点はやれない状況……まだ球拾ちゃんで行く?」

にこ「最悪私でもいいけど。出るんなら肩温めとくわ」

絵里「いえ……まだ、球拾でいくわ」

絵里「本人もやりたいって言ってるし、何かまだ策があるみたいだし……」

「もう少し……もう少しで支配出来そうなのに……」ブツブツ

546 :名無しで叶える物語:2020/09/04(金) 19:21:04.01 ID:S2geeUz/.net
今日はここまで

547 :名無しで叶える物語:2020/09/04(金) 20:26:23.32 ID:APBUCIHJ.net
完全に視界から消えてたのにフェンスの向こう側に落ちなかったヒデコの腕力よ

548 :名無しで叶える物語:2020/09/05(土) 16:49:59.19 ID:vJYy39fF.net
保守

549 :名無しで叶える物語:2020/09/05(土) 18:57:33.62 ID:oYtHzwq1.net
ーーー

「グルルル……」

(その虎、リディアは故郷チベットの地において『王』であった)

(一吼えすれば全ての動物が震え上がり、小動物などその臭いを僅かにでも感じた瞬間隣の山まで逃げるほどに……リディアは恐れられていた)

(薄汚いハンターに麻酔弾を打ち込まれ、檻に入れられても彼は何も変わらなかった)

「グァウッ!」

(檻の中に入った『肉』を、リディアは時に弄び、狩りの本能のまま食い殺した。一人は筋張った硬い肉で、もう一人は柔らかい肉だった)

(そして――また、新たな『肉』が檻に侵入した。妙にうるさく、甲高い声で喚く『肉』だった)

「ガァァァァァッ!」

(いつも通り、肉の纏うぴらぴらとした布を引き破り、肉に爪を立て弄ぶ。その間もずっと肉は甲高い声で喚いていた)

(そして、いつものように。肉を食いちぎり内臓を引き出そうとした時)

(肉は唐突に、リディアに『牙』を向いた)

550 :名無しで叶える物語:2020/09/05(土) 19:08:22.98 ID:oYtHzwq1.net
「はぁ……ぐ、痛い……なぁ!」ブォンッ

「グァウッ!? ガァッ!」

「人のこと餌みたいな目で見て! 殺されるくらいなら……」スッ

「ぶっ殺してやる……!」チャキッ

ピエロ「やるね、彼女」

ピエロ(分身)「危なくなったら助けようとしてたけど……必要なさそうだね」

ピエロ「だね、疲れるから戻ろうか」

ピエロ(分身)「戻ろうか」ヒュバオッ

(来る日も来る日も、私は練習終わりにその虎と戦い続けた)

(最初は爪に引き裂かれ、牙に肉を千切られ……死ぬ寸前まで追い込まれたこともあった)

(しかし……日を経るごとにその爪は当たらなくなった。その牙は当たらなくなった)

(代わりに此方の刀が。『牙』が、相手を捉えることが増えていった)

(そして……)

ーーーーーー

実況『あぁ……! これはいけません! ピッチャー球拾、滅多打ちです!』

実況『2回表から……現在、5回表にいたるまで! 毎回打ち込まれ続けていますっ! 既に一二三は5点のリード……対する音ノ木坂学院は0点が続いていますッッッ! 何故投手を変えないのか音ノ木坂学院っ! 手遅れになってしまうぞッッッ!』

絵里「球拾……! 大丈夫なの!?」

「すみません……エースがこんな調子で……」

「駄目駄目ですね、あはは……」フラフラ

絵里「凛! もう球拾は限界よ! 交代をっ……!」

凛「駄目にゃ!」

551 :名無しで叶える物語:2020/09/05(土) 19:17:04.56 ID:oYtHzwq1.net
絵里「凛……!」

凛「……エースが! 音ノ木坂学院のエースが、まだやれるって言ってるにゃ」

凛「なら凛は……代わることは出来ないよ!」

真姫「そうは言ってももうフラフラじゃない! これじゃ打ち込まれる為に投げてるようなものよ!」

絵里「そうよ……! 何を意地張ってるのよ! いつもはもっと……」

「ここで……」

絵里「っ……」

「ここで諦めたら……もう二度と、何も投げられない気がするんですよ」

絵里「け、けどっ……」

絵里「凛も! 負けてもいいの!? 甲子園行けなくなるのよ!?」

凛「……5点取られたら6点取ればいいにゃ」

凛「100点取られても、101点取れば勝ちにゃ! 凛は球拾ちゃんに任せるよ」

絵里「ッ……! 知らないわよ、どうなっても……!」

552 :名無しで叶える物語:2020/09/05(土) 19:25:44.56 ID:oYtHzwq1.net
凛「……とはいうものの」

凛「5点差……その上あの完璧な守備。突破方法が思いつかないなぁ……」

凛「球拾ちゃんもまだ打たれそうだし、本当に凛達ここで敗退しちゃうのかな……いやいや!」

凛(信じるって言ったのは凛なんだから! 何とかして勝つ方法を……)

ことり「凛ちゃん! そっちいったよ!」

凛「へ? うわっ!」

凛(やばっ……凛の頭越える! 飛びつかなきゃ……!)

凛「あ……」

ボゴァッ!

ことり「っ……! 凛ちゃん!」

絵里「先にボール回して! ランナー進んでるっ!」

花陽「大丈夫!? 凛ちゃんっ!」

…ンチャン! メヲアケ……

…………

553 :名無しで叶える物語:2020/09/05(土) 19:30:28.39 ID:oYtHzwq1.net
「……ーい、おーい。起きるにゃ」

凛「にゃ……」

「聞こえてる? おーい」ユサユサ

凛「ん……にゃっ!?」ガバッ

「あごぁっ!」ドゴッ

「いきなり飛び起きるのやめるにゃ……痛いなぁ、もう!」

凛「あ、あれ!? 試合は!? ここは……!?」

凛(目覚めた場所は、ついさっきまで試合をしていたスタジアムじゃなかった)

凛(何もない……壁も、床も、天井も、空も。色すらもない、ただ透明な空間が広がっている)

凛「ど、どこ……!?」

「とりあえず落ち着いてよ、凛が説明するから」

凛「へ……凛が目の前にいる……?」

凛「夢にゃこれ、ほっぺ抓っても痛くないし」ギュウウウッ

「まぁ確かに夢っちゃ夢にゃ。まぁとにかく聞いてよ、ようやく話せるようになったんだから」

554 :名無しで叶える物語:2020/09/05(土) 19:35:27.70 ID:oYtHzwq1.net
凛「話せるように……凛は凛なの?」

「凛は凛だよ。一つ違うところは……」

「ちんちん付いてることにゃ」ポロンッ

凛「なんで凛にちんちんが……!?」

「だって凛は男だもん」

凛「……? 凛は女だよ?」

「いや確かに凛は女なんだけど凛は……あー、ややこしいにゃ! まずは自己紹介!」

「凛の名前は星空凛太郎……君の先祖にゃ」

凛「せ、先祖……? けど、あまりにそっくりにゃ」

凛太郎「うん……凛の血筋は皆ほとんど顔が一緒になるんだよねぇ。真凛もそうだったし」

凛「ママのことを知ってるの?」

凛太郎「勿論。深ーく長ーい付き合いだったよ」

555 :名無しで叶える物語:2020/09/05(土) 19:44:08.19 ID:oYtHzwq1.net
凛太郎「詳しい話する前に……えっと、試合の途中で誰かに身体を操られるような感じがしたことなかった?」

凛「何回かあったけど……それがどうしたの?」

凛太郎「あれやったの、凛にゃ」

凛「……!」

凛(あのフォークボールや、虹ヶ咲でのホームラン……目の前のこの自称ご先祖様が? なんでそんな……)

凛「それは……凛が自分でやるべきことにゃ。なんで、凛の身体を操ったりしたの?」

凛太郎「怒らないでよ……。凛は、えっと……三十歳くらいで死んじゃったんだけどさ」

凛太郎「死ぬ前はずっと野球やってたんだよ。大日本東京野球倶楽部って……まぁ知らないよね。今でいう巨人にゃ」

凛太郎「そこで野球やってたんだよ。後輩に沢村栄治とかいたんだよ、凄いでしょ」

凛(誰にゃ……?)

凛「ごめん、凛野球選手は余り詳しくなくて……」

凛太郎「それにゃ。真凛のやつが、君に全然野球の知識を入れなかったから、凛は君と話せなかったんだよね」

凛太郎「凛、何の因果かある程度野球が上手い子孫としか話せないんだよねぇ……我ながら業が深いにゃ」

556 :名無しで叶える物語:2020/09/05(土) 19:50:02.55 ID:oYtHzwq1.net
凛太郎「まぁ、とにかく! 凛は若くして死んじゃって、野球に未練が残りまくってるんだよ」

凛「それで、凛の身体を借りて野球したってこと?」

凛太郎「そうにゃ」

凛「いやいや……人の身体勝手に操らないでよ。悪霊みたいにゃ」

凛太郎「ご先祖様に向かって悪霊とは失礼な! 許せん!」ブォンッ

凛「キャオラッ!」ドボゴォッ

凛太郎「か……はっ」

凛太郎「カウンター……見事にゃ……」

凛「それで、凛太郎はどうしたいの? 凛の身体あんまり貸したくないんだけど」

凛太郎「あれにゃ。ピンチになった時だけでいいから身体動かさせてほしいんだよ」

凛「だからそれが嫌だって言ってんの! 話聞いてた!?」

凛太郎「そうは言っても……真凛はもっと素直だったのになぁ」

凛「ママが? まさか……ママも身体、貸してたの?」

凛太郎「そうにゃ。真凛が甲子園に優勝したのも凛のお陰なんだよ」フンス

凛太郎「おかげで音ノ木坂学院も強豪扱いされて……まぁ、真凛達が引退した後はボロボロになったみたいだけど」

557 :名無しで叶える物語(鮒寿司):2020/09/05(土) 19:56:01 ID:oYtHzwq1.net
凛(ママが……こいつに身体を貸していた?)

凛(じゃああの甲子園も、最後の試合も……何処までがママ本人の力だったの?)

凛(もしかしたら全部……)

凛太郎「そういうわけでちょろちょろ身体貸してほしいにゃ。野球やりたくてやりたくて仕方ないんだよー!」

凛「い、嫌にゃ! 凛は凛だけの力で勝ち上がるんだから!」

凛太郎「無理だよ、そんなの」ボソッ

凛「にゃ……?」

凛太郎「なんでもないにゃー。ちぇっ、そんなに嫌かぁ……」

凛太郎「まあ、身体貸してもいいなーって思ったら呼んでよ。凛、待ってるから」

凛「そんな機会は無いにゃ」

凛太郎「あ、じゃあ最後に一つだけ……君、西園寺の修行で必殺技身につけてるよね」

凛「にゃ? 岩を砕くやつ? 凛はあれ失敗してるけど……」

凛太郎「失敗ってことはないよ。マウンドに立ったら、よーく目を凝らしてごらん」

凛太郎「君にしか見えない道が……目の前に広がってる筈だよ」

558 :名無しで叶える物語:2020/09/05(土) 20:05:32.39 ID:oYtHzwq1.net
ピシ……ピキッ

凛「にゃっ!? 崩れ……!」

凛太郎「ああ、もうそろそろ目が覚めるみたいだね」

凛太郎「じゃあ、また……危なくなったらいつでも身体を借りるから。すぐに呼んでよ」

凛「呼ぶわけないにゃ!」

凛太郎「そう? そうかな……」

凛太郎「とりあえずお試しとして……今回の試合、『勝っておいた』から」

凛「にゃ……? それ、どういう意味……」

カッ!

ーーーーーーー

実況『入るかっ! 入るかっ! 入るかぁぁぁっ!』

凛「……ふぁっ!」

凛「あ、あれ……今どういう状況……」

一二三 1 2 1 0 1 0 0 0 0
音ノ木 0 0 0 0 0 1 2 1

凛「き……9回裏!? あれ、何で……凛、バッターボックスに……」

559 :名無しで叶える物語:2020/09/05(土) 20:15:37.08 ID:oYtHzwq1.net
実況『入ったァァァァッ! センター、ヒデコッ! その場に崩れ落ちましたッ! 星空、サヨナラ弾んんんッ!』

ミカ「負け……ちゃった」

フミコ「そんな……」

凛「……凛が、ホームランを打った?」

審判「? どうしたのかね、早く回りなさい」

凛「え……あ、はい」タッタッタッ

絵里「凛、凛ーっ! ありがとう……絶対無理だと思ったわ……」

にこ「やるじゃない凛! どうしたのよ、頭打ってから大活躍じゃないの!」

凛「へ……え……あぁ、うん。ありがとう……」

真姫「……? 全然嬉しそうじゃないわね、どうしたのよ」

真姫「いつもは活躍したら鼓膜破れるくらいうるさいのに」

凛「い……いや、そんなことないにゃー! 嬉しいにゃー!」

凛(……嬉しいわけがない)

凛(何だろう……まるで、本を読んでいたら途中のページがごっそり抜け落ちていたような)

凛(酷くつまらない達成感だけが……やるせない気分だけが残っている)

希「ウチらも凛ちゃん見習ってもっと頑張らなあかんなぁ」

凛「いや……あはは」

凛(凛太郎……絶対呼ばないにゃ。こんな気持ちになるなら、負けた方がまだマシ……)

キャッキャッ ツイニケッショウネ

凛(……)

560 :名無しで叶える物語:2020/09/05(土) 20:18:39.03 ID:oYtHzwq1.net
ーーーーー

星空家

凛「……」

凛ママ「何してるの、凛。早くご飯食べなさい」

凛パパ「そうだよ、食べないと大きくなれないぞ」

凛「あ……うん……」モグ…

凛「あのさ、ママ。聞きたいことがあるんだけど」

凛ママ「何? 野球のコーチなら何度聞かれてもお断り……」

凛「凛太郎……って、知ってる?」

凛ママ「ッ!」

凛ママ「凛、その名前……何処で聞いたの?」ガッ

凛パパ「ん? どうしたんだ、凄い剣幕で」

凛「っ……」

凛パパ「痛がってるじゃないか、やめてやれよ……」

凛ママ「貴方は黙ってて!」

561 :名無しで叶える物語:2020/09/05(土) 20:22:13.69 ID:oYtHzwq1.net
凛ママ「あいつに会ったの!?」

凛「う、うん……夢の中で」

凛ママ「……! 凛、もう野球をやっちゃ駄目よ」

凛「へ……?」

凛ママ「いいから! もう絶対に野球をやっちゃ駄目!」

凛「ちょ、ちょっと待ってよ! いきなりそんな……ようやく東京予選決勝まで来れたんだよ!?」

凛「いきなり凛が抜けたら皆も……!」

凛ママ「部屋に入ってなさい! 決勝が終わるまで一歩も部屋から出ちゃ駄目よ……!」ガッ……ダッダッダッ

凛「ママ、痛い……やめっ!」

バターンッ

凛ママ「はぁ……はぁ……!」

凛パパ「お、おいおいママ……どうしたんだ一体。凛が可哀想じゃないか」

凛パパ「あんなに野球を頑張ってたのに……」

562 :名無しで叶える物語:2020/09/05(土) 20:26:37.93 ID:oYtHzwq1.net
凛ママ「貴方は何も分かってない……もう凛は絶対野球をやっちゃ駄目なのよ」

凛ママ「星空凛太郎に……」

凛ママ「あの『悪魔』と出会ったら、もう終わりなのよ……!」

パパ「悪魔……?」

凛ママ「終わったと思ってたのに……」

凛ママ「……パパ、今日は寝室に入ってこないで」

パパ「え、じゃあ僕は何処で寝れば……」

凛ママ「ソファで寝て! 私は凛太郎と話してくる……まだ話せるか分からないけど!」

パパ「う、うん……?」

バタンッ

リンタロウ、デテキナサイ! ……! ……!

パパ「ママ、おかしくなっちゃったのかなぁ……」

ーーーーー

凛「にゃー……野球やっちゃ駄目って……」

凛「皆にどう説明すればいいのさ、こんな……」

バタンッ

凛「にゃっ!?」

563 :名無しで叶える物語:2020/09/05(土) 20:30:31.61 ID:oYtHzwq1.net
凛ママ「……」

凛「ま、ママ……?」

凛ママ「……」ニッコリ

凛ママ「ごめんなさいね、野球を辞めろなんて言って」

凛ママ「あれは冗談よ。むしろ、貴女は野球をするべきだわ」

凛「ママ……?」

凛(ママ、なんだよね……何だか、いつもと雰囲気が違うような……)

凛ママ「さ、今日はもう寝なさい。明日も早くから練習があるんでしょ?」

凛ママ「ふふ……応援してるわね」

キィ……バタンッ

凛「……」

凛「何だか……おかしいにゃ」

凛「まぁ……気が変わったんだよね。うん、きっとそうだよね……?」

凛「……」

564 :名無しで叶える物語:2020/09/05(土) 20:30:40.28 ID:oYtHzwq1.net
今日はここまで

565 :名無しで叶える物語:2020/09/05(土) 20:34:22.72 ID:2NPo3YZt.net
実質おちんちん生えてる凛ちゃんじゃん

566 :名無しで叶える物語:2020/09/05(土) 20:45:11.86 ID:n9nCH0qW.net
メスガキに分からせたから許すわ

567 :名無しで叶える物語:2020/09/06(日) 11:59:00.30 ID:ijur5HtC.net
>>71
保守にゃ

568 :名無しで叶える物語:2020/09/06(日) 11:59:16.52 ID:ijur5HtC.net
安価はミス

569 :名無しで叶える物語:2020/09/06(日) 15:37:25.51 ID:qo2eWkFT.net
チチチ…チュンナチュンナ…

凛「ぐぉ……ごぉぉぉっ……」スースー

凛「ぐぅぅぅぅぉぉ……ふがっ!」スースー

凛「……んっ、よく寝たにゃ。今何時だろ……」

(・8・)  トッリ目覚ましが10:40をお知らせするちゅん

(・8・) ねぼすけさんっ♪

凛「んー……10時か」

凛「……10時? じゅうじぃっ!? ち、遅刻にゃ!」

凛「スマホスマホ……あぁ! 充電切れてるっ!」

凛「と、とにかく連絡……充電して電源入れてー……」

リンリンリンガベー

着信  西木野真姫28件
ライン 西木野真姫86件

凛「めっちゃ怒ってる時のやつにゃ!?」

570 :名無しで叶える物語:2020/09/06(日) 15:42:54.85 ID:qo2eWkFT.net
凛「うう……連絡したくないぃ……」

リンリンリンガベー

凛「うっ……かかってきたにゃ」ピッ

凛「も、もしもーし」

真姫「ぐっっっすり眠れたようで良かったわねぇ! 今何時だか分かってるの!?」

凛「じ、10:40ぷんです」

真姫「はぁい正解! よくできまちたねー。じゃあ皆でUTXと結ヶ丘女子の試合見に行く為に、集合するハズだった時間はァ!?」

凛「8時です……」

凛(ヤバい……めちゃくちゃブチ切れてるにゃ。ブチ切れ過ぎてキャラがよくわからなくなってるよ……)

真姫「もう……凛ったら。寝る時は電源キラナイデ! 今すぐ学校来いや」プツッ

凛「……行きたくないにゃー!」

571 :名無しで叶える物語:2020/09/06(日) 15:50:21.49 ID:qo2eWkFT.net
凛「あぁー、もう! 着替えてご飯食べて……10分以内に済ますにゃ!」ダッダッダッ

凛「ママ! 何で起こしてくれなかっ……」

シーン

凛「……あれ? ママ?」

凛(パパは仕事でいないにしても、ママが朝方に家にいないなんて珍しいな……出掛ける時はいつも事前に一言くれるのに)

凛「……っと、気にしてる場合じゃないにゃ! もうご飯はコンビニで済ませるにゃ!」ダッ

ーーーーー

真姫「……」イライライライラ

凛「はっ……はっ……」ダッダッダッ

凛「ご、ごめん……つい寝過ごしちゃって」

真姫「次はないから気をつけなさいよ……? 私だってUTXの試合見たかったのに!」

凛「他の皆は?」

真姫「先に会場に向かったわ。じゃんけんで負けたせいで私だけ居残りよ……もう!」

572 :名無しで叶える物語:2020/09/06(日) 15:59:36.76 ID:qo2eWkFT.net
凛「そ、それは本当にごめん……今UTXと結ヶ丘の試合ってどうなってるの?」

真姫「知らないけど……どうせUTXの圧勝でしょ」

真姫「聞いたことないもの結ヶ丘なんて……正直よく分からない高校よ」

凛「とにかく向かうにゃ! 今から行けばギリギリ最後の方間に合うだろうし!」

真姫「はんっ、もうコールドになってんじゃないの?」

真姫「無駄足は嫌だし、ちょっと希に聞いてみるわね……」prrr

希『あ、真姫ちゃん? 真姫ちゃんから電話してくるなんて……昨日の告白の返事、考えてくれたん?』

真姫「されてないわよそんなの! こっちはやっっと凛が来たとこで苛ついてるんだから、しょうもないボケかまさないで!」

希『んもー、からかいがいあって可愛い子やなぁ』

真姫「……だからぁ! はぁ……もう。まだ試合やってる? コールドで終わってたら行かずに凛とラーメン屋行くけど」

希『まだやってるよ、今6回終わったとこやね』

573 :名無しで叶える物語:2020/09/06(日) 16:06:37.26 ID:qo2eWkFT.net
真姫「あぁ、そうなの?」

希『けど早く来た方がいいかもしれんよ。予選はコールドあるから、いつ終わってもおかしくないし』

真姫「はいはい、けど結ヶ丘女子も意外とやるわね。UTXに10点差つけられずに6回終えるなんて」

希『んー? いやいや、UTXがコールド負けしそうなんよ』

真姫「……んん?」

真姫「脳みそだけじゃなく眼球まで腐っちゃったの?」

希『いやほんまやって……6回終わってUTX5点、結ヶ丘が11点なんよ』

希『あと1点入ったら……もう7回やから7点差で終わりやね。ウチ、驚きすぎて一周回って冷静になってるもん』

凛「え? え? 何、UTX負けてるの?」

真姫「スコアボード逆に見てない? それでも十分凄いけど……」

真姫「実際に見て確かめてみるしかないみたいね。ありがとう」

希『早く来てなー』プツッ

凛「……」

凛「……え? 本当にUTX負けてる?」

真姫「分かんないわよ……」

574 :名無しで叶える物語:2020/09/06(日) 16:20:29.32 ID:qo2eWkFT.net
ーーーー

凛「はっ……はっ……」

凛(UTXの名前は何度も何度も繰り返し聞かされていた)

凛(絵里ちゃんに、希ちゃんに、穂乃果ちゃんに……そして、真姫ちゃんに)

凛(その全員が口を揃えてこう言っていた)

『UTXは絶対王者だ』

凛(あの狂気じみた量の練習も……UTXを見据えてやっていたくらいに、皆あの高校を恐れていた)

凛「はぁっ……はっ……」ダッダッダッ

凛(部室に置いてあったぼろっちいテレビで、一度だけUTXの試合を映したDVDを見たことがあった)

凛(統率の取れた動き、流水のように美しい打撃、相手の思考の裏の裏を読む技術……どれをとってもプロ顔負けの実力者ばかりだったにゃ)

凛(そのUTXが……その、UTXが……!)

真姫「ぁ……」

575 :名無しで叶える物語(茸):2020/09/06(日) 17:08:37 ID:qo2eWkFT.net
凛(先に飛び込んでいった真姫ちゃんが、息を呑むのが分かった)

凛(つられて、凛も真姫ちゃんの視線を追って)

凛「……」

凛(言葉を失った)

結ヶ丘女子 2 1 2 0 4 2 0 1 1 13
UTX    1 0 2 1 0 1 1 2   7

真姫「嘘、でしょ……?」

実況『ッ……信じられません! これがあのUTXだと言うのでしょうか!』

実況『ワンアウトランナー無し! 打席に立つ3番統堂英玲奈……クールなポーカーフェイスで知られる彼女の表情に、明らかな焦りの色が浮かんでいますッッッ!』

英玲奈「く……こんなっ……筈じゃ」

実況『対するピッチャー、渋谷かのんもまた苦しげな顔をしています! 強豪UTXに9回まで投げてきたその疲れが色濃く滲みでています!』

かのん「はぁ……はぁ……っ! コールド、したかったのに……いつまでも食いついてんじゃ……ないわよっ!」ヒュッ

キュオオォォォォッン

凛「なっ……速っ……!」

576 :名無しで叶える物語(茸):2020/09/06(日) 17:12:05 ID:qo2eWkFT.net
>>575
訂正 UTX 8点

577 :名無しで叶える物語:2020/09/06(日) 18:11:06.31 ID:qo2eWkFT.net
凛(内角低めを攻めた球……バットを長く持った状態じゃかなり身体を開く必要がある)

凛(けど……)

英玲奈「UTXは……私達はっ!」

英玲奈「ここで負けるわけにはいかないんだっっ!!」シュオッ

凛(UTX側のロボットみたいな人も目が追いついてる……! 自然に体勢を移して打ちにいった!)

キュ

真姫「……!? これは……!」

英玲奈「ぐっ……!」

ギィンッ!

実況『ファールです! これで……なんと20球連続のファールですッッッ! 統堂英玲奈、食い下がるぅ!』

渋谷かのん「ぜぇ……またファール……!」

英玲奈「はぁ……そのボールを辞めてくれたら、ホームランにしてやるんだけどな……」

渋谷かのん「さっきから言ってるでしょうが……勝手になるのよっ!」ヒュンッ

ヒュォォォッ!

英玲奈「ぐ……うっ!」シュオッ

ボグォンッ

実況『ファールが続いています。これは苦しいぞ渋谷かのん! 疲れだけが溜まっていく状態ですね』

凛「な、なんで……あの人、確実にボールを追えてるのに芯を外されてる……」

578 :名無しで叶える物語:2020/09/06(日) 18:17:54.51 ID:qo2eWkFT.net
真姫「あれは……っと、その前に。皆のところに行きましょ」

真姫「絵里が手を振ってるわ。こっちが反応しないから変な人みたいになってる」

絵里「おーい、おーい!」ブンブン

凛「近くの席のオバサン凄い目で見てるよ……」

真姫「可哀想だから早く行ってあげましょ」

絵里「あぁ……よかったわ、気付いてないのかと思った」

凛「ごめん。試合に見入ってて……あれ、なんなの?」

凛「あの人、ちゃんと芯で捉えてるよね……何で、ずらされてるの?」

真姫「カットボールよ、あれは」

凛「ボールを……斬るの……?」

真姫「違うわよっ! カットボールってのは、ストレートとほぼ同じ速度で小さく鋭く曲がる球のこと!」

真姫「手元であんなに小さく曲がられたら厄介だけど……何でUTXがあの程度の球を打てないのかは分からないわね」

穂乃果「……私達、1回からずっと見てたんだけどさ」

穂乃果「投手の渋谷かのんちゃん……だっけ。あの子の球、おかしいんだよ」

579 :名無しで叶える物語:2020/09/06(日) 18:27:49.82 ID:qo2eWkFT.net
凛「おかしい……?」

にこ「そうよ……普通、カットボールが曲がる方向って一種類だけでしょ?」

にこ「あの子のボール……さっきからわけわかんない方向に曲がってるのよ」

真姫「わけわかんない方向……?」

渋谷かのん「これで……どうだぁっ!」ヒュンッ

ヒュォォォッ!

英玲奈「らぁっ!」シュオッ

キュ

真姫「っ!? さっき見たボールと……全然違う方向に曲がってる!?」

ことり「そうなんだよね……ざっと見るだけでも上下左右、それぞれ斜め……くらいは手元で小さく曲がってると思う」

絵里「正確には細かく……32方向ね」

海未「ですね……かなり細かく調整されてます」

海未「何より厄介なのは……握りも投げ方も一切変化がないところ、ですね」

にこ「そ……どう考えてもおかしいのよね。握り方も投げ方も変わらないのに……」

渋谷かのん「ファールばっか続けて……諦めてよっ!」シュオッ

キュ

にこ「曲がる方向だけが変わってる」

580 :名無しで叶える物語:2020/09/06(日) 20:27:56.17 ID:7G69fmoe.net
なんてことだ
甲子園はこれが集まると考えると....

581 :名無しで叶える物語:2020/09/07(月) 10:37:55.01 ID:Cgd4zsLv.net
保守にゃ

582 :名無しで叶える物語:2020/09/07(月) 14:24:24.28 ID:9JvbtzCc.net
気付いたら一気に読んでしまってた

583 :名無しで叶える物語:2020/09/08(火) 01:20:18.77 ID:pV1I3gXt.net
なんか崩壊してない?野球のとこはおもろいけど修行し始めた辺りから収拾つかなくなってるやん

584 :名無しで叶える物語:2020/09/08(火) 09:46:19.77 ID:o22rlYIE.net
テニプリみたいなもんだろ

585 :名無しで叶える物語:2020/09/08(火) 20:16:15.61 ID:wPqmxMbn.net
凛「そんなこと有り得るの……?」

「有り得ませんよ、普通なら。だからこそUTXも苦戦しているんです」

にこ「指のかかり方が違う? 遠くから見てるだけじゃ分からないわね……」

実況『渋谷かのん、肩で息をしながらも投げ続けます! 他に投手はいないのか結ヶ丘ァ!』

実況『そして統堂英玲奈が必死に食らいつくゥ!』

英玲奈「はぁ……はぁ……」

かのん(なんなの……あんなにボロボロになって。こんなに点差を付けられてるんだから……!)

かのん「早く負けなさい……っての!」クイッ

スルッ

かのん「ッ!」

英玲奈「……ッ!」

ガシャァァァンッ!

実況『な……すっぽ抜けた球が……統堂選手の頭に当たりましたぁ!』

586 :名無しで叶える物語:2020/09/08(火) 20:23:35.10 ID:wPqmxMbn.net
あんじゅ「英玲奈! 大丈夫!?」ダッ

かのん「あ……あぁ……」

ツバサ「しっかりして! 意識が……!」

ツバサ「馬鹿な子よ……こんなにボロボロになって……」

あんじゅ「バッティンググラブが擦り切れて、手から血が出てるじゃない」

あんじゅ「……担架をお願いします!」

審判「は、はい!」

実況『統堂選手、ぴくりとも動きません……うっ!』

実況『担架に持ち上げられた後に……血の痕が……!』

かのん「わ、私……私……!」

ツバサ「……気にしないで。野球をやっているとこういうことは付き物だから」

実況『審判達が話し込んでいます……渋谷選手の交代を議論しているのでしょうか』

587 :名無しで叶える物語:2020/09/08(火) 20:33:44.23 ID:wPqmxMbn.net
審判「はい、ではそういう処理で……」ピッ

審判「渋谷選手を退場とします! また、バッターは打とうとしておらず、かつ避けるのが不可能な状態だったと判断し一塁へ進塁したこととします」

ワァァァァァァァッ

実況『た……退場です! UTX応援席から歓声が上がっていますッ!』

実況『ここまでUTXを苦しめた結ヶ丘エースピッチャー渋谷かのんが、9回の裏とはいえマウンドを降りるのですから無理もありません! 渋谷選手、その場に崩れ落ちましたッ!』

かのん「あ……あぁ……そんな……!」

かのん「ま、待ってよ……わ、私! わざとやったんじゃない! あ、あんなにあの人が粘るから……!」

審判「む……退場宣告が出たんだ! 早く去りなさい!」

かのん「う、嘘……」

可可「かのん、問題ないデスネ。後は可可達がナントカするデス」

かのん「可可ちゃん……!」

588 :名無しで叶える物語:2020/09/08(火) 20:45:13.20 ID:wPqmxMbn.net
すみれ「そうですよ。このカリスマギャラクシー高校球児、平安名すみれに任せてくださいっ!」

かのん「皆……ごめんね、本当に……」グスグス

実況『渋谷選手、仲間達に見送られベンチに戻っていきます! しかしエースを欠いた結ヶ丘……俄然状況は厳しくなってきました!』

実況『9回裏ワンナウト、5点差とはいえ相手はあのUTXッ! 並大抵の投手では太刀打ちできません!』

可可「本当にいけマス……?」

すみれ「お任せあれ。ギャラクシーなピッチングを見せてあげますよ!」

ウグイス嬢『ピッチャー、渋谷かのんに代わりサード平安名すみれ。サードにはハロー選手が入ります』

実況『さ……サードがピッチャーにコンバートしました!? これは一体どういうことでしょうか! と……投球練習が始まります!』

すみれ「ふっ……見て驚きなさい! 配信班はしっかり動画に収めておきなさいっ!」

すみれファン「は、はい!」

すみれ「私のカリスマ魔球……『ギャラクシー』!」キュッ

589 :名無しで叶える物語:2020/09/08(火) 20:49:06.20 ID:wPqmxMbn.net
すみれ「らぁぁっ!」

ヒューンッ

パシッ

実況『……』

ツバサ「……」

凛「え……こ、これって……」

にこ「まさかとは思ったけど、間違いないわね……」

すみれ「ふっ……私の素晴らしいボールに皆言葉もないようね……!」

すみれ「んんっ! これぞカリスマの力……!」シャランラ

実況『な……なんだ今のクソのようなボールはっ! 山なりですっ! スピードもない上にボールでしたっ!』

すみれ「……はぁ!?」

実況『ど、どう見ても素人です! 投手経験があるとは思えませんっ! 結ヶ丘、本当に二番手ピッチャーがいなかったのかァ!!』

ツバサ「……本気でやってるの? 私達相手にそれで投げ勝てると思う?」

すみれ「思いますよ、私はギャラクシーなので」

590 :名無しで叶える物語:2020/09/08(火) 21:17:20.74 ID:wPqmxMbn.net
千砂都「やばいっすよあのボール。私が投げた方がマシですよこれ」

可可「ピッチャーの練習なんかシテナイデスから、誰がやっても同じデスヨ」

恋「かのんちゃんに頼りすぎてましたね……あんなに強いし、皆いけるところまで行こうくらいの気持ちでしたから……」

可可「新設校が予選決勝までイケルなんて、クゥクゥ達も考えて無かったデスカラ」

可可「来年以降が本番だと思ってマシタ……」

実況『ほ……本当にこの投手で行くつもりのようです! UTX、臨時代走の選手を据え、今王者綺羅ツバサがバッターボックスに立ちましたァ!』

ツバサ「悪いけれど、こっちも必死なのよ。素人が相手だからって遠慮はしていられないわ」

すみれ「当たり前です! ツバサさんは王者のようですけど、王なんかより銀河の方がカリスマなんですよ!」

ツバサ(……とはいえ、やりにくいわね)

ツバサ(普段なら相手の守備に隙を無理やり作るところだけど……)



希「随分と困ってるみたいやね……」

凛「え? むしろ余裕そうに見えるんだけど……」

591 :名無しで叶える物語:2020/09/08(火) 21:19:41.07 ID:ELk4Eq0a.net
帝京がおっそい球打てなくて負けた甲子園の試合を思い出しますね…

592 :名無しで叶える物語:2020/09/08(火) 21:24:28.36 ID:wPqmxMbn.net
希「綺羅ツバサのスタイルっていうのは、基本的に人心掌握なんよ」

希「彼女が『王者』と呼ばれる所以は、その言葉で、一挙一動で相手の動きを自然に操り……言葉通りその場を統べるんよね」

凛「えぇ? 流石に能力バトルがインフレしてるこの状況でも、いまいちそれは信じられないよ」

凛「だいいちそんなに簡単に人を操れるわけないにゃ」

希「そう? ところで凛ちゃん、試合終わったら熱々亭でラーメン奢ってあげよっか」スウッ

凛「にゃっ!? 熱々亭のラーメン奢ってくれるの?」キョロ…

希「はい、今の」

凛「……なにが?」

希「ラーメンという単語に反応して、凛ちゃんの頭の中にはラーメンが浮かんだやんな」

希「そして不意に出された右手の人差し指に、視線がいった」

凛「にゃ……それは確かにそうだけど」

希「綺羅ツバサは、それを9人単位でやってるんよ。意識的にね」

593 :名無しで叶える物語:2020/09/08(火) 21:35:27.77 ID:wPqmxMbn.net
凛「本当にそれが出来るなら……ずっこいにゃ。勝てるわけないじゃん」

ことり「甲子園ではほぼ毎回負けてるけどね」

海未「確かに、よく考えたら毎年甲子園出てる割には勝ち進んだ数が少ないような……」

希「ただ……今回はそれが全く上手く行ってない」

凛「なんでにゃ? 相手がそれを知ってるから?」

真姫「知ってたところで打ち破れるものじゃないわよ、あれは。あの女、目を閉じて耳栓してる人間でも操れるのよ」

真姫「原因は……あの子」



千砂都「……っと、またビリビリ来たっすねぇ。あの静電気女にも困ったもんです」

ツバサ(私の力……相手の行動を操り此方に有利に展開させる能力。私の身体から発する微量の電気信号を、相手にぶつけてパルスを狂わせることで完成する……なのに!)

ツバサ(電気信号が、全て彼女に吸われてる……おまけに全く彼女のパルスが狂っていない!)バリッ

千沙都「……あーもう! 鬱陶しいなぁこの電気!」

594 :名無しで叶える物語:2020/09/08(火) 21:47:46.04 ID:wPqmxMbn.net
すみれ「無駄ですよ……彼女は昔から妙な体質なんです。『他者に向かって使われた能力を、自分の肉体に集めて浄化する』」

すみれ「おかげで家人に道具のように使われていたらしいですけど……まさか野球に役に立つなんて、本人も思ってなかったでしょうね」

可可「そもそも野球選手が人外みたいな能力持ちバカリなんて、分かるわけないデスヨ」

ツバサ「……別に、それだけに頼っているわけじゃないのよ」

ツバサ「ただ不運なフライや不運なゴロで、アウトになるのを避けたかっただけ」

すみれ「へぇ、運が絡まなければ私からは打てると?」

ツバサ「当たり前よ。運以外で、そんな球で私を打ち取れると思う?」

すみれ「打ち取れるかどうか……やってみなければわかりませんよ! んんギャラクシーッッ!」キュッ

ヒューンッ

ツバサ(やっぱり遅い……100キロ出てるのこれ?)

ツバサ(こんなの私にとっては止まってるのと同じよっ!)ブォンッ

ギャキィィィィンッッ!

花陽「ピャアッ!!?」

穂乃果「す、凄い音……鼓膜破れるかと思った……!」

ツバサ「……」

実況『初球、遅い山なり球を思い切り振り抜きましたァ! しかし……余りの遅さに素早いスイングが勝ってしまったのか、引っ張り過ぎの大ファールです!』

すみれ「くっ……私のギャラクシー3号を打つとは……!」

すみれ「中々のカリスマですね!」

ツバサ(1号と2号は……? いや、それよりも)

ツバサ(スイングが早すぎた? ……それはおかしい、私は間違いなく真芯を捉えるようにスイングした筈なのに)

595 :名無しで叶える物語:2020/09/08(火) 21:55:02.87 ID:wPqmxMbn.net
ツバサ(……ずらされた? そんな風には見えないけれど)

ツバサ(渋谷かのんは荒削りながらも……いいえ、荒削りだからこそ異様な強さを見せる選手だった)

ツバサ(彼女の強みは『手元で不規則に曲がる球』。本人すらもどっちに曲がるか分からないから読みようがない……)

ツバサ(ただ目の前の彼女、平安名すみれはどう見てもただの素人急造投手。技術も何もない筈……)

ツバサ「次はないわ……!」

ツバサ(偶然……渋谷かのんが消え、英玲奈の仇を討ちたくて気がはやっていただけよ。二度はない)

すみれ「ふっ……知らないんですか? 二度あることは三度ある……」

ツバサ「まだ一度よ」

すみれ「そしてこれが私の……ギャラクシー8号ですッッッ!」クイッ

ツバサ(4から7号は……!?)

ヒョーンッ

ツバサ「ただの虚仮威し……さっきよりも遅くなってるじゃないッ!」ブォンッ

596 :名無しで叶える物語:2020/09/08(火) 22:01:24.81 ID:wPqmxMbn.net
ツバサ(……ッ!? これは……!)

ギィィィィンッ!

実況『……ど、どうしたのでしょうか綺羅ツバサ! またもファールです! 当たればセンター方向に向かっても間違いなくホームラン……これほどまで引っ張る必要はありませんっ!』

実況『カウントはツーストライク、ボール無し! ……信じられません、カウントの上だけならあのヘッポコ投手が王者を追い詰めています!』

すみれ「ヘッポコ!? カリスマギャラクシーな私をヘッポコ……!?」

すみれファン「大丈夫ですよ! すみれ様はヘッポコでもギャラクシーです!」

すみれ「そうね……そうよ、私はギャラクシー……誰が何と言おうとギャラクシーなのよ……」スーハー

ツバサ「信じられないわ……どんな手を使ったの?」

すみれ「何が!? まさかギャラクシーじゃないとでも言いたいの!?」

ツバサ「違うわ。……貴女のボール、手元で異様に遅くなるのよ」

597 :名無しで叶える物語(鮒寿司):2020/09/08(火) 22:09:48 ID:wPqmxMbn.net
すみれ「……? まぁ、ギャラクシーですから」

ツバサ(……この子も渋谷かのんと同じ、何も理解していないタイプ?)

ツバサ(確か結ヶ丘は今年出来たばかりの新設校……相手は全員一年生なのよね。まだ硬球の試合に慣れていない?)

ツバサ(無意識のバケモノ揃い……ってわけ)

ツバサ「発言を撤回するわ。貴女のボールは酷いものじゃない、私を打ち取れる可能性もあるわ」

すみれ「言われなくても分かってますよ。カリスマですから!」フンスッ

すみれ「最後の一球……いきますよ! ギャラクシー……えっと」クイッ

すみれ「6号……?」シュッ

ツバサ(何号まで行ったか覚えてないの……!?)

ヒュォンッ

ツバサ(相変わらず遅い……どんどん遅くなっているような気がするわね。間違いなく100キロも出ていない)

ツバサ(このボールならこのタイミングで打てばいい……から、一泊おいて!)ブォンッ

ギォォォォッンッ!

すみれ「……ッ!」

ツバサ「……悪いわね、UTXは王なのよ」

実況『す……凄いスイングですッ! 打たれたボールはレフト方向へまっすぐに進んでいますッッッ!』

ツバサが「……レフト?」

598 :名無しで叶える物語(鮒寿司):2020/09/08(火) 22:19:05 ID:wPqmxMbn.net
ツバサ(スイングは少しも遅れていなかった筈……何故センター方向に飛ばずにレフトへ……!?)

ツバサ(……まぁいい。一先ずホームランに……いや、これは)ダッ

実況『一塁ランナー、打球を見るや悠然とランニングを始めました。二塁ベースを回っています……これでUTXは二点を返すことに』

ツバサ「戻ってッッッ!!!」

「へ……?」

フワァッ パシッ

実況『え……? ガクリとボールが落ちて……?』

実況『わ、僅かに飛距離が足りません! フェンス下に待ち受けていたレフト、葉月恋選手が捕球していますッッッ!』

ツバサ「は……早くッッッ! 戻って!」

「えっ、あっわっ!」

実況『ランナー慌てて駆け戻りますッ! 葉月選手、セカンドへの中継を挟みながらもファーストへの送球ッ!』

実況『間に合うかッ! 間に合うかッ! 間に合うかーッッッ!』

599 :名無しで叶える物語(鮒寿司):2020/09/08(火) 22:23:12 ID:wPqmxMbn.net
ザーッ パシッ

審判「……」

ドクン

ツバサ「……」

ドクン

すみれ「お願い……」

ドクン

審判「……アウトッッッ!」

ツバサ「ッ!」

実況『な……』

実況『何ということでしょう!! 勝ちましたッ! 勝ちました結ヶ丘ァッ! あの絶対王者UTXが……新設校の前に膝をつきましたッ!』

実況『信じられません、信じられません! 夢を見ているようです! 綺羅ツバサ、ガックリとその場に崩れ落ちるッ!』

実況『UTXのベンチからは誰も……出てくる者はありません! 皆呆けたような、魂の抜かれた表情で固まっていますッ!!』


凛「UTXが……」

真姫「負けた……!?」

600 :名無しで叶える物語(鮒寿司):2020/09/08(火) 22:27:11 ID:wPqmxMbn.net
ツバサ「嘘よ……」

ツバサ「最後の夏が……私の甲子園が……」

ツバサ「聖良との約束が……」

『また来年……この甲子園の場で戦いましょう』

ツバサ『ええ。次は負けないわ……もっともっと、強くなってみせる』

あんじゅ「あ……ツバサ……」ヨロヨロ

ツバサ「あんじゅ……」

あんじゅ「負け、ちゃったわねぇ……私達……」

ツバサ「ええ……負けた、のよね」

ツバサ「負け……」

ツバサ「あ、あぁ……あああ……」ポロポロ

あんじゅ「ツバサ……!」グスッ

ツバサ「あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」ポロ…ポロ…

601 :名無しで叶える物語:2020/09/08(火) 22:34:43.06 ID:wPqmxMbn.net
審判「両校整列ッ! 礼ッ!」

「「「ありがとうございました!」」」


希「……まさか、本当にUTXが負けるなんて」

絵里「厄介なことになったわね……」

凛「け、けどUTXは……物凄く強いところだったんでしょ? むしろ負けてくれてありがたいにゃ」

穂乃果「分からないの? 化物が倒れたってことは……『化物より強い者』が生まれたってことなんだよ」

穂乃果「渋谷かのん選手だけじゃない。UTXから13点もぎ取った打撃力……はっきり言って異常の一言だと思う」

絵里「そう。その上……結ヶ丘は新設校よ」

絵里「公式大会に出たデータも、選手の情報も……何もない! 対策が全く取れない……! 仮に何かあるとしても、試合は明日よ!? 時間が余りにも足りない……!」

凛「対UTXで対策してたからね……」

海未「……なるようにしかなりませんよ。挑んで、無理矢理にでも勝ちに行く、それしかありません」

602 :名無しで叶える物語:2020/09/08(火) 22:39:31.61 ID:wPqmxMbn.net
ことり「勝てる、のかなぁ……」

凛「……大丈夫だよ! だって……」

凛(いざとなったら凛太郎に頼って……)

凛(……!? な、何考えたの? 一瞬とはいえ……凛太郎に頼ろうと考えるなんて)

凛(絶対頼らないにゃ! 凛の……凛の力だけでやるんだ……!)

花陽「だって?」

凛「……り、凛がいるから勝つにきまってるにゃー!」

希「真姫ちゃんみたいなこと言ってるな」

穂乃果「イキり猫だよ。ねこじゃらしで懐くかな?」フリフリ

凛「しゃあ……しゃあ……」キャオッキャオッ

絵里「……今日のところは解散しましょう。付け焼き刃の対策で何とかなる相手じゃないわ」

絵里「ゆっくりと身体を休めて……明日に備えて」

603 :名無しで叶える物語:2020/09/08(火) 22:43:18.80 ID:wPqmxMbn.net
ーーーーー

凛「ただいまー」

凛(結ヶ丘女子……か)

凛(UTXと戦うと思ってたから……何だか変な気分だよ)

凛(あの渋谷かのんって子、凄い球投げてたなぁ。後で代わったギャラクシーの子も何だかんだ言って綺羅ツバサを打ち取ってたし)

凛(……凛が投げてたら、打ち取れたかな)

凛「……あー、駄目にゃ駄目にゃ! 気分が暗くなるっ!」

凛「ママー? いないのー? 凛、お腹空いたよー!」ガラッ

凛パパ「あぁ、おかえり凛……ママならいないぞ」

凛「えー? まだ何処か行ってるの?」

凛パパ「なぁ凛、パパさ、ママに何か嫌われるようなことしたかな……?」

凛「……何かあったの?」

604 :名無しで叶える物語:2020/09/08(火) 22:49:15.78 ID:wPqmxMbn.net
凛パパ「いや、それが……これ見てくれよ」

マイハニー真凛『しばらく旅行に行きます』

凛「ライン……これ、ママからだよね? マイハニーって……」

凛パパ「冗談かと思ったんだけど、何回メッセージ送っても既読すらつかないし。知らないうちに傷つけてたのかな……」

凛「いや……いつもどおりにしてた気がするけど」

凛パパ「仕方ない、帰ってくるまでは出前だ。ママが帰ってくるまで二人で何とかやっていこう」

凛「ちゃんと帰ってくるよね……?」

凛パパ「た、多分……とりあえず今日は店屋物取るか。好きな物注文していいぞ」

凛「本当!? じゃあ凛、熱々亭のラーメンを……結局奢ってもらえなくてラーメンの口だからさ……」

ワーワー ラーメンニャー アハハ…

凛(朝になったら帰ってきているかもしれない。そんな期待と、明日の試合の不安がない混ぜになったまま布団に入って)

凛(結局、朝になってもママは帰っては来なかった)

605 :名無しで叶える物語:2020/09/08(火) 22:49:24.98 ID:wPqmxMbn.net
今日はここまで

606 :名無しで叶える物語:2020/09/08(火) 22:57:39.19 ID:wPqmxMbn.net
結ヶ丘女子はラブライブスーパースター(元ハローラブライブ)の高校です

607 :名無しで叶える物語:2020/09/08(火) 23:21:30.79 ID:O8QhhtEN.net
そういや虹ヶ咲出てこないと思ったけど音ノ木坂が出てるのは東東京大会なのか

608 :名無しで叶える物語:2020/09/09(水) 02:46:11.59 ID:XG9qWbi9.net
まだキャラも固まってないハローを持ってくるという英断

609 :名無しで叶える物語:2020/09/09(水) 09:36:31.26 ID:sq+ltPZj.net
保守

610 :名無しで叶える物語:2020/09/09(水) 12:43:13.41 ID:ft8IgKIb.net
ツバサの生体パルス云々でいよいよ一線超えた感ある

611 :名無しで叶える物語:2020/09/09(水) 14:56:25.72 ID:ARPkdL+P.net
さすがにハローはいらないわ、スレ卒業する(/0 ̄)

612 :名無しで叶える物語:2020/09/09(水) 21:14:37.74 ID:2RZSoLNk.net
ーーーー

待ち合わせ場所(潰れた古書店前)

凛「おはよう……」

花陽「おはよう凛ちゃん……寝れなかったの?」

真姫「顔色悪いわよ」

凛「早めに寝た筈なんだけどね……あはは」

凛(流石に言えないよねぇ……ママが出ていったなんて)

凛(予選決勝で心配かけるわけにはいかないしね)

真姫「しっかし本当に……参ったわね」

真姫「昨日帰ってから調べてみたのよ、結ヶ丘女子のこと」

花陽「どうだったの?」

真姫「駄目……全っ然駄目よ。中学時代の試合出場歴くらいは出てきたけど、他には何にもない」

凛「高校入ってからの練習試合とか情報無いの?」

真姫「いや、それが……」

真姫「あの高校、練習試合すらしたことないみたいで……」

613 :名無しで叶える物語:2020/09/09(水) 21:24:28.19 ID:2RZSoLNk.net
花陽「ええっ!? 練習試合もないの!?」

真姫「みたい。甲子園予選の情報スレ漁っても、いきなり湧いて出てきた扱いされてたわ」

凛「ますます意味が分からなくなってきたにゃ、あの高校……」

凛「なんでそんなところがUTXに勝てるの?」

真姫「知らないわよ! 花陽は試合最後まで見たのよね? どう思ったの?」

花陽「う、うん……えっと、やっぱり目立つのは渋谷かのんちゃんかな」

花陽「先発で出てきて、そこからUTXに投げ続けて……あの、手元で不規則に曲がる球でUTXの打線を抑えてた」

花陽「たまに曲がった方向とドンピシャのスイングされて、ホームラン打たれてたけど……あ、後守備は全然だったよ。多分私達の方が上手いくらい」

凛「そうなの?」

花陽「うん……ゴロの処理もおぼつかないし、簡単なフライを取り落としたりしてた」

花陽「けど、守備が壊滅的な代わりに打撃力がおかしいんだよね……UTXの投手、かなり凄い球投げてたのにポンポン打ってた」

真姫「UTX相手に13点の時点でおかしいとは思ってたけど……やっぱり打撃が凄いのね」

614 :名無しで叶える物語:2020/09/09(水) 21:33:53.15 ID:2RZSoLNk.net
花陽「うん、特に凄いのが葉月恋ちゃんと唐可可ちゃん。葉月選手はホームラン2本、可可ちゃんに至ってはホームラン4本……ほぼ全打席ホームラン打ってたよ」

花陽「凄かったよ……ホームラン封じに敬遠しにいった、とんでもなく外れたボール球に飛びついて」

花陽「無理矢理打って、スタンドにぶち込んでた」

真姫「……なんでそんな凄い奴らが新設校にいるのよぉ!」ガシガシ

凛「割と凄い選手なのに音ノ木坂に来た真姫ちゃんがそれ言う?」

真姫「うるさいわね! あの頃は学校での活動とか練習とか、仲間とか必要ないと思ってたのよ!」

真姫「今は……まぁ、二人と会えて良かったって、思ってるけど……」ボソッ

凛「真姫ちゃーんっ!」ギュッ

真姫「ヴェッ!? な、何するのよ!」

凛「かよちんも抱きつくにゃ。なんか真姫ちゃんが可愛い生き物になってる!」

花陽「う、うん!」ギュッ

真姫「ちょ……二人ともやめて! こんなところで恥ずかしいじゃない!」

凛「普段ならそろそろ殴ってるけど、今日は破壊衝動を試合にぶつけるから我慢するにゃ」

真姫「言われてみれば最近殴られてないわね私……」

真姫「殴られると腹立つけど、殴られないとそれはそれで寂しいわね」

花陽「大丈夫? 順調に調教されてない……?」

615 :名無しで叶える物語:2020/09/09(水) 21:41:32.95 ID:2RZSoLNk.net
絵里「まだかしら、あの三人……」

希「おかしいなー。事故にでもあったのかな?」

穂乃果「交通事故なら救急車通ってると思うし、違うんじゃない?」

絵里「不安になること言わないでよ。ただでさえ胃痛であんまり寝れてないのに」

絵里「あぁ……また胃が痛くなってきた。胃薬飲まなきゃ……」ザラザラ

希「胃薬といったらウチの筈なんやけど」

絵里「知らないわよ。欲しいならあげるわ、もう一瓶あるから」ボリボリ

希「海老の尻尾みたいな味がする」ボリボリ

絵里「ん……ああ、三人とも来たみたいね」

凛「真姫ちゃーん」ギューッ

花陽「真姫ちゃん……何だかいい匂いする……」ギューッ

花陽「炊きたてのご飯みたいな……」

真姫「炊きたてのご飯って、ご飯以外についてたら悪臭って話聞いたことあるんだけど……」

穂乃果「えっ、真姫ちゃんに抱きついてるじゃん! ずるいずるい!」

穂乃果「私も抱きつく!」ダッ

真姫「ちょ、ちょっと穂乃果まで!?」

616 :名無しで叶える物語:2020/09/09(水) 21:47:13.80 ID:2RZSoLNk.net
穂乃果「隙を見せたなダボがァ!」ゴガァンッ!

真姫「ぬうっ……!?」

凛「フンッ!」ガシッ

穂乃果「……何故、止める」

凛「その拳は人を殴る為にあるのではない。結ヶ丘の奴らを殴る為にあるにゃ」

花陽「け、結局人殴ってるよぉ!?」

穂乃果「ちぇー。じゃあ普通に抱きつくよ」ギュッ

真姫「な、なんで急にこんな……」

希「皆不安ってことやん。ふざけてないとウチも膝から崩れ落ちそうやもん」

希「予選とはいえ決勝……プレッシャーが酷いわ」

ことり「皆真姫ちゃんに抱き着いてる……ことりのなのにずるいよ! ね、私達も抱き着きに行こっ!」

海未「……」

ことり「やけに冷静だね、海未ちゃん」

海未「いや、私は抱きつく程度じゃすまないことを真姫としましたので……まぁ抱きつくだけで満足できる人は抱きつけばいいんじゃないですかね?」

ことり「は?」

海未「あ?」

617 :名無しで叶える物語:2020/09/09(水) 21:51:57.25 ID:2RZSoLNk.net
にこ「ふざけてる場合じゃないわよ、そろそろバス来るわよ」

真姫「毎回毎回試合のたびにバス出してもらってるけど……この学校、そんなにお金あったの?」

穂乃果「理事長のポケットマネーから出てるんだよ」

ことり「えっ……」

ことり「だから最近、おかずがもやしとおからだけだったの……?」

凛「知りたくなかったよ、そんな現実」

真姫「甲子園行ったら破産するんじゃないかしら、理事長……」

ブォォォンッ

絵里「あぁ……来たみたいね、バス」

絵里「皆揃ってるわよね? 大丈夫よね?」

618 :名無しで叶える物語:2020/09/09(水) 21:55:14.49 ID:2RZSoLNk.net
穂乃果「大丈夫じゃない? 心配なら……ほら、番号! 1!」

ことり「えっ? えっと、2!」

海未「3!」

真姫「え……これ私も言うの? 4!」

凛「5っ!」

花陽「……」

絵里「……」

花陽「あっ……次私なんだ……。ろ、6?」

にこ「7」

希「8!」

絵里「9……」

絵里「……」

絵里「えっ? 球拾は?」

619 :名無しで叶える物語:2020/09/09(水) 21:56:21.09 ID:BIbJQ4D4.net
嘘だろ球拾...

620 :名無しで叶える物語:2020/09/09(水) 22:01:53.83 ID:2RZSoLNk.net
穂乃果「球拾ちゃんまたいないの!?」

希「肝心なときにいつもいないやんあの子」

絵里「バスにはちょっと待ってもらうとして……試合に遅れたらまずいわよ」

海未「流石に不戦敗は避けたいですね」

絵里「そうだけど……もし球拾が遅刻で参加できなかったら、補欠0の上投げれるのは凛とにこだけよ?」

希「二人とも良い投手やけど流石に……キツいよなぁ」

凛「凛はいけるにゃ! 先発で9回投げれる! 投げれるよ!」ピョンピョン

絵里「そうはいっても……うん?」

絵里「何かしら……あのボロボロなの」

ことり「血まみれのボロ切れが歩いてる……?」

「……」

希「……えっ? 球拾……やんな?」

「……遅れました」

絵里「そ、それよりその怪我……というかその格好どうしたのよ!? 服が肌を隠す役割を果たしてないじゃない!」

621 :名無しで叶える物語:2020/09/09(水) 22:07:36.21 ID:XG9qWbi9.net
前回も凛が抑えたのか球拾覚醒したのか分からん

622 :名無しで叶える物語:2020/09/09(水) 22:07:48.95 ID:2RZSoLNk.net
「大丈夫ですから……早く会場へ……」

絵里「大丈夫なわけないでしょ! 救急車を……!」

真姫「……ちょっといい?」

絵里「真姫……?」

真姫「んー……球拾の言うとおり、問題は無さそうだけど」

真姫「この血、返り血みたい。球拾の身体にも浅い傷はあるけど、深いものは無いし……」

希「医者の娘だけあってしっかり見てるね」

穂乃果「あれ? でもここに深い穴があいてるよ」グチュ

「ぁんっ……!?」

穂乃果「元からか」

絵里「ほ、本当に大丈夫なの……? 着替えは……バスの中でいいわね、向こうにシャワーもあるし……」

凛「決勝戦……やってやるにゃ!」

623 :名無しで叶える物語:2020/09/09(水) 22:14:45.33 ID:2RZSoLNk.net
バスの中

希「けどさぁ……」

「なんです? あ……ジャージ貸してくれてありがとうございます」

希「それはいいんやけど。その血はなんなん?」

希「何があったらそんなボロボロになるんよ」

「虎が……」

希「虎?」

「あ、いえ……ううん。何というか」

「前回、完成させられなかったボールを完成させにいったというか……」

希「へぇ……どういうボールなん? ウチ、受け止めなあかんし……変化球とかならどっち曲がるか教えてよ」

「信じてくれるか分からないんですけど」

「……が、……で……なボールで……」ボソボソ

希「ふむふむ」

希「……マジで言ってる? 本当だとしたらとんでもないけど……」

凛「何話してるにゃ? 凛も仲間に入れるにゃ」

凛「かよちん達、カタンの開拓者やり出して会話に入れないんだよね……」

希「緊張感解けすぎちゃう? 緊張してるよりはいいけど……」

624 :名無しで叶える物語:2020/09/09(水) 22:19:39.61 ID:2RZSoLNk.net
凛「それで何の話してたの?」

希「球拾の新しい変化球……いや、変化球っていうか」

希「魔球……?」

凛「ボールから煙の出るやつでしょ? あれ見えにくそうにゃ」

「正確には煙じゃないんですけどね、あれ」

「まぁ……なんというか、あのボールの進化系というか、本来の形というか」

凛「えっ、えっ!? どんなボールなの!? 気になるにゃー」

「うーん……試合まで秘密で」

凛「えー! 教えてよ、教えてー! 気になるにゃー!」ガタガタ

花陽「うるさいよ、凛ちゃん」

凛「あ、はい……」

真姫「粘土が足りないわね……」

花陽「羊毛と交換してあげるよ」

625 :名無しで叶える物語:2020/09/09(水) 22:19:59.94 ID:2RZSoLNk.net
今日はここまで

626 :名無しで叶える物語:2020/09/09(水) 22:25:02.87 ID:J5kmaGUa.net
カタン良いよね

627 :名無しで叶える物語:2020/09/09(水) 22:40:50.07 ID:LVJGKFN5.net
カタン面白いよな〜
久々にやりたくなってきた

628 :名無しで叶える物語:2020/09/09(水) 23:04:34.19 ID:XG9qWbi9.net
次回カタン編突入みたいな引き

629 :名無しで叶える物語:2020/09/09(水) 23:20:00.60 ID:d9nxaFR4.net
羊じゃなくてアルパカにゃ

630 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 19:12:50.69 ID:RyA42a7K.net
ーーやんやんーー

ことり「……えっと」

ことり「ここ、本当に予選決勝の会場だよね?」

海未「みたい、ですけど……」

シーーン

穂乃果「えっ、お客さん全然いないじゃん」

海未「私が弓道大会で優勝した時より少ない……というか、音ノ木坂の吹奏楽部来てなくないですか?」

絵里「そうよね……普通は、少なくとも吹奏楽部が来る筈よね」

絵里「そもそも予選とはいえ決勝よ!? なんで生徒誰一人応援に来てないのよ!?」

希「結ヶ丘女子も同じ状況みたいやね。あっちも応援団誰一人来てないし」

凛「一年の子達は『夏休み潰してまで野球部応援する義理がない。顔も見たくない』って言ってたよ」

穂乃果「言われてみればうちのクラスの子も、応援来てねって言ったら鼻で笑ってたよ」

真姫「どんな扱いされてんのよ私達」

631 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 19:21:23.24 ID:RyA42a7K.net
花陽「え、えっと……皆忙しかったんだよきっと」

にこ「まぁいいわ。野球は応援でやるものじゃないし、それに……」


かのん「え……少なくない?」

恋「母に頼んで、生徒達に来るよう命令を出しておくべきでした……申し訳ありません」

※葉月恋の母親は結ヶ丘女子の理事長

可可「自分から来てもらわなきゃ意味ナイネ」


にこ「あちらさんもあちらさんで、決勝なのに応援団も何もないことにショック受けてるみたいだし。条件はイーブンよ」

穂乃果「何だろう、やる前から力が抜けるよ」

凛「決勝とは思えないくらいやる気がなくなってきたね」

絵里「だ、駄目よ! せっかくここまで来たんだから!」

絵里「こんなにボロボロになるまで練習をしたのは甲子園に行く為でしょ!? 頑張らなきゃ」

632 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 19:49:31.00 ID:RyA42a7K.net
実況『さぁ本日も快晴! 空は青く澄み渡り、甲子園を目指して歩く高校球児達の熱い戦いが今始まろうとしていますッ!』

実況『やはり決勝ともなると応援席の熱気も強まり……』

シーーーーーン

実況『んふっwww えー、あっ、ですね。ええ、オーラに……はいっ、高校球児達の熱いオーラに、客席も声を発することが出来ないようです』

凛「笑いやがったにゃあいつ」

ことり「何わろちゅんねん」

絵里「実況やってて初なんでしょ、こんな静かな決勝戦」

審判「両校、整列してください!」

ザッ!

審判「只今より、私立結ヶ丘女子高等学校対国立音ノ木坂学院の試合を始めます! 両校、礼ッ!!」

「「「よろしくお願いしますッッッ!」」」

実況「さぁ、始まりました決勝戦。まずは両校の出したオーダー表から確認していきましょう」

633 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 20:01:34.65 ID:RyA42a7K.net
音ノ木坂学院

1(一)高坂穂乃果
2(三)絢瀬絵里
3(捕)東條希
4(遊)西木野真姫
5(中)南ことり
6(二)園田海未
7(左)小泉花陽
8(右)星空凛
9(投)球拾

結ヶ丘女子高等学校
1(左)葉月恋
2(一)ハロー・ワン
3(右)ハロー・ツー
4(二)唐可可
5(三)平安奈すみれ
6(遊)嵐千砂都
7(中)ハロー・スリー
8(捕)ハロー・スー
9(投)渋谷かのん

実況『お互い代わり映えのしない面子ですが、それも仕方ありません』

実況『音ノ木坂は部員11名……その中の1名は現在事故で入院中。ベンチにはたった一人、抑え投手の矢澤にこしかいません』

実況『結ヶ丘も似たようなものです。新設校の苦しさか、部員は13名……音ノ木坂より僅かに多いとはいえ、補欠組は野球初心者で戦力としてカウント出来ないとのことです』

実況『なんでこんな二校が勝ち上がってしまったのか。UTXと一二三戦をやった方が間違いなく盛り上がった筈です』

かのん「酷い! 酷いこと言われてる!」

凛「けど確かにテレビで見るならUTX対一二三の方が熱い戦いしそうだし楽しそう」

634 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 20:08:18.42 ID:RyA42a7K.net
一回表

実況『一番高坂穂乃果、緊張の面持ちでバッターボックスに入ります。流れを音ノ木坂優位に持っていけるかは一番の彼女にかかっていると言っても過言ではないでしょう』

絵里「穂乃果! バッチリお願いね!」

穂乃果「……」

絵里「穂乃果……?」

希「……まずいなぁ、穂乃果ちゃん」

凛「にゃ?」

希「決勝まで来てようやく、自分の立場理解してもたみたいや」

穂乃果(私が打たなきゃ……まず、私が打って押せ押せムードを作らなきゃ)ドクンドクン

穂乃果(あれ……そういう意味じゃもしかして一番って……一番責任が重い……?)ドクンドクン

かのん「いくよっ……!」クイッ

ヒュオッッッ!

穂乃果(う……客席で見るより、バッターボックスで見ると余計にボールが速いっ!)

クイッ

スパァンッ!

審判「ストライッ!」

635 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 20:13:42.83 ID:RyA42a7K.net
実況『渋谷かのん、素晴らしいピッチングです! 昨日の疲れを微塵も見せない……スピードガンは貫禄の148キロを記録しました!』

実況『これで1年生だというのですから、来年以降が楽しみの一言です』

穂乃果(え? え? え? 148キロ?)

穂乃果「は、速すぎるよ……!」ドクン

穂乃果(け、けど! 私は一番なんだから……決勝戦のこの大舞台を決めるのは私の一打なんだから……!)ドクン

穂乃果(……あれ?)

かのん「ん……肩もばっちり。ゆっくりお風呂入っといて良かったぁ」

かのん「よし、このままなるべく少ない投球で終わらせるっ!」キュッ

ヒュオッッッ!!

穂乃果(バットって……)ドクン

穂乃果(どう振るんだっけ?)ドクン

スパァンッ!!

審判「ストライッツー!」

絵里「穂乃果……!? どうしたのよ、いつもは興奮したバッファローみたいに振り回してるのに!?」

636 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 20:23:54.69 ID:RyA42a7K.net
にこ「聞こえてないわよ、多分。見なさいよあの顔……」

凛「酷い冷や汗……顔色も悪いし、視線も泳いでる。あんな状態で打てるわけないよ!」

真姫「極度の緊張……けど、どうして今更? 今までだってずっと、穂乃果は一番打者を努めてきたじゃない」

にこ「簡単な話。決勝戦とそれ以外の試合では……天と地ほどの差があるッッッ!」

にこ「勝っても負けても準決勝までなら悔しいねで終わる……けれど、後一戦。これさえ勝てば甲子園という状況で負ける恐怖」

にこ「それを左右する最初の一打……そのプレッシャーは計り知れない」

穂乃果「あれ……あれ……!?」

穂乃果(分からない……なんで、なんで!?)

かのん「……? バットを振らなきゃボールには」

かのん「当たらないですよっ!」キュオッ

ヒュオォォォォンッ!

穂乃果「う……!」ブォンッ

クイッ

カァンッ!

絵里「当たった! けど……」

637 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 20:30:31.66 ID:RyA42a7K.net
審判「……ファールっ!」

絵里「ファール……それも、曲がったから芯をずらされたわけじゃない」

凛「最初から、芯から外れていた……先っぽで引っ掛けただけにゃ」

にこ「海未、ことり。穂乃果の幼馴染のあんたらに聞くけど」

にこ「穂乃果はああいう状況で、プレッシャーを跳ね除けられる人間?」

ことり「そ、それは……」

海未「無理ですね」

ことり「海未ちゃん!」

海未「嘘を言っても仕方ありませんよ。穂乃果は……能天気そうでパッパラパーで、メルカリで妹の物を勝手に売るレベルのアホですが、その実追い詰められると弱いところがあるんです」

ことり「うん……穂乃果ちゃん、一度悩むと悩んで悩んで潰れちゃうタイプなんだよね。それで中学の時も剣道を……」

海未「……中学の部活を辞めた時と、同じ顔をしているんですよ」

穂乃果(……ファール、追い込まれた、打たなきゃ、打たなきゃ、打た……)ドクン、ドクン

希「タイムっ!」

638 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 20:35:43.88 ID:RyA42a7K.net
凛「希ちゃん……?」

希「……」ズンズン

真姫「殴る気よ絶対。私には分かる、間違いなく殴る」

穂乃果「あ……希ちゃ……」

希「あのな、穂乃果ちゃん」

希「もし穂乃果ちゃんが打てなくても、ウチとか絵里ちとか、皆が打つから大丈夫や」

穂乃果「……け、けど。私は一番で、打たなきゃ、流れをこっちに、私が……」

希「流れなんてのは音ノ木坂にはいらないんよ。ここまで来れたのだって、別に流れなんて関係ない」

希「ここまで練習して、練習して。負ける流れを無理矢理潰してきたからこうして、決勝の舞台に立ってるんだよ」

希「逆風上等! それが音ノ木坂やん、だから……気にしないで、思いっきり振ればいいんよ」

穂乃果「希ちゃん……!」

639 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 20:41:46.11 ID:RyA42a7K.net
穂乃果「そう、だよね」

穂乃果「私達に流れがあったことなんて、今まで一度も無かったよね」

穂乃果「……よし! ありがとう、希ちゃん。気合入ったよ!」

希「良かった。じゃ……穂乃果ちゃんらしい一撃、あのクイクイ投手に見せたって」

穂乃果「うんっ!」

ザッザッザッ

穂乃果(……流れなんか今まで無かった。言われてみればそうなんだよね)

穂乃果(私らしい一撃、か。よぉしっ!)

海未「穂乃果の顔から……焦りが消えた」

ことり「いつもの穂乃果ちゃんの顔だよ! ちゃんと相手を見てる!」

穂乃果「さぁ、来い……」

希「いい話で終わると思ったかオラァッ!」ボグォッ!

穂乃果「がはぁっ!? げほっ、ごぱっ……」ビタビタボタッ

かのん「う、うわっ!? ゲロ吐いてる!?」

希「今日も世界は美しいなぁ」

真姫「ね、だから言ったでしょ? 隙があったら殴る目をしてたもの」

花陽「ダメ絶対音感みたいな能力だね、真姫ちゃん……」

640 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 20:45:42.72 ID:RyA42a7K.net
穂乃果「ふぅー……ふぅー……」

かのん「え……だ、大丈夫? 投げていいの……?」

穂乃果「タイムは解除されたから……投げていいよ……おごっ」

穂乃果「げぇ……」ゴポポ

かのん(驚くほど投げにくい……!)

穂乃果「……っと、肩とかお腹とか。力いい感じに抜けたよ」

穂乃果「ただのサイコパスじゃないね、希ちゃん」

希「将来は自転車のサドルを鹿の角に変える仕事に付きたい」

凛「ただのサイコパスだよこいつ」

かのん「……おふざけは終わりだよ。これでワンアウト……!」クイッ

ヒュォンッ!

穂乃果(相変わらず速い……! けどさっきよりは)

穂乃果(球がしっかり見えてる!)ブォンッ

クイッ

ガギィィンッ!

641 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 20:52:37.35 ID:RyA42a7K.net
穂乃果「……」

かのん「……」

かのん「……残念ね」

実況『高坂選手、打ちました……が!』

実況『当たりそこないのボールです! サードへボテボテのゴロが転がっていくぅ!』

かのん「見えても打てないのが、このボールなの。私にもよく分からないけど」

穂乃果「ッ!」ダッ

すみれ「遅いですよ、ギャラクシーッ!」ガッ

ヒュンッ

実況『サード平安奈すみれ、がっしりとボールを掴み一塁へ送球! 高坂選手、これは間に合いませんっ!』

穂乃果「……くうっ」

審判「アウトッ!」

実況『惜しくもアウトです! これでワンアウトランナー無し、続く打者は二番絢瀬絵里』

642 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 20:57:25.25 ID:RyA42a7K.net
絵里「穂乃果……」

穂乃果「あはは……駄目だったよ。ごめんね」

絵里「気にしないで。見逃すでもなく、ちゃんと打ちにいったんだから……むしろ誇るべきよ」

絵里「戦わず負けるのが、一番悲しいことなんだから」

絵里「よぉしっ!」ブォンッ、ブォンッ!

実況『2番絢瀬、大きくスイングをしています! 長打を打つという予告か、それともパフォーマンスか!?』

絵里(少なくとも塁に……結ヶ丘の攻撃力がおかしいことはもう知ってる)

絵里(1点でも多く稼いでおかないと間違いなくやられる!)

643 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 20:57:33.43 ID:RyA42a7K.net
今日はここまで

644 :名無しで叶える物語:2020/09/10(木) 22:50:42.24 ID:C207B2qr.net
そろそろ活躍したいにゃ

645 :名無しで叶える物語:2020/09/11(金) 00:18:54.94 ID:XWUsjP2U.net
4だけスーなんだな 2がリャンとかじゃなくて

646 :名無しで叶える物語:2020/09/11(金) 16:44:27.60 ID:C75HlkvF.net
まあ現実でも今年は無観客だったしね…

647 :名無しで叶える物語:2020/09/11(金) 22:22:51.01 ID:ybTsp59h.net
かのん「らぁっ!」

ヒュォンッ!

絵里(一球目は……外角低めのストライク。いや、ボール半個分外れてる)キュオッ

絵里(ギリギリをついてきた……というわけでもなさそうね。投げたら偶然そこにいった?)

絵里(一先ずはボールワンで……)

クイッ

絵里「ッ!」ブォンッ

キィンッ!

ボテボテ…

審判「ファールッ!」

絵里(……厄介すぎるわね、あのボール)

絵里(ボール半個分外れたところから、手元でストライクゾーンに曲がった)

648 :名無しで叶える物語:2020/09/11(金) 22:31:20.12 ID:ybTsp59h.net
かのん「ふぅ……危なかった。ボールになるかと思ったよ」

絵里(無自覚なのが酷いわね。とはいえ……)

絵里「覚えたわ」

絵里(合宿で身につけた『目』のお陰で、彼女の筋肉の移動、目線、力の流れ……全て見る事が出来た)

絵里(ファールを続ければ全てのパターンを見る事ができるかもしれない! そうすれば……守備の穴をついて、ヒットくらいは打てる筈ね)

かのん「覚えた? わけわかんないこと……」

かのん「言ってんじゃないよッ!」

ヒュォンッ!

絵里「……!?」

絵里(筋肉の動きが、指のかかりが、目線が……全て同じ!?)

絵里(なら、左方向に僅かに曲がる球……!)ブォンッ

クイッ

絵里「なぁっ!?」

スパァンッ

審判「ストライッ! ツー!」

絵里「下方向にフォーク回転……!? 何で……!」

649 :名無しで叶える物語:2020/09/11(金) 22:37:03.25 ID:ybTsp59h.net
絵里(客席で見たときは遠目だから判断できないんだと思い込んでたけど……)

かのん「よっし、追い詰めた!」

絵里「本当に、ボールの変化以外何も変わらないの……?」

絵里「オカルトじゃないそんなの!?」

かのん「酷いよ! 勝手に曲がるんだから仕方ないじゃん!」

絵里(自分のやってることの凄さに気付いていない……!)

絵里(けれど、筋肉の動きで判断出来ないとなると……ボールが曲がる瞬間を見極めてスイングの方向を無理矢理変えていくしかないわね)

絵里(幸い、球は縫い目までよく見えてる。私なら打てる……!)

かのん「これで……三振だよっ!」

ヒュオォォォォンッ!

絵里(いける……このタイミングでスイング!)ブォンッ

絵里(後は球に合わせて無理矢理軌道を変えて……!)

ボヤァッ

絵里「……嘘、でしょ」

650 :名無しで叶える物語:2020/09/11(金) 22:52:14.64 ID:ybTsp59h.net
絵里(ボールが……縫い目が見えない。曲がる方向も何も予測がつかない)

絵里(……!)ハッ

『すみれ「無駄ですよ……彼女は昔から妙な体質なんです。『他者に向かって使われた能力を、自分の肉体に集めて浄化する』」』

絵里(まさか……!)

千砂都「うわっ、なんか芝生めっちゃよく見えるっすよ」

絵里(『ボール』に向けた『目』の対象をずらされた……!?)

絵里「っつう!」グッ

クイッ

ギィンッ!

実況『絢瀬選手、何とか当てにいきましたが……ショートへゆるいフライがふわりと上がります!』

実況『ショート嵐、既に捕球体勢に入っています。これで音ノ木坂、ツーアウトか』

絵里「っ……」ダッ

絵里(まずい……希じゃあれに対応できるか怪しいのに! 落ちて……お願い……!)

651 :名無しで叶える物語:2020/09/11(金) 23:10:17.57 ID:ybTsp59h.net
千砂都「この程度のフライなら余裕ですよ! よーしカッコよくキャッチして……」

ポロッ

千砂都「あら?」

実況『なっ……し、信じられません! あんなゆるいフライを、あんな単純なフライを、あんな簡単なフライを……落としました嵐千砂都ォ!』

実況『何を考えているんだショート嵐千砂都、信じられません!』

千砂都「ボロクソ言われてるじゃん!?」

すみれ「当たり前です、あんな簡単なフライを……ギャラクシーッ!」シュッ

実況『サード平安奈選手がカバーに入りファーストへ送球しますが……絢瀬、余裕のセーフです』

絵里「はぁ、はぁ……」

絢瀬(『目』が戻った……ずらされたというよりは、奪われた?)

絵里(能力を自分に向けるだけじゃなく一時的に奪うこともできる……だとしたら、私とは相性が悪すぎるわね、あの子)

652 :名無しで叶える物語:2020/09/11(金) 23:21:04.39 ID:ybTsp59h.net
実況『続いては技巧派東條希、バント出塁率は今大会ではトップです』

実況『西東京予選優勝校、虹ヶ咲の上原歩夢選手に似たバッティングスタイルの持ち主ですね』

希「似た、っていうかパクりなんやけどね」


凛「虹ヶ咲、優勝したんだ……」

穂乃果「甲子園で当たったら前回のリベンジしなきゃね」

海未「前回?」

穂乃果「ああ、海未ちゃん達はいなかったんだよね。前に練習試合で……」


かのん「この人の次のバッター、あの西木野真姫だよね?」

かのん「何としてでもゲッツー取らなきゃ……私でも知ってるもんあの選手!」

かのん「なんでこんな無名にあんな有名選手がいるの……!?」

真姫(久しぶりに有名人として扱われた気がするわね……)

希「おっと……待った待った。真姫ちゃんの前に、君の今の相手はウチやろ?」

希「しっかり見てくれないと寂しいなぁ」スッ

653 :名無しで叶える物語:2020/09/11(金) 23:29:14.45 ID:ybTsp59h.net
希「……」チラッ

絵里「……」コクッ

かのん(実況の言葉を信じるなら……この人はセーフティバントで一塁二塁の形を狙ってくるはず)

かのん(どのみち一塁の人を二塁に進める為に、バントをしてくるのは必然……なら)

かのん「……ここっ!」キュッ

ヒュォンッ!

希「……」スッ

かのん(よし……バントの構えを取ってきた。残念だけど……)

かのん(前に出させてもらう!)

実況『ピッチャーかのん、投げると同時に前に進んでいますッ! バント一本に絞ってきました!』

かのん(ここからバスターに移行してもゴロになる可能性は限りなく高い! 潰せるっ!)

希「だと思ったんよね。実況にも騒がれたし、前に出る気満々だったし」

かのん「……!」

希「ウチは……引かせてもらうよ」スッ

実況『これは……三番東條、バットを引きました! 打球が東條の横を通り過ぎていきます!』

654 :名無しで叶える物語:2020/09/11(金) 23:36:46.57 ID:ybTsp59h.net
かのん「ただ単に見逃した? なら何でバットを……」

実況『あ、あ、ああっ! に、二塁です! 二塁に……絢瀬絵里がいます!』

かのん「……!」

絵里「駄目じゃない、希にばっかり気を取られたら……」

絵里「あんなにリードしてたのに。盗塁まで気が回らなかったの?」

かのん「な、な……ワンちゃん! 何で教えてくれなかったの!?」

「そう言われてもオイラ、野球初心者でやんすよ」

希(ゴロの処理が甘い、フライが取れない……だから疑ってはいたけど)

希(間違いない。こいつら、才能があるだけの初心者や)

希(一部経験者はいるみたいだけど……ほとんどが初心者なら戦いようはいくらでもある)

実況『これでワンナウト二塁、音ノ木坂、一気に得点が見えてきました!』

かのん「う、うう……!」キュッ

ヒュォンッ!

希(速いボール……けど、見えないほどではない)

希(手元で曲がったところでバントなら少し動かすだけ……余裕はある)

希(今度こそバントや)スッ

655 :名無しで叶える物語:2020/09/11(金) 23:45:19.52 ID:ybTsp59h.net
かのん「あ……」

カンッ

希(よし……三塁線ファールラインギリギリ! いつもより調子いいやん!)

希(他の高校の研究も余りしてないみたいやし、ウチのこの手も知らない筈やん。ファールかフェアか迷って……)

希(その隙に一塁を狙うっ!)

パシッ

シュッ

希(……なっ!?)

審判「アウトッ!」

希(投げられた……? あんなギリギリのボールを迷わずに取りに行ったっていうんか!?)

実況『捕手、ハロー・スー。迷うことなくボールに手を伸ばしていきました! フェアだと判断したのでしょうか!?』

希「確かにあのボールはフェアになる……けど、それが分かってるのは打ったウチだけやん」

希「なんで迷わずに……」

「ーーーー。ーーーー」

希「……? 英語……なんかな? 外人さん、やんな? ごめん、ウチ英語は余り……」

「貴女ガ、フェア、思ッタカラ」

希「?」

「……」スッ

希「ウチがフェアだと思ったから……? よく分からんな」

希「……頼むよ、真姫ちゃん」

656 :名無しで叶える物語:2020/09/11(金) 23:51:28.75 ID:ybTsp59h.net
真姫「ふーっ……」

かのん「……西木野真姫。中学ではベストナインに選ばれてたよね。全国の代表選手にも選ばれてた」

真姫「よく知ってるじゃない」

真姫「本当に懐かしいわね……昔はそう呼ばれていたのよ。ベストナインとか、代表選手とか……」

真姫「音ノ木坂ではたまにイキっては失敗しまくる腹パン要員くらいにしか思われてないけど……」

かのん(荒んでる……前にテレビで見たときにはもっと生き生きしてたのに)

真姫「ま……肩書なんてどうでもいいわ」

真姫「何処に投げてきてもいいわよ。私のスイングを見せてあげる」

かのん「……勉強させてもらいますよ!」キュッ

シュバォンッ!

かのん(相手が西木野真姫とはいえ、私の芯を外すボールは破れない筈!)

かのん(ゴロか浅いフライに抑えて、うちの攻撃にチェンジだよ!)

真姫「いい球ね、本当に……客席やベンチで見るよりも速く見える気がする」

クイッ

真姫「けど……」

657 :名無しで叶える物語:2020/09/11(金) 23:59:23.03 ID:ybTsp59h.net
真姫「……ふっ!」ガオンッ

クイッ

かのん(何て豪快で鋭いスイング……! 腕の先が見えな……)

ゴガギィィッ!

かのん(風……?)

シュオンッ!

かのん(違う、ボールが私のすぐ側を通り抜けて――)

実況『と……飛んだァッ! 西木野真姫、これが西木野真姫です! ピッチャーの頬を掠めたボールがどんどん上向き、今スタンドに一直線に叩き込まれましたッッッ!』

実況『ホームラン、ホームランですッッッ!』

真姫「……っと。力入れすぎたわね、これじゃ客席が壊れちゃうわ」

かのん「なんで……芯からはずれた筈なのに……」

真姫「ずれた? 何言ってるのよ」タッタッタッ

真姫「私にとっては、バットの何処に当たっても真芯よ」

マキチャーン ヴェェ!?

実況『今ホームインッ! これで2-0、音ノ木坂、先制点を奪いましたッ!』

658 :名無しで叶える物語:2020/09/11(金) 23:59:38.47 ID:ybTsp59h.net
今日はここまで

659 :名無しで叶える物語:2020/09/12(土) 00:00:54.28 ID:F7nUkwnX.net
なんだかんだで初めて真姫ちゃん普通に活躍したような…

660 :名無しで叶える物語:2020/09/12(土) 00:03:27.72 ID:Kf3/yFBb.net
えっ…真姫ちゃんが活躍してる…?

661 :名無しで叶える物語:2020/09/12(土) 01:25:27.55 ID:cmr2bvNw.net
まきちゃんつえええええええ

662 :名無しで叶える物語:2020/09/12(土) 03:27:42.47 ID:0FKJovi3.net
絵里は頑張って鍛えたんだから超能力とは違うじゃないですかー!

663 :名無しで叶える物語:2020/09/12(土) 23:54:59.74 ID:THSygzse.net
保守

664 :名無しで叶える物語:2020/09/13(日) 15:57:16.48 ID:uosM5qj3.net
凛「やったやったやったにゃー!」ゴロゴロ

真姫「ちょ……身体の上で転がらないで!」

希「どんな体勢なんよこれ」

花陽「立っている人間の身体の上で転がる……?」

凛「真姫ちゃん野球出来たんだね! 凛、仲間になったら途端に弱くなるタイプのキャラかと思ってたよ」

真姫「今までだってちゃんと野球してたでしょ!?」

真姫「私がいなきゃ勝てない試合だって……」

絵里「次はことりね。……心配だわ」

絵里「真姫のホームランでテンション上がってなきゃいいけど」

真姫「私に続けで押せ押せの方がいいじゃない。何が駄目なの?」

絵里「何がって……あぁ、そういえば予選ではまだなってなかったわね」

絵里「ことりはテンションが上がると……」

665 :名無しで叶える物語:2020/09/13(日) 16:04:20.27 ID:uosM5qj3.net
かのん(やられた……やられた、やられたっ!)

かのん(初回からホームランなんて……警戒していたのに! 西木野真姫は強いって、打てる選手だって分かっていた筈なのに!)

「……」

かのん「気にしないで、スー。敬遠策を取らなかったのは私にも責任があるから」

かのん「とりあえず次のバッターを打ち取って……裏で3点取ればそれでいい」

「……」コクッ

実況『さぁ、試合再開です。1回表で両校からタイムが入るのは珍しいですね、痛烈なホームランから立ち直れたのか渋谷かのん』

実況『よく分からん怪しい白い粉を指につけています』

かのん(ただのロジンバッグだよ……)

ことり「……」

かのん(次のバッターはかなりの細腕……とはいえ、西木野真姫の例もある。5番に据え置かれていることからパワータイプかな?)

かのん(油断は……しないっ)クイッ

(・8・)

かのん「っ!?」

666 :名無しで叶える物語:2020/09/13(日) 16:08:23.72 ID:uosM5qj3.net
かのん「なっ……ぬいぐるみ……?」ヨロッ

ヒョロロッ

審判「ボールッ!」

実況『おっと……なんだこれは!? バッターボックスに立っていた南ことり選手の姿が消えたァ! 代わりにバットを持ったぬいぐるみが置かれていますッ!』

かのん「ちょ、ちょっと待ってよ!」

かのん「ことり選手は何処にいったの!? バッターボックスにいないんなら、今のボールは無効で……」

(・8・) ちゅんな?

かのん「……?」

(・8・) トッリさっきから立ってるちゅんよ

かのん「……え? え? スピーカー入ってる……?」

実況『……っと。ここで資料が入ってきました』

実況『どうやらあのぬいぐるみは南ことり本人のようです!』

667 :名無しで叶える物語:2020/09/13(日) 16:17:14.34 ID:uosM5qj3.net
かのん「え……」

かのん「な、何で!? ……というか何で皆驚かないの!? 人があんなぬいぐるみみたいになってるんだよ!?」

恋「浦の星の黒澤ダイヤも同じ能力ですし。前に甲子園のテレビで見ましたよ」

可可「今更、人がぬいぐるみになったくらいで驚かナイヨ」

かのん「覚悟が決まりすぎてる……!」

(・8・) じー

かのん「うう……なんかやりにくいなぁ」

( ^8^ ) アイセーーーーーーーイwwwww

かのん「っ」ビクッ

( ^8^ ) 産毛のトッリ達もwwwいつか空に羽ばたくwww

( ^8^ ) 大きな強いちゅんなぁでwwwww

(・8・) ド・ブ

かのん「……ッ!」キュオッ

ヒュオォォォォンッ!!

ことり「内角への甘い球……ッ!」ブォンッ

かのん「なっ!?」

668 :名無しで叶える物語:2020/09/13(日) 16:22:43.40 ID:uosM5qj3.net
真姫「何よ、一瞬驚いたけどちゃんと相手を翻弄できてるじゃない!」

穂乃果「いや……違うんだよ」

穂乃果「あの状態のことりちゃんは、ことりちゃんの姿をしていても『トッリ』であって『ことり』じゃない」

穂乃果「ことりちゃんの能力『トッリ化』の効果は……」


ことり「らぁっ! ……あれ?」スカッ


凛「なあっ!? ば、バットからボールが離れまくってるにゃ!?」

希「あのモードになると……半々になるんよ」

希「三振か……ホームランか。普段なら安定してヒット撃ってくれるのに……」

真姫「……劣化してんじゃないのそれ!?」

絵里「い、いや。強い投手と当たって誰も打てない時は結構有効なのよ!?」


かのん(一瞬焦ったけど……何あのスイング。まるで素人のそれじゃん)

ことり「あれぇ……おかしいなぁ」

669 :名無しで叶える物語:2020/09/13(日) 16:29:15.08 ID:uosM5qj3.net
ことり「こうなったら……こうしちゃいますっ!」シュオンッ

(・8・) ちゅんなぁ! シュオンッ

ことり「むんっ!」シュオンッ

かのん「ぬいぐるみと人間を交互に……!」

恋「あれは……浦の星の黒澤ダイヤと全く同じ戦法ですね」

恋「人間形態とぬいぐるみ形態を瞬時に切り替え続けることで、ストライクゾーンをずらす」

すみれ「なんて悪魔的な発想っ……!」

かのん「ぐっ……!」

ことり「どうしたの?」シュオンッ

(・8・) 早く投げるちゅん! シュオンッ


絵里「黒澤ダイヤぶっぶ戦法……!」

絵里「ちゃんと自分の弱点を見極めていたのね、ことり……!」

670 :名無しで叶える物語:2020/09/13(日) 16:33:37.83 ID:uosM5qj3.net
かのん「ストライクゾーンが次々切り替わる……!」

かのん「……くうっ!」キュオッ

ヒュオォォォォンッ!

実況『渋谷、諦めて投げました……がっ! これはいけません! トッリの身長に対して球が高すぎるぅ!』

凛「ボールにゃ!」

穂乃果「これを繰り返せばことりちゃんの出る時は高い確率でフォアボールを取れるっ!」

(・8・) ブォンッ

スパァンッ

審判「ストライッ!」

穂乃果「……」

かのん「……」

(・8・) ……

(・8・) なんかトッリモードだと自動で振っちゃうちゅんね

真姫「結局駄目じゃない!?」

671 :名無しで叶える物語:2020/09/13(日) 16:44:26.60 ID:uosM5qj3.net
凛(トッリモードの穴をつかれ、敬遠に近い球を投げられ続けたことりちゃんは結局三振しスリーアウト)

凛(一回表が終わって2-0。リードはしてるとはいえ相手はUTXからあれだけの点を奪った猛者達)

凛(……球拾ちゃんで何とかできるの?)

実況『さぁ一回裏、結ヶ丘女子の攻撃です。一番葉月恋、バッターボックスで優雅に微笑んでいます』

実況『聞く話によると彼女の母親は結ヶ丘の理事長を努めているらしいですね。やはり生まれの良さが出ているのでしょうか』

ことり「私のママも理事長なんだけど」

ことり「あれ……優雅さ……?」

海未「大丈夫ですよことり!!! ことりは『優雅』というよりは『可愛い』です!!!」

ことり「う、海未ちゃ……そんな客席まで響く大声で……恥ずかしいよぉ」

凛「客席、あたりめ炙ってるオバサン一人しかいないから大丈夫にゃ」

「……」

恋「……久しぶりですね、球拾先輩」

672 :名無しで叶える物語:2020/09/13(日) 16:44:45.17 ID:na8iRCE9.net
ダイヤさんネタバレされてて草

673 :名無しで叶える物語:2020/09/13(日) 17:00:45.32 ID:uosM5qj3.net
「えっ……?」

恋「……覚えていませんか? 無理もないことです、当時私は一軍の補欠で、先輩とは余り縁がありませんでしたから」

恋「剛掌中学出身者で先輩のことを覚えていない人はいませんよ。ようやく、本物のエースになれたみたいで私も自分の事のように嬉しいです」

希「本物のエース……? お嬢ちゃん、球拾の知り合いなん?」

希「剛掌中学でエースピッチャーをしてた、って聞いてたんやけど……」

「えっと、いや、それは……!」

恋「エース……といえば、エースですが」

恋「球拾先輩は、三軍の補欠の……球拾い部隊のエースですよ?」

希「……はぁ!?」

絵里「三軍の……しかも補欠!?」

「……う」

恋「殆どの三軍補欠落ちがまともに野球をさせてもらえず辞めていく中、最後まで野球部に所属し一軍選抜試験を受け続けたその美しい姿……ファンも多かったんですよ?」

恋「けれど……少し、失望してしまいました。まさか自分がエースピッチャーだなんて偽っていたなんて」

674 :名無しで叶える物語:2020/09/13(日) 17:10:18.53 ID:uosM5qj3.net
希「今の話……本当なん?」

「……本当です。私は、エースどころか三軍ですらピッチャーを任せてもらえなかった」

「来る日も来る日も球拾いをして、他の部員達から憐れみの目で見られても野球に縋り続けた。そんな哀れなピエロが私です」

真姫「最初から気付いてたけど」

海未「真姫、今は空気を読んで黙っておいたほうがいいですよ」

絵里「確かにエースピッチャーにしては球が遅すぎると思ってたけど……」

希「……」

恋「大丈夫ですよ、例え肩書で手に入れた偽りのエースだとしても……先輩のその姿は弱者に光を与えています」

恋「その尊い姿を。足掻く姿を。きっと皆が忘れません」

「……」

絵里「……で。それが何だって言うの?」

恋「……?」

絵里「中学時代どうだったとか、嘘を吐いてたとか……そんなこと今は関係ないのよ」

穂乃果「球拾ちゃんはうちのエースなんだよ? 大体、肩書がどうあれ信用してなかったら先発なんか任せないよ」

希「ま……そういうことやん。お嬢ちゃん、悪いけど……」

希「今、君と対峙してるのは『三軍の球拾い』じゃない。『エースの球拾』なんよ」

恋「……ふぅん。随分信頼されてるんですね、先発」

675 :名無しで叶える物語:2020/09/13(日) 17:17:31.96 ID:uosM5qj3.net
「皆……」

希「……」スッ

「……!」コクッ

恋「そんなに輝いて……信用されて、それじゃ弱者の味方になれないじゃないですか」ブツブツ

恋「先輩はもっと、地を這って、抗って、どんな困難にも立ち向かって、けれど不幸でいてくれなきゃ……」ブツブツ

希「……他に名門はいくらでもあるのに。剛掌の一軍からこんな新設校に来るなんて、親が理事長以外にも何かの理由があるんやろうな」

希「君は三軍でもがく球拾を自分に重ね合わせて、何処か満足していたのかもしれんけど……」

「……」キュッ

恋「先輩は……先輩は……」

ヒュンッ!

希「抗い続けてようやく強くなったんよ、あの子も」

ヒュオォォォォンッ!

実況『これは……ピッチャー球拾、初球からあの煙の出る魔球です!』

実況『煙の量が多いッ! 全くボールが見えませんっ! まるで煙が纏わりついているような……!』

「……叫べ」

676 :名無しで叶える物語:2020/09/13(日) 17:25:36.93 ID:uosM5qj3.net
ギュオオオッ!

恋「煙が形を作っていく……!?」

(来い……お願いだから私に力を貸せッ……!)

(リディア……!)

ーーーー

昨夜

ピエロ『おや、どうしたんだい?』

ピエロ『君はもうリディアを手なづけたじゃないか。まだ戦い足りないのかな?』

『……まだ、終わっていません』ガラッ

虎『……グルルルッ!』ペタン

ピエロ『凄いねぇ! 檻に入っただけであのリディアが頭を垂れるなんて!』

『……表面的には服従している。けど』

『あなたの目は死んでいませんよね、リディア』

虎『……』

『従っているフリをして、私を隙があれば殺そうとしている。あなたには十八の爪と無数の牙がある……私の牙は一本しかない、だから心のどこかで驕りが生まれる』

『だから今日、あのボールは完成しなかった。そうですよね?』

虎『……グオオッ!』

『いいですよ、お互い納得いくまで……あなたが本当に屈するまで』

『殺し合いましょう』スチャッ

ーーーーー

実況『な、なんだぁ!? 煙が……ボールの周りをッ……!』

実況『この形は……虎の頭です! 虎の頭がボールを覆うように……!』

677 :名無しで叶える物語:2020/09/13(日) 17:29:58.59 ID:uosM5qj3.net
恋「虚仮威しを……! 先輩の三年間と同じッ!」

恋「中身のない虚勢ですよ、こんなものッ!」ブォンッ

グオオッ!

恋(……重い!? いや、この感触は……!)

恋(バットに牙が食い込んでいる……!?)

恋「ぐ……うっ! ぎいっ……!」

バギィィィッン!

スパァンッ!

実況『く……砕け散りましたッッッ! 信じられませんッッッ!』

実況『私の目の前で何が起こっているのでしょうかッ! ボールの虎がバットに食い付き……噛み砕きましたッッッ!!』

恋「本物の虎……じゃない。もっと強力な、これは……!」

678 :名無しで叶える物語:2020/09/13(日) 17:37:20.46 ID:uosM5qj3.net
「虎の魂……私に従った、とある人食い虎の『魂』が、今のボールには籠っている」

「そう簡単に打てるわけがないじゃないですか」パシッ

恋「虎の魂……!? そんな非現実的なことが……!」

可可「恋! 新しいバットデス!」

恋「クゥクゥさん……」

可可「惑わされないでクダサイ。本当の意味での「魂の籠もったボール」なんてあるわけがないデス」

可可「クゥクゥ達も攻略法を探しマスから、無理をしないでクダサイネ」

恋「……はい」



「……らぁっ!」キュッ

ヒュオォォォォンッ!

恋「くっ……また虎の形を!」ブォンッ

ガギィィンッ!

恋(っ……何とか前に飛ばしましたが手が痺れて……!)

恋(あの遅いボールが、ここまで重いなんてっ!)

679 :名無しで叶える物語:2020/09/13(日) 17:41:40.54 ID:uosM5qj3.net
「……真姫ちゃん!」

真姫「任せなさい……っと!」ヒュッ

穂乃果「よっしっ!」パシッ

穂乃果「これでワンアウト……凄いよ今の球!」

真姫「何処で身につけたのよあんなボール……中学の時でも見たことないわ」

「いや、あはは……」

(流石に虎と殺し合いしてたなんて言えないよね……)

凛「球拾ちゃん凄いにゃ! あれがバスの中で言ってた魔球……!」

凛「……ん?」

凛(球拾ちゃん超強化されたら……凛の出番無くない?)

凛「球拾ちゃん丁度良く打たれるにゃー! 1点差くらいになるように!」

絵里「何言い出すのよ!? 大丈夫よ、4回からちゃんと交代するから!」

680 :名無しで叶える物語:2020/09/13(日) 17:41:51.77 ID:uosM5qj3.net
今日はここまで

681 :名無しで叶える物語:2020/09/13(日) 19:32:02.49 ID:na8iRCE9.net
主役この子では?

682 :名無しで叶える物語:2020/09/14(月) 17:08:21.46 ID:kQytumyv.net
期待

683 :名無しで叶える物語:2020/09/15(火) 07:16:08.79 ID:fqKtXrSH.net
保守やで

684 :名無しで叶える物語:2020/09/15(火) 19:39:04.94 ID:EQq2RN2z.net
凛(謎の超強化を遂げた球拾ちゃんの活躍により無事に1回裏は突破……と思われたが)

「オイラ、あんな虎ボール打てないでやんすよ……」

ヒュオォォォォンッ!

「ん……虎ボールじゃなくただのストレートでやんすね!」カキィンッ

凛(一打席虎ボールを使うと、その後しばらく連発できないという弱点が判明)

凛(ハロー・ワン、ハロー・ツーにそれぞれ安打、二塁打を打たれ最初の興奮は何処へやら。一気にワンアウト二、三塁に追い込まれてしまった)

実況『やはり結ヶ丘の打撃は安定していますね、見ていて心地がいい。波浪一族のワン、ツーに連続で打たれた後はこいつが怖い! 海を渡ってやってきた怪物唐可可が今、バッターボックスに入ります!』

可可「……あの虎ボール、クゥクゥでも打てるか分からナイネ」

可可「まだ回復してなければいいケド」

すみれ「そ、そうなったら私があの虎ボールくらうじゃないですか!?」

すみれファン「大丈夫ですよ、虎に食べられたとしてもきっちりカメラにおさめますね!」

すみれ「ぎゃらくしい……」

希(実際どうなんや……一打席カウントで、連発できないということに球拾自身も気付いてなかったみたいやし)

希(投げた筈の魔球がただのストレートになって、一番驚いてたのはあの子やからな)

685 :名無しで叶える物語:2020/09/15(火) 19:52:24.31 ID:EQq2RN2z.net
「……」

希(いけそうか……?)

「……」コクッ

(どの道。唐可可選手の打力を考えれば、抑えるには虎ボールを投げるしかない)

(下手なボールを投げれば、軽くスタンドに持っていかれて……1回の表で得た2点のリードが消え失せてしまう)

「っ……らぁっ!」キュッ

ヒュオォォォォンッ!

可可「ッ……!」ギリッ

実況『ボールの周りに煙が……出ました、例のボールです! 葉月恋を抑えたあの虎ボールがこの場面で!』

グオオッ!!

可可(ボール自体は遅い……けどこの『圧』は)

可可(手を出してもドウにもならない、ボールの纏う空気がそう雄弁に語ってイル……!)

スパァンッ!

審判「ストライッ!」

希(初球は見逃し……頼むよ、球拾。コイツは恐ろしすぎる……何をしてくるかさっぱり分からないやん)

希(早く三振で終わらせて……!)

686 :名無しで叶える物語:2020/09/15(火) 19:59:04.68 ID:EQq2RN2z.net
可可「……」

可可「ナルホド。魂を降ろしてイルというとは、本当みたいデスネ」

希「信じられんかったけどね、正直。普通は有り得ないし」

可可「有り得ない? クゥクゥ達は今野球をしているんデスヨ?」

可可「クゥクゥの国、道士います。キョンシーだけの野球チームや、呪具で出来たボールもありマス」

可可「魂を降ろす、当たり前デスヨ」

希「世界って広いんやな。このスポーツ人外魔境の集まりになりつつない?」

希「当たり前……だとしても、そっちに攻略法はあるん? ほら……二球目!」

ヒュッ!

可可「……」

スパァンッ!

「……打てば噛まれる、打たなきゃ三振。それがこのボールなんですよ」

687 :名無しで叶える物語:2020/09/15(火) 20:17:46.44 ID:EQq2RN2z.net
可可「……」

(打つ手無し……みたいですね。これで決めるッ!)ギュッ

ヒュオォォォォンッ!!

グオオオオッ!!

希(よし……会心の虎や! こんな生き生きとした虎を打てるわけがない!)

希(これでツーアウトッ……!)

可可「……青龙附体」ボソッ

希「……? 今何か……!?」

希(なんや……可可の纏う雰囲気が変わった……!?)

(神々しさすら感じる、ような……!)

可可「呀!」ブォンッ

ガギィィンッ!!

「なッ……!」

実況『う……打ちましたッ! 唐可可、打ちましたッ! あの虎ボールを……牙をものともしていません! 純粋な力だけで打ち破りましたッ!』

実況『ぐんぐんと飛んでいくゥ!』

688 :名無しで叶える物語:2020/09/15(火) 20:23:59.91 ID:EQq2RN2z.net
希「入るなッ! ……入るなァッ!」

絵里「……これは」

実況『センターことり、下がる……下がっていく! 追いつけるか、追いつけるかァ!』

ことり「駄目、だね……」

実況『落ちない、落ちません! ぐんぐん伸びたボールが今……』

バギゴォォンムッ!

実況『スタンドに真っ直ぐ飛び込みましたぁ!』

可可「……噛み付く虎には飛び上がる龍ネ」

「そんな……」

真姫「四神……まさか虎ボールを、白虎を打ち破る為に青龍をその身に降ろしたって言うの!?」

希「そんなアホな! 神をその身に降ろすなんて、修験者でも出来るかどうか……!」

689 :名無しで叶える物語:2020/09/15(火) 20:50:07.93 ID:EQq2RN2z.net
可可「唐の一族、昔から神在哪里を守ってるヨ」

可可「産まれた時から神とは契約してマス。野球に使われるとは思ってなかったみたいデスケド」

凛(そりゃそうにゃ)

凛(けど神を降ろすなんて……そんな人智を越えた領域に、どう立ち向かって行けばいいの……?)

「……私の虎ボールが打たれるなんて」

可可「人間の出来る範囲の努力は、神の前では無力デス。残念ネ」

「……」ギリッ

実況『これで試合の行方は分からなくなってきました。2-3、結ヶ丘女子がリードを奪い返しました』

実況『続くバッターはこれまたホームランが怖い平安名すみれ』

すみれ「……可可さんに虎ボールが投げられたということは」

すみれ「私の時はあの虎ボールは投げられない! ギャラクシーなバッティングを見せてあげますよ」ブンブン

希(マズい……可可には僅かに劣るもこの選手もホームランをかなり打ってたんよな)

希(普段の球拾で太刀打ち出来るんか? 満塁にはなるけど敬遠して、次のバッターを狙った方が……)

「……いけます。私が打ち取ってみせますよ」

希「いけるん? 相手は……」

「ワンアウトで満塁になる方が怖いですからね。三振は難しいかもしれませんけど……」

すみれ「ふふんっ! カリスマを感じないわね!」

すみれ「三振に打ち取る、くらい言えなきゃギャラクシーなカリスマピッチャーにはなれないですよ!」

(なんだよギャラクシーなカリスマピッチャーって……)

690 :名無しで叶える物語:2020/09/15(火) 20:55:34.28 ID:6UmbhbQj.net
満塁ってホームラン打ったからランナーいないんじゃないん

691 :名無しで叶える物語:2020/09/15(火) 20:55:54.32 ID:EQq2RN2z.net
マジだ

692 :名無しで叶える物語:2020/09/15(火) 20:57:35.32 ID:EQq2RN2z.net
>>689
修正


可可「唐の一族、昔から神在哪里を守ってるヨ」

可可「産まれた時から神とは契約してマス。野球に使われるとは思ってなかったみたいデスケド」

凛(そりゃそうにゃ)

凛(けど神を降ろすなんて……そんな人智を越えた領域に、どう立ち向かって行けばいいの……?)

「……私の虎ボールが打たれるなんて」

可可「人間の出来る範囲の努力は、神の前では無力デス。残念ネ」

「……」ギリッ

実況『これで試合の行方は分からなくなってきました。2-3、結ヶ丘女子がリードを奪い返しました』

実況『続くバッターはこれまたホームランが怖い平安名すみれ』

すみれ「……可可さんに虎ボールが投げられたということは」

すみれ「私の時はあの虎ボールは投げられない! ギャラクシーなバッティングを見せてあげますよ」ブンブン

希(マズい……可可には僅かに劣るもこの選手もホームランをかなり打ってたんよな)

希(普段の球拾で太刀打ち出来るんか? 敬遠して、次のバッターを狙った方が……)

「……いけます。私が打ち取ってみせますよ」

希「いけるん? 相手は……」

「敬遠したところで次のバッターも怖いですからね。三振は難しいかもしれませんけど……」

すみれ「ふふんっ! カリスマを感じないわね!」

すみれ「三振に打ち取る、くらい言えなきゃギャラクシーなカリスマピッチャーにはなれないですよ!」

(なんだよギャラクシーなカリスマピッチャーって……)

693 :名無しで叶える物語:2020/09/15(火) 21:06:31.47 ID:EQq2RN2z.net
希(まずは外角低め一球外したにスローカーブで様子見……)

「……」コクッ

「らぁっ!」キュッ

ヒョロロッ

すみれ「……」

ヒョロロッ

すみれ「まだ……届かなっ……」ブンッ

スパァンッ!

審判「ストライッ!」

実況『お……遅いッ! あんまりに遅すぎます!』

実況『スピードガンの計測は……表示不能!? 70キロ以下ということでしょうか!?』

すみれ「な……70キロ以下ぁ!?」

希(確かに球拾のボールは遅い……けど、遅さも極めたら武器になるんよ)

694 :名無しで叶える物語:2020/09/15(火) 21:13:27.05 ID:EQq2RN2z.net
希(二球目は内角高めに同じ球を……)

「……ふっ!」キュッ

ヒョロロッ

すみれ「く……また遅い……」

すみれ「けど、もう目は慣れましたよ! ここっ……!」ブォンッ

キィンッ!

実況『おっと……いい当たりですが引っ張りすぎていますね。ファールです』

すみれ「……っ」

「ボールに比べてスイングスピードが早すぎるんですよ」

希(最後は同じところに……!)

すみれ「くっ……ギャラクシーな私の……」

ヒュオンッ!

すみれ「っ……! 速い……!?」

希(いや……全く速くはないんよ。ただ70キロ以下のスローカーブに慣れた目で見る、130キロのストレートは……)

希(かなり速いボールに錯覚してまうんよね。焦って早めに振れっ……!)

すみれ「……!」

695 :名無しで叶える物語:2020/09/15(火) 21:18:28.92 ID:EQq2RN2z.net
すみれ「ここっ!」ブォンッ

希「……! ドンピシャ!?」

ガギィィンッ!!

ヒュオンッ!!

「あ……」

凛(飛んでいく。白球が……さっきと同じ、信じられないほどの速度で客席目掛けて飛んでいくにゃ)

凛(また……ホームランだ)

実況『連続ホームランッ! 1回の裏、結ヶ丘打線が爆発していますッ! これで点差は2点に開きましたッ!』

穂乃果「2点……あのピッチャー相手に2点を追う試合かぁ……」

海未「厳しくなってきましたね……!」

「……ごめんなさい、私があの時敬遠に乗っていれば」

希「いや……結局同じことやったかもしれん。次のバッターも安定して安打打ってくるタイプやし……」

希「……」

希(駄目やな、予想以上や。打撃の勢いがつきすぎてる……!)

696 :名無しで叶える物語:2020/09/15(火) 21:28:48.92 ID:EQq2RN2z.net
凛(その後は……)

千砂都「打ち頃の球っすね!」ブォンッ

凛(6番、嵐千砂都がシングルヒットを打ち一塁に進み。続く7番ハロー・スリーに虎ボールを投げボテボテのゴロを打ちアウト、しかしその間に千砂都が進塁しツーアウト二塁)

凛(8番の外人、ハロー・『メアリー』・スーが二塁打を打ちそのうちに千砂都はホームイン……点差は3点に広がった)

凛(ハロー・スーは別に波浪一族でも何でもないただの外人らしい。一人だけ数字が中国読みでおかしいと思ったにゃ)

凛(そして、迎えるバッターは9番渋谷かのん)

かのん「1回で私まで出番が回ってくるなんてラッキーだね」

かのん「UTXの時はすぐに皆取られちゃって。中々回ってこなかったもん」

「UTX相手に13点も取っておいてよく言えますね……!」

かのん「他ではもっと取れてたからねぇ」

希(……渋谷かのんは投手やし、UTXの試合でも打者としては特に目立つところは無かった。強打が多いこの高校では平凡なバッターってところやな)

希(ただ打たれた場合、打者一巡で葉月恋に回る……一打席目は虎ボールにやられたとはいえ、彼女も中々のバッターや。下手をしたらまた打たれる流れに持っていかれるかもしれん)

希(何としてでもここで抑える……!)スッ

697 :名無しで叶える物語:2020/09/15(火) 22:10:53.21 ID:EQq2RN2z.net
「ぅらぁっ!」ヒュッ

キュオッ!

かのん「んっ!」ブォンッ

希(初球から振ってきた……! 打ち気にはやってる、というよりは)

キュルルッ

希(余り球を見ていない……?)

ボゴンッ!

実況『おっと、渋谷かのんボール球に手を出しました! 浅いフライがファースト目掛けふらふらと上がっていくぅ!』

穂乃果「よしっ! これでチェンジ……」

クイッ

穂乃果「……!?」

実況『おっと……ファースト高坂穂乃果、簡単なフライを取りこぼしました』

実況『しかし慌てて拾い直し、一塁はアウト。ようやくのチェンジです』

698 :名無しで叶える物語:2020/09/15(火) 22:15:58.76 ID:EQq2RN2z.net
真姫「何してるのよ、あんな簡単なフライを……」

絵里「浅いフライだからって気を抜いちゃ駄目よ!」

穂乃果「ち、違うんだよ!? あの子が打ったボール……私も信じられないんだけど」

穂乃果「グラブに入る直前に曲がったんだよ!?」

海未「……いやいや。何言ってるんですか」

海未「それはピッチングの話でしょう? 一度打った球が手元でくいくい変化されてはたまりませんよ」

花陽「外野に飛んできたら全部ヒットにされちゃうよ、そんなの」

穂乃果「本当なんだってぇ……」

ことり「次は海未ちゃんからだよね?」

海未「ええ……自身はありませんが、何とかあのボールに食らいついてみますよ」

実況『さぁ2回表、2-5……3点差を追う場面でバッターは6番園田海未。高校生弓道全国大会優勝という異例の経歴を持っています』

海未「ふぅ……」

かのん「へぇ……弓道やってるんだ」

699 :名無しで叶える物語:2020/09/15(火) 22:52:01.70 ID:EQq2RN2z.net
海未「そうですが……貴女も弓道を?」

かのん「ううん。興味はあるけどね」

かのん「私が気になったのは、何で弓道で全国を制したような人が野球やってるのかってこと」

かのん「何? 足りないの? 弓道でも野球でも全国行きたいってわけ?」

海未「……全国は行きたいですが。それだけが全てではありません」

海未「ただ、仲間を助けたい。だから今、ここにいるんです」


穂乃果「真姫ちゃんが身体を張ってお願いしたんだよねぇ」

ことり「あの頃の真姫ちゃん凄かったもんね。海未ちゃん勧誘するために土砂降りの雨の中、三日三晩道場の庭に正座してたって」

真姫「記憶ない時の私何やってんのよ」


かのん「ふうん。好きだよ、そういうの」

海未「破廉恥なことを言わないでください!? そんな、初対面なのに好きだなんて……!」

かのん「嫌いになってきたよ」

かのん「まぁ……何にせよ、私のボールは打てないと思うけど!」クイッ

700 :名無しで叶える物語:2020/09/15(火) 22:55:55.58 ID:EQq2RN2z.net
ヒュオンッ!!

海未(確かに速い……! その上)

クイッ

スパァンッ!

審判「ストライッ!」

海未(厄介な曲がり方をしますね。手元でクイッと曲がる……)

海未「……?」

かのん「このまま……何も出来ずに三振してもらうっ!」キュッ

ヒュオンッ!!

海未「……物は試し、ですか」

実況『なんだ……園田選手、腰を深く落としました。あのスタイルは……』

実況『牙突……?』

かのん「ふざけた真似を……! 何なのその構え!?」

海未「ふざけているかどうかは……!」

海未「すぐに分かりますよ!」ヒュッ

701 :名無しで叶える物語:2020/09/15(火) 23:11:29.14 ID:EQq2RN2z.net
海未(手元で曲がる……ならば、手元にまで来させなければいい)

海未(突きの要領で……飛んでくる前のボールを打ち落とすッ!)

かのん「当たるわけ無いでしょ……!」

海未(150キロで飛んでくる小さなボールを、バットの先端で突く。確かに難しいことですが……)

海未「忘れましたか、私は……」

海未「60m先の的の……中心に矢を射った女ですよ!」

海未(遠的に比べればこのくらいッ!)

コオンッ!!

かのん「……嘘ォ!?」

実況『し……信じられません! ビリヤードというか、フェンシングといいましょうか!』

実況『突きだされたバットに跳ね返され、鋭いライナー性の当たりが二塁の脇を抜けていきますッ!』

絵里「な……バットを突き出すなんて!」

希「野球を助っ人くらいでしか付き合ってこなかったから……だから出来る発想やな、あれは」

凛「考えても実行に移せるもんじゃないにゃ、あれ」

実況『センターがボールに追い付いた……が、園田選手既に二塁に到達しています! ツーベースヒット、変化する前に打つという見事な手法で鮮やかに塁を奪いました!』

702 :名無しで叶える物語:2020/09/15(火) 23:11:40.99 ID:EQq2RN2z.net
今日はここまで

703 :名無しで叶える物語:2020/09/16(水) 07:19:21.21 ID:kETPrGtu.net
さすが真姫ちゃんが全裸正座で勧誘した海未ちゃん

704 :名無しで叶える物語:2020/09/16(水) 08:18:45.25 ID:Osf1fTCq.net
球拾があまり報われてなくてつらい

705 :名無しで叶える物語:2020/09/16(水) 08:20:40.66 ID:eSfU1XaB.net
でも大半のメインキャラどころか下手すりゃ主役の凛ちゃんより目立ってるぞこのモブ

706 :名無しで叶える物語:2020/09/16(水) 08:37:53.44 ID:NKGABJZe.net
だんだん球拾がμ'sのメンバーだった気がしてきた

707 :名無しで叶える物語:2020/09/16(水) 19:05:19.94 ID:yLahdEOi.net
凛(続くかよちんも自信満々に打席に立ったものの)

花陽「私だって……!」

スパァンッ!

花陽「……は、速すぎるよぉ!」

凛(普通に三振してた。150キロの球なんて見たことないだろうししょうがないにゃ)

花陽「うぅ……ごめんねぇ、皆……」

凛「大丈夫にゃ。凛がかよちんの分も打つから」ポンッ

花陽「凛ちゃん……!」

凛(実際問題、3点差は厳しい……次の回はまた一番からだし)

凛(何としてでも点を取らなきゃいけない。出来ればリードを奪い返して……)

凛(……)

凛(凛太郎に頼ってホームランを……いやいや! 何考えてるにゃ!?)

凛「……問題ないにゃ。自力で打てる筈……!」

かのん(とりあえず三振一個……セカンドの子の突きには驚かされたけど)

かのん(流石にあれをやれる人間は少ないよね? この子も普通に構えてるし)

708 :名無しで叶える物語:2020/09/16(水) 19:10:55.31 ID:yLahdEOi.net
かのん「っし……いくよっ!」ヒュッ

ハォユォラッ!

凛(……ボール自体は見えてはいるけど)

凛(やっぱりどっちの方向に曲がるかまでは分からない。当てずっぽうでも振っていくしか……!)ブォンッ

キィンッ!

凛(……っ! 駄目にゃ、やっぱり芯をずらされる……!)

実況『ファールです。星空、苦い顔をしていますね』

実況『粘るつもりなのでしょうか? しかしピッチャーとして登板することを考えると体力を残しておきたいところではありますね』

凛(こっちだって残せるもんなら残したいけど……)

かのん「……っふ!」ヒュッ

キュオッ!

凛(そう簡単にはいかなさそうなんだもん! 仕方ないじゃん!)ブォンッ

709 :名無しで叶える物語:2020/09/16(水) 19:18:46.02 ID:yLahdEOi.net
スパァンッ!

凛「ッ……振り遅れたにゃ」

審判「ストライッ! ツー!」

実況『さぁ、星空選手追い込まれました。ツーストライク、ボールはありません』

実況『しかし、不思議と……今までの試合もそうなんですが、極端にボールが少ないような気がしますね。何ででしょうかね』

実況『わかんないや』

凛(ツーストライク……! 後一球、気を抜けばアウトカウントが一つ増える)

凛(凛の後ろは……球拾にゃ。少なくともバッティングが期待出来る選手じゃない)

凛(何とか穂乃果ちゃんに回せば可能性はある……出なきゃ。何としてでも塁に……!)

かのん「残念だけどさ、そんなに睨みつけても……」

かのん「何も変わらないよっ!」ヒュッ

凛(どっちに……どこに曲がるにゃ!? 観察しろ、観察しろ、観察……!)

710 :名無しで叶える物語:2020/09/16(水) 19:27:38.52 ID:yLahdEOi.net
スゥッ

凛(……にゃ?)

凛(何、これ……光が、道のように……)

スウウッ

凛(投げられた球がスローモーションのように、道を辿っていく……なんなの、これ)

凛太郎『君にしか見えない道が、目の前に広がってる筈だよ』

凛(……まさか、そういうことなの?)

凛(光の筋が辿る先は……)チラッ

凛「上斜め右方向に曲がる……!」ブォンッ!

かのん「当てずっぽうで何回振ったってまともに打てるわけ……!」

ガキィンッ!

かのん「……! 真芯で……捉えられた!?」

実況『打ちましたッ! 星空凛、鋭い当たりがレフトにぐんぐん伸びていきます!』

実況『入れば点差は1にまで縮まります! どうだっ! 入るか、入るのかぁ!』

凛「いける……あの角度なら確実に入るにゃ」ダッ

海未「これは……いけますね。やるじゃないですか、凛!」ダッ


恋「……」

711 :名無しで叶える物語:2020/09/16(水) 19:31:39.35 ID:yLahdEOi.net
穂乃果「おおっ! 凄い凄い、ホームランじゃん! ねぇねぇ真姫ちゃん!」

真姫「なによ、ハイタッチでもしたいの?」

穂乃果「しゃぶれよ」

絵里「……おかしいわね。ホームラン、ランナーが走って……何処かで見たことあるような」

希「絵里ち? どうしたんよ、難しい顔して」

絵里「……これって、まさか」

絵里「海未、戻って! 今すぐ二塁に戻りなさい!」


海未「え……?」ザッザッ


絵里「あのボールは……落ちるわ!」

凛「なーに言ってるにゃ、角度的に完全にホームランコース……」

実況『おっと……なんだ、ボールの勢いが……』

712 :名無しで叶える物語:2020/09/16(水) 19:45:33.78 ID:yLahdEOi.net
実況『どんどんボールの勢いが弱まっていきます! これはスタンドには入りませんッ!』

凛「な……ッ!」

実況『落下していくボールの下には既にレフト葉月恋が待っています! 今捕球し……二塁に投げましたッ!』

海未「くっ……あの状況から落下なんて有り得ませんよっ……!」

絵里「早く! 早く戻って! お願いッ!」

海未「既に凛がやられてツーアウト……ここで私までアウトになると0点……」

可可「これで……終わりネ!」パシッ!

海未「それだけはまずいッ……!」ザァッ!

実況『園田海未選手、必死の滑り込みィ! 間に合うのかぁ!』

海未「く……」

可可「……」

可可「たった1cm、たった1mm。ほんの僅かな差が……」

審判「アウトォッ! チェンジ!」

可可「全てを左右することもあるデスヨ」

海未「っ……」

713 :名無しで叶える物語:2020/09/16(水) 20:04:37.51 ID:yLahdEOi.net
穂乃果「そんな……間違いなくホームランコースだったのに」

絵里「おかしいと思ったのよ。あのUTXとの試合……綺羅ツバサのホームランボールが急に速度を落として、あのレフトに捕球されていた」

絵里「何らかの能力が使われたと見て間違いないわ」

花陽「それじゃあ、レフトに向けて打った球は……」

絵里「……ほぼ全て。あのレフトに捕球されると思って間違いない」

ことり「……参ったね」

ことり「あの厄介な曲がる球に加えて、ライトかセンターにしか打てない……」

凛「……皆、ごめん」トボトボ

絵里「凛が悪いんじゃないわ。むしろ……早めに知ることが出来て良かった」

絵里「さ……皆、守備につきましょ。これ以上点差を広げられたら厳しいわ」

714 :名無しで叶える物語:2020/09/16(水) 20:46:46.34 ID:yLahdEOi.net
実況『さぁこの回は一番葉月恋から始まります』

実況『前打席はショートゴロに抑えられましたが……』

恋「……」

「……」

実況『鋭い睨み合いです、バチバチと火花がなるような睨み合い……恐ろしいですね』

「……っらぁ!」クイッ

ヒュオンッ!

グオオッオッ!

実況『ピッチャー、やはりここは一球目から虎ボールで負担をかけていきます。対するバッター葉月選手は……』

恋「……上から叩いても駄目なら」

恋「すくい上げるっ……!」ブゥオンッ

実況『吼える虎に対し果敢なチャレンジです! アッパー気味に虎の顎を吹き飛ばしましたっ!』

恋「……っ重い!」

ヒュオォォォ

希「……っと!」パシッ

実況『ひょろりと上がったボールはキャッチャーフライになりました。やはり強いぞ虎ボール、唐可可以外には手が出ないのでしょうかッ!』

715 :名無しで叶える物語:2020/09/16(水) 20:46:57.17 ID:yLahdEOi.net
短いけどここまで

716 :名無しで叶える物語:2020/09/17(木) 01:36:10.34 ID:XouXRhPH.net
どれも人間離れしてるけど、ホームランじゃなくなる能力凄いw

717 :名無しで叶える物語:2020/09/17(木) 19:35:27.17 ID:jWn3YCzL.net
凛(しかし虎ボールを使えなくなった途端やはり打たれる)

凛(ハローワン、ハローツーに一回の焼き直しのように連打を浴び……)

可可「また二、三塁デスカ」

可可「どうせなら満塁ホームランを打ちたいデスネ」

ユラッ

希(龍が宿っている……この選手には勝ち目がない)

希(満塁にしてでもここは敬遠……ああ、でも次の平安名すみれもヤバい……!)

「……」

希「……」スッ

「希さん……!」

希(これでいい……真っ向勝負や)

希(どの道ここを打ち破れんかったら勝ち目はないんや、何とか頼むよ)

「任せる……ってことですか」

「……っらぁ!」キュッ

ヒュオォォォォンッ!!

718 :名無しで叶える物語:2020/09/17(木) 19:41:28.52 ID:jWn3YCzL.net
グゥオオオオッ!

実況『ボールが虎の像を作り上げるゥ! しかしバッターも……』

可可「一度敗れたボールに頼るようじゃ……駄目ヨ」

シャアアアアッ!

実況『青龍が唐可可の身体から出現しています! まさに龍虎大戦……妖怪大戦争です!』

(いけ……その喉元にッ!)

可可「叩き潰すネ、青龍ッ!」

(喰らいつけッ!)

グゥオオオオッ!!!

実況『虎が……龍の首に噛み付きましたッ! 神の喉笛を食い千切らんとしていますッ!』

実況『っ……! 立つのもやっとな程の風がここまで届いています! 物凄いオーラのぶつかり合いだ……!』

「いけるっ……!」

可可「……青龍、余り意地の悪いことをするもんじゃナイデス」

719 :名無しで叶える物語:2020/09/17(木) 19:45:56.78 ID:jWn3YCzL.net
青龍「ジラァァァァッ!!」ガシイッ!

「なッ……!」

絵里「白虎が……引き剥がされた!?」

花陽「牙が食い込んでいた筈なのにっ……!?」

青龍「ジャァァァァッ!」

花陽「首に怪我すらしてない……!? 魂の力が違いすぎる!」

「そんな……リディア! 逃げてぇっ!」

可可「遅いネ……神に楯突いたものは」

可可「煉獄で永遠の責苦を味わうがいいヨ!」

虎「グ……オォォォ!!」

青龍「ジガラァァァッ!!」

ズゥゥゥンッ!!

凛「っ……砂煙が……!」

凛「虎ボールは……!?」

720 :名無しで叶える物語:2020/09/17(木) 19:52:23.19 ID:jWn3YCzL.net
「……」

可可「……」

「……っ」ガクッ

凛「あ……ああ……!」

凛「ボールが……地面に転がってる……!」

実況『と……届きませんッ! 可可選手の放った青龍の力により、虎ボールが地面に叩きつけられていますッ!』

希「球拾……!?」ダッ

希「大丈夫か!? まさか、あんなに強大なモノを降ろしているなんて……!」

「……」

希「……球拾?」

「リディアが……虎の魂が、私の中から消えました」

「元々あれは私が『力』で支配した存在……より強大な力が現れた今、私に従う理由はありません」

「虎ボールは……もう、投げられません」

希「そんな……!」

721 :名無しで叶える物語:2020/09/17(木) 19:59:48.99 ID:jWn3YCzL.net
「何とか……何とか最後まで投げ切ります」ズキッ

「っ……!」

希「……」

希「なぁ……球拾、その腕……」

「腕……?」

「ぁ……」

実況『ぴ……ピッチャーの腕が……ぐちゃぐちゃにねじ曲がっています!』

「あぁぁぁぁっ……!?」

「折れ……わ、私の腕っ、ひいっ! 折れて……!」

希「お、落ち着いて! 暴れたら余計に……!」

可可「……人の身で神に危害を加えようとするならそうなるデス」

希「お前がやったんか!? あぁ……球拾、落ち着いて!」

「痛いぃ……! 痛いよぉ……!」

可可「私じゃなく青龍……といっても、呼んだのはクゥクゥですカラ。私がやったようなものですネ……」

凛「タンカを……と、とにかく医務室に運ばなきゃ!」

海未「急がなければ……! 恐らく骨が滅茶苦茶になっています! 繋がるかどうか……」

722 :名無しで叶える物語:2020/09/17(木) 20:05:49.97 ID:jWn3YCzL.net
「ぐぅ……! 駄目、です……!」グチ

凛「……! 球拾ちゃん……?」

希「何を言ってるんや!? こんな腕で……!」

可可「……」

「あんな化物をっ……うぐっ! 凛ちゃんやにこさんと戦わせるわけにはいきません……!」

「それに……っ! あれを倒せるのは……私だけです……!」

可可「……倒せないヨ。これは『能力』じゃない。『神』そのものなんだカラ」

希「……球拾」

絵里「駄目よ……部長としてそれは許可できない。腕が滅茶苦茶にネジ曲がっているのよ!? 今すぐ医務室に連れて行って治療をしなきゃ……!」

「……お願いします」

「どの道この腕じゃ……もう甲子園では投げられません」

「だから……お願いします」

絵里「甲子園とかそういう問題じゃないのよ! 日常生活すら出来なくなるかもしれな……」

希「分かった」

絵里「希……!」

723 :名無しで叶える物語:2020/09/17(木) 20:13:01.65 ID:jWn3YCzL.net
希「……いけるんやな、球拾」

「……はい」

実況『な……音ノ木坂ナイン、ピッチャーを変更しないようです! あの折れ曲がった腕で……まだ投げ続けるようですッ!』

可可「無茶ヨ……そんなことしたら、痛みで死ぬかもしれナイ」

審判「……一球投げて無理だと判断したら、強制退場させる」

審判「ここは戦場じゃないんだ……!」

「……死ぬ、かぁ。っう……!」ズキズキ

「……にこさんッ!」

にこ「……」

「貴女の変化球に憧れていました。本当は私じゃなく……貴女みたいな人がエースをやればよかったんです」

にこ「……かもしれないわね。けれど、今……音ノ木坂のエースはあんたよ」

にこ「自分で選んで、掴みとった道なんだから。誇りなさい」

「……凛!」

凛「にゃ……」ポロポロ

凛「あれ……涙が出てくるや。何でだろ……」

凛「何で……球拾ちゃんの道が見えない……」

724 :名無しで叶える物語:2020/09/17(木) 20:16:56.49 ID:QmWqMqmM.net
球拾…お前死ぬんか…?

725 :名無しで叶える物語:2020/09/17(木) 20:17:27.60 ID:bV/BgDee.net
もうこいつが主人公でいいよ…

726 :名無しで叶える物語:2020/09/17(木) 20:18:22.87 ID:jWn3YCzL.net
「……皆、凛の努力に惚れてここまで厳しい練習に耐えてこれたんです」

「これからの音ノ木坂を任せますよ……私に代わって、エースとして」

凛「球拾ちゃん……!」

凛「駄目にゃ……! 何か……凄く嫌な予感がする。投げちゃ駄目!」

「……」

希「……っ!」

希(何や……! 寒気がッ……!)

可可「……?」ゾクッ

可可「何デス、今のは……怯えて……?」

「……『人間』に『神』は破れない。そう言いましたよね」

可可「……ッ!」

「違いますよ。『神』ごときが……」キュオッ

ブチ……ボギィッ、メキッ……

「全力で生きた『人間』に勝てるわけないじゃないですかッ!」

ヒュオオォォォッ!

727 :名無しで叶える物語:2020/09/17(木) 20:24:23.00 ID:jWn3YCzL.net
可可「煙……? また性懲りもなく虎を……ッ!?」

可可「違う、これは……!」

実況『ボールが纏った魂は……虎ではありませんッ! 球拾選手の像を作り上げていますッッッ!』

実況『その手に持つは一振りの日本刀ッ! 一球入魂……文字通り、魂の篭ったボールに青龍が立ちふさがりますっ!』

ヒュオォォォォンッ!!

可可「ぐ……青龍ッ!」

青龍「ジラァァァァッ!!!」

ズガァァァンッ!!

希「っ……!」

可可「……」

可可「……青龍? 青龍……!?」

凛「や……やったの?」

希「……球拾」

希「ウチらの勝ちや……!」スッ

実況『青龍の首が……地面に転がっています! ボールは既にキャッチャー東條希の手に!』

審判「……ストライッ!!」

728 :名無しで叶える物語:2020/09/17(木) 20:32:55.63 ID:jWn3YCzL.net
可可「そんな……青龍が! 四神がたかが人間一人に殺されッ……!?」

絵里「やったじゃない球拾! あんな折れた手で……!」

「……」

海未「球拾……?」

実況『球拾選手、満身創痍といったところでしょうか。マウンドに倒れ伏したまま動きません……ナインが駆け寄っていきます』

希「球拾? なぁ、球拾……」

真姫「……タンカ! 早く医務室に……救急車も呼んでッ!」

真姫「息をしてない……!」

球拾 絶命

ーーーー

実況『球拾選手が緊急搬送されましたが……音ノ木坂ナイン、誰も付き添うことが出来ません』

実況『現時点で音ノ木坂野球部員は9人……誰か一人でも欠けたら最早野球は成立しないのです』

実況『ピッチャーは球拾選手に代わってライト、星空凛。ライトにはベンチから矢澤にこが入ります』

凛「……」

可可「……そんな馬鹿なことが。死んでまで青龍を……」ブツブツ

凛「何をブツブツ言ってるにゃ……! お前のせいで球拾ちゃんは……!」

729 :名無しで叶える物語:2020/09/17(木) 20:37:41.04 ID:jWn3YCzL.net
希「まだ分からん……! 病院で治療をすれば……!」

可可「……無駄ネ。私は青龍にぶつかって、砕け散るあの子の魂を見たヨ」

可可「一度魂が砕けたら……もう助かる術、ナイネ」

希「っ……」ギリッ

凛「……せめてお前を三振に取ってやるにゃ」

凛「命を使ってまで、厄介な青龍を破ってくれた……このチャンスを逃しはしない!」

可可「……青龍がいなくても。クゥクゥは強いヨ」

可可「『球拾は犬死にだった』って言わせてやるデス!」

凛「っ!」キュッ

凛(青龍はいない……それに)

凛「らぁっ!!」

ヒュゴオッ!!

730 :名無しで叶える物語:2020/09/17(木) 20:45:12.26 ID:jWn3YCzL.net
可可「ここっ……!?」ブォンッ

キュオッ

可可「フォークボール……!」

スパァンッ!

審判「ストライッ! ツー!」

凛(見える……本当に、目を凝らしたら完全に見えるにゃ)

凛(打者の死角……空振り、三振、凡打に導く道が光って見える!)

凛(次は外角の低めに……)

凛(ボール半分外れたストレート!)シュッ

クォォッ!!

可可「外角のストレートは得意ヨ……また一点貰うネッ!」

可可「……!」ブンッ

凛(青龍を殺され、見た目は平然としてるけど……頭はカッカ来てる。その状況で得意なコースに投げられ……)

凛(手を出すが、それがボールコースと気付き一瞬振るのが遅れて)

ボォンッ!

凛「……っと!」パシッ

凛「セカンっ!」シュッ

海未「はいっ! 穂乃果ッ」ヒュッ

穂乃果「……っと!」パシッ

審判「アウトッ! チェンジッッ!」

可可「ゲッツー……!? 何で……!」

凛(二塁ランナーはやや気がはやって飛び出し気味……それも、見えてたよ)

731 :名無しで叶える物語:2020/09/17(木) 20:51:13.74 ID:jWn3YCzL.net
希「……よし、ここから音ノ木坂の攻撃や」

穂乃果「……にこちゃんからだよね。球拾ちゃん、もういないし」

にこ「……」

にこ「……はぁ。嫌いなのよね、こういうの」

にこ「誰かの為にガンバルとか、誰かの犠牲をムダニシナイとか」

にこ「ただ、確かに。向こうのやり方は気に食わないわね」

実況『出ました……動かざる者矢澤にこ! ここまでの試合、ほぼ毎試合出ながらバットを振った回数実に二回! 三振率が高い選手ですが、バットを振れば確実にヒットを出す奇妙な選手です!』

にこ「ふぅ……」スッ

かのん「……あの、そっちのピッチャーのこと」

にこ「謝るんじゃないわよ」

かのん「……!」ビクッ

にこ「別にあんたのせいじゃない。それに、そっちの可可とかいう子だって……」

にこ「神を呼ばなきゃ勝てないと思ったからそうしただけ。それに対して球拾も、自分の命を使わなきゃ勝てないと思った」

にこ「だから、謝らなくていい」

かのん「……」

732 :名無しで叶える物語:2020/09/17(木) 20:52:37.42 ID:jWn3YCzL.net
今日はここまで

733 :名無しで叶える物語:2020/09/17(木) 20:57:36.20 ID:8dXyT5BU.net
>>720
ボーク消滅してなかったら一点取られてたという

734 :名無しで叶える物語:2020/09/17(木) 23:23:55.66 ID:bVpWrKbk.net
エタノールで目がつぶれても回復したんだから今回も復活してくれるよな、そうだと言ってくれ…

735 :名無しで叶える物語:2020/09/18(金) 07:26:38.42 ID:hmzBErWD.net
すまん「絶命」でワロタにゃ

736 :名無しで叶える物語:2020/09/18(金) 22:20:36.13 ID:ujmXwxhm.net
保守にゃ

737 :名無しで叶える物語:2020/09/19(土) 08:28:58.03 ID:Cj0B2Hk9.net
にゃ

738 :名無しで叶える物語:2020/09/19(土) 19:06:21.78 ID:niDQAuL1.net
かのん「……らぁっ!」キュッ

ヒュオォォォォ!!

にこ(……私には絵里や凛のように変化の方向を見極めるような目も)

にこ(真姫のように掠っただけの球をスタンドにぶちこめるような力もない)

にこ「なら……」ブォンッ

クイッ

ボグォンッ!

実況『矢澤、打ちましたァ! しかし打球はボテボテのゴロだぁ! ショートに向かって転がっていくゥ!』

千砂都「うわっ、こっちに……」

千砂都「っと……あぁ!」パンッ

絵里「弾いた! 急いで、にこ!」

千砂都「や、やば……急がないと間に合わないっす! ってああっ!」ポロッ

実況『焦りすぎました、ショート嵐千砂都ォ! 弾いた上に取り落としていますっ!』

実況『既に矢澤は一塁を踏んでいます! 矢澤、エラーに助けられました』

にこ(真正面からぶつかって、ミスを狙うしかない……!)

739 :名無しで叶える物語:2020/09/19(土) 19:16:12.31 ID:niDQAuL1.net
千砂都「ご、ごめんっす皆……」

可可「大丈夫ヨ。千砂都が初心者なことはみんな知ってるデスネ」

すみれ「そうよ、ミスは私がギャラクシーにカバーするから!」

実況『まだ余裕があります結ヶ丘ナイン……現在3点差、ノーアウト1塁の場面で一番高坂穂乃果』

穂乃果「うーん……」

穂乃果(実際のところ、どうなんだろ。あのボールはどう考えても私にも打てない)

穂乃果(ほとんどストライクに入れてくる投手だからフォアボールは期待できないし……)

穂乃果「全裸になって動揺を誘うとか……?」

かのん「……!?」

実況『おっと……何でしょうか、ピッチャー動揺しています』

かのん(全裸になるって言った……? いや、聞き間違いだよね)

かのん(野球の試合中に全裸になるわけないもん)

穂乃果「けど全裸になったら絵里ちゃんに叱られそうなんだよね……」

穂乃果「真姫ちゃんが神田を全裸一周してから、国から『音ノ木坂生は公衆の面前で全裸になってはならない』って書類来てたし」

かのん「……!!?」

かのん「西木野真姫ッ……!」チラッ

真姫「やめなさいよ穂乃果」

真姫「殺すわよ」

740 :名無しで叶える物語:2020/09/19(土) 19:22:20.85 ID:niDQAuL1.net
連休用事あって余り触れないので
隙見つけて短く刻んで更新していきますんで
連休終わってから纏めて読んでください

741 :名無しで叶える物語:2020/09/19(土) 19:48:42.18 ID:niDQAuL1.net
かのん(全裸の西木野真姫……)

かのん(全裸の西木野真姫ッ……!)

可可「まずいデスネ……かのんさんの集中が乱されていマス」

恋「恐らくは全裸の西木野真姫を想像しているのでしょう……破廉恥な」

かのん「違うッ!」

かのん「私は西木野真姫の全裸にも、目の前の高坂穂乃果の全裸にも興味を持ってはいない!」

かのん「ましてや貧乳の矢澤にこなら尚更興味がない!」

にこ「あ?」

穂乃果「真姫ちゃんも言うほどおっぱい無いよ?」

かのん「なッ……!」

かのん「……」チラッ

真姫「……」

かのん「バスト78……ッ!?」

かのん「っ……!」キュオッ

ヒュオォォ!

穂乃果(ボールの勢いが僅かに弱まった……!)

742 :名無しで叶える物語:2020/09/19(土) 19:54:58.34 ID:niDQAuL1.net
穂乃果(彼女達は強い……確かに才能があるのかもしれない)

穂乃果(けれど試合を余りこなしていないせいで揺さぶりに弱いんだ)

穂乃果(試合中に全裸の話をされたくらいで動揺する野球選手はいないッ!)ブォンッ

クイッ

穂乃果(曲がる……けど、この勢いなら無理やりッ!)

ガギィンッ!!

穂乃果(内野の頭を超えられるッ!)

実況『打ちました高坂穂乃果ッ! 手元で曲がるボールをうまく捉え、セカンドの頭を超えセンター前ヒットォ!』

実況『センターハロー・スリー選手二塁にボールを投げるもセーフです!』

「間に合わなかったでやんす」

「気にするなでやんす、スリー」

「そうでやんすよ、スリー」

絵里(……ノーアウト一塁二塁の状態でもまだ余裕? 得点圏に入っているのに)

絵里(点を取られても問題ないと思っている……? それ以上に取り返せる自信があるのね)

743 :名無しで叶える物語:2020/09/19(土) 20:22:03.17 ID:niDQAuL1.net
可可(……とでも思ってるんだろうケド)

かのん(実際のところ結構ヤバいんだよね……)

かのん(既に相手は……自分なりに、私のボールに打ち勝つ方法を編み出してきてる)

かのん(UTXの時もそうだった。後半にじわじわと点を伸ばされて……)

可可(その上、クゥクゥの青龍もいなくなってしまった)

可可(素である程度は打てるし、すみれさんもいるトハいえ……)

可可(厳しくなってきたことには変わりない。何とか点差を縮めないようにしナイト)

実況『さぁ続く二番絢瀬絵里。一打席目はゆるいフライをショートが取り落とすエラーで出塁しました』

実況『積極的に打ってくるタイプですので、投手にとっても厄介な相手でしょう!』

絵里(何とか一塁、出来れば二塁打を打ってにこをホームに返したい……とはいえ)

絵里(『目』は……)チラッ

千砂都「……」

絵里(あの子に取られる)

744 :名無しで叶える物語:2020/09/19(土) 23:00:05.24 ID:3WZ7ssvy.net
はい

745 :名無しで叶える物語:2020/09/19(土) 23:58:15.42 ID:niDQAuL1.net
絵里(けれど『目』を凝らさなければ、そもそもボールを捉えられない)

絵里(まずいわね……)

かのん「これ以上ランナーは出さない……!」キュッ

ヒュオォォォォンッ!!

絵里(やっぱり速い……! ただでさえ速いのに)

クイッ

絵里「ッ……!」ブォンッ

スパァンッ!

審判「ストライッ!」

絵里(捉え切れない……!)

かのん「これで一球……カウントを進めて……っ!」キュッ

ヒュオォォォォンッ!

絵里(取られるの覚悟で『目』を凝らすしかないの……!?)

絵里(少なくとも何処に着弾するかまでのラインは見える。そこからは……)

絵里(32分の1の真芯を狙う!)キュイィィィィ

かのん「……」

絵里(内角よりのほぼ真ん中……146キロで進んでいる。ここまではオーケー)

絵里(後は……)キュイ…

絵里(取られて、ぼやける。球が曲がるのは後一拍置いて……)

絵里(ここ!)ブォンッ

746 :名無しで叶える物語:2020/09/20(日) 21:55:53.41 ID:wKKxwlOv.net
どうなる

747 :名無しで叶える物語:2020/09/21(月) 01:29:18.34 ID:WFxA+aSz.net
にゃ

748 :名無しで叶える物語:2020/09/21(月) 08:50:49.58 ID:SZvfl27u.net
クイッ

絵里(私が狙うのは……私達が目指すは優勝!)

絵里(だから……『上』よ!)

絵里「……らぁっ!」

カキィィィンッ!!

絵里「……!」

かのん「……嘘」

かのん「真芯でっ……!」

実況『打った、打ちました!! やりました絢瀬絵里、ついに……』

実況『ついに真芯でボールを捉えましたッ! ボールはぐんぐんと伸びていき……!』

「は……入るなでやんすっ!」

可可(まずい……レフトに流れてくれたら良かったノニ! ライト方向は……!)

実況『フェンス激突ぅ! ホームランには僅かに足りませんッ! しかし既にランナーは三塁を回っていますッ!』

絵里「よし……ッ!」

749 :名無しで叶える物語:2020/09/21(月) 13:43:44.73 ID:1eusQnxV.net
野球はじまったな

750 :名無しで叶える物語:2020/09/22(火) 00:01:49.70 ID:1FLOGvpO.net
にゃ

751 :名無しで叶える物語:2020/09/22(火) 18:01:32.57 ID:ktK8npge.net
にゃ

752 :名無しで叶える物語:2020/09/22(火) 22:11:23.63 ID:p050UAQB.net
実況『今二塁ランナーホームイン! ツー選手、三塁に投球しますが……』

穂乃果「間に合うっ……!」ダダダッ

実況『一塁ランナー高坂選手は既に三塁を回っているゥ! 転々と転がるボールにショート平安名選手がカバーに入りますっ!』

すみれ「三塁にそもそも届いてない……! ギャラクシーじゃない肩ねっ!」シュッ

「そう言われてもオイラも必死でやんす……」

穂乃果「っ……!」ザーッ!

「……!」パシッ

実況『ヘッドスライディングっ……! しかしカバーに入った平安名選手の送球も速かった!』

実況『これは……!』

審判「……」

穂乃果「……間に合ったよ!」パッ

実況『高坂選手の高々と上げた手に……捕手ハロー・スー選手がつけたスパイクの傷があります! だらだらと流れ落ちる血液が全てを物語っていますっ!』

審判「セーフッ!!」

753 :名無しで叶える物語:2020/09/22(火) 22:17:04.99 ID:p050UAQB.net
実況『これで4-5。音ノ木坂学院、何とか点差を縮めました……おっとぉ!?』

「……!」シュッ

かのん「うわっ!?」パシッ

かのん「あ、危なっ! 何であんな速い球……」

可可「違うネ! こっちにボールを寄越すヨ!」

かのん「へ……?」ヒュッ

かのん「あぁっ!?」

実況『皆がホームに気を取られている間に、絢瀬選手一塁を蹴り二塁に進んでいますっ!』

絵里「……!」ダダッ

実況『捕手が刺そうと投げた球を投手が取ってしまった……ある意味エラーと言いますか……』

実況『絢瀬選手、二塁セーフです。これは俄然勝負が分からなくなってきました!』

754 :名無しで叶える物語:2020/09/22(火) 22:23:49.10 ID:p050UAQB.net
凛(けれど続く希ちゃんはサードへのボテボテのゴロでアウトを取られ)

凛(4番、真姫ちゃんがイキってホームラン予告をした直後に、誤ってレフトにホームランのなりそこないフライを打ちツーアウト。タッチアップで絵里ちゃんは三塁に進んだ)

凛(そして5番……)

実況『ツーアウト三塁、一点差を追う音ノ木坂としてはここはどうしても打っておきたいところです』

実況『この場面で5番、南ことりがバッターボックスに入ります! 今度はぬいぐるみ化はしておりませんっ!』

ことり「ふぅ……やっと落ちついてきたよ」

かのん「もうあのぬいぐるみにはならないの……?」

ことり「うーんと、ね。あのぬいぐるみってテンション上がらないと慣れないんだ」

ことり「だから今は、普通のことりがお相手しちゃいますっ」

かのん(良かった……あんなわけわからない形態で戦われたら、調子狂っちゃうよ)

かのん(ぬいぐるみだとバット絶対振ってくるから、アウトは取りやすかったけどね)

755 :名無しで叶える物語:2020/09/22(火) 22:26:06.56 ID:sLqA1hKj.net
真姫ちゃん!?

756 :名無しで叶える物語:2020/09/22(火) 22:28:40.77 ID:p050UAQB.net
かのん(ストライクゾーンは通常通りだし……問題なし!)

かのん「やぁっ!」ヒュッ

キュォォォッ!

ことり「……」

スパァンッ!

審判「ボールッ!」

かのん(……あれ、ずれてたかな。もう少し調整して、真ん中に寄せて……)

かのん(上手い具合にカウントを進めてチェンジさせてもらうよ!)

かのん「らぁっ!」ヒュッ

ヒュオォォォォンッ!!

ことり「……んっ」グッ

ことり「ここっ!」ブォォンッ!!

かのん(んなっ……何っつう大振り! やたらめったらじゃん、そんなんで当たるわけが……)

ガキィィィィンッ!

かのん「……あれ?」

757 :名無しで叶える物語:2020/09/22(火) 22:39:08.87 ID:p050UAQB.net
ことり「……やったぁ♡」

実況『南、打ちましたァ! 南を甲子園に連れてって、ならぬ南が甲子園に連れて行く一打か!?』

千砂都(力だけで無理やり長打にしてきたっす!? あの子も西木野真姫並のパワーを持ってるんすか!?)

千砂都(けど残念っすね、そこは……)

実況『しかし打球はレフト方向に飛んでいきますっ! 今まで数多の選手がホームランを失敗した魔のレフト、今回はどうなるかァ!?』

恋「……!」キィンッ

恋(無駄です……私の能力の前では、ホームランなど夢のまた夢!)

恋(レフト方向に打たれたホームランボールの……)

恋(……運動エネルギーを消失させる力っ!)キュォォォッ!

可可「味方ながら恐ろしい能力ネ。レフト方向だけという限定条件があるとはイエ……」

千沙都「ボールの運動エネルギーを消失させ無理やり静止し、ただの深いフライにする。分かっていても対処できないっすよ」

恋(さぁ落ちてきてください……私の手の中にっ!)

ユラッ

恋(……? 落ちて、こない?)

758 :名無しで叶える物語:2020/09/22(火) 22:50:40.05 ID:p050UAQB.net
恋「何で……っ!」

実況『おや……レフト方向に向かっていたボールが……』

グイッ!

実況『く、空中で大きく曲がりました! レフトに向かっていた筈のボールがぐんぐんとライト方向へ……!』

恋「なっ……!」

恋「これは……スライス……!?」

ことり(ゴルフの番組を見てる時に思いついたんだよね、これ)

ことり(練習しておいて良かったよ)ダッ

可可「……っ! ツー、何とか取るデス!」

可可「曲がることにエネルギーを使った分、ホームランには足りないヨ! 下がって、もっと……!」

「そ、そう言われても……あぁっ!」

実況『必死に下がるツー選手の健闘虚しく、ボールは頭を越えその先へ転がっていくゥ! これはいけません!』

絵里「……っと! これで同点ね」タッ

実況『絢瀬選手、今ホームインですっ! 同点、無事同点に追いつきましたっ! ツー選手、何とか追いつきセカンドへ送球ーっ!』

ことり(間に合う……二塁で止まって、次の海未ちゃんはあの打ち方でヒットを取れるから、それを狙って追加点をっ!)

759 :名無しで叶える物語:2020/09/22(火) 22:56:06.57 ID:p050UAQB.net
可可「これだけは嫌だったケド……仕方ないネ!」グオッ

ことり「っ!?」

ことり(何なの……? 今にも地面を転がりそうだった弱い送球が)

ことり(可可ちゃんに引き寄せられるように速く……!?)

ことり「や、やばいよっ!」ダッ

可可「遅いヨ!」パシッ

ことり「っ!」

可可「タッチアウト……チェンジヨ。いいボールを打ったのに残念だったネ」

ことり「な、なんであんなに……間違いなくボールは遅かった筈なのに」

可可「神の力ダヨ。ご加護のお陰であんなに……」

ことり「……神? 青龍は球拾ちゃんが殺した筈じゃ……」

可可「……青龍。そう聞いて、誰も疑問に思わなかったノ?」

可可「青龍がいるなら当然……他の四神もいるッテサ」

760 :名無しで叶える物語:2020/09/22(火) 23:01:35.02 ID:p050UAQB.net
ことり「他の……神!? そんな……!?」

可可「今、クゥクゥが呼び出したのは玄武ネ。クゥクゥの身体には玄武の加護が宿ってるヨ」

可可「……一日に二回も神を呼び出した代償に。寿命を半分持っていかれたケドネ」

ことり「寿命を……?」

可可「……持って行かれた。私は生きられても後二十年、長くても三十年程度ヨ」

ことり「……っ!」

ことり(そこまでこの一戦にかけて……!?)

ことり(正直今まで何処かで……新設校で、守備の練習もろくにしていないみたいだから『彼女達は遊びでやっている』って意識があった)

ことり(けど……寿命の半分なんて。そんな代償を払ってまで甲子園に行きたいなんてっ……!)

ことり「……」

審判「チェンジっ!」

761 :名無しで叶える物語:2020/09/22(火) 23:01:46.00 ID:p050UAQB.net
今日はここまで

762 :名無しで叶える物語:2020/09/23(水) 01:15:28.77 ID:azTKizqi.net
寿命どころか死んでる人もいるんですよことり

763 :名無しで叶える物語:2020/09/23(水) 02:27:50.87 ID:iDgctvf/.net
30年も生きれればここだと十分ぽい

764 :名無しで叶える物語:2020/09/23(水) 13:16:31.35 ID:iDgctvf/.net
保守

765 :名無しで叶える物語:2020/09/23(水) 20:14:50.05 ID:j7Ysaxda.net
保守

766 :名無しで叶える物語:2020/09/23(水) 22:07:06.35 ID:969HRW/w.net
ーーーヨッシャヨッシャワッショイーーー

ことり「……」

絵里「気にしないでいいのよ、ことり。まさか神を二度も顕現させるなんて……」

ことり「そうじゃないの……何て言うのかな」

ことり「向こうはきっと何かの事情があって、甲子園に行きたいと思ってる」

ことり「私達に、そこに食い下がる程の理由があるのかなって……」

凛「それは……」

凛(ある。とは言い切れない)

凛(凛は確かに甲子園に行きたいけれど……まだ来年も再来年もある。厳しい練習をして、仲間を失ってまで甲子園を目指すほどの大義名分はないにゃ)

絵里「……」

絵里「……あるわよ。『甲子園で戦いたい』」

絵里「高校球児にそれ以外の理由はいらないの」

ことり「……それは、そうだけど」

767 :名無しで叶える物語:2020/09/23(水) 22:13:03.85 ID:969HRW/w.net
ことり「虹ヶ咲は『廃部』をかけて戦うって言ってた」

ことり「結ヶ丘も何かの為に必死で抗ってる」

ことり「私達は」ズキッ

ことり「っ!? 痛っ……!」

海未「ことり!? どうしたんですか!?」

ことり「……あれ? 一瞬凄く頭が痛くなって……」

ことり「なんでもない。気のせいかな……よし、守備も頑張ろっ!」

絵里「え、えぇ。細かいことは気にしないで、今は目の前の試合に集中しましょ」

希「……?」

希(なんや? 一瞬……ことりちゃんに霊的なものを感じたような)

希(甲子園の魔物ってやつかな……?)

768 :名無しで叶える物語:2020/09/23(水) 22:21:31.00 ID:969HRW/w.net
実況『3回裏、5-5の同点の場面でバッターは5番平安名すみれ。彼女も4番可可選手と同じくホームランをよく打つ選手ですので、音ノ木坂としては不安なところでしょうか』

すみれ「……」キッ

凛(めっちゃ睨まれてるにゃ……)

すみれ「確かに、そちらのピッチャーが死んだのはうちのクゥクゥのせいです」

すみれ「けど……クゥクゥの寿命を半分にしたことは許さない! ギャラクシーに許しませんよっ……!」メラメラ

凛「そんなの知らないし! そっちが勝手に二回も神様呼んだんじゃん!」

凛「……ギャラクシーだかなんだか知らないけど、ホームランは打たせないにゃ」

すみれ「……」グイッ

凛(死角は……えっ?)

凛(ど真ん中のストレート!? 岩鬼じゃあるまいし、そんなところが死角になるわけないよ!)

凛(けど……光の道がど真ん中に真っ直ぐ伸びてる。どういうこと……?)

769 :名無しで叶える物語:2020/09/23(水) 22:26:46.84 ID:969HRW/w.net
凛(……ええい、もう! 信じていいんだよね……!?)

凛「にゃっ!」キュッ

ヒュオォォォ!

実況『星空選手、初球はど真ん中へストレート……すっぽぬけたわけでもありません! そんなところに何故……!?』

実況『キャッチャーが指示を出した訳でもなさそうです。意表を突こうとしているのかァ!』

凛(凛の方が聞きたいよ!)

ヒュオォォォ!

希(……凛ちゃんもかーなり速くなったなぁ。昔のひょろひょろ球から考えたらだいぶ成長してるやん)

希(とはいえ140キロに満たない程度のスピードでど真ん中。凛ちゃんの場合は、球種から何から任せてるとはいえ……)

希(ちょっと厳しいんじゃないかな……?)

すみれ「……」グッ

凛(目線は……普通にボールを追ってる。本当に死角なの……?)

770 :名無しで叶える物語:2020/09/23(水) 22:34:07.82 ID:969HRW/w.net
ブワァッ

凛「……にゃっ!?」

凛「道がっ……! ずれた!?」

すみれ「んーっ……ギャラクシーッ!!」ブォォンッ!

カキィィィンッ!!

実況『す……鋭い一撃がボールを襲うゥ! 平安名すみれ、打ちましたッ! ぐんぐん伸びた打球はライト方向へ……速度が落ちません! 客席にボールが突き刺さったぁ!!』

実況『ホームラン、ホームランですっ! ギャラクシー平安名、まさにギャラクシーな打力を見せましたっ!』

凛「な……なんで!? 光の道は間違いなく……!」

すみれ「クゥクゥさんが言っていたんですよ。貴女の能力は『死角を突く』ものだって」

すみれ「カリスマな私は、意図的に『真ん中のストレート』以外の全てを警戒することでギャラクシーな死角を作り上げた……」

すみれ「相性が悪かったみたいね。この球場の中で、平安名すみれに打たれる権利をあげる」タッタッタッ

希(死角を意図的にずらした……!? さらっと言ってるけどとんでもないことやん……!)

凛(光の道にそんな弱点が……? け、けど)

凛「死角をずらせるのはあの子だけ、そう考えて投げるしかないにゃ……!」

771 :名無しで叶える物語:2020/09/23(水) 22:44:18.16 ID:969HRW/w.net
凛(凛の考えどおり、死角をずらすというのは中々難しいみたいで。6番嵐千砂都、7番ハロースリー、8番ハロースーは光の道に従って、死角を突くことで問題なく三振させることに成功したにゃ)

凛(けれど相手投手渋谷かのんも、回を経るごとに調子が上がっていったのか……4回表は6番海未ちゃんがヒットを打ったもののかよちん、凛、にこちゃんはセカンド唐可可に翻弄され凡退)

凛(4回裏、5回表、5回裏とお互い三振合戦となり、0点のスコアだけがボードに並んでいく……)

凛(一点を返そうにも並のバッティングでは、手元で曲がるボールで凡退や三振に切って取られ)

凛(長打を打とうとしてもレフトは封殺、センター方向も玄武を宿した可可ちゃんが異常な守備力を見せアウトにする……)

凛「ヤバいにゃ……」

凛(5回裏が終わった時点でまだ5-6。次のバッターは真姫ちゃんなんだけど)

凛(真姫ちゃんがホームラン予告をした瞬間、思わずそう声が出た)

穂乃果「ヤバいね……真姫ちゃんがホームラン予告をしたあとの出塁率は0だよ」

絵里「何でホームラン予告なんか……っ!」

772 :名無しで叶える物語:2020/09/23(水) 22:51:09.36 ID:969HRW/w.net
実況『出ました、西木野真姫のホームラン予告です』

実況『次のバッター、南ことり選手に期待しましょう』

真姫「なんでよ!? 最初にきっちりホームラン打ったじゃない!?」

かのん(冗談めかしてはいるけど……ホームランを打たれる可能性は実際高いんだよね)

かのん(前打席もたまたまレフトに飛んだから良かったようなものの、あれがセンターかライトに飛んでいたら間違いなくやられていた)

真姫「何よ皆……たまには普通に応援したり褒めてくれたっていいのに……」ブツブツ

かのん(私のコントロールは良くない……なるべくレフト方向に飛ぶように少しでも外角へボールをやらないと)

かのん「っらぁ!」キュオッ

ヒュオォォォ!

真姫「……」ピクッ

スパァンッ!

審判「ボールッ!」

かのん(狙うと外れる……! 敬遠策を取るべき? だけど次のバッターも……)チラッ

ことり「……」

かのん(長打に無理やり持っていくパワーがある。二塁打はクゥクゥちゃんが阻止出来るけど……西木野真姫がどのくらい走れるかは未知数)

773 :名無しで叶える物語:2020/09/23(水) 22:57:41.87 ID:969HRW/w.net
かのん(真っ向から抑えて、塁に出さない他に手はない!)

かのん(6回表だし……ここさえ抑えれば次に西木野真姫に回るのは上手く行けば9回表、下位打線は抑えやすいから早くても8回)

かのん(そこまでに少しでも追加点を取ることが出来れば脅威は無くなる……!)

かのん「ここっ……!」クイッ

ヒュオォォォォンッ!!

「……」

かのん(やったっ! 狙い通りの外角……!)

かのん(これでライト方向には狙いにくくなる、何とかレフト方向に飛んでっ……!)

可可「……! まずい、玄武ッ!」

かのん「っ!?」

玄武「ブラォォォッ!!」ズゥゥンッ!

かのん(打つ前から玄武を顕現させた……!? 一体何が……!)

真姫「外角ギリギリをつけば引っ張れないと思った?」

真姫「悪いけど……」スッ


凛「バットを更に長く持ち直した……!?」


真姫「無理やりにでも、ライト方向に打たせてもらうわっ!」ブォォォッ!!

ガキィィィィンッ!!!

実況『な……打ちましたッ! 西木野選手、外角の球をバットを長く持ち無理やり引っ張っていますッ!』

774 :名無しで叶える物語:2020/09/23(水) 23:06:57.46 ID:969HRW/w.net
実況『しかしセカンド可可選手の反応も早いっ! いち早く玄武を顕現し、ライト方向に向かっていますッ!』

玄武「ブライィィィ!」ドォンッ

可可(玄武の能力は『近くの物を引き付ける』ことネ。何とかライトに間に合いさえすれば……!)

キュォォォッ!!

可可「間に合えッ……!」

玄武「ルイイイイッ!」ヒュウウウウッ!

実況『玄武、必死にボールに向かって吸い込みます……! 間に合うのか、入ってしまうのかっ……!』

可可(同点はまずい……! あの星空という投手からは、すみれ以外はほぼ安打を望めない!)

可可「間に合えええッ!!」

玄武「……ブォ」

タァァンッ!!

可可「あ……」

実況『僅かに……僅かに間に合いません! 今、西木野真姫の打ったボールがスタンドに収まりましたッ! 信じられません、まさかホームラン予告が成功するとはッ!』

真姫「残念だったわね。たった1cm、たった1mmの僅かな差が……」

真姫「全てを左右することもあるのよ」タッタッタッ

実況『これで6-6。音ノ木坂、またも同点に追いつきましたッ!』

775 :名無しで叶える物語:2020/09/23(水) 23:07:11.22 ID:969HRW/w.net
今日はここまで

776 :名無しで叶える物語:2020/09/23(水) 23:08:25.93 ID:KqMgYM7Q.net
まきちゃん〉神

777 :名無しで叶える物語:2020/09/23(水) 23:09:09.74 ID:DAqR429a.net
ただのすごい選手のくせに神を凌駕してる…

778 :名無しで叶える物語:2020/09/23(水) 23:12:11.67 ID:B2EWKV8h.net
もしかして真姫ちゃんってすごい選手だった?

779 :名無しで叶える物語:2020/09/24(木) 02:21:38.61 ID:+qkvcEtP.net
まきちゃん

780 :名無しで叶える物語:2020/09/24(木) 22:17:45.90 ID:vHNAl3/p.net
まきちゃん

781 :名無しで叶える物語:2020/09/25(金) 18:01:47.78 ID:kNPNls0Q.net
保守にゃ

782 :名無しで叶える物語:2020/09/25(金) 21:25:00.75 ID:VXS+3CZg.net
更新明日になります

783 :名無しで叶える物語:2020/09/26(土) 13:41:01.65 ID:4ntodZKt.net
頼むぞ

784 :名無しで叶える物語:2020/09/26(土) 18:19:55.35 ID:Kozi7TKK.net
ことり「よ、よしっ! 私も……」ブォンッ

ポコンッ

ことり「あぁっ!」

絵里(ことりの大振りは当たると大きいんだけど、やたらめったらだからずれすぎて凡打になりやすいのよね……)

ことり「あわっ! あわわっ!」タタタ

ことり「『ぶる〜べりぃとれいん』!」

ポワァ

「なんか甘くて酸っぱい匂いがするでやんす」パシッ

審判「アウトッ!」

ことり「あわわわっ!?」

実況『ブルーベリーの香りがスタジアムに漂っています。心が落ち着きますね』

実況『特に素早くなるわけでもなく、ブルーベリーの香りがするだけのようですね。さて、1アウトランナー無しの場面でバッターは園田海未』

ことり「うう……ごめんね海未ちゃん、塁に出ておきたかったのに」

海未「大丈夫ですよ、ことり。ブルーベリーのとてもいい香りがします」

海未「二度と使わないでください」

ことり「うぇぇん……ゆぇぇぇん……」トボトボ

785 :名無しで叶える物語:2020/09/26(土) 18:26:44.98 ID:Kozi7TKK.net
海未(さて……1アウトですか)

海未(私が塁に出られる可能性は、玄武に飛ばない限りほぼ100パーセント。しかし……)

海未「シングルヒット以上は望めない」

海未(私が出塁したところで続くバッターは凛、そして花陽……どちらもバッターとしての実力は低い)

海未(花陽も努力はしているのですが……まだ球を満足に追えているとは言い難い)

海未(となると……また、私が残塁したままアウトになる可能性が高い)

かのん「……ふっ!」キュオッ

ヒュオォォォォンッ!

海未「……」

スパァンッ!

審判「ストライッ!」

実況『園田選手、一球見送りました。例の構えをしておりませんが……今度は普通に打ってくるのでしょうか』

かのん(……突いてこない?)

786 :名無しで叶える物語:2020/09/26(土) 18:35:23.19 ID:Kozi7TKK.net
かのん(普通に打ってくれるなら、打ち取るチャンスは広がる……それは分かってる筈だけど)

かのん(ま……後続のバッターが連続で凡打に抑えられてるんだから、シングルヒットしか狙えないあれでいくのは厳しいか)

かのん「……やっ!」

ヒュオォォォォンッ!!

海未「っ……」

スパァンッ

審判「ストライッ! ツー!」

実況

787 :名無しで叶える物語:2020/09/26(土) 18:46:05.06 ID:Kozi7TKK.net
実況『二打目も振ってきません! どうした園田海未、微動だにしませんっ!』

かのん(試合を諦めた? いや……)

海未「……」

かのん(何とかして長打にしようと模索してる? させないっ……!)

かのん(考える時間を与えるな……っ!)

かのん「……らぁっ!」キュオッ

海未「っ!」

ヒュオォォォォンッ

海未(駄目です……! 何も、何も思い付かない……!)

海未(今から突きに……間に合わない! くっ……!)ブォンッ

かのん「いける……打ち取った!」

海未(どっちに曲がる……!? どっちに……)

海未「……!?」

カキィィィンッ!

かのん「……! なっ……!?」

788 :名無しで叶える物語:2020/09/26(土) 18:55:44.22 ID:Kozi7TKK.net
海未「曲がらない……!? よしっ……!」ダッ

実況『真芯で捉えたァァッ! ボールは左中間を割って転がっていくゥ! これは長打コースですっ!』

かのん「なんで……!?」

恋「く……」

実況『レフト葉月追い縋るが……今、ボールがフェンスにぶつかりましたッ!』

恋(まずい……! 今までのバッティングのせいで……前進守備気味になっていたのに!)

恋「っう……!」パシッ ヒュッ

可可「恋ッ! こっちね……!」

実況『今、ボールがセカンドに投げられました! 速いッ! 玄武の吸い込みとレフト葉月の肩が合わさって160キロ級のボールが真っ直ぐにセカンドに向かっていますッ!』

可可(間に合……)

海未「……届けぇっ!」バッ

実況『園田海未が飛んだァッ! 同時にボールは唐可可の手にッ! どうだっ! 間に合ったのかッ!?』

可可「……」

審判「……」

審判「セーフッ!」

可可「……くうっ!」

海未「……」ハァハァ

実況『間に合いましたァッ! 園田選手、意地の走りで二塁セーフッ! 音ノ木坂、追加点のランナーを得ました!』

789 :名無しで叶える物語:2020/09/26(土) 19:07:46.41 ID:Kozi7TKK.net
海未「よ、よかった……はぁ……はぁ……」

可可「まさか打たれるとは思わなかったデス。凄い走りでシタ」

海未「それはどうも……」

海未(しかし……)

海未(渋谷かのんのボールは手元で曲がる筈なのに……先程の一投は全く曲がらなかった)

海未(曲がるボールに曲がらないという選択肢が増えた? ……あるいは)

実況『続くバッターは7番星空凛。主人公なのに余りいいところがありません』

凛「うるせぇ」

凛(……かよちんは恐らく打てない。何とかして凛が海未ちゃんをホームに返さなきゃ)

凛(というか次の回からピッチャーにこちゃんに交代だし……ここで活躍しておかなきゃ、これ球拾と真姫ちゃん主役じゃね? 何でタイトルに凛ちゃんいるのwwwってなるにゃ)

凛「よしっ……!」

実況『並々ならぬ気迫を感じます、星空選手。ここは是非とも打っておきたいところですが……』

かのん「……ッ」ギリッ

かのん(おかしい……何なの、さっきの球。いつもと同じように投げた筈なのに)

かのん(全く曲がらなかった……!)

790 :名無しで叶える物語:2020/09/26(土) 19:14:04.77 ID:Kozi7TKK.net
かのん(偶然……? 偶然だよね、きっと……)

かのん「……っらぁ!」キュオッ

ヒュオォォォォンッ!

凛「やっぱり速い……にゃっ!」ブォンッ!

クイッ

ボコォッ

審判「……ファール!」

凛(スピードには慣れてきてるけど、やっぱりあの曲がりに対応できない……!)

かのん「なんだ……やっぱり曲がんじゃん、へへ……」

かのん「さっきのは偶然……二度目はないよっ!」キュオッ

ヒュオォォォォンッ!

凛「……っにゃ!」ブォンッ

凛(曲がる方向は……って、あれ?)

かのん「……!」

カキィィィンッ!!

凛(曲がら……なかった?)

791 :名無しで叶える物語:2020/09/26(土) 19:23:07.72 ID:Kozi7TKK.net
ラブライブで1レスで分かる山月記(翻案)

にこ「私は天才にこ。妻の真姫ちゃんを養うために公務員になったけど、他の無能とは違ってアイドルとして活躍出来る才能があるにこ」

にこ「だから公務員辞めてアイドルやるわよ!」

真姫ちゃん「ヴェッ!?」

〜ソレカラドシタノ〜

にこ「売れないにこ……私は天才のはずなのに……」

真姫「どうするのよ、もうお米ないわよ……?」

にこ「もう一回公務員やるわ……」

穂乃果「にこちゃんお帰り。今度は私の部下だねっ!」

にこ(馬鹿にしてた奴らが出世してるにこ……)

〜ツキヒハナガレテ〜

穂乃果(にこちゃんが湖畔の宿屋から失踪してもう一年かぁ)

ガサガサ

穂乃果「ひっ! 虎!? ……ってあれ、にこちゃん?」

にこ虎「!? いかにも、私は矢澤にこよ」

穂乃果「何で虎なんかになってるの!?」

にこ虎「発狂して走り回ってたらこうなったのよ。惨めでしょ、笑ってもいいのよ」

にこ虎「何だか今の気持ちを曲にしたくなったわ。にこにーのラストライブ、見ていって」

〜♪

穂乃果(技量は凄まじいのに何か心に響かない曲だなぁ……)

その後、にこの姿を見たものはいない

792 :名無しで叶える物語:2020/09/26(土) 19:29:19.94 ID:Kozi7TKK.net
凛(と、とにかく走るにゃ……!)

可可「っ……! これは……!」

実況『レフト前ヒットォ! 星空、一塁に滑り込みますっ!』

実況『その間に園田選手も三塁を踏み……まさかまさかのワンアウト一三塁! 理想的な状況を掴みました!』

かのん「あれ……あれ……?」

可可「かのんっ!」

かのん「クゥクゥちゃん……」

可可「さっきのボール、曲がってないように見えマシタ。何かあったデスカ?」

かのん「わからないの……いつもと同じように投げた筈なのに、何故か曲がらなくて……」

可可「なんで……」ハッ

かのん「……」プルプル

可可(指先が僅かに痙攣している……!?)

可可「かのん、大丈夫デスカ!? 疲れとか……指の痛みとかありまセン!?」

かのん「へ? いや……と、特にはないけど」

可可(無意識……? かのんはスタミナがある選手だから過信しすぎていた……! 昨日の連続ファールから疲れが抜けきってなかったんだ……腕が限界を迎えてる!)

可可(交代……!? けど……!)

793 :名無しで叶える物語:2020/09/26(土) 19:30:00.19 ID:4ntodZKt.net
>>791
!?

794 :名無しで叶える物語:2020/09/26(土) 20:04:07.01 ID:Kozi7TKK.net
すみれ「……?」

すみれ「カリスマな私に見とれてるのね。ギャラクシー!」ドヤッ

可可(まだ6回表……すみれじゃあと3回抑えきれない!)

可可(とはいえかのんの球は最早ただの速いストレート……どうしようもない!)

可可「くぅ……!」

可可(負けっ……! 負けっ……! ここで終わりっ……!)

可可(そうなれば……)

ーーーー

可可「師父、お呼びデスカ」

師父「うむ……可可。お前に伝えなければいけないことがある」

師父「この神域を手放さなければいけないかもしれぬ……」

可可「……神域を!?」

師父「オハラという会社にリゾート地として買収されかけているのだ……抵抗したのだが、一族のものが次々金に籠絡されておる」

師父「金が……金さえあれば……」

可可「金……!」

可可「……」バッ

『唐 可可殿。貴殿の神を従える力を評価し、結ヶ丘高校指定強化選手に……………契約の暁には契約金を……………』

可可(神を野球に使うなんて……いや、これしかないデス)

可可「大丈夫デス、師父。お金なら……クゥクゥが用意シマス!」

ーーーー

可可(甲子園に行けなければ契約を終了させられる可能性がある……理事長はストイックな人間だ。敗者に情けをかけるような人じゃない!)

可可「……っ!」

795 :名無しで叶える物語:2020/09/26(土) 20:34:24.56 ID:Kozi7TKK.net
かのん「大丈夫だよ、クゥクゥ」

可可「……! かのんさん……!」

かのん「私はまだ投げられる。ボールもきっと曲がるよ」

可可「……っ」

かのん「信じて、ね?」

可可「……ワカリマシタ、かのんさんに任せマス」

実況『タイムが終わりました……何かあったのでしょうか?』

実況『7番小泉花陽、緊張の面持ちでバッターボックスに入ります』

花陽「……」

花陽(打たなきゃ……皆、打ったんだ。チャンスなんだ……!)

花陽(モブAさんの分も背負ってるのに、私だけ打てないなんて嫌だ……っ!)

かのん「……ふぅ」

かのん「っやぁ!」キュオッ

ダッ

かのん「っ!」

実況『一塁星空、盗塁ぃ! 二塁を狙っていますが……玄武相手に盗塁は無謀すぎます!』

実況『いや……渋谷選手も予想外だったのでしょうか! 球がすっぽ抜けて……!』

ヒュロロロッ

かのん「まずっ……!」

花陽(打たなきゃ、打たなきゃ、打たなきゃ!)

花陽(……っ!?)

ドンッ

796 :名無しで叶える物語:2020/09/26(土) 20:40:53.76 ID:Kozi7TKK.net
かのん「あ……!」

カラッ…

凛「かよちん……?」

絵里「た、タイムッ! 花陽っ!」

実況『打ち気が流行ったのでしょうか……! 小泉選手、前に出過ぎましたっ……!』

実況『頭にボールが当たっています! 小泉選手、ぴくりとも動きませんッ!』

凛「かよちんっ!」ダッ

かのん「嘘……そんな……!」

かのん「また……やだ、ストライクゾーンだったのに……なんで!」

千砂都「落ち着くっすよかのん!」

花陽「……」

希「た……タンカ。タンカを……!」

実況『小泉選手、タンカで運ばれていきます……! 二試合連続で相手選手の頭にボールをぶつけてしまった渋谷選手、うずくまっています。泣いているのでしょうか、肩が細かく震えて……』

かのん「なんで……なんでぇ……!」

実況『小泉選手が運ばれ……音ノ木坂、残るメンバーは8人です』

実況『……この時点で、音ノ木坂の敗戦が決まりました! 最早ベンチには誰も残っていません!』

凛「あ……」

797 :名無しで叶える物語:2020/09/26(土) 20:45:03.01 ID:Kozi7TKK.net
凛(終わり……そうだ、野球は8人になった時点で……)

絵里「……負け、なのよね」

穂乃果「……」

かのん「ごめんなさい……違うの、わざとじゃ……!」

海未「……分かってます、見てましたから」

海未「あの時花陽は……随分と前のめりになっていました。すっぽ抜けを見て無理やり打ちに行こうとしたんですね」

海未「けれど……」

海未「……」ポロポロ

凛「……仕方ないにゃ。ここまでやってこれたのが奇跡みたいなものだもん」

希「ん……」

審判「……只今を持って、音ノ木坂対結ヶ丘女子の試合を終了――」



「その必要は無いな」

798 :名無しで叶える物語:2020/09/26(土) 20:51:20.73 ID:Kozi7TKK.net
絵里「え……?」

希「え、ええ……!?」

審判「何だ、君は……音ノ木坂の選手か? 今までベンチにいなかったじゃないか」

審判「そんな選手の参加は認められない……」

「今まで病院に入院していたんだ。選手登録はされているだろう?」

「理由があって遅れたんだ……認められる筈じゃないか?」

にこ「な、なんで……」

穂乃果「貴女がここに……」

審判「……ふむ、確かに入院中と聞いていたが」

審判「分かった。小泉花陽に代わることを認めよう」

「助かる。皆、待たせたな……戻ってきたぞ。この……」

英玲奈「モブAが!」

凛(に……似てるけど違う! 誰だこいつ……!?)

799 :名無しで叶える物語:2020/09/26(土) 20:57:37.64 ID:Kozi7TKK.net
絵里「ちょ、ちょっと」

英玲奈「なんだ? さっきの打席は扱い的にはストライクだろう」

英玲奈「打席に立たなければいけないのだが」

絵里「いや、そうじゃなくて……貴女統堂英玲奈よね?」ヒソヒソ

希「UTXの統堂英玲奈選手やんな? 何で金髪にしてるん……!?」ヒソヒソ

英玲奈「……? 何を言っているんだ、私はモブAだが」

英玲奈「ああ、そうだ。これ、お土産だ。病院で会ったギャルっぽい子に貰った」ヒョイ

絵里「何? 手紙……?」

『統堂英玲奈選手と同じ病室になったんだけど、記憶無くしてるみたいだから勝手に染髪して、自分があーしだって刷り込ませておいたわ』

『割と顔似てるしいけるっしょ』

絵里「え、ええっ!? そ、そんな無茶苦茶な……」

審判「何だね? その手紙に何か……」

絵里「んんっ!」バクッ

絵里「がひゅ、ごくっ!」モチャモチャ

審判「ん……!?」

希「え、絵里ちは紙を見ると食べたくなるんよ! あはは、あはははー!」アセアセ

審判「そ、そうか……精神病院に行ったほうがいいぞ」

800 :名無しで叶える物語:2020/09/26(土) 21:01:25.50 ID:Kozi7TKK.net
絵里「集まって! 英玲……モブA以外!」

英玲奈「?」

絵里「もう皆分かってると思うけど……あれはモブAじゃなく、UTXの統堂英玲奈よ」ヒソヒソ

凛「やっぱり別人にゃ……」

穂乃果「ど、どうするの? バレたら敗戦どころの騒ぎじゃないよ」

穂乃果「やってること完全に替え玉受験だもん」ヒソヒソ

絵里「そうだけど……ここであの選手はモブAじゃないって言ったらどうなると思う?」

希「その時点で彼女は退場、8人で負け……」

海未「……」

ことり「……よし、あの子はモブAちゃんだよ」

絵里「ええ、そうよ」

絵里「あの子はモブAよ。統堂英玲奈じゃない……!」

絵里「タイム終了! 頑張ってねモブA!」

英玲奈「あぁ、頑張るぞ」

801 :名無しで叶える物語:2020/09/26(土) 21:06:06.63 ID:Kozi7TKK.net
実況『負傷した小泉選手に代わりまして、代打モブA選手。入院していたとは思えない堂々とした構えです』

かのん「……!?」

かのん(えっ、この人……UTXの選手じゃなかったっけ)

かのん(しかも私が昨日頭ぶつけた人じゃ……)

かのん「あ、あの……UTXの人、ですよね?」

英玲奈「? 違うが。そんなに似ているのか?」

英玲奈「色んな人から言われるんだ」

かのん「い、いえ……あはは」

かのん(他人の空似か……世界には似てる人が三人いるって言うもんね)

かのん(けどよかったよ……あれで試合終了なんて後味悪すぎるもん)

かのん「悪いけど……ついさっきまで入院してた人になんて負けないよっ!」キュオッ

ヒュオォォォォンッ!!

英玲奈「……」

かのん(……やっぱり曲がらない。けど、病み上がりならこれでも十分……)

英玲奈「……ふっ!」ブォンッ

ガキィィィィンッ!!

かのん「……うわっ!?」

802 :名無しで叶える物語:2020/09/26(土) 21:12:34.43 ID:Kozi7TKK.net
実況『な……も、モブA選手初球から打って……』

ドォォッンッ…

可可「かっ……」

実況『ら……ライト方向に飛んでいったボールが、そのままスタンドに突き刺さりました! 素晴らしいバッティングです!』

実況『まるでUTXの統堂英玲奈を思わせるような、清々しい一打……たった今まで数ヶ月入院していた選手とは思えませんっ!』

かのん「な……な……」

実況『三塁ランナー、二塁ランナー、そしてモブA選手……それぞれホームインッ! これで9-6、一気に点差は三点に広がりました! 結ヶ丘には苦しい展開です!』

英玲奈「良い球だった。ノビがあるストレートだ」

絵里「良かったわ……よくライトに打ってくれたわね」

英玲奈「何でか分からないが、レフトは駄目な気がしたんだ。センター方向は大きな亀がいるからな。だからライトに……」

かのん「や、やっぱりUTXの選手じゃ……?」

すみれ「私もそんな気がするんだけど……けど髪の色が違うのよ」

すみれ「多分ギャラクシーに別人よ、この平安名すみれに保証される権利をあげるわ!」

英玲奈「ありがとう」

803 :名無しで叶える物語:2020/09/26(土) 21:21:11.67 ID:Kozi7TKK.net
凛(最早、統堂英玲奈選手を加えた音ノ木坂に敵はなかった)

凛(にこちゃん、穂乃果ちゃんが凡打に抑えられたものの結ヶ丘側にももう打つ手はなかったようで)

凛(6回裏、7回裏、8回裏とにこちゃんが点を取られつつも凡打に抑えていき……)

すみれ「っ……ううっ!」ブォンッ!

スパァンッ!

審判「バッターアウッ! ゲームセット!」

審判「12-9で音ノ木坂学院の勝利ですッ!」

実況『なんと……なんということでしょうか。あの弱小音ノ木坂が……東東京代表です! 夢でも見ているのでしょうかッ!』

凛「勝った……やった、やったにゃー!」

凛「にこちゃーん!」ダダダッ

ギュッ

にこ「ぐえっ!? や、やめなさいよ凛! 恥ずかしいでしょ!」

絵里「優勝……」

海未「呆けてる場合じゃありませんよ、絵里。本当に優勝したんですから……」

真姫「やれやれ……って感じね。理解が追いついてないみたい」

凛「真姫ちゃんももっと喜ぶにゃーっ!」ドゴォォォンッ

真姫「ぎえっ!」

804 :名無しで叶える物語:2020/09/26(土) 21:26:08.68 ID:Kozi7TKK.net
かのん「……終わっちゃった、かぁ」

すみれ「ごめんなさい……私が、私がもっと打てていれば」ポロポロ

かのん「ううん……私だって、ちゃんと最後まで曲がる球を投げられてたらこんなことには……」

可可「……」

かのん「皆、これからどうするの?」

可可「多分……国に帰ることになると思いマス。契約も終わりでしょうシ」

千砂都「私もダンススクールの費用払ってもらえなくなりそうだし……田舎に引っ込むっすかねぇ」

すみれ「私は特には……とはいえ、今までのように最高の機材で動画配信をすることは出来ないでしょうけど」

かのん「……離れ離れ、かぁ」

恋「……待ってください、皆」

かのん「恋ちゃん?」

恋「私が母を説得してみます。きっと……きっと、来年には甲子園に行けると思うんです」

恋「この皆なら……出場どころか優勝も狙えます! だから、だから……」

恋「離れ離れなんて寂しいこと言わないでくださいよぉ……」ボロボロ

かのん「恋ちゃん……」

805 :名無しで叶える物語:2020/09/26(土) 21:29:59.40 ID:Kozi7TKK.net
絵里「甲子園……私達が本当に……」

審判「両校集まってください! 整列……整列してください!」

希「ほら、絵里ち。整列やん」

凛「部長なんだから……いつまでも呆けてちゃ駄目にゃ」

英玲奈「そうだぞ。絵里は部長……」

英玲奈「あれ……部長はツバサ……ん?」

凛「どうしたの?」

英玲奈「いや……何でもない。一瞬変な記憶が……」

絵里「ぁ……そ、そうね」

絵里「よし……」パンパンッ

審判「礼ッ!」

「「「ありがとうございましたッッ!!」」」

806 :名無しで叶える物語:2020/09/26(土) 21:31:06.02 ID:Kozi7TKK.net
第××回甲子園東東京予選 優勝『音ノ木坂学院』

807 :名無しで叶える物語:2020/09/26(土) 21:31:26.87 ID:Kozi7TKK.net
今日はここまで

808 :名無しで叶える物語:2020/09/26(土) 22:39:38.10 ID:vOd5fmxd.net
やったぜ。

809 :名無しで叶える物語:2020/09/26(土) 23:44:24.76 ID:5PszNqjx.net
小泉花陽 ぜつまい

810 :名無しで叶える物語:2020/09/26(土) 23:44:31.92 ID:5PszNqjx.net
絶命

811 :名無しで叶える物語:2020/09/27(日) 04:02:14.55 ID:VX9P6INx.net
良かった…モブAは覚醒したんだね…

812 :名無しで叶える物語:2020/09/27(日) 18:01:40.56 ID:JIPHXKIQ.net
にゃ

813 :名無しで叶える物語:2020/09/28(月) 11:58:57.65 ID:RLvZ9s+E.net
保守

814 :名無しで叶える物語:2020/09/28(月) 16:10:32.50 ID:mBu0hOWB.net
ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

三日後 凛の家

凛「にゃー……」

凛(優勝かぁ……何だかんだ絶対優勝だって吠えてたけど)

凛(いざ優勝すると実感ないにゃー……)

凛「球拾ちゃんの葬式も終わったし、モブAの家族も統堂英玲奈を二人目の娘として迎え入れたし……」

凛「後は二週間後の甲子園に向けて努力を……努力……」

凛「やーる気起きねぇにゃぁぁぁ!?」

凛(五月病にゃ……マジで何もする気起きない……)

凛「はぁ……かよちんが寝てる間に部屋忍び込んで手マンでもしようかな」

花陽「何で本人が隣にいるのにそういうこと言うの?」

凛「手マンかクンニしていい?」

花陽「駄目だよ、殺すまであるからね?」

凛(あの時頭をぶつけ意識を失ったかよちんは……試合後、特に問題なく起き上がった)

花陽『レイプ宇宙人のチップを取るときに脳味噌と頭蓋骨を弄ったから、衝撃ですぐ意識飛んじゃうんだぁ』

凛(とは本人の弁にゃ)

815 :名無しで叶える物語:2020/09/28(月) 16:30:18.07 ID:mBu0hOWB.net
花陽「それに冗談言ってる場合じゃないよ。凛ちゃん、宿題にまっっっったく手を付けてないよね?」

花陽「甲子園行くまでに何とか終わらせたいって、私呼んだの凛ちゃんでしょ。早くやっちゃおうよぉ」

凛「それはそうなんだけど凛は五月病にゃ」

花陽「今は八月だよ?」

花陽「八月病だね」

凛「面白くない時のきらら系アニメにありそうな会話はやめようよ。宿題もいい感じに進んだし遊びに行かない?」

花陽「数学何問やったの?」

凛「3問」

花陽「3問?」

凛「凛としてはベストを尽くしたつもりだけど?」

花陽「ベストを?」

凛「あるいは」

凛「遊びたい遊びたい遊びたいにゃー!」ジタバタ

花陽「仕方ないなぁ……気晴らしも大事だし少しだけだよ」

凛「やったー! かよちん大好きにゃ!」ペロペロ

花陽「ぁっ……んっ……」

816 :名無しで叶える物語:2020/09/28(月) 19:14:32.80 ID:ia4RKokN.net
花陽「何処か行きたいところとかあるの?」

凛「んー……甲子園チップス見に行きたいにゃ」

※甲子園チップスとは甲子園出場選手や予選落ちした選手のカードが入ったチップスである。音ノ木坂が優勝した翌日には出てた。

花陽「あれどういうことなんだろうね。私達のカードも入ってるみたいだけど」

凛「予選落ちした選手のカードも入ってるみたいだしあらかじめ作ってたんじゃないの?」

凛「ほら、甲子園チップス最強カード一覧によると天下高校の柘榴選手がTier1にゃ」

『『奇術師』柘榴 攻100 防2500 東東京大会属性を持つカードを生贄に捧げることで相手のターンをスキップできる』

花陽「チートだよこれ」

凛「凛のカードはまだ調べてないけど多分最上位クラスな気がするにゃ」

花陽「あ……うん、そうだね」

『『月猫夜』星空凛 攻800 防1200 5ノーツの間特技発動率が4%上昇』。評価圏外。

凛「楽しみだにゃー」

817 :名無しで叶える物語:2020/09/28(月) 19:16:40.18 ID:8pL0e7L/.net
月猫夜はやめて差し上げろ

818 :名無しで叶える物語:2020/09/28(月) 19:23:36.34 ID:ia4RKokN.net


凛「甲子園チップス1つしか売ってなかったにゃ……」

花陽「ま、まあ……それだけ人気ってことだよ」

花陽(これに凛ちゃん入ってる可能性低いし……出来れば一生自分の性能知らないで生きていってほしいなあ)

凛「早速開けるにゃ……あれ?」

花陽「どどどどうしたの凛ちゃん!? まさかクソザコナメクジみたいな凛ちゃんのカードが!?」

凛「いや違くて……というか凛のカードクソザコなの?」

凛「あそこ見てよ、スマホと景色交互に見ながらうろうろしてる人がいる」

花陽「迷ってるのかなぁ……この辺の道ややこしいし」

凛「声かけていい?」

花陽「いいよ。知ってる場所なら案内してあげればいいし……一応聞いとくけど」

花陽「少しでも帰る時間遅らせて、宿題やる量減らそうとしてないよね?」

凛「そんなわけないにゃ。凛は正義の人だよ、困ってる人を見捨ててはおけない性質なんだ」

花陽「初めて聞いたよ、それ」

819 :名無しで叶える物語:2020/09/28(月) 19:38:45.57 ID:ia4RKokN.net
「ええと……この道を」

凛「あのー……」

「きゃぁっ!? え、えっと!? な、なんでしょうか!?」

花陽「ピャアッ!?」

凛「かよちんまで驚かないで、収集つかなくなるにゃ」

花陽「ごめん」

「えっと……」

凛「ああ、いや。道に迷ってるように見えたから……凛達、この辺地元だからよかったら案内しようと思って」

「本当? よかった……ずっと迷ってたのよ、道がよく分からなくて」

凛「何処に向かってるの?」

「えっと、ね……」

「音ノ木坂学院っていう高校なんだけど、分かる?」

820 :名無しで叶える物語:2020/09/28(月) 19:47:55.82 ID:ia4RKokN.net
―――――

「こんな偶然ってあるのね、まさか凛ちゃん達が音ノ木坂の生徒だなんて」

凛「それにしても、おねーさん何で音ノ木坂学院なんかに?」

凛「通ってる凛が言うのもあれだけど大したことない学校だよ? アルパカ臭いし理事長は風俗狂いだし」

「あんまり聞きたくない単語が聞こえたような気がするんだけど」

花陽「そうだよ! アルパカは臭くないもん!」

凛「いや臭いよ! 悪いと思って言わなかったけどアルパカ小屋の掃除した後とかさぁ!」

凛「シャツが、どぶに投げ捨てた牛乳雑巾みたいな臭いしてるんだよ!?」

花陽「えっ……そんなに……?」

「そっちじゃないんだけど……まあいいや」

凛「っと、あれにゃあれ。あれが音ノ木坂」

821 :名無しで叶える物語:2020/09/28(月) 19:55:39.00 ID:ia4RKokN.net
「ここが……ママの母校」

凛「にゃ?」

「ああ……えっとね、私のママがここの卒業生なの」

「私が産まれて少ししてから、パパの仕事の都合で静岡に引っ越しちゃったから……今まで見たことなかったんだ」

「たまたまこっちに来る機会があったから、一度見ておきたくて」

花陽「へえ……ところで」


「あっ、梨子ちゃーん!」

凛「にゃ!?」

凛(瞬間――感じたのは、身体が押しつぶされるような恐怖)

凛(振り向いた凛の目に映ったのは、梨子――恐らくは目の前のお姉さんの名前だろう――と叫びながら駆け寄ってくる五人の影)

凛(そのどれもが……真姫ちゃんに匹敵するほどの『野球オーラ』を放っている!)

822 :名無しで叶える物語:2020/09/28(月) 20:03:01.57 ID:ia4RKokN.net
梨子「皆……」

「音ノ木坂に向かうって聞いたのに、何処にもいないから焦ったでありますよー」

梨子「ご、ごめん。道に迷っちゃって」

「私達は無事神田明神にお参り出来たのだ!」

「あの聖雪姉妹に絡まれましたけど……『甲子園は遊びじゃない』なんて私達が一番分かってますわ」

「マリー達にかかればあの程度相手にもなりまセーン!」

「こっとんきゃんでぃえいえいおー」

「ルビィちゃんは残念だったね……」

「ルビィ……こんな変わり果てた姿になってもルビィは可愛いですわ……」ナデナデ

梨子「いや何があったの? 骨格レベルで変わってない?」

凛(……ただ話しているだけなのに、立っていられないッ! 凛太郎ッ!)

凛太郎(……なんにゃ? 久しぶりに呼んでくれたと思ったら……)

凛太郎(どえれぇクールな奴らがいるにゃ……!?)

823 :名無しで叶える物語:2020/09/28(月) 20:09:14.38 ID:ia4RKokN.net
凛(凛太郎なら勝てそう?)

凛太郎(タイマン(一打席勝負)なら何とか……ってとこにゃ。ただ……)

凛太郎(あの女はヤバい。凛、お前無意識に気付かないようにしてただろ?)

凛(にゃ……?)

ブワッ

凛「な……がっ……!?」

凛(何だ、この野球オーラ……真姫ちゃんより、いや、凛達九人の野球オーラを合わせても勝てない)

梨子「……」

凛(こんな奴の隣を凛は歩いていた……気付かなかった、本当に? この恐ろしいオーラを!?)

凛(まさか……意図的に隠していたの!?)

花陽「何してるの凛ちゃん」

「のけぞってるけど大丈夫?」

花陽「ごめんなさい……この子基本的に精神異常者なんです」

824 :名無しで叶える物語:2020/09/28(月) 20:17:05.35 ID:ia4RKokN.net
「ワオ! ソーキュートガールズね、梨子をここまで案内してくれたの?」

凛「イ、イエスファック」

梨子「ありがとうね、凛ちゃん、花陽ちゃん。おかげでずっと見たかった場所を見ることが出来たよ」

梨子「今度何処かで会ったらお礼させてね」

「早く帰ろうよー梨子ちゃん、お腹ペコペコだよ」

「さっさと旅館に戻るのだ!」

「しまうま」

「ルビィ……」


凛「はぇー……凄い集団だったね」

花陽「何処から来た人なのかな。梨子さん、って言ってたけど」

凛「さあ……」

花陽「ところで甲子園チップスまだ開けないの? 半分開いて止まってるけど」

凛「あ、うん。開けてみるにゃ……」

825 :名無しで叶える物語:2020/09/28(月) 20:20:35.29 ID:ia4RKokN.net
凛「あ」

花陽「え?」



『『魔槍』桜内梨子 静岡 浦の星女学院二年』

凛(桜内、って)

凛「……」

花陽「あの浦の星女学院の選手だったんだぁ……凛ちゃん?」

凛「ん、ああ……なんでもないにゃ」

凛(ママに聞きたいところだけど……まだ行方不明だし)

凛(ま……いいや。ママはママ、凛は凛だもん)

826 :名無しで叶える物語:2020/09/28(月) 20:21:01.68 ID:ia4RKokN.net
今日はここまで

827 :名無しで叶える物語:2020/09/28(月) 20:29:46.07 ID:U6jlhqml.net
黒木玄斎かな?

828 :名無しで叶える物語:2020/09/28(月) 20:36:45.41 ID:vp0011bK.net
公式のせいでルビィが…

やっぱ拓瑠の本気見たかったよね

829 :名無しで叶える物語:2020/09/28(月) 23:34:01.73 ID:RLvZ9s+E.net
>>814
球拾いほんとに死んでたしモブAの家族なんか受け入れてるし

830 :名無しで叶える物語:2020/09/29(火) 21:45:37.80 ID:y/K0jATQ.net
保守

831 :名無しで叶える物語:2020/09/30(水) 12:13:31.75 ID:jXoaHOd5.net
保守

832 :名無しで叶える物語:2020/09/30(水) 21:26:46.78 ID:QeUNlCPt.net
更新頻度減ったし来ても量は少ないしネタ切れならもう辞めたら?

833 :名無しで叶える物語:2020/09/30(水) 22:09:38.13 ID:4mldOGVm.net
ーーーー

甲子園 当日

実況『甲子園初日、初戦……音ノ木坂対福岡劇場! 試合はヒートアップしていますッ!』

しずく「ああ……『何故抗うの? 何故認めないの? 貴女は敗北者だと』!」

凛「あーもう! 集中力乱されるにゃっ……!」

実況『福岡劇場学院の試合は何度も見ておりますが……何というか野球というよりは、スタジアムを舞台にした演劇を眺めているような。そんな気になりますね』

しずく「オフィーリア……」

凛「凛はオフィーリアじゃ……無いっての!」シュッ

カァンッ!

凛「にゃっ!?」

ワーワー……



愛「音ノ木坂がまさか甲子園に出るなんてねぇ……。合宿の時は想像もしてなかったよ」

『異次元の標的』宮下 愛

花丸「そう? マルは順当に上がってくると思ってたけど」

『ブラックホール』国木田 花丸

834 :名無しで叶える物語:2020/09/30(水) 22:16:05.20 ID:ZO1NtKvx.net
ハリガネサービスで見たやつだ

835 :名無しで叶える物語:2020/09/30(水) 22:21:41.84 ID:4mldOGVm.net
愛「んー……あの時は大して強そうに見えなかったのになぁ」

愛「にしても皆結構見に来てるね、この試合。あのしずくって子そんなに注目されてるの?」

花丸「しずくちゃんも凄い選手だけど多分皆が見に来てるのは……」

侑「星空凛、でしょ?」

『魔術師』高咲 侑

愛「あれ、侑ちゃんじゃん。愛さんの親友の侑ちゃんじゃん?」

愛「甲子園の観戦でもしにきたの? 身体弱いんだし日陰にでも行けば? 日陰者だけにね」

侑「……中学の頃の話でしょ。今は身体動かしても平気よ」

かすみ「なんなんですかぁ、この失礼な人!? 侑先輩は日陰者なんかじゃ……!」

『ルネ・マグリット』中須 かすみ

璃奈「落ち着いてかすみちゃん。璃奈ちゃんボード『まぁまぁ』」

『ポーカーフェイク』天王寺 璃奈

璃奈「彼方ちゃん達が来れなかった分、私達がちゃんと試合を見なきゃいけないんだから。喧嘩してる場合じゃないよ」

836 :名無しで叶える物語:2020/09/30(水) 22:22:42.69 ID:8N9bbF5t.net
どっちかというとライトウィング…

837 :名無しで叶える物語:2020/09/30(水) 22:43:03.01 ID:4mldOGVm.net
愛「ふんっ……まだ許してないからね。愛さんを裏切ったこと」

侑「……許してほしいなんて言わないよ」

侑「お互い勝ち進めば準決勝で当たるよね。そこで証明してあげるよ、私は間違ってなかったってこと」

侑「……ま、簡単には勝ち進められそうにはないけど」チラッ



果南「いやいや……それにしてもびっくりだよ」

果南「普段なら試合なんて見に来ないじゃん、皆。それが四天王揃い踏みだなんて」

『現代の水ゴリラ』打振五輪羅高校 松浦 果南

鞠莉「果南こそ。いつもなら試合以外は常に海で泳いでるじゃない」

『尋ね人』浦の星女学院 小原 鞠莉

エマ「あはは……皆それだけ注目してるってことだよ。弱小高校を甲子園に導いた、星空真凛の娘にね」

『ミヒャエルの奇跡』聖ミヒャエル大学付属 エマ・ヴェルデ

聖良「正直に言いますと、その四天王という言い方が気に入らないんですよね」

聖良「聖良さんと愉快な三人組とでも呼び方を変えてください」

『雪砕き』函館聖泉女子高等学院 鹿角 聖良

838 :名無しで叶える物語:2020/09/30(水) 22:50:56.12 ID:4mldOGVm.net
理亞「姉様、流石にそれは横暴だと思う」

千歌「いいなー、千歌達も四天王とか呼ばれたいのだ」

曜「来年になったら呼ばれるんじゃない? 特に梨子ちゃんなんかは……」

ダイヤ「三年生になっても特に呼ばれない人もいますわ……」

善子「ふっ……現世での呼び名に固執するなんて、まだまだリトルデーモンとしての力が足りないようね」

エマ「善子ちゃん、初対面の人を悪魔扱いしたら駄目だよ? またシスターに怒られるよ」

善子「善子じゃなくてヨハネよ!」

千歌「自分が一番固執してるじゃん!?」

梨子「あはは……」

梨子(……そっか。あの時のあの子が……星空真凛の娘だったんだ)

梨子(私のママの右腕を壊した、あの女の娘……)

梨子(……勝ち上がってきたら、全力で潰してあげるわ)

『魔槍』桜内 梨子

839 :名無しで叶える物語:2020/09/30(水) 23:01:34.73 ID:4mldOGVm.net
凛「ママは『凛太郎に身体操られて海外に置き去りにされてた』とか言ってたし……」

凛「凛太郎は凛太郎で、皆に無茶苦茶な量の練習させるし! というか皆ボロボロになってたり、野球で人が死んだりしてるのこいつが裏で色々策を講じてたせいだったし!」

凛「女でも甲子園に出場できるよう、男子をレイプ宇宙人に差し出し……いや『男子の遺伝子が滅びた旧人類』と、凛たち『男子を作り出す家畜として創造された新人類』の対立を作り上げたのも凛太郎だったし……」

凛(甲子園が終わり次第……理亞ちゃんの『時空を越える球』で、第二次世界大戦で凛太郎を生き残らせ世界を改変してあるべき姿に戻さなきゃ……!)

しずく「何をブツブツ言ってるの?」

しずく「貴女のボールは私には通用しない……もう分かってるよね?」

凛「分かってるにゃ……さっきから散々打たれてるからね」

凛「今まで戦ってきた相手とは段違いに強い……」

しずく「嗚呼……それが分かっていながら何故抗うの? それとも何か対抗する術を持っているとでもいうの?」

凛「抗う術? そんなの決まってるにゃ」

凛「この一球に……」

840 :名無しで叶える物語:2020/09/30(水) 23:02:30.35 ID:4mldOGVm.net
凛「命を懸ける!」




841 :名無しで叶える物語:2020/09/30(水) 23:07:11.44 ID:4mldOGVm.net
確かにネタ切れ起こしてるよなぁと思ったんで一旦打ち切ります
甲子園編はあれば書き溜めして一括投下出来るように努力します

842 :名無しで叶える物語:2020/09/30(水) 23:09:09.73 ID:4mldOGVm.net
ここまで読んでいただいたのに、こんな結末で申し訳ありません

843 :名無しで叶える物語:2020/09/30(水) 23:18:16.34 ID:G4jokNdv.net
そんにゃ…

844 :名無しで叶える物語:2020/09/30(水) 23:37:02.97 ID:4h8BkiYP.net
そんなあ

845 :名無しで叶える物語:2020/10/01(木) 00:09:24.00 ID:BC+59x9d.net
お疲れ様でした!
甲子園編も楽しみに待ってます!

846 :名無しで叶える物語:2020/10/01(木) 01:14:45.42 ID:YCPqu+pT.net
お疲れ様
気になる能力沢山あるし続き待ってるよ
楽しかった

847 :名無しで叶える物語:2020/10/01(木) 01:47:37.74 ID:vM2qwwFo.net
そのうち頼むぞ

848 :名無しで叶える物語:2020/10/01(木) 14:52:02.87 ID:rKqECMZw.net
ゆっくり書きたいように書けばいいのに
辞めればとか言うやつはなんなん

849 :名無しで叶える物語:2020/10/02(金) 13:42:21.44 ID:8DpdkxYW.net
楽しかった。甲子園編、期待してます。ひとまずお疲れ様です!

850 :名無しで叶える物語:2020/10/02(金) 20:36:21.86 ID:EroZwk9L.net
キャラが終始壊れているくせに王道はきっちりおさえた名作でした
甲子園編待ってます

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