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【SS】歌姫×歌姫
- 1 :名無しで叶える物語:2022/03/22(火) 22:19:40.23 ID:k4o+C7s1.net
- 代行
かのすみ
- 2 :名無しで叶える物語:2022/03/22(火) 22:26:20.61 ID:Mcp47VM9.net
- 代行ありがとうございます
2ndライブMCからの連想
- 3 :名無しで叶える物語:2022/03/22(火) 22:28:41.90 ID:Mcp47VM9.net
- す「私、歌姫になりたいの」
春休み。本日の部活を終えて校門を出た五人。
『もうすぐ二年生だけど進路どうする〜?』という軽い雑談だったのに。
すみれが放ってきた爆弾に、かのんは顔を引きつらせる。
か「へ、へぇー。そうなんだ。
すみれちゃんの歌、上手いもんね。もう十分歌姫なんじゃない?」
す「そういうことを言ってるんじゃないわ。
プロになって、世界に名だたる歌姫になりたいって夢の話をしてるの。
かのんは違うわけ?」
か「………」
- 4 :名無しで叶える物語:2022/03/22(火) 22:32:14.39 ID:Mcp47VM9.net
- れ「……すみれさんは女優志望なのかと思っていました。
子役をされていたということですし」
す「そっちも魅力的だけどね。でも最近、歌が楽しくなっちゃって。
ライブで思いきり歌った気持ち良さが忘れられないのよ」
か「分かる! それはよく分かるよ。
うんうん、すみれちゃんが歌の魅力に気付いてくれて嬉しいなー」
す「なにを上から目線で語ってんのよ。かのん、まさかあんた。
未だに自分の歌が、一番上手いと思ってるんじゃないでしょうね」
か「……はい?」
す「あんたの歌、今の私に勝てるの?
ノンフィクション!!とDay1のコンボに勝てると思ってるの?」
- 5 :名無しで叶える物語:2022/03/22(火) 22:36:45.32 ID:Mcp47VM9.net
- か「なっ……」
く「はああああ!?
ちょっと評判良いからって、何を調子に乗ってるデスか!
かのんの私のSymphonyとスタプロだって、決して負けてマセン!」
す「ふふん。かのん大好きな可可ですら、『負けてはいない』止まりなわけね」
く「エ…… ち、違うんデスかのん! 可可は今でもかのんの歌が一番で……」
か「あはは……いいよ、可可ちゃん。ノンフィクション!!の動画再生数、確かにすごいよね」
重くなる空気の中、千砂都にひそひそと耳打ちする恋。
れ「かのんさんは、歌で誰かに肉薄された経験はあるのですか?」
ち「ないよ。いつも断トツに上手かったからね。
今まで自分との戦いばかりで、誰かと競ったことすらなかった。
私はかのんちゃんが出来ないことの方に注力してたから……
こんな相手は、すみれちゃんが初めてだね」
- 6 :名無しで叶える物語:2022/03/22(火) 22:42:36.25 ID:Mcp47VM9.net
- か「わ、私にとって歌は、誰かを負かすためのものじゃないし。
Liella!で優勝したいのもみんなのためで、すみれちゃんの歌唱力が高いのはむしろ歓迎……」
す「何を甘いこと言ってんのよ。あんたの夢も歌姫なら、いずれは商売敵よ。
ただでさえCDが売れない時代なんだから、少ないパイの取り合いになるわね」
か「私まだ高校生だもん! ビジネスの話なんかしたくないよ!」
く「そうデス! スクールアイドルはもっと清純で可愛いものデス!
ギスギスはやめて仲良くキャッキャウフフしないと」
す「可可にだけは言われたくないわよ!
ふんっ、別に理解してくれなくていいわ。可可が応援してくれるなんて思ってないし」
く「……誰も応援しないとは言ってマセン。
大きな夢があるのは素敵なことデス。歌姫になったすみれの姿、可可にも見せてクダサイ」
す「え、そ、そう……」(赤面
く「でもやっぱりかのんの方が上であって欲しいデスぅ〜!」
す「だー! こうなったら意地でもかのんより売れてやるわ!」
か「だ、だから私は……まだそこまで考えてないっていうか……」
ち「まーまーまー。混線してきてるからそれくらいで」
- 7 :名無しで叶える物語:2022/03/22(火) 22:49:16.31 ID:Mcp47VM9.net
- ち「かのんちゃんとすみれちゃん、二人でじっくり話してきたら?」
れ「それが良いですよ。進級して早々に進路希望調査もありますし」
す「私もこのままじゃ帰れないわね。かのん、ちょっと顔を貸しなさいよ」
か「ううう、分かったよ。じゃあ明治神宮にでも行こう……」
原宿駅の向こうへ歩いていく二人の背中を、可可は複雑な表情で見送る。
く「かのん……すみれ……」
れ「同じ道を志した時点で、二人にしか立ち入れない世界もあるのです。暖かく見守りましょう」
ち「可可ちゃんと恋ちゃんは、たこ焼き食べにおいでよ」
- 8 :名無しで叶える物語:2022/03/22(火) 22:53:56.13 ID:Mcp47VM9.net
- 長い参道をしばらく黙って歩いていたが、右に見える観光客向け商業施設に、かのんは口をとがらせる。
か「最近の明治神宮、商売っ気ありすぎじゃない?
なんか外苑の樹を千本切って大規模に開発するって」
す「そういうビジネスのおかげで街は発展するんでしょ。
かのんの家の喫茶店だって、大昔は原野だったんだからね」
か「そんな極論言われてもなあ〜」
す「で、進路希望票にはなんて書くのよ。食べていけなきゃ歌い続けられないわよ」
か「そりゃあ……歌を仕事にできたら、もちろん嬉しいけど」
す「はっ、覚悟も信念もない言葉ですこと。
かのんの歌に対する気持ちって、しょせんその程度なわけね」
か「そんな見え見えの挑発には……」
日本一の大鳥居を通り過ぎ、かのんは足を止めてすみれを直視する。
- 9 :名無しで叶える物語:2022/03/22(火) 22:58:04.88 ID:Mcp47VM9.net
- か「乗っかるよ! 私は歌が好きだ!
奪いに来てって言ったとき、悪いけどセンターにそこまで思い入れはなかったんだよね。
むしろセンターの責任を自分に課すために言った部分もあった」
す「……でしょうね」
か「でも歌となると話は別だよ。
ティアラで覚醒した後のすみれちゃんは、本当に強敵だけど。
これに関しては後には引けない。
歌が好きな気持ちだけは、私は誰にも負けない!」
鎮守の森に響く声に、すみれにふっと笑みが浮かぶ。
が、周りの参拝客は驚いて振り返り、我に返った二人はぺこぺこと頭を下げた。
か「す、すみません〜」
す「静かに参拝を済ませましょ……」
- 10 :名無しで叶える物語:2022/03/22(火) 23:02:26.59 ID:Mcp47VM9.net
- キッチンカーでたこ焼きを焼きながら、千砂都はしみじみと述懐する。
ち「押し付けになるから本人には言わないけど。
そりゃ私も本音では、かのんちゃんに超売れっ子の歌姫になってほしいよ」
れ「それが千砂都さんの夢なのですね」
ち「そうだね。だからすみれちゃんが張り合うのは良いことだし、私は私で出来ることをするよ。
恋ちゃんは、夢は一貫してるよね」
れ「はい、結ヶ丘をこの街一番の学校にします。
もう義務感に捕らわれたくはないので、義務とは言いませんけどね」
く「レンレンが理事長になったら、どんな生徒も夢が叶えられそうデスね〜」
れ「皆さんのように夢がある生徒はまだ良いのです。
特に夢もなく、やりたい事も見つからない子がいたら……
身近で小さなことでも夢にして良いのですよと、言ってあげたいですね」
ち「恋ちゃんは本当に教育者向きだねえ。はい、たこ焼きできたよ」
く&れ「いただきまーす」
- 11 :名無しで叶える物語:2022/03/22(火) 23:06:24.82 ID:Mcp47VM9.net
- く「はふはふ。スクールアイドルの仲間と、学校帰りに食べるおやつ。
こんな日常が可可の夢で、今まさに叶っている最中デス」
れ「そのために一人で異国へ来たのですものね。本当にご立派です」
く「ただ……あの二人が歌姫を目指すとしたら、在学中にオーディションを受けたりするのデショウか?」
れ「え、ど、どうでしょうね。学校の方にも募集のお知らせは時々来ますが」
ち「少なくともすみれちゃんは、チャンスがあれば芸能事務所に行っちゃうかもね」
く「その場合は、一緒にLiella!を続けるのは難しそうデスね……。
もちろん可可の夢のために、他の夢を犠牲にしろとは言えマセン。
笑顔で送り出すしかないのデショウね」
れ「可可さん……」
ち「……たこ焼き、もう一つお食べよ」
- 12 :名無しで叶える物語:2022/03/22(火) 23:09:22.62 ID:Mcp47VM9.net
- 本殿で柏手を打ってから、かのんとすみれは一心に祈った。
お互いの願い事が気になるものの、口にはしない。
お守りを買う客で賑わう授与所を横目に見ながら、帰りの参道に入る。
す「で、いつ動き出すのよ」
か「いつって?」
す「同い年でもうプロデビューしてる子だっているのよ。のんびりしてられるのかって話よ」
か「ええ!? そこまで焦る気は全くないよ。
やるとしても普通の就職活動と同じ、高三の夏くらいからかなあ」
す「ちょっ、本当にいいの? それで」
か「駄目なの? ショウビジネス的には遅い?」
す「いやまあ……女優やアイドルなら若さが大事だけど、歌手ならそこまでは」
か「ならいいじゃん。どうせ今の中途半端な私じゃ、オーディションには受からないし。
スクールアイドル活動でバッチリ成長してからにするよ」
す「そ、そうよねー! 私もそう思ってたのよ。
やっぱラブライブで優勝して名を売ってからの方が有利だし?」
か「ふーん」(ニヤニヤ
す「な、何よ」
- 13 :名無しで叶える物語:2022/03/22(火) 23:12:41.24 ID:Mcp47VM9.net
- か「本当はずっと悩んでたんでしょ? 誰かに相談したかったんだ」
す「ばっ……違うったら違うわよ! 私を誰だと思ってるのよっ」
か「はいはい、平安名すみれさんです。
努力家で才能があって、私が歌で負けたくないと、初めて思った人」
かのんの本心からの言葉に、すみれはぷいと横を向く。
その顔が真っ赤なのを確認してから、かのんは森の出口へ目を向けた。
か「私たちを救ってくれた可可ちゃんの夢も、最後まで叶えてあげなきゃね」
す「べ、別に可可のことなんて……。
まあ……今はLiella!が大事なのは認めるわよ」
か「うんうん、素直でよろしい」
す「くっ……素直ついでに言ってやるけど」
相手の顔を直視できないまま、すみれはぼそぼそと正直に話した。
す「私が歌姫になりたくなったの、あんたのせいだからね」
- 14 :名無しで叶える物語:2022/03/22(火) 23:16:45.50 ID:Mcp47VM9.net
- か「私の?」
す「今までは自分が歌が好きかどうかなんて、そもそも考えもしなかったけど。
歌に全てを懸けて、そのために悩んで苦しんできた奴が目の前に現れたら。
私にとっては歌は何なんだろうって、どうしても考えちゃうじゃない。
だから……この夢は、澁谷かのんと出会わなきゃ生まれなかったわ」
か「すみれ……!」
感極まって自然と出た言葉に、かのんは照れ笑いで口を押さえる。
か「つい呼び捨てにしちゃった。ごめんね、すみれちゃん」
す「いいのに、別に呼び捨てで。
少なくとも高校卒業後は、ちゃん付けは勘弁してよね」
か「それって卒業した後も、私たちの付き合いは続くってこと?」
す「そりゃあ……二人とも歌っていれば、顔を合わせることもあるでしょうよ」
ふふ、と。どちらからともなく笑いが漏れて、大人になった自分たちを想像する。
鳥居の向こうに原宿の街が見えてきた。
神域を後にして、二人の歌姫候補は元の日常へ帰っていく。
- 15 :名無しで叶える物語:2022/03/22(火) 23:18:33.59 ID:Mcp47VM9.net
- 終わり
ペイちゃんは人間が出来すぎてる
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