【社説】第2次安倍改造内閣発足、多様な民意を聞き入れよ。女性蔑視、大企業優遇、視野が狭い外交…偏った政策ごり押しの是正を

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ソース（北海道新聞）　http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/560782.html

　求心力を高め、長期政権への基盤を強化する。

　きのう発足した第２次安倍晋三改造内閣と自民党新役員の顔ぶれからは、首相のそんな考えがうかがえる。だが具体的に何をしたい
のか、そこが見えない。

　女性閣僚を増やし清新さをアピールしたが、骨格をなす重要ポストは代えなかった。党役員は選挙に備えて重厚な布陣にした。
外への発信より、守りに重きを置いたと言える。

　内向きな姿勢である。批判に耳を傾けようとしなかった安全保障政策の二の舞いにならないか。新体制発足を機に、数の力を背景と
したこれまでの強引な政治手法を改めてもらいたい。

　大切なのは多様な意見を聞き入れることだ。政策の優先順位を洗い直し、国民生活に直結する問題から解決していってほしい。

■重要閣僚軒並み続投

　首相は麻生太郎副総理兼財務相、菅義偉官房長官、甘利明経済再生担当相、岸田文雄外相ら重要閣僚を軒並み続投させた。

　入閣待望組の要望に応えて内閣改造に踏み切ったが、外交や経済・財政政策、官邸主導の政権運営は変えない意思の表れだろう。

　塩崎恭久厚生労働相や高市早苗総務相らも首相に近い。第１次内閣で揶揄（やゆ）された「お友達内閣」の再来とならないか。

　首相の政権運営に対しては自民党内に不満が募っている。幹事長人事でそれが表面化した。

　首相は石破茂前幹事長の続投希望を退け、安全保障法制担当相を打診したが、石破氏は固辞した。理由は集団的自衛権の行使容認
をめぐる首相との「安全保障観の違い」だという。

　政権与党のトップとナンバー２との間でこんな基本的立場の違いが残っていたとは驚きである。拙速な閣議決定が生んだひずみに
ほかならない。

　人事権を振りかざす官邸主導の政治は与党内に物言えぬ空気を生み出した。首相にはその反省が求められる。

■偏った政策の是正を

　谷垣禎一幹事長らベテランが入った新執行部に求めたいのは、首相の独断専行に歯止めをかけることだ。同時に、公明党や野党各党
との対話を密にする努力も忘れてはならない。

　首相は女性閣僚の数を２人から５人に増やし、「女性の活躍」を政権の看板としたい考えだ。

　大事なのは数より中身である。社会の中で男女の役割を見直す意識改革が必要だ。自民党では地方議員のセクハラ発言に象徴
されるように女性蔑視（べっし）の空気が残る。その根絶が出発点だ。

　もう一つの目玉は「地方創生」である。だが、実態は従来型公共事業や補助金の看板の掛け替えになろうとしていないか。仕事と生活の
両面から地域の自立を後押しする具体的な道筋を示すべきだ。

　ほかにも安倍政権には国民を脇に置いた政策が目立つ。

　消費税率引き上げで実質賃金が目減りする一方、法人税の軽減などによる大企業優遇があからさまだ。国民の不安に答えないまま、
原発再稼働に突き進んでいる。

　偏った政治をごり押しするのはもうやめてもらいたい。

　外交も視野が狭いのでは困る。米国の要望は聞き入れるが、中国や韓国への配慮を欠いては、外交が成り立たない。世界各国も懸念
を表明している。

　首相は靖国神社参拝への批判を謙虚に受け止め、米国からさえ「歴史修正主義」として批判される現状を改善する必要がある。

（>>2以降に続く）