【中国】習政権を揺るがす「武瘋子」問題　浮かび上がる農村部の貧困 [8/3]

紅あずま ★＠＼(^o^)／

【真・人民日報】習政権を揺るがす「武瘋子」問題　浮かび上がる農村部の貧困
富坂聰(拓殖大学海外事情研究所教授)
夕刊フジ(ZAKZAK)：2016.08.03
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20160803/frn1608031550002-n1.htm

　前回は、中国でいま、暴力的な傾向を持つ精神障害者を指して使われる「武瘋子」の問題が社会に深刻な陰を落としている現実について書いた。

　くしくも日本でも植松聖（さとし）容疑者（２６）が相模原市緑区の障害者施設に侵入し、１９人を殺害する事件が起きた。
植松容疑者は事件前から奇行を繰り返し、今年２月には「自傷・他害の恐れがある」として措置入院させられていた。
事件の全容は明らかになっていないが、凶行に走った植松容疑者も「武瘋子」だったのだろうか。

　一方、中国ではこの問題は深刻で、その数の多さと対策が追い付いていないのが実情である。

　人々の注目度の高い新聞として知られるタブロイド紙「新京報」が５月２９日に報じた記事の見出しにはそのことが如実に表現されている。

　《中国全土で約１億７３００万人の精神障害者が存在　うち９割以上が専門的な治療を受けられていない》

　国土が広いとはいえ、日本の人口さえも上回る数となれば大変だろう。

　こうした気の毒な人々を引き受ける医療機関という視点で見れば、なおさら絶望的だ。

　精神障害者の中でも、ときに衝動的に暴力的な行為におよび無差別に人を傷つけてしまう「武瘋子」のことは前回、事例を挙げて説明した。

　多くは殺人など深刻な犯罪となっているが、では一体どのくらいの割合で「武瘋子」はいるのだろうか。

　２００９年、中国疾病予防コントロールセンターが示した統計によれば、重度の精神障害と認定される患者は全国で約１６００万人。
うち約１０％が潜在的な暴力的傾向を持っていることがわかったというのだ。

　中国の人口分布は、経済の発展に従い都市部に移動したが、それでも０６年時点で人口の約６０％は農村にあった。

　つまり精神障害者にとって病院は身近な存在ではなかった。

　ゆえに貧しい農村部にとって「武瘋子」の存在は頭の痛い問題であり続けた。
なかでも家族にとっては深刻で、その反動で小屋に監禁したまま家畜のように放置していたケースも少なくなかったという。

　行政でも対応に困り果てているようだ。

　「一級貧困県」と国が定め、また精神障害者が多いことで有名な陝西省の貧農地区・永寿県の公安局に勤務する李育民副局長が週刊誌「中国新聞週刊」に寄せたコメントによれば、現地では対応に困った県レベルの公安が地元の「武瘋子」を別の県が管轄する土地に捨ててしまうという問題も起きているというのだ。

　永寿県中医院精神心理科の医師・王振義氏は、記事の中で、「都会に比べて農村は精神障害者の割合が０・７％も高いのは、人の流動がないため」と解説している。

　現状、治療を行うにしても医療機関が近くになく、費用もない患者ばかりということだ。

　それに加えて、そもそも中国には施設そのものが不足しているという問題もあるのだ。

　前出の中国疾病予防コントロールセンターによれば、精神障害者を収容できるベッド数は患者１万人に対してわずか１・０４床。
医師の数は２万人にも満たないという。

　２０年には、中国の全医療費の４分の１が精神障害者に向けられるとの予測もある。

　「心の病」への対応は、日本だけの問題ではないようだ。

■富坂聰（とみさか・さとし）　拓殖大学海外事情研究所教授。１９６４年生まれ。北京大学中文系に留学したのち、週刊誌記者などを経てジャーナリストとして活動。中国の政・官・財界に豊富な人脈を持つ。『中国人民解放軍の内幕』（文春新書）など著書多数。近著に『中国は腹の底で日本をどう思っているのか』（ＰＨＰ新書）。
　

▼関連ニュース
【真・人民日報】中国社会を揺るがす「武瘋子」問題の闇　暴力的な精神障害者による事件多発(1/2ページ)
夕刊フジ(ZAKZAK)：2016.07.27
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20160727/frn1607271550001-n1.htm
　

【中国】習政権を揺るがす「武瘋子」問題 浮かび上がる農村部の貧困 [8/3]

【中国】習政権を揺るがす「武瘋子」問題　浮かび上がる農村部の貧困 [8/3]