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宇宙世紀の小説書いてみてるんだけど
- 1 :通常の名無しさんの3倍:2019/07/24(水) 00:50:40.43 ID:XfFrIQoe0.net
- 小説書いたこともなければスレッド建てるのも初めてなんだけど、もし誰か見てるなら投稿してみる
- 598 :通常の名無しさんの3倍:2019/10/27(日) 20:06:31 ID:rKply1c80.net
- ふとプロローグを読み直しましたが...今度こそ本当のエピローグですねw
お疲れ様でした
なるほど、ベトナムからニューギニアまでの短い期間とは言えど
悶々とアプレゲールな生活を送っていたワーウィックが遂に自分の居場所を見いだす。
それも愛憎入り雑じった地球に対してではなく、やはり鉄の器であるガルダの、同じ中の人々から見いだしているのがまたいいですね!
戦場自体が無くなっても、終戦してミノ粉が薄まればまた交流の機会があるでしょうし、いいなぁ......いいな〜(軽くshit)
いやはや、読みやすく、面白く、心暖まる作品を本当にありがとうございました。
もし また機会があれば、是非ともお会いしたいです!
- 599 :◆tyrQWQQxgU :2019/10/27(日) 23:48:05 ID:HDjUbp870.net
- >>597
最後までお付き合い頂いてありがとうございました!
続編も書けたらなぁと思いますが、正直まだ何の準備も出来ていないので…笑
とはいえ、次を書くとしたらっていう伏線は沢山用意しておきました!いずれ書く時がきたら…?
- 600 :◆tyrQWQQxgU :2019/10/27(日) 23:55:33 ID:HDjUbp870.net
- >>598
え?何のことです?(すっとぼけ
ほんとのエピローグ()まで辿り着けて本当に良かったです…笑
地球がどうとかっていうスケールの話より、彼にとっては隣にいる仲間にこそ自分の存在価値を見出してほしかったというのがあります。
アムロやシャアは大きなスケールの中では偉業を成し遂げたり歴史に名を刻む人物ではありましたが、個人としての幸せを享受できたかというと微妙なところじゃないでしょうか。
この物語では、もっとミニマムな幸せを見つめ直しても良いんじゃないかと思った次第です。
- 601 :通常の名無しさんの3倍:2019/10/28(月) 16:32:29 ID:43ktE8o30.net
- シャアなんて裏切りの経歴まみれで挙げ句の果てにフィフスルナやアクシズ落としで大虐殺を画策しているのに幸せになるだけの資格なんて無い
シャア自身も個人の幸せなんて得られると思ってなさげ
- 602 ::2019/10/29(火) 05:50:03.84 ID:foFjUzco0.net
- >>601
その果てにあったのが母性っていうのがまた何とも…。
血統や使命感に対する当の本人の願望が噛み合わなくて色々こじらせちゃった人って感じですよね。
女遊びしてるだけとかならまだチャラいで済むんですが…w
ガンダムってそういう願望のスケールに対してぶっ飛んだ行動に出るキャラクター多い気がしますw
- 603 :通常の名無しさんの3倍:2019/11/22(金) 22:16:40 ID:RLXnGqu60.net
- https://i.imgur.com/v2BOEw5.jpg
☆
- 604 :通常の名無しさんの3倍:2019/12/06(金) 19:12:05 ID:Up+Tcuff0.net
- 勝手ながら登場人物紹介?
朱雀隊
○サム・ワーウィック
この物語の主人公。階級は大尉。多分27歳。一人称は「私」。
所属はジオン公国軍機動部隊(地上降下組)→カラバ・朱雀隊(応援)→エゥーゴ。
憂いを抱えたインテリ戦中世代で時代に乗り遅れ気味のオールドタイプ。
とはいえSFSをぶつける、水中戦を提案する、一時的に全体指揮を取るなど機転は利く。
自分の進む道を考えあぐねており一度は戦線を離れたがジャブロー核自爆の真相を知り
再び操縦桿を握ることを決意、やがて様々な人々と共に戦う中で居場所を見いだしていく。
搭乗機はMS-05(プロローグ)→マラサイ試作機(グリーン、途中に腕移植や換装など有、Ep1-64)→ジムII(Ep68)
○ベイト・アトリエ
サムの相棒的存在で一年戦争時代のエース。階級は中尉。多分29歳。一人称は「俺」。
金髪坊主頭でピアスやタトゥーをしている。厳つい風貌だがどちらかといえば虚弱体質(Ep5, Ep8)。
所属は地球連邦軍→カラバ・朱雀隊(応援)→エゥーゴ。
自由な天才タイプで優しくてしぶとい、憎まれ口を叩く損な役回りだが死にそうにはないタイプ。
気配を察知する等ニュータイプの素養が見られる。
搭乗機はマラサイ試作機(白・赤、Ep1-17)→ベースジャバー(Ep20-21)→ガンダムMK-IV(Ep26-64)→ジムII
○メアリー
自称6歳のウルフカットの少女。旧称・エイト、ハチ(ニタ研)、貨物ちゃん(自称)。一人称は「あたし」。
ムラサメ研究所からの脱走者で人に色(性質)を見る能力を持つ。自分の色は見えないが、本人は青が好き(Ep9, Ep2)。
自身にメアリーと名付けて大人に物怖じしないなど、理知的で活発な性格。
ニューホンコンにおける軍事作戦に出撃する可能性があった(Ep25)。
ニューギニア基地戦では、その感性と意志の強さを以て追ってきたサイコガンダムをコントロール下に置いた(Ep55)。
戦後世代の主人公といったところ
○トキオ・サドウスキー
大柄で豪快、口髭オールバックの大尉。バッカスとは旧知の仲でカラバに同伴。一人称は「俺」。意外と嫉妬深い。
ずっとノーマルスーツを着ているタイプの人で、キャノン装備のMSに乗ると落ち着く病気。
Ep51からはMS部隊長代理を務める。
搭乗機は量産型ガンキャノン→ジムキャノンII→ネモ(Ep18)→リック・ディアス(Ep22-32)
→ガンキャノン・ディテクター(Ep33-41)→リック・ディアス1.5(Ep48-60)
○スティレット・シェクター
華奢な黒髪、小柄で背が低い少尉。歳は20そこそこ。一人称は「俺」「僕」。
繊細で礼儀正しく工学に詳しい。
Ep4で撃墜された同僚のエドワード・イーエスと仲が良かったのもあって、ワーウィック以上に悶々として見える。
一方で度胸があり困ってる相手は敵でも放っておけない(SFSやパラシュート無しに降下したことも、Ep12-14)。
搭乗機はネモ(Ep12)→ド・ダイ改(Ep16)→Gディフェンサー(Ep22)→メタス改(ビームガン装備、Ep48-60)
○ライン・W・バッカス
40くらいの褐色ドレッドヘアの少佐。一人称は「私」。
地球生まれ地球育ちで明確にティターンズを嫌っている。サドウスキーとは旧知の仲で体育会系。
MS部隊の指揮官だったがスギ艦長の戦死に伴い艦長代行を務める。
搭乗機は改造ネモ(Ep22)→疑似ネモ・ディフェンサー(Ep23)
○メイ・ワン
後述
○ヴィジョン
朱雀のメカニックマン。あけすけに物を言える性格。一人称は「俺」。
ジオンの好戦的な面は嫌いだがメカには惹かれるという悲しい星に生まれた男。
機械の系統を血縁に例える。
○レイ・スギ
朱雀の艦長。一年戦争時はレビル派として後方支援を行っていた。一人称は「私」。
子供と話す時は目線を合わせ自分のことを爺さんだと言うタイプ。軍人だが上着に飴を入れて持ち歩いている(Ep7)。
おおよそ好好爺と言える一方、飴と鞭の扱いも上手い模様(Ep11)。
ホワイトベースに補給を行い、ジャブローでクルーと顔を合わせたこともある生き字引。
Ep44で朱雀艦橋にて戦死、葬儀で棺は海へと弔われた
- 605 :通常の名無しさんの3倍:2019/12/06(金) 19:14:13 ID:Up+Tcuff0.net
- 勝手ながら登場人物紹介?
ジオン残党
○アルフレート・フラマス
ワーウィックの旧友でジオン残党として戦場に残り、エゥーゴ参加を打診した人物。
黒い長髪をセンターから横に流した、筋肉質な体格のいい男。
仲間を引き連れ満身創痍の朱雀隊を援護した後、ジオン残党としてティターンズに宣戦布告した。
搭乗機は専用ゲルググ(Ep41)
ティターンズ(U型潜水艦、ペガサス級、ミデア)
○アルニコ・フェンダー
ティターンズに初期から参加している少将。ジャブローからニューギニア基地に転任となった。
純粋に反乱の芽を摘みたいだけの事なかれ主義者だったが、戦況が不利になるや敵前逃亡を試み
それを察知したアイバニーズを轢き殺そうとするものの逆にファラリスの雄牛に処された
○ヴォロ・アイバニーズ
特殊部隊出の優秀な少佐。普段は感情の読めない男で、フェンダーの右腕として数々の武勲を挙げてきた。
エゥーゴ及びカラバの作戦拠点制圧の命を受け指揮を取るもアトリエ1人に苦戦する部隊に業を煮やし、自ら出撃する。
優れた戦闘技術でアトリエのマラサイを空中分解させ(Ep17)、朱雀を火の海にした(Ep36-38)。
信念も何もなく戦いこそが人生であると定義しており、カラーリングは深く潔い黒を好む。
Ep64で崩落した潜水艦ドックにて戦死。
搭乗機は改造ジム・クゥエル(Ep61より更に改造されている、Ep17-64)
○ストランドバーグ
アイバニーズの側近的存在で白髪白髭のベテラン兵士。階級は中尉。
最近の部隊員の名前が覚えられなくなってきている。
32話でベトナム上空にて戦死。
搭乗機はジム・スナイパーII(ベース : ジム・クゥエル、Ep31-32)
○ビー
小柄な短髪の男で白兵戦に強い。階級は少尉。
調子に乗りやすく敵機を通信で挑発することさえある(Ep37)。
Ep60でニューギニア基地上空にて戦死
搭乗機はギャプラン(リミッター付、Ep34-41)→改造ギャプラン(Ep59-60)
○スペクター
ほっそりとした長身の眼鏡男で電子戦や情報処理に強い。階級は大尉。
咄嗟に装甲をパージして接近戦に突入するなど、臨機応変なパイロットとして描かれる。
一方でガンダムに乗るやいきり立つ病気である。
また、フェンダーの間諜としてアイバニーズを監視していた。
Ep59でニューギニア基地の地下試験場にて戦死。
搭乗機はジム・ストライカーカスタム(ベース : ジム・クゥエル、Ep34-41)→改造ジム・クゥエル(Ep41)
→ガンダムMK-IIIハーピュレイ(Ep59)
○メイ・ワン
地球連邦軍の諜報員。背が低く前下がりのボブヘアーで表情が分かりにくいようにしている。
所属は地球連邦軍→ティターンズ→カラバ・朱雀隊
コロニーに生まれ不自由ない幼少期を過ごすも戦時の混乱で両親と生き別れ、
ジオン残党と通じていた(とされる)女性を姉のように慕い共に地上へ降下、
護身術を学ぶも粛清によって彼女を失い、より強くあるために武術に打ち込み、連邦軍の育成機関に入った。
エゥーゴの作戦と動向を調査する為に朱雀へ潜入していたが
メアリー奪還任務のためにアイバニーズ隊に編入、帰還後ムラサメ研究所の部隊との接触を命じられる(Ep20)。
ドジっ娘気質で連携が苦手だが、縄抜けや演技は上手く戦闘スキルも工作員4人を瞬時に屠る程(Ep11, Ep39)。
うっかりアトリエに見つかり逃亡を図るも、追ってきたバッカスに気絶させられ尋問されるも脱走(Ep10-12)。
遭難時にシェクターに助けられ、ある出来事でアイデンティティが崩れかけた折にアトリエに誘われカラバへ出奔。
アトリエとシェクター両方に満更でないようで、メアリーとは徐々に姉妹のような関係になっていく。
搭乗機はネモ(Ep12)→ベースジャバー(Ep20-21)→ガンダムMK-IV(Ep26)→ジムII(Ep55-64)
- 606 :通常の名無しさんの3倍:2019/12/06(金) 19:15:30 ID:Up+Tcuff0.net
- 勝手ながら登場人物紹介?
ニタ研
○ネイト・ウェイブス
長い黒髪の女性でムラサメ研究所の研究員。
一年戦争後のニュータイプ研究に参加して即落ちしたクチで、人類全体の覚醒に希望を感じていた。
オーガスタ研究所からの盗用データで製作したガンダムMK-IVをティターンズに引き渡そうとしていた(Ep24)。
研究のために自らの娘を手放したことを長く後悔している。
Ep26でムラサメ研究所にて死亡
○強化人間
Ep56-58に登場。本名不詳。
本来はサイコガンダムを遠隔操縦するためニューギニア基地に送られていたが
機体のコントロールをメアリーに奪われたことで、基地内の試作機バイアランで出撃。
インコムを撃ち抜き4機相手に拘束戦闘を展開、次々に敵装備を破壊しシェクターを追い込むも天パに刺されて戦死
ゲスト
○ハヤト・コバヤシ
Ep1とEp54に登場、カラバの指導者に相当する人物でワーウィックとアトリエに直接機体を届けた。元WBクルー
○頬のこけた細身のスーツの男
Ep19にてモニター越しに戦況報告を受け思案顔になっていた男。
>>427コメントにてウォン・リー本人であると明言されている
○恰幅の良い男
ベトナム基地におけるエゥーゴ・カラバの軍議に参加していた将校。
戦況を理解せず緊張感のない物言いでワーウィックを苛立たせる。
恐らくゴットン隊の人質に捕られたりアイリッシュ級マスタッシュでアクシズ攻略を目論んだあのエゥーゴ軍人だろう
○天パ
Ep54に搭乗、マップデバイスを無くしたメアリーに誰にでも居場所があることを教え、連邦軍基地まで案内した。
続くEp58ではアウドムラ隊の僚機として早業でバイアランを仕留め、アトリエにメアリーのことを頼んで去っていった。
>>509ではワーウィックからレイという名の大尉ではないかと示唆されている。
搭乗機はリック・ディアス(Ep58)
- 607 :通常の名無しさんの3倍:2019/12/07(土) 09:34:44 ID:iYj4kuAy0.net
- コレナニ?
- 608 :通常の名無しさんの3倍:2019/12/07(土) 09:49:48 ID:HdhJcBo30.net
- 架空戦記におけるニューギニア島の戦いまでを描いた架空戦記
- 609 :通常の名無しさんの3倍:2019/12/12(木) 17:03:55 ID:dEJEHwDM0.net
- >>87から見れるpixiv版、久々にチラ見したところ
5ch版から2話追加で70話構成になってるんですね
1つはあとがきだとして、もう1話はいずこに...?
- 610 :通常の名無しさんの3倍:2019/12/13(金) 21:49:26 ID:lj4Zw39T0.net
- https://i.imgur.com/aFYIZzs.jpg
☆
- 611 :通常の名無しさんの3倍:2019/12/14(土) 18:54:17 ID:1uvCQqkN0.net
- 浮上
- 612 :◆tyrQWQQxgU :2019/12/15(日) 19:48:25 ID:wrV+LsOI0.net
- うおー!久しぶりに覗いてみたらまだ書き込んで頂けてるとは!皆さんありがとうございます!
>>604
凄く嬉しいです!ご紹介ありがとうございます!!細かな所まで拾って頂いている…!!
登場人物を持て余してしまった感もあったので、もう少し掘り下げていける機会があればと思います。
- 613 :◆tyrQWQQxgU :2019/12/15(日) 19:50:48 ID:wrV+LsOI0.net
- >>609
これはあれですね、冒頭がpixiv版だと話数に入ってます。あとは仰る通り後書きで70話。
切りがいい数字になったのはただの偶然ですが、結果的に締まったかなと笑
- 614 :◆tyrQWQQxgU :2019/12/15(日) 19:53:28 ID:wrV+LsOI0.net
- 折角なのでお伝えしておくと…実は続きを執筆中です…!
4話分書き終えていますが、まだ定まっていない部分もあるのでもう少しお待ちいただければ!ご期待ください!!
- 615 :通常の名無しさんの3倍:2019/12/15(日) 22:37:09 ID:aEi26jdx0.net
- お久しぶりです!
話数の件、了解です。
いやてっきり何話か見落としたのかと思いました...w
続き、それなりに進んでるんですね!
たとえば仮称の部分を後から「あぁ、こっちにしとけば良かった!」などと思って後悔するのも勿体ないので
(一応pixivの方は改稿できるようですけど)その時点で納得のいくように書いていただければ、と思います。
さてZの、頻繁に幽霊でも出そうな宇宙空間、何処から始まるのか...楽しみです
- 616 ::2019/12/21(土) 10:19:31.73 ID:obeaV6xL0.net
- >>615
お久しぶりです!
お待たせしてしまいましたが、そろそろ続きを始めようかと!
仰る通り、舞台を宇宙に移した話になります。
ところで、投稿はこちらが良いですかね?別でスレ立てした方がいいでしょうか?
今回は終わりを決めていないので、もしかしたらグリプス戦役終盤まで行くかもしれません。
そうなると1000超える可能性が…。笑
- 617 :通常の名無しさんの3倍:2019/12/21(土) 10:29:00 ID:udRChSLG0.net
- 此処はpixiv更新した時にその告知だけに使ったら?
- 618 :通常の名無しさんの3倍:2019/12/21(土) 12:12:38.07 ID:0kUclpJT0.net
- 私的にはpixivの一覧から見ていくのが面倒なので、こちらで一気読み出来ればな...と思うところもあります
- 619 :◆tyrQWQQxgU :2019/12/22(日) 01:18:28 ID:gCx9nIPL0.net
- なるほどなるほど…。
そしたら今まで通り、こちらに投下していきます。
一人でも多くの方の目に止まる方が僕も嬉しいので!
それじゃ、第2部を始めていきましょう…。
- 620 :◆tyrQWQQxgU :2019/12/22(日) 01:31:27 ID:gCx9nIPL0.net
- これまでの、そしてこれからのあらすじ。
ジオンでの敗戦を経験し、アイデンティティを喪失した主人公サム・ワーウィック。
彼は自らの過去の過ちをティターンズの横行に重ね、エゥーゴの大尉として戦いに再び身を投じる。
一時的にカラバの部隊と行動を共にする事となった彼は、同じくエゥーゴのベイト・アトリエ中尉やニュータイプ研究所の少女メアリー、そしてカラバの戦友と激戦を潜り抜けていく。
第1部は、地上におけるティターンズ最大拠点の1つであるニューギニア基地攻略を完遂し、再びアイデンティティを確立した彼が次の戦地へと飛び立ち幕を閉じた。
続く第2部。月周辺の哨戒任務にあたっていた主人公、ゲイル・スクワイヤ少尉…通称"死にたがりのゲイル"は日々の任務に飽き飽きしていた。
その部隊に隊長としてある男がやってくる。彼の着任を契機に、エゥーゴ・ティターンズの抗争は彼女らを激動の時代へと巻き込んでいくのであった…。
- 621 ::2019/12/22(日) 01:35:10.96 ID:gCx9nIPL0.net
- 好奇心は時として、命を代価に欲するのかもしれない。
底無しの宇宙に漂う機体の中で、ゲイル・スクワイヤ少尉はぼんやりとした思考を巡らせていた。ヘルメットを放り出すと、ウェーブがかった肩につくほどの黒髪が無重力に揺れる。
彼女は小柄な身体をシートに埋める様にして、その猫の様な青い目を閉じていた。ずっとこうしていられたらどんなに気楽か。
薄っすら目を開けて、遠くに映る青い星を眺める。地上ではティターンズの拠点が次々と陥落していた。破竹の勢いで進撃するエゥーゴ・カラバの両軍に、裏で同調する連邦軍の派閥も増え始めているという。
エゥーゴ所属の彼女にとっては旗色の良い話だが、大局の物事など関心の薄い話でしかなかった。
- 622 ::2019/12/22(日) 01:36:22.05 ID:gCx9nIPL0.net
- 『…少尉!スクワイヤ少尉!』
「…はい」
耳障りな通信が入り、気怠く身体を起こす。同僚のフジ中尉だった。とにかく息苦しいほどにお堅い男だ。
『無事か?てっきりやられたものかと。動けるのなら戻れ』
「帰投します」
スクワイヤ少尉達は月面近くの暗礁区域で偵察の任を帯びていた。このところ近辺でティターンズ艦隊の動きが活発化している為だった。恐らく大規模な作戦が行われると思われる。
今日もいつもの様に小競り合いになり、少尉が少し被弾したあたりで敵機は宙域を離脱していった。どうせなら落としてくれれば良かったものを。そう呪いながらそのまま漂っていたのだった。
彼女は、あまりに退屈な日々にうんざりしていた。いっそ死ねればどんなに楽か。しかし、死んだ先も退屈だったら?もし死が終わりでないとしたら、その先を知るのは死んだ者達だけだ。
楽観的にみるなら、そこが楽園だから彼らは現世に還らないのかもしれない。
- 623 ::2019/12/22(日) 01:37:49.81 ID:gCx9nIPL0.net
- 帰還すると渋々フジ中尉についていきながらブリッジへ向かう。
スラリと背が高く、姿勢の良いテキパキとした歩き方は彼の性格そのものの様だ。こざっぱりとした短髪の面長で、太ぶちの黒眼鏡からは切れ目が覗いている。
「ローランド・フジ中尉ならびにゲイル・スクワイヤ少尉。只今帰投致しました」
ブリッジに到着すると、中尉はハキハキと口上を述べた。
「報告ご苦労さん。まあ、大事になったらなったで他の連中がどうにかするさ…。ふあ…俺達はあくまで偵察!ゆるゆるやろうや」
艦長のファルコン・グレッチ少佐は欠伸をしながら目を擦っている。フジ中尉とは対照的にいい加減な男である。特徴といえば虎髭と飛び出た腹、それからいつも軍帽を深く被っていた。
この様子だとスクワイヤ少尉達の偵察中も居眠りでもしていたのだろう。
「艦長…!いつも申し上げておりますが」
「ああ、わかってるわかってる。昨夜は深酒しちまってな…。そうカッカするな」
詰め寄るフジ中尉を手で制するグレッチ艦長。もうこの光景も何度目だろうか。諦めたフジ中尉が肩を落としている。
- 624 ::2019/12/22(日) 01:38:49.71 ID:gCx9nIPL0.net
- 「しかしなぁ、"死にたがりのゲイルちゃん"よ。わざと被弾するな。メカニックの仕事が増える」
そう言いながら、グレッチ艦長が眠そうに目を細めながら肩肘をついている。
「…わざとじゃないんですけど」
スクワイヤ少尉はブリッジの外の眺めに目を逸らしながら小声で答えた。
「うそこけー!お前、ほんとは操縦滅茶苦茶上手いって聞いてるぞおい!」
急に身を乗り出した艦長がツバを飛ばしながら少尉を指差す。
「何を聞いてそんな事…。買いかぶりですよそんなん…!」
少尉は両手でツバから身を守る様にして嫌がりながら言い返す。
「いいから気をつけろ!若い女がそんなんでどうする!?世の中楽しい事いっぱいあるぞ!何なら俺が教えてやろうか!」
「はあ…最悪」
今時セクハラ親父なんて流行らないが、いつの時代も何処かに居るものなのだろう。スクワイヤ少尉は溜息をついた。
- 625 ::2019/12/22(日) 01:39:46.91 ID:gCx9nIPL0.net
- 「それはそうとしてだな…。お前らにも言っておこう。司令部から伝達があった。人員の補充だそうだ」
そういうと艦長はタブレット端末をフジ中尉に手渡した。
「お前らの上官だ。MS隊の隊長として配属になった。お前らのお守りはこれからはそいつがやる」
艦長をよそに、フジ中尉は真剣な眼差しで端末を見つめている。スクワイヤ少尉も覗き見ようとしたが、身長差のせいでまるで見えない。この堅物はその辺りの気遣いは出来ないらしい。
「御仁はいつ頃到着で?」
結局少尉には見せることなく端末のモニターを消灯した中尉が聞く。
「明日だったかな?よく覚えてねぇな」
「こんな大事な話、何でそんなギリギリになってするんです??と言いますか、いつ来るかも正確に把握してらっしゃらないので??」
また中尉が怒り始めた。もう好きにやっててくれと思いながら、取り敢えずどんなやつが来るのか想像を膨らましていた。今より状況が良くなるならどんなやつでも構わないが。
- 626 ::2019/12/22(日) 01:40:25.78 ID:gCx9nIPL0.net
- 「あの…艦長…?」
オペレーターのグレコ軍曹が消え入る様な声で間に入る。この女性オペレーターはいつも居るのか居ないのかわからない。その位影の薄い女だった。
「どうした?」
怒る中尉に辟易しながら艦長が聞く。
「その…新しく来られる方が…着艦許可を求めてます…」
「あ、今日だったのか」
今しがた思い出したかのように素っ頓狂な反応をする艦長。この艦長はこれでよく少佐になったものだ。案の定更に中尉が怒っている。
「嘘でしょう!?もしかしてこの間納入した新型も…」
「そんなのもあったなそういえば!」
「艦長!!!!!」
少尉は頭痛がしてきた。その後もしばらくその調子で見苦しい大の男達の漫才を見ながら突っ立っていた。
- 627 ::2019/12/22(日) 01:41:45.13 ID:gCx9nIPL0.net
- 「失礼」
飽きずに問答を続けていたところに、見知らぬ男が入ってきた。
「そのまま外で待つ訳にも行きませんでしたので、着艦させて頂きました…。本日より着任致しました、サム・ワーウィック大尉であります」
物腰の柔らかい、感じのいい男だった。バイザーを外したその顔には大きな火傷の跡がある。
「おお!君か!すまんな、ちょっと取り込んでたものでね。私が艦長のグレッチだ」
そういってそそくさと椅子から降りると、わざとらしく胸を張って握手をした。新入りには良いところを見せておこうと虚勢を張っているようだが、傍から見れば滑稽も良いところである。
「ほら、お前らも挨拶くらいしろ!…すみませんな、躾がなっておりませんで…」
よく言う。こうやって世渡りしてきたのかもしれないと思うと、あながちある方面では無能とも言えない。おかげでこちらは大迷惑だが。
「…フジ中尉とスクワイヤ少尉だな。よろしく頼む。よろしければ艦内を案内していただきたいのですが、どちらかお借りしても?」
ワーウィック大尉がそういうと、ハッとした艦長がまた胸を張る。慣れないことをしている艦長を眺めるのもまた一興かもしれない。
「よろしい!…うむ、ゲイルちゃんよ、案内してあげたまえ」
「私ですか?」
「なんだ、どうせ暇だろうが!大尉殿を待たせるな!」
「…はーい」
仕方ないので、苦笑いするワーウィック大尉を連れてブリッジを出る。
- 628 ::2019/12/22(日) 01:42:44.82 ID:gCx9nIPL0.net
- 「私は馴染めそうかな?この艦は」
バイザーをかけながら大尉が笑った。確かにこの面子には異質な存在に思える。
「ん…まあ…何とかなるんじゃないですか?…てかそのバイザー、洒落てますね」
「いいだろ?お気に入りだ」
そういってバイザーから覗く眼差しに何となく安心感を覚えた。これからは幾らか気休めができそうだった。
第2部 1話 漂う
- 629 :通常の名無しさんの3倍:2019/12/22(日) 07:45:32 ID:NtzOVhhu0.net
- 5ちゃんに投下するならもうちょっと書き溜めてからの方がいいんじゃね?
- 630 ::2019/12/22(日) 10:07:24.31 ID:iXefjNe40.net
- >>629
一応今のところ(お陰様で筆が進んで)10話以上ストック出来てるんですが、投下自体話数まとめての方が良いですかね?
スマホだからか、地味な作業ですが結構コピペが大変で…笑
何かいい方法あれば教えてください!
- 631 :通常の名無しさんの3倍:2019/12/22(日) 13:45:13 ID:2kz/A0RD0.net
- PCを使う
- 632 :通常の名無しさんの3倍:2019/12/22(日) 14:40:27.46 ID:UDowvX6B0.net
- おっ、投下はやかったですね!
月曜あたりからかと思ってました
スクワイヤ少尉は直近の出来事でヤケになってるのではなく、刺激に飢えてる感じですかね、出だしの話からして。
それとも親を早くに失くすとか、過去の出来事から人並みの価値観を逸脱気味なのか...普通は一人で帰投するでしょうし
艦種も機種も明らかではありませんが、月面軌道の哨戒となるとアイリッシュまでは出さないでしょうし
流出品のサラミス改かな...いっそ大型輸送艦の小改造モデルとかw
艦長が悠長に呑んでる辺りから、アクティブな作戦というよりは適当な隕石に錨を降ろして簡易基地という塩梅ですね。
MSはジムIIかネモかと、特務という風でもないですよね。
新型が何なのか気になりますな(ジェモとかワーウィックに合いそうだけど、本格配備がダカール以降なのでどうかな...)。
前章で元ジオン兵としての縛りが取れたので、何でも乗りこなしてくれそうなのが期待ですね!
さてフジ(どうにもヘンケンのサラミスを思い出す)にワーウィックを加えてスリーマンセルで話が進むのか
アポロ作戦関連の展開もあるでしょうし急遽再編成みたくなるのか、楽しみです
- 633 ::2019/12/22(日) 16:25:06.51 ID:iXefjNe40.net
- >>631
そうなりますよねー…笑
出先で書いたり投稿したりが多いのでスマホ率高いんですが、まとめて出せるときにPC使うくらいしか無いですかね…
>>632
どうも!
僕としてはもう忘れ去られてると思っていたので、ここがちょこちょこ機能してるの見て書かなきゃと思いました!笑
彼女のバックボーンも少しずつ書いていきます。
ワーウィック大尉とはまた違う経緯でエゥーゴにいるんですが、物語的にも結構重要な部分になっていく予定です。
考察いい線いってます!!一旦ストップ!!笑
一応、なるべく新鮮なアイディア盛り込んでるつもりですけど…!笑
ちまちま時間見つけて1話ずつでも投下しようかと思ってましたが、明日休みなので今夜PCからどどんと一挙公開します!10話くらい!
- 634 ::2019/12/22(日) 23:09:28.49 ID:JcV85rst0.net
- スクワイヤ少尉はひと通り艦内の設備をワーウィック大尉に案内した。とはいえ彼女らの乗るサラミス改は古い改造艦で、それほど案内できる部分もない。案内が済んでしまうと特にやる事も無かったので、休憩室でドリンク片手に休んでいた。
「少尉は何処の生まれなんだ?」
簡易ソファに腰掛けたワーウィック大尉が聞いた。
「地球生まれです」
少し離れた椅子に座ったスクワイヤ少尉は簡潔に答えた。あれこれ喋ることは日頃からあまりなかった。
「そうか。何かあって宇宙に?」
「まあ…色々」
彼女は過去の話があまり好きではない。ほぼ反射的に浮かぶ、ある男の顔が必ずと言っていいほど胸の内をかき乱す。
「なるほどな。私は君とは逆に、最近まで地球にいたんだ」
「あちらは激戦が続いていると聞きました」
「この火傷もここ最近の話さ」
そういってバイザーを外してみせた。どうも火傷跡にコンプレックスがあるわけではないらしい。
- 635 ::2019/12/22(日) 23:10:16.63 ID:JcV85rst0.net
- 「あの時は正直死んだと思ったよ。起きたら病室だったんだが、現実の心地がしなくてな」
「へえ…!」
「?…この手の話が好きなんだな」
目を輝かせた少尉に気付いた様で、大尉が微笑みかけた。
「死んだらどんな心地なのかは…興味があります」
「それはまた」
「変だとか、気を病んでるとか色々言われますけど」
「私はそうは思わんよ。ただ、少し危ういな」
「"死にたがりのゲイル"なんて言われるくらいには」
そういってドリンクを手で弄びながら自嘲気味に笑った。
「…此処にいらっしゃったのですね」
フジ中尉がやってきた。折角の良いところで…間の悪い男だ。
「ああ、彼女の話を聞かせてもらっていたよ。興味深い子だ」
立ち上がりながらワーウィック大尉が言う。目が合うとまた彼はニコリとした。
「またおかしな事を言ってなければ良いのですがね。それはそうと、艦長がお呼びです。スクワイヤ少尉も来たまえ」
おかしな事とは何だ。不服に思いつつ、口をつぐんだまま彼らに付いていく形でブリッジへと戻った。
- 636 ::2019/12/22(日) 23:11:26.41 ID:JcV85rst0.net
- 「お呼び立てして申し訳ないな大尉」
到着した我々に気付いた艦長は、いかにもといった風に資料へと目を通していた。普段は成人向け雑誌を読んでいるところしか見たことがない。
「そんな。私は部下です艦長」
「いやいや!何でも前の戦線ではガンダムと肩を並べて戦っていたというじゃないかね!大尉もニュータイプというやつですかな」
「ニュータイプというのは…私の様な茫洋な男とは似ても似つきません」
ガンダム…ニュータイプ…。遠い世界のものだと思っていた単語が大尉と結びつくと、彼への興味は更に増した。
「それで、状況に動きが?」
中尉が相変わらずの姿勢の良さのまま切り出した。
「おう、それなんだがね。遂に司令部が敵さんの目的を察知したそうだ。やはり月面都市の占拠を狙っているらしい」
そう言いながら、再度資料に目を落とした艦長は髭をいじっている。
「月の都市といえば、グラナダかフォン・ブラウンですか?」
ワーウィック大尉の表情が少し険しくなった。スクワイヤ少尉はそんな彼に気付きつつも、変わらず艦長の話を聞く。
「そうさなぁ…。グラナダとすればティターンズとしては今より融通を利かせたいところだろう。
アンマンあたりなら、グラナダとあわせてAEの工場を抑えて我々の拠点も潰してしまえば…ゼダンの門とも連携しやすくなる」
「そうなるとまるで一年戦争時のジオンですな」
フジ中尉が大尉を横目に見ながら言った。
「しかし、基本的にはスペースノイドからの反発は避けられないでしょう。土地が土地です」
大尉は宇宙生まれと言った。この辺りの事情には詳しいのだろう。
「敵艦隊の動きも鑑みた上層部は、フォン・ブラウン市が本命だと当たりをつけているらしい。
大尉の言う部分もあるが、ティターンズは経済都市の中心を抑えることで政治的に今以上の影響力を持ちたいのかもしれん」
艦長にしては真面目な話をするなと感心していた。或いは別の高官の受け売りかもしれないが。
- 637 ::2019/12/22(日) 23:12:30.26 ID:JcV85rst0.net
- 「この敵の動きに対して、我々も後手には回らん。偵察は程々にして、ぐるりと月の裏側にいけとの事だ」
「ん?でもフォン・ブラウンは表側でしょ?…あ」
スクワイヤ少尉が突っ込んだ。しかし突っ込んだ後で気付いてしまった。
「そう!我々は、主力がフォン・ブラウン側で敵とやり合ってる間、グラナダにちょっかいを出されない様に張り付くのが仕事と言う訳だ!」
「はあ…いつも通りじゃないですか」
少尉は大きく溜息をついた。やはり主戦場にはお呼びでないと言うわけだ。偵察の次は見張り…結局そういう役回りなのだ。
「少尉、主戦場だけが花ではないぞ。我々の任務がなければ、主力は思う存分戦うことができない」
フジ中尉がもっともらしいことを言う。わかりきったことを懇切丁寧に説明してくれるのでありがたい。
「まあ、必ずしもフォン・ブラウンが本命とは限らんさ。仮にそうだとしても敵としてもアンマンからの掩護などはなるべく牽制したいだろうし、それなりの規模の戦闘にはなるはずだ」
早くも大尉は、戦いたがっている少尉の本音を察しているらしい。
「ま!これで我々の次の動きはわかったろ!各自、自分の相棒の手入れはしっかりしとけよ」
そういって艦長は我々を見渡したあと、また資料を眺めながら椅子を回して背を向けた。そういえば、彼はずっと資料のページをめくっていなかった気がする。
本当に眺めているだけなのか艦長。呆れつつ、スクワイヤ少尉は退出する大尉達に続いた。
2話 月面都市
- 638 ::2019/12/22(日) 23:13:27.68 ID:JcV85rst0.net
- スクワイヤ少尉達は狭い格納庫へと辿り着いた。本来サラミス級はMSの運用を想定していなかった為、船外にMSを立たせている事が殆どだった。彼女らの艦はその劣悪な整備環境を改善する為に増設された格納庫がある。
「しかし狭いな。整備も大変だろう」
大尉がこぼす。
「大尉は地球ではカラバの艦にお乗りになっていたとか?ガルダ級はさぞかし広い格納庫があったでしょうな」
中尉のそれは若干棘のある言い方だった。やっかみかと思いつつも、まあ羨ましい気持ちもわからんではない。サラミス改はMS3機を並べるだけで殆どスペースは無かった。
「良い艦だった。だが、それは格納庫が大きかったからではないな」
そういって大尉は面々を見つめた。怪訝そうなフジ中尉と、暗い表情のスクワイヤ少尉。それはいつもだが。
「艦の良し悪しは乗員次第だ。私は、皆が帰れる場所を作っていきたいと思っている」
何ともこの艦には似つかない青臭さだった。しかしスクワイヤ少尉には、大尉の顔の火傷がその青臭さに現実味を帯びさせている様にも思えた。
- 639 ::2019/12/22(日) 23:13:59.71 ID:JcV85rst0.net
- 「…そうなれば良いですがね。大尉の機体はこちらですよ」
軽い溜息をついた中尉は傍の手摺りを掴み、手の中で滑らせながら床を軽く蹴って進む。フジ中尉に続くスクワイヤ少尉とワーウィック大尉は、一番奥にある機体へと近付いた。
そこにあったのは、GMなどと比べると細身の機体だった。一般的な機体しか乗ってこなかったスクワイヤ少尉からすると、あまり見慣れないフォルムだ。大型のバックパックが目を引く。
「Z計画の発展試作機…百式改です。本来ならオリジナルの百式と同じ様に耐ビームコーティングを行う筈だったのですが、如何せんコストがかかりすぎます。その関係で通常装甲のエゥーゴカラーに」
中尉がまくし立てる。
「これはまた希少な機体を回してくれたものだな。性能は?」
大尉は腕を組んで機体を見上げている。
「以前乗られていたマラサイよりは高性能です。火力と機動力には目を見張るものがありますよ。とはいえ、それこそZの様なフラッグシップモデルには敵わないといったところでしょうか」
中尉が即座に応えると、大尉は満足げに微笑んでいた。
「流石フジ中尉、聞きたいことは大体頭に入れてくれている…助かるよ。しかしこの機体、私には十分過ぎるくらいだな」
「エイリアンみたいな頭…。嫌いじゃないですよ」
スクワイヤ少尉は胸の前で手をパクパクと動かして、チェストブレイクしたエイリアンの真似をした。
「エイリアンか。また古い映画を」
大尉が笑った。何の事か解っていない様子の中尉は首を傾げた。
「中尉も知らないことはあるんですよね」
茶化す様に少尉が言うと、彼はフンと鼻を鳴らした。
- 640 ::2019/12/22(日) 23:14:32.10 ID:JcV85rst0.net
- 「君らはずっとこのGM2か」
振り返った大尉は、少尉達の機体を眺めている。
「ええ。スポーツカーみたいなの渡されても困りますし…これで良いんです」
そういいながらも少尉は内心この機体には飽き飽きしていた。反応はイマイチな上、直線の加速もそこそこ。
かといって特別小回りが利くわけでも無いし、装備出来る火器も大したものはない。
「そういう割に不満はありそうだな?」
少尉の顔を覗き込む大尉。どうも少尉は考える事が表情に出やすいらしい。
「我々にはこれで十分です。大尉の様に武勲を挙げている訳でもありませんから」
割り込むようにまた嫌味ったらしく中尉が言う。糞真面目な中尉には、この面白みのない機体がお似合いだ。
「これからは武勲を挙げることになるさ、嫌でもな…。さて、私は機体に慣れておきたい。少し籠もるよ」
そういって大尉は自分の機体のコックピットへと消えた。
- 641 ::2019/12/22(日) 23:15:05.58 ID:JcV85rst0.net
- 大尉が機体を触っている間、フジ中尉も自分の機体を調整していた。スクワイヤ少尉も自分の機体の元へ来たものの、前回の損傷を補修したばかりでそんなに弄る部分もない。
暇を持て余しつつ、コックピットから格納庫の中を眺めていた。
新入隊長と堅物上司、飲んだくれ艦長…。濃い面子だが、スクワイヤ少尉はこの隊長の加入と新たな作戦指示に少し気持ちが踊る心地がしていた。
『パイロットの諸君!支度は出来ているか』
その飲んだくれから各員へ通信が入る。
『お陰様で万全です。まさかこれほどの機体を回して頂けるとは』
大尉が嬉しそうに応える。
『いやはや、私も驚いたがね…!戦果を期待しておりますよ』
モニター越しに手を揉みながら艦長も笑顔である。恐らく彼はこの機体の価値など理解していない。何せ"そんなものもあった"などと言っていたばかりだ。
『慣熟とまではいかなくとも、大尉も実際に機体は動かしておきたいだろう。3機で偵察がてら指定宙域へ先行したまえ。そろそろ艦も動かさねばならん』
そういって艦長は椅子へ座り直した。
『了解。GM2両機はどうか?』
『問題ありません。いつでも』
大尉の声に、フジ中尉がレスポンスよく応える。
『私も行けます』
少尉も手短に応え、出撃を待った。
- 642 ::2019/12/22(日) 23:15:32.88 ID:JcV85rst0.net
- ワーウィック大尉を先頭に、3機はサラミス改から立った。指定された暗礁宙域はここから程なくのところにある。恐らく敵機と遭遇する事もあるまい。
『2人の操縦技術は評価が高い様だな。それに引き換え、私は慣れない機体でかなり久々の宇宙だ…。背中を預けるつもりでいるから、頼んだぞ』
大尉はそういいながら百式改で様々な動作を確認していた。ブースターを吹かし、四肢を使ったAMBACの作用と組み合わせて機体の旋回などを行う。
宇宙では3次元的な動きを求められる為、正確な空間認識能力が無ければたちまち制御を失う。
しかし大尉の動きを見るに、とても最近宇宙へ上がったばかりとは思えないコントロール技術だった。百式改は高機動な反面、操縦にかなりの技量を要求してくる筈だ。
開発元の百式も、かの高名な赤い彗星が乗っていると聞く。これ程の機体とパイロットが何故こんな部隊に配備されたのか、少尉も首を傾げざるを得ない。
- 643 ::2019/12/22(日) 23:16:09.98 ID:JcV85rst0.net
- 「何故大尉は…いや、言い方は悪いかもですけどね…?こんな閑古鳥が鳴いてる様な部隊に来たんです?」
スクワイヤ少尉は思い切って聞いてみた。
『嫌に自己評価が低い』
大尉が笑う。中尉は無反応だ。
「だって、そうですよ。オンボロ艦の艦長は飲んだくれだし、私達も糞の役にも立たなくてまともな作戦には参加してませんし」
『また辛辣だな少尉』
話しながらも彼は機体を動かし続けている。見る限りやはり腕が立つのは明白だった。戦い慣れているのが傍から見ても解る。
『少尉の言うところも、まあわからんではないさ。だが、少数派のエゥーゴが伸び代のある部隊を持て余すと思うか?私の様な前線にいた人間を回して、戦える人員を育てるのも課題なのさ』
「ふーん…」
『まだ少尉は腑に落ちない様だな』
そういって大尉はまた笑う。が、話に割り込むようにしてレーダーに反応があった。
『中尉!これは…』
大尉が頭を切り替えるようにしてフジ中尉に説明を促す。
『大きさからしてMSが2機でしょうか?味方の識別信号は無し…しかしこんな場所で…?』
デブリも多く、まだ姿は見えない。しかし恐らく相手もこちらを見つけた筈だ。
スクワイヤ少尉は先程までの話をすっかり忘れた。ヒリヒリと肌を刺す戦いの匂い…ふと、昂ぶる自分に気付いた。
3話 エイリアン
- 644 ::2019/12/22(日) 23:17:13.47 ID:JcV85rst0.net
- 『私の両翼につけ!各機離れすぎるなよ…。デブリの位置も考えながら動け』
ワーウィック大尉が指揮を執る。フジ中尉は指示通り右翼についた。
「一旦様子をみますか?」
中尉は周囲を索敵し、前方の2機以外の機影がないことを確認する。とはいえ何者かわからない以上、下手に動くべきではない。
『いや、目視出来る位置までこのまま接近しよう』
ジオン上がりのこの男は怖いもの知らずの様だ。或いは余程腕に自信があるのか。確かに並の腕では無いのだろうが…。
「この宙域で敵と遭遇する事自体イレギュラーです。やり過ごすのもひとつかと」
釘を刺したが、行軍を止める様子はない。
『大丈夫だ。無理はしない』
敵も動きを止める様子はなく、接触は時間の問題だった。中尉達はデブリの影に隠れつつ距離を詰める。
『よし…2機ともここで一旦待機。私が先に単騎で行って指示を出す』
「無茶です!いくら新型といえど…」
『その心遣いには感謝する。だが…まあ見ていろ、一瞬だ。気を抜くな』
そういうと、大尉はそのまま行ってしまった。その動きに気付いてか、敵の動揺が見て取れた。まごついて敵が足を止めたその間に、大尉の百式改は急接近した。
『ハイザックが2機!装備はビームライフル携行だ!私はこのまま中央から叩く!両機は左右で挟み撃ちにしろ!』
状況を咄嗟に判断した大尉の指示が飛ぶ。中尉達もそれに続く形で敵を強襲することとなった。
- 645 ::2019/12/22(日) 23:18:42.88 ID:JcV85rst0.net
- 宣言通り敵の中央を突破した百式改は、敵が振り向くより早く反転すると、敵のコックピットを的確にライフルで捉えた。
撃ち抜かれ沈黙した僚機を置いて、離脱しようとするもう1機のハイザック。中尉が追おうとしたその先に、敵を阻む左翼のスクワイヤ少尉が見えた。
彼女のGM2は抜刀すると、スプレーガンで牽制しながら敵の進路を絞り込んだ。敵も流石に素通りする気はないらしく、銃撃をかいくぐりながらヒートホークを発熱させる。
交差する機体とその刃。
『少尉!』
ワーウィック大尉の声が響く。しかし、舞ったのは切断された武器を握りしめたハイザックの左腕だけだった。
『大丈夫です隊長』
幸い少尉の機体は無事だったが、そのまま敵機は戦域を離脱していく。
「ワーウィック大尉、如何されますか」
ここで見逃す男ではあるまい。見逃せるところを敢えて先手で潰しに掛かる様な隊長だ。
『レーダーが許すギリギリの遠距離から敵を追う。近くに母艦が居る筈だ。しかし…』
中尉の予想に反して大尉は言葉を濁した。
「…敵も恐らく追われるのは承知の逃走でしょうね。作戦行動中だったのであれば、何か思惑があるかもしれません」
この隊長は猪突猛進している訳ではない様だ。敵はそのままのこのこと母艦の位置を知らせるなど、素人の様なことはしないだろう。とはいえ、仲間にこの遭遇を伝えない訳にもいくまい。
こうして考えている間にも、敵機はどんどん離れていく。
- 646 ::2019/12/22(日) 23:19:23.07 ID:JcV85rst0.net
- 『…中尉がやつならどうする?』
大尉に問われた。その試す様な物言いが癪に触ったが、今は一刻を争う。
「私なら可能な限り撒きます。母艦から引き離すことができれば少しはやりようもあるでしょう。ここでいう母艦というのは」
『我々の艦だな』
流石に物分りがいい。分かっていて聞いたかのようで余計に印象は悪いが。
「そうです。気付いたらこちらが敵に囲まれていたなんて事も十分あり得るかと」
モニターの向こうで少尉が首を傾げているが、彼女に説明している暇はない。
「どうします?」
『それを頭に入れた上で追うとしよう。機影があればすぐに引き返す。中尉の懸念が現実になる前にな』
『とりま追うんですね』
少尉が面倒臭そうに言う。その態度を説教してやりたいところだが、今は抑えた。
- 647 ::2019/12/22(日) 23:20:30.35 ID:JcV85rst0.net
- 付かず離れずの距離を保ちながら敵を追う。GM2のセンサー範囲はハイザックのそれと大凡同じだ。追われていることは確認しているだろう。
思った通り、敵は直進せずに迂回しながらこちらを気にしている様に見えた。
『中尉、流石に現状の進路から到着地点予測までは出来ないか?』
大尉が無茶を言う。
「それはいくらなんでも…いや、やってみます」
敵の推進剤を考えると、撒くとはいっても進路を大きく逸れることは出来ないはずだった。
同じ母艦の別働隊がいると仮定して、それらと落ち合いつつ自身も母艦に帰還できるポイント…。そんな場所はそう多くは無いだろう。
フジ中尉は、周囲の座標を確認しつつ、暗礁宙域のデブリやミノフスキー粒子濃度など様々な環境データをかき集める。この辺りの索敵はこれまで散々やってきた。
「…どうでしょう?この辺り」
絞られた地点は、どれも似たような位置を示していた。デブリが多い為目視が難しく、ミノフスキー粒子を散布した形跡も近くにある。
散布した場所を何かしらが通過しているのは明白だ。敵にとっての目印は、我々にとっても目印になる。
『すごいな…これだけのデータを即席で照らし合わせたのか?』
大尉は本当に驚いている様子だった。正直悪い気はしない。
「驚く暇があれば次の指示を頂きたいですね」
『手厳しいじゃないか…いや、その通りだな。この座標から選ぶならここだ。』
いくつか提示した座標の中から大尉がひとつを選んだ。
『パズルのピースが揃ったみたいだな。この座標に我々をおびき寄せるつもりなら、背後をつける場所はここ。そしてそうなれば…』
大尉はまた別の座標を示していく。
『…ここが敵の母艦の位置だ』
そこは、本来サラミス改が通過する予定経路の横っ腹だった。
4話 遭遇
- 648 ::2019/12/22(日) 23:21:21.54 ID:JcV85rst0.net
- スクワイヤ少尉は殆ど除け者にされた状態で、話だけがトントン拍子に進んでいる。とりあえず2人に付いてきた形だ。
『これは…追いかけてきた甲斐がありましたね』
中尉が唸る。よくわからないが、敵母艦の居場所を掴んだらしい。
『これだけ判れば長居は無用だ。追撃は中断して帰還するぞ。しかし、まさか中尉がここまで優秀とはな…。』
ワーウィック大尉が嬉しそうに笑う。それを見て、少尉は何となく嫉妬に近い感情を中尉に抱いた。
「まあ、私が敵を泳がせたからこそですけどね」
『よく言う。仕留め損なっただけだろうに』
中尉が相変わらず冷徹に言い捨てる。やはりこの男は好きになれない。
正直いって、あのハイザックは落とせた。その上で意図せず取り逃したのも事実だが、こうも言われれば腹も立つ。
『喧嘩するんじゃない、全く…。中尉だけじゃない、勿論少尉もよくやってくれたさ』
「すみません」
大尉の一言で少し気が晴れた。ちょろいもんだと自分でも思うが。
- 649 ::2019/12/22(日) 23:21:44.41 ID:JcV85rst0.net
- 追手に警戒しつつ暗礁宙域を抜け、当初指定されていた地点へと到達する。そろそろ艦長達も合流する筈だ。
『ここでサラミスと合流したとして、計画通りに進路を向けてしまうと先程の連中に腹をみせる事になりますね』
ひと息ついたところでフジ中尉が口を開いた。
『母艦の位置こそ掴んだが、敵の戦力は未知数なままだしな。ここにいた理由も不明だ』
大尉の言う通り、わざわざボロ艦を待ち伏せするとは思えない以上別の目的がありそうだ。
「偶然出くわしただけかもですよ?あっちも慌ててるかも」
『確かにな。折角だし、これからの作戦遂行の為にも敵の芽は摘んでおきたい。合流したら報告だ』
そういって大尉が深く息を吐いた時、サラミスからの識別信号が届いていた。
- 650 ::2019/12/22(日) 23:22:21.64 ID:JcV85rst0.net
- 『遅くなってすまんな!』
何も知らない艦長の能天気な声が響く。ちょっと散歩にでも出てきた様な風情だ。
『艦長、急ぎお伝えしたいことがあります』
大尉が真剣な面持ちで返す。
『ふむ、収穫が既にあるとは流石だな!補給がてら帰投したまえ』
モニター越しの艦長は見るからに満足げである。実際のところ、ここ最近の任務に退屈していたのは少尉だけではなかったのかもしれない。
こんなに活き活きしている艦長を見るのは久しぶりだった。
3機とも着艦すると、機体をメカニックに任せてブリッジへと急ぐ。到着すると出発前と変わらない様子の艦長が出迎えた。
「艦長、この先に敵母艦が居る可能性がかなり高いです」
ヘルメットを脇に抱えたまま、単刀直入に大尉が切り出した。
「機影があるか?」
グレッチ艦長はグレコ軍曹の方を振り返った。
「えと…いや、確認できません」
おどおどと軍曹が応える。機影があったら既に大慌てしているだろうに。流石の少尉もその位はわかる。
「…そうでしょうね。先程遭遇戦がありまして、退却した敵のルートから位置を割り出しました。まだ距離がありますが…」
やや呆れ気味のフジ中尉が眼鏡を掛け直しながら言った。
「わかった!お前達の言うことを信じよう。兎に角急ぐのだな?」
艦長にしては決断が早い。いや、詳細が分かっていなくても要点を掴むのが上手いとでもいうのか。
「艦長、中尉に立案を頼みたいのですが如何でしょうか。まだあの座標付近に母艦がいるとして…」
大尉がそう言いながらブリッジの正面窓の上に、拡大された宙域マップを写した。中尉が手早く敵艦の座標を入力する。
「よし。中尉、続けてくれ」
艦長はモニターを注視している。スクワイヤ少尉もその場に立ったまま、皆と共にそのマップを見つめた。
- 651 ::2019/12/22(日) 23:23:05.49 ID:JcV85rst0.net
- 「ありがとうございます。…ご覧の通り、このまま直進すれば確実に接敵します」
中尉が指し示すマップに表示された月面拠点アンマンへの進路の途中、ここからすぐの位置で接触が考えられた。中尉はそのまま説明を続ける。
「迂回して躱す事も出来ますが、時間が掛かりすぎます。
それに恐らく敵はこちらに居場所を掴まれている事を知りません。この辺りに駐軍している目的は不明ですが、先手で叩いておいた方が憂いは無いかと」
そこまで一気に話し終えると、フジ中尉は艦長を見つめた。腕組みをして唸る艦長。
「しかしなぁ…こちらも寡兵だ。相手の戦力を把握していない以上、危険じゃないか?」
珍しく艦長が真っ当な物言いをしたので、少尉はいささか驚いた。また顔に出ていたのか、艦長が不満げな顔で少尉を見る。
「なんだあ?少尉…。俺だって仕事くらいするぞ!それとも何か案でもあるのか?」
「いやぁ、物珍しくて…。私は攻めるのに賛成ですよ。だって敵がそこにいるんでしょ?」
「馬鹿にしてんな小娘め…。だが敵を避けるのは確かに歯痒いな」
虎髭を弄りながら艦長がいう。
「あまり時間をかけると敵の位置がわからなくなります。叩くなら急ぎましょう」
大尉が決断を促す。
「むむむ…。よし!ここはいっちょ派手にやるか!アンマンの奴らに土産が要るだろうしな…やられる前にやるしかねぇ」
そういって艦長が椅子から立ち上がった。いつもより少しは艦長らしい姿だ。そのまま中尉の方へ向き直った。
「それで?具体的にどう叩くつもりなんだ中尉」
- 652 ::2019/12/22(日) 23:23:57.82 ID:JcV85rst0.net
- 「そこですが」
中尉が大尉と目を合わせる。
「大尉に単騎で先行して頂きたい」
「なんちゅうことを言う!」
早速艦長が取り乱す。この提案は少尉も予想していなかった。
「私は構いませんよ。百式があればやれます」
当のワーウィック大尉は全く動じている様子がない。2人で案を照らし合わせてはいない筈だが、大尉も確信がある様だ。
「勿論我々も出ます。しかし敵との戦力があまりに違い過ぎた時、大尉以外は足手まといになりかねません。
何かあっても大尉単独なら帰還できるはずです。大尉からの指示を受けるまでGM2は少し後方で待機すべきかと」
中尉は淡々と述べた。少尉としてはワーウィック大尉に付いていきたいのだが、そうも言っていられない。
「それでやれるというのか…本当に…?」
艦長は一転して伏目がちになった。
「…いや、お前達に任せてみよう。これで返り討ちに遭うなら、きっと遅かれ早かれだ。
急いで準備にかかれ!本艦はこのまま進路を予定通り進む!座標に近づいたらタイミングを見計らって全機出撃、本艦もMS隊が帰還できる速度まで一時減速する。無理は禁物だぞ…」
踏ん切りがついた様に艦長が指示を飛ばす。
「「「了解」」」
少尉達はすぐに踵を返して機体のもとへと戻った。
- 653 ::2019/12/22(日) 23:26:20.27 ID:JcV85rst0.net
- 「…無茶な作戦だな全く」
格納庫へ軽く駆けながら大尉が口を開いた。そう言う割に口元は少し緩んでいる。
「急な立案をさせられて出てくるものなど、たかが知れてますからね」
性懲りもなく毒づく中尉。
「まあ、私は隊長なら大丈夫だと思いますよ。強いし」
少尉なりに元気付けようと言ってみた。実際、彼なら敵を退けてしまいそうな感がある。これまでの様々な情報が積み重なって、いくらか大袈裟に見積もっているのかもしれないが。
「少尉にも期待している。2人共、支援を頼む」
乗機のもとへ辿り着くと、3人は手早く機体へと乗り込んだ。行き当たりばったりな作戦にも思える。
下手をするとここで早々に全滅も有り得るのだが、頭の中で退屈しながら死を弄ぶ事に比べると遥かに心躍る時間になりそうだ。
5話 先行
- 654 ::2019/12/22(日) 23:27:23.26 ID:JcV85rst0.net
- 「何!?こんなところでエゥーゴ??…わかった、お前だけでも帰ってきてくれて良かったよ。おかげで次の手が打てる」
僚機を失い自身もボロボロになって帰ってきた部下の報告を受けた。
この艦…アレキサンドリア級を統率しているのは、黒髪の両サイドにブロックを入れた女性士官、ティターンズ所属ドラフラ・ウィード少佐である。
白い肌と鋭い眼光のコントラストが見るものをハッとさせる。まだ30歳ほどの彼女だが、士官学校から一気に駆け上がるようにして今の地位まで上り詰めた。
部隊は、母艦アレキサンドリア級を運用しての航行中であった。幸い遭遇戦を行ったのは偵察組で、本命は別にある。すぐにその本命の部隊へ召集をかけた。
「話は聞いた?」
ウィード少佐はブリッジに到着した3人と向き合う様にして立つ。
「うん、エゥーゴでしょ?何でまたこのタイミングで…」
応えた先頭のパイロットがヘルメットを脱ぐ。
ブロンドのロングヘアに首を軽く振っている彼女はフリード・ドレイク大尉。その美しい髪とグリーンの瞳が光っていた。ウィード少佐とは同期である。
「新型っぽいのが居たらしい。テストか何かしてたのか…」
そう言いながら、ウィード少佐は腕組みしながら近くの壁にもたれかかった。
「だったら捕獲しちゃえば良いんじゃない?新型ゲットに情報も取れて一石二鳥よ」
もう一人、ドレイク大尉の背後からひょいと顔を出してそう言ったのはリディル・オーブ中尉だ。彼女は小柄で童顔の為まるで子供の様だが、何ならウィード少佐達と歳はさして変わらない。
ピンで赤毛を横に留めて額を出しているせいか余計に幼く見えるのだが、本人はそれが楽とのことだ。
「そう簡単にはいかないぞ?しかしな…その困難な使命が我々をまたひとつ強くする…」
女性陣の後ろで腕を組む筋骨隆々の男はラム・ソニック大尉。角刈りで常ににこやか、爽やか風でむさ苦しい。
恐らくわかった上でやっているというのが余計に面倒臭いのだが、やる時はやる憎めない男だった。
- 655 ::2019/12/22(日) 23:28:09.28 ID:JcV85rst0.net
- 「あー…。おーけー、そしたらあんた達的には素通りしてやり過ごす気はないわけね?」
ウィード少佐は、両手でやれやれとジェスチャーしながら首をひねった。
「そんな見た目で意外と弱気なのよね?そういうところも良いと思うわ」
ドレイク大尉が茶化してくる。
「うるさいわね…。しかし今敵の本隊が何処に居るのかさえわからないし…」
そこまで言ったところでレーダーが機影を捉えた。
「何だあれは…。識別信号なし、データベースにもない機体か。早速、敵さんから出向いてくれたって事じゃないのかい?」
オペレーターの傍で情報を確認したソニック大尉がこちらを見て微笑んでいる。あとすごく二の腕の筋肉を主張してくる。
「てかあの速度で接近されたらやばくない??あたし達早く行かないと!」
オーブ中尉の言う通り、高機動な機体のようだ。明らかにこちらを捉えて突進してきている。しかも単騎である。
「はあ…ゆっくりしたかったのに…。しゃーなし!あんた達、お出迎え頼むよ!」
- 656 ::2019/12/22(日) 23:29:03.33 ID:JcV85rst0.net
- ウィード少佐がそういうと3人はバタバタとブリッジから退出した。また幾らか静かになったところで、冷静に状況を見極める。依然として敵機は接近中だ。
「お友達は皆血気盛んですなぁ」
さっきまで黙っていた副官のナイト・レインメーカー少佐が腰を上げた。
落ち着き払った初老のこの男は、ちょび髭がトレードマークの相談役だ。MSで出撃することも多いウィード少佐に代わって艦の指揮を執る事もある。
「落ち着きがないのよ連中は…」
溜息混じりにウィード少佐がそういうと、彼はニカッと笑った。
「羨ましくもある。今の私にはあのノリは出せません」
「レインメーカー少佐までああなってしまったら、私はいよいよ気がおかしくなっちゃう」
そういうと2人で少し笑った。
「…しかし、あの敵…何が狙いなのか。こちらの位置を掴んでいるあたり、無能なイノシシではありませんな」
腰の後ろで手を組みながらレインメーカー少佐が呟く。
「確かに…。余計、こちらの作戦まで気取られる訳にはいかない」
「左様。何にせよ迎撃して正解でしょう。オーブ中尉の言うように捕獲までいければ上等ですが、まあ様子見ですな」
格納庫から3機の出撃を確認した。すぐに交戦に入るだろう。大規模な艦隊行動を予定しているティターンズにとって、僅かな芽も摘んでおく方が後々の事を考えると有利だ。
兎に角今は前線の状況を見ながらモニターに食い入るしかなかった。
6話 イノシシ
- 657 ::2019/12/22(日) 23:30:04.35 ID:JcV85rst0.net
- 単独で接近する敵機を迎え撃つかたちで、ドレイク大尉達は隊列を組んだ。
センターを取るのはソニック大尉のガルバルディγ。エゥーゴのリックディアスを解析して手に入れた新素材で外装を強化したガルバルディである。
軽量な装甲材とはいえ、増加した分鈍重になった機体の運動性を損なわない様、ジェネレーターを高出力のものに換装して強引に動かしている。
機動性は下がったままだが、気持ち程度のバーニア増設は行われている。
その両脇を固めるのは、ドレイク大尉のガルバルディβとオーブ中尉のガルバルディα。ドレイク大尉のβは現行機種と殆ど大差ないが、それでもマラサイに勝るとも劣らない機体性能を備えている。
そしてオーブ中尉の、本来は旧ジオンの機体であるαの改修機。こちらは高機動戦闘に対応すべく軽量化に主眼を置いている。元々近接攻撃に秀でた機体である為、俊敏でトリッキーな戦法が取れるのも強みだ。
また3機とも連携の為センサー類を強化しており、その頭部はいずれもバイザータイプのものに外観が変わっている。
- 658 ::2019/12/22(日) 23:30:38.22 ID:JcV85rst0.net
- 「さてさて…。新型のお手並み拝見ね」
ドレイク大尉は接近する敵機をレーダーで捉えていた。かなり近いところまで来ている。
『俺に任せてくれ!γのパワーがあれば蝿の一匹や二匹…』
『何言ってんのよ!あんたは、あたしが敵の足を止めた時に突っ込んで叩くのが仕事でしょ!』
2人がまた喚いている。ウィード少佐が頭を抱えるのも無理はない。
「いい?あなた達…。指揮は私が執るのよ?」
『『了解ー』』
「聞き分けの良い子達ね。その調子」
そのまま付かず離れずの間隔をとって敵を待ち構える。
来た。緑色の、バッタの様なMS。
翅さながらのスタビライザーと、後ろに伸びた曲線的な頭部。所々フレームの見えた四肢といい、その身軽さと相まって異形さが際立つ。
デブリに跳び乗る様にして、敵は屈んだまま動きを止めた。双方睨み合いになる。
「何これ…。エゥーゴってこんなものも作るのね…」
ドレイク大尉は思わずこぼした。虫は好きではない。
『仕掛ける?』
オーブ中尉が身構えたまま聞いた。
「そうね…リディルが適任だわ、任せる。ラムもしっかり抑える用意を」
『わかった。この僧帽筋に誓って』
- 659 ::2019/12/22(日) 23:31:28.31 ID:JcV85rst0.net
- 決めるやいなや、オーブ中尉のαが速攻を掛けた。敵の乗ったデブリに回り込む様にして背後を取りにいく。
抜刀の動作もなく、ボックスタイプのビームサーベルで突きかかった。しかし敵はもうそこに居ない。
「上よ!リディル!」
オーブ中尉の真上から、別のデブリを足場にしたバッタがサーベルで斬りかかる。中尉は敵の刃を受け止めず、宙返りする様にして再びデブリの背後に隠れた。
バッタがそのデブリを切断すると同時に、すぐ後ろについたソニック大尉のγが両肩をがっしりと掴む。
『捕まえたぁ!!』
しかし敵はスタビライザーと大型バーニアを偏向させてγの肩関節へ向けると、勢いよく噴射した。オーバーヒートを恐れたγは堪らずその手を緩める。
すぐに身を翻したバッタが正面から袈裟斬りにする。咄嗟に両腕で庇ったγが、増加装甲を炸裂させることで敵の粒子を相殺。どうにか再び距離を取った。
- 660 ::2019/12/22(日) 23:32:07.33 ID:JcV85rst0.net
- 『こいつ…怖いもの知らずねッッッ』
間髪入れず再びαが刺しにかかるが、躱し躱されの3次元でのドッグファイトが続く。上下左右の概念も無くなる様な高度な読み合いの中、敵の動きが止まる気配はない。
「これだけ振り回してもよく動くわ…。捕まえても直ぐに抜け出しちゃうし、困ったわね」
翻弄される僚機達を眺めながら、どうしたものかと思案するドレイク大尉。するとその時、別の熱源反応を2つ感知した。
「増援!?これは…GM2!」
『こっちはそれどころじゃないの!…ッッッ!』
αが敵の斬撃を交わしきれず左脚を失う。γにしても先程のダメージがあり、長期戦は不利に思えた。
「まだアレを使う訳には…」
『畜生!筋肉は使った後の冷却も大切なんだ!』
『うるっさいわねぇ!どうすんのよフリード!長くは保たない!』
「揃いも揃ってこれじゃねぇ…。仕方ない、撤退よ。私が殿を務める」
そういってドレイク大尉はライフルを構えた。まずαに追いすがるバッタを狙撃して足を止める。躱されたものの、その隙をついてαは母艦へと一気に離脱していく。
続いてγがじりじりと後退するのを支援しつつ、βは矢面に立った。
- 661 ::2019/12/22(日) 23:32:43.79 ID:JcV85rst0.net
- 敵の高機動は性能面で優れているからこそだろうが、乗り手も尋常ではない。
「でも、やれない相手じゃないわ」
距離を詰めてきたバッタに射撃を続ける。よく動きよく躱すが、支援を要請した辺り決して余裕がある訳ではあるまい。その証左か、遂に敵の肩を弾が掠めた。
しかしそれとほぼ同時に、GM2が到着した。その内の1機が仕掛けてくる。
「逸っちゃって…」
バッタとの間に割り込むようにして突っ込んできたGM2は、ビームサーベルを抜刀するとすぐさま斬り上げた。
ドレイク大尉はシールドでそれをいなし、そのままシールド内蔵されたグレネードを至近距離で見舞った。
- 662 ::2019/12/22(日) 23:34:40.23 ID:JcV85rst0.net
- が、それは敵に炸裂しなかった。敵のGM2は弾頭を咄嗟に掴み強引な軌道修正をして避けたのである。
背後で爆発するグレネードの逆光に、GM2のバイザーが蒼く光っている。そんな芸当をみせた相手は初めてだった。
「…!こんなやつらと連チャンやりあうのは…どうかしてるわね」
γが確実に離脱したのを確認したドレイク大尉も、後退すべくバーニアを吹かした。更に追いすがろうとするGM2をバッタが制しているのも見えた。見逃してくれるらしい。
敵のMSが追ってくる気配はない。そのまま僚機達に続いて着艦したドレイク大尉だったが、久しぶりに冷や汗をかかされた自分に少し苛立ちを覚えていた。
バッタは勿論、GM2が脳裏に焼き付いて離れない。あの回避行動はまぐれではあるまい。繊細なマニピュレータの操作とそれを実戦で行う度胸…。
もし回避でなく攻勢に転じる動きだったらと思うと、首の皮一枚繋がった心地がした。思わず自らの首筋に触れる。
各機の被害状況確認で慌しいメカニック達をよそに、ドレイク大尉の胸のうちは静かに震えていた。
7話 静かに
- 663 ::2019/12/22(日) 23:55:03.07 ID:JcV85rst0.net
- 今日はここ迄!
10話くらいいきたかったんですが、添削しながらは普通にしんどいですね…これでも結構頑張ったつもりですが笑
また書き溜めて、話的に切りのいいところでまとめて投下します!pixivはもうちょい待ってください…笑
- 664 :通常の名無しさんの3倍:2019/12/24(火) 03:02:17.06 ID:3/OvdoYU0.net
- 乙!
- 665 :◆tyrQWQQxgU :2019/12/25(水) 17:08:18 ID:npqKeYdO0.net
- >>664
ありがとうございます!
また更新しますんで、ゆっくり読んでください!笑
- 666 :通常の名無しさんの3倍:2019/12/25(水) 23:30:52 ID:eAQEBsgp0.net
- 乙です!
マラサイから百式改とは、また跳びましたね...バッタだけにw
カラーリングもワーウィックが乗るのもあって納得です、目立ったら負けな方の戦線ですもんね。
てか金ピカはエマルジョン塗装とか言ってるけど、デモカラーにしか見えない(笑)
フジ中尉、思ってたより機転の効く人でびっくりしました、生真面目なだけでなく肝が据わってるんですね(失礼)。
そしてフジとワーウィックの間に入れないスクワイヤ、ミサイルを手で弾くとか恐ろしいことしますね ((((;゜Д゜)))。
あの技はスクワイヤの才能を見せると同時に、初期のワーウィックに通じる連携戦術の弱さを伝えるものに思えました。
彼女どうなっちゃうんでしょうね...
ティターンズの娘っ子たち+筋肉+お爺さん、普通にいい人たちっぽいなぁ...
死んでほしくないなと思う反面、どう戦況に巻き込まれていくんだろうとwktkしている自分がいます(おいおい)。
訳が分からないまま終わるのは可哀想ですけど、そうなってしまうのも戦争の異常性なわけで(フラグ立てるな、おい!)。
まぁ実感として、グリプス戦役後半を描く以上は第一部のような大団円は難しいだろうなと素人なりに思うわけです。
そこも含めて今後が楽しみです、よい年末を!
- 667 :◆tyrQWQQxgU :2019/12/27(金) 00:47:46 ID:zsWGJwoj0.net
- >>666
コメントありがとうございます!
あれだけ暴れまわっていればそれなりの機体が回ってくるはずかなと。
カミーユみたいな子供ですら、実績さえ挙げればZが回ってきてますしね。
しかし百式改って、色変えたら完全に悪いやつの見た目してると思うんですよ…頭長いし…笑
キャラクターの考察は特に嬉しいです!ありがとうございます!
自分で書きながらワーウィックは成長したなぁとしみじみ…笑
新規の2人は光るものがありつつも、まだこれから成長していく過程をストーリー的にも大切にしたいところです。
特に主人公のスクワイヤ少尉はどう書いていこうか未だに悩む部分が多いです。
ティターンズの面々は、第1部だとサドウスキーがいつぞや言っていたような"わかりやすい悪役"だったので、今回はもっと平等にキャラクターをつけました。
その辺りももう一つの軸にしていければと。
正直、第1部がそうだったように、あまりZ本編(特に後半)の様な陰鬱なトーンでは書きたくないと思ってました。舞台が同じなので余計に。
しかし今回はもっと過酷な環境下でキャラクター達を動かしたいとも思っているので、どうなるか自分でも楽しみです。
- 668 :◆tyrQWQQxgU :2019/12/28(土) 02:25:51 ID:k9rxMFLw0.net
- 今日は(恐らく)プラモ組み納めだったので、第一部の最終決戦風な画像でも上げておきます。笑https://i.imgur.com/HH6yvJM.jpg
始まったばかりの第ニ部ですが、地味に書き進めているので年内にこちらはまた更新したいところです。
https://i.imgur.com/UHBYOXk.jpg
- 669 :◆tyrQWQQxgU :2019/12/31(火) 16:28:30 ID:VILRIuWI0.net
- お待たせしましたー!
今年ももうじき終わりますが、今年最後の投下!よろしくお願いします。
- 670 :◆tyrQWQQxgU :2019/12/31(火) 16:29:15 ID:VILRIuWI0.net
- あのまま続けられる自信がスクワイヤ少尉にはあった。しかしそれを止めたのはワーウィック大尉だった。
「何故止めるんです!」
『やつら…性能はそこそこだったが、特殊な改造を施した機体だった。仮にわざわざテストの為にこの宙域に居たのなら、まだ大物を隠している可能性が高い』
「だったら余計叩いた方が!」
食い下がる少尉。
『今の我々の戦力では無理だ』
横からフジ中尉も口を挟む。そうこうしている間に敵との距離は開いてしまった。
「私では戦力不足ですか」
渋々帰投しながら少尉は思わずこぼした。大尉の様な戦闘技術や撃墜実績はないし、中尉の様には頭も回らない。それでもやれると思っての行動であった。
『そういう事ではないさ。さっきの戦闘…少尉のあれは並のパイロットの動きではなかったと私は思うがな…危ういくらいに。しかし今やつらを追うのは我々の任務ではないだろう?』
ワーウィック大尉の言うことがわからない訳ではなかった。それでも、目の前の敵をみすみす逃すことに耐えられなかった。やっと巡ってきた本格的な戦闘のチャンスだったのだ。
- 671 :◆tyrQWQQxgU :2019/12/31(火) 16:29:58 ID:VILRIuWI0.net
- 『また死にたがりか』
フジ中尉だった。長い間少尉の中で堰き止められていた何かが遂に決壊した。
「中尉に何がわかるって言うんです!?」
『わからんさ。わかりたくもないな』
「こんな辺鄙な宙域でいつまでも予定調和な哨戒任務ばかりやって、それで平然としてる方がよっぽどわかりませんよ!」
『死にたがるのは自由だが、そんな好奇心じみたものの為に少尉は人を殺せるのか?』
「何を今更!人を殺すのが仕事でしょ!?」
『2人とも…よすんだ』
血が昇った2人とは対照的に、止めに入ったワーウィック大尉の声は恐ろしく静かだった。その有無を言わさぬ雰囲気に気圧され、口をつぐんだ。
居心地の悪い沈黙のなか、少尉達の部隊は速度を落とし先行しているサラミスを追っていた。先程の敵も、もうこの宙域を離れている頃だろう。
『…2人の言い分もある。同じ様に、私にも言い分がある。だからこれだけは言っておきたい。2人の判断や能力が相手に劣っていた訳ではないと思っている。
タイミングさえ合えばあんな連中に遅れを取る我々ではない筈だ…そうだろ?』
ワーウィック大尉が宥めるようにして言った。どうも気を遣いすぎる男だ。その気遣いが今の少尉には痛かった。理屈で解っていても、気持ちが逸るのを抑えられなかった自分が酷く惨めに思えた。
「…やっぱり戦っていたいんです。その為にエゥーゴに入ったから」
『私もそうだ。だからこそ今は堪えてくれないか?来たるべき時に少尉の力は必要になる』
「…わかりました」
少し気持ちも落ち着いてきた。これまでの日々は、途方もなく広い宇宙に居て人ひとりの存在などちっぽけ過ぎて実感も湧かなくなっていたところだったのだ。
久しぶりに芽生えた存在意義の様なものが、自分を熱くさせたのかもしれない。
『フジ中尉も、君の物事を見る力はもっと冷静に使うべきだ。それが出来る判断力も持ち合わせているしな。間違っても仲間を煽るのにそれを使ったりするんじゃない』
『お見苦しいところをお見せしました。申し訳ありません』
すんなりと中尉は詫びた。しかしそれは少尉に対しての謝罪では無かった。当分溝は埋まりそうもないと少尉は感じた。
- 672 :◆tyrQWQQxgU :2019/12/31(火) 16:30:31 ID:VILRIuWI0.net
- 程なくして帰還した少尉達は、報告の為ブリッジへと足を向けた。彼女らを回収した艦は、再び元の速度でアンマンを目指し始める。
「おう!戻ったな!…何かあったか」
重い雰囲気を察してか、珍しくグレッチ艦長が気にかけている。
「少々、喧嘩しましてね…」
大尉が頭を掻きながら苦笑いしてみせた。その後ろで少尉達は変わらず黙りこくっている。
「なるほどなぁ…。まあ、たまには良いんじゃねえか!大尉もここに来たばっかりだし、俺達は元々てんでバラバラな人間の集まりさ…衝突してなんぼだぜ」
こういう時には、この艦長の気楽さがありがたかった。
「それで、敵さんはどうだったかね」
ワーウィック大尉から一通りの報告がなされた。
「…以上です。尻尾しか掴めなかった感触でしたが、こちらも足を止めずに済んだと思えばおあいこですね」
そこまで聞いて、艦長は進路を映したモニターを見つめた。
「おかげさんで割とすぐアンマンには着けそうだな」
「そのアンマンですが…」
大尉が再び口を開く。
「補給時に色々とお願いがありまして」
「おうおう!大尉殿には助けられましたからなぁ!あれこれ言ってくださいよ!」
また艦長が手揉みしながら笑っている。悪どい商人か何かの様に見えるのだが、本人は自覚していなさそうだ。それを見て大尉は微笑んでいた。
- 673 :◆tyrQWQQxgU :2019/12/31(火) 16:31:41 ID:VILRIuWI0.net
- 暫くしたらアンマンに着くと言うので、パイロット達はそれまでしばし休息ということになった。各々、自室へと帰るよう言われた。
大尉だけはそのまま少し艦長と話していたが、あの後何を話していたのだろうか。
スクワイヤ少尉は、何もない狭い部屋に戻ってきた。殆ど寝るだけの場所で飾ることも出来ない。
とりあえずシャワーを済ませ、下着姿にシャツだけ羽織ってベッドに寝転ぶ。左腕を額に乗せ、その下から天井を見つめた。
「…死にたい訳じゃないんだけど」
小さく声に出して言った。功を焦った訳でもない。ただ、何もしないでいる日々が耐えられなかった。
このまま何も無いのなら、寧ろ死の先に何かあるかもしれないと、淡い期待を抱いただけだ。今は何かしら取り組めるものがあるだけ充実して感じる。
そんな事を考えながら、うとうとと微睡み始める。眠るのに程よい身体の熱を感じながら、死ぬ時はこんな風にふわふわしていると良いなと思った。
8話 死にたがり
- 674 :◆tyrQWQQxgU :2019/12/31(火) 16:38:57 ID:VILRIuWI0.net
- 「…少尉。おーい…。入るぞ…。」
スクワイヤ少尉が寝惚けていると、少し遠くでワーウィック大尉の声が聞こえている様な気がした。とりあえずその辺の布に頭から包まる。
「流石にそろそろ起きろよ…体調でも悪いのか?」
大尉の声が近くなった。気のせいでは無かったらしい。そう思うと何故か心臓が高鳴ってきた。今顔を見られるのは、何となく恥ずかしい…寝起きだからか?
布の切れ間から外を覗こうと思った時、その切れ間が丁度開いた。大尉だった。結構な近距離で目が合う。
「あ!うわあ!」
「うお!」
つい少尉は驚いて額を額にぶつけてしまった。それにまた驚いて2人してバタバタと後ろに下がる。
「痛…いやいや、すまん、外から通信しても返事がないから体調が悪いのかと思って…見に来たんだが…」
尻もちをついて額をさすりながら大尉が言った。少尉もばっちり目が醒めた。いや寧ろ恥ずかしさで開きすぎるほど目が開いている。
「お…おはようございます…」
少尉もしどろもどろに挨拶をする。
「おはよう…あ」
大尉と目が合うと、今度は大尉が恥ずかしそうに目を逸らした。
「ほんとにすまん…その…」
そうだった。殆ど下着姿なのを忘れていた。もう恥ずかしさで爆発しそうだった。耳が熱い。また布に包まった。
「すみません…どの位寝てました…?」
目を逸らしたまま苦し紛れに尋ねる。
「いつもより起床時間は2時間近く過ぎてるな」
頭を掻きながら、同じく目線を逸らした大尉が言った。
「やっちゃった…。ごめんなさい、こんな格好で…。体調は大丈夫ですから…」
「そ、そうか…。早く支度しろよ」
大尉は少しこちらを見て赤面したまま微笑むと、足早に退室した。赤面していたといっても、恐らく少尉程ではあるまい。少尉は意味もなく包まった布で顔をごしごしとこすった。
- 675 :◆tyrQWQQxgU :2019/12/31(火) 16:39:39 ID:VILRIuWI0.net
- とにかく急いで支度すると部屋を出た。
まだアンマンには着いていないとはいえ、流石に寝過ぎた。作業というほどの作業はさしあたって無いのだが、昨日のことを考えると大尉が心配するのも仕方なかった。
とりあえずちゃんと謝る為にも大尉を探す。
「ん、少尉か。大尉が心配していたが…大丈夫か?」
フジ中尉と出くわした。昨日は昨日で言い争ったものの、中尉は特に変わりない様子だった。
「すみません、大丈夫です。中尉もその…昨日は申し訳ありませんでした」
「ああ、私も言い過ぎた。気にしないでくれ。…大尉なら今頃ブリッジだ」
「ありがとうございます」
軽く会釈してブリッジへ向かった。時間を見つけて中尉ともきちんと話をしようと思った。同じ艦にいる以上、彼とも今後長い付き合いになるかもしれない。
- 676 :◆tyrQWQQxgU :2019/12/31(火) 16:40:34 ID:VILRIuWI0.net
- ブリッジに到着すると、ワーウィック大尉がオペレーターのグレコ軍曹と何やら確認しているところだった。少尉に気付いた大尉が恥ずかしそうに笑った。
「少尉、さっきはすまなかった。元気そうで良かった」
「こちらこそご心配をおかけしました…。そういえば艦長は…?」
「艦長なら自室にいらっしゃるよ。基地に着く前に諸々資料の準備があるらしい」
「そうですか…」
そう言いながら、2人でブリッジから見える月を眺めた。遠くから見える月はぼんやりと白くて美しいが、こうして近くで見てみると点在するクレーターや観測機器で酷く無機質なものに思えた。
「もうじきアンマンの基地ですか」
「ああ、今日のうちに着くだろう。少尉が喜ぶものがあれば良いが、どうかな」
鼻筋の通った彼の横顔に何となく見とれた。恋人は居るのだろうか。
「私が喜ぶものでも用意してくれたんですか?」
ちょっとからかい気味に聞いてみる。
「ふふ、実は艦長に直談判しててな。まだどうなるか判らんが…」
「へぇ…楽しみにしときます」
それが何かはわからないが、気にかけてもらえていることが嬉しかった。彼が来てからというもの、退屈していた自分が少し変わり始めているのを感じる。
どうしようもないと思っていた色んなものが動き出した。
「私は月に来るのが初めてでな…話には聞いていたが。いつも見上げていたものがいざ目の前にあると変な心地だ」
感慨深そうに大尉が言う。
「こうしてやってきたのは私も初めてです。何ていうか、近くで見るとあんまり綺麗じゃない」
「まあそう言うな。どんなものも見方によって変わるものさ。自分の目が変われば、自ずと周りも変わっていく」
スクワイヤ少尉も何かを、誰かを変えられるだろうか。
ぼんやりとそんな事を思案していると、変わらなかった月の景色の向こうが輝き始めた。大小様々な灯火が色とりどりに灯っている。
「私には、とても美しく見えるよ」
大尉の声を聞きながら、アンマン市が地平線の先に見えてきた。
9話 地平線
- 677 :◆tyrQWQQxgU :2019/12/31(火) 17:00:07 ID:VILRIuWI0.net
- ダン・ロングホーン大佐は、アンマン市に入港するサラミス改を眺めていた。
彼は1年戦争においてはパイロットとして前線で戦い抜き、戦後はマゼラン級艦長や独立艦隊司令を歴任。現在はこのアンマン市にあるエゥーゴ拠点を任されている。
深い掘りにしっかりとした鼻、厳格な性格を表した様な太い眉、精悍な顔立ちをした軍人であった。
壮年に差し掛かった今でも若い連中に遅れは取らないと自負するだけあって、心身ともに鍛え抜いた彼は他の上層部の人間とは纏う雰囲気からして違う。
大佐はおもむろに席を立つと、サラミス改のクルーを出迎える為ドックへと降りた。哨戒任務を主に行っていたと聞いているが、エゥーゴには持て余していられる戦力は無いといっていい。
ブレックス准将からの指示もあり、彼らにはこれから嫌というほど働いてもらわねばならないだろう。
- 678 :◆tyrQWQQxgU :2019/12/31(火) 17:00:45 ID:VILRIuWI0.net
- 「やあ諸君。アンマン市へようこそ」
搬出などがやや落ち着いたとみえるタイミングを見計らい、大佐はクルー達に顔を見せた。皆作業を中断してその場で姿勢を正す。
「わざわざお出迎え頂くとは恐縮で…。私が艦長のファルコン・グレッチ少佐であります」
挨拶をした、だらしない風貌の男はそう名乗った。
「グレッチ少佐。私がここを任されているロングホーン大佐だ。航行ご苦労。諸君には伝えたい話が色々あってな…勿論、聞きたいことも色々と」
そう言いながらざっと周囲を見渡した。
「ワーウィック大尉というのは?」
「はい。お呼びでしょうか」
資料で見た通り、顔に火傷の跡がある男が前に出た。
「君か」
「サム・ワーウィック大尉であります。MS隊隊長として任務に参加しております」
かしこまってはいるが、その目には強い意志を感じ取った。これまでもそうやって生き延びてきたのであろう、死線を超えてきた男の目だった。
「いい目だな…。君からの要請は事前に艦長から聞いている。善処したつもりだが、まあその話は新しい艦でするとしようか」
「新しい…艦ですか」
大尉が驚いた様に聞き返した。
「ん?聞いていないのか?」
大佐はグレッチ少佐に視線を移す。なんの事か少佐もピンときていない様子である。
「ふむ…ギリギリの通達であったし、手違いがあったかな。ならサプライズだ。諸君はこれから新造艦であるアイリッシュ級戦艦へと配属になる。勿論、人員も補充する」
クルー達がどよめいた。栄転といっていいだろう。
「搬出した資材の多くはアイリッシュ級の方に移されている頃だ。今のうちに艦内を見ておくといい。…案内しろ」
そういって傍に控えていた下士官に誘導させた。
「艦長とブリッジクルー、MS隊の諸君はアイリッシュ級のブリッジへ。今後の作戦について話しておきたい」
- 679 :◆tyrQWQQxgU :2019/12/31(火) 17:01:33 ID:VILRIuWI0.net
- アイリッシュ級は、マゼラン級やペガサス級は勿論、エゥーゴの旗艦であるアーガマなども参考にして開発されたMS運用艦である。既に2番艦"ラーディッシュ"を始めとした数隻が作戦行動中だった。
今回の任務では、ブライト・ノア大佐やクワトロ・バジーナ大尉らが月の表側ならば、ロングホーン大佐達は月の裏側を守る。まさしく表裏一体の作戦といえよう。
「ここがブリッジだ。広いだろう?」
艦長達を引き連れ、出来上がったばかりのブリッジへと入った。サラミスとは比べ物にならない最新鋭の設備に、皆の唾を飲む音すら聞こえてきそうだった。
「…これを、私が扱うので?」
唖然としているグレッチ艦長が恐る恐る聞いてきた。
「勿論。私も同行したいところだが、基地を空ける訳には行かんしな」
それを聞いても尚、艦長は返す言葉もないといった様子でただただ驚いている。
「じき慣れるさ。それはそうと、これからの作戦について諸君に伝えねばならん」
大佐が後ろ手を組みながらクルーを見渡すと、皆の視線が注がれた。
「よろしい。…皆知っての通り、月周辺ではティターンズ艦隊の動きが活発になりつつある。
上層部はフォンブラウン市こそが標的になるとみているのだが、それを見越したティターンズがここアンマン市を無視するとも思えんというのが私の見解だ」
- 680 :◆tyrQWQQxgU :2019/12/31(火) 17:02:27 ID:VILRIuWI0.net
- ゆっくりとブリッジの窓沿いを歩きながら大佐が述べる。窓に写り込んだクルー達の表情は一様に固かった。
「諸君は哨戒任務の任を解かれ、これからはアンマン市を拠点とした戦闘行動に加わってもらう。
エゥーゴは少数精鋭だ。現状として、ティターンズ程は連邦軍内の他派閥を味方につけているとは言い難い。我々の少ない手札に於いて、まさしく諸君には切り札となってもらうべく召集した次第だ」
いささか仰々しい言い方だと自分でも感じながら大佐は続けた。
「この艦は勿論、人員だけでなくMSも新たに補充する。
MS隊は優秀な人材が多いと報告にあったしな。後で私の方から案内させてもらう。こう見えて私もパイロット上がりだからな…未だにMSを見ると昂ぶるものがある」
報告にあった面々…ワーウィック大尉、フジ中尉、スクワイヤ少尉。彼らの顔をクルーの中に見つけた。大尉は勿論、他の2人も興味深い人材であった。
「今後の詳しい作戦行動に関してはまた艦長を通して伝える。そして、今度はこちらが聞きたかったことなんだがね。ここに到着する前に交戦があったとか?」
そう問うとワーウィック大尉が進み出た。彼に向かって頷き、説明を促す。
「私からご報告させていただきます。…」
彼の話を要約すると、未確認機体の護衛を兼ねたテスト部隊と思われるティターンズと遭遇戦になったとのことだった。
「なるほど。連中がフォンブラウン市側の艦隊と合流すると厄介だな」
「はい。しかし遭遇した位置からすると、近いのはむしろアンマンです」
「やつら…ここに来るか…?」
「十分有り得ます。フォンブラウン側に大きく戦力を割いているとすれば、こちらに割く戦力はそれこそ少数精鋭で来るのでは」
大尉の話は頭に入れておくべき案件だった。アレキサンドリア級が母艦なのであれば、単艦でも一定の戦力は保持しているだろう。あと数隻引き連れて陽動に出る可能性は高い。
「そうか…。貴重な話を聞けて良かった。直ぐに作戦を立案させよう」
「お願いいたします」
そういって大尉は深く頭を下げた。
- 681 :◆tyrQWQQxgU :2019/12/31(火) 17:02:56 ID:VILRIuWI0.net
- それから、他のクルーと同じくブリッジクルー達にも設備の説明を受けさせている間に、大佐はパイロット3人と共にMS格納庫へと足を向けた。
「私がMSに乗っていた時には、まだまだ女性パイロットは少なかったものだよ」
感慨深く思いながらスクワイヤ少尉を見た。大佐からすればまだ子供のように見えるが、大尉や艦長からの報告に依れば彼女もなかなかの腕利きらしい。
「私の事はどうお聞きになったんです?」
「燻っていたが腕は良いと」
「買い被りですから」
そういって彼女は少し笑った。これからの働きに注目しておきたい。
格納庫に到着すると、サラミスから移したワーウィック大尉の百式改がまず目に入った。納入時に不足していた専用装備など、彼に合わせたチューンナップを施してやる予定だ。
「数ヶ月前、これの金色がここに来たよ」
「バジーナ大尉ですか」
ワーウィック大尉が食い付いた。彼からすれば同じジオンの男はさぞ気になるに違いなかった。
「サングラスなどかけて、気取った男だ」
「私も普段はこれを」
そういって彼はバイザーをみせた。
「傷を隠す為のものだろう?」
「はい。正直あまり気にはしていないのですが、カラバの友が私にくれたものですから」
大尉の火傷は最近負ったものだと聞いていた。ニューギニア基地での激戦は大佐の耳にも届いている。
- 682 :◆tyrQWQQxgU :2019/12/31(火) 17:03:44 ID:VILRIuWI0.net
- 続いて見えた機体はフジ中尉のものだった。
「これはフジ中尉の乗機だ。大尉から通信機器の強化を依頼されて、急ピッチで組ませたよ」
大佐がそう伝えると、大人しくしていた中尉が食い入るように機体を見つめた。
「これが私の機体ですか」
中尉の見つめる先には、畳まれた大型のレドームを背負ったネモが立っていた。
「EWACネモとでも言おうか。君の判断力を買ってのことだ。センサー強化は勿論、処理能力の高いAIも入れておいた。更にこの近辺で収集した環境データを蓄積…そのほぼ全てが入ったストレージを積み込んである。さながら前線司令塔といったところか」
そして、その後ろにはスクワイヤ少尉の機体が用意されていた。
「これがスクワイヤ少尉のMSだ…。驚いたか?」
そこに立っていたのは紛れもない、ガンダムだった。
10話 栄転
- 683 ::2019/12/31(火) 17:13:54.74 ID:VILRIuWI0.net
- 信じられなかった。むしろ、取り立てて実績を上げた訳でもない自分にこんな機体があてがわれるなど、陰謀すら感じた。
「ご覧の通り、ガンダムだ」
ロングホーン大佐がそう紹介したガンダムは、複数のバーニアノズルがついた見慣れない大きなポットを2基背負い、横に伸びた両肩にもアポジモーターが見られる。
「こいつは過去に少々揉めたデータを流用しているのだがな。まぁそうはいっても優秀なものを腐らせるわけにもいかん。君と同じだ」
大佐のいうデータに関しては何とも言えないが、まさかガンダムとは。
「この機体…ベースはジムカスタムですか」
中尉が聞いた。知らない名前だ。
「よく判ったな。設計データの基礎はその通りだが、勿論現代仕様に作り変えてある。そこにテスト運用されたポットのデータを盛り込んで、ガンダムタイプに仕上げた。
ティターンズが作ったジムクゥエルのガンダムヘッドと思想は似てはいるが、こいつは正真正銘のガンダムだよ…コードネームは"マンドラゴラ"…。
長いこと地面に埋まってたからな、引き抜いてやろうと思っていたのだ」
白を基調に胸部など各部で紫をあしらったカラーリング。その壮観な眺めには見惚れるしかなかった。
- 684 ::2019/12/31(火) 17:14:25.94 ID:VILRIuWI0.net
- 「しかし…何故こんな機体を私に…?」
「買い被りかもしれんな、大尉の」
大佐の言葉に、思わずワーウィック大尉を振り返る。
「元々私が乗る予定だったが…どうもガンダムは性に合わない。百式を受領して一度は流れた話だったのを、また掛け合って回してもらったんだ」
そういって彼は笑った。思わず少尉も笑う。そんな事があり得るのか。
「ほんとに…買い被り過ぎですよ」
「君ならやれるさ。中尉の万全のサポートもあれば、私がやることなど殆どない。…念願のスポーツカーだな。困るか?」
ニヤリと意地悪く大尉が言う。夢にも思わなかった事態に、興奮がしばらく続きそうだった。
しかしその時だった。大佐の端末が呼出音を鳴らした。周囲も急に慌ただしくなっている事に気付く。
「どうした」
ロングホーン大佐が応答している間に周囲の人間に聞くと、ティターンズからの放送中継が始まったという。少尉達も近くのモニターへ詰め寄った。
『…フォンブラウン市は我々ティターンズが占拠した。…繰り返す!…』
「馬鹿な!主力は何をやっていた!」
大佐が端末に怒鳴る。この放送が本当ならば、早くもフォンブラウン市を敵が抑えたということだった。
「…私は司令部に急ぎ戻る。諸君は指示を待ちたまえ。機体は任せるが、まだ慣れない内はGM2でも構わんぞ」
大佐はそういって足早に去っていった。
- 685 ::2019/12/31(火) 17:15:04.22 ID:VILRIuWI0.net
- それから殆ど間を置かず、今度は第1戦闘配備の指示が響く。こちらも敵襲か。
「早速か…。私は百式で出る。2人は…」
「データに目を通しておきたいですし、私もネモで出ます」
「えっと…」
大尉達が機体を決める中、スクワイヤ少尉はガンダムを仰ぎ見た。
「少尉…流石に急には動かせんだろう」
察した大尉が心配そうに言う。
「いや、やります。きっとこの時を待ってたんです。私も、この子も」
猶予はない。少尉がガンダムの元へ走ると、彼らも乗機に向かって走った。
それぞれコックピットに乗り込むと機体を起動する。少尉の乗っていたGM2はそもそも旧GMからのアップデート版だった為、全天周囲モニターですら無かった。
広々としたコックピットに周囲の様子が写る。まるで宙に浮いている様な気分だ。
「これ…すっごい」
『少尉、ガンダムで本当に大丈夫か?』
ワーウィック大尉からだった。
「大丈夫も何も…最高です」
『あまり無茶はするなよ』
「了解!」
このタイプのインターフェースについて無知な訳ではない。とはいえ、大体はわかっても後は実際に動かしてみる必要がある。
『中尉はどうか?』
『凄い量の情報が…。早く慣れます』
『少しずつで良いからな。焦るな』
『了解』
中尉の機体もどうやら勝手が違う様だ。今まで自分で組んでいたものが既に最適化されているらしい。
- 686 ::2019/12/31(火) 17:15:39.71 ID:VILRIuWI0.net
- 『MS隊、準備は出来てるか?』
グレッチ艦長からだった。緊張で顔が強張って見える。
『全機いけます。状況は?』
大尉はいつもと変わりない。
『詳しいことはまだわかっちゃいないが、フォンブラウン市の強襲と間を置かずにアンマン市へもティターンズが来ているらしい。アレキサンドリア級が1隻、後続にサラミス改も2隻遅れて付いてきてる』
「アレキサンドリア級…もしかしたら」
『ああ、奴らかもしれんな。残念ながら本艦はまだ出港出来る状態にはない。MS隊だけ、アンマン市の防衛部隊と共に出てもらう形になる』
『了解。我々の部隊指揮はこちらに一任していただけますか』
『もちろんだ大尉。データ収集は中尉のネモと少尉の新型を存分に使ってやれ』
『ありがとうございます』
モニター越しの艦長が大きく息を吐き、覚悟を決めた様に改めてこちらを見つめた。
『戦果を期待するぞ!』
『『「了解」』』
艦長は自らを奮い立たせる様に言った。まさかの新造艦の艦長だ、無理もない。同じくガンダムを任された身としては心境に近いものがある。
まだカタパルト以外の設備が使えない為、百式、ネモに続く形で格納庫を歩く。ドックの天板の一部が開き、カタパルトハッチの向こうに星空が見えた。いつもと同じ宇宙も、モニターが変わると別物の様だ。隅々の遠い星まで掴めそうだった。
大尉、中尉が先行して出撃した。スクワイヤ少尉もそれに続くべく機体をカタパルトに固定する。
『ゲイルちゃん。ガンダムだぜ?良かったな』
グレッチ艦長が苦笑いしている。自分達の手を離れたところで事態が動き出している気がした。艦長も今の状況に付いていくのが精一杯といった様子だ。
「これまでの鬱憤を晴らしてやりますよ。…ゲイル・スクワイヤ少尉、マンドラゴラ…出ます」
掛かるGに耐え、射出された機体を制御する。背後のポットと全身のアポジモーターのおかげか、どんな姿勢でも安定して飛行出来る。
月を背に、螺旋状の光を描いた機体は今、彼女と共に明るい宇宙へと飛び立った。
11話 螺旋状の光
- 687 :◆tyrQWQQxgU :2019/12/31(火) 17:27:04 ID:VILRIuWI0.net
- 「アポロ作戦…。始まりましたな」
副官のレインメーカー少佐がブリッジの外を眺めつつ顎に手を当て言った。その傍に立ち、戦況を確認するウィード少佐は敵の出方を伺っていた。
本作戦に参加する前段階としてのテスト実施だったのだが、敵に遭遇したのは計算外だった。
それにしても…パプテマス・シロッコ…。木星帰りの男は、したたかなやり口でフォンブラウン市を制圧した様だ。出し抜かれたジャマイカンが黙っているとは思えないが。
ウィード少佐の部隊はそれと呼応する形でアンマン市を強襲しているところであった。予定よりは早いが、この機を逃す訳にはいかない。恐らくシロッコ大佐もウィード少佐達が動くことを見越している筈だ。
『そろそろね…。先行するわよ』
出撃したドレイク大尉から通信が入る。彼女らの機体は先日の交戦で損傷していたが、急ピッチでの補修がどうにか間に合った。試験用でパーツを持ち合わせていたのが功を奏した。
『あのバッタ…出てくるかな』
『いようがいまいがエゥーゴなど…パンプアップした今の俺の敵ではない!』
オーブ中尉のαは脚部の修理で手一杯だったが、ソニック大尉のγは一時的に装甲材を増やしている。月面近くの戦闘では重力も気になるが、先日のデータからするに被弾することも考慮したテストを実施すべきだった。
ひとまず3人を先行させて敵戦力を引きずり出す。フォンブラウンの情報が錯綜しているだろうことを考えると、恐らく出せる戦力は殆ど出してくる筈だ。
- 688 :◆tyrQWQQxgU :2019/12/31(火) 17:28:01 ID:VILRIuWI0.net
- 「指揮官殿は出られますかな?」
レインメーカー少佐がこちらを見る。
「そうね…。こないだの連中が出てくる様であれば、それも考えるわ」
ガルバルディ隊のテストは勿論だったが、本命のモビルスーツがまだ眠っていた。
PRX-000…名をニュンペーと言う。シロッコ大佐から支給されたもので、木星船団のジュピトリス謹製らしい。メッサーラの様なエース機ではなく、連邦軍で本格的な量産に耐えうる機体を彼の独力で試作したいとの事だった。
そのデータを元にして次の試作機を作るそうだが、テスト運用した限りでは非常に操縦性に優れたインターフェースを備えている。
今頃彼はドゴスギアに乗艦している筈だが、そちらでも設計に携わった機体を配備しているらしい。
「あれは予備パーツが殆どないからね…。ここぞってとこでしか実戦には出せない」
「ニュンペーの為にガルバルディを用意した様なものです。戦局の見極めはお任せしますよ」
話している間にも敵に動きが出始めていた。
先行したガルバルディ隊に呼応して、敵の守備隊が出てきている。主にGM2と思われる機体が6機程度。サラミス改も2隻ほど確認している。
「サラミスは気にするな!アレキサンドリアで引きつける!コロニーの残骸を盾にしつつ、市街に侵入しろ」
フォンブラウン市の戦局が落ち着くまで、ウィード少佐としては援軍が参戦するまで、とにかく敵を引きつけたい。
『市街って…。そりゃ敵は攻めづらいだろうけど…』
ドレイク大尉がどうも渋っている。
「言いたいことはわかるわよ。なにも破壊活動をしろとは言っていない。そういう動きを見せるだけでも、敵を引きつけるには効果的だからね…もしあちらさんが砲撃でもして被害が出ようものなら、エゥーゴ側に非がある」
『無茶な屁理屈ね…あなたのそういうとこ、嫌いじゃないわ。今日のあなたは意外と強気』
ガルバルディ隊は引き続き侵攻を再開した。敵はしっかり釘付けになっている様だ。
- 689 :◆tyrQWQQxgU :2019/12/31(火) 17:28:51 ID:VILRIuWI0.net
- すると、防衛ラインに加わる機影が3機現れた。内1機は例のバッタの様だが、僚機が前回と違う。
「何なのあれは」
ウィード少佐は思わずこぼした。大型のレドームを展開した機体と、見慣れない機体が更に1機。
『嘘でしょ…!ガンダムじゃんあれ!』
オーブ中尉が驚きの声を上げた。バッタだけでも厄介なところに、更にガンダムとは。
「まずいね…。頭でっかちの方も気になる。急いで市街まで侵入して!」
『俺が的になる!2人は先に行け!』
ソニック大尉の宣言どおり、γが敵の射線を誘導する。しかし釣れるのはGM2ばかりで、先程の3機はαとβを捉えている。しかも接近速度が目に見えて早い。機動性は勿論、こちらの進路を先読みしている様な的確さである。市街に入る前に頭を抑えられてしまう。
「ちっ…このままでは」
ウィード少佐は歯ぎしりした。ティターンズこそ練度の高い連邦軍唯一の軍隊である筈だ。数に物を言わせるその他連中とは訳が違う…。この様な戦況をシロッコ大佐に報告するわけにはいかなかった。
「ここは私にお任せください。あなたはあなたの成すべきことを」
レインメーカー少佐が出撃を促す。確かにこのままでは最悪各個撃破されかねない。
「…わかった。時間稼ぎさえ出来ればこっちのものよね」
「左様、頼みましたぞ。…整備班!ニュンペーの用意を急げ!ウィード少佐が出る!」
彼の言葉を背に、ウィード少佐は直ぐに機体の元へと駆けた。
シロッコ大佐が彼女に語った未来…そこへ到達する為には必要不可欠な作戦である。そしてこのニュンペーは、その後の連邦軍における兵達が搭乗する新たな機体となる筈だと、彼女は確信していた。
12話 語った未来
- 690 :◆tyrQWQQxgU :2019/12/31(火) 17:32:44 ID:VILRIuWI0.net
- 新型の情報処理能力は桁違いだった。この機体はフジ中尉がほしい情報をいち早く届けてくれる。周囲の地形は勿論、敵の進路予測や到達までの予測時間など、戦術の組み立てに必要なものがすぐに手に入る。
データに関してはホームであるアンマン市だからこそともいえるが、それを抜きにしても舌を巻く性能である。
「このまま直進すれば敵の市街最短コースを潰せます。敵は迂回するしかないはずです」
『よし、こうして道を絞れば敵の頭を叩けるな…モグラ叩きだ』
そういってワーウィック大尉がニヤリと笑う。その後を、スクワイヤ少尉のガンダムも遅れず付いてきている様だ。
出てきた敵部隊は案の定、例のガルバルディ隊だった。重装甲の機体が防衛隊を引きつけている様だが、そちらは彼らに任せた。あろうことか残りの連中は街を盾に取ろうとしている。
「やはりティターンズは手段を選びませんね…」
『全てがそうとは言わんが、少なくとも市街には一歩も侵入させてはいかん』
市民は既に地下階層へ退避しているとはいえ、この街は市民の財産そのものだ。こんな作戦を平気で立案するティターンズに、宇宙移民者達が従うわけもなかった。
- 691 :◆tyrQWQQxgU :2019/12/31(火) 17:33:21 ID:VILRIuWI0.net
- 敵とコロニー外壁を挟む形で並走する。その先には市街が広がっていた。
「大尉、ここを抜ければ連中は市街へ手が届きます」
『その前にこちらから叩けということか』
「はい。ここから2kmの所で外壁が僅かに途切れる。先回りしてそこから敵の進路を遮りましょう」
『『了解』』
2人が速度を上げた。流石に百式とガンダムは速い。中尉はワンテンポ遅れる形でその後を追った。
「…!来ます」
位置を掴んでいるのはこちらだけだ。敵からすれば、姿の見えなくなった我々が突如進路に現れたことになる。敵機がクレーターの影から現れた。思った通り、予期せぬ事態に敵は足を止めざるを得ない。
『一気に叩け!』
大尉の一声で一斉射撃を行う。狼狽えた敵は奇襲をまともに受けた。決定打にはならなかったものの、距離が開くまでの間にかなり手傷を追わせた筈だ。後退する敵を追う。
「少尉!追いつけるか!?」
『この子なら!』
スペックだけ見れば少尉のガンダムは群を抜いて推力がある。いきなりの初陣とはいえ、ガルバルディの先を取るくらいなら訳もないはずだ。
ガンダムが加速をかけると、またたく間に中尉達を、そして敵を出し抜いた。まさしく電光石火である。敵に立ちはだかるようにして、彼女はビームサーベルを抜いた。
- 692 :◆tyrQWQQxgU :2019/12/31(火) 17:34:00 ID:VILRIuWI0.net
- 挟撃を受ける形になった敵は、血路を拓くべく少尉のガンダムに切り込む。軽装な機体が突貫するのを援護するように、もう1機が振り返りながら中尉達をライフルで牽制してきた。敵ながら咄嗟の連携の早さは称賛に値する。
『中尉!援護しろ!』
大尉の百式がライフルを交わしながら敵機に迫る。サーベルを瞬時に抜くと、敵の下に潜り込みそのまま居合いの如くライフルを両断した。
敵が尚も粘りシールドのグレネードを撃とうとしたところを、中尉のビームライフルが捉えた。誘爆で煽られた敵機はその場に倒れ込む。
少尉のガンダムに斬りかかった敵も斬撃を躱され、そのまますれ違い様に首を跳ね飛ばされるのが見えた。勝負ありと言っていいだろう。
『武装解除させるぞ。その後で残るゴリラを叩く』
大尉がそう言うのとほぼ同時に、新たな機影を掴んだ。ハイザック1機と未確認の機体。全身が薄水色をした、曲線的なシルエットの機体だった。特殊な形状の銃器を携えている。
『あれが親玉…?』
少尉が言うやいなや、未確認機はこちらに向けて発砲した。大した威力のビームではないが弾速は極めて速い。
「散開!」
やむを得ず中尉達は距離を取るように散った。あれを避け続けるのは困難に思える。威力が低くとも、ビームである以上は急所に当てられてしまうと無事では済まない。
『本命だな…ここで落とす』
大尉が再び抜刀して未確認機と距離を詰めた。遮ろうとしたハイザックの足元を容易くすり抜ける。気を取られたハイザックの無防備な背中へ、中尉は標準を合わせる。
- 693 :◆tyrQWQQxgU :2019/12/31(火) 17:34:57 ID:VILRIuWI0.net
- が、割り込むようにして少尉のガンダムが入り込んだ。
「少尉!射線に入るな!」
『中尉こそ位置が悪いですよ!』
撃ち損じたハイザックをガンダムが斬った時、沈黙していた筈の先程のガルバルディが動いている事に中尉は気付いた。
メインカメラを失った軽装機から武装を受け取ったらしいもう1機が、ガンダムにライフルを向けていた。
「少尉!」
中尉は思わずガンダムの前に飛び出していた。盾で防ぐよりも先に、敵のビームが機体を貫く。機体の制御を失い、中尉は重力に引かれた。
『『フジ中尉!』』
2人の声が響く。注意が逸れた大尉の百式を未確認機の銃撃が襲う。少尉はどちらに加勢すべきか決めあぐねている様だ。
「少尉!ガルバルディだ!あっちを先に…」
言い終わるよりも先に、機体が地表へ打ち付けられる。落下の衝撃で頭を強く打った中尉は、目の前が真っ暗になった。
13話 咄嗟の連携
- 694 :◆tyrQWQQxgU :2019/12/31(火) 17:47:21 ID:VILRIuWI0.net
- まだまだ未投下の話がありますが、キリが悪くなりそうなので今回はここまで。
来年もよろしくお願いします!!
- 695 :通常の名無しさんの3倍:2020/01/02(木) 19:30:59 ID:8YYQZkyE0.net
- ことよろです!
紫のガンダム、マンドラゴラですか。
コラボ企画で色々なカラーリングがあるにしても、白×紫で戦闘シーンのあるガンダムorジムって中々なさそうですね。
百式改とレドーム付ネモに対してガンダムヘッド、通常規格より感度が高いのか移植の副作用で微妙に鈍感なのか...
死にたがり気質で1人だけセンサー弱そうなのっていい感じに不安を煽りますねw
フジ専用ネモはネモ早期警戒型やネモ・ディフェンサーとはAIで差別化している感じですかね。
あの緑と藍色のボディーに偵察用のオプション、なんと言うか落ち着いてて知的なイメージを与えられると思います。
展開がどうなるにしろ、引き続き見ていきたい機種です。
そしてニュンペー、木星帰りの設計した機体とは...
どちらかといえば陰気な色の機体が続いているように思うので、薄水色の配色は絵的にいい清涼剤になりそうですね。
新型のライフルはフェダーインとはまた違うのかな?気になります。
最後にお気付きかもしれませんが、>>691に唐突に「コロニー」出てますよw
いや宇宙進出のための施設なんだから、入植地で合ってるのかな......ここはザ◯ングル風に「ドーム」が無難かと。
では、良いお年を!
- 696 ::2020/01/02(木) 21:48:13.51 ID:HWjwRoQ80.net
- >>695
よろしくお願いします!
マンドラゴラはその名前と仕様で何となく察する部分あるかもなので言うのも少し野暮ですが、ガンダム計画のデータ流用機って設定です。違うバッタの方ですね。笑
EWACネモに関しては、情報の収集・分析に長けた機体と言うところ以外はほぼネモです。フジ中尉はさして飛び抜けて強いとかそういうキャラではないので。てかネモ自体高級感ありますしね…。
ニュンペーは初の完全なオリジナル機体ですが、メッサーラの次のPMXシリーズ(女であり過ぎた人のやつ笑)のプロトタイプ的なデザインで想像してもらえたら良いかなと思います!
ライフルに関しても色々考えているんですが…シロッコってなんやかんやで硬派な機体も好きですよね?
独力でサイコセンサー作るような彼だったら、ヴェスバー的な通常とはスピードの違うライフルを(可変式でない形でなら)作るくらいやりそうかなと。
紛らわしくてすみません笑
コロニー(残骸の)外壁が月にぶっ刺さってるやつです!ティターンズ側の描写の時にも盾にしてますね。
引き続きよろしくお願いしますー!
- 697 :◆tyrQWQQxgU :2020/01/02(木) 21:54:37 ID:HWjwRoQ80.net
- バイオセンサーの間違いですね笑
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