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FFDQバトルロワイアル3rd PART18

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:fGuaf2U40.net
━━━━━説明━━━━━
こちらはDQ・FF世界でバトルロワイアルが開催されたら?
というテーマの参加型リレー小説スレッドです。
参加資格は全員、
全てのレスは、スレ冒頭にあるルールとここまでのストーリー上
破綻の無い展開である限りは、原則として受け入れられます。

sage進行でお願いします。
詳しい説明は>>2-15…ぐらい。

前スレ
FFDQバトルロワイアル3rd PART17
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/ff/1348887405/l50

2 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:fGuaf2U40.net
+基本ルール+
・参加者全員に、最後の一人になるまで殺し合いをしてもらう。
・参加者全員に、<ザック><地図・方位磁針><食料・水><着火器具・携帯ランタン>が支給される。
 また、ランダムで選ばれた<武器>が1〜3個渡される。
 <ザック>は特殊なモノで、人間以外ならどんな大きなものでも入れることが出来る。
・生存者が一名になった時点で、主催者が待つ場所への旅の扉が現れる。この旅の扉には時間制限はない。
・日没&日の出の一日二回に、それまでの死亡者が発表される。

+首輪関連+
・参加者には生存判定用のセンサーがついた『首輪』が付けられる。
 この首輪には爆弾が内蔵されており、着用者が禁止された行動を取る、
 または運営者が遠隔操作型の手動起爆装置を押すことで爆破される。
・24時間以内に死亡者が一人も出なかった場合、全員の首輪が爆発する。
・日没時に発表される『禁止技』を使うと爆発する。
・日の出時に現れる『旅の扉』を二時間以内に通らなかった場合も、爆発する。
・無理に外そうとしたり、首輪を外そうとしたことが運営側にバレても爆発する。
・魔法や爆発に巻き込まれても誘爆はしない。
・首輪を外しても、脱出魔法で会場外に出たり禁止魔法を使用することはできない。

+魔法・技に関して+
・MPを消費する=疲れる。
・全体魔法の攻撃範囲は、術者の視野内にいる敵と判断された人物。
・回復魔法は効力が半減。召喚魔法は魔石やマテリアがないと使用不可。
・初期で禁止されている魔法・特技は「ラナルータ」
・それ以外の魔法威力や効果時間、キャラの習得魔法などは書き手の判断と意図に任せます。

3 :テンプレ:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:fGuaf2U40.net
+ジョブチェンジについて+
・ジョブチェンジは精神統一と一定の時間が必要。
 X-2のキャラのみ戦闘中でもジョブチェンジ可能。
 ただし、X-2のスペシャルドレスは、対応するスフィアがない限り使用不可。
 その他の使用可能ジョブの範囲は書き手の判断と意図に任せます。

+GF継承に関するルール+
「1つの絶対的なルールを設定してそれ以外は認めない」ってより
「いくつかある条件のどれかに当てはまって、それなりに説得力があればいいんじゃね」
って感じである程度アバウト。
例:
・遺品を回収するとくっついてくるかもしれないね
・ある程度の時間、遺体の傍にいるといつの間にか移ってることもあるかもね
・GF所持者を殺害すると、ゲットできるかもしれないね
・GF所持者が即死でなくて、近親者とか守りたい人が近くにいれば、その人に移ることもあるかもね
・GFの知識があり、かつ魔力的なカンを持つ人物なら、自発的に発見&回収できるかもしれないね
・FF8キャラは無条件で発見&回収できるよ

+戦場となる舞台について+
・このバトルロワイアルの舞台は日毎に変更される。
・毎日日の出時になると、参加者を新たなる舞台へと移動させるための『旅の扉』が現れる。
・旅の扉は複数現れ、その出現場所はランダムになっている。
・旅の扉が出現してから2時間以内に次の舞台へと移らないと、首輪が爆発して死に至る。

現在の舞台は闇の世界(DQ4)
ttp://www43.atwiki.jp/ichinichiittai?cmd=upload&act=open&pageid=16&file=%E9%97%87%E3%81%AE%E4%B8%96%E7%95%8C.PNG

地図CGIはこちら
ttp://www20.atpages.jp/~r0109/ffdqbr3/

━━━━━お願い━━━━━
※一旦死亡確認表示のなされた死者の復活は認めません。
※新参加者の追加は一切認めません。
※書き込みされる方はCTRL+F(Macならコマンド+F)などで検索し話の前後で混乱がないように配慮してください。
※参加者の死亡があればレス末に、【死亡確認】の表示を行ってください。
※又、武器等の所持アイテム、編成変更、現在位置の表示も極力行ってください。
※人物死亡等の場合アイテムは、基本的にその場に放置となります。
※本スレはレス数500KBを超えると書き込みできなります故。注意してください。
※その他詳細は、雑談スレでの判定で決定されていきます。
※放送を行う際は、雑談スレで宣言してから行うよう、お願いします。
※最低限のマナーは守るようお願いします。マナーは雑談スレでの内容により決定されていきます。
※主催者側がゲームに直接手を出すような話は極力避けるようにしましょう。

4 :テンプレ:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:fGuaf2U40.net
書き手の心得その1(心構え)
・この物語はリレー小説です。
 みんなでひとつの物語をつくっている、ということを意識しましょう。一人で先走らないように。
・知らないキャラを書くときは、綿密な下調べをしてください。
 二次創作で口調や言動に違和感を感じるのは致命的です。
・みんなの迷惑にならないように、連投規制にひっかかりそうであれば保管庫にうpしてください。
・自信がなかったら先に保管庫にうpしてください。
 爆弾でも本スレにうpされた時より楽です。
・本スレにUPされてない保管庫の作品は、続きを書かないようにしてください。
・本スレにUPされた作品は、原則的に修正は禁止です。うpする前に推敲してください。
・巧い文章はではなく、キャラへの愛情と物語への情熱をもって、自分のもてる力すべてをふり絞って書け!
・叩かれても泣かない。
・来るのが辛いだろうけど、ものいいがついたらできる限り顔を出す事。
 できれば自分で弁解なり無効宣言して欲しいです。


書き手の心得その2(実際に書いてみる)
・…を使うのが基本です。・・・や...はお勧めしません。また、リズムを崩すので多用は禁物。
・適切なところに句読点をうちましょう。特に文末は油断しているとつけわすれが多いです。
 ただし、かぎかっこ「 」の文末にはつけなくてよいようです。
・適切なところで改行をしましょう。
 改行のしすぎは文のリズムを崩しますが、ないと読みづらかったり、煩雑な印象を与えます。
・かぎかっこ「 」などの間は、二行目、三行目など、冒頭にスペースをあけてください。
・人物背景はできるだけ把握しておく事。
・過去ログ、マップはできるだけよんでおくこと。
 特に自分の書くキャラの位置、周辺の情報は絶対にチェックしてください。
・一人称と三人称は区別してください。
・極力ご都合主義にならないよう配慮してください。露骨にやられると萎えます。
・「なぜ、どうしてこうなったのか」をはっきりとさせましょう。
・状況はきちんと描写することが大切です。また、会話の連続は控えたほうが吉。
 ひとつの基準として、内容の多い会話は3つ以上連続させないなど。
・フラグは大事にする事。キャラの持ち味を殺さないように。ベタすぎる展開は避けてください。
・ライトノベルのような萌え要素などは両刃の剣。
・位置は誰にでもわかるよう、明確に書きましょう。

5 :テンプレ:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:fGuaf2U40.net
書き手の心得3(一歩踏み込んでみる)
・経過時間はできるだけ『多め』に見ておきましょう。
 自分では駆け足すれば間に合うと思っても、他の人が納得してくれるとは限りません。
 また、ギリギリ進行が何度も続くと、辻褄合わせが大変になってしまいます。
・キャラクターの回復スピードを早めすぎないようにしましょう。
 (今までの話を平均すると、回復魔法使用+半日費やして6〜8割といったところです)
・戦闘以外で、出番が多いキャラを何度も動かすのは、できるだけ控えましょう。
 あまり同じキャラばかり動き続けていると、読み手もお腹いっぱいな気分になってきます。
 それに出番の少ないキャラ達が、あなたの愛の手を待っています。
・キャラの現在地や時間軸、凍結中のパートなど、雑談スレには色々な情報があります。
 雑談スレにも目を通してね。
・『展開のための展開』はイクナイ(・A・)!
 キャラクターはチェスの駒ではありません、各々の思考や移動経路などをしっかりと考えてあげてください。
・書きあがったら、投下前に一度しっかり見直してみましょう。
 誤字脱字をぐっと減らせるし、話の問題点や矛盾点を見つけることができます。
 一時間以上(理想は半日以上)間を空けてから見返すと一層効果的。


+修正に関して+
・修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述してください。
・NGや修正を申し立てられるのは、
 「明らかな矛盾がある」「設定が違う」「時間の進み方が異常」「明らかに荒らす意図の元に書かれている」
 「雑談スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等)」
 以上の要件のうち、一つ以上を満たしている場合のみです。
・批判も意見の一つです。臆せずに言いましょう。
 ただし、上記の修正要望要件を満たしていない場合は
 修正してほしいと主張しても、実際に修正される可能性は0だと思って下さい。
・書き手が批判意見を元に、自主的に修正する事は自由です。

6 :テンプレ:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:fGuaf2U40.net
+議論の時の心得+
・議論が紛糾すると、新作や感想があっても投下しづらくなってしまいます。
 意見が纏まらずに議論が長引くようならば、したらばにスレを立ててそちらで話し合って下さい。
・『問題意識の暴走の先にあるものは、自分と相容れない意見を「悪」と決め付け、
 強制的に排除しようとする「狂気」です。気をつけましょう』

+読み手の心得+
・好きなキャラがピンチになっても騒がない、愚痴らない。
・好きなキャラが死んでも泣かない、絡まない。
・荒らしは透明あぼーん推奨。
・批判意見に対する過度な擁護は、事態を泥沼化させる元です。
 同じ意見に基づいた擁護レスを見つけたら、書き込むのを止めましょう。
・擁護レスに対する噛み付きは、事態を泥沼化させる元です。
 修正要望を満たしていない場合、自分の意見を押し通そうとするのは止めましょう。
・嫌な気分になったら、モーグリ(ぬいぐるみも可)をふかふかしてマターリしてください。
・「空気嫁」は、言っている本人が一番空気を読めていない諸刃の剣。玄人でもお勧めしません。
・「フラグ潰し」はNGワード。2chのリレー小説に完璧なクオリティなんてものは存在しません。
 やり場のない気持ちや怒りをぶつける前に、TVを付けてラジオ体操でもしてみましょう。
 冷たい牛乳を飲んでカルシウムを摂取したり、一旦眠ったりするのも効果的です。
・感想は書き手の心の糧です。指摘は書き手の腕の研ぎ石です。
 丁寧な感想や鋭い指摘は、書き手のモチベーションを上げ、引いては作品の質の向上に繋がります。
・ロワスレの繁栄や良作を望むなら、書き手のモチベーションを下げるような行動は極力慎みましょう。

7 :テンプレ:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:fGuaf2U40.net
参加者名簿(名前の後についている数字は投票数)

FF1 4名:ビッケ、スーパーモンク、ガーランド、白魔道士
FF2 6名:フリオニール(2)、マティウス、レオンハルト、マリア、リチャード、ミンウ
FF3 8名:ナイト、赤魔道士、デッシュ、ドーガ、ハイン(2)、エリア、ウネ、ザンデ
FF4 7名:ゴルベーザ、カイン、ギルバート、リディア、セシル、ローザ、エッジ
FF5 7名:ギルガメッシュ、バッツ、レナ、クルル、リヴァイアサンに瞬殺された奴、ギード、ファリス
FF6 12名:ジークフリート、ゴゴ、レオ、リルム、マッシュ、ティナ、エドガー、セリス、ロック、ケフカ、シャドウ、トンベリ
FF7 10名:クラウド、宝条、ケット・シー、ザックス、エアリス、ティファ、セフィロス(2)、バレット、ユフィ、シド
FF8 6名:ゼル、スコール、アーヴァイン、サイファー、リノア、ラグナ
FF9 8名:クジャ、ジタン、ビビ、ベアトリクス、フライヤ、ガーネット、サラマンダー、エーコ
FF10 3名:ティーダ、キノック老師、アーロン
FF10-2 3名:ユウナ、パイン、リュック
FFT 4名:アルガス、ウィーグラフ、ラムザ、アグリアス

DQ1 3名:勇者、ローラ、竜王
DQ2 3名:ローレシア王子、サマルトリア王子、ムーンブルク王女
DQ3 6名:オルテガ、男勇者、男賢者、女僧侶、男盗賊、カンダタ
DQ4 9名:男勇者、ブライ、ピサロ、アリーナ、シンシア、ミネア、ライアン、トルネコ、ロザリー
DQ5 15名:ヘンリー、ピピン(2)、主人公(2)、パパス、サンチョ、ブオーン、デール、王子、王女、ビアンカ、はぐりん、ピエール、マリア、ゲマ、プサン
DQ6 11名:テリー(2)、ミレーユ、主人公、サリィ、クリムト、デュラン、ハッサン、バーバラ、ターニア(2)、アモス、ランド
DQ7 5名:主人公、マリベル、アイラ、キーファ、メルビン
DQM 5名:わたぼう、ルカ、イル、テリー、わるぼう
DQCH 4名:イクサス、スミス、マチュア、ドルバ

FF 78名 DQ 61名
計 139名

8 :テンプレ:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:fGuaf2U40.net
生存者リスト (名前に※がついているキャラは首輪解除済み)

FF1 0/4名:(全滅)
FF2 0/6名:(全滅)
FF3 0/8名:(全滅)
FF4 0/7名:(全滅)
FF5 2/7名:バッツ、ギード
FF6 4/12名:リルム、マッシュ、ロック、ケフカ
FF7 2/10名:ザックス、セフィロス
FF8 3/6名:※スコール、アーヴァイン、サイファー
FF9 0/8名:(全滅)
FF10 0/3名:(全滅)
FF10-2 2/3名:ユウナ、リュック
FFT 2/4名:※アルガス、ラムザ

DQ1 0/3名:(全滅)
DQ2 0/3名:(全滅)
DQ3 1/6名:セージ
DQ4 2/9名:ソロ、ロザリー
DQ5 2/15名:ヘンリー、プサン
DQ6 1/11名:クリムト
DQ7 0/5名:(全滅)
DQM 0/5名:(全滅)
DQCH 0/4名:(全滅)

FF 15/78名 DQ 6/61名
うち首輪解除済み 2名
計 19(21)/139名

9 :テンプレ:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:fGuaf2U40.net
■現在までの死亡者状況
ゲーム開始前(1人)
「マリア(FF2)」

アリアハン朝〜日没(31人)
「ブライ」「カンダタ」「アモス」「ローラ」「イル」「クルル」「キノック老師」「ビッケ」「ガーネット」「ピピン」
「トルネコ」「ゲマ」「バレット」「ミンウ」「アーロン」「竜王」「宝条」「ローザ」「サンチョ」「ジークフリート」
「ムース」「シャドウ」「リヴァイアサンに瞬殺された奴」「リチャード」「ティナ」「ガーランド」「セシル」「マチュア」「ジオ」「エアリス」
「マリベル」

アリアハン夜〜夜明け(20人)
「アレフ」「ゴルベーザ」「デュラン」「メルビン」「ミレーユ」「ラグナ」「エーコ」「マリア(DQ5)」「ギルバート」「パイン」
「ハイン」「セリス」「クラウド」「レックス」「キーファ」「パウロ」「アルカート」「ケット・シー」「リディア」「ミネア」

アリアハン朝〜終了(6人)
「アイラ」「デッシュ」「ランド」「サリィ」「わるぼう」「ベアトリクス」

浮遊大陸朝〜日没(21人)
「フライヤ」「レオ」「ティファ」「ドルバ」「ビアンカ」「ギルダー」「はぐりん」「クジャ」「イクサス」「リノア」
「アグリアス」「ロラン」「バーバラ」「シンシア」「ローグ」「シド」「ファリス」「エッジ」「フルート」「ドーガ」
「デール」

浮遊大陸夜〜夜明け(19+1人)
「テリー(DQ6)」「トンベリ」「ゼル」「レオンハルト」「ゴゴ」「アリーナ2」「わたぼう」「レナ」「エドガー」「イザ」
「オルテガ」「フリオニール」「ユフィ」「リュカ」「ピエール」「ハッサン」「ビビ」「ブオーン」「ジタン」「ライアン」

浮遊大陸朝〜終了(7人 ※うち脱落者1人)
「アルス」「ギルガメッシュ」「ウネ」「ウィーグラフ」「マティウス」「アリーナ」 ※「ザンデ」(リタイア)

闇の世界朝〜 (13人)
「サックス」「タバサ」「テリー(DQM)」「ルカ」「パパス」 「フィン」「ティーダ」「スミス」「カイン」「ピサロ」
「ターニア」「エリア」「サラマンダー」

10 :テンプレ:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:fGuaf2U40.net
■過去スレ
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1099057287/ PART1
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1101461772/ PART2
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1105260916/ PART3
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1113148481/ PART4
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1119462370/ PART5
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1123321744/ PART6
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1128065596/ PART7
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1130874480/ PART8
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1142829053/ PART9
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1143513429/ PART10
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/ff/1157809234/ PART11
http://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1179230308/ PART12
http://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1208077421/ PART13
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/ff/1218211059/ PART14
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/ff/1249315531/ PART15
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/ff/1295278544/ PART16

FFDQバトルロワイアル裏方雑談スレPart14
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/ff/1225283405/
※part13以前の裏方雑談スレログはまとめサイトに保管されています

11 :テンプレここまで:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:fGuaf2U40.net
■その他
FFDQバトルロワイアル3rd 編集サイト
http://www.geocities.jp/ffdqbr3log/
FFDQバトルロワイアル3rd 旧まとめサイト
http://www.geocities.jp/ffdqbr3rd/index.html
1stまとめサイト
http://www.parabox.or.jp/~takashin/ffdqbr-top.htm
1st&2ndまとめサイト
http://ffdqbr.hp.infoseek.co.jp/
携帯用まとめサイト
http://web.fileseek.net/cgi-bin/p.cgi?u=http%3A%2F%2Fwww.geocities.jp/ffdqbr3log/
FFDQバトルロワイアル保管庫@モバイル(1st&2ndをまとめてくれています)
http://dq.first-create.com/ffdqbr/
番外編まとめサイト
http://ffdqbr.fc2web.com/
1stまとめ+ログ置き場 兼 3rdまとめ未収録話避難場所
http://www11.atwiki.jp/dqff1st/


保管庫
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/2736/1201201051/
したらば
http://jbbs.livedoor.jp/game/22429/
あなたは しにました(FFDQロワ3rd死者の雑談ネタスレ)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/22429/1134189443/
ロワらじ
http://jbbs.livedoor.jp/game/22796/
お絵かき掲示板
http://blue.oekakist.com/FDBR/

現在の舞台は闇の世界(DQ4)
ttp://www43.atwiki.jp/ichinichiittai?cmd=upload&act=open&pageid=16&file=%E9%97%87%E3%81%AE%E4%B8%96%E7%95%8C.PNG

12 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:MKNRqg2zO.net
  

13 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:MKNRqg2zO.net
さるさん回避

14 :絶望シンドローム 12/28:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:fGuaf2U40.net
◆◆◆

手に抱くは若者たちから奪ったザック、胸に抱くは果てなき狂気。
魔導の力によって壊れた心に突き動かされるその男、ケフカ=パラッツォは、『救われるべき存在』だろうか?

――否。

魔導の力は精神に影響を及ぼすが、生まれ持った才能を塗りつぶすことはできない。
彼の残虐さは理性という箍が外れた結果であっても、その狡猾さはやはり魔道士自身の素質だ。
そして今一つ。人が変わろうとも、過去は変わらない。
勇者ソロが【闇】に憑かれた二人の銃士に手を差し伸べたいと願ったのは、彼らの過去を知っていたからだ。
力を求めて未完成の実験に身を捧げ、精神を病んだという過去を知る者達ですら、悉く悪と断じ否定した――
それ即ち、ケフカという人物が生来邪悪な存在であったことの証左に他ならない。

そして彼自身も、その評を否定することはないだろう。
救いを求める事もないだろう。

今や、彼の望みはただ二つ。
全てを超えるに足る力と、それによって齎される万物の破壊だけだ。
故に彼は、かつて魔王が求めたという進化の秘法を手中に収めるため、主亡き魔城の前に立つ。
そしてその掌に握りしめた機械と、南方に広がる草原を省みて――
彼は化粧に隠された口の端を、大きく吊り上げた。

「おやおや。またまたカッパちゃんが釣れたようですねえ……ヒッヒッヒ!」

◆◆◆

『オール・オール・アビュージズ』

◆◆◆

15 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:MKNRqg2zO.net
  

16 :絶望シンドローム 13/28:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:fGuaf2U40.net
ぼくちんはレーダーを見ながらこっそり笑いました。
南からまっすぐこちらに向かっている光点は見えても、その光が指し示す人物の姿はあまり良く見えません。
逆に考えれば、それは草原の色に紛れるような容姿の人物だということ。
そーーーんなの、ちんちくりんなカッパちゃんしか居ませんよねぇ!

どうせぼくちんの素晴らしいファッションに気付いて、身の程知らずにも復讐してやろうって魂胆なんでしょうけど……
そうや問屋もサンマも卸しませんコトよ!
セフィロスくん! 君のようなカッパは日干しになって焼かれてダイコンオロシを乗せられていればいいのだ!
この俺様に逆らおうだなんて百万飛んで一億年と二千年、いや未来永劫永遠に早ぁーい!
キレッキレに冴えわたるケフカ様の叡智で、存分に料理して差し上げましょう!

テレッテテテテッ♪ テレッテテテテッ♪
えー、悪い子の皆様こんばんわ。
ムービー・ボイスにコストもハイクオリティな、ケフカさま3次元クッキングのお時間ですよ〜ん。
今日の材料は飛んで火に入る生カッパと、おそらく城内に居るであろうユウナちゃん。
あとついでに城の中に残っちゃってるトンデモナク運の悪い有象無象どもです!

まずは一旦帽子を脱ぎまして、毎度おなじみとなりましたテレポを唱えます。
これは私の身体を一定距離、任意の方向に瞬間移動させる魔法です。
目標地点は当然上方向ですよ。
これですっトロいカッパ巻の具材よりも、素早く上階に行けるわけですね。
そして同時にバニシュ! 後から唱えないと透明効果が剥がれちゃうので注意が必要です。

「カー!」

あっ。

……まあ、極稀に予想外に早くてバッタ顔負けの脚力を持つカッパがいたりして、タッチの差でバルコニーから乗り込んでくることもあったりします。
そういう時は落ち着いて、抜き足差し足忍び足しましょうね。
……そう、今のぼくちんのようにスタコラサッサとね。

「カー…クァックァックァッ」

ああ、なーんか一匹85ギルぐらいで身売りされてそうな釣り餌のカッパがイッチョ前にニヤニヤしてますねえ。
間抜けヅラ晒しやがって、きゅうりでも探してるんですかぁ?
どうせそのヌルヌル生臭い身体じゃ、気配もわからなきゃ集中力も保てないに決まってるですからぁ。
大人しく一階に行って「きゅうりおいちいでち」って、そこらへんのロウソクでもかじってなさいよ!
ポッキリ折れるし火ィつけたら燃えるし、どっちも似たようなモンデショ!
だからあっち行け! アッチ!!

17 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:MKNRqg2zO.net
さるさん除け

18 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:MKNRqg2zO.net
  

19 :絶望シンドローム 14/28:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:fGuaf2U40.net
「……カー」

……フン、あくまでもバルコニーに陣取るつもりか。
そういうことなら、こっちは先に進化の秘法とやらを探してやろうじゃあーりませんか。
アーヴァインから騙し取った情報は断片的なものだけど、ぼくちんの慧眼と天災的頭脳は些細な情報も逃さないのであーる!

まず昨日の夜の出来事。
ピサロはアーヴァインを殺すべきだと考えるほどに警戒していた。
ゆ・え・にィ! 研究の内容をピサロが自発的に教えたとは考えニクーーい!
そんな状況が成り立つとすれば、実は口が上手いアーヴァインくんが色ボケのピサロを奇跡的に丸め込んだか――
さもなけりゃ、ピサロが教えるまでもなく研究の内容を知ることが出来た状況にいたか、だ!
で、前者の可能性はどう考えてもゼロだから、窓からポイします。丸めてポーイ。
そういうわけで、アーヴァインは件の研究を行っていた部屋に長時間居た可能性が高いに決まっている!
そしてその位置を指し示す手がかりは、ズヴァリ! 城の入り口に落ちていたロープだ!

そもそもあんな所にロープが落ちている理由なんて一個しかない。
誰かが出入りしやすくするためにバルコニーにロープを結び、用が済んだか敵が入り込んだかして切り落としたのだ。
では、何故侵入される危険を冒してまでロープをブラブラぶらさげていたか?
答えはひとォつ! ロープが結ばれていたバルコニーは『入口からだと酷く離れた場所に繋がっている』のだ!
んでもってついでに、『発見されるリスクを負ってでも頻繁に出入りしたがる人物がいた』!
そしてそして、そ・し・てェ!
場所とロープの長さを鑑みるに、カッパが陣取ってるバルコニーとは別の――対岸のバルコニーである可能性が高ァい!
これらの情報を合わせれば、探すべき研究室はあそこのバルコニーから行ける場所であることは間違いないのだじょー!

どうですか? 私にかかればこの程度の情報でこれだけの推理が可能なのですよ。
サァサァ、崇めろ称えろ褒め称えろー!! そしてぼくちんのすんばらしいアタマにひざまずけー!!
アーヒャヒャヒャヒャヒャ!

――ツマラン。

カッパの分際で、どこまでも私の邪魔をしやがって。
それにユウナもここにいるだろう。
城に来る道すがらで草むらから野性動物みたいに飛び出してこなかった以上、本物のアーヴァインをワザワザ無視して城に行った可能性しかない。
マッタク、誰だよ! ラムザなんかを追っかけさせた奴は!
それもこれも全部あのガキンチョとぼくちんを見間違えたユウナが悪い!
あーもう、あの女のフシアナめんたまと、セフィロスのストーカーめんたまを交換すればいいのになー。

20 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:MKNRqg2zO.net
  

21 :絶望シンドローム 15/28:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:fGuaf2U40.net
おまけにマッタクマッタク、このレーダー、なーんで横方向の位置関係しかわかんないんでしょうかねぇ?
高低差も合わせてわかんなきゃ意味がナイナイナーイのだ!
こんなものを支給する魔女ってアレですね、間違いなくアナログ世代の人間なんでしょうね。
きっと部屋にはエアコンも扇風機も置いてなくて、ウチワでパタパタ仰ぎながら「あづーい」って大の字になって寝そべっているんですよ。
ああヤだヤだ、ババア臭くて化粧臭いだけでも繊細なぼくちんには耐えられないのに、ついでに汗臭いなんてシンジラレナーイ! 
脱出に成功した暁にはあの城ごと瓦礫の塔で押し潰して、キンモクセイのかほりの消臭剤をたっぷりとぶちまけてやりましょう!
アーヒャヒャヒャヒャ! アーッヒャヒャヒャヒャヒャヒャッ!

……ツマラン!

私はレーダーの画面に再び視線を向ける。
光点は全部で七つ。
中心の私と、すれ違ったばかりのセフィロスを除き、どれが誰の位置を示しているのか絞り込む情報はない。
ただ、並走していた二つの光点が別の光点の近くで立ち止まり、そのまま動かなくなった。
そしてそれとは別に、追いかけっこをしているらしい光点が、少し西側に一組映っている。
このすんばらしくかっこいい俺様と、瀕死のセミのようにじたばたもがいてるガキンチョを見間違えるよーな絶望的にどうしようもないユウナちゃんが、誰かと一緒に行動したり、立ち止まって話をするとは思えない。
つまり、追われているのか追っているのかはわからないが、西側の光点のうちどちらかがユウナであるはずだ。

さて、ここで問題です。
私が目指すべきバルコニーは東側と西側、どっちにあったでしょーか。
ぼくちんがマルをつけたいのは1番なのですがここは二番で我慢するしか……って、え? 三択問題じゃない?
てへ、ごめんちゃーい。

……うっきゃーーーーーーーーーーっ!! チクチクチクチクチクッショー!!!

ドイツもコイツもソイツもアイツも! 空気読むって言葉を知らないんですか虫ケラどもが!
ぼくちん、もう我慢の限界ですことよ!
やっぱりセフィロス殺しましょう! ユウナも殺しましょう! そして俺様の出番を増やしましょう!
妨害なんかにくじけないワ!
邪魔者どもを排除した暁には見事進化の秘法を見つけ出し、神を超える神として降臨してやるんだじょー!!

幸い、廊下は静かである。
足音の類は一切聞こえない。
レーダーにどう映っていようと、実際に近くにいるのはセフィロスだけなのだろう。
ならば奥に進んでしまえば、一度バニシュを解いても平気なはずだ。
そしてこの城は、そこそこ頑丈に作られているようだ。
これならやりようというものがある。

22 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:MKNRqg2zO.net
  

23 :絶望シンドローム 16/28:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:fGuaf2U40.net
ぼくちんはぴょんこぴょんこと歩きながら、一旦帽子を脱ぎます。
二度唱える必要がない魔法というのもありますからねェ。
例えば……

「まーずーは、レビテトにヘイストっと」

詠唱が終わると同時に、透明化が解け、代わりに私の身体がふわりと浮きあがります。
ヘイストはモノのついでです。詠唱時間を短くしたい、という目論見もあったりなかったりしますがね。
「うーん。この辺りで良いカナー?」
ぼくちんは帽子を被り直しながら、ちょっとだけ開けた広間のど真ん中に立ちました。
近くにユウナちゃんが来たらイイ的にされちゃいそーですね。
きゃー、コワイ!
でもだいじょーぶ、見つかる前にぼくちんの魔法が完成するに決まってます!
神であるぼくちんがそう決めたのだ! カッパやキチガイ女にどうこうできるハズがないないなーーーい!

さあ、無知で無能な愚民どもに教えて差し上げましょう。
地を這う虫ケラなんかが、神に敵うわけないってことを。

二回分。
体感時間で二分ばかりの詠唱を終えた私は、魔力を解き放ちます。

「クエイク」

力ある言葉と魔力が城の基盤たる大地に亀裂を走らせ、結界に包み込みます。

『クエイク』

みなさんご存じの通り、ユウナから奪った帽子は山彦を生み出す事で多重詠唱を可能としまして。

「クエイク」

私が身に着けている装飾品は同時詠唱を可能とします。

『クエイク』
当然、一回目の詠唱も二回目の詠唱も、山彦となって反響し、魔力を集めて再構成するわけです。

24 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:MKNRqg2zO.net
  

25 :絶望シンドローム 17/28:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:fGuaf2U40.net
一発唱えただけでも地割れを引き起こし、極地的大地震を呼び起こす広範囲無差別破壊魔法。
ソイツを私の圧倒的魔力で四重詠唱したとなれば、どうなるか――

アーヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!
その答えがコレだぁあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!

ミドガルズオルムのアースサラウンドなんて雑魚すぎて目じゃない!
彫像が倒れ窓が割れ照明具が落下し棚が倒れ家具という家具が揺れに翻弄され跳ね踊る!
トーゼン、中にいる人間は空でも飛べなきゃ揺れ動く床に翻弄され叩きつけられる!
倒れた家具に押し潰され、ガラスに刺さり、階段や吹き抜けに落下する!
破壊が破壊を産む破壊のスパイラル!!
ハカイの大判ぶるまいだぁああああああああ!!!

で・も!
クエイクならばメルトンやメテオと違って熱的破壊は伴わない!
故に城全体を巻き込んだところで研究資料が焼失する心配はぬわぁーい!!
棚が倒れたって、肝心の資料さえ無くならなければ問題はナーイのだ!

嗚呼、なんてナンテすんばらしい!
これが魔導の力! これが俺様の本気! これがケフカ様の実力なんだじょーーー!
ひれ伏せ! ひざまづけ! ぺっちゃんこになって頭を下げろ!
あ、カッパとキチガイ女と雑魚どもは亡くなって結構です。
どうぞどうぞ、皆さまどしどし死んじゃってくださァい!

アッヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!
アーーッヒャッヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!

26 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:MKNRqg2zO.net
  

27 :絶望シンドローム 18/28:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:fGuaf2U40.net
◆◆◆

かつて彼女は召喚士として、世界に救いをもたらした。
かつて彼女はスフィアハンターとして、失われた愛を取り戻させた。
スピラの民に希望の象徴たる人物の名を尋ねれば、まず彼女が挙がるだろう。
それほどに彼女は愛され、親しまれ、崇められた、紛れもない英雄だ。

ならば、もし。
今の彼女をスピラの民が見たならば、何と称するのだろうか。

今の彼女が求めるものは、救いなどではない。
今の彼女に残っているものは、愛などではない。
嫉妬に狂って真実から目を逸らし、妄執に憑りつかれたまま血で血を洗い、
差し伸べられた救いの手に憎む男の幻影を重ねて、己が殺戮を愛の証と信じ込む。
かつての彼女を知る者は、今の彼女をどう感じるのだろうか。

神ですら慄かせた狂気に突き動かされるまま、彼女は【闇】を身に纏い、勇者にその手を向ける。

◆◆◆

『闇化症候群』

◆◆◆

28 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:MKNRqg2zO.net
  

29 :絶望シンドローム 19/28:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:fGuaf2U40.net
許さない。
許さない、許さない許さない、許さない許さない許さない許さない。
こいつさえいなければ私は幸せだったのに何度も何度も邪魔をして。
こいつさえいなければ私はずっと大好きなティーダと一緒に居れたのにこいつが……

――違う。

こいつは私を騙したんだ。偽物のティーダを連れてきて騙してたんだ。
人殺しのくせに私を騙して二人で嘲ってたんだ。私が傷つくのを見て笑ってたんだ。
ねえ、楽しかった? そんなに私は騙されやすかった?
私の気持ちを弄ぶのはそんなに楽しかった? 面白かった?
そうだよ、いつだって『     』は偽物の傍で笑ってて、偽物をカレの名前で呼んで……ああああああ。
許さない。
許さないユルサナイゆるさないゆるさない。
人殺しの分際で。私を騙して。

――違う。

私はスピラに帰る為に皆を殺すの。だって早く帰らなきゃティーダに会えないもの。
なのに『     』が邪魔をする。私が皆を殺す前に『     』が殺していくんだ。
私がティーダをどれだけ愛しているか、その証を『     』が消していく。
そんなの許されない。ユルサナイ。許さない。ゆるさない。
本当にティーダの事を好きなのは私だから私はティーダに会うために全力を尽くしたいのにこいつが邪魔をするんだ。
ティーダの偽物を持ち出して、リュックの名前を持ち出して。
私の気持ちを愛じゃないって否定して、騙そうとしてるんだ。
そうだよ、エドガーさんもあの女もクリムトさんも全部『     』が用意した偽者なんだ。
眼の前に居るこいつのせいで私はこんなに苦しんでるんだ。
でも大丈夫だよ。私は騙されないから。絶対に騙されないから。
許さなければいいんだよ。殺せばいいんだよ。
みんな殺してスピラに帰ってティーダに会いに行くんだから。
でもだからこそ『     』だけは絶対に許せない。
絶対に許さない。
許さない。ゆるさない。ユルサナイ。
ぜったいに、ゆるさない。

30 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:MKNRqg2zO.net
  

31 :絶望シンドローム 20/28:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:fGuaf2U40.net
きぐるみ士。
私が持っている中で、多分最強のドレスフィア。
暑くて頭が重くてクラクラするけど、文句は言っていられない。
『     』を逃がすくらいなら、動きにくい不恰好なモーグリの姿でいるほうがマシだよ。

そう、『     』は最低なヤツなんだ。
追いかけっこをするとかいって、最初に見せた姿とは別人の姿に化けたんだ。
それからあんな偽物を見せつけて、私を城の中に来るように誘導してから地震を起こしたんだよ。
また私を騙そうとしたんだ。
もう長く苦しめなんて甘いことは言わないよ。
こいつの声なんて一秒でも聞いていたくないから、何も言えないようにしてやる。
苦しめるのはそれからでいい。

『     』は呆然とした表情で私を見ている。
きっと自分の策が見破られるとは思ってなかったんだろうね。
あはははは。
このチャンスを見逃すほど私は弱くないんだよ。
モグチャージで周囲の魔力を掻き集め、モグビィームを叩き込む。
並みのモンスターなら一撃で殺せる、とっておきの技だけど――

「ユウナさん。リュックは貴方の身をずっと案じていました」

光が止んだ時、そこに居たのは無傷で銀色の盾を構える『     』だった。
ああ、本当に。
本当に本当に本当に本当に――コイツはどこまで私を馬鹿にすれば気が済むの!?

「リュックだけじゃない。リルムだって貴方の事を心配しています。
 その二人も、貴方は殺すつもりなんですか?」

うるさい。黙れ。
どうせお前が言ってるリュックやリルムだって――

「偽物なんでしょ。誰も彼もみんな、お前が作った魔物なんでしょ。 
 騙されないよ。もう騙されない。だから……
 その汚い声でリュックの名前を呼ぶなァアアアアアアッッッツ!!」

前にパインが言ってた。魔法が効かない奴はメッタ切りにすればいいって。
雷鳴の剣。テリー君が残してくれた武器を手に、全力で切りかかる。

32 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:MKNRqg2zO.net
  

33 :絶望シンドローム 1/28:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:fGuaf2U40.net
「くっ……!」

なのに、『    』は白銀の剣で私の攻撃を受け止めた。
狙撃手だって言ってたのに。銃以外はまともに使ったことがないって言ってたくせに。
騙してたんだ。

ムカツク。

剣の使い方だって、ティーダのことを思い出しながら、たくさん魔物と戦って身に着けたモノなのに。
こんな奴に通じないなんて、私の努力と思い出にべったりと墨を塗られた気分だ。
バカにしてる。
許さない。
殺す。絶対にここで殺す。殺さないと気が済まない!!

「エクスカリバー!」

気合と共に刀身から聖なる光が伸びる。
醜い魔物には効果覿面のはずだ。
でも、『    』の翳した盾がまたもや光を弾いてしまった。
「ラリホーマ!」
聞きたくもない声で『    』が何かの魔法を唱える。
妙な色の光が見えたと思った瞬間、激しい眠気が襲ってきた。
どこまでも私の事をコケにする腹積もりらしい。
冗談じゃない。ふざけるな。
怒りに意識を集中させ、眠気を散らす。

「ユウナ!」

背後からしわがれた声が響いた。
クリムトさんだ。
振り切ったつもりだったけど……さすがに追いつかれちゃうか。
でも、あれだけの地震に見舞われたせいか、腕や肩から新しい血が流れてる。
目が見えないんだから当然だよね。
本当に酷い。私を殺すためだけにこんな地震を起こして他の人を巻き込むなんて。
最低だよ。
許せない。

34 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:MKNRqg2zO.net
  

35 :絶望シンドローム 22/28:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:fGuaf2U40.net
「ご老人……? もしかして、貴方が」
『    』が間抜けな問いかけをした、その隙を狙って振りかぶる。
なのに――死角から一陣の風が吹いた。
同時に腹部にずしんと衝撃が走り、逆に吹っ飛ばされてしまう。

一体、誰が?

さらに追い打ちをかけるように、クリムトさんの声が響く。
「マヌーサ」
たちまち周りに霧が立ち込め、見たくもない『   』の姿がいくつも映し出された。

どうして? 体当たりみたいな攻撃も、クリムトさんの仕業だってこと?
クリムトさん、さっきも私の邪魔をして――ああ、いや、なんだ。そういうことか。
彼がこんなことをする理由は、一つしかないじゃない。

「クリムトさん。貴方も……そうなんですね」

『   』の作った偽物。
私を騙すためだけにいる存在。
そんなの、わかりきっていたはずなのに、どうしてこんなに苦しいのか。
決まっている。
全部『   』のせいだからだ。

ムカツク。

「君は……助けてくれたのか? いや、それよりも、ユウナさん!」
「青年達よ、聞け! その娘は悪しき力に憑かれ正気を見失っている!
 憎むべきは――!!」
「わかってます。彼女は僕の仲間の、大事な人なんです。
 だから死なせるわけにはいかない。絶対に……絶対に、助けてみせます!」

二人が何か言っているけれど、もう聞きたくない。

「もう騙されない……絶対に、許さないッッ!!」

その気持ちだけが、私の心を真っ黒く塗りつぶしていた。

36 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:MKNRqg2zO.net
  

37 :絶望シンドローム 23/28:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:fGuaf2U40.net
◆◆◆

四重に引き起こされた大地震はトレジャーハンターと亀の姿をした賢者を翻弄し、
召喚士は妄執に駆り立てられるまま勇者と盲目の賢者に殺意を向ける。
黒幕たる魔道士は平然と城内を掛け回り、貶められた英雄は――




そして、彼らの明暗は分かたれる。

◆◆◆

【開戦アンダーグラウンド】

◆◆◆

38 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:MKNRqg2zO.net
  

39 :絶望シンドローム 24/28:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:fGuaf2U40.net
「カー?」
地震……クエイク?
いや、この規模はクエイガかもしれん。
ならば、既に気付かれていたということか……
道化の分際で、どこまでも味な真似をしてくれる。

「チッ」
上階の窓から降ってきたガラスの破片を拳で弾き、壁を蹴って屋根へ飛び上がる。
素直に考えればケフカは一階にいて、道を塞ぐ私を排除する為に地震を起こしたと推測すべきだが……
『だからこそ』、その可能性を真っ先に切り捨てる。

あの不愉快な道化が、そんなわかりやすい思考と策謀で事を起こすとは思えない。
私が考える最も望ましくない事態は、『ヤツがこちらの存在を察知した上で私の眼を潜り抜け、既に上階に向かっている事』。
奴を相手取るならば、常に最悪を前提として事に当たるべきだ。
故に私は上を目指した。
激しく揺さぶられていた瓦が着地の衝撃で崩れたが、滑り落ちる前に走り抜けてバルコニー部の柵を掴む。

だが――普段の私ならば有り得なかった現象が起こった。
まとわりついている粘液と揺れのせいで、手が滑ったのだ。

「ック……!」

掴んだ柵の位置も悪かった。
ケフカを待ち構えるために陣取っていた二階のバルコニーではなく、地上まで落下する羽目になる。
短い手足でもどうにか受け身は取れた。
しかし未だに続いている地震のせいで足がもつれ、たたらを踏んでしまう。

何たる無様。
何たる屈辱か。
過去の『私』はおろか、自らを人と思い込んでいた『神羅の英雄』であれども、これほどの醜態など晒さぬというのに。

ケフカへの怒りを募らせながら、私は今一度、バルコニーへと飛び上がる。
すると唐突に、上階から女の絶叫が響いた。
それが最悪の予測を肯定するものなのか、別の意味を持っているのかはわからない。
だが、高層で何かが起きたことは事実なのだろう。
一階分の高さであればどうにか柵を飛び越えていけるが、揺れはまだ続いている。
不安定な足場に翻弄され、予想外の失敗を繰り返しながら。
今朝方見た外観の構造を思い出し、この身体でもよじ登れるルートを探す。

40 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:MKNRqg2zO.net
  

41 :絶望シンドローム 25/28:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:fGuaf2U40.net
それにしても、あまりにも長い地震だ。
ケフカめ。
ソウルオブサマサとやら以外にも、何か別の道具を使っているのだろうか。
それを知った所で引く気はないが……

……だが、地震。
この規模の地震、か。

アンジェロは無事だろうか。
もし小僧どもに付き合って、城内に留まっているなら、少し不味いかもしれない。

あんな犬を当てにする気はないが、生きているなら使い様がある。
それにこの状態では貴重な『話の通じる相手』だ。
獣に似合わぬ聡明さといい、ちっぽけな雌犬と思えぬ胆力といい、ケフカごときに殺されるなど惜しいに決まっている。
どうせなら生きていてほしい。

あるいはいっそ、城を離れていてくれたなら、気が楽だ。
先に単独行動を取ったのはこちら。あの犬が何処へ行こうが、別に裏切られたとは思わない。
それこそ、勝手に死なれる方がよほど裏切られた気分になる。
かつて行方をくらませたアンジールに対してそう思ったように、
あるいはアリアハンでクジャと別れた時に感じたように、あの犬の生を願う自分がいる。

……これもまた、『私』らしくない、か?

いや。
話が出来る。協力の余地がある。
何より、このままケフカを見つけられなかったり城から逃げられてしまうことがあれば、あれの助力はやはり必須という事になる。
それは紛れもない事実だ。
進んで認めたいことではないが、否定しても仕方がない。

「カー……」

試行錯誤を重ねている内に、ようやく揺れが収まった。
高層からは相変わらず女の声が響いている。
誰かと会話をし、決裂したようだが……その相手がケフカ、あるいはアンジェロを連れた小僧という可能性はどれほどあるだろうか。
考えていても仕方がない。
さっさと上階に昇れば済む話だ。

42 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:MKNRqg2zO.net
  

43 :絶望シンドローム 26/28:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:fGuaf2U40.net
――。

結論を言えば、騒いでいたのは着ぐるみなぞを着た妙な女で、相対していたのはソロとかいう小僧と盲目の男だった。
アンジェロと同行している可能性を考え、とっさにソロを襲っていた女の方を突き飛ばしたが……
残念なことに、あの犬の姿は近くにはない。
あるいは戦闘に巻き込まれ死なれるリスクを考えれば、『運が良いことに』と表現すべきかもしれないが。

「君は……助けてくれたのか? いや、それよりも、ユウナさん!」

ソロが勝手な事を喚くが、どうでもいい。
アンジェロが居なければ用は無い。
さっさとケフカを探しに行く方がマシだ。

「青年達よ、聞け! その娘は悪しき力に憑かれ正気を見失っている!
 憎むべきは――!!」
「わかってます。彼女は僕の仲間の、大事な人なんです。
 だから死なせるわけにはいかない。絶対に……絶対に、助けてみせます!」

二人が何か言っているが、興味はない。
どうせアンジェロ以外は最終的に死んでもらうのだ。
【闇】の集積という目的があるため、私自身が直接手を下す予定はないが。

「もう騙されない……絶対に、許さないッッ!!」

ぎゃあぎゃあと叫ぶ黒いモーグリ女を無視し、私はケフカを探しに戻ろうとする。
だが、鈍重そうな外見に反し、女は素早く剣を振りかざした。
瞬間、雷鳴が響き、糸のような雷がこちらに向かって降り注ぐ。
「……ッ!」
交わしきれる範囲ではないと判断し、とっさに取り出した矢を一本、虚空へ投げる。
金属の鏃に引き寄せられた雷は、矢を焼き尽くし炭へと変える。
しかし安堵する間もなく、雷光に紛れて距離を縮めていた女が剣を振るう。
「カー!」
しゃがんで避け、足払いをかけようとするが、着ぐるみの厚い生地に阻まれたのか女は体勢を崩さない。
不味い。
そう考えた時だ。
「水よ!」
「スカラ!」
ソロが突きだした指輪から迸った怜悧な水刃が女を襲い、同時に奇妙な光が私の身体を包む。
切りさく水を交わしながらも執念で振るった斬撃は、何故か私の腕の皮膚半ばで止まった。
どうやらプロテスに酷似した守護の魔法をかけられたようだ。

44 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:MKNRqg2zO.net
  

45 :絶望シンドローム 27/28:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:fGuaf2U40.net
「気に食わない」

気に食わない?
それはこちらの台詞だ。

「私は彼に会いたいだけなのに、どうしてそんなに邪魔をするの?
 どれだけ私を苦しめれば気が済むの?
 お前も、お前も、お前も……! なんでッ!! なんでェエエエッ!!」

ケフカを追いに行きたいというのに、わざわざこちらを執拗に狙ってくる女も。
頼んでもいないというのに、助け船を出したこの二人も。
何より、ケフカどころかこんな女一人に手こずる自分自身も。
何もかも気に食わないのは私の方だ。

ならば、どうする?
どうすれば私は、この忸怩たる思いを晴らす事ができる?

「死んでよぉおおおおお!! さっさと!! 今すぐ!!! 死んでッッ!!」

私が答えを出す前に、女は動く。

そして、女が一撃を繰り出す前に

「良い事言いますねェ、ユウナちゃん。
 私もテレポを使いまくった甲斐がありますよん」

宙空に寝そべる、見覚えのない帽子を被ってニヤニヤと笑う道化が

「そーれ」

あの、忌々しい白マテリアを手に

「ホーリーに、ホーリーっと」
               『ホーリー』『ホーリー』『っと』

――声と、谺を、響かせた。

46 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:MKNRqg2zO.net
  

47 :絶望シンドローム 28/29:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:fGuaf2U40.net
【セフィロス (カッパ 性格変化:みえっぱり 防御力UP HP:????)
 所持品:村正 ふういんマテリア いかづちの杖 奇跡の剣 いばらの冠 プレデターエッジ 筆記具
     ドラゴンオーブ、スタングレネード、弓、木の矢28本、聖なる矢14本、
     ウィンチェスター(みやぶる+あやつる)、波動の杖、コルトガバメントの弾倉×2、E:ルビーの腕輪
 第一行動方針:?????
 第二行動方針:ケフカを殺す/カッパを治して首輪を外すため、南東の祠に向かう
 第三行動方針:進化の秘法を使って力を手に入れる/アーヴァインを利用して【闇】の力を得たジェノバとリユニオンする
 第四行動方針:黒マテリアを探す
 最終行動方針:生き残り、力を得て全ての人間を皆殺しにする(?)】

【ソロ(HP3/5 魔力1/8 マホステ状態)
 所持品:ラミアスの剣(天空の剣) 天空の盾 ひそひ草
      ジ・アベンジャー(爪) 水のリング 天空の兜
     フラタニティ 青銅の盾 首輪 ケフカのメモ 着替え用の服(数着) ティーダの私服
 第一行動方針:????
 第二行動方針:サイファー・ロック達と合流し、南東の祠へ戻る
 基本行動方針:PKK含むこれ以上の殺人を防ぐ+仲間を探す
※但し、真剣勝負が必要になる局面が来た場合の事は覚悟しつつあり】
【クリムト(失明、HP1/3???、MP1/3) 所持品:魔封じの杖
 第一行動方針:????
 第二行動方針:首輪の研究と脱出方法の実験をする
 基本行動方針:誰も殺さない
 最終行動方針:出来る限り多くの者を脱出させる】

【ユウナ(きぐるみ士、HP9/10???、MP1/6、ティーダ依存症)
 所持品:銀玉鉄砲(FF7)、官能小説2冊、
 天空の鎧、血のついたお鍋、ライトブリンガー 雷鳴の剣
 スパス スタングレネード ねこの手ラケット
 ビーナスゴスペル+マテリア(スピード) 水鏡の盾
 第一行動方針:皆殺し
 基本行動方針:脱出の可能性を潰し、優勝してティーダの元へ帰る】

【現在位置:デスキャッスル外観4Fバルコニー】

48 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:MKNRqg2zO.net
  

49 :絶望シンドローム 29/29:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:fGuaf2U40.net
【ケフカ (MP:1/8、レビテト、ヘイスト)
 所持品:ソウルオブサマサ 魔晄銃 魔法の法衣 アリーナ2の首輪
 やまびこの帽子、ラミアの竪琴、対人レーダー、拡声器 白マテリア
 リュックの支給品袋(刃の鎧、チキンナイフ、首輪×2、ドライバーに改造した聖なる矢×3)
 サイファーの支給品袋(ケフカのメモ)
 レオの支給品袋(アルテマソード 鉄の盾 果物ナイフ 君主の聖衣 鍛冶セット 光の鎧)
 第一行動方針:セフィロスやユウナといった邪魔な人間を殺す/デスキャッスルで進化の秘法の情報を集める
 第二行動方針:アーヴァイン達に首輪を解除させる
 第三行動方針:「できるだけ楽に殺す方法」を考えつつ全員を殺す
 最終行動方針:ゲーム、参加者、主催者、全ての破壊】

【現在位置:デスキャッスル外観4Fバルコニー(空中)】



【ギード(HP3/5??、残MP1/4)
 所持品:首輪 
 第一行動方針:ソロ達と合流して南東へ向かう
 第二行動方針:首輪の研究と脱出方法の実験をする】
【ロック (左足負傷、?????)
 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード 魔石バハムート 皆伝の証、かわのたて
 死者の指輪、ひきよせの杖[0]、レッドキャップ、ファイアビュート、2000ギル
 デスキャッスルの見取り図
 第一行動方針:ソロと合流/ギードの護衛
 第二行動方針:リルム達と合流する/ケフカを警戒
 基本行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】

【現在位置:デスキャッスル内部・4F〜5Fの階段付近】

50 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:zrLgIpdE0.net
新作乙です!!スレ立て乙です!!こんなんじゃ感謝の言葉が足りないでしょうけど乙です!!

ここのケフカはほんとケフカらしすぎwwマーダーではなく策士として優秀すぎる

51 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:KM91tfuF0.net
ついにキターーーーと言わざるを得ない。
乙!
ユウナとケフカは毎回素晴らしくて飽きないね。

52 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:ET5nG7If0.net
おおおスレにまたがる大作が!
しかも構成も展開も面白すぎる...超絶GJです!
吹っ切れないロック、生真面目なソロ、壊れたユウナ、苛立つセフィロス
それぞれの内面の声がキャラ立ちまくりな上にストーリーもしっかり進展しているのがすごい

でもってケフカの脳内語りがいつもながら楽しいw
シリアスモードとぶっ壊れモードの瞬発的な切り替えといい、
ぼくちん3分クッキングとか「天災的頭脳」とか小ネタ満載っぷりといい、
実際にやってることのえげつなさといい、輝いてるな〜

一つだけ難を言うなら
続きが気になって仕方ないことだw

53 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/08/28(水) NY:AN:NY.AN ID:9WfM15/M0.net
新作乙です
デスキャッスルホーリーに包まれたかwww
ケフカは闇の世界に来てから如何なく本領を発揮してるな。

……あれ?これってロックもやばい?
フラフラの所に彫像ダイレクトアタック喰らったってことだよね?

54 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:TiWvmSde0.net
乙です乙です続きが気になる!
しかしケフカが輝きすぎてる。4連続大魔法とかやめろwww
MP1/8だけど山彦はMP消費しないんだっけ

やばいっていうか>【ロック (左足負傷、?????) とかもうなんていうか
ロックさんはメタ的に死亡フラグ乱立レベルだしこの場においては限りなく場を動かせると思うしすげー輝けると思うよ。ろうそくの火はとか言わない
ケフカとセフィロスはお互いを狙ってるけど最後の大乱戦になりえるデスキャッスル戦後こいつらのスタンスどーなるかなーマジで

55 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:WoLdIdml0.net
セフィロスがカッパの姿のまま死んだら伝説になりそうだな

56 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:Sh1hbPhf0.net
大作乙!久しぶりに書き込み。
長く書いておらず、また書き手参加したい気持ちもあるが
面白い展開が思いつかない以前に
この先どうなるのかすら全く想像が及ばないから読み手に徹する俺。
ケフカの思考最高です。

57 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:+ASPMiGG0.net
>>56
俺も続きかきたいけどなんもおもいつかねえよ……

58 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:U8JxSAy20.net
>>56>>57
俺も。今、このクオリティで継続して書いている人はマジですごいと思う。

59 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:zQgvBM8x0.net
>>56>57
おおっと書き手さん登場!
とりあえず、あんまり展開に絡んでないセージお兄さんを
何とかするあたりから再開してみるのとか、どうでしょう

60 :56:2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:Sh1hbPhf0.net
ほんとだ。セージは見事に孤立してるから、現状でもまだ書き手次第な立ち位置にいるんだな。美味しい。

でも、>>59が現書き手だとしたら、俺が新作を書くことは……正直期待しないでくれw
考えてはみたい、が……。

61 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:jK2xrLEI0.net
その時既に行動は終わっているんだーッ

1〜3kbのリハビリでもまずは書いてみるといいんじゃないかナ

62 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/08/30(金) NY:AN:NY.AN ID:BIqaxqV/0.net
闇の世界編が始まってからデスキャッスルにいろんな人が出入りしてたけど
このタイミングで、このメンバーで戦いが始まるとは思いもよらなかった
熱すぎる展開だぜっ!!

63 :HOLY×HOLY 1/10:2013/09/06(金) 00:50:02.79 ID:JVIVbd6g0.net
「…………悪い。いや、助かったギード」
「気にするな。ワシは甲羅があるからの」

立つことも許されない大地震の中。
彫像に襲われたはロックだったが、ギードの影隠れる形で難を逃れてた。
みっともなくひっくり返りながらの避難だったのは秘密だが。

「今の、地震か?」
「ふむ。しかし自然的なものとは思えんのぅ……」
「ってなると…………」

人為的なもの、ということになる。
ユウナか。
それとも別の誰かか。

だが、あれほどのことをできる人間が、いるというのだろうか?

実力的な話だけではなく。
倫理や常識的な意味でも。

だが間違いないことがある。
ここで何かが起きている。
誰かが何かを起こしている。

何かの意思によって。
何かの悪意によって。

「いったい、何が起きてるんだ…………?」

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

混沌とした状況で、真っ先に動いたのは緑の影セフィロスだった。
セフィロスは一息でバルコニーの縁に足をかけると、そのまま弾丸のような勢いで宙に浮かぶケフカに向けて一直線に飛びかかった。

「…………ひょ?」

まさかノータイムで飛びかかってくるとは、さすがのケフカもこの行動にも意表を突かれた。
なにせ白マテリアによるホーリーは発動している。
そこに真正面から飛び込むなど、みすみす餌食になりに行くようなものだ。

だが、白マテリアを用いたホーリーは、他世界のホーリーとは趣が異なる。
黒マテリアにより発動する究極の破壊魔法メテオ。
それと対を成すのがこの白マテリアによる究極の防御魔法ホーリーである。

その力は強大にして絶大。
だが強大であるが故に、その発動には時間がかかる。

その事実をこの場にいるモノの中で唯一、セフィロスだけが知っている

64 :HOLY×HOLY 2/10:2013/09/06(金) 00:51:56.24 ID:JVIVbd6g0.net
発動までの僅かなタイムラグを付いて、ケフカの目の前にセフィロスは到達する。
道化とカッパの視線が交錯する。

けっこう呑気してたケフカだったが、あまりに迷いのない行動に意表を突かれ、その接近を許してしまった。
余裕ぶっこいて適当な体勢をとっていたのも仇となった。
拳を構えるセフィロス。既に射程権だ。
ホーリーの発動は、撃退には間に合いそうにない。
カッパの身であるとはいえ、その中身は魔人である。
その一撃を喰らうのはまずい。
だがかわそうにも、体勢は悪く対応も厳しい。
ならば、

「――――ディスペル」

ヘイストにより呪文は即座に完成する。
自らにかけたレビテトは打ち消された。
浮遊効果は失われその体は地上へ向けて自由落下を開始する。
振るわれた緑の剛拳はケフカを捉えることはなく、その上空を掠めた。

「ブヒョッヒョッヒョ! 残念でした〜ぁ」

べろべろばー、と落下しながら道化師が笑う。
だが、セフィロスはそんな挑発を見向きもしない。
そもそも狙いはもとよりケフカではない。
突き出されたセフィロスの手が捉えたのは、発動を待ち、淡く緑に輝く白マテリアだった。

ホーリーを、発動前に潰す。
エアリスの発動させたホーリーを妨害した時のように、セフィロスにはそれが可能だ。

白マテリアの働きを阻害するべく、意志を込める。
ジェノバの呪われた力、そしてセフィロスの意志力により、今にも生み出されそうなホーリーを封じる。
水際にて、その発動を防ぐことに成功した。

そう、『一つ目』ホーリーは、だ。

「!?」

確かに封じたはずの輝きが、再び燈る。
ならば、再度封じるまでと、セフィロスが掴んだ手に力を込める。

だが、それは不運か。あるいは必然か。
確かに掴んだはずのその手が、粘液によりぬるりと滑った。

「カッ…………!」

カッパが舌を打つ。
何と忌々しい。
たましても呪いのようにこの体が足を引っ張る。
片翼すらないその身は、もはや重力に従い墜ちるしかない。

落下する。
その頭上で、世界を塗り替える青白い極光が生まれ、デスキャッスルを覆った。

65 :HOLY×HOLY 3/10:2013/09/06(金) 00:54:47.73 ID:JVIVbd6g0.net
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

「シンジラレナーイ! なんなんですかあのカッパ!」

はるか上空から地上に達した道化が、着地するなり叫びをあげた。
当然、この道化は落下などで死ぬタマではない。

空では閃光とともに持続的な破壊音が響いていた。
砕かれた瓦礫が雨のように降り注ぐ。
その光景を僅かに目を細めながら見つめ。

「うーん。研究資料とか、無事なんですかねぇ、これ」

それはケフカの知るホーリーよりも何回りか大きい破壊規模。
まさか城ごと吹き飛ばすほどのものとは、さすがに予想外である。

「ま。こういうのは大体、都合よく爆風とかで重要資料は助かってるもんですから、気にしないでおきましょ。
 それよりも、」

ケフカは気持ちを切り替えて、頭上に向けていた視線をクルリと背後の足元に向ける。

「セフィロスくぅ〜ん。君もしつこいですねぇ。
 まったく、ボクちんがいったい何をしたっていうんですかぁ?」

そこにいたのは、わずかに遅れて地上に降りた小柄な緑の影。
カッパとなったセフィロスである。
もちろん、セフィロスも落下などでは死ぬはずもない。

「カー。カァカア?(面白い。忘れたというのならこの場で思い出させてやろうか?)」

対峙する互いの距離は5メートルほど。
セフィロスならば、その気になれば一息で詰められる距離だ。
ケフカならば、その距離を詰める間に呪文の一つや二つ完成させることはできるだろう。

だが石や岩、何かの破片が降り注ぐ中、睨み合った二人はそこで動かなくなった。
いや、動かないのではなく動けない。
互いに油断ならない相手だと理解している。
うかつに動いていい相手ではない。

66 :HOLY×HOLY 4/10:2013/09/06(金) 00:57:29.25 ID:JVIVbd6g0.net
「ああ、思い出しましたよ。
 そういえばそんなこともありましたっけねぇ」

体を動かせずとも、口を動かすのならばタダだ。
挑発に乗って相手が動いてくれるなら、それこそ儲けものだ。

「それで、僕との約束はどうなってるんですか?
 もう5人、10人といわず、20人くらい殺しちゃってくれました?
 ポイント足りなければ、何ならここで自殺してくれてもぼくちん的には無問題ですよ?
 なんと今ならポイント5倍感謝DAY。死ぬなら今!」
「カー。カァーカアカア(そうだな。お前を殺して一人目としようか)」

ジリ、とセフィロスが間合いを僅かに詰める。
来る気だ。
それを見てケフカはクククと喉を鳴らす。

「…………さっきからカアカア、カアカア。
 何言ってんのかわかんなぁいんだよ、ブァーーカ!!」

道化師の叫び。
それと同時に、二人の視界を遮るほどの巨大な塊がが落下した。

「!?」

崩壊した城壁の一部だろう。
瞬間的に視界は遮られ、二人の間が完全に分断される。

「カっ(ふん)」

してやられたな、とセフィロスは息をつく。
立ち位置的に、ケフカにはこれが来ることが見えていたのだろう。
ケフカは落下のタイミングに合わせ、一目散にその場を離脱していた。

追うべきか、それとも見ておくべきか。
セフィロスはいまだ破壊の止まぬ上階を見つめる。

瞬くように炸裂する極光を見ながら、セフィロスは思う。
ホーリーは本来、星の害となるものを打ち滅ぼす防御魔法である。
それは言わば星の自浄作用。
つまり星の害悪となるものは、その発動時の条件、状態、脅威度により破壊の規模も、対象も“自動的”に設定されるということ。
あるいはそれはメテオであり、あるいはジェノバであり、あるいは人間であることもあるだろう。

ならば、今放たれたこの極光は、いったい何を打ち滅ぼすのだろうか?

67 :HOLY×HOLY 5/10:2013/09/06(金) 00:59:28.17 ID:JVIVbd6g0.net
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

それは、その身に纏う闇故か。
はたまた彼女自身の邪悪な意志か。

蠢くような無数の光帯。
その狙いの対象となったのはユウナだった。

もちろん、個人を狙ったところで、その破壊規模から周囲の被害は免れない。
辺り一帯を消し飛ばすような光の渦がバルコニーに迫る。

だが、その破壊の光に向かって出る影があった。
勇者ソロである。

彼は今マホキテの効果により、どれほどの規模であろうと、それが魔法的効果であるのならば無効化できる状態にある。
もっともこれほどの破壊魔法であれば、直接的被害を無効化したところで二次的被害は免れないだろうが。
その程度を防ぎきる技量も彼にはある。

だが、それではダメだ。
ソロは勇者である。

勇者とは、いかなる困難に対しても立ち向かう勇気を持った者へ送られる称号だ。
自分一人ならばともかく、周囲にはクリムト、そしてユウナがいる。
マホキテで自分の周囲の身だけを守るのではなく、辺り一帯を守らねばこの破壊から彼らを守ることはできない。
それが勇者の務めである、逃げることはできない。

「盾よ――――!」

ソロは天空の盾を掲げる。
すると光の壁が彼を包んだ。
それはあらゆる魔法を跳ね返す光の結界。

呪文ごと押し返す。
それ以外にこの場を守る方法はない。

対するは恐るべき光の奔流。
衝突とともに、絶対安全圏であるはずの結界内ですら衝撃を感じた。

68 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/06(金) 01:02:22.70 ID:4azR15hN0.net
 

69 :HOLY×HOLY 6/10:2013/09/06(金) 01:03:33.79 ID:JVIVbd6g0.net
「く――――ッ!」

その圧力に、思わずソロの足が押されそうになったその時。
詠唱の声を上げながら、前に踏み出る者がいた。
賢者クリムトだ。
クリムトはソロの意図を読み取り、呪文を唱えその隣に並び立つ。
唱える呪文は。

「マホカンタ―――――!」

勇者と賢者。
障壁となり究極呪文へと立ち向かう二人。
この状況でも反射呪文は正しく作用し、ホーリーを押し返すことに成功した。

いや。
正確には。
『二つ目』のホーリーは押し返すことに成功した。

今だ止まぬ白マテリアの輝き。
『二つ目』から僅かに遅れて『三つ目』のホーリーが発動した。

これにより生まれる結果は一つ。
跳ね返されたホーリーと、遅れて放たれたホーリーの衝突である。

生まれるのは弾けるような閃光。闇の世界が光に染まる。
相殺により凄まじいまでの熱量が生み出され、爆風により運ばれる。
それは彼らの皮膚をひり付かせるのみならず、城壁を溶かし破壊する。

ぶつかり合うのは同じ究極魔法。
拮抗は必然。
余波による破壊をまき散らしながらも、打ち消しあい消滅も時間の問題かと思われた。

だが、



そこに、トドメとなる『四つ目』のホーリーが発動した。

70 :HOLY×HOLY 7/10:2013/09/06(金) 01:07:23.33 ID:JVIVbd6g0.net
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

均衡はあっさりと、そして完全に崩れた。

4階から上は完全に吹き飛んだ。
あるのは瓦礫の海ばかりで跡形もない。

その瓦礫の一部が崩れ落ちる。
伸し掛かる岩片を払いながら立ち上がるモノがいた。
現れたのはソロだった。

幾つかの瓦礫に襲われたが、天空の兜が防いだ。
無傷とはいかないが致命傷はない。

その横には血を流し倒れるクリムトが。
ホーリー自体の破壊はマホカンタにより防いだはずだ。
クリムトのダメージはホーリーに破壊され生み出された瓦礫などによる二次的なものだろう。

「大丈夫ですか!」
「うっ……く」

息はある、だが意識は朦朧としているようだ。
頭部からの流血もひどい、迂闊には動かせそうにない。
ひとまず回復してから安全な場所に避難させるべきか。
ソロがそう判断し、魔法を唱えようとしたその時。
後方から、ガラリと瓦礫の落ちる音が聞こえた。

見れば、そこに幽鬼が経っていた。

71 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/06(金) 01:09:16.29 ID:cegp4owK0.net
 

72 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/06(金) 01:10:55.49 ID:cegp4owK0.net
 

73 :HOLY×HOLY 8/10:2013/09/06(金) 01:11:00.39 ID:JVIVbd6g0.net
ユウナだ。
魔法的効果は防いだ二人と違い、一時的効果まで受けた彼女の表面はやや焼け焦げている。
だがソロとクリムトが盾となったお蔭か、十分に五体無事といえるだろう。
あの破壊規模を思えば奇跡的ともいえる。

「……………………許さない」

だが、向けるのは憎悪。
助けられた恩義などない。
そもそも攻撃してきたのも『     』なのだ
助けたのが『     』だったところで許す理由もない。

襲ったのも助けたのも同じ人間で、それが複数いるだなんておかしな話だ。
だが、そんなまともな理屈など、今の彼女に期待するほうがどうかしている。
もはや常識(ルール)が違うのだ。
彼女の中で彼女は絶対的に正しい。

「許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない
 許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない
 許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない
 殺してやる、■■■■■■」

向けられるどす黒い殺意。
クリムトは動けそうにない。
彼をおいて逃げることはできない。

「戦わなきゃ、ダメなのか……ッ?」

そう呟くと、勇者は悔しげに天空の剣を握りしめた。

74 :HOLY×HOLY 9/10:2013/09/06(金) 01:13:27.67 ID:JVIVbd6g0.net
【ソロ(HP3/5 魔力1/8)
 所持品:ラミアスの剣(天空の剣) 天空の盾 ひそひ草
      ジ・アベンジャー(爪) 水のリング 天空の兜
     フラタニティ 青銅の盾 首輪 ケフカのメモ 着替え用の服(数着) ティーダの私服
 第一行動方針:戦う?
 第二行動方針:サイファー・ロック達と合流し、南東の祠へ戻る
 基本行動方針:PKK含むこれ以上の殺人を防ぐ+仲間を探す
※但し、真剣勝負が必要になる局面が来た場合の事は覚悟しつつあり】
【クリムト(失明、意識朦朧、HP1/8、MP1/3) 所持品:魔封じの杖
 第一行動方針:????
 第二行動方針:首輪の研究と脱出方法の実験をする
 基本行動方針:誰も殺さない
 最終行動方針:出来る限り多くの者を脱出させる】
【ユウナ(きぐるみ士、HP2/3、MP1/6、全身に軽度の火傷、ティーダ依存症)
 所持品:銀玉鉄砲(FF7)、官能小説2冊、
 天空の鎧、血のついたお鍋、ライトブリンガー 雷鳴の剣
 スパス スタングレネード ねこの手ラケット
 ビーナスゴスペル+マテリア(スピード) 水鏡の盾
 第一行動方針:皆殺し
 基本行動方針:脱出の可能性を潰し、優勝してティーダの元へ帰る】
【現在位置:デスキャッスル跡 3〜4F辺り】

【セフィロス (カッパ 性格変化:みえっぱり 防御力UP)
 所持品:村正 ふういんマテリア いかづちの杖 奇跡の剣 いばらの冠 プレデターエッジ 筆記具
     ドラゴンオーブ、スタングレネード、弓、木の矢28本、聖なる矢14本、
     ウィンチェスター(みやぶる+あやつる)、波動の杖、コルトガバメントの弾倉×2、E:ルビーの腕輪
 第一行動方針:ケフカを追う/ホーリーの跡を確認する
 第二行動方針:ケフカを殺す/カッパを治して首輪を外すため、南東の祠に向かう
 第三行動方針:進化の秘法を使って力を手に入れる/アーヴァインを利用して【闇】の力を得たジェノバとリユニオンする
 第四行動方針:黒マテリアを探す
 最終行動方針:生き残り、力を得て全ての人間を皆殺しにする(?)】
【ケフカ (MP:1/8)
 所持品:ソウルオブサマサ 魔晄銃 魔法の法衣 アリーナ2の首輪
 やまびこの帽子、ラミアの竪琴、対人レーダー、拡声器
 リュックの支給品袋(刃の鎧、チキンナイフ、首輪×2、ドライバーに改造した聖なる矢×3)
 サイファーの支給品袋(ケフカのメモ)
 レオの支給品袋(アルテマソード 鉄の盾 果物ナイフ 君主の聖衣 鍛冶セット 光の鎧)
 第一行動方針:セフィロスやユウナといった邪魔な人間を殺す/デスキャッスルで進化の秘法の情報を集める
 第二行動方針:アーヴァイン達に首輪を解除させる
 第三行動方針:「できるだけ楽に殺す方法」を考えつつ全員を殺す
 最終行動方針:ゲーム、参加者、主催者、全ての破壊】
【現在位置:デスキャッスル跡 1F外】

※デスキャッスルの4Fより上は完全に崩壊ました、下階も無事とは限りません
※白マテリアはどこかに落ちてます

75 :HOLY×HOLY 10/10:2013/09/06(金) 01:15:31.42 ID:JVIVbd6g0.net
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■





「なんじゃあこりゃああああああああああ!!!」

ロックの叫びが空に響く。
彼は今、ギードと主にはるか上空を飛んでいた。

何が起きたのか。
謎の閃光が城を覆ったと思えば、突然下階がぶっ飛んだ。
何言ってるのかわかんないだろうが、彼らもわけがわかってない。
恐ろしいものの片りんを味わったのである。

幸か不幸か、うまく足場ごと吹き飛ばされたため、今のところダメージはない。
が、まともな人間は、こんな高さから落ちたら間違いなく死ぬ。

爆風による上昇が終わる。
一瞬の浮遊感。
落下が始まる。

どうする?

【ギード(HP3/5、残MP1/4)
 所持品:首輪 
 第一行動方針:状況に対処
 第二行動方針:ソロ達と合流して南東へ向かう
 第三行動方針:首輪の研究と脱出方法の実験をする】
【ロック (左足負傷)
 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード 魔石バハムート 皆伝の証、かわのたて
 死者の指輪、ひきよせの杖[0]、レッドキャップ、ファイアビュート、2000ギル
 デスキャッスルの見取り図
 第一行動方針:着地
 第二行動方針:リルム達と合流する/ケフカを警戒
 基本行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】

【現在位置:デスキャッスル跡 上空】

76 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/06(金) 07:15:03.20 ID:GsboV7NV0.net
新作乙です!!
予想に違わずデスキャッスル崩壊した…がロックとギードがこうなるとは読めなかった!
ただ、マホキテじゃなくてマホステですよね?揚げ足取りで申し訳ない…

77 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/06(金) 11:38:56.98 ID:WB40ZuRt0.net
投下乙です。1stの大神殿と言い、三日目の世界にあるデカイ建物はぶっ壊される運命なのかw
上空に吹っ飛んだロックとギードはどうなってしまうのか。何にせよGJ

78 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/06(金) 20:08:52.13 ID:EyJTniUO0.net
ロックとギードが一難去ってまた一難すぎるwww
上空って面白い位置で引いたなあ

ところで10-2やったことないんだけど着ぐるみで全身火傷ってなるのかな。描写的に着ぐるみが燃え落ちてるのかなって思ったんだけど
ホーリー周りは考え込んだらよくわかんなくなったけどソロが熱いわ。ここを勇者として頑張って欲しい

79 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/06(金) 21:10:27.40 ID:lKsUMkYz0.net
新作乙
ロックギードは、こうくるとは思わなかったわ何かワロタ ロックここにきておいしいな

いよいよユウナとガチバトル来るか?

80 :HOLY×HOLY 修正:2013/09/06(金) 21:35:35.62 ID:JVIVbd6g0.net
>>67

15行目

>彼は今マホキテの効果により、どれほどの規模であろうと、それが魔法的効果であるのならば無効化できる状態にある。

>彼は今マホステの効果により、どれほどの規模であろうと、それが魔法的効果であるのならば無効化できる状態にある。

24行目

>マホキテで自分の周囲の身だけを守るのではなく、辺り一帯を守らねばこの破壊から彼らを守ることはできない。

>マホステで自分の周囲の身だけを守るのではなく、辺り一帯を守らねばこの破壊から彼らを守ることはできない。

に修正します

>>76
ご指摘、ありがとうございます

81 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/06(金) 22:18:36.66 ID:3jJVEifi0.net
ついにデスキャッスル「跡」にwww
ホント、城とか町とかよく消し飛ぶな。投下乙!

82 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/06(金) 23:57:43.06 ID:FZn3QQVo0.net
>何が起きたのか。
>謎の閃光が城を覆ったと思えば、突然下階がぶっ飛んだ。
>何言ってるのかわかんないだろうが、彼らもわけがわかってない。
>恐ろしいものの片りんを味わったのである。


ロックがポルナレフ顔になってるのが目に浮かぶようだ

83 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/12(木) 18:08:51.98 ID:Qe9rmjOn0.net


84 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/12(木) 21:39:33.36 ID:N2eFMYbj0.net
絵板死んでる?

85 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/13(金) 21:07:38.23 ID:OD0Enb4C0.net
>>84
今は普通に見れるよ。昨日はダメだったけど

86 :人間はエスパーではありません 1/16:2013/09/14(土) 14:48:52.25 ID:zq1fnkQI0.net
*SIDE:サイファー

混乱した思考がいくら足掻こうとも、溜まった疲労の前には無力だった。
目を閉じるだけで眠気が襲ってくる。
足元からせり上がる虚脱感は、まるで底なし沼に引きずり込まれているようだ。
身体を休める為の眠りが、何故こんなにも忌々しい感覚を伴うのか。
答えはわかりきっている。

今から見る夢で、安らげるわけがないからだ。


――。


「来たみたいだな。
 まあ、子供のお使いぐらい出来て当然か」

扉を潜ったとたん浴びせられた嘲笑に、俺は思わず舌打ちする。
ふてぶてしい物言いは間違いなく、昨日の朝方に出会ったいけすかねぇ奴のものだ。
失ったはずの左眼までも細めてニヤニヤと笑うアルガスから視線を逸らし、辺りを見回す。
どうやら飛空艇かなんかの機内らしい。
乗った事がないから断言できねえが、大方、スコールが使ってたラグナロクって機体だろう。
現にアルガスとは少し離れた場所で、スコール本人が、項垂れているティーダのヤツと差向いに座っている。
こっちの眼差しに気付いたのか、スコールは顔を上げ、バツが悪そうに余所を向いた。

「……信じてくれたか」
『良かった』とか寝言をほざかなかったあたり、テメェが何をしたかはよーくわかっているようだ。
そもそも俺だって信じたくて信じたわけじゃない。
普段なら鼻で笑い飛ばすような与太話でも、それ以上に荒唐無稽な現実を見せつけられた後じゃあ、否定しようがねえだけだ。

「どういうことだ」

俺はスコールの視界に入るように回り込み、立ったまま問い詰める。
スコールは観念したように顔を上げ、小さくため息をついてから、淡々と話し出した。
「……夢の中で話す道具をアルガスが持っていた。それを俺が借りた」
今聞きたいのはそんな事じゃねえよ。
そう思ったが、俺が罵声を浴びせる前に、アルガスの声が響く。

「感謝しろよ? 俺が婆さんの鍵を拾ってやっていたから、こうして魔女に気付かれずに話が出来るんだ。
 危険な状況にも関わらず単独行動したマヌケが仲間にいてもな」

頭にカッと血が上るのを感じた。
アリアハンでもそうだったが、やっぱりコイツはコレが素らしい。
いくら片目を失った状態で助けを求めてきたからといって、匿ってやった事がバカらしく思えてくる。

87 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/14(土) 14:49:59.70 ID:jye6ZPdGO.net
 

88 :人間はエスパーではありません 2/16:2013/09/14(土) 14:51:18.56 ID:zq1fnkQI0.net
「誰に向かって言ってるんだ? あぁ?」
激情に任せて拳を振り上げたい衝動を抑え込み、アルガスを睨みつける。
けれどもヤツは大人しくなるどころか、不満と敵意を露わにして叫んだ。
「お前こそ自分の立場と愚行を弁えろッ!
 セフィロスを討伐すると言っておいて、当の本人が目の前にいたにも関わらず野放しにしたのは誰だッ!」

ガルバディア野郎がコイツの眼を抉るなんて真似をした理由が、少しだけわかった。
他人を見下すタイプの人間を従わせようと思ったら、恐怖と暴力で縛り付けるのが一番楽だろう。
そう、自分が安全地帯にいるからといって調子こいてるヤツを黙らせることができるのは、言葉なんかじゃねえ。
有無を言わせない一発だ!

「止めろ」

アルガスに近寄ると同時に、腹が立つほど淡々としたスコールの制止が飛ぶ。
俺は構わず足を進め、アルガスの胸倉を掴み上げた。
「殴りでもするか? この――」
奴は一丁前に軽蔑の表情を浮かべ、何かを言いかける。
だが、こっちにしちゃ聞く気も聞いてやる義理もない。
そう思っていた俺の拳と、アルガスの嘲笑を止めたのは、やはりスコールの奴だった。

「止めろと言ったんだ、アルガス」

アルガスが呆然とスコールを見つめる。
『何故俺が止められるんだ』とでも思ったのだろう。
「今、俺が話したいのはサイファーだ。……邪魔をするなら起きてもらう」
「……ッ。
 くそっ、わかったよ。ああ、俺が悪かった」
どうやって躾けたのか。
アルガスは恐ろしく素直にスコールの言葉を聞き入れ、顔を逸らしながら曲がりなりにも謝罪の言葉を口にする。
だからといって俺の苛立ちは収まらなかったが、眠りについた理由を思い出し、仕方なく手を離した。

俺はスコールの所へ戻り、空いている椅子にどっかりと腰を下ろした。
『さっさと話せ』と顎をしゃくると、スコールは目を閉じ、例によって唐突に切り出す。
「……騙して済まなかった」
驚きのあまりこっちが腰砕けになりそうなほど、しおらしい態度だった。
少なくとも俺の中にある、『むかつくほどスカしてる癖に、目障りなほど頑固で退かない奴』という印象には似合わない。
そんな俺の表情を見て取ったのか、スコールは憮然とした表情を浮かべた。
「今回は俺達が明らかに悪いからな。………いくらなんでも、謝るに決まってるだろ」

なるほど。
まあ、下らない弁解や逆ギレを聞かずに済むのはイイことだ。
――この苛立ちを消すには程遠いが。

89 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/14(土) 14:51:38.58 ID:jye6ZPdGO.net
 

90 :人間はエスパーではありません 3/16:2013/09/14(土) 14:53:35.17 ID:zq1fnkQI0.net
「手帳を読んだ以上想像はついているだろうが……
 俺とアルガスの死は、アーヴァイン達と一緒に仕組んだ狂言だ。
 首輪に生存判定機能があった為に、解除に際して俺達の死を偽装する必要があった」
「あの野郎のキチガイっぷりは、全部演技だったってわけか?」
俺の言葉に、スコールは目を閉じながら「半分は」と答えた。
「あんた達に対する殺害予告は演技だし、過剰な表現はアイツのアドリブだ。
 ただ、【闇】が実在することは間違いない。
 ……それに、ティーダを殺した人物についても裏付けが取れた」

そこまで言って、スコールがちらりとティーダを見やる。
ティーダは俯いたまま、拳を握り締める。
本当に、何がどうなってるのかわかんねえことばかりだ。

「ティーダの事は……後にしよう。
 一番重要なのは、【闇】についてだ」

そう言ってスコールは【闇】とやらについて、改めて説明をした。
殺し合いによって生み出された、魔力を通すことで霧状に具現化する、魔女の意思と力が混ざった不純なエネルギー。
それ自体はヘンリーから聞いた話と殆ど変らなかったが、そこに隠された可能性――
『魔女の意思による電波障害』まではちっとも思い至らなかった。
悔しい話だが、……こいつの頭の出来には舌を巻く。
しかし、しれっと語るスコールを前にして、そんなことを素直に認めたくなかった。
だから聞かなくてもわかる質問を口にしてしまう。

「なんでガルバディア野郎を外に放り出した?」

スコールの表情が曇る。
そうなることはわかっていたし、答えも見当はついている。

「……俺達を『殺した』張本人が祠に留まるのは、余程の理由を付けないと不自然に見られる。
 加えて、アイツ自身が外に行ってユウナを探したいと願った。
 さらにアーヴァインが習得していた、首輪の解除に必要な技を、バッツが覚える事が出来た」
バッツの事だけは予想外だったが、後は殆ど俺の予想通りだった。
となると、首輪を外された人間にアルガスが入っているのも、アーヴァインを野放しにして大丈夫なのか試す為だろう。
ああ、アイツ自身の意志だけを問うなら、監視を付けずに放っておいても問題は無いだろうな。
能力的にも雑魚じゃない。前衛で戦えるリュックもセットで、チョコボまで連れていやがる。
オマケに気前よくビームライフルとパンデモニウムをくれてやったなら、対処できない敵なんざいないと考えても仕方がない。
俺がスコールの立場で、『ソイツ』の事を目の前で見てなかったら、やっぱりアーヴァイン達を送り出しただろう。

――だが、現実には『ソイツ』はアーヴァインを見つけ、容易く捕えた挙句、とんでもない事をしやがったワケだ。

91 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/14(土) 14:54:05.19 ID:jye6ZPdGO.net
 

92 :人間はエスパーではありません 4/16:2013/09/14(土) 14:55:33.27 ID:zq1fnkQI0.net
スコールだけを責められないってことはわかってる。
だが、それでもこれは聞いておく必要があった。

「アイツがどんな状態か知ってんのか?」

俺の質問に、スコールはますます面持ちを暗くする。
「……多少は本人とティーダから聞いている」
いつの間に、と思ったが、祠に来るまでアーヴァインが眠っていた事を思い出す。
コイツもアイツもいちいち手が早いが、だったら尚更、どうにかならなかったのか……
そう考える事さえも責任転嫁でしかないが、考えずにはいられない。

「外見の一部がモンスター化していること。セフィロスに精神汚染を受けているということ。
 しかし現時点ではほぼ正気の状態であり、自発的にこちらに協力する意思があるということ」
「アレが正気だと?」
俺はアーヴァインの容態を思い出し、眉根を寄せる。
確かに操られているような様子ではなかったが、表情には生気がなかったし、口調も錯乱気味だった。
そんな俺の疑問を読んだか、アルガスは性懲りもせず、鼻を鳴らす。

「フン。お前に殺されないよう、哀れな狂人の演技でもしてたんじゃないのか?」
「演技だ?」
「そうさ。奴が元気な化物なら、誰も保護しようとは考えない。
 だから追い詰められて弱ったフリをしたんだろう。姑息な考えだ」
「……姑息かどうかはさておき、俺もそう思う」
スコールも今度はアルガスを止めず、逆に同意を示す。
「アイツは『発狂して俺達を殺した人間』だ。
 あんた達に保護されるとなれば、『現時点で殺し合いに乗らない理由』が必要だろう。
 確かに、外見が変貌しているという以上、精神に異常が生じてもおかしくはないが――」
「ちょっと待てよ。アービン、こっちで会った時は元気だったじゃないか。
 さっきは苦しそうにしてたけど……精神がおかしくなってるってことはないだろ?」
ティーダまで口を挟んできた。
なるほど、どいつもこいつも、夢の中でマトモに振舞ってたからマトモだろうって言いたいわけだ。
「ああ。少なくとも夢で会ったアイツは、普段と変わらないレベルの思考が出来ていた。
 おかしかった点は、セフィロスの名前を出した時に苦しむ素振りを見せた事ぐらいだ。
 あんたがどういう場面を見たかは知らないが、錯乱したフリという可能性では片付けられないのか?」

――実にごもっともな意見だ。
俺が何を見たかも、アイツがどんな目に合ってるかもわからずに言ってやがるんだからな!

93 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/14(土) 14:59:08.82 ID:jye6ZPdGO.net
 

94 :人間はエスパーではありません 5/16:2013/09/14(土) 14:59:33.90 ID:zq1fnkQI0.net
*SIDE:リュック

サイファーが寝た後、あたしはまず『掃除』を始めた。
これまでの話を聞こうにも、先に盗撮対策をしておかないとマズイからだ。
ネズミや虫といった目につく小動物を手当たり次第に捕まえて、殺す。
少し可哀想だけど、あのケバい魔女がジャ……ジャンクフード? ジャンクション?
そうそう、ジャンクションだジャンクション。そんなカンジの技術を持っている以上、放置することはできない。

――えっ? 今日の晩御飯候補!?
いやいやいや。
あんなの、スコールが考えたデマカセだってば。
そりゃ、ヘンリーはネズミも虫も食べたことあるって言ってたけどさ……
いくらザックごとご飯を持って行かれたからって、こんなネズミとか、でっかい蜘蛛とか、へんな虫とか――
絶対に食べていいものじゃなーいって、見た目が全力主張してるって!

"ぐぅ〜〜〜〜"
「…………」
我ながら空気を読んでくれないお腹が鳴る。
でも、食べる物は無い。
無いったら――無い。

「……どーしよ」

思わず独り言をこぼし、燃やすつもりで集めた戦果を見つめる。
妙に大きめのネズミが三匹、クモ一匹、蛾が一匹。
虫は論外だとしても、ネズミは……うーん……た、食べるところは、ある、サイズ、だけど……
どうだろ……やっぱ一食ぐらい我慢した方が……でも明日の朝や昼もおんなじよーに食料不足だったら……

「……、……」

つんつん、と不意に肩を叩かれた。
振り向くと、いつの間にか這いずって近づいて来てたアーヴァインが、小さな袋を差し出していた。
中を見てみると、どこかで拾ったらしい干乾びたチーズが二切れ入っている。
どうやら、ネズミの死体を前にして頭を抱えているあたしを見かねたらしい。

「食べていいってこと? でも、あんたの分は?」
「………」
あたしの質問に、アーヴァインは項垂れ、眼を逸らした。
そして首を横に振り、そのくせ袋を押しつける。

さっきまでは自分勝手なヤツだって思ってたけど……やっぱり、サイファーの言ってた事が正しいのかもしれない。
"自分の事情は二の次で、他人に尽くす事が望みみたいな人間"。
その評価が当たってるなら、ティーダが心配したり、気遣う理由もわかる。
――三年前までのユウナが、そういうタイプだったから。

95 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/14(土) 15:00:25.34 ID:jye6ZPdGO.net
さる除け

96 :人間はエスパーではありません 6/16:2013/09/14(土) 15:01:06.95 ID:zq1fnkQI0.net
「あたしが気遣うならともかく、あんたみたいなズタボロの奴が気ぃ遣ってどうするのよ。
 こーゆーのは、あんたとサイファーで分けて食べなさいっ!」

あたしは袋を突っ返し、頭を吹き飛ばされたネズミを手に取った。
気はすすまないケド……とりあえず、捌いて、焼いてみよう。
もしかしたら奇跡的に食べてもダイジョブなヤツかもしれないし……

「……、……」
アーヴァインがますます顔色を悪くしてこっちを見てるけど、気にしないことにする。

火種は……ランプを使えばいいか。
アーヴァインの荷物を確かめると、ちゃんと残っていた。
さて、ネズミの方は……頭と手足を落として、皮を剥いでっと。
……うげっ。なんかお肉の部分からもへんな臭いがする。
いや、焼けばなんとか………

……ナントカ……なんとか……ななな、なんと、か?

「……、………!、………!」
……うん。そだね。
声は聞こえないけどアーヴァインが何を言いたいかはわかるよ。
どう嗅いでも、食べ物としてダイジョバナイ臭いだよね。
クサさでサイファーが起きちゃう前に、さっさと捨てよ……

「はーぁ」

ため息を吐きながら、他のネズミや虫と一緒に部屋の隅に持って行って、燃やす。
キッチリ炭と灰になったのを確かめてから戻ると、アーヴァインが泣きそうな顔であたしを見上げていた。
右手と両足で上半身を支えながら、必死に左手に持った袋を突きだしている。
『そんなことするぐらいならこっち食べなよ!』って言いたいようだ。
でも、あたしの気持ちはさっきと変わらない。
立って歩くことも出来ないほど消耗しきった仲間から、残り少ない食べ物をもらうなんてできない。

あたしはアーヴァインの後ろにササっと回り込んで、妙な翼ごと両腕を抱え、勢いよく彼の身体を引き起こした。
そして途中でくるりとひねって、ずりずり引きずって壁際に連れ戻し、足を延ばした格好で座らせる。

「そんな心配しなくてもダイジョブだってば。
 あたし、朝も昼もがっつり食べたから、夕食抜くぐらいでちょうどいいもんね!」

――そう言って笑って見せても、アーヴァインは辛そうな表情を浮かべるだけだった。

97 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/14(土) 15:05:24.09 ID:jye6ZPdGO.net
 

98 :人間はエスパーではありません 7/16:2013/09/14(土) 15:06:12.41 ID:zq1fnkQI0.net
*SIDE:アーヴァイン

……さっきから、気遣われてばっかりだ。

そりゃまあ、確かに体調は最悪に近いよ。
昨日の夜中に逆戻りどころか、身体中が痛んだりするし、眩暈が酷くて立てないし、声まで出せないと来てる。
だけどさ〜……だけどさ。
仮にも女の子が、食べ物があるって言ってるのに遠慮して、ネズミ食べようか迷う必要はないだろ?

もちろん、リュックが僕を心配する気持ちはわかるよ。
誰がどう見たって、今の僕は「ただでさえオカシイのにカッパのせいで魔物化して発狂しかけてる人間」だ。
顔色は死人並み。声もアレ。ロックと再会した辺りから、原因のわからない気絶を何度もしてる。
オプションパーツも危険要素も増える一方だし……ああ、間違いなくサイファーやリュックの反応は正しい。
それは認める。

でもね。
今はまだ、頭までおかしくなったわけじゃなーい!
お腹は空いちゃいるけど、一食抜いたぐらいでヘバるほど、衰弱してるわけでもな〜〜い!

多分、物理的にあのカッパと距離を取れたことが功を奏したんだろう。
魔物化が進んだ時はちょっと……いや、かなりヤバかったけど、リュックの魔法のおかげもあってどうにか落ち着いた。
幻覚も幻聴も止まったし、洗脳されそうなカンジも少しづつ治まってきた。
だから、もう、そんなに気ぃ遣わなくても大丈夫なのに……
昨日の夜もそうだったけど、もどかしい!
すっごく、すんごく、も・ど・か・し〜〜〜〜い!!

だいたい、リュックは接近戦の方が得意って言ってたじゃないか!
食中毒になってお腹壊したらマズいだろ?
それに空腹で、あのカッパの中身とやり合うことなんて出来るの?
『お腹が痛くて力が出ない〜』とか『お腹が空いて力が出ない〜』とか、そーゆーことになったらどーすんのさ?!

「………! ……、……!!」
(リュック! 食べてよ、気にしなくていいから!)
「もー! いいったら、いーいーの!」

……ダメだ。
言葉が通じる通じない以前に、僕の話を聞く気がない。
やっぱり頭もおかしくなってるって決めつけられてるんだろうなあ……
そりゃそーだよな〜。どう見ても僕、頭のおかしいモンスターだもんな〜。

――しょうがないか。そう見えるように演技してた部分も多いし。

99 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/14(土) 15:08:15.18 ID:jye6ZPdGO.net
 

100 :人間はエスパーではありません 8/16:2013/09/14(土) 15:08:33.84 ID:zq1fnkQI0.net
例えば放送前、ひそひ草でサイファー達を挑発した時にも、ワケわかんないこと言ったりしたよね。
『みんな殺せば僕の中で生きるんだーわーははははー』的な。
アレもソレもコレも、全部盗聴対策の一環なんだ。
ああ言っとけば、主催側には『頭のおかしい僕は自分の中でスコール達が生きていると思い込んでる』って伝わる。
だから僕が錯乱したフリをしながら『スコールは生きてる』って公言しても、首輪越しで聞いてる主催側は、字面通りには受け取らない。
真意が伝わるのは、スコール自身が書いた走り書きを見て、意図を理解した相手だけ。
いつでも筆談できるとは限らないし、言葉で喋って説明できるなら、そっちの方が楽でいいだろ?
……結局、物理的に喋れなくなったワケだけどさ。

――って、あれ?

何だろう。
ロックの時は普通に話しちゃってたような記憶がある。
南東の祠とか、手帳とか。
……そうだよ。
思いっきりペラッペラ喋っちゃってたじゃないか。
なんであんな不注意な事したんだ?

カッパがまだ近くにいて、頭がぼうっとしていたせいかな?
僕もリュック達も無事だからいいけど、ちょっと迂闊だったな……

って、そうだよ。ロックだよ。
なんでロックが居ないんだ?
それにリュック、どうして食べ物を持ってないんだろう?
サイファーもザック持ってないみたいだし……

――あれ?

「……!! ………!? …、…、…、……!!!」
(リュック! アレはどしたの!? ドライバー!!!)
そっぽを向いて水を飲んでいたリュックの肩を叩き、口パクで問いかける。
リュックはしばらく頭を捻っていたけど、どうにか僕の言いたいことがわかったらしく「あっ!」と叫んだ。

「えっと……あんね、アーヴァイン。
 実はあんたが会ったロック、ロックじゃなくて、ケフカって奴で……
 ……その時に、荷物、取られちゃったの」

――え?

「……で、でもさ。武器は取られてないし、
 あんたも水とか、道具は持ってるからヘーキだって、ヘー……あれ?」
笑顔を引きつらせながら答えていたリュックが、もっと表情を硬くした。
そして断りもしないまま僕の荷物を手元に引き寄せ、慌てた様子で探り出す。

101 :人間はエスパーではありません 9/16:2013/09/14(土) 15:10:52.25 ID:zq1fnkQI0.net
「どどど、どーしてアレがないの!?」
「……、……、………」
(例のカッパに取られたんだよ)

正確に言えば、希望の祠でカッパに荷物をぶちまけられた後、中身を拾う余裕が無かったんだ。
ティーダが頑張ってくれたけど、それでも僕を連れて逃げるのに精一杯だった。
スプラッシャーや変化の杖なんて危険物がアイツに渡らなかっただけでも、十分すぎるほど有り難い。
……てゆーか、あんなただの矢が大事なものだなんて、僕とリュック以外にわかるわけないじゃないか。

「……どーしよ」
リュックが肩を落として落ち込む。
そりゃそうだ。こっちだって頭が痛くてしょうがない。
例え僕に余力があったとして、ドライバーがなけりゃ首輪は外せないんだ。
このままじゃ、スコールの計画に大きく支障を来たしてしまう。

「うーん……木じゃダメだし……石、かなぁ」

リュックは呟きながらザックを放り出し、壁際に向かった。
彼女が持ってた剣――今は何故かサイファーが傍に置いてる――は、金属も削れる業物だ。
あの剣とリュックの器用さがあれば、周囲の壁を切り取って、ドライバー型に削り出す事も出来るだろう。
だけど石は金属と違って変形する性質が全くないから、ドライバーにしても薄い所からポキっと折れちゃうはずだ。
何か、金属並みに固くて、ある程度変形する性質があるもの……

爪とか?
いやいや、確かに緩んだネジを締めることはできるけど、固く締まったネジを開けようとしたら爪が指から剥がれちゃうよ。
痛いよそんなの。止めよう。
そもそも緩んだネジなら石ドライバーでも開けられるだろうし――

……待てよ?

「……!! ………!」
僕はリュックに呼びかける。
でも、壁をコンコン叩いて唸っている彼女は気づかない。
また這いずって近寄ろうかと思ったけど、面倒だ。
ザックを手元に引き寄せてピサロの剣を取り出し、鋭利な刃を長く伸びた右手の爪の根元に当てる。
柄を掴む左手に意識を集中させ、剣を押して、引くと、不愉快な音と共に刀身が僅かに爪に食い込んだ。

「ちょ、何やってんの!?」

さすがに気づいたリュックが僕の元に駆け寄ってくる。
でも、僕は手を止めない。
そこらのナイフより長くて分厚く、剣でも中々切り落とせない堅さ。
彼女もその事に気付いたんだろうか。
傍に来たところで足を止め、「爪、切りたいの?」と聞いてきた。
僕が頷くと、彼女はサイファーの手元から例のメタリックな剣を持ってきてくれた。

「ちょっと右手を向こう側に真っ直ぐ伸ばして、ついでにそっち見ててくんない?」
彼女に言われた通り、腕を身体と垂直に伸ばし、右側を向く。

「いい? 絶対コッチ見ちゃダメだかんね!」

――え?

ええええええええええええええええ?!

102 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/14(土) 15:11:10.85 ID:jye6ZPdGO.net
 

103 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/14(土) 15:14:27.35 ID:jye6ZPdGO.net
 

104 :人間はエスパーではありません 10/16:2013/09/14(土) 15:15:09.90 ID:zq1fnkQI0.net
「よーし! パラディンリュック、推参! ってね」

な、なんでよそ見しなきゃいけないのかわからなかったけど……
ドレスチェンジってこうなってたのか!?
服が砕けて再構成って……ちょっと待ってちょっと待って……
どうなってるんだ……色々とどうなってるんだ……うわああああああああああああ。

ドレスフィアを借りて彼女の姿に変装した時にも思ったけど……リュックってスタイルいい方だから、かなりヤバイ。
戦闘中なら気にしてる余裕はないんだろうけど、こういう状況で見てしまうと……!

はっ。

の、覗き見しようと思ったわけじゃないぞ!
見るつもりは無かったけど、右手側からの視界に偶然入っちゃったんだ!!
本当! 本当だって!! 信じて!! お願い!!!

うう……落ち着け、僕。
これじゃただの変態だ。
いや確かに見た目も変化してるけど、そっちの変態じゃなくて世間一般が言う方のヘンタイだ。
うわあああ、意識しちゃダメだ……心臓が……呼吸が……ドキドキが……
そうだ、目を瞑って他の事を考えるんだ……
ムンバ……コヨコヨ……シュミ族……顎たぷたぷ顎たぷたぷ……

105 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/14(土) 15:15:49.60 ID:WiKVOt/i0.net
 

106 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/14(土) 15:15:57.44 ID:jye6ZPdGO.net
 

107 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/14(土) 15:16:36.65 ID:WiKVOt/i0.net
 

108 :人間はエスパーではありません 11/16:2013/09/14(土) 15:17:17.61 ID:zq1fnkQI0.net
*SIDE:リュック

パラディンのドレスに着替え直したあたしは、メタルキングの剣を構え、アーヴァインの爪を切り落とす。
剣の方が切れ味バツグンなだけあって、見事にスパッといけたけど、手ごたえはかなり大きかった。
見た目だけじゃなく、堅さまで本物のナイフみたいだ。
さっきも自分の身体を傷つけちゃってたし……こんなのが伸びてたら不安にもなるだろう。
切りたくなるのもトーゼンだ。

「……はぁ、はぁ、………っ、……」

呼吸は相変わらず荒い。
瞼をぎゅっと閉じて唇を震わせている様子からも、体調の悪さが伺えた。
「大丈夫だよ。あたしもサイファーも味方だからさ」
どうにか安心させてあげようと、左手を握りながら声をかける。
アーヴァインはびくりと身を強張らせたけど、ややあって、ゆっくりと頷く。
「………、………」
ありがとう、って言ってくれたのかな。
さっきから全然声が出せてなくて、何を話したいのか、おぼろげにしかわからない。
ただ、不安と焦りでいっぱいの表情を浮かべてるのは見て取れた。
ドライバーが無くなって、首輪を外せなくなったことが怖いのかもしれない。
それとも自分の身体の変化に怯えているのかもしれない。
判断はつかないけど、とにかく落ち着けて、励ましてあげる事を優先した方が良さげだ。

「心配しなくても、人間に戻れる方法、一緒に探すってば。
 良くわかんないけど、ティーダも協力してくれてるんでしょ?
 だから絶対にダイジョブ! なんたってあたし達、究極召喚ナシでシンを倒した伝説のガードだもんね!」
泣く子も笑うとびっきりのスマイルを浮かべ、ピースしてみる。
けれどアーヴァインは呆然とした表情で、目を瞬かせるだけだ。
「ぅ……ぃ、……、…………」
唇を動かし、首を横に振る。
今回は、最初の部分だけは微かに聞こえた。『無理だし』って言ったんだ。
「諦めちゃダメ! 皆で探せばきっと見つかるから!」
「……、……………」
励ましても励ましても、アーヴァインの表情はどんどん暗くなっていく。
ううん……そんなにあたしって信用ないのかな?
そりゃまあ、ドライバーを無くしてる時点で、何をかをいわんやってヤツだけどさ……

――ドライバー?

「そうだ!」
異常に長く、硬く伸びた、鋭い爪。
あれを削ればドライバーを作れないだろうか。
何せ、床に傷をつけるぐらいだ。丈夫さは間違いなく周囲の石材より上。
それでいてこの剣で切れるわけだから、加工もできるはずだ!

「待ってなさい! あたしがやるって所、見せたげるかんね!」
あたしは爪を拾い上げ、もう一度ピースサインを出す。
今度こそアーヴァインの表情が緩んだ――そう見えたのは、あたしの気のせいじゃなかったと思いたかった。

109 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/14(土) 15:18:00.40 ID:WiKVOt/i0.net
 

110 :人間はエスパーではありません 12/16:2013/09/14(土) 15:18:44.19 ID:zq1fnkQI0.net
*SIDE:サイファー

「ふざけてんじゃねえ!!
 あんなのが演技で出来るワケねえだろうがッ!!」

怒りに任せ、スコールの頬を殴り飛ばす。
「ちょ、止めろって!」
ずっと黙っていたティーダが俺を羽交い絞めにする。
だが、俺の拳は止まらない。ティーダの制止を振り払い、もう一発を腹に入れた。
初撃も二発目もクリーンヒットだ。
スコールの奴なら躱せただろうに――どちらもわざと受けやがった。

「……っ、……魔物化が進行したのか」

夢の中でも唇は切れるものなのか。
スコールは血の糸を口から垂らしながらも、冷静な声音を崩さない。
「えっ?!」
驚きの声を上げたのはティーダだ。
あの変貌を見る前に姿を消したから、気づいていなかったんだろう。
「どどど、どうして!?」
「……そこまではわかるわけないだろう。
 だが、あんたがアイツの為にそこまで怒るとなれば、相応の理由があるに決まってる。
 そして演技でどうにもならない事なんて……それしかないはずだ」
「ああそうだ、正解だよ優等生。
 で、どうするんだ?」
俺の言葉に、アルガスの奴が「いっそ殺してしまえッ!」と叫ぶ。
当然、ティーダはその台詞に憤り、「ふざけんな!」と吠えながらアルガスへ詰め寄る。

「サイファー、確認させてくれ。
 今のアーヴァインの意志は、あんたから見てどうなっている?
 操られている素振りがあるのか? それとも意識自体が失われているような状態なのか?」
「……意識はあるし、テメェを信じろって訴えてたよ。クソッタレが」
「そうか……」
スコールは顎を撫でさすりながら、目を閉じる。
他の二人は口論を始めやがるし、さっさと答えろ、って気分でいっぱいだ。
そんな俺の意図を汲んだのか、スコールは三十秒ほどで瞼を開けた。

「【闇の操作】が出来るのはバッツとアイツだけだ。
 切り捨てる事も無理強いも出来ない以上、休ませて様子を見るしかない」

――実に優等生らしい回答だ。
もちろん、首輪解除の仕組みを聞いた以上、殺すなんて決断を下せるとはハナから思っちゃいなかったが。

111 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/14(土) 15:19:30.47 ID:jye6ZPdGO.net
 

112 :人間はエスパーではありません 13/16:2013/09/14(土) 15:21:04.32 ID:zq1fnkQI0.net
「ティーダが気づいていなかったのだから、変化が起きたのは召喚が終わった後だろう?
 なら……召喚による疲労……あるいは魔力とやらの浪費が引き金になった可能性が高い。
 別の原因であれば、ティーダにエリクサーを持たせてあんた達に送ることも出来たが……
 すまない。現状では有効な手立てが思いつかない」
「………」
「……納得いかないか」
「当たり前だ」
「だろうな」

喰ってかかっちゃいるが、俺自身、妙案があるわけでもない。
スコールもそれを見抜いているんだろう。
案が無いのかと聞き返すこともせず、口を噤む。
バカみたいにうるさい金髪二人がいなきゃ、長い沈黙が訪れていた所だ。

「……アルガス、ティーダ。………あんたらもいい加減にしろ」
「ふざけんなッ! この死にぞこないが食ってかかってきたんだぞッ!」 
「あんたがアイツを殺せっていうからだろ!?
 アービンがどんだけ苦しんでるのか知りもしないくせに!」
「バカがッ! 初日に四人も殺した殺人鬼なぞ苦しみのた打ち回って死ぬのが当然だッ!
 まして心も身も魔物になった以上、人を喰らい出す前に殺してしかるべきだろう!」
「アービンは魔物じゃない! 人間だ!!
 生きてる人間で、罪を償ってみんなに協力しようって頑張ってきたんだ! それをアンタは――!」
スコールの制止も通じやしない。
アルガスとティーダは敵意をむき出しにして、互いを罵りながら口論を続ける。
――そう思った矢先だった。

すっ、と二人の間に入り込んだスコールが、右手と左手でそれぞれの身体を押しのける。
静かな怒気を感じ取ったのか、アルガスもティーダもぴたりと黙った。

「俺の判断でアーヴァインを殺す事はしない。その代わり、アルガスの安全は俺が保証する。
 あんた達が何と言おうと、この二点を動かす気はない」

「だ、だが――」
これだけきっぱり言い切られてもなお、アルガスは食い下がろうとする。
スコールはため息を吐き、言葉を足した。
「『そう』ならないように事を進める。
 ティーダ、あんたも協力しろ。アイツが死んだり苦しんだりするのは嫌なんだろう?」
「そ、そりゃ、もちろん!」
リュックの仲間らしく、こいつも相当な単細胞らしい。
……じゃなきゃ、そもそもあんなナリで苦しんでる奴に『死んだら泣く』なんて言いやしないだろうが。

113 :人間はエスパーではありません 14/16:2013/09/14(土) 15:24:13.40 ID:zq1fnkQI0.net
「あんたは向こうの部屋で待っててくれ。
 サイファーの次は、またアイツを眠らせて休ませる……そうしたら、世間話でもしていてほしい。
 何だったら遊んでてもいい。アイツにユウナやセフィロスの事を考えさせないようにして、落ち着かせるんだ」
「なるほど! そういう事なら俺に任せろッス!」

ニコニコ笑ってるが……わかってんのか?
スコールの奴、テメェを殺した恋人の件について一切相談すんなって言ってるんだが。
それにアーヴァインがあんな状況じゃ、ユウナと会う機会は廻ってこない可能性の方が高い。
――まさかとは思うが、コイツがユウナに殺されたのは【闇】とか何とか関係ナシに、ド鈍すぎて痴話喧嘩が起きた結果ってオチじゃねえだろうな。

「もうすぐマッシュが来るはずだ。
 アルガスはあっちの部屋で、マッシュと一緒に攻略本の解析を進めてほしい。
 もちろん俺も後から手伝う」
「……あのモンクみたいな奴か。
 まあ、どこぞの20歳児やそこの馬鹿よりはマシだが」

いちいち皮肉を言わなきゃ気が済まないのか、アルガスはティーダを見やりながら呟く。
その割にスコールの意見には従う辺り、マジに気に食わない。

「あんな格好だが、マッシュも一応王族だし、俺より頼りになる大人だ。
 少なくともヘンリーと同程度にはあんたに合わせてくれるだろう」
「王族ゥ? ……ああ、なるほど、修道院に送られたクチか。
 それならいい。何歳で送られたにせよ、礼儀はなっているだろうからな」

礼儀がなってねえのはテメェだろ。

「礼儀がなってないのはあんただっつーの」
俺は言葉を飲み込んだが、ティーダは臆面もなく声に出す。
しかし、言い返しても埒があかないということをやっと学んだのか、アルガスは黙殺した。
スコールはまた呆れたように首を振り、ふぅ、と息を吐いた後、俺に向き直る。

「サイファー。『死んでいる』俺達は表立って動けない。
 情報の収集や整理、計画の立案といった、裏方的な作業が関の山だ。
 俺の方針は今言った通りだが………現場の人間でなければ対応できない事もあるだろう」

そこまで喋ってから、ヤツは視線を彷徨わせる。
言いたいことは何となく予測がついた。
だが、あえてスコールが言葉にするのを待つ。

「……あんたやアイツがどんな決断を下すにせよ、俺はそれを受け入れる。
 それだけは先に言っておく」

114 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/14(土) 15:24:26.95 ID:jye6ZPdGO.net
 

115 :人間はエスパーではありません 15/16:2013/09/14(土) 15:26:15.57 ID:zq1fnkQI0.net
「そうか」

会話を聞いていたアルガスが、わずかに唇の端を吊り上げる。
ド鈍いティーダは言外の意味に気づいてないらしく、何も言わない。
まあ、面倒な事になるのは目に見えているから、理解していない方がいいんだろうが。

「さて。今の段階で俺から説明できる事は以上だ。
 ティーダに関しては俺も良くわからないのが実情だからな。
 ……だから、先にあんた達の状況を聞かせてほしい。出来れば、ソロや城のグループについてもだ」

俺は舌打ちしながら頷いた。
仲間を危険な目に合わせて、自分は奥に引っ込んでるという状況こそ気に食わないが――
脱出手段が確立されていない状況で首輪を外す事がどれほど危険かぐらいはわかるし、話を聞けばスコールの言い分は妥当なものが多かった。
それに、少なくともアーヴァインが危険な目に合った原因を作ったのは俺だ。
何でもかんでも棚上げして、スコールに責任を押しつけるわけにはいかねぇだろう。

「――どっから話すか」

苛立ちと憂鬱さが胸に重くのしかかるのを感じながら、俺は今までの事を話し出した。



【サイファー(右足軽傷+重度の疲労、睡眠)
 所持品:G.F.ケルベロス(召喚不能)、正宗、スコールの伝言メモ
 第一行動方針:状況説明
 基本行動方針:マーダーの撃破(セフィロス優先)
 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【リュック(パラディン、MP9/10)
 所持品:メタルキングの剣、ロトの盾 クリスタルの小手 ドレスフィア(パラディン) マジカルスカート
     破邪の剣、ロトの剣
 第一行動方針:首輪解体用のドライバーを作る
 第二行動方針:ユウナを止める/皆の首輪を解除する
 最終行動方針:アルティミシアを倒す】
【アーヴァイン(変装中@白魔服、MP微量、半ジェノバ化(中度)、右耳失聴、声枯れによる一時的失声)
 所持品:ビームライフル 竜騎士の靴 手帳、G.F.パンデモニウム(召喚×)、リュックのドレスフィア(シーフ)
     ちょこザイナ&ちょこソナー、ランスオブカイン、スプラッシャー、変化の杖、祈りの指輪
     チョコボ『ボビィ=コーウェン』、召喚獣ティーダ
 第一行動方針:休む
 第二行動方針:脱出に協力しない人間やセフィロスを始末したい/ユウナを止めてティーダと再会させる
 最終行動方針:魔女を倒してセルフィや仲間を守る。可能なら生還してセルフィに会う
 備考:理性の種を服用したことで、記憶が戻っています。
    ジェノバ細胞を植え付けられた影響で、右上半身から背中にかけて異形化が進行しています。
    MP残量が回復する前にMP消費を伴う行動をするとジェノバ化が進行します。
    セフィロスコピーとしてセフィロスに操られる事があるかもしれません】
【現在位置:南西の祠】

116 :人間はエスパーではありません 16/16:2013/09/14(土) 15:31:01.16 ID:jye6ZPdGO.net
【アルガス(左目失明、首輪解除、睡眠中)
 所持品:インパスの指輪 E.タークスの制服 草薙の剣 高級腕時計 ももんじゃのしっぽ 聖者の灰 カヌー(縮小中)天の村雲(刃こぼれ)
 第一行動方針:攻略本を調査する
 第二行動方針:可能なら自分の手を汚さずにアーヴァインを始末する
 最終行動方針:とにかく生き残って元の世界に帰る】
【スコール (HP4/5、微度の毒状態、手足に痺れ(軽度)、首輪解除、睡眠中)
 所持品:ライオンハート エアナイフ、攻略本(落丁有り)、研究メモ、 ドライバーに改造した聖なる矢×2G.F.カーバンクル(召喚○、コマンドアビリティ×、HP2/5)
 吹雪の剣、セイブ・ザ・クイーン(FF8) 、貴族の服、炎のリング、ウネの鍵
 第一行動方針:南西組の状況を把握する
 第二行動方針:首輪解除を進める/脱出方法の調査
 基本行動方針:ゲームを止める】
【現在位置:南東の祠:最深部の部屋】

117 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/14(土) 15:33:56.76 ID:FFiqke2A0.net
 

118 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/14(土) 18:59:26.42 ID:sHLfSvlf0.net
乙でした!
思ったよりも落ち着いた再開だったな
アーヴァインもいろいろな意味でちょっと元気になって安心したw

119 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/14(土) 20:50:30.79 ID:30+Z5hWVO.net
新作乙!

顎たぷたぷで吹いて、頼りになる大人発言でうっかり涙腺緩んだ
マッシュの人柄もだけど成長したなあ

120 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/14(土) 23:52:20.37 ID:v+ejQm8H0.net

マッシュはブオーン以来の活動が夢の世界だったからもっと夢側来て欲しいな
しかしデスキャッスルと比べてこの安心感よ。班長とサイファーだからだろうけど

121 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/15(日) 01:36:30.32 ID:VLiFtaVI0.net
月報の方、集計お疲れ様です。
FFDQ3 694話(+ 6) 21/139 (- 0)  15.1(- 0)

122 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/15(日) 08:51:43.10 ID:ecbMJaEx0.net
新作乙です!
原作と比べて一番カッコよく描かれてるのってサイファーだよなあ。性格はほぼまんまなのに立ち位置でここまで違うとは

123 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/15(日) 08:59:37.29 ID:9/jitP/b0.net
新作乙です
ようやく接触できたか…長い道のりだったなあ
苛立ちながらもわりと冷静に状況を見てるサイファーが面白い
そしてはっきり言ってしまうティーダGJ
アルガスと缶詰状態で攻略本の解析ってなかなか嫌な役回りだが、マッシュの人柄なら無問題か。

124 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/16(月) 17:25:45.38 ID:ZKDzIE9B0.net
新作激しく乙です!

125 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/18(水) 19:06:00.35 ID:+Hz6bMu40.net
絵板凄い

126 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/18(水) 20:44:24.19 ID:NH8m8N9m0.net
ケフカ率が高いのがなんとも

127 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/18(水) 20:47:05.97 ID:BWs3vutU0.net
覗いてみようと思ったらアク禁食らってたでござる
書き込めないのはいいけど見ることすらできないのは切なす

128 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/19(木) 12:54:26.68 ID:ksEl/XQE0.net
爪鞭斧きたああああああああああ

129 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/19(木) 22:07:56.97 ID:Dc463JFW0.net
見事な誤爆だなw
しかし、仮に4thが開催されるとしたらDQ10は入れる事が出来るんだろうか

130 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/20(金) 10:21:28.38 ID:ZPHPuhBx0.net
>>4th
是非開催して欲しいが、DQ10とFF11は不参加の可能性があるよなあ
参加人数の削減を考えると作品ごと切られそうだからねえ

参加者増やすだけだと次は200名超えかねんし

131 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/20(金) 12:13:55.88 ID:zWJhXHOd0.net
FF11は板違いだから不参加だったけどDQ10は板違い扱いではないんだよね
やってることは同じなのに

132 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/20(金) 12:34:47.85 ID:rTrjiQya0.net
あまりこのシリーズのロワについて知らないから失礼な質問をするかもしれないけど、このロワは原作ゲーム以外の作品は取り扱えないのかな?
ドラクエで言うならロト紋とかダイ大とか、やっぱややこしくなっちゃう?

133 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/20(金) 13:07:43.06 ID:lRZSgwx10.net
新作群に乙!
やはりピサロ城は何かに包まれ、夢組は順調に対話中……だがアービン周りも厳しいのう。
この離れ離れの奴らがそれぞれ他グループの状況を知ったらどうなるんだろう。
ユウナとケフカの暴れっぷりもなぁwwwwwww

>>132
ゲームの板だし、世界観や設定がかなり尖ってるからどうだろうなぁ。
個人的には、難しいんじゃないかという思いが強い。

134 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/20(金) 17:42:52.84 ID:rTrjiQya0.net
>>133
丁寧な回答ありがとう!やっぱ難しいかー。ロト紋もダイ大も好きだから、ジョジョロワみたくいつか参加できる機会がやってくるかなーって淡い期待を抱いてたんだけどね。
でもここってFFとDQ二作品のロワだから、FF側も同じようにしなきゃ吊り合い取れないし、作品をこれ以上増やそうものなら各作品毎の参戦キャラが少なくなってそれはそれで寂しいというか、なんかもう色々と上手くはいかないんだなーって思った。
わざわざこんな質問に付き合ってくれてありがとう!

135 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/20(金) 18:02:29.74 ID:u32wwzL80.net
そう考えるとFFってまともなメディアミックスがないな。
映画版FF参戦しても誰得だし。

136 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/20(金) 19:35:46.77 ID:D4nknbZQ0.net
ヴィンセント「お前にふさわしいソイルは決まった」
問題は逆に対応できる気が全くしないことだ
ダイやロトは好きだけど漫画とかそっちの範疇になりそう。同じ外伝でもDQMやFFTあたりとはやっぱり別物に感じるし

137 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/24(火) 11:12:45.44 ID:BuhCyYIa0.net
FF11・DQ10から主催者側のジョーカーとして無理矢理3・4人ねじ込むとか?
ただ今回はジョーカー自体存在しなかったからルール自体変わっちゃうのが問題か……

138 :ライフカードを切れ 1/6:2013/09/24(火) 21:47:46.52 ID:OuiCysqt0.net
世の中には、大空を猛スピードで駆け抜けることを快感とするド変態がいる。
どこの誰とは言わないが、その変態っぷりは筋金入りだ。
必要以上の速度を出してはその風を全身に受け、吹き飛ばされそうなスリルを味わうのだという。
その時もクレイジーすぎて同意できなかったし、その考えは今も変わっていない。
ただ、この状況になって一つわかったことがある。
奴がそんなクレイジーな行為に興じていられたのは、あの船に"安心感"があったからだ。
大空を最高速で飛び回っても、落ちて死ぬことはない。
人間にはない、大空を駆けめぐる翼があれば、そんな趣味も持つのだろう。
まあ、そんな翼を手に入れても、自分はそんな趣味に目覚めることはなさそうだが。
ともかく、今。
大空を舞い、全身で風を受け止めて最高速へとたどり着こうとしている自分たちは。
その最高速のまま、地面に衝突しようとしている。
つまり、このまま行けば。

落ちて死ぬ。

と、いったところでどうするのか?
それが今回の課題だ。



〜テストケース・ワン〜



「フ、フフフ」
ロックは笑う。
大空を舞い、超速で風を切りすぎて、ついに頭がおかしくなってしまったか? とギードは少しだけ彼の頭を案じる。
「天才だ、俺って、天才なのかも知れない」
「いったいどうしたというのじゃ」
「ちょっと耳貸してくれないか?」
狂気じみたロックの言動を不思議に思いながらも、ギードは耳を貸す。
きっと何か秘策があるのだろうと、淡い期待を抱き、次の言葉を待つ。
「――――コンフュ」
しかし、囁かれたのは混乱の魔法。
全身の神経が、思考がまともに機能しなくなるそれは、いとも簡単にギードの体をグルグルと回していく。
「ロ、ロック、お前何を」
「まあ見てろよ」
持ち前の精神力で何とか保っていた自我で、ロックに問いかけるも答えは返ってこない。
「ヘイスト」
立て続けに唱えられる魔法、ギードの体が素早く動いていく。
グルグルとまるで駒のように回転し始めたところで、ロックは素早くギードの背に飛び乗り、次の魔法を唱える。
「行くぜ、トルネド!」
そして、極めつけの魔法を完成させる。
生まれた竜巻が、ギードとロックを飲み込む。
両者の体を回転させながら、空へと舞いあげていく。
「うおおおおおおおお!! 超速回転ベイ・ブレェェェェェッド!!」
意味不明の言葉を紡ぎながら、ロックはギードの体にしがみつき、超高速で回るギードと共に大空を駆けた。
「未来へ向かって、ゴォォォォォォーーーーッ!! シュゥッ!!」
暗い闇の世界で、大空を舞うロックの表情は。
誰も見たことがないほど、生き生きとしていた。

この結果? どうなったかなんて聞くまでもないだろう。
射出方向の調整に失敗していたことに気がつくこともなく、デスキャッスル付近の溶岩に真っ逆様に落ちていった。
ズブズブと沈んでいく中、ロックだけは大笑いをし。

天に向かって、親指を突き立てていた。

【□ック 死亡】
【≠"ード 死亡】

139 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/24(火) 21:48:37.48 ID:KXDaSGx10.net
 

140 :ライフカードを切れ 2/6:2013/09/24(火) 21:48:42.42 ID:OuiCysqt0.net
.


〜テストケース・ツー〜



「くそっ、なんか無いのか……!!」
大空を舞い、焦りながらもロックは自身の袋を漁る。
剣、証、指輪、鞭、役に立たないものが次々に現る中、コロンと一つの道具が現れる。
「そうだ、これなら!!」
オレンジを中に宿した薄緑の石。
それを鷲掴みにして、ロックはためらいもなく空に掲げる。
まもなくして、現れるのは幻獣王。
大きな口から放たれる、全てを飲み込む破壊の吐息。
先ほどまで足場となっていた瓦礫が、瞬時に塵と化していく。
「ヒューッ!! やっぱこう言うときは幻獣に限るぜ!」
やっぱり幻獣ってすごい、ロックはそう思った。
「してロックよ」
「おう」
「バハムートは、どれほどの間現世に留まっていられるのだ?」
そんなロックに、ギードは一つの問いかけを投げる。
「えっ、ああ、そりゃあまあ」
ロックは満面の笑みで、ギードの問いに答える。
「持って一分、じゃねえの?」
その瞬間、幻獣王の姿がふっと消え。
「うわぁぁぁぁぁぁぁっ……」
何ら変わらない結末、地面へ真っ逆様に落ちていってしまった。

【口ック 死亡】
【ギー卜" 死亡】

141 :ライフカードを切れ 2/6:2013/09/24(火) 21:49:28.19 ID:OuiCysqt0.net
.


〜テストケース・スリー〜



何も起こらない、何も出来るわけがない。
所詮生きるものは自然現象に勝つことはできない。
ギードも静かに首を横に振る、なにも出来ないということなのだろう。
重力に従い、この瓦礫達と一緒に着地する。
当然、瓦礫は崩壊するし、とんでもない衝撃が自分を襲うだろう。
それを受けてまで、生き残っていられる自身などあるわけもない。
不思議と、諦めは早い。
どうあがいても無理、というのがわかったのならば、あとは受け入れるだけというのも大きいだろう。
「ああ、レイチェル――――」
最後の最後、ロックは最愛の人の名前を呟く。
「愛している」
そして、大きな崩壊音。
ギードは甲羅があるから助かるかな? なんて事を考えながら。
何もかもが崩れ去っていく中、自分の意識をノイズに預けていった。

【ろっく 死亡】
【ぎいど 死亡】




















――――もちろん、これらは全て虚偽"フィクション"。
では、真実"ノンフィクション"はどうだったのか?

142 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/24(火) 21:49:33.19 ID:KXDaSGx10.net
 

143 :ライフカードを切れ 4/6:2013/09/24(火) 21:50:21.39 ID:OuiCysqt0.net
.


〜ケース・エックス〜



「……なあギード」
「何じゃ」
空を飛んでいる、というのに不思議と落ち着いた声がでる。
人間、焦りすぎるとイヤに冷静になると言うが、ロックは今まさにそれなのかもしれない。
「アンタの甲羅って、裏面も結構丈夫なのか?」
「まあ、そんじょそこらの石よりかは堅い自信はあるのう」
ひとまず、ギードはロックの問いに答えていく。
アダマンタイマイほどといわないまでも、自分の甲羅の堅さにはそこそこ自信がある。
だが、ロックはそれを聞いてどうしようというのか?
「ロックよ、もう地面が近いが……」
そうこうしているうちに、地面は迫ってくる。
自分の事はともかく、ロックはこの衝撃に耐えられるわけがない。
けれど、その当のロックは異常なほどに落ち着いている。
ぶつぶつと何かを呟きながら、頭を抱えている。
「ロック!」
「あーもう! レビテト覚えてりゃもうちょい楽だったんだけどな!」
檄を飛ばした瞬間、何かが弾け飛ぶかのようにロックは顔を起こす。
その勢いに、思わずギードは一歩引いてしまう。
そして、ロックは皆伝の証を携え、右手に鞭を、左手に杖を持ち、一つ深呼吸を置く。
「一か八か、やらずに死ぬよりやってみるか……!」
「何を――――」
「悪ぃ! 黙って首と両手両足を引っ込めてくれ!!」
ギードに必要最低限の事だけを伝え、意識を集中していく。
「行くぜ――――」
ギードが甲羅に身を隠したことと、もうまもなく地面にたどり着くと言うことを認識し。
もう地面に着弾する、と言ったところでロックは目を見開き。

「クイック!!」

高らかに、魔法を唱えた。

ロックの周りの時間が、まるで停止するかのように凍り付く。
いや、ロックの体だけが、動くことを許された空間。
その僅かな時間を掴んだことを認識し、ロックはひとまずため息をつく。
そして、勢いよく崩壊が始まる直前の地面を蹴り、本来の大地へと降り立っていく。
そのまま、息をつくまもなく全力疾走していく。
自分一人が助かるなら、それだけでも済むが、そういうわけにはいかない。
何より、彼もしっかり救うためにこれらを持ってきたのだから。
粉塵と破片が舞わないであろう領域まで走ってきたロックは、そのまま振り向きざまに一本の杖を投げ飛ばす。
杖は、一直線にギードの体にこつんとあたり、そのまま落ちていく。
何も起きない、何も、今は何も起きない。
残り時間は後少し、けれどそれはロックの計算通り。
両足のバネを生かし、天高く飛び上がっていく。
「行くぜコンニャロー!!」
その叫びと同時に、全ての世界が動き出した。

144 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/24(火) 21:50:22.51 ID:KXDaSGx10.net
 

145 :ライフカードを切れ 5/6:2013/09/24(火) 21:50:58.01 ID:OuiCysqt0.net
.
着弾の衝撃で崩壊し、破片とともに四方八方へ粉塵をまき散らしていく瓦礫。
それと同時に、まるでビー玉のように射出されるギードの体。
超高速で移動するギードは、ある場所を目指して突き進んでいた。
それは、ロック・コールの元。
だが、このまま行けば高速で引き寄せられたギードの体はそのままロックへと体当たりをかます事になるだろう。
人体を引き寄せて使うのならばともかく、言ってしまえばモンスターを引き寄せているのだ。
長き時を生きてきたギードの巨体を、ロックが受け止められるわけがない。
だから、だからこそ、彼はクイックが切れる間際に"跳んだ"。
そして、綺麗な放物線を描き。
「ジャスト、ライド、オン!!」
爆速で迫るギードの背に、乗ることに成功した。
そのまま地面を滑るギードの体の揺れと自身の足の痛みに、少しだけバランスを崩してしまう。
けれど、それも想定済み。
右腕に掴んでいた鞭を上手く操り、近くの木を支えに体を起こしていく。
「ひゅおう! よっ、ほっ、うらっ!!」
そのまま、スノーボードを駆るように、地面を滑っていく。
右、左、右、と器用にギードの甲羅を操り、障害物を回避していく。
その姿、正にSSStylish!!!!!!!

しばらくして、ようやく止まることに成功した二人。
全てを成し遂げたような表情のロック。
反するように、ゲッソリとした表情のギード。
まあ、無傷でやり過ごせたから良かったものの、さすがに他に方法はなかったのかとギードは少し考えてしまう。
が、いつまでもそんなことを言っている場合ではない。
窮地を脱したところで、ギードはロックに問いかけていく。
「時にロックよ、これからどうするのじゃ」
「ん? ああ、そりゃあ……」
ギードに問いかけられ、頭を掻きながら悩むロック。
かなり遠くまで吹き飛ばされてしまっている、ソロ達の元に戻るにしても少し時間がかかるだろう。
おそらく、それまで"コト"は終わってしまう。
やっかいな騒動に巻き込まれたな、とため息をつくと同時。
「ガメゴン……」
男のような、けれど女のようなそんな不思議な声に振り向いてみる。
そこには、青い法衣に身を包んだ男が、こちらを驚愕の目で見つめ続けていた。

146 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/24(火) 21:51:00.80 ID:KXDaSGx10.net
 

147 :ライフカードを切れ 6/6:2013/09/24(火) 21:52:11.02 ID:OuiCysqt0.net
.
【ギード(HP3/5、残MP1/4、げんなり)
 所持品:首輪 
 第一行動方針:状況に対処
 第二行動方針:ソロ達と合流して南東へ向かう
 第三行動方針:首輪の研究と脱出方法の実験をする】
【ロック (左足負傷)
 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード 魔石バハムート、皆伝の証、かわのたて
 死者の指輪、レッドキャップ、ファイアビュート、2000ギル
 デスキャッスルの見取り図
 第一行動方針:状況に対処
 第二行動方針:リルム達と合流する/ケフカを警戒
 基本行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】

【セージ(MP2/3、多重人格)
 所持品:ハリセン、ナイフ、ギルダーの形見の帽子、イエローメガホン
     英雄の薬、厚手の鎧、般若の面、釘バット(FF7)、グラディウス、聖なるナイフ、マテリア(かいふく)
     陸奥守、マダレムジエン、ボムのたましい
 基本行動方針:『アルス』:悪人を倒したい/城へ向かいたい
        『ローグ』:正気に戻りたい/精神状態が悪化しないよう、本物の『勇者』との接触を避ける
        『フルート』:皆と一緒にいたい/城へ向かっているつもり
        『セージ』:特にない/『アルス』の意見に従う
 最終行動方針:『共通』:みんなと一緒に魔女を討伐する、目の前の状況に対処】
【現在位置:デスキャッスル南西の茂み(分かれ道のあたり)】

148 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/24(火) 22:37:18.02 ID:VEb/5OhL0.net
タイトルに気づくまで荒らしかと思ったwww
まさかデスキャッスルの大乱戦からゴールドソーサーよろしく離脱とは
どっちの戦闘でも面白そうでどちらに絡むことになるのかと思ってたからまさかまさかのセージさんで逆に不安が止まらないwww

149 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/24(火) 22:49:42.06 ID:De17thgE0.net
大変乙です!
自分も荒らしかと思ったw
ロックの文字が違うのも3/6でやっと気づいた
んで最後のガメゴンに糞ワロタw

150 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/24(火) 22:53:54.52 ID:VEb/5OhL0.net
ああ、乙でした
乙忘れ申し訳ない

151 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/24(火) 23:31:50.11 ID:LoxNLT2S0.net
新作乙wwwwww
もう笑うしかねぇwwwwwwww
ガメゴン……じゃねーよwwwwwwwwww
そんでもってまた火種が生まれそうなのもまたwwwwwwww
全体的にネタっぷりが激しいのに文章力やら結果やらがガチだから困るわこれwwwwこんなん面白いに決まってるわーwwwwwwwwwww

152 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/25(水) 01:30:05.37 ID:RIyUPcgt0.net
新作乙です!!
ロック、お見事!!だがメッタクソ笑ったwww
シリアス展開続く中こんなコメディテイストな繋ぎが来るとはw職人様は凄い

孤立していたセージ兄さんがどう動くか楽しみで仕方ない!!

153 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/25(水) 08:14:15.71 ID:ajPR+ljJ0.net

どうする、どうするよ俺ー! だったもんなあw
ギードは森でラムザと会った時にレビテト使ってたから、
ロックもレビテトは使えるけど高すぎてまずいかもしれないと判断した。とかに修正いただいたりは出来ないかな

154 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/25(水) 08:27:25.44 ID:rDE+L1RJ0.net
>>153
ご指摘ありがとうございます。
〜ケースエックス〜の章始まりから、本文に入るまでの間に以下の文章を挿入させていただきます。

超高速で地面に向かいつつある中、ギードとロックは考え込む。
両者共に扱うことができるレビテトは使えない、というのもアレはそもそも地面から少し浮くだけの魔法。
決して、空が飛べる訳ではない。
確かに今の状況を凌ぐには最適かもしれないが、魔法が切れた瞬間に地面へ真っ逆様だ。
地面に立っているならともかく、空中かつ短時間の詠唱は難しい。
なら地面スレスレで唱えればいいとなるのだが、それで空中に逃げても崩壊する瓦礫に襲われてしまう。
無傷は免れないか、とギードがため息をついたときだった。

この後にロックの台詞が続く感じでお願いします。

155 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/25(水) 13:26:21.97 ID:SP0e5xTB0.net
ガメゴンクソワロタ

156 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/09/26(木) 08:04:05.51 ID:PwIr/joV0.net
修正乙です
ガメゴンネタは最初からあったのにこの時期だとまた違う破壊力があるなw

157 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/10/05(土) 21:15:04.08 ID:TWCZ1X+u0.net
乙です

158 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/10/13(日) 23:18:48.30 ID:DauW7dyH0.net


159 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/10/20(日) 19:06:09.11 ID:fbu7m2Ik0.net


160 :絶対の意志と奇跡の魔法 1/10:2013/10/25(金) 00:32:18.71 ID:Pk4hnYG60.net
目を開けると、そこはもうじっとりと薄暗い祠の中だった。
かび臭い空気に妙な落ち着きと安心感を覚えながら、俺はぐいっと背伸びをする。
どっかの誰かに撃たれた傷跡がずきんと痛むが、泣き言は言っていられない。

「ふぁああ……うっかりうたた寝しちまったぜ」

わざとらしいかもしれないが、現実の世界じゃあ首輪の機能は生きている。
無言で寝たり起きたりを繰り返していたら、さすがに怪しまれるだろう。
そんな俺の考えを汲んだのか、リルムがウィンクしながら応える。
「色々あったからしょうがないよね。
 オジサンも一応怪我人だし、トシみたいだしさ」
「トシなのは認めるけど、一応ってなんだ、一応って。
 俺は立派な怪我人なんだぞ……って、マッシュ、あんたも起きてたのか?
 もしかして気ぃ使わせちまったか?」

気遣いの言葉は演技ではなく本心だ。
俺自身、ピサロから貰った指輪が無けりゃベッドの上にいるような人間だが――
それでもやはりマッシュの方が重傷だし、精神面でも辛い境遇にいる。
何せ失ったのは、互いに信頼し合っていた双子の兄弟って話じゃないか。
俺とデールとの関係とはワケもモノも違う。
それで利き腕まで無くしてるとなれば……口が裂けても『気持ちはわかる』なんて言えないぜ。

「いや、いいって。
 えっと、あれだ。腹減って眠気が飛んじまったんだ」
マッシュは左手でサムズアップしながら、ニカっと笑った。
存外にしっかりした受け答えだ。
表情はただの強がりかもしれないが、生命力や体力は、俺が思っているよりも回復しているのかもしれない。
リュカやパパスさんを上回るガタイからしても、鍛え方が違うってヤツなんだろうな。

「そうか。まあ、喰うもん食わなきゃ治る怪我も治らないよな。
 せっかくだ。皆で夕食――って、バッツとラムザは?」
周囲を見回すが、部屋の中にはリルムとマッシュしかいない。
寝る直前までは一緒にいたはずなんだが……

「リルム達が起きたあと、ラムザが二人で見張りした方がいいだろうって、バッツ連れて上の階に行ったんだ。
 ついでに、『ココロザシ半ばで倒れたスコールの分まで首輪を調べる』って言ってた」

ああ、なるほど。
魔女の監視を考えて、自分達に意識を集中させようって腹づもりか。
あるいは、あえて首輪を調べると言いだす事で、スコールの研究は完成していなかったと思わせたいのかもしれない。
どちらにしても、考えて動ける奴がいるってのは頼もしい事だ。
心強い協力者を連れて来てくれたリルムには感謝………
……しようと思ったけどやめた。
この子、コリンズと同じで、おだてたら際限なく付け上がりそうな気がする。

「あっちはあっちで任せていいんじゃない?
 それより夕ご飯食べようよ。昨日貰ったビン詰め、まだ残ってるしね」

俺の心情を知らないリルムは、(こうやって機嫌よくしていれば)可愛らしい笑顔を浮かべながら、見覚えのあるラベルが貼られたビンを取り出す。
十中八九、レーベで拾ってアーヴァインに恵んでやった奴だ。

161 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/10/25(金) 00:34:01.98 ID:qARvHfTfO.net
 

162 :絶対の意志と奇跡の魔法 2/10:2013/10/25(金) 00:35:38.05 ID:Pk4hnYG60.net
夢で会ったアイツは、割合元気に見えたけれど……
いくらリルムがアーヴァインを心配していようと、アイツの現状なんて絶対に教えられない。

リルムがどうやって今まで生き延びたのかは、アーヴァインに対する弁護の中で何度も聞かされた。
当然、成り行きでラムザとウィーグラフ、銀髪の殺人者セフィロスの話にも触れている。
彼女にとって、セフィロスは仲間になり得たかもしれない男を目の前で殺した張本人だ。
そいつがアーヴァインを捕まえて化物に変えた挙句洗脳しようとしてるなんて知れたら、容赦なく脱走して助けに行くに決まってる。
ダメだダメだ、そんなのダメだ。

「……よーし。おじさんもまだ食料どっさり持ってるからな。
 三人で腹いっぱい食べて、元気出して行こうか」

幸い、リルムから先に飯を食べようと誘ってきた。
だったらその流れに乗って、食事に意識と時間を割かせるのが一番だ。
もしかしたらパクパク飯食ってる間に事態が好転する可能性も……期待は全くできないが、0%じゃあないだろう。
それにマッシュの体調もある。
本当に食欲があるなら、眠ってもらう前にしっかりしたものを食べさせたい。
さっきも言ったが、例え呪文で傷を塞いでも、血肉の元になるものがなきゃ体力なんて戻りっこないんだ。
スコールだって、食事に時間を割く程度の事は認めるだろうよ。
……アルガスはブーたれるかもしれないけど、まあ、スコールが説得するだろ。うん。

俺はザックから食料とランプを取り出した。
薪の類は無いといえ、燃料はそれなりに残っている。
大事な大事なひそひ草に燃え移らないよう、リルムに預けてから、ランプの火を大きくする。
「こんなもんかな……リルム、マッシュ、フライパンとか持ってないか?」
「リルム、ピサロのお城にしか寄ってないもん。
 持ってきてるわけないよ」
「俺も、まともな状態の町には立ち寄れなかったからなぁ……
 あんたが持ってないならお手上げだぜ」
「だいたい、そういうオジサンが持ってくれば良かったんじゃないの?」
「まー、そうなんだが……
 一昨日も昨日も普通に村があったから、今日の世界も集落の一つや二つあんだろって思っちまったんだよな」

さすがにこれは俺が迂闊だった。
こういう切羽詰まった状況じゃ、食事一つが士気や生存率に直結するもんだ。
こんな世界だって知ってたら、小型鍋ぐらいは持ってきてたんだが……後悔しても仕方がない。

「しょうがないよな。このまま直接パンと干し肉を焼いて、挟んで食べよう。
 瓶詰の中身をソースに使えば、マズくはならないだろ」
「あ、おいしそーかな? ……と思ったけど、パンもお肉もカタイんだっけ」
「軽く水で湿らせてから焼けば、多少はマシになるさ。
 ほら、二人の分もやってやるから、リルムはソロに連絡が取れないか試しててくれよ」
「えっ」
リルムがぽかんとした表情で俺を見る。
何か変な事を言ったかと反射的に身構えたが、彼女の口から出た言葉はどうしようもなくバカバカしいものだった。

163 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/10/25(金) 00:37:39.70 ID:qARvHfTfO.net
 

164 :絶対の意志と奇跡の魔法 3/10:2013/10/25(金) 00:41:54.07 ID:Pk4hnYG60.net
「オジサン、料理とかできんの?」
「……あのなあ」
俺はため息を吐きながら肩を落とす。
「料理が出来なきゃ旅も遠征も出来ないし、困る事の方が多いだろう。
 いや、それ以前に肉やパンを焼くなんて料理の範疇にすら入らないぞ」
「ふーん……そういうもんなの? 王子様って」
「そういうもんだ」

ランプの火力を調節しながら、少しだけ昔のことを思い出す。
俺が料理の知識や技術を覚えたのは、王宮での勉強や旅路の中じゃない。
数年間に渡る奴隷生活で、ムリヤリ身に着けさせられたものだ。
だから趣味でもなんでもないし、好きか嫌いかで聞かれたら、やや嫌いな方に入る。
仮にこの場にソロがいたなら、レーベでそうしたように、あいつに丸投げして任せていただろう。
ただ、リルムは女の子だしマッシュは怪我人だ。
火を扱わせて火傷しようものなら目も当てられないし、俺の辛気臭い身の上話を語ったってしょうがない。
――そう思って口をつぐんでいたんだが、残念ながら顔に出てしまっていたらしい。

「あんた……いや、やっぱなんでもない」
マッシュは複雑な表情で何かを問おうとし、すぐに言葉を濁す。
そういえばエドガーって奴がどっかの王様ってことは、彼も一応王子様に当たるのか。
まさかそこまで俺と似たような境遇だった、ってことはないよなぁ。 ……ないよな? ないよな?

「あれ? ……あ、もしかしてワケありってヤツだった?」
俺達の様子に気付いたリルムが、こちらとマッシュを交互に見やる。
いっそアルガスみたいに意地悪く笑いながら言ってるなら、小突きながら誤魔化すことも出来た。
だけどこんな、本気で心配する表情をされたら、とんでもなくリアクションに困る。
ふざけてあしらうのも気が咎めるし、黙っていたら勝手に邪推されそうじゃないか。
ああ、くそっ。せっかくパンが焼けてきたのに、空気がどんどん重苦しくなるのを感じる。
こうなったら……!

「――だぁあーーーーっ!!」
「「!?」」

思いっきり息を吸い込んで、叫ぶ。
そして二人が驚いた所で、一気に言いたい事を捲し立てる!

「いいか! 俺達はみんなで生きて帰るためにこれから美味いメシを明るく楽しくバリバリ貪り食うんだっ!
 それ以外の事は後で考えろ!! わかったらはいかイエスで返事だ!!」
「「……は、はい」」
うむ。よろしい。

――ああ、何でこんなことしたのか、一応説明するとだな。
人間って奴は驚かされると、一瞬だけ心が無防備になるんだ。
だから上手くタイミングを見計ってテキトーな事を言うと、そいつがそのまま暗示として機能するのさ。
ガキの頃はイタズラと組み合わせてオバケを信じこませたり、いきなり嘘泣きして説教を打ち切らせたりと、良く使ってた手だぜ。
料理もそうだけど、芸は身を助けるってのは真理だなあ。

*********************

165 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/10/25(金) 00:42:21.19 ID:qARvHfTfO.net
 

166 :絶対の意志と奇跡の魔法 4/10:2013/10/25(金) 00:44:57.45 ID:Pk4hnYG60.net
腕を狙う。躱される。
胴を狙われる。刀身で受け流し切っ先に引っかけて跳ねあげる。
間合いを取る。詰められる。
見切ってすれ違いざまに足を狙う。捕えたけれど手ごたえは無い。
どうやら着ぐるみ部分だけが斬れたようだ。彼女の動きは衰えず、ただ、僕を執拗に狙う。

表情すら判別できなくなるほどに焼け焦げた着ぐるみは、ところどころが破けて煤けた綿をはみ出させている。
その内部で剣を振るっているユウナさんだって、絶対に無傷ではないはずだ。
けれども彼女は止まらない。
呻き声のような呟き――「殺してやる」という呪詛と、断言はできないけど多分アーヴァインの名前――を延々と繰り返しながら、ひたすら僕へと斬りかかる。
動けないクリムトさんを狙おうとしないことが、せめてもの救いか。

でも、この状況で戦いを長引かせるのは危険だ。
先の呪文のせいでクリムトさんは深手を負っている。
頭からの出血を止めて手当をしなければ、最悪、死んでしまうかもしれない。
そもそも呪文を唱えた魔道士・ケフカがどこに行ったかわからない。
それでなくてもあの男、ロックさん達の世界を崩壊に追いやり、ピサロとロザリーさん達をたばかった張本人のはずだ。
カッパ君が果敢にも飛びかかっていったけど、彼一人で倒せるほどの相手じゃないだろう。
それに、城の中に件のロックさんやギード、サイファー達が取り残されているかもしれない。
城の破壊に巻き込まれて怪我を負っているかもしれない。

早く決着をつけるべき。
わかってる。わかってるんだ。
だけど、希望を捨てることはできない。

少し打ち合うだけでもわかる。
ユウナさんの太刀筋は、どうしようもなく歪だ。
守りを捨て、回避と攻撃に特化したヒットアンドアウェイの戦術。
それに理がないとまでは言わないけど、自分の才能や持ち味を考慮してるとは思えない。
誰がどう見たって、我流で剣を振るっていた『誰か』の動きを、徹底的に模倣し続けただけの剣だ。
剣で受ければいい攻撃も大きく躱そうとする。
単調な斬撃が中心で、突きやフェイントといった手を絡めようとしない。
言ってしまえば隙だらけ。
驕る気はないけれど、どう考えても僕と彼女の実力差は大きくて――
これなら止められるんじゃないかと、期待を抱いてしまう。

けれど、生きた状態で捕えようとするなら、四肢を封じるしかない。
腕でも足でも、急所を避けて動きだけを止めようというなら、狙える箇所は限られる。
さらに彼女の身体を包む着ぐるみは僕の目測を惑わし、こちらの攻撃も大振りになりがちで。
避けられて、あるいは捉えても浅すぎて、有効打を与えられないまま無情に時間が過ぎていく。

――やはり、彼女がこれ以上罪を重ねないうちに、殺してしまうしかないのか?
いや、まだ……まだ、諦めたくない。

167 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/10/25(金) 00:45:16.97 ID:9n/Hz1SB0.net
 

168 :絶対の意志と奇跡の魔法 5/10:2013/10/25(金) 00:53:20.95 ID:Pk4hnYG60.net
「ラリホーマ!」
正攻法で通じないなら、絡め手はどうか。
そう考えて間合いを取り、呪文を紡ぐ。
一度防がれた呪文とはいえ、先ほどは単純に気力で眠気を振り切っただけに見えた。
あの白い光のダメージで弱っているなら。抗わず眠りに落ちてくれれば。
クリムトさんも彼女も救うことができる――

そんな僕を嘲うように、彼女は歩を緩めなかった。
「死ね! 死ねシネしねぇえええええええええええ!!」
足元から胸を狙って切り上げられた刃を、僕は身体をひねって避けた。
続けざま、脳天を叩き割るために振り下ろされた一撃を盾で受け止め、わざと体勢を崩しながら足払いを掛ける。
けれども彼女は素早く飛び退いて、構え直した。

……こうなった以上、覚悟を決めるしかないのか。

命に価値の差はないけれど、優先順位は存在する。
僕はクリムトさんを守らなければならないし、仲間の無事を確かめなければならない。

 世界樹の花を手にした時の事を思い出す。
 あの日、僕はシンシアを蘇らせる事だって出来た。
 それをしなかったのは、そうしても僕の自己満足にしかならないとわかっていたからだ。
 仲間達もピサロも僕の事をお人よしだと言ったけれど、そうじゃない。 
 僕は自分が生きるために、シンシアを、父さんと母さんを、村の人達全員を死なせた。
 ピサロは良く『自分が憎くないのか』と聞いてきたけれど、そうじゃない。
 切欠を作ったのがピサロであっても、『大切な人全員の命と引き換えにただ一人生きる事』を選んだのは僕自身だ。
 
 シンシアを蘇らせたいと願うぐらいなら、『あの日』、彼女を引きとめて階段を上がって外に出るべきだった。
 そうしなかった.僕は、村の人達が信じたように、シンシアが信じたように、一人でも多くの人を救う勇者でなければならない。
 
   そう、一人でも多くの人を救う為に、その為に僕は――
  

僕は飛び退く素振りを見せながら、背負っていたザックを投げつけた。
当然、ユウナさんはザックを切り払って突っ込んでくる。
けれどザックを注視して回避行動を取った『その瞬間』だけは、僕の姿は彼女の視界に入らない。

「!!」

彼女がフェイントに気づいた時には、もう遅い。
僕は既にザックを追って間合いを詰めている。
すれ違いざまに斬りつけられ、反撃を喰らいにくく、それなりに致命的な箇所――彼女の腹部を狙い、剣を振るう。

「ぐっ、うぅうう……!!」

それは苦し紛れの反撃だったのかもしれない。
彼女の手に握られた剣が輝き、急激に黒雲が形を成す。
とっさに僕は天空の盾を翳し、反射障壁を作り出す。

そして降り注いだ雷光は――"光の壁をすり抜けて"、僕の身体を撃ちぬいた。

169 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/10/25(金) 00:56:10.33 ID:qARvHfTfO.net
 

170 :絶対の意志と奇跡の魔法 6/10:2013/10/25(金) 00:57:10.34 ID:Pk4hnYG60.net
閃光が脳を揺らし、激痛と痺れが全身の筋肉を硬直させる。
マホカンタの効果が打ち消されたわけじゃない。
失念していたんだ。
『精霊の加護を受けた武具によって引き起こされた奇跡は、呪文とは似て非なるもの』……『故に、マホステやマホカンタを貫通する』。
普段ほとんど起こらなかった、けれどこの状況下ではどうしようもなく致命的な事実を。

ざく、と肩に衝撃が走り、反射的に身をよじる。
さすがにユウナさんも隙を見逃すほど素人じゃあなかったようだ。
でもそこまで深手じゃない。血は吹き出しているけれど、まだ剣を握っていられる。
足も動く。間合いも取れる。戦うことは出来る。
でも、問題は、雷撃が通じると露呈してしまったこと。
僕の読み通り、ユウナさんもまた僕から離れ、後ろに下がる。
当然だ。遠くから剣をかざすだけで彼女は確実に僕を殺せるのだ。
そしていずれはクリムトさんも巻き込んで、彼の命まで断つだろう。
もはや迷う余地はない。一刻も早く彼女を殺さなければ……!

――そう思い、剣の柄を強く握り締めた、その時だった。

『だぁあーーーーっ!!』
「「!?」」

聞こえるはずのない声がどこからともなく響き渡る。
その人の姿を探して周囲を見渡せば、落ちていたのはザックからこぼれた、ひそひ草。

『いいか! 俺達はみんなで生きて帰るためにこれから美味いメシを明るく楽しくバリバリ貪り食うんだっ!
 それ以外の事は後で考えろ!! わかったらはいかイエスで返事だ!!』

大音声といっては少し大げさかもしれない。
けれどユウナさんの耳に届き、彼女の動きを止めてしまう程度には、その声ははっきりと聞き取れた。
そして場違いな励ましは、僕の中にあった後ろ向きな感情を吹き飛ばしてくれた。

(……ありがとう、ヘンリーさん)

僕は心の中で呟きながら、足を踏み出す。
クリムトさんを案じる。ロックさん達を案じる。サイファーを案じる。カッパ君を案じる。
それは大事な事だけれど、今、この時に考えるべきことじゃない。
ユウナさんを殺せば他の人が助かるかもしれないとか、ユウナさんを助ければ他の人が助からないかもしれないとか……
そんな計算を挟みながら振るう剣が、通用するはずがなかった。
迷いながら振るう剣で、僕が望む奇跡を起こせるわけがなかったんだ。

ヘンリーさんの言葉が思い出させてくれた。
僕は出来る限り多くの人を助ける。
そして、皆で生きて帰る。
『絶対に』。

もう迷わない。
僕はユウナさんだけを見据え、駆ける。
真っ直ぐに。

171 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/10/25(金) 01:01:33.90 ID:qARvHfTfO.net
 

172 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/10/25(金) 01:02:27.00 ID:9n/Hz1SB0.net
 

173 :絶対の意志と奇跡の魔法 7/10:2013/10/25(金) 01:02:53.43 ID:Pk4hnYG60.net
こちらの動きに気付いた彼女が剣をかざす。
あの雷撃が来るというなら……!

「光よ!!」
僕は剣を掲げ、残っている魔力で自ら雷を呼び起こす。
ユウナさんが呼んだ紫電は、僕が呼んだ雷光に飲み込まれ、刀身に纏わりつきそのまま長大な光の剣となった。

「邪悪を断つ力となれ――ギガソードッ!!」

本来なら頭上から振り下ろし、悪しき者を両断する為の技。
だけど今ばかりは、距離を開けたまま足を狙い、真横に振るう。
実体のない雷撃の刀身は僕の願い通りに、アリーナが振るうグリンガムの鞭のように鋭くしなりながら彼女の両足を捕えた。

「―――ッッ!!」

ユウナさんはがくりと両膝をつき、そのまま崩れ落ちる。
死なせないで倒すために全力を注いだ一撃だ。
当て方を選び、威力を抑えたといえど、雷の力は全身を麻痺させているだろうし……足に至っては当分の間使い物にならないだろう。

「……カー」

今まで階下で様子を伺っていたのだろうか、それともケフカを見失って戻ってきたのだろうか。
いつのまにか、カッパ君が崩れた柵を飛び越えて歩いてきている。
「無事だったのか……! 良かった!」
「カー」
僕の言葉に、カッパ君は「フン」と言わんばかりに顔を背ける。
どうやらかなり機嫌が悪いようだ。
「あの道化師は? 逃げたのか?」
「カー。カーカー」
カッパ君は肩を竦め、首を縦に振る。
それから床を指し示し、そっぽを向きながら足を踏み鳴らした。
『断言はできないけど、ボロボロになった城の中に逃げ込んだようだ』ってことなんだろう。

「中、か。倒壊する危険も、倒壊させられる危険も高いし、追わない方が良さそうだね」
こっちで暴れてたユウナさんは、どうにか止められたけど……
光の魔法がケフカの仕業なら、マホステで防げた大地震も十中八九そうだろう。
僕らが城内に入っていったとして、デスキャッスルごと潰されようものなら、勝ち目どころか逃げ場がない。
「カー」
『お前に言われなくてもわかってる』といった様子だ。
ものすごく悔しげに吐き捨てて、ギリギリとくちばしを鳴らす。
本当は追いかけたかったんだろうな。
まあ、敵意がなくて人手があるっていうのは有り難い。

「ねえカッパ君。クリムトさんの手当を頼めないかな?
 僕はユウナさんが起きた時に暴れないよう、縛っておくよ」
「……カー」
仕方ないな、と言ったんだろうか。
切り裂かれたザックから飛び出した、目立つ服を拾い上げながら、カッパ君はクリムトさんの傍に行きテキパキと処置を始める。
頭に服を押しつけ、止血しながら身体を横たわらせて、と、乗り気ではなさそうなのに手慣れた様子だ。
サイファーは警戒していたけれど、やっぱりそんなに悪いカッパではないように思える。
……いや、そんなことを考えてる場合じゃない。
ユウナさんが回復する前に拘束を――

174 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/10/25(金) 01:02:58.88 ID:9n/Hz1SB0.net
 

175 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/10/25(金) 01:03:16.26 ID:agIZQ8nk0.net
   

176 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/10/25(金) 01:03:29.26 ID:9n/Hz1SB0.net
 

177 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/10/25(金) 01:03:34.75 ID:qARvHfTfO.net
 

178 :絶対の意志と奇跡の魔法 8/10:2013/10/25(金) 01:04:27.54 ID:Pk4hnYG60.net
  ――カンッ。





え?

僕がその音を聞いた時、認識できた事は、『誰かが何かを投げたらしい』ということだけだった。
そして音に気付いたカッパ君は、僕よりも多くの事を知っていたらしい。
彼が「カー!!」と叫び声を上げた。
その言葉が『気をつけろ!』とかそういう類の絶叫だったとわかったのは、次の瞬間だった。

鼓膜を破りそうな爆音と目を焼き尽くすばかりの閃光。

叫ぶ余裕も無く、一瞬で感覚がオーバーヒートし、頭の中が真っ白になる。
『スタングレネードだ』、とサイファーの声が聞こえた気がした。

『目と耳を塞いで遠くに投げるだけだから女子供でも扱えるし、誤爆しても死ぬことはねぇ。
 何より、誰も傷つかなくて血も出ねぇって当たり、お前にはピッタリだろうよ』

そうだ。ターニアとエリアさんに渡されたはずの武器。
誰が投げた? ――ユウナさんしかいない。
じゃあ、何故ユウナさんが持っている?
二人を殺したのも彼女だったのか?
いや、そんなことを考えている場合じゃない。
ユウナさんは何をしようとしている?
わからない。何も見えない。聞こえない。
だけど、無性に嫌な感覚がする。
ダメだ。止めさせないと。
くそっ! 見えろ、聞こえろ! 早く、早く、早く!!

***************

179 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/10/25(金) 01:04:44.94 ID:9n/Hz1SB0.net
 

180 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/10/25(金) 01:05:15.30 ID:9n/Hz1SB0.net
 

181 :絶対の意志と奇跡の魔法 9/10:2013/10/25(金) 01:05:35.81 ID:Pk4hnYG60.net
「おい、ソロ! ソロ!! 何があったんだ!?」

パンを焼き終えそうな時だった。
リルムに持たせたひそひ草から、爆発音が響いたんだ。
それもイオラってレベルじゃない。イオナズンクラスとしか思えない轟音だった。
必死に呼びかけたけど、ソロの返事は無い。

――そう、『ソロの』返事は無かった。

『うるさいのよ、『―――』!!』

俺が聞いた事のない女の声だった。
でも、そいつが呼んだ名前と、リルムの顔が青ざめたのを見て、相手が誰なのか推測する事はできた。

『止まるわけないじゃない、諦めるわけないじゃない、逃がすわけないじゃない!!
 殺してやる殺してやる絶対に殺してやる許さないユルサナイ絶対に絶対に絶対にィイイイ!!
 忌まわしき影の力、命を傷つける力、この苦しみを力に変えてよォオおおおっ!!
    " 暗 黒 の 空 "ッ!』

その呪詛にどんな効果があったのか。
はっきりと知る術はない。
俺達にわかるのは、続いて聞こえた声と音だけだ。

『バシルーラ!!』
老人らしい、しゃがれた声が何かの呪文を叫び。
『クァアーーー!!』
場違いに甲高い動物の鳴き声が後を追う。
『邪魔しないで……ッ!!? 何?! 何よこれ?!
 ふざけ――』
憎悪の声が急に困惑にすり替わり、遠ざかって行って。
『カーー!! カーカー! ……クァッ!?』
『くそっ、何が……危ないッ!?』
動物の声とソロの声が重なり。

落盤や落石に似た、建物全体が崩れるんじゃないかって轟音が、全てを覆い潰した。

「……メテオ?」
マッシュがぽつりとつぶやく。
「まさか、嘘だよね」
リルムが青ざめた表情で顔を上げる。
「嘘だよね? ねえ、嘘だよね?
 こんなの、嘘だよね?」
普段の生意気で気丈な態度はどこかに消え失せ、俺とマッシュを交互に見つめ、小さな身体を震わせながら袖や肩に縋る。
でも、俺にもどう答えればいいかわからない。
マッシュも何も言わない。

断片的な情報は繋ぎ合わせれば繋ぎ合わせるほど、絶望的すぎて――
手元でパンが焦げる臭いさえ、酷く遠いもののように思えた。

182 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/10/25(金) 01:07:20.52 ID:9n/Hz1SB0.net
 

183 :絶対の意志と奇跡の魔法 10/10:2013/10/25(金) 01:07:32.08 ID:Pk4hnYG60.net
【ソロ(HP2/5 MP微量 マホカンタ状態)
 所持品:ラミアスの剣(天空の剣) 天空の盾 水のリング 天空の兜 着替え用の服1着
 第一行動方針:????
 第二行動方針:サイファー・ロック達と合流し、南東の祠へ戻る
 基本行動方針:PKK含むこれ以上の殺人を防ぐ+仲間を探す
※但し、真剣勝負が必要になる局面が来た場合の事は覚悟しつつあり】
【クリムト(失明、意識朦朧、HP1/8、MP1/6) 所持品:魔封じの杖
 第一行動方針:????
 第二行動方針:首輪の研究と脱出方法の実験をする
 基本行動方針:誰も殺さない
 最終行動方針:出来る限り多くの者を脱出させる】
【セフィロス (カッパ 性格変化:みえっぱり)
 所持品:村正 ふういんマテリア いかづちの杖 奇跡の剣 いばらの冠 プレデターエッジ 筆記具 ティーダの私服
     ドラゴンオーブ、スタングレネード、弓、木の矢28本、聖なる矢14本、
     ウィンチェスター(みやぶる+あやつる)、波動の杖、コルトガバメントの弾倉×2、E:ルビーの腕輪
 第一行動方針:?????
 第二行動方針:ケフカを殺す/カッパを治して首輪を外すため、南東の祠に向かう
 第三行動方針:進化の秘法を使って力を手に入れる/アーヴァインを利用して【闇】の力を得たジェノバとリユニオンする
 第四行動方針:黒マテリアを探す
 最終行動方針:生き残り、力を得て全ての人間を皆殺しにする(?)】
【現在位置:デスキャッスル跡 3〜4F辺り】

*ソロの荷物である ひそひ草 ジ・アベンジャー(爪) フラタニティ 青銅の盾
 首輪 ケフカのメモ 着替え用の服(数着)が近くに落ちていますが、
 デスキャッスルと付近の生存者及びこれらのアイテムが無事かどうかは不明です


【ユウナ(きぐるみ士、HP1/3、MP0、全身に軽度の火傷、下半身麻痺、ティーダ依存症)
 所持品:銀玉鉄砲(FF7)、官能小説2冊、
 天空の鎧、血のついたお鍋、ライトブリンガー 雷鳴の剣
 スパス ねこの手ラケット  ビーナスゴスペル+マテリア(スピード) 水鏡の盾
 第一行動方針:皆殺し
 基本行動方針:脱出の可能性を潰し、優勝してティーダの元へ帰る】
【現在位置:デスキャッスル跡 3〜4F辺り→闇の世界のどこか】

【ヘンリー(HP1/2、リジェネ状態)
 所持品:アラームピアス(対人) リフレクトリング バリアントナイフ 銀のフォーク キラーボウ
     グレートソード、デスペナルティ、ナイフ  命のリング(E) ひそひ草 筆談メモ
 第一行動方針:ソロ達が心配
 第二行動方針:食事/マッシュを眠らせてカードデッキを持っていく/出来れば別行動中の仲間を追いかけて事情を説明したい
 基本行動方針:ゲームを壊す(ゲームに乗る奴は倒す)】
【リルム(HP2/5、右目失明、MP1/10、錯乱気味)
 所持品:絵筆、不思議なタンバリン、エリクサー、 静寂の玉、
レーザーウエポン グリンガムの鞭、暗闇の弓矢 ブラスターガン 毒針弾 ブロンズナイフ
 第一行動方針:なんでこんなことになったのかわからない
 第二行動方針:食事/他の仲間と合流
 最終行動方針:ゲームの破壊】
【マッシュ(HP1/10、右腕欠損)
 所持品:なし】
 第一行動方針:何が起きているのかわからない
 第二行動方針:食事
 最終行動方針:ゲームを止める】
【現在位置:南東の祠(奥の部屋)】

184 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/10/25(金) 01:44:40.93 ID:rhTfSNQ70.net
投下乙!
あまりの展開に愕然としてたのに行動方針のカードデッキで吹いたww

185 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/10/25(金) 15:33:40.82 ID:93S68Zqf0.net
新作乙
ソロいいね 聖人主人公だね 熱いね

186 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/10/25(金) 17:42:43.67 ID:NGBvwLNR0.net
激しく乙です
10-2やったのに暗黒の空が魔法だなんて調べるまでわからなかったorz
バシルーラの結果も気になるところ。

187 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/10/25(金) 23:21:41.98 ID:tFBMGRIu0.net

空からヤンデレが降ってくるとか胸が痛くなるな… なお何があろうとデレない模様
ロックやギード、サイファーが取り残されて〜でスケートギード思い出して吹いた後にずっと行動共にしてたヘンリーがソロを(偶然とはいえ)立ち直らせたのはじわっときた
デスキャッスルで色々決着つくのかと思ってたからマーダー一人も落ちなかったのは意外だったけど
あと草挟んだカッパ評と行動も笑ったけど登場してないのにケフカの脅威が消えてないどころか増してるってもうこいつなんなんだよwww

188 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/10/26(土) 10:00:39.01 ID:2N4TmxBd0.net
新作乙です!
建造物崩壊したのに犠牲者ゼロなんて予想できねえよ

ユウナの着地点だけでなく、ソロとカッパのコンビが続くとなるとこれも相当な爆弾に成り得る
そしてケフカも健在とまだまだ盛り上がるな

189 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/10/26(土) 11:16:38.06 ID:EHGeuVac0.net


最近のセフィロスが全然悪者っぽくなくて良い

190 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/10/27(日) 19:31:10.04 ID:akaHaiej0.net

デスキャッスルさん崩壊で何人死ぬかと思ってたからこの展開は予想外
対マーダーはママ先生の領域まで持ち越しあるんじゃないかってわくわくしてきた

191 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/10/28(月) 22:01:15.90 ID:j/KwXbpM0.net
新作乙です!
熱い、熱いよソロ。まじ勇者さんっすよ
しかしこの潔癖さがいつか命取りになりそうで怖いな

城が本格的に崩壊して、中のケフカが潰れてないか心配なんだが
おおかた瓦礫に挟まっても一人でうきゅ!とか騒々しくやってるんだろうな、うん

192 :精神力より知力が高いと危険です 1/5:2013/11/01(金) 03:12:09.11 ID:r5mNjOeA0.net
 さて問題だ。
 『俺達』は今、良くわからない地下世界(notアレフガルド)にいる。
 ついさっき、中央の城がある方角で謎の発光現象が起き、地響きが伝わってきた。
 同時に、そちらの方角から若い男がガメゴン種と思わしき魔物に乗って飛んできた。
 この状況で連中が敵である可能性は――

「お前たち、ゾーマと魔女の手先だな!?
 悪しき魔物め、勇者の名において成敗する!!」

 あっ。

 ……俺が考えをまとめるよりも早く、『フルート』を押しのけて表に出た『アルス』が刀を取り出し振りかぶった。
 しかしガメゴンに乗ってた銀髪の男が、素早く水晶の剣で攻撃を受け止める。

「ちょ、ちょっと待てよ! 誰だよゾーマって!」
「わしらには他者を害する意思はない! どうか話を……」
「うるさい! 魔物風情と交わす言葉などない!」

 タバサやリュカの事を欠片も覚えていないとはいえ、短絡的すぎる思考で、『アルス』は一方的に攻め立てる。
 対する男は明らかに防戦に専念していて、喧嘩を売られた側にも関わらず、『俺達』を狙う素振りを見せない。
 ガメゴンに至っては、何故か人間の言葉を喋って平和的解決を訴えている。
 ガメゴンロードのさらに上位種なんだろうか。ガメゴンレジェンドとか、そんな感じの。

「待て、待ってくれ! あんたセージってヤツじゃないのか?!
 ティーダとプサンのおっさんが言ってた! サスーンで一人先に行っちまったっていう!」

 ――ティーダにプサンだって?
 ああ、確かに覚えている。俺だけは、だが。

「ふざけるな! 死者の名を出して僕達を惑わそうというのか!
 その罪万死に値するッ!!」

 なーんも覚えちゃいない『アルス』は吠えながら剣を握り直す。
 隠す気のない強烈な敵意と殺意が、セージの身体を通して俺にも伝わってくる。
 でも、十中八九言いがかりで誤解だろうな。
 そりゃ確かにティーダもプサンもこんな二人組の事は喋っちゃいなかったけど……
 サスーンに居なかったのに、プサンを置き去りにしたなんて、どうでもいいような細かい話を知ってるんだ。
 常識的に考えて、プサン本人から聞いたとしか思えない。
 第一、本気でこの連中が敵なら、二人がかりで『アルス』を返り討ちにしてるはずだ。
 疑う点が片割れの種族だけだってなら、限りなくシロだろう。

 そういうわけで、俺としては『アルス』の事を止めたい。
 フィンや焔色の髪の男みたいにバリバリ悪意があるってならともかく、友好的に接しようとしてる相手なんだからな。
 マジに殺しちまったら、いくらなんでも寝覚めが悪すぎる。

193 :精神力より知力が高いと危険です 2/5:2013/11/01(金) 03:18:53.93 ID:r5mNjOeA0.net
 ……けれども、だ。
 この二人が、又聞きとはいえセージって男の事を知っている以上、そう簡単にはいかない。
 仮にこいつらと落ち着いて話をすれば、ほぼ確実に『今の俺達』の異常性に触れられるだろう。
 自分が狂っているという事実を『セージ』が受け入れるはずもない。
 どんなに良くても、今『アルス』がそうしているように、敵とみなして殺すことを選ぶはずだ。
 悪ければ何度も言っているけど、そのまま精神崩壊直行コースに行ってしまう。
 そいつはそいつで、望ましい事態じゃない。

(『フルート』。あの銀髪男、『俺』の同業者みたいだ。
 悪いことは言わねぇからピオリム使っとけ)

 幸い、向こうはそんなにやる気じゃない。
 速度を補えば『アルス』でも多少はやり合える。
 話が通じなくて物理的に捻じ伏せもできないとなれば、あっちも逃げる事を考えてくれるだろう。
 軽くやり合って十分ほど追いかけっこすれば、ピオリムの効果が切れて、こっちが振り切られるはずだ。
 これなら『アルス』のメンツを立てつつも、お互いに被害を抑えた形で決着がつけられる。

「は〜い! ピオリム!」

 俺の助言に従って『フルート』が呪文を唱える。
 いきなり裏声になったからビビったんだろう。銀髪男が一瞬だけ動きを止め、目を瞬かせた。
 その隙を見逃さず、『アルス』が胴を切りつける。

「ッ!」
(バ、バカ! やりすぎだ!!)

 銀髪男がかすかに悲鳴を上げ、俺が焦ったところで、時すでに遅し。
 男の腹から血が吹き出し、服と草を赤く染める。
 けれど銀髪男は倒れることなく踏み留まり、『俺』の想像を絶する速さで剣を振るった。
 いったい何をしたのか――答えはすぐに提示される。
「なっ……!?」
 数時間ぶりに感じるダイレクトな痛みが『俺達』を襲う。
 『アルス』が剣を取り落とし、片膝をつく。
 手首、膝、足、肩。
 いずれも致命傷には程遠い、浅い傷だったけど、目の前の男はたった一瞬で四か所に切りつけたんだ。
 こんなソードイドもビックリな手並みを見せつけられたら、本物のローグなら『ヒュー!』って口笛吹いてたんじゃねえか?
 当事者の俺としては、そんな気分にはなれねぇけどよ。

「ケアルガ!」

 ガメゴンが、ガメゴンのくせに聞き覚えのある魔法を唱える。
 ふりそそぐ光は銀髪男の身体に吸収され、出血を止めた。
 どうやら俺も『アルス』も、相手の力量を甘く見積もりすぎてたようだ。

(さっさと俺と変われよ、『アルス』)
(うるさい! 魔女に与する魔物を前にして退けるか!)

 何故だろうか。
 焔髪の男と戦った時のように『アルス』を押しのけてようとしても、上手くいかない。

(……『アルス』に任せなよ、『ローグ』)

 ずっと押し黙ってた『セージ』がぽつりと呟いた。
 同時に、背筋にぞわっとした冷たさが走る。
 じっとりと絡みつくようなほの暗さ――それが『自分自身』の声だと認めたくないほど、薄ら寒い声音だった。

194 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/11/01(金) 03:19:51.36 ID:po8KpPgWO.net
 

195 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/11/01(金) 03:27:07.29 ID:po8KpPgWO.net
 

196 :精神力より知力が高いと危険です 3/5:2013/11/01(金) 03:30:09.67 ID:r5mNjOeA0.net
(『アルス』の判断は正しいんだ……いつだって正しいんだよ。ねえ、『アルス』)

 ――その言葉で、俺はようやく察した。
 察することが出来てしまった。
 何故、今、『アルス』と入れ替われなかったのか。
 何故『俺』は今になるまで"自分から逃げる"ってシンプルで安全な発想が浮かばなかったのか。
 その……出来る事なら永遠に認めたくない理由を。
 
 目の前にいる連中はプサンの知り合いだ。
 プサンがタバサとパパスの為にジタンを見捨てた時、セージって男は自分の無力を棚に上げてプサンに恨み言を吐いた。
 それでもプサンはこっちの身を案じていたっていうのに、セージって男はアルスを探したいなんて身勝手な理由で見捨てた。
 そして何より、セージって男は、プサンの知人であるフィンを返り討ちにしている。

 ああそうだ。はっきり言おう。
 "どれほど友好的であっても、『プサンとその仲間』は、セージという男にとって自分の罪を想起させる存在だ"。

 だからセージという男の抜け殻である『セージ』は、本物とはかけ離れた、殺したがりの『アルス』を創って全権を委ねた。
 目障りな奴に魔女の手下だの、魔物だのというレッテルを貼って、『勇者アルス』の手で殺してしまえば、自分は正義を成していると主張できる。
 そして殺意を抱いた本当の理由を暴かれたとしても、『セージ』は『アルス』に任せただけだと言い張れる。
 "僕はこんなことはいけないと思ったんだけど、『アルスの人格』を抑えられなかったんだ"
 そう言ってしまえば、誰かを殺した罪は全部『偽物の勇者アルス』の物だ。

 "『セージの中にいる人格が悪い』って事になるなら、『セージ本人は悪くない』"。

 ……なんで今まで気づかなかったんだ。
 正義感の象徴? 正気の象徴? 優しさの象徴?
 違う。
 『俺達』はそんなキレイなものじゃない。
 セージって男は、感情を代弁させるために俺達を創ったんじゃない。
 失った仲間の代替でさえない。
 『セージ』は……セージという男の主人格は。
 自分を守りたいって理由で、自分でない誰かに罪を着せる為だけに、自分でない仲間達の偽物を創っただけだったんだ!

「魔女の手先が! そんな演技で騙されるものか!!」
「だから違うって! 話を聞けよ!」

 いちいち叫ぶな。
 わかってるんだよ、『俺』は。……セージって男はわかってるんだよ!
 あんたらは魔女の手先なんかじゃないし敵でもない、プサンの仲間ってだけの友好的な亀とその同行者ってことを理解してるんだ。
 だけどあんたらが何を言ったって、『アルス』は絶対に止まらないし、『俺』も暴走を止められない。
 セージって男はただ殺したいだけなんだ。
 手も心もどうしようもなく穢れてるってのに、綺麗なままだと思い込んでいたいから、汚ねぇって指摘してきそうな奴を消そうとしてるだけなんだ!
 死人に口はないし、妄想で作った偽物ならセージって男に都合が良い事しか言えないからな!!

197 :精神力より知力が高いと危険です 4/5:2013/11/01(金) 03:36:35.98 ID:r5mNjOeA0.net
「スロウ!」

 ガメゴンがまたまた魔法を唱えた。
 今度は白い光が『俺達』の身体に纏わりつく。
 もったりとした感覚が全身を包み、同時に、連中の動きが数段素早くなる。
 どうやら相手の素早さを下げる補助魔法らしい。

「サンキュー、ギード!
 後は俺に任せて、適当に避難しててくれ!」

 ああ、そうだ。それでいいんだよ。
 だけどガメゴンだけじゃなくて、銀髪男、頼むからお前もさっさと逃げてくれ。
 セージって男の眼の届かない所へ行ってくれ!

「逃がすか!」
「ハッ、誰が通すか!
 こう見えても俺はトレジャーハントだけじゃなくて、ティナにエドガーにバナンとVIP護衛にも定評が……」
「うるさい! 邪魔だ!」
「うおっ!? こ、こういう台詞は最後まで言わせろよ!」

 実力差も空気も読まない『アルス』がガメゴンに追い縋ろうとする。
 その足と腕を、銀髪の男が力ずくで阻む。
 何度も言うが力量は相手の方が上だ。当然、横をすり抜けていけるはずもない。

「済まぬ、ロック……ここは任せたわい!」

 無事にガメゴンが逃げていく。
 この二人の声音に宿るのは悔恨でも悲しみでもなく、圧倒的な信頼だ。
 "彼ならこの場を任せられる"。"無事に逃げてくれる"。"間違いなくまた会える"。
 その判断を互いに欠片も疑ってないってことが、聞くだけでわかる。
 本当の意味で『仲間』なんだろう。こいつらは。

(『アルス』!!)

 こいつらは、フィンや焔色の髪の男とは違う。
 敵意があるわけでも殺意があるわけでもない。こんな奴らを殺すことが正義になるはずがない。
 それをわかっているのは俺だけだ。
 だからこそ叫ぶ。無駄だとわかっていても、無意味だとわかっていても、せめて『俺』だけは『ローグ』でありたい。
 本物のローグには到底及ばなくても、その名とイメージに恥じない存在でありたい!

(さっきの攻撃は見ただろ! 勝てるわけねーだろ!
 さっさと逃げろ! 逃げちまえ!!)

 気力を振り絞ったのに、出てきたのはこんな情けない台詞だ。
 これが『俺』に許される精一杯の言葉だ。
 正気でありたいってことしか願えない、ちっぽけな良心が訴えられる唯一の言葉だ。

 ――なのに、セージって男が抱いた狂気は、予想通りに俺の希望を封殺する。
 
(正気で言っているのか、『ローグ』!!
 命惜しさに魔女の手下を見逃すなんて勇者一行のすることじゃない!)
(そうだよ……『アルス』の言うことが正しいよ)

 狂人は、どこまでも現実を認めない。
 頭の中に『仲間』って名前のスケープゴートを生み出し、自分が救われたいからって理由で他人を殺め、身勝手に堕ちていく。

198 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/11/01(金) 03:46:09.49 ID:hzX+Q7Lt0.net
      

199 :精神力より知力が高いと危険です 5/5:2013/11/01(金) 03:47:16.38 ID:r5mNjOeA0.net
「……さっきからガメゴンだの魔女の手先だの、好き勝手に言ってくれてるけどな。
 ギードは俺達にとって大事な仲間で、皆にとってものすごく重要な事を調べててくれたんだ。
 例えティーダやオッサンの知り合いでも、本気で俺達を殺す気なら、俺だって本気で止めさせてもらうぜ?」

 銀髪男が真剣な表情で『俺』を睨みつける。
 澄んだ瞳は生気と希望で一杯だ。
 本物のアルスやローグやフルートと同じ、でっかい事を成し遂げて多くの人を救おうとしてる奴の目だ。

 もし、セージって男の心がもう少しだけ強かったなら。
 現実と自分の罪を認めて受け入れられるだけの度量があれば。
 せめてこの場の主導権を『俺』に握らせるだけの判断力と良心が残っていれば、他人を助ける為に彼らに協力するって選択肢を取れたんだろう。

 ……。

 セージ。 
 『俺』が正気に戻りたかったのは、本物のアルスやローグやフルートが守りたかった人達を助けたかったからだ。
 タバサに出会った時の、ビアンカさんやギルダーを助けた時の、誰かを助けるために戦ってたあの頃の自分自身に戻りたかったからだ。
 だけど死んで何も言えなくなった仲間の幻想に、自分の罪を押し付ける狂人が、セージって男の姿だというなら。
 自分が救われたいから他人を殺そうとする人間がセージって男の本性だというなら、そんな奴は救われるべきじゃない!!
 ああ、そうだ!
 そうさ!!
 本物のアルスやローグやフルートだって、きっとこう言うだろうさ!!

 "頼むから死んでくれ! これ以上、アルス達と賢者セージの名を汚す前に!"
 
 
 
【ギード(HP3/5、残MP1/8、精神的にさらにげんなり)
 所持品:首輪 
 第一行動方針:セージから逃げる
 第二行動方針:ソロ達と合流して南東へ向かう
 第三行動方針:首輪の研究と脱出方法の実験をする】
【現在位置:デスキャッスル南西の茂み(分かれ道のあたり)→移動】

【ロック (左足負傷)
 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード 魔石バハムート、皆伝の証、かわのたて
 死者の指輪、レッドキャップ、ファイアビュート、2000ギル
 デスキャッスルの見取り図
 第一行動方針:セージを足止めした後、逃げてギードと再合流する
 第二行動方針:リルム達と合流する/ケフカを警戒
 基本行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】
【セージ(MP3/5、多重人格)
 所持品:ハリセン、ナイフ、ギルダーの形見の帽子、イエローメガホン
     英雄の薬、厚手の鎧、般若の面、釘バット(FF7)、グラディウス、聖なるナイフ、マテリア(かいふく)
     陸奥守、マダレムジエン、ボムのたましい
 基本行動方針:『アルス』:ロックとギードを殺す/魔物や悪人を倒したい/城へ向かいたい
        『ローグ』:セージに死んでほしい
        『フルート』:皆と一緒にいたい/城へ向かっているつもり
        『セージ』:特にない/『アルス』の意見に従う
 最終行動方針:『ローグ以外共通』:みんなと一緒に魔女を討伐する、目の前の状況に対処】
【現在位置:デスキャッスル南西の茂み(分かれ道のあたり)】

200 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/11/01(金) 07:50:59.63 ID:Z/a9BNms0.net
乙!
え、ガメゴンネタで笑ってたけどこれどうなるん…?
調理が極めて難しそうだけど楽しみすぎて困る

201 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/11/01(金) 13:11:20.17 ID:etsTgblG0.net
どうしてこうなった…

202 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/11/01(金) 13:20:10.73 ID:Db5mrH1o0.net
投下乙てす!
ロックvsセージ……変にもつれる前に、なんとかしたいけどねえ……

203 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/11/01(金) 23:01:25.56 ID:xvHxA16V0.net
新作乙です!
こうなったか……裏フルートが出てきたらロックがヤバいし
出てこなくてロックが逃げおおせても表フルートの方向オンチで祠に向かわれたらアービンがヤバい
それでもどこかに飛んでったあの方よりはマシに見えるのがな……

204 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/11/02(土) 00:14:37.76 ID:Y8VvhmmR0.net
空飛ぶあの方はどこに飛んでもビックビクやでぇ
ヤンデレの位置によってはこの相対で一段落つきそうだけど放送にはまだ早いよね?

205 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/11/02(土) 00:49:42.23 ID:rtB3Tq5Q0.net
投下乙です!
またも分断か……マーダーもまたばらけたし、どの組も安心出来無いな。
セージはどうなってしまうんだろうか……。

>>204
まだまだ夜は長い
関係ないが空飛ぶあの方って言い方にクソワロタ

206 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/11/02(土) 01:28:29.11 ID:yxDWanmA0.net
乙です!
ギードが孤立したか…あとガメゴンネタを拾えるのはヘンリーとロザリーだけかねえ


避難所でちょいと話が出てるんだけど、次ステージは必要かな?
書き手さん読み手さん問わず避難所も一度回ってもらえると助かります

207 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/11/12(火) 23:33:19.30 ID:5SFN0OW/0.net
何となくバラムガーデンに決まってる雰囲気かと思ってた
人数も相当少ないだろうし、バラムガーデンを推す

208 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/11/15(金) 00:46:31.12 ID:fyAQGCkl0.net
月報集計何時もお疲れ様です
FFDQ3 697話(+ 3) 21/139 (- 0)  15.1(- 0)

209 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/11/15(金) 23:42:45.08 ID:VjYkTs3B0.net
ロザリーはギードと合ってるから難しそうだな

DSのDQ4起動したら闇の世界狭くてあれこんなんだったっけってなったわ
日が沈むまでと比較するとデスキャッスルから南西・南東・希望のほこらまで3時間くらいかかりそうで今後は逆にこんなんだったっけってなったけど

210 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/11/17(日) 03:06:14.17 ID:nfgeHEb40.net
次は帝国首都ベクタなんかもいいな
城、城下、魔導研究所、トロッコ道なんかもあるし

211 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/11/17(日) 20:18:08.01 ID:OgnJ+r+f0.net
ベクタだとちょっとぼくちん様に有利すぎないか?
そうでなくても対人レーダー持ってるんだし
一人ずつ分断されてなぶり殺しにされる展開しか想像できんばい

それはそれでいいけど。

212 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/11/20(水) 21:19:08.36 ID:fMU7jNa+0.net
10人以下なら、魔列車を…
いや、なんでもない

213 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/11/21(木) 09:43:12.98 ID:fk1XpVh30.net
FF6ならゾゾ街なんかも面白そうだが
雨が降ってるシチュと入り組んだ高層ビルといくつもの廃墟の建物、裏の山

214 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/11/21(木) 23:58:50.68 ID:xs+xkZDb0.net
人が多い序盤じゃ色々無理だがラストかラス2マーダーになったら楽しそうだな>ゾゾ・魔列車
魔列車に旅の扉が開かず時間切れでつれてかれる全滅オチが浮かんだ

215 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/11/28(木) 17:30:28.71 ID:F3/UgLoe0.net


216 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/12/08(日) 22:00:34.81 ID:cOejZ4GN0.net
保守

217 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/12/12(木) 02:48:14.20 ID:al3BH8sa0.net
乙です

218 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/12/23(月) 01:39:19.39 ID:fNCwWfbl0.net
班長の持ってる貴族の服だけど
ターニアを気遣って、レーベで血のついた服を着替えたヘンリーか
ずっと女物のスーツ着てるアルガス君にプレゼントしてはどうだろうか

と、保守ついでに最近ふと思ったどうでもいいことを書いてみる

219 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2013/12/27(金) 00:08:52.68 ID:Fna0+FKs0.net
思えばもうすぐ10周年迎えるのな

220 : 【中吉】 【105円】 :2014/01/01(水) 07:36:22.48 ID:TUu8Pe2l0.net
10月の10周年までにどんな展開になるのか楽しみです
あけましておめでとうございます

221 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/01/08(水) 20:38:51.73 ID:Pu8tu0wK0.net
乙です

222 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/01/17(金) 14:11:10.49 ID:XRuLXxDqO.net
保守

今バトルしてるのはロック達だけで他は一応区切りはついてるのか
どこもかしこも危険は孕んでるが

223 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/01/30(木) 02:34:04.07 ID:u7OL0eD20.net
保守

空飛ぶあの方もいるし油断は出来無いな
一体何処に着地してしまうのか

224 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/02/12(水) 21:34:26.43 ID:vlTVYHoc0.net
保守

空飛ぶあの方本人もだけど、置き土産で城がどうなったのかも心配
カッパとケフカだけ死んでくれれば平和だけど、その前にクリムトがやばそう

225 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/02/17(月) 03:50:25.90 ID:tvCb4MbI0.net


226 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/02/22(土) 08:58:53.41 ID:4GSVixdt0.net
乙です

227 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/02/26(水) 12:26:35.85 ID:3Pxb5mLX0.net


228 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/03/03(月) 14:22:29.03 ID:WrzR6XWC0.net
乙です

229 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/03/06(木) 02:28:57.44 ID:r2lqtuHx0.net
まーーーーだやってたのかwww
完結しないし長すぎて読む気失せるしマジ糞だな
稚拙でも完結した1stの方がはるかにマシだ

230 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/03/09(日) 16:31:06.46 ID:g9Wb6tek0.net
@wikiでIDとかパスとか流出したらしい
1stのまとめが@wikiにあるから見るのは危険かもね

231 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/03/13(木) 05:15:35.75 ID:QgE60qhI0.net
乙です

232 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/03/18(火) 14:48:14.37 ID:on8VknW00.net


233 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/03/25(火) 13:12:32.49 ID:POX+ay4t0.net
乙です

234 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/04/06(日) 23:49:45.24 ID:dLE9fuF50.net
保守

ドラゴンオーブって今セフィロスが持ってるのか
マスタードラゴン復活はまだまだ遠そうだな

235 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/04/29(火) 19:10:48.33 ID:BS+HnIeo0.net


236 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/05/02(金) 00:53:42.37 ID:sE5325O+0.net
まとめ更新乙です

237 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/05/08(木) 12:21:46.55 ID:V5/9s6J60.net
乙です

238 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/05/12(月) 06:50:03.07 ID:w4YaIMb+0.net


239 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/05/12(月) 21:08:36.46 ID:/5enfwEr0.net
何が乙なんだろう

240 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/05/17(土) 06:08:37.34 ID:B/ecVnDD0.net
>>239
セブンのアイスラッガー

241 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/05/22(木) 01:08:08.00 ID:ydpcvoQT0.net
うんごぶりぶりんこ!!!!ドビュビュビュビュドバババババブッ!!!
ドリュルリュルウリュリィブブブブブブッッ!!!!あへあへうんこまん!!!ぶりっちょ!!!
ケツの穴からドババババババババッバwwwwwwwwwwwwWWWW
wwwwwwwwwwww
WWWwwwwwwwwwww??? ? ? ? ? ? ? ????? ????????wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
 
なお、まにあわんもよう

242 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/05/23(金) 03:03:07.84 ID:krrKFoWn0.net
自動狩り大学を知った頑丈そうな昔のカレシは、100点を取ってもダメだったので、90点を取ってみた

243 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/05/26(月) 03:51:24.29 ID:TIcs3fD8O.net
保守

244 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/06/03(火) 20:11:16.08 ID:7mErsFae0.net
支援

245 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/06/10(火) 22:23:46.47 ID:hEKU/ZSL0.net
「ライフカードを切れ」のテストケース・スリーの展開みたく
ロックが最期にレイチェルの名前言って死んだら
死者スレがすげぇ修羅場になりそうだw

と、保守ついでに最近読み返してみてふと思ったことを書いてみた
本編もだけど、死者スレのクオリティもすごいよね

246 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/06/14(土) 18:22:19.71 ID:uD4koji30.net
支援

247 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/06/22(日) 00:48:52.26 ID:J8NNWWvoO.net
てす

248 :信じる奴が正義(※正解とは言っていない) 1/11:2014/06/22(日) 01:24:40.92 ID:aqD5mCQn0.net
「――決めた」
最初にそう言ったのはリルムだった。
ぐしぐしと目をこすりながら顔を上げると、素早く俺の傍から離れ、ザックを拾い上げる。

「リルム、ユウナとみんなのこと、助けに行く!」

今まで泣いていた子供の台詞とも思えない、突拍子もない発言は、俺の思考を硬直させるには十分だった。
けれど、この場に居合わせたもう一人の奴は、こんな言動をも予想していたのだろう。
深緑の輝きが俺の視界を横切り、廊下へ飛び出そうとするリルムの前に回り込んで、行く手を阻む。
「どいてよ、おっさん!
 ユウナ、ケバケバおばさんに操られてるんだよ!
 だからリルムがニブチンのぶんまでユウナのこと助けに行くの!!」
「ダメだッ!」
出口を塞いだヘンリーは、鋭い叱咤でリルムの抗議を封殺する。
「ユウナが正気じゃないってのはオジサンにだってわかる!!
 だからこそ、絶対にダメだ!! 大人しくここに居ろ!!」
険しい表情と語気に飲まれたのだろう。さすがのリルムも足を止めた。
しかし大人しく諦める事も出来なかったらしく、「でもっ」と何かを言いかける。
それほど負けん気の強いリルムが、続く言葉を飲み込んだのは――
何故か、ヘンリーの方が廊下へと飛び出して行ってしまったからだ。

「えっ!? 
 ……ちょ、ちょっとー!? おっさんこそどこ行くの!?」

数秒ほどして我に返ったのか、リルムは慌てて部屋の外に向かって叫んだけれど……
その声が届いたとは思えない。
リルム自身もそう感じたのだろう。
呆然とした表情のまま、こっちを見た。
「どうしよう」
……なんて、聞かれても、だ。
当然、俺としては『行っていいよ』なんて言えるわけがない。

「リルム……気持ちはわかるけど、ここに居てくれないか?
 リルムが危険な目にあったら俺も嫌だし……
 兄貴がここに居たら、やっぱり、絶対に外には行かせないと思うんだ」

兄貴は――エドガーは、リルムの事を随分と気に入っていた。
何せ、親しい人以外には明かしちゃならないはずのミドルネームを、自分から教えていたぐらいだ。
仲間としての好意か、十五歳ぐらいになったら口説くつもりだったのか、今となってはもうわからないけれど……
とにかくリルムに何かあったら、兄貴に申し訳が立たない。
……あ、それともちろん、ストラゴスの爺さんにも。

249 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/06/22(日) 01:25:07.53 ID:J8NNWWvoO.net
 

250 :信じる奴が正義(※正解とは言っていない) 2/11:2014/06/22(日) 01:29:38.46 ID:aqD5mCQn0.net
「ずっこい」
リルムがぷうっと頬を膨らませる。
ここに居ない人を持ち出すのはずるい、と言いたいのだろう。
だけど俺にだって、譲れないものがある。
リルムはしばらく俺を睨んでいたけれど、どうにか気持ちが通じたようだ。
素直に俺の傍に戻ってくると、ぺたんと座り込んだ。
遠出を諦めてくれた様子に、ほっと胸を撫で下ろす。
でも、すぐに安心していられる状況でもないと思い直した。

ひそひ草から聞こえた声からしても、この世界のどこかでユウナって女が大暴れしていて、ヘンリー達の仲間が危ない目に合っているのは間違いないんだ。
あの轟音が俺の思った通り、本当にメテオだったら――はっきり言って、運が良くなきゃ生き残れないだろう。
リルムが飛び出していきたくなる気持ちも、半分はわかる。
わかるけど……

どうしても、嫌なんだ。

"兄貴に気に入られてたリルムが、兄貴を殺したかもしれない奴を助けに行くだなんて"。


「……」

こんな感情、口には出せないし、出したくもない。
もっと言えば、兄貴が死んだという事自体、認めたくない。
それでも参加者リストの赤線やスコール達の態度がある以上、兄貴の死は現実に起きた事なのだろう。
そしてティーダって奴の錯乱っぷりは、『ユウナが犯人としか思えない』って言ってるようなもんだった。

リルムは、ユウナが【闇】に操られていると言い張ってるけれど――
みんなの説明じゃ、【闇】は『殺人を犯した』『心の弱い人間』に憑りつくはずだ。
なら、ユウナだって初めはあくまで自分の意志で人を殺したって事になる。

リルムは昨日の夕方まで、ユウナと一緒に居た。
俺はそう聞いてるし、リルムがこれだけユウナのことを信じているってことは、少なくとも夕方まではユウナはまともだったんだろう。
それに、俺が聞き逃した放送は、今朝の明け方に一度きり。
当然、兄貴が死んだ時刻は、昨日の日没から今日の夜明けまでのどこかで間違いない。
ユウナが狂ったのも、兄貴が死んだのも、昨日の夜。
この時期の一致を、偶然で片付けていいのか?

ユウナは、【闇】でおかしくなったから兄貴を殺したんじゃなくて……
兄貴を殺したことが原因で、【闇】に憑りつかれたんじゃないのか?

正気なのに、身勝手な理由で、兄貴を――

251 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/06/22(日) 01:29:50.05 ID:J8NNWWvoO.net
 

252 :信じる奴が正義(※正解とは言っていない) 3/11:2014/06/22(日) 01:33:39.30 ID:aqD5mCQn0.net
「――マッシュ?」
「!?」

耳元で響いたリルムの声が、俺を我に返らせる。
振り返って下を向けば、不安げに揺れる隻眼に自分の顔が映りこんだ。
眉間に皺を寄せ、暗い影を落としたその表情は……自分でも、『俺らしくない』と言いたくなるほどだ。

「な、なんでもない。大丈夫だ」

何やってるんだ、俺。
いくらリルムの意見に納得できないったって、この子を怖がらせてどうするんだ!

俺は気合で笑顔を作り、残っている左手でリルムの頭を撫でた。
ぱちくりと瞬きしたリルムは、物言いたげに小さな唇を動かしたけれど、結局何も言わずに俺を見つめ続ける。
俺はもう一度「大丈夫」と告げ、兄貴が良くやっていたように、ぱちりとウインクしてみせた。

「似合ってないよ、そーゆーの」
リルムは口を尖らせ、ぷいっとそっぽを向いた。
「まー、だいじょぶだってならいいけどさっ。
 ……それより、あのオジサン、どこまで行っちゃったんだろ?」

あ。
そういえば、ヘンリーは行先を言っていなかった。
でも――

「ラムザやバッツに説明しに行ったんじゃないか?」

全員で生還するために計画を練ってたというのに、別行動中の仲間が壊滅したかもしれないんだ。
手を打つ打たないは別として、他の連中にも話しておかなきゃいけないだろう。

「まー、遠くに行くわけないんだし、すぐに戻ってくるさ」
気休めみたいな言い方になってしまったけれど、戻ってこない理由が無い。
リルムも俺の言葉に納得したらしく、「だよねえ」とうなずいて、絵筆を手に取った。

(……って、絵筆?!)
彼女の特技をよーーーく知ってるこちらとしては、ぎょっとするし、身構えざるを得ない。
けれどリルムが描き出したのは得意の似顔絵ではなく、明らかに手を抜いた落書きだった。
バンダナ巻いた棒人間と、ゴーグルつけた棒人間と、トサカっぽい髪の棒人間。
最初がティーダってのはわかるが、残りはわからない。
ヘンリーが戻ってくるまで、不安を紛らわせるために絵を描いていたいのかもしれない。
そんなことを思っている間に、バンダナ棒人間の隣にローブ着た棒人間と、帽子をかぶった小さい棒人間が増えた。
そう言えば、リルムはアーヴァインにも懐いていたっけな……
ため息が出そうになるのを、ぐっと堪える。

253 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/06/22(日) 01:33:58.25 ID:J8NNWWvoO.net
 

254 :信じる奴が正義(※正解とは言っていない) 4/11:2014/06/22(日) 01:40:21.22 ID:aqD5mCQn0.net
はっきり言って、アーヴァインの奴に対しても、釈然としない気持ちは残ってる。
ティナやマリベルの事がある以上、アイツが戻ってきたら、最低二発は殴っときたい。
ただ――それでもユウナに比べれば、心の天秤は『許す』方に傾いている。
スコールから聞いた魔女との因縁とか元の世界にいる子だとか、殺し合いに乗った動機がそれなりにわかるってのが一つ。
既に改心してスコールに協力し、首輪の解除を成功させたってのが一つ。
それに何より、マリベルの遺言を汲んで、アイツを止めようと駆け回ったスコールの努力を間近で見てきた以上……
憎むより、スコールと一緒に喜んでやりたいって気持ちの方が強いんだ。

でも、それなら――

例えば、ユウナが兄貴を殺した理由が少しでも同情できるものであるならば、俺は素直にリルムを応援できるのか?
ユウナが心を入れ替えて、人を助けようとしているなら、俺はユウナのことを許す気になれるのか?

考えてみても答えは絞れない。
『悪い事をしたって認めて謝るなら、兄貴も許すに決まってる!』って気持ちが半分。
『ふざけんな!』って突っぱねたい感情が半分。
ちょうど真っ二つに割れている。

ユウナは何を考えて殺し合いに乗ったのか?
彼女と兄貴との間に何があったのか?
わからないことが多すぎて、『実は何もかも嘘だったりしないのか?』なんて現実逃避じみた考えすら浮かんでくる。

(……ん?)

待てよ。
脳裏に走った閃きに、俺は慌てて記憶を辿る。
スコールがティーダと話した時、アイツはなんて言っていた?

 "そうだ、ティーダ。もう一つ言っておくことがある。
  ユウナがエドガーを殺したかもしれないというのは、ある人物の推測だ"

――……そうだ。
ユウナが殺し合いに乗っているのは間違いない。
だけど、兄貴を殺したという証拠は……無いんだ。

なんでこんなことに気付かなかったんだ?
ティーダの態度がいくらそれっぽくても、そりゃアイツが『ユウナ犯人説』に納得してるってだけだ。
スコールが言う『ある人物』ってのも、誰かわからない。
それこそアルガスって可能性すらありそうだ。
とにかく話の出所が不確かな状況で、正気だったころのユウナを知っているリルムに、彼女を疑えなんて無理に決まってる。
むしろアルガスの言葉だけでユウナを兄貴の仇だと決めつけて憎んでしまっている、俺の心の弱さの方がよっぽど問題だ。
兄貴が居なくなったことがショックだからって、真実を確かめもせずに人を憎んでいいわけない。
そんなんだからダンカン師匠の時だって、死んだなんて早とちりしたんじゃないか!

255 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/06/22(日) 01:40:32.15 ID:J8NNWWvoO.net
 

256 :信じる奴が正義(※正解とは言っていない) 5/11:2014/06/22(日) 01:44:41.64 ID:aqD5mCQn0.net
いくら兄貴が死んだなんて聞かされたからって……動揺しすぎだ、俺。
一度リルムに謝ろう。
ユウナのこと、一方的に疑って悪かったって――

「――あれ?」

そう考えた矢先、唐突にリルムが顔を上げ、きょろきょろとあたりを見回した。
タイミングが良すぎて、自分の考えが見透かされたような錯覚を感じたけれど……そんなわけがない。
遠くで人の声とかすかな足音が響く。
慌てて耳を澄ましてみれば、誰かがリルムの名前を呼びながら、こっちへと走って来ているようだ。
俺が声の主に思い至る前に――彼は、弾丸のように部屋へと駆け込んできた。

「リルム!」

金髪をなびかせながら叫んだ、鎧姿の若者の姿に、俺は兄貴の幻影を垣間見る。
けれど瞬きをしてみれば、そこにいるのは当然ながら全くの別人だ。
「ラムザ? どったの?」
名指しで心配されたリルムは落書きを止め、若者――ラムザの傍へと近寄る。
その姿に安堵したのか、彼は少々大げさな動きで胸を撫で下ろした。

「ああ、良かった。
 僕達が気付かないうちに、どこかへ行っていたらどうしようかと……」

俺にはラムザの気持ちがよーくわかるけど、リルムにとっては不本意だったらしい。
「マッシュのこと放っておいてどっか行くわけないでしょ!
 リルム様の事をなんだと思ってるんだー!」
絵筆を握りしめたまま、ぽかぽかとラムザを叩いて抗議する。
そんな二人の後ろから、能天気な声が飛んだ。
「まあまあ、前科があるんじゃしょうがないって」
苦笑しながら現れたのはバッツだ。
その両手は数個のザックで塞がっている。

「ラムザ。荷物、一旦ここに置いとくからな!
 例のカードだけ、スコールんとこに供えてくるから!」
「ああ、宜しく頼むよ」

わけのわからないやり取りをしながら、バッツはザックを床におろし、何かのケースを持って外へ出ていった。
ヘンリーの姿や声が無いけれど、いったいどうしたんだろう?
そんな俺の疑問を代弁するように、リルムが尋ねた。
「ねーねー、ヘンリーのおっさんは?」
「ん? ああ、彼は――」
ラムザはわずかに表情を曇らせながら、言葉を探すかのように視線を巡らせる。
しかし良案が浮かばなかったのか、小さなため息をつきながら答えた。

257 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/06/22(日) 01:44:50.30 ID:J8NNWWvoO.net
 

258 :信じる奴が正義(※正解とは言っていない) 6/11:2014/06/22(日) 01:52:42.56 ID:aqD5mCQn0.net
「彼は、中央の城へ向かったんだ。
 ソロさんなら助かってる可能性があるから、状況を伝えに行きたいって」

「「は……はあああああああ!?」」

俺とリルムの声が見事に重なる。
でもな。さすがに、こればっかりはこう言うしかねえって。
「何やってんだ!?」「何やってんの!?」
「ですよねー……ああ、いや、僕達も話を聞いて止めたんです。
 本当に。さすがに、いくらなんでも、危険ですから。
 ただ、その……」
ラムザはこめかみの辺りをぽりぽりと掻きながら、リルムに視線を注ぐ。
「……ここに居るメンバーの現状を鑑みると、ですね。
 『祠を守る戦力』の中で抜けても問題がなく、単独行動ができる体力が残っていて、
 戦闘も交渉も説明も出来る人物となると、彼しかいないんです。
 僕もバッツさんもやるべき事がありますし、リルムもマッシュさんも休息を取るべきですから」

『リルムも』という個所をやたらと強調している辺り、よっぽど暴走を警戒してるんだろう。
何度でも言うけど、その気持ち、すっげえわかる。

「リルム、そんなに疲れてないよ!」
俺らの気苦労に気付いてないのか、無視してるだけなのか。
リルムは両手を振り上げ、大声でラムザに詰め寄った。
けれどラムザは動じることなく、冷ややかな目でリルムを見つめる。
「本当に? アルガスを追っかけるのに、城からここまで歩いてきたんだろう?
 それに回復魔法だって、ヘンリーさんやアーヴァイン相手に結構使ったそうじゃないか」
「うっ……」
「だいたい、君はいつも無茶をしすぎだ。
 確かに君は頭が良い、僕やセフィロスを出し抜けるぐらい賢い。それは認める。
 周りに子供扱いされたくない気持ちだってわかる。
 でも、それでも君は、客観的に見れば華奢な女の子なんだ。
 殺し合いに乗った人間に見つかったら、真っ先に狙われる立場にいるんだ」
「で、でも、あのネクラの犯罪者の誘拐犯は……」
「ウィーグラフが特別なだけだよ。
 彼が憎んでいたのは僕だけだった。君を殺す気は最初から無かった。
 けれど例えば、それこそセフィロスに見つかったらどうする?
 ヘンリーさんは、ヤツとは一度も会ってない。
 だからこそヤツの邪魔にならないと判断されれば、生還できる可能性が残ってる。
 けれど僕や君は違うよね。今朝戦った上に真正面から逃げ切られた相手だ、見逃す選択肢なんてあるはずがないよ。
 その目で、一人で、僕も誰も近くにいない状況で、無事にヤツから逃げ切れると考えているのかい?」
「そ、それは……」
真っ向から言い返され、さしものリルムも口をつぐむ。
すっかり蚊帳の外に置かれた俺は、『よくそんなに喋れるなあ』と感心することしかできない。

259 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/06/22(日) 01:52:52.27 ID:J8NNWWvoO.net
 

260 :信じる奴が正義(※正解とは言っていない) 7/11:2014/06/22(日) 01:57:22.65 ID:aqD5mCQn0.net
「だからね、リルム。皆の事はヘンリーさんに任せよう。
 彼だって君と同じぐらい、一人でも多くの人を助けようって考えて行動してるんだ。
 だから彼を信じて、マッシュさんや僕らと一緒に、この場所を守りながら待っていよう。
 皆を助ける事に成功した時、ここに君や僕達がいなかったら、ヘンリーさんも他の人も悲しむに決まってるからね」
「……むーっ」

おおっ。リルムが舌戦に押し負けるところなんて、初めて見たぞ。
しかしラムザの言い方だと、誰かが仲間を助けに行くことでリルムを納得させて外に出さないようにする、って目的もあったのか?
うーん。でもなあ、そうだとしても……

「なあ……こういう事、あんまり言いたくないけどさ。
 メテオ級の魔法に巻き込まれた人間が五体満足でいる確率って、そんなに高くないだろ。
 ヘンリーがどう説明したのか知らないけど、その。
 ……無駄足になる可能性の方が、大きくないか?」

俺の言葉に、ラムザが目を瞬かせる。
何を言っているかわからない――というよりも、純粋に驚いているような表情だ。
もしかしたら、『ユウナが魔法か何かでソロ達を攻撃した』という事は聞いていても、
『隕石でもぶつけて城ごとぶっ壊したんじゃないか』なんて話は知らされていなかったのかもしれない。
……そもそも、隕石の音なんて、聞いたことなきゃ気付くわけないしなぁ。

「うーん……」
ラムザは額を手で押さえ、少しばかり唸り声を上げたが、すぐに首を横に振る。
「ええと、その、確かに、攻撃方法や規模までは聞いていなかったのですが……
 それが『魔法』であるならば、ソロさんは無事だろうというのが、ヘンリーさんの意見だったんです。
 魔法反射障壁を作れる盾と、魔法の効果を打ち消す剣を持っている他、魔法自体を無効化する魔法まで使えるそうなので」
「えっ?」

おいおい。魔法反射に打ち消しに無効化って、どこのセリスだよ。
それが本当なら確かにスゴいし、ヘンリーがソロって奴の生存を信じるのももっともだ。
でも――

「え、でも、メテオってリフレクも、まふーけんも効かなかったんじゃ……」

リルムの言葉に、ラムザもとうとう言葉を失う。
そう。
俺達が知る限り、メテオはあらゆる魔法防御を貫通する魔法だったはずだ。
メチャクチャ高度で貴重な魔法だし(そもそも俺の世界じゃ魔法自体が希少だし)、ンなこと知らない方が当然ではあるのだが……

「………」
「………」
気まずい沈黙があたりを包む。
それを破ったのは、やはりラムザだった。

261 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/06/22(日) 01:57:31.97 ID:J8NNWWvoO.net
 

262 :信じる奴が正義(※正解とは言っていない) 8/11:2014/06/22(日) 02:00:20.92 ID:aqD5mCQn0.net
「……その、ええと、本当に、メテオだったんですか?」
「あ、いや……わかんねえ。
 音だけだし、『暗黒の空』とか言ってたから、メテオに似た別の魔法かもしれないな」

縋るような視線から目を逸らし、俺は答える。
実際、音以外の事は知りようがないのだからどうしようもない。

「そ、そうだよ!ユウナが使ったの、打ち消せる魔法かもしれないし……
 ソロって人が使う魔法が、まふーけんよりすっごいかもしれないじゃない!
 き、きっとみんな無事だよ!」

リルムが明るい声音で叫ぶ。
しかしその笑顔は見事に強張っていて、無理に元気づけようと言っているのが丸わかりだ。
ラムザは額を抑えながらため息を吐き――淡々と呟いた。

「……ええとですね、ヘンリーさんは、こう言っていました。
 何が起きたのか自分の目で確かめたいし、それ以上にソロさんの事を見捨てたくないと。
 自分の身を危険に晒そうと、どんな結果が待っていようと、仲間で在り続けるために仲間を助けに行きたいのだと。
 僕も、僕なりに最悪の事態を考えて、"説得"したり"おどす"ような事を言ったのですが……彼の意志を揺るがすことはできませんでした」
リルムを言い包められるほどの話術を使いこなせるラムザが、説得できなかった?
俺は眉を潜めながらも、ヘンリーの人柄や言動を思い返す。
――『よくわからない行動もするけど、基本的に気さくで面倒見がいい』。
それ以外の表現が出てこない。
少なくとも、人の説得をハナから無視するような、頑迷な人間とは思えない。
そんな俺の感想を肯定するように、ラムザは言葉を続ける。

「あの人は、僕が言った事態も考慮した上で、『行くべきだ』と判断したんです。
 ソロさんを見捨てたくないから。
 ソロさんが生きていれば、いずれ来る戦いで重要な戦力になるから。
 ソロさんが助からなくとも、どこかで誰かがユウナさんを止めなければいけないから。
 リルムやリュックさんの気持ちを汲んでやりたいから。
 そしてさっきも言った通り、ここに居るメンバーで単独行動が可能なのは、実質的に彼しかいないから。
 ――そこまで言われてしまったら、使えそうな物資を分けて見送る以外の選択肢はありませんでした。
 さすがにメテオというのは想定外でしたが……そうと知っていたら――」

263 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/06/22(日) 02:00:28.73 ID:J8NNWWvoO.net
 

264 :信じる奴が正義(※正解とは言っていない) 9/11:2014/06/22(日) 02:04:21.72 ID:aqD5mCQn0.net
『そうと知っていたら止めていたのに』と言いたかったんだろう。
しかしラムザは言葉を濁し、目を伏せる。

「……すみません」
「あ、いや、別に謝らなくてもいいって。
 俺だって五体満足で、スコールがピンチになってたら、どんだけ遠くでも助けに行くしな。
 そこまでしっかり考えてるだけエラいと思うぜ」
これは本心だ。
そもそも俺だったら――

「そうだよ!
 そこの筋肉男がヘンリーおじさんの立場だったら、絶対そこまで考えないで一人で勝手に助けに行ってるよ!」
……その通りだ。
さすがリルム、よくわかってやがる。
俺が顔を引きつらせると、ラムザも苦笑を浮かべた。
けれどそれは束の間のことで、何かを思い出したのか、急に真顔に戻る。

「あ、そうだ。
 マッシュさんには悪いのですが、その……ちょっと、この手紙を見てほしいんですが」

ラムザは、彼に似つかわしくない歯切れの悪さで呟きながら、一枚の紙切れを取り出した。
「ん?」
「なになに?」
何故か俺よりも早く、リルムがぴょこんと前に出てメモ書きを覗き込む。
そこに立たれたら見えないんだけどなぁ……

「……うわ」
リルムがものすごい呆れた声音をこぼす。
その反応に、俺は猛烈に嫌な予感を覚えながら、横合いから回り込んだ。
やたらと丁寧な字で書かれていた文面は――

 "マッシュへ。
 言い忘れてたけど、スコールが夢の世界に来てくれって言ってた。
 そんなわけで、悪いが状況説明は任せたぜ!
 俺も機会があれば連絡するけど、遅くなるから先にヨロシク。
 追伸:今の夢のホストはスコールだ。驚くなよ〜"

「……おい」

なんだ、これ。
なんかどう考えても厄介な事を、すっげえ気楽に書いて、押し付けてくれてるように見えるんだけどさ……
悪いって思う気持ちがあるなら、それこそスコール達に説明してから行ってくれよ!!

ああもう、口に出して全力で『ふざけんな』って叫びたい。
スコール達の事がバレたらまずいからやらねぇけどさ。

265 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/06/22(日) 02:04:32.86 ID:J8NNWWvoO.net
 

266 :信じる奴が正義(※正解とは言っていない) 10/11:2014/06/22(日) 02:07:12.76 ID:aqD5mCQn0.net
ラムザは俺の気持ちをわかってくれるのか、同情の眼差しを送ってきている。
そしてリルムは俺とラムザを交互に見やり、ひどい片言口調で呟いた。

「……リルム、とーぶん寝ないで起きてる。
 ラムザと一緒に、見張りがんばる」

アルガスとの相性の悪さを自覚しているのか、単純に見張りが多い方が良いと思ったのか。
どっちにしても、リルムなりの精一杯の気遣いなのは間違いない。

「……うん、頼んだ」

俺は、そう答えるだけで精一杯だった。



【ラムザ(話術士、アビリティ:ジャンプ・飛行移動)(HP3/4、MP3/4、精神的にすごく疲労)
 所持品:アダマンアーマー、ブレイブブレイド テリーの帽子 英雄の盾 エリクサー×1
 ミスリルシールド、スタングレネード×1
 エクスカリパー、ドラゴンテイル、バリアントナイフ、黒マテリア
 第一行動方針:祠の警備
 第二行動方針:首輪解除及び脱出に協力する
 最終行動方針:ゲームから抜ける、もしくは壊す
 備考:首輪の解体方法を覚えました】
【リルム(HP2/5、右目失明、MP1/9)
 所持品:絵筆、不思議なタンバリン、エリクサー、 静寂の玉、
レーザーウエポン グリンガムの鞭、暗闇の弓矢 ブラスターガン 毒針弾 ブロンズナイフ
 第一行動方針:祠の警備
 第二行動方針:他の仲間と合流
 最終行動方針:ゲームの破壊】
【マッシュ(HP1/10、右腕欠損、精神的に疲労)
 所持品:なし】
 第一行動方針:眠る/夢の世界でスコール達に状況を説明する
 最終行動方針:ゲームを止める】
【バッツ(HP3/5 左足負傷、MP1/6、ジョブ:青魔道士(【闇の操作】習得)
 所持品:アポロンのハープ アイスブランド うさぎのしっぽ ティナの魔石(崩壊寸前)
      マッシュの支給品袋(ナイトオブタマネギ(レベル3) モップ(FF7) バーバラの首輪)
      スコールのカードデッキ(コンプリート済み)
 第一行動方針:スコールにカードデッキを渡してくる
 第二行動方針:祠の警備/機会を見て首輪解除を進める
 基本行動方針:『みんな』で生き残る、誰も死なせない
 備考:首輪の解体方法を覚えました】
【現在位置:南東の祠(奥の部屋)】

267 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/06/22(日) 02:07:29.85 ID:J8NNWWvoO.net
 

268 :信じる奴が正義(※正解とは言っていない) 11/11:2014/06/22(日) 02:09:57.31 ID:aqD5mCQn0.net
【ヘンリー(HP1/2、リジェネ状態)
 所持品:アラームピアス(対人)、リフレクトリング、銀のフォーク、キラーボウ
     グレートソード、デスペナルティ、ナイフ、命のリング(E)、ひそひ草、筆談メモ
     魔法の絨毯、スタングレネード×1
 第一行動方針:デスキャッスルに向かい、ソロ達を助ける
 第二行動方針:仲間と合流し、事情を説明する
 基本行動方針:ゲームを壊す(ゲームに乗る奴は倒す)】
【現在位置;南東の祠→移動】


以上、投下終了です。

269 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/06/22(日) 05:03:52.21 ID:PL/Rg41y0.net
おおお久しぶりに新作が!乙です!
この期に及んでもユウナへの怒りを鎮めてしまうマッシュのお人好し加減が泣けるわい

270 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/06/22(日) 13:25:29.64 ID:/6BsU9u80.net
新作乙!
マッシュがどこまで事態を把握してるのか気になってたから彼目線の話はかなり嬉しい

しかしヘンリーはひそひ草も持って行っちゃったのか

271 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/06/24(火) 06:07:24.19 ID:12vFBiDi0.net
新作乙です
空飛ぶあの方の着地地点候補が増えてしまった

>ひそひ草
たしかに、祠のメンツが持っていた方がいい気はするな
だが城の状況考えると、片割れは応答無くなった時点で消滅しててもおかしくないんだよな

272 :前進と後退の逃避行 1/7:2014/06/25(水) 17:44:30.67 ID:5NpPfvjw0.net
草原がざわりと音を立てる。
夜の闇さえ存在しない地の底にも風は吹くのか。
それとも、睨み合いを続ける男達の気迫に、草といえども身じろぎをせずにいられなかったのか。

赤い羽帽子に水色の髪の賢者、セージ。
青いバンダナに銀の髪のトレジャーハンター、ロック。
今まさに剣を交えんとする彼らの目的は、その実同じ、殺し合いを強いる魔女への叛意。
歯車さえかみ合ったなら、仲間となることも出来ただろう。
――それを知るのは、現実には存在し得ない盗賊だけだったが。

「ピオリム!」
セージの中に居る『フルート』の人格が、落ちた速度を補うべく倍速の呪文を再び唱える。
同時に表に出ている『アルス』の人格が、陸奥守を振りかざし間合いを詰める。
常人には不可能であるはずの二回行動、けれどロックはうろたえない。
ロック自身も魔石を用い、時空魔法の最高峰であるクイックを習得している身だ。
『賢者という職に就く者は魔法を極めている』という知識もある。
多重人格という異常こそ見破れずとも、連続行動それ自体は予測の範疇。
真に警戒すべきは、そこから派生する戦術の方だ。
そう考え、魔法を詠唱していたロックは、あえて身を躱さずににクリスタルソードを構える。
手傷を負うことになったとしても、一刻も早く魔法を完成させるためだ。

「リフレク!」

あらゆる魔法を反射する光の壁が、ロックの眼前に出現する。
「うおおおおおおおおおお!」
一拍遅れて『アルス』の叫びが轟き、踏み込みと同時にすらりと伸びた刀身が振り下ろされる。
脳天を狙う剣閃に、ロックは
「ふっ!」
と短い雄叫びを上げ、腰を落としながらクリスタルソードを跳ね上げた。
ギィン、と澄んだ金属音が周囲に響き渡る。
「ぐぅううううううううッ!」
セージの体を動かすアルスの人格は、ぎりぎりと歯噛みをしながらも、両腕に力を込める。
それでも所詮は非力な賢者の肉体だ。いくら扱い慣れぬ騎士剣を握っているといえど、腕力の絶対量が違う。
ロックが打ち負ける道理はない――はずだった。

「――バイキルト」
「ッ!?」

急激にセージの腕力が増す。
分裂した精神の影に隠れた『セージ』本来の人格が、攻撃力を倍加する呪文を唱えたのだ。
あらゆる悪を断罪する勇者アルスの剛剣を再現するために。

273 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/06/25(水) 17:45:22.34 ID:FEuhwplqO.net
 

274 :前進と後退の逃避行 2/7:2014/06/25(水) 17:52:07.32 ID:5NpPfvjw0.net
「くっ!」
このままでは押し切られると判断したロックは、素早く手首をひねり剣を傾ける。
力の流れを変えられた薄刃は、つややかな水晶の表面を滑り落ち、勢いが余ったのか草を薙ぎ祓いながら地面に突き刺さった。
その機を逃さず、ロックは飛び退いて距離を取る。

「チッ……フルート、セージ、援護を!
 ピオリム! スカラ!」

セージは舌打ちをしながら、傍から見ればわけのわからぬ一人芝居を繰り広げる。
だが言動はともあれ、その作戦は理にかなったものだ。
壁状に広がった光を見てマホカンタと同義の呪文と判断し、『アルス』による接近戦を軸にするため、速度と防御を上げる。
見よう見真似の拙い剣術であっても、パワーとスピードを兼ね備えていれば十分な脅威となる――
それはロックも知悉していることだ。
ギードがかけたスロウの効果も、上昇補正に相殺され、失われつつある。
なればこそ、ロックが取る戦術は一つ。

魔法で強化するというのなら、その魔法を解除してしまえばいい。

「デスペル!」

波動がセージの体を包み込み、重ねがけされた呪文の効果を全て消し去る。
「なっ……凍てつく波動だと!?」
彼の世界では大魔王にしか出来なかった所業を、こうもあっさりと使われては、『アルス』といえど動揺を隠せない。
そしてその隙を見逃さず、ロックは次の魔法を唱えながら距離を取る。

「くっ!」
『アルス』の人格はおろか、『セージ』の知識をもってしても、ロックが使う魔法系統とその効力を見破ることはできない。
世界が異なる以上当然の話なのだが……相手の行動が予測できないという事が、戦闘時において、それがどれだけ不利か。
それだけは『アルス』にも理解できる。
虚構の勇者は苦し紛れにナイフを投げ、ロックの動きを牽制しようとする。
だが本来接近戦を得意とするロックにとって、狙いの甘い一投など簡単に撃ち落とせるものだった。
「ピオリム〜!!」
わずかに遅れて『フルート』の呪文が完成するが、それが効果を発揮するよりも早く、
「ストップ!!」
ロックが紡ぎ上げた時間停止魔法が、セージの体を絡め取らんとする。
しかし賢者として神に選ばれたほどの男が、他人の呪力になすすべもなく縛られるはずもない。
「はぁっ!」
戸惑う『アルス』を押しのけた『セージ』は、タイミングを見計らい、気合と共に僅かな魔力を放出する。
術式の完成そのものを阻むことで、ストップをレジストしたのだ。
物理的な回避行動や魔法発動後の効果抵抗とは異なり、そこには一切の隙が存在しない。
「『アルス』を傷つけさせはしない……」
体勢を崩さぬまま、『セージ』はロックをねめつけ――すぐに『アルス』に交代する。
「『セージ』のためにも、勇者の力、見せてやる!」
己が虚構の存在であることに未だ気付かぬ幻想の勇者は、敵を切り伏せんと大地を蹴る。

「くそっ、わけわかんねーことばっか言いやがって!」
ロックはバックステップで距離を取りながら、苛立ち交じりの愚痴をこぼす。
伸びた草に隠れてはいるが、その脇腹と左足からはじわじわと血が滲み出していた。
この世界において、回復魔法の効力は大きく制限されている。
いかに卓越した魔力を持つギードがケアルガを唱えたところで、これほど派手に動けば、傷口が開くのも当然だ。

275 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/06/25(水) 17:53:11.40 ID:FEuhwplqO.net
 

276 :前進と後退の逃避行 3/7:2014/06/25(水) 17:57:46.73 ID:5NpPfvjw0.net
(少し早いけど、潮時か……?)

放送まで休息を取っていたとはいえ、ロックは城から吹き飛ばされた時に、クイックを唱えてしまっている。
さらにリフレク・デスペル・ストップと、中位から高位の魔法を連発している。
このまま消耗戦にもつれこんでしまえば、逃げ出す事も難しくなるだろう。

ロックはとび色の瞳で周囲を見回す。
ギードの姿はもう見当たらない。
鈍重そうな外見で老齢であるとはいえ、大人をかついで若者に歩調を合わせるぐらいの能力を持っているのだ。
稼いだ時間は数分程だが――
(こいつもこんだけ魔法を連発してるんだ。
 疲れてきてるはずだし、そう簡単にギードには追いつけないだろ!)
そう判断し、ロックは痛みをこらえながら、魔力を振り絞り詠唱を始めた。

だが――ロックは重要な点を見落としていた。
似たような効果の魔法であっても、魔力消費が同じとは限らないのだ。

「ピオリム! ……バイキルト!」

素早さを引き上げるピオリムに、攻撃力を倍加するバイキルト。
ロックの世界においては、上級魔法であるヘイスガやブレイブに準ずる効果であっても――
セージにとって前者は低位の僧侶呪文であり、後者は中級の魔法使い呪文に過ぎない。
ましてそれらを行使しているのは魔法使いから賢者の道を歩んだ男なのだ。
連発しても消耗は微々たるものだし、例えあと数回打ち消されたところで、その都度唱え直す余裕さえ残っている。

「観念しろ、魔女の手先ッ!」

積み重ねたピオリムによって、ロックとセージの速度はまたもや逆転している。
矢のように奔る『アルス』の剣が間合いに入るまで時間は要らない。
横に薙いだ刃がロックの服もろとも腹の皮を切り裂く。
致命傷には程遠い一撃だが、次に放つ攻撃は確実にロックの急所を捕え、命を狩りうるものになっただろう。

――『アルス』が本物のアルスであったならば、だが。

カタナは刀身が細く、薄く、反身で片刃という特徴を持つが故に、扱いがきわめて難しい武器の一つだ。
最上級の業物である陸奥守といえど、例外ではない。
それでも勇者アルスであれば、かろうじて使いこなせただろう。
ジパング生まれの鍛冶師が鍛え上げた王者の剣は、直刀両刃といえ、カタナに通じるバランスを持っているからだ。
けれど、セージは決してアルスではない。
王者の剣を持つ資格などなく、そもそも剣の戦闘を好まなかった彼が、この日初めて持ったカタナを――
陸奥守をまともに使えるわけがない。

不慣れで未熟な者が、"手を返し、流れるように切り付ける"といった侍の所作など出来はしない。
故に、ロックを斬るために、セージは剣を構え直さねばならなかった。
真の勇者ではないが故に必要となってしまった、その無駄な動きが、ロックの命を繋ぐ時間を生む。

277 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/06/25(水) 18:00:20.32 ID:FEuhwplqO.net
 

278 :前進と後退の逃避行 4/7:2014/06/25(水) 18:06:25.19 ID:5NpPfvjw0.net
「ストップ!」

それが先ほどの魔法だと気付いた『アルス』は、今度は自発的に『セージ』に交代する。
『セージ』もまた当然身構え、打ち消しに挑む。
だが。

(……?)
『セージ』はすぐに異変に気付いた。
発動したはずの、すぐに自分を襲ってくるはずの魔力が、一切感じられないのだ。
一体、何故?
理解できないという焦りと困惑が、『セージ』の思考を混乱させる。
そして、それを見計らったかのように――突如発生した時間停止の縄がセージを縛り上げた!

「!!」
抵抗しようとしたところで、最早間に合わない。
止まった時に捕らわれて、セージの動きが凍りつく。

「へへっ……上手くいったぜ」
ロックはニヤリと笑いながら、腹を押さえ、走り出した。

ロックが仕掛けたのは、俗に言うデルタアタック戦法。
リフレクをかけた自分自身に魔法を唱え、反射した魔法を相手にぶつけたのだ。
これは本来"一度反射した魔法が反射されないことを利用し、相手のリフレクを貫通するためのテクニック"である。
しかしセージが使ったレジスト方法は、魔法発動時にタイミングを合わせて打ち消すという技術だった。
ならば逆に、"魔法発動のタイミングをずらせばセージのレジストを無効化できるはずだ"と、ロックは読んだのだ。
そして、ギャンブルのごとき試みは見事に成功した。
上手くいけば一分近く、セージの認識と行動を止める事ができるだろう。

(――けど、な)

ロックの脳裏を過ぎった楽観的な希望を、左足の痛みが打ち砕く。
与えられたわずかな時間で、セージから完全に逃げ切った上でギードと合流できるだろうか?
自問自答してみたところで『NO』という言葉しか出てこない。
ギードが逃げた方角はセージも知っている。
それにストップで時間を止めたといっても、既にかかっている強化魔法を解除したわけではない。
むしろ速度を上げられていた分、ストップの効果そのものも相応に短くなってしまうはずだ。

279 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/06/25(水) 18:06:37.57 ID:FEuhwplqO.net
 

280 :前進と後退の逃避行 5/7:2014/06/25(水) 18:09:32.76 ID:5NpPfvjw0.net
「うーん……やっぱ、仕方ねえか」

ロックは一人ごちながら、進路を南へと変えた。
ギードとは全く違う方向に逃げれば、セージがどちらを追うかで悩んだり、ギードを諦めてロックを追ってくる可能性が生まれる。
そうなればギードが無事でいる確率はぐんと上がる。
また、『即座にストップが解けて迷いなくロックを追われる』という状況にさえならなければ、ロックも逃げ切れる自信があった。
地形的には一本道の袋小路であるが、何せこの世界は背丈の高い茂みだらけだ。
血痕を残さないよう、必要以上に草を踏みしだかないように気を付ければ、環境に紛れて潜伏することも難しくない。

(俺だって何も知らずに死ぬのはごめんなんだ。
 追ってくるのは歓迎するけど、絶対に振り切ってやるぜ!)

仲間のため。無駄に自分の命を捨てぬため。
そして何より、生き抜いて真実を見つけるという己が目的のために。
苦痛を堪え、ロックは闇の世界を走り抜ける――



【ロック (HP7/8、MP2/3、左足負傷、軽度の疲労)
 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード 魔石バハムート、皆伝の証、かわのたて
 死者の指輪、レッドキャップ、ファイアビュート、2000ギル
 デスキャッスルの見取り図
 第一行動方針:セージから逃げ切る
 第二行動方針:ギード、リルム達と合流する/ケフカを警戒
 基本行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】
【現在位置:デスキャッスル南西の茂み(分かれ道のあたり)→南へ移動】

281 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/06/25(水) 18:09:47.82 ID:FEuhwplqO.net
 

282 :前進と後退の逃避行 6/7:2014/06/25(水) 18:14:03.05 ID:5NpPfvjw0.net
「くそっ……!」

セージのストップが解けたのは、およそ40秒後だった。
当然ながら、ロックの姿は既に見当たらない。
さらに補足すれば、彼の認識は魔法に捕らわれた時点で途切れているため、
一体何分間動きを止められていたのかすら判別できない。
落ち着いて冷静に耳を澄ませれば、逃げ行くロックの足音を聞き分けることもできたかもしれないが……
そんな精神的余裕は、彼には無かった。

「くそっ、くそっくそっ!
 魔女の手先が、卑怯な真似をッ!」
(………)

歯噛みする『アルス』――
その陰で、セージの中に未だ残る人格『ローグ』は、ロックの事を思い返していた。
己が半身達が散々殺意を向けていても、とび色の目に敵意が宿ることはついぞなかった。
あくまでもセージを殺める気は無く、先にこの場を離れた同行者が無事に逃げ延びるまでの時間稼ぎに徹する。
そんな彼と、今のセージ。
『勇者の仲間』に相応しいのがどちらかなど、問うまでもない。

(……いっそ、殺してくれりゃいいんだ)

『ローグ』の呪詛は、誰にも伝わらない。
正気の断片である彼の言葉は良心の呵責に他ならないというのに、半身達は誰も耳を傾けない。
(それもそうだろうな)
と、『ローグ』は自嘲する。
そうしたところで何も解決できないとわかっていても、そうすることしか出来ないのだ。

昼間に見た夢――死してなおセージの心を守ろうとしたギルダーとビアンカの願いも、届かなかった。
ギルダーを、ビアンカを、ジタンを、タバサを、共に過ごした時間はおろか出会った事すら忘れ。
本物のローグを、本物のフルートを、本物のアルスを、生きていると思い込むために、『別人格』という形で偽物を作り上げて。
そして襲ってきたという理由でフィンを、魔物と同行していたという理由でプサンの仲間であろうロックを殺す。
誰も守れなかった無力な自分を、縋る相手すら居ない孤独な自分を否定するために、過去を知る者を消す。
この世界には全てを見守る精霊神は居らず、死者を甦らせる呪文も意味をなさない。
街も城も大地さえもたった一日で跡形もなく壊れ、死体すら残らない。
こんな状況で現実を定義できるのは、生存者の言葉だけだ。

そう、極論すれば――
"セージ以外の語り部がいなくければ、セージが信じる現実こそがただ一つの真実だ"。
そして遠からず、『アルス』と『セージ』はその歪んだ結論に行きつくだろう。
"魔女の手先を倒す正義の勇者一行"という名目で、己を正当化しながら。

(……どうしようもねえよ)

『ローグ』は首を横に振り、ゆっくりと目を閉じた。
他の『偽りの仲間』と異なり、ただ一人彼だけはセージが経験した全ての記憶を保持している。
セージにとって、極めて都合が悪い現実を知っている。
それ故に"遅かれ早かれ自分は消されるだろう"という確信があった。
それを為すのが『セージ』か『アルス』か『フルート』か、別の代替人格かはわからないが。

283 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/06/25(水) 18:14:14.34 ID:FEuhwplqO.net
 

284 :前進と後退の逃避行 7/7:2014/06/25(水) 18:16:57.34 ID:5NpPfvjw0.net
(なんでこうなっちまったんだろうな……)

『ローグ』が考えたところで、答えなど見つからない。
――もしも彼に相談相手が居れば。
そしてその相談相手が【闇】とかつての魔女の目的を知っていたならば、話は別だっただろうが。

【闇】。それはこの殺し合いの世界に溢れる不可視のエナジー。
死者の無念と魔女の思念が生み出した不純物。
セージも、彼の中にいる『アルス』と『フルート』の人格も、
最も正気に近い『ローグ』でさえも気付いていないが、それは確かに存在している。
弱き心を穢し、侵す、猛毒として。

"自分以外の全存在を時間圧縮によって否定することで、忌まわしき過去と運命を消し去る"
それが魔女アルティミシアが長年抱いていた目的だった。
黒いクリスタルによって復活し、仮面の男との記憶を取り戻したところで、死の運命もろとも世界を拒んだ感情は消えない。
漏れ出てた憎しみは魂の残滓と結びつき、【闇】となり、そして今セージの身体と精神を蝕んでいる。
常軌を逸した現実逃避と、そこから生じた異常な攻撃性は、その結果だ。
決して、セージという男に元から狂人となる素質があったわけではない。

けれど『ローグ』には、そんな外部要因があることなど知る由もない。
ただ仲間の死と己が無力さに打ちひしがれ、一人で気が触れた挙句、
悪人どころか罪なき人間まで身勝手極まりない理由で殺そうとしているようにしか見えない。
それなのに、そんな救いようのない愚者が自分自身であるということだけは認識してしまっている――

(俺は……何のためにここにいるんだ……)

せめて『セージ』の足を引っ張ってロックに有利になるように立ち回ることができたなら、ここまで無力感に襲われることもなかっただろう。
だが、そんな真似さえできなかった。
二度目のストップが通じたのは、ロックの小細工があったからこそ。
"自分が唱えた呪文は反射できない"マホカンタと、"自分が唱えた呪文を敵に向けて反射できる"リフレクの差が、セージの認識を潜り抜けた結果だ。
ロックが何の工夫もしなければ、『ローグ』の願いなど顧みられることもなく――セージは、確実に相手を殺していたのだ。

(もう、救われなくてもいい……
 だから誰か、俺達を――……俺を、殺してくれ……)

セージという男に残された無力な良心の嘆願は、しかし、誰に聞き入られることもない。
彼自身たる欠片達にさえも。



【セージ(MP1/2、多重人格)
 所持品:ハリセン、ナイフ、ギルダーの形見の帽子、イエローメガホン
     英雄の薬、厚手の鎧、般若の面、釘バット(FF7)、グラディウス、聖なるナイフ、マテリア(かいふく)
     陸奥守、マダレムジエン、ボムのたましい
 基本行動方針:『アルス』:ロックとギードを殺す/魔物や悪人を倒したい/城へ向かいたい
        『ローグ』:セージに死んでほしい
        『フルート』:皆と一緒にいたい/城へ向かっているつもり
        『セージ』:特にない/『アルス』の意見に従う
 最終行動方針:『ローグ以外共通』:みんなと一緒に魔女を討伐する、目の前の状況に対処】
【現在位置:デスキャッスル南西の茂み(分かれ道のあたり)】

285 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/06/25(水) 21:56:20.98 ID:ASHVmfoY0.net
うお!?わずか3日で新作が!?乙です!
ロックが予想以上に健闘してるな…まさか魔法でセージを出し抜くとは思わなかったわ
しかし、裏フルート無しだとセージはここにきてガッカリマーダーになりかねんなw

286 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/06/25(水) 23:13:06.45 ID:q0rlt+530.net
乙です乙です!ラッシュ期到来か?
いろんな設定が存分かつ細やかに活かされていて、短い場面ながら濃密な話だった。
ロックは南に向かったってことは、南西の祠組に合流かな?(誰かが空から降ってこなければ)
もうどうしようもない所まで崩壊してしまったセージが、いまだにギルダーの帽子とかハリセンとか持ってるのがなんか泣ける

287 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/06/28(土) 23:39:55.12 ID:3B+5r2X30.net


288 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/06/29(日) 17:27:53.84 ID:MfUzizOD0.net
ドラクエモンスターズスーパーライトの招待コードです!
招待コード入力で最高ランクのssゲット!!!!

招待コード w573VLs8

289 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/07/04(金) 08:06:26.21 ID:XCmLqUvXO.net

班長の胃が痛くなりそうな展開が続く……

290 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/07/05(土) 19:01:29.54 ID:ZWWY3aPuO.net
乙です
班長の場合は眉間の皺が増えそうだ

ゲーム的な事は置いといてロックは遊撃や撹乱ポジションが活きるからな
流石盗トレジャーハンター

291 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/07/12(土) 11:03:09.38 ID:DggxIyKf0.net
乙〜

292 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/07/16(水) 21:23:48.01 ID:3vNyBnmd0.net
乙です

293 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/07/20(日) 21:37:24.71 ID:lXUCj/ie0.net


294 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/07/26(土) 12:19:27.70 ID:S40XGVMn0.net
乙です

295 :フラグ回収に余念がない参加者の鑑 1/7:2014/07/31(木) 13:34:09.49 ID:ahUyMGg30.net
どっかんどかーん、またどっかーん。
真っ暗な空から暗黒塊が雨あられと降り注ぎ、中々ユカイな音を立てています。
私は城の外――と言っても外門を出ていないので、厳密に言えば敷地の中ですが――で、
下に落ちるばかりの汚い花火を、一人優雅に眺めておりました。

えっ? なんで城内に逃げこんだはずなのに、外に居るのかって?
なにをおっしゃるウサギさん。
ぼくちんはさいしょからおそとにイマシタワー。

……まさか、マサカ、まーさーかー、ですよ?
この俺様ともあろうものが!
スタコラサッサと城の中に逃げ込んで探し物をしようとした矢先に、すんげー音がしたから慌ててテレポで飛び出したなんて……
そーんなサンシタっぽいことするワケがナイ! ナイない!
――ナーイったら、ないの!
良い子なら私の言う事は信じなさい!
イワシの頭も信心からっていうでしょ!
そう、ぼくちんはイワシ……じゃなくって神なのだ!
神の言う事は絶対なのだー! わかったな!

しかし、それにしても……
これほど見境のない破壊魔法、いったい誰の仕業なのでしょうか?
パッと見メテオにそっくりだけど、隕石や宇宙空間を召喚しているようでも無いし……
実に俺様好みだ!
――が、身の程とTPOを弁えていただきたいものです。
まあ、幸いというべきか胸糞悪いというべきか、堅物ピサロの居城なだけあって完全崩壊とはいかないようですね。
ぼくちんのだーいじな進化の秘法が部屋ごと破壊されちゃったらヒジョーに悲しいので、今回ばかりは残念だなんて言えません。
あー残念残念。
ついでに言えば、私の了解もなくこんな品も計画性もない破壊をまき散らすヤツのおつむも、相当残念なんだじょ。
後先を考えない人間など、存在するだけで非常に迷惑なので、さっさと消えていただきたいですね。
え、私?
俺様はホレ、人間という矮小な存在を超えた魔導師にして神ですので。
そして神たるぼくちんに内緒でこんな大技隠し持ってるなんて、とってもいけないんだぁー!
言ーってやーろー言ってやろー、せんせーに言ってやろー。
こんな隠し事してぼくちんの大事なものを勝手に壊す悪い子は、バケツ持って溶岩ダイブの刑だ!
寂しくないようガイド人形ちゃんもつけてあげるから、コンガリテンプラになるまで揚がってきなさァい!
アーヒャヒャヒャ!

296 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/07/31(木) 13:37:49.94 ID:Kn5OU0Y8O.net
 

297 :フラグ回収に余念がない参加者の鑑 2/7:2014/07/31(木) 13:39:45.64 ID:ahUyMGg30.net
……あー、ツマラン。
たまには真面目にやりましょうか。
生真面目なヤツには反吐が出るけど、シリアスな雰囲気はそこまで嫌いではありません。
ぼくちんの神オーラを引き立てる、良いスパイスですからねぇ。
だから他の雑魚どもはギャグ空間に巻き込まれて面白おかしく死ねばいいんだじょー。
あっ、でもギャグ世界の住人になると何度死んでも翌週には復活してしまうのでわ……
……スミマセン、やっぱりシリアスに死んでいいです。
1話に1人ぐらいのペースでサクサク死ぬと、読者もダレないからオススメですよォ!

そういうわけで、ぼくちんはシリアスな雰囲気を作るべく、手元のレーダーに視線を移して光点を確認しました。
一つ、二つ、三つ、四つ。
なんだかこの城に来た時よりも少なくなっていますが、きっと二人ぐらい、私が唱えた魔法でバイバイキーンと吹っ飛ばされたのでしょう。
――と、そんなことを考えた矢先に、点の一つが高速でバイバイキーンと離脱していきます。
思わず空を見上げてみたけど、もうお星様は見えません。

いったい誰が飛んで行ったのか。
自力で逃げたのか、強制転移の類なのか。
知る術はないですけど、こんなの考えるまでもないですね。

マジギレしてるユウナちゃんが、今更特定の個人をターゲットにするとは思えない。
カッパになってるセフィロス君は、魔法もアビリティも使えない。
そしてソロとかいうパセリ頭の小僧と、アジの干物より干物みたいなジジイは、ユウナを助けようとか考えちゃう筋金入りのBAKA。
ここからまず、見境なくメテオもどきを唱えたのはユウナだと断定できる。
そしてこの状況で逃げる、あるいは吹き飛ばされるとすれば……
それは無力で無能でガキとジジイに保護されるのがお似合いのカッパか、
ここに存在するだけで被害を拡大する、無脳だけど有能なユウナのどちらか。
そして今、不自然なほど静かになったことを加味すれヴぁー!!
吹っ飛ばされたのもユウナで決定なのだー!
こーんなコト、指一本で逆立ちして足でラクガキしながらだって、0.00001秒でわかりますよん。
ほーれほれほれ、褒め称えろ!

そういうワケで。
シロート目には危険に見えても、案外今は再潜入のチャンス! ……だと信じたいでちゅ。
これ以上城がぶっ壊れる前に、進化の秘法の手掛かりを掴まなければいーけませェん!
あの銀髪でカッコツケでロザぴぃロザぴぃうるちゃい、コミュ障のくせに恋愛脳な魔王ゆかりの地なんて、
そうそう都合よく転がってるワケはないんですからね!

……それに、だ。
セフィロスが体勢を立て直し、こちらの目的に気付く前に、事を済ませるべきだろう。
カッパになって尚、奴には手駒を作るという発想力も、人の魔法を発動前に封じるという行動力もあるチート野郎だ。
下手に時間を与えてしまえば、俺様の意図を察して先に進化の秘法の資料を見つけ出し、破壊しかねない。
ぼくちん、壊す事は大好きですし、ぼくちん好みのお人形ちゃんや塔を作ることも好きです、が!!
自分の怪我以外の物を直すことだけは、大・ダイ・だーーーいッきらい! です!
ましてやあのピサロが用意してセフィロスくんにぶっ壊されたものなんて、……キーッ!
ちまちま治すところ想像しただけで、ジンマシンがぶわーってなっちゃったじゃないですか!
あー、カユイカユイ!
もうイヤ、シンジランナーイ!

298 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/07/31(木) 13:40:20.36 ID:Kn5OU0Y8O.net
 

299 :フラグ回収に余念がない参加者の鑑 3/7:2014/07/31(木) 13:42:17.25 ID:ahUyMGg30.net
……ぜーはー、ぜーはー。
と、とにかく、奴が変なことやりだす前に、資料を探した方がいいじょ。

気を取り直したぼくちんは、再び勇気を振り絞り、決死の潜入行へ挑みます。
まあ、目的地が破壊されることはあっても、目的地が大幅に動くことは有り得ませんからね。
ここは騒がず焦らず、例の部屋に繋がっているであろうバルコニーに向かいましょう。
ホントは中から回り込めればいいんだけど……
上の階を経由しなきゃいけない構造になってた場合が、ね。
当の『上の階』が、ポポポポーンと吹っ飛んじゃったから、ね。
たのし〜いハカイ〜でポポポポーンと。
誰だこんなことしたやつは! 謝罪と賠償を求めて……あっ、ぼくちんでした。
せちがらい世の中だけど、ツマラン昔の事はスパッと忘れてしまう方が、ストレスもたまらないし長生きできるってものです。
そんなわけで、まずは二階のバルコニーに向かいましょう。

私は軽快なステップを踏みながらボロっちくなった扉をくぐり、城内に侵入します。
天井からパラパラと細かい砂塵が降っていることを除けば、さっきと大して変わりません。
ですが――
神という私の眼は、ポツンと存在する、不自然に砂塵が積もっていない床を見逃しませんでした。

「ふむ、これはこれは……またツマランもん作りましたねえ」

ひょいひょいと近寄ってみると、そこにあったのは血で描かれた魔法陣。
どうやら防御結界のようです。
こんな地味なモン作るのは、ロザリーちゃんぐらいなものですね。
最初に城に入った時、ぼくちんが気付かなかったことを考えると、それなりに前に出て行ったんでしょうか。
あー、モッタイナイモッタイナイ!
城に残っててくれりゃ、カッパの押し寿司ジジイの干物とパセリ添えに、デザートのネコ娘せんべいがついてたのに。
まあいいや。
ロザリーのことは後回し、後回し。
進化の秘法の資料を見つけつつ、セフィロスくんをカッパエビせんにする方が圧倒的に先決ですことよ!
ついでに偽善者ぶってる奴ら二人も間引いておきましょうねー。

――え? 厚化粧の喪魔女オバさんを殺すための戦力は、どうするのかって?
そんなの南西にいる三人と、南東にいる連中をこき使えばいいだけですよ。
南東組の構成はわかりませんが、『死んだはずの二人』を匿う必要がある以上、そこそこの人数がいるはずです。
少なくとも、前日にスコールと同行していたマッシュは一緒に居るでしょうねえ。
それからロックやソロを除いた、ピサロとリュックちゃんの仲間――
現在も生きている可能性があるのは、ヘンリーとバッツ、だったかな?
そいつらを含めると、男手五人分は保障されていると判断できる。
合計で8人、魔女にぶつける鉄砲玉としては十分だろう。
万が一撃ち漏らしたとしても、進化の秘法を手に入れてアルティメット神イングになった俺様なら
態度がデカいBBAなど、指先一つでダウンさせられるに決まってるのだー!
よって、今更ソロくんもジジイもいりませんえーん。
資料確保したら、カッパくんと一緒にプチっと殺っちゃいましょ。

300 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/07/31(木) 13:42:44.25 ID:Kn5OU0Y8O.net
 

301 :フラグ回収に余念がない参加者の鑑 4/7:2014/07/31(木) 13:45:46.20 ID:ahUyMGg30.net
――えっ? 資料探しに手間取って逃げられたらどうするのかって?
さっきから細かい事ばっかり気にしますねェ。
そんなんだからハゲるんだよ、ハゲ。
……まあ、そうなってしまったら、「セフィロス君を殺すため手段を選んでいられなかった」って言うだけですね。

実際、そうでしょ?
そこらの雑魚どもが、カッパじゃないセフィロス君を真っ向から殺すとなれば、死亡者続出のザックザクですよ。
例えば――そうですねェ、一人がタイマン挑んで殺されて、一人がおびき寄せて殺されて、
一人が特攻して殺されて、一人が回復で力尽きて死んで、一人が普通に戦って殺されて、
あとは……最後に後ろから羽交い絞めにして「俺ごと止めをさせー」って展開になるかナ?
そーんな感じで犠牲者タップリ出して、さんざんお涙ちょーだいした挙句、やっとこさっとこ勝つような相手でしょ。
ホントーはね。

でも、そ・れ・が!
ぼくちんの大魔法でぶっ殺すことが出来れば、被害は運悪く巻き込まれただけの雑魚どもの命だけで済むんです!
今だけお得なバリューセット! ヤスイヤスイ、実際ヤスイ!
さあさ、みなさんご一緒にどーぞ!
3・2・1、で、シンジランナーイ!
アーヒャヒャヒャヒャヒャ! アーーヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!

――つまらん。

戯言もここまでにしておきましょうか。
第一目標はあくまでも資料の捜索と入手、これは動きません。
ですが、セフィロスは確実に殺す必要があるのも事実。
進化の秘法の入手、魔女にぶつける生存者の確保、それらの邪魔しかしないゴミ以下の生ゴミを生かす理由はない。
それとは別に、レオの奴を思い出しそうになるソロや、ウザったいジジイも要らにゃい。
可能であるならば、三人ともここで始末しておきたい!!
これもまた、まっこと心からの本心なのです。

しかし、私の魔力も無限ではありません。
逃走経路や移動手段として、テレポ用の魔力を温存する必要もあります。
となると、魔力を回復しない限り、使える魔法はあと一発が限度です。
それも、ソウルオブサマサを外した状態で唱える必要がありますね。
もちろんぼくちんには山彦の帽子があるから、実質二発撃てることになるけど……
視界外の相手にも効果的な魔法となると、クエイクとトルネドぐらい。
クエイクはさっき使ったばっかりだし、トルネドはそもそも対象を絶対に殺さない攻撃魔法です。
悲しいけど、これ、現実なのよね。

それに――屋上に残っていたユウナ・ソロ・ジジイは、確実にホーリーの直撃を喰らっているはずだ。
なのに、ぼくちんがレーダーを確認した時、セフィロスともどもケッコー動き回っていたように見えた。
どう考えても、誰かが『魔法の被害を防ぐアビリティ』を持っているとしか思えない。
城はかなり吹っ飛んだ点を踏まえると、魔封剣のようなものではなく、対人レベルの防御に留まるのだろうが。
そしてユウナが吹っ飛んでいったことを考えると、ソロかジジイがアビリティの持ち主なんだろう、……

302 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/07/31(木) 13:46:29.26 ID:Kn5OU0Y8O.net
 

303 :フラグ回収に余念がない参加者の鑑 5/7:2014/07/31(木) 13:50:25.94 ID:ahUyMGg30.net
――ムッキーー!

ウザイ、ウザウザウザァァーーーイ!!
邪魔くさい! 青臭い! セリフもクサーーーイ!
あの小僧、パセリじゃなくてセロリか! あのジジイ、干物は干物でもクサヤか!
シュールストレミングが手元にあれば頭からぶっかけて殺してやるのにーーー!
ぢくじょー、ぢくぢくぢっぐじょー!!
あいつらなんか大っ嫌いだー!
ケバイババアのクッサイ化粧にまみれて死んじまえー!!

……ふぅ。
どうしたもんでしょうかね。
直接奴らを狙うより、搦め手を使う方が良いんでしょうか?
例えば城を本格的にぶっ壊して、生き埋めにして、その時点で殺せなくとも旅の扉だけは潜れないようにするとか――
……ただ、城を破壊する場合、それをやる前にやっぱり資料を回収しなければいけません。
となるとトーゼン、その前に奴らが城から逃げちゃう可能性があるわけで……
うーん。めんどクサァ〜〜〜イ。

しかし真の天才であるぼくちんは、文句を言っても始まらないという事を知っています。
資料を回収し終わって、それでもまだこのレーダーに奴らが映っていたら――
その時に、どんな魔法をプレゼントするか、じっくり考えると致しましょう。

クルクル〜と回りながら階段を上ったぼくちんは、とうとうバルコニーに辿り着きました。
ところどころに生じていた亀裂を、ほっぷ・すてっぷ・かーるいす!と華麗なトリプルアクセルで飛び越え、
対岸のバルコニーが見える位置までやってきます。
崩落や倒れた柱なんかで通行不能になってたら困っていたところですが、そんな事はマッタクありませんでした。
やっぱり進化の秘法を手に入れるというフラグがある以上、世界が空気を読んだようです。
まあぼくちんは神だからトーゼンなんですがね!
アヒャヒャヒャヒャヒャ!
……とまあ、大声で笑いたいんだけど、がまんして口パクにしておきます。パクパクパクパク。
ついでにテレポも小声で唱えて、さっさと対岸のバルコニーに渡りました。
そして辺りを見回し、城内への入り口を見つけたぼくちんは、無駄のない無駄な動きでカササササと高速移動します。
念のためにレーダー画面を確認してみましたが、光点が動く様子はありません。
これはもしかして、全☆滅ゥ!
……しててくれるなら、気分爽快なんですけどね。
大方、気絶してるだけか、治療中ってところでしょう。
ぼくちん、『楽してズルしていただきかしら!』が座右の銘だけど、くぉ〜〜んな状況で楽観視できるほどノーテンキじゃありましぇん。
それに、進化の秘法ちゃんが『はやくきて〜はやくきて〜』って嘆いているでしょうからね。
カカッと急遽参戦して、『メイン使い手きた!』と安心させてあげるのが、ナイスガイな私の役目なのですよ!
ひゃひゃひゃひゃひゃ!

――……と、まあ、こういうわけで高らかに笑いながら通路を走り、部屋という部屋を覗いてみたのです、が。

が。

304 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/07/31(木) 13:51:00.41 ID:Kn5OU0Y8O.net
 

305 :フラグ回収に余念がない参加者の鑑 6/7:2014/07/31(木) 13:53:56.22 ID:ahUyMGg30.net
「……どぼじよお」
ぼくちん、思わずため息をついてしまいました。

別に、私の華麗な推理が外れていたわけではありません。
この一帯は、明らかに何らかの研究を行うための施設群です。

瓦礫で潰されたガラクタの山でいっぱいの物置。
殆どの棚が倒れ、本が散乱した書庫。
ご丁寧に、紙と壁の両方にピサロ本人の書置きが残っている、床に器具や机や椅子や標本がコロコロ転がってる研究室。

このように、整理整頓という言葉を真っ向から否定し冒涜する、眼前に広がるゴミ屋敷の汚部屋っぷりに、
繊細極まりないぼくちんは強いショックを受けてしまったのです。

――え?
どう見てもぼくちんが唱えたクエイクのせい?

……う、うるさいうるさいうるちゃーーーい!!
なんでもかんでもぼくちんのせいにしやがって!!
そんな風に正義ぶってカッコツケてるやつは大・大・ダーイキラいだ!
反省したらぼくちんのためにこの部屋を片付けてクツを綺麗にしろ!
ホレ! ホレ!! ホレホレホーーーレぃ!!

……アッハイ。
ここに居るの、ぼくちんだけですよね。知ってます。

「ほんとにほんとに、どぼちましょ」
こんだけグッチャグチャになった部屋から、有用な資料を見つけるだなど……面倒くさすぎて死んじゃうじょ。

ピサロの残した文章も、壁にあるものは、ザンデが見つけた脱出方法の一部を説明したものにすぎない。
紙の方も、殆どが首輪の解除や脱出方法に関する筆談だ。
ただ、拾い集めて軽く目を通してみたが、どうも話題が二つに分かれている。
ピサロが書いたと思われるメモに対し、会話として話が成り立つメモをピックアップしてみる。
筆者は一人。不自然に崩れた汚い字で、ところどころ落書きがあった。
……とまあ、引っ張りましたが、ぶっちゃけアーヴァインくんですよね。この字。
手帳に認めてあった遺書とパーペキおんなじ字体ですし。
話の内容からして、先にピサロとアーヴァインが会話をし、
その後にやってきた何者かが、二人の書置きを見て脱出方法を考察していた、ってところでしょう。
結局のところ、どいつもこいつも『進化の秘法』の手掛かりにはなり得ません。
あえて言うなら、ピサロとアーヴァイン君が口頭で話していたダミーの話題が『進化の秘法』……ってことはないですかね?
ないですか。ないですね。
スミマセン。

306 :フラグ回収に余念がない参加者の鑑 7/7:2014/07/31(木) 13:56:35.13 ID:ahUyMGg30.net
ただ……アーヴァイン君みたいな凡人が『100%ウソだと言ってほしくなる話題』というのは、ちょっぴり気になります。
それにピサロのやつのテノヒラクルーっぷりも気にかかる。
『人殺しだから殺しておけ』とか言った相手と、こんなに仲良くお話してるなんて、イカにもオカシイじゃないか!
繋がってるとは思われない相手だからこそ、重要な情報を流した――なーんて可能性もあります。
もちろんユウナちゃん級に頭のおかしい奴だったら『なーんて、ンなワケあるかー!』と断言できるんですが……
アーヴァインくんの場合、言わばステルス対主催という立ち位置のようですからねぇ。
セフィロスくんをぶっ殺したら、本腰入れてアーヴァイン君の精神を弄ってみるのもアリかもしれません。

けど――記憶を破壊せずに人格だけをぶっ壊して支配下に置くってのも、中々難しいんですよね。
ぼくちん渾身の自信作だった操りの輪も、記憶喪失という副作用が残ってしまいましたし……
進化の秘法のついでに、そういう精神操作系魔術の資料も転がってるとぼくちんウ・レ・P! いんですが。

でも、そこまで期待するのは無駄とか無駄じゃないとか以前に――
ここを片付けながら探していかないと、あるかどうかすらわかりませんよね。

「めんどくさーい……お前らてつだえー!」

なーんて言っても、周りは誰もいません。
私は肩を落としながら、資料探しという地味ィーーな仕事を始めます。

全国七十億人のケフカファンの皆さん!
可哀想なぼくちんを、てつだってチョーダイな! ……ヨヨヨ。



【ケフカ (MP:1/9)
 所持品:ソウルオブサマサ 魔晄銃 魔法の法衣 アリーナ2の首輪
 やまびこの帽子、ラミアの竪琴、対人レーダー、拡声器
 リュックの支給品袋(刃の鎧、チキンナイフ、首輪×2、ドライバーに改造した聖なる矢×3)
 サイファーの支給品袋(ケフカのメモ)
 レオの支給品袋(アルテマソード 鉄の盾 果物ナイフ 君主の聖衣 鍛冶セット 光の鎧)
 第一行動方針:部屋を探索し、進化の秘法に関する資料や役立ちそうな資料を手に入れる
 第二行動方針:セフィロス・ユウナ・ソロ・クリムトを初めとする、邪魔な人間を殺す
 第三行動方針:アーヴァイン達に首輪を解除させる
 第三行動方針:「できるだけ楽に殺す方法」を考えつつ全員を殺す
 最終行動方針:ゲーム、参加者、主催者、全ての破壊】
【現在位置:デスキャッスル内部・隠し通路内部の一室】

307 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/07/31(木) 16:20:32.69 ID:pSMmekTM0.net
相変わらずケフカはネタまみれだなw
セフィロス討伐部分は1stネタか。懐かしいね。投下GJ!

308 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/08/02(土) 00:29:23.43 ID:QhOVImdZ0.net
投下乙! ケフカは毎話見てて楽しいw

309 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/08/08(金) 22:52:21.21 ID:d+vQ4nJhW
絵板が死んじまったようなのですが、復活しないのでしょうか。

310 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/08/12(火) 04:56:58.44 ID:KS8D4KqK0.net


311 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/08/14(木) 13:46:48.82 ID:jk3PWNx90.net
ニコ生ガンダム荒らしのキチガイ、他のゲームでもキチガイとして有名
どちらも同一人物

PSID

Konoha310
Lhasa310

バカッターもあって両方こいつ

ttps://twitter.com/konoha_310  ←ツイートだけ削除
ttps://twitter.com/dought1113  ←削除

春から社会人の大学4年らしいwwwやってることも発言も大学生には思えない嘘乙www
荒らして人のせいにするガンダムゲー好きのキチガイ

尚特にダークソウルでもマナーの悪い事を繰り返し複数のプレイヤーにブロックリストに入れられてる模様
格ゲーやFPSでも暴言煽り放題のキチガイとして話題に、FF14もやってるようだ、この池沼には気をつけろよ

主に184も使う、コテは「このは」か「Konoha310」と残すのが多い馬鹿
ニコID 380943 これもこいつである

312 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/08/26(火) 16:16:32.44 ID:Z+k/S8jf0.net
支援

313 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/09/03(水) 19:34:02.80 ID:MQpb+69U0.net
Konoha Leaves = Konoha310 = Lhasa310

いえーい!超真正のKonoha Leavesくん見てるー???
色んなゲームで迷惑かけちゃダメだぞー!!!

http://i.imgur.com/avPf1tH.jpg
内容は ゲームで弱い=底辺奴隷 ゲームで強い=偉い

http://i.imgur.com/SVNjMxG.jpg
内容は 弱いヤツは家族揃って韓国人にレイプされて死ね

流石伝説のキチガイィィィ!!!

ラプラスに乗って♪探しに行こう♪
誰も知っらない♪キチガイのひみつ♪

314 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/09/06(土) 22:59:03.39 ID:iHWuCMVX0.net
お絵かき掲示板見れなくなってる?
なんか「404 Not Found」とか言われるんだけど

315 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/09/07(日) 08:01:15.30 ID:dhGQTwZ/R
うん

316 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/09/13(土) 21:33:47.87 ID:kgQw6/Uf0.net
支援

317 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/09/16(火) 04:07:53.77 ID:aBVKO6jHO.net
保守

318 :賢者の定義とその道程 1/9:2014/09/17(水) 15:04:50.97 ID:U3ixz1b30.net
賢者とは何か。

七百年の時を生き抜いてきた賢者であるギードは、こう答える。
『賢者』とは、『己が集めた知恵を用いて他者を助ける者である』と。

 彼は亀として生まれたが、ただの亀として生きるには賢すぎた。
 そしてそれ以上に好奇心が強すぎた。
 "鳥や他の獣達は、いったいどんな話をしているのだろうか?"
 そんな疑問から彼らの言葉を学び取り、たまたま水辺にやってきた渡り鳥の会話から、世界の広さを教えられた。
 "見たことのない世界にはどんなものがあるのだろうか?"
 好奇心はすぐに強烈な誘惑へと変わり、ギードは故郷を飛び出した。
 そして今とは比べ物にならないほど鈍重だった亀は、すぐに人間達に見つかり、人の世で暮らすようになった。
 幸いな事に、ギードを見つけた人間達は、極めて気の良い人物ばかりであった。
 半ば戯れではあったが、ギードに食事を与え、世間話を聞かせ、古びた玩具や絵本を与えた。
 ギードはすぐに人の言葉を覚え、文章を読み取れるようになった。
 小説や叙事詩から始まり、歴史書、学術書、武術書、魔術書……
 人の世でなければ決して得られぬ叡智の結晶は、彼を飽きさせる事など無かった。
 毎日のように書物を読み、時に内容を実践し、時に新たな発見をし、時に自ら本を書き記し――
 そうして二百年の時が過ぎたある日、人間達の間で大きな戦乱が起きた。

 数多の命を散らし、夥しい血を流しながら広がる戦火は、ムーアの大森林にまで及んだ。
 "ムーアの大森林には自然を司る四つのクリスタルが眠っている"
 古文書を読み解き、そのことを知っていたギードは、クリスタルの安否を確かめるために長老の木を訪れた。
 そして――運命というべき邂逅を果たした。
 生まれ出でたばかりの、"死を超える存在"に。

 ――広がり続ける戦火が、勇気の心を蛮勇へと変え、意味なき破壊をまき散らす。
 ――仲間や家族を失う嘆きが、いたわりの心を憎悪や嫉妬で塗りつぶす。
 ――焼き払われつつある木々は、生という希望の代わりに死を望む絶望を訴える。
 ――住処を失った動物たちの怨嗟は、元凶を探し求め風に乗ってこだまする。
 地水火風のクリスタルが、全て一つ処にあったからこそ。
 光の心の裏返しともいうべき【闇】が、世界中の邪悪が、ただ一本の樹に集ってしまった。
 その結果、ソレは樹などではなくなった。

 ソレは未だ生きている兵士たちを見境なく襲い、喰らい、蹂躙していた。
 ギードは己の叡智と力を振り絞り、ソレを封印した。
 そして生き延びた兵士や将を助けた後、ギードは"襲いかかってきたモノ"の正体を説き、戦を止めるよう訴えた。
 訴えるだけでは足りないと悟れば、戦の原因を聞き、解決方や妥協案を提案し続けた。
 やがて彼の努力は実を結び、戦乱は終結を迎えた。
 その時から、人々は彼をこう呼び称えるようになったのだ。
 『賢者』ギードと。

319 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/09/17(水) 15:05:35.66 ID:zZ/XGHo4O.net
 
 

320 :賢者の定義とその道程 2/9:2014/09/17(水) 15:08:53.48 ID:U3ixz1b30.net
魔女によって作り出された偽りの地を走り抜けながら、ギードは考える。
『賢者として、己が為さねばならぬことは何であるか』を。

心に過ぎったのは、デスキャッスルに向かい仲間の安否を確かめたいという衝動。
ギード自身は城外まで吹き飛ばされたが、クリムトやソロはまだ城内に残っているかもしれない。
打倒魔女の志を共にする仲間である以上見捨てたくはないし、脱出路を確保するためにも彼らの能力は必要だ。
しかし――
ここで危険だとわかりきっているデスキャッスルに戻っては、セージの足止めを買って出たロックの想いを無駄にする。
そもそもソロやクリムトを見捨てるべきではないというのなら、ロックの事も見捨てるべきではない。

(やはり、向かうべきは南東か……)

南東の祠。
サイファーとリュックの仲間が集い、リルムが保護されている場所。
既にプサンとアンジェロが向かっているとはいえ、道中に殺人者が待ち構えていないとは言い切れない。
万が一の事態に備え、脱出方法を伝えに行くべきだ。

決意を固め、茂みをかき分ける。
やがて木立ちが途切れ、デスキャッスルの影が視界に映った。
不自然に城の上空を覆う雲のような闇――
その理由は一秒もしないうちに判明した。
ぶわり、と旋風が頬を叩く。
思わず目を閉じ、そして開ければ、闇は空一面に広がり、その隙間から真黒き流星雨が降り注ぐ。
遠目からでもそれとわかるほど削り取られていく城塞。
崩れる尖塔。
砂浜に築いた城のように、崩れていくシルエット。
気付けばギードの背筋を、ぬめついた汗が伝い落ちていく。
しかし突如小さな光球が、闇に対抗するかのように天を切り裂き、どこかへと飛んでいった。
やがて破壊の雨はぴたりと消え、音という音が止まる。

ギードはごくり、と唾を飲みこんだ。
誰の仕業かなどわからない。
だが、城を何度も揺るがした大地震<クエイク>、
ギードとロックを城のフロア諸共吹き飛ばした規格外の光条<ホーリー>、
そしてたった今目の前で降った隕石の雨<メテオ>は、いずれも生半可な魔導師が使いこなせるものではない。
賢者ギードの知識を持ってしても、脳裏に浮かぶ、それらを操るに相応しい存在などただ一つ――

"死を超える存在"
"この世の邪悪が集まった一本の樹"

――"暗黒魔導師エクスデス"。

321 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/09/17(水) 15:09:02.84 ID:zZ/XGHo4O.net
 
 

322 :賢者の定義とその道程 3/9:2014/09/17(水) 15:11:36.67 ID:U3ixz1b30.net
その名を思い出した時、ギードの脳裏に在りし日の光景が過ぎった。
炎に巻かれた森の奥で、歪な人型を取りながら兵士達に襲いかかるエクスデスの姿を。
この世の邪悪に憑りつかれ、樹であることを辞めたものの姿を。

(【闇】……負の思念……憑りつく……
 ………まさか?)

記憶と単語、かつて起こった現象と眼前で起きた異変。
様々な要素がジグソーパズルのようにかみ合い、一つの仮説を描き出す。

国と国の戦乱と、人と人との殺戮遊戯。
無為な流血の果てに樹に集った【この世の邪悪】と、死者の怨念から生まれ人に憑りつき狂わせる【闇】。
規模こそ異なれどその本質は極めて近しく。
ならば、この殺し合いは――

(『人為的にエクスデスを作り出す儀式』――!?)

蠱毒のように、邪悪を集め。
ただ一人生き残った者が第二のエクスデスとなる。
そうすることにどのような意味や目的があるのかなど、ギードにはわからない。
結果的に似たようなものが生まれてしまうというだけで、魔女の意図ではないという可能性さえもある。
しかし……殺し合いが続けば、ソレは確実に生まれるだろう。

あるいは既に生まれているのかもしれない。
今、城で起きた破壊が、ただ一人の手によって引き起こされたとするならば。

既に【闇】に飲まれ正気すら失ってしまったというアーヴァインか、
サイファーの言を信じるならばティーダを殺めてしまったらしいユウナか、
支離滅裂な言動で先ほど襲いかかってきたセージか、
圧倒的な強さを持ちながらなお力を求め暗躍するセフィロスか、
ギードの与り知らぬ誰かか。
答えなどわからない。
この目で確かめてみなければ。

(……すまぬ、ロック!)

ギードは賢者だ。
七百年の時を生き、五百年前に生まれたばかりのエクスデスを封じ、三十年前にも暁の四戦士に協力しエクスデスと戦った。
そんな彼が考える『賢者』とは、『己が集めた知恵を用いて他者を助ける者である』。
しかし――『賢者ギードとは何を成す者であるか』?
その問いであれば、ギードはこう答えるのだ。

(ワシはエクスデスを封じなければならん!
 この世に新しく生まれ出でようとしているならば、尚更に!)

心を奮い立たせた彼は、進路を変えて城へと向かう。
自らの使命を果たさんとする、その歩みに迷いは無く。
その決意に曇りは無かった。


【ギード(HP3/5、残MP1/8)
 所持品:首輪 
 第一行動方針:デスキャッスルに行き、エクスデス(=ホーリーやメテオを使った存在)を倒す
 第二行動方針:ソロ達と合流して南東へ向かう
 第三行動方針:首輪の研究と脱出方法の実験をする】
【現在位置:デスキャッスル南西の茂みからデスキャッスルへ移動】

323 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/09/17(水) 15:11:44.44 ID:zZ/XGHo4O.net
 
 

324 :賢者の定義とその道程 4/9:2014/09/17(水) 15:13:57.46 ID:U3ixz1b30.net
賢者とは何か。

若くして賢者という職についた青年・セージは、かつてこう答えた。
『賢者』とは、『神に選ばれし者である』と。

 人生は悟りと救いを求める巡礼の旅であるという。
 しかしセージ達――勇者アルス一行が赴いた旅路は、己ではなく世界を救済するための魔王討伐。
 襲い来る魔物の群れから、魔法使いであるセージを庇う為、仲間達はみな前線に立って戦い続けた。
 勇者は剣を薙ぎ、武闘家は拳を振り抜き、盗賊は薬草を配りながらも鞭で敵を牽制し……
 彼らが傷ついていく様を間近で見ながらも、セージに出来る事はいつだって『敵を倒す呪文を唱える事』だけ。
 仲間を癒すことも出来ない。
 仲間を庇うことも出来ない。
 せいぜいがスクルトやボミオスでの援護、だがそれらを唱えるのにも時間は必要で、結局仲間達は手傷を負う。
 役割分担だとか必要経費といった言葉で割り切ることができれば良かった。
 あるいは自らの無力さに気付かないほど愚鈍な人間であったなら、苦悩することも無かっただろう。
 けれども生来の"切れ者"であったセージは、無力な自分を許せなかった。
 それ故に、

 (ダーマで僧侶に転職すれば仲間達を癒す力が手に入る)
 そんな考えに行きつくのは当然の流れで。

 (でも……僧侶になるってことは魔法使いを辞めるってことだ。
  今より高位の呪文は絶対に習得できなくなる……)
  そんな恐怖を抱くのも仕方のない話。
 
 夢の為にこのまま仲間を苦難に晒すか。
 仲間の為に夢を諦め新たな力を手にするか。
 悩んだ末に、セージが選んだのは第三の選択肢だった。
 即ち――自分に素質がある事に賭けて、悟りの書を手に入れ賢者になる。
 その為に、

 『ガルナの塔に挑戦したい』

 雲どころか霧を掴むようなセージの申し出を、仲間達は快く受け入れた。
 そしてダーマから山を越え、塔を上り、飛龍や魔鳥の襲撃を潜り抜け――
 死と隣り合わせの冒険の果てに、ついにセージは念願の悟りの書を見つけ出した。

 (これが……悟りの書……!
  ……でも、本当に僕に読めるんだろうか?)
 そんな不安を余所に、勇者アルスが紐を解き、書を広げる。
 セージはちらりと背後から覗き込み――

 (!!)
 びっしりと書き込まれた文字、それらの意味を『理解』できることに気付いた。

325 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/09/17(水) 15:14:06.09 ID:zZ/XGHo4O.net
 
 

326 :賢者の定義とその道程 5/9:2014/09/17(水) 15:16:39.96 ID:U3ixz1b30.net
 一方のアルスはといえば、首を横に振りながら書を閉じる。
 そしてセージに手渡そうとしたところで、他の仲間――ローグとフルートが声をかけた。
 『記念で良いから見せてくれよ』
 『あっ、私もちょっとだけ見てみたいです〜!』
 その言葉に応え、セージは二人に悟りの書を渡す。
 ローグは興味深げに、フルートはいつもと変わらぬ微笑みを浮かべて、書に目を通し始めたが……
 一分ほど経ったところでこう言った。

 『めんどくせぇ。やっぱセージ専用品だな、こいつは』
 『ですねぇ……うん、やっぱりセージが賢者さんになって、私が僧侶さんになります!』
 『『『えっ?』』』
 『え? どうかしました?』
 『……フルート、僧侶に興味あったの?』
 『すっごくありますよ〜!
  旅に出てからずーっと薬草もしゃもしゃしてますけど、あの味、やっぱり好きになれません〜!
  だから私が回復呪文が使えるようになれば、もう薬草もしゃもしゃしなくてもいいじゃないですか〜!』
 『……まあ、そりゃ、そうだけど。
  でも、それならフルートが賢者になっても……』
 『あっあっ! それは無理です〜。
  私、さっぱり読めませんでしたからぁ。
  きっと選ばれた人しか読めないんじゃないですか〜?』
 『ああそうだな、俺も無理だったし。
  でも、セージには読めたんだろ?
  さっきからスゲェ嬉しそうな顔でニヤニヤしてるしな』
 『えっ』
 『……あ、本当だ。
  すごいなセージ、あれが読めるなんて!』
 『い、いやぁ、それほどでも……あるかも』

 仲間と会話を交わしながら、セージは思った。

 (あのアルスが読めなかった。
  ローグもフルートも読めないって言ってる……
  もしかして、この書はこういうものなのか?
  賢者に相応しい人間だけが読めるようになっているのか?)

 その仮説はすぐに裏打ちされた。
 他でもないダーマの神官が認めたからだ。
 悟りの書を読み解き賢者に転職できる者は、神に選ばれたほんの一握りの人間だけであると。
 元より高い自意識が、セージの心を支える誇りとなるまで時間は要らなかった。
 ダーマで賢者に転職したセージは、その誇りに相応しくあろうと、魔道の研鑽に励んだ。
 その甲斐あって、彼は見る間に数多の回復呪文や補助呪文を修め、勇者一行の旅を支えた。

 ――が。

327 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/09/17(水) 15:16:48.65 ID:zZ/XGHo4O.net
 
 

328 :賢者の定義とその道程 6/9:2014/09/17(水) 15:21:34.91 ID:U3ixz1b30.net
 (でも、本当に……あの時、ローグとフルートは悟りの書を読めなかったんだろうか?)

 ある時、そんな考えが心を過ぎった。

 盗賊、武闘家、魔法使い。
 もしも三人に平等に資格があり、誰か一人だけが賢者になれるというのならば。
 普通、盗賊か武闘家を賢者に転職させるに決まっている。
 その方がパーティ全体の戦力を底上げできるからだ。
 既に魔法使いの呪文を覚えている人間を、わざわざ賢者にする必要はない。
 ――だからこそ。
 本当は読めていたのに、読めないふりをして。
 自分達も使えたのに、セージ専用の道具だと言って。
 二人は、セージが後腐れなく賢者になれるように、身を引いたのではないかと。
 そう思えて仕方が無くなった。
 さりとて、二人に直接確かめる勇気などそう簡単に出せるものではない。
 セージは悩みを心の奥に隠し、戦いの日々を続けた。

 転機が訪れたのは、セージの昔馴染である女商人が開拓した街を訪れた時のこと。
 セージは、仲間の眼を盗んで彼女に会いに行き、相談をもちかけた。
 鉄格子の向こうで粗末なベッドに腰掛けていた商人は、セージの話を聞いた上で、こう言った。

 『そんなの悩む事じゃないじゃん。
  フルート達が言った事が嘘だろうがホントだろうが、そこまで含めて神様の思し召しってことでしょ』
 神様、などという言葉が商人の口から出たことに驚くセージを余所に、彼女は説明を始める。
 『そもそも貴重な本とか道具ってのは、しかるべき人間の元に行くようにできてるわけよ。
  もしあんたが賢者になるべき人間じゃ無かったら、悟りの書自体手に入ってないの。
  手に入れて読めたって事実がある時点で、あんたは賢者になるべき人間だったわけ』
 『そういうものなのかなぁ』
 『そういうもんよ。あんたが賢者になるべき人間だったから、悟りの書が手に入った。
  あんたが賢者になるべき人間だったから、フルート達は賢者にならなかった。
  そういう風に神様の采配が働いたってだけ。
  神様だってちゃーんと人のことを見てるってことは、今のあたし見りゃわかるでしょ?』
 『……君の場合、神様は関係ないんじゃないかな?
  町の人が見ていたっていうだけでさ』
 『あのね、誰も居ないから言うけど。
  ……人なんてのは、自分の事以外なんも見てないわよ。
  町の連中だって、あたしが強引な手段を取った理由も聞かずに「革命だー牢屋に押し込めー」だし。
  かくいうあたしも、町の連中がどう思ってるかなんて見てこなかったもんね』
 『……』
 『もう、止めてよ。そういう真剣な顔すんの。 
  あたしは自分のやるべきことをやっただけ。後悔なんて一つもしてない。
  それよりあんたも、あんたのやるべきことをしなさいよねっ』

329 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/09/17(水) 15:21:42.95 ID:zZ/XGHo4O.net
 
 

330 :賢者の定義とその道程 7/9:2014/09/17(水) 15:24:48.38 ID:U3ixz1b30.net
 『僕がやるべきこと……ね。
  心配されなくても、アルスや他の二人に迷惑かける気はないよ』
 『わかってんなら、今更どーにもならないことでウジウジ悩むの止めなさいよ』
 『えっ? そ、それとこれとは話が別じゃ……』
 『同じよ!
  あんたね、自分以外の人間が全員あんた並みの鈍感野郎だと思ってんの?
  アルスだってローグだってフルートだって、あんたが悩んでる事ぐらい気付くわよ!
  そんであんたの事を心配して、戦いに身が入らなくなったらどーすんの!?』
 『うっ……そ、それは』
 『あんたがすべきことはたった一つ!
  いつもの調子で「僕は神に選ばれた賢者なんです貴方達とは違うんですキリッ!」ってやってりゃいいのよ!
  そんで、アルス達に「君が賢者で良かった、実際安心だ」って言わせなさい!』
 『ちょっと待ってちょっと待って。
  ねえ、君ってば僕の事どう思ってるの?』
 『え? 切れ者って自分で言っちゃう、自意識過剰なやつ。
  そんで正義感と同じぐらいプライドが高い、超高い、高すぎてナジミの塔より高いやつ』
 『あのさあ……君との友人関係、見直していいかな?』
 『あっ嘘嘘! とっても頼りになるセージお兄さんダヨーって思ってるってば!』

 茶化しあい、笑いあいながらも、セージは女商人の言葉を噛みしめた。
 "自分が賢者となれたのは神の意志。
  なればこそ神に選ばれし賢者として、勇者の仲間として、相応しくあれ"
 ……不適切な発言を削って意訳すれば、彼女の言っている事はそういう事だ。
 そしてその考え方は、セージの胸にすとんと収まり、わだかまりを消し去った。


――けれど、それも、昔の話。

セージという青年の一欠片、偽りの『ローグ』は思う。
セージという男は、神に選ばれるべき存在ではなかったと。

彼の足はデスキャッスルへと向かっている。
あくまでも魔物であるギードを追う、という『アルス』の意図によってだ。
そこに『ローグ』の意志が介在する余地はない。
例え『ローグ』が幾万の言葉を費やして説得したところで、『アルス』は考えを変えないだろう。
彼らはそういうものでしかないから、だ。

『アルス』はセージの行動に大義名分を与えるための存在。
だからセージの歪んだ本心に従って行動するが、セージの意志に沿わない発想は持てない。
『ローグ』はセージに正気が残っている事を示すための存在。
だからセージの本心に反する行動が出来るが、真に自分の意志だけで動くことは出来ない。

331 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/09/17(水) 15:24:56.82 ID:zZ/XGHo4O.net
 
 

332 :賢者の定義とその道程 8/9:2014/09/17(水) 15:29:05.92 ID:U3ixz1b30.net
行動する権利はあるが意志がない。
意志を持つ権利はあるが自由がない。
例外があるとすれば、それはどの人格にもはっきりわかるほどの危険が迫った時だけ。
それを踏まえても、セージが都合よく事態を運ぶための傀儡というわけだ。
……少なくとも『ローグ』はそう捉えているし、誰も否定しないだろう。

(もしもあの時、本物のローグやフルートが賢者になっていたら――)

心に過ぎって止まないifが『ローグ』の思考を縛る。
もしも接近戦で後れを取る事も無い、心の弱さに押しつぶされる事も無い者が賢者になっていたのなら。
セージという男が、魔道を究める夢をきっぱりと諦め、もっと別の道を選んでいたのなら。
誰も彼もが今よりずっとマシな道を歩んでいたのではないか?
――そんな、存在しない可能性をシミュレートせずにはいられない。

(……神が、選ぶ人間を間違えやがったんだ)

精神の片隅で、『ローグ』はぽつりと呟く。
本物のアルスやローグ、フルートを責める事は出来ない。
故にセージという男と、心の弱い人間に誤って賢者の素質を与えてしまった神にしか恨み言を吐けなかった。
『正気』を割り振られた人格でなければ、そのまま神を呪い、心の【闇】に全てを委ねていただろう。
だが――どれほど歪んでいても、『ローグ』の中には未だ賢者セージとしての矜持が残っている。

(このままぶっ壊れて魔物以下の存在になるなら、死んだ方がマシだ。
 亀やさっきのニィちゃんみたいなまともな奴なんかじゃなくて、殺し合いに乗った奴に見つかって殺されて――
 ……ああ、いや、出来ればそういうマジで悪い奴とは相打ちになりてぇが)
 
セージという男の足は、デスキャッスル方面へと向かっている。
ギード達と共に吹っ飛んできた瓦礫や、遠目でもそれとわかるほどボロボロに崩れた城影からして、
大規模な戦闘行為が行われたことは間違いない。

だからきっと、そこには人としての誇りを捨てた殺人者がいるだろう。
そしてきっと、そこには魔物であっても生きるべき者がいるのだろう。

(……)

333 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/09/17(水) 15:29:13.07 ID:zZ/XGHo4O.net
 
 

334 :賢者の定義とその道程 9/9:2014/09/17(水) 15:34:29.26 ID:U3ixz1b30.net
『ローグ』の記憶に、女商人と交わした最後の会話が過ぎる。

 『ねえ、君は……町の人たちや僕らを恨んでいないのかい?』
 ――老人と共に町を開拓し、勇者の旅路を支援する為に大量の金を集め、その結果全てを失った彼女は。
 『は? なんでよ』
 と、呆けた顔で答えた。
 『なんでって……その、だって、まるっきり悪者扱いじゃないか。
  おじいさんの夢を叶えて町の人たちの暮らしを良くするために、一生懸命頑張ってきたのにさ。
  僕らのオーブ探しを手伝ったせいで、余計なお金が必要になって、そのせいで恨まれて投獄だなんて』
 『そんなんでいちいち恨んでたら、商人なんてやってけないわよ。
  それにあたしだって慈善事業はしてないし、色々と美味しい汁を吸ってたのは事実だもん』
 彼女は猫のようににやりと笑ったが、セージの表情に気付くと真顔に戻った。
 こほん、と咳払いをし、バツが悪そうに壁を見やる。

 『……まあ、だから。
  神様ってのは、あたしたちが思ってる以上に、あたしたちの事を見てて――
  あたしがちょっと調子乗ってたから、反省する機会を与える為に天罰を与えた。
  これはそういう話で……恨むとか、誰が悪いとか、そういう話じゃないのよ』

――彼女のように、他人を憎まず、それ以上に自分自身を否定することもなく。
罪も罰も全てを受け入れて生きていくことができたなら、セージという青年は心を壊す事もなかったのだろう。
けれど、最も正気に近しいはずの『ローグ』でさえ、それが出来ない。
セージという男の道程全てを否定し、その死を願わずにはいられない。

(もしも……もしも彼女を罰した神<アンタ>の眼が、このクソッタレな世界にも届いているのなら)

『ローグ』は願う。

(あんたが賢者に選んだ男に、相応しい罰を与えてくれよ。
 ……この際、賢者らしくだなんて贅沢は言わねえから)

罰と死を希う、その想いだけは曇りなく。
されどセージという青年は、迷走の果てに城へと向かう。
賢者としての使命を忘れ、自分自身のあるべき姿さえも見失ったまま――


【セージ(MP1/2、多重人格)
 所持品:ハリセン、ナイフ、ギルダーの形見の帽子、イエローメガホン
     英雄の薬、厚手の鎧、般若の面、釘バット(FF7)、グラディウス、聖なるナイフ、マテリア(かいふく)
     陸奥守、マダレムジエン、ボムのたましい
 基本行動方針:『アルス』:ギードを追い、殺す/魔物や悪人を倒したい/城へ向かう
        『ローグ』:セージに死んでほしい、出来れば本物の殺人者と相打ちがいい
        『フルート』:皆と一緒にいたい/城へ向かっているつもり
        『セージ』:特にない/『アルス』の意見に従う
 最終行動方針:『ローグ以外共通』:みんなと一緒に魔女を討伐する、目の前の状況に対処】
【現在位置:デスキャッスル南西の茂み(分かれ道のあたり)からデスキャッスルへ移動】

335 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/09/18(木) 10:46:26.85 ID:EXG1kfbT0.net
新作乙です!!
デスキャッスル跡で再度乱戦フラグが…今度は跡形なく吹き飛ぶかねえ

336 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/09/18(木) 12:45:08.28 ID:DdaVVlsX0.net
投下乙です!
闇≒エクスデスの解釈は新しいなあ。
そんでもってカッパとケフカのいる城にセージとギードか……

337 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/09/18(木) 22:01:59.21 ID:dEBhRwVZ9
セージがいかれちゃった当初は、誰かはやく引導渡したれよと思ったが
分析が面白すぎてだんだん楽しみになって来た

338 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/09/25(木) 02:05:12.16 ID:bphzIkBL0.net
乙!

339 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/10/02(木) 20:57:13.74 ID:ihR/e3zS0.net
乙です

340 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/10/08(水) 21:19:29.63 ID:XYrA9PsD0.net
久々に来たけどまだ続いてるんだなあ
10年くらい続いてるよな

341 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/10/13(月) 15:43:09.20 ID:RAEYeaUa0.net
今年の頭に@pagesでPerlが使えなくなってしまったので、移転しておきました。
ttp://r0109.sitemix.jp/ffdqbr3/
更新できなくなったタイミングの情報での復元となりますが、ご了承お願いいたします。

342 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/10/13(月) 17:32:13.15 ID:/3eqJIq40.net
>>341
乙です!
とりあえず、ギード、ロック、セージ、ヘンリーの4名を移動させてみましたが
こんな感じで大丈夫でしょうか

343 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/10/13(月) 18:46:29.51 ID:RAEYeaUa0.net
>>342
ありがとうございます!
長い間更新できない状態でほったらかしで申し訳ございませんでした

344 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/10/16(木) 05:52:14.99 ID:WYcFT01+0.net
乙です

345 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/10/22(水) 03:27:37.12 ID:1hh3MqYS0.net


346 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/10/29(水) 00:12:03.24 ID:6iygeJjA0.net
乙です

347 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/11/04(火) 03:24:39.00 ID:L8Mw5FFL0.net


348 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/11/08(土) 18:15:39.64 ID:cHeibySS0.net
乙です

349 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/11/14(金) 00:44:19.94 ID:Ywhkvp6k0.net


350 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/11/20(木) 06:06:07.80 ID:W+Sp7MCR0.net
乙です

351 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/11/24(月) 14:22:14.33 ID:4WO334mu0.net
乙!

352 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/11/27(木) 14:14:49.93 ID:nex5ljbA0.net
何となく参加者見返したが、FFだと10-2までDQだと7までしか参加してないんだな
要するにFFは12発売前、DQだと8発売前からやっているってことかw
かなり長々とやっているんだなあ。それでも進行は遅いけど着実に進んでいるのが凄いがw

353 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/11/27(木) 16:07:28.35 ID:z7fE8F1i0.net
もうかれこれ15年くらいやってるからな
それだけの間頓挫せずに続いてるのも凄いし、これだけかけて完結してないのもまた凄いw

354 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/11/29(土) 18:32:14.37 ID:AgMXHfli0.net


355 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/12/04(木) 21:29:43.68 ID:3gA/6+Dc0.net
乙です

356 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/12/10(水) 14:18:17.45 ID:g55W5/n20.net
おつ

357 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/12/16(火) 18:42:48.24 ID:2RLFbzGL0.net
保守と乙勘違いしてると思う

358 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/12/20(土) 23:30:00.75 ID:hY5ChNzLU
じゃあ、ほしゅぉつ

359 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/12/20(土) 23:22:19.68 ID:zRWkKa8S0.net
まとめサイトのお絵かき掲示板はもう消えてるんだな

360 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/12/23(火) 19:59:16.52 ID:KCr26A5s0.net
マジかよ

361 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/12/23(火) 21:01:46.53 ID:KQv2TNPZT
ケフカ以外も頑張って描くから復活してください

362 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2014/12/27(土) 20:32:28.83 ID:MHuxS/VL0.net
支援

363 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/01/03(土) 15:19:31.70 ID:7ilAwOIr0.net
支援

364 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/01/09(金) 18:23:30.44 ID:KcvQmzA70.net
支援

365 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/01/11(日) 22:37:52.09 ID:LM6TmFb1K
あけましておめでとう

366 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/01/14(水) 14:51:15.08 ID:ATMnCvW90.net
支援

367 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/01/20(火) 15:50:45.72 ID:Lu0rIrBl0.net
書き手はまだ残ってるのかな?

368 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/01/25(日) 23:55:09.51 ID:Dia/kCDAO.net
そういえば八章に入ってからはまだ死者が出てないんですね…

369 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/01/27(火) 16:01:00.24 ID:TzUQiwV20.net
超久しぶりに見に来た。FFDQ板自体本当に久しぶり
これ始まったの確か2004年ごろだったかな
最初の頃だけ書いてたけど頑張ってくれ

370 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/02/01(日) 14:39:07.65 ID:sdwoR/FC0.net
生き残りの内で女性は4名(一人マーダー)、DQ勢は6名か…

371 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/02/02(月) 12:31:15.88 ID:iSq82L+Y0.net
この板で一番長く続いてるよな

372 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/02/07(土) 00:11:28.20 ID:M2HuuRPo0.net
マジかよ

373 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/02/07(土) 11:35:16.51 ID:9ik7Gk/10.net
バトロワ3rdスレPart1がが04/10/29に立ってるから10年以上続いてるな

374 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/02/07(土) 12:29:01.38 ID:0eaeeEnq0.net
7章までは書いてたが、DQ10が出てからそっちが忙しすぎてあまり参加しなくなったな
仕事が忙しいだけなら時間作るのは簡単だが、趣味で忙しいと時間が創れなくなる

375 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/02/11(水) 20:09:39.29 ID:GAc4a2ej0.net
支援

376 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/02/15(日) 17:52:37.08 ID:w5eukKhU0.net
誰も続きが思い浮かばないんやろか?

377 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/02/21(土) 18:33:02.13 ID:gnzDj98V0.net
支援

378 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/02/22(日) 17:04:18.11 ID:F+aLZ+sV0.net
エイブラハム

379 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/02/25(水) 16:53:58.49 ID:yCSpLI070.net
>>378
死ね

380 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/03/01(日) 22:49:15.28 ID:+5fg5A7E0.net
 

381 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/03/07(土) 04:05:17.24 ID:IIYRMdtw0.net
hs

382 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/03/12(木) 16:36:34.59 ID:v3F3TLcv0.net
支援

383 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/03/17(火) 13:57:06.72 ID:khVelYUs0.net
支援

384 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/03/22(日) 00:51:50.92 ID:ST4gfaNe0.net
保守

385 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/03/25(水) 00:05:40.56 ID:DI0F9v+w0.net
保守

386 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/04/01(水) 04:36:43.68 ID:MuYJARXT0.net
支援

387 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/04/04(土) 17:11:17.22 ID:7WTHJUCu0.net
支援

388 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/04/06(月) 17:57:16.19 ID:Q6fVnR/B0.net
保守

389 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/04/07(火) 22:23:39.98 ID:D4xld0ic0.net
声なき声に

390 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/04/10(金) 15:01:44.53 ID:77gv3hXw0.net
支援

391 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/04/13(月) 13:45:33.24 ID:vN3aqOXh0.net
保守

392 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/04/14(火) 17:31:37.65 ID:gzmlTRQn0.net
テス

393 :何事もこじらせてはいけません 1/24:2015/04/14(火) 17:41:50.32 ID:gzmlTRQn0.net
情報は重要だ。
いつの時代も有力な貴族は優秀な間諜を抱えているし、少し目端の利く騎士や商人・傭兵程度でも子飼いの情報屋を用意している。
少しでも鮮度の高い情報を得て、少しでも誤った情報を敵に掴ませなければ、成功することなどできはしない。
目標が大きいのであれば尚更だ。
状況は刻一刻と変化するもの、一つ読み損ねるだけで足元を掬われる。
故に、スコールがサイファーへの情報収集を優先したことは至極当然のこと。
俺に非があったと認める気はないが、腹立たしさや反感などは覚えない。

だがまあ、それはそれとして。

いくら情報が重要であるといっても、馬鹿の話に俺が付き合う必要は無いに決まっている。
適材適所、役割分担。
スコールだってそれを理解しているから俺に攻略本を任せたはずだ。
城での出来事から語り始めたサイファーの声を背にして、例によって触ってもいないのに開く扉を潜る。
最後にちらと振り返ってみたが、ティーダはどうやら化物が来るまであの部屋で二人の話を聞くつもりらしく、床に座り込んでいた。
なぜ椅子に座らないのかと思ったが、円形状に湿った床と髪先から滴り落ちる水がその答えだと気付く。
ほんの少しだけ気が咎めなくもなかったが……
化け物を野放しにした馬鹿には良い薬だろうと思い直した。
さっさと踵を返し、扉の先にある廊下へと足を進める。

四方は金属の壁、足元も繋ぎ目一つない金属の床。
上を向けば幾本もの細長い物体が眩い光を放ち続けていて、周囲を真昼のように照らしている。
もはやため息すら出てきやしない。
スコールはこの場所を『飛空艇ラグナロク』と呼んでいたが、こんなもの、大昔のイヴァリースにだって無かっただろう。
……いや、俺が知らないだけで、ゴーグに行けばこんなものが埋まってるんだろうか?

連鎖的にイヴァリースの光景が脳裏を過ぎる。
帰りたい。
生きてイヴァリースに帰りたい。
幾度考えたかもわからないほど切実で、けれど現実の前では容易く潰れてしまいそうな望郷の念を胸に、足を進める。
三十秒ほど歩いたところで目的の部屋と思われる扉が見えた。
使用人が開けているわけでもなく、ただただ独りでに動く扉というのも奇妙な話だ。
夢の中だから成し得ているのか、スコールの世界ではこれが当たり前なのか。
……爆弾首輪や"でじかめ"に対する反応からして、多分後者なんだろう。

俺の知らない世界。
俺の知る常識が通用しない世界。
そこには、あるいは貴族も平民もない国が存在するのかもしれない。

394 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/04/14(火) 17:44:40.29 ID:gzmlTRQn0.net
  

395 :何事もこじらせてはいけません 2/24:2015/04/14(火) 17:47:15.33 ID:gzmlTRQn0.net
常識的に考えれば"羊飼いだけで家畜の居ない牧場"や"家畜だけで羊飼いが居ない牧場"など成り立つはずがない。
だが家畜や平民の役割を機械が全て果たすのであれば、人間は皆貴族という国が出来上がるのかもしれない。
ああ、認めてやる。認めてやるさ。
殺し合いという無法地帯においては貴族だろうと平民だろうとそんな肩書は何の意味もなさないように。
法も国家も魔法も犯罪も全ての概念が根底から異なる、
俺にとっての非常識が悉く常識としてまかり通ってしまうような異世界でなら、
どこぞの犯罪者どもが喚いたような夢想・空想・妄想の類も現実として成り立つんだろうさ。
認めてやる、認めてやるともッ、その『可能性』だけはなッ。
けれど、そんな世界やそんな国が存在したとして、それがマトモかどうかは別の問題だ。
平民、家畜、領土、それらは全て貴族と王家の財産であり、だからこそ騎士や領主が必死こいて他国や魔物の侵略から守っている。
だが平民と家畜を全て機械に置き換えてしまったなら、
それは即ち機械ごときを守るために人間様が必死で働いたり命賭けで戦うってことになるはずだ。
現にスコールだって傭兵学校の生徒だと言っていた。
学校があるってことは傭兵という職業に需要があるってことだろうし、つまりそりゃ戦争があるってことじゃないかッ。
命を持たない鉄塊を奪い合うために人間様が前線に立ち死んでいく、そんな世界の何が正しいんだッ?
俺からすればそっちの方がよほど理不尽極まりないッ!

「くそっ、さっさと帰らせろッ。
 俺はイヴァリースに、ランベリーに、ルオフェンデスに帰りたいんだよ……ッ」

誰も聞き止めやしないとわかっているからこそ、俺はあえて恨み言を吐き捨てる。
喚かなければやってられない状況だが、他の奴に八つ当たりしたところでどうしようもないからだ。
それに貴族も平民も存在しない世界なんてのはぞっとしないが、スコール個人が嫌いってわけじゃない。
散々愚痴をたれたが、この自動扉だって飛空艇だって"でじかめ"だって、使う分には便利で良いとは思っているさ。
だがな? 少しは俺の気持ちも考えろよッ。
悪趣味な魔女の掌を僅かに抜け出して俺だけの夢の世界を得たと思ったら、
馬鹿どもにギャアギャア喚かれたり『化物』に見つかりそうになったり、あまつさえ新しい馬鹿が増えたりしてるんだぞッ!
怒りやストレスだって溜まるに決まってるし、思考だっていちいち陰鬱になるってもんだろうがッ!!

――そんな苛立ちと自己弁護交じりの愚痴を心の中で重ねながら、俺はスッと開いた扉の隙間から身体をねじこむ。
足を踏み入れた室内で最初に目に付いたのは、中央に鎮座する金属製のテーブルと四個のスツールだった。
どういう意味があるのか、どれもこれも頑丈そうな金具で床にがっちりと固定されている。
しかしそれ以上に異彩を放っているのが机上に敷かれたテーブルクロス。
見た目は古びた羊皮紙そっくりだが、触れてみればそれは明らかに木綿で出来ている。
真ん中には3×3の升目が描かれていて、その傍らに置かれた透明の小箱は小指の先ほどのチップを何枚も収めている。
チップの絵柄は地水火風を示しているように見えるが、これはスコールの世界の占いかゲームなのだろうか。
そういえばスコールとあの『化物』は、カードがどうこうと話していたな……

396 :何事もこじらせてはいけません 3/24:2015/04/14(火) 17:52:21.20 ID:gzmlTRQn0.net
「自前の飛空艇に娯楽室ってわけか。
 ……フン、まるで王族だなッ」

ああ、わかっている。
わかっているさ。
生まれが貴族でなかろうとも、見た目に反して俺と1歳しか違わなかろうと、一度でもあの魔女と戦って生還したとなれば間違いなく英雄だ。
この閉ざされた世界の中でさえ魔女を出し抜いてみせる頭も、常識を超えた剣術の腕もあるってのに、俺の意見や存在を軽んじることもない。
俺や親父がどれほど望んでも掴み取れない名誉を手にしておきながら自分の食い前しか考えていない家畜共や、
善人気取りで他人を殺めながら仲間に守られて喜んでいる偽善者とは、格も出来も違う。
万人に信頼されて当然の人間。
それがスコールという男で、そんなヤツを妬んだって仕方がない。
それこそ侯爵様やザルバック卿相手に嫉妬するようなもんだ。

だが、それはそれとして――

(たとえ他国や異世界の英雄だろうと同年代の相手に、いつまでも一方的に気圧されてたまるかッ……!)

そんな、未練がましくも今だ心の奥に燻っているちっぽけなプライドが、皮肉にもならない下らない台詞を吐き出させた。
ほんの僅かな充足感とそれに倍する空しさを覚えながら、俺はスツールの一つに腰掛ける。

「……チッ」
材質の時点で想像できていたことだが、やはり硬すぎて座り心地が悪い。
ぐるりと周囲を見渡してみても、クッションなどという気の利いたものはない。
やたら薄い本ばかり収めた本棚と、その上に飾られた五枚の精緻な絵――"写真"が目に付く程度だ。

右端は花畑に佇むリノアの写真。
良く見ると背景にラグナとかいう男と、見知らぬ中年の夫婦が写りこんでいる。
二枚目はどこかの野外劇場で楽器を抱えている四人の男女と、彼らの演奏を聴いているらしいリノアの写真。
五人とも魔女の夢に出てきた、スコールと一緒に魔女と戦っていた連中だ。
要するに仲間達との思い出って事なんだろうが……
リノアの横顔が全体の3分の1を占めるほど大きく写っていて、その他の四人はほぼ背景扱いだ。
おかげで奇妙な縦長のトランペットを吹いている男があの『化物』本人だと気付いても、恐怖は浮かんでこなかった。
最も、絵だの写真だのでブルっちまうほど軟弱になっていたら人として終わりだと思うし、そこまでチキンになった覚えはないがなッ。
……まあそれはいい。
三枚め。満面の笑顔で犬を抱いているリノア。
毛艶も良いし彼女の飼い犬なのだろう。
そういえば下の本棚にも『ペット通信』とかいう本が大量に収まっている。
背表紙の色も割り振られている番号も違うから、内容は全て異なっているのだろうが……何にしても贅沢なこった。

397 :何事もこじらせてはいけません 4/24:2015/04/14(火) 17:55:57.23 ID:gzmlTRQn0.net
で、四枚目。やっぱりリノア。
赤錆びた鉄で覆われた空と瓦礫の街、影を差すように黒く立ちこめる靄の中で、
空色のワンピースを靡かせながら寂しげに微笑んでいる。
どことなくヘンリーの夢で見た雪原の絵にも通じる、言い知れない虚無感を覚えるが、まあそれなりに美しい。
最後に五枚目。ようやくリノア以外の写真が出てきた。
スコールが子供だった頃の思い出なのだろう。
ぼやけてはいるがサイファーらしき子供と背景扱いされてた四人組らしき子供達、それに少し年上の少女が花火で遊んでいる。

さて。
夢の中にあるものは夢の主の願望の反映。
故にこれらの写真がスコールにとって重要な思い出や記憶だということは簡単に推測できる。
だが、一枚を除いてどれもこれもリノア、リノア、リノア、リノア。
ヘンリーの夢と比べると、些か偏執的に思えるのだが――

……いや、そういえばアリアハンで出会った時にサイファーが言っていたな。
『リノアの騎士を気取ってるスコールって奴を見かけたら、さっさと探して合流してやれと伝えとけ』とかなんとか。
結局リノア本人に会う機会も無かったし、あの馬鹿の言い草にむかついていたから今まで思い出す事もなかったが。
単なる仲間などではなく、恋人かそれに類する関係だったのだろうか。
それならばこの、リノアの写真ばかり飾られた娯楽室というのも少しは納得できる。
納得できるが……

何というか、こじらせているよな、これは。

もちろん、リノアが死んだ時期を考えれば仕方がないことだ。
あの忌々しい魔女を倒すことに成功し、二人で平穏な日々を歩めると思った矢先に訪れた突然すぎる不幸。
月日が経てば心の傷も少しは癒えるかもしれないが、一日が過ぎたばかり。
さらに遺体は前の世界に置き去りで弔う事すら出来やしない、と来ている。
普通の感性を持つ人間なら、忸怩たる感情を抱えるのも当然だ。
そんな内心をこの部屋に押し隠し、冷静な態度を取りつくろって脱出計画に尽力しているのならば――

(……次に顔を合わせる時にでも、慰めの言葉をかけた方がいいのか?)

我ながら、柄でもない考えが頭を過ぎる。
だが俺だって、そこまでさしたる落ち度もないのに不幸な目に合う奴がいたら少しは同情だってするさ。
スコール以外にも、イザとか、ヘンリーとか、緑髪の化物に殺されてたあの女とかな。

ただ――どうにもこうにも思いつかない。
慰め。労わり。ねぎらい。
そういう類の台詞や、それを口にする自分自身の姿が欠片も思い浮かばない。

398 :何事もこじらせてはいけません 5/24:2015/04/14(火) 17:58:00.87 ID:gzmlTRQn0.net
客観的に見ても、俺はいわゆる『一言多い』性質だ。
原因はわかりきってる。
ガキの頃から没落貴族というだけで見下してくる身分知らずな平民ども、そいつらの売り言葉を買い言葉で応じていたせいだ。
俺の正しさを証明したくて、俺が貴族であることを知らしめたくて、ついつい相手を言い負かしたくなってしまう。
先ほどティーダの馬鹿相手にこぼしたエドガー殺害の件など、その最たる例。
あの馬鹿を殺したのはユウナ本人であり、奴自身があの女の狂気を身を持って知っている以上、エドガーの事を喋る必要は無かった。
スコールが機転を利かせてティーダの口止めをしてくれたが、
あのことが『化物』にバレた日には何をされるかわかったもんじゃない。
それに……ヘンリー達の反応からして、マッシュにはエドガーの死自体を知らせていなかった可能性が高い。
当たり前だ。
片腕を無くして昏睡してる重傷者を叩き起こして、血を分けた肉親の不幸な死に様を伝える馬鹿がどこにいる。
まさか絶望して兄貴の後を追えとでも?

――ああ、断っておくがもちろん俺にそんなつもりはない。
これっぽちもな。
アレは本当に、単純にティーダを黙らせたくて口を滑らせただけだ。
だが居合わせた奴らがどう受け取ったかはわからない。

そしてこれも、同じこと。

俺が真剣にスコールを慰めようとして何かを言っても、気付かないうちに地雷を踏むかもしれない。
そもそも俺とスコールの付き合いはたかが数時間でしかないのだ。
攻略本に記載されている経歴にしたって、殺し合いに巻き込まれる以前のほんの一部にすぎないだろう。
他の馬鹿共や20歳児ならともかく、その馬鹿共の相手を引き受けてくれているスコールを滅入らせてしまうのはさすがに気が咎める。
そしてそれ以上に、スコールに見放されようものなら俺の身が破滅する。
『化物』を制御して俺の安全を保障してくれるのも、魔女やその手下に対抗できる可能性があるのもスコールだけだ。
迂闊な事を言ってアイツの怒りを買い、追放されるという事態だけは絶対に避けなければいけない。

ここで俺がすべきことはただ一つ。
意味があるかどうかもわからない慰めなどではなく、イヴァリースへの生還の為に努力を続ける。
即ち、状況を打破する為に攻略本を調査して役立つ情報をかき集めるべきだ。
そう結論付けて、俺は椅子に座り、攻略本を机上に広げた。

ペラペラとページをめくり、セフィロスの記述を探す。
現実世界で優先して対処すべき問題、それは間違いなく奴だろう。
この殺し合いの中枢と言うべき黒いクリスタルも厄介ではあるが、今日明日即座に俺達の命を脅かすというものでもない。
その点、セフィロスの奴は無害なカッパを演じてソロに取り入りつつ、その裏で『化物』を手駒に収めようとしている。

399 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/04/14(火) 18:05:30.78 ID:jenAPSm9v
支援

400 :何事もこじらせてはいけません 6/24:2015/04/14(火) 18:02:22.12 ID:gzmlTRQn0.net
元より規格外の戦闘能力を持ち、初日からクジャと組んで多くの人間を殺戮した男。
一人でも『化物』以上の戦果を叩き出す歩く災厄のような相手が
更なる力を得るために、『化物』を利用し俺達を殺戮しようというのだ。
到底、看過できるものではない。
こちらの戦力が減る前に対策を立て、最小限の犠牲で仕留めるべき。
その為に必要な情報を洗い出すのが前線に立てない俺の仕事だ。
最も、例え人を殺せる気概が残っていたとしても、あんな人外級の輩と直接事を構える気はないがな。

「おっと、こいつか」

侯爵様に似た顔立ちが目に留まり、手を止める。
胡散臭い攻略法とやらを読み飛ばし、視線を下に移すと、至極当然のように奴のプロフィールや正体がつらつらと記載されていた。

曰く、胎児の時から"星に寄生し世界を滅ぼす"メテオパラサイトという魔物の変異種『ジェノバ』と融合していた人間。
曰く、ジェノバの意識に目覚めるまでは誰もが認める人格者であり英雄と呼ばれるに相応しい働きをしていた剣士。
曰く、狂気に堕ちた直後に人間としての死を迎えながらも、輪廻の輪に戻る事を拒みジェノバの統率体として世界に留まり続けていた存在。

初日に見せつけてくれた戦闘能力といい、化物相手にしでかしたことといい、この本の記述といい……
どこをどう見ても、どれ一つとっても厄ネタの塊だ。
念のために攻略法にも目を通し直してみたが、キューソネコカミとかいう支給品頼りの戦術しか書かれておらず、役立ちそうにない。
むしろインチキじみた道具を使わなければ勝てないということは、付け入ることのできる弱点など無いということに他ならない。

せめて他に利用できそうな情報がないかと近隣のページを探してみれば、
セフィロス同様に以前からジェノバと融合しているらしき記述がある参加者が3人。
チョコボ頭の剣士、クラウド。
ソロ達にくっついて行動しているらしい十字傷の男、ザックス。
痩せぎすの学者らしき男、宝条。
どいつもこいつもほんのちょっぴりだけ見覚えがあったり聞き覚えがある。
だがクラウドとかいう奴はセフィロスと戦って死んだはずだし、宝条に至っては鎧男に四人まとめて切り殺された程度の輩だ。
ザックスにしたって、イザとロザリーの話から受けた印象は『珍しくもなんともないアマちゃんどもの一人』。
誰も彼もセフィロスには似ても似つかないし、強いとも冷酷だとも思わないし、セフィロスに操られているような雰囲気も無かった。
それこそ、俺の眼を抉った時の『化物』が一番似通っていると言いたくなる。

「……ッ」

奴のことを思い浮かべたせいか、ずきん、と左目が痛んだ。
野外劇場の写真や子供の写真を見ても何も感じなかったのに、あの時の光景を連想した途端にコレだ。

「『化物』め……ッ!」

401 :何事もこじらせてはいけません 7/24:2015/04/14(火) 18:05:33.64 ID:gzmlTRQn0.net
呪詛の言葉を呟いたところで眼の痛みが増すばかりだとわかっていても、吐き出さずにはいられない。
スコールはあいつを殺さないと言っているが、そんな甘い事を言えるのは奴の本質に触れたことがないからに決まっている。
あるいは、スコールが記憶している『人間だった頃のアーヴァイン』というイメージだけで奴に接しているのかもしれない。
だが、アレは化物だ。
アーヴァインという実在した人間の殻を被り、記憶と人格を引き継いでしれっと周囲に溶け込んでいる、血に飢えた人外だ。
間近で見た俺にはわかる。
あの時の感触、あの時の奴の表情、あの時感じた恐怖と絶望ッ……!
アレを忘れることなど一生出来やしないッ。
それこそ、生きてイヴァリースに帰れたとしてもなッ!

けれど――それでも、それでもだッ。
非常に癪だが……あの『化物』の処理については後回しにするしかない。

スコールがあれだけ頑なに言い切ったのだ。
どれほど危険性を訴えようと、どれほど煽り立てようと、これ以上俺の意見を聞き入れるとは思えない。
さすがに完全に理性を失ってサイファー達に襲いかかってくれれば始末されるだろうが、
いくら俺だって、そんな状況を期待するのは本末転倒が過ぎるってことぐらいわかっている。
現状、奴はスコールの制御を受け付けているし、
アマちゃんすぎて死んだ鈍感バカに対しては何をされようが唯々諾々と従うのだ。
チョコボでもアンデッドでもドラゴンでもベヒーモスでも、調教され飼い馴らされているならそれはただの便利な駒。
ボロ雑巾として朽ち果てるまで使い潰せるなら、それが最良に決まっている。

それに、だ。
仮に奴が正気を失って暴れ出したとしても、今ならば被害を受けるのはサイファーとリュックの二人。
俺に直接危害が及ぶわけじゃない。
万が一サイファー達が奴を殺す事に失敗したとしても、
こちらにはスコール(と役立つかどうかはわからないがティーダもいる)という保証が残っている。
言わば最悪の事態が起ころうと起きまいと、俺の安全は九割方保障されているわけだ。
なら、今はそれで妥協すべき。
左眼の恨みは小さくなどないが、すぐそこにある別の脅威を差し置いて、スコールに見捨てられかねない選択を採るべきではない。

だが、どうする?

データを見る限り、セフィロス本人に付け入る隙はない。
カッパの姿になっている理由が、トードやチキンのように『他者によって強制的に変えられた結果』なら話は楽な方だが。
しかし『化物』やティーダの話を聞いた限り、『生存者の眼を欺くために自分にその手の魔法をかけて変身した』という線も捨てきれない。
載っているかどうかわからんが、一応、カッパになる魔法が無いか調べてみるか……

402 :何事もこじらせてはいけません 8/24:2015/04/14(火) 18:10:57.67 ID:gzmlTRQn0.net
……。
………。
…………。

あった。
カッパー。

『第六幻想世界固有の中級状態異常魔法。
 幻獣ケット・シーの魔力を取り込むか、カッパ装備品を装備し続けることで習得可能。
 使用者:エドガー、ケフカ、ゴゴ、シャドウ、セリス、ティナ、マッシュ、リルム、ロック』

あのやかましいガキやマッシュまで使えるのか。というか存外使用者が多いな。
だが、幸いなことにセフィロス本人の名前は無い。
ラムザがセフィロスを目撃した時間帯と現状の生存者を考慮するに、ケフカかロックがやったということだろうか?

『カッパ化するとカッパー以外の魔法及び戦闘用アビリティが一切使えなくなる。
 全身が滑るためカッパ装備以外の武器防具がまともに使いこなせなくなるが、
 武器に付随する追加効果や防具に付随する魔法防御力は残る。
 道具は制限なく使用でき、戦闘用アビリティに含まれない本人固有の必殺技も使用可能。
 またトードによるカエル化と異なり、本人の能力値そのものは変動しない』

……おい。
何の役に立つんだ? この魔法は。
実質的に武器防具を外して魔法を封印するだけか?
サイレスとアーマーブレイクとウェポンブレイクを同時がけ……ああ、そう表現すれば強そうに思えなくもないな。
だが相手は侯爵様以上に恐ろしい銀髪鬼・セフィロスだぞ?
どう安く見積もったって、徒手空拳だけで身を守れるし人を殺せる域に入ってる。
こんな変な魔法をかけるぐらいなら素直にトードを使っとけば良いものを……
……いや、変な魔法だからこそ解除方法が少ないとかそういうメリットがあったりするのか?

『解除方法
 魔法:カッパー
 呪文:ギガジャティス(P127)
 特技:凍てつく波動(P127)
 道具:万能薬(P420)、イエローチェリー(P627)、ラーの鏡(P627)』

おい。おいッ!
普通に多いじゃないかッ!
まあ、エスナやデスペルが無効というのは良い情報だが……

403 :何事もこじらせてはいけません 9/24:2015/04/14(火) 18:14:09.28 ID:gzmlTRQn0.net
ギガジャティスというのは……ふむ、フィンって奴が使えるだけか。
さっきの放送で呼ばれてたからこれは問題ないな。
凍てつく波動。使用者はピサロとイザとフィン。同上。
万能薬。……支給されているのか。
これは微妙だな。生存者の誰かが今でも持っているかもしれない。
だいたいこの本、長ったらしい書名をつけるなら支給先も明記しておけよ。痒い所に手が届かねえな。
まあいい、次。イエローチェリー。
……『カッパ大好きカッパッパ』? 『ちょっといい気持ちになる黄色いサクランボ』?
非支給品? 錬金で作成可能? イエローメガホンとアモールの水が材料?
良くわからんが、アイテムを組み合わせて別の道具を作る支給品があるということだろうか。
まあ普通に支給されていないなら入手難度は高いはずだし、メガホンと水を組み合わせようだなんて考える馬鹿はいないよな。
……いないよな?
そしてラーの鏡……『精霊が真珠金の剣を溶かして作った、あらゆるまやかしを破り真実の姿を映す鏡』。
錬金で作成可能。材料はきんきらの剣とシルバートレイとインパスの指輪……
きんきらの剣ってのは確かイザが持っていたヤツだな。
剣の形をしちゃいるが、刃もついてないから首を斬る事も出来ないとかいうとんだなまくらで――
――そうだ。当のセフィロスにぶっ壊されたと言っていた!
これは傑作だッ! 自分にかけられた呪いを解ける可能性の一つを、己の手で破壊していたとはッ。
まあ、仮にあの剣もどきが残っていたとしてもインパスの指輪を手放すわけもないんだがなッ!!

……さて。
少しだけ笑いたくなりはしたが、そこまでアマい状況でもない。
解除手段が限られているというのは良い情報だが、個人能力が低下しないというのは明らかに悪い情報。
普通に考えれば遠距離からの狙撃等で安全に始末すべきだが、俺の弓術で当てるのは難しいだろう。
そもそも中身がアレで見た目がカッパだとわかっていても、俺に弓を引けるかどうか。

「……」

考えてみたが、無理な気がしてならない。
当たった時に起こる『殺害』という事象。外れた時に起こり得る『反撃』という行動。
どちらも想像しただけで恐怖と吐き気がこみ上げる。
ならば俺以外に狙撃が出来る奴がいないものか。
考え込むまでもなく最適なのはあの『化物』、狙撃手アーヴァインに他ならないだろう。
けれども奴をセフィロスに差し向けるなど論外中の論外、愚の骨頂極まりない。
他に居るのはラムザ、ヘンリー、マッシュ、ガキ、20歳児。あとリュックにサイファー。
どいつもこいつも、弓や銃で狙撃できるような印象ではない。
そもそもラムザとヘンリーとガキ以外全員脳が筋肉で出来ているとしか思えない。
これならいっそ狙撃なぞ諦めて、重装備のラムザを矢面に立たせ、
ガキが後ろから似顔絵とやらでセフィロスの分身を出しまくる方が――

404 :何事もこじらせてはいけません 10/24:2015/04/14(火) 18:17:11.72 ID:gzmlTRQn0.net
……。

悪くないな。

適当な思いつきだったが、普通に勝機がありそうだ。
少なくともラムザの防具は拳で叩き割れるような代物ではなかったし、
リルムの似顔絵(?)は描かれた対象の現状に関わらず、そいつが使える最良の攻撃を放つ代物であるように見えた。
劣化していない『セフィロス本人』の一撃であれば、カッパなぞ一刀両断できるかもしれない。
しかも仮にセフィロスがカッパ化を解いてしまったとしても、この本を信じるならばリルムはカッパーを使えるのだ。
もちろん似顔絵とカッパーの両方が回避される可能性は否定できないが、
他の連中と比べても、かなり優位に事を運べる組み合わせであることには違いない。

だが、カッパを仕留める為にリルムとラムザを城に向かわせるというのは現実的では無い……か?

リルムはあの通りのガキだ。
どれほど生意気だろうと、余程の緊急事態でない限りは守られて当然の立場。
安全な場所から放り出してみすみす死地に送り込むなど、真っ当な人間なら反対するに決まっている。
賛同するとしたらそれこそ冷酷無残な化物か、俺以上に打算で動ける殺人者。
じゃなけりゃ、革命家気取りの犯罪者ぐらいだろう。
そして、ラムザ単独でセフィロスに勝てるかと問われれば首を傾げざるを得ない。
もちろん俺の知っているラムザよりも成長している以上、それなりに強くなっちゃいるんだろうが……
俺の知るアイツの強さは、仲間への指示出しだとか、味方の攻撃手段に合わせたアビリティで援護するだとか、
腐ってもダイスダーグ卿の弟だと納得できてしまう『指揮官として味方をサポートする』方面の強さだった。
いくらラムザがアマちゃんだといっても、勝てないかもしれない戦いに単独で赴く愚行は冒さない可能性が高い。

まあいい。
攻めることが叶わなくとも、返り討ちにできる戦力や戦術を取れるなら俺達の身はひとまず安泰だ。
あとは"セフィロスが『化物』を回収しようとした場合"を想定しておくか。
『化物』自身の推測によればそうなる可能性は低いのだが、生憎、アレの推測だの何だのを全面的に信用するほど俺はボケた覚えはない。
しかしそうなった場合、果たして対抗策が取れるのだろうか。
一番良いのは『化物』がセフィロスの言いなりになる前に、サイファーとリュックがセフィロスを抹殺する事であるはずだ。
リュックはそれなりに重装備をしていたような記憶があるが……
あの二人、接近戦で奴に勝てるほどの技量があるのだろうか?
気は進まないが、サイファーがこの夢の世界にいるうちに現在わかっている情報だけでも渡しておいた方が良いかもしれないな。

――そう結論付けて、席を立とうとした時だった。
不快感を催す雑音と抑揚のない女の声が、どこからともなく大音量で響き渡ったのは。

405 :何事もこじらせてはいけません 11/24:2015/04/14(火) 18:20:19.10 ID:gzmlTRQn0.net
『緊急連絡。緊急連絡。全乗組員、ブリッジに集合せよ。
 繰り返す。全乗組員、ブリッジに集合せよ』

リュックの声でもリルムの声でもない。
恐らくこの飛空艇に備わっている絡繰の一つなのだろう。
要はスコールのお呼出しってわけだ。
絶対に共有すべき情報が入ってきたのか、俺の意見を聞きたくなるほどのトラブルが起きたのか。
前者だとしても良い情報じゃあないだろうなと思いながら、攻略本を手に部屋を出る。
廊下を駆け抜け、急いでスコール達の居る部屋に戻ると、そこには緊迫した面持ちをした四人の男の姿があった。

「おいおい、何があったんだッ?」
四人目の男、マッシュを一瞥しながら、俺はスコールに問いかける。

「悪い知らせが二つ……いや、三つ入った」

スコールは眉間に皺こそ寄せたものの、それでも普段とあまり変わらない表情のまま呟いた。
その横でサイファーが舌打ちする。
それでサイファー側がまたミスを犯したんだろうと察しがついたが、
スコールの為にここは黙って話を聞いてやることにした。

「一つ目。ソロ達がユウナに襲われ、メテオらしき攻撃魔法に巻き込まれたせいで連絡が取れなくなった。
 二つ目。ヘンリーがソロの安否を確かめる為に単独でデスキャッスルに向かった」

マッシュがバツの悪そうな顔をする。
だがまあ、俺にしてみればさほど意外な話でもない。
ユウナがデスキャッスルに向かったかもしれないという話も、
ヘンリーがソロを助ける事に拘っていたのも、『化物』との会話で出ていた情報だ。
もちろん良いか悪いかで問われれば悪い話だが、スコールがわざわざ俺を呼びつけるほど重要度の高い情報じゃあないだろう。
となると、最後の話が最悪のニュースでそっちにサイファーが関わってるってワケだ。
さて、どんな話なのやら……

「――三つ目。アーヴァインが出会ったというロックはケフカが化けた偽物だった。
 そして十中八九、俺達が首輪解除に成功したことをケフカに知られた」

「……は?」
心の中にあった僅かな余裕がガラガラと音を立てて砕け散る。
ケフカ。ケフカ=パラッツォ。
ロザリーの話を信じるなら彼女とザンデを陥れ、脱出計画をメチャクチャにした張本人。
不殺主義者のスコールですら仲間に引き入れる事は不可能と判断し、『化物』を利用しての排除を考えるほどの厄ネタ二号。
そいつが、なんだって?
何を知ったって?
誰に化けていたって?

406 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/04/14(火) 18:27:38.20 ID:jenAPSm9v


407 :何事もこじらせてはいけません 12/24:2015/04/14(火) 18:30:14.15 ID:gzmlTRQn0.net
「もちろん、ヘンリーの行動自体は責めるべきではない。
 祠の防衛や俺達の計画にも配慮していたようだし、極力支障が出ないように単独行動を選び取ったんだ。
 命の危険だとか自分の首輪が解除できなくなるだとか、そういうリスクだって全部計算に入れているだろう。
 だが、問題はヘンリーが三つ目の情報を知らないということだ。
 故に本物のロックと出会った場合、主催者視点で見てヘンリーが知りえるはずがない情報を口走ってしまう可能性がある。
 主催者が気付かない、もしくはヘンリーが誤魔化し切れれば問題は無いのだが、俺は最悪の事態を想定すべきかと――」

「馬鹿じゃねえのか」

スコールの言葉が終わる前に、思わず本音が口からこぼれてしまった。
相も変わらず濡れ鼠のティーダが咎めるように俺を睨んだが、横に立っていたサイファーが手で制する。
『余計な喧嘩で時間をかけてる場合じゃねえ』って事なんだろう。
さすがにここは俺も空気を読んだ方が良さそうだ。

「ああ、馬鹿は言い過ぎたな。悪かった。
 あのバケ……いや、あれだけ煽られりゃ、引っ込んでるわけにもいかなくなるか。
 まあ過ぎたことは仕方ない、それよりこの先どうするつもりなんだ?」
言外に説明は要らないということを伝えながら、スコールを見やる。
しかしスコールが口を開く前に、サイファーが厭味ったらしく言い放つ。
「そいつを話し合っておきたいんだとよ、指揮官サマは」
緑の眼を細め、俺達二人をねめつけながら、ヤツは壁によりかかり左の踵で床を打った。
そして自分の考えを整理するかのように、腕を組みながらべらべらと喋り出す。

「とりあえず、あのクソピエロに関しては不本意だが放置が安定だろ。
 それに魔女だって、仮にテメェら二人が首輪を外した事に気づいたとしても、その程度ならまだ干渉してこねえだろうよ。
 ヘンリーとの連絡が取れてアイツがヘマやらかしてないかどうか判断できるまでは、
 迂闊に動かずに怪我人の手当やら拠点防衛に専念した方がいいんじゃねえか?」
「おいおいッ! ケフカはザンデやロザリーの脱出計画を潰した狂人なんだぞッ?!
 奴単独で首輪解除の件を魔女にバラそうとするかもしれないし、ましてや魔女が干渉しないなどどうしてわかるッ!!
 不確かな希望的観測で楽観視してるならお前の正気を疑うがなッ!!」
俺の反論に、サイファーはその高い身長で文字通り俺を見下しながらせせら笑う。
「ケフカが首輪のことを魔女にバラす気があるなら、その前に俺にアーヴァインを殺させるか俺達を殺すかしてるはずだろ。
 どっちもしなかった時点で、奴はアーヴァインに利用価値を覚えていて、アイツを操ろうとしてるセフィロスを疎んじてるってこった。
 ケフカとセフィロスが潰し合ってくれるなら、どちらが生き残るとしても俺達の損にはならねえ」
「しかし、セフィロスがケフカに協力を持ちかける可能性は――」
「あったとして、ケフカが聞き入れるわけねえだろ。
 首輪解除の時に裏切られたらその場でゲームオーバーじゃねえか。
 セフィロスがソロみたいなお人よしの鑑だったらともかく、派手にやってる人殺しのクソ野郎って時点でねえよ」

408 :何事もこじらせてはいけません 13/24:2015/04/14(火) 18:36:02.52 ID:gzmlTRQn0.net
くっ。
だ、だが――

「じゃあ魔女が干渉しないってのはどういう判断だッ!?
 首輪を解除するってことは、魔女側からすれば俺達に殺し合いを強制する術が無くなるって事だッ!
 指を咥えて待ってくれる道理などどこにあるッ!」
声を荒げて言い返しても、サイファーはやはり壁に寄り掛かったまま、くっくっと喉を鳴らすだけ。
「玩具が無くなった程度で止まるような殺し合いかよ、ってのもあるけどな。
 ……まあ、テメェみたいなロマンの欠片も無い奴には、一生わかんねぇだろうよ」
その態度と言葉にはカチンと来たが、奴が言わんとすることは察しがついた。
大方、『脱出経路が確立しない限りは主催者側も殺し合いが続行可能と判断し、干渉してこないはずだ』ってことなんだろう。
だからこそ先を制して言い返す。

「ザンデの奴は既に脱出方法を発見したッ、その結果はロザリーとケフカも知っているッ!
 この状況下で、ロザリーかケフカがこちらに合流しようとしたらどうなるッ!?
 首輪も外し脱出路も確保のアテがある、それを悟られれば真っ当な主催者なら潰しに来るに決まっているッ!」
「そりゃテメェの常識だろ。
 まあ……確かに、俺が主催者でもそうするけどな」
サイファーは意味ありげな笑みを崩さぬまま、ちらりとスコールを見やる。
しかしそれは束の間のこと、奴はぐるりと俺達を睨め回しながら言葉を継いだ。

「いいか? アルティミシアは『お伽噺に出てくるような悪い魔女』なんだよ。
 そんな『魔女』が、マジでガルバディア製の玩具なんぞを使って皆殺しなんて手段を選ぶものかよ。
 主催者としちゃ妥当かもしれねえが、『悪い魔女』としちゃ些か興醒めだろ」

「「は、はぁ?」」
間抜けな声を上げたのは俺だけじゃなかった。
ティーダも呆然と口を開けているし、マッシュだって目をぱちくりさせている。
ただ一人、スコールだけが納得したような面持ちで、小さく溜息をついてから頷いた。
「ああ……なるほど」
今の話のどこに説得力があったのか俺には計りかねる。
しかし考えてみればこの二人、アルティミシアが夢に見る程度には以前からの面識があるわけだ。
出会った人間でなければわからない、性格上の問題ということなのだろうか?

409 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/04/14(火) 18:38:42.02 ID:dRfiNt2s0.net
しえ

410 :何事もこじらせてはいけません 14/24:2015/04/14(火) 18:38:57.62 ID:gzmlTRQn0.net
「ま、他の連中にはピンとこねえだろうがな。
 『善良な人間を浚って殺す』『憎しみを煽り争いを起こす』『人を苦しめることに喜びを感じる』
 そんな『悪い魔女』って偏見で迫害された末に、ブチ切れて狂ったのがあの女だ。
 あの女の行動基準は『悪い魔女らしい振る舞い』と、あとはせいぜい『SeeDへの復讐』だけだ。
 理屈だとか常識だとか合理的な思考だとか、そんなのはハナからあの女の頭に存在しちゃいねえよ」
「だ、だったらなんでこんな首輪を俺達に嵌めたんッスか?!
 俺達の動向を監視するためじゃ……!」
「たまたま『悪い魔女』が掌握した国に使えそうなオモチャがあった。
 面白そうだから使ってみよう。
 せっかくだから馬鹿が一人か二人引っかかるようにちょっと改造してみよう。
 ……そんな程度の考えだと思うぜ」

サイファーの視線が、俺の手にある攻略本へと注がれる。
『じゃなきゃ、わざわざ首輪の機能や構造を記した支給品なんざ配るわけがない』と言わんばかりに。

「リノアが真剣な目的で大真面目に考えた結果、映画よりファンタジックな作戦を立てる奴だとしたら、あの魔女はその逆だ。
 ヒロイックファンタジーの悪役ごっこをするために、無駄に手の込んだ策略を用意する女なんだよ。
 だから最初からエスタに入り込んでこのラグナロクをぶんどりゃ済むような話を、とてつもなく大回りな手段で派手にやらかしたりするわけだ」
「だが、サイファー」
肩を竦めながら主張するサイファーに、スコールが真っ向から視線をぶつけて問いかける。
何故か右手の親指をサイファーの胸に向けているが、その仕草がどんな意味を持つのか、俺にはピンとこない。
「あれは単にオダインやラグナの反撃を警戒しただけじゃないのか?
 何事だって、万が一の事態を考えるぐらいの事はあの魔女だってするはずだ。
 リノアに似てるというなら『それはない』と判断するのもわかるが……逆だというなら尚更、干渉を警戒すべきじゃないのか?」
サイファーは唐突に俺やティーダをちらりと見てから、スコールに向き直り、口に手を当てながら言葉を返す。

「……他にも山ほどあるんだよ、この手の話が。
 俺以外にも洗脳されたガルバディア兵達がもっと効率的な作戦を提案しても
 たいていは『魔女の恐怖を愚かな人間共に知らしめるためだ』って譲らねえ。
 そのくせ、死にかけたテメェを殺さずに収容所に放り込んで拷問にかけたらどうかって進言には速攻で乗りやがった。
 大方、精神的にクる嫌がらせって条件に引っかかるかどうかが基準なんだろうよ」

大げさな身振りでどうでも良さそうなことをまくしたてるサイファーの話のどこに納得が行く要素があったのか。
じっと耳を傾けていたスコールは、急に腕を組みながら大きく頷いた。
「ああ……あの時か。
 なんで胸を貫かれたのに生きているのかと思ったら、あんたの差し金だったのか。
 どういう条件が重なったらあんなことになるのか不思議に思っていたんだぞ?」
「感謝しろよ? 俺が何も言わなかったらD地区収容所どころかそのままあの世送りだったんだ。
 テメェだけじゃなく、他の三人もな」

411 :何事もこじらせてはいけません 15/24:2015/04/14(火) 18:44:09.90 ID:gzmlTRQn0.net
そこまで言うと、サイファーは唐突にあらぬ方向へ視線を向けた。
まるで言葉を選んでいるかのようだ。
この一見益体の無い会話、もしかして何か意味があるのだろうか?

「そうだな……テメェらSeeD組は間違いなく全滅。
 リノアは関係ねえから脱出できるだろうな。まあその後で親父ともども捕まえられそうな気がするが。
 ガルバディア野郎は……半々ってところじゃねえか? 100%生き延びるってこたねえだろ。
 まあ、こんなのは所詮憶測だが、当たってる自信はそれなりにあるぜ」

俺の疑惑を肯定するかのように、スコールは真剣な表情を崩さぬままサイファーの話を聞いている。
「なるほど……そうなっていたらニーダやシュウ先輩やCC団が伝説のSeeDになってたかもな。
 ところであの拷問は痛かった。
 賠償はあんたに請求していいか?」
「ハッ、帰れたらポーション代ぐらいは払ってやるよ」

一体どういうことだ。
この会話、表面的な部分だけを受け取るならば、サイファー達が把握しているアルティミシアには常識で測れない非合理的な面があるということ。
アルティミシアの夢で見た情景と照らし合わせれば、確かにそんな傾向や雰囲気が無くも無いが……
果たして、それはスコールが納得するに足る理由か?
それに話の本筋と関係のない話題も多いし、何より二人の身振り手振りが気になる。
やはりこの会話には何かの隠喩が混ざっているのではないか?
何故それを俺達に共有しない? 隠す必要があることなのか?

――俺がそのことを指摘しようとした矢先だった。
死に損ないの馬鹿が、例によって空気を読まずに口を挟んできたのは。

「え、えっと、サイファーの意見はわかったッス。
 でも……様子見してて、本当に首輪解除が間に合うんスか?
 確かすっげー魔力を使うから、万全の体調でも一度に3人とか4人が限度って話なんだよな?」
「ああ」
スコールが頷くと、ティーダは文字通り湿気っているツラをさらに曇らせながら言葉を継いだ。
「だったら、例えばセフィロスや、その……ユウナが突っ込んできて。
 戦闘になって、魔法使って応戦して、怪我人が出て、治して、って……
 そんなことやってるうちに、アービンだけじゃなくてバッツって人も魔力が無くなるってことがあるんじゃないか?」

412 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/04/14(火) 18:44:13.35 ID:dRfiNt2s0.net
 

413 :何事もこじらせてはいけません 16/24:2015/04/14(火) 18:46:16.42 ID:gzmlTRQn0.net
ふむ。
馬鹿らしい馬鹿な発言だったら盛大に貶してやろうと思ったが、存外に真っ当な指摘だ。
『化物』はどうでもいいが、バッツの魔力が尽きてしまうと確かに面倒極まりない。
ヘンリーが居なくなったことで南東の祠にいる生存者は四人に減ったわけだし、エリクサーも残ってはいるが……
他の生存者が合流する可能性や、ティーダの指摘通り殺人者との交戦を考えると余裕があるとは到底言えない。

「どうせ全員一度に首輪外すってことは出来ないんだろ?
 なら一人ずつ、理由つけて首輪を外していった方がいいと思うんだ。
 ……アービンに余裕があるかどうかわかんないし、どっちも無理してほしくはないけどさ」
「俺もティーダに賛成だな。
 せめてバッツとリルムの首輪だけは外しておきたい」
そう言って口を挟んできたのはマッシュだ。
「今はヘンリーが城に向かってる最中なワケだ。
 仮に祠に向かってきてる奴がいてもヘンリーが見つけるだろうし、話し合いとか交戦とかで足止めされるだろ?
 その間は割と安全に首輪解除ができる……と思うんだ」
ほう、こちらも存外に良い着眼点じゃないか。
外見から脳筋どもの仲間かと思っていたが、腐っても王侯貴族の生まれということか。
しかし……

「一応聞いとくが、バッツはともかく、あのやかましいガキを優先する理由が私情以外であるのか?
 黙って死人のフリができるとも思えないんだが」
俺の質問に、マッシュは苦笑しながら頬を掻く。
「あー……その、男の沽券に係わるって理由じゃダメか?」

チッ。
半ば予想はついていたが、やはりその程度の考えか。

「死にかけの重傷者が見栄を張ってどうするんだよ。
 他人の命の心配より自分の命の心配をしたらどうだッ」
ましてやあんたは王族の端くれなんだろう、ガキ一人よりもよっぽど重い命のはずだ――と喉まで出かかった台詞を飲み込む。
この世界じゃ身分など意味を成さない。とっくの昔に悟った事だ。
安全な場所を確保できたってだけでこの世界のルールを忘れるなんて、俺も周りに影響されてボケてきたか?
「そうは言ってもなあ」
俺が反省する一方で誤魔化し笑いを続けるマッシュに、苦々しさを滲ませたスコールの声が飛ぶ。

「……あんたは本当に自分の事を心配してくれ」

414 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/04/14(火) 18:52:06.10 ID:uuc7jGhlg
支援

415 :何事もこじらせてはいけません 17/24:2015/04/14(火) 18:56:09.37 ID:gzmlTRQn0.net
短い言葉だったが、マッシュには何か感じるものがあったのだろう。
笑うのを止めたかと思うと、「わかったよ」と言ってスコールに近付き、頭をくしゃっと撫でた。
まるで聞き分けのない子供を宥めている親のようだ。この場合、聞き分けが無いのはマッシュの方だが。
スコールも俺と同じ感想を抱いたのか、「止めてくれ」と小さな声で呟く。
緊急時でなかったらしばらく放っておいてやってもいいのだが……当然ながら今はそんな状況じゃない。

「スコールの考えはどうなんだ?」
さっさと話を元に戻すために尋ねてみる。
しかしスコールはマッシュの手を退かしながら首を横に振る。
「いや……先にあんたの意見を聞かせてくれ。
 例の本で目に付いたデータもあるだろう?」

まあ、確かにある。
それに馬鹿どもの話で思う事も増えた。
俺は攻略本に視線を落とし、それからすぐにスコール達を見ながら答える。

「結論から言うが、バッツとマッシュの首輪を解除してラムザとリルムは夜明けまで祠の防衛に回せ。
 あとサイファー、お前らの方は知らん。勝手にやってろ」
「ああ?」
元より目つきの悪い悪人面をさらに険しくしながら、サイファーはチンピラのように俺を睨む。
それなりに迫力はあるが所詮は普通の人間、あの『化物』が見せつけた恐怖に比べればどうってこともない。
「俺がここでああだこうだと御託を述べても、貴様は素直に人の意見を聞くのかッ?
 それに首輪解除が成功するかどうかはあの『化物』の気分と体調次第だろうッ?
 第一、ケフカが戻ってきたり、ユウナに襲われる可能性はあっても、お前らの方に真っ当な生存者が合流する可能性は低いはずだ。
 まさかリュックが城の連中に一度も会わないままアーヴァインを拾いに行ったってなら話は別だが、そんな間抜けはしてないだろうしなッ」
意趣返しのつもりでわざと厭味ったらしく言ってやると、サイファーは歯ぎしりしながら答えた。
「……本物のロック達には、南東の祠に生存者が集まってるって話はしてる。
 俺もその場に居合わせたから間違いねえ」
「なら、お前らが心配すべきはお前ら三人の首輪と、襲撃者に成りうるケフカとユウナ、あとはせいぜいセフィロスだけってワケだ。
 よってヘンリーがドジを踏まず、『化物』が発狂せずに魔力が回復するまで保つと思うなら、守りに専念すればいい。
 そうでないなら『化物』か貴様が見張りになって、二人だけ首輪を外せばいいだろうよッ。
 三人だけなら筆談だって簡単だろ、自分達で話し合って決めてろッ」

(それにお前らの命まで背負う気はないしな)という本音があるが、まあそれを素直に教えてやる必要は無いだろう。
代わりに別の、これはこれで率直な想いを口にしておく。

416 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/04/14(火) 18:57:00.01 ID:dRfiNt2s0.net
 

417 :何事もこじらせてはいけません 18/24:2015/04/14(火) 18:59:42.38 ID:gzmlTRQn0.net
「ああ、断っておくがなッ、俺が死んでほしいと思っているのはあの『化物』と人殺しを辞さないキチガイどもだけだ。
 貴様を含め、他の奴らは努力して生き延びてくれなきゃ困るッ。
 馬鹿だろうとアマちゃんだろうと、魔女に対抗する為の貴重な戦力であることには変わりないからなッ」

「……つくづく何様だよテメェ」
こっちに近付いてこようとしたサイファーを、今度はスコールが制止する。
「アルガス。リルムを残す意味はあるのか?」
「対セフィロス戦を想定した時、あのガキの似顔絵は切り札に使えるだろ。
 それに奴をカッパに変えた魔法、あのガキも使えるみたいだからな」
俺の答えに、マッシュが食いつく。
「ちょっと待ってくれ、カッパーなら俺だって……」
ああ、確かに攻略本にも使えると書いてあったな。
だが片腕をもがれた格闘家がセフィロス相手に優位を取れるものか。
そんな俺の思惑をなぞるかのようにスコールが指摘する。

「無理だ、マッシュ。
 セフィロスの実力は明らかに桁が違う。
 あんたの体調が万全だったとしても接近戦を挑むのは自殺行為だ」
「今までだっていかにも腕に自信のありそうな無傷の連中が何人も殺されてきてるんだ。
 ガキを庇いたいって気持ちはわからなくもねえが、見誤ってテメェが死んだら意味ねえだろ」
サイファーまでが援護射撃に入り、マッシュは言葉を詰まらせる。
その隙に、俺は言葉を重ねた。

「リルムを残すのはもう一つ利点があるぜ。
 何せ、ラムザはあのガキのお守りに熱心だ。
 あのガキを生き残らせてやるためにラムザが他の奴を殺したってシナリオなら、さほど不自然じゃないだろ。
 確かにヘンリーがドジを踏んでバレる可能性はあるが、
 だからといって俺達が気を回さなくていいってことにはならないはずだ。
 魔女が俺達に干渉する気があろうがなかろうが、気付かれないに越したことはないんだからな」
「……成り行きで連れている子供の為に他人を殺すというのは、動機として弱くないか?」
「そうか? 成り行きで拾った殺人鬼を庇いすぎて殺された馬鹿よりは現実味があると思うぜ。
 何なら、ラムザに『リルムが妹に似てる』とか言わせとけばいいだろ。
 事実、アイツにゃアルマって可愛い妹がいるしな」

喋りながら、俺はアルマの姿を思い出す。
イグーロス城にてザルバッグ卿と連れ立つ形で、ディリータの妹と一緒にやってきた、ラムザそっくりな少女。
ラムザやディリータ兄妹に対しては言いたい事も思う事も山ほどあるが、彼女に対しては別にさしたる恨みも何もない。
せいぜい『骸旅団に誘拐されかけたがギリギリで難を逃れた、不幸だか幸運だかわからない娘』ってだけだ。
そして当然ながら、彼女は『金髪で女』ということ以外、リルムとは似ても似つかない。
しかしそんなことはスコール達にはわかりゃしないし、魔女だっていちいち調べようとも思わないだろう。

418 :何事もこじらせてはいけません 18/24:2015/04/14(火) 19:05:09.92 ID:gzmlTRQn0.net
「……アルガスの案、どう思う?」
スコールの問いかけにサイファーが食って掛かる。
「テメェの案は無いのかよ」
「俺の案は可能な限り早急に首輪解除を進めるというだけだ。
 主催者陣営がアルティミシア一人なら話は別だが、最初の広間でもティアマトを使役していた時点で配下の魔物がいることは間違いない。
 それにガルバディア産の首輪を使用しているのだから、ガルバディアの技術者を拉致して洗脳し部下として使用している可能性もある。
 魔物にしろ人間にしろ、どれほどの自由意思が残されているのかはわからないが……
 命じられている内容次第では、首輪解除がバレた時点で俺達への干渉が有り得ると思っている」
なるほど、サイファーの考えとは真逆だったわけだ。
スコールの意見はサイファーのそれに比べて十分理解できるが――
焦って首輪解除を進めるというのは事の露見に繋がりかねない危険さを孕んでいる。
あるいは彼自身それを把握していたからこそ一番最後に意見を述べようとしたのかもしれないが。

「ハッ、他の人間を拉致してるってなら最初の説明をドラゴンなんぞに任せるわけがねぇ。
 それこそキスティスや伝令女……じゃなけりゃカーウェイ大佐か学園長辺りを捕まえて、洗脳して利用するはずだ」
サイファーが上げた人名や形容詞が具体的に誰を指しているかはわからないが、おそらくスコールの知人だろう。
確かに知り合いを手駒に使われる方が殺し合いに乗る人間も増えそうなものだ。
俺が納得する傍らで、ティーダが首を傾げる。
「じゃ、全部モンスターが機械を弄って監視してるってことッスか?
 なんで他の人を……いや、そりゃ誘拐される人は少ない方がいいッスけど」
「そりゃ、あの魔女は人間を信用しちゃいないからな。
 乗っ取って操ってる他人の身体の傍ならともかく、自分自身の身体の傍には人間なんざ置いておきたくねえんだろうよ」
これまた不親切な言い方だが、やはり呑み込めなくもない。
絶対に裏切らない魔物を創り出すことはできても、絶対に裏切らない人間を用意することは不可能だ。
平民の分際でベオルブ家の手厚い庇護を受けて育ったにも関わらず、ザルバッグ卿の命を受けた俺を殺したディリータのように。
あるいは自分が助かりたいという一心で仲間を売ったという俺のじいさんのように。
利益が一致しないと言うだけで人は簡単に大恩ある相手を裏切る。
……ま、俺自身も他人を裏切って生きてきたわけだし、偉そうなことは言えないけどな。

「だが、僕のモンスターに自我があるかどうかなんてのは俺にだってわからねえ。
 実際に戦ったテメェが疑うなら、ちったぁ考慮した方がいいか」
珍しくサイファーがスコールの意見に素直な同意を示した。
その一方で、当のスコールは机を指で叩きながら、己の思考を纏めるかのように淡々と呟く。

「……考えられるのは、首輪を外した人間を抹殺しに来るケースと、残っている首輪を全て爆破しようとするケース。
 可能性が高いのは圧倒的に前者だ。
 後者は殺し合いへの影響が大きすぎるし、間違いなく魔女の眼に止まる。
 主の意見を仰がずに事を隠蔽しようとするなら、極力被害も干渉も最小限で留まる方法を選ぶはずだ」

419 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/04/14(火) 19:08:28.54 ID:dRfiNt2s0.net
 

420 :何事もこじらせてはいけません 20/24:2015/04/14(火) 19:11:17.45 ID:gzmlTRQn0.net
なん……だと……?
つまり危険なのは俺達の方って事かッ?
ずいぶんと嫌な事を言ってくれるじゃないか。
しかしそれなら尚更首輪解除を悟られないようにした方がいいのでは?
――そんな思考が顔に出ていたのだろうか、スコールは俺の表情を見ながらこう言った。

「しかしそれらを踏まえても、俺はアルガスの意見で妥協していいと感じている。
 マッシュはともかく、バッツがいればこちらの戦術幅も広がるし、手元の武装も合わせて最低限の抵抗ができるだろう。
 それにヘンリーの件も含めて、俺の危惧はあくまで可能性にすぎない。
 最初から魔女側に気づかれなければそれで済む話だ。
 あとはあんた達に反論や改善案があるかどうかだが」

「んー……まあ、いいんじゃないか?」
真っ先にそう答えたのはマッシュ。
次いでティーダが口を開く。
「そッスね。
 つか、ぶっちゃけここにいる"三人"とリルムとアービンとリュックとユウ……ゲフンゲフン、
 いや、まあ、あとロザリーとギードとロックとプサンのオッサンとソロとヘンリーって人と、
 それと殺し合いに乗ってない奴が無事なら俺はなんでもいいッス」
「……四人じゃないのか?」
スコールの指摘に、ティーダは俺をじろりと睨み付けて言った。

「アルガスは一度ぎったんぎったんにされて痛い目に合った方がいいッス」

さすがにこんなことを言われて黙っていられる俺じゃあない。
「なんだとッ!?
 人の気も知らん上に同行者の変心も見抜けない死に損ないがッ!
 喧嘩なら言い値で買ってやるぞッ!」
そう言って立ち上がり、ティーダに詰め寄った時だった。

"パチン"

と、スコールが指を鳴らす。
俺がそれに気づいた時には、辺りの風景は夢のように消え去り――




「――はっ?!」

辛気臭い空気と手足に染みる寒さが否応なく眼を覚ます。
やたらと狭い視界に映ったのは、圧迫感しかない石造りの壁と天井。
左眼をこすろうとしてかさついた包帯に触れる。
現実の感触。現実の空気。
夢の中での万能感と余裕はどこへやら、忘れていたはずの恐怖が真綿のように首を絞めつける。
何故俺は起きているのか。
話し合いの邪魔になるからスコールが叩き起こしたということか?
クソッ、今のは明らかにティーダの奴の方が悪いだろうがッ!
なんで俺がッ……!

421 :何事もこじらせてはいけません 21/24:2015/04/14(火) 19:13:13.92 ID:gzmlTRQn0.net
頭を抱えて嘆くよりも先に、スコールの身体がぼんやりと蒼く光る。
その手から奇妙な形に折りたたまれた紙が一枚飛び出した。
カミヒコーキとか言っていたか、先ほどスコールがバッツに向けて残した書置きに似ているが、折り方が微妙に違う。
拾い上げて広げてみると、やはりスコールの字で、俺宛の文章が記されていた。

『あんたの意見を採用する方向で話をまとめておく。
 話し合いが終わったらティーダと一緒にザンデと接触する予定なので、しばらく見張りを頼む』

これは……
騒ごうと騒ぐまいと、どのみち俺は起こすつもりだったってことか?
特に訓戒や警告の類が書かれていないあたり、少なくとも怒っているというわけではないようだ。
ほっと胸を撫で下ろすが、それでもやはり心は落ち着かないままだ。
「くそっ、こんなことになるならザンデと会う事に賛成しとけば……」
我ながら惰弱極まりない考えだ。
だが、左の眼窩がずきんずきんと痛みを訴える度に、後悔を抱かずにはいられない。
夢の世界でしか、この苦痛を忘れ去ることはできないのだから。

(しかし……何故ティーダと一緒に会うんだ?)

ふと、胸中に疑問が沸く。
あんな馬鹿を連れて行ったところで、それこそ話の邪魔になるだけだろうに。
ザンデとティーダを会わせる事に意味があるのか?
スコールの事だから考えなしの行動だとは欠片も思わないが、真意が説明されないままではやはりもやっとする。
さっきの会話にしたってそうだ。
何の話だったんだ、アレは。

膝を抱え、内心で愚痴をたらしていると、またもやスコールの手元から"カミヒコーキ"が放たれた。
何もかもが億劫になりそうな無力感をなけなしの気合で押さえつけ、見当違いな方向へ飛んでいくそれを回収する。
紙の折り目をさっさと開くと、今度はこう書かれていた。

『サイファーの話、あんたは気付いたかもしれないが、気付かなかったとしても誰にも話すな。
 それとカードデッキが届いていたら夢に持ち込みたいので渡してくれ』

「……?」

どういうことだ?
サイファーの話っていうのはさっきの妙な身内話もどきのことだろう?
俺でも真意の推測は可能だというのか?
そして気付いているなら口外しないと判断する話だというのか?

422 :何事もこじらせてはいけません 22/24:2015/04/14(火) 19:15:29.96 ID:gzmlTRQn0.net
俺は大きく深呼吸をしてから、冷静に二人の話を思い出してみる。
まず最初にスコールが『魔女の干渉を警戒すべきじゃないのか』と聞いた。
サイファーの答えは『魔女は精神的な嫌がらせを好む』。
この時点で少しチグハグなやりとりだ。
最低でもサイファーが考える『魔女の好む精神的な嫌がらせ』とは何か、それがわからなければ全く意味が通じない。
しかしスコールは最終的に納得していて、さらに俺が理解したかもしれないと思っている。
ということは、スコールが事前に知り得ている情報以外にも、どこかで具体的な説明が入ったはずだ。
一体どこで?
怪しいのはサイファーがやたらと思案していた、『SeeDが全滅、リノアが脱出して、ガルバディアが半々でどうこう』という話だが……

……全滅、脱出、半々?
そして、精神的な嫌がらせ……

「……もしかして」
SeeDは『敵』を、ガルバディアは『首輪』を意味しているのではないか?

敵の全滅、即ちゲームに乗った者の全滅。
首輪が半々、即ち首輪を外した生存者が半数以上に達する。
ならば真ん中の脱出はそのまま、実際に会場から脱出した人物の出現……

そうだ。
これに違いない。
『魔女は精神的な嫌がらせを好む』、故に『生存者が大きな希望を得る条件を満たした時に初めて干渉してくる』。
その条件が『危険人物の全滅』、『首輪解除に成功した生存者が過半数に達する』、『脱出に成功した者が現れる』、
そう判断したということかッ!!
だからこそサイファーは首輪の解除を後回しにする案を出したッ!
万が一魔女が俺達の生存に気付いたとしても、万が一魔女がザンデの生存に気づいたとしても、
万が一危険人物が全て勝手に潰しあって死んだとしても、ギリギリで魔女が手を出す気を無くすようにと!!

なるほど、なるほどッ。
確かに一度わかってしまえば口外できっこない話だ。
こんな予測を立てて行動していると魔女側に知られようものなら、裏を掻いてくるに決まっている。
そうなってしまえばそれこそ干渉のタイミングは予想困難、計画もへったくれもなくなってしまうからなッ!

423 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/04/14(火) 19:16:08.86 ID:dRfiNt2s0.net
 

424 :何事もこじらせてはいけません 23/24:2015/04/14(火) 19:18:37.12 ID:gzmlTRQn0.net
スコールが俺の意見を推したのも、バッツとマッシュだけなら首輪を外した所で生存者の半数に達しないからだろう。
仮に俺たち以外の連中がヘンリーを含めて全員死んだとしても、
ヘンリーが死ぬ前にヘマをやらかして首輪解除の件が露見したとしても、
ラムザとリルム、そしてサイファーとリュックと『化物』が残れば首輪付きが5人いる計算になる。
……まあ、そんな状況に追いやられた上で魔女側に事が露見するというのは、
干渉されようがされまいが詰んでいる気がするが。

もちろん、これらは全てサイファーの推測。
どこまで当たっているかはわからない、が。
単に非合理なのではなく、より的確に他者の希望を折るという一点で合理的に行動するというのは確かにあの魔女像と一致する。
わざわざ俺を甦らせておきながらこんな殺し合いに放り込んだこと。
天敵であるはずのスコール達を拉致しておきながら直接殺さずに、彼らと同じ境遇に追いやった他人の手でリノアを殺させたこと。
そして前主催者である仮面の男の遺志を無視し、黒いクリスタルに溜まった【闇】を我が力にして殺し合いを続けてようとしていること。
――どれもこれも嫌がらせとしては最上で、精神的にクる最悪さだ。

となると、だ。
ザンデと会うのにティーダを連れていくというのは、奴やウネにティーダを調べさせるためかもしれない。
俺の夢にやって来た時の事や、『化物』の反応からしても
あのティーダは魔女に作られた幻影などではなく、正真正銘本物の死にぞこないだと思うが……
例えベースになってる魂は本物の金髪馬鹿のものでも、その存在を召喚獣として成り立たせている力が魔女の所業なら
ティーダ自身や『化物』の意志を差し置いて、魔女の介入が起こり得る。
遠見の術の媒介に使われているぐらいならまだマシで、首輪解除の真っ最中に『化物』や俺達を襲うだとか、
最悪を考えるならそれこそティーダを操って『化物』を発狂させ、奴ら二人を俺達にぶつけようとしてくるかもしれない。
ザンデの首輪が外れていないのならば、奴の生存は既に魔女側にも伝わっていること。
ならば多少リスクがあろうとも、魔女側が行動を起こす前にティーダが安全かどうか確かめておいた方がいい――

「狐と狸の化かし合い……いや、そんな可愛いものじゃないか」

魔女と英雄様の命を賭けた出し抜きあい。
王位継承を巡ってるお偉方の騙し合いと、果たしてどちらが恐ろしいだろうか。
まあいい。
少し喉が渇いた、水でも飲もう。

俺は飲料水が入ったザックを探し、きょろきょろと辺りを見回す。
すると目的の物以外に、部屋の入口に四角い何かが置かれていることに気が付いた。

425 :何事もこじらせてはいけません 24/24:2015/04/14(火) 19:20:04.26 ID:gzmlTRQn0.net
掌に収まりそうで収まらない分厚さを持つ、ガラスを思わせる半透明のケース。
おそらく、あれがスコールご執心のカードデッキとやらなのだろう。
持ってきたのがラムザかマッシュかヘンリーか、それともあの20歳児は知らないが……律儀なこった。
俺は肩を竦めながら立ち上がり、そいつを拾い上げる。
ケースが特殊な素材で出来ているのか、予想よりも遥かに軽い。
しかし中身は透かし見るまでもなく、カードの束でいっぱいだ。
一体どんなものなのか、少しだけ気になった俺は、好奇心に誘われるまま蓋を開けて一番上のカードをめくった。

「……こじらせすぎだろ」

言いたいことはあるが、これ以上のコメントは止めておこう。
俺は何も見なかった。人のカードなんざ見てないんだ。
そういう事にするために、黙って蓋を元に戻し、寝ているスコールの手に握らせる。
カードデッキは瞬く間に青い光に包まれ、夢世界へと引きずり込まれていった。


【サイファー(右足軽傷+重度の疲労、睡眠)
 所持品:G.F.ケルベロス(召喚不能)、正宗、スコールの伝言メモ
 第一行動方針:状況把握
 基本行動方針:マーダーの撃破(セフィロス優先)
 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【現在位置:南西の祠】

【マッシュ(HP1/8、右腕欠損、精神的に疲労、睡眠中)
 所持品:なし】
 第一行動方針:眠る/夢世界で会話
 最終行動方針:ゲームを止める】
【バッツ(HP3/5 左足負傷、MP1/3、ジョブ:青魔道士(【闇の操作】習得)
 所持品:アポロンのハープ アイスブランド うさぎのしっぽ ティナの魔石(崩壊寸前)
      マッシュの支給品袋(ナイトオブタマネギ(レベル3) モップ(FF7) バーバラの首輪)
 第一行動方針:祠の警備/機会を見て首輪解除を進める
 基本行動方針:『みんな』で生き残る、誰も死なせない
 備考:首輪の解体方法を覚えました】
【現在位置:南東の祠(奥の部屋)】

【アルガス(左目失明、首輪解除)
 所持品:インパスの指輪 E.タークスの制服 草薙の剣 高級腕時計 ももんじゃのしっぽ 聖者の灰 カヌー(縮小中)天の村雲(刃こぼれ)
 第一行動方針:周囲を見張る
 第二行動方針:可能なら自分の手を汚さずにアーヴァインを始末する
 最終行動方針:とにかく生き残って元の世界に帰る】
【スコール (微度の毒状態、手足に痺れ(軽度)、首輪解除、睡眠中)
 所持品:ライオンハート エアナイフ、攻略本(落丁有り)、研究メモ、 ドライバーに改造した聖なる矢×2G.F.カーバンクル(召喚○、コマンドアビリティ×、HP2/5)
 吹雪の剣、セイブ・ザ・クイーン(FF8) 、貴族の服、炎のリング、ウネの鍵、スコールのカードデッキ(コンプリート済み)
 第一行動方針:夢世界でティーダを連れてザンデに会う
 第二行動方針:首輪解除を進める/脱出方法の調査
 基本行動方針:ゲームを止める】
【現在位置:南東の祠:最深部の部屋】

426 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/04/15(水) 00:17:07.36 ID:zCxt0nEY0.net
投下乙です!
脱出への考察と今後の方針が具体的に……アルティミシアの謎っぷりを考えても確かに納得できる。
んでもってスコール、やっぱり寂しいのか……

427 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/04/15(水) 00:34:11.37 ID:wYbR5N730.net
新作乙乙!!
FFTやったことないんだが、アルガスってけっこうすげぇしいい奴じゃんって思えてきたよw
冷静に状況分析ができる指揮官たちがいるのは頼もしい。
いやぁ面白くなってきた!

428 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/04/15(水) 12:05:45.29 ID:xrzORrgm0.net
投下GJです!
凄い、凄いよこれ。書き手さんはどんだけ頭良いんですか!
こんな感想が生まれたのは、ピエールがあらゆる戦術で敵を屠っていた時以来です!

極限状態に立ち続けることで、ただの原石だったアルガスも順調に磨かれてきた頃。
彼らが果たしてどうなるのか、本当に楽しみですね!

改めて、投下GJでした!

429 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/04/15(水) 20:15:55.95 ID:rNqThq+K5
夢にまで見た新作が!超絶GJです!
キャラクターを掘り下げ、謎の解明を暗示し、ユーモアを挟みつつしっかり話を進めて次の展開へと繋げる筆力にうなった。
過去の話もじっくり読み返したくなったよ。
それにしても順調に?進むとリルムVSセフィロス戦が勃発するかもしれんのか...

430 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/04/22(水) 21:42:04.86 ID:a/7ZLwvZ0.net


431 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/04/23(木) 06:23:14.57 ID:iSXZUBqD0.net
乙!

しかしこの書き手さんレベルがもう3〜4人いないと現実問題、このロワ恐らく完結しそうにないんだよね・・・

432 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/04/23(木) 17:49:53.44 ID:NX2UWLfV0.net
言い出しっぺだ

433 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/04/24(金) 12:45:18.38 ID:lPfDg8Bn0.net
続き早く

434 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/04/26(日) 13:38:02.16 ID:pnfYlI1q0.net
続きが楽しみな気持ちはわかるけど
リアル都合もあるしあんま急かしたらあかんで


改めて投下乙!
これ以上ぎったんぎったんにされたらアルガスといえどさすがに可哀相だw

あとささいな事だけど、ラムザの兄ちゃんの名前はザルバックではなくザルバッグなんだぜ

435 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/04/27(月) 19:49:50.25 ID:udHZGETM0.net
乙です

436 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/04/30(木) 16:30:03.18 ID:7eMbQ1C+0.net


437 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/05/01(金) 13:02:28.40 ID:/rIzM7hD0.net
>>434
へぇー
ラムザの兄ちゃんってバルザックだったんだ

438 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/05/03(日) 03:14:12.25 ID:3kUMet7/0.net
FFレコードキーパー招待コードです
ここから飛んで始めると特典がもらえます!
かなり有利になりますよー!
よろしくどうぞ
https://dff.sp.mbga.jp/dff/invite/m?ezJ3y

439 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/05/06(水) 17:08:38.58 ID:oupOe31D0.net
スレキープするだけで精一杯なのにレコードなんざキープできるか

440 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/05/08(金) 20:50:26.08 ID:Rc1iCUlX0.net
ワロタw

441 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/05/13(水) 18:26:29.36 ID:IFCaPYN80.net
乙です

442 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/05/16(土) 13:41:25.03 ID:Ie2AhKwQn
乙です!

ところで、絵掲新しく建ててみました。もし良ければ使って下さい。
http://www16.oekakibbs.com/bbs/FFDQ3rd/oekakibbs.cgi

443 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/05/16(土) 14:46:59.34 ID:trYIMDjc0.net
一応s_c_から転載



乙です!

ところで、絵掲新しく建ててみました。もし良ければ使って下さい。
http://www16.oekakibbs.com/bbs/FFDQ3rd/oekakibbs.cgi

444 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/05/17(日) 23:25:07.49 ID:0kkZB1v60.net
絵板建て乙です!
時間がある時に描かせてもらいます

445 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/05/19(火) 10:49:20.08 ID:/EeJZbwW0.net


446 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/05/24(日) 08:19:44.68 ID:lyE47BHM0.net
乙です

447 :輪廻する真実 1/2:2015/05/29(金) 01:00:37.17 ID:BxtdIH0j0.net
うっすらと、意識を取り戻していく。
ぼんやりとした視界に、若干の吐き気。
何が起こったのか、詳しくは覚えていない。
最後に覚えているのは、割れる空と、降り注ぐ瓦礫と。

「――――はっ!!」

そこで、はっきりと意識を取り戻す。
幸い、自分の体は瓦礫に埋もれていることは無かった。
だが、問題はそこではなかった。

「……ようやく、目を覚ましたか」

その時、低い声がソロの耳を打つ。
急いで声のする方を振り向けば、最悪の結果が待っていた。
そこには、ほぼ全身を瓦礫に埋めて倒れている、クリムトの姿があったからだ。
なぜ、そんな姿になっているかなんて、考えなくても分かる。
悔しい気持ちがわき上がる前に、ソロはクリムトの側に駆け寄る。

「クリムトさん! 待っててください、今――――」

急拵えの回復呪文は、差し出されたクリムトの手に止められる。
そうだ、控えめに見ても、分かり切っているのだ。
もう、助からない事なんて。
ゆっくりと、でも弱々しく、クリムトはソロの腕を掴む。
今から死に行こうとしているのに、その顔はとても落ち着いていた。

「……やはり、いい眼をしているな」

ぼそり、と今にも掻き消えそうな声で呟く。
目などとっくのとうに見えていない。
が、それでも、青年の心の清らかさは簡単に分かる。
だが、そんな風情を悠長に味わっている時間はない。
ごほ、ごほ、と二回せき込む。
終わりを察したクリムトは、残りの力で手を伸ばし、ソロの手のひらを包み込んでいった。

「お主に、全て託すとしよう」
「何を――――」

何が起こるのか、それを察するよりも前に。
暖かく、柔らかな光が一面を包み込んだ。
それは、真実を照らす力。
夢と現実の狭間、希望を手にするための力。
この力を、冥土に持って行くには惜しすぎる。
嘗て彼が生み出した宝玉の持つ力を、全てソロへと注ぎ込んでいく。
じわり、じわりと広がっていく光。
それが全てを包み込んで、弾け飛んだとき。
クリムトは、ゆっくりと眠るように。
闇の世界から、旅立っていった。

不思議な感覚が、ソロを襲う。
まるで心が洗われるような感覚と、さえ渡る意識。
逆にそれが、クリムトの死という現実をありありと見せつけてくる。
そう、自分は救えなかったのだ。
それどころか、救われてしまったのだ。
……ああ、結局、あの時と同じではないか。
勇者として守りたい者を守れず、勇者だから守られる。
世界を救おうがなんだろが、まだ弱いままじゃないか。
ここに来て何度目かのその感覚を、もう一度かみしめながら、ソロはすっと立ち上がる。

448 :輪廻する真実 1/2:2015/05/29(金) 01:00:51.07 ID:BxtdIH0j0.net
 
「カァーーーーッ!!」

それとほぼ同時に聞こえた叫び声。
瓦礫を吹き飛ばしながら現れたそれは、元気いっぱいの様子だった。
そんな元気な彼の方を向いて、話しかけようとする。

「カッパく――――」

その口が、見事に止まる。
真実を照らす力、ソロに植え付けられたそれが、一つの真実を映し出す。
バカな、そんなはずは無い。
けれど、それはちらついて離れない。
一匹のカッパの姿に、重なり続ける黒い影。

「――――セフィロス?」

呆然としながら、ソロはその名を呟いた。

【クリムト 死亡】

【セフィロス (カッパ 性格変化:みえっぱり 防御力UP HP:????)
 所持品:村正 ふういんマテリア いかづちの杖 奇跡の剣 いばらの冠 プレデターエッジ 筆記具
     ドラゴンオーブ、スタングレネード、弓、木の矢28本、聖なる矢14本、
     ウィンチェスター(みやぶる+あやつる)、波動の杖、コルトガバメントの弾倉×2、E:ルビーの腕輪
 第一行動方針:?????
 第二行動方針:ケフカを殺す/カッパを治して首輪を外すため、南東の祠に向かう
 第三行動方針:進化の秘法を使って力を手に入れる/アーヴァインを利用して【闇】の力を得たジェノバとリユニオンする
 第四行動方針:黒マテリアを探す
 最終行動方針:生き残り、力を得て全ての人間を皆殺しにする(?)】

【ソロ(HP3/5 魔力1/8 マホステ状態、真実の力を継承)
 所持品:ラミアスの剣(天空の剣) 天空の盾 ひそひ草
      ジ・アベンジャー(爪) 水のリング 天空の兜
     フラタニティ 青銅の盾 首輪 ケフカのメモ 着替え用の服(数着) ティーダの私服
 第一行動方針:カッパと会話?
 第二行動方針:サイファー・ロック達と合流し、南東の祠へ戻る
 基本行動方針:PKK含むこれ以上の殺人を防ぐ+仲間を探す
※但し、真剣勝負が必要になる局面が来た場合の事は覚悟しつつあり】

449 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/05/30(土) 21:33:57.65 ID:M6+G3uBsA
乙です!
クリムトがとうとう逝ったか。失明した時点で退場決定かと思いきや、頑張ったなあ。
遺志と力を継いだソロも頑張ってほしい所だが、微妙にやばい状況だな...

450 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/05/31(日) 13:23:39.22 ID:0w6JCLnM0.net
投下乙!
ついにクリムトさんが亡くなられてしまった…
今までお疲れ様でした

そしてカッパの正体がセフィロスだと判ったソロはこれからどうするんだろう

451 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/06/05(金) 06:05:14.51 ID:4ZCVCFW+0.net
乙乙

452 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/06/06(土) 19:26:53.41 ID:VVhP+CLp0.net
投下します。

453 :人は、誰かになれる。:2015/06/06(土) 19:27:58.78 ID:VVhP+CLp0.net
真っ暗な闇の中で、長身の男が白いコートをはためかせている。
その堂々とした立ち姿たるや、幾多の戦いを乗り越えてきた武人に例えても差し支えなかろう。
男の名はサイファー。サイファー・アルマシーだ。

何がどうなっているのかというと……彼は今、南西の祠から外出している最中である。
没落貴族から『あとサイファー、お前らの方は知らん。勝手にやってろ』と言われたので、勝手にやることにしたのだ。
目的は斥候である。自分達はあまりにも眠りすぎていた……故に、敵が近付いている可能性がある。
そう考えた結果、自身が買って出たのだ。

単独での任務であるが故に危険ではあるが、それに見合った益もある。
そもそも睡眠のおかげで肉体的な疲労も軽くなっているし、軽く歩くのは右足に追っている軽傷のリハビリにもなるのだ。
更にはしばらく体を動かしていないせいで、体が鈍っているのではないか≠ニいう焦燥感を取り除くにもうってつけというおまけつき。
そう、何もかもが丁度良いのだ。そういうわけで、スコール達やリュック達に許可を取り、祠への一本道にて斥候を行っているのである。

「……いねぇ、な」

少し見晴らしの良い場所で休憩がてら辺りを見回していたサイファーは、安堵のため息をついて呟く。
そして再び歩き出すと「こう静かだと、風神と雷神が恋しくなるぜ」と、寂しさを覚えた自身に対し自嘲の笑みを浮かべた。
それと同時に彼らが呼ばれていなくて良かった≠ニも思う。彼らが自身の与り知らぬところで殺されてはたまったものではない。
いや、それ以前に……そもそもどこであろうが死んで欲しくないわけだが。

「よし、行くか」

過去を思い出して感傷に浸った彼は、独り言でモチベーションを上げた。
サイファーは再び歩き出すと、切れ長の瞳で辺りを探り始めた。
すると、そのときである。見覚えのある銀髪の男が、こちらに向かって走ってきたのは。
あれは……あれは、そう、ロック・コールだ!


本物だったらな!


というのも、結論からいってしまえばあのロックはケフカ・パラッツォであるという可能性≠ェあるのだ。
しかもその確率は、相当に高い。気軽に接触するのは危険だ。少なくともサイファーは、そう考えた。
ならばどうするべきだろうか? 一瞬だけ考え込んだが、答えはすぐに決まった。

攻撃して、様子を見よう。

……というわけで、彼は牽制とばかりに正宗で奇襲をかけた。
銀髪はよく目立つので、とても都合が良かった。

「うおっ!? 何しやがる!?」
「いよう、ケフカぁ! 文字通りよくそんな顔で来られたもんだなぁ!? あァ!?=v
「け、ケフカ!? 俺が!? あの!? 待った待った待った! 話が見えない!」

正宗の一撃をクリスタルソードで受け止めたロック(仮)が必死に叫ぶ。
その滑稽さもまた道化じみていて、サイファーはより警戒を強めた。
鍔迫り合いは続く。だが、サイファーもただただ戦っているわけではない。
彼は、相手の目をじっと見つめていた。
そして、問う。

「方角は?」
「……は?」
「答えろ! 方角はどこだ!?」

すると相手は、サイファーの問いに隠されたものを理解したようだ。
正宗をいなしたロックは「南東だ! 俺が行くべきなのは南東だった!」と答えた。

454 :人は、誰かになれる。:2015/06/06(土) 19:30:15.83 ID:VVhP+CLp0.net
更にサイファーは「なんでだ!?」と尋ねる。
するとロックは「そこに生存者が集まってるからだ」と小声で返し、クリスタルソードをしまう。
そしてようやくサイファーは、彼を正真正銘本物のロックであると認めるのだった。

「悪い……ケフカがてめぇの姿になってたって聞いてたんでな」
「何だと!? はた迷惑な……いや、俺に恨み持ってるだろうから当然か……」

サイファーの言い分に、ロックは愕然とする。

「で? なんでこっちに来てんだよ。あれか? 方向音痴か?」
「すっごく面倒な事情があったんだよ。結論から言うとだな……ヤバいのから逃げて来た」
「ヤバいの、だと?」
「ああ、青髪ロングの男でな……」

そして彼は、この場に来るまでに至る出来事を話し始めるのだった。




       ◆       ◆       ◆


大災害にでも遭ったかのような城跡を見た青年が、こう独りごちた。

「なんだ。手を下すまでもなかったじゃないか」

そして更に、もう一言だけ口にした。

「しかしこうなると誰が潜んでいるか分からないな……独りでは危険か。方針を変えよう」

口調ははきはきとしていた。
さながら、悪しき者に裁きを与える勇者のように。


       ◆       ◆       ◆

455 :人は、誰かになれる。:2015/06/06(土) 19:33:03.59 ID:VVhP+CLp0.net
「独り芝居をしながら魔法をぶっ放してくるイカレ野郎……? そんな奴がいたのか。そりゃ災難だったな、ロック」
「ああ。だから仕方なく、南東行きは諦めたんだが……」
「で? そのイカレ青髪がこっちに来たら、どう責任を取るつもりなんだ? ええ?」
「それを今考えてるんだよ……まぁ、答えは一つだけど……やっぱ、一緒に戦うしかないよな」
「最悪だ……こっちにだけは来なきゃいいが」

最悪の邂逅――少なくともロックにとっては――の後、二人は小声で話し込んでいた。
当然理由はただ一つ、現状把握のためである。

「そういや、アーヴァインはどうなったんだ?」
「とっ捕まえてる。今は大人しいモンだ」
「とっ捕まえたぁ? いつの間にそんな……」
「まぁ、大人しいっつっても、これから先どうなるかは分からねぇがな。だからそろそろ戻ろうと思うんだが」
「なんか俺、今……独りだけ枠から外れてる気がする……」

自身が大変な目に遭っている間に、まさかそこまで事が運んでいるとは思ってもみなかったのだろう。
サイファーは、ロックが少しへこんでいるように見えたので、ため息交じりに言った。

「なんなら着いていくか? 実際にアーヴァインのことを確認したけりゃ、存分にすりゃいい」

その提案にロックは力強く頷く。実際、アーヴァインの姿を自身の目で確認したかったのだろう。
サイファーとしても、信頼出来る仲間が増えたのはありがたいし、夢の世界に連れていくのもありなので、一石二鳥だ。
やはり多少のリスクを背負ってでも、斥候はするべきだったな……サイファーは心中で独りごち、笑みを浮かべる。
こうして二人は踵を返し、その場から南西の祠へと歩を進めるのだった。

「やぁ」

が、そのときである。
唐突に、背後から挨拶が飛んできた。

「あァ?」
「ん?」

反射的に振り向くサイファー達。

「足が速いな、魔女の手先。おかげで時間がかかってしまった」

目線の先にいたのは、青髪ロングの柔和そうな男だった。
その瞳は、とてつもなく濁っている。それを真正面から見てしまったらしいロックは、震える声で「な、なんで……この速さで……!?」と口にした。
すると相手は「ピオリムという呪文がある。君達に教える必要はないが、な」と言い放ち、くすくすと微笑む。どうもこちらを小馬鹿にしているようだ。
その態度に苛立ちを覚えたサイファーが、一歩前に出る。

「よぉ。てめぇがロックの言ってた青髪ロングか……なんでここに来やがった? こいつをそんなに殺したいか? こんな、盗人一人を」
「それもある。だが、あのデスキャッスルとか言ったか……あの城が既に崩壊していたのを見て、方針を変えたんだ。一人では危険なのでね」

彼の問いに答えた青髪は、その長い髪を撫でながら「ならば自然と、選択肢はこうなる≠けだ」と言って嘲笑った。
しかも更に「ところで君は何者だ? ただただ邪魔なんだが」などと言うものだから、サイファーの眉間に深く皺が寄る。
それを隙と見たのだろう。青髪はにやりと笑みを浮かべて「天に選ばれし勇者として命じる。君には、ご退場願おう!」と言い放ち、素早く詠唱を始めると、

「バシルーラ!」

青髪を見据える二人が、一度も耳にしたことのない謎の言葉を紡いだ。

456 :test:2015/06/06(土) 19:37:39.34 ID:VVhP+CLp0.net
NGワードがどうとか言われました。
ちょっと待って下さい……。

457 :人は、誰かになれる。:2015/06/06(土) 20:00:40.85 ID:VVhP+CLp0.net
解決しないので、次の場面は画像で投下します。

458 :人は、誰かになれる。:2015/06/06(土) 20:16:33.98 ID:VVhP+CLp0.net
何度もすみません。
作戦を変更し、したらばの避難所に投下しましたのでそのURLを貼ります。

ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/game/22429/1115085648/205

改めて、続きを投下させて頂きます。

459 :人は、誰かになれる。:2015/06/06(土) 20:19:16.92 ID:VVhP+CLp0.net
「……あん?」

だがそのとき、彼の運命は、流転を迎える。

「……え?」

セージの瞳に、信じられないものが映った。
今まで忘れてしまっていたものを、その眼が捉えたのだ。
信じられないもの。忘れてしまっていたもの。その正体は、ただ一つ。

「……タバ、サ?」

グランバニアの王女、タバサの骸であった。

「……」

声も出せず、幽鬼のようにふらふらと遺体に近付く。
そしてその頬にそっと触れると、セージの脳は恐ろしいほどの刺激を受けた。
さながら、雷が落ちてきたかのようだった。

「……眠っているの、かい?」

あまりの衝撃から、彼は久方ぶりに自分自身の言葉で′黷閧ゥけた。
だがタバサは答えない。目を開いたまま、糸の切れた人形のように倒れたままだ。
そんな彼女を眺めている内に、セージの脳は彼女と過ごしていたときの記憶が強制的に紐解かれた。

460 :人は、誰かになれる。:2015/06/06(土) 20:21:09.98 ID:VVhP+CLp0.net
『とりあえず、僕の知っている限りの場所を探してみようか。森や砂漠以外の場所でね』
『わかった。セージお兄さんと一緒なら、きっと見つけられるよね?』
『"きっと"?違う違う』
『ぇ?』
『"絶対"だよ』

『あの頭の輪っか……何?前お城にいたときはあんなのしてなかったよ』
『さぁ、僕は知らないね。どっかで拾ったんじゃないの?』
『違うと思う』
『何でさ』
『お母さんの趣味じゃないもん、あんな変な輪っか』
『…………何それ』

『……言った通りだし』
『だから言ったでしょ?小鳥さんが話してくれたって』

『お兄さん……小鳥さんがね、"お父さんが泣いてる"って言ってる……』
『どこの世界でも物知りだねぇ、小鳥さんは。彼らなら……完璧に人の悲しみを取り除く方法も知ってるのかな』


そして芋づる式に、ほとんど頭に入っていなかったはずだったあの魔女の放送すら思い出す。


『定刻だ。
 太陽無き闇の世界にて、命を散らせた愚者たちの名を告げる』

『「アルス」「ギルガメッシュ」「ウネ」「ザンデ」「ウィーグラフ」
 「マティウス」「アリーナ」「サックス」「タバサ」「テリー」
 「ルカ」「パパス」 「フィン」「ティーダ」「スミス」
 「カイン」「ピサロ」 「ターニア」「エリア」 「スコール」
 「アルガス」「サラマンダー」
 ――以上、22名だ』

461 :人は、誰かになれる。:2015/06/06(土) 20:24:25.34 ID:VVhP+CLp0.net
激しい頭痛に苛まれ、セージは身をかがめて苦悶の表情を浮かべた。
別の人格に逃げようにも、痛みに邪魔をされてしまう。そればかりかアルス達の声を聞き取ることも出来ない。
だが両手で頭を掴み、しばしの間歯を食いしばっていると……突如、痛みが引いた。
そして全身に冷汗が流れるのも気にせず、セージは呆けるように空を見上げると、静かに「そっか……」と呟いた。
一体、何が起きたというのだろうか。

「どうして……忘れていたんだろう……? どうして、気付かないふりをしていたんだろう。
 何故僕はアルス達に助けを求めるばかりで、タバサのことから、現実から逃げてたんだ……?」

困難に押し潰され、精神をすり減らし、堕ちるところまで堕ちた賢者、セージ。
彼は、封印していた記憶を無理矢理こじ開けられたことによって、ようやく自分を取り戻したのだ。
そして今になって彼は何故この子を捨ててしまっていたのだろうか≠ニ自らに問うた。

「ふ、ふっ……ふふふ……っ! 馬鹿だなぁ僕は! あの魔女の言葉にすら耳を傾けていなかったんだもんねぇ!
 他でもないタバサとアルスの名前を言っていたのにさぁ! それを何が眠っているのかい?≠セよ! 愚かだなぁ僕は!」

だが答えが出なかったため、彼は自暴自棄になるしかなく、

「あはっ! あははははっ! 賢者!? これが、僕が、賢者だって!? あはははははは……笑わせるなぁ!
 なんでだよ! どうして忘れてたんだよ! どうして僕は……こんな大切な……こんな、こんな……こんなぁっ!」

衝動のままに大地を叩くと、そのまま後悔の海に沈んでいった。

「……タバサは、逃げなかった。いつも、いつも、逃げなかった。
 何があっても、前に進んだ。年上の僕が驚くぐらい……いつも……」

セージの脳内に心象風景が広がる。それは文字通り海に沈んでいく≠ニいうものだ。
そして深い深い海底に辿り着くと、そこで金髪の少女と青髪の青年が立っているのを見つけた。
前者はタバサで、後者は自分。タバサは満面の笑みを浮かべながら何か喋っている。
何故だか聞き取れないが、前向きな言葉を口にしているのだということだけは理解出来た。

「……それに比べて、僕は何だ?」

そして海底の自分はうつむき、無表情でぶつぶつと呟いていた。
これも聞き取れないのだが、呪詛の言葉を吐いているのだということだけは分かる。
賢者ではなく、愚者の行動だ。

「アルスと、ローグと、フルートの真似事をして、逃げて……本当、愚かにも程がある。
 馬鹿だなぁ、神様も。やっぱり僕は、賢者になんてなるべきじゃなかったんじゃないか」

心象風景から現実の世界に戻ったセージは、事切れたタバサの両目を伏せ、優しく抱きしめた。
そしてあやすように背中を叩きながら、自嘲の笑みを浮かべる。

462 :人は、誰かになれる。:2015/06/06(土) 20:27:30.47 ID:VVhP+CLp0.net
すると、

『セージ! どうした!?』
『やっと……やっとか、セージ!』
『セージさぁん!』

自身の奥底から、アルス達の声が聞こえてきた。
恐らくは彼を元気づけようとしているのだろう。いや、ローグからは違う意図が見え隠れしているようにも思える。
だが、今のセージにとっては、彼らはただの邪魔者でしかなかった。

「消えろぉ!」

故に彼は、自身への怒りを込めて叫んだ。
するとセージの中にいたアルス、ローグ、フルートの体が、風化するように崩れだす。
そう、これは死だ。人格の死が訪れたのだ。逃げ場所だった幻が、今まさに消えようとしているのだ。

アルスは驚愕からか目を見開き、何か叫んでいた。大方、止めようとしているのだろう。
フルートはのんきに呆けたような表情を浮かべていたが、すぐに人格が代わり、吠えた。
そしてローグは、笑っていた。とても優しく微笑んでいた。けれどどこか複雑そうでもあった。

こうして彼らは、今度こそ本当に死んだ。まやかしの命は、強制的に排除された。
残ったのは……セージ本人だけだ。

「逃げてばかりの僕が生きていて、頑張り続けた君が死ぬなんて、間違ってる」

そして、遂に独りぼっちとなった彼は、自身への憎悪を更に募らせ、

「死ぬべきなのは僕だったんだ。愚かな僕が死んで、聡明な君が生き残る。
 それこそが本当のシナリオだったんだ! そうあるべきだったんだよ……!
 なのにどうだ! 雑な写本のせいで物語は歪み、書き換えられてしまった!
 つまりこの世界も、今というこの瞬間も、間違いの積み重ねが生んだ塊なんだ!
 賢いタバサなら分かるよね? それにリュカさんも……そう思いますよね……?」

威嚇する狼のように低い声で叫ぶ。

「賢者になるべきだったのは君だ、タバサ。アルス達と冒険すべきだったのは、君だったんだ。
 悟りの書を読めて、いつも前向きで、大人顔負けの活躍をしてくれる君こそが、本物の賢者なんだよ」

すると黒い靄のようなものが、セージの体に絡みつきはじめた。

「ねぇ、タバサ……僕は正しい物語の続き≠紡ぐべきだと思う」

その靄の量たるや、浮遊大陸のときの比ではない。

「だから、この僕の無価値な人生は……全て捨てるよ」

そしてこれ以上ないほどに、靄が彼を覆い尽くした瞬間、

「だって、僕は弱くてすぐに逃げてしまう、この世に不必要な人間だからね」

セージは、

「だから……ばいばい、タバサ。そして、おかえり。タバサ」

あの呪文を唱えた。

「モシャス」

463 :人は、誰かになれる。:2015/06/06(土) 20:29:42.78 ID:VVhP+CLp0.net
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/game/22429/1115085648/206

(またNGワードと言われましたので、再びURLです)

464 :人は、誰かになれる。:2015/06/06(土) 20:33:16.99 ID:VVhP+CLp0.net
何者かが北上していったことにも気付かずにタバサの遺体を力強く抱きしめていたセージの姿が、黒い靄の中で変化を始めた。
まず髪が短くなり、青から金へと変わる。体つきと身長は幼い少女そのものと化し、賢者独特の衣は薄桃色を基調とした袖のない冒険服になる。
首回りからは紫色のマントが現れ、ズボンはミニスカートへ。靴の色は黄から白になり、サークレットが緑のリボンへと変化すると、

「そう……これが正史なんだよね、お兄さん」

命を落としたはずの少女……グランバニアが誇る心優しき王女タバサが、魔界の大地に立った。
そして抱きしめていた遺体をそっと横たえさせると、名簿を取り出しセージ≠フ欄をちぎって捨てる。
何故なら青髪の賢者はもういない。既に死んでいる≠フだ。ならば名簿上で生きている≠ニいうのはおかしいではないか。

更には彼女には使えないはずの火炎呪文≠ノよって地面に大穴を開け、タバサの遺体を運ぶ。
そして辺りの土で優しく埋めると、しばし目を閉じて……ふっと、微笑んだ。

こうしてセージは己の存在を捨て、タバサへと生まれ変わった=B
現在ここに立っているのはセージではなく、タバサだ。ただモシャスを唱えた男ではない。本物の少女なのだ。

そういうことになったのだ。

これが彼の贖罪だった。これが彼の到達した真理だった。これが彼なりの決着だった。
他人の目には奇妙に映るだろう。だがもはや、彼にはこうすることしか出来なかったのだ。

「お兄さん……わたし、お兄さんの分まで生きるよ。生きて、最後の一人になってみせる。
 そのためには、どんなことだってするよ。わたしは逃げない。絶対に、逃げないから! 約束するね!」

タバサに成り代わった……否、生まれ変わった彼は、かつての己を卑下するように喋り続ける。
そうすることで自身の記憶と人格と経験を捨て去り、その代わりにタバサのそれを埋め込んだのだ。

「これからは……わたしが賢者として、頑張るから……応援してね、お兄さん」

彼改め彼女は確信していた。
闇によって力を増幅されたこのモシャスならば、望む姿を半永久的に維持できるであろうことを。
結論からいえばそれは事実であるし、更には――本人も本能で理解しているようだが――唱えられる呪文も据え置き≠ニなっている。
つまりこのタバサはセージが覚えていた呪文を使用出来る≠フである。

何故、このようなご都合主義的な出来事が起こったのだろうか。
それはセージの強い願いと結論が具現化したからだ。

『賢者になるべきだったのは君だ、タバサ。アルス達と冒険すべきだったのは、君だったんだ。
 悟りの書を読めて、いつも前向きで、大人顔負けの活躍をしてくれる君が、本当の賢者なんだよ』

こうして闇の力は、悲観した者に力を与えた。
セージ改めタバサは、この力で混沌を生み出すことであろう。
けれど、大丈夫。何故ならタバサは、セージと違い前向きで、決して逃げたりしないのだから。

さぁ、これで歪んだお話はもうお終い。
これからは、美しい正史を紡いでいこう。

465 :人は、誰かになれる。:2015/06/06(土) 20:34:06.83 ID:VVhP+CLp0.net
【サイファー(右足軽傷+軽度の疲労)
 所持品:G.F.ケルベロス(召喚不能)、正宗、スコールの伝言メモ
 第一行動方針:ロックと共に南西の祠に戻り、スコールに報告
 基本行動方針:マーダーの撃破(セフィロス優先)
 最終行動方針:ゲームからの脱出】

【ロック (HP7/8、MP2/3、左足負傷、軽度の疲労)
 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード 魔石バハムート、皆伝の証、かわのたて
 死者の指輪、レッドキャップ、ファイアビュート、2000ギル
 デスキャッスルの見取り図
 第一行動方針:サイファーと共に南西の祠に向かう
 第二行動方針:ギード、リルム達と合流する/ケフカを警戒
 基本行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】

【現在位置:デスキャッスル南西の茂み(分かれ道のあたり)】



【ヘンリー(HP1/2、リジェネ状態)
 所持品:アラームピアス(対人)、リフレクトリング、銀のフォーク、キラーボウ
     グレートソード、デスペナルティ、ナイフ、命のリング(E)、ひそひ草、筆談メモ
     魔法の絨毯、スタングレネード×1
 第一行動方針:デスキャッスルに向かい、ソロ達を助ける
 第二行動方針:仲間と合流し、事情を説明する
 基本行動方針:ゲームを壊す(ゲームに乗る奴は倒す)】

【現在位置:デスキャッスル近辺】



【セージ(MP1/2、タバサ)
 所持品:ハリセン、ナイフ、ギルダーの形見の帽子、イエローメガホン
     英雄の薬、厚手の鎧、般若の面、釘バット(FF7)、グラディウス、
     聖なるナイフ、マテリア(かいふく)、陸奥守、マダレムジエン、ボムのたましい
 第一行動方針:デスキャッスルに向かうか、南東の祠に向かうか、それとも?
 基本行動方針:セージではなくタバサが生きているという正史≠紡ぐ。手段は問わない。
 最終行動方針:不幸にも死んでしまったセージ≠フ分まで生き、脱出する。手段は問わない】

※闇の力でブーストされたモシャス(以下、闇モシャス)の効果は以下の通りとします。
 .1:魔力が切れても姿は戻らない。
 .2:舞台が魔界から移ったとしても姿は戻らない。
 .3:ラーの鏡や凍てつく波動などは効くかもしれないし、効かないかもしれない。
 .4:変化した対象の呪文や特技ではなく、闇モシャスを使用した術者(今回はセージの呪文)が使える。これは術者の願いが具現化した結果。
 .5:闇モシャスは前述の通り闇の力で効力が上がっているので、闇が消えると普通のモシャスの仕様に戻るかもしれないし、戻らないかも(ry

※セージとタバサは長い期間を共に過ごしていたので、与り知らぬところでお互いの知識を交換している可能性があります。

【現在位置:デスキャッスル南東の茂み(分かれ道のあたり)】

466 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/06/06(土) 20:34:45.27 ID:VVhP+CLp0.net
あまりにもトラブルまみれでしたが、投下終了です。
ご迷惑をおかけし、大変申し訳ございませんでした。

467 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/06/06(土) 22:45:08.00 ID:4D81JONL0.net
投下乙です!
うわぁ、セージお兄さんがやらかしやがったぞ…
セージ改めタバサ()が南東に行かない事を祈りたいけど、
デスキャッスル方面はそれはそれで悲劇の予感しかないし一体これからどうなるんだ(震え

逆にロックは順調に生存ルートに乗ったなあ。
スタイリッシュ着地からノッてる感出てきたし、南西の祠組ともども頑張ってほしい

あと、細かい点だけどサイファーはクリムトにバシルーラくらってるんでそこはちょっと修正した方がいいと思った

468 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/06/06(土) 23:28:09.23 ID:VVhP+CLp0.net
>>467
感想ありがとうございます。かなり冒険した自覚があるので、受け入れられて嬉しいです。
では早速、ご指摘に対するレスポンスに移ります。

>あと、細かい点だけどサイファーはクリムトにバシルーラくらってるんでそこはちょっと修正した方がいいと思った

これは完全に失念しておりました。
というわけで解決策としては、>>455の最後を締める

>青髪を見据える二人が、一度も耳にしたことのない謎の言葉を紡いだ。

という文章を


サイファーに対し、少しばかり縁のある呪文を唱えた。


という具合に変更……って感じにしちゃおうと考えましたが、如何でしょうか。
っていうか、修正前の文章自体おかしいですね。すみません。

その他、何かありましたら感想も指摘もお待ちしております。

469 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/06/07(日) 03:29:53.29 ID:aJ3eNspM0.net
うわうわうわ、セージこうなっちまったか

470 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/06/08(月) 09:34:13.71 ID:AW79QSQB0.net
祝☆タバサ復活☆呪

新作乙です。ここにきてまさかの超展開(褒め言葉)
面白かったです

471 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/06/08(月) 10:51:33.37 ID:yFZpBxje0.net
多重人格の次はなりすまし(?)か。セージの中のローグも報われんなぁ

472 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/06/08(月) 21:58:06.14 ID:ELhuTRpl0.net
さらばセージ、というより
さらばローグと思っている俺がいた

473 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/06/13(土) 08:42:43.24 ID:lD9r4Rt1D
おつおつ
多重人格が解決したと思ったら結局危険人物のままじゃないか(震え声)

ところで8章に入ってから初の死亡者も出た事だしそろそろ編集サイトの更新した方がいいんじゃないですかね

474 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/06/14(日) 15:26:29.62 ID:UnJdVntd0.net
ローグカワイソス

ちなみに「ご都合主義的」って表現はどうなんだろう?
メタ表現なんだろうけど、自虐する必要はなくないか?
読んでて面白かったんだけどこの表現見てたら冷めちゃった
クロスオーバーなんだしある程度は許されると思うよ

475 :TRUE LOVE(FAKE) 1/7:2015/06/14(日) 23:46:18.19 ID:v9emFcHZ0.net
「止まれ、止まれ、止まれェェェェェェ!!」

光の射さない闇の世界で、彼女は一人叫び続ける。
飛び続ける体が目指すのは、どこかの彼方。
視界に写る城は、どんどん遠く小さくなっていく。
それでも、ユウナは崩壊するそれから目を離すことなど出来なかった。
だって、あの城には「      」がいるのだから。
早くこの手で、奴を殺さないと。
"キミ"は笑ってくれないだろうから。

「殺す、殺す、殺してやる!! ■■■■■■!!」

むき出しの殺意を空に溶かし、空を旅する優雅さなど味わう余裕もないまま。
ユウナは、どこかへと翔び続けた。



「おいおいおいおい! 一体何だってんだ!!」

ずん、と重く響く地鳴りに反応し、後ろを振り向いたザックスが、思わず言葉を漏らす。
何かが崩れ去っていく音と、とてつもない力のうねり。
そして、自分たちが先ほどまで居た場所であろう所から立ち上る、土煙。
ロザリーはその場で固まり、プサンは言葉を失う。
もし、あの場所に残っていたら。なんて、そんなことを考えると悪寒が走る。
一つ、気になることはあの場所に居る仲間の安否だ。
本音を言えば確かめにいきたいが、自分がやるべきことはそれではない。
託された事を、任されたことを投げ出すことなど、出来るはずも無い。
やるせない気持ちを握り拳にぶつけた後、ロザリーに優しく話しかける。

「行こう、ロザリー。今は、ソロを信じよう」
「……はい」

そう、今は希望を繋げるという役目がある。
それを果たすまでは、他の事にかまけている場合ではない。
何より、ソロがその程度で死んでしまうような戦士だとは思えない。
大丈夫、と自分に言い聞かせるように小さく呟いて、ザックス達は再び足を進めた。

476 :TRUE LOVE(FAKE) 1/7:2015/06/14(日) 23:47:04.73 ID:v9emFcHZ0.net
 


「ワンッ!! ワンワン!!」

しばらくして、アンジェロが突然吠え始める。
ザックスは、犬の言葉は分からないが、察することは出来る。
何かを伝えようとしていることを感じ取り、剣を抜いて一人前方へと躍り出ていく。
ずい、ずい、と警戒心を高めながら一歩ずつ進んでいく。
そして、数歩先に進んだ時。
軽い着地音と共に、どこからともなく一匹の着ぐるみが現れた。
こんな状況で場違いな奴だ、と一瞬考えるが、それを瞬時に振り払う。
仮にもソルジャーである自分が、無意識のうちに一歩下がってしまうほどの、強烈な気迫が放たれていたからだ。
剣を握る手に力を込めて、ザックスは来るべき時へと構えていく。
しばらくして、着ぐるみがゆっくりとこっちを振り向き、ザックスの正面を捉えた。
その瞬間、ザックスは着ぐるみが誰なのかを知ることが出来た。
けれども、それを理解することは出来なかった。
着ぐるみに身を包んだもの、その正体。
それは、あの場所で別れたはずのユウナという女性。
けれども、それはあくまで"顔"だけの話。
所々に散りばめられた赤と、光を失った目。
まるで、此方のことを魔物とでも思っているようだった。
何より決定的に違うのは、突き刺さる殺気と、どす黒い気。

「……ユウナ?」

ザックスは真実を確かめるために、その名を呟く。
返事はなく、僅かに俯いたまま、相手は動かない。
危険を感じながらも、ザックスは更に一歩前へ踏み込む。

「どうした、何があっ――――」
「邪魔」

声を遮るように、ユウナは突然前を向く。
この世の全てを憎む鬼のような顔に、ザックスは再び気を取られてしまう。
そして、その一瞬が命取りであることは、考えるまでもない。
いつの間にか握り込まれていた二本の剣が、ザックスの胸で交差する。
聖剣の力と、雷剣の力が、ザックスに深い傷を刻み込んだ。
ゆっくりと崩れ落ちるザックスの姿に、誰もが反応できずに見届けていた。
そして、それを認識したアンジェロがユウナに飛び掛るが、既に遅い。
流れるように繰り出されたもう一撃が、アンジェロの体にも傷を刻み込む。
力なく地面に落ちるアンジェロに、何の興味も示さず、ユウナは前へと進む。
その時、彼女の行く手を遮るように二つの人影が現れる。
眉間に皺を寄せながら、その人影を仕方なく視界に捉える。
片や、隣でうずくまるザックスを見て恐怖を感じている女。
よく見れば、それは自分が追い払った女だった。
そういえば今し方斬った男に、押しつけたような覚えがある。
だが、うずくまる男の姿を見て声を漏らして怯える女など、今はどうでもいい。
それより、問題はもう一人の方だ。

「あら、プサンさんじゃないですか」

ユウナは、未だに自分を睨み続けるバーテンダー風の男の名を呼ぶ。
抵抗するつもりなのだろうか、剣を握ったまま、ロザリーを庇うように一歩前へでている。

「一つだけ、聞こうと思ってたんです」

まあ、好きにすればいい。
そう言わんばかりに、ユウナは話を続ける。
一点だけ、彼女が気になっていたことを、プサンに問いかけるために。

477 :TRUE LOVE(FAKE) 1/7:2015/06/14(日) 23:47:30.48 ID:v9emFcHZ0.net
 
「本当に『     』は、あの城に居たんですか?」

決定的な名前を、彼女が口にする。
その瞬間だけ、音が削れたような感覚を受ける。
得も言われぬ恐怖に、プサンは思わず一歩退いてしまう。

「今、目を逸らしましたね」

勿論、ユウナはプサンの変化を見逃さない。
一歩退く姿、にじみ出る脂汗、そして逸らした目線。
言葉はなくとも、それを語っているようなものだった。

「嘘、ついてたんですね」

ずい、と一歩近寄る。
すっかり退け腰のプサンが、突き動かされるように剣を振るう。
だが、それは意味を成さない。
蠅を払うような手つきのユウナの剣が、それを弾き飛ばしたからだ。
その瞬間に、ユウナは更に一歩踏み込み、プサンの首を掴み、ゆっくりと持ち上げる。

「もう一度、チャンスをあげます。『      』の居場所を教えてください」

じたばた、とプサンは足をばたつかせる。
持ち上げられる力は、とても女性のものとは思えない。
ゆっくりと締め上げられる首が、空気の通り道を失っていく。
声にならない声だけが漏れ続ける中、ユウナは更に腕に力を込める。
必死になって切り抜ける術を考えるも、何も思いつかない。
ただ、ただ、残酷に時間だけが過ぎて。

「だんまりですか、じゃあいいです」

時間切れを告げる、言葉が放たれる。
空いていた片腕が、ゆっくりと上がり。
握られた剣が、プサンの胸を一直線に貫かんと迫る。

「……どうして」

その手を止めたのは、ロザリーの声。

「こんなことをするんですか」

ぽろぽろと赤く煌めく涙を流しながら、ユウナへと問いかける。
純粋な疑問だった、何故と思う心が強かった。
殺されるかもしれなくても、それだけは聞かないといけないと思ったから。

「それはね」

プサンから手を離し、ロザリーに背を向けたままユウナは答える。
同じ事を問いかけられることはあったが、こうして答えるのは初めてかもしれない。
どうせすぐに殺してしまうけれど、折角なのでそのまま言葉を続けていく。

「愛する人のため」

そう、ユウナが愛してやまない、たった一人の大事な人。
その人を取り戻すため、かけがえのない幸せな時間を過ごすため。
戦い続けなければいけないし、進み続けなければいけない。

478 :TRUE LOVE(FAKE) 1/7:2015/06/14(日) 23:48:12.20 ID:v9emFcHZ0.net
 
「愛する人の、ため?」

咄嗟には理解できなかったようで、ロザリーはユウナの言葉をオウムのように返す。

「そう」

間髪入れず、ユウナは肯定の言葉を投げる。

「だから、私が戦わなくちゃいけないの」

何よりも大切なものを取り戻すために、ユウナは血を浴びる。
この壊れた世界と狂った人間たちを滅ぼした先で、待ってくれている。
そう信じているからこそ、ユウナは前を向ける。

これ以上、語ることも無いだろう。
必要最低限の言葉を並べ終えた所で、ユウナは再び剣に手をかける。
あとは腕を振り抜くだけで、目の前の命は終わる。
そう、それだけ、それだけで終わりだというのに。

「……何が可笑しいの」

聞こえてきたのは、小さな笑い声だった。
俯いたまま、ユウナの顔を見ようとせず、ただただ静かに笑い続ける。
ユウナが眉を顰め始めたとき、ロザリーはゆっくりと顔を前に向け始める。
同時に、笑い声が大きくなる。
光の射さない暗い世界に、ひとしきりロザリーの笑い声が響きわたる。
狂ったように笑い続けるロザリーを黙らせようと、ユウナはその剣を振るう。

「"愛"? ただの"殺人"じゃないですか」

だが、その剣はロザリーに届かない。
いつの間にか抜かれていた一本の剣が、ユウナの剣を止めていたからだ。
ぐい、とユウナの剣が押し返される。
どこにそんな力があったというだろうか。
焦りの表情を浮かべるユウナに、ロザリーは立て続けに言葉を放つ。

「愛する人に捧げるのは"愛"です。"生け贄"じゃあ、ありません」
「あなたに何が分かるって言うの!!」

淡々とした声で語りかけるロザリーに対し、ユウナは再び剣を振るう。
けれど、やはりその剣はロザリーを傷つけることはない。
ひとつひとつ、丁寧に剣をかみ合わせて受け流す。
それは、まるで誰かが守っているかのように。
そしてロザリーは、ユウナの放つ大降りの一撃を、歴戦の強者のように弾く。

「ええ、分かりません。分かりたくもありません」

ロザリーは再び言葉を続ける。
その声はとても小さく、けれどもはっきりと聞こえて。
まるで彼女ではない、別の誰かの声のようでもあった。

「そんな、偽りの愛なんて」

そして、それは現れた。
怒りに狂い、力を振るい続けたユウナが止まった。
ようやく呼吸を整えたプサンは、再び呼吸を忘れた。
真っ黒い何かが、ロザリーを包み込む。
塔のようにそびえ立った後、一瞬で霧散していき、そして。

479 :TRUE LOVE(FAKE) 1/7:2015/06/14(日) 23:48:37.85 ID:v9emFcHZ0.net
 
「あまりにも、みじめで、可哀想で、哀れですから」

そこに残されたロザリーは、ロザリーとは思えないほど邪悪な顔で。
明らかにユウナを"見下す"ように、笑っていた。

「五月蠅ァァァァァァァァァいッ!!」

笑うロザリーに、再びユウナが剣を抜いて切りかかる。
しかし、それはロザリーを傷つけることはない。
二人の間に割って入った風、1stソルジャーがその斬撃を受け止めていたからだ。

「さっきのは、効いたぜ。でも、俺を倒すにはちょっと足りなかったみたいだな」

ユウナの剣を弾き飛ばしたあと、大剣をユウナに向けて突きつける。
大きな傷は負ったものの、致命傷ではない。
剣を振るうだけの体力も、まだ残されている。
ならば、前に出るのが"ソルジャー"の役目だ。

「二人とも大丈夫か」

ザックスの短い問いかけに、プサンもロザリーも頷いて答える。
ほっ、と一安心したところで、もう一度剣を構え直してユウナの方を向く。

「何があったか知らねえけど……悪いがこっちは"任されてる"んでね」

ザックスの言葉に応じるように、ユウナはザックスを視界に捉える。
その目には、明らかな殺意と憎しみ。
分かり切っていることだが、戦闘はもう避けられない。

「先に行っててくれ、後で追いつく」

短い一言で全てを察したのか、ロザリーとプサンは一歩退き、そのまま振り返って走り出す。
ザックスが手練れだとしても、二人を守りながら戦うには少し厳しい。
自分が二人から離れることは少し危険だが、それでもこの場にとどまらせるリスクよりかは断然軽い。
南東の祠へ、なんとしても情報を届けるのが今は先決なのだから。
幸い、自分は一人ではない。
傷を負いながらも共に立ち向かってくれる、力強い相棒がいるのだから。

「……どいつも、こいつも!! 邪魔、邪魔邪魔邪魔!
 邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔ァァァァッ!!」

ロザリーたちが走り出したと同時に、ユウナは小さく呟く。
低く、重いその声は、ザックスの知っている"ユウナ"とはかけ離れていた。
負っている傷は大きく、正直手加減などしている場合ではない。
命を奪うことになるかもしれないが、やむを得ないだろう。

「殺す、殺す! 殺してやる!! 『      』の手先め! 殺してやる!!」

叶うことなら、彼女の凶行を止めたいと思いながら。
どす黒い殺意を放ち続けるユウナへと、ザックスは向かっていった。

480 :TRUE LOVE(FAKE) 6/7:2015/06/14(日) 23:49:18.08 ID:v9emFcHZ0.net
 
走る、というよりは早歩きと言うべきか。
普段から運動になれていない女と、傷ついた男では出せる力に限度がある。
それでも、一生懸命前に進もうという気持ちのおかげか、普段よりは早く移動することが出来た。
そんな二人の間に、会話は無い。
それもその筈だ、プサンは"見て"しまったのだから。
ロザリーが何よりも怪しく笑った、あの時。
まるで、彼女を守るように重なる、黒い"影"の姿を。
はっきりと、両の目で見たのだ。
そして、今もそれはプサンの脳裏にちらついている。
……本当に、目の前の存在は"ロザリー"なのか。
ちらつく影は、プサンから確信を奪う。

「ロザリーさん」
「はい」

呼びかけには、素早い返答が返ってきた。
くるり、と振り向き、にこりと優しく笑う。
その姿は紛れもなく、先ほどまでの"ロザリー"だった。
桃色の美しい髪も、白い衣服も、輝く赤い目も、彼女だと主張しているのに。
どうしてだろうか、彼女が"ロザリー"だと信じきれないのは。

「いえ、何でも……」
「そうですか、では急ぎましょう」

言葉を濁すプサンに対し、はきはきとした受け答えの後にて、ロザリーはそそくさと歩き出した。
今は一刻も早く、南東の祠を目指さなくてはいけない。
それを誰より分かっているから、ロザリーの足が速まるのも無理はない。
気を抜けばどこか遠くへ行ってしまいそうな背中を、プサンはただ、黙って追いかけることしかできなかった。
その後ろ姿に、未だに黒い影をちらつかせながら。

481 :TRUE LOVE(FAKE) 7/7:2015/06/14(日) 23:49:49.43 ID:v9emFcHZ0.net
【ユウナ(きぐるみ士、HP1/3、MP0、全身に軽度の火傷、ティーダ依存症)
 所持品:銀玉鉄砲(FF7)、官能小説2冊、
 天空の鎧、血のついたお鍋、ライトブリンガー 雷鳴の剣
 スパス ねこの手ラケット  ビーナスゴスペル+マテリア(スピード) 水鏡の盾
 第一行動方針:皆殺し
 第二行動方針:ザックスを殺して、ロザリーを追う
 基本行動方針:脱出の可能性を潰し、優勝してティーダの元へ帰る】

【ザックス(HP1/5程度、左肩に矢傷、右足負傷)
 所持品:バスターソード 風魔手裏剣(10) ドリル ラグナロク 官能小説一冊 厚底サンダル 種子島銃 デジタルカメラ
 デジタルカメラ用予備電池×3 ミスリルアクス りゅうのうろこ
 第一行動方針:ユウナに対処
 第二行動方針:ロザリーの安全を確保する為南東の祠へ向かう
 基本行動方針:同志を集める
 最終行動方針:ゲームを潰す】
【アンジェロ(HP2/3)
 所持品:風のローブ、リノアのネックレス
 第一行動方針:ユウナに対処
 第二行動方針:ザックスに協力する
 基本行動方針:ケフカを倒す/仲間達に協力する】
【現在位置:東部草原(サラマンダーの死体のあたり)】

【ロザリー
 所持品:守りのルビー、力のルビー、破壊の鏡、クラン・スピネル、E猫耳&しっぽアクセ ウィークメーカー
 ルビスの剣 妖精の羽ペン 再研究メモ、研究メモ2(盗聴注意+アリーナ2の首輪について) 、ザンデのメモ、世界結界全集
 第一行動方針:南東の祠へ向かう
 第二行動方針:脱出のための仲間を探す[ザンデのメモを理解できる人、ウィークメーカー(機械)を理解できる人]
 最終行動方針:ゲームからの脱出】
※ザンデのメモには旅の扉の制御+干渉のための儀式及び操作が大体記してあります。
【プサン(HP1/3、左腕負傷のため使用不能)
 所持品:錬金釜、隼の剣、メモ数枚 風魔手裏剣(1)
 第一行動方針:南東の祠に向かい、脱出方法を伝える。
 基本行動方針:仲間を探しつつ人助け】
【現在位置:東部草原(サラマンダーの死体のあたり)→南東の祠へ移動】

482 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/06/15(月) 03:35:14.61 ID:u4QTFxtr0.net
いい加減誰かにユウナを止めてほしいけどその役目はティーダなんだろうと思うと犠牲ばかり増えて虚しくなるな

483 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/06/15(月) 08:24:53.59 ID:5s00Klgh0.net
うわああロザリーちゃんまで…!
しかし現状ではあながち悪い兆候ではないかもしれないな
他の「闇」とはちょっと別物みたいだし、どう転ぶんだろ

484 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/06/16(火) 15:36:19.39 ID:12uFHh7Z0.net
乙です 

485 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/06/16(火) 22:30:19.85 ID:a4iFnsCx0.net
投下乙!
ザックスとアンジェロ大丈夫かな…ユウナ様が相手では勝てる気がしねぇ

そして闇化した?ロザリーはなんとなく
サックス死亡後のエリアと雰囲気が似てる気がする
あの最後の方のエリアはめっちゃ好きだったな

486 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/06/17(水) 21:22:35.61 ID:W+uEcJL80.net
アカン、どうしても原作やCCでのザックスの最期を彷彿とさせられる
あの時と違ってアンジェロが居る分、どう転ぶか

487 :Give me a break! 1/21:2015/06/18(木) 16:24:21.63 ID:fUzeMHAk0.net
完成した四本目のドライバーを床の上に置いて、眼の周りを軽く揉む。
真っ暗闇ってわけじゃあないけどやっぱり薄暗いし、頼りのランプも一個だけ。
そんな中で、金属ですらない素材を削り出してドライバー作ってるんだもの。
そりゃー神経も使うし眼も疲れるって。

「……ぁ"ー……」
ふー、とあたしが息をついている傍らで、アーヴァインは首輪の上から喉に手を当て掠れた呻きを上げている。
「痛いなら治すってば」
さっきから何度も何度も、ずーっと言ってる台詞を口にするけれど、彼はやはり首を横に振る。
こちらに振り向きもしないで床を見つめたまま、音になってない声で何事かを呟くばかり。
無理やりケアルラかけちゃおうかなぁ、と思った事もあるんだけど。
近寄ろうとするとアーヴァインは左手を振り、あたしの手元を指差して『先にドライバー作っちゃいなよ』とジェスチャーで促してくる。
んでもって、確かにドライバー作りは優先しなきゃいけないことだからあたしも作業に戻らざるを得ないわけで。
結局、済し崩しになって放置って結果になっちゃってるワケだ。

もちろん、『本人がそれで良いなら別にいいんじゃないか』って考え方もあるんだろうけど。
パインとかアーロンとか、ワッカとかルールーとかキマリとか、他の皆だったら向こうの意見を優先したげるんだろうけど……
それでもやっぱり見ていて痛々しいし、少しぐらいどうにかしてあげたい。

そんなあたしの態度が気に障ったのか、はたまた単なる思い付きだったのか。
アーヴァインは大きなため息を吐くと、ゆっくりと自分のザックに手を伸ばした。
ごそごそと取り出したのは捻じ曲がった緑色の杖。
『変化の杖』って名前を思い出したのは、アーヴァインが一振りした後だ。

"ぼわんっ!"

ケッコー派手な音がして、ピンクの煙がもこもこ舞い上がる。
こんなに煙が出たら部屋の中に充満して息苦しくなっちゃうんじゃないかと思ったけど、魔法の産物だったのか瞬く間に消えてしまった。
晴れた視界の先、キリッと作り笑いを浮かべて立っていたのは、薄茶色のコートとこげ茶色の帽子を被ったアーヴァイン。
服装こそ見慣れないヤツだけど、羽も生えてないし右腕も変形してない。
フツーの人間の姿に戻って……いや、フツーの人間だった頃の姿に変化したってコトなんだろう。

唖然としてるあたしに見せつけるように、アーヴァインはグッと握った拳を胸の前に持ってきて何かのポーズを取る。
多分、『心配しなくていいよ』ってジェスチャーなんだろう。
でも――

「……あー、うん」
それ以外のコメントが出てこない。
『まーた無理して』って呆れと、可哀想なヤツだって気持ちがごちゃまぜのぐちゃぐちゃで。
気の利いた言葉すら思いつけない。

488 :Give me a break! 2/21:2015/06/18(木) 16:30:14.05 ID:fUzeMHAk0.net
「……」
トーゼンながら、向こうはあたしのリアクションが気に入らなかったみたいだ。
むすっとした表情を浮かべながら髪を掻き上げ、それから腕を組んで何事かを考え込み始める。

「あのさ、気持ちはわかったから、大人しく休みなってば。
 あたしもサッサカサーって作業終わらせちゃうから」
「え〜……」

アーヴァインは口を尖らせながら不満げに声を漏らした。
その反応があまりに自然だったからあたしは一瞬スルーしちゃったワケだけど。
「ん……? んん……」
さすがに本人は違ったらしく、眼をパチパチ瞬かせ、左手で喉元を抑える。
そして、
「あー、あー、らー」と、音程も何もない、歌なのか何なのかわからない声を出し始めた。
とうとう頭がおかしくなっちゃったのかなあとか、良くわからない悪ふざけの延長なのかなあ、と首を傾げたのもつかの間。
「あーあー……テステスマイクテス〜。
 本日は晴天なり、デリングシティはいつもど〜りの大曇り、いつ行っても夜みたい〜っと」
「ん? あれ……?」
ここまでペラペラ喋られれば、あたしだってさすがに気付く。

アーヴァイン、普通に声が出てる。

「……っしゃあ! やった〜〜〜! シャ・ベ・レ・ルぅうううう〜〜〜〜〜!」
呆気にとられるあたしを余所に、アーヴァインは今まで見たことないほど嬉しそうな表情を浮かべる。
腕をぐっと腰の後ろに引き、全身でガッツポーズを取ったかと思うと、ぴょんぴょんジャンプまでし始めた。
「いやっほ〜ぅっ! 魔法の杖スゴイ! これで勝てる!
 もうお荷物だとかヘタレだとか非正規SeeDだとか、あんたいたっけか覚えてないとか忘れてたとか言わせない!」
本当に嬉しいんだろうけど、そんなにはしゃいでヘーキなんだろうか。
あたしが心配した次の瞬間――

「アーヴァイン=キニアス、ここにふっかぁあゲホッゲホォォッ!!」
派手に咳き込みながら、ぱたりと転ぶように倒れた。
うん。やっぱりそう簡単に復活できるわけないよね。

「だいじょぶ?」
恐る恐る声を掛けると、アーヴァインは床に突っ伏したままぽつりと呟く。
「まま先生、僕はもうダメです」
「まま先生って人じゃないケド知ってた」
あたしはため息を吐きつつも、彼の手を握って勢いよく引っ張り起こした。
石造りの床とはいえだいぶ埃っぽいし、あんなふうに倒れこんだらフツーは服とか顔とか少しぐらい汚れそうなもんだけど……
不思議な事に、ウールっぽい素材のモコモコした袖や襟にすらゴミひとつひっつかない。
怪我の痕も血の染みも見当たらないし、コレもソレもぜーんぶ変化の杖の効果なんだろうか。
だけど――倒れたり、こうして「うう、いった〜……」ってぼやきながら顔をしかめているあたり、
カバーしてるのはあくまで見た目だけってことなんだろう。

489 :Give me a break! 3/21:2015/06/18(木) 16:38:50.47 ID:fUzeMHAk0.net
「でも、なんで急に声治ったんだろうね?」
色々考えてるうちに、ふと沸き起こった疑問を口にする。
中身は治ってないのに声だけ治るってのも不思議な話だと思ったからなんだけど。

「多分だけど……えいっ」
アーヴァインはまたもや杖をぽいんと一振りした。
化けたのはティーダの姿。
もちろんあたしが見慣れてたあの恰好じゃなくて、さっきアーヴァインに召喚された時と同じ、緑のバンダナにシンプルな服っていう出で立ちだ。
そしてさっきと違うポーズ――といっても、立ち上がって足開いて腕を組んでるだけだけど――を取る。

「ウィッス! 俺ティーダッス!
 ……ほらね、やっぱり」
爽やかなようでアヤシイ笑顔を浮かべ、ティーダと同じ声で嘘の名乗りを上げたかと思ったら、一人でうんうん頷いてるもんだから。
あたしはつい強めの口調で詰め寄る。
「一人で納得してないでよ!
 ……あ、でも喋るの辛かったら無理に話さないでいいかんね!?」
「説明してほしいのか要らないのかどっちなんだよ〜」
そっちの体調を考えて配慮したってのに、大きく肩を竦めながら、ティーダの姿をしたアーヴァインはため息をついた。
声も見た目も完璧に同じなのに、本物のティーダとは細かい仕草や表情が違ってるから不思議な感覚だ。

「まあいいや。
 仕組みはわかんないけど、この杖ってドレスフィアと違って身体や衣服の構造そのものを変化させてるみたいなんだ。
 だからほら。服も触れるし、手とかも別に変な感じはしないだろ?」
「えっ? ……あ、ホントだ」

促されて触れてみたけど、バンダナも服も本物の木綿で出来た布地としか思えない。
右手を握手してみても『あーあー、うんうん、ティーダの手だなぁ』って感想しか浮かばない。
髪の毛でさえ、ボサっとしているようでツヤツヤに洗っててビシッとスタイリングされてるいつものティーダの髪で。
前にヘンリーが、『この杖を使ってたスコールの偽物がいたみたいだ』って言ってたけど……
こんなスゴイ再現度で化けられるなら、そりゃピサロだって見抜ききれないはずだよね。

「声が出せないってのは、だいたい喉の声帯が炎症や怪我で変形した結果だからさ。
 この杖の力は声帯まで化けた相手に変化させちゃうから、変形が上書きされて結果的に声が出るようになる――って事なんじゃないかな。
 だから僕の声も、今はティーダの声になってるワケだよ」

そう説明しながら、アーヴァインは左手で変化の杖をくるくる回した。
あたしが知ってるティーダのイメージに引っ張られてるのかもしれないけど、顔色もいいし、フツーに元気に見えるのに……
一通り喋り終わった後にした「ゴホゴホッ」って苦しげな咳き込みが、彼の中身と本当の体調を物語っている。
けれど声が出なかった鬱憤が溜まっていたのか、苦しくても喋っていた方が気が紛れるのか。
アーヴァインは自分の恰好を改めてジロジロと眺めた後、独り言のように呟いた。

「ま、欲を言えば服の汚れやリアルな怪我なんかも再現してほしかったけどね。
 今の状況でこーんなツヤピカ新品服着れるやつなんかいないっつ〜の」
「そうかなぁ? ドレスフィアだって使い直せばツヤピカドレスに戻るよ?」
あたしのフォローに、アーヴァインは呆れたように目を細める。
「あんたのファンタジーなドレスと、フツーの人間がギルで買う既製品の服を一緒にしないでくれないかなぁ。
 ……ゲホッ、ゲホッゴホッ! ゴホッ、ゴホッ!」

490 :Give me a break! 4/21:2015/06/18(木) 16:42:21.89 ID:fUzeMHAk0.net
割と淀みなく喋っていたアーヴァインだったけど、少し無理が祟ったみたいだ。
急にしゃがみこんで、今までよりも強い咳をし始めた。
その様子に驚いたあたしは、慌てて彼の背中をさする。

「だ、大丈夫?」
あたしの言葉に、彼は目をぎゅっとつむりながら息を止め、口を押えて唾を飲み込んだ。
どっちかっていうとそれはしゃっくりを止める方法なんじゃないかなあと思ったんだけれど、それなりの効果はあったらしい。
すう、はあと呼吸を整えたかと思ったら、また顔を上げて話し出した。

「ありがと。でも、ヘーキだよ。
 ほら、この部屋って埃っぽいしさ〜。喉に悪い環境だから咳出ちゃうのも仕方ないっつ〜か」
絶対嘘だ。
そう思ったあたしは、今度こそ本気で治療するつもりでケアルラを唱えようとした。
しかしそれを見透かしたように、アーヴァインは眼を逸らしながら呟く。

「あのさ……構わないでくれとまでは言わないけど、マジで回復魔法とかは要らないからね。
 魔力が無駄になるだけだしさ」
「なんでよ!」

アンデッドってワケじゃあるまいし、回復魔法は良い効果こそあれ使って悪いものじゃない。
だからあたしは抗議の声を上げたんだけど、アーヴァインは無表情のまま自分の右手を見つめるばかり。
何をしたいのか計りかねて見守っていると、今度は水が入った小瓶を自分のザックから引っ張り出し、ごくりと一口飲み込んだ。
ホントにホントーに、何を考えてるのかさっぱりわかんない――
そう思った矢先だった。彼が唐突に喋り始めたのは。

「……僕をモンスターに変えたのは、アイツの血で。
 そいつはもう僕の血と一緒くたになって身体全部に行き渡ってる。
 だから怪我を負った部分を勝手に修復して造り替えたり、炎症を起こした喉をさらに変形させたりできるわけだ。
 で、さ。そうやって変な形に治されちゃった部分は、怪我してるってわけじゃあないんだよ」

「んー……んん? どゆこと?」
あたしが首を傾げていると、アーヴァインは苦笑しながら解説する。
「例えばさ。骨折っちゃって、処置せずに放っといたら骨が歪んでくっついちゃう事あるだろ〜?
 そういう状態で回復魔法かけても、骨がシャキーンって真っ直ぐにはならないよね。
 歪んではいるけど治ってるわけだから、それ以上治るも何もないワケだよ」
「だ、だけど、さっきは」
「ホワイトウィンドだっけ?
 確かにちょっとだけ侵食が止まったし、痛みも薄れたし、一応効果はあったっけね。
 でもさ〜……それがどうしたっての?」

アーヴァインは水をごくごくと飲み干してから、残った瓶を無造作に床に叩き付けた。
冷たい石造りの床の上でガラスの瓶は軽い音を立てながら呆気なく砕け、破片を辺りにまき散らす。
「助けて貰っといてアレなんだけど、別に僕の身体が元に戻ったってわけじゃないだろ。
 力を尽くしてもらったところで……やっぱり、ただの一時しのぎにしかならないんだよ」
呟きながら鋭利に尖ったカケラの一つを手に取った彼は、おもむろに自分の指先を切りつけた。
けれど流れるはずの血は一滴もこぼれない。
その不自然な現象が、変化の杖で他人の姿に化けた影響なのか、身体がモンスター化した結果なのか。
あたしには判別できないけど、彼自身は理解しているらしかった。

491 :Give me a break! 5/21:2015/06/18(木) 16:46:58.75 ID:fUzeMHAk0.net
「今すぐ治してもらわなきゃ死ぬってわけでもないし、今はまだ僕は僕で居られてる。
 限りある時間と魔力を費やしてまで治す必要なんかないんだ。
 逆に無理して僕を助けたせいで、例えばサイファーだとかあんた自身だとか――
 ……他の誰かの治療が出来なくなって、死んだってなったらさ。
 その方が、よっぽど嫌だし傷つくよ」

ハンドサインを見るまでもない。
表情を見れば、それが本心からの言葉だってことはわかる。
あたしが何も言い返せないでいるうちに、アーヴァインはどんどん言葉を継いだ。
「前に言ったかどうか忘れちゃったけどさ、リュックにはもっと先の事考えてほしいワケだよ、僕としては。
 痛いのも苦しいのも慣れちゃえばど〜ってことないんだし、僕一人が我慢すりゃ済む問題だ。
 だいたい僕が死んだらティーダは泣くって言ってくれたけど、僕以外の仲間の誰が死んだって、ティーダはやっぱり泣くだろう?
 ……嫌なんだよ、そういうの。これ以上ティーダが泣いたら、嫌なんだ」
「だけど――」

アーヴァインの言いたい事はわかるけど、それでも自分一人が犠牲になればいいって考え方が正しいとは思わない。
そう反論しようとした矢先だった。

「うっせぇな、てめぇら!
 人が寝てる時にギャーギャー騒ぎやがって!!」

部屋の隅から怒声が上がる。
顔を向ければ、そこには眉間に皺を寄せて上半身を起こすサイファーの姿。
夢世界での話し合いが終わったから起きたのか、本当にうるさすぎて目が醒めちゃったのか……
後者だったら謝った方がいいのかな……?

「あ〜あ、起きちゃった」
あたしとは反対に、アーヴァインは悪びれる様子もなく、額に手を当てため息をつく。
でもその姿はティーダのままだ。
サイファーにしてみれば、そりゃーわけがわからないに決まってる。
片方の眉を跳ね上げて、胡散臭げにあたし達を交互に見ていたけれど、やがてアーヴァインの手に握られた変化の杖に気づいたようだ。

「テメェ、アーヴァインか?」
「他に誰がいるってのさ〜」
サイファーが問い詰めると、アーヴァインはやれやれと首を振る。
けれど自分が姿を変えていた事に思い至ったのか、「あっ、いけね」と小声でぼやきながら杖を振った。
「ほらほら、この通りっと」
白いローブを着た自分の姿に化け直し、誤魔化し笑いを浮かべるアーヴァイン。
そんな彼を見て、サイファーは眉間の皺を一本増やしわざとらしく舌打ちした。

「チッ……ややこしい姿してるんじゃねえよ。
 またあの幽霊野郎を召喚したのかと思ったじゃねえか」
そのサイファーの言い方がそれほど気に食わなかったのか。
アーヴァインはぴたりと笑うのを止め、歯噛みしながらサイファーを睨み付けた。
同時に、部屋中の空気が一気に凍りついたような感覚に襲われる。

492 :Give me a break! 6/21:2015/06/18(木) 16:53:08.11 ID:fUzeMHAk0.net
「ティーダは生きてる。
 幽霊なんかと一緒にするなよ」

息苦しくなるほどの威圧感。
あたしの脳裏に、いつかの怯えきっていたアルガスの姿が浮かぶ。
だけどサイファーは気圧された様子も見せず、つまらなそうに鼻を鳴らした。

「フン、寝てる間に人並みに喋れるようになったと思ったらそれかよ。
 たかだか一日二日の仲間にずいぶんと執着しやがって。
 その感情、ハナっからチキン野郎やスコールに分けてやりゃ良かったんだ。クソ野郎が」

火に油どころか、ガソリンを注いでさらに全力で煽ってるようにしか聞こえない台詞と態度だったけど……
アーヴァインには何か思うところがあったらしい。
彼がサイファーから視線を外すと同時に妙な圧迫感は霧散し、代わりのように「そうかもね」と疲れを滲ませた呟きが響いた。

「……なぁ、サイファー。
 あんた、なんで殺し合いに乗らなかったんだ?」
「は?」
アーヴァインの問いかけに、サイファーは左眉を跳ね上げる。
そして「何を今更」って言いかけたけど、
「あんたの口から聞いておきたいんだ。
 いつが最後になるかもわからないから、聞けるうちにさ」
その言葉と表情に彼は口を噤み、ややあって大きく舌打ちした。

「ケッ、乗るも乗らねえも……あの魔女がもうちっと気の利いた御膳立てをしてたら考えたかもしれねえがな。
 百個以上あるゲームの駒扱いに甘んじたって面白くもなんともねえだろ。
 そんなことするぐらいなら魔王の恋人様の騎士を務めてやった方が余程ロマンがあるってもんだ」

……。

「えっと……なぁにそれぇ」
あんまりにあんまりな答えで毒気を抜かれたのか、色々聞き間違いかもしれないと思ったのか。
アーヴァインは目をパチパチと瞬かせ、首を傾げながら右耳を抑える。

「なんだよ。文句あんのか?」
「文句っていうか……そういう話なの?
 なんかこう、スコールやリノアって友達がいるからとか、あんたの憧れのラグナを殺したくなかったとか、
 あるいはアルティミシアが元の世界に返してくれるとは思わなかったからとか、そういうアレコレはないの?」
「1ミリも考えなかったとは言わねえが、そんなもんは後付けの理屈だ。
 最初に会ったのがロザリーじゃなくてテメェだったら、テメェをぶっ殺してそのまま殺し合いに乗ってただろうな。
 それでも戦い方も知らない女子供なんか殺す気はねえし、そいつらと出会った時点で俺の殺し合いは終了だったろうが」

相変わらずなサイファーの返答に、アーヴァインはとうとう頭を抱えて唸り出す。
「う〜……元側近のあんたが殺し合いに乗らなかったとか、スコールと同じぐらい相応の理由があると思ってたのに……
 明らかに僕より考えナシの、ぶっちゃけその場のノリとかどういうことなの……?」
「ノリじゃねえ、ロマンの問題だ」
「大して変わらないだろ!? あ〜もう、わけわかんない!
 ……ゲホッゲホッ」

493 :Give me a break! 7/21:2015/06/18(木) 16:58:24.56 ID:fUzeMHAk0.net
サイファーの言ってる事、全く理解できないってワケじゃあないけど……
それはそれとして、アーヴァインが叫びたくなる気持ちもよーくわかる。
だけどサイファーとしては面白くない反応だったようで、
「テメェが聞くからわざわざ答えてやったのによ、クソ野郎」と吐き捨てた。

「う〜〜〜〜……」
ザックから新しい飲料水の瓶を取り出し、ごくりと一口飲んだ彼は、それでも納得いかない様子でサイファーを見上げる。
サイファーはサイファーでアーヴァインを睨み付けたけど、やっぱりすぐに目を逸らしてつま先で床を叩いた。
「あーうるせえ、ガキみたいにやかましく喚きやがって。
 ……そんなことよりリュック、今何時だ? 俺が寝てから何時間ぐらい経った?」
「え?」

えっと、そんな急に話題を変えられても。
おまけに時計も何もないのに時間を聞かれても。
あたしが返事に困っていると、ぷーと頬を膨らませていたアーヴァインが小声で口を挟む。
「何時だなんてわかるわけなーいじゃ〜ん。
 一大事ーとか辛いぜマジ〜とか言っときゃいいわけ〜?」
「うるせぇって言ってんだろガルバディア野郎。
 だいたいでいいから教えろってんだよ」
サイファーは反論しながら、何故かアーヴァインのザックを拾い上げる。
喉でも渇いたんだろうかと思ったんだけど、取り出したのは手帳と筆記用具、そしてコンパスと地図。
夢の中で話した事を伝えるために、無理やり話題を変えたんだろうか?
でもコンパスと地図は何に使うつもりなんだろう?
アーヴァインもあたしと同じように考えたらしく、小首を傾げる。
だけどサイファーが苛立った様子で睨み付けてきたもんだから、あたしは慌てて返事をした。

「うーん。よくわかんないけど、一時間とか二時間とか三時間ぐらいじゃないかな?
 もしかしたらもっと経ってるかもしんないけど、放送は来てないから朝にはなってないと思う」
本当に知りようがないことだからテキトーに答えたんだけど、ちょっちテキトーすぎたらしい。
アーヴァインが呆れたようにあたしを見る。
「あのさ、範囲広すぎるよねソレ。
 『犯人は十代から三十代もしくは四十代から五十代かそれ以上』ってのと同レベルっつ〜か?」
「あたしにだってわからないんだからしょうがないでしょ!」
不毛な言い争いをするあたし達を余所に、サイファーはペンを動かしながら独り言のように呟く。

「……短い分には構わねえんだが、休み過ぎてた場合がマズいな。
 誰か近づいてきてるかもしれねえし、ひとまず俺一人で辺りを探りに行ってくる。
 テメェらはここで大人しくしてろ」

言葉の内容とは裏腹に、あたし達の方を見ようともせず文章を綴っているあたり、既に夢の中で話し合って決めた事だったんだろう。
あたしは空気を読んで頷いたけど、アーヴァインは不安げにサイファーを見つめた。

494 :Give me a break! 8/21:2015/06/18(木) 17:02:39.18 ID:fUzeMHAk0.net
「一人って、危なくな〜い?」
「俺はスコールじゃねえんだ、アイツみたいなドジは踏まねえよ。
 だいたいテメェなんぞを野放しにしたり連れ歩く方がよっぽど危険だ。
 それにリュック、お前何か作業をやってるんだろ?」

ほんの少しだけサイファーがあたしの手元に視線を向ける。
あたしが作ってるのがドライバーだってことは、床に転がってる完成品を見れば一発でわかることだ。
その素材が何なのか、気付いているかどうかまではわからないけど――
「G.F.もあるし、危なくなったら逃げるぐらいのことは出来る。
 どいつもこいつも下手な心配してねえで、やるべきことをやっとけ」
サイファーはそう言いながら、書きあがった文面をあたし達へと向けた。

『クソ野郎どもがデスキャッスルで派手にやらかしたようだ。
 追い出されたカッパが手駒を増やす為にアーヴァインを狙ってくるかもしれねえし、逆にカッパが死んでケフカが戻ってくるかもしれねえ。
 あるいは南東のチームの存在がクソどもにバレねえように、ワザとこっちに逃げてくる仲間だっているかもしれねえ。
 だからしばらくは首輪解除より生き残り重視で行くぞ。
 スコールには話を通してある。というか俺達は勝手にやってろだとよ』

「うわぁ……」
思わず声が出ちゃう。
予想の範囲内っちゃ範囲内のニュースなんだけど、こんなの嬉しいわけがない。
とりあえずソロ達やロック達が無事だといいなあ……
――なんて考えていると、横でアーヴァインの声が響いた。

「ま、待ってよ。せめてパンデモニウムつけてった方が良いよ。
 さきがけできるし、体力回復にも役立つからさ」

パンデモニウムってのもケルベロスと同じガーディアンフォースなんだっけか。
あたしは未だに良くわかってないんだけど、召喚獣とドレスの合いの子みたいなモノ。
サイファーもスコールもアーヴァインも、バトルには武器以上に必須だって話してたけど、祠に引きこもってる分にはそこまで使わないだろうし……
サイファーに貸そうってのは納得だ。
でも、向こうはそうは思わなかったらしい。

「それもテメェが持ってろ。ケルベロスがありゃ十分だ」
悩む素振りすら見せずにあっさりと言い放ちながら、サイファーは階段の方へ歩き出す。

「え、でも、パンデモニウムって元々風神のモノじゃんか。
 同じ風紀委員だったあんたの方が使いこなせそうだし、一体より二体あった方が……」
余程心配なんだろう。
アーヴァインは切実な表情で食い下がるけど、サイファーは大きく舌打ちして怒鳴りつけた。

「うっせぇな!
 リノアとスコールの遺品なんざいらねえってんだ!」

その言葉に、「え」、とアーヴァインが目を見開く。
あたしも初耳だ。
リノアって確か、スコールの恋人だよね?

495 :Give me a break! 9/21:2015/06/18(木) 17:07:21.38 ID:fUzeMHAk0.net
「いいか、スコールの野郎には教えておいてやったけどな、ソイツはリノアが使ってた奴なんだよ!
 魔女に支給された時からずっと、多分死ぬその時までな!
 いくらG.F.が記憶障害の原因になるったって、リノアの形見のソイツが傍に居りゃあよ!
 テメェがアホでバカでマヌケでヘタレで、そのくせクソうるせえ元殺人鬼のイカレガルバディア野郎だといっても、
 スコール達のことを忘れたりはしねえだろ!」

ちょ、ちょっと待ってよ。
それってすんごい『だいじなもの』なんじゃ……
……あれ? でも、パンデモニウムって確かビームライフルと一緒にスコールが渡したって言ってた気がする。
じゃあサイファーが言ったのと似たような理由で、アーヴァインがこれ以上おかしくならないようにだいじなものだけど貸したってこと?

「それとな、ついでに覚えとけ!
 テメェに掛けられる情けは今回が最後の最後なんだ!
 次に正気を失ったら誰が何と言おうと俺はテメェを殺すし、殺さなきゃならねえ。
 テメェのオトモダチとお優しい班長の為にも、今ここで俺の身を心配するぐらいなら、少しでも長くマトモで居られるよう努力しろ!」

アーヴァインは呆然とサイファーを見上げていたけれど、やがて唇を噛みしめながら胸に手を当てる。
そして変化の杖を脇に抱えてぐしぐしと目をこすり、踵を返し階段を上り始めていたサイファーに声を掛けた。

「サイファー……
 色々どうしたの? 寝てる時に壁にでも頭打ちつけた?」

ガクっときた。そしてガラガラっとシリアスな空気が崩れ落ちる音が聞こえた。
あのさあ。
いくらなんでもその台詞はないでしょ……

サイファーはサイファーで、当然ながらカチンと来たんだろう。
ものすごい目つきでこちらを睨んだかと思うと、つかつかと戻ってきてアーヴァインの胸倉を容赦なく掴み上げた。
さすがに今回ばっかりは、止める気も起きない。
「どういう意味だよ、クソ野郎」
「いや、なんか、僕の知ってるサイファーはそういうヒロイックなこと言わないっていうか?
 それこそガルバディアガーデンで会った時とか、もっとこうゲス顔で人の弱みをネチネチ言ってくるような奴だった記憶があるんだけど?」
こめかみを引きつらせているサイファーを前に、アーヴァインは何故か両手の人差し指を使って自分の唇を押し上げスマイルを形作る。
空気を読む気がないのか、空気は読んでるんだけど何らかの意図でわざとぶち壊そうとしてるのか。
あたしには判別がつかないし、サイファーだって同じだろう。

「なあ。ガルバディアのクソ野郎。
 俺は今、大マジでテメェの事を考えて言ってやったんだよ。
 いちいち人のこと茶化さねえと死ぬのか? ああ?
 それと魔女に操られてた時の事を蒸し返すのは止めろ、不愉快だ」
「え〜、でもちっちゃい頃のサイファーもヒドかった気がするよ?
 僕のこと女の子とばっかり一緒にいる意気地なしのタマなし野郎とかいっていじめたり、
 ゼルのこと泣き虫ゼルっていじめたり、スコールのことエルお姉ちゃんがいないとなんもできないシスコン野郎っていじめたりさ〜。
 そのくせまま先生達にはスコール以上に気にかけられてたから、世の中理不尽だなぁって思ってたぐらいだよ」
「その頃の話題も止めろってんだよ!
 だいたい十年以上経ってるってのに頭の中ガキのままなワケねえだろうが!」

496 :Give me a break! 10/21:2015/06/18(木) 17:11:05.40 ID:fUzeMHAk0.net
散々言われて怒りが限界に達したんだろう。
サイファーは力任せにアーヴァインを突き飛ば――そうとしたんだけど、アーヴァインが先に左手でサイファーの手首を掴んだ。
天然なのか何なのか、一体何がしたいってのか。
あたしが首を傾げた瞬間、不意に、アーヴァインの手にうっすらとした靄が覆いかぶさる。
だけどそれは本当に束の間の事で、瞬きした次の時には消えていた。

「そうだよなあ、あれから十年以上経っちゃってるんだよなぁ。
 そりゃ〜風神や雷神みたいな友達だって出来るし、キスティとも仲良くなるよね〜。
 でも学園長もまま先生も、相変わらずあんたが一番のお気に入りみたいだけどさ〜」

相変わらず作り笑いを浮かべたまま呟いた、その言葉の真意なんてわからない。
だけどサイファーには何か心当たりがあったらしく、ぴくりと眉が動く。
そして軽く歯噛みしたかと思うと、勢いをつけてアーヴァインの手を振り払った。

「ケッ……! このクソガルバディア野郎が!
 いちいち回りくどい言い方してるんじゃねえよ!!」
「え〜? 単独行動だの何だの一人で散々死亡フラグ立てといて、ストレートに言ってほしかったの?
 『お願い、無茶しないでサイファー!
  あんたにもしものことがあったら、風神や雷神やあんたの帰りを待ってる人達はどうなるの?!
  味方もまだ残ってる、ここを生き延びればガーデンに帰れるかもしれないんだから!』って」

……ああ、……ああ。
なるほどって言う気にはこれっぽっちもなれないけど、一応そういう系統の意図はあったんだ……

「なんかさ〜、そーゆー直球な台詞って僕が言っても気味が悪いだけだしむしろ逆に勘ぐられない?
 それともウワサのロザリーちゃんあたりに化けて言っときゃ良かった?
 でもそれはそれで別の死亡フラグになりそうだけどね。次回、サイファー死す! って続きそうっつ〜か」
「ふざけろ。気色悪りぃ。おまけに縁起でもねえ。
 一度でもンな真似したら全力でぶった切ってやる」
「冗談だってば〜。マジでやるわけないじゃん」
「テメェはどっからどこまでが冗談でどっからどこまでが本気なのか全くわからねぇんだよ!」
「あ〜、うん、あんたに無茶してほしくないってのはマジだよ。
 マジもマジマジ、超大マジだし、今までおっ立てた死亡フラグ全部ぶっ壊して戻ってくるって指切りしてほしいぐらい」
「指切りだぁ?
 ハッ、たかが偵察程度で死ぬなんて醜態さらしたらテメェに針千本飲ませてやるよ!」
「え? ちょっと待って、僕が針飲む方なの?
 おかしくない? 僕の知ってる指切りじゃない!」
「なんだよ、さっきからいちいちうっせぇな!
 ちったぁ黙れよ!」
「うわぁ理不尽、あんただってうっさいじゃん……
 ああでも僕の知ってるサイファーっぽい。うんそうだ、やっぱりコレがサイファーだよ。
 さっきまでのきれいなサイファーは夢だったんだ、じゃなきゃ映画版のサイファーとかそんなヤツだったんだ」

アーヴァインはぶつくさ言いながら壁によりかかり、両手を組んで頭の後ろに当てる。
そんな彼を見て、サイファーは「行く前から疲れちまった」と吐き捨てながら、あたしの方へ振り返った。

497 :Give me a break! 11/21:2015/06/18(木) 17:17:19.40 ID:fUzeMHAk0.net
「リュック、上のチョコボは置いていくぞ。
 そんな遠出するつもりもねぇし、身体がナマらないよう軽く運動してぇからな」
「今まで歩き回っといてさらに運動〜? うわ〜脳筋〜」
「いい加減にしろよテメェ……」
「あーあー、ストップストップ!
 わかったけど、なるたけ早く帰って来てよね。
 あと危ないヤツ見かけても一人で戦おうとか思わないでよ?
 知らせてくれれば、あたしだってガッツンガッツン戦って追い返してやるんだから!」
「ケッ、わかってる。無茶はしねえよ」

と、サイファーは剣を持ち上げ、肩に担ぐ。
そしてふと思い出したように、――メチャクチャ嫌そうな表情で――アーヴァインに視線を戻した。

「……おい、ガルバディア野郎。
 一応聞いておいてやるが、ソロだとかザックスだとか味方になるヤツがいたらここへ連れてくるが構わねえな?」

サイファーはアーヴァインの姿をジロジロと眺めながら尋ねる。
さっきまでのモンスターじみた外見を人目に晒すってのは可哀想だけど、人間の姿に戻れるなら問題ないだろって心づもりなんだろう。

「う〜ん。
 他の人ならともかく、ソロとザックスって人は放送直後にこう、BANGBANGって撃っちゃった記憶があるからアレなんだけど〜……
 わざわざこっちに連れてきたい理由、なんかあるの?」
「防衛戦力がほしいってのもあるが、何も知らずにブラブラうろつかれてケフカやカッパに眼ぇつけられたら困るからな。
 テメェを保護したって事と、あのキチガイどもの件を又聞きって事にして詳細を伏せて伝えりゃ、向こうからこっちに来ようとするだろ」

アーヴァインの質問に答えながら、サイファーは首輪の表面を軽く弾いた。
南東組とは別に近くにいる人を集めて首輪を解除しようってのか、いざ首輪解除って時のために出来るだけ見張り役を増やしておきたいのか。
細かい意味まではわかんないけど、とにかく首輪解除に関連した何らかの目的もあるってことなんだろう。
あたしとアーヴァインが頷くと、サイファーは小さく息を吐き――「そうだ、こいつも言い忘れてた」と手帳を取り出しながら呟いた。

「テメェら二人とも、俺が居ない間は起きて見張りしてろ。
 二人きりで片方が寝ちまったら、何かあった時にマジで対処ができねえからな」

アーヴァインが目をぱちぱちと瞬かせる。
眠りたかったのか、あたしを眠らせるつもりだったのかはわかんないけど……サイファーの台詞は予想外だったみたいだ。
「……サイファーがそこまで慎重になるって珍しいね。
 なんかヤバイ奴に心当たりでもあるの〜??」
「なんもねえよ。
 最悪の事態を考えたら心配しすぎるぐらいが丁度いいってこった」
答えながらサイファーはすごい速さでペンを走らせ、書きあがった途端に手帳とペンを床に放り投げる。
さっきと比べても雑な字だったけど、読める事は読めた。

『今、スコールがザンデってヤツとコンタクトを取ろうとしてる。
 起きられないティーダはともかく、何があるかわからねえから他の奴は関わらせたくねえんだと。
 長くても三十分ぐらいで切り上げるって話だが、これから一時間程度は寝るな』

498 :Give me a break! 12/21:2015/06/18(木) 17:22:48.56 ID:fUzeMHAk0.net
夢の中にいる二人の事を心配したのか、アーヴァインの表情が曇る。
けれど止めるわけにもいかないということはわかっているのだろう。
しばし眼を閉じて口を押えたかと思うと、あからさまに明るい声音を作って答えた。

「ふーん……オーケイ、わかったよ。
 頑張って起きてるから、早めに五体満足で戻ってきてくれよ〜」
「何度も言われなくたってわかってるって言ってるだろうが……
 ったく、起きてるついでにちっとぐらい黙る練習でもしとけ。
 誰に会うにしろ、そいつが味方だったら俺はテメェの事を『今は正気に戻って大人しくしてる』って説明しなきゃならねえんだ。
 俺とリュックだから多少ふざけても大目に見てやってるが、他の奴にやらかしたらマジでキレられるからな」

サイファーはそう言って、今度こそ階段を上がって行った。
あたしはしばらく後姿を見守っていたけど、足音が聞こえなくなったあたりで、いい加減ドライバーを作り終えなきゃいけないと作業に戻る。
その横でアーヴァインは「ふー」とため息をつき、瓶に入った水を軽く揺らしてから口を付けた。


ガリガリ、ガリガリ、ガリガリ――

"ぼわんっ"

ドライバーを削り出してしばらく経ったところで、アーヴァインが唐突に杖を振る。
だけど別に誰に化けたってわけでもない。今までと同じ、白魔道士のローブを着た姿だ。
何でそんなことをしたのか尋ねる前に、彼は独り言のように呟いた。

「……ホント、変な感じ。
 確かにサイファー、リノアや年少クラス相手に意外と世話焼いてたって話は聞いたことあるけど……
 ゲホゲホッ、ゴホッ……、…………ゲホッ」
咳き込んで、水を飲んで、それでもまだ咳が出て。
その苦しげな様子に、あたしは反射的に声を掛ける。
「喋りすぎじゃない? もう少し休んでた方がいいよ」
だけどアーヴァインは首を横に振り、口を動かす。
「喋っていたいんだよ。壊れてもいいから、喋っていたいんだ。
 言葉が通じないのって、思ってたよりストレス溜まるしね」

変化の杖を抱え込んだまま呟くその表情は、明らかに病的な影を宿していて。
さっきまでの彼と――サイファーが起きた直後と比べて――何かがおかしい、漠然としているのに確固とした違和感を覚える。
その原因らしきモノにはすぐに思い至った、けど。

「ああ、それにしてもサイファー、きれいなサイファーになってるよなあ。
 違和感すごくて落ち着かないよ」

あんたが言っちゃダメでしょって、心の中でツッコんでしまう。
コイツ、他人の事にはやたらと目聡いくせに自分の事には無頓着だよね。
わざとやってるのか、天然なのかはわからないけど……ホント、タチ悪い。

499 :Give me a break! 13/21:2015/06/18(木) 17:28:12.37 ID:fUzeMHAk0.net
「アーヴァイン。あんた、さっき何したの?」
頭を抱えたくなる気持ちを抑えながら、あたしは真っ向から尋ねてみた。
「え? 何のこと?」
「サイファーがあんたのこと突き飛ばそうとした時だってば。
 サイファーは気付いてなかったっぽいけど……なんか一瞬、靄みたいなの見えたんだけど」

あの時、わずかに浮かんだ【黒い靄】。
あたしの直感が正しければ、あれは首輪解除の時に見たものと同じ――【闇】と同じもののはずだ。

「……見えてたの?」
アーヴァインはばつが悪そうな表情を浮かべ、頬を掻く。
それから逃げ場を求めるように床へ視線を移し、そっぽを向いたまま呟いた。

「なんでサイファーが居る時に聞かなかったのさ」
答えになってないどころか完全な質問の言葉に、あたしは肩を竦めながら答える。
「あんたがサイファーに悪い事するとは思ってないからに決まってるでしょ」
「なら、それでいいじゃんか」
「サイファーに悪い事するとは思ってないケド。
 あんたが、あんた自身にとって悪い事するとは思ってる」
そう言ってやると、アーヴァインはますます気まずそうに天井へ眼を逸らした。

「わ〜お。信頼されてるんだか、信用されてないんだか」
「信用も信頼もしてるから聞いてるの」
あたしは立ち上がってぐるっと回り込み、アーヴァインの眼を覗き込む。
彼は顔をそむけようとしたけれど、結局諦めた様子で、嘆息しながら呟いた。

「……サイファーさぁ。
 再会した時からず〜〜っと【闇】がまとわりついてたんだよね」
「え?」

あたしは驚いて眼を見開いた――けど、よく考えたら有り得ない話じゃない。
サイファーは見た目に反して正義感が強いけど、見た目通りに好戦的だ。
アリアハンのお城を吹っ飛ばした女の殺人鬼を仕留めたって話もしてたし、【闇】がくっつかない理由の方が無かったのかもしれない。

「まぁ……話してて変な言動はなかったし、僕が近くに居るだけでこっちに【闇】が流れてきてたから。
 微妙な気はしたけど、まだまだ許容範囲なんだろうって、今まで放っておいたんだよ。
 ……だいたいサイファーの友達は好きだけど、サイファー自身の事は今まで嫌いだったしね」

あたしには【闇】の強弱どころか有無さえ判断できない。
アーヴァインがそう思うならそうなんだろう、としか言えないのが実情だ。

「だけど……あいつ一人で偵察に行くってなら話は別だ。
 サイファーの性格からして、敵と出会ったら勝ち目がある限り、その場でブチ殺すはずだもん。
 そんなことして新しい【闇】が湧いて、あいつのキャパシティをオーバーしちゃって、おかしくなっちゃったらさ。
 スコール達はもちろん……リノアやテリーにも顔向けできなくなっちゃう」
「じゃあ……」

500 :Give me a break! 14/21:2015/06/18(木) 17:32:34.44 ID:fUzeMHAk0.net
「そ、お察しの通りだよ。
 さっき腕掴んだ時に、サイファーにくっついてた【闇】、全部ドローして僕の中に移し替えたんだ」

言葉を失うあたしの前で、アーヴァインは「引き止めるのに、ちょっとアレな事言っちゃったけどさ」と苦笑する。
「さすがに少し頭の中がうるさいけど……とりあえず、これでサイファーはしばらく安全だと思うよ。
 少なくともこの先、一人か二人殺した程度じゃ発症しないで済むはずさ」

ゲホゲホと収まらない咳に表情を歪めながら、アーヴァインは残っていた水を飲み干す。
そして空の瓶を床に置いたかと思うと、今度は右手を振り下ろして叩き割った。
手に突き刺さる破片に、あたしが「何やってんの!?」と駆け寄ると、アーヴァインは何を勘違いしたのか笑顔を作って答えた。

「ああリュック、さっきも言ったけど……ケアルもエスナもいらないからね?
 そんなことするぐらいなら、生きてるネズミとか虫とか、何でもいいからテキトーに一匹捕まえてきてくれないかな。
 生き物壊す方が落ち着くっていうか……そっちの方がスカッとするし、満たされる」

フツーの人間には理解できない、【闇】の影響を受けた人間特有の破壊衝動。
あたしと同行していた頃にも何度かやっていたけれど……
それはまだ、狂った殺人者だとアピールするために『演じていた部分』が大きかったのかもしれない。
そんな感想を抱かずにはいられないほど、今のアーヴァインは異質な空気を纏っている。
変化の杖の力で見た目だけは元気な時の姿になっているものだから、殊更に違和感が大きい。
アルガスが主張していた『人間の姿をした人間以外の化物』という言葉の意味さえ、理屈ではなく心でわかってしまう。
だけど――目の前に居るのは、やっぱりアーヴァイン本人なのだ。

「……いや、いい。やっぱり我慢するよ」

そう言って彼はあたしから目を逸らし、変化の杖をぎゅっと抱きしめる。
「ネズミ退治、あんたがやってくれたばっかだもんね。
 生き物なんてポコポコ湧いてでてくるもんじゃないし、……忘れてくれ。
 まだ大丈夫だから、我慢できるから、気にしないでくれよ」
手を震わせながら、言葉とは裏腹に辛そうに呟く姿は、彼自身何かに怯えているようで。
だけどこっちに助けを求めないのは、少し前にサイファーが評した通り、
……他人の事は心配できるのに、自分の事は顧みないという性格のせいなんだろう。

「ゴホッゴホッ」とまたまた咳き込み出したアーヴァインに、あたしはザックから三本目の飲料水を取り出して手渡す。
本当はもっとダイレクトに助けてあげたいけど、それさえ向こうの望みにそぐわないってなら。
せめて今まで通りに仲間として接しよう。
彼が、本当の自分自身を忘れてしまわないように。

「少しずつ飲みなさいよ?
 喉が痛いからって水ばっかりガブガブ飲んでたら、ワッカみたいにお腹たぷたぷになっちゃうんだから。
 あとこれ以上瓶は割っちゃダメだかんね。
 洗えばまた使えるし、もったいないもん」
「え〜……いっぱいあるんだからいいじゃんか」
あたしの言葉に口を尖らせながら、アーヴァインは瓶のふたを外す。
そう言えばサイファーも水ばっかり入ってるって言ってたけど、そんなにいっぱいあるんだろうか?

501 :Give me a break! 15/21:2015/06/18(木) 17:36:56.27 ID:fUzeMHAk0.net
気になったあたしは、ザックから瓶を一つずつ取り出してみることにした。
最初に支給されてた水筒は別として、ガラス瓶だけ一本、二本、三本、………、今飲んでる奴を足して十本。
アーヴァインが割った分も含めたら十二本……十二本〜?
こりゃ多い、多すぎだぁ!

「なんでこんなにあるの?」
さすがに尋ねてみると、アーヴァインは肩を竦めながら答えた。
「支給品の食糧さ〜、最初の日の夜に全部持って行かれちゃったんだよ。
 まあその日はソロ達が作ったご飯食べさせてもらえたし、村にあった瓶詰ももらえたんだけどね。
 でもそれも無くなってきちゃって……デスキャッスル、ピサロの城ってだけあって人間の食べ物が見当たらなくて。
 ただ蓋付きのビンとか、飲めそうな水の入ったでっかい水がめはたくさん見つかったから、全力で汲んどいたってワケ。
 水さえあれば最悪の場合でも数日は生き延びられるからね〜」

うーむむ。なるほどと言うべきか、少し頑張りすぎと言うべきか……
唸るあたしを余所に、アーヴァインはぽつりと呟く。

「……ソロ、無事かなあ」
命の恩人の一人だからか、銃撃を仕掛けてデスキャッスルに追い込む原因を作っちゃったからか。
なんだかんだで心配になっているらしい。
あたしは少しでも元気づけようと、アーヴァインの背を叩きながら励ましの言葉をかける。
「無事だよ、きっと!
 だってピサロや地獄の帝王とかいう奴と殴り合って勝って、仲間にしちゃったってぐらいだしね!」
するとアーヴァインは眼をまんまるくしてあたしの顔を見た。
「え、なにそれ知らない聞いてない。
 マジで? あのピサロと殴り合いで勝ったって?」
「レナやヘンリーやわたぼうに聞いた話だから、ウソってことはないと思うよ」
又聞きっちゃ又聞きだし、細かい部分はうろ覚えだけど、みんなウソや冗談で人を騙すタイプじゃないもんね。
だけどアーヴァインは額を抑え、「うーんうーん」と呻き始める。

「まぁ、強いとは思ってたけどさ〜……
 全体的に規格外のヤツ多すぎるよ、この世界。
 単独勝ち抜け絶対阻止枠で入れたとしか思えない、っつ〜か」
「単独勝ちなんて目指す方がわるーい!
 さー、今すぐカモメ団に入って皆と一緒の脱出を目指そ〜!」
「うわ〜うっさんくさい。
 新手の宗教団体の勧誘みたい」
「宗教じゃないっ! カモメ団は由緒正しいスフィアハンター兼お助け屋なんだからね!」
「あれ? 三年前、ティーダがいなくなった後に作ったってユウナが言ってた気がするんだけど」
「そだよ?」
「……由緒、正しい?」
「スピラを救った大召喚士とガードが現役参加っ! すんごく由緒正しい!」

あたしが胸を張って答えると、アーヴァインは「はは」と苦笑した。
だけどそれもほんのちょびっとだけで、すぐに表情を曇らせ、割れたガラス片に目を移す。

502 :Give me a break! 16/21:2015/06/18(木) 17:43:22.56 ID:fUzeMHAk0.net
「……はぁ」

その病んだ眼差しに、あたしは思わず声を掛けた。
「割るの、そんなに楽しく感じてるの?」
アーヴァインは即座に「うん!」と頷き、何でだか力説し始める。
「これはこれでスカっとするんだよ、そりゃまあ生き物には及ばないけど。
 でもちょっとお高めのお皿とか、コミックに出てくる芸術家みたいにさ〜。
 『こんな駄作を有難がってどうするー!』ってパリンパリーンって割りまくったらすっごい楽しいんだろうな〜って、思ったり……しない?」
「いや、全然」
そもそもコミックってのがなんだかわからないってのもあるけど、そんな高いお皿は割るより売った方が良いに決まってる。
首と手を横に振って答えると、アーヴァインはがっくりとうなだれた。
「うーん、そっか……まあそうだよなあ」
そのガッカリ感が見てるだけでもすごかったから、あたしは慌ててフォローする。

「あ、でもでも!
 マキナのネジ引っこ抜いて上手くバラバラにできたら『やった!』ってなるのならわかるよ!
 あたしもそーゆーのは得意だし!」
「え……?」
だけど何故かアーヴァインは眉をひそめ、上半身を後ろへと引いた。
「あのさ……さらっとすっごい難度高いこと言ってない?
 マキナって確か機械兵器のことだよね?
 ネジ抜いてバラすとか、そっちの方がよっぽど過激じゃない?」
「え? そう?」
まさか引かれるとは思わなくて、うろたえながら答えると、アーヴァインはやれやれと手を横に広げる。

「リュックさぁ……元の世界に帰らないでバラムガーデンに転入しなよ。
 ネジ盗んで機械ぶっ壊すなんて特技、破壊工作員にうってつけだし。
 間違いなくスコール並みの高給取りになれるよ」
「あれ? ガーデンって傭兵の学校なんじゃないの?」
傭兵って言うと、村や街に雇われてモンスターやシンのコケラを追っ払うイメージが強くて、あんまりマキナを解体する印象はないんだけど。
「傭兵ったって、兵士やモンスターとドンパチやるだけが能じゃないしね。
 SeeDだって潜入工作から情報操作、兵器破壊に楽器の演奏までこなすわけだし……
 戦力二大トップのガルバディア軍とエスタ軍はどっちも機械兵器を主軸にしてるから、きっと大活躍できると思うよ」

あはは、と笑いながらアーヴァインは床の方へ視線を映した。
青い瞳が見据えている先にあるのは、アーヴァインが散々振り回していたビームライフルだ。
スコールの事を思い出したのか、それとも――本当の仲間と一緒に戦っていた時の事を思い出してしまったのか。
アーヴァインの顔から笑みが消え、やがて悲しげに眼を伏せた。

503 :Give me a break! 17/21:2015/06/18(木) 17:47:30.97 ID:fUzeMHAk0.net
「ねえ、リュック」
数分に及ぶ長い沈黙の後、縋るようにあたしの名前を呼んだ彼は、躊躇いながら言葉を紡ぐ。

「このまま……このまま僕の心が壊れて、いつか皆の事も思い出せなくなっちゃって。
 ティーダの言葉も、皆の声も、何も届かなくなって……もう元に戻らなくなったらさ。
 その時は……僕の事、殺してくれないかな?」
「え?!」
あたしは驚きのあまり、彼の肩を掴んだ。
アーヴァインは眼を逸らし、かすかに震える声で淡々と呟き続ける。

「僕が溜めこんでる【闇】って、自分で言うのもなんだけど半端なく多いからさ。
 フツーの人じゃ耐えられないと思うんだ
 でも……あんたなら多分、僕を殺しても狂わないでいられるはずなんだ」
「ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待ってよ!
 あたしそんな特別なナントカになった覚えは……!」
そりゃ、確かにあたしはアルベド族で他の皆とは種族とか違うけど。
だからって。
ますます混乱するあたしの様子に気づいたアーヴァインは、杖を握りしめながら努めて冷静に答える。

「……いや、ごめん、僕の言い方がだいぶ悪かった。
 あんたがって言うか、あんたの着てるドレスが特別っぽいんだよ。
 パラディンだっけ、今着てるその、白い、友達の形見ってやつ」

あ。

「それさ、シーフとか銃士のドレスとかと違って、【闇】を跳ね除ける効果があるみたいなんだよ。
 僕が見た限りだから、ホントに絶対100%大丈夫かって聞かれるとちょっと困るけど。
 だけどあんたの性格も【闇】につけこまれるような感じじゃないし、両方合わされば完全耐性になって安全じゃないかなあって」

あたしの性格はともかく、確かにこれはアレフが遺してくれたドレスで。
そのアレフは勇者ロトって人の子孫で、光の玉って大事なアイテムを悪い奴から取り戻すために戦ったって言ってた。
それに同じ勇者のソロは、本当の邪悪を倒す為にピサロと一緒に戦ったとか言ってたし……
勇者ってジョブ自体に、悪い力を……【闇】を祓う能力があるのかもしれない。
でも――

「もちろんまだまだ全然平気だし、最後まで頑張るつもりなんだけどさ。
 何かあった時のこと考えると、不安になるっていうか……サイファーが僕を殺すのだけは、避けたいんだよ。
 アイツが僕を殺しても正気のままで居られるとは思えないし、アイツがおかしくなったら泣く人がいっぱいいるから」

……アーヴァインの言ってる事、わからなくはない。
いや、だいぶ『わかる』方に傾いてきてる。
だけど。

504 :Give me a break! 18/21:2015/06/18(木) 17:52:50.92 ID:fUzeMHAk0.net
「……ダメ、かな」

いいよって言ってあげたい気持ち、ある。
自分で抱え込みたがるこいつがあたしのこと頼ろうとするなんて、よっぽど不安で、悩んで、悩み抜いた末に決断した事なんだろうし。
でも、それでも、やっぱり。

「あんたの言いたい事はわからなくもないけど。
 でも、そんな約束できないっ」
アーヴァインには悪いけど、これがあたしの本心。
「あたしは皆と一緒に元の世界に帰ってみせる。
 その皆の中には、あんただって入ってる。
 それなのに、見捨てるための約束なんて――どんな理由があったってしたくないの」

アーヴァインの顔から表情が消えていく。
それでも半ば予測していたのか、彼なりの強がりだったのか、「そうかぁ」とため息のようにこぼす。
だけどあたしはまだ自分の言いたいこと、言い終えてなかったから。
肩を掴んだ手に力を込めながら伝えた。

「でもね、アーヴァイン。こーゆー約束ならしたげる。
 ――この先何があっても、サイファーにあんたを殺させたりしない。
 サイファーやティーダの前であんたを死なせたりもしない!
 あたしが生きてる限り、何があっても絶対に!」

おぼろげなランプの光に照らされて、すっかり生気を失った青い瞳があたしを見つめる。
「それじゃあダメ?」と問いかけても、アーヴァインはしばらくぼんやりとしたままで。
だけどやがて疲れたようにあたしの身体へ寄りかかり、顔を伏せたままか細い声で呟いた。

「……いいよ、それでも。
 最低限の気休めにはなるしね」
「気休めじゃな〜い!」

最低限って何よ!
あたしは頬を膨らませたけど、アーヴァインは身体を起こそうともせずぐったりとしたままだ。
とうとう空元気すら尽き果ててしまったのか――
そう思って背中でも撫でてあげようかと手を回した矢先、彼はがばっと身を起こした。

「……うう、ダメだダメだ。
 こんなコトしててサイファーとか、ユウナやティーダに見つかったら色々誤解されちゃう〜!」
叫びながらアーヴァインは目をこすり、自分の頬をペシペシとはたく。
ついでに変化した姿を保っておきたかったのか、杖を『くるくるぼわんっ』と振り直した。
どこまで本気でどこから演技なのか、やっぱりわからない。
あたしはピンクの煙を吸い込まないように気を付けながら盛大にため息を吐き、アーヴァインに手を差し伸べた。

505 :Give me a break! 19/21:2015/06/18(木) 17:55:13.92 ID:fUzeMHAk0.net
「もー。ほら、指切り」

アーヴァインはきょとんとした表情であたしの手を見る。
「約束したげるっていったでしょ?」
あたしは彼の手を引っ張り、さっさと小指を絡ませる。
そこでようやく理解したのか、アーヴァインはぽつりとつぶやいた。
「……実は、言い忘れてたんだけどさ。
 僕がした約束って、僕の方から破ってばかりなんだよね」
寂しげに笑いながらロクでもないことを言ってくれたけど、この約束はきっと大丈夫。
だって、
「あたしがきっちり守れば問題ない約束だもん。ヘーキヘーキ!
 さーあ指切りげんまん、嘘ついたら針百万本のーますっ!」
「……多くない? ジャボテンダーより多くない?」
「いいの、これで」
引き攣った表情を浮かべるアーヴァインに、あたしはウィンクする。
あたしなりの覚悟ってヤツ、少しでも伝えたくて針の本数を増量したんだもんね。
まあこの気持ちがちゃんと届くかどうかはわかんないケド。何せ相手が相手だし。
――なーんて考えていると、アーヴァインが「あ」と声を上げた。

「そうだ、約束ついでにもう一つお願いがあるんだけどさ。
 この話、サイファーにはしないでほしいんだ」
「え?」
「ほら、サイファーってあの通り強引なところあるだろ?
 迂闊に話したらパラディンのドレスフィアあんたから奪って、速攻で僕の事殺しそうじゃん。
 他の人が手を汚す前に俺がやってやるぜーって、ノリと勢いだけで」

……ああ、うん。
分かる気がする。

「アイツ、魔女に操られてる時にやらかしたことがハンパないからさ。
 これ以上変な負い目を作らせたくないんだよね。
 口で言ってるぐらいに僕の事スッパリ切り捨てられるならいいんだけど、そんなのは無理だと思うし」
「わか――」

わかった、って言おうとしたその時だった。

「リューーーック! 無事かーーーーーーっ!?」

上の階から、思いっきり聞きなれた声が響き渡る。
「……」「……」
あたしとアーヴァインは顔を見合わせ、こそこそと早口で囁き合った。

「ねえ、今の声、サイファーだよね」
「そだね」
「早くない? 一時間どころか、三十分経ってるかどうかすらアヤシイ気がするんだけど」
「さすがに三十分は経ってるんじゃないかなあって気もするけど、でも早いよ。すっごく」

506 :Give me a break! 20/21:2015/06/18(木) 17:59:26.36 ID:fUzeMHAk0.net
そりゃ、確かにサイファーはオートヘイスト使えるって話は聞いてるけど。
さすがにこれは早すぎる。
索敵しようとちょっと遠くに行って、そこで誰かに会って、全力ダッシュで戻ってきたとしか思えない。

「ねえ、今の話、オーケーしてくれる?」
「わかってるって。
 言われなくたって、口が裂けても話さないってば」

アーヴァインとサクッと約束してから、あたしは階段に駆け寄り、大声で叫び返す。
「サーイファーー!
 こっちはダイジョブだけど、なんかあったのーーー?」

すると足音が二人分、ダダダダダって響く。
やがて出て行った時と同じ格好をしたサイファーが、駆け足で階段を下りてきた。
後ろにもう一人誰かいるみたいだけど……
一体誰なのか確認する前に、サイファーは息を切らしながらまくしたてる。

「なんかあったというか、少しヤバかったというか……
 ケフカでもカッパでもねえクソ野郎と、そいつに後つけられた間抜け野郎が近くに居やがった。
 まあクソ野郎はどっかにすっ飛ばしたから、間抜けだけ拾ってきたわけだが」
「はぁはぁ……ま、間抜け間抜け連呼すんの止めてくれよ……
 俺なりに、じ、時間稼ぎとか、してたんだからさ……
 あとお前も、は、早すぎるんだよ……一人だけヘイスト、使ってるだろ?
 ……ず、ズルいぞ……くっそ、足痛てぇ……」

そう言って、サイファーの後ろから現れたのは――

「……ケフカーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!?」
「違うっての!!」

呼吸を乱し、肩で息をしながら「俺は……! 本物だぁーーー!」って叫ぶロックの姿だった。

507 :Give me a break! 21/21:2015/06/18(木) 18:02:29.38 ID:fUzeMHAk0.net
【リュック(パラディン、MP9/10)
 所持品:メタルキングの剣、ロトの盾、クリスタルの小手、ドレスフィア(パラディン)、
 マジカルスカート 、ドライバー×4、未完成のドライバー×1
 破邪の剣、ロトの剣
 第一行動方針:首輪解体用のドライバーを作る/状況の把握
 第二行動方針:ユウナを止める/皆の首輪を解除する
 最終行動方針:アルティミシアを倒す
 備考:パラディンのドレス着用時のみ闇化耐性があります】
【アーヴァイン(変化の杖@人間時の自分、変装中@白魔服、MP1/8、半ジェノバ化(中度)、右耳失聴、一時的失声)
 所持品:ビームライフル 竜騎士の靴 手帳、G.F.パンデモニウム(召喚×)、リュックのドレスフィア(シーフ)、
     ちょこザイナ&ちょこソナー、ランスオブカイン、スプラッシャー、変化の杖、祈りの指輪
     チョコボ『ボビィ=コーウェン』、召喚獣ティーダ、飲料水入りの瓶×9、空き瓶×1
 第一行動方針:休む
 第二行動方針:脱出に協力しない人間やセフィロスを始末したい/ユウナを止めてティーダと再会させる
 最終行動方針:魔女を倒してセルフィや仲間を守る。可能なら生還してセルフィに会う
 備考:理性の種を服用したことで、記憶が戻っています。
    ジェノバ細胞を植え付けられた影響で、右上半身から背中にかけて異形化が進行しています。
    MP残量が回復する前にMP消費を伴う行動をするとジェノバ化が進行します。
    セフィロスコピーとしてセフィロスに操られる事があるかもしれません】
【サイファー(右足軽傷+疲労)
 所持品:G.F.ケルベロス(召喚不能)、正宗、スコールの伝言メモ
 第一行動方針:現状報告
 基本行動方針:全員の生存を優先/マーダーの撃破(セフィロス優先)
 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【ロック (HP7/8、MP2/3、左足負傷、とても疲労)
 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード 魔石バハムート、皆伝の証、かわのたて
 死者の指輪、レッドキャップ、ファイアビュート、2000ギル
 デスキャッスルの見取り図
 第一行動方針:俺はケフカじゃないって……!/何があったか知りたい
 第二行動方針:できればギード、リルム達と合流する/ケフカを警戒
 基本行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】
【現在地:南西の祠】

508 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/06/19(金) 00:10:22.02 ID:Z5rWBLJ3Q
乙です
アーヴァインもケフカに負けず劣らずフリーダムやなぁ

509 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/06/19(金) 12:39:49.41 ID:myBkIlsm0.net
投下乙です。
ロザリーといいサイファーといい、大丈夫だと思ってるメンバーほど危ないのかもしれない。
ラムザとかリルムも危ないかもしれんね……

510 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/06/20(土) 20:05:19.05 ID:+0qzHliu0.net
乙です!ロックの第一行動方針にワロタ
一時は腹が立つほどぶっ壊れてたアーヴァイン、よいこになったなあ。生還は難しいかもしれないが…
そして悪態つきながらも頑張るサイファーが妙にカッコいい

ここへ来て急に色々動き出したけど、次ステージは決まってたっけ?

511 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/07/01(水) 06:43:33.85 ID:2Cq/FygZ5
ほしゅ

512 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/07/20(月) 22:54:56.04 ID:uCGhrIJoU
netに新スレ立つまで保守

513 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/07/29(水) 12:38:50.31 ID:MykCYO8MA
ほす

514 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/08/05(水) 23:49:27.06 ID:NTgvBs6tT
ほっしゅほっしゅ

515 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/08/21(金) 23:00:44.99 ID:sUqc9cfR5
hosyu

516 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/08/28(金) 23:01:02.13 ID:3fRc0jkK2
保守

517 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/09/13(日) 16:20:37.91 ID:osRXEtMug
保守

518 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/09/24(木) 00:56:57.58 ID:zgbennCye
ほしゅ

519 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/10/07(水) 22:42:01.71 ID:f7anyXbnc
hosyu

520 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/10/17(土) 14:19:29.63 ID:hKbg5hvZA
ほっしゅ

521 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/10/23(金) 23:54:13.91 ID:0As2JAuiI
保守

522 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2015/10/27(火) 23:11:04.22 ID:FhZZp4+AB
新スレ
http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/ff/1445944627/l50

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