FFDQバトルロワイアル3rd PART20
- 1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2021/06/09(水) 22:06:52.97 ID:g0znu/HZu
- ━━━━━説明━━━━━
こちらはDQ・FF世界でバトルロワイアルが開催されたら?
というテーマの参加型リレー小説スレッドです。
参加資格は全員、
全てのレスは、スレ冒頭にあるルールとここまでのストーリー上
破綻の無い展開である限りは、原則として受け入れられます。
sage進行でお願いします。
詳しい説明は>>2-15…ぐらい。
前スレ
FFDQバトルロワイアル3rd PART19
http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/ff/1445944627/l50
- 385 :Homines id quod volunt credunt 13/15:2023/09/29(金) 16:41:44.43 ID:8Gnv14aDb
- 「ええと、だいたいの話はわかりました。
ですが、どうします?
僕としてはバッツさんが戻ってくるまでここで持ちこたえたいですが、居場所がバレているかもしれないとなれば話は別です。
ここを放棄すべきか、引き続き立て籠もるべきか……ロックさんの意見を聞きたいのですが」
本当はアーヴァインの居場所を聞きたいのだけれど、セージの前で直接それを話すわけにはいかない。
そんな僕の意を汲んでくれたかどうかはわからない――が、ロックは入り口と『タバサ』を交互に見やりながら頬を掻いた。
「あ、ああ。まあ、そうだな。
……今はまだ、立て籠もってもいいんじゃないか?
ここ、訓練施設とは反対側だしな」
……訓練施設?
そこにアーヴァインがいるんだろうか。
なんとかもう少し詳しい話を聞けないか、僕が言葉を考え出した、その矢先。
急に、ロックの視線が一か所に止まった。
「ロックさん?」
入り口を見つめたまま表情が消えた彼、そのただならぬ様子に僕もまた視線の先を追う。
木立の影からきょろきょろと顔をのぞかせているのは、バッツと――
「……サイファー?」
思わず声を上げた僕の口に、ロックの手が伸びる。
大声を出すなと言わんばかりに制止する手――そして彼は、強張った表情のまま鋭い声音で囁いた。
「違う。サイファーはソロと一緒に訓練施設に向かったはずだ。
あいつらを放ってこっちに来るわけない」
「――!!」
たった今聞かされたばかりの偽アーヴァイン。
"他人に成りすませるかもしれない怪物"という情報上の存在が現実となって近づいてきたという事実に、思考がパンクしそうになる。
ダメだ。
冷静になれ。
まずはセージを無事に逃がさないと。
そう思って振り返ってみれば――小さな姿が消えている。
そして同時に、遠くで『カチャリ』と鍵の開く音。
- 386 :Homines id quod volunt credunt 14/15:2023/09/29(金) 16:42:48.35 ID:8Gnv14aDb
- 「……は? え? マジか?」
『呆気にとられた』としか表現しようのない声で呆然と呟くロック――彼も焦っていたのだろう。
そもそも僕がここに来るはずのない人物の名前を出した時点で、ある程度頭の回る人物なら事態は察せられる。
そしてセージは心を病んでいても聡明なことには変わりない。
偽サイファーに見つかる前にさっさと逃げる――ああ、半ば方便とはいえ事実として僕もそれを勧めたわけだし、正しい判断ではあるのだろう、けれど。
「くそ、あんなイカレ野郎一人に出来るかよ!
俺がセージを追いかける!
ラムザ、お前は偽サイファーを食い止めて、バッツを何とか助けてやってくれ!」
反論を挟む余地も暇もなく、ロックは裏口へと駆けていく。
すさまじい無茶ぶりではあるけれど……これもまた正しい差配だ。
三人で逃げるより、誰かが足止めをした方が時間を稼げる。
そして偽サイファーの目的を探るにも、バッツを説得して引き離すにも、話術士である僕の方が適役だ。
遠ざかっていく足音を背に、僕は大きく息を吸う。
そして意を決して入り口に近づき、ガラス戸越しに手を振るバッツに声を掛けた。
際限なく高鳴る心臓の音に気付かれないことを祈りながら。
「――すみません、ご無事でしたか」
【ラムザ(話術士、アビリティ:ジャンプ・飛行移動)
所持品:(E)アダマンアーマー、(E)テリーの帽子、(E)英雄の盾、(E)ブレイブブレイド、エクスカリパー、ドライバーに改造した聖なる矢、
スタングレネード×1、ドラゴンテイル、バリアントナイフ、メガポーション
第一行動方針:セージ達が逃げる時間を稼ぎつつ、バッツと偽サイファーを引き離す/ソロ、ギードたちと再合流する
最終行動方針:ゲームから抜ける、もしくは壊す
備考:首輪の解体方法を覚えました】
【バッツ(MP3/5、ジョブ:吟遊詩人 青魔法【闇の操作】習得)
所持品:(E)アポロンのハープ、(E)キャットガーダー、うさぎのしっぽ、アイスブランド、メガポーション
マッシュの支給品袋(ナイトオブタマネギ(レベル3) モップ(FF7) バーバラの首輪)、ドライバーに改造した聖なる矢
おしゃれな壁掛け時計、IDとパスワードのメモ、メモ帳と筆記用具
第一行動方針:サイファーと協力してジェノバに対処する/ソロに会ったら謝る
第二行動方針:機会を見て首輪解除を進める
基本行動方針:『みんな』で生き残る、誰も死なせない
備考:首輪の解体方法を覚えました】
【サイファー (職業:魔剣士 見た目:ピカレスクコート(黒)@DQR 右足微傷)
所持品:E破邪の剣、G.F.ケルベロス(召喚不能)、キューソネコカミ、ひそひ草、ノートパソコン
第一行動方針:ラムザに状況を説明する
第ニ行動方針:仲間と合流し、静寂の玉を手に入れる
第三行動方針:ソロやアーヴァイン達を保護し、ジェノバを倒す/バラムガーデンと連絡が取れたならサーバーを確保する
基本行動方針:ケフカを除く全員の生存を優先/マーダーの撃破
最終行動方針:ゲームからの脱出
備考:ピサロの記憶を継承しています】
【現在位置:バラムガーデン・学生食堂】
- 387 :Homines id quod volunt credunt 15/15:2023/09/29(金) 16:44:08.07 ID:8Gnv14aDb
- 【セージ(MP4/5、人格同居状態)
所持品:ハリセン、ナイフ、ギルダーの形見の帽子、ボムのたましい
イエローメガホン、厚手の鎧、般若の面、釘バット(FF7)、グラディウス、
聖なるナイフ、マテリア(かいふく)、陸奥守、マダレムジエン
第一行動方針:"タバサ"を害する存在に対処する
基本行動方針:セージではなく"タバサ"が生きているという正史≠紡ぐ。基本的に"タバサ"に任せる。
最終行動方針:"タバサ"の安全を確保した上で、自分は消える】
"タバサ"(人格同居状態)
第一行動方針:逃げる
第ニ行動方針:ギードたちと合流して、セージを【闇】の大元へ連れて行く
基本行動方針:セージを助ける
最終行動方針:セージに復帰してもらい、自分は消える】
【現在位置:バラムガーデン・学生食堂→???】
【ジェノバ@ロックの姿
所持品:奇跡の剣、いばらの冠、筆記具、ドラゴンオーブ、弓、コルトガバメントの弾倉×1、ユウナのドレスフィア、スコールの伝言メモ、ひそひ草
第一行動方針:セージを追う
第二行動方針:利用できそうな生存者に寄生し、ケフカを殺してセフィロスの腕を入手する
第三行動方針:ソロをセフィロスコピーに変えて操り、真実の力を掌握する
基本行動方針:全生命体を捕食し、自己を強化する】
【現在位置:バラムガーデン・学生食堂→???】
- 388 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2023/09/30(土) 12:36:46.67 ID:zSmrSyw/n
- 投下乙です!!!!!!!
いや〜何事もなくサイファー・バッツとラムザ・セージ合流できたようでよかったよかった、
ラムザの演技さすがだなあなんて思っていたら後半全部の印象をひっくり返されて驚いた!
視点の違いで印象とか解釈が異なるのは当たり前だけど、自然に騙されてしまった……
読み手もここまで生き抜いたキャラたちの思考や前提をある程度把握しているからこそ、
視点の違いをはっきり理解できるのがすごく面白い!
前半は演技だと思っていたラムザの表情の硬さが、実際は取り繕えないほど本気だったことがわかるのゾクゾクするなあ……
ラムザは冷静で有能で頼れるけど、ジェノバのほうが先手とったかーうわー!と叫んでしまった。
偽物だと思ってるサイファーを留めるために時間稼ぎに会話をするだろうけど、
その間にセージとジェノバがどうなってしまうかもわからなくて……
ここにきてぐっとジェノバが攻勢を仕掛けた感じがあって、これからどうなるのか更にわからない!!
めちゃくちゃハラハラしました! 今後とも応援しています!!!
- 389 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2023/09/30(土) 22:17:07.67 ID:GGxXT6bpO
- 投下乙です。
いや、これはすごい。
初対面のラムザの態度、そういう意味なのかと印象がひっくり返る。
ちょうどFF8世界だから例えれば、アーヴァインの魔女暗殺ミッションで『撃てない』理由が後からひっくり返ったような、そんな精巧なレトリックが使われている感じ。
前半のパートでは、サイファーが『現実の世界ではちょっと話聞いただけの初対面だから警戒して当然だろう』という思考に至っている、これまでの積み上げからも自然な心情描写をおこなっているのに対して、
後半のパートでは『すでにジェノバに会っており、先に偽情報を掴まされていたからこその警戒』という補強があり、見事に一話の中で伏線が機能している。
さらにジェノバ本体の話の内容も、ラストのサイファーの位置関係以外はほぼ正確なので、
784話でロックに化けたのもあって、さてはここで読者を騙そうとしているんだな? と穿って読んでしまう。
これがさらに偽装になって、ラムザの態度のほうまで考えが回らなかった。
二重の隠蔽と情報開示による一話内での伏線回収、見事でした。
内容的には、ジェノバはすごくうまくやってるが、セージが外聞もなく逃げ出したのは想定外なんだろうなあ。
ただ、そのおかげでセージと一対一になるチャンスとサイファーの計画を知れないリスクが同時に生まれてしまったわけで、事態がさらに混迷してきた感じ。
ガーデンまわりの建築とか校則のらしさ描写も引き続きうまく、読み応えのある一作だった。
セージの友好関係どうだったかなと見返してみると、確かに遭った人は意外と少ない。
みんな死んでしまったんだよなあ、とも言えるのだけれども。
- 390 :トラウマスイッチ(連鎖式) 1/15:2023/12/06(水) 16:54:22.60 ID:5n+/hRHYp
- "うーん、まさか秘密の場所に目をつけるなんて思わなかったなぁ。
私としたことがふ、不覚〜……"
虚ろな足取りのアンジェロに寄り添い歩きながら、リノアさんが大げさな身振りで頭を抱える。
もちろん彼女の姿や声が聞こえているのは僕だけ――のはずなのだけれど、
「そういやソロ、お前ら今までどこにいたんだ?
もしかして訓練施設から歩いてきてて、ヘンリー達と行き違いになったとか?」
"もしかしなくてもそのとおりで〜す"
タイミングと察しの良すぎるロックさんの発言に、リノアさんが応えるものだから、会話が成立しているように錯覚してしまう。
さすがに笑ったりできるほどの余裕はないけれど……
圧倒的な窮地の中、味方になってくれる人がいる。
今は、その事実が何よりもありがたい。
「そうです。僕は、駐車場っていう……こう、金属製の馬車みたいな乗り物がいっぱいあるところに飛ばされて」
"……えっと、たぶん自動車のこと言ってる?"
「あ、はい。ジドウシャっていう乗り物みたいです。
で、そこから出て、とりあえず近くの場所を探そうと訓練施設に入ったところ、アンジェロに会いました。
それで僕と出会う前にアンジェロがいた場所が、件の『秘密の場所』だそうです」
「なるほどなー……そりゃお前も驚くわ。
だいたいホールで繋がってる構造なのにどうやって入れ違うんだ? ってなるよな。
まあ外から回り込んだんだろうけどさ」
"気持ちはわかるけど、正々堂々と向かってきてほしかったなあ。
あ、でもそうするとジェノバのヤツがアーヴァインにちょっかいかけてたかもしれないのか……
あーもう、あのニセモノモンスター! 人に化けるなんてどこの影武者よ! 次会ったらフェニックスの尾ぶっつけてやるんだからね!"
ふぇにっくすのおってなんだろう……?
よくわからない道具の姿を想像しながら足を進めるうちに、僕達は何事もなく図書館へ辿り着く。
――『図書館』だ。『図書室』ではなく。
「はぁー……これまたすごいな」
扉を開けて館内に足を踏み入れたロックさんが、唖然とした表情のまま首を横に振る。
僕だって、天空城の蔵書室を見たことがなかったら彼のように圧倒されていたかもしれない。
なにせ本棚の一つ一つが、あまりにも常識はずれな大きさなのだ。
横も縦も僕の身長の倍はある。
サイファーだって、本気でジャンプしない限り最上段の本は手に取れないだろう。
そんな棚の怪物とでもいうべき代物が二つ横並びになって、背中合わせにもう二つあって、その塊が全部で三つもある。
それなのにどの棚も本が隙間なく収まっていて整然と整理されているのだから凄まじい。
こんな場所、それこそ天空城しか比較対象に出せないぐらいだ。
……でも、リノアさんの話によれば、ここは傭兵を育てる学校でしかなくて――
- 391 :トラウマスイッチ(連鎖式) 2/15:2023/12/06(水) 16:55:57.93 ID:5n+/hRHYp
- 「これだけ本を揃えて天窓付けるってのもどうかと思うが……
どうせパッと見でわからないってだけで、日光対策とかしてるんだろうな」
"おおっと鋭い。
ここの窓はぜーんぶUVカットガラス使ってるから日焼け対策は完璧なのです。
空調もしっかりしてるからとっても過ごしやすいし、本もいろんなジャンルが揃ってるから私的にはイチオシスポット!
……でも食料とか飲み物がないんだよねえ。図書委員さんがいればこっそりおやつ分けてもらえるんだけど"
ゆーぶいかっとがらすってなんだろう……??
ジドウシャもだけれど、この世界、色々なものがすごすぎて理解できないことが多すぎる。
……そういえばアーヴァインもレーベでこぼしてたっけ。
『どこのド田舎か知らないけど、ちょっとこれは田舎すぎてついてけな〜い』って。
王侯貴族でもないのに火打石とか薪とか竈とか一切使ったことないなんて、どういう暮らししてたんだろうと思ったけど……
これが基準なら仕方ないな、としか言えない。
"それにしても不思議だよね"
「そうですね」
"声はするのに姿が見えないなんて、映画か小説の中だけだと思ってたのに。
透明人間は実在した! ってオカルトファンに投稿したら採用待ったナシだよね"
……あ、そっちなんだ?
てっきり図書館やこの世界の技術のことを指しているのかと思ったから頷いたのに、ロックさんのことだった。
僕からしたら、透明になる呪文の方がまだまだ全然有り得る気がするんだけどなあ。
「アンジェロ、なんて言ってるんだ?」
ロックさんが怪訝そうに尋ねてきた。
僕が相槌を打ったから、会話してるって気づいたんだろう。
「透明化の呪文に驚いてるみたいです。
そういえばアーヴァインもスコールさんもサイファーも、僕達が呪文を扱えることを珍しいって言ってましたから……
呪文自体が馴染み薄くて、代わりに技術が非常に発達した世界なんですかね、ここ」
"そのとおーり! ソロに百点あげちゃおう!"
………リノアさんがぴょんぴょん跳ねながら満面の笑みを浮かべる。
本当にこの人幽霊なんだろうか。
いやまあ、生前と変わらなすぎるって意味ではピサロも似たようなものだったけれど。
「なるほどなー。俺もアンジェロの気持ちちょっとわかるぜ。
何せ魔石の事を知るまでは、幻獣も魔法も伝説とかおとぎ話の中の存在だったからな。
ティナが使ってたのが魔法だって言われた時は、そりゃもう目玉飛び出すぐらい驚いたのなんのって……
……つーか誰も来てないみたいだし、そろそろ解いてもいいかもな」
- 392 :トラウマスイッチ(連鎖式) 3/15:2023/12/06(水) 16:56:50.93 ID:5n+/hRHYp
- そう言うと、ロックさんは「ケアル!」と魔法を唱えた。
僅かな癒しの輝きと共に、懐かしささえ覚えるバンダナ姿が露わになる。
"おおー。思ってたよりワイルドな感じのお兄さん。
独特な着こなしだけどこれはこれでかっこいいというか、映画俳優みたいだよねえ。
『俺が守ってやる!』とか言ったらすっごい似合いそう。もしかしてホントに映画に出てたり……する? しない?"
……リノアさんがマーニャさんみたいなこと言ってる。
そして好き放題に言われている当の本人は、ぼやきながら後ろ髪を描き上げ、ちらりと僕らの方を見た。
「くそー、わかってたけどあんまり回復しねえ〜。
なあソロ、お前とアンジェロの体調も魔法で確認させてもらっていいか?
正直俺も本調子じゃないし、お前らにどれぐらい戦う余力があるのか知っておきたいんだ」
「もちろんいいですよ。
僕も魔力が尽きている感覚がありますし、リ……っつぱに元気に見えてもアンジェロも本調子ではないかもしれませんしね」
うっかりリノアさんの名前を出しそうになってしまったけど、なんとかごまかす。
"いや立派に元気って無理があると思うなあ。
かーなーり、無理だと思うなあ"
……大丈夫。多分ごまかせてる。ごまかしたはず。
僕の祈りが通じたのか、ロックさんは首を傾げることもなく詠唱を始めた。
「悪いな、じゃあライブラっと。
……ってマジで魔力空っぽじゃんお前。後でちゃんと休んだ方がいいかもな。
で、アンジェロにもライブラって……うんうん、こっちは健康みたいだな。
死んだって聞いてたけど本当は仮死状態か何かだったのか? アンデッドとかになってなくて良かったな!」
"いや本当に死んじゃってたんだけどね……ぼんやり状態も治せないし、不甲斐ない飼い主でごめんね。
でも身体だけでも元気で良かった。本当に良かったよう……!"
リノアさんはアンジェロにぎゅっと抱きつき、何度も頭を撫でる。
そんな彼女の姿は見えていないはずなのに、分析魔法が何かを伝えたのか、ロックさんはぼやくように呟いた。
「しかしまあ、こいつ飼い主のこと大好きなんだな。
弱点が『リノアによわい』とか『リノアのおねがいによわい』とか『リノアのねおきによわい』とか初めて見たぞ。
あと『ホワイトチョコレートとおすしとリンゴとヨーグルトとピーナッツバターによわい』ってなんだ? 嫌いな食べ物?」
"あ、それ好きな食べ物!
こんなぼんやり状態でも好きなモノは忘れてないんだね〜、よしよし。
でも私にもよわいって堂々と言われると……て、照れるぜ"
- 393 :トラウマスイッチ(連鎖式) 4/15:2023/12/06(水) 16:58:01.31 ID:5n+/hRHYp
- 恥ずかしそうに、けれど明らかに嬉しそうに、リノアさんの顔がにやける。
心の奥がほんのり暖かくなるのを感じながら彼女の説明を伝えると、どういうわけかロックさんは不可解そうに首をひねった。
「犬ってチョコ食わしちゃダメなんじゃなかったっけ?
リルムがシャドウに注意されてたの聞いた気がするんだが」
"黒いチョコはダメだけど、犬用のホワイトチョコなら大丈夫。
ペットショップで売ってたの、珍しいと思って買ってあげたら気に入っちゃったんだよね。
ね、アンジェロ!"
「………」
アンジェロの眼差しは相変わらず虚無に満ちたまま、感情の欠片も見て取れない。
それでもきっと、全ての記憶が失われているわけではないのだろう。
いつかアンジェロ自身の心が戻るといいと願いながら、僕はロックさんに話しかける。
「どうやらペット専用の店があって、そこで犬でも食べられるチョコが売ってたみたいですよ」
「ああ、なるほどなー。……いやもう、この世界のこと理解できる気しないんだが。
無駄に無駄のない無駄に洗練された無駄な技術でも誇ってんのか、って感じだ」
はぁー、と大げさにため息をつきながら、ロックさんは乱れて目にかかった前髪を払いのけた。
ついでに色々気になったのか、バンダナを手早く巻き直して服の汚れを軽く払う。
それでも匂いはどうにもならないようで、袖口や襟を鼻先に近づけては顔をしかめた。
「どうせなら、服を着たまま汚れを落とせる機械とかありゃいいのにな。
こうぶわーっとお湯が落ちてきて、ふわーっと暖かい風で乾かすとか」
"うーん。デオドラントスプレーぐらいなら誰かしら持ってるだろうし、ロッカーとか机の中とか探せば出てくるかもしれないけど……
さすがに身体を綺麗にするのは普通のシャワーかお風呂しかないし、服を綺麗にするなら洗濯機使わないと無理だと思うなあ。
アーヴァイン達拾ったら、みんなで学生寮行ってみる? あそこならドライヤーもあるよ?"
ロックさんの軽口めいた独り言にリノアさんが答えてくれたけれど、さすがにそこまで魔法のような機械はないらしい。
……でもきっと、お風呂もシャワーも魔法みたいな機械で出来ているんだろうな。
洗濯機っていうのも、どうせ僕が知ってるような板とかバケツじゃないってオチだろうし。
「えっと、学生寮にシャワーとお風呂と洗濯場があるみたいです。
安全かどうかはわかりませんが、後で行ってみますか?」
「あー……いや、いいよ。
あまり動くとサイファーと会えなくなるかもしれないし、何よりケフカの奴もシャワー浴びさせろシャワー浴びさせろってうるさかったからな。
あの野郎、セフィロスの奴に毒沼ドボンさせられたから珍しくマジギレしてたんだぜ。ざまぁみろ」
「ケフカ――……」
ジェノバとは別ベクトルで邪悪な――……いやよく考えたら似たり寄ったりしれないけど――、倒すべき存在の名に、思わず拳を握りしめる。
切実な想いがあるわけでもなく、誇りや矜持があるわけでもなく、ただ己の快楽のために人を利用し傷つけることしか考えていない男。
リノアさんとロックさんのおかげでだいぶ救われていた心、その中にずしんと重い影がのしかかる。
思い出してしまった笑い声はどこまでも不愉快で――
- 394 :トラウマスイッチ(連鎖式) 5/15:2023/12/06(水) 16:58:50.24 ID:5n+/hRHYp
- "ソロ? 大丈夫?"
不安げながらも優しい声に顔を上げれば、そこには僕を覗き込むリノアさんの姿。
そしてその真後ろには、ばつが悪そうに頬を掻くロックさん。
「わ、悪りぃ。あの野郎はギードが監視してるから大丈夫だ。
本当は俺だってあんな奴生かしておきたくないんだが、ジェノバの野郎が人の心を読む反則生物だっていうからな。
矢面に立たせても大丈夫な奴が必要なんだ」
彼はしどろもどろと弁解しながら、指先を下ろしてつうっと首輪をなぞる。
夢世界や首輪解除の件がバレることを恐れているのだろうか?
それにしたって、リュックが近くにいる以上は既に露見していると思うのだけれど。
「……あー、いや、正確に言えば『俺とサイファーにとっては』だな。
そこらへんのことはヘンリー達と会ったら詳しく話すよ」
「は、はぁ……」
どういう事なんだろう?
思わずリノアさんの方を見たけれど、彼女も首を捻っている。
"ううん……アーヴァインなら、あのモンスターと会わせちゃマズイのはわかるけど。
この人とサイファーも正面切って会ったらマズイってどういうことなんだろ?"
そんな僕達の疑問や不安に感づいたのか、ロックさんは慌てて両手を振った。
「ああ、いや、そんな心配しないでくれ。
単純に話がややこしくてめんどくさいから、アイツらにもまとめて説明したいだけなんだ。
それと早くアイツらの無事を確かめたいってのもあるしな」
ややこしくてめんどくさい理由?
よくわからないけど、……ヘンリーさん達と合流する方が先だろう、って言われたら頷くしかない。
"それもそうだね。
アーヴァイン、迷惑かけてるといけないし。
非常口、こっちだから着いてきて!"
リノアさんとアンジェロがとことこと歩き出す。
僕も後を追おうとして、ロックさんに追い抜かれる。
足を踏み出しているはずなのに、二人と一匹の背が少しづつ遠ざかっていく。
- 395 :トラウマスイッチ(連鎖式) 6/15:2023/12/06(水) 16:59:51.73 ID:5n+/hRHYp
- ――ダメだ。もっと早く歩かないと。
心は急かすけれど、身体がついていかない。
胸がぎゅっと苦しくなって、冷汗が首筋から背中に流れ落ちる。
考えたくもない光景と、思い出したくない映像が、頭の中で浮かんでは消えてまた浮かぶ。
これが初めてってわけじゃないのに。
人に化ける魔物に襲われたこと、マーニャさんとミネアさんの顔で嘲笑われたこと、本物のマーニャさんにまで敵意を向けられたこと……
ああ、でも、あの時はミネアさんがいてくれた。
同じように魔物に陥れられたのに僕を信じてくれて、マーニャさんを説得してくれた。
けれど、その彼女は死んでしまって……――
シンシアも死んでしまって、アリーナも死んでしまって、僕は誰も守れなくて、そんな僕を誰がどうやって信じれる?――
とめどない感情が思考をどんどん暴走させて、僕の心を追い詰めていく。
"ソロ? どうしたの?"
最初にリノアさんが気づき、アンジェロが足を止めた。
振り返ったロックさんが僕の傍へ駆け寄ってくる。
肩に触れる大きな手の感触に、妄想に囚われかけていた考えは一気に現実へと引き戻され、それでも息苦しさは治まらない。
指先が震えて止まらない。
――いつかの日、血だまりで出来た沼の中で羽帽子を拾い上げた時のように。
「おい、大丈夫か?」
「……え、ええ。平気、です」
「いやいや、顔真っ青だぞ。
さっきの歌の後遺症かもしれないし、少し休んでいくか?
誰も後を追ってきてなさそうだし……ちょっとぐらい大丈夫だろ」
さっきの歌。
バッツさんが奏でた、あの曲。
そういう魔力が籠っていたのか、単に思い出を蘇らせるだけのものだったのかはわからない。
ただ、あの物悲しい旋律を聴いた途端、鮮明に思い出した。
村が焼き滅ぼされたあの日、シンシアを見殺しにしたこと。
参加者リストの中にシンシアの顔写真を見たこと。
彼女を助けるどころかもう一度会うチャンスすら掴めなかったこと。
どうしようもない後悔と……それ以上に、もっと彼女と一緒に居たかったという切望が溢れて止まらなくなった。
でも、本当に傷ついたのは、思い出のせいだけじゃなくて――
「違います……バッツさんの、せいじゃ、ないんです。
僕が、……僕が、臆病な、だけで」
頑張って口に出してみるけれど、途中で詰まってしまう。
それでも幸いなことに、ロックさんは理解してくれたらしい。
- 396 :トラウマスイッチ(連鎖式) 7/15:2023/12/06(水) 17:01:19.39 ID:5n+/hRHYp
- 「あ……そうか、そうだよな。
そりゃあんなことした奴が居たら、お前じゃなくたって不安になるよな。
ヘンリーはバッツほどアホじゃないと信じたいけど……今の状況じゃあ、な」
そうだ。そうなんだ。
僕だってヘンリーさんのことは信頼しているけれど――……こんな事を考えたくすらないけれど。
ヘンリーさんだって、僕を信じてくれるとは限らない。
"ええっと、ヘンリーさんってリュカさんの親友……だよね。
リュカさんはすごく落ち着いた佇まいの、大人ってこうあるべし! って感じの人だったけど……
ヘンリーさんの方は騙されやすいタイプだったりするの?"
「いえ……多分、ヘンリーさん一人だったら、僕を信じてくれる……って、思いたいです。
でも、アーヴァインを守るので手一杯だろうし……そんな時に、僕を、信じて、くれるか、どうか……
落ち着きも……あまりないですし……」
リノアさんの質問に精一杯答えてみるけれど、考えれば考えるほど、無理だと判断できてしまう。
だってジェノバが動き出したのはヘンリーさん達が旅の扉を潜った『後』だ。
アーヴァインから切り離された身体の一部が魔物になって動き出した上に、本来の宿主だったセフィロスを裏切って殺し、アーヴァインに成りすまして動いてるなんて……
いくらヘンリーさんが奇抜な発想力と行動力の持ち主だからって、こんな状況、想定できるわけがない。
それにああ見えて優しくて責任感の強い人だから、『重傷を負っているアーヴァインを守る』ことを優先するに決まってる。
ロックさんですら僕と同意見のようで、「ヘンリーだもんなあ……」と頭を抱え出した。
それに他にも問題がある。
まずアーヴァインがどれぐらいジェノバの影響を受けているのかわからないということ。
極端な話、ジェノバが彼の意思や言動を完全に掌握していて自在に操作できるのだとしたら……それこそヘンリーさんに虚言を吹き込んで僕を襲わせようとするだろう。
次に、ヘンリーさんの用いる戦法はメダパニやマヌーサを主軸にした攪乱だということ。
今の僕に――どうしようもなく乱れて落ち着かない精神状態で、果たしてメダパニに耐えられるのか。
もちろん天空の盾であらかじめ反射障壁を張ることはできるけれど、それがヘンリーさんやアーヴァインに直撃して、二人が防げなかったらどうなるか。
本当は信じたい。
アーヴァインは操られてなどいなくて冷静にヘンリーさんを説得してくれて、ヘンリーさんも僕を信じる方に傾いてくれると願いたい。
けれど、都合の良すぎる考えに甘えたら……それはもう『信頼』じゃなくて『現実逃避』なんじゃないかって思えてしまう。
クリムトさんから真実を見抜く力を譲ってもらって、ロックさんやリノアさんに協力してもらって、ヘンリーさんより多くの情報を知ってるはずの僕自身がそういう考え方になってしまうんだ。
最悪の事態を考えずに仲間を信じる――自分にも出来ないことをヘンリーさんに求めるなんて、卑怯に過ぎる。
「アーヴァインが正気ならワンチャン……いや、でもあいつはあいつで俺がいるってだけで警戒解くほど純真じゃないよな。
何ならケフカが俺に化けてるとかまで考えるかもしれない。
あの野郎、マジでやりやがった前科があるからな……仲間なんだから素直に信じろって言いたいが…
正直、俺も人の事は言えた義理じゃないしな……むしろガチでやらかした方だし……ああ〜思い出したら腸煮えくり返ってきた、ケフカの奴許さねえ……」
- 397 :トラウマスイッチ(連鎖式) 8/15:2023/12/06(水) 17:03:12.67 ID:5n+/hRHYp
- ロックさんは独り言のように呟くと、額に手を当てて天を仰いだ。
その一方でリノアさんはおろおろと僕達を見回していたけれど――塞ぎこんだ空気に抵抗しようとしたのだろう。
"えーい! 暗い顔ばっかりしちゃダメっ!"
両手を真上にあげ、背を伸ばしたまま飛び跳ねたかと思うと、思いっきり大声で叫び出した。
彼女が幽霊じゃなかったら間違いなく図書館中に響き渡っていただろう。
――というかロックさんが「え!? 何? リルム!? 幻聴!?」ってビックリしてるんだけど……物理的な音、出てないよね?
"恐れられたり嫌われたり、そういうの怖くなる気持ちはわかるよ!
わかるけど、すごくよくわかるけど、それでも疑心暗鬼になったら相手の思う壺でしょ!
皆が怖がってるのはウソの放送が本当だったらどうしようって可能性であって、ソロ自身のことを怖がってるわけじゃないはずだもん!"
……!
"仲間なんだから、ちゃんと話せば信じてくれる!
もしアーヴァインが操られてたり、二人揃って話を聞こうとしなかったら、膝の裏蹴っ飛ばしてアンジェロにどっかーんと投げ飛ばしてもらって頭冷やさせるから!
諦めるのは後でもできるんだから、今はどーんと当たって砕けに行こう!"
明るくも勇ましい言葉が、挫けかけた心にほのかな火を灯してくれる。
屈託のない笑顔は本物の天使のようで――……スコールさんが好きになるわけだと否応にも納得してしまう。
「な? 何だ? アンジェロが何か言ってるのか?」
「あ、はい。ちゃんと話せばわかってくれるはずだって……」
過激な部分以外を要約して伝えると、ロックさんは唸りながらしばし目を閉じた。
ややあって、「……それもそうだな」と頷く。
「アーヴァインの状態がどうであれ、あいつは手負いのはずだし、ヘンリーも別段強くはなかったよな。
だったら俺が初手で武器を取り上げちまえば、安全にオハナシできるはずだ。
よーし、ここはいっちょあいつらに俺の盗みの腕を見せてやるぜ! それこそ服ごと全部ひん剥いてやる!」
「いやダメでしょう服は」
武装解除しようってところまではわかるけど、服まで奪ったら素っ裸じゃないですか……
いくらなんでもそれはひどい。
あと武器を奪ったところで呪文対策にはならないし。
ロックさんが混乱して自分ではだかになっても責任取れませんよ?
"話を聞いてもらう姿勢……それよ、それ!
ねえソロ、フツーの服とか持ってない!?
ガチガチの鎧一式っていういかにも戦闘準備完了! って恰好より、無害な一般人で〜すって感じの服の方が、話もしやすくなるんじゃない?"
「え?」
「どうした? またアンジェロのお役立ちアドバイスか?」
- 398 :トラウマスイッチ(連鎖式) 9/15:2023/12/06(水) 17:12:40.56 ID:5n+/hRHYp
- ささっとリノアさんの言葉を代弁すると、ロックさんは「それだ!」と目を輝かせた。
……なんか嫌な予感がする。
「いっそガチガチに変装しようぜ!
そうすりゃリュックやジェノバに見つかっても気づかれにくくなるし、一石二鳥だ!
着替えとか持ってるか? なけりゃ俺の上着や帽子で上手くコーディネートしてやるけど」
「あ、え、ええと、ティーダの、遺品に、いくつか服が……」
剣幕に圧されて素直に答えてしまったけれど、そんな変装程度でどうにかなるかな……?
それにケフカとかが横から殴りこんできた時を考えたら、鎧や兜を脱ぐのはマズイと思うんだけど……
でもロックさんがノリノリで服を引っ張りだしてるし、リノアさんもキラキラした目で覗き込んでる……
せ、せめて剣と盾は死守しないと……できれば兜も……っていうか羽がついた帽子多くない? 今はあんまり被りたい気分じゃないのに……
「おおー! 色々あるじゃん!
バンダナがないのが惜しいけど、これだけありゃ変装し放題だ!
せっかくだし俺も着替えようかな!」
"へぇ〜。これが別の世界の服ですかあ。
いいんじゃない? ファンタジーって感じで!"
「あ、あの……」
「大丈夫大丈夫! このロックさまに任せとけ!」
"任せまーす! ビシっと決めてあげて!"
……なんで一方通行でしか聞こえてないはずなのに、こんなにも息ぴったりなんだろう。
盛り上がる一人と一人を前に、僕はアンジェロと同じようにひたすら遠くを見つめる事しかできなかった。
***********
「へっきゅしゅん!」
はー、なんか背筋がぶるっとする。風邪引いたか?
「だ、大丈夫〜?」
「いや、何でもない。きっと誰かウワサしてるんだろ。
それよりお前、ちゃんと隠れてろよ」
せっかく見つかりにくく逃げやすいマストなポジションを見つけたのに、声出したらバレちまうだろ。
振り返らずに咎めてみても、背後から投げかけられるのは反省の欠片もないのらりくらりとした言葉。
「これぐらい、ヘーキだよ〜。
空調も、浄水装置も、動いてるし……話し声や、オジサンのクシャミぐらい、紛れるって」
「……そりゃそうかもしれないが」
- 399 :トラウマスイッチ(連鎖式) 10/15:2023/12/06(水) 17:29:29.55 ID:Lw9pF3u+m
- 空調とやらも浄水装置とやらも俺にはさっぱりわからない、が……この空間、確かに『音』で満ちている。
緩急入り乱れて吹く風。生い茂る草木の葉擦れ。流れる水のせせらぎ。
どれ一つとっても本当に密林の自然そのものだ――って言いたいのに、キラーマシンめいた複数の駆動音が蒸し暑い空気に反響し続けているせいで雰囲気ぶち壊しだ。
ついでに言えば棘の付いた鉄線のフェンスだとか灰色の壁と天井だとか、自然には有り得ないもので囲まれているから見た目でも頭が混乱する。
「それよりさぁ、オジサンの姿勢の方が、……ゴホッ、辛そうなんだけど。
そんな、へばりつかなくても、ゴホッ、角度……、あるから、入り口からは、見えないよ」
「そうは言ってもなあ。念には念を入れた方がいいだろ」
カエルの気持ちになって隠れる――
これぞ悪ガキだったころに極めたかくれんぼ術だ。
秘密の場所への道を阻むかのように倒れた巨大すぎる石柱、その上にぺったりと腹ばいで貼り付いて、折れた木の枝を持ってカモフラージュ。
もう絶対に見つからない! 見つけられるわけがない!
「だから、最初から、見えないって。
ここ、入り口の方が低いし、ゲートも、あるし……真ん中、モンスター用の、生活エリアで、……森、っぽく、なって、見通し、悪いんだから。
逆に、秘密の場所側から、回り込まれたら、全部丸見えだし〜……」
「そういうこと言うのは止めてくれって」
さすがに旅の扉からコンニチハできる時間も過ぎ去ったし、空を自由に飛べる奴がいるとは思いたくない。
ついさっきセフィロスが空を飛んで希望の祠前に回り込んできたような気がする? ナンノコトカナー。
などと冗談はさておき、アンジェロの身体を借りているのだとしたらそこまでぴょんぴょん飛べないだろう。
空飛ぶ犬なんて聞いたこともないし。
あ、でも大昔には耳で空飛ぶネズミがいたらしいなあ。ソロなら知ってるかな?
――ってだからそのソロがヤバイかもしれないんだって。
あー、信じたくねえ。
アーヴァインは信じなくていいって言ってるけどそうもいかないし
「信じなくていいって〜」
「はいはい」
相変わらず心読まれまくってるけど、今ばっかりはしょうがない。
何かあった時、すぐに車椅子を押して逃げられる距離にいないとまずいからな。
そういうわけでアーヴァインには俺がよじ登ってる柱の影――恐らくは通路として切り取られたであろう隙間に隠れてもらっている。
幸い、この訓練施設は円状に道が繋がっている上に、入り口側だけが左右二つのゲートで区切られている。
万が一敵が来ても、どっちのゲートを開けてこっちに向かってくるかがわかれば、反対側から逃げられるって寸法だ。
さすが現地の民。完璧な地の利じゃないか。
レーベで散々引っ掻き回しただけあって、敵にすると果てしなくめんどくさいけど味方になると頼もしい。
これでもう少しめんどくさい部分が減ってくれればなあ……
色々考え込んでる割に、思考をロクに開示しないし、ギリギリまで相談もしないし、必要にならないと他人を頼ろうしない。
自分に出来ることは全部自分で片づけようとして、そのくせ友達とかが困ってたらそのトラブルまで抱え込もうとして、キャパオーバーでぶっ倒れるタイプっていうか。
- 400 :トラウマスイッチ(連鎖式) 11/15:2023/12/06(水) 17:38:13.72 ID:Fm9QoNgCM
- スコールも、ついでに言えばピサロとかもそういうところあるけどさぁ。
何ならピエールも似たようなもんだし、うちの城の隊長格にも何人かいるけどさあ。
お前ら全員ちゃんと言え、ちゃんと。
そんでちゃんと頼れ、人を。
俺だって誰だってエスパーじゃないんだ。
言葉に出してくれなきゃ何もわからないし、突然倒れて寝込まれても困るんだぞ。
せっかく景気対策とか色々やって活気あるラインハットを目指しても、警備隊長がぶっ倒れましたー理由は過労でーすとかブラック国家まっしぐらじゃねえか。
コリンズにはホワイトな国を継がせたいんだってマジで。
……でも警備隊長がぶっ倒れた理由はそのコリンズが城から脱走したからなんだよなあ。
どうしたらいいんだ俺。
マリアもデールももういないし、他の身内はコリンズとババアしかいないんだけど……あの女に頼ることになんの?
いや確かに和解したけどさあ。昔の事は水に流してやったけどさあ!
デールが死んで俺が生き残りましたなんていったらあの女絶対半狂乱になるだろ!?
アアーッ頼りたくねえ! 大臣助けてくれーッ!! この際マスタードラゴン様でもいいからァーッ!
「あ、あの、ご、ごめ……ん? ……なさい??」
「あ、いや、そういうわけじゃなくてだな……」
いやいたわエスパー。いるんだわエスパー。
俺の考え、誰かに読まれて困るってことはないんだが……読んだ方が困るってのはどうしようもない。
ずーっと無心でいるっていうのも難しいしなあ。
マリアなら出来るかもしれないけど。
確か修道院でそういう修行があるって言ってたよな。
毎日何時間か神様に祈りを捧げるんだけど、何かを願うのは私利私欲に繋がるから、純粋な祈りになるよう無心の境地に至らないといけない――とか。
うん、俺には無理。向いてない。
それにいつ誰がやってくるかわからない状況で無心でいたら逆にマズイだろ。
アーヴァインの目論見通りサイファーが来てくれればそりゃあ勝ち確待ったナシだけど、世の中そんなに上手くいったりしない。
どんな計画だろうと、たいてい予想外のことが起きて簡単にひっくり返されるもんだ。
まあ、一生に一回ぐらいは豪運が味方することもあるけど――……俺、絶対その『一生に一回』使い切ってるしなぁ。
何せ樽の中に三人詰まって山の上から海へダイビングしたら良い感じに海流に乗っかれて修道院の近くに無事漂着、生涯の友と未来の妻と仲良く生還したんだ。
修道院長やマリアは『マスタードラゴン様のお導きだろう』って信じてたのに、本人に聞いたら『そのころはトロッコに乗ってたので関与してないです』って返ってきたし。
数年間信じ続けて、ようやく礼を言う機会が巡ってきたと思ったら、マジモンの神様に『知らん……何それ……怖……』って顔された俺達の気持ち考えて?
「……ヘンリーさん、ホント、どんな人生送ってるの?
雑誌まるまる、一冊使って、特集記事とか……そ〜ゆ〜、レベルなんだけど……」
「俺に聞くな。正直自分でも波乱万丈すぎて眩暈がしてるんだ」
それでなくてもこんな殺し合いに巻き込まれるし、厄介な連中に死ぬほど迷惑かけられまくる――ってそれ思い出すのはダメだろ俺。
でも実際厄介なんだよなあ、驚異のはぐメタキング野郎。
- 401 :トラウマスイッチ(連鎖式) 12/15:2023/12/06(水) 17:44:08.51 ID:Fm9QoNgCM
- もう今なら本物のはぐれメタル見ても逃げ出せる自信があるわ。
いや放送を真とするならアンジェロになりすましてるんだから、犬見たら逃げた方がいいのか?
でもなあ。あの野郎、マジで無法の化身だからなあ。
放送は嘘でアーヴァインに悟られぬよう気配消してただけでした、なので対戦よろしくお願いしますって人間の姿でやってきても驚かねーわ。
……いや嘘ついたな俺。そんなことされたら心臓が口から飛び出て死ぬ。
「だから、あいつなら、大丈夫だってば〜……僕、気配探るとか、そういうの、自信あるし〜……」
ありがとうアーヴァイン、その言葉信じるよ。
信じるからなマジで。
でも気配わかるほど近づいたら先に操られたりしないのか? って素朴な疑問も湧いてくる。
「……う、うーん……さ、最悪、ティーダ、呼ぶから、ダイジョブ」
「いや大丈夫じゃねえだろ。
呼ぶなよ、絶対呼ぶなよ」
俺もスコールも言ったよな? 魔力の使い過ぎで身体の負担が魔物化進む原因かもって!
そりゃ友達に助けてほしくなる気持ちはわかるけどさぁ。
俺だって『助けてリュカーーー!!!』って絶叫したらすごく強い装備でガチガチになったリュカに出てきてもらって、超強い呪文で敵を薙ぎ払ってもらってほしいけどさ。
右手にバギクロス、左手にバギクロス、二つ合わせてグランドクロスとかバギムーチョとかそんな感じのつよつよ必殺技でセフィロスもケフカも一撃だ! みたいな。
「…………みたいな。じゃ、なくてさ……
ヘンリーさん、あたま、だいじょぶ?」
なんで『あたまだいじょぶ?』な真似を実現した当の本人がげんなりした声出すんだよ。
だいたいこれぐらい誰でも考えるだろ。なあリュカ?
心の中の親友に尋ねてみるといつものニッコリスマイルで、
『ヘンリー。僕に聞かれても困るから止めてくれないかな。
あと合体呪文なんて存在しないもの使えるわけないからね?
せめてモンスターのみんなを呼ぶ程度にしてくれない?』
と、視線だけは冷ややかに答える様子がまざまざと浮かんでしまった。
博愛主義者の割に、妙なところで現実的なんだよなぁ、アイツ。
ロマンを解さないっていうか、カジノに連れて行っても安牌なところにチマチマ賭けるタイプっていうか。
格闘場も1枚賭けばっかりだったしな。ああ、でもレースで1−2が10倍の時だけは99枚賭けてたか……何だったんだろう、あの賭け方。
「なんか……サイファーと、ウマ、あわなそ〜……」
「あ〜」
そういやサイファーも言ってたな。
アリアハンだっけ? 最初の旅の扉を見つける前に、リュカが家族を探したいって言い出したから別れたって。
正直、セフィロスの強さを目の当たりにしてたんだったら皆まとまって行動しろよって思ったけど――性格的に合わないって部分もあったんだろうなあ。
ちなみにリュカの探し人は家族とピエール、はぐりんだけで、俺のことはノーカンだったらしい。なんでだよ。
「だってヘンリーさん、殺しても、死なないじゃん」
「そんなわけあるか」
- 402 :トラウマスイッチ(連鎖式) 13/15:2023/12/06(水) 17:45:42.09 ID:Fm9QoNgCM
- 俺を何だと思ってるんだコイツは。
たまたま運よく生き残っただけで、殺されたら死ぬに決まってるだろ。
それじゃなくてもレーベでこいつらに狙われるしおかしくなったデールに殺されかけたし、
ウルで錯乱したレナに刺されるし、デールに狙われたし、サラマンダーに井戸に落とされたし、
昨日は昨日でおかしくなったタバサの説得に失敗するし、こいつにもろとも撃たれたし、自称タバサのセージに襲われるし、セフィロスと追いかけっこするハメになるし……あれ?
「普通は、死ぬんじゃ、ないかなあ……」
「………」
二回ぐらい殺しかけてきた張本人に言われるのは釈然としなさすぎるが……つくづく良く生きてるな、俺。
はぁ〜〜、と大きくため息をついた、その時――かすかな物音が聞こえた気がした。
俺の気のせいか、と思う暇もなく、強張った声音が背後から投げかけられる。
「ヘンリーさん、非常口」
その言葉に、俺は手を握りしめながら斜め下を凝視した。
木々の隙間からわずかに垣間見えるゲートに挟まれた広場、そこに何者かが入ってくる――
――最初に見えたのは、緑。
帽子だろうか、白い飾りが大きく揺れている。
服も緑だし、全体的に狩人を思わせる出で立ちだ。
次に気づいたのは、赤。
こっちは全身真っ赤。派手。
胸のあたりで白いのがヒラヒラしてる。多分ジャボつけてる。派手。
でも何故か違和感があるな。
帽子か? 何となく服に比べて優雅さが欠けてるような……くそっ、さすがに細かい形までは良く見えないな。
最後に、黄色のトンガリ帽子。
これはデカイ。ビビ並みにデカイ。つーか背が低い。ビビか?
でもよく見たら青いローブ着てるっぽいし、そもそも四つん這いになってる? ビビが?
何アレ? ビビ? 違う? え? 何?
つーか、全体的に誰だアレ???????
全身緑と全身赤って誰かいたっけ????
「え、ええ〜……誰?」
アーヴァインも頭抱えてる。だよなー。
しかしこういう時は俺が落ち着いて考えないといけない。
何も考えず逃げるってのもアリアリのアリな気がするレベルで怪しい連中だが――
てか四つん這いの時点でアンジェロじゃないか? あのビビもどき。
よく考えたらあの犬、ローブ着てたし。
でもこんなシンプルな形じゃ無かった気がするんだよなあ。
帽子といい、どこで調達した? ああいう服、この世界ならどこにでもあるとか?
- 403 :トラウマスイッチ(連鎖式) 14/15:2023/12/06(水) 17:47:16.32 ID:Fm9QoNgCM
- 「ないない、ないよ〜」
ないのかー。だよなー。
だがどうする? 俺達がまごまごしてる間にも、あいつら動いてるぞ?
ビビもどきがアンジェロとして、赤緑の片方がソロとして、もう一人は誰だよ?
まさかサイファー?
放送が嘘で、無実のソロとアンジェロを保護してるとか?
無いとは言い切れない……けど、サイファーが変装とか考えるか?
アイツ、どっちかっていうと堂々と向かってきて当たって砕けろする方だろ。
変装とか好きそうなのって、サイファーよりロックの方じゃないか?
あいつウルでソロと話してたよな。
俺がガーディアンフォースの練習してる時に、トレジャーハンターと盗賊の違いについてとか、潜入工作がどうとか変化の杖が羨ましいとか!
もしくはバッツかラムザ?
……ラムザはわからんが、バッツはやりそうだなあ!
で、アンジェロっぽいのはアンジェロじゃなくて今度は自分を犬と思い込んだセージとか……いやないか。ないよな。ないと言ってくれ。
だいたいそれならギードの方が有り得るだろ。
ローブ着て三角帽子被って魔法でスリムになったギード。
小人になったりカエルになったりカッパになったりする魔法があるなら、スリムになる魔法もあるんじゃないか?
この建物、狭い通路とか細長い扉とか、ギードの横幅じゃ通りにくい場所もいくつかあったしな。
だとするとあの派手派手真っ赤の化身はケフカ?
じゃあ緑は誰だよ。ロック? サイファー? リュック?
まさかまさかのセフィロスさんご本人とかァ? ケフカとセフィロスが手を組んで、アーヴァインに気づかれないよう魔法で気配を消して接近中とかァ!?
ドーモギードじゃなくてアンジェロです、ケフカです、セフィロスですってアイサツされちゃうのォ!?
えええ詰む詰む、詰むって!! アイサツ返す前に死ぬってばァ!!
「う、ううん、さすがに、最後のは、ないと、思う〜……けど……ど、どうする〜?」
俺に聞かれても正直困るって言いたいけど、この場でどっちが決断すべきかって、そりゃ俺だよなあ!
頼む待ってくれ、あと三十分ぐらい時間をくれ……って、緑と赤が両方のゲートを開けようとしてるー!?
待て待て待て待てまさかの挟み撃ち!?
それはさすがに予想してねえ! どどどどどどどどどどーしよう!!
……ってどっちも中央に戻った? 『なんかゲートがあるなあ〜』って見てただけ?!
何そのブラフ!? 俺の心臓止めるチャレンジで遊んでるのか?!
止めてくれよ――ってアーッ! やっぱり左右のゲート両方開けに行ったーッ!!
「お、落ち着いて……」
「大丈夫だ。俺に任せとけ」
こんな時でも崩さないポーカーフェイスを褒めてくれ。マジで。
だが冷静さは取り繕えても時間がない!!
考えろ、考えろ俺ェ! 謎トリオが誰であれセーフな方に賭けるか、安全策を取って逃げるか!!
今ならまだ秘密の場所側から外に出るとか、水中に隠れるとか、片方を強行突破するとか、逃げ道自体はある!
そもそも『きれいなソロとアンジェロにロックかサイファー』っていう安全トリオの可能性だって十分あるっちゃある!!
何が正解でどうするのがベストなんだ!!??
うおおおおお、考えろ、考えるんだあああああああああ!!!
「あの……先に、そこから、降りた方が、いいんじゃ、ないかなぁ……」
- 404 :トラウマスイッチ(連鎖式) 15/15:2023/12/06(水) 17:48:31.22 ID:Fm9QoNgCM
- 【ロック (MP3/4、HP:9/10、左足軽傷)(変装中@狩人もどき)
所持品:クリスタルソード 魔石バハムート、皆伝の証、かわのたて、2000ギル、メガポーション、デスキャッスルの見取り図
第一行動方針:ソロ達と一緒に本物のアーヴァインと合流する
第ニ行動方針:仲間と合流し、静寂の玉を手に入れる
第三行動方針:ジェノバをどうにかする
基本行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】
【ソロ(MP0、真実の力を継承、軽度の精神ダメージ)(変装中@赤魔道士もどき)
所持品:ラミアスの剣(天空の剣、E)、天空の盾(E)、レッドキャップ(E)、天空の兜、天空の鎧、ケフカのメモ、着替え用の服(残り一着)、
ドライバーに改造した聖なる矢、メガポーション、村正
第一行動方針:ロックと一緒に本物のアーヴァインと合流する
第ニ行動方針:ジェノバの魔の手から仲間を守る
基本行動方針:PKK含むこれ以上の殺人を防ぐ
※但し、真剣勝負が必要になる局面が来た場合の事は覚悟しつつあり】
【アンジェロ(リノア)(変装中@黒魔道士もどき)
所持品:風のローブ
第一行動方針:秘密の場所に向かって本物のアーヴァインと合流する
第ニ行動方針:サイファー、スコールなどのソロの仲間と合流
第三行動方針:アンジェロの心を蘇らせる手段を探す
最終行動方針:アルティミシアを倒し、スコールと再会する】
【現在位置:バラムガーデン訓練施設・入り口→奥へ】
【アーヴァイン (HP3/4、MP0、半ジェノバ化(重度)、疲労、右耳失聴、一時的失声、呪い(時々行動不能or混乱or沈黙)
所持品:G.F.パンデモニウム(E、召喚×)、変化の杖(E)、ビームライフル(E) 竜騎士の靴(E) 手帳、リュックのドレスフィア(シーフ)、
ちょこザイナ&ちょこソナー、ラグナロク、祈りの指輪(ヒビ)、召喚獣ティーダ、飲料水入りの瓶×9、食料、折り畳み式車椅子
第一行動方針:サイファーが来るのを待つ
最終行動方針:魔女を倒してセルフィや仲間を守る。可能なら生還してセルフィに会う
備考:・ジェノバ細胞を植え付けられた影響で、右上半身から背中にかけて異形化が進行しています。
MP残量が回復する前にMP消費を伴う行動をするとジェノバ化がさらに進行します。
・ユウナ?由来の【闇】の影響で呪い効果を受けています。会場内にいる限り永続します】
※ティーダの所持品:ユウナのザック(官能小説2冊、ライトブリンガー、スパス、ビーナスゴスペル+マテリア(スピード))、ガイアの剣
【ヘンリー
所持品:水鏡の盾(E)、君主の聖衣(E)、キラーボウ(E)、リフレクトリング(E)、魔法の絨毯、
銀のフォーク、グレートソード、デスペナルティ、ナイフ、チキンナイフ、果物ナイフ、筆談メモ
ザックスのザック(風魔手裏剣(5)、ドリル、官能小説一冊、厚底サンダル、種子島銃、ミスリルアクス)
リュックのザック(刃の鎧、首輪×2、ドライバーに改造した聖なる矢)、サイファーのザック(ガーデン保健室の救急セット・医療品、食品)、
レオのザック(アルテマソード、鍛冶セット、光の鎧)
第一行動方針:逃げるorやってきた人物と接触する
第ニ行動方針:仲間と合流する/セージを何とかする
基本行動方針:ゲームを壊す(ゲームに乗る奴は倒す)】
【現在位置:訓練施設・秘密の場所への入り口前】
- 405 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2023/12/08(金) 22:37:09.04 ID:uKcULI11P
- 投下乙です。
喋らない犬となぜか会話しているように聞こえるソロ←まだ分かる
思考に言葉で返すアーヴァイン←まだ分かる
アーヴァインの言葉に思考でありがとうと礼を言うヘンリー←??? ???www
なんか横着して思考で返事するシーンが混ざってきてるの草なんよw
アリニュメン「こいつら何独り言言ってるんだ?」
ソロはマジメなのでリアクション役としては力不足、ロックならいい感じに反応してくれそうなリノアの話題がことごとく不発の残念さがあるなあ。
フェニ尾も、俺が守ってやる! も、目の前で言われたら本人絶対いい感じに反応してくれるのになあ。
リノアがエモーション豊かに話すけれど、ソロは意味要約で通訳するのでコミュが消されてしまっているw
> 透明人間は実在した! ってオカルトファンに投稿したら採用待ったナシだよね" → >透明化の呪文に驚いてるみたいです。だもんなあ。
過激な部分が大事なんだぞ!
このエモの絞られっぷりは読めば読むほど、なんか味が出てくる感じがあるw
シンシアに化けて心の傷を抉るジェノバ→愛の歌であの頃の思い出を蘇らせるバッツ→羽根帽子を変装用服装に持ち出してくるロックとリノア
これが連鎖式トラウマスイッチ……!
ジェノバこそ悪意だが、バッツは合理的な生存選択のため、ロックたちに至っては善意なので跳ね除けることもできずにソロのメンタルだけがごりごり削れる。
リノアはコーディネートには一家言ありそうだし、ロックはガウのノリノリ着せ替えイベントにサウスフィガロの変装イベントがあるのでそういうの好きそう。
ソロのトラウマファッションが混ざってることなんて知り様がない二人、とても楽しそうなので、こいつら……w
> ヘンリーさん、殺しても死ななそうだし
ようやく気づかれましたか。
一生に一回の豪運を使い切ってるとかどの口が言っているんだw
そして彼は原作でもお家騒動・誘拐・奴隷・タル脱出と結構修羅場くぐってたのだが。いやほんとにどの口がw
ヘンリーとアーヴァインが思考と言葉で会話するという謎の特技を身につけているのが衝撃的……!
お前ら横着せずにちゃんと会話をしろw
この人、心を読む敵に対抗するには、相手が読みとれないくらい大量のことを考えるんだ! みたいな独自の対抗法でも編み出そうとしているのか?
完全に変装のせいで妙なことになってるんだが、これ変装してるのとしてないのとだとどっちがマシなんだろう?
というかロックは変装しないほうがよかったのでは……?
サイファーが変装とか考えるか? → ピサロのコスプレ見せてあげたい
不穏なタイトルではありながらわちゃわちゃしまくってて面白かった。
- 406 :自分の尺度で人をはかってはいけません 1/15:2024/01/31(水) 23:17:20.32 ID:cdLFgoRpB
- 全宇宙の皆様長らくお待たせしましたーァ!
あーもうホントのホンットゥぉ〜〜に長すぎて、オシメの取れない赤んぼが醜いオトナになっちゃうぐらい待たされた気がしますねぇ!
しかぁーしご安心ください! やってまいりました、念願の! 期待の! 大出血サービスタイム!!
そう! ケフカ様本人による、魅惑のシャワーシーンでございます!
……え? 過程がわからん?
ハァ〜〜。これだから凡人は困りますねえ。
どうせお前ら広告は全部スキップ、つまらんイベントもスキップ、戦闘は常に二倍速、何でもかんでも飛ばしに飛ばしまくってるんだろ?
そんな諸君に些細な過程を気にする資格があるとお思いですかァ!? この半チクの三角形野郎どもが!
そ・れ・に!
ぼくちんのシャワーに比べたら、移動シーンだのリュックちゃんの説得シーンだのなんてど〜〜〜でも良すぎて屁が出ると思わんのか?
ツマランツマラン! 実にツマラーン!
細かいことをイチイチぐちぐち気にしてるからお前らは負け犬なんだじょー!
勝ち神になるコツはただ一つ! 俺様のように時に大胆に、時にふてぶてしく、あらゆる手段でのし上がることだー!
あっハイ、スミマセン。
君たちみたいな個性無き一般無能凡人が私のように成りあがるなどできるはずがありませんでしたね。
残念無念! 来世に期待してねって言いたいけど世界はぼくちんがハカイしちゃうからどうしようもナーイ!
諦めて俺様のシャワーシーンを堪能したまえ!
――と言いたいところだが……お前らに見せるのはもったいなさ過ぎる気がしてきたじょー。
そういうわけで今世紀最大最後のスペクタクルショーはお預けだ!
お前らは指をくわえながらツマラン回想シーンを等速で眺めてろー! アーヒャヒャヒャヒャ!
……ところでこのシャワーどう操作するの?
アッヒャー! ツツツ冷たーーーい! ヒィッお湯! お湯プリーズ!
チクショウこれか? このボタンか!?
……え、なにこの数字。60?
ななななーんか嫌なヨ・カ……ンーーーーーーッあっづーーーーーい!!!!
ギャーーー! 傷口溶けるとける染みる染みる、骨身に〜し・み・る〜〜ーーー!!
チクチクチクチクチクショー! なんでこんな機械まみれなんだよエドガーの奴ぶっ殺してやるって思ったけどもう死んでたっけなァ!
あーじゃあマッシュでいいよもう! どうせあの暑苦しい熊男――だからあづいんだって! 温度調整しとけバカ!
あといつまで見てるんだよおまえら! 早く回想に入りなサーイ!
ホーレホレ! ホワッホホワッホホワッホホッホけふけふ〜〜〜!!
**********
(これまでのあらすじ)
みんなのアイドルケフカちゃまはキラキラかわゆいハカイの神!
だけどとってもわるーい年増の厚化粧魔女に囚われたり、勇者気取りのクソ野郎にインネンつけられたり、しつこい銀髪ストーカー男に襲われたりでたーいへん!
おまけにいっしょうけんめいぶっ殺したストーカー男からじゃあくなエイリアンが誕生してもうしっちゃかめっちゃか!
魔力もカラッケツでハカイの力には頼れなーい、大・ダイ・DIEピーンチ!
でも大丈夫! ケフカちゃまにはそうめいな頭脳とストーカー男からもぎとったエイリアンの腕、あとのりもののギードがあるもんね!
さあ、のりものと一緒にエイリアンに騙されてるド低noげふんげふん純真無垢なリュックちゃんを説得してあげよう!
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- 407 :自分の尺度で人をはかってはいけません 2/15:2024/01/31(水) 23:27:04.42 ID:cdLFgoRpB
- ――はい、というわけで。
毎度おなじみバラムガーデン二階より、私ことケフカ様が実況いたします。
それにしてもギードもリュックもいつまで廊下でくっちゃべってるんだ?
ダラダラ青春溜まり場やってる場合か?
百万歩譲ってやって亀はソロがあんしんあんぜんと信じてそうだからわからなくもないが、リュックちゃんは違うデショぉ?
「ふむ……なるほど、そういうことじゃったか。
しかしお主には済まんが、にわかには信じがたいのう。
ワシには、セフィロスほど強大な剣士が犬に身をやつすなどという手段を取るとは思えんのじゃ」
「でもでも! それでもアーヴァインがウソついてるとも思えないんだってば!!
それに瀕死の重傷でなりふり構わなくなったとか、ギードの裏を掻くためとか、そういうことまで計算してるかもしれないし!」
そーんな本気で主張しちゃってェ。
真下にセフィロスwithソロがいると思ってるんなら、なおさら早く逃げたらどうなのォ?
それともわざと見つかって偽アーヴァインくんが逃げる時間を稼ごうとでも思ってたり……する?
ギードとぼくちんを肉盾もとい生贄に捧げて追加ターンを召喚! 自分は降参してスタコラサッサー! とか。
いけません、いけませんねぇ〜。
私そういう忍者みたいに汚い卑怯戦法は許せませんことよ?
戦士たるもの正々堂々と戦ってケフカ様の完全性と己の出来損ないっぷりに気づいてから自ら命を断つべきそうすべき。
ところでこの子ジャンル的には何なんでしょうかね。脳筋戦死?
「リュックよ、落ち着かんか。
ワシとてアーヴァインが自分の意思でお主を騙すとは思っておらん。
じゃが、彼がセフィロスに操られとる可能性は本当に無いのかの?」
「え……そ、それはないよ!
すんごい必死に抗ってたし、ロックの質問にもちゃんと答えてたし、間違いなくアーヴァインは正気なんだって!」
「はい単細胞発見〜。
純真無垢なリュックちゃんに、精神操作のエキスパートたるぼくちんが一つ講義をしてあげまショー!」
正直なところ、俺様としてはこのまんま勘違いしていてくれた方が嬉しいんだけどねェ。
この流れだと絶対ギードが解説するし、それだとおバカなリュックはあっさり鵜呑みにするだろ?
なので信用度最低の私が直々に話す必要があるんですね。
「ケフカ――」
「ギードばっかり話させてもぼくちんヒマでヒマでショーガないんですよねー。
さてリュックちゃんは勘違いしてるみたいだけど、人を操ると一口に言っても色々な手法があるのでございます。
ぶっちゃけお前が考えているような、自我を掌握して人格を封鎖し肉体を操作するってのはメチャクチャ強引な方法でしてね。
ありゃ確かに意識障害に記憶障害、あるいは感情や人格の欠損といった後遺症が出るからアホのロックや君でも見りゃわかるってのはそのとーりなんだ・け・ど――」
これは操りの輪で実践済みだからな。
ティナみたいに単純な戦闘兵器として運用するならまーったくデメリットにならんが、工作兵やら人質やらに使うにはちょっとだいぶ不向きだ。
やっぱり肉盾は本人の意識があってこそよねー。アーヴァインくんも『サイファー逃げて!』とか言ってたしねー。
- 408 :自分の尺度で人をはかってはいけません 3/15:2024/01/31(水) 23:28:33.65 ID:cdLFgoRpB
- 「しかししかししっくわぁーし!
別に意識を乗っ取ったりしなくても、アルコトナイコト言わせるだけだったらできるんだじょー!
例えばリュックくん! 君はぼくちんを残虐非道なヤカラだと思っているようだがね!
それはロックとかマッシュとかにナイアルコトコト聞かされたからじゃないのかー!?」
「そんなわけないでしょ! だいたいアーヴァインに思いっきりヒドイことしてたじゃない!
魔力流し込んで魔物に変えてやるとか脅してさ!」
あっ。
そおいえばそんなこともあったっけ。
ケフカちゃまってばすっかり忘れてましたわ! テヘペロ。
「はい、それは一旦横に置いといて」
「置けるわけないでしょ!」
「じゃあ下に捨てておいてください。
私が言いたいのは、アーヴァインが虚偽の認識を与えられているカモカモネギカモって話なんですね。
"あやつる"とか"誘惑"とか使ったことございません? まっその貧相なボデーじゃ無理かもですけどォ、アーヒャヒャヒャ!」
「え?」
あっ、これはマジでご存じでない奴ですね。
勉強不足だじょー。ちゃーんと予習してこーい!
しかしケフカ先生はエライので赤点生徒にも教えてあげることを前向きに検討……
「"あやつる"は魔獣使いのアビリティで、"誘惑"はラミアどもの得意技じゃな。
どちらも対象に好みの相手の幻覚を見せて魅了し、自分の主人と誤認させて意のままに操る技じゃ。
思えばお主たちと合流する前、アーヴァインを乗せておったチョコボも奇妙な動きをしておった。
あれはロックが元凶の道具を見破って、見事打ち破ったようじゃったが……」
おいカメェーーー!! 勝手に教えてるんじゃねー!!
あーあーせっかく俺様がめずらしーく教えてやろうと思ったのになー! あーあー!
「察するにケフカよ。
アーヴァイン本人は正気じゃが、セフィロスによって一種の幻覚を与えられたと言いたいのかの?」
「あーあー、そうですよ! ケッ!
ソロと犬がたまたま近くを通りがかったタイミングで、別の場所にいたセフィロスがアーヴァインに毒電波をビビっと送信!
カワイソーなアーヴァインくんは毒電波による偽情報を自分自身の感覚だと誤認してしまった! ってね。
で? そこのおバカリュックちゃんはそういう可能性が無いって言えるのカナ? カナァ? カーナーァー!?」
ぷんぷんおこおこ真っ赤っかだったタコリュックの顔があっという間に青ざめていきます。
いいですね。そういう表情、ぼくちんだーいすき!
アーヒャヒャと気分良く高笑いしたいところですが、ここはぐぐっと堪えて解説を続けます。
- 409 :自分の尺度で人をはかってはいけません 4/15:2024/01/31(水) 23:29:50.73 ID:cdLFgoRpB
- 「アーヒャヒャヒャヒャ! 虚偽の情報や認識を与えるだけなら精神的な負担も低いんだじょー!
そうそう障害も起こらんし、本人は本気でそう思ってるからウソをついてる自覚もない!
さらに催眠術と合わせると効果はばつぐんだ!
いやー思い出しますねえ! ぼくちんをロックだと思い込んだアーヴァインくんは実に素直でしたっけ!」
「――ッ」
あら〜。今度はまた真っ赤に戻りましタワー。
一昔前に流行った映えるお茶かなんかか? 大丈夫? 重曹ぶっかけとく?
「いい加減にせんかっ!
リュックよ、こやつの安い挑発に乗るでないぞ」
あらら、ギードまでぷんぷんしちゃったじょ。
でもカメだから怒っても緑のまんまでツマラン。大丈夫? 赤チンぶっかけとく?
え、もう生産終了した? 最近の子にはわからない? そんなー。
「だ、大丈夫。
どうせこいつのことだし、テキトーなこと言ってあたしのこと騙すつもりに決まってるもんね!」
よーしよしよし、いい子ですねリュックちゃん。
私の言い分を信じない方に傾けば傾くほど、ギードが説得してもソロを疑おうとするでしょう。
計算通り――と心の中でほくそ笑むぼくちんに、ギードがジロリと睨んでくるけどもう後の祭りだーい。
アーヒャヒャヒャヒャ! ジェノバの思惑はどうあれ、ぼくちんだってソロは邪魔なのだー!
「うむ……しかし、こやつの言い分にも理がないわけではない。
念のため、アーヴァインを保護したら一度ライブラを掛けてみた方がええじゃろう。
ケフカが言うような催眠術や幻覚魔法を仕込まれているなら、それで判別できるはずじゃ」
あ、まずいやめろ。
それ一発で偽アーヴァインって見破れる奴じゃないですかーやだー!
ギードさんったらなにかんがえてるの?
もしかしてジェノバの本性をむき出しにするためにリュックちゃんを生贄もとい見殺しにする気なんですかァ?! このヒトデなし―!
……ってカメだわこいつ。このカメデなしー!
「う、うん。ギードがそういうなら……」
そして秒で信じるカモである。
ネギどころかコンロと鍋とダシとソバまで持参してそうだなこのリュック。
何でもかんでも信じちゃいけないっておとっつぁんに習わなかったのかな?
それとも若死にしちゃったとか? 本人が? それとも毛根が?
- 410 :自分の尺度で人をはかってはいけません 5/15:2024/01/31(水) 23:31:59.93 ID:cdLFgoRpB
- 「あ、でも、あたしライブラ使えないんだよねぇ。
"みやぶる"なら着替えれば使えるんだけど……」
「ふむ。それならワシらと一緒に行動せんか?
ケフカが不安なのはわかるが、こやつは下手に目を離すよりも二人で監視した方が安全じゃろう。
正直、ワシも手に余りかけておるでな。
アーヴァインの無事が確認できれば、改めて互いに別行動したらええ」
おい。勝手に話を――
「う、うーん……その方がいい、かなあ。
確かにギード一人じゃ大変だろうし……」
「だーれがコイツですかこいつ!
ぼくちん反対でーす! アーヴァインくんは私とギードで保護した方がいいとおもいまーす!」
「一緒に行く!」
ぬわぁーんで即決に変わるのォ!?
え? ぼくちんの信用度が最低だから? そっかーそりゃ仕方……あるわー!
「しっしっしっしっ! 着いてくるんじゃねー!
ぼくちんペットはカメさんだけでじゅーぶんなんですぅー!
ピーチクパーチクやかましい金髪女なんて飼ってる余裕はありません!
ナルシェのカナリアに生まれ変わって毒吸ってから出直してきてチョーダイ!!」
「うむ。お主が来てくれれば助かるわい。
何分こやつはうるさすぎてのう。
最低限の魔力しか回復させておらんとはいえ、どこで何をしでかすかもわからんし……色々な意味で気が休まらんのじゃ」
だから何考えてるんだよこのカメは!
……え? 特に裏表なくマジで俺様の監視が大変すぎて疲れてるだけ説?
そんなことありゅ〜? いやですねー、これだから年は取りたくないものです。
「だよねぇ〜……殺すってのも気が進まないけど、役に立つかっていうと絶対ぜーーったいマイナスだし。
魔力を強制的にゼロにするアクセサリみたいなのがあればいいんだけどね」
「や、やめたまへ! ぼくちん一応セフィロスくんをぶっ殺す気はあるんだじょ!?
ここは共闘しましょうよ共闘!
いくら君がバカを超えたバカだからって今回のレイドボスなセフィロス君は一人で倒せる相手じゃないって学習したでしょォー!?」
リュックちゃんも物騒なフラグ立てるの止めてくれませんかね!?
この世界の技術力だと本当に実在しそうで嫌なんだけど!!
稀少なケフカ様をいじめてはいけませんって学校で習わなかったのか?!
お前みたいなやつがサンマやウナギを取りつくして絶滅させるんだ!
守ろうケフカ様! そのためにもお前らのような危険生物は迅速に死にたまへ!
……ってやりたいのに、マジで何もできない俺様であった。
しょうがないね。例の謎細胞に洗脳魔法をねりねり練りこみ続けてるから、回復した端から魔力消費せざるを得ないのよ。
う〜ん世知辛いですねぇ、渡る世間はカメばかり……カモもいるけど。
- 411 :自分の尺度で人をはかってはいけません 6/15:2024/01/31(水) 23:35:01.98 ID:cdLFgoRpB
- 「魔力を封じる、か……確かにそんなものがあれば楽じゃな。
それよりリュックよ。お主、少し怪我を負っているようじゃが大丈夫かの?」
「え? あ、ああ、ダイジョブダイジョブ。
さっきの戦いでカスリ傷負っただけだから、ツバつけとけば治るって!」
この女が元気なのは見ればわかるんだよなあ。
なんで片腕が切り落とされている見るからに重傷の私を心配しないのか、コレガワカラナイ。
「そうもいかんじゃろ。
もしトルネドで負った傷なら、毒沼の水が巻き込まれている可能性もあるしの。
放置して悪化すると大変じゃ」
「えっ……あ、そ、そういえばクサクサ沼があったっけ……
で、でも、熱っぽくもないし最悪自分でポイゾナとケアル使うからダイジョブ!」
「だったらぼくちんに使ってくれませんかね?
それでなくても腕切られて毒沼ドボンなんですよ? 俺様を肉盾にして使い捨てるつもりだから治さなくていいってか?」
ぷるぷる、ぼくちんはわるくないケフカ様だよ! そろそろ優しくいたわって手当してくれないと手間暇かけて殺してやるぞ。
……ってしまったーァ! ついついうっかり建前と本音を逆に言っちゃったじょー!
いやーさすがに天より息苦しく海より暗い心の持ち主たるぼくちんといえども、イライラが溜まってリミットゲージがオーバードライブしちゃってますね。
だからいつまでこんな不用心な場所で喋ってるつもりなんだよ! 近くに部屋あるだろ!
………と思ったけど未だに偽アーヴァイン君が釣れるかどうか確認してるとか……あります?
もう十分じゃない? そろそろ移動しましょ?
だいたいアーヴァイン君より先にソロ君が釣れたらどーすんだ?
責任取ってソロもろとも爆発四散してくれるってのか?
「そんだけ喋ってるならダイジョブでしょ」
「そもそも傷口ごと見事に凍っとるからのう。
肩を縛って血が飛び出んようにしてから水で洗い流せば問題なかろうて」
「ああん冷たぁーい! せめて水じゃなくてほどよい暖かさのシャワーを要求しますですことよ!
あとそれならちゃんと止血しろー! いくら俺様がエラくても一人で結べるわけあるかー!」
「う……うーん、まあそれぐらいならやったげてもいいけど……いい感じの布、見っけたらだけど」
バカは反応しなくて――って手当してくれるんですかァ!?
ありがとうございます! 優しいリュックちゃんにはケフカ様ポイントを1点差し上げましょう!
十点貯めるとケフカ様プロデュース瓦礫の塔ツアーと死をプレゼント!
そこのカメもバカを見習ってしっかり稼いでくださいね〜!
「ところでお主、チョコボを使ってアーヴァインを先に逃がしたようじゃが……
合流するアテはあるのかの?」
「うん、一応ね、三階から降りてくる時に『学生寮に逃げ込んでサイファーが来るまで立て籠もろうか』って話をしてたんだ。
だから多分、そこにいると思うんだけど……」
- 412 :自分の尺度で人をはかってはいけません 7/15:2024/01/31(水) 23:37:00.42 ID:cdLFgoRpB
- って、俺様を無視して話を進めてるんじゃねー!
……でも、学生寮、ですかァ。
正直偽アーヴァイン君が本当にそこで待ってるとは思わんが――
「学生寮ってことはタオルやシャワーぐらいありますよねェ!?
いいじゃないですか! そうと決まればギードさん、リュックさん、行きますよ!
そろそろ桃のカホリのボディーソープでツヤツヤキレイな卵肌にならないと、あのカッパ野郎のツルペタ鼻が折れ曲がって気づかれちゃうカモしれませんからね!」
「ま、まあ、確かにクッサイから……いっぺん洗わせた方が良さそうかも……
セフィロスがアンジェロの身体使ってなかったとしても、フツーに気づかれそうなぐらいヤバヤバな匂い方してるし」
キーッ! なんてヒドイことを言うんだリュックちゃんよォ!
どこのダーーーレがオヤジクサイだってェ!?
ぼくちん自分で言うのは許しますが他人に言われるのは我慢がならないんだ!
「ううむ……さすがにこの臭さは宜しくないか。
ざっと学生寮を探してアーヴァインと合流できたら、交代でシャワーを浴びるべきかのう」
おい止めろそこのカメ。
本当に偽アーヴァインがいたらシャワー浴びてる余裕がなくなっちゃうデショ。
まあどこまで本気で言ってるのか、ショージキ怪しいですけど……
ギードはギードで何か企んでいるのかもしれません。
どうせリュックのお目目を覚ましつつ、ぼくちんとジェノバを共倒れさせる方法とかだろうけどな。
このカメ、ジジイでハゲの爬虫類のくせにそこそこ頭が回る。
コイツ視点で現状の最善手は、間違いなく『速攻でジェノバを見つけ出してぶっ殺す』だ。
何せジェノバはジャアクでインケンでネクラな宇宙生物、あーゆー手合いに時間を与えるのは愚の骨頂。
話し合いなんて野蛮な小細工をするよりも、穏便に暴力で済ますのが一番だとケフ神も仰っています。
あ、もちろんぼくちんは例外でお願いしまーす――って言いたいけど、このカメはそこまで甘くないよね。
そもそも俺様のGOODでGODなアドバイスによりサイファーとロックが戦線離脱してしまったわけですし?
リュックや他の生存者に余計な事を吹き込まれて戦闘不能者が属州したら困るということは猿でもカメでも思い至るでしょうねえ。
故に速攻。考えるより先にぶっ飛ばす、これが大正解……って考えてるんじゃないカナ?
でもその場合『ファファファ、ジェノバは倒れ貴様は用済み死ね』って襲ってくるのでナントカ倒さないとゲームオーバーになるんですよねわかります。
実に面倒くさい。
私とて時間は必要です。
ジェノバの狙いもソロの殺害であれば許容範囲ですし、ヘンリー、ラムザ、バッツあたりは一人ぐらい間引かれてもどうにかなるでしょう。
しかしソロへの寄生なら絶許案件、奴が事を成し遂げる前に速攻でぶち殺さないと超・超・チョーーーマッズーイ! のも動かざる事実でェ……
でもでもあんまり早く討伐成功しちゃうとぼくちんの計画どころか命が危なくってェ……
そう考えるとやっぱりジェノバとギード達、双方の足を適度に引っ張りつつ、どうにか魔力の回復手段を調達しないとナァ。
最低でも俺様の計画を完遂して、アーヴァインを支配下に置いて人質にしないと私の命が保証外!
シンジランナーイ! ケフカ様の君臨に対して三千世界保証を怠るなんてとんだ怠慢だぞー! ムキーッ!
- 413 :自分の尺度で人をはかってはいけません 8/15:2024/01/31(水) 23:39:02.48 ID:jfEMy+iHx
- まあ別に人質になるならソロ以外の誰でもいいっちゃいいんですが……
暴れずに大人しく人質になってくれそうな殊勝な輩がいないんですよねェ。
全く、かわいそうなアーヴァインくんを助けるために『俺が代わりに人質になる』とか言えんのかね!
ドイツもコイツも見下げ果てた奴らだ! そう思わんかおまえら!
それと偽アーヴァインことジェノバ野郎が、どういう形で誰に成りすませるのかイマイチわからんのも問題ではある。
本物アーヴァインやセフィロスの腕を解析した限りだと、そこまで自由自在に擬態するような能力はないはずだが……
恐らく進化の秘法パワーでセフィロスに反逆したところまでは確実、それ故に俺様のサンプルとは多少異なる性質を得ている可能性が高い。
あるいは人間種との融合寄生で退化していた能力を、どういうわけか進化で取り戻したってカンジかもしれないけど――わからんでちゅ。うきゅ。
現時点で確定しているのは、少なくともリュックとロックのダブルバーカーコンビを騙せる程度にはアーヴァインに成りすませることと、ソロの声を出せること。
しかし例えばセフィロスやソロの姿を取ったりできるのか?
リュックは? ロックは? サイファーは?
何でもアリアリ無法の化身なのか? それとも何らかのルールがちゃーんとあるのか?
………――うっきゃーー!!
こんなもん考えたってわかるわけないだろチクショー!!
ああもう、ウンウン唸ろうが頭捻ろうがわからんことは捨て置く!
はい、テストの解き方の鉄板ですね!
こういう時はとにかく何が起きても大丈夫なように準備を整えておくのが正解です! 正解ったら正解でーす!!
な・の・で! シャワーにかこつけてセフィロスの腕をいじくりーのくっつけーの――
……って言いたいけど先述した通り魔力がだいぶ足りません。
しかしこのままリュックが本格参戦して実質2対1となれば、手が空いたタイミングで抜き打ち荷物検査される可能性がぐぐっと上がりますからねえ。
見つかっても『これはぼくちんの左腕だじょー』って言い張れるように、ニコイチ修理は済ませておきたい。
問題は手首を切り落とせる武器が俺様の手持ちにないってことだが……
まあ学生寮って言うからには、包丁かナイフかノコギリのどれかはあるだろ。……あるよね?
それにクサくない着替えだって必要だし、化粧も治したいし、アーヴァインを探すという名目もある。
隙を見てくすねること自体は難しくない――……ない、けどォ〜。
こんなコソドロめいたこと、ぬわぁーんで俺様がやらなきゃいけないんだろうなー。
そりゃコソコソコソコソ何かやるのは俺様の得意技だけど、盗みは違うデショ。
こういうのはロックの役目だと相場が決まっているんだから、俺様の元に馳せ参じて素直に働かんかー!
はーつっかえ! ケッ! ロックなんかキライだー!
「じゃあ行こっか。
あっちのデッキに避難経路があるはずだから、探してみよう!」
……――と、人様の気も知らずに勢い込むリュックちゃんと一緒に、渋々デッキに出て色々探したのはいいけれど。
見つかったのはチョコボの足跡と避難用のはしごだけ。
脚立じゃないよはしごだよ。
ところで俺様片腕無いんだけど? あとカメがはしご使えるなんて聞いたこともないんだけど?
ひゅるりらーと風が吹く中、リュックちゃんが困ったように首を傾げます。
- 414 :自分の尺度で人をはかってはいけません 9/15:2024/01/31(水) 23:41:46.33 ID:jfEMy+iHx
- 「ううん……ギード、これで下まで降りれる?」
いや無理だろ。
見てわからんのかこのバカチンがー!
「ううむ、ワシ一人なら飛び降りれなくもないんじゃが……
こやつを連れていくとなると難しいのう」
あらやだ意外と肉体派。
だが俺様をお荷物みたいに言うんじゃねー! カメのくせにー! ムキー!
「ここは素直にエレベーターで一階に戻ったほうがええじゃろ。
お主がソロを警戒する気持ちはわかるが、ワシらが話している間に戦っているような物音は聞こえんかった。
幸い吹き抜けになっておるんじゃし、下に降りる前に覗き込んで確かめればええ」
「そうしよっか」
そんなこんなで私とフユカイな下僕どもは何事もなく一階に降りて特に襲撃もなく通路をノコノコと練り歩くのだった。
え? さっきのデッキ捜索といいカットが多すぎる?
まぁーじで誰もいなかったし何も無かったんだから仕方ないデショ。
こんなだだっぴろい通路をぐるりと回る間、俺様のキレッキレトークだけで場を繋げってか?
しかたないにゃあ、ソロの命で手を打とうじゃーないですか!!
あ? 無理だぁ? じゃあ黙って死んどけ! シッシッ!!
「それにしても広いのう。
地下に降り立った時はロンカ文明の要塞にでも飛ばされたとばかり思っておったが、これが学校とは信じられんわい」
「そうだよねえ。こんなマキナばっかりで全部ちゃんと動いてるって、それこそティーダが言ってたザナルカンドみたい。
……あっ、もしかして、だからトモダチになったのかな?
ティーダって前にも、聞いたことも見たこともないような機械の話して『やっぱ色々不便ッス』ってぼやいてたし……」
「あーあーありますねぇ。田舎生まれの奴が都会に出てきても周りと話が合わなくて結局田舎モン同士で集まっちゃう奴。
まあ話を聞く限り逆パターンみたいですけど。
都会の生活に疲れて彼女がいる田舎に移住したけど、どいつもこいつも不便な生活に慣れ切ってるから全然苦労をわかってもらえなくてェーー。
そんな時に都会出身のオトモダチが出来ちゃったもんだから意気投合して連日一緒に遊び回ってたら、彼女にキレられてぶっ刺された、みたいなー」
「どういう例えよ!? ユウナんがそんな心狭いわけないでしょ!
ね、ギード!」
「…………う、うむ」
思いっきり目を逸らしてますがこのカメさん。
そもそも心が広い奴なら、たかが殺し合い程度で発狂とかしないと思いマース。
「そ、それより、先の戦いでアーヴァインはティーダを召喚しておったが……
今のアーヴァインも同じようにティーダを呼んだりしたのかの?」
「え?」
「いやさ、それが真実であれセフィロスめの罠であれ、お主らはソロを見かけて危険だと判断したんじゃろ?
ティーダを呼んで助けてもらったりはせんかったのか、と思うての」
「うーーん……多分、今のアーヴァインには難しいと思うんだよね。
他の魔法と違って召喚魔法はポンポン使えるものじゃないし、アーヴァイン、元々魔力とかわかんないって言ってたから。
多分魔物化の影響で魔力が使えるようになって、そんでティーダを召喚できるようになったけど、使えば使うほど魔物化も進むみたいで……」
- 415 :自分の尺度で人をはかってはいけません 10/15:2024/01/31(水) 23:44:12.38 ID:jfEMy+iHx
- まあ、でしょうね。
あんなガキが魔石ナシで召喚魔法使えるほど魔力や魔法がありふれた世界なら、こんな科学一辺倒の建物を作ろうって気にはならんだろ。
それでいて対魔法を意識した構造も使われてるあたり、一部の魔物や特別な人間だけが使える――
ぶっちゃけぼくちんの世界に近い仕組みなんじゃないカナ?
まあ私の世界は既に破壊されることが決定してるので、ここが未来の世界ってこともないでしょーけど。
「お主が代わりに呼んでやることはできんのか?」
「ムリムリムリムリ! あたし召喚士じゃないもん!
そりゃティーダとの絆はバッチリあると思うけど、どうやればいいのかもわかんないし……ムリだよぉ〜」
「そ、そうか……」
しかしなんでこのカメ死にぞこないを呼ぶことにこだわってるんだ?
アレか? ライブラってもリュックちゃんが信用しない時のことを考えてるってか?
あの都会派体育会系男、俺様が知ってる幻獣とはだいぶ違ってアーヴァインの精神に強く依存しているような感じだったからな。
本物か偽物かを見分ける基準に使える〜……とでも思ってるのカ・モ・ね。
ですがそんなまだるっこしいことしないでも、ズンバラリンと首刎ねて死ななかったら偽物ってことで良くないですかね?
本物だった時に困る? それはそう。
「――――ェーー……」
ん? 何ですか、今のチョコボイスは。
ケフカイヤーが地獄耳すぎて遥か遠くの声を拾ってしまいましたかね?
「え? この声、ボビィ?」
おいおいバカにも聞こえてるじゃねーか。
じゃあマジでチョコボが鬨の声上げてるって……コト?
誰かが無礼にも俺様に断りなく乗り込んだのかな? それとも何かに驚いて逃げただけ?
「ねえギード、今の声聞こえたよね!?」
「うむ、急いだほうがいいかもしれんな」
バカとカメが頷き合うと、結構なスピードで走り出しました。
俺様は楽ちんちん……といいたいけどケツがバウンドしまくってとってもイッターーイ!
うーん乗り心地最低! 星0ですねこれは!
星1からしか評価できないシステムごと破壊したいところですが貴重な乗り物なので我慢する私ちょーエラーイ!
しかしそんな俺様の努力は長く続きませんでした。
何せ渡り廊下に差し掛かったところで、バカメコンビが急に足を止めたのです。
おかげでカワイソーな私は慣性の法則によりスポーンと吹っ飛び――……とはなりませんでしたがね。
ケフカアイには視力が備わっておりますので、ソイツの姿にはちゃーんと気づけておりました。
ええおりましたとも!
まーーーったく、なんでコイツがこんなところにいるんだか!
お前はサイファーと一緒にどっかで野垂れ死んでりゃいいんだよ! ペッ!!
- 416 :自分の尺度で人をはかってはいけません 11/15:2024/01/31(水) 23:48:41.71 ID:jfEMy+iHx
- 「「ロック!」」
「あああ、ギードにリュック!?
ああいや、話は後だ!
セージってかタバサってか、とにかく金髪の子供見なかったか!?」
見慣れたくもない銀髪に、相も変わらず貧乏くさくてダッサイバンダナ。
植え込みから飛び出しあわやギードにぶつかりかけたバカ二号は、出会い頭にいきなりわけのわからんことを聞いてきました。
なぜか足踏みを続けていますし、ぼくちんに向かっていつもよりも数倍イヤそーな顔をしてますが……いつ見ても落ち着きのない男ですねえ!
少しはぼくちんを見習って、大人の物腰を身に着けようとして叶わず絶望して自死していただきたいものです。
しかしこの言い方だと、タバサセージくんちゃんを探してるってコト?
エレベーターに乗ってる間、サイファーに保護を頼まれたのかしらん?
そりゃあ確かにソロと真アーヴァイン君に次いで狙われそうなところであるし、妥当な一手ではあるが。
でもでも、俺様からしたらチョー迷惑!
あーこいつがジェノバくんでぶっ殺していいってオチになんねーかなー。無理かなー。
「いや、見ておらんが……」
「わかったサンキュー!
ジェノバの奴、サイファーに化けてセージ狙ってる! 気を付けろよ!」
それだけ言うと、ロックはバビュンとすっ飛んでいきました。
メチャクチャ焦ってましたけど、保護対象に逃げられたみたいですね。
アーヒャヒャヒャヒャヒャ、ざまぁ!!!
その一方で、バカ一号はしきりに首をひねっています。
「ううん……ジェノバって、誰?」
「……それは後で話すわい。
今は――……アーヴァインと、念のためセージを探すとしよう。
もしかしたら二人ともこの建物に逃げ込んでおるやもしれぬし、セージはアーヴァインを敵視しておる。
かち合ってしまったら大変じゃ」
うーん無理やりな誤魔化し具合ですこと。
いい加減素直に話してもいいのにネー。
でも話したらリュックちゃんもバビュンとすっ飛んでいくに決まってますね。
それはそれでせっかくのシャワータイムが遠のくので空気を読む俺様であった。
「わかった! じゃあ皆で手分けして――」
「いやぷー!! シャワー浴びりゅんだじょー!!」
「……あたしが探して回るからギードは見張りを――」
「あっでも着替えとお化粧グッズは欲しいからお部屋の中は探すの手伝ってもいいじょー!
それが終わったらシャワー! シャワー! シャーワーーー!!」
「………」
「ああもうわかったわかった、探し終わったら存分に浴びるがええ!!」
やったー! いやー駄々っ子した甲斐がありましたね!
ところでリュックちゃんどうしてプルプルしてるの?
お花摘みの時間かな? 早くいっトイレ。
- 417 :自分の尺度で人をはかってはいけません 11/15:2024/01/31(水) 23:50:55.56 ID:jfEMy+iHx
- 「……ギード、ついでに胃薬も探そっか」
「ウム……一瓶ぐらいあるとええのう」
あらやだ不健康。
私の止血が終わるまでぶっ倒れないでほしいものですね。
胃痛のあまり胴体に穴が空いて失血死とか間抜けな死に様晒すのはセフィロス君だけで十分ですよ。
「とりあえず、上の階はあたしがざーっと探してくるよ。
ギードは一階のあっち側だけでも見てもらっていい?」
「任せい。それよりお主も気をつけてな」
バカメったら勝手に話進めてますね。
しかし一階のあっち側、って言われても――……ああ、なるほど。共用設備と小部屋の区画で別れているのか。
そういうことならお部屋探訪させてもらいマショ!
もちろんこれはセージ探索の為であり道具の調達が目的ではなく実際怪しくない。
うーん完璧な偽装ですね! スンバラシーイ!
……それにしても、サイファーの姿でタバサセージくんちゃんを狙う、ねえ。
確かにソロへ注意を向けておけばセージへの警戒は手薄になるし、サイファーの性格を踏まえれば多少強引な言動を取っても怪しまれません。
中々嫌らしい手を打ってくるじゃあないですか。
セフィロスの中身じゃなければ利用してやっても良かったが以下略。
これ以上、首輪解除要員や対魔女おばさん用の肉盾を削られるのも困りますしね。
最も、今会ったロックの方がニセモノだという可能性もあることはある。
あるっちゃあるんだが――ま、ないわな。
あそこでジェノバって呼び名を出したらリュックちゃんでも違和感に気付くなんて、それこそ単細胞生物でも謎細胞生物でもわかります。
せっかく騙されてる相手がいるのに、わざわざ目を覚ます手がかりをくれてやる必要はない。
それに『例のヤツ』とか曖昧な言い方で誤魔化せば、ギードもリュックも『ああジェノバか』『ああセフィロスか』って思い込んだまま話が進むデショ。
嫌らしくも空気を読んで色々な罠を仕掛ける小賢しいジェノバくんが、こんなツマランミスをするとも思えません。
よってあれは九割の確率でロックだ。
え? 残り一割引いてたらどーすんだって?
別に何の問題もありませんことよ。
ジェノバが化けているのがサイファーだろうとロックだろうと、奴が狙っているのはソロではなくセージだってことは変わらないだろ?
ぼくちんにとって一番厄介なソロへの寄生、即ち魔法耐性ガン積み物理特化構成を諦めてくれるなら勝算を立てやすくなります。
ついでに言えばセージを確保できていないことも確定的に明らかですから、焦らない焦らない、一休み一休みだじょー。
……しかしそうなると、ジェノバくんの目的は結局進化の秘法ってことでいいのかしらん?
リュックを誘導してソロを抹殺する! と思わせてェー。
けなげなワタシが慌てて対処する、その隙をついてセージを取り込んで、進化の秘法を重ね掛けしようって魂胆でいらっしゃる?
- 418 :自分の尺度で人をはかってはいけません 13/15:2024/01/31(水) 23:56:14.75 ID:jfEMy+iHx
- まー、なんてヒドイ!
セフィロス産の害悪生物が、舐めた真似をしてくれるじゃあないですか!
あーー許せません、許せませんねぇえええ!!
私の怒りが限界突破でステータス欄から絶賛はみだしバグまっさかり!!
わかる〜ジェノバうざいよね〜って皆の声もろともに裁きの光でビガーーっと蒸発させたーーい!!
そしてホットプレートの上にのせて絶妙な温度調整で世界ごとハカイしてやるんだじょーーー!!
ぜーはーぜーはー……しかしまあ、タバサセージくんちゃんも必死に逃げているはずです。
ロックに会う直前、確かにチョコボの声が聞こえたのに、肝心の黄色いチョコボちゃんの姿が見当たらなかったわけですからね。
十中八九、セージがチョコボに乗って逃げたと考えていいでしょう。
え? そう思わせるためにチョコボをテキトーに走らせて、自分は建物の中に隠れるっていう逃走術を使ったんじゃないかって?
はいはい、ギードもそっちの路線を考えたんでしょうね。
ぶっちゃけぼくちんはナイワーと思ってるんですけど、学生寮を探す旨味は捨てがた……ゲフンゲフン。
本当にセージがここにいるなら保護してバカメの隙をついて利用すればいい。
いないならいないで、チョコボに乗って逃げたならジェノバの追跡ごとき逃れられるはずだ。
よって何も問題ありません。
心置きなくシャワーでキレイキレイになりつつ二本の腕をガッチャンコしましょ!
ところでいったいぜんたい何部屋ぐらいあるのかな〜、カメさん一緒に参りましょっと………
「うげ」
「ううむ、学校部分の広さからある程度覚悟はしておったが――
この区画だけでも下手な宿屋を上回る規模じゃのう」
カメが呑気にコメントしてますが、いやーひどい。
部屋も多けりゃ中も割としっかりした造りで、格差社会を感じます。
これに比べたら帝国の隊舎はうさぎハウスどころか部屋中ぜんぶすみっこ、すみっこ専用生き物ハウスですね。
……もう探索とかメンドクサイからカットしていい?
え? ダメ? そんなー。
じゃあせめて巻き進行でいきましょ。
そーれイートーマキマキイートーマキマキっとぉ!
――というわけで、色々ありました。
結論から申し上げますと、必要な道具に関しては最低限揃いました。
包丁はなぜかゲストルームっぽい部屋の机の上にトンべリ柄のカードやらサボテンダー柄のカードやら弾薬やらと一緒に置いてありましたし……
それなりに綺麗なベッドシーツも見つかったので、包帯の代わりに何枚か頂戴しました。
小娘どもが使っていたらしき部屋もそこそこあったので、メイクグッズやクレンジング類も無事調達成功。
……どういうわけか白塗りのドーランがなかったけど。なんでェ?
あ、服は残念ながらありませんでしたね。実にツマランデザインの制服や下着ばっかりだ!
――……でもクサクサドロドロ汁に浸かったボロ布よりかはマシですから、サイズが合う奴は貰ってやりましたよ。感謝しろ、ケッ!
- 419 :自分の尺度で人をはかってはいけません 14/15:2024/01/31(水) 23:57:30.04 ID:jfEMy+iHx
- えっ? セージ?
当然のごとく見つかりませんでしたね。そもそも俺様探す気ないから当たり前の話なんだけど。
ともあれカワイソーなぼくちんはギードともどもヘトヘトになりながらエントランスに戻り、やっぱり空振りだったリュックちゃんと合流しました。
そして絶対血が出ないどころか鬱血待ったナシな勢いで肩をギュギュっと縛ってもらい、護身のためだと言い張ってザックを持ち込み、シャワータイムと相成るわけでございます。
さすがにバカメコンビは脱衣所前のラウンジに陣取ってオハナシしてるんで、カレイなる脱出マジックはできないんですけど問題ナシ!
そういうわけで回想終わり、現在に戻りましょう。
そーれ、ホワーホッホッホッホッホ〜〜
**********************
アーーーーッあづいあづい温度調整どぼやるのぉーーー!?
しかも回想終わるの早すぎィ!
え? 全然早くない? むしろめちゃんこ長い?
うるうるうるうるうるちゃーい! 俺様が早いったら早いんだよ!!
しかしまあこれだけ大暴れすれば手首ぶった切り音も誤魔化せるはずです。
別に暴れたくて暴れてるんじゃないんだケドね! ヒィーッ!
……あ、これか? これで……ああ〜ほどよい暖かさ!
これにはケフカ様もニッコリ。
だが最初から設定しとけカスが!
さて、落ち着いたところで取り出しましたるは凍り付いた腕二本。
片足で床に押さえつけたら、手首をトンベリっぽい包丁でザクッとな!
骨に当たらないよう関節部分を狙いつつ空いてる方の足で湯桶を蹴飛ばして切断音を上書きするのがコツですわよ奥様!
で、この左手首をセフィロスの腕にくっつけて回復魔法を……ああんまた魔力切れたじょー……
ショーガないからシーツ巻いて保持して……でっきあがりぃ!
これで要らん部分をどっかにポイすれば、荷物を改められてもダイジョーブ!
あとは適当にジェノバを邪魔しつつ魔力を回復させて、計画の最終段階へと移りましょう!
それまでどいつもこいつも無駄な努力を重ねてろ。
最後に笑うのは私だと教えてやるよ……ヒィッヒヒヒヒ!
- 420 :自分の尺度で人をはかってはいけません 15/15:2024/01/31(水) 23:59:49.50 ID:jfEMy+iHx
- 【リュック (パラディン HP:9/10)
所持品:メタルキングの剣、ロトの盾、クリスタルの小手、ドレスフィア(パラディン)、
マジカルスカート 、ドライバー×4、未完成のドライバー×1、ロトの剣
第一行動方針:ケフカの監視をしつつギードの話を聞く
第ニ行動方針:アーヴァイン(ジェノバ)を安全な場所に避難させる/セフィロス(アンジェロ)を倒しソロを正気に戻す
第三行動方針:皆の首輪を解除する
最終行動方針:アルティミシアを倒す
備考:パラディンのドレス着用時のみ闇化耐性があります】
【ギード(HP1/2、MP:1/5)
所持品:首輪、アラームピアス(E、対人)、りゅうのうろこ(E)、ジ・アベンジャー(爪)、スタングレネード、ねこの手ラケット、血のついたお鍋、雷鳴の剣、風魔手裏剣(3)
第一行動方針:ケフカ・ジェノバに警戒しながらリュックを説得し、セージを保護する
第ニ行動方針:仲間を探し、ジェノバを倒す】
【現在位置:バラムガーデン学生寮1F・ラウンジ】
【ケフカ (HP:1/10 MP:0 左腕喪失)
所持品:魔法の法衣、E:ソウルオブサマサ、やまびこの帽子、魔晄銃、アリーナ2の首輪、ラミアの竪琴、対人レーダー、拡声器、波動の杖、
腕の残骸、セフィロスの右腕(左腕に偽装済)、包丁(FF8)、バラムガーデン制服、メイクグッズ一式
第一行動方針:シャワーを浴びる/体力・魔力の回復
第二行動方針:ジェノバ細胞を利用する
第三行動方針:アーヴァインを利用して首輪を外させる/脱出に必要な人員を確保する
第四行動方針:"タバサ"を手駒として確保する
基本行動方針:「できるだけ楽に殺す方法」を考えつつ主催者含む全員を殺す
最終行動方針:ゲーム、参加者、主催者、全ての破壊】
【現在位置:バラムガーデン学生寮1F・バスルーム】
【ジェノバ@ロックの姿
所持品:奇跡の剣、いばらの冠、筆記具、ドラゴンオーブ、弓、コルトガバメントの弾倉×1、ユウナのドレスフィア、スコールの伝言メモ、ひそひ草
第一行動方針:セージを追う
第二行動方針:利用できそうな生存者に寄生し、ケフカを殺してセフィロスの腕を入手する
第三行動方針:ソロをセフィロスコピーに変えて操り、真実の力を掌握する
基本行動方針:全生命体を捕食し、自己を強化する】
【現在位置:バラムガーデン・学生寮→???】
*チョコボ(ボビィ)が学生寮前から移動しました。
移動先及び、セージが騎乗しているかは不明です。
- 421 :訂正:2024/02/01(木) 15:00:19.22 ID:PKN/fnf8U
- >>412
リュックや他の生存者に余計な事を吹き込まれて戦闘不能者が属州したら困るということは猿でもカメでも思い至るでしょうねえ。
↓
リュックや他の生存者に余計な事を吹き込まれて戦闘不能者が続出したら困るということは猿でもカメでも思い至るでしょうねえ。
誤字がありましたので訂正いたします。
- 422 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2024/02/23(金) 21:39:18.70 ID:TECHGgj+G
- 今さらながら投下乙です。
こういうこと書くと第四の壁を超えてケフカから煽り散らされそうなんだけど、ケフカって味方につけると頼りになるのがまたずるっこいなあ。
機械知識や魔導の知識の豊富さもあるが、倫理がないので話澱むようなことも全部ぶちまけられるのが強い強い。
リュックとギードで孫娘とお爺ちゃんポジションやってるのでほのぼのする? ほのぼのするか……?
ケフカとのコンビだと割と黙りこくってたギードが、ニギヤカ担当のリュックに触発されてしゃべくりまくるので見てて面白いのよ。
リュックがいい感じの潤滑油になってて会話がすすむすすむ。
リュックの直情ムーブのおかげでケフカがボケもツッコミも両方できるようになるので、ギャグのキレが増すんだよね。
ただ、ギードはともかくリュックは割とケフカに絆されてしまっているのでは……。
そいつセフィロスを超える危険人物だぞ?
ケフカの外道行為を言伝でしか聞いてないうえに、今のケフカが表面上あまりにニギヤカなので、危険度を測りきれていないのではないかと思ってしまう。
片腕で接合手術するケフカ、めちゃくちゃ器用で笑ってしまったけど、
普段あまりにも適当に騒いでるせいで、クリティカルなこと裏でやっててもまた騒いでるで済まされてしまうの、紛れもない脅威でしょ。
ジェノバは一瞬だけ出番が来たな。
最初なんでケフカがライブラ使わずに悠長に構えてたのかと思ったんだけど、そうかMPが空だったから使えなかったのか。
それでなくても、正体バレと、切り札用意する前の局地戦、お互いに望んでなさそうで、結果的にジェノバもケフカも首の皮一枚繋がった感じがある。
というかケフカはケフカで、ジェノバを高く見積もりすぎではありそうね。
意外とジェノバは抜けてるところがあるというか、感情先行の想定外行動を食らったときに結構弱い感じがあるw
その生体上、複数人いたときに余計な影響を受けやすいんだろうね。
ケフカは毎回すさまじい語彙力のトークを繰り広げてくれるなあ。
私見ながら、今までの話で一番ネタが多いんじゃないだろうか?
少し進むと腹がよじれるような強烈なネタが飛び出してくるし、ネタのリレーやってるのもかなり笑わせられる。
なお告白しますが、ケフカは死ぬまでシャワー浴びられないと思ってたw
浴びられて本当によかった、が、制服ケフカってスーツアルガスよりも想像できないなw
- 423 :薄氷を踏む、その背を押して 1/10:2024/04/08(月) 16:39:39.56 ID:iNF9KTSg/
- 「ロックさん、大丈夫でしょうか……」
ソロ、やっぱり元気なさげ。
仕方ないっちゃ仕方ない――むしろ仕方なさ過ぎてどうしようもなーいって話なんだけどね。
それでも私としては、いつまでも暗い顔でいるのは良くないぞって思っちゃうんだなあ。
『こっそり様子見てこようか?』
「え? そ、それは……」
『大丈夫大丈夫。
こんだけ完璧な変装してるし、こそっと隠れて進めば見つからないって!』
ソロが不安なのって、もちろんヘンリーさんって人の事が一番大きいとは思うけど――
私とアンジェロのことを守らなきゃって気を張ってる部分もあると思うんだよね。
だから私がビシッと活躍すれば、ソロも肩ひじ張らなくて良くなるじゃない?
ね? アンジェロ!
「………」
うーん、やっぱりぼんやり状態。
でもでも! ここは華麗にミッションをこなして、頼れるリノアさんってところを見せてあげたい!
そういうわけで――
『行くよ、アンジェロ!
SeeD仕込みの潜入術、ソロに披露してあげよう!』
「あ、ちょ、ちょ……」
うろたえるソロの声を背に、私達はバビュンとゲートを潜り抜ける。
それから倒れてる木を足場にして有刺鉄線を飛び越え、苔むした石の上に着地。
あとは足音が出ないように、草の生えてない地面を指示しながらぴょいぴょいっと移動してもらう。
うんうん、さっすがアンジェロ! カンペキすぎてこれならSeeD試験も一発合格間違いナシ!
本物のバラムガーデンに帰ったらシドさんに認定してもらってサイファーに自慢しようね!
……って褒めてる場合じゃない? ごもっとも。
ロックさんの後姿が見えてきたし、ここからはもっとソロリソロリと近づかないとね。
本当は私だけふよふよ〜って幽霊みたいに近づければいいんだけど――……今のぼんやりアンジェロから離れるのは良くないって、感覚的にわかる。
だから一緒に行こう。
大丈夫、家出する時に二人でいっぱい練習したもんね。
抜き足差し足しのびあし〜って。
あの時と同じぐらい慎重に、けれど時に大胆に、スススススーっと……そうそう、アンジェロ、上手上手!
おやついっぱい上げちゃうぞ〜! ……って持ってないや。
あとでソロに分けてもらおうね。
- 424 :薄氷を踏む、その背を押して 2/10:2024/04/08(月) 16:40:54.11 ID:iNF9KTSg/
- 「――アーヴァイン! 無事か!? お前ひとりか?!」
おっ? 突然ロックさんが走り出した。
アンジェロには木陰に隠れてもらいつつ、私だけなんとか身体を伸ばして通路の方を見やる。
具体的には左足のつま先だけアンジェロのところに残して思いっきり斜めに背伸び!
どう考えても無理がありすぎる姿勢なんだけど、幽霊だからか腕をぐるぐる回さなくてもしっかり安定してる。
意外と便利な幽霊ライフ。いやありがたがってる場合じゃないけどね。
「あ、ああ……なんだ、ロックさんかぁ。
おどかさないでほしいなぁ〜」
がさがさ音を立てながら現れたのは、コスプレみたいなローブを着て変な杖を持ったアーヴァイン。
どういうわけか服装以外はフツーの恰好をしている。
……アイツ、もっととんでもない姿に魔改造されちゃってたよね?
少しばかり首を傾げたけど、記憶を手繰っているうちに思い出した。
そういえばセフィロスから逃げる時、ヘンリーさんって人があの杖を使ってアイツの姿に化けてたっけ。
じゃああれはヘンリーさんなのかな?
それとも本当にアーヴァインで、人間だったころの姿に化けてるだけ?
(アンジェロ、わかる?)
頭を撫でながら聞いてみると、アンジェロはすぐにくんくんと鼻をひくつかせ、道から離れた木陰の方を指し示した。
どうやらあっちの方にいるのが本物のアーヴァインで、ロックさんと話してるのはヘンリーさんみたい。
うーん、バリバリ警戒されてますねえ……
「おどかすも何も、ちゃんと堂々歩いてきてるだろ。
俺が敵だったらこんな目立つ格好しないで、バニシュ使って近づいてるっての」
「"ばにしゅ"って……止めてよ〜。
それより〜、ロックさんこそ一人なの〜?」
即興にしては中々レベルの高い物真似なんだけど、ちょっと間延びさせすぎかな。
本物のアーヴァインはセルフィに合わせて話してるだけだから、余裕がある時でもセルフィ度50%ぐらいの口調なんだよね。
そんで今みたいな、どう考えても余裕のない状況ならセルフィ度はゼロのはず。
『どれぐらいヤバイ状況か』の判断に使うといいってキスティスも言ってたし――あれじゃあセルフィ度は70%以上、みんななら一発で見破っちゃうよ。
だけどロックさんはアイツとそこまで仲良しってワケじゃないかもしれないし、騙されちゃうかなあ……
騙されたところでどうこうってコトは起こらないと思いたいけど。
「いいや、ソロとアンジェロを保護してる。
さっきリュックの声でメチャクチャな放送が流れただろ?
あんなデマをバラまかれたらヘンリーにも疑われるんじゃないかって泣いて落ち込んでるから、ゲートの方で待ってもらってるんだ」
「あ、ああ、そう……」
ロックさんの言葉に、偽アーヴァインこと恐らくヘンリーさんは思いっきり顔を逸らし――つまりバツが悪そうな表情をこちらに向ける。
たまたまこっち向いただけで、気づいたってワケじゃなさそうだけど……先に出ていった方がいいかな?
仮にあんな放送を信じかけちゃってるんだとしたら、ソロと一緒にいないところを見せた方が疑いが解けるかも……だよね?
そんな私の考えに賛成してくれたのか、アンジェロはぴょいんと飛び跳ねて木陰から躍り出ると、有刺鉄線を華麗に飛び越えて走り出した。
それも結構本気のスピードで、だけど――ちょ、ちょっと、速すぎるような……!
- 425 :薄氷を踏む、その背を押して 3/10:2024/04/08(月) 16:42:25.04 ID:iNF9KTSg/
- 「わっ!?」
「アンジェロ?! どうしたんだ?!
ソロに何かあったのか?!」
ああー。そうなるよねえ。
私が急ブレーキをかけたところで、あとの祀り。
アンジェロラッシュでも仕掛けるのかってぐらい弾丸ダッシュしちゃったもんだから、ロックさんもヘンリーさんも警戒態勢取っちゃってる。
ううーん、まずいなあ。
特に何も起こってないけど、私達だけついてきただけですよーってなんとか伝えないと。
えーと、えーと……とりあえずアンジェロ! ゴロン!
「「………ええ、っと?」」
お腹を出して寝そべった、とっても可愛くて敵意ゼロのポーズに、二人は揃って困惑の声を上げる。
よし! 次はフェイスだよフェイス!
キュートなお鼻を撫で回して、可愛さでノックアウトしちゃおう!
えーと、それからそれから……おすわり! 伏せ!
「えっと――お手、おかわり、おまわり」
私達の意を汲んでくれたのかロックさんが芸のリクエストをはじめる。
うんうん、もちろんうちのアンジェロは全部こなせますとも! 一生懸命練習したもんね!
こんな天使みたいにかわいいアンジェロがセフィロスなわけないでしょ! どうだ参ったか!
「………あのさ。
急に芸をし始めるとか、怪しくないか?」
えっ!? そ、そんな観点があるの!?
なんで!? こんな可愛いのに!
「そうか? この犬メチャクチャ賢いみたいだし、お前が警戒してるから知ってる芸全部見せようとしただけじゃないか?」
「そうか? ……な?」
そうだそうだ! さすがロックさん頼りになる!
……あ、でも、よーく考えたらやっぱりおかしいのかな?
だって犬なのに本物アーヴァインと偽アーヴァインの見分けついてない――って思われてたらマズイよね。
ね、アンジェロ! ちょっと本物アーヴァインの方に向かって吠えてみて!
「ワン! ワンワン!」
「ちょ、ちょ……!」
おお、慌ててる慌ててる。
ヘンリーさんだけ。
- 426 :薄氷を踏む、その背を押して 4/10:2024/04/08(月) 16:43:30.08 ID:iNF9KTSg/
- 「あー、やっぱそっちか。
本当に賢いんだなお前。インターセプタ―にも引けを取らないぞ」
ロックさんがアンジェロの頭を撫でまわす。
そうこうしているうちに、アーヴァインがいるはずの木立からガシャン! ガサッ! と動き――動き………うごき?
「ああもう、出てくんなって言っただろ!」
偽アーヴァインが杖を振ると、ぼわんと音を立てながらピンク色の煙が舞い上がった。
現れたのは、参加者リストでよーく覚えた顔。
エメラルドみたいな色のおかっぱヘアーなんてへんてこな髪型にも関わらず、端正な顔立ちと立派な服もあって全力で王子様感を出している男性――
間違いなく、リュカさんの友達のヘンリーさんだ。
で、本物のアーヴァインはといえば……まだ出てこないし、ガサガサやってる。
何ならすっごい勢いで咳き込んでるけど――何か言おうとしてるのかなぁ。
「あー、悪い。
今のアーヴァイン、一人で歩けないから車椅子に乗せてるんだ」
「ああ、それで転んで立てなくなってるのか……
肩貸してやらないと、あれ無理だろ」
「言われなくてもわかってるって。
俺がアイツ起こしてる間に、お前らはソロを連れてきてくれよ。
色々話をすり合わせないとお互いマズそうだ」
なるほどなるほど。そういうことなら私達におまかせあーれ!
アーヴァインって体格いいからきっと重たいだろうし、ヘンリーさん一人じゃ大変でしょ。
ソロは私が呼んでくるから、ロックさんはお手伝いよろしくね!
「ワンワン、ワオン」
「ん? どうした?」
よーしよし。アンジェロも伝えようとしてくれたんだね。
……どう見ても伝わってる気がしないけど、こうなったらさっさとソロのところに行っちゃおう。
バビュッと連れてくればソロが通訳してくれるしね!
そういうわけでアンジェロ、全力ダッシュでゴーゴー!
ふわふわ背中に乗っかって緩やかな坂を駆け下りて、気分はウィッシュスター!
でもうっかりソロに体当たりしないように気を付けてね! あの威力、冗談じゃすまないからね!
『おまたせー、ソロー!
ヘンリーさん達、いたよー!』
ゲートの先、赤いシルエットが視界に映ったあたりで思いっきり大声で叫んでみる。
正直今の私が叫んだところで聞こえるかどうかわかんなかったけど、どうやらちゃんと伝わったようだ。
ソロはぐしぐしと顔をこすりながら、笑顔を作ろうとして取り繕いきれなかった表情をこちらに向ける。
- 427 :薄氷を踏む、その背を押して 5/10:2024/04/08(月) 16:45:00.11 ID:iNF9KTSg/
- 「リッ……あっと、アンジェロ、無事で良かった」
『無事も何も、フツーに落ち着いてたからねえ。
さすがにアーヴァインは隠れてたけど……なんか車椅子から転げ落ちてジタバタしてたけど』
「え……? だ、大丈夫なんですか?」
『んー、まあアーヴァインだし平気でしょ。
それより、向こうは向こうで何が起きてるのかさっぱりだろうし、私達とロックさんも完全には情報交換できてないでしょ?
何がなんだかワケわかんないから、一度集まってちゃんと話をしようってさ』
「そう、ですか。
……誤解が解けたなら、良かったです」
そう言いつつも、ソロの顔は晴れないまま。
覇気がないっていうか、生気もちょっと足りてないっていうか……サイファーと風神に揃って叱られた時の雷神よりもしょげかえっているっていうか。
顔を隠そうとしているかのようにロックさんから借りた帽子の鍔を何度も触りながら、それでも歩き出そうとする姿は、かなり痛々しい。
……でも、そうなっちゃうソロの気持ち、わかるんだよね。
恐れられたらどうしよう。嫌われたらどうしよう。
自分が魔女になったって気づいた時、真っ先に浮かんだのはそんな思考。
魔女イデアの暗殺指示を出したように、お父さんは私を殺せって依頼を出すのかな、とか。
アーヴァインが私を撃つのかな、とか。
キスティスや、セルフィや、ゼルも、私を殺せって言われちゃうのかな、とか。
ワッツとか、ソーンとか、森のフクロウのみんなにも逃げられちゃうのかな、とか。
――スコールに、剣を向けられるのかな、とか。
みんなはそんなことしないって信じたい気持ちも、当然あったけど。
でも、変わっちゃうのが私なら――……いつか『今ここにいる私』がいなくなって、『恐れられて当然の魔女』が残ってしまったなら。
そんな未来が怖くて、そうなる前に消えたいって、本気で願ってた。
スコールが『魔女でもいいさ』って言ってくれるまで、ずっと。
今のソロは、あの時の私よりももっと悪い状況にいる。
だって私は自分が魔女だってわかってたけど、ソロは完全に濡れ衣なんだもの。
なーんも覚えがないのに、敵の嘘だってわかってるのに、一方的にみんなから魔女だって恐れられるようなもので――
それってものすごく怖いし、絶望しちゃうよ。
おまけに変な歌で幻覚は見せられるし……アレ、私にはママの幻が見えたけど、多分親しい人の思い出が見えるとかそういうヤツだよね?
歌ってるママとか、交通事故とか、お葬式の時とか、鮮明に思い出して――人の心を弄ぶような幻のオンパレードだったもん。
それを仲間にやられたんだから、そりゃ辛いでしょ!
もうもう、すんごいつれぇわでしょ!
だから――今度は私が"スコール"にならなきゃいけない。
大丈夫だって言って、全力ではぐはぐして、安心させてあげられる、あの時のスコールみたいな拠り所になってあげなきゃ!
『未来って思うより悪いことばっかりじゃないし、人の気持ちってそんなにヤワじゃないの。
それにみんなソロの味方だから。
不安なら、私をスコールだと思って! "俺のそばから離れるな"!』
「………」
あ、あれ?
ソロが目をまん丸くしてこっちを見ている。
口もぽかーんと空いてるし……あれ? 私、良いこと言ってるよね?
- 428 :薄氷を踏む、その背を押して 6/10:2024/04/08(月) 16:46:31.56 ID:iNF9KTSg/
- 「あ、あの……その、す、すみません。
あまりにも似てない物真似――あっ、いや、その、リノアさ……あっ!
ああっと、えっと、その、リノアさん直伝の物真似なんでしょうけどアンジェロが似せられるのは無理がありますよね犬ですし!」
お、おおう……これまたダイナミックに口滑らせてるけど、大丈夫?
そして渾身の物真似だったのに似てない判定。ショ、ショック〜!
いやいや、きっとソロがスコールを良く知らないからだよね?
アーヴァインに見せたら似てる判定もらえるよね? ……ってソロ以外の人に見えてないんだった、私。
『と、とにかく、行こう、ソロ。
ヘンリーさん、意外と普通に話聞いてくれてたから大丈夫大丈夫。
もしアーヴァインが暴れたりしても、私が膝裏キックして態勢崩すから、その隙にスリッパか何かで頭叩けば大丈夫。
こう、ハリセンみたいに振りかぶってスパーンって! 勢いよく斜め四十五度から叩くのがコツだから!』
「ええ……? い、いや、はい……とにかく、行きましょうか」
******************
アンジェロの声を聞いた時、反射的に身体が動いた。
もっとも僕の意思でそうなったというよりは、『誰か』の動きに引っ張られたような感じで。
その『誰か』は間違いなくあの陰険根暗はた迷惑の化身、ヘンリーさんが言うところのはぐれキング野郎なんだろうけど、どういうわけか今までみたいなムリヤリ感は覚えなかった。
それはそれとして、絶賛ボロボロ重体中な僕の身体を省みてくれなかったのも確かで。
(あれ? なんで僕立ち上がっちゃってるの?)と思った瞬間には地面に倒れこんでいたんだからどうしようもない。
だいたいさあ、忘れてるのかもしれないけど、僕って右耳もぶっ壊されてるんだよ?
いきなり立とうとしたって転ぶに決まってるんだよね〜。
それに加えて脇腹も治り切ってないわけだし……
変化の杖をヘンリーさんに渡していなかったら、それこそ『オンギャーーーース!!』って叫び声を上げてたね。
残念ながら、喉がかすれて「かふっ、ひゅーー」って音しか出ないんだけど。
包帯の下からじわりと滲む血の感覚に辟易しながら立ち上がろうとしても、お腹に力を入れず傷口を庇うとかすんごい難しいし……
転がって車椅子にしがみ付きなおせないかとか、木にすがりついて上半身だけでも起こせないかとか、色々ジタバタしているうちにヘンリーさんがすっ飛んできた。
「おい、大丈夫か?!」
(いきなり吠えられて驚いたんだと思いたいけど、セフィロスの影響とかじゃないよな!?
まさかあのロックまで操られてるとか考えたくないんだが?!
でもなー、マジで放送が嘘ならソロが傷つくのは当然を超えた当然だし、俺だって無実のアイツを傷つけたくはないわけで――)
喋ってるのはたった一言、でも頭の中ではマシンガントークがババババって炸裂してる。
(とりあえずロックはついてきてないな。ヨシ!
はぐれキング野郎の影響が無くなったっぽいと言っても、あんまり銀髪見せたくないしな。
ここでこっちの話を聞かないようだったらニセモノ断定待ったナシだったけど――いやいや、まだ油断できないか。
それに本物だったとしても、ロックの心を読んだら全方位地雷まみれで大爆発! 脳みそボーン! とかになったら目も当てられねえ)
- 429 :薄氷を踏む、その背を押して 7/10:2024/04/08(月) 16:48:02.49 ID:iNF9KTSg/
- ……うん。そーゆー危惧を抱くのはわかる、わかるよ〜?
でもイメージの中とはいえ、人の頭をクラッカーに例えるのは止めてほしい。
僕ののーみそにはリボンもテープも火薬も入ってないっての。
突っ込む気力も、ついでにもがく気力も失せて大人しく地べたに寝っ転がっていると、思いっきり勘違いしたヘンリーさんに抱え起こされて頬をぺしぺしされた。
(えっまさか目を開けたまま気絶してる? てか腹と足の包帯赤くなってね? やべぇ!!)
「アーヴァイン!? しっかりしろ!!」
大丈夫じゃなさそうに見えるならもうちょっと優しく扱ってほしい。
そんなことを思いながら、僕は小さく頷く。
声がしっかり出せたなら「大丈夫だから止めてよー! もー!」って猛抗議してるんだけど……
ゆっくり口パクして読んでもらうしかないよね。
(『大丈夫?』 ……本当か?
えっと……『アンジェロの声がしたから、思わず動いただけ?』)
おおー、ちゃんと伝わってる伝わってる。
もしかして読唇術の心得があったりする? 例の奴隷時代に反抗目的でマスターしたとかそういうエピソードがあるやつ?
(本当かなあ……解読が合ってたとしても、絶対強がりだよなコレ。
とりあえず変化の杖は返しておいて、車椅子に座らせて運ぶとして……
ロック達に怪我を治してもらうか、変な心読まないように俺だけで手当てするか………)
脇の下に腕を差し込まれてずりっと持ち上げられる、その間にも頭の中に二つのイメージが浮かぶ。
妙にデフォルメされたロックとソロが『良からぬこと』を考えながら僕に回復魔法を使う場面と、本物よりだいぶ盛ったイケオジヘンリーさんが半泣きの僕を治療する場面だ。
まぁ、何が起きてるのかサッパリわかんない以上、僕にとっての地雷を警戒してくれるのはいいんだけど……
良からぬことのイメージに、マジで『良からぬこと』って文字をそのまま使っちゃうのはどうかと思う。
もっとこう、具体的にあるじゃん。
レーベのこととか、サイファーのこととか、セフィロスのこととか。
色々突っ込みたくてやきもきしてきたところで、僕を車椅子に乗せ終わったヘンリーさんが「ほら、使えって」と、念願の変化の杖を渡してくれた。
ぼわん、と早速一振り。
今回はスタンダードな僕、茶色コートに帽子の姿をチョイス。
やっぱりアンジェロが無事に生き返ったっていうなら、一番慣れ親しんだ姿で会いたいからね。
「ありがと――ゴホッゴホッ」
心配され過ぎないよう元気なところをアピールしたかったんだけど、やっぱりむせる。
痛みと息苦しさの悪循環。万が一吐血しちゃっても誤魔化せるように口だけはしっかり押さえて、呼吸が整うのを待つしかない。
「だから無理に喋るなって」
(どうしたもんか……やっぱり俺だけ話を聞いて、休ませた方がいいか?
でも俺の心読んだら結局伝わるんだから――でもなー、身体が弱ってる時にショッキングな話聞かされるのマジ良くないからな。
親父もそれでポックリ逝っちまったみたいだし……奴隷仲間でも絶望して衰弱して死んでった奴多かったし……)
- 430 :薄氷を踏む、その背を押して 8/10:2024/04/08(月) 16:49:17.21 ID:iNF9KTSg/
- お、重い……重すぎるってば〜。
すんごい絶望感と、実際不衛生で劣悪極まりない中うわごとを呟いて死んでいく人たちの姿が頭の中に流れ込んできて、僕の心までペシャンコになりそう。
本当にこのオジサン、どんな人生歩んできてるの?
王子様ってもっと『立派な王様になるように大事に大事に育てようね〜』って周りからちやほやされて育つものじゃないの?
僕より自分を救った方がいいんじゃないの? マジで、マジで〜!!
「だ、大丈夫だって。みんなの、話、聞こう。
で、でも――僕の、ことは、ナイショで、お願い」
僕の言葉に、ヘンリーさんの表情がますます曇る。
うん、そりゃ心配するよね。わかるよ〜。
「……気持ちはわかるが、ずっと黙ってるのは難しいと思うぞ」
(いやいやいや無理だろ、俺がちょっと変な事考えただけで噴き出すってのに。
それに俺みたいな面白思考のヤツばっかりじゃないんだぞ?)
自覚してるなら止めてほしいんだけど。
「特に、今のソロは真実を見抜く力みたいなのを持ってるからな。
お前の本当の姿を見てショック受けて、その思考をお前が読んで――って悪循環になるかもしれない」
(ピサロのことも見抜いてたしな)
「えっ、マジ?!」
なにそれ初耳なんだけど!?
んー、でも良く考えたらその話聞いたことあるような……それにカッパをセフィロスと見抜いてたりとか……あれ? これ誰の記憶?
うわうわ〜、なんか変な思い出が混ざってる気がする〜……!
これってセフィロスと、多分ピサロの影響だよね……ヘンリーさんが危なくなった時に『身体貸せ』って半ば無理やり乗っ取られたし……
「マジだって。それにその能力が無くたって、突然爆笑したり凹んだりしたら一発でバレるだろ。
一応、アッチの出方を伺うために最初の内だけ黙ってるのはアリだと思うが……
安全だって確証が取れたならすぐに話した方がいいぞ。
お前、お前が思ってるより数倍は挙動不審だからな?」
挙動不審の原因作ってる張本人がそれ言っちゃうの……?
釈然としない気持ちはあるけど、発言者に目を瞑ればもっともなアドバイスではある。
どうせ見た目も中身もとっくに化物なんだし、そもそも人を殺してる時点で嫌われて避けられるのは当たり前。
相手に悟られず一方的に情報を抜き取れるという利点はあるけれど、ヘンリーさんの指摘通り、ノーリアクションを貫けないなら速攻バレるし意味がない。
僕、演技力には自信がある方だけど……それだけじゃどうにもならないよね。
必要なのって何事にも動じない鉄の表情と精神力とかだよね。
ぶっちゃけスコールや、それこそヘンリーさんの方が得意なヤツ。
でも――……
「わ、わかってるよ〜。
ただ、ソロも、ロックも、本物でも……ゴホッ、僕を気遣って、隠し事、するかもしれないから。
だから、先に、知っておきたいんだ。
あの後、何が起きて、……ゲホッ、サイファーと、リュックが、どうなったのか」
- 431 :薄氷を踏む、その背を押して 9/10:2024/04/08(月) 16:50:41.55 ID:iNF9KTSg/
- 大丈夫だと思っていたかった。
リュックもギードもロックもいるんだから、石化なんてパパっと解いてるって。
そしてサイファーがいつものように眉間に皺を寄せながら、僕の胸倉を掴んで怒鳴りつけてきて。
リュックが止めに入って、言い合いになって……そんなニギヤカな二人の姿を見れるはずだって、信じていたかった。
だけど――……
「サイファー、元気なら……ロックに、任せないで、自分で来ると思うんだ。
だって、僕に、言いたいこと、いっぱい、あるはずだから。
それにリュックも……あの放送、ニセモノなのか、本物なのかも……ゲホッ、わからないしさ」
「……そうか」
(って納得してやりたいけど――どうなんだ?
ソロもロックも黙るような事実があったとしたら、それってやっぱり聞かない方が良くないか?)
……まあ、そう考えるよね。
だからこそ、無理やりにでも知りたいんだけど。
「覚悟、したいんだよ。
何も知らずにいたって……散々振り回されて、フラフラに、なってから、現実を……ゴホッ、突き付けられる、だけだから」
だったら、少しでも、余裕があるうちに……知って、おきたいんだ」
僕の言葉に、ヘンリーさんは口元を抑え――しばらくしてから、観念したように「わかった」と頷いた。
それでも心の中では結構グチグチ言ってたんだけどね。
こんなに心配してくれてるんだから素直に聞き入れた方がいいのかなとか、ちょっとだいぶ申し訳ないなって気持ち、そりゃあるけど……
事態が好転して僕のメンタルが回復する可能性と、事態が悪化してどうしようもなくなる可能性だったら、ぜ〜〜〜ったい後者の方が高いに決まってる!
故に、今聞いた方がマシ!
どんな最悪な事が起こってたとしても……例えばケフカが裏切ってリュックを操ってサイファーが殺されたとかそういうレベルだったとしても、とにかく覚悟するしかな〜い!
大丈夫、僕ならできる、僕ならできる、僕ならできる……
「よいしょ、っとぉ!」
車椅子が力強く押されて、草むらをかき分ける。
その間にも僕はひたすら深呼吸しまくって、自己催眠かけまくって、ありとあらゆる悪い想像をしまくって。
とにかく何が起きても耐え抜いて見せる――つもり、だった。
「――お、大丈夫か?」
どうしようもなくすんごい似合わないカッコのロックと、
「ヘンリーさん……!」
血の気が引くほどすっごく見覚えのある帽子をかぶったソロと、
「……」
作りものみたいに静かなアンジェロを守るようにまとわりついた、キラキラした光のもやを見るまでは。
- 432 :薄氷を踏む、その背を押して 10/10:2024/04/08(月) 16:51:28.13 ID:iNF9KTSg/
- 【ロック (MP3/4、HP:9/10、左足軽傷)(変装中@狩人もどき)
所持品:クリスタルソード 魔石バハムート、皆伝の証、かわのたて、2000ギル、メガポーション、デスキャッスルの見取り図
第一行動方針:ソロをフォローしつつ、ヘンリー達と情報交換する
第ニ行動方針:仲間と合流し、静寂の玉を手に入れる
第三行動方針:ジェノバをどうにかする
基本行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】
【ソロ(MP0、真実の力を継承、軽度の精神ダメージ)(変装中@赤魔道士もどき)
所持品:ラミアスの剣(天空の剣、E)、天空の盾(E)、レッドキャップ(E)、天空の兜、天空の鎧、ケフカのメモ、着替え用の服(残り一着)、
ドライバーに改造した聖なる矢、メガポーション、村正
第一行動方針:ヘンリーとアーヴァインにジェノバの事を説明する
第ニ行動方針:ジェノバの魔の手から仲間を守る
基本行動方針:PKK含むこれ以上の殺人を防ぐ
※但し、真剣勝負が必要になる局面が来た場合の事は覚悟しつつあり】
【アンジェロ(リノア)(変装中@黒魔道士もどき)
所持品:風のローブ
第一行動方針:ソロをサポートする
第ニ行動方針:サイファー、スコールなどのソロの仲間と合流
第三行動方針:アンジェロの心を蘇らせる手段を探す
最終行動方針:アルティミシアを倒し、スコールと再会する】
【アーヴァイン (HP3/4、MP0、半ジェノバ化(重度)、疲労、右耳失聴、一時的失声、呪い(時々行動不能or混乱or沈黙)
所持品:G.F.パンデモニウム(E、召喚×)、変化の杖(E)、ビームライフル(E) 竜騎士の靴(E) 手帳、リュックのドレスフィア(シーフ)、
ちょこザイナ&ちょこソナー、ラグナロク、祈りの指輪(ヒビ)、召喚獣ティーダ、飲料水入りの瓶×9、食料、折り畳み式車椅子
第一行動方針:????
最終行動方針:魔女を倒してセルフィや仲間を守る。可能なら生還してセルフィに会う
備考:・ジェノバ細胞を植え付けられた影響で、右上半身から背中にかけて異形化が進行しています。
MP残量が回復する前にMP消費を伴う行動をするとジェノバ化がさらに進行します。
・ユウナ?由来の【闇】の影響で呪い効果を受けています。会場内にいる限り永続します】
※ティーダの所持品:ユウナのザック(官能小説2冊、ライトブリンガー、スパス、ビーナスゴスペル+マテリア(スピード))、ガイアの剣
【ヘンリー
所持品:水鏡の盾(E)、君主の聖衣(E)、キラーボウ(E)、リフレクトリング(E)、魔法の絨毯、
銀のフォーク、グレートソード、デスペナルティ、ナイフ、チキンナイフ、果物ナイフ、筆談メモ
ザックスのザック(風魔手裏剣(5)、ドリル、官能小説一冊、厚底サンダル、種子島銃、ミスリルアクス)
リュックのザック(刃の鎧、首輪×2、ドライバーに改造した聖なる矢)、サイファーのザック(ガーデン保健室の救急セット・医療品、食品)、
レオのザック(アルテマソード、鍛冶セット、光の鎧)
第一行動方針:アーヴァインをフォローしつつ、ソロ達と情報交換する
第ニ行動方針:仲間と合流する/セージを何とかする
基本行動方針:ゲームを壊す(ゲームに乗る奴は倒す)】
【現在位置:訓練施設・秘密の場所への入り口前】
- 433 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2024/04/17(水) 21:41:46.46 ID:1LuEbQZpc
- 投下乙です
ソロとアーヴァインはやばかったが相方に恵まれたなあ。どっちも爆発しててもおかしくなかった
- 434 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2024/04/18(木) 22:32:54.90 ID:zUqKPZkz6
- 遅まきながら投下乙です。
アーヴァインの解像度たっか……というかセルフィ度で状況判断できるってマジもの?w
しかもキスティスにも知られてるってことは、まわりはみんな知っててアーヴァイン本人だけがバレてないと思ってるパターンでしょ。
やばい昔書いたアーヴァインがジェノバ認定されてしまうかもしれない。
魔女になった瞬間をクローズアップして、ソロの孤独と不安をここに絡めて共感するところはおおっと思った。
FF8、行間読んでないと割とするっと進んじゃうんだけど、確かに不安と恐怖が渦巻いておかしくなりそうだもんな。
『恐れられて当然の魔女』にも言及して、きっちり顛末を対比してるのが丁寧よね。
そして、『恐れられて当然』はアーヴァインのほうにもかかってくるわけで。
孤独で、不安で、恐れられて、お茶目な年上のオジサンに連れられてて、言葉がなくても相手のことがなんとなく分かって……
なんでソロとアーヴァインが似た者同士みたいなポジションになってるんだろうな。
二人とも、接触したら緊張とともに身体中の力が全部抜けるんじゃないか?
ところで、リノアはここぞとばかりに先輩やってますねえ。
ガーデンではじめてできた後輩にかまいまくる世話焼きの先輩ポジションじゃん。
でもはぐはぐはやめよ? 概念はぐはぐと概念スコールなのは分かってるけど、言葉自体のインパクトが強すぎてそちらに持っていかれてしまうw
もし物理はぐはぐが手段に含まれてるのなら別の意味で魔女になってしまうわw
この辺のフリーダムな表現、スコールが好きそうかつ、同時に頭抱えそうなところなんだよなあ。
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